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1988-04-13 第112回国会 衆議院 商工委員会 第7号 公式Web版

  1. 会議録情報

    昭和六十三年四月十三日(水曜日)     午前十時開議  出席委員    委員長 渡辺 秀央君    理事 甘利  明君 理事 尾身 幸次君    理事 奥田 幹生君 理事 田原  隆君    理事 与謝野 馨君 理事 奥野 一雄君    理事 二見 伸明君 理事 青山  丘君       麻生 太郎君    井出 正一君       石渡 照久君    小川  元君       海部 俊樹君    佐藤 信二君       島村 宣伸君    玉生 孝久君       中川 秀直君    中山 太郎君       額賀福志郎君    福島 譲二君       前田 武志君    牧野 隆守君       宮里 松正君    宮下 創平君       森   清君    山崎  拓君       綿貫 民輔君    井上  泉君       小澤 克介君    緒方 克陽君       上坂  昇君    城地 豊司君       早川  勝君    水田  稔君       石田幸四郎君    森本 晃司君       薮仲 義彦君    工藤  晃君       藤原ひろ子君  出席国務大臣         通商産業大臣  田村  元君  出席政府委員         通商産業大臣官         房長      棚橋 祐治君         通商産業大臣官         房総務審議官  山本 幸助君         通商産業大臣官         房審議官    末木凰太郎君         通商産業大臣官         房審議官    安藤 勝良君         通商産業省通商         政策局次長   吉田 文毅君         通商産業省産業         政策局長    杉山  弘君         通商産業省立地         公害局長    安楽 隆二君         通商産業省機械         情報産業局長  児玉 幸治君         工業技術院長  飯塚 幸三君         資源エネルギー         庁長官     浜岡 平一君         特許庁長官   小川 邦夫君         中小企業庁計画         部長      田辺 俊彦君  委員外出席者         議     員 上坂  昇君         総務庁統計局統         計調査部労働力         統計課長   伊達木瀧之助君         経済企画庁総合         計画局計画官  新保 生二君         経済企画庁経済         研究所次長   石井  武君         国土庁土地局土         地利用調整課長 鈴木 克之君         郵政省電気通信         局電気通信事業         部業務課長   濱田 弘二君         建設省建設経済         局事業調整官  和里田義雄君         商工委員会調査         室長      倉田 雅広君     ───────────── 委員の異動 四月十三日  辞任         補欠選任   佐藤 信二君     前田 武志君   中山 太郎君     宮里 松正君   穂積 良行君     井出 正一君   関山 信之君     早川  勝君   水田  稔君     上坂  昇君 同日  辞任         補欠選任   井出 正一君     穂積 良行君   前田 武志君     佐藤 信二君   宮里 松正君     中山 太郎君   上坂  昇君     水田  稔君   早川  勝君     関山 信之君     ───────────── 四月十三日  悪質商法規制に関する陳情書外三件(第二九号)  中小零細企業対策の充実に関する陳情書外三件(第三〇号)  フロンガスの早期規制に関する陳情書外三件(第三一号) は本委員会に参考送付された。     ───────────── 本日の会議に付した案件  地域産業高度化に寄与する特定事業集積促進に関する法律案内閣提出第三〇号)  訪問販売等に関する法律の一部を改正する法律案内閣提出第五七号)  訪問販売等に関する法律の一部を改正する法律案上坂昇君外三名提出衆法第六号)      ────◇─────
  2. 渡辺秀央

    渡辺委員長 これより会議を開きます。  内閣提出地域産業高度化に寄与する特定事業集積促進に関する法律案を議題といたします。  質疑の申し出がありますので、順次これを許します。奥野一雄君。
  3. 奥野一雄

    奥野(一)委員 いろいろお尋ねをしたいことがたくさんあるわけでありますけれども、時間が制約をされておりますので、なるべく今までの質問の重複を避けるようにお尋ねをしておきたいと思います。若干ダブる部分もあると思いますけれども、御了承いただきたいと思います。最初にこの法律案必要性と、現在まで行われてきております国の産業あるいは経済政策との関連、こういう観点から順次お尋ねをしていきたいと思っているわけであります。  最初に、産業雇用空洞化、こういう問題についてお尋ねをしておきたいと思うのですが、私は百四国会及び百八国会のこの委員会で、産業空洞化及びそれに伴う雇用空洞化ということについて若干質問をしたことがございます。そのとき、たしか産政局長だったと思うわけでありますが、そう心配はないというようなお答えが当時あったように記憶をしておるわけでありますけれども、今日の段階でそのことについてどうお考えになっておられるか、これを通産の方にお尋ねをしたいということです。  それからもう一つ経済企画庁の方にも一緒に関連するものですからちょっとお尋ねしておきたいのですが、一昨年の暮れだと思いますけれども経企庁の方で出されたものを見ますというと、雇用空洞化は深刻化しない、海外投資は積極的に進めるべきだというような判断をされておったわけでありますけれども、そういう判断について今日の段階でも変わっていないか、この点については経企庁の方にお答えをいただきたいと思うわけであります。  以上、まず最初お尋ねします。
  4. 杉山弘

    杉山政府委員 構造調整、特に海外投資に伴う産業雇用空洞化問題についてのお尋ねでございますが、御案内のように一昨々年のプラザ合意以降昨年前半までは、急速な円高に伴いますいわゆる円高デフレということで国内の景況が非常に心配されておりましたが、その過程におきましても、私ども海外生産進展に伴う雇用面への直接の影響というのはそれほど大きくはないだろう。将来さらに海外直接投資が進みました場合の問題につきましては、これはマクロ経済運営でございますとか為替レートの安定の問題でございますとか、また地域雇用問題に対する政策的な対応、こういうものがうまくいきますればマクロ的にはそう大きく懸念する心配はないのではないか。  ただ、ミクロ的に見ますと、産業別地域別、さらには年齢別にいろいろ雇用ミスマッチという問題も生じますでしょうから、そういう問題に対しては積極的な政策的な対応が必要なのではないか。この点をうまくやる必要がある。そういう観点から、私ども実は昨年のこの委員会におきまして産業構造転換円滑化法等を成立させていただいておりますし、これからもそういった実態の進展対応いたしまして政策的な対応は怠ってはならない、こういうふうに考えているところでございます。
  5. 新保生二

    新保説明員 お答えします。  一昨年出しました建議からの推移を見ますと、海外直接投資を含め国際的な産業構造調整はどんどん進んでいるという状況であります。こうした国際的な産業構造調整は、生産部門で見ますとかなりの部分海外生産を任せるという形の構造転換を当然に含むものでありますけれども、これはまあ大きく見れば、日本経済構造世界経済全体と調和あるものに転換させるために避けて通れない課題だというふうに我々は見ております。また、こうした産業構造調整国内面我が国立場から見ましても、産業構造の高付加価値化ということで、日本経済にとっても利益があるというふうに見ております。  それで、こういう海外直接投資を積極的に進めるべきかどうかという点につきましては、政策的にどんどん進めるということではなくて、基本的には市場原理に任せて、市場の流れで進めていくということが必要であると考えております。その結果、当然構造不況地域等中心にいろいろな摩擦現象が生じてくると思われますが、こういうものに対しては、地域産業政策を充実させて摩擦緩和に努める必要があると考えております。
  6. 奥野一雄

    奥野(一)委員 今のお答えでちょっとまだ私ぴんと来ないのですけれども、今産政局長の方からお答えございましたように、マクロ的に見ればこうだけれども大した心配はない、しかしミクロ的に見るとそれぞれの地域などでいろいろな変化が出てくる、こういうことについてはそれぞれ対応していかなければならない、こういうことのようでございます。  ただ、経企庁の方では、私ちょっと十分理解できなかったわけでありますけれども、あなたが言わんとしていることは、今市場原理というようなことでお話があったわけでありますが、円高あるいは貿易摩擦ということで日本産業構造がどんどん変わっていく、そして一面においては海外投資というようなことなども行われていく、それと国の経済産業政策、まあ市場原理に任せておくということは、なるようになれ、その中で出てきたものについては何らかの対応をしていくのが妥当なんだろう、こんなふうにとれるわけであります。  これは通産省の方から出た資料の中にも入っているわけでありますけれども、この「法律必要性」というものを読んでみますと「近時の円高等の影響による産業構造調整の進行、海外立地増加により工場立地に依存してきた地域経済空洞化が懸念されている。」それからまた、いただいておりますパンフレットの中には「最近の地域経済は、円高産業構造調整により著しく疲弊しています。一九九〇年時点では、地方圏において二百四十万人の余剰労働力が発生するという試算もあります。」また「一方、工場海外立地は、今後とも増大する見込みです。六十一年度の製造業海外直接投資は前年度の一・六倍、主要企業のうち海外現地生産を拡大する意向をもつ企業は六四%」こうなっておりますし、先ほども申し上げましたように「工場立地に依存してきた地域経済は、今後実質的に空洞化していくことが懸念」される、こういうふうに書かれているわけです。     〔委員長退席奥田(幹)委員長代理着席〕  こういう点から考えますと、今後、産業雇用空洞化は一層厳しく続く、こういう判断をせざるを得ない。これはマクロとかミクロとかということも関係するかもしれません。これは後でその点についてちょっと触れたいと私は思うわけですけれども、ここで確認をしておきたいことは、出されている資料とかあるいはこの法案の趣旨というのですか、そういうようなところに載っているものを見ますと、今申し上げましたように、今後ますます産業とか雇用空洞化は一層厳しく続くという判断をしておいていいのか、ここのところをもう一遍確認をさせていただきたいと思います。
  7. 杉山弘

    杉山政府委員 お尋ねのございましたような輸入増加とか海外直接投資増加とかという問題が起こってまいりますと、それが起こらなかった場合に比べますと、確かに御指摘のように国内での生産活動雇用機会の縮小という問題につながってまいります。私ども計算をいたしましたところでも、海外直接投資がこれから二〇〇〇年にかけまして毎年一四%程度伸びていくということで考えますと、一九九五年の段階では、海外直接投資がそういうふうに伸びなかった場合に比べますと六十万人程度雇用の削減の効果が出てくるということは計算をいたしております。ですから、先生おっしゃいますような空洞化というのがそういうことを指すということでございましたら、御指摘のとおりでございます。  それで、実は国内でそういう問題が出てまいりますので、これをカバーするための措置をとっていく必要がある、こういうことを私どもは考えているわけでございます。具体的には、やはりマクロ経済運営中程度成長で、できるだけ潜在成長力を生かした形で運営をいたしますとともに、また製造業分野等におきましては、新しい技術開発の成果を利用したような分野を実際に生産活動の面に実現をしていく。さらにはまた、国民のニーズに応じたサービス産業その他ニュービジネスの拡大等を図って雇用機会をまた別の面でつくり出していく。そういたしますと、マクロ的に考えますと、海外直接投資とか輸入増加によります雇用機会の減少というのをカバーできるであろう。ただ、全体として総バランスはとれましても、個々の労働者にとってみますと、年齢別に、また就職をする先との関係で、また地域との問題でいろいろ雇用面ミスマッチという問題が起こってきますので、こういった点については政策的な対応が非常に望まれる、こういうふうに考えておりますし、これまでもそういうつもりで申し上げてきたわけでございます。
  8. 奥野一雄

    奥野(一)委員 それからもう一つ、ちょっと確かめておきたいのですけれども、先ほど経企庁の方では原則的には市場原理に任せるというのですか、そういうような意味のことを言ったのでありますけれども、この円高による産業構造調整及びそれに伴う産業雇用空洞化、これはそういう市場原理の動きの中で国際協調上仕方がないというような立場で考えられているのか。あるいは、経企庁が一昨年の暮れに示した判断では、積極的に海外投資をやるべきだ、その結果構造調整とか空洞化が起きるということは百も承知、そういう立場、どちらの立場でとられておられるか。それによって対応もまた違ってくるのではないかと思うものですから、いわゆる消極的に考えておられるか、あるいは積極的にそういうような産業構造調整をやらなければならないとか、雇用空洞化が起きてもそれは別の面で対応していけばいいのだ、しかし国際的なことを考えればどんどん積極的にそういう海外投資や何かについてはやらなければならないのだ、どちらの方の考え方に立っておられるか。  これは、双方から見解をもう一度お尋ねしたいと思うのです。
  9. 杉山弘

    杉山政府委員 産業構造調整または日本経済構造調整について、受け身の立場で進めるのか積極的に進めるのかという御質問でございますが、世界経済の中で日本が孤立をせずに生きていく、世界経済とともに日本経済協調を保ちつつこれからも存立を続けていく、こういう立場に立ちますと、経済構造調整産業構造調整、これは輸出がふえやすく輸入がふえにくいという体質を直すことになりますので、これからの日本のために必要なことということで、むしろ積極的に対応していくべき問題だと私どもも考えております。  経済構造調整産業構造転換問題の中で幾つかの手段と申しますか方法と申しますかチャネル、そういうものがございまして、そういう中に仰せになるような海外直接投資という問題もあるわけで、企画庁の方で先ほど市場メカニズムに任せるとおっしゃいましたのは、こういった海外直接投資自身政府政策的な手段対応を講じて、積極的にやれいけそれいけという形で出すということではなくて、為替レートのもとで各企業の自主的な判断で行われる、それが前提になるということで申し上げたというふうに私も理解をいたしておるわけで、通産省立場も全く同様でございます。  ただ、繰り返しになりますが、その結果として国内での産業空洞化雇用空洞化ということが起こると、これは日本経済に大きな影響を与え、産業の活力をそぐことになりますから、こういった問題についてはむしろ政策的な対応をすることによって、全体としての構造調整を混乱なく進められることが望ましいということで、政策的な対応を必要とするというふうに考えているところでございます。
  10. 新保生二

    新保説明員 お答えします。  今通産省からお答えになったとおりでありまして、我が国構造調整というのは、基本的には世界経済全体の中で考えていく必要があると思っております。御承知のように、NICS等中心工業化が相当進んできておりまして、一部低付加価値製品、鉄鋼等々まで含めてだんだん途上国に譲り渡していかなければならない部分があるわけで、日本の場合はそういうものを譲り渡しながら高付加価値化、より先端部門にシフトしていくことが求められているわけであります。  これは、こういう意味産業構造調整は積極的に進めていく必要があるが、基本市場原理基本としたものが必要である。ただし、こういう過程で先生が御指摘のようにさまざまな摩擦が出てくるようなものに対しては、しっかりした政策をとっていく必要があると我々は考えております。
  11. 奥野一雄

    奥野(一)委員 昨年の五月に出されておりますいわゆる新前川リポートによりますと、積極的に対応しなければならないということになっているわけですから、恐らく国の方針としてもそういう方針に基づいているのだろうと思っているわけです。特に、新前川リポートの方では、産業構造調整の取り組みについては、現状をいわゆる産業空洞化ととらえて、その産業構造調整をおくらせるな、積極的にその対応を図っていけ——ここで私が感ずるのは、国際的なこういう状況の中で日本産業空洞化というものが起きてきても、そこでたじろぐな、こういう意味だろうというふうにもとれるのですね。それから、海外直接投資なんかの状況についても書いてありますけれども、一九九〇年代半ばでは現在の水準の二倍以上になると見込まれるけれどもアメリカ西ドイツに比べればまだ二分の一程度だ、だからどんどん海外投資をやれという趣旨だと受け取れるわけです。  新前川リポートの方ではそういうようなことを出しているわけですから、恐らく政府の方としてもその方針にのっとってやるのだろうと思っているわけでありますが、どうも私は理解ができませんのは、確かに今の国際的な状況の中で日本は膨大な貿易黒字も抱えている、そういうことから貿易摩擦も起きてくる、それを緩和するために海外にどんどん進出をしていくというようなときに、日本産業構造自体は一体どういうふうになっていくのだろうか。例えば今、電化製品でも自動車でも全部は海外に行っているわけではございませんから、日本にもそういう産業は残っているわけでありますけれども、仮にどんどん海外進出をしていって、最近では大手企業の部品を製造する中小企業海外進出をせざるを得ない、こういうふうに進んできているわけです。そうすると、その部分はやはり日本産業から消えていっているということになると思うのです。  一体、日本はどんな産業構造になっていくのだろうかということについて、これからどんどん海外投資が進んでいっても、新前川リポートで言っているように一九九〇年代半ばになったってまだアメリカとか西ドイツの二分の一にすぎないではないか、もっとやれ、こういうようなことになっているわけですけれども、そういうふうにして進んでいった場合に、日本産業構造はどういうふうに変わっていくのだろう。日本という国の立場に立った場合に、そういう産業構造でいいのだろうかという疑問がどうしてもぬぐい切れないわけでございます。  これは次の方で申し上げたいと思っておったのですが、ついでに一緒に申し上げていきます。これは例えばの話でございますけれども、同じ産業の中で今一番いい例になるのは、農業製造業ではありませんが、手っ取り早く言うと農業ですね。貿易摩擦で仮に農産物が一〇〇%輸入自由化になった場合に、例えば日本農業の中ではそれに太刀打ちできない。例えば沖縄パインであれば完全にこれはつぶれてしまうのではないか、そういうことを今言われております。その場合に、沖縄パイン産業がつぶれてしまった、しかしそれは外国から輸入してくるからいいではないか。それから、自動車業はそこまでいかないと思いますが、仮にいった場合、日本国内では生産しないで全部海外に行ってしまった、日本では自動車製造業というのはなくなってしまう、そういう産業構造になってしまうと思うのです。いろいろな製造業分野とか、円高とか何かで海外に行かなければならないような産業日本でどんどん減っていってしまった場合に、日本産業構造全体というのはどんな姿になるのか。ここのところは、私の頭ではなかなか的確につかめないものですから、優秀な産政局長の方でちょっとそういう構造をお示しいただければと思うのです。
  12. 杉山弘

    杉山政府委員 御質問のように対外直接投資がどんどん進む、また海外製品がどんどん輸入されてくる、そういうことで製造業分野が従来の水準に比べるとどんどん縮小していってしまうというようなことになりますと非常に問題が出てくるのではないか、これはまことにごもっともだと思います。私どもは、むしろそういう事態を起こさせてはならない、そのためにどうするかということになりますと、海外進出をする部分、また海外からの製品輸入に置きかわっていく部分、こういうものにかわる分野製造業の中に求めていく、新しい分野を求めていく、そのために技術開発その他政策的な助成を積極的にやっていく。そういうことで、新しい分野といたしましては一層のマイクロエレクトロニクス化が進むというようなこととか新素材とか、そういう新しい分野が出てくる。また、バイオテクノロジーのような新しい技術が各所に応用されるというようなことになっていく。そういたしまして、やはり製造業は何といいましても産業の中の中核でございまして、製造業なくして他のサービス業等がそこに成立するわけはございませんから、製造業は実質的な生産のレベルでは、今後についても現在と同じぐらいのウエートを持つものとしてぜひ維持をしていきたいと考えております。  ただ、製造業分野生産性向上余地がございますので、名目的な生産金額ということで考えてみますと、生産性向上余地が少ない三次産業サービス業に比べますと価格の上昇率等も少なくなりますから、名目生産分野でとらえますと、製造業割合というのは現在の割合よりは多少少なくならざるを得ない。また、そこに働く労働者就業構造割合からいきましても同じようなことが言えるかと思いますが、実質的な生産のベースでは従来のようなウエートをぜひこれは維持していく。そのために政策的な努力も大いにやっていかなければならない。また、そうすることがサービス産業その他の産業分野でこれから新しく雇用をつくり出していく、そのための新しいサービス業をつくり出していくそのまた源泉にもなるのではないか、そういうふうに考えているわけでございます。
  13. 奥野一雄

    奥野(一)委員 海外投資関係産業構造調整、私は一つ考え方として、産業構造調整というのはなぜ必要になってきたのか、これと、それでは海外直接投資ということと本来一本のものなのか違うものなのか。私は別に考えたいと思っているのです。  一般的に言われる産業構造調整というのは、円高とか何かでもって日本産業が例えば太刀打ちできなくなってきた、これは輸入がふえるということになると思うのです。輸入がふえてきて日本産業では太刀打ちできない。城下町企業のようにやっていけなくて、これは何とか構造転換——今までもそういう法律でやってきましたが、構造転換や何かでもってそこで生き延びられるような産業構造にしていかなければならない。これはある意味では私はわかるのです。しかし、今度海外直接投資ということになってくると、それは日本で今まで百生産しておったものを三十を海外生産する。これは私の考え方が間違っているかもわかりませんが、三十は海外でやる。すると、今まで日本は百やっておってそこには雇用もあったのが、三十が海外へ行くということによって三十分の雇用日本では減る。それから、三十について回っておった中小企業、これも海外に行けるものは行くのだろうけれども、行けないものはそこでちょっと困るという状況になってくる。  これが同じように考えられてくるとちょっとまた対応が違うのではないかというふうな気がしているものですから、私は前段言ったような産業構造調整ということであれば、そこにはいろいろな立地政策一つは考えていかなければならないのではないか。今までもやってきたような転換対策とか何かでもやらなければならない。しかし海外投資の場合だったら、これまたちょっと対応が違ってくるのではないか。だから、経済審議会で建議した構造調整の指針というものを見ておりますと、積極的に海外投資をやりなさい、そうするとそのことによって相手国の生産雇用を拡大することになる、それから現地生産進展に伴って我が国の経常収支の黒字縮小に寄与する、だから海外投資を積極的にやるべきだということになると、それによって国内が受ける影響ということになるとちょっと違うのではないかという感じがして、そこのところは少し私はこんがらがっているものですから、誤解してはいけないと思っているのです。
  14. 杉山弘

    杉山政府委員 私どもは次のように理解をいたしておるわけでございます。  日本経済は、これまで私どもの先人の努力によりまして非常に産業の競争力がつきまして、その結果として、先ほど申し上げましたように日本経済というのはこれまでは輸出がふえやすく輸入がふえにくい、黒字がたまりやすいという体質になってまいっておりまして、その結果として円高という問題が出てまいりました。円高になってまいりますと、国内生産をして輸出する、これがだんだんやりにくくなってまいりますし、海外製品の方が安く手に入るということで輸入がふえてまいります。これまで国内生産をして輸出していた企業も、円高のもとでは採算がとれないということになってまいりますと、海外に出ていって海外生産をして海外で販売をする、また海外の安い部品を輸入して国内で組み立てて海外に輸出をする、そういうような対応をしてきていると思いますので、輸入増加海外投資増加というのは、やはり円高という状態のもとで市場原理に従って当然に起こってきた二つの現象であろうと思いますし、こういうルートを通じて日本経済構造調整産業構造転換というものが出てくるのだろうと思います。  御指摘のように、そうした場合、大企業は出ていくけれども中小企業は出ていけないということでの国内でのひずみ、摩擦という問題が起こってまいりますし、先ほど来先生お尋ねのように、これまで国内生産を続けていた場合に比べて雇用機会が減るじゃないか、それも御指摘のとおりでございます。ですから、そういう問題については政策的な対応をして中小企業の混乱を少なくすることも必要でございますし、雇用機会をふやすためには新しい製造業分野をつくっていく、またマクロ的にできるだけ高目の成長を実現するということで経済の活力をつけ、その中で新しい消費を中心とした内需を盛り上げていって、輸出にかわって国内で事業活動が重点的に行われる、そういうようなものに切りかえていくための政策的な努力が重要になってきているのだろうと思います。  繰り返しになりますが、そういう意味におきましては輸入増加海外投資増加というのは同じルートから出ておりますし、またその効果は同じ産業構造の改善、経済構造調整というところに行き着く、ただしその際の混乱の防止ということについては政府として大いに努力をしなければならない、こういうふうに理解をしているところでございます。
  15. 奥野一雄

    奥野(一)委員 もうちょっとお尋ねをしておきたいのですが、日本産業あるいは日本という立場に立ってみて、例えば自動車産業なら自動車産業が全部海外に行ってしまったという場合を仮に想定して、それは本社は日本にあるから日本産業ということになるのでしょうけれども、いろいろな面で、例えば雇用は現地雇用になる、税金だってそれは現地で払うわけでしょう。向こうの方が安ければ、日本にはいろいろな税金は入ってこないと思うのです。そういう面から見て、仮にそういう一つ産業なら産業が全部海外へ行ってしまったという場合はどういうようなことになるのですか、やはり日本産業という形になるわけですか。
  16. 杉山弘

    杉山政府委員 お尋ねのような現象が実際に生ずるかどうかは別といたしまして、もし仮にそういうような、ないしはそれに近いような事態が起こる、これは大変なことであると思います。確かに、本社だけが日本にございましても製造現場が日本にないということになりますと、これは雇用機会の減少だけではなくて、やはり技術開発というものは生産現場に密着して行われるものでございますから、そういうような事態が生じますと、これは日本製造業にとってゆゆしい事態だと思います。  私ども日本企業にいろいろ聞いてみますと、もちろん海外との関係海外進出はする、輸入はふやしていくということは考えておりますが、基本となる生産現場はできるだけ国内に残しておく、またそれによって技術開発国内で進めていくということをお考えの企業が大半でございますので、実際の問題として先生お尋ねのような事態が起こることは考えられないと思いますし、起こってはいけないと思います。また、万が一にもそういう事態が生ずるような場合には事前に手を打つ必要があると思いますが、現在までのところの状態でいきますと、そういった大きな混乱なしに構造調整が実現されるのではないかと考えております。
  17. 奥野一雄

    奥野(一)委員 それは極端な例ということで申し上げたのですが、私が心配しているのは、海外直接投資や何かを仮にどんどんやっていって、先ほど言いました新前川リポートなどでは、それによって現地で雇用もできるし現地生産もできる。それから、日本ではその部分の製造が減るわけですから、逆に例えば輸入ということも出てきて経常黒字を減少させる役に立つ、だから積極的に海外投資をというふうに私とれるわけですね。そうすると、例えば一〇〇%行ってしまうということではないにしても、全体の産業という立場から見た場合に、日本産業というのはちょっとおかしくなっていくのではないか。それではだれのために一体やるんだ。そのことで日本国内産業がさらによくなっていくとか、あるいは日本の国民にとってよくなっていくというのであれば、これは私はわかる。しかしそうでないというと、一体それは何のためにやっているのだ、だれのためにやっているのか、こういう疑問が出るものですから、積極的に海外投資をやることがいいのか悪いのかという判断がなかなかつかないということになるわけでございます。  これは、皆さん方もう既に御案内のことだと思うのですが、ことしのごく最近だと思いますけれども、シンポジウムが行われているのです。その中では、脱工業化社会というのは幻想だ、空洞化を防ぐために絶えざる革新をやっていかなければならない、日本は対外直接投資による輸出から現地生産への切りかえ、発展途上国からのOEM、相手先ブランドによる供給方式による輸入企業の経営戦略と今なってきている。これは全体の意見ではありませんけれども、その中で代表的な意見として、経済を人に例えれば、研究開発は頭脳、情報通信のネットワークは神経、工場は筋肉ということで、この三者が一体にならなければだめなんだ、こういうことを指摘しているのですね。  今の日本の場合には、先ほど極端な例を申し上げましたけれども、そこまで行かないにしても、工場関係、筋肉に関係する部分は表に出ていってしまう、日本の方ではもっと先端的なものをやらなければならないということで、今度出てきているような法律だとか産業技術だとかいろいろなことをやっている、そういうようなことでやっていって果たしていいのだろうかという疑問を投げかけている学者もいるわけですね。このシンポジウムなんかにはどなたか出席もされているのじゃないかと思うのですけれども、もしその内容を承知だったらちょっとお尋ねしたいと思いますが、なかったらそれはそれで結構でございます。
  18. 杉山弘

    杉山政府委員 ただいま先生から御紹介のありました問題につきましては、それだけでどのシンポジウムであるかということは私も申し上げかねるのでございますが、実は最近のことになりますと、同じような趣旨製造業の重要性についてということにつきましては、私どもの所管の財団法人産業活力研究所というところがアメリカの学者を呼んで話を聞いたことがございます。その中で、私は直接聞いたわけではございませんが、資料等を読ませていただいたことでの断片的な知識でございますが、農業が縮小をしていったということになるけれども農業の縮小というのは、それ自体だけではなくてそれに関連をする各種のサービス業というようなものに大きく影響が出るのだ。したがって、同じように考えますと、これから製造業が縮小をしていくということになると、それと離れてサービス産業の拡大というのはあり得ない、そういう趣旨だったと思います。  ですから、そういう意味で申しますと、先ほども申し上げましたように、私ども製造業がどんどん縮小していっていいとは決して考えておりませんで、少なくとも実質生産ベースで現在程度製造業は絶対に維持していかなければいけない。そのためには、おっしゃるように革新的な分野というのを生み出していかなければならない。そうすることがサービス産業を育てるゆえんでもあるというように考えておるわけでございますので、あるいは先生御指摘の点はそういった学者のお話のことを指しているのではないかと思われます。
  19. 奥野一雄

    奥野(一)委員 そうなんです。なぜ言ったかといいますと、例えば新前川リポートの中の雇用への対策、それからこれは一昨年の暮れに経企庁が示した判断、そういうような中に、例えば雇用空洞化というのは心配ないんだ、確かに製造業やなんかではどんどん減っていっているけれどもサービス業とかそっちの方でふえているからいいじゃないか。前川リポートなんかの方でも大体そんなような書き方になっているんですよ。私はここにちょっと疑問を持ったものですから先ほどちょっと引例をさせてもらったのだけれども産業活力研究所ですか、そこが開いたシンポジウムの中でもそういう意見が出て、アメリカの何とかというその有名な学者がそういうことを言っておられる。  だから、私が言いたかったのは、そういうふうにして海外投資やなんかで例えば製造業が減っていって、これは産業だけでなくて今の部分雇用部分でありますけれども、例えば雇用が減っていっても三次産業でカバーするからいいじゃないか、これはやはりちょっと違うんじゃないですか。私もそういう見解を持っているものですから、そういう面で今お尋ねをしたわけでございます。  そこで、きのううちの小澤委員の方からも若干出ておりましたが、今までもいろいろな立地政策というものはとられてきた。産業投資、工業整備あるいは工業再配置、低開発それから農村地域の工業導入とか、いろいろなことをやられて今日に至ってきている。今度は、これは後で触れますけれども、頭脳立地という問題についてはその基本になったのがこれだというふうに私は思っているわけですが、地域経済活性化研究会の中間報告、これは昨年の六月に出されて、恐らくこれに基づいて今の頭脳立地法と言われるものが生まれてきたのだろうと思っているわけです。ですから、そういう観点に立てば、中身はこれだけの中身ですから、本来なら中で質問したいということがたくさんあるわけであります。しかし、これをやっていたらこれだけで大変な時間がたってしまいますので、これは当然この土台だろうと思いますので、まずこの中で二、三この辺はちょっと聞いておきたいなと思っている点がありますので、お尋ねをしておきたいと思います。  その一つは、この報告書の中に、円レートの急激な変化によって産業構造調整とか雇用問題を惹起して国内経済は厳しい状況にあるが、各国間の政策協調のもとで対応するとかというようなことで書いてあるわけであります。私は前にもこの委員会お尋ねをしたことがあるのですけれども、国際的な立場で国際的な産業調整というのですか、そういうようなことについてちょっと質問したことがあるのです。その場合に、国際分業とかなんとかというときに、お互いの国がそういうことについて合意に達しているのですか。例えば、日本は高度技術関係だとかサービス産業というものをやってください、アメリカはこういうことをやります、ドイツはこういうことをやります、そういうようなことに恐らくなってないはずだ。しかし、なってないのに日本だけが産業構造調整をやってというようなことになると、ちょっとおかしいのではないかというようなことでお尋ねしたことがあったのです。そういうようなことで、この中の「各国間の政策協調の下で」ということは何を意味しているのか、それをちょっとお尋ねしておきたいと思うのです。
  20. 杉山弘

    杉山政府委員 確かにおっしゃるように、各国の間でそれぞれどの分野をやり、どの分野を他に任せるかということについて明確な取り決めがあるわけではございませんし、各国それぞれの立場では、どうしても自分のところの産業分野を守ろうとする傾きがあるわけでございますが、日本の場合には特に、先ほども申し上げましたように大幅な黒字を出すような体質になっておりますし、それをほうっておきますとますますレートが円高に進む可能性がありますし、急速なレートの円高化というのは、調整効果はございますが、むしろ副作用と申しますか混乱、摩擦が余りにも大き過ぎる。そのために、レート調整によりますある程度構造調整産業分野の転換ということも当然必要ではございますが、むしろ体質そのものから変えることによって余り大きな混乱、摩擦なしに対応できるようにしていく、それが特に日本の場合には必要ではないか、こういうことであろうかと思います。  そういう観点から申しますと、むしろ日本の場合には輸入の拡大または海外投資ということで、当面は国内から産業分野を失う方に強く効果が出てまいりますから、おっしゃいますようにそこの部分は、サービス業という他の分野はございますが、痛みが出てくる分野と伸びていく分野とが全く違っておりますので、そう簡単に、マクロ的にはいってもミクロ的には問題が出てまいります。したがって、それにかわるようなより高度の分野製造業分野で拡大する等の対応策も重要だということだと思います。また、日本が余り黒字を出しておきますと、各国に保護主義的な勢いが高まってまいりまして、日本国内に残しておくことができる得意な分野すらも各国の輸入制限その他でむしろ発展の芽を摘まれる、そういう心配もございますので、日本立場から考えますと、他国に迫られてやるという面、これが全くないわけではないと思いますけれども日本立場からむしろ前向きに受けとめてやらなければならないという面が非常に大きい、強いのではないかと考えます。
  21. 奥野一雄

    奥野(一)委員 ちょっと私の聞き方も悪かったのだろうと思うのですけれども、例えば世界各国が協調して世界全体の経済を何とかよくしていこう、安定させていこう、そういう立場の中で、例えば日本はこういう役割分担、仮にそういうものが完全な文書や何かの合意でなくても、お互いにいろいろな会議や何かで話し合いの中で出てきて、それでうまくいくということであればまだいい。そうすれば私は、例えば貿易摩擦のようなことなんか今度は余り問題にしなくて済むということにもなるんではないかなという感じがするわけなんですね。今は、何かアメリカとのやりとりだけを見ておりますと、何でもとにかく日本の膨大な貿易黒字があるから悪いというたたかれ方をしているような印象があってしようがない。その場合に、世界経済全体を見てそういう協調が仮に成り立つのであればいいのだけれども、そういう意味で書かれているのかどうかということを一つは知りたかったわけなんです。
  22. 杉山弘

    杉山政府委員 大変失礼をいたしました。  日本立場は今申し上げたようなことでございますが、日本だけのために今のような事態が生じているわけではございませんで、むしろ国際的な政策協調といいますと、アメリカ立場からは今度は逆に輸入がふえやすく輸出がふえにくいという体質がありまして、これがまた一つ大きな混乱のもとをつくっているわけでございますから、今度はアメリカ立場からは、日本とは逆な方向での各種の政策的な努力というのが必要なのではないか。それは、産業の輸出競争力を高めて輸出をできるだけふやして輸入がふえにくい、そういう体質にアメリカ経済を変えてもらうということも必要だと思いますし、むしろそういう両方の政策的な対応相まって現在の問題の解決になる、それが国際的な政策協調であろうと思います。  また、マクロ経済の運営につきましても、日本はできるだけ高目の成長を続けるような努力をする、アメリカでは財政収支の赤字を減らすというようなことになりますと、経済についてはむしろマイナスの効果が出てくることもある程度甘受せざるを得ない。むしろそういう双方向での両国の政策協調があって初めて問題の解決になるんで、日本だけの政策努力で問題が解決する、そういうものだとは考えておりません。
  23. 奥野一雄

    奥野(一)委員 次に入らせていただきますが、その前に、これは私の考えとして申し上げておきたいのですけれども、これは先ほどちょっと言いましたように、雇用の方の関係になりますが、製造業が仮にどんどん減っていって雇用が少なくなっても三次産業あたりで雇用をカバーできるからいい、こういうのがあって、それで私はちょっと疑問だ。経企庁の方で出している六十二年度地域経済レポートというものを見ましても、今全国で一番景気が悪いと言われているところほど三次産業ウエートが高くなっているわけなんです。三次産業ウエートが高くなっているというのは景気の回復とか何かにはまだ役に立っていない、こう思われるのですね。これからどうなるかわかりません。  例えば北海道と沖縄なんというのは典型的な例だと思いますが、北海道の場合は二次産業だと二三・四、これは生産の構成比ですけれども沖縄は一九・六。ところが三次の方になりますと、北海道は六八・九、ちょっと沖縄の数字が抜けているからあれですが、就業者の構成比を見ましても、大体沖縄と北海道というのはずば抜けて三次産業の方がいっているわけなんです。本来であれば、雇用という立場から見ますと、働く人にしてみればそれはどこで働いたっていいと思うのですね、収入があれば。しかし産業全体とか経済全体というものから見た場合に、三次産業だけが仮にどんどん伸びていって、それだけで日本全体の産業構造としていいんだろうかという疑問があるものですから、これは時間の関係もありますので、そういう点だけ申し上げておきたいと思うのです。  次に、この地域経済活性化研究会の中間報告もそうでありますし、それから大臣の所信表明の中にも「近年、研究開発、情報サービス等いわば産業の頭脳部分が東京圏に一極集中する傾向にあり、地域経済の活性化を図るためには、こうした産業の頭脳部分の地方分散を促進することが急務」こう書いてあるわけであります。また、今申し上げました地域経済活性化研究会の報告の中には「東京からの機能分散も含め」こう書いてあるわけでございます。きのうも若干質疑があったように承知をしておりますけれども、今政府として進めている東京一極集中排除との関連、それからきのう通産大臣は、この法案については単に通産省が受け持ちという立場でやるのではなくて、日本全体というか政府全体が何かそういうことについてやるという気構えでなければ、そう簡単にはいかないよというふうにお答えになったように、私は承っておるわけであります。このいわゆる頭脳立地法も、そういう面では東京一極集中主義というものの排除のためにやられようとしている一環ではないかなという感じもするわけなんですけれども、今政府がやろうとしている東京一極集中排除との関連と、それから東京一極集中主義の排除というものは、今政府がやろうとしていることで実現する可能性があると思うかどうかという見解を、ひとつお伺いしたいと思うわけです。
  24. 田村元

    ○田村国務大臣 率直に言いまして、四全総の志向するところを受けておる面が多分にあるわけでございます。東京一極集中というものにコンパスの針を置いておると言っていいのか、あるいは地方の活性化というものに針を置いているのかという問題はあると思いますけれども、先ほどおっしゃったように過去の幾つかの計画を振り返ってみますと、確かに生産部門、つまり工場については工業再配置政策等の効果もありますし、地方分散が進みつつあると思います。これはそれなりに相当の成果をおさめてきた。工場数において、新規立地という点においては大体七、八〇%の成果をおさめたのではなかろうかと思います。  ただ、従来と違って最近の特徴というものは、いわゆるソフト部分というのが非常に発達してきた、サービス、情報化時代でございますから。そこで、研究者や情報サービス業等の急速な成長というものに我々はやはり対応していかなければならない。そういう意味で、この比重を高めていきましたいわゆる産業の頭脳部分の東京圏への一極集中、こういう傾向の著しいことは事実でございますから、このような産業面の集中が人口の集中や事業所需要の増大による地価高騰などの一因ともなっておるであろうというように、いろいろと東京一極集中排除ということを含めたこの法律案の成果というものは付加価値を広めていくだろうと思います。でございますから、私どもとしては、これで一〇〇%大丈夫かという議論より、むしろこの法律を進めることによって相当の成果を上げていくということに思いをいたすのが率直に言って正しいのではなかろうか、このように思います。  それからまた、先ほど奥野さんおっしゃいましたように、日本政府の名においてやらなければならぬ問題でございますから、単に四省の主務官庁だけで事が進むわけでもございません。日本政府のあらゆる機関の、あるいは地方公共団体のあらゆる機関の知恵というものもおかりしなければならないわけであります。例えば人材養成なんということになりますれば、文部省や科学技術庁のお知恵も拝借しなければならぬでしょうし、時には私学のお知恵も拝借しなければならぬかもしれません。そのようにして、政府一体となって、四全総という軸で回転していく政策展開の一環としてこれを進めていきたいものというふうに考えておる次第でございます。
  25. 奥野一雄

    奥野(一)委員 これは、地域経済活性化研究会中間報告の七ページのところの「地域間の経済格差の是正」という項目の中で「地域における生活環境の整備を進めるとともに、東京からの機能分散も含め地域における高次機能の集積等を促進することにより、個性豊かな地域経済を構築していくことが必要である。」こう書いているわけでございます。今大臣がお答えくださいましたように、一つの国の大きな方針というのは四全総、そういう立場に基づいて、また必要なものは各省庁がそれぞれ内容を整備していく。それから、東京一極集中主義排除あるいは多極分散型都市形成というものは、恐らくそれらの中に含まれているものだというふうに私は理解をしているわけです。ですから、この頭脳立地法と言われるものもそれから全く切り離された存在ではないだろう、この中身を見ますと、やはりそういうふうに受け取れるわけです、随分そういうことについても書かれているわけでございますから。  そこで、今度の例えば頭脳立地をやろうという場合、そういう研究開発機関や何かというものを地方に分散をさせていくということになるわけでありますが、その場合に、例えば新しく一つ地域に研究開発のようなものを設定をするということと、東京にあるものをそっちへ持っていくということとでは、ちょっと違ってくると思うのですね。これはどっちをとられるということになるのでしょうか。     〔奥田(幹)委員長代理退席、尾身委員長代理着席
  26. 安楽隆二

    ○安楽政府委員 ただいまの点でございますけれども、私どもは両方考えております。工業あるいは工場を分散するときも、地元企業、地場企業の育成発展というものと、東京都の大都市圏からの誘致ということを二つやったわけでございますが、これについてもやはり両方だと思います。  ただ、目的はあくまでも、その地域に内発的にそういうものが発展するということは非常に重要なことでございますし、しかしそういうものが十分でないときに、東京都からの移転というものがそれの一つの触媒になることも重要でございますので、当面は両方だと思いますけれども、最終的な気持ちとしては、地域でどんどん内発的にそういうものが育成発展していくということがまた望ましいと思います。
  27. 奥野一雄

    奥野(一)委員 私もちょっと心配しているのは、東京に余りに集まり過ぎて地方の過疎化が進む、そういうものを是正をしなければならないというのが東京一極集中排除、多極分散型だと思うのです。  そうする場合には、例えば地域の中に、その地場でもって何か新しいものを、これはできるものはできると私は思うのです、当たり前ですね。できるものはできるということは当たり前なんだけれども、ただ、今のような東京の姿をそのままにしておいたのではやはり東京集中になるというのですか、この中にも書いてありますけれども、東京の機能に依存をしないような地域の何とかかんとかとこうあるのですけれども、それは難しいのではないだろうか。すべてのものが今東京に集まり過ぎて、地方でそういうものができても、結局は東京依存という形になってしまう。そういうものをある程度なくして、その地域なら地域が独立をしてやれるような状況というものでなければ、さあこれでやってみて東京の方はそのままだということになっていった場合には、どれだけの効果が上がるのかなという疑念をちょっと持っているわけなんですよ。  しかし、東京から移転をさせるということになったって実際は難しいのではないか。政府の機関でさえなかなかそう簡単に決まらない。本当なら政府がやるんだから、政府の機関なんというのはさっと決まりそうなものだと思うけれども、これだってなかなか決まらない。まして民間の場合には、当然それは利益とかなんとかということにつながっていかなければなかなかできないわけですから。そうすると、せっかく例えば地方に何かをつくってみても、全部それは東京依存体質になってしまって、また本社は東京に置かなければならないとか、何とかしてしょっちゅう東京に出てこなければ自分たちの仕事ができないというような状況では困るのではないだろうか、こういう気がするのですが、その辺は心配ないということですか。
  28. 安楽隆二

    ○安楽政府委員 これまでやってまいりました工業再配置政策につきましても、いろいろな施策を強化して、それなりのある程度の成果を上げてきたと思っておりますが、これも地元の大変な御努力もありますとともに、国としてもいろいろな支援をしてきたということがございます。しかし今度のこの頭脳部分につきましては、今までと同じ、あるいはむしろそれ以上にそう簡単ではないということは、先生の御指摘のとおりでございます。と申しますのは、こういう産業の頭脳的なもの、そういうものは今の情報化とか国際化とかというものが進む中で大都市圏、特に東京圏の方が有利である。本当に有利かどうかは別といたしましても、そういうような感じというものが非常に強くあることは事実でございまして、それが今の東京一極集中になっている。これではいけないということで、地域にそういう集積地域をつくっていこうということなんでございます。  したがいまして、その場合にこれは国としても相当強力な支援が必要だということで、今度の法律の中でも、例えば税制のインセンティブにつきましても特別償却率としては相当高い率を考えておりますとか、それからいろいろ施設をつくる場合でも、地域振興整備公団が直接団地を整備するとか、あるいは施設づくりをする、そういうようなことで我々としては直接的な出資をする。さらにはNTTの無利子融資も活用する。そういうことで、強力な施策をやって地域に頭脳を集積しよう、こういうふうに努力しようと思っておるわけでございます。  したがって、やろうとすることは簡単ではありませんけれども、しかし一方におきまして、地元としてはその頭脳によって、テクノポリスの地域でももちろんそうでございますけれども、それ以外の産業におきましても、やはり単に単純なものをずっとつくっているだけではだめで、どんどん新しいもの、いいものをつくっていかないとこれからはだめだというのはどの産業でも共通でございますので、そういう産業の頭脳部分をぜひ地域に育てて、地域を活性化したいという地域の御要望も非常に強いわけでございますから、何とかそういう方向でこれを成功させていきたいというふうに考えております。
  29. 田村元

    ○田村国務大臣 今、局長が申したとおりでございますが、率直なお答えを申し上げるとすれば、やはり今の東京というのは異常だ。でございますから、大変難しい問題ではあるけれども、しかし何かをやらなければならないということだけは事実なんですね。でございますから、私はこの頭脳立地法律だけで能事終われりというものじゃないと思うのです。いわゆる四全総の思想に基づいて通産省はこういうことを担当して、これと取り組んでいくということだと思うのです。そして大きくは、夢のような話ではございますけれども、これまた取り組まざるを得ないでしょう、避けて通ることはできないと思うのですが、あるいは遷都にするのか分都にするのか展都にするのかはとにかくとして、この政治、行政の機能をどうするか。また、官庁の施設を地方へ持っていく、これも結局我々が担当しておりますこの問題と同じように、総理府にとっても避けて通れない問題だ。みんながそのように協力をし合ってやっていかなければならぬでしょう。  我々は、そういうことでございますので、東京圏一極集中ということについて対応をするわけではありますけれども、同時にそれ以上の大きな目標としては、やはり地方の活性化ということを図っていかなければならない。今、局長が申しましたが、なかなか並み大抵ではございません。ございませんが、難しいからといって腕をこまねくというわけにはまいらないということで、私が率直にお答えを申し上げるということを冒頭申し上げましたが、そういう意味でございまして、恐らくこれからも試行錯誤を繰り返しながら我々は進めていかなければならぬかもしれません。けれども、それを進めなければならない義務を我々は負っておる、責任を負っておるというふうに考えている次第でございます。
  30. 奥野一雄

    奥野(一)委員 時間の関係がありますので、先へ進みます。  この法律を実施する上で、この辺はちょっと考えていただいた方がいいんじゃないかなと今思う点があるわけでありますけれども、例えば集積促進地域というのは、産業集積が相当程度あり、人材の確保が可能な地域で、空港や高速道、新幹線などの高速交通手段がある地域、こうなっているんですね。私は、こういう地域だったらある程度自力でできる素質を持っているのじゃないかと思うのですね、これだけの条件が整っているのだから。ここに至らないようなところ、もうちょっとで届きそうだけれども、まだそこまで至らないというところがむしろ必要じゃないかなと私は思うのですが、それはどうなんでしょう。
  31. 安楽隆二

    ○安楽政府委員 今、先生のおっしゃいましたように、法律における地域の要件として五点書いてございますけれども、それを具体的にどの程度にするかということにつきましては、指針の中で細則として今後検討して決めることになっておりますが、先生のおっしゃるとおりでございまして、これが非常に自立的にほっておいてもやれるようなところだけが適用されるようなものであれば、この法律の目的には沿わないわけでございますので、そういうところもあり得るかもしれませんけれども、やはり地域産業全体の高度化をもたらすような集積の可能性があるというところで、そういうものに育成発展していくことが必要なんだという地域がカバーされるような指針というものを考えていかなければならぬと考えております。
  32. 奥野一雄

    奥野(一)委員 先ほどもちょっと触れましたけれども、この中間報告の中には大変いいことをたくさん書いてございます。私もこれを読ませていただいて、非常にいいことが書いてあるのですけれども、これは例えば生活環境の整備だとか生活文化の育成、情報通信機能の整備、あるいはまた人材養成のためには研究機関、大学等の教育機能の地方分散についても、この中では触れておられるわけでございます。したがって、私自身としても、単に産業の研究開発機関だけがそこにあったって、あたりが何もないようなところだとこれまただめだろう、やはり地域の経済の活性化ということを考えれば、今言ったようなことも一緒に進んでいかなければ完全な地域経済の活性化ということにはならないだろう、こう思うのですね。  そうすると当然、これは昨日もちょっと質疑の中に出ておりましたけれども通産省一省だけでやったってそう簡単にできない。ということになりますというと、この出された中間報告、これに基づいて通産省が今度の頭脳立地法をつくられた、こう私は理解をしているんだけれども、その書いている中身というのは広範多岐でございます。各省にわたるものが全部載っています。そういうようなものが実現できなければ地域経済の活性化も思うようにいかないし、せっかくのこの頭脳立地法も効果を一〇〇%上げることができない、こういうふうに私は理解をするんですね。  そのためには当然、各省庁の理解、協力ということも必要でしょうし、ですからこれは例えばの例でありますけれども、地元のことを言って大変恐縮なんでありますけれども、例えば大学の問題、私のところには単独の大学というのは一つもない。ところが国の方は、国立大学については何かもうこれ以上ふやさないとかなんとかいうようなことを言っているわけですね。しかしそれでは、こういうものとマッチして進むことができるのか、じゃ私立の大学をと、こうなると思うのですが、私立の大学ということになったってそう簡単にいきやしない。大学だって、営業と言っては悪いのですけれども、私立の場合にはやはり採算が合わなければそんなところへ進出しないと思うのですね。そうすれば、国全体で必要だとすれば、何らかの国の、大学とは申し上げませんけれども、国のやはりそういう人材を育成するような機関の設置ということについては考えなければいけないのじゃないか。しかしここに書かれていることは、そっちは文部省の方の仕事ですから、そうすると、こうありたいと願望的に書かれているのかという気になるんですね。  そうでなくて、これは四全総じゃありませんから、四全総だったら国全体ということになりますけれども立地公害局の方の諮問機関という形でこれはやっているわけですね。そうした場合に、中にいいことが書かれてあったって、そのことが単なる願望というようなことになってしまうのであれば、せっかくの頭脳立地法だって一〇〇%効果を上げられないでしょう。そうしたら、書かれていることの中身について、どういうように各省庁にこれから働きかけをされていこうとしているのか。それは四全総待ちだとか、各省待ちだということだけになっているのか。通産省としては、こんな立派な中間報告をつくり、こういういい法律案をつくった、これを生かすために各省庁はこう協力してくれないか、そういうことはやられることになるのですか。
  33. 安楽隆二

    ○安楽政府委員 先ほど大臣からもお話ございましたように、国土づくりあるいは地域経済の活性化というのは非常に総合的な問題でございまして、言ってみれば四全総に書いてあることは全部実現させたいというのが政府全体のあれだと思いますが、しかし全部を一遍にするというわけにもいきませんので、それぞれの所管の分野中心にしていろいろな専門的な施策を展開するということがあるわけでございます。  ただ、私ども産業の頭脳の分散立地という場合でありましても、先生御指摘のように人材というのが非常に重要でございますから、それでは人材のためには、そのための教育関係の制度、施設も必要だし、またよい人材が定着するための居住環境とか都市環境等も重要であるということはございます。この法律におきましては、特に住宅とか土地とかあるいはその他の公共施設等に関連いたしまして、例えば建設省、それからまた農用地に関しまして農林省、あるいは地方整備に関しまして国土庁、さらに通産省を入れまして、四省庁で一応主務大臣ということでやっていくことになっておりますが、余りたくさん船頭が多くてもかえって事務的に煩雑になるということがございますけれども、四省庁でやりまして、それからそのほかの省庁につきましても協議するという法律上の規定もございますけれども、そういうことをやりまして、政府全体の御協力を得つつこれをやっていきたい。したがって、こういうような考え方自体は四全総の中でもうたわれているわけでございます。  それからまた、この法律自体の中でも、先生は人材というか教育にお触れになりましたけれども、学校一般ということになりますと文部省とかそういうことにもなってくるわけでございますが、特に産業の頭脳に関した人材育成ということに関してもお手伝いしようということで、地域整備公団が直接出資いたしてつくります施設整備につきましては、研究開発だけでなくて高度な人材育成、産業の頭脳形成のための人材育成のそういう施設づくりも、いろいろ手伝わせていただきたいということで考えておる次第でございます。
  34. 奥野一雄

    奥野(一)委員 すべてのものが一〇〇%最初からうまくいくということはないと思うのでありますけれども、そういかせるために、せっかくつくって地域経済の活性化をやろうとするのであれば、そういう面での御努力もお願いしなければならないと思うのです。  ただ、ここでこういうようなことをやるためには今の体制でいいのか。今の体制というのは、いろいろな機能は東京一極集中主義になっていますけれども、行政の分野も中央一極集中になり過ぎているのではないかと私は思うのですね。ですから、こういうようなものを仮にそれぞれの地域の中で活性化させてやろうとするためには、地方に対する分権というのですか、これが非常に必要だというふうに私は痛感しているのですね。たまたま最近の「自治日報」の中に、島根県の恒松前知事さんの書いた記事が載っているわけでありますけれども、これはこういうふうに言われているのですね。「今多くの自治体は(まちむらづくり)に必死に取り組んでいる。自分たちの町や村が姿を消すのではないかという危機感からである。彼らが望んでいることは思い切った権限の委譲と自主財源」こういうものを地方に与えないとうまくいかないのだという意味のことを言われているわけなのですよ。  私も、そういう面はあると思うのですね。これは行政府の場合でも、今自分たちにある権限を放すということになったら相当の抵抗はあると思うのです。本来ならば、行政改革の第一歩にそれをやらなければならなかったのではないか。例えば地方に補助金をおろすという場合に、何回東京に出ていかなければならない仕組みになっているのか。こんなようなことでは、地方は自主性を失ってしまう。地方で自主性を失ってしまうということは、東京に頼らざるを得なくなるということとつながっていくということになるのですよ。地方の経済活性化ということにはなっていかないのじゃないか。やはり分権ということが一番重要ではないのだろうか。東京一極集中主義の排除でも、分権、委譲ということから始めていけば案外可能性が強いと思っているわけなのです。だから、この頭脳立地法なんかの場合でも、これを有効に実現させていくためには地方に対する分権、地方自治体の財政の強化ということもあわせてやらないとだめになってしまうのではないか。  時間がありませんので、ついでにそっちの方にも触れてお尋ねをしておきたいと思うのですが、例えばこの法案の中では「資金の確保」ということで出ておりますが、その中で国の援助なんかの場合に「地方債については、法令の範囲内において、資金事情及び当該地方公共団体の財政状況が許す限り、特別の配慮をする」となっているわけですから、逆にこれから外れたものはだめだということになるわけですね。「法令の範囲内」というのはちょっとわかりません。これは省令になるのだろうと思うのですが、地方団体の財政状況ということになりますとこれは何を基準にするのか。公債費率か何かで考えるということになるのか。せっかくやろうとするのであれば、そこが決まったけれども、いや、おたくは財政状況がだめですから資金を融通しません、これではまた困る、こういうことになるわけでありますが、今申し上げました地方分権と自治体の財政対策という点でお尋ねしておきたい。
  35. 田村元

    ○田村国務大臣 前段のくだりは、これは恐らく役人の答弁じゃ限界があるでしょうから、私からお答えをいたしたいと思います。  私は、基本的に奥野さんと同じ考えであります。四全総の中にも「このため、国と地方の役割分担については、国、地方を通ずる行財政の簡素合理化及び地方分権の推進の観点に立って、地域づくりにおける地方公共団体の自主性、自律性の強化等を図ることを基本に、」云々という文言があります。しかし、いざこれを具体化する、これは大変なことでございまして、私は今まで、政務次官時代を入れますと随分幾つかのお役所に奉公したわけでございますが、とにかく一が組織、権限、二が予算、これに関しては我々党人政治家というものでは、つまり我々庶民という立場では考えられない。自分の懐でもあるまいにと私はいつも思うのでありますが、これに関しては狂気のさたと言ってもいいのじゃなかろうか、私は本当にそう思うのです。  でございますから、私ときどきふと思いますが、今、内閣総理大臣でどんな人が必要なのだろうか。今は竹下総理ですから立派にやってくれると思いますが、その後だれが必要なのだろうか。私は、何らためらうことなく河野一郎と答えますよ。ああいう人が出てきて大なたを振るうというようなやり方をしなければ、これはなかなか簡単なものじゃない。地方分権というのもピンからキリまでございます。ですから、我々は遷都、分都、展都というものを交えながら真剣に考えていかなければならぬと思います。  東京というのがなぜこんなに巨大になったのか、なぜこんなに異常になったのか。それは、情報化時代だからすべての産業の機能、経済機能が東京に集まったと言えばそれまでですけれども、その以前に政治、行政のすべての権限がここに集中しておるからそういうふうな——結局これも付加価値ですよ。私はそう思うのです。でございますから、今こそ竹下総理が申しております政治、行政の地方分権も、我々が行動することによっててこを入れていかなければなるまい、進めていかなければなるまい、このように考えております。しかし、率直に言ってこれはなかなか並み大抵のことじゃない。その意味では、私は鬼にもなれば蛇にもなろうと考えておる次第でございます。
  36. 安楽隆二

    ○安楽政府委員 先ほど地方債についての御例示がございましたけれども、確かにここは法律の条文でございますので、「法令の範囲内」とか「資金事情」とかいうことが書いてございますけれども、これはある意味じゃ当たり前というか、そういう感じでございまして、むしろこの「特別の配慮をする」というのは、そういう本条の条件に合致する限りは優先的に起債の許可をするという、その支援するための条文を政府内の交渉で特に入れてもらった、こういうことになって国会の方にお願いしている次第でございます。
  37. 奥野一雄

    奥野(一)委員 時間が来たので終わりますけれども、せっかく皆さん方が英知を集めてつくられた法律案でございますから、地域の経済の活性化に幾らかでもやはりより多くの役に立つようにこれから運用や何かの面でも十分御配慮してやっていただきたいと思います。  では終わります。
  38. 尾身幸次

    ○尾身委員長代理 午後零時三十分から委員会を再開することとし、この際、休憩いたします。     午前十一時三十一分休憩      ────◇─────     午後零時三十一分開議
  39. 渡辺秀央

    渡辺委員長 休憩前に引き続き会議を開きます。  質疑を続行いたします。薮仲義彦君。
  40. 薮仲義彦

    薮仲委員 私は、地域産業高度化に寄与する特定事業集積促進に関する法律案、通称頭脳立地でございますが、これから頭脳立地と言わせていただきますけれども、この法案に関連して、大臣初め通産省の方々に何点かお伺いしたいと思います。  この頭脳立地という法案を作成したその陰には、やはり通産省として地域経済の活性化という大きな命題を抱えていらっしゃると思うのであります。四全総でも多極分散と言われますけれども、これは口では言うのは簡単でございますけれども、事柄はなかなか大変である。それは東京の持っているエネルギーといいますか、情報にせよ、国際的な金融機関あるいはあらゆる企業や行政あるいは司法も集中しておる。これだけ強大になっている東京というものを地方に分散させよう、そのための一つのコアとして頭脳を適切に全国へ分散立地して、そこに好ましい集積した一つの都市といいますかそういう形態をつくっていこうという、その趣旨はわかるわけでございますが、基本的に私は、これだけ強大な東京の持っているエネルギーといいますか経済力といいますか、これを分散させるために本当によほどの力といいますか圧力といいますか、思い切った英断がないとそれは不可能じゃないかなと思うことが間々ございます。  この四全総で言うところの多極分散、東京一極集中のエネルギーを何とか回避していこう、地方に好ましい都市を構成していこうという、これに対して通産省はどうお考えになっているか、まずその点からお伺いしたいと思います。
  41. 田村元

    ○田村国務大臣 東京というところは余りにも巨大になり過ぎて、もちろん東京のいい面もあります。情報化時代でございますから、特に政治、行政を中心として経済すべてが東京に集中しておるという次第ですから、いい面もありましょうけれども、今我々が当面して特に庶民が困り果てておるという、つまりこのマンモス都市東京が抱えておる悪い面が今浮き彫りにされておる。  そこで、四全総は多極分散ということを志向しておるわけでございますが、我々もその思想を受けて、従来の工業再配置、テクノポリス等のみならず、もう大体これはほぼそれなりの成果、十分ではなかったかもしれないけれどもそれなりの成果は上げ得たわけでございますが、これからいわゆる頭脳部分と言われるソフトの部分を地方へ分散といいますか拡散させよう、そして一つには、よき意味における東京都の空洞化を図ろう、と同時に地方の活性化に大いに役立つことができればという願いを込めてこの法律を御審議願っておるわけでございますけれども、もちろんすぐにすばらしい効果が出るかどうか。私は率直に言って、目覚ましい効果が出る、つまり環状七号とか八号とかという道路に大きな予算をつければそれは効果が目に見えて出るわけでございますが、この問題はそう簡単に効果は目に見えないかもしれない。しかしやらなければならない、放置するわけにいかない。でございますから、そういう点でこの法律案の御審議を願っておる次第でございます。  東京は余りにも巨大になり過ぎた、そして政治も行政も経済もすべての権力が集中し過ぎたということでございますから、四全総の志向する方向というものは正しいというふうに私は考えております。
  42. 薮仲義彦

    薮仲委員 今、大臣の御答弁の中で、私は非常に期待をする発言を感じておるわけでございます。それは、大臣はいみじくも東京の空洞化という表現をなさったのですね。今アジアNICS等のために生産立地海外へという動きで、いわゆる日本産業空洞化が叫ばれておりますが、基本は今大臣がおっしゃったように、東京を空洞化できないのかどうかということについて最後に大臣のお考えをお伺いしたいと思うのですけれども、この点今度の法案にも関連して、おっしゃるとおり非常に大事であるなと私も認識をいたしております。  そこで、これは局長で結構でございますから、今大臣の御答弁の中でも工業再配置促進法のお話もございました。その前に、新産都市構想とか多極分散型にしようといっていろいろ努力をなさっている。これは各省庁共管でございますから、関係省庁の努力もあろうかと思いますが、通産省としては、新産都市構想、工業再配置促進法あるいはテクノポリス等々の構想で分散を図ってこられた。これに対して今どういう評価、認識に立っていらっしゃるのか、その辺ちょっとお伺いしたいのです。
  43. 安楽隆二

    ○安楽政府委員 お答え申し上げます。  まず一番初めの古い方から申し上げますと、新産・工特地区でございますが、これにつきましては高度成長時代、昭和四十年代に地方に対して、地域に対して拠点開発をしようということで始めた政策でございます。その結果、これまで特に重化学工業の発展、臨海型基礎素材型産業の発展に大きく寄与いたしまして、今日の日本経済産業の成果の中で重要な位置を占めてきたものではないかと思います。これが新産地域十五地域と工特地域地域あるわけでございますが、対全国の工業出荷額のこの地域のシェアでいいますと、昭和四十年の一四・一%が六十年には一六・九%になった、それから人口が同じく一四・四%が一四・九%になったというような形で、一応地方に対する工業、人口の分散には寄与してきたわけでございます。  ただ、期間を分けてやっておりますけれども、昭和五十六年から六十年までの第三次基本計画の達成率を見ますと、工業出荷額の目標達成率は四三・九%等々ということで、目標には達していないわけでございます。特に二回の石油危機がございまして、それ以後我が国の経済が安定成長化する。そうした中で、産業構造も基礎素材型の産業ウエートからむしろ高付加価値型、加工組み立て型の産業ウエートが移るというような中で、この地域におきましてはさらに地域の整備というものを進めているわけでありますが、そうした産業構造の変化の中で、新しい産業構造に合わせたような展開ということも必要であるということで、高付加価値型産業の育成、あるいは基礎素材産業についても新しい技術開発等の導入によりまして新しい発展を図る、そういう努力が行われているわけでございます。  それから次に、昭和五十年の前後になりまして高度成長から安定成長にだんだん向かってまいりましたが、そうした中で国土計画の方では三全総というのができましたし、それから工業立地政策の方でも工業再配置政策ということでやってきたわけでございますが、これは必ずしも臨海型ということではなくて、内陸型の加工組み立て型産業等々を重視いたしまして、誘導地域という地方の地域法律上決めまして、そこに三大都市圏等からの工業の分散あるいは工業をそこで内発的に育てるということをやってきたわけでございます。これにつきましては、工場立地件数で言いますと、面積ベースで当初の目標の全国の七割くらいを誘導地域でやるという目標がほぼ達成されたわけでございますが、やはりこれも経済成長の安定化という中で、工業出荷額で見ますと目標の半分程度が達成されたということでありまして、まだまだ不十分ということでさらにこの政策を進めていこうというふうにしているわけでございます。  それからテクノポリス法でございますが、これは、そういう産業構造の変化の中で、特に昭和五十年代の後半以降ハイテク産業というものが技術革新の中で大変重要になってまいりまして、そこでこのハイテク産業というものを地域に導入していく、あるいはそれをてこといたしまして地域の工業の技術高度化するということで、高度技術に立脚した工業の開発、それと産学住の町づくりというような観点から地域を決めて、そこでハイテク的な工業開発をやってきたわけでございます。  これは、現在始めて四、五年というところでございますので、これからまだ時間がかかるので評価についてはさらに時間が要るわけでございますけれども、現在のところで見てみますと、テクノポリスを承認し始める前の三年とそれ以後の三年間を年平均で比べてみますと、工場立地件数につきましては、面積ベースで一・八倍、それから立地件数で一・四倍ということで全国平均を上回る立地が進んでいるというわけでございますが、その際同時に、テクノポリスということでございますので、高度技術関係したいろいろな施策があるわけでございますけれども、その一つといたしまして、例えばテクノポリスの開発機構というものをそれぞれの地域につくっていただいていろいろな事業をしていただいておりますけれども、その関連でも、例えば研究型企業の育成のための債務保証事業というので見ますと六十二年度末で合計百四十七件出ているとか、あるいは産学官の交流ということを非常に重視してまいりましたが、これもだんだんふえてまいりまして六十二年度で百九十件のケースが出ている。それからまた、リサーチコアというような研究施設の充実等の施策もございまして、そのほか公設試験研究機関の拡充等、地元の努力もいろいろございまして、研究開発とか人材育成、情報等の施設整備も進んでおるわけでございまして、一応六十二年度末までにテクノ地域でこうした施設が三十二カ所完成しているというような数字はあるわけでございます。  もちろん地域によりまして、あるいはその中身におきましていろいろ問題がないわけではないわけでございますけれども、我々としては、おおむね順調にプロジェクトが拡大しておりますので、これを一層支援してまいりたいというふうに考えております。
  44. 薮仲義彦

    薮仲委員 今お話しのように、最初は臨海工業地帯、重厚長大の産業の時代から、だんだんと通産行政の流れの中で今度はテクノポリスから頭脳立地へと流れが来ておるわけでございますけれども、お話しのように必ずしも、きょうはやめておきますけれども、その一つ一つの施策自体が当初の目標を達成し得たかどうかという、これはある意味では研究してみる必要があろうと思うのでございます。  そこで、テクノポリスのお話もございました。これはまだ始めてわずか数年ということでございますけれども、これに対しても、私は静岡でございますから、浜松の問題いろいろ抱えて、先日も浜松へ行ってまいりました。きょうは具体的にその浜松の問題を取り上げる気はございませんけれども、私が指摘しておきたいのは、当初の目的と地元のニーズをよくもう一度精査していただきたい。このことによって地域がどういう受けとめ方、またどう将来を見通しているかという点について、私は浜松しか正式にはわかりませんけれども、全国の二十数カ所のテクノポリスのそれぞれの地域でそれぞれの問題を抱えて、この辺でもう一度、現状はどうなのか、果たしてこのままでいいのかどうか点検をしないと、名ばかりあって実態が伴わない結果にならないように、コアが果たして育っているかどうか、この辺は私、言いたいことは山ほどあるのですけれども、余り地元のことを言うと好ましくありませんからきょうはやめておきますけれども、決して私は好ましいという考えで理解はしておらない。もう少し何とかしなければという考えで、きょうはそちらの方にウエートを置いて質問させていただきたいのです。  新産都市構想であろうと工業再配置促進法、工業再配置を促進していこうということで努力なさった、あるいはテクノポリスをやってこられたけれども、今回提出なさった頭脳立地、いわゆる頭脳のコアをそれに重ねるつもりなのか、全く別なところへ新たにやろうとするのか、この辺はある意味では非常に重要であろうと思うのです。重ねるというか、あるいは全く新しいところはだめですと言わないけれども、少なくとも何とかしようと思ったところに、テクノポリスというのは御承知のように頭脳のコアを地元がつくりなさいという形でございますから、果たしてそれだけで育成できるのかどうかということも考えながらきちんと見直していただきたい。特に、頭脳というのはだれでもいいわけじゃないのです。そこに世界的な名の通った研究者がいるかいないか、これは全然違うのですね。名もない人がと言っては大変失礼かもしれませんけれども、力がなければそこに集積はしてこないのです。本当にすばらしい研究者、そして研究に伴った施設というものがあってこそ、そこに人が育っていき、あらゆる人も寄ってくるわけです。  それだけの魅力のあるものをつくろうとなれば、これは通産省としても今度はよほど本気になって、この頭脳立地にきちんとこの指とまれというだけのものをつくらなかったら何にもならないと思うのですね。私は、テクノポリスのテクノの部分もポリスの部分も非常に不十分だと思うのです。自分の足で歩いてみてこれはいかぬと思っているから申し上げるのであって、例えばテクノポリスへ必ず重ねなさいとは言わないけれども、重ねることも十分考えなければならないだろうし、新しいところもつくらなければならないだろうし、同じように各地にあるテクノポリスのテクノの部分が本当に東京の引力に負けないだけのテクノたり得るかどうか。北海道あるいは九州、成功している例として大分とか熊本の例が挙げられますけれども、果たしてこれもこのままでいいのかどうか、見直す必要があると思うのです。その意味で、このテクノの発想の中に今度の頭脳立地をどうリンクさせるのか。  もう一つは、この次出てくると思うのですけれども民活法、これも似たようないろいろな形で出てくると思うのです。これもやろうとするんだったら、では民活法の位置づけをどうするんだ、全く別なところでやるのか、あるいはテクノの位置にまた重ねたってむだじゃないと私は思うのです。そこで新しい民活を掘り起こしなさい、これはポリスの方の形成の上に非常に役に立つと私は思うのです。テクノは頭脳立地です、ポリスは民活でやりなさいといってそこに重ねれば、テクノポリスもあるいは育っていくかもしれないけれども、テクノポリス自体は何ら、税制の優遇だけであって、そこに行政がお金をというような形じゃないのです。しかし民活にせよ、今度の頭脳立地にせよ、今度それじゃ間に合わないから国が手を出して財政的な面でもきちっとコアをつくっていこうというのですから、全く発想が違うのです。だから、私はこういうところを重層的にやることが非常に重要だと思うのですけれども、その辺はどうですか。     〔委員長退席奥田(幹)委員長代理着席
  45. 安楽隆二

    ○安楽政府委員 今、先生御指摘のように、こうした地域開発政策というか、産業高度化政策というものを成功させるためには、相当な努力をしないといけないわけでございます。  それで、今テクノポリスの話が出ましたけれども、テクノポリス地域というのは高度技術工業に立脚した経済圏、産業圏ということで、地域経済圏の中のそういう意味では非常に代表的なものの一つではないかというふうに思っております。それから、先ほども指摘ありました基礎素材産業中心にして始めた臨海型の新産・工特地域というものもございますし、それ以外の地域経済圏もあるわけでございます。そうしたいろいろな地域経済圏があるわけでございますが、どのような産業分野であれ、これからは頭脳、ソフト、技術、そういうものを大いに活用してやっていかないと、とても国際的な競争の中ではやっていけないという時代でございますので、その産業の頭脳というものを地域でぜひ活用していくべきではないかというのがこの法の発想でございます。  したがいまして、例えばテクノポリスというのはまさにそういう高度技術ということでございますから、頭脳を非常に必要とするわけでございまして、テクノポリス地域の頭脳集約化というもののためにも、この頭脳集積構想は当然大いに役立つわけでございます。したがいまして、テクノポリスの地域の中にとか、あるいはテクノポリスの地域の近くにとか、あるいは必ずしもテクノポリス地域だけではなくて、テクノポリスの地域とその他の地域経済圏をにらんだところにとか、これは地域の実情でいろいろ違うと思いますが、そういう地域産業高度化全体を進めるための最も適切な地域にこの集積促進地域がつくられるということが必要ではないかと思っております。そういう意味では、先生の御指摘のとおり重なると申しますか、まさにこの集積促進地域を活用するのはテクノポリス地域であり、あるいはその他の地域経済圏でありということになるのではないかと思っております。  それから民活法でございますけれども、それぞれ法律趣旨ということに、カバリッジについては違う方向を持っておりますが、民活法は日本の経済社会の基盤施設を充実させる、そしてそのことが現下の内需の拡大とか、それからこの民活法の場合には大都市圏でも地方でもいいわけでございますが、しかし地方でこの民活法を活用して施設を充実する場合には、当然地域経済の活性化あるいはテクノポリス政策の推進、それからまたこの頭脳立地の推進にも役立つわけでございます。そして、この民活法の施設の場合には、必ずしもこれはどこどこの地域をきちっと決めてというのではない。施設をつくるということでございますので、そのテクノポリス地域の中でも当然つくれるわけでございますし、集積促進地域の中でも使えるわけでございますから、施設整備の一つとしてこれもぜひ活用していただきたいということで、いろいろな施設メニューを動員いたしまして、そして立派な集積地域をつくっていくということでございませんと、なかなかこの東京圏の一極集中等の難しい情勢の中でうまくやっていくというわけにはいかないかと思うわけでございます。  それからもう一つ、先生、テクノポリスのポリスの面ということでございまして、ポリスの面と申しますかいずれにしましても、テクノにいたしましても頭脳の場合でも、人材が非常に重要でございまして、日本は賃金も高くなる、土地も高くなるというようなことで、なかなか国際競争の条件が不利な面がだんだん強くなってきているということがよく言われますが、その中でやはり人材、人のクォリティーということが最も重要だということはコンセンサスがあるのではないかと思いますが、そのために人材が育ち、定着するということが地域において必要でございますので、そのためには、それに直接関連したいろいろな研究開発の問題あるいはそのための教育施設の問題等々につきましては、この頭脳立地法の中でもそのお手伝いをするようになっておりますが、さらに広く、都市とかあるいは住環境とか、場合によってはリゾート環境とかいろいろなものを広く整備していくということが必要でございまして、この法律の範囲内でも努力する面もございますし、それから政府全体でいろいろな施策をやっておりますので、そういうものも活用して、人材が十分育つような立派な地域でないと集積促進地域は成功しないというふうに考えております。
  46. 薮仲義彦

    薮仲委員 私はもう一つ申し上げたいことがあるのです、自分でも浜松に行って感じたことで。これは名前を挙げて申しわけないのですが、その例として引くのではなくて、例えば日本の大手の東芝であるとか日立であるとか松下であるとか、こういう企業が例えば浜松へ工場をつくります。こうなったときに、これはだめだと言うのじゃないのですよ、どこまでも東芝の浜松工場であり、日立の浜松工場なんですね。権限や裁量権というものはほとんど中央にあるわけです。ただ、ここ工場なんですね。こういう形で地域を育てようとしても、どだいこれは本当の意味で育ってくることはないと私は思うのです。  これから全国に本当のすばらしいコアをつくろうというのだったら、東京なんというのは、アジアのこれから発展していくであろう国々の一つの国よりも、人口であれ経済力であれ金融力であれ、一つの独立国家以上に大きいであろうと私は思うのです。そういうのに対抗して、これから例えば大阪なり名古屋なり我々のいる静岡なり、いろいろな地域でこういうことをやろうとするときには、本当にある意味では東京とは全く違ったコアをつくっていかないと、しょっちゅう東京の顔色をうかがっていたのでは立派なものは育っていかない。  昔の戦国大名ではありませんけれども、もう徳川があったり豊臣があったように、大阪夏の陣、冬の陣じゃありませんけれども、ある意味では、よし大阪で天下を取ってやるぞとか、名古屋に来なければこのことはわからぬぞ、静岡に来なければこのことはわからぬぞ、九州に来なければこのことは絶対にわからぬ、北海道はこのことならわかるというような、きちっとした個性のあるコアを育てないと、どこに行っても同じものをつくったって、これはある意味では必要あるかもしれませんよ。でも、本当のことを言って、そこに育っている大事な芽をきちっと育てる必要があると私は思うのです。  そこにあるコアを本当に、小さな火であっても、火吹き竹で風を送ってだんだん燃え上がらせるような努力が何かあって、よそから引っ張ってこよう、そうかもしれませんけれども、そこにはやはり歴史があり、伝統があり、民族があり、文化がある。そこに育っている何かを育てないと、本当の意味でそこに根差したコアにはなり得ないような気が、最近私はしてならないのです。都合が悪くなれば逃げちゃうのですよ。これは石炭にせよ何であれ、造船だってぐあいが悪くなればどんどん逃げちゃうのです。でも、そこに住んでいる人は逃げられないのです。どんなにその経済が疲弊しても、そこで生活し、子々孫々育てなければならない。  だったら、二十一世紀に向かって、本社がぐあいが悪くなったらトカゲのしっぽ切りみたいに切るようなのではなくて、本当にそこに通産省としてコアを育ててやろうと、本気になってそこにコアを見つけて育てていただきたい。それがどんなコアであっても、将来絶対これは育ててみせるという考えでやらないと、似たようなものばかりばらばらつくったって、だれも喜んでいないのですよ。やはり東京の持っている力はあるかもしれない。しかし、地域には地域の個性のあるコアを立派に育てて、そこになるほど頭脳立地中心としたコアが育ったな、大きくなったなと。北海道には北海道のよさがあると思うのです。九州には九州の何とも言えないよさがあると思うのです。その技術を生かしてそこに立派なコアをつくることが、私は本当の意味での分散型の国土の均衡ある発展であり、通産省が目指さなければならないこれからの経済構造ではなかろうかな、こう思うのですよ。ですから、やはりそこにきちっとしたものをつくっていく、特殊性のあるものをつくっていく、これはどうですか。
  47. 田村元

    ○田村国務大臣 御指摘のとおりでありまして、東京圏に集中しております産業の頭脳部分、これを地域において集積させていくためには、おっしゃるように、東京に対抗するぐらいの特色のある集積の形成や地域づくりを目指すことが必要である、これはもうおっしゃるとおりであります。私も全く同感であります。  このためには、地域産業技術、人材、こういう集積や社会的歴史的な背景などの特性を十分踏まえて、そしてそれらをさらに伸ばしていくことによって、全国的に見てもまた国際的に見ても立派に通用する、そういうレベルの企業の育成や経済圏の形成に努めていくことが層一層重要であろう、私はそのように思います。国としても、民間企業立地に対する税制や金融上の措置や、地域の特色ある研究開発施設や人材育成施設の整備など、産業の頭脳部分立地促進のための強力な助成措置を講ずることは必要でございましょうし、また、交通基盤や情報基盤の整備や強化といった幅広い施策を積極的に推進していかなければなりません。  と同時に、なぜ大阪があそこまで陥没したのか。これは率直に言って、大阪に本拠を持っておった大企業の多くが、あるいは中小企業まで本社をどんどん東京に移したということ。そして、中には形だけ大阪本部というのを置いて、そして本社を東京に移したというようなこと。これは中京圏にも言えることかもしれません、あるいはあなたの方の静岡地域にも言えることかもしれません。そういうふうに、東京へどんどん本社機能が移ってきた。でありますから、単なる研究施設やオフィスというソフト部分のみならず、経営の頭脳部分ともいうべき本社も、やはり地方地方に適性を求めながら拡散するということは必要であろうと思います。  ただ、これは言うべくして行われがたい面が多々ございますが、今政治も含めて、政治や行政の地方分権あるいは遷都とか分都とか展都とかいうようなことが言われておるわけでありますが、こういう議論と並行して、あるいはこの中に包み込んで、こういう問題も今後討議して実現せしめるように努力すべきではなかろうか。私はそういう点で、単に今法律が志向しております問題のみならず、もっと大きなものも一緒に包み込んで、行政改革等と関連せしめていくという必要があろうかと考えております。
  48. 薮仲義彦

    薮仲委員 大臣の御答弁に私は大変意を強うしておりますので、これからの通産行政の中で着実に前進されることを重ねて期待をいたしておきます。  そこで、これは通産省立地公害局長、もう少し論議を進めてお話をさせていただきたいのですが、私は浜松に行って感じたことがあるのです。いわゆる内発的な産業を誘発しようということでテクノポリスというのはあるのです、確かにそれはそれでいいのです。ところが、浜松というのは特殊性がありまして、二輪と楽器と繊維といういわゆる三大産業があるのですね。しかし、この二輪を例に挙げれば為替レート円高のために生産の拠点を国内に置いておいたのでは競争できないというようなことで、自動車産業は本田にせよあるいはヤマハにせよ鈴木にせよ、全部海外立地を求めて、むしろ浜松にいてほしいコアになるべき大企業海外立地をして、そこで雇用がある。力のある中小企業はついていかなければならない。そうすると、経済構造自体に、最もそこに育てたいと思ったところで、力のあるものは海外に行ってしまうという空洞化という現象が起きているわけですね。そこで、考えなければならないのは、やはり企業として生き延びるために、どうしてもそこで海外拠点をつくらざるを得なかった、企業の生き残りのぎりぎりの選択だったと私は思うのですよ。好きこのんで行ったのではないと思うのです。  そうすると、私はこの浜松で思ったのです。では、例えば私が経営者として海外へ拠点を設けようか、あるいは通産省の言うテクノの拠点へ工場立地しようか、そのときにやはりどちらが得かという判断をしなければならない。判断するよりも、むしろこれからテクノポリスを成功させようと思ったら、例えば人件費であるとか円高の為替の問題でやはり生産拠点は海外へつくろう、でもなおかつ、この内発的な地域で自分の生産拠点を設けようという必要性といいますか魅力というか、そこへつくろうというやむにやまれざる決定がなければ出てこないと思うのですよ。笛吹けどだれも踊らないと思うのです。やはり本気になってこれから多極分散しようとするのだったならば、これはさっき言ったようにアジアNICS、東京も一つの国と考えたならば、その東京から見たときにアジアよりも例えば九州がある、ほかには北海道がある、あるいは私のいる中部圏がいいのだという何か魅力のある、何があれば一番いいのか、これは通産省としてどうお考えになっているのか。今おつしやったコアも必要でしょう。それだけで果たしていいのかどうか、私も浜松の地に立って幾つか考えたことがある。局長はどうお考えになりますか。
  49. 安楽隆二

    ○安楽政府委員 大変重要な問題でございますが、また難しい問題でもあると思いますけれども日本の経済発展、社会の発展のためには産業構造高度化していかなければならないということで、これまでも世界の経済貿易の中でそういう方向で産業構造を転換し、高度化してきたわけでございます。  そういうことでございますから、ではこれからそれはどういうことかといいますと、一応世界の最先端を走る工業国になったわけで、後からNICSその他もどんどん追い上げてくる、欧米との競争もあるということでございまして、例えば人件費は高度工業国家ですから相対的に安くならない、それから土地も決して日本は広いというわけではない等々考えますと、やはりこれはソフトと申しますか頭脳、技術、そういうものの集約したものに持っていかなければならない。実は、こういう方向は既に通産省としても一九七〇年代の初めに、産業構造の重化学工業から知識集約化へというようなビジョンを出しまして、そういう方向の努力もしてきましたし、また、このテクノポリス政策というのはさらに先端技術産業、新たな技術革新の波の中でそういうものを全産業に高度技術を活用していくというような観点で、地域面ではテクノポリス政策というものが出てきたわけです。  それがさらに現時点になりまして、先生の御指摘になりました海外投資の問題とか円高の問題とか、また新たに二、三年大きな厳しい問題が出てきた中で、しかし産業構造高度化の中で日本はそういう方向でやっていかなければならないということで、それが頭脳である。それは研究開発とか技術とかも含めた、それが非常に重要な部分でございますけれども、より広いソフトと申しますか、これはハードの面でもあるいは経営の面でも、いろいろな意味でのソフトが重要になってきている。現に、そういうサービス産業がふえるばかりでなくて、製造業自体の中でもそういう部分ウエートが、就業構造の面でもいろいろな面でも、付加価値の面でも非常に高くなってきているわけでございます。これをぜひ地方に持っていく。そこで、特定事業とこの法律では呼んでおりますけれども、そういう形でできるだけ広くソフトの部分をとりまして、それを集積するというのが今度の法律趣旨になるわけでございます。  先生が浜松の例で海外への現地生産の問題をお触れになりましたけれども、これは非常に問題でございますが、おっしゃるように、しかし海外へ行くよりも日本のそういう地域集積のあるところに行った方がいいのだという強い立地条件をつくらなければならない。それはまさに頭脳であり、ただ頭脳と言っているだけではだめで生活環境、都市環境、人材というものを広く考えた上でそういうものをつくっていかなければならないのではないか、こういうふうに考えている次第でございます。     〔奥田(幹)委員長代理退席、委員長着席〕
  50. 薮仲義彦

    薮仲委員 私はニーズの中で、これはある外資系の企業立地のデータベースがあるわけですよ。幾つかの条件があって、それに点数をつけている。今、局長のおっしゃった例えば情報であるとか土地の問題であるとか、雇用のしやすさとか、全部あるのです。パーセントなんかも書いてあるのです。これはちょっと公開すべき資料じゃないですから、概略で申し上げますけれども、その中で非常に大きなファクターを持っているのは何か、それはクオリティー・オブ・ライフと書いてあるのです。いわゆる洗練された、高度化された住環境といいますか生活環境、それを非常に重要視しています。  例えば、さっき頭脳のコアと私が申し上げた優秀な教授であったって、教授はひとりじゃないのですよ。奥様がいてお子さんがいらっしゃるのです。それは、例えば教授は行きたいと思ったところで、奥さんが例えばあそこは高校だとか大学だとか、生活はどうなのか、あるいは文化的なレベルはどうなのか、問題が出てきます。その奥様が音楽が非常にお好きだったらば、あそこですばらしい演奏会があるかしらとか、簡単なことかもしれませんけれども、教授はひとりじゃないのですね、その周りがいるわけですよ。しかもそこに住んでいる社会があるわけです。友達がいるのです。それをぷつんと切って無人島へやるみたいなことを、ではその教授が受け入れるか。こういう点を、ソフトという表現を使ったけれども、もっと人間の側面から考えてみなければならない。皆さん方は命令でとんでもないところへ飛ばされて、いろいろ御苦労なさっているので申しわけないと思っています。単身赴任で苦労なさっている方も我々知っておりますから、本当に大変だと思っております。しかし翻って、そういう集積をつくろうとするときに、優秀な人を集めようと思ったらば、いわゆるクオリティー・オブ・ライフ、アメニティー社会というものがそこになければ、これからの人は行きたくても行けないのですよ。  生活実感で言えば何か。奥様がお買い物かごを提げて楽しいショッピングができます、ウインドーショッピングをしてもフラストレーションの解消にはなります、そういう非常に快適な生活環境がそこになければ家族はついていけないのですよ。子供の将来のことも考えるのですよ。そうなってくるから、さっきから民活やなんかで重層化とこう言っておりますけれども、そこに子供の育てやすさ、生活のしやすさ、住まいの快適さ、そういうものがあって、私は東京に行くよりあそこへ行こう、これが強力な一つの決め手になると私は思うのですよ。  教授が行こうと思ったって大変なんですから、やはりそのときにみんなで行こう、あそこならばいいよ、そういうところをつくらないと、ハードな面でコア、コアとおっしゃっても、人間は生きているのですから、生きている人間には音楽の好きな人もいるのです、花の好きな人もいるのです。すべての人がそこで楽しく快適な生活ができるような空間をつくってあげないと、浜松へ行って、ここに工業団地とこっちに住宅の団地とあるのですよ、そんなのには住まわせませんと言いますけれども、職住接近というアイデアはもうおやめになった方がいいのです。我々が普通の生活の中へ入っていけるような生活をした方がいいと思うのです。会社に行って課長の顔を見て、うちへ帰ってきたら隣が課長だった、これではとても職住接近なんという理念は嫌ですよ。うちへ帰ったら全然知らない人と会って、おじいさん、おばあさんと楽しく暮らすのが家庭ですよ。そんな、住まいと勤務地をくっつければいいなんてだめですよ。  浜松なんて自動車なんですから、離れている方が自動車を買ってくれるんですよ。近ければ歩いていっちゃうじゃないですか。もう少し地元の産業の育成のためにも離すんですよ。そんなにくっつけなくたっていいのです。クオリティー・オブ・ライフというのは多面性があっていいと思うのです。レジャーとおっしゃったけれども、湖もあればあるいは山もあればと、そういうことを含めながら快適な居住環境をつくるという、いわゆる基盤整備ですね、こういうことがこれからの産業政策の中でもっともっと重要じゃないか。これがあれば、じゃ僕は台湾へ行くより日本のあそこの方がいいよ、韓国へ行きたくないよ、あそこへ行こうよというような人が出てくるような魅力のあるテクノポリス、それでこそ初めてテクノポリスのポリスの部分が充足すると私は思うのです。  ですから、通産省のかたい工業再配置だとか新産都市だとかいうより、もう少しソフトな、住みよい快適なところですよ、行きましょうと、みんなが行きたくなるようなテクノポリスをこれからおやりになろうとしていらっしゃるのでしょうけれども、ハードもいいけれどもやはりソフト面で、みんなが望んでいる快適な生活、そういうものをこれからは産業政策上の非常に重要なファクターとして取り入れていただきたい、私はこう思うのでございますが、大臣、いかがでしょう。
  51. 田村元

    ○田村国務大臣 いや全く、役人がつくる文章というのは無味乾燥というか、私実は答弁要旨をそのまま読まないのですよ。そのまま読んだら、それはもう本当に読んでおるということが一見してわかりますよ、かかる観点からとかですね。でございますから、実際タイトルでもおっしゃるとおりだと思うのです。  僕は、政治でもそうですが、行政で一番必要なことは何か、一般の庶民が聞いてすぐわかるということだと思うのですよ、庶民のためにあるのですから。まさにおっしゃるとおりでありまして、なかなか直らぬでしょうけれども、私は余り難しいことを言ってくると突っ返すことにしておるのですけれども、それは何と言ってお答えしていいのですか、よく言い聞かせておきましょうということですか、もうおっしゃるとおりだと思います。
  52. 薮仲義彦

    薮仲委員 次に、郵政省さんをお呼びしていて私が聞きたいことは、これは大臣にも今後御努力いただきたいのですが、通産省の研究なさっている二〇〇〇年の将来を見通した産構審の情報産業部会の「二〇〇〇年の情報産業ビジョン」というのを読ませていただきました。大変すばらしい内容になっておると思うのでございますが、いずれにしても将来は電子工業、情報サービス、電気通信事業というものが二十一世紀のリーディングインダストリーであるという御指摘は、私はそのとおりだと思うのです。雇用であろうと経済成長であろうと、その三つがぐんぐん日本の国の経済を引っ張っていくだろう、空洞化もこれによってカバーされるだろう、私は非常に喜んでいるわけでございます。  しかし、この高度情報化社会というのは、通産行政あるいは郵政省の行政の中で非常に重要な行政だと思うのでございますけれども、一番ひっかかってくるのは、後で郵政省の方にちょっと嫌なことをお聞きしなければならないので恐縮でございますが、この料金の問題をもっともっと使いやすくできないものかな。VAN事業にしたって育成できるだろうし、あるいは家庭に入ってくるワープロ通信だってできるでしょうし、今の千二百のモデムを九千六百ぐらいのモデムで使ったらぼんと料金は安くなるでしょうし、日進月歩でどんどん情報化というものは進んでいくと思うのです。  そうしますと、私が聞きたいのは、立地公害局長、これは私の考えなんですけれども、例えば昔は団地をつくって更地にすれば来てくれるだろうと思った。今の企業者のニーズの中身は、山、川でも何でもいいと言うのですよ。自然のままに置いといていいのです。ただ、そこに行くアクセスの道路はきちっとしてほしいと言うのです。水があり電気がある、通信がしっかりしているということが大事なんです。そこを自分の好きなようにアレンジして、山の中に工場があったっていいでしょう。真っさらなところにみんな同じようなビルディングを建てるという発想の味気なさ、ああいうのは新しいからといったって余り好まれないのですよ。山の中の知らないところに道がぴっちりしている、行ったらそこに整然と工場が転居しておった、これでいいと言うのですよ。何か団地をつくって、みんな来い来いという、あれはいいようでも新しい時代にそぐわない考えだと私は思うのです。自然の景観を残し、そこに道路をぱりっと敷いて、そこはお好きなようにお使いくださいといって提供する、相手のニーズに合わせてやってあげた方がいいのです。平板に区画整理して同じような工場を建てる、行ったって味気ないですよ。工業団地、あれではだめですよ。やはり緑陰があり水があり、そういう自然がある中に高度な情報産業があっていいと私は思うのです。  そういう意味で、例えば今のテクノポリスの税制の恩典があるわけです。そういうニーズは、今は余り魅力がないのですよ。何が魅力かというと、今インテリジェントビルであるとか、インテリジェントスクールだとか文部省の答申にも出てきますけれども、いわゆるインテリジェント化された地域というのは非常に好まれるのです。町でも地方でもそうなんです。例えば団地をつくったときに、そこに大容量のコンピューターがあり、このコンピューターは入ってきた方が端末だけ買えば自由にお使いいただけますよ、端末を置いておけばこのコンピューターは非常に安い、ただみたいな料金でコンピューターが使える。端末だけ持ってくれば大容量の演算能力のあるもので使えます、ソフトも教えてあげます、皆さんの事務管理や工程管理も全部ソフトを組んであげます、ですから心配しないでこの団地にいらっしゃいというような、ソフトや大容量のコンピューターをむしろ提供して、使いやすくしてあげたら行くのですよ。  それと今、電話料金の中で専用線の話が出てきますね。ISDNという速いものがあるかもしれませんけれども、いずれにしてもそこへ専用線を引いてあげます、これはファックスであろうとあるいはどんな電気通信のディジタル化された通信でも、やりたければ全部できますよ、全国の情報が東京にいると同じ料金で使用できます。今、情報化といいますけれども、東京なら情報があってとりたいのですけれども、地方から東京の情報を引っ張ろうとしたらたまったものじゃないですよ、通話料金で。ですから、ここの団地は東京にいると同じあるいはニューヨークにいると同じ料金で情報が入ってきます、この方がみんな来るのですよ、今情報のコストの方が高いのですから。だから私の言うのは、情報コストが非常に安いというインテリジェント団地、そういうコンピューターとかハイテクの機器を使えるようなケーブルが入っておる、だからいらっしゃい、ここは安いです、そうだったら多少地価が高くたって張りついてくるはずです。情報が高過ぎるのです。  そういう意味で私は、インテリジェントビル化した方がいい。ソフトの面とハードの面で、中小企業の経営者の方が、我々四十代、五十代が一番抵抗を感じるのはコンピューターのキーボードをたたくことですよ。あれを見ただけでうんざりして頭が痛くなる人はたくさんいるのですから。しかし、もしもあれを使いこなせる団地があるよ、心配しないでおいでよと言ったら、皆喜んで集積してきますよ。だからインテリジェントビル化した方が、税制を何だかんだとややこしいことを言うよりも、今二十一世紀に向かって最も必要なことを団地の中に集積させた方が、ある意味ではみんなわあっと来るんじゃないかと思うのですけれども、これはいかがですか。
  53. 安楽隆二

    ○安楽政府委員 今、先生御指摘になりましたように、情報の問題というのはこれから情報化社会と言われますように極めて重要な問題でございまして、集積促進地域をつくるためにも極めて大切な要素だと思っております。それで私どもは、その地域をつくる場合の法律の中に要件の一つとして書いてございますが、高速交通の施設とともに、その情報提供施設というようなものが既にある程度あるということも前提としておりますけれども、それだけではなくて、これからもっともっとそういう情報関連の施設が使いやすいという状況でないと、この地域産業高度化、あるいは特定事業集積は成功しないというふうに考えております。  ただ、この情報関連ということにつきましては、いろいろな観点から広い施策が政府全体で行われておりますので、そういうものも活用させていただきつつ、それからまた私どもがやりますこの法律の中におきましても、集積の対象となる特定事業という中には一応今、政令で定めることにはなりますが、予定しております最も重要な事業というのがこのソフトウエア事業、あるいは情報処理サービス事業とか情報処理提供事業というようなものも入っておるわけでございますし、それからまた、地域公団が整備いたします受け皿としてのリサーチパークと申しますか、産業支援団地と言っておりますけれども、団地というと何となくかたい感じがするわけでございますが、そういう中にはただ受け皿を整備するということだけではなくて、利便施設と申しますか、その中に入った人たちが皆共通に活用できるような利便施設として、いろいろなものを整備していくというようなことも可能でございます。そういうことで、この情報の重要性ということは、いろいろな問題が環境整備にありますけれども、最も大切なポイントではないかというふうに考えております。
  54. 薮仲義彦

    薮仲委員 局長さん、そういうややこしい答弁はいいです、私だってわからないわけじゃないんだから。私の言っているのは、そういうことが今ないのだからおやりなさいというのだから、これは検討をなさった方がよろしいと私は思うのです。
  55. 田村元

    ○田村国務大臣 やはりおっしゃったこと、僕は非常におもしろい構想だと思うのですよ。これは検討に値するということより、必然的に検討せざるを得ない、そういう時代がもう目の前に来ておるということだと思います。  それから、ちょっと今の御質問の御趣旨とは違いますけれども、郵政省からも来ておりますし、速記録に私が残しておくこともいいことだろうと思いますので、むだなこと、余分なことを申し上げるようで恐縮ですけれどもちょっとお聞きを願いたいのは、そういう理想的な姿に到達するにはまだ時間がかかりますから、その前段階の問題として、まず長距離通話料というものをもっとうんと安くしてくれないだろうか。それから、ファクシミリなんかももっと普及を図った方がいい。特に、お互い自動車電話あるいは携帯電話等、これは趣味や道楽で持つわけではありませんね。趣味や道楽で持っておる者もあるかもしれないけれども、実務で持っておるわけですね。ところがこれには二つの大きな悩みがある。まず第一高い、べらぼうに高い。と同時に、高くてもいいから聞こえりゃいいけれども、雑音が入るわ、途中でぶっ切れるわということでございましょう。ですから、せっかくああいうものを世に出したのだから、やりようがあるのじゃなかろうか。トンネルでもちょっと設備のいいトンネルだと、あの自動車電話は通用するのですよ。それならビルの谷間にでも、何らかのアンテナのようなものでも何かするのでしょうが、僕はそういう科学性はありませんけれども、何らかのことをしてサービスをして、そしてああいうものを安定的に確度の高い、そして低料金のというふうに、それが情報化時代が持っておるニーズじゃなかろうかというふうに思うのです。  ちょっとこれは御質問の御趣旨とは違いましたけれども、あえてむだなことを申し上げましたけれども、郵政省もおりますし、速記録に残すことも意義のあること。それでもまだ効き目がなければ、そのうち猟官運動をして郵政大臣にでもなろうかなということかもしれませんが、それはそれとして冗談はさておきまして、そういうことを、まず手っ取り早いところからどんどんやっていく必要があるのじゃないでしょうか。
  56. 薮仲義彦

    薮仲委員 これだけ言うと、郵政省も答弁が非常にしやすくなってきたんじゃないかと思うのですけれどもね。  ちょっとその前に、国土庁さんお見えでございますから一言。通産省さんがこういう民活とかテクノとかをやろうとすると、よくないのはすぐ地価を上げるのですけれども、どうか国土庁さんは英知を奮って上がらない努力を、もう先行的に積極的にやっていただきたい。いかがでございますか。
  57. 鈴木克之

    ○鈴木説明員 確かに先生御指摘のように、大型の開発プロジェクトが予定されますとそこに思惑が入ってまいりまして、投機的な土地取引が行われ地価が急騰する、こういう懸念があるわけでございます。国土庁といたしましては、この東京の地価高騰がこれ以上進展しないように、特に地方の主要都市においてもこれは要注意の状況でございますので、そういうところについての地方自治体によります地価の監視については、つとに積極的かつ十分に行うように指導しておるところでございます。そこで、さらに地価が急激に上昇し、またはそういうおそれのある地域につきましては、時期を失さないように積極的に国土利用計画法に基づきます監視区域の指定を行うように指導をしてきておるところでございます。  御指摘のような地域につきまして、私どもはそういうところも含めまして、大規模な開発プロジェクト予定地域について監視区域の指定を積極的に行うように、今後とも関係地方公共団体を指導してまいる所存でございます。
  58. 薮仲義彦

    薮仲委員 どうか通産行政が円滑に進むように、国土庁として十分有機的に対応していただきたいと思いますので、このことは重ねてお願いいたしておきます。  じゃ郵政省さん、大臣から大事なことはほとんどお話があったので、大臣の言ったことが全くそのとおりですから、これから余り時間がないものですから私の方で言いますから、今後どうするかということをお答えいただきたいと思うのでございます。  まず、これから二十一世紀の高度情報化社会を急速に進展させるということは、郵政省の大きな眼目だろうと私は思うのです。それには、今おっしゃられたように通話料金、電気通信事業の進展のスピードとこれがいかに低廉になるかによって、この情報化というのは等比級数的に伸びると私は思うのですね。そこでNCC、新電電が参入してきましたから、今にわかに例えば東京—大阪の幹線を下げるというと、NCCは体質的にもまだ強くないから大変だという意見もございますし、私はそれは理解できます。ただ、ここで一つ問題なのは、NCCが参入したからといっても、例えば郵政大臣のいらっしゃる衆議院の議員会館はNCC使えないのです。使えないというのは交換器が古いからだと思うのです、ディジタル化していないから。NCCが入ってきても使えない地域が全国で数多くある。ディジタル化を早急にきちっと進めるべきだと私は思うのです。国会議員がNCCを使えないなんというのは余り聞こえのいい話でもございませんし、全国至るところであるわけですから、この辺の問題は御検討いただきたいな、これが一つです。  それから、幹線料金を余り急激に下げることは、今申し上げたようにNCCにとってひどいでしょうから、これは時期的に考える必要がありますけれども、都内の料金、市内料金は私は高過ぎると思うのです。十円を七円にしろとか五円にしろと言わないのです。ただ、時間がないから私の方で言いますと、日本アメリカ西ドイツ、フランス——イギリスはイギリスで一つ考え方がありますから必ずしも同じ立場でやることは間違いですけれども、例えばアメリカにしても西ドイツにしてもフランスにしても、もちろんイギリスにしても、いわゆる単位料金制の範囲内、日本でいえば十円の料金制、ここにも夜間割引があるわけですね。これはちょっと数字だけ答えてもらった方がいいですかね。  もう本当に時間がないのです。だから言ってしまいましょう。日本は十円で三分間です。アメリカが五分間で日本円に換算して十円ですね、八・一セント、これは間違いないと思うのです。夜間割引が九時から三五%、深夜になりますと六〇%割引なんです。西ドイツも単位料金制が十八円として決まっておりますけれども、これも夜間は割引です。十八時から朝の八時まで十二分間になるのです。日本の四倍になるのですね。フランスなどはやはり単位料金があって、夜間割引が夜の十時半から朝の六時までは十八分ですから、これは六倍なんですね。そうしますと、ざっと単位料金制の中で見ても、日本海外とを比べてどこから日本が高くなっているかというと、四分以上はアメリカと比べても高い、西ドイツと比べても高い、フランスと比べても高いということが出てくるわけです。例えば、ちなみに一時間しゃべりますと日本の場合は二百円、アメリカは八十八円、西ドイツは百四十一円、フランスは百六十七円、この金額は郵政省さんの資料ですから間違いないと思うのです。これだけ違うわけですね、二百円が百六十七円あるいは百四十一円。この辺は、私はどういうふうに考えるかというと、例えば隣接している地域の領域をもうちょっと広げられないかな。東京の場合ももうちょっと広げる。例えば隣接しているところが料金が変わるのだったら、そこの地域をもう少し広げて、十円の料金区域を広げられないかな、こう思うのです。これが私のお願いの二つ目でございます。  それから、今大臣からあったこと、これはきちんと言っておいた方がいいと思うのです。最遠長距離区分がありますね。日本の場合は百六十キロと三百二十キロですが、日本アメリカ、イギリス、西ドイツ、フランスそれぞれ最遠長距離は違いますけれども、せっかくお見えでございますから、一分間、十分間、一時間の料金を日本アメリカ、イギリス、西ドイツ、フランスという順に、金額だけで非常に粗っぽい答弁を求めて恐縮なんですけれども、言わんとすることは大体わかっていますし、ひどいことを言いませんから、ちょっと大臣にわかっていただくために、金額だけ言っていただけませんか。
  59. 濱田弘二

    ○濱田説明員 先生の御質問にのみお答えさせていただきます。  長距離料金の最遠距離の料金でございますけれども日本はNTTの料金、アメリカはATTの料金で比べさせていただきますと、一分のところでは、四月一日の換算レートでいたしますと日本が百二十円、アメリカが五十三円、英国、これはBT、ブリティッシュ・テレコムでございますが四十二円、西ドイツ八十七円、フランス八十二円でございます。それから三分のところでございますが、日本が三百六十円、米国百三十八円、英国百五円、西ドイツ二百六十一円、フランス二百十四円でございます。十分は、日本千二百円、米国四百三十三円、英国三百五十七円、西ドイツ八百七十円、フランス七百九円。それから一時間でございますけれども日本が七千二百円、米国二千五百四十三円、英国二千百二円、西ドイツ五千二百二十二円、フランス四千二百四十七円でございます。
  60. 薮仲義彦

    薮仲委員 大臣の御指摘のとおり、日本はちょっと高いと思うのですよ。最遠長距離で、フランスは百キロからなんです、日本は三百二十キロですから。百キロというと東京から熱海ぐらいでしょう。三百二十キロというと大体名古屋前後、もっと手前を安くしてもいいのかなと思うのです。七千二百円で、今言ったようにアメリカやイギリスや西ドイツ、フランスと比べると、例えばパーセントで言うとイギリスなどは二八%、アメリカも三十数%ですね。この点は、今にわかには言いがたいかもしれませんけれども、NTT、NCC、これから十分御努力いただいて、これを安くしていただくように御尽力をいただきたいと思うのでございます。これはごく簡単で結構ですから、御尽力いただけるかどうか、いかがでございましょう。
  61. 濱田弘二

    ○濱田説明員 お答えいたします。  昭和六十年四月の電気通信制度改革の大きな目的は、いいサービスをより安い料金で提供するということで行ったわけでございます。そういう観点からいたしまして、先生ただいま御指摘の長距離料金は世界的に見ても相当に高い、それから市内も必ずしも安くない。先進四カ国、アメリカ、イギリス、西ドイツ、フランスの場合は夜間料金があるけれども日本にはない、そういうところも御指摘のとおりでございます。したがいまして、私どもといたしましては電気通信制度改革の趣旨に照らして、長距離料金の引き下げはもちろんでございますけれども、市内、近距離料金も含めた料金全般の低廉化を目指してまいりたいと考えておるところでございます。  個別の問題でごく簡単にお話しさせていただきたいと思うのですが、市内料金の夜間割引につきましても、大いに検討しなければならない一つの重要な課題であると認識しております。それから、三分十円のエリアを隣接区域、例えば東京二十三区内から武蔵野、三鷹にかけますと三分三十円になるわけです。それから、神奈川県の川崎、埼玉県の川口とか千葉県の市川、こういうところは全部東京二十三区に隣接したエリアになっておるわけです。したがいまして、三分十円のまま話せるエリアを拡大する。イギリスあたりではグループ料金制と言われておるわけでございますけれども、この辺についても私ども大きな検討課題の一つであると認識しておるわけでございます。  それから最後に、ディジタル化の問題でございますが、東京千代田区のまさに真ん中であります先生方の議員会館五〇八の電話というのは霞ケ関電話局に収容されておるわけですが、その収容されておる交換機というのは旧式の交換機でございましてID、アイデンティフィケーションという専門用語でございますが、そういう送出装置がございませんので新電電が利用できない。これは新電電だけじゃございませんで、例えばNTTの新しいサービスでございますキャプテンサービスなども利用できない。それから、KDDの国際自動電話サービスなども利用できないということで、ひとりNCCだけの問題ではないわけでございます。したがいまして、NTTと新電電の公正かつ有効な競争条件をつくるというような観点、並びにまたNTTの高度なサービスを提供していくという観点からも、行政といたしましてもこのID問題についてはさらに積極的に取り組みまして、抜本的な解決策といたしましてはディジタル化の促進を図っていくというところで取り組んでまいりたいと考えておる次第でございます。
  62. 薮仲義彦

    薮仲委員 どうかよろしくお願いをしたいと思うのです。きょうはもう一つ専用線のこともやりたかったのですが、ちょっともう全く時間がなくなりましたからやめますけれども、どうか今おっしゃったように料金の低廉化、ぜひとも重ねてお願いをいたします。  今度ちょっと話を変えさせていただきますけれども、これは大臣に一言だけ御答弁いただいて、問題はたくさんあるのですけれども、やむを得ませんから一つだけ聞きたいのは、今日本アメリカの間で科学技術研究協力協定が結ばれようとしておるわけでございますけれども、この中身の方は外務省が御担当でございましょうから、中身に立ち至ってのことは差しおきまして、こういう頭脳立地とかいろいろあるわけでございますが、どうも日米の間ではっきりしておいていただきたいことがあるわけでございます。  それは日米科学技術協定、これは条文ございますけれども、第一条に「両政府は、平和的目的のため、平等及び相互利益の原則に基づき、相互に合意される分野における科学技術研究開発のための協力活動を発展させる。その分野からは、エネルギー研究開発協定に基づいて合意される分野を除くものとする。」こうあるわけでございまして、ここに一番冒頭に「平和的目的のため、」と科学技術協定の精神がうたわれておるわけですね。ここから外れてはならないと思うのです。ところが、どうも最近、新聞に出てくるだけであって成文化された条文を見ておりませんのでわからないのですが、副長官のブリーフィングの中には安全保障という文字が出てくるわけです。どういう形で出てくるかは全くわかりません。  安全保障の関連の法制は日本の国にないし、その安全保障に対する概念もないから日本関係ないという説明は受けておりますけれども、ただ私が申し上げたいのは、これは先日の朝日新聞にも載っておりましたけれども、社説の中で世界的な超電導の権威者の田中昭二先生の言葉を引用しております。「問題は、アメリカがソ連を恐れると同時に、日本に対しても技術を完全におさえたいと考えて、そういうワクを作ろうとしていることです。いままでこんなことはなかった。えらい時代に突入したというのが、私の判断なんです」大要、以上が述べられているわけです。ということは何かというと、やはりアメリカが国防総省といいますか、ペンタゴン主導で日本の先端技術というものに対して非常に脅威といいますか、アメリカの言うことを聞くように押さえ込もうといいますか、そういうことが暗にあるのかな。  そうなってきますと、やはり科学技術とか学問というものは公開が原則であり、自由が保障されなければならないと思うのです。しかし安全保障という文言が入ってまいりますと、これは非常にやりにくい問題が数多く出てまいります。きょうはこのことについてはやめますけれども、こういう科学や学問の領域に余り安全保障という文言は入れないで、自由で公開で、本当に新しい技術がどんどん生まれてくる土壌を日本の科学技術の世界の中につくっておいていただきたいと思いますので、大臣のお考えをお聞かせいただきたいのです。
  63. 田村元

    ○田村国務大臣 これは外務省なりあるいは科技庁から御答弁申し上げるべきものかもしれませんが、この協定におきまして情報の公開の原則を確認することにつきましては、大筋合意を得ているところであります。この協定における情報の取り扱いとの関連で安全保障に言及する部分があることは事実でございますが、これは我が国の現状の法制度に何らかの変更を加える内容のものではございません。なお依然字句の詰めが残っておるということもございまして、署名までは私どももその内容を明らかにすることもできませんので、ちょっと具体的なお答えを申し上げることもできませんし、また、私の立場から具体的なお答えをすべきではないかもしれません。いずれにいたしましても、我が国の現状の法制度に何らの変更を加える内容のものではないということは、極めて明確になっておる次第でございます。
  64. 薮仲義彦

    薮仲委員 これは工技院さんだと思うのですけれども、たった一言お聞きしたいのです。これはごく簡単に答えてください。  秘密特許の問題があるわけでございますけれども、これはいろいろ細かいことはやめますが、問題は、秘密特許の関係の中で秘密保護法の適用を受けるのかどうかということがあるわけでございます。例えば秘密特許でございますと、アメリカから軍事技術が来た、しかし日本でたまたま民間でもそういう同じ研究を行って特許を求めてきた、それがたまたま同じ内容であった、こうなってくると、アメリカ日本へ特許を申請してくるであろうということが言われておりますけれども、それはそれとして、こういう秘密特許法という概念が入ってきますと、我々日本の国民にとってはベールに包まれた部分が特許庁の中に出てくるわけでございます。細かい問題はきょうはやめますが、秘密保護法の適用を特許庁の職員は受けるとは思うのですね。でも、日本で同じような特許がぽんと出たときに、向こうが日本へ特許を申請した時点でその秘密保護法は形骸化してくると私は思うのですよ、もう公開されるのが当然ですから。そうなったときに、この秘密保護法の適用というのは、日本が同じ発明をぽんとやったときにもうないと思うのですが、いかがでございますか。ほんの一言、あるかないかだけ。
  65. 小川邦夫

    小川政府委員 いわゆる五六年協定の実施に伴いまして、MDA秘密保護法が特許庁に適用あるかどうかということは、実は個々の協定出願の中身によって保護法の対象になるかならないか分かれてくるわけでございます。しかし、特許庁の職員から見れば個々のケースで決まることでございますから、一口で申しますと、特許庁の職員は秘密保護法の対象になり得るということでございます。ただ、それがゆえに二千三百人の職員が、何十万という通常の出願を扱っている中でどんどん保護法の対象が広がるようなことでは実務処理上も非常に困りますので、こういった案件、秘密保護法の対象たり得る協定出願を扱う職員は最小限に限定するということで実務的に対応しようと考えております。
  66. 薮仲義彦

    薮仲委員 きょうはそんな細かいことはやめます。  最後に大臣に二つだけお伺いして終わりたいのですが、さっきは特許庁と工技院を間違えまして失礼しました。  一つは、私は日本の頭脳立地ということで工技院に行ってきたんですよ。なかなか大したものだなと思って、私は感心をして帰ったわけでございますが、予算がもっと必要かなと思いながら帰ってまいりました。そういうことも含めて、大臣は工業技術院に一度行かれたことがおありかと思うのでございますけれども、もしも行かれてなければ、私は一度くらい大臣が行ってあげて、あそこにいる若手の科学者というか研究者はもう一生懸命ですね。大臣が行ってちょっと肩でもたたいたら、超電導なんか一発で出てくるんじゃないかと思うほど皆さん熱心でございますから、工技院の予算をふやすことと、大臣一度あの研究機関で一生懸命やっていらっしゃる方を、そのときはヘリコプターでも何でもいいですから使われて、一回は激励していただいて見ていただきたい。非常にあそこの方は熱心だし、本当にすばらしいことをやっていらっしゃる。ニューロコンピューターだとか、一秒間に一億七千万回の並列のコンピューターなんて、私はわからない話ばかり聞かされて頭がおかしくなって帰ってきましたけれども、大臣が行って握手して激励したら、あそこにいる職員は本当に喜ぶと私は思うのです。この辺ひとつお願いします。  もう一つは、大臣は議員の映画連盟の会長さんでございまして、「敦煌」も御案内いただいて喜んでおるわけでございまして、これはちょっと違うのですが、この間国会で「遠い夜明け」という映画がございました。アパルトヘイトの問題ですね。私は、ここでではなくてほかで見たのですが、一言で言うとやりきれないという気持ちになりました。今、南アフリカとの貿易の問題が言われておりますけれども、人権宣言にもありますように、人種や皮膚の色や性や言語で差別されるということが絶対あってはいけないな。世界で一番の貿易額になっているわけでございますが、人種差別という意味から、このことについては何とか好ましい方向をとっていただけないものかなという思いで、私は帰ってまいりました。この二つを御答弁いただいて、私の質問を終わります。
  67. 田村元

    ○田村国務大臣 まことに申しわけないことながら、二年近く通産大臣をいたしておりまして、まだ筑波へ行っておりません。実はこの前、筑波へ行くことにいたしまして、スケジュールを全部組んで、工技院の院長も喜んでくれましていよいよということになりましたら、国会へ呼び出されまして行きそびれたのです。近いうちにぜひ行きたいと思っております。激励もしたいが、同時に、興味も持っておりますのでぜひ行きたい。  それから南アの問題でございますけれども、今薮仲委員は非常にいい言葉を使われたわけです。いい言葉というか、むしろある意味においては悲しい言葉を使われたのですが、私も全くその言葉どおりやりきれない気持ち、なぜああいうことがあるのだろうか。例えば、これは黒人だけの問題じゃありません。案外日本人は気がついてないことだと思うのですが、白人以外全部だめなんですよ。ですから、日本人に対してどういう待遇をしておるか。名誉白人、お前たちは白人じゃないよというのが前提にあるわけですよ。本当にやりきれない気持ちです。でございますから、我々は国際的な協調の枠組みの中で南アに対応していかなければならない、それも人道的な立場に立って対応していかなければならない、このように思っております。
  68. 薮仲義彦

    薮仲委員 質問を終わります。どうもありがとうございました。  外務省の方、どうも済みませんでした。
  69. 渡辺秀央

    渡辺委員長 次に、青山丘君。
  70. 青山丘

    ○青山委員 私からも質問をいたします。  特に戦後、疲弊しておりました我が国経済の立場で見ますと、よくぞここまで産業が振興できたものだ、その間に政府産業振興のためによくやってくれた。私は、教育であるとか福祉であるとか都市の建設であるとかいろいろあるけれども、全部金が要ることで、産業基本的に発展しておらない国はだめだ、いけないというふうに基本的に強く考えてきましたので、これまで通産行政が果たしてきた役割を非常に高く評価しています。  その中で、我が国産業立地政策が果たしてきた役割も非常に大きい。特に新産・工特で始まって工業再配置計画、そしてまたテクノポリス計画と、我が国産業立地政策は大体こういう形で進められてきました。そのことは、我が国経済の活性化と高度化に大変貢献してきたと思っております。もちろんその中には、かつての過疎過密の問題、そして今や東京一極集中というような大変な政治テーマを抱えています。これは絶対に解決していかなければいけない国家的な大きな課題であります。ところが、こうした産業立地政策を考えていくときに、地方に産業を興していく、こういうことで政策を進めてこられましたが、先ほどから議論がありましたような問題、例えば産業を支えていく重要な要素の中には、生産拠点だけではない、例えば情報とか物流であるとか金融あるいは技術、交通といったものがある。そういうものが総合的に地域で受け入れられて地域の活性化に結びつく、こういうことでなければいけない。ところが、そうした基本的な問題、つまり地域産業を興していくための背景となる問題がいささか欠落してきたし、そうしたことは大変基本的な問題でもあるというふうに私は思います。  したがって、戦後の我が国産業立地政策を、通産省として今の時点でどういうふうに評価しておられるのか。また、その背景にある問題が本当に解決しなければ、我が国が進めてきた産業立地政策は真に実のあるものにはなかなかなっていかないのではないか。そういう点では、産業立地政策の背景というものをどのように受けとめておられるか、このことをまず冒頭に聞いておきたいと思います。
  71. 田村元

    ○田村国務大臣 今、青山委員が冒頭におっしゃったように、かつてのことを思いますと、日本産業経済というものの飛躍ぶりというものは本当に隔世の感があります。私が初めて外遊をしましたのが昭和三十二年でございました。一年生代議士のときでありました。そのときに外貨割り当てが五百ドル、三百六十円。それ以外は、言葉は悪うございますがやみで買う、四百何十円というようなことでありました。外国へ行って安いホテルを探して、本当に苦労いたしました。本当に今昔の感にたえません。今、経済の繁栄がすばらしいがゆえの弊害というものと取り組んでおるということであります。  この産業立地政策というのは、大都市圏に集中した産業の分散、適正配置、こういうものを通じて、我が国の国土における地域間のアンバランス、所得間格差あるいは雇用機会の格差とか生活水準の格差、そういう地域間のアンバランスを是正して、国土及び国民経済の均衡ある発展を図ることを目的とした政策であるということが言えます。従来の産業立地政策は、雇用とか所得の創出の観点から最も効果の期待される工業を主たる対象としておりました。そして、工業再配置の促進とかテクノポリス、その前には、非常に懐かしい言葉でございましたが例の新産・工特ですか、本当に久しぶりで聞いた懐かしい名前でありますが、そういうものの推進など地域への工業分散を中心として展開された。あるいは工業分散というか、地域に工業立地ということが言えるかもしれません。そしてその結果、新規立地工場件数で言うと八〇%ぐらいが地方圏立地するなど、一定の成果を上げてきておることは事実でございます。それなりの成果を上げたと思います。  しかしながら、地域経済を取り巻く現下の情勢を見ますと、最近の円高などによります産業構造調整の進行や工場海外立地増加などによりまして、従来工業立地に依存してきた地域経済空洞化が一般的に懸念されております。また反面、経済の高度化あるいはソフト化によります従来の直接生産部門、すなわち工場に対して研究所やソフトウエア業などのいわゆる産業の頭脳部分ウエートが著しく増大しつつあります。今後成長の期待されますこれらの産業の頭脳部分が東京圏に集中しておる、これはある意味においては当然の帰結であったかもしれません。それこそ政治、行政、経済のすべての権力中枢と言ってもいい立地になっておりますから、そういう傾向がございます。  このような状況に対しまして、地域経済の発展と産業の配置の適正化を図って、地域住民の生活の向上と国民経済及び国土の均衡ある発展を実現していくために、これまでの工場中心主義、工場の地方分散、これに加えて産業の頭脳部分地域において集積させるということによって地域産業高度化を図ろうとする構想が、頭脳立地構想でございます。従来の工業再配置政策あるいはテクノポリス政策等、これの補完ということが期待される次第でございます。
  72. 青山丘

    ○青山委員 国土の均衡ある発展、東京一極集中を回避していかなければいけないということで、実は昨日の衆議院本会議でも多極分散型国土の建設のための趣旨の説明がありました。産業立地政策の中で新産・工特それから工業再配置計画が進められてきましたが、現時点でこうした既存の産業立地政策の進捗状況というものをどういうふうに評価し、理解しておられるのか。  それは、既存の産業立地政策というものが、新産・工特とか工業再配置計画といったものがなかなか思うようにはいかなかったのではないかと、私なりの理解をしております。経済が非常に急速に発展をし、展開を見せてきましたので、かつて高度経済成長のときのようなああした重厚長大から軽薄短小、そして今やその先を目指すソフト化といいますか、さらに高度化といいますか、そういう時代に来ておる。したがって、既存の産業立地政策においては、さらに高度化を進めていかなければいけない、あるいはテクノポリス計画との連携も進めていかなければいけないというような状況に今あると考えます。そういう点では、既存の産業立地政策をどういうふうに受けとめ、かつ現状をどうとらえ、将来展望をどういうふうに見ておられるのか。  今、大臣がおっしゃられましたように、かつては生産拠点中心であった。しかし、生産拠点を地方で確立をしていくためには、いろいろな問題が解決されなければだめであった——だめであったと決定的に言えるのかどうかわかりませんが、まだなお解決していかなければならない背景の問題があります。それは、先ほどから議論になっておりましたようなレジャーであるとか文化、居住といった社会基盤そのものとの連携がやはりとられなければならなかった。そういう意味では、生産立地だけではない、産業立地政策を進めていく上での社会資本の整備、こういう関係についてどういうふうに受けとめておられるか。  私は、ちょっと似たような問題でありますが、本法律案についての問題で建設省にも後でまた一点お尋ねをしたいと思っておりますけれども基本的に既存の産業立地政策、つまり新産・工特及び工業再配置計画のこれまでの経過にかんがみて、経過と現状と将来展望をどうとらまえておられるか、それから既存の産業立地政策と社会資本の整備との関係をどう理解しておられるか、伺っておきたい。
  73. 安楽隆二

    ○安楽政府委員 まず第一点でございますけれども日本経済成長それから産業構造の変化という過程で、日本経済のパフォーマンスは今まで非常によかったわけでございますが、その過程におきまして絶えず三大都市圏への集中あるいは東京圏への集中、そして地方の方のウエートが下がるという、国土の不均衡発展という問題が常に出てきていたわけでございます。したがって、産業立地政策といたしましては、この産業構造の変化に合わせまして、できるだけ成長性の高い産業地域に持っていくことが必要であるということで、その時代、その時代で重点がある程度変わってきたわけでございます。  昭和三十年代以降は重化学工業、重厚長大産業あるいは臨海型の基礎素材型産業が非常に重要であるということで、立地政策といたしましては地方の拠点開発方式ということをやってきたわけでございます、新産・工特制度というものもこれに相当するかと思いますが。それから、昭和四十年代になりますと、産業構造も加工組み立て型産業ということが中心になってくる方向になりましたので、工業立地政策の方も言葉を工業再配置政策というふうにいたしましたけれども、特に内陸型の機械産業その他の加工組み立て産業を広く地域に分散するということで、工業あるいは工場の誘導地域への分散、育成ということを心がけてきたわけでございます。それから昭和五十年代、特に後半になりましてハイテク産業、先端産業というものが非常に重要になりまして、地方においてもこういうものを大いに導入する、あるいはそれをてことして地域産業自体の技術高度化するということでテクノポリス政策というものが出てきた、こういうことでございます。  それで、これの評価でございますけれども日本産業経済のパフォーマンスは非常によかったわけでございますが、その中で我々なりにいろいろな形の工業の地方分散をやってきたわけでございますけれども、全体としては非常に国土の不均衡の是正に役立ったのではないかというふうに思っております。しかし、十分かと言われると決して十分ではないということでございます。新産・工特制度につきましては、昭和四十年から六十年という二十年間の数字で、工業出荷額とか人口の全国に占めるシェアはそれぞれ上がってはきておりますけれども、特に近年におきます基礎素材産業産業構造全体の中におけるウエートの低下と申しますか、そういうことの中で、さらにこの新産・工特地域につきましても従来からのインフラの整備というものを一層進めますとともに、産業構造自体も高付加価値化の方に持っていくというような問題になって、そういう方向で努力しているわけです。  それから、特に五十年代、工業再配置政策をやって工場の地方分散をやったわけでございますが、これにつきましては工場の件数自体は目標にほぼ近い形で地方に行ったわけでございますけれども、予想していたよりも経済成長がスローダウンいたしましたので、その割には工業生産と申しますか出荷と申しますか、それが伸びなかったとか、あるいは地方に行った産業が三大都市圏にかなり分散していた産業よりも付加価値が低かったというようなこともございまして、工業出荷額で見ますと当初予定したシェアの拡大の半分ぐらいしかまだ達成していないということで、工場分散政策をさらに一生懸命やっていかなければならないということだと思っております。それから、テクノポリス政策については始めてまだ四、五年ということでございまして、これからでございますけれども、現在までのところ立地も進んでおります。そういうことで、我々は、それなりの効果はありますけれども、これからまだまだやっていかなければならないということで、頭脳立地構想を新たに出した次第でございます。  それから社会施設と申しますか、産業立地政策と広い意味での社会基盤との関係でございますけれども、拠点開発のときには臨海型のインフラを重視しましたけれども、工業再配置からテクノポリスになるに従いましてより広い住環境とか都市環境、そういったものを重視するようになりまして、テクノポリスでは産学住の一体的な整備ということを言っておりますし、今後の頭脳立地構想におきましても、人材の重要性等も加味しましてさらに広い社会基盤の充実を図っていかなければならない、このように考えております。
  74. 青山丘

    ○青山委員 一点だけ、テクノポリス計画が今進められておりますので、このテクノポリス計画の進捗状況をさらにお尋ねしておきたいと思いますが、現在二十四地域が指定をされている、一地域が審査中であるということでありますが、このテクノポリス計画というのは、新産・工特と違って地域から承認申請が出る、一定の要件が満たされれば承認されていく。したがってその件数が、現行二十四と一地域が審査中ということですから、日本の都道府県の半数以上がこの指定地域になってきている。いささか私の感じでは多いように思う。多くたって全部成功していけばこれはいいわけですけれども、さてそのことが本当にうまくいくのかなという不安を持ちます。そういう点で、テクノポリス計画のそれぞれの地域の進捗状況をどういうふうに受けとめておられるか、またこれを今後どういうふうに進めるつもりであるというような将来展望について、少し御意見を聞かせていただきたい。
  75. 安楽隆二

    ○安楽政府委員 テクノポリス地域は、先生のおっしゃるとおり二十四地域を承認して今やっているわけでございますが、テクノポリス地域は先端産業を導入するということとともに、そういうものをてことして地域産業というか地域の工業全体の技術高度化する、こういうことで、高度技術工業を中心とした工業開発、地域開発、こういうふうに言っております。  それで、今後は日本産業全体として技術、頭脳ということでやっていくということでございますから、二十四地域の承認に当たりましては、法律に基づいて熟度とかいろいろ要件を審査して承認したわけでございますが、私どもといたしましては、ぜひこれがそれぞれ成功いたしまして、日本全体の技術高度化産業構造高度化に役立ってほしい、こういうふうに思っております。これまでの四、五年間の経緯によりますと、全体として申しますと、私どもはおおむね順調に進んでいると考えております。  ただ、今後でございますけれども、そうした方向をさらに進めるということでございますが、特にやはりテクノポリスもそこの地域だけではなくて、その周りの経済圏への経済的な波及といいますか、テクノポリスが発展しその周りも発展するというようなことも重要だと考えておりますので、そのテクノポリス圏域と圏域外との交流を強化するとか、あるいはもう既にある程度は努力しておりますけれども、産官学の交流を一層促進するとか、いろいろな課題はあるわけでございまして、今後さらに政策的な支援をもってそういうことを推進してまいりたいというふうに考えております。
  76. 青山丘

    ○青山委員 頭脳立地法でありますが、この構想は、それぞれの地域から自主的に作成をした計画が申請される、要件を満たせば承認をしていくという形になっておりまして、この形というのは、例の今おっしゃったテクノポリス計画の場合と大変よく似ておるわけです。ただ、その規模を見ていきますと、既存の産業立地政策の中では今回の頭脳立地考え方というのは最も規模が小さいように考えます。したがって、この頭脳立地の構想というのは、単独でこれから進められていくというよりは、テクノポリス計画の補強をしていくのだ。したがって、頭脳立地構想というのはテクノポリス計画と共存していくといいますか、補強していく、補完していく、こういう考え方があるのではないかと私は理解しておりますが、今回の頭脳立地法の位置づけといいますか、既存の産業立地政策の中における位置づけというのをどういうふうに位置づけておられるか、その役割をもう少しわかりやすく。
  77. 安楽隆二

    ○安楽政府委員 現在、地域におきましてはいろいろな地域の経済圏というものができておりまして、誘導されてきた企業もあるし地場産業もあるし、いろいろあるわけでございます。そして、政策的な対象となっているものの例として、テクノポリス地域あるいは前からあります新産・工特地域、あるいはそのほかにもいろいろな経済地帯というのがあるわけでございます。  それで、この頭脳立地構想は、別にそのどれでなければいけないということではなくて、全国的に工業その他の産業を、特に地域産業高度化するためには何といっても頭脳である、ソフトであるということでございますので、そういうどのような経済圏域におきましても、必要なところはこの頭脳の集積というものをつくって、それをその経済圏あるいは周辺の経済圏というものが活用して、全体として高度化していくということではないかと思います。その中で、確かにテクノポリス地域というのは高度技術ということに立脚しておるわけでございますから、頭脳的な性格というものが特に強いということは言えると思いますけれども、そのほかの地域でも当然、頭脳集積というものを活用するということはあるのではないかと考えております。  それからその地域の広さでございますけれども、新産・工特地域あるいはテクノポリス地域などの場合におきましても、工場を広く分散していくということでございますから、かなり広い地域を考えているわけでございまして、現在でもテクノポリス地域につきましては、一番大きい方では十三万ヘクタールとか十三、四万ヘクタールとかというようなのがあるわけでございますけれども、今度の場合にはある程度特定事業、ソフト事業、頭脳でございますので、集積をした方が集積の利益があるということで、集積するというところに一つの特徴があろうかと思います。しかしそれも、ただ一つの団地とかというようなのでは、やはり東京に対抗するたくさんの特定事業集積としては弱いわけでございますから、受け皿としての集積促進地域は、テクノポリス地域のように工場分散という形のような大きな広さは必要ないと思いますけれども、そういったものよりはもう少しコンパクトな地域、具体的に申しますと、地域経済圏のどこかの中心的な都市とかそういう適切なところを含むような地域、こんなふうに考えている次第でございます。
  78. 青山丘

    ○青山委員 頭脳立地がこれから順調に進められた、テクノポリス構想が相当な成果を上げてきている、こういうような段階に来たというふうに考えても、現在問題になっている東京一極集中の回避のためのどれほどの効果が出てくるのかな。数日来、私はこのことでどれぐらいの効果が出てくるのであろうというふうに見てきたのですが、それは決定的に東京一極集中の解決策にはなり得なかったとしても、地方の経済活性化には相当貢献することができたよということになるのかどうか。そうなればそれでいいじゃないか、それが東京一極集中へのあの加速的な力を弱めてきたことにもなるではないかと言えば、それはそれでも、皮肉で言っているわけじゃないのですよ、率直にそれはそれでいいと思っています。  というのはなぜかといいますと、企業立場から考えますと、地方にそういう誘導政策がとられても、その地域へ行って何か大きなメリットがあるのかどうか。また、仮に行こうとしたって、何か企業活動の拠点はやはり東京に残しておこうというようなことになっていくのが普通なんですね。そうでない形に本当は持っていかなければいけないのですが、そのあたりの見解、東京一極集中の回避には決定的にならなくても、地方の経済活性化には絶対に相当の大きな貢献をしたのだよという考え方というか確信を持っておられるかどうか、その辺はいかがでしょうか。
  79. 安楽隆二

    ○安楽政府委員 分散と申しますときには、人口と人間の諸活動、広くあるわけでございます。政治、産業、行政、文化等々いろいろあるわけでございますが、やはり地方にいろいろな機能が分散しても雇用がないといけない、所得の源泉はやはり相当部分産業であるということは言えるかと思います。     〔委員長退席、甘利委員長代理着席〕 そういうことで、これまでの工業再配置政策というのは、先ほど申しましたようないろいろ努力しました結果、現在では東京圏の全国における工業の割合は大体人口と同じ程度、二五%ぐらいになっているわけでございまして、そういう意味では地方に工場が行っておるわけでございます。  ところが、ソフトというか産業の頭脳、特定事業というのは東京圏に七、八割が集中している。しかも、このままほっておきますと、工場というか工業自体もやはりそういうソフトの部分が地方に来ないと高度化できないということで、せっかく地方に根づいている工業の将来も心配になるというようなこともございます。したがいまして、今後とも工業の分散をさらに努力するとともに、この特定事業を分散するということによって工業もさらに定着させる、工業立地にも役立つとともに、この特定事業自体がやはり何といいましても人材を活用するということで、高度の魅力ある雇用機会も定着しますので、そういうことで地方にとって非常に重要だと思います。もちろん、これだけですべて今の一極集中問題を解決できるということは言えないと思いますけれども、少なくとも産業面、一雇用面では極めて重要な施策になるのではないかというように考えております。
  80. 青山丘

    ○青山委員 ちょっと先ほども触れましたけれども、頭脳立地法をこれから進めていくときに、関連する社会基盤をやはり進めていかないと、きちっと整備していかないとなかなか産業立地政策というのは成功しないであろうと私は考えております。  今回の頭脳立地構想が出てきたその背景というものは、私の理解では、テクノポリス計画を進められていく中で高度技術の面が欠落しておったのではないか。それは、頭脳部分が欠落しておったという指摘地域にあって、地域の方から何とかそういう研究開発部門の地域への集積を求められてきたのだというふうに私なりに理解しておりますが、今回のこの構想、研究基盤施設が、内容から見ますと民活法に基づくリサーチコアに非常によく似ておる。これを民活ではなかなかできない地域では官活でやらざるを得ない。民活ではできない地域から見ますと、これはまことに歓迎すべき措置で、求められていることであろうと思います。ただ、そういう産業立地政策をこれからもさらに進めていこうとするときに、今日まで欠落していた部分は頭脳部分だけではない、研究開発部分だけではない。すなわちそれは、先ほども議論に出ておりました地方における文化、あるいは質の高い余暇の時間が持てるような環境あるいは生活環境、こういったものが整備されていかなければなかなか成功し得ないもの、つまりうまくいかないものというふうに考えております。  建設省は来ておられますね。東京一極集中を回避して地方経済を活性化させていきたい、そして国土の均衡ある発展をさせていく。そうしたときに、地域の経済の活性化のためには産業立地政策というのはそれなりに役割を果たしてきておる。そうしたときに、生活基盤といいますか、道路であるとか住宅であるとか公共下水道であるとか、そうした社会資本そのものを整備していかなければ人材をなかなか確保できないし、企業もなかなか進出の決断ができないというような一面もあります。産業立地政策を推進していくためには、相当な建設省なりの理解や協力をいただかなければできないことだと思うのです。そのあたりはどのようにこれまで取り組んできて、これからどう進めていこうかと考えておられるか、ぜひ聞かしていただきたい。と同時に通産省も、なおまた建設省とどういう連携をとって総合的な視点に立った立地政策を進めていこうと考えておられるか。
  81. 和里田義雄

    ○和里田説明員 お答えいたします。  私ども建設省におきましては、これまでも先ほど来お話のありました各種産業支援のための諸施策、これにつきましての関連いたします社会基盤施設の整備につきまして鋭意努力してまいってきておるところでございまして、幹線道路その他が整備されたことによって工場立地が非常にしやすくなったというような例、あるいはその他各種細部にわたる整備の効果が上がったというふうに私どもも自負しているところでございます。近年も、テクノポリスその他も、通産省その他の省庁と一緒にやらせていただいているところでございます。  この頭脳立地法におきましても、建設省も所管省庁の一つということで参加させていただいているわけでございますが、ただいま先生の御指摘のありましたように、この法律の目的でございます地域産業高度化、特に頭脳部分集積、これの実現というためには、地域の環境の整備が不可欠であるというのは重要な点でございます。そういう点からも、私どもはこれまで以上に住宅あるいは道路、都市施設、そういうような施設の整備に鋭意尽くしてまいりたい、こういうふうに考えております。
  82. 安楽隆二

    ○安楽政府委員 ただいま建設省の答弁がございましたが、私どもも同じ考え方でございます。主務大臣、一応四大臣ということで建設省それから農林省、国土庁それから通産省でございますが、この主務大臣はもちろん、いろいろな問題につきましては関係大臣と協議するという規定も入っておりまして、そういうものも含めまして産業ということだけではだめなので、やはり都市環境、住環境を含めた社会基盤の整備ということを頭に置きつつやっていきたいと考えております。
  83. 青山丘

    ○青山委員 これは実はテクノポリス計画じゃないのですけれども、私の地元で大きな工場団地ができまして、地域はそれまで比較的寒村なところだったものですからかなり期待されておりまして、道路も幾らか整備したつもりでいたのです。ところが、先日たまたまその地域に私、朝の出勤時間に差しかかったのですが、これまではまるで想像できないような渋滞が起きておりまして、これは県の事業だったものですから県の方には言ってはおきましたが、恐らく建設省の方はそれは県の事業だからということなんでしょうが、具体的にそういう事例がありまして、今後テクノポリス計画を進め、頭脳立地の構想を進めていこうと思いますと、同じようなことが必ず出てくるのじゃないか。ああいうことでは、まさに仏をつくって魂が入らないようなことになってしまいます。そういうことがないように、十分に全体のインフラの整備をぜひ進めていっていただきたい。これが間接的には東京一極集中の抑止に一つ大きな効果を持ってくるのであろうと私は思いますので、一言申し添えておきたいと思います。あともうよろしいから、お引き取りいただいても結構です。  それから、今通産省からお答えがありましたように、テクノポリス計画と同じように今回の頭脳立地法、四省庁の共管でかつ自治大臣との協議も必要ということです。このことは、承認申請を提出する地方自治体の立場に立ってみますと大変な労力でありまして、同じ内容の申請書をそれぞれ主務大臣に提出をする、説明をする、そしてその後主務省庁間で協議、調整が行われる。これはよほど円滑な連携体制を構築しておかなければだめというふうに考えますので、そのあたりどんな取り組みをするのか。  それから、現在法律に基づかないところの各省庁の情報化施策がいろいろ進められておりまして、私はそれはそれでぜひ進めていただきたいと思うのですけれども、この頭脳立地との類似点も幾らか多いように思いますので、これとの重複や隣接地域によってそういうことがないように、あるいは整合性がとれるような実施を進めていただくための取り組みが必要だと思うのです。他の省庁で進められております情報化施策との連携、どういう進め方をされようとしておるのか、時間がないから簡単にお答えいただきたい。
  84. 安楽隆二

    ○安楽政府委員 四省庁が共管でやることになっておりますが、これはテクノポリス法と大体同じでございまして、そのほか自治大臣その他関係大臣との協議というものもございますが、余り関係大臣が多いと手続が複雑になるという面がございますとともに、できるだけ関係省が親身に地元の御努力に対して御協力したいという観点からは、ある程度の共管ということもよいのではないかということで、テクノ法と大体同じようになっております。いずれにしましても、手続が複雑になったりすることのないよう、地元のイニシアチブとか自主性が損なわれないどころか一層発揮されるように、うまいやり方でこの運営体制を考えていきたい、そのように考えております。
  85. 児玉幸治

    ○児玉(幸)政府委員 ただいま、地域の情報化につきまして各省いろいろな施策を講じている点がどういうふうに調整され、また連携をとりながらやっているかというお尋ねがあったわけでございます。これから二十一世紀に向かいまして、情報産業日本産業をリードするいわば先端部門になるわけでございますけれども、その中で地域の情報化をバランスよく進めていくというのは非常に重要な施策の一つでございます。そういった観点から、実は地域の情報化をいろいろな切り口からいろいろな分野で、あるいはいろいろな手法で進めようという動きがあるのは事実でございまして、若干紛らわしい印象を与えているのではないかなという気がいたします。  ただ、例えば私ども通産省で担当いたしておりますニューメディアコミュニティーという構想がございます。現在二十一カ所モデル地域を指定いたしまして、それぞれにつきましてシステムの構築を進めているところでございますけれども、これはどちらかと申しますと、それぞれの地域のニーズに即しまして、その地域産業活動あるいは社会活動を踏まえてどういう情報ネットワークをつくるのが一番その地域のために役に立つかという、いわばユーザーオリエンテッドな発想で実際に役に立つシステムをつくっていこうということで作業をいたしておるものでございます。  そのほかには、例えばテレトピアのようなもの、あるいはグリーントピアとかいろいろなものがあるわけでございますけれども、テレトピアというのはむしろ通信インフラを優先的に整備をいたしまして、その上でさまざまな情報化を推進していこうという、いわばハード面からのアプローチでもございます。それから、グリーントピアという構想は、農村地域における農林漁業関係の情報システムの構築をしようというものでございまして、切り口、手法、分野等にそれぞれ相違があるわけでございますけれども、いずれにいたしましても地域の情報化を通じまして国民生活の向上を目指す、ひいては高度情報化社会の実現を目指すという点におきましてはすべて共通でございます。そういった意味合いで、相互によく連携をとり、お互いに協力しながらそれぞれの目標を推進してまいりたい、こういうような立場でこれまでやっているところでございます。
  86. 青山丘

    ○青山委員 頭脳立地法の業種指定がなされるわけですけれども、今私が聞いておりますところでは、特定事業は大体十六業種だというふうに聞いておりますし、候補業種の中には運輸関係とか運送関係とか通信関係が含まれておりませんが、この法律案の「定義」の中には、先ほども議論されておりましたように、特定事業産業高度化に特に寄与すると認められる業種を政令で定めることになっておりますが、この十六業種が絞られてきた経過、その理由、選定の基準を明らかにしていただきたいと思います。  もう一点は、こうしたサービス産業は、技術開発とか情報化の進展ということで思いがけない新たな事業が展開されてきますね。全く思いがけなかったということではいけませんので、そうした問題が出てきたときには弾力的に対応する考え方があるのかどうか。私は弾力的な対応をしていかなければいかぬと思っておりますが、その辺はいかがでしょうか。これは簡単に答えていただきたい。
  87. 安藤勝良

    ○安藤政府委員 お答えいたします。  特定事業の指定につきましては、これは政令でやることになっておりますが、我々今考えておりますのは、日本標準産業分類に基づきまして、あくまでも地域産業に対する直接的な効果が大きい、また対事業所サービスのウエートが高いというようなこと、また今後地方への展開の可能性が大である、そういった面から産業高度化に特に寄与する業種を精査し政令で定めていきたい、こう考えているわけでございます。  また、今後の弾力的な運用につきましては、当然今後の経済活動の変化あるいは技術革新の展開、あるいはサービス業に対するニーズの高まりとか、そういったいろいろな面でこういうものが変化することも十分予想されます。そういったことから、この問題につきましては弾力的に対応していきたい、こう考えております。
  88. 青山丘

    ○青山委員 ぜひそうして進めてください。  それから、産業支援基盤施設の運営についてお尋ねいたします。今回のこの頭脳立地法が制定されますと業務用団地を造成していく、研究基盤施設を政府が先導的に進めていく、特にそれは地域振興整備公団が国の資金を核として先導的に整備していくのだ、こういうことでありますが、これは民活法ででき得ない、官活でなければでき得ない地域にとっては大変歓迎されることであろうと思います。ただ問題は、研究基盤施設がどのような規模でどのような運営がなされるのかということはまだ十分伝わっておりませんので、いろいろな危惧が出ております。そこで今年度、初年度ですが、一施設当たりでは資金は十八億円、資本金が九億、借入金が九億。資本金の九億のうちの三分の二、六億円は地域振興整備公団の出資、借入金のうちの十分の七の六億三千万円はNTTの無利子融資資金、こうした資金計画で今想定されている規模、内容、水準、これを少し説明いただきたい。  それからもう一点、これは先ほどもちょっと出ておりましたが、技術革新が非常に早い。そういう中で、研究設備の更新を今後相当求められてくるでしょう。それから、設備の拡張がきっと相当求められてくるでしょう。そうした状況が想定されるのですが、どのような対応をしていこうと考えておられますか。
  89. 安藤勝良

    ○安藤政府委員 地方で行います高度化事業に対しまして、地域公団がいろいろな角度から支援するということで、一つ産業支援団地の整備、もう一つ産業支援基盤施設の整備が行われておるわけでございまして、今お尋ね産業支援基盤施設の方でございますが、御質問にありましたとおり、公団からの出資あるいはNTTの無利子融資なりを活用してこういった施設をつくるということになっております。予算の積算をしたときに、いろいろモデルケースなりを分析調査いたし、また検討いたしまして、それなりの規模のものを想定しておるわけでございます。これはあくまでもまだ予算上でございますので、実際の計画になりますと若干の幅ができるかと思いますが、我々大体床面積で申しますと約三千平米を考えております。こんな面では、多分建物関係では坪二、三十万かかるとすれば、数億はこっちの方にかかると思います。  さらにこの中に入れる研究設備、これが大変問題かと思いますが、あくまでもテーマによりまして大変数字が変わろうかと思いますが、そういった面で確定的なことは申し上げかねますが、いずれにしても研究所あるいは研修設備、こういったものが内容的にはなるわけでございますので、研究所ということになりますと、当然コンピューターとかそういった共通的な設備も必要でございます。また、例えばバイオ関係であれば細菌モニタリング装置だとか、IC関係だとクリーンルームだとか、そういったものが必要になってきますので、テーマによって大変変わるかと思いますが、我々は十億を超える範囲内のところを想定してみました。そうしますと、先発でいろいろやっているところの例などを申し上げますと、この程度の規模であればまあまああの設備水準が保てるのじゃないか、こういうふうに考えておるわけでございます。  また二点目のお尋ねの点でございますが、さらに技術革新等によりまして設備が陳腐化したときの更新の問題、あるいはテーマがふえた場合の拡張の問題、これらにつきましても、計画の中身あるいは今後の研究、研修の進捗状況を見ながら、適宜指導してまいりたいと思います。
  90. 青山丘

    ○青山委員 時間がなくなりましたので、残余の質疑については、個々にまた特段の問題がありましたらお尋ねしたいと思います。  最後に、委員長のお許しをいただいて一つだけ。これから除外地域が指定されてきます。テクノポリス計画でも東京圏、中京圏、近畿圏は、自立的に発展し得る地域ということで除外されてきております。今回の頭脳立地法も同じような考え方でいくのでしょう。ただ、東京圏はともかくとして、例えば近畿圏あたり見てまいりますと人口が流出増なのです。所得であるとか工業生産高を見てまいりますと、むしろ低下しています。そういうような点考えていきますと、言われる意味は理屈としてはよくわかる。しかし、現実的には今申し上げたような近畿圏の状況。それから今日的な課題としては、東京一極集中をできるだけ回避する、こういう重要な段階であるということを考えれば、除外地域は東京圏だけで私はいいのではないかというふうに考えておりますが、そのあたりはいかがでしょう。最後にお尋ねをして、質問を終わります。
  91. 安楽隆二

    ○安楽政府委員 法律によりますと、政令で定めるということになっておるわけでございます。これは、東京圏等に相当集中しております研究開発とかその他の特定事業、ソフト事業、頭脳部分を分散する、地域集積させるということでございまして、三大都市圏、東京以外の大阪圏とか名古屋圏とか、そういうところも相当集積していると見るのかどうかという問題はございますが、地域集積につきまして日本全体の産業、頭脳の再配置という観点から政令を定める段階で決めたいと思います。
  92. 青山丘

    ○青山委員 質問を終わります。ありがとうございました。
  93. 甘利明

    ○甘利委員長代理 次に、藤原ひろ子君。
  94. 藤原ひろ子

    ○藤原(ひ)委員 まず、今回の法案の目的は第一条に示されておりますが、高度技術工業集積地域開発促進法、いわゆるテクノポリス法と比べて具体的にどう違うのでしょうか、簡潔にお答えをいただきたいと思います。
  95. 安楽隆二

    ○安楽政府委員 テクノポリス法と本案との違いでございますけれども、目的につきましては、テクノポリス法は高度技術に立脚した工業開発、そしてそのときに産学住が一体となった町づくりという形で行うということになっておりますが、本法案の場合には、産業の頭脳部分地域における集積と、それによって地域産業全体の高度化を図るということで、目的が違っております。ただ、いずれにしましても地域経済高度化していくための地域開発立法と申しますか、そういう点では共通でございまして、相補完、強化し合う関係にあるわけでございます。したがいまして、その施設の対象といたしましても、テクノポリス法の場合には高度技術工業というのが対象になります。あるいは、そういうものを利用した地域の工業の技術高度化ということになるわけでございますが、本法案の場合には、産業のソフト部分とか頭脳的ないわゆる政令で指定する特定事業というものの地域集積ということでございまして、簡単に申しますれば前者が直接的な生産部門を主たる念頭に置いているのに対して、後者の方はソフト部分と頭脳部分といった直接的生産部門を支援するような部門を念頭に置いているということでございます。それに従いまして、助成措置の手段につきましても、それに相当するような違いがございます。
  96. 藤原ひろ子

    ○藤原(ひ)委員 テクノ法は、工業、工場集積促進するものだ、ハードのものだということですけれども、第一条の「目的」には「高度技術に立脚した」というふうに明記をされておりまして、この法律に基づく高度技術に立脚した工業開発に関する指針を見ましても、第一に「地域立地している企業を高度技術の開発を行う企業又は高度技術製品の開発若しくは生産に利用する企業成長させるよう努めること。」第二には「地域技術水準向上の核となる高度技術開発企業立地条件を整備することによって、その立地を適正に促進すること。」こういうふうになっておりますね。頭脳立地法では「産業高度化に寄与する特定事業集積促進する」というふうになっておりますが、今回の特定事業としてデザインを加えるということを除けば、目的とか目標とか、こういう内容はほとんど変わらないのじゃないかなというふうに思うのですね。  しかし変わる点がある、大きく違う点がある。それは何かといいますと、テクノの場合は、制定されました八三年当時、臨調行革の真っただ中だった。そして税制などを除いては国の支援策が非常に少なかったわけですね。開発費、基盤整備費はほとんど指定地域の負担になっていたわけです。それが今度の法案では、内需拡大策の一環として資金運用部資金、それから産投会計出資、NTT株売却益による無利子の融資など、国の資金を直接投入をして産業支援団地、産業支援基盤施設を建設したり整備したりする、これが最大の相違点ではなかろうかというふうに思うのですね。そしてテクノポリス地域などのてこ入れをするものじゃないか、こういうふうに思うのですが、いかがでしょうか。
  97. 安楽隆二

    ○安楽政府委員 先ほどの御議論の中にもございましたけれども産業立地政策というのは、産業構造の変化、時代の変化に応じて適用し、かつ、その拡充強化をしていくという方向で変遷してきておりますけれども、そういう意味におきましては、このテクノポリス政策につきましても、テクノポリスの高度技術地域に植えつけていくというときに、この頭脳集積というものが非常に大きく役立つということは事実でございまして、そういう意味では現在おおむね順調に進み始めていると私ども思っておりますが、このテクノポリス政策を新しい環境の中でさらに強化するということになると思います。しかし、産業の頭脳部分地域集積というのは何もテクノポリス地域だけではございませんで、いろいろな地域の経済圏というものが頭脳というものを必要としているわけでございますから、さらに広い観点から、地方経済圏の一つの頭脳的な拠点になっていくという形で広く活用されるべきものではないかというふうに考えております。
  98. 藤原ひろ子

    ○藤原(ひ)委員 それでは、テクノポリス法の評価についてちょっとお尋ねしたいと思うのですけれども通産省がテクノポリス構想を打ち出されてテクノ法が制定されたときといいますのは二度にわたります石油危機の後で、新産・工特などにより次から次へと臨海部を埋め立てたり、大規模工業団地を造成したり、重化学工業化路線を進めてきた、こういう方向で走っておりましたが、こういう産業立地政策の破綻が露呈された時期だったと思うのですね。それだけに、全国各地で異常とも言えるテクノポリスのブームが巻き起こりました。指定地域を受けてテクノポリス構想を推進することが地域再生の切り札であるかのように言われた。これは記憶に新しいところだと思うのです。ところが、地域指定の状況を具体的に見てみますと、それぞれ地域指定された当時の夢が大きく崩れて、決して順調には進んでいない、こういうふうに思います。  具体的に私どもが、私自身も参りましたし、党議員団として手分けをして調査したことを述べていきたいと思うのですが、例えば長岡のテクノポリスですね。ここでは工業用地、道路等のテクノポリス関連公共事業費が、八四年度から八六年度末までに三百九十九億円投入をされております。地域振興整備公団が建設しております長岡ニュータウンも、住宅、商業、業務地区など、全体面積は千八十三ヘクタール、総事業費は五十年度価格約一千億円で、昭和五十年度からおおむね十五年間の工期で建設が進んでおります。ところが工場立地雇用増はわずかなものですね。高度技術工業研究所等の集積により、住宅一万戸、計画人口四万人を予定しているニュータウンの入居者はどうかといいますと、昨年の八月現在で百六世帯、三百九十七人にすぎません。けたが違うのじゃないかと思うほどですね。このまま工業団地やニュータウンを建設し続けるとどうなるのだろう、こういう不安が広がっているのが現状です。  また函館を例にとりますと、全体面積一万一千二百五十三ヘクタール、うち工業用地は五千六百五十六ヘクタール、大規模な苫小牧東部工業基地を建設していまだに約四千九百へクタールもの工業用地が未利用である、こういう苦い教訓を間近に見ていますから、工業団地等の基盤整備には大変慎重です。それでも、これまでに道や市、町の合計で八六年度まで二十二億円を投入しておりますが、工場立地やそれによる雇用増はまことに微々たるものです。市の当局者の方たちもこう言っておられます。テクノ、テクノでメカトロニクスやエレクトロニクスなどハイテクばかりに目を奪われてきたが、水産加工など地場産業にもっと目を向けて地道にやっていくしかない、こういうふうにおっしゃっているわけですね。  さらに岡山の吉備高原テクノポリス、ここも同様でした。テクノ地域の指定を受けてから県の公社が約三十五億円かけて造成いたしました三十六ヘクタールの御津工業団地には、従業員わずか三十人、それもほとんどがパートという小さな工場一つ立地しただけで、あとは全くめどが立っていない、こういうことだったわけですね。団地のある御津町は人口一万一千二百人の小さな町ですけれども、この団地の工業用水道建設などテクノ関連で既に二億七千三百万円投入をし、今宙に浮いた感じの大学研究所用地の買収を四億円かけて行い、助役さんたちもこの先どうなるのやらと途方に暮れておられるという感じだったのです。ある新聞がかってテクノポリスについて、夢をかき立て、実利とる企業踊らず、こういうふうに書いておりましたが、その結果、地元負担だけが残されたという面は否定できないというふうに思うのですが、この事実についてどうお考えになるでしょうか。
  99. 安楽隆二

    ○安楽政府委員 現在まで二十四地域がテクノポリス地域として承認されておりまして、それぞれ地元でテクノポリスづくりが始まっているわけでございますが、私どもといたしましては、テクノポリスのこれまでの状況を見ますと、もちろんこれはいろいろな時期によってあるいは地域によって、それぞれの違いというかそういうことは当然あるわけでございますが、全体として見ますとおおむね順調にいっているというふうに考えております。  その点につきましては、例えば工場立地でございますけれども、テクノポリスを承認し始める前の三年と後の最近の三年と比べましても、立地件数は四割ふえておりますし、敷地面積ベースでも八割ふえているということがございます。それからまた、テクノポリス政策というのは何もハイテク産業を誘致するということだけではございませんで、地場産業地域産業技術高度化するということが非常に大きな目的の一つでございますので、そういう意味で、各地域でテクノポリス開発機構等がいろいろ技術高度化のために努力をしているということもあるわけでございます。  その成果ということでございますけれども、研究開発型企業の債務保証事業ということで申しますと六十二年末で百四十七件ございまして、地場企業の新製品や新技術の開発に貢献しているわけでございますし、また技術者を養成していくための研修指導事業も六十二年度だけで年間四百十七件をやっているとか、また技術高度化に非常に重要な産学官の交流事業につきましても六十二年度で百九十件行われているというようなこと、それからまたいろいろな形の研究、人材育成の施設整備等も行われているわけでございます。地域づくりというのは当然非常に時間がかかるわけでございますけれども、現在スタートして努力を始めた段階におきまして、私どもといたしましてはおおむね順調に進んでいるというふうに今考えている次第でございます。  それから、今先生御指摘のございました工場団地と申しますか工場用地の問題でございますが、苫東の例もお出しになりましたけれども、私どもの把握しているところでは、昭和五十六年の全国の工業団地における造成済みの工場用地の面積というのが五万二千六百ヘクタールであったのに対しまして、六十一年は六万四百ヘクタールということで、五年間で約七千百ヘクタール増加しているわけでございます。そういうような数字がございますけれども、第一次石油危機前後と申しますか、臨海型の工業開発ということをやったとき以降、経済成長が非常に安定化したというようなことで、一部この分譲というのが進んでないというような地域もございますけれども、全体としては分譲は非常によく進んでおりまして、内陸の団地についてもそうでございますし、地域別の個性は別として、全般的には工場用地あるいは団地の造成というものは、工業の受け入れとして今までの地域経済の活性化、発展に寄与してきているというふうに考えております。
  100. 藤原ひろ子

    ○藤原(ひ)委員 御答弁を聞いて全く残念に思うのですね。なぜかといいますと、具体的にこれだけ地方自治体で大変な目にも遭っておられる、苦労しておられますよということを見てきて言いましても、全体としてうまくいっているのだ、少しぐらいうまくいっていないところがあったってしょうがないじゃないか、時間がかかるんだというふうなことをくどくどとおっしゃる、いろいろ言いわけされる。本当にそうなんでしょうかね。指定地域の皆さんの苦労とか失望感というものを全く理解されていないなというふうにしか、私には思えないのですね。  私自身も、昨年の六月でしたが、大分県の国東テクノポリスを調査いたしました。御承知のとおり、ここは熊本と並んでテクノポリスの優等生と言われるところですね。ところが、ここでも実態は大同小異だったわけです。テクノポリス地域の安岐町は、キャノンの誘致に当たりまして九億九千万円かけて工場用地を造成し、半分にまけて五億円で提供したのです。そのほか、取りつけ道路とかグラウンドとか体育館とか公園とか上水場など、関連施設の整備に総額二十四億円もの町費を投入しているのです。まことに立派なものでした。ところが、誘致はしたものの、法人住民税は年間で均等割の十五万円だけですよ。キャノンの関連税収総額は、八三年度から八六年度の四年間でわずか一億九千万円、町費を投入したのは二十四億円。雇用の方も、自動化やロボット化がうんと進んでおりますから、約千人予定されていた従業員は、当時パートを含めて四百八十人雇ってもらっただけですね。大分県の皆さんの話でも、円高不況の影響で、現在は多少回復しているとはいえ、当時有効求人倍率は十七年ぶりの水準に悪化した。テクノ地域への企業立地も、当初一万人雇用計画を立てていたのだが、これから見ると四割にとどまっている。進出予定企業が倒産したり、立地を決定しながらまだ進出してこない企業が十社もあるのですよ、こうおっしゃったわけですね。杵築市の方でも大変苦渋に満ちたお話を聞きました。東芝のために工場用地を七・二ヘクタール用意したが、五ヘクタールしか購入されず、第二期工事のおくれで残りの二・二ヘクタールは転売もできないで、東芝が購入してくれるのをじっと待っているのだ、こういう状態だとのことなんですね。  異常円高企業海外進出急増という新しい事態のもとで、テクノポリスの優等生の大分県においてすら、テクノポリス構想計画の進捗状況というのは工業用地、工業用水道、道路など自治体負担による基盤整備だけが先行して、工場立地地域産業高度化、工業出荷額など、高度技術に立脚した工業開発の目標達成は大きくおくれているというふうに思うのですが、いかがでしょうか。全体としてうまくいっているのだ、おまえさんは重箱の隅をつっついてそんな悪いところばかりほじくっているじゃないか、こういうふうなお考えでしょうか。
  101. 安楽隆二

    ○安楽政府委員 テクノポリス地域への工場立地ということでございますが、これは全国的な工場立地動向にも影響をされると思いますけれども、私どもの全国の工場立地動向調査というのがございますが、これが昭和五十八年、五十九年、六十年と立地件数がふえまして、実は六十年、六十一年と我々の数字では年間大体二千五百件ぐらいの立地が全国であったわけでございます。実は、六十一年後半ぐらいからの円高不況と申しますか、こういうことがございまして、立地動向も企業の設備投資の動向、景気の循環に影響されますので落ち込みまして、六十二年の上期は千八十八件という形で減ったわけでございます。     〔甘利委員長代理退席、尾身委員長代理着席〕  しかしながら、昨年の後半からの景気の回復、特に製造業なんかも非常に回復してきたということで、下期は千四百七十五件というふうに大きくまた伸びまして、六十二年全体としては六十一年を若干上回る二千五百六十三件となったわけでございます。そういうようなこともございまして、テクノ地域におきましても、この円高不況の影響が非常に強まってきた一昨年から昨年の上期ぐらいにかけまして、企業立地と申しますかそういうものがなかなか従来ほど感じがよくないというような時期ももちろんあったと思いますが、そこは循環的な面もございまして、現在は昨年の下期以降回復しているということでございます。  ただ、今度中期構造的にこのままどうなるのだということにつきましては、この頭脳立地法の御審議の中でも出てまいります議論にございますように、いろいろ構造的な問題ということで、地域工場立地していく、地域経済を活性化していくというためにはいろいろな努力をしなければなりませんので、私どもはテクノポリスについてはおおむね全体として順調だと申しましたけれども、これからでございますので、テクノポリス地域ももちろん、工業再配置政策さらにこの頭脳立地政策等含めて、地域経済の活性化にもっと一層努力していかなければならないというふうに考えておりまして、決して楽観的にこれですべていいのだというようなことではございません。これから一層努力が必要だというふうには考えております。
  102. 藤原ひろ子

    ○藤原(ひ)委員 それでは、この法案に関連してお聞きしたいと思うのですが、特定事業集積促進地域、全体として同地域程度の指定を考えておられるのでしょうか。  それで、本事業にいろいろと予算が計上されている。六十二億円と予定されているのですが、これらの地域指定あるいは団地や施設の建設予定地域では、一体どんな企業あるいは研究所を立地する予定なのか、具体的な目標とか見込みはあるのだろうか。さらには、あるのならその目標を実現するために具体的な指導、これを責任を持って実行するつもりがおありかどうか、これを明確にお答えいただきたいと思います。短くお願いをいたします。
  103. 安楽隆二

    ○安楽政府委員 初めの地域指定の問題でございますが、現時点におきましては、特に地域指定を全部で幾つするかとか、どういう地域をするかということは、まだ特別な想定を持っているわけではございません。今後、法律が成立いたしますれば早急に政省令をつくったりあるいは集積促進指針というものをつくりまして、地域の方で御検討なさった計画が出てまいりますれば、これをいろいろな観点から、あるいは法律に基づいて承認をするかしないかというような手続、段取りになってくるわけでございます。ただ、一応予算を取るという関係で、初年度につきましては、予算面で地域公団の整備する予定の業務用地として三地域分と、それから中核的な施設分として五施設分、一応予算面では確保されるということで、今後の法律の成立を待って、地域の御要望も聞きつつ具体的に作業を進めていきたいというふうに考えております。  それから、この特定事業の目標でございますけれども、正直に申しましてどのぐらいの数量がどうということはわかりません。しかしながら、私どものこういう構想の背景といたしまして、今後頭脳部分ウエートが高まるということで、例えば私どもが将来予測した一つの試算値といたしましては、今後の製造業とそれから製造業にいろいろサービスを提供するような対事業所サービス業等を含めた就業者の中で、いわゆる私どもの言っております産業の頭脳部分と申しますか、特定事業的なものが昭和六十年で二八%であったものが、二〇〇〇年には三八%ぐらいになるということで、直接的生産部門に対してこの産業の頭脳部分ウエートが非常に就業面でも高まってくるということは確かでございますので、こういう特定事業地域集積をする。その場合に、もちろん基本は地元の御努力ということになりますけれども、国、地域公団あるいは地方公共団体が協力いたしまして、そういう特定事業の誘致につきましても、本法で認められますいろいろな税制、金融のインセンティブ、あるいは先ほどの業務用団地とかの受け皿づくりとか、あるいは中核的施設による誘引というようなものも活用しつつ、いろいろな形でお手伝いはしていきたいというふうに考えております。
  104. 藤原ひろ子

    ○藤原(ひ)委員 六十二億円も予算があって、それを使う目標それから具体的指導策というのがもう一つ私にはぴんとこないわけですね。大変不安も心配もあるわけですが、時間がありませんので、角度を変えて、通産省産業の地方分散、地域振興を図る目的で進められました工業再配置政策の結果についてお聞きしたいと思うのです。  工業再配置促進法といいますのは、一九七二年に工業の過疎地域への分散を目的に制定化されたわけですね。全国を一〇〇とした場合の地域別構成比を一つの目標として、昭和四十九年実績を昭和六十年度にはどこまで高めるのか、あるいは抑えられるのかということで計画が立てられたわけですが、ここに表をいただきましたが、北海道、北陸、山陰、四国、九州、これの地域別工業出荷額の四十九年実績、六十年の計画、六十年の実績、これを見ますと、大変なことになっているというふうに思うのです。一々お答えいただく時間がありませんのでこの点は飛ばしますけれども、北海道や四国では、計画に向かって構成比が高まるどころか逆に低くなっております。北陸や山陰、九州では横ばいというふうにとどまっております。その他、近畿臨海地域、山陽地域は計画を上回って地盤沈下をし、目標に反して関東、東海への集中が強まっているという特徴があるのですね。  そこで、経済企画庁さん、総務庁さん、おいでくださっているわけですね。  まず経済企画庁お尋ねしますが、人口一人当たりの県民所得は長期的にどう推移しているか。東京都における人口一人当たりの県民所得を一〇〇といたしましたときに、六〇以下の県の数はどうなっているでしょうか。七〇年度と七五、八〇、八四、八五と、この推移をお聞かせいただきたいと思います。     〔尾身委員長代理退席、委員長着席〕
  105. 石井武

    ○石井説明員 ただいま先生のお尋ねの件でございますが、最近公表いたしました昭和六十年度の県民所得統計をベースに申し述べますと、お尋ねのように東京都を一〇〇とした場合、六〇を下回る県の数でございますが、七〇年度は三十七、それから七五年度は十七、八〇年度は十一、それから八四年度が二十、八五年度が二十三でございます。
  106. 藤原ひろ子

    ○藤原(ひ)委員 一人当たりの県民所得、東京と地方との格差というのは、八〇年度まではせっかく縮小してきている。ところが八四年度、八五年度と再び大きく拡大してきている。  それでは続いて総務庁さんにお聞きしたいのですが、地域別の完全失業率の推移ですね、これをお聞きしたいと思いますが、一九七五年平均と最新の八七年平均の完全失業率について、それぞれ全国及び北海道、近畿、中国、四国、九州、この数字をちょっと急いでお知らせください。
  107. 伊達木瀧之助

    ○伊達木説明員 お答えいたします。  労働力調査の結果によります七五年と八七年の地域別失業率でございます。全国は七五年が一・九%、八七年が二・八%、北海道はそれぞれ二・五%と四・二%、近畿は二・二%と三・三%、四国が一・九%と三・三%、九州が二・四%と四・〇%というふうになっております。
  108. 藤原ひろ子

    ○藤原(ひ)委員 最近、景気は回復した、雇用も順調に推移しておる、こういうふうに言われているのですが、今の御答弁でも明らかなように、長期的に見ますと、関東及び東海と他の地域との地域間格差というのは大変広がっているわけです。そして、昨年一年間の平均で、全国平均が二・八、南関東が二・七、北関東・甲信が一・八、東海が二・〇であるのに、北海道は四・二、九州は四・〇と大変深刻な事態になっておりますね。工配法の目的、計画に逆行するという事態が、工業出荷額の地域別構成比だけでなくて、一人当たりの県民所得とか今言っていただいた完全失業率、こういうものにもあらわれているわけですね。  そういう点で通産省にお聞きしますが、工業再配置計画を推進するために、国からの直接の支出であります工業団地利子補給金、工業再配置促進費補助金、これまでは総額で幾ら投入されてきたでしょうか。
  109. 安楽隆二

    ○安楽政府委員 ここに数字がございますが、ちょっと過去からの総計というのはございませんけれども、六十三年度の予算でございますが、工業再配置補給金が約四十二億円、それから工業団地の利子補給金が三十七億円でございます。ちなみに、五年前の五十九年度におきましては、それぞれ四十八億七千万円それから五十億円ということでございましたが、若干減ってきております。ただし、工業再配置補助金につきましては、六十三年度につきましては六十二年度に比べまして若干の増加をお願いしている次第でございます。
  110. 藤原ひろ子

    ○藤原(ひ)委員 私は、昭和四十七年から六十二年までの計も出しているわけですが、二つの補助金についてだけの金額ですが、そのほかにも道路とか基盤施設整備、これに国や地方自治体から莫大な投資をしているわけですね。工業団地造成について言えば、地方自治体でも巨額な資金を投入しているわけですが、工業団地の状況、これについて工場用地の面積とか、そのうち分譲済みの面積、未利用地の面積、八一年と八六年で比較しますと、それは一体どうなっているでしょうか。
  111. 安藤勝良

    ○安藤政府委員 お答えいたします。私の方で把握している工場用地面積あるいは未利用の面積でございますが、五十六年と六十一年の比較でお答えいたします。  まず、工場用地面積でございますが、これはいろいろなとり方があろうかと思いますが、造成済み工場用地の面積でお答えいたします。五十六年では全国で約五万二千六百ヘクタール、これに対して六十一年では六万四百ヘクタールでございます。したがいまして、五年間で約七千八百ヘクタールが増加しております。このうち分譲済み面積では、五十六年では四万六千五百ヘクタール、それに対して六十一年では約五万四千二百ヘクタールでございますので、この間約七千七百ヘクタールが増加しております。  また、造成済み分譲中の工場用地面積でございます。これはある意味では一定水準、商品として抱えている面積かと思います。五十六年では約六千百ヘクタールでございました。六十一年では約六千二百ヘクタールでございますから、この間若干の変動はございましたが、大体年間通してみますと、約六千ヘクタール程度のものが分譲中の工場用地として存在しているということになろうかと思います。
  112. 藤原ひろ子

    ○藤原(ひ)委員 未利用地の面積というのは、とにかくこの五年間にふえているわけです。昨年の工場立地動向調査結果、これを見ますと、八七年  一年間の工場用地の取得面積が二千九百三十二ヘクタールですから、それを上回るような未利用地がふえております。そして、八六年現在の未利用地面積は、約九年分の用地取得面積に匹敵するというように膨らんできております。この中には、当然地域振興整備公団が造成されております中核工業団地、これも含まれているわけですね。借入金の返済額が事業費を上回っているだけではなくて、借入金のための利子その他の経費の額まで事業費を上回るという、大変なサラ金経営になっているというふうに思います。こうした点は、売れない工業団地をいっぱい抱えている自治体ではもっと深刻なわけですね。  私はここに日経ビジネスをコピーしてきましたが、八七年六月十五日のものですけれども、これにどう書いてあるかといいますと、例えば「貴社の発展を鳥取県で!」「大型の優遇制度を用意しております。(補助金最高十三億円)」あるいは「なんと十年間、土地がタダで使えます。」十年間工業用地無償貸付「熊本県」というように、各自治体は必死の企業誘致活動を展開しているわけです。今回の法律によりさらに工業団地を造成していく、そして未利用地を拡大していく、こういうことになりますと、地方自治体の出血競争、これはさらにあおられるということですね。国や地方自治体の負担というものを一層増大をさせることになるわけです。そういう点でいかがにお考えでしょうか。
  113. 安楽隆二

    ○安楽政府委員 先生いろいろ御指摘いただきました工業用地と申しますか工業団地でございますけれども、私ども一つの数字といたしましては、これまでの造成済みの工業団地のうち一応九〇%が販売されておりまして、現在、内陸と臨海とか地域によって違いはございますけれども、数年分の在庫があるということでございますが、できてすぐそこに全部工場が埋まってしまうということではございませんので、在庫率そのものが非常に高いというふうには考えておりません。いずれにしましても、適正な需要に応じて工業団地はつくっていくということだろうと思います。  今度の法案にございます業務用の団地は、いわゆるリサーチパーク等々と言われるものでございますが、これはもっと規模の小さいもので、しかも集積促進地域でございますから、特定事業集積するような場所にできるものでございまして、これにつきましてはまた特定事業の受け皿になるわけでございますから、当然大いに活用されるべきものと思っております。いずれにいたしましても、地方の実情というものを十分把握いたしまして、既存の業務用地で活用できるものはそういうものも活用しますし、新たにつくるものが必要なものはつくるというような形で、需要とのバランスを十分把握、検討して適切な整備を図って、集積促進のお役に立ちたいというふうに考えております。
  114. 藤原ひろ子

    ○藤原(ひ)委員 私も促進を強く願っているわけですけれども、異常な円高とそれをてこにした産業構造調整が推進されている中で、これまで私も本委員会で何度となく指摘をしてまいりましたが、大企業中心とする海外直接投資の急増、工場閉鎖、縮小、こういうものを含む大量人減らし、合理化の強行、中小企業中心にした休廃業の急増、地域経済の崩壊というふうな事態が全国で進んでいるわけです。ですから、こうした事態に歯どめをかけるのではなくて、これをどんどん推進しながら特定事業集積させるといっても、一体その穴を埋められるほどの集積ができるんだろうか、この点が一番心配であるわけです。後ほどお答えをいただきたいと思うのです。  昨年、大牟田市に行ってきたのです。御承知のとおり、ここは不知火とか有明、大牟田ということで新産業都市に指定された地域であるわけです。新庭都市の建設の総事業費は、一九六四年度から八五年度までの二十二年間に国、県、市町村合わせて二兆六千四十億円、産業基盤整備だけでも一兆四百五十二億円が投入をされております。ところが、この大牟田は三井の企業城下町なんですけれども、石炭、石油化学、アルミなどの軒並み規模の縮小、撤退が行われ、立地公害局監修の「二十一世紀の産業立地ビジョン」を見ますと、大牟田市の昭和五十五年を一〇〇とした昭和六十年の指標は、人口は九七、工業製品出荷額は八二、工業従業者数は八四と、みんな低下をしてきています。この後アルミ、石炭の合理化が行われましたから、今ではもっと深刻なんですね。ところが、驚くことに三井グループは全体としてびくともしていない、大もうけを続けている。私が一昨年、この委員会で取り上げました三菱金属の細倉鉱山、ここはついに閉山に追い込まれて労働者中小企業やその家族、地域住民の皆さんが大変打撃を受けて苦労されている。ところが、本当に腹が立ちますのは、その三菱金属が昨年の九月期決算では史上最高の利益を上げているわけですね。  どうしてこんなことになるのでしょうか。それは結局、これまでの新産・工特、工配法、テクノポリス法、そしてまた今回の頭脳立地法すべてに共通していることですけれども、いずれも資金の確保、財政措置等、国や地方自治体の支援策、こういう責務しか書いてないわけなんですね。それぞれの法律が対象とする企業とか大企業の責務というのは何ら明記がされておりません。したがいまして、国や地方自治体が幾ら巨費を投じて支援策を講じましても、企業の方は条件がよければ出てくるし、悪ければ、合わないということになれば進出しない。情勢が変われば、企業の都合だけで平気で工場閉鎖をやっていく、生産拠点も海外に切りかえる。研究所等につきましても茨城や千葉、神奈川など、首都圏への立地が急増しているだけでなくて、海外立地が大きく増加するというような情勢にあります。  そこで、本法案の目的を真に達成するためには、首都圏への一極集中に歯どめをかけて、経済の地域間格差を是正する。このためには大企業の責務、大企業の社会的責任を明確にする必要があると思うのですが、最後に大臣、この点どう思われるでしょうか。
  115. 田村元

    ○田村国務大臣 企業活動というものは、もとより個々の企業がそのときどきの情勢の変化に応じて、独自の判断に基づいて決定するものでございます。しかしながら、地域経済の中核となる企業につきましては、その活動が地域経済に大きな影響を有していることもまた事実でございます。したがいまして、各企業が事業転換等を進めていくに当たりましては、雇用への影響等にも配慮しながら、関連する各種施策を十分活用されて、地域経済の振興のために最大限の努力が払われることを期待するものでございます。
  116. 藤原ひろ子

    ○藤原(ひ)委員 大臣おっしゃいますように、地域経済の中核として、そういう任務があれば雇用どもちゃんと責任持ってやらなければいかぬ。そうすると、この法案に大企業の責務、大企業の社会的責任を明確にすべきだ。これが明記していないこの法案ではこの誤りを繰り返すのではないか、この点が私は心配だ。これがきちんと明記されていない法案には反対せざるを得ないと思うわけです。  以上で終わります。
  117. 渡辺秀央

    渡辺委員長 これにて本案に対する質疑は終了いたしました。     ─────────────
  118. 渡辺秀央

    渡辺委員長 これより討論に入るのでありますが、討論の申し出がありませんので、直ちに採決に入ります。  地域産業高度化に寄与する特定事業集積促進に関する法律案について採決いたします。  本案に賛成の諸君の起立を求めます。     〔賛成者起立〕
  119. 渡辺秀央

    渡辺委員長 起立多数。よって、本案は原案のとおり可決すべきものと決しました。  お諮りいたします。  ただいま議決いたしました本案の委員会報告書の作成につきましては、委員長に御一任願いたいと存じますが、御異議ありませんか。     〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
  120. 渡辺秀央

    渡辺委員長 御異議なしと認めます。よって、そのとおり決しました。     ─────────────     〔報告書は附録に掲載〕      ────◇─────
  121. 渡辺秀央

    渡辺委員長 次に、内閣提出訪問販売等に関する法律の一部を改正する法律案及び上坂昇君外三名提出訪問販売等に関する法律の一部を改正する法律案の両案を一括して議題といたします。  これより質疑に入ります。  質疑の申し出がありますので、順次これを許します。甘利明君。
  122. 甘利明

    ○甘利委員 今回提案をされております訪問販売等に関する法律の一部を改正する法律案について質問を行うわけでございますけれども、今回は政府案と、上坂先生御苦労されております社会党案と提案をされております。私は政府案を中心に、そして社会党案にも一、二御質問をさせていただきたいと思うわけでございます。     〔委員長退席、尾身委員長代理着席〕  近年、小売販売の方法がいろいろと多様化してまいりまして、そういう中で訪問販売や通信販売等が急速に発展と申しましょうか成長をしてきたわけでありまして、その一方で、これらをめぐって消費者のトラブルが絶えない、そしてその手口も多様化をしてきているし複雑化をしてきているわけであります。  訪問販売の伸びを数字で追ってみますと、五十五年には一兆二千億円であったわけでありますけれども、六十年になりますと二兆一千五百億円、この五年間で実に一・八倍、約二倍の伸びを示しているわけであります。そして、小売業の売上高に占める割合も二%を超してきた。通信販売を例にとっても、ほぼ同じような伸びを示しているわけであります。五年間で二倍になってきたということは、売る側が一生懸命必死で売っている、セールストークもなかなかうまいということも当然ありましょうけれども、買う方の側にとっても多少なりともメリットがある、だからこれだけに伸びてきたという点もあろうと思うわけでございます。消費者にとっては、この訪問販売というのはわざわざ店舗に出向くという必要がないわけであります。買い物に行く手間が省けるわけでありますし、セールスマンと相対の商売でありますから、ゆっくり時間をかけて商品についてじっくりと知ることができるわけであります。最近はパートタイマーの進出も大変に多くなってきておりますから、家庭の主婦に対して就業の機会を与えるとか、収入の機会を提供するといったメリットも当然考えられているわけであります。  こういった規制法をつくる、あるいは規制を強化していくというときに大事な点といいますのは、いろいろ出てくる弊害、悪い点、悪い芽を摘もうとするために規制を各種強化をしていく。しかし、当然いい点もあるからこう伸びてくるわけでありますから、悪い芽を摘もうとしているその行為でいい点、いい芽もどんどん摘んでしまったということがないようにしなければいかぬと思うのです。訪問販売や通信販売が本当に悪いことだけで、消費者にとっても全くいい点がないということであれば、これはもうとっくに見捨てられているはずでありますし、どんなに巧妙な手口を使っても、そうそう五年間で二倍近くに伸びてくるはずはないのでございますから、そういう点は、規制を強化をしていく、規制を新たに設けるといった点では、我々が非常に注意をしなければならない点であるというふうに私は考えるわけでございます。  政府当局でもいろいろと御苦労されたと思うのでありますけれども、今回訪販法を改正するに至った理由とか経緯というものについて、お話しをいただければ幸いかと思います。
  123. 末木凰太郎

    ○末木政府委員 訪問販売、通信販売の最近の発展状況につきましては、先生今数字を挙げておっしゃったとおりでございます。小売売り上げに対しましてそれぞれ二%と一%ということでございますから、一つの業態として立派に確立された業態だと思っております。  しかし、それに伴いまして消費者との間にいろいろなトラブルが発生しておりますし、特に最近はそのトラブルの態様が多様化してきております。例えば、かつては消費者との間のトラブルの主要なものは、商品の販売をめぐるものが主流をなしておりましたけれども、最近は商品の販売に伴うもののウエートがだんだん下がりまして、かわって役務、サービスにかかわるものがふえてくるとか、取引の場所も消費者の住居におけるものから街頭でお客をつかまえて契約をさせる、俗にキャッチセールスと呼んでおりますものとか、電話で呼び出して契約をさせるというような形もふえてまいりました。消費者に迷惑をかけるような行為の態様としても多様化してきております。  このような点については、かねて国会でも御議論のあったところでございまして、私どもはそれに対しまして一昨年の十二月以降、省内に研究会を設けまして実態の分析及びこれに対してとるべき対策の勉強を重ねてまいりました。研究会は、延べ十六回にわたっていろいろな御検討をいただきました。さらにそれを踏まえまして、昨年十二月から産構審、産業構造審議会のもとで流通部会、消費経済部会の御審議をいただきました。その結果、本年の一月二十九日に産構審から答申をいただいておりますが、この答申を踏まえまして、先ほど申しましたような実態に対応する内容を盛り込んだ訪問販売法改正案を今回提出させていただいた次第でございます。  なお、これにつきましては、一方において消費者の保護に遺憾なきを期すると同時に、先生も言及されましたように、これが正しいビジネスを行っていけば消費者に認知された一つの立派な業態であるという認識も同時に持っておりまして、不当にビジネスを抑圧することのないようにも配慮をしつつ立案した次第でございます。
  124. 甘利明

    ○甘利委員 訪問販売の取引の適正化については各方面で大変御心配をいただいているところでありますし、ただいまの答弁の中にもございましたとおり、産構審の答申においても重要な項目が新たに提言をされているわけであります。  その中で大きなものとしては、規制の強化あるいは消費者の啓発、そして業界の自主規制、この三項目が大変重要であるというふうに述べられているわけでありますけれども、産構審答申のこれらの方策を、政府としてはどういうふうにとらえて受けとめて、どういうふうに総合的に講じていくというお考えでありますか。
  125. 末木凰太郎

    ○末木政府委員 産構審答申にあります三本の柱でございますが、私どもはこの三本の柱、三本の矢でございましょうか、これが適切なバランスをとった形で行われるべきものだと思っております。  一つ目の規制の強化につきましては、これは今回御審議をいただいている法律に盛り込んだつもりでございます。  二つ目の柱としまして、消費者啓発でございます。これはどんなに立派な法律をつくりましても、結局消費者が自分で自分を守るという意欲を持っていただき、努力をそれなりにしていただきませんと法律も生きません。ただ、何しろ数の多い話でございますから、意識の高い消費者もいらっしゃいますれば、心ならずも何かそういう勉強ができない方もいらっしゃることもこれまた事実でございます。特にお年寄りの方とか、いわゆる弱者と言ってはなんでしょうがそういう方もいらっしゃいますが、私どもは消費者啓発につきましては、いろいろな方法でできるだけ消費者に情報を提供し、あるいはこの法律の仕組みを初めとしまして、どうやって自分を守ったらいいかということを知っていただくつもりでございます。具体的に、例えば今年度から全国に約三百名の訪問販売モニターをお願いしましてトラブル情報を収集いたしまして、そういった生のまた生きた情報に基づいて集めた情報を、消費者トラブル連絡協議会という連絡会を消費者関係の十一団体で組織しておりますが、そういったところを通じて今度は逆に消費者にリターンするというようなこともやっておりますし、今後とも一層努めてまいるわけでございます。  第三の柱といたしまして業界の自主規制でございますが、数多い企業がいるわけですけれども、大多数は一生懸命やっておる企業だと思います。そういったまじめな企業に、悪徳商法について仲間の中で目を光らせてもらいまして、悪貨が良貨を駆逐するのではなくて、良貨が悪貨を駆逐するように持っていくことも有効な手段だと思います。そこで、この法律でも業界団体の任務をうたう規定を置いております。この三つの柱をバランスをとって進めていきたいと思っております。
  126. 甘利明

    ○甘利委員 先ほども申し上げましたとおり、訪販というのは消費者にとってもいい部分があるからこうやって伸びてきたのだという話をしたわけであります。ただ、訪問販売や通信販売を逆手にとってと申しましょうか、悪用して悪い芽が出てくる、それをきちっと摘み取っていくのが政府の責任であるわけでございますけれども、私は、訪問販売や通信販売というのは国民にとって非常に有益な部分があるというふうに考えておるわけであります。政府の御答弁からもそうだというニュアンスは出ておりますけれども、もう一度確認をさせていただきます。  そして、もし有益な販売方法の一つであるというふうにお考えになりますと、今回の法改正、規制を強化していくということが、その部分で少し張り切り過ぎて健全な業界の方を少し萎縮させてしまうおそれはないか、健全な業者、業界の発展を阻害するようなことがないだろうかという懸念を少し持っておるわけでございますけれども、この点についてはいかがでございましょうか。
  127. 末木凰太郎

    ○末木政府委員 関係者の方の中には、訪問販売は害だけあって益がない、このような商売は禁止すべきではないかという方も、一部だと思いますがいらっしゃるわけでございます。私どもはそのようには考えません。悪徳商法は断固として規制しなければいけませんけれども、きちっとルールを守ってビジネスを行う限りにおいては、消費者の需要があれば需要に応じて伸びていくものだと思います。どの程度の伸びをするかというのは、まさに決められたルールのもとで、マーケットを通じて需要という形で消費者が決めていくことでございますし、魅力がないあるいは価値がないということであれば、売り上げが伸びない、減っていくということだと思います。したがいまして、政府といたしましてこれを抑圧するとかいうことはもちろん論外でございますが、かといって積極的に養成をするというわけでもございません。ルールをきちんとさせて、しかもそのルールというのは、先生おっしゃいましたようにいたずらに業界を萎縮させてしまうことのないように、適切なルールでやっていくことだと思います。
  128. 甘利明

    ○甘利委員 ルールを持って規制をしていくというお話、大変結構でございます。今回の法改正を見ますと、消費者を保護していくという観点からしますと非常に評価をできる改正案であると思います。  ただ、一方では、お話の中にもありましたとおり、消費者啓発をしていくということも忘れてはならないことでございまして、先ほどの答弁の中の産構審答申の消費者啓発の項目もございました。その内容でございますけれども、消費者が商法の悪性の有無について確かな判断を行えるようになることが大事である。また、政府は、そのために問題のある商法についての情報提供その他の消費者啓発活動をより有効に行うよう努めるべきだ。つまり、消費者自身も判断能力を養っていく必要があるのだということであろうと思います。  法律で消費者をしっかりと抱えて守ってやるということは大事なことでありますし、私は決してそれを否定しているわけではありませんけれども、余り二重、三重にガードして、全く消費者は何もしないでもいいということになると、そういう悪徳商法に対する免疫性、免疫性というのは適切な言葉ではないかもしれませんが、対抗力というかそういうものまでも全部はぎ取ってしまう。つまり、軟弱な消費者をつくってしまうということになりはしないかということを心配するわけでありますけれども、その点はいかがでありましょうか。
  129. 末木凰太郎

    ○末木政府委員 ちょっと言葉の使い方が難しいと思いますけれども、もちろん軟弱な消費者というのは好ましくないと思いますし、自立できるというか自衛できる消費者であってほしいと思います。そういう基本的な考え方のもとに、何でもかんでも政府が面倒を見る、すべて警察や通産省がお世話するということではもちろんございません。ある程度合理的な範囲内で消費者にも努力していただく、自衛のための努力をしていただくということを当然考えつつ、しかし必要な消費者保護はやる、そして関係者の利害も合理的な調整を図るということで考えております。
  130. 甘利明

    ○甘利委員 今回の法改正に関しましてはいろいろな議論がなされたというふうに聞いておりまして、訪問販売業者についても登録制を導入したらどうかというような議論もあったと聞いております。後で御質問を申し上げますけれども、現に社会党案では届け出制というのが法律案の中に規定をされているわけでありますけれども政府案の方を見ますと、これが規定をしておらないわけでありますけれども、これはどういった理由でございましょうか。
  131. 末木凰太郎

    ○末木政府委員 許可制とか登録制とか届け出制とか、いろいろな方法があるかと思いますけれども、訪問販売の事業を始めるときにその入り口のところで何かスクリーンをすべきではないかという意味の開業規制について、研究会あるいは産構審等でいろいろ議論がございました。開業規制をするかしないかという点は、今回の改正法案をつくる作業における大きな、重要な論点の一つだったと思います。結論といたしましては、今回御審議いただいておる改正案には開業規制の規定は盛り込んでおりません。  その理由は、まず第一に、この開業規制といいますのは営業の自由に対します重大な制約でございます。もちろん開業規制のやり方によって、その程度影響も変わることは当然でございますけれども、原則として営業の自由に対する制限になるというものでございますから、その必要性あるいは具体的な方法、手段の妥当性あるいはその効果等について、慎重に検討しなければならないことは当然のことでございます。特にこの業界は、非常に大勢の多種多様の企業といいますか販売業者といいますかがおります。今、企業と申し上げましたけれども企業形態をとらない個人営業のものが数としては非常に多うございます。パートで家庭の主婦が行う訪問販売もありますし、あるいは小規模の小売業者が行う場合もあります。なおかつ、大部分の業者は一生懸命まじめにやっているものだと思います。そこで、こういった極めて多数の、そしてまた零細な販売業者について、一部の悪徳な悪質業者を排除するために広く規制の網をかけるということは、今の段階においていかがなものか、やはりなお慎重に検討をする必要がある問題だろうと思うのが第一点でございます。  それから第二に、業者の数が非常に多いものですから、これに伴います行政庁の事務が膨大なものになると思われます。セールスマンは百万以上もいると言われておりますが、これについて仮に一番緩い措置として届け出制をとったといたしましても、その届け出された書類、いわば台帳でございますが、台帳をきちんと整備するだけでも相当大変な作業量になります。私ども実は限られた人数で一生懸命やっておりますが、今度そういった事務が加わりました場合には、これを的確にこなしていくことについては率直に言って自信がございません。行革の時代でございまして、人員をふやすということは現実的には難しいわけでございますし、都道府県の関係者の数も、仮に都道府県に頼んでも限られております。そこで、現時点におきましては、行政負担の点から大変難点があると言わざるを得ません。さらに、業者の数を絞るような何か工夫ができないかということもいろいろ考えてみたのですが、そういう工夫をいたしますと、どうしても今度は脱法ができるようになってしまうということで、現時点におきましては、開業規制ではなくて、むしろいろいろなところに情報網を張りめぐらせまして、悪質な商売を行う者に関する情報を的確に早くキャッチいたしましてこれを重点的に追っかける、重点的に規制していくあるいは指導していくということで効果を上げるべきだと考えまして、いわゆる広義の開業規制を盛り込まなかった次第でございます。
  132. 甘利明

    ○甘利委員 ここで、社会党案に対して質問をさせていただきたいと思います。  訪販法の問題に関して、消費者保護という立場から本当に熱心に御研究をいただいている上坂先生には、本当に心から敬意を表する次第でございます。  社会党案と政府案を比べてみますと、大体大まかなところでは一致をしている。ある何点かの部分について、社会党案がそれに加えたような形になっているわけであります。その加えたような形になっているところを私も勉強させていただいておるわけでございますけれども、中には果たしてこれで実情に沿っているのだろうかというふうに、疑問に思う点が幾つかございます。  ただいま政府に、届け出制というのをなぜ採用しなかったかという質問をしました。その答弁の中にもいろいろございました。訪販の業者というのは、定期に行っているものだけでも何千社かある。パートタイマーが進出してきている部分が非常に多うございまして、そういうところまで入れると、届け出を義務づけられる業者というのは一体何千、何万あるいは何十万あるのだろうか。そういったものを届け出をして、きちっと悪徳業者の監督をするために行政の方で管理をしていかなければいけない。これは膨大な行政コストがかかるのじゃないだろうか。しかも、それで完全に悪徳業者が排除をされて、いいのだけきちっと見分けがつくということであればまだしも、届けてある、届け出業者であるということを逆に悪徳業者が利用をして、我が社ではお墨つきをもらっていますからということで、そういう悪徳業者がはびこる余地を与えてしまうというような心配もあるのではないかと考えるわけでございますけれども、この点についてはいかがお考えでありましょうか。
  133. 上坂昇

    上坂議員 甘利先生の質問お答えをさせていただきます。  私どもも、この訪問販売法というのは、いたずらにいろいろな業界を規制をする、そういうものにするつもりはございません。しかし、今まで豊田商法と言われるような、そうした悪質商法が後を絶たないで続出してきているという現状は、これは何から起こってくるかということになりますと、これが大体においていわゆる訪問の取引形態において起こってきているのが実情であります。したがって、これに対してある程度の規制を加えていかない限り、消費者の立場を守ることができない。  この訪問販売法の目的は、御承知のように第一条で、訪問販売、通販あるいは連鎖販売取引、これを公正にする、そして同時に、購入者等が受けることのある損害の防止を図っていわゆる消費者の利益を保護する、こういうことによって流通業界の正常な発展を図る、こういうことになっておるわけでありますから、業界の立場ばかりではなくて、やはり何といっても消費者を保護するという立場が堅持をされていかなければなりません。これをやはり非常に大きなファクターとして考えていくことが必要だろうと私は思います。  そういう意味で、今まで政府からもお答えがありましたけれども、聞いておりまして、入り口の開業規制という形でいわゆる登録制はとらない、届け出制もそれに似たような形であって営業の自由の制限につながるものである、こういうふうに言われております。また同時に、業種が多種多様であるために、これは販売形態が多様である。もう一つ重要なことは、届け出制をいたしましても、台帳やそういうものを整備をし、それを預かる官庁としては人員が足りないし非常に困る、こういうことをおっしゃっているわけでありますが、私は、こういうのはまさに仕事を放棄する立場ではないかというふうに考えざるを得ないのであります。一番最後の台帳整備の問題にいたしましても、特許庁などというのは、あれだけの人数で何十万件という届け出、これは登録からいわゆる特許の申請を処理をしているのであります。そのくらいのことができなくて、とても悪徳商法を駆逐するなどということはできないだろう、こういうふうに私は思わざるを得ません。  それからもう一つは、どうも政府といろいろ討論をしておりますと、訪問販売の形態というのが、どこをもってとらえているのかということが実に不明であります。というのは、パートタイマーがたくさんいるから届け出制ができないと言う。それではパートタイマーを雇用形態としてとらえるならば、それは業者が届ければ完全に雇用者をつかまえることができるであろう。したがって、雇用形態として一体とらえることができないのかどうかというところにむしろ問題があるのでありまして、そういうことを抜きにして、パートタイマーを一つのまあ企業者であるというか、あるいは訪問販売者であるとかというふうに考えること自体が、私は過ちであるというふうに思わざるを得ないのであります。もし企業形態であるならば、販売業者だと思っていて品物を渡している業者は、これは販売業者ではありません。卸売業者になるのであります。そういうところがこの訪問販売法では明確ではないし、政府のとらえ方は誤っているというふうに私は考えざるを得ないのであります。  したがいまして、私は、訪問販売というのは、先生が先ほどお話しになりましたが非常に伸びているところでありまして、私どもも決して、提案にも申し上げましたように、これを抑えつけるとかどうとかということではなくて、健全な育成をしなければならない。時代の要請によって訪問販売というものは生まれてきたものである。しかし、店舗販売との共存共栄を図っていかなければならない。そして、豊田商事等において失墜してまいりましたこの訪問販売業の信頼というものを回復をしていかなければならない。もう一つは、先ほど申し上げました消費者保護とそれから悪徳業者の排除を通じて、その実態把握をするということが目的でなければならないという形で、実態把握ということに届け出制は非常に大きな効果を持つものであるということでこれを提起したわけであります。
  134. 甘利明

    ○甘利委員 実はもっともっと社会党案には質問をしたいことがたくさんございまして、肝心なのが控えておったわけでありますけれども、大変に御丁寧な御答弁をいただきまして時間が終わってしまいました。またの機会に譲るといたしまして、私の質問を終わりたいと思います。  大臣には決意のほどをお伺いしたかったのでありますけれども、それもまた次の機会に譲らせていただきたいと思います。     〔尾身委員長代理退席、奥田(幹)委員長代理着席
  135. 奥田幹生

    奥田(幹)委員長代理 次に、小澤克介君。
  136. 小澤克介

    ○小澤(克)委員 訪問販売等に関する法律の一部を改正する法律案についてお尋ねをいたします。  まず最初に、訪問販売及び通信販売について規制する法律が、まあ現行法があるわけでございますが、この法律成立後、特に近年、訪販あるいは通販の実態について行政庁通産省としてはどのように把握しておられるでしょうか。例えば、売上高あるいは従業者数がどの程度であるのか。それから、特にいろいろなトラブルが伴う、被害がある、そのことからまた今回の規制を強化する案が出たわけでございますけれども、そのトラブル等の実態について一体ふえる傾向にあるのか減る傾向にあるのか、また類型的にはどんなものがあるのか、その辺についての実情把握といいますか、御認識をまず伺いたいと思います。
  137. 末木凰太郎

    ○末木政府委員 訪問販売及び通信販売の実態でございますが、まず売上高でございます。訪問販売は、現在の訪問販売法が制定されました昭和五十一年の売上高約六千八百億円でございましたが、五年後の五十六年には一兆三千八百億円、それからさらに五年たちました六十一年には二兆二千七百億円、こういう著しい伸びをしております。小売業全体に占めるウエートは二・一%程度でございます。しかし、最近は主婦の在宅率、家にいる時間が減っている等の影響によりまして、売上高はやや伸び悩みの傾向にございます。     〔奥田(幹)委員長代理退席、尾身委員長代理着席〕 それから、通信販売の売上高は、同じく五十一年が二千八百億円でございましたが、五十六年には五千五百億円、六十一年には九千七百億円、小売全体について約〇・九%のウエートでございます。通信販売の方は大幅な伸びを現在続けております。  それから従業者数でございますが、訪問販売に従事する者の数というのは非常に膨大で、正確にこれを把握するのは困難でございますけれども、おおむね百四十万人ほどと認識しておりまして、このうちで第一線でセールスをしているセールスマン、セールスウーマンも含めてでございますが、百三十五万人ぐらいでございます。このほかに、不定期的に訪問販売を行っているような者もあるかと思いますが、これはなかなか推計困難でございます。それから、日本訪問販売協会がセールスマンの教育登録制度というのを自主的な活動として行ってきておりますが、この訪問販売協会に登録されているセールスマンはこのうち九十一万人ほどでございます。次に、通信販売につきましては、業界全体の従事者数は二万三千人程度と思われます。  その次に、トラブルの実態でございますが、これはいろいろなデータがございまして、通産省本省あるいは通産局の消費者相談室というところで受け付けた件数をまず申し上げますと、五十三年度は訪問販売が約五百九十件でございまして、消費者の相談件数の約一割を占めておりましたが、六十一年度には千七百一件、三倍にふえまして、相談件数全体に占める割合も二割にアップしております。そのほか、各地に国民生活センターとかあるいは消費生活センターというのがございますが、こちらの方で受け付けたものは、最近の数字でございますが、昭和六十一年度三十二万七千二百件でございます。これは相談全体が三十二万でございまして、うち訪問販売が十一万、通産省の場合には全体の二割が訪問販売でございましたが、この場合は三四%でございます。  それから、相談の中身でございますけれども、最近少し変化してきておりまして、通産省の消費者相談室で受け付けたもののうちで、役務関係が二三%ということで最近伸びてきておりますし、それから道路上でつかまえて喫茶店等に呼び込んで契約をさせるようなものとか、電話で呼び出してどこかで契約するようなアポイントメントセールスとかキャッチセールスとか、こういったものもふえてきております。  通信販売の相談件数でございますけれども、五十三年度には通産省で受け付けたものは九十四件にすぎませんでしたが、六十一年度には二百二十五件とふえております。国民生活センター、消費生活センターの方を見ますと、六十一年度の受け付けは、通信販売は二万四百件、全相談件数の六%でございます。したがいまして、大きな方の数字を消費生活センターの方で見ますと、訪問販売が三四%、通信販売が六%、こういうような実態になっております。
  138. 小澤克介

    ○小澤(克)委員 今実態についての御認識あるいは把握の御説明があったわけでございますけれども、一口に言いますと、訪販あるいは通販も含めまして近年売上高等がどんどん大きくなっている。と同時に、トラブルの方も非常にふえている。今幾つかの数字が御紹介ありましたけれども、これはあくまで相談等があったケースでございまして、泣き寝入り等の暗数が恐らくこの十倍、二十倍とあるのではないかということまで考慮いたしますと、相当大きな被害があるのではないか。もちろん、世上いろいろマスコミ等をにぎわした事件が頻発していることも御承知のとおりだろうと思います。今の数字の中でも、消費者センター等に相談が寄せられた中で、実に三四%が訪販にかかわるものである。こういうことを見ますと、そもそも基本的な考え方として、通販も含めまして訪販にどう対処すべきなのかという、基本的なスタンスについて御開陳願いたいと思うわけです。  諸外国では、例えば北欧のデンマークそれからルクセンブルクなどでは、訪問販売という取引形態全体をほぼ全面的に禁止しているようでございます。それから、ルクセンブルクを除くところのいわゆるべネルックス、ベルギー、オランダですか、この辺もかなり強い規制をして、例外的にのみ認めるというようなケースもあるようでございます。類型的には、今御紹介したような北欧の諸国などのように、訪問販売はその不意打ち性あるいは非常に攻撃的であるというようなことから、原則的に禁圧するという非常に否定的な価値判断に基づく対処が一つの類型であろうと思いますし、それからいま一つの類型は、訪販あるいは通販といえどもいわゆる営業の自由を一応享受すべき範疇に属する取引形態であるから、一般的に禁圧するということにはならない、ただこれについては弊害があればこれを除去していく、どちらかというと禁圧もしないし推奨もしない、かつ中立的なといいますかそういう政策。それからもう一つは、これは実際にあるかどうか知りませんけれども考え方としては、この訪販あるいは通販の機能に着目してむしろこれを助成していこう。類型的にはそのぐらいが考えられるわけでございますけれども、一体基本的なスタンスはどういうことなのか、これを御開陳願いたい。
  139. 末木凰太郎

    ○末木政府委員 訪問販売も通信販売も、当然のことながらそれぞれ小売業の業態の一つのタイプでございます。小売業というのは、当然のことながら自由な営業でございます。したがいまして、小売業の一つのタイプとしての訪問販売、通信販売も自由な営業が原則でございます。しかし、一般に比べて訪問販売あるいは通信販売は消費者とのトラブルが多いではないかというところから、一体こういう業態をどう評価するんだというような問題が提起されまして、そこで先生お尋ねだろうと思うわけです。  私どもは、最近の小売業を見ておりますと、小売業と一言で言いましてもその態様が非常に多様化してきております。これは、その背景にあるのはいろいろな事情がありますけれども一つには、まず商品が大変多様化してきておりますから、多様化した商品の売り方というのも多様化してきているという面が一つございます。もう一つは、消費者の生活のタイプがいろいろ変わってきておりますので、それに応じてまたいろいろな売り方が出てきております。これは単に訪問販売、通信販売だけではなくて、例えば昔の戦前でいえば百貨店と専門店と近所の商店というぐらいの感じ、もちろん訪問販売も通信販売も若干ございましたが、それに対しまして戦後は、御承知のように大型のスーパーマーケットですとか、コンビニエンスストアですとか、最近は郊外の車で買い物に行くような大型専門店とかディスカウントハウスですとか、最近例えばNICSショップスですとか、いろいろなものが出てきております。  こういった業種、業態は、きちっとルールを守って営業する限りにおいては、消費者のニーズに応じて発展するなり、ニーズがなくなれば衰退するものだと私どもは思っております。そういう基本観点に立ちますと、訪問販売も通信販売も、そういった形での買い物ニーズに対応するという意味におきまして、消費者の利便の増進に役立っております。また、一つの競争機能でございますね。化粧品なんかの業界を想定していただくとわかりやすいと思うのですけれども、やはり企業間の競争を活発にする機能もございますし、さらには働く人に働く場所を提供するという面もございまして、この点は評価すべきものだと思います。  ただ私どもは、そうは言いましても、こういう特定の業界に特に振興策を講ずるとか、そういうことを申し上げているわけではございません。ちょっと例を引かせていただいて大変恐縮でございますけれども、ある学識経験者の方から、通産省は、円高海外に物が売れなくなった、売りにくくなった、その品物を国内にさばくために訪問販売に助成をしているのではないかという御質問をいただいたことがありまして、大変驚いたことがございます。そういうことまでして応援をしているのではなかろうかというような疑念をもしお持ちの方からすると、通産省の取り締まりなり規制はどうもなまぬるいのではないかと見られるのかなと思ってびっくりしたことがございますが、そういう意味の助成はいたしておりません。消費者保護のために、主な団体としまして日本訪問販売協会等に消費者保護の観点からの助成は若干いたしておりますけれども、あとはきちんとしたルールを整備し、その中で自由企業としてやっていただくということでございます。  いま一つ、新しい職場といいますか、事業の場を提供するという面につきましても、実は産業構造審議会の席上でそういうお話が出ました。ある委員さんが、このように土地が高くなってくると商売でひとつ小売業をやってみようという若い人でも店を持つことが大変難しい、しかし一生懸命努力をし知恵を出す若者が訪問販売あるいは通信販売の世界で一生懸命やっているというものを私どもは見ております、こういった人たちはやはりそれなりにやっているので評価してあげないといけないと思いますという発言をされましたときに、実は満場シーンとなりまして、確かにそうだという雰囲気でございました。そういう意味におきまして職場、ビジネスの場の提供という面もございます。そこで私どもは、不当あるいは過剰な規制にならないように、しかし消費者のために規制すべきは断固として規制をするということでございます。
  140. 小澤克介

    ○小澤(克)委員 基本的なスタンスについてはさように伺っておくわけでございますが、そこで今回、いろいろトラブルが続出しているということから改正案の提出ということになったと理解するわけでございます。  実は今回の政府案の中にも、現金取引への適用拡大、それから役務取引への適用拡大等があるわけでございますが、これらについては実はいろいろな方から従来から、こういう法改正をぜひ早くやってくれという要請が当然通産省にも寄せられていたはずでございます。例を挙げますと、昭和五十七年には東京都知事それから関東地方知事会から通産大臣等に要望書が送られているはずでございます。それから昭和五十八年には、総理の諮問機関である国民生活審議会で同様の指摘、すなわち現金取引それから役務取引にも適用を拡大すべきであるという指摘がなされております。さらに地方自治体から、これまでたびたび同様の要請が出ていると聞いているわけでございます。その意味で、今回の法改正案の提出はいかにも遅きに失したという感を免れないわけでございます。どうしてこのような時間がかかったのか、あるいは地方からの声にどのようにこれまで対処しておられたのか、それについてこの間の事情をお尋ねしたいと思います。  それから、最初にトラブルの類型、傾向についてもお尋ねしたと思いますけれども、それについては具体的なお答えがなかったように思いますので、その点についてもお答えを願いたいと思います。
  141. 末木凰太郎

    ○末木政府委員 現金取引あるいは役務に関する手当てがおくれたではないかという御指摘でございますが、現金取引につきましては、現行法では、品物の引き渡しが済み、支払いも済む、双務契約の両方の当事者の履行が全部済んでしまったものについてまで特別な定めをするかどうかというようなことにつきましては、法的安定性の尊重という方に重点を置いた結果でございますが、例えばクーリングオフができないとかいうことになっているわけでございます。それから役務につきましても、この法律が制定されました当時の主たるトラブルが商品の販売に伴うものであったことを踏まえて、その後今日まで役務が対象になっていないわけでございます。  これについて、現金取引も例えばクーリングオフを認めろとか、あるいは役務を対象にすべきではないかという御議論が当委員会でもございましたことはそのとおりでございますし、近くは六十一年の預託法の御審議を当委員会でいただいたときにも、そういう問題が提起されておりました。私どもは、その六十一年の預託法のときの議論を踏まえまして、一昨年の暮れから研究会で実は勉強を重ねてまいりました。できるだけ早く対策を確立しようと思ってやってきたのでございますけれども、これは業界の振興を図るいわゆる振興法と違いまして、民法、刑法の特則を定めるという性質の法律論がございますし、それからトラブルなり業界の実態も相当多様で複雑だったものでございますから、現状を正確に分析し、これに対する評価を加え、そうして法律論の検討を経て、ようやく今日こういうふうに御審議をいただくことになったわけでございます。それにつきましては、少し遅いではないかというおしかりを受けるかもしれませんが、おしかりは私どももしかと受けとめますが、精いっぱいやったつもりでございます。もちろん、これだけの時間がかかったのは当然であると言うつもりはございません。そんなことを申し上げるつもりはございませんし、今後ともこの種の問題につきましては機を失しないように対処しなければいけないという心構えで受けとめさせていただきますが、経緯はそういうことでございます。  それから、先ほど失礼申し上げましたけれども、トラブルの態様でございますけれども、どんなものがあるかということでございますが、先ほど申し上げましたように、最近品物についてのものからその売り方、どういう売り方をするかという方にトラブルの重点が移ってまいりまして、品物の欠陥によるトラブルということではなくて、例えば消防署の方から来ましたと言って消火器を売りつけるとか、NTTが民営化されたことに伴って黒い電話は使えなくなりますとか、そういう一種の詐術、詐欺すれすれのものを使うとか、もちろん詐欺であれば取り締まれるわけでございますけれども、そういう言葉巧みに売りつけるような態様がふえてくる。あるいはまた役務の関係では、新しいものとしましていろいろな資格取得でありますとか、これは通産省で扱うものかどうかちょっと判断に迷いますけれども結婚情報サービスとか、そういう世の中の新しい動きに応じたものがふえてきているという動きがございます。  ただ、訪問販売全体といたしますと、主要な品目というのは比較的限られておりまして、化粧品とか教材とかあるいは家庭用品、寝具、ミシン等々でございます。このうちで英語教材等は、最近は品物とサービスを結びつけたセールスということで相談件数がふえているものでございます。
  142. 小澤克介

    ○小澤(克)委員 そこで、法案の中身についておいおい伺っていきたいと思うわけでございますが、開業規制を採用しなかったことについて伺おうと思うのですが、ちょっと大臣の御都合等があるとお聞きしましたので、順序を変えまして、今回の法案では現行法と同様に指定商品制をそのまま維持をしておられます。役務等に対象は拡大しておりますけれども、通産大臣によって指定された商品、役務にのみ本法を適用するという制度はそのまま維持されているわけでございます。これは、実は私自身が提出者になっております社会党案も同様維持しておりますので、やや自問自答にもなりかねませんけれども、その点はさておきまして、政府提出者としてはどういう理由から指定商品制を維持したのか。既に先ほどの甘利委員からも御質問ありましたけれども、もう一度簡単に御紹介願いたいと思います。
  143. 末木凰太郎

    ○末木政府委員 指定商品制でいくか、それとも指定制を外して原則すべての商品を対象にしてしまって、しかしどうしても除かなければならないものを除く、いわば除外商品制にするかという点につきましては、先ほどの開業規制と並びまして、今回の準備の作業の中の主要論点の一つだったと思います。  しかしながら、結論としては、私どもは指定商品制を維持させていただいたわけでございますが、その理由といたしましては、法制定のときと基本的に変わりませんけれども、規制は一方において必要最小限であるべきだという基本的な考え方がございます。他方において、消費者保護のために必要なことは断固やるべきだという考えがございます。この二つの折衷といたしまして、トラブルが起きる、またはトラブルが起きる蓋然性が大きい、かつそれが特殊なものではなくて一般的な現象としてそういう見通しがあるものを指定していくという考えでございまして、これは法制定当時の考え方を今日も変えないでおくことが適切だということでございます。  ただ、五十一年、五十二年にわたりまして政令で四十三の品目群を現在指定をしております。そこで、現実問題としまして、問題が多発しているのにもかかわらず通産省が政令指定の追加をしないものがあるのかどうかということでございますが、実はそのようなものとしてほとんどないわけでございます。正確に申しますと、実は現在の法律では政令指定するための要件が限られておりまして「主として日常生活の用に供される物品のうち、定型的な条件で販売するのに適する物品」、この中で政令指定するということになっております。  問題は金でございまして、金は現行法では指定したくても指定できないわけでございます。「主として日常生活の用に供される」という要件に該当しないわけでございます。金についてはしかし、日常生活には使わないけれども、いわば財形的な観点で消費者が訪問販売で買うという実態が最近ございますので、今回の改正案ではこの政令指定の制度は維持いたしましたけれども、指定し得る範囲を拡大いたしまして「日常生活の用に供される」という条件を外しておりまして、日常生活にかかわる取引において販売されるものであれば、日常生活で使わなくても指定できるようになっておりますし、「定型的な条件で販売するのに適した物品」という条件も撤廃しておりますので、金は法案成立後に改めて検討して決めることでございますけれども指定し得るものになっておりますし、今そういうことになる可能性が大きいものでございます。  それ以外の一般の商品では、若干の事例があって指定されていないものとしてはごく特殊なものがございまして、墓石でございますとか二、三の例がございますが、私どもは大体必要なものは指定してきたつもりでございます。今後ともそういう方針で臨むつもりでございます。
  144. 小澤克介

    ○小澤(克)委員 この指定商品制については、一つは、この訪販というのは対象となる商品あるいは役務によって特徴づけられるのではなくて、訪販という取引形態によって特徴づけられるものであるから、したがって、これを法的に規制する場合に商品、役務の種類によって取り扱いを異にするのは合理性がないという理論的な批判と、それからもう一つは、実際には指定されていないものを扱おうというふうに常に業者は、特に悪質な業者は抜け道、抜け道を考え出していく、したがって、それを追加指定していってもある程度被害が出てからという、どうしても後追いになるという実際的な批判があるわけでございます。  それで、私ども社会党案を作成する際にも、この点については実はかなり検討したわけでございますが、一つには、今回届け出制を社会党案で採用したこととの絡みで、すべての商品、役務について、しかも訪販である限りすべて届け出をさせるということはやや無理かなという考え方から、涙をのんで社会党案としては見送りまして、指定商品制を維持したという経過が実はあったわけでございますけれども政府提出案は、届け出制等の開業規制を今回一切見送っているわけでございます。そういたしますと、なおかつ指定制を維持したというのはどうも私としては納得できないわけでございます。これについては引き続き検討するということのようでございますので、ぜひ期待をしているわけでございます。  そこで大臣、何かお時間がないということなんで、ちょっとここでお伺いしておきたいのですが、この指定商品制を維持する限り、非常に機動的な、適切な指定が行われることがこの法をして実効あらしめるための絶対的な条件ではないかと思うわけでございます。それから、私ども社会党の案も、実はそこに期待をして指定制は維持したわけでございますけれども、それからさらに今回の政府案でもいろいろな行政庁による指示、それから公表、業務停止命令等の行政処分が新たにつけ加わっているわけでございますので、これらについても適切、機動的な処分がなされることが肝要であろうかと思うわけでございます。この点につきましての、担当大臣としての決意のほどをお聞かせ願いたいと思うわけでございます。
  145. 田村元

    ○田村国務大臣 この法律案が成立しました暁には、まずその内容の消費者、関係業界、地方公共団体等への周知徹底を図らねばなりません。また、悪質業者の取り締まりに当たりましては、警察庁など関係省庁との緊密な連携のもとに、法の厳正な運用に努めることは当然であります。と同時に、また消費者自体の勇気というものが何よりも基本であるということも言えるかと思います。そういう点で、広報活動等もあらゆる機会にやっていくべきであろうというふうに思っております。  特に、主務大臣による訪問販売業者などに対する業務改善のための指示、業務の停止命令などの処分のほか、本法の規制対象となる商品、権利及び役務の政令指定に当たりましては、訪問販売等の取引の公正及び購入者などの利益の保護をさらに図るべく、適切かつ機動的に対処してまいる所存でございます。
  146. 小澤克介

    ○小澤(克)委員 そこで、今次政府案では開業規制について、これまたいろんな議論があったにもかかわらず取り入れなかったわけでございます。これについてはどういうことから取り入れなかったのか。少なくとも届け出制は採用すべきであったのではないかというふうに思うわけでございますが、この点についてはいかがでしょうか。
  147. 末木凰太郎

    ○末木政府委員 届け出制につきましては、広義の開業規制の形の一つとして私どももいろいろと検討いたしました。しかし、非常に数の多いこの業界の大多数がまじめに正当なビジネスをやっているときに、一部の悪質業者対策のために全部に届け出義務を課する、そういう手段が目的に対してバランスがとれているかどうか。これにつきましては、自由な事業活動、自由な営業に対する規制は必要最小限であるべきだというもう一つの価値判断もございまして、それとの関係でいろいろ勉強いたしましたけれども、現段階におきましては、届け出制を全部の業者に課すのはいかがかという結論に落ちついたわけでございます。これが基本的な問題点でございます。  その次に行政負担の問題がございまして、私どもも、仮に届け出制が導入されますと、届け出られた事項について最小限のチェックはしなければなりません。したがいまして、届け出られたとおりのところに届け出られたとおりの業者が存在するかどうかということは最小限チェックをしなければいけませんし、その変更等も適宜フォローしていかなければなりません。これは一方において、今どの程度の行政体制があるかという点との絡みでございまして、ちなみにこういったことをやるとすれば恐らく都道府県に協力をお願いすることになると思うのですが、仮に都道府県に事務委任をしてやったとした場合に、どのくらいの体制が今あるか。  一例を申しますと、例えば訪問販売、通信販売に携わっている職員は、北海道のケースでは課長を含めて七名でございます。あの広い北海道で七名でございます。それから、東北のある県は一名でございます。大体の都道府県が数名程度の単位でやっております。したがいまして、百万を超える、百数十万の届け出を受理いたしますと、なかなか事務的には大変でございます。私どもは大変だからやらないということでは必ずしもございません。大変でもやらなければならない場合にはやらなければならぬと思いますけれども、現在の限りある行政上のパワーをどこに重点的に使うかということを考えましたときに、悪質業者は百万ではなくて一部なんだということであれば、その悪質業者の情報をしっかり管理をして、これをよくウオッチをするということが効率的な行政のやり方ではないだろうかと思います。  その情報は、じゃどうやって手に入れるかということでございますけれども、現行法あるいは今度改正で強化をされます書面交付の規定がございまして、その交付される書面には業者の所在とか名称とか書かれるわけでございまして、これは届け出制を採用したときに届け出られる事項は、今の書面で実はカバーされるわけでございます。それで、トラブルがあれば、その書面に書かれた情報が消費者から苦情なり相談なりという形で行政庁に参りますので、そういった情報を中心に特に問題のあるもの、これは必ず違法かどうかは別としまして、話題になったもの、相談の対象になったもの、こういったものを重点的に情報管理をしていくということが効率的ではないかと思うわけでございます。  そのほか、今回の改正で報告徴収、立入検査の規定を設けさせていただくことになっておりますが、こういったものも当然悪質業者の情報源として活用できる手段でございますし、また予算措置といたしまして消費者モニターの活用がございます。こういういろいろなソースから重点的に使える情報を集め、これを有効に活用していくことによりまして、届け出制の御主張をなさるお立場でねらっておいでの効果をできるだけ上げるように努めてまいりたいと思う所存でございます。
  148. 小澤克介

    ○小澤(克)委員 先ほど私、ちょっと勘違いしまして、甘利委員からの御質問があったのはこの開業規制の点であったので、私の質問がこの点で今重複したかと思うのですけれども、その点ちょっと勘違いだったことを申し上げておきまして、今の御説明で納得しかねるところが多々あるわけでございます。  開業規制、文字どおり開業規制ですね。登録をもって開業の要件とする、登録しない者が開業すれば、そのこと自体をもって処罰をされるというようなやり方が果たしてどこまで実効的か、事務負担との兼ね合いにおいてどこまで実効的かということについては、いろいろ議論があろうかと思うわけでございますが、実質的に見れば、つまり事務負担が非常に多い中で開業規制をいたしましても、形式的な要件が整っていればすべてこの登録を認めざるを得ない、そういうふうに登録の要件が外形的になってしまって、悪質業者を効果的に排除できるかどうかについては疑問があるというのが、納得できる理由があるとすれば唯一の実質的な理由だろうと思うわけでございます。  したがって、むしろ開業規制そのものよりも、開業後の行政監督を効果的に行う方が効果的だということかなと思うわけでございますが、そうであるとすれば、行政庁として実態把握のまずイロハのイといたしまして、既に業として訪販を行う者については速やかにこれを届け出をさせるということが絶対に必要な条件ではなかろうかと思うわけでございます。このような実態把握があって初めて適切な指導監督等、あるいは業務停止まで含めた行政上の諸措置が可能になるわけでございます。今のお話では、書面交付をさせることになっているから、それを消費者から提供を受ければ実態把握には事欠かないのだという御説明がありましたけれども、業者が法を守ったことを前提とするわけでございまして、書面交付をしないような悪徳業者については全く無力になるわけでございます。ですから、ここのところはどうしても納得がいかないわけであります。  しかも、届け出制であれば営業の自由等との難しい問題も全く生じないわけでございますし、その意味で少なくとも届け出制は採用すべきではなかろうかと思うわけでございまして、実は私どもの社会党案にはこの届け出制をつけたわけでございます。実態把握のイロハのイであると同時に、これが純粋に行政目的に資するために届け出をさせるということが実態把握の主たる目的でございますが、副次的には、消費者の側で取引の相手がどうも特定できない、書面交付されなかったとか交付された書面を紛失してしまったとか、一たん交付しておいて引き上げてしまったとか、一体だれを相手に取引したのか取引主体がよくわからないというような場合には、行政庁に問い合わせればそこにあるファイルの中から相手を特定することができるという効果も期待できます。それから、悪徳業者が届け出をしないままに不当な訪販を展開している場合に、この届け出をしていないというそのことだけをもって、もちろん刑罰が伴うわけでございますから捜査の対象とすることができる、刑事的な処分が可能であるという副次的な効果もあるわけでございますので、これはぜひ採用すべきではないだろうか、こう思うわけでございますが、いかがでしょうか。     〔尾身委員長代理退席、委員長着席〕
  149. 末木凰太郎

    ○末木政府委員 いろいろな制度の中で届け出制は、確かに規制は最小限にするという観点と消費者保護に遺憾なきを期すという観点を、できるだけ両方生かすという立場から工夫をされた発想だと思います。また、取り締まりのイロハとして、どこにどういう業者がいるかということをまず把握するのが第一歩であろうという御指摘も、それはそうだと思います。したがいまして、私どもも、届け出制をおっしゃるお立場の方が、先生を含めまして届け出制によって何を目指しているかというその目標といいますか、その方向につきましては決して別の意見を持っているわけじゃございませんで、実態をできるだけ的確に把握をするということがまず必要だという点についてはそのとおりだと思うわけでございます。  しかし、今例をお挙げになりましたのであえて私の方の一つの見方を申し上げさせていただきますと、例えば書面交付でも、これをしなかったらどうするんだということでございますけれども、確かに書面交付をしないケースがあるだろうと思います。あるいは、きちんと正確に書かないケースもないとは申せません。しかし、そういうことを意図的に、書面交付の義務を免れようとしたりごまかそうとしたりする業者は、届け出のときも恐らくまじめな届け出をしないのではないかと思うわけでございます。すべてそういうものが有効に働かないと言ってしまうと、これは何をかいわんや、身もふたもない話になってしまうわけでございますから、もちろん制度をつくる以上は大方守られるという前提で議論しなければいけませんし、そういうふうに私ども考えておりますが、書面交付とのバランスでいいますとそういうことになるのではないか。書面交付ににせの住所を書く人は、届け出書面にもにせの住所を書くおそれがあると思わなければならない。  そこで、いずれにしましても、届け出られたものの真偽なり変更の有無なりのチェックがある程度必要になってくるということは、先ほど申し上げたわけでございます。同じことは書面についても言えます。そういう前提の上で、御指摘の方向はよくわかるのでございますけれども、あえて現在の限られたエネルギーを有効に使うという観点から先ほどのようなお答えを申し上げたわけで、届け出制を採用しなかったわけでございます。届け出制によって目指すべきところについては、届け出制がなくても精いっぱいの努力を私どもはするつもりでございます。
  150. 小澤克介

    ○小澤(克)委員 私は、何らかの開業規制といいますか、開業規制という言葉が適当かどうかはともかくといたしまして、入り口のところでのチェックは必要であろう、こう確信をしているわけでございます。それは、現在の被害の実態等からする実感でもあるわけでございます。  それで、それにもかかわらず、我が社会党案が登録制といいますか、登録をもって開業の要件とするという強い立場をとらなかった理由の一つに、登録をもって訪販の要件とするとした場合に、登録をしない悪質業者について、そういう業者が行った法律行為の私法上の効果をどう考えるのかというのが立法技術的にかなり難しいわけですね。登録していない者の取引行為については全部無効とするというのも、ちょっと公法と私法との混交の問題がございまして、やや難しいかな。かといって、一方で登録をもって訪販のおよその最初の要件としながら、登録しない者の法律行為についていろいろなクーリングオフとかなんとかの法を適用するというのも、ちょっと技術的に難しいかなというふうな観点から、これも涙をのんで届け出制にとどめたという経過があるわけでございます。  それからまた、行政上の事務負担についても、これは届け出でございますので、訪販業者が全部記載した書類を受け付けて、それを順にとじていけばいいわけですから、いわばロッカー一つ備えれば済むことではないか。そして日ごろは、その届け出の用紙がロッカーに眠っていても構わないと私は思うのですね。何かあったときにそれをあけて見れば、規制の基本的なデータがまずそこにある。少なくともこの程度は必要ではないかと思うわけでございますが、どうですか。事務負担の観点からは、これは自治体、都道府県等に機関委任することになろうかと思いますけれども、可能なんじゃないでしょうかね、いかがでしょうか。
  151. 末木凰太郎

    ○末木政府委員 二つのことをたしか御質問だったと思うのですが、登録制とかあるいは届け出制でも同じような問題があるかもしれませんが、違反をしたときに、その届け出をしてないあるいは登録をしてない業者が行った行為について、何らかの法律的な効果が生ずるようなことであるとこれは一つ意味があるといいますか、いい悪いとか賛否は別として意味があるわけですが、先生御指摘のように、必ずしもそういう法律効果は生まれないようでございます。例えば、食肉の売買契約をした者が食品衛生法による営業許可を受けていなかった場合に、その取引の私法上の効果に影響が及ぶかということについて、判例では取り締まり法規違反が即取引の効力には影響を及ぼさないという判例があったり、大体そういうことでございます。  そういたしますと、届け出制のねらいというのは、やはり先生おっしゃるように実態の把握ということだと思うわけです。私どもも、実態の把握が大事だということは御指摘のとおりでございますけれども、問題は、何か悪いことをしてやろう、ずるいことをしてやろうという業者を把握していなければ効果はないわけでございますし、恐らくまじめな人は、住所を変えるあるいは代表者がかわるという場合に変更届けをきちっと出すでしょうが、そうでない、初めから何かずるいことを考えている業者の場合には、事によると初めからにせものを出してくるかもしれませんし、あるいは初めは正しくても変わったときに出さないかもしれない。実は、よくトラブルがありまして相談窓口に見えたときに、これを呼び出そうとすると、どこかへ消えてしまっていないというケースが確かにあるわけでございまして、これは届け出さしても恐らく同じだろう。そうしますと、実は問題を起こさないまじめな業者の資料だけがきちっと整備をされてロッカーにおさまっているということになりかねないのではないだろうか。  そこで、重ねて繰り返しで恐縮でございますけれども、もうちょっと同じ目的を達するためにうまい方法はないだろうかというので、先ほど来、重点的に問題のあったもの、名前が挙がったもの、問い合わせがあったもの、こういったものをできるだけフォローしましておっしゃるような効果を上げたいというふうにお答えを申し上げておるわけでございます。
  152. 小澤克介

    ○小澤(克)委員 せっかくのお答えでございますが、私としては同意できない、全く腑に落ちないわけでございます。最初からうその届け出をする者あるいは届け出ない者については結局無力ではないかということでございますが、そういう悪質な業者は届け出をしていないというそのことだけをとらまえて刑事的な捜査の対象にし得る、これだけでも悪質な業者に対抗する非常に大きな武器を持つことになると思うわけでございます。この点については、これ以上議論しても仕方がないかなという感じがいたしております。ちなみに社会党案は、後で触れるかと思いますが、この届け出というのを純粋に行政目的による届け出ということに純化いたしまして、違法行為があった場合の消費者による解除権等にもこの届け出の有無ということはかからしめていないわけでございまして、非常にモデレートといいますかマイルドな立法だというふうに思っているわけでございまして、少なくともこの程度のものはぜひ政府案に入れていただきたかったと思うわけでございますが、これ以上この点について議論はしないことにいたしましょう。  そこで、今ちょっと触れましたが、訪販業者にこの訪販法に違反する行為があった場合に、ただ単に刑罰の対象とするあるいは行政処分の対象とするだけでなく、民事的な効果からも制約をする、すなわち消費者側からの契約解除権を認めるべきだという意見が、特にこういうトラブルについて第一線に立って頑張っておられる弁護士さんであるとかあるいは消費者センター等の方々の体験から強く寄せられておりまして、今回の政府案では、この消費者による解除権が検討の対象とされながらも結局採用されなかった、これはいかにも残念なわけでございます。なぜこれは採用しなかったのか、お答えを願いたいと思います。
  153. 末木凰太郎

    ○末木政府委員 消費者取り消し権と俗に関係者が呼んでおります制度も、御指摘のとおり大きな論点の一つだったと思います。訪問販売等問題研究会それから産業構造審議会、いずれの場におきましても大変熱心な御議論をいただきました。消費者保護の観点から、もちろんこういった制度についてはそれなりに大きな評価ができる面がございますけれども、しかし他面、やはり法律論的にいろいろ大きな問題がございます。  御承知のとおり、まず民法におきましては、詐欺または脅迫によって結ばれた契約につきましては九十六条で、そのだまされた人、おどされた人は取り消しができることになっております。現行法のもとにおきましても、詐欺、強迫によって訪問販売業者から物を売りつけられた場合には、この制度によって契約を取り消すことができるわけでございます。さらに訪問販売には、そのような契約に瑕疵がなくても、一切の事由を問わずにクーリングオフの制度が認められております。そういう意味で、通常の店舗における売買に比べて手厚く制度ができているわけでございます。さらにこれに加えて何をやるかということになりますと、いろいろな問題が出てまいります。すなわち取り締まり法規の違反、これはいろいろな取り締まり法規が日本にございますけれども、取り締まり法規違反が私法上の契約にどういう影響を及ぼすものとして制度をつくるかということについては、なかなか難しい議論がございます。  例えば、よく私どもが申しますケースで独禁法違反の契約がある。独禁法違反だったら私法上の契約は無効かといいますと、直ちに無効にはならない。その独禁法に違反することが民法九十条、公序良俗違反に該当すれば九十条違反として無効だ、そういうことになっているようでございますし、先ほど例に挙げました例えば食肉の取り扱いについて、食品衛生法の許可を受けていなくても売買は有効であるとか。これらは、消費者というよりも業者の問題ではないかとおっしゃるかもしれませんが、いずれにいたしましても取り締まり法規あるいは強行法規と私法上との関係については、先生御承知のとおり大変精緻で複雑な理論がございます。いろいろな取り締まり法規について私法上の効果を並べて議論した場合に、訪問販売については特別に取り消し権というような形で私法上の効果を生ませるべきではないかという議論には、なかなかそう簡単には政府部内のコンセンサスもできないというのが実態でございます。  そういうようなことで、今回非常に大事なテーマとして慎重に時間もかけて学識経験者の御議論もいただいたわけでございますが、この問題については消費者取り消し権というものが全く不適切だということではございませんけれども、なおまだ研究を要するということで、今回は見送らさせていただいたわけでございます。
  154. 小澤克介

    ○小澤(克)委員 この点は、消費者保護についての通産省の熱意を疑わざるを得ないわけです。どうして消費者による解除権を認めなかったのか。今のお話では、公法上の規制に違反した場合の私法上の効果についていろいろ議論があるということでございましたが、これについては理論的には契約締結上の債務不履行といいますか、信義則違反というような理論構成が、これは我が国でもそれからドイツなどでも既に学説等によって十分用意されておりまして、理論的には何らちゅうちょする理由はなかろうかと思うわけでございます。  それから今、詐欺、強迫があればというお話がありましたが、それは詐欺、強迫があればそれによる取り消しが可能なことは民法上明らかなわけでございますけれども、それでは足りないということから今回でも行為規制を強化したわけでしょう。そういたしますと、このような不当なあるいは行政取り締まり法上違法な形態によって契約を結んだ場合には、私法上もそれはまさに契約締結上の債務不履行なんだから、その契約関係から離脱できる地位を消費者に与えるべきだ。そのことが何よりも消費者保護になりますし、それからもう一つは、訪販業者による違法行為をさせないという何よりの強い担保になろうかと思うわけですね。  実態的には、なかなか機動的に刑罰権が行使されるということもそれほどは期待できませんし、仮に刑罰権が行使されても、罰金を払えばそれっきりだというような悪徳業者にとっては全く痛くもかゆくもない。行政庁による営業取り消し等があっても、また名前をかえて実質的な当事者が営業を継続するというような脱法行為は幾らでも可能なわけでございますので、これらを禁圧する最も効果的な担保は、民事上の効果も認めないといいますか、最初から認めない必要はないと思いますけれども、消費者側からの解除権を認める、これしかないというふうに思いますし、それから先ほどもお話ししましたように、実際に第一線に立って消費者の救済に当たっておられます弁護士あるいは消費者センター等の担当者が、異口同音に消費者からの解除権を認めてほしいと言っているわけでございますので、今の御説明は余りにも消極的で到底納得できるものではございません。これについてはお考え直しをいただくことはできませんかね、どうでしょう。
  155. 末木凰太郎

    ○末木政府委員 悪徳商法の撲滅ということは、私どもそれが目的でこういう改正案を準備させていただいたわけでございますから、有効な手段があればもちろん進んでこれを採用すべきだと思いますが、しかし一方におきまして、従来からの法体系との整合性の問題もございます。悪徳業者に対する制裁、それに伴う悪徳商法の抑圧につきましては、別の手段を今回いろいろ用意したわけでございます。こういうことはやってはいけないというような規定、従来なかった行為規制を入れましたとか、あるいは行政的な改善をさせるための指示の制度を入れたとか、あるいは業務停止命令、立入検査、報告徴収等々、直接的な規制の手段を幾つか盛り込んだわけでございます。まずはその悪徳商法の撲滅につきましては、このような直接的な規制の手段を今回お認めいただきますれば、最大限有効に使って抑圧していくべきだと思っております。  加えて、私法上の効果の否定という形を通じてもさらに悪徳商法の抑制を図れるだろうという御指摘は、それは業者にとって解約が痛いということももちろんあると思いますけれども、現在のところは、悪徳商法に対する制裁としては我が国の主たる法体系としては罰則で臨む、あるいは場合によっては公表という制度もここに入っておりますけれども、ということであって、私法上のルートを通じた一つの迂回作戦といいますか、そういったもので悪を抑圧するというのは、原則としてほかの法律でもまだないわけでございます。  したがいまして、この問題につきましては研究会、審議会でも、それはおかしいという議論ではなくて、いわば継続審議といいますか、通産省もう少し引き続き勉強しなさいという御意見をいただいているわけでございます。そういう意味で、なお私ども勉強したいと思っておりますが、例えば違法行為があった場合につきましても、すべての法律のあらゆる違反について私法上の効果を否定して取り消しできることにするのか、民法の原則からいえば詐欺、強迫でございますから、その次にくるものをどれとどれとを選んで考えるのかということを一つとりましても、なかなか線の引き方が難しゅうございます。この点は、なお引き続き勉強させていただきたいと思っているわけでございます。
  156. 小澤克介

    ○小澤(克)委員 到底納得できるものではございません。消費者保護について非常に消極的だという評価をせざるを得ないと同時に、今のお話を聞いていますと、引き続き勉強するとは言うのですが、石橋をたたきながら結局渡らないような感じでございまして、全く消極的な姿勢ではなかろうかと思うわけでございます。  独禁法違反の場合に直ちに私法上の効果云々というお話がありましたけれども、独禁法に違反の場合には、非常に優越的な地位に基づいて契約を結ぶわけですから、その契約内容自体が公序良俗違反という評価を受けて私法上の効果も否定されるということがあり得ると思うのですけれども、訪販法の場合は、取引における契約締結に至る過程で非常に違法、不当なことが行われていても、契約それ自体としては消火器の販売であったりして、特に高価であったりすればそれはおかしいわけですけれども、契約内容それ自体が公序良俗違反というのにはちょっと結びつかないような点もあろうかと思うわけでございまして、実際に救済に当たる弁護士の先生方としては大変苦慮しておられるところなのです。詐欺、強迫がはっきりあればいいのですけれども、そこに至らないような巧妙なやり方で売りつけている。そういたしますと、せっかく今回行為規制を拡大したわけでございますので、それから理論的にも契約締結上の債務不履行という理論構成は確立しているかと思うわけでございますので、問題はなかろうかと思うわけでございます。ぜひこれについては再考していただきたいということを言っておきたいし、それから我が社会党案では、目玉的に消費者による解除権を認めているわけでございますので、他の委員諸公、この社会党案にぜひ賛成していただきたいと思うわけでございますが、これは議論になりますのでこの程度にとどめまして、クーリングオフの問題について入りたいと思います。  今、消費者解除権を認めなくてもクーリングオフの制度等その他いろいろあるという御指摘ありましたけれども、クーリングオフがまた、実際に消費者救済に当たっている方々からのお話を伺ってみますと、機能していない場合が非常に多いわけでございます。一つには、期間が余りにも短過ぎる。これはかつての四日から七日に一たん延びたわけでございますけれども、この七日というのが余りにも短いわけですね。  それから、もう一つの重要な問題点は起算点なんです。起算点が書面交付時から七日というふうに起算されている。ところが、現実に実態からいたしますと、お年寄りが一人で留守番しているときに訪販業者が訪れて何か売りつけた、あるいは役務提供契約を結んだ。屋根を修繕するとかシロアリ駆除とか、いろいろあろうかと思いますけれども、上がり込んでやいやい言うもので、お年寄りがもう仕方ないからその勢いに押されて契約をしてしまった。何も言わないわけですよ。ある日こんにちはと言って屋根修繕に伺いましたとかシロアリ駆除に伺いましたとか、あるいは商品の布団とかなんとかを持ち込んだ。そのときになって周りの者が気づいて、これは大変だ、おじいちゃん何したの、おばあちゃん何したの、いや実は余りうるさく言うものだから判こ押しちゃったんだよ。それで、それじゃクーリングオフ、解除しようと思ったときにはもう七日過ぎている。業者の方は七日過ぎるまでじいつとしておって、過ぎてからやってくる、これが実態なんですね。そこでこの起算点を、期間の問題もありますけれども、起算点を物品の交付があったときあるいは役務提供についての開始があったときから起算するというのが、このクーリングオフを実効あらしめる要点ではないかと思うわけでございます。  社会党案も実はそのようにしているわけでございますけれども、この二点。七日というのがいかにも短過ぎやしないか、今回これを維持したのはなぜか。それから、起算点について書面交付時としていること、これも現行法を維持したわけでございますけれども、これは問題ないのか、どういう御認識なのか、御見解を賜りたいと思います。
  157. 末木凰太郎

    ○末木政府委員 クーリングオフ制度について、これがうまくワークしないではないかという声を整理いたしてみますと、実はクーリングオフの制度を消費者の方が知らなかった、そもそも制度を知らなかったというものがかなりのウエートを占めております。それから次に、クーリングオフの制度を適切に使わせることを業者の方が積極的に知らせないとか、あるいはもっとひどい場合には、うまいことを言ってそのクーリングオフができないように思い込ませるとか、そういうことである種の妨害があるようなケース、これがかなりのウエートを占めております。もちろんクーリングオフできる期間は、長ければ長いほど消費者にとっては制度が使いやすくなることは当然でございますけれども、幾日にするかという点については、一方において法的安定性ということも考えなければなりません。  クーリングオフは、一切の理由を問わずに解約できるわけでございます。そういう意味でかなり思い切った制度でございますから、法的安定性とのバランスも考えなければなりません。他方、うまく使われないケースを分類すると、今のように知らなかったとか使いにくくされていたということがございます。そこで、クーリングオフの制度の有効な活用について今大事なことは、消費者の方にこの制度をよく知っていただく、そしてよく活用していただく、これが今一番大事なことであろうと思います。これらは、私ども訪問販売の実態をいろいろ調べている過程でそういうことに気がついたわけでございます。なお、海外の立法例を見ましても、クーリングオフ期間は三日というものも幾つかございます。三日とか七日とかいうものが多いようでございます。そういったことを総合勘案しまして、今回七日間を現行維持としたわけでございます。これが第一点でございます。  それから第二点の起算点でございますけれども、これもクーリングオフの基本的な性格にかかわる問題かと思うのですけれども、訪問販売の場合には消費者の方が能動的に物を買うという立場で意思形成が行われるのではなくて、話を持ち込まれて受動的な形で意思形成が行われるというところに特質があるわけでございますので、結局その意思形成のところに問題点がある。そこで、その点に着眼いたしまして、購入者が意思形成を行ったところから物事を考えるのが論理の筋道ではないだろうか。そういうことでございますと、つまり契約をしたときからということになります。事実上契約をしたときというのを外形上はっきりわかりやすくすれば、これはクーリングオフができることを知った日、今回の改正案の中ではこれを交付書面の中に書かせるようにしておりますので今回はそうなりますが、結局現行法でいえば契約をしたときにクーリングオフができることを知らせなければならないというようになっておりますから、その意思形成の時点からカウントするというのが理論といいますか考え方の筋道であろう、こういうことで第二点についてはお答えさせていただく次第でございます。
  158. 小澤克介

    ○小澤(克)委員 まさに訪販の実態を知らない机上の空論だろうと思うわけですね。日数については、これは結局のところ訪販業者と消費者との利益衡量ですからどこかで決めざるを得ないわけでございますので、長いとか短いとかいろいろな評価があろうかと思いますけれども、この起算点については、余りにも実態からかけ離れた議論ではなかろうかと思うわけです。つまりクーリングオフというのは、うっかり不要なものを買わされた、訪販形態における攻撃性あるいは不意打ちに遭って不必要なものを買わされた、頭を冷やす期間を認めようということでございますけれども、したがってその起算点を理論的に、頭を冷やすのだから意思形成から開始すべきだとか、あるいはクーリングオフできるという書面交付があってクーリングオフの制度を知ってから開始すべきだとか、どうでなければならぬという理論的な必然性というのはないんであって、つまり不要なものを買わされたということを確定的に認識し、ぜひこの契約の拘束から免れたいということを現実に受けとめてから期間を開始するというのが実態に合ったものだろうと思うのです。契約からの解放、解除を願い得る状況というのは、非常に抽象的なレベルからだんだん具体的に、これはたまらぬということを確定的に意図するまでいろいろな段階があるわけでございまして、先ほど言いましたとおりの取り引きの実態からすると、本人は黙っている場合が多いのですね、若い方の場合あるいはお年寄りの場合。周りが気がついて、何でこんな要りもしない契約をしたんだというときには既に遅い。この実態からしますと、今の御説明は全く納得できないわけでございます。  特に指摘しておきたいのは、第六条で今回その対象に役務提供が入ったわけですけれども、第六条の三項の五号ですか、役務提供事業者が役務提供後といえどもクーリングオフがあれば既に役務を提供したことに対する対価等を請求することができない、不当利得があってもそれを返還請求できないという規定があるわけでございまして、これはこれで非常にドラスチックな、ここまでよく思い切った法案を出されたなというふうに思うわけでございますけれども、これは一見非常に消費者を保護しているようで実際の機能としては、こういう規定があると、役務提供型の訪販業者はこのクーリングオフの期間は役務提供に着手しないでじいっとしていて、その期間経過後に着手するという形がもう原則になってしまうと思うのですね。それはそうですよ、それはだれだって危険を負担したくないですから。そうしますと、これは一見消費者保護のように表面は見えても、実際にはクーリングオフをかいくぐることをむしろ誘発しかねない、そんな印象も受けるわけでございまして、この点については、起算点について、より実態に適した法改正が必要でないかと強く痛感するわけでございます。  それからもう一つ、このクーリングオフについてなのですけれども、クーリングオフについては七日間というふうになっているわけですけれども、七日目にクーリングオフをしようと思って電話等をかけたら営業所がその日は休日であった、それで連絡がつかないままにクーリングオフを徒過してしまうというようなことも大いにあるわけでございます。したがって、そのクーリングオフ期間の最終日が営業所が開いていないような場合には次の営業の最初の日まで延長すべきである、かように考えますし、社会党案もそのようになっているわけでございますが、この点についてはいかがでしょうか。
  159. 末木凰太郎

    ○末木政府委員 恐縮でございますけれども、先生最初におっしゃいました方をまずちょっと御説明させていただきたいのです。六条の五項でございます。これにつきましては、新しく役務を指定対象に加えまして、その役務についてクーリングオフが行われた場合には、もし役務提供が済んでいても対価の請求ができないという規定を設けたわけでございまして、これがかえってクーリングオフ制度を何かくぐり抜けるようなことになりはしないかという点については、私どもは全く逆に思っておりまして、先生最初によく思い切ってとおっしゃったので、初めてお褒めをいただいたのかと思ったわけでございますけれども、確かに思い切ったわけでございます。  これは、シロアリの駆除をやりませんかといって駆除しちゃった、しちゃったけれども何もその程度のことでやってもらうことはなかったのだというのでクーリングオフをした、クーリングオフはしたのだけれどもサービスはしちゃったのだから、したという効果は残ったからそれを不当利得という形で、代金相当額を不当利得でいただきますと言われたのではクーリングオフの意味がございませんので、この規定を思い切って入れたわけでございまして、何が起きるかというと、おっしゃるようにクーリングオフ期間が終了するまではシロアリ駆除をしないであろう、恐らくそういうことになると思います。もちろん消費者が急ぐ場合には、それは消費者が具体的に自分の方の発意で訪問販売にならないようにシロアリ業者に注文をなされば、それはもちろんすぐできるわけでございまして、そういう意味では、これはクーリングオフ制度を実効あらしめようと思ってできるだけのことは考えたつもりでございます。お尋ねのないのに申し上げさせていただいて、大変失礼しました。  もう一つの方の、七日目が休日に当たった場合でございます。あるいはこれは誤解をなさっていらっしゃるのではないかと思うのですけれども、クーリングオフは発信主義をとっておりまして、文書で発信をしたときに有効でございますので、具体的には発信というのは郵便の消印になります。ですから、七日目の日付の消印があれば有効でございます。問題は、それでは七日目が日曜日であった場合に消印が押されるかどうかということでございますけれども、これも郵政省に当たって調べてみたのですが、全国に郵便ポストが約十五万ございますけれども、もうほとんど一〇〇%に近く休日も集配がございます。休日集配がないものが約百だそうでございまして、これは非常に特殊なケースだと思いますので、原則として休日も集配がある。それに間に合うように投函していただけば、休日であってもクーリングオフは有効に成立いたしますので、最終日の問題は、これは最終便が何時であろうとも、郵便ポストに入れる限りはその最終便の集配に間に合わなければならないというのでは同じでございまして、もちろんあいている郵便局へいらっしゃればあいている限りの時間受け付けるわけでございますけれども、ポストに投函でも今のように大体できるということでございます。
  160. 小澤克介

    ○小澤(克)委員 クーリングオフは、今御説明があったとおり発信主義なんです。ですから、理屈としては今おっしゃったとおりになるのです。弁護士なんか相談を受けて、内容証明でクーリングオフの意思表示をするというような場合は、まさに今言ったようになされるわけです。ところが、実態はそうじゃないのですよ。まず大騒ぎになります。若い方やお年寄りが訪販にひっかかった場合に周りで大騒ぎになって、それでもうきょうがクーリングオフ最終日だ、何はともあれ一体どこの業者から何を買ってどうなっているのだ、契約内容はどうなっているのだと電話で問い合わせます。ところが、幾ら鳴らしてもだれも出ない、わからない、もたもたしている間にクーリングオフの期間が徒過してしまう。こういう実態から考えてみますと、まずその業者のところに電話をかけて相談してみようと思うのは、一般の消費者からすればある意味で当然のことでございますので、発信主義云々という理論的なところはともかくといたしまして、次の営業日に発信したものをもってクーリングオフ成立というふうにするのがむしろ実態に適していると思うわけでございますので、先ほどから言っているわけです。この点についても御一考を願いたいと思うわけでございます。  時間がもうほとんどなくなりましたので、残された問題を若干伺っていきます。  今回いわゆるマルチまがい商法ですか、これをも規制の対象としたわけでございます。これはこれで大変結構なことだろうと思うわけでございますが、今回の法改正の政府提案が成立した場合に、マルチまがいについて十分な禁圧ができるというふうにお考えなのかどうか、そこを開陳していただきたいと思います。
  161. 末木凰太郎

    ○末木政府委員 今回改正案で、いわゆるマルチまがいでございますけれども、マルチの定義に加えまして、いわゆる再販売を行う人の募集以外に、販売の委託販売あるいはあっせん等も全部対象に加えたわけでございます。対象を広げますと同時に、さらに取り締まり規定も強化をいたしております。あるいは業務改善等の指示の制度等、行政監督規定も強化いたしております。したがいまして、この法律によりましてマルチを抑圧してまいりましたのと同様に、マルチまがいについてもさらに従来の法律よりも強化された法律で網を広げるわけでございますから、一生懸命運用いたしまして、マルチと同様に実質的に抑えていけると思っております。
  162. 小澤克介

    ○小澤(克)委員 実は、最初にこの法律ができたとき、昭和五十一年の議事録を拝見させていただいたのですけれども、そのときにこのマルチ商法禁止の法律によってマルチを禁圧できるのかどうかという議論がありまして、実はこの法律ではマルチそれ自体を禁止はしていないわけですね、強い規制をしているわけですけれども。それで、そのとき答弁された方が、これは天谷さんとおっしゃるのでしょうか、制限する法律ではあるけれども実質的には禁止的な効果を持つ法律である、このように答弁されておられるわけでございます。そういたしますと、このマルチまがいについても本法は同様の効果を持つもの、すなわち実質禁止の効果を持つもの、またそのように運用をするというお考えなのかどうか、伺いたいと思います。  と申しますのは、時間が来ましたからこれでやめますけれども、現在マルチ商法を行っている会社エム・ビー・シーが依然として活動を続けているわけです。そういたしますと、実質禁止ということは必ずしも言えないのではないかという感じがするものですので、この点も含めまして答弁願いまして、時間が来ましたからこれで終わらせていただきます。
  163. 末木凰太郎

    ○末木政府委員 マルチにつきましては、直接的な禁止ではないけれども実質的に禁止に近い効果をもたらすでありましょうという御答弁を当時、天谷審議官が言いましたというお話でございますけれども、結果といたしましては、いわゆるマルチ企業はほとんど整理をされまして、おっしゃった一社存在しているわけでございます。この一社につきましても、もちろん私どもは、当省に苦情相談が寄せられておりますので特に関心を持って注目をしておりますが、マルチまがいにつきましても、このような運用実績にかんがみ、私どもの決意としては、この法律を有効に使いまして、同様に実質的に禁止の効果を生むようにやっていきたいと思っております。
  164. 小澤克介

    ○小澤(克)委員 終わります。
  165. 渡辺秀央

    渡辺委員長 残余の質疑は後日に譲ることといたします。  次回は、来る十五日金曜日午前九時五十分理事会、午前十時委員会を開会することとし、本日は、これにて散会いたします。     午後五時四十二分散会