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1988-05-17 第112回国会 衆議院 社会労働委員会 第14号 公式Web版

  1. 会議録情報

    昭和六十三年五月十七日(火曜日)     午前九時四十四分開議  出席委員    委員長 稲垣 実男君    理事 高橋 辰夫君 理事 丹羽 雄哉君    理事 野呂 昭彦君 理事 畑 英次郎君    理事 池端 清一君       相沢 英之君    伊吹 文明君       石破  茂君    今井  勇君       小沢 辰男君    大石 正光君       大野  明君    大野 功統君       片岡 武司君    近藤 鉄雄君       佐藤 静雄君    自見庄三郎君       高橋 一郎君    竹内 黎一君       中山 成彬君    堀内 光雄君       三原 朝彦君    持永 和見君       伊藤 忠治君    大原  亨君       川俣健二郎君    田邊  誠君       永井 孝信君    前島 秀行君      新井 彬之君    平石磨作太郎君       吉井 光照君    塚田 延充君       林  保夫君    児玉 健次君       矢島 恒夫君  出席国務大臣         労 働 大 臣 中村 太郎君  出席政府委員         労働大臣官房長 清水 傳雄君         労働大臣官房審         議官      齋藤 邦彦君         労働省労政局長 白井晋太郎君         労働省婦人局長 佐藤ギン子君  委員外出席者         郵政大臣官房文         書課長     荒瀬 眞幸君         労働省労政局労         働法規課長   渡邊  信君         社会労働委員会         調査室長    石川 正暉君     ───────────── 委員の異動 五月十七日  辞任         補欠選任   木村 義雄君     大石 正光君   自見庄三郎君     石破  茂君   河野  正君     前島 秀行君   田中 慶秋君     林  保夫君   田中美智子君     矢島 恒夫君 同日  辞任         補欠選任   石破  茂君     自見庄三郎君   大石 正光君     木村 義雄君   前島 秀行君     河野  正君   林  保夫君     田中 慶秋君   矢島 恒夫君     田中美智子君     ───────────── 五月十三日  労働組合法等の一部を改正する法律案内閣提出第三三号) 同月十六日  戦時災害援護法案山本正和君外三名提出参法第三号)(予) 同月十三日  労働組合法等の一部を改正する法律案廃案に関する請願経塚幸夫紹介)(第二五八九号)  同(工藤晃紹介)(第二五九〇号)  同(児玉健次紹介)(第二七〇六号)  労働組合法中央労働委員会公益委員任命制度現行維持等に関する請願井上普方紹介)(第二六五五号)  同(池端清一紹介)(第二六五六号)  同(村山富市紹介)(第二六五七号)  福祉国庫負担金削減反対等に関する請願沢藤礼次郎紹介)(第二六五八号)  労働組合法等の一部を改正する法律案反対等に関する請願岡崎万寿秀紹介)(第二六五九号)  同(児玉健次紹介)(第二七〇七号)  療術制度化促進に関する請願大石千八紹介)(第二六六〇号)  同(関谷勝嗣君紹介)(第二六六一号)  同(田村良平紹介)(第二六六二号)  同(塚原俊平紹介)(第二六六三号)  同(丹羽雄哉紹介)(第二六六四号)  同(西田司紹介)(第二六六五号)  同(榎本和平紹介)(第二七〇八号)  同(近藤鉄雄紹介)(第二七〇九号)  同(額賀福志郎紹介)(第二七一〇号)  同(松野幸泰紹介)(第二七一一号)  亜急性硬化性全脳炎の患児と家族に対する医療及び福祉に関する請願坂田道太紹介)(第二七〇四号)  難病患者などの医療及び生活保障等に関する請願近藤鉄雄紹介)(第二七〇五号) 同月十六日  療術制度化促進に関する請願佐藤信二紹介)(第二七五二号)  同(田中龍夫紹介)(第二七五三号)  同外二件(持永和見紹介)(第二七五四号)  同(森下元晴君紹介)(第二七五五号)  同外一件(稲村利幸紹介)(第二八四四号)  同外五件(小沢辰男紹介)(第二八四五号)  同(大原一三紹介)(第二八四六号)  同外七件(田村良平紹介)(第二八四七号)  同(西田司紹介)(第二八四八号)  同(森下元晴君紹介)(第二八四九号)  高齢者就労対策充実に関する請願外一件(大原亨紹介)(第二七五六号)  同(川俣建二郎紹介)(第二七五七号)  同(沢藤礼次郎紹介)(第二七五八号)  同(川俣健二郎紹介)(第二八三九号)  重度戦傷病者と妻の援護に関する請願佐藤信二紹介)(第二八二八号)  同(田中龍夫紹介)(第二八二九号)  同(谷垣禎一紹介)(第二八三〇号)  同外一件(塚原俊平紹介)(第二八三一号)  同(月原茂皓紹介)(第二八三二号)  同(中村正三郎紹介)(第二八三三号)  同(増岡博之紹介)(第二八三四号)  同外一件(三ツ林弥太郎紹介)(第二八三五号)  同(持永和見紹介)(第二八三六号)  同(森喜朗紹介)(第二八三七号)  国立大蔵病院整備拡充に関する請願岩佐恵美紹介)(第二八三八号)  労働組合法等の一部を改正する法律案廃案に関する請願岡崎万寿秀紹介)(第二八四〇号)  同(中路雅弘紹介)(第二八四一号)  労働組合法等の一部を改正する法律案反対等に関する請願田中美智子紹介)(第二八四二号)  同(野間友一紹介)(第二八四三号) 同月十七日  腎疾患総合対策早期確立に関する請願木下敬之助紹介)(第二九〇八号)  療術制度化促進に関する請願外一件(天野光晴紹介)(第二九〇九号)  同(中西啓介紹介)(第二九一〇号)  同(村岡兼造君紹介)(第二九一一号)  同(森下元晴君紹介)(第二九一二号)  同(青木正久紹介)(第二九六七号)  同(葉梨信行紹介)(第二九六八号)  同外七件(船田元紹介)(第二九六九号)  同(森下元晴君紹介)(第二九七〇号)  重度戦傷病者と妻の援護に関する請願大坪健一郎紹介)(第二九一三号)  同(鹿野道彦紹介)(第二九一四号)  同(鈴木宗男紹介)(第二九一五号)  同外二件(左藤恵紹介)(第二九七二号)  同(小宮山重四郎紹介)(第二九七三号)  同(葉梨信行紹介)(第二九七四号)  同(船田元紹介)(第二九七五号)  同(細田吉藏紹介)(第二九七六号)  同(山崎拓紹介)(第二九七七号)  原爆被爆者高齢化に伴う諸対策に関する請願児玉健次紹介)(第二九六四号)  歯科保険医療制度改善に関する請願安藤巖紹介)(第二九六五号)  高齢者就労対策充実に関する請願川俣健二郎紹介)(第二九六六号)  労働組合法中央労働委員会公益委員任命制度現行維持等に関する請願井上普方紹介)(第二九七一号) は本委員会に付託された。     ───────────── 五月十七日  重度戦傷病者と妻の援護に関する陳情書外一件(第五一号)  労働時間の短縮に関する陳情書外一件(第五二号)  冬期雇用安定奨励金及び冬期職業講習助成給付金制度改善充実に関する陳情書(第五三号) は本委員会に参考送付された。     ───────────── 本日の会議に付した案件  労働組合法等の一部を改正する法律案内閣提出第三三号)      ────◇─────
  2. 稲垣実男

    稲垣委員長 これより会議を開きます。  内閣提出労働組合法等の一部を改正する法律案議題とし、趣旨説明を聴取いたします。中村労働大臣。     ─────────────  労働組合法等の一部を改正する法律案     〔本号末尾に掲載〕     ─────────────
  3. 中村正三郎

    中村国務大臣 ただいま議題となりました労働組合法等の一部を改正する法律案につきまして、その提案理由及び内容概要を御説明申し上げます。  我が国の公共企業体等における労使紛争処理等については、国営企業労働委員会がこれに当たってまいりましたが、その対象企業もかつての三公社現業から郵政事業等四現業に減少し、臨時行政調査会最終答申でも指摘されたように、労働委員会機構簡素化が重要な課題となっております。  さらに、近年不当労働行為審査迅速化等要求が高まる中で、労働委員会制度効率的運営及び機能強化を図る必要が生じてまいりました。  本法律案は、このような状況に対処するため、中央労働委員会国営企業労働委員会とを統合するとともに、所要の改正を行おうとするものであります。  次に、この法律案内容につきまして、概要を御説明いたします。  第一は、統合後の中央労働委員会委員についてであります。  委員の数は、使用者委員労働者委員公益委員各十三人といたしております。  委員任命権者内閣総理大臣とし、公益委員については、労使委員意見尊重して作成した委員候補者名簿のうちから国会同意を得て任命することとし、また、使用者委員及び労働者委員については、それぞれ関係労使推薦に基づいて任命することとし、そのうち各九人については民間企業関係労使の、また、各四人については国営企業関係労使推薦に基づくことといたしております。  第二は、国営企業地方における労使紛争処理についてであります。  現行国営企業労働委員会地方調停委員会は廃止いたしますが、その現在果たしている機能を維持するため、統合後の中央労働委員会地方調整委員を置くこととし、専ら地方における事件を担当させることといたしました。なお、この地方調整委員は、従来中央労働委員会が扱うこととしていた民間企業事件のうちの一部についても担当することができることといたしております。  第三は、中央労働委員会における紛争調整手続についてであります。  使用者委員及び労働者委員についてはそれぞれの推薦母体別に、公益委員については会長の指名により、国営企業担当一般企業担当を定め、紛争調整開始決定やあっせん、調停仲裁等に参与させることといたしております。  第四は、国営企業事件に関する不当労働行為審査等のための審査委員会の設置についてであります。  不当労働行為審査等については、国営企業事件特殊性にかんがみ、重要な事件を除き、国営企業担当公益委員のみで処理することができるようにいたしております。  最後に、この法律施行期日は、委員任命のための準備行為に関するもの等を除き、昭和六十三年十月一日といたしております。  以上、この法律案提案理由及び内容概要につきまして御説明申し上げました。  何とぞ慎重に御審議の上、速やかに御可決あらんことをお願い申し上げます。
  4. 稲垣実男

    稲垣委員長 以上で趣旨説明は終わりました。     ─────────────
  5. 稲垣実男

    稲垣委員長 これより質疑に入ります。  質疑の申し出がありますので、順次これを許します。永井孝信君。
  6. 永井孝信

    永井委員 ただいま大臣から提案されました趣旨説明中身を聞いておったわけでありますが、まず、その立法目的について確認をしておきたいと思うわけであります。  今大臣からの趣旨説明によりますと、国営企業労働委員会対象企業がかつての三公社現業から四現業に減少した、減少したから国営企業労働委員会中央労働委員会統合するんだ、こういう趣旨説明であったわけであります。しかし、国営企業労働委員会中央労働委員会というのは全く異質のものでありまして、単にこれを三公社現業内容的に少なくなった、そういう量的な観点から便宜的にその統合を考えるべき問題ではないと私は思うのであります。また、もし両委員会統合を考えるとするならば、国営企業労働者に対する労働基本権制約という問題については、ILOからもたびたび指摘をされておりますし、幾多の労働運動の過程で経過がありました。したがって、そういう労働基本権制約という問題については、原則的に撤廃することを前提とすべきではないかと私は思うのであります。今回、そのような点については全く触れられておりません。いわばほおかぶりをしたままで安易に組織統合を図ろうとする姿勢については、私は強く批判をせざるを得ないのであります。ともあれ、単なる組織統合問題と考えた場合にも問題は残ってまいります。もともと異質のものを統合しようとするわけでありますから、そこには大変な無理や矛盾が生じてこざるを得ないのであります。  そこで、以下順次具体的に質問をするわけであります。  この改正法案趣旨目的は、組織統合そのものであって、従来国営企業労働委員会中央労働委員会がそれぞれ果たしてきました機能について変更を加えようとするものではないということをまず確認しておきたいと思うのでありますが、御答弁をお願い申し上げます。
  7. 白井晋太郎

    白井(晋)政府委員 お答え申し上げます。  今回の両委員会統合は、先ほど趣旨説明にもございましたように、臨時行政調査会最終答申指摘や三公社現業が民営化されたことを踏まえて行うものでございますが、従来、中央労働委員会及び国労委がそれぞれ果たしてきました機能につきましては、それを維持しつつ変更を生ずるものではないという内容で御提案申し上げているというふうに思っております。
  8. 永井孝信

    永井委員 その機能変更しないという御答弁でありますから、私はそれは重要な問題として素直に受けとめておきたいと思うわけであります。  次に、提案理由説明の中にありましたけれども公益委員任命方式であります。  公労使者構成によります労働委員会制度というものは、労使間の紛争の解決を促進するための制度であります。その中心的な役割を果たすのが公益委員であることは言うまでもありませんが、その公益委員は、労使それぞれの同意の得られる人物が選ばれて、初めてその任務を果たすことができると私は思うのであります。しかるに政府案は、統合後の中央労働委員会公益委員任命方式については、従来の国営企業労働委員会方式をベースにすることによりまして、現行労使委員同意を必要とする方式から、労使委員意見尊重する方式に改めるようになっているのであります。これでは労働委員会の公正さあるいは中立性を損なうおそれが非常に大きいと私は思うのであります。従来どおり労使委員同意を必要とするようにすべきではないかと思うのでありますが、ここは明確にお答えをいただきたいと思います。
  9. 白井晋太郎

    白井(晋)政府委員 お答え申し上げます。  先生指摘のとおり、統合後の委員会は、民間企業に係る事案のみならず、調整仲裁への参与等国営企業に係る事案処理する機関でございまして、その公益委員は、いずれもが国営企業事案を担当する可能性があることから、その任命手続は、従来の国営方式にこの法案についてはよることにいたしております。  国労委におきます公益委員任命方式は、国権の最高機関である国会審議権尊重要請と、それから労使委員意見の反映の要請との調整を図った方式であるというふうに考えているわけでございますが、従来から公益委員候補著名簿の作成に当たっては、実質的には労使委員同意を得ているところでございまして、今後ともこのような慣行は尊重してまいりたいというふうに考えている次第でございます。
  10. 永井孝信

    永井委員 今御答弁いただいたのでありますが、候補者名簿を作成するに当たっての同意という問題と、それから労使お互いの了解に基づいてという意思の尊重中身は変わらないというふうな趣旨説明でありますが、中央労働委員会で過去ずっと経過がございます。あるいは法的に保障されておりました労使委員同意という問題は、私はやはりこれは基本に据えなくてはいけないと思うのであります。  国会審議権云々という問題もありますけれども、この国会における同意という問題と、労使委員同意という問題とは、私は次元が違うと思うのです。片方名簿を作成するための同意であり、片方国会審議というのは、その名簿に基づいて、それに同意を与えるかどうかという判断をするわけでありますから、その次元が全く異なっておる、私はこのように思うわけであります。したがって、実質的には労使委員同意を得て名簿を作成するというのでありますと、当然法文上もそのことは明確にすべきだ、私はこう思うのであります。それで不都合はないと思うのでありますが、どうでございますか。これはひとつ大臣お答えいただきましょう。
  11. 中村正三郎

    中村国務大臣 先ほどもお答えを申し上げましたように、現行国労委における公益委員任命方式は、おっしゃったように、国会審議権を配慮したものと承知をいたしておるわけでございますけれども、この問題につきましては、先生指摘のような意見のあることも十分私ども承知をいたしておるわけでございまして、当委員会審議を見守りながら対処してまいりたい、このように考えております。
  12. 永井孝信

    永井委員 もう一つ、この公益委員関係について、さらに突っ込んで質問をしてみたいと思うわけであります。  今大臣は、この公益委員任命について、私の今提起いたしました問題については、そのことを受けとめて対応するということでありますが、もう一つ問題点というのは、公益委員常勤制の問題であります。  ここにも議事録を持っているわけでありますが、昭和三十一年の公労法改正の際に、この常勤制というものが導入されました。委員会でも本会議でも、我が党はこの問題について強く異議を申し立てているわけであります。修正要求もいたしているわけであります。我が党が反対をしましたその理由というのは、常勤制の弊害というものが出てくる、このことを強く主張しているのです。ここで議事録内容を細かく御紹介する時間がありませんので、私は御紹介いたしませんけれども、その我が党の主張もありまして、公労委あるいは国労委時代を通して常勤公益委員は一度も任命されたことがないのであります。  この実情を踏まえますと、公益委員常勤制は本来不要であり、組織統合に当たりましては、むしろこれを廃止することとすべきではないかと私は思うのであります。これをあえて存続させるということについては、何か特別な意図が隠されているのではないかと危惧するのでありますが、この点についてはどうでございますか。大臣、ひとつお答えいただけますか。
  13. 中村正三郎

    中村国務大臣 御指摘のように、公益委員の一部常勤制につきましては、従来国営企業労働関係法国労委について公益委員の一部を常勤とすることができるという規定を、そのまま今回も踏襲をいたしたわけでございます。  公労委時代を含めまして、この常勤公益委員が置かれたことがないのは御指摘のとおりでございます。また私どもとしましても、当面常勤委員任命することは考えていませんけれども常勤制そのものについては、少なくとも制度としては引き継いでおくことが大事ではないかなというふうに考えておるわけでございまして、御理解をいただきたいと思うわけであります。
  14. 永井孝信

    永井委員 この問題については、ここで深く議論しようとは思いませんけれども、現実的に常勤制がしかれておっても、長い歴史の間に常勤者がいなかった、任命されたことがない。しかし制度としては残す。たとえ制度としては残すということであっても、残すこと自体に私は大変な危惧を持つわけであります。したがって従来の、昭和三十一年の公労法改正以来続いてきた歴史的な経過というものをしっかり踏まえて、それが定着するようにしてもらいたい、このことをあえて重ねて私は申し上げておきたいと思うわけであります。  さてその次に、この統合後の労働委員会制度においては、現在の国労委制度における地方調停委員会を廃止する。これにかえて地方調整委員を設けるということにしているのでありますが、その理由について具体的に明らかにしていただきたいと思います。
  15. 白井晋太郎

    白井(晋)政府委員 お答え申し上げます。  今回、統合後の委員会地方調整委員制度を設けましたのは、地方調停委員会処理対象となるべき企業がかつての三公社現業から四現業に減少したこと及び取扱件数減少傾向にあることから、地方調停委員会を常設の合議体として存置するよりは、実質的に行政水準を維持しながら機動的な運用ができる制度に置きかえる方が行政組織簡素化制度運用効率化観点から妥当であるという判断をしたためでございます。
  16. 永井孝信

    永井委員 地方調整委員 というのは、今御説明を受けました政府案によりますと、「国営企業とその国営企業職員との間に発生した紛争その他の事件地方において中央労働委員会処理すべきものとして政令で定めるもの」いわゆる第十九条の十ですね、これを扱うものとされているのであります。つまり地方調整委員法律上は民間事件についても扱うことができることになっているわけですね。この点については、私といたしましては、冒頭包括的に確認しましたように、この改正案目的、そして基本的な内容は、中央労働委員会国営企業労働委員会国労委ですね、これの組織統合そのものであって、従来両委員会がそれぞれ果たしてきました機能につきましては、基本的には変更を加えない、民間事案に係る中労委地労委権限関係には全く変化がない、冒頭の質問答弁を聞いておりまして、私はこのように理解をしておるわけであります。しかしながら、民間労働組合などの間では、この部分につきましては、都道府県機関として地方労働委員会が設けられているのに、さらに民間事案も取り扱うことのできる地方調整委員を置けば、地労委権限が侵されることになるのではないか、こういう心配が根強く存在をしていることは事実であります。この点についてはどのように考えていらっしゃいますか。
  17. 白井晋太郎

    白井(晋)政府委員 お答え申し上げます。  国営企業事案については、従来と同様、これを地労委が扱うことはなく、地方におけるものであるならば、原則として地方調整委員が扱うということになります。  それから、民間事案の件でございますが、不当労働行為等審査事務及び紛争調整事務のいずれも地労委権限と截然と区別された中労委事務の一部を地方調整委員が扱うものということで考えているわけでございます。すなわち不当労働行為等審査事案については、地方調整委員は、従来中労委のみに審査権限のあった民間の再審査事案について、その一部を扱うものでございます。また紛争調整事案については、従来どおり二以上の都道府県にわたる事案、または全国的に重要な事案であって中労委処理すべきものについて、その一部を扱うものでございます。  以上のように、地方調整委員の扱う事案は、地労委が扱う事案と性質上異なるものでございまして、地方調整委員中労委に置くことによって地労委権限を侵すことはないというふうに考えている次第でございます。
  18. 永井孝信

    永井委員 従来の地労委権限を侵さないということを明確に答弁されたわけでありますが、その実態的な運用については、今答弁されたことをきっちりと踏まえられて、問題を生じないように、この地方調整委員という制度については、従来の二つの委員会機能お互いに侵すことがない、そういう立場も含めて、これからもひとつきちっと整理をしていただきたい、対応していただきたい、このことをあえて強く申し上げておきたいと思うわけであります。  その次に、この労働委員会制度そのものについてお尋ねをしたいと思うわけでありますが、いわゆる不当労働行為なら不当労働行為という問題が提起をされますね、扱ってまいりますね。この審査長期化が大変問題になっているわけであります。もちろん中央労働委員会あるいは地方労働委員会審査そのものが、労働者から問題が提起され、訴えられた不当労働行為であれば、その不当労働行為の問題について労働者に対して確実に救済の措置がとられていかなくてはいけない、これは当然なことでありますが、その具体的な効果を速やかに上げることができるように、審査のあり方について抜本的な改正が今求められていると私は思うのであります。  そこで、まず審査の実情についてお尋ねを申し上げますが、中央労働委員会の最近五年間の審査事件件数の推移及び審査に要した日数の平均はどうなっていますか。これがまず第一。特に長期にわたったものではどのぐらいの日数を要しているのか。これについてひとつ明らかにしてもらいたいと思います。さらにつけ加えていけば、最も短い期間に法律的にこの問題の処理がされたというものがあれば、それも参考に聞かせてもらいたいと思います。
  19. 渡邊信

    ○渡邊説明員 中労委におきます昭和五十八年から六十二年までの最近五年間の各年ごとの審査事件件数等についてのお尋ねでございます。  以下、申し上げますと、まず不当労働行為審査事件の件数ですが、これはその年に新規に申し立てられましたものと、前の年から繰り越したものの合計で申し上げますが、昭和五十八年から順次申し上げますと、各年三百二件、二百九十七件、二百七十九件、二百九十三件、二百八十六件となっておりまして、この五年間の平均では年二百九十一件となっております。また審査に要した平均日数ですが、各年に終結しました事件について見てみますと、かなり長期化をしておりまして、昭和五十八年が千二百十五日、以下順次千百三十四日、一千八十三日、九百九十日、一千二十四日、この五年間の平均で一千八十九日、このようになっております。また不当労働行為の救済の申し立てがなされましてから命令が交付されるまで、この最近五年間で最も長期間を要した事件といいますのは三千八百七十七日、十年ちょっとかかっております。また最も短かった事案について申し上げますと、約二百日となっております。こういった数字があります。
  20. 永井孝信

    永井委員 今聞いておりまして、中央労働委員会あるいは地方労働委員会あるいは国営企業労働委員会などが大変な御苦労をいただいていることは十分わかるのですが、大臣、これは余りにも長過ぎますな。不当労働行為を受けて、それの救済措置が仮にされたとしても、今の御答弁でいきますと平均千八十九日、三年かかっているわけですね。この三年間の期間に不当労働行為を受けた人が、その不当労働行為そのものを定着させてしまう、あるいは不利益な扱いを受けた者が、その間の分については取り返しがきかない、私は大変な問題だと思うのです。大変な御苦労をいただいているんだけれども、そういう状況では労働委員会本来の機能が発揮されているとは私は思えません。不当労働行為事案審査を促進するために、だからこそ対策が必要だと思うのでありますが、この点については労働省はどのような対策を考えておられるのか、お答えをいただきたいと思います。
  21. 白井晋太郎

    白井(晋)政府委員 お答え申し上げます。  先生指摘のとおり、不当労働行為事件審査長期化しております。いろいろ理由はあるかと思いますが、我々としても促進が図られなければならないというふうに努力いたしているわけでございますが、この点につきましては、かねてから各方面から審査の迅速化について強い要望が寄せられていることは承知いたしているところでございます。これまでにも労働省及び中労委では、委員の増員、労委規則の改正など審査の促進を図るため種々の方策を講じてきているところでございます。今般の統合に当たっても、公益委員の増員、審査部門の職員の増員を図る等審査体制の一層の充実を図ることとしておりまして、審査の迅速化に資すると考えております。今後とも引き続き審査の迅速化のための制度上及び運用上の施策を検討してまいりたいと考えておる次第でございます。
  22. 永井孝信

    永井委員 今お答えを聞いておりますと、迅速化のための制度上及び運用上の施策を十分に検討してまいる、こういう御答弁であります。その答弁はその答弁として私は受けとめておきたいと思うのでありますが、しかし現実の問題として、この不当労働行為の救済問題が遅々として進まないという、今そこに苦しんでいる労働者がいるということを、この国政の場でもっと真剣に考えてみるべきではないかと思うのですね。考えてみますと、私も当委員会で、これは七、八年間不当労働行為の問題に触れなかった年はないわけであります。とりわけことしの三月二十二日でしたか、当委員会で私が質問に立ちましたときに、具体的にJRの不当労働行為問題を一つの問題として提起をしながら、不当労働行為の救済をすることがおくれている、これも問題、十分に労働委員会機能を発揮できていないことも問題、しかしむしろ一番大きな問題は、不当労働行為が起きないように行政指導を強めることにあるということを私はこの三月二十二日の質問でも提起をしているわけであります。  たまたまここに第八十四回国会におきます労働組合法の一部を改正する法律案に対する附帯決議を持ってまいりました。この附帯決議は昭和五十三年四月二十五日にこの委員会で決議をされているわけでありますが、その内容を参考までにもう一度触れてみたいと思うわけであります。   政府は、最近の労働委員会における不当労働行為事件の増加、事案内容の複雑化等にかんがみ、次の事項を実現するよう、なお一層努力すべきである。  一 労働委員会機能の十分な発揮を期するため、審査手続のあり方の検討、円滑な労使慣行の醸成等事件処理の促進について十分配慮すること。  一 労働委員会委員の処遇の改善及び各労働委員会の管轄区域の実情に応じた事務局の整備、拡充に努めること。  一 不当労働行為等事件数の減少を図るため、行政指導及び啓蒙に努めること。 この三つが実は昭和五十三年四月二十五日の当委員会で附帯決議で決議をされているわけであります。  振り返ってみますと、毎年毎年私は当委員会不当労働行為の絶滅を期するために政府側、労働省側にその努力を要望してまいりました。訴えてまいりました。全くこの附帯決議に言われていることと同じなんですね。ところが現実は不当労働行為が続発をし、今も聞いてみると大変な数字が存在しています。年平均二百九十一件も最近は不当労働行為事件紛争解決のために救済要求が出ている。数が多いから労働委員会が対応し切れないという量的な問題もあります。しかし根本は不当労働行為をさせないような行政指導に尽きるのではないかと私は思うのであります。  一つだけ例を申し上げますと、ここで議論をしようというつもりはありませんけれども、例えば広島の第一学習社の問題のように、十五年近くもかかって、中央労働委員会が最終的に救済命令を出した。労働者側からすれば全面的に勝利をしたという内容なんです。全面的に組合の不当労働行為の申し立ては認められました。それで一件落着かと思ったら、今度は経営者側が改めて法廷に持ち出す。これはいつ解決するかわからぬ。ようやく年数を経て最高裁が判決を出した。それでもなお解決していないのですね。一体それでは労働者はどこで救われるんだろう。その具体的な処理も早くしなくてはいけないことは当然でありますが、今現実にどんどん不当労働行為が行われている。いわば労働者の権利はどっかへ飛んでしまったと言ってもいいような状況に置かれている。だから今回のこの国労委中労委統合問題について、そのことも大切だが、むしろ根本は労働省の行政指導の姿勢にかかっている、私はこう思うのですが、これについてひとつお答えをいただきたいと思います。
  23. 白井晋太郎

    白井(晋)政府委員 お答え申し上げます。  先生指摘の点、種々問題があるわけでございますが、使用者は労働組合法の禁止する不当労働行為を行ってはならないということは当然であり、その発生を未然に防止することが大切なことは御指摘のとおりでございます。これまで不当労働行為の発生防止のために、国においてはブロック会議等、地方においては労働大学等を通じて労使関係法規の周知徹底を図るとともに、労使からの情報収集に努め、事前に問題の解決を図る等の努力をしてきたところでございますが、おっしゃるとおり十分とはまだ申せないわけでございまして、今後ともあらゆる機会をとらえ、労使関係法規の周知徹底、情報の収集に努めてまいりたいと考えておる次第でございます。
  24. 永井孝信

    永井委員 重ねて恐縮でありますが、労働委員会で問題の処理を図るということは、もういわば第三者機関にゆだねているわけでありますから、直接介入はできないかもしれない。その労働委員会に問題が提起されないように、事前の段階で労働省が積極的に啓蒙しろ、指導しろ、こう要求しているわけでありますから、そこはひとつしっかり踏まえてもらいたいと思います。  あと時間の関係がありますから、走って恐縮でありますが、次の質問に入ります。  この労働委員会統合にかかわる今回の法改正では、労働関係調整法の改正も含まれているわけでありますが、この労調法については、周知のように日本電信電話株式会社、NTTにかかわる懸案事項があります。三年前の電電公社の民営化に当たりまして、新会社については、政府案では不当にも労調法附則第三条で当分の間の措置として特例調停制度を設けることにされてきたわけですね。しかし、この規定については、我が党の強い主張によりまして、三年後に見直すこととし、その旨附則第四条に明記されることになる一方、当時の中曽根総理は、三年後の見直しの際には、廃止する方向で検討すると約束をされていらっしゃるわけであります。  既に三年が経過しておりまして、労働省としても検討を行っているはずでありますが、この問題の経緯を踏まえますと、NTTの特例調停制度につきましては、直ちに廃止することとすべきだと考えますが、どうでございますか。これはひとつ大臣からお答えいただきたいと思います。
  25. 中村正三郎

    中村国務大臣 NTTの特例調停制度につきましては、かねてから関係者の皆さんの御指摘もございましたし、また労働省としましても、三年前これが制度として発足した経緯を踏まえながら、部内におきまして関係者等のヒアリングをずっと行ってまいったところでございます。現段階におきましては、おおむね関係者の中でも廃止しても差し支えないではないかという合意を得られておるところでございます。  ただ、今回の改正案中身につきましては、これは中労委国労委統合法案でございまして、調停制度関係には言及しておらないわけでございますので、このことにつきましては、急いで別途措置をいたしたいと考えているところであります。
  26. 永井孝信

    永井委員 ひとつ大臣答弁どおり速やかに措置をしてもらいたいと思います。  その次に、我が国は経済大国と言われるようになりました。そして世界一の債務国になったと言われているわけでありますが、これを支えているのは労働者なんですね。その労働者の生活や労働条件は欧米諸国に比べてまだまだ劣っていることは周知のとおりであります。一ドル百二十数円という状態でありますけれども、この前も当委員会で私が質問いたしましたら、経企庁は、一ドルで買えるものを日本で買おうとすれば二百三十円かかる、こういう答弁がありました。だから見せかけの——確かに経済大国であり、あるいは労働条件も向上したと言われているのでありますが、実態はそうではない。その労働条件の改善と向上を図ろうとする労働者労働組合の正当な活動を認めようとせずに、悪質な不当労働行為を働く使用者が絶えないことは、私は最前も申し上げましたように、重大な問題だと思うわけであります。したがって、労働委員会に期待されるところは非常に大きいものがあります。  公務員の場合には、そもそも労働基本権自体が法律によって不当に制約されています。官公労働者労働基本権問題については長い経過がありまして、まだ一定の制約が設けられることもやむを得ないという側面が部分的にせよあるとは思うわけでありますが、現在のように、一律全面的なやり方で基本的権利を奪うのは、どうしても私は納得できないのであります。労働基本権の保障というのは、国際的な常識でありまして、現行の官公労働法体系の改正が当然必要であるということを、私はこの際強く主張しておきたいと思うわけであります。  ILO第百五十一号条約、つまり公務における団結権の保護及び雇用条件決定のための手続に関する条約がまだ批准されておりません。この際、これを早急に批准すべきではないかと思うのでありますが、どうでございましょう。またこれに関連して、ILO百四十四号条約というのがございます。つまり国際労働基準の実施を促進するための三者協議に関する条約であります。これについても早急に批准すべきではないかと思うのでありますが、あわせてひとつ見解を伺いたいと思うわけであります。
  27. 齋藤邦彦

    ○齋藤(邦彦)政府委員労働省) お答えをいたします。  百五十一号条約は、先生指摘のように、公的被用者団体、いわゆる国家公務員等の職員団体に関します団結権の保護ですとかあるいは雇用条件の決定に際しまして紛争が起こった場合の解決の手続、そういうものについて規定している条約でございます。  この条約と我が国の法制との関係を見てまいりますと、若干と申しますか、いろいろな点で問題がございます。一例を挙げさせていただきますと、百五十一号条約によりますと、公的被用者団体、いわゆる職員団体につきましては、構成員のいかんを問わないということになっておりますが、我が国公務員法体系におきましては、管理職員等とそれ以外の職員、いわば一般職員とが一緒になるような職員団体は禁止されておるというところがございます。そういうようなことで、この条約と現在の我が国公務員法体係におきます職員団体制度との間には種々な点で問題点がございます。そういう意味におきまして、この条約の批准につきましては、これからも先生いろいろ御指摘がございました点を踏まえながら慎重に検討をしてまいりたい、こういうふうに思う次第でございます。  また、百四十四号条約と申しますのは、政府と代表的な労使団体の間で、ILOからの質問書に対します政府の回答、そういうようなものについて効果的な協議を実施しろということ等を規定しておる条約でございます。  この条約の趣旨としますところは、我が国におきましても一部実際上の問題として実行されておるところでございますが、まだこの条約の解釈をめぐりまして若干不明確な点がございます。そういうようなことから、現段階におきまして直ちに批准をするということについてはなかなか困難な問題があるのではないかというふうに思っております。
  28. 永井孝信

    永井委員 それなりの現状における政府の態度について説明がされたわけでありますが、日本が経済大国と言われ、先進国とも言われ、また自他ともにそれを許しているとするならば、労働問題についても当然先進国でなければいけないと私は思っているのです。経済大国を支えてきたのはだれでもない、労働者だと私は思っております。この労働者基本的な権利がいまだに、公務員でいえばスト権が剥奪されたままになっている、いろいろな面で制約が加えられたままになっている。たとえ日本の国情というものがあったにせよ、なるほど日本は労働問題についても人権問題についても世界の各国に比べて先進国であるなと言われるように、その努力を積み重ねることが政府の責務だと私は思います。もちろん国会もその責任を問われてくると思うのであります。したがって、今御指摘いたしましたように、百五十一号条約あるいは百四十四号条約についても、当然速やかに批准の手続をとるように国内法の整備などもすべきでありますし、またその百四十四号条約について不明確な点があるとするならば、その不明確な点は一日も早くただして、そして具体的にその対応について検討を進めてもらいたい、こう思うわけであります。  また、ILOが採択いたしました条約あるいは勧告は非常に数が多いのでありますが、日本の場合、ILO条約の批准の率は極めて低いわけです。極めて低い。これはもう先刻御承知のとおりであります。ですから、今申し上げました百五十一号条約あるいは百四十四号条約だけではなくて、ILOが採択をしました条約や勧告について、もう一回全体を見直して、労働者の権利を守るためにもあるいは近代国家と言うにふさわしい労使関係をつくり上げるためにも、速やかに、積極的にILO条約、勧告について批准あるいは実施ができるように政府を挙げて努力すべきだと私は思うのでありますが、ひとつ労働大臣の方からその決意のほどを伺っておきたいと思うわけであります。
  29. 中村正三郎

    中村国務大臣 我が国の条約批准の基本方針というものは、非常にシビアに考えておるわけでございまして、一たび批准した以上は、国際間において厳正に実行しなければいけない、こういう考え方でございます。そのためにはやはり国内法との調整が担保されなければならないと思うわけでございまして、お説のように、これからも国内法との調整を十分なし遂げながら早い時期に批准の数を多くしていかなければいけない、このように肝に銘じているわけでございます。
  30. 永井孝信

    永井委員 予定の時間が参りましたので、これでおきますが、今回の国労委中労委統合についてずっと今まで、短い時間でなかなか十分なことは言えませんでしたけれども、私が指摘しました問題点ども含めて、本来労働委員会が果たすべき役割が一〇〇%フルに発揮できるように、そして労働委員会にかかる事案一つでも少ないほどいいわけでありますから、かかる事案を少なくする事前の労働省の指導とか啓蒙というものにさらにさらに重点を置いて対応してもらいたい、このことを強く要望いたしまして、私の質問を終わります。
  31. 稲垣実男

    稲垣委員長 吉井光照君。
  32. 吉井光照

    ○吉井委員 せっかくの機会でございますので、まず労働問題の基本的な問題につきまして大臣に若干お尋ねをしておきたいと思います。  まず、戦後の日本経済の発展に対する労働組合の役割についてでございます。御承知のように、戦後四十三年目を迎えた今日、我が国はGNPも四兆ドルのアメリカに次ぐ約二兆ドルに達したわけで、世界第二位の経済大国、このように言われておりますが、この驚異的な経済成長の背景には、国民性であるとか技術革新、また企業努力等々さまざまな要因があったことは事実でございますが、日本経済の近代化と成長の原動力であるところの生産性の向上にとって最も肝心なことは、どれだけ労使が一体となって取り組むことができるかという問題ではないかと思います。  そういった意味から、労働者の権利保障、そして労働条件の充実目的に組織される各労働組合の存在というものは大変重要であったわけでありますが、欧米先進諸国に追いつき、追い越すほどの急成長を遂げた戦後の日本経済の発展に、この労働組合というものはどのような役割を担って貢献してきたと思われるのか、その評価をここでお聞かせを願いたいと思います。
  33. 中村正三郎

    中村国務大臣 御指摘のように、我が国の今日の繁栄のために労働組合が果たしてきた役割というものは、私は極めて大きかったと評価をいたしておるわけでございます。とりわけ産業構造の転換あるいは技術革新の進展、高齢化の進展等の中で、国民経済的視野に立ちまして、使用者と真摯な話し合いを積み重ねられ、問題の解決に努めるとともに、相互信頼を培いまして、安定的な労使関係を築いてきた、これが我が国の経済発展の達成の大きな要因であると考えておるわけでございます。
  34. 吉井光照

    ○吉井委員 次に、組合の組織率の現状と将来の見通しについてでございますが、さる三月に東京で開かれた労使関係研究会議で、今世紀末には労組への加入率が二割まで落ち込む、このような推計が示されたように聞いておるわけですが、現在組合の組織率はどうなっているのか。また政府としての将来見通しはどのように考えていらっしゃるのか。さらにこの研究会議指摘をいたしますように、組合の組織率というものが低下するのであれば、それはどのような原因に基づくものであるか、この点についてお尋ねをしたいと思います。
  35. 白井晋太郎

    白井(晋)政府委員 お答え申し上げます。  労働省政策調査部において実施しております労働組合基礎調査によりますと、昭和六十二年六月三十日現在の推定組織率は二七・六%ということになっております。昭和五十年以降低下を続けているわけでございます。  先生指摘の三番目の方から先にお答え申し上げますが、組織率低下の要因につきましては、種々の見方があるかと思います。ただ、いろいろの見方の中で、大方の労使関係者等が指摘いたしておりますのは、第三次産業化が進んでいるということ。それから就業形態におきましては、パート、派遣労働等の形態がふえてまいりまして多様化している。それから労働者自身の意識の多様化等が指摘されているところでございます。今後も第三次産業化等は進んでいくと見られているわけでございます。  一方、労働団体は連合結成等の新しい情勢の中で、パート労働者や中小企業の組織化に取り組んでいこうとしております。今後の労働運動がどのような方向に向かっていくかによってもいろいろ差異があるかと思いますが、組織率が今後どのように推移していくかということについては、今直ちに申し上げるのはなかなか難しいというように考えている次第でございます。
  36. 吉井光照

    ○吉井委員 そこで、現在における労使関係のあり方についてでございますが、今労働界を取り巻くところの情勢は、低成長、国際化、産業構造の転換、そして技術革新、また高齢化等の諸状況に直面をして、雇用の確保や税制等の制度、また政策問題への全体的な取り組みが必要となっていると思うわけですが、こうした背景のもとで、御承知のごとく昨年十一月二十日に民間企業労働者を結集したところのいわゆる連合が結成をされ、さらに国や地方公共団体、公営企業で働く宮公労働者もあわせた労働界全体の統一、これが来年秋を目標に動き出しているわけでございますが、こうした現状を踏まえて、現在の労使関係の状態というものをどのように認識をされていらっしゃるか、この点はいかがでしょうか。
  37. 白井晋太郎

    白井(晋)政府委員 お答え申し上げます。  今お話にございましたように、昨年十一月、民間労組が結集いたしまして連合を結成したわけでございますが、これは我が国労働運動におきます一つの画期的な出来事であったというふうに思っております。新しく結成されました連合は、総合生活の改善を目指して政策、制度課題を樹立するといたしておりますが、先ほど大臣も申しましたように、名実ともに豊かな勤労者生活の実現を目標とする労働行政といたしましても、そのような運動を注目しているところでございます。  いずれにしても、現在の我が国の労使関係は、労働争議の減少等にも見られますように、労使の方々がこれまで引き継いでこられた相互信頼のもとに、全体としては安定したものであるという認識をいたしているところでございます。
  38. 吉井光照

    ○吉井委員 今ちょっと御答弁をいただいたわけですが、将来におけるところの労使関係のあり方ですが、我が国の労使関係の特色といたしまして、年功的処遇と終身雇用、さらには事務と現場が一体となったところの企業内組合、これを挙げる人が非常に多いわけですが、こうしたことが日本の経済的成功を支えてきたとして海外では非常に評価も高いようであります。  しかしながら、国際化、産業構造転換のうねりの中で、今企業効率化を求め、そして年功というよりも、むしろ能力を重視して、正社員を減らしてパートや派遣労働者をふやす、これまでの労使関係の見直しがされているのではないか、このような指摘もあるわけです。これらは先進国に共通した傾向のように見えますが、パートタイマーのような未組織労働者の問題も含めて、将来におけるところの労使関係のあり方はどうあるべきなのか、これは極めて大きい問題ではないかと思いますが、この点につきまして、ひとつ大臣の御所見を伺いたいと思います。
  39. 中村正三郎

    中村国務大臣 御指摘のように、労働組合のあり方に対しましてはいろいろな意見も出ております。あるいはまた雇用実態につきましてもいろいろな形が、姿があらわれておるわけでございますけれども、経済のソフト化あるいはサービス化等々ありますけれども、今の年功序列型の企業形態というものが中心にあるのではないか、当分の間はそういう方向に行くのではないかなというふうに私ども基本的には考えておるわけでございます。  御指摘のように、今後国内的には高齢化あるいは技術革新の進展、これへの対応はどうかという問題、あるいはまた国際的には内需主導による均衡のとれた経済成長への要請が強まる中で、我が国のあり方が国全体に浸透してきておりまして、それに伴い勤労者の問題意識も、生活の質の向上を重視したものになってきておりますことは、御案内のとおりでございます。  このような中で、勤労者の総合的な生活の向上なくしては、国内的にも国際的にも我が国の安定的な発展はあり得ないと考えられるわけでございます。その意味におきまして、連合初め労働組合がすべての勤労者の名実ともに豊かな生活を実現するために果たすべき役割は、今後さらに重要なものとなっていくと考えるわけでございます。私どももしっかりこの推移を見守っていかなければいけないというふうに考えておるわけであります。
  40. 吉井光照

    ○吉井委員 では次に、四現業の民営化につきまして、郵政省お見えになっていますね。お尋ねしたいと思います。  中曽根前内閣のもとに臨時行政調査会昭和五十八年三月十四日、行革の最終答申を行ったわけです。そしてこの答申に基づいて、六十年四月に専売、電電が、そして六十二年四月に国鉄がそれぞれ民営化されたわけです。少し前までは、公共性、公益性を理由に、もう民営化などは到底無理な話である、このようにされていた問題ですが、ごらんのとおり民営化をされたわけでございます。したがって、今後も行革が推進されていくとするならば、残ったところの郵政、それから林野、印刷及び造幣の四現業の中で、行革いわゆる民間移行が可能なもの、例えば宅配業務と関係する郵政などは民営化が可能ではないかとの考えもあるわけですが、今後の検討も含めまして、この点についてお尋ねをしたいと思います。
  41. 荒瀬眞幸

    ○荒瀬説明員 お答え申し上げます。  御指摘のように、臨調の中で、かつての三公社現業時代から三公社等が民営化されるという背景もございまして、郵政事業についても民営化したらどうかという話が出ておりますが、郵政省といたしましては、郵政事業を民営化するということにつきまして議論をしたり、あるいは検討しておるといった事実はございません。
  42. 吉井光照

    ○吉井委員 わかりました。  それでは今回の改正に伴うところの行革の効果についてでございますが、今回の改正は、先ほども述べましたように、臨調答申の行革の一環として行われたものであります。通常、行革といえば人、物、金減らしをいうわけですが、今回の改正で具体的にはどの程度の行革ができることになるのか、この点についてお尋ねをしたいと思います。
  43. 渡邊信

    ○渡邊説明員 今回の両委員会統合によります行革効果についての御質問でございますが、まず委員につきましては、現在の中労委公労使各側九人の合計二十七人、国労委公労使各側七人、五人、五人の計十七人で、合計四十四人となっておりますが、統合後はこれを各側十三人といたしまして合計三十九人、差し引き五人の委員を減員することにしております。  また、職員数につきましては、二つの事務局を統合しまして、総務部門、管理部門のように重複する部門については簡素化を図ることにしております。  また、関東の事務局支局は廃止することにしておりまして、こういったことで現在両委員会の職員が百五十人いますのを百二十六人にするということにしまして、二十四人の職員を減員する予定にしております。  また、常設の機関であります地方調停委員会、現在全国八ブロックに置かれておりますが、この常設の地方調停委員会を廃止しまして、非常勤地方調整委員を置くということにしております。  予算面におきましては、六十二年度の両委員会関係予算は約十五億八千六百万円でありますが、以上のような措置を講ずることによりまして、六十三年度約五千三百万円の予算の減になるというふうに見込んでおります。
  44. 吉井光照

    ○吉井委員 では、統合による影響についてちょっと確認をしておきたいと思うのですが、もともと性格を異にするところの中労委国労委の組織を統合するという今回の改正案は、民営化等によって、昭和五十六年、三公社現業当時、公労委の対象職員数が約百十六万人が、現在は三十六万人と約三分の一に激減をしているわけです。これはいわゆる臨調行革の一環としてのものですが、統合されて組織的には新中労委一本となるわけです。業務分担は明確に区分をされるわけで、労使関係に混乱が生じたり、またトラブルが発生するようなことはない、このように政府はおっしゃっているわけですが、本当に統合によるところの労使関係への影響はないのか、ここでもう一度確認をしておきたいと思います。
  45. 白井晋太郎

    白井(晋)政府委員 お答え申し上げます。  今回の統合によりまして、先ほど申し上げましたように、委員、職員の削減、組織の簡素化は図っているところでございますが、両委員会が従来果たしてまいりました機能を低下させることがないよう十分に配慮いたしておるところでございます。  また、特に民間不当労働行為審査につきましては、委員を増員すること等によりまして、機能の強化を図っているところでございます。  したがいまして、この統合後の委員会が迅速かつ的確な紛争調整を行うことによりまして、今後とも良好な労使関係の維持発展に資することを期待しているものでございます。
  46. 吉井光照

    ○吉井委員 次に、不当労働行為事件の現状と問題点及び対策についてちょっとお尋ねをしておきたいのです。  昭和六十一年におけるところの不当労働行為審査状況を見ますと、国労委の場合、係属五十七件、新規二十件、平均処理日数が昭和五十七年から六十一年平均で五百四十三日でありますが、中労委の場合は、係属が二百九十三件、新規が八十五件、平均処理日数が九百九十日と圧倒的に件数も多く、また処理能力も遅いということが明らかであるわけです。  このように、不当労働行為事件処理状況が悪いのは、一体どこにどのような問題があるのか、またどのようにすれば迅速な処理が可能となるのか、この点はいかがですか。
  47. 渡邊信

    ○渡邊説明員 不当労働行為事件審査に要します期間は、先生指摘のように長期化する傾向にあります。私どももこの問題につきましては相当重視をしておりまして、かつて研究会に委嘱をいたしまして、各県の労働委員会等にも参りまして、審査遅延の実情等あるいはその原因等について調査をしたことがございます。  この審査長期化する傾向にある要因としましては、いろいろなものが複合化しているというふうに現在見ておりまして、次のような理由が挙げられるかと思っております。  まず、事件数が増加をしている、こういった傾向にあることが挙げられます。さらに事案内容が組合の加入の別を理由とする昇給、昇格の差別でありますとか、非常に複雑な事案というものがふえてきているということが挙げられるかと思います。また労働委員会審査の進め方が、裁判と同じような非常に厳密な審査手続によって進められる、こういったことが審査を遅延させているといった原因も挙げられます。また労働委員会におきましては、直接問題になっております不当労働行為事件のほかに、周辺の問題も含めて、この際いろいろ議論するといった傾向がないとは言えないというふうなこともあるかと思います。またあるいは当事者間で審査を申し立てた後に、自主交渉するといったふうなことでしばらく審査が中断しておる、こういった事情もあるようでありまして、こういったいろいろな原因が複合化をしまして、審査長期化という傾向が出ているのではないかと思っております。  この問題につきましては、私ども審査体制の充実を従来から心がけておりまして、できるだけ審査を迅速に進めたいというふうに考えております。
  48. 吉井光照

    ○吉井委員 現行法上の組織においても、このような不当労働行為事件処理能力が芳しくない、その上にもってきて、今度二十九人も人員整理される新中労委の組織では、十分機能することができないのではないか、このような懸念を抱くわけですが、この点についてはどう考えていらっしゃるのか。  また、昭和五十三年の四月二十五日、第八十四回国会での労組法一部改正の折に、本委員会の附帯決議の中で、「不当労働行為等事件数の減少を図るため、行政指導及び啓蒙に努めること。」という事項があるわけですが、それから今日まで十年の歳月が流れたわけです。この間どのような努力が払われてきたのか、今回の改正案にどのように迅速な処理のためのいわば事後対策が盛り込まれるのか、さらに事件を起こさないためのいわば事前対策はどのように盛り込まれているのか、お示しをいただきたいと思います。
  49. 渡邊信

    ○渡邊説明員 先ほど申し上げましたように、この不当労働行為事件審査長期化につきましては、少しでも迅速に審査できるようにということで、私ども常々事務局体制の充実等に努めてまいっておりますし、またいろいろな機会を通じまして、事業主団体等に対しましても、不当労働行為が行われることがないようにいろいろな指導を重ねているわけでございます。  今回の統合におきましては、先ほど申し上げましたように、相当の行革効果もねらっているわけでありますが、特に審査事件の多い民間部門につきましては、従来九人の公益委員で当たっていたものを、統合後は十三人の公益委員審査ができるようにするということにしておりまして、委員の面でも強化を図るというふうに配慮しております。  また、これは法律事項ではありませんが、先ほど事務局の部門についてはいろいろな整理をするということをお答えいたしましたが、これは管理部門のように両委員会統合することによりまして自主的に省略できる部門、こういったところを重点的に当たるということでございまして、直接審査に当たります職員につきましては、増員を図るということにしておりまして、全体の行革効果の中でも重点的な配分をするということで配慮しておるわけでございます。
  50. 吉井光照

    ○吉井委員 では、時間が参りましたが、最後にパート労働対策のあり方についてお尋ねをしておきたいと思います。  六十二年の産業労働調査所の女子パートタイマーの雇用実態調査によりますと、一日の所定労働時間は五時間未満が二九%で最も多く、次いで六時間が一七%、そして七時間が一一%となっております。しかも退職金の支給企業が七%、それから慰労金、金一封的なものですが、この支給企業は九%、パートの労働条件や福利厚生は大きく立ちおくれているわけです。こうした中、財団法人婦人少年協会が女子パートタイム労働対策としてパートタイム労働者福祉法、これは仮称ですが、この制定を提言されているわけですが、これに対して、これをどのように評価をされているのか。また労働省としては、五十九年のパートタイム労働対策要綱を基本方針として、具体的にはこの問題を検討するパート労働問題専門家会議を早急に設置するということですが、そのスケジュールはどうなっているのか、お尋ねをしておきたいと思います。
  51. 佐藤ギン子

    佐藤(ギ)政府委員 先生指摘のように、パートタイム労働者は家庭の主婦層等を中心といたしまして増加をいたしておりますが、まだまだ労働条件その他の点で問題になるところがあるわけでございます。そこで今先生おっしゃいましたように、私どもも学識経験者の御意見を伺っておりまして、パートタイム労働対策につきましての貴重な御報告を昨年の秋いただきまして、これは私どもにとっても大変参考になる貴重な御提言だと受けとめております。さらにこの御提言を参考にしながら、総合的なパートタイム労働者のための対策をつくろうということで、今御質問にもございましたような専門家会議をつくるべく現在準備中でございます。まだ何日からというところまで固まっているわけではございませんけれども、遠からずこの専門家会議を発足させまして、できるだけ早く総合的な対策をまとめたいと考えております。
  52. 吉井光照

    ○吉井委員 今後ますます増加傾向にあるところのパート労働者数また長時間労働あるいは専門技術労働、質量ともに変化しているパート労働問題の一刻も早い対策は緊急かつ重大である、このように思いますので、ひとつその点を大臣に強く要望をいたしまして、私の質問を終わりたいと思います。ありがとうございました。
  53. 稲垣実男

    稲垣委員長 塚田延充君。
  54. 塚田延充

    ○塚田委員 今回の労働組合法等の一部を改正する法律案は、現行中央労働委員会国営企業労働委員会統合目的としたものでございますので、これにつきましては、私たちも行政改革推進の立場から、また労働委員会の効率的な運営という観点からも、基本的には評価できるものと考えております。しかしながら、今回の改正に関連いたしまして、国営企業労働組合の在籍専従者の期限の制限の問題が議論されておりますことは、既に労働省も御存じのことと思います。  そこで、まずこの問題について若干質問させていただきたいと思いますが、現在、国営企業労働組合の在籍専従期間は、国営企業労働関係法によりまして五年に制限されているわけでございます。しかし、安定した労使関係をつくって、優秀な人材を労働組合に確保し健全な労働組合に進めさせるためには、このような制限は、この際抜本的に見直す必要があると私たちは考えます。私たちは、国営企業におきます在籍専従期間は、本来団体交渉によって労使が自主的に決定すべきものと考えていますが、いかがなものでございましょう。
  55. 中村正三郎

    中村国務大臣 在籍専従の制限期間の延長の問題につきましては、かねてから労使協定にゆだねるべきであるという御意見があることも私どもは十分承知をいたしておるわけでございます。かつてILO八十七号条約が批准されるまでは、専従期間については制限がなされていなかったことも事実でございます。私としましては、この問題が本来労使関係の健全化のためにどうあるべきかという観点から検討を進めてきましたけれども国営企業における専従期間は延長する方向が望ましいと考えておるわけであります。今後とも先生方の御意見を十分しんしゃくしながら、国営企業における労使関係が十分に安定したものとなるよう制度運用の実態を見ながら前向きに検討を進めてまいりたいと考えております。
  56. 塚田延充

    ○塚田委員 この問題につきまして前向きに検討するということでございますが、重ねて質問し確認いたします。在籍専従期間の制限をこの際きっぱりと撤廃する意思はございませんか。     〔委員長退席、野呂委員長代理着席〕
  57. 白井晋太郎

    白井(晋)政府委員 お答え申し上げます。  国営企業職員は国家公務員として職務に専念する義務を有しております。したがって、期間制限を撤廃することは困難であると考えておりますが、職務専念義務と調和させつつ、国営企業労使関係の安定に十分資するような期間があるかどうかということは、十分検討に値するものであるというふうに考えております。
  58. 塚田延充

    ○塚田委員 御答弁は、結局のところ在籍専従期間の制限撤廃は難しい、このようなお答えであったと受けとめざるを得ません。大変残念なことでございます。  それでは、次善の策ということで、我々は在籍専従の期間については当分の間七年以下の範囲内で労働協約で定める期間とするということで検討しておるわけでございます。仮にそうなったといたしましても、政府としては、在籍専従制度運用の実情をよく見ながら十分慎重に検討して、さらに適切なものとすべきだと考えます。この問題についてどのような考えなり今後の方針なりを持っているのか、重ねてお答え要求いたします。
  59. 中村正三郎

    中村国務大臣 在籍専従の制限期限を延長するとした場合、具体的な期限につきましては、国際情勢あるいは国営企業労使の実態を踏まえながら、さらに前向きに検討しなければいけないというふうに考えておるわけであります。
  60. 塚田延充

    ○塚田委員 現在の国営企業労働関係法では、在籍専従の制限以外にもいろいろ多くの労働基本権制約が課せられているわけでございます。労使関係の安定という観点から見ますと、これらの制約も在籍専従制限とあわせて抜本的に見直して、さらに大幅に緩和していくべきだと考えますが、これらの問題につきまして、今後どのように対処していくつもりなのか、具体的に御答弁をお願いいたします。
  61. 白井晋太郎

    白井(晋)政府委員 お答え申し上げます。  国営企業の職員の労働基本権制約、特に争議権の制約につきましては、昭和五十三年六月に、公共企業体等基本問題会議から、国営事業については、争議行為に対して経済原則に基づく抑制力が働かないことなどを勘案すれば、現時点において争議権を認めることは適当ではない旨の意見書が政府に提出されております。政府としましては、三公社現業労働基本権問題については、この意見書の趣旨尊重して対処することとする旨閣議了解されているところでございます。このような状況を踏まえますならば、国営企業の職員に争議権を付与することは、現状としては難しいと考えます。  いずれにしても、国営企業労使が良好で安定的な労使関係を形成、維持されるよう期待しておりまして、労働省としても、その環境整備を図ってまいりたいというふうに考えている次第でございます。
  62. 塚田延充

    ○塚田委員 在籍専従期間などの問題につきましては、これぐらいにいたしまして、次に仲裁裁定制度について質問をさせていただきたいと思います。  現在の仲裁裁定制度につきましては、仲裁が出たらこれを直ちに実行に移せるようにするなど、その拘束力の強化を図っていくことが必要であると私は考えます。先ほど他の委員から質問もございましたけれども、いろいろな紛争解決に当たりまして非常な長期間を要しておりまして、そのために事態は固定化するなど、社会的な悪影響も出ておるわけでございまして、せっかく仲裁が出るならば、その拘束力をこの際きちんとすべきだと考えます。現行仲裁裁定制度について、その拘束力の強化を図るために、具体的にどのような施策を考えているのか、その内容などについてお尋ねしたいと思います。
  63. 白井晋太郎

    白井(晋)政府委員 仲裁裁定の効力の強化等でございますが、現在の国営企業労働委員会仲裁裁定につきましては、労働協約と同一の効力を持ち、労使両当事者はこれに拘束されるということになっております。ただ、予算上、資金上実施不可能な仲裁裁定につきましては、国営企業労働関係法により国会に付議しなければならない、国会の承認が得られない限り、その効力は発生しないということにされているのでございます。このような国労法の規定は、国会の予算審議権尊重という要請仲裁裁定の尊重という要請との間の調和を図るためのものでございまして、やむを得ないものと考えているところでございます。  いずれにしても、現在まで国営企業仲裁裁定につきましては、いずれも完全実施されてきておりますし、労働省としては、今後とも政府の仲裁裁定についての実施努力義務を規定した国労法第三十五条の精神を尊重いたしまして、仲裁裁定が完全実施されるように努力してまいりたいと考えている次第でございます。
  64. 塚田延充

    ○塚田委員 私が申し上げておりますのは、完全実施ということは当然のことであって、その効率的な実行ということでございまして、そういう面においては、今のままでは拘束力が弱過ぎるのではなかろうか。その辺の改善をしないと、先ほど話が出たように、最長のものでは三千数百日、十年間もかかってしまうとか、平均でも三年かかるというようなことでございますので、その辺の改善ということも含めて、拘束力の問題について考え直す必要があるのではないか、このように御指摘申し上げているわけでございます。いかがでございましょうか。
  65. 白井晋太郎

    白井(晋)政府委員 お答え申し上げます。  仲裁裁定と先生申されました三千数百日との問題は、これは不当労働行為調整の問題でございますので、直接は関係ないわけでございますが、御指摘のとおり、先ほどから申し上げておりますとおり、この不当労働行為の解決についてはなかなか思うようにいかない点もあるわけでございますけれども、今回の改正等で組織の強化を図りながら何とか迅速化に努めてまいりたいと考えております。  それから、仲裁裁定につきましては、先ほど申し上げましたように、国営企業で民営ではないわけでございますので、国会におきます予算審議権との調整仲裁裁定が持ちます労使に対します労働協約と同じ効力、これを調整しながら完全実施されていくということをあくまで確保してまいりたい。そのように従来も確保してまいりましたし、今後も確保してまいりたいと考えている次第でございます。
  66. 塚田延充

    ○塚田委員 中央での統合に合わせまして、地方調停委員会時代要請に合わせて改革し、その機能の強化を図る必要があると私たちは考えます。これにつきまして、具体的な施策についてどのように考えておられるのか、お尋ねいたします。
  67. 白井晋太郎

    白井(晋)政府委員 お答え申し上げます。  この点につきましても、先ほど申し上げた点が重なるわけでございますが、地方調停委員会につきましては、今回の統合において、その処理対象となるべき企業がかつての三公社現業から四現業に減少したこと及び取扱件数減少傾向にあることから、これにかえまして、発生する事件に応じ機動的に対応できる地方調整委員を設けることとしたところでございます。時代要請に合わせた改革であるというふうに、我々としては御提案申し上げている次第でございます。
  68. 塚田延充

    ○塚田委員 今回の統合によりまして、新しい中央労働委員会が誕生することになるわけでございますけれども、単に統合をするだけでは労働委員会効率化は実効が上げられないと思います。先ほどの他の委員質問に対しての御答弁の中で、行政改革の見地から、予算面であるとか人員の面からかなりの合理化ができていることについては認めますけれども、今度の改正目的そのものは、それ以上に統合によって新しい効率化が進まなければいけない、ここに大きなポイントを置かれるべきだと思います。  そこで、新しい労働委員会における調停仲裁事案処理をもっと迅速化し、先ほど私質問をちょっと取り違えたようでございますけれども、何回も出ております不当労働行為などでももっともっと速やかに救済できるようにすべきだと思うわけでございます。事案処理の迅速化を図るためにどのような具体策を考えておられるのか。一般の方が聞いたならばびっくりするような長期の時間がかかっているわけでございますけれども、これを抜本的に改正するためにどのように手を打つべきなのか。今度の新中央労働委員会発足を機に、さらに労働省及び関係者は、このことについて徹底した案を出し、また実行すべきだと思います。そして中央労働委員会の運営も、現在はどちらかといえば賃金紛争処理に重点を置いておられると申しましょうか、ずばり申し上げますと、賃金紛争処理にのみ終始しているというように見られがちな状況でございます。ということは、その他の事案について十分な処理がおくれている、これは先ほどの時間が大幅にかかるということでも明らかと言えるのではないでしょうか。このような運営過程の改善につきまして、具体的な施策についてどのように検討を進めておられるのか、今後どのようにしようとされておられるのか、この辺具体的に、国民というよりは民間労使も含めて皆さん関心を持っている問題でございますので、このような事案処理の迅速化についてお答え要求いたします。
  69. 白井晋太郎

    白井(晋)政府委員 お答え申し上げます。  一つは、新しい中央労働委員会におきまして調停仲裁処理を迅速化するということ、それからこれらに伴います、賃金紛争のみではなくて、不当労働行為等における救済などを迅速化していくということの御指摘だというふうに思います。  今般、統合におきましては、民間事案不当労働行為審査処理に当たる公益委員を九人から十三人に増員し、審査部門の職員の増員を図ること等によりまして、審査体制の充実を図り、審査の迅速化に資するように措置いたしたわけでございますが、さらに運営その他の面におきましても迅速化が図られるよう、今後検討をまた進めてまいりたいというように思っております。  それから、国営企業担当公益委員四人をあらかじめ決めるなどいたしまして、調停仲裁事案処理につきましても、迅速かつ的確な紛争調整が行われるようにすることとしております。このような措置によりまして、統合後の委員会におきましては、賃金紛争のみならず他の諸問題も含めて迅速かつ的確な処理が行われると期待しておるところでございます。
  70. 塚田延充

    ○塚田委員 ただいまかなり具体的にお伺いいたしましたけれども、とにかくこの委員会審議過程及びその決定に基づく拘束力の実施、すなわち紛争解決そのものの迅速化、これは国民の要望だと私は思います。つきましては、大臣の方から、先ほどの不当労働行為などについてもうびっくりするような長期間かかっていることについて、どのような決意を持って指導されていくのか、この決意のほどを重ねてお伺いしたいと思います。
  71. 中村正三郎

    中村国務大臣 不当労働行為等の裁定につきましては、最少二百日間、最長三千八百日というようなまことに気の遠くなるような話でございまして、何としてもこの迅速化を図っていかなければならないというのは至上の課題であると承知をいたしておるわけでございます。先ほど来からいろいろな面でかくあるべしという御提言をいただきましたし、また労働省としましても、いろいろな面でこの改善策をお訴えをいたしておるわけでございますけれども、それだけで全部足りるというわけにもまいりません。これからもあらゆる角度から、あらゆる面から十分な検討をいたしまして、御期待に沿うような方向を見出していかなければいけない、この決意を新たにいたしている次第であります。
  72. 塚田延充

    ○塚田委員 国営企業におきましては、国民の負託にこたえて、労使が共通の認識を持てるように、労働組合が経営にもっと参加できるような体制をつくることが今の社会情勢に適合していると考えます。竹下総理も世界に貢献する日本とか国際化の時代とか言われているわけでございますけれども、まさしく国際競争や国際信頼を確保する意味におきまして、労使が共通の場で問題の処理に汗を流して一緒にやって解決をしていくということが求められていると考えます。  そこで、組合の経営参加ということが最近よく言われるわけでございますけれども、これらの問題についてどう対処されていくのか、大臣の御見解を求めます。
  73. 中村正三郎

    中村国務大臣 御指摘の点も大事なところでございます。おっしゃられますように、民間企業の一部では、組合が広い意味で経営に参画をし、経営者とともに責任を分かち合うという状況が見られるわけでございます。国営企業におきましても、労使が共通の認識のもとに、双方の立場を超えまして問題解決に努力することは極めて望ましいことでありまして、今日社会の情勢は確かにその方向に向かっていると認識をいたしておる次第であります。
  74. 塚田延充

    ○塚田委員 その大臣の、経営参加に関する国際情勢、今の社会情勢を踏まえての御見識をお伺いいたしましたので、今後とも労働組合の健全な発展のために、労働省一丸となって取り組んでいただくことを切に要望いたしまして、私の質問を終わります。
  75. 野呂昭彦

    ○野呂委員長代理 児玉健次君。
  76. 児玉健次

    児玉委員 この法律は、憲法第二十八条で言う労働者の団結権、団体交渉権、団体行動権を保障する、それを支えるという意味で非常に重要な法律でして、今度の改正には幾つかの重要な問題点を含んでおります。改正案の一部について修正の合意があったにせよ、極めて短時間の審議、私は二十分ですが、そしてきょうの午後の本会議に緊急上程、こういう運びは遺憾であるということを最初に述べておきます。  そこで、手短に私は質問いたしますので、お答えいただく方も端的に答弁をいただきたい。重ねてその点は要望いたします。  まず、地方調整委員の新設についてですが、現在の労組法二十五条一項、ここに「二以上の都道府県にわたり、又は全国的に重要な問題にかかる事件」について、地労委に優先して管轄することができる、こういうところがございます。今度の改正案でもそれはあります。この改正案において、地方調整委員が新設されたことを契機にして、JRなど大企業事件中労委が直接担当して、事案の審問まで地方調整委員に行わせる、そのことで地労委での審理が排除される、こういうことにならないかという懸念を持ちますが、その点、いかがでしょうか。
  77. 白井晋太郎

    白井(晋)政府委員 お答え申し上げます。  地方調停委員会を常設の合議体から、実質的に行政水準を維持し、機動的な運営ができる制度として、簡素化制度運用効率化観点から地方調整委員制度を設けた点につきましては、先ほど申し上げたとおりでございます。地方調整委員については、不当労働行為審査手続の調査、審問を行わせることができるといたしておりますが、これは不当労働行為事件の現地における調査、審問が有効な場合があり、ひいては審査の迅速化にも資するものと考えて、このような権限を付与することとしているものでございます。
  78. 児玉健次

    児玉委員 私が質問しているのは、この改正案地方調整委員が新設されたことを契機にして、大企業事案などを中労委が直接担当する、こういう新しいことが起きはしないか、起きるか起きないかということについて答えていただきたい。
  79. 白井晋太郎

    白井(晋)政府委員 その点につきましては、地労委は従来どおりやるわけでございますから、多くは差はないというふうに考えております。
  80. 児玉健次

    児玉委員 そこで、今最初に局長がお答えになったことについてなんですが、地方調整委員が審問を行うことがなし得るというふうに今度の改正案ではなっております。今の局長の答弁で、明確に、地労委権限が今後後退されることはないということは承りましたが、制度としてそれが残っているということについて、中労委公益委員が調査、審問を直接行うことなく命令を下すことになっていかないか、これでは不当労働行為の認定が消極的になり、審理の直接主義に反することにならないか、この点はいかがですか。
  81. 渡邊信

    ○渡邊説明員 不当労働行為事件審査につきましては、現行の仕組みでは、まず地方労働委員会に申し立てをしまして、その命令に不服のある当事者がさらに中労委に再審査の申し立てをするということになっておりまして、中労委は東京に置かれているわけでありますから、遠くから中労委にやってこなければいけないというふうな問題があります。また現地で迅速に調査などを行うことが不当労働行為の真実の発見に大変有効であるということもありまして、従来から地方における再審査処理というものは強い要望も一部にはあったところであります。なかなか人的、予算的にこれが今までできていなかったわけでありますが、先ほどからるる指摘されておりますように、不当労働行為事件審査がいろいろ遅延している、長期化しているという実態も考えまして、今後の制度におきましては、現地において地方調整委員を活用して、不当労働行為審査事務も担当することができるというふうにしておるわけであります。ただ、おっしゃるように、直接公益委員が担当しない問題点もあるかと思いまして、真実の発見においてどのような方法が最も有効かということは、新しい労働委員会の中で十分審議をされながら活用していく問題ではないかというふうに考えております。
  82. 児玉健次

    児玉委員 別の角度から今の点を御質問したいのですが、労使関係法研究会が「労働委員会における不当労働行為事件審査迅速化等に関する報告」というのを出されております。その中で「手続の適正の保障という観点から、労働委員会は審問を行つたうえで命令を発すべきものと考える。」こういうふうに明記されております。それから御承知のように、民事訴訟法においては、「判決ハ基ノ基本タル口頭弁論ニ関与シタル裁判官之ヲ為ス」そのようになっておりますが、その精神は今後も大いに尊重されるべきだと私は考えますが、この点については、大臣のお考えを伺いたいと思います。
  83. 中村正三郎

    中村国務大臣 お説のように、尊重さるべきものであると考えます。
  84. 児玉健次

    児玉委員 次に、中央労働委員会における委員任命のあり方についてお伺いいたします。  労働組合法の第十九条第七項「使用者委員は、使用者団体の推薦に基いて、労働者委員は、労働組合推薦に基いて、」云々、こうございますが、ここで言う労働組合とは、いわゆる単産のことですね。
  85. 渡邊信

    ○渡邊説明員 労働組合法労働組合労働委員会委員推薦資格を与えているわけでありますが、これは労働組合法に定める資格要件に適合する労働組合ということでございますから、単産に限らず単位労働組合、要するに労働組合法の資格を満たす組合であれば推薦資格を有しておるわけであります。
  86. 児玉健次

    児玉委員 そこで、昭和二十四年の七月二十九日に「地方労働委員会委員任命手続について」こういう次官通達が出されております。昭和二十四年七月二十九日の日付ですが、その後、ことで提起されている主題に基づく次官通達は出されているんでしょうか。出されたか出されなかったかだけを伺います。
  87. 渡邊信

    ○渡邊説明員 その後は出されておりません。
  88. 児玉健次

    児玉委員 この事務次官通達の中で「従来労働大臣が本件に関して」すなわち地方労働委員会委員任命ですが、「労働大臣が本件に関して承認要件としていた事項特に左記事項等を了承の上貴下の責任において任命されたい。」そういった通達を都道府県にされております。そしてその中で、労働者委員の選考については、「産業分野、場合によつては地域別等を充分考慮すること。」このように明記されております。私は、これは中労委でも同様の趣旨というか、先ほどの通達の前文にありますように、「従来労働大臣が本件に関して承認要件としていた」こう明記しているところからも、この趣旨は大いに尊重されなければならないと考えますが、いかがでしょうか。
  89. 渡邊信

    ○渡邊説明員 中労委委員任命に当たっても尊重すべき事項だというふうに考えております。
  90. 児玉健次

    児玉委員 次官通達では、それに続きまして、「産別、総同盟、中立等系統別の組合数及び組合員数に比例」させて選考する云々、こういうくだりもございます。ここで言う「産別、総同盟、中立等」というのは、昭和二十四年段階における指摘だ、そのように私は理解をしております。  そこで、お伺いしたいのですが、中労委における現在の係争事件、係争事案、これを私たちなりに調査し、整理してみますと、百九組合百九十四件、その中で同盟といいますか旧同盟といった方が正確でしょうか、これは四件、百九十四件中の二・一%です。そして連合に加わった労働組合中労委への申し立ては十六組合二十四件、残りはすべて連合に対して批判を持っているか、または連合に加わらないことを明らかにしている組合からの申し立てだ、そのように私たちは承知しております。ところが九名の労働者委員中、同盟からの推薦が四名、その四名を含めて九名全員が連合推薦になっています。連合から推薦されなければ労働者委員任命されないのか。この点は大臣の裁量ですから、大臣から答えていただきたいと思います。
  91. 白井晋太郎

    白井(晋)政府委員 連合の推薦でなければということはございません。
  92. 児玉健次

    児玉委員 それでは、この労働組合法がもし成立しますと、本改正案は十月一日から施行ということになりますので、その際、委員任命については、あくまで公平、公正を旨として選考されるべきだ、こう考えております。この点について大臣のお考えを伺います。     〔野呂委員長代理退席、委員長着席〕
  93. 中村正三郎

    中村国務大臣 御指摘の点につきましては、従来からそういう方針で進んでおるわけであります。今後もそれを踏襲してまいります。
  94. 児玉健次

    児玉委員 従来からという点については重要な疑義があります。今回のその発令行為についても、純中立から何人かの推薦がありました。ところが労働省としては、その中で連合の推薦のあった人九名のみを選んでいる。これは非常に重大な問題点を含んでいると私は思うのです。今度の法の改正について、先ほど私が紹介した、昭和二十四年七月二十九日の次官通達、その後新たなものは出していない。そして再三申しますが、従来労働大臣が本件に関して承認要件としてきたもの、この立場でなされるべきだ、こう考えております。その点、重ねて大臣のお考えを伺います。
  95. 白井晋太郎

    白井(晋)政府委員 お答え申し上げます。  今回の推薦も、連合の推薦のみというわけではないわけでございまして、各単産の推薦に基づいて受け付けているわけでございます。
  96. 児玉健次

    児玉委員 この点については、結果を見れば一見明白でして、その点については、労働省がこの機会に抜本的な再検討と申しますか、昭和二十四年に皆さんが出された次官通達、その後それを変更していないのですから、その立場で進めていただきたいという点を重ねて重ねて要望いたしたいと思います。大臣、繰り返しになるけれども、お考えを伺います。
  97. 中村正三郎

    中村国務大臣 先ほど申し上げましたように、適正にその方針に基づいて実施してまいる予定であります。
  98. 児玉健次

    児玉委員 次の質問をさせていただきます。  労働組合法の今後についてですが、関西経営者協会が昭和六十年六月に発表された「「労使関係法」制定に関する提言」、これを私たちは今真剣に検討しております。さらに昨年は、労働法を二段階改正する、こういう新聞報道もございました。大臣の諮問機関である労使関係法研究会は、労組法の今後についてどのような検討をなさっているのか、またはなさっていないのか、その点について伺います。
  99. 渡邊信

    ○渡邊説明員 今御指摘労使関係法研究会は、大変長い歴史を有する労働省の研究会でありますが、この研究会の設立の目的は、当初から、立法を目指すということではありませんで、労使関係運用の実情と問題点について研究するということで一貫してやってまいっているわけでございます。現在は、外国の労使関係法制について、法律の勉強をしているということでございまして、重ねて申し上げますが、何か特定の目的を持って、立法を目的として研究しているというものではございません。
  100. 児玉健次

    児玉委員 先ほど私新聞報道と言いましたが、昨年三月十六日付の日本経済新聞が、「労働法を二段階改正」「公労委廃止を先行」、こういうふうに大きな見出しを打ち出して述べているわけですが、今課長からは労使関係法研究会についてのお答えをいただきましたが、労働省としてのお考えはどうか、この点、お答えいただきます。
  101. 中村正三郎

    中村国務大臣 御承知のとおり、三十五年間ほとんど改正をせられずに今日に至っておるわけでございます。労使双方からいろいろな意見はちょうだいはしておりますけれども労働省としては、現在その見直しの機運が熟しておるとは判断をしておりません。
  102. 児玉健次

    児玉委員 それでは、最後の質問に入ります。  これまでの同僚議員の質疑の中でも取り上げられましたが、公益委員についてでございます。中労委で係争中の不当労働行為、その審査日数が非常に延びている。先ほど大臣からも気の遠くなるようなという言い方でお話がありました。昭和五十五年当時、不当労働行為審査日数、再審査の場合、命令決定が出るまで八百二十一日、それが昭和六十一年では千二百九十六日と長期化しております。今回の両労働委員会統合によって委員の数が削減されますが、このことによって審理日数の長期化に拍車がかからないだろうか、この点、いかがでしょうか。
  103. 渡邊信

    ○渡邊説明員 先ほど来申し上げておりますように、今回の統合によりまして委員の全体の総数、合計の総数は減るわけでございますけれども、従来の国労委については、規模も相当縮小してきましたし、そう多数の不当労働行為事件が係属しているわけではありません。そこで統合後は、民間事案についての審査をしておりました従来の九人の公益委員に、さらに四人の公益委員をふやしまして、この十三人で審査に当たれるということにしておりますので、私どもとしてはむしろ審査は促進されるのではないかというふうに期待しておるところであります。
  104. 児玉健次

    児玉委員 今労働省からお答えになったことは、来年の例えば労働一般の質問のときに、果たしてそのようになるのかどうかというのが事実で明らかにされていくことになりましょう。それに加えまして、労使関係法研究会のこの報告の中でも、事務局の事務局員が大変多忙な状況にある、そういった方々の苦労と、そして業務の猛烈なラッシュ、そういった中で、今回の改正では事務局員の数も削減されるということになっておりますね。委員も減り、そして事務局員も減る。そうなると、今の労働省のお答えは単なる決意表明にしか過ぎないのではないか、こう考えざるを得ませんが、いかがでしょうか。
  105. 渡邊信

    ○渡邊説明員 今回の統合によります事務局の合理化につきましては、例えば管理部門、総務部門のように、重複してやる必要がないというところを簡素化することにしておりまして、直接審査に当たるというところはむしろ増員を図っておるわけでございます。
  106. 児玉健次

    児玉委員 委員の数は減る、しかも全体として日数も延びている、そういう中で、審議は促進されると再三表明されているのですが、それは例えばある不当労働行為審査を想定した場合に、今労働省が答えられたことは具体的に裏づけがあるのでしょうか、いかがですか。
  107. 渡邊信

    ○渡邊説明員 先ほど申しましたように、担当公益委員の数につきましても、九人から十三人で当たれるという体制になるわけであります。これは先ほど申しましたように、不当労働行為事件審査長期化にはいろいろな要素が複合しておりますので、委員の数が四人ふえたから直ちに改善される、目に見える効果があるかどうかという点は大変疑問ではありますが、少なくとも体制といたしましては、九人の公益委員が十三人の公益委員になって審査ができるということになるわけであります。
  108. 児玉健次

    児玉委員 では、時間ですから。労働組合法の中では、不当労働行為の救済という点では非常に迅速を要する、この中ではあえて調査の着手に関する部分は、「遅滞なく」こういうふうに明記されております。労働者労働組合の権利が不当に侵害されたまま長く放置されるというのは、憲法で言う団体交渉権、団体行動権、団結権の侵害でもありますから、この点については労働大臣の特段の御努力を今後にわたって期待して、私の質問を終わります。ありがとうございました。
  109. 稲垣実男

    稲垣委員長 以上で本案に対する質疑は終局いたしました。     ─────────────
  110. 稲垣実男

    稲垣委員長 この際、本案に対し、高橋辰夫君外三名及び児玉健次君から、それぞれ修正案が提出されております。  提出者より順次趣旨説明を求めます。池端清一君。     ─────────────  労働組合法等の一部を改正する法律案に対する修正案     〔本号末尾に掲載〕     ─────────────
  111. 池端清一

    池端委員 ただいま議題となりました労働組合法等の一部を改正する法律案に対する修正案につきまして、自由民主党、日本社会党・護憲共同、公明党・国民会議及び民社党・民主連合を代表いたしまして、その趣旨を御説明申し上げます。  修正の要旨は、第一に、中央労働委員会公益委員委員候補者名簿の作成について、労使委員の「意見尊重して」を「同意を得て」に改めるものとすること。  第二に、日本電信電話株式会社に係る調停事件についての実情の公表等の特例措置を廃止するものとすること。  第三に、国営企業の職員が労働組合の役員として専ら従事する期間の上限は、国営企業の運営の実態等にかんがみ、当分の間、「五年」を「七年以下の範囲内で労働協約で定める期間」とするものとすること。  以上であります。  何とぞ委員各位の御賛同をお願いいたします。
  112. 稲垣実男

    稲垣委員長 児玉健次君。     ─────────────  労働組合法等の一部を改正する法律案に対する修正案     〔本号末尾に掲載〕     ─────────────
  113. 児玉健次

    児玉委員 私は、政府提出労働組合法等の一部を改正する法律案に対し、日本共産党・革新共同を代表して、修正案の提案理由説明を行います。  政府案は、臨調答申に基づいて国営企業労働委員会中央労働委員会統合する、このことに便乗して労働委員会制度の根幹にかかわる制度改悪を行おうとしております。  改悪の第一は、中労委公益委員任命を、現行労働委員、使用者側委員同意を得て労働大臣任命する方式から、労使委員同意制を廃止し、新たに国会同意を得て内閣総理大臣任命することとしております。  公益委員中労委における役割と権限は、裁判制度における裁判官と同じであって、その独立性と公平性がとりわけ重要であります。今回の法改正は、この独立性、公平性の根幹である労使委員同意制を奪うものであって、認めることができません。  第二は、統合に伴い委員数を四十四名から三十九名に削減することです。これに伴って公益委員も十六名から十三名に減らされます。不当労働行為の審理が長期化している中で委員の削減を行うことは、審理の長期化に拍車をかけることにつながります。  第三は、公益委員常勤制の導入です。公益委員二名を常勤化すれば、学者などは兼職することが困難で、官僚出身者が天下り的に任命され、また他の非常勤委員の役割が形骸化されるおそれもあります。  第四は、地方調整委員不当労働行為事件の審問権を与えたことです。地方調整委員が審問を行い、審問に直接参加しない公益委員が決定を行うことになれば、正確さ、公平さが損なわれ、民事訴訟法における直接主義の原則が否定されます。  以上が修正案を提出する理由でございます。  次に、その趣旨を一言説明いたします。  修正案の第一は、公益委員任命にかかわる労使委員同意制の回復です。労働大臣労使委員同意を得て作成した候補著名簿の中から、内閣総理大臣任命することといたします。  第二は、委員の定数について、現行の両労働委員会の会長のダブルカウントを除いて、公益委員を十五名とし、現行委員数の削減を認めないことといたします。  第三は、公益委員常勤制導入は削除することといたします。  第四は、地方調整委員の任務と権限は、あっせん、調停と調査に限定し、審問権は削除することといたします。  なお、これに要する経費は、昭和六十三年度においておおむね千六百万円であります。  以上が修正案の要旨でございます。  委員各位の御賛同をお願いして、提案理由説明を終わります。
  114. 稲垣実男

    稲垣委員長 以上で趣旨説明は終わりました。  この際、児玉健次提出の修正案について、国会法第五十七条の三の規定により、内閣の意見を聴取いたします。中村労働大臣
  115. 中村正三郎

    中村国務大臣 ただいまの修正案につきましては、政府といたしましては、反対でございます。     ─────────────
  116. 稲垣実男

    稲垣委員長 日本共産党・革新共同から討論の申し出がありますが、理事会において協議の結果、御遠慮願うことといたしましたので、さよう御了承願い、直ちに採決に入ります。  労働組合法等の一部を改正する法律案及びこれに対する両修正案について採決いたします。  まず、児玉健次提出の修正案について採決いたします。  本修正案に賛成の諸君の起立を求めます。     〔賛成者起立〕
  117. 稲垣実男

    稲垣委員長 起立少数。よって、児玉健次提出の修正案は否決いたしました。  次に、高橋辰夫君外三名提出の修正案について採決いたします。  本修正案に賛成の諸君の起立を求めます。     〔賛成者起立〕
  118. 稲垣実男

    稲垣委員長 起立総員。よって、高橋辰夫君外三名提出の修正案は可決いたしました。  次に、ただいま可決いたしました修正部分を除いて、原案について採決いたします。  これに賛成の諸君の起立を求めます。     〔賛成者起立〕
  119. 稲垣実男

    稲垣委員長 起立多数。よって、本案は修正議決すべきものと決しました。  お諮りいたします。  本案に関する委員会報告書の作成につきましては、委員長に御一任願いたいと存じますが、御異議ありませんか。     〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
  120. 稲垣実男

    稲垣委員長 御異議なしと認めます。よって、そのように決しました。     ─────────────    〔報告書は附録に掲載〕     ─────────────
  121. 稲垣実男

    稲垣委員長 次回は、公報をもってお知らせすることとし、本日は、これにて散会いたします。     午前十一時四十八分散会