運営者 Bitlet 姉妹サービス
使い方 FAQ このサイトについて | login

1988-04-15 第112回国会 衆議院 商工委員会 第8号 公式Web版

  1. 会議録情報

    昭和六十三年四月十五日(金曜日)     午前十時一分開議  出席委員    委員長 渡辺 秀央君    理事 甘利  明君 理事 尾身 幸次君    理事 奥田 幹生君 理事 田原  隆君    理事 与謝野 馨君 理事 奥野 一雄君    理事 二見 伸明君 理事 青山  丘君       麻生 太郎君    石渡 照久君       小川  元君    古賀 正浩君       佐藤 信二君    島村 宜伸君       中川 秀直君    中山 太郎君       額賀福志郎君    福島 譲二君       穂積 良行君    森   清君       山崎  拓君    緒方 克陽君       上坂  昇君    関山 信之君       水田  稔君    石田幸四郎君       工藤  晃君    藤原ひろ子君  出席政府委員         通商産業大臣官         房審議官    末木凰太郎君         通商産業省産業         政策局長    杉山  弘君  委員外出席者         参  考  人         (名古屋大学法         学部長)    森嶌 昭夫君         参  考  人         (社団法人日本         訪問販売協会副         会長)     小宮山宇一君         参  考  人         (社団法人日本         通信販売協会会         長)      綾  元文君         参  考  人         (日本弁護士連         合会消費者問題         対策委員会委員         長)      兵藤 俊一君         参  考  人         (日本消費生活         コンサルタント         協会会長)   三村 光代君         商工委員会調査         室長      倉田 雅広君     ───────────── 委員の異動 四月十四日  辞任         補欠選任   石渡 照久君     木村 義雄君   海部 俊樹君     近藤 鉄雄君   佐藤 信二君     宮崎 茂一君   中山 太郎君     大野  明君   綿貫 民輔君     古賀 正浩君 同日  辞任         補欠選任   大野  明君     中山 太郎君   木村 義雄君     石渡 照久君   近藤 鉄雄君     海部 俊樹君   宮崎 茂一君     佐藤 信二君 同月十五日  辞任         補欠選任   城地 豊司君     上坂  昇君 同日  辞任         補欠選任   上坂  昇君     城地 豊司君     ───────────── 四月十五日  特定産業構造改善臨時措置法を廃止する法律案内閣提出第五九号)  民間事業者能力活用による特定施設整備促進に関する臨時措置法の一部を改正する法律案内閣提出第六〇号)(予) 同日  民間事業者能力活用による特定施設整備促進に関する臨時措置法の一部を改正する法律案内閣提出第六〇号)(参議院送付) は本委員会に付託された。     ───────────── 本日の会議に付した案件  訪問販売等に関する法律の一部を改正する法律案内閣提出第五七号)  訪問販売等に関する法律の一部を改正する法律案上坂昇君外三名提出衆法第六号)      ────◇─────
  2. 渡辺秀央

    渡辺委員長 これより会議を開きます。  内閣提出訪問販売等に関する法律の一部を改正する法律案及び上坂昇君外三名提出訪問販売等に関する法律の一部を改正する法律案の両案を一括して議題といたします。  本日は、参考人として名古屋大学法学部長森嶌昭夫君、社団法人日本訪問販売協会会長小宮山宇一君、社団法人日本通信販売協会会長綾元文君、日本弁護士連合会消費者問題対策委員会委員長兵藤俊一君、日本消費生活コンサルタント協会会長三村光代君、以上五名の方々の御出席をいただいております。  この際、参考人各位に一言ごあいさつを申し上げます。  本日は、御多用中のところ御出席をいただきまして、まことにありがとうございました。参考人各位におかれましては、ただいま議題となっております両案につきまして、それぞれのお立場から忌憚のない御意見をお述べいただきたいと存じます。どうぞよろしくお願い申し上げます。  次に、議事の順序について申し上げます。  まず、参考人から御意見をそれぞれ十五分程度お述べいただき、次に委員の質疑に対してお答えいただきたいと存じます。  それでは、まず森嶌参考人にお願いいたします。森嶌参考人
  3. 森嶌昭夫

    森嶌参考人 おはようございます。森嶌でございます。  私は、政府案のもととなりました訪問販売等問題研究会報告書の取りまとめに当たりました者でございます。また産業構造審議会答申に基づいて政府案がつくられておりますけれども、その委員としても参画をいたしましたので、その立場及び私個人意見を申し上げたいと思います。  御承知のように、訪問販売通信販売はここ数年の間に大変売上高を伸ばしておりまして、例えば訪問販売の場合には六十一年に二兆二千七百億円の売り上げ通信販売につきましては六十一年で九千七百億円という売り上げを上げております。他方で、このような急激な増大に伴うものと思いますけれども訪問販売にかかわる被害増大をしておりまして、例えば豊田商事のような悪質な被害も見られているわけでありまして、大きな社会問題になっております。政府の機関に対する被害の問い合わせあるいは相談苦情等も、このところふえているというふうに伺っております。  このような訪問販売あるいは通信販売に対してどのような態度評価をするかということでございますけれども一つは、特に訪問販売用意のない家庭の中に入り込んでプライバシーを侵害し、かつ取引の面でも心に用意のないうちに不意打ちをするという面がある。さらに勧誘方法が、密室だということもありまして極めて攻撃的になるということから、本質的に訪問販売というのは望ましくない販売方法であるとして、強い規制をかけて実質的に禁止すべきだという評価の仕方もございます。  これに対して、先ほど述べましたように訪問販売通信販売は現在大きな産業になりつつあるということでございまして、さらにはそのことから雇用の機会も提供しているのではないか。特に産構審委員の中に、訪問販売というのは店舗を構える資力のない若者に対して夢を与える産業であるというふうにおっしゃった方もおられましたけれども、そういう側面がございます。他方、また消費者にとっても利便性があるということから、基本的には訪問販売という販売方法取引一つ方法として適切な方法と認め、ただ先ほど述べましたような特性があることから被害が発生しやすい、その被害をいかに抑えるかという観点から見ていくべきだという評価の仕方もございます。そこで、この後の場合には、規制バランスをとりながら過剰規制を避けて、実質的に悪質な業者を取り締まるというような規制方法をとるべきだというふうに考えることになります。  訪問販売等問題研究会、それから産業構造審議会におきましてもさまざまな考え方がございまして、基本的にはその二つの考え方が対立していたわけでありますけれども、各方面からのヒアリング等を経まして、最終的な考え方としましては大多数をもって後者の考え方、つまり訪問販売というものを認めた上で悪質な業者を取り締まっていくというバランス論の上に立ち、過剰規制を避けて実効的な規制を試みるという考え方報告書答申案がまとめられたわけであります。  そこで、結論としてどういうことが提案されたかと申しますと、まず第一、第二は規制範囲を広げるということでございますが、第一は規制対象を、従来商品だけでありましたものを役務に広げる、サービスに広げるということでございます。しかしながら、すべての商品サービス対象とするということではなくて、指定商品指定役務ということで政府指定したものについて規制をかけていくということでございまして、これは先ほども申しましたように過剰規制を避けるという意味でございます。訪販法対象になるということは、クーリングオフなどの関係もありまして文書交付をしなければならない、あるいは損害賠償についても一定の枠がかかっているというような負担がございますので、訪販法をかける対象は問題のあったものでよいのではないか。そこで、問題のあるものについてこれを指定して規制をしていくという考え方をとるべきだというふうに考えたわけであります。この考え方訪販法に特有のものではありませんで、既に訪販法の前にございました割賦販売法からの考え方を受け継いでいるものであります。  さらに、仮に規制指定制をとらないというように考えましても、結局のところすべての商品役務について規制をかけていくということは、例えば御用聞きとかいろいろございますので無理ですので、適用除外ということで外していかなければならない。指定という形でいくか適用除外でいくことになるかという違いに帰するのではないかと思われますので、むしろ指定については政府において行政が迅速に対応して、問題があれば直ちに指定をしていくという態度をとられる、そういう行政をされれば後追いということにもならないで済むのではないかというような考え方をとったわけでございますが、この点は政府案の二条一項、二項において規定されておりまして、役務に広げております。さらに、政府案では指定権利というのがございますけれども、これは研究会等では、サービスの中に例えばゴルフ場の使用をする権利ども入ると思っていたのですけれども、どうも規定都合上、技術的にサービス提供とそうした権利ゴルフ場等施設の利用の権利というものを分けた方がよいというので、これは技術的に分けられたもののようでございます。訪問販売通信販売とも規制対象役務に広げておりますが、同時にいわゆるマルチ連鎖取引においても役務を取り込み、さらには従来再販売だけであったものをあっせん、委託という行為についても広げるというふうに政府案はしておりまして、これは政府案の十三条、十四条に規定をされております。  それから、規制範囲を広げる第二といたしましては、訪問販売につきまして、従来訪問販売ということですので営業所以外の場所、例えば個人の家に行きまして売りつけるということを対象としておりましたものですから、営業所契約を申し込んだり、契約を締結いたしますと適用除外というふうになっていたわけですが、いわゆるキャッチセールとかアポイントメントセールというような販売方法で電話をかけて営業所に呼び出す、あるいはアポイントをとって営業所に呼び出して契約はそこでさせるというようなことがあるものですから、これについてもその被害を防ぐために訪販法対象にすべきだということで報告書答申提案をしておりまして、これも政府案において二条一項の二号に規定をされております。文言から必ずしもアポイントメントセールが入るかどうか、読んだだけではわかりませんけれども政府のこれは省令でしたかによって明らかにして、アポイントメントセールが入るということのようでございます。  それから第三点としましては、クーリングオフ制度実効性を確保するという点でございまして、従来もクーリングオフ制度はあったわけでありますが、必ずしもクーリングオフが十分に使われていないということから、これをより実効性のあるものにしたいというふうに考えたわけであります。クーリングオフという言葉自身、私は個人的に、こんなところで英語を使って、本来英語などはよくわからない消費者にとってクーリングオフなどという横文字を使うことは適切でないと思っておりますが、クーリングオフというのは売買契約をした後一定期間、何ら理由がなくても契約を解除できるという制度でありますけれども、これは元来、一たん契約をしたらその契約は守らなければならないという近代法の鉄則の例外であります。消費者先ほど申しましたような不意打ちを食らうとか、攻撃的な勧誘に遭ってやむを得ず契約を結ぶことがあるということから特に認められたものでありまして、いわば消費者にとっては、一たん契約申し込みあるいは締結した後、冷却期間を置いてクールになる、クーリングオフをするという期間であります。  そこで、このクーリングオフ、頭を冷やす期間をどのくらいにすればよいかということですが、五十九年の訪販法改正前は四日間でございました。しかし、これについては少し短過ぎるのではないか、ごたごたしているうちにたちまち四日くらいたってしまうということから、そこで現行法は七日間ということになっておりまして、私どもはその七日間がよいかどうかということを検討をいたしました。中には二週間であるとか、あるいは社会党案にあるように十日間というような御提案もございましたけれども、実際に消費者団体等で伺ってみますと、延ばした方がいいというお答えはあるわけですが、それではその七日間では契約の解除はできないけれども二週間あるいは十日ならば契約を解除できたという例はあるのだろうかというふうに伺ったところ、実際には七日でできなかったけれども十四日ならできたというような例はそれほどないのではないか、むしろ問題は、クーリングオフという制度そのものを知らない、あるいはクーリングオフでどうやって契約を解除したらいいかという方法を知らないことからもたもたしている間に日にちがたってしまうということではないかということで、そのクーリングオフ存在それからその方法を周知させるという規制をすべきではないかというふうに考えたわけであります。  なお、クーリングオフ期間中は、業者の方からしますといつ契約をやめられてしまうかわからないわけですから、実際に契約を履行することをためらうことになります。特にサービスなどですと、一たん提供しますと、これは今度の六条に書いてありますけれども提供してもその実費を返してもらうということもできない状態ですから、そこで業者としてはクーリングオフ期間はなるべく実際の履行に取りかからない方が賢明でありまして、そうなってくると、場合によってはクーリングオフをする必要もない消費者の側で、その間業者が疑心暗鬼で履行してくれないということでかえって不便を増すこともあるのではないだろうかというような両面からの判断をいたしまして、期間としては七日間を維持すべきであるというふうに考え、しかしそのクーリングオフ存在方法等については、最初に契約が締結されたあるいは契約申し込みがあったときに交付する文書の中に示すなどの方法をもって明らかにすべきだということを提案いたしまして、政府案では四条の四号、五条にその旨が規定されているわけであります。  なお、クーリングオフにつきまして社会党案では、最終日事業者休業日に当たる場合には一日繰り延べるということになっておりますけれどもクーリングオフというのは相手方に、事業者の方に到着する必要はない、その文書を発したときに契約が解除されるという効果を持ちますので、技術的に見てこのような社会党案のお考えをとる必要は必ずしもないといいますか、技術的に言えば消費者の保護に直接かかわらないのではないであろうかと思われます。  なお、そのクーリングオフ日にち開始日につきましても、社会党案では文書を受け取ったときからではなくて、さらに物を受け取ったあるいはサービス提供を受けたときからクーリングオフ期間が始まるということになっておりますけれども、これも考え方の問題ではありますが、クーリングオフをする意図のない消費者にとっては、そのためにかえって迷惑をこうむることもあり得るのではないかと私は考えます。しかし、この辺のところは立法政策の問題でありますが、私はクーリングオフという制度消費者が十分に知るようになれば、それで何とかなるのではないかと思います。  それから、クーリングオフにつきましては、さらに現金取引についても、従来はクーリングオフを認めていなかったわけですが、認めるべきだというふうに提案をいたしまして、政府案の六条一項三号に入っております。     〔委員長退席奥田(幹)委員長代理着席〕  それから通信販売につきましては、私ども先ほど言いましたように、思わぬところで急に人が入ってきて用意のないうちに契約を締結するというような要素はないのではないか、一定広告を見て十分考えて申し込むことはできるわけですので、そこでクーリングオフという制度は必要ないのではないかと考えました。  次に、四番目でありますが、この点が今回の改正の中心となるところでありますけれども一定のことをしてはならないというような業者行為規制をするという点でありまして、これは従来の訪販法につきましては、マルチ商法以外にはそういう規制はなかったわけであります。そこで、一定の不当な行為につきましては罰則をかける、あるいはこれに対して行政業務停止命令を課すというような方向で実質規制をしていくべきだということを提案いたしまして、政府案には五条の二の一項で、不実のことを告げてはならない、二項で、人を威迫し困惑させてはならないということで、不当な行為規定いたしまして、それに違反した場合には罰則、一年以下の懲役、百万円以下の罰金ということですし、さらにそれ以外のものであっても、通産省令によって一定行為指定いたしまして、そのような行為に違反した場合にはそれに対して指示をし、場合によっては、指示に従わない場合に罰則をかけるというような方法をとっております。これは五条の三などに規定されております。このようにして、一定行為について罰則をかける、あるいは行政庁指示あるいは業務停止命令を守らない者に対して罰則をかけるというような方法が、恐らく最も有効な方法であろうというふうに私どもは考えたわけであります。  通信販売につきましても行為規制を置きまして、誇大広告を禁止するという行為規制を八条の二に政府は入れておりますけれども、私どももこれは適切ではないかというふうに考えております。  そのほか、これらの行為規制を行うために、行政庁前提となる監督権限を与えるということで、業者報告をさせる、あるいは官庁が立入検査を行うというような権限も私ども提案し、政府案の二十条の二に盛り込まれております。  そのほかございますけれども、あと、私どもがとらなかった点につきまして、例えば開業規制であるとか中途解約権高齢者取り消し権、それから消費者取り消し権と言われるようなものにつきましては、御質問があれば、私の方でなぜそのような考え方をとらなかったのかという点について御説明申し上げたいと思います。  以上、私の申し上げたことを要約いたしますと、政府案は、研究会及び産構審答申を踏まえて、これを実際に法律文言として実現したものというふうに考えます。先ほども申しましたように、これは過剰規制を避けるという前提がありまして、実効的な規制をするということでありますから、問題は法の文言であるのみならず、それを実際に政府がいかに弾力的かつ実効性のある運用をするかということでございまして、これらの案に携わった私としましては、国会で申し上げることではないのかもしれませんけれども政府に対してこの点を強く要望したいと思います。  どうもありがとうございました。
  4. 奥田幹生

    奥田(幹)委員長代理 ありがとうございました。  次に、小宮山参考人にお願いいたします。
  5. 小宮山宇一

    小宮山参考人 社団法人日本訪問販売協会の副会長をやっております小宮山でございます。  実は、通産省産業構造審議会消費経済部会に私どもの加藤副会長が出ましていろいろと討議をしておりましたのですが、都合が悪くて、私がきょう国会参考人として、いわば臨時ピンチヒッターみたいな形で出ますので、非常にしどろもどろいたしますが、よろしくお願いいたします。  訪問販売業界は、昭和五十年ごろから急速に拡大し始め、その伸び率は毎年二けた台を示しておりました。しかし、最近では家庭における婦人の在宅率の低下、そして訪問販売とは次元の異なる金の現物まがい商法などが訪販と同じレベルで報道されたこと等が大きく影響し、ここ二、三年横ばい基調を続けております。そういう状況下にあっても、六十一年度の売上高は二兆三千億円にも達しており、我が国流通業界に確固たる位置づけを占めております。  しかしながら、残念なことは、こうした業界の急成長に目をつけた一部の不心得な事業者が当業界に参入したこと等により、全国的かつ恒常的な消費者トラブルを惹起させ、結果として、一部の有識者の間では訪問販売そのものを否定する論調まで台頭するようになっております。  当協会におきましても、昭和五十五年発足以後七年間、業界商業倫理の確立と消費者利益の増進を目的として、倫理綱領の推進、訪問販売員登録制度拡充相談処理体制拡充等、種々の事業を展開しその健全化に努めてまいりました。  したがって、今般の政府原案につきましても、産構審等においての議論の段階より当協会からも代表委員出席し、意見を述べてまいりましたとおり、協会基本姿勢はあくまでも、訪問販売取引適正化のためには、法の規制強化ではなく業界自主努力にまつことが最良の選択であると考えております。  しかし、冒頭申し上げましたように、恒常的に出現する悪質事業者を淘汰するためには、現下の状況を厳然と受けとめ、健全な事業者にとって負担の重い部分、例えば現金取引へのクーリングオフ適用等は、当初から絶対に受け入れることはできないものでありましたが、やむなく本政府原案を基本的に容認することにしております。  これに加えて、さらに社会党案にあるように、例えばクーリングオフ起算日商品到着日とするような案が仮に通るのであれば、業界存在基盤に極めて重大な影響を与えることとなり、到底容認できないところであります。  したがって、今後の本改正法案運用に際しては、行政サイドに対し、健全な事業者に過重な負担を与え、その活性化を失わないよう十分配慮してもらうようお願いする次第であります。  さて、今後、当協会としても本改正法案の施行に伴い、より充実した施策の展開を図ろうと、現在自主規制制度等の中身を大幅に改正し、かつ補強すべき点は強化するといった作業をしている段階でございます。例えば、入会審査規程強化により、入り口の部分申し出事業者のあしき部分を是正し、また万一、会員の不当取引が判明したときは迅速的確に徹底指導でき得るよう、その体制強化整備したいと考えております。  具体的に申し上げますと、次の五つを大きな柱として実施していきたいと考えております。  まず第一の柱は、倫理綱領整備強化であります。  当協会には、企業及びセールスマンが遵守すべき基本的事項を定めた倫理綱領といった、いわば協会の憲法がございます。この倫理綱領を本改正案に照らしつつ、それ以上に厳正なものとすべく、現行規程改正、あるいは新たに自主綱領等を策定いたします。そして、これらの倫理綱領等を実効あらしめ、かつ機動的に運用するために、現在の倫理審査委員会位置づけ強化していく所存でございます。  次に、二として販売員教育徹底であります。  昭和五十六年から開始した訪問販売員登録制度を通じて、セールスマン教育徹底を図り、その資質の向上に努めてまいりました。現在、本制度により、教育を終え登録されていますセールスマンは、全国におよそ九十一万人おります。しかし、本制度は、まだ十分整備されていない点もございまして、それらを今後研究し、是正していくことにいたします。また、残念ながら本制度が十分消費者に認知されていない点についても力を注ぎたいと考えております。  具体的に申し上げますと、一つ目は、セールスマン教育管理体制のあり方を研究し、協会が一元的に教育管理できる体制を逐次拡大強化していきたいと考えております。二つ目は、現在、一部の登録販売員をコンピューターにより管理しておりますが、今後はその量的拡大とともに、将来的にはトラブル情報を入力し、公正な取引に効果的に活用していきたいと考えております。三つ目は、訪問販売員登録証を消費者の正しい訪販の目安として積極的に活用すべく、本制度消費者に対するPRを一層強化します。このため、一般家庭に貼付用の登録ステッカーを大量に作成し、これは訪問販売員登録証をお持ちですかというふうなことでございます。そういうステッカーを大量に作成し、着実に張ってもらうよう各自治体等を通じて依頼します。  三つ目の柱は、苦情処理体制強化であります。  当協会の訪販一一〇番、これは当協会で訪販一一〇番という制度を設けております。受理する相談件数は六十二年度で約八百件で、母集団としてはまだまだ小さく、かつこれらの申し出は関東周辺に限定されています。このため、倫理審査委員会をより機能的、効果的に運営するために、早急に全国レベルでトラブル情報を収集できるよう体制整備する必要があります。まず、数地区に転送電話を配置します。これは現在もう既に準備中でございますが、都市としては名古屋、大阪、福岡等でございます。さらに、これは順次全国的に配置する予定でございます。そのほかに、全国に三百名の消費者モニターを委嘱し、定期的にトラブル情報を吸い上げ、それらを分析整理し、コンピューターにより管理し、多発地区を限定します。これを重点地域として指定し、トラブル未然防止のため啓発活動を展開いたします。また、全国の消費生活センター等の公的相談機関と密接に連絡をとり、あるいは直接当協会の者が来訪し、情報提供を依頼いたします。  四つ目の柱は、消費者啓蒙の推進でございます。  悪質な訪販業者から消費者を守り、かつ契約意識の高揚を図ること等を目的に、協会自身が消費者の啓発活動を推進いたします。当協会にとっても、訪販一一〇番はもとより、移動消費者相談室等の設置により、直接、消費者から訪販企業の動向等について生の声が聞けるとともに、消費者に対し訪問販売のよい点を認知してもらい、そして訪問販売の賢い利用方法等について啓蒙できる大変有効な機会であると考えております。その一環として、各地区で消費者セミナー、高齢者セミナーを開催し、また若年層に対しては啓発資料等により啓発活動を展開いたします。  最後に、当協会存在を国民各層に周知してもらうための一環策として、新たに定めました信頼のシンボルマーク「Hhk」というマークをつくりまして、それを普及啓蒙いたします。そしてこのマークを各訪問販売協会に加入している会員の企業の営業用パンフレットやその他契約書面などの広告等に積極的に記載してもらうことといたします。これは、消費者にとっては、加入している企業であるかどうかということが非常にはっきりとわかるものでございます。  このように、訪問販売の適正化を推進する当協会存在消費者の皆様に広く深く認知していただき、かつ消費生活センターあるいは消費者団体との連携の強化を図ることによって、良貨が悪貨を駆逐する日が一日も早く来るよう望むものであります。  最後になりましたが、今回の訪問販売法の改正によって、当協会が、業界自主規制の中核として訪問販売法第十条の二に規定されている訪問販売協会として位置づけられることについての責任の重みを当協会としては深く感じておりますとともに、その名に恥じない活動を今後強力に展開していく所存でございます。  以上でございます。ありがとうございました。
  6. 奥田幹生

    奥田(幹)委員長代理 ありがとうございました。  次に、綾参考人にお願いいたします。
  7. 綾元文

    ○綾参考人 おはようございます。私は社団法人日本通信販売協会会長をいたしております綾でございます。どうぞよろしくお願い申し上げます。  きょうはごあいさつを兼ねまして、通信販売の現状について御説明申し上げます。  我が国における通信販売は、昭和六十一年度におきまして九千七百億円の売り上げを計上いたしておりまして、小売業の売上高の約一%のシェアを占めております。ここ十年にわたりまして、通信販売は年間二けたの成長を続けておりまして、このことは、先ほど訪販の会長さんもお話がありましたように、女性の社会的進出を背景に、便利な買い物の手段として広く消費者の支持を得ているということのあらわれだと思っております。  通信販売業者の数は把握されておりませんが、確実なところでは千社前後でございます。しかし、一回でも新聞、雑誌あるいは折り込みチラシ等で広告したものを教えますと、数千社という数字になるかと思います。  通信販売の利用者は、各種統計によって多少違いますけれども、一回でも利用したことのある主婦はおおむね六割、国民全体から見ても三割に達していると思います。このように国民の間に広く利用されている通信販売は、いながらにして買い物ができるという特質から、高齢化社会の進展に応じましてますます国民の間に広く浸透することが予想されます。我々通信販売業にかかわる者としては、便利でかつ楽しく、かつ安心して買い物のできる通信販売を発展させることに責任を感じておる次第でございます。  次に、通信販売協会の設立とその会員構成について申し上げます。  通信販売に関する法律は、現在訪問販売等に関する法律の中で定義を含めまして三カ条規定されております。これは訪問販売法ができました昭和五十一年でございますが、そのとき、まだ通信販売が今ほどには普及されていなかったということもあるかと思いますが、通信販売そのものに法律規制しなければならないようなトラブルがなかったということによると思っております。  しかし通信販売が徐々に発展してくるに従いまして、消費者との間におけるトラブルもふえてまいりました。それで、昭和五十八年に至りまして通産省の御指導を得まして、通信販売に係る商業倫理の確立と取引の適正化を通じまして、国民の消費生活における利便の増進を図り、商品の流通を適正かつ円滑に行うということで、国民経済の発展に貢献することを目的としまして社団法人日本通信販売協会が設立された次第でございます。この協会はあくまでも業者の自主的団体として商業倫理の向上を目指し、そしてその趣旨に賛成して設立時に参加いたしました会員は、正会員で九十二社、賛助会員で百四社でございまして、その後着実に会員がふえてまいりまして、現在では正会員が百七十四社、賛助会員で百四十七社を数えております。  正会員は、国民の消費生活に資する物品の販売及び便益の提供通信販売方法により営む法人あるいは事業部などを有する法人でございまして、一方賛助会員は、通信販売に関連する法人であって、本会の目的に賛同し、その事業に協力しようとするものであるということをうたっております。現在の正会員は、専業の通信販売業者のほか、百貨店、スーパー、専門店、メーカー、商社等、通信販売に携わる法人等はほとんど参加いたしております。またNHK、朝日新聞、毎日新聞、テレビ各社等マスコミの通信販売業者、また生活協同組合の通信販売に携わる法人等も当協会の会員であるという状況でございます。     〔奥田(幹)委員長代理退席、委員長着席〕  先ほど申し上げましたとおり、全国の通信販売企業の数は算定できませんが、全国の一年間の通信販売売上高は、先ほど申しましたが推定で一兆円弱、そのうち当通信販売協会の会員社のシェアはそれの約八〇%を占めておりまして、大手の通信販売業者はほとんど当協会に参加しているという状況でございます。  次に、通信販売協会の活動状況を申し上げます。  協会ができまして最初に制定いたしました通信販売倫理綱領は、協会の外部の学識者、それから新聞、雑誌、テレビ等マスコミの代表者、それから消費者団体の代表者等、有識者による倫理綱領の制定委員会を設置いたしまして、そして慎重な討議の結果でき上がったものでございます。     〔委員長退席奥田(幹)委員長代理着席〕  その内容は、消費者権利の尊重が一番でございまして、二番目に関連法規の遵守、三番目に適正な品質価格、四番目に平易明瞭な広告表示、五番目に取引条件に関する正確克明な情報の提供、六番目に消費者に安心と満足を与える取引条件の設定、七番目にプライバシーの保護、八番目に青少年対象の通販についての配慮、九番目に苦情処理体制整備、こういったものを通信販売倫理綱領にうたっております。さらに、倫理綱領を実施するために具体的な基準も詳細にこれを定めております。  また、消費者保護の観点のみならず、通信販売に対する消費者の魅力をより高めるために、当協会としても、商品到着後一定期間内は自主的に返品を認める自主的返品制度の普及拡充をしていくことといたしております。  さらに、協会発足とともに協会の会員マーク、JADMAマークを定めまして、協会会員は広告にこのマークを使用することによりましてその位置づけを示しております。また、このマークに恥じない通信販売取引を行うよう求めております。また、協会会員外のアウトサイダーにはJADMAマークの使用を認めておりませんで、安心と信頼のJADMAマークによって協会会員とアウトサイダーとの区別を明確にしまして、消費者の皆様方によい業者を育て、あしき業者を駆逐する一助としていただいているわけでございます。  さらに、協会会員は、倫理綱領にもあるとおり、消費者の苦情の防止に最善の努力を払うとともに、苦情処理体制整備し、適切かつ迅速な処理を行うために、苦情申し込みの窓口責任者を決めまして、その電話番号も明示しまして、責任者の氏名を機関紙に掲載して、消費生活センターあるいは消費者の皆様方に配布いたしておる次第でございます。  また、協会には通販一一〇番という電話を設置しまして、会員企業の対応でなお解決しないトラブルにつきましては、協会が直接消費者との間の相談に乗って解決を進めるようにいたしております。なお、通販一一〇番につきましては、会員社だけでなく、アウトサイダーに関する相談も受けておりまして、これを当該会社に文書で申し入れて、クレームの解決を要請しております。これに対しまして、アウトサイダーの会社も誠実に対応されておりまして、今までに通販一一〇番にかかったクレームについて、アウトサイダーの方もほとんど解決していただいておりまして終わっているのが実情でございます。  さらに、窓口の対応を含めまして通販企業の職員の教育強化いたしまして、当通販協会におきましては、昭和六十年度からは新人研修会、六十一年度からは幹部職員の研修会、昨年、六十二年度には女性職員のための研修会を開始いたしました。  また、広告規制につきましては、訪販法改正が予定される前より、我が協会におきましてはガイドライン委員会なるものを設置しまして、倫理綱領でなお不十分な点を見直しまして、さらに強力な自主規制案をつくるべく現在作業を進めております。  また、消費者のプライバシー問題につきましても、昨年度MPS制度、これはダイレクトメールを欲しくないという消費者に対しましては、当協会に申し込めば会員社の名簿から削除してダイレクトメールを送らないという制度でございますが、これを実施しております。そして、具体的に消費者の要請に応ずるという制度をとっております。  また、昨年度には、通産省の委託によります輸入品の情報誌、名前は「クオリティーインポート」これを編集いたしまして、新聞でもごらんいただいたかと思うのですが、各都道府県あるいは政令指定市、各通産局等に配布いたしております。そして国内各地の消費者からの直接の求めに応じて、数千部を現在発送いたしたところでございます。  最後に、今回の訪問販売法の改正で、当協会訪問販売法に位置づけられたことは、今後の通信販売に係る自主規制活動を展開していく上で極めて大きな効果があるものと私は期待しております。当協会としても、法律上に位置づけられた団体として、通信販売取引の適正化のため最善の努力をしていきたいというふうに考えております。  以上、通信販売協会の一端を説明申し上げまして、私の説明を終わらせていただきます。どうもありがとうございました。
  8. 奥田幹生

    奥田(幹)委員長代理 ありがとうございました。  次に、兵藤参考人にお願いいたします。
  9. 兵藤俊一

    兵藤参考人 おはようございます。本日は、意見表明の機会を与えていただきましてまことにありがとうございます。  私は、日本弁護士連合会の消費者問題対策委員会委員長を仰せつかっておる者でございます。これまでの日弁連及び全国各地の弁護士のいわゆる訪問取引被害救済の取り組みを踏まえまして、この大変貴重な場所をおかりしまして意見を述べさせていただきたいというふうに考えるわけでございます。なお、時間の関係がございますので、お手元の私の意見要旨を適宜はしょりまして述べさせていただくことをお許しいただきたいというふうに思います。  まず最初に、いわゆる訪問取引被害の実態について、二つほど例を挙げて御説明を申し上げておきたいというふうに思うわけでございます。  まずその第一は、いわゆる輸入ステンレスなべパーティー商法でございます。本日の赤い資料でございますが、そこにもちょっと出ておるかと思いますが、本年一月八日に名古屋におきまして、いわゆるなべパーティー商法の摘発が行われたわけでございます。テレホンレディーが電話で、成人病予防のための料理講習会を開かせてくださいなどと持ちかけまして、家庭へ上がり込んだ販売員が、アルミなべはがんになる、あるいはほうろうなべも有害というようなセールストークと、いわゆる重曹でございますが、それを使ったもっともらしい実験で消費者の不安をあおりまして、六点ないしは七点セットで約四十万円という非常な高値で輸入ステンレスなべを押し売りしていたものでございます。輸入ステンレスなべパーティー商法は全国各地で被害が発生しておりまして、名古屋では四百人の被害者が被害者の会をつくりまして、集団訴訟を進めているところでございます。販売目的を隠して家庭訪問をいたしまして、消費者の不安をあおり立てる、いわゆるがんになるとかあるいは体に毒だといったようなことを申しまして、欺瞞的勧誘あるいは悪質な訪問販売をしておるわけでございます。こういった悪質な行為に対する規制強化の必要性はつとに指摘されておるところでございまして、その規制強化が痛感されるところでございます。  次に、もう一つ例といたしまして霊感商法を取り上げてみたいと思うのでございます。霊感商法と呼ばれますのは、いわゆる顧客を心理的不安に陥れまして、印鑑、念珠、つぼ、多宝塔などの商品を市価の数十倍もの高価な代価で売りつける悪質商法であります。これまで日弁連も、各地で被害救済の取り組みを強めてまいりました。社会的批判の高まりの結果、最近では被害申告がやや減少してきておりますが、業者はまず宗教的人間関係を形成した上で販売活動を実行いたして、次々と新しい販売会社を設立するなどして手口を変容させてきておるのでございます。霊感商法の特徴は、このような悪質な勧誘行為だけではなくて、末端の販売員が委託販売員と呼ばれるような、いわゆるあたかも独立の営業者であるというような仕組みになっていることでございます。  アルミなべ商法にしろ、いわゆる霊感商法にいたしましても、いわゆる心理的不安、がんになるとかあるいはたたりがあるといったようなところから消費者に対して非常な被害を与えるところが共通しておるわけでございます。特に霊感商法問題は、訪問販売におきまして開業規制行為規制の導入、あるいは氏名の公表、業務停止などの行政規制がぜひ必要であるというふうに考えざるを得ない商法でございます。  訪問取引被害というのがいかに大きいかということについて、御説明をしておきたいと思います。国民生活センターへの訪問取引の苦情相談が、昭和六十一年度では十一万件に上っております。また、警察庁の六十二年中における生活経済事犯についての報告書によりますと、昭和六十二年一月から十月、これは一年間に満たないわけでございますが、その一月から十月までに、訪問勧誘が大半を占めるいわゆる利殖商法の摘発は五十三件でございました。被害者数一万七千三百人、被害金額は実に四百五十一億ということでございます。そして、いわゆる利殖勧誘以外の訪問取引の摘発は八十六件でございまして、被害者が十一万五千二百人、被害金額が実に百三十五億ということに上っているわけでございます。  これだけ見ましても、極めて多数の被害が生じていることが推測されるのでございますけれども、さらに驚くべきことは、いわゆる公的資料によりますと、被害の顕在化率というのは一%にすぎないと言われておるわけでございまして、被害実数は少なくとも右に申し上げました数字の数十倍に達すると考えられるわけでございます。まことに巨大な被害であると言わざるを得ないと思います。  訪問取引被害の深刻さということにつきまして申し上げます。訪問取引被害者は、高齢者、若年者、家庭の主婦という、いわゆる取引の知識、経験に疎い者、社会的弱者と言われる層の消費者に集中して発生しております。特に、現在のごとく六十五歳以上の高齢者が総人口の一割を超す高齢化社会の中で、高齢者の深刻な消費者被害の多発は、重大な社会問題となっているのであります。  一体、国民は訪問取引をどのように見ておるのでございましょうか。訪問取引業者の悪質な行為によって深刻で広範な消費者被害が生じている現在、国民の多数は訪問取引に対する拒否反応を持っているのではないかと思われます。総理府の昭和六十年二月の消費者問題に関する世論調査によりますと、回答者の実に八四・二%の人が、訪問販売は利用したくない、必要ないと考えております。また、訪問販売を利用した人の過半数に当たる五八・九%もの人が、被害を受けたと考えているのでございます。これらの事情のもとで、訪問取引における消費者被害を防止するために今回の改正が検討されてきたことは、改めて申すまでもないところでございます。  そこで、これから、現在審議中の訪問販売法の一部改正法案、いわゆる政府案につきまして、特にその訪問取引部分に限りまして私の意見を申し述べたいと思うわけでございます。  政府案の特徴は、大きく二つに要約できるのではないかと思います。まず第一は、現行法規制対象商品に限定しているのに対しまして、これを役務施設利用権などに拡大したことでございます。いわゆる規制対象の拡大でございます。第二は、悪質な勧誘行為に関しまして禁止行為規定し、遵守事項を設けるとともに、その違反に罰則行政命令を発動することであります。いわゆる行為規制を導入したことでございます。  第一につきましては、いわゆる適用対象を拡大しはしましたものの、引き続き政令指定制に固執しているところに問題があります。いわゆる、これまで言われておりました商品指定制を依然として維持しているということでございます。政府案指定役務指定権利としていかなる役務施設利用権などを構想しているのかは、本委員会の審議でこれから明らかになる事柄でありましょうが、私は、改めてこの政令指定制自体が全く不合理な制度であり、速やかに撤廃されるべきであるであることを指摘しておきたいのでございます。  第二の禁止行為につきましては、政府案五条の二におきまして、いわゆる契約の重要事項について消費者に不実のことを告げる、あるいは消費者を威迫し困惑させるということを禁止事項としております。禁止事項はこの二つでございます。さらに五条の三におきまして、業者の遵守事項といったものを定めております。禁止事項あるいは遵守事項を定めまして、刑罰と行政命令によって訪問取引における悪質行為の防止を図ろうとしておるわけでございます。政府が、現行法を大きく改善した箇所でございまして、悪質行為防止の最も適切にして有効な方法と強調するところでありますが、しかし、刑罰規制行政規制による政府案では、悪質行為を防止することは不可能であると考えるのでございます。  まず、刑罰規制でございます。現在求められておりますのは、頻発しております詐欺まがい、恐喝まがいに対する適切かつ有効な規制であります。この場合、本来謙抑的であります刑罰規制には余り多くを期待できません。刑事告訴をいたしましても、警察の方でなかなか捜査を進行していただけない例が多うございます。告訴いたしましても、告訴状の預かりといった形でその進展が期待できない場合が多うございます。政府案も、悪質行為防止策として、重点は行政規制に置いていると言ってよいのではないかと思います。  しかし、政府案行政規制には二つの欠陥があると思うのでございます。その第一は、遵守事項が具体的に明示されていないことでございます。政府案五条の三は、遵守事項のほとんどを通産省令で定めるということを言っておりまして、産業構造審議会答申にも、長時間にわたる執拗な勧誘、強引な勧誘、虚偽のセールストークを用いる勧誘クーリングオフの行使を妨げる不当な行為などを挙げて、これらを抑止しなくてはならないという内容になっておるのに、その期待に十分こたえているとは言えないのでございます。  第二は、開業規制を採用していないことでございます。開業規制前提としない行政命令がいかに実効性がないかということは、同様の行政規制を採用しております海外先物取引規制法の施行状況が如実に示しているところでございます。逆に開業規制を採用し、これと連動させることによって悪質な行為を減少させる効果を発揮しておりますのが、いわゆる貸金業規制法でございます。また宅地建物取引業法、旅行業法あるいは投資顧問業法なども、いずれも開業規制を採用しておるわけでございます。  さらに関連して申し上げますと、刑罰規制あるいは行政規制のほかに、さらに契約の解除権というものを採用してこの禁止行為実効性を担保していかなくてはならないという要請があるにもかかわらず、この点も政府案では欠けておるわけでございます。いわゆるクーリングオフ期間は、先ほど来お話に出ておりますように七日間でございますが、その期間を経過してしまった後で初めて業者の悪質行為が明らかとなる事例も非常に多いのでございまして、現在は民法の詐欺、強迫、公序良俗違反、こういったようなことを根拠に被害者救済を我々としては図っておるわけでございますが、十分な効果を上げているとは到底言えないわけでございます。契約解除権を新しく創設することによりまして消費者に救済の道が開かれるのでありまして、消費者が悪質な行為に対して契約解除権を積極的に行使すれば、業者は不当、不正な利得は掌中におさめておけなくなるのであります。契約解除権は消費者みずからが行使できる権利でありますから、周知徹底すれば大いに活用されることは間違いないところでありますし、悪質業者は悪質な行為をすれば必ず反撃を受けることとなりまして、悪質行為の抑止に大きな効果が期待されるのでございます。  開業規制契約解除権を採用しないで到底悪質行為規制実効性は期待し得ないのであります。政府案訪問販売の「取引の公正及び購入者等の利益の保護をさらに図るため、」との提案理由を掲げながら、その最大の眼目である行為規制実効性を期し得ないという致命的欠陥を有するものであると考えております。  次に、悪質行為に対する規制を真に実効あらしめるためには、次の三点が必要不可欠であると考えます。  まず第一に禁止事項、先ほど申し上げましたいわゆる消費者を威迫して困惑させる、あるいはうそをつくといったようなことをしてはいけないという禁止事項とか、あるいは守らなくてはいけないその他のことを具体的にもっと書く必要がある。日本弁護士連合会ではそれらを約二十二にまとめておるわけでございますが、この二十二類型は、最近全国各地の地方自治体で進んでおる内容と同じでございます。いわゆる消費者保護条例改正作業の中で制定された不当な取引方法を整理したものでございます。これらはいずれも、取引業者の注意義務として既に定着するに至っておりまして、これらを訪問販売法中に明示することは十分可能なはずでございます。産業構造審議会答申のいろいろな、長時間にわたる、あるいは執物な勧誘、早朝深夜にわたる勧誘といったものも、具体的にある程度枠を広げて書く必要があるのではないかというふうに考えるわけでございます。  第二に、悪質行為に対する民事効果を導入することでございます。とりわけ契約解除権を採用することが必要であると思います。契約解除権といいますのは、一たん契約いたしましたけれどもクーリングオフ期間経過後に、いわゆる悪質行為によって契約が締結されたという場合に、その悪質行為を原因として契約を離脱するようにできないかということでございます。いわゆる契約解除の権利でございます。これは新しい提唱でございますから、法体系上の整合性を有するかという疑問を呈する向きもございまして、その内容につきましては検討する必要があるのでございますが、私はこれは全く採用することに問題はないというふうに考えるのでございます。まず実質面からいいますと、その前提となりますいわゆる禁止事項が、契約締結上の信義則に反する事項でございましたり、契約締結上の過失と言われる事項でありますから、債務不履行の一種と理解してよいのでございます。  さらに、そういう例があるかということでございますが、民法の五百四十条は、契約解除に関する基本条文として、契約または法律規定により解除権が認められるというふうに規定しておるわけでございます。訪問販売法のクーリングオフも、この法律規定によって初めて認められた権利でございます。したがいまして、何ら法体系上の整合性に欠けるところはこの解除権にはないというふうに考えるのでございます。ついででございますが、割賦販売法ではその二十七条におきまして、いわゆる許可を受けた割賦販売業者がその許可を取り消された場合には、消費者契約を解除することができるというような規定がございまして、いわゆる純然たる行政法規の違反にも契約解除権が認められているという例が現にあるのでございます。したがいまして、この契約解除権をぜひ採用すべきであるというふうに考えるわけでございます。  第三に、開業規制をやはり採用すべきであろうかと思います。開業規制には業者を具体的に把握できる、いわゆる行政当局が業者を具体的に把握できるというメリットと、悪質業者が参入しないように防ぐことができるという二つのメリットがあるのではないかというふうに考えておるわけでございます。  さらに、開業規制は法技術的に十分可能でございまして、法技術上のポイントはいわゆる例外規定の設け方、すべての業者、すべてのセールスマン、そういう人にことごとく網をかけるのではなく、ある程度の例外規定を設けていくやり方をとっていく。それから、末端業者を支配する卸元業者の捕捉を十分にしていく。あるいは委託販売員の取り扱いを、通常消費者の利益を害さないと思われるものは除外していく。末端の訪問取引業者を支配統轄する業者は、支配関係業者として登録させる。委託販売員は、その実質に着目いたしまして勧誘員として取り扱うというようなことをいろいろ検討していけば、十分実効性のある制度であるというふうに考えるわけでございます。  訪問販売は、これまでいろいろお話の出ておりますように攻撃的、密室的でございまして、消費者被害を誘発しやすい取引形態でございます。したがいまして、責任をとることのできない業者にはなるべく遠慮してもらいたいという立場に立って、今回の法改正ではぜひ開業規制を採用していただきたいのでございます。  終わりに当たりまして、本委員会審議を経まして、訪問販売法が私のただいま申し上げました内容を含んで速やかに改正された上、業者の自主的努力が一層強化されまして、消費者啓発などの推進が図られますならば、悪質な業者が排除されまして公正な訪問取引の基礎的条件が整います。消費者権利が確保された訪問取引が実現するものと確信しておるのでございます。  以上で、私の意見表明を終わらせていただきます。ありがとうございました。
  10. 奥田幹生

    奥田(幹)委員長代理 ありがとうございました。  次に、三村参考人にお願いいたします。
  11. 三村光代

    三村参考人 おはようございます。日本消費生活コンサルタント協会三村でございます。  私どもの団体は、昭和三十七年に財団法人の日本消費者協会が消費生活コンサルタントの養成講座を設けましたが、その養成講座の修了者をもって構成されている団体でございます。会員の約七〇%が各地の消費生活センターで相談に当たっているということで、きょうは私は消費生活相談員の立場から、消費者被害がどういうふうに発生しているかということを、議員の皆様には少し次元が低いかもわかりませんが、実態を交えてお話しさせていただきたいと思います。  昭和五十四年の東京都のデータを見てみますと、全体の相談件数が一万一千二百九十八件でございました。それが六十一年の件数ですと、倍の二万八千五百八十三件になっております。そういう中で訪問販売にかかわる相談がどのくらいあるのかというのを見てみますと、ちょっとずれますが、五十九年のデータでは全体の中の千九百三十件だけが訪問販売にかかわるトラブルだったわけですが、六十一年には七千七百三十六件とはね上がっております。そういう中で、私ども消費生活センターの中で相談をしている者にとっては、実際に毎日毎日入ってくる相談がすべて訪問販売にかかわるトラブルのような実感を持つぐらい、もう七、八〇%が訪問販売トラブルではないかと思うぐらいの状態で入ってきております。統計的には、現実には今の東京都のデータを見ましても大体四〇%ぐらいなんですが、実感としてはもっと多いのじゃないかと思うような、内容が複雑になった相談がふえているというのが実態でございます。  今回の改正案を読ませていただきましたが、その中で、私ども相談を処理している中で、こういうふうになっていたらもっと救われたのではないかと思われる部分でとてもよかったなと思っている部分を、私なりに幾つかある中から二つだけ申し上げてみたいと思います。  それは、現金販売クーリングオフが適用されたということでございます。現金販売の場合には今までクーリングオフが適用されなかったために、何とかして現金で売っていってしまおうとするセールスマンが多かったわけです。例えば、お金がないときには銀行まで連れていって、銀行で貯金をおろさせて現金販売にしてしまうというようなケースもありました。それから、買った商品が例えば全部で二ダース買っていたとしましたら、一ダースだけ領収書を発行しまして、これは現金販売なんだから一ダース分だけクーリングオフに応じてやるというような、悪質な売り方をしておる業者もたくさんいました。  そういう中で、消費生活センターの中で今一番手をやいておりますのが消火器の販売でございます。これは、大体主婦たちがお財布をあげて出せる金額、簡単に出せる金額にこのごろはなっているんじゃないかと思うのです。私は昭和四十八年から消費生活センターの中で相談をやっておりますが、その当時は主婦がお財布から簡単に出せるお金というのは大体三千円から四千円ぐらいでした。ですから、そのころのトラブルとして多かったのは、ガス漏れ警報器とか表札とかそういうものが多かったのですが、現在は消火器が圧倒的に多いというのは、大体消火器は一万六千円から二万円ぐらいのところで、ひどいときには二つ対で買わされてしまうというような場合でも、現金で買っていただかないと困ると言われた場合には現金がお財布の中から出ていくということになります。そういう場合も過量ではないかという判断をどこで下すかという問題があるものですから、結局クーリングオフの解除が現金で買ったためにできない、泣き寝入りをしなければならないというトラブルも発生しているわけです。  それから、クーリングオフの告知というのは現行法でもあるわけですけれども罰則が担保されていなかったために、クーリングオフで解除していただいても払った頭金が戻ってこないというトラブルも多発しております。その点では今回、書面の交付義務の中に入るということですので、罰則が担保されればクーリングオフ被害というのが、現在せっかく解除されたのに消費者救済が中途半端に終わるということが防げるのじゃないかというふうに思います。  それから次に、改正案の中でこうあってくれたら私たちの相談の処理がもっとよくなったのにというふうにいささか嘆いている部分だけ、私たちの意見が入ったらいいなと思っている部分をちょっと申し上げてみたいと思います。  指定商品制という形が現行法でとられているのですが、指定商品制をとられているために、指定商品に入っていないものを買った消費者が救済されないという例があるのですが、消費者は買うときに、これが指定商品だからとか指定商品じゃないからというようなことを考えて買っているわけではありませんので、トラブルが発生してから、これは指定商品じゃないからクーリングオフができないんだというような形で消費者被害が広がっていくということになるわけです。私ども苦情の場に入ってきた相談の場合でも、解釈によっては指定商品に入らないのではないかと思われるようなものもありまして、通産省に問い合わせをすることで、どちらに入るのか入らないのかということを解釈していただくというような形での商品も出てきているのが実態でございます。  そういう中で、例えば私が住んでいるところは田舎の方ですので、新興住宅地の中で庭石が販売されていくというようなのも訪問販売でやってくるわけです。家ができ上がると、入居したころにやってきて庭石を売っていくというようなのもあるわけです。それから、今現在も全くないわけではないのですが、高齢化していきますともっといろいろな商品が出てくるのではないかという中に、墓石の販売なんというのも入るんだというふうに思われるのですが、これも現在では指定商品にはなっていないというのが実情です。     〔奥田(幹)委員長代理退席、委員長着席〕  それから今回の改正で、電話のリースが大分被害が発生していますので、多分入るだろうと読んでいるのですが、現実にリースという変わった形態のものが電話だけのリースで入ってきた場合に、そのほかの消費者リースに及ぶかどうかというのも懸念していることでございます。例えば、このごろは学習塾がファックスを使って、それをリースで貸し出しておいて、お互いの家と学習塾とを結んで添削指導をするというような学習教育みたいなものも起こってきていますので、そういうところまで及ぶのかどうか。被害が発生してから及ぶのではなくて、できれば一括してそういうものにもかぶせるような、指定商品制というのは撤廃していただけたらかぶせられるのじゃないかというふうに思っているのが相談員の皆さんの実情だと思います。  それから、キャッチセールスが定義の中に入れていただけたということは大変ありがたいのですが、キャッチセールスでつかまった——つかまったという言い方はおかしいですけれどもキャッチセールスでアンケートをとらせてほしいとか、あるいはモニターになりませんかとか、あるいはモデルになってみませんか、そうしたら仕事をあげますよというような形で勧誘されて営業所に連れていかれて、結果的には化粧品を買わされるというようなケースがとても多いのですが、実際に営業所契約した場合にもそれは適用になるという形にしていただけるようですから大変ありがたいのですが、できればキャッチセールスというのは禁止していただけたらありがたかったというふうに私たちは思っております。きょう私がつけてまいりました資料の、化粧品の訪問販売工業会では化粧品のキャッチセールスを禁止しております。自主規制の中でこういうように禁止している業界もあるんだということも踏まえて、法律改正の検討をしていただけたらありがたいと思います。  それから、先ほど来問題になっております大学生等に一番多い、つけてまいりました東京都の資料を見ていただきますとわかりますが、アポイントセールスで契約するというのが、英会話教材あるいは会員権等に多いのです。そのようなアポイントセールスで買わされたというケースの多い中で、アポイントセールスが多分政令あたりで入るのだと思うのですが、実際に今の条文の中から本当に入るのかどうかということが読み込めないというのが不安ですので、ぜひそのあたりの検討をしていただけたらありがたいと思います。  もう一つクーリングオフが過ぎてからの解除権というのが私どもが一番問題にしているところなんですが、実際にクーリングオフ期間中に入ってくる相談というのはそんなに多いわけではないのです。七日間という期間がありますけれどもクーリングオフは、幸いにクレジットで買った場合には注意して読めば赤い字でクーリングオフの告知がされていますので、それに気がつけば御自分でもできるということになりますから、消費生活センターに入ってくるクーリングオフ相談はそんなにたくさんなくて、クーリングオフ期間が過ぎてから入ってくるのがほとんどでございます。品物が届いてみたら違った品物だったとか、あるいはキャッチでつかまってエステティックに通っていたけれどもどうも機械の調子が悪くて体の状態が悪くなったとか、あるいは美顔術をやってもらっていたら顔がかぶれてきたとか、そういうような状態の場合に途中で受ける役務をやめた場合、サービスを受けないで中途でやめた場合でも中途解約ができないというケースがありまして、最終的には何十万かのお金を払い続けているというような苦情も発生してきています。消費者側のわがままではなくて、実際に契約上に問題があったときには中途で解約できる解約権を消費者側に与えていただけたらば、私どもの苦情処理がいかに速やかにできるかということを考えて、これも一言述べさせていただきました。  それから、このごろとても頻繁に売られております学習教材なんですが、学習教材というのはどうしてああ多量に売るのかと思うぐらい、例えば中学の一年生でしたら中学三年生分まで売っていく。小学校の四、五年生のときに中学三年生まで契約させられたというケースもあります。実際に使い始めてみたら、そんな六年も先のものですからお子さんが使うとは限らないのだけれども、ワンセットになっているからこれは分けて売ることはできないんだと言われて買ったために、中途で解約したくても解約できなくて、あきらめて仕方なしに全部払っているというケースがありまして、これは大変問題だと思うのですが、消費者側がその辺を自分で選択できるような形になっていて一年ではいけないかということが言える状態になっていないために、被害が大きくなってきているわけです。こういう過量販売の場合には、過量だというところでたたけるのじゃないかという感じはいたしますが、消費者側が一方的に消費者解除権を持っていれば、消費者はもっと速やかに自分のかぶっている被害から離脱できるのではないかと思いましたので、この件を入れさせていただきました。  最後に、今回訪問販売法を改正していただけるということで私たちは大きな希望を抱いているわけですが、その中で役務指定役務という形でながらも入るということをしていただきましたので、今までできなかった部分のカバーができるところは大変うれしいのですが、ただ一つここでぜひ申し上げておきたいのは、指定役務という形でも割賦販売法指定商品になっていないために、クーリングオフが過ぎてからの問題でトラブルが発生した場合に、月賦で物を買っている、割賦で物を買っているという形、クレジット会社を利用しているという場合に中途解約ができないということが出てくる可能性があります。割賦販売法指定商品制の中にこれを入れていただければ抗弁権が行使できることになるのですが、今の状態では片手落ちではないかと私たちは思っております。  学生たちが契約する英会話教材のたぐいは、後ほど東京都の資料を見ていただくとわかりますが、ピークは五十万から百万というところに出ております。学生がアルバイトをしながら百万もする教材を買ってしまった場合、全く使わない商品であったり、あるいはこん包も解かない状態で置いてあったものを三年後ぐらいにあけてみたら商品が違っていたなどという苦情も扱ったことがございますが、現実にそういう状態の場合でも、割賦販売法改正していただかないと抗弁権は行使できないということになってしまうわけです。そこのところが私たちにとっては一つ残念だなと思えているところでございます。  大分いろいろなことを申し上げましたが、ここで訪問販売法を改正していただけるということは、私たちにとっては一歩も二歩も前進でございますので、私が今申し上げましたことが入らなくても、私どもの言ったことが次の踏み台になってもらえたらありがたいと思います。どうもありがとうございました。
  12. 渡辺秀央

    渡辺委員長 ありがとうございました。  以上で参考人意見の開陳は終わりました。     ─────────────
  13. 渡辺秀央

    渡辺委員長 これより参考人に対する質疑に入ります。  質疑者にあらかじめ申し上げます。質疑の際は、質疑する参考人のお名前をお示しください。  なお、念のため参考人各位に申し上げますが、発言の際は委員長の許可を得ることになっております。また、参考人委員に対して質疑をすることはできないことになっておりますので、あらかじめ御承知おきを願います。また、時間の制約がございますので、なるべくお答えは簡素にお願いを申し上げたいのでございます。既に今まで十分ちょっと実はオーバーをいたしております。  それでは、質疑の申し出がありますので、順次これを許します。尾身幸次君。
  14. 尾身幸次

    ○尾身委員 尾身幸次でございます。参考人の皆さん、大変御苦労さまでございます。  最初に、森嶌先生にお伺いをさせていただきたいと思います。  森嶌先生は、この訪問販売法の改正に当たりまして、訪問販売等問題研究会の座長といたしまして報告書をまとめられ、そしてまた産構審委員としてもこの法改正の基本的な考え方を取りまとめられた方でございまして、大変に御苦労さまだと思う次第でございます。  このまとめに当たりまして、一方では消費者トラブルの解消を願っておられる消費者の方々、他方訪問販売通信販売業界の代表の方々、あるいは弁護士の先生方、学識経験者等々、多数の方々のかなり幅の広い異なった意見あるいは方向の違った意見を取りまとめられるに当たりまして、大変御苦労されたと思うわけでございます。最初、先生のお話にございました国民生活あるいは国民経済の中に訪問販売あるいは通信販売というものを健全な形で組み込むことが大事である、それと同時に他方消費者の保護も十分にやっていかなければいけない、その間におきまして適切なバランスをどこにとるかということで大変御苦労をしたと思うわけでございますが、どういう点に一番御苦労されたのか、その点につきましてまずお伺いをしたいと思います。
  15. 森嶌昭夫

    森嶌参考人 森嶌でございます。  尾身先生の御質問ですが、苦労したところはたくさんございまして、特に法改正前提と考えておりましたので、単に政策的な提言をするということでなくて、実際に法律的に文言に書けるようなものになるかどうかということもにらんでいかなければいけないということでございまして、行為規制をする場合に、いろいろな悪質な行為があるわけですが、その規制に違反をした者については罰則をかけるとかあるいは行政命令をかけるということでございますので、逆に申しますと、要件が非常に緩やかですと、政府が故意に乱用するとは思いませんけれども、それが乱用される危険もあるわけですので、その点で行為規制をどういうふうに考えていくかという点が一つの大きなポイントであったかと思われます。  そのほか、先ほど兵藤参考人からもお話がありました解約権の問題等について、これは法技術的に非常に面倒なことがございますので、御質問があれば詳細にお答えいたしますが、これについても検討いたしましたけれども、最終的にはこれをとらないということにいたしました。  ほかにもございますが、行為規制それから私法的な取り消し権の問題が問題だったかと思います。
  16. 尾身幸次

    ○尾身委員 今、先生のお話の消費者の解除権とかあるいは中途解約権の問題なのでありますが、この訪問販売法の中のクーリングオフ規定は、いわゆる契約自由を一つの原則としております民法の特例法といいますか例外規定であるというふうに考えているわけであります。さっきの消費者解約権とかあるいは中途解除権というようなものを導入することに対しまして、そういうことを導入した方がいいのではないかという御意見もありましたが、そういうことに対しまして、この取りまとめをされた先生の御意見をお伺いさせていただきたいと思います。
  17. 森嶌昭夫

    森嶌参考人 これもどういう事項を取り消し権の対象にするかということでございますが、一つは形式的な違反に対して取り消し権を行使できるようにする。例えば文書の交付ですね。氏名とか商品とかそういうことを書いた文書を交付する、それに違反をした場合には取り消しができるという考え方がございますけれども、これは要件がはっきりしているという点では取り消し権の対象として考えてもよいわけでございますが、果たして文書の不交付だけで私法上の効果も否定するようなことを考えてもいいかどうかという、そこは政策的な判断も含まれますけれども一定行政的な規制文書をちゃんと渡しなさい、それに違反をしたということだけで全体の取引を取り消し得るかどうかという点が問題であります。  それから実質的な行為について、その行為が悪質であるからとして取り消しを認めるという場合に、問題はどういう行為が悪質な行為と考えるかということでございまして、例えば執拗に勧誘をするとか長時間にわたって居座るというようなことを仮に要件にいたしますと、結局、消費者の方では執拗であった、長時間であったとして取り消す、他方業者の方ではそういうことではないと言う。そういうある程度要件がはっきりしない、価値判断が入り得るというようなところでは、消費者の方では取り消したつもりでいても、客観的には、あるいは裁判所に行ったときにそう長時間ではなかった、執拗ではなかったということになるかもしれない。つまり、本来紛争を解決するための方法が、要件がはっきりしないような取り消し権を認めることによってかえって紛争を激化するということもあり得る。そうだとしますと、取り消し権を仮に認めるとすればかなり要件をはっきりとして、しかも実質的に取り消してもやむを得ないような内容を持っているものでなければならない。  それにつきましては、私はそういう技術的なコンストラクションが全く不可能だとは思っておりません。将来研究をしていけば可能かと思われますけれども、現時点では私は、例えば社会党案で出ておりますものについては、一方では形式的な問題について取り消しをすることは妥当かどうかという判断の問題がございますが、実質的に例えば不実なことを述べる、あるいは威迫をして困惑させるということは、民法上の詐欺、強迫という要件で、あるいは少しずれるところがあるかもしれませんけれどもカバーできるのではないかという点で、当面取り消し権という技術構成は無理だというふうに考えました。
  18. 尾身幸次

    ○尾身委員 私、今先生のお話を伺ってなるほどというふうに思ったわけでありますが、もう一つの議論をされておりますポイント、先ほど来も議論されておりますが、いわゆる開業規制の問題であります。訪問販売事業あるいは通信販売事業に登録制を導入すべきである、あるいは社会党案では届け出制が提案されているわけでありますけれども、こういう形の提案に対しまして先生のお考えをお伺いしたいと思います。
  19. 森嶌昭夫

    森嶌参考人 問題のある業者について開業規制をするということは、先ほど兵藤参考人にもありましたように例があることでございますし、また訪問販売について外国でそういう一定の届け出等、あるいは登録制を要求するという例もございます。ただ、我が国の例で幾つか、例えば貸金業取り締まりとか宅建業法とか旅行業法というのがございますけれども、それでは登録をすることによって被害がなくなるのかということでございますが、これも因果関係についてはっきりはいたしませんが、依然として宅建業界被害が絶えないということは周知のとおりでありますし、ドイツにおいては登録制をとっておりますけれども、これによって被害は減っていないのではないかというふうに評価されております。     〔委員長退席奥田(幹)委員長代理着席〕  問題は、仮にそうだとしてもあった方がいいではないかということになるかと思いますけれども訪問販売の場合には先ほどから出ておりますように非常に多様な形態を持っておりまして、大きいのもあれば小さいのもある。それから場合によっては個人もある。しかもいろいろなものを売っている。しかも、必ずしも長年やっているのではなくて不定期にやるという場合もありまして、そうだといたしますと、そのような業者を登録するにしても届け出させるにしても、要件をそろえるとすれば、これも社会党案のように氏名とか住所とか比較的簡単なものにならざるを得ない。その届け出をさせることのコスト、これは行政コストも含みますし、業者のコストも含みますし、それから実際に訪販業者のようにかわるたびに一々それを登録がえしなければならぬということになりますと、そのコスト等を考えて、効果から考えてみてその意味でのコストが大き過ぎるのではないだろうか。  私は開業規制の可能性について全く否定するわけではありませんけれども、それよりもむしろ、先ほど申し上げました行政官庁が報告を徴するとか立入検査を行うという問題が生じたときに、直ちに行政庁がリアクトする方がより効果的ではないだろうかという観点から、この点につきましても開業規制は現時点ではとる必要はないというふうに考えました。
  20. 尾身幸次

    ○尾身委員 どうもありがとうございました。  次に、日本訪問販売協会小宮山参考人にお伺いをさせていただきます。  今、森嶌先生からいろいろお話があったわけなんでありますが、私は、日本経済あるいは国民生活の現状及び将来を考えますと、先ほども申し上げましたように、訪問販売あるいは通信販売を健全な形でやれるような体制をつくる必要があるというふうに思っているわけでございます。  そういう状況の中で、今回消費者保護の徹底を図るために、例えば住居以外の場所における現金取引への書面交付の義務づけの問題とか、クーリングオフ制度現金取引に適用するというふうに拡大をすることに加えまして、さっきお話のありました行為規制、不当行為の禁止の規定とか業務改善の指示業務停止命令あるいは報告徴収、立入検査というような規制行為規制という形で強化をする、そしてまた監督官庁のかなり厳しい監督権限をこの法律で与えるわけでありますが、そういう厳しい規制を受けることによって健全な訪問販売を行っている方々が事実上、実態として仕事ができなくなるというか、非常に障害が生じてくるというおそれも他方あると思うわけであります。そういう意味で、消費者に対する悪質な販売行為というものは、これはまた徹底的に規制をしていかなきゃならないわけでありますけれども、その点について訪問販売協会としてこういう規制の内容をどういうふうに受けとめておられるか、その点をお聞きしたいと思います。
  21. 小宮山宇一

    小宮山参考人 お答え申し上げます。  当協会が発足したのは昭和五十五年でございます。七年くらいでございまして、協会としてはまだまだ機能的にいろいろなことができないわけでございますけれども、今回の訪問販売法のいろいろの内容につきまして我々業界として検討したわけでございますが、行為規制が具体的に決まったことや、それからそれに違反した場合の罰則等が強化されている、さらに現金決済の場合のクーリングオフ導入等々、業界にとってはいろいろな面で影響がございます。非常に残念ですが、悪質業者が一部恒常的に存在しているという、これは世の中でそういう連中は幾ら退治しても退治できないような場合がございます。そのような連中のために、健全に訪問販売を進めている企業、零細企業まで含めまして、今回こういう規制をされることは大変残念だと思います。  しかしながら、我々としても商売をやっておりますので一般の消費者の方々から支持を受けるような、信用を得るような行動をこれからとっていきたいと思います。協会の中に先ほど申し上げましたように倫理綱領を設けまして、委員会を設けて、それから協会員であるというPRも盛んにしまして、少なくとも協会のメンバーである企業、あるいはそれに所属する団体、セールスマン等は、今回の法の改正の趣旨を十分認識して行動していかなければならぬ、やむを得ない状況ではないかというふうに私は考えております。
  22. 尾身幸次

    ○尾身委員 今の質問と同じ内容の質問でありますが、通信販売協会の綾参考人にお伺いをさせていただきます。  新しく導入された行為規制を中心とする新しい形の規制というものが、これからの通信販売業界にとってその発展を、いい意味ではなく悪い意味で阻害するし、そして長い目で見た国民のニーズに対応したような業界の発展ができなくなるというような懸念はないのかどうか、心配であります。私は昔、アメリカにいたことがありますが、通信販売は実はアメリカで大変盛んでありまして、我が国と比べましても大変発展をしているわけであります。そして、それなりに国民のニーズに対応しているというふうに私は思っております。そういう現状を踏まえまして、将来展望とその法規制につきまして、もちろんさきのいろいろなお話にあります悪徳業者をどうしても退治をして消費者保護を図っていくということが必要でありまして、私は基本的にはこういう規制は必要であるというふうに思っておりますが、業界の代表として綾さんにその辺についての感じをお聞きしたいと思います。
  23. 綾元文

    ○綾参考人 通信販売協会といたしましては、設立のときから基本的に自主規制で我々の会員を指導して、健全な通信販売の運営を行いたいというふうな考えでおります。しかし、いろいろな点でアウトサイダー的な方もいらっしゃいまして、協会だけの力ではできないこともございます。そういった意味で、今回の法規制で最小限度に規制されることは否めないこともあると思いますが、将来的には、我々自分で広告関係もガイドラインを設けておりますし、それからそういった加入関係も、悪い場合は除名とかあるいは会員停止等を行っております。  また、苦情等におきましては、大体年間六千五百万件ほど商いをしておるのですが、そのうち消費者センターあるいは通産省相談関係に参っているのは百件から数千件で全体の〇・〇一%というような、一応数字では少のうございます。そういった点で、協会の自主的な規制が割と浸透されつつあるのではないかと思っております。  そういった点で、先ほど申しましたように、アウトサイダーも含めましてある程度の広告等の規制はやむを得ないのではないかというふうに考えております。
  24. 尾身幸次

    ○尾身委員 どうもありがとうございました。質問を終わりにさせていただきます。
  25. 奥田幹生

    奥田(幹)委員長代理 次に、上坂昇君。
  26. 上坂昇

    上坂委員 参考人の皆様方には、お忙しいところをおいでいただきまして、貴重な御意見を賜りましてありがとうございます。  森嶌参考人にお伺いをいたしますが、私どもがやっているクーリングオフ期間の問題に関しまして、物やサービスを受け取った日とする場合かえって消費者が不利になることがある、こういうふうにおっしゃったのですが、ひとつどういうことなのか、例を挙げていただきたいと思います。  それからもう一点でありますが、先生は例えば通信販売なんかおやりになったことがあるかどうか。私は一年に二、三回必ずやっておりまして、今まで過去にも三回返品をしたことがあります。  それからもう一つは、クーリングオフが過ぎてしまって返せなくなってからそれを使ってみたら大変困ってしまって、こういう品物を売っているようでは社会的な信用を失うだろうからということで、その業者のところに参りまして忠告をいたしまして、その品物は返品でなくておたくの方で試してみてください、こういうものでは非常に困るんじゃないですか、こういうものをお売りになっているという忠告を申し上げたようなこともございます。そういうことを実際に何回もいろいろやっているわけであります。バスローブの場合も贈ったことがあります。贈ってしばらくたってから、その贈った先の人に会いましたら、ここのところが悪い、あそこのところが悪いといって指摘をされたこともあります。アメリカと違いまして、日本の通信販売における商品開発というのはまだまだ非常に未熟なところがございます。非常に努力をしておられることについては私はよく知っておりますけれども、そういう点があります。したがって、カタログ販売のとき、カタログを見てやるわけですから、実際に品物を手にとって使ってみないとなかなかわからぬという問題があることも事実であります。したがって、私ども通信販売にもクーリングオフが必要だ、こういう考え方を持ったわけでありますが、その辺についてお答えをいただきたいと思います。  もう一点は、勧誘規制とかいろいろやりますと過剰規制になる、過剰規制というのがどうも納得がいかないのであります。それから、過剰規制と実効ある規制というのは一体どういうふうに解釈したらいいのか。被害者が余りにも多いという形は、やはり被害者の立場に立つという観点がなければ、私は悪徳業者を駆逐することはできないのではないか、こういうふうに考えますので、先生の御意見をいただきたいと思います。
  27. 森嶌昭夫

    森嶌参考人 それでは、お答えいたします。  クーリングオフ期間が延びることによって不利になる例はどういう例があるかということですけれども、例えば、これはまだやっていないのでわかりませんが、理屈の上で考えた場合ですけれどもサービス提供した後にクーリングオフができることになりますので、そういたしますとクーリングオフの効果として、業者サービス提供してもそれに対して対価を要求することはできないことに、現在提案されている社会党案政府案も両方ともそうなっておりますので、そういたしますと、業者の方としては危なくて仕方がないわけですね。それで提供しないということになりはしないか、その点に不利な点があるのではないかと申し上げたことでして、必ず不利になるということではございません。そういうことも考えられるということでございます。  それから二番目でございますが、私も通信販売を利用したことはございますけれども、極めて限定をされておりまして、リトグラフという絵画なんかですので、これはよくても悪くてもこちらの目が悪いだけのことですので、あるいは高いのかもしれないし安いのかもしれませんけれども、身から出たさびだと思って苦情を申したことはございません。  私もアメリカに長く生活したことがございますが、アメリカでは割合返品ということをきちっとうたっておりまして、日本でも現在、例えば期間だとか方法とかについて、具体的な商品に適切な返品制度をお考えのようですので、一律にクーリングオフによってそれをカバーするというのではなくて、個々の商品に合った適切な返品制度というものが早急にできればよい、自主的にできればよいというふうに考えております。  それから、過剰規制という言葉ですけれども過剰規制というと何か警察が盾を持ってぐっと押していくように見えますけれども、そういう意味ではございませんで、規制をしているコストが非常にかかる割合には効果が上がらないという意味でございます。例えば社会党案でございますけれども訪問販売の際に全部の業者に対して文書を交付するということになりますと、確かに文書を交付した方がわかりやすいかもしれませんけれども、訪ねていくたびにいつも全部文書を出していかなければならないということは、申し込みをするときとかあるいは契約を締結するときに、現在の政府提案あるいは社会党提案両方でいずれ文書は交付されることになっておりますので、そうすれば、その前にもう一度交付することはないではないか。その意味で過酷な規制というよりも、むしろ効果から考えてみた場合に過剰ということを申し上げたわけでして、そのことの逆がいわば実効ある規制というふうに考えております。  もちろん、被害者の立場に立ってということを考えなければなりませんけれども、立法する場合には、その一定規制が乱用されるということも考えなければならないわけで、先ほど参考人のお話がありましたけれども、何とかわがままでない消費者の中途解約を認めたい、これはおっしゃるとおりでわかるわけですけれども、それでは、中途解約権を無条件に認めた場合に、わがままな消費者がもう要らないと言った場合に、それでも法としては認めざるを得ないということになるわけですので、私としては、実効性ある規制ということは、被害者の立場を忘れて議論していたというふうには思っておりません。
  28. 上坂昇

    上坂委員 開業規制の問題でありますが、私たちは、問題が起きたとき実態的な把握がすぐできるということが一番もとになって、そういう方向をとっているわけでありますが、そういうことで登録制とまでもいかなくても開業届けをするという形の届け出制にしたわけでありますが、そのコストという面につきましては、こういう意見を私は持っております。例えば、訪販協会の人を呼んでも必ず名刺を出します。何かカタログを持ってきてくれませんかと言うと、大変立派なものを持ってまいります。みんなそれぞれコストをかけているわけですね。自分の商品を売ってもうけるわけですから、これだけのコストをかけなくちゃいけない。開業規制で届け出るくらいのことはなんでもない。こんなのはコストが過剰になるなんというふうには絶対私は考えないので、やはりそのぐらいの責任と義務を果たすべきではないか、こういう観点に立っております。  そこで、兵藤先生にお伺いいたします。この開業規制を実施するということは非常にやはり大切ではないかと私は思っておりますが、これを実施することの意味においては、先ほど先生の御意見を伺っておりますが、これをどの程度の訪問取引にまで及ぼしたらいいのかというのが第一点であります。  それからもう一点は、よく主婦のパートというものが対象になって、こういう人はたくさんいるから登録ができないのだとか届け出ができないのだ、こういう論法があるわけなんです。ところが、そういうことをする人はやはり雇用形態に入ってくるのじゃないかと私は思うのですね。それを雇用形態としてつかまないならば、私はいつも言っているのですが、その前の品物を卸す人は卸業者になってしまって訪問業者ではなくなってしまうのじゃないかと思うのです。そこのところの区別が非常にあいまいになっているところに、この訪問販売の一番基本的な問題があるのではないかというふうに思うのです。そういうことについての御意見を承りたいと思います。
  29. 兵藤俊一

    兵藤参考人 私どもとしましては、訪問取引というのを悪だとは言っていないわけでございます。これはあくまでも、現状の訪問取引は弊害が大き過ぎる、したがって何とかルールづくりをしてきれいなものにしてほしいということを申し上げているわけでございまして、決してこれを禁圧するとかあるいはやめてしまえというようなことを申しておるわけではございません。まず、その辺を十分御理解いただきたいと思っておるわけでございます。その一つのルールづくりの大事な問題点が開業規制だというふうに考えているわけでございます。  この開業規制を登録あるいは届け出にするにしましても、その基準をどうするのかということが絶えず問題になろうかと思いますけれども、この開業規制をかける対象となるのは、まず訪問取引を営む者、これはもう当然だろうと思います。そして訪問取引を営む者をさらに支配している者、若干上から統括している者というようなものを、やはり含めるべきであろうというふうに考えるわけでございます。  具体的にいろいろ問題はあろうかと思いますけれども、いわゆる訪問取引業を直接営む者は一応わかるといたしまして、それを支配している者はどういう関係の者かということになると思うわけでございます。この支配関係につきましては、日弁連におきましてもそれまでいろいろ検討してきたわけでございますが、いわゆる訪問販売法十一条に統括者という規定がございます。これは連鎖販売取引規定でございますけれども、その統括者に大体照準を合わせたらいいのじゃないか。訪問取引業を直接行っている業者は当然開業規制の網がかかる、さらにそれを支配している直接の業者についてもやはり広げて網をかけるべきだ。それについての基準は、一応訪問販売法十一条あるいは商品取引所法四十七条の二の第二項にいわゆる支配関係法人というのがございまして、役員をたくさん派遣しているとか資本をたくさん出しているというところの会社にまで網をかぶせるべきではないのかというふうに我々は考えておるわけでございます。具体的な業者の名前とか業態を挙げるのはちょっと差し控えさせていただきたいと思いますが、大変抽象的で申しわけございませんけれども、そういうある程度の基準さえはっきりすれば、そう難しいことではないというふうに考えております。  それからもう一つ、かなり例外規定を設けていく必要があろうと思います。先生のおっしゃいましたように、いわゆるパートタイマーというような人に一々網をかけていくということは大変だろうと思います。それから近隣の小売業者、例えば近所のおまんじゅう屋さんだとか電気屋さんだとか、最近は店にいても売れないから訪問販売に打って出るというのがございます。ですから、そういう近隣の人たち、顔見知りの業者が、絶えず行き来しているような業者訪問販売をする、これに対して開業規制の綱をかけるというようなことは必要ないと思います。それはある程度の信頼関係がありますし、店舗がどこにあるかということもわかっておるわけですから、そこまで広げる必要はなかろう。ですから、かなり例外は認めていいのじゃないか。その例外の基準は何かとおっしゃいますと、現行訪問販売法の十条、いわゆる恒常的に訪問販売を行う者でしかも弊害のない者、これをある程度類推適用していってかなり例外を設けていったらどうだろうか。そうすれば非常にやりやすいというふうに考えておるわけでございます。     〔奥田(幹)委員長代理退席、委員長着席〕  それから、先生の御質問の第二点のパートタイマーでございます。これは一部、開業規制の難しい点としてパートタイマーをどうするのだという指摘がございますが、これは私としてはちょっと誤解があるのじゃないか。パートタイマーのいわゆる勧誘員、この雇用関係を重要視しまして、パートタイマーにいたしましても独立の委託業者というような形で独立の商人のような形態はとっておる場合がございますけれども、実質はこれは従業員でございますね。ですから雇用関係がある。先生の御指摘のとおりでございまして、雇用関係があるという場合は訪問販売業者にいわゆる登録員として登録させる、そしてこれを通産省の方へ提出させるというような形で、一つ訪問販売業者を仲立ちにいたしまして勧誘員登録という形にすれば、現在でもこれはほとんどやられておりますね。勧誘員登録証を持って訪問販売に来ている場合が多うございますので、それはもうそう難しいことではない。パートタイマーをどうするのだというのは非常に議論がありましたけれども、私はそれほど神経を使う必要はないのじゃないかというふうに考えておるわけでございます。
  30. 上坂昇

    上坂委員 小宮山参考人にお伺いをいたしますが、私どもも訪販業界の正常な発展を非常に願っておるわけであります。むしろ、今社会的な評価が落ちているわけでありますから、これの信頼を回復しなければならないというふうに私は思うのです。そういう意味で、皆さんの業界が正常に発展されることは結構なんですが、どうもときどきとんでもないのが起こってくるわけです。ところが、なかなかこれがつかめないわけであります。それを皆さんがつかもうと思っても、アウトサイダーでどうにもならないというものは、やはり通産省なり何なりの法的な規制の中でこれを把握するしかないであろう、こういう意味で私たちは届け出制というものをつくったわけであります。  私どもの考えている届け出制というのは、非常に簡単なものであります。何の商売とか住所と代表者の氏名ぐらい書いて出せばいいわけですからね。それでそれを扱うのは行政段階でありまして、これは幾らでもできるわけです。これについてどうしてこれに反対されるのか、どうも意味がよくわからないということであります。  それからもう一つは、先ほど森嶌先生がおっしゃった勧誘員にカードを持たせるというようなことは、こんなのは必ずやらなければならないことだと思うのです。勧誘する人が名刺も持たないでただ行ってやったのじゃ信用されるわけがないので、本当に自分のところの信用ある品物を売るとするならば、名刺で自分がどこの会社に属して何を売っているかぐらい、日にちを入れるぐらいのことは、こんなのは持たしてやるのが当たり前の話であって、どうせカタログのこんな立派なものを持たせてやるのですから、そういうことはできないわけがない。そういうのをコストに入れたからといって僕は大した問題ではないと思うのですが、その点についていかがでしょうか。
  31. 小宮山宇一

    小宮山参考人 今先生のおっしゃいました、まず最初の登録制でございますけれども、我々が訪販協会で調べた範囲でありますと、やはり一般の企業のセールスマン、それから団体加入の小さな企業のセールスマンというものは無数にございます。現在私どもで把握している範囲は、当協会に入っているのが百八十六社ございます。そのうち正会員が百二十二、うち団体が十九団体ございます。それから準会員が五十六社、賛助会員が八社、こういうことで総数百八十六社でございまして、大体我々が、先ほど申し上げましたように、登録証を発行しているセールスマンは九十一万、それからいわゆる団体に加入している小さな会社といいますか、小さな訪問業者は約千から千五百というふうになっている。多少流動的でございます。そういう方々のいわゆる届け出制でございますかをやりますと、実はしょっちゅう異動があるということがまず一つあります。ですから、把握するのに常にそれを、異動の把握というものが大変な膨大な数になるのではないかと思います。  それともう一つ、私たちが非常に懸念していることは、先ほど消費者協会会長さんでございます参考人の方が申しておられたと思いますが、キャッチセールスのときに化粧品業界では自主規制をしてそれをなくしたということ、私は、物事はすべて法律だけで規制をするということは不可能だと思います。やはり我々一般の者が、法律の趣旨に沿って社会から指弾を受けないようなことをしなければいけない。  そこで、我々が考えていることは、実際には自主規制でございます。自主規制をやるにはどうかというと、今回は訪問販売協会法律的にも非常に確たる地位を築いていただいたわけでございますが、そういう意味で、訪販協会に入っているものはとにかく正しい活動をしているのだというPRを先ほど申し上げましたようにやっていく。届け出をしますと、あるいはそれを政府の認可というふうなことでありますと、宅建業界を例にとると非常に恐縮なんですけれども、悪いことをするものはすぐ名前を変えたり、また一般の消費者のところへ行っていろいろな話をするときに、政府の保証があるんだとか、うちは政府から認可されているんだというふうなことも勝手に使います。今でも、例えば先ほどの話にありました消防の消火器の話でも、我々が調査した範囲だと、消防署の方から来た、あるいは消防署の職員に似たような制服を着たという、これは全く私たちに言わせると詐欺行為でございます。そういう意味で、お墨つきを上げるという、お墨つきかどうかわかりませんが、許可証を持つということは、あたかも正業であると。そこで我々は、自主規制の中で、我々の訪販協会が本当の意味の自主規制をこれからやろうというふうに考えております。
  32. 上坂昇

    上坂委員 時間が参りましたから私の質問は終わりますが、三村参考人に、今までいろいろ指定商品の問題、たくさん疑問の点があったと思うのです。そういう点を意識しまして、これはきちんとこの法律を制定する段階で明らかにしていって、そして皆さんが仕事のやりいいように私たち頑張ってまいりたいと思いますので、御了解をいただきたいというふうに思います。  また、通信販売につきましては、非常にこれからますます伸びる企業であろうと思いますので、我々も十分皆さんの意を体しながら行方を見守ってまいるつもりですので、頑張っていただくことをお願いいたしまして、質問を終わります。
  33. 渡辺秀央

    渡辺委員長 続いて、二見伸明君
  34. 二見伸明

    ○二見委員 公明党の二見伸明でございます。五人の方々から大変貴重な御意見をいただきまして、本当にありがとうございます。  最初に、先ほどいろいろ議論のありました契約解除権につきまして提案されております兵藤参考人、それからもし御意見があれば小宮山さんの方からもこれについて伺いたいと思います。  実は、私もこの契約解除権というのは注目して、研究してみる課題かなという認識を持っておりますけれども、いただいた資料を拝見いたしますと、例えば訪問取引業者がいわゆる禁止行為に違反した場合「消費者はその契約を解除することができる。」そうして「前項の場合、訪問取引業者契約に関連して金銭を受領しているときは、消費者に対し、すみやかにこれを返還しなければならない。」さらに「訪問取引業者は既に商品が費消若しくは使用され、役務提供され又は権利が行使されたときにおいても、消費者に対し、その費消若しくは使用された商品又は提供された役務の対価その他の金銭又はその権利の行使によって得られた利益に相当する金銭の支払を請求することができない。」これは非常に厳しい内容になっておりまして、これは善良な消費者立場から見れば、非常にすばらしい規定だというふうに思います。  しかし物事には、盾にも表と裏がございまして、悪質な消費者から見ればこの規定は逆用できますね。例えば自動車を、訪問販売に来たから買った。それで一年間乗って、そういえばあのときおまえは早朝に来たじゃないか、夜遅くまで粘って売っていったじゃないか、それから銀行も世話してやると言ったじゃないか、これは禁止行為に当たるからこの契約は解除だ、こういう逆用もできますね。法律というのはそういうものだと思います。その点をどういうようにお考えになるか。業者にしてみれば、品物は売ったけれども、日弁連の方では二年間ですね、二年間はこの品物が本当に売れたんだか売れないんだかわからないということなのですね。実際、今度裁判ということになりますと、長時間いたとかいないとか、あるいは書面を出したとか出さないとかというその行為というものは、立証が非常に難しいですね。ですから、そこら辺を提案者としてはどういうふうにお考えになっているのか。そうしませんと、よかれと思ってやったことが悪用されることになりますと、これは商取引の秩序を乱すことになりますし、そういう点についてはどういうふうにお考えになっているのか、これを提案された兵藤さんから承りたいのと、業界としてはこれをどうお考えになるか、御意見を承りたいと思います。
  35. 兵藤俊一

    兵藤参考人 お答えいたします。  私ども日弁連といたしまして、解除権を行使した効果というものにつきましてはクーリングオフと一緒だというような考えを持っておるわけでございます。そして、期間を二年というふうに一応考えております。社会党案はたしか一年ではなかったかと思うのですが、その辺の法的安定性の問題はあるかもしれませんけれども、私どもの基本的な考え方は、いわゆる悪質業者の禁止行為違反に基づく契約については、やはり本質的に被害者が救済を得られるような権利を与えておかなければならぬじゃないかというところがまず第一に表面にあるわけでございます。  したがいまして、もしその消費者が悪い心を起こして、一年なり二年たってから解除権を行使するというような場合であっても、それが本当にいわゆる禁止行為違反であったら、これはそういう場合も、むしろそういう場合、禁止行為に違反した場合こそ解除権を行使されても業者としてはやむを得ないんじゃないかというふうに考えて、そこまで踏み切らざるを得ぬだろうというふうに考えて意見書を作成したわけでございます。ですから、確かに御指摘のとおり、争いになりまして訴訟になりまして、一体禁止行為違反かどうかというようなことで、あるいは最終的に禁止行為違反でなかったということになれば、これはやはり消費者の方にそれなりの制裁が行くのではないかと考えるわけでございます。
  36. 小宮山宇一

    小宮山参考人 ちょっと風邪を引いておりまして声が出ませんで、大変失礼します。  今先生のおっしゃられましたクーリングオフの件でございますけれども、今回は非常に厳しく現金のクーリングオフまで対象になって、いろいろと問題があると私が先ほど申し上げましたが、実際には商売というのは、現金のデリバリーがありますと普通それで完了でございます。しかし今回は、先ほど幾つか例が出ましたようなことでクーリングオフをやるということですが、実際には消費者すべて善ではございません。悪い消費者もございます。  一つの我々の例から言いますと、最近サラ金で非常に苦しんでいる消費者がございます。その人たちが月賦で買いまして、すぐ入質してしまう。それはどういう方法でそれをやるかというと、サラ金業者がどこどこの企業はうまくいくよというふうなこと、いわゆるあたかも善良な消費者を装って取り込み詐欺といいますか、そういうふうなことがしばしばございます。それと同じように、消費者が使って不便であれば、普通の場合は信用ある企業あるいはデパートでも、二日や三日なら品物を持っていって返せば自分のところの信用によってお金を返します。契約したんだけれども、そういう事情ならばお引き取りしましよう、これが普通でございます。ですから、本来はその企業の責任においてクーリングオフをやらなければならない。  ところが、今回の現金までのクーリングオフあるいは品物についてもいろいろな問題が出ているということは、悪い業者がいるんだ、これを駆除するということは大変難しい問題ではないかと私は思います。大概うまいことを言って持ってきます。先ほど参考人からお話があったように、銀行まで一緒に行ってお金を取るなんということは、我々の普通の商売では考えられません。訪問販売をやっているからそうであるのではなくて、その商売をやる人たちは、あらかじめそういう予断があってやっているのじゃないかと思います。  ですから、私たちが一般の正しい企業活動をし、正しい経済活動をする我々の業界というものは、やはりそういうものは当然排除しなければなりません。私は先ほど何遍も申し上げますように、排除の方法としては、それぞれ消費者も自覚していただくし、我々業界としても自主規制の中でそういうものを排除していく。だから、端的に言いますと、訪問販協に入っていない業者はもうだめなんだ、悪であるという印象まで、極論でございますが、持っていければ私は大成功だと思います。
  37. 二見伸明

    ○二見委員 実は、訪問販売のいろいろな被害を受けた消費者の方々とお話をしておりまして出てくる話が、いわゆるキャッチセールスですね。キャッチセールスはぜひとも禁止してもらいたいという強い要請がございますし、私もキャッチセールスはけしからぬと思っております。できれば禁止をして、禁止をするというのは、法律に書けば、罰則がなければ禁止になりませんから、訓示規定ではなくて罰則も直罰を科して、キャッチセールスを禁止したいと思っております。化粧品の関係の方では倫理規定として、キャッチセールスをやってはいかぬということがありますね。団体としての倫理規定キャッチセールスはいけないと書くのは差し支えないんだけれども、どうも研究すればするほど、法律に書いた場合に、これは兵藤先生、法律の専門家ですから伺うのですけれどもキャッチセールスは禁止、これを犯した者は罰則といきなり法律に書いた場合、憲法との関係はどうなりましょうか。そこだけが私、非常に気がかりなんです。路上で勧誘をしてはいけない、ただそれだけでもって、本当にこんちくしょうと思うけれども罰則でというのは憲法上あるいは刑法なんかと並べて、どういうことになるのかなと思っておるのですけれども、御意見を承りたいと思います。
  38. 兵藤俊一

    兵藤参考人 今回の訪問販売法の規定によりまして対象キャッチセールスまで広がった、あとアポイントを政令あるいは省令で指定するというような意向があるというふうに聞いておりますけれども、少なくともキャッチセールスにつきましては要するに規制対象として認知したということでございますから、訪問販売法の一つの形態として認める、こういうことになるのだろうと思います。ですから、キャッチセールスをした場合は訪問販売法の今度の改正案についての規制を受けますよ、こういうことになるんですね。ですから、キャッチセールスを禁止行為だというふうにはしていないわけでございます。  ですから一つのルールづくりという形では、キャッチセールスがその対象になってきたということで前進だろうと思うのですが、先生御指摘の、キャッチセールスはいかぬ、これをした場合には罰則あるいは行政処分というようなことでございますけれども、やはり営業の自由といいましても公共の福祉という一つの枠がございますので、憲法上営業の自由あるいは職業選択の自由というのは当然でございますけれども、やはりその裏腹として公共の福祉に反しない限りというような一つの枠がございますから、いわゆるキャッチセールスで、目的を秘してしつこくつきまとうというようなことで購入意思あるいは意思決定の自由をほとんど奪ってしまうようなやり方が商法として認められるかどうか、その辺はやはり考えなくてはならないところがあろうと思います。  ですから私としては、現行のキャッチセールスはやはり禁止すべきではなかったかと考えておるわけでございます。したがいまして、現在のこの改正としては、対象となったという点である程度のルールづくりはできるということでやむを得ないかなという気はしますけれども、本当は禁止行為の方へいくべきではないかというふうに考えておるわけでございます。
  39. 二見伸明

    ○二見委員 私もその点については、もう一つ憲法との関係から可能なのかどうかということは、やはり研究はしなければならぬというふうに思っております。  それから、三村さんにお尋ねいたしますけれども、昔石川五右衛門が「浜の真砂は尽きるとも世に盗人の種は尽きまじ」と言いまして、どんなに法律の網の目を小さくしても、その網の目をかいくぐって悪いことをするやつはするのですね。だから困るわけで、そうなると自衛手段というのは消費者が賢くならなければいかぬ、これがやはり最終的な解決方法だと私は思います。それを、現場でいろいろな相談を受けていらっしゃる三村さんとしては、そうした消費者教育といいますか、これをどういうふうにお考えになられますか。そこら辺がきちんとしないと、法律だけでは悪質業者被害を根絶するということは無理なんじゃないかなというふうに思うわけですけれども三村さんの御意見はいかがでございましょう。
  40. 三村光代

    三村参考人 私も、先生お考えのとおり消費者が強くならない限りは自衛できないというふうに思っているのですが、現実は——消費者は裸でもいいのじゃないかというのが、私は本論はそう思っているのです。消費者が裸であっても守られていくのが当たり前のことじゃないかと思うのですが、今の実態では消費者が勉強することが大切だと思うので、きょうお配りしましたピンク色のあれは消費者啓発につくったパンフレットですが、ああいうものが出るとすぐあれの裏をかくのが出てきまして、実際のところは出しただけまたマイナスになって、またこちらもその上手をいかなければならないという結果になるのですが、今の実態では、だれかがやはり消費者教育をやっていかなければいけないので、やはり一日も早く学校教育の中に入れていただきたいというふうに思っております。
  41. 二見伸明

    ○二見委員 開業規制の話がありました。我が党では二つの意見がありまして、例えば日弁連に所属している冬柴鉄三代議士だとか中村巖代議士は、登録制、開業規制をがっちりやれ、我が党内でこういう強い意見がありまして、ただ一方、それはわかるけれども、そして開業規制をやった場合に一定の効果、悪徳な業者がそんなに面倒くさいのならやめようかという意味で、参入してこないという意味での効果はあるかもしれないけれども、かえって登録免許証を持っているのだぞということでお墨つきを与えるから、結果として意味ないのじゃないかという意見と二つありまして、党内まとまっておらぬわけです。目下検討中ということになっております。  ただ、率直に言わせてもらいますと、資料を拝見いたしますと、開業規制でも政令で除外をしますね。除外規定、例えば国または地方公共団体を除外していますね。それから銀行法や保険業法で指定されたものも除外していますね。例えば、郵便局の局員さんが簡易保険のセールスに来た。生命保険の保険屋さんがセールスに私のところに来ます。選挙のときにあなたに入れたんだから入れと来る。それは訪問販売であることには間違いありませんね。そうすると、なぜこれが除外で、なぜこれが対象になるのだというこの境目で議論になりますね。去年売上税がつぶれた一つの理由は、非課税品目をやったものだから、わけがわからなくてなったという説もあるぐらいですから。そういう、なぜこれが除外でなぜおれのところは適用になるのだという、この利害というものは必ず出てきますね。そこら辺はどう思いますか。  私は、端的に言って、例えば郵便局の局員さんが簡易保険の勧誘に来るのは適用除外だというのは、自動車のセールスの人にしてみればおかしいじゃないかと率直な疑問が出てくると思いますが、そこいら辺はどういうふうに整理されますか。
  42. 兵藤俊一

    兵藤参考人 お答えいたします。  銀行とか保険会社が勧誘する、訪問販売であると思いますね。ですから、こういう場合はいわゆる銀行法とかその他のいわゆる規制がございまして、そちらの方で国の監督が行き届くというようなことがございまして、そこまでは規制をする必要はないんではないか、要するに例外規定の方でいいんじゃないかということを考えますし、同じような理屈から、郵便局の場合は国がやるというようなことになりますと、国または地方公共団体の行為ということで例外規定というところへいくのではないかというふうに思います。やはり弊害があるかないかというところである程度区別していくより仕方がなかろう。自動車会社、民間会社のセールスマンが、郵便局は何だ、全然登録も何もしないで自由にやるのはけしからぬということがあるとしましても、被害の出る可能性がない、少ないというふうなことについては、ある程度例外規定として行っていくより仕方なかろう、やむを得ないというふうに考えておるわけでございます。
  43. 二見伸明

    ○二見委員 以上で終わります。
  44. 渡辺秀央

    渡辺委員長 続いて、青山丘君。
  45. 青山丘

    ○青山委員 民社党の青山であります。私からも質問させていただきます。  参考人の皆様方には、大変貴重な御意見をありがとうございました。  まず森嶌参考人にお尋ねをさせていただきたいと思いますが、森嶌参考人は御承知のように訪問販売等問題研究会の座長として、この一年間訪問販売通信販売、これらの現状についてよく検討をいただいてまいりました。また消費者トラブルの実態についても把握をし、検討していただいてきたところであります。そうした立場からこの研究会報告書を取りまとめいただきましたし、産構審のメンバーとしても答申の取りまとめに参画をしてこられた立場でございます。その意味で、私どもは信頼をしてお尋ねをいたしたい。  今回の法改正を、率直にどのように評価をしておられますか。また、例の研究会報告あるいは答申の提言、これらがどのように取り入れられていると受けとめておられますか。
  46. 森嶌昭夫

    森嶌参考人 お答え申し上げます。  今回の改正法案は、基本的には報告書並びに答申案をすべて受け入れていただいたものというふうに考えます。ただ、法律上の制約から、例えば禁止行為などについて私が個人的に考えていたものと少し違った書き方がなされているところもありますけれども、これは法律の要件としてどう書くかという問題でございますので、実質的な内容は、私は、政府答申案を忠実に守られたものだというふうに理解しております。
  47. 青山丘

    ○青山委員 先ほど来の御意見あるいは質疑の中で感じたのですが、一体訪問販売をどういうふうに評価をしていくのか、社会的な効用をどういうふうに評価していくのか、経済的な効用をどういうふうに評価していくのか、そのあたりで法規制に対する考え方、見解が大きく分かれてくると思うのです。特に先ほど森嶌参考人からは、商業活動、消費経済活動が活発になっていくときに消費者トラブルが起きてくる、この消費者トラブルに対する解消のための過重な規制が行き過ぎてもいけないし、そのあたりのバランスが大切だとおっしゃられました。率直に申し上げて私もまさに同感でありまして、その意味である程度経済的な効用として評価を私はしてきた面もあります。その点でまた、消費生活も豊かになってきている面がある。  しかし、さりとて消費者トラブルがこういう形でどんどん出てきますと、こういう悪徳の事業、業態についてはきちっと法律で抑え込んでいかなければいけない。問題はそのバランスの問題になってくると思うのです。経済的な効用あるいは社会的な効用を森嶌参考人はどういうふうに理解しておられますか、もう一度ひとつ聞かしていただきたいと思います。
  48. 森嶌昭夫

    森嶌参考人 お答え申し上げます。  訪問販売それ自体は、それが適切に行われる限り適法なといいますか、社会的に認められてしかるべき販売行為だと私は思います。ただ、それが通常の店舗の販売などと違って、先ほど申しましたように不意打ちをする危険性がある、あるいは攻撃的になる危険性があるということから、通常の販売でしたらこれに対して特にコントロールする必要はないわけですけれども訪問販売法の考え方は、適切に行われる限り社会的に認められるべき販売方法の中で危険性のあるものをどうやって抑えていくかという考え方でできているもの、また私どもはそういうふうに考えてまいりましたので、社会的効用を認めた上でそれをコントロールしていくべきだというふうに考えております。
  49. 青山丘

    ○青山委員 先ほど中途解約権について質問が出ておりました。今回の答申の中には今後の検討事項ということで指摘をされておりますが、「開業規制等を直ちに導入することは妥当でなく、今後の状況を踏まえ、検討していくべきである」こういう答申になっておりますが、今後の検討における課題といいますか、どのような問題があると受けとめておられますか。
  50. 森嶌昭夫

    森嶌参考人 参考人は質問してはいけないということでございますが、今の御質問は中途解約ではなくて開業規制、最初に中途解約のことをおっしゃったのですが、開業規制の方をお答えすることになりましょうか。(青山委員「同時に二つ」と呼ぶ)  それでは、開業規制につきましては、先ほども申しましたように、開業規制そのものがあり得ないことだとか、ほかには例のないことだということではございませんで、訪問販売の実態、先ほど申しましたように非常に多様な、しかも多数にわたる業者を登録ないしは届け出をさせるとすれば、それは非常に簡単なことにならざるを得ないだろう。そうだとすると、先ほど上坂先生がおっしゃったように、業者がどこにいるかということをつかまえるためにのみ届け出をさせるということになるわけです。普通、登録とかあるいは届け出というのは、それを契機にして例えば定期的に報告を徴収するとか、そういうことですが、訪問販売法では、被害があって消費者の利益が害されるおそれがあるときにそういうことをするわけですので、それは必ずしも事前にわかっていなくても、問題が起きたときにわかるという状態であればいいのではないかということで、今後の検討課題と申しましたのは、それ以外に届け出の効用というのが考えられるのか。  それから、先ほどコストの面で業者のコストが出てまいりましたけれども行政コストもかなりかかると考えなければなりません。これは通産大臣のところに届け出るといっても、実際には各都道府県で取り扱うことになりますので、しょっちゅうかわるものに対して常に届け出をファイルしておかなければならないというようなこと、実際に今の政府案では届け出はさせないわけですけれども、させたとすればどういうことがあるだろうかというようなことをもう少し考えなければならないということでありまして、基本的には開業規制は必要でないという上に立って、しかしもう全く無視してしまってもいいということではない、そういう趣旨でございます。  それから、中途解約権のことでございますが、これも中途解約権をどういう要件で認めるかということとかかわるわけです。それから、中途解約権は例の預託法にもあるわけです。預託法の場合には金(きん)を預けたということにしてあるわけですが、それを返してくれといって途中で解約しても、それはただ預けた金(きん)を返してもらえばいいだけのことでありまして、業者にとっても預かっているものを返すというだけのことなんですが、役務を含む訪問販売全般について中途解約を認めるということになりますと、解約した後一体どうするのか。つまり、これは自分の意図と違ったものだからといって消費者がやめたと言った場合に、今まで使ってきたものはどうなるのかというようなことがございます。そうした損失の評価とか、それから無制限に、消費者の方で自分の意図と違うといったらやめていいのかというようなことがございまして、これはよほど要件を絞り、そしてその効果についてきちっと考えておかなければ、中途解約を認めることは、先ほどの二見先生のお話にもありましたけれども、事柄には表裏がありますので、乱用されないということを考えておかなければならない。  そういうことも考えた上で、中途解約ということも現在自主規制である程度行われておりますので、これを伸ばしていくことは望ましいけれども、もしも法的にやるとすれば、今申しました乱用のないようなものをどうやってつくっていくかというのは、法律的にはかなり難しいものではないかというふうに思っております。
  51. 青山丘

    ○青山委員 今後の検討課題の中には消費者取り消し権、それから高齢化社会になってきて高齢者取り消し権。主婦だけがねらい撃ちになっているんじゃなくて、高齢化社会をこれから迎えるわけですが、高齢者がねらい撃ちになっている。ところが高齢者はそうした消費生活の中でねらい撃ちされやすい、情報も入っておらない、啓発活動が余り活発でないというようなことになりますと、こういう考え方が出てくるのです。そのあたりの今後の問題をどういうふうに受けとめておられますか。  それから、消費者トラブルをなくしていかなければなりません。しかし今回出てきておりますこの法改正がなされますが、この法の運用上今後の問題点、憂慮される点をどういうふうに理解しておられますか。
  52. 森嶌昭夫

    森嶌参考人 消費者取り消し権の件でございますが、これは先ほどお答えしたので、中途解約権と同じようにやはり要件効果をきっちり考えなければならないという点で、現時点ではかなり法律技術的にも難しいところがあるのではないかという程度のお答えにさせていただきたいと思います。  高齢者取り消し権ですけれども、これは大変難しいことで、私もやがてこの取り消し権を必要とするような高齢者になるかもしれないのですけれども、かといって、例えば六十歳以上は行為能力者だ、取り消し権だと言われても、それでは例えば財界、政界の中には八十歳を超えてもかくしゃくとした方もおられるわけで、そうかと思うと五十過ぎでよぼよぼの方もおられるわけですから、そこで一律に何歳からというわけにいきませんし、よぼよぼの高齢者だと言ってみてもこれは法律としては何とも仕方がありませんので、一般的に高齢者取り消し権を、あるいは訪問販売だけでなくてほかの取引にも認めるということは、これは訪販のところで考えるべき問題ではなくてむしろもっと社会的に考えなくちゃなりません。  もしも取り消し権を認めるとなると、では今度後見人に当たる者はだれか。精神異常ですと夫婦のどちらかが後見人になるわけですけれども、両方とも年をとったらじゃ子供か、子供はなかなか親の面倒を見てくれないというようなときに、取り消し権だけ認めると業者はなかなか売ってくれませんから、そこでちゃんと後見人がついているということを言わなくちゃならない。そういうことも考えますと、アイデアとしては非常におもしろいと思うのですけれども、そう簡単には決まらない。現に訪販で出ている高齢者の被害については、やはり教育と申しますか、老人クラブなどでそういうことについて日常生活の指導をしていくほかないのではないかと思っております。これは単純には片づかない問題だというふうに思っております。  法の運用の御質問もございましたけれども、これも先ほど申しましたけれども、今度の政府案では行政的な命令、規制というものをフルに活用することを期待して、その他のところは余り画一的なことはしていないわけですので、政府においては今こういうことが問題になっているということを十分自覚した上で、迅速にかつ有効に、改正法によって与えられるであろう権限を使って被害の発生を防止する。例えば、仮に指定商品でこのまま法律が通るとしましたら、指定商品指定役務について後追いにならないように迅速に行動するというようなことが問題であろうかと思われます。
  53. 青山丘

    ○青山委員 ありがとうございました。  小宮山参考人にお尋ねいたしますが、最近訪問販売が非常に活発になってきておりまして、同時に通信販売も含めて一面では消費生活は豊かになってきておると思っていますし、従来の商売に対する考え方でも、昔のようにお店を構えて奥の方で殿様のように座っていてもなかなかお客が来てくれません。したがって、だんだん戦場へ出るといいますか、例えが余りよくないのですけれども、活発に活動をした点での成果が上がっている面を実は率直に評価しているのですよ。したがってそういう点を考えますと、訪問販売というのは今後なお活発になってくると言わざるを得ないと思います。  私どもは基本的に商業活動が活発になってもらわなければいけないし、そういう点で、ある意味では肯定的に理解しておるのですが、さりとて消費者トラブルが出てきてはいけません。悪徳業者がのさばってくるようなことではいけません。何しろこうして法規制するとすぐ悪知恵がまた出てきて、たとえ後追いと言われてもこうした悪徳業者に対してはきちっとした法的な取り締まりをしていく。ただ問題は、訪問販売事業者にとって今回の法改正規制一定強化になってくるわけですが、どのような影響が出てくると受けとめておられますか。また、業界の中におけるみずから規制していく姿勢、このあたりもひとつ述べていただきたいと思います。
  54. 小宮山宇一

    小宮山参考人 お答え申し上げます。  先生がおっしゃるように世の中の経済の発展というのは、やはりどんどん商品の普及なり出ていくことといいますか、我々は積極的な活動という表現をしているのですけれども、それが商売の発展なりひいては世の中の発展につながる、これはもうどなたも御存じだと思います。  今回の訪販の改正というものの影響は、非常に末端の方へ行ってはあると思います。実は私どもは大手の方の企業でございますので、それぞれ今までのトラブルの状況につきましては、消費者教育というものも含めまして各企業がいわゆる相談室というものを設けまして、それからその相談室の状況が直ちに現場へ伝えられ、現場の連中がお客さんとのコミュニケーションを図る。今回、そういう意味では訪問販売協会が各地にセンター、いわゆる転送電話を設けまして各地の消費者協会と連絡をとりながら対処していく、そういうことの積み重ねを実はだんだんやっていかなければならないと思います。  先ほど先生方からも浜の真砂と何とやらというようなお話がありましたけれども、これは全くそのとおりだと思います。それをだんだんなくすのはどうかというと、扱う業者、我々あるいは消費者それぞれが自覚する以外にないと思います。自覚にはやはり自覚するような自主規定、自分たちで守る規定というものが必要だと私は思います。今回、訪問販売協会倫理綱領を変更しなければなりません。法律によって割合に細かくやってはいけないという行為、これが出ておりますので、これは改正していく予定でございます。そういう面で、まず我々の姿勢としてはそうやっていきます。  それから影響としましては、末端ではいろいろとこれが普及されて、消費者とのトラブルがまた起きるのじゃないか、法律はこうだけれども実際はどうなんだというふうな問題が起きると思いますが、我々としては法の趣旨をやはり尊重しまして実行していきたいと思います。影響はいろいろあります。一番大きい影響は、何といってもクーリングオフの延長と現金のクーリングオフでございます。これは何といっても、現金の場合七日間、一週間といいますと、やはり経理上の処置その他いろいろな処理が企業においてもございます。そういう意味では影響がないとは言えず、非常に大きな影響があるということは御承知願いたいと思います。  以上でございます。
  55. 青山丘

    ○青山委員 質問を終わります。
  56. 渡辺秀央

    渡辺委員長 続いて、工藤晃君。
  57. 工藤晃

    ○工藤(晃)委員 きょうは五名の参考人の方、大変御苦労さまです。  共産党の工藤晃ですが、党としましては、今度の改正には前進面がある、しかしまだ不十分な点があるといって、一層それを充実させる、改善する修正案も既に出しております。その場合、私自身の事務所を含めまして党の全国各地の相談の窓口で受けたこれまでの経験に照らして、それからまた特に日弁連の皆さんも出されましたいろいろな案を十分検討して、最善のものを出したつもりであります。  そういうことで、最初に兵藤参考人に伺いたいわけでありますが、私ども相談を受けるとき、真っ先にクーリングオフを過ぎているか過ぎていないかというところからスタートするわけなんですね。我が党の案でも中途解約権は認めるべきだと考えておりますが、先ほど来いろいろ議論がありました。じゃ中途解約権がないとすれば、クーリングオフが過ぎた後で民法上どういう救済措置が考えられるのか、それはどれだけ効果があるのか、その上で中途解約権は当然であると考えるかどうか、その点が一つ。  もう一つクーリングオフそのもののあり方を強化しなければならない。訪問販売を受けて自分が被害者となったなと感じるのは、よく品物はいいんだけれども物すごく高い。あるいはまた、だまされた、消火器は必ず持たなければいかぬと義務づけられているとか、電話機はもうかえなければいかぬと義務づけられているとうそを言われた、気づくのに相当時間がかかる。特にお年寄りの場合は、子供だとか親戚だとかあるいは近所の人に教わって気がつく、そうすると過ぎているということもありますので、そういう点でクーリングオフ強化の仕方で、例えば我が党の案では十四日にすべきではないか。十四日という例は海外先物取引にもあるわけですから、こういうことも含めて考えておりますが、まずその点について伺いたいと思います。
  58. 兵藤俊一

    兵藤参考人 お答えいたします。  クーリングオフ規定につきましては、消費者保護という面から大変強力なものがあるわけでございますが、一見大変強力に見えるわけでございますけれども、現実の取引を見てみますと、今先生も御指摘のように、気がついたときにはクーリングオフ期間が過ぎておったというのが非常に多いわけでございます。お年寄りの方がいろいろなものを訪問販売で買われる、あるいはその他の役務訪問販売で受けられるというような場合におきましても、お年寄りの方がなかなかすぐに家族に話すとか、隣近所でこういうことをしたよということを話すことが少ないわけでございます。自分でいいものだと思い込んでずっと予約しておりますと、いつの間にか一週間過ぎてしまう。過ぎた後でしまった、早まったということがわかりましてもクーリングオフの行使ができない場合がございまして、立派な規定があるのですけれどもこれがなかなか生かされない場合が多うございます。  ですから今の七日間というのも、社会党案では最後が休日の場合は延ばすとか、あるいはさらにいろいろな形で、日弁連は十日だというふうに言っておるわけでございますけれども、なお延長する必要があるのではないかと考えておるわけでございます。先ほど先生の御指摘のとおり十四日というのもございますので、さらに期間を延長すべきではないかと考えておるわけでございます。  それから、クーリングオフ期間が仮に過ぎても、先ほど中途解約権とかあるいは取り消し権、解除権とも申し上げたいと思うのですけれども、要するにクーリングオフ期間が過ぎても、いわゆる禁止行為違反があった場合は契約から消費者が離脱できるんだ、解除して契約から逃れることができるんだという権利はぜひこれを認めておかないと、禁止行為違反があった契約でも縛られてしまう、何ともできないということでございます。民法の詐欺とか強迫になればいいのですが、そこまでいかない場合が多いわけでございます。民法の詐欺とか強迫までいかないけれども、詐欺まがい、強迫まがいというのが通例のセールス方法でございます。したがいまして、こういう場合には解除権をぜひ認めていくべきではないかと思っておるわけでございます。民法の詐欺などは、取り消し権が行使できるのは五年ということで非常に長くなっております。詐欺まがいのような場合ですからそう長くは必要ないにしましても、一年とか二年とかある程度の期間契約から離脱できる権利を認めておかないと、消費者の方のいわゆる禁止行為に対する防御というものが非常に薄くなってしまうと考えるわけでございます。  したがいまして、クーリングオフ権の強化並びにその補充として、解除権あるいは中途解約権はぜひこの際採用してほしいというふうにお願いしておるわけでございます。
  59. 工藤晃

    ○工藤(晃)委員 兵藤参考人に重ねてお伺いします。  先ほどもお話がありましたように、悪質な業者が絶えないというのでいろいろ実情を調べますと、雨後のタケノコのごとく出てくるという面と、しかし手繰ってみるともとが一つであるという面と両方ありまして、中には豊田商事なんかでノーハウかライセンスか持って、それがまた独立して細胞分裂して広がるという面と、しかしもとは手繰ってみると必ずしも多くの業者ということじゃないという両面あるように思うわけなんです。そういう点で、消費者権利を守っていく立場から、雨後のタケノコのごとく出てきたときにすぐに被害に遭った消費者行政当局に対して、もちろん法に基づいてですが、何らかの行政措置をとれという請求をすることは当然だと思いますし、これは独占禁止法の中にもこの規定がございますので、我が党としては修正案の中にこれを入れておりますが、その点についてどう考えられるか。  それからもう一つ、時間の関係で続いて伺いますが、先ほど行為規制の類型として二十二のタイプということを言われました。行為規制を具体化するという点は私も大変大事だと思いますが、最近の被害状況を聞いておりますと、キャッチセールスにしろアポイントメントセールスにしろ、あるいはもっと別の訪問販売にしろ、サラ金、貸金業者に行って金を借りなさいということまでやるというような例がありますし、先ほどお話がありましたように、銀行へ連れていって預金をおろしなさいとかこれこれを解約しなさいとか、そういう行為そのものは禁止していいんじゃないかと思いますが、そういう具体性を持った点での行為規制はどうお考えでしょうか。
  60. 兵藤俊一

    兵藤参考人 まず、最初の御質問の措置請求権でございます。先生御指摘のとおり、独占禁止法に規定があるわけでございますが、我々消費者被害の救済を行っておりますと、訪問販売の商法の形態は違いましても、だんだん追及していきますと根は一つということはよくあるわけでございます。そして、そのもとを行政が十分把握していただければいいのですけれども、その点の把握が私はやや足りないのではないかという危惧を持っております。したがいまして開業規制が必要だというところにも結びつくわけですが、せめて消費者の方から、こういう業者がこういうことをしているんだ、こういう行政監督をしてほしいというような申し出権は当然認めないと、その辺の行政の対応がおくれる。したがいまして、被害が出てからまた後追い行政というような批判が出るのではないかということを考えておりますので、その点の措置請求権を認める必要があろうかと私は思っております。日弁連もそのような請求を出しておるわけでございます。  それから、行為規制の具体化でございますけれども、いわゆる政府案の不実の告知あるいは威迫して困惑させるという、二つだけの行為類型では足りないと私は思うわけでございます。もっと行為類型をはっきり明示して具体的にすべきである。早朝、深夜の勧誘、長時間にわたる勧誘、執拗な勧誘、威迫して困惑させるというとほとんどが入るような感じがしますけれども、豊田商事なんかを見てみますとそうではございません。むしろ御老人に対して親切、洗たくする、食事する、ふろを沸かす、買い物はする、肩をもむというようなことで、長時間にわたる執拗な勧誘になるのだろうと思うのですが、威迫とか困惑させるということは余り目立たないわけでございます。むしろ逆でございます。ですから、そういうのに老人が参ってしまうということがございますから、むしろそちらをある程度はっきりさせていかないといけない。肩をもむのが何で悪いんだというようなことになりますと、これは本当の議論にならないわけでございます。もっと本質をとらえないといけないのではないかということを考えておるわけでございます。  したがいまして、先生の御指摘の、銀行へ連れていって定期を解約させて金をつくらせるとかクレジット契約をさせるとかいうようなことにつきましてはもってのほかでございまして、豊田商事ではそういう例が目立ったわけでございますけれども、御老人といたしましては、中には非常に悲惨な場合でございますけれども、寝たきりの方のまくら元であれやこれやいろいろセールストークを並べてその気にさせて、そこに預金通帳と印鑑があるから持っていって銀行でやってくれということを言う人がありましたり、あるいは自分も乗せていってくれと言って車に乗っていく、あるいは乗っけていってあげるから一緒に解約に行きましょう、こういうふうなものが非常に多いわけでございます。それで金策させて悪徳商法に引き込むということがございますので、こういう行為については禁止していくべきだろうと私は思います。日弁連はこの二十二の中にそういうものを入れておるわけでございまして、その点はぜひ行為規制の中に入れていかなくてはならぬのではないかと思っております。
  61. 工藤晃

    ○工藤(晃)委員 続いて三村参考人に伺いたいと思います。  私も東京都消費者センターに伺いまして、大変貴重な御意見を伺いました。大変御苦労なさっているということで、皆さんの経験と御意見が大変大事だというふうに考えている者の一人であります。  それで、そこで伺ったこととしてこういう言い方もされておりました。六十年度は豊田商事なんかで金(きん)の年だった。それから六十一年度は例の統一教会なんかの霊感商法の年だった。これは終わってないと思うのですが、それで六十二年度はさて何かというと、やはりサービス類が非常にふえてきてもっと非常に複雑になっているというようなことを言われまして、そうすると時々刻々、年々変わっているということから、先ほども御意見として言われましたように商品指定制はまずいのではないか。我が党の修正案としては全商品サービス対象になるようにすべきだ、こう考えておりますが、そういうことになってないゆえに非常に被害が広がった例が多かったのではないかと思いますが、そういう代表的な例につきまして一、二ありましたらお答えいただきたいと思うのです。
  62. 三村光代

    三村参考人 お答えいたします。  今までの例としては、一番問題だったのは今回指定役務に入れていただけるだろうと思っております役務の関連が一番多かったわけです。指定になっていなかったために解約できなかったという件では、例えばこれからも問題になるだろう思うのですが、通りすがりにペンキ塗りの訪問販売をしていくとか、屋根のかわらを取りかえるとか言って訪問販売で取りかえていく業者、それからもっと大きいのでは家の壁を張りかえるアルミサイディング工事というのがありまして、これは訪問販売指定になっていなかった工事が主体だったために、クーリングオフができなかったためにかえって違約金を大きく取られたというようなケースもあります。これからもそういうリフォーム的な形でのサービス分もふえてくるのではないかと思いますけれども、そのあたりがどこまで今度の法律改正で担保していただけるのかというところが、相談をやっている者としては心配しているところです。
  63. 工藤晃

    ○工藤(晃)委員 三村参考人に重ねてお伺いしたいのですが、これも東京都の消費者センターで伺ったことですが、訴えから相手の業者に対して消費者センターが問題解決しようとするときに、業者には三つのタイプがあるというのです。一つは素直に、では解約しましょうというのと、二つ目が、うちのセールスマンは絶対そんなことを言うことはないと言ってあくまで頑張る。三つ目には、割合に簡単に解決するのだけれども、損料を大いに稼ぐという三つのタイプがあるというのです。それで二つ目のタイプに対しましては、特に東京都の消費者センターの場合はメコニスというデータが入っているところがありまして、そこからのデータで、そんなこと言ったっておたくは方々でこういうことをやっているじゃないかと言うと、参りましたということになると言っておりますが、こういうメコニスとか、それがさらに国民生活センターのパイオネットに入っていくという、こういう情報が集まるということが非常に大事だと思っておりますが、その辺の点と先ほどの損料ということの問題。  それから、それと関連するのですが、今度は法律がよくなっても運用面が大事だということを皆さん言われていたように思うのです。考えてみますと、確かにそういう東京都の消費者センターのデータが集められ、活用され、それが国民生活センターまでいくのですが、一方行政の主体が通産省ということで、被害はこっちに集まるけれども行政の主体がこういうことで、私もそこに一つ問題点があるのじゃないかと思っておりますが、その辺、日常どうお感じでしょうか。
  64. 三村光代

    三村参考人 私たちも、苦情が発生してきますと、まずコンピューターをたたいていただいて、現実にはこの業者がどのくらい被害が出ているかということを見るのを第一歩としてやっております。それは、一番簡単なのは先ほどお話がありました国民生活センターの各地のセンターが集めましたパイオネットというのは、私のおりますセンターにはコンピューターがないのですが、県庁の方でコンピューターをたたいていただきまして、出てきましたデータでどのくらい苦情が出ているかというのをまず見るわけです。現実、でも苦情が出ているから悪い業者というふうに判断してしまうのはちょっと短絡だと思うのですが、余り多い業者というのは一体何なのかという中まで調べまして、各地のセンターにまた電話を入れましてその実態のもうちょっと細かいところまで聞くというふうにやっておりますので、情報がたくさん集まってくるというのは物すごく重要なことだというふうに思っております。  それから損料の問題なんですが、実際に損料の規定というのが余りないものですから、業者との話し合いの中で決めていかなければならない問題と、それから現実に損料の規定が書いてある約款を持ってくるものもあるのですが、そういう場合には、どうしても解約するときにそれに縛られがちになりまして、実際にどこかで損料をはっきり割り切った形のものが出せていたら私たちは示談屋にならないで済むのにということを常々感じているような状態です。現実に法律改正されても、それがうまく運用できるような形での解釈がなされないと、私たちの立場では改正されたものがなかなか上手に使えないんじゃないかということもありまして、法が改正されましたら一日も早く解説書等をつくっていただけたらありがたいと思っているのです。
  65. 工藤晃

    ○工藤(晃)委員 森嶌参考人に一問だけ伺いたいと思います。  今と関連するわけですが、今度全体の訪販法改正ということでいろいろ検討されたということを伺いましたが、先ほど言いましたように、東京都なら東京都の消費者センターがあって、それが国民センターにデータが集まってきて、それで各自治体で消費者を守る何らかの条例というのがあって、ここは割合一体化しているわけです。今度通産省の方にいくと、通産省のシステムにもいろいろデータが入ってくるのですが、これとがくっつかなくて、件数を聞いても非常に少ないとかいうところに端的にあらわれるのですが、ここから出てきたものに基づいてどうもこういう業者はけしからぬことをやっているとか、けしからぬと言えないけれども問題があるとかいうときに、この指導に回るというのがこの体系だとうまくいかないんじゃないかと思うのですが、その辺はどのように検討されたのでしょうか。
  66. 森嶌昭夫

    森嶌参考人 私ども消費者行政が一本化されていないということを感じておりましたし、そこで答申案の中には関連行政機関の連絡を密にすることということで、これは法律問題ではありませんけれども、通産でもそういう計画を持っておられるようでして、その点は一つの実質的な政策の問題として、委員会には通産省は約束されたと私は思っております。  それからさらに、これも予算がついたというふうに聞いておりますが、これは正式の名称は私もよく存じませんけれども、今後迅速に行政が動くようにいわば助言、監督をしていく、これも行革の問題がありますので正式の審議会となるかどうかはわかりませんけれども訪問販売等適正化委員会というようなものをつくって、消費者の代表あるいは学識経験者あるいは業界からも入って、常々消費者行政のあり方を見ていく、そしてまた被害が生じた場合に迅速に行政に動いてもらうように勧告をする、そういうような機関もつくられる方向で動いているというふうに聞いております。私どもは今まで、先生御指摘のような通産とその他例えば経企庁との連絡がうまくいっていたかどうかというようなことについて、うまくいっていなかったとか、うまくいっていたとかいうような判断の材料は持っておりませんけれども、今後はきちっとやってもらうように我々は答申案でもお願いしましたし、そのようなお答えをいただいております。
  67. 工藤晃

    ○工藤(晃)委員 終わります。どうもありがとうございました。
  68. 渡辺秀央

    渡辺委員長 以上で参考人に対する質疑は終了いたしました。  参考人各位におかれましては、お忙しい中を長時間にわたり御出席を賜り、貴重な御意見をお述べいただきまして、まことにありがとうございました。委員会を代表いたしまして厚く御礼を申し上げる次第でございます。  次回は、来る十九日火曜日午前九時五十分理事会、午前十時委員会を開会することとし、本日は、これにて散会いたします。     午後一時十一分散会