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1988-04-21 第112回国会 衆議院 社会労働委員会 第10号 公式Web版

  1. 会議録情報

    昭和六十三年四月二十一日(木曜日)     午前十時五分開議  出席委員    委員長 稲垣 実男君    理事 高橋 辰夫君 理事 戸井田三郎君    理事 丹羽 雄哉君 理事 野呂 昭彦君    理事 畑 英次郎君 理事 池端 清一君    理事 田中 慶秋君       相沢 英之君    粟屋 敏信君       伊吹 文明君    今井  勇君       小沢 辰男君    大石 千八君       大野  明君    大野 功統君       片岡 武司君    木村 義雄君       北村 直人君    近藤 鉄雄君       佐藤 静雄君    自見庄三郎君       高橋 一郎君    中山 成彬君       堀内 光雄君    三原 朝彦君       箕輪  登君    持永 和見君       伊藤 忠治君    川俣健二郎君       田口 健二君    田邊  誠君       永井 孝信君    村山 富市君       新井 彬之君    大橋 敏雄君      平石磨作太郎君    古川 雅司君       吉井 光照君    塚田 延充君       児玉 健次君    藤原ひろ子君  出席国務大臣         厚 生 大 臣 藤本 孝雄君  出席政府委員         内閣法制局第三         部長      津野  修君         内閣総理大臣官         房参事官    平野 治生君         厚生省保健医療         局長      北川 定謙君         厚生省社会局長 小林 功典君         厚生省児童家庭         局長      長尾 立子君         厚生省年金局長 水田  努君         厚生省援護局長 木戸  脩君         社会保険庁年金         保険部長    佐々木喜之君  委員外出席者         法務省民事局参         事官      寺田 逸郎君         法務省訟務局民         事訟務課長   大島 崇志君         外務省アジア局         北東アジア課長 田中  均君         外務省条約局国         際協定課長   小島 高明君         外務省条約局法         規課長     西田 恒夫君         大蔵省主計局主         計官      若林 勝三君         大蔵省主計局主         計官      中島 義雄君         自治省行政局公         務員部福利課長 鈴木 正明君         社会労働委員会         調査室長    石川 正暉君     ───────────── 委員の異動 四月二十日  辞任         補欠選任   片岡 武司君     橋本龍太郎君   自見庄三郎君     赤城 宗徳君   高橋 一郎君     大塚 雄司君   中山 成彬君     松永  光君   三原 朝彦君     工藤  巌君 同日  辞任         補欠選任   赤城 宗徳君     自見庄三郎君   大塚 雄司君     高橋 一郎君   工藤  巌君     三原 朝彦君   橋本龍太郎君     片岡 武司君   松永  光君     中山 成彬君 同月二十一日  辞任         補欠選任   小沢 辰男君     北村 直人君   近藤 鉄雄君     大石 千八君   大原  亨君     村山 富市君   田邊  誠君     田口 健二君   大橋 敏雄君     古川 雄司君   田中美智子君     藤原ひろ子君 同日  辞任         補欠選任   大石 千八君     近藤 鉄雄君   北村 直人君     小沢 辰男君   田口 健二君     田邊  誠君   村山 富市君     大原  亨君   古川 雅司君     大橋 敏雄君   藤原ひろ子君     田中美智子君     ───────────── 四月二十一日  原子爆弾被爆者等援護法案田口健二君外十一名提出衆法第七号) は委員会許可を得て撤回された。     ───────────── 本日の会議に付した案件  児童扶養手当法等の一部を改正する法律案内閣提出第六九号)  原子爆弾被爆者に対する特別措置に関する法律の一部を改正する法律案内閣提出第七〇号)  戦傷病者戦没者遺族等援護法及び戦没者父母等に対する特別給付金支給法の一部を改正する法律案内閣提出第七一号)  厚生年金保険法の一部を改正する法律案内閣提出第七七号)  原子爆弾被爆者等援護法案田口健二君外十一名提出衆法第七号)  原子爆弾被爆者等援護法案田口健二君外十一名提出衆法第七号)の撤回許可に関する件  社会福祉・医療事業団法の一部を改正する法律案内閣提出第五四号)(参議院送付)      ────◇─────
  2. 稲垣実男

    稲垣委員長 これより会議を開きます。  内閣提出児童扶養手当法等の一部を改正する法律案原子爆弾被爆者に対する特別措置に関する法律の一部を改正する法律案戦傷病者戦没者遺族等援護法及び戦没者父母等に対する特別給付金支給法の一部を改正する法律案厚生年金保険法の一部を改正する法律案及び田口健二君外十一名提出原子爆弾被爆者等援護法案の各案を議題といたします。  これより各案について質疑に入ります。  質疑の申し出がありますので、順次これを許します。川俣健二郎君。
  3. 川俣健二郎

    川俣委員 今委員長が読み上げられたように、児童扶養手当法初め四法案を一遍にやってしまうというのだから、しかも三時五十一分で終わって採決だというのだから、東北の熊襲ではせやみの節句働きといいまして、今大臣に言いましたけれども、日ごろ横着しておって一遍にやってしまおうというわけです。しかも、少しはさわらないで賛成するわけにいかないから、ひとつ川俣さんやってくれぬかときのう言われた。  それで児童扶養手当を見ると、ちょっと間違ったかなと思ったが、三万三千九百円から三万四千円というのだから差し引き百円、それから福祉手当などについては一万千六百五十円から一万千七百円だから五十円ですね。百円や五十円上げるのに、これはコストの方が高くつくのじゃないかなと思うのですが、長尾局長と百円、五十円の問題を幾らいじくり回したってしようがないと思うのですが、しかし上げてくれると言うのだからこれは賛成した方がいいのだろうと思うのです。  それから、予算委員会から数年間ずっとやってまいりましたが、今、厚生年金国民年金の積み立ての総額、残額というか、どのくらいあるのでしょうか。
  4. 水田努

    水田政府委員 まず厚生年金についてお答えを申し上げます。  昭和六十二年度の厚生年金保険積立金は約六十兆でございまして、十年前の五十二年度の十八兆に比べて約三倍以上になっております。  なお、国民年金につきましては、現在約四兆でございます。
  5. 川俣健二郎

    川俣委員 十年で約三倍。合わせて六十五兆円。日本の国の今の予算が五十六兆円。そこで私たちが長年与野党を通じて叫んできたのは、「シーザーのものはシーザーへ返せ」という――大蔵省もきょう来ておるので聞いてもらいたいのだが、予算委員会でもなかなか、社労ではどうにもならない。こういう議事録が出てきました。「大蔵大臣、この資金運用について、社会保険審議会でも自主運用の一部を糸口をつけてみたらどうかという提言があった。大蔵省はそれを協議する用意がありますか。」これは納める側からの主張であり、ぜひ窓口を開くべきではないか、こういう論争を時の竹下大蔵大臣とすったもんだと何回もやりまして、そこで「一切話し合いにも応じませんという姿勢を持っておるわけではございません。」こういうぼつぼつぽつぽつ窓が開くかな、こういうように予算の方で見ておりましたが、現在、その経過と、できれば今後どのくらいの金額が厚生省自主運用になるのだろうかという見通しをちょっと教えてください。
  6. 水田努

    水田政府委員 自主運用有利運用事業は、六十一年度に資金確保事業という形で年金福祉事業団を使ってやるという形でスタートいたしまして、六十二年度にさらに財源強化事業というものを創設いたしたわけでございまして、最初六十一年度五千億でスタートしたものが、六十二年度両事業合わせまして一兆五千億、六十三年度は二兆一千二百億という形まで増加をいたしてまいっております。
  7. 川俣健二郎

    川俣委員 局長、今後はどういう見通しでございますか。というのは、時の大蔵大臣も、郵便貯金ども含めて、こういうことになりまして、したがって郵政省も一緒にスクラムを組んで大蔵省に働きかけたわけですね。きょうはそっちの方の担当大蔵省は呼んでおりませんが、郵政省としては、六十二年度は二兆円、それからそれに六十三年、六十四年、六十五年というように五千億ずつ足していくんだそうですよ。ということは、六十二年が二兆円、六十三年は二兆五千億と足していくのですよ。そうすると、六十六年度分は単年度で四兆円です。六十二年から六十六年までの五年間トータルで十五兆円になるわけですね。そういったようなお墨つきというか見込みを厚生省はもらっていないのかね。その辺も含めて、今後どういうような見通しなのか。
  8. 水田努

    水田政府委員 厚生年金積立金は、先ほど六十二年度で約六十兆ということを申し上げたわけでございますが、十年後の七十二年度では約百兆ということになるわけでございまして、郵政省の方は、先生指摘のとおり、五年間で十五兆という形で自主運用をスタートされたときに大蔵当局とセットされておることは、御指摘のとおりでございまして、それで私どもといたしましては、郵政自主運用あり方に倣うというよりは、むしろ共済組合自主運用あり方に準拠して厚生年金自主運用も考えていく方が至当ではないかなということで、私どもは一応究極の姿としては、国家公務員共済の場合と同様積立金総額の三分の一程度自主有利運用事業に到達するように今後持っていきたいと考えておりまして、あえて郵政と同じく五年間セットするという形をとらなかったものでございます。
  9. 川俣健二郎

    川俣委員 そうすると、局長、こういうことですか。究極共済と同じように三分の一くらいを自主運用していきたいという気持ちを持っておるし、そうあるべきだ、各委員、応援してくれ、こういう意味ですか。
  10. 水田努

    水田政府委員 気持ちの上では先生指摘のとおりでございますが、もちろん私ども資金運用部に預託しております年金原資は、財投の重要な原資として内需拡大その他の国の金融経済政策に寄与しているという側面を持っておることも否定できないわけでございまして、そのときどきの金融財政事情との総合勘案の中で、私どもが理想としております三分の一自主運用の実現との調整を図りながら、究極においてはそういう形に持っていきたいと考えている次第でございます。
  11. 川俣健二郎

    川俣委員 随分御遠慮なさるような、ここに大蔵大臣もいないんだから、その方の主計官もいないから……。資金運用部云々なんというのはわかり切っていますよ、ちょうど大蔵省が言うような発言をするから。結局大蔵省に当たっているのですか。どの程度大きな声で当たっているのかね、低い声でかね、おねだりかね。
  12. 水田努

    水田政府委員 社会部会の御決議もいただきまして、精いっぱい大きな声で要求いたしておるつもりでございます。
  13. 川俣健二郎

    川俣委員 最初からそう言ってくださいよ。  そこで、我々が大蔵省運用について言うように、この辺で聞いてみたいと思い出したのは、年金福祉事業団運用させているわけですね、今局長は言った。そうなると、この年金福祉事業団はどういう使い方をしているんだろうかということを後で聞かせてもらえますか。今一覧表みたいなものはありますか。
  14. 水田努

    水田政府委員 年金福祉事業団資金運用部から原資を借りてまいりまして、それを民間の専門の金融機関に運営を委託し利刺差を稼ぐということをやっております。
  15. 川俣健二郎

    川俣委員 そうすると、局長年金福祉事業団自主運用の金を預けているわけだが、それを今現在でどのような使い方にしているかということの一覧表を、きょうは時間がないから後で見せていただけますか。
  16. 水田努

    水田政府委員 承知いたしました。
  17. 川俣健二郎

    川俣委員 それから、戦傷病者法案にちょっと絡んでお伺いしたいのは、中国残留日本人孤児でございますが、過日、いつでしたか、今後例の訪日調査を打ち切るやに私は感じ取って読み取ったのですが、そうですか。この辺はどうですか。
  18. 木戸脩

    木戸政府委員 そのようなことが新聞で、国会でも取り上げられたわけでございますが、この件につきましては、三月の中ごろ担当課長を訪中させまして、今後とも中国政府訪日調査協力をする、ある程度のまとまった数の孤児がいれば訪日調査脇刀をするということになったわけでございます。引き続き私どもは、一人になるまで肉親調査をする、まとまった孤児の方がいる場合は、中国政府協力も得て訪日調査を継続をしてまいりたいということを考えているわけでございます。
  19. 川俣健二郎

    川俣委員 わかりました。  それじゃ幾つかの質問を一遍に行いますから、お願いします。  今後どのくらいを見込んでいるだろうかというのが一つ。それから現在まで何回、何班と言うのですか、分けてやっただろうか。それから今日中で認定者訪日した者は何人いて、帰国したのが、帰国したといっても国費と、以前は私費でよく来たんでしょうから、これを分けて、何人ずつおったか。それから孤児以外の残留者がおりますね、家族を含めて。その辺をちょっと数字を聞かせてくれませんか。
  20. 木戸脩

    木戸政府委員 まず、今後訪日調査対象の方がどのくらいいるかということでございます。私ども本年度予算において百名分の調査経費を確保しているところでございます。けさの日刊紙にも出ておりましたが、六月上旬には百名前後の訪日を考えておるわけでございます。問題は百名以外にどのくらいの対象者があるかということでございますが、日中両国政府調査調整中の件数あるいは中国各省人民政府孤児担当官推計等を総合いたしましても、今確たる数字は申し上げられないわけでございますが、百名以内の方が百名以外にはまだおられるのではないかという程度のことしか申し上げられないわけでございます。  それから、訪日調査の実績でございますが、五十六年から始めまして第十五次まで、これは六十一年度でございますが、五十六年度から六十一年度まで十五回の調査を行いました。それから六十二年度に補充調査を二回行ったわけでございまして、千五百八十八名の方が来日をし、そのうち五百八十一名の方が判明をしたという状況にあるわけでございます。     〔委員長退席高橋(辰)委員長代理着席〕  それから、現在孤児の方がどのくらいいるかというお話でございます。私ども日中両国政府把握している孤児の数というのは、訪日調査対象者を中心に考えておりますので、現在大体二千二百名弱でございますが、これ以外にも自費で帰国をしたというような方々もおられるわけでございまして、厚生省国費支給をして帰国をした人は把握はできますが、それ以外の方については具体的な把握方法を持っておりませんので、この点につきましては、昨年の八月に、各都道府県孤児以外の方の中国帰国者実態も含めまして調査を依頼して現在集計をしているところでございます。ざっとした数字を申し上げますれば、現在孤児というふうに日中両国政府認定をしている者あるいは認定をして養父母の扶養費を払った方ということから推計いたしますと、大体二千八百名から二千九百名くらいの方を把握しているわけでございます。  それから、孤児以外の人が中国にどのくらい残留しているか、これは非常に難しいのでございますが、一時帰国という制度がございまして、その数等から推計いたしますと、主に御婦人残留婦人の方が約三千五百名おられるというような実態にあるわけでございます。
  21. 川俣健二郎

    川俣委員 ある程度国費は、それは間違いなく一人残らず把握できるのだろうが、私費で前もって来ておったりする人方はかなり議員などに願っていろいろな就職その他やっている状態でございます。私もそれを経験しておりますので、今後のためにぜひ把握しておいてもらいたいと思います。  そこで、この問題の最後ですが、質問したいのは、厚生省が作成した膨大な資料、これを見てまいりましたが、昭和六十三年度には全国十五カ所に自立研修センターをつくるということです。全国六カ所の定着促進センターとあわせて帰国後一年間を通じて自立支援体制を確立しよう、大変結構なことだと思います。帰国孤児の現状を見ると、地域社会に溶け込むのに非常に時間がかかる、苦慮しておる、生活保護に頼る者も少なくない、私はそれの実態を知っておる。  そこで、大臣にも伺いたいのですが、まず事務当局から帰国者自立促進について具体的な改善策、箱、場所をつくるということは、今申し上げたとおりですが、やはり関係官庁との関係が非常にあるのだろうと思いますね。早速働くとなれば労働省関係があるでしょう。そういったところを聞かせてもらいたいということと、先ほど大臣に伺おうと思っておった訪日調査の今後の基本方針、この点については局長から言ってもらったのでいいのですが、今の残留孤児帰国後の受け入れをどうやっていくかということをまず局長から聞いて、大臣最後に伺いたいと存じます。
  22. 木戸脩

    木戸政府委員 先生から御指摘がありました、箱はできたけれどもソフトの中身はどうか、こういうことでございます。まず帰国後の四カ月間の定着促進センターにおきましては、日本語や生活習慣についての指導を行う際に、特に就労というのが日本では非常に大切なんだということを認識していただくとともに、日本労働事情労働慣行生活保護制度の趣旨を理解してもらう、この点につきましては、労働省から格別の協力をいただいておるわけでございます。  それから、そうやってまず全般的な日本制度を理解してもらうとともに、高齢であるとか病気であるとか専修学校へ行くとか長期間の職業訓練校に行くとか、そういう場合は例外でございますが、原則としては帰国後一年以内に生活保護から脱却するよう生活設計を立てなさい、立ててくださいということを指導しまして、その計画に基づきまして、定着促進センターを所管する職業安定所求職票提出させてもらうというような指導を行っているわけでございます。  それから、四カ月が終わりまして、今度新しくできます自立研修センターに行っていただきました後は、八カ月間ございますので、ここで個別世帯別定着促進センターにおいて作成いたしました生活設計の実施について個別の指導を行いまして、定着促進の実例に合った生活設計を立てていただく。  それから、いよいよ自立研修センター研修を終わった後につきましても、肉親または身元引受人自立指導員福祉事務所のケースワーカー、それから職業安定所職員等が十分に連絡をとりながら、早期自立できるようきめ細かな指導を行ってまいりたいと考えております。  それから、先生から御指摘がございましたように、地域社会からの孤立というのがなかなか生活保護から脱却できない、早期自立できない原因でございますので、文部省あるいは県の教育委員会協力を得まして、地域社会との交流事業が推進できるように関係都道府県に要請しているところでございます。  いずれにいたしましても、箱をつくりました後は、きめ細かな指導というものを行ってまいりたいと考えておるわけでございます。
  23. 藤本孝雄

    藤本国務大臣 中国残留日本人孤児の問題につきましては、さきの大戦におきます非常に大きな犠牲者であるわけでございますので、政府といたしましては最大限の努力をいたしてまいりたい、まずこれが基本的な考え方でございます。  御承知のように、日本孤児問題につきましては、訪日調査肉親捜しというのはほぼ峠を越しているわけでございます。しかし、最後の一人までその調査を行うという方針でございますが、峠を越しておるような状況でございますので、今後の焦点としては、判明をした孤児方々、現在中国にいらっしゃる方々、約千世帯いらっしゃるわけでございますが、これらの方々帰国を早急に実現さす、六十四年度末までに帰国を実現させようという考えであります。  その問題と、さらに最も大事な帰国後の定着自立の問題でございます。この問題については、孤児皆さん方自立に対するそういう努力がもちろん前提でございますけれども、私どもといたしましては、この定着自立のために粘り強く援助をしていきたい、そういうふうに考えておるわけでございまして、関係各省庁、地方公共団体、さらには国民皆さん方の御協力を得ながら、できる限りの対策、対応はしてまいりたい、かように考えております。
  24. 川俣健二郎

    川俣委員 今大臣なり局長が話したように、やはり大変だと思います。私も個別的に何回かお願いしたことがあるのでございますが、この戦後処理、大変な問題であるということを認識しております。ただ、働くとなれば労働省教育となれば文部省、そして住みかを考えると各地方日治体、こういったものとの連絡を密にしないと、援護局だけで苦慮してもなかなかはかどらないという欠点もございますので、ぜひその辺は、せっかく今のような構想をお持ちでございますので、しかも大臣にも一人残らず最後の一人までやろうという気構えを聞かせてもらったので、この問題はこれで終わりたいと思います。  さて、戦後処理の問題ですが、たしかきょう内閣委員会の方で戦後処理議員立法審議をするというように伺っておりますが、ただ、戦後処理ということだけでは片づけられないという問題で、私は予算委員会で十年やってきた問題があります。それはほかでもないシベリア抑留者強制労働に対し、日本国政府はどういうように取り計らうのだろうか、この問題であります。  そこで、きょうはせっかく戦後処理援護法等がかかっておりますので、社労の場としてはこういう場しかございませんので、今までの関連でやっていきたいと思います。しかし、きょうは予算委員会じゃありませんので、各官庁担当者に来ていただいております。今裁判がかかっておるので法務省、それから担当の総理府、法制局外務省と、こういう皆さんにぜひ審議に入ってもらいたいと思ってお呼びしておりますので、お願いしたいと思います。  皆さん承知だと思うのですが、なぜ私は単なる戦後処理では片づけられないかというと、日本の国が例によってポツダム宣言を受諾して矛をおさめたわけでございます。「日本国軍隊は、完全に武装を解除せられたる後、各自の家庭に復帰し、平和的且生産的の生活を営むの機会を得しめらるべし。」こういうポツダム宣言の第九項。ところが、こういうポツダム宣言受諾判こを押したはずのソ連が何たることをやるのだろうか、あのソ連という国は。特に当該者はいまだにこうも思っているだろうと思います。  そこで、ポツダム宣言後、五十数万人があの極寒のシベリアそして南樺太、千島、四つの島、さらには旅順、大連のような租借地、こういうところで、とてもじゃないけれども、語るに尽くせない強制労働をやらされた。これは何人かの本も出ておりますし、映画にもされておりますが、一体あれはどういう立場の人方だろうか。捕虜だろうか。俘虜という言葉が出ましたね。どういうように――これは外務省の方がいいんだろうかね、ちょっと聞かせてくれませんか。
  25. 西田恒夫

    西田説明員 お答えいたします。  ただいま先生の御質問捕虜俘虜の違いでございますが、国際法上の概念として言えば、これは同様のものであろうというふうに理解しております。
  26. 川俣健二郎

    川俣委員 あなたは書いたものを読まないで、あの人方は何だろうかと言っているのだ。ポツダム宣言を受諾して、強制労働に、長いのは十二年抑留されておったけれども日本の国の政府としては、あの人方をどのように定義づけているかということです。これはまだ国会の審議に出ていない。初めての質問です。
  27. 西田恒夫

    西田説明員 お答えいたします。  私がお答えいたしましたのは、国際法上、私たち政府の理解としましては、当該の皆様は捕虜というというふうに理解すべきものと考えております。
  28. 川俣健二郎

    川俣委員 それじゃ、これから捕虜ということで確認いたしますよ。いいですね。  そこで、戦後処理は終わったという報告書が国会に出されました。それは五十九年の十二月二十一日です。もちろん私はこの問題に関心があるから見ました。この戦後処理問題懇談会は、五十七年六月三十日、これが三十五回行われておりますね。ところがこれはどういうような話し合いをしたんだろうか。七人の有識者によってというが当該者の代表も入っているわけではないし。一々見せてくれとは言わないが、例えば一九四九年にジュネーヴ条約を結ばれて、そのジュネーヴ条約に基づいて、日ソ間で一九五六年の条約を結んだ。簡単に言うと、もうどちらも権利、義務は問わない、鳩山総理が行って。そういうことであったわけです。したがって、そのジュネーヴ条約というのは、ちょうど今外務省捕虜だと定義づけてくれたので非常に話がしやすいのですが、それまでの各国の捕虜に対する補償は当該国で行うという日本語であった。それは英語で言うと「ザ・セッド・パワー」だ。「ザ・セッド・パワー」をどう解釈するんだろうかということで、条約の批准は日本語ですから、そして日本語で天皇に調印をいただくわけですから、その日本の国会にかけられた条約、それから天皇に調印をもらった文書はもちろん当該国と書いておいて、一体当該国というのは抑留したソ連を指すのか、いや、この場合は祖国日本を指すのか、こういう論争を昭和二十八年以降やってきた。ところがイタリア、フランス等の実例を見ますと、当該国というのはそれぞれ捕虜がいるわけですから、フランスからドイツ、ドイツからイギリス、イギリスからドイツもあっただろう、ドイツは解放されたらすぐ放したたろう。だけれども、それぞれの捕虜は自国に帰ったその国が、祖国が補償するんだというジュネーヴ条約の解釈であるということで、イタリアもフランスも西ドイツも、それに基づいて年金で払う国、あるいは一時金で払う国、いろいろ補償の仕方は違うが、いずれにしても自国で払うのだ、こういった解釈であった。ところが日本の場合は、当該国というのはソ連を指すのだ、こういうことであったが、私は、そうじゃない、諸外国の実例はこうじゃないかというので十何年やってきたのですが、今度は総理府の平野さんに聞きますけれども、この七人の有識者に対して、この三十五回の懇談会中に、イタリアはこのようにやっています、それからフランスはこのようにやっていますという諸外国の実例を一体説明したことがあるのだろうか、ちょっとそこを聞きたいと思います。
  29. 平野治生

    ○平野政府委員 お尋ねの戦後処理問題懇談会におきまして、諸外国の例はあるかということでございますが、私の承知している限りでは、外務省からそのような各国の例、主として欧米諸国の数カ国の例でございますが、それについて聞いたことがあるというふうに承知いたしております。
  30. 川俣健二郎

    川俣委員 聞いたことがあるというよりも、この七人のお歴々の有識者に説明してきた、こういうように解していいと思います、時間がありませんので解説しますと。ところが、これをずっと追及している間に六十一年七月六日にダブル選挙、投票日です。自民党の皆さん方が大勝したときでございます。その後の九月にあの「ザ・セッド・パワー」というのは誤訳であった。誤訳であったというのは、簡単に言うと、抑留国と考えておったが所属国の間違いだった。今平野参事官捕虜だと言ってくれたので話がしやすいのですが、捕虜にやっている間の補償は祖国日本、所属国が補償するんだという解釈をすべきであったのが間違っておったので、これはこれからはソ連じゃなくて日本の国が補償するんだという解釈にすべきだという一片の官報が六十一年九月三日に公布された。しかし、国会はまだ開催されていない。大勝した、公布、我々は敗北した状態で感情の処理もこれありで、その間にあの一片の官報で、間違っておった。そうなると、ちょっと待ってくださいよ、天皇陛下に調印をもらったものまでさかのぼるべきではないか。その前に国会にもう一遍かけ直すべきではないか。こういう大きな問題はきょうはなじまない。厚生大臣一人に言ってみたってどうにもならない。これはいずれ予算委員会なり大舞台でやらざるを得ないと思うが、そこで、私はこういうように思うのだが、外務省あたりも少しは口を出してください。どうですか。
  31. 小島高明

    ○小島説明員 お答え申し上げます。  先生指摘捕虜の待遇に関するジュネーヴ条約の訳語の問題につきましては、昭和六十一年十月の衆議院の予算委員会における先生質問に対する答弁という形で、当時の倉成外務大臣より政府の見解を申し述べておるところでございます。これを改めて申し上げますと、条約の締結は正文に基づいて行われるものであり、正文テキストが表現している条約の内容に我が国が拘束されることを約束する性格を持っておる。六十一年九月の訳語の変更は、その訳文である日本語テキストについて、その一部を正文に即した表現に改めるものであって、この条約の正文である英語及び仏語のテキストには何ら変更があるわけではなく、したがって、条約の内容の変更をもたらすものではない。六十一年九月の訳語変更は、このような性格のものであるので、政府としては、条約の締結を所掌している外務省の告示という形で、その内容を広く国民に知らせることが妥当であると考え、この措置をとったものである。かように御答弁申し上げた次第でございます。  それからもう一点、さらに昨年の七月、これも川俣先生からの御質問に対する答弁という形で外務省の斉藤条約局長から答弁してございますが、前段は今倉成大臣の答弁をそのまま繰り返し申し上げたものでございますけれども、さらに申し上げますと、訳語の訂正が補償問題にどういう影響を及ぼすかという点について二点申し上げたいと申しておりまして、「第一点は、この捕虜の待遇に関する条約は一九四九年に作成されておりまして、日ソ間でこれが適用されるようになりましたのが一九五四年でございます。昭和二十九年でございます。したがいまして、この条約が第二次大戦を契機として起こっておりますいろいろな問題にそのまま適用されると考えることには無理があるのではないかと考えております。」  さらにもう一点答弁しておりまして、「この訂正を行いました第六十七条の趣旨は、抑留国または所属国が行いました支払いを最終的に敵対行為が終了した後に関係国の間で取り決めをつくって清算しなさいという規定でございまして、いずれの国が補償責任を負うかという問題とは関係がない規定でございます。」  以上のように答弁している次第でございます。この点について、現在でも考え方は変わっておりません。
  32. 川俣健二郎

    川俣委員 ではもう一つ踏み込んで、今後のための参考に聞かせてください。  条約を変えるなんということは到底できるはずがない。問題は、外務省の意思決定が、解釈が違っておったという官報なんです。たしか倉成さんでしたね。解釈が違っておったということは、いわゆる抑留国か所属国かどっちが支払うのだという解釈が違っておった。ところが「ザ・セッド・パワー」というのは、諸外国の実例から見ても、その当時のいろいろな資料を収集してみても、抑留国に支払わせるものではなくて、所属国が支払うのだという解釈に変わったと読んでもいいのでしょう、どうですか。私は条約が変わったとは言わないよ。
  33. 小島高明

    ○小島説明員 お答え申し上げます。  繰り返しになる点があるとは思いますけれども、所属国に変わったということではございません。それはいろいろと慎重に検討しました結果、「セッド・パワー」という訳につきましては、当該国というふうに訳すのが適当だというふうに判断して訂正したわけでございます。
  34. 川俣健二郎

    川俣委員 それでは何と解釈して国会で承認を得たの。国会に承認を得るときの日本語を言ってごらんなさいよ。
  35. 小島高明

    ○小島説明員 国会で承認をいただきましたときの訳語につきましては、「セッド・パワー」を抑留国と訳しております。
  36. 川俣健二郎

    川俣委員 抑留国ですね。
  37. 小島高明

    ○小島説明員 国会で承認いただきました訳文につきましては、「セッド・パワー」を抑留国と訳しております。
  38. 川俣健二郎

    川俣委員 抑留国というのはソ連のことを指しますね。
  39. 小島高明

    ○小島説明員 シベリア抑留に関しましては、ソ連を指すというふうに解して差し支えないと思います。
  40. 川俣健二郎

    川俣委員 それが所属国に変わったということは、日本を指しますね。
  41. 小島高明

    ○小島説明員 御指摘の点につきましては、政府部内で詳細に検討しましたところ、抑留国と訳すのは必ずしも適当でない、ただし所属国というふうに言えるかということにつきましては、前後の関係からいって、あるいはほかの条文の関係からいっても直ちにそうは言えない。したがいまして、「セッド・パワー」の訳といたしましては、当該国というふうに訳した次第でございます。
  42. 川俣健二郎

    川俣委員 当該国というのは、具体的にどこの国ですか。
  43. 小島高明

    ○小島説明員 お答えいたします。  この点につきましては、所属国及びまたは抑留国というふうに解すべきものだというふうに考えております。
  44. 川俣健二郎

    川俣委員 所属国に訂正したということは、どこの国を指すのかと言っているんだよ。
  45. 小島高明

    ○小島説明員 お答え申し上げます。  昭和六十一年九月三日の官報で訳語を訂正いたしましたけれども、その際に訂正いたしましたのは、抑留国から当該国に訳し、訂正したという次第でございます。
  46. 川俣健二郎

    川俣委員 これは伺っている人はわからないと思うのです。この社労委員会で、人の舞台をかりてまさか暴れてとめるというわけにいかないし、予算委員会ものだと思うが、今の議事録はあなたじいっと読んでごらんなさい、矛盾の答弁だから。  抑留国ではないという意味で訂正したのでしょう。いわゆるこの場合は補償するのはソ連ではない、こういう意味で訂正したのでしょう。所属国ということになったわけでしょう。だから日本の国のことなんですよ。それは答弁の時間がない。答弁はいいです。  法務省、せっかく来てもらっていますので、一点だけ伺います。  この問題を含めて、今結審がされまして、判決を待つばかりですね。ところがどういうわけか、全国の抑留者の皆さんがつくっておる全国シベリア抑留者強制労働補償協議会、全抑協、皆さん伺っていると思いますが、この組織に対して別のものをつくろうという動きが十何年前にありまして、その代表が相沢先生であった。ところが裁判が、訴訟を起こした提訴側、いわゆる全抑協側に非常に有利になってきた。だれが考えたってそうだ、有利でしょう、今のところは。そうしたら、相沢先生が法務委員長になられた。これは味があることをやるなと思った。ところが株式の売買益の問題でおやめになった。これが現状である。  そこで、法務省に聞きますが、これは外務省に依頼されている民事だと思うのですけれども、一体どういう結審の感触ですか。判決がどうなるかということまでは聞かないが、感じはどうです。
  47. 大島崇志

    ○大島説明員 いわゆるシベリア抑留者の訴訟は東京地方裁判所に係属しておりまして、昨年二月十日に弁論が終結されて、現在判決言い渡し期日は追って指定ということになっております。  ただいま御質問ありました感触ということについては、こちらではちょっとわかりかねますので、御了解いただきたいと思います。
  48. 川俣健二郎

    川俣委員 終わります。ありがとうございました。
  49. 高橋辰夫

    高橋(辰)委員長 代理 池端清一君。
  50. 池端清一

    ○池端委員 まず最初に、厚生年金保険の国庫負担繰り延べの問題について二、三お尋ねをしたいと思います。  四月のこの時期というのは、サラリーマンは春闘で賃上げの時期でございます。年金受給者の方方は、年金法スライドの成立を本来なら一日千秋の思いで待ち受けている時期でございます。しかるに今回提案されておりますスライド案は、聞いてびっくり見てがっかり、あっと驚くタメゴロー、こういうような内容でございます。  例えば厚生年金のモデル年金受給者については月額百八十三円のアップ、国民年金に二十二年加入していた場合には月額四十二円の引き上げ、老齢福祉年金の場合は月額百円でございます。まさに限りなくゼロに近い〇・一%のアップ率、私はこういう状況を見て、まさにむなしい思いに駆られるのでございます。また今年金受給者の方々は、この問題についての不満の声が非常に満ちあふれている、こういう状況でございます。  これは六十二年の物価上昇率が〇・一%であるという理由のようでございますが、このように受給者の皆さんには月額四十二円とか月額百八十三円というふうに一円の単位まできっちりとしておきながら、一方ではどうでしょうか。国庫負担繰り延べの措置ということで、二兆円を超える膨大な厚生年金保険の国庫負担の繰り延べ措置が現在行われているわけでございます。私は、こういう問題についてこそきっちりとけじめをつけてもらいたい、こう思うわけでございます。  そこで、お尋ねをいたします。これまでの繰り延べの状況はどうなっているのか、この点について明らかにしていただきたいと思うのであります。
  51. 佐々木喜之

    ○佐々木(喜)政府委員 お答えを申し上げます。  厚生年金保険の国庫負担のいわゆる繰り延べ措置でございますが、昭和五十七年度から始まっておりまして、昭和六十三年度におきまして三千六百億円を措置する、これを加えまして累計額が一兆九千七百十億円ということに相なっております。
  52. 池端清一

    ○池端委員 累計額、そのほかに利息を加算しないと正確な数字になりませんね。その点はどうですか。
  53. 佐々木喜之

    ○佐々木(喜)政府委員 利息でございますいわゆる運用収入相当額につきましては、一定の前提を置きまして計算をいたしますと、昭和六十三年度末におきまして四千六百三十七億円となる見込みでございまして、さきに申し上げました元金に加えました元利合計額は二兆四千三百四十七億円となる見込みでございます。
  54. 池端清一

    ○池端委員 それでは、今回の年金改正案のスライドに要する給付費と国庫負担額は幾らになるのか、その点をお示し願いたいと思います。
  55. 佐々木喜之

    ○佐々木(喜)政府委員 今回のスライドに要します所要額でございますが、給付額といたしまして六十三年度分百二十四億円、なお国庫負担額につきましては、同様に六十三年度分として三十五億円というふうに見込んでおります。
  56. 池端清一

    ○池端委員 ただいま佐々木年金保険部長からお答えがありましたように、昭和六十三年度の繰り延べ顔は三千六百億円、これの利息相当分は、資金運用部の利息は五%でございますので百八十億円になると思いますが、これを今回のスライド経費に充ててもなおおつりが来るという膨大な金額が年金勘定に入っていない、こういうのが実情でございます。  きょうは大蔵省の中島主計官にもおいでをいただいておりますので、大蔵省にお尋ねをするわけであります。  この繰り延べの措置は昭和五十七年度から昭和六十年度までは行革関連特例法によって措置をされる、そして昭和六十一年度から六十三年度までは厚生保険特別会計法上の特例規定によって繰り延べ措置が行われた、こういうふうになっておるわけでございますが、国の財政状況も今や景気の回復によって好転をしておる、こういう状況にもありますので、早急に本来の姿に戻すべきである、従来の国会答弁の経緯からしても、それが理の当然ではないかと私は思うわけでありますが、これについての御見解を承りたいし、また今後どのような形でこの分を返還していくおつもりなのか、大蔵省の見解を承りたいと思います。
  57. 中島義雄

    ○中島説明員 厚生年金国庫負担の繰り入れのこれまでの経緯につきましては、先生指摘のとおりでございます。このような措置が望ましいかどうかという点につきましては、私どもとしても決してこれが望ましい措置と考えているわけではございません。御承知のように、これまで財政が大変に苦しい状況にありまして、特例公債の発行額を少しでも減額していきたいというような中で、社会保障を初めとする必要な歳出の財源を確保するためのいわば苦肉の策としてこうした措置をとらしていただいたというのが実情でございます。そういった意味では、私どもといたしましても、できるだけこのような措置によらなくて予算が編成できる、そしてしかも必要な歳出を確保できる財政状況になることを望んでいるわけでございます。  したがいまして、来年度以降もそのような基本的考え方で臨みたいわけでございますが、財政状況はこれまでの歳出抑制の努力あるいは歳入の増加によってだんだん好転の兆しは見せておりますけれども、借入金の残高はなお百五十兆円を上回り、特例公債も約五兆円を発行しなければ予算が組めないという実情には変わりはございませんので、私たちといたしましては、もうしばらくの間努力して財政改革を進めていきたいと思っております。このような中で、この措置を今後どのようにするかということでございますけれども、今申し上げましたような財政事情等を勘案する必要がございますから何とも言えない点でございますけれども、安易に延長することのないように慎重に検討していきたいということでございます。  これからの返済の点についてのお尋ねでございますけれども、これにつきまして法律では国の特例公債に依存している期間を経過した後におきまして、国の財政状況を勘案しつつ積立金運用収入の減額分を含む国庫負担金の減額分を繰り入れていく、つまり返済していくということをはっきり書いているわけでございます。ただ、返済の期間、方法等の具体的な内容につきましては、来年度以降の財政状況を勘案する必要がございますので、現時点では何とも申し上げられないのでございますけれども、私どもといたしましては、国の財政改革をさらに一層進めるといった努力を重ねてまいりまして、一般会計が特例公債依存体質から脱却いたしました後におきましては、いわゆる運用収入の減額分も含めまして、できる限り速やかな繰り入れに着手していきたい。なおその場合には、厚生大臣大蔵大臣の約束でございますけれども年金財政の運営に支障を来すことがないように計画的に繰り戻しを行っていきたいというふうに考えている次第でございます。
  58. 池端清一

    ○池端委員 今主計官は、安易に延長しないようにしていきたい、こういうお話がございました。政府はこれまでもできる限り速やかな繰り入れに着手し、計画的に繰り戻しを行う、こういう答弁をされておりますし、今もそのような趣旨のお答えがあったわけでございます。私はこのような特例措置というのは、これ以上行うべきではないということを強く申し入れておきたいと思います。速やかに本来の形に戻すべきである、このことを重ねて強く要望しておきます。主計官はきょうは大変御多用のようでありますので、これ以上は質問をいたしませんので、どうぞ御退席されて結構でございます。  そこで、この問題について藤本厚生大臣にお尋ねをいたします。  ただいま大蔵省の答弁にもございましたが、この繰り延べ措置は、法律の定めによって六十三年度までとなっておりますけれども、再度法律改正をして六十四年度以降も継続してやるということはよもやあるまい、私はそのように考えておるわけでございますが、大臣の決意のほどを承りたいと思います。
  59. 藤本孝雄

    藤本国務大臣 この厚生年金の国庫負担の繰り延べ措置につきましては、一般会計の厳しい財政状況ということから好ましいことではございませんけれども、特例的に認めてきたわけでございます。六十四年度以降の問題につきましては、これは先ほど大蔵省からも答弁がございましたが、私どもといたしましては、安易な繰り延べはしない方向で努力をしてまいりたいと考えておりますし、また繰り延べ分の返還につきましては、法律で明記いたしておりますし、また大蔵大臣とも特例公債脱却後速やかに戻すということで合意しているわけでございまして、本来の姿に戻るように、私たちといたしましては、最大限の努力をしてまいりたい、かように考えております。
  60. 池端清一

    ○池端委員 それでは次に、恩給と年金のスライドの問題についてお尋ねをしたいと思うのであります。  今度のスライドの内容についてでございますが、共済年金は従前は恩給と同じように公務員給与の引き上げに準拠してスライドをされてきたわけであります。その後先般の昭和六十一年四月の改正によりまして、物価スライド制が導入されたわけでございます。ここで恩給の改定率との間に格差が生じてまいる、こういう状況になったわけでございまして、ちなみに六十二年度は恩給は二%のアップ、共済年金は〇・六%のアップ、六十三年度は恩給は一・二五%のアップに対して共済年金は今回提案されておりますような〇・一%のアップになっておるわけであります。このようにますます格差が広がっている、こういう状況にあるわけでございます。  そこで、きょうは自治省の鈴木福利課長にもおいでをいただいておりますので、ひとつ自治省にお尋ねをいたしたい。同じく老後保障であります恩給と共済年金でスライド率に差を設けているのは何ゆえなのかということで、その理由をひとつ明らかにしてもらいたい。また、今申し上げましたように、同じく老後保障であるという観点から、あるいは今日的なこれまでの歴史的な経緯からいっても、このような格差は早急に是正されてしかるべきであるというふうに私は考えておりますが、これについての自治省の見解を承りたいと思うのであります。
  61. 鈴木正明

    ○鈴木説明員 お答え申し上げます。  今先生指摘のとおりに、共済年金と恩給の改定につきましては差が出てきております。この経緯につきましては、昭和六十年の公的年金制度の改革におきまして、今お話のございましたとおりに、共済年金につきましても、従来の恩給に準じた方式から基礎年金あるいは厚生年金年金額の改定方式に準ずるということで、物価スライド方式に切りかえが行われたわけでございます。考え方としては、恩給とは性格が異なるあるいは共済年金というのは社会保険方式で運営しているものであるということで、公的年金制度として整合性を確保していこうという考え方でございます。今回の共済年金の改定につきましても、基礎年金あるいは厚生年金等他の公的年金制度における措置に準じまして、消費者物価スライドということで〇・一%の改定ということで考えているところでございます。  なお、恩給の改定率と共済年金の改定率が異なることにつきましては、社会保障制度審議会あるいは地方公務員共済組合審議会等におきまして、恩給のスライドのあり方について、公的年金制度との均衡を考慮すべき旨の答申をいただいているところでございます。なお共済年金におきましても、物価スライドとは別に、国民生活水準、賃金その他の諸事情に著しい変動が生じた場合には改定の措置を講じなければならないという規定がございまして、これにつきましては、少なくとも五年に一度の財政再計算時におきまして、厚生年金等の取り扱いも勘案しながら、それらの事情を勘案しまして再評価ということで検討をしていかなければならないと考えております。
  62. 池端清一

    ○池端委員 経過は私もよく知っておりますので、経過の報告はいいのです。今後どうするつもりなのか、この対策をお聞きしておるわけでございます。  今年金と恩給は性格が異なる、制度が違うということを言われました。よくいつも政府は恩給は国家補償が建前だ、こういうふうに言われておるわけでございます。しかし、六十年十一月二十日の衆議院の大蔵の連合審査会における恩給局長の答弁はこうであります。恩給は国家補償であるが、年金という面で公的年金制度に類似することは確かである、こういう答弁をしておるわけであります。この意味においては恩給も公務員制度の一環である、こういうふうに政府は明確に発言をした、こういうふうに私は思うわけでございますし、一昨年まではスライド率は恩給も年金も同率で行ってきた。さらに、先ほど言いましたように、恩給と共済年金の歴史的相関性、恩給は共済年金の先駆的制度であるという立場から考えますと、性格が異なるからスライドの率も違っていいのだという理論にはならない、私はこういうふうに考えるわけですね。  今課長も言われましたが、ことしの二月三日の地方公務員共済組合審議会で答申が出されました。その中で「今回も恩給の改定率と共済年金の改定率との間に格差が生ずることは問題であり、恩給のスライドのあり方については、公的年金との均衡を十分考慮して一層の見直しが行われるよう強く要望するものである。」こういう答申が実は出ているわけですね。そういう答申の重みを考えるとき、格差是正に早急に取り組むという姿勢が必要ではないか、こういうふうに思います。  ちなみに、誤解を招いては困りますので、はっきり申し上げておきますが、私は、恩給の引き上げ率が高い、だから年金に合わせよということを決して言っているものではないのです。むしろ逆でございますから、その点は明確にしておきたいと思うのであります。  ですから、今課長は再計算の時期に考慮したいというような趣旨の発言があった。それは、再計算の時期というのは来年でありますが、来年には見直しをする、こういうふうに理解してよろしゅうございますか。
  63. 鈴木正明

    ○鈴木説明員 お答え申し上げます。  お話しの恩給と共済年金の性格は確かに異なっているものの、機能面においては似ている面がありますので、それが一つと、もう一つは、先ほど申し上げました諸審議会の答申等も受けまして、恩給につきましては、総合勘案方式ということで六十二年度から従来の公務員給与スライド方式にかえまして、物価の変動あるいは公務員給与の改善その他の諸事情を総合勘案するという方式に切りかえておりまして、恩給におきましては、そういう面でも改正が行われてきているところでございます。  共済年金の方につきましては、公的年金制度との整合性を図るという考え方で、物価スライドという形でやってきておりまして、先ほどの答申を受けまして、基本的にその整合性を図ってまいりたいと考えておるわけでございますが、御指摘の財政再計算時におきましては、賃金の要素あるいは国民生活水準の要素その他の事情を勘案しまして、平均給料月額の再評価ということもございますので、検討してまいりたいと考えております。
  64. 池端清一

    ○池端委員 ぜひ真剣な検討をお願いしたい。年金受給者の皆さん方、今ほうはいとしてこの格差是正を求める声が強まっております。その声を十分しっかりと受けとめて対処していただきたい、このことを強くお願いしておきます。  最後に、自治省、もう一問だけお尋ねしますが、共済年金の既裁定年金受給者については、今申し上げたような改定率が下げられた上で、自分の年金額が新制度の計算による年金額に達するまではスライドが停止されております。いわゆる足踏みの状態が続いておるわけでございます。さらに加えて今回の〇・一%の物価スライドすら適用されない、こういう状況にあるわけでございます。これは年金生活者の皆さん方の老後生活に重大な影響を与えるものである、このように私は思うわけでございます。これについても早急に是正されてしかるべきである、このように考えますが、自治省はどのように受けとめておりますか。     〔高橋(辰)委員長代理退席、野呂委員長代理着席
  65. 鈴木正明

    ○鈴木説明員 お答え申し上げます。  今先生指摘のように、六十年の公的年金制度の大改正があったわけでございますが、その際に、公的年金制度間の整合性を図るということで、共済年金につきましても、給付水準の適正化等の措置が講じられたところでございまして、その関係で、既裁定年金を受けている方につきましても、新制度による年金との均衡を考慮してすべて通年方式によります年金額に裁定かえされたわけでございます。ただ、その場合に、従前の額よりも下回る場合には、その額にかえるということにもまいりませんので、経過措置として従前の額は保障するということにいたしたわけでございます。  この場合の年金の改定についてはどうかということでございますが、基本的には、新しい制度によるルール、これに改定措置を適用していこう、物価スライドを適用していこう、それで改定してもなお従前の額よりも下回っている場合には、その従前の額を保障しようという考え方をとったわけでございます。その意味では、確かに、新しいルールでスライドしても、従前の額まで届かない場合には足踏みということになってくるものですから、お話しのようなことがあらうかと思います。しかし、基本的に経過措置としての従前額ということでございますので、それにスライド制を導入するのは大変困難でございます。これらの措置というのは、現役と受給者の方のバランスあるいは給付と負担のバランスということでやむを得ないものと考えておりますので、御理解を賜りたいと思います。
  66. 池端清一

    ○池端委員 自治省がやむを得ないというようなそういう消極的姿勢は、私は実に理解しがたいのです。財政当局が言うならばまだ百歩譲ってもわかるとしても、あなた方は、かつての自分たちの先輩の皆さん方の老後の生活を守るという立場からこの問題は検討されていかなければならない、こう思うのであります。今日の日本のこの繁栄をつくり上げた先輩に報いる道、ぜひこのために前向きの検討を私はお願いをしておきたいと思います。  自治省、もう結構でございます。  そこで、厚生省にお尋ねをします。  共済年金に限らず、厚生年金国民年金についても、従来から物価スライドだけでございますが、同様に恩給との格差が出ているわけでございます。これについて厚生省としてはどのようにお考えでございましょうか。  私は、かつてのオイルショックのようなときのあの狂乱物価の際なんかの場合は、この物価スライド制というものも一定の意味を持っていた、こういうふうに思うわけでありますが、今日のように物価も安定して景気も回復基調をたどっている、いやもう回復基調より拡大基調に向かっている、こういうようなとき、ことしの春闘でも四%から五%の賃上げが行われた。引き続き今後もこれを上回る賃上げが予想されるわけでございます。そうなれば、ますます恩給と国民年金厚生年金との間にも格差が拡大をする、こういうふうに私は思うわけでございますが、これについて厚生省の御所見を承りたいと思います。
  67. 水田努

    水田政府委員 釈迦に説法で大変恐縮でございますが、御案内のとおり厚生年金国民年金ともに社会保険方式をとっておりまして、五年ごとの再計算期に、給付の水準につきましては、そのときにおける国民生活水準あるいは賃金の動向等を十分勘案しながら、あわせまして将来における負担の均衡も配慮しながら見直しをし、その間の五年間はその給付水準の実質価値を維持するということで、物価のスライドを行うという方式をとっているわけでございまして、先生指摘の恩給制度とは、やはり基本的に性格を異にしているものと考えている次第でございます。
  68. 池端清一

    ○池端委員 年金局長はそのようにお答えになりますが、ここに昭和六十年四月十日の、社会保障制度審議会から内閣総理大臣提出された意見書がございます。この意見書ではこう述べているのです。「スライドの在り方その他を含め速やかに不公平を是正する等の措置が望まれる。」と明確にその是正を社会保障制度審議会は求めているのであります。また六十二年二月五日に、同じく社会保障制度審議会が大蔵大臣あてに提出をいたしました答申では、「恩給が文官恩給を含め、共済年金より高い改定率を適用しているため、両者の間に給付水準の格差が生ずるという問題がある。さきに本審議会が公的年金制度に関する意見において指摘した点を留意されたい。」こういうことを述べておられるわけでございます。だから局長、性格が違うからということで簡単に片づけないで、同じく、等しく老後保障の問題でありますから、この均衡を欠くことのないような対応というものがあってしかるべきではないか、私はそのように考えるわけでございます。こういった各種審議会の意見や答申、そして恩給と年金の歴史的相関性、さらには一昨年まで同率で改定を行ってきたというこの冷厳な事実、そして今申し上げた同じく老後保障である、こういう観点から、同じ職場にあった人が退職後の取り扱いに差が設けられることはどうしても私は納得がいきません。まさに理不尽なやり方である、こう思うわけでございます。ですから、ぜひこの是正方について前向きに検討してもらいたい、こういうことを申し上げますが、厚生大臣、いかがですか。
  69. 藤本孝雄

    藤本国務大臣 大変難しい問題でございまして、確かに昭和五十年代は恩給のアップと年金のアップがほぼ同じ水準であった。ただ、恩給年額の改定についてはベースアップを基準にして計算しておる。年金の場合には御承知のように物価の上昇を基準として計算しておる。したがって、基準のとり方は違っていたわけでありますけれども、物価の上昇率が高かったために、結果として数字的にはほぼ同じ水準でありましたので、年金と恩給の格差というものがなかった。今日は物価が安定しておりますので、物価の上昇によって目減りをする分をスライドで年金は確保するわけでございますから、物価の上昇率が非常に低いという段階では年金のスライドも低い。ところが恩給の方は、公務員のベースアップを中心とした物差しではかりますから、やはり高い、こういうことになっておるわけでございます。これは毎年毎年、つまりこの昭和六十年以降の状況を比較いたしますと、確かに格差が続いておるということは事実、その格差をどうやって考えていくか、是正していくかということでありますが、やはり年金というのは給付と負担、つまりたくさん年金をもらおうと思えばたくさん負担しなければならぬ、こういう方式でございますので、その点が恩給とまさに根本的に違う点。しかし、それを念頭に入れながら、年金と恩給との格差がもしあるとすれば、これをどうやって是正していくかということになりますと、やはり一つの解決の道とすれば、五年ごとの年金財政再計算期においてそれをいかに考えていくかということだと思うわけでございまして、その点につきましては、今後十分に配慮してまいりたい、考えてまいりたい、かように考えております。
  70. 池端清一

    ○池端委員 時間も刻々と迫ってまいりましたので、次の問題に移らせていただきます。  厚生年金基金の問題でございます。  厚生年金基金は、昭和四十一年の制度発足以来今回で二十年ぶりの初めての改正が提案されているわけでありますが、今回の制度の改正のねらいは那辺にあるのか、それをまずお伺いしたい。  引き続き、制度発足当初は、基金を設立できる企業は従業員千人以上のものとされてきたわけでございます。中小の企業については総合設立あるいは連合設立というものが認められておったわけでございますけれども、やはり実際には基金が設立をされたのは大企業が中心でございました。しかし、その後二十年経過した今日、かなりの総合設立、連合設立が増加をしているということは、評価に値すると私は思うわけでございます。  しかしながら、基金全体の普及率が厚生年金被保険者、現在約二千七百万人おられるわけでございますが、その保険者の約四分の一にしかすぎない、こういう実情でございまして、やはりこの基金制度というものは一部の恵まれたサラリーマンの利用に限られている、こういう実情ではないか、こう思うのであります。したがって、これをどのようにして普及を図っていくつもりなのか、その具体的な方策をお尋ねしたいと思うのです。
  71. 水田努

    水田政府委員 六十一年の政府決定をいたしました長寿対策大綱におきまして、公的年金を補完するものとして、今後一層長寿化が進んでまいりますので、その長期にわたる老後を、より豊かに、安定的なものにするために、企業年金の普及を図っていくという方針が決定されたわけでございまして、これを受けまして、厚生省は省内に学識経験者から成る企業年金等研究会を設けまして、約一年間はわたる御審議をいただきまして、昨年の七月にその中間報告をいただいたわけでございまして、その中間報告に即しまして、今回の改正をつくり、御審議をお願いしているわけでございます。  今回の改正の主なるねらいは、一つは、基金の制度を魅力あるものにしていくということと、二番目には、基金を今後中小企業等を含めて普及をしていくための基盤整備を図っていく、この二点が今回の改正の主たるお願いを申し上げている点でございます。  次の御質問は、さらに普及を図るための具体的な方策はどうだ、こういうことでございます。  一つは、私ども単独設立につきましては、現在八百のものを五百まで下げたい。しかし、五百までに下げますためには、そのための環境整備が必要である。環境整備の一つは、規模の大小にかかわりなく事務費コストがかかるわけでございますので、設立規模は緩和されたけれども、事務費が高くてつくれないということがあってはならないので、そういう小規模の基金につきましては、事務費の共同処理ができるという措置を講ずる。  それからもう一つは、やはり規模の小さい企業は当然倒産の危険がそれだけ高いわけでございますので、支払い保証の制度を準備をしておく、こういうことを考えているわけでございます。  それからなお、総合設立につきましては、現在五千人の人員要件を要求しておりますが、これを三千人まで下げるようにという中間報告を昨年いただいておりますが、この改正案を諮問いたしました年金審議会においては、さらに二つの注文を受けております。  一つは、これまでの同種同業の基金だけではなく、工業団地等の地域型の異業種間の総合基金もつくれるように工夫すべきではないかということと、三千人という人員要件をもう少し、さらに緩和について検討すべきではないか、こういう御注文をいただいておりますので、年金審議会の御答申を私ども前向きに受けとめまして、法案成立後、そのための条件整備について早急に検討を行い、できるだけ御注文のついた線まで条件が緩和できないかどうか検討をしてまいりたい、このように考えている次第でございます。
  72. 池端清一

    ○池端委員 今早急にというお答えがありましたが、時期的なめどはいつごろと見てよろしゅうございましょうか。
  73. 水田努

    水田政府委員 単独あるいは総合の条件緩和は、やはり同時に行うことが望ましいと私ども考えておりまして、法案成立後できるだけ早い時期に、いわゆる環境整備としての支払い保証制度あるいは事務の共同化を図り、六十四年度早々からも新しい緩和措置の適用ができるように努力をしてまいりたい、このように考えておる次第でございます。
  74. 池端清一

    ○池端委員 厚生年金基金のもう一つの問題は、当初我々が期待しておったのは積立金自主運用を改正法案に盛り込むのではないか、こういうことを注目しておったわけでございますが、今回の法案にはこれがないわけでございます。なぜこれを取りやめたのか。一部報道によりますと、現在資産運用を独占的に受託している生命保険会社あるいは信託銀行が反対した、こういうふうに伝えられておりますけれども、これは事実でございましょうか。その辺の事情についてごく簡単に承りたいと思います。
  75. 水田努

    水田政府委員 資産の運用方法を拡大するという問題につきましては、本年に入りまして大蔵省と協議を開始をいたしたわけでございますが、法案提出までに両省で合意に至るだけの十分な時間のゆとりがなかったために、今回は見送ることといたしましたが、両省の事務次官が確認書を交わしまして、次期通常国会に法案提出するものとし、そのため運用方法を拡大する方向で、両省が誠意を持って今後協議するということに相なっておりますので、その方向で最大限の努力をしてまいるつもりでございます。
  76. 池端清一

    ○池端委員 それでは次に、厚生年金国民年金の次期再計算の問題について、一、二お尋ねをいたします。  次の財政再計算の時期は、来年、昭和六十四年となっておるわけでありますが、それに向けての準備状況はどうなっているのか、またこれに関連する法案はいつ提出するお考えなのか、それをまず承りたい。  第二は、再計算に当たって、年金受給者やサラリーマンの方々はどういう問題が飛び出すのか、非常に懸念をしているというのが実態であります。今後の検討過程については、私たち社会党としても重大な関心を持って注目をしてまいりたいと思うのでありますが、二つの点についてお尋ねをいたします。  この再計算によって、今後負担増、掛け金の引き上げということが起こらないかどうかという問題であります。  もう一つは、老齢年金支給開始年齢の問題でありますが、言うまでもなく、厚生年金保険法では、本則で六十五歳、こう規定されております。附則において当分の間六十歳、こういうふうになっておるわけであります。  この支給開始年齢については、私どもはかねてから雇用と年金とのリンクということを強く言っておるわけであります。そういうことから軽々に六十五ということについては私たちは反対でございますが、この点について、次期再計算でどのように対処しようとお考えになっているのか、これについてもお尋ねをしたいと思います。
  77. 水田努

    水田政府委員 次期再計算の時期は、先生指摘のとおりに六十四年の四月でございます。このため、私ども再計算期に伴いますところの制度の改正については、従来から事前に十分年金審議会で御検討いただき、その意見をいただいて、それを踏まえて対処するということが慣例となっておりますことから、昨年の九月から年金審議会において次期再計算期に向けての問題点を総洗いし、それにどう取り組んでいくかということの御審議を現在お願いしておりまして、本年恐らく晩秋には意見をいただけるもの、このように考えているわけでございまして、私ども、その晩秋における御意見を踏まえて、次期通常国会に、六十四年の再計算期に伴う必要な制度改正を提出いたしたいというふうに思っておる次第でございます。  次の、費用の負担増の問題あるいは開始年齢の引き上げの問題、これは次期再計算期においてどのように対処するつもりであるか、これが御質問でございますが、いずれにいたしましても、私ども財政再計算の計算結果がまだ出ておりません。結果が出ておりませんが、私ども前回の再計算のときよりも財政事情は非常に悪化している、こういうふうに見ているわけでございまして、特に厚生年金の場合は、昭和八十年代に大変な心臓破りの丘にぶつかるわけでございまして、これをどう乗り切っていくかということが次期再計算期における最大の検討課題になるもの、私どもこのように考えているわけでございますが、その具体的な方策については、再計算の結果、それから年金審議会における御意見を十分踏まえて対処していきたい、このように考えておる次第でございます。
  78. 池端清一

    ○池端委員 この支給開始年齢の問題は、御案内のように公的年金全体ではまだ一本化されていないわけであります。共済年金は前回の改正で、従来の五十五歳から徐々に引き上げられて、現在は五十七歳、これが民間サラリーマン並みの六十歳になるのは昭和七十年のことでございます。このような官民の違いを残したまま、この厚生年金の六十五歳問題に手をつけることは非常に問題があるということを、私はあえて指摘をしておきたいと思うのでございますし、さらに今日企業の定年の状況を見ますると、労働省調査でも、六十歳を定年にしている企業数は今なお五三・九%にしかすぎません。六十五歳定年というのは、わずかに二・四%の企業なわけでございます。  こういうような雇用情勢を勘案すると、これは非常に慎重に対応していかなければならない、こう思うわけでありますが、最後に、これらの問題についての大臣の所信のほどをお伺いして、私の質問を終わらせていただきます。
  79. 藤本孝雄

    藤本国務大臣 厚生年金支給開始年齢の問題は、厚生年金制度の長期安定のために避けて通れない極めて大きな課題であると思います。  先ほど来いろいろ御意見がございましたように、この支給開始年齢をどうするかという問題を考える場合の一つの大きな問題としては、高齢者の雇用政策とのリンク、確かに私もそうだと思います。したがって、そういう問題を総合的に考えていかなければならぬと思っておるわけでございますし、同時に、今後の制度改正の重要な柱として、今審議会で御検討いただいておるわけでございますし、そういう結果も見ながら慎重に対処してまいりたい、かように考えております。
  80. 池端清一

    ○池端委員 以上で終わります。
  81. 野呂昭彦

    ○野呂委員長代理 田口健二君。
  82. 田口健二

    田口委員 私は、原爆被爆者特別措置法に関連をして幾つかお尋ねをいたしたいと思います。  まず最初に、外務省に在韓被爆者の問題についてお尋ねをいたしたいと思います。  去る三月二十一日にソウルで開催されました日韓外相定期協議の中で、この在韓被爆者の問題がテーマになったということが新聞などで報道されております。どういうことがこの外相定期協議の中で話し合われたのか、韓国政府としてはどういう意向を示されたのか、あるいはそれに対して日本政府としてはどのような対応を考えておられるのか、まずそのことをお尋ねいたしたいと思います。
  83. 田中均

    田中説明員 お答えを申し上げます。  御指摘のとおり、三月二十一日に日韓の外相定期協議が開かれまして、その席上、韓国側の崔侊洙外務長官から本件問題に触れられまして、日本については被爆者の治療の経験の蓄積というものがあるので、ぜひとも本件問題について綿密な協力をお願いしたい、こういう御趣旨の発言がございまして、宇野外務大臣から、本件については人道的な問題として日本側も非常に大きな関心を有している次第であり、一体どういった協力が可能かということを実務レベルの調査団を派遣して協議させましょう、こういう受け答えがあったわけでございます。これに対しまして崔侊洙外務長官の方からは、特段のコメントはございませんでしたけれども、私どもとしては、調査団の派遣を肯定的に受けとめておられるというふうに考えておりますし、今後できるだけ早い機会に調査団を派遣して、韓国側とどういった協力が可能かということを十分調査をしたいというふうに考えております。
  84. 田口健二

    田口委員 実務者レベルといいますか、調査団を派遣する意向だということを今お伺いをしたのでありますが、例えば新聞報道などによりますと、現地に病院を建設する、あるいは医療技術者の研修日本でやる、あるいは医療技術援助といいますか、そういうことなどが報道されているわけです。現在、外務省としては、その中身について、ただ調査団を派遣するということだけなのか、ある一定のものを考えておられるのか、その辺をひとつお伺いをしたいと思うのです。
  85. 田中均

    田中説明員 委員御案内のとおり、本件いろいろ経緯がございまして、過去五十六年から六十一年まで、日韓間の合意に基づきまして渡日治療というものを行っておったわけでございます。これが韓国政府の意思によりまして、むしろもはやほとんどの治療は済んだということ、それから韓国側で十分な治療体制ができています、したがって、その渡日治療は停止したいという申し出がございまして、渡日治療を打ち切った経緯がございます。  その後、在韓被爆者団体を中心にいろいろな要望がございまして、私どもとしては、本件につきましては、少なくとも法的な問題としては決着がついておる問題である、ですから、賠償とかそういうことは考えられないわけでございますが、他方、人道的な観点から協力をすべきであるし、一体どういう協力ができるかということは政府部内でも種々検討しておるわけでございます。もちろん渡日治療の再開ということも韓国側次第では一つの方法であろうかと思いますし、また経済技術協力という観点から一体どういったことが可能か、技術協力の中で果たして具体的にどういう先方の要請があってどういうことが可能かということはいろいろ検討しておるわけですが、少なくとも韓国側の中の種々の考え方というのも十分確かめてみたいし、その結果に基づいて日本としてどういうことをするかということを決めたいというのが現在の状況でございます。
  86. 田口健二

    田口委員 どうも外務省の認識というのは少し甘いというふうな感じが私はするわけです。在韓被爆者というのは、御存じのように、かつて戦時中に日本政府によって強制的に日本の本土の方に連れてこられて、さまざまな労働に従事する中で広島、長崎で実は被爆をされた方々なんですね。まさに日本政府の責任がそこにあるのですよ。ですから、そういう立場に立ってこの問題を考えていきませんと、確かに相手国政府があるわけですから、日本独自の考え方だけではうまくいかない点もあろうかと思いますけれども、やはり基本はそこに置いてこの問題には対応していかなければならないと私は思うのです。  そこで、今もちょっと話が出ましたけれども、渡日治療の問題です。これは一昨年の十一月まで約五年間にわたって実施をされてきました。ところが韓国政府の事情によってこれが打ち切りになった。私は、今国内におられる被爆者の方はもちろんでありますが、在韓被爆者についても、既に戦後四十三年目をも迎えようとして被爆者自体が非常に高齢化をしている、そういう中で、被爆者の方々にとってみれば、今何が求められておるかといえば、やはり適切な治療を受ける、このことが非常に大事なことだと思うのですよ。ですから、今もお話がありましたが、少なくとも日本政府としては、やはりこの渡日治療を復活させていく、そういう立場で強力に韓国政府と話し合っていくべきではなかろうか、こういうふうに考えるのですけれども外務省としてはどうなんですか。
  87. 田中均

    田中説明員 私どもといたしましても、委員指摘のとおり、渡日治療の重要性ということは十分認識をしておりまして、それも当然一つの可能性として政府の中でも御相談を申し上げている次第でございまして、韓国側ともその点を踏まえて十分相談をしたいというふうに考えております。
  88. 田口健二

    田口委員 それと韓国の原爆被害者協議会から日本政府に対して約二十三億ドルの補償請求がなされているわけです。これまた新聞報道によれば、去る二月二十五日に竹下総理が盧泰愚大統領の就任式に韓国に行かれた折に、この問題について具体的な要望もなされたというふうに聞いておるのでありますが、この辺の状況はどういうことになっていますか。
  89. 田中均

    田中説明員 委員指摘のとおり、韓国の被爆者団体から御指摘のような補償、賠償請求というものがあるのは事実でございます。それが我が方の大使館を通じて要請がされておりますし、かつ竹下総理が訪韓をされた際に、外務省担当局長が面談をしているということも事実でございます。  他方、我が国といたしましては、少なくとも賠償云々の問題につきましては、一九六五年の請求権協定によってすべての補償、賠償問題は決着したということでございますし、そういう観点から補償問題、賠償問題に応じるのは困難であるというのが現在の考え方でございます。
  90. 田口健二

    田口委員 それで厚生省の方にお尋ねをしたいと思うのでありますが、今外務省から見解を伺いましたが、とりわけその中でも、今申し上げました渡日治療の再開、これは直接関係からいえば厚生省担当することになろうかと思うのですが、厚生省としての見解はどうなんでしょうか。
  91. 北川定謙

    ○北川政府委員 渡日治療の件につきましては、ただいま外務省の方から御答弁があった経緯であるわけであります。厚生省といたしましては、渡日治療の意思が韓国側から示されれば、今後とも人道上の見地から技術的には十分な用意をして渡日治療を再開する用意を持っておるわけでございます。     〔野呂委員長代理退席、委員長着席〕
  92. 田口健二

    田口委員 次に、厚生省にお伺いいたしますが、六十三年度から予算措置の中で新しく被爆者対策の事業としてがん検診を実施する、こういうことが出ておるようでありますが、まずこれに対してどの程度予算をつけておるのか、そのことからお尋ねをいたします。
  93. 北川定謙

    ○北川政府委員 昭和六十三年度から新たに導入をいたしました被爆者がん検診の予算は被爆者健康診断費交付金の中に計上しているわけでございますが、総額約十一億四千三百万円でございます。
  94. 田口健二

    田口委員 このがん検診の問題は、被爆者がどんどん高齢化をするに当たって、特にこれまでも被爆者からの強い要望もあった問題でもあるわけです。  そこで問題は、がん検診といっても具体的にどういう形で実施をされるのか。例えばどういう医療機関に対して委託をし、あるいはどのような内容の検診を行われるのか、このことがなかなか明確になっておらないわけですね。これは、私は地元が長崎でありますから、長崎の原爆関係の団体なりそういう医療機関から話を聞いても、簡単にがん検診といったって、レントゲン車でぱっと一回やって済むとかそんなことではできない、相当精密にやらないと、この意義がないではないか。ということになると、そう簡単にこれが実施できるだけの機能を持った医療機関というのが一体あるのかどうなのか、対応できるのかどうなのか、そういう話も聞いておるのです。ですから、どのようにこれを実施していこうとしておられるのか、その辺をひとつ具体的にお伺いをいたしたいと思います。
  95. 北川定謙

    ○北川政府委員 先生指摘のように、がん検診というのは技術的にもなかなか難しい点を持っているわけでございます。被爆者のがん検診の内容は、簡単に申しますと、胃がん、肺がん、乳がん、子宮がん、それから多発性骨髄腫、この五つの項目を年に一回それそれ検診できるということになっておるわけでございます。  また、それらを実施するための医療機関の選定の仕方あるいは市町村の公報だとか被爆者に対するいろいろな周知徹底の問題等につきましては、現在まだ関係県市といろいろ詰めておる段階でございまして、五月のうちには各部道府県及び広島市、長崎市に通知をいたしたいと考えておるところでございます。  先生の御指摘のように、今いろいろながんの健康診断の技術というものはかなりレベルが高まっておりまして、スクリーニングという方法でまずふるいにかけまして、その上で、病気の状態がかなり疑わしい、そういう場合に、例えば大学病院ですとか県立病院ですとか原爆関係の病院ですとか高度の診断機能を持ったところに集めていくというような、二段構えでいくのではないかと考えておるわけでございます。いずれにいたしましても、非常に困難な問題でございますので、関係自治体とよく相談をしてまいりたい、このように思っております。
  96. 田口健二

    田口委員 次に、原爆医療法八条に基づく認定医療の問題についてお尋ねをしたいと思うのであります。  最近になりまして、私も被爆者の方々から陳情、苦情を随分受けておるわけでありますが、認定医療については最近非常に厚生省のガードがかたいというのでしょうか、ほとんど認められない、こういう声が非常に満ちておるわけですね。現実に私も二、三件の方々の問題を扱いましたが、いずれもこれが認められない。現地の長崎における原爆病院であるとかそういう医師の方々がなぜこれが認められないのだろうと首をかしげるぐらいに、この問題についてはなかなか厚生省というのは認めようとしないという声が非常に多いわけなんです。この八条による認定申請に対しては、具体的にどのように処理をしておるのか、その処理実態についてまずお伺いをいたしたいと思います。
  97. 北川定謙

    ○北川政府委員 原爆医療法第八条第一項に基づきます厚生大臣認定につきましては、被爆者の負傷または疾病が原爆の放射能の影響を受けているということが基本にあるわけでございまして、これは委員十分御承知いただいている点でございます。したがいまして、これは全く医学的な見地から判断をされるべき事柄でございまして、現在厚生省では原爆医療審議会の専門的御意見に基づきまして認定を行っているところでございまして、今後ともこの線に沿って適切に対処してまいりたいと考えておるところでございます。  なお、この審議会には地元広島、長崎のそれぞれの専門の方々もお入りいただいておりますので、審査そのものは極めて科学的に行われておるものだと考えております。
  98. 田口健二

    田口委員 それでは、今の認定医療の現実の姿、例えばこの五年ぐらいの間に認定の申請があって、どのぐらいが認定をされたのか。あるいは却下をされた数は一体どのぐらいなのか。この辺の実態数字を明らかにしていただきたいというふうに思います。  それから、認定をされた場合の疾患といいますか、それは一体どういう内容になっておるのか。がんとか甲状腺障害であるとかさまざまな内容があると思うのですが、どういう疾患の内容になっておるのか、あわせてお答えをいただきたいと思います。
  99. 北川定謙

    ○北川政府委員 過去五年間の認定件数でございますが、申請がありましたのは千三百九十七件でございます。そのうち認定をされたものが五百九十七件、却下をされたものが八百件でございます。  その認定疾病の内容でございますが、一番多いものが悪性新生物それから甲状腺機能障害それから造血機能障害の順でございまして、いずれも放射線障害と密接に関連があるものと考えられる疾病でございます。
  100. 田口健二

    田口委員 今五年間まとめて数字をいただいたのですが、六十二年度、六十一年度、六十年度と年度別にわかりますか。
  101. 北川定謙

    ○北川政府委員 過去五年間でございますが、五十八年度から各年度別に申し上げますと、五十八年度では合計二百六十三件のうち認定されたものが百十六件。それから五十九年度は二百四十六件のうち認定されたものが百九件。六十年度は二百七十九件のうち認定されたものが百十八件。六十一年度は三百二十四件のうち認定されたものが百四十二件。それから六十二年度は二百八十五件のうち認定されたものが百十二件でございます。
  102. 田口健二

    田口委員 それから、これは通告はしておりませんでしたが、ちょっと厚生省の見解をいただきたいと思うのです。  先ほど申し上げましたように、戦後ことしは既に四十三年目を迎えようとしておる。被爆者の方方も非常に高齢化が進んでおるし、同時に被爆二世、三世の問題が今被爆者対策の問題では大変重要な課題になってきているわけです。  四十三年でありますから、もう既に当時出生をされたあるいは胎児であった方ももう四十を超える、中年という言葉が適当かどうかわかりませんが、そういう年代になってきている。そこで被爆二世、三世に対して、この原爆症というものが一体どう影響してくるかという点について大変な不安を持っておられる方がたくさんいるわけですね。被爆二世、三世の問題について厚生省としては一体どのようなお考えを持っておられるのか、あるいは今後の対応についてございましたら、ひとつお伺いをしておきたいと思います。
  103. 北川定謙

    ○北川政府委員 二世の問題につきましてはいろいろな議論がございます。それから医学的にもこういう問題が残るのではないかという議論があるわけでございますが、実際にはそういうことが証明をされているという事実は現在のところないわけでございます。  例えば、これは昭和二十一年の五月から三十三年の十二月までに出生した約五万人の調査で、昭和四十四年の十二月までの死亡例について、被爆者二世とそれから被爆しなかった人の二世との比較をした調査があるわけでございますけれども、こういう調査からも、現段階では有意な差は認められなかったというようなことがございます。  なお、厚生省といたしましても、現在被爆者二世につきまして、その希望者については健康診断をするなどの形でフォローをしておるわけでございますが、現段階で二世に放射線の影響が残るということは考えられないというふうに考えておるところでございます。
  104. 田口健二

    田口委員 確かにこの問題は、科学的なデータということになると、現在の状態あるいは科学技術の水準、もろもろの中から具体的な数字というのはあらわれてきておらないことは私どもわかっておるわけです。しかし、現実にそういう不安を持っておられる方がいらっしゃいます。そして今局長の答弁の中にもありましたように、被爆二世に対する健康診断というものが今実施をされておる。ところが、この問題一つをとってみても、言うならば予算措置でやられているわけですね。やはり被爆二世の健康診断についてはきちっと制度として法制化をすべきではないか、こういうふうに私は思うのですが、その辺はどうでしょうか。
  105. 北川定謙

    ○北川政府委員 被爆者二世の方々が御自身の健康問題について大変な御不安を持っておられるという状況が一方ではあるわけでございますが、しかし一方では、科学的にいろいろな調査をしていって、そこに問題がない、現段階で被爆をした方とそうでない方との間で差がない。これは非常に積極的な明るい情報ではないかと私どもは考えておるところでございまして、そういう観点からいっても、厚生省といたしましては、現在行っておる施策を今後とも続けて長期的にフォローをしていく、こういう基本的な姿勢でいくことが適当ではないかというふうに考えておるわけでございます。
  106. 田口健二

    田口委員 それでは、最後に私は厚生大臣にぜひお尋ねをしたいと思っているのですが、いわゆる黒い雨地域というのがございます。被爆直後に放射性物質を含んだ雨が広島でも長崎でも各所で降っているわけですね。これが今広島でも長崎でも大変問題になっておりまして、昨年、私ども社会党は十月二十日に国会議員による調査団を編成いたしまして長崎に参りました。現地の約七、八百人の方々からいろいろな御要望、御意見等も聞いてまいりました。例えばある地域では、この雨が降っていわゆる死の灰と言われるものが畑一面、野菜が真っ白になるように積もっておった。当時でありますから、もちろんそういった地域には上水道もない、井戸水を使用しておる、あるいはそのちりが積もった野菜や果物その他食糧を自給しておる。そういう家庭の中で赤ん坊や子供たちが原因不明の病にかかって亡くなられるという事態が起こった。あるいは今日でもそこに居住しておられる方々の中に非常にいろいろな疾病にかかっておられる方がいらっしゃる。  これは長崎大学の長滝先生が昨年の十月一日に長崎市で開催をされました第二十七回日本核医学会総会の中で調査結果を発表されておるのですが、こういう黒い雨地域の住民を対象調査をした結果、これらの方々の甲状腺障害の発病率というのは被爆者と同じである。これを非被爆者、一般の方々と対比をいたしますと、約五倍ぐらいの発病率になっておる、こういう調査結果なども発表されておるわけです。ところが、その黒い雨地域の中には現在でも被爆地域として指定されておらない地域もあるのですね。これは大変な問題であるというふうに私ども考えておるわけでありますが、こういうことについて大臣としてはどのような認識を持っておられるか、そのことをまずお尋ねをいたしたいと思います。
  107. 藤本孝雄

    藤本国務大臣 就任以来長崎県の地元の国会議員の皆さん方から被爆地の見直しの問題、御熱心に御要望を承っております。私といたしましても、今までの経緯等勉強いたしまして、結諭といたしまして、私今考えておりますのは、科学的な合理的な根拠があれば見直しを進めていくべきであるというふうに考えております。
  108. 田口健二

    田口委員 大臣の言われておることは、基本懇の意見書書が出されて以来一貫して政府はそういう立場をとっておられるわけですね。ところが、今私が申し上げましたような事実というものがあるいは大学の先生調査研究によって、とりわけ黒い雨地域、こういうところではこういうものが出てきておるとかあるいは地域の住民がこういうふうに証言しておるというのが具体的に出てきておるのですよ。ですから、今大臣が言われたような一般論ではなくて、黒い雨地域の問題についてはどのようにこれを認識されておるのか、お尋ねいたしたいのです。
  109. 北川定謙

    ○北川政府委員 今先生指摘の長崎大学の長滝先生の論文もあるわけでございますが、この点もまだまだ分析の途中である、必ずしも科学的に十分関係者の間で評価をされたものではないというように私どもは考えておるわけでございまして、現段階で放射線障害に関するいろいろな専門家の御意見を伺っておるところでございますが、現段階では、積極的にそういうことが考えられるという情報は、まだ厚生省としては持っていないというのが実情でございます。
  110. 田口健二

    田口委員 時間がありませんので、再度申し上げておきますが、今大臣並びに局長の方から御答弁ありましたけれども、少なくとも私が先ほど来申し上げたような状況というのがあるわけですから、それに対しては何らかの対応を厚生省としては考えていかなければいかぬのじゃないか。従来どおり基本懇の意見書があって「科学的・合理的」云々という形で、厚生省何も考えておりません、こういうことではなくて、現実にそういったものに対して何らかの対応を厚生省としても考えるべきではないか、こう言っておるのですが、どうですか。再度その辺をお尋ねいたします。
  111. 藤本孝雄

    藤本国務大臣 新しい材料といたしましては、地元の県、市で検討会をおつくりになっていろいろ御検討されるというように承っておりますので、私どもとしては、その検討会の内容を非常に関心を持って見守っていきたい、かように考えております。
  112. 田口健二

    田口委員 以上で質問を終わります。ありがとうございました。
  113. 稲垣実男

    稲垣委員長 午後一時から再開することとし、この際、休憩いたします。     午後零時十九分休憩      ────◇─────     午後一時四分開議
  114. 稲垣実男

    稲垣委員長 休憩前に引き続き会議を開きます。  質疑を続行いたします。新井彬之君。
  115. 新井彬之

    ○新井(彬)委員 まず、児童扶養手当法等改正案についてお伺いをいたします。  児童扶養手当法昭和六十年に大改正が行われまして、そのときに附帯決議等もついているわけでございますが、その附帯決議の中で、「手当の全部又は一部停止の所得限度額決定に当たっては、離別母子世帯の生活実態をも勘案し、今後適切な配慮を図ること。」このようにあるわけでございますが、離別母子世帯の生活実態をどのように認識しておられるか、まずお伺いしたいと思います。     〔委員長退席、野呂委員長代理着席
  116. 長尾立子

    長尾政府委員 お答え申し上げます。  私どもの方で全国の母子世帯の実態調査を五年に一回やっておりますので、昭和五十八年度の古い数字で大変恐縮でございますが、その母子世帯の実態調査の内容につきまして申し上げたいと思います。  母子世帯全体、平均的な収入は、平均いたしまして二百万円ということでございまして、平均世帯人員が三・一六人ということでございますから、全体の一般世帯の三・四二人ぐらいの世帯の四百四十四万円という収入に比べますと半分程度の所得ということでございます。  それで、この全国母子世帯等実態調査は、今先生質問は離別母子世帯という御質問でございますので、死別の母子世帯も含めまして調査をいたしておりますので、今私の申し上げましたのは、全母子世帯についての数字でございます。それで離別、死別の別にとりますと、死別の世帯を平均いたしますと二百四十万円というような所得レベルになっておりますが、離別世帯は百七十七万円ということで、離別世帯の方が所得レベルが低いということがわかるわけでございます。これは一つは、死別の場合には年金を受給しておられる方が相当おられるということもございましてこのような状況になっているのではないかと思います。
  117. 新井彬之

    ○新井(彬)委員 次に、六十三年度において所得制限限度額をどのように改善する予定か、お伺いいたします。
  118. 長尾立子

    長尾政府委員 児童扶養手当の本人の所得制限限度額でございますが、これは従来から、最近の所得の上昇等を勘案いたしまして、いわゆるとんとんベース的な考え方で引き上げをやってきておるわけでございますが、今年八月から、現在の限度額、二人世帯、扶養親族一人の場合でございますが、二人世帯の場合で年収三百十二万五千円でございますものを三百二十万八千円に改善いたしたいと考えております。
  119. 新井彬之

    ○新井(彬)委員 所得制限限度額が毎年改善されるといっても、手当が全額支給されるかどうかの限度額百七十万六千円は六十年からの据え置きでありまして、実質的には支給制限強化ではないかと思いますが、この点いかがでございますか。
  120. 長尾立子

    長尾政府委員 児童扶養手当を全額支給するか否かの限度額でございますが、これは先ほどの先生が御指摘になりました昭和六十年の本法の改正をいたしましたときに、母子家庭生活状況、必要度に応じて給付の重点化ということを中心に改正をお願いしたわけでございまして、全額支給の限度ラインの考え方を所得税の非課税ラインという考え方でいたしたわけでございます。所得税の非課税ラインということでございますので、本来それぞれの方が得ておられます所得から給与所得等必要経費を控除いたしまして、これと所得税で決まっております基礎控除、扶養控除等の額とを対比いたしまして、このレベルを決めるわけでございますが、この所得税の実質的な、例えば基礎控除のレベルでございますとか、こういうものについての変更がございませんので、したがいまして、この限度額については変更いたさないという取り扱いにいたしたわけでございます。
  121. 新井彬之

    ○新井(彬)委員 次に「父子家庭及び養育者が祖父母である家庭等の増加に対応し、今後きめ細かな施策を検討すること。」というのが附帯決議にあるわけでございますが、父子家庭及び養育者が祖父母である家庭実態はどのように把握されておりますか。
  122. 長尾立子

    長尾政府委員 先ほど申し上げました昭和五十八年の全国母子実態調査で、初めて父子家庭それから養育者家庭、養育者が祖父母である家庭につきましての調査を実施をいたしました。このときに父子世帯として把握いたしました数は十六万七千三百世帯でございまして、養育者が祖父母である世帯数は二万七千九百世帯でございました。  この調査の全体の概況を申し上げますと、いわば祖父母が養育者となっておる世帯の平均月収は、先ほど申し上げました母子世帯全体の平均水準とほぼ同様でございまして、この方々が現に一番困っていることは何かという質問項目に対しましてお答えいただきましたものも、まず家計、つまり経済的に困っているということを挙げられておりますので、経済的に母子家庭と同様な経済状態にあるということが言えるのではなかろうかと思います。  次に、父子家庭でございますが、父子家庭の場合には、母子家庭と比較いたしますと所得のレベルも高うございますし、経済的な問題は少ないようでございますが、反面、家事の問題、育児の問題について困っているというお答えが多いように認識をいたしております。
  123. 新井彬之

    ○新井(彬)委員 父子家庭につきましては、いろいろな方々がいらっしゃるので一概には言えないと思います。所得が非常に高くて、人を雇って、そして子供さんの養育もできる方もいらっしゃいますし、そうでない方もいらっしゃる。私もいろいろな家庭を知っておりますけれども、ある意味では母子家庭よりも父子家庭の方が大変だなという感じを持っているわけでございます。  特に、小学校あるいは中学校の子供さん方は両親がそろっている家庭というのが理想的でございますけれども、その小さいときに、母子家庭の場合というのはわりかたお母さんとの対話とか話とかというものができる。ところが父子家庭の場合というのは、朝食をお父さんがつくる、あるいは夕食をどうする、そういうようなこともなかなかし切れないで大変な状況があるわけでございます。  そういうわけですから、この父子家庭の子供さん方をどのようにしたらいいか。ただ児童扶養手当をあげたらいいとかということではないかもわかりませんけれども、何かほかのことでこの子供さん方に温かい家庭ができるような施策というようなものを考えなければいけないなということを非常に思うわけでございます。近所の方が、その子供さんが小学校から帰ってきたら、うちへ遊びにいらっしゃい、それでうちで一緒に勉強しなさいとか。非常に大事なときでございますので、やはり温かい家庭的なフォローをすることが非常に必要じゃないかということが一つありますのと、それからお父さん方が非常に教育熱心であればあるほど、今まで遅くまで仕事をしておったのができませんし、その都合によっては会社をかわらなければいけないというようないろいろな状況もあります。  きょうはこのことについては長いことやっている時間がございませんが、「父子家庭についての暮らしの実態と当事者組織への道」、こういう報告書もいただいているわけでございます。確かに大変な問題を抱えております。そういうわけで、全部が全部というわけじゃないのですけれども、父子家庭に対しても、よく分析をしていただいて、児童扶養手当支給してあげてもいい家庭がわりかたあるんじゃないかと思いますが、そういうことについてはいかがでございますか。
  124. 長尾立子

    長尾政府委員 今先生から父子家庭のお話がございまして、私どもも、父子家庭問題というのはどういうふうな取り組みをするのかということについては、いろいろな意味で大変難しい問題をはらんでおる家庭であると思うわけでございます。  確かに我々がやってきました母子家庭対策は、一家の生計を担っておられた御主人が急に亡くなられた、または御主人と離婚されたということによりまして、急激な家庭の経済上の危機が訪れ、それに対します社会上の女の方が負っておられるいろいろなハンディキャップ、具体的には、なかなかある程度の収入がある就職が得られないといったような現実のハンディキャップに対応いたしまして、主として母子家庭の方の社会的に置かれております状況を勘案いたしまして、経済的な自立を図るという観点からいろいろな対策を講じてきたわけでございます。  ところが、父子家庭の場合には、これは今先生もおっしゃったわけでございますが、実は態様は、さまざまなタイプの父子家庭という言い方はいかがかと思うのでございますが、問題の所在が多様な対象ではないかというふうに思っております。経済的にはそれほどお困りになるということではないけれども、今おっしゃいましたような育児の問題でいろいろな問題を抱えておられるというような御家庭もあると思いますし、また、これは非常に少数かと思いますが、お父さま自身が定職を持っておられなくて非常に生活の面でも家庭を維持するためのいろいろな能力を欠いておられるというような、問題家庭といいますか、そういうような父子家庭もあると思うわけでございまして、私どもは、それぞれの父子家庭を全部ひっくるめて一つの対策といいますよりも、今のそれぞれの父子家庭のタイプに応じたさめ細かな対策ということを考えていくのが本当は基本ではなかろうかというふうに思っておるわけでございます。  例えば、これは一般の低所得対策にも通じるような働く意欲のない男の方について、その方を中心とする世帯が自立していくためにはケースワーカーのいろいろな指導とか尽力とかをやっておるわけでございますが、そういった形で対応していかなくてはならない父子家庭もあるだろうと思います。  今の先生の御質問は、一般に父子家庭児童扶養手当支給してはどうかということなのでございますけれども、一般論として申し上げますと、奥様と死別をする、また奥様と離婚をなさるということを契機といたしまして、稼得能力ががくっと下がるということは通常はないのではないかということでございます。また育児や家事の面で御指摘のように非常に困難はありますものの、先ほど申しましたように、全体として見れば所得レベルがそれほど低くはないということでございます。また児童扶養手当が低所得の家庭で子供さんを抱えている家庭に全部支給するというような仕組みであればよろしいかと思うのでございますが、ある一定の条件を付しまして、母子家庭に準じた家庭だけに支給いたしておりますこととの均衡ということから考えますと、父子家庭全部を通じまして児童扶養手当支給していくということは、私は困難ではないかというふうに考えております。
  125. 新井彬之

    ○新井(彬)委員 全部に対してそういうことをするということではないわけでございますが、いろいろな調査の中で、当然母子家庭よりも大変な家庭がある、そういう方にはやはりしてあげなければいけないんじゃないかというケースも大分あるんじゃないかということを言っているわけでございます。  この児童扶養手当は国が八割、都道府県二割の費用負担割合になっております。六十一年度から六十三年度までは暫定措置として国が七割、都道府県三割、こういうぐあいにされるとなっておりますが、地方の負担が非常にふえているわけでございます。暫定期間明けの六十四年度以降についてはどう対処されるのか、お聞きしておきたいと思います。
  126. 藤本孝雄

    藤本国務大臣 六十四年度以降の補助率の取り扱いの問題は、まさにこれからの問題でございまして、今後関係大臣で検討協議するわけでございますが、その場合に国と地方の財政状況、これは政府全体の問題でございます。そういう問題と、それと国と地方のこの制度に対する役割分担の問題もあるわけでございまして、特に私どもとしては、財政状況もさることながら、国と地方の役割分担の状況を勘案しながら考えていかなければならないと思っております。いずれにいたしましても、今後の問題でございますので、十分協議の上、適切に対処してまいりたいというふうに考えております。
  127. 新井彬之

    ○新井(彬)委員 母子家庭自立のために就労は重要ですが、母子家庭の母が就労するためには保育所利用が不可欠であります。母子家庭については優先的に保育所に入所できるよう指導すべきであると思いますが、その点はいかがになっておりますか。
  128. 長尾立子

    長尾政府委員 先生の御指摘のとおりでございます。私どももそのように考えております。母子家庭のお母様方につきましては、保育所に入所せざるを得ないという事情になりましたときには、すべてに優先をして入所措置をするようにということで指導をいたしてまいったつもりでございますが、今後とも円滑な入所措置がとられるようあらゆる機会をとらえまして周知徹底を図ってまいりたい、かように考えます。
  129. 新井彬之

    ○新井(彬)委員 その保育所でございますけれども、保育時間が短いためにベビーホテル等の無認可保育施設を利用せざるを得ないという声も聞きます。延長保育対策をもっと推進すべきではないかと思いますが、いかがでございますか。
  130. 長尾立子

    長尾政府委員 確かに最近の女の方の就労の状況を見ますと、就労の数自体も大変ふえてまいりましたし、お子様を抱えた女の方の就労が大変ふえているという状況にあると思います。このことはいろいろな職場、いろいろな職種につかれる女の方がふえてくるということをも意味していると思いますので、先生指摘のように、女の方の労働時間も非常に多様化しておるわけでございますので、保育所の保育時間もそれに対応した体制ということが必要であるということは、先生指摘のとおりだと思っております。  それで、延長の問題でございますが、私どもは基本的には保育所は夕方の六時までは通常の時間の中で保育ができるような体制を考えておったわけでございますけれども、六時ということでは対応できないという御要望もございますので、七時または八時という二時間なのでございますが、今こういう形で延長保育特別対策ということをやっていっておるわけでございます。この延長保育特別対策といたしましては、通常の保育時間を超えまして七時または八時までの保育時間の延長をいたしましたときに、通常お子様一人当たりに委託費として支払われます金額に一〇%、二〇%の上乗せをいたしまして、経費を保育所側にお支払いをするということをいたしておるわけでございますが、こういった対策につきましては、末端の市町村、都道府県の御理解をいただかなくてはいけないわけでございますけれども、現在延長保育特別対策を実施しております保育所は、全国の保育所の中で実は四百十一カ所という非常に限られた数になっております。私ども予算がこれだけしかないということではなくて、実はこれ以上お願いしたいと私どもは思っておるわけでございますが、延長保育につきましては、保育所側の勤務体制の問題等がございまして、なかなかに普及が図れていないという状況でございます。私どもといたしましては、先生指摘のような状況を踏まえまして、あらゆる機会に各方面にこういった延長保育対策の推進をお願いしてまいりたいと思っております。
  131. 新井彬之

    ○新井(彬)委員 保育所もいろいろとベビーホテルの危険な運営とかまた無認可保育施設の現状と問題、こういうのもずっと出ておりますけれども、きょうは余り時間がないので、これは言いませんけれども、とにかく民間でもその需要にこたえて精いっぱいいろいろやっておられるというような現状もあります。そういうことでございますので、子供さん方の安全を託して本当に大丈夫だというようなことを中心にして、もう少し充実していかなければいけないのじゃないかなと思っております。子供は一家の宝でありますと同時に国の宝でもあります。最近は育児に不安を抱く母親もふえており、身近な施設である保育所で育児に関する相談に応ずることができるようにすべきではないかと思いますが、この点いかがでございますか。
  132. 長尾立子

    長尾政府委員 最近は核家族化の進展がございまして、また都会へ人口が集中しているという時代でもございまして、おじいちゃん、おばあちゃんの子育てについてのいろいろな知恵がかりにくいということでございますから、子育てについての不安を持っておるお母様方が多いというふうに私どもも思っております。  それで、育児の相談といいますのは、身近にあるということが必要であると思いますし、また相談を受ける側が経験豊富であるということも必要であると思っておりますので、一番身近な施設という意味では保育所でございますので、私どもは保育所の保母さん方が育児に関します相談、指導指導といいましょうか、そういうものが行っていただけるような乳幼児健全育成相談事業という形の対策を講じているわけでございます。先生お話しのように、この対策、保育所の保母さん方にしてみますと、お仕事に重ねて大変御苦労なことではございますが、非常に喜ばれていると思っております。
  133. 新井彬之

    ○新井(彬)委員 今いろいろと本が出ていますけれども、胎教なども大変影響する。だから、胎教のときからきちっとした子供というのは立派だあるいは生まれてから三歳までに子供さんを本当に身近に置いて教育するのとそうでないのと違うというような、近ごろ非常に専門的に分析されたような書物が出ております。私もそうだなというふうに思うわけでございますが、そういうことがなかなかでき得ない。  それからもう一つは、この前テレビでもやっておりましたけれども、昔の母親というのはとにかく子供を育てるために一生懸命に働いて子供を育てていた。近ごろはそうじゃなくて、子供さんも大事に育てるけれども、自分もそれなりに自分の未来をきちっとしていかなければならないという考え方をお持ちの方が多い。そういう中で、とにかくおじいちゃん、おばあちゃんがいればいいわけですけれども、そうでない人というのは、今の母親なり父親が子供を一体どのように育てたらいいのかというのがわからないような現状があるというようなことがうかがわれるわけでございます。やはり子供というのは、親がどうであれ全然自分としては何も責任がないわけでございますから、何らかの形でみんなで面倒を見ていかなければいけない。母親に対してもこうあるべきだということを言わなければいけませんが、母親だって、御夫婦いらっしゃる家庭と違って仕事をしなければいけないとかいろいろなことがあります。そういうことの中で教える。そして先ほど私が申しましたように、子供さん方のある意味では母親がわりです。保育所などでも自分の子供みたいに非常にかわいがってやってはいただいていると思いますけれども、そういう温かい雰囲気の中で子供さん方が豊かな生活ができるようにする、こんなことが非常に大事じゃないかなというふうに思うわけでございまして、そういう面につきましても、もっと充実をしてあげていただきたいな。だから、わからないことがあったらどんどん言いに来なさい、こっちが教えますというような形で言っていただきたいと思うわけでございます。ただ、そういうような母親が保育所で相談したらいろいろ教えてもらえるということがまだPR不足といいますか、余り行き届いていない。自分たちで知った者に頼んだりいろいろなことをして苦労されているということの方が多いのじゃないかな、こういうように思われますので、その点よろしくお願いしたいと思います。  それから、我が党がかねてより離婚後の妻や子供が経済的に安定した生活が送れるようにとアリモニー制度、つまり離別金や別居手当の導入を図り、法的に夫の扶養料の支払い義務を設けるようにするアリモニー制度というものを提唱しているわけでございますが、このアリモニー制度についてどのような認識を持っておられるか、まず法務省からお伺いしたいと思います。
  134. 寺田逸郎

    ○寺田説明員 ただいまのお尋ねの点につきまして、まず法的な枠組みにつきまして私の方から御説明させていただきたいと思います。  現在、夫が離婚した場合に子供に対してどのような義務があるかと申しますと、一般的には民法の八百七十七条によりまして扶養義務が規定されてございまして、その扶養義務は離婚後の父についても同じように適用がございますので、この規定によりまして一般的な扶養義務が定められております。しかし、この実体的な扶養義務をどのように実現するかということでございますが、これには手続規定がさまざまございまして、一番通常用いられておりますのは、家事審判法に基づく家事審判によりまして義務を定めてもらいまして、これをさらに家事審判法に基づく履行勧告あるいは履行命令などによって強制する、あるいは判決によりまして、この判決を強制執行するという形で強制的にその扶養料を取り立てるという形がございます。したがいまして、今御指摘のありました点でございますが、強制的な履行が確保されているという点では、現行の制度も一応それを備えているというふうに申し上げていいかと思います。  ただし、今アリモニーというふうな制度の御紹介がありましたが、諸外国ではさまざまなこれについての法的な関与がある国がございまして、かねてから一部に、現在のような日本制度では、強制的な履行といいましても、なお不備があるのではないかという御指摘がございます。この御指摘にももちろん耳を傾けるべき点がなくはないわけでございますので、私どもといたしましては、さらにこれについてどのような制度が考えられるか、より履行を強化すべきだという点につきましてコンセンサスのようなものが得られますれば、これについてなお検討させていただきたいというふうに考えております。
  135. 新井彬之

    ○新井(彬)委員 世界各国そうでございましょうけれども日本は特に親が子供を一生懸命にかわいがって育てる。そしてまた子供が親に一生懸命尽くすといいますか、孝行するといいますか、非常に円満な家庭の中で今まで来たように思うわけでございます。だから、離婚するとかそういうことについては、これはおのおの自由の問題があろうかと思います。したがって、それについてとやかく言うわけじゃございませんけれども、事子供さんのことにかけては、お父さんもお母さんも、やはり少なくても成年に達するぐらいまではきちっと面倒見ていくというのが当たり前ではなかろうか。そういう中で、先ほども家事審判のことがございました。今いろいろな取り決めで協議離婚とかが成り立っていることと思いますけれども、そういうことがなかなか実行できないというのは、その本人の考え方によるところも大分あろうかと思いますけれども、もうそういうことじゃなしに、子供だけは大事にしていくという形でなければならない、こう思っているわけでございまして、今までのいろいろの事例の中で、法務省といたしましても、より一歩進んだ、うまく取り入れられるような状況があれば、そういうものも考えて取り入れていただきたい。御要望申し上げておきます。法務省、結構でございます。  次に、年金の問題についてお伺いをいたします。  現在、我が国では人口の高齢化が非常な勢いで進展しておりますが、経済社会の変動もまた非常に目まぐるしいものがあります。こうした状況の変化に対応して年金制度も長期的に安定したものとなるように抜本的な見直しが求められておりました。その結果、昭和六十一年四月から全国民共通の基礎年金を導入した新しい年金制度が実施されているところであります。この新しい年金制度は、我が党が従来から主張してまいりました国民基本年金構想と大枠において一致しておりますが、なお幾つかの点において改善すべき課題が残されているように思われます。  まず、国民年金の保険料の問題でありますが、これは現在一月に七千七百円の定額制であります。こうした所得に関係のない定額制の保険料というのは、所得の低い人にとっては負担が重くなって保険料が納められない事態が生じ、せっかく全国民共通の基礎年金を導入しても、全国民に行き渡らないようなことになれば非常に大きな問題であります。  そこで、私の提案でありますが、国民年金の保険料の半分は均等割、すなわち定額の保険料とし、あとの半分を所得割保険料として所得に応じた負担ができるようにしてはどうかということでございます。これで公平かつ無理のない保険料負担が可能になると思われますが、この考えについてお伺いをいたします。
  136. 水田努

    水田政府委員 現在の定額制の保険料に一部所得比例制を導入したらどうか、こういう御提案でございますが、私ども二つの点で問題がありはしないかというふうに考えているわけでございます。  その一つは、国民年金のいわゆる一号グループの被保険者というのは、御案内のとおり業種が多種多様にわたっておりますので、その所得を公平に把握することができるだろうかという問題点が一つございます。  それから二番目は、保険料だけ所得に比例して徴収しまして、それが給付枠の上に反映しない、給付はあくまでもフラットということについて国民の多くの皆さんのコンセンサスを得ることができるだろうか。  この二つの点について私ども問題があるのではないか、このように考えておるわけでございますが、なお費用負担のあり方については、現在年金審議会で御検討をいただいておりますので、その御検討も徴しながら、ただいまの御提案については慎重に検討をさせていただきたい、このように考えておる次第でございます。
  137. 新井彬之

    ○新井(彬)委員 現在の基礎年金は、その財源として保険料のほかに国庫負担も行われております。その割合は基礎年金に要する費用の三分の一となっております。この程度の水準では、先ほども申し上げましたが、保険料負担が重くならざるを得ません。そこで国庫負担の割合を例えば四〇%に引き上げて、保険料負担の適正化を図るべきであると考えますが、いかがでございますか。
  138. 水田努

    水田政府委員 御案内のとおり、さきの年金改革におきまして、いわゆる国民に公平な給付を保障するということで基礎年金を導入いたしまして、その際に、国民に公平にフラットな給付をするこの基礎年金に将来に向かって国庫補助は全部投入するということで、それが三分の一という額に決められたわけでございますが、御案内のとおりの国庫補助の繰り延べをするような現下の大変厳しい財政状況のもとで、これを四割に引き上げてまいるということは非常に至難ではなかろうか、このように考えているわけでございます。
  139. 新井彬之

    ○新井(彬)委員 制度の体系上の問題としても言うべきものが残されております。その問題といいますのは、新しい年金制度では、全国民共通の基礎年金を導入いたしましたが、サラリーマンが加入している厚生年金共済年金におきましては、基礎年金を一階部分の年金として、これに報酬比例年金を上乗せするという、いわゆる二階建て年金の構成をとっております。翻って自営業者などの人々はどうかといいますと、基礎年金だけ、すなわち一階部分の年金だけしかありません。そこで、こうした人々についても基礎年金への上乗せ年金として新地域年金制度を設けることによって格差解消を図るべきであるというのがかねてからの我が党の主張でありますが、この点についていかがお考えでございますか。
  140. 藤本孝雄

    藤本国務大臣 確かに御指摘のような現状でございます。私も就任以来、その点につきましては非常に問題だと考えておりまして、厚生年金のいわゆる報酬比例部分に匹敵するそういう二階建て部分を国民年金の方にもつくるべきだ、かように考えておるわけでございます。  具体的には国民年金基金、現行の職域を単位といたします国民年金基金の活用をしやすくする。つまり全国組織、全国単位のこの国民年金基金ではなかなかこれは対応が難しいわけでございますので、新たに地域を単位とした国民年金基金というものをつくりまして、それによりまして国民年金にも二階建て部分をつくるべきであろうというふうに考えております。今後、年金審議会の御意見も伺っておるところでございますので、その結論を踏まえて対応してまいりたい、かように考えております。
  141. 新井彬之

    ○新井(彬)委員 その件については、よろしくお願いいたします。  今回の法案には、旧国民年金法の障害年金等の支払い回数を年四回払いから年六回払いに改めることが盛り込まれておりますが、これはどういう趣旨でございますか。
  142. 佐々木喜之

    ○佐々木(喜)政府委員 年金の支払い回数を増加いたしまして、きめ細かな支払いサービスを行うことにつきまして関係者の大変強い御要請をいただいているところでございまするし、また国会でも御議論がございましたところでございます。こういうような御要請にこたえまして、昨年の法律改正によりまして、本年の二月から国民年金の旧法老齢年金の年六回払いを実施いたしたところでございますが、その次の第二次着手といたしまして、今回法案でお願いしておりますように、旧法国民年金の障害年金につきまして、明年の二月から年六回払いを実施するということにいたしているわけでございます。
  143. 新井彬之

    ○新井(彬)委員 受給者にとると、年金はまさに老後生活の頼みの綱になるわけでございまして、本来ならその月の生活に充てる分はその月に支給するというのがあるべき姿だと思います。事務処理体制の整備などの問題はあるかと思いますが、できるだけ早く毎月支払いを実施すべきであろうと考えます。  イギリスなんかにおきましては、毎週ごとの支払いができるようになっておりますし、そういうことで一月分もあるというようなことでございます。またフランスは三カ月ごとであったのを改善しまして、八六年十二月に毎月払いになっております。西ドイツも毎月払い、それからイタリアが二カ月ごと、カナダ毎月払い、アメリカ毎月払い、こういうことで、やはり年金そのものが毎月の生活費であるというようなことでどんどん進んでおります。そういうことで、なかなか処理は大変だろうと思いまずけれども、今これだけコンピューターとかいろいろ科学技術が進歩しておりますので、なるだけ早く毎月払いにしていただきたいことを御要望しておきます。  次に、年金積立金自主運用についてお伺いをいたします。これもたくさん質問通告しておりますけれども、時間がありませんので:::。要するに、この年金積立金自主運用について今後どのようにやっていくのか、お伺いしたいと思うのです。  これはもう予算委員会でも出ました。また当委員会でもいろいろ出ております。この自主運用のやり方いかんによって掛金も減るあるいはそれに対する支給額もふえるというような大変な基本的な問題にもなろうかと思いますので、そういうことを踏まえまして、この自主運用の問題についてお伺いしておきたいと思います。
  144. 藤本孝雄

    藤本国務大臣 御指摘のように、年金の財政基盤の強化、これは今後の年金制度が高齢化時代を迎えまして老後が長期化する中で極めて大事な問題だと思っておるわけでございまして、御承知のように、六十一年度から自主運用がスタートしておるわけでございます。今後、私どもといたしましては、共済年金並みの三分の一の自主運用を目標に、その自主運用の強化充実を図ってまいりたい、かように考えております。
  145. 新井彬之

    ○新井(彬)委員 では、その件については、ひとりよろしくお願いしたいと思います。  次に、戦傷病者戦没者遺族等援護法及び特別給付金支給法改正案について若干伺っておきます。  いわゆる戦後処理の問題でございますが、昭和三十一年の経済白書では、もはや戦後ではない、こう言っておるわけでございます。その理由は、経済的に見た場合は世界有数の大国に発展していると考えられるわけでございますが、しかし、太平洋戦争のため傷つき、家族を失い、生活基盤を喪失した多くの戦争犠牲者にとっては、まだ戦争は終わりたとは言えないのではないかと思うわけでございます。その一つが戦没者の遺骨の収集、中国孤児問題、恩給欠落者の救済問題、台湾人元日本兵の補償問題、シベリア抑留者に対する補償問題、北朝鮮残留孤児問題、日本人妻の問題、国家補償に基づく原爆被害者の問題等々枚挙にいとまがございませんが、まず厚生省の認識をお伺いしておきたいと思います。
  146. 藤本孝雄

    藤本国務大臣 今御指摘ございましたように、戦争の痛ましい犠牲者への援護は引き続き必要でございまして、その意味でも戦後は終わっていない、私どもはそのように考えておるわけでございます。  具体的な問題につきましては、今御指摘ございましたが、特に厚生省といたしましては、戦傷病者戦没者遺族への年金支給、さらに中国残留孤児対策の充実など援護施策の充実強化には十分に配慮してまいらなければならない、かように考えております。
  147. 新井彬之

    ○新井(彬)委員 その中で中国残留孤児の問題でございますが、肉親捜しの訪日調査は六十二年の三月第十五回調査で一応終了した。実際的には今後とも積極的な補充調査を実施する必要があると考えておるわけでございます。御承知のように、五十六年から六十二年の六年間の訪日者数は千四百八十八人、身元判明が五百五十一人、判明率が三七・〇%ということで、新たに日本孤児と認められた者、それから病気、家事など家庭の事情等で参加できなかった者、訪日後の追加調査によって血液の鑑定をすれば肉親判明率が高いと考えられている者等々があるわけでございますが、これについて厚生省の御見解を承りたいと思います。
  148. 木戸脩

    木戸政府委員 私どもといたしましては、肉親調査最後の一人になるまで行う。それから訪日調査というのは、肉親を捜すのに今考えられる一番いい方法でございますので、ある程度まとまった方がおられる限りは、中国政府協力を得まして引き続き行っていくという考え方でございまして、過去何らかの事情で参加されなかった方につきましては、さしずめは本年六月に訪日調査を予定しておりますので、そこに参加をしていただきたいと考えております。それから不幸にして肉親が見つからなかったけれども、向こうへ帰った後、日本側あるいは孤児側でいろいろな資料が出てきてかなり確実な資料が整った方につきましては、再訪日というのを実施しているわけでございまして、さきの三月の六十二年度の第二回の訪日調査におきましても、五名の方が再訪日で参加をいたしまして、四名の方が肉親判明をした、こういうことでございます。いずれにいたしましても、今後とも訪日調査は続けてまいるつもりにしております。
  149. 新井彬之

    ○新井(彬)委員 永住帰国者の問題についてお伺いしますが、これまで三百七十人、家族を含めますと千六百三十人、自費帰国者も多数おられるわけでございますが、厚生省はさらに三年間に孤児千人、家族を含めますと五千人を見込んでいるわけでございます。しかし、既に五十歳代前後の方が多いわけでございまして、言葉、就職の壁は厚く、定住には問題が多いと考えられておるわけでございますが、そういう点についてはいかがお考えでございますか。
  150. 木戸脩

    木戸政府委員 先生指摘のとおりに、孤児の大部分の方は五十歳代前後はなっておられるわけでございまして、日本語の言葉を覚える、あるいは日本生活習慣になれ親しむという点には大変問題がございますし、就職につきましても問題があるわけでございます。御指摘の言葉の問題、就職の問題について、現在の厚生省の施策を申し上げます。  まず、日本教育でございますが、現在帰国後四カ月入っていただきます定着促進センターにおきましては、年齢や過去の生活歴、日本語の学習歴によってクラス分けを行いまして、入所者のいろいろな状況に応じたきめ細かな指導方法をとっております。さらに今年度予算全国十五カ所の中国帰国者自立研修センターというものが認められましたので、ここにも日本語の補充教育を行えるように、特に年齢の多い方、日本語を全く学んだことがない方等につきましては、重点的に補充教育をしていくということを考えておるわけでございます。  それから、就職の問題でございますが、日本へ来まして定着自立を成功するためには、何としても就職をしていただくということが大切でございますので、まず定着促進センターに入所中に日本労働事情、職業慣行等について理解をしていただく、そして職業安定所とか職業訓練校も見学をしていただく、そして求職票というものに書き込んでいただきまして、それを落ちつき先の最寄りの職業安定所に送っていくというようなことを考えております。  さらに、先ほど御紹介いたしました自立研修センターにおきましては、具体的な就職相談に応ずるほか、必要に応じて職業安定所及び職業訓練校へセンターの職員が同伴していって、そこでまたいろいろ学んでいただくというようなことを考えてみたいと思いますし、さらに職場を開拓するため、労働省協力を得まして、特定求職者雇用開発助成金等を活用するとともに、地域社会において帰国者に対する理解を広めるための一般的な啓蒙広報活動も行ってまいりたいと考えております。
  151. 新井彬之

    ○新井(彬)委員 養父母等中国に残された家族の生活保障の問題についてお伺いしておきます。  帰国孤児一人当たりの養父母など被扶養者は一人として計算し、月額六十元、十五年分を支払う、その費用は日本政府と財団法人中国残留孤児援護基金が二分の一ずつ負担するということが中国との間に合意され既に実施をされておるはずですが、それが今どの程度進行しておるのか、お伺いしておきます。
  152. 木戸脩

    木戸政府委員 先生から御指摘がございましたように、中国残留日本人孤児の養父母に対する扶養費につきましては、昭和五十九年三月と昭和六十一年五月の二度にわたって両国政府間で口上書が交換されまして、これに基づきまして昭和六十一年八月から先生指摘の額が支払われるようになったわけでございます。これまで五回にわたり七百六十二人分約三億二千二百万円が中国残留孤児援護基金から中国紅十字会総会に対して送金されているところでございます。本年も、私ども前年度に帰国した孤児は二百七十名と把握しておりますが、この扶養費を六月末までに支払うことになっている状況でございます。
  153. 新井彬之

    ○新井(彬)委員 もう時間が参りましたので、はしょって質問をいたします。  厚生年金保険法の一部改正案についてでございますが、一つは基金の積立金運用についてでございます。生命保険会社等で運用委託がなされておるわけでございますが、この運用委託をした場合、元本の保証についてはどのようになっているのか。現在ドル安のために生保は一兆円余りの損失があったと聞いておるわけであります。大切なお金であり老後がかかっているわけでありますが、これらの危険についてはどのように考えているのかということが一問でございます。  次に、委託運用ではなく、自主運用についてはどのように取り扱うのか。これも確認書等ができておりまして、今後自主運用ということになろうかと思いますが、これらについての見通し。この二点についてお伺いをいたしまして、質問を終わります。
  154. 水田努

    水田政府委員 現在、厚生年金基金は信託銀行と生命保険会社に委託をするようになっております。生命保険会社については元本保証並びに五・五%の確定利回りということになっております。信託銀行については元本保証はございません。運用実績がそのまま反映されることに相なっております。  それから、生命保険会社はドル安のために一兆円余の損失を確かに御指摘のとおり計上したわけでございますが、先ほどお答え申し上げましたように、契約上元本保証並びに五・五%の利回りの最低保証がございますし、現に生保並びに信託は八%を超す利回りの確保をしていただいておりますので、問題はないものと考えております。  それから、最後の御質問の今後の自主運用の取り組みにつきましては、両省の覚書どおり次期通常国会に提出するということで最大限の努力をしてまいるつもりでございます。
  155. 新井彬之

    ○新井(彬)委員 終わります。
  156. 野呂昭彦

    ○野呂委員長代理 古川雅司君。
  157. 古川雅司

    古川委員 私は、議題になっております原爆被爆者特別措置法改正案に関連いたしまして、厚生大臣に若干の質問をするものであります。  終戦から四十三年の歳月を迎えているわけでございます。ことしもまた広島では八月六日、長崎では八月九日、この忘れ得ぬ暑い日を迎えるわけでございます。私はいつもこの時期になりますと井伏鱒二さんの「黒い雨」という本を繰り返し読むことにいたしております。すぐれた反戦文学の一つとして例えられておりますし、この中には核兵器云々とか戦争反対といった記述はございませんけれども、これほど生々しく、鋭く原爆の被害の実態を浮き彫りにした文学も少ないのではないかと思います。大臣も御就任以来大変お忙しい毎日だと思いますが、厚生大臣におなりになってから、この「黒い雨」という文学書をお読みになったかどうか、ひとつお伺いをしておきたいと思います。  さて、昨年この同じ法案の改正に当たりまして附帯決議が決議されております。その冒頭には、   国家補償の精神に基づく原子爆弾被爆者等援護法の制定を求める声は、一層高まってきた。また、原爆被爆者対策基本問題懇談会の意見書も、被爆者の援護対策は、広い意味での国家補償の精神で行うべきであるとの立場をとっている。   政府は、原爆被害者が高齢化し、事態は緊急を要するものであるという認識に立ち、可及的速やかに現行法を検討して、次の諸点についてその実現に努めるべきである。 と、以下十項目にわたりまして決議をいたしているわけでございますが、厚生省におかれましては、この諸点につきまして、今日までどういう点を、たとえ一歩でも半歩でも前進をさせたか、その点をまずお触れいただきたいと思います。
  158. 北川定謙

    ○北川政府委員 附帯決議の第一にございます実態調査の結果でございますが、これを踏まえて対策の充実強化に努める、こういうことが指摘をされておるわけでございますが、厚生省といたしましては、六十三年度予算におきまして、この被爆者が非常に高齢化をしておるという状況に着目をいたしまして、がんの健康診断の体制を整備をするということで予算の措置をさせていただいたところでございます。そのほかの項目につきましても、それぞれ対応をさせている点があるわけでございますが、また御質問があれば、順次お答えをさせていただきたい、このように思います。
  159. 古川雅司

    古川委員 この一つ一つについて詳細にお伺いしていければよろしいのですが、時間の関係で、特に第一項目にございます「死没者を含む実態調査が行われたが、速やかに解析を行いその集大成を図るとともに、被爆者対策の充実に努めること。」このことに対しましては、作業は今どのように進んでいるのか、その点ひとつ御報告をいただきたいと思います。
  160. 北川定謙

    ○北川政府委員 昭和六十年に行いました原爆被爆者実態調査のうち生存者調査につきましては、昨年の六月に結果を取りまとめて既に公表させていただいたわけでございます。  なお、死没者の調査につきましては、現在広島、長崎両市におきまして調査票を両市の原爆被爆者の動態調査等の既存の資料と照合を鋭意進めておるところでございまして、まだその取りまとめにはもう少し日にちがかかるということで、私どもとしては、今年度いっぱいをめどに公表させていただきたい、このように考えておるところでございます。     〔野呂委員長代理退席、畑委員長代理着席
  161. 古川雅司

    古川委員 この厚生省の行いました被爆者実態調査とともに、日本被団協が独自で行いました原爆被害者調査、既にその内容が発表されておりますけれども、この両方を踏まえて被爆の実態というものがますます明らかになってきております。この解析を急ぐ、そして集大成をするということをひとつきちんと進めていただきたいと同時に、これまでしばしばこの委員会でも議論のありました、いわゆる自由記述部分についての取り扱い、これをいつどのようにしていくのか、この点にこの調査協力をした被爆者の方々から大きな期待と、そしてまたぜひこれをあからさまに公表をしてほしい、広く知らしめてほしいという要望が続いているわけでございます。どのように受けとめていらっしゃいますか。
  162. 北川定謙

    ○北川政府委員 自由記載の欄には、被爆当時の思い出だとか当時の状況あるいは被爆者の立場からの御意見等を記述をしていただいて、大変貴重な資料であると私ども考えておるわけでございますが、現実問題としてこういうものを取りまとめるということはなかなか難しい点がございまして、その取りまとめに当たりましては、やはり被爆者の方々の不安だとかあるいは要望内容等がなるべくリアルに反映をされるようにということで、これを統計処理をいたさなければなりませんので、被爆者の考えられる御要望だとか手当の問題だとか健康診断の充実の問題だとか老齢化に対する問題だとかいろいろと項目を設けまして、そういうものにうまく当てはまるように分類、集計を現在進めておる段階でございまして、なるべく被爆者の声が反映できるように努力をしてまいりたい、このように思っております。
  163. 古川雅司

    古川委員 この自由記述部分については、これは解析とか分析とかそうした統計的な整理ではなくて、むしろもうありのままに一言一言を伝えるような、そういう扱いでもって公表をできないものか、ぜひそうしてほしいという要望が強いわけであります。この点をどうお考えになっているのか。そしてまた今作業を続けていらっしゃるということでございますが、大変御苦労なことだと思いますけれども、いつどうするのかという点については予定をお持ちでございますか。
  164. 北川定謙

    ○北川政府委員 何分にもこの自由記載欄に記載をされた件数が約七万から八万件というような膨大な数に上っておりまして、この中には余りお書きにならないところもございますが、非常に綿々とお書きになっておられる方もあるとか、非常に千差万別でございまして、こういうものをどういう格好で客観性を持たせて資料として公表するか、私ども先生の御指摘のような気持ちを十分理解しながら作業をしたい、こういうふうに考えておるところでございます。何分にも技術的にどう処理するか、これはまだまだ非常に問題を抱えておるところでございまして、公表の時期も、先ほどの死没者調査と同じように六十三年度末までにはめどをつけたい、このように思っておるところでございます。
  165. 古川雅司

    古川委員 大臣にお伺いをいたしますが、前斎藤大臣が、昨年の決算委員会でございますけれども、私の質問に対しまして、この原爆被害の調査をまとめながらいわゆる原爆被災白書といったもの、その取りまとめを検討したいというふうに答弁をしておられます。これは死没者調査を含む国の被爆者実態調査やあるいはまた海外で収集をした原爆資料、そういったものをまとめて集大成をする、そして全世界に向けて、四十三年たつわけでありますけれども、被爆の悲惨さ、実態というものを大きく訴えていきたい。検討されるということで大臣が交代されたわけでございますが、現大臣はこの点についてはどのようにお考えで、またその作業はどこまで進んでいるのでありましょうか。
  166. 藤本孝雄

    藤本国務大臣 昨年の七月二十九日の決算委員会における古川先生の御質疑、私も会議録で拝見いたしました。被爆の被害の実態を明らかにする、そしてこれが被爆国家の一つの責任であろう、こういう御指摘に対して、前厚生大臣も前向きに答弁をされておるわけでございまして、私は、さらにそれを進めてまいる、かように考えておるわけでございます。御承知のように、昨年の六月に六十年の生存者調査の結果を発表しまして、これに加えまして、現在広島、長崎両市におきまして取りまとめを行っておられます死没者調査、また現在収集中の各種被災資料がまとまりますと、被爆者の現状、被害の状況が一層明らかになってくると思います。私といたしましては、死没者調査が六十三年度末までにまとまるわけでございますので、そういう資料を踏まえまして、具体的な取りまとめの方向について今後広島、長崎両市ともよく相談をさせていただきまして、集大成に向けて進んでまいりたい、かように考えております。
  167. 古川雅司

    古川委員 特にそうした被災の実態を集大成するという作業の中で、アメリカを初めとした海外に散っている被爆実態の資料といいますか、そういったものの収集ということについても当然必要になるわけでございまして、それを含めての被害白書ということになると思いますが、その辺はもう手をおつけになっているでしょうか。
  168. 北川定謙

    ○北川政府委員 これは基本的には広島、長崎両県市が非常に力を入れてやっておられる点でございまして、厚生省といたしましても、それらの動きを十分に見守りながら必要があれば協力をしていくという基本的な姿勢でやってまいるわけでございます。
  169. 古川雅司

    古川委員 この実態調査でございますが、厚生省のおやりになった実態調査も大変な作業であったということはよくわかります。しかし、とかく厚生省調査というのは、どれだけ被害があったかという被害の数量的なもの、数で押さえる、そういう傾向が強く出ております。被団協の方でおやりになった、これはまたお一人お一人が大変な苦労をして積み重ねた調査でございますが、これはむしろ被害が人間にとってどれほど重いものであるか、悲惨なものであるかということを明らかにしようとした調査でございます。その調査の結果、それが浮き彫りになってきたわけでございます。厚生省としては、というよりも政府として、その辺をどう認識をしていらっしゃるのか。厚生大臣の私的諮問機関でありますいわゆる基本懇、昭和五十五年十二月十一日でありますから、もうかなりの年月を経ているわけでありますけれども、このときに答申をした意見書で、原爆被害、核戦争による被害を含めて戦争による被害は、すべて国民がひとしく受忍しなければならないとして、以来原爆被害者に対する援護法制定の要求も切り捨ててきた。これを最大唯一の口実にしてきたわけであります。しかし、こうした厚生省調査、また被団協の調査の内容から見ても、こうした基本懇の答申、この考え方、いわゆる受忍しなければならないという認識、この表現はこのままでいいと大臣はお考えになっていらっしゃるかどうか。これは基本的な争点でございますけれども、原爆被害というのは人間にとって受忍できるのかどうか。原爆被害を国民に受忍させてよいのかどうか。これはこうした調査の内容が明らかになって、本当に被害の悲惨さというものがさらにはっきりしてまいりますと、ますますそういう疑問を持たざるを得ないのでありますが、厚生大臣はどういう認識を持っていらっしゃるのか。この表現をそのまま置いておいてよいとお考えなのかどうか、大臣からひとつよろしくお願いいたします。
  170. 北川定謙

    ○北川政府委員 先に、この被爆者対策基本問題懇談会の意見報告書について若干御説明をさせていただきたいと思います。  基本的な理念といたしまして、戦争による一般の犠牲は、すべての国民がひとしく受忍しなければならないものである、これは原爆の被爆以外にも各所でいろいろな大きな被害を受けたわけでございまして、そういうもの全般を指して言っておられることであろうというふうに考えるわけでございます。  そこで、厚生省といたしましては、従来から原爆関係二法によりましていろいろな対策をとっておるわけでございますが、これは原爆被爆者が受けました原爆の放射線による特殊な被害、こういうことでございまして、こういう特別の犠牲であるので、広い意味における国家補償の見地に立って対処するべきだ、こういうふうにこの報告書は記載をされておるわけでございますので、原爆の被害すべてを受忍するというふうに言っておるのではないと私どもは考えておるところでございます。
  171. 藤本孝雄

    藤本国務大臣 私も三十八年初当選以来、社労委員会に所属しておりました時期が長いわけでございまして、この原爆の援護法の問題、当時からいろいろ議論がございました。まさしく古くて新しい問題だと思います。今までのいろいろな経緯、経過も御承知のようなことでございまして、今の段階では、私どもとしては、広い意味での国家補償という考え方のもとに、原爆被害の甚大性をも考えまして、原爆二法という法律をつくり、その法律に基づきまして援護措置を講じておるわけでございまして、援護法の制定というところへは参っておりませんけれども、この法律の適用によりまして十分に効果を上げていくという考え方で対応しておるわけでございまして、今後ともそういう考え方で進まざるを得ないのではないかというふうに考えております。しかし、いろいろと難しいといいますか御指摘の点もございますので、その点については将来の課題の一つではあろうかというふうに考えております。
  172. 古川雅司

    古川委員 このいわゆる受忍の問題でありますが、これは先ほどの局長の答弁で、戦争全体の被害だ、そう言っているのであって、核爆弾の被害の悲惨さ、それを受忍しろと言っている意味ではないという意味にとれたわけでございますけれども、そういたしますと、もう一回この基本懇に考え直してもらって、そこのところははっきりさせる必要があるんじゃないか。あくまでも被害の実態がこうして明らかになってきている。さらに詳細に明らかになってきている。その調査結果というものは決して受忍できるものではないということがはっきりしている時点でございますので、この受忍しなければならないという認識について、また記述について、今大臣は課題だとおっしゃいましたけれども、これはもう一回、はっきりこの基本懇の答申が今日なお生きている以上、再検討をお願いする必要があるのじゃないかというふうに考えますが、いかがですか。
  173. 北川定謙

    ○北川政府委員 先ほど来大臣も御答弁をいただいておりますように、現在厚生省といたしましては、この原爆二法を最大限活用して、被爆者の放射線障害による健康被害という特別の犠牲という点に着目をいたしまして、今後とも十分必要な対応はさせていただく、こういうふうに考えさせていただきたいと思います。
  174. 古川雅司

    古川委員 原爆の被害について受忍しろと言っているのじゃない、そういうふうにとれる御答弁でありますけれども、私は、あくまでもこれはもう一度きちんと見直して、誤解のないように、また原爆の被爆者を初めとして受忍をさせる、させてもよいというこれまでのとらえ方についてはっきりさせる必要があるのじゃないかというふうに考えている次第でございます。次の質問に移りますけれども、もう一度その点確認をしておきたいと思います。  次に、在韓被爆者の援助の問題でございますが、外務省おいでになっておりますか。――さきの日韓外相会談で、在韓被爆者への援助の再開が話し合われたと聞いております。これは報道で知っているわけでございますが、一昨年末の援助中断以降も再開を求める声が非常に強まっておりまして、この外相会談の中で、特にこれから話し合いの場を設ける、あるいはまた調査団を派遣するというようなことが明らかにされておりますけれども、そうした背景というのは、申し上げるまでもなく、一つには在韓被爆者の治療の要求の高まり。特に韓国原爆被害者協会、辛泳珠会長でございます。昨年の十一月末に日本政府に対して総額二十三億ドル、約三千億円の補償要求を提出をしたということがございます。もう一つには韓国政府側に生じた変化。五年間の期限切れになった一昨年末、援助継続を望まないという打ち切りを通告してきたのに対して、盧泰愚大統領は、戦後処理の問題の一環として在韓被爆者の窮状を救うための政府間交渉に対して非常に積極的な意欲を示しているというような背景があるわけでございますが、この点について外務省としてはどのようにお考えになっているのか。特に調査団を派遣するというようなことについては、いつごろ、どういう規模で、どういう内容で派遣をなさるのか。御答弁をいただきたいと思います。
  175. 田中均

    田中説明員 お答えを申し上げます。  委員指摘のとおり、三月の二十一日に日韓定期閣僚会議が開かれまして、その席上、韓国側の崔侊洙外務部長官から、本件問題について、日本は治療の蓄積というものを持っておられるので、この協力問題について綿密な検討をお願いしたいという御発言がございまして、宇野外務大臣の方から、日本側としても、本件は人道的な問題として非常に大きな関心を有している次第であり、一体どういった協力が可能なのか、実務レベルの調査団を派遣をしたい、こういう趣旨の発言をした次第でございます。  この問題の背景等は、委員指摘のとおりでございますけれども日本側の立場といたしましては、少なくとも賠償、補償といった問題については、六五年の日韓請求権協定によって最終的な決着がついているわけでございます。  他方、まさに人道的な問題として、一体今後どういった協力が可能かということは、きちんと検討をしたいということでございまして、御指摘がありました渡日治療の問題も、六十一年の段階では、韓国側の方からほとんど重症者に対する治療は済んだこと、それから韓国の国内で治療体制が整備されているということをもって打ち切りという韓国側の申し出があったわけでございまして、私どもといたしましても、渡日を再開する可能性、それから医療協力として何ができるか、そういった問題を含めまして、実務者レベルの調査団を派遣したいということでございます。  お尋ねのタイミングでございますが、韓国の国内でも四月二十六日に国会議員選挙というものもございますし、私どもとしては、今後関係省庁とよく御相談をして日程を決めたいと思っておりますが、とりあえずは五月の下旬ごろをめどに派遣をしたいという考えでございます。
  176. 古川雅司

    古川委員 時間がなくなりましたので、最後にまとめてただいまの件についてお伺いいたします。  最初外務省の御説明でございましたけれども、この中に出てくる総額約二十三億ドルというこの金額、これは何か背景なりがあるのかどうか、またこれはお金で渡すというような形になるのか、その他治療というようなほかの形で渡すことになるのか、その辺はお考えになっていらっしゃるかどうか。  また、大臣にお伺いいたしますけれども、在韓被爆者の援助の問題、先日四月十五日の参議院の決算委員会でもこの問題が出ておりまして、小渕官房長官が、基本的には、原則的にはこの問題は終わっている、しかし人道的に取り組むというふうに答弁をなさっているわけでございますが、厚生省御当局としては、この問題に基本的にこれからどう取り組んでいくのか。今外務省から御答弁がありましたとおり、非常に大きな変化が今起こってきているわけでございます。ひとつ大臣の御決意なりあるいは御認識をお披瀝いただきたいと思います。
  177. 田中均

    田中説明員 お尋ねの二十三億ドルという数字でございますが、私どもも、特段その数字の積算とかそういう背景がある、その背景については承知をしておりません。他方二十三億ドルのうちとりあえず十億ドルを日本側から供与してほしい、こういう要望が被爆者協会からは出ているということでございます。
  178. 藤本孝雄

    藤本国務大臣 荘韓被爆者の渡日治療の問題、これは私どもといたしましてはできる限りの対応をしてまいるという考え方でございまして、今まで韓国の国内問題ということでもございましたけれども、いろいろ協議の結果、そういうことになれば、最大限の御協力といいますか対応はしてまいる、かように考えております。
  179. 古川雅司

    古川委員 終わります。
  180. 畑英次郎

    ○畑委員長 代理 次に、塚田延充君。
  181. 塚田延充

    ○塚田委員 まず、児童扶養手当法改正案に関連いたしまして、これは母子家庭ではなくていわゆる父子家庭または養育者がおじいちゃんとかおばあちゃんとかいうような方になっている、こういう家庭が増加しているというふうに思われるわけでございますけれども、実際このような父子家庭であるとか祖父母による養育が行われている家庭、どのくらいの数があるのか、最新の資料と、それからこれを今後どのように厚生省として実態把握して対策をしていこうとされておるのか、その辺お答えいただきたいと思います。
  182. 長尾立子

    長尾政府委員 まず、父子家庭、養育者家庭実態でございますが、私どもが実施をいたしております全国母子世帯等実態調査、五十八年に実施いたしました際に、父子世帯及び養育者が祖父母である世帯の実態調査を初めて実施をいたしました。この調査数字で申し上げますと、父子世帯数は十六万七千三百世帯、養育者が祖父母である世帯数は二万七千九百世帯という世帯数でございます。  この数が今までふえてきたのか、今後どうなるかという見通しの問題でございますが、申し上げましたように、全国母子世帯等調査の五十八年が最終でございますので、この増減の状況はちょっとわからないわけでございますが、参考的な数字として申し上げますと、私どもの厚生行政基礎調査で従来世帯類型別に世帯数の傾向を見ておりまして、この中で父子世帯は、今私が申し上げました全国母子世帯等調査の父子と定義が違いまして、父子のみ、父親と子供のみの世帯でございますので、限定しました世帯でございますから数は少ないのでございますが、この傾向で見ますと余り大きな増減はないように思われます。  もう一つの養育者世帯の方でございますが、これはそういう意味でほぼかの傍証となるような調査がございませんが、私どもが養育者について児童扶養手当支給しております数字で申しますと、やはりそれほど大きな変化はないのではないかというふうに思っておるわけであります。  先生の御質問は、今後父子世帯、養育者世帯の実態をどういうふうに分析し、どういうふうな対策を考えていこうとしているのかということであるかと思います。今申し上げました、この父子世帯、養育者世帯の実態でございますけれども、五十八年の母子世帯実態調査に即して申し上げますと、父子世帯につきましては十六万七千三百世帯のうち就労しておられます方が大部分でございまして、九割はお父さんが就労しておられるという状況でございます。平均年収も母子世帯に比べますと、世帯全体の平均年収もやや多いということが言えるかと思います。ところが養育者世帯につきましては、この平均の年収はやはり母子世帯と同様に余り多くない、一般世帯の半分程度というような状況にあるように思われます。父子世帯について生活上の問題として認識しておられますことは、やはり子供さんの教育関係の問題が非常に大きいようでございます。これは母子世帯の方が家計が苦しいということを非常に言っておられるのに比べますと、非常に大きな差があるのではないかと思います。  父子世帯の対策をどうとっていくかということでございますが、これは率直に申し上げましてなかなかに難しい問題ではないかというふうに思っております。母子世帯がいわば私どもの行政の中で特別な対策として従来からやってまいりましたのは、やはり基本的には生計の主たる負担者である御主人が死亡される、または離婚されるということによりまして、その世帯に起こりました急激な変化に対応するために、かつ女の方が現実の社会生活の上でいろいろな意味で就職が困難であるなどのハンディキャップを持っておられますので、そういう面を補う意味で対策を講じてきたという経緯がございますが、父子世帯はそういう意味ではやや対応の仕方が違わなくてはならないものではないかと思います。私どもといたしまして、児童家庭局の観点からいいますと、父子世帯の子供さんが健全に育つような、そういう意味のお力添えをしていくということが中心ではないかと思っておりますので、保育所に対します優先入所の問題でございますとか相談体制の充実でございますとかまた介護人派遣事業、つまりお父様が病気になられましたときに、御家庭に対しまして介護人を派遣するなどの対策を従来から講じてきたところでございます。
  183. 塚田延充

    ○塚田委員 確かに父子家庭の場合は、母子家庭と違いまして収入の面とかいうことについては、平均で言えば案外基盤がしっかりしておって大丈夫じゃなかろうかと行政の側で判断されるような統計データが出ることは当然だと思います。しかしながら、やはり数多くの中にはもうどうにもならないような、収入面とかそれから子供にかける手間暇がうまくいかないで、いわゆる悲劇的な状態になるようなケースも間々見受けられるということがたまにマスコミの話題になっておることは御承知のとおりだと思います。  そこで、資金的な問題については、それほど心配はないと言っておりますものの、やはりそういう特殊な方々が困った場合、福祉資金の貸し付け、これにも道を開くことはいかがなものであろうかとか、それから相談業務とか、何か今局長の方からかなり力を入れているとは申されましたけれども、これを制度そのものとしてもっと充実させて、そういうものがあるんだよということを周知徹底せしめる。家事とか子供の養育などについて母子福祉センターに相談することが十分可能であるし、それも母子福祉センターの業務の一つとしてきちんと定義づけられておるとか母子休養ホームなども休養のために使ってもいいんだよとかいうように、制度の上で父子家庭に対しても、また養育者家庭についてもはっきりさしてはいかがかと思うのですが、この件について御見解を求めます。
  184. 長尾立子

    長尾政府委員 今先生の御指摘は、父子家庭の場合でも、低所得層の家庭については貸付金の対象として考えていく、それから母子福祉のいろいろな対策について、そういう家庭に対する周知徹底を図っていく必要があるのではないかという御指摘だと思います。  これは、先生の御指摘はごもっともだと思うのでございますが、一般的には、例えば貸付金の例をとりますと、低所得者層ということでは、これは私どもの方では社会局の所管になるわけでございますが、世帯更生資金の貸付制度がございます。これは一般の低所得者層に対しまして経済的な自立生活意欲の助長促進ということをねらいといたしまして設けられておる制度でございまして、内容的には母子福祉貸付金とほぼ同様の内容を持っておるわけでございますが、こういったものの御利用はいただけるのではないかと思っておるわけでございます。  先生がおっしゃいましたように、後半の部分、父子家庭につきましていろいろな対策が十分とられておるようになっておって、それが十分利用できるためにはもっと積極的な私どもの、先生は今制度化というようなことをおっしゃったわけでございますが、具体的には周知徹底を図っていく、いろいろな仕組みをもっと工夫しろということは、もう御指摘のとおりだと思いまして、現在の制度のままでもこの点は十分御利用いただけ、またお子様のためには、そういった相談業務などに積極的においでいただくことが望ましいことは当然でございますので、工夫をいたしてまいりたいと思っております。
  185. 塚田延充

    ○塚田委員 次に、原爆被爆者に関連した問題についてお尋ねいたします。  原爆被爆者の方々に対する救済処置についてもう既に各委員から御質問がなされておりますけれども、そんな中で私どもはもうずっとずっと前からいわゆる被爆者援護法をつくったらどうか、つくるべきだと厚生省に迫っておるわけでございますけれども、その制定につきましては、大臣として、やはり何のかんのということで結論的には否定的な回答ばかり続いているわけでございます。それならば、せめて、これにつきましては、五十五年十二月の原爆被爆者対策基本問題懇談会の意見の中にも「国は原爆被爆者に対し、広い意味における国家補償の見地に立って被害の実態に即応する適切妥当な措置対策を講ずべきものと考える。」と述べられているわけでございますから、援護法ができないならば、今検討の対象となっておりますいわゆる措置法の中においても、国家補償的な見地をぐんと出していただいて、その諸手当について、今審議対象となっておるスライド程度じゃなくて、もっともっと大幅にきちんとやることはできないんであろうか、この件についてお伺いしたいと思います。
  186. 北川定謙

    ○北川政府委員 御指摘の点でございますけれども、原爆被爆者に対しましては、放射線による健康障害という他の戦争犠牲者には見られない特別の事情があるというところから各種の手当を支給をしておるところでございますが、その額につきましても、これは先ほど来先生が御引用なさっておられます基本問題懇談会の御意見にもあるわけでございます。すなわち、原爆被爆者に対する対策は、他の戦争犠牲者に対する対策に比して著しい不均衡が生ずるようであってはならない、こういうふうに指摘をされているわけでございまして、そういう観点からいたしましても、その額につきましては、国民的な合意が得られる公正、妥当なものでなければならないというふうに考えておるところでございます。
  187. 塚田延充

    ○塚田委員 本年三月二十一日の日韓外相定期協議で在韓被爆者問題について合意がなされたわけでございます。この件についても同様他の委員から質問が出されており、外務省からお答えをいただいておりますが、この問題について厚生省として具体的に何をなすべきなのか、または外務省なり関係省庁に対してどういう働きかけをすべきか、厚生省の責任と権限において大臣の見解をお伺いいたします。
  188. 北川定謙

    ○北川政府委員 御説明をさせていただくわけでございますが、先日の日韓外相定期協議の概要については、私どもも十分承知をしておるところでございます。厚生省といたしましては、人道上の見地から、韓国政府が要請をされるというようなことがございますれば、外務省関係省庁とも十分に協議をいたしまして、渡日医療の再開の可能なように十分に技術的にも協力をしてまいりたい、そのように受け入れという観点から十分協力をさせていただく予定でおるわけでございます。
  189. 塚田延充

    ○塚田委員 それでは次に、戦傷病者援護法についてお尋ねいたします。  この件ずばりではございませんが、関連ということで帰国を希望されておる中国残留孤児の受け入れ態勢について、六十二年度から三年計画で整備されるということを厚生省ははっきりされておるわけでございますが、その進捗状況について具体的に御説明いただきたいと存じます。
  190. 木戸脩

    木戸政府委員 御説明申し上げます。  先生指摘のとおり、六十二年度から六十四年度までに千世帯を受け入れるという厚生省方針を決定したわけでございます。この計画を具体的にいたしますために、まず六十三年度におきまして、所沢の定着促進センター、これは従来からありましたが、それ以外に全国に五カ所、自治体の協力を得まして定着促進センターを新設をいたしまして、年間受け入れ能力を三百三十というふうにしたわけでございまして、これで三年間で千世帯が受け入れられる、こういういわば入れ物の整備をしたわけでございます。六十二年度の実態を見ますと、二百七十世帯、孤児も含めまして家族千八十九名の孤児世帯を受け入れたわけでございます。若干数が減っておりますが、一つは所沢以外のセンターが若干おくれたということと、それから帰国を希望しておりまして、こちらから帰国の申請書を送りますと、実際はちょっとまだ帰るのに時間がかかるということで、三百三十世帯は帰らなかったわけでございます。しかしながら、私どもといたしましては、今のようにいわば入れ物の整備は終わっておりますので、受け入れは十分可能だと思います。特に六十一年度までに訪日調査に参加した帰国希望者の大多数は、本年度中に、全部というわけにはいかないかもしれませんが、大多数の者が帰国が可能というふうに見込んでおります。
  191. 塚田延充

    ○塚田委員 残留孤児中国における養父母に対しましては、今ボランティア基金によって扶養費を払っているはずでございます。大変お世話になっておりますこれら養父母も既に大変高齢化しておることはご存じのとおりであり、日本の国の立場からすれば、これは償っても余りあるほどの責任があるはずでございます。そういう意味におきまして、この養父母への扶養費というのは、全額国庫負担できちんとする、こういう制度に改めるべきじゃないか。そしてボランティアの方の基金は、それ以外の、言葉どおりボランティア的な活用方法を考えて、残留孤児に対するバックアップの基金にすべきであろう、私はこのように考えますけれども、この養育費国庫負担の件につきまして見解を求めます。
  192. 木戸脩

    木戸政府委員 先生の御指摘のような御意見もあるわけでございます。この養父母の扶養費の問題につきましては、五十九年と六十一年、二度にわたりまして日中両国政府で口上書を交わしてございます。特に五十九年の場合には、その養父母の扶養費の基本的な性格は何であるのかということが問題になりまして、これは中国側も最終的には、親を扶養するというのは子供の義務である、つまり民法上の私的な扶養である、そこは了解をしたわけでございますが、しからば、帰ってきた人たちが生活が大変なのに養父母に仕送りができるのか、それでは中国の養父母は困るではないか、こういうことになりまして、そこで人道上の見地、それから日中友好の見地から、結局五十九年三月の口上書で「日本国に永住した孤児が、中国に残る養父母等に対し、負担すべき扶養費の二分の一は、日本国政府が援助する」という合意に達したわけでございます。この合意に基づきまして、残りの二分の一については、民間からの寄附金を募るための先生指摘中国残留孤児援護基金が五十八年の四月に設立され、扶養費援助にかかわる寄附金は税法上の特定の指定寄附扱いといたしまして、六十年六月までに十億円の基金が造成されたという経緯があるわけでございます。  せっかくの御意見でございますが、このような日中両国政府の協議の結果の合意でございますので、今後とも国と基金との負担で扶養費の支払いを続けてまいりたいというふうに考えておりますので、御了解を願いたいと思います。
  193. 塚田延充

    ○塚田委員 それでは厚生年金保険法の改正につきまして質問をさせていただきます。  御承知のとおりの長寿社会が刻々というか、もう既になっておると言ってもいいでしょうか、そういう状況の中で老後生活をゆとりのある充実したものにするためには、公的年金とあわせて厚みのある給付を行っております厚生年金基金の役割は今後さらに重要になってくると私は思います。この厚生年金基金制度を一層充実強化させるべきであるという立場から質問を続けてまいりたいと思います。  まず、この基金の普及がいろいろ条件の面である程度制約され過ぎているのじゃなかろうか、これを緩める必要があるのじゃなかろうか、この辺に今度の改正案は着目しているわけであり、それ自体、方向としては評価するものでございます。しかしながら、具体的に見た場合、今の普及状況厚生年金被保険者の約四分の一しか入っていないというようなところから、普及させていくということからすると、今要件の面で同一企業あるいは同種同業の企業に限って基金の設立を認めているわけでございますけれども、この要件を緩める必要があると強く私は指摘しておきたいと思います。  すなわち、同一の地域に同業種ではないけれども関連企業が集まっている。例えば企業城下町のような立場でいろいろと連携をとり得る、現にとっておるような工業団地みたいなものもございましょうし、または商業関係でいえば卸売団地というようなことで、扱い品目は違いますけれども、卸売業ということにおいて非常に似通っておるために、はっきりした組合はつくってないとしても、協議会みたいなものをつくっていろいろなことを一緒にやっておるような団地、グループがあるはずでございます。そのような地域性的なものに着目して、そういう団地そのものを設立母体とする基金をもっともっと奨励していってはいかがであろうか。これによっていわゆる勤労国民に歓迎されておる厚生年金基金の制度をもっと普及させることができると考えますが、この地域的な面に配慮した基金の設立についていかがお考えでございましょう。
  194. 水田努

    水田政府委員 結論から申し上げますと、御指摘の地域型の基金の設立につきましては前向きに取り組んでまいりたい、私どもはこのように考えておるわけでございますが、基金は長期にわたる年金の支払いをしなければならない仕掛けでございますので、踏み切ります前には相当慎重な検討も加えておかなければならない、このように考えております。  その検討を加えるべき点としては、私ども三点考えておりまして、地域型の基金の場合には、その基金をつくります母体というものが異業種間で果たして継続的に維持ができるかどうか、その点についてのチェックをどうしていくかということが一つ検討課題としてあろうかと思います。  二番目には、同種同業でございますとわりかし労働条件というのは粒がそろっておりまして、基金の上乗せ部分というのは退職金の移行型が基本的に多いわけでございますが、異業種間でございますと、こういう労働条件にかなりの違いがあるわけでございまして、退職金からの移行を踏まえた給付設計をします場合にうまく適応ができるのかどうか、そこらあたりも十分見きわめておく必要があろうかというのが二番目の問題であります。  三番目の問題点は、異業種間でございますと、賃金体系がかなり区々でございますので、掛金の算定基礎をどのようにとらえていくか、ここもひとつ慎重な検討をしておかなければいかぬ、こう思っております。  この三点につきまして検討を加えた上で、私どもこの問題についてはできるだけ前向きは取り組んで、中小企業へのこの基金制度の普及という課題にこたえ得るようにいたしたいと考えておる次第でございます。
  195. 塚田延充

    ○塚田委員 産むは案ずるよりやすし、または、信ずる者よ、なんじは幸いなれということで、異業種であれ何であれ、必ずこの基金をやりたいというからには、その団地の方はきっとうまく厚生省の要望にこたえてくれると思いますので、ぜひ前向きにお願いしたいと思います。  この基金の普及のために、もう一つの要件、いわゆる人数の要件でございますね。一企業として何百人とかこうありますけれども、そういうものについて、これは政令改正でやるのじゃないかと思いますけれども、この要件をいつ改正されようとしておるのか、お聞かせいただきたいと思います。
  196. 水田努

    水田政府委員 基金の設立人員規模というのは、御指摘のとおり政令で定められているわけでございまして、これは一応単独型の基金をつくります場合の基準でございまして、総合とか連合の場合にはさらに厚みを加えた形で、いわゆる行政の認可基準という形で慎重を期しているわけでございます。この単独型、現在政令上は七百人でございますが、慎重を期して八百人という行政上の運営方針をとっておるわけでございます。単独型の場合、私どもこれを五百人まで下げたい、このように思っておるわけでございますが、そのための条件整備として、今回の法律改正で事務費負担の軽減を図るための共同処理のシステム、それから支払い保証のシステム、こういう環境整備をして政令改正に踏み切るということで、政令改正の時期としましては、できるだけ六十四年度早々からこの緩和に踏み切れるように、私ども最大限の条件整備に取り組んでまいりたいと考えておる次第でございます。
  197. 塚田延充

    ○塚田委員 このたびの改正案がそのような小規模の基金でもうまく設立できる、また運営できるようにという条件整備を図っていることについて評価したいと思います。そして今局長からもお話がございましたように、そのための条件整備の一つとして、事務の共同処理をするのだ、これが今回の改正案の一つのポイントになっていると私は読んでおるわけでございますけれども、それではこのような連合会による共同処理によって事務コストがどのくらい具体的に軽減されるのか、システムを変えて連合会の方に共同処理させるのだと言ったって、実際やってみたら大して事務コストが下がらないというのじゃ無意味に近くなってしまうと思うのです。具体的な成算がどこにあるのか、御説明願います。
  198. 水田努

    水田政府委員 私ども、小規模の基金の共同処理の場としましては、基金が共同してつくった基金連合会の場において行うのが最も適当であると考え、そのための改正をお願いしているわけでございます。  具体的なコストの軽減のめどでございますが、私どもの一応の心づもりといたしましては、共同処理をすることによりまして、単独でつくって運営した場合に比べて共同処理による削減効果が六割程度上がるように持っていきたい、このように考えております。逆に申し上げますと、共同処理することによって、自前で単独でやる場合に比べまして四割の費用負担で済むという形まで徹底した形に持っていきたい、このように考えておる次第でございます。
  199. 塚田延充

    ○塚田委員 もう一つの条件整備でございます支払い保証制度をきちんとしなければいかぬというわけでございますけれども、この制度はいつごろをめどにきちんとされるのか、御説明いただきたいと思います。
  200. 水田努

    水田政府委員 この支払い保証制度は、国によっていろいろとやり方があるわけでございますが、私ども今回改正をお願いいたしておりますのは、いわゆる基金相互間の共同事業としての連合会の事業としてやるという形で形づくっておりまして、この共同事業に参加するのはあくまでも基金の自発的意思によるということで法律上強制措置をとっておりません。したがいまして、この制度の趣旨を十分各個別の基金にPRをし、参加について御協力を得るためにはある程度の時間を要する、このように考えているわけでございまして、私どもひとつ六十四年度早々にスタートできるように、法律が成立いたしましたら早速にPRをいたしまして、各基金の御協力、参加を呼びかけてまいりたい、このように思っておる次第でございます。
  201. 塚田延充

    ○塚田委員 この支払い保証事業は、解散した加入員の給付を確保するため、その支払いを保証するわけでございますけれども制度の目的そのものはいいのですけれども、この事業をやることによって、逆に各基金そのものが新たに過重な負担を負わされてしまう結果になりやしないか、その辺心配されるところでございます。もしそのような心配が強くなってくると、それを危惧して基金の普及そのものが逆目に出てしまうということが考えられるわけですけれども、その辺いかがお考えでしょう。
  202. 水田努

    水田政府委員 御指摘のとおりの問題を抱えているわけでございまして、しかもこの制度自主参加ということになっておりますので、この事業をやりますための参加基金の拠出金を非常に過大なものにしますと、この事業自体が成り立たないということに相なってまいるわけでございます。この事業をやりますための各基金の拠出金というのは、一応倒産を見込む、いわゆる基金の解散の発生率、それから支払い保証をしますところの金額をどの程度と見込むかということと非常に関連してまいるわけでございますが、私どもは一応支払い保証をすべきプラスアルファ部分というのは、基金を設立いたします場合の最低基準として、代行部分の三割増しがあることということを認可の最低条件としておりますので、支払い保証すべき一応の最低のメルクマールとしては三割増しということを目標に置いておるわけでございますが、私どもの試算をいたしましたところによりますと、一応加入員一人当たり年間平均百円程度でおさまるのではないかと見ているわけでございます。
  203. 塚田延充

    ○塚田委員 今回の法改正では脱退一時金を通算するという形になるわけでございますけれども、このことは一時金を連合会に委嘱、移換するといいましょうか、これと同じ効果をもたらすことになると思います。そうなりますと、中途で脱退したいんだという人があった場合、その一時金のニーズを無視することになってしまうと思います。このように一時金を受給希望する者に対して、年金でもってやっていった方がいいと希望される方は今度の法改正どおりでいいけれども、今まで同様一時金で欲しいのだという中途脱退者に対しては、今まで同様一時金として支給すべきであると私は考えますけれども、この件について御配慮いただけないでしょうか。
  204. 水田努

    水田政府委員 私どもの今回の短期脱退者に係りますところの通算措置の改善は、先生の御指摘の線に沿って改正をいたしておるつもりでございます。具体的に申し上げますと、この通算制度を設けました二十年前は、この事務を行います基金連合会の事務能力からいって、代行部分のみの通算措置しかできないという扱いになっておりまして、プラスアルファ部分についても年金化してほしいという方について、その道が全くなかったわけでございますが、そういう希望を持っておられる方に代行部分と同じくプラスアルファ部分についても通算できるという道を開くというのが今回の改正の趣旨でございまして、内容的には先生の御指摘のとおりになっているところでございます。
  205. 塚田延充

    ○塚田委員 それを聞いて安心いたしました。  それでは次に、今度の法改正に基づく百三十二条第三項によって、年金給付に新たに老齢厚生年金の二・七倍という努力目標を設定したわけでございます。この二・七倍という数字の根拠がいかなるところから出ているのか、この辺のことについて具体的に御説明いただきたいと思います。
  206. 水田努

    水田政府委員 この二・七倍という数字は、退職前の所得の六割程度の水準にいわゆる国から支給される年金と基金から支給される年金を合算して到達できるという水準に持っていきたいということで設定したのがこの二・七倍という水準でございまして、この二・七倍の水準まで、その水準に達するまでの年金積立金については、今回の法律の附則で法人税法の上においても非課税措置をとる、こういうことにいたしておるわけでございます。  具体的な数字で申し上げますと、勤続二十年以上、男子の方のボーナス込みの退職前所得というものは年間約五百五十万、一月当たりで見ますと四十五万七千円でございます。その六割というのは二十七万四千円でございます。この二十七万四千円を基礎年金で十万四千円、それから代行部分のスライド部分というのは国から支給するようになっておりますが、これが三万一千円、それから国にかわって基金が支払いますところの代行部分は五万円、それにプラスアルファ部分が八万九千円。以上が平均的に見た厚生年金の加入者の場合の具体的に六割で満たされる金額ということに相なります。
  207. 塚田延充

    ○塚田委員 この条項が努力目標として設定されたこと自体はいいとしても、最終的には、やはり法律として決められたものということになると、努力目標というのがひとり歩きする、もしくはお役所側の行政指導などによって、これ自体がもう強制規定のような形になってしまって、各基金がふうふう言うといいましょうか、問題が生じることがあり得はしないか。その辺のことについて歯どめと申しましょうか、実際の運営についての厚生省としての留意点について決意をお聞かせいただきたいと思います。
  208. 水田努

    水田政府委員 この努力目標の水準というのは、基金を魅力あるものにするために、一つの労使で到達していくべき努力、あくまでも努力目標として設定したわけでございまして、これを法律上もそれからまた行政指導上も強制するものではございません。あくまでも、先生指摘のとおり、基金をつくりますところの企業の労使のいわゆる労働条件として、合意に基づいて給付の改善を図っていくべき内容のものであるというふうに考えております。
  209. 塚田延充

    ○塚田委員 厚生年金基金がこれからの長寿社会に果たしていく役割について、先ほど私それを評価するというふうに申し上げたわけでございますが、今後ともこの制度のより充実発展のために厚生省としても努力をさらに続けていただきたいと思います。  これにつきまして、最後大臣から、この制度の充実について御決意のほど伺わせていただき、質問を終わりたいと思います。
  210. 藤本孝雄

    藤本国務大臣 厚生年金基金の育成、普及の問題は、厚生年金の充実にとりまして重要な課題であると考えております。今回の改正は、企業年金の育成、普及を図ることを盛り込みました長寿社会対策大綱、これの決定に沿ったものでございます。具体的には基金制度を魅力のあるものとする、また中小企業への普及を図るためにかなり思い切った内容を盛り込んでおります。改正法案が成立いたしますれば、今後基金の育成、普及に対しまして、全力を挙げて取り組んでまいる所存でございます。
  211. 塚田延充

    ○塚田委員 終わります。
  212. 畑英次郎

    ○畑委員長 代理 児玉健次君。
  213. 児玉健次

    ○児玉委員 最初大臣にお伺いをしたいのですが、厚生省昭和六十年の十月、戦後初めて原爆死没者に関する調査を実施されました。その目的と動機、そして調査をなさった後約二年半経過したのですが、いつまでにどのような形式で発表されようとなさっているのか、その点をお伺いいたします。
  214. 北川定謙

    ○北川政府委員 御説明をさせていただきたいと思います。  原爆による死没者の数につきましての政府の推計というものは、これまで技術的にも非常に困難であったということで行われていませんでしたが、戦後四十年を経過して、後世のために被災の実態を資料として残す、こういう趣旨のために今回死没者調査を行ったわけでございます。  その取りまとめにつきましては、従来これは広島、長崎両県市が行っております既存のいろいろな死没者に関する資料があるわけでございますが、こういうものと照合をするというような作業がございまして、最終的な取りまとめは六十三年度いっぱいかかるという見込みでございます。
  215. 児玉健次

    ○児玉委員 原爆死没者に関する調査について、これは何人の回答ということが、亡くなった方だからできませんので、この調査についての回答カード数は何枚になっておりましょうか。
  216. 北川定謙

    ○北川政府委員 現在調査票を送付した対象は約三十六万名でございますけれども、死没者調査について回答があった枚数は二十八万六千八十七枚ということでございます。
  217. 児玉健次

    ○児玉委員 生存者調査についての回答数が三十一万三千四百九十九人、そして死没者調査に関する回答カードは二十八万六千八十七枚、被爆者の大変な協力がこれにはあったと思うのです。そして被爆者の家族の皆さんももちろんですが、こういった被爆を繰り返させたくない、こういう決意も今の数からうかがえるように私は思います。  そこで、先ほどから何回か同僚の委員皆さんから御質問がありましたが、生存者調査の末尾のところに「自由記載欄」というのがございまして、そこには二つの設問がされています。特に第一問、「原爆によってお亡くなりになったあなたの家族の思い出で印象深く残っていることがありましたらお書きください。(例えば原爆でお亡くなりになった時の状況等)」こう書いてございます。先ほどの御答弁の中で、この「自由記載欄」に対する記入は七万ないし八万件だ、そのように厚生省はお答えになりましたが、特に今の設問一についてどのように集約して公表されるのか、ぜひ公表を私はお願いしたいと思うのですが、その点についてお答えください。
  218. 北川定謙

    ○北川政府委員 先ほども御答弁申し上げたわけでございますが、何分にも量の多い回答でございますので、今の回答につきましてどのようにまとめるかは、現在関係者の間でいろいろ知恵を絞っているところでございますので、もう少しの猶予をいただきたい、このように思っております。
  219. 児玉健次

    ○児玉委員 先ほど局長の御答弁は、私お聞きしておりまして、設問二についてはなるほどと思ってお聞きしておりました。自由に記載された例の中で、すなわち設問二は、「このほか、被爆者の立場から、ご意見がありましたらお書きください。」それは先ほどの局長の御答弁のような形でいろいろ困難は伴うだろうけれども、恐らく幾つかに整理し、集計することは可能だと思うのです。一問については、先ほどの御答弁のようなぐあいにはなかなかいかないと思うので、ここのところについての集計は大変な御苦労だと思いますが、せっかく七、八万件の回答があるのですから、それを公表することについて最大限の御努力をいただきたいと思うのですが、いかがでしょうか。
  220. 北川定謙

    ○北川政府委員 広島、長崎、現地の関係者とも十分相談をしながら、どういう形に取りまとめることが最も適切であるか、十分考えてまいりたい、このように思います。
  221. 児玉健次

    ○児玉委員 厚生省がこの調査をなさったのは昭和六十年の十月のことでございます。日本被爆者団体協議会が昭和六十年の十一月から六十一年の三月にかけて、生存者の調査と死没者の調査を実施しております。さきに発表されました厚生省の生存者の報告、それと被団協のなさいました生存者調査についての集計、両方読ましていただいたのです。それぞれの調査に大きな観点の違いがございますが、結果を照合してみると、被団協の調査の客観性を厚生省調査が実証している部分が随分たくさんあるように私は拝見いたしました。  そこで、被団協の死没者調査についてですが、ここでは一万二千七百二十六人の死没者について相当細かな分析が行われております。  私がまず一つ指摘しておきたいことは、昭和二十年内の死者のことです。調査によれば五千六百九十六人、そのうち広島と長崎で原爆が投下されたその日のうちに亡くなられた方が二千七百九十七人、この調査でつかまれています。四九%に当たります。それを分析してみますと、当日死と被団協では言っておりますが、女性が千三百六十七名、当日死全体の比率の中で男性四八%、女性五二%。それから年齢別に見ていきますと、当日死の中で九歳以下が一九・三%、十歳から十九歳が二七・三%、合わせると四六・六%です。大臣、実は私、この広島に原子爆弾が投下されたとき、現在の爆心地の近くにあります中島国民学校の六年生でした。集団疎開をしたおかげで私は生きてこうやって質問することができます。十歳から十九歳の死亡が当日死の中で二七・三%。私はもしあのとき私が疎開していなかったらという感じでどうしても読み取らざるを得ません。女性の死亡の多さと年少の子供の死亡の多さ。そしてもう一つは、当日死の中で家族にみとられながら亡くなった方はわずか百七人、四・一%にすぎません。だれからもみとられることなく行方不明で亡くなった方が千三十三人、三九・七%に及びます。その中で十歳代だけを取り出せば五四・七%です。ほとんどの子供が親にみとられることなく、いまだ遺骨、遺体が確認されることなく行方不明になっているのです。こういう原爆死の一つの姿について、厚生省はどのように受けとめていらっしゃるでしょうか。
  222. 北川定謙

    ○北川政府委員 委員指摘のように、原子爆弾という重大な事件によって一度に大量の方が亡くなられた、そのような事実については心から冥福を祈りたいという気持ちでやっておるわけでございます。
  223. 児玉健次

    ○児玉委員 当日死については、先ほど御紹介いたしましたが、昭和二十年内の死亡、日本被団協は直後死という呼び方をしておりますが、それを見てみますと、当日死の死亡状況の一位は圧焼死と爆死です。一週間以内になりますと、死亡状況の第一位は大やけどです。二週間以内になりますと、やはり大やけどですよ。八月末になりますと、大やけどにかわって原爆症が浮かび上がってきます。そして九―十二月は原爆症です。最初はやけどと圧焼死、やや時間を置いて放射能による急性放射能の障害で死に至る方がむしろ最前面に出てくる、ここに原爆被爆の重要な特徴があるだろうと私は思います。  そして、直後死の中で、八月以降になりますと、死亡者のかなりの方々は家族にみとられて亡くなっております。そのとき、家族の側からすれば、自分の最も愛する身内が次々に原爆症で死んでいく、次は自分の番ではないだろうかという死の恐怖に襲われる、これが原爆の被害を考えるときの重要な特徴だと私は思うのです。  もう一つは、昭和二十一年以後の死亡についてでございます。被爆時九歳以下であった死亡者はこれまで二百八十九名、その全員が五十歳を迎えることなく亡くなっています。それからがんの発病についてですが、被爆時二十歳代、三十歳代だった方が最もがんに襲われている。ここからおくれてくる原爆死ががんであり、総体的に被爆者の中で若い方々が早過ぎる死を迎えている。こういった特徴について厚生省はどのように御理解なさっているでしょうか。     〔畑委員長代理退席、委員長着席〕
  224. 北川定謙

    ○北川政府委員 人間の死はいろいろな姿を持っいるわけでございますが、特に戦争によって亡くなられた方の状況というのは大変に悲惨なものがあるわけでございます。そういう中で、この原爆被爆者の場合に一番特徴的なのは、今委員が御指摘のように、放射線の障害ということによって起こるがんあるいは造血臓器の障害等によって非常に慢性の経過をたどって亡くなられた、これが原爆の非常に重要な特徴である。そういう点に着目いたしまして、厚生省といたしましては、いわゆる原爆二法というものをもってこれらの被爆者の方々に対しての健康上からの対策を従来とってまいったわけでございます。
  225. 児玉健次

    ○児玉委員 では、ただいまのお答えとかみ合わせてさらに御質問したいのですが、今お話のありました原爆医療法が制定されたのは昭和三十二年のことでございました。被団協が今度把握された一万二千七百二十六名のとうとい犠牲者の中で、昭和三十二年前に亡くなった方が七千三百八十八人、これは死没者調査対象の五八%になります。それから今お答えの原爆特別措置法が制定されたのは昭和四十三年です。その前に亡くなられた方は、先ほど挙げた数字との累計になりますが、八千八百三十七名、六九・四%になります。こういう方々に対して国は報いることがあったでしょうか。
  226. 北川定謙

    ○北川政府委員 亡くなられた方に対しましては大変お気の毒なことであるわけでございますけれども厚生省といたしましては、他の一般の戦災者との対比において、生存をされて不安の中に生きておられるあるいは病気と闘っておられるという状況に着目しながら対策をとってきたわけでございます。
  227. 児玉健次

    ○児玉委員 これもそれぞれの委員から繰り返しきょうの審議の中で提起されたことですが、以上の短い時間の審議の中からも原爆の被害というものの特殊性が浮かび上がってきていると思うのです。そういう原爆の被害に対して、少なくとも原爆死没者、遺族に対して弔慰金、遺族年金支給することが国としてなすべきことではないか、私はそう思います。この点についてお答えいただきたいと思います。
  228. 北川定謙

    ○北川政府委員 広島、長崎における原爆投下が非常に世界でも類のない惨禍をもたらした、これは先生るる御説明されておるとおりであります。また被爆者と御遺族の方々の御労苦には頭が下がるものがあるわけでございます。  しかしながら、原爆被爆者対策につきましては、先ほど来申し上げておるとおり、放射線障害という他の戦争犠牲者には見られない特別の犠牲という点に着目いたしまして、その被害の実態に即した形で進められるべきであるということでございまして、こういった特別の事情にない死亡者とか遺族に対しての弔慰金あるいは年金支給するということは、一般の戦災者との均衡上問題があるということでございまして、厚生省といたしましては、今後とも現行の原爆二法を中心とする施策の充実に努めてまいりたい、このように考えておるわけでございます。
  229. 児玉健次

    ○児玉委員 その御答弁を伺いながら、私は原爆被爆者対策基本問題懇談会の意見を重ねざるを得ないのです。オーバーラップさせざるを得ません。この基本懇の意見の中で私は次の部分に着目します。「その無警告の無差別的奇襲攻撃」、そのことを述べた上で「前代未聞の熱線、爆風及び放射線が瞬時にして、広範な地域にわたり」云々、そして「人間の想像を絶した地獄を現出した。」その後のくだりでは、放射能の被害がどのようにじりじりと被爆者をとらえているか、白血病、甲状腺がん等の晩発障害、このことについても触れられております。このように述べられていくと、論理の必然として意見書自身が「一般の戦災による被害と比べ、際立った特殊性をもった被害であると言うことができる。」こう言い切っているわけですから、そうなると、極立った特殊性に対する国の責任のとり方、それは基本懇の打ち出している受忍義務なる概念とは違ったものが浮かび上がってくる、そのようにお考えにならないでしょうか。
  230. 北川定謙

    ○北川政府委員 この原爆被爆者の問題につきましては、いろいろな立場から御意見があるわけでございますが、私どもといたしましては、戦争による一般の犠牲というものとの対比、そういう物の考え方をベースに置きながら原爆被爆による放射線障害、こういう健康障害の特別な状態、こういう点に着目をして施策を進めていくことが国民全般の健康を考えるという立場から適切であると考えておるところでございます。
  231. 児玉健次

    ○児玉委員 無差別の大量の殺害、ジェノサイドですね、それが今どのくらい人類全体に対する犯罪になっているか、そのように見られているか、私これは多くのことを述べる必要がないと思います。先ほどの主張を繰り返しませんが、この点について厚生省として真剣な御検討をお願いしたいということを私は強く述べ、かつ、先ほどちょっと指摘しました、昭和三十二年原爆医療についての法の制定前における死亡ないしは特別措置法制定前の死者、そういう方々に対する特段の配慮が求められている、この点を強く強調して、次の御質問に入りたいと思います。  それは、厚生省の今回既に発表された被爆者実態調査でございますが、これを拝見しておりますと、被爆者が苦労、心配されていることの第一位が自分の健康とお答えになっております。七四・四%に上ります。そこで厚生省昭和六十三年度予算でがん検診の実施についてさらに一歩踏み出されました。これは多くの被爆者から喜ばれております。私はそのことを率直に申し述べたいと思います。  先日、日本被害者団体協議会からいただいた昨年十一月の大きな行動の文書の中で、「厚生大臣藤本孝雄殿」という要請書の冒頭のところに「新規事業のがん検診実施など施策の改善方針を打ち出され、これを推進してくださっていることに深く感謝申し上げます。」こう大臣に対して被爆者の方方は申されております。私は、大変な御努力があったことだ、そう思います。  そこで、述べたいのですが、五つのがんについて今度検診をなさる。先ほどの昭和五十五年の基本懇でも、晩発障害として甲状腺がんのことが述べられています。再生不良性貧血がどのくらい被爆者をとらえているか。これはよく御存じのことです。そして昨年長崎で開かれた第二十八回原子爆弾後障害研究会、そこで長崎大学の貞森直樹先生が皮膚がんが被爆者をおくれてとらえる。同様の研究結果を広島放影研の山田美智子先生も発表されております。貞森先生のコメントをそのまま言いますと、皮膚がんは放射線に対する感受性が鈍いためか今になってピークが訪れてきているようだ、こういうふうに述べられております。  私は、甲状腺がん、再生不良性貧血、皮膚がん、こういった悪性腫瘍ないしはそれに類似する部分について一歩進めて検診に取り組んでいただきたい、このように熱望するものですが、いかがでしょうか。
  232. 北川定謙

    ○北川政府委員 被爆者の健康問題、健康の確保ということにつきまして、私どもも最大の配慮をしていきたい、このように考えていろいろな施策を進めているわけでございます。委員指摘のように、特に六十三年度からはがんの検診の仕事を始めるわけでございますが、このがんの検診もなかなか技術的に困難な点も多々あるわけでございまして、こういうものを克服しながら、レベルの高い水準に持っていく、これは今後とも努力を続けてまいりたいわけでございます。  ただいま委員が御指摘になられました甲状腺がんあるいは白血病あるいは皮膚がんでございますが、これらについてどう考えるかという問題があるわけでございますけれども、現在一般の被爆者健康診断におきまして、血液の検査あるいは医師の診察、これは視診とか触診とかいう行為があるわけでございますが、ただいま申し上げた三つの種類のものは、このような検査をすることによってかなり見つけ出すことができると私どもは考えているわけでございまして、そういう点について十分に医師の注意を喚起する、こういうことをやっていけば、当面はいいのではないか、このように考えておるわけでございます。
  233. 児玉健次

    ○児玉委員 先ほど来の審議の中でスクリーニングの問題が提起されておりました。ただいまの厚生省のお答えは、もしかしたらそれをも幾らか念頭にお入れになったかと思うのですが、ある程度集団的な検診、そういう性格がございます。がんの検診の中で集団検診ということについての技術的な困難が私はこの後さらにさらにクリアされていくだろうと思います。  それと、例えば血液中の総コレステロールの量の検査、心電図、こういったものについて厚生省として前進的な検討をお願いしたいと私は思うのですが、いかがでしょうか。
  234. 北川定謙

    ○北川政府委員 委員ただいま御指摘なされた検査につきましては、一般検診ではやっておりませんけれども、一般検診である程度問題がありということで精密検査に回る場合には、それらの検査ができることになっておるわけでございます。
  235. 児玉健次

    ○児玉委員 では、その点は引き続いての御努力をお願いします。  被爆者の悪性腫瘍、がんに対する特別な恐怖感、もし病院に行って腫瘍腫湯が見つかったらそれで終わりになるのじゃないかという気持ち、そういう方々に対して悪性腫瘍の早期発見の重要性、ともかく早く検査して、初期のうちに今日の進んだ医学で措置すれば回復することが十分に可能だ、こういう点についての啓蒙、宣伝。先ほど私は自分のことを申しましたが、実は私の妻は被爆者でございます。そして被爆者手帳をいただいて、札幌市から年に何回か直接の郵便をいただいております。ダイレクトメールです。その中に、今度せっかく厚生省がお始めになったがんの検診について啓蒙、宣伝の特別な手だてをやっていただければ、自治体も喜ぶし、厚生省としても、言ってみればこの措置の実効を進めるために非常に有効だと思うのですが、この点いかがでしょうか。
  236. 北川定謙

    ○北川政府委員 がんの問題、特に胃がん、子宮がん等は日本で非常に多い種類のがんでございまして、原爆被爆者の問題とは別に、厚生省といたしましては、老人保健法に基づきましていろいろ健康診断等の対策を進めておるわけでございますが、そういうものの中でも保健所、市町村を通していろいろな形でがんの早期発見、早期治療ということが有効であるということをPRしておるわけでございます。これは関係の各都道府県が実際には現場となってやっておるわけでございまして、厚生省といたしましては、そういうものな基本的に推進するということを全般的にやっておりますので、そういう中で被爆者の方々も当然理解していただけるものと考えておるわけでございます。
  237. 児玉健次

    ○児玉委員 健康管理手当のことですが、昨年八月に斎藤前厚生大臣が長崎で記書会見をなさいましたときに、再申請の手続が大変煩瑣である、面倒だ、思い切った簡素化について検討は大詰めに入っている、そういう趣旨のことをお述べになっておりますが、今どこまで検討が進んでいるか、どの方向で簡素化されようとしているのか、お伺いします。
  238. 北川定謙

    ○北川政府委員 健康管理手当は一定の疾病にかかっておる被爆者に対して支給をされておるわけでございまして、疾病にかかっている状態を定期的に確認するということは、どうしても手当の趣旨からして必要なわけであります。単に高齢であるという理由だけで支給の期間を撤廃するというようなことがなかなか難しい状況にあることは、委員も御理解いただけるものと思います。  現在、その支給期間をどのように考えていくかということにつきましては、関係の専門家に今検討をお願いしている段階でございますので、もうしばらくその結果を待つまで時間をちょうだいしたい、このように思うものでございます。
  239. 児玉健次

    ○児玉委員 この問題について、最後にこれは大臣からお答えをいただきたいのですが、厚生省の生存者調査に対して三十万人を超える方々から回答があった、死没者調査についても二十八万六千を超える回答カードがあった。本当にこれはこの種の大規模なセンサスとしては回答率からいっても非常にすばらしいものだと思うのです。  その結果は、日本国民共有の財産になるべきものではないかと私は思います。これを総合的に解析して、原爆被爆白書を作成される。世界のただ一つの被爆国としてこれを内外に公表していく。この点について、藤本厚生大臣は、先ほど集大成して取り組むという点についての積極的なお答えがありましたが、内外に原爆被害白書を公表していく、この点についてどうでしょうかという点が一つ。  それからもう一つは、担当大臣として、きょう私がさまざまに御質問をしたことを含めて、この後のこの分野の取り組みについての御決意のほどをお伺いしたいと思います。
  240. 藤本孝雄

    藤本国務大臣 原爆被爆者対策につきましては、厚生省にとりまして重要な課題の一つでございまして、昭和六十三年度におきましてもがん検診の実施をいたしたところでございます。斎藤前大臣を初め歴代厚生大臣の御努力を踏まえながら、私といたしましても十分に対処してまいりたいと思っております。  最初の御質問でございますが、厚生省が六十年に調査をいたしました生存者、また死没者の調査につきまして御指摘がございました。また現在、広島、長崎両市におきましても、死没者調査、収集中の各種被災資料の取りまとめを行われておるわけでございまして、この取りまとめがまとまりますれば、被爆者の現状、被害の状況が一層明らかになってくるわけでございます。これらの資料はいずれも広島や長崎の原爆被爆の実態を伝える貴重なものであるわけでございますので、私といたしましても、今後このような資料を、被爆国の日本といたしましては、かかる悲惨な問題が二度と再び起こらないためにも十分に保存し、また公表していくことは大きな役割であろうかと思っておるわけでございまして、前斎藤厚生大臣がお答えいたしました線をさらに進めて、積極的に取り組んでまいる、そういう所存でございます。
  241. 児玉健次

    ○児玉委員 それでは残されている時間で厚生年金保険法改正案について御質問したいと思います。  現在、厚生年金基金の加入者は約七百四十万人、基金に加入できない中小企業で働く労働者との格差の問題がこの後どうなっていくのかという問題、今回の改正でスライド制が導入されなかった理由はなぜか、まずそのことをお伺いいたします。
  242. 水田努

    水田政府委員 まず、スライド制を採用しなかった点からお答えを申し上げます。  厚生年金基金は、御案内のとおり企業を単位としまして労使による自助努力として、将来必要な給付は事前に積み立ててこれを賄うという財政方式をとっているわけでございまして、政府が行っております公的年金のように、自動スライド制を採用いたしますと、それに伴う追加費用が発生してまいりますが、こういう小さな保険集団においては、そういう追加費用を調達し賄うという財政方式をとることは困難なために、この制度を導入していないわけでございます。  それから最初の、この制度を設けている企業と設け得ない企業との格差はどういうふうに対応していくのかという御指摘でございますが、私どもできるだけ普及できるようなあらゆる努力を講じてまいるべきものと考えておりますが、企業年金としましては、私ども厚生年金基金以外に税制適格年金という大変つくりやすい制度もございますので、これが現在半々、厚生年金の加入者の半分が基金、半分がこの税制適格年金ということで、何らかの企業年金があるというのが約五割でございますが、私ども今回の改正を契機に、厚生年金基金四分の一のカバー率を五割まで上げていきたいと思っておりますが、この努力をする過程で税制適格年金の方にもいい相乗効果を及ぼして、相当程度の企業に何らかの形で公的年金をカバーするところの企業年金というものの普及を図ることができるのではないか、このように考えておる次第でございます。
  243. 児玉健次

    ○児玉委員 今のお答えとも関連しますが、住友商事の企業年金は、当初物価スライドでしたが、昭和五十五年からベア率の二分の一スライドに切りかえております。完全事前積み立てを建前とする基金、それが物価スライド方式をとるというのは現実的に相当な困難を伴う。その道でなく、厚生年金等公的年金の充実が今最も必要ではないか、こう考えるのですが、御見解を承ります。
  244. 水田努

    水田政府委員 公的年金を充実するということも必要な道であろうかと思いますが、あわせて、これからは長期化しますところの老後生活をより豊かに安定的に過ごしていくためには、やはり企業年金の普及も大事であろうか思っております。  なお、企業年金の方においては、自動スライドという公的年金のような追加費用を伴う仕掛けはとれませんが、現在厚生年金基金の場合は、予定利率五・五%で財政の計算をいたしておりますが、現実の運用は九%近い利差益を生じておりますので、その利差益をできるだけ事後的に給付の改善に振り向けさせることによって、実質的には給付の内容の実質価値の維持というものが私どもできるというふうに考えておりますので、必ずしも自動スライドをとらなくても、それにかわる代替措置というものはとれるものである、このように考えておる次第でございます。
  245. 児玉健次

    ○児玉委員 厚生年金などにおいて公的年金の充実、その必要性、重要性を私は再度強調しておきたい。  そこで、年金積立金運用について一言御質問をして終わりたいと思います。  郵政省の簡易生命保険及郵便年金特別会計、これの運用に関連しまして、昨年十一月会計検査院が、円高・ドル安で三千億の為替差損を生んだ、会計検査院はその金額も明示して注意を促す異例の措置をとりました。厚生省は以前からこの年金積立金の安全かつ有利な運用ということを盛んに強調されておりますが、一つは、この郵政省関連の問題についての会計検査院の指摘をどのように受けとめていらっしゃるかという問題と、そしてもう一つは、前車の轍を踏んではならぬということがありますが、特にアメリカ国債の引き受け、それはアメリカの軍事予算を支えるだけでなく、今日の特殊な国際的な為替状況からすれば非常にリスクを伴うものですから、二重、三重に年金加入者の利益を損なうものではないか、この点についてのお考えを承って終わりたいと思います。
  246. 水田努

    水田政府委員 お答えします。  郵政省がいわゆる為替差損を生じたということは、私ども十分承知しておりますが、私ども自主運用というのは、幸い相当程度円高になった時点からスタートをいたしております。  先生指摘のとおり、安全かつ確実な運用をしなければならないというのはもう基本でございまして、そのために高度の運用能力を持つ専門機関、生保、信託、投資顧問、この三種類の機関に、しかも多数の金融機関に分散しまして運営の委託をいたしておりまして、六十二年度の実績を見ましても、私ども預託金利に比べまして一%から一・五%上回る有利運用事業団はいたしているわけでございまして、私どもはその点は大丈夫であるというふうに確信をいたしているところでございます。  次に、アメリカ債を買うかどうかという問題でございますが、事業団の自家運用分につきましては、やはり一応円高ということにはなっておりますが、為替ヘッジをする等の高度の運用テクニックを要しますので、外債を買うことは当面手控えております。  なお、生保、信託に委託しております分につきましては、どういう運用をするかは個別の指図をしないシステムになっておりますので、それがどのような運用がなされているかは残念ながら私ども承知をいたしていないところでございます。
  247. 児玉健次

    ○児玉委員 では、この点についての懸念は依然残るということを表明して、終わります。     ─────────────
  248. 稲垣実男

    稲垣委員長 この際、お諮りいたします。  ただいま審査中の原子爆弾被爆者等援護法案につきまして、提出者全員より撤回の申し出があります。これを許可するに御異議ありませんか。     〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
  249. 稲垣実男

    稲垣委員長 御異議なしと認めます。よって、そのように決しました。  以上で各案に対する質疑は終局いたしました。    ─────────────
  250. 稲垣実男

    稲垣委員長 この際、児童扶養手当法等の一部を改正する法律案原子爆弾被爆者に対する特別措置に関する法律の一部を改正する法律案戦傷病者戦没者遺族等援護法及び戦没者父母等に対する特別給付金支給法の一部を改正する法律案に対して、野呂昭彦君及び児玉健次君から、それぞれ修正案が提出されております。  提出者から順次趣旨の説明を求めます。野呂昭彦君。     ─────────────  児童扶養手当法等の一部を改正する法律案に対する修正案  原子爆弾被爆者に対する特別措置に関する法律の一部を改正する法律案に対する修正案  戦傷病者戦没者遺族等援護法及び戦没者父母等に対する特別給付金支給法の一部を改正する法律案に対する修正案     〔本号末尾に掲載〕     ─────────────
  251. 野呂昭彦

    ○野呂委員 ただいま議題となりました児童扶養手当法等の一部を改正する法律案原子爆弾被爆者に対する特別措置に関する法律の一部を改正する法律案及び戦傷病者戦没者遺族等援護法及び戦没者父母等に対する特別給付金支給法の一部を改正する法律案に対する修正案について、自由民主党を代表いたしまして、その趣旨を御説明申し上げます。  修正の要旨は、各案において「昭和六十三年四月一日」となっている施行期日を「公布の日」に改め、昭和六十三年四月一日から適用することであります。  何とぞ委員各位の御賛同をお願いいたします。
  252. 稲垣実男

    稲垣委員長 児玉健次君。     ─────────────  原子爆弾被爆者に対する特別措置に関する法律の一部を改正する法律案に対する修正案     〔本号末尾に掲載〕     ─────────────
  253. 児玉健次

    ○児玉委員 私は、ただいま議題となりました原子爆弾被爆者に対する特別措置に関する法律の一部を改正する法律案に対する修正案につきまして、日本共産党・革新共同を代表して、その趣旨を御説明申し上げます。  昨年、米ソの間でINF全廃条約が調印され、核兵器廃絶に向けて世界が大きな動きを開始しました。緊急かつ死活の課題である核兵器の廃絶を訴える広島、長崎からのアピール署名は世界百五十カ国にその取り組みが拡大され、国内の署名数も既に二千八百万人を超えています。  世界唯一の被爆国として、原爆被害の実情を訴え、核兵器を廃絶するため努力することが求められています。  再び被爆者をつくるなと訴え続けてきた原爆被爆者が高齢化し、援護の強化はますます緊急の課題となっておりますが、被爆者に対するいわゆる原爆二法では、被爆者年金支給、被爆者に対する弔慰、遺族に対する援護の制度を欠くなど被害者に対する対策は極めて不十分であります。  被爆者は、国家補償に基づく原爆被爆者援護法の制定と、核戦争阻止、核兵器廃絶が一日も早く実現することを願いつづけ、昨年十一月の被爆者による政府要請行動は大きな盛り上がりを示しました。  日本共産党・革新共同は、国家補償に基づく原爆被爆者援護法を直ちに制定することを任務の一つとする非核の政府の実現のために、広範な人々と協力して取り組みを進めているところであります。  被爆者の願い、日本国民と世界の人々の願いを法制化するために、政府提出法案を国家補償に基づく原子爆弾被爆者等援護法に名称、内容ともに変えるよう修正を御提案するものであります。  次に、その内容をごく簡単に申し上げます。  その第一は、健康診断、医療の給付及び一般疾病医療費を支給することとしております。  第二に、被爆者に対する月十万円以内の医療手当及び家族介護を含め介護手当の支給を定めております。  第三に、全被爆者に被爆者年金支給することとしております。その額は障害の程度に応じて定めることとし、スライド制をとることといたします。  第四に、死没者の遺族に対する弔慰金及び遺族年金にかわるものとして、死亡者一人につき百二十万円の特別給付金を支給します。  第五に、被爆者が死亡したとき葬祭料を支給することとしております。  このほか、被爆二世、三世に対する措置、被爆者の援護施設、被爆者の代表を加える被爆者等援護審議会の設置、日本に在留する外国人被爆者への本法の適用など、被爆者援護に必要な措置を定めております。  以上が修正案提案の理由及び内容でございます。  何とぞ慎重御審議の上、御賛同くださるよう心からお願い申し上げます。
  254. 稲垣実男

    稲垣委員長 以上で趣旨の説明は終わりました。  この際、児玉健次君提出の修正案について、国会法第五十七条の三の規定により、内閣の意見を聴取いたします。藤本厚生大臣
  255. 藤本孝雄

    藤本国務大臣 ただいまの修正案については、政府といたしましては、反対でございます。     ─────────────
  256. 稲垣実男

    稲垣委員長 これより各案及びただいま提出されました各修正案を一括して討論に付するのでありますが、その申し出がありませんので、直ちに採決に入ります。  児童扶養手当法等の一部を改正する法律案及びこれに対する修正案について採決いたします。  まず、野呂昭彦君提出の修正案について採決いたします。  本修正案に賛成の諸君の起立を求めます。     〔賛成者起立〕
  257. 稲垣実男

    稲垣委員長 起立総員。よって、野呂昭彦君提出の修正案は可決いたしました。  次に、ただいま可決いたしました修正部分を除いて、原案について採決いたします。  これに賛成の諸君の起立を求めます。     〔賛成者起立〕
  258. 稲垣実男

    稲垣委員長 起立総員。よって、本案は修正議決すべきものと決しました。  次に、原子爆弾被爆者に対する特別措置に関する法律の一部を改正する法律案及びこれに対する両修正案について採決いたします。  まず、児玉健次君提出の修正案について採決いたします。  本修正案に賛成の諸君の起立を求めます。     〔賛成者起立〕
  259. 稲垣実男

    稲垣委員長 起立少数。よって、児玉健次君提出の修正案は否決いたしました。  次に、野呂昭彦君提出の修正案について採決いたします。  本修正案に賛成の諸君の起立を求めます。     〔賛成者起立〕
  260. 稲垣実男

    稲垣委員長 起立総員。よって、野呂昭彦君提出の修正案は可決いたしました。  次に、ただいま可決いたしました修正部分を除いて、原案について採決いたします。  これに賛成の諸君の起立を求めます。     〔賛成者起立〕
  261. 稲垣実男

    稲垣委員長 起立総員。よって、本案は修正議決すべきものと決しました。     ─────────────
  262. 稲垣実男

    稲垣委員長 この際、本案に対し、畑英次郎君外四名から、自由民主党、日本社会党・護憲共同、公明党・国民会議、民社党・民主連合及び日本共産党・革新共同の五派共同提案に係る附帯決議を付すべしとの動議が提出されております。  提出者より趣旨の説明を求めます。池端清一君。
  263. 池端清一

    ○池端委員 私は、自由民主党、日本社会党・護憲共同、公明党・国民会議、民社党・民主連合及び日本共産党・革新共同を代表いたしまして、本動議について御説明申し上げます。  案文を朗読して説明にかえさせていただきます。     原子爆弾被爆者に対する特別措置に関する法律の一部を改正する法律案に対する附帯決議(案)   国家補償の精神に基づく原子爆弾被爆者等援護法の制定を求める声は、一層高まってきた。また、原爆被爆者対策基本問題懇談会の意見書も、被爆者の援護対策は、広い意味での国家補償の精神で行うべきであるとの立場をとっている。   政府は、原爆被害者が高齢化し、事態は緊急を要するものであるという認識に立ち、可及的速やかに現行法を検討して、次の諸点についてその実現に努めるべきである。  一 昭和六十年に行われた原爆被爆者実態調査のうち死没者等調査について、速やかに解析を行い調査の集大成を図ること。  二 被爆者の障害の実態を踏まえ、所得制限のあり方を見直すこと。  三 放射線影響研究所、広島大学原爆放射能医学研究所、科学技術庁放射線医学総合研究所など研究調査機関相互の連携を強化するとともに、研究体制を整備充実し、その成果を被爆者対策に活用するよう、遺憾なきを期すこと。 四 放射線影響研究所の運営の改善、移転対策を進めるとともに、被爆者の健康管理と治療に、より役立てるため、原爆病院、財団法人原爆障害対策協議会との一体的運営が行えるよう検討すること。 五 原爆病院の運営に当たっては、被爆者が必要とする医療を十分受けられるよう、施設、設備の充実を含め、万全の措置を講ずること。  六 被爆者に対する諸給付について、他制度との関連も検討し、生活保護の収入認定あり方を見直すこと。  七 原爆症の認定については、近時の科学的知見を踏まえつつ被爆者の実情に即応するよう、運営の改善を行うこと。  八 被爆者に対する家庭奉仕員制度及び相談業務の一層の強化を図ること。  九 被爆者とその子及び孫に対する影響についての調査、研究及びその対策について十分配意し、二世の健康診断については、継続して行うとともに、その置かれている立場を理解して一層充実を図ること。  十 健康管理手当の支給については、制度の趣旨を活かしつつ、被爆者の実情を踏まえた運営を行うこと。 以上であります。  何とぞ委員各位の御賛同をお願いいたします。
  264. 稲垣実男

    稲垣委員長 以上で趣旨の説明は終わりました。  採決いたします。  畑英次郎君外四名提出の動議に賛成の諸君の起立を求めます。     〔賛成者起立〕
  265. 稲垣実男

    稲垣委員長 起立総員。よって、本動議のとおり本案に附帯決議を付することに決しました。     ─────────────
  266. 稲垣実男

    稲垣委員長 次に、戦傷病者戦没者遺族等援護法及び戦没者父母等に対する特別給付金支給法の一部を改正する法律案及びこれに対する修正案について採決いたします。  まず、野呂昭彦君提出の修正案について採決いたします。  本修正案に賛成の諸君の起立を求めます。     〔賛成者起立〕
  267. 稲垣実男

    稲垣委員長 起立総員。よって、野呂昭彦君提出の修正案は可決いたしました。  次に、ただいま可決いたしました修正部分を除いて、原案について採決いたします。  これに賛成の諸君の起立を求めます。     〔賛成者起立〕
  268. 稲垣実男

    稲垣委員長 起立総員。よって、本案は修正議決すべきものと決しました。     ─────────────
  269. 稲垣実男

    稲垣委員長 この際、本案に対し、畑英次郎君外四名から、自由民主党、日本社会党・護憲共同、公明党・国民会議、民社党・民主連合及び日本共産党・革新共同の五派共同提案に係る附帯決議を付すべしとの動議が提出されております。  提出者より趣旨の説明を求めます。平石磨作太郎君。
  270. 平石磨作太郎

    ○平石委員 私は、自由民主党、日本社会党・護憲共同、公明党・国民会議、民社党・民主連合及び日本共産党・革新共同を代表いたしまして、本動議について御説明申し上げます。  案文を朗読して説明にかえさせていただきます。     戦傷病者戦没者遺族等援護法及び戦没者父母等に対する特別給付金支給法の一部を改正する法律案に対する附帯決議(案)   政府は、次の事項につき、格段の努力を払うべきである。  一 国民生活水準の向上等に見合って、今後とも援護の水準を引き上げ、公平な援護措置が行われるよう努めること。  二 第二次大戦末期における閣議決定に基づく国民義勇隊及び国民義勇戦闘隊の組織及び活動状況等について明確にするとともに、公平適切な措置をとり得るよう検討すること。  三 戦没者遺族等の高齢化が進んでいる現状にかんがみ、これら遺族の心情に十分に配慮し、海外旧戦域における遺骨収集、慰霊巡拝等については、更に積極的に推進すること。  四 生存未帰還者の調査については、引き続き関係方面との連絡を密にし、調査及び帰還の促進に万全を期すること。  五 訪日調査により肉親判明しなかった中国残留日本人孤児については、引き続き肉親調査に最大限の努力をするとともに、今後とも、日本人であることが判明した中国残留孤児については、すべて訪日調査対象とすること。    帰国孤児定着先における自立促進を図るため、関係省庁及び地方自治体が一体となって、広く国民協力を得ながら、日本教育、就職対策、住宅対策等の諸施策の総合的な実施に遺憾なきを期すること。  六 ガス障害者に対する救済措置は、公平に行うとともにその改善に努めること。  七 法律の内容について必要な広報等に努める等更にその周知徹底を図るとともに、相談体制の強化、裁定等の事務の迅速化に更に努めること。 以上であります。  何とぞ委員各位の御賛同をお願いいたします。
  271. 稲垣実男

    稲垣委員長 以上で趣旨の説明は終わりました。  採決いたします。  畑英次郎君外四名提出の動議に賛成の諸君の起立を求めます。     〔賛成者起立〕
  272. 稲垣実男

    稲垣委員長 起立総員。よって、本動議のとおり本案に附帯決議を付することに決しました。  この際、厚生大臣から発言を求められておりますので、これを許します。藤本厚生大臣
  273. 藤本孝雄

    藤本国務大臣 ただいま御決議になりました両法案に対する附帯決議につきましては、その御趣旨を十分尊重いたしまして、努力いたす所存であります。     ─────────────
  274. 稲垣実男

    稲垣委員長 お諮りいたします。  ただいま議決いたしました各案に関する委員会報告書の作成につきましては、委員長に御一任願いたいと存じますが、御異議ありませんか。     〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
  275. 稲垣実男

    稲垣委員長 御異議なしと認めます。よって、そのように決しました。     ─────────────     〔報告書は附録に掲載〕      ────◇─────
  276. 稲垣実男

    稲垣委員長 この際、内閣提出参議院送付社会福祉・医療事業団法の一部を改正する法律案を議題とし、趣旨の説明を聴取いたします。藤本厚生大臣。     ─────────────  社会福祉・医療事業団法の一部を改正する法律案     〔本号末尾に掲載〕     ─────────────
  277. 藤本孝雄

    藤本国務大臣 ただいま議題となりました社会福祉・医療事業団法の一部を改正する法律案について、その提案の理由及び内容の概要を御説明申し上げます。  今後、人口の急速な高齢化、家庭における介護能力の低下、年金制度の成熟等に伴い、福祉サービスに対する国民のニードは確実に増大、多様化するものと思われます。  こうした状況に的確に対応していくためには、公的福祉施策の一層の推進と相まって、民間の創意工夫を生かした多様なサービスを健全に育成する必要があります。  このため、良質の民間サービスに対する社会福祉・医療事業団による低利融資制度を創設することとし、この法律案提出することとした次第であります。  以下、この法律案の主な内容につきまして御説明申し上げます。  第一に、社会福祉・医療事業団が、社会福祉事業施設の設置等に必要な資金を貸し付ける対象者として、社会福祉法人のほかに政令で定める者を加えることとしております。  第二に、社会福祉・医療事業団が、身体上または精神上の障害があることにより日常生活を営むのに支障がある者の居宅において介護を行う事業その他政令で定める事業を行う者に対し、必要な資金を貸し付けることとしております。  なお、この法律の施行期日は、昭和六十三年十月一日としております。  以上がこの法律案の提案理由及びその内容の概要であります。  何とぞ慎重に御審議の上、速やかに御可決あらんことをお願い申し上げます。
  278. 稲垣実男

    稲垣委員長 以上で趣旨の説明は終わりました。  次回は、公報をもってお知らせすることとし、本日は、これにて散会いたします。     午後四時十七分散会