運営者 Bitlet 姉妹サービス
使い方 FAQ このサイトについて | login

1988-03-16 第112回国会 衆議院 大蔵委員会 第6号 公式Web版

  1. 会議録情報

    昭和六十三年三月十六日(水曜日)     午後六時五十八分開議  出席委員    委員長 越智 通雄君    理事 大島 理森君 理事 太田 誠一君    理事 中川 昭一君 理事 中西 啓介君    理事 中村正三郎君 理事 中村 正男君    理事 宮地 正介君 理事 玉置 一弥君       逢沢 一郎君    新井 将敬君       今枝 敬雄君    江口 一雄君       遠藤 武彦君    金子 一義君       小泉純一郎君    笹川  堯君       杉山 憲夫君    戸塚 進也君       葉梨 信行君    鳩山由紀夫君       村井  仁君    村上誠一郎君       山本 幸雄君    上田 卓三君       野口 幸一君    早川  勝君       堀  昌雄君    柴田  弘君       橋本 文彦君    日笠 勝之君       森田 景一君    矢追 秀彦君       正森 成二君    矢島 恒夫君  出席国務大臣         大 蔵 大 臣 宮澤 喜一君  出席政府委員         大蔵大臣官房総         務審議官    角谷 正彦君         大蔵省主計局次         長       斎藤 次郎君         大蔵省主税局長 水野  勝君         大蔵省関税局長 大山 綱明君         大蔵省理財局長 足立 和基君         国税庁次長   日向  隆君         資源エネルギー         庁次長     高橋 達直君         資源エネルギー         庁石油部長   内藤 正久君  委員外出席者         大蔵委員会調査         室長      矢島錦一郎君     ───────────── 委員の異動 三月十六日  辞任         補欠選任   金子 一義君     逢沢 一郎君   森田 景一君     柴田  弘君 同日  辞任         補欠選任   逢沢 一郎君     金子 一義君   柴田  弘君     森田 景一君     ───────────── 三月十一日  共済年金等の改善に関する請願森本晃司紹介)(第七二二号)  相続税贈与税改正に関する請願奥田幹生紹介)(第七二三号)  同(伊吹文明紹介)(第七六七号)  新大型間接税導入反対国民本位税制改革に関する請願矢島恒夫紹介)(第七九一号)  相続税大幅減税に関する請願工藤晃紹介)(第七九二号)  大型間接税導入反対に関する請願正森成二君紹介)(第七九三号)  大型間接税導入反対に関する請願安藤巖紹介)(第七九四号)  同(工藤晃紹介)(第七九五号)  同(佐藤祐弘紹介)(第七九六号)  同(辻第一君紹介)(第七九七号)  同(寺前巖紹介)(第七九八号)  同(中路雅弘紹介)(第七九九号)  同(藤原ひろ子紹介)(第八〇〇号)  同(松本善明紹介)(第八〇一号) 同月十六日  大型間接税導入反対に関する請願安藤巖紹介)(第八三九号)  同(石井郁子紹介)(第八四〇号)  同(浦井洋紹介)(第八四一号)  同(岡崎万寿秀紹介)(第八四二号)  同(経塚幸夫紹介)(第八四三号)  同(児玉健次紹介)(第八四四号)  同(佐藤祐弘紹介)(第八四五号)  同(柴田睦夫紹介)(第八四六号)  同(瀬長亀次郎紹介)(第八四七号)  同(田中美智子紹介)(第八四八号)  同(辻第一君紹介)(第八四九号)  同(寺前巖紹介)(第八五〇号)  同(中路雅弘紹介)(第八五一号)  同(野間友一紹介)(第八五二号)  同(東中光雄紹介)(第八五三号)  同(不破哲三紹介)(第八五四号)  同(藤田スミ紹介)(第八五五号)  同(藤原ひろ子紹介)(第八五六号)  同(正森成二君紹介)(第八五七号)  同(松本善明紹介)(第八五八号)  同(村上弘紹介)(第八五九号)  同(矢島恒夫紹介)(第八六〇号)  同(山原健二郎紹介)(第八六一号)  同(安藤巖紹介)(第九五〇号)  同(金子満広紹介)(第九五一号)  同(児玉健次紹介)(第九五二号)  同(田中美智子紹介)(第九五三号)  同(寺前巖紹介)(第九五四号)  同(正森成二君紹介)(第九五五号)  同外一件(矢島恒夫紹介)(第九五六号)  新大型間接税導入反対国民本位税制改革に関する請願岩佐恵美紹介)(第八六二号)  同(金子満広紹介)(第八六三号)  同(工藤晃紹介)(第八六四号)  同(中島武敏紹介)(第八六五号)  同(中島武敏紹介)(第九五七号)  同(松本善明紹介)(第九五八号)  新大型間接税導入反対に関する請願中路雅弘紹介)(第九四八号)  大型間接税導入反対に関する請願外一件(児玉健次紹介)(第九四九号) は本委員会に付託された。     ───────────── 本日の会議に付した案件  租税特別措置法の一部を改正する法律案内閣提出第五号)      ────◇─────
  2. 越智通雄

    越智委員長 これより会議を開きます。  内閣提出租税特別措置法の一部を改正する法律案を議題といたします。  質疑の申し出がありますので、順次これを許します。上田卓三君。
  3. 上田卓三

    上田(卓)委員 三月八日の与野党国対委員長会談で、社会党、公明党、民社党の三会派の要求する三兆円減税につきまして合意、こういうことになったわけでございます。現在、与野党政策担当協議機関で、減税の方法、財源などの具体的方策が話し合われているわけでございます。  財源問題では、不公平税制是正などが中心に話し合われているわけでありますが、政府自民党内には、三兆円の財源は確保できない、不足分新型間接税でとの思惑があるようであります。しかし、新型間接税は絶対に我々は認めるわけにはいかないわけであります。財源はあくまでも与野党合意のとおり、不公平税制是正その他の項目に限って、野党側要求以外のものは持ち込むべきではない、このように考えておるわけであります。  三兆円減税与野党合意について政府としてどのような態度で臨むのか、減税財源の確保に大蔵省はどのように考えておるのか、まず大臣からお答えいただきたい、このように思います。
  4. 宮澤喜一

    宮澤国務大臣 去る三月八日の与野党国対委員長会談におきます合意事項につきましては、もともと各党間のお話でございますので、政府がこれをあれこれ有権的に解釈すべきことではないと存じますが、殊にこの合意に至りますまでの間に、各党間で非常に長い間の国対委員長の方々の間でのお話があり、また大変に御苦心をなさってこの合意をつくられたように存じておりますので、殊さらこれにつきましてかれこれ政府の意見を申し上げるべきでないと思うのでありますが、いずれにいたしましても、この合意の第二項によりまして各党政策担当者間で御協議が既に始まっておりますので、御協議の推移を見守りたいというふうに考えております。
  5. 上田卓三

    上田(卓)委員 政府は、昭和六十二年度補正予算租税印紙収入の当初見込みが四十一兆一千九百四十億円を、さらに一兆八千九百三十億円増額をいたしたわけでございます。この増額補正金額は適正な見積もりかどうか、お聞きしたいわけであります。  新聞報道では、二月二十日に補正予算が成立した四日後に、自民党国対幹部は、野党予算修正減税要求に対して、六十二年度税収大幅増による剰余金数千億円の範囲で減税考えるケースもある、こう発言されておるわけであります。これは二月二十五日の読売新聞であります。日経新聞では三月七日、六十二年度補正見積もりを少なくとも数千億円上回るのは確実、一兆円上回るとの予測も出ている、このように報道されているわけでありますが、最近の急速な景気上昇あるいは企業収入好調ぶり等考え合わすと、政府税収見込みは過小という気がしないわけではないわけでありますが、この点についてどのようにお考えでしょうか。
  6. 水野勝

    水野政府委員 六十二年度の補正につきましては、補正予算作成時までの実績と、それから今後の経済見通しにつきましての政府見方あたりを参考にいたしまして、適正に見積もったものでございます。この見積もったものを結果的な数値としての弾性値ではじいてみますと、一・八三という数字になっております。十年平均弾性値は一・一でございますので、これに比べると相当高い数値であるわけでございます。そういう意味では、近来にない大きな見積もりをしているとも言えるわけでございます。  一方、昨年の九月には減税を通していただきました。この減税を受けまして、一番最近の一月税収を見ますと、前年比一二・五%の減となっております。これは年末調整によりまして、相当の源泉所得税減税がここにあらわれている結果であろうと思われます。次は、申告所得税も三月の、きのうで終わっているわけでございますが、その中に減税もあらわれてきておるはずでございます。一方、今委員お話しのように、景気動向は、今は割合順調でございます。こういったものが三月決算法人にどのようにあらわれるか。この中には一・三%の減税分もあるわけでございますので、その分の減も見込む必要があるわけでございます。  確定申告それから三月決算法人申告、この大きな二つの要素を残しておりますので確たることは申し上げられないわけでございますが、先ほど申し上げた弾性値数値でございますとか最近までの税収動向からいたしまして、私どもといたしましては、補正予算におきましては適正なものを見積もってお出ししたと考えておるわけでございます。
  7. 上田卓三

    上田(卓)委員 大蔵省は、八六年の当初予算税収見込み四十兆五千六百億円を、補正で一兆一千二百億円減額されたわけであります。決算では二兆四千三百億円の増の税収となっておりますね。八七年度は、当初予算で前年度比六千三百四十億円の税収増だと言われておったのが、それが補正で一兆八千九百三十億円の増額をされております。これは、減税実施分と廃案になった売上税の分を合わせると、実質三兆七千二百三十億円の自然増ということになるわけです。この上に、さらに先ほどのように数千億円あるいは一兆円近い増収予測されるとなると、この大蔵省税収見積もり間違いっ放しというのですか、そういうことになるのではないかと思うわけでありまして、こんなお粗末な税収見積もりしかできないような大蔵当局にどうして税制改革数字的根拠が出せるのか、こういうふうに国民は思うのではないかと思うわけであります。  一年間の税収見込みがこんなに大きく外れていて、どうして二十一世紀を展望する税制改革ができるのか、ちょっとオーバーな言い方になるわけですけれども、やはりこれほど大きな違いは単なる見込み違いということでは済まされないのではないか、このように考えるのですが、どうですか。
  8. 水野勝

    水野政府委員 まことにごもっともな御指摘でございまして、私ども汗顔の至りでございますが、それにいたしましても、御説明させていただきますと、六十一年度の補正予算は十月に御提案させていただきました。その十月と申しますのは、税収としても伸びがゼロでございましたし、結果的に考えますと、前回の景気後退の谷がちょうど六十一年十一月でございました。その当時の月例経済報告は、数カ月連続いたしまして景況は停滞ぎみであるということで一貫しておったわけでございますが、そうした真っただ中で例年よりもかなり早い時期に補正予算を組みましたので、かた目なものとなったわけでございます。その結果、御指摘のように一兆一千億円の減収を見込んだところ、それに対しまして二兆四千億円の増収となったということで、景気境目と申しますか、こういう時期でございましたので、全くその点は御指摘のとおりでございます。  その四年間を見てみますと、おおむね誤差は一%前後を上下しておったわけでございます。こうした景気の大きな変わり目と申しますか、そうした時期には、過去も何年かにはそういう一〇%くらいにまでまいります誤差もございました。こうしたことも、いつも肝に銘じて見積もっておるつもりでございますけれども、六十一年度はこうした結果になったことにつきまして、まことに不明をおわびするわけでございますが、事情としてはそういうことでございました。
  9. 上田卓三

    上田(卓)委員 民間の企業の社長であれば、責任問題であろうと思います。本当にようやっているなという感じがするわけです。  八七年度の税収過小見積もりがこの百九国会で、与野党によるということになるわけでございますが、所得税減税を一兆五千四百億円という非常に小さいものに値切ることとなったのではないかというように考えておるわけであります。マル優廃止に関連して減税先行が宣伝されまして、大蔵省は、一兆三千億円が限度、しかもその財源は六十一年度の剰余金だと主張されました。六十二年度に税収増加分はないという立場でなかったかと思います。宮澤大蔵大臣は、昨年八月十八日の衆議院本会議で、一兆三千億円の上にさらに上積み云々というお話は、これはもう財源的に私どもどうやって処理していいか到底見込みのないことでございますと、非常に悲観的な泣き言をおっしゃったわけであります。そして六十二年度は、昨年の剰余金が相当ございますので、これで何とか減税分を賄っていかなければと思っています、六十三年度は、ただいまの段階でははっきりした見通しがついておりません、このように答弁をされておるわけであります。  野党が二兆円減税要求し、与野党折衝となって結局自民党が二千億円の上乗せ、こういうこととなったわけでございますが、そのときに財政当局財源がないと言い続けて、結局昨年の減税は一兆五千四百億円、結果そうなったわけでありますが、今日明らかになった膨大な年度内税収増考えると、全く仕組まれたんではないかと言わざるを得ないというように思っているわけであります。  八七年度の減税財源がない、そして前年の剰余金を充てざるを得ない、こういうことで泣き言を言いながら、実際は補正をした後二兆四千三百億円の増収になっておる。実質的に売上税の分あるいは減税の分というものを除いてでも、そういうような大きな増収になっておる。要するに、前年度の剰余金を充てなくてもさらに自然増が出ておる、こういうことになっておるのではなかろうか、こういうように思うわけでございます。  そういう点で、要するに減税財源はびた一文出ないと言いながら、現実には減税分をのみ込んでもなおかつ増収が見込まれた、こういうことでありますから、財政当局責任ははかり知れないものがある。そういう意味では、本当に野党を、国民を小ばかにするというのですか、だまし討ちにしたと言ってしかるべきではないか、こういうように私は思っておるわけであります。特に、八七年度の膨大な年度内増収を優秀な大蔵当局予測できないはずはない、私はそのように思っておるわけであります。八七年度の税収過小見積もりは、減税財源を値切った上あるいは売上税による増税をやりやすくするための、そういう意味では計画的な過小見積もりである、こういうふうに言わざるを得ないのではないか、このように思っております。  財政民主主義というものは、言うまでもなく、議会の決定に財政当局あるいは政府は従うということではないか、このように思うわけでありまして、議会減税要求を値切るために税収見込み額を正しく出さないようなやり方は許されない、私はこのように思っておるわけでありまして、そういう意味で、税収見積もり違いというものは単なる見込み違いでは言いわけが立たないと思うのですが、その点どのように大臣はお考えでしょうか。
  10. 宮澤喜一

    宮澤国務大臣 先ほどから御叱責がありまして、確かに六十一年度におきましては、まず減額補正をし、次に大きな自然増が出るというふうに、まず六十一年度におきましては歳入の多寡でなくて、減か増かという、方角を間違えたということがございました。六十二年度におきましても、補正で相当大きな当初見積もり増額修正をいたした、このようなことは、先ほど政府委員も申し上げましたが、まことにおわびのしようのないところでありまして、これはいかに御叱責があろうとも甘んじて受けなければならないと思っております。  ただ、そのようなことではございますが、これは決して事実を覆い隠して、いわば偽りを申し上げようとしたわけではなかったのでありまして、心底私ども予測能力が不足しておりましたための、そのための過ちでございまして、意図したものでないことだけは、どうぞこれだけは御了解をお願いいたしたいと存じます。  そこで六十二年度でございますが、ただいままでのところ税収は、年度途中から伸びは少し鈍っておりますけれども、まだまだ好調ではございます。しかしながら、やはり減税がきいてまいりまして、年末調整所得税源泉にそれが響いてまいりまして、また申告納税もそうであろうかと思います。あるいはまた、昨年度の二・一あるいは今年度の一・八三でございましたかというような、これは上田委員ももうよくよく御承知のように、まことに異常な弾性値でございますから、こういうことが続いていくはずはない。土地とか株式等々の、いわゆる財テク等々による一過性税収というものははげ落ちていくに違いないのでありますが、それが正常な営業利益によってどれだけ正常な税収に変わっていくかという境目にあろうと思います。そうだといたしますと、もうそういう大きな弾性値は常識的にはあるはずがないと考えておりまして、ただいま六十二年度の税収につきましては、私どもまだ何とも楽観的なことを申し上げられない。  実際上、御承知のように五月分までが税収になりますが、五月になりますと、昨年度あたりでも、たしか五兆円ぐらいの税収が一月に入ってきておりまして、そのうち法人税が四兆八千億か何か、大変大きな金額が一月で入ってまいります。それは、これからのことなものでございますから、どうもそこのところの見通しが最後まで、遅くまでなかなか立てられないというような現状にございまして、過去の過ちは、これはおしかりがありまして、ごもっともなことで甘んじて受けなければなりませんが、決して何かをはかってやったことではないということは、ひとつお認め願いたいと思うのであります。
  11. 上田卓三

    上田(卓)委員 大臣はそうおっしゃいますけれども、そう思われない節が多々あるわけであります。  八八年度の税収見積もりも四十五兆九百億円、このように見積もられておるわけでありますけれども、これも前年度と同様に過小見積もりではないか、こういうように考えざるを得ないわけでありまして、実際には相当多額の年度内増収があるのではないか、我々もそのように考えざるを得ないわけであります。八六年度それから八七年度のような、そういう大きな見込み違いというものが八八年度も起こる可能性は大いにある、このように考えておるわけであります。  なぜ、そういうことを申し上げるかというと、八八年度の税収見積もりは八七年度の補正見積もりと同じ時期、昨年十一月から十二月に計算されておるのではないか、このように思うわけでありまして、来年度見積もりの前提となっている八七年度補正見込み違いが明らかになりつつあるときに、どうして見込み違いがないということが言えるのか、我々はこういうように思うわけでございますので、八八年度の税収見込みは過小ではないか、あるいはこの予算どおり間違いないということを果たして言い切れるのかどうか、その点についてお聞かせいただきたい、このように思います。
  12. 水野勝

    水野政府委員 御指摘のように、六十三年度税収は六十二年度の補正とおおむね同時期に見積もったものでございます。これも先ほど申し上げましたようないろいろな要素から、適正な見積もりをいたすように心がけたところでございます。そして、その結果として弾性値でもってチェックいたしてみますと、一・〇八となっております。これは十年間の平均のものとほぼ同じでございますので、私ども適正なものではないかと思うわけでございます。  税収につきましては、過去何回かそういう大きな誤りがございますので、私どもいろいろ申し上げても言いわけがましくなるわけでございますけれども昭和四十年にかなり大幅な減収が出て、これが国債発行の原因となり、昭和五十年にまた見積もりが不足いたしまして三兆円の赤字が出て、これが特例公債発行につながったということから、私どもそのあたりはそうした意味でも、非常に責任を感じて見積もっておるところでございます。そうした意味がございますので、見積もるときはかた目になるということは、そういう要素はあるいはあろうかと思うわけでございますけれども、何と申しましても、経済も非常に谷あり山ありでございますので、変動はいたす。そこらの見積もり誤差は、ある程度のところは御理解を賜りたいと思うわけでございますが、いずれにしましても、しかしそうした経緯を十分踏まえまして適正な見積もりに努めてまいりたい。そういう意味におきましては、六十三年度、私ども適正なものであるということで考えて御提案を申し上げたわけでございます。
  13. 上田卓三

    上田(卓)委員 八八年度の税収見積もりは、前年度当初予算と比べると九・五%増になっておりますね。しかし、補正後の比較では四・五%増にすぎないと言ってもいいのではないか、このように思います。その補正も数千億円、あるいは新聞によりますと一兆円近い増収予測される。あるいは日経の三月七日の新聞によると、五千六百億円、赤字国債の未発行分ですか、これに全額充てられるのではないかというようなことも大蔵省の方針というような形で新聞に出ているのですけれども、私は絶対にそういうものはけしからぬ、これは減税財源に当然使うべきであって、故意に増収を低く見積もって、そして減税を値切りながら、補正後の税収がこれだけ見込まれるから、それを今度はひとつ赤字国債の穴埋めにというようなことは筋が通らない、国民をだましたことになりはしないかというように思うのです。  いずれにしても、そういうようにやはり八七年度の補正後においても、なおかつ五千億以上あるいは一兆円近い増収が見込まれる、こういうようなことになるわけでございまして、例えば仮にもし五千億円の増収があったとしても、八八年度の税収見込みは八七年度の三・四%増にしかすぎない、こういうことになるのではないか。あるいは一兆円ということになりますと、さらにもっと低い伸び率になることは言うまでもないわけであります。最近の非常に活発な経済動向、好調な企業収益を見ても、とても税収政府見積もり程度にとどまるとは私は思えないわけであります。  八七年度の国民総生産いわゆるGNPの伸びは三・七%、政府経済見通しでは八八年度も三・八%成長と予想されておるわけであります。日経新聞によりますと、全国上場九百二十六社の三月期経常利益は九・三%増、八九年三月期も九・七%増と企業収益好調そのものではないか、こういうように思うわけでありまして、そういう点でこの八八年の税収が前年度に比べて、補正後のそういう計算によって三・四%からそれ以下になることは事実でありますから、そういうことを考えますと、前年度に対する伸び経済成長よりも低くなるというようなことはあり得ない、私はこういうふうに思うわけでありまして、当然八八年度は当初政府考えている以上にもっと大きな自然増収が見込まれるのではないか、私はそういうふうに考えるわけでありますけれども、再度その点についてお聞かせいただきたい、このように思います。
  14. 宮澤喜一

    宮澤国務大臣 前段に、新聞報道を御引用になられましたので、一言申し上げておきたいと思います。  報道の表現が多少ミスリーディングであったのではないかと思いますのは、私ども今思っておりますのは、もしこの六十二年度におきまして、幸いにしてかなりの自然増収が出るということでございましたら特例公債発行を、未発行分がございますが、これは本来歳入が不足であるということで発行するものでございますので、出納整理期間までにもし自然増収をもって歳入が満たされるならば、その部分は実は発行してはならないものであるというふうに考えておるわけでございます。これは法律的にもそうでございましょうし、また、それだけ借金をして金利を払うということは国民経済に明らかに損失でございますから、それはよほど気をつけまして、もしそういう状況であれば発行を取りやめるのが本当であろうと考えておりますことを何か穴埋めに利するというふうな表現で報道されましたので、多少誤解を生じたかと思うのであります。  それから、その次の問題でございますが、確かに法人の収益は順調であるというふうに私は考えております。殊に今年度、この三月期は昨年と違いまして、営業利益が相当ふえておるであろう、そういうことで決算がいいということは多分そのとおりであると思っておるのでございますけれども、実は昨年の三月というのがあんなにいい決算を法人がするとは予測をしておりませんで、その内容は、実は御承知のように財テクであるとか土地であるとか、そういったものでかなり一生懸命な決算をした。今度は、それが営業利益の方にやや正常化していくとは思いますが、昨年の上にさらにそれが乗るというふうにどうも考えてはいけないのではないかという気持ちがあるものでございますから、昨年の決算が悪うございましたらことしはその上にいいぞという感じなのでございますけれども、昨年の三月期が意外にいい決算を出しておりますだけに、その上にというふうに今年度考えていいものかどうかということを関係者がみんな心配をしておりまして、なお楽観を許さないというふうに申し上げておったところでございます。
  15. 上田卓三

    上田(卓)委員 要するに減税財源がないと言いながら、十分に前年度の剰余金を充てなくても減税を一兆五千四百億円して、さらに税収があるということで赤字国債の減額に踏み切っているわけですね。やってないのじゃない、もう既にやっているのですよ。それに加えてまだ、この新聞によると五千六百億くらいのものが赤字国債の穴埋めに――穴埋めという言葉がいいかどうか別にして、発行しなくてもこれで十分賄える、こういうことでありますから、減税を値切ってあるわけですから、もともと財源がないということですから。ところが、こういうことで出てきているわけですから、これで十分ではないわけですが、八八年度の減税財源の一部に回すということは当然のことではないか。国民は、去年の国会等の減税論議というのはよくわかっているわけですから、何だ、だまされた、こういう気持ちになるのは当然ではないか、私はこのように思っておりますので、その点だけ申し上げておきたいと思います。  そこで、税収弾性値、名目GNPの伸びに対する税収伸び率というのですか、一つとってみても、一・〇八ですか、最近の実績に比較して八八年度は非常に低目に計算されている、私はそのように思っておるわけでございます。八七年度補正後の税収が底上げされるので、補正後の対比では、四・五%の税収伸びがなくても八八年度の税収見込みは十分達成できる。これは私、先ほど申し上げたとおりでありますが、やはり税収見積もりを今日の時点に立って正確に見直すことが必要である、私はこういうように考えておるわけであります。  さきに与野党合意した三兆円減税財源、方法についてでありますが、この十四日から与野党政策担当者の協議が始まりまして、自民党大蔵当局減税財源が三兆円もない、不足分新型間接税という方向にこの話を持っていきたいのでしょうが、しかし私どもに言わせるならば、三兆円の減税財源は十二分にある。与野党が既に合意しておりますところの不公平税制の見直しは当然でありますが、政府税収過小見積もりもやはり正さなければならない、こういうように思っておるわけであります。与野党協議の前提になる数字がもともと過小見積もりであるというのでは話にならない、私はこのように思いますので、その点について十分に我々は監視していかなければならぬ、このように考えております。  そこで、野党の共同提案では減税財源として七千三百億円の税収の増、自然増を我々は見込んでおるわけであります。仮に、この八七年度補正後の税収増先ほどのように五千億円としますと、八七年度税収実績は四十三兆五千八百七十億円となるわけであります。これは私どもが計算した数字でありますが、税収弾性値政府予算案の想定どおり一・〇八とすると、八八年度税収見積もりは四十五兆八千四百六十五億円となり、政府予算案の税収見積もりよりも七千五百六十五億円の増収になる。うまい計算になるということになるのかもわかりませんが、こういうように、八七年度の補正予算後、なおかつ五千億円ほどの増収があれば、その計算でいくならば、この八八年度の税収政府の計画よりも七千五百六十五億円大きくなるはずだということなのですね。それが野党が言うところの七千三百億、八八年には自然増収が出るのじゃないか、こういうようなものに脈絡が合ってくるのじゃなかろうか、こういうように思うわけであります。  さらに、政府税収弾性値の一・〇八ですね。これについては、私が先ほど申し上げましたとおり低過ぎるという意見があるわけでありまして、過去五年間の単純な平均値は何ぼかということでありますが、どのように把握されているか知りませんが、一・二四、大体そのぐらいではないか。そうしますと、一兆九百十三億円ぐらいの増収になるのではないか、私はこういうように思っておるわけでありますから、当然、前年度の五千億、そして新年度は少なくとも七千五百億ぐらい、一兆円近くということになりますと、我々野党が三兆円減税要求しておりますが、その中で八八年度の自然増収が半分の一兆五千億近くにもなるのではないか。もう既に三兆円減税の半分近くは、新年度予算の中でそういう形で自然増で見積もることができるのではないか。これはまあ仮定でございますけれども、我々そのように思うのですが、どうでしょうか。
  16. 水野勝

    水野政府委員 弾性値は一・〇八、お示しの数字でございます。これは十年平均でございますと一・一でございますので、おおむねその趨勢に合っておるところでございます。お示しのように、五年をとりますと一・二前後になろうかと思うわけでございます。ただ、弾性値というのも非常に変動するわけでございまして、かつて非常に高かったのは四十八年度、一・九まで参りましたが、その次の年は一を割っておりますし、その次の年の五十年度はむしろマイナスになっておるということもございます。昭和五十年代前半も、当時見積もりが非常に過小ではないかという御議論をたくさんいただきましたが、その五十六、五十七には、これは両年度とも弾性値が一を割りまして六兆円という大赤字を出すということも結果いたしまして、五十九年度特例公債脱却ということもここで一挙に不可能になったということで、非常に弾性値は変動が激しいものでございますから、この弾性値をもって将来をずっと見通すというのはなかなか難しいところでございます。  私ども、やはり見積もりとしては積み上げで、それを適正かどうかその程度をチェックするという意味におきまして、弾性値を用いてそれをチェックしているわけでございます。これをもって直ちにその年、翌年度のものを推計するのは、過去のいろいろな経緯からいたしますと、やはりなかなか難しい面があると感じざるを得ないわけでございます。
  17. 上田卓三

    上田(卓)委員 弾性値がどうなるか、こういうことで、予測ですからつきにくいということはわかるのですけれども、それをつけていくのがあなた方の仕事でもあるのじゃないかというように思っておるわけです。手がたく見るということは正しい。私はそれ自身は否定しないのですけれども、しかし過去の八六年度、八七年度の状況を見ましても、わずかな誤差というよりも、本当に八七年度においては三兆七千二百三十億というような違いが実質に出ているわけですよね。あるいは前年度においても一兆八千億ですか、出ておるわけですから、いわんやここ去年あたりから、これはまあ非常に正常だとは私は言いませんよ。  土地とか株の値上がり等によって全般的に景気がよくなってきた、こういうことでありますから、過去十年間のトータルを見るよりも、やはり過去五年間なら五年間、あるいはもうちょっと近い形で見ることの方が正しいのではないかというように一つは思うということと、それからもう一つは、減税財源がないということで当初非常に絞りに絞って手がたくいって、そうしてその決算の時点で財源が出てきたからといってそれをほかのところへ回すということが非常に国民にとってはわかりにくい。この二つの意味から、低く見積もっているということ、低く見積もるというよりも、手がたいという言葉以上にもっと作為的なものを我々は感じざるを得ない。  要するに、財政難だ、財政が割と非常に窮屈でなくなっているにもかかわらず、なおかつ新型間接税を導入するために過小に見積もり過ぎている。そういう意味では非常に、犯罪的という言葉はどうかと思いますけれども、非常にけしからぬような状況があるのではないか、こういうところに問題があるわけでありますから、そういう点で、少なくとも一・〇八、こういう弾性値自身が実際それでよかったのか低かったのかということは後で出ると思いますけれども、少なくとも補正、十月、十一月の時点のものを踏んまえたときに、私が先ほど申し上げたような、少なくとも七千億から一兆円ぐらいはそれこそ手がたく見積もっても自然増収が出てくる、あるいはそれ以上に出てくるというふうに見るのがやはり正しいのではないか、私はこのように思っておりますので、もう一度ひとつ大臣からお答えいただきたい。
  18. 宮澤喜一

    宮澤国務大臣 先般与野党国対委員長会談に御提示のありました予算修正共同要求、この歳入の面につきまして、実は政府といたしまして直接御説明を承る機会はございませんでしたので、今、何ゆえに七千三百九十億という自然増収を見込まれたかのお考え方の根拠はわかりました。そのような推定のもとにお見込みになられたということはそれとして、政府としても御説明はわかりました。  ところで、その税収見積もりのことでございますけれども、私自身もしばしば、過大見積もりと同じぐらい過小見積もりというものも、やはりある意味で罪なものだということを事務当局にも申しております。私自身にも言い聞かせておりますので、ある程度かた目にすることはお許し願うといたしましても、余り大きく狂いますといろいろ政策判断がそこで、いわばそうでなかったらば違った判断ができたであろうという意味では同じことだというふうに思っておりますので、その点は今後とも戒心をいたしてまいります。
  19. 上田卓三

    上田(卓)委員 そこで、時間の関係もありますから前へ進ませていただきたいと思います。  先ほど申し上げましたように景気は上向きになってきた、こういうことのようでございますけれども、しかし国民の生活というのですか、あるいは国民の生活実感というのですか、決してよくなったというほどのものではないと、私はそういうふうに思っておるわけであります。特に円高の魔術というのですか、この円高現象の中で、例えばドル換算にすれば日本の賃金は世界一になったのではないかというような言い方にもなってくるわけでございますけれども、しかし、大臣も御承知のように、例えば物価です、物価は今非常に円高の状況の中で物によっては下がってくるということで、非常に模範的な状況になっているというように思うのですけれども、もともと物価がずっと上がり過ぎて、日本の現在の物価水準というものは私は世界一と言っていいのじゃないかと思うのです。世界一ですよ、これは、はっきり申し上げて。それはもう外国の方々が日本に来て、日本の物価の高さにはびっくりしている、こういうことではないかと思います。  肉の値段も、いやアメリカの三倍だ、五倍だと言われておる向きもありますし、あるいはカメラとかビデオなどでも、日本製品のものがヨーロッパとかアメリカで買う方が四割近く安いものが実際にあるのですよ。だから、一体どういうことかということになりますよね。日本製品が、外国で売る方が非常に安い、日本で買うと高いということを、現実に私も経験しておるわけでございますけれども、そういうような問題もあります。日本人は、やはり高い物を買わされておるということになるわけであります。それは何もカメラ、ビデオだけではございません。その他の日本の工業製品などもそういう傾向が大いにあるわけで、非常に高いということであります。  それから、去年は国際居住年、こういうことでございましたけれども、日本の住宅は外国人、欧米人からはウサギ小屋と言われるような、非常に旧態依然たる実態にあることは事実でありますし、また国の最低居住水準、それに満たない住宅が四百万戸もある、こういうこともあるわけであります。  総じて日本では、食糧、住宅、光熱、それから教育費が非常に高いですね。高等教育以上は非常に高いということが言えるわけでございまして、全民労連、連合と言われておりますけれども、その研究所の試算では、為替レートでは一ドル百三十円前後と言えても、いわゆる購買力平価では一ドル二百二十二円ぐらいではないかというような数字も出てきておるわけでございます。  やはり国民生活を豊かにする方策というのですか、そういうものはとりもなおさず賃上げと大幅減税、こういうことではないか、このように思うわけであります。先ほど言いました全民労連は、欧米並みの生活をスローガンに、六ないし七%の賃上げ、そして労働時間の短縮を要求して、春闘に参加して取り組んでおるわけであります。日経のモデルを使った連合のシミュレーション結果では、日経連の言うような定期昇給並みの低賃上げ、いわゆる二・五%と従来の緊縮財政の継続では、再び成長の鈍化あるいは経常黒字による経済摩擦の激化につながるのではないか、こういうように言っておるわけでありまして、これに対して、六・五%の賃上げと積極財政の組み合わせで日本経済は内需拡大に進み、対外黒字も着実に減少するというのが連合の研究所の結論でございます。これは三月十五日号のエコノミスト誌に掲載されておるわけであります。景気回復が進んだのだから、内需拡大はもう必要ないという考え方もあるかもわかりませんけれども、条件が好転した今こそやはり思い切った内需型経済への転換を進めるべきだ、私はこのように考えておるわけでございます。  先ほど来、税収見積もりの問題を取り上げてまいったわけでありますが、景気回復によって増収見込みがあり、あるいは内需型経済に転換するための積極政策によってさらに税収伸びも確保できる、またそうすべきだ、私はそう思っておるわけでありまして、そういう意味でのこの六・五%賃上げプラス積極財政、こういうような方針について大臣はどのようにお考えでしょうか。
  20. 宮澤喜一

    宮澤国務大臣 我が国経済のここ十何年を回顧いたしますと、やはり二度の石油危機がございまして、お互いに、これはもう非常に大変なことになったと、本当に国民全部がそう思いました、これは労使と申しましてもいいのでございますが。その後にまた急速な円高がございましたので、雇用の問題が本当に深刻なことになりまして、労働側におかれてもあるいは使用者側でもそうかもしれませんが、雇用をどうやって確保するかということがどうしても一番大きな問題になり、そういう意味では賃金よりは雇用というふうにみんなが考えてまいらなければならない時代が続いておりました。経済が幾らかここで好転をし始めましたので、そういう意味では今までの苦労というのが、多少この事態が好転しつつあるということは申せるのかもしれないと思っておりますけれども、賃金の問題は、申し上げるまでもなくこれは労使の間でお話し合いをして決めていただくべきことでありまして、本来政府があれこれ申し上げるべきことではないと存じます。  財政としましては、これももう御承知のように内需拡大、国の社会資本整備というものが内外からの要請でございますので、財政再建は決して放てきするわけにまいりませんが、それを進めながらなお内外の要請にこたえてまいらなければならないということで、財政といたしましてもそういう努力をいたしておるところであり、これからもいたさなければならないと思っております。
  21. 上田卓三

    上田(卓)委員 いわゆる大幅賃上げあるいは減税、こういうものが内需拡大に大きな貢献をするということは事実だと思うのですね。そして当然、積極的な内需拡大の政策をすることによって貿易摩擦の解消ということにもつながるわけでありますから、今までが今までで、非常に緊縮財政のもとでデフレ経済のような状況がありまして、そういう点で財政再建といってもなかなか難しい状況があったわけでありますが、いろいろな問題を含んでいるとはいえ、せっかくフォローの状態というのですか、ここでちょっと景気が上向いたからといって安心するんじゃなしに、さらに、今まで賃金が抑えられてきたわけでありますから、大幅な賃上げ、大幅減税というもので景気を上げる、そのことがまた税収にもつながってくる、それが減税財源にもまたつながってくるという因果関係があるわけでありますから、その点について大臣、十分ひとつお考えをいただきたいと私は思います。大臣、まだお食事されていないようでございますので、時間をとっていただいて結構でございます。  それで、三月十日に総務庁が発表した家計調査報告は今後減税問題を考える上で大切な資料ではないか、私はこういうように思っておるわけであります。報告によりますと、昨年のサラリーマン世帯の収入は、五段階の階層別に分けると、実収入の伸びは一番高所得層が二・八%増加、二、三、四段階層は一・三%から一・六%増加で、一%以上の差があるわけであります。これを消費支出の伸びで見ますと、高所得層は三・四%の増加、その他の階層は所得が一番低い層が一・五%、二番目の層が何とマイナス一・一%、三番目の層がマイナス〇・七%、四番目の層が〇・五%増加となっておるわけであります。また、個人営業者の消費支出は三・九%増加、法人経営者は四・二%の増加、自由業は一五・一%の増加となっております。結局、昨年一年間で消費支出が大きく伸びたのは、年間実収入七百七十三万円以上のサラリーマンや経営者だけだと言っても言い過ぎではない、このように思うわけであります。  所得の低い層で支出がふえたのは、保健医療あるいは交通費などの生活必需品、それから借家世帯の場合は、消費支出に占める家賃の割合が五年前の一二・五%から一五%に急上昇をいたしております。これに対して高所得層は、高級家具や娯楽用耐久財、貴金属の購入などが特にふえておるわけでありまして、ひところ一億総中流階級などと言われたことが、ここ数年で急速に国民の生活格差が広がり、中堅サラリーマンなどに生活実感としても不公平感が広がっていると言ってもいいのではないか、このように思います。  日経新聞によりますと、高額所得層の利子配当、株式売買益は平均でも年間十二万円を超えており、六十二年度の所得減税によって高額所得者の生活が最も潤ったことは明白ではないか、私はこのように思っております。野党要求したいわゆる中堅サラリーマンや低所得層に重点を置いた大幅所得減税という要求に反して、政府が行った、私どもは中途半端な減税政策であったと言わざるを得ないわけでありますが、たった一年で総務庁の調査結果になってあらわれております。あの減税がどこまでこの数字に反映しているかということは私は定かでありませんけれども、日経の論調によりますとそういうようになっておるので、私は大体合っているのではないか。減税の先食いということもあるわけですから、減税法案が通った時点からそういうような国民の動きというか、そういうものになったのではないか、このように思うわけでありまして、政府は総務庁が行っておるこの調査報告をどのように受けとめておるのか、お答えをいただきたいと思います。
  22. 角谷正彦

    ○角谷政府委員 上田委員指摘のとおり、確かに最近のいろいろな数字を見てみますと、勤労者世帯よりは一般世帯の実収入あるいは消費の伸びが大きい、また第一分位と第二分位で見ますと、いろいろ御指摘ございましたように、主として自由業者世帯とか法人経営者世帯というふうな比較的第五分位に属する人の家計費支出あるいは実収入の伸びが大きいといったことは事実でございます。これは基本的には景気の回復によりまして、これらの人たちの収入が伸びた、収益が伸びたということに加えまして、昨年来の例えば株価あるいは土地の上昇といったことに伴う資産効果といったものも、こういったことにかなり寄与しているのではないかと考えておるわけでございます。
  23. 上田卓三

    上田(卓)委員 そういう点も確かにありますが、そういうものを是正する意味でも政策的な減税というか、どこに力点を置くのかということが今必要ではないかという意味で申し上げておるわけであります。実際に、先ほど言いました総務庁統計局の家計調査報告の四十九ページで、「税金、社会保障費などの非消費支出の第V階級の第I階級に対する格差率は、拡大傾向を示していたが、昭和六十二年の税制改正の影響などにより、前年の五・三九倍に比べ、五・一六倍と縮小している。」と分析されておるわけであります。  いずれにしても明白なのは、高額所得者の可処分所得だけが急速に伸びるような、それだけではございませんが、そういう減税のあり方を根本的に見直すべきだということであります。給料は少しふえたが、医療費とか家賃とか住宅ローンの値上がりのために、多くのサラリーマンはささやかな交際費や教養娯楽費など、人間らしいゆとりある生活を切り詰めねばならない事態が実際に今起こっておるわけであります。政府は、こういう層が家計を切り詰めて蓄えたマル優貯金の非課税制まで原則廃止ということでありますから、本当に責任が大きいと言わざるを得ない、私はこのように思うわけであります。日本経済を支える国民の大多数の勤労者の家計に起こっているこの事態をどう改善するのか、それがこれからの税制改革減税のあり方を検討する中心課題ではないかと考えますが、その点についてどのようにお考えでしょうか。
  24. 水野勝

    水野政府委員 今回の税制改革は、まさに給与所得者の負担が税収全体の中のウエートからしましても、また収入に対する負担率からいたしましても相当上昇してきている、大きくなってきているというところに重圧感、不公平感がある、そのあたりをどのように解消していくかというところが眼目でございます。六十二年、去年の九月に所得税減税をまず先行したわけでございます。このときは、やはり中堅所得者層を中心に減税を行うということでございまして、所得税で申しますと、夫婦子二人の四人世帯ですと、減税率としてはもちろん下の方が大きいわけでございますが、減税額といたしましても、八百万、九百万、一千万のところあたり金額としても一番大きくて、千二百万を超えると減税額そのものが小さくなるというふうな減税でございました。  もちろん、上の方に参りますと、今まで納めていただいている金額が大きいものですから金額は大きくなりますが、中堅から中の上ぐらいのところをとりますと、昨年の改正はまさに中堅のあたりが中心であったというふうに思われるわけでございます。これが去年の十二月に年末調整で、大半がここで実現されたわけでございますので、景気の拡大にも相応の効果があったのではないかと私ども考えておるところでございます。  今回、これに続きましてのなお所得税の負担のあり方につきましては、現在税制調査会で検討いたしておるところでございます。また、先ほどお話のございました与野党政策担当会議でも、このあたりも含めて御議論が行われるのではないかと思うわけでございますが、いずれにしましても納税者の中の一番の多数を占める給与所得者の負担につきまして、公平な合理的なお感じがいただけるような所得税のあり方につきまして御審議を賜っているところでございまして、成案を得た段階でまた御審議をお願いをいたしたいと思うわけでございます。
  25. 上田卓三

    上田(卓)委員 与野党の税制の協議機関で、協議会でいろいろ詰めた話があろうかと思いますけれども、いずれにしても今の調査報告によりますと、やはり所得の格差というのですか、あるいはそれに伴って消費の格差というのですか、そういうものも出ておるわけでありまして、やはり国民の大部分を占める中堅サラリーマンを初めとする、それ以下の多くの勤労世帯に、やはり適切な減税によってそういう国民の格差というのですか、そういうものを是正していく必要があるのではないか、このように考えております。大蔵省においても、その点について十分頭に入れて実現方に努力してもらいたい、このように思っております。  さらに質問を続けたいと思うのですが、この税制改革に臨んで、政府は公正な税制として、所得、消費、資産にバランスがとれた課税をする税制を目指す、こういうふうに言っておられるわけでございます。所得税と消費税については、昨年来多くの議論がなされておると思うのですけれども、問題は資産課税について余り議論がなされていないのではないかというような感じがするわけでございます。  要するに、バランスのとれた税制をつくるという場合、所得税と消費税それから資産税ということでありますが、バランスのとれるということはだれでも納得するのですけれども、それじゃどのような割合が一番いいのかということになるわけでありますから、その点どのようにお考えでしょうか。
  26. 水野勝

    水野政府委員 所得、資産、消費に対する課税の割合、これはある意味では直間比率という問題とも関連するわけでございますが、こうした比率につきましては、アプリオリにこういうものがいいということはなかなか定量的に申し上げにくいところでございます。  ただ、この十年二十年をとりますと、所得課税はそのウエートを高め、また負担率も高めておる。それに対しまして消費課税の方は、我が国の消費税が酒、たばこ、ガソリンといった限られた物資へのかなり高い負担に重点が置かれておりましたので、課税の税収ウエートとしてはかなりこれが低下してきているということでございます。  このように、放置しておきますと、それがどんどんどちらか一方の方向に偏っていくという、そういう制度自体に問題があるのではないか。これが高度成長期でございますと、毎年多額の自然増収が発生いたしますので、その相当部分を所得税減税に振り向けることによって、そこにある程度のバランスを保つことができた。これが昭和四十年代までの姿であったかと思うわけでございます。  これが五十年代以降になりまして、先ほど申し上げた特例公債発行が始まってからは、減税というものも思うに任せないようになる。そういうところから、そこらが基本的な見直しが行われていない。そうした点につきまして今回いろいろ、基本的な観点から見直しを行ってまいりたいというふうに考えているわけでございます。  この点につきましては内閣総理大臣からの諮問におきましても、所得課税、法人課税、消費課税、資産課税について、その望ましいあり方について具体的な方策を審議してもらいたいという諮問でございます。それぞれにつきまして望ましいあり方を審議して、その結果として出てまいります税の全体としての体系、ここから所得、消費、資産という望ましい、均衡のとれたものが出てまいるのが順序ではないかと思うわけでございますので、ここで、こうした割合が均衡のとれたものであると具体的にお示しをするのは、現在の段階ではちょっと難しいところでございます。  しかし考え方としては、十年二十年の間にかなり偏ってきている。そういう偏りというものを、どの時点を基準にするかということは別として、ほうっておくと自然に偏ってくるようなこういう税制は、何とか基本的に見直しを行う必要があるということではないかと思うわけでございます。
  27. 上田卓三

    上田(卓)委員 政府税調に提出された資料によりますと、国税全体に占める所得税、消費課税それから資産課税の割合は、五十年代後半から六十年代初めまでを通じて所得課税が七割、消費課税が二割から二割三分程度、資産課税が高いときで一割、低いときで七分か八分となっている、こういう資料が出ておるようでございますが、現在の時点で所得、消費、資産の各税収の比率はどうなっているのか、それから資産税の税収は全体で幾らか、御報告願いたいと思います。
  28. 水野勝

    水野政府委員 この所得、消費、資産につきましての税の分類と申しますのは、OECDの歳入統計をもって一応区分をさせていただいておるわけでございますが、これによりますところの最新の決算年度として出ております六十一年度で見てまいりますと、所得課税が六九・八%、このうちで所得税が三九・三%、法人税が三〇・六%でございます。消費課税が二〇・〇%、資産課税が一〇・二%でございます。  この資産課税一〇・二%は、金額で申しますと四兆三千五百億円になっておりまして、これは具体的には四つの税目を合計したものでございます。相続税、有価証券取引税、印紙収入それから取引所税でございます。相続税は一兆三千九百六十六億円、有価証券取引税は一兆三千六百六十四億円、印紙収入は一兆五千七百五十八億円、取引所税は百十二億円となっております。
  29. 上田卓三

    上田(卓)委員 資産課税の約四兆円ですか、パーセントで言うと一〇%ですね。これはこのくらいでいいのですか、多いのですか、少ないのですか。
  30. 水野勝

    水野政府委員 同じ基準でもって外国と比較してまいりますと、アメリカ、イギリスとほぼ同じと申しますか、やや多目か、フランスに比べますとやや低目、ドイツに比べますとやや高目ではないかと思うわけでございます。  この中身として、今申し上げました相続税と有価証券取引税というのが、六十一年度は、財テクでございますとか土地の価格の上昇でございますとかそういったものによってかなり引っ張られまして、そうした歳入ウエートの増加によりまして割合高くなっているのではないかと思うわけでございます。
  31. 上田卓三

    上田(卓)委員 そうしたらいわゆるバランス云々というのは、資産課税という、キャピタルゲインの課税の問題はありますが、総じてこの資産課税というのは大体一〇%でアメリカ、イギリスと大体同じくらいだ、フランスから見るとちょっと低い、ドイツの方より高目ですか、少し高い、こういうことのようで、そうするとそのバランスと言うているのは、所得税に対して消費税が云々というバランスを言うているのですか。バランスよくというのは、何がバランスよくなんですか。よくわからないのです。
  32. 水野勝

    水野政府委員 所得、消費、資産のバランスと申し上げるときには、税制全体の中で所得税、消費課税、資産課税のバランスであろうかと思うわけでございます。これが現在比較的高くなっているのは、申し上げるまでもなく相続税と有価証券取引税でございます。相続税が全体の税収の三、四%を占めているというのは、日本の税制の歴史でも、また諸外国と比べてもかなり高い方でございます。それから有価証券取引税という、こういう一種の資産に対する課税ではございますが、これはいわば流通税的なものでございまして、これも税収の三、四%を占める。これは、こういうものとしては割合高いわけでございます。  しかし、もう一つ今御指摘のございましたように、資産に対する課税と申しますか資産課税としては、キャピタルゲイン課税もあるわけでございます。日本におきましては、有価証券に対する課税はこういう取引税に重点が置かれて、一方資産所得の面、キャピタルゲインの面につきましては、どちらかというと原則非課税でここからの税収というものは割合大きくない。むしろ、我が国の資産課税につきまして申し上げれば、ここらの問題でもって資産課税と申しますか、そういう中でのバランスをやや欠いているという面があるいはあるのかもしれないというのが税制調査会の考え方でもあり、現在検討されているところでございます。  もう一つ、印紙収入というのを申し上げましたが、これは大半は土地の登記、登録の税金でございまして、こういったものはどちらかといえば、現時点のような土地の状況から考えますと、土地の取得につきましてはある程度の御負担をいただいたらどうかということで、去年の秋の改正におきまして登録免許税の課税標準を五割アップしていただきました。これは恐らく、ただいま申し上げた数字は六十一年度でございますので、この数字が実績として出てまいりますと、このウエートを上げることになるという結果で出てくるのではないかと思うわけでございます。  ただ、もう一つ資産課税につきまして申し上げたいと思いますのは、国税とともに地方税がございまして、固定資産税というのが資産課税のかなり大きな要素を占めておる。そこの点も本当は含めて御議論をお願いするところでございますが、これは地方税でございますのでちょっと直接には申し上げられないところでございます。
  33. 上田卓三

    上田(卓)委員 いずれにしても、額に汗をして働いて得たそういう勤労所得に対しての税金というもの、それから消費などでかかる消費税というもの、それから資産、資産には相続税という、限定すれば相続税ということになるのかもわかりませんが、あるいは地方税であれば土地に対する税金、こういうことになるわけですけれども、問題は利子課税ですね、これもやはり広い意味の資産課税といってよろしいと思う。それからキャピタルゲインですね、そういう配当課税ということになるわけですが、ここの部分は相当大きいんではないかというように思うのですね。ところが利子課税については、これは本来ならば総合課税でぴしっとやればいいわけですけれども、日本の場合分離課税。ところがその分離課税が、マル優原則廃止の時点で、三五%の税率が二〇%にそういう意味で下がるという状況になっているわけですね。一般的に言うたら、だからそれが金持ち優遇、こういうような批判もあるわけですね。所得の低い層はマル優廃止されて増税になって、ある程度資産を持っている人が資産課税という部門で税率が下がった、こういうことになるわけでありまして、これは総合課税ということになればきっちりとそのことが税収として上がってくるのではないか、私はこういうように思っております。  特に、今問題になっているキャピタルゲインの課税はぜひともしなければならない。口だけ言うて、間接税導入するための呼び水的な形で、実際言わなきゃいかぬから言うているんだというような形では国民は納得しない、私はこのように思いますので、その点についてひとつ十分理解をしていただきたい、こういうように思います。この点についてさらに決意というんですか、与野党の税制の協議機関でもそのことが検討されておるわけですけれども大臣のお考え方を。
  34. 宮澤喜一

    宮澤国務大臣 キャピタルゲインのうちで有価証券の譲渡益に関する課税が、いわばかなり大口のものは課税をしておりますけれども、それ以外のものは原則非課税のようなことになっておりますことは、事柄が非課税でいいと思っておりますのではございませんので、行政面でこれをいかにすればまんべんなく所得の捕捉ができるか、またキャピタルロスをどうするかといったような、そういう行政上の問題が実は主たる原因でございます。したがいまして、税制調査会にもただいま、例えば納税者番号といったようなことについて御検討願っておるわけでございまして、政府としましては、まんべんなく不公平のない行政をできるだけ早くいたしまして、これを総合課税なりなんなり、いわば原則課税の対象にいたしたい、そういう努力を続けてまいる所存であります。
  35. 上田卓三

    上田(卓)委員 次に、外国税控除の実態の問題でございますが、三野党要求減税案では、減税財源として国際課税制度の強化によって一千五百億円の財源を生み出すべきだ、こういうように主張しておるわけでございますが、新聞報道などによりますと大蔵省自身も外国税控除の圧縮に積極的、このように聞き及んでおるわけであります。  制度改革による税逃れの克服は当然重要でありますけれども、現行制度を悪用して現在も税逃れをしておる企業が非常に多い、こういうように聞いておるわけでございまして、大手企業がほとんどそういうことをしているように聞いておるわけでございますが、この制度の利用状況といいますかあるいは申告数、あるいは国税庁として外国税控除に関する体制ですね、どういう体制で臨んでおるのか、悪質事犯に対する調査状況はどうなっているか、あるいはさらにこの外国税絡みの調査予算はどうなっておるのか、あるいは海外調査のための費用とか国税職員の語学研修とか留学などバックアップする体制がぜひとも必要ではないか、このように考えておるわけでございまして、タックスヘーブンというのですか、そういう税逃れでどんどん日本の企業が外国へ本社を移すというようなことでございまして、これは大変なことだ、国民は大きな関心を持っておるときでございますので、その点についてひとつお聞かせいただきたい、このように思います。
  36. 日向隆

    ○日向政府委員 幾つかお尋ねがございましたが、順次申し上げていきたいと思います。  まず第一に、外国税額控除を適用している法人及びその適用額はどのくらいかというお尋ねでございます。お断りさせていただきますが、委員も御承知と思いますけれども、私ども、このデータは会社標本調査で出しておりまして、全体としての適用金額等は正確に把握しておりますけれども、実法人数は把握しておりません。したがいまして、その実法人数については御答弁は容赦をいただきたいと思います。  おっしゃいますように、外国税額控除の適用につきましては最近非常にふえてきておりまして、最近年分から順次申し上げますと、六十一年分では四千七十五億円、六十年分で五千二百六十一億円、五十九年分で四千八百四十二億円、五十八年分で四千五百五十三億円、五十七年分で四千百億円、こうなっております。  第二点目に、それに対してどういう調査体制をしいているかということでございますが、これは委員の御指摘もございましたように、制度がございますからその活用をなさることは結構でございますけれども、しかしそれを適正にやっていただきたいということで、この点についてはかなり重点的な調査をしておるつもりでございます。申し上げますと、直近の六十一年度におきます調査課主管法人につきましては五千七十五件の調査をしておるわけでございますが、この調査を実施するに当たりましては、外国に子会社を持っておりますところは往々にしてこの外税控除の適用をいたしますものですから、その場合には必ずこの外国子会社との関係を調査するということにしておりまして、実際に非違の把握された件数は百二件。この場合におきまして、外国法人税額控除等に誤りがありまして、法人税額が増加したものについてこれを見てみますと、控除外国法人税額の非違額は、この年度におきまして十三億円ということになっております。なお、御指摘もございましたので、この点については十分調査上配慮をしてまいりたい、かように考えております。  さらに、第三点目にお尋ねのありました企業の海外取引一般に係る調査体制でございますが、この点につきましては、海外取引に係る脱税が最近ふえてきておりますことに加えまして、一年半ほど前から移転価格課税も私ども制度をいただきまして実施に移っているわけでございまして、国際調査体制の充実は、機構、定員、予算の各面にわたりまして急務であるというふうに考えております。機構におきましては、国際調査専門官、これは今二十六人でございますが、予算につきましては、六十三年度、今御審議いただいております予算におきましては外国調査旅費八千九百万ということになっておりますが、この増加が特に必要であると考えております。  また、御指摘ございましたように語学とか貿易実務及び海外調査取引手法の研修、これを十分行いまして、海外調査に携わります調査官の調査能力の向上ということに一段と努力してまいりたい、かように考えております。
  37. 上田卓三

    上田(卓)委員 さらに努力を続けていただきたいと思うわけですけれども、きのう確定申告が一段落した、こういうことでございまして、私も税務署をちょっとのぞかせてもらったこともあるのですけれども、税務職員は大変御苦労いただいているということはよく存じているわけでございます。  そこで、国税職員の問題にかかわってでありますけれども昭和五十年の申告者数は四百六十七万人、それから六十年度では七百三十七万人、約一・六倍ぐらいですか、昨年の実績は七百六十九万人、年々こうやってふえておるわけであります。しかし、税務職員はこの二十数年間五万一、二千人で、ちょっとふえたりちょっと減ったりというような形でもうほとんど増員がない、こういう状況でございまして、これは税務職員にとっては耐えがたい労働強化、こう言ってもいいと思うのですね、申告件数はこれだけふえているのに職員は横ばいということでありますから。そのために職員が不足し、そして多忙をきわめている。  こういうことから何が起こってくるかというと、きめ細かな税務指導というのですか、そういうものができない。あるいは、その結果、推計課税などの手荒な税務行政を招く結果にもなっており、納税者にとっても不利益だ、私はこういうように思っておるわけでございまして、徴税の強化という側面もあるかもわかりませんが、しかし、それでは今まで職員は楽しておったのかということになるわけでございますから、さらに税というのは複雑になってきておるわけでございますから、少なくとも百人とか二百人というようなそんなことじゃなしに、抜本的に一万人ぐらいでもぼんとふやすというようなことが一番大事じゃないか、私はこういうように思っておりますが、どのようにお考えですか。
  38. 日向隆

    ○日向政府委員 ただいま委員指摘になりましたように、課税対象は、まさに御指摘になりました申告所得税の納税者数で見ましても、この五十一年から六十一年の十年間で一・六倍、法人数で一・三倍、源泉徴収義務者数で一・四倍、源泉還付申告者数で二・二倍、滞納件数で一・四倍というふうに、相当大幅に増加していることに対しまして、定員はこの五十三年から六十三年度、今、予算案で御審議いただいております直近のところをとりましても、一・五六%と微増の状況にとどまっておるわけであります。  私どもといたしましても、今御指摘になりました円滑な税務行政の遂行という観点も踏まえまして、事務の運営合理化、効率化には一層の努力はいたしますものの、このような努力をいたしましてもなお必要となる増員につきましては、関係方面の御理解を得られるよう一層の努力をしてまいりたい、こう考えております。
  39. 上田卓三

    上田(卓)委員 もう時間が来ましたので、最後に一言申し上げて終わりたい、このように思います。  ずっと一時間半ばかり議論を進めてまいったわけでございますけれども、やはり何といいましても日本の場合は、所得や資産の格差は大きくない、こういうような意見もあることも事実でありますけれども、我々はそのように考えていないので、やはり格差は広がっておる、こういう認識が正しい。何を基準にするかということが一つの問題ではないか、こういうように思うのですが、しかし、特に諸外国に比べて日本の場合は富の多くが企業に集中している。アメリカの場合であれば、個人に所得が集中して、そして個人が税金を納めるということになっておるのですが、どうも日本の場合は、各個人に所得が集中しているというよりも圧倒的部分が企業に集中している、こう言ってもいいのではないか。  例えば、日経ビジネスの調査というのがあるのですけれども、それでは、例えば野村証券の従業員一人当たりの一年間の経常利益は四千五百五十九万円になっているのです。一人がですよ、一年間の給料ですから、どの程度もらっているかということになりますけれども、四千五百五十九万円。それから、明治不動産が三億八千七百六十五万円、億ですよ。それから、都内各所に高層ビルを保有している森ビルですね、これは何と十二億八千四百七十六万円。それから例の最上恒産ですね、これは十億九千六百七万円。一人これだけ稼いでおることになるのですね。だから、いかに企業がもうかっているか、こういうあかしではないか、こういうように思っておるわけであります。土地投機や株の売買で法外な利益を上げている大企業あるいは大法人こそ、私はやはり課税強化の方策をとるべきだ、こういうように思っておるわけであります。  それからもう一つは、必要のなくなったというのですか、そういう租税特別措置、あるいは各種の準備金や引当金をこの際抜本的に、ちょこちょこ改正されておりますけれども、やはり抜本的に見直しをして改正すべきではないか、こういうように思います。  それからもう一つは、やはり土地税制の見直し、あるいは先ほど申し上げました利子配当課税の強化などに手を加えるべきではないか。このような不公平税制是正によって恒久的な減税財源を確保できるのではないか、またすべきである。また、そのことによって高齢化社会における社会保障の整備も、私は十分できるのではないか。税を取るべきところから取らないで、取れないものだということにして、取ってはならないそういう一般大衆から新型間接税というような形で、安易な形の増税を私は図るべきではない、こういうように思っておるわけでございまして、そのことを特に訴えまして、一言大臣から感想めいたものをいただけたらありがたい、このように思います。
  40. 宮澤喜一

    宮澤国務大臣 我が国が、いわゆる企業国家であると時々言われることは私も気がついておりますが、企業と個人との関係がどういうことになっておりますか、これはやはり企業側、個人側、労働の分配率であるとか、いろんな問題があるいはあるのかもしれませんが、ちょっとこれは税の話を超えますので、私、これという考えを申し上げる資格がございません。  ただ、法人につきまして、今、世界どこでも本社を立地できる時代でございますから、法人の税負担というのはやはり国際的の水準というものがあって、それより余りに重いということは、我が国の場合いろんな意味で、これは企業ばかりでなく雇用の問題にも関係し得るわけでございますから、もう少し軽減していくべきだと思っておりますが、ただその際、御指摘のように現行のいろいろな法人課税に関する制度の中で、必ずしも不公平とは申しにくいものもございますけれども、やはり税率を引き下げるかわりに、制度としては改めたらどうだと考えられるものが幾つかございます。御指摘のように、そういう点が幾つかございますので、それは一緒に考えていかなければならないと思っております。
  41. 上田卓三

    上田(卓)委員 ありがとうございます。
  42. 越智通雄

    越智委員長 次に、日笠勝之君。
  43. 日笠勝之

    ○日笠委員 四月一日から、いわゆる新マル優に変更するわけでございます。  昨年の十一月には、既にこの新しいマル優の政令が発布されておるわけでございますが、実はこういう投書が新聞に出ておりました。ちょっと大臣、簡単でございますから、聞いていただければと思います。   兄の子供は三人兄弟(小学生、中学生、高校生)ですが、両親がすでに死亡しているため、現在、遺族年金を受給しています。この場合、新マル優の非課税措置は受けられるのでしょうか。(兵庫県、会社員・50歳) というのがございますが、いかがですか。
  44. 水野勝

    水野政府委員 新しいマル優と申しますか、ことし四月一日から適用になる少額貯蓄非課税制度は、お年寄り、身体障害者、母子世帯、母子家庭と申しますか、大ざっぱに申し上げてそのような範囲のものとして御審議をいただき、制度化していただきました。御指摘のようなケースにつきましては、この中には含まれないところでございます。
  45. 日笠勝之

    ○日笠委員 私は、交通遺児、災害遺児、また病別で両親を亡くしたいわゆる未成年の方々、何人ぐらいいらっしゃるかということで各省庁に電話していろいろ聞きましたけれども、結論としては統計が出ておりません。が、しかし、交通遺児と称する方は、推計によりますと十万人とも言われておりますし、災害遺児は一万五千人、病別はさっぱりわかりません。  両親が亡くなって、その両親の生命保険料であるとか、死亡退職金であるとか、預貯金というものが残されたいわゆる未成年の、特に児童生徒、こういう方々に相続をされるということも十分あるわけでございます。そういう方々の預貯金にもこれは利子の二〇%は課税をされる、こういうことでしょうか。
  46. 水野勝

    水野政府委員 先般の改正におきましては、利子所得と申しますか、預貯金からの利子、これは原則としてはひとつ課税をお願いいたしたい。こうしたものは、現役の方々が所得を稼得される、稼得された残りの中で預金をされる、そうしたものにつきましては原則としてはこれは課税をお願いいたしたい。しかし、御本人の稼得する能力が減退した場合、こうした場合の方々、それが先ほど申し上げた高齢者、母子世帯あるいは身体障害者でございます。こうした方につきましては、その預貯金利子を一定金額まで非課税にする、そういう趣旨でございました。  御指摘のようなケースにつきましては、この方々が未成年者であるということで、稼得をされて預貯金を得られているというケースではないと思いますので、そうしたケースにつきましては、今回の非課税制度といったものはその趣旨としては含まれていないところでございます。
  47. 日笠勝之

    ○日笠委員 もし相続を受けた場合は、未成年控除というものがございまして、ある程度は優遇されます。  この投書の答えはどうなっているかといいますと、  残念ながら非課税措置を受けることはできません。しかし、まだ、三人とも在学中で今後も教育費はかかります。有利でなおかつ安全な貯蓄方法を考えてください。 これが答えなんですね。  これは大臣、もう政令は出ちゃった。こういう方々が抜けておるわけですね。いわゆる恵まれない、両親も亡くした、これからも教育費はかかる、最も政治が手を差し伸べていかなければならない方々であろうかと思いますが、どうでしょうか大臣、これは大臣決裁でこういう方々を、ひとつ非課税適用を受けられるように何とかなりませんでしょうか。
  48. 宮澤喜一

    宮澤国務大臣 それは、この投書の方には非常に御同情をいたしますけれども、昨年、この制度を改めましたときに、いろいろ御議論がございましたが、資産所得でもございますから、基本的にはもう課税をさせていただく。その場合、今主税局長が申し上げましたように、老人とか母子家庭とか身体障害者、稼得能力のない方々といったようなふうにでも申したらよろしいのでしょうか、に限って残す。しかも、その方々が、いわば比較的容易に確認できるということが行政上はどうしても条件になるわけでございますが、そして、何と言いますか、確認できたその状態がそう始終は変わらないと申しますか、若い方でしたら成長されるというようなことがございますから。そういったような場合に限って残したということがございますものですから、必ずしも社会的に特に救済をしなければならない方々にこの制度が一般的に及んでいるというふうには実はなっておりませんで、そういう意味で今のような方々は、お気の毒であるとは存じますものの、この制度の対象にはしにくかったということでございます。
  49. 日笠勝之

    ○日笠委員 私、よく言うのですが、理屈というのは幾らでも立つわけでございます。まさに税金の税という字は、御存じのように、のぎへんにチョンチョンとして兄という字を書くわけでございますが――チョンチョンといいますか、のぎへんは収穫物、右に左に頭の大きい人が全部かすめ取っていくというのが税金の税の字の語源でございます。ですから、そういう意味からすれば、こういう方々にこそこの少額貯蓄非課税制度を残さなければいけない。これは税理論ではなくて、政治のホットな、ハートフルな、メンタルな面ですよ。でないと、これから私、この後やりますけれども、では十年所有して、父母とか祖父母から相続、遺贈を受けた方々が、なぜ買いかえ特例が残るのですか。これは大臣も何遍も本会議でおっしゃいましたよ、墳墓の地だとか。墳墓の地といったら生涯そこへ住む。しかし、それが特別な事情があってやむを得ず行かなければいけない、そこにハートフルな、ホットな政治の手が入ったから、買いかえ特例を残したんでしょう。そういう資産家には残して、こういう恵まれない、本当に何とかしてあげなければいけない方々はもう全然無視する、これが本当に日本の政治であっていいかどうか。ですから、これは政治決裁ですね。理屈じゃありません、これは。どうでしょうか、大臣
  50. 宮澤喜一

    宮澤国務大臣 ただいま申しましたことに尽きるわけでございますけれども、この新しい制度が社会的に非常に救済をする人々のためにすべて残されたというわけでは経過としてなかったわけでございます。そういうことがございますので、こういう場合になかなか適用しにくい……。これ以上のことを申し上げますとちょっと余計な理屈になりますので、そこまで申し上げておきます。
  51. 日笠勝之

    ○日笠委員 だから政治決裁で、もう既に政令ができてしまいましたから、本来ならば国会の議論を踏まえて政令をつくる。私たちは議論した後、政令なんか見たことはありませんよ。勝手にもう公布してしまって、もし先に見せていただけばこういうことがわかったかもしれません。これは今すぐとは言いませんが、政令を改正するときには大臣、ひとつ念頭に入れて、こういう方々にこそ、わずかな方でしょう、レアケースでしょう。何とかしよう、大臣、そういうふうな決意だけでもお聞かせ願いたいと思います。
  52. 宮澤喜一

    宮澤国務大臣 これはいずれにしても法律事項でございますので、検討させていただきます。
  53. 日笠勝之

    ○日笠委員 検討するという前向きな御答弁が出たとして、夜も遅いですし、それでよろしいですね。前向きに検討していただくというふうに理解いたしました。よろしいですね。
  54. 宮澤喜一

    宮澤国務大臣 この投書の場合につきましては、もう少し立ち入って申しますといろいろなことがあるようでございます。したがって、このケースというふうにいきますかどうか、いろいろなことがございましょうから、検討を続けさせていただきます。
  55. 日笠勝之

    ○日笠委員 私は、次期の政令改正のときには前向きに取り組んでいただけると理解しないと次へ進めませんから、いきたいと思います。  去る三月十日、この場所で衆議院の予算委員会がございまして、竹下総理が、大型間接税につきまして苦吟の末卒業論文を書いたつもりだとおっしゃいまして、六つの懸念なるものを示されましたね。この六つの懸念というのは、当然大臣御存じでしょうが、確認いたしますと、一つは逆進的な税の体系になるのではないか、二つ目には中堅層の不公平感を増すのではないか、三つ目、所得税を納めてない人にも負担増になるのではないか、四つ目、税率の引き上げが容易に行われるのではないか、五つ目、納税事務の負担が大きくなるのではないか、六つ目、物価等を押し上げ、インフレになるのではないかということを御答弁されたわけでございます。  宮澤大蔵大臣、この六つの懸念は、竹下総理は卒業論文を書くつもりでとおっしゃいましたけれども、評価はどうですか。秀、優、良、可、不可といきますと、いかがですか。
  56. 宮澤喜一

    宮澤国務大臣 これは衆議院の予算委員会でお尋ねがございましたときに、総理大臣がひとつ考えてみようということで、大分長い時間を使われましてお考えになりました。これは、やはり昨年のああいう国会で政府案が審議未了になったという非常にショッキングなことがございましたし、それはよほど反省をして出直さないといけないということを私ども一様に考えておるわけでございますが、それにつきましては、今度はどういうことを一番戒心しておかなければならないかということをいわば懸念という形で表現をされて、そしてそれに対してどのように対処すべきかという心構えを言われたものであろうと思います。これは、やはり今後将来において、このような何かの形の新しい税金の御審議をお願いいたしたいと考えておられる総理の立場としては、非常に謙虚に問題をお考えになった、その答えであるというふうに私は承知をいたしております。
  57. 日笠勝之

    ○日笠委員 六つの懸念。六つなんというのは、ろくなことはないのロクでございますね。せめて八つの懸念ぐらいで、八つは開く義ということがありますから。まだあるでしょう。例えば、消費者に転嫁できるのかできないのかという懸念なんかないのですか。また、取引がガラス張りになっちゃうというような懸念はないのですか。また、非課税品目はどうなるかという懸念はないのですか。この六つで言い得て妙なんでしょうか。ですから、秀か優か良か可か不可かと尋ねておるわけです。どうでしょう。
  58. 宮澤喜一

    宮澤国務大臣 その取引がガラス張りになるというのはいかぬ、納税者のお立場から言えば本当はガラス張りということは困られるのでございましょうけれども、それはいかぬとも政府の立場としてもなかなか言えないことですが、いろいろな問題がまだまだございますけれども、まあまあ中心になる問題を挙げられたのだろうと私は思っておる。これで問題が尽きておるということでは無論ないと思います。
  59. 日笠勝之

    ○日笠委員 まあまあというところは良ぐらいですね。甲、乙、丙、丁の乙ぐらいでしょうか。  まだまだ懸念はたくさんありますし、総理がおっしゃったように、この六つをクリアできるような大型間接税というのは世界じゅうに存在するのかということも言えるわけでございます。これ以上言うと、間接税論議に引き込まれるようになりますのでこれでやめておきますけれども、やはりもっともっと売上税のときの反省に立って、国民が本当に聞きたいこと、いわゆる第一線でいろいろ商売されている方が本当に心配しておることを頭に描いて懸念なりお考えにならなければ、これは六つやそこらじゃないということでございますので、もう少したくさん出した方がいいのじゃないでしょうか。  それから、租税特別措置の概論からいきたいと思います。  六十三年度はこの百七十六項目を特別措置されるわけでございますが、これをずっと一項目ずつ見ていきますと、有価証券の譲渡所得の非課税というのはちゃんと出てくるのですね。ところが、先日出されました六十三年度の租税特別措置による減収額試算には、この有価証券の譲渡所得の非課税において幾ら減収するかという試算は全然出てきません。出てこないということは、全然把握がつかないということなんでしょうか。ある程度推計はつくのでしょうか。私、一度前にキャピタルゲインのことで大臣に質問しましたら、全く雲をつかむような話で推計ができないとおっしゃいましたけれども、そういうことで減収額試算には載せてないのでしょうか、どうなのでしょうか。
  60. 水野勝

    水野政府委員 先ほどお話もございましたように、大口のものにつきましてはこれによって課税が行われておる。こういう譲渡所得でございますと、通常で申しますと五十万円控除、それの二分の一課税というのがこういうものの原則でございます。大口のものでございましたらこの五十万円控除をいたしましても課税所得は残るわけでございますが、そこそこの譲渡所得でございますとこの五十万円控除で落ちてしまうとかいうことでございますので、大口のものは原則として課税されつつ原則は非課税であるということと五十万円控除があるということを組み合わせてまいりますと推計がかなり困難であることとともに、また原則課税といたしました場合でも、現実には大口で経常的なものは課税される建前になっておりますので、これをどのように計上するかということはそうした制度の面から見てもいろいろ難しい面がございますので、現在は計上はしておらないというのが実情でございます。
  61. 日笠勝之

    ○日笠委員 その減収額試算の合計は一兆六千九百四十億円という莫大な金額になっておるわけですね。もし俗にキャピタルゲインを総合課税するともうはるかに二兆円を突破するのじゃないかと思うのです。それだけの政策誘導といいましょうか、政策目的のためにこういう特別措置をしているということでしょうけれども、有価証券の譲渡所得の非課税がどれくらいの減収額かちょっとわからない。これが非常に多いということで、何となく臨調なり行革審なりいろいろなところからこの租税特別措置の見直しをしろということを要求されておるわけでございます。余り金額を膨らませ過ぎるとそういう声が大きくなるから少な目にやっているのじゃないかという疑いも持つわけでございますが、主税局長、これはどうなんですか、政府税調でキャピタルゲインのことは原則課税で御論議されておるわけでしょう。こういう推計の資料も何も出さずに政府税調の皆さんは論議をされておるのですか。それとも私どもだけにそういう資料はいただけないのですか。局長、どうですか。
  62. 水野勝

    水野政府委員 いろいろつくりました資料で税制調査会等にお出ししているものは全部当委員会にもお配りされていると思っておりますので、ここで隠しているとかいうことでは全くございません。  先ほど与野党政策担当会議におきましての共同修正要求にございますキャピタルゲイン課税の強化という項目もあり、これの金額も試算をいただいているところでございます。現在そこらの点についても検討が行われておるところでございますので、そうした推移も注視させていただきたいところでございますし、一方、政府税制調査会においてはできる限りの資料をお出しして御検討をお願いしているところでございます。
  63. 日笠勝之

    ○日笠委員 キャピタルゲイン原則課税ということであれば、そういうもろもろの資料もなければ我々もやぶをつつくようなことになりますので、また資料もいただければと思います。  この中身にちょっと入っていきますが、例えば鉱業用坑道等の特別償却という項目がございます。これの六十一年度の適用件数、減収額試算はお幾らだったのでしょうか。
  64. 水野勝

    水野政府委員 これは戦後石炭が非常に盛んであったころのもので、なお現在相応の石炭産業が続いているところでございますので、そうしたものとして継続されて適用されているものでございますが、先ほどお示しの数字は、一応十億円を基準にいたしまして、この十億円のオーダーになるものはここに計上させていただいて、それが先ほど金額の合計額になるわけでございます。税収全体としての見積もりにおきましても各税目十億円を一つのめどとして計上させていただいておりますので、この鉱業用坑道は現時点におきましてはもう件数もそれほど大きくない、それからまたそうした産業の所得が余り大きくないところでございますので、いずれにしても十億円未満になるものでございますので計上はいたしておらないところでございます。
  65. 日笠勝之

    ○日笠委員 私は六十一年度の適用件数とその減収額をお聞きしているのです。
  66. 水野勝

    水野政府委員 先ほど申し上げたようなことで最近は戦後の一時期に比べれば減ってきておりまして、六十年度まではございましたが、六十一年度はサンプル調査ではございますがそうした適用はないというのが実際でございます。
  67. 日笠勝之

    ○日笠委員 同じく証券取引責任準備金、これも六十年、六十一年ぐらいの適用件数と減収額は幾らですか。
  68. 水野勝

    水野政府委員 証券取引責任準備金は、その積立額が一定の頭打ちを置いておりますので、近年におきましてはその金額伸びはほとんどないところでございます。この準備金の積み立ての減収額の計算といたしましては積み増し分を減収額の計上の基準といたしておりますので、最近の年度におきましては積み増し分がないかあるいは十億円未満ということで計上はいたしてございません。
  69. 日笠勝之

    ○日笠委員 五十六年の臨調の第一次答申にこの租税特別措置についてこういう指摘がございます。「利用状況が悪く政策効果の期待できないもの」は見直しをしろとありますね。同じく行革審の五十九年七月二十五日の「意見」と称するものの中には、「租税特別措置については、政策目的や効果に照らし、引き続き厳しい見直しを行う。」こうあります。ところが、六十年ぐらいから、項目数も、六十年が百六十三項目、六十一年が百六十八、六十二年が百七十三、六十三年はまだ案でございますが百七十六と、少しずつふえております。金額もふえております。こういうことから、政策効果の薄いもの、政策誘導するにはいかがなものかというものは、臨調、また行革審からも厳しく指摘をされておるわけでございます。  この点は大臣にお答えをいただかなければいかぬと思いますが、今後どのようにこの租税特別措置の厳しい見直しをしていかれるか、御決意をお願いいたします。
  70. 宮澤喜一

    宮澤国務大臣 これはまさに臨調の言われることが本当だと思います。今後とも厳しく見直しをいたしてまいります。
  71. 日笠勝之

    ○日笠委員 資源エネルギー庁が来られておりますが、先にちょっと一問お聞きしたいと思います。  御存じのように、今度石油税が従価税から従量税に変更いたします。お聞きしますと、従価税から従量税に変わりますと一キロリットル当たり二・四倍くらい税負担は上昇するわけでございます。これは揮発油、ガソリン一リットルに換算した場合は金額にして税負担がどのくらいアップになるのでしょうか。
  72. 内藤正久

    ○内藤(正)政府委員 お答えいたします。  先生御承知のとおり、現在は従価税でございますので、原油価格の動向とか為替レート等によりまして税金額が変わってまいります。したがいまして、一応の仮定として六十二年度上期を固定して原油でとってまいりますと八百十五円パーキロリットルの税金をいただいておりましたけれども、今回の税制改正でキロリッター当たり二千四十円ということをお願いしておりますが、そのときにあわせまして原油関税を百十円パーキロリットル引き下げていただくということで、それをお認めいただければ、結論的には千九百三十円という税負担でございますから、差し引き千百十五円パーキロリットルという負担になります。したがいまして、ガソリンの価格は大体今リッター当たり百十九円程度でございますので、一円十銭程度ということでございますから〇・九%程度ということでの水準というのが実態でございます。
  73. 日笠勝之

    ○日笠委員 六十二年上期に固定をいたしますと、ガソリン代が、転嫁していくのが当然でございましょうから、平均的な家庭の家計に及ぼす影響はどれくらいの金額になりますでしょうか。月でも年でもいいですから。
  74. 内藤正久

    ○内藤(正)政府委員 今ガソリンに例をとってお答え申し上げますと、運輸省の陸運統計の最新版のもので判断いたしますと、六十二年一月時点の自家用乗用車一台一日当たりのガソリン消費量が四・一七リットルでございます。したがいまして、一円十銭掛ける四・一七ということでございますので、一日一台当たり四円六十銭程度の税負担になる。したがいまして、それを年間で計算いたしますと、千六百七十五円くらい車一台当たりに負担増になるということでございます。
  75. 日笠勝之

    ○日笠委員 わずか千六百七十五円、これは平均でございますから、使う人はこの三倍も四倍も恐らく負担をするわけでしょう。これは卸売物価も相当下がっておるという状況の中でこれだけが上がるということにもなるわけでございます。  問題は、今全国に六万ガソリンスタンドがある。給油所がある。これはもう過当競争の一途をたどっておるわけでございますが、いわゆる税理論からいきますと、この一円十銭何がしかの石油税のアップしたものは結局消費者に転嫁をしなければいかぬわけですね。さあ、これができるかどうか。私も何軒かのガソリンスタンドに聞きましたけれども、こんな過当競争の中で、お客さんに、今度石油税が八月から上がりました、一円何がしか上げますというようなことは言えない。上げても一円だ。あとの十銭は自分のところが面倒を見なければいけない。これが大型消費税の欠点である。まさにこれが序盤戦ですよ。ガソリンスタンドは転嫁できないと言います。そういうことでございます。  一店舗当たりの月平均のガソリンの販売数量は、大体四捨五入いたしますと六十キロリットルだそうでございます。これで、一円十銭と先ほどおっしゃいましたけれども、六万六千円上がるわけです。ところが、粗利益は今リットルで十二、三円でございますから、六十七、八万円。ということは、粗利益の一〇%の石油税をガソリンスタンドは面倒を見なければいけない。とても面倒見れませんというのが町の、皆様方が給油しているところのガソリンスタンドの経営者の声です。ということは、今度八類型考えられておりますところの俗に言う大型間接税も同じことが言えるわけです。だから私は転嫁ということは懸念にないのですかと言ったわけです。  これはどうなんでしょうか。資源エネルギー庁さん、こういうふうなことは、ガソリンスタンドの過当競争、石油税は上がる、お客には転嫁できない、どのようにガソリンスタンドや皆様方にPRなり環境づくりをして御理解願っていこうとお考えでしょうか。
  76. 内藤正久

    ○内藤(正)政府委員 今御指摘のとおり、石油税、最終的には消費者に転嫁すべきものであると考えております。あわせて、御指摘のとおり、ガソリンスタンドが大変な過当競争をいたしておりまして苦しい状況にあることも事実でございます。したがって、今後の増税がいかに転嫁されていくかということについては、基本的には市場メカニズムでございますから予見はなかなか難しいわけでございますけれども、石油政策といたしましては、ガソリンあるいは軽油等々の油種が適正な価格維持ができるように、独禁法の不公正な取引方法を排除するという観点からの適正な価格維持ができるように、昨年来いろいろ検討を進めております。  例えば、ガソリンにつきましては、昨年三月に石油審議会の揮発油流通問題小委員会答申を受けまして大綱を定めておりますけれども、その中で、例えば採算割れ防止を図るため独禁法を弾力的かつ機動的に適用するというふうなスキームも公正取引委員会と一緒になってつくっておりますし、事後調整の撤廃であるとか、あるいは特に過当競争の激しい地域につきましては揮発油販売業法に基づきまして地域指定をいたしまして過当競争を是正するとか、あるいは基本的な構造改善をいたしますとか、いろいろな手を例えばガソリンについて打ってきております。  かつ、他方、軽油につきましても、昨年の十二月以降同じような石油審議会の軽油流通問題小委員会の答申を受けまして公正な競争を推進するためのルールを策定いたしておりますし、その徹底を現在図っております。かつ、購買者側においても、カルテル類似のことがないかどうかというふうなことで公取と一緒になって市場の適正化に努めておるわけでございます。  そういうことで、プライスメカニズムが明確にワークするということになれば結果的に転嫁が可能になるわけでございますから、独禁法の適正な運用を含めてプライスメカニズムが働くような努力を石油政策としてやっておるというのが一つでございます。  それから、今御指摘のPRをどういうふうにやるのかという点につきましては、今後、お認めいただければ八月実施ということでございますので、それまでに十分に検討いたしたいと思っておりますけれども、例えば通産省の所管業種の中で需要にかかわるところに税が上がりましたということをお知らせするとか、それを単に通産省のみならず他省庁にもぜひそういう周知徹底方をお願いをするというふうなことで内容の徹底を図っていきたいと思っております。
  77. 日笠勝之

    ○日笠委員 大臣、わずか一円二十銭上げて転嫁することがいかに大変なことか、大型間接税もよくよくお考えいただかなければならないと思います。  では、時間も来ましたので、三十六条の関係の居住用財産を譲渡した場合の課税の特例の改正について何点かお伺いいたします。これはもう皆さんの方が御案内のように、所有期間十年を超える居住用家屋及びその敷地で、父母または祖父母から相続または遺贈により取得したもののうち三十年以上の居住に供したものは、これは買いかえ特例を残すということでございます。これを何点かお聞きします。  これは事務方のお話でしょうから局長にお伺いしますが、父母または祖父母ですが、曾祖父、ひいじいさん、これはだめなんですか。高齢化社会ですからこういうこともあり得るかもしれませんね。
  78. 水野勝

    水野政府委員 この制度の趣旨は、やはり二世代以上にわたって住んでおられたという場合を対象といたしておるわけでございます。が、その場合は、父母または祖父母ということが通常の場合と思われるわけでございます。もちろん極めて例外的に曾祖父母といったケースもないわけではございませんが、代襲相続ということは一代限りのものでございまして、またそれを遺贈されるということになりますと、それはいわば今度は相続税の世界で申しますと二世代飛び越す遺贈でございますから、それは別の観点からするといかがかというような感じもするわけでございますので、今回の制度としては、形式的にはそこまでは切らせていただいて、父母または祖父母ということで御提案をさせていただいているところでございます。
  79. 日笠勝之

    ○日笠委員 要は、いかぬということですね。  それから、例えば、相続、遺贈により取得したものとなっておりますが、生前贈与とか死因贈与ということもありますよね。この場合もだめなんですか。相続とか遺贈じゃなくて、生前贈与されたとか死因贈与によって十年以上所有し三十年以上一緒に居住しておったというそういう条件を満たした場合もだめなんでしょうか、贈与関係は。
  80. 水野勝

    水野政府委員 やはり相続ないしはそれに準ずる遺贈という自然体としての承継というものを対象といたしておるわけでございまして、そうした生前におきますところの人為的なものといったものまでこの制度に含めるのはいかがか。先般も申し述べましたが、基本的と申しますか原則的にはこうした制度はいかがか、残すといたしましても、極めて特殊な事情と申しますか状況が見受けられる場合に限りまして存続さしていただくことがいかがかという観点から御提案をいたしておるところでございますので、通常の贈与等につきましては外させていただいているところでございます。
  81. 日笠勝之

    ○日笠委員 配偶者ですね、御主人が亡くなって配偶者が相続、遺贈を受けた、三十年以上住んでおる、十年以上所有しておる、これもだめなんでしょう。あくまでも直系の子供とか孫じゃなきゃいかぬということですか。配偶者は対象外でしょう。イエスかノーかで答えてください。時間がない。
  82. 水野勝

    水野政府委員 ノーでございます。
  83. 日笠勝之

    ○日笠委員 ノーですね。  そして、一代で自分が買って五十年も六十年も住んでいる。二代じゃないんですよ、一代。自分が買った。六十年も住んでおる。その方が特別な事情があって買いかえしなければいけない。これもイエスかノーか。どうですか。
  84. 水野勝

    水野政府委員 先般も申し述べましたが、この制度の趣旨からいたしまして、それは除外させて御提案しているところでございます。
  85. 日笠勝之

    ○日笠委員 だって、大臣は本会議で、墳墓の地だと特別な事情があるとおっしゃったんですよ。五十年も六十年も住んでいてどこかへ行こうかというのは、これが特別な事情じゃないんでしょうかね。  ですからいろいろ疑問点が出てくるわけなんです。土地行革審と言われたところで、土地対策で買いかえ特例は見直しをしろ、それを受けた政府の土地対策の要綱の閣議決定でも、見直しをしろ、政府税調も、見直しをしろ、自民党税調だけがなぜかしらこれを入れてきたのですね。その辺からおかしくなってくるわけですよ。  おまけに、政令で定める。政令で定める、政令で定めるじゃ、何か政令のオンパレードですね。政令はもう決まっておるのでしょうか。私は売上税のときに政令の骨子というのを出していただきましたけれども、この際これを出していただかないと、このところがどうしても合点がいきません。不公平である、整合性がない、実際に、実定法に則してない、こういうふうに思います。政令は見せていただけるのでしょうか。
  86. 水野勝

    水野政府委員 政令は、法律を可決成立させていただいた段階におきまして、それまでの国会での御議論等をも踏まえまして、その時点で準備するというのが通常の姿でございますので、現在準備中のところでございます。
  87. 日笠勝之

    ○日笠委員 売上税のときは出していただいたわけでしょう。ですから、そういうふうに国会の論議を踏まえてとおっしゃっても、もとへ戻りますが、両親の亡くなった子供なんかはマル優の適用を受けられない、こういうことになるわけです。  どうでしょうか、委員長、政令の骨子をひとつまず見せていただく。でなければ、ここのところが大問題です。これは不公平です。整合性もありません。実態に即していません。奥さんはだめだ。ひ孫はだめだ。  まだありますよ。災害等で家屋がなくなってしまって新しく建てたのはどうなんですか。全く新しくなったんですよ。家が大きくなったとしますか、これはいいのですか、だめなのですか。時間がありませんからイエスかノーかで言ってください。
  88. 水野勝

    水野政府委員 奥さんの場合でございますとか曾祖父母、これはもう法律の問題としてノーとしてお答えをいたしておるところでございます。災害等におきまして同じ敷地で建てかえがされた、こういう場合は、まさに三十年間居住の用に供していたものとして政令で定める、そこのところあたりはまさに政令の事項でございまして、検討中の段階でございます。
  89. 日笠勝之

    ○日笠委員 だから、委員長、わからないわけですよ。雲をつかむような話になるわけですね。これはひとつ政令の骨子を見せていただいて、ここのところをもう少し私ども吟味したい。自民党税調でぱっと出てきて、ぱっとこれに食いついて、局長も非常に答弁に窮しておるじゃありませんか。  大臣、どうですか。売上税のときは政令の骨子を見せていただいたじゃないですか。一たん論議した後は、論議を踏まえて、あとは野となれ山となれ。マル優だって、こんなかわいそうな子供が全然適用を受けられない。これはとんでもありません。  どうでしょうか、委員長におかれてひとつ督励してください。
  90. 宮澤喜一

    宮澤国務大臣 政令となりますとやはり国会の御審議をいろいろ承りましてその後にということでございますから、今お尋ねの趣旨は、この部分の適用の範囲や理由等がたくさん政令に落ちておってわからぬ、こう言われるのでございますから、政令という厳密な形でございませんでも、何を一つ一つが考えておるかということを何かの形で整理してお目にかけるようにいたします。
  91. 日笠勝之

    ○日笠委員 やっとこれで質問したかいがありますが、ぜひお願い申し上げたいと思います。  最後に、租税特別措置全体のことでございますけれども、どうなんでしょうか、だんだんとふえておるということは先ほど言いましたが、例えば抜本改正、どんな中身かわかりませんが、今考えておられる抜本改正の法案が、出ることは望みませんが、もし出るとなれば、こういうものは大幅に見直しをされたものが出てくるのでしょうか。それともそれは残したままの抜本改正を出すおつもりなんでしょうかね、大臣租税特別措置を残したままの抜本改正が出てくるのか、抜本改正だから租税特別措置は厳密に見直して出てくるのでしょうかね。
  92. 水野勝

    水野政府委員 租税特別措置法の個々の項目で申しますと、これは税制の基本原則からいたしますと、政策目的からいたしましてそれがある程度必要であるということから個別に講じられているものでございますので、それは全体としての社会経済情勢の要請によるところでございます。  一方、抜本改正におきましては、所得、消費、資産、バランスのとれた税制ということでございます。その中におきましては、先ほどお話のございましたようなキャピタルゲインの問題等、そうした所得、資産、消費の中で大きな問題に関連するものは、抜本改正の中である程度のものを成案を得てぜひお示しをいたしたいと考えておるところでございます。
  93. 日笠勝之

    ○日笠委員 終わります。
  94. 越智通雄

    越智委員長 次に、柴田弘君。
  95. 柴田弘

    柴田(弘)委員 もう時間も随分遅くなりましたので、簡潔に御質問申し上げ、なるべく早目に終わりたいと思います。大臣予算委員会から引き続き、大変御苦労さんでございます。ひとつ簡潔に御答弁をいただきたい、こう思います。  私は、きょうは不公平税制是正という問題について執行面、制度面からいろいろと御論議をしたい、このように考えておりますが、その前に、財政再建という問題につきましてこの際お聞きをしておきたいと思うのです。  大臣、竹下内閣における財政再建の目標というのはあると思うのです。何でございましょうか。
  96. 宮澤喜一

    宮澤国務大臣 内閣として明確にこの問題を定義し直したことはございませんが、前内閣からの継続でございますところの昭和六十五年度には赤字公債依存の体質から脱却をいたしたいという目標はぜひ達成をいたしたい。そのためにと申しますか、そういう目標のもとに一般歳出はゼロシーリングで運営をしてこの六十三年度に及んでおるわけでございますが、一般的により優先度の低い歳出を抑えましてまず赤字公債に依存の体質から脱却をいたしたいというのが当面の一つの目標でございます。
  97. 柴田弘

    柴田(弘)委員 おっしゃるとおりだと思います。そこで、先日の参議院の予算委員会において、六十五年度赤字国債の脱却、大蔵大臣が自信を示された、こういうふうに新聞報道がなされております。大蔵大臣は、「「六十五年度に赤字公債脱却の目標は、現実の射程内に入ってきている。正常な経済運営が何より大事で、(それさえ続けば)二年かけて目標に接近、達成できるのではないか」と、六十五年度赤字公債脱却の実現に強い自信を表明した。」こうあります。いかがでございますか。
  98. 宮澤喜一

    宮澤国務大臣 そういう趣旨のことを最近申し上げたのでございますが、何よりも経済運営が、ただいま順調にいっているわけでございますが、いろいろ内外のこともございますから、それらを通じまして比較的順調に経済が動いていくということが何より大事なことで、政府としてもそれに全力を挙げて努めなければならぬと思っておりますが、そういうことの中から、なお不要不急の歳出は抑制しつつ、あと二年間で一年一兆五、六千億ずつ落としていけばよろしいわけでございますので、何とかこれはやりたいと思っておるところでございます。
  99. 柴田弘

    柴田(弘)委員 それで、この経済の調子が続いていけば私も六十五年度の赤字国債脱却は決して不可能ではない、こんな感じを持っています。大臣も御承知のように、臨時行政改革推進審議会昭和六十一年六月十日に答申をいたしました中で、要するに財政再建の道筋というのは、一つは先ほど申しましたようないわゆる「赤字国債に依存せざるを得ない財政体質から脱却すること」である、つまり六十五年度赤字国債脱却であります。もう一つは、「中長期的にも、財政本来の機動的役割を果たし得るため、全体として国債依存度を低めていく必要がある。」この二点が述べられております。  でありますから、できると思いますが、六十五年度赤字国債脱却をするとすれば、やはり私は六十六年度以降の何らかの財政再建の目標というものをそろそろ考えていくべきではないか。例えば国債依存度が六十三年度当初予算はたしか一五・六%であったと思います。だから、例えばこれを一〇%にするとか、あるいは一〇%以内にするとか一二%にするとか。しかも、現在経企庁の方で、新経済五カ年計画、六十三年度から六十七年度でございますが、これを審議中であります。経済企画庁の方でこれを作成しております。やはりそちらの方へも、この国債依存度の引き下げということを、その目標というものを働きかけていく必要があるのではないか。それにはそういった目標も、六十五年度のことでございますからあと二年ですか、ですからそろそろ財政当局としても新たな目標の設定に向かって、臨時行革審がこう言っておるわけでありますから、私は考えていくべきではないか、こう思いますが、いかがですか。
  100. 宮澤喜一

    宮澤国務大臣 とにかく赤字国債の新規発行をゼロにしようというのが当面何とか達成したいと思っております目標でございますが、さて、仮にそれが達成されましても、実は申し上げるまでもなくいろいろな問題がございまして、ここへ参りますまでの間にずっと一般会計をゼロないしマイナスで一般歳出をやってまいりましたけれども、それとの関連でいろいろあれこれ財政的な工夫をいたしておりまして、あちこちから借りたりしておるものもございますし、そういうものをいずれはまた返していかなければならぬという御承知のような問題がございますし、それから、赤字公債をやめましても建設国債はすぐにやめるというわけにまいらないわけでございますから、そういう意味では国債発行額は依然としてふえ続けるということに一応なるわけでございます。  そういたしますと、国債依存度は確かに減っていくわけでございますが、公債費そのものは減っていかないということになります。一般会計が非常に大きくならない限り、やはり国債費が二割もあるという状況はそう簡単に直らないということがございまして、まさに柴田委員の言われますように、幸いにして赤字国債をゼロにできたら、その次は何を具体的な目標に置くかということは考えなければならないときになりつつあるのでございますけれども、おっしゃいますように、これは経済企画庁の今度の新しい経済計画もにらみながら、次の段階の問題をやがて考えていかなければならないであろうと考えております。
  101. 柴田弘

    柴田(弘)委員 いわゆる公債費二〇%というのもこれは一つの目標かもしれませんが、とにかくその発行、もとを下げていく財政運営というものを今後していかなければいけない。確かに赤字国債はゼロになっても建設国債は発行しなければならぬ、これは私どもも言っておりますので、それは依存度を急激に下げろ、こういうことを言っているわけではないわけでございますけれども、やはり一つのメルクマールというものを持ったいわゆる財政運営をしていくべきではないか、こういった意味で目標を設定してください、そろそろその時期ではございませんか、こう言っておるわけでございますので、重ねてひとつ御答弁をいただきたいと思います。
  102. 宮澤喜一

    宮澤国務大臣 それはおっしゃるとおりであると私どもも思っております。
  103. 柴田弘

    柴田(弘)委員 では、次に進みます。  今各委員からもお話がありましたが、六十三年度予算修正に絡む与野党合意、これは、あくまでも私ども野党要求する減税実現のための財源論議には大型間接税を絡ませない、こういった合意であると私どもは確信いたしております。それで、第一回目の会合が始まって、そして自民党の方から間接税論議云々という話が出たかどうか知りませんが、何か雲行きがおかしくなっておるわけでございますが、この与野党合意を見てまいりますと、もし順調にいけば、いわゆる四月の予算成立までにその結論を得る、こうなっております。その結論を得た税制改革というものは、私は、政府としてもこれを遵守し、尊重し、実行すべきである、このような考えでおりますが、いかがですか。
  104. 宮澤喜一

    宮澤国務大臣 ただいまのお尋ねの意味は、この三月八日の合意に基づきまして現在行われております各党政策担当者間の協議の結果、この合意事項について具体案が合意された場合に政府はどうするかというお尋ねでございますが、公党間でそういう合意ができました場合には、もとより政府はそれを尊重しなければならないと思っております。
  105. 柴田弘

    柴田(弘)委員 尊重するということは、それを実施するということですか。
  106. 宮澤喜一

    宮澤国務大臣 政府としては合意の趣旨に従いましてその具体化を図らなければならないと思います。
  107. 柴田弘

    柴田(弘)委員 実施するということで、前へ進みます。  それで、今日笠委員からも大型間接税に対する竹下総理の六つの懸念ということについてお話があったわけでありますが、私も同様に思います。中小零細企業に与える打撃、本当に転嫁するだろうかどうか、私はそう思いますし、あるいは売上税のように輸出は無税、輸入は有税、こうなりますとこれは内需拡大に逆行する、あるいは行政コストの点というものが考えられていない、この三点が欠落している、私は個人的にこう思います。その答弁は要りませんが、いずれにいたしましても、国民が今大きな心配をしておりますのはこの六項目以外にあると私は思っております。  それはやはり、竹下内閣の税制改革というのは初めに大型間接税ありき、そして、政府は増税というものを主目的にしているのではないかという疑いが国民の中にあると私は思います。高齢化社会の福祉政策のための安定財源というものの、本音は大きな政府へ安易な増税ということではないかという不信感であります。  そうじゃない、このようにもし大蔵大臣がおっしゃるならば、例えば政府税調が部会で確認をしております、引き続き行財政改革を推進をしていく、税負担率を上げぬということ、前面にこれを出してまず議論の出発にすべきであると私は思います。すなわち、それは、まず執行面、制度面における不公平税制是正、ここから議論を始めていかなければならないと思います。大型間接税ありきの竹下内閣の抜本改革は私どもとしてはどうしても許すことができないと思います。  それから、もう一点指摘したいのは、竹下内閣における税制の改革はまず大型間接税ありきということであります。先ほど申しました。これは、国民自民党員の反対するような大型間接税は導入しないとの選挙公約に反し、国会に提出された売上税法案が国民の怒りを買って廃案になってから一年もたってないのになぜ今再び大型間接税かという疑問、これは国民の疑問です。余りにも拙速過ぎる点というものを次に御指摘を申し上げたいわけであります。  今上田先生からるる御質問がありましたように、税収は増加傾向にあるわけであります。そして、六十五年度赤字公債脱却のめども可能性として立っているときに、なぜ今大型間接税なのか。税制というのは一度導入されたならばこれは十年、二十年制度として定着していくわけだから、まず不公平税制是正をしっかりやる、数年じっくりと議論をすべきである、私はこのように考えております。  そこで、私は国税庁にお尋ねしていきますけれども、毎日のように脱税の新聞ばかりであります。調査をされた首都圏の自営業者、自由業者、九六・二%が所得隠しや申告漏れがあった。確定申告もようやく終わったわけでありますが、徴税上の不公平是正の必要性というものを私は訴えるわけであります。執行面。要するに、給料から税金を天引きされるサラリーマンや正直に申告している中小企業の皆さん、これは全く腹立たしいことであると私は思うわけであります。  もちろん税金逃れをなくすためには納税者の納税意識やモラルを戒めていかなければならないのも当然でありますが、背景として脱税しやすい税の構造が存在しているのも事実であると思います。これは、私、いろいろあなたの方からいただいた資料があるから、時間がありませんから申しますけれども、それはよく御存じだと思います。サラリーマンなどの給与所得に比較して他の所得の捕捉率が著しく低いという税の不公平の構造というのは一向に改善をされておりません。でありますから、徴税上の所得捕捉を徹底する納税環境の整備というものをまずしっかりとやっていただきたいと思います。例えば、私どもが主張しております記録及び記帳義務に基づく総収入申告制度の確立や税務執行の充実、徴税事務の効率化、これをしっかりと図っていただきたいと思いますが、いかがでしょうか。簡単にひとつお願いいたします。
  108. 日向隆

    ○日向政府委員 既に委員は重々御存じでございますので簡潔に申し上げたいと思いますが、申告納税制度のもとにおきまして漏れなく正しい申告を確保するためには、まずおっしゃいましたように納税道義の向上、第二番目には記帳の充実等納税環境の整備を図るとともに、課税上有効な資料、情報をもとにいたしまして、第三番目に、質、量ともに充実した税務調査を実施することが重要であります。  なかんずく、今御指摘になりましたように税務調査の充実は重要であるというふうに考えておりまして、このために、内部事務の合理化を前提に、関係方面の理解を得ながら定員の増加に努めるとともに、課税上有効な資料、情報の収集を踏まえて、調査対象の的確な選定、おっしゃいましたように調査の効果的、効率的な実施等に努力しているところでございますけれども、今後とも、この線に沿って一層努力して、税務調査の充実に努めてまいりたい、かように考えております。
  109. 柴田弘

    柴田(弘)委員 次は、制度面の不公平税制是正ということについて大蔵大臣に質問したい。  大臣、シャウプ勧告の税の本質というのは一体何だったのかということですね。私は、これは、累進課税であり、申告納税であり、そして総合課税、この三つにあった、こう思うのですよ。以来四十年近くたったわけでありますが、この三つの柱がいずれも今日、あえて申しますが、税制改悪によってゆがめられてきました。応能負担を徹底する累進、総合課税は有名無実化し、勤労所得者が事業、資産所得者に比べて不利をこうむっている。その上、申告に際しても、先ほど申しましたようにごまかし、脱税がまかり通る。これは決して見過ごすことができないわけであります。でありますから、今申しました執行面の徹底的な是正、徴税体制の確立と制度面のこの両面から脱税の温床構造に鋭いメスを入れていくべきである、私はこのように思います。  そこで、具体的にお尋ねしたいのは、キャピタルゲイン課税であります。  政府税調のいわゆる地方公聴会においても、この有価証券の譲渡所得が非課税のままではおかしいという声が出ておりますし、政府税調もキャピタルゲインの原則課税で一致をしている。また、四月からマル優が廃止をされ利子にも一律に課税をされることになることも、やはりキャピタルゲイン非課税に対する不公平感を強めている、こう思います。キャピタルゲイン、有価証券譲渡益の原則課税というのは、これは国民の声であり天の声である、このように私は思うわけでありますが、大臣、いかがでしょうか。
  110. 宮澤喜一

    宮澤国務大臣 考え方といたしまして、有価証券の譲渡益に所得税を課する、それはまさにシャウプ税制の精神からいいましても、所得であれば総合課税の対象にするというのが原則だというところは、私は考え方として今柴田委員の言われますことも私どもの思っておりますこともそう開きはないと思うのでございます。  ただ、現実の問題として、先ほどシャウプ税制のお話もございましたが、昭和二十八年まで三年間ほどやってみたわけでございましたが、これがなかなかうまくいかなかった。現在もっと事柄が複雑に大きくなっておりますから、一体、公平にキャピタルゲインもキャピタルロスもいろいろ把握をいたしまして、それを本当に課税の対象にまんべんなくするにはどうやったらいいかというところで今税制調査会に御検討願っている。大口のものにつきましてはこれは課税をいたしておるわけでございますけれども、そうでないものは行政をどうやって工夫をいたしましたらまんべんなく公平な課税ができるかということを目下税制調査会で御検討願っておるのでございまして、おっしゃいます目的そのものについては異存がございません。
  111. 柴田弘

    柴田(弘)委員 こういう議論が国会であったということをどうかひとつ正直に税制調査会に御報告いただきましてこれからの議論をしていただきたいと思います。よろしくお願いします。  私は、基本的な考え方は、やはり原則課税に向けて法改正を行うべきであると思います。これは捕捉率を高めるために納税者番号制度を確立する、導入する、それから取引内容を税務当局に報告させるための資料提出の法制化を行うべきである、このように考えるわけであります。  それで問題点は、我が国における個人所有の株式数というのは急激に伸びております。この結果、個人の株式に係るキャピタルゲインは莫大なものであると推定をされるのではないかと思うわけであります。ある資料があるわけでありますが、これは全国証券取引所協議会の資料でありますが、一九八〇年度に個人所有株式数は六百三十億七千九百六十九万七千株でありました。そして、それが一九八四年、四年後になりますと、六百七十八億六千二百三十万四千株。そして、推定キャピタルゲインは、八〇年が二兆八千五百三十一億、八四年が三兆三千八百八十九億円であります。こういう一つの資料があります。推定すればもっとあると思いますね。把握できない。だから、恐らく現在五兆円ぐらいキャピタルゲインはあるのじゃないか、こういうふうに私は思います。  しかし、原則非課税のために、自主的に申告しているものは極めて少ない。六十一年分の株式譲渡益の申告状況は、六十三年三月十日の日経新聞によれば百八十六件、取引総額九百三十億円ですね。また、課税要件に該当しないように借名、仮名等々の取引や分散取引を行うなど、作為的に申告を免れているものも多いと考えられる。  これは、もうここまで言えば、だれがやったかということはね。きのうのテレビで言っていましたね。納税者番号制を採用すると一番困るのは、トーゴーサンピンのピンというのは政治家だそうですが、政治家が一番困る、こう言っていました。あるテレビが、まあ私の見間違いかもしれませんが、そう言っていました。  でありますから、有価証券譲渡益課税の対応というのは、やはり公平確保の見地からも原則課税として、そのための所要の法改正、環境の整備をする必要がある。主要国の株式のキャピタルゲイン課税、個人の状況を見てみますと、アメリカ、イギリスは原則課税であります。  また、これ以上の執行上の不公平を招かないために納税者番号制度を導入する必要がある。諸外国の例を見ると、かなりの国において導入をされております。アメリカ、カナダ、デンマーク、スウェーデン、ノルウェー、イタリア等々であります。守秘義務の問題がありますが、これで議論してもいいのですが、課税を公平に行うために使用するものであって、限定するように。私は今の国税職員の守秘義務というものを心から信頼をしておりますが、もしそれでだめだ、税務執行以外にこのプライバシー保護が侵されるというのであれば、プライバシー審議会を設置し、有識者で法制定の方向へ持っていってもいいのじゃないか、私はこのように考えているわけであります。  それと、国税庁におけるコンピューター関係、機械化のための予算増額する、あるいは先ほどお話がありましたように国税職員を増員する等々、しっかりと税を捕捉する、所得を捕捉する、こういった方向へ持っていくべきである、このように思いますが、御所見はいかがですか。
  112. 宮澤喜一

    宮澤国務大臣 ただいま税制調査会において特別の小委員会を設けられましたゆえんは、まさに課税を有効に行うためにどういう方法があるか、例えば納税者番号はどうであろうかというようなことにつきまして鋭意御検討が始まりました。その御検討の対象になっておりますことは多岐でございますが、そのような制度が果たしてうまく動くものであろうか、それはコストの面で、あるいは非常にたくさんの取引先等々に、金融機関等々に、証券会社等々に非常に手数をかける、その辺がどうであろうか、そういう納税者番号を設けたときにそれがほかに使われるという可能性あるいは危険性はどうなのであろうか、その場合プライバシーというものはどうなのかといったような関連事項が非常に多うございます。あるいはそういう番号を用いなかった取引は取引としては無効であるのか無効でないのかといったようなこともございます。それから、キャピタルロスというのがあったときに、それはキャピタルゲインから引けることは恐らく間違いないであろうが、総合課税であればその他の所得からも引き得るものであるかどうかといったようないろいろなことを御検討中でございますが、これはとりもなおさず、柴田委員の言われますように、これを何とかまんべんなく行政の対象にしたい、課税の対象にしたいという考え方から御検討が行われておるわけでございます。  それから、国税庁の問題につきまして、先ほどシャウプのお話がございまして、私はシャウプが見えましたときに大蔵省で折衝した相手の一人の人間でございますが、その当時国税庁の職員というのは六万二千か六万くらいで、とにかく五万という頭がその後ございまして、大蔵省へまた帰ってきましたら今でも五万でございますから、機械化が進みましたにしましてもいかにもこれはよくやってくれると思いますが、これはなお工夫をしたり機械化したり、またどうしてもやむを得なければ、おっしゃいますように補強をしてやってまいらなければならない。税の公平ということはやはり税の命でございますから、それは行政の面でも確保しなければならないと思っております。
  113. 柴田弘

    柴田(弘)委員 それで、心配されるプライバシーの問題、これは私の個人的な意見をここで披瀝しておきます。  私は、納税申告という意味は、国民が憲法三十条で義務づけられております所得、財産のあるべき姿を正確に税務官庁に開示することであると思います。納税者番号制をもってプライバシーの侵害として非難するのは、不公正な租税回避を正当化しようとするすりかえの論理でしかないと批判されてもしかるべきではないかと私は思います。  また、租税以外の目的に対する税務官庁の守秘義務遵守については、先ほども申しましたように、経験的に信頼をしてもよいと考えますが、仮に不十分だとすれば、より厳格な保障の制度化をすればよいと思います。  さらに、納税者番号制が国家統制の用具になるという論理も短絡であると思います。社会保障番号制を納税者番号に活用しているアメリカでそのような論議は聞かれておりません。ですから、むしろ納税者番号制が公正で効率的な税制の実現に役立つならば、それこそ民主主義の維持を担保する基礎システムとして積極的に評価されていくべきである、私はそういう考え方をしております。  こういう国会議論があったということを税調に十分に御報告をいただきまして、その実現に向けてひとつ大蔵大臣の勇気ある英断というものを私は期待するものであります。いかがですか。
  114. 宮澤喜一

    宮澤国務大臣 ただいまのような御意見のございましたことは間違いなく政府税調の方にお伝えをいたします。ありがとうございました。
  115. 柴田弘

    柴田(弘)委員 それから、もし有価証券の譲渡益、キャピタルゲインに課税をすれば、一方において預金者の利子というものは分離課税が今認められておるわけですし、やはり公平確保という意味から、この預金者の利子を捕捉するという意味においても、特に私は納税者番号制というものの適用が必要ではないか、このように思います。的確な捕捉のできる体制をとらずに申告方式の導入を行えば、キャピタルロスだけが申告をされ、課税を強化した趣旨を損なってしまう。そういった意味で、取引実態の的確な捕捉のために納税者番号制度の導入、証券会社あるいは銀行からの取引資料の提出を義務づけることが必要である、このように考えているわけであります。これはぜひひとつ執行面でいろいろ御苦労されております国税庁次長から今の私の議論についてのお考えをお聞かせいただきたい。簡単で結構であります。
  116. 宮澤喜一

    宮澤国務大臣 実はそこらのところが税調の小委員会でも御検討の一つの問題でありまして、有価証券の譲渡益の関連で納税者番号というものをつくったときに、それは預金者にも及ぼすべきであるという御議論は、当然に、柴田委員ばかりでなく、多くの方々から起こってきそうに思います。そういたしますと、これは有価証券の取引と異なりまして非常にたくさんの国民を巻き込むことは必定でございます。したがって、納税番号のない預金というものが無効になってしまうのかといったようなことになってまいりかねません。としますと、問題はそこからもっともっと大きくなるかといったようなあたり、この辺を見きわめなければならぬというのが今の税制調査会の小委員会の御検討の対象ではないかと思っております。
  117. 柴田弘

    柴田(弘)委員 いずれにいたしましても、税調へ正確に御報告してください。  それからもう一つ最後に、大企業の持つ土地の再評価という問題について。いわゆる土地の含み益ですね。これは、固定資産の評価額を勘案して再評価をしたものがいわゆる再評価額、それから簿価を引いて、その引いたものに税率を掛ける。今こういう現状なんですね。土地が値上がりをする、それによって上がった土地担保力で企業は銀行からお金を借りる、それで別の土地を買うとかあるいはマネーゲームを行う、こういうケースがあると思います。その一方で、この借金の利子は損金として落とすことができるわけですよ。収益を圧縮する。中には赤字法人になるところもあります。大企業の四分の一が赤字法人。でありますから、私は、そろそろ赤字法人に対する外形課税というものを論議してもいい時期ではないか、こう思います。  それで、じゃ、個人はどうかといいますと、相続税というものがあるわけです。ある期間たちますと把握されてしまう。企業にはそれがない。こうした直接税の中の不公平にメスを入れるということが大事だ。不公平を温存したままで、そうした議論もせずに大型間接税導入ありきの税制改革には、私は重ねて反対をいたします。個人は死亡による相続税で一定期間の間に資産の再評価を受けることになるわけです。三代続くともうなくなってしまう。ところが、法人は、死亡ということがないために再評価の対象とならない。これは極めて不合理である。だから、私は、この含み益に対する再評価税というものを、一遍に大きな税率でなくて、段階的緩やかな形で課税をして、そして不公平税制是正を行っていくということが大事じゃないかと思います。  今言いましたように相続税の個人と法人との格差、それだけでなくて、先発企業と後発企業との格差もあるわけです。明治時代からやっているところ。簿価が安い土地で。後発企業はもう高い。それからもう一つ言えることは、先発企業というのはもう既に償却済みのところもあるかもしれませんね。あるいはまた、外人が日本へ参りましてビルを構えようとすると、高い家賃で、平米当たり五十万も百万もということで、年間四億も五億も。これはもう外人から言わせれば一つの貿易摩擦である、非関税障壁をつくっているのじゃないか、こういった不公平があるわけです。  そういった点もよくひとつ検討いただきまして、そろそろ土地の再評価、含み益、こういったものに対する課税というものを議論していくときではないか。大臣の御見解と税制調査会への御報告はいかがでございましょうか、ひとつお聞かせをいただきたい。
  118. 宮澤喜一

    宮澤国務大臣 この点は、柴田委員は実業に御経験のおありになるお方でいらっしゃいますので、なおそうおっしゃいますかというふうな気が私はするのでございます。殊に公明党ではそういうことを強く御主張になっておられるのでございますが、どうも私自身は、企業が現実に実現しないところの含み益というものへ一体本当に課税していいものであろうか。保有税という意味でございましたらそれは保有税としての固定資産税があるわけでございますし、所得税となりますと、やはり実現していない所得でございますから、今の点はどうもなかなか私にはぴったりとのみ込めませんで、殊に、おっしゃいますように先発がある。また、どっちかといえばいわゆる装置産業、基礎資材をつくる産業は大きな設備、大きな土地を持っておりますから、必ずしもそれが好況企業とは言えない。そこへの負担が大きくなるといったようなこともございますので、どうもなかなかこの問題は、お話ではございますけれども、いかがなものであろうかという気持ちを私は持っております。  ただ、ちょっと一言言われました、そうかといって、企業が借入金をして土地を買って土地が値上がりをする、その金利は経費である、そこのところのことは、確かに何か一つ方法があるだろうかということは考えてみる価値があると私は思っているのでございます。いかにもそれはちょっと話がうま過ぎる、そういうことは考えてみる価値があると思っておるのでございますが、全体の企業の保有土地の含み益についてのいわゆるやや資産評価的課税というのは、ちょっと私は、なかなかにわかにいい方法といいますか、どんなものであろうかというような気持ちがいたしております。
  119. 柴田弘

    柴田(弘)委員 参議院予算委員会で我が党の和田委員が同じような質問をしまして、保有税を上げた方がいいじゃないかと大臣がおっしゃった。だから、答弁は大体そうだろう、こう思っておりましたが、金融機関からの借入金で土地を購入した場合、土地を未利用のまま保有している間はこの借入金の利子を損金として計上していい現行の課税方式、法人税の基本通達ですか、これは批判されてしかるべきである、こう思いますよ。  きょう銀行局来てないからなんですが、ある資料によりますと、法人の土地購入額は七兆円に上り、そのうち自己資金は五七%の四兆円で、残りの四三%の三兆円が金融機関からの借入金で、この利子は非課税、こういうわけですね。だからこうした借入金利子を損金に計上して利益を圧縮しているわけでありますが、極めて不合理であると思います。やはりこの辺の改正というものが必要である、こう私は思いますが、どう対応されますか。
  120. 水野勝

    水野政府委員 御指摘の点は、確かに、借入金の利子を支払った、しかしまだその土地が活用されていないというような場合におきましては、費用、収益、これを対応して両方見合うように計算をするという費用収益対応の原則からいたしますといささか問題かもしれない、こういった点が検討課題であろうかと思うわけでございます。
  121. 柴田弘

    柴田(弘)委員 最後に、あと二分になりましたので、証券局長来ていらっしゃいますか。――来てみえない。それでは大蔵大臣に聞きます。申しわけございません。証券局長もお願いしておったのですが、遅くなったので帰られたかしりませんが、それはいいです。  キャピタルゲイン原則課税にしまして背番号式にした場合ですが、今兜町のうわさでは、四百十六兆円の個人の取引総額のうち三十兆円がアングラマネーだ、こう言われているというのです。これは兜町のうわさですよ。そういう金が逃げ出すであろう。だから株は昨年のブラックマンデーのようなまた暴落が起こるであろう。この点については、くしくも渡辺自民党政調会長がおっしゃっておりますね。それから、山中税調会長も、経済的なショックが起こる、このようにおっしゃっております。  いかがでしょうか。本当に株が暴落し、経済的な大ショックが起こるのですか。この点お伺いをして、私の質問を終わりたいと思います。
  122. 宮澤喜一

    宮澤国務大臣 これは事の性質上私から何とも申し上げられないことでございますが、ただ、そのお尋ねとちょっと切り離したことで申し上げますれば、昨年の十月十九日にニューヨークでああいうことがございまして、その後、何しろ東京市場が今世界で一番大きい市場でございますから、世界が東京市場の方を注目しておりましたが、東京市場が非常に落ちついた反応をいたしましたので、それが世界的にあの後の処理に非常にいい影響を与えたということは広く認められておるところでございますので、国会におかれましても、このような問題を御検討賜りますときに、我が国の証券市場が持っております国内ばかりでなく世界市場に与える影響、その大きさといったようなものはぜひとも一緒に御検討、御考慮をいただきたい問題であるということは、常に申し上げまして間違いのないところであろうと思っております。
  123. 柴田弘

    柴田(弘)委員 どうもいろいろありがとうございました。  最後に、答弁漏れがありまして、いわゆる大企業の土地の含み益の課税の問題、政府税制調査会にこうした議論があったということを正確にお伝えいただきますことをお約束をいただきまして、質問を終わりたいと思います。どうですか。
  124. 宮澤喜一

    宮澤国務大臣 それも私どもから税制調査会の方にお伝えをいたします。
  125. 柴田弘

    柴田(弘)委員 では、どうもありがとうございました。
  126. 越智通雄

    越智委員長 次回の委員会は、来る十八日金曜日に開会することとし、本日は、これにて散会いたします。     午後十時三分散会