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1988-04-13 第112回国会 衆議院 社会労働委員会地方行政委員会連合審査会 第1号 公式Web版

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  1. 会議録情報

    昭和六十三年四月十三日(水曜日)     午前十時二分開議  出席委員   社会労働委員会    委員長 稲垣 実男君    理事 高橋 辰夫君 理事 戸井田三郎君    理事 丹羽 雄哉君 理事 野呂 昭彦君    理事 畑 英次郎君 理事 池端 清一君    理事 田中 慶秋君       相沢 英之君    粟屋 敏信君       伊吹 文明君    今井  勇君       大野  明君    大野 功統君       片岡 武司君    木村 義雄君       佐藤 静雄君    自見庄三郎君       高橋 一郎君    中山 成彬君       堀内 光雄君    三原 朝彦君       持永 和見君    川俣健二郎君       河野  正君    田邊  誠君       永井 孝信君    村山 富市君      新井 彬之君    平石磨作太郎君       吉井 光照君    塚田 延充君       児玉 健次君    田中美智子君   地方行政委員会    委員長 松本 十郎君    理事 岡島 正之君 理事 片岡 清一君    理事 片岡 武司君 理事 渡海紀三朗君    理事 西田  司君 理事 山下八洲夫君    理事 岡田 正勝君       石橋 一弥君    金子 一義君       北村 直人君    鈴木 恒夫君       高橋 一郎君    友納 武人君       中山 利生君    松田 岩夫君       渡辺 省一君    加藤 万吉君       佐藤 敬治君    中沢 健次君       細谷 治嘉君    安田 修三君       小谷 輝二君    柴田  弘君       岩佐 恵美君    寺前  巖君  出席国務大臣         厚 生 大 臣 藤本 孝雄君         自 治 大 臣 梶山 静六君  出席政府委員         厚生大臣官房総         務審議官    黒木 武弘君         厚生省健康政策         局長      仲村 英一君         厚生省保健医療         局老人保健部長 岸本 正裕君         厚生省社会局長 小林 功典君         厚生省保険局長 下村  健君         厚生省年金局長 水田  努君         社会保険庁医療         保険部長    土井  豊君         自治大臣官房総         務審議官    小林  実君         自治大臣官房審         議官      湯浅 利夫君         自治大臣官房審         議官      前川 尚美君         自治省財政局長 津田  正君  委員外出席者         大蔵省主税局税         制第二課長   薄井 信明君         文部省高等教育         局医学教育課長 佐藤 國雄君         地方行政委員会         調査室長    大嶋  孝君         社会労働委員会         調査室長    石川 正暉君     ───────────── 本日の会議に付した案件  国民健康保険法の一部を改正する法律案内閣提出第一九号)      ────◇─────
  2. 稲垣委員長(稲垣実男)

    稲垣委員長 これより社会労働委員会地方行政委員会連合審査会を開会いたします。  先例によりまして、私が委員長の職務を行います。  内閣提出国民健康保険法の一部を改正する法律案を議題といたします。  本案の趣旨の説明聴取につきましては、お手元に配付してあります資料により御了承願うこととし、直ちに質疑を行います。  質疑の申し出がありますので、順次これを許します。村山富市君。
  3. 村山(富)委員(村山富市)

    村山(富)委員 きょう各紙が一斉に取り上げて報道いたしておりますが、警察庁が六十二年の自殺の実態をまとめた資料を発表いたしております。それによりますと、自殺者は二万四千四百六十人、戦後四番目の多さだった、しかも六十歳以上と病気を苦にした自殺がふえたのが特徴、特に六十五歳以上では四人のうち三人が病気を苦で自殺されておる、高齢化社会で健康の維持に悩むお年寄りの姿を浮き彫りにしておる、こういう報道がなされておるわけです。  私は、こういう報道をまつまでもなく、これから高齢化社会を迎えて、医療問題というのはやはりいろいろな意味で大きな課題になるのではないか。そのために一元化問題等検討されておると思うのですが、特に最近の流れを見ていますと、先般も予算委員会分科会で申し上げましたけれども医療保険というのがだんだんだんだん空洞化されているのではないか、そういう傾向にあるのではないか。逆に言えば、保険外負担がふえて、保険診療だけでは被用者保険にしても国民健康保険にしてももう賄えない。したがって、民間保険会社医療保険をどんどんどんどん導入して、そして公的医療負担とそれから私的医療負担と両方合わせてやらなければ病気になったときに心配になる、こういう傾向が強まっておる。そのことは、やはり医療保険水準がだんだんだんだん下がっていくような傾向にあるのではないかというふうに思われるわけですよ。  先般の予算委員会分科会でも申し上げましたけれども、例えば差額ベッドも今までは二〇%ぐらいを限度にして指導いたしておりましたけれども、これからは三〇%に枠を広げて、そして金を出せばいい部屋に入れる、金を出さなければ狭い大部屋で我慢しなければならない、こういうことになりますし、それから給食なんかにつきましても、これはやはり給食というのは治療上必要で病院で給食するわけですね。ところが民間にどんどんどんどん委託されて、しかも患者が注文すれば自分の好みの食物が与えられる、金のない者は基準給食で我慢しなさい、こうなってまいりますと、これは民間が営業でするわけですから、だんだんだんだん基準給食の質が下がっていくのじゃないか。もう給食を受けるにしても、金がなければなかなか思うとおりいかない。こういう状況になっていく傾向を見ておりますと、さっき申し上げましたように、医療保険というものが空洞化されて、自由診療の枠がどんどんどんどん広がっていくのではないか、こういうことがやはり一番こういう原因をつくり出していくもとになるのではないかと考えるわけです。  そういう意味で、今回の改正案医療保険制度一元化に向けての環境整備のためにやるのだというふうにも説明されておりますが、この改正案一元化とどういう関連を持っておるのかということについて、同時に、この一元化道筋というものをどういうふうに考えておるのか、どういうふうに進めていくつもりなのか、まず冒頭にお尋ねしたいと思うのです。
  4. 藤本国務大臣(藤本孝雄)

    藤本国務大臣 いろいろな角度からの御意見を交えた御質問でございます。  まず第一に、この医療とか年金等社会保障制度というものは、国民生活基盤、安定するための基盤であるわけでございますので、この社会保障制度が今後高齢化社会に向けまして十分に機能するために、揺るぎない制度になるために、私どもといたしましては全力を挙げていかなければならないと考えておりますし、そのためには、一つにはこの制度が長期安定をしていく、二つには給付負担の公平を図っていくということが最も考えなければならない中心的な問題、課題だと思うわけでございます。  そこで、この医療保険制度につきましては、よく御承知のように、将来の給付負担の公平、つまり一元化に向けまして段階的にいろいろな制度改革を行ってきたわけでございまして、具体的には、御承知のように、老人保健法制度また健康保険の一部負担等改革を行ったわけでございますが、これは将来の各制度を通じて給付負担一元化を図っていく、こういうための段階的な改革であったわけでございます。今回の国保改革も、御承知のように、国保財政が非常に苦しくなってきておる、その大きな原因でございます構造上の問題、つまりは低所得者が多い、また医療費地域差が非常にある、こういう構造上の問題を解決していくということが今度の国保改革のポイントでございまして、こういう構造上の問題を改革することによりまして国保安定化を図る、それによって将来の医療保険制度一元化に向けて条件整備をしていく、こういう考え方であるわけでございまして、段階的な改革一つであると位置づけておる次第でございます。
  5. 村山(富)委員(村山富市)

    村山(富)委員 一元化がその負担給付公平化を図ることにあるというふうに説明されるわけですが、今度の改正案のどこを見ましても、私はそういうふうに受けとめられないわけです。  そこで、これから具体的にお尋ねしてまいりますから、それはそれとして、昨年の十二月七日に地方制度調査会国保財政健全化答申を行っておるわけです。その答申を見ますと、こういうふうに書いてあります。「医療保険制度一元化への道筋を明らかにするとともに、具体的かつ実効ある医療費適正化対策推進国民健康保険税(料)の負担水準賦課徴収方式の在り方の見直し等を行うことを基本とすべきである。このような基本的事項についての検討を尽くすことなく、単に国の負担変更することにより対処しようとすることは、保険制度根本をみだし、国民健康保険財政安定化に何ら資するものではない。」こういう答申を出しておるわけです。これは昨年十二月十五日の地方財政審議会も同じような意見を行っておるわけです。  この地方制度調査会答申あるいは地方財政審議会意見等々と照らして、今度の改正案を見ますと、まるで逆のことになっておるわけです。 この答申と今度の改正案とどういう関連づけをなされておるのか、なぜこの答申が、意見が守られなかったのかということについてお尋ねしたいと思います。
  6. 梶山国務大臣(梶山静六)

    梶山国務大臣 昭和六十三年度においては、国保問題懇談会の報告や三大臣合意等を経て、国保制度見直しが行われることになりましたが、これは職域保険と異なり地域保険である国保には、年金生活者等の低所得者無職者自由業老人等加入割合が高く、これらの方々に安定した医療を保障することは地域社会にとって大変重要なことでございます。特に医療費の増高等により国保財政危機的状況にあること等にかんがみ、都道府県市町村としても国保の安定のための条件整備協力をしなければならないという考え方からこういう措置をとったわけでございまして、これに伴う地方負担増についての地方財政措置を行い、地方財政運営に支障のないようにするとともに、医療保険制度一元化などへの抜本的対策や国、都道府県市町村役割分担等についてさらに十分な検討を行う必要があるため、二年間の暫定措置としていることから、地方制度調査会及び地方財政審議会の御意見は実質的には守られたというふうに御理解をしていただきたいと思います。  なお、医療保険制度一元化への道筋等については、引き続き検討してまいりたいと思います。
  7. 村山(富)委員(村山富市)

    村山(富)委員 実質的には守られたというお話でしたけれども、これはもうはっきり書いてありますね。一元化への道筋を明らかにする、具体的かつ実効ある医療費適正化対策推進国保税(料)の負担水準賦課徴収方式あり方見直しという基本的な問題をまず検討すべきだ、こういう検討をすることなくして、単に国の負担変更することにより対処することは保険制度根本を乱し、国保財政の安定に何ら資するものではない、明確に言っているわけです。今度の改正というのは、医療保険都道府県を導入して若干関与してもらうということにすぎないわけですから、全くこの答申とは反しているというふうに私は理解するわけです。もうそれはあと質佃があるからいいです。  そこで、今二年後に見直しをすると言いましたね。せっかく一元化環境整備のためにといって改正案を出すのに、二年どまりで、二年後にまた見直すということをなぜしなければならないのか。これは厚生自治、大蔵三大臣の覚書によってそうなっているわけですけれども、今度の改正について十分中身が煮詰められないままに拙速でやられたから、二年後に見直しということを言われるのではないかというふうにも思われますし、どういう点をなぜ見直しをする必要があるのかということについて御説明いただきたいと思うのです。
  8. 藤本国務大臣(藤本孝雄)

    藤本国務大臣 国保財政が最近急激に悪くなってきておる、そういうことから、私も郷里に帰りますと、市町村長から、一番頭の痛い問題は国保の問題、つまり財政が非常に悪化をしてきておる、毎年毎年保険料を値上げすることもなかなか難しい、早くこの改革に手をつけてもらいたい、これは大勢の町村長からお話がございます。恐らく村山先生も同じお考えだと思うわけであります。  そういう非常に緊迫しておるという状況のもとにありまして、私どもとしては、この国保改革を図っていくためには、やはり他の医療保険制度と異なりまして構造的な問題点が幾つかある。 お年寄りが多い、これは老健法で解決させていただいた。あとは低所得者の数が多い、それから地域差が非常にある。低所得者保険料軽減は、同じ保険者の中の加入者負担しているわけでございまして、他の政管健保とか健保組合の被保険者に比べると負担が大きい。ですから、全体として見れば、国保制度財政事情が悪くて、給付は他の医療保険制度に比べて低くて、しかも負担は大きい、こういう状況にあるわけでございますから、将来の一元化を考えた場合に、国保の状態をよくしていく、これは前提になる条件だと思うわけでございます。そこで、できるだけ早くこの内容を改善していかなければならぬということを考えますと、やはり何といっても、国と地方が共同して構造的な問題に取り組むということが必要になるわけでございまして、そういうことをやらせていただいたわけでございます。  そして、今後の問題としては、六十五年度までに老人保健法見直しがあるわけでございまして、これは国保制度に非常に深く影響があるわけでございますので、そういうことも考えますと、二年間の暫定措置として当面はスタートしたいという考え方であるわけでございますので、御理解をいただきたいと思います。
  9. 村山(富)委員(村山富市)

    村山(富)委員 時間がないものですから、質問だけに答えてもらいたいと思うのですよ。 なぜ二年後に見直しをする必要があるのか、何を見直すのかということを聞いているわけですから、それだけに答えていただけばいいわけですよ。その答えの方がなくて前段の解説がずっとあるものですから、それでは時間が足りなくなりますから、そういうふうにお願いしたいと思うのです。
  10. 津田政府委員(津田正)

    津田政府委員 国保問題はこの数年来いろいろな議論がされてまいったわけでございますが、先生承知のとおり、まず退職者医療見込み違いという問題がございました。これにつきまして昨年の補正予算で解決したというようなことで、そういうような問題をまず片づけた。それから御承知保険料水準というのがまちまちでございます。それで国保問題というものは、いわゆる低所得者層を抱えておるという特性もありますので、そういうような軽減保険料制度ということを設ける中で保険料統一化というものを図ってまいりたい、そして基本的には一元化の問題を抱えておるということでございます。
  11. 村山(富)委員(村山富市)

    村山(富)委員 余計な答弁をするけれども、私が質問したことに何にも答えてないではないか。二年後に何を見直すのか、なぜ見直しをする必要があるのかということについてはだれも答えていない。そして言い足らぬことがあったら今補足して説明しているわけですよ。私が意見書やら答申と違うじゃないかと言ったら、いや違いませんという弁解をしているわけです。余計な答弁はせぬでいい。  時間がもったいないから次に移るけれども、それではお尋ねするが、自治大臣は、これはいつだれがしたのかちょっと記憶がありませんけれども国保制度国民保険の一環として国の制度として設けられたものであり、地方負担の導入は行政責任地方に転嫁することにほかならない、こういう意見を述べて反対しているわけですね。この意見には今も変わりがないのですか。
  12. 梶山国務大臣(梶山静六)

    梶山国務大臣 基本的に国の責任であることはもう言うまでもございませんけれども、さわらなくて済むならばさわりたくないのです。ただ、地域保険でございますから、一番当面する市町村が火の車で困っている国保を見殺しにできない、そういうことがありますと、赤字国保に対して財政的な援助も与えなければならない、緊急退避をどうしてしなければならないかという、いわば火のついたような思いがございますから、自治体としてはこれに関与せざるを得ない。ですから、もろもろの問題点を後送りにしながらも、二年後という期限を切りまして暫定措置としたのはそういうことでございまして、これは基本的には国の責任であるし、さはいうものの、地方自治体が全く関与しないで済むかといいますと、特に都道府県中心として、いわば自治体のまとめをする都道府県がこの問題にさわらないで済むはずがない、そういうことを率直に思うわけでございますから、財政的には一義的に国の責任において補完をする、そういうことでこれから、責任は中央にありますけれども、付随的に補完的に地方自治体からこれに口出しをして、何とか国保財政がうまくいくように、そして一元化ができるように、給付水準が同様になるように自治体側からもこれにチェックをしていきたい、そういう心情でございます。
  13. 村山(富)委員(村山富市)

    村山(富)委員 若干今までの経緯を踏まえて私はお尋ねをしていきたいと思うのですが、昭和三十三年に国保法改正されまして、市町村の固有の事務から国の団体委任事務に変わってきているわけです。それで、これは国民保険の土台として、今お話がございましたように、国の責任において行うということが明確にされているわけですね。しかもその財源としては国庫負担保険料保険税で賄うという原則もはっきりしているわけです。特にこの国庫負担地方財政法第十条一項八の三に位置づけられて、かつ同法十一条の二により交付税の対象からそのために除外されているわけですね。国民健康保険財源負担というものが明確にされているわけです。  そういうことから考えてまいりますと、今回の地方負担を導入するということは、公費負担を導入するということは、こういう性格を変えていくことになるのじゃないかというふうに思うのですけれども、その点はどうですか。
  14. 下村政府委員(下村健)

    下村政府委員 国民健康保険事業財源としては、基本的には保険料国庫負担中心になるという点につきましては、ただいま自治大臣からもお答えがありましたとおりでございまして、私どももそのように考えております。  今回の国保改革案は、そうは申しながらも、低所得者の問題でありますとかあるいは医療費地域差の問題であるとかというふうに、社会保険の原理だけではなかなか対応できないという種類の国保構造的な問題について地方の御協力をいただきまして、国、都道府県市町村協力をして取り組む体制をつくる、それに見合った負担をお願いしようということでありまして、基本はただいま申したとおりでありますけれども、それを補完する形で地方公共団体に一定の役割負担をお願いするという考え方を取り入れたわけでございます。したがって、国保制度基本変更するというふうなものではない、こう考えております。
  15. 村山(富)委員(村山富市)

    村山(富)委員 いろいろ説明のっけようはあると思いますけれども、しかし、そういう前提原則からすれば、やはり若干変更になっておる。変更になった分だけやはり地方負担が転嫁されてきておるということは間違いないわけですからね。  これは、私はこれまで国庫負担がどういう推移で来ているかということを見てみますと、三十七年の四月に二〇%から二五%に引き上げられているわけですね。これはやはり国保財政の体質が非常に弱い、所得の低い人が多いというようなことから、もっと国庫負担をする必要があるというので引き上げておるわけです。そして三十八年に税制調査会が初めて国保財政問題を調査したのです。そしてその調査の結果、所得に比較して余りにも国保料国保税負担が過重だということから特別調整交付金制度というものが設けられたのですね、四十一年六月にさらに国庫負担が四五%に引き上げられているのですよ。ですから、法律建前国保制度あり方等から考えて、今の国保財政を救っていくためには、やはり国の負担というものが中心にならなければいかぬ、こういう考え方でずっと今まで来ているのですよ。  ところが最近の状況を見ますと、例えば昭和五十年には国保歳入に占める国庫負担割合というのは六〇・六%あったのです。それが六十一年には四四・五%に下がっているのですよ。だから、いろいろな要因はあるけれども国保財政が厳しくなった最大の原因は、やはり国庫負担が削減されてきておるというところにあるのではないかというふうに思われるのですが、その点はどうですか。
  16. 下村政府委員(下村健)

    下村政府委員 皆保険後二十年間ばかりの期間、相当の期間にわたりまして大体四分の三程度の国庫負担をやって給付改善をやってきた、これは御指摘のとおりでございます。 しかしながら、ここでいろいろ国保の問題、それから今後の医療保険制度負担の公平というふうなことを考えてまいりますと、国庫負担だけで調整をしていくという方式についてはいろいろやはり問題があるわけでございます。 したがって、国庫負担見直し等もやって、やはり社会保険としての基本性格というものを維持しながら今後の一元化に備えていこうというのが私ども考え方でございます。  これは、例えば一元化というふうな考え方の中で、按分率改正でありますとか退職者医療制度というふうな形で負担の公平というふうな措置をとってきたわけでございますけれども、当然それに際しましても、国庫負担と一体どちらでやるべきかというふうな議論被用者保険側からもあったところでございます。それらも考え合わせると、私どもとしては、国庫負担も当然必要ではありますが、やはり社会保険としての性格というものも当然維持していくべきであろう、このように考えているわけでございます。そういったことで今後の運営を考えていきたい。  それから、現在の財政状況の問題でございますが、国庫負担については確かにそのように見直しをやりましたけれども、全体としての国保財政状況の度合いと置かれた条件というものを考えながら国庫負担見直しはやっているわけでございまして、国庫負担だけが一方的に削られるという形で推移しているということではございませんので、私どもとしては、現在の国保財政の窮迫の基本的な原因は、何といっても高齢化による医療費の高騰というものが非常に大きく影響している、このように考えております。
  17. 村山(富)委員(村山富市)

    村山(富)委員 しかし現実に国庫負担が、今申し上げましたように、年次を追って下がってきていることは間違いないのですからね。 その分だけだれかが負担をしなければならないわけですよ。その負担はやはり今各保険制度で公平に負担してもらうというので、退職者医療制度をつくったりあるいは老健法改正して按分率を引き上げていったり何かしているわけですよ。そこからいろいろな意味で矛盾が起こっていると私は思うのです。本来保険制度というのは縦割りになっていますから、被用者保険地域保険である国民健康保険とそれぞれ保険者があって、そして被保険者があって、それに加入して保険金を納めていく、それで賄う、同時に国が負担をする、こういう建前になっているわけです。そこで被用者保険国民健康保険に、これは老人医療だからそれぞれやはり応分に負担してもらうということが必要であることはわかりますよ。わかりますけれども、やはり限度があるのですね。今健康保険組合だって皆赤字になると言っているじゃないですか。だからもう老人医療保険負担にたえかねてあっぷあっぷしているのですよ。  しかも、今度は都道府県税からさらに国民健康保険に税金を一部導入することになるわけですね、極端に言いますと。そうしますと、その税金は相対的にはやはりサラリーマンの割合というのは大変高いですね。サラリーマンは被用者保険に入って被用者保険の方から老人保健の負担をしてきている。今度は税金で国民健康保険負担をする。 こうなってまいりますと、本来の保険制度建前というのが崩れていくのじゃないか、こういう気もしますし、同時にサラリーマンには二重にも三重にも負担が転嫁されていくのじゃないか、こういうことも言えると思うのです。  これは自治大臣もあるところで言っていますけれども、衆議院の地方行政委員会で、国保の被保険者のみに税金を出すことは住民相互の負担の公平を欠く、こう指摘していますけれども、私はそのとおりだと思うのです。  これは東京都の国保委員会が都知事に答申している答申の中にも指摘されているわけですけれども、老人保健、退職者医療など一連の法改正は、健康保険など被用者保険から多額の財源を捻出させることを図ったものであることも考慮すれば、一般会計からの繰り入れは結果的にはこれら被保険者の二重の負担を強いることになる、こういうように指摘しています。そういうことでいろいろな矛盾が起こってくるのじゃないかと思うのですけれども、そういうことについてはどういうふうに考えていますか。
  18. 梶山国務大臣(梶山静六)

    梶山国務大臣 国全般の問題を答える立場にございませんけれども地方自治という観点からのみ申し上げましても、例えば今委員御指摘のとおり、保険料保険税とそれから国費の比率、国費といえども、これは何らかの税金の変形でございますから、その比率を高めることは、終局的にはサラリーマンの税金からという理論にむしろ到達をするわけでありますから、これがフィフティー・フィフティーがいいのか、あるいは幾らがいいかという技術的な論拠はあるとしても、所得の低い方が高い保険料を持たなければならない、あるいは給付水準が低いという、これは同じ人間でありながら大変矛盾をはらんでいると私は思います。そういう問題を恐らく厚生省は必死になって解決をしようとしてくださっていると思うのですが、私は、今市町村財政に大きな圧迫を与えているいわば表裏一体の地域保険である国保緊急退避的に破綻から守らなければならない、そういう観点から今回の措置をとったわけでございまして、結果として交付税の中にそういうものを見込んだことが、ある意味国民負担に返るのではないかという議論は私もよく理解をいたしますが、いずれにしても、それでは個人が負担をすればいいかという問題になりますと、これは別個な問題でございますので、その辺の整合性を何とかうまくとれる方式をこの二年の間にぜひ厚生省に考えてもらいたい、どうしてもできなければ自治省が一生懸命考えて知恵も出してあげようという道を今回つくったわけでございます。
  19. 村山(富)委員(村山富市)

    村山(富)委員 見るに見かねて自治省が一肌脱いだ。ただ、心配されるのは、最近の傾向を見ていますと、国保の加入世帯における所得なし世帯が一六%というふうにふえていますね。それから軽減世帯も二四%を超える状況にあるわけですよ。都市によっては加入者の五二%がこの軽減世帯になっているというようなところもあるわけですね。こういう状況から見ますと、軽減世帯がどんどんふえていけばそれだけまたその負担がふえていくことになりますね。私はどこかで歯どめをかけておく必要があるのではないかというふうに思うのですけれども、今申し上げましたように、例えば老人保健の按分率の問題とかあるいはサラリーマンが二重に負担することになるとかいう負担の公平の問題とか、それから今申し上げましたように、今度の改正軽減保険料に対する負担都道府県がするわけですけれども、こういう負担あり方とかいうようなことも六十五年以降見直しをする対象になっているのかということです。  それから、この地方財政負担は、地方交付税の特例債やあるいは調整債で賄うことになっていますけれども、こういうあり方は、仮に六十五年度以降も続くとした場合に、同じような扱いになるのかどうかというようなことについてもお聞きしておきたいと思うのです。
  20. 津田政府委員(津田正)

    津田政府委員 今先生が指摘したように、六十五年度以降の課題としましては、一元化というものに進むためには保険料格差というものをどうするか、それから医療費の地域的な差というものがどの程度是正されるかとか、そういうような問題を抱えておるわけでございます。さらに申しますと、基本的には国と地方との社会保障についての役割分担、こういう点まで考えなければならない、かように考えております。  その結果によりまして財政対策を講ずるわけでございますが、それにつきましては、今回のは暫定的な措置ということで財源措置も暫定的な形でございますが、六十五年以降抜本的な国保問題、あるいは国保だけではなくて医療保険全体の問題が片づきましたら、恒久的な国と地方との役割分担等を踏まえました財源措置が必要で、いずれにしましても、地方団体の財政運営に支障のないよう私ども十分の努力をしてまいりたい、かように考えております。
  21. 村山(富)委員(村山富市)

    村山(富)委員 私は具体的に聞いているわけですよね。今あなたの方からいろいろ説明がございましたように、老人保健を負担する按分率の問題も非常に過酷になっておる。 これは健保組合なんかは赤字組合がふえてもう極限に達しておる、こういう意見もありますね。だから、これは見直しをする必要があるのではないか。  それから、さっきちょっと指摘しましたように、都道府県負担をするということは二重にも三重にもサラリーマンの負担になるのではないか、負担の公平を欠くではないかという問題がありますね。それからいろいろな意味でどんどん軽減世帯がふえていく、それだけまた地方財政負担がふえていくことになるわけです、率でやっていますから。そうなりますと、やはりどこかで歯どめをかける必要があるのじゃないかというようなことも起こり得る。こういう問題について六十五年度の見直しは対象になっているのか対象になってないのか。もしずっと継続するとすれば、交付税で見るとかあるいは調整債で見るとかというようなことは、今後も変わりなくやっていくのかということを聞いているわけです。
  22. 津田政府委員(津田正)

    津田政府委員 今先生御指摘の問題は検討対象、このように考えております。 六十五年度以降の財源措置につきましても、そのような検討結果に伴いまして地方財政運営の支障のないようやりたい、かように考えております。
  23. 村山(富)委員(村山富市)

    村山(富)委員 私は今の国保税国保料の掛け方を見ますと、大変複雑になっておってわかりにくいと思うのですね。各市町村で違いますからね。例えば所得割、資産割、均等割、平等割という四つの組み合わせでやられておるわけでしょう。所得割についても本文方式、ただし書き方式、住民税方式、その他と四種類あるわけです。それから資産割も二種類あるわけですよ。加入者が非常に理解しがたいものになっておる。これは経済的にも社会的にもうんと世の中が変わってきているわけですから、若干そのあり方については矛盾も出てきているのではないかという気がしますし、この際、もう少しわかりやすい方式見直しをする時期にも来ているのではないかというふうに思うのですが、こういう国民保険税保険料の掛け方について、計算の仕方についてはどういうふうにお考えですか。
  24. 前川政府委員(前川尚美)

    ○前川政府委員 国保税等の課税方式見直しの問題でございますけれども、確かに今委員御指摘のように、課税方式そのものは第一方式から第三方式まで三つの方式、それぞれ応能割、応益割に応じて項目を選択することになっておりますし、また所得割につきましては、所得割そのものの計算方式についてただし書き、本文、それから住民税所得割、三つの方式がある。 それぞれを組み合わせて市町村が選択する、こういう格好になっておるわけでございまして、一見御指摘のように大変複雑なようにも思えるわけでございますが、しかし当該団体においてはいずれか一つ方式になっておるわけでございまして、したがって、国保加入者としては当該団体が選択をし条例で定めた方式に従って国保税負担していただくというわけでございます。  そもそもこういうふうに課税方式をある意味では細分化している趣旨は、これも委員承知のとおりと思いますけれども市町村によりまして産業構造が相当違いがある。農山漁村的なところ、中規模都市でもある程度商工業が発達しているところ、あるいはサラリーマン階層の人たち、いろいろな都市の構造の違いというものがございます。それに従ってまた所得階層の分布なりあるいは資産の保有の状況というものもおのずと違ってまいっておりますので、国保税(料)を御負担いただく場合に、どういう要素に着目していただくのが当該地域として最も適当であるか、そういう観点から市町村に選択をしていただく、そういうことになっているわけでございます。  実際の状況を見ておりますと、これだけ多数の選択肢を制度的には用意されておりますけれども、御案内のとおり課税方式については第一方式がもう圧倒的でございます。また所得割の計算の方法につきましては、ただし書き方式というのが圧倒的でございます。こういう状況ではございますが、しかし、なおその他の課税方式あるいは所得割の計算方式を選択している市町村もあるということは、他の市町村では圧倒的多数を占める第一方式なりあるいはただし書き方式なりということでは当該団体では無理があるという御判断があってのことであろうか。ですから、御指摘のとおり簡素化する見地からそれを見直すということ、私どもも社会経済の伸展の状況に合わせて常に考えていかなければならないことだと思っておりますけれども、反面、国保税(料)を課税しております市町村の側にそうした選択を適当と判断する状況があるということも頭に置いていかなければならないのじゃないか、そういうような考え方でございます。
  25. 村山(富)委員(村山富市)

    村山(富)委員 なお、さっき自治大臣 からも国民健康保険税保険料というものが大変重いものになっておるという意味の御指摘がありましたけれども、市民税との比較を見てみますと、全国平均で三十万から四十万の所得層では一世帯当たり市町村民税の七倍強ぐらいの保険税保険料になっているわけです。これは大変重いですよ。市町村民税には免税措置がありますけれども国保税国保料にはないわけです。したがって、所得の低い層にとっては非常に重いものになっておる。各市町村は、厚生省からしりもたたかれるのでしょうけれども、収納率を上げるために夜討ち朝駆けで大変苦労しているという実態もあることを私ども承知いたしております。 こういうことから考えてまいりますと、所得の非常に低い層に対する保険税負担については、住民税等々とも兼ね合わして何らかの検討を加えていく必要があるのではないか。さらに健保、共済等から考えてみましても、だんだん比重が重くなって、そして格差が次第に大きくなってきている。だから相対的に見ますと、国保税国保料というのは大変重いものになってきておる。 負担に耐え切れない状況になっておる。それだけに、収納をしていくためには苦労もある。それがまた一層国保財政を厳しいものにしておるということにもなるわけですから、こういう点については何らかの検討が必要ではないかと思うのですが、どうでしょうか。
  26. 下村政府委員(下村健)

    下村政府委員 皆保険発足当初から低所得者の問題というのは国保では非常に大きな問題になっておりまして、当時は谷間の一千万人というふうなことも言われたことがあったわけでございます。当時から比べますと、医療費の方が大体所得の倍ぐらいの水準に上がっておりますので、医療の方が実は所得の伸びよりも相当ハイレベルのものになってきておる。一方、国保加入者自体も構成が相当変わってまいりまして、農家なんかか相当ウエートが落ちてきたという状況もありまして、低所得者の問題が非常に深刻になっているというのは御指摘のとおりでございます。  ただ、その場合に、それでは低所得者の問題を従来どおり保険ということだけで割り切っていくのかどうか。これは皆保険のときに、今申しましたように、谷間の一千万人という形で問題になったところでありますけれども、私どもとしては、皆保険がこれだけ定着をしてきて保険制度のメリットも捨てがたい、このように思っておるわけでございます。したがって、保険制度は維持したい、しかし低所得者の問題を保険ということだけで割り切っていくといろいろな問題も生じてくるということで、福祉的な観点も配慮に入れて、今回は国保制度基盤をやや支えるという形で、地方の御協力もお願いをして低所得者問題の解決をするという考え方をとったわけでございます。 したがって、そこはおっしゃるように、保険制度としての国保のかなり基本的な性格にかかわってくるところでございますが、私どもとしては、保険制度を維持しながら低所得者については特別な配慮をするということが現状では最も適切ではないか、このように考えております。
  27. 村山(富)委員(村山富市)

    村山(富)委員 もう一つ問題を指摘しておきたいと思うのですけれども、さっき言ったように、賦課方式がいろいろ違うということの原因もあるし、各市町村構造上のいろいろな違いもあると思うのですけれども保険税保険料については各市町村でも大変大きな格差がありますね。調べてみますと、六十一年の資料によると、一世帯当たり最高は北海道の湧別町で二十二万八千八百八円、最低は和歌山県の北山村で二万八百九十七円、何と約十一倍の格差があるわけです。それで同じ医療サービスを受けるという仕組みになっているわけです。しかし、医療機関が多いとか少ないとかいろいろ違いはありますから、若干の給付条件の違いはあるにしても、建前は同じ給付を提供することになっておるわけです。そういうことからしますと、こんなに負担に格差があるというのはやはり問題ではないか。極端に言いますと、同じ県内の市町村でまた違うわけですからね。そういうことから考えてみますと、私は格差を解消するために何らかの方策を考える必要があるのではないかと思うし、できればこの際標準保険料というようなものを導入して、さっきお話がございましたように、都市の構造の違いもある、各市町村で工夫して妙味を発揮する意味で若干の選択を与えた方がいいというような意見もあるでしょうから、若干の調整をする措置は残すにしても、基本になる問題については何らかの標準保険料というものを示して、できれば全国的に余りばらつきがないように、格差がないように負担の公平を図っていくことも必要ではないかと思うのですが、そういう点についてはどうでしょうか。
  28. 下村政府委員(下村健)

    下村政府委員 標準保険料の問題はかねてから自治省の方からも非常に強く御要望を受けておりまして、何とかならないだろうか、こうこの二十年ばかりずっと言われ続けているわけでございます。ただ、その場合に、今お話が出ましたように、医療費との関係で一体保険料をどうすればいいのか。医療費の高低という問題がございまして、医療費の方がなかなか標準的な医療費というものがつくれないわけでございますので、そこのところでどうしても標準保険料というのが非常に難しい、私どもからいえばそのようなことになるわけでございます。現在は国の財政調整交付金で一応調整をやっておりまして、医療費所得と同一であれば保険料もほぼ同一という形にはなっておりますが、その形をとりましても御指摘のような差がいろいろ出てくるというふうな問題があるわけでございます。したがって、今回その点についてはまだ一挙に決着というわけにもまいりませんでしたけれども、さらにもう少し標準化という方向に向かって何とか改善の余地はないかということについては私ども努力をしてまいりたい、また自治省にも御協力を受けて、その問題は検討してまいる、このようになっております。
  29. 村山(富)委員(村山富市)

    村山(富)委員 これから地域医療の適正化プログラムを設定して、そういうことをやっていくのでしょう。そういうことをやっていくのなら、前段としてできるだけ負担の公平を図っていくという意味で、そういう格差を解消する手だてを講じていくということもやらなければならぬことだと思うのです。その方は後回しにして一方だけやるのは片手落ちじゃないかという気もしますし、特に私は健康保険改正を審議する際にこういう切実な訴えを受けたことを思い出すのです。負担給付を公平にするという建前に立ってやるならば、今申しましたように、負担は健保や共済に比べてどんどん高まっていますよ。しかも給付は三割負担でしょう。しかも傷病手当もないのですよ。そういう給付の格差を是正していくことが急務ではないか。  しかも、さっき冒頭に申しましたように、だんだん保険料負担がふえていって、三割負担だけでは現在は病院に入れませんよ。差額ベッドを取られる、付添看護料を取られる、それからいろいろな意味負担がかかる。そういう現状から考えた場合に、給付を改善させていく、そして少なくとも国保内部の負担公平化を図っていくということもやりながら、行き過ぎた面については是正する努力をしていく、そして医療の適正化を図っていくという努力をすべきであって、そういう被保険者の切実な要望は後回しにして、財源措置だけを講じていくような行き方は間違いではないか。これは全く保険制度の本旨に反することになると思うのですが、この点はそういうことだけを指摘しておきまして、何とか今指摘しましたような負担の格差あるいは地域的な格差等が是正されるように、今後もっと検討を加えていただく必要があるのではないかということを申し上げておきます。  次に、今度の改正の中身の中で、私はずっと読み上げて御質問しますからよくお聞きをいただきたいと思うのですが、保険基盤安定制度と療養給付費等負担金と財政調整交付金の関係についてお尋ねしたいと思うのです。  まず、保険基盤安定制度ですが、この安定制度国保保険者保険料負担の緩和を図ることにより市町村国保基盤安定に資することを趣旨にしております。このために仮称保険基盤安定負担金として五百億円を計上しているわけです。ところが現行とこの改正案では国庫負担がふえないということになっています。これは本法律案の要旨の中の「国庫負担に関する事項」で説明されているように、療養の給付等に要する費用に係る国庫負担の算定に当たっては、療養の給付等に要する費用の額から市町村負担金相当額を控除することとされております。このために、市町村に交付される療養給付費等負担金が減額されることになったことにより相殺されることになっておるわけです。なぜこの療養給付費等の交付金の対象額から控除されるのか、その点を第一に承りたい。  次に、仮にある保険者保険料軽減費用額が二億円、そして療養給付費等負担金の対象額が百億円としますと、現行の制度では財政調整交付金の軽減交付金が二億円の八〇%で一・六億円、そして療養給付費等負担金が百億円の四〇%ですから四十億円、普通調整交付金の不交付保険者だとすると、これだけで言えば四十一・六億円の国庫支出金があるわけです。ところがこの改正案でいきますと、軽減交付金にかわる財政基盤安定制度により二億円が入るが、療養給付費等負担金が百億円から二億円控除され九十八億円となります。この交付額が三十九・二億円となりますから、合計すると四十一・二億円となるわけでありまして、結局四千万円減額されることになるわけであります。この点について間違いないかどうか確認しておきたい。これはあらかじめ内容を説明してありますから、おわかりになっていると思うのです。  次に、財政調整交付金の交付団体では、軽減交付金の残りの二〇%分は調整対象収入額から控除されるので、軽減保険料についてはほぼ一〇〇%交付されていると考えられますが、これだけを見るならば、ここで四千万円の措置されているものが、これもなくなるとすれば約八千万円の減額となるわけです。そこで財政調整交付金の配分が問題になるわけですが、普通調整交付金の交付団体はともかくとして、不交付団体に対してどうしようとお考えになっておるのか。その点について御説明いただきたい。現在、この不交付団体の保険者においては、この点が最も深刻な悩みだと聞いているわけであります。単に財政基盤の弱い保険者への配分を重点的に考えるだけではなくて、このような保険者に対する安定財源が必要と考えますけれども、そういう点についてはどういうふうに対処するつもりですかということをお尋ねします。
  30. 下村政府委員(下村健)

    下村政府委員 保険基盤安定制度は、先ほども申しましたように、低所得者関連の部分を一応国保制度から外すといいますか、外したような形で特別な配慮をすることによって国保財政負担を軽くする。社会保険としての国保部分と低所得者対策という部分とやや分離して考える、こういうふうな考え方をとっておるわけでございます。したがって、ただいまお話がありましたような措置を講じている、こういうことでございます。計算としては、ただいまおっしゃったような計算もあるかと思います。ただ、私どもとしては、総体としての資金量としては国保財政に十分配慮して確保しているつもりでございますので、それは財政調整交付金の配分の点で十分配慮をしていく、このような考え方になろうかと思っておるわけでございます。  それから、最後の不交付団体なんかはどうなのか。これは個々の保険者状況を見まして、その保険制度の安定的な運営に支障がないような配慮を考えていく、このような考え方で対処をすることになろうかと思います。
  31. 村山(富)委員(村山富市)

    村山(富)委員 次に、昨年でしたか赤字保険者の問題について二十数保険者を対象にして実態調査されています。私の承知している範囲では、この二十数保険者団体の中には収納率も大体平均ぐらいにランクされておる、それから賦課限度額についても厚生省が示している額を大体賦課している、にもかかわらず赤字額がふえておる。こういう団体の赤字がふえる原因というのは一体どういう構造から生まれてくるのかというようなことについて、調査した結果について、若干問題点があれば御説明いただきたいと思うのです。
  32. 下村政府委員(下村健)

    下村政府委員 昨年十月に行ったヒアリングは、二年以上継続して赤字で、その赤字顔が多額の二十一保険者につきまして、国保財政健全化をより一層推進するという観点から実施をいたしたわけでございます。  この結果を踏まえて二十一保険者状況を見ますと、保険料の収納率が全国平均並み、保険料賦課が医療費水準及び伸び率に見合っている、それから賦課の限度額が三十七万円に達している、三つのすべてに該当する保険者はございません。ちなみに保険料収納率が全国平均並み以上はその二十一のうちの二保険者でございます。それから保険料の賦課が医療費水準及び伸び率に見合って行われているものは四、それから賦課限度額が三十七万円に達しているものは四ということで、それぞれに努力はしておられるのですが、そういった点でなお改善の余地があるかどうか、さらに具体的に検討してまいりたいということでございます。  赤字原因でございますが、二十一保険者の中で赤字の発生年度が五十九年度以降のものが八ございます。八保険者赤字原因は、退職者医療制度の創設に伴う影響額の未措置分が影響を与えていることは確かにあるのではないかと考えられるわけでございますが、基本的には医療費水準及び伸び率に見合った保険料の適正な賦課及び収納という点から考えると問題があるというふうに考えております。
  33. 村山(富)委員(村山富市)

    村山(富)委員 私が調べた範囲では、五十九年ぐらいから赤字が出てきた団体もあるわけです。これは明らかに退職者医療制度見込み違い、影響額ということも大きな原因になっておると思うのです。今回の予算措置で一千八億円の退職者医療制度の創設に伴う影響額についての補てんをすることになっています。この一千八億円でもって総体的に全部影響額の解消が六十一年まではなされるのかどうか、その点をちょっと聞いておきたいと思うのです。
  34. 下村政府委員(下村健)

    下村政府委員 退職者医療制度の創設に伴う財政影響額は、全国ベースでの推計で、個々の市町村ごとには、退職者数あるいは一人当たり医療費、一人当たり保険料の当初見込みがないために、市町村ごとの財政影響額の推計はなかなか難しゅうございます。したがって、完全補てんということになりますと、その判断の根拠はなかなか難しゅうございますが、マクロで推計いたしますと、今回の補正予算措置一千八億円によりまして財政影響額の全額が完全補てんを行われたというふうに考えて差し支えないと思っております。
  35. 村山(富)委員(村山富市)

    村山(富)委員 総体的に影響額は二千八十億円というふうに踏まえて前回措置をして、その残りの千八億円を全部補てんをすれば一応全部この影響額については補てんしたことになるというふうに計算されていると思うのですけれども、個々の団体については、やはりその影響額については、これだけでは完全に補てんされないものも残ってくるというふうに私は聞いていますから、そういうものについてはそれなりの手当てをする必要があるのではないかというふうに思いますから、問題が具体化してくれば十分検討してもらいたいというふうに思うのです。  それから、今回の措置では、さっき申しましたように、六十一年度分までの影響額については補てんをするわけです。この影響額というのは推定すれば六十四年ぐらいまでは残っていくのではないか、こういう気がするわけですが、六十二年から六十四年までに仮に影響額があるとすれば、それは一体今後どういうふうに措置をすることになるのか。
  36. 下村政府委員(下村健)

    下村政府委員 退職者医療制度創設に伴う財政影響は六十二年度以降も発生するのは御指摘のとおりでございます。ただ、六十二年以降の国保財政につきましては、先般の老人保健制度改正によりまして、老人医療費の負担の公平が図られた結果、国保財政総体としては退職者医療制度創設に伴う影響を吸収してなお若干の余力が出るという形になってまいります。さらに御審議をお願いしている国保制度改革によりまして、国と地方が共同して国保構造問題に取り組む仕組みができれば、さらに安定に資するというふうに考えられますので、その点については特別の措置を必要としないというふうに考えております。
  37. 村山(富)委員(村山富市)

    村山(富)委員 例えば老健法改正して按分率を上げたとか、それから退職者医療制度をつくったとか、今後の法改正でもって適正化を進めていくとかというようなことをすれば、仮にそういう意味赤字があっても、影響額があっても、それは全体として解消されていくのではないか、こういう意見でしょう。これはしかし私は筋違いだと思うのです。これは退職者医療制度をつくったことによって国保に対する負担も下げたわけでしょう。そして見込み違いでもって影響額が残っているわけですから、これは明らかにその筋からすれば、それで生まれた赤字をそんなもので埋め合わせをして、全体で解消するからいいではないかという考え方は全く筋違いではないかと思います。これはここで議論してもしようがありませんから、私はそういう意見だけは申し上げておきます。影響額が出たものについては、もっとその筋として考えるべきだと思いますから、その辺だけは指摘をいたしておきます。  もう時間がありませんから質問を移していきます。私はこれまでたびたび申し上げているわけですけれども医療保険制度の健全化を図っていく、医療の適正化を進めていく、負担給付の公平を図っていく、こういういろいろな視点があるわけです。そういう点を本当の意味で是正させていって、安心して医療が受けられるような体制をつくっていくためには、単に財源をどうするかという問題だけではなくて、医療の供給のあり方、診療報酬の支払いの方式等についても、この際大きく検討を加えていく必要があるのではないかと思うのです。  特に、これは課題にもなっているわけですけれども、一番今地域住民が切実に期待していることは、何も大病院やら大学病院、そういうところだけに行くのではなくて、もっと身近なところにいつでも相談ができる、いつでも診療してもらえる、しかも医師もその地域の生活環境やその人の生活の実態をよく知っているということが地域の医療をつくっていく上では大変重要な課題になるのではないかというので、家庭医の制度というものがいろいろ話題になっているわけです。予算を見ますと、厚生省の六十三年度予算で家庭医機能普及定着事業費として五千六百万円を計上しているわけです。今後こうした家庭医制度あり方について厚生省はどういうふうに進めていくつもりなのか、あるいは医師会等々の関係はどうなっているのかということについて御説明をいただきたいと思うのです。
  38. 仲村政府委員(仲村英一)

    ○仲村政府委員 御指摘の家庭医でございますが、私どもただいまおっしゃいましたように、プライマリーケアを担当する、地域に密着したそのような機能が今後ますます重要になるということで、懇談会を設けまして、昨年御報告をいただいたわけでございます。その御報告に基づきまして、私ども家庭医機能普及定着事業ということで、今年度六十三年度の予算に若干のモデル事業を実施するということで計画しておるわけでございます。地域の医療が、おっしゃいましたように、患者を全人的に見て、あるいは家族全体で見るということと、それから患者さんの流れを、そういう方たちが病院、診療所の機能連携その他いろいろの問題があるわけでございますので、さらには健康相談あるいは健康増進も含め、あるいはリハビリテーションまで包括的な医療を提供することが今後ますます重要でございますので、四カ所でございますけれども、モデル事業を行ってまいりたいということで考えております。  内容的には、もちろん地域のお医者さんの御協力が必要なわけでございますので、日本医師会とも十分相談しながら、今後どういうやり方をするか。日本医師会の御主張はかなりのお医者さんがそういう機能を担っておるという御主張もあるわけでございまして、私どもそういうことも実施をする傍ら、そういう機能が欠落している部分については、どのように地域でそれを盛り上げていったらいいかということを含めまして、モデル事業を実施するということで予算を組んでおるところでございます。
  39. 村山(富)委員(村山富市)

    村山(富)委員 特に高齢化が進んでいきますと、医療費の中で老人医療費が一番問題になっているわけですから、したがって老人医療とそういう家庭医との関係というものを考えた場合に、老人がいつでも相談に行けるような仕組みを考えていく必要がある。それは同時に今の診療報酬の体系からしますとなかなか難しい問題がありますから、そういう意味前提として、どうしたら一番いいのかという診療報酬の改定も考える必要があると思うのです。  私は予算委員会でもちょっと申し上げましたけれども、この際、老人保健については、急性疾患は別にして慢性疾患等については登録制みたいなものを考えて、今言う地域の家庭医があれば、その家庭医に登録する。どこに登録するかは被保険者の選択に任せる。そして本当にいい治療をしてくれるお医者さんには登録はふえていくということにもなりましょうし、全体としては医療の適正化に循環として影響していくことにもなると思いますから、そういう登録制度を考えて、人頭割で払うということも検討したらどうかということが一つです。  それから、健保連が先般、定額支払い方式というものを導入したらどうか、こういう提言もされていますね。今老人医療の支払い方式についてはいろいろ意見があって検討されていると思うのですけれども、こうした問題について厚生省は今後どういうふうに検討していくのか。私は、登録制の問題、定額支払い方式問題等は十分検討に値するものだというふうに思うのですけれども、どういうふうに受けとめていますか。
  40. 岸本政府委員(岸本正裕)

    ○岸本政府委員 老人医療の支払い方式につきましては、出来高払い方式が長期にわたって用いられておりまして、医療費の増大に歯どめがかけにくいなどの欠点が指摘されるわけでございますけれども、この方式には一方で、患者の病状に応じた診療行為を行いやすいこと、医学の進歩に対応した医療が取り入れやすいことなどの、医師と患者双方にとって大きな長所があるわけでございます。このため、当面は出来高払い方式の欠点を是正しつつ、良質な医療を効率的に確保できるように努めてまいりたいというふうに考えておりまして、今回の診療報酬の改定におきましても、このような趣旨に沿った措置を講じたところでございます。今後とも中医協の議論を踏まえつつ、診療報酬体系の合理化につきまして引き続き努力をしてまいりたいと思っております。  また、登録医制のお話がございましたが、健保連の御提唱になっておる登録医制というものにつきましては、詳細どういうふうに考えていらっしゃるのかはまだ私どももはっきりとわからない点もあるわけでございますが、今先生お話しになりましたような趣旨のものとして考えますと、家庭医制度との非常に密接な関係があるだろうというふうに考えるわけでございまして、家庭医につきまして、これから家庭医機能の普及定着のためのモデル事業というようなものが行われる段階でございまして、こういう事業の推移を踏まえつつ、今後の検討課題であるというふうに考えていきたいと思っています。
  41. 村山(富)委員(村山富市)

    村山(富)委員 そういう推移を踏まえつつ今後の検討課題にしているというのじゃなくて、そういうものも積極的に取り入れるような検討をしておるのか。単なる検討で終わるのか。こういう診療報酬の支払い方式といったようなものについても、今後やはり何らかの改善をする必要があるということを前提にして検討しておるのかどうか、そこらの点をもう少し聞かせてくれませんか。
  42. 岸本政府委員(岸本正裕)

    ○岸本政府委員 諸外国におきましていろいろな支払い制度があるわけでございます。こういう登録人頭払い制度というような方式がとられている例もありますけれども、それはそれぞれの国々の診療の習慣とか文化に根差すものでもございまして、そういうものの採用につきましてはいろいろと議論があろうかと思います。したがいまして、私どもといたしましては、何よりも患者に対する良質な医療を確保するという観点を第一にいたしまして、それぞれの支払い制度の長所、短所、こういうものを勘案しつつ考えていかなければいけないのだろうと思います。今御答弁申し上げましたのは、家庭医機能の普及定着のためのモデル事業、こういうものがスタートする段階でございますので、そういうものの推移も踏まえながら今後検討をしていきたい、検討課題として考えていきたい、こういうふうに考えておるところでございます。
  43. 村山(富)委員(村山富市)

    村山(富)委員 もう時間がありませんから、余り議論はできないのですけれども、やはり今の出来高払い方式というのはいろいろな意味で矛盾がありますし、問題がありますし、それがまた必要以上に医療費を増大させている原因にもなっておるという見方もあるわけですね。また、そういう問題点もあると思うのですよ。そういう意味も含めて、全体の医療費の適正化を図っていくためには、支払い方式というものも、今の出来高払い方式で全体を賄っていいのかどうかというようなことについても見直しをする必要があるだろうと思いますし、これはまた見直しをされていると思うのですよ。特に家庭医の創設などというものは、今の出来高払い方式一点張りの診療報酬の支払いではなかなかできにくい面があると思うのです。ですから、もっと極端に言えば、大学教育から医学教育から変えていく必要があろうし、そういうところを重点に置いた教育もやはり考えていく必要があろうし、それから診療報酬の支払い方式もそういうことが可能になるような方式をやはり検討していく必要がありましょう。そして地域住民にいい医療が提供されるような全体としてのシステムを考えていくということも大事なことでしょうし、そういう点をもっとマクロに検討していく必要があるのじゃないかというふうに私は思うのですよ。問題点が出たために対症療法的に手直しをしていくというふうな、泥縄式にやっていけばいいというような考え方ではなくて、やはりさっきの意見書やら答申にもありましたように、全体の現下の道筋を明確にした中で、この点はこういうふうに変えた方がいい、この点はこうすべきだというようなことを検討していかなければ全体の構想というものが出てきませんから、私はそういうところを特に注文しておきたいと思うのです。  それから、話が若干戻るのですけれども、今度の改正で若干地方負担が、公費負担が導入される。これまでも一般会計から国保特別会計に繰り出しをされていますよね。私が聞いたところによりますと、六十年度では例えば給付費、事務費それから保健施設のいろいろな費用その他二千二百五十三億円が一般会計から繰り出しされているわけですよ。これは総体的には繰り出しがどうもやむを得ない、必要だと思われるものもあると思いますけれども、特に事務費だけに限って申し上げますと、これは当然国が全額一〇〇%負担をしなければならぬものになっているわけですね。ところが、それが全額負担をされておりませんから、超過負担地方自治体が繰り出してやらなければいかぬという筋のものもあるわけですね。したがって、私はこの際、都道府県協力して国保に若干の責任を持ってもらおう、国、都道府県市町村が一体となってやっていこう、こういう気持ちにもなっているときですから、全体として繰り出し金がどういう実態になっているのか、もっと国が考えて負担すべきものもあったのではないかというようなことも、この際検討してみる必要があるのではないかという意味で、実態調査なんかもやるべきではないかというふうに思うのですが、どうでしょうか。
  44. 津田政府委員(津田正)

    津田政府委員 市町村繰り出し金等の中に事務費部分というのが確かにございます。そういう意味で、この事務費というものが現在国の予算単価で適正かどうか、私ども超過負担の問題があるのかどうか、本年度実態調査を大蔵省、厚生省と共同してやりたい、このように考えております。
  45. 村山(富)委員(村山富市)

    村山(富)委員 もう時間が参りましたから、これでやめたいと思うのですが、たださっき私が申しましたように、負担給付をできるだけ公平にしていく、そして適正な医療、いい医療給付されるようにやっていく、そのために医療改革も必要だし、一元化も必要なんですという意味ですね。そういうことから申し上げますと、さっきもちょっと申し上げましたけれども、今度の改正案がそういう道筋にどうつながっていくのかということから考えてみますと、幾多の疑問があるわけですよ。そういう疑問があって、これが本格的に一元化に向けての段取りではないかというふうに思うから、二年後には見直しをするということも必要にもなっていると私は思うのですね。  これは、ある意味から申し上げますと、六十三年度予算の編成をするに当たって当然増の自然増が七千億円あった、この七千億円を大蔵省から大分削られた、この削られた不足する財源をどこでどう切り詰めていくかというので、こういう苦肉の策もとられたのではないかというふうに思われる節もあるわけです。そういう財源措置だけの観点から見るのではなくて、もう少し国民の暮らしの実態やら医療の実態やら等々に視点を移して、本気になって本格的に高齢化に向けて医療制度をどうしていくかということを考えていくという姿勢が必要ではないか、そういう試みが必要ではないかというふうに私は思うのです。せっかく三省で覚書も交わされて、自治大臣もやる気になっているようですから、ひとつ力を合わせて、そういう方向で成果の上がるように今後の取り組みを強化していただくことを心からお願いいたしまして、質問を終わります。どうもありがとうございました。
  46. 稲垣委員長(稲垣実男)

  47. 佐藤(敬治)委員(佐藤敬治)

    佐藤敬治委員 これは四月三日の朝日新聞あるいはほかの新聞あるいはまた先般の三月三十一日の社会労働委員会質問にもありましたけれども、「一月二十八日、厚生省保険局長の名前で都道府県知事に対して通知なるものを出された。その中で「保険料(税)の引き下げ措置を取るようなことは厳に行わないこと。」」もしこんなことをやれば補助金をやらないぞ、こういうような通知を出したというのが出ておりますが、これは本当ですか。
  48. 下村政府委員(下村健)

    下村政府委員 毎年度国民健康保険の予算編成につきまして、私どもの方からは予算編成についてのいろいろな前提条件でありますとかいうふうなものも示しながら指導通知のようなものを出しているわけでございます。今回も昭和六十三年度の国民健康保険保険者の予算編成方針ということで、今お話がございましたようなものを保険局長通知という形で出しまして、その中で保険料の引き下げについて言及しているわけでございます。私どもとしては、国保制度の安定的な運営を確保していくというためには:::(佐藤敬治委員「いや、説明は要らないから、出したのか出さないのか、それだけでいいです」と呼ぶ)出しました。
  49. 佐藤(敬治)委員(佐藤敬治)

    佐藤敬治委員 それで、ここで何か新聞によると、十市町村前後が国保料金を引き下げたということをちょっと書いてありますが、こういう事実はありますか。
  50. 下村政府委員(下村健)

    下村政府委員 新聞報道で出ておりましたのは恐らく六十二年度の話ではないかと思いますが、六十二年度の保険料の賦課状況を見ますと、全市町村のうち十一市町村割合として〇・三%でございますが、十一市町村におきまして前年度に比べて保険料の引き下げを行っておるわけでございます。
  51. 佐藤(敬治)委員(佐藤敬治)

    佐藤敬治委員 その市町村はどこですか。
  52. 下村政府委員(下村健)

    下村政府委員 北海道の朝日町、宮城県の柴田町、福島県の本郷町、金山町、それから新潟県の小国町、山梨県の牧丘町、岐阜県の高富町、京都府の京北町、高知県の佐賀町、西土佐村、それから長崎県の有家町、以上十一町村でございます。
  53. 佐藤(敬治)委員(佐藤敬治)

    佐藤敬治委員 一体どのくらい下げたのですか。
  54. 下村政府委員(下村健)

    下村政府委員 引き下げ率でございますが、最高の朝日町の場合二八・一%、それから一番低いのが岐阜県の高富町一・六%ということでございます。
  55. 佐藤(敬治)委員(佐藤敬治)

    佐藤敬治委員 私はこれを見て非常に憤慨をしているのですけれども国民健康保険保険料を引き下げてはいけない、しかも引き下げるとペナルティーを課してやるぞというおどかしを厚生省がやる資格は私はないと思っているのですよ。あなた方はどれほど多くの災害を市町村国保にかけたか。さっきからいろいろ言っているのですが、私はこれを予算委員会のときも申し上げましたけれども、この通知を見てもう一遍言わざるを得ないので今言っているのです。一遍言ってあなた方も知っている、御存じのとおりですけれども、この通知を見て言わざるを得ないので、もう一遍言いますけれども、料金を下げる、そうすると罰則として補助金をぶった切るぞ、こういうようなことはあなた方には、私から言わせると、資格がないと思うのですよ。やらない前にあなた方の方がぶった切っているのですね。ぶった切っているのです。  この例は、さっきからも話がありましたけれども、例えば老人保健法です。老人保健法のとき市町村保険者は、いわば老人が非常に多いのでたくさん金がかかって困る、これを何とかすれば国保財政が楽になるからやってくれ、こうして一生懸命何十年来頼んだ。私も昭和二十六年からこれを手がけているのですが、何とかしてやってくれと言ってどのくらい頼んだか。何十年たってようやくこれが実行されたのですね。これは大変みんな喜んでおりました。ところが喜びもつかの間、あなた方は老人保健法をつくった、それによって国保財政が楽になった、楽になったからといってあなた方が今まで出している補助金をどんどんみんな引き揚げた。結局国保財政はもとのもくあみなんです。何にもよくならない。 よくならなければいけないはずの国保財政というのが何にもよくならない。なぜよくならないか。 よくなったプラスの分を全部引き揚げてしまったからなんです。今まで三〇%出していた公費負担を二〇%に切り下げて、県に五%、市に五%今度やろうとしている。それから今度は加入者按分率でどんどん金を出させておる。被用者保険から三千百七十四億円も出させて、それで国の方は二千六百八十一億円も引き揚げているのです。こういうふうにしてどんどん国保財政から補助金を引き揚げていったので、老人保健法ができてよかったどころじゃなくて、全くかえって悪くなったような感じを持たれている、これは大変私はひどいことだと思いますよ。大変ひどいことだと思う。  この前もちょっと例を挙げましたが、二百万借金している人に百万しか金がない、私が二百万借金して百万しか金がない。百万何とかならないかと思っていたら、藤本さんが来て百万貸してやろうと言ったんだ。いや、立派な人だなと喜んでいた。そうしたら何のことはない、こっちの金を貸すからおまえの持っている百万をよこせというのと同じなんですよ、これは。こんなばかばかしい話がありますか。笑っているのですけれども、本当にそのとおりのことをやっているのですよ。あめをなめさせてむちでぶん殴っているのだ。もとのもくあみなんです。  もっとひどいのは退職者医療制度ですよ。これは、これも皆さんに申し上げる必要もないかもしれませんけれども、大変な話だ。あなた方は、全国市長会でも全国町村会でも、絶対に迷惑かけませんと再三再四にわたって誓約をしているのです。ところがどうですか。四百六万人が頑張ったと言っても二百何万人ですか、これしかいない。六〇%ぐらいしかいないのです。今の次官の幸田前保険局長、もうちょっと時間をかしてもらえば全部集まるから、もう少し我慢してくれと言った。幾ら我慢したって出てこないのですね。出てこない。今はまだ四百六万人に達しないのですよ。三年たってまだ三百二十四万人しかいない。しかしそれにもかかわらず補助金を四五%から三八・五%にぶった切った。四百六万人に合わせてぶった切ったのです。ところが四百六万人いない。その六〇%しかいないのです。私は、これを戻しなさい、そうでなければそれがいつまでも負担になってきますよ、戻しなさいと言っても絶対戻さない。これは間違えたのは事実なんですね。事実でしょう、数を間違えたのは。どうですか。事実であるかないか、それだけをちょっと言ってください。
  56. 下村政府委員(下村健)

    下村政府委員 退職者医療加入者数につきまして、私どもが四百万人以上の加入者があるという見通しをいたしましたのに対しまして、初年度約二百六十万人ということで、見込み違いをいたしたということは事実で、大変遺憾に思っております。
  57. 佐藤(敬治)委員(佐藤敬治)

    佐藤敬治委員 そうですね。間違ったことは事実である。そして間違った事実に基づいて補助金をぶった切った。そうしたら補助金を正当なところに戻すのが当たり前でしょう。どうですか。
  58. 下村政府委員(下村健)

    下村政府委員 多少時期がずれたので申しわけなかったわけでございますけれども、今回一千八億円というふうな措置をいたしまして、補助率を従前の補助率並みとした場合の水準国庫負担の面では確保した、こういうことでございます。
  59. 佐藤(敬治)委員(佐藤敬治)

    佐藤敬治委員 多分そう言うだろうと思っていましたが、そんなことじゃないのですよ。一千八億は三年もたってから、多少と言ったけれども、三年もたってから補充したって、それはたった単年度限りなんです。補助金というのは毎年累積されていくのですよ。一千八億円、あなた、毎年出しますか。ことしで終わりでしょう。この補助金というのは毎年出ていくのですよ、これは直さない限り。そうでしょう。  だから私は、これが常に国保財政の圧迫の要因になるから、補助金をもとに戻しなさいと言ってきた。特にあのとき、厚生省からうそをつかれた、だまされた、こう言って日本じゅう大騒ぎになった。あなた方は陳弁これ努めて、うそじゃないと言ったけれども、ついに最後には認めました。間違いでもうそでもどっちでもいいのですが、大変な不信感を持っているのです。その不信感を直すためには補助金をもとに戻しなさいと幾ら言っても戻さない。  大臣にお伺いしますが、大臣、居眠りしていてはだめですよ。お伺いしますけれども、間違った事実に基づいて間違った補助率のカットをしたら、それを直すのが当たり前じゃないですか。どうですか。いやいや、あなた要らないよ。あなたには聞いたんだから、あなたのやつは聞いたからもういいよ。
  60. 下村政府委員(下村健)

    下村政府委員 じゃ、ちょっと。退職者医療の効果というものは年を追ってだんだん大きくなってくる、こういうことでございます。これは発足当初から考えられていたことで、ただ、私どもが初年度から従前の水準退職者医療の効果によって十分確保できるというふうに見ていたのが相当ずれ込んできたということでございます。したがって、退職者医療の効果は着実に効果をあらわしている、これは断言できるところでございまして、その後さらに老人保健制度改革もありましたので、総体として国保制度としてはプラスの効果が出ている、こういうことでございます。
  61. 佐藤(敬治)委員(佐藤敬治)

    佐藤敬治委員 あなたじゃだめなんだよ。どうですか。いいですか。もう一遍間きますが、間違った事実に基づいて間違ったことをしたら、それを直すのが当然じゃないかと私は聞いているのですよ。弁解を聞いているのじゃないのですよ。
  62. 藤本国務大臣(藤本孝雄)

    藤本国務大臣 そういうお考え方も確かにあると思いますが、私ども見込み違いによりまして御迷惑をおかけした分について全額まず埋め合わせをするという考え方で対処したわけでございます。
  63. 佐藤(敬治)委員(佐藤敬治)

    佐藤敬治委員 どうもよく私の質問に答えてないのです。さっきも言っているでしょう、下村さんに。一千八億は一時金なんですよ。単年度なんですよ。ところが補助金をカットしたというのは、これは毎年補助金がこれだけ少なくなるのであって、それが圧迫要因になると言っているのです。だから直さなければいかぬのだ。理由がなくて、ただ補助金を上げろと言っているのじゃないのですよ、私は。  あなた方は絶対に、ここに証拠はいっぱいありますが、絶対に市町村には迷惑をかけませんと、どのぐらい念を押して約束したかわからぬ。書き物まで出した。そうしておいてだましたんです。だから市町村は大変な大怒りだった。しかしあなた方とけんかするわけにはいかない、向こうは弱いですからね。泣き寝入りした。この不信感を取り返すために、間違った基礎に基づいて間違った補助率に訂正したのをもとに直しなさい、そうしてもう一遍出直せ、そうでなければ不信感はとれませんと私は言っているのですよ。一千八億は初めから足りない分なんですよ。この補助金の問題と別の問題なんだ。これは直さなければいけないのです。それを絶対に直さないという理由も私はわからないのですよ。あなたは人間として間違ったものに基づいて間違ったことをしたら直すのが当たり前じゃないですか。間違ったことを認めておりながら直さない。これは一国の大臣であり一国の保険局長の言うことじゃないと私は思うのですかね。どうですか。
  64. 下村政府委員(下村健)

    下村政府委員 国民健康保険国庫負担というのは、そのときどきの国保が置かれている財政状況に即して国保の特殊性を考慮しながら決められてきている、このように理解しているわけでございます。したがって、四五%が決められたときには、そのときは老人保健制度もなく、また退職者医療制度もなく、高齢者の負担が非常に国保に偏ってかけられているというふうな状況に着目して四五%というふうな補助率が決まった、その後退職者医療ができて、その状況を間違った、こういうことになるわけでございます。したがって、その他の条件が加わらない状況のもとで老人保健制度改革前のものについては、それは従前の補助率までは戻したということでございます。補助率そのものは動かしませんが、従前の補助率見合いのものを国庫負担で特別の措置をとって補てんをした、こういうことでございます。さらにその後、現在の状況から見ますと、老人保健制度改正がございましたので、それによって国保状況がまた違ってきたわけでございます。違ってきた状況のもとで現在の国庫負担水準を決めている、こういう考え方でございます。
  65. 佐藤(敬治)委員(佐藤敬治)

    佐藤敬治委員 そんなこと言うならなぜ一千八億円をカバーしたのですか。あなた、今さっきの答弁では、この補助金がこういうふうになったから、それをカバーするために一千八億円を出したと言ったじゃないですか。あなた、それで補助金を切ったのが間違っておったから一千八億円をことし埋めた、こう言った。しかし私の言っているのは、それは単年度にすぎない。補助金を切れば毎年それが累積されていくから補助金を戻しなさい。戻せば一千八億円なんかあなたの理論でいくと要らないですよ。だから間違っていることをちゃんと認めて、今度は間違っていません、補助率は別の問題でと言ったのですよ。一体こんなばかばかしい矛盾した話がありますか。
  66. 下村政府委員(下村健)

    下村政府委員 私が申し上げておりますのは、退職者医療制度創設によりまして国庫負担の引き下げを行った、それによって確かに市町村には従前の国庫負担水準は確保する、こういうふうにお約束を申し上げたわけですから、補助金は動かしませんでしたけれども、補助率を従来の水準で維持したと同等の措置を予算措置でやりました、したがって、その退職者医療ができて老人保健制度ができるまでの期間については、補助率は従前の補助率を維持したのと同様の予算措置になっております、こう申し上げたわけでございます。
  67. 佐藤(敬治)委員(佐藤敬治)

    佐藤敬治委員 これは水かけ論になるかもしれないけれども、とにかく補助金を戻すことについては、あなたがどう強弁しようが、これは何のあれもないのです。切ったものは戻しません、金がありません、この一言なんですよ。この前幸田さんがそうして説明しているのだ。後からこういうことだからこういうようになってといろいろな理屈をつけているけれども、要するに間違った、しかし補助金を切った、切ったのは金がないから戻しません、これだけの理由なんです。何にも理由がないと私は思う。  ところが問題はこれだけじゃないのですよ。この補助金を切っただけじゃないのです。退職者医療制度だけじゃなくて、どさくさに紛れて火事場泥棒みたいに老人保健に対する拠出金の国の補助金、これも同じ三八・五%に切り下げてしまった。これは何で切り下げたのかとあのときも市町村が大分騒いだのですね。何も関係がないじゃないか、関係ないのに退職者保険の補助金を切り下げたとき老人保健まで切り下げたかといって大騒ぎをした。しかしあなた方はもう委細構わずみんな切ってしまった。いわば火事場泥棒ですよ、私から言わせると。おかしいでしょう。そうしてどんどんみんな補助金を切っていくから結果的にどうなったかというと、退職者医療制度も長年要望してようやくできたと思って喜んだが、あなた方がみんな足元から補助金を切ってしまうので、これももとのもくあみなんです。何にもいいところがないのです。もっとひどいのは、今言ったように火事場泥棒で、老人保健の拠出金のあれまでも三八・五%にぶった切ってしまった。さっき私は、二百万借金があって百万あって、藤本さんが百万貸した、ありがたいと思ったら自分の金を取られたと言ったけれども、それではもとのもくあみだけれども、これはもとのもくあみよりもっと悪いのですよ。二百万借金した、百万しかない、藤本さんが百万貸してやろう、喜んで借りたら、これに利息をつけて百二十万取っていった、八十万しかもらえない。もっと悪くなったのです。そうでしょう。どう思いますか。答えてください。
  68. 下村政府委員(下村健)

    下村政府委員 最初に老人保健の国庫負担の問題でございますが、老人医療費の負担につきましては、大体三割が公費、七割が保険持ちというふうなのが基本的な考え方、こう言っていいかと思うわけでございます。したがって、老人医療費についての基本的な負担というのは、公費負担の部分が本来の老人医療に対する公費負担。それから保険制度につきましてもちろん別に補助をやっているわけでございますが、これは国民健康保険が低所得者が多いとかいろいろな事情を考慮いたしまして、別途これは老人医療費に対する部分も、それから本体の医療費に対する部分も含めて、拠出金も最終的には保険料負担をしていただくことになりますので、その保険料負担の均衡というふうなことを考えて国庫負担をやっているわけでございます。したがって、老人医療の部分も切り下げたわけでございますが、これは今お話がありましたように、全部一律に二分の一の線にそろえたということではありませんで、その時点での退職者医療の影響額というものを私どもできる限り精密にやったつもりでございますけれども、それに合わせて老人については実は、三八・五とおっしゃいましたが、それより高い水準国庫負担を現在も維持しているわけでございます。  それから、百万円というお話が出るわけでございますが、仮にそれと同じような言い方をさせていただきますと、百万円借金があるところに二百万円持ってきて百万円は返してもらったとか、例えばそんなふうなことになるのではないかと思います。
  69. 佐藤(敬治)委員(佐藤敬治)

    佐藤敬治委員 後で聞きますが、あなたはもうあちこちで、いや国が引き揚げたよりも出した方が多いんだと言って、この間の社労の委員会で何カ所もやっているのですね。ついでだから聞くけれども、その資料を出してください、何ぼ引き揚げて何ぼ出してどのぐらい地方がもうかっておるか。冗談じゃないですよ。幾ら私が計算したってそんなことは計算で出てこない。借金は別ですよ。  こうなんですよ。さっきも申し上げましたとおり、老人保健とそれから退職者医療制度というのは長年の国保の願望だったのです。だから何とかやってくれと言ってやった。やったけれども、あなたは取ったよりもやった方が多いんだと言うけれども、取った方よりやった方が多ければ、もっと国保財政がよくなっているはずなんです、その瞬間で。医療費が上がらなくてもその瞬間でよくなっているはずだ。全然よくならないでしょう。ますます苦しくなっている。特にどうですか。この前の退職者医療制度をつくって、そうして間違ったあれを補助金でぶった切った。それから埋め合わせもしない。三年もたってからようやくやった。その結果どうなったかというと、市町村というのは本当に四苦八苦、もう崩壊するんじゃないかといって大騒ぎした。ようやく五十九年度は基金を入れてしのいだ。六十年度から以降というのは一般会計からの繰り入れをどんどん、さっき村山さんもやっていたけれどもたくさん入れた。二千何百億続けざまに入れているのですね。そのほかに税金を二〇%も何ぼもどんどん上げているのです。それでようやくしのいできているのですよ。老人保健ができて退職者医療制度ができれば国保財政はうんとよくならなきゃいかぬ。何にもよくならなくてどんどん悪くなる一方なんだ。あなた方に言わせると医療費が膨張するからだと言うけれども、それだけじゃないのです。二つ原因があるのです。医療費の膨張とあなた方みたいにあめをなめさせてどんどん補助金をぶった切っていく、この二つによって幾ら立ち直ろうとしても立ち直れない。さっきから一元化の問題も出ているけれども一元化をするためには、そろえるためには給付とあれをそろえなければできないなんというけれども、そんなことは余裕がなければできないのですよ。余裕があって初めてそういう一元化でも何でもできるけれども、今みたいな余裕のない状態でそろえて一元化するなんということは、私はできないと思うのです。やるならば、やはり多少余裕を持たせなければいかぬ。余裕を持たせるためには、老人保健をやり退職者健保をやったら補助金をそのままにしておけば多少余裕を持って一元化でも何でもできるのですよ。あなた方は単にマイナスシーリソグに合わせて金を市町村から引き揚げる、それのためにやっているとしか思われない。だから不信感というのが非常に増大してくるのです。  自治大臣にお聞きしますが、こんなことをどんどんやられて何を唯々諾々としているのですか。私は非常におかしいと思う。あなたは今度の改革のときにも藤本さんとかなりやり合って、藤本さんは梶山大臣に貸しがある、何の貸しだといってやっていたんだけれども、手を振るけれども大変不愉快なんですよ。公的なことがあんな貸し借りで処理されるなんということはとんでもない話だと私は思っているのですよ。後からまた交付税の問題から何から聞きますけれども、どんどん国保財政の中に食い込んでいっているのです。一方的に食い込んでいっているとしか私は思われない。自治省は一体これをどう受けとめているのですか。大臣からひとつ御所見を。
  70. 梶山国務大臣(梶山静六)

    梶山国務大臣 過去の経緯についてはそれぞれ意見の分かれるところがあるかもしれませんけれども、今回の国保改正の問題については、やはり国保財政の危機的な状況、それから内容、そういうものに向けて市町村都道府県がこれにもっと関与をしなければ改善ができないであろう。地域医療という特殊性から見ましても避けて通れない問題でございますから、我々も知恵を出し合おう、そういうことで、一義的には国の責任でございますけれども、我々地域問題としてこれを取り上げざるを得ない環境に立ち至りましたので、幾つかの問題に対して提案を申し上げ、これから二年間を暫定期間としてこの問題にひとつメスを入れていこう、そういうことで今回の措置になったわけでございます。現実には財政上の支障がないように繰り入れをいたしておりますし、その点で財政がこの問題によって悪化をするというふうに考えておりません。しかも、むしろ今回の措置はだれがどう言おうと入り口である。これから二年間それぞれ誠意を尽くし、厚生省あるいは現地にある、現地にあるという言葉がいいかどうかわかりませんが、自治体側も知恵を出して、あるいは大蔵側の資金的なことも考慮に入れて、三者が相協議をすることによって国保の問題の解決に努めてまいる、その入り口であるというふうに位置づけを願いたいと思います。
  71. 佐藤(敬治)委員(佐藤敬治)

    佐藤敬治委員 もう大変、百八十度大転換で、絶対反対だ、絶対反対だといって随分新聞にも書かれたし、私ども委員会で聞いて、今聞きましたらあなたは絶対賛成なんですね。随分変わり身の早い状態ですね。  じゃ、もう一つお聞きしますが、私は昨年の十月地方行政委員会で北海道に視察に行ったのです。稚内に行きました。稚内の宗谷支庁に周辺の町村長が全部集まって会議をして、たまたまこの国保の問題が出たのです。そうしたら、私は念のために聞いたのです。あなた方は今度の改正に賛成ですか反対ですかと聞いたら、全部反対だと言うのです。しかし今度は県が入る、県が入れば県が多少は市町村の苦しいところをカバーしてくれる、こういうことを盛んに言われると、今度は賛成するんじゃないですか、本当に反対ですかと聞いたら、いや県が来れば我々のところにも必ず負担が来るから絶対反対ですといって、かたく反対ですと言っておった。ところがこの間五日のあれを見たら市長会の代表も参考人もみんな賛成なんですね。私はちょうど今それを思い出したのですが、どうもあれほど反対しておった自治大臣がいきなり聞くと今度は賛成だと言っておるので、ちょうどそれと同じように何か原因があってこれは賛成になったのですか。なぜ賛成になったのですか。
  72. 梶山国務大臣(梶山静六)

    梶山国務大臣 大変痛いというか意地の悪いというか、そういうふうに感ずるわけでございますが、国の負担すべき責任を一方的に地方に転嫁をすることは、私は絶対反対だということは、今でも変わりがございません。ただ、今の市町村の置かれている表裏一体の国保問題、この問題を避けて通っていいのかどうなのかという問題になりますと、それは国の責任だから厚生省が、大蔵省が全部やりなさいといって拱手傍観ができる立場にあるかというとそうはまいらない。泣く子と地頭には勝てぬという言葉が適切であるかどうかはわかりませんが、火のついた国保財政市町村がこれだけ一般会計を繰り出しをしている現実、こういうのを考えれば、厚生省に任しているだけで果たしてそれがうまくいくのかどうなのかという懸念もあるわけであります。大変厚生省には悪い表現を使いますけれども、やはり厚生省が国から眺めるだけで、いわば地域医療である国保というものの問題解決が果たして十全にできるのかどうなのか、この問題を考えれば、やはりこの問題に手をつけざるを得ない、手をつけるに当たっては、これから二年間という暫定期間を決めて暫定措置として行うし、財政負担は回避をする、この原則に従って今回の措置を取り決めたわけでございます。
  73. 佐藤(敬治)委員(佐藤敬治)

    佐藤敬治委員 財政負担は回避をするという、断言するほどできるかどうか、私は大変疑問だと思いますけれども、二年間暫定にしたというので、さっき村山さんの質問にもお答えしておりましたが、二年間暫定にした後何かめどがあるのですか。私がこれに非常に懸念を持つのは、国の補助金カットがありましたね、六十年でしたか、あれを訂正すると言いながら何も訂正しない。三年間暫定にした、暫定にしてからもまた暫定にしている。そして今度は来年から、六十四年度から直さなければいかぬ。また今度は、この間の新聞を見ますと、大蔵省があれをもっと削るとか、固定するとか、また暫定にするとかと書いてあるのです。全然信用ならないですよ。二年間暫定にしてどうするのか。具体的な一つの目途があって暫定にするというのならば、その方法なり目途なり、こういうふうにするんだ、それまでの経過措置だ、そういうことをはっきり聞いておかないと安心できません。二年たったらどうするつもりなんですか。
  74. 下村政府委員(下村健)

    下村政府委員 まだ私ども大蔵省から正式な意見を承っておりませんが、先日の報道に出ておりましたのは、補助率問題を検討いたしました補助金問題検討会というものを、これは各省関係ございますので、関係各省と内閣の方が入りまして関係閣僚会議をつくって、その下に補助金問題の検討会というものをつくったわけでございます。それを再開したいという意向を大蔵省が持っているこのように新聞報道がなされているわけでございます。ただ、具体的な内容として、私どもとしては、まだ各省間の協議も入っておりませんし、厚生省として六十四年度予算にどう対応するかという点についてはまだ……
  75. 佐藤(敬治)委員(佐藤敬治)

    佐藤敬治委員 それを聞いているのじゃないよ。二年間暫定にするとあなたは言っているでしょう。その後どうするのか、何をするつもりかということを聞いているのですよ。
  76. 稲垣委員長(稲垣実男)

    稲垣委員長 ちょっとお待ち下さい。—梶山国務大臣
  77. 梶山国務大臣(梶山静六)

    梶山国務大臣 前段の補助金カットの問題は、原則として六十三年度までやるから、これからはもとに復元さるべき問題だ。ですから六十四年度の予算編成に当たっては、その問題の討議がされるということが第一の条件です。  それから第二の、国保問題に関して二年間の暫定措置であると言ったことは、二年間において一元化やあるいは給付その他のもろもろの条件整備をやっていく。果たして二年でできるかできないかという問題については、まだ確定をして申し上げられる段階ではございませんが、この二年間精力的にこの問題の話し合いと具体的な方式厚生省と自治省が合い議をしながら取り決めてまいる。万一どうにも仕方がなければもとに戻ります。しかし、私はやはり二年間努力をして、なお将来に展望があるとするならば、その後の継続もあるかもしれませんが、それは今Uターンをすべきことではございません。この二年間精力的にこの問題の話し合いをして成果あらしめたいと思っております。
  78. 佐藤(敬治)委員(佐藤敬治)

    佐藤敬治委員 もとに戻すというのは大変いいことだからそうやってもらいたいのですが、そうすると、ちょっと念を押しますが、これは大蔵省が今やろうとしている補助金カットの問題とは別の問題ですね。  それから、最近の報道によりますと、国保の滞納者に対してペナルティーを科する、こういうことが盛んに報道されたりしておりますけれども、私はこれを見まして非常に危険性があると感じておるのです。最近の国保税というのは、単に悪質だから納めないという状況でないと私は思うのですね。どんどん税金が高くなっている、払い切れないところが出てくるのじゃないか。例えば国保税の課税限度額を見ても大変な値上がり方ですね。十九万から二十二万、二十四万、二十六万、二十七万、二十八万、三十五万、三十七万、三十九万、今度は四十万になるのです。こんな激しい値上がりというのはないのです。なかなかこれにくっついていけないのですよ。だから納められない人が出てくる。これがいわば悪質者だという形でもってどんどんやられる可能性がある。私は非常に危険を感じておるのです。  これは某新聞の投書ですが、こういうことが書いてあるのですね。「この十二月から保険料率改定ということで通知をもらいましたが、計算事例に引いてある夫婦と子供一人で、賦課標準所得を二百四十万円とすると、年間保険料が三十一万三千四百円となり、総所得二百六十六万円の一二%近くになります。」と書いてある。大変な税率なのですよ。  それから、これは三月三十一日の社労の児玉委員質問ですけれども、札幌市で収入金額三百万円というポイントをとりますと、所得金額は百九十三万五千円になる。国保国保料が幾ら課せられているかというと三十万二千円である。この所得と税金とを比べてみると、いかにこれが酷税であるか、高い税金であるのかということがよくわかるのです。  だから、今徴収率が非常に悪い。九三%以下になると補助金をやらないぞとおどかしているようでありますけれども、現実の問題として、幾らやってもいろいろな問題から取れないあれがいっぱい出てくる。そんなことしないと言っているけれども、悪質な滞納者だというので交付停止あるいは給付率の引き下げ、こういうことをどんどんやられたら、これはたまったものじゃないと思うのですが、一体どういうふうにして悪質者とそうでない人と具体的に見分けをつけるのですか。
  79. 下村政府委員(下村健)

    下村政府委員 悪質という場合には、単に保険料を払わないということだけではありませんで、保険料を納めるという計画を何回つくっていただいても、そのまま守っていただけないとか、あるいは保険料徴収のために何回も伺うわけでございますけれども、そのたびに故意に会わないとか、あるいは保険料関係に対応するために資産を分散するとかいろいろな事例があるわけでございます。単純に保険料があるときたまたま入ってこないというだけで悪質というふうな認定を行っているわけではありません。
  80. 佐藤(敬治)委員(佐藤敬治)

    佐藤敬治委員 念のために注意しておきますが、これはよっぽど気をつけないと大変危険だと思います。これは深く追及しませんけれども、現実に国保税は非常に高いものである、そういうことを念頭に置きまして、決して無理して悪質と決めつけていろいろなあれをやらないようにひとつ十分注意していただきたいと思います。  それから、さっき村山さんが質問しておりました一般会計からの繰り入れの問題であります。村山さんが質問されたのと別の角度で私はちょっと質問してみたいと思います。  厚生大臣、一般会計から繰り入れする一つの理由として、下村さんはこういうことを言っているのですね。これは三月三十一日の社労の議事録です。   国保事業の財源として、基本的には保険料国庫負担金が中心になる、これは現行制度としてはそうでありまして、一般原則としてはそのとおりではないかと思います。   ただ、国保運営法律上はそういうことでございますが、法律の上でも都道府県及び市町村国保事業に対して助成できるというふうな規定も設けておりまして、これは実は国保事業の運営主体としての市町村に、例えば給付率を初めといたしましていろいろ自主的な判断の余地を残し、それに対応して一般会計からの繰り入れもやることは法律上は問題がないというふうな考え方をとっている。したがって、今日の財政制度で申しますと、自治体が一般会計からの繰り入れを国保にやった場合には、したがって、それは市町村の単独と申しますか独自の判断に基づいて行われるものということで、財政上のそれに対する、例えば交付税等の措置はとられてない、こんな格好になっているわけでございます。そういうことで、原則として国保制度というのはそういうものだというのは、自治大臣がおっしゃっているとおりではないかと思います。   それから、やむなく一般会計からの繰り入れが行われる。これもほぼ全体的な状況といたしましては、そういうものが比較的多いのではないか、こんなふうに考えているわけでございます。ただ、一般会計からの繰り入れの内容をいろいろ見てみますと、先ほど申しましたように、国保運営については各市町村の独自性というものがかなり認められているという点もございますので、いろいろな理由で繰り入れが行われているわけでございます。例えば、このごろは余り新しくそういう措置をとられることもなくなったわけでございますが、国保制度の上に立って単独の形で、例えばいろいろな一部負担金を軽減する、障害者の医療をやりますとかあるいは母子世帯の医療をやりますとかあるいは子供の医療をやりますとかいったふうなものもいろいろありまして、それに見合う、あるいはそれに伴う財政影響に対して地方自治体が一般会計からの繰り入れを行っている、こんなものもございます。 私はこれを見まして、これはとんでもないことを言うものだと思っておりますよ。これを見てどう思いますか、自治大臣。私が今読んだのを見まして、このとおりだと思いますか。
  81. 梶山国務大臣(梶山静六)

    梶山国務大臣 それぞれの地域にはそれぞれの地域の特殊性、問題点があろうかと思いますし、自治体には自治体の特殊性があるわけでございますから、私からこの問題に論評を加える気はございませんけれども、ひとつ大きな意味で、国保財政市町村の一般財源を費やさなければならないというのは、国保運営の仕方自身あるいは建前制度自身に何らかの欠陥があるからだ、そういうことではぜひ国の責任を感じていただいて、そういうものを原則やらないでも済む制度をつくり上げていかなければならないというふうに考えております。
  82. 佐藤(敬治)委員(佐藤敬治)

    佐藤敬治委員 下村さんはどうですか。
  83. 下村政府委員(下村健)

    下村政府委員 先ほど村山委員の方からも御質問があったわけでございますが、国保財源国庫負担保険料というのが基本だという点についての、これは自治大臣のどこかでの御発言をもとにしての御質問に私が答えたものでございます。私は、基本的にはそのとおりですというふうに申し上げた上で、しかし、今繰り入れられている二千何百億かの一般会計負担の中にはいろいろなものも入っておりますので、全部その原則だけで律し切れない面も一部あるという意味で、ただいまのことを申し上げたわけでございます。
  84. 佐藤(敬治)委員(佐藤敬治)

    佐藤敬治委員 これの文章をずっと読んでみますと、もう市町村が勝手に独自なことをやるから一般会計から繰り入れなければいけないというふうに読まれるのですよ。それじゃ市町村が独自なものを何にもやらなければ、一般会計から繰り入れなくてもいい状態になるか、どうですか大臣、いかがですか。
  85. 下村政府委員(下村健)

    下村政府委員 これはお言葉を返すようで恐縮でございますが、その全体を読んでいただきたいわけでございます。冒頭のところで自治大臣がおっしゃったように、原則はそのとおりだ、やむを得ないものがかなりある、これもそのとおりだけれども、しかし、一部にはそんなものもあって、一般会計負担をどうするかという問題については、全部を一律にして議論できない面がある、このように申し上げたわけでございます。
  86. 佐藤(敬治)委員(佐藤敬治)

    佐藤敬治委員 全部を一律にして議論できない面もある、それは確かにそうかもしれないけれども、非常に小さいのですよ。本体は、さっきから言っているとおり、いろいろな問題、例えば要するに医療費がどんどん暴騰していく、それに収入がついていかない、これは一般的なことなんですよ。市町村が独自にやっていることじゃないのです。それを、これを見て私はそう思っているのですけれども市町村が独自の責任でいろいろなことをやっているから市町村が繰り入れるのだ、これは当たり前のことじゃないか、そういうニュアンスのことを言っているのです。あなたは今そこでないと言っているけれども、別のところにも同じようなことを書いてあるのですよ。だから、私はこれを聞くのですけれども、こういうような考え方市町村財政を見ているならば、厚生省というのは非常に無責任な態度だと私は思うのですよ。さっきから言われているとおり、これは元来一般会計から繰り出すべきものじゃないのです。今から十年か十五年ぐらい前には一般会計から国保に金を出すと自治省からえらい怒られたものですよ、出すなと言って。それこそ補助金切ってしまうぞと言って怒られたものなんです。それが何ともならないから出しておるのですよ。市町村が独自に勝手なことをやっていたからこんなものを出しているなんて、一般会計から繰り入れをしているなんという認識を持ったら即刻改めてもらいたい。とんでもない話なんです。大臣、これはどうですか。
  87. 藤本国務大臣(藤本孝雄)

    藤本国務大臣 申し上げておりますように、あくまで社会保険方式をとっておる関係上、加入者保険料と国の補助金、これで運営することは当然でございます。しかし、現状におきましては、御指摘のような一般会計からの繰り入れということがあるわけでございますが、それは結果でございまして、原因はやはり医療費の高騰という原因があるわけでございまして、それを正すことが極めて大事なことでございますので、従来から御承知のようにいろいろと改革に取り組んできたわけでございますし、また国保改革にも今回取り組んでおるわけでございます。御理解をいただきたいと思います。
  88. 佐藤(敬治)委員(佐藤敬治)

    佐藤敬治委員 勝手なことをやって金が足りなくなっているから、勝手にあれしたらいいじゃないか、おれたちの責任じゃないなんて、そういうことを思わないようにぜひひとつ考えていただきたい。  それで、さっきの話に戻りますけれども国保税というのはどんどん上がっていって何ともならない状態に来ているのです。来年もまたこれは上げなければいけないのですか。
  89. 下村政府委員(下村健)

    下村政府委員 医療費総体としてはかつてに比べますとかなり低い伸び率にはなっておりますけれども国保あるいは高齢者を中心にいたしまして医療費は相当上がってきております。そういった状況から考えますと、今回の改正によりまして若干の負担緩和は見込んでおりますけれども、一般的には保険料の引き上げは必要というふうに考えております。
  90. 佐藤(敬治)委員(佐藤敬治)

    佐藤敬治委員 六十四年も上げなければいけないということですね。
  91. 下村政府委員(下村健)

    下村政府委員 これは現在負担の公平ということで全般的に負担をならしてはおりますけれども、現在の医療費の動向から見ますと、やはり保険料の引き上げは必要になってまいると考えております。
  92. 佐藤(敬治)委員(佐藤敬治)

    佐藤敬治委員 一体国民はどこまで負担に耐えると思いますか、そして、どこまで行けば大体とまりますか。何かそういうシミュレーションをつくったことはあるのですか。これは無限に上がっていくのですか。  例えば、あなた方は六十三年で国民医療費は大体十九兆円になると言っているのでしょう。一九九九年になると四十三兆円になると言っている。これは一体どこまで上がるものか。これは途中に行けばだれも払えなくなってしまうと思うのです。さっき言いましたように、国保税というのは大変な高い税金なんですよ。来年も上げる、再来年も上げる、どんどんこの調子で上げていったら払えなくなりますよ。払えなくなれば、国保というのは内部崩壊してしまうのです。国民保険は崩壊しますよ。一体どこへ行ったらどうなるか、こういうような一つのめどがないと不安でやっていけないじゃないですか。どういうふうに考えてどういうふうな対策、めどをつけているのか、それをひとつ聞かせてもらいたい。
  93. 下村政府委員(下村健)

    下村政府委員 医療も全体の経済の中で動いていくわけでございますから、経済の方が拡大していけば、それに伴って医療費もやはり相応の拡大はしていくというふうに思います。私どもとしては、当面の目標としては、国民所得の伸び程度に医療費の伸びを保っていきたいということで、直接的にそれを統制する方法はございませんけれども、いろいろな形の適正化対策を講じまして、医療費の伸びを適正な範囲にとどめたいというふうな努力を行っておるところでございます。
  94. 佐藤(敬治)委員(佐藤敬治)

    佐藤敬治委員 これはそういう抽象的なことではもうおさまらなくなってきているのですよ。さっき申し上げたでしょう。三十何万というのが、あれは一番高い人が取られているのじゃないですよ。本当に標準家族が三十何万という税金を取られているのですよ。二百何十万か三百万しかない人が三十何万の税金を取られている。これがまた来年どんどん上がっていったら、一体どうして払うのですか。あなた、ただ抽象的に国民所得も上がればこっちも上げても大丈夫だなんて、そんなのんきなことを言っている時代じゃないですよ。それじゃ経済成長が一体どういうふうになって、医療費がどう伸びて、そして国保税というのがどういうふうに推移していくのか、そのシミュレーションをひとつ出してください。とてもこんな、どこまで上がるかわからない、軍歌じゃないけれども、どこまで続くぬかるみぞで、見当もつかないようなことをやっていられないじゃないですか。その計画、シミュレーションを出してください。
  95. 下村政府委員(下村健)

    下村政府委員 医療費につきましても経済につきましても、なかなか長期予測というのは変動要因がございますので難しゅうございますが、一応の推計をしたものがございますので、提出いたします。
  96. 佐藤(敬治)委員(佐藤敬治)

    佐藤敬治委員 それに伴って考えられるのは、最大の原因である医療費の膨張を一体どういうふうにするか、これは今最大の問題だと思います。今あなた方は現行の支払い制度でこれをやると言っているけれども、あなた方の考えているような現行の支払い制度でこのまま推移すれば、あなた方が出している、厚生省が出しているように、一九九九年になると四十三兆円になる。 こんなばかばかしい医療費になったらとても払えない、逆に医療亡国になる。一九九九年というのは、たった今、今すぐ具体的な方法を講じなければ間に合わないのです。今世紀末になって高くなってから対策なんて講じることはできない。そうならないように今やらなければいけない。青函トンネルは十何年かかったでしょう、今ようやくできた。同じことですよ。あなた方のシミュレーションで世紀末になったら四十三兆円になるとわかったならば、たった十何年しかないんだから、今から一体何をやるかということを、きちっとした具体的な計画を立てて、それを着々と実行していかなければ、このままいったら必ずあなた方のシミュレーションのとおり四十三兆円になりますよ。どういう計画を持ってどうしようとしているのですか。具体的な計画は何もありません、これから検討します、そんなことじゃ怠慢のそしりを免れないと私は思う。いかがですか。
  97. 藤本国務大臣(藤本孝雄)

    藤本国務大臣 医療費の将来の伸びの推計につきましては、御承知のように、一つは人口増また高齢化状況、二つ目には医療が非常に高度化してまいっておりますので、その影響、さらに三番目には政策努力、こういうものがございます。  一番目と二番目の問題につきましては、一番目の人口の問題は将来の予測が可能でございますけれども医療の高度化による予測は難しい。また、最後の政策努力につきましては、短期的には予測はできますけれども、中長期的には予測が難しいということから、現状を自動延長的に延ばして推測した結果が御指摘の数字になるわけでございます。しかし、私どもはそれをそのとおりになっていいというふうには決して思っていないわけでございまして、今後政策努力につきましては十分に進めていかなければならないと考えておるわけでございます。  具体的には、他の医療保険制度に比べまして国保の現状、御指摘のような保険料負担が非常に高いというような問題があるということは、とりもなおさず今の国保構造的に幾つかの問題点を持っているということになるわけでございまして、この構造上の問題点を今回の改正によって改革したい、かように考えておるわけでございます。さらには六十五年度までに、御承知の老人保健の見直しもあるわけでございます。また暫定的でございますけれども、この二年間の国保の推移を見まして、最終的には六十五年の見直しの結果を見まして、所要の改革に取り組んでいかなければならない、かように考えておるところでございます。
  98. 佐藤(敬治)委員(佐藤敬治)

    佐藤敬治委員 そんな適当な答えじゃ答えにならないと思うのですよ。  お聞きしますが、今構造上のいろいろなものがあると言っていますけれども、現在構造上の問題としておられる、例えば老人の問題であるとか地域差であるとか、それを全部解消すれば、これは解消できるのですか。
  99. 下村政府委員(下村健)

    下村政府委員 私どもとしては、これからの医療の問題としては、一つは、お話に出ましたように、診療報酬も含めまして医療面での対策をやっていく、それからもう一つは、保険制度の面で負担の公平ということをやってまいるわけでございますが、人口増とかあるいは高齢化ということで医療費負担がふえてまいるということはある程度やむを得ない、このように考えているわけでございます。負担の公平ということでやってまいりましても、相当の負担がふえる、将来の国民負担の限界がどうかというふうな議論もございますが、私どもとしては、安定した負担体系、公平な負担体系をつくっていくということと医療費の適正化、その両輪でできる限りの努力をやっていくということでございます。  国保につきましては、今の構造上の問題、保険ということで考えてみますと、そういった地域差の問題と低所得の問題が一番大きいと思いますが、その点が解決されれば基本的には相当安定してまいるということであろうと思います。ただ、これは保険制度全体として、言葉を変えて言いますと、公平に負担がふえてくるということにもなってくるわけでございます。
  100. 佐藤(敬治)委員(佐藤敬治)

    佐藤敬治委員 公平に負担がふえていくから大丈夫だと言うけれども、もう四十三兆円なんという—四十三兆円じゃなくてもいいですよ。これから一九九九年までかかって四十三兆円ですから、その中途は半分くらいかもしれませんが、それだって莫大な金額でしょう。これは平等でいいというものじゃないのですよ。平等だってだれも払えないのだ。  例えば、国保の場合で見ますと、今度あなた方が改革をやった後を見ますと、老人医療費の問題でも、一人当たりの全体の医療費の伸びを見ますと、六十一年度上期には被用者保険と老人保健の医療費が大体四%台ですね。ところが国保は八・四%なんです。だから、老人が多いから高齢化社会だから医療費がかかるんだと言うけれども、これを見ると、老人を除いても国保医療費というものは八・四%で突出しているのですよ。だから必ずしも老人だとかなんとかそういうことではない。やはり今老人が一つの大きな要素になっているけれども、では老人をみんな除外してしまって国保がよくなるかというと、国保はよくならないですよ、あなた方の出した資料を見ますと。だから、年齢差だとか地域差だとかそういうものだけでできない、はかり知れないところの一つ医療費の膨張要因というものが私はあると思うのですよ。例えば、今あなた方改革したから国保がよくなるというものじゃありません。根本的には医療供給体制、さっきちょっと話が出たけれども、出来高払い、請負制、ああいうものの根底まで、診療報酬の支払い方式根本まで入って見直し検討していかないと、このままでいくとあなた方のシミュレーションのとおり四十三兆円に必ずなると思うのです。でなければ途中で崩壊してしまう。今あなた方が言っているような何か漠然とした、何を言っているかわからないようなものでなくて、もう世紀末は既に目の前に来ているんですからね。今どうするか。勇を鼓して、医療供給体制なり出来高払いなりをどういうふうにするのがいいのか、アメリカのようなああいうファミリー制度だとかスウェーデン、ノルウェー、スカンジナビアのような在宅制度であるとか、いろんなものがあるのですから、ああいうのを利用して今やらなければ、これは取り返しがつかなくなると思う。そういう漠然とした何かわからないような抽象的なことじゃなくて、具体的な例があるならばちゃんと示してください。
  101. 下村政府委員(下村健)

    下村政府委員 私どもとしては、したがいまして、今回、国保制度改革をお願いしているのもその一つの段階であり、次いで六十五年に次の改革をやりたい、このように思っているわけでございます。  国保医療費でございますが、確かに各制度を通じて一番高い、これは御指摘のとおりでございます。ただ、老人医療費を全部別計算にいたしまして、それから退職者分を別計算にいたしますと、生の医療費で比較をいたしますと、国保とその他の医療費は大体一対一・六、六割増し、こういうことになりますが、それを除外して考えますと一対一・一ぐらい、かなりの程度に格差は縮まってくるわけでございます。したがって、私どもは高齢者の医療費負担の公平を進めるということが国保にとって非常にプラスになる、このように考えているわけでございます。  それから、診療報酬の問題でございますが、出来高払いの最大の欠点ということで言われているのは、すべてが出来高払いで何でも膨らむということではありませんで、一つは入院日数の問題、入院を何日間ぐらいさせるかというところが出来高払いで影響を受ける、こう言われているわけでございます。それからもう一つは薬の問題、それからもう一つは検査の問題、この三つが出来高払いの最大の欠点と言われているわけでございまして、私どもとしては、出来高払いについてはそういった非常に大きな欠陥はありますけれども医療の本質から見て出来高払いがいい点もある、このように考えておるわけでございます。 また実際問題として数十年間今の方式でやってきて、一挙にこれを変えようと思いましても、支払い制度の方を初めといたしまして、かなり全般的な改革ということになりますと、これはなかなか一挙にいかない、現実の問題としてはそうなってまいろうかと思います。  そうしますと、現実に私どもがとり得る対策としては、やはりただいま申しましたような出来高払いの欠点の是正をするというところにまずは全力を集中していくというのが現実的な手段ではないか、このように考えておりまして、今回四月から診療報酬の改定をやりましたけれども、そういった配慮のもとに今回の診療報酬改定も取り組んだわけでございます。また今後もさらに診療報酬改定を適当な時期に行っていくことになると思いますけれども、そういった基本方針で診療報酬の合理化には取り組んでいくということになろうかと思います。  もう一つ診療報酬制度に絡んで申し上げますと、確かにほかの国がいろいろそういったことでアメリカのように思い切った改革をやった国もございます。ただ、それではそれによってアメリカの医療費の伸びがどのぐらい落ちたか、あるいはドイツやイギリスの医療費の伸びがどのぐらいかということで見てみますと、日本の医療費の伸びは高いのですが、それでも各国に比べると実はまだ低い方の伸び率の部類に属していると思います。そういったことで診療報酬の問題だけでこの問題が解決するということではありませんで、これもお話にありましたように、供給体制の問題も含めて取り組んでいく。特に現在の医療費の高騰のかなりの部分が高齢者の医療費の増加に基づくものが多いわけでありますから、老人について適切な処遇の体系をつくっていく。現在はかなり医療に偏って老人の対策が行われているというふうに私どもは考えておるわけでございますけれども、老人に対する適切な処遇の体系をつくっていくということが医療費の適正化にもつながっていくという観点から総合的な対策を講じていきたい、医療制度の面も含めた対策を講じていきたい、このように考えております。
  102. 佐藤(敬治)委員(佐藤敬治)

    佐藤敬治委員 とにかくこれは一朝一夕にして解決する問題でもないし、しかも大変な大きな問題なので、漫然と医療供給体制を直すこともできないとか、今までの慣行があるからだめだとかなんとかそういうことじゃなくて、やはり根本的なところにメスを入れるような、別に出来高払い制をみんなぶっ壊してしまえということを言っているわけじゃないけれども、この急激な医療費の増高というものをとめなければ大変なことになるでしょう。それを真剣に具体的に考えてください。そうでなければ、それにみんなとばっちりを食って、各保険制度みんな払えなくなってしまう。そのことをひとつよく考えていただきたいと思っているのです。  それで、時間も来ましたので、もう結論的に申しますけれども、今度の国保改革、これの六十三年度の財政への影響、これを概括的に見てみますと、こういうふうに私は考えています。都道府県保険基盤安定制度で二百五十億円、高額医療費共同負担事業で百九十億円、合わせて四百四十億と最大の負担増となっております。市町村は二百五十億円の負担増となっている。注目されるのは、地方負担が六百九十億円増加されているにもかかわらず、国保のいわば被保険者ですね、これの負担軽減額が二百四十億円で、これを一人当たりで見ますとたった六百五十円にとどまっているということなんですね。これは何といいますか、国保の老人保健拠出金への国庫負担の削減額が四百六十億円に上っている。こういうことによって、六百九十億円も負担しておるのに負担軽減額が二百四十億円だ。あなたはさっきから国が余計金を出している、余計金を出していると言うけれども、六百九十億円と二百四十億円じゃかなりな大きな差があるのですね。こういうふうなことで、これはいわばしわ寄せだ、こういうことを言わざるを得ない。  それから、国が高額医療費共同事業に対して十億円負担している。これを差し引いても四百五十億円と、国保を上回る負担減となっているわけでありまして、ここでも国保財政力引き上げ効果が国庫負担引き下げ政策を最優先した政策のもとで大幅に弱められている、こういうことになると思います。したがって、こういうことを見ますと、負担地方転嫁、こう言われてもやむを得ないのではないか、私はこういうふうに思います。  そしてまた、あなた方が言っているように、それを全部みんな財源は補てんしてやっているのだ、こう言っておりますけれども地方負担の増加のうち地方交付税の交付団体にかかわるもの五百五十億円、これを交付税で見る、こう言っております。しかし、これは大変大きな問題を含んでおりまして、これは一般財源でありますので、必ずしも国保にそのまま行くとは限らぬ。金持ちなところには金が行かぬということになりますので、この点についても完全な国保財政と密着しているものではありません。さらにまた不交付団体に対して百億を出しているけれども、これは全く片手落ちな話でありまして、なぜ不交付団体だけが借金をしょって、交付団体に借金でない金をくれるのか、こういうような問題もありまして、いろいろ考えてみましても、とてもこれは地方に利益をもたらす改革だ、こうは思われません。したがって、私どもはこれを賛成することはできない、こういうふうに考えておるわけであります。  願わくは、一番先に申し上げましたように、これからいろいろ改革があるかもしれないけれども改革したならば、そのプラスになった分をあなた方がいきなりかっさらっていくことのないように、改革したならば幾ばくかの余裕は残して、そうしてそこでもって国保の内容をもう少し改善していけるようにしてもらいたい、そうでなければどんな改善をしても国保財政はよくならない、このことを強く皆さんに申し上げておきたいと思います。終わります。
  103. 稲垣委員長(稲垣実男)

    稲垣委員長 午後一時三十分から再開することとし、この際、休憩いたします。     午後零時二十八分休憩      ────◇─────     午後一時三十三分開議
  104. 稲垣委員長(稲垣実男)

    稲垣委員長 休憩前に引き続き会議を開きます。  質疑を続行いたします。岡田正勝君。
  105. 岡田(正)委員(岡田正勝)

    ○岡田(正)委員 大蔵省は来ておられますね。—それでは質問をさせていただきます。  冒頭に、この国民健康保険法改正という問題で、よくよく中身を読んでみると二つの言葉を書き分けてあるのですね。健康保険料という書き方と健康保険税という書き方をしてありますが、これは一体どういう意味なのでしょうか。
  106. 前川政府委員(前川尚美)

    ○前川政府委員 国民健康保険料と税のお話ですから、あるいは厚生省の方からお答えいただくのが正しいのかもしれませんけれども、御案内のとおり、原則といたしましては、国民健康保険法に基づいて国民健康保険財源の一部は国民健康保険料で充てる、こういうことになっておるわけでございますが、例外として、地方税法の定めるところによって国民健康保険税をもってかえることができる、そういうことになっております。ただ、実際に実施されております姿を見ますと、これはもう御案内のとおり、国民健康保険税、税として課税しておるところが大多数、そういう格好になっております。
  107. 岡田(正)委員(岡田正勝)

    ○岡田(正)委員 厚生省の方からもお答えいただきましょうか。
  108. 下村政府委員(下村健)

    下村政府委員 ただいま自治省からお答えがありましたとおりでございます。私どもとしても、どうしてもどちらでなければならないということもないわけでございますが、実際の市町村の当事者の間では、保険税ということで長年やってきて、これが定着しているのだというふうな気持ちが強いようでございます。
  109. 岡田(正)委員(岡田正勝)

    ○岡田(正)委員 それではもう一遍お尋ねをいたしますが、なぜ保険料保険税との使い分けを許しておられるのですか。
  110. 前川政府委員(前川尚美)

    ○前川政府委員 沿革的に私ども理解しておりますところを申し上げますと、当初国民健康保険はすべて保険料、料という形で賄われていたと承知をいたしております。その後、昭和二十六年の改正であったと思いますが、地方税法の改正によりまして、税、国民健康保険税制度が導入をされたと承知いたしております。  その際の理由は幾つかあるようでございますけれども、一番大きな理由は、当時国民健康保険市町村の公営という形になった、いわば市町村公営という姿を料といいますか税といいますか、そういう面で反映させたいという市町村のお気持ちがあったということ、それから徴収面のことをお考えになって税の方を選択する市町村あるいはそれを希望なさる市町村が多かったというふうに承知をいたしております。  ただしかし、この問題につきましては、国民健康保険という一つ保険制度でございますから、料を基本とすることが適当ではないかという御議論も従来から随分ございました。しかしながら、反面では、やはり税の方が望ましいという要望もあったということもありまして、現在まだ税か料かという問題について理想的な姿といいますか、原理原則にかなった姿と、実際に国民健康保険というものを運用する市町村の立場からの意見とが、まだ必ずしも斉一でない、そういう状況でございます。
  111. 岡田(正)委員(岡田正勝)

    ○岡田(正)委員 厚生省の意見はいかがですか。
  112. 下村政府委員(下村健)

    下村政府委員 これはもうお話のようなことではないかと思います。二十年代の半ばといいますと、健康保険の方は既にかなりの実績があったわけでございますけれども、当時の状況からすると、保険に入っていても保険を使わないというふうなこともあったような時代でございまして、保険料というとどうもなかなか定着してない。公営になったのを機会に保険税ということでしっかりやっていきたい、こういう気持ちが市町村側の意見として強かった、こんなふうに私ども聞いております。
  113. 岡田(正)委員(岡田正勝)

    ○岡田(正)委員 では、税とか使用料、手数料、保険料というような区別について一番正確な認識をしておるはずの大蔵省の見解をまず承りたいと思います。
  114. 薄井説明員(薄井信明)

    ○薄井説明員 お答え申し上げます。  突然の御質問で、私の知識を申し上げますと、税といいますのは税法に基づきまして、これは憲法から由来する納税義務なりあるいは租税法定主義という背景のもとに、国民が国あるいはその地方公共団体行政を賄っていくために必要な経費を集めていくための手段として税という形をとっておるわけでございます。この税は、国民の義務であると同時に、それは国会においてきちんと決められることが大事でございますので、その辺が体系的な税体系によって確保されているものが税であると考えております。  これに対しまして、手数料なり、そういう便益を受けた者に対する料金というものは、それなりの限度においてそれぞれの制度ごとの考え方はあろうかと思いますけれども、それなりの体系をとっているものと考えております。
  115. 岡田(正)委員(岡田正勝)

    ○岡田(正)委員 というような今の大蔵省の説明をお聞き取りになりまして、これは実はこの法律の中にちゃんと書いてあるんですね。百十八条の二に保険料保険税とを一緒に書いてあるんですよ。私はこんな不明瞭な、このごろは言語明瞭、意味不明というのがよくはやりますけれども、とにかくこれぐらいよくわからぬことを何でわざわざ書いてあるのかな。もっと法文を整備するべきじゃないのか。これは十ページの第百十八条の二の十一のところではっきり書いてありますね。「条例の定めるところにより行う保険料の減額賦課又は地方税法第七百三条の五に規定する国民健康保険税の減額に基づき」こういうふうにいろいろ書いてあるんですね。何でこの二つを使い分けをしなければならぬのか、どうも腹へおさまらないんですよ。税金なのか料金なのか、どっちなんですか。そもそもこういう法律の出だしにおいてあいまいもことした書き方をしておるということは、私は非常に不愉快だと思うのですね。今、税というのを使っておるところが市町村では多いようでございます、こういうお答えがございましたが、多いようじゃ困るのであって、税なんですか、料金なんですか、どっちなんですか。どっらに統一したいと思っておりますか。自治省と厚生省の意見をはっきり伺いたいと思います。
  116. 下村政府委員(下村健)

    下村政府委員 私どもとしては、経済的な本質というふうなことから考えますと、皆保険、こういうことで私ども申しておるわけですから、本質的には保険料、したがって保険料という言い方をすることの方が多いのですが、実態はおっしゃるように逆で、保険税という形で取っておる場合が多いわけでございます。  社会保険も定着してまいりましたので、保険料でいいのではないかというふうな議論厚生省内部では比較的有力かと思いますが、なかなかそこは実際の事業を執行しております市町村側の意見として申しますと、実はまだ保険税でやっていきたいという希望が強いので、両方のやり方を認めているというのが現状でございます。
  117. 前川政府委員(前川尚美)

    ○前川政府委員 あらまし厚生省の方からお答えがあったわけでございますが、私どももこの国民健康保険という事業の性格を考えますと、これはやはり保険料というのが理論的にも適切な姿ではないかというふうに考えております。  先ほど料と税の法律的な性格の違いについて大蔵省の方からお話がございましたけれども、現在、料として徴収するかあるいは税として徴収するか、法律上の効果の面から見ましても、幾つかの徴収に関する規定を除きまして、そう大きな効果はございません。したがって、今後この制度あり方をいろいろ検討なさる際には、料か税かという従来からの問題を頭に置きながら検討を進められることが適当ではないかというふうに私も考えております。
  118. 岡田(正)委員(岡田正勝)

    ○岡田(正)委員 それじゃ大蔵省にもう一遍お尋ねをいたしますが、大体自治省の方も厚生省の方もどちらかといえば性格的には保険料の方が好ましいと思うが、地方自治体市町村の諸君は税として納めてもらった方がいいと言うので保険税という名称を使っておるところが多い、こういうお話であります。  さて、そこで税金として令書を出した場合、料金として令書を出した場合、これのはっきりした違いはどこに出てまいりますか。
  119. 薄井説明員(薄井信明)

    ○薄井説明員 お答え申し上げます。  最初にお断り申し上げなければいけないのですが、私は国税の方を担当しておりまして、国税の世界にはそういった問題がない。といいますれば、ただいまの御質問はあるいは私に対する質問としてはなかなか答えにくい質問かと思いますが、私が思いますには、国税におきましては、先ほど申し上げましたように、国の運営に必要なお金を税金という形で国民の義務としていただく、ついては払う人と払わない人がいてはこれは不公平でございますから、税が確定すればこれはきちっと納めていただく、それが確保できるような税体系をつくって徴収をさせていただいておる。このような公平の確保が保たれるような税体系がつくられているのが国税における徴収の体系であると理解しております。
  120. 岡田(正)委員(岡田正勝)

    ○岡田(正)委員 ということになりますと、いわゆる税という名前がつく限りにおいては、一たん令書を出した限りはそれを納めてもらわなければなりません。もし納めることができない場合には差し押さえをしてでも持っていく、むしり取るというのが税金ですよね。それで国の税金のことを酷税と言うのですよね。  だから、ちょっと話が横道にそれまして大変恐れ入りますが、そうすると、大方の市町村がいわゆる国民健康保険税という名目で取っておるとするならば、至るところでいわゆる差し押さえという事件が起こっておるはずでありますが、その実態は一体どうなっておりますか。これは厚生省ですね。
  121. 下村政府委員(下村健)

    下村政府委員 大変申しわけございませんが、正確な数字を調べてお答えいたしたいと思いますが、実態としては余り件数は多くないというふうに記憶いたしております。
  122. 岡田(正)委員(岡田正勝)

    ○岡田(正)委員 突然の質問でありましたから資料の用意がないのかもしれませんが、税金として令書を出した限りにおいては、納めない人に対してこれは差し押さえというのが当然のことですね。いわゆる減免とかいろいろの措置がございますけれども、差し押さえが当然ですね。そういうのを私は幸か不幸か聞いておりません。ということになると、税金としての作用をなしておらないものをいわゆる税金という名目で令書を発行するということは、これは大変な間違いである。だから、保険料ということに統一をすべきではないか。保険料であれば、例えば納入できない人がおっても差し押さえということはできませんね。これはどうですか。
  123. 下村政府委員(下村健)

    下村政府委員 これは保険料でございましても、皆保険ということで、国民が何らかの保険にすべて加入をする、それでこれを納めていただくというのが当然の義務ということになっておりまして、保険料につきましても、国税徴収の例にならって滞納処分等もできるという形になっております。
  124. 岡田(正)委員(岡田正勝)

    ○岡田(正)委員 ということになれば、私が質問するまでもなく、税金であれ保険料であれ、納められぬ人については情け容赦なく差し押さえをしておる実績があるはずですね。その実績を当局が御存じないというのはどういうことですか。
  125. 下村政府委員(下村健)

    下村政府委員 大変行き届かないことで申しわけございませんが、実績数値はただいま取り寄せてお答えをいたしたいと思います。  ただ、現実問題としては、滞納処分までやって取り立てるという例は極めてまれというのはお話しのとおりでございます。
  126. 岡田(正)委員(岡田正勝)

    ○岡田(正)委員 それでは地方税としていわゆる差し押さえをした例は何件か、それから保険料として差し押さえをした例は何件かと分けて、近々の数字で結構でございますから、後ほどお教えをいただきたいと思います。  さて、この税金の問題でちょっと余分に話を挟ませていただきますが、委員長、実は全国会議員に昨日こういうようなものが三部配られました。私、これを見てたまげたのでありますが、本当は大蔵大臣を呼ばなければいけないのですが、課長さん、ちょっと気の毒なんですけれども、我慢して聞いてください。そのかわり答弁大臣になったつもりで答弁していただいて結構であります。  私が非常に不思議に思いますのは、まだ政府税調が結論を得たわけでも何でもない、素案を今こしらえたという段階において、何でこれが大蔵省と自治省との名前でこんなに立派な印刷物が、これは恐らく何億と金をかけていると思いますよ。政府はお金は何ぼでも持っておるわけですから簡単に印刷をなさるのでしょうが、しかし政府税調の素案をPRするというようなことは、間接税のよしあしは別としまして、まだ国民的な合意に何もいくものじゃないし、政府税調の結論も出ておらぬ、党税調の結論も出ておらぬときに、先駆けてこれが麗々しく—これは民間のじゃないですよ。政府広報で大蔵省、自治省の名前をもってこんなに立派なものを出しておるということは、言うなれば間接税へ世論を誘導するという作為があってやったものではないかと思うのであります。課長さんでまことに気の毒でありますけれども、税金の課長である以上は、あら、そんな物が出ておるとは知らなんだということはないと思うのですね。ですから、その点をひとつ大蔵大臣に成りかわって御答弁を願いたいと思います。
  127. 薄井説明員(薄井信明)

    ○薄井説明員 お答え申し上げます。  国会議員の皆様方にこのパンフレットを配らせていただいたことは承知しております。このパンフレットをつくるに至りました私ども考え方を御説明いたしますと、昭和六十一年十月以来、政府の税制調査会におきましては、いわゆる税制の抜本改革ということを御審議いただいておるわけでございます。一つの答えが昨年のこの時期に法案として提出させていただきましたが、結局は廃案になったといういきさつがございます。その後、私どもなぜ税制改革が必要なのかあるいは必要でないのかを含めて新たに税制調査会に御審議をいただいておりますが、前回の経験にかんがみますと、私ども国民の皆様への説明が不十分であったということを深く反省しているようなわけでございます。そこで、税制調査会といたしましても、事柄が決まってしまってから御説明するのではなく、途中の段階でも政府税調が何をやっているかということを知っていただく、その上で御批判もいただくということがこの問題を正しく御理解していただくためには必要ではないか、こういう立場に立っております。そういうことで、今回異例ではございますが、政府税制調査会の素案がどう変わるか、それは国民の皆様の反応、御批判をまってまた議論をしたいということでお出しになられました。その素案の性格からすると、私ども大蔵省なり自治省といたしましては、これを一日も早く皆様に御理解をいただく、知っていただく、その上で御批判も含めて御意見をいただくことが大事ではないか、こういう姿勢で提出させていただいているものでございまして、決して御指摘のような、一方に誘導しようという趣旨に出るものではないことは御理解いただきたいと思います。
  128. 岡田(正)委員(岡田正勝)

    ○岡田(正)委員 なかなかうまいね。今いい調子ですよ。  さて、そのいい調子のところで水をかけるような質問をいたしますが、御承知のように、今の御反省がありましたように、何も根回しもしないでいきなり唐突に出した昨年の売上税、これが廃案になったのが五月二十七日—五月二十七日というのはちょうど八十二年前に日本海においてロシアのバルチック艦隊を劣勢の払い下げの軍艦で東郷元帥が破った日本海大海戦の大勝利の日なんですよ。私ども昔の軍人はよく覚えておりますが、海軍記念日ですよね。実に不思議な日だったのですよ。そのことが痛烈にこたえたので、素案ではあっても、これは成案ではありませんから御意見があったらよく聞かせてください、幾らでも耳はかします、実際は修正はしません、こういうことかもしらぬが、とにかく意見だけは聞かせてくれというのでやっておるのですということですから、すばらしい部数が出ておるのだろうと想像します。国民の皆様に知っていただくためにということでありますから、すばらしい数が出ておるのだと思いますが、有権者の数だけでも九千万人になんなんとする日本でございます。恐らくやその過半数以上、約五千万部くらいは出されたのかなと思いますが、いかがですか。
  129. 薄井説明員(薄井信明)

    ○薄井説明員 お答え申し上げます。  素案のPRといいますか、世の中の皆様に知っていただく手法としてはいろいろな手法があろうかと思います。私ども素案をいただいて直ちに新聞の方々に御説明するなり、あるいはお集まりいただいて、媒体を通じて知っていただく、いろいろなことをやっております。その一環として、一つはパンフレットという発想に至ったわけでございまして、御指摘のように、国民の皆様一人一人にお渡しできるほど印刷ができれば一つの方法かと思いますが、現実にはいろいろな面で制限があってそこまでできませんで、部数にいたしまして三十万部程度のものを発行させていただいていると承知しております。
  130. 岡田(正)委員(岡田正勝)

    ○岡田(正)委員 約九千万人の有権者に対して三十万部といったら、私は頭が悪いからとっさに計算できませんが、わずかな数でございますね。そんなもので国民の皆様に政府素案はこんなものでございます、どうぞひとつ御意見がありましたら伺いたいと思いますといったところで、はね返ってくる声はほとんどないと私は思います。  昔、私の親戚に丸山警視総監という人がおりましたが、その人がこういうことを言ったことがあります。有名な言葉です。当時、カフェーが非常にはやっておりまして、世の中のだんな様が晩の十二時を過ぎてもなかなかお帰りにならない、それで奥様方の御不満が非常に大きかったので、世の奥様方に味方をして、これに何か制限を加えようというので、十二時以降はカフェーをやってはならぬということで営業をとめました。これは賛否両論がございまして、その総監のところに莫大な投書が来たのでありますが、その投書を総監は手に取って見ようともしませんでした。数が多いせいでありましょうが、どう言ったかといいますと、部下の人が非常に心配しまして、総監、これは大変ですよ、月夜ばかりじゃないぞというような言葉から始まって、おまえを殺してやるとか爆殺をするだとか穏やかでない投書が随分あるので、これは気をつけないといけませんよと言ったところが、総監ははかりを持ってこいと言うので、総監室へはかりを入れて、それで賛否両論をはかりにかけてみたらちょうどとんとんでつり合いがとれたというのです。それで部下の者はこんなにたくさんの反対の投書があるのにと言いましたところが、そのときの総監が言ったことが非常に有名な言葉でありまして、心配するな、とにかく賛成するという声を出す者はまずまれである、反対という声は言いやすいものである、反対の投書もしやすいものである、とにかくこれだけ反対と賛成とがてんびんにかかる程度であるならば、これは賛成者の方の数がはるかに多い、いわゆる十二時以降の営業は禁止するということに対する賛成の人の数の方がはるかに多いはずであるから心配は要らぬ、全部焼き捨てなさいと言ったのですね。それでそのとおり通してしまいました。そのことを考えてみると、今国民一人一人に漏れなく今度の—私は先ほど九千万になんなんとする有権者と言ったが、本当はどうかといったら、小学校の生徒、幼稚園の生徒に至るまで税金がかかるわけです、間接税が。これは大人だけじゃありません。有権者だけではありません。したがって、赤ちゃんは別といたしましても、少なくとも一億一千五百万以上の人たちがこの間接税にはかかわりがあるのでありますから、そういう人たちに対して政府の考え方を徹底させよう、意見を聞きたいということに対して三十万部というのは、私は非常に部数が少な過ぎるというふうに思うのですが、世論誘導のために出しておるのではないかということが見え見えでありますから、本当からいうならば、今この時点にこれをお出しになるのはちょっと考えものではないかというふうに思っておりますので、大蔵大臣によく言っておいてください。選挙区が一緒だからちょっと言いにくいのですが。  そこで、いま一つ大蔵省にお尋ねします。今私は税金と料金という問題でお尋ねをいたしましたが、このパンフレットの第一ページをあけてみてください。ここに何と書いてありますか。これは一番国民の目にぱんと映るところですよ。「あるべき税制とは」と書いて「税金は、」「「会費」です。」と書いてあるのです。これはどういう意味ですか、「会質」というのは。あなたに聞くのは酷かもわからぬけれども、もし答えられたらどうぞ。
  131. 薄井説明員(薄井信明)

    ○薄井説明員 お答え申し上げます。  ここにも書いてございますように、税金は国や地方公共団体の公共施設、公共サービスを運営していくための大切な財源であります。この財源というものは、その国を構成している国民がひとしく公平に負担をしていくべきものであろうかと思います。そういう意味で国なり地方公共団体一つの組織と考えれば、そこでその負担をするものは、ここでも「いわば「会費」」と書かせていただいておりますが、わかりやすく御説明するには、いわば会費のようなものだという意味で使わせていただいていると承知しております。
  132. 岡田(正)委員(岡田正勝)

    ○岡田(正)委員 そこで、課長さんは頭がいいから、この下の説明書の中で「いわば「会費」なのです。」こういうように書いてありますといってしきりに強調なさるのです。ここは説明書きであり、しかもこれはごく小さな字です。上に書いてあるのは「税金は、」「「会費」です。」と大きく書いてあるのです。会費というのは何ですか。これは国民に対してびっくり仰天させないようにという配慮なんでしょうが、国民が受け取る会費というのは町内会費みたいなもの、親睦会費みたいなものです。ははあそんな程度かというふうにお考えになるかもしれませんが、これは明らかに国民に間違いを教えていますね。会費というのは会に入っておる人が払うものであります。だから、会というのは入会の自由もあれば脱会の自由もあるわけです。そうしたら、会費というのは、私は会に入りたくないよと言ったら会費を払わなくていいわけでしょう、入会しておる人だけが会費を払うのでありますから。大変誤解を生みやすい言葉でありますが、これは一体どういうつもりでこんな言葉を使ったのでしょうか。難しいかね。     〔稲垣委員長退席、野呂委員長代理着席〕
  133. 薄井説明員(薄井信明)

    ○薄井説明員 むしろ国民の皆様に税金というものが私たちの国を運営していくための共通の費用であって、みんなで公平に賄わなければいけないということを知っていただくことは一つの方向かと思います。そういう意味で会費というものの定義については先生御指摘のような面もあろうかと思いますが、かぎ括弧をつけて、そうした組織なり団体を運営していく上でみんなで賄い合いましょう、ひとしく負担し合いましょうという性格としては、かぎ括弧つきの会費ということは必ずしも間違いではないと思いますし、むしろ一般の国民の皆様にはわかりやすいのではないかという趣旨で書いたものではございますが、先生の御指摘につきましては、私ども十分わきまえていきたいと思います。
  134. 岡田(正)委員(岡田正勝)

    ○岡田(正)委員 大変苦しい答弁をなさいましたが、こういう国民に誤解を呼ぶような言葉は少なくとも責任官庁は使うべきではありませんね。 会費でしたらたとえ納められなくても差し押さえということはありませんよ。会費を納めていないから差し押さえをするぞというようなことはありませんね。こういう誤解を生むような言葉を、しかも麗々しく第一ページに書くなんということは、不見識きわまると私は思っておりますが、あなたはこれでいいと思いますか。ちょっと難しいかな。
  135. 薄井説明員(薄井信明)

    ○薄井説明員 先生の御指摘は一つの御見識かと思います。私はこれまでも割に口頭では、税金というものはということを説明するときに、税金は税金ですと申し上げてもなかなかわかりにくいものですから、別の言葉を使えばやはり一番わかりやすいのは会費という言葉かな、こういう言葉が世の中でも割に使われているというふうに認識しておったものですから、そのように申し上げてお答えとさせていただきたいと思います。
  136. 岡田(正)委員(岡田正勝)

    ○岡田(正)委員 だから私は、国民が物をわかっちゃおらぬのよ、教えてやらなければいかぬのよというような、いわゆる国民を見下したような姿勢が腹の中にあるのではないかと思うのです。私は今から何年か前に当時の総理あるいは大蔵大臣にこういう質問をしたことがあります。 一体税金というのは何のために取るのですか、こう言って質問をいたしました。そのときの総理大臣の名前は言いませんが、まことに噴飯きわまる答弁をなさいました。その中身も失礼に当たりますから今さら申し上げません。そこで私が言ったことは、税金というのは、日本という国の自由と平和と安全と国民生活を守るために取るのである、だからこれは国民の義務だ、だからその国に住む限りは税金を出してもらわなければなりません、こういうことがいわゆる税金ですよ、どうですと言ったら、おっしゃるとおりです、こうおっしゃいました。だから、時の総理大臣も認めた税金の意義でありますが、こういうわかりやすい言葉を、しかも義務ということがはっきりわかるように書いて国民の皆さんにお知らせするのが本当じゃないでしょうか。私は、いかにも税金というものを軽々しく考えておるこういうパンフレットは、この次から、出したものは仕方がありませんが、この次から出すときにはもっと真剣なことを書いてください。少なくとも国民を軽く見るような書き方はなさらぬでいただきたいと思います。 これは希望しておきます。  それから、ちょっと余談にわたりますが、先輩からちょっと御注意がありましたのでお尋ねをいたします。  これは片方は政府の責任で出していますね、政府広報。片方は財団法人日本広報協会、これを自治省と大蔵省が監修をしている。だから、これは出版元が違うということはわかるのでありますが、出版元は違うのだけれども、目的は一緒ですね。この二つはどうやってとじますか。とじようがないのですよ。逆さにすればできる。こうやってとじればとじられるのです。しかし、逆さにしたのでは一々こうやらなければいけませんね。何でこんなことになったのですか、ちょっと答えてみてください。これも難しいですか。
  137. 薄井説明員(薄井信明)

    ○薄井説明員 御答弁申し上げます。  黄色い方は御指摘のように大蔵省、自治省が作成したものでございまして、最近では大抵横書きという方式をとっておりますので、疑いもなくこういう左から開いていくパンフレットを考えたわけでございます。他方、こちらの「TAXNOW」の方でございますが、これは社団法人の日本広報協会というところがアイデアを出されて、私どもに監修を求めてまいりました。 先ほど申し上げましたような理由で、国民の皆様に少しでも多く知っていただくためには御協力することが必要だと思いまして御協力したわけですが、日本広報協会の方は、ごらんいただいてもおわかりのように、非常にナうなんですね。現代の人たちの感覚に合うようなデザインでつくられておりまして、そういう意味では表紙もまるで違いますし、縦書きがレトロというのですか、その方が案外読まれやすいということだったと思います。私どもその編集方針にまでも口を挟むことはいたしておりませんので、そういう意味では、結果的に先生おっしゃるように左とじ、右とじになってしまった。これを一緒にお配りして、とじる方の身になれば非常に不親切ということは、御指摘を受けて初めて気がつきましたが、私どもはそういう別の媒体としてこれを見ておりましたので、結果的にそうなったということでございます。
  138. 岡田(正)委員(岡田正勝)

    ○岡田(正)委員 それでは、もう一つ聞いておきます。これは定価を書いておりませんね。この財団法人日本広報協会というのは、こういうものを三十万部もただで配るほど財源の豊かな団体ですか。
  139. 薄井説明員(薄井信明)

    ○薄井説明員 お答え申し上げます。  財団法人ではなく社団法人でございまして、そういう意味では公益を目的としていろいろな活動をされている団体でございまして、都道府県とか市町村とか日本新聞協会あるいは日本放送協会あるいは日本民間放送連盟といった方々が会員になっている公的な公益法人でございます。  今回、この企画につきましては、政府の広報といたしまして買い上げるという形で、発行されたものを総理府で買い上げているという形をとっているように私は承知をしております。
  140. 岡田(正)委員(岡田正勝)

    ○岡田(正)委員 わかりました。この社団法人日本広報協会が出した三十万部は、政府が丸ごと買い上げるということですね。  ということになると、私はこの際お願いをしておきたいと思います。横書きだから、縦書きだからというお話でありますが、横書きであろうと縦書きであろうと、二冊もらったら二冊こうやってとじて通読できるようにしなければ、こんな一々ひっくり返さなければいかぬような、こういう編集の仕方。買い上げるということは、政府が銭を出すのと一緒でしょう。ということになれば、そんなことをしなくてもいいように、初めから気配りをしなければならぬのに、その気配りがなっとらぬじゃないか。全然てれこじゃないかと言うて私は怒るのでありますが、いかがですか。
  141. 薄井説明員(薄井信明)

    ○薄井説明員 お答えを申し上げます。  御指摘のような配り方、私ども二冊一緒に配っている立場からすれば、御指摘の点はなるほどなと、御指摘の鋭さに困ってしまうわけでございます。  用途といいますか、内容的には、黄色い方はかなり数字なりデータをちりばめて解説していくという内容になっておりまして、青い方はどちらかというと、なぜ税制改革が必要かという、そこに重点を置いたものになっております。そういう意味では、両方使い分けていくということもあろうかと思います。  お答えになりませんが、先ほどの御指摘の点については、よく心にとめておきたいと思います。
  142. 岡田(正)委員(岡田正勝)

    ○岡田(正)委員 それでは、大蔵省に対しては、これを最後の質問ではなく希望にしておきますが、これをよく見てください。縦書きと横書きとの差がありますのでとおっしゃいましたね。ところがほとんどが横書きですよ。両方ともほとんどが横書き。であるのに、これが逆さまになっているのね。だから、縦書きと横書きというのは、どうも言いわけにしかすぎないので、どこをはぐったって横書きですよ。大きい字だけが縦ですよ。その説明は全部横で童日いてある。こっちの政府が出されているものも全部横書きですよ。そうしたら横書きと横書きとあわせるのは何ということないじゃないですか。そしてこの税制改革についての素案も横書きですから、政府の分と一緒くたになりますね。見るのに便利ですね。そういう点が——あなたは関係ないですよ。あなたはまことに気の毒だと思います。来なくてもいいところにわざわざ来まして、本当に気の毒ですが、よく言うてください、こういうてれこなことをなさらぬように。  それからいま一つは、国民をなめたような解説を書かないように、もっとまじめにやっていただきたい。そして世論の誘導なんということは考えておらぬとおっしゃいますが、そういう疑いが濃厚でありますから、本来ならば起訴するところであるが、本日はこのぐらいでやめさせていただきますので、どうぞお引き取りください。  さて次に、厚生省と自治省に続けてお尋ねをするのでありますが、今お話がありましたように、これは税金あるいは保険料でありましても、滞納すれば容赦なく差し押さえをするという性格のものでありまして、とにかくどっちを使うてもいいのですということでありますが、さて、最後にこの問題についてお尋ねをしておきます。  どっちを使っても一緒なら、何で日本の国の中において保険料として徴収する市町村と、保険税として徴収する市町村があっていいのか。 大体、法律にそういう言葉があること自身がおかしいではないか、これを統一なさるお気持ちはないのかということを確認したいと思います。
  143. 下村政府委員(下村健)

    下村政府委員 これはこれまでも実は私どもとしても検討したことがございまして、なかなか一挙に統一というのも難しいかと思いますが、今後保険料の問題についてもいろいろ検討いたすことになっておりますので、その際あわせて再度検討してみたいと思います。  それから、先ほどの滞納処分でございますが、六十一年度の実績で七万六千七百六件、額にいたしまして百九億円ということになっております。(岡田(正)委員「それ両方の区分は、税金と手数料」と呼ぶ)これは実は今の制度先生お話しのように料、税、特に区分して統計をとっておりませんのでわかりませんが、実態としては大体九割までが税でございます。
  144. 岡田(正)委員(岡田正勝)

    ○岡田(正)委員 きょうは連合審査でございますので、せっかく両省がおそろいでございますから、この保険料という名称と保険税という名称を二つ書き分けて、現実にそれを九割と一割で使用しておるということはまことに見識のない話であります。だから、これはこの機会に、今法律が出ておるのですから、この際、保険税がいいと思うのなら保険税という名称に統一をなさったらいかがですか。このぐらいの修文はわけはないでしょう。何も政府のメンツにかかわることでも何でもないと思うのですが、その点いかがですか。御答弁が難しければ、両方が別々に言って食い違ったら大ごとですから、暫時休憩して統一意見を出していただいて結構であります。
  145. 下村政府委員(下村健)

    下村政府委員 これは先ほど来申し上げておりますように、実は私どもとしては市町村がやりやすい方がいいということで、料で行くのも税で行くのもいわば市町村の選択に任せている格好でございます。  したがいまして、料がいいという市町村も、税がいいという市町村も両方あるということで、私どもの一存で、この場でどうしても統一しなければならないというのもなかなか難しいかと思いますが、なおしばらく再度検討するということでお許しをいただきたいと思います。
  146. 岡田(正)委員(岡田正勝)

    ○岡田(正)委員 ちょっと、私は穏やかな人間でありますが、どうも承知できないのですよ。なぜかといいますと、今のお答えの中に、これは決して不用意な発言だとは私思いたくないのでありますが、使用料、いわゆる保険料という名前にせよ保険税という名前にせよ、どっちにしても滞納したら差し押さえをしてでも国民からはぎ取るんだという、それだけの強大な権力を持って最高額三十七万円まで取っていく制度でしょう。そういうような制度であるのに、まあどっちなりとやりやすい方をやりなさいや、そんなあほなことがありますか。そんなことやっていいのですか、国民から金取るのに。私は了承できませんね。これはまじめに考えてくださいよ。厚生省だけでこれを決定できるのなら、厚生省ではっきりした意見を出してください。今度の答弁大臣にお願いします。
  147. 藤本国務大臣(藤本孝雄)

    藤本国務大臣 いろいろ先ほどからの議論を拝聴いたしておりまして、私も非常に勉強いたしました。しかしこれは厚生省だけで決められる問題ではございませんので、自治省とよく相談をいたしまして、早急に結論を出したいと考えておりますので、暫時私どもに時間をいただければありがたいと思います。
  148. 岡田(正)委員(岡田正勝)

    ○岡田(正)委員 わざわざ厚生大臣がお答えになったのでありますから、暫時時間をいただきたいというお答えに対して、本来ならば私はいつまでですか、この法案の採決が行われるまでの間に御回答があるのですかとちょっとひねりたいところですよ、だけれどもそんなことしません。だから安心してゆっくり御相談を願います。  さて、そのことはこれで済んだことにいたしますが、今の政府広報誌の中にこう書いてありますね、これはもう中曽根前総理大臣が何回も言ったことでありますが、公平の原則というのは、垂直的な公平、いわゆる経済力の大きさに従って負担割合を変える、それと水平的な公平、経済力が同じなら等しい負担、こういういわゆる垂直的、水平的公平、そしてひずみのないバランスのとれた、こういう言葉を書いてあるのですね。もう一つの言葉はわかりやすい、公平、公正、簡素、こういうのがありましたね。それを考えてみると、この国民健康保険税くらい物すごいアンバランスの税金はありません。地域による格差というのはもう莫大なものですね。この国民健康保険というのは何々市町村保険なんですか、何々町保険なんですか、何々県保険なんですか。 そうじゃないでしょう、日本国の国民健康保険でしょう。ならば、例えば税金を払うにいたしましても、人間働いてどこへ住んでおろうと公平でなくちゃいけませんね。公正でなくちゃいけませんね。それが住むところによってお年寄りが莫大多いから負担が多いだとか、あるいはその他の条件が違うから莫大負担が多いというような、そういうアンバランス、住む町、住む村によって変わってくるというようなこと、これは許しておくべきじゃないです。国としてのいわゆる保険税、先ほどもお話がありましたが、あくまでも国民健康保険の最終的な責任者は国であります。それを市町村にお世話をいただいておるのでありますという趣旨からしたら、もうこれに書いてあるこんなうそっぱちなんか書くなというのだ。国民に示すときだけいい言葉を書いて、実際にやっておることはとんでもない不公平が物すごく介在をしておる。この国民健康保険税の地域の格差、これをどういうふうに是正しようとしておるのか、それをお答え願いたいと思います。
  149. 下村政府委員(下村健)

    下村政府委員 おっしゃるように、国民健康保険は各市町村ごとに事業運営をやっておりますけれども、皆保険ということで制度基本的な維持については国が責任を負っているわけでございます。したがって、保険料もできるだけ公平にということで国庫負担を通じて調整をやっているわけでございますが、現状は、医療費所得が同じような水準であれば大体保険料が同じになる、こういう考え方調整をやっており、ほぼ医療費所得が同一水準であれば保険料も同一水準、こんな格好になっていると思います。  ただそこで、今お話が出ましたように、医療費の差という中には、老人が多いから医療費が高いとかいうふうな問題もあるわけでございますから、そこら辺のところをどう考えていくのかという点で、なおさらに残されているような問題もございます。そこで今回も、その点が一つ問題点になりまして、保険料の標準化と申しますか、公平化というふうなことについては今後引き続き検討していくということで、大蔵省、自治省とも一応そういう方向で努力をする、特にこれは厚生省としての努力ということが重要になってまいろうかと思いますが、今後そういうことで努力をしてまいりたいと考えております。
  150. 岡田(正)委員(岡田正勝)

    ○岡田(正)委員 時間が参りましたから、この質問をもって終わらせていただきますが、私がかねて不満と思いますところは、いわゆる国民保険、日本人である限り病気になった場合心配をしなさんな、こういう制度がありますよということで、この制度がずっと維持をされており、国民もその価値を認識をしておるのでありますが、しかし、その町その村で住むところによって負担の金額が莫大も変わってしまうということは、これはなかなか了承できないことであります。例えば片田舎に老人ばかりがたくさん残った場合、これはある程度補助金をもって負担をしておるということがありますけれども、しかし、その地域の住民の負担は非常に大きなものでありまして、それはその村で働こうと思っても、その村に産業がない、働くところがない、したがって町へ出ていく、都会へ出ていくというような、いわゆる日本全体の構造的な問題で起きてきたひずみなんですから、これに書いてあるように、ひずみのない、公平な、公正な税金にするためには、私は地域の格差をなくすために標準化、公正化、公平化、こういう問題についてひとつ真剣に取り組んでいただきたいと思うのであります。     〔野呂委員長代理退席、松本委員長着席〕  そしていま一つは、市町村の諸君の最大の不満は—きょう文部省の方えらい済みませんでした。とうとう質問する機会がありませんで、最後にちょこっと言っておきますから。お医者様をつくる医科大学の設置の問題、あるいは医学生の数の問題、そういうこと等については文部省が所管をしておる。今度はお医者さんの認定とかあるいは病院とか、そういう関係については厚生省が認定する、あるいは都道府県においては病院設置の認定をする、そしてレセプトの審査は県がやるというようなことであります。そういう問題について、例えば、これはちょっと言い過ぎかもわからぬが、何でこんなに医療費がかかるんだというので、たまたま住民同士で話し合ったとき、いわゆる何の治療もしないで点滴だけを受けておるような御老人でも目ん玉ひんむくほどの医療費の請求があるというじゃありませんか。一体何でそんなに金がかかるんだろうかという不満がある。だから市町村自体においてもそういう問題について手を突っ込みたい。手を突っ込みたいが、市町村は最終的に医療費の請求があったときに支払うだけ。もうレセプトの審査もできない、医師の数についても文句は言えない、病院の設置についても文句は言えない、そして医科大学のことについても文句は言えない。大体世の中で自分が金を出して物を買おうかというのに、その買う品物に対してお金を出す人が一切文句を言うてはならぬという、こんな制度があっていいものですか。だから市町村の諸君にどういう権限をこれから与えていくのか。いわゆる支払い主は市町村なんですよ。そういう市町村の諸君がもう全く泣き寝入りをさせられておるということについて大変な不満を持っておるということを強く申し上げまして、今の私の最後の意見に対し、厚生大臣は、うん、なるほどと思ったら思ったということをお答えをいただいて、終わりにさせていただきます。
  151. 藤本国務大臣(藤本孝雄)

    藤本国務大臣 前段の給付負担の公平、これは制度間を通し、また同じ制度内においてそういうふうに進めていくことは、私どもの目標でございまして、全力を挙げて七十年を目途にいたしまして現在取り組んでおるわけでございまして、なおひとつよろしくお願いいたしたいと思います。  さらに権限、監督の問題でございますが、これはお説のことにつきましてはよく私はわかります。したがって、今後国保制度安定化を図る中で、そういう役割分担につきましても十分に検討してまいりたいと考えております。
  152. 岡田(正)委員(岡田正勝)

    ○岡田(正)委員 ありがとうございました。  自治大臣がわざわざお出ましになっておるのに全然お答えがないのはいかぬぞという御注意がありますから、最後に一つだけお願いをいたしますので、決意のほどを伺いたいと思います。  今県、市町村の諸君で非常に心配しておりますのは、六十三年、六十四年度でこの一部改正の問題が行われる。一応その措置をされますから、びた一文損をするわけでも何でもないので、むしろ市町村によっては一日も早くこの法律を通してくださいなんというような希望さえ出るくらいでございますが、さて問題は何かといえば、二年たった六十五年からどうなるのだろうか、そのときに今国のやっておる六十三、四の負担というのを、あれはやめたと言いはせぬか、残るのは借金だけ、いわゆる負担だけというような形にならぬかと言って大変心配をしておりますので、その点地方自治体に対して責任を持っておられる立場から、うん、さようなことはさせぬ、こうおっしゃるか、まあしようがないでしょうとおっしゃるか、ちょっと声を聞かせていただきたいと思います。
  153. 梶山国務大臣(梶山静六)

    梶山国務大臣 大変な激励をちょうだいしたことを、まずもって心からお礼を申し上げます。ありがとうございます。  それから、ただいま御指摘の件につきましては、この二年間で精力的に詰めて、後でいい案ができなかったらどうする、後は野となれ山となれというわけにはまいりません。ですから、この二年間にあとう限り全力を挙げて前進をしてみたいと考えております。そして二年後にできなかったらどうするのだということは、二年たってできなければ負担はいたしませんよということと制度が残りますということではなくて、今やっている制度もお金ももとに戻すわけでございますから、その限りにおいては負担だけが残る、制度だけが残るということではございません。しかし、そうなると一番実害をこうむるのは地域医療でございますから、市町村が困ります。どんなことがあってもこの二年間、そしてまたこの二年間で完全にできなければ、さらに将来の展望を持ってやれるように、この二年間に全力を挙げて詰めてまいりたいと思います。
  154. 岡田(正)委員(岡田正勝)

    ○岡田(正)委員 ありがとうございました。  文部省の佐藤課長さん申しわけありませんでした。
  155. 松本委員長(松本十郎)

    ○松本委員長 柴田弘君。
  156. 柴田(弘)委員(柴田弘)

    ○柴田(弘)委員 私は、まず老人保健の拠出金にかかわる国庫負担見直しの問題について、我が党の平石委員から特に御要望がありましたので、質問をさせていただきます。  現行の老人保健拠出金に対する特例的に高い国庫負担率、五五%でありますが、これは特例としての存在意義があった、こういうふうに思うわけであります。今回国保の体質改善という一般的な国保財政問題とは別のレベルの問題ではないか、このように私は考えております。五五%から五二・五%への軽減は明らかに国費節減のためのものである、このように私は確信をいたしております。  そこで、今回の措置によって四百六十億円の削減を行っているわけでありますが、これは国保の拠出金の増額となり、その分保険料に与える影響も大きいわけです。国保制度の安定を図るという政府の考え方とも矛盾をするのではないかと私は思います。単なる国庫負担の削減であるとの批判もあります。もし見直すのであれば、六十五年度に予定をされている老人保健の加入者按分率見直しのときにあわせて議論すべきことであり、急ぐことはないと思います。この点についてはどうかということ、そしてこの按分率見直しは、六十五年度にするということはもう決まっているのかどうか、この際、厚生大臣にお聞きをしたいと思います。
  157. 下村政府委員(下村健)

    下村政府委員 老人保健の拠出金に係る国庫負担は、国保財政体質というふうなことも考えまして、五十九年に国庫負担率の見直しをした際に、拠出金部分についてはお話しのように五五%というふうな特例的に高い水準を設定しているわけでございます。  今回の措置は、保険基盤安定制度の創設等によりまして、国保制度財政体質が改善されるというふうなことも考慮いたしまして五二・五、これもやや特例と申しますれば特例を幾らか残した格好で、国保財政に対する影響も十分配慮した上で老人保健拠出金についての国庫負担調整しようということでございます。全体的の問題といたしましては、六十五年までに実は老人保健制度については見直しをする。これは按分率一〇〇ということで国会に提案いたしまして、その際九〇までということで国会での御意見をちょうだいいたしまして、六十五年までに見直しをした上で一〇〇の問題を検討する、こういうことになっておりますので、私どもとしては、老人保健制度全体の見直しとあわせて一〇〇の問題は考えるべきものということで、一〇〇だけが自動的ということではない、これが国会の御意思ではなかったかというふうに理解いたしております。
  158. 柴田(弘)委員(柴田弘)

    ○柴田(弘)委員 それからいま一つ、これは岡田委員も今おっしゃいましたが、自治大臣、この制度暫定措置でありますね。六十三年度と六十四年度。しからば六十五年度はどうするか、こういう問題であります。もとへ戻される御決意であるのかどうか、その辺をお聞きをしたいと思う。
  159. 梶山国務大臣(梶山静六)

    梶山国務大臣 岡田委員にもお答えをいたしましたように、二年間の暫定措置であることは間違いのないことでございますが、二年間にこれからの国保制度あり方運営あり方、こういうものに地方自治体がどれだけ関与して改善ができるかどうか、その具体的な詰めをいたしてまいりたいと思います。二年後にそれができなければもとへ戻るということは極めて簡単なことでございますが、もとへ戻って困るのは地域医療、その裏腹になる市町村であり住民でございますから、何とかうまくいくように渾身の努力を払って二年間で将来の展望を開いてまいりたい、現在の決意はそういう状況でございます。
  160. 柴田(弘)委員(柴田弘)

    ○柴田(弘)委員 それではずっと質問に入っていきたいと思います。  まず、私は厚生省に長寿科学研究センターの設置問題についてお尋ねをしたいと思います。二月十九日、この設置につきまして愛知県の県知事が竹下総理に要請をいたしました。総理は愛知県のこともよく御承知になっておりまして、何か核があればいいな、こういうお話でありました。 たまたま愛知県の大府市付近に構想しているマンモス老人総合施設群「あいち健康の森」というものがございまして、これが核になる。 こういうことで総理といたしましても前向きに検討されたと聞いておるわけであります。私自身も「あいち健康の森」一帯に国立公園、運動公園があり最適の場所であると考えているわけであります。  お尋ねしたい第一点は、厚生省は六十二年の九月にこの長寿科学研究センターの基本構想を発表しているわけであります。今後どのような方針で建設設置していくのか、六十三年度以降の方針についてお聞きをしたい。  それから第二点は、去る三月九日衆議院予算委員会の第四分科会におきまして厚生大臣は、厚生省としては同研究センターの基本構想の具体化に向けて検討を進めているが、まだ候補地選定に至ってはいない、大臣になって初めて受けた陳情が愛知県のこの問題である、大変熱心であることは承知している、候補地選定のときに十分考えていきたい、こういうふうに前向きに積極的な姿勢を示されたということでございますが、この大府市周辺「あいち健康の森」への誘致について大臣のお考えはどうか、この二点についてお伺いをしていきたいと思います。
  161. 藤本国務大臣(藤本孝雄)

    藤本国務大臣 長寿科学研究センターの問題でございますが、現在この構想の具体化に向けまして検討を進めております。六十一年度から六十三年度でございますが、毎年調査検討費を計上いたしまして、今日具体化に向けて検討を進めております。したがいまして、現段階におきましては、設置運営主体、規模、立地等につきましては具体的に申し上げる段階ではございません。  また、この長寿科学研究センターの設置につきましては、先ほど御指摘のように、厚生大臣になりまして最初の陳情がこの問題でございまして、私も十分に記憶をいたしておるわけでございまして、稲垣委員長を初め草川委員その他大勢の方から愛知県についての御要望が非常にあるわけでございます。なお、その他の公共団体からの御要望も受けておりますが、非常に熱心な御陳情を愛知県からは受けているというのが現状でございます。今後の問題といたしましては、愛知県を含めまして、候補地につきましては十分に検討してまいりたい、かように考えております。
  162. 柴田(弘)委員(柴田弘)

    ○柴田(弘)委員 各党の先生方も熱心に誘致を進めていらっしゃるわけであります。私からも重ねてお願いをしてまいりますので、厚生大臣、どうぞよろしくお願いいたします。  そこで、これは自治大臣あるいは厚生大臣にお聞きしてまいる問題でありますが、地方自治体の補助金のカット問題についてお聞きをしたいと思います。  まず、自治大臣からお聞きをしていきます。  この補助率のカット、これによりまして、カット以前の五十九年度に比べ一兆六千六百億円ほど国の負担が軽くなっておりますね。それだけ自治体に転嫁をされているわけであります。この六十一年度から三年間でその転嫁額の合計は四兆三千億になっているということであります。自治大臣は二月十八日の予算委員会で、六十一年度から実施しているこの措置は、あくまで三年間の暫定措置で実施をしている、国庫補助率の特例措置は廃止されるべきである、六十四年度予算編成までに廃止の方向で結論を出すと明言をされました。一方、宮澤大蔵大臣は、自治体にとっても好ましいことではないので認めざるを得ないと述べられている。ところが三月二十三日の参議院本会議で竹下総理も宮澤大蔵大臣も、諸情勢の推移を見て総合的に対処すると、いわゆる延長に対する含みを残す発言をされているわけであります。  そこで、自治大臣は、もし六十四年度以降もこのような特例措置が続くことになれば、代替措置として地方交付税の引き上げか、あるいはまた制度改正か、何らかの措置が必要である、こういうふうにおっしゃいましたね。私がここでお聞きしたいのは、そうすれば、地方交付税の引き上げというのは、今国税三税の三二%でありますが、一体どういうお考えであるのか、あるいはまた制度改正というのは一体どういうことを考えていらっしゃるのか。悪く考えるわけではありませんが、自治大臣としては、カットがもし恒久化された場合には、新型間接税の財源というものを自治体に配分することを求める考えで制度改正という言葉をおっしゃったのか。この制度改正の中身をひとつ教えていただきたい、このように思います。いかがですか。
  163. 梶山国務大臣(梶山静六)

    梶山国務大臣 国庫補助負担率の引き下げは、国の極めて厳しい財政事情と内需振興という両面を勘案いたしまして、補助金問題検討会における事務事業や費用負担あり方検討などを経て、六十三年度までの暫定的措置として行われているものでございます。昭和六十四年度以降の補助負担率の取り扱いについては、原則としてもとの補助負担率に戻すべきものであるというふうに考えておりますが、具体的には六十四年度の予算編成時までに各省庁で協議の上定められることとなるわけであります。自治省としては、各事業の性格、国庫補助負担制度の意義等を踏まえつつ、国としての責任が全うされるよう、また地方財政の健全かつ安定的な財政運営の確立が図られるように検討を進めてまいる考えでございます。ですから、この制度が恒久化されるという懸念、全くないと言えば、これまた断定的になりますけれども、いずれにしても、取り決めが六十三年度までの暫定措置でございますので、原則としてもとに戻る。三年前の状況に戻るわけではございませんから、その後の経済情勢や財政状況の相当な変化もあるわけでございますから、そういうものを原則としながら、現況を踏まえながら今後の対策を講じていくということがまず前提条件であります。それからまた、これが恒久化をされるならば、今の交付税の三二%を引き上げるべきだという御意見、当然でございますが、これはあくまでも暫定措置でございますから、今後とも地方財政に大幅な赤字を来す要因とは考えておりません。この補助率カットの問題さえなければ収支は均衡する状態になっておりますので、私はその問題をもって交付税率のアップにつながるということは考えに入れておりません。  それから、制度改正等の代替措置と言うけれども、これは補助率をどうするかとかもろもろの制度で、これは国が行うべきものである、あるいは地方が行うべきものであるという、いわば補助率という問題を離れて考えますと制度上の問題が幾つかあろうかと思います。 ですから、まだまだ予見のできない新しい税の財源をどちらにどう配分をするなどということは、毛頭考えた発言ではございません。
  164. 柴田(弘)委員(柴田弘)

    ○柴田(弘)委員 大臣がいつも御答弁なさっているように、これはやはりもとへ戻すべきですね。それが第一なんです。ところが大蔵省は—きょうは大蔵省来ておりませんが、本来ならば大蔵大臣にも来ていただきたいと思っておったのですが、どこかへ行かれたそうですのでなにですが、あくまで暫定措置である以上はもとに戻すべきだと思いますね。しかし、一歩へりくだって、もとへ戻らなかった場合には地方交付税の引き上げをするのか、あるいは制度改正は税制改革、大型間接税とは関係ない、もっぱら補助率のアップの問題、あるいはまたもろもろのと、こうおっしゃったのだが、そのもろもろの中には税の問題は入っておりませんね、増税という問題は。 そのように好意的に私は理解をしていくわけでありますが、とにかく第一義としてこれはもとへ戻してもらいたい。  そのために、私はいろいろ申し上げたいのは、例えばNTT売却益における融資というのは、昭和六十四年度から六十六年度の毎年度一兆二千億が公共事業の財源として予定をされておりますね。ところで六十三年度は公共事業の伸びが一九・九%の大幅増であったわけでありますが、六十四年度には、景気情勢から見て、公共事業の事業費が六十三年ほどなくてもいいかもしれないと私は思います。そうすると、財政に余裕が出て、補助率復元の余裕も出てくるように私は思われる。  それからもう一つは、この補助率復元については、大蔵省が言っているのは、六十五年度赤字国債脱却のために六十四年度以降も継続するということを固執しているのです。大蔵省はこれは間違いなく固執しています。どうすれば復元が可能かじっくり検討する機関を早急に設けるべきではないか、私はこういうように思うわけなんです。これは厚生省も関係してまいりますが、関係各省とよく詰めて、六十三年度の予算も通過した後でありますから、そろそろそういった詰めの機関というものを設置をしていくべきではないか、こういうように思いますが、この辺はどうでしょうか。
  165. 梶山国務大臣(梶山静六)

    梶山国務大臣 私も懸念をする分野でございます。ただ、この取り決め、補助率カットの問題はあくまでも暫定措置でございますので、私は、六十四年度の予算編成期までに大蔵から、財政当局から合い議がなければ、もとに復元をするものだ、むしろそういう前提に立っております。私が役所を通じて大蔵省に申し入れをしていることは、自治省側から、この補助率カットの復元を私の方から手段として申し上げるべきものではない、大蔵の方から合い議がなければ、自動的に復元をするものだという申し入れをまずいたしております。  それから、補助率カットの問題は、大蔵と自治の間のいわば役所同士の話し合いでございますから、減税の問題と連動することは全くございませんけれども、しかし考えてみますと、補助率カットを復元するというと年間約一兆六千億要るようなわけでございますから、この原資をどこに求めるかといいますと、幸いに景気がよろしいから税収もふえている、そういうことがこれあるので、私からそういう言い方をしては大変失礼な言い方でございますけれども、与野党間で減税の合意も見、さらにその状況が進んでいるわけでございますけれども自治大臣として考えることは、まず約束を守ってもらうことだ。ですから、よそ目ではございますけれども、減税の行方は重大な関心を払っておかないと、分けるべきパイがなくなってしまっては大変だ、こういう懸念を持っていることは私も率直にきょうは申し上げておきます。何とかそういうことがなくて済むように。  それから、NTTの活用の問題に関しましては、これは恒久財源にはなり得ませんから、補助率カットの問題と、これを財源にしてという問題は、恐らく一時的にはできるとしても、そういうことにはなることができないというふうに感じております。いずれにいたしましても、六十三年度までの暫定措置として終われるように、それからさらに国庫補助負担率がどういう姿であるべきか、あるいは生活保護は八割でいいとか九割でいいということではないし、これはまるっきり国が持つべきものであるとか、あるいはその他の問題で地方が持つべきもの、そういう問題をもう一回詰め直して新しい体制で築き上げていかなければならないと思います。  いずれにしても、一兆六千億という金額は決して生易しい金額ではございません。そういうことでございますので、これからの、あるいは増収の分野の比重をどんなふうにこの分野に分けさせるか。私はある意味でそういうものと減税問題の綱引きも現実に増税がないとすればあろうかという感じすら持っているわけであります。
  166. 柴田(弘)委員(柴田弘)

    ○柴田(弘)委員 大臣、参考のために申しておきますけれども、大蔵省は六十五年度赤字国債脱却というのを財政再建の一つの目標に掲げておりますね。やはりそれとの綱引きもあると思うのです。我が党としては、基本政策として、この財政再建の時期を三年ぐらいずらして、六十五年度でなくて六十八年度でもいいじゃないか、こういうふうに考えております。それだけは参考に申しておきますので、今後とも大蔵省と折衝の間において十分なひとつ御検討をいただきたい、このように思います。  次は、厚生大臣生活保護費の問題についてお尋ねをしたいと思います。  御案内のように、これは補助率カットによりまして、昭和六十年度に八〇%から七〇%になりました。大蔵省としては、この七〇%になって今までずっと水準を変えていないものですから、ここで一〇%から二〇%程度の引き下げをしよう、こういうような考えもあるやに聞いておるわけであります。申すまでもなく生活保護法の第一条の「目的」には、「国が生活に困窮するすべての国民に対し、その困窮の程度に応じ、必要な保護を行い、その最低限度生活を保障する」云々、こういうふうにあるわけであります。生活保護の事業の主体は国なんです。ですから、補助率カットの問題のときに、八〇%が七〇%になり、またその七〇%から六〇%、五〇%に切られないことはもちろん、むしろ私は七〇%から八〇%に復元する決意を持ってひとつ予算折衝に当たっていただきたい、こういうふうに考えておるものでありますが、いかがでしょうか。
  167. 藤本国務大臣(藤本孝雄)

    藤本国務大臣 私も柴田先生と同じ考え方でございまして、まさにこれからの問題だと心得ております。関係省庁十分に相談をして決められる問題でございますけれども、精いっぱい努力をしてみたい、かように考えております。
  168. 柴田(弘)委員(柴田弘)

    ○柴田(弘)委員 自治大臣ともよくお話しをいただきまして、両大臣お話しをいただきまして、ひとつ復元をしていただきたい、要望してまいります。  それから、これは簡潔に御答弁いただければ結構でございますが、厚生年金基金の自家運用の問題について一通りお聞きしたいと思います。  この自家運用の改正法案は今国会提出は断念されたわけでございます。国民年金や厚生年金などの公的年金を補完する企業年金の中核としての厚生年金基金、これはスタートしてもう二十二年になるわけでありますが、今いろいろお聞きいたしますと、大企業を中心にして千百三十四基金、七百二十五万人が加入をしておりまして、積立金も十四兆五千億に達しておる、こういうふうに言われておる。金融の自由化、国際化のいうのはもう常識でありまして、国際社会における日本の役割も大きくなってまいりまして、銀行あるいは証券といえども欧米並みの門戸開放は当然のことだ、私はこう思うわけであります。  しかも、今回厚生省が考えておったのは、資産二百億円以上の大型基金について積立金の三分の一以内で自家運用を認めるというものであって、こうした制約もあるのになぜ大蔵省が反対するか。いろいろ聞いてみると、事前に相談がなかったということもあったわけでありまするが、いずれにいたしましても、大部分は従来どおり信託と生保が運用するわけなんです。もうやるべきだ。とにかく加入者の立場からすれば、あなた任せの運用でなく基金自身による自家運用によってより効率的に利益が出るようにしてほしい、こう思うのは当然のことであるわけであります。さらに年金資産運用の活性化にもつながるわけであります。  このことと加えて、転職した場合の通算制度や企業が倒産しても年金が受けられる支払い保証制度の創設というものが盛り込まれておったわけです。これは非常にいいことだ、こう思います。また政府の長寿社会対策大綱でも「企業年金制度の充実」というのはうたわれておるわけでありまして、役所の縄張り争いやあるいは金融業界の垣根論争、政争の具にしてはいかぬ、こういうふうに思います。この辺の大臣の御見解。そして厚生省は今国会は断念したのだが、次期の通常国会では、この自家運用というものを一歩先に進め、投資顧問会社にも預託できる受託機関の拡大を盛り込む方向で検討すべきだと私は考えておるわけでありますが、その辺のお考えを、ありましたらお聞かせをいただきたい、このように思うわけであります。
  169. 水田政府委員(水田努)

    ○水田政府委員 まず、運用範囲の拡大の問題でございますが、本年三月十五日付で、大蔵、厚生事務次官の確認書で「厚生年金基金及び同連合会の資産運用問題については次期通常国会に法案を提出するものとし、そのため運用方法を拡大する方向で、両省が誠意をもって協議する。」という確認を交わしたところでございますので、金融の自由化の流れに即して、この確認書の線に沿って次期通常国会に法案が提出できるよう、私ども最大限の努力をしてまいる所存でございます。  それから次に、支払い保証制度でございますが、この問題につきましては、既に今国会提出しております基金制度の改善内容の重要な柱の一つとして、既に今国会に提出をいたしておるところでございます。
  170. 柴田(弘)委員(柴田弘)

    ○柴田(弘)委員 局長、ちょっと、すぐ終わりますので。  あなた記者会見で、異業種の企業が集まっている工業団地のようなところにも厚生年金基金の設立を認める地域型厚生年金基金について、厚生年金保険法の改正成立後早急に省内でプロジェクトをつくり、前向きに対処する、こういうふうに以前に述べられておるわけですね。きょうの毎日新聞を見ますと、トップで「「地域健保」六月にも認可 まず宮城、長野で 工業団地など事業所集団」ということで、「六月にも宮城、長野両県内の卸(商業)団地から提出されている設立申請を認可する見通し」であるということで、今後とも、こうした異業種間の共同事業のため、保険料の算定基準となる標準月額報酬の設定など難しい点もあるわけでありますが、厚生省としては条件が整い次第認可する方針であるということが言われております。これは事実かどうか。それから今後の方針。そしてそのメリット等々についてお聞かせをいただきたい。
  171. 水田政府委員(水田努)

    ○水田政府委員 基金制度の改善につきまして今国会に法案を提出いたしておるところでございますが、国会に法案を提出するに先立ちまして年金審議会に諮問をいたしましたところ、その諮問に対する答申で、工業団地等における地域型の基金についてもこれを認める方向で工夫するようにという附帯意見をいただいておりますので、私ども前向きに検討してまいりたいというのが基本的な姿勢でございます。  その場合に、私ども、おおむね三つのことを念頭に置いて慎重な検討を要するというふうに考えております。  その一つは、年金制度でございますので、非常に長期にわたる制度でございますので、工業団地等の地域型基金、それを支える母体になる興業種の母体の組織というものが長期的に維持され得るものでないと空中分解してしまいますので、同種同業の場合は同業組合等があるわけでございますが、異種業種の場合はそういうものがないわけでございまして、母体として十分長期的に安定的に支え得る組織体があるかどうか、その面のチェックが十分必要であると思います。  それから二番目に、私ども問題として考えておりますことは、厚生年金基金というのは、厚生年金の代行給付の上にいわゆる労働条件として労使の話し合いによってプラスアルファの年金を乗せる、これが本来の目的機能になっているわけですが、このプラスアルファの年金というのは、非常にすぐれて労働条件に密接に関連する問題で、賃金体系なり退職金と非常に関連し、その線上で考えられるというのが一般的でございまして、同種同業の場合でございますと、賃金体系なり退職金というものがかなり似通っているわけでございますが、異業種間になると、そこがかなり区々であって、それを統一したような形での給付の設計が果たしてできるのかどうか、これも慎重な検討を要するというふうに思っております。  それから第三に、やはりどこの企業もそうでございますが、自分で単独でつくった方が簡単だし楽なわけでございまして、私ども今度の改正法案がお認めいただいて成立しましたら、単独企業の場合の人員規模というものをかなり大幅に引き下げるつもりでおります。そうなりますと、それなら単独で自分でつくるつもりだったというようなことで、できてそう余りしがらみがないからすぐそちらの方に乗り移ろうかというようなところが出ても困るものですから、そういうことと、やはり総合的に勘案してスタートさせなければならぬということで、私ども、一応法案が成立しまして一年ぐらいの慎重なプロジェクトによる総合的な検討をした上で、年金制度でございますので、将来悔いが残らないような形でスタートをさせてもらいたい、このように考えているわけでございます。  健康保険組合の関係につきましては、保険局長の方からお答えをさせていただきます。
  172. 下村政府委員(下村健)

    下村政府委員 けさの新聞報道健康保険組合の方でございまして、大体新聞報道のとおりでございますが、見出しでは工業団地になっておりますけれども、卸の商業団地、宮城県と長野県の両県におきまして六月の設立ということを目標にいたしまして今具体的な検討を進めているということでございます。  今後の問題といたしまして、私どもとしては、まだ申請書ができていないという状況でございますが、具体的な申請を待って対処していく方針になりますが、的確なものであれば当然これを認めていきたい。今後も同様な条件のものが出てくれば設立を認めてはどうだろうか、このように考えております。(柴田(弘)委員「メリットは」と呼ぶ)メリットは、これはやはり健保組合一般のメリットということになるわけでございますが、従来から健康保険組合は業種別というふうな組織がむしろ通常でございます。ただ、それだけで十分に組織し切れない、特に地方に参りますと、同種同業といいましてもなかなか一つ健保組合までにまとまるものは数が少ないというふうなものの場合に、こういった地域的な形によって健康保険組合ということが設立しやすくなるのではないか。そこが一つのメリットであろうと考えております。  私どもとしては、そういうことで、健康保険組合はそれなりの小集団としての健康管理でありますとか、いろいろな経営努力の点でも十分メリットがあるので、そういう利点が生きるような形で運営をやっていけば、こういうものができていくということが大いに意味があることではないかと考えております。
  173. 柴田(弘)委員(柴田弘)

    ○柴田(弘)委員 次は、厚生白書の問題につきまして、六十二年度版でございますが、お伺いをしていきたいわけであります。  まず三点、お伺いをします。今回の白書は、これまでのような制度面の整備だけでなく、マンパワーという運用面の整備と改革に初めて焦点を当てられたわけであります。社会保障を支える人々は、現在、医師、看護婦、理学療法士、家庭奉仕員、社会福祉士などで、約三百三十万人、これは昭和六十一年の統計でありますが、いらっしゃるわけであります。ところが昭和七十五年には約四百七十万人が必要であると予測をされている。医師、歯科医師は既に量的には一定水準が確保されているのに対して、高齢化社会の到来に伴ってふえる介護サービスや看護サービスに従事する人の拡充も求めているというわけであります。これについての対策はどうかというのが第一点。  第二点は、一方こうした専門技術が必要でないボランティア活動の重要性を指摘し、欧米各国に比べて未成熟であるとしているわけであります。このために、今後は家庭の主婦や老人、企業がボランティア活動に参加しやすいような環境づくりと国民側での福祉マインドの醸成を強く訴えているわけであります。具体的にどう対応されるのか、こうした人材をどう確保していくか、具体案があるはずでありますが、白書の中には一向に政府の責任ある提言がないわけであります。いかがでしょうかということであります。  第三点は、日本のボランティア活動の活発さと幅広さは、婦人の職場進出の影響を受けて退潮ぎみである、もしそうであるならば、白書はもっと克明に日本はなぜ欧米に比べてボランティア活動が普及していないのか、その歴史的、社会的、文化的背景は何か、日本が豊かになる過程でなぜ十分に発展してこなかったかなどを分析をして、国際比較を交えながら白書に載せるべきではなかったか、このような考え方でおりますが、この三点について、大臣、いかがでございましょうか。
  174. 黒木政府委員(黒木武弘)

    ○黒木政府委員 第一点のマンパワー全体のお話でございますけれども、私どもは、今回初めて「社会保障を担う人々」ということでマンパワーの問題を白書に取り上げさせていただいたわけでございます。これからの高齢化を控えまして、財源という大きな問題もございますけれども、やはり社会的なサービスを充実していくという意味でマンパワーの問題が非常に大切であろうという認識からでございます。そういった意味で、お尋ねのように介護サービスなりあるいは看護サービスのマンパワーの点が特に重要になってくるわけでございます。  私どもは、できるだけ長期的な視点に立って、計画的に養成なり確保なり質の向上を図ってまいりたいというふうに考えておりますが、特に寝たきり老人等の福祉に関する相談とか介護のための人材の養成確保という観点から、先般社会福祉士及び介護福祉士法というものを制定したところでございまして、これに沿ってこういった方々を養成していきたい。それから看護婦等につきましては、近く第三次の看護婦需給計画を作成することにいたしておりますとともに、老人にはリハビリテーションが特に大事でございますが、OT、PTの方々につきましても、需給計画の見直しを含めて一層の養成確保に努めてまいりたいというふうに考えております。
  175. 小林(功)政府委員(小林功典)

    小林(功)政府委員 御質問の第二点、第三点、ボランティアに関するものにつきましては、私からお答えいたします。  確かに、活力ある福祉社会ということを考えます場合に、各種の公的施策は当然に必要でございますけれども、同時にそれにあわせて国民の自助努力あるいは社会連帯精神に基づく福祉活動への自発的な参加ということが大変重要であると考えております。そういった意味で、今御指摘のボランティア活動の育成、振興、これは大変重要な課題であるという認識を持っております。  私どもといたしましては、このボランティアにつきましては、ボランティアが地域社会で活発に、しかも永続的に展開されるように、その基盤となるような人的あるいは物的な諸条件を整える、つまり環境整備をするということが我々の使命であろうという考えを持っておりまして、そのために、例えば昭和六十年度からモデル事業といたしまして福祉ボランティアの町づくり事業、俗にボラントピア事業と言っておりますけれども、これを実施しております。内容としましては、ボランティアの育成でありますとか研修、登録、あっせん、組織化等々を内容とする一種のメニュー事業でございますが、このボラントピァ事業をやっておるというのが一つ、それからさらに昭和六十一年度の税制改正におきまして、ボランティア活動に対する民間資金導入のためのいわば条件整備を図るという観点から、ボランティア基金に対する寄附金につきまして指定寄附金の取り扱いを行うことが、これは新たに認められております。  そういったことで、いろいろボランティアの振興につきまして知恵を絞っているつもりでございますが、これはさらに今後も積極的に進め、ボランティアの自主性を損なわない範囲でさらなるボランティア活動の活発化ということについて努力を続けてまいりたいと思っております。  それから、第三点の国際比較の問題でございますが、特に福祉の分野でボランティアの重要性は大きいわけでございますけれども昭和六十二年七月の関係団体の調査によりますと、現在社会福祉協議会に登録されておりますボランティアの数を見てみますと、六十二年七月で約二百九十万人でございます。これは昭和五十一年は百三十六万人でございましたから、約二倍強になっているわけでございます。そういうことで、徐々にではございますがボランティアの数も非常にふえておるということでございますけれども、次に国際比較の問題、これは本来的に民間における自主的、自発的活動でありますために、国際的にいわば共通の土俵の上で数量的にこれを比べるということはなかなか難しいわけでございます。そのような資料もなかなかないということで、いわゆる統計的手法での比較はちょっと難しかろうという感じを率直に申し上げざるを得ません。ただ、外国の事例などで非常に参考になるようなものがあれば、これはどんどん取り入れまして、国内でも紹介するといった努力は続けたいと思いますし、ボランティア活動への国民の参加意識の盛り上げにも、それは資するわけでありますから、そういった方向での努力は続けてまいりたいと思います。ただ、ボランティアは、よく言われますように、欧米の場合にはどうもボランティアの基盤として宗教的な基盤があるという感じがいたしますので、そこら辺が日本との基本的な違いなのかなという印象は持っております。
  176. 柴田(弘)委員(柴田弘)

    ○柴田(弘)委員 そこで、これからが問題でありますが、これは大臣にぜひ御答弁をいただきたいわけでありますけれども、この社会保障制度の柱である医療や年金などの制度改革の指針では、公的年金を七十年をめどに一元化することを改めて唱えている。しかし、医療保険一元化は、必要性は認めながらも、その実施時期については触れられていないですね。六十一年度版がたしかこの医療保険一元化というのは六十年代後半のできるだけ早い時期と明示したのに比べ、後退した印象を与えているというふうに私は感ずるわけであります。その理由はどうでしょうか、お伺いをしたいと思います。
  177. 藤本国務大臣(藤本孝雄)

    藤本国務大臣 今後高齢化が本格的に進んでまいります中で、社会保障制度の長期安定は極めて重要な問題でございますし、また社会保障経費も増大することはやむを得ないわけでございまして、そういう中で最も大事なことは、給付負担が公平公正でなければならない、これは最も大事な問題だと思います。  かねてから、御承知のように、公的年金制度につきましては昭和七十年を目途として一元化の努力をしてまいります、こういうことを申し上げているわけでございます。また医療保険制度につきましても、昭和六十年代の後半のできるだけ早い時期に一元化を進めてまいりたいということを申し上げておるわけでございまして、御指摘のように、白書の記載が六十二年度にはないからということで後退をしておるわけではございません。私ども考え方は変わっていないわけでございまして、昭和六十年代の後半できるだけ早く医療保険制度給付負担の公平を図っていく、つまり一元化ということについては今後なお努力をしてまいりたい、考え方は同じでございます。
  178. 柴田(弘)委員(柴田弘)

    ○柴田(弘)委員 であるならば、今回のこの国保改革は、医療保険制度一元化の中でどのような位置づけを持つものであるか、やはりこれを明確にしていかなければいけないと思います。私自身その点がどうも不鮮明でわからないわけであります。この医療保険制度一元化を今後どうして、どのような手法で六十年代後半までに行っていくのか、今後どのような制度改革を行っていくのか、十分な検討もされずに、私は今回のこの国保改革は余りにも性急過ぎたのではないかというふうな感じを持っております。それと国費削減に主眼を置いたような形で改革を行うことが果たして適切と言えるかどうか、これも大いに疑問を持っているわけであります。  今回のこの改正が、一元化との関係で、国保安定化を図ることがその目的であると同時に、将来の医療保険制度一元化のステップである、このようにあなたの方がおっしゃるならば、この一元化の時期と、そしてそれまでにどういう改革を行っていくのか、そして一元化を行ったそのときの社会の姿というのはどうか、給付負担あり方はどうなんだ、中身はどうなっているのだ等々具体的な一元化の構想があって今回の国保改革がありますよ、やはりこういった明確な位置づけをすべきではないか、私はこのように思っておりますが、大臣、どうでしょうか。
  179. 藤本国務大臣(藤本孝雄)

    藤本国務大臣 将来の医療保険制度一元化に向けまして、今日までいろいろと改革を進めてまいったわけでございます。御承知のとおりでございまして、老人保健制度、また健康保険法の一部改正、今回の国保改革等々は一元化のための条件整備であるわけでございます。  今後の問題といたしましては、六十五年度までに老人保健の見直しがございますし、また国保改革も、制度といたしまして国、地方が共同して国保改革に取り組む、そういう制度をつくったわけでございます。暫定的に二年間というふうに考えておるわけでございまして、六十五年度までにこの国保改革の推移、また老人保健の見直し、そういうものを見きわめまして、六十五年度以降どういうふうに進めていくかということにつきましては、その後考えてまいるというのが今の考え方でございます。  将来の手順、またいつ一元化が行われるかということの明示の問題につきましては、御指摘、御意見はよくわかるわけでございますけれども医療の問題は年金の問題とは異なりまして、将来経済社会の諸条件がどうなるかとか、国民生活の推移がどうなるかとか、また制度改正する場合には国民のコンセンサスも必要であるわけでございます。今の時点で目標、水準は申し上げられるわけでございますけれども、具体的に、それは何年にそういうことを改正するとか、そういう計画であるとかいうことは、今の時点ではそういうことを織り込むことができませんので、はっきり申し上げられないということにつきましては、御理解いただきたいと思います。
  180. 柴田(弘)委員(柴田弘)

    ○柴田(弘)委員 白書の中にこう書いてあります。   人口の高齢化が急速に進展するなかで、二十一世紀までに残された十数年間は、経済社会のソフト化、サービス化に対応し、国民生活の質の向上を図るための社会保障の成熟化へ向けての制度改革期間である。   なお、各般にわたる制度改革前提としても将来にわたり相当程度の国民負担増は避けられないところであり、社会保障制度の安定的運営を維持していくためには、社会的な公平と公正の確保という観点に立って、将来の負担増について国民的な合意を得ていく必要がある。 これは一番大事なところだと思います。  そこでお聞きしたいのは、「各般にわたる制度改革」というのは、今大臣も御答弁になりましたように、今までずっとやっていらっしゃった。それは敬意を表します。我が党が反対した法案もありますが、やっていらっしゃった。ところがこの医療一元化というのは六十年代後半だ。六十五年度の老人保健のあり方、あるいは国保改革あり方等々をやって、その推移を見ながらやっていくといったって、六十年代後半というと六十五年以降六十九年までですよね。あと二、三年なんですよ。その間に、ここでおっしゃっている制度改革というのは一体何があるのか。 そして国民負担増は避けられない、こうおっしゃっているのですが、負担増はどの程度まであなたの方は考えていらっしゃるのか。そして何よりも大事なのは、一体そのときの我が国の福祉社会の青写真というものはどうなっているのか。ビジョンというのはどこにあるのか。やはり僕はそういうものが必要であると思います。いろいろ申し上げましたが、いかがですか。
  181. 藤本国務大臣(藤本孝雄)

    藤本国務大臣 将来の高齢化社会のビジョンにつきましては、政府で昭和六十一年に長寿社会対策大綱を、いわゆる人生五十年型から人生八十年型の経済社会を再構築する、そのための指針として発表しているわけでございまして、これは政府全体として取り組んでおるわけでございます。また厚生省といたしましては、同年同じく高齢者対策企画推進本部報告という形で、医療、年金、福祉等につきまして将来のビジョンを出しているわけでございます。  それから、負担の問題につきましては、これは御承知のように、給付と裏腹の関係にあるわけでございまして、どの程度の負担が必要かということにつきましては、どの程度の給付国民が必要とするか、こういうことと裏表の関係にあるわけでございます。したがいまして、将来の負担の限界といいますか、どの程度の負担ということを考えますことは、すなわちどの程度の給付を必要とするかということでございまして、これは将来の問題でございますので、最終的には国民の皆さん方の選択にまつわけでもございますし、今の時点で固定的にこれを考えるということはなかなか難しい問題だと考えております。     〔松本委員長退席、片岡(武)委員長代理     着席〕
  182. 柴田(弘)委員(柴田弘)

    ○柴田(弘)委員 そこで大臣、大蔵省と厚生省が共同で予算委員会に提出いたしました、二十一世紀初めの社会保障の給付負担の展望、これを見ますと、社会保障負担国民所得に占める割合、いわゆる社会保障負担率が、昭和六十三年度の一一・一%から昭和七十五年度には一四%から一四・五%、昭和八十五年度には一六・五%から一八・五%、年々上がっていくわけであります。租税負担率を加えた国民負担率は六十三年度は三六・六%でございますが、西暦二〇一〇年度には四〇%台半ばまで高まり、二〇二〇年には五〇%を超すことも想定される、こういうふうに言われております。もちろん二〇一〇年度の総人口は一億三千五百八十二万人、その二〇%が六十五歳以上の老人人口と推定をしている、あるいは一九八九年度以降の国民所得の伸びを四%から五・五%、こういうふうに一定の仮定を置いて出されたわけでありますよね。現行制度をこのままにして、一定の仮定を置いて出された試算ではありますが、やはり一つの事実は事実だと私は思います。  そこで、臨調、行革審は、あるいは「八〇年代経済社会の展望と指針」でも、欧米各国よりも、五〇%を超えちゃいけないんだ、四〇%前半ぐらいのところで国民負担率をとめていかなければならない、こういうことを絶えず答申をしてきたわけですね。だから問題は、確かに給付負担あり方は裏腹になるとおっしゃったあなたの言うことはよくわかりますが、一体どういった社会像で、そしてそのときの給付はどうあるべきだ、そして国民のコンセンサスを得る負担というのはどうあるべきかというものを、整合性ある未来の社会像というものをきちっと出さないと、国民理解と納得が得られぬというふうに私は思っておるわけでありますが、その辺どうでしょう。
  183. 藤本国務大臣(藤本孝雄)

    藤本国務大臣 将来の国民負担率の問題、どの程度を目標としておるかということでございますが、今まで国会でもいろいろ御議論があったわけでございますが、これは大蔵大臣も御答弁されておられますように、私どもとしては、ヨーロッパの例を参考にしながら、国民負担率については、臨調の答申にもございましたように四五、六%が多数意見である。また大蔵大臣も自分も同感であると言われておられますが、まさしくそのような水準が最も好ましい水準であるというふうに私どもも考えております。
  184. 柴田(弘)委員(柴田弘)

    ○柴田(弘)委員 問題は、その国民負担率になるのにどのような医療一元化等を目指して今後制度改革を図っていくのか、あるいは二十一世紀の社会を展望してどのような制度改革を図っていくかというのを私はお聞きしているわけなのですよ。それはどうなのですか。
  185. 藤本国務大臣(藤本孝雄)

    藤本国務大臣 その点につきましては、先ほど申し上げましたように、制度改革という問題につきましては、国民のコンセンサスが必要であるわけでございますし、またその時期につきましては、当然その時点での国民生活状況であるとか、またその時点での社会経済の諸条件というものを考えて制度改正していかなければならぬわけでございまして、今の時点でそれらの諸条件の変化また国民生活状況等を織り込むことは難しい問題でございますので、今の段階でいつの時点でこういう制度改正を行うということを申し上げるのは難しい、こういうことでございますので、御理解いただきたいと思います。  ただし、申し上げておりますように、目標、水準につきましては、昭和六十年代の後半のできるだけ早い時期に医療保険制度につきましては負担給付公平化、つまり一元化を図っていく、そのためには、六十五年度までは、先ほど申し上げましたような見直しを行いまして、国保制度の安定を図り、他の医療保険制度との言ってみれば均衡といいますか、よく似たところへ持っていくために今私どもは努力しておるわけでございまして、そういう条件の整備を図った上で最終的に判断してまいりたいと考えておるわけでございます。
  186. 柴田(弘)委員(柴田弘)

    ○柴田(弘)委員 その一元化で確認のために私もう一回お聞きしたいのですが、これはまだ答弁できないかもしれませんが、医療保険制度にはいろいろあるわけです。我が国の医療保険制度は被用者を対象とする健康保険、政府管掌健保、組合健保、船員保険、国家公務員、地方公務員あるいは私立学校等の各共済組合もあります。他方、今審議しております自営業者を対象とする国民健康保険、いろいろあるわけですね。一元化というのは、制度をみんなばらばらにしてしまって、その制度を統合してやるのが一元化なのか、あるいはそれぞれの制度を残して、ただ給付負担の公平のために財政上の負担調整をするのが一元化なのか。大臣の頭の中にあるこの一元化の概念、簡単でいいですから、お聞かせ願いたいと思います。     〔片岡(武)委員長代理退席、松本委員長着席〕
  187. 藤本国務大臣(藤本孝雄)

    藤本国務大臣 今申されました全部を一つにするというのが一本化だと思います。それから各制度をそのまま残しまして、その制度について給付負担を同じにする、公平にする、これも一元化でございまして、私の一元化というのは、今の制度前提にして給付負担の公平を図っていく、こういうことを申し上げておるわけでございます。
  188. 柴田(弘)委員(柴田弘)

    ○柴田(弘)委員 そこで、きのうもレクチャーのときに、私ども公明党の「「国民基本健康保険制度」の創設」という問題で、基本政策になっておるわけでありますが、時間の都合上全部言うことはできませんが、コピーをして既にお渡しして、大臣もお読みいただいたと思いますが、いろいろな保険制度がある。   特に、サラリーマンが定年退職後に加入する国民健康保険は、老人加入者を一二・五%(六十一年度)も抱えており(政管健保四・三%、組合健保二・九%、共済組合三・九%)、国保財政は危機に陥っています。昭和五十八年には老人保健制度が、その翌年には退職者医療制度が創設されて、各制度間の財政調整等が図られていますが、抜本的な対策とはならず、そればかりか医療保険制度は、いよいよ複雑なものとなってしまっています。   このままでは、わが国の医療制度は、来るべき高齢化社会において十分機能することができなくなる恐れが出てきています。従って、公明党は、医療保険における給付負担公平化を図り、かつ医療保障を将来にわたって安定的に維持させるために、企業や職域や地域といった現行医療保険制度の枠組みを越えた全国民基盤とする適正な給付内容をもった「国民基本健康保険制度」を提言し、国民合意の形成を図りつつ、医療制度の抜本改革に取り組みます。 こうありまして、細かく十二項目にわたって提言をしておるわけです。  その中の主なものを数点申しますと、   基本健保は政府管掌として、基本健保に関する事務は現行の各保険者に委任する。   基本健保の医療給付基本給付)は、本人、家族、入院、外来の別なく、すべて同率とするとともに、高額医療費制度を抜本的に改善し、家計の負担能力に応じたキメ細かな仕組みを確立する。また、出産、死亡、育児等についての現金給付制度を設ける。   高齢者については、基本健保の医療給付に上乗せして給付を行う。   基本健保の保険料の定め方は、サラリーマングループ(政管、組合、共済)と自営業者等のグループの二種類とし、サラリーマンは、標準報酬の一定割合を、自営業者等は世帯単位に現行国保の課税方法をベースに、全国一律の料率とし、両グループの負担に不公平がないように定める。 等々十二項目あるわけでございます。  いよいよ一元化を目指して、今負担調整だとおっしゃったわけでありますが、我が党の意見も政策的に御勘案いただきまして取り組んでいただきたいと思いますし、現実に私どもの労作である国民基本健康保険制度についてどのような御認識、御見解をお持ちになっているのか、あわせてお聞かせいただきたいと思います。
  189. 藤本国務大臣(藤本孝雄)

    藤本国務大臣 公平化の具体的な進め方につきましては、いろいろな御議論もございまして、私どもといたしましては、今後社会保険審議会等の場も含めまして、さらに検討を進めてまいるわけでございますが、公明党の御提言になっております国民基本健康保険制度、この構想は公平化につきまして非常に思い切った御提案であるわけでございまして、私どもはそういう点で評価をさせていただいております。
  190. 柴田(弘)委員(柴田弘)

    ○柴田(弘)委員 時間もだんだんなくなってまいりましたので聞いておきますが、将来の負担給付の関係です。  私は、多様なシナリオがあってもいいと思います。それは国民的なコンセンサスを得るためには一つだけではだめなので、いろいろなシナリオをつくったらどうかと思います。それの提言をいたしたいと思います。  今回の試算といいますか、大蔵省と厚生省の推計は、あくまでも現行の仕組みが変わらないという物差しを使ったものである。しかし、現実はこの試算のもとになる要素は大きく変わることが予想され、例えば雇用一つとってみましても、労働省は六十歳以上への雇用延長が進むとしておりまして、もしそうなれば、年金の受給者が保険料負担する側に回ることになる、またこれからは女性の労働力率が高まるとされており、ここでも基礎的なデータは違ってくるわけであります。さらに試算では、厚生年金の支給開始年齢を、現行は六十歳としているが、どうも政府の方は近い将来に六十五歳までおくらせたい考えを持っているわけであります。この賛否は別といたしまして、六十五歳支給となれば年金支出が減り、負担もそれだけ低いところで抑えることができるわけであります。年金が暮らせる水準に落ちつけば、ふえる老人の消費活動は内需拡大につながるという指摘もあるわけであります。それは経済構造の変化をもたらすことになるわけでありますね。こういったシナリオになる。それでむだを排除したりあるいは雇用のあり方を変えたり、何よりも日本の経済構造の転換を図る、つまり国民所得、パイを増大させるための内需拡大、日本の経済と社会の体質転換を図って高齢化社会に対応していくことも決して不可能じゃない、私は今こんなふうに思います。でありますから、一つの試算だけではなく、幾つかの変動要因をもとに多様なシナリオを描いて柔軟な議論を進めていくべきであると思います。二十一世紀に向けて、そのための時間は私は十分にあると思います。きょう大蔵省来ておりませんが、大蔵省も政府も初めに大型間接税ありきという議論ではなくて、まず不公平税制の是正、制度面、執行面、しっかりやる。そして行政改革を徹底をする。そして数年かけてしっかりと二十一世紀の社会の展望はこうなるという一つの青写真というものも描いて、負担給付はこうなりますよ、こういって国民のコンセンサスを得て議論をしていく。そういった努力を続けた上で高齢化社会への軟着陸を図ることが賢明な行き方である、こういうように私は考えるわけであります。だれもが納得できる国民負担率とは望ましい社会を目指した後に結果として出てくるものである、私はこのように思います。この辺につきまして、厚生大臣自治大臣の御見解を伺いたいと思いますが、いかがでしょうか。
  191. 藤本国務大臣(藤本孝雄)

    藤本国務大臣 税制改革の問題につきましては、私から御答弁を申し上げる立場ではございませんが、私なりに考えてみますと、今回の税制改革というものは、国民が感じております税制に対する不公平感を払拭して安定的な税体系を構築する、その際に高齢化も視野に入れて御議論を願っておる、こういうふうに考えておるわけでございます。  また、高齢化の問題につきましては、御意のように、まだ大分先の問題でございますけれども、現実には毎年百万人の年金受給者もふえておりますし、年金の給付について申し上げますと一兆五千億、また医療給付につきましては一兆円の給付がふえておるわけでございますので、今から取り組んでいくということは極めて大事なことである考えております。その場合に、御指摘のように、将来の社会保障制度についてのビジョン、目標、水準を含めまして、それを国民に具体的に提案をしてコンセンサスを得て進めていくべきであるという御議論につきましては、私は同感でございます。目標、水準につきましては、できる限りこれからも国民の皆様方に御理解をいただくためにお出しする、そういう考え方でございます。
  192. 梶山国務大臣(梶山静六)

    梶山国務大臣 厚生大臣の申されたとおりでございまして、力を合わせて長寿社会に対応する努力を払ってまいりたいと思います。
  193. 柴田(弘)委員(柴田弘)

    ○柴田(弘)委員 もう時間があと五分足らずになりましたので、最後に一つだけ厚生大臣に聞いていきたいと思います。  効率的な医療経営のための提言ということで、私のある友達が公認会計士をやっておるわけなんですが、医療法五十二条を改正したらどうだ。つまり医療法五十二条は、御承知のように民間医療機関が毎会計年度終了後二カ月以内に財産目録、貸借対照表及び収支計算書を作成することを義務づけている。ところが収支計算書とは資金繰り表のことであり、経営の成績を示すものではない。ですから、収支計算書に加えて損益計算書の提出を義務づければ、医薬品の実際の使用料はもとより毎月の医療行為も明示されることになり、効率的な経営ができ、むだも省くことができるのではないかということなんですが、聞くところによりますと、そういった改正のお考えもあるやに聞いております。その問題と、医療法もいろいろ問題がその他出てきたと思いますが、もし私が指摘した以外の問題等もあれば、それも含めて、今後の医療法の見直し改正について、簡潔で結構でございますから、大臣から御答弁をいただきまして、私の質問を終わりたいと思います。いかがでしょうか。
  194. 藤本国務大臣(藤本孝雄)

    藤本国務大臣 医療法人が提出すべき財務書類につきましては、損益計算書の提出を義務づけるべきではないかという御指摘の点、私もごもっともだと思います。御指摘の点を踏まえまして今後十分に検討してまいります。
  195. 柴田(弘)委員(柴田弘)

    ○柴田(弘)委員 それ以外にありますか。
  196. 仲村政府委員(仲村英一)

    ○仲村政府委員 ただいまの点を含めまして、私ども六十年十二月に医療法を改正させていただいて、今地域医療計画をどんどん作成していただいているところでございますが、その際にもいろいろ附帯決議等がございましたし、私どもといたしましても、今後いろいろ御意見がございました医療費の適正化対策とか、そのために供給体制を見直すというふうな問題がございますので、今後医療法を改正するということで、時期はまだ未定でございますけれども検討しておりますので、例えば慢性病院と急性病院にもっと機能を分けたらどうかとか職員の配置のあり方、病院の職員の標準数を決めておりますが、それを見直すとか、広告規制がかかっておりますが、患者さんにもっと的確な情報がわかるようなことでの規制を見直したらどうか、あるいは診療科名といいますが、内科、外科ということだけでなく、もっと細かくあるいは専門がわかるように見直したらどうか、いろいろの課題がございますので、そういう課題検討いたしました上で、第二次医療改正と申しますか、医療改正を企図しておりますので、先ほどの点も含めまして、なお検討を続けてまいりたいと考えております。
  197. 柴田(弘)委員(柴田弘)

    ○柴田(弘)委員 時間が参りましたので、これでやめます。どうもありがとうございました。
  198. 松本委員長(松本十郎)

    ○松本委員長 岩佐恵美君。
  199. 岩佐委員(岩佐恵美)

    ○岩佐委員 国民健康保険法の第四条「国及び都道府県の義務」というところで、「国は、国民健康保険事業運営が健全に行われるようにつとめなければならない。」こう国の義務を規定しています。また第五条では、「市町村又は特別区(以下単に「市町村」という。)の区域内に住所を有する者は、当該市町村が行う国民健康保険の被保険者とする。」とし、他の保険制度に入っていない人すべてを対象にしているわけであります。ところが一昨年の法改正で、第九条三項「市町村は、災害その他の政令で定める特別の事情がないのに保険料地方税法の規定による国民健康保険税を含む。)を滞納している世帯主に係る被保険者証の返還を求めることができる。この場合において、当該世帯主は市町村に当該被保険者証を返還しなければならない。」つまり被保険者証の返還を求めるそういう条項を加えたわけであります。  そこで、厚生大臣に伺います。  保険証返還の問題について前の斎藤厚生大臣は、我が党の経塚議員の質問に対しまして、「特に悪質な滞納者に対して給付を一時差しとめるにすぎないものでありまして、国民医療を受ける権利を奪うというものではないわけでございます。」こう答えておられます。また悪質滞納者については、「真に払えない方というよりも、合理的な理由がなく故意にこれを滞納しているという悪質な者に限って適用するよう運用いたしてまいりたい」、こう言っておられるわけでございますけれども大臣、この立場はもちろん現在も変わらないというふうに理解をいたしておりますけれども、いかがでございましょうか。
  200. 藤本国務大臣(藤本孝雄)

    藤本国務大臣 前斎藤厚生大臣が申されたことにつきましては、私どもも変わっておるわけではございません。同じでございます。     〔松本委員長退席、稲垣委員長着席〕
  201. 岩佐委員(岩佐恵美)

    ○岩佐委員 大臣は御存じだと思いますけれども、実際には悪質な滞納者とは言えない人に保険証を出さない、そういうことによって結果的に善良な市民が苦しめられる、そして非常にそのことを思い悩みながら死去をされる、そういう非常に痛ましい事件があるわけであります。  この事件は、三月七日の「NHK特集」で、「だれが医療費負担するのか・国民健保・赤字一千二百億円」という番組で報道されたものでありますけれども、京都の五十一歳の男性の例です。この方は、商売がうまくいかなく借金がふえ、二年分の保険料を滞納しました。そして保険証をもらえなくなったわけです。NHKのインタビューの半年ぐらい前に血便が出ておかしいと思ったけれども保険証もない、保険証をもらえるだけの保険料も払えない。体も一応動いたので、別に動く間大丈夫だろう、そう思ってやっていたら、最後には御飯も通らぬようになった。結局長期入院の診断が出て、どうしても保険証が必要、そういうことでケースワーカーに付き添われて、本人でないと事情がわからないということで、ぐあいが悪いのに、タクシーでもって最後の力を振り絞ってやっと集めた一期分六万三千円を区役所に払って保険証を受け取ったということであります。しかし、同時にこの人は、保険証を受け取るときに、これまでの滞納分は全額払ってください、もし支払わなければ土地や家財道具を差し押さえますよ、そういう誓約書を書かされたわけであります。NHKの放映を見ることなくこの方は亡くなられたそうでありますけれども、最後までこの誓約書のことを気に病んでおられたわけであります。  私は、このようなケースの場合、悪質滞納者とは言えないと思うのです。特にケースワーカーに付き添ってもらって保険証の交付を受けに行った以前にも、本人は何とか保険料を払おうということで、親戚だとか友人の間を回ってお金を集めようと思ったわけであります。ですから、こういう方を、言ってみれば悪質というふうにみなすことはできない、そういうふうに思いますけれども大臣の感想をお伺いしたいと思います。
  202. 下村政府委員(下村健)

    下村政府委員 具体的な問題でございますので ……。  この方は、五十八年以来保険料の滞納がずっと残っておりまして、五十九年は全然払わない。六十年は納めておられますが、六十一年、六十二年が滞納があって、役場の方ではたびたび、保険証の期限が来たりいたしまして、おいでいただくように申し上げているのですけれども、なかなか来られない。最後に、おっしゃるように、十二月に区役所に来られて、そこで保険証が交付されたというケースでございます。ですからこれは、悪質滞納の法令によりまして保険証を交付しないで資格証明書を出したというよりも、事前の納付相談が十分にうまくいってなかったという事例ではないかというふうに考えられるわけでございます。
  203. 岩佐委員(岩佐恵美)

    ○岩佐委員 大臣、いずれにしろ、こうした保険証が交付をされないことによってこういう痛ましい事故が起こる、保険証が交付されなかったということのない時代には起こり得なかったそういう事故だというふうに思うわけであります。  例えば金沢市の例でも、国民健康保険の資格証明書が郵送されていた四十七歳の婦人でありますが、高血圧で倒れて、救急車で入院をして四日後に亡くなってしまったわけであります。 この婦人も、保険証がないので病院にも行けない、死ぬ間際にそう言い残しておられるわけであります。  京都の例は、資格証明書が発行される以前の問題。つまり京都の男性の場合は、非常に不況の中で御主人が働かなければもう一家を支えることができない、そういう中で保険証のいろいろな手続等そういうことを何度も何度もやるわけにはいかなかった。一度お金をかき集めて窓口に行ったんだけれども、あなたの持ってきたそのお金では足りませんよというふうに言われた。その人は倒れる、自分がもうどうにもならない、長期入院というふうに診断が下される前にも一回そういう努力はしているわけです。ところが窓口ではねつけられてしまったというようなことであります。  その金沢の例は、資格証明書が送られてくるというようなことで、納付したくても納付ができないという例なわけでありますけれども、いずれにしても、悪質な例ではなくてこういうことが起こっているわけであります。  私は、このような事例というのは、国民医療を受ける権利を奪ったものだというふうに思います。先ほど前斎藤厚生大臣答弁はそのまま生きているということでお答えいただきましたけれども大臣、こういうことが起こらないようにきちんと対応していただきたい、そのことを求めたいと思います。
  204. 藤本国務大臣(藤本孝雄)

    藤本国務大臣 医療保険制度は、御承知のように社会保険制度でございまして、基本的には加入者負担、また一部国庫負担もあるわけでございますが、そういう社会保険制度で運用しているわけでございます。したがって、加入者にとって申しますと、給付を受けるためにはそれだけの負担をしていかなければならぬ、これはもう制度根本でございまして、大多数の方々は、国保に関して申し上げますと、そういう保険料負担されておるわけでございまして、そういう方々との公平の問題を考えていかなければならぬという側面もあるわけでございます。したがって、悪質な滞納者という言葉は私も使うことは非常に嫌なことでございますけれども、そういう場合にはやむを得ないのではないかな。しかし、そういう場合でない場合には、御指摘のように、十分に配慮されるべきものだと考えております。
  205. 岩佐委員(岩佐恵美)

    ○岩佐委員 現在、被保険者証の未交付の方々は何人おられるのか、それから資格証明書の方は何人か、お答えいただきたいと思います。
  206. 下村政府委員(下村健)

    下村政府委員 最初に、資格証明書の交付件数でございますが、昭和六十三年二月一日現在におきまして資格証明書の交付市町村が四百九十五、交付対象世帯数が約一万八千七百五十ということでございます。保険証の未交付につきましては、特別に把握をいたしておりません。
  207. 岩佐委員(岩佐恵美)

    ○岩佐委員 兵庫県保険医協会の調査でありますが、十六市、四十六万三千世帯中未交付の世帯二万八千世帯だということであります。これは全体の六・一%を占める。伊丹市では七・八%、神戸市では七・四%と、都会ほど高くなっているわけであります。県全体では四万世帯に上る、こういうふうに言われているわけでありますが、厚生省が未交付世帯の数を把握していないので実態が正確につかめませんけれども、全国的にかなりの未交付の方がいらっしゃるのではないか。またそういう方々は非常に良心的に苦しんでおられる、そういう方々もおられると推測をされるわけであります。  先ほどの議論でも明らかになっているように、六十年度の所得なし世帯は一六%と、五十三年度の一二・二%、五十五年度の一三・一%と比較をしてふえているわけであります。また保険料軽減世帯も五十九年度七千四百九十世帯、額にして六百十四億円。六十年度が七千四百十一世帯、額にして六百三十四億円。六十一年度が七千五百一世帯、額にして七百十二億円ということで、国保では保険料負担能力の低い層がかなりふえてきているわけであります。  先ほどの京都の例からもわかりますように、世帯主が病気をしたら、その日から困窮をする、そういう状況であります。世帯主が倒れれば、保険料どころか生活費にさえ困る、そういう実態であります。しかし、世帯主が倒れたら、まず病気を治さなければならないわけであります。ですから、保険料よりも、やはり保険証が先に渡される、こういうことが必要であります。ところが国は、保険証が欲しければ保険料を払いなさい、そう言って非常に冷たくあしらっている、そういう点から、今この不交付の問題というのが非常に大きな問題になっているわけであります。  先ほど大臣からも悪質という言葉、これは非常に悪質なものについては、それはそれなりの対応をしていかなければいけないけれども、一般のそういう人たちについては配慮していかなければならないというような答弁があったわけであります。今国保におきまして低所得の方々がかなりふえているという実情でありますので、その点は厳に大臣の発言された基本路線を守ってやっていただきたい、このことを再度強く要請したいと思います。
  208. 下村政府委員(下村健)

    下村政府委員 低所得者の問題というのは、確かに国保にとって非常に大きな問題でございますが、皆保険体制ということで保険に御加入いただいているわけでございますので、やはり保険料を払うということは、何とか努力をしていただかなければならぬと思っております。私どもとしては、とにかく事前の納付相談であるとか、そういうことを十分に徹底してやるようにというふうなことを指導しているわけでございます。  いろんな事例をお聞きしておりますと、なかなか役場に来られない方がどうも多い、こういう印象を受けるわけでございますけれども、役場に来るというのはなかなか大変な場合もあるかと思いますが、余り嫌がらずにぜひとも足を運んで十分窓口と相談をしていただきたい、これに尽きると思うわけでございます。  それからまた、先ほどの事例等でございますけれども、私ども医師会等とも相談をいたしまして、資格証明であっても社会保険並みの医療をちゃんとやっていただくように、十分この点については徹底しているつもりでございます。したがって、資格証明で医療が受けられない、あるいは仮に今の日本の実態からいたしますと、皆保険ということは医療機関側も非常によく承知しておりますので、仮にそれがなくても、医療機関で診療を拒否するというふうな事態はちょっと考えられないわけでございますので、早期受診という点についても、これはいろいろ悩まれることもあるかと思いますけれども、やはり必要な場合にはお医者さんのところにちゃんと通っていただく、これはもうやっていただいた方がいいのではないかと思います。
  209. 岩佐委員(岩佐恵美)

    ○岩佐委員 ただ、局長、資格証明の場合には、全額医療費を窓口で払わなければいけないということで、保険証とは違う扱いになるわけですね。  それから、先ほど窓口でよく対応されるようにということでありましたけれども、それがそういう答弁できちっと確認をしていただいているのならば、やはり地方自治体に対して、その出先に対して、そこのところはきちんとやりなさい、そういう血の通った行政をしなさいというようなことでぜひ対応されるべきだと思うのですけれども、その点いかがですか。
  210. 下村政府委員(下村健)

    下村政府委員 まず、地方に対する指導の問題でございますけれども、十分な納付相談指導を行えということは、会議のたび、あるいはこの制度ができましたときにも通知の上ではっきり指導をいたしておりまして、私どもとしては、そういうことで納付相談でありますとか事前の指導でありますとかいうふうなことをやった上で悪質滞納というふうな扱いをするようにという点については、徹底を図っているつもりでございます。  それから、医療機関の窓口で払えなかったらどうなるのか。これは個々のケースによりましてどうなるということは一概に言えませんが、これはもう医療機関との相談ということになるのではないかと思います。医療機関側で金が払えないから診療を拒否するという事態は、まず実際に私どもの知る限りではないというふうに承知しております。
  211. 岩佐委員(岩佐恵美)

    ○岩佐委員 しかし、実際には資格証明というのは窓口でお金を全額払うということになっているわけでありますから、そういう点で資格証明をぽんと送られてきて、保険証とは違う扱いということになれば、患者さんはその病院に行くのが非常におくれてしまうということにもなるわけですし、それから医療機関にしてもいろいろあるでしょう。そういう決まりのあるものを、そこのところを私のところだけそういうふうに対応しましょうというふうにもなかなかならない状況だってあると思うのです。だからこそ、先ほど言っているように、保険証について本当に払う意思がある、ただ今なかなか払えないというようなことについて、かき集めたお金を一生懸命持っていったけれども、全額に満たない、それじゃ出せないよという冷たい対応じゃなくて、もっと血の通った対応をすべきではないですかということを申し上げているわけです。
  212. 下村政府委員(下村健)

    下村政府委員 私どもとしては、事前の被保険者に対する納付相談、指導というものを十分徹底するように、この面については今後も徹底してまいりたいと思います。
  213. 岩佐委員(岩佐恵美)

    ○岩佐委員 この件については大臣答弁もありますので、ぜひその点できちっと対応していただきたいと思います。  次に、退職者医療制度の創設に伴う見込み違いの問題ですけれども、影響額として六十二年度の補正で一千八億円を補てんされているわけですけれども、どういう計算根拠によるものなのでしょうか。そしてこの一千八億で十分対応できた、補てんできたというふうに判断しておられるのかどうか、その辺を伺いたいと思います。
  214. 下村政府委員(下村健)

    下村政府委員 退職者医療制度の創設に伴う国保財政の影響額につきましては、五十九、六十の両年度については、市町村ごとの調査をいたしましてその額を積み上げたものでございます。六十一年度の影響額につきましては、その実態調査額をもとにしてマクロの推計をやったということでございまして、今回の一千八億円ということで、その総額が完全に補てんされたというふうに考えております。
  215. 岩佐委員(岩佐恵美)

    ○岩佐委員 今の問題について自治省、済みませんがお願いします。
  216. 津田政府委員(津田正)

    津田政府委員 六十二年度の補正措置によります一千八億円によりまして、退職者医療制度見込み違いによる国保への影響額は吸収された、かように考えております。
  217. 岩佐委員(岩佐恵美)

    ○岩佐委員 ここに札幌市の例があるのですけれども国民健康保険運営協議会、ことしの二日十五日に開かれたものですけれども、市当局は次のように指摘をしています。ちょっと長いのですけれども読み上げますが、保険医療部長の発言であります。   一点目の退職者医療制度等に伴う千八億円に対する影響額というのはどうなのかということですが、その部分については、札幌市の分としては二十三億円不足というふうに、我々は試算をしております。これが約十億円しかこないと、こういうことになるわけです。なぜ違うのかというと、影響額の総額の把握の仕方が、我々は実際に計算をしてやっております。国の千八億円というのはどういう数字なのか明確ではないので、その辺が我々としてはちょっと数字が合いませんが、いずれにしても、札幌市としては二十三億円が影響受けている、こういうものであります。   それから、六十一年度については全く触れられておりません。六十一年度の退職者医療の関係についても、本来我々としては影響があると、こう見込んでいるんですが、それは全く今回触れられていない、こういうことです。   その額は幾らかというと、大体我々の試算では二十億円である、合わせて四十三億円というのが制度改正で影響を受けていると、こう踏んでいるんですが、たまたま千八億円に該当する分については二十三億円、それに対して十億円と、こういうふうに理解をしていただきたいと思います。 こんなような説明があるわけであります。こういう実態について自治省、いかがですか。—自治省に聞いているのです。
  218. 下村政府委員(下村健)

    下村政府委員 国保の問題でございますので、私からお答えをさせていただきます。  各市町村で影響額を算定されておる、その積算についてはいろいろな算定方法をされているところがございますので、二十三億という根拠については、私どもとしては、その積算を細かく拝見いたしませんと、それについての評価はできませんが、総額で、現在の算定方法については、地方団体とも一応相談の上で影響額、五十九、六十、六十一ということについては合意を見たというふうに考えておるわけでございます。  それから、六十一年度の影響額は補てんされていないという話は、ちょっと私としてはその説明はよく理解できませんので、札幌市の話を調べてみたいと思いますが、今年度末の国庫負担の配分につきまして札幌市から特にそういったクレームと申しますか、苦情は聞いておりません。
  219. 津田政府委員(津田正)

    津田政府委員 札幌市等個々の地方団体に対する配分等につきましては、厚生省がやっておりますので私ども承知しませんが、マクロで申しますと、五十九年度及び六十年度分の影響分が二千八十億円、六十年度補正予算でそのうち千三百六十七億二千五百万円補てんされております。六十一年度分につきましては、影響額が千五百三十六億円で、六十一年度の当初予算及び補正予算によりまして九百七十億円補てんされ、さらに老健法の六十二年一月実施によります効果額が二百七十一億円ございまして、結果的に申しますと、五十九年度及び六十年度分のまだ未措置額であったものが七百十三億円、六十一年度分の未措置額が二百九十五億円、合わせて千八億円、このように理解しております。
  220. 岩佐委員(岩佐恵美)

    ○岩佐委員 しかし、実際には今の札幌の指摘もありますし、またほかの、例えば大阪だとか川崎だとかそういうところでも、一体これからどうなるのだろうかということで非常に不安だという話があるわけであります。  これは東大阪の例ですけれども、老健拠出金の按分率改正退職者医療見込み違い、これは相殺されるかどうかということですが、六十二年度の退職者医療の影響額が十一億九千四百万円、老健拠出金の額は六億九千二百万円、影響額は相殺どころか五億二千万円の負担増、個々にはこういう例もあるわけであります。ですから、今この一千八億で済むのだというふうには、全体としてはそういう話があるわけですけれども、個々にはなかなかそういっていない、こういう問題について自治省に意見を伺いたいと思います。
  221. 下村政府委員(下村健)

    下村政府委員 これは自治省の問題ではございませんので、私からお答えをさせていただきます。  先ほども申し上げましたように、退職者医療の影響額につきましては、非常に大きな問題になってまいりましたので、六十年の六月か七月ころだったと思いますが、その時点で各市町村ごとの実態調査をやりまして、五十九年、六十年の影響額の把握をした、その積み上げをやった数字がただいま財政局長が言われた数字でございます。六十二年につきましては、そういった個別の積み上げはやっておりませんけれども、五十九年、六十年の結果をもとにして推計をして、この推計方法並びに総額については地方団体、町村長会、市長会、それぞれと一応総額について合意を見た。配分につきましても、したがって、私どもとしてはそういった積算に基づいて配分をしておりますので、今の話は個々の問題としていうとさらにもっと欲しいというような御希望があるいはあるのかもしれませんが、例えば札幌市につきましても、ただいま申しましたとおり、国庫負担の配分後に札幌市の方にもお目にかかる機会がございましたけれども、特にそういった点について問題があるというふうな話を私は伺っておりません。
  222. 岩佐委員(岩佐恵美)

    ○岩佐委員 時間が限られておりますので、厚生省、余りしゃしゃり出てこないでいただきたいと思うのですね。自治省にいろいろとそういう実情や何かについてどうなのかということを伺っているわけで、現実に決着がついたといっても、自治体の中ではこういう例がありますよということを申し上げているわけですから、それはそれなりの、その地方が足りないで大変だ、今財政難なわけですから、そういう点についてきちんと見ていくならいくということで、自治省自身もウオッチしていかなければいけない問題だと思うのですね。だから自治省に伺っているので、何も厚生省が自治省をかき分けて答えさせないというような、こういう非常に何というかすごい委員会だと感心をしているのですけれども、そういうことじゃないようにお願いをしたいと思います。委員長、よろしくお願いします。
  223. 津田政府委員(津田正)

    津田政府委員 千八億円の総額につきましては、私ども厚生省と十分に協議して決めまして、千八億円の配分は厚生省がやっておりまして、自治省はタッチしておりませんので、その点御理解いただきたいと思います。  なお、国保全般の財政状況等につきましては、私ども今後とも地方財政の問題として十分注視してまいりたい、かように考えております。
  224. 岩佐委員(岩佐恵美)

    ○岩佐委員 一昨年の連合審査で斎藤前厚生大臣は経塚議員に対して、「保険料も相当引き上げられてきて、なかなか限界に近い状況にきているように私は感じております。」こう答弁をされておられますけれども大臣、この認識はいかがでしょうか。
  225. 藤本国務大臣(藤本孝雄)

    藤本国務大臣 医療費の増高を背景にいたしまして、国保の場合、保険料が他の健康保険組合であるとか政管健保に比べまして負担がふえておるということにつきましては、私もそのとおりだと考えております。
  226. 岩佐委員(岩佐恵美)

    ○岩佐委員 六十三年度も国保の老人保健医療拠出金が削減をされる。多くの市町村退職者医療制度の創設に伴う見込み違いに引き続いて保険料の引き上げ、一般会計繰入額の増額、こういうことを迫られているのが実態であります。厚生省は六十三年度の国保の値上げの実態をつかんでおられるかどうか伺いたいと思います。
  227. 下村政府委員(下村健)

    下村政府委員 六十三年度につきましては、まだ年度早々でございまして予算編成の状況全体を把握いたしておりません。  六十二年度の状況を申し上げますと、六十二年度の保険料引き上げ状況は、全国平均で八・四%というふうな数字になっております。
  228. 岩佐委員(岩佐恵美)

    ○岩佐委員 先ほど申し上げたように、今でさえ払えない方々がかなりふえているというような実態でありますけれども、六十三年度、これは確たる数字ではありませんが、値上げをする市町村は全国の大体六割くらいになるのではないかと言われていると聞いています。こういうふうにどんどんと値上げをされていく中で、これで一般国民が本当に保険料を払い切れると思っておられるのかどうか、その点どうなのでしょうか。
  229. 下村政府委員(下村健)

    下村政府委員 医療保険ということで、医療費に見合って保険料負担をしていただくということでございます。したがって、医療費が伸びる程度に応じて保険料を上げていただくというのが基本的な考え方になってくるわけでございますが、現状を見ますと、所得医療費では医療費の伸びの方が高いというのがここ数年続いておりますので、私どもとしては、医療費について適正化対策をぜひとも強力に実行してまいりたいということで、国保の問題については負担面の問題と医療費の問題と両面から対応策を考えてまいりたいと考えております。
  230. 岩佐委員(岩佐恵美)

    ○岩佐委員 医療費にすぐに責任を転嫁するということではなくて、もう少しそこのところはきちんと実態を見ていかなければいけないと思うのです。既に保険料は五十九年度から六十一年の三カ年間で二〇%上がっています。一方所得は一一%しか上がっていない。だから、払えるのですかと伺っているのは、ここのところなんです。つまり保険料の上昇が所得の上昇を大幅に上回っているわけです。  ちなみに、五十六年度の滞納額は幾らだったのか、さらに六十一年度はどうなのか、その数字を伺いたいと思います。
  231. 下村政府委員(下村健)

    下村政府委員 ただいま手元に持っておりますのが五十九年、六十年というあたりでございますが、五十九年度の滞納額が一千四十三億円、六十年度が一千百五十三億円でございます。
  232. 岩佐委員(岩佐恵美)

    ○岩佐委員 ちょっともう一度、五十六年と六十一年と聞いているのです。
  233. 下村政府委員(下村健)

    下村政府委員 五十六年は八百三十八億でございます。六十一年はちょっとここに数字を持ってまいりませんでしたので、六十年でございますが、六十年ですと千百五十三億でございます。
  234. 岩佐委員(岩佐恵美)

    ○岩佐委員 厚生省に伺うと余りきちっとした答弁が出てこないで、呼ばないときにいろいろと答えをされるという感じですけれども、五十六年は八百三十八億で六十一年は一千二百九十二億円であります。ですから、この五カ年間に五四%も滞納額が上昇しているわけです。この保険料の引き上げというのは経済的に保険料を払えない人をふやしているわけでありますし、また先ほど保険証未交付の方の例を挙げましたけれども、こういう方々をふやしていっているわけです。病気にかかっても医療を受けられない、そういう状況をつくり出しています。  全生連というところが調査した京都の例ですけれども、年収入が二百三十七万円で所得が百四十九万円の場合、国保料は十六万円、実所得は百三十三万円、生活保護を受けたときの二百四十八万八千円を大きく下向る、こういう報告がされているわけであります。保険料の引き上げ、これは国民保険制度の重大な危機を招いて国民医療を受ける権利を侵害する、そういうことになると私は思います。大臣、この事態は大変重大な事態だと思いますけれども、この点の御認識を伺いたいと思います。
  235. 藤本国務大臣(藤本孝雄)

    藤本国務大臣 社会保険という制度考え方につきましては十分御理解いただけていると思うわけでございますが、これは皆でひとつ助け合おう、こういう趣旨でつくられている制度でございますから、当然その制度に加入するにつきましては、それなりの負担前提になる、これが社会保険制度考え方であるわけであります。 したがって、まずそれを根本に考えて、しかも運用につきましては十分配慮していかなければならぬ、かように考えておるわけでございます。
  236. 岩佐委員(岩佐恵美)

    ○岩佐委員 そこのところが、みんなで助け合うというのもそれは大事なことでありますけれども、国がやるべきことをやらないで地方負担をさせたり、あるいは加入者負担をかぶせたり、そういうところに大きな問題があるというふうに私たちは思っているわけであります。  次に、市町村の六十一年度の一般会計から国保会計への繰入額、これは厚生省お答えいただきたいと思います。
  237. 下村政府委員(下村健)

    下村政府委員 六十一年度の市町村の一般会計からの繰入総額、二千二百六十七億であったと記憶しております。
  238. 岩佐委員(岩佐恵美)

    ○岩佐委員 それで、ちょっと私は東京日野市の例を持ってきたのですけれども国保税と国庫支出金を比べてみますと、国保税割合が格段にふえているわけであります。五十七年度国保税割合は二七・五%、国庫支出金は五三・五%でした。これがあの補助金カットされた五十九年にどうなるかといいますと、三二・二%が国保税、それから国庫支出金が四七・五%というふうになっているわけであります。そして昭和六十二年、これは予算額でありますけれども、ここで逆転をいたします。六十二年の場合、国保税が三七・二%、国庫支出金が三三・二%、それから六十三年度は国保税が三四・七%、国庫支出金が三四%、こういうふうに地方自治体あるいは加入者負担というのが確実にふえてきている、こういう状況であります。  今回の制度改正による地方負担は、都道府県市町村全体で八八年度だけでも六百九十億円に上りますけれども、先ほどの一般会計からの繰り入れと合わせて地方への財政負担となることは明らかであります。この六百九十億円は、ちなみに東京都で見てみますと市町村を含めて七十四億円の負担増になります。それから福岡県で三十八億円、沖縄県で十二億円もの負担増になるわけであります。今日地方財政は、地方債の残高が六十三年度末で六十七兆円、一世帯平均百六十八万円の借金となっているわけです。借金返済のための支出が二〇%を超す、危険ラインと言われる地方自治体の数は、四十九年度はゼロだったものが六十一年度は一千七十五団体に上っています。全国の三三%にも上っているわけであります。ですから、かつてない財政危機の状態、こう言われているわけでありますけれども、今回の地方への負担転嫁は地方財政危機を決定的なものにしていく、財政運営の困難はますます増大をする、こういうふうに私たちは理解をしております。その点、自治大臣はこのような状態をどう考えられるのか、伺いたいと思います。
  239. 梶山国務大臣(梶山静六)

    梶山国務大臣 国民健康保険事業は、原則として保険料及び国庫支出金により賄われるべきものと考えておりますが、増高する医療費等に対応するためやむなく一般会計からの繰り入れが行われている現状等にもかんがみ、国保経営の安定化に資するため制度見直しを行うこととしたものでございます。  なお、今回の制度見直しに伴う地方負担増加額については、地方財政運営に支障が生じないように、中身で申しますと、交付税の特例加算五百五十億、それから百四十億の調整債、所要の地方財政措置を講ずることといたしておりまして、この見直しによりまして、むしろ二百四十億円の保険料負担軽減効果があるわけでございますので、今回の見直しによって地方自治体財政力を悪化させるというふうには考えておりません。
  240. 岩佐委員(岩佐恵美)

    ○岩佐委員 大臣財源措置を一応したということでいいというふうにはならないと思うのです。本来国が持つべきものを持たない、それを地方責任を転嫁している、そういう点が一番大きな問題だと思っています。また地方もこうした問題を非常に深刻に受けとめているわけであります。  今度の改正についても、例えば名古屋市の例ですけれども、これは名古屋市の民生局が国保の条例改正の概略説明をしたときの資料でありますが、「国民健康保険財政再建の必要性」ということを強調して、「今般の国の制度改革案は、本市の国民健康保険財政負担軽減につながるものではなく、財政再建は緊急課題である。」こういうふうに言っているわけであります。そういう点で、私どもとしては、これは地方の立場に立って自治大臣がきちっと対応していかれるべきではないかと思います。  かつて安孫子自治大臣は、一九八一年十月十三日衆議院の行革特別委員会で、国の負担市町村負担させるということにつきまして、こう答えておられるのですね。「国がその負担市町村に肩がわりさせることによってそれを強化するというのは、よこしまな道ではなかろうか」、そういうふうにおっしゃって、はっきりと反対の答弁をしておられるわけであります。こういう安孫子自治大臣基本姿勢からいいますと、今回、財源措置を一応はしたというようなことを言われるにしても、こうした国の措置地方自治体公費負担制度化する、国の責任を大幅に後退させる、そういう点では重大な問題だと思いますし、地方の意思にも反するということを強く指摘したいと思います。これは最後にまとめて伺いたいと思っています。  次に、安定化事業について伺いますが、厚生大臣の定める指針、都道府県の助言、指導による、こういうふうになっているわけですが、それはどういうものなんでしょうか。
  241. 下村政府委員(下村健)

    下村政府委員 安定化計画でございますが、私どもとしては、一応、一番の出発点としては、平均の医療費を使う、こう申し上げているわけでございます。ただし、平均の医療費をそのまま使いますと、年齢差等によって相当の差が出てくる。したがって、年齢差を考慮して、かつ、平均値でございますので若干の幅を見るということで、偏差値等を使って多少の幅を見る。その上にさらに地域ごとの特殊事情、原爆でありますとか災害でありますとかいろいろな要因を除いたところで、さらに残る高い市町村を指定する。その市町村につきまして、高い要素についていろいろな要因の分析をしてまいりたい。例えば入院日数が非常に長い、あるいは薬が非常にたくさん使われている、いろいろな原因が出てくるはずでございます。そういった要因に応じてそれぞれの対策を考えるということで、その計画の全体の考え方、構成、それからそれに対する対策の立て方というふうなものについて、基準と申しますか、指針のようなものをつくって指導してまいりたい。また基本になる医療費のデータ分析についても、国としては相応の援助、指導をしてまいりたいと考えております。
  242. 岩佐委員(岩佐恵美)

    ○岩佐委員 この計画は、地方自治体の自主的な考え方、例えばこの部門では上乗せ医療をしてきちっとやっていきたいと思うというような、地方自治体あるいは住民の人たちのいろいろな希望、期待があると思うのですけれども、そういうものに対する干渉とはならないのですか。
  243. 下村政府委員(下村健)

    下村政府委員 医療費が高くなっている原因の中にはいろいろな要素が恐らく出てくると思います。その中に、地方責任と申しますか、地方で手のつけられないようなものがあるかもしれませんが、そんなものは今申したようなことで除外をする。反面、ただいま出ましたような上乗せ措置をとっている、それに伴って医療費が高くなって負担も高くなっている、これは自治体においてやはり相応の責任を持って処理をしていただく、こういうことになるのではないかと思います。
  244. 岩佐委員(岩佐恵美)

    ○岩佐委員 基準超過費用額、これを定める問題でも、保険者医療機関を通じて医療費を仰制する、そういう努力をすることになって、医療サービスの低下、つまり国民が期待する医療とならないことが危惧をされるわけであります。老健法の改悪が非常にいい例ですけれども、この制度を導入することによって医療費仰制のための保険者間の競争をあおる、そういうことにもつながるのではないかと思います。このような基準づくりそのものが医療費の過度な抑制を行い、そして国民医療切り捨てにつながるのじゃないか、そういう不安が非常に強いわけでありますけれども、この点について厚生大臣の御意見を伺いたいと思います。
  245. 下村政府委員(下村健)

    下村政府委員 私どもとしては、医療水準を下げる、あるいは医療内容を悪くするということにつながらないように、適切な指導を行ってまいりたいと考えておるわけでございます。したがって、ただいまお話が出ましたような老人の問題等が非常に大きな問題として浮かび上がってくるのではないかと思いますが、やはり基本姿勢としては、老人に対する適切な処遇体制をつくっていくというところに重点を置いて市町村に取り組んでいただきたいと考えております。
  246. 岩佐委員(岩佐恵美)

    ○岩佐委員 最後に、先ほど自治大臣はこの暫定的な措置はうまくいかなければもとに戻すというような御発言をなさったわけでありますけれども、もとに戻すというのはどこに戻されるのでしょうか。
  247. 梶山国務大臣(梶山静六)

    梶山国務大臣 文字どおり、二年の暫定措置でございますから、その後の展望が全く開けないということになれば、今回の改正分をもとに戻すということでございますが、もとに戻して困るのは、実は地方住民、地域医療でございますから、地域に住む方々に大変な御迷惑がかかることでございますから、いかなることをしても逆戻りをさせないで、何とかこの二年間に前向きな措置がとられるようにこれから努力をしてまいりたいと思います。
  248. 岩佐委員(岩佐恵美)

    ○岩佐委員 私は、もとに戻すというのは、四五%の補助率に戻すということあるいは軽減の十割給付をする、未交付をなくす、こういう方向だと思うのですけれども自治大臣、補助金カットはもうだめだと言いながらずっと土俵を明け渡しているわけですから、戻すのだったら思い切ってそういうところに戻していかなければいけないと思いますが、いかがでしょうか。
  249. 梶山国務大臣(梶山静六)

    梶山国務大臣 何が何でも昔のままの姿に全部返してくれと言われても、昔のことに関する責任は負いかねますけれども、少なくとも今回の国保改正では万一だめな場合には戻すということが原則でございます。しかし、それは戻せば必ず地域住民が大変な苦しみをしょうわけでございますし、国保の受給者は地域の問題でございますから、これを解決することは当然であります。ですから、国の責任であるとか地方責任、もちろん一義的には国の責任でございますが、地方はこれに我関せずでいて、住民の、いわゆる国保加入者の苦しみを傍観していいのかということになりますと、それは通らないところでございます。
  250. 岩佐委員(岩佐恵美)

    ○岩佐委員 最後に、厚生大臣に御意見を伺いたいと思います。  先ほど自治大臣に伺ったことと同じなんですが、本来国が四五%のお金をちゃんと出す、あるいはその軽減について十割給付をするということで責任を持たれる、未交付を生じることがないような状態にするべきだと私は思います。そうでなければ、結局今の医療制度というのは悪循環をきわめていって、そして低所得者なりそういう人たちを切り捨てていく、国民の一般の医療も引き下げていくということにつながると思いますけれども大臣のお考えを伺いたいと思います。
  251. 藤本国務大臣(藤本孝雄)

    藤本国務大臣 国保制度に対します国の負担の問題でございますけれども、確かに国の負担が多ければ多いほどいいという考え方も成り立つと思います。しかし問題は、医療保険制度につきましては、国保制度だけではございませんで、健康保険組合もあれば政管健保もある、こういうことでございまして、他の制度との国の負担についてのバランス、公平という問題もまた別の角度から当然考えなければならぬ問題でございます。  同時に、国保について申しますと、この国の負担率をどう決めるかという問題は、そのときどきの国保財政状況に応じておのずから決められるものでございまして、今日までは特例的に高い補助率で対応しておったわけでございますけれども老健法の効果も徐々に出てきておりますし、全体として国保財政はいい状態に向いておるということから、国の負担率が現在の水準になってきたわけでございます。ただ、国保財政がここ数年悪化いたしました原因の大きな一 つとしては、退職者医療制度見込み違いの問題があるわけでございまして、この点につきましては、先ほど来申し上げておりますように、対応したところでございます。
  252. 稲垣委員長(稲垣実男)

    稲垣委員長 岩佐君、もう終了しております。
  253. 岩佐委員(岩佐恵美)

    ○岩佐委員 はい。以上で終わりますけれども、最後に、人間の命は地球より重いわけでありますから、軽々に制度をあれこれいじって、そして本当に医療が必要な人たちをはじき飛ばす、あるいは地方自治体負担を押しつけるということがないようにしていかなければならないというふうに思っているわけであります。そのことを指摘して、質問を終わりたいと思います。
  254. 稲垣委員長(稲垣実男)

    稲垣委員長 以上で本連合審査会における質疑は終了いたしました。  本日は、これにて散会いたします。     午後四時四十六分散会