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1988-04-19 第112回国会 衆議院 商工委員会 第9号 公式Web版

  1. 会議録情報

    昭和六十三年四月十九日(火曜日)     午前十時一分開議  出席委員    委員長 渡辺 秀央君    理事 甘利  明君 理事 尾身 幸次君    理事 奥田 幹生君 理事 田原  隆君    理事 与謝野 馨君 理事 奥野 一雄君    理事 二見 伸明君 理事 青山  丘君       麻生 太郎君    石渡 照久君       小川  元君    古賀 正浩君       佐藤 信二君    島村 宜伸君       玉生 孝久君    中川 秀直君       中山 太郎君    額賀福志郎君       福島 譲二君    穂積 良行君       牧野 隆守君    粟山  明君       森   清君    井上  泉君       小澤 克介君    緒方 克陽君       城地 豊司君    関山 信之君       水田  稔君    権藤 恒夫君       中村  巖君    森本 晃司君       薮仲 義彦君    工藤  晃君       藤原ひろ子君  出席国務大臣         通商産業大臣  田村  元君  出席政府委員         環境庁大気保全         局長      長谷川慧重君         通商産業大臣官         房総務審議官  山本 幸助君         通商産業大臣官         房審議官    末木凰太郎君         通商産業大臣官         房審議官    野口 昌吾君         通商産業省通商         政策局次長   吉田 文毅君         通商産業省産業         政策局長    杉山  弘君         通商産業省基礎         産業局長    鈴木 直道君         通商産業省機械         情報産業局長  児玉 幸治君  委員外出席者         警察庁刑事局保         安部生活経済課         長       泉  幸伸君         経済企画庁国民         生活局消費者行         政第二課長   吉田  博君         労働省労働基準         局監督課長   松原 東樹君         労働省婦人局婦         人労働課長   粟野 賢一君         商工委員会調査         室長      倉田 雅広君     ───────────── 委員の異動 四月十九日  辞任         補欠選任   石田幸四郎君     中村  巖君 同日  辞任         補欠選任   中村  巖君     石田幸四郎君     ───────────── 本日の会議に付した案件  訪問販売等に関する法律の一部を改正する法律案内閣提出第五七号)  訪問販売等に関する法律の一部を改正する法律案上坂昇君外三名提出衆法第六号)  特定物質規制等によるオゾン層保護に関する法律案内閣提出第五八号)      ────◇─────
  2. 渡辺秀央

    渡辺委員長 これより会議を開きます。  内閣提出訪問販売等に関する法律の一部を改正する法律案及び上坂昇君外三名提出訪問販売等に関する法律の一部を改正する法律案の両案を一括して議題といたします。  質疑の申し出がありますので、順次これを許します。井上泉君。
  3. 井上泉

    井上(泉)委員 訪問販売というのを、この法案を審議するに当たって私も若干勉強させていただいたわけですが、三兆円に近い取扱額、それから百万人を超えるこれに関与する人たち、そういうようなものを見た場合に、訪問販売業あるいは通信販売業というものが我が国の流通経済の中で、これは将来ますます伸びる方向にあるのか、もう現在が飽和点であるのか、あるいはこういう傾向というものは好ましいことであるのかないのか、その点、まず大臣の見解を承っておきたいと思います。
  4. 田村元

    田村国務大臣 訪問販売は、最近の消費者ニーズというものが非常に多様化してまいりまして、これに対応した販売手段一つでありまして、消費者の利便の増進や流通近代化などの観点から見ても、積極的に評価し得るものと私も思います。そういう面も多いと思います。  しかしながら、現状におきましては、訪問販売によって消費者が不当に不利益をこうむることも少なくございません。これらの取引の適正化によりまして、購入者等の利益の保護を図るとともに、訪問販売業の健全な発展を図ることが当面の課題であると考えております。訪問販売というのは、非常にいい面を持っておる反面、非常にまたあくどい不当行為というものもあって、消費者が大変困っておる、多大の迷惑を受けておるという点もございます。でございますから、そういうものをなくさなければなりませんから、いい面だけ伸ばしていかなければならぬということで、消費者保護を図ろうというものでございます。  そういうことでございますので、どうかよろしくお願い申し上げますが、これからの消費者ニーズということを考えますと、法によって適正な線を守ってあげるということにして育成すれば、私は訪問販売はこれから相当伸びていくんじゃないかというふうに思っております。
  5. 井上泉

    井上(泉)委員 訪問販売業者あるいは通信販売業者、これらのごく最近の資料によるおよその取扱金額がどれくらいあるのか、そしておよそこれに関連をする働く人たちはどれくらいあるのか。そのことを、これは通産省の方から御答弁願いたいと思います。
  6. 末木凰太郎

    末木政府委員 訪問販売の最近の売上高あるいは従業員の規模というお尋ねでございます。  まず、小売全体の売り上げが今大体商業センサスで百兆強でございますが、その中で訪問販売売上高は最近二%程度に達しておりますが、この推移を見ますと、五十五年の売上高が一兆二千億円でございました。それが、年々その後、五十六、五十七、五十八、五十九、六十と、五十年代後半におきましてはほぼ二けたの成長を遂げまして、六十一年には二兆二千七百億円に達しております。ただ、六十一年の伸び率は、それまでほぼ二けたの伸びを維持しておりましたのが、前年比五%の伸びということで増勢はやや鈍化してきておりますが、小売全体に占めるウエートとしては二%強に達しました。これは、全体として小売の中でどのくらいの地位を占めているか、ほかのものとの比較を申し上げますと、例えば百貨店は小売全体の売り上げの中で七%強くらいでございますし、いわゆる大型スーパーというものが一〇%くらいでございますが、最近しばしば話題になります家電、家庭電化製品量販店大量販売店等が、これは正確な把握はなかなか難しゅうございますけれども、おおむね一%くらいでございますし、それから中小企業との摩擦問題で話題になります生協が一・三%くらいでございますから、二%のシェアを持っている一つ小売形態というのはかなり有力な形態だと思います。  それから、ここで働いている従業員につきましては、独立営業主という形をとっている家庭の主婦が、いわば内職といいますか、古い言葉内職と言いますが、一日何時間か訪販をするというのが数が多うございますが、こういったものを含めますと百数十万人と言われております。
  7. 井上泉

    井上(泉)委員 その中で最も訪問販売が多いと思われる化粧品界つまりポーラとかノエビアとか、化粧品訪問販売の率というものは非常に高いと思うわけですが、それについて調査されたことがあるのかどうか、お尋ねいたします。
  8. 末木凰太郎

    末木政府委員 特に化粧品について立ち入った調査をしたということはございませんけれども、おっしゃいますように訪問販売で売られる商品品物別に見ますと化粧品が第一位でございまして、全体の三割くらいを占めていると見られております。ちなみに二位が教材、三位が家庭用品でございます。  なお、化粧品につきましては、御承知のようにマスコミ広告によってマーケティングを行う方式を中心とする、古くからあります既成の大手企業がございますが、これに対しまして戦後、そういったマスコミ広告によらないでマン・ツー・マン、一人一人の訪販員が一人一人のお客様に、本当に対面販売の極致と申しますか、そういった格好で商品を売り込む訪問販売が非常に伸びて、業界の競争の活発化に寄与しているのではないかと思っております。
  9. 井上泉

    井上(泉)委員 この訪問販売法改正に伴う全条文を見ましても、つまり二兆円産業、三兆円産業と言われるものを支えておるのは、これはやっぱり末端の訪問販売員ではないか、こう思う。販売員販売努力があって、それで初めてそれぞれの企業商品が多く売られておる。  それにもかかわらず、この販売員位置づけというものが全く確立されていない。会社からの訪問販売員から消費者と直結するものがあるし、また、別に営業所をつくって、その営業所の所長が何人かの販売員を使って営業所としての販売行為をしておる。ところが、その一番先兵である販売員というものが業界では全く法のらち外に置かれておる。つまり労働関係の諸法規のらら外に置かれておるということを見て私は非常に遺憾に思うわけなので、その点について、労働省からきょうおいでを願っておるわけですが、労働省の方ではこの訪問販売販売員というものをどういうふうに位置づけておられるのか、お伺いしたいと思います。
  10. 松原東樹

    松原説明員 訪問販売員就業形態はいろいろございまして、一概に労働基準法等労働保護法規適用になる労働者であるかどうか判断することはできないというふうに考えております。訪問販売員のうちで、業務内容及び業務遂行方法につきまして、使用者の具体的な指揮監督を受けて、勤務場所あるいは勤務時間等につきまして指示管理されて業務に従事している者につきましては、労働基準法上の労働者になるというふうに考えております。  一方、その他の委託契約に基づきまして、業務内容及び遂行方法につきまして具体的な指揮監督は受けず、また勤務場所勤務の時間等につきまして厳格な指示管理を受けずに業務に従事し、その実績に応じて報酬を受け取るというような形の者につきましては、労働基準法上の労働者には当たらないというふうに考えているところでございます。
  11. 井上泉

    井上(泉)委員 それで、労働省の方では、この訪問販売員の動向というか形態というものを調査をされたことはありますか。
  12. 松原東樹

    松原説明員 訪問販売員全体につきましての調査実態把握をいたしたことはございません。
  13. 井上泉

    井上(泉)委員 調査をされたことはないというわけですけれども、やはりそこに百万人もの人が働いているというその実態ぐらい調査をするのが労働省としての、私は労働者地位を守り労働者条件等行政指導していく立場にある者としては当然なすべき任務だ、こう思うわけですけれども、そういうふうに任務を自覚しないですか。
  14. 松原東樹

    松原説明員 私ども労働基準法等労働者に当たる者につきましての労働条件の確保、向上等に努めてまいる義務を負っているところでございますが、具体的ケースに応じましてそれぞれ事案が生じてまいりますれば、その都度具体的に判断をした上、労働基準法上の労働者は当たる者につきましては、問題があればそれぞれ指導監督をいたしておるところでございます。
  15. 井上泉

    井上(泉)委員 それは後追い行政ということになりはせぬでしょうか。やはりそういう働く者がおれば、そこのところの企業実態はどうだろう、そこの販売員はどういう形態でやっておるのか、そういうことは、やはりこれは問題があればそれを調査するというのでなしに、現実にこの社会の中で二兆円産業、三兆円産業と呼ばれ、百万人もの販売員がおるわけですから、いろいろ形態は違うと思う。そうすれば、その実態はどうかというのを調査されるのが労働省として当然なすべきことではないかと私は思うのですけれども、そんなことをしようにも人がいない、こういうことでしてないのかどうか。
  16. 松原東樹

    松原説明員 労働基準法上の労働者に該当しない訪問販売員は、いわば独立自営業種に当たるものかと思います。いろいろな契約形態の中で経営あるいは就業が行われているわけでございまして、労働者に該当しない者について逐一把握ということもなかなか難しいというふうに考えております。
  17. 井上泉

    井上(泉)委員 あなた、労働者に該当するかしないかということを一遍も調査もせずに、外から眺めておってわかりますか。それほど洞察力を持ったお役人でしょうか。やはりそういうところに働いている者が二百万もおる。そしてその営業所には三十人、多いところでは五十人も販売員がおる。その人たちがどういう労働条件の中で販売行為をしておるのか、これはやはり労働基準法の中にこれを入れて検討する必要があるかないか、労働省というのはそういう調査をするところじゃないですか。現象があって初めて出向く、調査をする、そういう役所ですか。
  18. 松原東樹

    松原説明員 先ほど申しましたように、あくまでもその使用従属関係にある者につきましては、調査するしないにかかわらず労働基準法等適用になるわけでございまして、その上でなおかつ何らかの問題が生ずれば、その具体的事案に応じて適切に対処してまいりたいというふうに考えておるところでございます。
  19. 井上泉

    井上(泉)委員 そういう該当するかしないか、それは表面は該当しないような形でやっておるけれども実際は該当するんだというようなことは、やはり労働基準局としても労働省としても調査をすべきだと思うのですけれども、そういう必要がない、結果があらわれて問題が生じたときには調査をするけれどもそれまでは調査をしない、こういうことは一貫したあなたの姿勢ですか、労働省姿勢ですか。
  20. 松原東樹

    松原説明員 大方の状況といたしまして、この問題をめぐりまして監督署等労働基準法上の問題等につきましてそう頻繁に提起されているところではございませんし、私ども当面、全体の調査といいますか実態把握するという必要まではないのではないかというふうに考えておるところでございます。
  21. 井上泉

    井上(泉)委員 事業所調査なんか労働省がやっておるでしょう。そういう場合には、営業所というものは事業所にも該当せぬわけですか。それから、その事業所に該当するのかどうかということを、やはり労働省としては一遍ぐらい調査したらどうでしょうね。例えば労働災害の問題でも、労働災害が発生をしないように、例えば白ろう病患者が出ないようにチェーンソーの操作時間を何時間にするとか、何時間やれば何時間休むとかというように労働者保護している、労働者の健康を保護する。そういうようなことは、そこに白ろう病患者が出てからやるのではなしに、出ない状態の中で出さぬようにするという、つまり予防するという、そういう意味からも私は労働省がもっと熱心であってしかるべきだと思うわけですけれども、そのあなたの考えは変わりませんか。
  22. 松原東樹

    松原説明員 労働者を使用しております事業所につきましては、おっしゃるように必ずしも事後的というばかりではなくて、事前の予防を含めまして指導監督をいたしておるところでございます。
  23. 井上泉

    井上(泉)委員 あなたと押し問答しても全く官僚的な答弁で腹が立つわけですけれども、それが労働者であるのかどうか、労働者的な要素があるとすれば、その的な要素に対応する道を考えなければいかぬ。  そこで、同じ労働省婦人労働課長おいでになっていただいておるわけですが、これはもう大多数が婦人ですが、この婦人労働者佐対して目を向けた行政行為をされておるのかどうか、承りたいと思います。
  24. 粟野賢一

    粟野説明員 多分、訪問販売員ということになりますと労働者はどうかという問題もございますが、労働者だということにしますとパートタイム労働者ということになるのかもしれませんが、そういった方につきましては、五十九年にパートタイム対策要綱というものを策定いたしまして、その中で労働条件改善等取り組んでおるところでございます。
  25. 井上泉

    井上(泉)委員 そんな通り一遍な答弁、納得ができぬわけですが、多くの販売員女性である、婦人職場である、その職場実態調査することは、これは国民に対する行政サービス精神じゃないでしょうかね。奉仕精神じゃないでしょうかね、どうですか。
  26. 粟野賢一

    粟野説明員 調査等につきましては、先ほど監督課長がおっしゃったとおりだろうと思います。
  27. 井上泉

    井上(泉)委員 監督課長が言いよったからと、あなたより監督課長は上席で上には従う、そういう考え方であなた業務をなさっておるのですか。国家公務員法で、国家公務員というものはどうでなければならぬと法規で書いてあるのか、一遍、国家公務員としての任務位置づけ条文を読んでみてください。あなたたち国家公務員ですから、国家公務員としての任務はどう書いてあるのか、それくらいのことはそらで覚えておらなければ国家公務員としての資格はないでしょう。あなたたちは優秀な方だと思うわけなので、私はあえてそのことをお尋ねしたわけですが、どうでしょう。
  28. 粟野賢一

    粟野説明員 私ども婦人行政という立場からそういう女性労働条件改善等々に取り組んでおるわけでございまして、先ほど申しましたように、訪問販売等につきましても労働者であるということになりますとパートという形の方が多いのではないか、そういう中でパート対策については取り組んでおるところでございます。
  29. 井上泉

    井上(泉)委員 多いのではなかろうかではなしに、多いかどうかということをやはり調査をする必要があるじゃないですか。こういうパンフレットをつくっておるが、それなら販売員は一体どうだろう、その実態を聞くだけでなしに、業者から聞くかどうかは知りませんけれども、問題が提起される以前に、そういう多数の、百万人というのはほとんど婦人ですよ。その婦人の方の労働実態パートタイマーとしての要綱に該当するのか、該当するけれどもそのまま放置されておるのか、あるいはこれはこうこうだから該当しないのか、そこらの見きわめと、国家公務員任務を言ってみなさいよ。
  30. 粟野賢一

    粟野説明員 私どもは、婦人労働行政を取り扱っている者としまして、婦人労働者全体の労働条件改善等々に取り組んでおるということでございます。訪問販売につきましても、その中には婦人の方々が大変多いというわけでございますので、全体の中で取り組んでおるということでございます。
  31. 井上泉

    井上(泉)委員 全体の中でと言われるけれども、一遍も調査をしてないんじゃないですか。訪問販売のところがどういう状態であるかということを調査しておるんですか。
  32. 粟野賢一

    粟野説明員 訪問販売員ということで調査はしておりません。(井上(泉)委員「しておりますかおりませんか、語尾がよくわからぬ」と呼ぶ)しておりません。
  33. 井上泉

    井上(泉)委員 そのことでは反省しないですか。おりませんで、そのまま逃げますか。
  34. 粟野賢一

    粟野説明員 婦人労働全体として私ども取り組んでおるわけでございまして、これまでのところ、訪問販売員だけの調査ということでは調査をしていないわけでございます。
  35. 井上泉

    井上(泉)委員 だから、今後においても調査をしないのか。全体として把握しておる――全体として把握するためには、部分部分調査をして、それが集積されて初めて全体になるでしょう。そこをもうちょっとまじめに考えてもらえないかと思うわけですけれども、逃げるということじゃなしに、問題へ飛び込んでいくという積極的な精神公務員の諸君にはあってしかるべきだと思うわけですが、ひとつ話を聞かせてもらいたい。
  36. 田村元

    田村国務大臣 婦人労働課長も、立場立場ですから、まだ自分で自信を持って責任ある答弁ができないのでございましょう。実は私は、労働省では政務次官も大臣もやったものですから、昔のことですけれども通産省のことよりは労働省のことの方があるいはよく知っておるかもしれません。  こういうことは本来調査すべきものだと私は思いますけれども労働大臣に、少なくとも婦人が働いておる実態あるいは職場等いろいろな面で、婦人に関する労働という点ではなるべく調査をした方がいいのじゃないかなというようなことで、OBとして、友人として私から申しておきます。これはこれ以上言っても、恐らくもうよう答えぬと思うのです。発音も私にしっかり聞こえないくらいですから、私が申しますので、そこのところ、しかるべくよろしくどうぞお願いをいたします。
  37. 井上泉

    井上(泉)委員 これは説明員ですから、あなた方が局長になり、あるいは政治の場に出て大臣になられたりした場合にはまたおのずと考え方も違うと思うし、今は一つの枠の中から外へ出たら局長に怒られるか大臣に怒られるかという気持ちが強く動いておるわけですが、通産大臣の助言を私は了として、労働省に対する質問は終わりますので、どうぞお引き取りください。  そこで、私は今、そんなに労働省にしつこく言うのもと思われるような問い方をしたのですが、実際に私は、こういう化粧品販売員にずっと当たってきたのです。当たってみると、みんな異口同音に言うのは、私たちは仕事をしてもよし、月に三千円の化粧品しか売らなくてもよしというようななにだ、販売に行っておって途中でひっくり返ってけがをしても私らには労災の何もない、一体私らはこういう機構の中で何でしょう、こう疑問を投げかけられて、私もその返答に困ったわけです。今度国会の中で訪問販売法というものが改正をされて、消費者保護するし、そして健全な訪問販売業を育成することのできるような数々の条項というものが改正案として出されておるわけですから、その中でそれはお伺いをしてみましょう、私自身がまことに不勉強で恐縮です、こう言って私は、一カ所ではいかぬと思って次々と回ったのです。その人たちにおわびをして、話をしてきたわけです。  この大事な訪問販売業、これは日本の経済の中でなくすることのできない現実形態ですから、そこで一番働いておるのは販売員だから、その販売員の身分的な安定なりあるいは問題のある点等について、通産省の方も一遍当たってみる必要があるのではないか、こういうように思うわけです。きのう、審議官担当課長にいろいろとお伺いもしたわけで、御苦労なさっておることは私も了とするわけでありますし、その通産省の取り組みについては期待をしておるものでありますが、私と担当者との話だけではいかぬからやはり委員会で、直接業務を執行する側にある通産省産業政策局長なり官房審議官なりのこういう訪問販売員に対する考え方、そして今後における位置づけ、そういうものについて御意見を承りたいと思います。
  38. 末木凰太郎

    末木政府委員 先ほど来、先生御指摘の、第一線の訪問販売員は一体どういう位置づけにあるのであろうかということにつきましては、私どもも若干の勉強はしたわけでございますが、先ほど来の御質疑で明らかなように、大方はその商品製造販売元といいますか、その会社雇用関係ではなく、法律的には独立事業主だというふうに位置づけられております。しかし、そこのところも実態がそうではなくて、本当は雇用に近いのだけれどもそうでないと言っているというような仮装であればおかしいと思いますので、なかなか実態は複雑でありますし、その形態も多様でありますし、また人数も大変多いのですけれども、主要なもの、主として化粧品等中心契約関係調査してみました。  その結果は、おおむねの形はセールスマン、女性が多いですからセールスウーマン会社との契約条項の中には、例えばこういう規定がございます。ディストリビューター独立事業主であります。「その地位独立したものであって、」当社当社というのはその製品製造販売の元をやっている会社ですが、当社の「従業員または代理人となるものではありません。」という条項があったり、あるいは、セールスウーマンディストリビューター販売員、いろいろな名前を使っておりますが、それらは当社から品物を「仕入れます。」という言葉を使ってあったりしております。また、ほかの契約ではさらに、販売員当社の「従業員でも、代理人または外交員でもありません。」そういうような形。あるいはまた別の表現では、雇い人あるいは共同経営者ではなく「独立した商人」でありますというような契約書が交わされております。しかし、非常に数多いものの中には、あるいは実質は雇用形態ではないかというものが絶対ないかどうかは、これは私どもも断定的に申し上げることはできませんし、今後、先ほど通産大臣から御答弁ありましたように、労働省においてもしかるべく対処されると思います。  さて、私ども通産省の分野でどうするかということでございますが、これは今申し上げましたように、一応契約上は独立の事業者独立の商人というふうに契約関係では位置づけられておりますが、その独立の商人というのが、法律的には独立の商人でございますけれども経済的に本当に契約相手先と対等といいますか、十分渡り合えるだけのものかというと、これは当然のことながら大方非常に零細な個人の事業主でございますから、これをどうするかという問題が残ります。これにつきましては、今回の法律改正は御指摘のように消費者保護という観点から取り組んだわけでございますので、直接法律の中でそういった関係の条文を御提案申し上げているわけではございませんけれども、一応次のような考え方を持っております。  まず第一に、業界全体の地位の向上が個々の販売員、セールスマン、セールスウーマン地位の安定、向上につながるだろうという認識でございます。今、訪問販売業界は悪徳商法が多いということで世間の非難を受けているわけでございますが、こういうことを放置しておけば、まじめにセールスをやっている家庭の主婦なんかも全部同じように見られるおそれがあります。したがいまして、今回の法改正を機に、規制すべきは規制し、正すものは正すことによって業界そのものの信用を向上させ、それによって個々の事業主としての販売員の社会的地位の向上を図るというのが、迂遠ではございますけれども基本に第一にございます。  その次に、第二といたしまして、商品製造販売元である大きな企業と個別の販売員との間の取引関係、契約条件等が、もし強いものが弱いものに不当な扱いを強いているというようなことが仮にございますれば、これは例えば独禁法上の不公正な取引方法に該当することもあり得るわけでございますし、そういった観点から、不当な契約条項がないかどうかという点については通産省としても今後目を光らせていき、もしあればできるだけの手段を講じて是正すべきだと思います。基本的にはそういう考え方で臨んでいきたいと思っております。
  39. 井上泉

    井上(泉)委員 これは訪問販売業が複雑で、法的にどう規制されておるのかわからないわけですけれども、製造会社があって、その大方の製造会社販売会社をつくっておる。その販売会社が一括して、BならBに売る。Bは営業所長なりそこの事務所の所長なりという肩書であるけれども、本社の社員ではない。つまり販売員を取りまとめておる支部長といいますか営業所の所長ですが、ところが、営業所の所長の権限でおまえは何%、おまえは何%とできないように本社の方で、この場合には営業所売り上げに対しては何ぼのマージンだよ、それから個人の売り上げに対してはこういうようになるよということになっておるわけで、本当に資本のあくどさ、あくどさという言葉は表現が悪いかもしれないけれども、資本がいかに自分の企業の利潤を図るかということで考え出した知恵であると思うわけですけれども、その知恵の犠牲に訪問販売員がならぬように、やはり訪問販売員が誇りを持って、例えば田村商店の品物を私は売りますよ、私は誇りを持って井上商店の品物訪問販売しますよ、こういう気持ちになるように訪問販売員というものもやはり大事にしなきゃいかぬのじゃないか。これは私ども社会党も案を出しておりますけれども、社会党の案の中にもこの販売員販売業の中でどう位置づけるかということについては、きょうは中小企業庁がおらぬので質問ができないわけですけれども、何かその点が不備じゃないかと、これは自分自身が社会党の議員として反省をしておるわけです。  そこで、今度の法改正で貴金属も扱うことができるようになっておるわけですが、そうすると勢い、貴金属を扱う場合というのはこれは豊田商法のようなことが起こり得る可能性があるわけなので、そこで販売員の質というものが問われるのではないか、私はこういうふうに思うわけです。現品を持っていって取引をする場合と、現品を持っていかずに取引する場合と出てくるでしょうけれども、それにしても販売員の質というものがよくなければなかなか大変なことだと思う。その質を向上さすためにも、やはり企業販売員位置づけをしなければいかぬのじゃないか。そしてまた行政も、せっかくこういう法律をつくる以上は、やはりその中で関係をする者についての一定の評価をして取り扱いをしてやらねば励みがないではないか、こういうふうに思うわけであります。  その点、きのう審議官から説明を聞く中でも、私は訪問販売員でございます、右の者は、井上泉は当訪問販売協会に登録された、あるいは販売協会の指定した訪問販売員であるという何か証明書のようなものを検討されておるということを聞いたわけですが、やはりそういうものを一つもらうと人間というものはおかしなもので、これは私が営業をする場合でも、井上泉はそこの会社販売員でございますよといってその会社が認知をしたものか、あるいは販売協会が認知をしたものか、そういうものを提示をすることによって信用というものを消費者に与えることができるわけで、そうすれば勢い訪問販売協会もそのことについては厳選をするだろうし、そういうことを強く考えるわけでありますので、訪問販売協会に加盟をしておる訪問販売員については、一定の身分証明的なものを出してやるとかいうようなことを指導されたらどうかと思うわけですが、どうでしょう。
  40. 末木凰太郎

    末木政府委員 先生、金のことに言及されたわけですが、考えてみますと、販売員が一番虐げられるといいますか被害をこうむるのは、まさにマルチ形態でうまいこと言われて、あなたこの販売組織に入れば非常にいいことがあるというようなことを言われて、搾り取られるというのが被害の最たるものでございますが、これは既に規制を強化しまして、かなり効果を上げてきているわけでございます。     〔委員長退席、奥田(幹)委員長代理着席〕  さてそこで、おっしゃるようにセールスマンに誇りを持たせるような何らかの仕組みを考えたらどうかということでございます。これにつきましては、社団法人日本訪問販売協会がかねてより訪問販売員教育登録制度というのを実施しております。この制度によりまして、協会がっくりましたカリキュラムに従って訪問販売員の教育を行いまして、そして一定のレベルに達した者に対しまして訪問販売員教育登録証というのを交付しております。この資格を取得しました者が六十三年三月現在で九十一万余ございまして、これは訪問販売協会に名前が登録されております。  ところで、この訪問販売協会がこういった制度に関連しまして、五十七年のことでございますけれども、会員に対してアンケート調査を行いまして、こういった制度についてどう評価されているかを調べたことがございますが、これによりますと、結論から申しますと非常に高く評価されておりまして、訪問販売員の資質の向上に役立つという回答、それから社会的な地位の向上に役立つという回答、あるいは消費者とのトラブルがこれによって減るであろうという回答、そのほか流通業界での位置づけが上がる等々、いろいろな観点から大変高く評価されております。  私どもはこの制度を一層強化充実することが必要かつ適切であるとかねてから思って、協会にその旨慫慂してきておりますけれども、今回の法改正におきまして、日本訪問販売協会が法律上役割を与えられることになるような御提案を申し上げているわけでございますから、法律上社会的な役割を与えられた協会においてその行う教育を受け、その資格を認められて登録された人、そういう人に対しては身分証明書等、これは現在持ってもらっているわけでございますが、持ってもらいまして、一方において消費者には、そういうセールスマンから買えば安心であるというPRをすると同時に、セールスマンの方々自身にも誇りと自信を持って仕事をしていただくという方向を、さらに一層進めてまいりたいと思っております。     〔奥田(幹)委員長代理退席、委員長着席〕
  41. 井上泉

    井上(泉)委員 今、末木審議官が言われたことについても私は同感ですが、この委員会の審議の中でそういうふうに言われたということで、またこれがこのまま追いおくりになるというようなことのないような、これは一定の期間も要るでありましょうし――今の訪問販売協会は公益法人ではないのですか、任意組合ですか。
  42. 末木凰太郎

    末木政府委員 昭和五十五年に民法上の公益法人、社団法人になっておりますが、社団法人であることに加えて、訪問販売法の中に社団法人日本訪問販売協会というものを引っ張ってまいりまして、名前を引いてまいりまして、この団体に消費者保護のための任務をうたうということが、今回さらに加わるわけでございます。
  43. 井上泉

    井上(泉)委員 訪問販売業者というか、その中に外資関係というか外国の商品というものもかなり日本の国内へ入ってきて、これはどこそこの国のものですから立派ですよというような形で、横文字の入った商品というものがかなり出回っておるわけですが、外資系ではなしに外国の資本で、そして外国で製造されるものがそのまま売られておる、こういうものも訪問販売協会の会員として受け入れるような仕組みになっておるのか、あるいはそういうものは除いておるのか、これは非常に幼稚な質問ですけれども、承っておきたいと思います。
  44. 末木凰太郎

    末木政府委員 資本系統が外資であるかそれとも純粋国内資本であるかということで加盟に差別はございませんし、また取り扱う商品が国産品か輸入品かということでも差別はございません。現に、外資系の企業あるいは輸入品を取り扱う訪問販売企業がメンバーに入っております。
  45. 井上泉

    井上(泉)委員 この訪問販売業、最初は化粧品、こういっても次は台所用品、次は身の回り品、装飾品、次は貴金属類、こういうふうにだんだん取り扱い品目が、それぞれの訪問販売業者がふえてきておるわけですが、こういうことについては、訪問販売をするものはこれとこれとかというような届け出の義務とか何か、そういうものは今度の法では別段規制はないですか。
  46. 末木凰太郎

    末木政府委員 訪問販売を行うについては、こういうものについては訪問販売をやってよろしい、こういうものについては訪問販売やってはいけないというのは、原則としてございません。もちろん他省庁の法律で、持ち歩いて売ってはならないものがなくはないと思います。薬品関係なんかで、例えば訪問で売ってならないものがあるかもしれませんが、原則としてそれは商売自由でございます。  ただ、この法律適用を受ける品物については、御承知のように指定商品制をとっておりますので、四十三商品群ということで法律の対象になる品物は限定されておりますが、これは実際には、現に訪問販売で売られている品物はほとんど全部訪問販売法でカバーしているというふうに認識しております。
  47. 井上泉

    井上(泉)委員 現実に貴金属を扱っておることについても、これは別段異議はないということになるわけでしょうが、貴金属になるといわゆる豊田商法まがいの、表面だけ金に見せていこう、あるいは装身具にしても、コピーの装身具を本物のような形でやる。それは刑事事件も構成するかもしれませんけれども、そういうものについての規制といいますか監督というものは、協会員であろうとなかろうとやっておることについては、そういう行為、中身がいい悪いは別として、そういうことをすることは自由ということに理解をされるわけですが、そうでしょうか。
  48. 末木凰太郎

    末木政府委員 豊田商事のような悪徳商法については別の法律、いわゆる預託法で規制をしておりますが、通常の形で、そういう悪徳商法ではなくて訪問販売で金とか貴金属を売ることについては現在自由でございますが、今回の訪問販売法改正によりまして、金その他の貴金属も政令指定によりまして訪問販売法の対象商品訪問販売法による規制を受ける商品に追加する道が開かれたわけでございます。  金を指定するかどうかは、この法律成立後に審議会に諮って決めることになりますけれども、この法律の対象に加えられれば、化粧品とか家庭用品とか等々従来指定されている品物と同様に、例えば消費者はその気はないのについうっかり買ってしまったけれども取り消したいという場合のいわゆるクーリングオフの対象になるとか、あるいは今度新たに規制を強化しておりますので、欺瞞的な方法、セールストークあるいは威迫等によって金を売りつけた場合に、業者に対する規制措置等がほかの商品と同様に適用されることになります。
  49. 井上泉

    井上(泉)委員 訪問販売の中で、これは昭和六十年三月八日の予算委員会の分科会で、新聞も訪問販売の協会の中でこれを位置づけたらどうか、指定商品とするべきではないかという意見が出されたわけですが、そのときの村田通産大臣答弁としては、別段今どうということもないし、業界自体が自粛をしておるからということで、その委員会質疑は終わっておるわけです。しかし、それは引き続いて検討する条件の中にある、慎重に見守っていく必要がある、そういう発言もなされておるわけですが、今訪販法の中に新聞販売を入れるということについてはまだその時期にあらず、こういうお考えにあるのかどうか、御説明願いたいと思います。
  50. 末木凰太郎

    末木政府委員 昭和六十年三月八日の分科会における新聞にかかわる御質疑は、私も承知しております。  ところで、最近の新聞の訪問販売をめぐる消費者トラブルの推移でございますが、通産省消費者相談室で受け付けた件数を申し上げますと、六十年度が九件、六十一年度が十八件、六十二年度は十二月末までの九カ月間の集計ですが六件ということになっておりまして、通産省で受け付ける消費者相談の全体に占める割合は〇・一%ないし〇・二%程度の数字でございます。これは、非常に少なくて実態に合わないのではないかという御指摘もあるいはあろうかと思いますが、この新聞の問題は、実は二つの側面がございます。  一つは、新聞の販売店がお客さんを奪い合う、お互いに過大な景品を配ることによってお客さんのとりっこをするという問題があります。これは、お客さんの場合にはたまたま景品をもらうというだけのことになるわけでありますが、競争秩序という観点から見れば、不当な手段による顧客の奪取といいますか、そういう独禁法的な観点から問題があります。したがって、これにつきましては独禁法あるいは景品表示法による規制が行われておりまして、公取が監視しておるところであることは先生御承知かと思いますが、こういった面と、それから、要らない新聞を無理やりとらされるという消費者との関係における問題点と、二面あるわけでございます。  しばしばクレームとして大きな数字が出てまいりますのは、前者の方がどうも出てくるようでございまして、もちろん私どもは後者の問題がないとは申しませんし、前者のお客さんの取り合いの問題がひいては消費者のためにならないという点もよくわかっているつもりでございますが、現実の問題として、通産省に寄せられている純粋なといいますか、はっきり消費者から出てくる件数が、今のところの数字がこのくらいで落ちついているわけでございます。それにつきましては、いろいろ過去に業界の自主規制の努力も促してきた効果も出ているのではないかと思います。六十一年二月二十日に、日本新聞協会と新聞販売店の団体でございます日本新聞販売協会の間で新聞の訪問販売に関する自主規制の規約が作成されまして、行き過ぎたことをやらないように自主規制が行われてきております。そういったこともこれあり、あるいは世論の批判もありまして、やや数字が落ちついていると思います。したがいまして、このような状況でございますので、当面のところは自主規制の努力を引き続き注意深く見守っていくということにいたしたいと思っております。
  51. 井上泉

    井上(泉)委員 もう私の与えられた時間がなくなりましたので、この訪問販売法という法律は、別にイデオロギーが加味されて中に入ってつくられた法律でもない、これは純粋な経済関係の、消費者あるいは業界を指導するためにつくられた法案であろうと思うわけで、この法案を実際運用するのもやはり業者であるし、そして、法律は基づいて行為をする業者と実際その業者を支える販売員というふうな関係があって、そこで初めて販売業というものが社会的に存在価値を認められる。  田村通産大臣もこの企業の必要性、存続性というものを指摘されたのでありますが、この法ができて施行されるに当たっても、私がきょう、これを支えておる、企業は人なり、あらゆることでも人なり、これを指導する役人が悪かったら、これはとてもじゃないがいいかげんなことになって問題を起こす。問題を起こしたときにはもうその役人は役所におらぬ。こういうことが往々の例ですから、やはりそういう法を守って、法が生かされていくような行政指導というもの、そして今申し上げましたような、これに従事する人たちがもっと誇りを持って業に専念のできるような要綱というものを、今審議官答弁なされたわけですが、そういう点を大臣として篤と推移を見守って適切な指導をして、この法が立派に成果をおさめるようにしてもらいたい。ましてや今度の法の改正の中では貴金属も扱うことができるような仕組みになっておるわけなので、まさに日本の家庭商品というか、全部の商品訪問販売で扱うことができるような仕組みにもなっておるので、そうなっておるということから考えますと、やはりそれに従事する人を大切にするという思想がなければこれは健全な発展にはならぬと思うので、その点を大臣にお伺いをして、私の質問を終わりたいと思います。よろしくお願いします。
  52. 田村元

    田村国務大臣 今、井上委員のおっしゃったことはごもっともでありまして、私は、訪問販売というもの自体を、そういうなりわい自体を悪なりと断定し、あるいは否定するということは好ましくない。訪問販売が健全に繁栄するということが大切なのである。ですからそういう点では、この法律が成立をいたしました暁におきましては、消費者と申しますよりはもっとざっくばらんな言葉を使えば庶民ですね、庶民に十分周知徹底するように広報活動もしなければならぬ、PRもしなければならぬと思います。  と同時に、今すぐに革命的とも言えるような訪問販売に対する手かせ足かせということも萎縮させることにもなりましょうから、まずここでこの法律が成立しまして、その経緯を見て、それは人間のやることでございますから試行錯誤は当然あるわけで、ああもしとけばよかった、こうもしとけばよかった、ではこれはちょっと行き過ぎだったかなとか、いろいろなことがあると思います。それは、今我々はこれを最善のものと思っておりますけれども、後世の人が見ればそういうことはあると思う。今私どもが昭和二十年代、三十年代の政治や行政を振り返ってみて、何とあの当時あんなばかなことをしたのかなと思うこともあれば、よくあの当時、炯眼すばらしいものだということもあるわけでございますから、これはおっしゃるように今後も健全な育成ということに重点を置いて進まなければならない。  また、当然それは従事する人、特にパートの婦人たちという存在に対して、私は冷たい仕打ちであってはいけないと思うのです。おいおいと、こういう人々の労働条件あるいは労働的な立場というものが明確にされていくということが必要であろう。今おっしゃったように、人を大切にする、従事する人を大切にすることが何よりも大切ということは、私はそのとおりだと思います。もちろん、通産省一省でできるものじゃありませんけれども労働省その他とこれから十分相談をして万遺憾なきを期するように、部下に対して私から改めて指示をいたしておきます。
  53. 井上泉

    井上(泉)委員 どうもありがとうございました。
  54. 渡辺秀央

    渡辺委員長 次に、森本晃司君。
  55. 森本晃司

    ○森本委員 今、井上先生の質問に対しまして、大臣から今度の訪問販売法改正について、その施行の仕方についていろいろと決意を述べていただき、あるいはまた先般来の質問で、今度の改正に対する被害の実態や問題点がいろいろと浮き彫りにされている点もあるかと思いますが、私の方から改めてその被害の実態を踏まえまして、いかに消費者、あるいは今大臣がおっしゃった言葉をおかりいたしますと庶民を守るのかという点について、質問をさせていただきたいと思うところでございます。  訪問販売は、五十一年に法律が制定されましたが、この十年間、実際売上高等々で見てみますと、訪問販売は五十一年に六千八百億円であったものが、六十一年に二兆二千七百億円という大きな伸びを示しています。この伸びを示しているということは、私は必ずしもそれは悪いことであると思っているわけではありませんし、訪問販売業界の皆さんも一生懸命努力をされ、また、国民生活の必要性の上からもこの訪問販売法というのは大きく伸びてきたんではないだろうかとも思うところがあります。また、通信販売についても、五十一年に二千八百億円であったものが九千七百億円と、これも大きく伸びています。  しかし一方、その象徴的なものが豊田商事であるように、消費者、特に弱い立場の高齢者の皆さんを巻き込んだトラブルが非常に多く発生しています。業界団体に加入しておられる皆さん方の場合には、いろいろとそれぞれ自主規制をやったり、あるいはいろんな教育をされているわけでございますけれども、ともすればアウトサイダーあるいは少人数でいろんなことを考える悪徳業者がある。こういった意味で、健全な業者も大変迷惑を受けておられるということもあります。しかし、現実にトラブルが発生した件数、通産省の相談室で調べた発生件数は、五十三年が五百九十件、それから六十年が千八百件、訪問販売だけで三倍になっているわけであります。しかし、私はこの通産省の資料を見ましたときに、表面的な統計処理でありまして、必ずしも真の被害実態に立ち入ったものではない。相談室に寄せられた内容だけでこれだけですが、実際にいろいろな被害に遭った人あるいはそういったことに潜在的に不満を持っている人等々を調べてみますと、これは相当な数になるんではないだろうか。いろんなところの消費者団体等々の調査によりますと、あるいは推測によりますと、その被害はこれらの十倍にも達しているというふうに言われている場合もあるわけでございます。  私は、今回の法改正で、健全な訪問販売が行われること、また、健全な業者がその商取引の業をなしていくことについて評価されていくことが一つは大事なことであると思うと同時に、もう一つは、庶民がこの訪問販売業から受けるいろいろな被害からどれだけ守られていくのかということが大事であると思います。そういう意味で大臣に、今回の法改正、趣旨説明はいただきましたが、法改正をしてどれほど消費者を守っていくのか、またどんな決意でいらっしゃるのかということをまずお伺いしたいと思います。
  56. 田村元

    田村国務大臣 この法律におきまして消費者保護を図っていくには、法の趣旨、内容等の周知徹底を図ること及び法の厳正で機動的な運用をしていくことが肝要であろうと思っております。  このために、この改正案が成立いたしました暁には、消費者、関係業界などに対しまして法の趣旨、内容の周知徹底を図りたいと考えております。と同時に、この規制対象となる商品、権利及び役務の政令指定、それから業者に対する指示や停止命令の発動、悪質業者の取り締まり等に当たりまして、関係省庁や地方公共団体との緊密な連絡を通じて法の厳正かつ機動的な運用に努めてまいる所存でございます。実は、私どもの家も訪問販売、とりわけダイレクトメールなんか大変楽しませていただいております。私は、テレビのコマーシャルでひょっと出てくるのを見るとすぐ電話で申し込むくせがありまして、もう二社ほどの電話番号を覚えておりますが、訪問販売そのものは私は大いに伸ばしたらいいと思うのです。  ただ問題は、訪問販売と不動産というのは悪質な業者が多いというのでなかなか悪名も高いのですけれども、それを政府の手で守ること、つまり規制すること、と同時に、今度は消費者つまり庶民の側においても理論武装をしてもらわなければならない。そのためには、政府あるいは地方公共団体があらゆる機会に十分の周知徹底を図るためのPR活動をしていくということが必要であろうというような趣旨で、今申し上げた次第でございます。
  57. 森本晃司

    ○森本委員 実態をいろいろ見てみますと、よくぞこれほどうまく従来の法すれすれのところでやっている、あるいはこれほどうまくごまかしながらやっているなというほど新手が次から次へと出てきて、私も、これはそういうことを考える人間の悪知恵をどうやってとめていけばいいのかということで時々苦慮するわけでございますが、現行の政令指定要件を今度は大きく緩和するということになりました。緩和することになったということは、現行の指定要件では十分ではないということであります。それは最近起きているいろいろなトラブルの例を見ても十分わかります。  ここで改めてお伺いしたいわけですが、現行の指定要件では一体何が問題になったのか、だからその幅を今度はどう緩和しようとしているのかということ。それから、同時にあわせて、この指定要件を緩和したことによってどのようなものを今度追加認定するのか、そういった具体例がないとなかなか我々にはぴんとこない。この場で、どういったものが追加されていくのか、基本的なもの、例示等々を挙げて御答弁いただきたいと思います。
  58. 末木凰太郎

    末木政府委員 現行法の対象は、法律の二条三項におきまして指定商品を対象とする。「「指定商品」とは、主として日常生活の用に供される物品のうち、定型的な条件で販売するのは適する物品で政令で定める」、こういうことになっております。「日常生活の用に供される」ということ、「定型的な条件で販売するのは適する」ということ、それから「物品」であるということ、この枠の中で政令で指定をすることになっております。  ところが、最近の消費者トラブルを見ますと、まず日常生活の用に供されるものとは言いがたいものでトラブルが出てまいりました。これは典型が金その他の貴金属でございます。     〔委員長退席、尾身委員長代理着席〕 それから、定型的な条件で販売するのに適しているかどうか。こちらの方は解釈の幅がもうちょっとございます。しかしこれについても、こういうふうにきちっと枠をはめておくと機動的な発動がしにくいのではないかというケースが時々あります。それから、物品ということに限っておりますけれども、生活の多様化によりまして新しいいろいろなサービス提供業がふえておりますので、役務の提供を訪問販売という形で行うものがふえている、これに伴う紛争あるいはトラブル相談件数がふえております。  したがいまして、今度の法改正におきましては、まずこの物品に限っているというところを、物品だけではなくて権利または役務、私どもは簡単に、時には役務あるいはサービスを追加いたしますと申し上げておりますが、といいますのは、権利というのは、結局ここでは何らかの施設を利用したりあるいは何らかのサービスの提供を受ける権利、施設を利用する権利またはサービスの提供を受ける権利でございますから、結果は役務を受け取るということになりますのでそう言っておりますが、正確には権利と役務を商品のほかに追加する。さらに、この商品、権利、役務につきましても、日常生活の用に供されるとか、定型的な条件云々という制約を外しまして、国民の日常生活に係る取引において販売されるものあるいは提供されるもの全般に及び得るということにいたしました。したがいまして、日常生活の用に供さなくても日常生活の場で取引される、つまり消費者としての資格といいますか、そういう生活態様において取引されるものは政令指定の対象になることになります。  具体的にはどういうものがあるかといいますと、その結果、改正をお認めいただきました暁には、物品につきましては典型的には金その他貴金属が候補に挙がってまいります。それから権利、役務につきましては、これは今申し上げましたように消費者から見れば同じようなものでございますけれども、非常に多様なものがございますが、最近のトラブルの発生状況を踏まえまして、本法の対象に早急にする必要がある緊急性とか、一般にこれが広がる波及性とか、消費者の被害の程度とか、他法令との関係とか、いろいろなことを検討する必要がございますけれども、早急にそういったことを検討いたしまして、割賦販売審議会に諮った上で政令で定めるつもりでございます。  それではどんなものが現にトラブルが起きているのかといいますと、トラブルの多いものといたしましては、害虫の駆除でございますとか、あるいはこれはたまたまNTTが民営化されたころからでございますけれども、電話機のリースとか、トイレファンの取りつけ工事等が典型的な相談の例として多うございます。これはもちろん例でございますから、例えば害虫といいましても一番多いのはシロアリの駆除でございますけれども、シロアリの駆除は問題だけれどもゴキブリの駆除は問題じゃないのかというふうに、必ずしも物事を狭く限定して私ども考えておるわけではございませんし、適当なカテゴリーで区切って考えるべきだと思います。一例を挙げますと、こういったようなものが現に問題が提起されておりますので、提起されておる問題につきまして、今のような手順を踏んで勉強した上で、指定の手続を踏んでまいりたいと思っております。
  59. 森本晃司

    ○森本委員 今、最近のトラブルの例、シロアリ駆除等々の話をされましたが、私も具体例でもう少し伺ってみたいと思うのです。  シロアリの場合は害虫駆除という大きな範囲で、したがって今後それは類似したものも全部入ってくるわけですね。シロアリだけじゃなしに全部入ってくる、そういうふうに今私は解釈をさしていただいたわけでございます。  電話機のリースはトラブルが多いというふうに御回答がありましたが、電話機はこれからいろいろな訪問販売によるリースが行われてくると思います。最近一番よく聞くのはやはり電話機だと思うのですが、トラブルが多いという審議官の今のお答えだけで、これは今回の規制の対象に入りますか入らないですか、その辺はいかがですか。これはいろいろ審議会等々でもかなり問題になったように私は伺っていますが。
  60. 末木凰太郎

    末木政府委員 電話機のリースは最近非常に目立つトラブルの事例でございますので、対象の有力というような言葉はよくないかもしれませんが、重点的に対象として検討すべき候補だと思っております。
  61. 森本晃司

    ○森本委員 検討すべき候補ということは、もう明らかに対象にしようと考えていらっしゃるわけですね。  あと二、三聞きたいのです。ほかによくあることで、例えば水道の蛇口を取りかえますよと言って入ってきます。今までは蛇口ですね。これとシャワーとの違い、こういった点をついて彼らはやってくると思うのです。それからほかに多いのは、最近の新興地では、すばらしい家ができましたね、この家にはこんな庭石が非常によく合うと思いますがちょっと置いてみましょうなんて置かれて、その後どけてもくれない、代金を請求されるという例がある。この庭石の問題。  あるいはまた、私のところへも、あるいはいらっしゃる各代議士の先生方のところへも非常に多いわけですけれども、紳士録にあなたの名前を掲載させてあげます、データを下さいというふうにやってくる。これは、データを載せてもらうことに対する代金なのか本の代金なのかはっきりわからないけれども、この紳士録を買わざるを得なくなってくる。私が議員になりました年に早速お見えいただきまして、これはその業者がいいとか悪いとかは別にしまして、私、まだ何にも知らないものですから、ああ国会議員になったらこういう調査に答えなければならないんだなと思って答えておりましたら、すぐに代金の請求が来た。ああこれも議員になったあれかな、これを払わなければどうなるんだろうかなんて思いながら、紳士録については私は実際に代金を払いました。これは、名簿に掲載したことによる代金なのか本の代金なのか、役務、サービスと書籍代金とが一緒になっているようなことも考えられますし、今まではこれがなかった、今度役務が入るということは大いなる前進だと私は思うのです。  具体的に考えてみまして、これらの点についてはどのように考えておられるか、お答えいただきたいと思います。
  62. 末木凰太郎

    末木政府委員 初めの物品の方からまず申し上げますと、庭石の例をお挙げになりました。現在、政令指定されていないがゆえに消費者被害の救済ができないではないかという御指摘が世間からあるものの数は、実は非常に少ないわけでございまして、金は政令指定のしようが今までなかったわけで、今度は指定し得ることになります。そのほかに、通常の物品としては、実は庭石それから墓石でございます。これが時々問題になります。したがいまして、これは従来、今の法律では手の打ちようがなかったわけではございませんけれども、この機会にもう一遍篤とよく検討をして、必要があれば、別に逡巡する必要はございませんから追加を考えたいと思います。  次に役務、工事の関係でございますが、先生おっしゃいました例えば水道の蛇口とかいうものも、私、今手元にあるのはたまたまトイレファンの取りつけ工事というのがありますけれども、トイレの換気扇は問題が起きるけれどもふろ場の換気扇は問題が起きないとか、ふろ場の蛇口についてはトラブルがないということは通常ないと思います。トイレの換気扇で問題が起きるなら恐らく風呂場の換気扇でも問題が起きると考えなければいけませんし、蛇口で問題があればシャワーの蛇口の方も問題が起こり得ると思います。したがいまして、私先ほどシロアリの例で申し上げましたように、こういったものを指定する場合には、その取引の態様とか物の形態とか金額の程度とかそういったものを見まして、同類と思われるものはやはりまとめてやるのが通常だろうと思いますので、千差万別なかなか難しい中ではございますけれども、工夫を凝らして指定をするときにアンバランスになったり取り残しがないようにしなければいけないと思います。  それから、具体的に御指摘がございました紳士録の掲載でございます。これは確かに解釈によって微妙なところでございまして、あなたの名前を載せます、ついては載せた紳士録をお買い下さいという、本を売っているのか、それとも載せてあげますから幾ら払ってください、ちなみに本は一冊差し上げましょうということなのか、これは契約書の書き方で微妙に分かれると思いますが、従来の私どもの紳士録問題についての対応は、原則としてこれは書籍を売っているのではないかと見ておりました。それは、もし掲載するという役務の問題だということになりますと訪販法の対象にならないものですから、訪販法の解釈ぎりぎりでできる範囲で精いっぱいの指導をしようという観点から、原則として、つまり反証を挙げない限り本を売っているということで指導に当たるということでございまして、既に五十年代にそういう趣旨の通達を発して、関係行政機関等にそういうふうに対処してもらいたいということを言いますと同時に、主要な紳士録の発行者に対して、そういう法解釈で臨むからその旨対応してほしいという通達も出しておるわけでございます。  したがいまして、一応そういうことでやってきてはおりますけれども、しかしこれは解釈のできる限りの範囲を精いっぱいやってきたわけでございますから、今回役務が法律の対象になりました暁には、もう一遍契約の態様などもよく調べまして、役務の提供ということで正面切って堂々と扱った方が効果が上がるという実態であれば、従来のものと別にダブって矛盾ということは決してございませんので、重ねてこれも指定対象として考えてみたいと思っております。
  63. 森本晃司

    ○森本委員 今時間もありませんのでわずかの具体例しか質問することはできませんけれども、この法が改正になりました場合にどれを役務とみなすのか、どれを指定商品としてみなすのかということがこれから検討されると思いますが、今日までの事例だけではなしに今後起こり得る可能性のある分野も含めて、そういったものを決してトラブルの後追いだけにならないように先取りしながらやっていただきたいし、またそれをある意味で法律で、政令で定めていくというのはあるいは非常に難しいことかもわかりませんけれども言葉一つにしてもすぐそれを拡大して適用できるような書き方を、指定の仕方をぜひやっていただきたいと思うところでございます。  さらにまた、五十一年に法律がつくられて十年たって、この十年間何ら改正がされなかった。いよいよ今改正されることになり、その中で特に役務が入ったことは、これで消費者を少しでも守ることができるのではないだろうかと私は思っているところでございまして、この法が改正された場合、施行までの猶予期間は六カ月ということでありますけれども、私は、一日も早くこの法律を施行するよう、六カ月と言わずに早くやらないと、この間にまた多大の被害が生じてくるのではないだろうかと思うところです。  さらにまた同時に、こういった何を指定するとかいう形に持っていく場合に、必ずしも通産省の範囲でない場合もあります。きょうは他省庁の人を一人一人お呼びするわけにいきませんし、むしろこれから通産省の皆さんでやってもらわなければならないわけでございますが、例えば衛生用品では厚生省にかかわる問題であるとか、あるいは農林省にかかわる問題がある。その辺の各省庁間の調整がいつまでも手間取っているということのないようにぜひともお願いしたいと思いますが、いかがでしょう。
  64. 末木凰太郎

    末木政府委員 六カ月の施行期間の問題でございますが、通常要するPRの周知徹底の期間あるいは政省令の準備期間、審議会の諮問の期間等を考えてそうさせていただきましたが、六カ月ぎりぎりゆっくりやろうという気持ちでももちろんございません。できるだけ早急にやりたいと思います。  それから、他省庁との関係につきましても、この改正法案作成の過程でもいろいろ相談をいたしました。これは共管になる部分が幾つかございますので、今後とも協力をしてやってまいりたいと思います。
  65. 森本晃司

    ○森本委員 今度はキャッチセールスあるいはまたアポイントメントセールスに対する規制が加わりまして、これもまた前進だと見ることができるのですけれども、こういうものをいっそ全部禁止してしまってはどうかという考え方も、その被害に遭った人たちから見ますとそういう声も当然上がってくるわけであります。通産省がいろいろ審議されている中に、キャッチセールスにはよいキャッチセールスと悪いキャッチセールスがあるとか云々ということがあったようにも、私は事実は確めておりませんが、そんなことも聞いております。キャッチセールスに果たしてよいセールスと悪いセールスがあるのかなというふうに、私もその辺の解釈に困るわけでございますが、今回のこの規制、全部禁止すべきであるという考え方がありますが、いかがでしょうか。  それから、これも私の体験で、どうも私はこういうことにはだまされやすい善良なる男かもわかりませんけれども、国会議員になりまして初めてこの国会周辺をバッジをつけて歩いておりましたら、あるとき車が横にすっととまりまして、先生、先生と呼ばれる。私は生まれて初めて先生になったものですから、ひょっとしたら自分のことではないのだろうかと振り向きましたら、このライターと万年筆とバンドを先生に差し上げます、今お見かけしたらどうも新しくなられた先生のようでいろいろと必要でありましょう、どうぞお受け取りくださいなんてこられまして、田舎者ですから、東京というのはこんなにただでくれるところなのかなと思ったりしながらじっと商品を見ておりましたら、我々素人ではなかなか判断がつかぬいいように見える商品です。何で私にくれるのですか、あなたは私を知っているのですかといろいろ話をしているうちに、どうもそうではない、これはやばいなと思ったのです。そうすると、本当にもらってよろしいのですかと聞いたら、その人は、先生、これは差し上げますが、ただし三人で商品を卸してきましたので三人にちょっとずつと言って、言われた額が三人で来て一人当たり五千円の一万五千円支払ってくれ、こういうことを言われて、これは私はそんな金を持っていなかったので、金がないということで商品をお返しして危うく逃れましたけれども、東京ではこういうものが非常に横行しているというふうに後で伺いました。こういったキャッチセールスがあります。これは路上のものなので取り締まりは非常に難しいと思いますけれども、無理につかまえて営業所へ連れていくというキャッチセールス等々があって、その営業所の中で換金してしまうというキャッチセールスが非常に多くて被害も多い、この辺も禁止すべきだという意見については、通産省としてどのように考えておられますか。
  66. 末木凰太郎

    末木政府委員 極端なケース、身体の自由を奪って強引に拉致していってということになれば、これは現在の刑法のもとでも強要とか逮捕、監禁とかいろいろな規定に触れると思うのですけれども、通常そこまではいかないですれすれのところで業者の方もやるのだろうと思いますが、その態様はいろいろございます。それにつきまして、およそ路上でつかまえてどこかへ連れていくという、こういう商法は禁止すべきだという議論は確かにございます。私どももそれについては内部でも検討いたしましたし、研究会等でも話題になりました。しかし、これは程度が非常に社会的に非難すべきである、あるいは違法性が強いというようなものとは言えない程度のものから、違法性の程度の強いものに至るまでいろいろございます。  例えば、通常の商店でも店先で呼び込みはやっておりますし、これについてはもうそういうものだと思っている。たまには非常にきょうはしつこい人につかまってしまって参ったというようなこともありますけれども、その程度は恐らく社会的に許容されているのだろうと思いますが、そこで、これも一律禁止ということになりますと非常に要件を書きにくいわけでございます。どうしても書けということになると、恐らく刑法と似たり寄ったりのような書き方になってしまうのではないか、うまくは書けないわけでございます。そこで、いきなり禁止ということではなかなか難しいものでございますから、これをもうちょっと広い目にふわっと書いて、すぐそれに違反したから罰則がかかるということではないけれども訪問販売の一形態として広い意味の本法の規制の対象にするという形で取り込んでおいて規制を加えていこうというのが、今回の考え方でございます。  ただ、その中に一律に書こうとするとそういうことになるわけでございますけれども、ある悪質な企業が例えば具体的にマニュアルをつくりまして、従業員にこういうふうに路上でつかまえてこういうふうに喫茶店に連れていって、あるいはこういうふうに営業所に連れていってというようなことで組織的、計画的に何かやっているような場合が仮にあったといたします。その形態に着眼してこのタイプはひどいではないか、一般的には書きにくいにしても、これは明らかにおかしいじゃないかということがあれば、これは今回御提案申し上げています指示の制度がございます。業務に対して必要な改善措置を命ずる指示の制度がございますが、例えばそういったところでそれを規制していくとか、結局最終的に違反は刑罰で担保されることになりますが、そういう意味でこの法律のいろいろな手段を使って規制できることと思います。直罰で禁止しなかったのは、そういった考え方に基づくものでございます。
  67. 森本晃司

    ○森本委員 次はアポイントメントセールスですが、この定義は一体どういう定義になっているのか。それから今回の改正法の中で第二条第一項の中で「その他政令で定める方法により誘引した者」、この「政令で定める方法により誘引した者」とは一体どういうことを言うのか。それから小売業の皆さんあるいはデパート等から我が家の家庭に、こういう商品が入りましたのでお越しくださいという正常なる案内が来る。これは奥さん、お買いになるとお得ですよという案内をいただく。暮れになりますとそういうことが非常に多いわけですけれども、これまで規制されてしまうと、私はまた健全なる小売業者の皆さんの営業活動が停止されていくというふうにも思ったりするわけですが、アポイントメントセールスの定義はどのように考えておられるのか。  それから、電話の呼び込みだけではなしに、最近非常に多いのが、はがきで来る場合があるのです。アンケート調査に答えた、そうするとそのアンケートに対してあなたが当たりました、重要なことをお伝えしたいので何月何日どこの営業所へお見えくださいというふうに、電話ではなくはがきで来る場合がある。電話で来る場合は、最近もううるさいのとそれから消費者の皆さんも相当自衛手段がついてきたのか警戒をするということがありますが、意外と新たな方法で、はがきで来るあるいは文面で来るということに対しては弱い部分もあるんじゃないかなと思うわけですが、その辺については、このアポイントメントセールスの定義のとり方はどのように考えておられるのか。
  68. 末木凰太郎

    末木政府委員 実は、このキャッチセールスとアポイントメントセールスの二つは、大体二つ並べてどうするんだというふうに問題提起をされる勧誘形態でございます。  キャッチセールスの方は、法案作成の過程で比較的どういうものであるかというのが話が詰まりやすいと感じたんでございますが、アポイントメントセールスの方は、さらに一層定義と申しますか構成要件、どう書いたらいいのかというのが難しい問題でございます。そこで現在、これはおっしゃいますように政令で書くように譲られておりまして、法律の中に直接出てまいりません。その点をとらえまして、通産省は事によるとアポイントメントセールスの規制はやめちゃったんじゃないかというような御懸念の向きもあるようでございますが、決してあきらめたわけではございませんで、工夫をして政令で書くつもりでございますが、今のところはどういうふうに書いたらいいか、まだ具体的な成案に至っておりません。  ただ、どういうタイプのものが今あるかといいますと、勧誘方法といたしましては、御指摘のように電話、郵便、あるいは郵便でない書状をポストに投げ込んでいく等ございます。それから、どうやって呼び出すか、その気にさせるかということにつきましても、典型的な例で言いますと、先生おっしゃいましたような、お話ししたいことがありますとか説明したいことがありますということもあります。そのほか、預かり物をしておりますからとか、あるいはあなたは特に抽せんによって何万人の中から一人ということで選ばれましたので、ついてはいい話があるからおいでくださいとか、あるいはまた無償であなたに会員権を差し上げることにいたしましたのでお越しくださいとか、非常に千差万別でございます。しかし、こういったものをよく分析をいたしますれば、ある程度のタイプにくくれるのではないかと思っておりますので、要するに欺瞞的な方法によって、本当はそういうふうに誤解をしなければ出向かなかったであろう人を無理に出向かせてしまうようなものをできるだけとらえなければいけないと思っておりますが、そういう点に着眼いたしまして、工夫をして政令でできるだけ書きたいと思います。  それから、はがきで勧誘した場合につきましても、基本的には電話で勧誘した場合と似たり寄ったりでございますけれども、これも電話よりもはがきの方が、受け取った方からすれば冷静に見る機会があるということもまた一面事実でございます。もっともらしく見えるという面もありますけれども、冷静に判断できるという面も両方ございますので、その点よく検討させていただきたいと思っております。
  69. 森本晃司

    ○森本委員 それから、住居以外の場所における現金取引の場合にも書面を交付をするということがございますが、住居以外の場所の現金取引の場合に書面を出すとなりますと、これは私は、そういうことがされることは望ましいという考え方でありますけれども、一方、住居以外の場所となりますと、屋台あるいは露店商、そういう人たちの場合も書面を一々交付しなければならないのか。こうなりますと、そういった人たちの営業もまた非常に困難なものになってくる。今日まで、神代の昔とまではいかないけれども、伝統的に日本の中にある営業方法もそれは規制されていくとなってくると、私は実態的に非常に混乱が生じるんではないかと思いますが、その辺についてはどう考えたらいいでしょうか。
  70. 末木凰太郎

    末木政府委員 現金取引を今回書面を交付すべき場合の対象とすることにいたしましたのは、従来現金取引につきましては規制が及ばないために、本来現金取引でなくてもいいものを現金取引にしてしまうとか、あるいは現金をセールスマンが立てかえて会社に払っておきましたからあなたとの関係では現金取引になっていますとか、そういう弊害が出てきたことに着眼して今回改正しようというものでございますから、したがいまして、露店とか屋台とか伝統的にある商売の形態につきましてはそういう問題もございません。結論を申し上げますと、このようなものについては適用除外を定めるつもりでございます。
  71. 森本晃司

    ○森本委員 次は、禁止行為のところでございますが、第五条の二の禁止行為、これを今回創設されたその趣旨は、一体どういう趣旨で創設されたのか。これも私は、その禁止行為については創設した方がいいという考え方に立った上でございますが、もう一度その創設した基本的な考え方伺いたいと思うのです。  それからこの中に、顧客等の「判断に影響を及ぼすこととなる重要なものにつき、」とあります。顧客等の判断に影響を及ぼすことになる重要なものとは一体どんなものなのか、ちょっと私、抽象的でわかりません。長時間居座った、これは顧客の判断を狂わすということになる。しかし、時間の長さというのはその人によっていろいろで、急用があるというときに訪問販売者が来てだあっと座れば非常に長く感じますし、自分一人でいるとき、暇であるときにはそんなに感じないかもわからない。それも一定の限度を超えると、もう大変判断に狂いを生ずること等もありますし、そのほかどんな影響があるのか。  それからもう一つ、「不実のことを告げる行為をしてはならない。」とあります。これはマルチでは、不実を告げる、それから第二番目に大事なことをあえて言わないというふうにありますけれども、ここは「不実のことを告げる行為をしてはならない。」それは例えばどういうことであるのかという点について、お伺いしたいと思います。
  72. 末木凰太郎

    末木政府委員 第一点の、禁止行為の規定を導入した考え方でございます。現行法は昭和五十一年のことでございますから、当時の訪問販売のトラブルに対応して必要最小限な法規制を導入したものと理解しておりますけれども、当時の訪問販売におきまして、いわば不意打ち的に契約の締結をしてしまうといったところから、一体どういうふうに契約をしたのか、契約の中身は何であったのかよくわからない、後でもって、いやそんなつもりではなかったとか、そんな約束はしていないとか、そんなにたくさん買った覚えはないとか、こういったことがありましたので、契約の中身についての明確性あるいは透明性の担保のための措置が必要であろう。あるいはまた、その気がなかったのに契約をしてしまった場合には撤回ができる、あるいは解約ができるようにするということで、訪問したときには氏名等を名のらなければいけないとか、あるいは書面で契約の中身を明確にしておかなければいけないとか、あるいはまたクーリングオフができるとか、こういった、いわば当事者間の関係の適正化の規定にとどまったわけでございます。     〔尾身委員長代理退席、委員長着席〕  ところが、その後のトラブルの実態が非常に変化してまいりまして、量的にも件数としてもふえ、また内容的にも、詐欺的、欺瞞的な方法を用いたりあるいはおどしに近い方法を用いたりになってまいりましたので、今回はそういった行為の悪質化に対応いたしまして、従来は売り手と買い手の間の当事者間の主として民事関係を中心にした明確化等でできていた法律でございますが、行政庁がこれに積極的に今度は関与いたしまして、悪い行為があれば、当事者間の問題だけでなく、行政庁として是正のために必要な措置を指示するとか業務停止を命ずるとかあるいは罰則を適用するとかいう形で、行政庁あるいは刑罰という形で介入するということが必要になったというのが、今回の改正の基本的な柱でございます。  それから次の、顧客の判断は影響を及ぼす重要なもの云々のところでございますが、これは結局、そういったことがなければ買うという意思表示、契約をするという意思形成をしなかったであろう、そのことによって顧客が契約をする気になったという、その分かれ目を支配したような事項でございまして、最近のトラブル例から具体的な例を挙げますと、例えば法律上の設置義務がないのは設置義務があるようなことを言った、これは不実のことを告げたわけでございます。それで顧客の方は、そういうことであればということになってしまうケースとか、あるいは、この品物あるいはこの資格は公的機関のこういう証明がありますというような権威づけ等、典型的にはこういった例があるかと思います。  ただこれは、いずれにいたしましても「判断に影響を及ぼすこととなる重要なもの」というのは、絞って絞り切れるものではございません。非常に形態は多様でございますので、これとこれとこれに限るということを申し上げるわけにはまいりませんけれども、法制後段階におきましては、できるだけその中身がわかりやすくなるように、例示を通牒で挙げるような形で趣旨の徹底を図っていきたいと思っております。
  73. 森本晃司

    ○森本委員 もう少し聞きたいのですが、ちょっと時間がありませんので、次に移らせてもらいます。  クーリングオフについてでございますが、クーリングオフの書面上の表示の仕方、これをよほど明確に、商品を売ると同じぐらいの、極端に言うと文字の大きさもそういうぐあいにしていかなければ、そういう制度があるというのはなかなか一般の皆さんにわからない。それからもう一つは、クーリングオフとは一体何なのかという、このクーリングオフの意味も一般の人にはわからないと思います。私、先般地元へ帰りまして、ちょうど高齢の皆さんにお集まりいただいている会合がございましたので、皆さん、このクーリングオフというのは何か知っていますかと、まあ百人の人に聞きましたというわけじゃないけれども聞きますと、大半、クーリングオフとは一体何なのかということがわからなかった。このクーリングオフとは何なのかということも、消費者にきちっとわかるような書面の表示の仕方をしていただきたいと思うのです。これが一番大事な問題ではないか。  この間も、通信販売のある雑誌を見まして、まあ通信販売は自主規制されているわけですが、クーリングオフのことが書いてある。二ページにわたる通信販売商品説明の中の一番後ろに、小さな字でクーリングオフの意味のことが書いてあったのですよ。これは私は全然わからなくて、それで大変恐縮だったのですが、課長さんにこれは書いてないぞと言ったら、課長さんじっと見ていただいて、一番最後にありましたねと、これはあったのです。普通見ていると、大抵そういうのを見逃してしまう。このクーリングオフの意味をわかりやすく、そして、クーリングオフはこうあるんだよということをわかりやすく表示するように、通産省としては指導していく必要があるのではないだろうか。  また、クーリングオフにすそ切りを考える場合、金額はどの程度を考えておられるのか。  それから、七日間という期間でございますが、先般社会党の先生の質問のときに、最終営業日を一日延ばすという話のときに、審議官は、それが休業日でありましても、全国を調べてみますと百カ所ぐらいを除いて日曜日も郵便がありますのでそれでいけますというお答えをされていたと思います。  確かに、クーリングオフはその発信主義でいいと私は思うのですけれども、日曜祭日の場合、審議官の家の周りのポストは一日に何回あって何時か、一度調べてもらいたいと思うのです。私の家のすぐ横は一日一回でございまして、朝の十時十五分に来ます。そうすると、例えば月曜日に訪問販売に来られて、月火水木金土日、最後の日曜日です。大抵判断に迷ってできないのは、平日に来られて主婦が聞く、主人は帰りが遅い、もしそういったことを協議する場が最大に考えられるとすると、日曜日ではないかと私は思うのです。間に日曜日があればいいですけれども、月曜日から始まった場合は日曜日で終わりだ。朝起きて、家族でおばあちゃん何したんやとなって、行こうと思っても郵便の回収の時間は、私の家の近所では十時十五分で終わってしまいますから、その日急に決心がつかない。日曜日の場合あるいは国で決められた祭日の場合には、消印はその翌日でもいいというふうにした方が実効性があるのではないかと私は思いますが、どうでしょう。
  74. 末木凰太郎

    末木政府委員 第一点の、クーリングオフに関する記載がわかりにくくて小さい字ではだめじゃないかということでございます。現行法のもとでも四条、五条で、交付する書面につきましては、例えば活字の大きさを日本工業規格の八ポイント、これは官報で使用する活字の大きさでございますから、まだ小さいという御指摘もあるかもしれませんが、数字の大きさも規制しておりますし、赤枠で囲って大事なことはわかりやすくするようにしておりますけれども、この改正の機会に、どういうふうにしたらなお一層消費者にわかりやすく読んでいただけるか、理解していただけるかということを考えたいと思います。  なお、クーリングオフという言葉はつきましても、わかりにくいという御指摘がいろいろございます。もともとはこれはクーラーのクールでございますから、頭を冷やして考え直すという意味でございまして、比較的わかりやすいかなということで関係者は使っていたわけでございますけれども、今にして思えば無条件解約権というような日本語の方がよかったのではないかという御意見もありまして、せっかく使ってきた言葉ですからこれを全部やめてしまうのもどうかと思いますが、要は、いろいろな言い方でわかりやすいように工夫を凝らしていくことが必要だと思っております。  それから第二の、現金取引に今度クーリングオフを適用することにいたしたにつきましては、余り少額なものについてはすそ切りの適用除外をする考えでございますけれども、この金額はよく検討して決めたいと思いますが、諸外国等でも、この程度ならという、日常比較的簡単に買い物をして決済も済ませてしまうような現金取引で、かつ少額なものはすそ切りをしておりまして、国によってまちまちでございますけれども、諸外国の例も参考にし、それから最近の我が国の実態も踏まえまして、今強いて申し上げれば五千円ないし一万円の範囲内ぐらいで適当な線を探したいと思っております。  最後の第三点で、クーリングオフができる期間の最終日、つまり七日目が日曜祭日の場合でございます。大方のところが日曜祭日でも集配をしておりますが、御指摘のように集配の回数、最終集配時間が違うことは事実でございます。私の近所のポストももちろん見ておりますが、日曜祝日は平日よりも早く終わってしまいます。しかしその差というのは、地域によって違いますけれども、御指摘のように、もし朝十時にしかなければほぼ一日に近いぐらいの差が確かに生じますが、もしお昼であれば半日の差でございます。いずれにしても、若干の差といいますか目減りが生ずることは確かにあります。  しかし一方において、これは無条件に、理由を問わず解約を認める制度でございますから、取引の安定という観点からの配慮もしなければなりません。長ければ長いほど消費者にとってはいいし、それから長ければ長いほど取引の安定については問題があるわけでございますので、そういった点も配慮して現在七日と決められているわけでございますし、最終日が全然使えないわけではないので、先日のような御答弁を申し上げたわけでございます。なおかつ、蛇足でございますけれども、集配が終わった後も、あいている郵便局まで行って消印を押してもらえばもちろんできるわけでございますが、御指摘のような事実は確かにあると思います。
  75. 森本晃司

    ○森本委員 期間については、長ければ長いほどいいと私は言っているわけじゃなしに、内容のあるものにしてもらいたいということでございますので、よく検討していただきたいと思います。  それで、あともう少しいろいろとお伺いしたかったのですが、最後に二点だけ私の方から申し上げまして、答弁の方は時間がございませんので結構でございます。  問題は、こういう法律をつくったからといって、やはり人間の心の弱さあるいは強欲さというのがございますから、必ずしもそれは全部守られていく、なくなるということは、私は今回の法改正でもあり得ないというぐらいに思っております。そこで大事なことは、消費者が自分たちで自衛する手段を持つということであります。これが非常に大事で、先ほど大臣も、庶民が理論武装することが必要であるというお答えを井上先生のときにされておりましたが、これに対する啓発運動に、この法改正を機会に通産省あるいは総理府、全面的に各省庁は取り組んでいただきたいと思うのです。通産省から出す通達は難しくて、これは消費者にはわかりません。私でももちろんわかりません。一々解釈していると何となく頭が痛くなる。わかりやすい方法で、しかも高齢者がそんな文章を見なくても、例えば家でテレビを見ているときに通産省あるいは総理府からコマーシャルが流れる。訪問販売の場合には、あなたも一週間お考えになって解約することができますよとか、何かそういう簡単な、誇大広告に対するコマーシャルがありますが、そういう啓蒙啓発運動をどんどんやってもらいたいし、そのために通産省も大いに予算を使っていただきたい。これは大臣にぜひ聞いておいていただいて、お願いを申し上げたいと思います。  最後に、これでなくなるわけではございません。今後、この商工委員会で我々もこの実態については絶えず掌握をしていかなければならないし、新たな点について絶えず監視をしていかなければならないと思っています。法改正をしてもその後よく状況を調べていただきまして、この場で報告をしていただき、また我々のいろいろな質問に答えてもらい、後追いだけではなしに、絶えず消費者を守るため、また健全な業者を守るための取り締まりをやっていただきたいということをお願い申し上げまして、同僚の中村さんに質問を譲ります。ありがとうございました。
  76. 渡辺秀央

    渡辺委員長 関連質疑の申し出がありますので、これを許します。中村巖君。
  77. 中村巖

    中村(巖)委員 最初に、具体的事例から聞いていきたいと思うのであります。  こういう事例があります。原野商法によって売りつけられた原野がありまして、そういう原野を持っている人に対して、これを売却してやる、ついては測量費を払ってもらいたい、測量費を出してもらえば測量の上にそれを他へ売却いたしますよ、こういうことを戸別に家庭を訪問しながら言って歩いた、そして金を取った、こういうことがあるわけでございます。こういう事例について、まず、警察もこれを取り締まっているということが新聞に報ぜられておりますけれども、警察庁の方からこの事例の実態について、あるいは捜査状況についてお答えをいただきます。
  78. 泉幸伸

    ○泉説明員 お尋ねのような事案で警察庁に報告があったものにつきまして検討しますと、北海道警察で本年検挙した事案がございます。  その事案の概要と捜査経過を簡単に申し上げますと、札幌市内の不動産業者が北海道の石狩郡内の原野の所有者を訪問いたしまして、土地を売ってやる、そのためには土地を測量しなければならないなどと申し向けまして、昭和六十一年六月から昭和六十二年十一月までの間に測量費名下に、北海道などの被害者約一千百人おられますが、その人たちから金銭をだまし取っておったという事案でございます。これに対しまして、北海道警察本部がその不動産会社の社長ら五名を一月二十九日に詐欺罪で逮捕する等の捜査を行った事例がございます。
  79. 中村巖

    中村(巖)委員 今、北海道警察の事例を挙げられましたけれども、こういうことは東京でも頻発しておりまして、原野商法でもともとだまされている上に、そういう測量費名下にさらに金を取られるということで、泥棒に追い銭というような状況になっているわけでございまして、具体的に東京都内であったという事例も私のところへ相談に来ております。  次に、経済企画庁の国民生活センター関係で、こういうような事例の苦情あるいは相談というものがありますかどうか、それをお尋ねをいたします。
  80. 吉田博

    吉田説明員 第二次被害を伴います原野商法の苦情、国民生活センターにも寄せられております。  事例を申し上げますと、四、五年前に購入した北海道の土地を高く売ってやるということで三百万円、これは営業費あるいは測量費ということで支払ったわけでございますが、現在その業者と連絡がとれないというような事例であるとか、十年前だまされて購入した北海道の原野を営業費五十万円で売却すると勧誘されているけれども応じていいか、こういう相談も入っております。そういうことで、六十一年度国民生活センターの分だけで二十九件、六十二年度二十二件、そのうち新原野商法につきましては六十一年度が十七件、六十二年度が十一件、こういうふうになっております。
  81. 中村巖

    中村(巖)委員 次に、別の事例について伺うわけですけれども、ジュースとかの清涼飲料水の自動販売機を置かしてもらいたいということで、一般の家庭、通りに面している家庭でしょうけれども、そういう家庭を訪問してやって来る。そして、あなたのところはこの販売機をあなたの家の前に置けば必ずもうかるんだ、大変ないい副業になるんだ、こう称して置かしてもらうということで自動販売機のリース契約なるものを締結をする。しかし実際は、それを置きましてもさっぱりもうからない、こういうことでかなりの苦情がいろんなところに寄せられているように聞いておりますけれども通産省ではこういうことの実態について把握いたしておりますでしょうか。
  82. 末木凰太郎

    末木政府委員 おたくの軒先に自動販売機を置いたらどうですか、それでジュースが売れるといい内職になりますよというケースだと思うのでありますけれども、これはかつて昭和五十四年ごろだと思いますが、かなりそういったケースが頻発しまして、しかし思ったようにはもうからない、うまく口車に乗せられてしまったというような話がございました。そのときには、販売形態としては割賦販売の形で自動販売機を売りつけるというのが多かったようでございまして、そういった点の対策を講じたことがございますが、御指摘の最近のリースの関係を見ますと、今のところ件数は非常に少のうございまして、ここ三年ほどは毎年あるかないかの件数でございます。これは、件数と申しますのは通産省の相談室に相談に見えた件数でございます。非常に鎮静化していると思いますが、これは六十二年、昨年の六月に関係の業界団体、これはリース事業協会とかクレジット産業協会とか、そのほかの関係団体が消費者向けのリースをどうやって適正化していくかという勉強会を設けまして、それに基づいて自主規制の努力をしていただいております。こういったことも効果があったかと思います。そういうわけで、最近では非常に件数は少ないということでございます。
  83. 中村巖

    中村(巖)委員 今お聞きをした清涼飲料水の自動販売機のケース、少ないということで大変結構でございますけれども、今私が挙げましたような事例につきましては、これはいずれも大変悪質なものでございまして、これはまず少なくとも現行の訪販法では適用対象にならないのじゃないかというふうに思いますがいかがでしょうか。
  84. 末木凰太郎

    末木政府委員 御指摘のとおりでございまして、これはリースですと役務の提供でございますから、現行法では対象になりません。改正法によりまして、こういったものを指定し得る状態になるわけでございます。
  85. 中村巖

    中村(巖)委員 先ほどの原野商法の測量費云々についてはいかがですか。
  86. 末木凰太郎

    末木政府委員 原野商法につきましては、現行の訪販法におきましても改正後の訪問販売法におきましても商品と役務、それから権利はサービスの提供を受ける権利でございますので、不動産は対象になりません。もちろん、私どもはこういった消費者関係の苦情相談とかトラブルの相談を受け付けておりますから、そういったところでもし消費者から原野商法に関する御相談があれば、それは関係の方面に連絡をとるお世話をいたしますけれども、私どもの所管としてこの法律の対象になるということはございません。
  87. 中村巖

    中村(巖)委員 いや、今原野商法そのものを聞いているのじゃなくて、測量費ということになれば役務の問題で、測量というサービスの問題でございますから、それは今までは適用対象でなかったのではないかということで、それから今後どうなるんだ、こういうことを伺いたいわけです。
  88. 末木凰太郎

    末木政府委員 失礼いたしました。測量サービスというものの販売であれば、これは法律の対象になり得ると思います。ただ、私ども勉強で、原野商法に関連した測量サービスの提供の実態を今詳細承知しておりませんので、もしそういう悪徳商法がございました場合に、これとどういうふうに対処していったらいいかということにつきまして、仮に不動産売買と非常にリンクしたような形であるのか、それとも全くそういうものと無関係な原野の売買を話にのせるだけで測量そのものが独立している商法なのか、それによってもどういうふうに対処したら一番効果的なのか違うと思いますし、純粋理論的には法律の対象になり得ると申し上げましたけれども、具体的にどう扱うべきかについては、よく検討してみた上でないと何とも申し上げられない状況であります。
  89. 中村巖

    中村(巖)委員 そこで、今回の改正についてもなお指定商品制を維持している、あるいはまた権利についても指定権利制であるという、こういうことが問題になってくるわけでございまして、指定商品制なり指定権利制というようなものを維持する限りは、次から次へ新しい商法というかそういうものが出てくるわけですから、問題が出てくれば指定をいたしますといっても、常に後追いにならざるを得ない、こういうことになるのでございます。今、指定商品について四十三品目ですかあるわけですけれども、今度法が改正されればその商品の指定さらには権利の指定についてかなり広範におやりになる、そういうおつもりでしょうか。
  90. 末木凰太郎

    末木政府委員 指定商品につきましては、現在の日常生活の用に供するという条件等を外すことによりまして、新たに指定し得るものに何かあるかといいますと、金その他の貴金属が主要なものでございまして、そうたくさんあるとは思っておりません。したがいまして、かなりの確率で――確率といいますかカバー度と申しますか、商品については今度の改正後追加指定をいたしますれば、指定制ではあるけれどもおおむねカバーしているという状態になると思っております。  それから役務につきましては、御指摘のように大変広範にわたりますものですから、そしてまた、従来物品ということでやってきました経験しか持っておりませんものですから、役務については千差万別な供給形態あるいは契約形態がございますので、指定をした場合にどの条項がどういうふうに働くかということをよく見きわめて指定していくことになると思いますが、心といたしましては、法の趣旨でございますから、できるだけこの法律を最大限に活用するというのが基本姿勢だと思います。  ただ、今も測量のお話でありましたように、訪販法で取り扱うべき問題なのか、それとも、訪問販売という形で行われているけれども、中身は訪問販売でなくて営業所契約をしてもそもそも問題である、そこにポイントがある役務提供の問題なのか、非常に重要な点はそこでございまして、訪問という形によるから問題が起きているのだというものであれば本法でも極力取り組んでいくべきでございますし、もし販売の態様が店舗販売であろうと訪問販売であろうと、共通の問題としてこういう問題があるということであれば、本質的な問題はそちらにあるわけでございますから、そういったものはその本質を見逃さないように一つ一つ対処していかなければならないだろうと思います。そういった点を踏まえて政令指定に臨みたいと思っております。
  91. 中村巖

    中村(巖)委員 したがいまして、常に後追いになるようなやり方では困るので、初めから指定商品、指定役務ということでなくて、全部の商品、全部の役務に一応網をかけておいて、その中からこういうものとこういうもの、例えば新聞は外すという形で除外商品制あるいは除外役務制というか、そういうふうなやり方をやった方がいいのじゃないか。だから、逆に言えば全部網をかけておいて、これは綱をかけてはぐあいが悪いというものをどんどん外していけばいいのじゃないか、こういうふうに思うのですけれども、そういうふうにおやりにならないのはなぜでしょうか。
  92. 末木凰太郎

    末木政府委員 実は、指定商品制につきましての御指摘のような問題点ないし御批判ほかねてからあるわけでございますけれども、先日の当委員会における参考人の意見陳述のときにも出たと思いますけれども、実は従来の経験から見ますと、指定されないために大きな被害が生じたというようなケースは余りなかったのではないかということを参考人の先生もおっしゃっておりました。それから、同じ参考人で消費者関係の仕事をしていらっしゃる方のお話でも、商品については、庭石の例をお挙げになったと思いますが、一、二の例しかお挙げにならなかった。したがいまして、従来やってきました商品に関しましては、私どもは、物の考え方としては指定商品制と除外商品制というのは確かに大きな差でございますけれども現実四十三の商品群を指定しております今日から見ますと、実際の問題としてはもうほとんどカバーしてきている。今度、日常生活の用に供する云々を外せばその部分が新しいものとして入りますが、そこはそう広い分野ではないというふうに考えております。     〔委員長退席、尾身委員長代理着席〕  そうすると問題は役務でございますけれども、役務につきましては、繰り返しで恐縮でございますけれども商品以上にいろいろ検討すべき問題がございますので、うまく適用除外制というふうな法案をつくることができるだろうか、非常に難しいのではないかと思います。したがいまして、まずその典型的に問題のあるところについて、できるだけ積極的な姿勢で取り組んで指定をしていくということでやらせていただきたいと思います。
  93. 中村巖

    中村(巖)委員 指定商品が網羅的であるようなことをおっしゃいますけれども、日常生活の用に供する云々というのがかぶってはおりますからあれですけれども、古い法律ではそうですけれども、金なんか典型的に指定商品に含まれなかった、こういう経緯があるわけでございまして、今後ともそういうものが発生をしないとは限らないわけでありますから、やはりその辺は今後の課題としてお考えいただきたいと思います。  次に、訪問販売の際の氏名明示義務、三条にございますけれども、これについても、かねてから氏名明示義務に違反したような場合については、刑事罰等の制裁を科することが必要じゃないかというふうに言われております。今回の改正でも、少なくとも刑事罰は科さないというふうになっております。しかしいろいろ被害者に聞いてみますと、名前を名のったような名のらないような、したがって、じゃどういう者が売ったんだ、あるいはどういう会社が売ったんだ、その所在地はどこなんだということになるとさっぱりわからない、こういうことがあるわけで、この第三条をきちっと守らせるというために刑事罰の担保も必要なんじゃないかという気がしますが、いかがでしょうか。
  94. 末木凰太郎

    末木政府委員 そういう議論が確かにございます。しかし、典型的な契約の流れを申し上げますと、まず消費者の家を訪ねて話を始めて、そして消費者がそれじゃこれを申し込みましょうとおっしゃいますと、その申し込むと言われたときに、あなたの申し込み内容はこうでありましたという書面の交付をする義務がかかってまいります。契約をすれば、また五条で書面の交付の義務がかかってまいります。そういうわけで、すぐ後の段階で氏名とか名称とかを含んだ書面を交付する義務が課されておりまして、これは不交付は当然罰則がかかるわけでございます。  したがいまして、その前の段階で、ガラっとあげた段階で直ちに氏名、名称等を名のらないときにすぐ罰則で担保するかどうかという点については、罰則で担保して別に問題ないじゃないかという御意見もあろうかとは思いますが、そこまで刑罰で強制するのが現在の日本の法意識といいますか、その中でバランスがとれているのだろうか。すぐ後で不交付があれば罰則がかかるということなので、これは罰則では担保しないということにしたのでございますけれども、ただ、そこのところはいろいろな御意見が多方面にございますので、たまたまそのときに名のり方が不明確であったとかいうものはさておき、計画的になるべく名を名のらないで、それから目的も隠して話し込めというようなことを組織的、計画的にやるのが問題でございますから、こういうものにつきましては、今回その三条の違反に対しまして非常に悪質のものであれば五条の三で通産大臣、主務大臣が必要な改善措置を命じることにしております。そういう意識的、計画的に名を名のらないでうまく入り込んで引きずり込むような商法はいけない、ここをこういうふうに直せという指示を出せるような条文を整備しておりますし、これに反すれば業務停止もできますし、あるいは罰則もかかります。そういった形を置いて対処するのが現実的ではないだろうかと考えた次第でございます。
  95. 中村巖

    中村(巖)委員 次に、開業規制の関係でございますけれども、開業規制については現行法にも別にないし、今回の法改正でもないわけでありますけれども、私はやはり開業規制というものが一番抜本的なのじゃないかなという気がしているわけでございます。各戸別の家庭を訪問して販売を営む、こういう事業にやはり届け出なり登録をするという程度の規制を課することはいいのじゃないか。もちろん営業の自由というのはあるわけですけれども、憲法上の自由でありますけれども、その程度の規制を課するということは、これは憲法の規定にも違反しないし、いろいろな業種におきましてはそれぞれに登録制なり届け出制というものがあるわけで、やはり戸別の家を訪問するという業態に関する限りはその辺の規制は当然あり得ていいんじゃないか、こういうふうに思っているのでございます。  そこで、まずとにかく業務を営むについて登録なり届け出をする、こういう制度をお持ちにならないというのは、何かそういうことをやると、また役所の機構がふえて予算が要る、こういう配慮に基づくのかどうか知りませんが、その辺のことはどういうお考えでやっておられるのでしょうか。
  96. 末木凰太郎

    末木政府委員 開業規制を導入しなかった理由は一つではございません。幾つかのことを考えまして、今回導入を見送ったわけでございます。  一つは、現在訪問販売を行っている事業主体が、一日数時間あるいは週に数日だけ訪問販売に従事する家庭の主婦、独立の営業主という形でやるわけでございますが、こういった人を含めまして非常に多様であり、膨大な数に上る。百万を超える数でございますので、それだけ大勢の人たちに届け出をさせるということは、一部の悪質の人のために大勢の人に負担をかけるというのはいかがなものか。また、行政庁の方といたしましても、そういう膨大な数の届け出を受けまして、ただそれを積んでおくというだけでは意味がありません。やはり届け出なり登録なりがあればそれなりの審査、少なくとも事実の確認をしなければなりませんし、変更があればその変更のフォローをしなければなりませんので、大変行政負担もふえる。もちろん行政負担がふえるからやるべきことをやらないというのは理屈にならないと思いますけれども、限られた行政能力をどういうふうに使ったらいいかといったときに、効果的な方法であろうかという点に疑問がある。  それから、あえて申し上げますれば、しばしばあることでございますけれども、登録あるいは届け出をいたしますと、悪質な業者通産大臣登録第何号というような看板をかけたり名刺をつくったりしまして、その事実は間違いないものですから、どうも権威づけに使ったりすることもあり得る。それやこれや考えまして、現時点におきましては、まず悪質なものは限られた範囲だと思いますから、それを重点的に追及していくということにした方が効果的なのではないかということで見送ったわけでございまして、論理的に絶対成り立たないとかいう思い詰めたわけではございません。もっと現実的な感覚で、こういう考え方をとったわけでございます。
  97. 中村巖

    中村(巖)委員 業者登録というのは宅建業法ででもやっているわけです。宅建業者、不動産屋さんというのは数からいっても物すごく多いわけで、それと並行的に考えればやれないわけはないだろうというふうに思っております。それは悪用する向きもないとは言えないかもしれませんけれども、宅建業法なんかでは保証金まで積ましてやっているわけで、そういうことできちっとやればいいかげんな訪問販売業者というものはいなくなる。訪問販売企業というものが、企業というか個人企業も含めて今それだけ数が多いとおっしゃいましても、そういうふうな制度を用いればそれは数そのものも整理できるのではないか、こんな気がするわけでございます。これもまた、将来の問題として御検討いただかなければならない課題ではなかろうかというふうに思っております。  それと同時に、業者を登録すれば、宅建業法における宅地建物取引主任というような形で、そこの中の責任者とかさらには末端の販売員に至るまで届け出をするということが可能になってくるのじゃないか。それをしないと、悪質企業の中では悪質な販売員という、それこそ前科何犯というような、あるいはまた豊田商事でやっていた者が今度は原野商法になって、今度はこれになったというように転々として悪いことをして歩く、そういう販売員、勧誘員が出てくるわけでありますから、その辺のことは業者登録とあわせてお考えをいただかなければならないことではないかというふうに思うわけでございます。  次に、今度新しい法律によって法律上の制度として訪販の協会をつくる、こういうことでありますけれども、この訪販の協会というのが本当に機能するのかどうか。貸金業法なんかにおきましてはきちっと貸金業協会に入らなければならないようにしておりますけれども、これは任意団体というか、アウトサイダーを許す、こういう訪問販売協会ですから、これが本当に機能するのかどうかという点についてはどういうふうにお考えでしょうか。
  98. 末木凰太郎

    末木政府委員 日本訪問販売協会、社団法人としての歴史は五十五年以来ですからまだ八年でございまして、それから団体加入が多い等、まだ団体として完全に成熟した団体でない面も確かにございます。しかし、最近の世論の高まりに対しまして、自分たちで何とかしなければいけないんだという意識は非常に高まってきておりますし、今回の法改正を機に任務を与えられるわけでございますから、大いに頑張っていただいて、協会の内部の体制も整備し、それからできることならばアウトサイダーに対する影響力もできるだけ及ぼしていただいて、消費者保護のために体制と機能を強化してもらいたいと思っているわけでございます。  私どもは、詳しくはまだ存じておりませんけれども、御指摘の貸金業法の例を見ましてもかなり長い業界の自主的団体の歴史がございまして、それを踏まえて今の登録制でございますか、法制度ができたという経緯があるように思っておりますし、そういう意味では訪問販売業界につきましては時間的には少しその後おくれているかと思いますが、今体制整備への途上にあると申しますか、しかも意欲を持って取り組んでいただいているものと思っております。私どもとしましても、若干の消費者保護のための助成を訪問販売協会に対してしておりますが、そのほか精神的な支援も含めまして、これを後押ししてまいりたいと思っております。
  99. 中村巖

    中村(巖)委員 将来へ向かっては、やはりアウトサイダーは許さないんだ、全部協会に加入しなくちゃならぬのだというようなことにすることが必要だと思います。協会ができればそれなりに協会による自主規制というものは行われるはずでありまして、やはりその辺のこともお考えをいただきたいというふうに思っております。  時間がなくなりましたけれども、最後に行為規制の関係でございますが、業務規制というか行為規制ですけれども、禁止行為というのが五条の二に設けられておりまして、そのほか五条の三におきましては「購入者又は役務の提供を受ける者の利益を害するおそれがあるものとして通商産業省令で定めるもの。」について、そういう行為をした場合に「必要な措置をとるべきことを指示することができる。」こういうことになっているのですが、この通産省令ではどういうような行為を規制するつもりでございましょうか。
  100. 末木凰太郎

    末木政府委員 この不当な行為の類型は非常に多様でございますが、典型的には、例えばこういうのは何とかならないかと言われている例でいいますと、御要望いただいているケースとしては大変著しく長時間にわたる執拗な勧誘とか、深夜早朝の勧誘とか、そういった例が挙げられておりますが、私どもは、そのような各界の御意見あるいは御要望をよく勉強いたしまして、大体幾つかの基本的な考え方に基づいてこの通産省令で定める行為類型を決めていきたいと思っております。  まず一つは、構成要件がある程度明確でなければいけません。したがいまして、ただ長時間ということでいいのだろうか、ここはどう工夫したらいいのだろうかということがございます。  第二に、非難すべき程度、度合いでございます。刑法の教科書を見ましても、夜店で非常に安い値段で金の指輪と言われたときに信ずる人はだれもいないというような例が教科書にはございますが、それは当たり前の話でございますけれども、どの程度欺瞞的であった場合にこれを取り上げるかという、これがチェックの第二点かと思います。  それから、他の法令との関係で均衡がとれた措置になるかどうか等がございます。理屈を申し上げれば、そのほかに、行為の類型によりましては、この省令で定めた禁止行為といいますか規制対象行為で保護すべき法益は一体何なのかという議論も実は生じてくると思います。消費者経済的利益を保護するのか、それとも静かな家庭環境の維持という静ひつ権といいますかそれなのか、その辺のところも詰めませんと、ほかの制度とのバランスで説明ができないのでは困ると思います。  しかし、そういった点は私どもは慎重に検討いたしますけれども、これはなるべく通産省令で定める行為類型を狭く定めたいということで申し上げているのではありません。消費者保護の観点からできるだけ知恵を絞って、今のような問題点はございますけれども、できるだけ問題が、消費者のトラブルが解消するように省令を定めたいというのが本当のところでございますので、ぜひ勉強いたしてまいる所存でございます。
  101. 中村巖

    中村(巖)委員 五条の二あるいは三、そういうものに違反した取引契約の取り消し権というようなものも本当は考えなければいけないんだろうと思いますけれども、とにかく時間が参りましたのでこれで終わります。
  102. 尾身幸次

    ○尾身委員長代理 この際、暫時休憩いたします。     午後零時三十二分休憩      ────◇─────     午後三時四分開議
  103. 渡辺秀央

    渡辺委員長 休憩前に引き続き会議を開きます。  質疑を続行いたします。青山丘君。
  104. 青山丘

    ○青山委員 通産大臣、昨日まで四極通商会議、御苦労さまでした。  委員長の御理解をいただきまして、法案に入ります前にちょっとだけ大臣に質問をさせていただきたいと思いますが、よろしいでしょうか。
  105. 渡辺秀央

    渡辺委員長 どうぞ。
  106. 青山丘

    ○青山委員 しかし、それはいささか訪問販売法と関係もありますので、お聞きいただきたいと思います。  最近の我が国経済は、地域の経済あるいは中小企業問題等々でなお問題は残しておりますけれども、総体的には相当堅実良好な状況になってまいりました。こうした景気回復基調をさらに進めていく意味でも、内需の拡大をきちっとやっていかなければいけない。そのことが外国からいろいろ批判を受けております貿易摩擦の解消にもつながり、かつ、国際社会の中で受け入れられる日本、こういうことになってまいります。そうしますと、内需の拡大というものの一つの大きなテーマは、消費生活が本当に質が高く、国民生活が高まっていくのかどうか、こういうことになってきます。そういう点では、消費者の利益はきちっとこれは守られなければなりませんが、同時に幅広いサービス産業の健全な発展というのも、どうしてもこれは結びついてくるものであります。したがって、訪問販売における健全な育成ということも、これは政府においても極めて重要な施策であります。  そういうふうになってまいりますベースとして、せっかく大臣、四極通商会議に出席をされましたので、まず冒頭、今回の四極通商会議の中で主に取り上げられてきた議題、その内容についてどのようなやりとりがおありになったか。大臣答弁要旨要りませんので、率直な感想をひとつお聞かせいただけませんか。
  107. 田村元

    田村国務大臣 いや、答弁要旨じゃなくて、これは実は項目を書いてある紙なんで……。  今度の四極貿易大臣会合、これは賢島四極からちょうど丸一年ぶりでありました。本来ならもっと早くあったはずなんですが、カナダ側の都合で少しずれた。アメリカのミネソタ四極はもう予定どおりということで六月にやる。くっついて、これは別にどうという理由があったわけじゃなくて、アメリカは当番国として予定どおり、カナダが当番国として都合が悪くてずらしたというだけのことなんですが、何か新聞記者の中にもそれを奇異の感で眺めた記者もあったようで、もちろん外国人の記者ですが、これは何の他意もあったものじゃありません。  主に取り上げられたテーマというのは、米国の包括貿易法案、それから最近の貿易環境の評価、ウルグアイ・ラウンドというものでありました。今度の特徴は、カナダのカーニーさんが予算局長官になられて、クロスビーという大臣が新しくなられた。そして、この大臣がしょっぱなから議長をおやりになったわけですが、前日に私にどういうふうにしたらいいだろうかということでいろいろ御相談があって、このクロスビーさんの御配慮があったのでしょう、テーマの一番最初の討議というのがヤイター代表に包括貿易法案の説明をさせて、それが討議の的になったということでございました。もちろん、これは日本もECのドクレルクも絶対反対でございますから、議会の保護主義と戦っておるアメリカ政府、つまり行政府を大いに激励したということでありますが、ヤイター米代表が、東芝等については日本が文句を言うのはよくわかるが、三〇一条についてはむしろUSTRの裁量権が弾力的になるのだから保護色は薄まったのだ、こういう言い方。それに対してECのドクレルクが激しくかみついて、私もそれに対して激しくかみついたというようなやりとりもございました。しかし、だからといって、行政府は保護主義反対というのですから行政府とけんかするわけにもいかない、大いに議会とやってくれということで、三局でヤイターを激励してヤイターが丁重に礼を言ったというような一幕もありましたけれども、そういうことでございました。いろいろと話も聞きましたけれども、ここで御説明申し上げることはちょっと御遠慮申し上げます。  それから、最近の貿易環境の評価につきましては、これは非常に空気がよかったです。世界の貿易環境が不均衡の解消に向かって改善し始めたということで、それで流れが変わったというような表現まであったということでございます。これは非常になごやかな討議でございました。  それから、ウルグアイ・ラウンドの主要項目につきましては、サービス、知的所有権、貿易関連投資、それから発展途上国の特別な扱い、ガット機能の強化、農業等について討議がなされたわけです。そのうち農業は、これは僕は直接の権限がありませんから専ら小林大使が受け持ってやったことです。何かというと、東芝問題についてもおまえのところの農業がとこうきて、何でも農業と結びつけるというようなところがありましたけれども、農業問題については日本とECが同盟軍というようなことでありました。  それから、特に発展途上国の扱いについて私から、発展途上国あるいはNICSも含めましてこれに対して特別の待遇はやめるとかなんとかと先進国が言うことは、これはいかがなものであろうか、途上国を今突き放したらまた途上国をつくってしまう、NICSといえどもその基盤はまだ脆弱なのだし、しかもNICSは輸出依存度が産業の半分くらいなのだから、これはむしろ脅威として受けとめるよりオポチュニティーとして、いわゆる機会として受けとめるべきである、NICSを初め途上国は育成すべきものであって袋だたきにすべき相手ではない、自分はこう言って頑張ったのですが、それに対して同意は得られませんでした。しかし私は、発展途上国を守るために、途上国たたきの前面で大手を広げて途上国を守ったことは自分で正しかったと思っております。  それから、バイ会談はもちろんカナダを皮切りにアメリカ、ECとやりましたが、カナダとはよもやま話、それからアメリカとは包括貿易法案並びに半導体、それからECとは半導体というようなことで、相当突っ込んだ話し合い、時には激しい討論も行いました。しかし、時節柄でございますし、これは外に出さないというお互いの約束でございますから、その内容は御遠慮申し上げたいと思います。
  108. 青山丘

    ○青山委員 田村通産大臣がアメリカのヤイター通商代表と個別会談をされたときのニュースが報道されまして、その報道によりますと、ヤイター通商代表の考え方として、包括貿易法案の東芝制裁条項は残る、あるいはまた半導体の日本市場におけるシェアがまだ低い、そういう点で制裁条項はまだ解除する意思がないというような報道がなされまして、私はまことに残念で、大臣がこの前所信表明をなされたときの私の質問でも触れさせていただいたけれども、日本政府としてはできるだけの努力をし対応をしてきた、しかしアメリカの政府がそこまで評価しておらないのではないかという印象を強く持ちました。そのあたり大臣はどういう話し合いをされたのか、いま少し説明をいただけませんか。     〔委員長退席、尾身委員長代理着席〕
  109. 田村元

    田村国務大臣 そういう報道があったのかどうか、何かちょっと包括貿易法案と半導体とが絡んだような感じで今受けとめたのですが、そういうことはありません。それはそれ、これはこれ。包括貿易法案についても三〇一条等については、彼は保護主義はなくなったとか薄まったとか言っておりましたけれども、包括貿易法案そのものに対してはやはり絶対批判的であるし、特に東芝問題については彼は、田村さん、これはあなたが最も嫌がる問題だなというような表現で、彼の私に対する同情のような発言もしておりましたが、これは何といっても彼らと対議会の問題でありますから、私らとしては、ECでもそうですけれども行政府を激励するということしかちょっと方法がないわけですね。それで大いに激励した。しかし、こちらの言い分はまた繰り返し繰り返し述べたということであります。  半導体については例のあのダンピング問題があるものですから、それで例のガットの問題があるものですから、それとの絡みもあるいはあるのかもしれませんけれども、金額はふえたけれどもそれは円高になったからだとかなんとか理屈を言っておりました。私と、アクセスの問題についても見解を完全に異にして、激しく応酬をしたということでございますけれども、その内容についてはちょっと具体的に述べるわけにもいきませんし、またいずれかの日に、それこそ一杯やりながらというような席ならどうか知りませんが、ちょっと公の席では御遠慮を申し上げておきます。
  110. 青山丘

    ○青山委員 くどいようで何ですが、包括貿易法案の見通しについて一体大臣はどういうふうに見ておられるか。私は、半導体の制裁条項はどういう形で解除されていくのかという見通しについて、いずれも非常に深い関心を持っておりまして、大臣の見通しはどうかな、こういう点でお尋ねしております。  ぜひひとつ御見解をお聞かせいただきたいことと、法案の審議がありますからもう一点。昨日、アメリカとイランとの間にペルシャ湾で直接交戦がありました。これまで小康状態を保っておりましただけに、この成り行きについて非常に憂慮しておるわけでありますが、通産大臣、この見通しを一体どういうふうに見ておられるか、ペルシャ湾における日本のタンカー等の安全航行について一定のお考えを持っておられるのかどうか。また、国際石油情勢の影響をどういうふうに受けとめておられますか、ぜひひとつ御見解を承っておきたいと思います。
  111. 田村元

    田村国務大臣 包括貿易法案につきましては、率直に言っていろいろな戦略的な話も聞きました。るる具体的な説明もございました。きょうも実は私、ここへ来るのにちょっと時間を心配しておったのは、ウエンツというアメリカの国務省の大使と会っておったものですから、彼からもいろいろな話を聞きました。なかなかいろいろな話があります。それは、私が今ここで交渉事のときに、何もかも暴露するというようなことはとんでもないことになるので何とも言えませんけれども、抽象的に物を言えば、今まだ法案なんです。法律じゃないのですね。ですから、今は予選の予選のようなものなんですね。それで、決勝戦というのはやはり大統領対議会ということだろうと思うのです。ですから、これからいろいろな面で展開は非常に微妙であり、複雑なものになっていくと思います。これについて、私もこれから毎日毎日を緊張しながら眺めていかなきゃならぬと思っております。  それからペルシャ湾の問題でございますけれども、私が夕べ遅く記者会見を終わって家へ帰って、きょう朝八時二十分から閣僚会議が始まって、それに閣議で、その足でここへ入ってきて、先ほど十二時半ごろに委員会が休憩して、それからアップル・コンピューターという会社の社長さんと会って、ウエンツというアメリカの国務省の大使と会って、レイノルズというアイルランドの商業産業大臣と会ってというふうにして、実はろくに飯を食う時間もないようなスケジュールでございました。余り詳しい報告は受けておりませんけれども、私が事務方から受けました報告では、イランの機雷敷設ということに端を発してアメリカとの間でああいうことが起こったが、しばらく事態の推移を見守るしかないだろうということでございます。それはそのとおりでございまして、まさか日本が軍艦を持っていってというわけには、そんなばかなことはできるものではないし、持っていく軍艦もないわけです。ですから、それはしばらく事態の推移を見守るということでございましょうし、石油情勢も、これからどういうふうになりますやらまだ何とも言えません。これからOPECもしくは非OPEC、いずれにしても各国の情報をとっていかなきゃならぬというふうに考えております。今もうあの地域はしょっちゅうこういうことが起こるものですから、だからちょっと今確度の高い情報としての石油情報を私は持っておりませんし、ここで述べることもちょっと不可能でございます。
  112. 青山丘

    ○青山委員 法案の質疑に入らさせていただきます。大臣、ありがとうございました。お疲れのところ、しかも乏しい情報の中で御見解を求めましたので、やむを得ない面も多かろうと思います。  さて、今回訪問販売の規制の強化、内容の充実のための法案が用意されて、国会へ提出されて質疑が始まったわけであります。内容をよく見てまいりますと、一部の消費者の中からはなお規制がなまぬるい、こういうような批判があるようであります。しかし、私はまず一定の前進であろうと評価すべきではないかと考えております。マスコミの報道を見ますと、毎日のように悪徳な商法による消費者の被害が報道されておりまして、ずっと大変心を痛めてきておりました。何となくイタチごっこがずっと続いてきておるけれども、それでもこれは辛抱強く規制をきちっと強化していく、整備していく必要があるなというのが率直な私の考え方であります。  消費者立場から見てみましても、所得水準は上がってきている、財テクブームでもある、資産形成の機運が相当大きく盛り上がってきているときに、つい安易に手軽に甘い言葉に乗ってしまう、そういうこともあったのかなという点はあります。しかし、消費者の利益を守っていくということと、基本的に経済活動が順調に活発に進んでいく、消費経済活動を健全に育成させていくというのは、考えてみればいずれもかなり矛盾した点を多く持っておりまして、それを同時に満たしていくというのはなかなか困難だ。したがって、つい後追いになってきているということも認めてこざるを得ない一面であろうと私は思います。ただ、一部の悪徳業者が悪知恵をどんどん発展させていく、そして当局はやむを得ず規制を後追いでも仕方がないからやっていかざるを得ない、こういうイタチごっこのような現象がずっと続いてきたと言わざるを得ないでしょう。ところが、私ども立場からすると、率直に言ってこうした悪徳商法を根本的に退治することはできないものかという疑問を持ちます。その辺の御見解はいかがでしょうか、これが一点。  それから、今回の改正案でいわゆる訪問販売形態をとる悪徳業者をどの程度規制できると考えておられますか。また、消費者の利益がどれぐらいこれで守られるんだと確信を持っておられるのか、率直な御見解をお聞かせいただきたいと思います。
  113. 末木凰太郎

    末木政府委員 この種の消費者被害の防止といいますか根絶はなかなか難しいということも率直にお認めいただきまして、その上での御質問でございますので、私も率直にお答えしたいと思いますが、いかなる法規制を強化いたしましても、それだけですべてのこの種の被害を全くゼロにするということは、実際問題として難しかろうと思います。したがいまして私どもは、一方において法規制の強化、それからもう一つは、消費者にみずからの利益、みずからの立場を守っていただくという御努力もお願いをし、そういった自衛能力をつけるためのお手伝いはできるだけさせていただくということを二つ目の柱とし、それから三つ目に、大多数の業者は一生懸命やっているわけでございますから、業界の中で自主規制の形で悪いものを駆逐するような仕組みも工夫をしてもらい、またその仕組みのもとで悪い業者については行政的な規制、取り締まりを行うのにできるだけ力をかしていただく、この三つの柱によりましてできるだけのことをやっていくということだろうと思います。ゼロにできないからといって、それでは必要な努力をしないということはもちろん論外でございます。一番悪いわけでございますから、悪徳業者が知恵を出すのならば、さらにこちらの方はそれを上回る知恵を出さなければいけないという心構えでございますし、本当に悪かった場合には警察当局にもお願いをして、一罰百戒で示しもつけなければいけないと思います。基本的にはそういう姿勢でございます。  さて、そういうことで今回の改正の柱でございますけれども、現行法は主として訪問販売業者消費者との間の契約関係の明確化、何かトラブルがあったときに、どういう契約関係であったかということについて不明確であると、それだけでトラブルのもとになりますからまず明確化、そしてできるだけそれがフェアな内容になるようにということを中心につくられております。したがいまして、主要な関係条文としましては現行法三条の、訪問した場合の氏名等を明示しなければいけないという規定と、それから消費者から契約の申し込みを受けたときに書面を交付しなければいけないということと、五条で、契約を締結したときに書面を交付しなければならないという規定が中心規定になっております。通信販売法もこれに準じた形になっております。  それに対しまして、今回は訪問販売業者消費者という甲と乙の関係に、行政庁というものが第三者として登場いたしまして、訪問販売業者の不当な行為がある場合に行政行為をもってこれの抑圧に乗り出すという柱が大きく加わったわけでございまして、具体的には五条の二の新設規定によりまして「禁止行為」と総称しておりますけれども、こういうことはやってはならないという規定を置き、それをあえてする悪質業者に対しましては、五条の三の「指示」の規定の発動あるいは五条の四の「業務の停止等」の処分あるいはその旨の公表、そしてまたこれらに従わないときの罰則等がございますし、さらに五条の三で、具体的な行為は省令で定めるように省令に譲られておりますけれども、その他の不当な行為につきましても省令で定め、これに対して必要に応じてそのような省令で定めた不当な行為を行っている者に対して是正のための指示、それに従わない場合の命令等をかけ得るようにしております。  そういう意味で、従来の私法的な関係を中心にできていたものに対しまして公法的な規制という柱を導入いたしましたもので、もちろん私どもの執行よろしきを得ればということだと思いますけれども、全力を挙げてこれを施行させていただきまして、従来と違った武器、ツールを持ったわけでございますから、これによって相当消費者の利益を守ることができると思っております。
  114. 青山丘

    ○青山委員 法律案内容に触れさせていただきたいと思います。  今回の改正案では定義規定が改正をされて、役務の提供などが追加されております。これについても従来どおり指定制がとられているわけでありますが、従来の指定商品に加えて指定権利、指定役務、これらが規制の対象となります。この指定は政令で定められることになりますが、これまで悪質業者による貴金属などの指定外商品の取引による脱法的な規制逃れあるいは新たな手口、そういったものへの対応が必ずしも円滑に行われたとは言えません。  今回の場合、答申でも、規制が後追いとならないように、追加指定については機動的に行うシステムをつくるべきだという趣旨の提言があります。この追加指定についてはどのようなシステムで指定を追加されようとしていかれるのか、その検討の方法や参加されるメンバー等について、お考えをひとつ明らかにしていただきたいと思います。
  115. 末木凰太郎

    末木政府委員 新しく指定していくものにつきましては、商品のカテゴリーではそう多くはないと考えております。今回の改正で、日常生活の用に供するものであることという要件を外すことに伴いまして、日常の生活の場で取引はされるけれども日常の生活の用に供していないものが指定し得ることになるわけでございまして、具体的には金とか貴金属が該当すると思いますが、その他について現在未指定のために問題が残されておるというものは数多くはございません。  もちろん、この機会にもう一遍洗い直しをいたしまして必要なものは追加いたしますが、そのほか今度新たに法律の対象になってまいります指定役務、指定権利等がございます。そういったものを含めて、それからもちろん商品も、今時点においては懸案になっているものはそう多くないと申し上げましたけれども、今後法律の施行をしていく長い将来がございますので、そういったことを考えましたときに、機動的にできるだけ速やかに必要な指定が行われる必要があるということは御指摘のとおりでございまして、審議会等でもそういうお話がございました。  そこで、その点につきましては通産省を信用しないわけではないけれども、いわば通産省に対して手伝いをするからみんなで一生懸命情報を持ち寄って、今どういうところに問題が起きつつあるのかということを、情報を通産省に集めて機動的な指定の仕組みをつくっていく必要があるのではないかという御意見がございまして、これは私どももその御指摘のとおりだと思っております。それで、どういうメンバーでこれを具体的な組織として構成するか。システムといいましても、要するに委員会組織のようなものをつくりまして、その場で情報の交換なりあるいは議論なり方向づけなりを行うということだと思いますが、これはまだ法案も御審議いただいている段階でございますし、具体的にはまだ案ができている段階ではございませんが、最も有効な方法で考えていきたいと思っております。  現にこれまでやってまいりましたことを御参考までに申し上げますと、まず私どもは、省内におきましていろんな部局に消費者トラブルが寄せられます。その中には、消費者の方は訪問販売法だからあるいは何法だからといって必ずしも区分して持ち込むわけでもございませんから、電気用品法に関する苦情もあれば計量法に関する苦情もあれば、訪問販売法も割賦販売法もいろいろございます。したがいまして、そういったものをできるだけ幅広く集めまして、それがどこの担当であるか、だれが責任を持って処置すべきかという体制をきちんとしなければいけないということで、省内的にもそういう体制をとっております。  それから、この消費者トラブルに関連してお手伝いをいただいてしかるべき民間団体が十一ほどございますが、この団体とも定期的な会合を持っておりますので、そういった方々の御協力も今後とも期待いたしますので、そういった過去の経験も踏まえまして、余り大げさな組織になってもかえって動きませんから、効果的でかつ機動的に動けるような勉強の仕組みを考えて、そして適切な指定に役立てていきたいと思っております。
  116. 青山丘

    ○青山委員 今回、定義規定の改正に伴って指定商品のほかに指定権利、指定役務が追加されてきますが、指定権利、指定役務というのをどんなものと考えておられるのか。  それから、これまでトラブルになってきた事案というのはどんなものがあって、どういうふうに受けとめておられるか、いかがでしょうか。
  117. 末木凰太郎

    末木政府委員 先生、二つに分けてお尋ねでございますけれども、第二としておっしゃいました指定権利とか指定役務に関するトラブルの実態の方からスタートいたしまして、そういう実態を踏まえて法律的な検討も加えた上で指定役務、指定権利の政令指定に資するということになろうかと思います。  今日頻繁に寄せられております相談あるいはトラブル、問い合わせ等は、例えば害虫駆除でございます。これは一例を申しますと、悪質な業者はシロアリを自分で持ってきまして、それを縁の下にまいて退治をする必要があるとかあるいは退治したとかいうような、そういう害虫駆除にかかるもの、これはいかにも訪問販売消費者に不意打ちをして契約をとるのに適したと言うと言葉が悪いのですけれども、そういう材料かと思います。消費者が気がついたときには、もうまいちゃってあるというようなケースでございます。ですから、これは一つのタイプを暗示しているといいますか、むしろ明示しているものでございますが、こういったカテゴリーが一つございます。  それから、制度の変更に伴いまして消費者の錯覚に陥りやすい状況を利用する例といたしまして電話機のリースがございまして、NTTの民営化によりまして従来の古いタイプの黒い電話機は使えなくなるんだというようなことを明示的あるいは黙示的、暗にそういうことを言って新しい電話機を取りつけた方がいいですよ、今なら安いというようなことで、電話機のリースをするようなケースがかなりございます。あるいはまた、衛生とか安全とか健康とかいうことに対する関心の高まりに乗じまして、トイレとか換気扇、これはぐあいが悪いですよ、こういうことでは危険ですからということで取りつけ工事をしましょうというので、場合によっては消費者が態度をあいまいにしているうちにどんどんやってしまうとか、あるいは最近の国際化に即しまして、英会話の指導のクラブに入りませんかというような勧誘も多く見られるところでございます。  このような、現実に多く見られて相談が寄せられておりますケースを中心に、当面指定を検討してまいりたいと思っております。
  118. 青山丘

    ○青山委員 指定商品は政令で定めるということになっておりますが、指定の要件が緩和されてきましたその経過というか背景を御説明いただきたいことと、これによって追加指定がなされるかもしれない商品、今見直しをしなければならないという機運の中で追加指定をどのような商品と考えておられるのか、いかがでしょうか。
  119. 末木凰太郎

    末木政府委員 一番大きなものは、現在の法制のもとで要件を緩和しないとどうしようもないのは貴金属だと思います。これは、日常生活の用に供する品物として読むにはちょっと無理だと思います。したがいまして、今回政令を定めるための要件そのものを改正していただきまして、その上でやっと政令指定できることになります。  それから、現在の法律のままでも政令に定めれば法律的には定め得るものとしてどんなものがあるか、かつやっていないものに何があるかということでございますが、実はもう四十三のカテゴリーを指定しておりまして、およそ問題と言われるものは大体指定をいたしましたけれども、なお今残っているものとしては、これはたしか当委員会の参考人の意見陳述のときにも出た話だと思いますが、庭石、墓石というのが最近ちょっと宿題に残っておりまして、これもこの機会に徹底的に勉強して、やる必要があれば指定したいと思っております。  役務については、先ほどお答えしましたような状況を踏まえて対処いたします。
  120. 青山丘

    ○青山委員 庭石とか墓石とかOA機器であるとか、紳士録の登載みたいなのが話題になっておりましたね。やはり恐らくそのあたりなんでしょう。その点についても御意見があったらお聞かせいただきますが、消費生活の中における消費経済の取引において余り過剰な規制というものが経済活動を大きく圧迫しては何にもならない。さりとて、消費者の利益というのは断々固として守らなければなりませんけれども、そういうなかなか困難な二つの命題を解決していく道筋として、指定制というのはおおむね妥当ではないかなと私は実は考えています。ただ、答申に触れられておりますし、先ほども私触れましたように、トラブルの生じたものについては指定の追加などは機動的に対応していくことが重要であります。したがって、消費者トラブルの状況というものをどのように今把握をしておられるのか、その点はいかがでしょうか。  また、相談の業務に乗っていただいておるそれぞれの機関、そういうところでは結構苦労してその相談に乗っていただいておりますが、そういうところで受け付けられる情報というのは非常にたくさんあるし、多様であろうと思います。しかしそれは非常に重要なものでもありますので、そのあたりをいかに有機的な形で対応できる体制として整理していくことができるのか。このことは、例えばデータベースを構築していく、そういうデータベースを十分活用していって情報の交換をしていくことによって消費者被害を未然に防ぐことができるし、また地域特性の悪質な商法に対して事前に――事前でもないかもしれませんが、適宜適切に対応することもできるわけであります。そういう意味では、相談業務にあずかってきているそれぞれの機関で、入ってきた情報というのがどういう形で整理されていくのか、またそれがどういう形でデータベースとして構築されていくのか、そして構築されたものはそれぞれの地域や機関において情報の相互乗り入れがうまくいって、それぞれの地域でその情報を有効に活用することができるのか。こういう体制をつくらないと、全国的にはなかなか一律にうまく悪徳な商法をきちっと規制していくというのは困難で、消費者の利益を守るということはなかなか難しいのではないかと私は思うのです。その辺はいかがでしょうか。
  121. 末木凰太郎

    末木政府委員 基本的に先生がおっしゃるとおりだと思います。それで、私どもは具体的にそういう点についてどうやっているかということでございますけれども、二つ申し上げたいのでございます。  一つは、先ほどちょっと言及さしていただきましたが、消費者トラブル情報連絡会議というのを省内に設置をして、省内における情報交換をやっているということは申し上げました。もう一つは、消費者トラブル連絡協議会、似たような名前でございますけれども、これは消費者トラブル早期警戒システムと、実はちょっと物々しい名前でございますけれども我々の中では呼んでおりまして、この早期警戒システムの方は通産省及び消費者トラブルに何らかの意味で関係する民間の団体で構成しておりまして、毎月一回定例の会議を開いております。  そこで、この組織を通じまして今後効果的な情報交換をし、情報対策をしていきたいと思っているわけでございますが、使い方が二つございます。その十一団体の代表者から成る定例的な情報連絡会議を開きます。これには私も極力毎月出席しまして生の状況をつかむようにしておりますが、これはいわば参謀本部で、情勢分析をする会でございます。もう一つは、この十一団体が相互にコンピューターを活用しまして消費者トラブル情報を交換し合うあるいは蓄積するという仕組みでございまして、この二本立てで考えております。  十一団体の中には、実はちょっと毛色の変わったものといいますか、ただ物を売るだけではないものも加わりてもらっておりまして、例えばクレジットの供与と訪問販売との結びつきというようなことがよくございますので、例えばクレジットの産業の面からどういう情報をつかんでいるか、これもインプットしていただく、供給していただく。逆に販売業界の方で生じた情報をクレジットの業界の方にももちろん流す。あるいは広告を審査するための機構がございます。新聞広告を出すときに、これが新聞広告に適したものかどうかの審査をするような広告関係の団体にもこのメンバーに入っていただいております。したがいまして、物を売るだけではなくて、信用を供与するとか広告関係、それとももろん日本消費者協会がその中核でございますが、この十一団体の情報を日本消費者協会のデータベースに蓄積するという作業を現在進めているところでございます。まだ蓄積途上でございますが、これを有効に活用し、さらに今後形がだんだん整いましたらば、インプットあるいは情報交換する対象を一層広げていって、御指摘のような機能を持たせていきたいと考えております。
  122. 青山丘

    ○青山委員 情報も余り豊富過ぎますとなかなか活用できない、さりとて有効で適切な情報をできるだけ簡易に得られるシステムというのをつくっておかないとなかなか対応できない。そのあたりはぜひ、消費者トラブル早期警戒システム、かなり物々しい名前でありますが、こうしたシステムの発足を必要としているのではないかと思います。  それから、指定商品は当然でありますけれども、新たに指定をされます指定権利、指定役務、これらについても消費者の利益をきちっと守っていく、消費者の利益が侵されるようなことがあってはならない。そういう点で、消費者トラブルの防止のために万全を期していくことがやはり必要であります。ただ、こうした指定については、通産省管轄だけではなくて他の省庁の所管する事項も相当あると思いますので、そのあたりの連携の体制といいますか、そういうものも必要になってくると思うのです。しかし、それは通産省が相当主導的な役割を果たしていかなければいけないのではないかと私は思います。そういう意味で、消費者保護の観点から、トラブルを抑えていくシステムといいますか連携体制というものを築き上げていっていただきたい。この辺の方針はいかがでしょうか。
  123. 末木凰太郎

    末木政府委員 御指摘のとおりだと思います。今日まで必ずしも十分でない面があったかもしれません。今後ともなお一層、そういった努力を重ねてまいりたいと思います。
  124. 青山丘

    ○青山委員 行為規制について少し質問いたします。  今回の改正案によって訪問販売にかかわる不当行為の禁止規定が創設されます。そして、問題のある訪問販売業者に対しては業務改善命令を出す、業務改善の指示を出すあるいは業務停止命令を出す、こういうことで行政処分が規定されていくわけでありますが、第五条の二、禁止行為についての第一項でありますが、契約に関する事項でありまして、顧客等の「判断に影響を及ぼすこととなる重要なもの」というのは、一体どんなことを考えておられるのでしょうか。
  125. 末木凰太郎

    末木政府委員 抽象的に書いてございますけれども、お客さんがそのことを告げられなかったらば、あるいはそういうふうに言われなければ買わなかったかもしれないけれども、そう言われたので買ってしまったというようなことでありまして、契約をするかしないか、買うか買わないかの意思決定にいわば決定的に重要な契機となるような事項ということでございまして、契約そのものといいますか、品物そのものに関する事柄である場合もあるでしょうし、その品物をめぐる環境に関する事柄もあると思います。  それらはいろいろあると思うのですが、具体的な例で申しますと、例えば、こういう消火器を設置する義務があるのですけれどもおたくにはまだ備えつけてありませんね、これはぜひお買いにならなければいけませんというようなことを言われた場合に、法律上そういるものを備えなければいけないということになっているのなら、それはうっかりしていた、それじゃ買いましょうというようなことになる、そして買ってしまう、実は法律上の義務はなかった。これは典型的な例だと思いますし、そのほかに、いかにも公的な機関がその品物とかサービスを支援しているといいますか、アプルーブしているといいますか認定しているといいますか、何か公的な権威があるものだと思わせるようにしむけまして、それが決定的な理由になってお客が買ってしまうとか、そういうようなものを言っているわけでございます。  これが具体的にどのような事項をカバーするかということは、できるだけ具体的な事例に即して、いわば事例集というようなものを積み重ねていくことによって、いわば判例法的にわかりやすい中身ができ上がっていくと思いますけれども、当面におきましても、できるだけ解釈通牒等でわかりやすい、消費者に理解していただけるようは、この内容を周知させていきたいと思います。
  126. 青山丘

    ○青山委員 審議官、このことは非常に重要なところでありまして、仮に全く不当な商品を不当な金額で訪問販売しようとしておらなくても、セールスに当たる人たちからしますと、つい一生懸命売りたい、違法のものでもない、ないけれども、たまたま消費者がそういう認識がないので、それを巧みに活用して何とか販路を拡大し成績を上げたいというような、これはかなりモラルにも近いところに関係してきますので、今おっしゃられたようによほど業界はおける自主的な適用が実を上げていかないと、非常にデリケートでしかも難しくて、つい消費者が買わなくてもいいものまで買ってしまうというような不利益を受けてしまう。ここは大切なところでありますので、よく業界に徹底をさせていただかないと、今後この種の問題は必ず尾を引くと思います。  そこで、禁止行為の中に取り上げられておりますこうした顧客等の「判断に影響を及ぼすこととなる重要なもの」あるいはまた「不実のことを告げる行為」こういうことをしてはならないということになっていますが、これらと詐欺や偽計との関係というのはなかなか微妙でありますけれども、そのあたりとの関係をどういうふうに整理されるのか、これが一点。  それから「不実のことを告げる行為をしてはならない。」とありますけれども、事実を告知しない場合は問題とならないようでありますが、これは業者立場に立ってみますと、業者の不利益になるようなことは言いませんから、したがって言わなかった。言わなかったということが禁止行為にならないということになると、事実を告知しなかったということで、これは消費者の権利が時に侵されていくかもしれない、非常に微妙な点であります。事実不告知の行為が禁止行為とならない、そのあたりをどういうふうに整理してこられたのか、いかがでしょうか。
  127. 末木凰太郎

    末木政府委員 第一点の詐欺との関係でございますが、詐欺罪は刑法の二百四十六条でございますが「人ヲ欺罔シテ財物ヲ騙取シタル者ハ十年以下ノ懲役ニ処ス」と、これでございまして、人をだまして、そしてたまされた人がその結果錯誤に陥りまして、その錯誤のゆえに財産的な処分行為をする。相手の悪い人の方は、その結果財物を取得したり、あるいは財産上の不法の利益を得ることによって成立する犯罪でございます。つまり、相手方が財物を取得したり利益を得るということに構成要件がなっている。これに対しまして、今回のこの五条の二の「禁止行為」でございますけれども、今のようにだました人が積極的にといいますか、結果的に財物を取得したりあるいは財産上不法の利得を得るかどうかにかかわらず、このような行為があれば、不実告知があるとかということに基づきまして契約が締結されあるいは代金が支払われたという行為があれば、その結果、今たまたま代金が支払われたと申し上げましたけれども、支払われなくても、契約が締結されただけでも、その行為自体に着眼しまして違反が成立すると思います。  微妙なところでございますけれども、もうちょっと常識的に申し上げますと、刑法上の詐欺の成立を立証するのはなかなか容易ではございません。現実には警察庁が非常に取り締まりをしてくださっておりますけれども、いろいろ具体的な事例に即しますと、なかなかその立証のために、消費者もそれだけの立証の能力が必ずしもない。もっとも、その立証のための材料を収集しておくくらいの消費者であれば、そもそもそういうのに引っかからないわけでございますから、そこはイタチごっこになってしまって、消費者が立証のための協力が十分できないので挙げることができない、検挙できないとまた同じようなことを繰り返すということになるわけでございますが、こちらの方はそれに比べれば、程度の差ではございますけれども、その構成要件の緩やかさといいますか厳しさといいますか、あるいは立証の難しさといいますか、その点が少し緩くなっていると思います。なおかつ、今のような差がございますし、直罰のほかに行政的な処分の対象にもなりますので、そういう意味ではずっと発動しやすい性質のものだと思います。  それから第二点の、今のは不実のことを告げた場合の例でございますけれども、今度は事実を告げない場合についてはどうなのかということでございます。これは、研究会でこの禁止行為の議論をしていただきましたときには、不実のことを告げる行為と事実を告げない不作為と、いずれも問題ではないかという議論がございました。重要なことであればうそをついてはいけないし、重要なことであれば知らせなければいけないんじゃないかということでございます。しかしその後、いろいろ法律的な観点から詰めて検討をしてみますと、重要な事項について不実のことを告げる、積極的にうそをつく方につきましては、これはいろいろあり得る。先ほど例に挙げましたように、法的な設置義務がないのに設置義務があるように言い抜けるとか、大いにあり得るわけでございます。  しかし、重要な事項かもしれないけれどもそれを告げない場合に問題が起きる、そういうものはあるだろうかということになりますと、実は重要なものというのは、これは訪問販売という特性にかんがみてもちろん議論をした場合のことでございますけれども、必ずしも、店舗で売買をする場合と比較をして訪問販売の場合には、これは重要だというものはそうはないんじゃないだろうか。まあ共通の問題としまして、これは店舗の場合でももちろんありますけれども、書面交付の義務を課せられております。その書面の交付の記載事項としての、例えば価格とか支払いの時期、方法とか、それから権利の移転時期とかサービスの提供の時期とか、こういう本当に基本的なことについては実は書面の方に書かせることになっておりますから、それ以外のものについては黙っていることによって可罰性がある、それだけで可罰性がある重要な事項はないのではないだろうか、こういうことで、結局最終的に規定をいたしましたのは、積極的にうそをつくというものを法律に規定した、そういう経緯でございます。
  128. 青山丘

    ○青山委員 随分苦労がこの経過の中にはあったと私は思う。第五条の二の二項「人を威迫して困惑させてはならない。」ここまで来ると、私は消費者の生活実感の中から、威迫というのは刑法上の脅迫と受けとめるケースがほとんどだろうと思うのです。こうなってくると、私は刑法上の問題が非常に微妙に絡まってくると思うのです。そのあたりは、この訪問販売法の場合どういうふうに整理して理解してこられたのか、消費生活の中できちっとわかりやすく説明ができますか、どうでしょう。
  129. 末木凰太郎

    末木政府委員 「人を威迫して困惑させてはならない。」の威迫と、それから刑法に言います脅迫との関係、ちょうど先ほどの詐欺のところの案件、不実告知の関係と類似の関係でございますけれども、脅迫の方は人を畏怖させるに足りる害悪を加えるぞということを告げることだというふうに言われております。そこで、これとの関係で、今回規定しております威迫でございますけれども、これは人を畏怖させるまでには至らないけれども、不安の念を生じさせる行為をとらえる概念ということでございますので、性質はよく似ておりまして程度の差があるということでございます。したがいまして、これも明確に物差しでここからこちらが脅迫で、ここからこちらが威迫だというふうになかなか線を引きにくい概念でございますけれども、従来おどかされたようなケースにおいて、刑法の脅迫罪で取り締まることができなかったような程度のものを今度はできるだけカバーしようということでございまして、そういう意味で規制の実効性を上げようということでございます。  具体的な例は、そのときのいろいろな状況に即して考えなければなりませんので、口でどう言ったかということだけで決めることはできませんし、口で言う言葉とそのときの例えば態度とか周囲の状況とか総合判断になると思いますが、例えば入れ墨を見せるとか、それから、自分は会社に帰れないことになるんだけれどもそういう立場に私を追い込むつもりかなどと声を荒げるとか、いろいろのケースがございまして、このようないろいろなケースを踏まえまして、いろいろな状況にもよりますけれども、それらが仮に刑法の脅迫に至らなくても、かなりのものをカバーすることができるようにというつもりで威迫という概念を取り上げた次第でございます。
  130. 青山丘

    ○青山委員 実は、既に新聞報道されました改正原案、あるいはここでもう既に触れられた方があるかもしれませんが、暴行、脅迫、偽計を行った悪質販売員に対して懲役三年以下、罰金三百万円以下というような考え方が既に述べられておりました。それに比べますと、今回の禁止行為違反の罰則、一年以下の懲役、百万円以下の罰金、いささか私は――幾らかの紆余曲折があり、ここまで調整が進んでこられたんだろうと思いますけれども、その経過について少し御説明がいただたきい。  それから、余り時間がありませんので急ぎますが、第五条の四の業務停止命令、第一項の「利益が著しく害されるおそれがあると認めるとき、」というのは一体どのような状況を言っておられるのか、どのような行為を言っておられるのか。  それから、この第二項に公表の義務が設けられておりますけれども、昭和六十年に発足いたしました訪問販売トラブル情報提供制度における公表、これとの関係をどういうふうに整理していかれるのかということです。従来のものは手口の公表というのがどうも中心であったようでありまして、しかし当局が指導してきたにもかかわらずなお改善がされておらないということで個別の業者名が公表されることになっておりますが、調べますと、これまで四十社余りが指導されておる。しかし公表されたのはわずか一社、株式会社エレーヌという会社が公表されたようであります。ところが、これが公表されると直ちに会社の名前を変えてしまっている。商業道徳上、これは消費者の権利を侵そうという意図があったり不当な行為を犯そうというような意図があったりというのが丸丸見えるというような状況の中で、企業名を公表してきた例示が非常に少ない。それはむしろ企業の名前を公表することを少し控えてきた点があるのではないか、それがよくない結果を生んでおるのではないか。率直に申し上げて、私はそんな印象を強く持ちました。そうした及び腰の姿勢というのがやはりこれまではよくなかったのではないかと思うのです。そのあたりはどのように受けとめておられますか。  それから、一挙にたくさん質問して申しわけありませんが、情報提供の制度は現在どのような運用の状況にあるのか、御説明いただきたいと思います。
  131. 末木凰太郎

    末木政府委員 まず第一点の罰則でございますが、私も確かに、新聞に罰則強化という大きな見出しの記事が載ったのを記憶しております。そのときの内容までは正確に覚えておりませんが、たしかおっしゃるような記事だったと思います。それに対して、いざ法案ができてみたときには懲役も三年が一年、罰金は三百万と伝えられたのが百万になっているではないかということでございます。新聞記事のソースはもちろん私存じませんが、罰則とか懲役の何年とか罰金の幾らだというのは、政策的にえいっと決めるような話ではもちろんございませんから、私どもが法制当局と内部で相談いたしましたときに、類似の立法例とのバランスを見つつ決めていくというのがこういったものの決め方でございまして、類似のものとして海外先物取引規制法等いろいろございますが、そういったものを見ながら均衡のとれる刑を定めたわけでございまして、これは値切られたとか一歩後退したとかいう性質のものだとは思っておりません。  また、罰則につきましては、刑罰が加えられるということが大きな問題でございまして、刑罰規定がかかるか、かからないかということが分かれ道でありまして、三年なら考えてしまうけれども一年ならやってしまおうか、そういう人も絶対いないとは申しませんけれども、やはりそうじゃなくて、刑罰がかかるというのは大変な抑止力になるといいますか、効果があるのだろうと思います。これが第一点でございます。  それから第二点の、禁止行為等の違反があった場合に必要な措置を講ずるように指示をすることができるのですが、その場合、ほうっておくと消費者の利益が著しく害されるおそれがある場合には業務停止までいける、業務停止をするとその旨を公表することができる。ただ、改善のための指示をするのと業務停止とどこで分かれるかということでございますが、これはどの程度であった場合に著しいと言うべきかというのは、もう全く千差万別、ケースによって判断せざるを得ないわけでございまして、法律論的にはこういう言い方はやや正確を欠くかもしれませんけれども、いわば改善の指示では消費者の被害の続発あるいは拡大を防ぐのに十全でない、これはもうストップさせる以外手がないというような程度に質が悪いものということで、若干同義反復的でございますけれども、そういう場合には五条の四の方で業務を停止し、公表するということになろうかと思います。  そこで第三点の、訪問販売トラブル情報提供制度における公表と今回のこの五条の四の規定による公表との異同でございます。申すまでもなく、訪問販売トラブル情報提供制度による公表は、法律に基づかないいわば行政措置としての公表制度でございますし、過去に三回、六十年十一月、六十一年、六十二年の年末それぞれ公表しておりますけれども、おっしゃるように主として悪質な手口の公表でございまして、具体的な企業名をやったのは一社だけ、これは御指摘のとおりでございます。ここのところは及び腰という御批判でございましたけれども、及び腰であったとは思いたくないのですが、根拠が法律ではなく行政的な措置ということでやりましたために、運用の仕方におのずからの限界があったと言えばあったのではないかと思います。  もともとこれは、手口を広く消費者に知っていただくという啓発的な方に相当重点がありまして、制裁的な面は、これもありましたけれども、それにくっついていたと言うと言い過ぎかもしれませんけれども、主として啓発を中心に具体的な法律の根拠なしにやったものとしてやむを得なかったことだと思いますが、今回は業務停止とか公表そのものが直接的に法律に規定されておりますので、そういう意味ではずっと発動しやすいものでございますし、強力なものだと思います。  そこで、この二つの制度はそういう意味で、片や啓発の方にかなりウエートがあり、片や制裁的な色彩がかなり強いという差もございますので、メリット、特徴を生かしつつ、かつ整合性を確保するように配慮しつつ、どちらの制度も有効に使っていきたいと思うわけでございます。なお、最近の運用実績といたしましては、ただいま申し上げましたように昨年十二月に手口の公表を行ったのが最新のところでございまして、ごく最近では企業名の発表はございません。
  132. 青山丘

    ○青山委員 私からは、クーリングオフの制度について一、二点お尋ねをしたいと思います。  このクーリングオフの制度というのは、消費者救済に相当な効果というか成果を上げてきていると思うのですね。今回は現金取引にも適用されていく。政令で定められていくその金額、この足切りの額が設けられるようでありますが、どの程度の金額を考えておられますか。  それから、現金取引へのクーリングオフの適用によって救済をされるトラブルのある取引というものを、どのように想定しておられますか。  それから、これが大事なことなのですけれども第三点は、現金取引にクーリングオフが適用されてくる、そのことによって業者にとってはもしかするとこれは大変なことになるかもしれない。消費者の権利が乱用されるようなことになれば、これは大変なことになるということが新聞に出ていました。そのあたりの業界の不安、訪問販売という取引形態そのものが不安定になっていくのではないかという不安、懸念、これをどのように受けとめておられますか。  さらに、比較的少額な商品販売を行う健全な業者にとって、消費者のクーリングオフによる商品の回収等のコスト負担の増大、つまり消費者のクーリングオフによって、少額な商品を売っている健全な業者にとっては商品の回収のために逆に大変な負担をすることになって、取引の形態そのものが揺らぐものであるという懸念を持たれるのではないかと思うのです。そのあたりはいかがでしょうか。
  133. 末木凰太郎

    末木政府委員 四点お尋ねでございます。  第一点の、現金取引にクーリングオフを適用する場合のすそ切りの金額をどのぐらいに定めるかということでございます。これは余り少額に定めると、業者に大変過度の負担を負わせることになります。御指摘のようにクーリングオフ、契約が解除されれば代金は返し品物を回収するわけでございますが、そのほか帳簿のつけかえとか、あるいは場合によっては仕入れ先との関係とか、いろいろな問題が出てくる可能性がございます。したがいまして、物が返ってきましてもそういう経費だけで経費倒れになってしまうおそれもありまして、まじめに商売をやっている人に対しては大変な負担になりますので、そういった経費倒れにならないように、余り少額なものについては配慮する必要があろうかと思います。具体的には、外国の立法例あるいは消費者にどのぐらいの場合までのことを願うかという両面を考えまして、各国の例を見ますと大体五千円ないし一万円の範囲で線を引くものが多いようでございますので、大体この辺を見当にこれから詰めてみたいと思います。  それから、今度クーリングオフを現金取引に適用することになると、具体的にどういったものが救済されるのかということでございますが、これは今逆に、現金取引であるとクーリングオフされないということなものですからしゃにむに現金を取り立てるというケースがありまして、極端な場合には消費者と一緒に銀行まで行ってお金を払わせてしまうとか、あるいはセールスマンが、私が自分のポケットマネーで立てかえますというような形をとって現金取引にしたような形を構成してしまうとか、形態としてはそういうものがあります。これが、そんなことをしてもしょせんクーリングオフの規定の適用に関しては同じことであるということになれば、そういうむだなあるいはむちゃな不当なことはなくなると思います。それから、金額的にはどの程度のものが今あるかということでございますが、これは参考人の公述のときにも消費者関係の方からお話が出ましたけれども、いろいろなものがあるようでございます。比較的ポピュラーな例としてよく挙げられるのが、消火器などがよく現金取引の対象にされるようでございますが、こういったものが救われる例でございます。  それから第三の問題点で、クーリングオフ規定が一方において訪問販売に対して不当に抑圧的な、きつ過ぎる規制になりはしないかという点でございます。これは第一点で御説明したことに尽きるかと思いますけれども、要するにバランスのとれたところですそ切りをすることによりまして、極端な場合ですが、千円の品物を売ってクーリングオフされて、行ったり来たりしているうちに千円のコストがかかるとかいうことにならないように、合理的な線を引きたいと思います。  第四は、比較的少額の商品を行うものの負担増についてどう考えるか。これも基本的に同じことだと思いますけれども、要は、余り大きな金額で定めますと消費者保護に欠けますし、余り低いところまでかけますと取引の安定を害しまじめな業者の過大なコスト負担をもたらしますので、両方にらんで妥当なすそ切りをしたいと思っております。
  134. 青山丘

    ○青山委員 時間が来ましたので、まだ残余の質問がありますけれどもやめますが、消費経済活動が活発になってきますと、特に悪質な業者についてはもう抗弁の余地もなく取り締まりの対象になってきますし、断固として取り締まっていただきたい。いただきたいが、公正な商取引の中においても、事業を進めていきたい、成績を上げたいということから若干の行き過ぎも恐らく出てくるかもしれない。そういう一面と、消費者の利益をきちっと守っていくというなかなか難しい二つの命題を同時に満たしていくということは、行政上なかなか困難であることは私も率直に評価しております。評価しておりますが、しかし、国民生活がさらに高度化していく中で消費生活を確立していくためにも、訪問販売法が正当はきちっと運用されていきますように当局の特段の御努力をお願いいたしまして、質問を終わります。
  135. 尾身幸次

    ○尾身委員長代理 藤原ひろ子君。
  136. 藤原ひろ子

    ○藤原(ひ)委員 悪質な訪問販売業者が雨後のタケノコのように生まれて、かたり商法、ホームパーティー商法などなど、新手の悪徳商法は一層巧妙で複雑です。その被害は、不動産から下着やサービスや会員権などの権利にまで及んでおります。悪質セールスマンは、チョウのように舞い込み、ハチのように刺し、トラのように契約をとれと徹底的な訓練を受けた上で、アタックしやすい被害者層を選定し、事前調査を十二分に行い、相手の心に潜む不安感を言葉巧みに増幅させ、多彩な手口を使って攻撃をかけてきております。霊感商法も、世論の非難を受けると、今度は宗教法人天地正教に衣がえして布教活動を装って展開し、まことに悪質化しております。一方、だまされる消費者の側はどうかといいますと、まるで裸同然の無防備状態です。そこへある日突然に魔術にかけられ、信じ込まされたあげくの果て被害者になっているわけです。訪問販売研究会の六十二年十一月の報告でも「消費者の主体的意思形成がなされずに契約が締結されるおそれがある」と書かれているほどです。  この悪徳商法への規制強化を求める運動が、日本弁護士会や国民生活センターあるいは消費生活センターの相談員の方々、消費者団体連絡協議会などを中心に高まり、十二年ぶりは政府は訪問販売法改正案提出したわけです。政府の改正案は一定の改善策を盛り込んでおりますけれども、今日の被害の実態に照らしてみまして、消費者被害の防止と救済、この両面でなお不十分と私は考えますので、質問をさせていただきたいと思います。  初めに、霊感商法についてです。  まず、経済企画庁はお尋ねをいたします。霊感商法に関する被害金額、被害件数、一件当たりの最高金額について、八四年度から直近までの年度別及び総合計の数字をお尋ねいたします。  もう一つ、被害は最近も引き続き発生していると思いますが、その動向や特徴をお示しいただきたいと思います。
  137. 吉田博

    吉田説明員 まず最初に、件数及び金額でございますが、件数を先に申し上げますと、五十九年度二千八百七十六件、それから六十年度が三千二百九十九件、六十一年度が五千三百五十七件、それから六十二年度、これは一月末までの集計でございますが二千九百七十二件となっております。合計をいたしますと一万四千五百四件でございます。それから被害金額でございますが、五十九年度が十八億五千九百万円、六十年度が二十億六千八百万円、六十一年度が六十五億、それから六十二年度が、これも一月末までの集計でございますが四十五億八千五百万円、合計いたしますと百五十億一千二百万円となってきております。一件当たりの被害の最高金額でございますが、これは六十一年度に出ておりまして七千九百八十万円、こういうふうになっております。  それから二点目の最近の動向でございますが、まず被害件数は昨年の四月をピークは減少の傾向にございますが、その中で特徴的なのは、介在する商品が和服であるとか絵画であるとか毛皮であるというふうに、非常に多様化しているということが言えようかと思います。事例を一つ申し上げてみますと、和服の例でございますが、高校の同級生から和服の展示会に誘われて、買えば幸福になるというふうに説得され、断り切れずに契約をした。解約通知を出したところ、誘った友達から解約すると不幸になる、こういうことを言われた、こういう例がございます。  以上でございます。
  138. 藤原ひろ子

    ○藤原(ひ)委員 それではここに、昨年七月の三十日ですが、通産省からいただきました霊感商法に対して通産省がとられた対応の経過報告がございます。「昭和六十一年十二月二十三日及び昭和六十二年三月二十五日の消費者トラブル連絡協議会において、当省が受け付けた霊感商法に係る相談事例の手口を公表し、参加十一団体に対しその構成員等は対する注意喚起を要請。」「三月十九日社団法人日本訪問販売協会幹部に対し、同協会の会員であり本商法に係る二社に対し倫理綱領違反がないかどうか、ある場合には同協会として所要の処分を行うよう、特別の指示を実施。なお、両社は四月三十日、同協会を自主的に退会した。」「両社に対し、昭和六十二年四月六日以降三回にわたり、事情聴取及び訪問販売法の遵守について指導を実施。」というふうに書いてございます。以上は、通産省からいただいたその資料の一部を原文のまま紹介したものです。  また、北畠消費経済課長さんが昨年の五月二十一日の物価問題特別委員会で、今の件についてこう答弁しておられる。ここに議事録もございますけれども「この会社訪問販売法の関係で問題があるのではないかという可能性がございますので、」云々とあって、「事情聴取をいたしました。その結果、」「訪問販売法の関係におきまして、例えばドアをあけたときに印鑑なりつぼなり多宝塔なり売りますよということを相手の方に告げていないというようなあたりはやはりちょっと度が過ぎるのではないかな、」「そのあたりを含めまして法律関係それから長時間の説得等が問題あるのではないかということで厳重指導をしておる」というふうに答弁をされたわけですね。紹介をした中の二社といいますのは、株式会社ハッピーワールド及び株式会社「世界のしあわせ」、「この会社」とありますのは株式会社「世界のしあわせ」のことであるということでありますが、以上の事実経過を述べたわけですが、この内容に間違いはございませんでしょうか。
  139. 末木凰太郎

    末木政府委員 私どもの差し上げました資料からお読み上げになったわけでございますから、用語は御指摘のとおりだと思いますけれども、まず六十一年の十二月二十三日及び六十二年三月二十五日に関係十一団体に対しまして情報を流し云々のところはそのとおりでございまして、その結果、その十一団体に入っております日本消費者協会等は、消費者向けの啓発資料をつくりまして、消費者にこういった手口にひっかからないようにというPRをしてくださっております。  それから、六十二年三月十九日に日本訪問販売協会に対しまして、このいわゆる霊感商法の二社につきまして指示をしたことも事実でございまして、その結果、結局いろいろございましたが、この二社は協会を退会したというのも事実でございます。  第三に、二つの会社を呼びまして訪販法の観点から指導を行ったこともそのとおりでございます。ただ、私どもはこの二社の名前につきましては公式に発表しておりませんので、その点につきましては、その二社の名前がどうであったかということについてはコメントを控えさせていただきますが、今私が繰り返したところが事実でございます。
  140. 藤原ひろ子

    ○藤原(ひ)委員 ここに、通産省が今の消費者トラブル連絡協議会で公表されました霊感商法にかかわる相談事例、いろいろ手口も書いてあるんですが、それがあります。その内容を紹介をいたしますと、「昭和六十一年十一月分契約トラブル事例 霊感商法」というところですが「(1)「手相をみてあげる。」、「姓名判断をしてあげる。」等と言って購入者に近づく印鑑の訪問販売」「(ロ)問題点」として「①悪質なセールストーク ②販売目的を隠した勧誘 (ハ)参考 ①印鑑の訪問販売では職場を訪問し個々人に販売する形態、電話勧誘や友人の紹介でホテル、マンション、集会場で販売する形態がある。 ②トラブルの内容には「もう彫ってしまったのでクーリングオフできない。」、「代金は商品代金ではなく祈祷料である。」といったものもある。」それから二番目に「会場に呼び出して行う多宝塔の訪問販売」として「(イ)販売の手口」ケース一は省略をいたしますが、「(ロ)問題点」で「販売目的を隠した勧誘」ということ。  「昭和六十二年二月分契約トラブル事例 霊感商法」でも「(イ)販売の手口」として、セールスマンに「「家系図を供養してあげる。」と連れ出され、祈祷師に会わされた。そこで祈祷師から「あなたの先祖は六十万円の壺を買えと言っている。」と言われたので、言われるまま現金で購入することとした。」「いつも講話又はビデオ放映の後「マスコミに惑わされずに信じなさい。」と言うので恐ろしくなった。」この例を挙げて「(ロ)問題点」として「販売目的を隠ぺいして接近し、脅迫的な言動を用いて不当に販売する。」と指摘をしております。その他、釈迦塔四百四十万円とか印鑑セット、多宝塔一千三百四十万円の被害事例も公表しておられます。  通産省は、霊感商法についてこうした被害の事例を把握して問題点を分析をしながら、訪問販売をめぐる消費者トラブル発生の未然防止を図るためとして八五年の五月に発足をさせました訪問販売トラブル情報提供制度、これにおいて霊感商法を一度も公表しておられない、こういうことになっているわけですが、これはいかなるものでしょうか。
  141. 末木凰太郎

    末木政府委員 御指摘の訪問販売トラブル情報提供制度でございますが、これは、通産省に寄せられました訪問販売に関する消費者相談のうち一定の態様のものにつきまして、さらにそれが一定の態様に該当するような手口であってかつ同一の販売業者についてある程度同種の多数の案件が寄せられた場合に、この制度を適用するということにいたしております。  ところが、このいわゆる霊感商法につきましては、手口の点についてはこのトラブル情報提供制度の項目に該当いたしたのですが、どういうわけか通産省に寄せられました件数が比較的少のうございました。そこで私どもは、そのルールに当てはめますとずばりこれに該当するだけの件数がなかったわけでございまして、したがいまして、この情報提供制度にのせた発表はしなかったわけでございますけれども、もう一つ、機動的に運用しておりました先ほど消費者トラブル連絡協議会におきまして、こちらの方は毎月定例的な会合という形でやっておりますものですから、この場におきまして手口を紹介をしまして、その結果、消費者関係団体が傘下のところに、あるいは関係先に広くPRをしてくださった。我々ももちろんいろいろな機会をとらえてその手口についての情報を流したというわけでございまして、一応制度をきちっとつくっておりますものですから、それはそれとして、のらないものは仕方なかったと思うのでございます。もちろん、その後数がふえていれば該当することもあり得たわけでございますが、その数以下でございましたけれども、別の使える制度を使って、できるだけの消費者への情報提供を行ったということでございます。     〔尾身委員長代理退席、委員長着席〕
  142. 藤原ひろ子

    ○藤原(ひ)委員 いろいろおっしゃるわけですけれども、まことに消極的だ、とんでもない認識だというふうに思うのですね。そういう姿勢というのは、後に述べますけれども、非常に重大な問題も醸し出してきている。  先ほど答弁していただきましたように、経企庁が把握されているだけでも、被害額はこれまでに百五十億円に達しているわけですね。最近も引き続き行われているということで、商品も多様化しているとさっき御答弁にもあったわけなんです。こういう状態だということをきちっと認識していただきたい。それからまた、日本弁護士連合会の集計結果によります霊感商法の被害は、一九八〇年から八七年四月までが被害者は約一万五千人で被害額は三百十七億円、昨年四月以降でも四百四十件、総額としますと十二億円となっているわけですね。警察庁も、霊感商法というのは各種の悪質商法の中でも最も悪質なものだ、こう言って、この厳正な取り締まりを行っていくと答弁しておられるわけです。現に、詐欺罪であるとか脅迫罪などで検挙もしているのですね。経済企画庁も「御用心。これが霊感商法の手口です。」というような、まだまだ不十分だとは思いますけれども、こういう政府広報もやっておられるという状況ですね。そうすると、御答弁からも、それから今までの経過から見ましても、私は通産省姿勢が一番弱い、悪いんじゃないかと思うのですね。ここが問題だというふうに思います。  日弁連がこの三月にまとめました「霊感商法被害実態とその対策について(その二)」というもの、これは労作の跡があるわけですが、これを読ませていただきますと「世界のしあわせ」が自粛宣言した昨年の四月以降も、先ほど通産省の資料で紹介したのと同様の手法により被害が発生している事例が具体的に紹介をされております。ぜひ一遍お読みいただきたいと思うのですけれどもね。消費者が訪問を受けた後に、連れていかれて販売の舞台として使われる道場は、宗教団体霊石愛好会から宗教法人霊石愛好会になり、それがことしの二月からは宗教法人天地正数に衣がえしているのですね。ですから、その数が少ないですの何のと言っているのは、ここでごまかされているわけですり私はここに、東京の大田道場とか兵庫県の西宮道場のチラシを持ってまいりました。こういうものですね。これもいろいろ出しているのですけれども、これは住所も電話番号も、地図まで全く一緒なんですね、名前が違うだけで。ただ、世論の批判をかわし消費者の目を欺く、そのために衣がえをしただけであるわけですね。  しかも、霊感商法の手法は一層巧妙かつ悪質化しております。ここに、昨年の十一月からことしの二月にかけて被害に遭った方のビデオセンターの受講カード、こういうもの、それと、その道場に通うための天地正数の会員証というのを持ってきております。このカードは「天聞行録」こういうふうに書いてありますけれども、これには、通産省の資料でいいますセールスマンの氏名が紹介者というふうに記されているわけですね。入っております。この方は、千葉県の船橋市の例ですけれども、昨年の十一月に十四万円の印鑑の三本セットを買わされて、この段階で一幸商事という住所入りの領収証を渡された、一たん販売はこれで終了したという形式をとって、その後ビデオセンターで冷静になるのを妨げるような精神状態に持っていかれ、最終的には道場で、先生と紹介者という名のセールスマンの二人がかりで、先祖供養のために霊界解放しなければならない、それをしないと子供は離れ夫婦はばらばらになる。霊界解放のためには、一、命を投げ出して出家するか、二、浄財を出すかと迫り、七十万円献金させられた、こう言っているわけですね。ほかの例で見ますと、六百万円献金させられて、弥勒仏が授かりますということで、領収証を発行せず、売買ではない装いを凝らしている例もあるわけですね。  通産省、お聞きのとおりですよ。「世界のしあわせ」から名前を変えました株式会社ユニバーサル東京とか株式会社ハッピーワールドなどに対して、直ちに再び事情聴取して厳重な指導を行うべきだ。上がってくるのが数が少ないとか、そんなのんきなことを言っているときじゃない。同時にまた、この改正案が施行される際には、早速新設された行政監督規定を発動して、報告を聴収し、立入検査を実施すべきだ、こう思うのですが、いかがでしょうか。
  143. 末木凰太郎

    末木政府委員 私どもも、数は少ないとは申しましても、寄せられた件については、十分慎重にこれをウォッチしております。  ただ、先生おっしゃいますように、ただ単に物を売るということだけではなくて、精神的ないろいろな要素を織り込んだ形でやっている手口のようでございますので、したがいまして、物の売買ということですと消費者の方も、これは通産省に相談しようか、通産局に相談しようかというふうに考えることが多いのだろうと思いますけれども、恐らくそういった物の売買ということでないケースというふうにお考えになる結果、私どもに相談に見えるケースが少ないのかと思いますが、しかし物の売買が絡んでいることも間違いないわけでございますし、従来はぴしっとできなかった、例えば立入検査とか報告徴収という規定もこの改正法のもとではございますので、個別の案件につきましてこの委員会の席で具体的な措置の予告を申し上げるようなことは控えさしていただきますけれども、厳正な考え方で見ておりますので、法律違反の疑いがあり、必要があると考えました場合には、断固とした法の運用を図ってまいります。
  144. 藤原ひろ子

    ○藤原(ひ)委員 先ほどから経過で述べましたように、通産省もこれは大変だと指導を厳しくされて、二社は退会したわけですね。しかし、このごろ大変なまぬるいという状況がある。それで、今度行政監督規定を新設した改正案なんですから、ここのところ、いろいろ誤解を招いたり言いわけをしたりせずに、本当に厳しくやっていただきたい。  皆さんが仕事をしやすいように、消費者被害の救済がきちんとできるように、私どもの修正案ではどうしたかといいますと、親事業者の共同責任をはっきりと設けたわけですね。通産省は、先ほども申したように、訪問販売法の関係で問題があるということでこの二社を呼んで厳重指導してきたわけですから、これを受けて、訪問販売と言って霊感商法のようなことをやっているんだ、こういう認識があるからこそ二社は自粛宣言を発せざるを得なかったわけでしょう。  それからまた、ハッピーワールドとか「世界のしあわせ」社というのは昨年の四月三十日に、通産省の指導も受けて社団法人日本訪問販売協会を退会している。これ自体、野に放たれたトラというようなことにならないかという問題もあるわけですが、この二社がそれまで訪問販売協会に加盟していたこと自体、ここに訪問販売協会の定款というのを持ってきておりますが、第三条の目的や第七条の会員の資格に照らしてみますと、この二社は訪問販売業者であるということになるわけですね。  大臣にこの件で最後にお尋ねしたいのですが、あの豊田商事の事件、一九八一年に豊田商事が設立されてから八五年までの四年間で、被害者の会に届けられた被害届け出の数は二万七千七百六十一件、被害金額は一千百十五億円です。大変な被害に拡大をしてきたわけです。その間、私ども共産党初め、何度となく行政の規制を求めたわけですけれども通産省や警察などの取り組みがおくれたためにあれほどまで被害が拡大をした、これはもう事実としてあるわけですね。霊感商法に対しましては、この豊田商事事件の二の舞を絶対にしてはならないと私は強く思うわけです。大臣、こうした立場で、通産省としても霊感商法に対して今後被害が拡大しないように、今具体的な会社の名前は言いにくいとおっしゃいましたけれども、あえて言いますが、ハッピーワールド社であるとかユニバーサル東京であるとか、こういうところに対して厳正な態度で指導を行っていただきたい。決意をお聞かせいただきたいと思います。
  145. 田村元

    田村国務大臣 霊感商法というもの、これは私も非常に批判を持っております。実は、しばらく前でありますが、私の家にも印鑑を売りに来まして、その印鑑を五十万か百万かで買わないとおまえのところの人生がどうのこうのというようなことを言って来たことがありますが、確かに目に余るものがございます。  この点について、今後とも消費者の啓発、それから消費者相談業務の充実等に努めますとともに、とりわけこういう問題は、通産省だけではどうにもしようがないと思うのです。現に、通産省への被害通告というのは割合に少ないのです。でございますから、警察庁を初めとして法務省も関係あるでしょうし、関係省庁との密接な連携によりまして、消費者保護に万遺漏なきように適切に対処する所存でございます。
  146. 藤原ひろ子

    ○藤原(ひ)委員 ぜひお願いしたいのですが、大臣、現在のところ、関係省庁との密接な連携というのは、よそもやってくれよということで、積極的じゃなしに後ずさりしているという状況があるわけですね。密接な連携のもとに、通産省は積極的にやっていただきたい。なぜかと申しますと、霊感商法は、ハッピーワールドやかつての「世界のしあわせ」を表の元締めとして、背後には何があるかというと統一協会とか勝共連合、これが一体となって組織的に行っている悪徳商法であるわけですね。昨年の六月には遠藤法務大臣も、その根を絶やすような方途もこれから検討していかねばならないと、強くこの意図を持って答弁しておられるわけです。法務省がこう言うておられるのですから、通産省にはより一層お願いをしたいと言っているわけです。私どももこの霊感商法の被害根絶のために、今後とも全力で取り組んでいきたいと決意を表明したいというふうに思います。  それでは次に、訪問販売法政府案に対しまして二、三お尋ねをしたいと思います。  私が政府案に対して不十分だと考えます最大の問題点は、指定商品制度が維持され、被害の後追い的欠陥が残されていることです。現行法では、指定商品として四十三の物品が政令の別表で定められております。しかしこの表で見ただけでは、指定商品であるのかそうでないのか判別しにくいという例が余りに多い。通産省は解釈を求めて問い合わせている間に、クーリングオフの期間も過ぎて、被害救済できない例が多発している。現に、指定商品ではない墓石とか庭石、水道の蛇口などの被害も報告されている。先ほどからの御答弁を聞いておりますと、墓石、庭石、水道の蛇口、シャワー、こういうものは検討して指定の追加の考えがある、工夫を凝らして指定しアンバランスがないようにしたいとか、あるいは電話のリースなんかも役務の対象候補になり得るんだ、こういうようなことを朝からお聞きしてきたわけですけれども、しかしこれだって結局は後追いじゃありませんか。指定します、政省令に書きます、こう言われたって、結局後追いをしてきているということですね。国民生活センターや消費生活センターの現場で直接相談に当たっている人たちが、指定商品なのかどうかと判別を通産省に問い合わせ、返事をもらうというその間にクーリングオフの期間は済んで、その間にも被害者が出ている。非常に心を痛めておられるし、これでは間尺に合わぬのだというふうに強い意見を持っておられるわけですね。  そういう中で、今後対象となる指定役務というのは、これは入ったということはいいのですけれども、それが定型的ではありません。それだけに、一層指定の網をくぐるという悪徳商法の出現が懸念をされるわけですね。こういう点に立って私どもは、指定制度というのは撤廃せにゃいかぬ、そしてすべての商品や役務を法適用の対象に加えて、被害が多発し社会問題化して初めて追加するというような後追い行政の欠陥は改めるべきだと考えるのですが、いかがでしょうか。
  147. 末木凰太郎

    末木政府委員 先生も実は御質問の中でおっしゃいましたように、現実問題として商品の中で指定されていないために問題が起きているのではないかと思われるものはほとんどない実態でございまして、墓石につきましては日常生活の用に供するもので読めるかどうか、やや疑念があったものですから指定をしておりませんけれども、今度日常生活要件が外れれば、そしてかつ被害が相当数あるおそれがあれば、これはもう指定できることになります。商品については、物の考え方としては確かに指定商品制と除外商品制と大きな差でございますけれども、私どもは結果的には大体カバーしてしまったというふうに認識しております。  そしてまた、法の対象になるのかならないのかという点について明確でない点が残るという、これは確かにそういう点があるわけでございますけれども、いずれにしても、指定制を外した場合も何らかの除外のものは書かざるを得ません。今度は除外商品制になった場合でも、同じように除外は入るのか除外されていないのかという問題は、境界線では間々起きやすい問題でございますけれども、そういったどちらが便利かということを、哲学論争と言ってはなんですが、原則論を繰り返す前に、既に商品についてはおおむねカバーし終えているという現実の認識でございます。  役務につきましては、今度は新しく導入される制度でございますから、逆にあらゆる役務ということでカバーすれば、これは確かに極めて広範に法の適用対象が及ぶことになりますけれども、逆に役務は余りにも多種多様でございますので、また一方私どもは、今度の法律で相当思い切った規定を入れているつもりでございます。したがいまして、これが実体経済にどういう影響を及ぼすのかということをよく見きわめつつ考えなければいけない面も片方にございます。そこで、後追いにならないようにということを常に励ましといいますか自戒をしつつ、指定制でできるだけのことをやっていくということで御了解いただきたいと思います。
  148. 藤原ひろ子

    ○藤原(ひ)委員 なかなか熱心に固執をされるということは、ちょっと疑問で理解ができないと思うのですけれども、昭和五十八年十二月九日の国民生活審議会消費者政策部会、これを読ませていただきました。「a、訪問販売法は、本来販売方法の特殊性に着目して消費者保護を図ろうとする法律であるから、取引対象が何であるかは関係がない」、bは「すべての商品、役務の取引を規制対象とする原則を立てた上で、一定の場合については、一定の規定の適用を除外するという規定の仕方に改めるべきである。」と報告をしているのですね。国民生活審議会消費者政策部会というのは、総理大臣または関係大臣の諮問機関である。政府の諮問を受けて、部会長の竹内昭夫東大教授以下皆さんの意見を反映したものが部会報告ということなのではないでしょうか。私は、いろいろと言い逃れは許されないなというふうに思うということを強く述べておきたいと思います。  次に、ターミナル駅周辺や若者が集まる繁華街で声をかけられて商品などの勧誘を受けるというキャッチセールス、それから電話などで呼び出されて喫茶店や営業所で勧誘を受けるというアポイントメントセールス、これについてのトラブルが多発していることでお聞きをしたいと思います。  国民生活センター発行の生活行政情報ナンバー三五〇では、警察庁が昨年の十二月に調べた昭和六十二年度における生活経済事犯の記事が掲載をされているのですが、これによりますと、無店舗販売に係わる被害者状況では、キャッチセールス、アポイントメントセールスの被害は全体の一五・七%を超えております。被害額でも全体の一割近くになっている。しかも重大なのは、そのほとんどが社会的経験の少ない青年や学生層、ここに集中しているということですね。胸が痛みます。路上で突然親しげに話しかけられて、知り合いの人かと思ってびっくりして立ちどまったらアンケートを求められる。海外旅行に関する簡単なアンケート。その後、もっとゆっくり話を聞かせてとかうまいことを言われて、営業所に連れていかれて英会話の教材を勧誘されたり、そのときはアンケートだけをとって住所、氏名を聞き出して、後でアンケートのお礼や、海外旅行の権利が当たりましたよ、あなた、おめでとうなどと電話で呼び出して勧誘する、そして商品を売る。  目的を隠して近づいて、需要のない人を外部とは遮断された閉鎖的な場所に連れ込んで、アンケートなどを使ったセールストークで買うことを迫る。こういうやり方はトラブルを起こしやすいと考えられ、キャッチセールスを禁止している業界もあるんですね。また産構審の答申でも、キャッチセールス、アポイントメントセールスを訪問販売の定義に加えることが適当である、こう言っておりますが、今改正案でなぜキャッチセールスに加えてアポイントメントセールスを法文に明記されないのか、いかがでしょうか。
  149. 末木凰太郎

    末木政府委員 私どもは、キャッチセールスもアポイントメントセールスも訪問販売法によってきちんと規制をしようと思っております。法文にキャッチセールスが書いてあってアポイントメントセールスが書いてないのは、これらをきちっと押さえたいがためでございまして、アポイントメントセールスの方はなかなか書き方が難しい。そこで、法律で一たんかちっと書いてしまいますと、そこから少しずれた形で逃げるというようなことが考えられやすい態様だということが勉強の過程でわかったものですから、こちらの方はある程度法律よりは柔軟に対応できるような形の方が規制の実効が上がるのではないかということで政令に譲ったわけでございまして、政令に譲っておいてやらないというつもりで法文に書かないことにしたということではないわけでございます。
  150. 藤原ひろ子

    ○藤原(ひ)委員 明快に答えていただきましたが、政令や省令で書くということですからきちっと明記をしていただきたい。今日の被害の実態から見て、消費者救済のためには絶対に重要だ。私も強く要請をいたしたいと思います。  その次ですが、クーリングオフ制度ですね。この充実ですが、業者に対して、政府改正案が第四条の四で義務づける書面に加えて、クーリングオフ権の存在を口頭で告知する義務を負わせるというのはどうか。  二つ目には、書面だけではなく口頭による通知でも無条件解約できることとし、加えてすべての業者に対し、クーリングオフを通知するための受取人負担の書留はがきをお客さんに手渡す、これを義務づけるようにしてはどうかと提案をしたいと思うのです。これは悪徳業者へのクーリングオフをさらに実効あるものにして、消費者救済のために具体的にこういうことをやるということは大変必要だと思いますが、いかがでしょうか。
  151. 末木凰太郎

    末木政府委員 クーリングオフについては、後日の証拠とかいうことを考えますと書面でやらせるのがいいと思います。現実にクーリングオフにかかわるいろいろなトラブルも、そのときの事実がどうであったかということが不明確なことによるところが多いわけでございまして、そういう意味で書面できちっと通告させることにしたわけであります。  それから、はがきの添付のアイデアでございますが、こういった方法ももちろん私どもも議論はいたしました。しかし、クーリングオフという制度は、我々の社会のよって立っております近代市民法の体系からすれば随分思い切った制度でございまして、ある意味では、理屈はいろいろあるだろうけれどもそこは議論はその程度にしておいて、とにかくああだこうだ言わないで解約できるようにしようというふうに、非常に大ざっぱに言えば割り切った制度でございまして、そのために学界でもクーリングオフ制度の法的性格というのは三つも四つもあって分かれておりまして、定説がまだないような状態でございます。それだけの思い切った制度を民法に対する例外で導入したわけでございますから、一方において消費者の方も、やはりある程度その制度を自分たちで積極的に使って自分たちを守るんだという姿勢をとっていただきたいということで、買ってみた、何となく気が変わっちゃったからこのはがきをぽんと入れようというようなところまでやるのはいかがなものかということで、いろいろな法的な利益を比較考量した結果の選択でございます。
  152. 藤原ひろ子

    ○藤原(ひ)委員 先ほど申しました総理大臣または関係大臣の諮問機関であります国民生活審議会消費者政策部会、この報告の二十九ページにはこう書いてあります。「消費者が無条件解約制度を十分に活用できるよう検討を行うべきである。特に、解約通知をするための印刷ずみ通知書の交付を強制することは、消費者の無条件解約権行使を容易にするという意味で消費者保護に資するところが大きいのみならず、販売業者としても商品及び売り方について十分自信を持っていることを示すものとして意味がある。」こういうふうに記されているのですね。  それで、私ども改正案に対する幾つかの修正案を出しますので、そういう中身も含んでいろいろ述べさせていただいて、時間がないので全部言えないのですけれども、せっかく御論議をしたわけですが、政府の側は、自分が出したものは金科玉条で最高だというような感じがするんですね。自分の言動に確信を持つということは大変いいことだと私は思うのですね。しかしながら、やはり人の話もよく聞いて、検討に値するものがあれば取り入れるという幅が要るんじゃないかというふうに思うのですね。書留はがきを受取人負担ということで出すなど、みんなにこういうふうに考えているがどうでしょうかねと聞きますと、それは大変ユニークですね、国民はそう言われるのですね。政府は頑として、いや、わしの方がいいと頑張っているという感じが大変するのですが、検討してみてはどうかというふうに思うのです。ぜひお願いをしたいと思います。  時間がありませんので、最後に田村通産大臣にお尋ねしたいのですが、ことしは消費者保護基本法が制定されまして二十年目という年に当たります。この年にふさわしく、消費者被害の防止、救済両面で実効性のある訪問販売法改正を実現するということは大変大切なことだ。あわせて大事なことは、法を運用する体制、消費者相談、消費者保護体制を抜本的に強めることが大変大切ではないかというふうに思うのですね。この相談員さんたちはこう言っておられるのです。せめて安定した雇用関係のもとで消費者行政の充実、前進に寄与したい、こういう声を出しておられます。  そういう中で、私調べてみようと思って資料をいただいたんですが、びっくりいたしました。それは消費者相談員の数ですね。通産省では、沖縄を含めて全国の通産局におられる方を含めてたったの二十一人なんですね。経済企画庁の所管では、国民生活センターと各地方自治体の消費生活センターを合わせて千十八名です。ところがこの千十八名というのも、正規の職員は二百十九名、けたが違うのと違うでしょうか。二百十九名で、その他の七百九十九名は一週間に二日とか三日とか勤務されている非常勤の方です。しかもこの方たちは、私が京都でお聞きしたところでは日給は五千数百円で、まさに献身的に消費者相談に取り組まれているという状態です。また、こうした体制ですから、通産省さんは訪問販売に関する相談件数が年間千五百九十七件である、通信販売に関するものが二百十七件だということで平然としておられるんです。消費者被害に対する認識がまるで不十分なわけですね。今の訪問販売、通信販売、マルチなど特殊販売に関する国民生活センターや消費生活センターの相談件数が年間十四万二千件を上回っているというのでは、認識が全然変わってくるわけです。  そういう中で、大臣に二つお尋ねしたいわけですが、一つは、訪問販売法等の運用に当たっては通産省として国民生活センターや消費生活センターの皆さんの活動や相談内容等をもっと重視して、それを法の運用に生かすように連携を強めること。二つ目には、法改正によって実現する行政監督規定などが消費者の期待にこたえて実際に機能するように、消費者相談員の増員、相談員の待遇改善、これを含めた消費者保護体制を抜本的に強めること。この二つについて、特に努力をお願いをしたいと思います。通産大臣として、また大変有力な実力者である国務大臣の一人として、決意をお聞かせいただきたい。それで質問を終わらせていただきたいと思います。
  153. 田村元

    田村国務大臣 大変お褒めいただきましたが、非力である自分を恥じております。  消費者相談業務は、通産省消費者保護行政の重要な施策の一つでございます。したがって、本省及び各通産局の消費者相談室はおきまして、複雑化する消費者トラブルの迅速かつ効果的な解決に努めておりまして、今後ともその体制の強化を図ってまいる所存でございます。  また、現在通産省に寄せられております消費者相談の約三割は消費生活センターからのものでございまして、改正法の施行に当たりましては、今後とも国民生活センター及び各地の消費生活センターとの緊密な情報交換、また連携を図ることによりまして、消費者トラブル相談の円滑化等に努めてまいる所存でございます。
  154. 藤原ひろ子

    ○藤原(ひ)委員 終わります。
  155. 渡辺秀央

    渡辺委員長 残余の質疑は明日に譲ることといたします。      ────◇─────
  156. 渡辺秀央

    渡辺委員長 次に、内閣提出特定物質規制等によるオゾン層保護に関する法律案を議題といたします。  これより趣旨の説明を聴取いたします。田村通商産業大臣。     ─────────────  特定物質規制等によるオゾン層保護に関する法律案     〔本号末尾に掲載〕     ─────────────
  157. 田村元

    田村国務大臣 特定物質規制等によるオゾン層保護に関する法律案につきまして、その提案理由及び要旨を御説明申し上げます。  オゾン層保護問題につきましては、昭和六十年三月、オゾン層保護のためのウィーン条約が、さらに、本条約に基づいて、昨年九月特定のフロン及び特定のハロンの生産量及び消費量の規制限度等を具体的に定めたオゾン層を破壊する物質に関するモントリオール議定書が採択されたところであります。  条約及び議定書につきましては、今国会におきまして、別途御審議いただいているところでありますが、我が国といたしましては、これら条約及び議定書を的確かつ円滑に実施するために、特定のフロン及び特定のハロンの製造の規制並びに排出の抑制及び使用の合理化に関する措置等を講じ、もって人の健康及び生活環境の保全に資することが必要であると考えられます。  このような要請に対応するため、今般、本法律案を提案した次第であります。  次に、この法律案の要旨を御説明申し上げます。  まず、環境庁長官及び通商産業大臣は、議定書に基づき我が国が遵守しなければならない特定のフロン及び特定のハロンの生産量及び消費量の基準限度、オゾン層保護についての施策の実施に関する重要な事項等を定めて公表することとしております。  第二に、特定のフロンまたは特定のハロンを製造しようとする者は、毎年、製造しようとする数量について、通商産業大臣の許可を受けなければならないことといたしております。  第三に、特定のフロンまたは特定のハロンを輸入しようとする者は、外国為替及び外国貿易管理法の規定によりまして、輸入の承認を受ける義務を課せられることとしております。  第四に、通商産業大臣は、我が国の特定のフロンまたは特定のハロンの生産量及び消費量が議定書に基づき我が国が遵守しなければならない特定のフロンまたは特定のハロンの生産量及び消費量の限度を超えることとならないように、製造の許可、輸入の承認等に関する処分を行うこととしております。  第五に、環境庁長官及び通商産業大臣は、特定のフロン及び特定のハロンの排出の抑制及び使用の合理化を図るための指針を定め、これを公表し、主務大臣は、当該指針に即して必要な指導及び助言を行うことができることとしております。  第六に、その他国の援助、観測及び監視、報告徴収、立入検査等につきまして所要の措置を講ずることといたしております。  以上が、この法律案の提案理由及びその要旨であります。  何とぞ慎重御審議の上、御賛同くださいますようお願い申し上げます。
  158. 渡辺秀央

    渡辺委員長 これにて趣旨の説明は終わりました。  本案に対する質疑は明日に譲ることといたします。  次回は、明二十日水曜日午前九時五十分理事会、午前十時委員会を開会することとし、本日は、これにて散会いたします。     午後五時二十四分散会