○自見
委員 御指名がございましたので、
後天性免疫不全症候群の
予防に関する
法律案につきまして
質疑をさせていただきたいと思うわけでございます。
人類の発生以来、
人類はいろいろな
難病、特に
伝染病に遭遇をしたと私は思うわけでございます。我々
人類に大変深い傷跡を残しました十四世紀のペストの大
流行、これによりますと、ヨーロッパでは約二千五百万人以上の方が亡くなられただろうというふうに言われているわけでございます。一九一八年から一九年のインフルエンザの大
流行がございます。これで二千万人以上の方が、大変お気の毒でございますが、命を落とされただろうというふうなことが我々の記憶に新しいわけでございます。やはり
人類というもの、これは生物でございまして、
国家をつくったということも、この大きな理由の一つに、集団で
病気を
予防し、あるいは治療し、
病気にかかった方をともに助け合うというふうなことも、
国家が発生し、ましてや
近代国家になったわけでございますから、こういったことが
日本国においても、また
国家というものの持っておる本質の
存立基盤として、疾病の
予防あるいは
治療法を未知の
病気に対して開発する、そしてなおかつ
世界各国がこういった
情報化の時代でございますから、お互いに手を取り合ってやっていくということは、
政府に与えられた崇高な使命だというふうに私は思うわけでございます。
そういった中で、きょう
議題となりました
エイズでございます。
後天性免疫不全症候群、アクワイアド・イムノデフィシエンシー・ディジーズでございまして、それを略して
エイズ、こう言うわけでございます。
エイズという
病気は、
病気の成り起こりからいろいろ非常に特徴のある
疾患だというふうに認識をさせていただいたわけでございます。一九八一年にアメリカで最初の
報告があったわけでございます。そして、最初たしか四人だったと思いますけれども、同性愛の
患者さんに
日和見感染、普通起こりにくい
日和見感染で四人が死亡されたという医学上の
報告がCDCからあって、それ以来急に非常に世の中の耳目を集めるようになったわけでございます。しかしながら、同時に一九八一年に初めて
報告されたその後のビールスの同定あるいは分離といったことについては、従来の
病気になかった急速な短期間で、主に西洋の学者ではございますけれども、一九八三年に
モンタニエ教授がフランスで、また一九八四年でございますか、ギャロでございます。これは先日
日本にもおいでになられました。
自由民主党にも表敬訪問されて、我々
エイズに
関心を持つ
自由民主党の
国会議員でいろいろディスカッションをさせていただいたわけでございます。ギャロにつきましては、昨年三月、我が
自由民主党の小沢辰男団長を中心といたしました
エイズの訪米団、私も一員として同行させていただいたわけでございますけれども、ギャロにもお会いいたしました。そういった短い、大変急速な学問上の進歩があったと思うわけでございます。
しかしながら、御存じのように、そういったビールスの同定等々を通じまして、感染経路が非常に短期間ではっきりしてきたというふうに思うわけでございます。そしてなおかつ、これは御存じのように、同性愛あるいは異性間の性的接触によってうつる、あるいは輸血によってうつる、あるいは注射針によって、薬物中毒者でございますけれども、うつる、あるいは母子間の垂直感染というふうに、はっきり感染経路が限定をされておるわけであります。
なおかつ、御存じのように大変弱いビールスだと私は思うわけでございます。特にアメリカでは、二十代―四十代が約八九%だというデータもあるわけでございます。青壮年層を中心とした
病気である。なおかつ全世界に大変広がっているということが今世界で大きな問題になっているというふうに思うわけでございます。
一方の致死率でございますけれども、いろいろな
報告がございますけれども、発病いたしますと、大体一年以内に五〇%の
患者さんがお亡くなりになられる、二年以内が七五%、三年で九二%、五年たちますとほとんど致死率が一〇〇%に近いという
病気でございますし、御存じのように、ギャロと我々がお会いしたときも、
エイズというのは普通の感染症じゃないんだ、これは
病気の本質からいって
流行性のがんだということを言ったわけでございまして、がんの本質に近い部分も実はあるわけでございます。なおかつ潜伏期が六カ月から五年と大変長いということでございます。
なおかつ、これは大変大事な点でございますけれども、国が
エイズの対策を考えていく場合に、根治的な
治療法がまだ発見されていないということでございます。これは
エイズビールスの特徴、レトロビールスでございますから、ワクチンをつくったりそういったことがなかなか困難で難しいという点がある。大変大まかな話ですけれども、そういった特徴が
疾患としてあると私は思うわけでございます。
それで、お聞きをしたいことがいろいろあるわけでございますが、今回の
法律改正に当たりまして、詳しい数字は時間がありませんから申し上げませんけれども、実は
日本の
エイズの
患者さん、きのう発表がございました。
患者の発生数が八十人だということでございます。うち輸血と申しますか、凝固因子製剤によって約五八%、四十六人の方が実は
報告されておるわけでございます。大変お気の毒でございますが、亡くなられた、いわゆる
エイズによる死亡数からいきますと、合計が四十六人、うち凝固因子製剤による
患者さんが六五%だということでございます。なおかつ感染者と申しますか、キャリアでございます、ビールスを持っているけれども、まだ臨床症状が発症していないという方が、この
報告によりますと、千三十八人のうち九百六十六人、九三%だということでございます。これはほかの、アメリカは約五万人の
患者さんの
報告があるわけでございますけれども、アメリカではちなみに五万三千八百五十八名の
患者さんのうち血友病による
患者さんはわずかに一%、
日本は感染者でいきますと九〇%ですから、
日本における
エイズの
患者さんの感染経路別の分布が非常に異なっているということが、
日本の現時点における
エイズの大変大きな特徴だろうというふうに私は思うわけでございます。
男女比を見ましても、WHOが世界の
エイズの分布に大体三つの形があるというふうに言っておるとお聞きしておるわけであります。一つはアメリカ、ヨーロッパを中心とした大変同性愛の
患者さんが多い地域、それから二番目がアフリカでございまして、これは
エイズの発祥の地ではないかというふうに推定されておるわけでございます。男女比が欧米の場合は大体十三対一、男が十三に対して女が一ぐらいの割合でございますけれども、アフリカでは
患者さんの男女比が大体一対一だろうというふうに言われておるわけでございます。しかしながら、これはいつ
病気が発症したかということによるわけでございまして、いずれ
日本型の
エイズも、将来はアフリカのように男女比が一対一になる。全体の
患者の中に占める血友病の
患者さんの割合が少なくなって、性的接触による
患者さんの割合がふえてくるということが十分に予想されるわけでございます。
そういった中で、まず一点お聞きしたいわけでございますけれども、今
日本の
エイズの
患者さんの疾病分布が大変異なるという話をしたわけでございます。現在
法律をつくるあるいは
エイズ対策を
政府の方でも一生懸命やっておられるわけでございますけれども、この疾病の感染経路別の
患者さんというのは、非常に世界とは違っているわけでございます。なおかつ、特に血友病の
患者さんで輸血を受けて、本当にお気の毒なことでございますが、そのために発症された方、それから性的接触によってうつされた方というのは、
病気としては同じでありましても、やはり社会のありようと申しますか、社会の中において、血友病の
患者さんは、血液の第VIII因子あるいは第IX因子の不足で輸血を受けねばならないという宿命にあるわけでございますから、そういった方とおのずと違うというふうに思うわけでございます。今諸外国の
エイズの対策というのは、主に性的接触の
患者さんを防ごうということに主眼があるわけでございますから、諸外国と違ってくるというふうに思うわけでございます。そういった違いを踏まえまして、特にこの
法律の提出に当たりましていろいろ社会の
関心を呼んだわけでございまして、この血液製剤による
エイズの感染者の救済にまずどのように取り組むのかということが、私は大変大事だと思いますし、特に今申し上げましたように、医学的には同じ
エイズという疾病であっても、公衆衛生対策の面から異なった取り扱いが必要ではないかというふうに思うわけでございまして、その点につきまして、まず質問をさせていただきたいわけでございます。