運営者 Bitlet 姉妹サービス
使い方 FAQ このサイトについて | login

1988-05-11 第112回国会 衆議院 商工委員会 第12号 公式Web版

  1. 会議録情報

    昭和六十三年五月十一日(水曜日)     午前十時開議  出席委員    委員長 渡辺 秀央君    理事 甘利  明君 理事 尾身 幸次君    理事 奥田 幹生君 理事 田原  隆君    理事 与謝野 馨君 理事 奥野 一雄君    理事 二見 伸明君 理事 青山  丘君       麻生 太郎君    石渡 照久君       小川  元君    古賀 正浩君       佐藤 信二君    島村 宜伸君       玉生 孝久君    中川 秀直君       中山 成彬君    額賀福志郎君       福島 譲二君    宮下 創平君       粟山  明君    森   清君       谷津 義男君    山崎  拓君       伊藤 忠治君    小澤 克介君       緒方 克陽君    小林 恒人君       城地 豊司君    関山 信之君       石田幸四郎君    森本 晃司君       薮仲 義彦君    米沢  隆君       工藤  晃君    藤原ひろ子君  出席国務大臣         通商産業大臣  田村  元君  出席政府委員         通商産業大臣官         房長      棚橋 祐治君         通商産業大臣官         房総務審議官  山本 幸助君         通商産業大臣官         房審議官    末木凰太郎君         通商産業省通商         政策局次長   吉田 文毅君         通商産業省貿易         局長      畠山  襄君         通商産業省産業         政策局長    杉山  弘君         通商産業省基礎         産業局長    鈴木 直道君         工業技術院長  飯塚 幸三君         資源エネルギー         庁石油部長   内藤 正久君         特許庁総務部長 林  昭彦君         運輸大臣官房審         議官      金田 好生君         郵政省通信政策         局長      塩谷  稔君         建設大臣官房審         議官      青木 保之君  委員外出席者         経済企画庁調査         局内国調査第一         課長      土志田征一君         農林水産大臣官         房審議官    須田  洵君         農林水産省構造         改善局農政部農         政課長     野田 哲也君         運輸省港湾局技         術参事官    御巫 清泰君         建設省道路局道         路経済調査室長 橋本鋼太郎君         商工委員会調査         室長      倉田 雅広君     ───────────── 委員の異動 五月十日  辞任         補欠選任   石渡 照久君     武藤 嘉文君   海部 俊樹君     近藤 鉄雄君   佐藤 信二君     小沢 辰男君   中山 太郎君     加藤 紘一君   額賀福志郎君     稻葉  修君   城地 豊司君     永井 孝信君 同日  辞任         補欠選任   稻葉  修君     額賀福志郎君   小沢 辰男君     佐藤 信二君   加藤 紘一君     中山 太郎君   近藤 鉄雄君     海部 俊樹君   武藤 嘉文君     石渡 照久君   永井 孝信君     城地 豊司君 同月十一日  辞任         補欠選任   中山 太郎君     中山 成彬君   穂積 良行君     谷津 義男君   小澤 克介君     伊藤 忠治君   水田  稔君     小林 恒人君 同日  辞任         補欠選任   中山 成彬君     中山 太郎君   谷津 義男君     穂積 良行君   伊藤 忠治君     小澤 克介君   小林 恒人君     水田  稔君     ───────────── 四月二十八日  異常円高による産業空洞化防止等に関する請願工藤晃紹介)(第二〇七七号) 五月十日  異常円高による産業空洞化防止等に関する請願工藤晃紹介)(第二五五八号)  同(佐藤祐弘紹介)(第二五五九号)  同(藤原ひろ子紹介)(第二五六〇号) は本委員会に付託された。     ───────────── 本日の会議に付した案件  特定産業構造改善臨時措置法を廃止する法律案内閣提出第五九号)  民間事業者能力活用による特定施設整備促進に関する臨時措置法の一部を改正する法律案内閣提出第六〇号)(参議院送付)      ────◇─────
  2. 渡辺秀央

    渡辺委員長 これより会議を開きます。  内閣提出特定産業構造改善臨時措置法を廃止する法律案並びに民間事業者能力活用による特定施設整備促進に関する臨時措置法の一部を改正する法律案の両案を議題といたします。  これより質疑に入ります。  質疑の申し出がありますので、順次これを許します。緒方克陽君。
  3. 緒方克陽

    緒方委員 二つ法案について、時間がありませんので端的に質問を申し上げていきたいというふうに思います。  民活法では、事業をやることによって国内経済の浮揚、内需拡大に非常に役立つという観点からの宣伝もいろいろありましたけれども、実態としてはなかなかそう思うようには進んでいないというのが今日の現状であろうかと思いますが、そういう中で一体具体的にどう手だてをするのかということが、今や必要な時期ではないかと思います。  そこで、まず最初に、民活法による直接投資どもかなりあるということで国会では議論がされ、政府としての考え方も出されているわけです。百四回国会政府答弁では、内需拡大に役立つとして約一兆四千億円の直接投資があって、関連の設備、施設まで含めると六兆円から七兆円になるというのが政府側答弁として出されているわけであります。ところが百八国会では、なかなか進まなかったということで八百億円くらいになるということになったわけです。しかし、今日の現状はどういうふうに進んでいるかということで一番新しいところで調べてみましても、十八の施設認定をされて、総額は七百四十二億、単純に十八で割ったとしても四十一億ということにしかならないわけでございまして、こういうことでいくと八千億というのは、直接投資がそんなに、後七年しかないわけですが期待できるのか、一体八千億というのは達成できるというふうに見ておられるのかどうか、その辺についてお尋ねします。
  4. 杉山弘

    杉山政府委員 ただいま御指摘のございましたように、これまで認定済みプロジェクトにつきましては、直接投資額総計で七百億円余りでございます。認定は昨年の後半以降かなりピッチが上がってまいりまして、今各省庁が把握いたしております今後認定申請に及ぶものを含めまして、かなり計画が具体化しつつあるものを全部含めますと、その直接事業費は約五千六百億円、こういうような数字を私ども得ているところでございます。  ただ、それにいたしましても、昨年本法の改正の際に御答弁申し上げました八千億円という数字からしますとまだ少ないわけでございまして、八千億円が完全に達成できるという見通し現時点で持つことはなかなか難しゅうございますけれども、御案内のように、NTT株式の売り払い収入を原資といたしました無利子融資制度といったものも新しく助成制度として加えられたこともございますので、これからまた新しいプロジェクト計画等も進められると思いますので、全体として内需振興が叫ばれておる折でございますので何とか事業規模拡大するようにいたしたいと考えておりますし、そういう観点から今回も新しくまた施設追加お願いしている、こういうような状況でございます。
  5. 緒方克陽

    緒方委員 八千億なかなか達成できないからというようなことも含めて、新しい十一施設の問題があるようなことも出たわけでございますが、当初は一兆四千億から、現時点では五千六百億ということで大体三分の一強ですか、そういう状況でありますが、これらの見通しはやはりきちんと立てた上でないと、今後の政策執行にいろいろ問題があるのではないかということで、そういう数字を出す場合には慎重に検討してもらわなければならぬと思いまして、この点についてはそのことだけ申し上げておきたいと思います。  二つ目ですが、経企庁はお見えでしょうか。そこで、内需拡大に非常に役立つということで民活が評価されているわけでありますが、経企庁昭和六十三年度に出されました「日本経済現況」というのがありまして、これは経企庁調査局が出された本であります。もちろん、この本は前段と後段に分かれて、百十五ページ以降は課題、分析研究だというふうに言われているわけでありますが、これが公表されたものですから、ことしの一月十日の日経新聞でありますけれども主要民活事業で生産が一兆二千億円誘発ということである、そしてGNPも年〇・三五%拡大をするというふうに言われているわけであります。  そこで、その中身をよく読んでみますと、もちろん調査研究資料でありますけれども、その数字はやはり明確に正しい根拠に基づいて出してもらわないと、新聞に〇・三五影響があるのだということになれば、国民はそう思ってしまうわけです。ところが、この中で見ますと、百七十七ページでありますが、民活は「構想全体としては総額十兆円とも言われているが、十月現在認定済みのものとしては十件(四千億円強)に止まる。」ということです。四千億円強にとどまる根拠は一体どこにあるのかということで注釈がありますが、そこでは「民活法関連プロジェクトのうち六十二年十月現在認定済のもの及び六十三年度までに認定の確度が高いもの(MM21等)」ですね。これは横浜のものですが、これなどを選び出して算出根拠をやったということです。  ところが、いわゆる民活というのも何億円規模から何百億円規模まであるわけでありまして、横浜のものは二百億円ということで大きいものです。それを出して平均するものですから四千億円ということになっているわけです。ところが、実際には十八認定されたとしても、結局七百億円強という数字でありますが、経企庁のところはそこらを何か適当に都合のいいものだけ、単価の高いものだけ出してそれの平均で出すというようなやり方をして、〇・三五GNPが押し上がるのだというようなやり方をするというのは、数字を最も大事にする経企庁としてはいかがなものかというふうに言わざるを得ないし、その四千億円が例えば一千億円に下がったとすれば、GNP寄与率は〇・三五ではなしに〇・三三とか〇・三二とか、それぐらいの数字に下がってくるわけでございます。  たとえ研究資料ということにしたとしてもその数字根拠は明確なものでなければ、新聞発表されてしまうと、これは数字として生きていくわけでありまして、そういう根拠の薄いやり方でいかにも民活経済に寄与するのだというようなやり方をされるということについては、非常に問題があるのではないか。経企庁というのは最も数字を大事にし、根拠を大事にすべきだというふうに思うわけでありまして、こういう発表もされていることはもう本があるわけですから事実でありますが、このことについて、やはり今後経企庁としてはこういったことがないようにしてもらわなければ困るというふうに思うわけでございまして、そこらについてお答えを願いたいと思います。
  6. 土志田征一

    土志田説明員 お答えいたします。  先生御指摘資料は、おっしゃいましたように六十三年版の「日本経済現況」のうち、参考資料の形で個人研究論文を掲載したものでございます。そこに掲げられた数字でございますが、四千四百億円という数字は、ここの分析の目的が民活プロジェクト経済効果分析するということでございましたので、既に認定された民活法関連プロジェクト事業費よりも広い概念で、第一にはさらに認定される可能性があるもの、それから民活法に基づく認定を受ける特定施設以外の事業、そういうものを含めて、関係省庁で昨年の末の時点でどのように考えておられるかということを伺いまして、それを合計した数字になっております。したがいまして、民活法認定された部分よりは定義として広くなっておりますが、その点、文章表現上その辺の注意書きが不十分でございまして、その点では、個人論文ではございますけれどもどものチェックの不行き届きを痛感しているわけでございます。  なお、経済効果GNPに対する影響につきましては、この民活法関連部分だけではなくて、大規模プロジェクト効果も含めて、それも含めた形で大きな数字になっているかと思います。  以上でございます。
  7. 緒方克陽

    緒方委員 弁明みたいな言葉がありましたけれども、「MM21等」ということで、じゃその「等」というのは何と何かということを聞きましたら、根拠がはっきりしないわけですよ。五億円のものと二百億円のものを一緒にして、二百億円のものが基準でやるなら高くなるのは当たり前でありまして、これは経企庁というのは、明らかに認定をされたものを、そしてあるいは出すなら平均的で、平均的では四十一億ぐらいになるのですよ。そういうやり方をしないと、何かいかにも夢がありそうだという感じでやってもらっては困るということで、そこは今後十分注意してもらいたいということでありますので、時間の関係がありますから、今後十分注意してもらいたいということだけ確認をしておきたいと思います。  次に、この事業で非常に大きな役割を果たします基本指針の問題ですね。一〇八国会で昨年審議をいたしまして成立をして、六月には法の公布がされているわけでありますが、しかし肝心の大臣がつくる基本指針が出されたのは、八号施設については六十三年の三月三日ですか、そして七号施設については三月の十八日ということでありまして九カ月もたっておるわけで、年度末ぎりぎりだからもうどうしようもないということで出されたというふうに思うのですが、片一方では急げ急げと言いながら、政府自体政府内部作業のおくれでそれが進まないということになっているわけで、非常にこれは遺憾なことだというふうに言わざるを得ないと思うのですが、そのおくれた理由とそのおくれた責任ということについて、一体どう感じておられるのかということについてお尋ねいたします。
  8. 杉山弘

    杉山政府委員 御指摘のとおり、昨年の法改正追加をしていただきました七号施設、八号施設につきましての基本指針の公示が本年の三月になってしまっております。全体として内需拡大のための民活施設の設置の促進ということが必要な段階でこういう事態になりましたことにつきまして、まずまことに申しわけないことということでおわびを申し上げなければいかぬと思っております。  若干言いわけめくわけでございますが、七号施設につきましては、これからの国際化情報化に必要な施設ということで、その施設要件の決定をいたします原案作成に手間取りまして、また八号施設につきましても、外国企業外資系企業に対します要望の調査等に時間を要しまして原案作成がおくれたということのほかに、またこれらの施設要件といいますのが租税特別措置法上の特別償却要件にもなるものでございますから、財政当局等との折衝に時間がかかってしまったという結果でございますが、いずれにいたしましても政府部内での原案作成なり調整なりに時間をとったということで、この点につきましては冒頭に申し上げましたようなことでまことに申しわけなく、その責任を痛感をしている次第でございます。今後は、こういうことのないようぜひやらしていただきたいと思っております。
  9. 緒方克陽

    緒方委員 そこで、これからもまた十一施設がプラスをされるということになるわけですね。これでも、一般の場合でも二省庁にまたがる場合があるということで、またもや同じような轍を踏むということについては非常に問題があるのではないかということで、これはおくれないように努力するというふうに言われましたから、それはされると思います。  それと同時に、申請をしてくる第三セクター、自治体その他がいろいろ作業する場合に二カ所、通産省にも行かなければならぬ、郵政省にも行かなければならぬ、どっちで調整をするのかということでおくれるような面もあるのじゃないか。確かに二省庁にかかわるということでやられているかもしれないけれども、何かここらのところは、これはこの問題だけじゃなしに全般的な政府所管で二省庁にまたがる場合の作業の問題で、簡単にいくかどうかわかりませんが、しかし申請する側とかそういうところを考えれば、どちらか一本が窓口になって、そしてあと政府部内で調整しますよ、二カ所もあっちこっち行くようなことをしないで済むような、そういう一本化の方法というのは何らかないのかということについてお尋ねをいたします。
  10. 杉山弘

    杉山政府委員 お尋ねのように、施設によりましては複数主務大臣がございますので、申請者の側からいたしますとそのために大変手間がかかるのじゃないか、また各省庁連携が不十分なために時間がかかってしまうのじゃないか、こういう御心配でございまして、まことにごもっともだと存じております。ただ、そうかといいまして、どちらか一方の省庁だけを直接の窓口としてということもなかなか難しい点がございますので、この点につきましてはうまく関係省庁との間の連携を図るということがまず基本になるのかと思っております。  そういう意味では、現在民活関連をいたします五省庁課長レベル連絡会をつくっておりまして、問題がありますとその連絡会を開いてここで協議をするということになっておりますし、また複数大臣主務大臣になっております場合には、当然のことながら個別の認定ということではなくて共同して認定をするというような、手続面簡素化ということも考えていかなければならないと思っております。  いずれにいたしましても、省庁複数にまたがるがゆえに申請者の方に御迷惑をかけるということがあってはなりませんので、その点については私ども、御指摘を十分踏まえましてこれから注意をしていきたいと思っております。
  11. 緒方克陽

    緒方委員 今そういう御答弁ございましたので、ぜひこれは実際問題として何か考えられないかということで、簡素化については十分政府としても検討していただきたいというふうに思います。  次に、特定施設追加の問題で、十一施設が今回追加されるわけですが、もう三年連続して、まあ六十一年は法案の新しい成立ですが、昨年もことしもということでこの法案改正審議がされているわけでありますが、昨年も、この種のものがその都度ふえてくるのではないか、そういうことはないのかという問いに対して、今回二施設追加するけれども、また同じような構想が出てくるたびに追加するのか、これは対象施設については法律で決めるということになっているので、またその都度法律改正お願いするというのは恐縮だということで、今回の改正では十分その点につきまして配慮して今のところ追加は見当たらない。確かに言い逃れはあるわけですが、毎年毎年、昨年も改正してことしも改正で、どうも今の模様では五千六百に到達しなければまた追加かというような話もさっき出たのですが、そういうことについてはそのたびに法律改正というのはどうもおかしいんじゃないか。今のところ見当たらない、将来にわたってということであれば、大体に、三年くらいはないというのが常識だと思うのですけれども、今回こういうことになっているわけでありますが、また来年も改正があるということになるのかどうか、その辺をお尋ねいたします。
  12. 杉山弘

    杉山政府委員 確かに御指摘のように、前回法律改正お願いをいたします際には、その時点で、新しくさらに追加するということについてはお願いをしなくて済むのではないかという見通しを申し上げたわけでございます。  これも言いわけめいて甚だ恐縮に存じますが、実は前回法律改正の際にもいろいろ御指摘がございまして、民活については助成措置というのがこれでは不十分じゃないか、こんなことで民活施設整備が進むのか、こういう御指摘もございました。政府総合経済対策の一環として、NTT株式の売り払い代金を利用いたしました無利子融資制度、これが地方民活の場合には全体の五〇%の融資率で行われるというような、かなり画期的な助成措置が導入をされましたので、それをきっかけにいたしまして新しい民活施設整備計画というのが各地で持ち上がってまいりまして、それが今回追加お願いをしております十一の施設ということになったわけでございまして、そういう助成措置の拡充ということがございましたが、前回申し上げました見通しに反するようなことになってお願いするということは甚だ心苦しいわけでございますが、来年度以降どうなるのかということにつきましては、これは現時点で断定的なことを申し上げるほどまだ私ども調査も充実をいたしておりませんが、これから地方公共団体を通じまして、この十一の施設以外に新しい民活施設にふさわしい施設整備計画等があるのかどうか、この辺につきまして地方状況等十分調査をした上で考えたいと思っております。  ただ、毎回法律改正お願いするということも甚だ恐縮でございますので、実は今回改正の際に、法律施設特定、列挙せずに政令委任をして追加するという道がないものかということも事務的に検討させていただいたわけでございますが、政令委任ということになりますと、委任の範囲というものを法律上はっきりさせなければいけない。ところが、民活施設といいますのは新しい公共的性格を持つ施設でございますので、その限界というものを今の段階であらかじめ明確にするということもなかなか不可能だということで、検討はいたしましたが、現時点では政令での追加指定というのは難しいということで断念をした経緯もございますので、あるいは先ほど申し上げました調査の結果として追加お願いせざるを得ないというような場面があり得るかとも思いますが、これはこれからの調査の結果ということにいたしまして、現時点で断定的なお答えを申し上げますことは差し控えさせていただきたいと思っております。
  13. 緒方克陽

    緒方委員 しかし、毎年毎年というのもいかがなものかというふうに思います。これは去年も言われているようでありますけれども施設法律の中で特定するということになっているから、それを移すというのは一体国会の権限との関係でどうなのかという問題もあるのもわかりますが、しかし何かいろいろな名前のものをたくさんつくるということだけでやるのじゃなしに、何かもっと大きな枠の中で、絞りの中でできるようなものでやらないと、もうしょっちゅう法律改正で、そのことだけで議論というふうになるんじゃないかということで、これはいろいろな意味で御検討お願いしたいというふうに思います。  次に、予算の問題です。先ほど質疑で明らかになったように、政府自体基本指針の策定がおくれたということなどもあって、通産省の方にお聞きしましたら民活特定施設緊急整備補助金、いわゆる補助金ですけれども、これが実際には全然消化されていない。六十一年度三十三億ですか予算を組んで、四千万円を使っただけであとは全部返納されたということで、六十二年度の約十五億円もまだ全然使われていない、六十三年度もまた十四億円組まれているわけですけれども。結局、何でそうなったのかなあということであります。  去年の改正では、杉山局長が「財政当局との間では六十一年度及び六十二年度に着工されたものに限る、むしろ」ここが大事ですが、「むしろ前倒し促進するという観点から決めたもの」であり、現在のところ二年間で終了したいということで、前倒し景気回復ということでやられたわけですが、実際には政府自体基本指針ができなかったということで作業が進まなかったということになるわけで、ここらは何か見通しに甘さがあったのではないかなということが一つ。  それから、六十三年度まで、ことし確かに予算がついております。ところがまた、今はもうずっと認定が進んできましたからいいのですが、六十三年度に間に合わなかったというところが六十四年度の初めに出てきた場合には一体どうなのかという問題が、また起きてくると思うのです。そこらについては一体どういうふうになるのかということで、その二点をお尋ねいたします。
  14. 杉山弘

    杉山政府委員 民活施設整備に関します補助金の使用状況が進んでいないという御指摘はまことにそのとおりでございます。これにつきましてはいろいろな事情があるわけでございますが、先ほど冒頭に御指摘のございましたように、法律制定当時には直接事業規模で一兆四千億円ぐらいのプロジェクトがある、こう申し上げていたわけでございますが、何せ民活施設整備という新しいプロジェクトでございますので、その計画の具体化ということになってまいりますとそう簡単にはいかなかったこと、それからまた第三セクター方式を使うというようなことで、民間及び地方公共団体の出資者の間での出資比率の問題、さらには一般的な経済情勢の悪化で、特に地方における民活プロジェクトについては進捗に支障が生じたというような問題もありまして、具体的な認定申請に及ぶプロジェクトが非常に少のうございました。  先ほども答弁申し上げましたように、昨年の後半以降かなりピッチが上がってまいりました。ただ、それにいたしましても、この補助金は土地取得費とか土地の整備費とかといったようなものは補助対象になっていないということでございますので、実は数カ年にわたる工事期間の後半の方に補助対象金額が膨らんでくるという性格のものでございますから、そういうことでこれまで六十一年度、六十二年度につきましての補助金の使用状況というのが非常に悪かったわけでございますが、私ども六十三年度につきましてはかなりその実績が上がるものというふうに期待をしておるところでございます。  また、六十四年度についても延長することになるんじゃないか、この点はどうか、こういうお尋ねでございますが、この補助金制度はやはり前倒し施行という観点からつくりましたもので、当初六十二年度までの着工のものにということでやってまいりましたが、例外的にこれを六十三年度まで延長させていただくということをお願いをしたわけでございますが、これをまた六十四年度も前倒しお願いせざるを得ないというような事態というのは、私どもとしてもちょっといかがなものかなという感じを持っておりまして、現時点では、六十四年度についての延長ということについては私ども事務的な感じとしては否定的に考えたい、こういうふうに思っているところでございます。
  15. 緒方克陽

    緒方委員 前倒しをということでやっても実際はなかなか進まないということでありまして、そこらで何かずるずるというのではどうもおかしいのではないか。やはり一定のけじめをつけてやるというふうにしないと、では六十四年度もまた出なかったから六十五年度かということで、二年も三年も延びていくというのはどうかというふうに思いますから、そこらは一定の考え方をきちっとすべきではないかなというふうに思いますので、そのことだけ御意見として申し上げておきたいと思います。  次に、組織と運営についてであります。資料で調べてみますと、十九のうち十四ですか、これが第三セクターということになっているわけでありまして、運営面では民間の持つ創意性とかあるいは機動性というものが十分生かされるということになっていかなければならぬということが、今までの議論ではなかったかというふうに思うのです。そこで、認定済み民活プロジェクトの第三セクターの常勤役員の一覧表を見てみたのですが、民間出身が四十三名に対して官出身、役所なり市役所、県と思いますが、それが十九ということであります。それで、大阪テレポートというのを実態をお聞きしましたら、民間が六で官出身が六だということで、非常に高いのではないかということで調べてみましたら、これは何か大阪テレポートを進めているいわゆる会社自体の役員がそういうことだということで、テレポート自体の役員が六、六ということではないということがけさわかりましたので、郵政省の説明は大体わかったのですけれども、聞きましたら、つくば支援センターに通産省から一人、それから富山市民プラザは二人、富山市民プラザは民間出身はゼロで官出身、これは役所のようですけれども二人ということのようです。  それで、これはこの設立の趣旨からすると、やはり機動的に動くということになれば、官僚とかその他の役所の天下りの場所にするというのは余りよくないのではないかなと思います。それで、富山のことを私も実態もわからないのにいろいろ言えませんが、民間がゼロで非常勤でたくさんいるということですが、しかし常勤がやはり実権は握るわけですよね。そういう意味で、一概に言えません、数字だけ見た感じですけれどもどうかなという気がするのですが、そこらに対する考えと、運営については、せっかくできたわけですけれども、うまく運営されていくようにするためにはいろいろな配慮というものが必要だと思います。そこらについての基本的な考え方があれば、当然必要だと思いますが、そこらについてお尋ねをいたします。
  16. 杉山弘

    杉山政府委員 御指摘のございましたように、民活施設整備、運営につきましては、当然のことながら資金的な面だけ民間活力を使うということではなくて、経営能力と申しますか、そういったソフトの面においても民間の活力を十分利用させていただくということがベースになるものだと思います。そういう意味におきまして、私ども計画認定いたします場合に、施設整備基本指針の中におきましても、民間における実務経験を有する者を積極的に登用するということが義務づけられているわけでございまして、その点について各プロジェクトごとに十分認定をさせていただいております。  先生御指摘のございましたように、プロジェクトによっては常勤役員の中に民間出身者がなくて官出身者だけのケースもあるじゃないか、これは確かにそのとおりでございますが、例えば富山の場合でまいりますと、これは常勤役員が二人で、その二人が富山市出身の方、こういうことになっているわけでございます。常勤役員の数が二でなくてもっと多くすることが可能ならば、その中に民間の方々も十分入っていただくことが可能だったのではなかろうかと思いますが、恐らくこのあたりは経営上の問題があって、常勤役員は極力絞るという方針があったのかなという感じもいたします。  ただ、非常勤の役員としては、先生も御指摘ございましたように、私どもとしてはこのほかに民間出身の方がかなり参加をしておられると思いますし、会社の運営は、そういった非常勤の役員を含めて基本的な方針というのは役員会、取締役会等で御決定になるはずでございますので、そういう基本的な施設の運営等につきましては民間の方々の経営ノーハウというものを十分に使わせていただき、実務者として実際の仕事をやっていく者につきましては、御指摘のような官出身者が経済的な状況からこれに当たらざるを得ないというようなことになりましても、全体としての効率性が損なわれることがあってはならないと思いますし、そういう観点から我々これからも、各プロジェクトごとに十分民間の経営能力が使われるような方向で指導をしてまいりたいと思っております。
  17. 緒方克陽

    緒方委員 そこで、いろいろ今まで議論してきまして、せっかく法律ができたけれども、確かに三年目ですからそんなに即々とはいかないということはわかりますけれども、できたからにはそれがうまく運営されなければならぬという面もあるだろうし、政府自体責任も大きいのじゃないかということで、六十三年度の追加施設にかかわるプロジェクトが十七施設あるわけですが、また六十一年度と同じようになってはいかがなものか、問題があるのじゃないかということで、今日まで私が指摘しましたような、あるいは今までの国会議論になってきたような問題点がないようにしていかなければならぬというふうに思うわけですが、新しい十七施設認定見通し、それからこれに取り組むに当たっての大臣としての見通しなり決意といいますか、そういうものをお聞かせいただきたいと思います。
  18. 田村元

    ○田村国務大臣 今回の法改正追加お願いしております特定施設は、いずれも経済社会の基盤の充実に資するものでございます。民間活力を活用して、そしてその整備を図ることがふさわしい重要なものというふうに考えております。  通産大臣であります私としましては、こうした特定地域に合致して地域の活性化に資するプロジェクト民活プロジェクトというものが各地で企画立案されて、実現に向かって動き出すことを強く期待いたしております。特に、六十三年度より、地方における民活プロジェクトの推進のためにノーハウの蓄積とか人材の育成を図るための講習会を実施することとしておりまして、こうした支援を通じまして、これまで民活事業の起こっていなかった地域、民活事業を求めるに至っていなかった地域につきましても、民活プロジェクトの発掘がなされるように努力してまいりたいと思っております。いずれにいたしましても、民間の活力というものが、それこそ太平洋にインキを落とすような効果ということよりは、やはりその地域に非常に強い活力として活性化を促していく、これが必要でございますから、そういう点でやはりどんどんと各地域において発掘をしていただきたい、それに通産省も全面的に御協力を申し上げたい、このように考えております。
  19. 緒方克陽

    緒方委員 そういうことで大臣としても取り組んでいくという御決意でございますので、そういうことでお聞きいたしました。  それで次に、産構法について二、三質問をしたいと思います。  これは石油関連の今後の展望の問題でありますが、今回法が廃止をされますけれども、既に石油関連のエチレンなどは六十二年から六十三年度当初にかけて指定対象から外されているわけでございます。ところが最近、お聞きしますと一部国内からもということでありますが、アジア諸国から生産増強の要請もあって、産構法によって休止した設備を再度復活しているところもあるというふうに聞いております。しかし、これからの石油関連の全体の展望を見た場合には、IJPCと同じころ始まったサウジ石化とかシンガポール石化ももう動き出しておるわけでありますし、またNICS関連もだんだん動き出していく。そういうことになると、競争面でまた大変厳しい状況が出てくるのではないかということで、再び生産過剰というようなことでまたもや、これから何年後かには構造調整をしなきゃならぬということもあり得るのではないか。そういう場合、この法律はなくなっていくわけでありますけれども、そういうことが想定されないのかどうか、そこらについてはもっと慎重にあるべき点もあるんじゃないかという気がいたしますが、その辺についての考え方をお願いします。
  20. 鈴木直道

    ○鈴木(直)政府委員 御指摘のとおり、石油化学は産構法下におきまして約二百万トンの設備処理を行いました。これは三〇%を超える設備処理でございますが、これは実は我が国だけではございませんで、アメリカにおきましてもヨーロッパにおきましても同様に設備処理が行われております。石油化学は、例の石油危機以降、世界的なリストラクチャーに見舞われまして、これは各国がそれをやったということは非常に大きな効果を持ちまして、現在の需要拡大とマッチいたしましていい環境をもたらしているわけでございます。  したがいまして、現在の石油化学産業は、その過程、プロセスにつきましては十分認識をしているわけでございまして、今回御指摘のように、産構法下の指定の解除以降、一部の休止設備につきましてそれの再稼働の動きがございます。現在、私どもが届け出を受けております再稼働能力は約四十五万トンでございまして、その半分ぐらいが既に動いておりますけれども、昨年の生産水準は約四百七十万トン程度でございましたので、約一〇%に当たる再稼働の動きということでございます。私どもの方の設備稼働状況調査によりますと、現在ほぼフル稼働でございますので、この一〇%程度の能力増は、むしろ需要に見合った生産という観点からいきますと、望ましい方向ではないかと考えております。  しかし御指摘のように、東アジア地域におきまして約三百万トン近い能力増の計画がまさにございます。ただ、その地域は今後とも需要が伸びる地域でもございますので、その地域の内需に見合ったような形で拡大してまいりますと全体的な需給バランスに影響はないかと存じますけれども、その過程におきまして当然ながら景気変動がございましょうから、日本の化学工業がそういう点につきましても十分配慮した今後の計画は考えていると存じております。私どもも内外の経済情勢、特に化学工業の需要業界の動向等につきましての情報を十分産業界に提供いたしまして、彼らの自主責任に基づく今後の経営という面につきましては十分寄与してまいりたい、かように考えておるわけでございます。
  21. 緒方克陽

    緒方委員 わかりました。そこで、この石油関運でIJPCの問題についてお尋ねをしたいと思います。  これは私、ずっとまだ象の足ぐらいしかさわっていないということで、過去国会でも勉強させていただいておりますが、昨年の八月ですか、保険の申請の前段の手続、まあ保険申請と事実上同じだと思いますが、そういうのもされております。そこで、このIJPCの現状はどうなっているのか。また、貿易保険の申請がなされたということでありますけれども、その後の手続、取り扱いといいますか、そういうものはどうなっているのかということについてお尋ねをします。
  22. 吉田文毅

    ○吉田政府委員 先生御指摘のIJPCプロジェクトでございますが、日本とイラン両国の友好関係のシンボルといたしまして、これまで我が国政府としましてはできる限りの支援をしてまいってきたところでございます。しかしながら、本プロジェクトは、イラン・イラク紛争の中で被爆をするなど不幸な状況のもとにございまして、現時点では、工事再開につきまして見通しを得ることができるような状況にはございません。
  23. 畠山襄

    ○畠山政府委員 御質問の後段の保険の申請状況等についてでございますけれども、貿易保険、これは投資保険等でカバーをしておるわけでございますが、その申請自体はまだ出ておりません。出ておりませんが、昨年の八月の二十六日に海外投資保険につきまして、被保険者でございますイラン化学開発株式会社が保険約款に基づきましていわゆる危険発生通知書というものを出しました。これは保険契約期間が一部、それから間もなくして切れるというようなこともございましたものですから、他方、イラン・イラク戦争による被爆の状況どもございまして、プラントに被害があったということも一応想定されたものでございますのでそういうものが出てきたわけでございまして、私どもとしてはその被害の実情がわかりませんし、むろん企業の方も保険の申請は出てきておりませんが、一応被害が出たという通知書といいますか、そういうものが出ておるという状況でございます。
  24. 緒方克陽

    緒方委員 それで、危険発生通知書が八月二十六日に出たわけですが、それは局長、一部が出て、それからまた次々と出てきているということなのかどうかということと、この前の委員会のときにも、いろいろな見方がありますけれども総額的にはどれぐらいのものになるのかということで、多分この前出たと思うのですが、再度質問で申しわけございませんけれども、保険の対象額というのがどれぐらいになるかということで、この場でわかればお願いしたいと思います。
  25. 畠山襄

    ○畠山政府委員 保険契約が幾つかに分かれておりますので、その期限が参りますと、基本的には被害があればその危険発生通知書というのが出てくるということでございます。投資保険につきましては今申し上げましたように八月二十六日に出た、こういうことでございます。  それから保険総額でございますが、これは一応個別の案件の保険がどれぐらいあるかということは申し上げないことになっておりますので、余り具体的な点は御勘弁いただきたいと思いますけれども、それに若干関係しますあれといたしまして、この事業投資金額でございますが、それは三千二百億ということになっております。
  26. 緒方克陽

    緒方委員 三千二百億のうち幾ら保険にあるかということでございますが、ちょっと後の質問との関連で時間がございませんので、その点は後ほどまたお聞きをしたいというふうに思います。  この貿易保険に絡んで、最近いろいろな新聞に載っておりますが、ハイリスク型の導入ということで貿易保険制度自体を見直そうということで、特にリスクの高いところの国などに対する新しい保険の問題とか、それから、それに対応するためには当然保険料率のアップが必要だということで、現在四%を七%ということで大体七五%引き上げるというようなことが新聞報道でも出されているわけで、五月十七日に審議会で承認というような記事が出ておるわけです。  それで、この問題については一般質問でも、あるいは昨年でしたか、輸出保険法の改正の際にもいろいろ質疑がされてきておりますし、私も質問をしてきているわけですね。IJPCなどの大変なものが事実上、近い将来この貿易保険に影響してくるのではないかということで大変だ、それから赤字国からのリスケジュールなどで非常に保険が窮屈で特別会計からの借り入れも膨大になっているということで、一体これで大丈夫なのかということを再三にわたって質問をいたしました。政府側からは、リスケジュールはあくまでもリスケジュールであって、後で必ず入ってくるから問題はないというふうに答弁されておりますね。そして、その後また、戻らない場合は準備金なり資本金等で賄っていきたいということで答弁があって、それでも大丈夫かという質問をしたときに、保険料などもあるからというような答弁をされております。言うならば借金なり資本金等で、あるいはできないときには保険料でということですが、保険料は通常いつも入ってきているわけですね。  私に言わせれば、そういうことで大丈夫だ、そういうふうに政府側答弁されているわけですけれども、現実には一年たった今日、まあ昨年の暮れぐらいからですが、貿易保険審議会では新型保険の新設を含めて料金の大幅アップが議論されている。七五%もアップされるということであります。もちろん日本が貿易黒字国で、何らかのいわゆる途上国あるいは債務国に対しての一定の役割を果たさなければならぬということは私もよくわかります。わかりますが、しかしこれに影響するであろうIJPCなどの問題、これは非常に政府責任が私はあると思うのですけれども、そういう責任が明確にならないまま保険料率だけがアップされていく、その料率だけの問題で解消されるような気がしてならぬわけですね。そこら政府責任は一体どうなっているのかということで、私としては非常に疑問に思うわけでありまして、審議会が今開かれているようですが、明らかにできる限りの現状と、それからやはり政府責任というものが私は明確にあるというふうに思うわけですね。七五%アップをするということだけで済まされる問題ではないというふうに思いますが、その辺についてはどういうふうにお考えであるか、お答えをお聞きしたいと思います。
  27. 畠山襄

    ○畠山政府委員 まず、御指摘審議会の審議状況でございますが、おっしゃいますように、昨年十二月以来、特に今御指摘の資金還流に関する貿易保険の役割というところに焦点を置きまして貿易保険審議会で審議をいただいているわけでございます。  その基本的な問題意識は、一九八七年末に発展途上国の累積債務が一兆一千九百億ドルになったということでだんだんふえてきているわけでございますが、他方、我が国は黒字でございまして、九百億ドルを超えるような黒字というようなことでございますものですから、内外から資金還流、特に累積債務国を中心とする発展途上国に対する資金還流の要請が強まっているわけでございます。なかんずく、政府の方では二百億ドルあるいは三百億ドルとも言っておりますが、その資金還流計画をやっておりますけれども、あるいは財政的な限界もございますものですから、民間資金を還流することが大事だという問題意識がございまして、それにはやはり貿易保険でリスクをある程度カバーしながら民間資金を還流していくことが大事だという状況になってきているわけでございます。具体的にも、フィリピンでございますとかメキシコでございますとか、リスケジューリングなんかをやります際に、最近ではそのリスケジューリングの金利を特別に安くしてあげるとか、そういう形で経済協力的な色彩も込めた保険の運用になってきているわけでございます。  他方、御指摘のようにIJPC等もございますし、それからリスケジューリングで返ってくるべきお金が返ってくる期限が伸びていくという問題もございますので、保険会計の収支は非常に厳しいものがございます。今御指摘の、昨年来の国会で御審議いただきました際に私ども申し上げましたのは、そういうリスケジューリング等は、基本的な考え方としては、それはその相手国という国のことでございますから、やがては返ってくるものなので、とりあえずは資金運用部なら資金運用部からの借り入れでもし返ってこないときはつなぐのでございますということで、ただ、その間やはり準備金とか資本金とかそういうものを使いますし、それから保険料収入なんかも制度的にはございまして、そういうもので賄っていくということを申し上げたわけでございます。  緒方議員は、それは政府側としては大丈夫だと申し上げたというふうにおとりいただいているようでございますけれども、私どもとしては、絶対に大丈夫と申し上げたつもりはございませんで、制度的に準備金もあり資本金もあり、また保険料収入もございますということを申し上げて、あの時点では保険料のアップをするかどうかは決めていなかったというのが実情でございます。しかしながら、それから一年有余を経まして、今日ではやはり保険料のアップも、先ほど申し上げましたような民間資金の資金還流という要請にこたえるためにも保険料のアップもまた検討せざるを得ないという状況になってまいりまして、御指摘数字そのままかどうかは格別といたしまして、ある程度の保険料アップをお願いせざるを得ない状況になってきているというふうに、私ども事務的には判断いたしております。  ただ、御指摘のように、審議会でそれをせっかく御検討いただいている最中でございますので、今決めてはおりませんが、ある程度値上げをしなくちゃいかぬだろうと思っております。ただ、御指摘のようにそれを民間の負担だけでやっていくということは余りよくないと私どもも考えておりまして、政府としても財政基盤の樹立のために何かできることがないか、もっと十分考えていくべきだということで、これは今審議会の中でも、その点についても御検討いただいておるということでございます。
  28. 緒方克陽

    緒方委員 今、民間の資金還流ということでありますが、貿易は中小企業その他も含めてこれから活発にやっていかなければならぬという中で、そこだけに求めるというのはやはり私も非常に問題があるのじゃないかということで、貿易保険全体の管理を責任を持っている政府としては、そこらについては今御検討いただいておるということですが、政府自体の中でもそういう問題についてもやはり積極的に検討して審議会等でも提起をしていく、そういうことが必要ではないかと思いますので、そこらを十分考えていただくようにお願いいたしまして、私の質問を終わります。  どうもありがとうございました。
  29. 渡辺秀央

    渡辺委員長 続いて、城地豊司君。
  30. 城地豊司

    城地委員 私は、特定産業構造改善臨時措置法を廃止する法律案、いわゆる産構法を廃止する法律案について、いろいろな角度から質問をし、政府の考え方をただしたいと思います。  今回、この産構法を廃止する法律案を提案するに当たって、この提案理由の中に、この法律によって例えば過剰設備の処理については当初の目標がほぼ達成された、また事業提携、原材料・エネルギーコスト云々ということについては大きな成果が得られたというように述べられておるわけでございます。したがって、昭和五十三年に特定不況産業安定臨時措置法、いわゆる特安法、そして五十八年に産構法、そして昨年さらにそれらとの関連も含めて円滑化法の制定がされたということでありますし、国内の産業構造転換等々にこれらの法律が果たした役割は非常に大きかったというふうに私も思いますし、また政府もこの法律案を中心にして産業構造の関係、さらには各種の事業の集約化・共同化等々、産業全般にかかわる問題について非常に大きく力を注いでこられたと思います。  まず、そういう意味合いで、この今回廃止の産構法の果たした役割をどういうふうに評価をされるか、総括的にお答えいただきたいと思います。
  31. 杉山弘

    杉山政府委員 産構法の果たした役割について総括的にどう評価するか、こういうお尋ねでございます。  これにつきましては、昭和五十八年に先生御指摘の特安法の改正ということで産構法が成立をいたしまして、以来対象にいたしました業種が二十六業種ございますが、主として法律がねらっておりました構造的な設備過剰状態の解消という点につきましては、昨年の九月の段階調査では、対象業種平均で設備処理目標に対して御指摘のように九六%、また三月の時点で改めて調査をいたしておりますと目標処理量の九八%の達成率ということになっておりまして、設備処理の面では相当効果があったと思われますし、また事業提携等につきましても、相当多数の提携案件を公正取引委員会と十分協議をした上で認めております。また開銀融資、さらには税制上の特別措置によります活性化投資促進ということにつきましてもかなり見るべきものの成果がございまして、そういったことの結果として、二十六業種のうち既に十三業種につきましてはこの法律の指定業種から外すという状態になっておりまして、経営状態も全般的に見てまいりますと相当大きな改善を図ることができたというふうに思っております。残っております十三業種につきましても、この法律の存続期限でございます六月末までの間適用対象ということにさせていただきますれば、ほぼ所期の目的を達成し得るものではないかというふうに考えておるわけでございます。  なお、最近の円高によりましていろいろ問題を生じている業種というものもまだこの産構法の対象業種の中にはあるわけでございますが、こうした新しい事態によって困難に対応しているものにつきましては、先生御指摘の昨年成立させていただきました産業構造転換円滑化臨時措置法によりまして、各企業の個別の自主的判断によりまして設備処理等所要の構造改善を進めていく、こういうふうにしてまいりたいと考えているところでございます。
  32. 城地豊司

    城地委員 具体的な関係について、続けて質問いたします。  構造改善の実施状況の中で、今お答えがありましたように設備処理等の状況については九六%昨年で達成し、そしてことしの三月では九八%、さらに事業の集約化・共同化、原材料・エネルギー対策、製品の多様化及び技術開発の状況、そして債務保証、融資及び税制の利用状況等々広範にいろいろな施策がやられてまいったわけでございますが、特に債務保証等々の関係で担保解除資金、資料によりますと七件で八十四億円、退職金関係で十四件で百六十三億円、日本開発銀行の融資約三百十二億円、これは化学産業関係の低利融資だと思います。税制の関係で四十五件。この総体的な資金の関係で見ますと、今全体的に非常に成果が上がったということと裏腹の関係で、件数も少ないし金額も少ない。どうしてこういう件数とこういう金額の少ない中で、例えば設備の処理がおおむね九八%も終わったのか、さらには事業の集約化や共同化、それらが大きな成果を上げたのか、若干理解に苦しむところがあるわけでございますが、それらの点での御見解があればお聞かせをいただきたいと思います。
  33. 杉山弘

    杉山政府委員 ただいまの御指摘は、開銀融資なり債務保証なりといった資金のフローの面での産構法で用意した対策の利用状況が非常に少なかったではないか、それなのに全体として設備処理がうまく進んだというのはどういう理由によるのか、こういうお尋ねであろうかと考えるわけでございますが、私どもも、実はどちらかといいますとうれしい誤算と申しますか、当初はもっと金融面では、特に債務保証等の利用は大きくなるのではないかというふうな考えも持っていたわけでございますが、実績は今先生が申されたとおりでございます。  この原因はどこにあるかということになってまいりますが、やはり一番大きな原因は、この産構法の適用期間を通じて日本の金融情勢というのが全般的に極めて緩和された状況にあったというようなことが背景にございますし、それから先ほど私から、経営状況も非常に改善をされたと申し上げたわけでございますが、これは設備処理等が進んだことのほかに、やはり何と申しましても二度目の石油ショック後の原油価格の高騰というのがその後の状況から見ますと価格が下がってまいりまして、そういった原油価格の低落等による影響、こういったものも非常に大きかったのだろうと思います。こういった面からの企業の経営状況の好転というもので、債務保証を中心とした資金面で私どもが用意をいたしました助成措置の利用状況というのが割合に少なかった、こういう結果になっているのではないかと考えているところでございます。
  34. 城地豊司

    城地委員 今のお答えで、構造改善の実施状況が、法律によっていろいろ手当てをしようとした、そのこともプラスに作用したのでしょうが、金融の緩和とか石油価格の下落というような言うなれば追い風があって、それで全般的にそういう構造改善が成ったということでございますが、先ほどもちょっと触れられました最近の円高の状況によって、今度六月三十日でこの法律は切れるわけでありますけれども、まだ十三業種あるということでございまして、最近の円高その他の状況で経営が非常に低迷している業種もあるのではないかというふうに思います。そういう業種はどういう業種なのか、またその理由はどうなのか、そしてこれらの対策は、こういうことで改善をしていけばこうなるというような、大まかな見通しがあればお聞かせをいただきたいと思います。
  35. 杉山弘

    杉山政府委員 先ほど総括的な評価の段階で申し上げましたように、これまで産構法で二十六業種を対象にやってまいりましたが、その大部分がおかげさまで業況がかなり好転をいたしておりますが、そうした中にございまして、御指摘のように一部の業種につきましては、最近の円高によりまして依然として業況が低迷しているというものがございます。その業種、どういうものがあるかと申しますと、化学肥料関係それから合金鉄関係、こういった業種にそういう状況が見られるわけでございます。  この理由は、これらの業種につきましては、最近までの円高等によりまして輸入品が大幅にふえておりますし、一方、逆に我が国からのこれらの製品の輸出というものが大幅に減少をする、さらには安い輸入品が大量に入ってくることによりまして市況が大幅に低落する、こういったような状況になっているかと考えるわけでございます。したがって、こういった業種につきましてはなお構造改善のために対応が必要かと思われますけれども、必要な業種につきましては、この法律が切れました後も産業構造転換円滑化法で、従来のように業種全体として設備の処理計画をつくって共同行為の指示をして設備処理をする、こういうようなことではございませんが、むしろ過剰設備を抱えている業種に属する企業が自主的な御判断のもとに設備処理をして新しい事業分野に転換をしていこうという場合には、産業構造転換円滑化法がそのためのお手伝いをし得ることになっておりますので、この対象設備として指定することによりまして、これからの対応についても政府として何がしかのお手伝いを申し上げる、こういうことが考えられると思います。これまでのところ、例えばセメントでございますとか合成関係の幾つかの業種につきましては、従来産構法でやってまいりましたが、新しく構造転換円滑化法のもとで個別企業の自主的判断に基づく事業転換というような構造改善を進めておられるものもありますので、そういったようなことでやってまいる業種も出てまいるかと思います。  それ以外に、法律の適用対象ではございませんけれども、例えば設備能力が急速に過剰にならないように設備投資に関する情報を公開するとか、需給見通しについて審議会等で一定の情報を提供するとか、そういったよりソフトな方式で対象業種のこれからの構造改善のお手伝いをする、そういうものも出てくるのではないかと思いますが、このいずれによるかは、その業種の実態に応じて適宜使い分けていきたいと考えているところでございます。
  36. 城地豊司

    城地委員 今お答えがありましたように、依然としてそういう業種が残るわけであるし、日本の産業構造の転換はまだまだ続くというふうに考えますし、法律がなくなったからといっていろいろな面での救済措置といいますか援助措置といいますか、そういうことができないようでは非常に困るわけでありまして、そのことはぜひとも、お答えがありましたようにあらゆる英知を絞ってそういう産業を助成していく。援助という言葉は適当でないかもしれませんが、そういうことを通じて構造転換が円滑にできるようにしていただきたいと要請を申し上げたいと思います。  次に、特に化学産業関係からの要望がいろいろ参っておりますので、十項目ほどあるのでございますが、エチレンの質問をし、お答えをいただきたいと思います。先ほども同僚議員からお話がありましたが、エチレンの生産の関係は現在年間四百万トン以上の時期がずっと続いている。そして、そういう状況の中ですが、最終的な出荷構成はどうなっているか。いわゆるエチレンを高付加価値化をしようということで取り組んでいるわけでありますが、その状況がどうなっているかということについて、まず質問をしたいと思います。
  37. 鈴木直道

    ○鈴木(直)政府委員 エチレンが製品として出荷される場合にどのような構成になっているかということでございますが、八五年の数字を見ますと合成樹脂が五八%、合成繊維が一四%、合成ゴム九%、塗料四%等々になっておりまして、五年間ぐらいの傾向を見ますと、合成樹脂の比率が増大し、合成繊維の比率が減少しているという傾向はございます。それに加えまして、合成樹脂の内容が変化してまいっておりまして、よく新聞に出ておりますがエンジニアリングプラスチック、合成樹脂の中でもより機能の高い樹脂の比率が拡大しつつございます。  合成樹脂の中には、汎用樹脂といたしましてポリエチレン、ポリスチレン等ございます。塩ビもこれでございますが、そういう汎用のものと、それ以外のいわば特殊樹脂といいますかエンジニアリングプラスチック系とがございますが、その辺の比率が徐々に増大しておりまして、六十一年の数字でございますと約三六%に達してきているわけでございます。一般的に申し上げますと、日本の化学工業の高付加価値化を業界ではいわゆるファイン化、スペシャリティー化という表現をしておりますが、日本の場合平均いたしまして二〇%、欧米の主力企業でございますと四割ないし五割に達しておりますので、現在各企業とも高付加価値化という経営方針を立てまして、計画的に必死に努力をしているというのが現状だと存じます。
  38. 城地豊司

    城地委員 石油化学産業全体を見てみまして、この構造改善だけではないのですが、それは企業努力もある、いろいろなプラス要因もあると思いますが、例えば昨日の日本経済新聞等でも、三井石油化学工業の収益が非常に拡大している、経常益が初の二百億円台に乗せるというようなことで掲載をされておりますが、そういうように数年前に比べて企業業績が格段に改善している。それらの原因をどういうふうにとらまえておられるか、お答えをいただきたいと思います。
  39. 鈴木直道

    ○鈴木(直)政府委員 石油化学産業の現状でございますが、これは実は日本の企業だけではございませんで、世界的に共通して現在いい方向にいっていると思います。  その理由の第一は、世界的な産業構造調整が行われたということでございます。我が国の場合は、産構法によりまして設備処理を三〇%以上行いましたけれども、同様な設備処理がアメリカにおきましてもヨーロッパにおきましても行われまして、世界的に一四、五%の設備処理がここ五年間に行われたと存じます。その点が第一点。第二点は、石油価格が下落いたしまして原料価格が低下した、これが需要拡大に結びついたという点が第二点でございます。第三点は、我が国は現在内需拡大しておりますが、世界的に景気が好調でございます。世界的に需要が現在好調である。その辺が現在の好況に結びついているというふうに私ども考えておるわけでございます。
  40. 城地豊司

    城地委員 最近のエチレン生産は、先ほど申し上げましたように四百万トンということで、先ほどのお答えでは四百七十万トンというような状況でもございましたが、公称能力を非常に上回ってきている。一方で設備廃棄をしたが、それらがどんどん能力が上回ってきているのはどういう理由なのかということ。さらには、ポリプロピレンとかポリスチレンとか、こういうものについては設備増強を行っている、これとエチレンやプロピレン等の供給の安定性との関連はどうかということについて、質問いたしたいと思います。  続いて、時間の関係がありますので二つ、三つまとめて質問したいと思います。  次に、韓国や台湾、中国など近隣諸国でも、非常に石油化学の設備増強が盛んになってきているわけであります。もちろんアメリカ、ヨーロッパも、今や世界的にエチレンなんかは大分生産が伸びているという状況でございますが、こういうような設備増強が非常に盛んになっている。そういう中では、日本も含めて供給過剰になるおそれはないかと心配するわけでありますが、その辺の見通しについてお伺いしたい。  さらには、東アジアの石化工業、先ほどもお答えがありましたが、日本も含めて原料の自給面では非常に弱いようだと思いますけれども、コスト競争力はどうなっているのか。また、日本製品はそういう中であっても非常に優位性があると言われておりますけれども、その優位性はどの辺に原因があるのかということについて、お答えをいただきたいと思います。
  41. 鈴木直道

    ○鈴木(直)政府委員 第一点のエチレンの生産能力の点でございますが、エチレンの設備能力議論する場合にいろんな観点がございますけれども、昨今大変な企業サイドの御努力があるようでございます。例えば原料につきまして、軽質のものを活用いたしますと大変能力が拡充するとか、あるいは温度を高目にいたしますと収率が高まるとか、あるいはコンピューターを導入いたしますと最適条件で運転が継続的に可能になるとか、いろんな要因が重なっております。  さらにそれに加えまして、最近いわゆる定期修理につきましても制度の修正がございまして、従来毎年一カ月程度の定期修理をやっておりましたけれども、技術的な向上もございまして二年に一度、修理期間を三十日以内に抑えてやれるというようなことも寄与しているようでございます。いろんな要因が重なりまして、従来我々が議論しておりました能力以上の生産能力には現在なっていると存じます。しかし、需要動向も一方におきまして拡大しておりますので、需要に見合った生産という観点から現在、先ほどちょっと御紹介いたしましたが、産構法で休廃止した一部の休止設備につきましては稼働しているという面がございます。しかし、全体の需給バランスからいきますと、それに対しましてはむしろいい方向に働くというふうに、私ども当面見ているわけでございます。  ただ、第二点で御指摘ございましたNICS諸国の設備増強の問題がございます。これは私どもの試算によりますと、八九ないし九一年にかけまして日本周辺の先進的な発展途上国におきまして約二百七十万トン程度の能力増の計画がございます。日本の場合が四百七十万程度でございますからその半分以上ということで、大変大きな能力増でございます。ただ、この地域は内需の特に拡大する地域でもございます。したがいまして、私どもといたしましては、それぞれの国内の内需の増に見合った能力という面でまいりますと、世界的な需給バランスに影響はないと思いますが、しかし景気変動等によりましては、当然ながら輸出等にも回ってくるという意味での不透明な要因もあるわけでございますし、そのほか原油の価格の問題だとかあるいはアメリカの景気の問題等々もございます。したがいまして、日本の企業はこのような世界的な状況を十分長期的に見据えながら今後の経営方針を立てていくだろうと考えておりますし、我々もそれに必要な情報を的確に提供していくという役目を全うしたいと考えております。  それから第三点の、東アジアの石油化学工業は原料面で弱いのではないかという御指摘でございます。確かに東アジア、これは日本も含めてでございますが、石油化学は原料をほとんどナフサに依存しております。先ほどお話ございましたサウジ等につきましては、これは天然ガスが原料でございますし、しかもこれは自国で産出されるという意味でいきますと、このような自国で天然ガスを産出する国の石油化学と輸入ナフサに依存する石油化学とでは当然ながら競争力に格差がございますので、そういう意味でいきますと東アジア各国共通いたしましてハンディキャップを持っていると私ども思います。しかし、この辺はいろいろな形で努力をしてクリアをしていこうというふうに考えておりますが、特に日本の場合におきましては、品質の高さあるいはまた供給の安定性、ユーザーのニーズに見合った細かい商品の開発、あるいはまたサービスの提供というようなことで、これは日本の産業一般的に言えることでございますが、ユーザーのニーズに見合った品質の高い供給という面で競争力を蓄えて何とかしのいでいきたい、こういうふうに考えていると存じます。
  42. 城地豊司

    城地委員 これは直接石化業界だけということではございませんけれども、今非常に原油価格が安定している、安いということでありますが、九〇年代に入ると非常に変動するんじゃないかという一部の説もありますし、そうは言ってもこのまま安定するという説もあるわけでありますが、通産省としてはこの原油価格、四、五年後にはどういうふうになるかという見通しと見解がありましたら伺いたいということと、それから、今後景気の変動や需要構造の変化によって石化製品の過剰が発生した場合、通産当局としてどういうような対策をとられるか。今のお答えでは、NICS関係でも非常に生産は上がっているが需要の面でも非常に大きく拡大している、であるから過剰にはならないという意味の御答弁がありましたが、もし万が一、そうは言っても産業は生き物でありますから、そういう過剰が発生した場合にどういうような対策をとられるというふうにお考えになっておられるのか、その点についてお伺いをしたいと思います。
  43. 内藤正久

    ○内藤(正)政府委員 四、五年の原油価格の見通しについてでございますけれども基本的には需給が不安定になるという先生の御指摘と同じ考え方を持っております。  需要面で見てまいりますと、発展途上国を中心といたしまして石油の需要が着実に増大していく。他方、供給面で見てまいりますと、原油の賦存の三分の二が中東に賦存しておりますし、それに伴いまして今後非OPEC諸国の生産能力は低下していくということの結果として、当然のことながら中東依存、とりわけその結果としてのOPECへの依存度が上昇していくということになっていくと見ております。その場合に、過去二回の石油危機の体験を考えますと、いずれもOPECの稼働率が八〇%を超えたときにOPECの支配力が強まってああいう混乱が起こっておるということを非常に懸念いたしておりますし、中東依存が高まるということは、その地域の政治的、民族的あるいは宗教的な理由による不安定というのがなかなか克服できないであろうというふうなことから、今後の石油需給が不安定になり、あるいは逼迫化するという可能性が高いものと見ております。それで、これはIEAの閣僚理事会が昨年五月開かれておりますけれども、そこでも同じような認識にはなっております。  それで、内外のいろいろの機関の石油価格の見通しでございますけれども、八六年価格の実質値で考えまして、一九九五年には大体二十ドルから三十ドルの水準で想定しておるものが多いようでございますが、とりわけ多くの機関は二十五ドル強程度で見ておるものがございます。それから、二〇〇〇年になりますと、三十ドルから四十ドルの幅で見ておりますけれども、三十ドル強というものにかなり見通しが多いように見受けております。我々は、こういう見通しと別に違った見通しは持っておりませんで、基本的には不安定な要因の中で十分に対応を備えていく必要があるということで考えております。
  44. 鈴木直道

    ○鈴木(直)政府委員 後半の、将来過剰になった場合どのような手を打とうとしているかという点でございますが、基本的には、第一は内需に立脚した産業として確立していくのが一番いいのではないかと考えております。現在、輸出比率が一割程度でございますので、内需そのものに十分適応した産業になるという点が、そういう面では非常に強い要素を持つのではないかと考えております。  第二点は、その点との関連でございますが、技術力を強化していく。ユーザーの多様なニーズに対応していくわけでございますし、より高付加価値なものを追求していくという点からいきますと、当然でございますが技術力の強化が最大の課題だと思います。  第三点は、設備投資の問題でございます。私どもは、設備投資計画につきましてはなるべくオープンにしていただきまして、相互に長期的な観点で妥当なものであるかというものを個々の企業の責任で判断をしていただくということは必要であろうと考えておりまして、各企業が今後の設備投資計画を考えられる場合には、私どもにも届け出をしていただきますが、一般にも公表していただくという制度をとり、自己責任を全うするような仕組みを考えたいと思います。  第四点は、そのために十分なる情報を提供していく。内外の動向、特に中長期的な需要動向あるいは海外におきます生産能力の拡充動向等につきまして十分なる情報提供をして、各企業の責任ある判断に寄与するという点を十分考えてまいりたいと考えております。
  45. 城地豊司

    城地委員 石油化学業界も、今後は国際分業それから協調が大きなテーマになると思います。そして、従来のように日本国内だけでは需給関係調整が非常に難しくなってくる。今の御答弁ですと、まあまあ各国とも需要が拡大するので問題がない、輸出の関係でも一〇%くらいであるから問題がないというふうにとれるお答えをいただきましたけれども、少なくともそういう需給関係調整も非常に難しくなるということであれば、アジア的規模でも生産、投資など調整をする場が必要になってくるのではないかと思いますし、またその中で労働組合の意見も取り入れて、雇用や労働条件への配慮も当然すべきだと思いますが、それらについてどのようにお考えになるか、質問をしたいと思います。
  46. 鈴木直道

    ○鈴木(直)政府委員 国際化に対応した産業の今後の対処ぶりというのは非常に重要であるという点につきましては、全く私どもも同様に考えております。現在、業界におきましても同じような認識を持っておりまして、東アジア諸国との情報交換の場などを設定いたしまして、相互に理解をするという道をたどっております。これも今後、政府レベルでも考えていかなくてはならない課題だと思います。いずれにいたしましても、今後の中長期的な化学工業の課題、それに対してどうこたえていくかということは非常に重要でございますので、実は私ども基礎素材懇談会の中で現在化学小委員会を設定して議論していただいておりますが、その中にも労働組合の代表の方も参加いただきまして、十分皆さん方の意見もお聞きする、こういう形で進めてまいっております。
  47. 城地豊司

    城地委員 通産大臣が四十分ごろから席を外すというお話もありましたので、最後に、大臣にも総括的にお答えをいただきたいと思います。  その前に、きょうのこの法案と直接関係ないのですが、通産大臣がこの間中国へ行かれました。新聞で拝見したのですが、ココム問題、東芝機械問題での御見解等が発表になりました。この後、当委員会で一般質問ということで中国問題についていろいろ伺いたいと思っているのですが、大臣の海外出張等との関係で今国会では大臣とお目にかかる機会がないので、この機会に、五月四日、五日ですか中国へ行かれて、ココム問題だけでも結構ですから、その件について行かれた後の御感想なりについて、大臣から直接伺いたい。これはその他の関係でございます。  それから本題の方の関係でございますが、ことしの二月に化学エネルギー労協という日本の化学エネルギー関係の労働組合から通産大臣に対して「ポスト産構法について」という表題で、課題と政策をまとめて提言がございました。これの中にはいろいろなことが書いてありますけれども、その第一項には「事業提携と投資調整機関の設置」ということで、今後「産・官・学による国際的な需要、生産、設備等の予測を行う、投資調整機関を設置すべきである。」という提言がなされておるわけでございます。第二番目には「国際化への対応」ということで、国際化に対応するための考え方が述べられている。第三番目には「新素材、新規事業分野への進出」ということで述べられています。新素材、新規事業分野への進出の問題については、きょうの新聞ですか載っておりましたが、石油化学産業が各業者とも研究所を非常につくりまして、新たにそういう研究分野にどんどん力を注いでいるということでございまして、業界としてもそれなりの積極的な対応がなされておるわけでありますが、この提言にも見られるように、石油化学産業だけではありませんけれども、こういう構造不況、そして構造調整の必要な産業、そして日本の大きな意味での産業転換というようなことがこれからもどんどん起きてくるのじゃないかと思う次第でございます。  特に、重厚長大から軽薄短小へ産業全体が移行する、そしてできるだけ高付加価値のものを生み出していくということも必要でありますし、そういう意味で当面その衝に当たられます通産大臣、大変御苦労されると思うのですが、それら日本の全体の産業構造転換に向かうに当たっての通産大臣としてのお考え、そしてさしあたっての問題である化学エネルギー労協からのこれらの提言等々についての考え方、それから先ほども局長からお答えをいただきましたが、産横法がなくなってもとにかくありとあらゆる手段を用いて対応するという決意のほどをお聞かせいただきましたけれども大臣からもそれらの問題も含めて総括的にお答えをいただいて、私の質問を終わりにしたいと思います。
  48. 田村元

    ○田村国務大臣 まず、法案の方から先に申し上げます。  先般、日本化学エネルギー労働組合協議会の本田議長さん方にお目にかかって、いろいろとお話し合いをしました。結論から申しますと、お互いに認識は共通のものが多かったということであります。産業構造の転換というものは、基本的には市場メカニズムによるものであることは言うまでもありませんけれども、この市場メカニズムに従いまして、各事業者の創意工夫と努力というものを通じて進んでいくものであると思います。また、実際に最近の円高の急速な進展、定着というものを背景にして、産業構造転換の動きが加速しつつあることもおっしゃるとおりでございます。それに対して政府の役割は、やはり補完的な対応をしてそれをスムーズに展開せしめることだと思います。言うなればこうした産業構造転換が円滑に進展するように、産業活力の低下あるいは地域雇用の問題等に対して適切な政策対応をしていくということであろうと考えております。このために、今後とも産構法のもとでの構造改善の成果の維持を図りながら、それはそれでその成果の維持を図りながら、構造調整を円滑に進めていくために、必要に応じて、昨年の四月に施行されました円滑化法の弾力的運用を図る、そしてまた助成の充実等について検討していきたいと考えております。  産横法のもとで行いました共同販売会社の設立等の事業提携につきましては、産構法が廃止された後におきましてもその内容等を一層充実していくことが必要でございます。通産省としても、そうした方向で業界を指導していきたいと考えております。また、設備投資につきましても適正な投資活動が行われていくことが重要でございまして、このために、業種の実態に応じまして必要な場合には各事業者の設備投資の動向に関する情報の公表を確保するための措置、あるいは産構審等による需要見通し作成等の施策を講じていくこととしております。先般、日本化学エネルギー労働組合協議会とお話ししました。国際化への対応、新素材、新規事業分野への進出等々いろいろなことをお話し合いをいたしましたが、時間が長くなりますので、一応骨子のみ申し述べました。  それから、私の訪中の御報告でございますが、実は今度の訪中は通産省が所管しております映画産業というもので、特に日中合作で四十五億円もかけた「敦煌」という映画でございますが、四十五億円といいますと、実際は現地のお金の値打ちというものに換算いたしますと二百数十億に匹敵するのじゃないかと言われております。それほどの巨額の投資がなされた共同制作、大変いい映画でございました。それの特別試写会のオープニングセレモニーに私も参加をいたしました。御承知のようなことでちょっとぎくしゃくした面もないでもありませんから、そういうことを少しでもほぐすことができたら、日中友好のお役に立てたらと思って私も行ったわけでございます。  そのときに、王震副主席初めたくさんの方に会いました。ちょうどたまたま同じときに外務大臣が訪中しておりましたから、なるべく私は政治向きのことは避けておりましたけれども、しかしだからといって通産大臣でございますから、自分の本職のこともしなければならない。それで、特に桃依林さん、鄭拓彬さんとは仕事のことでお目にかかった。桃依林さんは、御承知のように筆頭副総理でございます。私からまず何か話をしなさいということで、あなたからまずどうぞ話をしてください、いろいろとお互いに応答しようじゃありませんかということでございましたので、私はいろいろなお話をしましたが、今のココムに関する部分を申し上げますと、東芝機械の既契約問題等が我が国の対応方針を理解されて、これをベースに解決が図られつつあることは大変うれしいことでございます、それから電子測定器の不正輸出事件につきましては、これは二商社の問題でありますが、国内法令に違反したわけでありますから、これがはっきりした以上、我が国も法治国家でございますから、法治国家の建前からいっても国内法令で処罰せざるを得ませんでした、これは同じ建前を大切にする両国として御理解を賜りたいということを私から申し上げました。それから同時に、日本の日中友好希求の姿勢は不変であって、昨年の改正外為法のもとでの罰則強化に当たっても中国向けはソ連などと異なる扱いといたしました、また対中ココム規制緩和については、今後とも他のココム参加国とともに積極的に対応していきたいと考えておりますというようなことを申し上げました。特に、対中行政例外品目ですか、これにつきましても、その拡大のために可能な限り努力をしていかなければならぬと思いますということを申しました。  おおむねそういうことを言ったわけでございますが、それに対して中国側からは、できるだけこういうことは避けるようにしてくれ。特に鄭拓彬さんからは、我々はココムそのものに反対なんだけれども、それはそれとしてというところから、あとはお二人ともできるだけこういうことが起こらないようにしてもらいたい、それから、不幸にして問題が起きた場合には双方でよく話し合うようにしてもらいたいというような御意見もございました。それから、対中ココム規制の緩和を強く要求します、あなたが説明してくださったことに対してよくあなたのお気持ちはわかりましたというようなことでございまして、お互いの言葉のやりとりも大変和やかでございましたし、それから内容も非常に現実的で、もちろん私どもも誠意を尽くしてお話を申し上げたわけでございますけれども、ココムに関しては私は覚悟をして中国へ行っただけに、大変ありがたかった。桃依林さんに私は思わず、いや実は私もちょっと緊張して来たけれどもお話を承ってほっとしました、こう言いましたら、にこにこ笑っておられました。  まあそういうことで、非常に友好裏に話し合いをしてまいりました。けれども、それはもちろん友好裏に話し合いをしたといっても、私どもが言葉に出した以上、やはり両国ともに東洋の建前を重んじる国でございますから、これは誠実に対応していかなければならぬことは当然のことでございます。
  49. 城地豊司

    城地委員 ありがとうございました。今後、産構法廃止後も適切な政策対応でよろしくお願いしたいと思います。  以上で質問を終わります。
  50. 渡辺秀央

    渡辺委員長 午後零時五十分から委員会を再開することとし、この際、休憩いたします。     午前十一時四十九分休憩      ────◇─────     午後零時五十一分開議
  51. 渡辺秀央

    渡辺委員長 休憩前に引き続き会議を開きます。  質疑を続行いたします。薮仲義彦君。
  52. 薮仲義彦

    薮仲委員 私は、本日の二つ法案のうち、最初に、特定産業構造改善臨時措置法を廃止する法律案について何点か質問させていただきます。  いわゆる産構法でございますけれども、産構法が制定されたというにはそれなりの意味があるわけでございますが、私は本来、企業の盛衰といいますか企業経営というものは、やはりその経営者に大きな責任がある。簡単に言えば、企業の経営の実体というものは、経営に問題があるからそこに栄えたりあるいは滅んでいったりということが起きるわけでございますが、私はそのことは、基本的に市場のメカニズムに従うことが至極当然の経済の姿であろうと思うのでございます。私は、今回のこの産構法等を含めまして産業調整というものはどうあるべきか、このことについてお伺いしたいわけでございますけれども、私は、国際社会の中で健全な形で企業を育てるためには、やはり産業調整ということは本来好ましくない、ない方がいいんじゃないか、こういう基本的な考えに立っておるわけでございます。  しかし、今回の場合は、御承知のようにオイルショックであるとか、あるいは予想をはるかに超えるような急激な円高、これはもう経営能力を超えるというようなバックグラウンドのあったことは十分承知をいたしておるわけでございますが、この法律を廃止するに当たって、経済情勢というのは予測が非常に困難だろうと思うのですが、そういう中にあって、基本的に今後通産省がとるべきスタンスとして、産業調整というものはどうあるべきか、その辺の基本的なお考えを最初に伺っておきたいのです。     〔委員長退席、甘利委員長代理着席〕
  53. 杉山弘

    杉山政府委員 産業構造調整ないし産業調整といった問題についての通産省のかかわりの基本的スタンスについてお尋ねがございましたが、この点につきましては、ただいま質問の中で御指摘のございましたように、基本的には市場メカニズムに任せるということにつきまして、私ども全く同様に考えておるわけでございます。むしろ政府の対応を必要とする部分というのは、市場メカニズムの働かない部分ないしは市場メカニズムに任せていたのでは摩擦、混乱が大きくなる、そういう部分について補完的に対応をしていくということにとどめるべきだということについては、全く同様に考えておりまして、現在の円高下での産業構造転換問題にいたしましてもそういうスタンスで臨んでおりますし、これからもそのスタンスは貫きたい、かように考えております。
  54. 薮仲義彦

    薮仲委員 重ねてお伺いしますけれども、今度この産構法が廃止されるということで、にわかに電炉であるとか製紙、エチレン、低密度のポリエチレンが、今まで設備を休止しておったものを再稼働する、あるいは電炉のように設備を増強しようというものもあるわけでございます。これは、確かに内需拡大ということで住宅産業が急激に好調になりましたので、電炉の製品が足りないよ、丸棒が足りないよというようなことは我々もよくわかっておるところでございます。さはさりながら、これらの業種というものは、今までこのような形で産業調整の一つの指定の業種であったことは事実です。経営不振になった、設備過剰によって経営が苦しくなった、だったらば政府が何とかしてくれるだろう、政府が必ず調整してくれるだろう、このままやっちゃおう、また設備過剰になって景気が悪くなったら何とかしてくれるのじゃないか、こういう考えがもしも経営者の中に芽生えるような通産省の行政がそこにあるならば、これは根本的にやるべきじゃない。それは、経営者として最もふさわしくない物の考え方であると思うのですね。  景気の動向や経済の動向というものは生き物ですから、あしたはどうなるかなかなか予想を超えた部分があるかもしれませんけれども、それにしのぎを削って企業を前に進ませていくのが、私は経営者の経営努力だと思うのです。そこにこそ本当の意味での経済の活性化があると思うのですね。それが何らかの形で調整されるということは、今度の二十六業種について、きょうは余り言いませんけれども、必要なかったんじゃないの、ゆがんだ形になったんじゃないのというような指摘もあることは、これは我々も十分承知しておるわけでございます。そういう反省を踏まえて、この廃止と同時に、次にこれらの業界が、仮に電炉にせよ製紙にせよ、調子悪くなったらまた何とかしてくれるというような甘えの構造だけは絶対抱かせないような、きちんとした行政の姿勢は必要であろう。かといって私は、急激な円高や何かに対応するな、そんなむちゃくちゃなことを言ってはおりませんけれども、やはり基本的には、経営者がきちんとした経営姿勢、努力というものを持ってほしい。この法案を廃止するときに、通産省としてもそのことが業界にわかるように、きちんとしていただきたいということが一つです。  また、もう一点は、それらの解決の方法として、いろいろ言われておりますデクレア方式があるわけですね。今後これだけ増設しますということを数カ月前に公表するというようなことでございますけれども、私は、このことも果たして好ましいことであるかどうか疑念がよぎるわけです。これは一種のカルテルに近いんじゃないかなという気がするわけです。本来自由競争であるべきものにそういうことをやって、本当の意味での経済原則をゆがめているんじゃないか、独禁法に抵触しないのかなという懸念すら、私は心のどこかで持っておるわけでございます。その意味において、やはり廃止するからには、今まで指定されていた業種が設備の増設、増強をするときの通産省としての対応、それから今申し上げたデクレア方式に対して通産省はどういうお考えを持っていらっしゃるか。  私は、これからはやはり日本の国だけでは通産行政というのは行えないと思うのです。こういうことをやっていると、必ずまた新たな日米摩擦、あるいは今度は世界の国々から、日本の通産行政というのは衰退していく企業をいつまでも温存するのか、やはり企業というのは新しい時代に即して展開していって、新しい活力を生んでいくのが本当の経済の原則じゃないのかと言われかねない問題もあろうかと思うのです。ですから、国内の事情だけではなく、国際社会の中で通用するだけの企業の競争力、成長させるために好ましい競争関係といいますか、経済の環境というのがこれからの通産行政に最も望まれるところだと私は思うのでございますが、その点いかがでしょう。
  55. 杉山弘

    杉山政府委員 二つの点について御質問がございました。一つは、先ほど来おっしゃっております企業経営の自主責任の問題について、これから通産省として業界との間でどういうふうな方針で対応していくのか。二番目は、デクレア方式の問題について若干疑問があるのではないか、こういう御指摘であったかと思います。  第一の点につきましては、先ほども答弁いたしましたように、私ども基本的には先生と同じような考え方で進みたいと思っております。確かに一部の対象業種の中には、休止設備の稼働を考えるというような事態が生じておりますので、そういう点から先生の御懸念も出ているのかと思いますが、たまたまこれは一時的な状況、国内、国外双方の状況から、むしろ当初予想した以上の設備を稼働させなければ価格が上がる、そういうような問題が生じたための対応措置ということになるのだろうと思いますし、むしろ長期的な問題として、そういう状況に甘えてということでは恐らく企業サイドも考えてないと思います。  石油価格の場合どうであるかは別としまして、例えば鉄鋼につきましても、御案内のように、今一般的に国内の需要がふえておりますので、粗鋼ベースで一億トンを超えるような生産になっております。かつて鉄鋼業界は、六十五年度で粗鋼ベースで九千万トンくらいがマキシマムではないかということで合理化計画をやったようでございますが、この長期的な合理化方針については、鉄鋼業界は依然としてそういう方向でやっていこうということを考えておりまして、一時的な好況に浮かれてこの方針を変えるということにはしていないというふうにも承知しておりますし、各業界は、むしろこれからの先行きの厳しさというものを十分頭に置いて対応してくれるものと思いますし、私どももその限りにおいて、業界の責任においてやったことは業界の責任で解決するというのがまず第一である、こういうことで進んでいきたいと思っております。  それから、デクレア方式について若干の御懸念の表明がございました。これについては、対象業種すべてについてやるということではございませんで、経済情勢、必要性から特定の業種についてだけ、むしろ投資に関する情報の透明性を確保するという観点から、公正取引委員会とも十分御相談をしながらやっていることでございますし、情報の透明性を確保するということが主体でございますので、それがおっしゃるようなカルテル、共同行為ということには絶対なってはならないものであるというふうに理解をいたしております。また、これが適用された場合でも、それが恒常的に適用されていくということで考えていただくのもこれもまた問題があると思いますので、むしろ一時的な経済情勢のもとでのこれまでの産構法による効果の維持継続といった観点からとられているものと承知をいたしております。そういう点について御懸念のようなことがあってはならないと思いますけれども、その運用につきましては、御心配のような点があるといたしますと、私どもとしてはその点を十分頭に置きながらこの問題に対応してまいりたいと思っております。
  56. 薮仲義彦

    薮仲委員 私はこれで産構法の問題は終わりますけれども通産省が今日までそれぞれの経済情勢の中で、あるときは特安法、あるときは今の廃止するべき産構法、そしてまた円高のための円滑化法、いろいろと御苦労なさって対応を進めてこられたことはわかっておりますし、またそれの中で多くの教訓を得られたと思うのですね。特に、産構法と円滑化法の法体系の中身が非常に変わっておりますので、それはそれなりに私も評価をいたしております。今日までその産業構造の調整のあり方がどうあるべきかいろいろと研究、あるいはそこで学んだ点を今後生かされて、なるほどというような結果を生んでいただきたい、このようにお願いをいたして、この問題は終わりたいと思います。  次に、民間事業者能力活用による特定施設整備促進に関する臨時措置法、通称民活法、この法案について質問を進めさせていただきます。  私は、まず民活法の政策目的、これをきちんとした形で確認をさせていただきたいと思うのでございます。今言われておりますように、四全総の中で、東京の一極集中を何とか排除して国土の均衡ある発展を目指すべきだ、多極分散型の社会を構築する、これが四全総の大きな柱でありますけれども、この四全総と民活法のかかわりはどういうようにお考えになっているか、この点が一つ。  それから、通産省として通産行政の中でこれから非常に重要なのは、地域経済の活性化だと思うのですね。地域経済をどうしても活性化させなければならない、これは避けて通れない重要な課題でありまして、地域経済の活性化と民活法をどういうふうに認識して進められようとしているか、その基本的な方向をまずお伺いしたいと思います。
  57. 杉山弘

    杉山政府委員 まず、四全総と民活法による対象施設整備の問題関係についてお答えを申し上げたいと思います。民活法は、これからの新しい経済社会の基盤となるような公共的な色彩の強い施設について、民間の活力を通じて整備をしていこうという一般的な考えのもとにつくられているものでございますので、国土の均衡ある発展ないしは四全総で言っております拠点開発とは、直接的な関係はないのではないかというふうに思います。ただ、こういった施設が、四全総で言っております国土の均衡ある発展のために必要な拠点地域においてまず整備されることが必要だ。そういう意味では、四全総の観点から望まれることだと考えておりますが、この点につきましては、今国会に国土庁から御提案を申し上げました拠点開発促進のための法律の中で、民活法対象施設につきましても若干ではございますが、助成措置の強化を図るという格好で、拠点地域での民活対象施設整備ということも重点的に取り上げていくという考え方が示されておりますので、むしろ四全総との関係では、そちらの法律の運用ということにまちたいと思っております。  二番目は、地域開発と民活施設関係でございます。この点につきましては、従来、民活施設整備についての御批判が民活施設の採算性の観点から、特に大都市圏を中心としたところに施設整備が実際の問題としては集中をしてしまうのではないか、むしろ地方経済の活性化を図る観点からは、大都市圏に限らず地方でも民活施設整備が図られるようにすべきだ、こういうような御意見がございました。確かにこれは民活法の運用にとっても非常に大きな問題でございますので、この点につきましては我々かねがね努力をしてきたわけでございます。例えば、昨年導入をされましたNTT株式の売り払い代金によります無利子融資制度につきましても、地方で行われます民活施設に対しましては融資比率を五〇%と高めましたが、大都市ないしその近傍で行われるものについては一般の融資比率よりも低い融資比率を通用するというようなことを考えておるところでございますし、こういった面での助成に濃淡をつけていくことによって民活施設整備が地域経済の発展につながっていくということは、これからも民活法体系の中で十分考えていかなければならないことだと思いますので、無利子融資制度の問題に限らず、これからも我々はそういう点について、助成の面である程度濃淡をつけることによって地域経済の活性化に民活施設整備を役立てる、そういう方向で考えていきたい、かように考えているところでございます。
  58. 薮仲義彦

    薮仲委員 私はこの民活法、今おっしゃられたように都市型といいますか、大都市圏周辺ならば確かに重要な施策の一つだなという理解には立っております。  そこで私がお伺いしたいのは、通産省はこの民活法が直接四全総とはリンクしておらないとおっしゃるけれども、しかし地方によって受けとめ方は、これによって少なくとも地域経済の活性化と国土の均衡ある発展の一つの手がかりにしよう。これは、今局長はそうおっしゃったかもしれないけれども地方にいる側から見れば、何とか東京や大都市に負けないような町づくりを、村おこしをやらなきゃならないというのが、これは各地域において必死であり真剣なんですね。そうでなければ、あるいは町ぐるみあるいはその小さな市がとっても生き残っていけないよというような、深刻な課題すら抱えている地域があるわけですから、やはりこの民活という言葉が今出てくる地方では、これをどうしようかという認識に立つのは当然だと思うのです。  ただ、そこで、先ほどもお話の中に出てまいりましたけれども、やはりこの民活を提示されても人、物、金、この三つが集まらなければ民活はどうしても実施できない、計画できない。そうすると私は、この民活法というのをただずっと続けておる、A型、B型、C型とありますけれども、後ほど具体的に進めてまいりますけれども、私は今盛んに認定されているプロジェクトを見ていくと、やはり特定の地域に集中してくる。人、金、物の集まるところへどうしても集まるし、またそこでしかできない。これは、民活が収益というものを前提にする以上当然のことなんだ。  でも、より以上に必要なのは、このまま放置すると、例えば民活でできるところ、それからできないところ、逆に私は格差というものは広がるんじゃないか。この民活法をきちんとした形で整合性のあるものにしないと、民活をやったところとできなかったところと、このできなかったというのはあるいはノーハウを知らなかった、あるいは人がいなかった、いろいろな条件にせよ民活に乗らなかった地域と乗った地域とは、これから五年、十年たったときに大きく格差が出てくる。こういうことがあったのでは、いわゆる現内閣は、局長が何と言おうと竹下さんは四全総を実施する。「ふるさと創生論」とかいろいろなことを言って地域を何とかよくしようというのですから、これだってはっきり言って四全総に乗らないような政策ならば、本当にいいのかなと私は懸念すらするのですよ。  現内閣が四全総を実現して、あの総理のおっしゃっていることは「ふるさと創生」なんだから、少なくとも民活であれどの手法であれ、関係省庁は志を同じくして国土の均衡ある発展に努力しよう。四全総というのは内閣が決定した国の総合開発計画ですよ。それに乗らない政策が出てくるのだったら、私は根本的にこの民活法というのは一体何なんだ、これは今の内閣と通産省のおやりになることは逆なのか、これでは私は賛成いたしかねますね。私たちはやはり、どうであれ四全総というものはこれから大事なことだな、私は地方ですからそう思います。この間から私は通産大臣に言っているように、何とか地方が東京の空洞化を目指すぐらいの勢いでやらなければだめですよ。かつての関ケ原の合戦ではないけれども、東京に負けるかというので、地方地方が個性のある本当の勢いで活性化しなければだめだということを、私はずっと言っておるのです。  我々地方にある者にとっては、やはりこの民活にせよ何にせよ地方の大きな経済発展の活力にしていこう。これを受ける側は、今の局長とは全く違うと思うのですよ。と同時に、私はもっと必要なのは、今格差を助長することにならないように、人、金、物が集まらないところをどうするか。今、民活法で手を挙げて乗っているところはいいですよ。だんだん乗りにくくなってくるのです、後ほど言いますけれども。今はまだ乗れるところが乗っているからいいのです。乗れないところあるいはもっと大変なところに対して、きちんとした地域経済の活性化の手を打たないと、私はとてもじゃないけれどもこの民活法によって日本の国の至るところにでこぼこが出てきてしまう、かえってできたところとできないところと非常な経済力の格差や人の集まりや、とんでもなく均衡ある発展とは逆行することになると思うのです。その点いかがですか。
  59. 杉山弘

    杉山政府委員 先ほどの私の御答弁、あるいは若干舌足らずであったために御迷惑をおかけしたのかと思いますが、民活法の「目的」の中でも、施設整備することによって地域経済の発展に資するということは書いてございますので、そういう意味では先生御指摘のとおりだと思いますが、御質問が四全総との関係、こう端的におっしゃったものでございますから、四全総で言っているいわゆる拠点開発との関連ということになりますと、直接的には国土庁の方で提出をしている法案の中で、民活施設もその対象施設の一部としてさらに助成について一段と強化した措置を用意しているのでそちらの方の問題でございましょうと申し上げたわけでございますが、地方における地域経済の活性化に民活施設整備することが役立ち、それがひいては国土の均衡ある発展との関係で四全総とのつながりが持たれてくるという意味においては、確かに御指摘のとおりであろうかと思うわけでございます。  そういう観点から、先ほど御答弁申し上げましたように、これまでのようにどちらかというと対象施設についても大都市周辺でないとなかなか採算的に成り立ちにくい施設から、今回御提案申し上げております十一の施設につきましても、かなりの部分がむしろ地方でもこれから整備をしていこうという計画のあるような施設でございますので、助成の面での濃淡をつけること等と相まって、特に地域経済の活性化の問題については、この民活法というのも大いにお役に立つようにしたいと考えております。
  60. 薮仲義彦

    薮仲委員 私は与党じゃございませんから四全総にこだわるわけではないのですけれども、私は国土審議会の委員だったんですよ。四全総をずっとやる中で、あそこの論議をずっと聞いておりましたし、見ておりましたし、自分でもいろいろなことが胸をよぎったこともありました。しかし、やはりこれはやらなければならないなという基本的な認識は私は持っておるわけです。ですから、もしも竹下内閣がやろうとするのだったら、一つ一つが基本的な方向と当然合致していらっしゃると私は承知をして質問を続けさせていただきます。  ここで今、人の集まるところ、集まらないところというお話、私の方で言いましたけれども、この既認定プロジェクト、これを出資比率だけでどうのこうのと言うのは非常に暴論なんです。これは私も、自分が少しむちゃなことを言うなということは十分承知の上ですけれども、しかしこの出資比率、数字というのはやはり端的にその実態を物語っている半面もあるわけですね。すべてを物語っていませんけれども、ある断面は数字というものは正確に言っているわけです。  この出資比率を見てみますと、例えば関西の国際電気通信基礎技術研究所、これに対しては公的セクターの出資比率は〇・六%ですね。また大阪テレポート、これも二五%です、公的なセクターの出資比率は。また、幕張メッセとか神奈川のみなとみらい、ああいうのはやはりそれなりの国際会議場をやろうとかすばらしい展示場をつくろうという、大きな建物を要することでございますから公的の出資比率がある程度必要だなというのはわかるのです。それらを除きまして、例えばここに出てくる恵庭のリサーチ・ビジネスパークとか、あるいは久留米のテクノ・リサーチ・パークであるとか、柏崎市のソフトパークであるとか、大半が三〇%から五〇%、一番多いのが富山の市民プラザが七〇・四、いろいろな事情があるわけです。  私は、民活というからには民間が喜んで持ってくる。関西はどうか、あるいは神奈川の話も聞きました。千葉の話も聞きました。民間が、千葉、神奈川でもちょっとじくじたるものがあったのです。でも国際会議場ができ、将来の構想が明確になってくると民間は参加してきた。特に関西などの場合は、〇・六%という数字が物語るように民間が大いに賛成して乗ってきた。ところが平均でいくと三〇%、五〇%、これがいわゆる株式会社ですから、普通我々が知っている株式会社というのは、株を買収しようというと二割から二割五分、二五%まで買収しちゃうと経営権というものに入っていけるわけですね。役員を送り込めるわけです。経営の実体を掌握できるのです。そうなってきますと、この三割から五割というのはやむを得ないとは思いますけれども、第一に手を挙げたところですらこういうこと。  ということは、先ほども申し上げたように、出資比率だけで言うことは暴論だということは前提にしても、民間業者が何を見通すかというと、これは一体収支はどうなんだろうな。大体のプロジェクトが五年ぐらいで単年度収支を黒字にしよう、累積の債務を解消するのは大体十五、六年だ、これが大体のプロジェクトだと思うのです。そうしますと、十五、六年先への投資ということにはやはり慎重であるし、これに民間が乗れないということは一つの問題であろうかなと私は思うわけですけれども、その辺はどうですか。
  61. 杉山弘

    杉山政府委員 確かに御指摘のように、民活施設整備につきましては、採算性という点で民間が積極的に出にくいという問題があるのは事実でございます。その理由は、申し上げるまでもなくまずハードの施設整備をするということになりますので、土地の手当ての問題から始めまして建物の完成に至るまでに長い時間がかかってまいります。と同時に、その建物の利用料を収入といたしますので、採算が先にならないとなかなかとれないという事実がございます。  私ども、これまで計画認定をいたしたものにつきまして、単年度の収支が一つの時点で黒字になるのか、また累積の損益でどの時点から黒字になるのかということを見てみますと、単年度損益では早いものでも三年、遅いものですと十年かかる、平均で六、七年というところかと思います。累積損益が黒字になりますのはもっと先でございまして、一番短いもので五年、長いもので十六年、十三年から十五年ぐらいというのが恐らく平均的なところだろうと思います。これは確かに、事業自体の性格からいってそうならざるを得ないところでございますが、これだけ長期にならないと採算がとれないということになりますと、おっしゃるようになかなか民活だけではやりにくいという意味で、官活的なことになってしまっているというのが現状ではなかろうかと思うわけでございます。  こういった点について少しでも採算を緩和できないかということで、実はNTT株式の売り払い代金による無利子融資制度というものも導入をしたわけでございますが、先ほど来何回となく御答弁を申し上げておりますが、その上でさらに、地方における民活施設整備というのは採算性の点で問題が出てまいりますので、こういった点については、これからもさらに助成措置の面で何らか対応し得る道がないかということを考えながら、やはり本来のように民活中心で施設整備が進む方向でいろいろと努力を重ねていきたいと考えているところでございます。
  62. 薮仲義彦

    薮仲委員 今御答弁にありましたように、民活と言うからには公共とは違いますから、やはり収益が上がるということが大前提ですね。いずれは融資を受けたものを返済していかなければならない、これは理の当然のことであります。既設のプロジェクトをずっと見せていただきましたし、収支が一体どうなるのかという御意見も伺わせてはいただきました。大都市近傍のプロジェクトは、それなりになるほどなと思うこともございます。しかし、このプロジェクトをずっと見ますと、何によって収益を上げるかというと、依頼されたときの研究開発等のための費用であるとか、あるいは施設の利用料といったものが収入の大宗なんですね。果たしてこれで収支が均衡するのかなという点で私、出資の比率からだけで言ってはと申し上げたように、民間がちゅうちょしていらっしゃる。  そうなってくると、施設の利用といっても必ずしもここを使わなくても、単なる会議室とか、今いろいろなイベントルームがたくさんあるのですね、ホテルにせよ民間のやっているのはたくさんあるんです。そうしますと、施設利用料をどうするか。高ければ確かに収益は上がるかもしれませんが、高いとだれも使わなくなってきます。こうなってくると、使用料をどうするのか、簡単なようでこれは難しい問題です。それが端的な例は、道路公団などが有料道路をつくります。一般有料道路は五十路線ありますけれども、半分が赤字ですからね。最近の四国との瀬戸大橋、あそこは五千五百円でしょう。観光には役に立ったけれども経済を誘発するには料金が高過ぎる、こういう話もあるわけです。ということは、料金がある一定から上になると、みんなよそへシフトしていっちゃう。そうしますと、この料金収入しかよりどころがないとなってくると、これは事と次第によっては非常に大変かなという懸念がどうしても私はよぎるわけです。  かといって利用する側からいうと、使用料は高くしないでくれという意見が出てくるのは当然なんです。なぜかならば、今おっしゃったようにNTTの無利子融資が入っているわけです。しかも、政府がその施策として低利の融資をそこへ導入しているわけです。NTTの無利子融資というのはすべて国民の、我々の共有財産なんだ、それを入れた以上、また低利の融資、公的な金が入ってくる以上、民活とはいえ利用する側が納得できる料金以上に上げるべきじゃない、こういう理論は成り立つと思うのです。民間だからといって、民間の市場メカニズムで上げてもらっては困るんだ、低く抑えてくれ、使いやすくしてくれ、それでなければつくった意味がないよ、こういう話が出てくると私は思うのです。この料金の設定というのは、それが収入の大宗ですから、やはりここで真剣になって考えておかないと、つくったはいいけれども使いにくい、なかなか使ってもらえない、こういうことでは大変だと思いますので、この辺の研究は今からおやりになる方がよろしいかなと、他の例を見て思います。  もう一つは、これは絶対あってはいけないと思うのですが、不採算になったらどうするか。これは、早目に手を打たないと大変なことになると思うのです。今、追加の措置を講ずるというような御意見もちょっとございました。私はそれもいいかなと思います。いずれにせよ、絶対あってはいけないのですけれども不採算になった、経営が困難だ、こういうことも、ある意味では初めてスタートする民活を育てるためには、さっきの話とは大分違って何となく嫌ですけれども、これは公的なセクターが入っていますから言わざるを得ないのですが、やはりそこにきちんとした育成を、厳しい中にも立ち上がっていけるだけの最後の手だてだけは今から十分考えておかなければならない、こう思いますけれども、いかがですか。
  63. 杉山弘

    杉山政府委員 料金の点について、料金決定自体についてだって非常に難しい問題があるではないかという御指摘は、まことにそのとおりであろうと思います。実は私自身の個人的な経験からいたしましても、MM21の会社の設立についてアドバイスを受けまして、いろいろと話を聞かせていただきましたが、その過程でも、おっしゃいますように利用する側からすると、公的助成を受けている施設であり地域の公共団体が出資者として参加しているんだから、一般の料金よりは当然低水準であるべきではないか、こういうような話がございますが、余りに低水準に過ぎますと採算的な面で問題があるということで、料金水準の決定に御苦心をなさっているということも十分承知をいたしております。こういう点については、各事業主体がそれぞれ地元との関係その他を御考慮の上、御苦労の上でお決めになることだと思います。  また、二番目の御質問の、万が一にも不採算になるようなことがあってはならぬじゃないか、これもまことにそのとおりだと思います。この点につきましては、例えば地元の地方公共団体ないしは開銀等が出資している場合には、出資者として経営にも参画をいたしておりますので、そういう面から経営上の問題につきましてはできるだけ早く情報をキャッチして、それに対応できるような体制を整えていくということが必要ではないかと思います。開銀等は、出資をし融資をする場合には計画段階でかなり厳密なチェックもしておると思いますが、その上、実際上経営に参加することによってフォローアップをしていく、こういう体制で臨んでいく必要があるのではないかと考えております。
  64. 薮仲義彦

    薮仲委員 私がなぜこういうことを言うかといいますと、通産省が今日までやっていらっしゃる、こういう民活の前にテクノという重要な政策があるわけです。静岡県にもテクノを指定された地域があるわけです。ああいうところを見ながら、やはり何年かたったら見直してみないと、最初に考えていたことと現実とは少し乖離があるな、これは非常に重要なことなんです。ですから私は、施策をやったのならば二年か三年たったらもう一度見直してみる。何が欠けて、あるいは何をしなければならないのか、そういう積極的なことを十分考えていただきたい。そういう意味で今申し上げておるわけでございます。  それからもう一つ、既設プロジェクトをずっと眺めていきますと、ほとんどがハイテク中心の研究機関といいますか、またそれに付随する施設利用を目的にしたプロジェクトなんですね。いわゆるリサーチパークであるとかサイエンスパークだとかテクノリサーチパーク、ソフトパーク、ニューメディアプラザ、みんなテクノであるとかメディアプラザ、そればかりなんですね。確かに二十一世紀のリーディング産業はハイテクだろうということで、全国至るところみんなハイテクにしがみついたと言っては申しわけないのですけれども、それにみんな事業を乗っけてきたわけでございますけれども、全国至るところハイテクばかりで、果たしてこれでいいのかな、ハイテクだけに偏った民活でいいのだろうか。  ごくわずかそうじゃないものもありますよ。それは国際会議場であるとか幕張メッセみたいな、千葉にしても神奈川にしても長年、十年、二十年という県独自の構想を温めた上にあれがぽんと乗っかったといえば乗っかったようなものですから、全く他とは違うわけです。根っこが違うわけです。そういう意味で、これを見るとみんなハイテク、ハイテク、ハイテクに乗ればバラ色になるような錯覚を持つと、これはまたいかがかな。私は、この次に申し上げたいと思うのでございますが、本当の民活ってこれでいいのだろうかという疑問があるわけです。今認定されている一号、二号、三号、四号、五号、七号まであるわけでございますけれども、これを見て全国ハイテクブーム、これが通産行政の民活のすべてではないと思うのですが、これでいいのかどうか、いかがですか。
  65. 杉山弘

    杉山政府委員 確かに、これまで法律で指定をいたしておりました施設につきましては、一部のものを除いて、ハイテクないしはそれに関連するものが中心であったことは事実であろうかと思います。新しい経済社会の基盤となるような施設ということになりますと、ある程度ハイテク中心とならざるを得ないこともまた事実でございますが、ただしそれだけではないということも、また御指摘のとおりであろうと思うわけでございます。  そういうことで、今回十一の施設お願いしておりますが、この中には漁港関係施設でありますとか、いわば地域で設置されるもので直接的にハイテクとそう関係のないような施設整備も考えておりますので、むしろこれから、先ほど来御指摘のように特に地域経済の活性化との関連ということになりますと、大都市中心のハイテク関連ということではなくて、地域の経済の実情に即してハイテク以外の施設というものを対象にしていく必要があるだろうと思います。そういう観点から、とりあえず今回は十一の施設お願いしたわけでございますけれども、地域においてまた新しい施設等の検討がなされ、その具体化が考えられる場合には、そういうものもこの中に逐次これから取り入れていく必要があるかというふうに考えております。
  66. 薮仲義彦

    薮仲委員 どんどん時間がたちますので、運輸省お見えだと思うのですけれども、運輸省にちょっと聞いておきたいのです。  通産大臣は元運輸大臣でございますから大変お詳しいわけですが、第七次の港湾整備計画、この方向は決まっておるわけでございますけれども、かつて我々の港というイメージ、港湾、端的に言えば埠頭といいますか、そういう感じがあったわけでございます。物流の拠点、基地、そういうイメージがあったわけでございますけれども、最近は運輸省も大分近代化されまして、ウオーターフロント構想というようなことで非常に概念が変わってきた。人との触れ合いの中で、触れ合い空間というのですか、そういう中で港湾を考えていこう。ですから人、港、そして海ですけれども、そこが憩いの場であったり交流の場であったり、あるいは商業地域であったりイベントのゾーンであったりリゾートゾーンであったり、いろいろと港湾の高度利用、さらにはそこを文化教養の発信地にしようというようなことで努力をしていらっしゃるというふうに私も認識をいたしておりますけれども、やはりこの民活というものがここに出てきたときに、運輸省も幾つかのプロジェクトをこれにお持ちのようでございます。  きょうは時間がございませんので、この第七次の港湾整備計画の中で、私は先ほど来こだわっていますけれども四全総とのかかわり、もう一点は、今回の民活プロジェクトを第七次の港湾整備計画の中ではどのように生かしていこうとして組まれたのか、運輸省お見えでしたら要点だけお伺いしたいのです。
  67. 御巫清泰

    ○御巫説明員 先生のおっしゃいますとおり、いろいろと世の中の事象は二十一世紀に向けて変わってきております。国際化とか情報化とか、あるいは価値観の多様化等いろいろなことが出ておりますし、ウオーターフロントにいかに親しむか、いかにそれを有効に利用していくかという要請もますます強くなっているところであります。  ウオーターフロントは、物流空間あるいは産業空間、そして市民が憩い楽しむ場所というような多様な利用の可能性を有しているところでありまして、港湾五カ年計画整備しておりますけれども、今後その中においてこのウオーターフロントの特性を最大限に生かすというような形で整備を進めていく必要があろうかと思います。こういう中で、この民活の港湾関係特定施設ございますけれども、十分その機能を発揮していけるのではないかというふうに理解をいたしております。
  68. 薮仲義彦

    薮仲委員 もう少し運輸省に聞きたいのですけれども、じゃ具体的にどんなことをやろうとしているのですか、ちょっとお答えください。
  69. 御巫清泰

    ○御巫説明員 お答えいたします。  現在、私ども港湾関係民活プロジェクトは四件、整備計画認定を行っております。そのうちMM21につきましては、国際見本市場あるいは国際会議場ということにつきまして六十三年中に着工し、六十六年には運営開始、こういうような予定になっております。また釧路でございますけれども、釧路についてはフィッシャーマンズワーフというものが具体化しつつありまして、れんがづくりの倉庫もございますけれども、旧釧路川の右岸にございますが、これを再開発して漁業と観光というようなものを中心に活性化していこうというものでございます。これも六十三年度に着工し、六十四年一部供用、そして六十六年には完成、こういうふうに考えております。またさらに、これも港湾関係でありますが大阪のテレポート、先ほどお話にございましたが、これも本年一月着工ということで六十四年十月には一部の運営を開始する。  こういうふうに、港湾における民活特定施設整備を着実に進めつつありまして、将来もこれが地域の発展、地方港湾には限りませんけれども、地域の振興ということに非常に重要な意味を持ってくるであろうというふうに理解をしております。
  70. 薮仲義彦

    薮仲委員 農水省にお伺いしたいのですけれども、まとめてお伺いしますが、農水省は今度初めて民活に参加なさるといいますか、初めて手を挙げられるようでございますが、三つの施設が加わったわけでございます。施設が加わりましたので、これに対してもう既に希望している地域があるのかどうか。あれば、もしも差し支えがなければ今こういう構想を持っているということをひとつお伺いしたい。  それから、やはり農水省の持っていらっしゃる地域というものは、地方の漁港であるとか農村という地帯にどうやって民活活用していくか、私は非常に難しい問題であろうと思うのですね。しかし、また地域には非常に地域のよさがあるわけでございまして、そこにすばらしい民活が生きればまたそれなりに農村経済の活性化に非常に役に立つのじゃないか、私はこういう思いがあるわけでございますが、やはり初めておやりになるからには、それなりの十分な研究あるいはいろんなことをおやりになっていらっしゃったと思うのですが、農水省の民活に対する取り組みについてお話をいただきたいのです。     〔甘利委員長代理退席、奥田(幹)委員長代理着席〕
  71. 須田洵

    ○須田説明員 お答えいたします。  まず、農林水産省関係でこのたび新たに追加することにいたしておりますのは、一つは第二条の第一項九号の関係でございますが、農林水産関係の研究開発あるいはその企業化の基盤施設でございます。これにつきましては、現在既に具体的に静岡県の焼津市におきましてこのような取り組みをやっていこうという動きが出ております。それからさらに、第十号関係の漁港の利用高度化施設でございまして、これにつきましても、先生も先ほどから御指摘もございますが、まさに地方の漁港の振興といいますかあるいは地域産業といいますか、地域経済の活性化の観点からも望まれるわけでございますけれども、現在既に島根県隠岐郡の西ノ島町におきまして、それからもう一つは千葉県の銚子におきまして、その取り組みの声が上がっております。それから三つ目でございますが、やや性格が違っておりますが、通商産業省と共管でございます十一号ロの卸共同流通ターミナルの施設でございます。これにつきましては、神奈川県の横浜市あるいは新潟県の長岡市ということで、それぞれについて取り組みを希望するというような動きが出ております。  具体的な詳細の内容につきましてはまだ十分ではございませんけれども、我々農林水産省の立場におきましても、これまでも農村地域の活性化といいますか、農山漁村の活性化等の観点から、各般の事業、いろいろな補助金も含めまして政策を進めてまいりましたけれども、今日いろいろな事業展開というものが非常に広がりを見せている、あるいは多様化をしている。例えば研究一つとらえましても、農林水産関係というものになりますと、どうしても国立なり公立の試験研究機関が中心ということでやってまいりましたけれども、今日においては民間企業におきましてもさまざまな研究開発の取り組みという動きも出ておりますし、またいわゆる流通部門関係におきましても、従来は卸売市場等の生鮮食品中心で対応してまいりましたけれども、加工食品というものが非常にふえております。そういうことに伴っての流通の合理化のための民活の取り組みというものを、我々も積極的に受けとめていく必要があるんじゃないか。  こういったようなことで、具体化するまでにはまだ若干詰めなくてはなりませんけれども、現実にそういう声も出てきている。そういう芽を我々としましては非常に大切に大事に扱って育てていきたいということでございまして、既存の事業でもしそういう民活事業などに手助けができるようなことがうまくできれば、そこはうまくかみ合わせていきたいというようなことも考えられますし、それから例えば研究開発等の問題で見ますと、いわゆる国なり試験研究機関が今まで蓄積しております情報、研究開発の情報なり成果につきまして、積極的にそういうものが活用できるように応援をしていくという、ハード、ソフト両面にわたりましてできるだけ応援してまいりたい、こういうふうに考えております。
  72. 薮仲義彦

    薮仲委員 農水省のテリトリーは大変大変だと思うのですけれども、どうか成功させていただきたいと思っております。  郵政省お見えだと思うのでちょっとお伺いしたいのですが、何点か飛ばしまして、一つだけお伺いします。先ほどちょっと名前を挙げました国際電気通信基礎技術研究所、通称ATRでございますが、これについて簡単にお伺いしたいのですが、まずこのATRの目的、そしてどういう役割を持っておるのかというのが第一点。  それから、これは簡単にすっと言っていただきたいのですが、主な出資企業名、出資額、出資比率、簡単に言ってください、だあっと数字だけ。
  73. 塩谷稔

    ○塩谷政府委員 お尋ねのまず第一点でございますが、ATR、国際電気通信基礎技術研究所、これの役割と申しますか目的でございますが、これは電気通信というのは非常に技術的に日進月歩進んでおりまして、いろいろ先端的な技術研究の必要が大きいわけでございますけれども、とりわけそういう技術研究というのは、特に基礎的なあるいはそれを若干応用するような、そういう面での研究というのは民間だけではなかなかやりにくいという面もございますので、そういったところを援助しながら、民間の援助をしながら先端技術、基礎的な研究技術の開発をやっていこう、こういう役割でございます。  それからお尋ねの第二点でございますが、出資比率でございますが、ATRというのは組織的に二つございまして、一つはATRIという親会社とそれから四つの研究開発会社がございまして、ATRIにつきましてはNTTを初めとしまして民間会社、京都府など地方公共団体が出資しておりまして、本年三月現在の出資比率といたしましては、NTT五七・七%、KDD四・三%、大手メーカー各社〇・九%などでございます。それから四つの研究開発会社でございますが、全体の七〇%を基盤技術研究促進センターが出資いたしまして、残りの三〇%を民間が出資している。この民間の出資の内訳は、NTT一二・三%、ATRI、これは親会社が出しておるものでございますが六・九%、KDD一・〇%、大手メーカー各社〇・二三%、以上の数字でございます。
  74. 薮仲義彦

    薮仲委員 このATRについて何を言いたいかというと、きょうは時間がありませんから結論だけちょっと申し上げますけれども郵政省、心にとどめておいていただきたいと思うのです。  今お話しのように、ATRグループの出資の大宗はNTTが五七・七、KDDにしても四・三、あとの民間企業が、東芝、日立が入っているのですが、〇・九%、一%いってないわけですね。もうNTTがこの出資の大宗でございます。それで、おっしゃったように、基礎研究というのは非常にリスキーなものでございますから大変だということはわかるのです。もう一つ、役員表を私の方で申し上げますけれども、本体と研究四施設で役員がずらっと五十一名おるわけでございますが、その五十一名中NTTが二十三名です。郵政省が七名、KDDが三名、あとは経団連、関経連、銀行だけなんですけれども、この役員の大半はNTTであることは事実なんです。  私が何を申し上げたいかというと、今基礎研究とおっしゃった。基礎研究というのは非常に重要であります。リスクも大きいということもわかります。ただ、民間がやったときに、研究の成果というのはその企業の命運を決するのです。その企業にとって、例えば五年なり十年なり時間をかけて一つの研究成果が出てきたわけですね。これをどうするかということは、民間の場合はあだやおろそかにこれを提供するということは、企業にとっては死活問題です。と同時に、これを特許申請します。そうしますと、四つの研究機関にその特許権は帰属するわけです。そうすると、これは一般の人がどう使うかというと、当然いわゆるロイヤリティー、特許使用料を払って使うわけです。これが、もしも市場原理に準ずるようなコストでやられたらどうなるか。高く使わせる、あるいはこれによって投資を回収していく、利益を出すんだ、こうなって民間の経済原則でいったときに、この基礎研究というもの、いわゆる民活というプロジェクトにのっとりながら一つの企業の利益のためにやったんではないのかな、こういう懸念がどこかにないとはいえない。私の心の中にもあるわけです。  というのは、民活プロジェクトとして政府の承認を得たプロジェクトである以上、研究の成果が広く国民の利益に寄与すると同時に、日本のハイテク技術というのはNTTがほとんど最先端を行っているのは当然でしょう。でもそれが一般の企業に転嫁されて、あまねくそれが潤ってレベルが上がる。決してそれが一つの企業のためでなく、独占でなく、いわゆる民活という名のもとでの利益を上げようということでなくして、日本全体の科学技術のレベルアップと同時に、国民の福利向上のために役立ってほしい。これを私、きょう時間がありませんからお願いだけいたしておきます。  最後に大臣にお伺いしたいのでございますが、民活の話をずっと論じてきたわけでございますが、もう大臣も御承知のように、研究施設というのはほとんどハイテクに偏ったとか、いろんな論議をさせていただきました。しかし、やはり地域経済の活性化ということが非常に重要なファクターであることは当然であります。私は、もっと必要なのは、手を挙げるのを待っているということでいいのかなという考えがございます。と同時に、その地域の生活とか文化とか伝統とか、そこに根差した何かがもっとあるような気もするわけです。そこに昔から育ってきた産業なりあるいは技術なり伝統工芸なり、いろんなものがあるんじゃないか。そこで新しい商品やあるいは産業、新しいサービス、これがどんどん芽生えていくように、今度こちらから手を差し伸べて、民活に乗らない地域の活性化のために、何か研究機関をつくっていくということができないものかなという感じが一つあるわけでございます。  と同時に、やはりその地域の特性を生かすということは、ハイテクがずらっと並んだのですけれども、決してハイテクだけじゃなくて、いろんなことは産政局長も心の中で考えておると思いますけれども、やはりいろんなことが出てきて、国民のニーズに沿ったような芽が、産業が育ってきてほしい。そのときには、研究機関と同時に、あるいは通産省からその地域に二年なり三年なり行ってみて、本当に地域から見て活性化というのはどういう施策が必要なんだろう、こうすればここに芽が出てくるんじゃなかろうかとか、むしろこちらから出ていって地域を活性化させ、経済を盛り上げるような産業おこし、地域おこし、村おこしと言いますけれども、そういうような、人の面でも機関の面でも、この施策の中で均衡ある発展あるいは地域経済の活性化の上から何とかお考えをいただきたいと思うのでございますが、大臣、最後にそれだけ伺って、質問を終わります。
  75. 田村元

    ○田村国務大臣 今の薮仲委員の御質問のお言葉自体が私の答弁になるんじゃないかと思うのでありますが、全く同感でございます。  民活プロジェクトは、全国いろんな地域で実施されて計画されております。地域経済の活性化を通じて国土の均衡ある発展に資するという点で、大変重要なものだと思います。ただ、今おっしゃいましたように、確かに手っ取り早いところからやっちまおうというだけでは能がない。私としては、こうした特定施設に合致して地域の活性化に資する民活プロジェクトというものが各地で企画立案される、それで実現に向かってこれが動き出すことを強く期待しておりますし、また、特に六十三年度より、地方における民活プロジェクトの推進のためのノーハウの蓄積とか人材の育成とか、いろいろなことを図るための講習会を実施することにしておりますが、こういうような支援を通じても、これまで民活事業がまだ起こっていなかった地域についてもこれを発掘がなされるようにしなければいけない、このように思います。  ただ問題は、それじゃどんどんとこちらで検討して押しつけていいのかということになりますと、なかなか難しい問題もあります。もう古い話でございますが、かつて私が手がけた問題、他省のことになるので例に挙げるのはどうかと思いますが、民活のはしりともいうべきレク都市というものがあったのです。これはちょっときれいごとを並べ過ぎて押しつけて、ちょっとうまくいきませんでして、地元に大変迷惑をかけたことがありました。そういうこともありますので、やはり土地それぞれということも必要かと思います。  そのときは、地域経済の活性化の観点から、民間プロジェクトのみで必ずしも十分なわけではないという認識も持って、そして今の掘り起こしもやって、検討もして、それだけでもなお十分でないという考え方の上に立って、いわゆるテクノポリス法とかあるいは頭脳立地法とか産業構造転換円滑化法とかリゾート法とか、いろいろな地域振興に関する法律や各種地場産業の振興対策などをどんどんと総合的に活用していく、地域対策に活用していく、そういうふうにして地域経済の活性化や地域の振興に努めていかねばならぬな、いろいろな組み合わせが必要だな。だから、民活プロジェクトというものが一つの呼び水になって、いろいろな政府の施策の総合的な組み合わせも相まって、全国各地にそれが広がりを見せていくことが一番必要かなというふうに考えております。
  76. 薮仲義彦

    薮仲委員 終わります。
  77. 奥田幹生

    ○奥田(幹)委員長 代理 青山丘君。
  78. 青山丘

    ○青山委員 産構法廃止法案から質問をさせていただきます。時間がありませんので、ごく基本的なことで私からも質問をしたいと思います。御承知のように、産構法が成立してきました背景というのは、二回の石油危機を迎え、しかもその後の世界的な不況の中で、我が国の基礎素材産業が大変困難な状況に陥った、構造的に非常に苦しい状況になってきた、何とか立ち直っていかなければいけない、そういうことから構造改善をぜひ進めていこう、活性化を図っていかなければいけない、こういうことで、産構法が果たしてきた役割はそれなりに大きなものがあったというふうに私は思っております。しかし、今回の廃止法案成立すれば、その役割が終わることになります。  しかし、我が国の基礎素材産業が現在置かれている状況は、なお厳しい状況にあるという認識に立っております。御承知のように、コストにおける競争力が低下してきておる。また、NICSの追い上げを受けてきておる。需給構造が変わってきておる。こういう状況の中で、我が国の基礎素材産業が果たす役割は非常に重い。にもかかわらず、なお相当難しい状況にあると私は見ております。これは申し上げるまでもないことで、既に十分御承知のところでありますけれども、この基礎素材産業というのは国民生活にも国民経済にとっても非常に重要で、しかも幅広い、すそ野の広い産業であります。しかも我が国の基礎素材産業は大変品質の高いものでありまして、これが我が国経済を非常に活性化させてきた、経済の大きな発展の原動力になってきておると言っても言い過ぎではないと私は思います。そういうような状況で、なお現状は全国それぞれの地域においては、雇用の面でも相当重要なウエートを持っておりますし、地域経済にとっても極めて大きい影響力を持ってきておると私は理解しておりますから、そういう位置づけで物を考えますと、ここでさて産構法の廃止法案成立されて、今後一体どうなっていくのかという素朴な疑問をまず持ちます。  政府としては、一体我が国の基礎素材産業を産業政策上、どういう位置づけとしてこれから取り組んでいかれるのか。私も十分承知しておりますが、我が国の産業構造は今大きく変わろうとしてきております。そのことは、産業構造の国際化であるとか高度化であるとか、先ほど来言われておりましたソフト化、こういう大きな動きの中で、しかしなお我が国の基礎素材産業が果たしていく役割の大きさを考えますと、一体どのような位置づけになっていくのか。政府基本的な受けとめ方と今後の取り組みについて、これは総括になりますしなお重要なことでありますので、きちっとお答えをいただきたい。
  79. 鈴木直道

    ○鈴木(直)政府委員 我が国の鉄鋼業あるいは化学産業という基礎素材産業は、出荷額で見ますと約四十兆円、従業員数で見ますと約九十万人でございまして、我が国の製造業の中におきますウエートで見ましても、出荷額では一五・五%、従業員数では八・五%を占めております。すなわち非常に基礎的な、基盤的な重要な産業だと認識しております。  特に、その特色を申し上げますと、第一点は、我が国の産業構造の中の足腰であるという点でございます。自動車産業あるいは半導体産業等の加工組み立て産業が世界的な水準に達しておりますけれども、そこに対しまして非常に良質でかつ低廉な素材を従来から安定的に供給をしていく、技術の変化に適切に対応してきている、そのような面で非常に重要な貢献をしてきている、そういう意味で足腰だと考えております。  第二点は、例えばエネルギー価格の高騰があったような場合に、鉄鋼業は積極的な省エネ技術を導入しました。そのことに見られますように、基礎素材産業には非常に技術の蓄積がございます。今後の二十一世紀へ向かっての大きな技術革新の流れの中に、例えば新素材あるいはバイオテクノロジーというものが有力なる技術革新の種であると言われておりますが、いずれも基礎素材産業に付随するものでございますし、既にその点に関しましては意欲的に対応していると思います。すなわち、日本経済の技術革新をてことした発展を支えるという意味での、もう一つのソフトの面での足腰であるというふうにも理解しているわけでございます。  今後、そういう意味におきまして雇用、地域経済、いろいろな点で御指摘の面がございますが、一方におきまして、産業構造の面でも非常に大きな重要な役割を果たすものと私ども考えているわけでございます。しかし中期的に考えますと、お話のございましたように、オイルショックあるいは円高という面で大変厳しい局面に立たされました。これに対しましては、産業サイドの自主的な構造改善努力、それにあわせまして産構法の運用等によりまして現在回復基調にあるわけでございますし、特に内需拡大効果というものは大きいわけでございます。  しかしながら、今後の展望を考えてみますと、アジア周辺のいわゆるNICS諸国の追い上げ、さらには需要構造の変化への的確なる対応、あるいはまた急激なる円高の進展等と、不安定要因が非常にございます。これに対しまして適切に対応していかなければいけないと考えているわけでございまして、お話の中にございましたような国際化への対応、さらには技術開発の推進等々、多くの課題を依然として抱えておると私どもは考えております。私どもの基礎産業局に基礎素材産業懇談会を設けまして、この問題についてやや中長期的な議論を現在させていただいておりますし、昨年は例の「新世代の鉄鋼業に向けて」という鉄鋼に関する中間報告を出していただいておりますが、現在化学工業について検討しているところでございます。  基本的には、そのような考え方で今後とも対応したいと考えているわけでございます。     〔奥田(幹)委員長代理退席、委員長着席〕
  80. 青山丘

    ○青山委員 産構法に基づきまして、これまで特定産業として二十六業種の基礎素材産業が構造改善を進め、かつ活性化対策を進めてきました。業況を見ていきますとそれぞれの業種によって大変さまざまでありまして、構造改善が達成をされた、そしてその後需要が拡大をして業況は回復してきている業種もありますし、その後円高等がありまして非常に深刻な影響を受けてなお業績が回復しておらない業種もありまして、なかなかさまざまであります。  そこで、ごく基本的なことでありますけれども、なお業況が回復しておらない業種、不況から脱し切れておらない業種に対して、この廃止法案成立の後政府としてどのような対応をされようとされるのか、これが一点。  それから、一部の業種では円滑化法の適用を受けていこうかという動きがあるようでありますが、それぞれの業種によってどんな動き方をしていると通産省は把握しておられるのか。業種によって大分受けとめ方が違うと思うので、一様に把握というのはたやすいことではなくなかなか困難であろうと思います。しかし、通産省としてどのように受けとめておられるか。  それから、自助努力だけでは構造改善を進めていくのはなお難しいという業種が私はあると思うのです。産構法の廃止法案成立することによって廃止後新たな措置はとらなくてよろしいのかどうか、この点についていかがでしょうか。
  81. 杉山弘

    杉山政府委員 産構法につきましては、これまで二十六の業種を対象にして構造改善をやってまいりました。一般的に申し上げますと、相当の成果を上げ得たと思いますし、結果として業況が改善をしている業種が多いわけでございます。そういう意味で、現在は十三業種が対象として残っております。ただ、残念ながら中には、法律の適用を受けながらまだ十分な構造改善の成果を上げ得ず業況が低迷している業種というのも一部にございます。例えて申し上げますと、尿素を中心とした化学肥料関係、それからフェロシリコン等の合金鉄といったところがそういう例になるわけでございます。全体的には産構法はその所期の目的を達成したと断定されますので、今回廃止法を御提案をしているわけでございますが、こういった一部の業種につきましては、この法案の廃止ですべてが終わるということでは恐らくないものと思われます。  業種の中では一部、昨年成立させていただきました産業構造転換円滑化法の対象業種になりたいという御希望をお持ちの業種もあるようでございます。また、設備処理まではやらないけれども、これまでの産構法の成果をできるだけ維持をしていきたい、こういうような御希望をお持ちの業種もございます。そういったものにつきましては、それぞれ業種の実情に応じて、私ども、この法律の廃止後も所要の対応をしてまいりたいと思います。円滑化法の適用を希望される業種につきましては、十分業界とも御相談をしまして、また公取とも相談の上、円滑化法の対象設備として指定をするという方向で考えるというのがまず第一でございます。  それから、構造転換円滑化法の対象業種にならないまでも、これまでの産構法の成果を維持していく、そのためには設備投資について情報の透明性を確保する、そういうことから、巷間言われておりますデクレア方式というものの採用をあるいは必要とする業種も出てくるかもしれません。また、そこまではまいりませんけれども、将来の当該業種の業界全体としての需給バランスについての政府からの情報提供というものを御希望になる業種もあろうかと思いますが、そういうものにつきましては需給見通し作成等でこれに対応していく。幾つかいろいろなタイプがあり得ると思いますけれども、各業界の実情に応じ、各業界の御希望も十分承った上、我々としては所要の対応を図ってまいりたい、かように考えております。
  82. 青山丘

    ○青山委員 現在なお特定産業として残っている業種の中でまだ不況から脱し切っておらない業種、このあたりに不安を与えていくのではないかと私は率直に懸念を持ちましたので今幾つかお尋ねいたしましたが、これらの点についてもぜひひとつ十分配慮していっていただきたい。  それから、今お答えをいただきましたように、業種によっては、これからなお適切な情報を提供していっていただかなければならないのではないかと思います。今申し上げたような、なお不況から脱し切れておらない業種については、構造改善もなかなか独自に十分進めていくというわけにはいかない、投資活動もそう活発に進められないというようなところがあります。しかし、今までのように主務大臣計画を立ててそれに沿って進めていくというようなことではなく、これからは、これは当然のことでありますが、独自の判断で的確な事業を推進していかなければならない状況になるわけですから、政府の立場から見ますと、そうした業種が中期的な展望を持って投資活動をやっていく場合に、政府の立場で中期的な情報、長期的な情報、相当豊富な情報提供をやっていただかなければならないのではないか、それは産構法廃止後もなお非常に重要ではないかという気がするのです。そのあたりの方針をひとつ聞かせていただきたい。
  83. 杉山弘

    杉山政府委員 先生、今おっしゃいましたように、これまで業種全体についての構造改善の目標を大臣が決める、その計画に従って業界全体として、例えば設備処理について共同行為をやるというような、どちらかというと若干役所主導的な感じの強かった構造改善というものはこの産構法の廃止をもって終わるわけでございますが、その後は、本来の自主的な企業の判断で、マーケットメカニズムを中心とした各企業ごとの構造改善の努力が続けられる、そういうことになるわけでございますが、その際には、おっしゃいますように、中期的な需給見通しを初めとした各種の情報の提供というのが、政府として大きな政策になってまいるのではないかと思います。  通産省はこれまでも、ビジョンその他の形での情報提供というのが産業政策の大きな役割であるという認識のもとに、先ほど基礎産業局長からお答えをいたしました基礎素材産業懇談会等でもやっておりますが、そういう形での中長期的な情報提供ということについてはむしろこれからますます必要になる、そういう認識のもとに力を入れてやっていきたいと思っております。
  84. 青山丘

    ○青山委員 ぜひひとつ、そういう取り組みをしていただきたいと思います。  特に、設備投資動向について考えてみますと、最近いささか需要が増大してきておるというようなことから、凍結した設備を再開する、あるいは老朽した設備を更新していくというような動きが出ておると聞いております。ただ、基礎素材産業にとって、その設備投資というのは非常に重要な活性化対策でありますから、私はある程度進めていただかなければならぬと思うのでありますが、実は、今申し述べられましたような需給の見通しをもし過大に見積もって積極的に設備投資をやっていったというようなことになれば、その見通しが正しければよろしいのでありますが、かつてのような過剰設備の問題あるいは過当競争の問題、深刻な問題が再び出てこないということはあり得ない。その辺は、それぞれの業種でも大分厳しく見ておるようであります。そうたやすく軽々しく見てはおられないようですから、一定の信頼はできると思いますが、しかし基礎素材産業が与えていく社会的な影響というのはこれまで非常に大きかった、そういう点を考えていきますと、これは政府としては、ひとつ重大な関心を持って見守っていただかなければならないことです。  もともとその事業者の判断によるものでありますが、事業者が自主的な判断をしていく、それから自主的な自己の責任の上に立った事業の展開であるべきことでありますから、自由競争というのはそういう厳しさを反面持っておりますが、それによっての活力をまた同時に発揮してきたわけですから、それはそれでよろしい。けれどもそういう点で、通産省が今指導しておられるような例の事前公表制度、デクレア方式、これによって事業者が設備投資をしていく動向、設備動向というものが把握することができるというようなことは、業種によっては必要だと私は考えております。おりますが、しかし基礎素材産業が社会的に与える影響というものがかつて非常に大きかった。この点を考えますと、政府としては重大な関心を持って見守っていただかなければならないと思います。そのあたりはいかがでしょうか。
  85. 杉山弘

    杉山政府委員 おっしゃいますように、基礎素材産業は装置型産業でございますし、また投資ユニットというのが非常に大きくなってきてもおりますので、もし再び不必要な投資競争が起こってまいりますと、これまでのせっかく産構法によります構造改善努力というものが水泡に帰することにもなります。こういった点につきましては、本来は企業の自主的な判断でというのが筋でございますから、そういう意味におきまして、企業の判断のベースになりますような各種の情報提供ということは、先ほど来お答えしておりますように政府としてぜひ力を入れてやっていかなければいけない。それに基づいて、企業サイドで的確な判断をしていただくということがまず第一かと思います。  また、相互間で各社の投資動向についての情報が不透明なために疑心暗鬼になってというようなことがあってもいけませんので、特にそういう点で心配のあります業種につきましては、実情に応じましては、先生おっしゃいますような投資についての事前の情報公開制度というものを適用してこれに対応していくというようなことも必要かと思いますが、これは少なくとも一律にやるということではなくて、業種の実情に応じてその必要性に応じてやっていくべきものであり、できるだけ慎重に対応していきたいとは思いますけれども、全く手放しでいいということで考えているわけではございませんで、そのあたり十分実情を踏まえてこれから対応してまいりたいと思っております。
  86. 青山丘

    ○青山委員 ありがとうございます。  民活法について、これも総括的な質問をさせていただいて、また個々の問題が出てきましたら改めて質問させていただこうと思いますが、今回は時間もありませんから、ごく基本的な質問に触れさせていただきます。  民活法が出てきた背景を見てまいりますと、アメリカやヨーロッパからの相当激しい経済摩擦、貿易摩擦の中で、さりとて我が国も非常に厳しい財政事情の中で地方経済を活発化、活性化していかなければいけない、内需を拡大して産業構造を外需中心から内需中心に大きく転換していかなければいけない、ついては地方に活力を持ってもらわなければということで民活法が制定されてきました。そして、政府も各種の支援措置を進めてこられたわけであります。とりわけ、昨年五月の緊急経済対策あるいは七月の補正予算等見てまいりますと、NTT株式売却の収入を活用することによって民活法に基づく特定施設整備計画が相当進められてきました。その結果、昨年七月から特定施設整備計画認定件数が十六件に増加してきました。思い起こしますと昨年五月、この民活法改正案の審議のときに政府が示された特定施設整備計画認定件数は十四件、その点では、通産省管轄の特定施設に限っては一応目的は達してきておると言うべきでしょう。  そういう中で、まだ民活法がスタートを切って二年、これで三年ということですから、今の段階でまだそうとやかく言うべきではないかもしれません。しかし、この改正案に伴って政府が今持っておられる民活法に対する基本的な認識、その評価をまずお尋ねし、大臣からも少し御所見を伺っておきたいと思います。
  87. 田村元

    ○田村国務大臣 民活法というのはどういう法律かということでありますけれども、これは内需拡大への要請を背景としながら、従来余り整備の実例のなかった公共的性格を有する施設に対して、政府が呼び水的な支援措置を講ずることによってその整備促進して将来の新しい事業分野を開拓するとともに、当該施設を軸とした地域経済の活性化を図る、これを目的とした法律が御承知の民活法でございます。民活法に基づきますプロジェクトは、民活法制定当初の見込みよりも確かに相当おくれました。これは事実でございますけれども、昨年の後半からプロジェクト認定が増加しまして、現在十九件のプロジェクト認定に至っております。ようやく軌道に乗ってきたと私ども認識をいたしております。  今回の改正は、特に総合経済対策の一環として内需の拡大、地域の活性化の一層の推進を図る、そのために新たに日本電信電話株式会社の株式の売り払い収入を活用して無利子融資をするという制度が創設された。それで、民活によりますさまざまな施設整備計画が浮上してきたことを踏まえまして、さらに一層経済社会基盤の充実と地域活性化を進めていこう、こういうことでございますが、率直にいいまして極端な地域偏重があってはいけない。濃淡はあるでしょうけれども、やはり全国にでき得る限りまんべんなく配慮されるべきもの、しかしそれは地域によっては受け入れがたい地域もあるでしょうし、いろいろな問題ありましょう。我々はそれを掘り起こすことも必要、調査をしてノーハウを供与していくということも必要でありましょうし、また、いろいろな現在あります法律によってプロジェクトをいろいろやっておる公共的なものもございますが、そういうものも両々相まって、両々といいますか幾重にも相まって、日本の多極分散型の地域活性化が図れるものというふうに考えております。
  88. 青山丘

    ○青山委員 話がちょっとそれますが、多極分散型国土形成については、今回の民活法がある程度骨子の一つになってきておるというふうに私は見ておるのです。民間事業者が持っておる能力を有効に活用していくということが、一つの発想としてなかなか画期的であったと私は思って、当時評価しておりましたよ。ただ、実効あるものにしていくのにはいろいろな問題がありまして、さりとて民活法が十分生かされてきておるのか、いやまだこれからだという評価があるかもしれません。しかし、今回の改正によって追加されます十一施設を含めて、特定施設整備計画がこれからなお進められていくわけです。いくわけですが、この特定施設整備計画が円滑に進むためにも、それぞれの地域の開発計画あるいは整備計画ときちっと連携をとってやっていかなければいけない、これは当然のことです。同時に、この民活法を実効あるものにするためには、今までいろいろな規制の法律で抑え込まれてきてなかなかうまくいかなかったということで、これは相当規制を緩和していかないと実効あるものにならないということが、最初から繰り返し言われてきておりました。  例えば、従来ですと既成市街地の容積率の見直しであるとか用途地域の見直しであるとか、あるいは新市街地における線引きの見直しであるとか、とにかく開発許可申請は物すごい膨大な手続で、これを何とか簡素にしていかなければとても地域の開発などというのは無理だというような声が、地方自治体においてもあるいはまた民間の事業者からもそういう声が強く出ておりました。今回、農水省来ていただいていますが、農林水産省関係施設が加わって、従来の規制の問題と、さらに加えて農地法等の問題がきっと出てくると思うのですね。農地法の問題は既に出ていますね。それで、例えば農地転用の規制の問題がこれから出てくると思うのです。これらの農地法の規制の問題、それから規制の緩和の問題、それを相当取り組みをしておかなければいけないのではないかと懸念しています。  そこで質問ですが、これまでの整備計画認定について、関連法規による規制の状況と今後の規制の緩和について、通産省、農水省、お考えをひとつ示していただきたい。
  89. 杉山弘

    杉山政府委員 それでは私どもの方から、ごく一般的な考え方について御答弁を申し上げたいと思います。  民活施設整備計画認定につきまして、他の関連法規による規制との関係についてこれまでどうであったかということでございますが、先ほど来の御質問の中にもございましたように、認定に至りましたのがまだ全部で十九プロジェクトということで、そう多くあるわけではございませんが、幸い実際上は地方自治体等が参加をしておられることもあるのかと思いますけれども、これまでのところ、計画策定、認定につきまして他の規制法規との間でそう大きなトラブルは出ていないと思います。先生御指摘のございました農地法の転用の問題につきましても、これまでのところのプロジェクトは、どちらかといいますと自治体所有の土地をそのまま譲り受けるとか借り受けるとかという形で手当てをしてというものが多いものでございますから、御懸念のような農地転用という格好での問題が出てきたケースというのはほとんどないように思います。  地方におきます特定施設というものも大分追加をさせていただいていますので、これからあるいはそういう問題が出てくる可能性が全くないわけではないと思いますが、こういった点につきましては、施設整備の任に当たりまする私どもの立場からいたしますと、できるだけ早く施設整備するという観点から、農地転用を初めとする関連法規の規制の運用につきましては、関係省庁にぜひ積極的な面での御協力を賜りたいと思いますし、そういう面でまた申請者の側にいろいろ注文なり御希望なりがございましたら、私どもがそれを代弁するような形で関係省庁との間で十分御連絡をし、お願いをしたい、かように考えております。
  90. 田村元

    ○田村国務大臣 ちょっと青山君の御質問と私のお答えは筋の違うことかもしれませんが、非常にいい機会でありますので、この機会を利用させていただいて少し役人たちに申しておくというか、速記録に私の言葉を残しておきたいと思います。  それは、民活プロジェクト、本来民間人の官僚にないノーハウというものを生かして、そして政府あるいは地方公共団体の公権力というもので補完していくというものでなければならぬわけですね。ところが、何かにつけてやはり役人が割り込みたがる。OBも送りたがる。入れば、やれこれは政府から金が出ておるんだから会計検査院がうるさいとか、いや何だかんだでプレッシャーをかける、ブレーキをかけるというようなことが、ありがちとまでは申しませんけれども、起こり得る危険性もあるということでありますので、やはり可能な限り民間人の経験と英知に存分の腕を振るわせるべきだと僕は思うのです。そして、民間人が困ったところを補完していくということで初めて民活というものが生きる。その典型的なものがJRだと思うのです。  でございますから、ちょっと御質問の答えにはならぬかもしれませんけれども、つまり役人に対する戒めの気持ちも込めまして、民活プロジェクトがうまく進んでいきますために、あえて私が答弁という形で速記録に言葉を残させていただくということを思いついたわけでございます。
  91. 野田哲也

    ○野田説明員 農地転用の件についてお答え申し上げます。  農業と農業以外の土地利用との調整を図りつつ優良な農用地を確保いたしまして、あわせて国土の計画的合理的利用を促進する、こういう目的で農地転用につきまして許可制度を設けているわけでございますが、都市計画法によりまして定められました市街化区域におきましてはこれは届け出のみで足りる、こういうことになっております。また、民間活力の活用によりまして経済の活性化を図っていくということが我が国の緊急な課題であるということにもかんがみまして、農地の転用につきましても、数次にわたる転用許可基準の緩和なりあるいは事務処理の簡素化、迅速化を図っているところでございまして、こういう取り組みによりましてこの民活プロジェクトの推進にも対応してまいりたいと考えております。  先ほど通産省の方からお話もありましたように、この民活法に基づきますプロジェクトについては、今までのところ指定される施設の性格あるいは実績から見て、農地の転用の必要なものは少ないと思っているわけでございますけれども、今回施設も大幅に追加されまして地方における実施の機会も増加する、こう思われるのでございますので、必要があればこの優良農地の確保に配慮しつつ十分に調整して適切に対処してまいりたい、こう考えております。
  92. 青山丘

    ○青山委員 ありがとうございます。ぜひお願いします。  最後に、一問だけお願いします。特定施設整備計画が順調に進められるためにも、この特定施設整備だけではなくて、関連する周辺施設整備されなければなかなかうまくいかない。さきの頭脳立地法のときでも私はこのことに触れさせていただいたのでありますが、そういう点ではいささか配慮していただいておると思います。例えば都市再開発関連公共施設整備促進事業費、これが予算化されて、通常の補助事業と別枠で進めていただいておることであります。そういう形で積極的に特定施設整備を進めていくわけでありますが、周辺についても十分配慮していかないと実効あるものにはなかなかなっていかないという懸念を持っておりますので、そのあたりの御見解をひとつお聞かせいただきたい。
  93. 青木保之

    ○青木(保)政府委員 先生おっしゃいますとおり、特に都市の整備におきましては、施設のみならずいろいろな面を面的に整備をしていく必要があると存じておる次第でございます。私どもも、特定施設を核といたしまして都市の公共施設を面的に整備する必要、これは非常に重要だと思っておるわけでございますが、民活法によりましても、都道府県知事が特定施設を拠点としました特定都市開発地区の指定及び開発整備の方針を定めることができることとなっておりまして、この開発整備の方針に基づきまして、関連する公共施設整備を推進するということにしておるわけでございます。  この関連する公共施設整備に当たりましては、従来から、街路でございますとか公園でございますとか下水道の整備事業を行っておるわけでございますが、今、先生おっしゃいましたように、通常予算とは別枠で、特に都市の再開発を促進するという意味で、関連公共施設整備を行います都市再開発関連公共施設整備促進事業というものを設けておりまして、これを特定都市開発地区にも適用するというような仕組みもつくっておるわけでございます。これらの仕組みを積極的に活用いたしまして、特定施設を核といたしました町づくり、いい町づくりをするために、私どもも誠心誠意努力してまいりたいというふうに思っておる次第でございます。
  94. 青山丘

    ○青山委員 ありがとうございます。  質問を終わります。
  95. 渡辺秀央

    渡辺委員長 次に、工藤晃君。
  96. 工藤晃

    工藤(晃)委員 これまでも大きな企業の工場の縮小、閉鎖によって、いわゆる城下町と言われる地域が大きな打撃を受ける、こういう例は数多くあったわけですが、とりわけ私は、岩手県釜石市の例は非常に深刻な例であり、この事態というのは国の政治がそのまま放置しておいてはならない、こう思いまして、最初にこの問題を取り上げた次第であります。もとより、これは直接は産構法とかかわりはないかもしれませんが、私によりますと、産構法を引き継ぐ円滑化法もかかわる可能性がありますので、あえて取り上げる次第であります。  十年前、ちょうど新日鉄が第一次合理化計画を出したときも、私は釜石市へ参りまして各方面の方から御意見を受けました。それで、この委員会の場でも取り上げたことがあります。今回も第四次合理化計画に臨みまして、市の各方面の方々からも多くの御意見、要請を受けました。野田市長さん、それから平松市議会議長さんからも要請を受けましたし、もとより働いている労働者、下請の労働者あるいは中小企業の方、青年会議所の方、いろいろな方面の方からも要請を受けました。はっきり言って大臣、野田市長も新日鉄の本社によく来られますが、何とか釜石の高炉は残してくれと自分は言っているんだと大変はっきり言われました。それから前回、高炉二本あったのを一本にするとき、第三次合理化のときですが、十年間はあとの高炉は続けますよという約束がはっきりあった、それが破られているではないかということに対する強い不満もありました。それからまた、縮小のやり方が余りにも身勝手過ぎるのではないか。それで、同じ縮小もありますが、広畑、室蘭では新溶解法というともかく鉄源を維持するのに対して、これほど深刻な釜石だけなぜ新しい鉄源をなくしてしまうのか、こういう要求もありました。青年会議所の皆さん方は未来についていろいろな計画を示されておりましたが、一企業に依存する市をいつまでも続けたくない、しかしともかくソフトランディングするようにやってくれないと困るという要望でありました。いろいろなトーンの違いはありますけれども、ともかく今の新日鉄の高炉を来年とめてしまうようなやり方、こういうことに対しては国政の場でブレーキをかけられないものかというのが、共通したものであったわけであります。  そこで、これまでの第一次、第二次、第三次の合理化が進められたこの十年間に、一体釜石市がどういう影響を受けたのかということで、委員長、申し上げました資料大臣に見ていただきたいと思います。そのグラフの方は、市がつくった資料であります。大臣、最近釜石に行かれたことはございますか。――ないですか。もし行かれたら、そのことで資料で説明されると思いますが、それで持ってきたわけであります。  過去二十五年間見ますと、人口を見ますと九万二千余りから五万七千余りに減った。三万四千七百八十名減った。それが、釜鉄の従業員数の減る速度と非常に関連があるというのがそのグラフによってわかるわけであります。釜鉄の従業員が八千十四名から五千七百十四名減って二千三百名になったということで、釜鉄の従業員が一人減ると市の人口が六人減る、こういうスピードで進んできた、これがあります。もう一つ、新日鉄のやっている合理化の政策ですか、これを反映した人口構造といいますか人口構成になってきている。今見ておりますと、五十歳以上の方が残されて若い人が君津やその他へ出かける、こういうことになっておりますので、ともかく小中学校の生徒の減り方が驚くべきものでありまして、一九七八年九千七百五十二人が十年後の八八年四千四百七十八人で、五千二百七十四人減りました。つまり、子供たちは五四%減っている。それで教室が八十三あいている。それで、市立の幼稚園は一園を除いては定数の半数に満たないものばかりである、こういう状況になっている。  それで、財政で一番響いてくるのが国保の収納率でありまして、七八年の大型圧延工場の休止以来どんどん低下して県下最悪になっている。そこで私、調査もいただきましたが、国保税滞納千八百二十四世帯のうち、担税能力を持つと推定されるものは世帯数で一・八%にすぎず、あとは借財の返済だ、無職だ、日雇いだ、出稼ぎだということで払えないということで、そういう深刻な事態も出ております。また商店街は、三年間に商店の数が三四%減ったというようなことですが、これは通産省の基礎産業局ですか、こういう状態に釜石がなっているということはつかんでおられますかどうですか、そのことだけごく簡明にお答えください。
  97. 鈴木直道

    ○鈴木(直)政府委員 私どもも、釜石市のいろいろな方々からお話を直接お伺いしております。
  98. 工藤晃

    工藤(晃)委員 では、一応知っているという前提でさらに進めようと思います。  それから、釜石のもう一つの特徴としまして、大臣、今地図をお渡ししましたけれども、これを見てもおわかりのように、リアス式海岸で平たん地が非常に少ない釜石で、平たん地の七割は製鉄所のものになっているわけなんです。また、海岸部の砂浜だとか湾岸部だとか、それはほとんど占有されているということから何が起きているかといいますと、結局、住宅を建てるにも急斜面にしか建てられなくなってしまって、岩手県の急斜面の危険住宅の六割が釜石に集まっているというような状態です。それから漁業の方からいいましても、三陸沖の世界三大漁業の近くだと言いながら、広い砂浜だとかそういう場所がないですから、漁港として育てるために非常に必要な水揚げ場だとか水産加工団地がつくれない、こういう状態になっている。  つまり、釜石のもう一つの大きな特徴というのは、土地空間が製鉄所にほとんど押さえられているがゆえに、釜石市として、企業を呼ぼうとかそういう努力をしても身動きがつかない、そういう状態になっている。今度は水産業を振興させようとしてもできない、そういう状態になっている。こういう状態がありますが、基礎産業局長、その点についての事実も御存じでしょうか。
  99. 鈴木直道

    ○鈴木(直)政府委員 私どもも、釜石市長あるいはその市会議員の方からいろいろ実情をお聞きはしておりますけれども、ただ、地元の方々も企業誘致に大変御熱心であるという事実は承知し、一部成功の結果も出ているやに聞いておりますが、確かに御指摘のようないろいろ難しい事情があることも承知しております。
  100. 工藤晃

    工藤(晃)委員 さてそこで問題なのは、今までのこういう経過から見て、今第四次合理化計画によりまして、言われているように来年高炉を休止してしまうとどういう結果が起きるかというのは、これまでの経過からもうわかり切っている。しかも、どういう合理化になるかというと、この釜石で高炉をなくしてしまって線材工場が残るわけですが、鋼片は君津あたりから持ってきて、さっき言いましたように室蘭、広畑はまだ新溶解法とか鉄源が何らかの形で維持される方針のように聞いておりますが、釜石の場合は完全になくなってしまう。  それで、実際に釜石の製鉄所というのは、前は大型圧延工場があって、これが休止になってしまったため圧延量が半分以上減ってしまって、そして高炉が一本ということになってしまったわけなのですが、今この釜石の線材というのは、非常に高品質のスチールコードをそれからつくれるわけであります。日本の七割のシェア、世界の四分の一のシェアを持っている、非常に高品質のスチールコードがつくれる。それで、しかも高炉から鉄源をとってやっている優秀な工場だと私は見ております。しかも、高炉が古いというわけではなしに、三年前に改修しているわけであります。そういうことにもかかわらず、しかもさっき言いましたように被害がどんなに大きいかということはわかっていながら、なぜわざわざこの高炉休止ということを急いで、そして君津の方に集中してしまうのか。君津の高炉の方は二本にふやしてしまう、線材も君津の方に移していく、なぜそんなことをやるのか、このことに対して関係者は非常に強い批判を持っている。私は当然なことだと思います。  そこで、仮にこのまま進むならばということになりますと、この線材工場で働く四百人だけになってしまう。あと、全部で八百人と言いますが、三百人は出向者を含めているわけです。病院の百名を含めて八百人と言っているわけであって、残るのは四百人で、しかも鉄源を持たないわけですから、本当に中小工場というような惨めな状態になってしまいます。そして、下請などを含めると恐らく三千名が職を失うであろう。そうすると、これまでの経験からいいましても、人口で一万人くらい減少を来すであろう、四万人台の人口になってしまうだろう。そうすると、市の財政はもう完全に破綻しまして、今の市の税金が四十七億円でありますから、それに対して十億円くらい市の税収が減ってしまう、こういうこともあります。病院事業の会計やら国保の会計やら、あるいはまた、一時は九万二千人の人口を前提としてつくった上下水道等々のこれらの施設の収入がなくなってしまう。一体どういうことが起きるか、これはもう明らかだと思います。そして、残るのは公債費、借金ですね、これが山のように積まれてくる。先ほど局長も言われましたように、一企業が来ると五千万円の奨励金を出すという企業奨励をやっているのですが、皮肉なことに、新日鉄がどんどん撤退し出したからやむなくこういう制度を設けたのですが、それが今後その財源さえもう出なくなってしまう、こういう状況になっているわけであります。  そういうことから、実は今、鉄は一億トン増産、それから新日鉄の利益も急速にふえていく、こういう状況になっている中で、ともかくこれほどはっきりとした悪い影響が出る以上、少なくとも合理化の内容や進め方について、地域住民にこれ以上迷惑を与えないようなそういう方向で見直すということで、大臣ぜひこの問題は提起して、そしてよく考えるようにという指導をしていただきたい、このことを強く要請いたします。大臣、いかがでしょうか。
  101. 鈴木直道

    ○鈴木(直)政府委員 本件につきましては、大臣よりかねてから私どもも指示をいただいておるわけでございますが、円高の急激な進展に伴いまして、特に地域に立地いたします基礎素材産業は非常に厳しい局面に立たされるわけでございまして、生き残りをかけてのいろいろな対策を打って出ざるを得ない、こういう現状にございます。お話のように、確かに内需の拡大ということでいい方向にありつつありますけれども、しかし鉄鋼業が直面しております問題は、基本的な構造的な問題は解決されておらないわけでございます。輸出の減少、輸入の拡大、NICS諸国の追い上げ等々の条件は変わりませんので、このような構造的問題に対応するという企業側の努力そのものは、やはり続けざるを得ないものと私どもも認識しております。  しかし、それに伴います地域の問題、これにつきましては、大臣のかねてからの御主張で私どもも最大の配慮をすべきだと考えておりまして、例えば昨年の補正予算以降、公共事業の配分におきましても、このような不況地域への重点配分ということを意欲的にやっておりますし、大臣も直接関係大臣に御要請いただいております。さらには、労働省がやっております不況地域の雇用対策、これも大臣の御指示で私ども労働省にお願いしてやっております。省内の問題でございますが中小企業対策、これも地域に重点を置くというようなことで、この辺の地域問題に関しましては、私どもが持っております各般の政策手段をフルに活用して、必死に対応しているというのが現状でございます。
  102. 田村元

    ○田村国務大臣 今、局長が申したとおりでございますが、私は鉄鋼業界各社に対して、何回となくいろいろなことを要請いたしました。新日鉄におきましても、釜石あるいは室蘭――室蘭へは先般行ってきましたけれども、随分お願いをしたわけです。そして一方において、今局長申しましたように公共事業の、つまり社会資本投資の傾斜配分にしても、特定地域の問題にしても、あるいはその他いろいろな問題を手がけてまいりました。労働省へも、福川次官を連れて懇請にも行きました。また一方において、矛盾したことも私もやったことはやったのです。それは、円高による競争力の低下等で本当に苦しんでおる鉄鋼業界に対して石炭、国内炭の高いものを押し売りしたというところもないでもありません。別に国家公権力で押し売りしたわけじゃありませんけれどもお願いを申し上げて引き取ってもらうというようなこともありました。  ただ、我々がやれますことは、政府予算でいかに対応するか、大臣局長等がどういうふうに頭を下げてお願いするかしか、自由経済の今日において、我々は社会主義者じゃありませんので、国家公権力で押し切ってしまう、あるいは抑える、あるいは計画を変更せしめるということは、これはできません。でございますから、何とかというので我々は補完的な協力をしたりあるいはお願いをしたり、しかし実際には私どもはできるだけのことはしてまいりました。今後もしてまいる所存でございます。内需の拡大で少しよく見えますけれども、なお円高の状態で定着してまいりましたし、また輸出というのは減少の傾向があります。大変苦しいものと思いますが、今後も私ども、可能な限りの手は打っていくつもりでございます。
  103. 工藤晃

    工藤(晃)委員 最後の可能な限りの手を打つということ、実際中身のあるようにぜひやっていただきたいと思いますが、ただ、公権力でやるにはもちろん法律的基礎というのはないと思います。思いますけれども、やはり通産省というのは日常いろいろな行政指導もされておるわけでありますから、その関係があると思うわけです。  しかも、私は特に新日鉄の釜石製鉄の場合、ただ一私企業で合理化はやむを得ないと済まされないものがあると思うのです。というのは、釜石の製鉄所の歴史というのは、そもそも安政の四年に大島高任がそこで洋式の高炉を成功させるという、長い百三十年以上の歴史がありまして、それから官営の製鉄所時代があります。今の土地のかなりの部分というのは、官営製鉄所時代に強制的にとったわけですよ。そんなら製鉄所で働かせるからいいじゃないかといって取り上げた。それからその後、民営といえ日鉄時代がありますね。そのときもどうだったか。製鉄業奨励法それから製鉄事業法と続いてきますが、このときこういう製鉄所に対しては、国から奨励金が出るだけでなしに所得税を取らない、地方も税金が取れない。それだけでなしに、当時は土地収用法を持っていたんですよ、与えられていたんです。ですから、釜石の場合もかなり広大な土地、松倉地区、これは五十万平米を超える土地は土地収用されて比較的最近まで裁判が続いていた、こういういきさつがあるわけですね。こういうふうにして、言ってみれば国や自治体から百年以上も長く支えられ、支えられしてここで製鉄業を続けてきたというこの歴史を考えるとき、一私企業がやることだ、そういうふうに私は言ってはならないと思うのです。  それからもう一つ、私もよく勉強して、地域に行きまして調査して非常に深刻に思ったわけでありますが、あそこに製鉄所があったがゆえに、日本が敗れる直前、七月十四日と八月九日、二回にわたって最初はアメリカの大艦隊により、その次はアメリカとイギリスの合同艦隊により艦砲射撃を受けて、アメリカの艦隊がぶち込んだ弾だけでも五千三百四十六発、これは新日鉄の社史を見ましても世界の戦史をひもといてみても、一つの工場に対して二度にわたって大艦隊が直接艦砲射撃の攻撃を加えたことはないということで、市街地で五百三十四名、製鉄所内で百五十七名、六百九十一名が命を落とされた、そしてまたほとんどの人々が罹災してしまった、こういうことがあります。戦後は戦後で、港湾の整備は県がやって、それから漁業権はどんどん失われていくということ。自治体は自治体で、さっき言ったようにいろいろな都市の施設をつくらなければいけない、公害が非常にひどくなった、カキもとれなくなった、いろいろなこういう犠牲の歴史の連続でもあるわけなんですね。  ですから、確かに私企業であるということはわかりますけれども、とりわけこの新日鉄の釜石製鉄所について言うと、百年にわたって国と自治体に、言い方によってはおんぶにだっこで来て、そしてまた住民の人にはいろいろな犠牲、負担をかけて、そしてまた歴史的に見ても釜石で近代製鉄というのが、技術がっくり出されて日本の製鉄業をつくり出した。釜石があって初めて今日の鉄鋼業があるような、こういうことから見ても、私が言いたいのは、新日鉄に対して、こういうこれまでの経過から見て、今利益をもっと上げなければいかぬというようなことだけで釜石市民のことは見捨てるとか、やりたいことをやるんだ、こういうことは許されないんだ、こういうふうに私は思うのです。これは決して社会主義者の言葉でなしに、民主主義者なら当然これは経済の民主主義という立場から考えると思うわけなんです。  先ほど局長がいろいろ言われましたけれども、しかし最近のどの新聞を見ても、二年ぶりに一億トン台になった粗鋼生産の話や、それから来年の三月の予想では経常利益増収率ランキングではトップがみんな製鉄で、二番目が新日鉄であり、来年の三月には経常利益千三百億円に拡大するであろうということや、それから釜鉄自身フル操業ですね。コークス炉の操業なんかは一五四%という操業を現にやっていて、それゆえその中で、二月には一人の労働者がコークス炉とガイド車のわずか五センチの間に挟まれて本当に惨殺されるような悲惨な労働災害が起きる、こういうことが今のむちゃくちゃなフル操業の中でさえ起きている。こういうふうに、第四次合理化計画の前提とした生産の見通し、九千万トン体制にするんだ、これが変わってきている。それから利益は、どんどん赤字になる、これも変わってきている。当然ここでもう一度、あの四次計画そのままでいいのか、見直しをしなければならないときである。  しかももう一つ、大変な新しいニュースとしては、新日鉄は明らかに、何か縮小みたいなことを言っているけれども事業拡大に向かっているというのが、ユーロ市場でワラント債を、新株引受権つき社債ですね、これを十億ドル秋に起債をするということになっております。これは、これまでの日本のどの民間企業と比べても、例えばトヨタの八億ドルと比べても大きい。これほど新日鉄は、あの社長さんは昨年の一月、三年間でむくむく起き上がってやると朝日新聞にお書きになりましたが、三年間どころか一年半でむくむく起き上がって、それでワラント債十億ドルやって事業拡張をやる。私が言いたいのは、これほど新日鉄の場合はゆとりが現にできている。だから、何か先ほど言ったように生き残りなんて調子のいいことで、新日鉄も沈没寸前みたいなことを大宣伝しましたけれども、そんなことないですよ。世界最大の鉄鋼の大企業なんですから、しかもこういう状況なんですから。  そこで、新日鉄の場合は、何も釜石だけの一つの事業所じゃなしに幾つも事業所を持っているだけに、これほどはっきりとした大きな被害が出るということをわかりながら、あえて釜石のいろいろな機能を君津に移して、釜石の高炉はなくしてしまって君津の方を二本にする、こういうことを急ぐ必要はないじゃないか、こういうことを私は言いたいわけなんです。そういうことを含めて大臣、こういう現実に地域や住民生活に大きな問題を起こしているとき、これは必ずこうしなさいよともちろん通産省は命令できないでしょうけれども、それなりのしかるべき指導があっていいんではないかというふうに私は思いますので、あえてもう一度大臣にお伺いしたいと思います。
  104. 田村元

    ○田村国務大臣 随分おしかりをいただくわけですが、私なりに今までは随分努力してきたつもりでございます。経済の民主主義というのがどういうことか、ちょっと私も意味がしっかりわかりませんが、私は経済、産業というものと人道主義というものとをいかに絡めるかということで訴えてまいりました。そして、室蘭でもどこでもそうですが、もちろん今後もいろいろな点で訴えていくつもりでございます。  ただ、強力な指導とおっしゃいますけれども、それにもやはり限界がございます。指導というのはどういうものなのか、お願いというのも指導の中に入るのでしょうけれども、指導して言うことを聞かなければ何か制裁を食らわすぞというわけにもいかない。でございますから、政府がやはり先ほども申し上げたようにいろいろな面で補完的な援助もしていく。同時に、釜石や室蘭その他神戸製鋼などたくさんありますが、そういうことで苦しんでおるところ、かつての函館、佐世保がそうでしたし呉がそうでございましたけれども、それらと同じように十分の配慮をしていただきますように、私は今後も懇請し続けるつもりでございます。
  105. 工藤晃

    工藤(晃)委員 建設省、おいでになっていますね。  私は、釜石の鉄鋼団地協同組合に参りました。この鉄鋼団地の歴史も長いのですが、ここで高度化資金を運用してきたわけですが、ことしの夏九月にこの償還が終わる。非常にそれは喜んでいるのですが、同時に、仕事がなくなってきたというので複雑な状況にあるわけです。そこで、ここの関係者たちが強く言っていたのは、釜石市の場合、海側の公共事業というのは割合進んでしまった、これは製鉄所があったからです。しかし、今中小企業の方たちは首都圏、千葉なんかに仕事をとりに行かなければいけない。ところが、道路が整備されていないために大変時間がかかってしまう。それで、一トン加工するのに一万円運賃が余計について競争にならない。何とか道路整備を早くしてくれということで、例えばという話で、仙人峠を越える一般国道二百八十三号、釜石―遠野間の抜本的な道路改良をということも出されておりましたが、こういうのは一体どのように促進されるのか。こういうところこそ公共事業として促進されるのが当然だと思いますが、いかがでしょうか。それ一問だけ、簡単に答えてください。
  106. 橋本鋼太郎

    ○橋本説明員 一般国道の二百八十三号は、釜石市と花巻市を結ぶ幹線道路でございますが、仙人峠付近は地形が厳しく、最急勾配等大変厳しいものがございます。さらに冬季については、積雪や路面凍結のために交通障害になっている現状でございます。  そのため、これらを改善するために建設省では、国道二百八十三号を含む三陸沿岸地域の道路網体系について、六十年度より調査をやってまいりました。今年度六十三年度からは、仙人峠付近の具体的な路線調査を実施することといたしております。仙人峠の整備方針等について早急に検討し、実現に向かって努力してまいりたいと考えております。
  107. 工藤晃

    工藤(晃)委員 時間がだんだんなくなって民活法の方に行けるかどうかわからないのですが、私は鉄鋼のことや産構法の問題で、今度産構法が廃止になるというのは、もともとつくるときに反対していたから廃止は大いに賛成なんですが、事実上円滑化法というので逃げているわけです。これは共通して一つ大きな問題があるのは、どの文言にも、内外の経済事情の著しい変化でと、何か経済が物すごく変化したから、物が売れなくなって過剰になったから何とか国がやってやりましょう、こういう仕組みになっているわけなんです。  しかし、鉄鋼の場合はそれだけで済むだろうか、そう考えますよ。日本は世界の鉄鋼業界のリーダー格でもあった。IISI、国際鉄鋼協会の中でも主導的な役割を果たしてきたというのはだれでも知っている。それで、一九八五年のロンドン総会でIISIの会長が、設備投資に関する見通しで自分たちは過ちを犯してきた。余りにも過大に見過ぎた、過ちがあったということをここは認めているのです。ではだれが一番過ちを犯したかというと、一九七五年以来のことを言っているのですが、七五年以来、日本とアメリカとECと比べると、どこが一番過大な設備投資をやったかというと、これは文句なしに日本なんですね。それから、浦項製鉄所が今どうだこうだと言うけれども、あれを全面的に支援してきたのはやはり日本の鉄鋼業界で、新日鉄と鋼管なんですね。だから設備に関して言うと、余りにも急速に突き進んでしまって、そしてみずから過大な状態をつくり出したというそちらの側面が全然出てこなくて、すべて情勢が変わったから過大になってしまったということで、こういう放漫な、余りにも冒険的な設備投資責任が問われない。そういう法律の体系が、特安法から始まってまだ延々と続いているというところに、私は非常に問題があると思うのです。これが一つの問題点です。  もう一つは、国の計画あるいは国が承認する計画ということで、それをてこにした労働者の首切りが行われているという問題、あるいは地域の経済がいろいろな迷惑をこうむるという問題が起きる。そういうことからいって、一連のこれらのやり方に対して我が党は強い批判を持ってきたといういきさつがありますので、これに関して廃止というのは賛成だけれどもあともっともっとやりたかった民活法は時間がなくなりましたのでこれで終わりますが、大臣に最後にもう一度。  私は、釜石だけのことを言っているわけじゃないのです。一つの典型的な例として申し上げましたので、企業のそういういろいろな経営戦略が地域に大きな影響を及ぼす、しかも悪い影響であるときに、果たして経営戦略そのものがいいのかどうかという判断もしなければならない。そういう点でいうと、基礎素材産業懇談会の中間報告なんか見ると、これは局長も知っているでしょうが、第四次合理化計画をもっと早くやれと書いてあるのです。早くやれということでは指導して、遅くやれということでは指導しない、これは大変けしからぬ話だと思います。  こういうことを述べまして、私の質問を終わります。
  108. 渡辺秀央

    渡辺委員長 これにて両案に対する質疑は終了いたしました。     ─────────────
  109. 渡辺秀央

    渡辺委員長 まず、特定産業構造改善臨時措置法を廃止する法律案について議事を進めます。  これより討論に入るのでありますが、討論の申し出がありませんので、直ちに採決に入ります。  特定産業構造改善臨時措置法を廃止する法律案について採決いたします。  本案に賛成の諸君の起立を求めます。     〔賛成者起立〕
  110. 渡辺秀央

    渡辺委員長 起立総員。よって、本案は原案のとおり可決すべきものと決しました。     ─────────────
  111. 渡辺秀央

    渡辺委員長 次に、民間事業者能力活用による特定施設整備促進に関する臨時措置法の一部を改正する法律案について議事を進めます。  これより討論に入ります。  討論の申し出がありますので、順次これを許します。青山丘君。
  112. 青山丘

    ○青山委員 私は、自由民主党、日本社会党・護憲共同、公明党・国民会議及び民社党・民主連合を代表して、民間事業者能力活用による特定施設整備促進に関する臨時措置法の一部を改正する法律案に対し、賛成の討論を行うものであります。  御承知のとおり、最近の我が国経済は、円高下にもかかわらず、内需を中心に着実に拡大し、経常収支の黒字幅は、六十一年末をピークに、高水準ながら減少傾向をたどっておりますが、米欧諸国との間の貿易のインバランスをめぐる摩擦は激化しており、我が国の内需拡大策の一層の推進が要請されております。また、我が国の経済社会における技術革新、情報化及び国際化の流れは一層進展しており、内需主導型経済に向けての構造調整がますます重要となっているところであります。  このような観点から、昨年五月、政府が決定した緊急経済対策に民間活力の活用及び地域経済の活性化の推進が取り上げられ、民活法対象施設整備促進するための助成措置として、日本電信電話株式会社の株式の売り払い収入の活用による無利子融資制度が創設されたのであります。この結果、各地域において、これまでの八施設に該当しない新たな特定施設整備事業の動きが生じております。これらの新たな施設民活法対象施設に加えることは、当該地域の活性化を図るための拠点形成の要望に合致するのみならず、内需拡大観点からも重要となっているのであります。  また、本改正案によって新たに追加されることとなる特定施設の中心は、いわゆる草の根民活と言われるものであります。こうした草の根民活と言われる施設には、地域開発と関連性の強い施設が多く、地域の活性化による国土の均衡ある発展の重要性が一段と高まっている今日、地域のニーズに基づく特定施設整備を推進することは、地域経済の高度化、活性化の拠点を形成するものとして大きな役割を果たすことが期待されるのであります。  さらに、本改正案によって追加されることとなる施設を含めた特定施設は、いずれも関連産業の円滑な発展と国民生活の向上に資するものであり、二十一世紀に向けて、我が国経済社会の中長期的な発展基盤の整備を図るという意味を持つものであります。  こうした最近の経済社会情勢の進展に対応して、特定設備の一段の整備を図ろうとする本案は、まことに時宜にかなった適切なものであると考えます。  以上の点から本案に賛成の意を表明し、討論を終わります。(拍手)
  113. 渡辺秀央

    渡辺委員長 次に、藤原ひろ子君。
  114. 藤原ひろ子

    ○藤原(ひ)委員 私は、日本共産党・革新共同を代表し、ただいま議題の民間事業者能力活用による特定施設整備促進に関する臨時措置法改正案につき、反対の討論を行います。  本案に反対する理由の第一は、民活の名による大型プロジェクトへの助成措置拡大で、技術革新、情報化国際化など、大企業の二十一世紀戦略への支援をますます強めていることです。  今回改正では、税の減免や事業費補助、無利子融資などの助成対象とする特定施設を一挙に十一種類も追加しています。これは、東京湾臨海部副都心や横浜みなとみらい21、幕張新都心など、大企業が主導する大型プロジェクト促進のための過大な支援措置にほかなりません。さらに、無利子融資のための財源に、国民の財産であるNTT株式の売却収入を充てていることも許しがたいところです。  第二は、住民の要求とは無縁のプロジェクトのために、住民、自治体が一層の犠牲を強いられるからです。  特定施設がふえるにつれ、関係自治体は第三セクターへの出資、関連公共施設整備地方税の減収等の負担がふえることになります。地域住民も、そのツケ回しによる負担増はもとより、地価高騰や環境破壊などの新たな犠牲を強いられることになります。また、プロジェクト関連公共事業の優先が、公共住宅や上下水道、生活道路など生活密着型公共事業の立ちおくれをますますひどくすることも指摘せざるを得ないところです。  第三は、地域経済活性化、地方分散などのかけ声とは裏腹に、東京一極集中を強めるものであることです。  既に認定された十九のプロジェクト事業費を見ると、首都圏が過半の五七%を、近畿圏は二三%を占め、残りのわずか二〇%が北海道から九州までのその他の地域に分配されているのです。首都圏の、なかんずく東京湾岸の大型プロジェクトの推進こそが最大の眼目となっていることは明白です。大都市と地方の格差が一段と強められ、首都圏の地価高騰が常態化することは目に見えております。  かかる内容の本法案には断固反対することを表明し、討論を終わります。(拍手)
  115. 渡辺秀央

    渡辺委員長 これにて討論は終局いたしました。    ─────────────
  116. 渡辺秀央

    渡辺委員長 これより採決に入ります。  民間事業者能力活用による特定施設整備促進に関する臨時措置法の一部を改正する法律案について採決いたします。  本案に賛成の諸君の起立を求めます。     〔賛成者起立〕
  117. 渡辺秀央

    渡辺委員長 起立多数。よって、本案は原案のとおり可決すべきものと決しました。  お諮りいたします。  ただいま議決いたしました両案の委員会報告書の作成につきましては、委員長に御一任願いたいと存じますが、御異議ありませんか。     〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
  118. 渡辺秀央

    渡辺委員長 御異議なしと認めます。よって、そのとおり決しました。     ─────────────    〔報告書は附録に掲載〕     ─────────────
  119. 渡辺秀央

    渡辺委員長 次回は、公報をもってお知らせすることとし、本日は、これにて散会いたします。     午後三時二十六分散会