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1988-05-10 第112回国会 衆議院 社会労働委員会 第12号 公式Web版

  1. 会議録情報

    昭和六十三年五月十日(火曜日)     午前十時三分開議  出席委員    委員長 稲垣 実男君    理事 高橋 辰夫君 理事 戸井田三郎君    理事 丹羽 雄哉君 理事 畑 英次郎君    理事 池端 清一君 理事 沼川 洋一君    理事 田中 慶秋君       相沢 英之君    粟屋 敏信君       伊吹 文明君    今井  勇君       片岡 武司君    木村 義雄君       北村 直人君    佐藤 静雄君       自見庄三郎君    高橋 一郎君       竹内 黎一君    中山 成彬君       堀内 光雄君    三原 朝彦君       村上誠一郎君    持永 和見君       伊藤 忠治君    大原  亨君       川俣健二郎君    城地 豊司君       田邊  誠君    永井 孝信君       村山 富市君    新井 彬之君      大橋 敏雄君    平石磨作太郎君       吉井 光照君    塚田 延充君       児玉 健次君    田中美智子君  出席国務大臣         労 働 大 臣 中村 太郎君  出席政府委員         労働省労働基準         局長      野見山眞之君         労働省労働基準         局安全衛生部長 松本 邦宏君  委員外出席者         経済企画庁物価         局物価政策課長 熊澤 二郎君         国土庁土地局土         地政策課長   原  隆之君         労働大臣官房審         議官      若林 之矩君         労働省労働基準         局労災管理課長 岡山  茂君         労働省労働基準         局安全衛生部安         全課長     北山 宏幸君         労働省労働基準         局安全衛生部労         働衛生課長   草刈  隆君         労働省労働基準         局安全衛生部化         学物質調査課長 冨田 達夫君         労働省労働基準         局賃金福祉部長 石岡慎太郎君         労働省労働基準         局賃金福祉部福         祉課長     坂本 哲也君         建設省住宅局住         宅政策課長   石井 隆弘君         自治省行政局公         務員部公務員第         二課長     佐藤  信君         消防庁消防課長 川崎 正信君         社会労働委員会         調査室長    石川 正暉君     ───────────── 委員の異動 五月十日  辞任         補欠選任   小沢 辰男君     北村 直人君   近藤 鉄雄君     村上誠一郎君   田邊  誠君     村山 富市君   永井 孝信君     城地 豊司君 同日  辞任         補欠選任   河野  正君     田邊  誠君 同日  辞任         補欠選任   北村 直人君     小沢 辰男君   村上誠一郎君     近藤 鉄雄君   城地 豊司君     永井 孝信君   村山 富市君     河野  正君     ───────────── 四月二十八日  高齢者就労対策充実に関する請願川俣健二郎紹介)(第一九九八号)  同外八件(中西績介紹介)(第一九九九号)  同(井上普方紹介)(第二〇六六号)  同(沢藤礼次郎紹介)(第二〇六七号)  同(大原亨紹介)(第二一五七号)  同(角屋堅次郎紹介)(第二一五八号)  同(田中美智子紹介)(第二一五九号)  同外一件(中西績介紹介)(第二一六〇号)  国民健康保険法改正反対等に関する請願池端清一紹介)(第二〇六三号)  同(左近正男紹介)(第二〇六四号)  同(浦井洋紹介)(第二一九三号)  同外一件(児玉健次紹介)(第二一九四号)  同(瀬長亀次郎紹介)(第二一九五号)  同(中路雅弘紹介)(第二一九六号)  療術制度化促進に関する請願山崎拓紹介)(第二〇六五号)  同(古賀誠紹介)(第二一九七号)  医療費抑制反対及び医療福祉拡充に関する請願安藤巖紹介)(第二〇六八号)  同(田中美智子紹介)(第二〇六九号)  同(安藤巖紹介)(第二一六一号)  同(佐藤観樹紹介)(第二一六二号)  腎疾患総合対策早期確立に関する請願江藤隆美紹介)(第二〇七〇号)  国民健康保険制度改悪反対等に関する請願工藤晃紹介)(第二〇七一号)  同(石井郁子紹介)(第二一六三号)  同(大原亨紹介)(第二一六四号)  同(経塚幸夫紹介)(第二一六五号)  同(児玉健次紹介)(第二一六六号)  同(田中美智子紹介)(第二一六七号)  同(野間友一紹介)(第二一六八号)  同(藤田スミ紹介)(第二一六九号)  同(藤原ひろ子紹介)(第二一七〇号)  同(正森成二君紹介)(第二一七一号)  同外一件(村上弘紹介)(第二一七二号)  同(山原健二郎紹介)(第二一七三号)  国民健康保険法改悪反対に関する請願池端清一紹介)(第二〇七二号)  同(岩佐恵美紹介)(第二〇七三号)  同(金子満広紹介)(第二〇七四号)  同(中路雅弘紹介)(第二〇七五号)  同(岩佐恵美紹介)(第二一七四号)  同(大原亨紹介)(第二一七五号)  同(岡崎万寿秀紹介)(第二一七六号)  同外一件(金子満広紹介)(第二一七七号)  同(工藤晃紹介)(第二一七八号)  同外一件(佐藤祐弘紹介)(第二一七九号)  同(柴田睦夫紹介)(第二一八〇号)  同(中路雅弘紹介)(第二一八一号)  同外一件(中島武敏紹介)(第二一八二号)  同(不破哲三紹介)(第二一八三号)  同(長亀次郎紹介)(第二一八四号)  同(松本善明紹介)(第二一八五号)  国民健康保険法の一部を改正する法律案反対に関する請願安藤巖紹介)(第二〇七六号)  同(佐藤観樹紹介)(第二一九一号)  同(正森成二君紹介)(第二一九二号)  国民健康保険法改正反対医療制度改善に関する請願安藤巖紹介)(第二一五四号)  同(田中美智子紹介)(第二一五五号)  手話通訳制度化に関する請願園田博之君紹 介)(第二一五六号)  労働組合法等の一部を改正する法律案廃案に関する請願岩佐恵美紹介)(第二一八六号)  同(柴田睦夫紹介)(第二一八七号)  同(中路雅弘紹介)(第二一八八号)  同(山原健二郎紹介)(第二一八九号)  国民健康保険法改悪反対等に関する請願山下洲夫君紹介)(第二一九〇号) 五月九日  国民健康保険法の一部を改正する法律案廃案等に関する請願東中光雄紹介)(第二二四〇号)  高齢者就労対策充実に関する請願上田哲紹介)(第二二四一号)  同外五件(河野正紹介)(第二三六〇号)  同外一件(戸田菊雄紹介)(第二三六一号)  医療費抑制反対及び医療福祉拡充に関する請願安藤巖紹介)(第二二四二号)  同(石田幸四郎紹介)(第二二四三号)  同(柴田弘紹介)(第二二四四号)  同外一件(早川勝紹介)(第二二七六号)  腎疾患総合対策早期確立に関する請願外一件(伊藤忠治紹介)(第二二四五号)  国民健康保険制度改悪反対等に関する請願伊藤忠治紹介)(第二二四六号)  同外二件(河野正紹介)(第二二四七号)  同(経塚幸夫紹介)(第二二四八号)  国立腎センター設立に関する請願近江巳記夫紹介)(第二二四九号)  同(嶋崎譲紹介)(第二三六二号)  国民健康保険法改悪反対に関する請願伊藤忠治紹介)(第二二五〇号)  同外三件(池端清一紹介)(第二二五一号)  同外四件(河野正紹介)(第二二五二号)  同外一件(左近正男紹介)(第二二五三号)  難病患者などの医療及び生活保障等に関する請願伊藤忠治紹介)(第二二五四号)  労働組合法等の一部を改正する法律案廃案に関する請願児玉健次紹介)(第二二五五号)  国民健康保険法の一部を改正する法律案反対に関する請願外一件(山下洲夫君紹介)(第二二五六号)  同外一件(吉原米治紹介)(第二二五七号)  同(早川勝紹介)(第二二七七号)  国民健康保険法改正反対等に関する請願児玉健次紹介)(第二二五八号)  同(柴田睦夫紹介)(第二二五九号)  療術制度化促進に関する請願今井勇紹介)(第二二六〇号)  同(小泉純一郎紹介)(第二二六一号)  同(坂田道太紹介)(第二二六二号)  同(小泉純一郎紹介)(第二三〇一号)  同(葉梨信行紹介)(第二三〇二号)  同外二件(甘利明紹介)(第二三六三号)  同外七件(倉成正紹介)(第二三六四号)  同(小泉純一郎紹介)(第二三六五号)  同外四件(野中広務紹介)(第二三六六号)  国民健康保険法改正反対医療制度改善に関する請願安藤巖紹介)(第二二六三号)  同外一件(石田幸四郎紹介)(第二二六四号)  同(佐藤観樹紹介)(第二二六五号)  同外一件(柴田弘紹介)(第二二六六号)  同外一件(早川勝紹介)(第二二七八号)  福祉国庫負担金削減反対等に関する請願河野正紹介)(第二三五八号)  同外一件(永井孝信紹介)(第二三五九号) 同月十日  アスベストの粉じん防止対策に関する請願佐藤祐弘紹介)(第二四二五号)  福祉国庫負担金削減反対等に関する請願矢島恒夫紹介)(第二四二六号)  同(大原亨紹介)(第二四七八号)  高齢者就労対策充実に関する請願佐藤祐弘紹介)(第二四二七号)  同(高沢寅男紹介)(第二四七九号)  腎疾患総合対策早期確立に関する請願田中美智子紹介)(第二四二八号)  同外一件(大原亨紹介)(第二四八〇号)  同(鳥居一雄紹介)(第二四八一号)  難病患者などの医療及び生活保障等に関する請願田中美智子紹介)(第二四二九号)  同外一件(大原亨紹介)(第二四八二号)  同(日笠勝之紹介)(第二五五七号)  肢体障害者生活保障等に関する請願田中美智子紹介)(第二四三〇号)  同(山原健二郎紹介)(第二四三一号)  療術制度化促進に関する請願丹羽雄哉紹介)(第二四三二号)  同(粟山明君紹介)(第二四三三号)  小規模障害者作業所助成等に関する請願大原亨紹介)(第二四七七号) は本委員会に付託された。     ───────────── 本日の会議に付した案件  労働安全衛生法の一部を改正する法律案内閣提出第六七号)(参議院送付)  勤労者財産形成促進法の一部を改正する法律案内閣提出第六八号)(参議院送付)      ────◇─────
  2. 稲垣実男

    稲垣委員長 これより会議を開きます。  内閣提出参議院送付労働安全衛生法の一部を改正する法律案及び勤労者財産形成促進法の一部を改正する法律案の両案を議題といたします。  これより両案について質疑に入ります。  質疑の申し出がありますので、順次これを許します。永井孝信君。
  3. 永井孝信

    永井委員 日本が経済大国ということになりまして、その経済大国を支える産業構造技術革新は目覚ましいものがあるのですが、それだけに新たな技術革新進展あるいはサービス経済化進展などに伴って新たな労災あるいは職業病が発生してきているわけです。これらについて労働省として現在の実態に対応したより適切な対策を講ずべきだと私は思うのですが、まず初めに、近代社会における労働安全衛生という問題について、大臣の基本的な取り組みの姿勢をお聞きをしておきたいと思うわけであります。
  4. 中村太郎

    中村国務大臣 御指摘の点は極めて大事であると考えております。特にいわゆるテクノストレス問題等につきましては、未解決な部分が多いことから、労働省におきましては、昭和六十一年度から三カ年計画調査研究を進めておるところでございます。また企業におけるストレス対策を進める立場から、昭和六十一年度以降、産業医衛生管理者等対象としてメンタルヘルスケアにかかわる研修を実施しているところでもございます。今回の健康保持増進対策におきましては、産業医を中心とした企業内健康確保体制を整備し、この中でメンタルヘルスにつきましても、心身両面にわたる総合的な健康対策という観点から積極的に取り組んでまいる所存でございます。  労働省においては、これらの対策の推進を図るとともに、これが効果を上げるためにも労働時間の短縮は重要な課題であると考えておりまして、改正労働基準法の円滑な施行、労使自主的努力に対する指導援助等ソフトウエア労働者を含め、労働時間短縮を積極的に推進してまいりたいと考えておる次第であります。
  5. 永井孝信

    永井委員 そこで、大臣の基本的なお考えを聞いたわけでありますが、具体的な問題についてただしてみたいと思うわけであります。  まずVDT作業です。労働省調査によりましても、それぞれの職場OA機器が導入されている企業というのは、昭和六十一年の調査によりましても九三・七%という数字になっています。これは六十一年の数字でありますから、現在ではもっとこの数値は上がっていると私は思うのです。このように職場OA化がどんどん進んで、ワープロやコンピューター操作というものは、今やOLにとりましても必須科目になっています。これに伴って、VDT作業による視覚障害などの新たな労災職業病が発生しておることは御承知のとおりでありますが、その根本的な対策が実は求められていると思うのであります。  労働省はそういう現状から昭和六十年の十二月に「VDT作業のための労働衛生上の指針」を発表しておるわけですね。これには一連続作業時間の制限というものが具体的に示されているわけでありますが、一日の作業時間の総量制限というものは全く示されていないのですね。そしてその指針の中に触れられていることは、働く時間を短くするように指導することが望ましいという趣旨のことは触れられているのでありますが、総量規制は全く具体的に触れられておりません。したがって、一連続作業時間の制限ということがあったとしても、総量規制がないために、そのことがざる抜けになってしまう、労働条件改善に必ずしもつながっていかないという面を持っていることを私は否定できないと思うのです。  この問題については、既に国会でも取り上げられてきているわけでありますが、例えば六十一年の五月八日でしたか、参議院で我が党の同僚議員がこの問題を取り上げました。そのときに当時の労働基準局長は、「外国で、例えば国際的な労働組合で一日四時間というような線でもって労使協定を結んでいる国もございます。」というふうにヨーロッパの実情を認識して紹介をされているわけですね。作業時間が長くなれば、当然疲労回復に要する時間も長くなってくることは必然でありまして、いわば常識ですね。そうすると、労働省がせっかく「VDT作業のための労働衛生上の指針」を発表して、指導に乗り出してから二年半が経過しているのですが、今日に至るもなおこの総量規制という問題については具体的に示されていない。私はこの現状から見て現在の指針というものを見直すべきではないかと思うのですが、基本的なお考えをお伺いしたいと思います。
  6. 野見山眞之

    野見山政府委員 今お話しのように、VDT作業につきましては、昭和六十年の十二月に「VDT作業のための労働衛生上の指針」を公表しまして、現在これに基づきまして、その周知徹底を図っているところでございますが、さらにVDT作業実態の把握あるいは情報の収集にも努めてきているところでございます。今御指摘のように、その後時間も経過いたしておりますけれども、本年度におきましては、VDT作業に関する実態調査及び健康管理に係る調査研究を行うことといたしておりまして、これらの結果等を踏まえまして、作業管理の問題あるいは健康管理等の問題につきましても、この指針についてさらに検討をしてまいりたいと考えております。
  7. 永井孝信

    永井委員 今局長の方から積極的に調査をし、研究をして、それを政策に反映させたい、こういうお話がございました。これは労働省が六十年の十二月にこの指針を出しているわけですね。この指針を出して現在まで二年半経過をしている。この二年半という経過の間に本来ならもうその調査研究というものは集大成されていなくてはいけないと私は思うのですね。  例えば、ちょっと古い資料で恐縮ですが、労働省がこの指針を出された後、労働団体の方でこれにこたえて具体的な実態を提起するために調査をした数字があります。これは総評が行った数字でありますが、この総評数字を見ましても、例えばVDTを使っている人は、総評加盟の単産などを通じて行った対象だけでも、一万二千百二十一人というVDT作業に従事している人が回答を寄せました。調査対象は一万三千百四十三人のOL等でしたから、そのほとんどが実はVDT作業に従事しているということが調査対象数から明らかになりました。その一万二千百二十一人のVDT作業に従事している中で、例えば妊娠中毒症、これが十八人、あるいは切迫流産など六十七人のVDT作業に従事している人が出産に伴うことについてかなりの影響を受けているということが明らかになりました。あるいは異常な出産だった者が五十一人、二〇%に上っているというふうにいろいろなデータを当時既に発表しているわけですね。  この数字が今どうかということを私は問いかけようとしていないのです。局長が今言われたように、鋭意努力をして調査研究をして、それをもとにして具体的な政策に反映させたい、こう言われているわけでありますが、そうだとすると、六十年の十二月にそういう指針が出されて二年半経過した、二年半経過したその間に、そこまでの調査がなぜできなかったのか、私はそこのところを問題視すべきではないか、こう思うのですが、どうでございますか。
  8. 野見山眞之

    野見山政府委員 六十年の十二月に出しました指針につきましても、それにさかのぼります昭和五十九年におきましても、当面の措置としてガイドラインを出したというような状況でございまして、これらの技術の進歩あるいはOA化進展状況等考えまして、VDT作業中身等につきましても、さらに検討を要する面も多々あろうかというふうに考えているわけでございまして、既に労働省におきましても、OA化に伴う労働安全衛生全体につきましての研究委員会等もスタートいたしているところでございまして、今お話しのように、実態調査等も含めまして、所要の見直しを含めた検討を進めているという状況でございますので、さらに時間等につきましても、お見守りいただきたい、かように考えているところでございます。
  9. 永井孝信

    永井委員 今局長の言われたことを私は何も否定するつもりはないのですね。ただ、この指針を見ましても、「一日のVDT作業時間が短くなるように配慮することが望ましい。」と書かれている。これでとまってしまっているのです。ところが近代化の速度というのはもう異常なほど速いのですよ。労働省は、具体的な対応を示されるまでに、現実は長時間労働によって大変な健康障害がどんどん広がっているというこの現実の重みというものをしっかり踏まえて対応してもらいたい。したがって、この実態調査をやる、研究をするということについても、一定のめどをつけていつごろまでにそういうことをやって対応していきたいというぐらいのことは持っていただきたいと思うのですが、どうですか。
  10. 野見山眞之

    野見山政府委員 今お話しのような点も十分踏まえまして、早急に検討を進められるように対応してまいりたいと考えております。
  11. 永井孝信

    永井委員 繰り返して恐縮ですが、早急にという言葉はすぐによく使われるのですが、これがいつまでのことなのか、いつごろをめどにするかなかなかわかりづらいですね。これはこの問題だけじゃなくて、常に質問の中でそういうことが出てくるのですが、やはり六十年の十二月にそういう指針を出したのだから、もう二年半たったのだから、少なくともあと一年とか二年とかの間にきちっと調査研究をやって、具体的な政策に結びつけたいということぐらいは私はめどを持ってもらいたいと思うのですよ。もう一回、そういう決意を込めてやってもらわぬと、目標もないままにだらだらいかれたのでは、これはいつまでたっても解決しないですよ。どうですか。
  12. 野見山眞之

    野見山政府委員 先ほど大臣からお答え申し上げましたように、ソフト労働者等に関するテクノストレスの問題につきましては、六十一年度から三カ年計画ということで六十一、二、三年度調査研究を進めているところでございますし、六十三年度におきましても、先ほどのようにVDT作業に関する実態調査を行うわけでございますので、本年度、ひとつ大きな節目として、作業につきましての進捗を図ってまいりたい、かように考えております。
  13. 永井孝信

    永井委員 今テクノストレスの問題が出ましたから、ついでのことで、その問題に入っていきたいと思うのです。  財団法人労働科学研究所調査があります。それによりますと、ソフトウエア生産に従事するシステムエンジニアやプログラマーのテクノストレスの率というのは、一般の一・五倍という数値が出ております。これは昨年の新聞などにも大きく報道されましたね。産業に従事する労働者企業戦死——この戦死、戦う士じゃなくて死んでしまう戦死なんですね。名誉の戦死なんです。そういうことを防がなければいかぬというようなことまでどんどんとキャンペーンが張られたのが去年でありました。  だから、そういう実情からいきましても、今のこのVDT作業との関連でのテクノストレスの問題というものは、今局長がいみじくも言われましたように、極めて重視をして対応しなくてはいけないと思うのです。とりわけその中に、電算機関連労働組合などでつくっている協議会がありまして、その協議会はいろいろな自分のところの企業関係も含めて調査をしまして、その中身が発表されたことがあるのです。それを見ますと、このテクノストレスになっていく一つの根本的な原因として、電算機業界の激しい競争がある、こう言っているのです。したがって、こういう問題について、既に関連労働組合協議会では公正取引委員会に対しましても業界に対する指導を求めたという経緯があります。長いものでは一人で二百五十時間を超える業務をしている人もいるのです。これは人ごとじゃないと思うのです。私の身近な人にもそういう人がいます。しかし、その人たちはもちろんそういう業務誇りを持ってやっているのでありますけれども、誇りを持って業務に従事することと、実際に長時間労働で体を壊すこととは、これは別の問題ですね。だから、たとえ本人が誇りを持って従事しておっても、やはり労働者の健康を守るという視点に立てば、こういう長時間労働などは避けていかなくてはいけない。それは何かというと、業界の過当な競争について、関係省庁とも協議をして、過当な競争になっていかないように、あるいは電算機を使う仕事の特徴として、途中でその仕様変更になる、仕様変更になっても納期というものは変わっていかないというのが現実なんです。それが全部長時間労働、時間外労働にかぶさってくる。これがテクノストレスの発生の大きな原因にもなっていく。こういうことについて、やはり労働条件を守る立場から、労働省はもっと積極的に対応してもらいたいし、また産業精神医であるとかあるいは心理カウンセラーであるとかいう専門家の養成も労働省は積極的に対応すべきではないか、こう考えるのでありますが、いかがでしょう。
  14. 野見山眞之

    野見山政府委員 先ほど大臣からお答え申し上げましたように、これらの労働者テクノストレス問題につきまして、昭和六十一年以降産業医あるいは衛生管理者等対象としたメンタルヘルスケアに係る研修を現在実施しているわけでございまして、今後ともこれらのソフト労働者に対する健康管理対策の推進並びに先ほどお話がございました長時間労働実態につきましても、私ども十分把握をしているところでございまして、特に情報処理産業につきましては、時間短縮対策の重点業種に指定いたしまして、六十二年度以来特別に研究調査を進めておりまして、近く時間短縮に係る方策についても結論を出すというような状況にございまして、今お話しのようなテクノストレス対策及び時間短縮両面にわたって、これらの情報処理産業労働者に対する安全衛生対策を進めてまいりたいと考えております。
  15. 永井孝信

    永井委員 それは積極的に進めてもらうことにして、例えば去年労働基準法を改正しましたね。これは四十年ぶりの改正だったのですが、これはもちろん総労働時間の短縮も一日の労働時間の短縮も含めて大きな目的に掲げられて対応してきました。労働基準法が改正されて、この四月一日から施行されたのです。片方でこういう実態があるのですから、局長、これはもうかなり腹をくくって対応してもらいたいということを、私は時間の関係がありますから、細かいやりとりはできませんけれども、重ねて要望しておきたいと思います。  そこで、こういうVDT作業との関連で、労災認定についてお尋ねをしておきたいと思うのですが、今言ったようなテクノストレスではありませんけれども、今ストレス社会と言われている中で、非常に若い働き盛りのサラリーマンなどが脳出血で倒れたり心筋梗塞や狭心症などで急死するというケースが極めて多いわけですね。これをいわゆる社会的には過労死と呼んでいますね。労働省は昨年十月にこれに関する認定基準を改めまして、発病前の一週間以内に過重な業務に連続して従事しておれば労災として認めるというふうにされましたね。これはいいことですから、私は高く評価しております。  さて、そういう新たな認定基準をつくって改めて、それ以降そのことによって、申請件数に対してどの程度実際の認定がされてきたか、数値を明らかにしてください。
  16. 若林之矩

    ○若林説明員 脳血管疾患及び虚血性心疾患の認定基準につきましては、先生御指摘のように、昨年十月二十六日に新しい通達を出したわけでございますけれども、昨年の十月二十六日から六十三年三月三十一日までの請求件数は二百六十五件でございまして、この間に業務上として認定された件数は二十七件ということになっております。
  17. 永井孝信

    永井委員 あとの分は、そうすると却下ということですか。
  18. 若林之矩

    ○若林説明員 今回の認定基準が出されましたので、現場の方も慎重な調査を進めておりまして、調査中というものが多いように考えております。
  19. 永井孝信

    永井委員 調査中だということでありますから、できるだけこの通達に沿って、改正に沿って労働者が救われるような方向をとってもらいたいと思うのであります。  とりわけ視力低下ということが大変な問題になりました。VDT作業に従事したことによって急激に視力が低下してきた、こう訴えておる労働者が非常に多いわけですね。もしもその視力低下ということが他に理由らしき因果関係が認められなかったとしたら、そういう人たちは認定すべきだと思うのですが、どうですか。具体的な例としてお聞きをいたします。
  20. 若林之矩

    ○若林説明員 VDT作業に従事します労働者で眼疾患ということで労災請求しているのが七件ございますけれども、このうちで三件は調査中でございまして、四件は業務外ということになっております。  先生御指摘の点は、こういった業務外の問題についての御指摘かと存じますけれども、VDT作業に従事いたします労働者につきましては、一般に目の機能の障害を生ずるということは因果関係が明らかになっておりません。こういう場合どうするかと申しますと、私どもといたしましては、一件一件ケースごとに判断をしていくわけでございまして、個々の事案ごとに十分調査をいたしまして、医学専門家の意見、特にこれも複数の医学専門家の意見を聞きまして、こういったもの全体を見て、この労働者の視力障害とVDT作業との医学的関連があるかどうか、こういうものがあるというものにつきましては、業務上疾病として取り扱うということでございまして、ケースによって理論的には業務上疾病として認められるということがあるわけでございます。     〔委員長退席、高橋(辰)委員長代理着席〕
  21. 永井孝信

    永井委員 今お聞きしますと、七件の申請があって三件が調査中ですか、四件が業務外として認定された。七件申請された中で現実には一件も救済されていないのですね。ところがいろいろ新聞でもたくさんの報道があります。VDT作業によって視力障害がひどいとか、そういう実態が随分と新聞でも報道されてまいりました。VDT作業というのは、今OA化がどんどん進んでほとんどの職場でそういうものが使われて、それに従事する労働者がふえてきた。これは、そのVDT作業に従事するまでは視力に何の障害もなかった人が、長時間労働に加えて特殊な作業ですから、目に大変な負担がかかることはだれでも常識でわかるわけですよ。その従事した労働者が視力障害を起こしたと訴えて、それが明確に業務との因果関係が明らかでないというあるいは医学的見地からそのことが証明されないという理由で却下されていくとすれば、VDT作業に従事する人の視力障害については救う道がなくなってしまうのですね。七件しか申請が最近なかった。その七件のうち一件も実は認定されていないということでは、私は大変な問題になっていくと思うのです。ですから、どんどん近代化が進んでいく中で、そういう職業病が新たな問題として発生してきているわけですから、きちっとした基準なりきちっとした因果関係を突きとめるような手だてができるまでの間、現実にそういう障害を訴える人がどんどん出てきたときは、むしろそういう疑わしき人は救済するという立場に立って認定作業を積み重ねていって、その中で最終的に具体的な基準をつくるなり明確な判断をできるような指針をつくるなりというふうに持っていくべきではないかと思うのです。労働大臣には、時間の関係がありますから、この問題ばかり余りやれませんけれども、政治家としてこういう問題については、この近代社会の中で放置できないものだと思うのですが、これについての考え方を聞かせていただけませんか。
  22. 若林之矩

    ○若林説明員 技術的な点だけ御説明させていただきますが、先ほども申しましたように、通常の目の視力を持っている方につきましては、VDT作業をかなりやりましても、それによって目の疾患が出てくることはないというふうに言われておりますけれども、何らかの目の疾患を持っておられる方が相当強度なVDT作業をしますと、そういった場合には眼精疲労等を生じて、こういったものは労災業務上になってくるという可能性があるわけでございまして、これはケースケースでやはり判断をしていくわけでございますので、ただいままではそういった救済事例はございませんけれども、先ほど申しましたように、理論的にはそういったケースが出てくるということでございます。やはり労災業務と疾病の間に相当な因果関係が必要でございますので、先生の御指摘の点もよくわかるのでございますけれども、労災の制度という建前からいきますと、そういったはっきりしていないものを認定するということはなかなか難しい問題だというふうに考えております。
  23. 中村太郎

    中村国務大臣 先生の言われる趣旨は十分理解はできます。しかし、労災保険におきましては、原則として、業務上の疾病ということは、業務そのものに起因しなければいけないという原則があるわけでございまして、その点につきましては、従来からそうでございますけれども、専門家の判断、専門家指針、見解等を参考にしてまいっておるわけでございますが、現在の医学の面では、それが解明されないというところに実は問題があるわけでございます。このことにつきましては、医療技術進展するわけでございますので、なお一層の綿密な審査、検討をしてまいりたいと考えておるわけでございます。
  24. 永井孝信

    永井委員 重ねてこの問題についてお聞きいたします。  VDT作業に従事する以前には何の障害もなかった人が、VDT作業に従事をしたために急激に視力が低下したとかいう場合は、業務上の因果関係ということを捨て切ることはできないと私は思うのです。かつて、これは古い話でありますが、昭和六十年に起きたことでありますけれども、通常一・五以上だった視力を持つ人がVDT作業に従事してからわずか三カ月後に〇・一から〇・三まで視力が下がってしまったというケースがありました。これは昨年の十月の発病前一週間以内という通達が出る前の話でありますけれども、しかし、そのときに医師からは中心性網膜炎でストレス的要因によるという診断が出まして、認定申請をしたけれども、これは却下されてしまったというケースがあるわけですね。こういうケースはこれからも出てくると私は思うのです。だから、なるほど業務との因果関係が基本でありますけれども、VDT作業のように、そういう近代的な作業が非常に過酷な条件のもとで長時間労働も含めて行われている中で、今まで障害のなかった人が急激にそういう障害が起きてきた場合には、業務との因果関係という立場に立って、そういう人は救済するようにしむけていくことが労働者の安全上の権利を守ることになるのではないかと私は思うので、重ねてお尋ねをしておきたいと思います。
  25. 若林之矩

    ○若林説明員 ただいま先生御指摘のケースも私ども承知をいたしておるわけでございます。そのほかに先ほど申しましたような眼精疲労の問題がございまして、これも私ども、医師数名の専門家会議を開きまして、ここで個別に検討を重ねて業務上外の判定をいたしておるわけでございます。もとより今後いろいろな医学的な知見が積み重なっていくと思いますけれども、そういうものも収集しながら、今後ともこういったVDT作業にかかわる眼精疾患につきましては、十分専門家の意見も聞きながら判断してまいりたいと思っております。
  26. 永井孝信

    永井委員 できるだけその人たちを救済するという立場に立った労働行政が望ましいということで、ひとつ大臣にも十分に要望しておきたいと思います。時間の関係で、これ以上議論することは避けます。  さて、同じ労災の認定問題で、却下をされた場合に、却下された人が不服申請をする道が開かれていますね。こういう問題について過去何回か国会でも議論になってきました。その議論の中で政府が、当時の小粥局長が、今の事務次官が局長のときに国会で答弁した中にこういうことがあります。私どもが業務上外と判断する場合は、不服申し立てのためにも、その理由が明らかになっていないと相手方としていろいろ困る面も出るので、そこは明確に業務上外とした理由を書くように指導いたしますという答弁をしているのです。これはこのときだけの答弁ではなくて、何回かそういう国会議論があるのです。視力障害の問題も、もちろんそういうことで不服申請があったら、やはりその却下の理由を明確にしなくてはいけないと思うのです。このことがきちっと守られていかないと、不服申し立ての道が開かれておってもそのことが生かし切れない。私は働く側の立場に立って物を申しておるのですがね。  ところで、こういう具体的な例があります。これは旭化成の守山支社のロイカ工場でのジメチルアセトアミドの溶剤にかかわる障害でありますが、この人は医師の所見を添えて、診断書を添えて申請したけれども、業務外として却下されました。ところが、その却下した理論的根拠が明らかでないから不服申し立てができないとその当事者は言っているのです。私はその当事者に直接会ったわけではありませんけれども、いろいろなところからその話を聞きました。もしも理論的根拠が明らかにされていないために不服申し立てがなかなかできにくいということになると、その人の救済の道は閉ざされてしまうわけですが、これはどうなっているのですか。
  27. 野見山眞之

    野見山政府委員 労災保険の給付請求事案に関しまして不支給処分を行います場合には、事務処理上可能な範囲内で不支給の理由を説明するように指導いたしているところでございますが、その点必ずしも十分でないという面があれば、さらにこの趣旨につきまして徹底をしてまいりたいと考えておりますし、また請求人の方から処分についての照会がありました場合には、補足説明をするという方法で御本人に対してもわかるように指導してまいりたいと考えているところでございます。  なお、今お尋ねの事案につきましても、現在再審査請求のところでございまして、この中でそれぞれ不支給の理由等についても説明その他行われているというふうに考えているところでございます。
  28. 永井孝信

    永井委員 いろいろ現地の方に問い合わせてみますと、当事者は、その却下の理由というものが私にはわからない、こう言っているのです。この件は労働衛生検査センターが調査をいたしまして、その見解を明らかにいたしました。その見解が明らかになったということで却下されたケースなんですが、その見解の中身が当事者にはわからないわけですね。我々に、第三者に明らかにしろと言っているのではない。納得できないと言っている本人には、少なくともその労働衛生検査センターが調査をした内容については、納得するかしないかは別にして、本人にきちっとわかるようにするのが、かつてのこの国会の審議の経過にありますように、不服申し立てのためにも、その理由を明確にしないと、その当事者が困る、だから、きちっといたしますと言った国会答弁を実践することになると私は思うので、あえてこの問題を取り上げているわけでありまして、長い答弁は時間の関係でできませんけれども、この国会答弁をきちっと踏まえて労働省は対応するということをもう一回明確にしてもらいたい。
  29. 野見山眞之

    野見山政府委員 御指摘の点を踏まえまして対応してまいりたいと考えております。
  30. 永井孝信

    永井委員 ついでのことに、労災の認定は非常に難しゅうございまして、いろいろなケースが出てまいります。そのことはわかります。例えば電波公害などという問題も出てきているのです。話は変わりますけれども、自動車のAT車が突然暴走する。これは、衆議院の交通安全委員会に私はいるのですが、その方で大変問題になりました。今運輸省も一生懸命その実態を把握するために、実車を使って試験を繰り返しているのでございますが、そのAT車に見られるように、最近の近代的な機器が使用されている場所では、電波公害などによっていろいろな問題が起きるのではないか、このように私は思うのです。現実にそういうことがいろいろ報告されております。例えば山梨県内のバルブ加工工場では、電磁波によってNC旋盤が誤作動してしまって、そのために作業員が死亡するというケースがありました。あるいは高出力のレーザーによってやけどをしたというケースもありました。こういうことはこれからどんどんふえてくると思うのです。ILOは一九八六年に電磁波に対する労働者の防御についてという報告書も出しています。こういうことから、こういう電磁波などに対する新たな労働災害が起きてくることに対して、どのように対応されようとする用意があるかどうかをお聞かせいただきたいと思います。
  31. 野見山眞之

    野見山政府委員 今お話しのような電磁波によるNC施盤の誤作動を初めといたしまして、産業用ロボットあるいはVDT作業等新しい技術進展に伴います労働安全衛生上の諸問題がいろいろ登場してまいっていることはお話のとおりでございまして、私どもといたしましては、これらの安全衛生に及ぼす影響等についての調査研究を進めると同時に、その災害防止に関しまして、規則、指針等定めまして、その安全対策を図っているというところでございます。  特に重要な点は、新しい技術関連します問題点について、事前に予測して問題に対する早い対応を図っていくということでございまして、新技術の開発あるいは導入段階におきます開発者あるいは導入者向けの事前評価に関するガイドラインの開発研究を行っていくということ等によりまして対応を図っていきたい、かように考えているところでございます。
  32. 永井孝信

    永井委員 あわせて最近非常に社会的な問題になっておりますアスベストの問題についてお聞きをしておきたいと思うのです。  粉じん作業などについていろいろな規制がありますが、この規制をしている法令は、労働安全衛生法、じん肺法、粉じん障害防止規則、特定化学物質等の障害防止規則など幾つかに分かれているわけですね。ところがその基準というものが、私どもが見る限りはどうも統一できていない。個々の事例に合わせてということなのかもしれないけれども、統一されていない。私は、やはり粉じんに対する防御措置としては、一定の基準というものを統一すべきではないかと思います。これがまず一つ。  もう一つは、アスベストの問題で、港湾労働者などが屋外でアスベストを扱うというケースがありますね。船倉から揚げるという問題もあります。あるいはJRで非常に問題になりましたように、貨車に断熱材として使用されているアスベストが貨車の解体のときに大変な問題になっているということも報道されておりました。具体的に言いますと、JRの場合は貨車の解体作業を一たん中止しているようであります。労働省がどのように指導されたかは別にして、中止をされているようでありますが、屋内の安全対策は一定の基準があって一定の措置がされておりますけれども、屋外について規制というものがなかなかしづらいということはわかりますけれども、港湾労働者やあるいは学校の校舎のアスベストをはがす作業などは屋外になってしまうわけであります。この現状のままで個人に防護措置をとらせるだけでいいのだろうか。新たな問題として今出てきているわけでありますから、ひとつこれについての考え方を聞かせていただきたいと思います。
  33. 松本邦宏

    松本(邦)政府委員 まず、先生御指摘の最初の点でございますが、石綿の扱いにつきましては、石綿肺を含むじん肺の予防という観点から昭和三十五年にじん肺法を制定して徹底を図ってまいりました。四十年代になりまして、石綿と肺がんとの因果関係ということが明らかになりましたので、特化則で石綿を発がん性の物質として規制するということで諸種の規制をかぶせているわけでございます。ただ御指摘のように、じん肺法あるいは特化則その他の法令にまたがっていることは事実でございまして、いろいろな化学物質の規制のあり方につきましては、その他の物質につきましても、若干他の規則とまたがっているようなケースが確かにございます。それにつきましては、化学物質関係の規制をどうするかということでの規則全般の見直しのようなものは検討したいということは一つ考えております。  それから、後段の屋外労働者の取り扱いの問題でございますが、御指摘のように、確かに屋外の問題につきましては、屋内と違いまして、例えば局排をつけるとかいったことが実際上不可能でございます。したがって、どうしても個人の暴露を防止するという観点での保護具の着用といったものが中心にならざるを得ないというふうなことで考えておりますが、労働者の保護については、屋内、屋外とも保護の遺漏がないように十分な配慮をいたしたいというふうに考えております。
  34. 永井孝信

    永井委員 この問題についても、この種のケースがどんどんふえてくると思います。確かに屋外では屋内のような規制措置がとりにくいことは十分承知をして申し上げておるのです。だからといって、例えば防じんマスクをつけることだけぐらいで済むものだろうかという気がしてならぬわけですね。ここらについては専門家の知恵もかりて積極的に対応できるように、あるいはJRの貨車なんかの解体作業は今中止しているようでありますが、では、どのようなことが検討され、結論が出たらその廃車解体は再開されるのか、そこらを聞かせていただけますか。
  35. 松本邦宏

    松本(邦)政府委員 JRの貨車の解体につきましては、先生おっしゃいますように、現在、解体作業を中止いたしておりますが、六月末までぐらいの予定で貨車の解体作業にかかわります安全な作業手順の検討を開始しておるところでございます。労働省の方でも、解体時に発散する粉じん防止のために、例えば作業主任者の選任の問題でありますとか、あるいは作業の湿潤化の問題でありますとか防じんマスクの着用、そういった具体的な対策についてJRを指導しているところでございまして、そういった安全作業手順ができますれば再開するというようなことで考えております。
  36. 永井孝信

    永井委員 時間がなくなってまいりましたので、走って恐縮でありますが、次に労基法の施行規則の一部改正という問題について、三十五条の問題です。  これは昭和五十二年から三年にかけてでありますが、三十五条の問題について具体的に改善をすべきではないかということが行政監察当局から要求されて、国会でも問題になって、実は昭和五十三年に労働基準法施行規則第三十五条定期検討のための専門委員会というものが設置をされました。もう十年たったわけですね。十年たっているのですが、その途中経過で一向に専門委員会が開かれていないではないかという指摘も国会でなされて、当時の労働大臣が、もっと積極的にこの専門委員会が開かれるように努力をするという答弁をされた経過もありました。  私、最近の動きについて調べてみますと、労働省から資料をいただきますと、昭和六十一年以降は回数としてはかなり開かれてきているのです。ところが十年たったけれども、この検討結果が今の段階でどのようになったのか、あるいはその検討結果がどのように改善をされてきているのか、ここらについては正直言って、一項目は新たに追加されたものがありました。ありましたけれども、全体的に見ますと、検討はしてきているのだけれども、全く成果が上がっていない。これは一体どういうことなんでしょうね、十年もたっているのですから。
  37. 若林之矩

    ○若林説明員 先生御指摘の専門委員会につきましては、現在まで十四回の専門委員会と六回の小委員会を開いておりますが、当初二十項目についていろいろ検討すべき事項があるということを掲げたわけでございますけれども、今日までそのうちで騒音性難聴につきまして認定基準を改正いたしました。またクロム障害につきまして認定基準を改正いたしました。タール障害につきまして認定基準を策定いたしました。マンガン中毒について認定基準を改正いたしております。それからつい最近では、細菌干渉性及びウイルス等による伝染性疾患について通達を出しておりまして、二十項目のうち九項目につきまして検討を終えておるところでございまして、今後、その残りにつきましても検討を進めてまいりたいというふうに考えております。
  38. 永井孝信

    永井委員 積極的に検討はされているのだろうと私は思うのですが、私は専門じゃありませんからわかりませんけれども、しかし専門委員に委嘱された先生方の中には、どうもまだまだ対応が鈍い、一生懸命検討すると言いながら開催回数も少ないとか、あるいは十年も専門委員をやっていろいろ検討に協力してきたけれども、いまだにそのことが政策の面で具体的な成果としてあらわれてこないということから、非常に不満といいますか不信感を持っていらっしゃる先生方も何人か私は聞きました。これでは困るのであって、これが一年とか二年ならまだいいのですけれども、もうちょうど十年たった。十年一昔という言葉があるくらいですから、二十項目の検討事項を掲げて、それを専門委員の皆さんにお願いをして検討をしてきた。十年たったら、本来ならそのことが具体的に政策に反映されて、その専門委員会は円満に解散するということがあってもいいのではないかと私は思うのですね。余りにも遅々として進まない。こんな労働行政では不信感を持たれるだけですよ。  もう時間がありませんから、この問題について、積極的な検討をさらに進めて、専門委員の皆さんも意欲を持ってその専門委員会に参加できるように、その意欲を持ってもらうということは、具体的にそのことが政策に反映できていくことを自分の目で確かめて初めて意欲が出てくるのですから、そういう専門委員会のあり方、ほかにもたくさんの諮問委員会がありますからね。大臣の私的諮問機関もありますし公的なものもあります。やはり全体的に通じてそういうことが言えると思いますので、この専門委員会関連してひとつ積極的な対応を大臣からお答えいただいて、私は終わりたいと思うのですが、どうでございますか。
  39. 中村太郎

    中村国務大臣 専門委員会の運営につきましては、お説の趣旨に沿いまして十分な検討を加えてまいりたいと考えます。
  40. 永井孝信

    永井委員 終わりますが、今の言葉、私は非常に重いものとして受けとめておきたいと思うのです。この十年があと五年たってもまだ結論が出ないとか、具体的に改善されないようなことのないように、ひとつ担当の局長も積極的な対応をしてもらいたいということを要望して終わりたいと思います。
  41. 高橋辰夫

    高橋(辰)委員長代理 村山富市君。
  42. 村山富市

    村山(富)委員 もう時間が限られていますから、端的にお尋ねをしてまいりますので、できるだけ簡明にお答えをいただきたいと思うのです。  まず第一に、本日審議をされております労働安全衛生法に基づいてそれぞれの事業場に安全委員会や衛生委員会が設置されることになっておりますが、この設置の状況について現状はどうなっておるか。特に民間の事業場の場合と、地方自治団体の場合の設置の状況はどうなっておるか、御説明をいただきたいと思うのです。
  43. 松本邦宏

    松本(邦)政府委員 私の方からは民間の事業場の状況について御説明をいたしたいと思います。  昭和六十年に労働安全衛生基本調査というものを実施いたしておりますが、それによりますと、常用労働者五十人以上の製造業の事業場のうちで安全委員会及び衛生委員会を設置しておりますのが七六・七%及び七四・五%ということになっておりまして、総括安全衛生管理者あるいは安全管理者、衛生管理者あるいは産業医、これを選任しておりますのは、それぞれ九七・九、八四・三、八四・七及び八一・五というようなパーセントになっております。
  44. 佐藤信

    佐藤説明員 地方公共団体におきます御指摘労働安全衛生法に基づきます安全委員会、衛生委員会などの安全衛生管理体制の整備の状況でございますが、六十二年の三月末の現在で、都道府県とか市町村とか全団体の合計で見ますと、総括安全衛生管理者が九一・九%、安全管理者が八八・〇%、衛生管理者が五九・二%、産業医が五五・〇%、安全委員 会が八〇・八%、衛生委員会が四六・五%という数字になっております。
  45. 村山富市

    村山(富)委員 今御説明がございましたが、特に安全委員会や衛生委員会の設置状況というのは市町村が非常によくないわけですね。これは今御説明がありましたけれども、内容を見ますと、例えば衛生委員会等は二千二百二十二設置をする必要があるのにわずかに七百三十六事業場、言うならば三三・一%しか設置されてない、こういう現状になっておると私は思うのです。  こういう安全衛生管理体制が十全に整備をされてないような市町村等に対して、これまで自治省はどういう対応をしてきたのか、簡単に御説明いただきます。
  46. 佐藤信

    佐藤説明員 お話がございましたように、快適な産業環境を進め職員の安全と健康を確保するというのは、地方公務員自体にとってももちろんでございますが、地方公共団体にとっても非常に重要な問題でございます。安全衛生管理体制の整備は、その基本というふうに認識をいたしているわけでございまして、この点で従来から地方公共団体に対して指導の通知でございますとかあるいはいろいろな会議等を通じまして指導してきたところでございますが、先ほど申し上げましたようなまだ整備の立ちおくれているという現状があるわけでございます。  そういった状況にかんがみまして、さらに最近では、特に御指摘のございました整備状況の悪い市町村などに対しましては、個別の指導も行っているところでございまして、若干ではございますが、年々改善もされてきているわけでございます。今後ともそういった整備促進を図りますように、あらゆる機会をとらえて指導の徹底に努めてまいりたいというふうに考えております。
  47. 村山富市

    村山(富)委員 いや、そうした対応をしてきていると思うのですけれども、現実にはなかなかやはり整備されていかないという問題点もあろうかと思うのです。その改善をされていかない問題点の一つとして、衛生管理者等の資格の問題が非常に難しいという問題もあるやに聞いているわけですね。これは私は現業職場の場合と非現業職場の場合と同一の資格を持った安全管理者が必要であるかどうかというようなことも若干問題があるのではないかと思うのですね。ですから、そういう点はもう少し見直しをして、再検討する必要があるのじゃないかと思うのですが、その点はどうでしょうか。
  48. 野見山眞之

    野見山政府委員 今お話しのように、現業的職場における衛生問題と同様に、最近は特に技術革新進展あるいはサービス経済化等に伴いまして、職場環境が大きく変わってきているわけでございまして、特に非工業的な、非現業的職場でございますが、これらにつきましては、むしろストレスといったような健康対策が重要になってきているというふうに思うわけでございます。現在の衛生管理者の制度は、有害業務対策とかあるいは健康確保対策等の業務を遂行できるということを前提にしているわけでございますが、今先生お話しのような非現業あるいは非工業的職種の職場における衛生管理問題というのは、また別な角度から見なければならないというふうに考えているわけでございます。この点につきましては、中央労働基準審議会の建議にも、それらの指摘をいただいているところでございますので、これらの工業的職種、非工業的職種と区分けをした資格制度についても必要ではないかということで検討を進めてまいりたいと考えております。
  49. 村山富市

    村山(富)委員 ぜひその再検討をして、もう少し各職場に対応して安全衛生委員会等の整備が十分できて、そして健康が保持されるような仕組みにやはり変えていく。これは何ぼ決めたって実行されなければ意味がないわけですから、実行できるようなものに変えていく必要があるというように思いますから、ぜひひとつお願いしておきたいと思うのです。  それから、時間がどんどん過ぎますから、もう端的に質問しますけれども、消防関係職場ですね。これは災害件数も大変多いわけですね。こういう消防関係職場はいろいろな意味でもう少し神経を使って安全対策考える必要があるのではないかというふうに思うのです。ところがこの消防職場の場合には、安全委員会の設置の義務づけから除外されているわけですね。これは一体どういう理由によるのか。私はむしろ一番必要な職場ではないかというふうに思うのですが、どうでしょうか。
  50. 松本邦宏

    松本(邦)政府委員 消防職員の業務は、先生御承知のように、火災等の災害から国民の生命、身体あるいは財産を守る消防活動という極めて特殊な仕事であると思っております。  そこで、消防署の安全衛生管理体制をどうするかということでございますが、通常の産業活動を頭に置いております安全衛生法の安全管理体制というよりは、むしろ消防活動の作業態様に見合った独自のものとすることがより効果的ではなかろうかというふうに考えておるわけでございまして、この点は、消防庁におかれても、消防安全管理規程というようなものを定めて、災害防止の徹底のために必要な指導を行っておられるというふうに承知をしておるところでございます。
  51. 村山富市

    村山(富)委員 私は、やはりそういう危険が一番多い、災害の件数の多いような職場については、もう少し労働者健康管理やら安全管理の面から労働省も関心を持ってきちっとしてもらう必要があるというふうな意味でお尋ねしているわけです。ただ、これは消防関係の皆さんも漠然と見ているわけではない。「安全管理体制の整備について」なんという文書も出していろいろ神経を使ってやっておられると思うのです。この中に総括安全責任者会議とか安全関係会議なんというものもつくられて、万全を期すような段取りがされておるのですけれども、しかし、問題点を指摘しますと、職場でつくる安全委員会なんというものは、そこに労働組合があれば労働組合の代表、そうでなければ、労働者を代表すると思われるような方への三分の二の推薦とか、いろいろ職場で働いている労働者の意見が反映されるような仕組みになっているわけですよ。これはやはり職場の安全なんというものは、単に使用者に責任があって使用者だけがやればいいという問題ではなくて、働いている労働者も一緒になって協力してもらう、そして安全を期すというところにねらいがあると思うのですね。ところがこの消防関係ではすべて上司が上から任命することになっているわけですよ。これでは安全委員会というものの設置目的が十全を期し得ないのではないかというふうに私は思うのですよ。そこらの点についての見解はどうですか。
  52. 川崎正信

    ○川崎説明員 消防職員の勤務の特殊性から厳しい状況下で身を挺して職務遂行に当たらなければならないという状況がございます。職員の公務災害の発生を防止し、消防活動を確実に遂行していくということは極めて重要なことだと考えております。そのため消防職員に係りますその特殊性を反映した安全管理、衛生管理を徹底するということは、消防庁を初め管理者の重要な責務の一つであるというふうに考えてございまして、全国の消防長の会議、また総務、人事担当の課長の研修会を通じまして、その点は十分徹底いたしておるところでございます。現在までに私どもが示してございます消防における安全管理規程は、全国の消防本部の九二・七%、六十二年の十月一日現在でございますが、九二・七%ほど整備されておる状況でございます。  御指摘の安全関係会議の構成員の指名等につきましては、実態といたしましては、安全管理に密接な関係を有します職を充て、職としてあらかじめ指定いたしましたり、また課ですとか係などの各職場の単位ごとに推薦をするということなどで、各消防機関の実情に応じて選任されているところでございます。  消防庁といたしましては、今後とも公務災害の発生を防止し、消防活動を確実に遂行するために、職員の安全管理をさらに徹底するよう消防本部を指導してまいりたいと考えております。
  53. 村山富市

    村山(富)委員 時間がないから議論はできないわけですけれども、安全委員会を設置して、そこで働いている労働者の三分の二以上の推薦が要るとかなんとかいうような規定をわざわざ設けているということは、やはり現実に現場で働いている労働者の意見を十分反映させる必要がある、同時にそういう方々に協力をしてもらう必要がある。安全衛生に関しては、やはり管理責任者なり使用主に責任があることは明確です。だけれども、その責任を全うするためには、やはり労使が一体となって安全を期す必要があるという意味からつくられていると思うのです。そういう意味からしますと、単に所属長が指名して、その指名された人が当たるというだけではなくて、もう少し現場の皆さんの声が反映できるような仕組みに検討していく必要があるのではないかというように思いますから、その点は議論する時間がもうありませんから、意見だけ申し上げておきます。  それから、もう一つの問題点は、地方団体の場合には、労働基準局の機関やらあるいは監督署の機関等は、人事委員会のあるところは人事委員会に代行してもらっているわけですね。人事委員会のないところは、その長が兼任するというような仕組みになっているわけですね。人事委員会にかわってもらうことについては、若干問題があるにしても、まあまあ第三者の立場から客観的に見ていけるんじゃないかと思いますからいいとして、法律を遵守しなければならないその長がみずからその監督権限を持っている、こういうのはちょっと立法的にも矛盾があるのではないか、あるいは具体的に現実の問題としても矛盾があるのではないかというふうに思うのですが、そこらの見解はどうでしょうか。
  54. 松本邦宏

    松本(邦)政府委員 人事委員会あるいは人事委員会委員にその権限をゆだねておりますのは、これは安全衛生関係ばかりではございませんで、労働基準法全般の扱いについてそういう形にしているわけでございます。したがいまして、公務の特殊性といいますか、そういったものをいろいろ考慮して、こういう形で行われているというふうに理解をいたしております。
  55. 村山富市

    村山(富)委員 いやいや、それはわかるのです。わかるんだけれども、ただ、地方公務員法の解説をしたのがありますけれども、これを見ましても、  人事委員会を置かない地方公共団体における非現業の職員に対する労働基準監督機関はその長とされている。市町村長等、地方公共団体の長は、当該地方公共団体の代表者、すなわち、地域の公益を代表する者であり、かつ、職員の実情に明るいものであることにより監督機関とされたのであろう。しかし、地方公共団体の長は同時に職員の使用者としての地位に立つものであり、実質的に使用者とその監督者の地位を兼ねることになるのであって、立法論として問題が残るといえよう。 こういう意見もあるわけです。私は確かにそうだと思うのですよ。ですから、安全委員会や何かの設置がなかなか整備されていかない一つの原因にもなっているのではないかというふうに思いますから、そういう点はひとつ十分今後検討していただきたいというふうに思いますので、意見だけ申し上げておきます。  次に、労災年金と厚生年金等の併給調整の問題ですけれども、話を聞きますと、六十一年四月から、これまで七六%の支給であった、言うならば二四%カットされていたわけですが、それが七三%になって二七%カットということになった。それから六十三年四月から、それ以前から給付を受けておった人については七六%が七五%にダウンしたわけですね。  年金の給付等については、いろいろ年金改正がこれまでされてきましたけれども、既得権が侵害されたという例は余りないのです。暫定措置として、例えばスライドはしないとかいろいろな扱いをされている部面はありますけれども、現実に受けている給付が引き下げられたというふうな事例はないのですよ。この併給調整はどういう理由で、どういう根拠でこういうことになったのか、簡単に御説明をいただきたいと思うのです。
  56. 野見山眞之

    野見山政府委員 労災年金と厚生年金等が同一の事由で支給される場合には、損害の重複てん補やあるいは費用の二重負担を避けるという観点から、この調整制度が設けられているところでございまして、この具体的な調整方法につきましては、政令で定められているところでございますが、調整の計算につきましては、すなわち前々保険年度におきます労災年金の平均額から厚生年金の平均額の二分の一を差し引いた額が労災年金の平均額で割った率を基礎とする、いわば申し上げましたような調整率でもって併給調整をするということが法律の建前として定められているところでございます。  それで、既得権の問題でございますけれども、労災年金の平均額と厚生年金の平均額とのお互いの関係によりまして、調整率が上がったりあるいは下がったりするということがあるわけでございまして、現に年金を受けている方の中では、今申し上げましたような厚生年金と労災年金との相対関係から労災年金が若干低下するということもあるわけでございます。しかしながら、この労災及び厚生それぞれの年金双方におきまして、物価スライドあるいは賃金スライド等が行われます結果、相当数の方々につきましては、年金額は調整率の改正前の水準を上回るというふうになるものと考えているわけでございます。今後とも調整率の決定に当たりましては、法律で定められました計算式によって行うということでございますけれども、具体的には労災補償保険審議会の方に諮って定めてまいるわけでございますが、旧制度の厚生年金の受給者につきましては、調整率はそう大きく変動することはないというふうに考えているわけでございます。
  57. 村山富市

    村山(富)委員 僕はよくわからないのだけれども、調整率が変わったわけですか、変わったんですね。それは政令で変えることができるわけですか。
  58. 野見山眞之

    野見山政府委員 先ほど申し上げましたような方式に基づきまして、今回調整率の変更をさせていただいたわけでございます。
  59. 村山富市

    村山(富)委員 それは今までもそういう仕組みがあったのか、変わってきたのか、どっちですか。
  60. 岡山茂

    ○岡山説明員 御説明させていただきます。  この調整率の仕組みにつきましては、法律に定めがございまして、併給する場合の調整率は政令で定める、こういうふうにしておりますが、その政令で定める考え方が、やはりただいま局長御答弁申し上げましたように、労災年金の平均額から厚生年金の平均額の二分の一を引いて、もとの労災年金の額で割ったその率を基礎にして定めるように、こういうふうに従来から定められているわけでございます。そういう数字に基づきまして改正を政令で行うことになっているわけでございます。
  61. 村山富市

    村山(富)委員 その理屈はわからぬことはないのだけれども、今までそんなことは聞いたことはないのです。六十一年四月から、改正後受給する人は七三%になる、そして改正前から受けている人は七五%になる、ダウンするわけですね。これはこれから新規に受給する人はまあいいとして、よくはないけれども、まあまあとして、今までもらっている人は労災年金の支給額がダウンするというのは既得権の侵害になるので、これは私はさっきも申しましたけれども、こういう年金制度の仕組みの中で、支給されている年金額が政令が変わったことによって一方的にダウンさせられるなんていう例は余り聞いたことがないのです。これはやはり仕事を通じて災害を受けて、そして一生不幸な人生を送っているわけですよ。そういう人に支給されている年金がそんなことによってダウンをさせるなんてことは、考える必要があるのではないか。これは理屈の問題ではなくて政治的に配慮してやる必要があるのではないかというふうに思うのです。ですから、これは後で全部まとめて大臣に見解を聞きますけれども、そういうふうな配慮が必要ではないかということの意見は申し上げておきます。  それから、もう一つは、これは以前から私は何回か質問もしてきているわけですけれども、例えばじん肺患者や脊損患者みたいに長期に療養を必要とするような患者さん、しかもある意味では不治の病だと言われているような方々です。その方々が亡くなられた。そうした場合に、たまたま死因が直接じん肺や脊損と関係がないというので補償が打ち切られる。長い間介護に付き添ってきて、そして一生懸命介護してきて御主人が亡くなられた。その遺族に対しては、たまたま死因が業務上とは関係がないというので、この補償が打ち切られたというようなことで悲惨な立場に置かれている方がたくさんあるのですよ。私は人数をまだはっきり正確につかんでおりませんけれども、大分あると思います。こういう事例を考えた場合に、例えばじん肺などの場合には慢性的な酸欠になるわけです。酸欠になれば内臓機能にいろいろな影響が出てくることは当然なのです。そこで影響が高じてきて、たまたま医師が気づいて、これがじん肺と関連があってこういうものが併発したというので治療していけば、亡くなられたときに関連があるというふうになるかもしれないけれども、気がつかずにそのままにしてきて、たまたま別の原因でなくなった。こうした場合には打ち切られるというようなこともあります。それから長く治療していますから、薬の副作用か何かで併発して起こったというようなこともあり得ましょうし、いろいろな意味で関連が全然ないとは言い切れないのではないか。それを余り簡単に、簡単にはしてないと思いますけれども、業務上関運がないということで打ち切られてしまうといったような扱い方については、私はやはり検討を加える必要があるのではないかというように思うのですが、どうでしょう。
  62. 野見山眞之

    野見山政府委員 今お話しのように、じん肺などによりまして長期にわたって療養中に併発いたしました疾病につきまして、じん肺との医学的な因果関係につきましては、今後さらに医学情報の収集あるいは調査研究に努めているところでございまして、さらにこれらの作業を踏まえまして、今お尋ねのような長期にわたり療養した後に亡くなった方々に対する対応につきましても、医学専門家による検討をお願いしたいというふうに考えております。
  63. 村山富市

    村山(富)委員 これはもう時間がありませんから、大臣に最後に見解を聞きたいと思うのですが、さっきちょっとお話し申しましたように、現実労災給付を受けている方が厚生年金等の給付と併給調整をされる。これはある意味では両方とも使用主負担が入っているわけですから、やむを得ないものがあると思うのです。だけれども、現実に受けている年金が、そのことによって年金額を下げられるというような事例というのはほかにないのですよ。ですから、こういう点は、労災患者であるだけに、私はもう少し政治的な配慮が必要ではなかったのかというように思いますし、これからもまた起こり得る可能性がありますから、特にそういう点については大臣に見解を聞きたいと思うのです。  それから、もう一つは、今申し上げましたように、じん肺やら脊損患者というのは長期に療養を必要とするわけです。一生入院で治療しなければならぬ。そして奥さんはそれに付き添って介護しなければならぬ。こういう状況に置かれている方がたまたま亡くなったときの医師の死亡診断書がじん肺ならじん肺が直接の原因ではなかったあるいは脊損が原因ではなかったという診断を受けたために補償が打ち切られてしまう。特にこれから患者さんは高齢化してまいりますから、そういう事例がふえていくのではないかというように思いますが、そういう点についてはもう少し温かい配慮があっていいのではないか。特に最近認定が厳しくなったとかあるいは後でまた御質問があると思いますけれども、振動病などの場合も新しい治療指針が出されて、そして療養中打ち切られるといったようなことから、皆さんはいろいろな意味で大変不安を持っているわけです。そういう打ち切りの一環としてこういう扱いをされるのではないか、こういう懸念を持っています。私はそうではなくて、労働することによって受けた災害ですから、ある意味では社会的な被害者なのです。そういう方々の一生を考えた場合、それくらいの温かい配慮があっていいのではないかというように思いますが、大臣の見解を最後に聞きたいと思うのです。
  64. 中村太郎

    中村国務大臣 労災保険制度の本旨というものは、あくまでも被災労働者、その遺族の保護というところに本質があるわけでございます。したがいまして、仰せになりましたようないろいろな認定の際には、まずその線に沿って温かい配慮というものが前提にならなければいけないというふうに考えるわけでございまして、今後ともそういう方針の中で進めてまいりたいというふうに考えておる次第でございます。
  65. 村山富市

    村山(富)委員 さっきちょっと触れましたように、そういうような意味では今患者さんは非常に不安に思っていますよ。特に高齢化することによってそういう事例がまたふえていくのではないかというように思いますから、やはり従来のような単なる心因説だけではなくて、もう少しそういう医学的な関連も、現に論文もあるわけですから、そういう論文も参考にされて、そして最初に打ち切りがあるというのではなくて、できるだけ救済していくということを前提にして行政は当たるべきではないかというように思いますから、重ねてそういう点を強く要望しておきまして、私の質問を終わります。
  66. 高橋辰夫

    高橋(辰)委員長代理 池端清一君。
  67. 池端清一

    池端委員 今般、労働省は全国的に労働基準監督署長名をもって振動障害に係る保険給付を昭和六十三年四月三十日をもって打ち切る旨の通告をいたしたようでございますが、その人数は何名か、またそのうち北海道関係は何人か、その状況をまず明らかにしてほしいと思います。
  68. 若林之矩

    ○若林説明員 労働基準監督署長名をもちまして四月三十日付で症状固定とする旨通知を出しました者の数は、六十二年度におきまして行った者の数は九十四名でございます。このうち北海道局管内につきまして各労働基準監督署長が症状固定である旨の通知を行いました者は二十九名でございます。
  69. 池端清一

    池端委員 私は去る三月二十二日の本委員会におきまして、中村労働大臣にこの問題についてお尋ねをしておるわけであります。その質問に対して中村労働大臣は、初めに打ち切りありきという姿勢はとらない、こういう極めて慎重な態度を表明された、私はこのように理解をしておるわけであります。しかし、その答弁があってからわずか八日後の三月三十日にこの通知が発送をされているわけでございます。これはどういうことでありましょうか。なぜあの三月二十二日の時点で、近々打ち切りの通告をする予定だ、通知を出す予定だとなぜこの委員会でおっしゃらなかったのでありましょうか。私は中村労働大臣は極めて誠実な人である、かねてから党派を超えて非常に敬意を表しておりましたが、この措置によって全く私の気持ちが裏切られたという感を免れないわけであります。まさに国会審議軽視ではないか、こう思いますが、大臣、いかがですか。
  70. 中村太郎

    中村国務大臣 確かに私は三月の時点におきまして、初めに打ち切りありきという姿勢では臨みませんと申し上げたわけでございます。これは御承知のように、新しい治療指針に基づきまして適切な治療が行われ、振動障害者の早期解決を目標として行政を行う者の立場では当然のことではないかと考えておるわけでございます。ただ、長年にわたりまして治療を継続してきたところ、専門家の判断として治療効果が認められなくなったと考えられる者については、労災保険制度の建前に立って症状固定の通知を行ったものであるというふうに承知をいたしておるわけでございまして、三月時点でもそのこと自体は進展しておったというふうに承知いたしておるわけでございます。  しかし、今回の通知に当たりましては、私どもの調査の中でも、このこと自体が初めてのケースでございますし、さらにまた趣旨の徹底についても必ずしも十分ではなかったという御指摘があるわけでございますが、これは確かに私どものある意味においては手落ちであると受けとめざるを得ないかと思うわけでございまして、この点につきましては、今後も十分配慮するよう指導してまいりたいというふうに考えておるわけであります。
  71. 池端清一

    池端委員 三月の二日に北海道の十勝の山林労働者がみずから命を絶っておるわけであります。北海道内ではこれまで振動病患者の自殺者が二十名の多きを数えているわけであります。全国的にはもっともっと多い数になっておるわけであります。御案内のように、振動病、かつては白ろう病と言われておりました。しびれ、発熱、耳鳴り、頭痛、不眠、そして指はレイノー現象、白ろう現象になる。ひどい場合はこれが腐る。こういう大変な病気でございます。こんな苦しみの中にある患者に対して、しかも現在入院中の患者に対して、十年以上療養しても症状がよくならないという理由で症状固定即治癒とみなして給付を打ち切るというのは、余りにも血も涙もない行政ではないか、私はこう思うわけであります。これが労働行政かと、率直に私は怒りを覚えるわけでございますが、これについてはどうですか。
  72. 野見山眞之

    野見山政府委員 被災労働者に対しまして十分な療養補償を行うということは、労災保険制度の本来の目的であるわけでございます。しかしながら、症状が固定したことにより、これ以上治療効果が認められない場合には、療養補償を行うことができないものでございまして、その時点で障害が残るというような場合には障害補償を行う、あるいはアフターケアとして必要な保険上の措置を行うということになっているわけでございます。  今回の症状固定の通知につきましても、治療期間が長期にわたることのみを理由に画一的に行ったものではございませんで、個々の被災労働者の症状の経過等を慎重に検討した上で症状固定の判断をさせていただいたわけでございます。今後はアフターケア制度等を活用いたしまして、必要に応じまして予防その他の保険上の措置を講じ、当該労働者労働能力の維持、回復に努めますと同時に、職場復帰につきましても全力を挙げてまいりたいと考えております。
  73. 池端清一

    池端委員 一昨年の十月に労働省は「振動障害の治療指針」なる通達を出しました。引き続いて十一月には「振動障害に係る保険給付の適正化」という通達を出したのであります。この通達は非常に多くの問題点があるということで、我が日本社会党としてもかねてから当時の基準局長あるいは審議官あるいは関係課長、担当課長とも鋭意この問題について話し合いを進めてまいりました。また関係組合も労働省と精力的な話し合いを行ってきたわけであります。その結果、この通達は医学的情報、目安であり、画一的な基準ではない、治療に当たってはあくまでも主治医の判断であり、主治医の意見を尊重する等の一定の確認を行ったところでございます。  ところが、私ども今回、四月二十四日、二十五日の両日、北海道で調査を行いましたところ、例えば主治医の先生が、なお入院加療を要す、全部休業を要す、いまだレイノー現象あり、こういう診断をしているにもかかわらず、これが無視をされて打ち切られたという事実。しかも、これらの最近の診断書が、労働基準局の中にあります地方労災委員協議会、この局医協議会にも提出されていない。だから局医協議会の先生方もそれを見ていない、こういう事実が数多く出てきたわけでございます。これは主治医の判断を尊重するという従来の態度を否定するものであり、手続的にも大変な問題がある、極めて重大な問題だというふうに言わなければならないと思います。私どもがお会いした主治医の先生方の中には、今回の労働省のとった措置は納得いかない、こういう不満を率直に表明されている先生方もおったわけでございます。私は非常に問題のある今回の打ち切り通告だと思いますが、当然再調査、再検討されてしかるべきもの、このように考えますが、この点についてはいかがですか。
  74. 野見山眞之

    野見山政府委員 今回の措置に関しまして、労働基準監督署長は長年にわたって治療を続けてきた振動障害療養者が症状固定の状況にあるか否かを判断するに当たりましては、個々の療養者ごとに経年的にその動向に着目いたしまして、症状、経過あるいは治療内容等について検討し、主治医及び地方労災委員協議会の意見を伺った上で慎重に判断することといたしているわけでございます。しかしながら、今回の事例の中には、委員協議会の開催前に主治医から診断書を受理はいたしておりましたけれども、これを委員協議会に提出していなかったケースもあることは遺憾ながら事実でございます。しかし、これらにつきましても、監督署長は当該診断書を含めて客観的にかつ経年的に症状固定の判断を行ったものと考えているわけでございます。しかしながら、先ほど来先生から御指摘のございましたようないろいろな審議の経過の中で、主治医の意見を尊重するということを私どもお答え申してきておりますし、また今後とも尊重していくという見地から、今回の措置の中には労働省指導が必ずしも十分でなかった面もございますので、今後はさらに慎重な取り扱いを行いますように、さらに指導してまいりたいと考えておるところでございまして、今回先生の御指摘のような手続上問題のあるものにつきましては、適切な対応を考えてまいりたいと考えております。
  75. 池端清一

    池端委員 今最後に局長は、適切な対応をとってまいりたい、こういうお答えがあったわけであります。これはもう極めて抽象的でございまして、どういうことを意味しているのか。具体的にはどういうことをされるのか。私は再調査すべき、こう強く求めているわけでありますが、この点についてはどうですか。
  76. 野見山眞之

    野見山政府委員 今先生御指摘になりました再調査も含めまして、適切な対応をしてまいりたいと考えております。
  77. 池端清一

    池端委員 先ほども申し上げましたが、この四月二十四日、二十五日、私は現地で患者の皆さんや家族の皆さんとお会いをいたしました。その席上で、労働省は私たちを死に追いやるのか、こういう悲痛な叫びが聞かれたわけであります。私もまさに胸の締めつけられるような思いでございました。振動病患者の皆さんというのは、いわば我が国高度経済成長政策時代の犠牲者と言っても言い過ぎではございません。今局長が言われましたように、ぜひ真剣に、そして誠意を持って再調査をされるよう強く要望をしておきたいと思います。  次に、アフターケアの問題についてお尋ねをいたしますが、私は、この振動障害者に対するアフターケアの制度、これは必ずしも十分ではないのではないか、この制度をより拡充すべきではないか、こういうふうに思うわけでありますが、これについての見解を承りたい。  さらにまた、これは二年で一応打ち切る、こういうことになっておるわけでありますが、やはり画一的に二年で打ち切るということは、この実態にそぐわない、こう思いますので、この点についてもお尋ねをしたいと思います。
  78. 若林之矩

    ○若林説明員 振動障害等の特定の傷病にありましては、その症状固定後におきまして後遺症が残ることがあるわけでございまして、それらの予防等保険上の措置が必要とされますために、労働福祉事業において、傷病が症状固定となった後のアフターケアとして、必要な診察、検査、保健指導、投薬等が実施されておるわけでございます。振動障害者に対するアフターケアにつきましては、昭和五十七年から頭頸部外傷症候群に係るアフターケアの対象傷病に加えて実施してまいったところでございますが、一つとして、その後の振動障害についての医学的知見の集積がございましたことと、第二にアフターケアの充実についての要望がございましたので、専門家会議を開催していただきまして検討を行ってまいりました。この結果に基づきまして、昭和六十二年十二月に「振動障害に係るアフターケア実施要綱」というものを定めたわけでございます。これによりまして対象範囲を拡大いたしまして、より効果的な薬剤の支給、検査項目の充実を図ったわけでございまして、これによりまして振動障害者に対するアフターケアの拡充を行ったわけでございます。昨年十二月でございますので、現在はこの「振動障害に係るアフターケア実施要綱」につきまして関係医療機関に周知徹底を図っているところでございます。  ただいま先生御指摘のアフターケアの期間でございますけれども、これは症状固定後二年を限度としておるわけでございますけれども、先生御指摘のように、二年を超えましてもアフターケアの必要なケースが出てまいろうかと思うのでございまして、医学的にアフターケアを継続して行う必要があると認める場合につきましては、その必要な期間継続をしていくというふうに考えております。
  79. 池端清一

    池端委員 私は、そのアフターケアに理学療法等も含めるべきではないか、このように考えますが、それについてはどうですか。
  80. 若林之矩

    ○若林説明員 先ほど申しましたように、現在のアフターケア制度は検査、投薬等でございまして、これによりまして後遺症として考えられます痛みでございますとかしびれ等を除くということでございます。専門家会議にいろいろと御議論いただきました段階では、現在のアフターケア制度で十分であるという御指摘でございましたけれども、ただいま先生の御指摘のございます理学療法等につきましては、今後このアフターケア制度を運用してまいるわけでございますけれども、その運用の段階でいろいろな医学的な知見が収集されてまいると思います。その結果を必要に応じて先生方に御検討いただきまして、内容を見直していきたいというふうに考えております。
  81. 池端清一

    池端委員 我が党はかねてから、林業における振動障害対策について、その予防から補償、職場復帰対策、一雇用といった総合的な対策の樹立、これが緊急不可欠だ、こういうふうに言ってきたわけであります。これについて労働省はどのように対処するおつもりか、その御見解を承りたいと思います。
  82. 中村太郎

    中村国務大臣 振動障害対策につきましては、とりわけ先生いろいろな面で御関心を寄せられ、私ども御指導いただいていることを実は感謝をいたしておる次第でございます。この対策につきましては、現在、第三次の振動障害総合対策要綱に基づきまして、振動障害の防止対策あるいは補償対策、社会復帰対策等を推進しておるところでございます。  しかしながら、林業における対策におきましては、何せ労働者の就労、居住地が山間地域であるなど種々の困難な問題もありまして、必ずしも十分な効果を上げているとは言いがたいと思っておるわけでございます。先生方御指摘になりました、各省庁間、林野庁、厚生省、労働省の間で横並びの連絡会議を持ってこの問題に対処すべきではないかという御意見等につきましては、仰せに従いまして、従来からその線でいろいろな協議を調えておるわけでございます。これからもこの会議は頻繁に開催していかなければいけないと考えておりますけれども、特に今回はいろいろな問題もございまして、また先生の御指摘もありましたので、振動障害をめぐるこのような問題点を踏まえまして、労働省内に基準局担当審議官を長とする横断的なプロジェクトチームを設けまして、林業の振動障害にかかわる、予防から御指摘のような補償、社会復帰に至るまでの総合的な対策検討に早急に着手をいたしまして、早期に結論をつけるよう最大限の努力を払ってまいる所存であります。
  83. 池端清一

    池端委員 一歩前進のお答えをいただきました。早期検討の着手と早期結論をぜひ出していただくように強くお願いをしておきたいと思います。  次に、振動病の病状の軽快者の就労の場の確保の問題でございますが、この対策も率直に言って何ら講じられておらないのが現状でございますし、今回の通告によって雇用や生活の場が断たれ、患者の皆さんや家族の皆さんはまさに途方に暮れている、茫然自失の状態だと言っても言い過ぎではないと思うのであります。そこで就労が可能であるという診断が出されている方の再就職については、行政が、労働省が責任を持ってその再就職先を確保すべきではないか、これが当然の責務ではないかと思いますが、この点についてはいかがですか。
  84. 野見山眞之

    野見山政府委員 軽快者の雇用機会の確保につきましては、従来から求人の確保あるいは各種就職援護措置の活用、あるいは基準行政の面におきましても、社会復帰特別援護金制度の実施、さらにまた特別援護金を六十三年度から倍増するというようなことで種々努力をしてまいったところでございますが、先生御指摘のように、これまで必ずしも十分な成果を上げていないことは遺憾に存じております。  今回、症状固定とされた方々の職場復帰につきましても、地方の労働基準局及び労働基準監督署の幹部が先頭に立ちまして、職業安定機関との連携を図りながら、林業振動障害者職業復帰推進員等を活用いたしまして、症状固定者の職場復帰の相談、指導関係機関が一体となりまして誠心誠意努力をしてまいりたい、かように考えております。  さらに、ただいま大臣からお答え申し上げました総合対策プロジェクトにおきましては、雇用の確保等の社会復帰対策を重点の一つとして早急に検討を進めてまいりたいと考えております。
  85. 池端清一

    池端委員 振動病の治療、補償対策等について、これまで関係組合と労働省との間で確認をされてきました折衝の経緯及び今日まで衆議院、参議院、国会においていろいろな論議が交わされてきたわけでありますが、この論議経過、審議経過というものを今後とも労働省としては十分尊重していく、こういうふうに確認してよろしいか、念のためにお尋ねをいたします。
  86. 中村太郎

    中村国務大臣 振動障害療養者の補償対策につきましては、労災保険制度の趣旨にのっとりまして適正な保険給付に努めてきたところでございます。今後とも関係組合と労働省との間での確認事項あるいは折衝経緯及び国会における審議経過を十分に尊重して対処してまいる所存であります。
  87. 池端清一

    池端委員 次に、症状固定の概念について確認をしたいと思います。  従来、労働省は治療によって症状の改善が図られている者や治療を中断することによってかえって症状が悪化する者などは、症状固定とは考えていないという態度をとってこられましたが、その考え方についても変わりがないと理解してよろしゅうございますか。
  88. 野見山眞之

    野見山政府委員 今先生お話しになりました考え方に変わりがございません。
  89. 池端清一

    池端委員 主治医の意見を尊重するということについて、抽象的ではなくて、今後具体的にどういうふうに対処、対応していくのかをお答えいただきたいのです。一般的に主治医の意見を尊重するといっても、今回のような措置がなされている。全く相反することが行われておるわけでございます。具体的な保証をぜひお尋ねをしたいと思うのでありますが、具体的な対処方針をお答えいただきたいと思います。
  90. 野見山眞之

    野見山政府委員 簡単に申し上げます。  局医協議会にかける前に、所見書及び診断書のほかに改めて主治医の意見を聞くとともに、その意見を局医協議会に提出することといたしたいと考えております。
  91. 池端清一

    池端委員 症状固定と判断された振動障害の方が、その後再発した場合の措置でございます。どういうふうに対処されるお考えでございますか。当然ながら早期に認定をし必要な保険給付は行うというふうに私は理解をするわけですが、その点についての見解も承りたいと思います。
  92. 野見山眞之

    野見山政府委員 労災保険におきましては、傷病が一たん治癒した後、再び何らかの原因により同一の傷病が発症し、当初の傷病と再発後の症状の発現との間に医学的に見て明らかな因果関係がある、またそれが業務以外の原因によるものではないと認められます場合には、必要な保険給付を行うことといたしております。振動障害につきましても、同様の考え方に基づきまして、労災請求がありました場合には、当初の振動障害との関連、療養の要否などにつきまして専門医等の意見を聞きまして、迅速に処理してまいりたいと考えております。
  93. 池端清一

    池端委員 今述べられました御答弁の内容につきましては、ぜひ地方の局なり監督署に十分徹底できるように、今後細心の配慮をしていただきたいということを強くお願いをしておきたいと思います。  時間になりましたので、最後に私意見だけを申し上げておきますが、振動病の発生は単に林業だけではございませんで、土木、建築あるいは集配業務でバイクに乗ります郵政職員にも振動病が発生をしている。この問題は非常に多くの産業に拡大をしているというのが今日の現状でございます。したがって、こういった振動工具の規制なり予防、そして早期発見、早期治療、このことがぜひ重要なことである。ですから、この観点からの対策を万全にしていただきたいということを強く求めておきたいと思います。  それから、振動障害は三障害に限定をしているということについても、これは大きな問題でございます。産業衛生学会を初めとする専門家、医師の間でも、これは意見が大きく分かれているところでございますし、司法の判断でも、昭和五十二年七月の高知地裁のように、全身的な疾病、こういうふうに司法判断をされているところもあるわけでございます。  こういうもろもろの要素を十分尊重をされまして、事を決するには慎重の上にも慎重を期していただきたい、このことを強くお願いをしておきたいと思います。事柄は地球よりも重い人の命にかかわる問題でございます。単にそろばん勘定で措置するのではなく、本当に人の痛みを知る行政を今後とも進めてもらいたいということを私は強く要望して、質問を終わりたいと思います。
  94. 高橋辰夫

    高橋(辰)委員長代理 伊藤忠治君。
  95. 伊藤忠治

    伊藤(忠)委員 私は財形法の改正案の問題について質問をさせていただきます。  まず初めに、今回の改正案の中心でございます年金貯蓄の場合、据置期間で利子が変動する、その結果、非課税枠が五百万ということになっているわけですが、この枠をオーバーした場合に引き出せるようにしよう、こういう便宜を現実的に図っていこうという骨子でございます。  愚問になるかわかりませんが、一点質問させていただきますけれども、そういう枠を超えた事態が起こったときに、金融機関が責任を持ってミスのないように本人に適宜処理をしてくれるのかどうか。このあたりがはっきりしていませんと、御本人は恐らくそのことはわからない場合が多いと思いますからね。そうすると、もしミスがあって、結局枠が超えてしまう格好になって非課税を適用されないということになっては困りますので、そういう場合には、どこが責任を持って、どのようにやってくれるのかという点について質問をいたしたいと思います。そういう点を遺漏のないように、労働省としては、当該金融機関に対してきちっとする。あるいはまた年金貯蓄というのは事業所を通じて勤労者が加盟をする仕組みになっているわけですから、事業所の方は、そういう場合には、どのように対応してミスのないように万全を期することになるのか。労働省としては、そういうことが起こらないようにどのように対処をされるのか。この点についてまず一点質問をさせていただきます。
  96. 石岡慎太郎

    ○石岡説明員 今回の法改正で、財形年金貯蓄につきまして、据置期間中の予期しない金利変動によりまして、非課税限度額を超える場合の払い出しの特例を設けさせていただきたいと思っているわけでございますが、確かに先生御指摘のように、勤労者が限度額を超えたかどうかわからないといったケースも出てこようかと思っております。したがいまして、この制度が円滑に行われるためには、金融機関が個々の勤労者の残高を確実に把握いたしまして、その残高が非課税限度額を超えることとなる場合には、勤労者に金融機関がその旨を通知するということにいたしてまいりたいと考えている次第でございます。  なお、この措置は、法案が成立いたしますと、本年十月一日から施行を予定いたしておりますが、それまでの間に金融機関あるいはまた事業主等も指導いたしまして、勤労者に対するこの制度の周知、非課税限度額を超える場合の払い出しの手続等につきまして遺憾なきを期してまいりたいと考えている次第でございます。
  97. 伊藤忠治

    伊藤(忠)委員 ぜひひとつ、とにかくこれはいい改革でございますので、そういうミスの起こらないように、不利益のケースが惹起しないように政府としても十分指導をいただきたい、このように思います。  二点目は、御承知のように、高齢化社会というのがますます進行しているわけでございまして、老後の生活を安心して暮らせる、そういうためには年金が極めて重要な生活の柱になっているわけであります。しかし、現実にこの公的年金の給付額は、もう最低の生活保障すらもなかなか賄い切れないというのが実態だと思っております。現在この公的年金は、物価スライド制は採用されているわけですが、賃金スライド制にまでは制度としては及んでいないわけでありまして、年金というのは御案内のとおりインフレに極めて弱いわけですね。今日物価が幸い安定をして横ばい状況でありますから、そういう事態には遭遇していないわけですが、今後いつインフレに見舞われるという事態になるかわかりません。そういう場合には、年金の価値というのが直ちに下がってしまう、それがもろに生活にはね返ってくる、直撃を食らう、こういうことだろうと思うのです。そういう意味からしまして、この公的年金の賃金スライド制の採用、制度をそこまで改革をしていくということと、それから給付水準のレベルアップを図るということは喫緊の課題であろう、私たちはこのように思っているわけでございます。  さらに、老後を少しでもゆとりのある生活を保障していくためには、公的年金を補完するものとして本制度の役割は極めて重要であると思っております。したがって、その充実が強く望まれているわけでありまして、現在はそういう状況の中で非課税枠というのは五百万円なんですね。今も私申し上げましたが、老後の生活を少しでもゆとりのある生活にレベルアップを図っていくという立場に立つならば、この非課税枠五百万円を一千万円に拡大をすべきである。やってやれないことはないのですから、制度をいじるというよりも、補完策として、今の五百万円枠を一千万円にまでとりあえず拡大をしていって老後の生活の安定に資していく、こういうことは当然やるべきじゃないか。特に労働省にしてみれば、労働行政に責任ある立場で携わっておみえでございますから、五百万円を一千万円にまで非課税枠を拡大するということについて大臣の御見解をお伺いをしたい、こう思うわけでございます。私のこの考え方に御賛同いただけるのかどうか、そして一千万円枠に向けて拡大のための努力をされる気持ちがあるのかどうか、大臣に決意表明も含めましてお答えをいただきたい、かように考えます。
  98. 中村太郎

    中村国務大臣 仰せになりましたように、我が国が本格的な高齢化社会へ入るわけでございます。したがいまして、勤労者が安定した老後生活を送るためには、どうしても年金資産の保有を促進することが大事であることは言うまでもありません。その一環としての今の非課税枠の拡大の問題でございますが、このことにつきましては、私どももかねてから関係当局とも折衝をしてまいったところでございます。しかし、残念ながら今日まで実現いたしておりません。もう既に財形審議会からも御提言をいただいておりますし、また仰せのように、各方面からこのニーズが高まっておるわけでございまして、何としてでもこれから一千万円までの非課税措置というものを全力を挙げて実現をしていかなければいけない、こういうような決意をいたしておるわけでございまして、これからも粘り強く関係当局と折衝をして、その実現を期する所存であります。
  99. 伊藤忠治

    伊藤(忠)委員 大臣の表明をいただきまして、考え方については、まず異論はない、今後最大限努力をしていきたいという答弁をいただきました。  聞くところによりますと、今国会は間もなく終わりますが、税制国会ということで臨時国会が開催されるやに私たちも聞いておるわけです。まさに税制国会でのこれも議論をされるべき言うならば当を得た場所だと思うのでありまして、ぜひとも早急に、せめてものということです、正直申し上げて。五百万円を一千万円の枠に拡大するということは、勤労者の非常に切実な要求でございますから、ぜひとも最大限の努力を図っていただきたい。私たちもそのために精いっぱい頑張り抜きたい、このことを申し添えたいと思うわけでございます。  次に、年金貯蓄の加入者の現状と今後の拡充策について伺うわけでありますが、加入者の現状を見ますと、就業者数というのは、統計のとり方にもよりますが四千数百万、こう言われております。このうち加入者数を見ますと極めて少ないというのが現状ではないか、比率から見ましてそう思うわけです。私たちはそう思うのですが、労働省としては、いや、少なくない、まあまあなんだ、この種の制度だったらこの辺までいけばまあまあなんじゃないかというふうにお考えなのか。私は少ないと思っておりますが、その点についてまず見解をお伺いしたい、こう思います。
  100. 石岡慎太郎

    ○石岡説明員 昭和六十二年九月末現在で財形貯蓄及び財形年金貯蓄の契約者数の合計は約一千九百五十万人となっております。この契約者数の全勤労者四千四百四十万人に占める割合はおよそ四四%程度でございます。  この数字の評価でございますが、私どもは、この数字を見まして、勤労者生活に財形貯蓄制度が広く定着しているのではなかろうかと基本的には認識いたしております。しかしながら、規模別に財形貯蓄者の状況を見てみますと、中小企業におきましては、財形貯蓄をしている労働者が非常に少ないといったような状況もございますので、この数字をもって必ずしも財形貯蓄は満足すべき状態にあると言えないのではなかろうかと考えております。 …………〔高橋(辰)委員長代理退席、委員長着席〕
  101. 伊藤忠治

    伊藤(忠)委員 この年金貯蓄の場合、勤労者にとってメリットのある制度は幾つかありますけれども、住宅の問題もございますが、比較をしますと、魅力のある制度の一つなんです。ですから、今おっしゃいましたような現状でございますし、さらに加入者がふえていきますように、政府の方としても、今後の拡充策とも関連をしますが、拡大に向けての積極的な指導をいただきたい。時間の関係がございますので、これ以上は触れませんけれども、お願いを申し上げたい、かように思います。  次は、財形住宅融資の問題について資料などを拝見いたしましても、実績と融資枠が余りにも開きが大きい、こういう現実であります。六十年度の場合でも、持ち家の個人融資が六百十七億ですか、分譲融資がわずか十七億です。六十一年度がふえまして一千百五十三億、これは個人融資です。分譲融資はむしろ減っていまして十一億しか借りられてないわけです。にもかかわらず、用意をしております政府の方の融資枠というのは、個人の持ち家の場合で二千六百億、分譲融資の場合も三百十億なんです。もちろんこれはミニ開発というような格好で分譲の場合には事業主がやっていくわけですが、以上の数字が示すとおり、融資枠と決定額の融資をしました実績とのギャップ、これは極めて大きい、こう思うわけです。  それで、その原因を後でお伺いしたいのですが、どう分析をされているのか。このギャップを埋めていくために、今後どう対応されようとしているのかということをお伺いしたいと思いますが、私なりに思いますのは、今日の地価高騰、土地政策の問題、もう都内では勤労者は土地を買って持ち家ということは全く不可能ではないか、このように私は思います。例えば私たち宿舎にいましても、毎日のように、新聞の中にこういう宣伝、これは不動産の関係です。もちろんこれはマンションでも初めの方は非常にハイレベルのものなんです。ところが後の方を見ましても、一番安い例を見ましても、これは都心というふうに言えると思いますね。笹塚のマンションです。非常に狭いです。これが二DKで四千七百万円。五反田、これはマンションなんですが、こういうのは物件としてはめったにないと思いますけれども、坪数が何と十八・五坪、これで五千二百万円。都心から見ますと少し郊外に出ていますが、三鷹の場合、これはなるほど土地が広い、八十坪あります。三億二千四百万円です。もっと小さな土地で久我山、四十坪です。一億五千万円です。これが経済大国日本の東京の言うならば住宅事情を端的に物語っているわけです。こんな高いマンションや持ち家をとても購入できるはずがありません。マンションをどうにか無理をして買うということになっても、親子二代で借金を返済できない状態じゃないか、こう思っているわけです。まさに勤労者は、東京で一千二百万の方々がお住みですし、勤労者が圧倒的多数を占めているわけですが、もう家は持つなということです。生涯全然そのことの展望が見出せないという非常に厳しい状況の中で生活をされているわけです。経済大国といいますけれども、住居あるいは土地の問題については、まさにこれは後進国だと言っても過言ではないと思う。このような異常な状態にメスを入れなければいかぬ。すなわち、抜本策を講ずることなしに融資制度の改善策を論じてみたって、どうにもこれはかみ合わないと思うのです。焼け石に水というのじゃなくて、焼け石に水というのは、お金を借りてやっていくというかい性のあるケースを言うのであって、焼け石に水どころか全然手を染めることもできない、どうにもならぬところへ追い込まれているのじゃないか、私はこう思っております。  国民にしてみれば、抜本策の早期確立を切望しているわけです。これは非常に難しい。もちろん国土庁が中心に土地政策、住居の問題もやっていかれる。所管庁ではそういう仕組みなんでしょうけれども、これは労働行政を預ってみえます労働省として、このままじゃどうにもいかぬだろう。日本だけがどうもその点の努力を怠っていると言われてもやむを得ないのじゃないですか。隣の韓国もどうにかやっています。台湾も行ってみましたがやっています。シンガポールもやっています。言うならば、アジアNICSとか、ASEANまでは言いませんが、そういう開発途上国の国家でも、一定の土地政策なり住居の問題を解決しながら、財産権、私有権に対して公共性を、あるケースについては優先をさせながら、共有財産である土地そのものをどう平等に分かち合うかという政策に切り込んできているわけです。ただ全く野放図というか手をつけていないのが日本の場合ではないか、私はこのように断言してはばからぬわけですが、こういう実態の解決をどうしてもやっていかなければいかぬ。したがって労働省、もちろんこれは関係省庁等が一体となってこの問題にメスを入れていくという決断を私は強く迫りたいと思うのですが、答弁をひとつ聞かしていただきたい、かように思います。
  102. 石岡慎太郎

    ○石岡説明員 先生御指摘のように、財形持ち家融資の貸付実績を見てまいりますと、年々着実にふえてはいるんですけれども、融資枠に対しまして、その実績がもう一つ振るわないといった事実が確かにございます。  このように融資の実績が必ずしも十分に進んでいない原因といたしましては、他の公的融資に比べまして、財形持ち家融資の貸付金利が今まで相対的に高かったこと。あるいは融資条件といたしまして、融資を受けられる人は財形貯蓄を三年以上やっていなければいけなかったこと。それから制度のPRが必ずしも十分ではなかったことなどなどのことが考えられます。したがいまして、昨年も法改正をお願いいたしまして、融資条件である財形貯蓄の期間を三年から一年に短縮していただきました。また融資額も、今まで財形貯蓄残高の五倍までしか貸し付けなかったのですが、これを十倍まで貸し付けることにいたしまして、財形融資の魅力も高めさせていただきました。それから法改正ではなくて、予算措置によるものでございましたが、高かった貸付金利の引き下げも行ったところでございます。現在は財形持ち家融資の貸付金利は、その結果四・五五%となっております。住宅金融公庫の金利が現在四・五〇%でございますから、財形の金利は住宅金融公庫の基準金利に近いものになっております。その他中小企業へのPRにも予算をとりまして意を用いてきたところでございます。  今後、これらの措置ないしは制度をさらに改善いたしまして、財形持ち家融資の活用の促進を図ってまいりたいと思っておりますが、やはり最大の問題は土地の価格の高騰でございます。この点につきましては、我々も臨時行政改革推進審議会の検討状況を見守りつついろいろ検討しているところでございますが、労働省といたしましても、地価対策についての調査研究などもやっているところでございます。
  103. 中村太郎

    中村国務大臣 地価対策あるいは住宅対策につきましての御意見は、全くお説のとおりだと承知をいたしております。当然のことながら、政府全体で取り組むべき課題でございまして、目下のところ、臨時行政推進審議会の本格的な答申を踏まえまして、国土庁を中心にこれから真剣に取り組んでいかなければいけないというふうに考えております。  また労働省としましても、勤労者の住宅あるいは勤労者の持ち家制度ということから考えましても無関心ではいられないわけでございまして、その立場に立っての調査研究を新しい年度から推進することになっておるわけでございます。この問題について今後とも一生懸命精いっぱいの努力を傾けてまいりたいと考えております。
  104. 伊藤忠治

    伊藤(忠)委員 ひとつ本腰を入れていただいて、最大限の取り組みをいただきますように強く要望いたしまして、私の質問を終わります。
  105. 稲垣実男

  106. 田中慶秋

    田中(慶)委員 労働安全衛生法の一部を改正する法律案について、若干質問をさせていただきたいと存じます。  日本の経済そのものが国際化となってきているわけであります。そういう中で産業構造の変化からあるいはまた円高の問題を含めて海外派遣の労働者が増加の一途をたどっているわけであります。こういう関係の中で、聞くところによりますと、日本企業が海外進出している中で、例えばバンコクとかジャカルタ等でそれぞれの疾病あるいは事故等々が毎月出ている、こういう話も聞いているわけであります。こういうことから、海外の現地法人は現地の法のもとにあることもあって、安全衛生教育あるいは健康診断が十分に行われていないのではないか。労働者の安全衛生や健康診断について具体的な指針や基準が明らかでない、こういうことが指摘をされておりますけれども、これらについてどのような見解をお持ちでいるか、お考えを承りたい。
  107. 中村太郎

    中村国務大臣 仰せのように、国際化の進展に伴いまして、海外で勤務する日本人労働者は逐年増加する傾向でありますし、これら労働者の安全と健康を確保するための施策の充実が重要であると考えておるわけでございます。このため、労働者を海外の事業所に派遣する際及び帰国後に、当該労働者に対し事業者による健康診断並びにメンタルヘルスを含めた安全衛生教育が実施されることとなるよう、法令の整備を含めまして、必要な対策を十分検討してまいりたいと考えています。
  108. 田中慶秋

    田中(慶)委員 いずれにしても、海外労働者はあるいは現地法人を含めて大変多く、日本の産業の活躍というのは国境を越えておるわけでございますので、ぜひ早急に検討していただきたい、こんなふうに思うところであります。  さて、今度の安全衛生法の改正案の中で、健康保持増進措置の実施のため労働大臣指針を公表することになっているわけであります。指針の策定に当たっては労働者側の意見を十分に聞く必要があろうと思います。さらにこの健康保持増進の実効ある推進のためには、産業医制度の強化というものが不可欠であろうかと思います。産業医制度の強化のため、具体的な施策というものをどのようにお持ちなのか。この二点にわたってお伺いをしたいと思います。
  109. 野見山眞之

    野見山政府委員 まず、健康保持増進措置の実施のために指針を策定することになっておりますが、この策定に際しましては、学識経験者から成る委員会におきまして、専門的立場から検討していただくということにいたしておりますが、これを公表する場合には、中央労働基準審議会の場を通じまして労働者委員の参加をいただいておりますけれども、労働者側あるいは事業主の方々の御意見を十分拝聴してまいりたいと考えております。  第二点の産業医制度の充実強化でございますが、職場における健康保持増進対策を実効あるものにするためには、産業医による専門的な指導が重要であることは言うまでもございません。今回の改正におきまして、衛生委員会等の調査審議事項に労働者の健康の保持増進に関する事項を加えたことと同時に、産業医を衛生委員会等の構成員とすることといたしております。さらに産業医活動の活性化を図るという観点から、産業医の職務内容の明確化を図っていくこと、あるいは産業医に対する研修活動の強化あるいは産業医としての職務の執行に必要な研修を修了した人を優先的に産業医として選任していただくというようなことなどにつきまして、事業者に対して必要な指導等を講じてまいりたいと考えております。
  110. 田中慶秋

    田中(慶)委員 この産業医の問題を含めて、ある一定規模の企業は今局長から言われたような具体的な検討や措置ができると思います。そこで選任義務のない小零細企業についても、実質的な産業医の役割が果たせるような措置が必要と思いますけれども、この辺をどのようにお考えになっているのか、お伺いをしたいと思います。
  111. 野見山眞之

    野見山政府委員 お話しのような小零細事業場においても、医学的な指導助言等を行える体制を整備することは重要でございますので、事業者からの労働衛生に関する相談等に応ずる医師の体制のあり方、その実効性につきまして、今後具体的に検討をしてまいりたいと考えております。
  112. 田中慶秋

    田中(慶)委員 これはいずれにしても、それぞれ事業主も現実には大変心配をしておりますけれども、なかなかそういうところまで踏み切れない、こういう問題があるわけでありますから、これは当然行政側あるいはまた労働省として具体的に何らかの措置をとらない限り、この日本の産業を支えている中小零細企業人たちに対する健康管理というのはできないと思いますので、この労働安全衛生法の趣旨からしても、これをもっともっと具体的に明確にすべきだろう、こんなふうに思いますので、この辺について再度見解をお伺いしたいと思います。
  113. 野見山眞之

    野見山政府委員 今御指摘になりました行政側の対応のあり方を含めまして、考えてまいりたいと思います。
  114. 田中慶秋

    田中(慶)委員 ぜひお願いをしたいと思います。  また、最近の疾病そのものを考えてみますと、全体的に健康診断の診断項目というものが、これは時代とともに大変変わってきております。最近の疾病あるいは死亡状態を考えてみますと、成人病と言われるものが、すなわち高血圧の問題あるいはまたがん、さらにはまた心臓等々の問題が非常に全体的なウエートを占めているわけでありますから、こういう問題について、やはり項目として導入する必要があろうと思いますし、また高齢者に対する診断の強化ということも私は必要ではないかと思いますが、この辺はそれぞれ質疑をされていると思いますけれども、この辺について再度お考えをお伺いしたいと思います。
  115. 中村太郎

    中村国務大臣 労働安全衛生法に基づく健康診断の実施項目につきましては、労働者の高齢化に伴って御指摘のような高血圧症、心疾患、糖尿病等の増加が見られるなど、疾病構造が変化をいたしておるわけでございます。医学の進歩に伴いまして種々の健康診断項目が精度よく比較的容易に実施できるようになってきたことを踏まえまして、また本年の一月二十九日には中央労働基準審議会から労働大臣に提出されました「労働安全衛生法令の整備について」の建議の中におきましても、このことが提起をされておるわけでございまして、その一層の充実を図ることが必要であると考えておりますので、その項目も見直すことを今考えておるわけであります。
  116. 田中慶秋

    田中(慶)委員 日本の産業が大きく発展するに伴って、そこに公害、有害の問題が出てきているわけであります。そこで有害物質を取り扱う業務あるいはまたこれらに従事する労働者に対して、職場環境の問題はそれぞれ労働省が積極的に指導してまいりましたけれども、これらに対する特殊健康診断の項目の拡充等々については、いま一歩、こういうふうに言われているわけでありますが、その必要性をどのように考えているのか、お考えをお伺いしたいと思います。
  117. 野見山眞之

    野見山政府委員 有害物質を取り扱う作業環境や作業内容の変化等、さらには医学の進歩等の状況も反映いたしまして、ただいま大臣がお答え申し上げましたように、一般の健康診断と同様、特殊健康診断につきましても、その状況の変化に対応した充実につきまして検討してまいる方針でございます。
  118. 田中慶秋

    田中(慶)委員 ぜひこれはこれからも大きな産業構造の変化が伴ってこようかと思いますが、随時そういうものがチェック項目といいますか拡大できるように検討しておいていただきたい。要望しておきたいと思います。  そこで、先ほどもお話が出ておりましたが、OA化に対応したトータル安全衛生施策の推進が重要な問題になってきていることは言うまでもありません。これらに対してどのように取り組むのかという問題が一つ。さらにまたOA化関連してVDT労働の安全衛生を次回の改正に対して安全衛生法本体に組み込む、こういう姿勢が必要であろうと思います。これらについてどのようにお考えになっているのか、お伺いをしたいと思います。
  119. 野見山眞之

    野見山政府委員 マイクロエレクトロニクスを中心といたしました技術革新によりまして、オフィスオートメーション化が各分野で進んでいるわけでございまして、これに対する健康への影響等がいろいろ指摘されているところでございまして、今お話しのように、労働省におきましては、先ほど来御質問のありましたVDT作業における労働衛生管理の問題、あるいは今後OA化進展に対応いたしまして、事業所におきます安全衛生対策についての総合的な検討をさらに進めてまいりたいと考えております。  また、VDT労働者の安全衛生対策に関する安全衛生法本体への組み込みの問題でございますが、先ほど来御質問をいただきましたように、本年度VDT作業に関する実態調査を行う予定でございまして、これらを踏まえまして指針の見直しを含む検討を進めてまいるわけでございますが、これらにつきましては、健康への影響につきまして、まだ未解明の状態もございますので、今後ともさらに調査研究、さらに知見の集積に努めていった上で本体への組み込みについて考えてまいりたいと考えております。
  120. 田中慶秋

    田中(慶)委員 事、人体、生命というのは大変大切なことであろうと思います。そういう点では、今局長がそれぞれ検討され調査をする、こういうことでお話が出ているわけでありますけれども、やはりこの安全衛生法本体に対する組み込みというものはもっと積極的に取り組んでおかなければいけない問題であろうと思います。この問題が逆におくれてしまいますと、これからの新しい産業技術革新に対する取り扱いに影響等々も出てきようかと思いますので、これはもっと積極的な姿勢というものが要求されてきていると私は思います。この辺について再度前向きな、もう一歩突っ込んだ形で御答弁をいただきたいと思います。
  121. 野見山眞之

    野見山政府委員 労働者に対する安全衛生対策が後手に回りませんように、必要な調査研究を進めますと同時に、さらに医学的な情報の収集等を含めまして、後手に回らないような積極的な対応を考えてまいる所存でございます。
  122. 田中慶秋

    田中(慶)委員 今後手に回らないということでありますから、それを了としますけれども、技術革新の方がもっと進んでおりますので、これは大変重要なことだと思っております。ぜひ積極的に取り組んでいただきたいと要望しておきたいと思います。  そこで、先ほども申し上げたように、日本の経済そのものの国際化に伴って、OECDでは化学物質の有害性について調査方法や基準など国際的共同化を進める構想があると聞いておりますけれども、我が国の制度もこれに対応すべきであろう、こういうふうに言われておりますけれども、この辺についてどのような見解をお持ちなのか、お伺いをしたいと思います。
  123. 野見山眞之

    野見山政府委員 OECDにおきましては、加盟各国が化学物質の有害性に関しましてOECDが確立いたしましたテストガイドライン、いわゆる有害性調査の統一的な試験方法あるいはOECDの優良試験所基準、いわゆるグッド・ラボラトリー・プラクティスと言われております試験機関が備えておくべき基準でございますが、これを採用すべきこと、さらにはこのGLPに合致いたしました機関においてテストガイドラインに従って得られたデータを各国間で相互に受け入れるということを決めているわけでございまして、これによりまして同一物質に対します重複した試験を避ける、あるいはデータを相互に利用していくということを促進するということによりまして、有害性調査の斉一化が進められているところでございます。  労働省におきましては、既に化学物質の有害性調査の試験結果の信頼性を確保するために、このOECDの勧告を踏まえつつ、六十年十月に基準を作成して、これに基づいて関係者の指導を行ってきたところでございます。しかしながら、この基準につきましては、労働省が個々に確認する制度とはなっていないということもございまして、この基準が十分に担保されていないという面もございます。したがいまして、今回、このような国際的な動向も踏まえまして、新規化学物質の有害性調査の制度を法的に確保することを目的といたしまして、今回の法律改正の中に有害性調査を行う機関が一定の水準を備えること、またこの調査が一定の基準に従って行われるべきこととするための内容を盛り込んでいるところでございます。今後ともこのような国際的動向を十分踏まえながら対応してまいる所存でございます。
  124. 田中慶秋

    田中(慶)委員 特に改正法の五十七条の二項に化学物質の有害性に関する項目が掲げられているわけであります。このことについて、今お話もありましたように、調査制度あるいはまたやり方等々について具体的に完全なものにするように要望しておきたい、このように思っております。  そこで、労働災害の問題について若干触れてみたいと思いますけれども、現在労働災害の約半数は機械によるものとされております。しかも近年、大変な科学技術の進歩によって、機械がそれに対応でき得ない状態の中で労災が上昇する傾向にあるのではないかと言われております。欠陥機械の改善、回収命令、今回の改正では安全衛生法四十二条に言う機械が対象となっているわけであります。  それでは、三十七条及び四十三条に言う機械に欠陥がある場合、どのような具体的な措置を講ぜられていくのか、あるいはまたどのような具体的な命令を出していくのか、これらについてお伺いをしたいと思います。
  125. 松本邦宏

    松本(邦)政府委員 今回の改正によりまして創設をいたします欠陥機械の改善命令につきましては、機械等を使用する者がその機械の欠陥の存在を認識できない場合がございます。現行法制の規定の中では必ずしも十分に安全性が担保できない、そういった場合について、改善、回収の措置を講じさせる、こういうことで欠陥機械による災害防止を図ろうと考えているわけでございまして、四十二条の機械につきましては、その機械等を使用する者が欠陥の存在を認識することができない形で欠陥機械が大量に流通することが考えられるということでございますので、四十二条を対象にしたわけでございますが、三十七条のように、製造の許可を行いますボイラー、クレーン、こういった特定機械につきましては、特に危険な機械だということで、製造許可あるいは製造時、設置時の検査、そういった厳重な規制によりまして欠陥機械が市場に出回らないことを制度的に担保いたしておりますので、万が一こういった規制に反して欠陥機械が流通した場合は、個々の機械につきまして即座に使用停止命令を発するということで法違反を問うことができる、こういうことで今回の欠陥機械の対象からは外しております。  それから、四十三条の方につきましても、動力により駆動される機械について、動力伝導部分等についての覆い等の措置が施されていないものの譲渡が禁止をされているわけでございまして、これについても、欠陥の存在確認あるいは改善が容易にできますので、今回の措置からは一応除外して考えている、こういうことでございます。
  126. 田中慶秋

    田中(慶)委員 こういう労働災害が比較的起こりやすいというのは、今言われた話のように、法的規制があるからとか事前に設置の検査があるからとか、こういうところが盲点になることが十分あるからであります。そんなことを含めながら、事故が起こる前に欠陥機械を事前に発見するための監督やチェック項目が必要かと思いますし、また作業手順等々において、現実にはそのようなマニュアルで行っても、結果として欠陥の機械が発見された場合、どのような措置を講ぜられていくのか、これについても明確でありませんので、この辺も明確にしておいていただきたいと思います。
  127. 松本邦宏

    松本(邦)政府委員 機械等を製造する事業場に対しましては、立入検査等も実施をいたしておりますし、それから機械等を設置する場合等についても、計画の届け出という事前の届け出制度がございます。そういった審査を通じまして、構造規格等に合致をしないいわゆる欠陥機械の発見に努めているわけでございますが、それ以外にも個別の監督指導等におきましても欠陥の機械を発見するようなことがございます。そういったことで欠陥機械の発見に努めているわけでございますが、欠陥機械が発見されました場合には、その製造者に対する調査を行いまして、製造者等が既に譲渡いたしました同型式の機械等について改善あるいは回収あるいは欠陥機械の使用事業場に対する通知、そういった措置をそれぞれに応じてとることによって欠陥機械の排除を行いまして、災害防止を図りたい、かように考えております。
  128. 田中慶秋

    田中(慶)委員 特に最近円高によって輸入機械が非常に多くなってこようかと思います。そういう点では、その説明、手順等々について詳しくその解釈がされていない部分も出てきて、欠陥機械どころか機械操作上の問題も出てこようかと思いますので、そういう点もこれから大所高所に立って、労働者の安全という面からも、ぜひそういう問題も含めて幅広く、欠陥機械という形のデスクワークではなくして、起こるべくして起こるような問題も当然検討されていると思いますので、そういうことを含めてこれからも対応していただけるように、これはきょう通告しておりませんから要望しておきたい、こんなふうに思っております。  そこで、若干財形法の問題に触れてまいりたいと思います。  先ほども大臣から述べられておりますけれども、今回の財形法の問題、それぞれ制度を補完する意味で、あるいはまた逆にこれを多く利用していただく意味で大変な努力をされていることは高く評価をしたいと思っております。しかし、残念なことに労働者の持ち家というものが、地価の高騰を初めあらゆる諸条件の変化に伴ってなかなかマイホームの夢そのものが遠い、こういう形の中で現在財形の持ち家融資についても、その活用が進んでいないように思うわけであります。やはり金融機関だけの問題ではなくして、全般的な政策的な問題も今回あろうかと思います。こういう点についてどのようにお考えになっているのか、まずひとつお伺いをしたいと思います。
  129. 野見山眞之

    野見山政府委員 持ち家融資につきまして、十分な活用が進んでいないという状況につきましては、先ほど来状況を御説明申し上げたとおりでございます。それに対応いたしまして、金利の引き下げあるいは融資条件の緩和あるいは制度のPR等改善措置につきまして努力をいたしておるところでございますけれども、今後さらにPRに関する予算的な措置等も加えまして、その他制度の改善につきましても、今後福祉ニーズの調査等も踏まえまして、なお改善措置について努力をしてまいる所存でございます。
  130. 田中慶秋

    田中(慶)委員 この問題については長いことそれぞれ論議をされてきたし、財形ができる部分についても私も承知しております。しかし、例えば昨年も改正されました、一年積み立てておいて十倍の問題。しかしその制度より地価の高騰や社会的条件の方が非常に先、先という形で進んできているというか、そういう問題に手の届かない状態もあろう、こんなふうに思っているわけであります。  地価の検討とかあるいはまたそういう問題を含めて先ほど議論されておりますけれども、これは単に労働省がそういう問題を検討したところで始まる問題ではないと思います。国の政治姿勢として具体的にこの持ち家制度をするためには、例えば欧米並みに年間収入の三ないし五倍で持ち家ができるような具体的な制度をちゃんとしていかなければできないわけであります。需要と供給、あるいは土地が商品化されているような日本の現状を見たときに、労働者の持ち家というのは絶対できません。そんなことを考えたときに、やはりこれは単なる労働省の、せっかく財形というものを利用していただく意味からしても、こういう問題については、これは大臣にお伺いしたいわけでありますけれども、総体的な政治課題として取り組んでいく必要があろうと思いますけれども、大臣、いかがですか。
  131. 中村太郎

    中村国務大臣 仰せのとおりであると存じております。先ほどもお答えをいたしましたように、とにかく一労働省だけで解決できる問題ではありません。政府全体で強力なリーダーシップを発揮しながら総合的な対策を確立する以外にないと思うわけでございまして、政府といたしましても、御承知のように、臨時行政改革推進審議会の本格的な答申も踏まえながら、その中で国土庁を中心に抜本的な解決のための取り組みをしなければいけないというふうに考えておるわけでございまして、これからも、その中にありまして労働省は勤労者の福祉向上という面での持ち家対策というものを検討の課題に入れていかなければいけないということで、今新しい年度からこのための研究をいたしておるところでございます。
  132. 田中慶秋

    田中(慶)委員 研究されているということであるからついでにお願いしたいことは、労働者住宅そのものが、それぞれの生協やいろいろなところでお持ちである土地とか、総体的にそういうものを含めて、全体的な持ち家制度というものが、何らかの法の規制をしながらも抑えられて、持ち家をできるような制度でいかなければ、絶対に今の状態の中では持ち家そのものができなくなってくる、これを私は大変心配しているわけであります。国土庁が幾ら努力をしようとしても、国土庁そのものがはっきり申し上げて調整機能がないわけであります。そういう点では、全体的な問題として、労働省だけが云々という問題ではありませんけれども、労働省労働者の持ち家制度を論じるのであれば、そういうところまで一歩突っ込んでやらなければできない問題であります。そういう点では、労働省で具体的に調査検討をするということであるならば、そういうことも含めて検討していただきたい。これは要望しておきたいと思います。  先ほど財形の問題でも、例えば課税の限度額五百万を一千万に引き上げるべきである、こういうことでそれぞれ前の質問の中で述べられておりました。こういうことは、やはり現在の情勢に合った形の中で、五百万から一千万、やがては一千五百万、二千万、そういうスライドができるような制度でなければいけないと私は思うのです。そのために、現実にはこの制度をなかなか利用できない問題があっては困るし、総体的な高齢化社会の問題も出てくるわけでありますから、こういう問題について、この限度額の問題あるいは財形の問題で中小企業の中に余り普及していないことを見ても、制度の見直しあるいは魅力ある商品づくり等々を含めて検討していかなければいけないだろう、こんなふうに思っているわけでありますけれども、これらに対する見解をお伺いしたいと思います。
  133. 野見山眞之

    野見山政府委員 今後財形制度を中心に勤労者福祉充実を図っていくという観点から、労働省といたしましても、今年十月以降、勤労者福祉部の設置など機構面、また調査研究も含めまして、勤労者福祉充実のための対策につきまして、さらに努力をしてまいる方針でございます。
  134. 田中慶秋

    田中(慶)委員 きょうは本会議もありますので、あと一問ぐらいでそれぞれとめておきたいと思いますけれども、例えばこの財形も、単に制度をつくったり福祉部をつくったところで始まる問題じゃないわけです。要はそれぞれの立場に立った、財形を利用される立場に立った制度でなければいけない、こんなふうに思いますし、このことが本当に中小零細の人たちまで普及されていくためにはどうしたらいいのだろう。町の声も聞きなさいよ、中小企業の経営者の声も聞きなさいよ。そういうことがあって初めてこの商品というものが完全なものになっていくのだと思います。デスクワークだけでやったところで、やはりそれはお役所仕事にならざるを得ないわけであります。今持ち家制度で、本当に困っている労働者人たち福祉として国の制度としてやるのだったらば、今度調査機関を設けるということですから、そういう人たちのアンケートをとったり、中小企業人たちが本当にこの制度を利用するための具体的な施策はどうあるべきかということを検討するとか、そういうことで私は一層の内容の充実というものが望まれるような気がしてならないわけであります。  最後になりますけれども、大臣の見解を述べていただいて、私の質問を終わりたいと思います。
  135. 中村太郎

    中村国務大臣 勤労者の財産形成促進制度は、御承知のように、昭和四十六年制定以来、今日まで五回にわたりまして法改正を含めて着実に制度の改善が図られてきたところでございます。完全ではございませんけれども、現在では貯蓄、融資の両面にわたりまして、広範な内容を有する福祉制度として勤労者の生活には広く定着してきているのではないかというふうに私どもは理解をいたしておるわけでございます。しかしながら、一方では、今御指摘になりましたように、財形持ち家融資の利用が低調である等の問題もありますので、これも御指摘のように、勤労者の福祉に対するニーズ等も十分調査しながら、そのことを踏まえて制度の一層の充実が図られるよう今後とも積極的に取り組んでまいる所存であります。
  136. 田中慶秋

    田中(慶)委員 せっかくこの財形法ができて、仏つくって魂入れず、こんなことにならないように、これは労働者福祉の面からも、労働者の持ち家制度やあるいは長寿社会の問題からも、これは今私が述べあるいはまたそれぞれの質問があったと思います。そういうことについて、労働省としてより積極的にこのことが皆さん方の福祉の目玉であるというぐらいに自負するような内容の充実をぜひ図っていただけるように強く要望して、私の質問を終わります。
  137. 稲垣実男

    稲垣委員長 この際、暫時休憩いたします。     午後零時五十一分休憩      ────◇─────     午後一時三十三分開議
  138. 稲垣実男

    稲垣委員長 休憩前に引き続き会議を開きます。  質疑を続行いたします。平石磨作太郎君。
  139. 平石磨作太郎

    ○平石委員 まず大臣にお伺いをいたしますが、少なくとも仕事を進める上については、まず労働者を保護する、そして特に作業現場における労働者の安全衛生を確保することは、少なくとも労働行政の上からも、また企業においても、このことについては特に努力をしていかねばならないものである、こう理解するわけですが、我が国が高度成長期に入って生産活動が活発化してきた、さらに技術革新進展あるいは有害物の製造、こういったように安全衛生を阻害する要因、これが非常に多くなってまいったわけでございます。したがって、労働者は常に危険と同居しながら作業が行われておる、こう言っても差し支えがないわけであります。  そういう意味から、おたくの方で、労働省の方で出しております統計を見てみますと、交通事故とかあるいは火災による災害、こういったものと比較をしてみますと、労働災害は比較にならないほどまことに多く発生しておる、こういう統計がうかがえるわけでございます。そういった意味で、さらにME化による産業構造の転換とかあるいはME化によるところの各種の機器、こういったものが作業の現場に導入されて、そして新しい労働災害が多発してきておる、こういうような新時代をも迎えておるわけでございまして、今後のそういった防止対策等を含めて、ひとつ大臣のこれからの対応についてお伺いをしておきたいと思うわけです。
  140. 中村太郎

    中村国務大臣 労働災害につきましては、昭和三十七年をピークとしまして逐年減少を続けてまいりましたが、御指摘のように、現在なお八十一万人の方々が被災をしておるわけでございます。これら労働災害の多くは中小企業において発生しておりますし、労働災害発生率の規模格差というものは、拡大する傾向にあることから、中小企業労働災害防止が重要な課題の一つであると考えておるところであります。また高年齢労働者労働災害の発生率が高く、増大する高年齢労働者労働災害の防止も大きな課題でございます。さらにまた御指摘がありましたように、ストレスの増大による心の健康も含めた総合的な健康対策の推進も重要な課題であると承知をいたしております。  今後ともこれらの課題を十分考慮しながら、総合的な安全衛生対策を推進してまいることが大変重大であると考えております。
  141. 平石磨作太郎

    ○平石委員 今大臣お述べいただきましたように、大変いろいろな災害要因があるわけでございまして、これに少なくとも労働省は対処をしてまいらなければならないわけでございます。したがって、今日まで建設業とかあるいは製造業とかあるいは陸上貨物取り扱い、この労働省の示しておる統計の中で最も死傷者災害の発生率の高いのは、今の三つの業種、統計から見てみましても、少なくとも七〇%はこの三つの業種によって占められておるわけです。したがって、これは当然のこととして、これらに重点的に行政が行われなければならないと思うわけであります。  こういう中で、今回労働省労災防止計画の案が出ておりますが、これで見ますと、三〇%減を目標としてやる、こういうようなことが書かれておるわけです。この達成ということは非常に厳しいのではなかろうか、このように思うのでありますが、これについての見通し、対策等ひとつお答えをいただきたい。
  142. 松本邦宏

    松本(邦)政府委員 先生御指摘のように、労働災害の大半が小規模事業場で発生していることは事実でございます。今回の第七次の労働災害防止計画の上でも三〇%という目標をつくらせていただきましたけれども、やはりこの達成のためには、中小規模事業場における災害防止が大切であろうというふうに認識をいたしているわけでございまして、我々の監督指導の重点も当然この中小零細事業場に置いているわけでございますが、その中でも、特に死亡等を見ますと建設業が非常に多いわけでございまして、この建設業におきます小零細事業場の労働災害防止、これについてはやはり我々としても重点的に取り組んでいかなければならないというふうに認識をいたしております。  建設業につきましては、特に元請、下請関係というような形で行われることが多いものでございますから、元請業者の方にもある程度の責任を持たせまして、中小零細規模の事業場の指導等をやらせているわけでございまして、そういった元請、下請関係を通じて、あるいは関係のいろいろな専門工事業者の団体その他の団体等がございますので、そういった団体等を通じても、災害防止活動の促進を図ってまいりたいというようなことで努力をいたしまして、何とかこの三〇%の目標達成に向けて努力をいたしたい、かように考えておる次第でございます。
  143. 平石磨作太郎

    ○平石委員 今お答えの中で、小規模企業で特に多発している、こういうことを言われたわけですが、「総合的な安全衛生対策の推進」ということで、中央労働基準審議会からの報告の中でそのことが指摘をされておるわけでございます。したがって、統計の上から見ましても、今お答えにありましたように、建設業における死傷者というものが非常に多く出ておって、しかも建設現場における建築工事が五一・八%、まさに半分以上、それから土木工事が三五・九%、合わせますと八七・七%というのが建設業における事故の比率であります。それを内容的に見てみますと、一人から四人の労働者数の工事現場が二三・九%、それから五人から十五人という工事現場が四七・八%、少なくともこの八七・七%のうちで一人から十五人までの小規模のところで七一・七%というのが出ておるわけです。まさに今御答弁にあったとおりでございますが、やはりここのところを集中的に安全対策を講じなければならないのではなかろうか、私はこういう気がします。  この状況は、過去さかのぼっての数字を調べてみますと、やはりずっとさかのぼってそういう数字があるわけです。したがって、三〇%を達成するということについても、これはなかなか至難のわざではなかろうかという気がするのでありますが、こういった小規模の事業場についてどのように対策考えるか。それからこの小規模の中で安全衛生推進者を置くのが十人以上五十人、こういうことになっておりますが、これは建設現場に適用されるのかどうかわかりませんけれども、少なくともそれ以下のところは何の手だてもない、こういうことでは三〇%減達成も非常に厳しいのではなかろうか、こういう気がしてならないわけでございますが、これについてひとつ具体的な対応策をお話しいただきたいと思います。
  144. 松本邦宏

    松本(邦)政府委員 建設業の特に小零細規模事業場におきます災害防止というのは、先ほどもお答えいたしましたように、我々としても最重点で考えているところでございます。したがって、建設業につきましては、他の業種とは違いまして、こういった元請組織を通じての協議組織のようなものも設置させるように法律では義務づけておりまして、小規模な下請事業者については一九請の方にある程度の責任を持たせるという形でやってきております。あるいは上下水道工事のように、比較的小規模事業場が施工することが多い場合には、発注機関との連携の強化を図ったりいたしておりますし、それから木造家屋建築、これなどはまさに零細な事業者がやっているわけでございますが、建築行政機関との協力関係あるいは専門工事業団体等の指導を通じまして、自主的な災害防止活動の促進を図るというようなことでやってまいったわけでございます。  今回御指摘のように、五十人未満の事業場につきましても、十人以上のところについては安全衛生推進者のようなものを設置していただくということで、一層の安全対策の強化を図る所存でございますが、十人未満の事業場につきましては、規模が小さいこともございますので、事業主の目が行き届くであろうということもございまして、法律的な義務づけということでは考えておりません。段階的には、やはりそういったところについても安全管理体制の指導を強化する必要があるであろう、かように考えている次第でございます。
  145. 平石磨作太郎

    ○平石委員 今元請、下請、孫請というようなことが出てきたわけですが、工事現場においては、元請が一応発注者から仕事を受ける、そしてその現場における作業そのものはほとんどが下請と孫請がやっておる。この計画について元請の方に行政指導がいく。それで孫請、下請の方へは余り、余りというよりも直接の指導は行われていない。  昔私は職業病のいわゆる振動病のときにここで発言をしたことがあるのです。これは高知県のことでありましたが、高知県のお百姓が農閑期に二十年来ずっとパルプ材の伐採に入っておったわけです。ある大きな製紙会社から、農閑期になりましたが、今年もまた来て、山でパルプ材を切ってほしい、こういう要請が来る。そうすると、その人は隣近所の若い者を連れてその山に入るわけです。そしてその山に二十年、毎年毎年農閑期に行っておったわけでありますが、連れていっておったその若い者に振動病の白ろうが出た。そこでこの人を救済するために手続をとりますと、その製紙会社にはそういう労務者はいませんと、こうなったわけです。そんなはずはないということでやってみますと、会社から電話がかかってきたその人が下請の事業主になって、その若い者がその事業主と一緒に山で伐採しておるという形式がとられておる。したがって、大手の会社は、全く安全な作業でございまして事故は発生しておりませんと。現実にはその業者がやっておるところでそういう事故が起きておる。結局、その若い人を救済するのには、会社から請負して下請業者とされておった人が事業主として判をついて救済をした。ところが今度は自分がなったわけです。自分がなって、要求してみますと、会社の方は、あなたは事業主だから救済はできない、そういう者はいないと。私は事業主になった覚えはありません、毎年会社から電話がかかってきて、毎年来て切っておるんだから、ここの労務者なんだと、こう言っていろいろと話はしましたものの、結局受け入れられないということで、この人の救済はなされずじまいです。こういったことから考えたときに、結局作業現場における労働災害というのは全部下請、孫請が受けるのです。だから元請の方は何にも苦痛を感じない。こういう労働実態があるわけです。したがって、このことについては不服の申し立てをして、こちらで審査をしましたけれども、審査でもこれが取り上げられなかったというような経過がございます。  そういったことから考えたときに、そういう作業現場におけるいわゆる労働災害というのは、元請の大きな会社は関係ない、下請、孫請のところに関係がある、こういう形に相なっておることが間々あるのではないか、私はこういうような気がするわけです。これについて一言お答えをいただきたい。
  146. 松本邦宏

    松本(邦)政府委員 建設業につきましては、御指摘のように、孫請、下請、元請関係というような形で行われることが事実でございまして、したがって、もとより孫請、下請のようなところで災害が発生することが比率の上では多いのも確かに事実かと思います。そこで、我々としては、そういう責任を単にそういう零細な事業主にかぶせるだけでは安全管理が全うできないというふうに理解をいたしておりまして、そういった重層下請関係の場合には、元請についてある程度下請についての責任も持たせる、こういうことで協議組織をつくらせるとかあるいは作業場所の巡視をさせるとかあるいは下請、孫請が行います安全衛生教育についていろいろな指導援助を行わせる、そういった形で元請の方にかなり重い責任を統括安全管理という形で持たせるということで安全の万全を期しておる、こういうことでございます。今後とも、さらにそういった下請に対する安全管理が徹底されますように、元請等を通じての管理強化に努めてまいりたい、かように考えております。
  147. 平石磨作太郎

    ○平石委員 今の御答弁は大変結構なことですが、現実にはなかなかそういきません。現実にどのようにしてそこまで手を入れるかということです。作業実態はそういう実態ですから、したがって、発注者からの相手になるのは元請企業が相手になる、表に出ておるのは元請企業です。労働省もそのまま元請企業に行くわけです。元請企業、下請、孫請をよく見てあげてくださいよという程度のことでは、今言ったようなことに相なってしまうわけです。そのことを労働当局は十分承知しておってもらわないと、被害がそういうところへ出て救済が行われないというようなことが現実に出てくるわけです。  ここの報告の中にも出ております。「中小企業における労働災害の現状と課題」で「中小規模事業場においては、労働災害の発生率が高いが、これら事業場においては、労働安全衛生法に規定されている労働災害防止のための諸策がとかく怠られがちな状況にある。このような中小規模事業場における労働災害の発生を防止するためには、何よりも事業者の安全衛生問題に対する理解と熱意が重要である」この理解と熱意を元請に持たせていただけるかどうか、そういうことがここにも指摘があるわけであります。「現実には、事業者は、経営問題等に忙殺されて十分な時間的余裕がない場合が多い。」したがって、効率効率という形で安全については全く、全くではありませんけれども、比較的忙殺されて時間的余裕がない、こういうことが指摘されておるわけです。「ME化をはじめとする最近の技術革新は、中小規模事業場にも幅広く取り入れられ、安全衛生に関する専門的知識が必要となっていることから、事業者だけでは必要な安全衛生面での対策を講じ得ない場合も増大している。」だから、私は労働当局がこの「対策を講じ得ない場合も増大している。」という状況を認識してもらって、そして元請企業が十分孫請、下請の働いておる人たちを救済していくようなことを現実にとってほしい、こう思うわけで、これは強く要望しておきたいと思うわけです。ちょっと大臣、このことを一言お答えを言ってくれますか。
  148. 中村太郎

    中村国務大臣 実際的にはお説のような面が十分あると思うわけでございまして、それだけに労働省としましては、きめの細かい、場合によっては、実態調査などをしながら行き届いた配慮をしていかなければいけないなということを感じた次第でございます。
  149. 平石磨作太郎

    ○平石委員 今の大臣のお答えも、結局それぞれの制度の上での整備が整っていない、現実に現地においてはなかなか難しいのではなかろうか、こういうことが思われますので、当局の方は、そういった面でどのようにしてその災害を受けた労働者の救済ができるのか、これはひとつ制度の上からも御検討いただきたい、このように強く要望をしておきたいと思うのです。  それから、安全基準ということ、これについてこの統計を見ますと、いわゆる「定期監督等実施状況及び労働安全衛生法関係法違反状況」という統計がここに出ております。これを見てみますと、安全基準違反というのは最も多いのですね。これは二二・六%になっている、ダントツです。ほかが大体〇・何%とかあるいは三・三%程度でありますが、安全基準違反という衛生法違反状況が二二・六も構成比の中に出ておる。その次に出ておるのが健康診断の違反です。この安全衛生法違反の監督の上において、いわゆる定期監督の中で出てきておる違反状況、これはずっとこれを通覧したときに、これだけの項目にわたっての調査が行われるのでしょうが、大きいのはこの二つだけですよ。安全について労働当局といいあるいは業者といい比較的関心が薄いということがこの状況の報告の中でわかるわけです。これは六十一年度調査であります。これをどう考えますか、一言。
  150. 野見山眞之

    野見山政府委員 労働基準行政におきましては、労働基準法あるいは労働安全衛生法の遵守の徹底ということを目的といたしまして、個別の事業場に対する監督指導等に努めているところでございますが、その結果、監督をいたしました事業場のうち法違反の状況が各面にわたって見られるという点は先生の御指摘のとおりでございます。ただ、監督指導対象として選定する事業場につきましては、危険、有害業務の有無など総合的に勘案した上で選定をしているという状況でございますので、この違反率が我が国全体の安全衛生水準をそのまま反映しているというものとは考えておりませんけれども、しかし、いずれにいたしましても、監督いたしました事業場におきましてかような違反状況が発見されるということでございますので、今後さらに監督指導を強化すること、あるいは集団指導を実施すること、さらには事業者団体自身による自主的な安全衛生活動を促進するなどさまざまな手法、措置等によりまして、安全衛生水準の改善にさらに努めてまいる所存でございます。
  151. 平石磨作太郎

    ○平石委員 私は、やはりこういった安全基準にしてもすべての制度にしても、問題は熱意を持ってやるかどうかにかかっている、このように思うわけですよ。この違反事業場数というのは、一番末尾にありますから、これを見てみましても、これは労働安全衛生法関係のみではありません、労働基準法違反等も含まれておるという注がありますが、これでも五六・八%。だから、これは監督等実施をしたところではあろうけれども、半分以上のものが違反になっておる。労働省もなかなか大変だとは思うのですけれども、こんなに違反が多い。これは考えねばならぬ点ではなかろうか、こう思うわけです。したがって、私は、日本の企業、いわゆる働け働けということで高度成長がなされてきたわけでありますが、問題はどう効率よく企業業績を上げていくか、作業を上げていくか、どう効率よく仕事を進めるか、これを重点的に経営者にしてもあるいは働いておる人たちにしても思うわけです。ついつい安全ということに気が余り注がれないという結果がここへ出てきておるのではなかろうか、こういうような気がしてなりません。  後で触れたいと思うのですが、さっきの指摘の中でも私ちょっと気がついたのですが、欠陥の機械、この欠陥とは一体何なのかということを私は思うわけです。安全衛生上、機械が欠陥なのか。普通は欠陥機械といえば、作業効率を上げる上にその機械の機能が非常に悪いとか、これを欠陥と普通は言うのです。だから作業効率を上げるための能力の高い機械、これは安全が比較的考えられていない。だから欠陥機械を発見して回収をします、改善命令を出します。その改善命令を出すのは労働省ですから、安全についての欠陥だということに認識をするわけですけれども、現実にはそういった安全をもって欠陥というようなことは普通は考えていない。作業効率を上げること、能力の高いこと、仕事の能力の高いものを一〇〇%いい機械とし、作業効率の悪い機械を、あるいは故障が起こる機械、非常に故障をする、これを欠陥機械という、そこの認識が労働省の言う安全基準に基づいての欠陥なのかどうなのかをやっておられるかどうかちょっと聞いてみたい。
  152. 松本邦宏

    松本(邦)政府委員 我々が欠陥機械と呼んでおりますのは、例えばいろいろな特定の危険の可能性のありますクレーン等の機械については、一応の構造規格のようなものを定めております。その構造規格のようなものに合致をしていない機械、これを欠陥機械と称しておるわけでございます。ただ、合致をしていないからといって必ずしもそれで災害が起こるということではございませんけれども、そういう可能性が高いということで、そういったものを欠陥機械、こういうふうに呼んでおるわけでございます。
  153. 平石磨作太郎

    ○平石委員 その場合に、いわゆる機械の構造については、安全を組み込んだ、安全項目というものを入れた構造、こういうものが示されておるわけですか。
  154. 松本邦宏

    松本(邦)政府委員 そうでございまして、単なる能率を上げるための構造ではございませんで、安全を担保するための構造規格というものを決めておるわけでございます。
  155. 平石磨作太郎

    ○平石委員 そうすると、いわゆる構造に欠陥がある、こういったようなものを把握するのは、これはやはり一応災害が発生をして届け出が来てから、ああそうだったかということで欠陥が指摘されるということに相なるのか、事前にそういったことのチェックが行われておるのか、ここを一言お答えをいただきたい。
  156. 松本邦宏

    松本(邦)政府委員 確かに災害が起こりましてから欠陥が見つかるという場合もございますが、それ以外に機械等を製造する事業場に対する立入検査のような制度もございますし。あるいは機械等を据えつけたりいたします場合に、計画の届け出というのが事前に出てまいります。そういった計画の審査をやっております段階で、そういった欠陥を発見するということもございますので、必ずしも災害が起こってからということではございません。
  157. 平石磨作太郎

    ○平石委員 これで見ますと、やはり一応臨時検査というものがあるようでございます。災害調査、臨検監督、こういうことが「欠陥機械改善命令制度の概要」の中に二つあるわけです。もちろん災害が出た場合は、当然のこととしてそこではっきりわかってくるわけですが、これは結局後追いになってしまう。事前に欠陥機械を発見するということは、もう臨検監督以外にないのではないか、こういう気がするわけです。したがって、この臨検監督によって事前チェックでもって把握し、この機種は安全上、構造上非常に欠陥がありますというような指摘をしていた実績がありますか、どうですか。
  158. 松本邦宏

    松本(邦)政府委員 実績はございます。
  159. 平石磨作太郎

    ○平石委員 そういう実績があれば安心でございますが、この仕事の実態からいったときに、あるいは発見をする実態からいったときに、比較的後追いになるのではなかろうか、こういうような気がいたしますので、事前チェック、事前把握する、こういったことに努めてひとつ力を注いでいただきたい、これは強く要望をしておきたいと思うわけでございます。  それから、安全についての教育、この安全教育、これが大変幾つも書いてございます。この安全教育というのは、現実にはどういうところでどなたが行うのか、ちょっとお聞かせをいただきたい。
  160. 松本邦宏

    松本(邦)政府委員 安全教育につきましては、まず最初は雇い入れ時の教育というのがございまして、雇い入れた際に教育をいたします。それからもう一つは、危険、有害な作業につける場合に、そのつける前に行わせるというようなことになっておりまして、それぞれ当該事業場の専任者といいますか、そうした人がやるわけでございますが、それ以外にもいろいろな災害防止団体等でもいろいろな講習等を行っておるところでございます。
  161. 平石磨作太郎

    ○平石委員 安全委員会だとか衛生委員会、こういったものが取り入れられておるわけでございますが、こういうそれぞれの企業の中で実態に即しての安全教育がなされ、あるいは講習もなされるのであろうと思うのですが、そういうような状況は、労働当局の方は、大体どのようにやっておるのか、あるいはおたくは実施をしたのかしないのか、こういった報告を求めるとか、あるいは企業の中へ入って調査をするとか、そういうことは行っておるのでしょうか、どうでしょうか。
  162. 松本邦宏

    松本(邦)政府委員 安全衛生教育等につきましては、一々報告はもらうことにはいたしておりませんが、記録を保存させることにいたしておりますので、我々が監督に行きました際には、実際に教育が行われたかどうかということのチェックはできるようになっております。
  163. 平石磨作太郎

    ○平石委員 そういった面で安全衛生ということについては今後の労働行政を進める上について非常に大事な面があるのだろう、こう思うわけでございまして、特に今新しい時代を迎えてME化されてきました。先ほども論議がありました。このME化については、私ちょっと調べてみますと、ぼつぼつと入り出したのが昭和五十年。だから昭和五十年ごろから入ってき出した。そうしてだんだんとこれが本格化してきた。そして日本のいわゆる事務系統であろうが製造工場であろうが、そういったものが入ってき出した。こうなりますと、従来とは違った労働災害が出てくる。そういう面で労働面への影響というものが非常に出てくるというようなことから、これへの対応ということで労働省は五十六年度からこのME化の進展についてのいろいろな調査研究ということに取り組むこととした、こうなっておるようですが、これについては相当把握をしておられるのでしょうが、今どういう状況なのか、ちょっとお聞かせいただきたい。
  164. 松本邦宏

    松本(邦)政府委員 労働災害の中でも新しい技術の導入に伴います災害をどういうふうに把握するかというのは、技術的にはいろいろ非常に難しい問題がございますが、今までもいろいろな監督署あるいは基準局等からの報告、あるいは新聞の報道、そういったものによりまして情報の把握に努めておりまして、それに基づいて、従来からの例で申し上げますと、産業用ロボットの問題あるいはVDT問題等々についてそれぞれ対策を打ってきているところでございまして、今後ともそういった新しい災害はいろいろ予想されると思いますが、そういった場合については、監督署、局等からの報告、その他いろいろな情報関係の収集に努めてまいる、かように考えておる所存でございます。
  165. 平石磨作太郎

    ○平石委員 そこで五十年ごろからME化がだんだん始まって本格化してきたという中で、特に今問題に挙げられておるのがVDTの問題です。  これは労働省が「VDT作業のための労働衛生上の指針」というものを出しておるが、こういう指針だけでいいのか。これは先ほど見直すとかいったようなことも聞きましたけれども、非常に機器については日進月歩、しかも我々がその機械を使う場合に、担当者が使う場合に、目に見えない被害を受けておるといったようなことも出てくるわけでございますし、だから日進月歩のこの機械に追いついての安全対策ということは非常に難しいと思う。したがって、労働省としたら一応こういう指針を出して、昭和六十年十二月に出ておりますが、これで十分なのか。一言お答えを賜りたい。
  166. 野見山眞之

    野見山政府委員 VDT作業の健康への影響の問題、そのほかただいま御指摘いただきましたME化の問題、オフィスオートメーション、ファクトリーオートメーションを初めといたしまして、新しい技術に対応するための安全衛生上の諸対策につきましては、先ほど来お答え申し上げましたように、後手に回らないようにしなければならないということは基本でございまして、今御指摘VDT作業の問題につきましても、既に二年を超えるような状況になっております。したがいまして、その後の新しい機械の状況あるいはさらに作業規制の問題等、最近におきます状況の変化等も十分踏まえながら、この指針について、今の時点におきます変化等も踏まえた検討を進めてまいりたいと考えております。
  167. 平石磨作太郎

    ○平石委員 私はやはり海外でやっているように、労働協約で——この指針というものをもとにして、この指針に従ってやりなさい、それは結構なことなのですが、その企業その企業に必要な特殊事情があろうと思うので、できれば労使がこの使用についてどうすると。この指針の中に、一日に四時間、五時間はいけないとか、あるいは一時間以内にやりなさいとか、あるいはまた連続する場合は十分か十五分の作業の休止をとかいったような指導があるわけですが、もちろんそれは、そういう指導企業あるいは担当者がそのままそうでございますという式にやっておられるかどうかは、これはちょっと疑わしい面がある。したがって、私先ほどの例でも挙げましたように、振動病の場合にも同じようにこういうものを出しました。同じように出しましたけれども、現実作業に追われてどんどんもう一日八時間もずっとこれを使うということで白ろうになるわけですから、そういったように、指針だけで実際災害にかからないように気をつけておられるかどうかは、作業に追われて現実にはそうはいかない。そうなると、指針にありますから、私は休みますと言うて一人の女の子が休むわけにもいきません。個人では言いにくいから、だから労働協約を結んで、こうする、ああするということをやらせたらいいと私は思う。これについて労働省の強い行政指導があってしかるべきだと思うのですが、現状と今後の対策をひとつお話しいただきたい。
  168. 野見山眞之

    野見山政府委員 職場におきます安全衛生問題の基本的責任は事業者にあるわけでございますが、しかし、お話のように、職場におけるそれぞれの実態に応じて安全衛生の確保を図っていくという観点から、その職場で働く労働者の意見も十分反映されるような形で安全衛生確保が実現するということが望ましいわけでございますので、その面におきます指導につきましても、さらに努力をしてまいる方針でございます。
  169. 平石磨作太郎

    ○平石委員 時間がなくて走り走りでございましたけれども、今御質疑をさせていただいて、それぞれ問題点があらまし出たと思うのですが、大臣、そういった審議を踏まえて、今後大臣がこれに対処せられる決意といいますか、ひとつ御披瀝をいただいて、終わりたいと思います。
  170. 中村太郎

    中村国務大臣 御指摘の点、極めてごもっともな点が多いわけでございます。とりわけまして、指針を示しただけで能事足れりということではいけないわけでございまして、その指針が実際に事業場でいかに実行されるかということの把握が大変重大であろうと思うわけでございまして、まさにお説のとおりでございます。今後におきましても、その点に重点を置きながら、指針の的確な実行というところにウエートを置いてまいらなければならないと考えておるわけでございます。  いずれにいたしましても、職場における労働者の安全と健康を確保する、これは労働行政の極めて重要な課題の一つであるわけでございます。このため、労働力人口の高齢化あるいは技術革新進展あるいは経済のサービス化あるいは就業構造の転換等々社会経済情勢の変化に対応した安全衛生対策が必要でございますし、今回、健康の保持増進対策等、心身ともに健康で安全な勤労者生活を確保するための労働安全衛生法の改正をお願いいたしたところでございます。  今後とも社会経済情勢の変化に的確に対応した安全衛生対策を積極的に、まさに本当に熱意を持って推進してまいることが、この成果を上げる基本であるというように承知をいたすわけでございまして、御指摘の点等踏まえながら、これからも積極的に取り組んでまいる所存でございます。
  171. 平石磨作太郎

    ○平石委員 以上で終わります。どうもありがとうございました。
  172. 稲垣実男

    稲垣委員長 新井彬之君。
  173. 新井彬之

    ○新井(彬)委員 私は勤労者財産形成促進法の一部を改正する法律案について質問をいたしたいと思います。  本法の第一条「(目的)」において、「この法律は、勤労者の計画的な財産形成を促進することにより、勤労者の生活の安定を図り、もって国民経済の健全な発展に寄与することを目的とする。」とあるわけですが、財形は五百万円までにおいて非課税が維持されておるわけでございます。今後、勤労者の健全な財産形成にはより大きな役割があると思いますが、これに対する大臣の取り組みについて、まずお伺いをいたしておきます。
  174. 中村太郎

    中村国務大臣 御指摘のように、勤労者財産形成促進制度は、勤労者の計画的な資産形成を促進するため、勤労者自身の自助努力に国と事業主が必要な援助を行い、もって、豊かで安定した勤労者生活の実現を目指そうとするものでございます。  御承知のとおり、この制度は昭和四十六年に制定されて以来、五回にわたる法改正を含めまして着実に改善が図られてきておるわけでございまして、今や勤労者の福祉政策の大きな柱として広く定着をいたしているものと私どもは理解をいたしております。  しかしながら、一方におきましては、財形持ち家融資の利用が極めて低調である等の問題もありますので、勤労者の福祉に対するニーズ等を踏まえつつ、制度の一層の充実が図られますよう、今後とも積極的に取り組んでいかなければいけないと考えておる次第でございます。
  175. 新井彬之

    ○新井(彬)委員 老後における安定した生活を維持していくためには、どれぐらいの生活費が必要であると考えているのか。また厚生年金の平均受給額はどのぐらいになっておりますか。
  176. 坂本哲也

    ○坂本説明員 昭和六十二年五月に出されました勤労者の老後生活安定対策研究会報告書によりますと、高齢者世帯の希望生計費、これは生命保険文化センターの調査によるものでは月額で二十万五千円程度、それからまた日本銀行の貯蓄広報中央委員会調査によるものでは二十二万円程度ということになっております。  また、厚生年金の平均受給額でございますが、社会保険庁の事業年報によりますと、昭和六十一年度末現在の厚生年金の平均受給額は、旧法による裁定の場合は全体の平均で約十三万円、新法による裁定の場合で約十万円ということになっておりまして、男子のみについて見ますと、旧法による裁定の場合が約十五万、新法による裁定の場合が約十四万というふうになっております。
  177. 新井彬之

    ○新井(彬)委員 そういうことでいろいろ資料は出ているわけでございますが、期日指定の定期預金契約の例といたしまして、例えば積立期間が十五年、据置期間五年、年金原資として五百万円目いっぱいを毎月払い、賞与払いで積み立てた場合で計算いたしますと、年金原資として毎月一万円、賞与月四万円を積み立てた場合、支払いを年に四回として一回当たりの、支払い期間十年の場合、平均受取額で三カ月で十五万一千円、つまり月にして五万三百三十三円の受給額となるわけです。六十五歳から平均寿命の八十歳まで十五年間の支払い期間であるならば、平均の受取額は三カ月で十一万三千円、月々にしますと三万七千六百六十六円の受け取りとなるわけであります。最初に大臣にもお尋ねいたしましたが、これからのサラリーマンにとっては、マル優が廃止になったこともあり、老後の生活を考えるために、特に財形年金が重要になってくるわけでありますが、限度額五百万円ではどうも不安が残るわけであります。限度額を引き上げ、一千万円ぐらいにすべきではないかと考えますが、労働省としてはどのようにお考えになっておるのか、お伺いをいたします。
  178. 中村太郎

    中村国務大臣 仰せのように、これから本格的な高齢化社会に入るわけでございまして、勤労者がより安定した老後生活を送るためにも、年金資産の保有を促進することが極めて重大でございます。五百万円までの非課税措置につきましては、かねてからこれをもっと上げるべきだという御意見につきましては十分承知をいたしておるわけでございます。労働省自身といたしましても、関係方面とかねてから折衝をしてまいりましたけれども、現在実現しておりません。財形審議会からも御提言をいただいておりますし、また各方面からもこのニーズが高まっておるわけでございますので、これからも粘り強く折衝をいたしまして、早い機会に実現するよう努力する所存であります。
  179. 新井彬之

    ○新井(彬)委員 とにかくマル優もなくなりましたし、先ほども年金の金額とかがございました。旧法によりますと、老齢年金が大体十四万円、それから新法でも十八万五千円、こういうことになるわけですが、先ほど大体二十万五千円から二十二万円ぐらいの老後の生活費が欲しい、こういうぐあいに言っておるわけです。それに所得税とか住民税とか合わせますと、大体二十五万円ぐらいになるだろう。そうしますと、実際に月額で現在で言えば十一万円ぐらいの不足になりますし、新法であっても六万五千円ぐらいの不足になるということですから、どうしてもそれだけの貯蓄をしておかないといけないというようなことも計算上出ているわけでございますので、五百万というのは絶対に少な過ぎるということでございますので、その点は早急に御検討願いたい、このように思います。  昨年九月三日、第百九回国会における衆議院社会労働委員会の附帯決議についてお尋ねをいたします。  第二番目のところで、「企業内福利厚生に関する企業規模間格差の現状にかんがみ、特に、中小企業に対する制度の普及促進に努めること。」とあります。現在財形貯蓄を実施している事業所は二百十七万一千、財形年金を実施しているのが三十七万九千となっておりますが、これら規模別の実施状況及び中小企業への普及に対し、どのように取り組むのか、お伺いをいたします。
  180. 坂本哲也

    ○坂本説明員 私どもで行いました労働者福祉施設制度調査によりますと、企業規模別の財形制度導入割合でございますが、企業規模五千人以上のところでは八五・〇%、千人から五千人未満のところで八四・〇%、三百人から千人未満のところでは八〇・七%と八割を超えておりますが、百人から三百人のところでは七一・七%、三十人から百人未満では五七・四%というふうに、規模が小さくなるに従ってその割合が小さくなっております。  また、財形制度の中小企業に対する普及促進でございますが、これは私どもといたしましても非常に重要な課題と受けとめておりまして、六十二年度からは中小企業の労務改善集団に対する指導援助を内容とする新たな事業を開始したところでございまして、今年度におきましても二百十集団の指定を予定をいたしておるわけでございます。またことしの四月からは損害保険も新たに財形制度の対象となったところでございまして、代理店を通じての中小企業への浸透が期待されるところでございます。このほかにも、さらにマスコミの活用とか説明会の開催、こういったものによりまして、幅広く制度の普及促進に努めてまいりたいと考えております。
  181. 新井彬之

    ○新井(彬)委員 年金を実施している企業が少ないわけでございますが、それらの理由はどのようにお考えですか。
  182. 坂本哲也

    ○坂本説明員 御指摘のように、財形貯蓄に比べまして財形年金貯蓄を導入している企業は非常に少ないわけでございますが、財形年金貯蓄というのが昭和五十七年十月に制度が創設されたわけでございまして、一方、一般財形貯蓄は昭和四十七年一月から創設されているというようなことで、その創設以来の経過年数が非常に違う、まだ浅いということで十分浸透していない、これが大きな原因であろうかと思っております。しかし、今般の税制改正によりまして、一般の貯蓄については、老人等を除きましてマル優が廃止された中で、財形年金貯蓄は非課税措置が継続されることになったわけでございますので、今後積極的な導入が進むのではなかろうかというふうに見ております。
  183. 新井彬之

    ○新井(彬)委員 附帯決議の七項目といたしまして、「勤労者財産形成給付金制度及び基金制度について、事業主がこれらを積極的に活用するよう、なお一層行政指導を行うとともに、当該事業場のなるべく多くの勤労者が給付金の支給を受けられるような方策について引き続き検討すること。」こういうようにあるわけですが、どのような検討及び行政指導を行ってきたのか、お伺いいたします。
  184. 野見山眞之

    野見山政府委員 財形給付金制度及び基金制度の普及促進対策といたしまして、昭和六十二年度に、これらの制度に対します国からの助成金制度がございますが、この助成率をほぼ倍に引き上げる措置をとったわけでございまして、例えば零細規模の場合は助成率を一〇%から二〇%に、また小規模の場合に五%から一〇%に引き上げるなどの改善を行ったところでございます。また中小企業の事業主が共同で基金を設立する場合に出されます設立奨励金制度がございますが、これを三十万円から百万円に引き上げる措置もとったところでございます。それから都道府県中小企業労務改善集団に対します特別の指導援助も行っているところでございまして、中小企業におきます制度の普及促進に積極的に取り組んできているところでございます。それから今回の法律改正の中に含めております転職時におきます継続措置等も、これらの改善措置の一環としてお願いしているところでございます。
  185. 新井彬之

    ○新井(彬)委員 六十二年九月現在、財形給付金制度の実施企業数は四千三百四十五社、財形基金制度の実施はわずか百七となっておるわけです。今回の改正で財形給付金及び財形基金給付金の転職時等における継続措置の創設が行われておりますが、このように少ない企業数では余り役に立たないのではないかと考えられますが、いかがでございますか。
  186. 野見山眞之

    野見山政府委員 対象企業状況は今お話しのとおりでございますが、これらの労働者が転職、出向、転勤というような状況に際しまして、財形制度を中断することなく行われるということが望ましいことは言うまでもございません。特にこのような転職、出向の機会の多いと思われます中小企業労働者や系列下請企業を抱える企業の勤労者にとっては、今回のこの継続措置によりまして中断なく財形が行われるという面でプラスの面が大きいのではないかというふうに思っているわけでございまして、今回の法律改正の面での効果も期待できるというふうに私どもとしては考えているところであります。
  187. 新井彬之

    ○新井(彬)委員 確かにそういう制度をつくらないことにはどうしようもないわけでございますが、基金制度の実施が百七という余りにも少ない企業でございますので、やはりこれがどんどんふえていかないと、電話と同じように、相手先がなければかからないというようなことになろうと思いますので、それらの普及、今後ともよろしくお願いしたいと思います。  今回の改正について、もう一点お伺いしておきますが、現行の住宅建設、購入に加えて増改築が予定されておるわけです。この増改築の工事費用が二百万円を超える場合のみとなっておりますが、これは相当な工事となるわけで、マンション等では数は少ないものと思われます。マンションなどのリフォームを含む増改築もできるように限度額を百万円まで引き下げるべきであると考えますが、いかがでございますか。
  188. 野見山眞之

    野見山政府委員 増改築の範囲を二百万円を超えるものということにいたしているわけでございますが、これはこの三月に成立いたしました租税特別措置法の一部改正法によりまして、改正後の住宅の取得等をした場合の所得税額の特別控除制度、いわゆる住宅ローン控除制度でございますが、これと横並びをとっているところでございます。したがいまして、税制上支援をいたします住宅の増改築の範囲は、住宅の取得とほぼ同視し得る規模の工事とするという観点から二百万円を超えるものということで定められたものでございます。したがいまして、税制の一律性を図るという観点から、今回の対象を定めるということにいたしたわけでございます。しかし、いずれにいたしましても、この要件につきましては、勤労者のニーズあるいはこの制度の利用の実績等も見きわめながら、今後必要に応じて改善していくということも検討してまいりたいと考えております。
  189. 新井彬之

    ○新井(彬)委員 この点も確かに二百万というのは、大したお金で建てる場合はないかもしれませんが、マンションなんかが今たくさんありますけれども、そんなに多額でやれるような、まあ増改築にはならないのですけれども、やはり古くなりますと、ふろ場をかえたりいろいろして、ちょっと部屋をかえたりなんかするためには百万円程度あるとできるというようなことも大分見えておりますので、その辺ひとつ今御答弁あったようによろしくお願いしたいと思います。  退職一時金の財形への預け入れについてお伺いをいたします。  現在財形年金貯蓄積立期間終了後五年間据え置くことになっておりますが、退職時の一時金を限度額まで達していない人のために年金として受け取ることができるよう預け入れができる制度をつくるべきであると考えますが、いかがでございますか。
  190. 野見山眞之

    野見山政府委員 退職金は勤労者の資産形成の上で重要な位置を占めるものでございます。特にまた本格的な高齢化社会を迎えるに当たりまして、退職後の生活保障の機能を持つということで退職金は非常に重要であるわけでございます。  しかしながら、現行の財形年金貯蓄の制度は、勤労者が在職中に賃金から控除をする、これに税制上の優遇措置があるわけでございますが、事業主を通じてこれを長期にわたって計画的に積み立てていくということをその制度の目的としているわけでございまして、退職金の一時預け入れを認めるということにつきましては、年金原資の大部分を最終回に積み立てるというような方法も可能になるわけでございまして、そうなりますと、先ほど申し上げました長期、計画的な積み立てという制度との関係でいかがかという問題も出てくるわけでございます。先ほど申し上げましたような、退職金につきまして既に税制上の優遇措置が講じられている上に、さらにこのような財形預け入れというような税制上の優遇措置を加えて措置をするということの問題もあるわけでございまして、今御指摘のような点につきまして、直ちにこれを認めるという面は非常に困難な問題があろうかと存じますけれども、しかしながら退職金の老後生活保障における重要性は十分あるわけでございますので、今後財形年金制度と退職金制度との関連についてさらに慎重な検討を加えてまいりたいと考えております。
  191. 新井彬之

    ○新井(彬)委員 今検討していただけるというお話でございますのであれですけれども、老後生活というのは、一時金が必要な場合もありますが、やはり安定した生活というのを望んでいる方が非常に多いわけでございます。だから、月に幾ら入るんだ、財形年金が三百万円しかない、そうすると、入るお金というのは非常に少ないわけですね。ところがこれも限度額がありまして、税制税制といいますけれども、それもあれば全部、一千万でも二千万でもそれにしてあげるというわけじゃありませんので、とりあえず今だったら五百万ですから、やはり退職したときに、この五百万でみんなが平均していけるような状況の方がいいのじゃないかな、こういうようなことも思われますので、ひとつただいまの答弁のとおりよく御検討していただきたい、このように思います。  次に、附帯決議の六番目といたしまして、「勤労者の住宅取得を促進するため、土地対策の強化を図るとともに、諸制度の整合を図る等の積極的な施策を推進すること。」となっております。また本法の第四条において、「労働大臣、大蔵大臣及び建設大臣(大蔵大臣にあつては勤労者の貯蓄に係る部分に、建設大臣にあつては勤労者の持家の取得又は改良に係る部分に限るものとする。)は、勤労者の財産形成に関する施策の基本となるべき方針を定めるものとする。」こういうぐあいに法律でもあるわけでございますが、まず基本方針は作成されているわけですか。
  192. 石岡慎太郎

    ○石岡説明員 財形の基本方針はこれまで策定されておりません。
  193. 新井彬之

    ○新井(彬)委員 これは法律にも第四条に、そういう労働大臣、大蔵大臣あるいは建設大臣おのおのがどういう内容で方針を決めなければいけないかということがちゃんとうたわれているわけです。そういうわけですから、高齢化に向かう勤労者のために早急に基本方針の作成に取りかかるべきである。各省との関係がございましてなかなか難しいと思いますが、作成検討委員会なんかを設置されましておやりになったらいかがかと思いますが、いかがでございますか。
  194. 石岡慎太郎

    ○石岡説明員 財形の基本方針につきましては、昭和四十八年ごろに審議会で検討されたのでありますけれども、その後、石油危機が生じまして、経済全体が非常に困難な状況になったこと、それから財形制度の内容が十分に充実してない状況で基本方針の策定をするのは時期尚早ではないかという意見も出たこと、それから財形の実績などもなかなか伸びませんでしたので、制度の改善が急務とされたことなどなどから策定されてない状況にあるわけでございますが、先生御指摘の点を踏まえまして、本問題につきましては、財形審議会に図って検討してまいりたいと思います。
  195. 新井彬之

    ○新井(彬)委員 今度は建設省にお伺いしますが、この法律の第四条で、建設大臣にあっては勤労者の持ち家の取得または改良に係る部分に限ってその方針を決めなければいけないとなっておりますが、これについて建設省はどのように取り組んでおられますか。
  196. 石井隆弘

    石井説明員 建設省といたしましては、住宅政策の推進に当たりまして適正な住居費負担のもとで国民の居住水準の向上を図るということを基本的な方針として考えております。このために、国民の持ち家取得に伴う負担を軽減すべく今年度におきましては、住宅金融公庫融資におきまして、貸付限度額の引き上げでございますとか貸付対象住宅の規模区分の見直し、譲渡価額の限度額の引き上げ、それから特別積み立てローンの創設などを行いますとともに、住宅取得促進税制につきましても、従来その二分の一が控除対象でございました公的ローンにつきまして、全額を控除対象とする等の措置の拡充に努めているところでございます。  また、住宅の改良につきましてでございますが、これもやはり住宅金融公庫の融資におきまして、貸付限度額の引き上げとか特別割り増し貸し付けの創設などを行っておりまして、住宅取得促進税制において一定の増改築工事に係る借入金を含めるといったこと等施策の充実に努めているところでございます。
  197. 新井彬之

    ○新井(彬)委員 民間の調査機関であります不動産経済研究所の調査によりますと、昨年の首都圏のマンション価格一戸当たり平均は三千五百七十九万円となり、前年より二八・八%の上昇、東京都内では四千七百九十一万円で千五百万円近く高騰という調査結果が出ております。一戸建て住宅においては億単位の住宅になると思われるわけでございますが、サラリーマンが取得できる住宅価格というのはどのぐらいであると建設省は見ているのか、お答えいただきます。
  198. 石井隆弘

    石井説明員 適正な住宅費負担につきましては、私どもの住宅宅地審議会というのがございまして、そこから昭和五十年八月九日でございますが、答申をいただいておりまして、それを踏まえまして、標準的な世帯、例えば私どもよく例示しますのは第三分位、所得分位で第三分位で四人世帯の場合には、住宅ローンの支払いは世帯収入のおおむね二五%程度までと考えております。例えば京浜地区の平均的なサラリーマン、これいろいろな計算がございますが、一応年収七百七万円といたして計算いたしております。住宅ローン返済負担率が二五%になるまでローンを借り入れていく、それで貯蓄を自己資金として投入するというふうな前提をして、かつ住宅減税の効果を加味いたしました場合、取得可能な住宅価格を試算いたしました。おおむね三千七百万円程度になり、それが年収の約五倍でございます。
  199. 新井彬之

    ○新井(彬)委員 とにかくマンションも高いですけれども、今東京近辺、これ一つ参考までにパンフレットを持ってきましたけれども、とにかく二億とか、もう一億なんというのは大したことないですね、一億六千三百万なんというのは。それもちょっとぐらいいいのかなと思っても、もう土地だって三十坪ぐらいで一億七千万、一億八千万。ちょっとあると、これはもう二億八千万とか大変な金額です。だから三千七百万、今もしそういうのがあったら皆さんに、ここに三千七百万でこういう家がありますということを建設省に教えていただきたいと思うのですけれども、なかなかそういう物件はない。だから今の平均的なサラリーマン、わりかた七百七万というのはいい方だと思いますけれども、その方ですらもう住宅は持てないということですから、また新たにどういう形にすれば持てるかということを建設省もお考えになっていただきたい。賃貸でも何でもいいのですけれども、とにかく希望を勤労者の皆さんに持たせていただきたい、このように思います。  先日の国土庁が発表した地価公示価格を見ても、全国の全用途平均の変動率二一・七%、このうち三大都市圏の平均は四三・八%、地方平均の二・四%と比べ著しい上昇となっているわけでございます。東京圏では六五・三%、住宅地において六八・六%、また大阪圏においても一九・八%の上昇となっております。  六十一年に総理府が行った大都市圏の住宅・宅地の世論調査、ちょっと古いわけですが、それを見ましても、約二年前の時点の調査ですが、「近い将来に住宅の新築や増改築などの計画を持っているか」という質問に対しまして、「計画はない」と答えた者が六三・五%、そのうち「現在の住まいに満足している」人が三六・三%、「経済的なゆとりがなく、新たな住宅は考えられない」とする人が二九・六%、約三割です。また計画のある人のうち、その実現時期を聞いたところ、「五年以上」三八・六%、「わからない」二一・六%、約六割の人に実現可能かどうか不安な要素が見られるわけであります。  このように、大都市圏のサラリーマンにとって住宅取得は非常に困難な状況であるわけですが、国土庁は地価高騰の状況に対してどのような見解を持っているのか、お伺いをいたします。
  200. 原隆之

    ○原説明員 地価の状況についてどう考えておるかというお尋ねでございますが、六十三年の地価公示につきましては、先生今御指摘になられましたように、大変な状況になっているわけでございますが、最近の地価の動きといたしまして、これを見てみますと、昨年改正をしていただきました国土利用計画法、これに基づきまして、現在監視区域制度を運用しておるわけでございますが、この監視区域の中におきまして、地価の動向を調査いたしておるわけでございます。それによりまして最近の動きを見てまいりますと、東京圏におきましては、六十二年中は今御指摘ございましたように、地価の高騰が周辺の住宅地等に波及をしたわけでございますが、昨年末から東京都の地価は下落に転じておりますし、またことしに入りましてからは、神奈川、埼玉などの住宅地の地価も下落に転ずるなど鎮静化傾向がかなり顕著になってきてまいっております。また御指摘の大阪圏につきましても、商業地や一部の中高級住宅地がかなり価格上昇したわけでございますが、年末には中心商業地等の地価上昇も鈍化を始めておるわけでございます。  そうは申しましても、最近の東京を中心とします地価の上昇というのは、御指摘のような住宅の取得でございますとか社会資本の整備を難しくするというようなことで、経済の円滑な運営等社会の安定にとって大変な重大な問題であるというふうに考えておるわけでございます。
  201. 新井彬之

    ○新井(彬)委員 地価対策というのは大変ないろいろな問題がありますので、きょうはもう時間がありませんから申しませんが、とにかく今行革審に検討を依頼しているわけでございます。国土庁としてももっと積極的な施策といいますか、こういうのはどうだろうということを打ち出すべきであると思いますが、いかがでございますか。
  202. 原隆之

    ○原説明員 多少言いわけじみたお答えになるかもしれませんが、私ども、今回の東京都心の商業地に端を発しました地価高騰に対しましては、六十年以降不動産業界等の関係業界に対しまして指導を行うほか、東京都の方とも当初から連絡会議を設けまして、具体的な対策につきまして取りまとめをいたしてきたわけでございます。それで先ほど申し上げました国土法の改正に先立つ形で、六十一年の九月には東京都で条例を制定していただきまして、小規模土地取引制度を創設いたしまして、土地取引の規制の強化を図っておりますし、また関係閣僚会議を開催いたしまして、政府一体となりまして、国土法の改正とか土地税制、長短期重課制度を初めといたします土地税制の見直しでございますとか土地関連融資の適正化というような施策を講じてまいってきたわけでございます。また先ほどお話ししましたように、監視区域制度の機動的な運用でございますとか金融機関の指導の強化というような対策を現在鋭意講じておるところでございます。  今後は、今お話のございました行革審の御検討も踏まえることは当然でございますが、現在国会で御審議をいただいております多極分散型国土形成促進法案に基づきまして、東京に集中しております諸機能を地方に分散する、それから住宅宅地の供給を促進するというようなことで、土地の需給の緩和を図りまして、地価の安定、ひいては地価の引き下げということに最大限の努力をしてまいりたいというふうに考えております。
  203. 新井彬之

    ○新井(彬)委員 原さん一生懸命に頑張っておられるので安心していますけれども、とにかく今の状況からいきまして、いろいろ本にも出ておりますけれども、やはり東京にはどんどん人口が集中するだろうと思われます。少々小手先の機関の分散をやりましても、その程度ではおさまらない。したがいまして、やはり需要供給の関係ではどうしても地価というのは上がらざるを得ない。これは経済原則でございます。今東京都で建てる面積からいきますと、大体二・七階くらいになっておるわけでございまして、それをやはり今後どういう形でその空間スペースを埋めるのか、あるいは東京湾をどうするのかとか、さっきも言いましたように、多極分散型のことを本当にどのようにするのかというのは大変な大きな問題でございまして、行革審からもまたきちっとした一つの答申が出ようかと思います。  この前、四野党共同の土地基本法というのを提出をいたしました。その土地基本法の目的というのは、やはり今後勤労者の方々に対する住宅対策をどうするか。これは基本的に年収の五倍程度、これが一つでございます。それから通勤は一時間以内ということでございます。それから百平方メートルの住宅。このくらいの三つの条件をかなえて皆さんに優良な住宅をやろうということで、四野党共同で土地基本法案というのを提出いたしました。これはまたよく検討していただきたいと思うわけでございますが、これらについてもし御意見がありましたら、建設省と国土庁にお伺いをしておきたいと思います。
  204. 石井隆弘

    石井説明員 先生の御質問のうち住宅政策の面から御答弁申し上げます。  先ほどもお答え申し上げましたけれども、住宅政策の基本的な目標といたしましては、適正な住居費の負担のもとに国民の居住水準を向上するということでございます。現在、私どもとしても第五期五カ年計画ということで推進中でございまして、良質な住宅ストックと、それから住環境を改善していこうということで努めておるところでございます。  御指摘の地価の高騰につきましても、供給のサイドと、それから先ほどお答え申し上げましたけれども、住宅の取得能力の向上という両方のサイドから私ども住宅政策の面からは努めてまいりたいというふうに思っております。
  205. 原隆之

    ○原説明員 お話しの土地基本法案につきましては、詳細承知をいたしておりませんが、今後一生懸命勉強さしていただきたいというふうに思っております。
  206. 新井彬之

    ○新井(彬)委員 よろしくお願いします。  もう時間がありませんのであれですが、やはり勤労者の生活の安定という観点からしますと、物価の安定ということが非常に問題になります。全金同盟が日、米、西ドイツ、そういうところで日本の現状は一体どうなっているかということを調査したことがあるわけでございますが、「名目賃金は高いが労働時間は長い」「飲食費支出、教育費負担、自動車維持費は高いが、税負担は小さい」、こういう結論が出ております。  確かに諸外国へ参りまして、特にアメリカならアメリカへ参りましても食べ物というのは非常に安いわけですね。このデータからいきますと、飲食費は日本八万八千四百五十円に対し米国は五万七千三百九十二円。食事に行きましても、十ドルディナーといいますか、ジュースとかコーヒーとか野菜とかというのは食べたいだけ食べてください、あとメーンになるものはステーキですか、それともチキンですか、それとも魚ですかということがあるわけですけれども、とにかく非常に安いということがございます。それから米国の場合は、「教育費は連邦政府税と地方税でまかない、塾には行ってない」ということでゼロというのが出ているわけですね。日本は、御承知のように、教育費というのは塾まで入れますと大変な金額で学校に行かしているということがあります。そういうことで生活様式というのは非常に違うのですが、特に住宅になりますと、この調査の中で、日本人のうち持ち家は六人あったけれども、「最も広い敷地の人でも四百十六平方メートルで、米国で一番狭い敷地の人より二百八十二平方メートルも狭い。」ということで、家賃も高いし、住んでいる状況も非常に貧しいといいますか、そういうような現状が出ている、こういうことがございます。日本の国はアメリカのカリフォルニア州にも及ばないくらい非常に狭い土地でございますし、それに山があって、これだけの一億二千万の人口があるわけですから、これをいかに豊かにするかということになりますと、また新しい発想でもって考えなければいけないなと思うのですけれども、とにかく物価を安定させる、食べ物を安くする、そして老後の生活も安定さすということが非常に大事なことではないかと思うわけでございます。  時間が来ましたから、これを最後の質問にいたしますが、そういう問題について、例えて言いますと、円高差益の問題にしましても、まだ九兆円くらいが円高差益還元されないで残っているとか。具体的に言いますと、経企庁あるいは通産省いろいろなところで問題があります。そういうことでございますが、これを物価安定をさすということで、経企庁に最後に質問をいたしまして、質問を終わりたいと思います。
  207. 熊澤二郎

    ○熊澤説明員 先生お尋ねの内外の価格差を是正していくという問題は、私ども大変重要な問題だと認識しております。大変時間のかかる問題だろうと思いますけれども、経済構造の調整でありますとか規制、制度の見直し、輸入の拡大等を通じて、こうした内外価格差の縮小に努めていくことが今後極めて重要な課題だろうと私ども認識しております。
  208. 新井彬之

    ○新井(彬)委員 終わります。
  209. 稲垣実男

  210. 児玉健次

    児玉委員 労働安全衛生法の改正案についてお尋ねをします。  今回の改正案で、先日大臣が行われた提案理由の説明においても、「労働者の健康の保持増進のための措置を充実すること」、このようにうたわれております。このような措置は、労働時間の短縮、残業の規制への努力を一層強化することと結びつかなかったら実効のあるものにならない、こう思うのですが、大臣のお考えを最初に伺います。
  211. 中村太郎

    中村国務大臣 改正法案におきます健康の保持増進対策は、労働者健康障害を防止するという観点に加えまして、心身両面にわたる積極的な労働者の健康づくりを目指しまして、必要な措置が講ぜられることを期待をいたしておるところでございます。労働時間の短縮は、労働者の健康の保持増進という観点からも重要な課題と考えております。本年四月一日から施行されておりまする改正労働基準法の円滑な施行、国民的合意の形成、労使の自主的な努力に対する指導援助等に対しまして一層の努力をしてまいりたい決意でございます。
  212. 児玉健次

    児玉委員 法案の中身について何点か触れたいんですが、法十九条にあります安全衛生委員会についてです。ことし一月二十九日の中央労働基準審議会の労働災害防止計画、その中で次のような一節があります。「労働組合労働災害防止への取組みの実績をも踏まえ、労働者の積極的参加により、企業レベル、職場レベルでの労働災害防止活動の活性化を図る。」労働組合もさまざまありますが、私は、労働者職場における安全、健康の保持、このことで積極的な努力をしている労働組合がこの分野に参加していくということは重要だと思いますし、この審議会の計画指摘に注目したいと思います。  そこで、安全衛生委員会での労働者委員の役割について労働省はどのようにお考えなのか、伺います。
  213. 松本邦宏

    松本(邦)政府委員 先生御承知のように、安全衛生委員会は使用者を代表する者と労働組合を代表する者とで構成されているわけでございまして、安全の責任はもとより第一義的には事業者にあるわけでございますけれども、やはり現場で働きます労働者の意見を聞いて行われるあるいは労働者のいわば自覚的な参画によって行われるということが必要であろうというふうに考えておりまして、そういう意味では安全衛生委員会におきます労働側の委員の役割も大きいものと考えております。
  214. 児玉健次

    児玉委員 産業医についてですが、今度の改正の中でも産業医の問題が一つのポイントだと受けとめております。そこで適切な人を得れば確かに職場労働者にとって非常に好ましいことだと思います。適切な人を得るためにも仕事のやりがいという問題があります。医師としての専門家性が十分に発揮され、その権限が確立されること、それが非常に重要だと思うわけですが、労安規則十五条で、例えば毎月少なくとも一回の作業場巡視などを含めて産業医の職務と権限が規定されてありますが、今度の法の改正に当たって産業医の権限を一層強化していく、労働者の意見、要求を正しく反映できるようにするための抜本的な検討がこの分野でも必要ではないのか、今後の政省令の作業を含めて労働省のお考えを伺いたい、こう思います。
  215. 松本邦宏

    松本(邦)政府委員 今回の法改正の中では、健康保持増進対策というのを非常に重要視をいたしております。この健康保持増進対策を推進いたしますためには、まさに産業医がその活動の中心になってもらわなければならないであろうというふうに考えておりまして、今までは安全衛生委員会産業医委員とすることは必ずしも要求をいたしておりませんでしたけれども、今回の法改正で必ず委員に加えるということにまずいたしたのが一つと、安全衛生委員会の審議事項の中にも、そういった健康増進対策を加えるというようなことにいたしまして、そういう面での産業医の参画を強化したわけでございます。さらに加えて産業医の職務権限を現在政省令で定めておりますが、それを一層充実させたいというふうなことで考えておりまして、従来健康診断の実施等について書いておりましたほかに、健康教育あるいは健康相談その他の労働者の健康保持増進を図るための措置、あるいは作業方法、作業態様等の作業管理に関すること、そういったことも産業医の職務の一環として書き加えたい、かように考えておる次第でございます。
  216. 児玉健次

    児玉委員 現行制度で今取り上げました安全衛生委員会産業医がどのように機能しているか、それは法改正を論ずるときも当然踏まえなければいけない問題だと私は考えます。  そこで、具体的なケースを挙げて質問いたします。これはこの四月十九日、本委員会田中美智子議員が取り上げた問題でもあるわけですが、JR東日本、新潟にあります新津車両所、ここで四月二十一日から上越線の夜行快速「ムーンライト」などに使われている一六五系電車の石綿の撤去作業が始まりました。この点については、国労東日本が先日田中議員が取り上げました「北斗星」食堂車でのアスベストの使用について指摘をし、そしてJRから、それを使用している千七百の車両について、とりあえず今年度は二、三百の車両について撤去をする、新津、郡山、土崎、大船工場でやる、こういうふうに答えたことの具体化でもあります。  さて、私がお尋ねしたいのは、この新津車両所において一六五系電車のアスベスト撤去は、専門業者によって私の調べたところによるとこれまで二回実施されました。毎日行われているわけではない、二回実施された。その際、専門業者は、紙でつくられているんですが、宇宙服のような密閉作業衣、これは一回使ったら使い捨て、そして手袋なども原則として使い捨て、そういうJRの職員にとっては目をみはるような装備をして、完全な密閉状況作業をしている。それが一つ、アスベストの撤去作業として行われている。一方、新津車両所の職員の方はどうか。この職員の皆さん方は、定期検査で車両所に入ってくる一一五系、一六五系、四八五系の車両の外板が腐食している部分、そこを点検の人がチョークで丸を書くのですね。丸を書いた部分についてガスバーナーで腐食した外板もろとも切断する。その際、劣化したアスベストが飛散する、こういう作業現実に行われている。その際、JRの職員は防じんマスク、フィルターも毎日取りかえるわけではない。取りかえるフィルターは準備されてはいるそうだけれども、当局から毎日取りかえろという指示はない。それから革手袋、これは常時使用している。そういうものを使ってやっているのです。このような事実について労働省は御承知でしょうか。
  217. 冨田達夫

    ○冨田説明員 新津車両所における石綿関係の取り除き作業につきましては、四月二十一日から五月九日までの間に二両についてその作業が実施されております。この作業については、専門業者が御指摘のように防じんマスクあるいは作業衣、これを着用して実施しておりまして、石綿粉じんに暴露するような作業については、以後このような専門業者に委託して行うと聞いております。
  218. 児玉健次

    児玉委員 今私が指摘したことをよく聞いてほしかったのですが、千七百両について、当面二、三百両を今年度やる、その撤去作業についてはあなたがおっしゃったとおりですよ。それとは別に、車両所というのは常時車両の検修を行うのです。そこに入ってくる、先ほど私が指摘した型式の車両については、アスベストもろとも外板のガスバーナーによる切断作業をやっている、これは現に今も行われているのです。その事実を労働省は知っているか。
  219. 冨田達夫

    ○冨田説明員 新津車両所のある東日本JRについては、現在一万一千五百四十一車両を保有してございまして、そのうち石綿を吹きつけている車両が約千七百ございます。それらの車両については、これは解体ではございませんで、改修作業のときに必要に応じて吹きつけた石綿を除去しよう、こういうような計画を現在行っております。その石綿除去について、しかるべき作業手順、すなわち石綿粉じんに暴露しないような適切な作業方法をどうしたらいいかということについての検討を現在JR東日本初め関係JR各社で行っておりまして、そのマニュアルができ次第、以後取り除き作業等を実施するように承っております。  先生御指摘の石綿取り除き作業以外の作業も事実改修、検修作業として行われておりますけれども、除去作業については、石綿除去作業を隔離するような専門業者による作業方法、JR関係作業者が石綿粉じんに極力暴露しないような方法をとるという方向で指導をしておるところでございます。
  220. 児玉健次

    児玉委員 事実の有無を的確に答えていただきたいのです。私が聞いているのは、「北斗星」を含む千七百両の何年かにわたる石綿撤去作業の問題ではないのです。それはそれで重要な問題ですが、それではなく、あなたのおっしゃった定期の検修で入ってくる車両、その型式をもっと詳しく言ってもいいのですが、それについては、現実に石綿が吹きつけられている外板をガスバーナーで撤去する作業専門家でなくJRの職員によって今日行われている。そして新津車両所というのは二百五十人のところですが、廃車解体要員十五名、これは三月二十五日発令で各地から新津に集められているのですが、その人たち現実にアスベストの暴露を受けながら、先ほど言ったガスバーナーの作業を工場内で行っている。マニュアルというのは今からの問題です。現にこの作業が行われているのです。その事実について御承知ですか。
  221. 冨田達夫

    ○冨田説明員 この作業については、御指摘のような作業と解体作業と両面の作業がございます。それで千七百車両ということについては、JR東日本が今後解体する車両のことと承知しております。先生御指摘の検修作業とか修理作業等については、千七百両ではなくて、現在予定している車両については……(児玉委員「その作業は現に実施されているのです」と呼ぶ)現に実施されている車両については、石綿等の問題を別途分けて考えようということで、我々はJR各社に対して指導しているところでございまして、御指摘のバーナーによる措置、切断等の作業については、もし石綿がその近辺に使われているとするならば、前もってその石綿を専門業者によって取り除いた上でJR各社の作業者がその後の溶断作業をするように、セパレートした作業をやるように指導しているところでございます。
  222. 児玉健次

    児玉委員 それでよくわかるのですよ。現実にそういう作業が行われているのです。労働省としては、こういう指導をしているということで区別しないとだめですね。  さてそこで、アスベストについてですが、労働省としては、管理濃度方式と皆さんおっしゃっていますが、基準値を設定されている。大気中一ccについて繊維二本、そして作業場での検査方式は、一作業について二日間を選んで行って、六カ月に一回実施する、そのようにしていますね。伺います。
  223. 冨田達夫

    ○冨田説明員 作業環境測定についてお答えしますと、当該作業場所では二日に分けて作業場の測定を行っているように聞いております。
  224. 児玉健次

    児玉委員 そこで、労働省が言っていらっしゃる基準値、大気中一ccについてアスベストの繊維二本、発がん物質であるアスベストについて言えば、医学的に安全な閾値はないとされています。これよりも多かったら危険で、これより少なかったら安全、そういう閾値、仕切りはないというのが医学的な考えです。  私は具体的にお伺いしたいのですが、労安法施行令二十二条において、「別表第三第一号に掲げる特定化学物質等を製造し、若しくは取り扱う業務」、そういう業務は「健康診断を行うべき有害な業務」とされております。そして別表第三には「石綿」が明記されています。そうであれば、新津車両所で現実に今車両の検査、修理が行われている、こういう中で労働者の健康診断が行われていると思うのですが、どのような内容で、いつ実施されましたか。
  225. 冨田達夫

    ○冨田説明員 石綿粉じんに暴露される作業に常時従事する労働者については、年二回、六カ月に一回、石綿にかかわる特定化学物質等障害予防規則に規定する検診項目による健康診断を実施しております。(児玉委員「新津でしているかどうかです」と呼ぶ)昨年八月十二日、九月七日、二回目が六十三年四月七日にやっております。
  226. 児玉健次

    児玉委員 私が聞いているところでは、昨年の八月に確かに健康診断は実施された。しかし、その健康診断は主としてベンジジンと鉛の影響を調査することを主内容とした検査であった、そのように聞いているのですが、どうですか。
  227. 冨田達夫

    ○冨田説明員 地元の基準局を通して調査した結果でございますと、石綿にかかわる検診項目による健康診断と承知しております。
  228. 児玉健次

    児玉委員 そこで、今回の法の改正とのかかわりで伺いたいのですが、この車両所は二百五十人ですから、いわゆる専属の産業医の選任は法では求められておりません。鉄道病院に勤務している医師が嘱託産業医になっておりますが、この産業医の工場巡視はどのように行われているか。そして労働安全衛生規則の十五条によれば、「作業方法又は衛生状態に有害のおそれがあるときは、直ちに、労働者健康障害を防止するため必要な措置を講じなければならない。」産業医の職務権限がそのように明記されているのですが、現実に、不十分な防じんマスクで、革手袋を使って工場内でアスベストの解体作業をやっている、こういう事実をこの嘱託産業医は知っているのかどうか、そして一カ月の工場巡視はどのようになされているのか、この点を伺います。
  229. 冨田達夫

    ○冨田説明員 事業場の細部でございますので、必ずしも細部の点はわかりませんが、我々が把握しております限りでは、産業医等の職場巡視は、昭和六十二年度につきましては十四回実施されておるということのようでございまして、その中で産業医が直接巡視をいたしましたのは六回、産業医の指示を受けました保健婦、看護婦等が回ったのが八回、かようなことになっているようでございます。六十三年度は、まだ日も新しゅうございますが、一回実施している、かように聞いております。
  230. 児玉健次

    児玉委員 アスベストの飛散を伴う作業が行われていることを産業医は御承知でしょうか。
  231. 草刈隆

    ○草刈説明員 石綿取り扱い作業に関する産業医の対応でございますが、取り扱いに当たりまして、ぬらして、結局湿式で作業をする方がいいというふうな口頭のアドバイスを行ったように私たちは伺っております。
  232. 児玉健次

    児玉委員 新津車両所の安全衛生委員会で、このアスベストの問題が取り上げられたかどうか、この点伺います。
  233. 草刈隆

    ○草刈説明員 七月三十日の委員会でJR当局側から作業方法について説明を行ったというふうに伺っております。その内容につきましては、石綿張りかえ工事計画とか検修作業時の取り扱い作業に関する注意事項の徹底などでございますし、また九月三十日に関しましては、いろいろと配管の周りの断熱材のことについての知識を付議しているということでございます。
  234. 児玉健次

    児玉委員 お尋ねが細部にわたって恐縮ですが、この問題はかなりシンボリックな問題ですから取り上げているのです。  さて、四月二十一日に、先ほど言いましたように、専門業者によるアスベストの撤去作業が行われた。それをJRの職員が見て、ああいう使い捨ての宇宙服のような作業衣を着て、防じんマスクというか防じんのヘルメットをつけて、そして手袋も含めて使い捨てだと、おれたちとえらい違いだと大いに驚きまして、JRの職員が四月三十日に二十九項目の職場環境の改善要求を所長に提出いたしました。その中身を見てみますと、一つはアスベストに対してどのように作業をすることが安全なのか勉強会を実施してほしい。それからアスベストを含む環境調査を実施してほしい。そして工場の中ではあるけれども、一部大気中にアスベストが飛散するかもしれないから、周辺の学校、病院に対する安全対策を立ててほしい。こういった問題を含む二十九項目を車両所長に提出をしたわけです。ところが総務課長はこれを受け取ることをしない。このような態度で今度の改正案で言う労働者の健康保持増進が図られるだろうか。この点、いかがでしょうか。
  235. 松本邦宏

    松本(邦)政府委員 要望書の提出を受け取らなかったというような話は、実はまだ私は承知いたしておりませんけれども、もしそういうことであるとすれば、やはり問題があろうかと思います。詳しく実情調査いたしまして、善処いたしたいと思います。
  236. 児玉健次

    児玉委員 この後、郡山、土崎、大船工場のこともありますので、一部私が調べたことと一致している点もありますし、一致していない点もあります。それは仕方がないことでしょう。  そこで、私としては、労働省に今私が指摘した事実について速やかに調査していただいて、適切な作業衣の着用を指導するなど、今皆さん方はマニュアルをつくっていらっしゃると聞きますが、定期検修に当たってどのようにすることが労働者の安全と健康を確保する道なのか、そういった点について速やかな指導をしていただきたい。その点、いかがでしょうか。
  237. 松本邦宏

    松本(邦)政府委員 私どもが現在調べております点と先生のお調べになった点、若干微妙な差異もあるようでございますので、さらに詳しく調査をいたしまして、また検修作業あるいは解体作業が安全に行われますような的確な指導を行ってまいりたい、かように考えております。
  238. 児玉健次

    児玉委員 さて、今のケースなんですが、専属の産業医は千人以上の事業場、そして幾つかのものについては五百人以上となっております。そして四十九人以下は嘱託産業医も選任しなくていいという制度です。ここに極めて大きな企業がある。すべての事業場が四十九人以下で、トータルして例えば二万人であれば、嘱託産業医も選任しなくていいということにならないでしょうか、お伺いいたします。
  239. 松本邦宏

    松本(邦)政府委員 現在の法制では、それぞれの事業場の単位が四十九人以下でございますと、嘱託産業医も必要はないということになります。
  240. 児玉健次

    児玉委員 それで参議院でのこの法案についての審議、そしてきょうの午前中の審議もそうでしたが、小規模事業場での事故の多発の問題が労働省も含めてよく指摘されております。中小企業、四十九人以下の事業場、それらがかなり集中している場所で、例えば地域産業医の選任、一つ一つの事業場については四十九人以下であるけれども、そういう事業場がかなりコンパクトに集まっている、そういう箇所における地域安全衛生委員会の設置、他方、先ほど申しました、大企業ではあるけれども、事業場が小さいというふうな場合に、その大企業の職員の総数でもって一定数の専属の産業医を配置するような問題、この二つについて検討すべきではないかと思うのですが、いかがでしょうか。
  241. 松本邦宏

    松本(邦)政府委員 確かに現在の法制では、四十九人以下の事業場というのは産業医の恩恵にあずかれないという形になっておるわけでございまして、この点は労働基準審議会等でも実は議論になったところでございます。そこで一つの企業という場合でも必ずしもございませんが、そういった四十九人以下の事業場に対して、産業医といいますか、そういった医師の関与をどうするかという問題につきましては、今御指摘のございましたような地域産業医というようなものも一つの考え方かと思いますが、そういった考え方も中基審あたりでも意見には出ておりますので、どういう体制がいいか、どういう体制が実効があるか、そういったことについても検討いたしたい、かように考えているところでございます。
  242. 児玉健次

    児玉委員 改正法案における第六十五条の四「作業時間の制限」、現行の六十九条ですが、ここについて次にお伺いします。  この文の中で「潜水業務その他の健康障害を生ずるおそれのある業務」という表現がございますが、「その他」というのは、例えば何を指すのでしょうか。
  243. 松本邦宏

    松本(邦)政府委員 現在法律的な規制を設けておりますのは、潜水作業等の圧力、高気圧作業だけでございまして、「その他」というのは現在のところは具体的には定めておりませんが、仮にそういうものがあれば将来定める、こういうことで考えているわけでございます。
  244. 児玉健次

    児玉委員 「わかりやすい労働安全衛生法」という本がございます。労働安全衛生部長望月三郎氏がお書きになったものです。その中でこの六十九条のところ、趣旨として、振動、高気圧等の物理的な要因による職業性の疾病を予防するため云々と、振動という言葉がここには入っていますね。  それで、今のお答えでも、高圧作業については述べて、そしてこの後の医学的な知見といいますか、高圧作業に限るというニュアンスの答えではなかったのですが、例えばチェーンソー、昭和五十年十月二十日、労働省が出された「チェンソー取扱い業務に係る健康管理の推進について」、その中では、「操作時間は、一日二時間以下」、「連続操作時間は、長くとも十分以内」、こういうふうに明示されております。これは確立した医学的知見に裏づけられていると思います。  きょう午前中に他の議員が論議されたVDT労働についても、昭和六十年十二月二十日に皆さんが出された「VDT作業のための労働衛生上の指針」、その中でも、一日のVDT作業時間は短くする、それが好ましいと言われた上で、一連続作業時間一時間以内、そして十分ないし十五分の作業休止などが盛り込まれています。これも産業衛生学会はVDT労働について一日の上限を定めるべきだという指摘をしておりますが、いずれにしろ、こういったものについて、「その他」につけ加えることが今必要ではないかと思うのですが、いかがでしょうか。
  245. 松本邦宏

    松本(邦)政府委員 作業時間の規制を法律的に義務づけるということになりますと、やはりその作業量とそういった作業に従事する労働者への健康影響、そういった関係が医学的にきちっと把握されていなければ難しかろうというふうに考えておりまして、御指摘VDT作業の問題あるいは振動障害の問題につきましては、まだその辺の関係が明確ではないというふうに我々は認識しております。しかし、そのまま放置しておくわけにいかないということで、現段階では行政通達でとどめておる、かような理解でございます。
  246. 児玉健次

    児玉委員 その点の検討を速やかに進めていただきたいということを要望いたします。  そこで、最後に、きょう午前中も論議をされました振動病の問題について、残されている時間お尋ねしたいと思います。  ことしの三月三十日に、私、今文書を持ってきているのですが、例えば帯広労働基準監督署長がある患者に対して、「振動障害に係る保険給付について」、「四月三十日をもって症状固定として取扱いいたしますので通知する。」これが出された直後に、北海道統一戦線促進労働組合懇談会、北海道労災職業病対策協議会、北海道振動障害被災者の会、全日自労建設一般北海道本部、これらが四月四日に北海道労働基準局長に対して緊急の要求書を提出いたしまして、その後何回かの交渉が行われております。その中で、今述べた四団体は、これまで北海道においては、当局が、「症状調査は、労災打ち切りを目的としたものではない。」「あくまでも主治医の意見を尊重する。」「症状固定としても、直ちに休業補償の打ち切りは問題が残る。」そう答えてきた経過からも、この文書は非常に強い怒りを呼んでおります。  この点については、午前中随分突っ込んだ質疑が行われましたから、私は繰り返すことをしたくはありませんが、今後の対応について改めてお伺いいたします。
  247. 野見山眞之

    野見山政府委員 症状固定者に対する通知の問題につきまして、今後主治医の意見を尊重するという観点から、さらに今後慎重な取り扱いに配慮するよう指導してまいりたい、かように考えておりまして、今回の通知につきまして、手続上の問題があるものにつきましては、再調査を含め適切な対応を図ってまいりたいと考えております。
  248. 児玉健次

    児玉委員 その労災事業について言えば、北海道、これは高知も同じですが、全国各地の熱心な臨床医、その方々を患者の皆さんは主治医とおっしゃっているけれども、その方々の協力がなければ皆さんの労災事業は進まないと思うのです。そういう方々の中で、今回の一連の経過は強い不信を買っています。主治医の意見を尊重していく、この点について今お答えがありましたが、さらに踏み込んだお答えを私は求めたいのです。
  249. 野見山眞之

    野見山政府委員 今後、症状固定の判定をする際に当たりましては、主治医の所見その他につきまして資料提出を求め、これを尊重してまいる方針でございます。
  250. 児玉健次

    児玉委員 職場復帰といいますか、社会復帰の問題です。  十年たちますと、しかも振動病に立ち返るようなところは適当でないわけですから、そうすると、以前勤めた職場に復帰するということは非常に困難です。やはりここで中心にならなければいけないのは、社会復帰、適切な職業につくことです。この点で、これまで労働省努力をなさってきましたが、率直に言って実効が上がっているとは思いません。今後の抜本的な対策強化が図られるべきだと思います。この点、いかがでしょうか。
  251. 野見山眞之

    野見山政府委員 現在までの再就職の援助対策といたしましての各種の奨励制度、あるいは求人開拓等の努力に加えまして、今後労働基準監督署、労働基準局並びに職業安定機関とが連携を十分とりながら、社会復帰のための諸対策につきまして、さらに努力を重ねてまいりたいと思っております。
  252. 児玉健次

    児玉委員 では最後に、大臣にお伺いしたいのですが、振動病の発生予防を含めた、この後の対応の強化ですね。この点で、労働大臣としてどのようなお考えをお持ちか、その点をお伺いいたします。
  253. 中村太郎

    中村国務大臣 御承知のように、振動障害対策につきましては、現在第三次の振動障害総合対策要綱に基づきまして、振動障害の防止あるいは補償対策、社会復帰等を推進しておるところでございます。今後におきましても、御指摘のありましたように、振動障害をめぐる問題点を踏まえまして、省内に労働基準局担当審議官を長とします横断的なプロジェクトチームを設けまして、林業の振動障害に係る予防から補償、社会復帰に至るまでの統合的な対策検討に早急に着手をいたしまして、極めて早い時期に結論を出すよう最大限の努力をいたす所存であります。
  254. 児玉健次

    児玉委員 この問題は患者にとっては死活の問題ですし、そして今過疎で苦しんでいる北海道のそれぞれの地域にとっては、地域経済にも関係した深刻な問題ですから、労働省として、これまでのさまざまな経過は、私としては、この際白紙に戻すというほどの決意を含めて、今大臣がおっしゃった再検討を進めていただきたい、そのことを述べまして、質問を終わります。
  255. 稲垣実男

    稲垣委員長 以上で両案に対する質疑は終局いたしました。     ─────────────
  256. 稲垣実男

    稲垣委員長 これより両案を討論に付するのでありますが、その申し出がありませんので、直ちに採決に入ります。  労働安全衛生法の一部を改正する法律案について採決いたします。  本案に賛成の諸君の起立を求めます。     〔賛成者起立〕
  257. 稲垣実男

    稲垣委員長 起立総員。よって、本案は原案のとおり可決すべきものと決しました。     ─────────────
  258. 稲垣実男

    稲垣委員長 この際、本案に対し、戸井田三郎君外四名から、自由民主党、日本社会党・護憲共同、公明党・国民会議、民社党・民主連合及び日本共産党・革新共同の五派共同提案に係る附帯決議を付すべしとの動議が提出されております。  提出者より趣旨の説明を求めます。伊藤忠治君。
  259. 伊藤忠治

    伊藤(忠)委員 私は、自由民主党、日本社会党・護憲共同、公明党・国民会議、民社党・民主連合及び日本共産党・革新共同を代表いたしまして、本動議について御説明申し上げます。  案文を朗読して説明にかえさせていただきます。     労働安全衛生法の一部を改正する法律案に対する附帯決議(案)   政府は、次の事項について、適切な措置を講ずべきである。  一 労働者の健康の保持増進を図るための措置を促進するため、専門家の養成、実施機関の育成その他必要な基盤整備に努めるとともに、事業者に対し必要な指導援助を行うこと。  二 労働者産業の場で取り扱う化学物質について、労働者の健康を確保するために必要な表示の充実及び安全衛生教育の徹底を図るとともに、健康管理手帳について、知見の集積に努め、必要に応じて交付対象業務の範囲の拡大について積極的に検討を行うこと。  三 林業における振動障害に関し、予防、補償、職場復帰及び再就職の促進について総合的な対策の確立を図ること。  四 産業医確保のための積極的対策を講ずるとともに、産業医制度の充実を促進する具体的方策を拡充強化すること。  五 労働安全衛生水準の向上に資するために、労働安全コンサルタント及び労働衛生コンサルタント制度の活用を図ること。  六 ME化、サービス経済化進展等に伴って生じている新たな労働災害・職業病を防止するため、関係法令について、実態に即したものとなるよう見直しを行うこと。  七 本改正法の円滑な施行を確保するため、労働基準監督官、安全・衛生専門官の増員と、労働安全・衛生を担当する行政体制の整備拡充を図り、労働災害の防止に即応できる態勢を確立すること。 以上であります。  何とぞ委員各位の御賛同をお願いいたします。
  260. 稲垣実男

    稲垣委員長 以上で趣旨の説明は終わりました。  採決いたします。  戸井田三郎君外四名提出の動議に賛成の諸君の起立を求めます。     〔賛成者起立〕
  261. 稲垣実男

    稲垣委員長 起立総員。よって、本動議のとおり本案に附帯決議を付することに決しました。  この際、労働大臣から発言を求められておりますので、これを許します。中村労働大臣
  262. 中村太郎

    中村国務大臣 ただいまの附帯決議につきましては、政府といたしまして、その御趣旨を尊重いたし、努力する所存でございます。     ─────────────
  263. 稲垣実男

    稲垣委員長 次に、勤労者財産形成促進法の一部を改正する法律案について採決いたします。  本案に賛成の諸君の起立を求めます。     〔賛成者起立〕
  264. 稲垣実男

    稲垣委員長 起立総員。よって、本案は原案のとおり可決すべきものと決しました。  お諮りいたします。  両案に関する委員会報告書の作成につきましては、委員長に御一任願いたいと存じますが、御異議ありませんか。     〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
  265. 稲垣実男

    稲垣委員長 御異議なしと認めます。よって、そのように決しました。     ─────────────     〔報告書は附録に掲載〕     ─────────────
  266. 稲垣実男

    稲垣委員長 次回は、公報をもってお知らせすることとし、本日は、これにて散会いたします。     午後三時四十四分散会