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1988-01-29 第112回国会 衆議院 大蔵委員会 第1号 公式Web版

  1. 会議録情報

    国会召集日昭和六十二年十二月二十八日)( 月曜日)(午前零時現在)における本委員は、次 のとおりである。    委員長 越智 通雄君    理事 大島 理森君 理事 太田 誠一君    理事 中川 昭一君 理事 中西 啓介君    理事 中村正三郎君 理事 野口 幸一君    理事 宮地 正介君 理事 玉置 一弥君       新井 将敬君    井上 喜一君       今枝 敬雄君    江口 一雄君       遠藤 武彦君    金子 一義君       小泉純一郎君    笹川  堯君       杉山 憲夫君    戸塚 進也君       葉梨 信行君    鳩山由紀夫君       藤波 孝生君    堀之内久男君       村井  仁君    村上誠一郎君       山中 貞則君    山本 幸雄君       上田 卓三君    沢田  広君       中村 正男君    早川  勝君       堀  昌雄君    武藤 山治君       橋本 文彦君    日笠 勝之君       森田 景一君    失迫 秀彦君       安倍 基雄君    正森 成二君       矢島 恒夫君 ────────────────────── 昭和六十三年一月二十九日(金曜日)     午後四時三十二分開議  出席委員    委員長 越智 通雄君    理事 大島 理森君 理事 太田 誠一君    理事 中西 啓介君 理事 中村正三郎君    理事 中村 正男君 理事 宮地 正介君       新井 将敬君    石渡 照久君       今枝 敬雄君    魚住 汎英君       金子 一義君    小泉純一郎君       斉藤斗志二君    杉山 憲夫君       戸塚 進也君    葉梨 信行君       堀之内久男君    松田 岩夫君       村上誠一郎君    山中 貞則君       山本 幸雄君    沢田  広君       堀  昌雄君    武藤 山治君       橋本 文彦君    日笠 勝之君       森田 景一君    失迫 秀彦君       安倍 基雄君    正森 成二君       矢島 恒夫君  出席国務大臣         大 蔵 大 臣 宮澤 喜一君  出席政府委員         大蔵政務次官  平沼 赳夫君         大蔵大臣官房総         務審議官    角谷 正彦君         大蔵省主計局次         長       斎藤 次郎君         大蔵省主税局長 水野  勝君         大蔵省理財局長 足立 和基君         大蔵省証券局長 藤田 恒郎君         大蔵省銀行局長 平澤 貞昭君         大蔵省国際金融         局長      内海  孚君         国税庁次長   日向  隆君  委員外出席者         運輸省航空局監         理部航空事業課         長       圓藤 壽穂君         参  考  人         (日本銀行副総         裁)      三重野 康君         大蔵委員会調査         室長      矢島錦一郎君     ───────────── 委員異動 一月二十九日  辞任         補欠選任   井上 喜一君     松田 岩夫君   遠藤 武彦君     石渡 照久君   鳩山由紀夫君     斉藤斗志二君   村井  仁君     魚住 汎英君 同日  辞任         補欠選任   石渡 照久君     遠藤 武彦君   魚住 汎英君     村井  仁君   斉藤斗志二君     鳩山由紀夫君   松田 岩夫君     井上 喜一君 同日  理事野口幸一君同日理事辞任につき、その補欠  として中村正男君が理事に当選した。     ───────────── 一月二十五日  漁船再保険及漁業共済保険特別会計における漁業共済に係る保険金支払財源の不足に充てるための一般会計からする繰入金に関する法律案内閣提出第一号) は本委員会に付託された。     ───────────── 本日の会議に付した案件  理事辞任及び補欠選任  国政調査承認要求に関する件  小委員会設置に関する件  参考人出頭要求に関する件  国の会計税制及び金融に関する件(財政金融基本施策)      ────◇─────
  2. 越智通雄

    越智委員長 これより会議を開きます。  理事辞任の件についてお諮りいたします。  理事野口幸一君より、理事辞任申し出があります。これを許可するに御異議ありませんか。     〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
  3. 越智通雄

    越智委員長 御異議なしと認め、そのように決しました。  次に、理事補欠選任の件についてお諮りいたします。  ただいまの理事辞任に伴う補欠選任につきましては、先例により、委員長において指名するに御異議ありませんか。     〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
  4. 越智通雄

    越智委員長 御異議なしと認め、中村正男君を理事に指名いたします。      ────◇─────
  5. 越智通雄

    越智委員長 国政調査承認要求に関する件についてお諮りいたします。  国の会計に関する事項  税制に関する事項  関税に関する事項  金融に関する事項  証券取引に関する事項  外国為替に関する事項  国有財産に関する事項  専売事業に関する事項  印刷事業に関する事項  造幣事業に関する事項 の各事項につきまして、今会期中国政に関する調査を行うため、議長に対し、国政調査承認要求を行うこととし、その手続につきましては、委員長に御一任願いたいと存じますが、御異議ありませんか。     〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
  6. 越智通雄

    越智委員長 御異議なしと認め、そのように決しました。      ────◇─────
  7. 越智通雄

    越智委員長 小委員会設置に関する件についてお諮りいたします。  先刻の理事会におきまして協議いたしましたとおり、それぞれ小委員十五名よりなる  税制及び税の執行に関する小委員会  金融及び証券に関する小委員会  財政制度財政投融資に関する小委員会  金融機関の週休二日制に関する小委員会 を設置することとし、各小委員及び小委員長委員長において指名いたしたいと存じますが、御異議ありませんか。     〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
  8. 越智通雄

    越智委員長 御異議なしと認め、そのように決しました。  小委員及び小委員長は、追って指名の上、公報をもってお知らせいたします。  なお、委員異動に伴う小委員及び小委員長補欠選任並びに小委員及び小委員長辞任の許可及びそれに伴う補欠選任につきましては、あらかじめ委員長に御一任願いたいと存じますが、御異議ありませんか。     〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
  9. 越智通雄

    越智委員長 御異議なしと認め、そのように決しました。      ────◇─────
  10. 越智通雄

    越智委員長 国の会計税制及び金融に関する件について調査を進めます。  まず、財政金融基本施策について、大蔵大臣所信を聴取いたします。大蔵大臣宮澤喜一君。
  11. 宮澤喜一

    宮澤国務大臣 今後における財政金融政策につきましては、先般の財政演説において申し述べたところでございますが、本委員会において重ねて所信一端を申し述べ、委員各位の御理解と御協力をお願い申し上げます。  二十一世紀を目指し、今後我が国が進むべき道は、対内的には、真に豊かで活力のある経済社会建設し、対外的には、各国との協調を図りつつ、国際社会に占める地位にふさわしい役割を積極的に果たしていくことにあります。  昨年の我が国経済は、円高進展にもかかわらず、物価が安定基調を維持する中で、内需中心として景気が回復から拡大に向かった一年でありました。個人消費は堅調に推移し、住宅建設は高い水準にあり、さらに設備投資も着実に増加するなど、国内民間需要は堅調に推移しております。  一方、国際経済情勢を見ますと、主要国間の大幅な対外均衡等背景に保護主義的な動きもなお根強く、また、開発途上国における累積債務問題も、いまだに解決を見ておりません。  私は、今後の財政金融政策運営に当たり、このような我が国の置かれている状況を踏まえ、二十一世紀に向けての我が国の進むべき道を展望しつつ、以下に申し述べる諸課題に取り組んでまいる所存であります。  課題の第一は、内需中心とした経済持続的成長を確保していくことであります。  政府は、昨年夏に補正予算を編成して緊急経済対策を実施するなど内需拡大に努めてまいりましたが、昭和六十三年度予算におきましても、厳しい財政事情のもとではありますが、社会資本整備の促進のためNTT株式の売り払い収入活用を図ること等により、一般公共事業費について、前年度当初予算に対し二〇%増という高い水準を確保したところであります。  また、金融政策運営につきましては、内外経済動向及び国際通貨情勢を注視しつつ、適切かつ機動的に対処してまいる所存であります。  さらに、持続的成長を確保していくためには、為替相場の安定が重要であることは申し上げるまでもありません。このため、昨年末には主要先進七カ国の蔵相・中央銀行総裁による声明を発表し、ルーブル合意に立脚しつつ、経済政策協調についての各国積極的取り組みを再確認すると同時に、これ以上のドルの下落は世界経済成長にとり逆効果であるとの共通の認識を示したところであります。この点につきましては、先般の日米首脳会談においても確認されております。今後とも、各国との政策協調及び為替市場における協力を通じ、為替相場の安定を図ってまいりたいと考えております。  第二の課題は、財政改革を引き続き強力に推進することであります。  財政改革の目的は、一日も早く財政がその対応力を回復することにより、今後急速に進展する人口の高齢化国際社会における我が国責任の増大など今後の社会経済情勢の変化に弾力的に対応し、豊かで活力ある経済社会建設を進めていくことにあります。  このため、昭和六十三年度予算におきましては、歳出の徹底した見直し合理化等に取り組むことにより、特例公債発行額減額最大限努力を払い、公債依存度を一五・六%にまで引き下げたところであります。これは、昭和五十年度以来の特例公債発行下では最も低い水準であります。この結果、昭和六十五年度までの間に特例公債依存体質から脱却し、公債依存度を引き下げるという努力目標達成に向けて着実に前進することとなりました。  しかしながら、このような努力を行ってもなお、昭和六十三年度末の国債残高は百五十九兆円に達する見込みであり、国債利払い費歳出予算の約二割を占めるなど、財政事情は引き続き極めて厳しいものとなっております。  来るべき世紀に向かって我が国内外から求められている課題に、財政が十分対応できるよう、今後ともこの目標に向けて財政改革をより一層強力に推進してまいる所存であります。  第三の課題は、税制抜本的見直しであります。  今後の高齢化社会の到来、経済社会の一層の国際化を展望するとき、抜本的な税制改革実現は避けて通れない課題であります。このため、国民の税に対する不公平感を払拭するとともに、所得、消費資産等の間で均衡がとれた安定的な税体系を構築することが不可欠であり、早急に成案を得ることが必要と考えます。  このような認識のもと、現在、税制調査会において、我が国にとって望ましい税制のあり方とその実現に向けての具体的方策につき、精力的に御審議願っているところであります。  国民各界各層の御議論等を拝聴しつつ、国民の納得が得られるような税制改革関連法案を取りまとめるよう、引き続き最大限努力を傾けてまいる所存であります。  第四の課題は、我が国の国際的な地位の向上に見合い、調和ある対外経済関係の形成に努めることであります。  世界的な対外均衡等背景とした保護主義的な動きには根強いものがあります。我が国としては、引き続き各国に対し対外均衡是正努力を求めると同時に、みずから率先して市場アクセス改善経済構造調整等を進め、自由貿易体制維持強化に努めていく必要があります。  このような観点から、昭和六十三年度においては、特恵関税制度改善関税引き下げ、撤廃等改正を行うとともに、現在進められているウルグアイ・ラウンド交渉におきまして、建設的な役割を積極的に果たしてまいりたいと考えております。  金融資本市場自由化国際化につきましては、昨年六月に「金融資本市場自由化国際化に関する当面の展望」を発表し、その後、その方向に沿って、各般の措置が講じられてきているところであります。  さらに、先物市場整備拡充につきましては、証券先物市場の一層の整備金融先物市場の創設及び海外金融先物取引の一層の自由化を進めていく予定であります。  今後とも、我が国金融資本市場内外に対して十分な貢献を果たし得るよう、一層の自由化国際化を進めてまいりたいと考えております。  開発途上国自助努力を支援するとともに、累積債務問題の解決を図り、もって世界経済成長と繁栄に資することも我が国の大きな国際的責務であります。  このため、政府開発援助につきましては、第三次中期目標について七年倍増目標の二年繰り上げを実施するとともに、現在実施しております三百億ドルを超える官民アンタイド資金還流措置達成に全力を傾けているところであります。  次に、昭和六十三年度予算の大要について御説明いたします。  昭和六十三年度予算は、財政改革を強力に推進するとともに、内需拡大要請に配意することとして編成いたしました。  歳出面におきましては、国民健康保険制度改革を初めとする既存の制度施策見直しを行い、特に経常経費について一層の節減合理化を行うとともに、一般公共事業費についてNTT株式の売り払い収入活用すること等により、前年度当初予算に対し二〇%増という極めて高い水準を確保するほか、限られた財源を重点的、効率的に配分するよう努めることといたしました。  この結果、一般歳出規模は、三十二兆九千八百二十一億円と前年度当初予算に比べ三千九百八十七億円の増額となり、これにNTT株式の売り払い収入に係る産業投資特別会計への繰り入れ一兆三千億円、さらに国債費及び地方交付税交付金を加えた一般会計予算規模は、前年度当初予算に比べ二兆五千九百八十七億円増額の五十六兆六千九百九十七億円となっております。  次に、歳入面におきましては、歳入の基幹たる税制につきまして、税制抜本的改革との関連に留意しつつ、最近の社会経済情勢等に即応して、当面早急に実施すべき措置を講ずることとし、土地住宅税制について見直しを行うとともに、石油税について増収措置を講ずる等の税制改正を行うことといたしております。  税の執行につきましては、今後とも国民の信頼と協力を得て、一層適正公平な税務行政を実施するよう、努力してまいる所存であります。  また、税外収入は、前年度に比べ大きく減少しておりますが、可能な限りその確保に努めたところであります。  公債につきましては、以上の結果、その発行予定額は前年度当初予算より一兆六千六百億円減額し、八兆八千四百十億円となっております。その内訳は、建設公債が一千七百億円増の五兆六千九百億円、特例公債が一兆八千三百億円減の三兆一千五百十億円となっております。  また、昭和六十三年度においては、十四兆五千百二億円の借換債発行予定しており、これを合わせた公債の総発行額は、二十三兆三千五百十二億円となります。  財政投融資計画につきましては、内需拡大社会資本整備資金還流措置推進等要請にこたえ、資金の重点的、効率的な配分に努めたところであります。  この結果、昭和六十三年度の財政投融資計画規模は二十九兆六千百四十億円となり、前年度当初計画に対し、九・四%の増加となっております。  この機会に、昭和六十二年度第二次補正予算について一言申し述べます。  昭和六十二年度第二次補正予算につきましては、給与改善費国民健康保険特別交付金義務的経費追加等、特に緊要となった事項について措置を講ずることといたしており、この結果、昭和六十二年度一般会計第二次補正予算の総額は、歳入歳出とも第一次補正予算に対し二兆三百三十九億円増加して、五十八兆二千百四十二億円となっております。  なお、昨年不成立となりました売上税法案関連歳入歳出につきましては、この際所要の補正を行うことといたしております。  以上、財政金融政策に関する私の所見の一端を申し述べました。  本国会に提出し御審議をお願いすることを予定しております大蔵省関係法律案は、昭和六十三年度予算関連するもの五件、昭和六十二年度第二次補正予算関連するもの一件、その他二件、合計八件であります。このほか検討中のものとしては税制改革関連法案があります。今後、提出法律案の内容について、逐次、御説明することとなりますが、何とぞよろしく御審議のほどお願い申し上げます。(拍手)     ─────────────
  12. 越智通雄

    越智委員長 この際、参考人出頭要求に関する件についてお諮りいたします。  各件調査のため、本日、参考人として日本銀行総裁三重野康君の出席を求め、意見を聴取いたしたいと存じますが、御異議ありませんか。     〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
  13. 越智通雄

    越智委員長 御異議なしと認め、そのように決しました。     ─────────────
  14. 越智通雄

    越智委員長 質疑の申し出がありますので、順次これを許します。新井将敬君。
  15. 新井将敬

    新井(将)委員 大臣、お疲れのところ、ひとつよろしくお願いいたします。  まず最初に、先ほど申されました財政再建の特に六十五年度に特例公債をゼロにするという方針に向かって六十三年度予算が着実に進んでいる、そういうお話を伺いました。  特に、赤字公債については去年よりも一兆八千億の減額を行っている、そういうことを伺いましたが、これは一方ではまた昭和六十年度に、赤字公債についても一括の現金償還をやめて六分の一ずつやっていこう、残りは情換債で賄おうということになっておりますから、国債整理基金の方では三兆円に近い倍換債発行しているわけです。そういたしますと、一兆八千億を減らしましても、全体としての赤字公債発行額はやはり六兆円を超えるという非常に巨大な金額になっておりますし、一般会計の姿だけを整えましても、実際上は整理基金においての借換債がどんどんたまっていく、そして利払いの圧力も全然減っていかない。大臣がおっしゃっているよりは、財政再建というのはストックを考えますと、本当はもっともっと厳しい環境にあるのじゃないかなという気が率直に言ってするわけですが、お考えを聞かせていただけたら幸いです。
  16. 宮澤喜一

    宮澤国務大臣 その点は新井委員のおっしゃるとおりでございます。それに間違いはございません。  ただ、政府昭和六十五年度には赤字公債依存体質から脱却しようと決心をいたしましたのは、それにいたしましても赤字公債新規発行されていくということをまずとめることから始めませんと、このような国債の累積を防ぐ方法がございませんので、まずそれをやろうということでありまして、それをやりましたらすぐに国債費が小さくなる、あるいは国債残高が減少していくとか、なかなかそういうわけにまいりませんことはもうおっしゃるとおりでございますから、六十五年度にまず新規発行をゼロにしよう、脱却しようということは、将来に向かっての国債減額の第一歩である、そういうふうに考えておるわけでございます。
  17. 新井将敬

    新井(将)委員 おっしゃるとおりだと思います。ただ、国債整理基金特別会計、これにNTT株株式売却収入という項目ができております。新しい中期財政計画予算委員会の方で提出されたところであると思いますが、その中でNTT株株式売却による収入を三兆八千億、一株当たり二百四十七万円、八掛けとなっておりますけれども、これは、前の中期財政計画の一兆八千億よりは毎年二兆円も国債整理基金NTT株売却によってお金が流れ込んでくる、ある意味ではこういう非常に楽観的なNTT株売却に対する計算になっているような気がいたします。現在の市況等考えると、これはちょっと過大な見積もりではないのかなという気がいたしますが、お考えはいかがでしょうか。
  18. 宮澤喜一

    宮澤国務大臣 昨年末に予算編成を最終的に締め切ります時点からさかのぼりまして、たしか一月間の市場平均価格を一種の約束事として積算の基礎にとったということと承知しております。したがいまして、ただいまの市況から申しますと、その金額は確かに市況を上回っておりますが、一応そういう慣例に従いまして、約束事としてそういう積算をしてその八掛けを計上した、こういうことでございますから、今後どういう進展になりますか、これは株式市況全体の状況とも関連をいたすことであろうと思います。
  19. 新井将敬

    新井(将)委員 大臣は一応の見積もり中期財政計画を出しておる、こうおっしゃっております。そのとおりだと思います。ただ、私らこれを見てまいりますと、余裕金残高というものがあるわけですが、これが昭和六十七年には定率繰り入れをやらないと思いますので、ほとんど一兆円、百七十兆円を超える借金に対して一兆円しか財布の中にはないというような、非常な自転車操業がこの過大な収入からもかなり予測されるわけでありますし、また六十八年からは、三兆円に上る定率繰り入れを行うという計画になっておりますけれども、これは財政再建後に一般会計から三兆円またお金を入れていくということは、大臣笑っておられますが、これは恐らく大変な一般会計のプレッシャーになる気がいたします。ですから、これほどよくできた中期財政計画でさえ、これは相当先行きが実は難しいのではないかなという気がいたしておるわけですけれども、いかがでしょう。
  20. 斎藤次郎

    斎藤(次)政府委員 今御指摘になりましたのは、つい先ほど予算委員会に提出いたしました資料のうちの、「国債整理基金資金繰り状況等についての仮定計算」のBケースというのを恐らく言われているのだろうと思います。これは先ほど御質問のときにおっしゃいましたように、NTT株式を今後毎年百九十五万株売る、それから市況二百四十七万円に八掛けをした――安全率八割を掛けているわけですが、それで仮に売れるとして、それから無利子貸し付けを毎年一兆三千億ずつやっていく、いろいろな前提を置きまして、そうすると余裕金残高は、先般の国会理財局長が御答弁申し上げましたように、約一兆円あれば大体スムーズな国債管理政策ができるだろうという前提がございますので、一兆をちょっと上回るところまでは仮に定率繰り入れをストップしたとしたら何年度までできるだろうか、いわばそういう仮定計算を行ったものでございまして、これはもちろん今後の株式売却収入動向、あるいはNTTの株をどれぐらい活用していくかという無利子貸し付け活用額等によって変動があるものでございます。
  21. 新井将敬

    新井(将)委員 非常によくできた作文だと思って伺っておきます。  大臣、これから実は核心ですけれども、NTT株売却については昭和六十四年度までに二分の一を下らない額を放出する、こう大蔵、郵政の間で取り決めになっているわけであります。現在、既にそのうちの三百九十万株の発行が済んでおりまして、今ごらんのとおり、去年の発行以来非常に市況が軟化しておりますし、ある意味では大蔵省責任を問う声もちまたにはあるように伺っております。果たして、このような状況の中でことしまた百九十五万株を覚書どおりに、とにかく何が何でも市況が壊れても覚書どおりに百九十五万株を秋に放出する、そういう非常に固定的なお考えでおられるのかどうか、ちょっとお聞きしたいのです。
  22. 宮澤喜一

    宮澤国務大臣 私、その辺の両省の事務当局の考えは直接聞いたわけではございませんけれども、国民の財産でございますから、それはできるだけ有効に活用させていただかなければならない。それはもう明らかなことであって、しかもそれを買っていただくということは、政府にとりましてもこれは一種の商行為でございます。それから、買われる方もまたそうでございますから一つの原則があって、何が何でもそのとおりにしなければならないという性格のものではなかろう。そうでございませんと、せっかく国民の残されました、先輩の残されました財産を最も国民的利益に沿うように活用しなければならないという、それが至上命題でございますから、それに従ってそこはいろいろ弾力的に考えるべきものではないだろうか。原則論として私はそう思っておりますが、事務当局がどのようなことを今検討しつつございますか、まだ私は聞いておりません。
  23. 新井将敬

    新井(将)委員 今大蔵大臣が、非常に弾力的にNTT株売却考える、国民財産であり貴重な財源でありますから、長期的に収入を最大化することが国民にとっても政府にとっても最大のメリットだというお考えを示していただきましたわけですが、具体的に方法というのはそう幾つもあるわけじゃないと思うんですね。例えば一回当たりの売却株数を引き下げる、あるいはまた売り出し時期を何が何でも秋に、相場が悪くてもよくてもやるということも考えてみればナンセンスな話で、いいときに売って悪いときに売らないということはだれでもやっているわけでありますから、それも余り固定的に考える必要はないんじゃないでしょうか。  またもう一つは、外国人の株式保有を一株も認めないというのは、これは多分国内の第一種の電気通信事業会社に関してはNTTだけではないでしょうか。これはイギリスの会社なども三分の一ぐらいは認めておりますし、こういうあたりも株に対するサポートとしては重要ではないかと考えておりますけれども、いかがでしょうか。
  24. 宮澤喜一

    宮澤国務大臣 先ほど申し上げましたことは、私の原則的な物の考え方を申し上げたわけでございます。予算におきましては、一応そういう想定のもとにやらしていただきたいということで予算案を編成しておりますことは御承知のとおりでございますから、それを今変えるということを申し上げておるのではございませんで、事柄の本質はそういうことでございますから、現実の事態に対処して弾力的に考えなければならないことはあり得ることであろう、こういうふうに申し上げておるわけでございます。  それから、そうでございますね、外人の保有ができないということになっておりますから、いわば外人は株主になることはできないということでございますか、そういう制度だというふうに承知しておりますが、その辺のことも、会社側がどう考えられるのか、郵政当局がどう思われるのか、いろいろまたこれからあれこれの御議論があるんではないだろうか。外国から見ましてもこれはどうかなという問題提起は考え得ることでございますので、そういうこともいろいろこれからみんなが議論をすることではなかろうかと思っております。
  25. 新井将敬

    新井(将)委員 ことしがちょうど電気通信事業法の見直し、ちょっと今やらない予定みたいですが、ちょうど六十四年度にNTT会社法の方の見直し予定されておりまして、特にこの外人の保有に対しては、会社法だけ改正すればできる問題であると私理解しておりますし、今のような日本と外国との関係の中で、やはりNTT株の外人保有をもちろん制限をつけた上で認めていくことは、市場においてもまた日本の国際社会への態度という意味においても非常に重要なことだと思いますので、ひとつ御考慮をいただけるようにお願いを申し上げます。  次は、税制改革についてお伺いいたします。特に今政府税調進行中でございますから、余り予見を与えないという理由で、大臣に何を聞いてもまずちゃんとした答えをいただけないんじゃないかというふうに思っておりますが、この抜本的税制改革の理念として、やはり公平、簡素それから改革に対する国民的合意というものが非常に基本的理念として重要だと思いますが、そのことについてお考えをお伺いしたいと思います。
  26. 宮澤喜一

    宮澤国務大臣 御指摘のとおりと思います。
  27. 新井将敬

    新井(将)委員 その中で特に不公平税制の是正がなければ、大型間接税といいますか税制の抜本改革というのはだめだ、こういう意見がいろいろと出ております。  特に、その中でもキャピタルゲイン課税については、こちらにおられる皆さんもそれやらなきゃだめだ、こういうふうにおっしゃっているわけでありますけれども、このキャピタルゲイン課税を考えます際に実は幾つかの論点があります。このキャピタルゲイン課税と有価証券取引税との関係について、大臣はどのように御理解されておられるでしょうか。
  28. 宮澤喜一

    宮澤国務大臣 有価証券株式等のキャピタルゲインの課税につきましては、先般課税を強化いたしまして、五十回から三十回あるいは二十万株から十二万株といったようなことをいたしたわけでございますが、結局キャピタルゲインなりキャピタルロスなりを行政が間違いなく、まんべんなくとらえられて、そして行き当たりばったりでない行政がちゃんとどうやったらやっていけるかということが私はこの問題の中心であろうと考えておりまして、そのための案につきまして、政府税制調査会においていろいろ御検討願っておるということであると存じます。  どういう方法を税制調査会でお考えいただけますか、それにも当然よることでございますが、今新井委員の言われましたのは、有価証券取引税というものがかなり大きな歳入になっておる、そのこととこのような課税方法あるいは行政が適当であるという結論とがどういう関連を持ちますか持ちませんか、その辺のところはこういう方法がいいだろうということがある程度出てまいりませんと、正確には申し上げ得ないことであろう。非常に関連の深い二つの出来事であるということはよくわかっています。
  29. 新井将敬

    新井(将)委員 税理論的にちょっと申し上げたいという気がいたします。というのも、マル優の改革によって利子収入に対しての課税がされるのだからキャピタルゲインをほっておけない、こういう議論が常に出てまいります。しかし考えてみますと、利子収入に対する課税とキャピタルゲインに対する課税とでは、所得の性質にかなりの違いがあることはよく言われていることだと思います。といいますのも、本来キャピタルゲインを生み出す基本的な投資というのは株式資本、リスクキャピタルとも言われておりますけれども、そういうリスクを背負うことに対しての投資でありまして、それが実現するのは法人の利益として実現するわけです。しかし、その中で税で法人税が持っていかれる。残りは配当と内部留保になるわけですね。配当が個人に返ってくる、この際には一回法人税がかかった配当に対して、個人はまた受け取り配当に対して現在課税されていることはそのとおりであります。  一方、理論的に考えて、内部留保のものがさらにキャピタルゲインとなってまた個人に来る、その際にキャピタルゲインにまた課税が起きてくる。それはもちろん、所得のいろいろな段階で形に応じて課税が行われることはわかりますけれども、やはり大型間接税の際の付加価値税の場合に重複課税を耐える形で、付加価値がどのように変わっていっても、最終的な流れの中で付加価値に対する一定割合が税金だというふうに整理されている理屈と考えますと、論理の番人の大蔵省として、単に譲渡所得があるからやるんだというだけの理屈、利子収入に係るからやるんだというだけでは、ちょっと理論的にもおかしいのではないかなという考えをしますけれども、いかがでしょううか。
  30. 水野勝

    ○水野政府委員 御指摘の点は法人税の基本的性格にもかかわるものでございますし、法人税と個人所得税との調整、その間の二重課税であるかどうかという点にも関連をする点でございます。しかしながら一方におきましては、個人ベースで考えますと、とにかくその個人の方につきまして処分できる経済的利益というものが入手されるならば、それはそれで所得として課税を申し上げるのが公平ではないかという観点もあるわけでございます。  そこらの点につきましては、従来からいろいろ御議論があり、法人所得につきましても、例えば役員賞与につきましては課税所得の対象に含められ、それが役員に配られるときでも損金に算入はされない。それがまた役員に給付されるときには、役員にも所得税が課税されるということとの配当につきましては、そこはベースが合っている。諸外国におきましても、配当を損金に算入するという立法例はなかなかないようでございますが、それを個人の段階でどのように調整するか、もろもろの考え方、制度の変遷はございますが、一応現在のところ我が国といたしましては賞与と同じ扱いをし、ただ一定の配当を税額控除というもので調整をいたしておるというところではないかと思います。  またもう一つ御指摘の、果実があったらそれが含み益としてキャピタルゲインが発生する、しかし配当としてそれを払えば、その部分は減るわけでございます。その配当にまた課税になるわけではございますけれども、理論的に申し上げれば、配当を払えば、それは配当落ちとして株価はその分だけ下がるという理屈もまたございますので、その点につきましても法人税なり未実現のキャピタルゲイン、実現されたキャピタルゲイン、これらのものにつきましての課税をどうあるべきかということにつきましては、いろいろ御指摘のような御議論、あることはあるわけでございますが、現時点の我が国の法人税、個人所得税につきましては、個人段階では原則としては稼得された経済的利益、処分可能な利益は課税させていただくこととしつつ、一定の場合は二重課税の調整を必要な範囲におきまして行っておるというところに、一応今のところは理論的に決着をつけたことにいたしておるところでございます。御議論はいろいろあるところであることは、否定できないところでございます。
  31. 新井将敬

    新井(将)委員 非常によくわかります。ただ、大蔵的な考えで言いますと、例えば有取税は流通税だ、キャピタルゲインは譲渡所得税だ、これは違いますよと名目分類をされるわけですね。しかし局長、取られる側からすれば一緒なんですね。名目分類というのは役立つケースもあると思うのです。しかし、取られる側からすれば、昭和二十八年にまさにキャピタルゲインが原則課税から原則非課税になったときに、かわりに取りやすいために有取税をやりましょうということをちゃんと政府で答えられて、現在一兆三千億に上っております。また個人の割合は二八%ぐらいですよ、取引で。政調会長が法人は五五とおっしゃっておりましたけれども、もうちょっと大きいと思います、取引ベースでは。個人が三割以下ですね。そうすると、法人は法人税と有取税がかかってくる。キャピタルゲイン課税を例えば個人をねらい撃ちでやる。その場合理屈上の話、法人の有取税を外してしまうということになると、むしろ株式売買においては、今大蔵省がやっている安定的な個人株主をつくるというのとは逆に、個人への負担が、法人が今かぶっている有取税の負担まで個人のキャピタルゲイン課税から吸収しなければいけない。個人の資本市場への参加から吸収しなければいけない。これもまた行政としてはちょっと矛盾を生むものではないかなというふうに考えておりますが、いかがでしょうか。
  32. 水野勝

    ○水野政府委員 御指摘のとおり、昭和二十八年に株式の譲渡益課税が原則非課税とされたときに、有価証券の取引の背後にある担税力に着目して有価証券取引税をお願いした、そういう御説明がされておったようでございます。その時点におきましては、有価証券取引税、株式につきましては万分の十五でございました。その後万分の三十、万分の四十五、万分の五十五と逐次引き上げられてまいったわけでございまして、万分の十五といった水準におきましては、ただいま御指摘の法人、個人の問題、そういった問題等はそれほど大きな問題とはされておらなかったのではないかと思いますが、五十なり五十五まで参りますと、そうした点の問題点は確かにあるわけでございます。現時点におきましては、御指摘のように七割前後を占める法人につきましては有価証券取引税を課税させていただき、さらにそれのゲインにつきまして実現された部分は法人税をお願いしておるという形になっておることは確かでございます。  この点につきましては、先ほど大臣から申し述べましたように、果たしてこの有価証券譲渡益課税がどういう形、どういう方向で対処されることになるのか、それとの関連で有取税もどうなるのか、基本的には御指摘のように両者は非常に関連の深い税でございますが、その関連をどうするかは、この譲渡益課税をどのような方向で検討していくかということともまた結びつきが大きいところでございますので、現時点で必ずこれを両者一体として検討する、あるいは切り離して検討するという点もなかなか申し上げにくいところでございます。
  33. 新井将敬

    新井(将)委員 もちろんそういうことだと思いますが、ただ一つ、少女趣味、ひがみ趣味というあれじゃないのですけれども、このことに関してはやはり冷静に大人の議論、徴税方法、またキャピタルゲイン課税を取るために背番号制を入れるというのも主客がちょっと転倒した議論にも思いますし、あるいは背番号制を採用して課税ベースが広くなることによって所得税の水準が非常に落ちてくるならば、それはそれでむしろいいのじゃないか、アメリカ型だと思うのですけれども、キャピタルゲイン課税をかけても二八%の所得税率ですから。  そういう非常に幅広い問題でございますので。名目的な分類、流通税や譲渡所得税や、単に利子にかけるからキャピタルゲインという議論ではないなというところだけは局長と話が一致したのではないかなというふうに思いますが、ひとつこれからもそういう深い御検討をお願いしたいと思います。  時間がないので、もうちょっとやりたいのですけれども、次に進ませていただきます。  大臣、相続税について一つお聞きしたいのです。  これは東京、我々、委員長もそうなんですけれども、現在相続ということが実は大変な問題になっておりまして、地価高騰による相続難、特に昭和五十年以来相続税の改正がございませんで、相続税を払う人の数がこの十年間で三倍にも四倍にもふえてきておりまして、お金がある人が払うのはいいんですけれども、普通の大衆、零細と言ってはなんですけれども、普通の大衆課税にだんだんと、このままでは地価高騰によって移行しつつある気がしてなりません。そういう意味で、相続税の軽減につきましてどういうことをお考えになっておられるでしょうか、大臣、ちょっとお伺いしたいのですが。
  34. 宮澤喜一

    宮澤国務大臣 現在の相続税の基本的な枠組みが昭和五十年でございますかのものでございますから、実はかなり長い時間がたっておるわけで、その点だけから考えましても一度再検討すべきではないかということが言えると思うのでございますが、他方で非常に急激な地価の上昇が、殊に大都会、東京でございますが、においてこの一、二年ございました結果、小規模宅地の割引とかいろんな制度をお願いしておりますけれども、それでも先祖から住んでいたところを売り払わなければならないというような事態になりかねない。まあ、それも大邸宅なら別でございますが、そうでない住んでおられるところ、あるいは居住と業務と一緒にやっておるようなところ、どうもそこまで来てしまっていいかどうかということをやはり世間でも議論しておられますし、私どももいろいろ考えております。  したがいまして、やはり何かこれは、もう十何年もたっておることでもございますから、抜本改正の一環として考えていただくべき問題ではないだろうかということで、政府税制調査会でも検討していただいておりますし、私どもの党の方でもそういうお考えのもとに検討をしておられるように承知をいたしております。  ただ、これは抜本改正の一部、いわゆる所得、資産、消費といったような抜本改正の一部として主たる部分はとらえておりますものですから、その時期いかんによりまして、現に地価の上昇はかなり急速に進んでしまったものでございますから、相続というのはまた実際、常に毎日毎日起こっておることでありますので、抜本改正がかなり後におくれましたときに、現実に起こります事態をどういうふうにすればいいのかという問題は私ども気がついておる。気がついておるのはおるのでございますけれども、どういうふうにそこを処理いたしましたらいいか、まだきちっと最終的に申し上げるまでには至っておりません。
  35. 新井将敬

    新井(将)委員 最後にさせていただきます。  五十八年に、事業承継税制というそれまでの考え方から、二百平米以下の居住用の資産や宅地あるいは事業用資産について、それぞれ三割あるいは四割を軽減していただけるというふうに決まったわけでありますけれども、ここに山中税調会長おられますが、ちょうど十年前に、農業については親の事業を子供が継いでいく場合においては、その農地等は土地の評価益に対しての相続税というものは、簡単な言い方をさせていただきますと事実上かからないという形になっておると思います。  そのときの相続のいろんな御議論の中で、やはり親の商売を子供が継ぐとか親と一緒に子供が住んでいくということについて、私、昭和二十三年生まれですけれども、戦後の憲法やあるいは相続税法また民法を含めて、家を継ぐ、親の商売を継ぐということに対して、何らの特権と言うとおかしい言い方になりますけれども、その子に対する特権がない、責任に伴う得るものがないというふうに実はなってきたと思うのです。その中で十年前に農地だけは、親の商売を子供が継ぐということに対して明確な姿勢を示していると思います。  しかし、今大臣言われましたように、この東京においてもやはり地域社会というものは非常に重要でございまして、この地域社会が壊れないようにするためには親の商売を子供が継ぐ、その子に対して憲法と民法が果たすことができなければ、そういう日本的な家を継承、事業継承、これを税法で持ち込むしか現実的には手段がないんじゃないか、そんなふうに我々考えておりますので、この事業を、農業のように事業を承継していくそのときの税制、そういうものについて最後に御意見を伺わせていただければ大変幸いです。
  36. 宮澤喜一

    宮澤国務大臣 いわゆる中小企業、商工業の場合について承継税制というものが考えられた経緯は存じております。が、強いて申しますなら、農業の場合には、これは農業というものの性格上、土地を細分してしまうと農業が成り立たぬということがございまして、そういう意味で商工業とやや違う扱いになっておるのだというふうに聞いておりますが、しかし、中小企業についても小規模の承継税制というものはございまして、先ほどのように三割とか四割とかいういわば割り引きをしている、それは、新井委員の言われましたようなことを背景にして現に行われていることではないかというふうに私は理解をいたしております。
  37. 新井将敬

    新井(将)委員 どうもありがとうございました。
  38. 越智通雄

    越智委員長 次に、堀昌雄君。
  39. 堀昌雄

    ○堀委員 きょうは、この一般質問に際して自由民主党の新井さんが大変いい質問をなさいました。私は当大蔵委員会昭和三十五年一月からおるわけでありますけれども、どうも自由民主党の姿勢というのは、法案を出したら少しでも早く成立させたい、それには与党の者が質問するのは時間のむだだ、だから与党は質問をさせないで、ともかく野党だけに質問をさせて早く上げようというのが自由民主党の過去一貫した考えでございました。私は、今ここにおられる山中貞則さんと話をいたしまして、ちょうど藤井勝志さんたちが当選をされてこられたときに、ひとつ与党もやってくださいといってお話をしたのですが、藤井先生は県会から来られたものですから、私どもの予測に反して二時間半ぐらい延々とおやりになったものですから、これでまたどうも与党質問というものができないということになってしまいました。しかし、私はかねてから、国権の最高機関である国会の中で論議をするのに、野党だけが論議をして与党が論議をしないというのは国権の最高機関たるにふさわしくない、こういう考えでございますので、きょう新井さんの、大変よく勉強をされて、もともと大蔵省でございますからベースはできているのでありますけれども、大変適切な問題を提起されたことについて敬意を表し、どうか自由民主党の皆さんもこれから御勉強をしてここでしっかり質問をしていただく、私どもも拝聴したい、こう思っておりますので、委員長、どうぞよろしく御配慮をいただきたいと思います。  その次に、本日、大蔵大臣所信表明をなさいました。私は、再開国会でこれが最初の委員会でございますが、これを主張してまいりましたのは、私がもう十数年前に、予算委員会が始まると実は大蔵委員会には大蔵大臣はなかなか出席をしていただけない。しかし、議会の歴史を振り返ってみますと、議会というのは歳入の問題からイギリスで始まっているというのが議会の歴史でありますが、日本ではどういうわけか、歳出委員会の方が重視をされて歳入委員会が軽視をされておる。どうしても、まず最初に当委員会歳入その他に関する論議をして、その後に予算委員会をやってもらいたいという慣例を、実は山中さんその他の理事の皆さんと御相談をしてやっていただけるようになったのでございまして、そういう意味で、きょう初めてでございますが、ここで大蔵大臣がこういうふうに先ほどお話しになりました。税制のところでありますけれども、「国民各界各層の御議論等を拝聴しつつ、国民の納得が得られるような税制改革関連法案を取りまとめるよう、引き続き最大限努力を傾けてまいる所存であります。」この「国民の納得が得られる」という言葉は確かにそのとおりでありますけれども、これを強調しますと、それなら国民の意思を選挙で問えということになり得る問題の提起ではないか。  昨年の本会議及び委員会で、与野党が一致してこれでやろう、こういうことになるのが本来正しい税制のあり方であって、今ずっと税制の進め方を拝見しておりますと、まず政府税制調査会が何か最初にスタートをしていろいろおやりになる、それを追って今度は自民党税調がおやりになる、国会は最後にそこて固まってきたものをお出しになる。これでは野党が納得をする税制にはならない、こういうふうな考えで既に昨年の税制改革の中で何回か当委員会で私は申し上げておりますから、宮澤大蔵大臣もよく御承知をいただいておることだと思うのであります。ですから私は、政府税調がおやりになるのも結構であります、自民党税調がおやりになるのも結構でありますが、これが国会も同じように並行して、国民の意見を聞く場所が国会にあるわけでありますから、参考人を呼んで国会の場で私たち野党を含めた全部の議員が国民の意見を、各階層の意見を、例えばアメリカの税制改正、この前も下院における三十回の公聴会ということを申し上げておりますけれども、そういう経過を経て与野党が合意できない限り、税というものを多数党が押し切るなどということは、ここにお書きになった国民の納得は得られないわけでありますので、そういう問題が非常に重要ではないかということが一つ。  それと、新聞を拝見しておりますと、大臣は大変慎重な御発言をしていただいておるようでありますけれども、ともかくもこの通常国会に法案を提出をして臨時国会で上げるんだとか、ともかく入り口もきちんと決める、出口もきちんと決める、どんな法案が、税法ができるかもわからないのに入り口、出口を決めて押し込んでくるというのなら、これは皆さん、国民も反対するでありましょうし、野党の私どもも反対であります。問題は、その中身がどうかということを、少なくともこの国権の最高機関の国会において与野党お互いが国民の意思を聞きながら意見を出し合って、そうしてそこで一致点が見られたときに、国民の本当に納得した税制というものになるんじゃないのか。  ですから、二つの問題ですね。これからの問題の進め方と、その入り口と出口を決めてやるという話は、ほかの方がおっしゃるのはいいのですが、少なくとも大蔵省及び大蔵大臣財政に関係する部分の方はそういうところはひとつ明確にしていただいて、みんなが納得できたときにひとつやりましょうということにしていただかないと、このいろいろな関係の法案というのは私は無関係でございません。昭和六十年二月の予算委員会で、私は公式にこれらの問題について提案をしている提案者の一人でありますから、それだけに日本の将来の財政考えるとこの問題の重要性というものを感じておりますので、どうかひとつそういう角度から宮澤大蔵大臣が賢明なる御判断と対応をしていただきたいと思いますが、いかがでございましょうか。
  40. 宮澤喜一

    宮澤国務大臣 その点は、昨年も堀委員からるる承りました。アメリカにおける議会の運営我が国国会運営とは、いろいろでき方から違っておるところもあろうとは存じますけれども、しかし、国民各層に御議論をしていただいてわかっていただくという意味で、民意を一番直接に代表しておられるのは国会であることは間違いのないことでございます。殊に、この問題は大蔵委員会の御所掌の事項であって、委員各位におかれては与野党問わず、長い経験と学識を有せられる方が当然のことながらたくさんおいでになるわけでございますから、そこの御議論というものは極めて大切であるということはもう申すまでもないことでございます。したがいまして、この委員会において各党間でいろいろ御議論があって、そうして少なくとも問題の所在等々はお互いにわかり合っていただいて、その結果よし悪しということを決めていただく、この委員会で御議論いただかずにそれで民意を聞きましたということになるわけにはまいらない、そこは私、はっきりそう思っております。  それから、どの時期に御提案を申し上げ、お願いをするといったようなことは、事は将来に向かって非常に大事な問題でございますし、じんぜんと日を送っていいとは思っておりませんものの、昨年あのような経緯がございましたことは、政府といたしましても反省をいたしますところが多々ございます。昨年の反省の上に立って、今年は誤りなくこの問題に当たらなければならないと思うにつきましては、いたずらに時間を急いだり日を限ったりすることは、これは昨年の反省に基づくゆえんではないと思っておりますものですから、そういう間違いをしたくない。十分に御議論をいただいた上で、政府としてはもとより御賛同いただきたいという案を提出するつもりでございますけれども、少なくとも十分御議論をいただかなければならないということ、昨年のような誤りを繰り返したくないということは強く思っております。
  41. 堀昌雄

    ○堀委員 もう一つは、税制協議会という会が設けられて、いろいろと経過がございました。現在はそれが開かれておりませんが、この税制協議会というのは、いろいろな経過がございましたからそれを今からとやかく言うのでありませんが、実は共産党がこの税制協議会には入っておられないわけであります。しかし、ここに書いてありますように、「国民各界各層の御議論等を拝聴しつつ、国民の納得が得られるような税制改革関連法案」ということになりますと、やはりこの国会の場で共産党の皆さんを含めて、要するにすべての国民を代表しておる政党が参加をした中で議論ができるのでなければフェアな議論にならない、こう私は考えております。自民党の方では、税制協議会についていろいろ御意見があるのは新聞で拝見しておりますけれども、私はあの問題はもうほどほどにしていただいて、もし論議をするならば公の場で、共産党の皆さん初め全党が参加しておるところで論議を進めることが、国民の納得を得られる税法をまとめる手だてではないだろうか、こう考えておりますけれども、大蔵大臣いかがでございましょうか。
  42. 宮澤喜一

    宮澤国務大臣 この問題は、昨年あのような経緯で衆議院議長のごあっせんということで各党間のお話し合いがあって、あの場が設けられてまいりました経緯がございますので、政府としてこうあるべきである、こうあるべきではないということを大変に申し上げにくいということは御了解をいただきたいと思います。  それはそれといたしまして、私どもとしては、当委員会にはもちろん党の皆さんがお出になっていらっしゃいますので、各党間の十分な御議論がなければならないということ自身は、これはもう疑いのないところだと思っています。
  43. 堀昌雄

    ○堀委員 以上でちょっと歳入に関する話の原則のところを終わりまして、二つ目は、実は私昨年も貨幣法という今日にそぐわない法律案について、大蔵省の皆さんに協力をいただき、日本銀行にも協力をいただいて今日的な法律に改めることにいたしましたが、実は戦後四十二年たっておりまして、政治経済の情勢はもう一変しておるにもかかわらず、この平和の時代に何とも理解のしがたい法案というのがあるわけでございます。それは、本日三重野日銀副総裁においでをいただいたのでありますけれども、この日本銀行法という法律でございます。戦争中の昭和十七年の法律でありますから、私ども今読んでみまして何とも納得のしがたいものがありますし、ここの中に使われております用語は、今日もう存在しない用語が法律としてたくさん実は使用されておるということであります。私は、さっきも申し上げましたように長年この委員会におりますが、ひとつ私の在職中にこういうちょっと常識的でない古い法律は、法律そのものを全部変えようという気持ちはありませんけれども、今日から見ておかしくない法律にしておかなければ、私はこれは立法府の権威を問われても当然だという気持ちがしてなりませんので、きょうはまず最初に日本銀行法の改正について論議をさせていただきたいと思います。  そこで三重野参考人に、法律はこれは議会がつくりますし原案は大蔵省がつくるのでありますが、当事者である日本銀行として、現行の法律案の中で今申し上げたように現状にそぐわない部分というのがお気づきの点があろうと思いますので、まず三重野参考人からひとつお答えをいただきたい。
  44. 三重野康

    三重野参考人 お答えします。  確かに日本銀行法は、昭和十七年の戦時経済下につくられた片仮名の法律でございますので、表現等において先生の御指摘どおりなかなか現状にそぐわない点があると思います。例えば第一条、第二条の例を挙げますと、第一条でございますが「国家経済総力ノ適切ナル発揮ヲ図ル」とか、あるいは第二条でございますが「専ラ国家目的ノ達成ヲ使命トシテ」とか、そういう文言がございまして、いずれも戦争当時の雰囲気を残している感じがいたします。  このほか、当時の法体系を反映いたしまして、勅令をもって定めるという文言が第五条、七条、八条等、随所に用いられておりますし、それから当時中央銀行機能の一部を営んでおりました朝鮮銀行とか台湾銀行、そういう銀行の発行する兌換銀行券に関する規定などもまだそのままになっておりまして、その点は確かに先生の御指摘のとおりだというふうに考えております。
  45. 堀昌雄

    ○堀委員 私は、宮澤大蔵大臣とは長い政治生活を通じて非常に物の考え方に共通部分が多いのでありますが、その一つは、大臣は非常に合理主義をたっとばれる、合理性をたっとばれるということでございますね。もう一つは、自民党の中で数少ない憲法を非常に重視をされる方だということも、私ども高く評価をしておるわけであります。そうしますと、現行憲法から見まして、今、副総裁がお話しになったようなことが今日このままあるというのはいかようにもどうも、私だけでなくここにいらっしゃる皆さんも同感だと思うのでございますが、大臣、これは私は、この今の日本銀行法を平仮名にしてこの前の昭和三十五年の金制報告のようなことをしてくださいということを言う気は毛頭ないのでございます。現状でこの法律でちゃんと日本銀行うまくいっているわけでありますが、それにしてもこの法律の文言はいかようにもどうもこのままにしておけない、こういう感じがいたしまして、そういう点での大臣のお考えをまず承りたいと思います。
  46. 宮澤喜一

    宮澤国務大臣 今、日銀副総裁が言われましたように、第一条、第二条、確かに戦後に生まれられた若い方からいえば、これは大変に不思議なことが書いてあるという感じがされるでございましょう。それはわかっております。が、現実の問題として、それならば日本銀行が、今の我が国が果たさなければならない国家的な役割あるいは国民との関連において大変にぎくしゃくした環境におられるかといえば、全くそのようには思えない、立派に国民的な期待を受けて仕事をしていらっしゃると思います。  それでございますから、まあ憲法のお話もありまして、私は憲法をかなりの部分英米法的な要素を持っておるというふうに考えておるものでございますから、そういう意味では大陸法的に字句に非常にこだわって、この法律を憲法下において読んだり適用したりしなければならないということではあるまい、いわばそのときどきの、お互いが常識的に考えて国家的な要請は何か、国民的な要請は何かということで日本銀行が今日まで運営しておられる、そのことはまさにそういうふうにこの法律を解釈してやってこられたのであろうと思うものでございますから、当面これはもうすぐにどうかしなければならないというふうに私は必ずしも考えてはおりません。  しかし、しょせんはやはり今日的なものにした方がいいのだろうとおっしゃれば、それはもうそうでございますというふうに申し上げるべきでございましょう。ただその場合に、恐らく大変にいろいろな問題が起こってまいりましょうから、そういう企ては何度か試みられたこともあるわけでございますので、それならばどういうふうにしたらいいかということはそれとして慎重に検討すべきものであろうと思います。
  47. 堀昌雄

    ○堀委員 私は、この法律を書きかえようと言っているのではないのです。この法律を流れている流れは原則このままでいい。ただいかようにも、勅令なんというものがないのに勅令という言葉が入っている法律を我々立法府の者がそのままにほうっておくということは、立法府の権威にかかわるのです。ですから、政府の側として御関心が余りなければ、私は与党の皆さんと御相談をして、何も今の法律を基本的に変えようというのではないのですから、おかしいところだけ変えるのには何も政府でなくても、委員の皆さんの協議が調えばいいのではないかと私は思うのです。  もう一つ、副総裁はおっしゃいませんでしたけれども、私は、この問題の中でちょっと問題があると思っておりますのは、これはちょっと宙でお話をしたのではわかりませんので、きょう皆さんに日本銀行法を委員長の御了承をいただいて配らしていただいておるのでありますが、この日本銀行法というのは昭和十七年二月二十四日の法律でありますけれども、戦後に「第一章ノ二」というところが新たにつけ加えられておる部分でございます。「第一章ノ二 政策委員会 任務 第十三条ノ二 日本銀行ニ政策委員会ヲ置ク政策委員会ハ」云々というふうに、これはアメリカの今のFRBのボードの思想が実はここに導入をされたわけでありまして、ちょっと読んでみますと、これに流れております法律の流れとこのボードの考えというのは、必ずしも同じ流れの中にあるわけではないというふうに私は認識をしております。しかし、それも私はそこを変えようという気はないのですが、ぜひ変えてほしいと思うのは、今の政策委員会の十三条ノ四でありますけれども、   政策委員会委員七人ヲ以テ組織ス  ②委員ハ左ニ掲グル者ヲ以テ之ニ充ツ   一 日本銀行総裁 結構でございます。この次からなんですね。   二 大蔵省ヲ代表スル者一人   三 経済企画庁ヲ代表スル者一人   四 金融業ニ関シ優レタル経験ト識見ヲ有スル者二人     内一人ハ地方銀行ニ関シ経験ト識見ヲ有スル者トシ他ノ一人ハ大都市銀行ニ関シ経験ト識見ヲ有スル者トス   五 商業及工業ニ関シ優レタル経験ト識見ヲ有スル者一人   六 農業ニ関シ優レタル経験ト識見ヲ有スル者一人  ③前項第四号乃至第六号ニ掲グル委員(以下任命委員ト称ス)ハ両議院ノ同意ヲ得テ内閣ニ於テ之ヲ命ズ こういうふうになっているわけであります。  私は、人数も今のままでいいし、日本銀行総裁が入られるのもいいのですが、ボードの中に政府を代表する者が入っているボードというのが一体アメリカやその他の国にあるのだろうか。これはどう考えてもおかしい。  この法律をずっと読んでみますと、日本銀行監理官という制度がここにありますが、私も長年大蔵委員会にいますけれども、大蔵省異動というかポストのあれを見ても、どこにも日本銀行監理官というものはないのですね。そこで、私は大蔵省に、日本銀行監理官という言葉はあるが一体だれがやっているのかと言いましたら、銀行局長日本銀行監理官を兼ねております、こういうことでございます。平澤銀行局長、そうですか。
  48. 平澤貞昭

    ○平澤政府委員 おっしゃるとおりでございます。
  49. 堀昌雄

    ○堀委員 日本銀行監理官を銀行局長が兼ねていて、さらにボードの中に大蔵省を代表する者が入っている。経企庁もそうでありますけれども、これはこのボードという概念から見ても、どうも余り適切でない。  そこで、人数はいいが、もう表現を学識経験者ということにして、一々こんな大都市銀行だとか、農業を代表する者なんというのは、私に言わせますと、現在昭和六十年度の納税者のうちで納税率は、給与所得者が九二%、農業所得者は〇・七%、そして農業以外の事業所得者は七・三%でありますからね。全納税者の中の〇・七%を代表する者が金融政策中心である日本銀行のボードに入らなければならない、これはどう考えても合理的でない、こういう考えでございます。ですから、ここはもう日本銀行総裁を置いて、あとは学識経験者、それは政府国会の承認を得て任命すればいいのでありまして、ここらあたりは変えたらいいと思うのですね。  もう一つ、私はちょっと気になるのがあるのです。それは、私は昭和四十年の国債発行のときに大蔵委員会で、当時の宇佐美日銀総裁もお越しいただいて議論をしたことがあるのでありますけれども、第二十二条の二項でございます。第二十二条「日本銀行政府ニ対シ担保ヲ徴セズシテ貸付ヲ為スコトヲ得 ②日本銀行国債ノ応募又ハ引受ヲ為スコトヲ得」。大体、日銀引き受けというのは財政法としては原則としてやらない、こうなっておるのですが、受ける方は今でも「日本銀行国債ノ応募又ハ引受ヲ為スコトヲ得」こう書いてあるわけです。そこで、これはやはり財政法五条と同じ形のものにしておかなければいけないのではないだろうか。財政法第五条は、「すべて、公債発行については、日本銀行にこれを引き受けさせ、又、借入金の借入については、日本銀行からこれを借り入れてはならない。但し、特別の事由がある場合において、国会の議決を経た金額の範囲内では、この限りでない。」これを日本銀行法にも書くべきではないのか。財政法はこう書いていて日本銀行法は幾らでも引き受けもできるなどというのは、やはり合理性に欠ける。こんなふうに考えますのでそういう点だけ、さっきの勅令とか朝鮮銀行、台湾銀行とか……。  ですから、これを平仮名の法律に直す必要も何もないのです。片仮名の法律のままで、問題になっている第一条、第二条、今の政策委員の者、あるいは第二十二条二項というようなところを直せば、さっき大臣がおっしゃったように、この法律で私は日本銀行は何ら変化することなく、そして私ども国会としてはこのおかしな、要するに実在しないようなものを法律に書いたものをいつまでもほったらかしておるという責任を免れることになるのではないか、こう思うのでありますが、大蔵大臣、いかがでございましょうか。
  50. 宮澤喜一

    宮澤国務大臣 にわかのお尋ね、どう申し上げていいか迷いますけれども、実は今のような問題の御提起は、恐らくみんなまことにそのとおりの御提起に違いないのでございますが、さてその問題を今度は政府側として取り上げるといたしますと、どうせそうなればもうあちこちおかしい。たくさんございますね。たくさんおかしいので、これは全部見直すことにきっとなっていくのだろうと思うのでございます。そういたしますと、またそこは大変長い複雑な議論を呼んで、なかなか現実にそれではこういう結論にいこうということになりにくくなるという現実があるのではないだろうか。これは私、十分お答えができないのですけれども、そういうことをちょっと考えております。
  51. 堀昌雄

    ○堀委員 大臣がそうおっしゃっているのをそれ以上あれしませんが、自民党の皆さんはこれでいいと思いますか、議員として。思わないでしょう、皆さんも。みんなで話し合って国民の納得するような、形式的にですよ、内容はこれでいいと思っているのです。それをさわると、今大臣がおっしゃったように昭和三十五年の日本銀行の金制答申と同じようなことで、A案だB案だというようにいろいろなことが起きます。私は、昭和三十五年の一月からこの委員会にいましたから、この三十五年九月のA案、B案をよく承知しているわけであります。そういうことで、ひとつ金融証券委員会というのがあるのですから、そこで皆さんとお話し合いをして、越智委員長のもとに日本銀行法の議員立法による改正ができれば、私は大変幸せだと考えております。  続いて、ちょっと今度は金融問題について三重野副総裁にお伺いいたします。  実はこの前、竹下総理がアメリカにおいでになってレーガン大統領との間で、為替安定のために金利を低目にしようではないかというお話が、新聞で拝見すると合意をされておるようであります。そこで、金利を低目にという問題は、これは長期金利は日本銀行がどうこうなすってもそう簡単にいかない問題でありますが、短期金利というのは、日本銀行の政策のいろいろな対応によって調整ができると私は理解をいたしております。そういうふうに認識をしてよろしゅうございましょうか、副総裁。
  52. 三重野康

    三重野参考人 そのとおりだと思います。
  53. 堀昌雄

    ○堀委員 そこで、まだ金利という問題を表面金利で見るだけでは私は問題があると思うのでありまして、きょうの夕刊を見ますと、昨年の全国消費者物価は物価上昇〇・一%ということのようでございます、ちょっと見てきただけですから正確ではないかもしれませんが。〇・一%の物価上昇となると、今日本の短期金利の標準というのは、三カ月物CDの金利というのが一般的な指標ではないかと私は理解しておりますが、副総裁、いかがでございましょうか。
  54. 三重野康

    三重野参考人 代表的というといろいろとり方があると思いますが、今お挙げになった金利もその一つだと思います。
  55. 堀昌雄

    ○堀委員 これは今たしか四・三%程度のように私は思いますが、いかがでございましょう。これはいろいろな時期がありますから、きのうとかおとといとか、いつでもよろしゅうございますが……。
  56. 三重野康

    三重野参考人 大体その見当でございます。  それから、代表的金利にしばしば二カ月物の手形も持ち出されておりますが、これは今三・八%程度でございます。
  57. 堀昌雄

    ○堀委員 そうしますと、〇・一というのは消費者物価でありますが、どうも政府予算関係のデフレーターは一%ということになっているようでありますから、そうすると、今のCDで見ると三・三%くらいが実質金利になる。手形の場合ですと、今三・八とおっしゃいましたから二・八くらいになる、こういうことだと思うのですが、今アメリカの実質金利と西ドイツの短期の実質金利というのはどんなものでございましょうか。
  58. 三重野康

    三重野参考人 これも何をとるかによりますけれども、例えば米国の場合はTBの三カ月物がいいのではないかと思いますが、これは五・七%程度でございます。西独はコールレートの三カ月物がいいのではないかと思いますが、これは三・四%程度でございます。
  59. 堀昌雄

    ○堀委員 いや、デフレーターとの間の実質金利を伺っているのです。
  60. 三重野康

    三重野参考人 今先生のおっしゃいました実質金利というのは、何をとるかによりますけれども、一般的な定義としましては、その金利から予想インフレ率を引いたものでございますが、予想インフレ率を何にとるかはなかなか難しいものですから、例えば今先生がおっしゃるのに即して言えば、短期の市場金利からCPIの一番最近の率を引いたもので申し上げますと、日本はさっき申しましたように手形の二カ月物をとっておりますが、日本は三・〇一%、アメリカは一・二三%、イギリスも調べてございますのでついでに申し上げますが、イギリスは四・六%、西独は二・四%ということに相なっております。
  61. 堀昌雄

    ○堀委員 やはり今この金利の問題で重要なのは、イギリスももちろんさることながらでございますけれども、しかしアメリカと日本、それから日本とドイツというのは非常に関係のある主要国でございますので、ちょっとこれで見ますと、アメリカが一・二三%、ドイツが二・四%に比べて日本の三・〇一%というのは、竹下総理がレーガン大統領と低目にやるとおっしゃったのにしては少し高いんじゃないかな、もう少し低目でもいいんじゃないかな。確かに日本銀行は、インフレについていろいろ御心配があることは承知しておりますし、マネーサプライが昨年に比べてふえておることも承知しておりますけれども、今の日本の状態というのは、さっき消費者物価が○・一%というようなこともありますが、最近の状態というのは、一時ちょっと建設資材が上がりましたけれども、今やNICSその他からさっと輸入して調整ができる。いろいろな点で、私は、今低目に処理をされても、マネーサプライは今の日本のような円高でありますから、どうしても少しはふえるかもしれませんけれども、そんなにインフレ懸念をしなくても、もう少し低目誘導は可能ではないかな、こういうふうに思うのでありますが、副総裁、いかがでありましょう。
  62. 三重野康

    三重野参考人 先生今、短期市場金利の実質金利をお尋ねでございましたのでお答えいたしましたが、短期金利という場合、例えば経済界に与える影響等を考えますと、短期の貸出金利、それからこれは恐らく卸売物価でございましょう、卸売物価を差し引いたこういう短期の貸出金利の実質金利というものを比べてみますと、日本の場合は四・四%程度、米国の場合は六・五%程度、イギリスは四・七%、西独は六・三%。これは何にとるかによって、実質金利が低いあるいは高いと一概にはなかなか言えないように思います。  したがって私どもとしましては、名目金利をそのときの景気、マネーサプライあるいは為替その他の状態と照らし合わせて、高い低いということを考えるべきだというふうに考えておりますが、その場合日本は、これも先生がもう既に御指摘になりましたとおりでございまして、ただ景気は、昨年の財政金融政策もあずかって完全に着実な上昇過程に入っていると思います。片一方、マネーサプライは、先生の御指摘のとおり今や二けたの非常に大きいもの。物価は、夏ごろから一時ちょっと危ないなという感じはしましたけれども、昨年十月の株の世界的な暴落、その後のドル安の進行で、今のところはそれほど、将来は別にしまして落ちついた動きをしておると思いますが、ただ景気がこれだけよくなってきて、マネーサプライが二けたもあるということを考えますと、やはり金融政策は慎重にすべきではないか、こういうふうに私どもとしては考えております。
  63. 堀昌雄

    ○堀委員 私も、むやみに下げればいいということを言っているのではないのでありますが、やはり今や金融政策と為替の問題は不可分の問題だと思うのですね。ですから、私は当委員会で何回か過去にも言ってきたのですけれども、一つの問題は公定歩合の操作の問題ですが、どうも日本では、よそもそうかもしれませんが、公定歩合というのは伝家の宝刀でして、めったに抜かないんだという話ですが、そういう発想は、こういうふうに為替もフロートしておる、金利もどんどん自由化してきておるという中で、指標になるものは動かさぬぞというこの発想は、今の情勢の中では少し考え直したらどうだろうかというのが私の今の気持ちであります。  というのは、例えばこの前は、西ドイツと日本の間には少なくとも〇・五の差がございましたね。いろいろ問題があって、私は、世界の中央銀行の中でドイツのブンデスバンクというのは最強の中央銀行だ、こう思っておるのですが、その最強の中央銀行もとうとう二・五まで下げてきた。そうすると、これまでは〇・五の差があったのが今同じになっておる。私は、欧州のEC議員会議というところへ昨年の十一月に行きまして、西ドイツの人やイギリスの人やいろいろなECの関係者と話をしていて、私は、この際、日本は大変円高になっているので○・二五%ぐらい公定歩合を下げてもいいんじゃないか、しかし、もしおかしかったら――下げていればすぐ上げられるのですが、じっと長く抑えていますと、ちょっと上げたいなと思ってきてもなかなか上げにくいという問題もあるのじゃないかという話をそこにいた皆さんとしていて、それにはまずドイツが金利を下げなければ世界はうまくいかないよということをドイツのECの代表の人と話をしたことがあるのでございますが、最近、自民党政調会長渡辺さんも私と同じようなお考えで、中身はどうかわかりません、しかし、公定歩合をもう少し下げてもいいのじゃないかというようなお話があるんですね。  私は、今ここで公定歩合を下げたらいいと言っているのじゃない。要するに公定歩合操作というのは、もう自由に機動的に下げて、うまくないようならまた戻すとか、もっとフレキシブルにやる時代がもう来ているのではないだろうか。新聞を見ておりますと短期プライムの話が出ておりますけれども、これはやはり銀行側とすれば、コストに見合う短期プライムレートでなければ逆ざやになって銀行はもちませんから、この短期プライムも金利の自由化部分がふえるにつれてもっと動かした方がいいのではないか。全体として、今そういう意味ではデレギュレーションですから、自由化をということでやってきたわけですが、そういう方向に流れがあるものですから。  私は鈴木総理のときに、閣僚やその他が公定歩合で発言するのはけしからぬ、こう言っていました。政党が言われることは、これは関係ありません。しかし、閣僚が公定歩合を下げるべきだとか上げるべきだと言うのは適当でないので、鈴木総理に、以後そういう閣僚の発言は慎むようにしてくださいと言いました。鈴木総理はそれをきちっと守っていただいたわけでありますが、だから私も下げなさいとか上げなさいとか言っているのじゃないのですが、公定歩合の操作というのは、客観的な条件に合わせてもっとフレキシブルにやってもいい時代に来ているのではないかという感じがするのですが、副総裁、いかがでございますか。
  64. 三重野康

    三重野参考人 先生が非常に大事なことをたくさんおっしゃいましたので、一つ一つお答え申し上げるわけですが、まず、公定歩合を含めて金利を弾力的に上げ下げしたらどうか、それはおっしゃるとおりだと思います。事実、もちろんこれも釈迦に説法ではございますけれども、公定歩合を動かす場合には景気、それから物価、マネーサプライとか為替とか、そういったものを見て総合的に判断するわけでございますが、特に最近のように自由化国際化が進んでまいりますと、外との関係というものも一つの大きな重要なファクターになってきております。ですからこそ、六十年九月のいわゆるプラザ合意の後五回にわたって日本銀行が公定歩合を下げたのも、その線に沿ってだというふうに私どもは思っております。これからも弾力的にやるということについては、ひとつ努めてまいりたいと思います。  それから、西独のことをちょっとお触れになりましたので、西独ももちろん私どもと同じように総合的に判断して下げたのだと思いますが、先生御存じのように西独は非常に景気が悪い。今はまだ実質成長率も一・五%くらいでございますので、やはりある意味でそういったことからも下げなければならない一つの要素があったと思いますが、日本の方は今恐らく内需は年率五%程度増加しておりますから、そういう意味では景気が西独とは完全に違う、しかもマネーサプライが二けただというようなことから、あのときには西独に追随してはいけないというふうに私どもは判断したわけでございます。  それから、短期プライムのこともお触れになりましたけれども、実は昭和五十二年三月に、森永総裁の当時でございますが、それまでは日本銀行が公定歩合を上げ下げしますと市中の方をお呼びしまして、公定歩合と同幅短期プライムを動かしてくれということを要請していたわけでございますが、自由化がもうぼつぼつ始まりましたので、五十二年の三月以降は、公定歩合の上げ下げの趣旨は説明しますけれども、プライムレートはそういう趣旨を踏まえて御自分でお決めください、そういうふうに毎回申し上げているのです。ところが、事実上はまだくっついて上げ下げしているのは先生御案内のとおりでございます。  ただ、自由化が一層進んでまいりますと、例えば都銀は、市場金利で調達しているものがごく最近で四四%ぐらいでしょう。まだ地銀その他より低いです。四四%、四割強というものを市場金利で調達しているわけですから、今後短期プライムを決めるのに、公定歩合にぶら下がっているのではなくて市場金利と連動するようなことを考えるということは、方向としては当然の成り行きではないかと思います。総裁が、ごく最近記者会見でその点に触れたのもそういうことではないかと思いますし、先生のおっしゃるようにだんだんとそういう方向で進んでいくのではないかというふうに考えております。
  65. 堀昌雄

    ○堀委員 きょうはほかにもう一つやりたい問題がございますので、副総裁、どうもありがとうございました。  最後に、私どもは、大蔵省の皆さんとも日本銀行の皆さんとも御意見を十分に聞きながら、ひとつ自民党や各党の皆さんと協議をして、この前近代的、不合理な日本銀行法の改正をぜひ議員立法でやりたいと思いますが、そういう点でいろいろと皆さんの知恵をかしていただいて、こういうどうもアナクロニズムだけは改めたいと思っておりますので、越智委員長にもひとつ御配慮をいただきたいと思います。  最後に、実は大臣がこの中でお触れになっていることでありますけれども、   金融資本市場自由化国際化につきましては、昨年六月に「金融資本市場自由化国際化に関する当面の展望」を発表し、その後、その方向に沿って、各般の措置が講じられてきているところであります。   さらに、先物市場整備拡充につきましては、証券先物市場の一層の整備金融先物市場の創設及び海外金融先物取引の一層の自由化を進めていく予定であります。   今後とも、我が国金融資本市場内外に対して十分な貢献を果たし得るよう、一層の自由化国際化を進めてまいりたいと考えております。 このように大臣、実はきょうごあいさつをいただいたわけであります。  そうして、実はこの間の二十五日の本会議の演説の中で、竹下総理はこういうふうに言っておられます。   地価上昇の原因の一つは、東京への人口や諸機能の一極集中であります。政府としては、第四次全国総合開発計画の着実な推進等を通じ、都市・産業機能の地方への分散により、東京への過剰な依存からの脱却を図るよう努めてまいります。   また、この一環として、政府機関等の地方移転を推進していくこととしており、そのため、今般、移転方針について、決定を行ったところであります。 それからちょっと先へ行きまして、   第四次全国総合開発計画は、地域の創意と工夫を基軸とした地域づくりを基本とし、そのための基盤となる交通、情報通信体系の整備と交流促進のためのソフト面の施策の拡充を内容とする交流ネットワーク構想の推進により、多極分散型の国土の形成を図ることとしております。 こういうふうに総理はおっしゃっておりますね。  実は、先ほどの金融先物問題と今のこの総理の御発言とを重ねてみますと、既に大阪証券取引所が株先五〇をやっておりまして、東京証券取引所は国債の先物をやっております。この間、大蔵省として銀行局、証券局、国際金融局の合意になった一応の先物に関する構想の発表がございました。私は、当面あの構想に沿って、この通常国会大臣も法案を出したい、こうおっしゃっておりますので、法案が出されてくるのだと思うのであります。  実は私、昨年の十月十日からワシントンへ参りまして、その後ニューヨークに参りまして、さらに、ブラックマンデーの日はニューヨークにおりましたけれども、その二日後にシカゴへ参りまして、そうしてシカゴ・マーカンタイルあるいはボード・オブ・トレードあるいはオプション取引所を詳しく視察をしてまいりました。そうして感じたことなのでありますけれども、やはり日本も先物の取引というものは必要だ。それがスペキュレーションかヘッジかというような議論はもう幾らやっても切りのない問題ですが、それはそれに参加する方たちのビヘービアの問題であります。ですから私は、市場そのものには、こういうふうにやったらこれはヘッジであって、こうやったらスペキュレーションだなんということはないわけでありますから、そういう点で私も、この国会に先物の法案が出されることについては大変結構だと思うのでありますが、あの考え方からいきますと、どうも東京の場合には東京の証券取引所で証券関係のものをおやりになるようで、金融関係はどこかに金融関係の先物取引所をおつくりになるということになるのだろうと私は見ているのです。  そこで、今の東京集中型という総理のお話。アメリカで見ますと、株式現物とその他の金融関係というのはニューヨークに集中をしております。ですから一極集中になっているのですけれども、ところが先物オプションはシカゴにあるわけでございますね。これは沿革があると私は思うのです。それはなぜかというと、シカゴというのはアメリカ中部の農産物の最大の集散地でございましたから、あそこでは商品取引が非常なウエートを持っておった。ところが、さすがのアメリカも農産物だけで商品取引がうまくいくわけもないので、そこで取引所の皆さんは頭を働かせて、金融証券やいろんな先物をあそこで開発された。  私はアメリカへ参りましたときに、ルーダーSEC委員長にお会いしたときに、ルーダーさんが言われたのは、日本は監督というのが大変にうまくいっている、それは今のCFTCとSECが別個になっていて、そしてシカゴの証券先物についてはSECは何ら介入ができない、こういう点をおっしゃったのだと思うのでありますけれども、日本の場合には要するに証券局、銀行局、国際金融局、みんな大蔵省の中にありますから非常にコントロールというのが、調整がうまくいくという意味だったと思うのであります。  そういう意味で、ひとつこの際大阪に今の新しい金融先物取引所というものを一つ構築をしたらどうだろう。要するに複眼的な視野に立ってやる。これはまだどなたとも相談したことはないのでありますけれども、北浜の大阪証券取引所というのがありますが、あれの上に少し二階か三階くらい継ぎ足して、そしてそこで一つフロアを区別して、要するに一番下は株式の現物をやっている、二階は証券関係の先物やオプションをやる、三階は金融の関係のオプションや先物をやる。一つの建物の中ならば、法律は別々の法律でないと、一本で書けないのか私はよくわかりませんが、ちょっと質が違うものができると思うのです。フロアは一つのフロアですけれども、あそこへ行けばともかくもう証券の先物も現物も、それから今の為替も金利もみんなやれるということになれば、ユーザーにとっては大変望ましいことではないか。  私は、大蔵省の皆さんにいつも言っているのですが、何しろ日本では証券、銀行の業際問題というのが長い歴史的な問題でありまして、私もそれに長くかかずらわってきているのですが、常に申し上げていることは、今金融というのは証券会社や銀行のためにあるのじゃありませんよ、要するにこれを利用する国民と利用する企業のために金融がサービスを提供するために金融制度があるのであって、証券会社がもうける、銀行がもうければそれで済む話じゃありません。この真ん中の国民と企業にどのようないいサービスを提供していただいて、日本の全体の経済がプラスになるようにするかというのが私は金融業の本来の姿じゃないか、こういう考えでございます。しかし、いろいろな経過がありますから、何としてもそう簡単にはいきません。  しかし、今のあれをやって、東京は恐らく二つになるでしょう。大阪はそういうふうにして一つにしましたら、そこに名称を日本金融先物取引所、これが冠せられるわけです。なぜかというと、東京は東京証券取引所あるいは東京金融先物取引所でしょう。しかし、大阪の場合はともかく先物の発祥の地でございますから――ちょっとまだ少し時間がありますから、私のところの国際金融経済研究所で十二月に出しました「当面の国際金融の諸問題」というリーフレット、中村正三郎先生が座長として御参加をいただいているわけでありますが、その中で私はちょっと先物のことについて書いております。要するに先物は  日本では一六〇〇年代ぐらい、つまり慶安、承応の時代のようでありますが、各大名が大量の藩米を取引をしておりました。が、実は大阪の非常に有力な米商人で、両替商を兼ねていたところの淀屋の庭先で、大勢の米商人が集まって市場が形成されていたのであります。その市場で米手形による延べ取引が発生した。これが米屋米市といっているようでありまして、その後この延べ取引は次第に差金決済、先物取引へと発展したようでございます。   この先物取引が公許されたのは一七〇〇年代に入ってからでありまして、その間、インフレ下にあって、米手形取引は投機取引を助長するという理由で十回ばかり規制処置、禁止令が布されたようでありますが、享保十五年(一七三〇年)八月十三日、名奉行の誉れ高い大岡越前守忠相によって、大阪の堂島米相場会所に限って、米の先物取引、帳合米取引ともいうのだそうでありますが、許可されたということであります。これが世界の先物取引の歴史的な最初のページでございます。 こうなっているわけであります。  まさに大阪は日本の、そして世界における先物取引の根源の場所でございますので、ひとつこの際大阪に、一つの建物の中で今の証券の現物及び先物ができて、債券もできて金利もできて通貨もできるという形になりますと、ユーザーにとっては二つのところへ行かなくても、そこへ行けば用が足りるわけでありますから大変便利なわけでありまして、それをずっとやっていく過程を通じてこれはやはりお互い一つでやった方がいいじゃないかということが、現実のそういう売買の過程を通じて醸成されてくるのではないか。世界でともかくそういうものが二つあるところはほかにないと思うのですが、だれに答えてもらえばいいかな、証券局長
  66. 藤田恒郎

    ○藤田(恒)政府委員 世界でどうなっておるかというお尋ねでございますけれども、世界の各市場を見てみますと、一般的には現物関係、すなわち株式、債券等の現物の市場と、それから金融関係の先物の市場と二つに分かれているというのが一般的でございます。今先生の御指摘がございましたように、現物も先物も一緒に取引をしているというところは現在のところございません。ただ、ロンドンその他につきましては、現物、先物も一緒にしたらどうだろうかというふうな議論があるとは聞いておりますけれども、会員組織の問題でございますので会員間の利害調整とかそういったものがございまして、まだ実現をしていないというふうに理解しております。
  67. 堀昌雄

    ○堀委員 私も全部一緒にしようという話じゃないのですから、よく理解しておいていただかなければいけないのは、一階は株式取引所なんですよ。そして二階は、株の関係の今度新しい法律でできる先物をやる。三階は、新しい法律でできる金融の問題をやる。だから、要するに一つの建物の中で同じようないろいろな関連の業種が行われている。そうしてこれは一つの建物ですから、建物に日本金融先物取引所という看板をかけてもちっともおかしくない。そしてフロアとして、その下に大阪証券取引所があり大阪証券先物市場があり大阪金融先物市場があるという格好にする。そうすると、今ロンドンで議論が出ているのと大体同じようなものなんですから、結果からいえば。  大体株式も、戦前は御承知のように現物取引じゃなく、みんな差金決済だったわけです。それがアメリカが来て現物決済にして、信用取引なんというまことにへんちくりんなものをつくっていったわけですけれども、だんだん流れはまた長い時間かかると変わっていくのじゃないか。そういうのには、今の一つの建物の中にそういうものが入るというのは、少し先見性を持って日本のそういうものが望ましい方向に行く一つの道筋になるのじゃないか。同時に、一極集中で東京にばかり金融センターが大きくなるということも、今の竹下総理の施政方針演説から見ても適切な方向じゃないと思うし、そう感じるのですが、これは皆さん認可をなさる立場でありますから皆さんに伺う気はないのですが、宮澤大蔵大臣、私のこの堀構想についての感想だけをひとつお答えをいただきたいと思うのですが、いかがでございますか。
  68. 宮澤喜一

    宮澤国務大臣 業際の問題はまことに長い歴史があるようでございまして、今度あちこちの専門委員会から合同の報告書をつくってもらって、私どもの省内でも、また関係の専門委員会の方々も大変御苦労なさったようでございます。堀委員はそういう経緯を長いことよく御存じでございますので、私はそういう経緯が実はわかりませんで、何となく頭で聞いているだけでございますので肌でわかっておらないところが多いのでございますが、大変に難しい問題らしゅうございます。いきさつもありこれからのこともあって、難しい問題らしゅうございまして、ともかくよくまとめてくれたと思っているのですが、これから法律を出して御審議を願うという、いえば大変デリケートなバランスの上に事柄が立っているように思われます。そこへ今度また大阪という問題が今お話がございました。堀委員のおっしゃっておられます竹下総理が東京への一極集中を排除しようということ、それから大阪には先物の伝統が非常に古く一六〇〇年代からあるということ、それから四全総でも実は大阪というものの位置づけをどうするというときにそういうことを述べておるわけでございますね。そういうことはそういうこととして大きな流れとして私今お話を伺って決してわからないのではございませんが、片一方の話がいかにも微妙なバランスの上に乗っておるようでございますので、うかつに私が何か申し上げることはやはり大変にいい結果にならないようでございます。  したがいまして、法律をとにかくつくらせてみていただきまして、御審議をいただいてということをまずやらせていただきたいと思っておりまして、堀委員がかなり時間をかけて、また大所高所からのお話もあり、お話しになられましたことはよく私ども記憶にとどめさせていただきたいと思います。
  69. 堀昌雄

    ○堀委員 現在の状態では、私は大臣の御答弁はその程度が限界であろうと思いますので、これ以上承りません。  今度は自民党の議員の皆さんに申し上げたいのですけれども、これからの国会は、お互いにみんなで勉強して、ひとつ自民党の皆さんも大いに発言の場所を持っていただいて、この委員会が活性化した委員会として国民の負託にこたえるように、私どもも頑張りたいと思いますので、どうか皆さん、ひとつよろしくお願いしたい。  終わります。
  70. 越智通雄

    越智委員長 次に、日笠勝之君。
  71. 日笠勝之

    日笠委員 私は決して大臣を兵糧攻めにするつもりはございませんので、武士の情けで、どうぞお食事に行ってくださって結構でございます。ですから、大臣にお聞きする前に、関係の皆さんに何点かまずお聞きをしたいと思います。  まず、政府税調の件でございます。恐らく、大臣が帰ってこられてからいろいろと質問を重ねていきますと、政府税調に予見を与えてはならない、予断を与えてはならない、こういうふうになるかと思いますが、その政府税調について若干お聞きしたいと思います。  今の政府税調の会長は小倉先生でございまして、私は小倉先生に何ら個人的な遺恨はないわけでございますが、実は小倉先生、今度五期目ということでございます。任期は三年でございます。ところが、昭和三十八年九月の閣議口頭了解というのがございまして、「各種審議委員等の人選について」というのがございます。それを見ますと、「広く各界の意見を行政に反映させるため、委員の長期留任は特別の事由のない限り行なわない。任期三年のものは三期まで、」政府税調は三年でございますから三期まで、こういうことでございます。ところが、今度五期目という異例の長期留任、それも会長でということになるわけでございますが、那辺にその意義があったのか、背景があったのか、まずお聞きしたいと思います。
  72. 水野勝

    ○水野政府委員 税制調査会委員の任命は内閣総理大臣の行うものでございまして、したがいまして、私どもとして責任あるお答えをいたすことはできがたいわけでございますが、私どもの範囲でお答えを申し上げるとすれば、御指摘のように三十八年九月二十日の口頭了解がございます。「広く各界の意見を行政に反映させるため、委員の長期留任は特別の事由のない限り」と、今委員も御指摘のように、そういう文言があるわけでございます。任期三年のものは三期ということでございますので、当然三期を超える方につきましては通常であればそこで改選が行われるということでございますが、その特別の事由に該当する場合には、この口頭了解の例外として、内閣といろいろ御相談を申し上げて、その特別の事由の有無につきまして御説明申し上げ、その事由ありとすれば三期を超えて任命されることもあり得るということでございます。  具体的には、昨年の十月末に任期が参りました。その中で三期という点に該当される方はお二人おられたわけでございますが、この際は、いわばそれぞれ特別の事由ありということで、引き続いての任命が内閣総理大臣から行われた、このように私ども、任命権者は大蔵省の方でございませんので端的に申し上げることはできないわけでございますが、承知いたしているところを御答弁させていただくとすれば、そういうことではないかと思います。
  73. 日笠勝之

    日笠委員 小倉会長は、大変高齢でもございますし、それから、今五期目でございますが、その前一期休まれて三期やっておられますね。通算で言うと八期ですか、非常に長期にわたって御苦労されているということはよくわかるのですが、昨年はもうやめるというふうなお話も一時報道されたわけでございます。私が心配いたしますのは、同じ方が長期留任をすると、やはりそこへどうしても、癒着という言葉は悪いかもしれませんけれども、大蔵省さんのペースにのっとって、よく心理的なあれもわかる、人間関係もあるというようなことで、思うがままの誘導ができるんじゃないか、そういうようなことで、閣議口頭了解で三期までとなっているわけですね。それを、四期ならまだしも五期目ということ、これは異例の異例の長期留任ということになるわけでございます。  私は、税制学者、広く学識経験者が一億二千万の国民の中でいないのか、たくさんいらっしゃると思うのですね。なぜあえて小倉会長だけ通算十五年もやっていただくようになるのか、何かそこに意図があるのではないか、こういうふうに思わざるを得ない。決して小倉会長に遺恨があるわけではないということは、先ほど申し上げたとおりでございます。  結局、これはきっと局長が推薦をされるわけでしょうね。それを、総理大臣の諮問機関でありますから、総理府の方で任命をされるということでありましょうが、総理府の方が初めからこの人ということで推薦をしたわけじゃないと思います。手続があると思うのですね。そういう意味では、どうですか、局長、小倉会長は税制抜本改正の継続性というようなことでありましょうけれども、そのほかに何か理由があるのか。  私は申し上げておきたいことは、やはり閣議口頭了解、閣議で決まったことでありますから、これは大変尊重しなければ、例のGNP一%の枠突破じゃありませんけれども、閣議で決まったことがいとも簡単にほごにされるということは、大変問題があるんじゃなかろうかと思います。もう一度御答弁を。
  74. 水野勝

    ○水野政府委員 御指摘のように、税制調査会の庶務は主税局と自治省の税務局でやってございますので、私どもがいろいろ事務的な作業はいたすわけでございますが、こうした任命の問題については、私ども事務的な手を越える問題でございますので、的確に御答弁を申し上げる立場にはないのではないかと思うわけでございますが、その間事務的にいろいろお手伝いを申し上げている段階での感触として申し上げれば、今御指摘のように、税制改革作業が進んでいるその中途の段階であるということで、継続性の観点から任命が行われたのではないかと私どもも考えておるところでございます。  それから、長年の御在職でございますと癒着とか誘導とかということの御指摘がございましたが、そうしたことは、私どもの立場から考えますと、全く万々ございませんで、そういった点の御指摘は当たらないのではないかと思うわけでございます。
  75. 日笠勝之

    日笠委員 これが新しい会長ですとそれは一から説明しなけばいけませんでしょうね。そういうことになれば、非常に急いでおられるわけでしょうから、できれば今度の通常国会で、検討中ということでありますが、出したいという意欲ありありでございましょうから、そういう意味では、よく知った方が続けてやってくだされば非常にやりやすいということも考えられるわけでございます。私は、閣議口頭了解というものは、厳に、原則的に守るべきであろうと思います。四期のみならず五期ということは、原則を大幅に逸脱しておる、このようにも考えられますので、今後こういうことのないように、また機会があればこのことについてやりますけれども、御認識を新たにしていただきたいと思うわけでございます。これが一点。  それから、昨年いわゆる新貨幣法ということでこの委員会でも論議をさせていただきました。本年の四月一日から弾力的に記念貨幣も発行していこう、こういうことでございます。そのときに私がお願いしたのは、瀬戸大橋開通が四月十日でございます。これに合わせて、ひとつ国家的行事であろうと思いますし、世界一の鉄道・道路併用橋でもあります。これについて前向きに検討をお願いいたしましたが、その後どういう検討をしてくださいましたか、現状をお聞かせいただきたいと思います。
  76. 足立和基

    ○足立政府委員 ただいま先生おっしゃられましたように、昨年、いわゆる旧貨幣法等を廃止いたしまして、新たに通貨の単位及び貨幣の発行等に関する法律、いわゆる新貨幣法を成立させていただいたわけでございまして、それによりまして記念通貨の発行というものが機動的に行えるようになったわけでございます。この法律の施行が本年の四月一日からでございます。そういうことになってございますので、現在私どもこの法律に関連いたします政省令等の検討を実は行っておる段階でございます。  この新しい貨幣法に基づきます国家的な記念事業として発行する貨幣、こういうことになっておりますが、そういうものを発行するといたしますと、本年四月一日から施行される法律、政省令に基づいて発行するということになりまして、現在、お話ございました瀬戸大橋完成記念についての記念貨幣については、この法律に乗るのかどうかということをその施行日に合わせて検討している状況でございますので、いましばらくお時間をちょうだいいたしたいと思います。
  77. 日笠勝之

    日笠委員 決定ではないそうでございますが、竹下総理大臣も開通式には御参加をされるのではなかろうか、こういうお話も漏れ承っておるわけでございます。ぜひひとつ、天皇在位六十周年のあれに懲りずに、国民の要望が高いわけでございますから、前向きに御検討いただきたいということで、もう一度御答弁を、前向きにということで、いかがでしょうか。
  78. 足立和基

    ○足立政府委員 ただいま申しましたように、国家的な記念事業としての記念貨幣というものの範囲をどの程度のものにするかというところが恐らく議論の中心になろうかと思いますが、施行日に合わせてできるだけ結論が早く出るように鋭意検討いたしたいと思います。
  79. 日笠勝之

    日笠委員 総理大臣まで出られるということであれば国家的事業であろうと理解をしたいわけでございますので、新貨幣法の発効と同時に、国民の要望にこたえてということでぜひひとつ前向きに御検討をお願い申し上げたいと思います。  聞きますと、郵便切手の方はもう既に四月八日発行が決まっておるようでございます。切手と違いまして、これは印刷じゃございませんので、材料の仕入れから、また何百万枚になるのか知りませんけれども、作製するのに相当時間もかかるだろうと思いますから、早く決定しなければ、四月十日ですから、これがことしの七月や八月に発行になったのではギャップがありますので余り価値がなくなりますから、ぜひひとつ早急に検討をお願い申し上げたいと思います。  ちょっとお聞きしますけれども、これは記念硬貨ですが、実はこの前ある方が海外へ内閣制度百年の硬貨を持っていって海外の方に差し上げたらしいのです。そうすると、「昭和六十年」と書いてあるがこれは西暦何年ですかと聞かれたというのですね。これはいかがなものでしょうか。国際化だとかなんとか、まあ高齢化もありますが、大臣は盛んに、国際化に対応する、こうおっしゃっておりますけれども、やはり西暦を入れないと円は国際的に通用しないということにも相なるかと思います。昭和年号を取ると非常にまだいろいろ難しいのだそうですから、横の縁というのですか、ここでも結構ですね。ここにはちゃんと「NAIKAKU 一〇〇NEN」と振っていますから、この縁のぎざぎざのところでもいいですから西暦を入れる、そういうことで前向きに検討していただきたい。瀬戸大橋のコインを発行するときにはぜひ西暦年号を入れないと、国際的にも海外からどんどん観光客が来ると言っているのに、「昭和六十三年」では説明するのに困る。この点についてはいかがでございましょうか。検討する余地があるかどうか。
  80. 足立和基

    ○足立政府委員 ただいまの御質問でちょっと補足させていただきたいと思います。  法律の施行が四月一日からでございまして、国家的な記念事業として記念貨幣を発行する場合には、御承知のとおりその発行枚数等も政令で定めることになってございます。したがいまして、新しい政令というのも四月一日以降に発効することになりますので、やはり先生おっしゃるようにある程度の期間がかかりますので、もし発行するといたしましても直ちに現物が出てくるということは大変難しいのではないかと思います。  それから、今の西暦の年号を入れるという点につきましては、記念貨幣の発行につきまして検討させていただきたいと思います。
  81. 日笠勝之

    日笠委員 それでは、きょうは時間も短いので、次に参りたいと思います。  実は土地税制の件でございまして、買いかえ特例の件でございます。  順番に申し上げますと、昨年の十月十二日に新行革審から「当面の地価等土地対策に関する答申」がございました。これを見ますと、「居住用財産の買換特例の見直し」という項目がございます。これについては「地価高騰の波及を抑制する見地から必要な見直しを検討する。」ということで、まず新行革審から答申が出ました。  それを受けまして、十月十六日、「緊急土地対策要綱」ということで閣議決定をしております。その中にも、「土地譲渡所得課税における居住用財産の買換特例制度について地価高騰の波及を抑制する見地から必要な見直しを行うことなどにつき、税制調査会に諮るなど所要の措置を講ずる。」ということがございます。  それで政府税調がこれを受けまして答申をしたのが昨年の十二月十八日でございます。これを見ますと、買いかえ特例については必要な見直しをするんだ、こういうことでございます。見直しをするということは、原則認めない、こういう意味でございます。  同じ日に自民党税調の改正大綱が出ております。これを見ますと、「父若しくは母又は祖父若しくは祖母から相続又は遺贈により取得したその者の居住用家屋及びその敷地で、三〇年以上の期間にわたってその者の居住の用に供していたものを譲渡した場合の長期譲渡所得については、居住用財産の買換えの特例を存置する。」ということで、相続、遺贈を受けて三十年以上の長期にわたった家屋、敷地については残す、突然こういうふうに出てくるわけですね。  それを受けまして昨年の十二月二十二日の「六十三年度税制改正の大綱」にもその旨が記載されておるわけでございます。  これは原則的には廃止というふうに私どもは聞いておったわけでございますけれども、自民党税調さんの方で三十年以上云々が出てきてそれが閣議で決定したということで、今それに沿って法案づくりが行われておるのではないかと思うわけでございます。三十年以上、父母または祖父母から相続、遺贈を受けた居住用財産、これはもう少し詳しくお伺いいたしたいと思うのですけれども、あくまでも相続、遺贈を受けたものでなければならないのか、それとも三十年間個人で持っておれば超長期の譲渡であるということで認められるのか、この辺はいかがですか。
  82. 水野勝

    ○水野政府委員 この買いかえ制度は、今回は原則としては廃止させていただきたい、しかし、二世代以上にわたりまして同じ場所で居住の用に供されておった土地、住宅については、そういうところを長年の間生活の本拠とされてきたものを手放してよそに移られるということでございますれば、それはかなり特別な事情がある場合に限られる、そういう限られた場合には買いかえの特例を存置いたそうということでございまして、ここにございますように、お読みいただきましたように、相続または遺贈により取得した場合に限られる。したがいまして、その御本人自身が取得をされてそこに三十年以上居住の用に供しておられたという場合には入ってまいらないことでございまして、あくまで父または母、祖父、祖母、そこから相続または遺贈により取得をされた場合に限りこの従来の特例が存置される、そういう趣旨でございます。
  83. 日笠勝之

    日笠委員 そうすると、遺贈、相続を受けた。三十年住んでいる。しかし、例えば途中で家が火災に遭ったとか災害で建物を建て直した場合には、これは該当するのですか、しないのですか。
  84. 水野勝

    ○水野政府委員 この点につきましては、本日法律を御提案させていただいたところでございますが、その条文におきましては、「当該個人がその居住の用に供している期間として政令で定める期間が三十年以上である」というふうな文章で規定をさせていただいておりまして、具体的に三十年を算定する際にそれをどういう基準で計算するか、なお今後国会の御議論等をお聞きいたしながら検討してまいるというところでございますが、ただいま御指摘のような災害で途中一時お住みになれなかった、当然火災があればよそに移られてその復興と申しますか新築されるのを待つわけでございますが、そうした場合、恐らく通常でございますれば住民票も移してしまってということはなかろうかと思います。そういたしますと、それは火災等災害で一時よそに移転されておられた期間は三十年の中に通算されるということでよいのではないかと一応考えておるわけでございますが、これはまさにこれから法案を成立させていただいた後での政令の問題ではないかと思っております。
  85. 日笠勝之

    日笠委員 どうもこの三十年以上にひっかかるのですね。何かまたまた相続とか遺贈を受けた三十年のものは買いかえ特例を認める、それ以外、自分の資力で三十年前から買って住んでいる、それはだめだ。何となく持てる者がさらに持てるというふうなことで、これは朝日さんとか毎日さんですか、社説を見ましても、非常に評判が悪うございますね。読まれていると思いますけれども、大変評判がようございません。父とか母とか祖母とか祖父、なぜそこに特別の重みがあるのかということで、三十年では短期過ぎないかというふうな疑問もございます。  「税経通信」二月号にその辺の論議をされた自民党税調の野田先生と「税経通信」の顧問の方との対談がございます。「六十三年度税制改正の方向」、これを読んでも何となく野田先生のお話も要領を得ていないのじゃないかと思うのです。例えばこういうふうにおっしゃっています。  今度は居住用資産の買換えの特例を認める対象を限定して、十年以上ではなく三十年以上、しかも父親とか祖父から相続をした財産を売ったということに限定をしたわけです。   なんでそういうことなのかと言うと、これは自民党的なんですが、 ということで全然説得性がないわけですね。先ほど局長もおっしゃった「余程の事情があるに違いない」「そういう心を大事にしてやろうと。まあ〝墳墓の地〟という表現もあったんですけれど、」なんて、非常に情にさお差したような表現でおっしゃっておるわけでございます。そして、非常に難しいところだ、「三十年がいいのか、五十年がいいのか、あるいは一代でもいいじやないかとか、いろいろあるんですが、ここは一つの発想だ」、こういうふうにもおっしゃっているわけでございます。  そういうことで、これはきょう法案を提出されたというのでございますけれども、これだけ特例を認めるということ、先ほど言いましたように政府税調にはなかったですね。自民党税調だけやった、それを閣議で決定したということでございますが、大臣、いかがですか。三十年以上、父母とか祖父母、こういう人から相続、遺贈を受けた場合には買いかえ特例を認めるのだ。自分で買ったものは三十年間住んでいてもだめなのです。今度の税制抜本改正は、公平、公正というようなことも当然大きな理念に相なるかと思うのですが、この辺も何か先ほどから申し上げておりますように不公平ではないかなと思う。  私ちょっと計算しますと、これはざっと計算しましたので間違いかもしれませんが、もし一億円でそれが売れたとすると、三十年前に自分で買って住んでいた人だったら住民税を入れて一千百六十万円ぐらい納税しなくてはいけない。ところが、父親とか母親とかそういう人から相続、遺贈を受けた場合は無税だ、こういうことでございますね。もちろん、買いかえ特例ですから、買った方が一億以上なければいかぬということがあるわけです。買いかえ特例をせっかくなくして波及効果を抑制するのだ、大変立派な新行革審の答申があり、また政府税調の方も恐らくそういうことを考えて検討されたと思うのですけれども、私、そこだけがどうも納得いかない。細かいことは政令にゆだねるのだ、火災かなんかで二、三年間いなくても、戸籍がそこにあればいいのじゃないか。じゃ、海外に四、五年間行っていて留守にしていた、それはどうなのだ、こういうことになってきますと、さらに不公平が生ずると思うのですが、いかがでしょう、大臣
  86. 水野勝

    ○水野政府委員 その前に、確かに御指摘のように政府税制調査会の答申そのものにはございませんが、政府税制調査会の答申も一応そのことはのみ込んでございまして、今後買いかえ特例については、原則としては現行の制度にかえて軽減税率により分離課税にするということで、この中に一部は存置されるというものも読み込んではおられるようでございますので、意識をしてないということはございません。  御承知のように、買いかえ特例は、昭和四十四年まではかなりフリーに認められておった、それがいろいろ問題点があるということで廃止され、昭和五十七年に復活したものでございまして、そういう点におきましては、復活いたしましてからまだ六年ぐらいでございますので、全面的にこれを廃止してまた昔に戻るということもいかがかというような点もあって一部は残した、極めて特殊な事情がある場合については存置したということではないかと思います。
  87. 日笠勝之

    日笠委員 じゃ、相続とか遺贈を受けて三十年住むというのが特殊な例ということですね。それが、先ほどから申し上げるように、自分が三十年前に買った、それは全然対象外だ、相続とか遺贈を受けたものはいわゆる買いかえ特例の対象として残します、どうもその辺が、せっかくいい方向へ行きつつあったものがちょっとまた後ろ戻りしたな、こういうふうにも感ずるわけでございます。これは詳しいことはまた法案が出てからゆっくりやりましょう。  大臣もお帰りになりましたので、じゃ大臣の方へ御質問をお願いしたいと思います。きょうは予算委員会のリハーサルだと思ってひとつ気楽にお願いしたいと思います。  ただ、私、先日来の参議院、衆議院の本会議で各党代表質問等々をお聞きしておりますと、税制改正、抜本改正という名前だけは聞こえてくるのですが、全然その姿といいますか、これはもう不透明も不透明、真っ黒と言ったらいいでしょうか、全然わからない。とにかく政府税調に予見を与えてはならないということで、悪く言えば逃げを打っている。まじめに考えれば、確かに予見を与えちゃならない。しかし、国民の論議を踏まえてと言う。どんどん論議はしてくださいとおっしゃる。何かその辺が二律背反じゃございませんけれどもよくわからない。この前からの各党の代表質問をお聞きいたしましても、選挙の公約違反だということ、それからまたいわゆる六十年二月六日の政府統一見解を白紙還元するのかしないのかということ、もし抜本改正を出すのなら当然大型間接税のこともあるであろうから国民に信を問えとか、恐らく予算委員会が始まっても、この前の売上税と一緒で、中身にいく前に、もう入り口で、公約違反じゃないか、信を問え、政府統一見解は一体重んずるか軽んずるか、こういうようなことでまたまた審議ストップというようなことにも相なるのじゃないかというような心配も実は私はしておるわけでございます。  そこで、率直なところ大臣にお聞きするわけです。理屈は幾らでも後で貨車でついてくるといいますから、もう一問一答、簡潔で結構でございます。要は、昭和六十年二月六日、中曽根総理がおっしゃった多段階、包括的、網羅的、普遍的で大規模消費税を投網をかけるようなやり方でやるようなことはしないと政府統一見解では言われております。これは今後守るのか守らないのか、イエスかノーかでちょっとお答えください。理由はよろしい。大臣のことですからもう理由はいろいろとたくさんつけられるでしょうから、この政府統一見解、これは守るべきものなのか、もう守らなくても、もう済んだこと、こうおっしゃるのか、イエスかノーか。
  88. 宮澤喜一

    宮澤国務大臣 それは、おっしゃいますように、本会議でも随分御質問があり、矢野委員長も御質問になられまして、総理大臣がお答えをなすっておられますので、私はそれにつけ加えるべきものはないわけでございますが、ああいう経緯がありまして、中曽根首相の選挙中にあるいは国会で言われましたこと等々、それに背馳することのないような法律案国会に提出して御審議を願うつもりであったわけですけれども、結果は廃案になった、国会のお受け入れいただくところとならなかったということは極めて深刻な事態でございますから、そういう反省の上に立って、一切、つまりもう一遍出直すというようなことで、どういうふうにすれば国会の、あるいは、国民が先でございますが、国民が、したがって国会が、まあこれはその程度ならやむを得ないということでお認めいただけるのか、そういうことをもう一遍虚心に探求しようではないかということが私は今の政府の態度だと思います。  したがいまして、政府税制調査会におかれましてもお願いをしてそういう態度で問題を討議していただいておりますし、地方の公聴会等々も数多く開いて地方の人の御意見も伺いたい。また、私ども党の方の税制調査会においても、伺うところによりますと、今度は業界、団体等々から広く、前回どこが悪かったのか、どうすればいいのかということを伺いたいという、そういうふうに当面努力をしたいということと伺っておりますので、結局、ですからそういうことで虚心にもう一度、どういうことであれば国民がまあまあといって納得されるのか、国会がお受けいただけるのか、それをもう一遍原点に立ち戻って探求をしたいというのが私は今の政府の立場である、それが総理大臣が本会議でお答えをしておる意味であろうと考えております。
  89. 日笠勝之

    日笠委員 ですから、要は、守るのか守らないのか、これだけでいいのです。要は、守るべきものなのか、もう守らなくても、いわゆるフリーになったんだ、イエスかノーかでお答えいただかないと、幾らでもそれは理由はつくのですね。何か竹下総理の言語明瞭、意味不明がだんだんと大臣の方にうつってきたような感じで、イエスかノーか、守るべきものだ、イエス、そうじゃない、ノー、どっちでしょうか。
  90. 宮澤喜一

    宮澤国務大臣 これはやはり今だけの長さでお答えを申し上げ、お聞きをいただきませんと、意を尽くさぬことになると思います。
  91. 日笠勝之

    日笠委員 そういうふうな経過を言われましたね。だから結論として、守るべきものなんだ。あくまで拘束されるんだ。六十年の二月六日、テレビでも国民の前で政府統一見解を、審議がとまった後、いろいろと皆さんが検討されて出てきたものでしょう。そういうものは当然継続性があるということで守るべきものなんだ。そういうものを念頭に置いて政府税調で検討をしてもらっているのか、全然そういうものは抜きでフリーで政府税調に検討をしてもらっているのか、こういうことに相なるわけですね。どうでしょう。
  92. 宮澤喜一

    宮澤国務大臣 竹下総理の言っておられますのは、そのような国会における中曽根当時の総理大臣の言明に、忠実にそれを守って、忠実に、背馳しないように案をつくって御審議を願ったが、その結果がああなったという、そういう極めて厳粛な重い事実に基づいて、もう一遍これは原点に立ち返って国民の御意見を聞こう、こういうことを言っておられるのだと私は考えます。
  93. 日笠勝之

    日笠委員 原点に立ち戻るというのは、政府統一見解の原点に立ち戻るのか、それとも売上税とともに去りぬでもういいのか、これをただお聞きしているだけで、大臣、そんな難しいことは言わないで、簡単な質問なんですから、簡単にお答えいただければいいのです。原点というのは、政府統一見解を原点にして検討をするのか、考えるのか、それとも、それは原点じゃないんだ、政府統一見解は原点じゃなくて、全部もう抜きにして、全くの白紙にして、それを原点にして考えるというのか、どっちなんでしょう。明確にお願いします。
  94. 宮澤喜一

    宮澤国務大臣 それは、中曽根さんがああいうことを言われたということは、もう現実に、いわば歴史と申しますか現実に起こったことでございますから、そのことがいいとか悪いとか間違っているとか白紙にするということではなくて、そういう経緯を経て案をお出ししましたが、まことにショッキングなことになりました、しかし、やはり問題は、どうしても抜本的な改正が入り用だと思いますので、予断を持たずにひとつ国民の声を聞きたい、国会の御意見も伺いたい、こういうことであろうと思いますから、そのイエスかノーかということ、そういう次元のこととちょっと違うように思います。
  95. 日笠勝之

    日笠委員 いろいろ御論議をするわけでしょう。その論議をするのに、政府統一見解は守って頭に入れて論議をするのか、全然なくて白紙で何を論議してもいいんだ、ああいうものに拘束されないといって論議をするのか。御論議を願いたい、御論議を願いたい。きょうも先ほど所信表明で、国民各層の御論議を拝聴。国民はあれを頭に入れて御論議をするのか、ああいうものは全然なくて白紙で拘束されないで御論議をするのか、どういうことでございますか、もう一度これははっきりと。
  96. 宮澤喜一

    宮澤国務大臣 同じことを繰り返すようでございますけれども、別の角度から申しますならば、竹下首相になられましてから、つまり廃案になりました後でございますが、十一月に税制調査会に新しい諮問をされたわけでございます。その諮問の文章を申しますなら、「税制抜本的見直しについての答申」、これは一昨年の税制調査会の答申でございますが、「「答申」に示された考え方及びその後現在に至るまでの諸情勢の進展を踏まえ、所得・法人・資産及び消費課税等についてその望ましい税制のあり方と実現に向けての具体的な方策につき審議を求める。」文章でこういうことになっておりますが、これは結局、一昨年の答申というものがあった、しかしその後にこうこうこういうことが、現実に今御指摘のようなことがずっと起こっておるわけでございますから、そういう経緯というものを踏まえてもう一度考えてみてくれ、こういう諮問をしておるわけです。
  97. 日笠勝之

    日笠委員 ここでこれだけ論議をするぐらいですから、予算委員会ではこれはもう大変でしょうね。まあリハーサルだからいいですけれども、大変ですよ、恐らく。そういうことじゃ納得できないでしょうね。私も納得できない。だけれども、きょうは皆さんも少ないですし、早く終わることが皆さんにとっては非常にいいことだというふうな話も聞いておりますから……。  ただ、一つお聞きしたいのは、もし政府税調がEC型付加価値税に本当によく似た、九〇%、八〇%方よく似たものを出してきた場合には、政府統一見解との絡みから見まして、これは別に構わない、政府税調がEC型付加価値税に七〇%、八〇%ぐらいいわゆる骨格が一緒のようなものを出してきた場合、それはこの政府統一見解があったとしても構わない、こういうことですか。
  98. 水野勝

    ○水野政府委員 まさにただいま大臣お読み申し上げた諮問が内閣総理大臣から出され、それに従って審議が行われているところでございますので、どういうふうな審議が行われ、どういうものが取りまとめられてまいるか、全くこれは現在は予見しがたいところでございます。とにかく税制調査会審議を尽くしていただくというところでございますので、どういうものが出てきた場合にはこうだということは政府側としては現在申し上げるのもいかがかなという感じがいたします。
  99. 日笠勝之

    日笠委員 日向次長に来ていただいていますので、では今の論議は今後の予算委員会、また大蔵委員会にまつことにいたします。  実は、昨年の九月に質問させていただきました医療費控除が五万から十万の足切りになる、倍増になるわけでございますが、それに伴って、全国に寝たきり老人が六十万人いらっしゃるわけでございますが、こういう方々に少しは温情ある措置をということで、いわゆる紙おむつであるとかおむつのリース代は医療費控除で認めていただければというふうに御質問いたしましたところ、ことしの一月一日から認めていただける、こういうことに相なったわけでございます。これは本当に、ある新聞によりますと、国税庁の温情ということで大変評価が高まっておるようでございますが、実はこれは来年二月の確定申告からでございます。制度はこの一月一日から発足でございますが、確定申告で所得税が少し返ってくる、こういうことでございます。  そうすると、お医者さんのおむつ使用証明書というのは医師会を通じて大分隅々までいっているようでございます。ところが、現実に領収証を集めておかないと、来年の二月十五日になって慌てて政府広報とかを見てそれから集めようといったって、例えば町の薬局で買っておれば今さら一年前の領収証を下さいというわけにはいかぬわけですね。だから、そういう医療費控除の対象になりました領収証は今から集めていなければいけませんよ、医者の証明書の方はまた後日でも結構なわけですから、そういうPRといいましょうか、広報活動といいましょうか、これをやっておかないと、せっかくの温情ある御措置が一年分だけ残念なことに相なる可能性もあるわけでございますが、その辺の広報活動をいかようにされるおつもりかをお聞きして、終わりたいと思います。
  100. 日向隆

    ○日向政府委員 ただいま委員が御指摘になりましたように、本院におきます質疑を踏まえまして、紙おむつ等につきまして一定の条件のもとに医療費控除の対象にすることにいたしまして、去る十二月二十四日、各国税局に対しまして、「おむつに係る費用の医療費控除の取扱いについて」ということで通達をいたしました。と同時に、厚生省に対しまして、同様の趣旨について連絡したところでございます。  この内容の周知徹底につきましては、御指摘のとおり、本年一月一日からこれが適用になりますところから早急にその周知をする必要があるということでございますが、今もお話がございましたが、厚生省におきましては既に各都道府県医師会を通じまして各医療機関に対し周知する手続をとったと聞いておりますし、また、今領収証との関係の御指摘がございましたが、私どもにおきましても、この長官通達につきましては、各地の税務署に周知のための所要の措置をするよう指示したところでございます。  さらに、一般に広く知っていただくということも必要であろうかと思いますので、決してその来年の確定申告の準備期間を待つということではなくて、第一には、放送媒体による方法でございますが、二月二十七日にテレビでやりますし、同様に二月十五日、二月二十八日には続けましてラジオでこれをやるつもりでございます。  第二には、もっとはっきりした形で広報、印刷物といった方法でございますが、二月に臨時のチラシをこれに関して出すつもりでございますし、七月にはパンフレット及びチラシを配布する。  さらには、実際にこの事務に具体的にかかる源泉徴収義務者等の問題もございますので、ことしの十一月、十二月には、サラリーマンの年末調整及び確定申告書の書き方というところに十分織り込んでいきたい。  今御指摘の点を踏まえて、周知徹底について十分な措置をとってまいりたい、かように考えております。
  101. 日笠勝之

    日笠委員 もう一層の御努力をお願いして、終わりたいと思います。ありがとうございました。
  102. 越智通雄

    越智委員長 次に、安倍基雄君。     〔委員長退席、大島委員長代理着席〕
  103. 安倍基雄

    安倍(基)委員 私、今度の質問をたくさん出してしまって、たまたま竹下総理の答弁を聞いているうちにどんどんと質問が出てきてしまったものだから、大勢の方を呼びましたけれども、物によってはきょうは当たらない場合もあり得るので、あらかじめ――もっとも、役人のころは、当たらないと、わざわざ来たのにという気持ちと当たらなくてよかったという気持ちが錯綜しまして、むしろ後者じゃないかと思うので、もし当たらない場合には御容赦願いたいと思います。  大臣、まず今回の竹下総理の訪米は成功だったと思いますか、失敗だったと思いますか。
  104. 宮澤喜一

    宮澤国務大臣 総理大臣に新たに就任をされまして、日米間の問題あるいは世界情勢についての最初の意見交換をされた、そして個人的にもいわばお互いに顔を知り、話をされて親しくなられる、個人間の信頼をつくられるという意味で、私は大変に結構なことであったと思います。
  105. 安倍基雄

    安倍(基)委員 実は私は竹下総理は以前から知り合っておりますし、非常に好意的な見方をしているのでございますけれども、経済問題に関する限り、私は必ずしも成功ではなかったと思っております。と申しますのは、それの関連でまず一つお聞きしたいのですけれども、さっき堀委員から質問もありましたが、今回の日米会談で我が国の金利を下げるということを約束してきたのかどうか、その辺をはっきりお伺いしたいと思います。
  106. 内海孚

    ○内海(孚)政府委員 経済問題に関するレーガン大統領と竹下総理大臣の共同発表におきまして、ただいま委員御指摘の金利の問題につきましては、「日本銀行は、経済持続的成長達成し、為替相場の安定を図るため、現在の安定した物価状況の下において、現行の政策スタンスを継続するとともに、低下しつつある短期金利が実現されるよう努力を続けることに同意している。」というスタンスを事実として述べているわけでございます。ここに書かれている以上のことでもなければ、以下でもないということでございます。
  107. 安倍基雄

    安倍(基)委員 実は私は以前からこういった議論をしておったわけです。アメリカは自分の生産力をオーバーする購買力を減税と財政赤字でもってつくり出している。となれば、通常であればインフレになる。ところがインフレにならないのは海外からいろいろな輸入をするからだ。でありますから、財政赤字と貿易赤字とは双子の赤字、まさに連関しておる。もしこれが普通の国であれば、たちまちいわゆる外貨不足になるのであるけれども、アメリカの場合には基軸通貨国でありますから、ドルが下がることによってそれをカバーしているというわけですね。でございますから、レーガノミックスは本来基軸通貨国であるということに甘えまして放漫な財政を続けてきたわけです。それを支えていたものがまた我々の日本からの巨大な米国債の投資。私は以前から大臣あるいは金融局長にどのくらい我が国のキャピタルロスがあったのかということを何回も聞いておりますし、私自身が、ドルが落ちる前に、日本のいわば債権が累積することはドルが暴落したらどうなるのだということを例のG5の前に質問してあるわけです。  私は週刊誌というのは余り好きじゃないのですけれども、私と非常に意見が一致する大森実の「サンデー時評」がございます。それは何を言っているかといいますと、今回のあれはアメリカの大得点である。IMFの政策委員長の言い方は、「ヨーロッパは米国に高金利を勧告している」。本来アメリカが金利を上げるべきだったのだ。ところが日本の方が下げてしまった。ということは、アメリカが選挙を控えまして、景気後退を嫌がって、放漫、つまり金利の引き上げに応じなかった。むしろ日本が引き下げることによっていわばその相場安定を図った。ここに、きのうの新聞ですけれども、日銀総裁の見解として、米国債券の投資の環境が整うと言っております。これは、こちらが金利を下げて、アメリカに高金利を要求しないで金利差を設けて、日本の資金がまた向こうへ行くという構造をそのまま是認したものである。大森実というのはなかなか意見が一致するのですけれども、結局この最大の眼目は、大統領選挙を前にアメリカは景気を後退させないように高金利政策をとらない、しかし、そのままで行くと、いわば海外からの資金流入がなくなる、そのために相手国日本に金利引き下げを要求した、これができたのでアメリカにとっては大成功である。  しかし、これは選挙を控えてアメリカがますますいわば放漫財政というか、景気を為替よりも優先するおかげで、将来また必ずドルの下落になる、それはまた日本のキャピタルロスになる、こういう大きな構造があるわけです。その意味で、これはむしろ予算委員会で追及すべき大問題でございますけれども、大体ドルが今まで半分になっている。それで非常なキャピタルロスをこうむっている。それをなお追従するという。それをさらに拡大する可能性がある。もしここでアメリカが放漫財政を続ければ、ボルカーがやめてグリーンスパンになっていますから、これは誠実な男ですから、それがまた選挙の前にアメリカのこの財政を続けていけば、また日本の投資がドルの下落によって大損害をこうむるかもしれない。この点で、金利を向こうに引き上げさせなくてこちらが要するに引き下げたということは、まさに大問題ではないか。  ここはIMFの政策委員長の発言として、「そんなことをすれば、米国はゼイタクな生活を続けるだけで、貿易収支の改善など望めないので、またドル安の危険にさらされる。いま必要なのは米国のオスティリティである」という警告をしているわけです。なぜ日本はこの前の会談でもってアメリカの金利引き上げを要求せずにこちらが金利を引き下げたか。それはまたここで日銀総裁がはっきり言っていますように、米国の債券をそれでもってもう一遍買えと言っているわけですね。その結果、またそれが下落したらどうなるのだ。その点、これはもっともっと声を大にしてこの問題を取り上げるべきであると私は思います。大臣、いかがでございますか。
  108. 宮澤喜一

    宮澤国務大臣 残念ながら所見を異にいたします。  アメリカが金利を上げればいい、それは上げればいいでございましょう。しかし、上げられない事情があるわけでございますね、御承知のとおり。十月十九日に株が暴落して、これが一九二九年の再来になるかならないかということは、アメリカはもちろんですが、自由主義国家群はみんな非常な関心を持った事態であって、二九年の教訓というものは、あそこで金を締めた、金利を上げたということが後に事が大きくなったもとであったということを一様に多くの人が信じておる状況で、あの直後にアラン・グリーンスパンが言いましたように、とにかくFedはもう金融の源泉である、これは安倍委員のよく御承知のことでございますから詳しくは申し上げませんが、金融の源泉である、だれも金を取りに来いということで対応せざるを得なかった。いい悪いじゃございません、得なかったという現実があって、それが数週間続いて、ようやく事が鎮静をしている。それは、いい悪いよりは、もう一遍ああいうことが起こるということは、アメリカにとって大きな問題であるばかりでなく、あちこちにとって大きな問題でございますから、ああいうことの後遺症がなるべくないように、再発しないように、そういうことにせざるを得ない。それがよくないじゃないか、そんなことをすればますますアメリカはぜいたくになるとかわがままになるとか、それは幾らでも言うことができますけれども、現実のアメリカの政治の、あるいは政策の当事者としてはそうせざるを得なかったということだと私は思っているわけです。
  109. 安倍基雄

    安倍(基)委員 この前の株価の暴落というのがいわば一つの刺激になりまして、アメリカの財政赤字を思い切って締めようという動きになっているわけです。でございますから、要するに金利をこのまま上げないで日本の方を下げて、それでまたアメリカの国債を買うということを続けていけば、必ず大破局が来るのですね。一時的に金利が上げられなかったではなくて、今ここでアメリカが厳しい経済政策をとらなかったら、一年後には大破局が来るのじゃないかと私は思っております。金利を上げられる上げられないというのは目前の問題であって、株価というものはむしろ経済の前途に対する一つの予告なわけですね。でございますから、大臣が金利を上げられなかったと言うのは非常に短期的な見方である、むしろアメリカは今こそ厳しい政策をとらないと、一年後に大破局が来るという可能性さえあるのではないかと私は思いますが、いかがでございますか。
  110. 宮澤喜一

    宮澤国務大臣 その点について私は何とも申し上げる材料がございません。が、やはり一晩に五千億ドル株価の下落があるということは、我が国と違いまして個人があれだけ大きなたくさんの株を持っている国にとってはこれは大きな出来事でございますから、その再発をともかく防ぎたいと政策当局者が思ったことは私は無理からぬことである。安倍委員のおっしゃることは、いや、そういう対症療法をやっておれば病気の本当のところに話は行かないのであるから、かえってそういう対症療法はよくないのだ、そんなことをすれば一年後に本当に病気――本当の病気といいますか、もっとえらいことになるよとおっしゃることは、これはあるいはそうであるかもしれない、そうでないかもしれませんが、しかし、だからといって、あのときに何にもしないでほうっておけたかということが私が申し上げようとしていることであります。
  111. 安倍基雄

    安倍(基)委員 私は、今回の問題は将来必ず大問題になる。と申しますのは、六十年前のときは、株価が大暴落して、二年の間上がったり下がったり、最後に大暴落が来たわけですね。当時と現在と必ずしも同一ではないにしても、基本的にアメリカが自分の生産力以上の購買力を造出して貿易赤字を続け、それを今の海外からの資本流入で賄う、レーガノミックスを続けているうちは必ず大破局が来ると私は見ています。  その点で、今度の場合には、日本はアメリカに対し高金利を求めず、それでもって日本が逆に低金利でいくというのは、これはまさに今のヨーロッパ全体がアメリカにオステリティーを求めているときに日本は逆に――これはちょっと汚い表現で、読むのは嫌ですけれども、ともかくこれはちょっと品位に関するから読みませんけれども、大森さんは結局、米国に自粛をしてもらうことなく、レーガン政権が垂れ流した財政赤字、貿易赤字を米国債を買うということでがぶ飲みすることにした、それ以外にラテン債務のデフォルトのしりぬぐいまでさせられる、そうすると今に百二十円台が来るだろう、幾ら金余りの日本でも、大型間接税、要するにこういった増収なしでは賄い切れない、内憂外患を持ってきたんだ。  これは何も大森さんの意見にそのまま賛同するほど私はナイーブじゃございませんけれども、基本的には今回の問題につきましては、IMFの政策委員長の発言の方がむしろ正しいのじゃないか。我々が求むべきはアメリカに対するオステリティーである。私は塚本さんに言ってもらったのですよ。今度のアメリカ行きは、単に注文を受けてくるだけじゃなくて、こちらが注文をつけるべきだということを本会議の演説でも言ってもらいましたけれども、それを考えますと、注文をするよりはむしろ逆に注文をもらってくる、そのもらった注文が、最終的にはアメリカのオステリティーを十分求めないで、こちらがいわば巨大な投資をして、それがまたキャピタルロスを生む。同じパターンを繰り返す。私は、内閣が変わったときにこの経済政策をきちっと転換すべきである、変更すべきであるということを塚本さんにも言って、塚本さんから言ってもらったのですけれども、この点、今度の訪米はいわば大きな問題を残したと私は思います。大臣がもしそれに対してもう一遍反論があるならしていただきたいと思います。
  112. 宮澤喜一

    宮澤国務大臣 それは結局、アメリカが双子の赤字を解消すべきだ、そのおっしゃっていることは私は少しも間違いだと思っておりません。また、歴代首相がそういうことは機会があればアメリカの大統領に要請しておられる、それも御存じのとおりでございます。それがなかなかそういかないというのが現実であって、いい悪いは別といたしまして、そういかないときにどういう対応をしていくのかということが現実の問題なんだろうと思います。そういうことはよくないじゃないか、そんなことをしておれば病気はますます重くなるよ、あるいはそうかもしれない。しかし、一国が財政政策をあるいは貿易の収支をよそに言われてちゃんと素直にそのとおり動いてくれるかというと、おのおのが主権国家でございますからなかなかそういかぬことも安倍委員のよく御承知のとおりのことであって、そういう現実に我々としてはこういうふうに対応しておる、こういうことを私は申し上げておるにすぎないのであります。
  113. 安倍基雄

    安倍(基)委員 いずれにいたしましても、今回の金利引き下げは米国債を買いやすい状況に持っていったということでございますから、私はこの問題はかって何度も生保あるいは機関投資家があれだけのロスをこうむったのだから首脳者はやめてもいいのじゃないかということまで言ったわけでございますけれども、こういった時期に今度はむしろ政府がそれを奨励しているように思わざるを得ない。むしろ向こうの要望に従って何で下げたのか。これを見ますと、まさにベーカーの最大関心事は、要するに金利引き下げの公約を取りつけることができたらあとは何でもいいということを言ったとか言わないとか言っておりますけれども、これはこういう週刊誌にございますからどの程度かわかりませんけれども、この問題は大問題であるな、これでもってまた日本が大きなキャピタルロスをこうむり、最終的な大破局に来たときに一体だれが責任をとるのだと私は言いたいのであります。時間もございませんから、冒頭でございますけれども、この問題につきましてもう一遍皆さんに再検討していただきたいと私は思います。  二番目でございますが、今まで新型間接税についてのいろいろな話が出ました。政府税調が欧州型付加価値税が一番いいのじゃないかというようなことを言っているという報道がされておりますけれども、その辺は、政府税調がそれに似たようないわば審議というか、半ば結論ではないにしても事を打ち出し始めておるのでございましょうか。
  114. 水野勝

    ○水野政府委員 税制調査会は、本年に入りましてからは、直接税、間接税、両部会に分かれて、各論につきましての審議を行っておられるところでございます。  間接税につきまして申し上げれば、二回ほど現行間接税の現状等につきまして御審議をいただきまして、いろいろな問題点もあるというような御審議があったわけでございますが、その後は、ではどういうふうなことが考えられるかということで、現在におきましての諸外国のすべての例あるいは歴史的にいろいろ実施されあるいはいろいろな段階で議論された例、そういったものを洗いざらい取り上げまして、それを客観的に全部材料として検討をなさっておられる段階でございますので、これがよい、あれがよいというふうな御議論、そういう方向でのお取りまとめ、そういったことはまだ一切行われておられないところでございます。
  115. 安倍基雄

    安倍(基)委員 今まで例の公約を守るのか、あるいは発言を守るのかという話がございました。それはもう既に議論されておりますから私はその細部に触れないつもりでございますが、これからの議論のときに考えていただきたいことが一点あるわけです。  私自身大蔵出身でございますけれども、前回の売上税が案になったときに、吉野君のところに行きまして、これは残念ながら賛成できないとはっきり言ったのです。君との友情はある、大蔵出身で、大蔵がこの間接税を導入したいという気持ちはわかる、しかしこれはまずいということをはっきり言ったわけです。私自身が野党の中の理論武装の一人となったわけでございますけれども、簡単に申しますと、そのとき問題になったのですが、転嫁できるかできないかということが一番の問題である。いわゆる最終段階で消費者が買うときにちょっと払うということなら長期的にいわば取引の過程を通じて少しずつ転嫁できるけれども、各段階で払うというのは、日本の経済構造が生産においても非常に多段階である、よく二重構造と言われますけれども、流通においても多段階であるということがある。となりますと、それぞれの段階にメスを入れて、私はあのときも宮澤大臣だと思ったのですけれども、多段階的なものの間に全部メスを入れると必ず血が出る。大きいものが小さいものにそれを押しつけてしまう。それはきちっと次の段階に転嫁するわけにはいかない。つまり、いろいろな段階がありまして、大きな企業が小さな下請なりなんなりにそのコストをのめ、あるいは合理化でもって吸収しろという話に必ずなりやすい。流通においても大小さまざまのいわば企業がある。それは大きいのが小さいのにそれを押しつけるという過程が必ず出る。転嫁の問題が一番大事だ。  でございますから、日本の場合に、私は通産に中小企業の数を調べさせたのですが、中小企業で働く労働者の割合がほかの国に比べて非常に大きいわけですね。しかも流通あるいは生産段階は非常に複雑である。これを簡素化しなければならないのだとおっしゃるならそれも一つの考え方かもしれませんけれども、そこで食べている人間が大勢いるわけですよ。でありますから、今我が党は不公平税制を是正し行革をやれということを言っておりますけれども、最後に考えるのだったら、やはりアメリカの州税的な、いわば消費者と直結した、消費者が本当に負担することがはっきりする段階での間接税ではないかなということを私はしきりと言っておるのでありますけれども、これはこれからいろいろ皆様が議論される過程で、これは別に民社党を代表して言っているんじゃないので、民社党の政策担当者の一人として私が内部で言っているわけでありますけれども、この点をもうちょっと日本の制度とアメリカの制度、つまり欧米の制度と――例えば皆さんも御承知のようにフランスなんかは取引高税がずっとあってそれを合理化する形で付加価値税が出てきたわけですから。しかも、今ちょっとここでいただいた資料を全部言うわけにいきませんけれども、本当に長年月をかけて、日本のように多段階的ではない形で生産、流通ができている。  でございますから、多段階が悪いと言えば別ですけれども、それで食っている日本の現状を見ますと、いわばこの付加価値税というものは、私はここで聞きたいのですけれども、税調で、中小企業における労働者がどのくらいいるかとか、大企業はどのくらいいるかとか、あるいは生産、流通段階でどのくらいの階層があるのか、それは欧米と比べてどう違うんだという議論がどの程度なされているかということをむしろ今お聞きしたいわけでございますけれども、いかがでございますか。
  116. 水野勝

    ○水野政府委員 そのあたりの点につきましては、一昨年夏から秋にかけましていろいろ税制調査会で検討が行われました際に、企業規模別の業態でございますとかそういったものは検討がされた経緯があるわけでございます。今回、先ほど申し上げました現状の御審議をいただき、その上に立ちまして考えられるもろもろのタイプを今取り上げられて御検討に入った、どのような視点からされるか、これは今後の税調の御審議進展いかんでございますが、御指摘のような点も含めて検討がなされるのではないかと予想されるところでございます。
  117. 安倍基雄

    安倍(基)委員 何かもう時間がないもので、土地問題、税制問題やろうと思ったんですけれども、ちょっと何人か呼んだところのあれを言おうと思います。  円高関連しまして、円高差益の還元というのはいつも言われるわけでございますけれども、私は昭和六十一年の十一月に当大蔵委員会で、日本航空が自分らの経営のときに要するに一体どういうレートで計算しているのかということを質問したことがございます。そのときにたしか一ドル二百八十円くらいの数字を言ったと思いますが、これはそのころのレートはもっともっと百円台になっていたと思いますけれども、現在こうなっているときに、今日本航空が使用している円ドルレートはいかがでございますか。
  118. 圓藤壽穂

    圓藤説明員 お答え申し上げます。  国際航空運賃につきましては、変動相場制に移行しましたのは昭和四十八年でございますが、それより前の段階では一ドル三百六十円ということで換算いたしまして日本発の運賃を設定しておったというのは事実でございます。しかしながら、変動相場制に移行しますと、それで固定しておりましたのでは毎日運賃が変わるということになりますので、これは非常に不便であるということになりまして、発地国の航空企業の費用をベースとして発地国の通貨建てで設定されるいわゆる発地国通貨建て主義というのが国際的に採用されるに至っております。したがいまして、それ以降我が国の国際航空運賃につきましても、主として本邦企業、日本航空でございまして、日本航空の費用を勘案して円建てで設定されるということで、先生御指摘のように、あらかじめ何かドル建てとか何かのほかの換算のもので立てられた運賃があってその運賃を換算レートで円に直して計算しているわけではございません。もともと日本円で計算しておるわけでございます。  ただ、前回私の前任者の課長が御答弁申し上げましたのは、例えば東京からニューヨークに行きまして、ニューヨークからロンドン、こう行くというお客さんがおりました場合に、例えば東京からロンドンまで運賃は四十万五千円ということでございます。これは、例えば東京からニューヨークはJALが運んだ、それからニューヨークからロンドンはほかの航空企業が運んだといたしますと、この四十万五千円というのをどういうふうに分けるか、案分するか、精算をするかというときに、精算のためのレートといたしまして一ドル二百九十六円に通貨調整率を掛けるわけでございまして、大体二百二十円とか二百三十円程度のもの、掛けたものを使用しておりました。  こういうことになりますと、何か我が国発の国際航空運賃の設定に二百九十六円というレートが用いられているのではないかという誤解を生ずる、そういう誤解を生ずることは決して好ましいことではございませんので、運輸省といたしましては日本航空を強力指導いたしまして、昨年の九月IATAの会議におきましてその廃止を、FCUという一ドル二百九十六円とかそういう一つの単位を用いるわけでございますが、そういう制度を廃止いたしまして、そのかわりに米ドルの実勢レートを用いるということにいたしたものでございます。
  119. 安倍基雄

    安倍(基)委員 時間もございませんから余りあれですけれども、本会議でも塚本委員長が、向こうで買ったらこんなになるということを随分言いました。円高、つまり円高メリットの享受という面で何でいつまでもこういうことであるのか。簡単に言いますと、結局寡占、独占、そういう要素があると必ずそういう問題になるわけです。これはフリードマンの説じゃないですけれども、いろいろないわば自由を妨げる要素があることがこういった円高メリットをみんなが享受できないということにつながるわけです。その面で公正取引委員会の話を聞こうと思ったのだけれどもきょう時間もございませんからそれはやめておきますし、それから土地問題あるいは地方税と交付税の問題はまた次の懸案にしておきますから、一応きょうは、さっきの米国との関係、それから税制の問題、これで質問は終わります。     〔大島委員長代理退席、委員長着席〕
  120. 越智通雄

    越智委員長 次に、矢島恒夫君。
  121. 矢島恒夫

    矢島委員 大臣は引き続き大蔵大臣を担当され、きょうのこの委員会は竹下内閣が誕生いたしまして通常国会における最初の委員会ということですので、幾つかの点について確認させていただきたいわけなんです。  と申しますのは、本委員会は何といいましても財政金融全般にわたっていろいろと審議していくという極めて重要な委員会であります。私が申し上げたいのは、本委員会のこの審議を大いに尊重してもらいたいということなんです。とりわけ税制改革の問題等は国民生活に極めて重要なかかわり合いを持つ問題です。徹底審議をしていかなければならない。広く国民の理解を得るためにはそのことが極めて重要だと思うのです。そういう意味からいたしましても、本委員会における質問、意見等について、今までも大臣そういうように取り組まれてきたと思いますけれども、明確にはっきりとお答えいただきたい、意味不明のないようにひとつお願いしたい、これが一つです。  それからもう一つは、私たちこういう徹底審議をしていく上において大蔵省の各担当部門に資料をいろいろと要求するわけですが、要求された資料につきましてはできるだけ速やかにひとつ提出していただきたい、こう思うわけなんですが、この点について大臣
  122. 宮澤喜一

    宮澤国務大臣 申し上げるまでもないことでございますが、私ども大蔵省の者にとりましては当委員会はいわば私どもの省務の所管をしていただく委員会でございますから、その御審議に対しましては誠心誠意私どもの全力を挙げまして協力を申し上げ、またお尋ね等につきましてはお答えを申し上げ、提出できる資料は提出をさせていただく、そういう心構えでおります。
  123. 矢島恒夫

    矢島委員 私がなぜこのことを一番最初に申し上げたかといいますと、昨年の百九国会のことを私考えたからなんです。あの百九国会のときには、先ほども堀委員の方からも触れられましたが、税制協の問題、私その問題を蒸し返すつもりじゃないのですけれども、委員会での質問に対して、ただいま税制協の方で御審議願っておりますのでというので一向に重要な問題について御答弁いただけない、肝心なことが抜けてしまうために審議ということが進まない、こういう事態があったことは大臣も御案内のとおりだと思うのです。私たちに言わせれば私的な税制協という機関のやっていることが大蔵委員会審議を拘束するというようなことは、まさに議会制民主主義の点からいっても重要な問題ではないか。二度とそういうようなことにならないことを私は要求するわけですが、大臣、この点いかがですか。
  124. 宮澤喜一

    宮澤国務大臣 ただいまのお尋ねは、昨年税制改革協議会が議長のごあっせんでできまして、あの場で各党、共産党の場合は別でございましたが、いろいろ税制について御協議をなされることになりました。その進行の途中の段階で私どもがその先をあれこれ申し上げるということは非常に行政府としては控えなければならないような事態に現実に立ち至りまして、したがって、御答弁でそういうことを申し上げるのはいかにも私どもも申し上げづらいのですけれども、事実がそうでございますのでそう申し上げざるを得なかった。そのことは、どうもそれ以外の方法はございませんでしたが、お聞きになられる方もきっと不快に思われただろうということは私どもわかっております。ただ、あの協議会そのものは院において議長のごあっせんででき上がったものでございますので、そのこれからの運営、これからのあり方について私どもはかれこれ申し上げるべきものではないだろうと思っております。
  125. 矢島恒夫

    矢島委員 いずれにいたしましても本委員会を重視して十分この審議が尽くせるような状態をつくってもらいたい、このことを申し上げて質問に入りたいと思いますが、この所信表明全般について、基本的な考え方から四つの柱、六十三年の予算の大要等補正予算も含めましてあるわけですが、時間の関係ですべての分野にわたってお尋ねするわけにまいりませんので、財政問題と税制問題二つに絞ってちょっとお聞きしたいと思うわけです。  財政の問題ですけれども、六十一年度、六十二年度と比較的税収の伸びというのが著しかった。この税収の伸びについて、大臣、どんな理由でこうなったかということをちょっとお聞きしたいのです。
  126. 水野勝

    ○水野政府委員 六十一年度におきましては、秋の補正の段階で一兆一千億円減額補正をいたしたところでございますが、結果といたしましてその後補正予算をかなり上回りました増収が生じ、決算額におきましては二兆四千三百六十八億円の剰余額となったところでございます。  ただ、この結果としての数字、この税収の伸び率を当年度の経済成長率と比較いたしますと、その伸び率は二・一倍になっております。これは、私ども税収弾性値と称しておるものでございますが、十年平均とりましておおむね一・一ということでございます。二・一というのは、戦後こういう数字をとりまして以来最大のものであるとともに、通常の平均値の約二倍になっている。こうした数字というのは、我が国税制の構造からいたしますとかなり異例なものである。したがいまして、この六十一年度の姿と申しますのは、もろもろの特殊な要因が作用いたしましてこのような伸びが実現されたのではないか。また、六十二年度におきましても、そうしたいろいろな特殊な事情というものはなお若干尾を引いてございますので、六十一年度、六十二年度、こうした年度の税収の動向というのは、それまでの傾向からいたしますとやや異常なような感じがいたすわけでございます。
  127. 矢島恒夫

    矢島委員 きょう「中期的な財政事情仮定計算例」という資料をいただいたわけなのですが、六十五年度までこの見込み額が書いてあるわけですけれども、大臣、六十五年度になりますと、五十兆一千八百億の五十兆台に乗っていくような形での税収ということで見込んでおるわけです。今後の税収見込み、これについてのとりわけこの財政事情仮定計算という中における御感想を承りたいのです。
  128. 宮澤喜一

    宮澤国務大臣 仮定計算は、実は文字どおり仮定計算でございますので、かなり機械的な要素を多く含んでおりまして、むしろ体験的に申し上げた方がよろしいと思いますが、今の六十一年度の税収の伸びというのは、主税局長が申し上げましたが、いわば一過性と思われる要素がかなりあったと思います。  一つは、土地が非常に上がりましたものですから、相続税が大きくなったとかあるいは個人の譲渡所得がふえたとか、それから株式の取引も相当多うございまして有価証券取引税が非常に大きくなった。それから、法人の昨年の三月期の決算というのも、営業収支ではかなり苦しかっただろうと思っておりましたら、いわば金融収支といいますか、財テクといいますか、そういうもので決算されたところが少なからずある。いずれもそれらはやや一過性のものであったと思いますので、その後の税収の見積もりのときにそれは排除して考えなければならないのでございますが、期待しておりますのは、この六十二年度、今の年度でございますが、これはそういう一過性の要素でなく、経済がやや正常に動き始めておりますので、それが税収になって出てきてくれることをいわば期待をしている。ただいままでのところ六十二年度の税収はまずまず悪くないと思っておるのでございますが、一番大きな部分は三月の法人でございます。これは見てみないとわからないのでございますが、今までのところ悪くない。その上に六十三年度の経済の運行がまずまず普通であればある程度の税収が期待ができて、そして節約を進めていって六十五年度の特例公債をゼロにしたい、こういうふうな考え方をいたしております。
  129. 矢島恒夫

    矢島委員 その六十五年度特例公債ゼロという一つの目標について非常に大きな役割を果たしているのがNTT株売却益の問題があろうかと思うのですね。六十一年に値決め二十万でしたか、値づけで十万株ありましたが、結局百六十五万株売却された。それから六十二年度につきましては百九十五万株全部を、あれは二百六十四万ですか、ただ三・五引きますのでもうちょっと低くなって二百五十五万くらいになるかと思いますが、こういうことで売却されてきた。  ところで六十三年度ですけれども、きょう「国債整理基金資金繰り状況等についての仮定計算」という資料をいただいたのですが、三兆八千億円というこれについてはどういうような形で、株数は百九十五万だと思うのですが、株の値段などどういうふうにして決めておられるのか。
  130. 斎藤次郎

    斎藤(次)政府委員 これにつきましては六十三年度の予算では六十二年度と同様まず百九十五万株を売らせていただくという前提を置いておりまして、株価につきましては、発売後一カ月間の市況の実績二百四十七万円を使いまして、それに安全率ということで〇・八を掛けた価格を使用しているわけでございます。
  131. 矢島恒夫

    矢島委員 これは一株お幾らだったのですか。一株お幾らを見込んでいらっしゃいますか。
  132. 斎藤次郎

    斎藤(次)政府委員 二百四十七万円ということでございますが、安全率八割を掛けておるわけでございます。
  133. 矢島恒夫

    矢島委員 二百四十七万円ということでございますけれども、きょうの終値、NTT二百二十九万円だったと思うのですけれども、いずれにいたしましても、この株の変動というのがいろいろと考えられるし、先ほど大臣のお答えの中にもありました一過性の中での税収増というのもこれありますが、景気が割合と上向きになってきている、こういう部分を期待する、こうおっしゃいました。いずれにいたしましても、そういうように不安定要素もあるわけで、六十五年赤字体質脱却というのは極めて厳しいということは大臣もちょくちょく言われているのですが、ひとつ六十五年赤字体質を脱却する決意のほどをちょっとお伺いしたいと思うのです。
  134. 宮澤喜一

    宮澤国務大臣 それは結局昭和六十三年度の経済運営が大体政府の思っておりますようにいくかどうかということになるわけでございまして、国内的にはそう難しい問題がなくて済むのではないかと思いますが、この節は何分にも国際的な外からの要因がいろいろにございますもので、それに適当に対処していく必要がございます。やはりそれだけ経済運営が複雑になっておると思うのでございますが、結論としてまあまあの経済運営ができますと相当の税収の期待もできまして、したがって六十五年度に今の、要するに一兆五千億円余りずつを落としていけばいいわけでございますので、それはいわばかなり現実性を帯びてきたというふうに考えておりますし、ぜひそういたしたいと思っておるわけでございます。
  135. 矢島恒夫

    矢島委員 時間がありませんのでまた次の機会にこれらの問題については質問させていただくといたしまして、今の大臣の御答弁をしっかりと承っておきたいと思います。  次に、税制問題についてお伺いしたいのですけれども、政府税調の現在の状況はどんなふうなところにあるか、ちょっとお聞かせいただけますか。
  136. 水野勝

    ○水野政府委員 税制調査会は任期三年でございまして、先年十月でもってそれまでの税調が任期満了となりました。十一月に新しく選任されたわけでございまして、十一月十二日内閣総理大臣から諮問を受け、十一月、十二月と総会ベースで十数回審議をいただいてきているところでございます。その間、途中六十三年度税制改正につきましても若干の御審議をいただきましたが、基本的には、諮問を受けました対象でございますところの税制改革抜本的改革につきまして御審議を願ってまいったところでございます。  年が明けましてからは、二つの特別部会を設けまして、それまで続けてまいりました全体的な審議を踏まえまして、直接税部会、間接税部会に分かれ、各論に入りまして、それぞれ現行税制をまず一わたり御検討いただき、その上に立ちまして少しずつ今後の方向につきましても御審議に入られる段階にございます。  しかしながら、なお現時点におきましては総論的な御議論と現状につきましてのいろいろな御検討ということでございますので、具体的な方向といったものは現在のところ特段のものはおまとめになっているところではないというふうにお伺いをしているところでございます。
  137. 矢島恒夫

    矢島委員 ところで、その政府税調のことなんですが、昨年の七月でしたか、二十五年間政府税調の委員として、とりわけ最近の十二年間は会長代理というような形で奮闘されておりましたあの木下和夫さんですね、この方、大変長い間政府税調の中での中心役割を果たされたと聞いておるのですけれども、大臣、この木下さんについてどのようにお考えになっていらっしゃいますか。
  138. 水野勝

    ○水野政府委員 委員お話のございましたように、木下委員は会長代理として長らく御就任をいただいておったところでございますが、先ほど御議論もございましたように、こうした政府審議委員と申しますのは兼職の数が限られているところでございまして、その後いろいろな審議会の要職におつきになるということから一つ超過をするということもございまして途中でおかわりになったというふうな事情ではないかと思います。
  139. 矢島恒夫

    矢島委員 その木下和夫さんがこういうことを言っていらっしゃるのですね。これは日経の一月十一日の新聞ですが、「政府税調の性格はまったく変わってしまった。かつては税理論の分かる人たちが国の税体系をどのようにするかを議論する場だったが、今では利害関係者と素人の集まりに過ぎなくなった。」そしてさらに、「税制の本質的な論議はとうてい期待できない。」これは木下さんの発言ですが、政府税調というものが自民党税調の追認機関じゃないかとか言われたり、あるいは今度の税調のメンバーは大型間接税賛成者を集めたのじゃないかとか、いろいろなことがちまたでは言われておりますけれども、その点についてひとつ大臣の御感想を。
  140. 水野勝

    ○水野政府委員 税制調査会、現時点での税制調査会が発足いたしましたのは昭和三十七年でございますか、その当時と現時点での委員の構成、そういったものを拝見いたしますと、発足当時は産業界でございますとかそういったところからの代表といった方がむしろ多かったような感じがいたします。その後、消費者団体でございますとか労働組合でございますとか、それから女性の委員も極力ふやしていただくとか、いろいろ時代の要請とともにその構成も変わってきているように見受けられるところでございます。それぞれにおきまして各界の有識者として内閣総理大臣から任命をされておる。特段大型間接税の問題を焦点として選任がされているというようなことは当たらないのではないかと私どもは考えておるところでございます。
  141. 矢島恒夫

    矢島委員 いずれにしろ、そちらではそう考えていると言われるのでしょうけれども、この木下和夫さんの指摘は当を得ているのではないかと私は思います。  ところで、先ほどの所信表明の中にもございましたけれども、「最近の社会経済情勢等に即応して、当面早急に実施すべき措置を講ずることとし、」という、これは政府税調の答申の中にも出ている言葉だと思うのですけれども、そういうことから考えて、今国民が早急に求めているものは何か。大型間接税の導入ではなくして、土地の高騰の中で、相続税が高くて払い切れなくて困っている、こういう現状で、この相続税を何とかしてくれというのが当面国民が早急に求めている問題ではないかと思うのですね。莫大な相続税が課せられた、そのために土地を売って相続税を払った、ところが今度は譲渡所得税がまたかけられてきた、また土地を売った、残ったのは結局借金だけだった、こういう例がたくさんあるわけなんですね。  首都圏である埼玉県もこの都心の地価高騰の影響を受けて大変な状況にあるわけですけれども、私の住んでいる川越市では、一月二十二日国税庁が発表いたしました最高路線価が六二・九%アップした。実勢価格でいきますと、一平方メートル当たり百万円を優に超えている状況にある。所沢市の方では、もう一〇〇%最高路線価が上がっている。一平方メートル当たりでいきますと、実勢価格で五百万とも言われているのですね。こういうことに早く手をつけるべきであり、相続税の課税最低限だとかあるいは配偶者控除等の大幅アップを今こそやるべきではないかと思うのですが、この点について大臣の御見解を。
  142. 宮澤喜一

    宮澤国務大臣 今の相続税は昭和五十年に決めてほとんどそのまま動いておりませんものですから、やはり十年以上たちますと、それは考え直すべきであったと思うのでございますけれども、殊にその後に急に土地の上昇がございましたから、今おっしゃいましたようなことが生じてまいりました。ただ、今度のこの抜本改正、所得、消費、資産という事柄を考えてまいりますと、やはり資産の中心になりますのは相続税でございますので、これをこの抜本改正から除いてバランスのとれた税制をつくろうということがいかにも無理であるし、難しい。そこで、抜本改正の中へこれを加えさせていただいたわけでございます。  そうではございますけれども、今矢島委員の言われましたように、現実の土地の上昇は早く起こっておって、そして何どきにも相続というものは起こるものでございますから、抜本改正の成立を待ってそれから新しい制度を発足させるというのではいかにもそれは現実に合わないのではないかということも私ども実は感じておりまして、それならばそこをどのようにすればそのような状態の救済にもなるかということはぜひ考えまして法律の上で御審議をいただきたいと思っておるのでございます。  ただ、もう一つつけ加えさせていただきますならば、そういう問題は深刻な問題でございますし、大きな土地でなくて本当に親と住んでいて自分の代になって売らなきゃならぬというようなことは避けたいことでございますけれども、ほかの人々から言いますと、それだけ土地を持っているのはやはりうらやましい、そういう見方は確かにないわけじゃございませんものですから、その辺のこともいろいろ考えておく必要もあろうかと思います。  いずれにしましても、抜本改正で御審議をいただこうと思っておりますが、その際には、現実に起こっております事態にどう対処するかということはあわせまして御検討いただきたいと思っております。
  143. 矢島恒夫

    矢島委員 現実に合わせてという部分なんですけれども、新聞報道によりますと、実際に税制の抜本改革ができるのが秋だと言っている人もいますし、いろいろな話がございますが、ことしの一月一日にさかのぼってそれを適用するようにしたいというのがあるのですが、この点についてはどうなんでしょうか。
  144. 宮澤喜一

    宮澤国務大臣 それを今何とも申し上げにくいのでございますけれども、従来路線価が大体一月一日現在で改定をされておりますものですから、過去においてそういうことを参考にしてさかのぼった例はございます。ただ、今回どういうふうにすべきかは、ひとつもう少し検討させていただきたいと思っております。
  145. 矢島恒夫

    矢島委員 また次の機会にいろいろとお聞きしたいと思いますが、もう一つなんですけれども、先ほど来ほかの委員からもいろいろと指摘されているこの所信表明の中にあります「国民各界各層の御議論等を拝聴しつつ、国民の納得が得られるような」というこの部分ですが、今所得あるいは消費、資産のバランスということでした。どうも私たち聞いていて、この大型間接税導入のゴールを決めておいて、御意見を拝聴するとか納得のいくとか、こういう論議をやっているというようにとれるわけなんですよ。大臣は常々拙速は厳に慎むべきであるというような発言をされているわけで、秋までには決着をと言ったのは別の大臣でございますので、そういう点からしますと、やはり大臣が言われているように拙速を厳に慎んで、そして慎重審議するということ、これは言うまでもないことだと思うのですね。  そこで、この税制改革関連法案ですけれども、大臣、いつごろ国会に提案するつもりでいらっしゃるのか、それをちょっとお伺いしたい。
  146. 宮澤喜一

    宮澤国務大臣 私が申し上げておりますのは、やはり社会が老齢化する前にこういうものは広く薄く国民がみんなそのときに備えて社会の共通の費用を負担していただける方法を今から考えておくべきだ、そのことは、また同時に、国際的にも所得税も法人税も非常に高うございますので直間比率の是正にもなる、ここまでのところはやはりそうさせていただきたいとはっきり思っておるのでございますが、そのためにはどのような間接税ならば国民が受け入れていただけるかということは、昨年ああいう体験をいたしておりますだけにこれはもう二度と失敗を繰り返すことはできない、こう思いまして、私どもの党の方の税調も、国民に対して、昨年はどこが我々は悪かったか、どういうことであれば受け入れていただけるかというようなことをできるだけ国民の御意見を聞きたい、それに時間とエネルギーを費やしたいと思っておりますし、政府税調も無論そうでございますので、したがいまして、政府税調がこの案ならばといっていつ結論をお出しになるか、正直のところ予断ができないのが今でございます。そのような意味で、先般院に対しまして政府提出の法律案の中でこの税制の抜本改革関連は検討中というふうに報告をさせていただきましたのは、まさにそのままを申し上げたわけでございますので、明確にただいま申し上げることはできないというのが事実でございます。
  147. 矢島恒夫

    矢島委員 時間ですので最後の質問になるわけですが、大臣御案内のように、現閣僚の中で十六名の方が、それから自民党の衆議院議員の八割の方が、あの同時選挙のときには大型間接税反対と言われて当選していらっしゃった。百八国会では、そういう状況の中で公約違反の大型間接税反対だということで廃案になった。そういう経過から考えてみましても、今七タイブを税調に示されたようでございますけれども、いずれにいたしましても、今言われているのは、非課税品目を少なくするとかなくすとか、あるいは非課税業者も年収限度を下げるとかいろいろ言われているわけですけれども、いずれにしろこの大型間接税を導入するということは公約違反だ、この点を私たちは強く感ずるわけなんですが、大臣、この点についてはどんなふうにお考えですか。
  148. 宮澤喜一

    宮澤国務大臣 先ほども申し上げましたし、また本会議で総理大臣が何度か答弁をしておられるわけでございますが、やはりそういうことを申し上げて、それに背馳しないようなものとして昨年国会に売上税法案を御提案いたしたつもりでございましたが、それがああいう結果になりましたことは、私どもにとっては非常に大きなショックであります。深刻な反省をいたしておりますが、国民の側におかれても、なるほど問題はあるのかもしれないなというような程度の認識はかなりの方が持っていただいたようです。  それならば、そういう状況の中でどういうことであれば国民に納得していただけるのかをもう一遍原点に立ち返って探究をいたしたい、国民におかれてもそれについて私どもにお考えを示していただきたい、こういうのがただいまの政府の態度でございます。
  149. 矢島恒夫

    矢島委員 時間ですので質問を終わりますが、原点というのは先ほど問題になった点でございますので指摘しておきまして、終わります。
  150. 越智通雄

    越智委員長 次回は、公報をもってお知らせすることとし、本日は、これにて散会いたします。     午後八時九分散会