運営者 Bitlet 姉妹サービス
使い方 FAQ このサイトについて | login

1988-05-19 第112回国会 衆議院 社会労働委員会 第15号 公式Web版

  1. 会議録情報

    昭和六十三年五月十九日(木曜日)     午前十時三分開議  出席委員    委員長 稲垣 実男君    理事 高橋 辰夫君 理事 戸井田三郎君    理事 丹羽 雄哉君 理事 野呂 昭彦君    理事 畑 英次郎君 理事 池端 清一君    理事 沼川 洋一君 理事 田中 慶秋君       相沢 英之君    粟屋 敬信君       伊吹 文明君    今井  勇君       遠藤 武彦君    小沢 辰男君       大野 功統君    片岡 武司君       木村 義雄君    近藤 鉄雄君       佐藤 静雄君    自見庄三郎君       高橋 一郎君    竹内 黎一君       中山 成彬君    堀内 光雄君       三原 朝彦君    持永 和見君       伊藤 忠治君    大原  亨君       川俣健二郎君    河野  正君       佐藤 徳雄君    田邊  誠君       永井 孝信君    新井 彬之君      大橋 敏雄君    平石磨作太郎君       吉井 光照君    塚田 延充君       児玉 健次君  出席国務大臣         厚 生 大 臣 藤本 孝雄君  出席政府委員         厚生省健康政策         局長      仲村 英一君         厚生省保健医療         局長      北川 定謙君         厚生省薬務局長 坂本 龍彦君  委員外出席者         文部省初等中等         教育局高等学校         課長      森  正直君         文部省体育局学         校保健課長   込山  進君         社会労働委員会         調査室長    石川 正暉君     ───────────── 委員の異動 五月十九日  辞任         補欠選任   佐藤 静雄君     遠藤 武彦君   永井 孝信君     佐藤 徳雄君 同日  辞任         補欠選任   遠藤 武彦君     佐藤 静雄君   佐藤 徳雄君     永井 孝信君 同日  理事田中慶秋君同月十七日委員辞任につき、そ  の補欠として田中慶秋君が理事に当選した。     ───────────── 五月十八日  福祉国庫負担金削減反対等に関する請願新井彬之君紹介)(第三〇五三号)  同(石井郁子紹介)(第三一七四号)  同(岩佐恵美紹介)(第三一七五号)  同(浦井洋紹介)(第三一七六号)  同(児玉健次紹介)(第三一七七号)  同(柴田睦夫紹介)(第三一七八号)  同(瀬長亀次郎紹介)(第三一七九号)  同(辻第一君紹介)(第三一八〇号)  同(中路雅弘紹介)(第三一八一号)  同(中島武敏紹介)(第三一八二号)  同(不破哲三紹介)(第三一八三号)  同(藤原ひろ子紹介)(第三一八四号)  同(正森成二君紹介)(第三一八五号)  同(山原健二郎紹介)(第三一八六号)  同(石井郁子紹介)(第三三二四号)  同(浦井洋紹介)(第三三二五号)  同(経塚幸夫紹介)(第三三二六号)  同(児玉健次紹介)(第三三二七号)  同(瀨長亀次郎紹介)(第三三二八号)  同(辻第一君紹介)(第三三二九号)  同(寺前巖紹介)(第三三三〇号)  同(野間友一紹介)(第三三三一号)  同(東中光雄紹介)(第三三三二号)  同(藤田スミ紹介)(第三三三三号)  同(藤原ひろ子紹介)(第三三三四号)  同(正森成二君紹介)(第三三三五号)  同(村上弘紹介)(第三三三六号)  同(山原健二郎紹介)(第三三三七号)  高齢者就労対策充実に関する請願川俣健二郎紹介)(第三〇五四号)  同外二件(川俣健二郎紹介)(第三三三八号)  労働組合法等の一部を改正する法律案反対等に関する請願児玉健次紹介)(第三〇五五号)  療術の制度化促進に関する請願阿部文男紹介)(第三〇五六号)  同(臼井日出男紹介)(第三〇五七号)  同外二件(小此木彦三郎紹介)(第三〇五八号)  同(箕輪登紹介)(第三〇五九号)  同(森下元晴君紹介)(第三〇六〇号)  同外一件(石川要三紹介)(第三一九〇号)  同(中山利生紹介)(第三一九一号)  同(宮下創平紹介)(第三三四〇号)  重度戦傷病者と妻の援護に関する請願石橋一弥紹介)(第三〇六一号)  同(鯨岡兵輔紹介)(第三〇六二号)  同(田邉國男紹介)(第三〇六三号)  同(谷垣禎一紹介)(第三〇六四号)  同(吹田愰君紹介)(第三〇六五号)  同(三ツ林弥太郎紹介)(第三〇六六号)  同(今井勇紹介)(第三一九三号)  同外一件(櫻内義雄紹介)(第三一九四号)  同外一件(細田吉藏紹介)(第三一九五号)  同(三原朝彦紹介)(第三一九六号)  同(新井将敬紹介)(第三三四三号)  同(佐藤文生紹介)(第三三四四号)  消費生活協同組合法改悪反対に関する請願市川雄一紹介)(第三一七三号)  腎疾患総合対策早期確立に関する請願大橋敏雄紹介)(第三一八七号)  国立腎センター設立に関する請願金子みつ紹介)(第三一八八号)  難病患者などの医療及び生活保障等に関する請願大橋敏雄紹介)(第三一八九号)  亜急性硬化性全脳炎の患児と家族に対する医療及び福祉に関する請願橋本龍太郎紹介)(第三一九二号)  保険医インターン制度導入反対医師卒研修の改善に関する請願児玉健次紹介)(第三三三九号)  小規模障害者作業所助成等に関する請願岩垂寿喜男紹介)(第三三四一号)  労働組合法中央労働委員会公益委員任命制度現行維持等に関する請願大出俊紹介)(第三三四二号) 同月十九日  保育制度の維持、充実に関する請願春日一幸紹介)(第三五六八号)  障害者雇用等に関する請願児玉健次紹介)(第三五六九号)  同外三件(池端清一紹介)(第三七五三号)  同外六件(沼川洋一紹介)(第三七五四号)  福祉国庫負担金削減反対等に関する請願金子満広紹介)(第三五七〇号)  同(児玉健次紹介)(第三五七一号)  同(田中美智子紹介)(第三五七二号)  同(不破哲三紹介)(第三五七三号)  同(村上弘紹介)(第三五七四号)  同(経塚幸夫紹介)(第三七五五号)  同(不破哲三紹介)(第三七五六号)  同(藤原ひろ子紹介)(第三七五七号)  同(中路雅弘紹介)(ハ第三九二四号)  高齢者就労対策充実に関する請願中島武敏紹介)(第三五七五号)  同(早川勝紹介)(第三五七六号)  同(金子満広紹介)(第三七五八号)  同(中西績介紹介)(第三七五九号)  同外一件(沼川洋一紹介)(第三七六〇号)  同外一件(川崎寛治紹介)(第三八四三号)  同(柴田睦夫紹介)(第三八四四号)  同(竹内猛紹介)(第三八四五号)  同(寺前巖紹介)(第三八四六号)  同(水田稔紹介)(第三八四七号)  同(安藤巖紹介)(第三九二五号)  同外二件(池端清一紹介)(第三九二六号)  同(児玉健次紹介)(第三九二七号)  同(辻第一君紹介)(第三九二八号)  同(野間友一紹介)(第三九二九号)  同(藤原ひろ子紹介)(第三九三〇号)  同(矢島恒夫紹介)(第三九三一号)  同(山原健二郎紹介)(第三九三二号)  国立腎センター設立に関する請願鳥居一雄紹介)(第三五七七号)  同(臼井日出男紹介)(第三八四八号)  保険医インターン制度導入反対医師卒研修の改善に関する請願田中美智子紹介)(第三五七八号)  労働組合法等の一部を改正する法律案の廃案に関する請願児玉健次紹介)(第三五七九号)  同(田中美智子紹介)(第三五八〇号)  労働組合法等の一部を改正する法律案反対等に関する請願田中美智子紹介)(第三五八一号)  療術の制度化促進に関する請願近岡理一郎紹介)(第三五八二号)  同(関谷勝嗣君紹介)(第三五八三号)  同外一件(井出正一紹介)(第三七六二号)  同外二件(江藤隆美紹介)(第三七六三号)  同外一件(臼井日出男紹介)(第三八五〇号)  同外四件(奥田幹生紹介)(第三八五一号)  同外四件(竹中修一紹介)(第三八五二号)  同(鳩山邦夫紹介)(第三八五三号)  小規模障害者作業所助成等に関する請願小泉純一郎紹介)(第三五八四号)  同外六件(永井孝信紹介)(第三五八五号)  同外一件(畑英次郎紹介)(第三五八六号)  同(市川雄一紹介)(第三五八七号)  同(田川誠一紹介)(第三五八八号)  同外一件(新井将敬紹介)(第三七六四号)  同外二件(新井彬之君紹介)(第三七六五号)  同外十件(伊藤忠治紹介)(第三七六六号)  同(伊吹文明紹介)(第三七六七号)  同外一件(稲葉誠一紹介)(第三七六八号)  同外三件(今井勇紹介)(第三七六九号)  同外四件(上田哲紹介)(第三七七〇号)  同(大野明紹介)(第三七七一号)  同(大野功統紹介)(第三七七二号)  同(岡崎万寿秀紹介)(第三七七三号)  同(片岡武司紹介)(第三七七四号)  同(川俣健二郎紹介)(第三七七五号)  同(児玉健次紹介)(第三七七六号)  同外二件(佐藤静雄紹介)(第三七七七号)  同外一件(自見庄三郎紹介)(第三七七八号)  同(田中恒利紹介)(第三七七九号)  同外一件(田邊誠紹介)(第三七八〇号)  同外一件(高橋一郎紹介)(第三七八一号)  同(戸井田三郎紹介)(第三七八二号)  同外二件(沼川洋一紹介)(第三七八三号)  同(三原朝彦紹介)(第三七八四号)  同外三件(箕輪登紹介)(第三七八五号)  同(村山富市紹介)(第三七八六号)  同外一件(持永和見紹介)(第三七八七号)  同(山下元利紹介)(第三七八八号)  同外二件(大野潔紹介)(第三八五四号)  同(木村義雄紹介)(第三八五五号)  同(古賀誠紹介)(第三八五六号)  同(丹羽雄哉紹介)(第三八五七号)  同外三件(平石磨作太郎紹介)(第三八五八号)  同(池端清一紹介)(第三九三三号)  同外一件(河野正紹介)(第三九三四号)  同(鈴切康雄紹介)(第三九三五号)  同外三件(塚田延充紹介)(第三九三六号)  同(野呂昭彦紹介)(第三九三七号)  同外一件(吉井光照紹介)(第三九三八号)  重度戦傷病者と妻の援護に関する請願有馬元治紹介)(第三五八九号)  同(河本敏夫紹介)(第三五九〇号)  同(橋本龍太郎紹介)(第三五九一号)  同(平沼赳夫紹介)(第三五九二号)  同(井出正一紹介)(第三七八九号)  同外一件(唐沢俊二郎紹介)(第三七九〇号)  同(谷垣禎一紹介)(第三七九一号)  同(中曽根康弘紹介)(第三七九二号)  同(竹中修一紹介)(第三八五九号)  同(相沢英之紹介)(第三九三九号)  消費生活協同組合法改悪反対に関する請願伊藤茂紹介)(第三五九三号)  同(岩垂寿喜男紹介)(第三五九四号)  同(大出俊紹介)(第三五九五号)  同(加藤万吉紹介)(第三五九六号)  同(田中慶秋紹介)(第三五九七号)  同(松前仰君紹介)(第三五九八号)  同外一件(前島秀行紹介)(第三五九九号)  同(伏木和雄紹介)(第三八六〇号)  同(河村勝紹介)(第三九四〇号)  同(草野威紹介)(第三九四一号)  同(橋本文彦紹介)(第三九四二号)  公衆浴場法の一部改正に関する請願外四件(土井たか子紹介)(第三七四三号)  保育・福祉充実育児休暇及び看護休暇制度化に関する請願金子満広紹介)(第三七四四号)  同(児玉健次紹介)(第三七四五号)  同(瀬長亀次郎紹介)(第三七四六号)  同(田中美智子紹介)(第三七四七号)  同(寺前巖紹介)(第三七四八号)  同(中路雅弘紹介)(第三七四九号)  同(不破哲三紹介)(第三七五〇号)  同(藤原ひろ子紹介)(第三七五一号)  同(松本善明紹介)(第三七五二号)  難病患者などの医療及び生活保障等に関する請願沼川洋一紹介)(第三七六一号)  臓器移植の促進に関する請願中山太郎紹介)(第三八三七号)  同(工藤巌紹介)(第三八三八号)  同(自見庄三郎紹介)(第三八三九号)  同(竹内黎一君紹介)(第三八四〇号)  同(戸井田三郎紹介)(第三八四一号)  同(林義郎紹介)(第三八四二号)  同(丹羽雄哉紹介)(第三九四三号)  原爆被害者援護法の制定に関する請願田口健二紹介)(第三八四九号)  保育所運営費国庫負担率復元等に関する請願村上弘紹介)(第三九二三号)  建設季節労働者対策充実に関する請願児玉健次紹介)(第三九七八号) は本委員会に付託された。     ───────────── 本日の会議に付した案件  理事補欠選任  後天性免疫不全症候群予防に関する法律案内閣提出、第百八回国会閣法第九〇号)  柔道整復師法の一部を改正する法律案起草の件  あん摩マッサージ指圧師はり師、きゆう師等に関する法律の一部を改正する法律案起草の件  クリーニング業法の一部を改正する法律案起草の件      ────◇─────
  2. 稲垣実男

    稲垣委員長 これより会議を開きます。  この際、理事補欠選任についてお諮りいたします。  理事田中慶秋君が去る十七日委員辞任されたのに伴い、現在理事が一名欠員となっております。その補欠選任につきましては、先例により、委員長に御一任願いたいと存じますが、御異議ありませんか。     〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
  3. 稲垣実男

    稲垣委員長 御異議なしと認めます。よって、そのように決しました。  それでは、理事田中慶秋君を指名いたします。      ────◇─────
  4. 稲垣実男

    稲垣委員長 厚生関係基本施策に関する件について調査を進めます。  柔道整復師法の一部を改正する法律案あん摩マッサージ指圧師はり師きゅう師等に関する法律の一部を改正する法律案及びクリーニング業法の一部を改正する法律案、右三法律案起草の件について議事を進めます。  本件につきましては、先般来各会派間において御協議いただき、意見の一致を見ましたので、委員長においてそれぞれ草案を作成し、委員各位のお手元に配付いたしてございます。  まず、柔道整復師法の一部を改正する法律案起草案趣旨及び内容につきまして、御説明申し上げます。  近年の我が国における急激な高齢化社会への移行は、保健医療をめぐる環境を大きく変化させ、国民医療に対する関心は急速に高まってきております。  本案は、このような状況にかんがみ、我が国において古くから国民に親しまれ、国民の健康の保持に大きな役割を果たしてきた柔道整復術が、今後とも国民ニーズに対応し、国民信頼にこたえていくために、柔道整復師資質向上養成教育のより一層の充実を図ろうとするもので、その主な内容は次のとおりであります。  第一に、柔道整復師免許を与える者及びその試験実施する者を、都道府県知事から厚生大臣に改めること。  第二に、柔道整復師試験受験資格について、中学校卒業後四年以上または高等学校卒業後二年以上学校養成施設において必要な知識及び技能修得することとなっていたのを、高等学校卒業後三年以上に改めること。  第三に、国家試験実施に関する専務及び免許登録実施に関する事務については、厚生大臣の指定する者に行わせることができること。  第四に、この法律は、昭和六十五年四月一日から施行することとし、学校養成施設等に関し必要な準備は、公布の日から行うことができること。  以上が本起草案趣旨及び内容であります。     ─────────────  柔道整復師法の一部を改正する法律案     〔本号末尾掲載〕     ─────────────
  5. 稲垣実男

    稲垣委員長 採決いたします。  お手元に配付いたしてあります草案柔道整復師法の一部を改正する法律案成案とし、これを委員会提出法律案と決するに賛成諸君起立を求めます。     〔賛成者起立
  6. 稲垣実男

    稲垣委員長 起立総員。よって、そのように決しました。     ─────────────
  7. 稲垣実男

    稲垣委員長 次に、あん摩マッサージ指圧師はり師きゅう師等に関する法律の一部を改正する法律案起草案趣旨及び内容につきまして、御説明申し上げます。  近年の我が国における急激な高齢化社会への移行は、保健医療をめぐる環境を大きく変化させ、国民医療に対する関心は急速に高まってきております。  本案は、このような状況にかんがみ、我が国において古くから国民に親しまれ、国民の健康の保持に大きな役割を果たしてきたあん摩マッサージ指圧、はり、きゅうが、今後とも国民ニーズに対応し、国民信頼にこたえていくために、あん摩マッサージ指圧師等資質向上養成教育のより一層の充実を図ろうとするもので、その主な内容は次のとおりであります。  第一に、あん摩マッサージ指圧師はり師及びきゅう師免許を与える者及びこれらの試験実施する者を、都道府県知事から厚生大臣に改めること。  第二に、あん摩マッサージ指圧師試験はり師試験及びきゅう師試験受験資格について、あん摩マッサージ指圧師については中学校卒業後二年以上、はり師またはきゅう師については中学校卒業後四年以上または高等学校卒業後二年以上学校養成施設において必要な知識及び技能修得することとなっていたのを、高等学校卒業後三年以上に改めること。  なお、著しい視覚障害のある者については、中学校卒業者であっても、学校養成施設修得すれば試験を受けられるよう特例を設けること。  第三に、国家試験実施に関する事務及び免許登録実施に関する事務については、厚生大臣の指定する者に行わせることができること。  第四に、この法律は、昭和六十五年四月一日から施行することとし、学校養成施設等に関し必要な準備は、公布の日から行うことができること。  以上が本起草案趣旨及び内容であります。     ─────────────  あん摩マッサージ指圧師はり師、きゆう師等に関する法律の一部を改正する法律案     〔本号末尾掲載〕     ─────────────
  8. 稲垣実男

    稲垣委員長 採決いたします。  お手元に配付いたしてあります草案あん摩マッサージ指圧師はり師きゅう師等に関する法律の一部を改正する法律案成案とし、これを委員会提出法律案と決するに賛成諸君起立を求めます。     〔賛成者起立
  9. 稲垣実男

    稲垣委員長 起立総員。よって、そのように決しました。     ─────────────
  10. 稲垣実男

    稲垣委員長 次に、クリーニング業法の一部を改正する法律案起草案趣旨及び内容につきまして、御説明申し上げます。  近年、繊維製品の素材の多様化クリーニング技術高度化等により、クリーニング所業務に従事する者には、より高度の知識及び技能が要求されるに至っております。  本案は、このような情勢を背景として、クリーニング所業務に従事する者の資質向上並びに知識修得及び技能向上を図るため、これらの者の研修及び講習制度を設けようとするもので、その主な内容は次のとおりであります。  第一に、クリーニング所業務に従事するクリーニング師は、都道府県知事が指定した、クリーニング師資質向上を図るための研修を受けなければならないものとし、営業者は、そのクリーニング所業務に従事するクリーニング師に対し、この研修を受ける機会を与えなければならないものとすること。  第二に、営業者は、そのクリーニング所業務に従事する者に対し、都道府県知事が指定した、クリーニング所業務に関する知識修得及び技能向上を図るための講習を受けさせなければならないものとすること。  第三に、この法律は、昭和六十四年四月一日から施行すること。  以上が本起草案趣旨及び内容であります。     ─────────────  クリーニング業法の一部を改正する法律案     〔本号末尾掲載〕     ─────────────
  11. 稲垣実男

    稲垣委員長 採決いたします。  お手元に配付いたしてあります草案クリーニング業法の一部を改正する法律案成案とし、これを委員会提出法律案と決するに賛成諸君起立を求めます。     〔賛成者起立
  12. 稲垣実男

    稲垣委員長 起立総員。よって、そのように決しました。  なお、各法律案提出手続等につきましては、委員長に御一任願いたいと存じますが、御異議ありませんか。     〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
  13. 稲垣実男

    稲垣委員長 御異議なしと認めます。よって、そのように決しました。      ────◇─────
  14. 稲垣実男

    稲垣委員長 次に、後天性免疫不全症候群予防に関する法律案議題といたします。  これより質疑に入ります。  質疑の申し出がありますので、順次これを許します。自見庄三郎君。
  15. 自見庄三郎

    ○自見委員 御指名がございましたので、後天性免疫不全症候群予防に関する法律案につきまして質疑をさせていただきたいと思うわけでございます。  人類の発生以来、人類はいろいろな難病、特に伝染病に遭遇をしたと私は思うわけでございます。我々人類に大変深い傷跡を残しました十四世紀のペストの大流行、これによりますと、ヨーロッパでは約二千五百万人以上の方が亡くなられただろうというふうに言われているわけでございます。一九一八年から一九年のインフルエンザの大流行がございます。これで二千万人以上の方が、大変お気の毒でございますが、命を落とされただろうというふうなことが我々の記憶に新しいわけでございます。やはり人類というもの、これは生物でございまして、国家をつくったということも、この大きな理由の一つに、集団で病気予防し、あるいは治療し、病気にかかった方をともに助け合うというふうなことも、国家が発生し、ましてや近代国家になったわけでございますから、こういったことが日本国においても、また国家というものの持っておる本質の存立基盤として、疾病の予防あるいは治療法を未知の病気に対して開発する、そしてなおかつ世界各国がこういった情報化の時代でございますから、お互いに手を取り合ってやっていくということは、政府に与えられた崇高な使命だというふうに私は思うわけでございます。  そういった中で、きょう議題となりましたエイズでございます。後天性免疫不全症候群、アクワイアド・イムノデフィシエンシー・ディジーズでございまして、それを略してエイズ、こう言うわけでございます。エイズという病気は、病気の成り起こりからいろいろ非常に特徴のある疾患だというふうに認識をさせていただいたわけでございます。一九八一年にアメリカで最初の報告があったわけでございます。そして、最初たしか四人だったと思いますけれども、同性愛の患者さんに日和見感染、普通起こりにくい日和見感染で四人が死亡されたという医学上の報告がCDCからあって、それ以来急に非常に世の中の耳目を集めるようになったわけでございます。しかしながら、同時に一九八一年に初めて報告されたその後のビールスの同定あるいは分離といったことについては、従来の病気になかった急速な短期間で、主に西洋の学者ではございますけれども、一九八三年にモンタニエ教授がフランスで、また一九八四年でございますか、ギャロでございます。これは先日日本にもおいでになられました。自由民主党にも表敬訪問されて、我々エイズ関心を持つ自由民主党国会議員でいろいろディスカッションをさせていただいたわけでございます。ギャロにつきましては、昨年三月、我が自由民主党の小沢辰男団長を中心といたしましたエイズの訪米団、私も一員として同行させていただいたわけでございますけれども、ギャロにもお会いいたしました。そういった短い、大変急速な学問上の進歩があったと思うわけでございます。  しかしながら、御存じのように、そういったビールスの同定等々を通じまして、感染経路が非常に短期間ではっきりしてきたというふうに思うわけでございます。そしてなおかつ、これは御存じのように、同性愛あるいは異性間の性的接触によってうつる、あるいは輸血によってうつる、あるいは注射針によって、薬物中毒者でございますけれども、うつる、あるいは母子間の垂直感染というふうに、はっきり感染経路が限定をされておるわけであります。  なおかつ、御存じのように大変弱いビールスだと私は思うわけでございます。特にアメリカでは、二十代―四十代が約八九%だというデータもあるわけでございます。青壮年層を中心とした病気である。なおかつ全世界に大変広がっているということが今世界で大きな問題になっているというふうに思うわけでございます。  一方の致死率でございますけれども、いろいろな報告がございますけれども、発病いたしますと、大体一年以内に五〇%の患者さんがお亡くなりになられる、二年以内が七五%、三年で九二%、五年たちますとほとんど致死率が一〇〇%に近いという病気でございますし、御存じのように、ギャロと我々がお会いしたときも、エイズというのは普通の感染症じゃないんだ、これは病気の本質からいって流行性のがんだということを言ったわけでございまして、がんの本質に近い部分も実はあるわけでございます。なおかつ潜伏期が六カ月から五年と大変長いということでございます。  なおかつ、これは大変大事な点でございますけれども、国がエイズの対策を考えていく場合に、根治的な治療法がまだ発見されていないということでございます。これはエイズビールスの特徴、レトロビールスでございますから、ワクチンをつくったりそういったことがなかなか困難で難しいという点がある。大変大まかな話ですけれども、そういった特徴が疾患としてあると私は思うわけでございます。  それで、お聞きをしたいことがいろいろあるわけでございますが、今回の法律改正に当たりまして、詳しい数字は時間がありませんから申し上げませんけれども、実は日本エイズ患者さん、きのう発表がございました。患者の発生数が八十人だということでございます。うち輸血と申しますか、凝固因子製剤によって約五八%、四十六人の方が実は報告されておるわけでございます。大変お気の毒でございますが、亡くなられた、いわゆるエイズによる死亡数からいきますと、合計が四十六人、うち凝固因子製剤による患者さんが六五%だということでございます。なおかつ感染者と申しますか、キャリアでございます、ビールスを持っているけれども、まだ臨床症状が発症していないという方が、この報告によりますと、千三十八人のうち九百六十六人、九三%だということでございます。これはほかの、アメリカは約五万人の患者さんの報告があるわけでございますけれども、アメリカではちなみに五万三千八百五十八名の患者さんのうち血友病による患者さんはわずかに一%、日本は感染者でいきますと九〇%ですから、日本におけるエイズ患者さんの感染経路別の分布が非常に異なっているということが、日本の現時点におけるエイズの大変大きな特徴だろうというふうに私は思うわけでございます。  男女比を見ましても、WHOが世界のエイズの分布に大体三つの形があるというふうに言っておるとお聞きしておるわけであります。一つはアメリカ、ヨーロッパを中心とした大変同性愛の患者さんが多い地域、それから二番目がアフリカでございまして、これはエイズの発祥の地ではないかというふうに推定されておるわけでございます。男女比が欧米の場合は大体十三対一、男が十三に対して女が一ぐらいの割合でございますけれども、アフリカでは患者さんの男女比が大体一対一だろうというふうに言われておるわけでございます。しかしながら、これはいつ病気が発症したかということによるわけでございまして、いずれ日本型のエイズも、将来はアフリカのように男女比が一対一になる。全体の患者の中に占める血友病の患者さんの割合が少なくなって、性的接触による患者さんの割合がふえてくるということが十分に予想されるわけでございます。  そういった中で、まず一点お聞きしたいわけでございますけれども、今日本エイズ患者さんの疾病分布が大変異なるという話をしたわけでございます。現在法律をつくるあるいはエイズ対策を政府の方でも一生懸命やっておられるわけでございますけれども、この疾病の感染経路別の患者さんというのは、非常に世界とは違っているわけでございます。なおかつ、特に血友病の患者さんで輸血を受けて、本当にお気の毒なことでございますが、そのために発症された方、それから性的接触によってうつされた方というのは、病気としては同じでありましても、やはり社会のありようと申しますか、社会の中において、血友病の患者さんは、血液の第VIII因子あるいは第IX因子の不足で輸血を受けねばならないという宿命にあるわけでございますから、そういった方とおのずと違うというふうに思うわけでございます。今諸外国のエイズの対策というのは、主に性的接触の患者さんを防ごうということに主眼があるわけでございますから、諸外国と違ってくるというふうに思うわけでございます。そういった違いを踏まえまして、特にこの法律の提出に当たりましていろいろ社会の関心を呼んだわけでございまして、この血液製剤によるエイズの感染者の救済にまずどのように取り組むのかということが、私は大変大事だと思いますし、特に今申し上げましたように、医学的には同じエイズという疾病であっても、公衆衛生対策の面から異なった取り扱いが必要ではないかというふうに思うわけでございまして、その点につきまして、まず質問をさせていただきたいわけでございます。
  16. 北川定謙

    ○北川政府委員 ただいま自見先生から大変御専門的な立場からの御詳細な御説明をちょうだいしたわけでございますけれども、その中で、我が国エイズ問題の実態というものが世界の状況とやや異なっておる、そういう状況の中で、特に凝固因子製剤の利用によって感染をされた方々へのいろいろな対応というものも含めてどう考えているのか、こういう御質問であるわけでございますが、先生からただいまお話をいただいたように、エイズは感染症である。感染の原因が異なっても、医学的には同一の疾病であります。そういった意味の特徴を持っておるわけでございますけれども、その蔓延防止を図るということから見ますと、感染者の感染の原因、それからその人たちの行動形態、こういうものを十分に認識をして、それぞれに適切な対応をするということが必要ではないか。非常に大事なことであると私どもも考えておるところでございます。  この点で、血友病のエイズ感染者の方々は治療に用いた製剤による感染でございまして、同様のパターンでさらに他の方々へ二次感染を起こすというような可能性がまずないわけでございます。またこの血友病の患者さん方というのは、未成年者の方が非常に多いというようなこと、さらにすべての方々が主治医の指導を受けておるということからいいまして、性行為による感染者あるいは薬物の常用による感染者とは非常に異なったビヘービアをとっておるわけでございまして、エイズの蔓延防止といった公衆衛生上の対策をする上で、それぞれに異なった対応があってしかるべきというふうに考えられるわけでございまして、私どもも、その点については十分に配慮をして、今後の対応をしたい、このように考えておるところでございます。
  17. 自見庄三郎

    ○自見委員 今そういう答弁でございますから、もう本当にこれは日本におけるエイズ対策の大変大事な点だと私は思うわけでございまして、今の局長の答弁にございましたような認識で行政の方、あるいはきょうから法律案の審議が始まるわけでございますから、こういった疾病の予防に対する法律というのは、基本的にどういうふうに疾病を予防するか、だれも健康を願わない人はいないわけでございまして、一日も早くこういったことを、いろいろな政治的お立場があるかと思いますが、各国も全部いろいろな法律があるわけでございます。そこら辺で、健康な人はこういったエイズにかかりたくない、あるいは本当にお気の毒でございますけれども、疾病にかかられた方を一日も早く救済をしていただく、あるいはその治療法が現在ないわけでございますから、その研究開発に関して政府は全力を挙げるという、この我々の善意は、私はいろいろな立場、イデオロギーを超える人間の善意だと思うわけでございますから、そういった立場でもぜひ強く推進をしていただきたいと思うわけでございます。  それでは、いろいろな質問をしたいわけでございますけれども、この法律案が第百八国会に提出をされたわけでございます。いろいろな論議があるわけでございますけれども、この法律ができるとかえって感染者の方が地下に潜ってしまって逆効果ではないかという論議があるわけでございます。御存じのように、これは大部分が今さっき申し上げました性的接触ということでございまして、性でございますから、これは人間の道徳観あるいは倫理観あるいは社会における規範、宗教の源泉でもある大変人間の深淵な部分でございまして、これは本当に我々凡人には計り知れないような奥深さも人間としてあるわけでございまして、同時に人間でございますから、一方において大変な尊厳と社会的役割というのがあるわけでございます。  そういった中で、このエイズ予防法案は、一方では感染の、疾病の予防をするということでございますから、ある程度我慢をしていただかなければならないというところもあるわけでございます。同時に、患者さんあるいは感染者の方々の人権を守るということも、大変私は大事な点だと思うわけでございます。  私は昨年の三月にアメリカに行かせていただいて、アメリカというのは大変壮大なエイズに対する戦争、私はエイズウオーと言ったのですけれども、エイズウオーをしかけているというふうな気がしたわけでございます。その中でも一番苦労したのが、今呻吟しつつあるのが地下における疾病の予防患者さんの人権、人権というのは言うまでもなく大変大事なものでございますから、それをどういうふうに調和するのかということで、これは向こうのボーエン厚生大臣あるいはいろいろな政府の方にもお会いしたわけでございますけれども、その点が大変大きな問題であったわけでございます。  そういった点を踏まえて、今申し上げましたように、特に人権の問題、感染者のプライバシーの保護等について、この法律が果たしてきちっと担保できるのかというところでございますけれども、その点につきまして御意見をお伺いしたいと思います。
  18. 北川定謙

    ○北川政府委員 エイズという人類が今まで経験したことのない新しい病気にどう対応するか。世界各国はそれぞれの国の状況に応じていろいろな対策をやっておるわけでございますけれども、我が国におきましても、このエイズという問題から決して隔離をされているわけではない。これから非常に国際交流が活発になる社会情勢の中で、ひとりこの日本列島だけが被害を受けないで済むということはない。そういうことを考えますと、とにかく今のうちに予防をする必要がある。そのために一体どういうことをすればいいのか。法律がなければならないのか、あるいは法律があることによってむしろいろいろな障害が出てくるのか、そういう点についても、厚生省といたしましても、専門家の先生方といろいろな議論を詰めて、今日に至っておるわけでございます。  そこで、先ほど先生が御指摘になられました、法律ができると感染者が地下に潜ってしまう、こういう心配があるのではないか。こういう点について申し上げてみますと、これは確かにそういう問題が決してないわけではないわけでございますけれども、しからばそういうことを踏まえてどんな対応がとれるのか。しかし、法律というものは、その点だけではなくて、本当にエイズ予防するための総合的な観点から組み立てていくべきものであるわけでございますので、私どもとしては、御提案申し上げました法律の中で、やはりエイズの蔓延を防止するために法律が必要である。その上で一番配慮をしなければならないのは、この種の疾病が持つ特異性、それは今自見先生がるる御説明をいただいたわけでございますけれども、そういう点からして、その関係者の個人のプライバシーを守る、そこが最大ポイントであるわけでございます。そういう環境づくりをしながら、感染の心配を持つ人々が自発的に受診をしていただく、こういう流れをつくっていきたい。こういうことから、この法律案でも医師と患者信頼関係に基づく医師の指導ということを最重点にしておるわけでございます。したがって、予防対策を進める上で必要な医師からの都道府県知事への報告でございますけれども、これも氏名だとか住所だとかその個人を特定するような情報は一切含まない、こういうことでやっていこう、こういうふうに考えておるわけでございます。  また、医師、公務員等関係者に対しては、厳しい守秘義務を課すというようなことをいたしまして、従来の伝染病予防法や性病予防法といった法律と比べても、プライバシーには格段の配慮をしたと私どもは考えておるわけでございまして、こういう点についても十分関係の皆様方の御理解をいただくようPRをして、自発的な受診が抑制されるということがないということに十分配慮をしながら今後対応してまいりたい、このように考えておるところでございます。
  19. 自見庄三郎

    ○自見委員 医者と患者さんとの信頼関係に力点を置いてやっていくということでございます。当然エイズ患者さんでございますから、やはり信頼のできる主治医にかかるということが基本でございます。その点を十分に守ってやっていただきたいと思うわけでございます。  時間がございませんが、実は諸外国のエイズ対策ですね。今ちょっと局長の中にもありましたけれども、エイズの立法措置がとられているという話があったわけでございます。実は我々昨年の三月、アメリカに行きました。小沢辰男先生が団長で行かせていただいて、アメリカのボーエン厚生大臣に直接、当時はベネチア・サミットの前でございましたけれども、御存じのように、大変情報化、国際交流が激しい、日本一国ではエイズ予防というのは限界があるわけでございますから、ぜひベネチア・サミットで議題に取り上げてくれということを小沢団長また私も強く――出発前には中曽根前総理ともお話をしていったわけでございまして、強く働きかけさせていただいたわけでございます。  御存じのように、このベネチア・サミットでは、「エイズに関する議長声明」というのができたわけでございまして、この中では、当然今言ったように、一つの国家だけでやってもなかなか効率が上がらないということで、国際協力及び共同キャンペーンをやろうというふうなこと、それからこの活動の中心は世界保健機構、WHOが最適であるというふうな声明が実は出たわけでございます。御存じのように、ことし世界保健機構の事務局長日本人のお医者さんでございます中嶋宏先生が、戦後初めて国連の四大機関の一つの事務総長ということにもなったわけでございます。そういった意味でも、日本は国際的にもエイズ予防について大変責任があるというふうに私は思うわけでございます。また御存じのように、ことしの一月二十八日、「エイズ予防に関するロンドン宣言」というのがあったわけでございます。これはベネチア・サミットの議長声明を踏まえて、イギリス政府及びWHOの共催でやったわけでございます。この中でも「情報提供と教育が唯一最も重要なエイズ対策である。」ということがあるわけでございます。  そういったことを踏まえまして、諸外国のエイズ立法あるいはエイズ対策について、手短に御説明をいただければと思うわけでございます。
  20. 北川定謙

    ○北川政府委員 今先生がエイズウオーと御指摘になられましたけれども、アメリカのみならず世界各国が、非常に急速なエイズ流行ということに対処するために、それぞれの状況に応じて知恵を絞っておるわけでございます。  まず第一に、各国がそれぞれどんな対応をしておるのかということを簡単に御説明申し上げますと、このエイズ予防に関連しまして法律をつくっておる、持っておる国ほどのくらいあるかということでございますが、私どもが調査しただけでも三十九カ国が法によってエイズの対応をしておるわけでございます。その中の二、三を御紹介申し上げますと、アメリカは御承知のように、州レベルの法律という体系になるわけでございますけれども、エイズ対策の組織を設置するとか、結婚時のエイズウイルスの検査の義務づけですとか、あるいはエイズに関する情報、診断した医師からの報告、それから関係者の秘密保持、また関連の情報が漏れたことに関連する罰則、その他非常に特殊な場合には、エイズ患者の結婚の禁止とかあるいは売春の禁止とかいう規制をしているところもあるわけでございます。そのほかオーストラリア、イギリス、ドイツ、フランス等におきましても、それぞれの国の状況に応じた法制を持っておるわけでございますが、特に一番大事なことは、的確な情報の把握ということで、発生した患者報告ということについては、各国とも非常に意を用いておるところでございます。  それから、今自見先生が御指摘になられました国際協力でございますけれども、これは本当にこういう国際交流の激しい社会の中での問題でありますので、共同して対策を進めるということが非常に重要で、WHOが中心となってやっている。そういうことの中での日本の医学的な協力関係をさらに強めていく。WHOへの協力ですとかあるいは二国間協力を積極的に進めておるというところでございまして、今後ともこれらWHOを中心といたしました国際協力にさらに力を尽くしていくべきである、このように考えておるところでございます。
  21. 自見庄三郎

    ○自見委員 それでは、そろそろ与えられた時間のようでございますので、最後に大臣に。  私が最初に申し上げましたが、大臣の責任というものは大変に重たいというふうに確信をするわけでございます。ロンドンでの百四十八カ国参加のエイズ大臣会議でも、さっきのロンドン宣言が出ております。今まだ五年生存率がゼロ%に近い。一遍発病すれば、本当にお気の毒なのですが、今有効な治療法かない。AZTという薬がありますが、これは延命効果でございますから根治的な治療ではございません。なおかつビールスそのものが弱い、感染経路がアイデンティファイと申しますか、明確にされておるわけでございまして、そういった中で私もアメリカに行かせていただいて、大変ある意味では絶望的な気持ちにもなったわけでございます。私も国会に来るまでは、十数年内科の医者をやって難病患者さんをずっと診断あるいは研究をさせていただいた人間でございます。しかしながら、我々人間の英知というものは、医学に関しては本当に信じるに足る無限のものがあるというふうに私は確信をするわけでございます。大臣は一国の、日本国のそういった公衆衛生、健康の責任者でありまして、ロンドン宣言の最後は「責任ある行動と国際協力を通じて、HIVの感染蔓延を抑えこむことが、今これから実現可能であり必ず実現するであろうことを我々は確信する。」という言葉で終わっているわけでございまして、このエイズ予防、制圧、あるいはそういったことにかける大臣の決意を聞かせていただきたいと思うわけでございます。
  22. 藤本孝雄

    ○藤本国務大臣 免疫学の非常な権威でいらっしゃる自見先生でございますから、よく御存じでございますが、エイズというのは病気として非常に厄介な病気でございまして、免疫体を破壊をする。それによって人間の病気に対する抵抗力がなくなる。現在五百万人から一千万人の感染者が世界じゅうにいる。そのうち三〇%ぐらいの方々が将来患者になり、患者になれば、先ほど申されましたように、一〇〇%近い方々が死亡する。私どもにとりまして、こういう極めて大きな問題を持つ病気でございますから、政府としては、この治療法が確立していない現状におきましては、予防に力を入れ、かつ蔓延の防止に全力を挙げていかなければならぬ、これは至極当然のことでございます。  ただ、その場合に考えなければならないことは、感染者のプライバシー、また不当な差別、偏見から守る、この二つ、このことがあるわけでございまして、エイズの蔓延を防止するということと、感染者の人権、不当な差別、偏見から守るということは、私はまさに車の両輪であると考えておるわけでございます。確かに一部には、蔓延を防止するために感染者の人権を制限してもやむを得ない、こういう意見もございますけれども、私はそういう意見ではございませんで、申し上げておりますように、蔓延防止と感染者の人権、不当な差別、偏見から守るということは、車の両輪であるという考え方を持っておるわけでございます。正しいエイズに関する教育を普及強化をいたしまして、エイズという病気は特殊な人たちだけの病気ではないということを十分に国民の皆さん方に理解をしてもらい、さらに感染された方々を社会の中に受け入れて、ともに生きていくという考え方を社会の中につくっていくということも、私は極めて大事なことだと考えております。  現状におきましては、幸いにも我が国ではアメリカ、ヨーロッパ、アフリカに比べまして極めて感染者も患者も少ないわけでございまして、こういう状況にある間に、我々としては、このエイズの蔓延防止に全力を挙げるということは、国民の健康を守るという重い責任を持っている厚生省、また厚生大臣としては、最も大事な責務であると考えておるわけでございまして、今後、感染者、患者の人権、また不当な差別、偏見から感染者を守るということを十分に念頭に置きながら、蔓延の防止のために全力を挙げてまいりたい。そのために、今回、法案も御提案申し上げている次第でございまして、どうぞよろしく御理解の上、御協力、御支援をお願い申し上げたいと思います。
  23. 自見庄三郎

    ○自見委員 これで質問を終わりますけれども、大臣の決意の表明を聞かせていただきました。今さっき申し上げましたように、人類がペストを克服し、あるいは日本国においては昭和二十六年まで死因の一位でございました結核を制圧したわけでございまして、道は大変、また御理解をいただく方もたくさんいます。なおかつきょうもエイズで病んでおられる方、あるいは日本エイズの特徴を今さっき申し上げました。血友病の患者さんでエイズになられた無事の方が大変多いわけでございます。そういう現時点も踏まえつつ、いかに効率のいい、実効のある法律をつくり、なおかつ患者さんの人権と、そして我々には健康を保持したいという人権があるわけでございますから、どこら辺で調和をとるか、これは大変大臣の練達な判断だと私は思うわけでございます。決意を聞かせていただきまして、本当に私も心から協力をさせていただきます。しっかりこの日本国国民の健康のために、なおかつ人類の本当に未踏の病気でございますから、征服するためにもぜひ一層の御奮起をお願いいたしまして、私の質問を終わらせていただきます。本当にきょうはありがとうございました。
  24. 稲垣実男

  25. 池端清一

    池端委員 昨日、エイズサーベイランス委員会の検討の結果が発表されたようでございますが、現在、日本国内におけるエイズ感染者は何名で、そのうち血友病の患者さんは何名か、また未成年者は何名になっているか、その実態をまず明らかにしてもらいたいと思います。
  26. 北川定謙

    ○北川政府委員 本年の四月末までの報告に基づく数字でございますが、エイズの感染者は現在一千三十八名でございます。そのうち凝固因子製剤によるものは九百六十六名、全体の九三%。それから凝固因子製剤による感染者のうち、二十歳未満の者は四百五十三名、四六・九%という数字になっております。
  27. 池端清一

    池端委員 血友病患者エイズの感染者は、今の答弁では九百六十六人、まさに全感染者の九割にも及んでいるわけでございます。しかもそのうち死亡が三十名、こういうまことに悲惨な状況に置かれております。しかも、昨年九月の厚生省研究班の発表によりますと、血友病患者の約四割がその被害を受けていると言われております。したがって、今後の調査が進めば感染者は二千名にも及ぶのではないか。しかもその半数は未成年者で占められている、こういうふうに言われておるのであります。まさに日本医療史上例を見ない悲惨な状況と言わなければなりません。本来、エイズに無縁な血友病患者の皆さん方がなぜこんな仕打ちを受けなければならなかったのか。これは既に明らかなように、エイズウイルスに汚染された輸入血液凝固因子製剤の投与によって感染したものでありまして、国と製薬会社の責任は極めて重大である、こういうふうに私は思うのであります。  そこで、お尋ねいたしますが、どこのメーカーの製剤で感染したのか、まずそれをお答えいただきたいと思います。
  28. 坂本龍彦

    ○坂本(龍)政府委員 お答え申し上げます。  エイズの感染者あるいは患者の場合におきましては、実際にある時点で感染の原因に遭遇いたしましてから、その病状が出てくる、あるいは感染の兆候が出るというまでには相当の時間がかかります。またそれは個人によっていろいろと差があるというのが実情でございます。そういう事実に基づきまして考えますと、感染の時期、感染の原因となった事実が発生した時期を特定するということは非常に困難でございまして、したがって、私どもとしても、個々に感染の原因となった個別の製品、さらにその製品を製造した企業を特定するということは極めて困難なことと考えておる次第でございます。
  29. 池端清一

    池端委員 なぜわからないのか、私は全く理解に苦しむのであります。わかろうとしないのではありませんか。薬事法によりましても、血友病Aの製剤は国家検定が義務づけられているのであります。国立予防衛生研究所にはロット製造番号のサンプルがあるはずであります。したがって、どれが汚染製剤であるかは、この製造番号調査でわかるのではないでしょうか。さらにお医者さんのカルテを見れば、どのメーカーのどの製剤を使ったか一目瞭然ではないですか。
  30. 坂本龍彦

    ○坂本(龍)政府委員 国立予防衛生研究所において国家検定を行っていることは御指摘のとおりでございます。ただ、ここにおきます国家検定におきましては、製品の中から一定の数量を抜き取りまして、そこで試験を行うわけでございますが、この抜き取られる数量は試験に必要な限度ということになっておりまして、検査の結果としての記録はございますが、検査を受けました製品の実物は残されていないというのが実態でございます。また検査の段階におきまして、最終製品につきましては、現在の検査に用いられておりますエイズ抗体診断薬では、最終製品中の微量の抗体を検出するということは不可能である、こういうことになっておるわけでございますので、実際に検定をいたした段階、あるいは仮にその後製品があったといたしましても、その製品についての検査によってエイズウイルスの汚染の有無を確定するということは困難だということになるわけでございます。そのようなわけでございまして、凝固因子製剤についてのエイズウイルスの汚染問題、これは私ども事実として認識はしておるわけでございますが、具体的にどの製品であったか、どの企業の製品であったかというのを特定するということは困難であるということになるわけでございます。
  31. 池端清一

    池端委員 お医者さんのカルテは、病院のカルテは。聞いておることに答えないと。
  32. 坂本龍彦

    ○坂本(龍)政府委員 医師のカルテには記載してあるであろうということは推定できるわけでございますが、ただ、この場合にいたしましても、いつの時期に使ったものから感染したかということを個別に判断していくということは極めて困難であろうかと思われるわけでございます。
  33. 池端清一

    池端委員 実に無責任も甚だしいと思うのですね。昨年の秋、例のB型肝炎の問題のときは、あなた方そういうカルテの調査をしたでしょう。具体的にそういうことをやってやれないはずはない。これは責任をとりたくないからそういう方法をとっていないのだ。私はこの点は非常に遺憾に存じます。きょうは時間がありませんから、この問題ばかり申し上げておる余裕がございませんので、改めてこれは薬務局長、やりますから、あなた、一人間としてお答えをいただきたい、こう思うのです。  それでは、非加熱製剤を販売していた企業はどこですか。
  34. 坂本龍彦

    ○坂本(龍)政府委員 非加熱製剤の凝固因子製剤には第VIII因子と第IX因子とございますので、それぞれについて販売していた企業を申し上げます。  まず、第八因子製剤でございますが、株式会社ミドリ十字、財団法人化学及血清療法研究所、それからバイエル薬品株式会社、バクスター株式会社、日本臓器株式会社及び日本製薬株式会社でございます。次に第九因子製剤でございますが、株式会社ミドリ十字、バイエル薬品株式会社、バクスター株式会社、日本臓器株式会社及び日本製薬株式会社、以上が非加熱の凝固因子製剤を販売していた企業でございます。  なお、日本製薬株式会社につきましては、国内で採取をいたしました血液のみを原料として製造していたという事実がございます。  以上でございます。
  35. 池端清一

    池端委員 過日、厚生省のまとめた血友病患者の救済策では、報道によりますと、今局長が言われた、これら血液製剤メーカーから大口の基金の拠出を求めて、それをもとにして救済金を支給するということが発表になっておったわけであります。なぜ、あなたが言うように、責任のないものであるならば、そこからこういう基金の拠出を求めることができますか。そのメーカーに拠出を求める根拠をひとつ示していただきたいと思います。
  36. 坂本龍彦

    ○坂本(龍)政府委員 このエイズに感染された血友病患者の方々の救済の問題につきましては、私ども従来から非常に重要な問題と考えて鋭意その対策の検討を進めておるわけでございます。その段階におきまして、救済対策のための費用をどうするかという問題についても対策の内容あるいは実施方法ともあわせていろいろと考えておるわけでございます。  そこで、今お尋ねがございましたように、血液製剤を製造していたメーカー、これは先ほども御答弁申し上げましたように、具体的に個々の製品についてどのメーカーのものが汚染されて、それがエイズ感染の原因となったかということまで特定することは困難でございますけれども、現実に実際に使用されていた製剤によって感染された方がおられるわけであります。そこで、私どもとしては、特に法律上の根拠なり責任という意味で具体的に拠出をせよということは困難であると考えておりますけれども、政府においてできるだけ対策を進めていこうという中において、医薬品の製造に携わった企業についても、この救済対策に協力することくらいはできるのじゃないか。したがって、私どもとしてはできるだけ協力してもらいたいという気持ちから協力方を要請している。これがこの新聞に報道されましたような医薬品メーカーにおける費用負担の問題であるということでございますので、個々の責任の問題とは別に、実際にそのメーカーの医薬品を使用していたと考えられる方々の非常に不幸な状態に対しまして、何らかの形でいわば人道的な意味も込めてメーカーとしての協力を考えてもらいたい、こういう趣旨でございます。
  37. 池端清一

    池端委員 薬務行政をつかさどる人がこれだけの重要問題を協力をしてもらいたいと言うのは極めて不見識であります。責任はやはり明確にすべきだと思います。  それでは、あなたが協力を求めているこのメーカーは、今その基金の拠出に応ずる、こういうふうにお返事はあったのですか。
  38. 坂本龍彦

    ○坂本(龍)政府委員 私どもからできるだけ協力をするようにという話をしておるわけでございますが、現在の段階において具体的に金額の拠出の回答というものはまだございません。しかし、できるだけ私どもとしては、その回答を得るように努力をいたしたいと考えておる次第でございます。
  39. 池端清一

    池端委員 私は、協力を求めるというようなことではなしに、はっきりとその責任を明らかにするということが、この問題解決の大前提であるということを強く申し上げておきます。  アメリカ国立防疫センター、CDCは、五十七年七月十六日付「疾病死亡週報」で、血液製剤を使用していた血友病患者三人がカリニ肺炎にかかり二人が死亡、こういう報告を週報でしておるわけであります。引き続いて昭和五十八年三月四日には、血友病患者エイズ発病の原因は血液製剤と見られる、こういうふうに警告をしているのであります。そしてその直後、アメリカは加熱処理した濃縮血液凝固製剤の製造を承認したわけでございます。しかしながら、日本では、その後二年半もこの汚染された血液製剤が使われていたのであります。まことに驚くべきことであり、恐ろしいことでございます。それでもあなた方政府は責任はないとおっしゃるのですか。
  40. 坂本龍彦

    ○坂本(龍)政府委員 アメリカにおきましては、エイズの問題が日本より早くから取り上げられまして、それに対する研究調査も進んでおったわけでございますが、日本においても、それに対しては相当の関心を持って、その情報をそのときそのときにおいてできるだけ入手するように心がけてまいりました。  今御指摘ございましたように、アメリカにおきましていろいろな結果が発表され、そのための対策がとられてまいったわけでございますが、アメリカにおきまして加熱製剤が承認されましたのは、まず肝炎対策のための加熱の製剤が承認されましたのが五十八年の三月時点でございまして、エイズのための予防対策としての加熱の凝固因子製剤が承認されましたのは五十九年二月でございます。日本におきましては、まず五十八年の六月にエイズ問題についての重要性を認識して厚生省でエイズ研究班を発足させ、また五十八年の七月には輸入血液製剤につきまして、エイズ感染のおそれのない供血者から採血した旨の証明書の添付を義務づけております。同時に、五十八年の八月には日本においても加熱処理製剤の早期開発を指示いたしておるわけでございます。実際には日本においてこれまで使用した経験のない製剤でございますので、加熱によってたんぱく質が変性するなどの危険性がないかどうか、これを十分確認する必要があったということから、国内における臨床試験、これを欠かすことはできなかったわけでございまして、これにつきましても、厚生省としては通常の臨床試験に比べましてある程度簡素迅速化を図るという形をメーカーにも指示してまいりました。またそれらの臨床試験を経まして申請が出てまいったのが六十年の四月前後でございますけれども、それにつきましても、厚生省の承認の手続を通常の医薬品の承認手続よりもはるかに優先をさせまして、緊急に処理をいたして、六十年の七月に承認をいたしたわけでございます。  こういうことで、エイズのための加熱という点につきましては、アメリカとの間で約一年四、五カ月の開きはございますが、日本における薬務行政上必要な手続、さらにそのための努力、こういうものにつきましては、私どもとしては、新しい加熱製剤の安全性を十分に確認しつつ、その供給を最大限に急いで実施した、国としては最大限の努力をいたしてまいったと考えておる次第でございます。
  41. 池端清一

    池端委員 最大限努力した、通常よりも早く処理した、こういうふうにあなたは言われますけれども、今お話ありました、ようやく日本でも加熱処理した濃縮製剤が認可をされたのは、諸外国よりおくれること約二年半、昭和六十年の七月ということです。これが昭和五十八年の時点で安全な国内の血液による製剤の製造、あるいは加熱処理をされた血液製剤の緊急輸入、こういうような措置を国がとっておれば、今日このような、まさに痛ましい悲劇、被害者を出さないでも済んだはずであります。  しかも、薬事法第五十六条の六号「病原微生物により汚染され、又は汚染されているおそれがある医薬品」は「販売し、授与し、又は販売若しくは授与の目的で製造し、輸入し、貯蔵し、若しくは陳列してはならない。」明確に薬事法にうたわれておる。これにも明らかに反しているではありませんか。これについてはどう思いますか。
  42. 坂本龍彦

    ○坂本(龍)政府委員 安全な血液凝固因子製剤の供給につきましては、国としても、特にこれを重要視して、それぞれ必要な対策をとってまいったわけでございますし、またこういった製剤について血友病の患者の方々からのいろいろな御要望も、私どもとしては十分承っておったわけでございます。  ただ、先ほども申しましたように、一つは、日本の国内において、これまで経験のない加熱による凝固因子製剤、これを使って本当にエイズ以外の面で別の危険性がないかどうか、これはどうしても確認をしなければならない問題であったわけでございますし、そういう意味におきまして、アメリカの製品をそのような確認をせずに緊急に輸入をすることは、国内の薬事法の体制から見て、これはやはりとり得なかったわけでございます。それに対してできるだけ正規の承認を急ぐように私どもとしては努力をしたわけでございます。その間におきましても、輸入製品についてハイリスクのグループから供血したものでないという証明をつけさせるとか、あるいは抗体の検査を受けたことを証明させる、そういうような安全確保も同時に行ってきておるわけでございます。  また、一方におきまして、ただいま病原微生物に汚染され、あるいは汚染されたおそれがある医薬品というものに該当するのではないかという御指摘でございますが、確かに今から考えてみますと、その当時そういうウイルスが混入していたということによって発病した、感染したという結論に大体なっておるわけでございますが、当時の科学的所見に照らしてみますと、まずエイズのウイルスがはっきりと分離され、これが病原体であるということが学問的にも技術的にも確認されるまでの段階におきましては、病原微生物に汚染され、あるいは汚染されたおそれのあるという認定は困難であったわけでございます。またその後におきましても、先ほど申しましたように、輸入製剤につきましてハイリスクグループから供血したものでないという証明あるいは抗体試薬を用いた検査済みの証明、こういうものをつけて輸入を認めておりますので、現実に市販されておりましたものも、もちろんその危険性が全くゼロということまでは言えなかったと思いますけれども、薬事法に言う、具体的にこの製品が汚染されているおそれが明らかにあると認めるに足るだけの根拠というものも、また同時になかったわけでございます。  それと同時に、凝固因子製剤をもし供給を停止いたしますと、これをどうしても必要とされる血友病の方の治療に非常に重大な支障が生じる、こういうこともございまして、私どもとしては、非常に苦しい選択ではございましたけれども、一方において加熱製剤の承認を急ぎつつ、また他の安全対策もあわせ、実際の医療に支障かないような方法をとってまいったというのが実情でございます。
  43. 池端清一

    池端委員 大臣にお尋ねをしますが、大臣もお読みになったと思うのでありますが、毎日新聞の四月二十日付の「飽血にっぽん」と題する特集記事の中で、「東京逓信病院は、六十一年十一月から血しょう製剤をすべて製剤メーカーから日赤製品に切り替えた。」こういう記事がございました。磯崎薬剤部長は、「薬価差益を考えれば損になる。しかし、安全という点からは、日赤製品を選ぶ。安全と損得をはかりにかけるべきではない」こういうふうに述べておられるわけでございます。また三十人以上の血友病患者を抱えながら、国内の原料血の血漿製剤だけを使って、一人のエイズ感染者も出さなかった横浜市の向山小児科医院の向山秀樹院長は、「血液には何が入っているかわからない部分がたくさんある。だから他人の血液はできるだけ体内に入れない方がいい。外国の血は極力避けるべきだ」こういうふうに言われているわけです。そして具体的にヨーロッパのエイズ流行地域に属するノルウェーでは、血友病患者が三百六十四人いらっしゃる。その中でエイズウイルスの感染者はわずかに二十一人だということであります。六%にとどまっている。これは何か。これはノルウェーが自国の献血を原料としたために血友病患者の感染を回避した。極めて教訓的な事例だと私は思うのであります。  こういうような諸外国の先進的な経験あるいは日本国内でもこのような血液に対する極めて見識のある先生方の御意見というものを、なぜ日本は、我が国は薬事行政に反映できなかったのか。私は非常に残念に思うわけでございます。しかも厚生省の血液事業検討委員会委員でもあります村上省三東京女子医大名誉教授は、エイズ感染の血友病患者は国の無策のツケを払わされた、こういうふうに発言をされておるのであります。これに対して大臣はどのような御見解をお持ちでしょうか。
  44. 藤本孝雄

    ○藤本国務大臣 凝固因子製剤の開発によりまして血友病に悩む多くの方々が救われた。事実非常にそういう救われた事実があるわけでございますが、同時に、極めて不幸なことでございますが、当時予見をし得なかった新たな病気、B型肝炎であるとか今回のエイズ感染、こういう病気を背負われる患者も出てきたわけでございまして、そのようなことを考えますと、これは社会全体としても、こういう方々に対して救済であるとか支援であるとかいうことを考えていかなければなりませんが、特に私どもといたしましては、こういう方々に対する救済につきましては、誠意を持って対処していかなければならない問題だと考えておるわけでございます。先般の予算委員会におきましても、総理がまさに、凝固因子製剤が原因でエイズに感染されました方々に対して、政治の責任において誠意を持って対処しなければならぬとおっしゃられましたことは、私もそのとおりだと思いますし、そういう背景からすれば、私どもとしては誠意を持って救済しなければならぬと思っております。  ただ、先ほどから政府委員が申し上げておりますように、アメリカでの凝固因子製剤を加熱して加熱製剤として採用した時期と、日本におきまして同じように採用した時期につきましては、一年四カ月間のおくれがあるわけでございまして、整理して考えますと、この一年四カ月のおくれは何が原因であるかということになるわけでございます。そのおくれは、申し上げておりますように、私ども薬事行政、特に日本国民の健康を守る立場からすれば、外国で採用されております医薬品をそのまま無条件で国内で採用するということは、これはできないことでございまして、おのずからアメリカ人と日本人、また外国人と日本人の栄養、体格その他条件が違うわけでございますから、国内で採用する場合には、それ相応の基準に照らして検査をするということも、これまた当然の措置であるわけでございます。そういう観点から、この凝固因子製剤の加熱化につきましては、たんぱく質が加熱によってどう変質するか、それが日本人にとってどう影響を与えるかということの臨床実験をするということは当然であるわけでございまして、そのための一年四カ月ということでございますので、その点につきましては、御理解をぜひいただきたいと思います。  冒頭に申し上げました救済措置につきましては、関係者の意見を十分に聞きまして、誠意を持って対処してまいりたい、かように考えております。
  45. 池端清一

    池端委員 今大臣も言われました政治的救済策、これは厚生省が現在どういうような救済策を検討しているのか。例えば患者団体の皆さんからも強い要望もございます弔慰金の問題あるいは見舞い金の問題、これもあわせて検討されているのかどうか。その救済策を具体的にお示しいただきたいと思います。
  46. 北川定謙

    ○北川政府委員 厚生省といたしましては、血友病患者エイズに感染をされておられる方々の現状に対して、総合的に早急に手をつけるべきところから手をつけていく必要がある、こういうことでございまして、いずれにしても、血友病の患者さんたちは、それぞれ主治医との連携を密接に保っておられるわけでございますので、私どもとしては、主治医の先生方の御意見を聞いて、それから患者さん方のプライバシーの保護にも十分配慮しながら、これまで険討をしてまいったわけでございます。  具体的には、一番まずやらなければいけないことは、感染をした人が発症をしない、そういう発症予防ということがまず早急に手をつけるべきことではないだろうか。それから発症者に対しましては、まだ現在のところ特効的な治療方法がないわけでございますけれども、その方が持っておるいろいろな病状に応じて、その病状が拡大しないように、あるいは次の新たなる感染が起こらないようにというようなこと、専門の分野では対症療法というようなことを言っておるわけでございますけれども、そういうことについて万全の措置をとっていく必要がある。また他の患者と比べまして、プライバシーの保護というのは、特に神経を使うべきことでございますので、こういう今申し上げました二つのことをやっていく上でも、どこかのお医者さん、どこのお医者さんでもというわけにはいきませんので、直接患者さんを持っておられる方々を全体として協力していただく。そういうことで全国の血友病患者の主治医の先生方の御協力をいただいてネットワークをつくっていこう。そういうことで保健医療の体制を整備し、発病の予防、それから医療をやっていく。その上で必要な経費につきましては国費で考えていこう。関連経費の軽減、それからカウンセリング、これは非常に微妙な心理の動き、あるいは社会の不必要な偏見と申しますか、そういうものにもさらされる危険が非常にあるわけでございます。就学の問題、就職の問題、いろいろあるわけでございますので、そういうことに適切に対応するようないろいろな相談事業、これを専門家カウンセリングというようなことで言っておりますが、日本ではまだそういう機能が非常に弱いわけでございまして、そういう機能も大いに拡充をしていくというようなこと。それからさらには一般の医療関係者あるいは学校の関係者、それぞれ血友病の患者さんを取り巻く社会のいろいろな機能があるわけでございますけれども、そういう方々がすべて血友病に関する正しい理解、さらにはエイズに対する正しい理解というものをお持ちでないというようなこともございますので、正しい知識という観点から、社会がエイズに対して不必要な不安を持たない、不必要な差別をしない、そういう体制づくりを早急にしていく必要がある。当面こういうことに手をつけてまいりたい。今後血液製剤によってエイズに感染された方々の救済のために、さらに広く関係者の御意見を聞きながら早急に所要の措置を講ずる、こういうふうに考えておるわけでございます。
  47. 池端清一

    池端委員 弔慰金は……。見舞い金。質問に答えてください。
  48. 北川定謙

    ○北川政府委員 現在の段階では、ただいま申し上げたところまで私どもとしては具体的な方策を考えておる。それ以上の問題については、現段階では考えていないという状況にございます。
  49. 池端清一

    池端委員 今局長はとうとうと時間を大分費やして述べたが、答弁はもっと簡潔に。私は十一時四十五分まで、限られた時間ですから、たくさん質問しなければならない。あなたの言ったことは救済策ではありませんよ。そして私の言ったことには答えていない。こんなものはもう本当に救済策と呼べる代物ではございません。まことに不十分であります。  そこで大臣、私は申し上げたい。この問題は一党一派の問題じゃない。党派を超えて、この社会労働委員会の皆さんがすべての英知を結集し、そしてまた患者団体の皆さん方やあるいは医療関係の従事者の皆さん方、こういうような方々の要望を踏まえて、この救済策は抜本的、全面的に早期に確立をしていかなければならない。これが今日急務である、私はそう思いますが、大臣の御意見を承りたいと思います。
  50. 藤本孝雄

    ○藤本国務大臣 エイズ対策を進めていくためには、凝固因子製剤が原因でエイズに感染された方々、この方々に対して誠意を持って救済策を講じていく、これは大前提であるというふうに考えておるわけでございまして、たびたび御答弁申し上げておりますとおりでございます。
  51. 池端清一

    池端委員 さきにも触れましたように、日本エイズ感染者の多くは汚染された血液製剤によったところの被害者でございます。まさに日本エイズとも言えるのではないか、こう思うわけであります。薬害による被害者なのでございます。したがって、血友病患者の血液製剤による感染者と、そしてその他の事情によるエイズ感染者の取り扱いは、完全に切り離し、その対策を図ることが大事ではないか、私はこういうふうに思うわけでありますが、大臣、その点についてはいかがでございましょうか。
  52. 藤本孝雄

    ○藤本国務大臣 血友病のエイズ患者につきましては、一般の患者と異なっておりますので、別に取り扱いをするのも一つの考え方であると思っております。法律上の措置につきましては、いろいろ御意見もありますので、今後の国会での審議、与野党間の協議を踏まえまして適切に対処したいと考えております。
  53. 池端清一

    池端委員 それでは、血友病患者の皆さん方の問題は、一応この程度にいたしまして、エイズ一般対策についてお尋ねをいたします。  ここに厚生省感染症対策室監修、アメリカ合衆国公衆衛生総監報告エイズ」という冊子がございます。これを読みますと、「情報と教育がわれわれの唯一の武器である」こう述べております。そして「秘密保持」ということでは、「地区あるいは州政府が性的接触者あるいは薬物濫用についての接触者を追跡するために、性病について行っている方法で、エイズウイルスに感染した人々に対して公衆衛生専門家への申告をするように求めても、エイズウイルスに感染した人々は保健や医療の対策の網の目からもれ落ちてしまう。この理由から今日の公衆衛生活動では、エイズウイルスに感染した人々のプライバシーを保護することと健康記録に関して厳密に秘密保持をすることが必要である。」とこの冊子では述べておるのであります。しかも「強制的血液検査はすべきではない。」「隔離はエイズの対策にはなんの役割も果たさない。」こういうふうに述べているのであります。今回政府が提案してきておりますこのエイズ法案、実は極めて重要な法案であるにもかかわらず、厚生省内にある公衆衛生審議会という審議会の議も経ていないのであります。非常に拙速でこれが昨年の三月、国会に提出されてきたという経緯があるわけであります。一方、エイズ先進国ともいうべきアメリカでは、こういうような対策がなされている。しかるに日本では、それと逆行するようなことが行われようとしている。しかも拙速に法制定をやろう。私はこれはやるべきことではないのではないか。私は、法の制定によらずして、予算措置その他でもって十分にこの対策を講ずることができる、こういう立場から物を申し上げておるわけでありますが、これについてはどうですか。
  54. 北川定謙

    ○北川政府委員 今先生が御指摘になられたアメリカの公衆衛生総監ドクター・クープが報告書を書かれた、その本であろうと思います。私もクープさんには何回かお会いしてアメリカのエイズ状況日本状況、意見交換もいたしました。アメリカにおける強制あるいは個人の秘密保護の問題、それぞれの社会環境の中でいろいろ考えられ、いろいろ対応されておるわけでございますが、結論的に申せば、アメリカはもう非常に大きな感染の状況になっている。本当にこれを防ぐためには、今や手段がないとさえ言っているわけでございます。  そこで、今先生が御指摘になられた日本の今度の法律案でございますが、これも決して強制ということを言っておるわけではございませんでして、個々人のプライバシーの保護ということに大変な注意を払っておると私どもは認識をしておるわけでございまして、そういう点からいいますと、従来の伝染病予防法あるいは性病予防法とは格段に違っておるわけでございます。そういうことで、この法律は今先生が御指摘になられたような非常に強制的なものであるという御認識をいただいておるようでございますけれども、私どもといたしましては、決してそうでないということを改めて御理解をいただきたいというふうに申し上げさせていただきたいと思います。  それから、厚生省における公衆衛生審議会の議を経ずというふうに御指摘をいただいておるわけでございますが、実は法案作成の段階でエイズ対策専門家会議というようなものも組織をさせていただきましたし、公衆衛生審議会の伝染病予防部会の専門家にも御説明し、御相談し、その意見も踏まえて、こういう形をとってきておるわけでございますので、十分に御理解を賜りたいと存ずるものでございます。
  55. 池端清一

    池端委員 局長は必ずしも強制的なものではないと言いますが、まだ法律が制定されていない段階で、例えば神戸の事件、高知の事件が起きたときのあの異常な社会の動き、非常に個人のプライバシーが侵害されるというような問題あるいはこの間血友病の友の会が発表されておりますように、血友病の患者さんというだけでもう職場から追われてしまう、あるいは幼稚園からもいづらくなって出てしまうというような事態も往々にして出てきている。これが法制定されればどういう状況になるかは、もう今さら多くを言う必要かないと私は思うわけであります。  先般、私ども日本社会党では東京都立駒込病院の根岸先生においでをいただきまして、いろいろ今日の状況についてお尋ねをいたしました。根岸先生はあの「エイズを診る」という本を医師団の一人として出版をされておるわけでありますが、この本の中にも、例えばエイズ予防法案が作成されたころから、  専門外来予約者のキャンセルが増え、法案が国会に提出された直後には、とうとう半数以上が受診をキャンセルしたのである。   私たちは強い危機感におそわれた。このままでは、エイズ感染者が医療の場から逃れ、放置され、その結果、知らないうちにエイズ感染者が増えてしまうかもしれない。   今こそ、受診者やエイズ感染者と日々接している臨床現場からの意見をいわなければならないと考え、 私たちはここに意見を述べる、こういうふうに言われておるわけでございます。私はやはりこの事態がはっきりと証明しておるように、このような法律をつくるということになれば、かえって感染者の皆さんを地下に追いやる、表現は余り妥当ではないかもしれないけれども、そういう状況になってしまうのではないか、そのおそれが非常に多いのではないか、このように考えますが、局長、あなたは過去の経験から照らして、そういうことは絶対にないと言い切れますか。
  56. 北川定謙

    ○北川政府委員 結論から申し上げれば、そういうことが進行するということは、法律ができるということを一つの社会的な契機として地下に潜るというような行動をとられる方が全くないと私どもも考えておるわけではございません。しかし、このエイズ予防法案というものは全体を見ていただきたい、こういうふうに思うわけでございますけれども、今地球の上でアメリカ大陸、アフリカ大陸で猛威を振るっておる、日本のこの地域へもやがてそういうものが、既に現在入っているわけでございますけれども、だんだんと浸透をしてくる、こういう状況から考えて、今の段階で総合的に手を打っておく必要がある、こういう観点から法の体系を構成をしておるわけでございます。  そういうことからいいまして、先ほど先生がお挙げになられました駒込病院の根岸先生の御意見もあるわけでございますけれども、しかし既に専門のお医者さん方の御協力を得て、患者の発生状況についてはサーベイランス委員会というようなところでも不完全ながら状況把握を進めてきておるわけでございます。私どもといたしましては、今後の状況を考えますと、こういう疫学的な情報を的確につかむ、これは今後のエイズ対策を的確に進めていく、むだのないように重点的に進めていく上でぜひ必要なことである、こういうことについては、私どものみならず世界各国がそう考え、そういう体制をつくっておるわけでございます。  そこで、今度のこの法律案の体系の中でも、患者のプライバシーの保護ということについては最大限の意を用いているところでございますし、こういう法体系にあるということを医療関係者が再認識し、また社会の皆様方もそこを御認識いただけるということになれば、先ほど先生が御指摘になられたようないろいろなパニック、プライバシーの侵害というようなことも、むしろプライバシーの侵害を抑えていくというようなことがさらに進んでいけるのではないか、このように考えているわけでございます。
  57. 池端清一

    池端委員 局長、お医者さんだと思ったから、もっと医学的な立場、専門的な立場でお話しになるかと思ったら、そうでないので、私は非常にがっかりしているのであります。私はお隣にいる河野先生と違い医者でもございません。医学には全く素人でございます。ですから、それだけに私はこの問題を取り上げるに当たっていろいろな文献を読みました。厚生省にもいろいろな文献を要求したんだけれども、まだ翻訳ができていないと言って、去年の重要な資料すら私はまだ手にすることができなかったわけであります。いろいろな文献を読んで勉強しました。読めば読むほど、勉強すれば勉強するほど非常に大きな問題を抱えている法案だなということを感じたわけであります。  例えば、朝日ジャーナルの五月二十日号で弁護士の鈴木利廣先生がこう言われている。   過去の感染症対策立法は、伝染病、性病、らい(ハンセン病)、結核のどれをとっても隔離を中心とした優生思想や社会防衛の考え方によって形づくられてきた。   このような感染症対策には一つの悪循環がある。感染者は差別をのがれて逃げまわり、病気を伝染させ、社会に害をもたらすと考えられて、通報、健診、隔離の管理体制が強化される。管理の強化は人々に”感染者は怖い”との認識をうえつけ、社会的差別はさらに深まる。感染者は差別をのがれてさらに潜在化するため、管理は一層強めざるを得なくなる。この悪循環は治療法予防法の確立まで続き、感染者に対する人権侵害はやむを得ないものとして是認されてゆく。 こういう指摘をされておるわけであります。そしてこの法案は患者を行政的に管理する危険を持っている。   ”行政介入”という刀を懐にかくしもったエイズ対策でなく、信頼関係を基盤にした政策を展開する勇気と熱意をもってほしい こういうふうに結んでおられるわけでございますが、厚生大臣、この先生の御所見に対してあなたはどのようにお考えでございましょうか。
  58. 藤本孝雄

    ○藤本国務大臣 先ほど御答弁申し上げましたように、エイズ予防、蔓延を防止するためには、エイズ感染者の人権を守り、また偏見、差別から感染者を守るということは、もう車の両輪だと申し上げたわけでございまして、池端先生の御指摘につきましては、私もそのように考えております。  要は、私が考えますのは、このエイズという病気について国民の皆様方が正しい理解、知識を持ってもらうということ、決してこれは一部の特定の人たちの病気ではないということを知っていただくこと、さらにエイズに感染された方々を受け入れて、ともに生きていくという考え方を国民の皆様方が持つということ、さらには世の中が感染者に対して保護と支援を行う、こういう中で初めてこのエイズ予防というものが、また法案の効果というものが十分に実効を上げていくものだと私は考えておるわけでございまして、感染者の人権を損なって隔離をしたりするような考え方は毛頭持っていないわけでございます。
  59. 池端清一

    池端委員 また大臣にお尋ねをしたいわけでありますが、五月十三日に閣議が行われました。この閣議の席上、奥野国土庁長官の発言をめぐって激論が闘わされた、かなり時間が長引いた、こういうふうに新聞は報道しておるわけであります。この長引いた原因は、新聞報道によると、田村通産大臣がエイズ問題で時間がかかったから長引いたんだということにしようというふうに報道をされておるわけであります。もしこれが事実であるとするならば、非常に不見識なことではないか、こういうふうに私は思うわけです。確かに閣議でエイズの問題が話題になったようでございます。その後何人かの閣僚がそういう発言をされております。しかし、こんな政治の都合でエイズの問題を扱うというのは見識が問われるのではないか。今血友病患者の家族の皆さん方はどんな思いでいるか。きのうも衆議院の第一議員会館で集会がありました。テレビに映るのを、顔を隠しながら発言をされている。そういう本当にふんまんやる方ない気持ちで、デモもしたい、あるいは厚生省にも行って訴えたいけれども、それができないという状況に置かれているこの患者の皆さん、家族の皆さんに対する、これは何と言っていいかわからないような気持ちに私は駆られたわけでございます。こんなことが許されていいのか、これがこの日本の政治家のやるべきことか、私はこう思ったわけでありますが、この辺の事実関係について、厚生大臣、どうだったのですか。
  60. 藤本孝雄

    ○藤本国務大臣 閣議におきましてある大臣から、新聞に出ております大阪のエイズ患者の記事を例にとりまして、今後エイズ患者が極めてふえていくことも考えられるので、エイズ対策について厚生省はどういうふうに対策を考えておるか、こういう質問がございまして、それに対しまして一般的な、私どもが今考えておることを申し上げたわけでございます。  さらに、それに加えまして、献杯の問題が出たわけでございます。これは一部のマスコミにも出ておりますけれども、これは正確に伝わっておりませんので、この機会に申し上げたいと思いますが、献杯によってエイズが感染するということを申し上げたわけではございません。そのような見出しがございますけれども、そういう事実はございません。ハエや蚊、入浴や献杯などによってエイズに感染することはありません。ただエイズ感染者が口の中に傷を持っておりまして、その傷によって血液が出ておる、そういう人と献杯をした場合大丈夫か、こういう具体的な質問があったわけでございますので、その場合には心配がないということではない、こう申し上げたわけでございます。献杯につきましては、公衆衛生上問題があるという意見もあるわけでございますが、これは長い間の習慣でございますので、そういう習慣の中で各人各人が公衆衛生上の問題その他の問題を考えながら対応すべき問題だと私は考えております。
  61. 池端清一

    池端委員 稲垣委員長にこの際お尋ねをしたいと思います。  今後の委員会運営についてでございますが、この法案の性質上、例えば三巡したからここで質疑を打ち切って採決をし、多数でもってその賛否を決める、こういうような運営ではなくして、研究者の皆さん、現場の第一線で御苦労なさっている医療関係の皆さん、患者の皆さん方あるいは在野法曹の皆さん方の意見等も幅広くお聞きをした上で、この委員会で慎重審議を尽くして、各党合意を得るように最大限の努力をすべきではないか、こう私は思いますが、委員長としてのこの委員会運営についての御所見のほどを承りたいと思います。
  62. 稲垣実男

    稲垣委員長 委員長として私は常々民主的かつ公平な運営に努めてまいったところであります。  本案は、とりわけ慎重な取り組みを必要とする法案であると考えますので、理事会等の協議を踏まえ、より一層努力をいたすつもりでございます。
  63. 池端清一

    池端委員 最後に、この法案とは関係ございませんが、先ほど全会一致で可決になりました、あん摩マッサージ指圧師はり師きゅう師等に関する法律の一部改正、これが実施されますと、一般的には高卒三年以上の養成課程を経なければ受験資格が与えられない、こういうことになっております。しかし、著しい視覚障害のある者については、特例として現行制度のまま、すなわち中卒三年以上の養成課程を経れば受験資格を与えるということになっておるわけであります。これは視覚障害の方、特に子供さん方の就学の状況に照らして当分の間はやむを得ない措置だと思うのでありますが、行政努力の方向としては、将来できる限り早い時期にこの特例措置を廃止すべきではないかという意見が関係者の間でも非常に強いわけでございますので、これについての御見解を承っておきたいと思います。  それで私の質問を終わります。
  64. 仲村英一

    ○仲村政府委員 御指摘のあん摩マッサージ指圧師はり師きゅう師等に関する法律の改正でございますが、資質向上という観点で御改正をいただくということで承知しておるわけでございます。今御指摘の視力障害者の問題は、現在の目の不自由な方たちの教育の現状から見ますると、直ちに高卒三年に移行するのは無理ではないかということでの特例措置と承知しているところでございます。ただ、方向といたしまして、資質向上という観点からすれば、やはり高卒三年という方向に向かうべきだということでの原則は私どももそういうつもりでおるわけでございますけれども、現在の教育の実態あるいは将来の視力障害者の教育の方向性、文部省とも関係するわけでございますので、そういう役所とも十分調整をしながら、さらにこの方たちの資質向上という観点で私どもも努力を続けてまいりたい、このように考えておるところでございます。
  65. 池端清一

    池端委員 終わります。
  66. 稲垣実男

    稲垣委員長 午後一時から再開することとし、この際、休憩いたします。     午前十一時四十九分休憩      ────◇─────     午後一時二分開議
  67. 稲垣実男

    稲垣委員長 休憩前に引き続き会議を開きます。  質疑を続行いたします。平石磨作太郎君。
  68. 平石磨作太郎

    ○平石委員 時間がわずか三十分余りですので、なるべく簡潔にお答えをいただきたいと思います。  我が国では、エイズの発症、そして患者の発生以来、エイズをめぐる大変なショックといいますか、社会に深刻な衝動を与えました。そしてそれに関する一連の報道は、まことに私ども国民に対してエイズというものの恐ろしさ、さらには深刻さというものを教えてくれたと思うわけであります。私どもは、こういったエイズに対しては、少なくともすべてのものが力を合わせて英知を絞ってこれに対応してまいらねばならない、このように認識をするところであります。  そして、このエイズの問題は、深刻さと同時に、一方でエイズ患者、さらに感染者やその周辺の人々の名誉やプライバシーが不必要に傷つけられている、こういう問題も派生をしてきたわけであります。したがって、この問題こそ、大きく言えば民族の問題であり、さらには人類の問題と言っても過言ではありません。そういう意味から、私は、今回の提案をなされております法案に対しましては、果たしてこの法案でエイズの撲滅ができるのかどうなのか、こういったことを非常に心配しながら審議に入らせてもらいたいと思うわけでございます。  我が党は、このエイズが発生をしてから直ちに党内にエイズ対策特別委員会を設置いたしました。そしてそれぞれアメリカに直ちに派遣をしました。そしてあちこちのアメリカのそういった状況についてつぶさに調査をし、関係者とも会い、そういう形でエイズに対しては私ども党を挙げて取り組んできたわけでございます。したがって、これからこのエイズの対応につきましては、少なくとも各党と一緒になってやっていきたい、このように考えるわけでございます。  そこで、具体的なお伺いに入ってまいりますが、昨日エイズサーベイランス委員会から発表がございました。そしてその中には、不特定多数の男性あるいは女性とのいわゆる性交渉、そういったような事例が報告され、しかもエイズ患者のまた新しい患者が発生をしたという形での発表がなされております。そして感染者につきましても、さらに多く発生した、こういう報告がなされておるわけでございます。その数字を見てみますと、今まで患者が六十六名でございましたものが八十名になった。そして感染者にしましては、一千十六名であったものが一千三十八名に増加をしておる、こういうことでございます。こういう形で、委員会が開かれるたびに発表がふえてまいりますが、今後、患者並びに感染者がふえる見込みなのかどうなのか、お答えをいただきたい。
  69. 北川定謙

    ○北川政府委員 昨日、エイズサーベイランス委員会が発表なさった数字につきましては、今先生が御指摘になられたとおりでございます。  これまで我が国で性的接触、これは同性愛と異性間の接触と両方のケースがあるわけでございますけれども、このケースによってエイズに感染したと思われる患者数は三十名、エイズウイルスの感染者は五十七名ということになっておるわけでございます。我が国では、血液凝固因子製剤の注射によって感染をし、発病した人が現段階では非常に多くて、これが欧米やアフリカなどのケースとやや様相を異にしておる、こういう状況であるわけでございます。しかし、血液凝固因子製剤によって感染をされたケースは、今後我が国でふえていくということはほとんどないと考えることができるわけでございますけれども、現在は数が少ないわけでございますが、性的交渉によるエイズ患者数あるいは感染者数は今後じりじりと増大するのではないかと考えておるわけでございます。  ちなみに、この三月に専門家の先生方が将来予測をされたわけでございますけれども、この資料によりますと、今後五年間で患者数は四・五倍くらいになるのではないであろうか。それから感染者数は、現在約千名と見ておったわけでありますけれども、五年後には三千名くらいになるのではないか、こういうような推測をされておるわけでございます。
  70. 平石磨作太郎

    ○平石委員 そこで、そのようにふえる見込みである。しかし、中で凝固因子製剤に基づくものはふえないのではなかろうかということがありました。  今日までの状況を見てみますと、この凝固因子製剤に基づく感染者が、患者数において五七%、感染者においては九三%おるわけでございます。これは血友病の方々にこの凝固因子製剤をお医者が使用して治療した、こういうことからここへ出ておるのでございますが、まことにお気の毒な状況がここへ犠牲者として出てきた、これは相当な責任を感じてもらわなければならぬじゃないかというような気が私はするわけです。  そこで、この血友病についてお伺いをいたしますが、血友病という病気そのものはどういうことなのでしょうか。しかもどういう発生源によってこの血友病という病気が生まれてくるのか。さらにこれの治療法。これもあわせお答えをいただきたい。
  71. 北川定謙

    ○北川政府委員 血友病は、血液が凝固をするその際に必要な凝固因子、これが欠乏しておるということに起こってまいる遺伝性の疾病でございまして、主として男性に発現するわけでございます。そのために、小さなけがでも出血がとまりにくいというようなことから、関節内に出血をする、あるいは頭蓋内出血を起こすというようなことで、いろいろな障害が具体的に起こってまいるわけでございます。  それで、血友病の治療方法でございますが、これはただいま申し上げましたように、血液凝固因子が不足をしておるわけでございます。先天的にそういうものが不足をしておるわけでございますので、そういう不足した物質を補給してあげるということで治療ができるわけでございます。血液凝固因子製剤は、それに補充をする凝固因子の種類によって第VIII因子と第IX因子、それぞれの製剤が現在市販をされているわけでございます。
  72. 平石磨作太郎

    ○平石委員 今お答えがございましたが、この血友病の方々は、今おっしゃったように、もともと血液の凝固因子が欠乏しておる、こういう体質を持っておる。しかも、これはそういういわゆる血液の病気である、こういうようにここに記されておるわけです。したがって、これは先天性の血液の病気だ、こう規定づけられている。そういたしますと、この方々は、今お話がございましたように、少なくとも出血しやすい、あるいは内部の臓器においても出血がある。こういう方々はいわゆる補充という意味で常にこの凝固因子を輸注しなければならない。したがって、これは治療のためにやられたことなのです。その治療として患者の方々が輸注を受けて、そしてまさかそこに汚染されたものが入っておる、エイズ菌が入っておるというようなことは全く考えてない、お医者を信頼し、そして製剤としてあるものを信用してこれを打ち続けた。ここに大変な悲劇が出てきたわけでございます。このことは御認識をいただいておると思うのでありますが、そういった方々は本当に全く身に覚えのないことで感染をしてしまった、こういうことでございますから、この方々に対しては、いわば同性愛によるとか異性間交渉によるとかいったようなことでいわゆるエイズが伝染するというものと同じ座に、今この法案の中にあるということは非常におかしい、私はこういうような気がしてなりません。したがって、この患者さんは、お医者さんによっていわば指導をされておる、そして特定の方々である、こういうことを考えてみますと、不特定の方々とは全く性質が異なっております。そういう患者さん、血友病の患者さんの数をお知らせをいただきたい。そしてその中で、血友病の方でエイズに感染された方がどのくらいいらっしゃるのか、こういうことをあわせお答えをいただきたい。
  73. 北川定謙

    ○北川政府委員 厚生省が行っておりますHIVキャリアの発症予防・治療に関する研究班というのがあるわけでございますが、その報告によれば、我が国の血友病患者は約五千人と推定をされておりまして、そのうち約四〇%に当たる二千人がエイズウイルスに感染をしていると推定をされております。
  74. 平石磨作太郎

    ○平石委員 そうすると、五千人のうちでエイズ患者が二千人、それからエイズに罹患をしてない血友病の方々が約六〇%の三千人という推計が出てくる。今お話し申し上げたように、この方々は全くエイズと関係ない。しかも、先ほどの私の話の中で申し上げたのですが、非常な人権の問題、プライバシーの問題が派生しておるわけです。しかも、エイズに罹患してない、そういう者までこの中に入れて対策を立てる、どうもおかしい。これには納得ができない。この方々にさらに苦衷を強いるものであるし、さらにこの方々がそういったプライバシー、人権の問題を背負いながらこれからの一生を過ごしていかなければならぬというような形が出てくると私は思うのです。私は、別途に救済をしなければ、一緒にここで単なる予防、治療ということだけで考えていくというのはどうも納得ができません。したがって、これらの被害者の方々をどう救済をするのか、大臣に一言お答えをいただきたい。
  75. 藤本孝雄

    ○藤本国務大臣 たびたびお答え申し上げておるわけでございますが、凝固因子製剤の開発によりまして、血友病に悩む方々が非常に救済されたわけでございますが、同時に、予知できなかった新たな病気を背負い込むことになった患者もいらっしゃるわけでございます。これはまさに不可抗力であるわけでございまして、まことにお気の毒、同情申し上げなければならないと思います。したがって、社会全体として、こういう方々に対しては救済、支援をどう進めていくかということを考えることも大事でございますけれども、まさに政治の分野におきまして救済すべき問題であると考えまして、私も就任以来いろいろ勉強をいたしまして、事務当局に凝固因子製剤が原因でエイズに感染された方々に対してどのような救済措置があるかということを検討するように指示をいたしたわけでございます。その後、予算委員会におきましていろいろの御質問に対する総理のお答えの中で、これは政治そのものの責任として対応すべき問題だというお話もございまして、現在そういう考え方をもとに、どういう救済方法があるかということを検討しておるわけでございまして、現段階におきましては、相当具体的な内容も詰まってまいっております。私といたしましては、この凝固因子製剤が原因でエイズに感染された患者の方々に対しては、誠意を持って救済を申し上げなければならない、かように考えております。
  76. 平石磨作太郎

    ○平石委員 これは先ほどの午前中の質疑の中にもございました。不可抗力といったことをちょっと今大臣はおっしゃったのですけれども、少なくとも薬剤にはロット番号が入っておる。このロット番号は何のためにつけておるのだ。私もしばらく医療機関におりましたけれども、このロット番号というのは、私が聞いておるのでは、医療事故が起きたときに、どこでどの製薬会社がつくったのか、そしてこれはどの患者に投与されたのかわかるために、そこらを明らかにするためにロット番号がついておるということを聞いたのです。したがって私は、そういう制度の上でそういうことがなされておりながら、見逃しているというのがちょっとおかしいなというような気もするのですが、局長に一言このことについてお答えをいただきたい。  しかも、先ほども申し上げましたように、これらの患者は安心をして打ち続けてきたわけです。医師の指導によってやってきた。これは血をとめるためにしてきた。そして事故があった。何の事故だ、エイズの事故だ。事故が起きたときに、ロット番号からいけば特定ができるはずです。できなければならぬはずなんだ。ところがそれができてないわけです。午前中の審議のときにもありましたが、ロット番号は何のためにあるのか、お答えをいただきたい。
  77. 坂本龍彦

    ○坂本(龍)政府委員 一般的に申しまして、医薬品の製造段階において、その品質を十分管理し、また使用後においてもいろいろな検証が可能なようにロット番号が定められておる、これはただいま御指摘のあったとおりでございます。ただ、医薬品の種類によりましては、その使用の効果あるいはそれに伴う別の問題が直ちに発現する場合と、相当長期の期間を経た後発現する場合といろいろございます。  今回の、この血液製剤によってエイズに汚染されたケースにつきましては、仮に使用した薬剤にエイズのウイルスが混入していたとしても、実際にその感染というものが確認されあるいは発症するというまでには相当の期間がかかる。また人によってその期間がまちまちであるということもございますので、過去にロット番号が記録されておりましても、どの時点の使用によって感染、発症したかということまで確認するというのは非常に困難な問題でございます。  また、メーカーあるいは国立の予防衛生研究所でのいろいろな検査というものも実際上あるわけでございます。その際に、どういうロット番号のものを検査したという記録は残っておるわけでございますが、現物といたしましては、予防衛生研究所の場合には試験に必要な数量だけを抜き取って検査を行いますので、その後に実際の製品が残っているということはございませんし、メーカーの場合に、たまたまこれが長期間保存されていたとしても、現在の最終製品に対する検査においては、エイズの抗体を検出するということは技術的にも極めて困難でございます。  そういう意味におきまして、過去の検定の際にもエイズウイルスの検知ということは行われておりませんので、やはり一般的に申しまして、ロット番号の趣旨、目的はお尋ねのとおりでございますけれども、今回の血液製剤については、これが直接作用しない面もある。たまたま今回のエイズの感染につきましては、今申し上げましたような理由でロット番号による確定というものは残念でございますけれども非常に困難である、こういうことでございます。
  78. 平石磨作太郎

    ○平石委員 不可抗力ではなかった、ここを確認しておきたいと思う。  そこで、先ほどの答弁の中にありました、これから将来は、これらに基づくエイズは発生しない、これはどういうことで発生しないと言えるのか。そのことを簡単に、もう時間もありませんから。
  79. 北川定謙

    ○北川政府委員 血液凝固因子製剤の投与による患者の新規発生はないということの根拠でございますけれども、先ほど来薬務局長が御説明申し上げているように、加熱処理をするということで、現在使われておる血液製剤はエイズウイルスを混入していない、こういうことによるものだと考えております。
  80. 平石磨作太郎

    ○平石委員 国内での献血、さらに輸入血すべてにわたって熱処理が行われておる、こういうことですね、もう一度。
  81. 坂本龍彦

    ○坂本(龍)政府委員 血液製剤というものもいろいろな種類がございまして、私どもが従来御説明してまいりましたのは、血液凝固因子製剤について加熱処理をいたしておるわけでございますが、輸血用のいわゆる全血につきましては、加熱ということがその治療のためには適当ではございませんので、加熱の処理は行われておらないわけでございます。
  82. 平石磨作太郎

    ○平石委員 そこで、時間もございませんが、ここに手紙があります。これをひとつ大臣、聞いていただきたいと思います。これは名前が入っております。名前が入っておりますが、ここでは言いません。  息子は誕生より血友病という重篤な疾病を背おい、苦しみに歯をくいしばり耐え、血液製剤で治療しながら中学生となり、毎日通学しています。足の関節は度重なる内出血の為硬直し、歩行は足をひきながら頑張っています。現在審議されようとしている「エイズ予防法案」は、私達はじめ多くの患者にとって生きる希望と将来の社会生活を無にする大変重大な法案です。 こう書いてある。  私達は自分の過失で不利益を負うのなら、罰を受けます。しかし、エイズはちがいます。医者を信じて(大丈夫、大丈夫といっていました)不安を抱きながら治療を受けていたのです。日本エイズ感染は他の国と異り、汚染された薬を打たれつづけられた血友病患者ばかりといっても過言ではありません。将来頑張って自活しようと努力している息子に親として何んと云ったらいいのですか。   「お前の人生は、一生国に管理され、制限されて生きていかなければならないよ。」って云えますか。世間からは白い目で見られ、偏見を受け、病気とたたかい、尚エイズ発症の不安におののいて、どうやって生きていったら良いのですか。 こういう手紙が来ておるのです。  私は本当の叫びだと思う。こういうことをひとつ御当局も十分理解をしてほしい。したがって、先ほどから申し上げておりますように、きょうは内容には入りません。内容には入りませんが、少なくともこの法案に当たっては、こういった方々といわば他の不特定多数のエイズの方々とが同座しておる法案について、これは分離すべきではないかという考えを私は持っているわけです。ひとつ大臣のお考えをお聞かせいただきたい。
  83. 北川定謙

    ○北川政府委員 大臣に御答弁いただく前に、ただいまのお手紙の中でちょっと誤解があるのではないかと思いますので、その点だけ指摘をさせていただきたいのでございますが、今回の法案で血友病の患者さんすべてを国が管理するというようなくだりがあったように思いますけれども、そこのところは事実ではございませんでして、エイズに感染したという事例については、氏名とか住所とかそういうものは一切報告を受けることは考えていないわけでございます。そのケースが他の人に頻々と感染をさせるというような危険が相当程度に疑われるような状態になった段階で、初めて氏名が報告をされるというようなことになっておりますので、そこのところだけ一言訂正をさせていただきたいと思います。
  84. 藤本孝雄

    ○藤本国務大臣 エイズの蔓延を防いでいく、これは私どもの国民に対する大きな責任でございますが、その対策を立てていく場合に、凝固因子製剤が原因でエイズ感染された方々に対して救済をしていく、これは極めて大事な問題でございまして、同時並行して考えていかなければならない問題でございます。  それからさらに、今御質問のございました点につきましては、血友病のエイズ患者につきましては、一般の患者と異なりまして定期的に医者のところに通っておるわけでございまして、いわば医者の指導が徹底をしておるということにもなるわけでございまして、公衆衛生上の観点から別の取り扱いをするのも一つの考え方だと私も考えております。  いずれにいたしましても、法律上の措置につきましては、いろいろ御意見もあるわけでございますので、国会の御審議並びに与野党間の協議を踏まえまして適切に対処してまいりたいと考えております。
  85. 平石磨作太郎

    ○平石委員 大臣からそういう御答弁をいただいて大体了解をいたしますが、なおこの件につきましては、委員長にも一言お伺いをしておきたいので、よろしくお願いをしたいと思います。
  86. 稲垣実男

    稲垣委員長 ただいまの平石委員の御指摘は極めて重要な御指摘だと考えております。  法案の取り扱いを決定するのはあくまで国会であります。委員長といたしましては、理事会等の協議を踏まえまして、前向きに取り組んでまいる所存であります。
  87. 平石磨作太郎

    ○平石委員 ところで、法律法律としての審議の責任がございますが、そういった法的整備ということもさることながら、やはりエイズの対策ということは一方でおろそかにできません。したがって、当面必要なことは行っていかなければならないということから考えてみますと、このウイルスに感汚をした人、こういう人たちに発症をまず予防する。それからさらにエイズ予防ワクチンの研究開発、こういったようなことをもあわせ国は力を入れていかねばならないのではなかろうか。さらにそういった研究体制を整備し、そして広くしかも正しく理解ができるために学校教育、社会教育、そういった面で国民の協力を得るためにも、このエイズについての十分な教育ということも徹底をしていかねばなりませんが、最後に、そういった面について大臣の決意、さらにはそういった方向についてどのようにお考えなのか、お聞かせをいただいて、終わりたいと思います。
  88. 藤本孝雄

    ○藤本国務大臣 エイズに関しましては、今御指摘がございましたように、治療方法が確立されてないわけでございますので、当面はエイズにかからないように、予防という問題が最重要対策になろうかと思うわけでございまして、そういう点で、国民の皆さん方にエイズに関する正しい知識、理解、啓蒙を行いまして、正しく理解してもらうということが大事であろうと考えておりますが、根本的には、仰せのように、根本的な解決をするためのワクチンや治療薬の開発、これはもとより根本的な対策でございまして、そういう点に力を入れていくということは無論当然のことであります。政府といたしましても、ことしの予算は昨年の予算の約八倍、十三億程度の予算を計上しておるわけでございまして、今後とも根本的な解決のための治療方法の研究という問題につきましては、十分に力を入れていかなければならない、そういう課題であると考えております。
  89. 平石磨作太郎

    ○平石委員 これで終わらせてもらいますが、どうかひとつこの問題だけは大変な問題でございますから、今後とも精力的にそういった面での政策を進めていただきたい、こういうことを重ねて強く要望いたしまして、時間が参りましたので、終わらせてもらいます。ありがとうございました。
  90. 稲垣実男

  91. 田中慶秋

    田中(慶)委員 私は、民社党の立場から、今回提案されておりますエイズ法案について質問をさせていただきたいと思います。  特に、今度のエイズ法案が国会に提出をされてから一年有余経過しているわけでありますけれども、まず、この間において、厚生省として、これらに対する予防対策あるいは具体的な救済問題を含めての措置をどのように検討されてきたのか、冒頭にお伺いをしたいと思います。
  92. 北川定謙

    ○北川政府委員 エイズは、先生も御承知のように、人類始まって以来の新しい疾病でございます。最初にエイズ患者報告されたのは七年前、一九八一年でございます。それからウイルスがその病原体として検出をされたのが五年前、一九八三年ということで、人類の経験にとって非常にまだ新しい病気であります。しかし、非常に死亡率が高いあるいは治療方法がないというようなことから、世界各国いろいろな側面で対応しておるわけでございますけれども、我が国におきましてもいろいろと対応しておるわけでございますが、幸いにして現段階では、まだまだ我が国におけるエイズ患者さんは数が少ないという状況にあるわけでございます。  具体的には、第一に感染状況を把握するためのサーベイランス、これは調査というふうに言っていいと思いますけれども、そういう調査。それから保健所及び医療機関における相談、これはいろいろな不安のあるケースに対して相談の窓口を開くということでございます。それから第三に、検査体制の整備、特殊なウイルスの検査でございますので、どこでもすぐ検査ができるというわけにいきませんので、研修会等を行って一定の水準のある検査施設を特定していくというようなことをやってまいったわけでございますが、昨年の一月に初めて女性の患者報告をされ対策の抜本的強化が叫ばれたわけでございます。政府全体で対応するために関係閣僚会議を設置いたしまして、エイズ問題総合対策大綱を定めていただいて、何といっても非常に大事なことは、エイズについて国民の皆さんに正しい知識を持っていただくことが基本であるということで、まずそこから手をつけたわけであります。さらに昭和六十三年度からは、エイズ感染者への発症予防の研究事業の拡充あるいは相談事業の実施を進めることとしているわけでございます。
  93. 田中慶秋

    田中(慶)委員 この法案は、本委員会に昨年の七月提案をされたわけであります。きょうまでそれぞれ慎重に対応し、かつまたこの法案が審議をされなかったということについて、厚生省としてどのように考えられているのか。一つには、この法案の重要性あるいはまたプライバシーの問題、人権侵害の問題、さらに基本的には予防や救済問題等々の大変複雑な問題を含めながら、こういう問題について急がれている部分と慎重にしなければいけない部分と両面があったからこそ、きょうまで時間がかかったことと私は思うのです。このような重要な法案について、やはりこれだけの時間が経過したということを、厚生省としてそれなりに十二分に受けとめ、考えられていると私は思いますけれども、まずその辺の見解をお伺いしたいと思います。
  94. 北川定謙

    ○北川政府委員 先生御指摘のように、エイズの問題というのは、世界のいろいろな状況を見ておりますと、いつまでも手をこまねいておるわけにはいかない。アフリカにおいて、アメリカにおいて、もう大変な状況になっておるということは御承知いただいておるわけでございますが、幸い我が国の場合には、一般的なエイズの感染、すなわち性的行動によって起こってくる感染は、それらの国々と比べてまだ非常に数が少ないという状況にあるわけであります。一方、先ほど来御議論をいただいております血友病の問題があるというようなことから、我が国におけるエイズの問題は特殊な状況を持っておったと言うことができると思います。そういう関連の中で、エイズの感染者のプライバシーの問題が非常に重要である、こういうことで、国会の中においてもあるいは社会全般においても、この法律に対するいろいろな御心配が背景にあったのではないか、このように考えているところでございます。
  95. 田中慶秋

    田中(慶)委員 私も幾つかの手紙をちょうだいしたりしているわけであります。その手紙を読んでみると、やはりプライバシーの問題も大変心配をされている。あるいはまた我が国の場合は感染者の九三%が血液製剤によるものであり、この法律は血友病患者に対する偏見、差別を固定化するおそれがあるのではないか、こういう心配も述べられておりました。私はこの血友病患者の方々の意見も聞きました。そしてそれなりに認識をいたしましたけれども、悩みや考えられていることは大変ごもっともな点が多いわけであります。こういう問題について、厚生省としてどのような形でこれを認識し、対応されようとしているのか、お伺いをしたいと思います。
  96. 北川定謙

    ○北川政府委員 先生御指摘のように、日本では血友病患者さんで感染しておるケースが非常に多い、こういう状況にある。そういう環境の中で、このようなエイズ予防法等いろいろなことが実現していくと、血友病に対する差別が固定化する、血友病すなわちエイズというような連係図が描かれるということへの御心配であろうかと思うわけでございますが、そこのところは果たしてそういうふうに簡単に考えていいものであろうかと私どもは考えているわけでございます。  エイズの問題というのは、今さら私が申し上げるまでもなく、非常に特殊な形態を持った感染症であるということでございます。すなわち、感染力というものは非常に弱いわけでございますが、相当濃厚な性的接触あるいは注射等による血液の接触、そんなようなことで感染をしていく感染症であるわけであります。しかも、これは非常に死亡率が高い、治療をする手段が今のところない、こういうような状況にあるわけでございまして、そういうことのために万全を尽くしていろいろな予防措置をとっていく必要がある。そのためには、個人の権利に非常にかかわることでもございますので、行政措置ではなくて法的な根拠に基づいてやっていく、これがどうしても必要であると私どもは考えているところでございます。  そこで、血友病の患者さんの問題でございますけれども、これは先ほど来大臣もお答え申し上げておりますように、大変御不幸な状況にあるということではございますが、主治医との連携のもとに適切なる生活を過ごしておられる、こういうことでございますので、他への感染ということは一般的には心配のないことである。したがって、私どもとしては、血友病イコールエイズという関連図を何とかして消していきたい、このように考えておるわけでございまして、そのためにも国民全般としてエイズに対する正しい認識を持っていただきたい、このように願うものでございます。
  97. 田中慶秋

    田中(慶)委員 私は、実はこの法案を審議するに当たって、きょうの委員会の審議を国民の前に明らかにして正しい認識をしていただきたいという主張をした一人であります。この法案がもし具体的になって医師の報告法律で義務化した場合、プライバシーの侵害等を恐れて感染者が潜在化する危険性があるのではないか。すなわち、今局長が言われたようなこととは逆に、逆効果が生ずる場合があるのではないか、こんなことが心配をされるのであります。いずれにしても、私は、限られた時間で全般にわたって質問をさせていただく関係で、こういう一連の問題を明確に指摘をしておきたい、こんなふうに思うわけであります。  そこで、その対策の問題も含めてでありますけれども、先ほど来議論されました、例えば血液凝固製剤を加熱処理するように、アメリカでは一九八三年五月から現実にメーカーに勧告をされたということであります。日本では一年五カ月後にこういうことが承認されたわけでありますけれども、大臣の答弁でも、それぞれ慎重に検討したりいろいろな手続上の問題があったということを言われておりましたし、あるいは外国人と日本人の相違を述べられたわけでありますけれども、これだけ急を要するもの、また日本の場合に血液製剤によって感染をされた人、こういうことを考えたときに、この処置はもっと早くできたのではないか、なぜこんな形で一年五カ月もかかったのだろう、こういうことが悔やまれてならないということも述べられたわけであります。私は、患者の親御さんの気持ちを考えたときに、もっともだなというふうに思ったのであります。むしろこれは行政としてその責任を問われてもやむを得ないのではないか、こんな感じを受けてならないわけであります。  私は、法的な問題とあわせて、こういう一連の問題に対する厚生省としての対応に対する責任を痛感をしながら、これらに対してやはり具体的に、今後こういう問題に対して厚生省は、この血液製剤の感染者に対する十分な救済の措置、こういうことについて、先ほども若干述べられておりますけれども、もっと具体的に検討すべきではないか、これは大臣の御答弁をいただきたいと思います。
  98. 藤本孝雄

    ○藤本国務大臣 内容的には極めて具体的な問題でございますので、誤解があると困りますから、政府委員から答弁させます。
  99. 北川定謙

    ○北川政府委員 先ほど来御答弁申し上げているところでございますけれども、血液製済によりエイズに感染された方々、大変深刻な状態にあるわけでございまして、行政としても最大の努力を払う必要がある、こういうことで、主治医の御意見も伺いながら、プライバシーの保護に十分注意をしながら検討を進めておるわけでございます。  現在、まず手をつけなければいけないことは、第一に感染をした方々が発症をしないような発症予防、これが大事である。また発症された方々に対しましては、十分な治療を行うということが必要である。それから他の患者と比べプライバシーの保護ということが非常に重要でございますので、主治医の密接な指導、主治医と患者の間以外にそういう問題が漏れないようにするというようなことも非常に大事なことではないかと考えているわけでございます。  こういうような観点から、救済対策といたしましては、全国の血友病の主治医の方々の御協力をいただいてネットワークをつくり、保健及び医療の体制の整備を図り、発症予防あるいは医療あるいはカウンセリング、さらには医療関係者等へのこういう患者さんに対応する上での基本的な認識の普及、こういうようなことを柱に総合的に対策を推し進めてまいりたい、このように考えておるところでございます。
  100. 田中慶秋

    田中(慶)委員 私は、今度の法案の問題の中で、やはり一つには予防という問題、一つには救済という問題が大きな――今回の法案に対する一つの審議を前提とした場合において、このことをかねがね主張してきた一人であります。そんなことを考えてみますと、まず、この法案について、それぞれ各委員からも慎重審議の問題等々を述べられてきているわけでありますけれども、いずれにしても、この法案というものが大変いろんな問題を抱えているだけに、慎重審議を要するものと、こんなふうに考えるわけであります。まず、この辺について、大臣に、この法案に対する取り扱いを含めながら考え方を求めたいわけであります。  特に、このエイズという問題と血友病の因果関係を含めながら、二分をしながらちゃんとしていかなければいけないだろう、私はこんなふうにも考えていたわけでありまして、こういう一連の問題を含めて慎重審議を行うべきである、こういうことをかねがね主張して、今回の法案に対する取り組みをしてまいりました。大臣の考え方を求めたいところであります。
  101. 藤本孝雄

    ○藤本国務大臣 法案の御審議につきましての、慎重に審議をすべきであるという御指摘につきましては、それは当然のことであるというふうに私も理解をいたしております。  問題は、やはりこのエイズの蔓延を防止していくためにいろいろな対策を講じてまいらなければなりませんが、その場合に、感染者、患者の人権を守る、また差別であるとか偏見からも守る、これが非常に大事なわけでございます。そういう偏見や差別があるという背景には、やはりエイズに対する正しい理解、知識というものがないというところに大きな原因があるわけでありまして、そういう点につきましては、十分に啓蒙、またそういうエイズについての知識国民の皆さん方に十分に持っていただくということが大事であって、法律によって人権が守られなくなる、また差別とか偏見が助長されるということよりも、そういう社会的に、エイズ病気に対して、これは特殊な病気ではない、一般的な病気である、しかも、こういう感染者を社会が受け入れて、そして一緒になって生活をしていく、またそういう中で救済も支援も社会全体として考えていくのだ、やはりこういう社会ができませんと、私は、このエイズの蔓延防止の対策は進まない、また偏見であるとか差別であるとかまた人権、プライバシーが守られないということになろうかと思うわけでございまして、その点につきましては、十分にそういうふうな認識を持ちまして、これからも対応してまいりたいと考えております。  それから、法案の取り扱いにつきましては、いろいろ御意見があるわけでございますので、凝固因子製剤が原因で感染した血友病患者の皆さん方と、一般のエイズ患者とを別個に考えるべきではないかという御指摘も一つの考え方であるわけでございまして、今後の国会における審議の状況、与野党間の協議の内容等を踏まえまして適切に対応してまいりたい、かように考えております。
  102. 田中慶秋

    田中(慶)委員 今いみじくも大臣から、この問題に対する国民の生活に対する正しい理解という問題で、それぞれ述べられたわけであります。しかし、この法案というものが活字になればなるほど、国民に対する誤解や不安を招く結果ということも一部では言われているわけであります。やはりこういうことも絶えず気をつけなければいけないことであろうと思います。それは極端なことを言えば、いろいろな出版物も出ておりますし、いろいろな本も出ております。いろいろなマスコミの方も、とらえ方がそれぞれ画一的ではないわけでありますから、そういう点で興味本位に報道されているものもございますし、また誤解の報道もあるわけであります。こういう一連のものを含めて、私は、何も出版の自由とか報道の自由を抑制するとか阻害をするという意味じゃないけれども、しかし、正しい報道をしていただけるように、それは当該省庁として最大の努力が必要であろう、こんなふうに思うわけであります。なぜならば、例えば、この報道が出たことによって、日赤が行った献血に対するアンケート調査でも、献血をしたくないという人の五人に一人がエイズや肝炎に感染する、こういう理由を挙げていること、これを考えても、間違った一つの報道といいますか、あるいは間違った理解、誤解というものを生んでいるのじゃないか、こんなふうに思うわけであります。ですから、こういう一つ一つの問題というものは、こういう献血のところまで現実問題として波及をされている、こういうことが今それぞれアンケートで明らかになったわけでありますから、こういう一連の問題を含めて、私は、正しい報道、正しいPR、こういうこともぜひ必要であろう。しかし、それは法律ができたからといって正しい報道や正しいPRができるとは限っていないわけでありますから、慎重の上にも慎重を期しながら、こういう問題を含めてぜひそれらに対する努力をしていただきたい、こういうことを私は考えておりますけれども、いかように考えられているのか、御答弁をいただきたい。
  103. 藤本孝雄

    ○藤本国務大臣 エイズにつきましては、世界じゅうの、特にアメリカ、アフリカ、全体で感染者は五百万人から一千万人、アメリカでは七、八十万人、患者では六万人。非常に多い、非常に蔓延しておる。しかも発病いたしますとほとんど死亡する、こういう怖い病気だということを国民の皆様方が知っておるわけでございます。そういう恐怖からエイズについての正しい知識というものがない場合には、今おっしゃいましたような偏見であるとか、そういう誤解が生ずるわけでございまして、やはり私は、国民の皆さん方にエイズ病気、また感染の方法、内容につきましては、正確に理解していただく、啓蒙を進めていくということが非常に大事な問題だなということを痛感しておるわけでございまして、そういう正しい理解、知識を持って、このエイズの問題について国民の皆様方も対応していただきたい。そのために今後とも御指摘のような努力を重ねていかなければならないというふうに考えております。
  104. 田中慶秋

    田中(慶)委員 いずれにしても、これから時間をかけ、いろいろなことをお互いに勉強しながら、さらにまた検討していかなければならない問題であろうと思います。しかし、その以前に、日本は少なくともGNPでは世界の第二位、こういう国でありますし、先進国として、あるいはまた科学技術に対するそれぞれ優位的な立場をおさめている国であります。しかし、エイズの根本的な対策、すなわちワクチンの開発や治療法の確立という問題について、この研究体制や整備、こういうときにもっとたくさんの予算をとりながら対策を急ぐべきじゃないか。法律の整備よりは、むしろこういう問題によりお金をたくさん投入されて、具体的な対策が必要ではないか。  アメリカでは何兆円というお金をこれに費やしているというふうに聞いているわけであります。日本では、まずこういう問題の、今の研究体制等々を含めながら、製薬会社初めそれぞれの研究機関とお互いに連携をとって、その製薬会社がみずからの従来までの経過をかんがみながら、単なる営利事業という形じゃなくして、この重要性にかんがみて、それぞれ連携をとりながら積極的な開発研究というものをすべきではないか、こんなふうに考えるのですけれども、国際的な責任あるいはまた日本の責任、こういうことにおいて厚生省ほどのように指導し、どのような考え方を持ち、そしてこれから予算組みをどのようにしようとしているのか、明確にしていただきたいと思います。
  105. 北川定謙

    ○北川政府委員 エイズの問題はまだ始まったばかりであるわけでございまして、ウイルスを用いたワクチンの開発あるいは治療技術の開発、こういうものについては、まだまだ人類は十分な知識を持っていないわけであります。幸いにして我が国は、先ほど来お話にありますように、まだエイズ患者さんの数は少ないわけでありますけれども、医学あるいはそのバックにある科学技術全般についての知識、技術は大変高いレベルのものを持っておるわけでもございますので、こういう状況の中で国際的な連携を保ちながら力を発揮していく必要があると考えておるわけでございます。  予算の額につきましては、昭和六十三年度には十二億四千万余の予算を計上しておりますし、また国立予防衛生研究所に新たにエイズ研究センターを設けて、研究体制の整備を図るというようなことをやっておるわけでございます。研究の問題というのは、お金を出せばすぐに答えが出るということではございませんので、よい人材の開発、研究体制の整備というようなこともあわせてやっていかなければならないと思うわけであります。そういうわが国の持っている力をやはり世界にも協力できるようにして、世界のエイズの蔓延防止に努力すべきであるというふうに考えておるわけでございます。
  106. 田中慶秋

    田中(慶)委員 時間が参りましたから、これで終わりますけれども、研究開発をするというのは確かに人材かもわかりません。しかし、またお金もかかることなんです、はっきり申し上げて。国立の研究機関だけではなくして、やはり民間の機関ともそれぞれ連携をしながら、各ノーハウをそれぞれ集中して、今の医学、今の科学技術、僕は、少なくとも総力を結集して、このワクチンやその体制、対策に努力する必要があるだろう、こんなふうに考えているわけでありまして、やはりそのためには、お金も、現在は一つの六十三年度の予算という中で処理をされておりますけれども、しかしお金が足りなければ補正予算も組み、もっと積極的にこの問題に対処する、その姿勢があって初めてそういう具体的な成果が上がるのではないか、私はこんなふうに思うので、これは要望しておきまするので、大臣の方で積極的な働きかけ、取り組み、コンセンサスを総理を初め全部得られるように心から期待を申し上げたいと思います。  最後に委員長に質問いたします。  理事会の経過、きょうまでの質疑の経過をそれぞれ踏まえて、この法案の重要さを大変感じられていることと思います。そんなことを含めながら、私どもこれからも、理事会の中に検討委員会を設けてみたり、各般の理解、勉強をするために慎重審議、いみじくも与野党の対立法案でもなく、これは国民人類の問題であるわけでありますから、そういう問題を含めて慎重審議、そして委員長における今回のそれぞれの計らいも十二分に期待するところでありますので、委員長の見解をお伺いして、私の質問を終わらしていただきたいと思います。
  107. 稲垣実男

    稲垣委員長 ただいまの田中委員の貴重な御意見、御指摘、まことに傾聴に値するものと受けとめておきます。  この法案は、ただいま御指摘ありましたとおり、極めて国民生活に重大な影響を与えるわけでありますから、今後慎重な取り組み、またその取り扱いにつきましても、民主的にまた公平に、今後理事会の協議等も踏まえまして、前向きに積極的に取り組んでいく覚悟でございます。
  108. 田中慶秋

    田中(慶)委員 終わります。
  109. 稲垣実男

  110. 児玉健次

    児玉委員 私はこの三月二十五日に衆議院の社会労働委員会エイズに対する対策で最も急ぐ課題として、発症の予防、根治療法の確立、そして安全な血液製剤の供給、そのことに触れて質問いたしました。きょうはそのとき尽くせなかった問題について引き続いて質問したい、こう思います。  まず最初に、昭和六十年八日に厚生省の血液事業検討委員会中間報告、それが発表されております。その冒頭において、「血液は、貴重な人体の臓器組織の一部であり、医療上の必要による輸血は、臓器移植とも言うべきものである。」非常に重要な指摘、ある意味では基本的な理念が提示されておりますが、この点について厚生省はどのように受けとめていらっしゃいますか。
  111. 坂本龍彦

    ○坂本(龍)政府委員 ただいま御指摘になりました引用文は、血液事業の専門家から成る血液事業検討委員会報告書の冒頭に記載されているものでございます。その考え方につきましては、私どもも同様の認識を持っておるわけでございまして、血液というものが貴重な人体の一部であり、輸血が臓器移植とも言うべきもの、こういう考え方を基本にして血液事業を進めていく必要があろうという認識を持っておるわけでございます。
  112. 児玉健次

    児玉委員 では、そのことをはっきり確認した上で、厚生省が、非加熱製剤による血友病患者の中からの感染者の出現、それが非加熱製剤に含まれたエイズウイルスと因果関係がある、既に明確に認められております。  そこで、どうしても次のような根源的な疑問が生まれてきます。アメリカの国立防疫センター、CDCがハイリスクグループからの採血中止を指示する、昭和五十八年の段階ですが、その段階でなぜ日本の厚生省は速やかに打つべき手を打たなかったのか、この問題です。  東京ヘモフィリア友の会の皆さん方がこれまで粘り強く会誌を出されておりますが、昭和六十二年十一月に出された会誌三十七号、その中で患者の皆さんの座談会が出ております。  Aさんという匿名で次のような言葉があります。「私はエイズで死ぬより血友病で死ぬ方がましだと思うこともあるんです。あの時点で手を打ってれば半分ぐらいの人が救われたのではと思います。」あの時点というのは、昭和五十八年、さっき言ったその時点です。なぜ厚生省は速やかに打つべき手を打たなかったのか、その点重ねて質問いたします。
  113. 坂本龍彦

    ○坂本(龍)政府委員 アメリカにおいては日本よりもエイズの発見あるいは症例の研究等が進んでおりましたので、アメリカにおける状況については、日本においてもできるだけその情報を多く集めて適切に対応をすべく努力をしてまいったわけでございます。アメリカにおいて従来用いられておりました非加熱製剤を加熱製剤に切りかえるように指示がなされた後、日本においても間もなく同様の指示をメーカーにいたしたわけでございます。これにつきましては、しかし日本の場合、加熱製剤の使用の経験がないということから、どうしても最低限必要な臨床試験は欠かすことができない。しかも血液製剤というのは長期にわたって用いるものでありますから、それなりの臨床試験が必要であったわけであります。しかしながら同時に、例えばアメリカから輸入する血液製剤につきましては、いわゆるハイリスクグループの人たちから供血した原料ではないものを使った、こういう証明もつけさせておりますし、抗体検査が可能になった後においては、その検査の実施の証明もつけさせております。そういうことで、必要な新しい薬品の安全性を確認しつつ、同時にできるだけ速やかに加熱製剤への切りかえを実施する、こういう対策をとってまいったということになるわけでございます。
  114. 児玉健次

    児玉委員 いつも同じ答えですし、けさから局長は今の答えを私でたしか四回目にならないか、そう思うのですが、今局長がおっしゃった、アメリカに対して売血を採用するときに必要なチェックをした、そのチェックの書類は先日厚生省から私のところに現物を届けていただいた。これは大体日本赤十字社が現在日本でボランティアから献血を受けているときにも、こういう人たちは献血を遠慮してくれという趣旨のものが壁に書いてある。それと同趣旨であって、それをしたからといって別に厚生省がなすべきことをしたということには全くなりません。  私は、先日以来、皆さんのお答えを聞いて、私なりに調べてみた。そうしたら昭和五十八年の八月、全国ヘモフィリア友の会が拡大理事会をなさった。そのとき、アメリカで先ほどのCDCが勧告する前につくられた血液製剤の速やかな回収、それが一つです。二つ目は国内献血による製剤の増産。三つ目は加熱処理の早期化。そしてこの論議のとき、先日も触れたし、この後私が触れようと思っている安全なクリオプレシピテートの利用、それらも拡大理事会で論議されていた。昭和五十八年の八月です。厚生省のように十分な情報を得ることのできない患者団体が、当時のささやかな情報の中で、それだけの判断を形成して、昭和五十八年九月二十二日、この要望は厚生省薬務局生物製剤課長に提出されたと私は調べて承知しているのですが、この要望に対して厚生省はどのように対応されましたか。
  115. 坂本龍彦

    ○坂本(龍)政府委員 先ほどから何回もお答えをしているわけでございますけれども、加熱製剤への切りかえということは、当時非常に緊急の重要な課題であったわけでございます。厚生省としても、そういう見地に立ってできるだけ早期に加熱製剤が供給できるように手続を進めてまいったわけでございます。しかし、その間において、何度も繰り返しますが、やはり必要最小限の臨床試験ということを欠かすことはできなかった。これは私どもとしても、現在でもそれは必要であったと言わざるを得ないと思っておるわけでございます。  と同時に、先ほどお答えしました輸入血液製剤についてのハイリスクグループからの供血ではないという証明、これも当時としては、少しでも安全性を確保するために打つべき手を打ったということになるわけでございまして、結果から見ますと、必ずしもそれらがすべて一〇〇%有効であったかどうかという批判は、現在の時点から見るとあると言わざるを得ないかもしれませんが、当時としてはできる限りの手を打ってきたと理解をしておるわけでございます。  また、患者の団体からの御要望などでのいろいろな事項についても、私どももそれは十分承知しておったわけでございますし、またクリオプレシピテートの問題につきましても、これは当時としても製剤として供給されておりましたから、使用可能な状態にあったわけでございます。しかし、やはり血液凝固因子製剤というものは、非常に使いやすく、便利で副作用も少ない、こういうことで、現実の選択としてはそれをお使いになった方が多いということは、結果として出てきておるわけでございますが、決してクリオが使用できないような状態にあったわけではなかったということもあるわけでございまして、いろいろと私どもも難しい局面に遭遇し、選択に苦しみながらも最大限の努力をしてまいっておるわけでございます。
  116. 児玉健次

    児玉委員 厚生省に重ねてお願いしますが、手短に答えてください。  私が聞いたのは、九月二十二日にヘモフィリア友の会が先ほど述べた要望を出している。例えばその中に、アメリカのCDCが勧告する前に製造された製剤を直ちに回収してほしい、そしてクリオの利用の問題も出されている。この点について手を打ったのか打たなかったのか、明確に答えてください。
  117. 坂本龍彦

    ○坂本(龍)政府委員 非加熱製剤の回収につきましては、加熱製剤の承認、製造後、それができるだけ速やかに全国に行き渡るようにメーカーに対して供給の確保を指示するとともに、それと引きかえに回収をするように指示をいたしたわけでございます。やはり血液凝固因子製剤としては患者の治療に不可欠のものでございますから、それが実際に使用できなくなるような回収の方法というものは、現実にはとり得なかったということになるわけでございます。  それから、クリオの問題につきましては、先ほど申しましたように、これは従来から使いたいと思われる方が十分使用することができるような状況で供給を確保しておったわけでございます。
  118. 児玉健次

    児玉委員 今の点は、次の問題として、また議論したい。  そこでクリオの問題です。  前回、私は日本とスイスの血液製剤の使用の極端な違い、日本にあっては濃縮製剤が九八%、クリオその他が二・〇、スイスではそれが逆で、濃縮製剤が二八・二%、クリオが七一・八%、これは厚生省も御存じです。  そこで、厚生省の皆さん方が厚生省血液事業、昭和五十八年度研究報告集、随分大部なものをおつくりになっている。その中でクリオの相対的な適応、「血友病乳幼児の軽・中等度の出血」、「血友病年長児・成人の軽度の出血」、これはクリオが適応とはっきり書いていらっしゃる。朝からの論議でもありましたが、ことし一月三十一日のサーベイランスのデータによれば、現在キャリアの四三・七%が二十歳未満ですから、この段階で子供さん方の補充剤についてクリオに切りかえていれば、そのようなことにならなかった。そして厚生省の血液事業の研究報告集は、総括の部分でこう言っている。「一般医家に対し、各製剤の適切な適応等の教育普及を推進」、そう述べている。  三月二十五日、私はこのことに触れて、あのとき皆さんは濃縮製剤とクリオは複数の選択肢だということをお認めになった。まさにそのとおり。その適切な使用の仕方について現場の臨床医師にアナウンスメントする必要があるんじゃないか、こう述べましたが、厚生省が委嘱している最高の専門家の集まりが、一般医家に対して、今述べたことについての教育普及を推進、こう述べていらっしゃる。厚生省はこの総括に従って何をやりましたか。
  119. 坂本龍彦

    ○坂本(龍)政府委員 ただいまの研究班の御報告の中に、クリオの使用例として望ましいというようなことがいろいろと書かれておるわけでございまして、私どももそういった薬剤を、どういう病状に対してどういうものを使用するか、それはいろいろと、その薬剤の性質等によっておのずから区別はあるだろうと思っております。ただし、実際にそれを使うということになりますと、やはり患者を直接診察、治療に当たっておられる医師の判断というものに、最終的にはよるべきものであろうと考えております。  そこで、そういった各界の権威の方々がお集まりになった研究班で一つの御判断をなさったとすれば、それはやはり同じ職業に携わる医師の方においても、それを十分参考にされて診断に当たられる、治療に当たられるものと理解しておるわけでございます。同時に私どもとしては、そういう選択肢ということもございますので、幾つかの選択肢というものを用意いたしまして、それぞれ十分に選択をして使用ができるような供給というものを確保しておくことが必要であるわけでございまして、そちらの方につきましても、十分使用にたえるような供給体制を確保していたわけでございます。
  120. 児玉健次

    児玉委員 一言で言えば何もしなかったということじゃないですか。専門家がこれを出した、これが出たから臨床医家はわかっているはずだというそんな理屈だったら、皆さん方が「エイズ診療の手引き」を出す意味はどうなるのですか。  私は具体的に言いますが、厚生省が何もしなかったために、ある血友病患者の日々つけていらっしゃるメモを私拝見したのですが、そのメモをそのまま読みましょう。  昭和六十年五月二日、乾燥型クリオを使用してくれる病院を探す。ほとんどの病院が理解してくれない。五月三十日、乾燥型クリオを使用する病院が見つかったと、患者自身がこうやって厚生省がやらなかったことをかわってやっているのですよ。そのことについて責任を感じませんか。
  121. 坂本龍彦

    ○坂本(龍)政府委員 血友病の症状もいろいろ状態が違うわけでございまして、やはり疾病というものは、それぞれ個々の患者の病状というものに見合った治療を行うというのが正しい医療だと考えておるわけでございます。  かような意味において、実際にどのような製剤を使用するか、これは直接診療に当たられる医師の判断によるべきものでございますので、私どもとしては、それが可能なような体制をつくり上げておくということが重要であると考えるわけでございまして、そのための必要な措置はとってきたというふうに理解をいたしております。
  122. 児玉健次

    児玉委員 別の角度から聞きましょう。  カッタージャパンのコーナイン―HTによる肝炎発症についての経過。昭和六十年十二月にカッタージャパン、現在バイエル薬品、これが輸入したコーナイン―HTの一ロットの投与によると疑われる肝炎発症症例が厚生省に報告された。そこで昭和六十二年五月、因果関係が確認し得る症例報告が厚生省に提出されたことに伴って、直ちに製造元である米国マイルス社への調査を命じた。  その調査の結果、個々の採血段階での検査では異常はなかったが、原料となったプールプラズマがHBs抗原陽性であることが確認された。  そこで厚生省は、六十二年十二月、十五日間の業務停止をカッタージャパンに命じ、当該製品の投与により何らかの異常を認めたと考えられる十九名の患者に対する補償についてカッタージャパンを指導した。  経過はこのとおりですね。このとおりかどうか、一言答えてください。
  123. 坂本龍彦

    ○坂本(龍)政府委員 そのとおりでございます。
  124. 児玉健次

    児玉委員 それで伺いたいのですが、製薬会社が血液製剤の原料として用いたプールプラズマ、現在保管されているでしょうか。
  125. 坂本龍彦

    ○坂本(龍)政府委員 これは一律に保管の義務がございませんので、メーカーによって保管してある場合もございますし、保管をしていないものもあるということになろうかと思います。
  126. 児玉健次

    児玉委員 それでは、これは大臣に要望しますが、このプールプラズマを保管している製薬会社を調べていただきたい。このことがこの後の当委員会の審議にとって重要な意味を持ちますので、いかがでしょうか。
  127. 坂本龍彦

    ○坂本(龍)政府委員 調査については私どもの方で検討をしてみたいと思います。
  128. 児玉健次

    児玉委員 薬事法五十六条の問題に入ります。  薬事法五十六条の六番目のところで「病原微生物」という言葉が使われておりますが、これはウイルスも含まれておりますか。
  129. 坂本龍彦

    ○坂本(龍)政府委員 ウイルスにつきましても、病気の原因となるものは該当すると考えております。
  130. 児玉健次

    児玉委員 そこで三月にも議論したことですが、「病原微生物により汚染され、又は汚染されているおそれがある医薬品」、五十六条では、供給をしてはならぬ、展示をしてもならぬ、当然回収することが義務づけられている一連の医薬品について列挙されている中で、この六号だけが「汚染され、又は汚染されているおそれがある」、「おそれがある」と明記しているのはどういう理由からでしょうか。
  131. 坂本龍彦

    ○坂本(龍)政府委員 この「おそれがある医薬品」というのは、その前に汚染されている医薬品という字句がございます。汚染されているというのは、やはり何らかの検査方法によってそれが確認された場合が汚染されている。この「汚染されているおそれがある」というのは、検査方法によっても必ずしも十分に検出されない、しかしいろいろな理由によって汚染されているということが相当程度疑われる具体的な医薬品、こういうものであるというように解釈されております。
  132. 児玉健次

    児玉委員 今もお答えがないんだけれども、なぜこの第六号についてのみ「おそれがある」という言葉が書き込まれているのか。
  133. 坂本龍彦

    ○坂本(龍)政府委員 やはり病原微生物については、現在の科学的水準をもって検出可能なものと完全な検出が可能でないものとあるわけでありますが、検出が確実にできなくても非常に大きい影響を及ぼすおそれがある、こういうことから、必要に応じて処置がとれるように規定がされているというように理解しております。
  134. 児玉健次

    児玉委員 「おそれがある」というふうに判断する医薬品、その判断は定量的な判断によってなすのですか、それとも定性的な判断によって行うのですか。
  135. 坂本龍彦

    ○坂本(龍)政府委員 これもやはり医薬品の性質なりあるいは病原微生物の種類によってはある程度定性的な基準をもって判断のできるものもございますし、そういう定性的な判断の不可能なものもございます。
  136. 児玉健次

    児玉委員 時間がありませんから、この点は次の機会に譲りますが、定性的な判断という言葉が出たことを私は非常に重視いたします。  そこで、文部省にもおいでいただいているわけで、現在この輸入血液製剤によって多数の感染者を出している血友病患者に対する差別の問題につきまして、私は手短にお聞きしたいと思います。  まず、厚生省に伺いたいのですが、厚生省はこの「エイズ診療の手引き」を出していらっしゃる、その中で「医療機関等保健医療施設での留意点」「B型肝炎ウイルス・キャリアの場合に準ずる」、それでいいと言っていますが、そうですね。
  137. 北川定謙

    ○北川政府委員 ウイルス肝炎に準じて扱うということにしております。
  138. 児玉健次

    児玉委員 血友病の子供を持っていらっしゃるお母さんから、こういう指摘が先日ありました。ある病院にお子さんが入院したら、大部屋でその子供さんだけに使い捨ての食器が使用される。六人入っている部屋で、その子供さんにだけ使い捨ての食器が使用される。これは厚生省の出した「診療の手引き」からしてもおかしいし、そして病院という厚生省のおひざ元でそういう事態が起きているというのは非常に残念なので、これはほんの一例ですが、こういった事態を是正するために、厚生省として速やかな手を打っていただきたい。この点は大臣からお答えいただきたい。
  139. 北川定謙

    ○北川政府委員 エイズに対する正しい認識がまだなかなか行き渡ってないというのが現状でございまして、厚生省としても、従来からそういう間違った認識を持たないようにという注意をできるだけいろいろな場面で喚起をしておるのでございますが、今後ともさらに入念にそういうことへの認識の普及ということをやってまいりたいと思っております。
  140. 児玉健次

    児玉委員 私はその点を迅速に求めたい。  次に、文部省にお伺いいたします。  厚生省が出している「エイズ診療の手引き」、その二十九ページに「職場、学校等の集団生活での考え方」「エイズウイルスは感染力が非常に弱いため、通常の社会生活では感染した例がない。そのため、陽性者との集団生活の機会においても、特別な配慮は不要である。」こう明記されておりますが、文部省の考えを伺います。
  141. 込山進

    ○込山説明員 お答え申し上げます。  学校での集団生活における感染者との対応につきましては、厚生省の指導のとおりと考えております。なお、文部省におきましては、児童生徒がエイズに関する正しい知識を身につけまして、感染の危険を回避するとともに、誤解や差別を生ずることのないように、学校における指導の充実を図ってまいりたいというふうに考えております。
  142. 児玉健次

    児玉委員 これも私たちに訴えがあったことなんですが、東京のケースです。小学校で学校から血液検査を受けるよう勧告があり、結果を知らせることが求められた。そして幼稚園で陰性証明の提出が要求されたケースがある。これも東京です。高校受験の書類で血友病と記入されたために不合格となった。こういう母親からの訴えもございます。考えられないことですが、この点、文部省はいかがでしょうか。
  143. 森正直

    ○森説明員 御説明申し上げます。  文部省には生徒指導要録という帳簿がございまして、これは各学校が備えるものでございますが、そこの様式とか記入要領は文部省が教育委員会に参考例として示しております。それの中に、例えば各教科科目の学習の記録の中の所見の欄に、生徒の体力の状況、学習に影響を及ぼすような生徒の健康状況に関することを記入すること、それから特記事項という欄でございますが、生徒の指導上、特に留意する必要があると認められる児童生徒の健康状況及び配慮事項を記入することというように参考例として示しております。文部省といたしましては、これ以上のことは示しておりませんで、それから先は個々の各教育委員会及び学校の判断によるわけでございますけれども、先生が今おっしゃいましたようなことにつきましては、検査した結果――検査したかしないかはちょっと私どもつまびらかにいたしませんが、恐らく児童生徒本人のために、一般的には教育指導上の配慮から当該欄に記入するというようなことになっているのではないかと思います。  それから、入試の関係でございますけれども、私どもといたしましては、高校入試を例にとりますと、中学校長から送付されました調査書ですとかあるいは選抜における学力検査の成績などを資料として総合的に判断することといたしておりますので、一般論として申し上げますと、単に血友病であることのみをもって受験の門戸を閉ざすということは考えられないというふうに思っております。
  144. 児玉健次

    児玉委員 来年の入試の時期までに、この点についての文部省の特段の努力、是正の措置を私は強く求めます。  さて、時間ですから、最後に一言、これは大臣に私は要望したい点があります。  去年三月三十一日にこの法案が出されましたときに、日本衛生学会AIDS問題検討委員会が厚生省に要望書を出されております。その中で、  法案の最大の目的は、AIDS抗体保有者の動態を把握することであり、そのためには、キャリアの協力が絶対に必要である。しかるに同法案は、以上の目的のためキャリアの届け出を義務付けている。現在まで潜在的キャリアの同法案に対する反応をうかがうと、この条項はむしろ、キャリアを地下に潜らせ、その協力を得ることは出来ないと思われる。キャリアが潜在化した時、残るのは医療機関から離れることの出来ない血友病者である。現在すでに見られるように、かかる人々に対する社会的差別が助長される恐れも認められる。 私は、このエイズ、血友病患者もそうですし、そうでない方々も、死に至る病であるエイズによって脅かされているという点では同様です。そしてこの衛生学会の要望書もございます。ですから、同性愛などハイリスクグループについては、この管理的法案を適用していいということには全然ならないと思う。先ほど田中慶秋議員も言われましたが、エイズに対する救済、補償の措置は、補正予算の措置として行うことが十分に可能です。そういった立場からすれば、私はこの法案を内閣が撤回されることを強く求めて、私の質問を終わります。ありがとうございました。
  145. 稲垣実男

    稲垣委員長 次回は、来る二十四日火曜日午前十時理事会、午前十一時委員会を開会することとし、本日は、これにて散会いたします。     午後二時四十一分散会