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安楽政府委員 産業立地政策の
評価ということでございますけれ
ども、私
どもはその一番
中心的なものといたしまして、
工業再
配置法に基づいていろいろなことをやっておるわけでございますが、これを
中心にして申し上げますと、この
工業再
配置法に基づきましてやっておる
工業再
配置政策は、移転
促進地域と
法律でなっておりますが、いわゆる三
大都市圏の工場等の
集積の高い移転
促進地域から
地方の工場
集積の低い誘導
地域と呼ばれているところに移転させる、あるいはそういうところで工場を新増設させていくということが
目的で、税制、金融上の措置とか
地域公団による中核
工業団地づくりのための助成等々を積極的に進めてきたわけでございます。
その結果でございますけれ
ども、これはこれまで約十年間、
工業再
配置法ができて以来やってきているわけでございますが、その初めに
工業再
配置計画というものをつくったわけでございます。したがいまして、この
計画と実績がどう違うかということを申し上げると
一つの
評価になるかと思いますが、
計画の当初におきましては、五十年代の当初でございますけれ
ども、十年後の六十年の時点における目標といたしましては、今後
全国の工場の新増設の敷地面積ベースで七割は誘導
地域にしたいという
計画を立てたわけでございますが、六十年の実績といたしまして、先ほど
大臣からも触れられましたように、大体その七割が誘導
地域で行われたわけでございます。件数ベースで見ると八割ということでございまして、したがって、いずれにしてもこういう工場が誘導
地域に行ったという点では、
地方分散は目標にほぼ近い形で達成したということに実は今なっているわけでございます。
ところが、それでは実際に
工業の出荷額と申しますか
生産量と申しますかそういう点で見てまいりますと、実は五十年代当初、ある
程度まだ高度成長への期待というものがあった時点につくりまして、六%前後のGNPの年率の成長率を見込んだわけでございますけれ
ども、安定成長時代になりまして結果的には五十年代は四・三%のGNPの成長率であったということで、その結果といたしまして、当初見込んだ予想よりも新規工場
立地の全体の量というものは小さくなったわけでございます。そういうことで、その工場による出荷額の増分というものは予想よりは小さくなっているということでございます。
その結果といたしまして、誘導
地域の
工業の量と申しますか
工業の出荷額ベースでは、実は五十年代の初めは
全国の二四%が誘導
地域にあったわけでございますが、これを六十年には三〇%まで上げようとしたわけでございますけれ
ども、今申しましたような成長率が下がったとか、誘導
地域におきましては
工業構造と申しますか
産業構造が比較的成長の伸びの低い
工業が多かったということになりまして、二四%のシェアが三〇%にはならないで実は二七%になったということでございまして、誘導
地域のウエートは高まったわけでございますけれ
ども、目標に対しては半分くらいまでいったということでございます。したがって、私
ども、全体といたしましては、工場としてはかなり
地方に持っていくことにはなったけれ
ども工業生産量ではまだ極めて不十分ということで、今後ともこの
工業再
配置政策を一層強化し、進めていかなければならないというふうに
考えているわけでございます。
そうした中で、近年になりまして
東京圏への
産業の一極
集中あるいは経済の高度な機能の
集中というようなことが出てきているわけでございますが、この原因でございますけれ
ども、やはりいろいろな原因があろうかと思いますが、
一つにはやはり国際化、
情報化というものが進む中で、
東京圏に対して特に高度な機能、これは必ずしも経済だけではございませんけれ
ども、経済の面でも高度な機能が
集中してくる。そうした中で、一度おさまった人口の
大都市圏への
集中というのが、五十年代の半ばから再び
東京圏に対しては人口の比率が高まってくるという再
集中化の動きも出てきているわけでございます。
こうしたことのほかに、例えば
産業構造の面からは、
サービス産業とか
都市型
産業と言われるものが成長してきているということになりますと、これも
東京圏の
東京のようなところが有利であるとか、それからまた、これまでいろいろハイテク
産業とかというものを
政策で
地方分散に
努力してきておりますけれ
ども、やはり
業種によってはかなり
東京周辺に知識集約型の
工業、
産業というものも
相当今まで集まってきているということもございます。それからまた、本社機能だとかあるいは金融機能だとかあるいは外国のビジネス、オフィス、こういったものも
東京圏に
集中しているということが言われるわけでございます。そして他方、
東京圏と相対的な
関係になります
地方の方は、円高とか
産業構造の調整、海外投資等々によりまして、最近非常に停滞というか力を弱めた、不
活性化したということがございまして、その両方の力が働いてこの
東京集中ということが強まってきたのではないかと思っております。
こうした中で、特に
産業面に注目してみますと、先ほど申しましたように直接
生産部門、すなわち工場についてはかなりの
地方分散が進んだ。まだまだ不十分ではあるけれ
ども、ほかの分野に比べればかなりの
地方分散も進んできたというふうに見ておりますが、そういう
産業の中での
研究所とか
情報関係あるいは
産業支援サービス業等の
産業の
頭脳部分というものの
東京圏一極
集中はさらに非常に強まっている。そういうものも実は
東京圏への人口の
集中とか事務所の
集中というようなことともいろいろ
関係がございまして、いわばいろいろなものが、
集積が
集積を呼ぶということで現在の
状況になっているという面があろうかと思います。
私
ども、こうした中で今までの
工業再
配置をさらに強力に進めるためにも、あるいはこうした高度
部門の
東京集中に対してもっと
地方を強化するためにも、この
産業の
頭脳部分というものに光を当てまして、従来の
工業再
配置とあわせていわば二本立てで、あるいは強化する形でこの
地方への
頭脳集積を進めていくということで、この
頭脳立地法というものを提案させていただいている次第でございます。しかし、もちろんこの
集中現象ということは、多極分散型
国土の形成と四全総でもうたっております、これを目がけていろいろな
施策を政府としても総動員してやっていくということが必要な大きな問題でございますから、そういう観点で、政府全体として各般の
施策を今後強力に推進することになろうかと思いますが、特にこの
頭脳立地法は
産業面の
高度化という面にポイントを当てて、それに貢献したいということで
考えている次第でございます。