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1988-03-31 第112回国会 衆議院 社会労働委員会 第5号 公式Web版

  1. 会議録情報

    昭和六十三年三月三十一日(木曜日)     午前十時三分開議  出席委員    委員長 稲垣 実男君    理事 高橋 辰夫君 理事 丹羽 雄哉君    理事 野呂 昭彦君 理事 畑 英次郎君    理事 池端 清一君 理事 田中 慶秋君       相沢 英之君    粟屋 敏信君       伊吹 文明君    今井  勇君       小沢 辰男君    大野 功統君       片岡 武司君    木村 義雄君       近藤 鉄雄君    自見庄三郎君       高橋 一郎君    中山 成彬君       堀内 光雄君    箕輪  登君       持永 和見君    伊藤 忠治君       大原  亨君    川俣健二郎君       田邊  誠君    永井 孝信君      新井 彬之君    平石磨作太郎君       吉井 光照君    塚田 延充君       児玉 健次君    田中美智子君  出席国務大臣         厚 生 大 臣 藤本 孝雄君  出席政府委員         厚生大臣官房総         務審議官    黒木 武弘君         厚生大臣官房審         議官      川崎 幸雄君         厚生省健康政策         局長      仲村 英一君         厚生省保健医療         局長      北川 定謙君         厚生省保健医療         局老人保健部長 岸本 正裕君         厚生省生活衛生         局長      古川 武温君         厚生省社会局長 小林 功典君         厚生省保険局長 下村  健君         社会保険庁医療         保険部長    土井  豊君  委員外出席者         大蔵省主計局主         計官      水谷 英明君         大蔵省主計局主         計官      中島 義雄君         文部省体育局体         育課長     吉田  茂君         自治省財政局調         整室長     嶋津  昭君         社会労働委員会         調査室長    石川 正暉君     ───────────── 本日の会議に付した案件  参考人出頭要求に関する件  国民健康保険法の一部を改正する法律案内閣提出第一九号)      ────◇─────
  2. 稲垣実男

    稲垣委員長 これより会議を開きます。  国民健康保険法の一部を改正する法律案を議題といたします。  これより質疑に入ります。  質疑の申し出がありますので、順次これを許します。池端清一君。
  3. 池端清一

    池端委員 まず質問に入る前に、今回の公明党沼川先生家族皆さん方の不慮の災害に際しまして、まことに痛恨のきわみにたえません。心から哀悼の意を表しまして、御冥福をお祈り申し上げる次第でございます。  それでは質問に入ります。  御案内のように、我が国人口高齢化は諸外国に例を見ない速度で進行しております。六十五歳以上の人口は、十二年後の二〇〇〇年には二千百二十七万人、人口の一六・二%、二〇一〇年には二千七百三万人、一九・九%、約二〇%に達する、こういうことが予測をされているわけでございます。今後このような本格的な高齢化社会を迎えることになるわけでございますが、この高齢化社会に対応する社会保障について厚生大臣はどのような基本的な考えをお持ちでございますか、それについてまず最初にお伺いをしたいと思います。
  4. 藤本孝雄

    藤本国務大臣 池端先生の御質問にお答えする前に、先生からもお言葉がございましたが、公明党沼川先生の御家族の御不幸に対しまして、衷心より哀悼の意を表しますとともに、あわせて御冥福をお祈り申し上げたいと思います。  今具体的に数字を挙げられましてお話がございましたように、我が国高齢化は非常なスピードで、しかも世界で経験のない高齢化社会にこれから入っていくわけでございまして、そういう高齢化社会の中で国民皆様方が安心して生きがいを持って生活をしていただく、そういう社会をつくっていこうということが私どもの大きな目標であり、役割、使命であると思っております。  社会保障制度というものは、国民生活を安定さすための基盤となる制度でございますから、そういう超高齢化社会国民皆様方が安心して自分の老後を生活できるようにするためには、この社会保障制度というものが有効に機能するということが非常に大事なわけでございますので、私どもといたしましては、この社会保障制度が長期的に安定し、揺るぎのないものになるように、最大限の努力を払っていかなければならない、かように考えておる次第でございます。
  5. 池端清一

    池端委員 大臣はさきの所信表明で、「長寿社会財政負担の増大の面のみ強調した暗いイメージでとらえることなく、お年寄りの豊富な人生経験社会の財産であるとの認識を持って、国民の一人一人が明るく健康で生きがいを持って暮らせるような活力ある社会づくりに努めていかなければならない」こういうふうに述べられたわけでございますが、具体的にどのような活力ある社会づくりというものを構想されておるのか、その辺の御見解を承りたいと思います。
  6. 藤本孝雄

    藤本国務大臣 高齢化社会ということになりますと、まずお年寄りの数がふえる、したがって社会保障の費用がこれまでよりもたくさん必要になる。金の面が先行して、しかもその負担が若い人にとって耐えられるものであるか、こういう話になってまいります関係上、ややもすれば、お金の問題が先行して、暗いイメージがあるということでございますので、私は、高齢化社会というのは、そういう暗いイメージではなくて、人生経験豊富で健康で賢明なお年寄りがふえるということは、家庭にとっても、社会にとっても、国にとっても、これはすばらしいことなので、高齢化社会というのは、決してお年寄りが肩身の狭い思いをするような社会ではなくて、明るく生き生きとした社会、そういう社会だということを申し上げておるわけでございます。  そのための具体的な方策につきましては、やはりまず何よりも第一に健康でなければならぬわけでございますので、ヘルス事業、予防、健診、そういう事業にも力を入れていきますし、健康づくりにつきましては、六十三年度から十年計画、今までの十年計画の上に延長いたしまして、健康増進のための十年計画がスタートするわけでございますので、その中で積極的に運動面を取り上げまして推進していく。アクティブ80ヘルスプランであるとか、またことしの秋には、兵庫県におきまして健康なお年寄り皆さん方に集まっていただいて、全国福祉祭というものも計画しておるわけでございますし、また生きがいを持って生活をしていただくということも大事であるわけでございますので、社会参加のために老人クラブ活動等を通じまして積極的に厚生省としても支援をしていく。社会参加をされて健康で明るく生き生きとした社会をつくってまいりたい、かように考えておるわけでございます。
  7. 池端清一

    池端委員 今大臣はいろいろなことをおっしゃられたわけでございますが、それは多とするものであります。しかし、現実には社会保障予算を取り上げてみましてもマイナスシーリングが続いております。ここ数年、昭和六十年度には生活保護補助率引き下げ、六十一年度は措置費補助率引き下げ老人保健制度見直し昭和六十二年度には老人保健制度見直しの平年度化、こういうことによりまして、毎年七千億から八千億に上る巨額の当然増の経費が縮減されてきているわけでございます。また来年度予算を見ましても、今問題になっております国保制度改革や政管健保の国庫負担特例措置等によりまして約七千億に上る当然増を縮減しておるわけであります。まさに社会保障後退、切り捨て、これが顕著になっているというのが現実の姿でございます。  このように、我が国社会保障後退に次ぐ後退と言ってもあえて言い過ぎではないと思うのでありますが、こういう状況について厚生大臣はどのような見解をお持ちになっておるのか、その所信をひとつ承りたいと思います。
  8. 藤本孝雄

    藤本国務大臣 厚生省予算につきましては、御指摘のように巨額な当然増があるわけでございます。また一方、財政上の問題、御承知のようなことで一律マイナスシーリングという背景もあるわけでございまして、きょう今井厚生大臣もおられますけれども、毎年厚生省予算を編成するに当たりまして、やりくりに非常に苦労してきたというのが現実の姿であろうと思います。このまま推移いたしますと、来年、再来年ということになりますと、予算を組む上におきまして非常に大変だなということを実感として感じております。しかし、そういう中で懸命に努力をいたしまして、御承知のように一般歳出では、ことし五千億の増の中で、厚生省につきましては、そのうち三千億の増を確保しておるような次第でございまして、何とかやりくりをしながら社会保障水準を落とさないように、必要な予算は確保するように努力をしておるわけでございます。
  9. 池端清一

    池端委員 水準を落とさないようにというふうに大臣言われましたけれども現実健康保険法改正老健法改正等で、その水準はもう目に見えて落ちておるわけでございます。私は、このような社会保障後退を重ねていくならば、これは本当に大変な事態になる、こういうふうに非常に憂慮するものでございまして、この点についてはいま一段と努力をしていただきたいと強く申し上げておきたいと思うのであります。  そこで、政府はこれまで長寿社会対策大綱高齢者対策企画推進本部報告、さらには国民医療総合対策本部中間報告、こういうようなものを策定してまいりました。しかし、それらのいずれを見ましても、政策を実施する手順や数量あるいは財源の裏づけ、こういうものが示されておらない。私は、単なる作文に終わっているのではないか、こう思うわけでございます。先ほど申し上げました高齢化社会の到来が声高に言われている今日、高齢化社会における社会保障の具体的なビジョンと、それを達成するための社会保障の中長期的な計画を今こそ策定すべきではないか、このように考えますが、このビジョン計画の問題についてお尋ねをしたいと思います。
  10. 黒木武弘

    黒木政府委員 社会保障の具体的な中長期のビジョンを示せというお尋ねでございます。  御指摘になられましたように、政府といたしましては、長寿社会対策大綱をつくっております。これで基本的な施策方向をお示しいたしておりますとともに、毎年毎年そのフォローアップをやっておりまして、どういう施策が実現をしたか、次に何をやるべきかというような手順を踏みながら、この大綱に沿って政府全体として整合性ある長寿社会対策を実施してまいっておるところでございます。  また、これも御指摘になりましたように、厚生省におきましては、高齢者対策企画推進本部報告という形でかなり具体的に年金、医療もろもろ施策の今後の取り組みの方向をお示しいたしておりますとともに、特に医療については、これも御指摘のように、国民医療総合対策本部中間報告という形で、これからの良質で効率的な国民医療のあり方を明らかにしたところでございます。また定量的な関係では、先般、二十一世紀の社会保障の展望につきまして、給付負担の推計などおおよその姿をお示ししたというふうに考えております。  私どもは、これらをもと国民に幅広い御議論をいただきながら、そしてそのコンセンサスに基づきながら、これから揺るぎない社会保障制度を着実に実施してまいりたいというふうに考えておる次第でございます。
  11. 池端清一

    池端委員 私は、やはり単なる作文ではなしに、本当に国民全体がぐっと鮮烈にわかる内容のそういう計画というものを国民の前に示すべきである、このように考えるわけでございます。なお引き続きこの問題については、重要な問題でございますので今後とも論議を深めてまいりたいと思います。  次は、問題の国保改革の問題でございます。  私は、後にも述べますが、今度の国民健康保険法の改悪、まあ改正の問題は、改革の名に値しない、こういうふうに思っている。そこで国民医療、健康を守るという観点から、この改革案ポイント、そういう観点でのポイントを明らかに示していただきたい、こう思います。
  12. 下村健

    下村政府委員 国民医療と健康を守っていくというためには、私ども国民保険体制を椎持していくということが何としても基本的な条件として必要なことではないかというふうに考えているわけでございます。そのためには、皆保険体制というのは、国民健康保険ができて皆保険ができたわけでございますから、やはり国民健康保険制度の安定を図っていくということがどうしても必要ではないかというふうに考えたわけでございます。  今回の国保改革は、低所得者問題あるいは医療費地域差問題というふうな国保の抱えております不安定要因、特に国保の現在の不安定をもたらしている構造的な問題に、国、都道府県、市町村というふうなものが一体となって取り組んで、国保安定化を図るということを考えたわけでございまして、国民医療と健康を守る基礎的な条件をつくっていくということにつながるものだというふうに考えているわけでございます。
  13. 池端清一

    池端委員 それではお尋ねしますが、昭和五十九年の健康保険法改正の際に、厚生省は五十九年の四月二十七日でございますが、「今後の医療政策基本的方向」と題する厚生省試案を発表いたしたわけであります。その中で「全制度を通じる給付負担公平化措置一元化)」、これを六十年代後半に行う。そしてこの給付の統一及び財源調整等による負担公平化を図る、こういう試案を発表しておるわけでございますが、今回のこの改革案は、このような医療保険制度一元化の中でどのように位置づけて考えたらいいのか、その辺を承りたいと思います。
  14. 下村健

    下村政府委員 お話しのように、私どもといたしましては、医療保険制度を守っていくという観点から、これまでも給付負担の公平ということで一元化をやっていくのだというふうな考え方から、健康保険制度老人保健制度改革を実施してきたわけでございます。  今回の改革は、国保の安定を図るということで、国保の構造的問題、特に低所得者の問題あるいは医療費地域差問題というふうな構造的問題を解決することによって、社会保険としての国保機能をより十分に発揮できるような体制にしたい。そのためには、国と地方が共同して取り組む仕組みをつくっていくということを考えたわけでございまして、やはり一元化に向かっての一つ段階と申しますか、一環として位置づけられるものだというふうに考えているわけでございます。
  15. 池端清一

    池端委員 一元化に向かっての一つ段階である、ワンステップである、こういうふうな受けとめ方のようでございますが、昨年の十二月十九日に提出されました「国保問題懇談会報告書」においては、こう述べられておるのであります。すなわち、「国保改革については、国において医療費適正化を強く推進するとともに、医療保険制度一元化保険料標準化等の在り方について、結論を得た上で改革に踏み切るべきであり、六十三年度予算編成に向けて現段階報告を急ぐべきでないとの意見があった。」こういうふうにこの報告書には明記をされているわけであります。こういう意見があったにもかかわらず、今回政府国保改革を急いだ。これは先ほど申し上げましたが、厚生省予算をしゃにむに概算要求の枠内におさめるためのびほう策ではないか、私はこう思うのでありますが、その点についての見解を承りたいと思います。
  16. 下村健

    下村政府委員 確かにお話しのように、国保問題懇談会報告におきましては、御指摘のような意見が併記されているわけでございます。ただ、国保問題がおくれていいという感覚の意見ではなかった。予算編成のために国保改革がゆがめられる、あるいは予算のために無用な地方負担が生ずる、それは困るということであったというふうに私どもとしては理解しているわけでございます。大方の意見としては、やはり国保改革はできるだけ早くやるべきだ、しかし、そのために、ただ早ければいいというだけではなくて、予算編成によってそれが左右されるというのは困るということではないかというふうに理解をいたしたわけでございます。したがいまして、今回の改革を取りまとめるに当たりましても、国の財政面での措置予算措置については十分考えた上で、当面する構造的な問題について取り組むという考え方をとったわけでございまして、そういう点につきましては、予算編成必要性から行ったものでないということを御理解いただきたいわけでございます。
  17. 池端清一

    池端委員 これは予算編成段階で、これから申し上げます三大臣折衝で決まったわけでしょう。六十三年度予算編成に向けて拙速で報告を急ぐべきではない。結果的には急いだわけじゃないですか。それでこういう結論が出たわけでしょう。何か本当に詭弁を弄していると、保険局長、私はあえて申し上げざるを得ないのであります。非常に急いだ、これはもう明らかでございます。  この国保改革について、こういった国保問題懇談会での議論各省折衝の過程で、昨年の秋に、当初出されました厚生省試案にありました福祉医療制度というものが姿を消したわけでございます。かわって保険財政基盤安定化措置という名の制度が導入されたわけでございますが、この福祉医療制度が明らかになった段階で、多くの国民から、これは第二の生保ではないか、あるいはこれは政貧政策だという強い反対があったわけでございます。その結果、これが姿を消したわけでございますが、今後ともこの福祉医療制度というものの構想が蒸し返される、そういうおそれはないというふうに私は理解をしているわけであります。厚生省としては、もはやこの問題は断念した、こういうふうに理解してよろしいかどうか。その点についてもお答えをいただきたいと思います。
  18. 下村健

    下村政府委員 国保財政状況等を眺めてみますと、保険料負担能力の低い低所得者加入割合が非常に多いということが非常に大きな問題になっているわけでございます。そういうことから、昨年十月二十八日に国保問題懇談会に提出いたしました案としては、福祉医療制度という形で低所得者問題に取り組むということを提案いたしたわけでございます。これについていろいろの批判、御意見があったということは、ただいまお話しのとおりでございます。したがいまして、今回の国保改革案では、低所得者に対して保険財政基盤安定制度という形で保険料軽減分についての措置をとるということで対応する、こういう結論になったわけでございます。  ただ、この制度の創設をしたわけでございますけれども、六十三年、四年の暫定措置という形になっているわけでございます。したがって、六十五年にはどうしてもその見直しを行うということになってまいります。これまでの経緯からしますと、低所得者問題が国保の重要な問題である。その点についての認識は一応懇談会議論ではかなりはっきりしている、こう思っているわけでございます。したがいまして、低所得者問題をどうしていくかという議論は、引き続きいろいろな角度から検討していくことになろうと思いますが、その際におきましても、これまで出てまいったいろいろな問題点についても、十分こたえ得るような形で今後の結論を出していくということは、頭に置いていかなければなるまいというふうに考えているわけでございます。
  19. 池端清一

    池端委員 今回の措置は六十三年、六十四年二年間のものである、六十五年度には見直しをすることになっている、そこで低所得者の問題が最大の問題である、こういうようなお話でしたが、私具体的に今言っている福祉医療制度、これが蒸し返されるおそれがないのかどうか、それがまた持ち出される、こういうような状況になってくるのかどうか、その点を明らかにしてもらいたい、こういうことです。
  20. 下村健

    下村政府委員 福祉医療制度という形で提案をいたしまして、あれも一つ試案という形でございますから、十分内容的に明らかでない部分も含まれていたわけでございます。名前ももちろんそういう意味では一応の仮の名前という形で、そういった別建てのような形のものを考えてはどうかということで、それに対するいろいろな御批判、御意見があった。したがって、これを直ちにもとの形のままでというふうなことはないというふうに考えてよろしいかと思いますが、低所得者問題に対する対応の仕方としては、やはりいろいろな考え方があり得るわけで、必ずしも現在の保険料軽減だけが唯一のものだということでもないと思います。そこは私どもとしてこれからのいろいろな議論を重ねていかなければならないと思いますが、保険料軽減だけで今後もずっとやっていくかどうか、そこは私としては現在の段階としてはなかなか断定できないのではないか、このように考えているわけでございます。
  21. 池端清一

    池端委員 今の問題をちょっと角度を変えてお尋ねをしますが、国保局長も言われましたように、保険料軽減世帯割合が全世帯の四分の一近く、二三・五%に上っており、低所得者の問題を構造的な問題として抱えているのが国保現実であります。この保険財政基盤安定化措置、この制度によって低所得者問題には十分対応できないということを今局長は言われたのかどうか、その点についてお尋ねをします。
  22. 下村健

    下村政府委員 保険料負担能力の低い被保険者保険料軽減相当額に着目して、今回の制度保険基盤安定制度というものをつくったわけでございます。したがって、保険料軽減分について市町村一般会計から完全補てんをするということを通じて保険料負担軽減される。全体で五百億円ということになっております。それからこの措置によりまして、反面調整交付金調整機能が高まるということで、財政力の弱い保険者に重点的に調整交付金が配分できることになるわけでございます。こういった効果もありますので、確かに今回の措置が低所得者問題に対して答えが出せるということは、そのとおりでございます。  ただ、一方におきまして、保険料負担のいろいろな格差という問題についても、さらに一層公平化を図っていくべきであるというような議論等もありまして、これだけでいいかどうか。保険料負担軽減制度というのは、確かに国保財政に対して相当効果を及ぼして、その安定に資するという面については疑いのないところでありますが、さらに今後残された問題もありますので、それらもあわせて考えた場合に、保険料負担軽減という方式だけでずっとやっていっていいかどうか、そこはさらに議論を重ねていく必要があろう。私どもそういう意味で今回の制度が問題があるとかなんとかというふうなことを申し上げたわけではございません。
  23. 池端清一

    池端委員 この高医療費市町村安定化計画でございますが、この高医療費地域として対象となる地域を決める基準、これはどういうものでございましょうか。
  24. 下村健

    下村政府委員 高医療費部分の算定に当たりましては、年齢構成をまず考えるわけでございますが、医療費の場合には年齢によって相当の差がございます。地方団体もそれぞれの年齢構成の差というものがございますので、年齢構成の要素は一応考慮に入れる。それから災害とかいうふうな問題も当然入ってまいります。あるいは広島、長崎のように、原爆によって医療費が高いというふうな事情もございます。あるいは供給体制の方の事情もある程度考慮するということになろうかと思っております。そういった地域的な特別な事情というふうなものを勘案いたしまして一定基準をつくる。したがいまして、これは各地方団体ごとに、全国一律というよりは、それぞれの特別事情が入ってくるわけでございますが、そういった考え方一定の上限を設けて指定をするということにしてまいりたい、こう考えておるわけでございます。  ただ、さらに具体的な基準につきましては、現在まだいろいろな角度から検討中でございまして、検討が進んでまいりましたら、逐次明らかにしてまいりたいと考えておるわけでございます。
  25. 池端清一

    池端委員 非常に漠としてわからないわけでございまして、現在検討中ということでございますが、おおよそのところ、我々の判断材料をひとつ提供してもらいたいわけであります。  例えば、全国市町村が三千三百ありますし、医療費が高いということでいつも北海道がやり玉に上がっているわけでありますが、北海道には二百十二の市町村がございます。このうち、おおよそどの程度の市町村がこれに該当するのか、この辺の見当を明らかにしてもらいたい。
  26. 下村健

    下村政府委員 具体的な指定基準あるいはそれに対応いたします費用負担基準につきましては、ただいま申し上げましたように、鋭意検討しているところでございます。また実際に負担が生ずるのが六十三年度の医療費実績に基づいて六十五年度以降ということになりますので、現時点で確定的なことを申し上げるのはなかなか難しいわけでございますが、六十一年度の医療費データに基づいて現時点で、これは極めて大ざっぱな感じになるわけでございますが、共同負担が生ずる可能性のある市町村数が全国約三千三百のうち百二十、これはあるいは百五十くらいになるかもしれませんが、今のデータでまいりますと、百二十前後になるかもしれない、こんな感じでございます。  それから、北海道について見てみますと、七十市町村程度が該当するという感じではないかと思います。  実際に、その結果、共同負担が生ずる市町村数については、さらに今後の指定市町村医療費適正化努力の度合いによっても変わってくる面がございますので、これはあくまでも現在の時点での一応の感覚ということで御理解をいただきたいと思います。
  27. 池端清一

    池端委員 その負担額は総体でどのくらいになるのですか、市町村財政負担
  28. 下村健

    下村政府委員 これもただいまのところは六十一年度の医療費データに基づいての推計というふうなことになるわけでございますので、個々の市町村ごとの積み上げをやってみませんとなかなか正確なことは出てこないわけでございますが、全国的な状況で申しますと、市町村だけの負担ということで考えてみますと、大体十億から二十億というふうなオーダーになってくるのではないか、こう考えております。     〔委員長退席、野呂委員長代理着席〕
  29. 池端清一

    池端委員 六十一年度実績で全国で約百二十市町村、そのうちの半分以上の七十が北海道、こういうことでございます。しかし私は、北海道の医療費が高いというのは、北海道の特殊事情があると思うのであります。積雪寒冷、土地の広さあるいは他府県に比較して非常に核家族化が進んでいる、こういう問題等も無視できないし、私は、基本的にはやはり国の医療政策の貧困の反映がここにあらわれている、こういうふうに思うわけでございます。これを十分な権限のない市町村安定化計画というものによって是正しようとするのは、これは市町村に対する単なる責任転嫁ではないか、私はこう思うのでありますが、これについてはどうでしょうか。
  30. 下村健

    下村政府委員 医療費適正化についてでございますが、市町村はレセプト審査と診療報酬支払い面での適正化など、あるいは都道府県は療養取扱機関の指導など、それぞれの立場で医療費適正化対策を推進できる権限は一応持っておるわけでございます。また例えば老人の医療につきましては、ヘルス事業でありますとか在宅福祉対策を推進するということで、医療費適正化に関連する対策を実行するというふうな力もあるわけでございます。  ただ、私ども考え方で申しますと、医療費の問題というのは、確かに権限問題あるいは制度の問題というふうなこともありますが、私ども適正化と言っているのは、国によっては医療費の節約というふうな言葉を使っているところもあるわけでございまして、そういうことからいいますと、医療費については、やはり関係者が全体を挙げて一定の目標のもとに取り組んで、節約と申しましてもあるいはいいのかもしれませんが、その適正化努力をしていくということが必要ではないか。特に現在の保険の置かれている状況からいたしますと、高齢者の医療費、老人医療費の増加というのが非常に全体的に大きな負担としてのしかかっているわけでございます。老人の場合に、その老人の状況に応じまして適切な処遇を与えていく必要がございます。  北海道の話が出ましたので、恐縮でございますが、現在の北海道の状況を見ますと、五年以上、十年以上というふうに病院に入っておられる方が多いわけでございます。これは確かに現実に必要があって入っておられるという面があるのですが、一方保険の方からいいますと、医療の必要があるかもしれませんが、入院の必要がなくて入っておられるという方について入院医療給付をやっていくということは、制度的にいえば問題があるわけで、現在の保険の体系からいいますと、権限という面からいえば、入院については保険者の承認が要るという形になっておりますので、単に権限だけで処理していくということであれば、そういった入院の給付給付から外すというふうな考え方もあるいはあろうかと思いますが、現状ではいろいろな状況も考え合わせて、私どもとしてはそこまではやっていないわけでございます。  ただ、それじゃ現状のままで放置しておいていいかということになりますと、これはやはり老人のためにも、そうやって長期ずっと入っておられるというところは問題があるのではないか。やはりこれはそのお年寄り状況、家庭の状況に応じて、それぞれ適切な処遇が与えられるようなことを考えていく必要がある。これはなかなか大変な仕事でございますけれども、時間をかけてもそういうことに取り組んでいくべきではないか、こう考えて、そのためには市町村あるいは都道府県の御協力もぜひともいただきたい、こう思ったわけでございます。
  31. 池端清一

    池端委員 市町村国保財政運営に当たっては大変な苦労をされていることは今さら言うまでもないところであります。昭和六十一年度決算でも、市町村一般会計から約二千三百億円もの繰り入れを行っておりますし、都道府県支出金も約三百七十億円にも上っておる。まさに四苦八苦の状況です。大変な状況でございます。こういう状況の中で、今度の改革案では老人保健医療費拠出金に対する国庫負担を四百六十億円も引き下げる、これは私は全く納得できないところであります。なぜこういうような国庫負担の調整を行うのか。仮に百歩譲っても、六十五年に老人保健の見直しがあるわけであります。この際にあわせて検討されてもいいんではないのか。それを拙速にここで四百六十億も削減をする、これは一体どういう理由なのか、その点明らかにしていただきたいと思います。
  32. 下村健

    下村政府委員 老人保健拠出金に係る国庫負担は、国保の体質が弱いということで従来特例的に高い水準を維持していたわけでございます。したがいまして、一応現在の考え方で申しますと、社会保険制度である以上は、やはり二分の一というふうな原則に戻すべきではないかということで、五十九年にも国保国庫負担の改定等をやったわけでございますが、今回の措置は、その際に残った部分についてもう一度考えてみたということでございます。  今回の保険基盤安定制度等によりまして国保制度財政体質が改善される、それに伴って国保財政に対するプラスの影響も出てまいるわけでございます。そういったこともあわせ考えて、特例的に高い老人保健医療費拠出金に係る国庫負担を調整する。ただ、そういったことで、片方の保険基盤安定制度の創設といったものもやや暫定的な措置という形になっておりますので、老人保健の拠出金に対する国庫負担につきましても、同じく六十三、四両年度の措置で、しかも一挙に二分の一という原則までは持っていかない、ちょうどその中間をとった、こんな格好になっているわけでございますが、そういった措置をとりあえずとって、六十五年度におきましては、御指摘のとおり老人保健制度見直しにあわせて改めて見直しを行いたいというふうに考えております。
  33. 池端清一

    池端委員 どうも納得できないのであります。今回の改革案というものは、単なる国と地方負担やりくりにすぎない。被保険者の立場から見れば、改革の名に値しないものであると言っても言い過ぎではないと思うのであります。厚生省は口を開けば一世帯当たり千七百円の保険料軽減措置が行われる、こう言っておりますけれども、これも医療費が伸びれば大きな効果はございません。国保医療保険制度の中で保険料が一番高い、そして給付率が一番低い。今国民の間で最も強い要求は、何とかこの一番低い給付率を改善してもらいたいと、給付率改善を求める声が強いのでありますが、この給付率改善にこそ手をつけるのが国保改革ではないでしょうか。なぜこれに手をつけなかったのか。その点を明らかにしてもらいたいと思います。
  34. 下村健

    下村政府委員 厚生省としても、給付率の問題というのは、国保制度の今後を考える上で非常に大きな問題点一つだというふうに考えておるわけでございます。したがいまして、給付率の問題も、国保問題懇談会におきましては一応爼上にのせて御議論をいただいたわけでございますが、残念ながら現在の状況からいたしますと、その問題を直ちに取り上げて本格的にこれに取り組んでいくというには時期尚早と申しますか、条件が整ってないということで、この点については、実は懇談会意見がほぼもう全員一致に近い形でそういうお答えをいただいたわけでございます。そんなことで、今回は給付改善については見送りをして、さらに今後医療保険制度全体の展望を考える中で、私どもとしては議論を深めてまいりたいというふうに考えております。
  35. 池端清一

    池端委員 きょうは十二時から本会議があるというので、用意した質問を大分はしょる結果になるわけでございますが、次に進んでまいりたいと思います。  この医療保険制度問題とともに、年々一兆円ずつふえ、昭和六十三年度には十九兆円に届こうとしている莫大な医療費の問題は、我が国医療にとっては申すまでもなく重要な問題でございますが、この国民医療費の最近の状況及び今後の見通しについて承りたいと思います。
  36. 下村健

    下村政府委員 国民医療費の最近の状況と今後の見通しでございますが、医療費の伸びは五十八、九年度は制度改正あるいは薬価基準引き下げ等によりまして国民所得の伸びを下回ったわけでございます。しかしながら、六十一年度以降は国民医療費の伸びが国民所得の伸びを上回るというふうな状況が続いておりまして、六十三年度におきましては、国民医療費は約十九兆円というふうに見込んでいるわけでございます。  今後の予測でございますが、医療の進歩あるいは高度化あるいは患者の受診動向でありますとか不確定要因が医療については非常に多いものですから、正確な予測は極めて難しいわけでございますが、最近の医療費の伸びを前提にいたしまして、そういった仮定のもとに推計をいたしますと、国民医療費は昭和七十五年に約四十三兆円、昭和八十五年には約八十八兆円になるというふうに推計をいたしております。
  37. 池端清一

    池端委員 そこで、重ねてお尋ねをしたいわけでありますが、昭和五十九年の健保法改正の際に、厚生省は、国民所得の伸びの範囲程度に医療費の伸びを抑えるためにはいろいろな手だてを講じていかなければならない、こういうような見解を明らかにしたわけでありますが、この政策目標は今日も変わりはないのでありますか。この方針も今後とも堅持していくお考えなのかどうか。私が非常に疑問だと思うのは、人口高齢化が進み、高齢化による医療費の伸び率だけでも、六十三年の推計五・二%のうち高齢化による伸び率は一・二%というような推計も出ておるわけでございまして、果たしてこれが実現可能なのかどうか非常に疑問なしとしないわけでございますが、この辺の見解について承りたいと思います。
  38. 藤本孝雄

    藤本国務大臣 御指摘のように、医療費の伸びを考えます場合に、人口高齢化、それから医療の高度化、そういう面から非常に医療費がふえる圧力があるわけでございます。五十九年の健保法改正のときに、国民所得の伸びの範囲内に医療費の伸びを抑える、政策目標として掲げておるわけでございまして、先ほど申し上げましたような状況からいたしますと、なかなか厳しい状況であるわけでございますけれども、当面は、この政策目標の実現のために、医療費適正化、合理化を図りながら努力をしてまいりたい、私どもかように考えております。
  39. 池端清一

    池端委員 きょうは時間がありませんので、私はまた改めて質疑の時間を得たいと思っておりますが、今度の国保改革案は、そのねらいは厚生省予算の縮減、そして制度改革としては極めて中途半端であって、矛盾だらけのものになっている。負担地方と被保険者に転嫁するものである、こう言わざるを得ないと思うのでございます。そういう意味でこの問題はひとつ再検討されてしかるべき、こう思いますが、この点についてはどうでしょう。
  40. 藤本孝雄

    藤本国務大臣 御承知のように、現在国保財政状況は非常に厳しいわけでございまして、私もどこへ参りましても、市町村長に今一番頭の痛い問題は何か、こう聞きますと、国保財政問題だ、こういう答えが返ってくるわけでございまして、この国保の長期安定のためには、ぜひとも早急に対策を立てなければならない、こういう考えでおるわけでございまして、この点につきましては認識は一致いたしておると思うわけでございます。  その場合に、国保財政安定化のためには、国保が持つ構造上の問題点、老人問題とか低所得者問題とか医療費地域差の問題、やはりこれに改革の手を加えなければ、国保の長期安定化を図ってまいることは非常に困難だ、こういう認識に立っておるわけでございまして、内容的には御不満な点があるかと思いますが、私どもといたしましては、長期安定のための基盤をつくるための改革として今回取り組んでおるわけでございまして、これをさらに推進してまいりたい、かように考えておるところでございます。
  41. 池端清一

    池端委員 時間が参りまして、そのほかたくさんの質問を予定しておりましたが、全部終わることができませんでした。また別途機会を見てやりたいと思いますが、ともかく今度の改革案国民の期待に非常にこたえていない、まことに中途半端であり、負担地方に転嫁する、こういう内容でございまして、ぜひこれは撤回して、もう一回本当に真剣に議論をしてしかるべき性格の法案である、こういうことを私は考えます。そういう点を十分配慮して今後ともひとつこの問題に対処してもらいたいということを強く要望して、私のきょうの質問は終わります。
  42. 野呂昭彦

    ○野呂委員長 代理 大原亨君。
  43. 大原亨

    ○大原(亨)委員 今度の国民健康保険法改正は、今もお話がございましたように、当面の措置として二、三点にわたってかなり苦労されたということは理解をするのですが、しかし内閣全体の、政府全体の方針というものがきちっと確立していないというところに非常に苦労しなければならない原因がある、そういうふうに理解をするわけです。  中曽根総理以来、やはり高齢化社会に対応する年金や医療や福祉についての費用がかさんでくるという問題を税制改革の理由にする、こういう演説が繰り返されるわけです。しかし、その内容的なものは、今も指摘がありましたし、先般も私が指摘をしましたけれども、一番肝心なのは、年金や医療や福祉サービスの面で高齢化社会に対応するビジョンをきちっとつくって、改革の目標をつくって、一つ一つ何を改善していくかという段取りをつけるべきであるのに、財源のことを先に言ったり、細かい問題でごちゃごちゃしたり、非常にそういう点では非効率なのではないかと思います。  質問の通告の順序は若干変わりますが、大体その範囲内で質問を続けますから、適正に答弁をいただきたいと思います。  高齢化社会の中でだんだんと高齢化率が進んでいって中高年齢層のウエートが非常に高くなってくる。それから日本の高度成長以来続いてきた民族移動、その結果としての核家族化がどんどん進んでくる。もう一つはオイルショック以来の経済の低成長時代ということが財政にはね返ってきておる。そういう面において非常に厳しい条件にあることは、私ども承知をいたしておるわけです。そしてその中で高齢化に対応する医療費をどうするか、非常に老人の比率が高いという問題の国民健康保険をどうするかという問題の審議でありますから、非常に重要な審議であると私は思っております。  改正案として出てきておる問題は、そのこと自体に議論をする余地は私は十分あると思いますが、内容的に見てみますと、やはり非常に大きな問題をはらんでおるのではないか。そこでもう一回改めて質問をいたしますが、昭和六十五年までの二カ年間の保険基盤の強化その他の政策は、言うなれば二カ年間の時限的な立法です。宮崎さんの国民健康保険懇談会にも出ておりますが、日本の保険制度をどうするかという問題を含めて医療給付全体の総合的な改革計画を立てなければいけないということをしばしば指摘をしております。昭和六十五年からそれらの問題について手をつけて、いわゆる医療保険制度一元化というのは、負担給付を公平にするという、抽象的にはだれも否定できない目標ですから、それを実現する制度改正に手をつけるわけですが、その制度改正をやろうと思えば、来年、昭和六十四年には法案を国会に出さなければならぬ。昭和六十四年に出すというふうに用意をしている、検討している法律の項目を、これは随分議論して局長政府委員はマスターしていると思いますからお聞きするのですが、どういう項目について法的な改正措置を来年度からとっていくのか、これを最初にお答えをいただきたいと思います。
  44. 下村健

    下村政府委員 大変難しい問題でございまして、おっしゃるように、一元化あるいは給付負担公平化という点については、理念的には余り異論はないということではないかと思いますが、ただ、その具体論になりますと、まだ実際問題としては基本的な意見の対立もあるというのが素直なところではないかと思います。  そこで、私どもといたしましては、社会保険審議会あるいは社会保障制度審議会、それらの審議会におきまして、今後の動向を見きわめながらいろいろ御議論をいただいているところでございます。これまでのところ社会保険審議会で御議論いただきましたのは、主として現在の基本的な保険制度の立て方はそれでいいのかどうかというふうなところまででございまして、そこから先はまだこれからいろいろ御検討いただくということになってくるわけでございます。  そんなことで、今の状況からしますと、余り先走って私どもの方からあれをやる、これをやるということを申し上げるのが果たしていいかどうか、ちょっとちゅうちょするようなところがあるわけでございますが、今お話しの六十五年ということに仮に焦点を絞ってまいりますと、六十五年に厚生省として現在の状況で取り組まなければならないという意味ではっきりいたしておりますのは、一つは今回の国民健康保険制度の問題をどうするのかというところがございます。それから老人保健制度。これは老人保健部長がおりますので、あるいは老人保健部長から補足して答弁をいたした方がよいかと思いますが、老人保健制度見直しという問題が同じく六十五年度の課題ということになろうかと思います。その中で出てくる問題といたしましては、今回暫定ということでお願いしております保険基盤安定制度をどうするか、低所得者問題をどう扱うのかということがどうしても個々の問題としては出てまいろうかと思います。  そのほかに、老人保健制度見直しに伴う国庫負担のあり方、あるいは老人保健制度議論の流れからいいますと、老人保健の方の一部負担の問題あるいは拠出金の配分の問題といったところが中心的な課題として、今のところ比較的はっきりしているというふうなことが言えるのではなかろうかと思います。
  45. 大原亨

    ○大原(亨)委員 今のをもうちょっと続けますが、六十五年からの改正については、来年の四月、昭和六十四年の四月の国会には出さなければいかぬわけです。ですから、その準備期間は本年しかないわけです。そうすると、今はかなり皆さんは議論をしておることは私も承知しておりますが、やはり目標を立ててこの法案の審議をする必要があるという意味でお聞きをするわけです。  今までやってまいりました退職者医療制度とか、今回でもそれに関係した千八億円の問題がありますが、それとか老人保健法の見直しの問題、そういう問題は昭和六十五年を実施の一応のめどといたしておりますから、この問題は掘り下げて徹底的に議論をしなければいけない。健康保険組合連合会の資料によりましても、これから二十一世紀になる直前の十年後におきましては、自分たちのところでいわゆる受益者負担の原則で出しておる保険料よりも、その保険料の五〇%を超えて拠出金がふえていく、赤字組合がいっぱい出てきて保険料も上げなければいかぬ、これは保険制度自体の否定につながる、こういう議論があります。健保連は別建て、公費負担制度の老人保健法という構想を出しています。それから国民健康保険組合の連合会は、拠出金その他で援助を受けている側の話ですが、国庫負担以外に保険制度間の拠出金の援助を受けておるわけですが、受けておる方から考えてみても、国民健康保険基盤とする老人保健の運営はもう限界に来た、だから老人保健制度というものは保険制度から切り離して、別建ての公費負担にすべきである、これは双方の意見が一致をいたしておるわけです。関係団体の間でそういう福祉目的税論に関係をした議論も出ておるわけですが、しかし、これは短絡的に考えるべきではないと思うのですけれども、そういう議論が出ておるわけです。  問題は、老人の医療費がだんだんふえていくということはあらゆる資料から出てきておるわけですが、だれが一体負担するのか、どういう制度でカバーしていくのか、こういう問題について、私は幾つかの外国の例によってタイプがあると思うのです。日本の老人保健制度というような、国庫負担財政調整しておいて、今度は保険料でまた財政調整する、そしてがちゃがちゃにねじれ現象を起こしているというふうなことで行き詰まる、こういうことも、そのままではないですが、これに近い状況である。しかし、高齢化する老人の医療費負担するやり方として、制度のタイプとしていろいろな制度があるわけですが、日本ではどういう選択をしようとしておるのか、大まかな筋についてお答えをいただきたい。
  46. 下村健

    下村政府委員 各国ともにそれぞれの沿革なり伝統と申しますか、そういうものがありまして、やっているわけでございますが、大まかに申しますと、一つはアメリカのように老人医療、これはアメリカの場合には一般の公的な医療保障はございませんので、メディケァという形で老人医療を、これは社会保障税という形で、直接税でございますが、やっているわけでございます。  それから、特別の老人医療制度はありませんが、ドイツとかヨーロッパ大陸の諸国のように、社会保険制度を基本にいたしまして、一定保険にずっと高齢者も所属させる。ただし、それだけではやはりそれぞれの保険制度間で格差が当然生じてまいります、産業の盛衰というふうなこともありますので。高齢者が一定のグループに所属をするということだけではなかなか公平な負担という点から見て問題が起こるわけでございます。したがって、ドイツとかフランスとかいうふうな国では、保険制度を基本にいたしまして、特別の老人保健制度はつくっておりませんが、さらに財政調整という形で保険制度間の公平化を図っているというふうなところもございます。  それからもう一つは、ややアメリカに似ていると言えば似ているかもしれませんが、ナショナル・ヘルス・サービスというふうな形でやっているイギリスのようなタイプもある。大まかに言えばそんなことになろうかと思います。  日本の場合は、どちらかといえばドイツの社会保険制度というものが一つのモデルのような形で、それに日本的にいろいろな改革を加えながら今日までやってきたということでございます。老人の場合には、その発生の沿革からいたしまして、保険給付を根底にいたしまして、それに公費負担医療を継ぎ足すという形で、老人医療のまず無料化ということをやったというのが今日の老人保健制度のスタートになっているわけでございます。それにその後いろいろな改革を加えて、按分率の改革等もやってきたということではないかと思います。  いろいろございますが、現在のところは、一応現在の体制というものを基本にいたしまして、さらに公平化を進めていくというのが私ども考え方だというふうに申し上げることができるかと思います。
  47. 大原亨

    ○大原(亨)委員 まだ突っ込みが足らないのですが、つまり日本の制度国庫負担財政調整をする。それは国民健康保険医療給付費の五〇%国庫負担しているわけですから、それを公平に傾斜配分いたしまして下支えをしていく、そのルールというものが医療費の増大で崩れたものですから、それで保険制度間の財政調整をやった。これが拠出金の制度、退職者医療制度だ。国庫負担を削減した。しかし、これも既に限界に来たという意見は健保連や国民健康保険組合――これは私は反対ですが、そんなことはやっちゃいかぬと思うけれども、けしからぬと思うけれども、自民の齋藤邦吉君が中央の会長をしておられますね。そこもやはり公費負担制度ということで、それでその双方とも税方式、別建てという改革案を出しているわけですね。それについてどう思いますか。
  48. 岸本正裕

    ○岸本政府委員 先生おっしゃいましたとおりに、この老人の医療費をどういう制度でだれが負担をするかというのは非常に大事な問題でございまして、いろいろな議論があり、いろいろな案があった中で、今のような社会保険の共同事業という形で制度が組み立てられたわけでございますが、今のような財政事情の中で、先生おっしゃるようないろいろな御意見が出ておることもまた事実でございます。  私どもといたしましては、この財源問題につきましては、老人保健法に基づく見直しの中で各界、各層の御意見を伺いながら判断をしていかなければいけない重要な問題であるというふうに思っているわけでございますけれども、今の直接のお話でございます、別建てで、全額公費で負担をするという制度をどう思うかという御質問に対しましては、やはりこれは税制のあり方とか財政全体に非常に大きな影響のある問題でございますし、また私どもといたしましては、社会保険方式が国民にもう根づいているという現状から見ますと、非常に急激な改革になるというところに問題があるのではないかというふうに感じております。     〔野呂委員長代理退席、高橋(辰)委員長代理着席〕
  49. 大原亨

    ○大原(亨)委員 ドイツやフランスのような保険制度を日本は導入したわけですね、あの型なんですね。そうすると、ドイツやフランスは通貫方式といって、一つ保険制度を終わったら、被用者保険を終わったら、その人は一生涯その保険制度の枠の中で老人医療費を見ていく。日本のは、加入者按分率の八〇%、九〇%、一〇〇%というのは、これはその延長ではなしに、全然関係のないところへ拠出金がひとり歩きをしておって、出した者がチェックするシステムがどこにもない。だから僕が言うのは、保険料が税金化しているのだ、拠出金というのが。これは保険制度自体の否定である、こういう議論が出るわけです。ですから、これはドイツ方式であるならば、フランス方式であるならば、一生を通じて通貫方式で、そしてその被用者保険のグループが見ていく、それを国やその他が援助する、こういう方式もあるわけです。  しかし、もう一つの方式は、アメリカのメディケアそのままではありませんけれども、老人医療費というのは、これは六十五歳、老人福祉法のところで線引きをして六十五歳以上。退職者医療はその中に入っちゃう、やめてから。それでその医療については、稼得能力、例えば年金にいたしましても、日本は半分以上が国民年金ですが、非常に給付率が低いわけですから、年金で生活するということにはならないわけです。低所得階層の人が入っているということで、やはり公費負担を主として、それで保険負担能力は自営業者その他ある人かおるわけですが、そういう人も保険料を従として負担をする。そして医療給付の方は、それに対応する改革をしていく、点数出来高払いを修正していく、こういうふうに考えて老人の医療費制度として負担するようにするしかないのではないか、こういう議論もあるわけですね。そういう議論に対してはどういうふうに考えますか。
  50. 下村健

    下村政府委員 もちろんいろいろな議論があり得るんだと思います。ただ、私どもとしていろいろその問題を考えてみますと、税制につきましては、ただいまのところいろいろな議論がなされている最中でございます。私どもとしては、もちろん税制が一体どういう形で改革をされるのか、その辺の状況も見ながら保険の方で一体どう対応していくのかということも考えていく必要があろうというふうに思うわけでございます。  ただ、日本の場合には、今お話に出ましたように、ドイツの社会保険制度というふうなものを一つ頭に置きながらこれまでやってきた。白紙のところに新しい制度をつくるというわけではございませんので、やはりこれまでの制度の運営の実績、現実というものは無視できないんではないかというふうに考えております。ただ、保険制度の面から申しますと、御指摘のように、高齢者の医療費負担というのが非常に大きな問題でございまして、これをどう適正化していくかという面の問題ももう一つあるわけでございます。  いずれにいたしましても、まず第一は、やはり私どもとしては公平な負担が、税の問題もあわせてということになろうかと思いますが、全体的に医療費の公平な負担がとにかくなされるような仕組みが必要だ。それからもう一つは、やはりそういった形で幾ら適正化をいたしましても、高齢者が非常にふえてまいるという現実でもございますので、そういった負担にたえ得るだけの安定的な制度にしたい。その二つを基本にして取り組んでいくということになろうかと思っております。
  51. 大原亨

    ○大原(亨)委員 これは制度議論だけでは済まないわけですけれども、つまり方式としましては、通貫方式で最後の被用者保険のグループが一生涯見ていく。若いときに、比較的病気が少ないときには保険料を払っているわけですから、一生涯を通じて被保険者としても保障される場所が欲しい。そういうことからいって、これは通貫方式というのは一つの理屈です。しかし、ヨーロッパの方は高齢化の比率が非常に緩慢ですから制度の急変がないという格好ですが、日本はこれが非常に急激であるということが一つの問題であると思います。それで税方式、別建てという方式が一つある。この問題については折衷案もありますが、これは私は言いません。  例えば、日本の場合に、現実的に六十五歳までについては被用者保険が退職後も見ていく、六十五歳からは全国民が費用負担をして老人保健をやっていく。給付の方は、それに対応するように、点数出来高払いは修正していく、あるいは医療法についてもさらに根本的に改革をする、そういうような思い切った整合性のある政策をとらなければいけない。保険制度がどうしてもいけないということになれば、イギリスに右に倣えいたしまして、最近やっておりますが、民主的な国でもあるのですが、非常に議論の多い国です。イタリーはナショナル・ヘルス・サービスをやっているわけですね。今移行しようとしているわけです。スペインがやっていますし、スウェーデンが中間的ですが。そうたくさんの方法、知恵はないわけですよ。しかし、ほっておくと戦前のような形になって保険制度がないということになりますと、これは大変な社会不安になってくる。高齢化社会家族で見たらいいという議論を簡単にする人がおるのですが、そうは日本はもうできないわけですよ、核家族が進んでおるし共稼ぎも進んでおるわけですから。共稼ぎをいたしましても、東京や大都会では住宅を持つことはできぬのですから。サラリーマンは三分の二ぐらいあきらめている。こんなに土地が暴騰しましたらマイホームなんかないわけです。とてもじゃないが、寝たきり老人とか痴呆性の老人がどんどんふえるのですが、そういう人々を抱えて家族生活はできないのです。社会的に見ていかなければならない。これは当然の論理ですね。ですから、思い切った改革をやるようなスタンスで、昭和六十四年、来年からの改正に臨まなければいけないし、六十五年以降もそういう点について整合性のある政策をやっていかないと、これはどんな議論をいたしましても、余り実りのある議論ではない。今回の措置も、池端委員の方からも指摘がありましたように、問題をかなり抱えながら当面の措置はいろいろしているわけですけれども、根本的な問題については何ら解決していないではないかという議論になるわけです。  大臣、どうも答弁を求めないと眠くなるから、今度は総括的に、今の議論の前へ進みますから、大臣の所見を聞きたいと思います。
  52. 藤本孝雄

    藤本国務大臣 非常に広範囲にわたる御意見でございますし、また制度の核心に触れる御指摘もございました。幾つかお答え申し上げたいと思いますが、まず、六十五年度の見直しの時期を踏まえまして、六十四年が極めて重要な年になる、この御指摘は私も全く同じ認識を持っております。  それから、これからの我が国医療費を考えます場合に、老人医療の問題は極めて大きな問題であることも全く同感でございます。要は、この医療保険制度というものが、高齢化社会の中で一番大事な問題点としては、制度の長期安定それから給付負担が公平である、この二つは、年金も含めまして、医療、年金の制度にとって最も大事な基本的な問題だろうと思います。  それから、医療を受ける側から言えば、適切な医療を効率的に受けられる、良質な医療を受けられるということも大事な問題であるわけでございます。先ほどの老人医療費につきまして、税金で賄うべきだという御意見は、私も極めて有力な一つの御意見だと思います。また、そのために、その医療費については全面的に見直すという整合性の問題も、私は有力な意見だと思います。  ただ、一般論で申し上げますと、これからの我が国の経済社会のいろいろな条件、その変化というものを今から予測するのは極めて困難だということがございます。それからまた、例えば老人医療費について一部負担をこれからどうするかという計画を今から打ち立てるということも、これまた国民皆さん方の合意ということも必要になるわけでございますし、また国民皆さん方の今後の生活状況というものも見定めなければならない、こういうものでもあるわけでございまして、御指摘のこれからの具体的な計画を出すべきだというお考えはよくわかるわけでございますけれども、目標、水準ということについては、我々はあくまでその目標、水準を達成するため、その目標、水準をお出しすることはできるわけでございますけれども、そのための年次計画というものを今の段階で出していくということにつきましては、極めて困難な状況があるということもこれまた御理解いただけると思うわけでございまして、今後医療並びに年金の将来の一元化に向けてどういう道筋で、どういう手順でやっていくかということにつきましては、なおしばらくいろいろな方、審議会等の意見も踏まえまして、そしておよその姿をお出しすることは、まだ若干時間がかかるのではないかというふうに私は思っております。
  53. 大原亨

    ○大原(亨)委員 これは全体の議論になりますけれども、つまり中曽根総理以来、竹下総理もそうですが、自民党の諸君もそうなんですが、最近いろいろな議論をすると、新税、新型間接税を導入する際に、高齢化社会高齢化社会ということを言うわけですが、しかし高齢化社会医療をどうするんだというビジョンがあって、その財源は何が適正なのか、何がいいのかという議論をやることで、議論を深めることで国民はどういう負担をするのだという理解を進めていかなければいけない。そうでなしに、初めに売上税ありき、新型間接税ありきということでやるから国民の反発を受けているわけです。これは間違いです。この前も申し上げたのですが、直間比率の問題、そういう議論の前に、租税負担率と社会保障費、保険負担率との関係から言うなれば、保険負担率が租税負担率に追いついて追い越す。年金も成熟していく、医療費もふえていく。その前に租税負担率なのか、保険料負担なのか、こういう議論がなければいかぬじゃないか、こういう議論をいたしました。その議論は蒸し返しをいたしません。しかしそういうことをきちっとやらないと、例えば保険基盤の安定制度なんといいましても、これは実りのある議論ではない、展望のある議論ではないと私は思います。  この保険基盤の安定制度軽減保険料の問題があるわけです。それで第二の質問は、国民健康保険保険料の決め方について、今までの経過の中でいろいろな議論があったようです。その中で、懇談会でもそうですが、三省三大臣の合意の中にもあるのですが、標準保険料という考え方がある。それで国民健康保険保険税、保険料のタイプを見てみますと三つほどあるのです。所得割、資産割、それから世帯割、世帯人員一人当たり、被保険者一人当たり、こういうふうな均等割があるわけですが、それを組み合わせて三つほどある。どのタイプが一番多いのですか。
  54. 下村健

    下村政府委員 保険料の賦課でございますが、所得割、資産割、それから被保険者の均等割、それから世帯割、この四つが一応基本のタイプとしてあるわけでございます。その四つを全部組み合わせてやっているのが四方式、そのうちから例えば資産割を取っていないというところは三方式とかいうふうに申しているわけでございますが、現在のところは、ただいま申しました所得割、資産割、被保険者均等割それから世帯平等割、この四つともを組み合わせてやっている四方式をとっているところが一番数としては多いわけでございまして、保険者数のうちの九二・七%がこの四方式という形でやっているのが実態でございます。
  55. 大原亨

    ○大原(亨)委員 それで、これも議論が蒸し返されておるわけですが、応能か応益かという議論があるのです。国民健康保険は他の保険制度に比べても一人当たりの医療費負担は非常に大きい。十一万円。しかし国民健康保険の中においても、保険料の――三千幾つかの中においても、やはり是正すべき点があるのではないか。九二%対八%という比率ではなしに、そのことの適用自体についても、やはり負担の公平という面から検討すべき点があるのではないか。それで私は標準保険料考え方が出てきたと思うのです。標準保険料の考え万を具体化するといえば、具体的にどういうふうな内容になるのですか。
  56. 下村健

    下村政府委員 おっしゃるようなことで標準保険料という考え方が出てくるわけでこざいます。ただ、その場合に一番難しいのは、医療費の方に標準というものがございませんので、標準医療費というふうな設定がなかなかできないので、保険料の標準化もなかなかできないというのが、実はこれまで標準保険料について検討をしてきた一つ結論ではないかと思います。  ただしかし、そうは申しましても、市町村ごとに保険料負担の不均衡があるのは好ましくないということで、保険料の標準化という面についてもう少し具体的な検討を進めてはどうかというのが三大臣合意のときに出てきた考え方でございます。具体的には、例えば保険料の所得割の率でありますとか、均等割の額を全国一律の基準で決めるというふうなことができないかというふうな考え方になってまいるわけでございますが、その場合にやはり一番の問題点は、医療費の差というものをどの程度考慮すればいいかというところが一番の難しい点だろうかと思っております。
  57. 大原亨

    ○大原(亨)委員 負担の面と給付の面からいくわけですけれども負担の面においても、やはり公平な負担ということでないといけない。基準は大体同じであって、そして自治体であんばいするということになると思います。つまり国民健康保険市町村の単位の保険の団体の格差というのは、所得の格差が一つあるわけですから、これは市町村によって違うわけですから。それからもう一つ年齢があるわけです。それ以外の問題については、一人当たりの医療費の問題で医療費適正化政策にクローズアップしている問題ですね。  ですから、これは一つ一つ分析してやらなければいかぬのですが、話を進める順序から、次に、先般私が要求いたしました資料で、政府管掌の健康保険で、都道府県別の被保険者一人当たりの医療費を出しなさい、こう言ってずっと前から私が主張しておりましたが、最近出てまいりました。これと、国民健康保険の一人当たりの医療費の格差の実態、これを比較しまして、どういう特徴点が出ておりますか。
  58. 下村健

    下村政府委員 政府管掌健康保険の被保険者は、国民健康保険と異なっておる点は、住所地ではありませんで事業所の所在地で適用されている。したがって、東京都、大阪府、こういった大都市の事業所の被保険者及びその家族は、周辺の県に、例えば東京で申しますと、千葉とか埼玉といったふうなところに住んでおられまして、その居住地付近の医療機関で診療を受けるということが比較的多いのではないかと考えられるわけでございます。したがって、東京都などの被保険者一人当たり医療費は統計上低くなって、周辺県が高くなるというふうな点が大きな差として出てまいります。したがって、全国単一で運営しております政管の仕組みからしますと、正確な地域差というのを国保のような形で出してくるのは大変難しい問題がございますが、現在の業務統計よりもうちょっと正確な医療費地域差が推計できないかということで、現在いろいろ検討を進めているわけでございます。  結果から申しますと、国保の方は広島が一番高いというふうなことが言われているわけでございますが、政管で見ると広島は十二位になる。北海道は両方とも二位という形で、この辺はそろっておりますが、国保の三番の富山は政管では十八番。逆に今度は徳島が政管にいきますと一番ですが、国保は四番というふうにかなり差が出てまいります。これはもちろん医療費年齢とかいろいろな要素もございますので、国保と政管と同じ地域でありましても、年齢差というものも当然入ってまいりますので、なかなかこれだけで一概に申すことはできませんが、地域差についての数字から申しますと、ある程度政管と国保と似たような面もありますが、しかし個々に見てまいりますと、相当の差が出てくるというのが実態ではないかと思います。
  59. 大原亨

    ○大原(亨)委員 住居と事業所、事業所で保険証を発行しますから、社会保険事務所単位ですから、大都会のグループの中では今の御指摘のような点があると思う。しかし、例えば長野県は国民健康保険の場合も政府管掌の場合も、政府管掌は一人当たりの医療費が十四万円ですね、これは四十三番目。それから沖縄は十四万円、こういうふうになっておりますね。  細かい議論は別ですが、やはり国民健康保険をやる場合に、一人当たりの医療費地域差を非常に問題として適正化政策を立てておるわけですが、政府管掌についてもちゃんとやらなければいけない。そうしないと、医療費国民負担率の問題が全体として解決ができない。政府が自分がやっておることは棚に上げておいて、国民健康保険だけやるというのも片手落ちである。これは制度全体としての整合性がない。そういう面において、これを的確に分析をしてもらって、大都会の特徴である非常に通勤範囲が長くなりますと、そういうギャップが出てくるわけですけれども、そういう点はそれぞれ統計を修正する方法もあるはずですから、それをやはりやらなければいけない。組合管掌なんかにしましてもそうだし、共済についてもそうであるということであります。これは支払基金等を通じてできるように思うのですが、それをやることが目的ではなしに、地域的な医療費についてアンバランスがあるというのならば、単なるモラルの問題だけではないと私は思うのですよ。私が聞いたところでは、モラルの問題であると言われた知事がおりますが、それはモラルが高いところと低いところは一人当たりの医療費が違いますと言った人がありますけれども、そういう議論は全部が全部のむわけではないわけです。しかし一人当たりの医療費を問題にするのだったら、国民健康保険だけでなしに、他の制度を問題にしなければいかぬ。その問題について総合的に考えていかなければいけない。そのためには、医療の供給の面においてポイントとなる点は決まっておるわけですから、それをきちっと節度を持って実行するということに、問題を前向きにしていかないと解決できないのではないか、こういうふうに思います。この点について大臣の所見があれば聞かせてもらいたい。
  60. 藤本孝雄

    藤本国務大臣 御指摘のとおりだと思っております。医療費地域差問題を是正していくことは極めて重要な課題でございまして、これは国保のみならず政管健保におきましても同様でございますから、御指摘のとおりこれから進めていきたいと考えております。
  61. 大原亨

    ○大原(亨)委員 今まで政府の側の答弁では、保険給付を八割給付にするということを盛んに言ったわけですね。全体の保険制度給付を八割にそろえるという考え方、そういう考え方は機械的に適応することができますか、実現できますか。国民健康保険については八割、引き上げることについてはどういう時期をめどに実施するという今の政府考え方であるか、お聞かせいただきたい。
  62. 下村健

    下村政府委員 八割給付という問題につきましては、従来から見ると、実は二つの議論があるわけでございまして、被用者保険等が根っこに定率の八割あるいは九割というふうな給付がございますので、それに国保も合わせるべきだという意味で八割給付、これはかなり古くからそんなふうな議論があったかと思います。  それからもう一つは、私どもが五十九年の健康保険法改正案を出しました際に、医療保険の将来展望といたしまして、将来の給付水準といたしまして八割程度への給付水準の統一というふうなことを申したわけでございます。これは、その当時の医療保険医療費に対する保険給付費の割合を出しますと、ちょっと当時の数字を今正確に覚えておりませんが八十数%、八二、三、八三、四、そんなところではなかったかと思うわけでございますが、トータルとしてそんなところだったわけでございます。したがって、全体としての負担を公平にして公平な給付ということであれば、しかも国民負担を余り大きく上げないというふうな前提で考えると、八割程度の給付水準の統一というところは現実的な考えられる線ではないかということで、八割というふうに申し上げたわけでございます。  ただ、私どもの申しました八割程度というのはそういう意味で、ではその給付の中身はどういう形でそれを実現するのか。入院も外来も定率の八割給付をやって、それに高額療養費をやるという形で八割程度なのか、入院をもっと高くして外来を低くする、あるいは外来を高くして入院を低くして八割なのか、それとも高額療養費部分を手厚くすることによって現在の国保給付水準をもっと上げるという議論なのか、そこら辺は、その時点では私どもとしても必ずしも明確ではないので、給付水準をどうするかという点については、今後さらにもっと議論をしていく必要がある問題ではないかというふうに考えております。したがって、現在給付の程度がどうあるかという点も今後の検討課題ということで思っているわけでございます。  また、その実施の時期につきましても、国保問題懇談会でいろいろ御議論いただいた際には、現在は直ちにそういう問題に取り組むことは無理だという議論が多かったわけで乙ざいますが、ではいつやるかという点について、まだ具体的に確たる見通しを持ち得る段階には私どもとしても至っていないというのが現状でございます。
  63. 大原亨

    ○大原(亨)委員 一人当たりの医療費の問題で池端さんからも話がありましたが、北海道型というのが一つあるわけですね。特殊な地域的な事情や歴史があるわけですけれども、広島の場合には原爆等の特殊事情があるということで数字の修正があります。下村局長も広島だし、私も広島だから、悪いかいいかわからぬけれども、広島が一番高いというふうな話だけではいかぬと思うのですが、それはまた別の議論にしましょう。  そういうことなんですけれども、やはりこれから医療給付面で医療負担が非常にかかってくるのは何かといいますと、これは地域医療、在宅ケアの場合ですね。政府は在宅ケア、在宅ケアということをしょっちゅう言うわけですよ。それが進んでいけば長期入院やその他が克服できる、こういう議論ですね。しかし、在宅ケアの場合には、例えば訪問看護とか医者が行かない場合には看護婦さんが行くとかあるいは介護サービスとかあるいは家事サービスとか、それは核家族がどんどん進んでいるのですから、共稼ぎがふえているのですから、先ほど申し上げたように、その負担をだれがするかというと、家族におっかぶせるというわけにいかぬわけですよ、これは。だから社会的に負担しなければいかぬ、在宅ケアの場合は。そういうサービスは社会的に負担するというのが、これは先進国の常識なんですね。だからそれをどういう費用で、どういう制度負担するかということをきちっと立てなければいかぬ。そのためには五年計画か十年計画を立てて、ここまでいきますよということを明確にしなければいかぬですよ。     〔高橋(辰)委員長代理退席、委員長着席〕  大臣、私も早くやめたいと思いますから頑張るようなことはしませんけれども、在宅ケアの場合には、やはり計画的にやらなければいかぬですよ。五年計画なり十年計画をやって、そして二十一世紀までにはこういうふうにするんですよということを目に見えて実現できるような手だてをしないといけない。年金について言えば、基礎年金をどうするかということで問題が一つある。それから医療保険制度では、申し上げたように、老人医療の問題がある。医療、福祉のネットサービスの面においては、在宅ケアの問題を、受け入れ体制をきちっとしなければ、これは選別主義で所得制限をしてはいけない。そういう考え方をなくして、どういう家庭でも、寝たきり老人等、痴呆性老人等、精神障害者とかあるいは重度障害者が高齢化していく中で出た場合には、家庭破壊になるのですから、最大の社会問題になるのですから、その場合にはだれがどうなってもケアが保障されるような、そういうどこまでいくんだということについて明確な方針を立てなければいけない。これを急いでやらなければいけない。そういうことをやることが、こういう保険基盤の問題とか、一人当たりの医療費の問題とか、そういう問題についてこれを前向きに処理をしていく基盤になるわけですから、そういう在宅ケアについての計画的な、総合的な実現について政府は――局長局長、聞いておらなければだめじゃないか。そういう計画を立てるというふうな具体的な作業計画があるか、いかがですか。
  64. 下村健

    下村政府委員 今お話が出ました問題点、いずれもごもっともでございまして、私どもとしてもそういう問題点は非常に認識いたしておるわけでございます。  ただ、老人の問題、在宅だけですべてが解決するというわけではありませんが、現状から見ますと、在宅についての体系化と申しますか、標準化というふうなものもなかなか進んでない、余りにも施設に偏っているのではないかということで、当面の重点として在宅に力を入れているということでございます。  その場合に、現状を見ますと、やはり地域ごとの状況でいろいろ在宅対策というものをやっていますので、やはり全国的に見て、どこの地域でも一定の在宅サービスが受けられる、その場合にできるだけ広い範囲の人がだれでも手に入れることができるというふうな体系をつくっていくことが必要ではないか、これが目標としては私どもの考えているところでございます。  その場合に、現在の状況からしますと、例えば在宅で一体どの程度のお年寄りならお年寄りを相手にしてやっていけるのか、これはいろいろな条件がありますので、必ずしも一律に決められないかもしれませんが、それをまず見きわめていく必要があるだろう。それに一体どのくらいの費用をかければやっていけるのかというふうな問題も当然伴ってまいります。そんなことを頭に置きまして、在宅対策の総合的なモデル事業のようなものをまずやってみて、在宅の体系化というふうなことから手をつけていきたいというのが現在私どもが取り組んでいる状況でございます。
  65. 大原亨

    ○大原(亨)委員 最後ですが、厚生大臣、きのう税制協議会では与野党で一定結論が出たようです。それで所得税、住民税減税については財源問題は切り離す。自民党はそうでないようなことを言っているらしいが、そうでない、切り離すということになったようですね。  考え方は、私申し上げましたように、年金でも医療でも在宅ケア、在宅福祉、地域福祉の問題でもそうですね。ナショナルミニマム、最低の基準だけは国が持つ、そして自治体がその上にいろいろな創意工夫をして積み上げていく、こういうことが必要である。したがって、その順序を誤らないように、そういう基盤の上に税負担をどうするか、保険料負担をどうするかということを総合的にやはり考えていくような考え方でないと国民不在になるのではないか。今の竹下内閣の考え方は逆じゃないか、本末転倒じゃないか、私はそう思うのです。厚生大臣としてしゃんとした所見を述べてもらいたい。
  66. 藤本孝雄

    藤本国務大臣 社会保障制度国民生活の長期安定の基盤でございますから、私どもとしては必要な給付は確保してまいる、これには全力を挙げてまいりたいと考えております。
  67. 大原亨

    ○大原(亨)委員 では終わります。
  68. 稲垣実男

    稲垣委員長 この際、暫時休憩いたします。     午前十一時五十七分休憩      ────◇─────     午後二時一分開議
  69. 稲垣実男

    稲垣委員長 休憩前に引き続き会議を開きます。  質疑を続行いたします。伊藤忠治君。
  70. 伊藤忠治

    ○伊藤(忠)委員 本法案が上程をされまして、関係大臣に対して質問をいたしたところでございますが、関係大臣からそれぞれ御答弁をいただきましたので、その答弁をもとにしまして、本委員会で私の方から以下質問をさせていただきたい、かように思っているわけでございます。  まず一点目の質問なんですが、今回の法改正について厚生大臣はこういう答弁をなさっておみえでございます。「給付負担公平化に向けての改革の一環として今回の法案を位置付けている」さらに続きまして、「医療保険制度の将来構想については、引き続き検討していきたい」このように答弁をいただいているわけですが、その中身について、現時点で明らかにできる具体的な内容についてまず答弁を賜りたいと思います。
  71. 藤本孝雄

    藤本国務大臣 長期ビジョンといいますか長期目標については、御承知のように、厚生省高齢者対策企画推進本部報告という形でまとめておりますが、その中で、医療の問題につきましては、いわゆる一元化給付負担の公平を図っていく、そういうことを申し上げているわけでございます。内容につきましては、今の制度を前提にいたしまして、おおよそ八割程度の給付水準を目標にして給付負担公平化を図っていくということを、今一元化の将来の目標として考えているところでございます。
  72. 伊藤忠治

    ○伊藤(忠)委員 そうすると、今答弁がございましたが、給付水準は八〇%、一元化というのは、現行制度を前提にして給付負担の中身をどのように水準を引き上げていくのか、統一をしていくのかということの考え方であろうと思うのです。そういう考え方を基本に据えまして、この法案では二年間限定立法になっているわけですが、それは六十五年度に今おっしゃった考え方を具現化する、こういう立場に立っての答弁だと受けとめてよろしゅうございますか。
  73. 藤本孝雄

    藤本国務大臣 今までいろいろな面で改革を行ってまいりましたことは御承知のとおりでございます。老健法、退職者医療制度、健保の一部改正、また今回の国保改革、これはすべて将来の給付負担公平化に向けての条件整備、こういうことでございます。しかし、今御指摘がございましたように、六十五年度までに老健法国保見直しというものがあるわけでございまして、その見直しをした上でおよその道筋というか目標がよりはっきりしてくる、そういうふうに考えております。
  74. 伊藤忠治

    ○伊藤(忠)委員 私はこのことを突っ込んでというか、かなり具体的な質問なり議論をさせていただくと一番いいのですが、時間の配分でほかに聞きたいこともございますので、そこまでいかないと思いますが、今大臣の答弁を伺いまして、二年間やっていって六十五年には今おっしゃいましたような考え方を具現化できる、一挙にそこまでいけるというようには、私自身勉強させていただいて、そのようにはなかなか理解をできないと思うのです。それの極めて大きなステップが今回の法改正であるとは受けとめにくいわけですが、大臣がおっしゃいましたとおり、今回の法改正は六十五年から給付負担一元化に向けて突っ込んでいくための非常に有効な地固め、言うならばステップなんだ、このように受けとめてよろしゅうございますか。
  75. 藤本孝雄

    藤本国務大臣 そのようにお考えいただいて結構だと思います。
  76. 伊藤忠治

    ○伊藤(忠)委員 大臣がそうおっしゃるのですから、そのように答弁をお聞きすることにいたしまして、次に移らせていただきますが、私の質問に対してこういう答弁もいただいているわけです「老人医療制度財源は、公費と拠出金で賄うことが最もふさわしい現実的な方式」である、こういうことなんですね。  それで、何といいましても、今後一層高齢化が進んでまいります。当然現役の世代の保険料が高騰していく、それも非常に厳しい状況になっていくと思うのです。そうなりますと、将来にわたって有効に、こういう考え方に基づく老人医療制度が運用できていくかどうかについては、私は極めて疑問に思っているわけでございます。ですから、同僚議員からも種々議論がなされているところでございますが、むしろ一般財源を中心に確保するような制度に早い時期に抜本改革に着手するということが、遠い将来を展望した場合にはベターなのではないか、このように私は考えるわけですが、この点についてどうお考えでございましょうか。
  77. 岸本正裕

    ○岸本政府委員 老人医療費財源は、主として生産年齢世代の負担によるしかないわけでございます。その負担の方式につきましては、老人保健制度創設当時からいろいろな御議論があったわけでございます。我が国におきましては、医療保険制度が分立して保険者間の老人加入割合に著しい格差があるという現状から、いわば各保険者の共同事業という形で老人医療費の七割部分について各保険者から拠出金を御負担願っているところでございます。このように公費と拠出金で賄う現行の財源負担方式が老人保健事業の性格から見て最もふさわしい現実的な方式ではないかと考えているということの趣旨を大臣から御答弁を申し上げたところでございます。  今の先生お話の中で、現役世代の保険料が高騰する中で将来にわたって有効に運用できるかどうかという危惧を示されたわけでございますけれども、この老人医療費の高騰というものは、我々できるだけむだを排除するという意味において適正化努力をしていかなければいけないと思っております。それにいたしましても、やはり老人医療費の全体というものは増勢、増加していくということは避けられないものだと思っております。その中でこのようなものをどのように負担をしていくのが最も公平であるか、老人保健法の趣旨にかんがみまして、これからどういうようにするか、それをいろいろと関係各位の御意見を伺いながら検討をしていかなければならないというふうに思っているわけでございまして、その中ではいろいろな御議論があろうかと思いますけれども、私ども今考えておりますのは、先ほど申し上げましたように、現行の社会保険制度に立脚をした仕組みというのが最もふさわしい現実的なものではないかというふうに現在考えているということを申し上げたわけでございます。
  78. 伊藤忠治

    ○伊藤(忠)委員 現行方式で今日まで来ましたし、これからもそれでいけるならば、さらにどのように充実していくかという議論で問題の解決が図れるのでしょうけれども、やはり高齢化社会がどんどん進行します。現状でも問題を抱えている。そうすると、公費とそれから拠出金方式、これを固定的に考えて、将来にわたって必ずやっていけるんだ、その道しかないんだというかたくなな考え方では、やはり無理が生じるのではないか、そこはやはりいろいろな角度から検討を進めるべきではないのかということを私は言いたいわけでして、そういう考え方、私たちのこの考え方に対して、いや、そうじゃないというふうに全く否定されるのか、いやいや、それはやはり状況を見ながら、幅を持って抜本改革に向けて検討を開始するということが必要なんじゃなかろうか、こういう立場なのかどうか、その点も聞かしていただきたい、こう思うのであります。
  79. 下村健

    下村政府委員 老人保健制度改正なんかがありまして、健康保険組合等から見ますと拠出金の負担が非常にふえてきた。特にここ数年は経済状況も非常に停滞していたと申しますか、賃金上昇率も低かったということもありまして、健康保険組合での負担感というのは非常に大きいわけであります。そういうことを背景にして、健保連あたりも、ただいまお話がありましたように、老人医療費について税負担に切りかえてはどうかというふうな考え方が出てきたということではないかと思っております。  ただ、現在の局面を見ますと、そういう意味で、保険制度全体を通じまして、老人医療費が非常にふえていく中で負担が急増しているというところがそれぞれの保険制度にとって非常に大きな問題になっておるわけでございますが、今後の展望が果たしてどうなるのか、それから保険料負担が果たして現在水準以上に上げられるのかどうか、そこら辺が問題になってくるのではないかと思います。税の方も、一体これから税負担をどうしていくのか、いろいろ議論がありますので、私ども必ずしも今の制度だけでやっていくのかどうかという辺については、確かにもう少し幅を持って検討する余地もあるいはあろうかと思いますが、ただ、これまでの経緯、それから今の税制の議論等を私どもも拝聴しておりますと、現在の体制ということで、それに改革を加えながら進んでいくというのが現実的な方向ではないかと考えておりますと、こういうことでございます。
  80. 伊藤忠治

    ○伊藤(忠)委員 次に質問いたします。  高齢者対策の一元化についてなんですが、こういう答弁をいただいておるわけですね。「長期的課題として取り組んでいく」と。問題は、その考え方がどうなのかという点をもう一度確かめたいと思って質問するわけですが、私たちが考えますに、雇用、年金、医療というのは何といっても福祉社会の大きな柱であります。現実は、この三つの問題、制度というのが一元的に統合されていない。これは極めて大きな問題点であろうと思っているわけであります。とりわけ高齢化社会が進行しているわけですから、これが統合されていない、接続していないという点は一つの大きな欠陥でもあろう、こう思っているわけです。現実的には、もう御承知のとおり退職の年齢といいますのはさまざまでありますけれども、なかなか六十歳定年というのは制度が一般的には行き渡っていないという現状ですが、年金の支給開始年齢というのが六十五歳にこれからなっていくであろうということになりますと、退職はしたけれども、年金とこれが接続をしていないということになれば、これは何といっても年金の支給開始年齢というのは六十歳、こういうものが望まれるところでありますし、本人が六十五歳で退職をする、定年が来た、すぐこれが年金生活につないでいけるというような制度が何としてもこれからの社会保障の一環としては非常に望まれているところであろう、私たちはこう思っているわけでございます。  その場合に、老人医療の対象年齢というのは、今は七十歳、それぞれの県段階では多少六十八になったりというのはございますが、これを六十五歳に老人医療の対象年齢引き下げていって接合を図る、高齢者対策の一元化としては、早急にやはりこういうシステムをつくり上げていくということが必要なのではないか、このように考えまして、実は質問さしていただいたのです。この考え方について一定の答弁をいただいておりますが、抽象的ですので、なおひとつ深めた答弁をいただきたい、こう思うわけです。
  81. 岸本正裕

    ○岸本政府委員 老人医療の対象年齢の問題でございますけれども、定年の延長とか高齢者雇用の推進状況、公的年金の支給開始年齢の動向のほかに、高齢化の進展とか財政状況等、今後の社会経済情勢を総合的に考慮いたしまして、長期的に検討すべき課題であるというふうに認識をしておりまして、その旨をこれも先生大臣から御答弁申し上げたとおりでございます。
  82. 伊藤忠治

    ○伊藤(忠)委員 次に、自治大臣からこのような答弁を国保事業についていただいているわけです。「国保事業は原則として保険料および国庫支出金により賄われるべきものと認識している。しかし、増高する医療費等に対応するため、やむなく一般会計からの繰入れ等が行われている」、こういう答弁でございます。厚生大臣あるいは厚生省としては、このお考えと同じ立場に立たれますか。
  83. 下村健

    下村政府委員 国保事業財源として、基本的には保険料国庫負担金が中心になる、これは現行制度としてはそうでありまして、一般原則としてはそのとおりではないかと思います。  ただ、国保の運営は法律上はそういうことでございますが、法律の上でも都道府県及び市町村国保事業に対して助成できるというふうな規定も設けておりまして、これは実は国保事業の運営主体としての市町村に、例えば給付率を初めといたしましていろいろ自主的な判断の余地を残し、それに対応して一般会計からの繰り入れもやることは法律上は問題がないというふうな考え方をとっている。したがって、今日の財政制度で申しますと、自治体が一般会計からの繰り入れを国保にやった場合には、したがって、それは市町村の単独と申しますか独自の判断に基づいて行われるものということで、財政上のそれに対する、例えば交付税等の措置はとられてない、こんな格好になっているわけでございます。そういうことで、原則として国保制度というのはそういうものだというのは、自治大臣がおっしゃっているとおりではないかと思います。  それから、やむなく一般会計からの繰り入れが行われる。これもほぼ全体的な状況といたしましては、そういうものが比較的多いのではないか、こんなふうに考えているわけでございます。ただ、一般会計からの繰り入れの内容をいろいろ見てみますと、先ほど申しましたように、国保の運営については各市町村の独自性というものがかなり認められているという点もございますので、いろいろな理由で繰り入れが行われているわけでございます。例えば、このごろは余り新しくそういう措置をとられることもなくなったわけでございますが、国保制度の上に立って単独の形で、例えばいろいろな一部負担金を軽減する、障害者の医療をやりますとかあるいは母子世帯医療をやりますとかあるいは子供の医療をやりますとかいったふうなものもいろいろありまして、それに見合う、あるいはそれに伴う財政影響に対して地方自治体が一般会計からの繰り入れを行っている、こんなものもございます。あるいは事務費について、特別な事業をやるために国保制度を利用して、それに対してヘルス事業なんかについての金を出すというふうなものもございまして、総体としての認識は、おっしゃるようにやむを得ず入れておられるものが、全体的なものとしてはそういうものが多いという意味で自治大臣がおっしゃるとおりだと思いますが、個々に見てまいりますと、自治体の事情によっていろいろなものもこれは含まれているというのが現実の姿ではないかというふうに考えております。
  84. 伊藤忠治

    ○伊藤(忠)委員 自治大臣のこの答弁を私も読み返してみまして、この考え方厚生省としてもそれはそのとおりだということになりますと、実際にいわゆる国保の実態は、その運営に当たって自治体の負担というのが年々歳々ふえていっているわけでしょう。その現実と建前の乖離というのが年々歳々広がっているんじゃないですか。私はそういうふうに思うのですね。今回の法改正でも、これはもう申し上げるまでもなくて、むしろ都道府県の負担分が四百四十億ですか、これが以前よりは負担増になるわけで、市町村の場合だって二百五十億がさらに負担増になるわけですね。これに対して国の方はむしろ助かっていくわけですね。これからもこういう傾向で実態は進んでいくのか。運営するためにはそれはやむを得ないんだという格好で、国の支出分よりも、むしろ地方にその負担がどんどんかぶっていくというようなことが進んでいくのか。今もその基本的な考え方で答弁がございましたけれども、原則としては保険料と国庫支出なんだという本来の姿に改革を通じて戻していくのか、この点についてはどうなんですか。
  85. 下村健

    下村政府委員 その点につきましては、さらにいろいろ議論を深める必要がある問題点が幾つかあろうかというふうな感じで私ども受けとめておるわけでございます。問題が地方財政に関連する問題でございますので、あるいはこの点については自治省側の見解も十分私ども聞いてみる必要もあろうと思いますが、例えばやむを得ず一般会計で繰り入れをしているものの中に、保険料が上げられないというふうなことで、一般会計から補てんをするというふうな例がございます。これはかなり多くの例についてでございます。  その中に、例えば私どもとしては今回低所得者の問題を今度の対策で取り上げたわけでございますが、所得が低くてなかなか上げられないというふうなものも、これは各市町村保険料の問題の中にはいろいろな問題が含まれておりますので、単純に低所得者の問題だけと割り切れないかもしれませんが、そういうたぐいの問題も当然含まれておるはずでございます。したがって、私どもとしては、そういった対応ができるものについては、やはり制度的な裏づけをつくっていくということが一つの解決策にならないだろうか。現実にいろいろな形で行われておるものの筋道をつけながら、財政的な裏づけもつけながら、そういう意味では国保制度を変えていくという面があってもいいのではないだろうか。これが厚生省考え方でございます。  ただ、今回の改革では、その点については明確に、国保制度財政原則については国庫負担保険料でやるというのを変えるというところまで政府内で話が決まったということではありませんで、むしろ低所得者の存在という問題を現実問題として認めて、これについては福祉的な観点も加味して、いわば国保制度とちょっと離れた格好で基盤安定制度ということで、保険料負担軽減について地方負担も導入してこれを負担する道を開いた、そういう格好になっているわけでございます。  そういう意味で、私先ほど申しましたように、国保の現在の財政原則というのは、保険料国庫負担でやる、そこの基本は今回も特に変わったわけではありません、こう申し上げたわけでございます。
  86. 伊藤忠治

    ○伊藤(忠)委員 答弁はそうおっしゃいますけれども、その国保事業財政の基本原則というのは、もう形骸化しているように私は思うんですよ。今説明がございましたけれども、実態はそういってない、原則と実態は非常に乖離が大きくなっていって形骸化している、私はこういうふうに指摘せざるを得ないと思うのです。  それでは、お聞きしますけれども、今回の改正案では、基盤安定制度ができまして、それに都道府県が二百五十億円持ち出すわけですね。高額医療費の共同事業で百九十億円持ち出すわけですね。これまでは都道府県というのはそういう負担がなかったと思うんですね。これを求める。二年間、これでこの法案が通ればやっていくというんです。それで六十五年には抜本改革をやられるというんですが、一たんつくったシステムは、そう簡単に廃止をするとかなくなるという問題ではなかろうと思うのですが、六十五年度以降もこのシステムが残っていくとするならば、存続するとするならば、都道府県の二百五十億という負担額あるいは百九十億の負担額というのは、このままで済まぬと思いますよ。これからもっとこれが負担増という格好で額がふえていくんじゃないですか。その辺はどうですか。
  87. 下村健

    下村政府委員 私どもとしては、今回の改革の基本になる考え方といたしまして、国保制度についても地方団体の積極的な関与が必要だということで考えておりますので、それを具体化していくという形で六十五年の改革にも取り組んでいきたいということについては変わりはございません。ただしかし、仮にそういうことでいろいろ考えていく場合でありましても、地方財政に、それによって不当なしわ寄せをするとか負担増を招くということではありませんで、今回もそういう意味で、地方財政については財源措置を講じたわけでございます。  厚生省予算としては、国の負担が減っているではないか、こういう御指摘もあろうかと思いますが、一般会計総体といたしましては、国の負担減以上の財政措置を講じておるわけでございまして、地方財政全体として見ますと、あるいは一般会計総体として見ますと、地方負担がふえているという御指摘は必ずしも当たっていないのではないかと思うわけでございます。  今後も地方負担の問題、いずれにせよ、問題点一つとして残っていくかと思いますが、そのような場合でありましても、厚生省といたしましては、地方にそういった形でしわ寄せをしないという考え方努力をしてまいりたい、こう考えておるわけでございます。
  88. 伊藤忠治

    ○伊藤(忠)委員 そのように答弁はおっしゃいますけれども、フォローしたと言いますけれども、それは地方交付税、いただいたものを好きなように使えるというような状態じゃないことは御承知のとおりなんで、これはやはりひもつきなんですよ。ですから、なかなか地方はおっしゃるような実態ではありませんで、今回の負担増というのは、必ず地方財政を圧迫していくことになるのは間違いありませんので、これはどういう答弁をいただこうと私たちとは見解を異にしますから、はっきりさせておきたいと思うのです。  次に移りますけれども医療費適正化対策について答弁がありました。この具体的な対応について明らかにしていただきたいと思います。  これは五十七年八月九日の衆議院社会労働委員会、第九十六回の国会附帯決議がございまして、ここではきちっと立派な附帯決議がついているわけですね。中身は、「薬価基準適正化医療機関に対する指導、監査の徹底、医療費通知制度の普及、高額医療機器の共同利用」、このようにこの種の附帯決議の中では一番具体的に指摘をされているわけであります。こういう国会の議論を通じて附帯決議があるわけでして、これを踏まえてどのように今日まで具体化をされてきたかということも含めまして、医療費適正化対策についてひとつ具体的な答弁をいただきたい、かように思います。
  89. 下村健

    下村政府委員 附帯決議で指摘をされた点につきましては、まず第一が薬価基準でございますが、これは市場実勢価格を適切に反映するということで、一昨年までは毎年薬価基準の改定を実行してきたわけでございます。ことしは一年置きまして、四月一日から改正するということで、一〇・二%の薬価の引き下げ、これは医療費にしますと二・九%ということになりますが、こういうことで一連の改革を実施しておりまして、薬価差も若干ながら減少している。医療保険医療費に占める薬剤費の割合も少しずつ低下してきているというふうな状況になっております。  それから、二番目が医療機関に対する指導、監査の徹底でございますが、医療保険上の診療報酬の不正または不当な請求に対しては、指導、監査を実施して、診療報酬の返還あるいは保険医療機関の指定取り消し等、厳正に対処するということで実行いたしているわけでございます。六十一年度の実績で申しますと、十五億円返還させて、三十一医療機関の指定を取り消すというふうな、これは一番厳しい部分だけを申し上げたわけでございますが、そういった処分を行っているところでございます。  それから、医療費通知の普及でございますが、従来からこれを徹底するということで、健康保険国民健康保険ともほぼ一〇〇%と申してよいと思いますが、ほとんどの保険者において医療費通知は実行するという段階まで至っております。今後さらにきめ細かく医療費通知の徹底を図ってまいりたいというふうに考えております。  それから、高額医療機器の共同利用の推進につきましては、医療機関相互の機能の連携を進め、医療費源の効率的な活用を図るという上で、私どもも極めて重要視しているわけでございます。これにつきましては、現在各都道府県において作成進行中の医療計画におきまして、地域の実情に応じた医療機器の共同利用が図られるよう指導を行っているところでありまして、地域医療計画、これからさらに具体的な内容を盛り込むということが必要な部面もございますが、こういった方向に沿いまして指導を行ってまいる所存でございます。
  90. 伊藤忠治

    ○伊藤(忠)委員 今具体的な対処策の答弁をいただいているわけですが、例えばレセプトのチェックも強化をなさって、大きな成果を上げたというような報告がございました。にもかかわらず、一方じゃ薬価基準引き下げて、もちろん診療報酬も上がっていますけれども、多角的に手を打たれて、それでもなおかつ医療費が増高するというのは、これはどういうところに原因があるとお考えなんでしょうかね。  私が言いたいのは、例えばレセプトのチェックも、これはそれぞれ当該機関でもってきちっと一次審査、二次審査、再審査というようにやられまして、単価そのものは薬価基準なり診療報酬の、つまり手数料ですが、そういうものは年々適正にやられているわけでしょう。あとは結局量の問題ですかね。薬が結局多く使われるから、しかも治療そのものが非常に総合的高医療ということでやられるものだから、トータルで見ますと、医療費がかさむんだということなのか、医療費が高くなるという最も主要な原因は何だとお考えですか。
  91. 下村健

    下村政府委員 医療費が増大する原因についての分析はなかなか難しゅうございますが、人口増の影響が一%程度はあるということは確かでございます。またそのほかに高齢化に伴う医療費の増加というものもございます。あと今の状況で申しますと三%ぐらい、なかなか特定の原因と結びつけて考えるのが難しいものがございますが、この部分を国によりましては、これを医療の高度化というふうな言葉で説明しているところもございます。供給体制とも関連いたしまして医療が非常に高度化する、それの普及があるというふうな問題が非常に大きく影響しているのではないかというふうに考えております。  それからまた、形を変えて見ますと、現在の医療費の増加の半ば以上は高齢者の入院医療費というのが非常に大きくふえているわけでございます。これにつきましては、長期入院の問題、特に社会的入院という言葉で問題点指摘されているわけでございますが、老人に対する適切な処遇体系をつくっていくというふうな医療そのもののあり方を含めた、従来の適正化という考え方からもう一歩進んで、医療そのもののあり方というふうなものを含めて変えていくという努力が必要ではないかということで、昨年、国民医療総合対策本部というふうなものをつくりまして、その中間報告をまとめたわけでございますが、そういう考え方もとにして、医療そのもののあり方を高齢化社会に即したものに変えていくような努力が必要だろうということを考えているわけでございます。四月一日からは、先ほど申し上げました薬価改定と並行いたしまして診療報酬の改定も実行することにいたしておりますが、その中でも、そういった中間報告考え方に沿って診療報酬自体の合理化を進めるというふうなことも取り上げているわけでございます。
  92. 伊藤忠治

    ○伊藤(忠)委員 今指摘がございました人口増の問題、高齢化の問題、これは医療費の抑制策といいますけれども、なかなか抑えようのない問題を含んでいますよね、はっきり言って。あとは医療の高度化でしょう。これは今も報告がありましたけれども、附帯決議にもございました高額医療機器の共同化というのはなかなか進みませんよね。なかなか進まないと思うのです。非常に難しい問題ですよね。これはお医者さんにかかわる問題です。それからあとは老人対策ですよね。これも一面的な対策で済むわけじゃございません。よく言われますように、受診者の行動の問題、モラルの問題にも発展しますし、老人医療対策というのは病院だけじゃございませんで、在宅の問題、健康づくりの問題、いろいろ含めてそうなのですが、というふうに見ていきますと、結局高医療費対策というのは、治療にかかわる問題というのは、何といってもそこらあたりにどうも対策を立てれば、有効にセーブしていけるようなファクターが存在するのじゃないかと私は感じるわけでございまして、特にチェック体制、現在のシステムで、例えばレセプトというのはどんどんふえると思うのですが、これをチェックしていく当該機関の要員問題、それから国保連合会、だれだれさんのものがどのように使われているかという把握の問題だって、これは人がもっとおればきちっとできるじゃないかという悩みが当該機関にあるようにも聞いているわけですね。その点の問題点というのを厚生省としては把握をされているのかどうかというのを一点私はお伺いしたいと思います。  もう一つは、薬づけ、検査づけの問題。これは巷間言われていることです。それを解決をしていくという点で、何といっても指導的な地位に立たれておる医師の立場から、モラルの問題も含めまして、やはりきちっとやってもらわなければ困る、こう思うのですよ。もちろん患者さんの方も、病院ずれしていまして、はしごして、あの病院はいかぬからこの病院にと渡るなんていうことはおのずから自制してもらわなければいけませんが、診療する側もその辺はきちっと踏まえてやってもらわないと、行政サイドで高医療費対策に何ぼ頭を抱えても、やはり限界がございますから、巷間言われるそういう批判を受けますと、常々私としてもそのように認識をしているわけです。ほとんどのお医者さんというのは立派な方でございます。しかし、時々事件が起きますね。ああいう世の指導的な立場にありまして、人の命を預かっていただいておる医師の皆さんというのは、社会において社会的な責務を果たす、税制の面からもそれを支える特例措置が加えられているわけですね。ですから、そういう点もしっかり踏まえていただいて、高額医療で全体が非常に悩んでいるときに、もちろん受診する側もその点はきちっと踏まえるが、やはり治療に当たられるそういう皆さん方も、その辺をきちっと踏まえて対処いただくということで両々相またぬことにはいけない。これは保険制度ですから、だれも助けてくれぬわけですからね。私はこう思うのです。  私が今指摘をいたしましたのは限られた諸点なのですが、まださまざまあるとは思いますけれども、その点きちっと厚生省の立場からも与えられているそういう役割というか権限の中で対処をいただきたい。でないことには、これは回り回って結局自分の上にかぶってくるわけですから。その点を踏まえて、一方ではやはり国会の議論を通じて、抜本改革に向けてどのように踏み出していくか。そのときに余り過去のことにこだわらずに、二十一世紀を展望したら、多少のことはあっても前へどんと進んでいくという抜本改革に向けての姿勢を持っていただかないと、なかなか問題の解決が図れないと私は思いますので、今申し上げました点について、大臣あるいは局長の方からも答弁をいただきたい、かように思います。
  93. 下村健

    下村政府委員 おっしゃるとおり、保険制度でございますので、医療費あるいは医療の使われ方が余り野方図なことになりますと、結局もとに返ってくるということになるわけでございます。したがって、ただいま制度問題についてもいろいろございましたけれども、私どもとしては、医療費適正化あるいは医療の総合対策といったものを一つの大きな柱として、もう一つ制度改革ということを大きな柱として、その二つを両輪として取り組んでいきたいということで努力をいたしておるわけでございます。  何といっても老人の問題はいろいろありますけれども、現状を見ますと、病院に行きまして五年も十年も入っているというふうな方がおられるわけでございます。そういったことが果たしてその老人のために本当に幸せかどうか。もっとそれぞれの老人に適した処遇体制をつくっていくということが医療適正化にもつながるのではないか、こんなことを考えながら老人対策は取り組んでまいりたいと思っております。  それから、審査体制につきましては御指摘のとおりでございますので、体制の整備、特にそのコンピューター化というふうな問題もいろいろ取り上げてまいらなければなるまいと思っております。非常に大量になってまいりますので、今回の改革案では、市町村ごとの、医療費の高い市町村について特に詳細な安定化計画をつくってもらう。その前提として相当詳細な要因分析をやってもらおう。地方ごとにそれぞれ違った要素が若干ずつ出てまいるというふうに思っておりますので、その地方ごとの特有な問題というものも頭に置きながら適正化に取り組んでいただいてはどうだろうか。病気の種類も違うとか、医療機関の利用の仕方も地方ごとに多少の差があるように思うわけでございます。そういった問題を各市町村ごとに細かく分析しながら、問題点に取り組む体制をつくっていきたいというのが今回の考え方でございます。  それから、医療機関の不正については、これはもちろん許されていいことではございませんので、断固として厳しい姿勢で臨むということでございます。  それから、現在の医療のあり方に関連して、大学教育のあり方あるいは大学病院のあり方についても、今後引き続き取り組む課題ということで私どもとしては考えておるわけでございますが、そういった面も含めて、医療のあり方についてはかなり基本にさかのぼって、高齢化社会にふさわしいものに変えていく必要があるのではないか、こんなことを考えておるわけでございます。  御指摘方向で私どもとしてもぜひとも頑張ってまいりたいということでございますので、よろしくお願いいたします。
  94. 伊藤忠治

    ○伊藤(忠)委員 質問を終わります。
  95. 稲垣実男

    稲垣委員長 吉井光照君。
  96. 吉井光照

    ○吉井委員 それではまず最初に、最近よく言われております一元化論と、それから改革案関係についてお尋ねをしておきたいと思います。  現行の医療保険制度は、地域保険としての国保と職域保険としての被用者保険の二本立て、このような形になっているわけですが、これがどういう形になることが一元化なのか、まずこの点からお尋ねをしたいと思います。
  97. 下村健

    下村政府委員 一元化の具体的なあり方ということにつきましては、給付負担の公平という基本的な理念につきましてはほぼ御理解をいただいていると思うわけでございますが、一元化の具体的な形については、かなり基本的なところで意見が対立している状況でございまして、なかなかこれを現在の段階でこうだと明確に示すことはできませんが、私どもとしては、現在の国民保険体制の基本は一つ前提として守っていってはどうだろうか。それから給付水準につきましては八割程度。現在の水準をならしますと平均八割程度、こういうことになろうかと思うわけでございますけれども、現在の水準はこれも守ってまいりたい、そういうことで負担面の公平化を図っていくということが一元化の形ではないか、こう考えておるわけでございます。
  98. 吉井光照

    ○吉井委員 最近の新聞報道によりますと、地域総合健康保険組合というものが近く認可をされる、こういうふうに聞いておるわけですが、こうした健保組合は一元化への方向に合うのかどうか、この点いかがですか。
  99. 下村健

    下村政府委員 まず地域健保組合でございますが、現在の健康保険の組織の方針と申しますか基本的な考え方は、企業単位と申しますか職域単位、これが基本になっております。したがって、健康保険の方で地域保険を認めるといいましても、長年の実績があります職域あるいは企業単位というものを根底から覆して地域的に健康保険を再編成する、これはなかなかできないと思っているわけでございます。  ただ、そういった前提を置いて考えてみましても、地域によっていろいろな特色がございまして、地域として一つの強固なまとまりがある。例えば商業団地でありますとか工業団地でありますとか、その地域に特別の非常に強固な結びつきを持った組織があるとかいうふうな例もありますので、そういったものについては、従来の基本原則にかかわらず地域単位の健保組合もつくっていってはどうだろうかというのが私ども考え方でございます。  そこで、一元化ということの中で健康保険組合をそういった形で多様化してどんどんつくっていくということはどうなのか。一元化ということであれば、むしろ余り多くの保険者を乱立させない方がいいんではないか、あるいはこんな考え方もあろうかと思いますが、私どもとしては、従来の基本的な枠組みの中で、やはり保険者というものが適切な規模、内容であれば、ある程度できてもいい。その上に立って、保険制度全体の問題としての一元化あるいは老人保健制度、退職者医療制度というふうなものを通じて皆保険体制ができるような適切な調整組織をつくっていく、こういうことで考えているわけでございます。地域健保組合もそういうことで、でき上がった場合には健康保険組合の一つとして全体の体制に協力をしていただくという点におきましては、従来の健康保険組合と何ら変わりはない、こう考えております。
  100. 吉井光照

    ○吉井委員 ところで、本改革案が大蔵、自治、厚生の三者合意の成案、このように聞いておるわけですが、これによって本当に国保の経営基盤が安定的に保障されるのかどうか、この点いかがですか。
  101. 藤本孝雄

    藤本国務大臣 御承知のように、国民健康保険制度は最大の制度でございまして、最近この国保が経営上極めて厳しい状況にある。したがいまして、国保の長期安定化を図っていくということにつきましては、これはもう大方の皆さんの一致したところでございます。その場合に、国保を長期安定化していくためには、どういたしましても不安定になる構造上の問題が幾つかあるわけでございまして、一つはお年寄りが多い、それから低所得者の方々が他の制度に比べて多い、それから医療費地域差がある、この三つの構造上の問題が国保の不安定になってきている構造上の原因であるわけでございまして、お年寄りの問題は老人保健法ということで是正を図っておるわけでございますが、あとの低所得者の問題と医療費地域差の問題、この問題を今回の国保改革によりましてひとつ改革していこう、こういうことでございますので、国保制度の長期安定のための基盤が今度の改革によってできる。そのためには、やはり国と地方が一緒になって改革のために取り組まなければならぬわけでございまして、そういうことが今回の国保改革の一番大きなポイントであるわけでございます。  さらに、今後国保の長期安定化のためには、今社会保障制度審議会等にお願いをいたしまして、全体の中で国保はどういう位置づけであるとか、また長期安定のためにどういう方策を考えていかなければならぬかということにつきましては、これから御意見をいただきまして、総合的に私どもといたしましても判断してまいる、そういう考えでございます。
  102. 吉井光照

    ○吉井委員 今の問題ですけれども、大蔵、自治、厚生の三者合意ということですが、私たちが見る上において、どうも大蔵省と自治省は積極的というのじゃなくして渋々合意をされたというふうな感じを受けるわけですけれども、この際、自治、大蔵の考え方と御意見をお伺いしておきたいと思います。
  103. 嶋津昭

    ○嶋津説明員 国保懇及び地方制度調査会等で地方団体の代表、知事さんなりあるいは市町村長さんも入って非常に厳しい議論をした結果でございますが、今のここにお出ししている結論につきましては、現時点で妥当な結論ではないかと考えているわけでございまして、大方の地方団体におきましても御理解をいただいていると考えております。
  104. 中島義雄

    ○中島説明員 国保医療の問題といいますのは、社会保障予算全体の中から見ましても大変大きな問題でございます。厚生大臣からの御答弁にもありましたように、市町村にとりまして国保対策というのは最も頭の痛い問題の一つであるということでございます。同時に、私どもの立場から考えましても、国保に対しましては国費を二兆二千億円程度入れておりまして、まことに重大な課題でございます。これから高齢化が一層進展していく中で、いかに長期的に安定した制度を築き上げていくかということが大変重大な課題だということは、厚生、自治、大蔵、三省とも共通の認識に立っておったわけでございます。  果たしてどういった仕組みをするのが一番適当であるかということについて有識者の御意見ども伺いながら、昨年、六十二年度予算編成のとき以来、足かけ二年にわたりまして検討をした結果が今般の制度改革の案に結実してきたものと考えております。この案が果たして将来にわたって最善のものかどうかわかりませんけれども、とにかく現時点では大変工夫のされた案であろう。この実行状況等を見ながら、再度将来にわたって検討を加えていきたい、このように考えておるところでございます。
  105. 吉井光照

    ○吉井委員 では次に、各医療保険制度の実質給付率、いわゆる高額療養費も含めて現在どうなっているのか、教えていただきたいということと、先日の本会議での厚生大臣の答弁では、原則八割程度の給付水準となるように、このように答弁があったわけですが、これは実質給付率八割程度ということを意味しているのかどうか。だとすると、現行の給付水準と何ら変わらないことになる、このように思うわけですが、いかがですか。
  106. 下村健

    下村政府委員 現在の実効給付率でございますが、国民健康保険が七九%ちょうどでございます。それから政府管掌健康保険が八四・三%、健康保険組合が八五・八%ということでございます。医療保険全体としての実効給付率、これを出しますと八二・七%でございます。給付率を八割程度にするという考え方は、現在の医療保険全体の状況を考えまして、余り医療保険負担を大きくふやさないというふうな前提で考えてまいりますと、現在の給付水準を維持するというところが適当ではないかということで、給付率八割程度というふうに五十九年に考えたということでございます。ただ、八割程度という場合に、法定給付率、フラットの一律の給付率八割に高額療養費という形で考えられる方が多いわけでございますが、果たしてその形がいいのか、実効給付率八割ということで高額療養費のようなものをもっと充実するという方向で考えていけばいいか、この辺はさらに今後負担面の問題等も考え合わせて関係審議会の審議等も踏まえてさらに検討する必要がある、このように考えております。
  107. 吉井光照

    ○吉井委員 次に、老人保健制度についてお尋ねをいたします。  昭和五十八年に発足をした老人保健制度によって老人医療費の七割を各医療保険制度の拠出金によって賄うことになったわけですが、この負担が健保の財政に大きく影響をしている。そして六十二年度収支で健保組合の七割が赤字、そして赤字額も千四百六十億ということでございますが、六十三年度以降の財政はさらに悪化する一方ではないか、このように見られているわけです。したがって、このままでは近い将来には事業運営が不可能になる事態が生ずるのではないか、こういったことで、せんだって健保連から老人医療費についての提言があったわけです。すなわち老人医療を現行医療保険から分離をして間接税による国の負担ですべきだとする点、そして支払い方式も慢性疾患の場合、現行の出来高払い制を改めて定額支払い方式にすべきだとする点ですが、この提言について大臣はどのようにお考えですか。     〔委員長退席、野呂委員長代理着席〕
  108. 藤本孝雄

    藤本国務大臣 健保連の今回の提言でございますが、これは今後の高齢化社会における老人保健制度の基本的なあり方を御提言された、そういうふうに思っております。  まず第一に診療報酬でこざいますが、現行の出来高払い方式は医療費の増大に歯どめがかけられない欠点が指摘されるわけでございますけれども、一方で患者の病状に応じた診療行為を行いやすいという利点もあるわけでございまして、この点を考えますと、当面は出来高払い方式の欠点を直しながら良質な医療を効率的に確保していく、そういうふうに努めてまいりたいと思います。  それから、二番目の財源論、税制の問題につきましては、御承知のように、現在基本的な問題につきまして御議論いただいている段階でございますので、私といたしましては、その議論を見守ってまいりたいというふうに思います。  三番目の老人保健制度のあり方につきましては、これはまさにこれからの大きな課題であるわけでございますので、関係各層の御意見を聞きながら広く検討していかなければならない課題であるというふうに十分に認識をいたしております。
  109. 吉井光照

    ○吉井委員 先日の本会議厚生大臣の答弁の中で、財源調達論について、「公費と拠出金で賄うことが最もふさわしい現実的な方式」である、こうした答弁をいただいたわけですが、具体的には公費と拠出金の割合というものはどうあるべきなのか、その点はいかがですか。
  110. 岸本正裕

    ○岸本政府委員 現行の老人保健制度の公費と保険料割合でございますけれども保険料負担七割、公費三割ということになっております。これは老人医療費無料化制度が始まった昭和四十八年当時、医療保険七割、公費三割というような割合になっていたことも勘案して決められたものでございます。公費と拠出金の比率は、国、自治体、医療保険保険者の従来の負担状況とか利害関係等を総合的に勘案して決められるものでございますので、先見的に妥当な比率というのはこれこれであるということを申し上げることはできないわけでございます。その点御了承いただきたいと思います。
  111. 吉井光照

    ○吉井委員 次に、せんだって国保の問題が提起されまして、私も山口県下のある市の状況をちょっと調べてみたわけです。この市をA市としますと、保険税の最近の動向が五十八年度で平均五万一千八百三十七円、六十二年度の平均が六万七千百九十九円、すなわち四年間で三〇%の急激な引き上げとなっているわけですが、特に六十一年度には一気に約二〇%も引き上げられているわけです。このような短期間における額の大幅な引き上げは、これは無論御承知のように、退職者医療制度の見込み違いによる国庫負担金の減少等に基づく要素もあったわけですが、こうした国の施策の落ち度というものがそのまま住民負担に転嫁されていることを示しているものではないか、一面ではこういうことも考えられるわけです。しかも、本来ならばしなくてもいい一般会計からの繰り入れが六十年度までは毎年一億二千万、六十一年度からは毎年一億四千万にふえているわけです。もしこれがなかったならば、保険料の額はさらに大幅に引き上げざるを得なかったはずですが、このような国保の多額な一般会計繰り入れの実態について厚生省はどのように見ていらっしゃるのか、お聞かせを願いたいと思います。
  112. 下村健

    下村政府委員 国民健康保険制度財政的な面から申しますと、財源としては基本的には保険料国庫負担中心というのが現在の考え方でございます。ただ、実際問題といたしましては、国保事業の運営主体であります市町村がさまざまな自主的な判断によりまして、保険料のかわりに一般会計繰り入れを行っているというのが現実の姿ではないかと思います。  一般会計繰り入れの事由は、総体としては現在の保険料関連で行われているものが比較的多いというふうに考えておりますが、個々に見てみますと、保険者によっていろいろでございまして、保険料負担の緩和を目的とするもののほかに、政策的な配慮でありますとか事務費への補助あるいはヘルス事業といったもの、さまざまな事情によって繰り入れが行われているわけでございます。したがって、現在の国保制度の上でも一般会計からの助成あるいは繰り入れというものを形としては認めている、ただ財政的な裏打ちをやっていないというふうな形になっているわけでございまして、その辺は繰り入れの実態に即して、私どもとしては国保制度の安定に資するような方向で今後いろいろな対策を考えてまいるということではないかと考えます。
  113. 吉井光照

    ○吉井委員 次に、収納率の問題が非常に大きいウェートを持ってくるわけですが、この収納率の動きを見ますと、五十八年度が九二%、これが六十二年度には九四・四%と若干ながら上昇しているわけです。元来一〇〇%まではいかないまでも、九八、九%までは収納されてしかるべき税でありますから、このような低い収納率は何が原因なのか、またこの収納率向上のために厚生省はどのように指導をしていらっしゃるのか、この点をお聞きしたいと思います。
  114. 下村健

    下村政府委員 国保保険料の収納率は他の保険に比べると低い水準にあるわけでございます。被用者保険の場合には、保険料が源泉徴収されるというふうなことがありまして、ほぼ一〇〇%というふうな高い収納率になってくるわけでございますが、国民健康保険の場合には、個別に徴収せざるを得ないというふうな基本的な難しさがあるわけでございます。そのほかに、特に都市部で非常に多い問題といたしまして、都市化に伴って住所移動が非常にふえている、あるいは留守がちな単身世帯がふえておりまして、なかなか被保険者との接触あるいはその把握が困難というふうな要素がございまして、他の制度に比べて全体として低くなっているということではないかと思います。  私どもとしては、収納率の向上を図るためには、従来から保険料収納率の特別対策事業というふうなものを推進いたしておりまして、単身世帯の場合には、休日でありますとか夜間に訪問をして格別の収納努力をしてもらわなければなりません。そういった場合の特別な助成措置を講ずる。それから収納率が一定水準以下の市町村につきましては、調整交付金の面での減額措置をとりまして、努力を促すということもやっておるわけでございます。今後もこういった措置にあわせまして、いわゆる悪質滞納者対策の適正な運営を行うということも含めまして、保険料収納率の向上には努力をしてまいりたいというふうに思っております。
  115. 吉井光照

    ○吉井委員 次に、A市の四割、六割保険料軽減世帯数及びその額を見ますと、五十八年度から六十二年度までの四年間で軽減世帯数は約二割ふえています。これは軽減基準以下の収入の所得の低い人、いわゆる低所得者が多いということを示していると考えていいのか。また軽減額は四年間に五割の増加となっておりますが、乙の間の保険料の上昇率三〇%を大幅に上回っているわけです。このように、保険料を引き上げても、それ以上の率で軽減額がふえるということは、国保においては低所得者対策をより強力に考えていかなければならないということを示すものであると思いますが、いかがですか。
  116. 下村健

    下村政府委員 お説のとおりだと思うわけでございます。実態を見ますと、軽減対象になる方々の数自体は、例えば六十年度をとりますと七百七十万人、六十一年度は七百九十万、六十二年七百九十八万ということで、実数自体はそれほど大きくふえているわけではございませんが、御承知のとおり、国民健康保険の加入者総数が大体横ばいあるいはわずかに減少するという傾向でございますので、総体的な形で考えますと、低所得者の存在というものが国保財政に与える影響というものは大きくなってくるというふうなことになるわけでございます。したがいまして、今回はそういった低所得者の問題というものを保険制度基盤を安定するために特別に取り上げて、国保基盤安定制度という形で地方自治体の協力もいただきまして取り上げてみたということでございまして、今後も低所得者に対する対策というのは、国保制度安定の上で欠くことができないものというふうに考えております。
  117. 吉井光照

    ○吉井委員 今御答弁をいただきましたように、そうした実態から、低所得者の広範な存在を考慮して、今回の改革保険基盤安定制度が設けられて、そして保険料軽減相当額について国が二分の一、県、市町村が各四分の一ずつの公費補てんが新たに設けられたわけですが、その市の負担額、このA市で見ますと、六十三年度四千四百万とされて、従来の一般会計繰り入れ額の一億四千万円のほかに、さらにこの額が一般会計から繰り入れられることになっているわけですが、このほか、同じ額が県から交付されると考えていいのか。今回の改正によって、A市の場合、保険料軽減額は県、市の新たな負担額と同額の八千八百万になると理解をしていいのか、この点はいかがですか。
  118. 下村健

    下村政府委員 今までの一般会計繰り入れがいかなる理由に基づくかという点についての問題があると思います。従来のものと今回の一般会計繰り入れと同質な部分があれば、それとの見合いにおいて従来の一般会計が減額されるということも考えられるわけでございますが、今回は一応保険料軽減対象者に絞りまして、軽減対象額を全額補てんをするということで手厚い対策を講じたわけでございますので、一般会計繰り入れ総額としては、やはり多少従来よりはふえてまいるということではないかと思います。ただし、その場合におきましても、財源措置を講じましたので、地方自治体のネットの負担としては従来よりは若干減るということではないか、こう考えております。
  119. 吉井光照

    ○吉井委員 そこで、さきに申し上げましたように、このA市の保険料軽減額は四年間で五割増というように、今後とも急増していくのではないかということが容易に想像されるわけですが、これに伴っていわゆる県、市の負担額も同率で急増していくものと考えられるわけです。したがって、全国ベースでは、六十三年度で県、市の新たな負担がおのおの二百五十億、このようになっておりますが、これは今後急増が予想されるのであって、その財政措置をどのように講じていくつもりなのか。これはひとつ厚生省と大蔵省にお尋ねをしておきたいと思います。
  120. 下村健

    下村政府委員 個々の市町村によりまして、今回の制度改正による影響というのもさまざまではないかと思いますが、お話のように、低所得者保険料軽減額というのはやはりふえてまいると思います。今回の措置は、低所得者保険料軽減に着目いたしまして、保険料軽減についての補助を行うことによって国保安定化を図るということでございますが、六十三年、六十四年両年の措置、こういうことになっておるわけでございます。またそれに見合った財政措置を講じたということでございます。  そこで、六十五年度以降はそれまでの実施状況も踏まえながら見直しを行った上で所要の措置を講じていくということでございますが、私どもとしては、低所得者の問題は国保にとって重大な問題でございますので、ぜひとも力を入れて取り組んでまいりたい。またそれによって地方財政に過大な負担を、御迷惑をおかげすることがないように、この面もあわせて努力をしてまいりたいという方針でございます。
  121. 中島義雄

    ○中島説明員 ただいま保険局長の方から御答弁があったとおりでございます。軽減対象者の割合が今後どんな動向をたどるか予測しがたい面がございますけれども、特段の事情変更がなければ、六十四年度においても六十三年度と同様の地方財政措置を講ずることになると考えております。  なお、六十五年度以降につきましては、六十五年度時点における見直しを踏まえて適切に対処していくべきものと考えております。
  122. 吉井光照

    ○吉井委員 もう一度確認の意味でちょっとお尋ねしておきたいのです。  六十三年度の場合は、地方負担の増六百九十億に対して交付税上の措置として五百五十億円を特例加算されたわけですが、この特例加算は六十四年度以降も増額した上で継続して実施されるものと理解をしていいのか。六十三年度における措置と同様に六十四年度も講ずる、このように厚生大臣の答弁もいただいたわけですが、このように理解をしていいのか。またこの保険基盤安定制度は六十三、六十四年の二カ年の暫定措置ということですが、少なくともこの間は特例加算制度を維持すべきである、このように思うわけですが、いかがでしょうか。
  123. 水谷英明

    ○水谷説明員 お答えいたします。  今回の国保制度改正に伴って地方負担が生ずるわけでございます。地方負担が生じます保険基盤安定制度の実施及び高額医療費共同事業の拡充の両措置は六十三年度及び六十四年度の措置とされている、六十五年度において見直しを行うこととされているということを前提に六十三年度、今先生がおっしゃいましたような地方財政措置を講じたわけでございます。地方財政対策は、年々の地方財政の円滑な財政運営に支障が生じないよう毎年度対策を講じておるわけでございますが、六十四年度につきましても、こういう国保制度改正の前提のもとで、特段の事情変更がなければ同様の考え方で対処してまいる考え方でございます。  なお、六十五年度以降につきましては、国保制度見直しが固まった段階地方財政措置についても考えてまいりたい、こう思っておるわけでございます。
  124. 吉井光照

    ○吉井委員 今回の保険基盤安定制度で県が新たな負担を行うようになったわけですが、国保に対して一定の権限を持つべきものだ、このようにも考えられるわけです。今回の改正案では、都道府県の新たな権限は見られないわけですが、このような財政負担だけさせるというのでは片手落ちではないか、こういう意見もあるわけです。この意見に対してどういうお考えなのか。また今回の改正論議の中で事業主体を市から県レベルに引き上げるという議論はなかったのかどうか、こういった点についていかがですか。
  125. 下村健

    下村政府委員 現行制度上の権限でございますが、都道府県に関しまして申し上げますと、一つは、市町村に対する市町村国保運営についての指導監督といった権限を有しているわけでございます。これが一つ。それから二番目には、療養取扱機関の申し出の受理、取り消しあるいは取扱医療機関につきましての指導といった権限、そのほか医療制度の上から申しますと、医療計画の策定等医療供給体制につきまして権限を持っている、こんな格好になっているわけでございます。したがいまして、現行制度におきましても、都道府県は医療費適正化等に関連いたしましていろいろな権限を持っているということでございますが、私どもとしては、医療の問題というのは権限だけで処理できるということでもありませんので、もちろん権限も含めてでございますが、周辺の問題も含めて取り組んでいただきたいというふうに考えているわけでございます。  また、今後の問題といたしまして、国保問題についてはさらに検討を続けていくことになっているわけでございますが、都道府県において処理することが適当なものが出てまいりますれば、議論を踏まえて都道府県に適切な権限を付与してまいるということについては、厚生省としては前向きに取り組んでまいりたいと考えます。  それから、都道府県経営ということについては、議論としてはいろいろ出てきたわけでございますが、懇談会における議論といたしましては、現状に即して考えると、個々の住民を対象とする行政であって、やはり市町村の力をかりて運営することが適当ではないかというのが大方の御意見であったというふうに受けとめております。
  126. 吉井光照

    ○吉井委員 そこで、従来の制度では、先ほどからいろいろと話もございましたが、保険料軽減額については国費と保険料とで賄ってきたわけですが、今回の改革によって新たに国が二分の一、そして県、市町村各四分の一の負担が生じたわけです。したがって、国については、軽減額を従来補てんしてきた財政調整交付金の中の保険料軽減額が廃止をされて、その一部が国の負担にかわるわけですから、国の負担軽減されたことになるわけです。そうなりますと、結果的には国にかわり、県、市町村のみが新たな負担をするということになるわけですけれども、これは国の負担地方転嫁ではないかということに対してどのようにお考えなのか。
  127. 下村健

    下村政府委員 これはあるいは厚生省よりも大蔵省からお答えした方がいいのかもしれませんが、厚生省予算としては、確かに国民健康保険に関する予算が減ったという格好でございますが、地方に対する財源手当てを特別加算という形で行った結果、一般会計総体で見ますと、国の負担はふえている面があるわけでございます。したがって、総体として見ますと、国の負担地方負担に転嫁をするという形にはなっていない、このように考えております。
  128. 吉井光照

    ○吉井委員 次に、地域医療費適正化プログラムについてお尋ねをいたします。  今回の改革で創設された地域医療費適正化プログラムは、年齢構成のほかに災害等の特別な事情を考慮する、こういうことになっているわけですが、具体的にはどのような事情が考慮の対象になるのか、この点はいかがですか。
  129. 下村健

    下村政府委員 医療費地域差をもたらす最大のものは年齢構成でございますので、年齢構成が当然入ってまいるということで、そのほかに災害を例に挙げているわけでございますが、ほかに地域事情として考えられるものは、例えば広島、長崎における原爆被爆者の問題、それから北海道等におきましては、診療報酬上療養担当手当の上で特別な手当を出しているというふうな問題がございます。それから老人ホームの所在によって老人の転入が非常に多いとかというふうな事情も考えられるわけでございます。また病床についても、一部そのような事情も考慮せざるを得ない面があろうかと思うわけでございます。  現在まだ検討中でございまして、すべてを網羅して申し上げるということもなかなか難しゅうございますが、現在頭に置いておりますものはそういったことで、個々の事情を考えながら高医療費市町村の指定を行ってまいりたいというふうに考えております。
  130. 吉井光照

    ○吉井委員 高医療費とする基準としてどの程度を考えていらっしゃるのか、またその場合の市町村はどのくらいの数になるのか、これらの具体的な指定基準等はいつごろ決まるのか、また具体的に対象市町村が指定されるのはいつごろになるのでしょうか。
  131. 下村健

    下村政府委員 指定基準につきましては、現在鋭意検討中でございますので、現時点でその数を正確に申し上げるということもなかなか難しいわけでございますが、全市町村三千三百の五%程度か、これまでの実績等をもとにして、また現在まとまっている考え方あるいは六十一年度の実績数値等をもとにいたしますと、そんな感じになってまいろうかというふうに考えております。  それから、指定基準をいつ決めるかということでございますが、これは政令で決めるということになっておりまして、法律が決まりましたら、その施行に遅滞を来すことがないようになるべく早く決定をいたしたいということでございます。
  132. 吉井光照

    ○吉井委員 こうした要素を考慮して決められた医療費水準を著しく超えるところの高医療費は、市町村の自主的な努力だけで引き下げられるもの、このように考えてよろしいですか。
  133. 下村健

    下村政府委員 もちろん医療費適正化というふうな問題については、国も都道府県もそれぞれ協力をして行っていく必要があるわけでございます。国は、安定化計画の作成につきまして、できるだけいろいろのデータの提供を含めて指導助言等を行ってまいりたい、また都道府県もそれ相応の役割を果たしていただきたいというふうに考えているわけでございます。  ただ、実際の費用負担の問題等とも絡むわけでございますけれども、それぞれの要因を、できるだけ地方の実情に沿った形で要因分析を通じて問題点をはっきりさせて、その具体的な問題にそれぞれ即応した安定化計画をつくるというのが基本でございますが、それには問題の種類によって、努力をしても、その効果があらわれるまでに時間がかかるというふうな問題もあろうかと思います。そんな点も含めて、市町村の実情に合った安定化計画をつくってその実行を促してまいりたい、このように考えるわけでございます。
  134. 吉井光照

    ○吉井委員 今回の改革によりますと、県、市の負担については財政措置を講ずることになっていない、このように聞くわけですが、これはどういうことなのか。制度的にこのような措置を設ける以上は、地方財政負担については、やはり財政措置を講ずるということが地方財政法の建前じゃないか、こののように思うわけですが、いかがでしょう。
  135. 下村健

    下村政府委員 今回の措置による高医療費部分の共同負担につきましては、安定化計画に基づいて的確な取り組みをしていただけば生じない負担部分だということが一つございます。そういったことで、医療費適正化を推進するというこの制度の趣旨からは、地方財政措置を講ずることは適当でないと考えられるということ等がございまして、地方財政措置の対象としなかったというふうに承知いたしております。
  136. 吉井光照

    ○吉井委員 次に、医療費適正化対策について若干お尋ねをしていきたいと思います。  国民医療費の上昇が六十三年度はついに十九兆円にも達する、このように推計されておるわけですが、六十二年度は対前年比五・七%、そして六十三年度は五・二%増、こうした傾向性というのはこれから先も続くのではないかということが予想されるわけです。このように三年連続で国民所得の伸びを上回った理由について、どのように分析をされているのか。また国民医療費の規模について、当面は医療費の伸びを国民所得の伸び程度とする政策目標のもとで、医療費適正化を進めていくとの総理の答弁がせんだってあったわけですが、六十年度以降のデータからも明らかなように、この政策目標を維持することが不可能な段階になってきているわけです。したがって、ことで新たな医療費政策目標を持つべきだ、このように思うわけですが、お考えをお伺いしたいと思います。
  137. 下村健

    下村政府委員 医療費の基本的な伸び率をどのように見ればいいか、これは医療費の伸びに影響する要素がさまざまでございますので、大変難しゅうございます。経済の成長率と比べてどんな程度になればいいか、保険制度の運営から考えると、経済成長率に見合った程度のものでいくことが負担の上昇をもたらさないという意味で一番好ましいわけでございますが、現在の状況を見ておりますと、医療の分野におきましては、高度化あるいは技術革新というふうなものが非常な勢いで進んでおります。それらのことも考え、今後の高齢化を考えると、基本的な傾向としては、私ども国民所得の伸びよりもやや高いところに基本的な傾向があるのではないか、こんな考え方一つございます。  ただし、医療の現状を見ておりますと、いろいろ適正化すべき問題点も残されているわけでございます。したがいまして、いろいろな制度改正による努力、その他の適正化努力も含めて、六十年代ぐらいは国民所得の伸びの範囲内におさめていけないか。これはもちろん単年度ごとというよりは、ある一定期間を通して、その程度の伸びにおさめてまいりたい、そういった努力をする、こう申し上げたわけでございます。  その結果、五十九年、六十年といった辺は、健康保険制度改革あるいは老人保健制度改革等もございまして、国民所得の伸びを下回った。ところがその後、六十一年、二年、これまでのところは、二年の前半ぐらいまでしかわかっておりませんが、その状況を見ますと、やや高目の伸びになってきている。長期の見通しとして見ますと、医療費の推計というのは、大体過去の実績をもとに推計をいたしておりますので、私どもとしては現在の伸び率がやや基本的な伸び率を反映しているようにも思うわけでございます。  しかしながら、それでは現在直ちに医療費適正化の目標を撤回するかどうかということになってくるわけでございますが、医療費をどういう規模で考えていくかということは、絶えず現実に即して見ていく必要はあろうかと思います。現在の医療状況からしますと、なお適正化すべき問題もいろいろある。またさらに今後いろいろな改革も予定しているということで、当面は、私どもといたしましては、国民所得の伸び程度に医療費の伸びを抑えるという努力を引き続き継続したい、このように考えているわけでございます。
  138. 吉井光照

    ○吉井委員 今医療費上昇についての御答弁をいただいたわけですが、私はその一つの大きい原因は、何といっても我が国医療社会保険システムにあるのではないか、このようにも思うわけでございます。  私たちがよくあちらこちらへ行きましていろいろの人と懇談をして出てくる話の中に、医師の裁量一つで患者一人当たりの医療費の額は幾らでも左右できるということをよく聞くわけです、これは極端な例かもしれませんが。また毎年、医師会の方から医療費単価の値上げ要求がなされている、このようにも聞くわけですが、こうしたものに対する大臣の率直な感想をお尋ねしたいわけです。  なお、六十二年度厚生白書でも、二十一世紀の本格的な高齢化社会に向かって、医療費保障システムの長期的安定化をうたっているわけですが、この白書にうたっているところのシステムの具体的な内容についても、あわせてお尋ねしたいと思います。
  139. 藤本孝雄

    藤本国務大臣 今回の診療報酬の改定につきましては、まず医業の経営の現状、また物価、賃金の動向等を踏まえまして、去年の暮れに、中医協における意見に基づきまして、四月一日から実施するということでございますが、具体的には、医療を取り巻く状況の変化に対応いたしまして、医療報酬の合理化を図る見地から、長期入院の是正であるとか、また老人医療見直し、在宅医療の推進、そういうもの等を図るものでございまして、私は、この改定を通じまして医療費適正化に資するものであるというふうに考えております。
  140. 下村健

    下村政府委員 医療費保障システムというお尋ねでございますが、現在の医療費に関して申しますと、出来高払いという点についていろいろな批判があるわけでございます。出来高払いの欠点として言われますのは、診療報酬を改定しなくても医療費の額が毎年上がっていく、これはもちろん医療費の一人当たり額あるいは一日当たり額が上がるということの中には、医療そのものの高度化という要素が反映しておりますので、それが直ちに現在の診療報酬制度あるいは医療の欠陥をすべて反映している、こう断定できない面もありますが、そのように言われているわけでございます。したがって、現在の問題として言いますと、医療費の自然増というものがどうも大き過ぎるのではないかということがいろいろ言われておる。その原因としては、現在の出来高払い制度の欠点ということがいろいろ指摘をされているわけでございます。その原因として大きく言われているものが薬の問題、検査の問題、それから入院日数、この三つが医師の裁量によって左右されるので、出来高払いの欠点があらわれやすいのではないか、このように言われているわけでございます。したがって、私どもとしては、そういった欠点を是正するという方向で新しい医療システムといいますか、そういったものを考えていくべきではないか。これはもちろん診療報酬といった価格面の問題だけではありませんで、医療制度というか医療供給体制そのもののあり方もかなり変えていくということで、総合的に取り組む必要があると考えているわけでございますが、そういった観点で取り組んでいこう、こういうことでございます。  今回の診療報酬改定、ただいま大臣からも御答弁申し上げたとおりでございますが、私どもとしては、そういった欠点を是正する、一方で新しい技術等も盛り込むという観点で、今回の診療報酬改定に取り組んだということでございますので、御理解をいただきたいと思います。
  141. 吉井光照

    ○吉井委員 今御答弁をいただいたわけですが、医療費適正化という問題についても非常に努力をされているということは認めるわけです。すなわち、点数票の見直しであるとか長期入院の是正、そして一部の検査料の引き下げとか、また在宅医療の推進等が図られているわけですけれども、ところが一方では医療費の値上げが認められている、そして他方ではそれを抑制する、そういうことについて何か矛盾めいたものを感じるわけですけれども、いかがですか。
  142. 下村健

    下村政府委員 これは、私どもとしては、医療そのものがいろいろ変化をしてまいりますので、時期を置いていろいろ合理化をするなり新しい要素を取り入れるということがどうしても必要だというふうに考えております。また反面、ただいま申しましたような現在の診療報酬が持っておりますいろいろな問題点というものも直していかなければならない。私どもといたしましては、今回の改定を通じまして、確かに数字の上から見ると矛盾した印象を受けられるかもしれませんが、一面では十分にそういった合理化問題に取り組むということで、私ども考え方といたしましては、よく出来高払いの欠点として言われるような自然増はできるだけ正常な形にしたい、反面、新しい要素はできるだけ取り込んでいきたいということで、両面をあわせて取り組んだという点があるわけでございますけれども、ひとつ御理解をいただきたいと思うわけでございます。
  143. 吉井光照

    ○吉井委員 差額ベッド枠の拡大、そして差額給食料、それから紹介外来者等患者負担というものがふえておりまして、また七、八人の大部屋の病室でも、当たり前のように差額が徴収されているようであります。  先日、あるお年寄りに会って話を聞いたところ、老人医療費は外来が一カ月八百円、そして入院は一日四百円、それほど大きい負担にはならない、このように思っていたところが、昨年妻が市立病院に入院をした、そして入院をしたその部屋は大部屋、しかしながら差額ベッド代が一日二千円、医療費その他で月七万五千円強の支払いになるというのです。そしてその方は年金月額が十五万円で収入の半分をこういったものに支払ってどうして生活をしていけばいいのだろうか。現在は息子夫婦の援助があるから何とかやっていけるわけですが、老夫婦だけであったならば入院することもできない。差額ベッド代の要らない病院はベッド待ちの時間が非常に長くて、いつ入院できるかそのめども立たない。そうした状況の中で、一日二万五千円も払って、そしてテレビ、電話、それから風呂つきの特別室で悠々と養生しているお金持ちの御老人もいらっしゃる。このように、金の有無で大きく差別されるということは何とも言いようのない気持ちである、こういうことでございます。  私は、こうした実態を頭から否定するのではありませんけれども、やはりこうした点については、今から高齢化社会に突き進んでいく現在、若干なりとも考え直す必要があるのではないか、このように思いますけれども大臣いかがですか。
  144. 藤本孝雄

    藤本国務大臣 一番心配な点は、今おっしゃったようなケースだと思います。自分の老後を安心して暮らせるかどうか、また病気になった場合どうなるだろうか、家族が、主人が、奥さんが病気になった場合どうなるのだろうか、そういう場合が一番心配な点であると思います。御主人が、また奥さんがそういう病気にかかった場合、経済的にもまた精神的にも非常に負担がかかるわけでございまして、私も就任早々横浜で、寝たきりの御主人を抱えられまして、精神的にも非常に負担を感じて、睡眠薬を飲まなければ寝られない、そういう状況であったというお話も、実際そのお宅へ伺いまして承ったこともございます。  確かに、そういうケースが一番お気の毒なことでもあるし、その対策は極めて重要なことであると思うわけでございまして、具体的にはやはり家族の方の御負担にならないような形で、住みなれたお宅で介護を受けられるというような仕組みを十分に充実していく。そういうことができない場合には、そういう方々が入っていただく施設、中間施設であるとか特養であるとか、そういう施設の整備、それを充実していくということが極めて大事なことだと思っておるわけでございまして、今後そういう問題を十分に頭の中に置きまして、さらに充実してまいるように考えてまいりたいと考えております。
  145. 吉井光照

    ○吉井委員 質問を終わります。
  146. 野呂昭彦

    ○野呂委員長 代理 新井彬之君。
  147. 新井彬之

    ○新井(彬)委員 質問の前に、我が党の沼川洋一社会労働委員会理事の御家族の訃報に接しまして、大臣初め各理事先生、そしてまた委員の皆様に大変な弔意を賜ったということを心から御礼を申し上げる次第でございます。本来、沼川理事が本日は専門家の立場できちっと質問をしたいということでございますが、本日は本葬でございます。そういうことで、本当に私も心から御家族の御冥福をお祈りする次第でございます。  今回の国保改革につきましては、私は、基本的な問題というのは、とにかくお金があろうとなかろうと、どんな方でもみんなやはり健康でそして立派な生活をしていただきたい。まじめな人が、そしてまた善良な方が一生懸命生活をなさって健康を害された場合に安心して医療を受けられる、こういう基本的な医療制度でなければなりませんし、この国保改正でなくちゃならない、こういうことを前提にいたしまして質問させていただきたいと思うわけでございます。  今回の国保改革医療費地域差対策と低所得者対策がポイントと言われておるわけでございますが、そこでまず、国保医療費には大きな地域差が見られる、こういう地域差をもたらした要因というのはどのように考えておられるか、お聞きしたいと思います。
  148. 下村健

    下村政府委員 地域医療費水準というのはいろいろな原因が絡まっておりまして、なかなか単純に断定できない側面がございますが、考えられる要因のうちで重立ったものを挙げてみますと、一つは、何と申しましても人口年齢構成の差というものが大きく影響いたしておると考えます。それから二番目には、やはり住民の生活慣習と申しますか健康に対する意識と申しますか、あるいは医療に関連するいろいろなビヘービアあるいは医療慣行というふうなものが考えられます。それから、住民に対するいろいろのヘルス事業あるいは福祉事業といったような問題。それからまた、医療側の状況からいいますと、医療機関側の診療のやり方、診療パターンと申しますか、そういったものが大きな影響を与えていると思います。また、それに関連いたしまして、病床数でありますとかあるいは病院の程度、どの程度の機能を備えているかといった供給側の状況というものが、やはり大きな要因として挙げられるのではないかというふうに考えられます。
  149. 新井彬之

    ○新井(彬)委員 厚生大臣医療費の高い市町村を指定する、こういうことでございますけれども、その指定の基本的な考え方をお聞きしておきたいと思います。
  150. 下村健

    下村政府委員 医療費の高い市町村厚生大臣が指定するという考え方で現在お願いをいたしておるわけでございます。その指定の考え方でございますが、毎年度の医療費が著しく高額となるというふうに見込まれる市町村であって、医療費適正化その他国保事業安定化のために必要な措置を講ずることが特に必要だという市町村を指定する、これが基本になる考え方でございます。  具体的な指定基準につきましては、現在鋭意検討中でございますので、全体を明確に申し上げることはちょっとできないわけでございますが、基本的な条件といたしましては、年齢構成のほかに地域的な特別な事情、その年にたまたま災害があったために医療費が高いというふうなことも考えられるわけでございます。あるいはそのほかに、原爆の被爆者が多いとかあるいは老人ホームの大きいのがあって特別に老人の転入者が多いとか、これは病院についても同様な事情が考えられる場合があろうかと思います。そのような地域的な特殊事情も加味した上で、なおかつ、基本的に非常に高いというふうに考えられる市町村を指定するということを考えております。
  151. 新井彬之

    ○新井(彬)委員 指定を受けた市町村は、厚生大臣の定める指針に従いまして、安定化計画を策定し、医療費適正化を行う、こういうことが言われておるわけでございます。地域にはさまざまな事情があるところでありまして、中央から一律の改善策を押しつけると、医療の質の後退が心配されるということが言われておるわけでございますが、この点についての配慮はいかがなさっておりますか。
  152. 下村健

    下村政府委員 指定を受けた市町村医療費適正化対策を推進する場合には、まず前提といたしまして、市町村ごとの医療費の中身を十分詳細に分析してもらおうと思っておるわけでございます。単に、医療費が高いと申しましても、ほかに比べて何が高いのか、薬が高いとかいうふうな場合もありましょうし、検査が非常に多いというふうな地域もあるかもしれません。あるいは一般的にかなり考えられる要因としては、老人の入院者が非常に多い、しかもそれがほかの地域に比べて非常に長期なものが多いというふうなこともあるいは考えられるわけであります。そういった個別の要因を見ながら、しかもその要因は、問題点によりましては、単純にすぐに解消できるものもできないものもいろいろ出てまいろうというふうに考えられるわけでございます。そういった対策の効果というふうな側面と両面あわせて考えて、地域の実情に即した対策を実行していただきたい、そういった指導を考えておりますので、適正化対策を実行することによって医療の質を後退させるというふうなことは、御心配の向きもあろうかと思われますが、その点については心配のないように的確な対応を考えていきたい、このように考えております。
  153. 新井彬之

    ○新井(彬)委員 都道府県や市町村医療費適正化に当たって何かできることがあるのか、お伺いしておきたいと思います。
  154. 下村健

    下村政府委員 医療費適正化につきまして、現在市町村がやっておりますのは、一つはレセプトの審査、それから医療費通知といった形のものを直接の適正化対策としてやっているわけでございます。それから都道府県は療養取扱機関の指導あるいは医療費の審査をやっております審査委員の任命でありますとか、審査面での指導とかといった面の対策も実行しているわけでございます。  先ほど申しましたように、適正化をやると申しましても、一律にやるということではなくて、各市町村ごとに要因の分析をやって、具体的なその市町村問題点について対策を考えていく。したがって、市町村ごとに違ってまいろうと思うわけでございますけれども、例えば老人の疾病につきまして、高血圧のようなものが非常に多いというふうな場合には、ヘルス事業を大いに強化してもらうというふうなことも必要になってまいるかもしれませんし、あるいは長期入院に関連して在宅対策あるいはそれらを含めた福祉対策の推進をお願いするというふうな問題も出てまいるかもしれませんので、単に保険制度の上での権限問題とかということだけではなくて、幅の広い対策を実行していただいてはどうだろうかということでございます。  もちろん、これに関連いたしまして、市町村だけではありませんで、そこの関係都道府県でありますとかあるいは国も一体になりまして、適正化対策の推進を考えてまいろう、こういうふうな考え方をいたしております。
  155. 新井彬之

    ○新井(彬)委員 大変結構なあれだと思うのですけれども、日本の中で脳卒中が非常に多い地域であるとかあるいはがんが多いとか、よく分布図等が出ております。そういうようなこともよく勘案されまして、今までにも大分調査もされ、その地域に対して、例えば塩分を余りとるなとか、それからこういうことをしてはいけないとか、いろいろな適切なアドバイスもあっただろうと思いますけれども、より充実していただきましてやっていただくということが非常に大事ではないか。その中で高額医療というものが必要なのかどうか。決して医療費を少なくするための施策ではなくて、本当の健康者をつくるというような医療費であっていただきたいな、こう思うわけでございます。  次に、低所得者加入割合が高いことによる財政赤字に対しまして、保険税の軽減相当を国、都道府県、市町村負担することになっておりますが、地方負担を導入した理由はいかがなものでございますか。
  156. 下村健

    下村政府委員 保険料軽減制度は、低所得者保険料負担能力を考慮に入れまして、いわば福祉的見地から行われているというふうに考えることができるということで、これにつきましては、国の負担のほかに都道府県、市町村一定負担をお願いするということが適当であろう、このように考えまして、地方負担の導入を図ったわけでございます。ただ、国保制度国庫負担保険料というのが基本になっておりますので、国保制度とやや関連を持った形で、国保財政基盤の安定制度という形でこういった制度を考えてみたということでございます。
  157. 新井彬之

    ○新井(彬)委員 本来、国保は国がきちっと面倒を見なければいけない、こういうことであろうかと思うのですけれども市町村とか都道府県が負担することによって、先ほどのようないろいろなことが行われるわけでございますけれども、これについて医療の低下とかいうものが少しでもあってはならないと思いますが、その辺は大丈夫でございますか。
  158. 下村健

    下村政府委員 低所得者につきましては、一部負担軽減でありますとかあるいは高額療養費制度の上でも特殊な条件を設けるとか、いろいろな考え方を行っておりますが、給付の面では何ら差別がないということでございます。またこれに関連して、悪質滞納者対策というふうなことも行っておりますけれども医療面でこういった問題に関連して差をつけるという考え方は全くございません。
  159. 新井彬之

    ○新井(彬)委員 先ほども保険料の収納率が芳しくないということがちょっと出まして、答弁があったわけでございますが、この収納率が悪いのにつきましても、善意の方あるいは悪質といったらおかしいのですが、そういう方もいらっしゃると思うわけでございます。先ほども移転であるとかいろいろの事情によってなかなか把握しにくいということでございますが、やはりこの滞納者に対してはきちっとした措置を講じなきゃいけない、このように思うわけでございますが、その辺はいかがでございますか。
  160. 下村健

    下村政府委員 お話のありましたように、国民健康保険社会保険でありますから、当然保険料を適切に徴収するということが制度の運営の基本的な事項の一つになってまいるわけでございます。したがいまして、保険料の収納努力ということにつきましては、従来から強力に指導をいたしてまいっております。収納率はこのところ、五十九年度以来三年連続で若干上昇するということなどもございまして、一時の低落傾向にやや歯どめがかかったように見受けられるわけでございますが、さらに努力をしてまいるということでございます。  そういった観点から、悪質な保険料滞納者につきましては、窓口で指導をいたすほかに、六十二年一月の法改正で導入された資格証明書制度を活用いたすというふうなことで、今後も努力をしてまいろうということでございますが、現状を見ますと、滞納しておられる方の中に、適切に行政機関、国保の窓口の方となかなか連絡をとっていただけないということ等がございまして、第一線は非常に苦労しておるわけでございますけれども、今後もぜひともそういった面で適正な、厳正な運営を図ってまいりたいというふうに考えます。
  161. 新井彬之

    ○新井(彬)委員 保険証がない、資格証明書をもらって、これは悪質の場合はもう論をまちませんけれども、善意の場合、会社が倒産したとかお父さんが亡くなったとかいういろいろなことがあって、そういう保険証がないという場合もあろうかと思います。そういう場合は、必ず福祉事務所とかいろいろのところへ行けばきちっと解決ができるということは間違いないと思いますが、保険証がないために死に至ったなどと言われるようなこともちょっと聞いたことがございますので、その辺はいかがでございますか。
  162. 下村健

    下村政府委員 そのような事件が起こってはならないというふうに私どもも考えておるわけでございます。したがって、被保険者資格証明書制度というものをつくりましたときに、私どもとしては、医師会の方にも十分相談をいたしまして、資格証明制度だからといって医療機関の窓口で断られるというふうなことがないように十分話をして、社会保険診療と同様な取り扱いをするということについては徹底を図っているところでございます。今の日本の状況からいたしますと、仮にそういうものがなくても、医療機関の窓口で医療を断られるというふうなことはちょっと考えられないように思うわけでございます。まして資格証明があるということは、最終的に医療費が保証されているわけでございますので、万々そのようなことはないと私ども信じておりますけれども、今後とも十分こういった面につきましては徹底を図ってまいりたいと考えております。
  163. 新井彬之

    ○新井(彬)委員 老人保健医療費拠出金の国庫負担率を引き下げるということになっておりますが、これは単なる国庫負担保険料への転嫁ではないのかと思いますが、いかがでございますか。
  164. 下村健

    下村政府委員 老人保健医療費の拠出金に係る国庫負担は、国保財政体質の弱さというふうな点も考えまして、五十九年に現在の国庫負担制度に改める際に、従前の水準とのバランスというふうなことも考えまして、特例的に実は高い水準に設定されたということになっております。今回は保険基盤安定制度の導入等によりまして、国保財政体質が改善されているというふうなことも考えまして、国保財政の影響も配慮しながら、この特例的に高い拠出金に対する国庫負担を調整する。これも原則といたしましては、ただいま申しましたように、社会保険という本質からしますと、二分の一というふうなことで割り切るということではなくて、暫定措置的な形で今回の対策は考えているわけでございます。ということで、最終的には六十五年度に老人保健制度見直しをやる際に、この国庫負担についても改めて見直しを行うことで、慎重を期して国庫負担水準は取り扱ってまいりたいと考えております。
  165. 新井彬之

    ○新井(彬)委員 国保財政安定化のためには、単に国保の中の対策だけではなくて、関連分野をも視野に入れた対応が必要であると考えておるわけでございます。  人間の歴史をずっと見ますと、昔から死との闘いでありますし、病との闘いであった。いかに健康を保つか。もう一つは安定した経済の発展というようなことになろうかと思うわけでございますが、世の中で一番つまらないことというのは、何があっても病気ではないか、このように私は思っているわけでございます。これは本人は一番つらいでしょうし、あるいは親戚も家族も他人までみんなが悲しむというようなことでございまして、やはり人生の基本というのは、何といいましても健康である。したがいまして、どのようにしたら健康になるかというようなことをしっかり考えないと、今のまま行きますと、やはり病人がふえれば、それだけ医療費がふえるわけでございますから、経済成長率に見合ったように病気が出たりあるいは減ったりするようなことは考えられないわけでございます。したがいまして、健康をどのように保持するかということについても、これが今後やはり一番大事ではないか、このように私思うわけでございます。  この前も朝日新聞でございますが、社説に「国保改革で大切なこと」として、「日本人三人のうち、一人が加入している国民健康保険制度改革と費用分担をめぐる厚生、大蔵、自治三省の攻防が、二十一日の大臣折衝で一応の決着をみた。だが、改革といってもほんの入り口に立っただけだ。加入者たちが病気にかからぬようにし、かかっても早めに手を打って健康的な暮らしに戻れるようにする――といった正攻法で国保を健全化しない限り、赤字の押しつけ合いが毎年末繰り返されかねない。手本になる市町村と反面教師ともいうべき市町村を具体的に比較して国民の前に提示するなど思いきった手段をとって改革の道すじを示し、議論を呼び起こすべき時である。手本にすべき市町村一つに、岩手県の沢内村がある。」「六十五歳以上の高齢者が人口の一九%を占める。高齢化度は、日本全体の一一%はもちろん、世界一の高齢国スウェーデンをも超える。にもかかわらず、医療費全国平均の半分であり、ボケや寝たきりも極めて少ない。これにはいくつかの秘密があるようだ。」「十八年前、沢内村の国保税は県平均を上まわっていた。いまは県下で最も保険税の安いグループに属し、徴収率百%である。」「六十歳以上の人びとと乳児の通院診療費の無料化を二十六年間も続けてきたため早期受診が徹底しているのがその一つだ。国保病院の院長が村の健康管理課長を兼ね、保健婦、歯科衛生士とともに予防活動に力を入れている。集団検診ではなく、村人一人ひとりの都合に合わせた一泊二日の人間ドックもある。村外の病院にかかる場合も、国保病院の二人の医師が相談にのる。彼らは「村の道は病院の廊下と同じ」をモットーに、気軽に往診にでもでかける……。」もう一つの逆の方の例では、「ある町では、六十五歳以上の老人全員が入院している」というような例が載っております。  こういうことで、やはり健康を保持するということについては、小さいときからそれだけのいろいろな健康に対することをやらなきゃいけませんけれども、そういう問題についてはどのようなことをお考えになっておられるか、お聞きしておきたいと思います。
  166. 北川定謙

    ○北川政府委員 厚生省では、医療経済の問題とは別個に、委員御指摘のように、国民の健康確保をどうするか、これは非常に重大な課題として対応をしておるわけでございます。特にこれから本格的な老齢化社会が近づいてくる、こういうことでございまして、健康で活力ある社会をつくるためにということで、昭和五十三年度から、第一はライフサイクルに応じた健康診査をきめ細かに行う、第二は健康を進めるためのセンターあるいは市町村機能を整備をする、さらには保健婦等のマンパワーを確保する、第三には栄養と運動と休養という三つの健康に関する基本的な要件について、これを一般国民の間に普及するための啓発の運動、こういう三つの柱から成る国民健康づくり対策を進めてきておるところでございます。  昭和六十三年度はこれが十一年目に入るわけでございますが、このため従来の施策をさらに推進をするとともに、新たにアクティブ80ヘルス、80というのは八十歳、こういうことでございますけれども、これからの老齢化社会を目指したこういう事業をスタートをさせ、その一環としましては、健康運動指導士というような専門の人々を養成をする、第二は運動普及推進員というようなボランティアの方々を育成をする、あるいは健康増進施設というのが社会にもいろいろあるわけでございますが、こういう民間の機能をもさらに活動を強めていただくために、その機能整備を図るため社会福祉・医療事業団によります融資制度を創設するなど、総合的にこういう問題に対応しまして、バランスのとれた食生活を普及させる、あるいは適切な運動の習慣を普及させるというようなことを進めながら、国民の健康確保を図ってまいりたいと考えておるところでございます。
  167. 新井彬之

    ○新井(彬)委員 東京都職員共済組合の「中高年の健康読本」という中に「あの手がかり、憎らしい亭主を早死にさせるには、次のことを守りましょう」、このような皮肉な文面がありまして、「亭主を早死にさせる七カ条」というのが載っております。第一条が「ストレスにさらす。」第二条が「一日三食、満腹するまで食べさせるのはもちろん、間食もドシドシすすめる。」第三条、「塩分、動物性脂肪を多く食べさせる。」第四条、「酒、たばこは十分に。」第五条、「生活は不規則に、睡眠は不足に。」第六条、「運動を制限し、太るようにする。」第七条、「医者にかかるのは、できるだけ遅くさせる。」七つまであるんですけれども、逆説的にこういうのが出ているわけでございます。  やはり健康増進というのは、何といいましても運動とそれから食べ物、ストレス、この三つで成っている、このように思うわけでございます。そういうことで、交通事故なんかでとんと亡くなった場合は、急速に腎臓でも肝臓でも心臓でも圧迫されまして、部分が傷んで亡くなるわけでございますけれども、普通の病気というのは、大体一から一〇〇までといたしますと、長年かかって腎臓でも肝臓でも心臓でも悪くなる。大体四〇%くらい悪くなると、ちょっと医者へ行ってこようかということになろうかと思いますし、六〇%も悪くなると、今度は入院している、八〇%以上になると危ないんじゃないか、こういうことですから、時間をかけ、日にちをかけて毎日のように健康を害するような状況をつくっているというのが現状ではないかな、このように思うわけでございます。  そういうことで、加古川の医師会長の平野先生という方がいらっしゃいますけれども、これは学校でいろいろ診察をするわけですけれども、足の骨を写しますと非常に健康でない。僕は専門的なことはわかりませんが、本来骨というのはきちっとこういうものがあるんだ、ところがその中にすが通っているような状態になる、こういうのは長生きできないのだ。特にこれから長寿社会長寿社会と言いますけれども、今まで確かに年を追って長寿社会になってまいりました。しかし、我々の小さいときというのは食べ物はほとんどなかったわけでございますし、毎日走り回って泥だらけになっておりましたし、余り受験勉強ということでストレスもなかったわけでございますので、今のお年寄りの方というのは、健康的に――客観的にいいか悪いかは別として、健康的には非常によかったんじゃないかな。しかし、今の子供さん方見ますと、言ってみれば栄養過多でありますし、それから運動はもう全く不足している。スポーッの選手でもとにかく大学受験というと二年生でやめたりいろいろしなければいけない。そういうことでストレスはたまる、運動不足だ、栄養過多だ、このようなことで、今の若い方が年寄りになったときに、長生きするか短いかは別にしまして、健康には非常に不安を感ずるわけでございますけれども、そういうことについて文部省では、子供さん方の健康に対して一体どんな教育方針を今とっているのか、お伺いしておきたいと思います。
  168. 吉田茂

    ○吉田説明員 学校におきます健康教育でございますが、これにつきましては、保健教育あるいは給食指導、体育を中心にいたしまして、さらに家庭科、理科、こういったところで指導をする、さらに特別活動というような分野にもまたがっておるわけでございます。  例えば、保健教育につきましては、健康に関する知識を理解させる、あるいは健康な生活を営むために必要な習慣、態度を養うということを中心にいたしまして、保健体育の授業、特別活動、こういったところでの指導を行っております。また体力づくりという観点からは、体育の授業が中心になるわけでございますが、これは小中学校週三時間ということを基本にいたしまして、さらに特別活動、部活動で指導する。学校給食は、今御指摘のございましたような、栄養ということを中心に考えて、栄養豊かな、かつバランスのとれた食事を提供し、こうした各方面から総合的な健康教育を推進する。同時に、青少年の運動不足というような御指摘があったわけでございますが、学校における体育あるいは特別活動、部活動、さらには地域における生涯スポーツ、こういったところでのスポーツ活動をさらに推進していかなければならないというふうに考えておるところでございます。
  169. 新井彬之

    ○新井(彬)委員 昔は日本もオリンピックがありますと、水泳の選手とかいろいろな方が出まして、わりかた優秀な成績を上げておりました。何もオリンピックは金メダルをとるばかりが目的ではない、参加することに意義があるというようなことでございますけれども、竹下総理の私的諮問機関でありますスポーツの振興に関する懇談会が三十日提出した報告書を見ますと、その内容は、オリンピックでメダルをとれるスター選手を育てるという傾向性が強いとも言えますけれども、「基本的認識」のところで非常に大事な点が指摘されている。  現在の子ども達の状況をみると、運動量は減少しており、二十一世紀の日本を背負って立つ青少年の基礎体力が十分に培われていないのではないかという危惧の念を禁じ得ない。昭和三十九年の東京オリンピックの成功を目指して努力した国民の活力は、昭和三十年代半ばから始まった高度成長の一端を担い、その後の我が国の発展の基礎となったともいわれているが、このような社会のエネルギーは、国民一人ひとりのもつ気力・体力が基礎となるものと考えられる。  特に、学校におけるスポーツ活動は、生涯を通じてスポーツ活動を行える能力や態度を育てる上で必要不可欠なものである。  それとともに、近年、我が国においては、余暇時間の増大、生活水準の向上、高齢化社会の進展などに伴い、日常生活の中でスポーツに親しむ人々が増加しているが、このような人々が、気軽に、生涯にわたりスポーツ活動を行えるような諸条件の整備を推進する必要がある。また、国際的水準のスポーツ選手が育つためには、広汎な国民のスポーツ活動への参加や支持という国民基盤の存在が不可欠であり、その意味においても生涯スポーツの積極的推進に努めることが肝要である。 こういうふうに言われておるわけでございます。  学校教育でのスポーツ、国民基盤である生涯スポーツの取り組みということが言われておりますが、この報告書を見ましてどのように思われますか、文部省と厚生省にお伺いしたいと思います。
  170. 吉田茂

    ○吉田説明員 今オリンピックのお話でございますが、オリンピックで必要なのは、やはり基本的な体力であるということがあるわけでございます。そういう中で、ただいま委員御指摘のような事柄につきまして、私どもとしても、まず学校教育の中で体育というものの充実を図っていかなければならない。その基本的な考え方といたしましては、生涯にわたって健康で充実した生活を送るための体育あるいは健康教育、さらには生涯スポーツにおきまして、幼児から高齢者までのスポーツの振興ということが必要であるというふうに感ずるところでございます。
  171. 北川定謙

    ○北川政府委員 委員御指摘のように、最近の飽食時代ということで、子供のころから非常に過栄養であるとか運動不足であるとか、こういう状況は将来にわたって非常に憂慮すべき問題であると私どもも考えているところでございます。特に、非常に奇異な言葉でございますけれども、子供の成人病なんという言葉が学界の専門家の間でも語られるような時代になっております。そういったことからしますと、やはり栄養の問題と運動の問題、休養の問題、これは先ほど来私どもも申し上げておりますし、委員も大変強く御主張なさっているわけでございますが、こういう三つのバランスをとって、それぞれの世代、年代に応じた健康づくりということをやっていく必要がある。そういうことで、厚生省といたしましては、乳幼児期の問題は担当しておりますが、学童それから青少年の段階は文部省さんがただいま申し上げたようなことで対応されておられますし、その後の一般社会人になってからは、また厚生省が関与するというようなことで、連携を保ちながら、トータルとしての健康づくり問題というものを今後もさらに進めていく必要がある、こういうふうに考えております。
  172. 新井彬之

    ○新井(彬)委員 私は、今のいろいろな子供さん方を見ておりますと、大体勉強、勉強で何でもいい大学へ入らなければいけないということですから、夜中まで塾へ通ったり勉強されております。これはこれでいいことだろうとは思いますけれども、逆に、さっき言いました健康の面などを考えますと、スポーツなどして非常に朗らかで、何事も一つのことをやっている人の精神力とか、それから学んでいる姿というのは大変なものがあります。そういうわけで、きょうは文教委員会でも何でもないので、文部大臣に言うわけにいきませんけれども、とにかくそういう方々もまた大学へすっと入れるようなことも考えていいのじゃないか。そうしないと、これから日本全体の長寿社会といいますか、そういうこともなかなかできませんし、それからそういう方々の活力によってまた大きな違いも出てくるだろう。何でも画一的に、同じ試験を通って同じようにやるだけがいいのではないなという感じもしているわけでございます。  もう時間でございますので、最後に一言、質問というよりも言っておきたいのですけれども、前に兵庫県の坂井時忠知事が、これからの老齢化社会を目がけまして、今の医療制度のあり方、それだけでは当然追いつかないだろう、したがって、やはり予防医学を中心といたしました、仮称でございますけれども、健康科学大学というものをやったらどうかということで、昭和五十一年でしたか、衆議院の予算委員会で私も申し上げました。当時の砂田文部大臣が、そういう変わった形態のものは文部省でも予算をつけるわけにいかない、あるいは厚生省でもいかないということで、これは調査費という形で神戸大学の須田学長に予算がつきました。須田学長は、それ以来ずっと一生懸命にどうしたらこれからの二十一世紀にわたってのそういう総合的な健康づくりに資することができるかという、そのときに私は須田学長に何回かお会いしましたけれども、今まで神戸大学というのは立派な大学だと思っていた、私も学長で頑張りました、しかし、こういう現実的な一つのものを考えたときに、いかにそういうことが抜けていたかということもよくわかりましたということで、この健康科学大学院大学というものの試案ができ上がったわけでございます。  これは読んでいただきますと、今まで厚生省の言われたこと、文部省の言われたこと全部入っております。ただ、言えますことは、やはり幅広いわけでございますから、文部省だけではない、厚生省にも通産省にもわたるわけでございまして、どこで学校をつくっていいかわからない、主管官庁がわからないということで今保留になっております。総合人間学あるいは科学専攻、福祉工学、生体料とかいろいろ分かれておりまして、とにかくお医者さんだけではだめだというのです。それには今の工学的な知識もなくてはいけない、あるいはほかのことも持っていないと、これからの長寿社会に対しての貢献はできないというようなことがいろいろと提言されているわけでございます。今後また時間がありましたら、そういう問題についても、本当に今後の日本の国民の福祉の増進と健康の増進のために、こういうものの実現を図ってまいりたい、このように考えております。  以上で質問を終わります。
  173. 野呂昭彦

    ○野呂委員長 代理 塚田延充君。
  174. 塚田延充

    ○塚田委員 今回の国民健康保険法改正案につきましては、都道府県などの財政負担を導入する内容が伝えられるや否や、全国の知事会などから猛烈な反対運動が起きたことは御存じのとおりでございます。その反対の主な理由は何であったのか、そして自治省としては、それを受けてどのような認識もと厚生省と話し合ったのか、お間かせいただきたいと思います。
  175. 嶋津昭

    ○嶋津説明員 国保問題につきましては、御承知のように、六十二年度の予算編成の際に非常に大きな問題に一つなったわけでございまして、財政当局の方から今の国庫負担のうちの一部について都道府県に肩がわりをしてもらいたいという申し入れがあったわけでございます。そのことにつきまして、都道府県の方から、国の負担を単に肩がわりするということは、地方団体としてものめないという非常に強い反対があったわけでございます。  そういうような経緯を踏まえまして、国保問題懇談会が設置され、いろいろな議論が行われたわけでございますが、都道府県知事あるいは市町村長さんの代表が入りましていろいろ国保の現状と問題点を中心に厳しい議論をその中でしていただいたわけでございます。その過程で十月末に、国保問題懇談会における議論のたたき台として、厚生省の方から一つの素案、たたき台というものが出されたわけでございます。これは一定の幅を持った御提案であったわけでございますけれども、その内容につきまして都道府県なりあるいは市町村からいろいろな御意見が出たことは事実でございます。十一月の初めに六団体の代表が集まりまして、国保問題懇談会議論を踏まえたいろいろな決議をしているわけでございます。  その主な内容といたしましては、まず第一点といたしまして、退職者医療制度創設の際、五十九年度のそれの創設のときにおける計算の違いといいますか、そういうものに基づくところの国民健康保険財政への影響額が一部未措置になっている、そのものについてまずどういうふうな対処を国としてするのだという点が第一点でございます。  それから、第二点につきましては、細かい御説明は省かせていただきますけれども厚生省素案の中にございますところの福祉医療制度なりあるいは地域差調整システムというものが都道府県なり市町村国保財政あるいは一般財政に非常に大きな影響を与えるのではないかという点が第二点でございます。  第三点といたしましては、このような国保制度の大きな改革に際しては、従来からの経緯から考えましても、医療保険制度一元化なりあるいは医療費適正化に対する抜本的方策、医療費適正化に対して基本的に手段を国保保険者なりあるいは都道府県知事というのは持っていないのではなかろうかというような点につきましての異論といいますか意見が出たわけです。  主としまして、その三点につきまして反対の意見というものが出たわけでございます。  そのことにつきまして、第二点といたしまして、自治省といたしますと、都道府県、市町村の御意見を含めまして、主として国保問題懇談会の場でいろいろと議論が、その厚生省のたたき台に対しまして都道府県なり市町村の方からも、いわば対案といいますか意見的なものも出たわけでございます。  そういうようなことの議論の末、報告が出されたということでございますので、この報告の中においては、その懇談会における主要な論点とそれに対する地方団体意見が一応網羅的に出ているというふうに考えております。
  176. 塚田延充

    ○塚田委員 そのような認識もとに、自治省を旗頭としてかなり抵抗があったわけでございますが、それが大蔵大臣厚生大臣との三者会談に基づいて、自治省側としては絶対反対であったその矛を急にぱたりとおさめたような形になっているわけでございます。何に納得してその矛をおさめたのか、最大の理由について御説明いただきたいと思います。
  177. 嶋津昭

    ○嶋津説明員 先ほどもお答え申し上げましたように、国保問題懇談会におきまして、厚生省の案なりたたき台に基づく御意見、あるいはそれに対する都道府県、市町村の御意見というのが集約されて出てきたわけでございますが、その都道府県側の一番の根幹となる議論につきましては、やはり国保制度の全体の改革の中で、今度の国保の現状に対しての対策をどう位置づけるかという点ではなかろうかと思います。そういう点につきまして意見の対立がございましたが、国保問題懇談会後におきますところの自治省、厚生省、大蔵省、その三省間におきます調整におきまして、やはり自治省といたしますと、国保制度の根幹につきまして、今の国保制度国民保険下における国の制度として基本的に国の責任において運営が行われるものだという点、その根幹を崩さずに、しかし現在国保制度が抱えておりますところのいわゆる医療費の高騰に伴う財政危機の状況とか医療費地域的な対応の問題、低所得者保険者に与える影響等々につきまして当面講すべき措置ということについて議論をし、そのことについて三省の合意を得るに至ったわけでございまして、地方団体の御意見も踏まえた今回の提案の内容につきましては、途中ではいろいろな厳しい議論もございましたが、結果的には地方団体意見がそれなりに、一〇〇%ということではないと思いますが、反映された形になっていたということでこの合意に至ったのではないかと考えております。
  178. 塚田延充

    ○塚田委員 地方団体も納得という形で合意をしたから矛をおさめたような形になったという御説明でございますけれども、それでは自治省にずばり率直な御見解をお伺いしたいわけです。今審議されておりますこの改正案に対して、まだまだこれが足りないとかこうしてほしいとか、恨みつらみというわけじゃございませんが、見解があるのじゃないかと思いますが、率直な御意見をお聞かせいただきたいと思います。
  179. 嶋津昭

    ○嶋津説明員 自治省と厚生省と大蔵省との間で、いわば議論はそれなりにそれぞれの立場をお互いに主張するわけでございますが、政府部内としての意見につきましては、結論に対して考え方は一応一致しているわけでございます。ただ、地方団体から今回の国保改正案に続いて今後どういうふうな対応をすべきだというような希望があるのかということにつきましては、国保問題懇談会報告の中にもその趣旨が出ているわけでございますが、やはり当面暫定的な措置を講じているわけでございまして、保険者といたしますと、これらの暫定的な制度が講ぜられて、財政的に余裕が多少生じても、医療費のアップというものがそれを一年か二年で帳消しにしてしまう、こういうような状況が続く限りにおいては、根本的に限界に近づきつつあると保険者が考えておりますところの保険料負担水準を、今後どういうふうに持っていくのか、あるいは保険料負担保険者間の格差の問題もございます。それからもう一つは、やはり地域保険が必然的に高齢者とか無職者あるいは低所得者を抱えている。これは内容的には一つの現象だとは思いますが、高齢化に向けて今後もますます地域保険が他の保険制度と比較いたしまして制度的にも非常にウィークポィントといいますか、そういうものを持ち続けるだろう。そういうことに対して、医療保険一元化の道筋で、どういうふうなことを国としてお考えいただけるのか。あるいは第三点といたしましては、やはり医療費適正化、抑制に対して、これは市町村保険者としては間接的にこれについての対応をすることは可能かと思いますが、その根本はやはり都道府県、市町村ではいかんともしがたい点が多いわけでございますので、それらの点につきまして、ことしも含めて今後ともに国において総合的な対応をしていただきたいというような点に集約されるのではないかと考えております。
  180. 塚田延充

    ○塚田委員 調整室長の御説明、ありがとうございました。  その中でも述べられておりますように、やはり国保問題について抜本的な改革ポイントを決めてきちんとやらなければなかなか地方団体としても乗っていけないというようなことが言葉の表にも裏にも強くにじみ出ていたのじゃないかと思います。それが単に交付税を交付するからというようなことで予算編成上のつじつま合わせ、これのみに終わったのでは、やはり地方団体としては多分六十五年以降のことについてまたまたいろいろな意見が沸騰してしまうのじゃないか、このように懸念するわけでございます。  そこで、厚生省にお伺いいたしますが、厚生省はこの改正案を医療保険制度一元化のための条件整備と位置づけておられるようでございますけれども、どの点がどのように一元化に結びついていくのか、端的に御説明いただきたいと存じます。
  181. 下村健

    下村政府委員 私どもとしては、今回国保の構造的な問題というふうなものに当面の対策を講じたということでございますが、低所得者の問題と医療費地域差という保険制度で本質的に対応しにくい問題というふうなことであると思いますが、そういった問題に当面の対策を講じた。そのことによって国保保険として機能していけるような条件をつくり出していきたい、こういうことでございます。  医療保険制度一元化あるいは給付負担の公平を図るということにつきましては、保険制度という意味で両者の一元化を図っていくことは可能なのではないか。そういう意味で、国保保険としての機能を回復するということが一元化にとっての前提条件につながることだ、こんなふうに考えているわけでございます。そういう意味で、今回はいわば当面の対策ということでございますが、国保の構造的問題につきまして、国と地方とが協力しながら国保社会保険としての機能が果たせるように取り組んでいく体制をつくるということが、国保の長期的安定また一元化にもつながっていくというふうに考えているわけでございます。
  182. 塚田延充

    ○塚田委員 その一元化ということでございますけれども、今までの審議の中でも何回かこの問題が取り上げられておりますけれども、これは全国民負担給付が同一になることを言っておるのか、それともいろいろな言いわけがあるようでございますが、実際にその姿がどうなるのか、国民がわかるような形で簡単に御説明いただきたいし、またそれに至るスケジュールについても御説明いただきたいと思います。
  183. 藤本孝雄

    藤本国務大臣 医療保険制度一元化の問題は、今後の高齢化社会が本格化する中で、年金とか医療とかいう制度を考えていく場合に、長期安定をさせていくということと、負担給付の公平を図る一元化という問題は、二つの大きな基本的な問題であるわけでございます。  そこで、御承知のように、これまでも、例えて言えば老人保健制度であるとか退職者医療制度であるとか健保法の改正であるとか、また今回の国保改正は、すべて将来の給付負担一元化を達成するために、段階的にこういう改革を進めていこう、そういう考え方で取り組んでおるわけでございまして、まさに今回の改正は、その目標に向けての条件整備であるわけでございます。  今後の問題といたしましては、御承知のように、六十五年度に向けまして国保改革見直し、また老人保健法の見直しをするわけでございまして、その見直しを行った上で、その内容を踏まえまして、さらに一元化のために努力をしてまいる、こういう考え方であるわけでございます。
  184. 塚田延充

    ○塚田委員 厚生省はさきに「国保制度の課題と改革の基本的考え方」という中で、八割程度の給付水準に改善するために必要な検討をすると述べているわけでございますが、その八割という水準は何を基準に考え出したのか、それぞれの各制度をそのままにして、給付面のみ八割で一元化するつもりなのか、あるいはほかに別の方法を考えているのか、その具体策についてお伺いしたいと思います。各制度をそのままにして給付面のみ八割で一元化するとすれば、給付は公平になりますけれども、それぞれの保険制度の間で保険料負担がまちまちとして残ってしまう、これはかえって不公平感が生じてしまい、各制度の反発を買うことになりはしませんか。この件についてお伺いいたします。
  185. 下村健

    下村政府委員 現在の医療保険が対象としている医療費につきまして、医療保険負担している部分割合をパーセントで表示いたしますと、大体八二、三%、こういうことになろうかと思います。したがって、八割程度の水準を維持するというのは、総体といたしまして、現在の医療保険制度給付水準を維持する、こういう考え方が八割程度ということになるわけでございます。  そこで、それをやっていくためには、現在の分立している医療保険制度そのままで高齢化社会を迎えますと、負担の非常に大きな不均衡が生じてまいります。したがって、その負担をどうしても公平にしていく必要がある。ただ、負担だけを公平にしていくということになりますと、そこにはまた給付面での差に基づく負担問題というのが影響してまいりますので、給付もできるだけそろえていくという考え方が出てくるわけでございます。そこで、給付負担の公平を図っていく。ただ、その場合に、完全に全部を同一の水準にしてしまう方がいいのかどうか、ここら辺はまだ議論が十分尽くされていないということではないかと考えております。  また、八割という問題にいたしましても、国保が現在既に高額療養費を含めますと七九%ということで、相当八割に近い水準まで行っておりますが、なお八割にはちょっと及ばない。これを高額療養費等を改善するあるいは入院部分を改善するというふうな考え方もあろうかと思いますが、八割程度の水準という場合に、その具体的な給付のあり方として、定率給付部分をどうすればいいのかあるいは高額療養費のようなものをどう考えればいいのか、その辺でもさらに問題が今後の問題としては残されている、こういうことではないかと思います。  それから、もう一つの問題としては、医療費の差という形で今回取り上げたわけでございますけれども、受けている医療の実質的な内容が地域によって差がある、そういう実質的な面での公平を確保していくという面から考えると、さらにその面についても対策を考えていく必要があろうか、こういうことが出てまいります。  いずれにいたしましても、そういうことで私どもとしては現在の社会保険体制というものを維持していく方が適当ではないかというふうに考えておりまして、その中で今言ったような問題点を解決していくためには、やはり給付負担公平化ということを進めざるを得ないだろう。まだいろいろ問題が残されておりますが、今後さらにその辺の議論を徹底させて検討を進めてまいりたいというふうに考えているわけでございます。
  186. 塚田延充

    ○塚田委員 一元化ということが抽象的に言えば負担給付公平化を目指すものであるということはよくわかります。それではそもそも保険とは何かという基本的な、議論を吹っかけるわけじゃございませんが、問題についてお尋ねしたいと思います。  単純に保険ということを考えてみますと、一個人の病気とか家族の病気とか、それに加入している団体のそれぞれがお互いに保険料を納めて、言うなれば相互扶助を行うもの、これがすなわち保険という言葉どおりの定義の内容じゃないかと思うのです。それが最近においては、各保険者から老人医療に対しまして拠出金を出すとかまた退職医療に対して拠出金を出すとか、このような形で、保険料がどちらかというと、その保険グループの相互扶助を逸脱した状態で利用されるようなことになっているわけですね。これは今のデータで言えば、健保組合の推計によりますと、現在保険料の約三〇%がそういう老人保健とか退職医療制度の方に拠出されておる、将来はこの拠出割合が五〇%以上になってしまうのじゃないかということになります。そうすると、そもそも保険とは何ぞやということから考えると、保険加入者にとっては納得できないという基本問題が浮かんでくる。そうなると、その制度そのものが崩壊する危険性があるのじゃないかと僕は思うわけです。  そこで、既にいろいろな団体、学者の方からも、これらの解決策に対して意見が出されており、一長一短あるわけでございますけれども、老人医療費であるとか退職医療費は、むしろこの保険料以外の財政負担制度を考えて別に切り離していく、以前のように老人福祉法で行うとかいうようなやり方をもう一度考え直す時期が来たのじゃないか。これは端的に言えば、税金を財源とすべきだという意見ととられても仕方がないと私は自分自身解釈しておるわけでございますけれども、この財源問題については言うつもり全然ございません。しかしながら、あくまでも社会保障全般の中で老人医療費がどうなるのか。その比重が余りにも膨大になっていくということからすれば、老人医療については国家としてきちんと福祉政策としてやる時期が来るのではないか。それをこの保険制度一元化という中でも検討すべき段階に来たのではないか、私はこのように考えるのですけれども厚生省としての御見解をお伺いしたいと思います。
  187. 岸本正裕

    ○岸本政府委員 老人に対する医療費の増高というのは相当の勢いがあるわけでございまして、それを負担する生産年齢の方々に対する圧力というものも今後大きなものが見込まれているわけでございます。私どもといたしましては、これから一番大事なことは、老人の医療を保障する場合に、サービスの内容が老人の特性にふさわしいものであること、特性に合ってむだのない効率的な医療、それが老人の健康も増進するし幸せも高めるということだというふうに考えているわけでございまして、そういう意味ではいろいろとございましょうけれども、漫然たる長期入院というようなものを是正する、そしてリハビリテーションというものを重視をする、そしてできれば在宅で医療ケアを続けるというようなことができるようにしてあげる、こういうような方向が望ましい方向ではないかと思っているわけでございます。  そういうふさわしい医療という意味で老人医療適正化ということを進めなければいけない、これは我々に課された大きな課題であるというふうに考えておりますが、それにいたしましても、老人人口の増高等によりまして医療費の増加は避けられない面がございます。じゃ、だれがどう負担をするかということでございますけれども、これは老人保健法創設当時からいろいろな御意見があったわけでございまして、私どもとしては、そういう御意見を踏まえた上で、医療保険制度が分立をしておる、それで保険者間で老人の加入割合に著しい格差がある、こういうようなことから、これを公平に負担するという見地で、各保険者の共同事業という形で老人の医療費を組み立てた。七割部分については各保険者からの拠出金で御負担を願う、三割については公費で負担をするという仕組みにしたわけでございます。私どもといたしましては、このような仕組みが社会保険制度というものの長所を生かしつつ負担の公平を図るということで極めてふさわしい、また現実的な対応であると思っているわけでございます。  ただ、これからの各保険者負担というものが相当重くなってくるという御意見もいろいろと私ども拝聴しているわけでございまして、六十五年までに行う老人保健制度見直しの中でも一つの大きなテーマであろうと思うわけでございますけれども、私どもといたしましては、そういう今の仕組みの基本的な考え方というものを生かしながら、今後の負担のあり方というものを探っていけないものかということを今考えているわけでございます。
  188. 塚田延充

    ○塚田委員 今の問題は余りにも根本的な問題でございますので、じっくりと研究してください。  次に、医療費増高の大きな原因の一つに末期医療の問題があることは事実でございます。延命を第一義とする今の医療のあり方を見直して、望ましい末期医療のあり方について研究、検討を行う時期に至ったのではなかろうか、このように思うのですが、いかがでしょうか。
  189. 仲村英一

    ○仲村政府委員 医療が進歩いたしまして、今まで治療のできなかった疾患に対しても治療を行うあるいは手術を行うということで、今までの医学というのは延命に非常に効果を上げてきたわけでございますが、単なる延命医療と申しますか、患者の終末段階で患者さんの残されたクォリティー・オブ・ライフを考えないで延命治療をするということで、いろいろ反省と申しますか、そういう指摘があるのは先生おっしゃるとおりでございます。ただ、これには従前の臨床医学というのは、患者さんを生かすためだけということでやってきたという過去の経緯と申しますか、沿革もあるわけでございまして、単純に行政側がどうこうということは非常に難しい医の倫理の側面も含んでおる問題でございます。したがいまして、私どもといたしましても、そういう事実があるということは十分認識をしておるわけでございます。  行政機関としてできることは何かということでいろいろ今私どもやっておりますことを御紹介させていただきますと、やはり実際現場で行われている末期の医療というもの、全体的なクォリティー・オブ・ライフなどを含めた患者さんを中心にした医療のあり方、あるいは絶対治らない病気をどのような形で臨終を迎えていただくかというふうなことで難しい問題かたくさんあるわけでございますので、私どもといたしましては、もちろんそれによりまして医療費がかかるということも一方にあるわけでございますけれども、末期医療をどのように考えたらいいか。医療の内容あるいは患者さんの心理の問題あるいは家族との交流の問題あるいは死に場所の問題と申しますか、そういう多くの問題を専門家にお集まりいただいて総合的に検討していただいたらどうかということで、昨年の七月に末期医療に関するケアの在り方の検討会を設けて、来年度も引き続き検討していただくということで、現在多角的に検討をいただいているというのが実情でございます。
  190. 塚田延充

    ○塚田委員 次に、地域単位の健康保険組合の設立についてお尋ねいたします。  厚生省は六十一年の四月以来国会答弁で何回も何回も地域健保組合の設立を検討すると答えておられますけれども、まだ認可されたものはないんですね。具体的な設立基準が何になっておるのか、まずそれについてお伺いします。
  191. 下村健

    下村政府委員 地域総合健保組合については、実はかねてから私ども関心を持ちまして、何らかの形で実現してみてはどうかという気持ちを持ちましていろいろ検討を進めてきたわけでございます。ただ、現在の健康保険組合は、大体職域と申しますか産業別と申しますか、そういった組織原則が中心のような形になっておりまして、そこへ地域を持ち込むというと、組織のあり方として全く異質の原理原則を持ち込むという格好になるわけでございます。したがって、それを地域主義一本に変えられるかというと、そこはなかなか難しゅうございます。現実問題として既存のものがありまして、保険である以上は大体同じような、余り条件のかけ離れていない同一の条件の人を保険で組織するという方がまとまりもいいし、運営がうまくいくという面があるということでいろいろ検討してきたわけでございまして、そういう意味では、大前提といたしましては、従来の組織原則を基本から変えるものではないけれども一定のそういった健保組合設立の条件が満たされるような場合には、地域健保を認めてもいいんじゃないかという考え方が基本になってくるわけでございます。  そこで第一は、ある一定地域をとって、その地域について共同連帯意識の強い設立母体と申しますか、母体となるような組織が存在するということが一つ条件ではないかと思います。それが何といっても基本でありまして、あとは既存の組織との調整問題等いろいろございますが、基本的には従来の健保組合と同様、標準報酬とか医療費等から見まして、安定した運営の見通しが立つというふうな問題、それから保険集団として適正な規模が維持される見通しがあるというふうな問題等々を考えまして、その設立を認めていくということになろうかと思うわけでございます。  具体的な設立の条件といたしましては、現行の総合健保組合につきまして考えております規模でありますとか標準報酬でありますとか、そういったものが満たされる。ただし、一定地域でそういう組合を維持していく基盤として十分な母体になるような組織が存在するというふうなことが考えられるのではないか。そういうことから考えてみますと、私どもとしては、各都道府県等に商業団地でありますとか工業団地でありますとか、こういったふうなものがありますので、まずそういったところが考えられるのではなかろうか、こういうことを考えておるわけでございます。
  192. 塚田延充

    ○塚田委員 設立手続はどのように進めたらいいのか、ごく簡単に御説明いただきたいと思います。
  193. 下村健

    下村政府委員 これは通常の健保組合の設立手続と同様でございまして、設立の認可申請を出していただく、こういうことになるわけでございますが、認可申請の場合には、そういったことで医療費でありますとかいろいろ難しいデータをそろえることも必要でございますので、なるべく早目に私どもの窓口に相談していただいて、進めていただくということがいいのではないか、このように思います。
  194. 塚田延充

    ○塚田委員 去る三月十四日の参議院の予算委員会で下村保険局長は、その答弁の中で、早ければ一、二のものについて数カ月以内にその設立を認めるような状況になってくるとおっしゃっておられますけれども、その一、二のものについて具体的な進捗状況をお聞かせいただきたいと思います。
  195. 下村健

    下村政府委員 実はまだ正式な申請書が提出されるというところまではいっておりません。先ほど申しましたように、いろいろデータの検討をしているということでございます。それらがうまくまとまりましたら、いずれ申請書が出てまいりまして、認可をする、こういう段取りになるわけでございますが、先ほど申しましたように、一、二の卸商の方の団地のようでございますが、それがかなり具体的に検討を進めているということでございます。先万の希望といたしましては、六月を目途に設立したいということでこざいますので、私どもとしても最初のケースでございますので、できるだけ希望に沿う形でまとめていきたいということで取り組んでおります。
  196. 塚田延充

    ○塚田委員 地域医療を充実していく上で、このような地域健康保険組合の設立というのは一つのアイデアであり、積極的に推進していく必要があるのではないかと私どもは考えておりますし、申し上げたとおり、またそれを三月十四日我が党の井上計議員が質問したとき、局長の方から大変積極的と思われる回答をいただいたこと、私も議事録で読んだわけでございますけれども、それから見ますと、先ほどの御答弁でも、また私の質問に対する御答弁でも、ちょっと消極的になっているのではないかという危惧がするわけでございますけれども、そもそもこの地域単位の健保について厚生省はどういう態度で臨まれるのか、見解をお伺いします。
  197. 下村健

    下村政府委員 私どもとしては、いろいろ申し上げましたけれども一定条件が満たされるところについては積極的にその設立を認めていくという方針でございます。
  198. 塚田延充

    ○塚田委員 それでは、その件につきましてはひとまずおきたいと思います。  このたびの改正案では、私が冒頭で申し上げたごとく、都道府県の財政負担導入が大きなポイント一つとなったわけでございます。従来都道府県は医療法に基づいて地域医療計画での病床規制とか医療費適正化など医療機関の指導にかかわっていたことは事実でございます。しかしながら、医療保険業務には直接的には余り携わっていなかったといってよいのではないでしょうか。それが今回の改正では、指定市町村安定化計画作成に助言したり、指導したりというようにある程度かかわることになるわけでございますけれども、全体的に見てみても、まだまだ形式的なタッチ程度であって、すなわち都道府県の側から見た場合には、責任と負担という観点からしますと、財政負担という責任のみを求められているように受けとめられてしまうのではないかと私は懸念しているわけでございます。  そこで、厚生省にお伺いしますけれども国保行政における都道府県の役割について、財政負担のみをすればいいと考えておるのか。あとはまあ負担を頼んだんだからちょっとやらせようか、その程度のことなのか。それとももっと前向きに、国保制度のあり方全体の中でこういう役割を分担してもらって、よりよいものにするんだという前向きの御意向があるのか、はっきりとお答えいただきたいと思います。
  199. 下村健

    下村政府委員 私どもとしましては、ただいまの御質問の言葉をおかりいたしますと、もっと前向きに取り組んでいただこう、こう思っておるわけでございます。これは医療費問題等いろいろ厚生省としてやってまいりまして、厚生省医療費問題等適正化というふうな観点から取り組みましても、やはり全国一律という感じがどうしても強く出てまいるわけでございます。ただ、医療の需給関係供給体制の問題にいたしましても、これは地域ごとに具体的な問題が存在するわけでありまして、私どもとしては、地域の具体的な実情に即した適正化なり医療体制をつくるということで取り組んでいただく必要があり、これはやはり厚生省だけではなかなかできないのではなかろうか、このように基本的な認識としては持っておるわけでございます。  そこで、今回の改革では、現在の国保制度の上からいいますと、一つは、国民健康保険の運営について都道府県は監督指導をやっております。それからもう一つは、ただいまお話に出ましたように、医療機関関係の監督指導あるいは審査機関等の監督指導、審査委員の任命とかそんな仕事をやっております。それからもう一つは、診療報酬制度の上でもう少し具体的な、場合によっては医療用に使うものの価格を決定するとか、そういった診療報酬絡みの事務を行っていただいているわけでございます。当面はこれをてこといたしまして、その周辺の医療行政あるいは福祉行政といったものも保険制度と結びつけながら、都道府県、市町村ともに総合行政をやっていくというのが一つの特色ある役割になっているわけでございますので、総合的な医療費に対する取り組みをお願いしたい、このように思っているわけでございますが、さらに実績を見ながら、必要であれば都道府県にもっとこういう役割を果たしてもらえばいいのじゃないか、こういう仕事をやっていただけばいいのじゃないかという具体的な問題が出てまいりましたら、これは今後の検討の中でさらに十分考えてまいりたい、このように考えております。
  200. 塚田延充

    ○塚田委員 先ほどの自治省の説明によりますと、地方団体の立場で言えば、国保の抜本改正のためには、制度一元化であるとか保険料水準地域格差問題を是正するとかいうような根本的な問題を厚生省にきちんとやってもらわなければ、地方団体としては困るというような指摘があったわけでございます。そしてあらゆる意味における根本的な問題というのは、やはり医療費適正化問題ということになってくるのじゃないかと思います。  ところが今の保険局長の御答弁によると、都道府県にかなりの役割をきちんと担ってもらうことを考えておるということでございますけれども、この改正案そのものは、現実的には六十三年度及び六十四年度限りの暫定措置と位置づけられて、我々の方に提案されてきているわけでございます。となりますと、この二年間でどのような検討を行うのか。それから当然心配になるのは、ならば六十五年以降はどうするのか。そういうことを含めて、普通だったらば根本改正でやって、そして見直し規定か何かでもって二年後に見直そうというのならいいのだけれども、最初から二年の、言うならば時限立法的な色彩が強い。どうしてこのような時限立法的な措置を提案してきたのか、御説明いただきたいと思います。
  201. 下村健

    下村政府委員 先ほど私が申し上げましたのは、今後の国保制度あるいは医療保険制度に対する期待あるいは希望という点も含めまして申し上げたわけでございまして、今回の措置ということになりますと、先ほど冒頭に御質問がありまして自治省からお答えがありましたように、いろいろな経過がありまして、二年間の暫定措置にする、当面必要な措置を講ずるということでございます。  したがいまして、さらに国保制度改革についてはいろいろな検討が必要だということになってまいるわけでございますが、これにつきましては、社会保障制度審議会の方に医療保険制度全体のあり方等も踏まえた幅広い検討をお願いしたいということで、検討の依頼を行っておりまして、自治省が言っておられるような問題も含めまして、社会保障制度審議会で具体的な検討をお願いすることになる、このように考えているわけでございます。  それでは、六十五年度以降長期安定とはいっても、そこは問題が残らないかという御心配でございますが、私どもとしては、そういう検討をしていくにいたしましても、当然国保制度自体の安定性、継続性といった面についても配慮しながら、そういった検討をお願いするということになるのではないかと考えているわけでございます。
  202. 塚田延充

    ○塚田委員 現在生じております保険料地域格差につきまして、どのような方法で保険料の標準化を図っていくつもりなのか。例えば国の財政調整により全国的な保険料水準のアンバランスの調整を行う必要があると思いますが、この件、いかがでしょうか。
  203. 下村健

    下村政府委員 現在でも実は保険料につきましては国の財政調整交付金を通じましていろいろ調整をやっております。その結果、現状におきましても、所得が同じ、それから医療費水準が同じというところについてはほぼ同一水準保険料が確保されるような調整が行われているわけでございます。  ただ、それにいたしましても、保険料の賦課方法が違うとかいろいろな問題もある。もう少しその辺の標準化ということを進めるべきではないか、国としてもう少し明確な具体的な指針等が示せないか、これが自治省あるいは地方団体が言っておられる考え方でございまして、これにはただいま医療費が同じ、所得が同じであれば大体同じ保険料というふうに申し上げたわけですけれども、例えば医療費に対する考え方をどういうふうにするか。これまでのところは大体そういうことでやっておりますが、医療費が高いところは保険料が高くなってもやむを得ない。どちらかといえば、そちらが比較的強く出るような形の調整をやっているわけでございます。  したがって、医療費地域差問題を今度も取り上げておりますが、その辺の問題とも関連しながら、一体保険料負担の公平という辺をどう考えるか。これはかなり基本的な考え方に影響するので、非常に難しい問題でございますが、自治省とも協力いたしまして、そういった検討を進めていこう、こういうことになっているわけでございます。
  204. 塚田延充

    ○塚田委員 現在の各市町村国保財政状況がどうなっているのか。具体的に言えば、一般会計から補てんをしている市町村はどのくらいあって、その補てん総額がどの程度になっているか、お答えいただきたいと思います。
  205. 下村健

    下村政府委員 六十一年度の国保財政状況を見ますと、実質収支差し引き額で六十年度決算が五百九十六億円の黒字であったわけでございますが、三百八十二億円の黒字ということで黒字幅が二百十四億円減少、こういう形でございます。一方、これに伴いまして、赤字の保険者数が六十年度の四百四十六から六十一年度は三百三十七、百九減少しておりますが、赤字保険者の赤字総額は六十年度の九百三十二億円から千二百四十五億円へと三百十三億円増加しているというふうなことでありまして、依然として厳しい財政状況が続いているということでございます。  一般会計からの繰り入れでございますが、市町村数にいたしまして二千二百四十二、操入総額が二千二百六十七億円になっております。ちなみに、六十年度の一般会計繰り入れは、市町村数にいたしまして二千百二十八、繰入総額が千七百六十一億円ということでございますので、市町村数、繰入額ともに増加しているということでございます。  現在の状況は以上のとおりでございます。
  206. 塚田延充

    ○塚田委員 低所得者医療給付は一般被保険者医療給付と比較してどうなっていますか。
  207. 下村健

    下村政府委員 低所得者の場合の一人当たり医療費は平均の一人当たり医療費の二倍程度ということで、かなり高い医療給付が行われているということでございます。それでこの差は主に低所得者という中には老人が多いというふうなことがございまして高いということでございますが、そのほかに病気がちの人が所得が低いという結果になっているということも考えられるわけでございます。
  208. 塚田延充

    ○塚田委員 安定化計画を策定しなければならない市町村はどのくらいあると考えておられますか。
  209. 下村健

    下村政府委員 全国市町村数、三千三百余りございますが、大体その五%程度、百五十程度か、これは直近の年度を通じての数字が六十一年度の実績でございますので、六十一年度実績をもとにして現在考えている、非常にまだ大まかでございますが、その基準もとにして考えた場合に、そんな程度になろうかということでございます。したがって、まだ多少今後幅、変動があり得るということでお考えをいただきたいと思います。
  210. 塚田延充

    ○塚田委員 今回の改正案の中で指摘されております言葉の定義でございますけれども、著しく高い医療費の「一定部分」とはどの程度のものと考えているわけですか。
  211. 下村健

    下村政府委員 実は、これもまだ具体的に市町村の数字等を見ながら検討を進めておりますので、考え方だけを申し上げさせていただきますと、当初、昨年の十月に私どもが素案というふうな形で国保改革考え方を出しましたときには、全国平均医療費というふうなものを一応算定いたしまして、もちろんその平均の中には年齢差を加味する、年齢差を加味して、年齢差の要素を考慮に入れても平均より高い部分負担していただいてはどうか、このように考えたわけでございます。ただ、これに対しては、平均でいきなりそういうことをやるというのは少し荒っぽ過ぎるんじゃないか、こんなふうな議論もありまして、一定層の余裕を見る。大体現在考えておりますのは、二割程度かまあそんなことになろうかと思いますが、その前後の数値をとろう、これは標準偏差等をもとにしてそういう考え方でいこう。これにさらに地域的な要素を加味いたしまして、地域的にどうしても高くなる要素がある。災害があって病気が非常にはやったとかあるいは原爆の被爆者が多くて非常に医療費が高いとか、それから老人ホームが非常にたくさんあって他からの転入者が多いとか、あるいはたまたま透析患者が非常に多発をしたとかいういろんな特殊要因が考えられるわけであります。そういった特殊要因を外して考えてみるということで、現在その考え方を整理いたしているところでございます。
  212. 塚田延充

    ○塚田委員 本来国保医療費適正化というのは、現に医療費が高い低いにかかわらず推進すべき課題じゃないかと思います。となりますと、すべての保険者計画を策定して医療費適正化を図ることによって制度安定化を図るべきだと思いますが、いかがでございましょう。
  213. 下村健

    下村政府委員 当然そのとおりでございます。私どもとしても従来からそういうふうな指導を行ってきておりますし、また現在も国保団体、自主的に三%運動というふうな形で適正化問題を含めて取り組んでいる、こういうことでございます。  ただ、今回はそういったことのほかに、やはりさらに重点的に、特に医療費の高いところについてはさらに精密な計画を立てて努力をしていただこう。もちろん中身はその市町村によりましてそれぞれ違ってくると思いますが、かなり詳細な要因の分析等も行いまして、基本的な分析については、国もお手伝いをした上で、市町村ことの医療費についての問題点を見定めながら計画を実行していただこう、こんなふうに考えているわけでございます。  ただ、全体として、できればそれは高いところも低いところも一層適正化をしていただく必要がある、それは御指摘のとおりではないかと思います。
  214. 塚田延充

    ○塚田委員 以上で終わります。
  215. 野呂昭彦

    ○野呂委員長 代理 児玉健次君。
  216. 児玉健次

    ○児玉委員 厚生省国民健康保険課が「国民健康保険四十年史」というのを出していらっしゃいまして、昭和五十四年三月の発刊です。一通り読ませていただきました。大変興味深いものですが、その中で、「新国民健康保険法の立案」、昭和三十三年のときのことですが「厚生省当局で立案した新国民健康保険法の要点は、次のとおりである。」ということで若干のことが書いてありまして、その中で次のように述べている部分があります。「国民保険体制の確立のための国の責任を明確にしたこと。」「国民健康保険事業を行うことは、市町村の固有事務であるとする旧法の考え方を改めて、国民医療保障を行うことを国の責務とし、これを市町村に団体委任するという考え方を基本とした。」こう書いてあります。この点では厚生省、この後皆さんとしても変わりがないんだと思うのですが、大臣、いかがでしょうか。
  217. 下村健

    下村政府委員 皆保険体制を維持し、それを守っていくということは、当時においても今日においても変わりはない、団体委任の考え方もそこに書いてあるとおりだと思います。
  218. 児玉健次

    ○児玉委員 これはやはり厚生大臣に一言お聞きしたいのですが、三十三年の時期の国民保険に向けての変化というのは、振り返ってみて随分ドラスチックなものだったと思うのですよ。その中で「国民医療保障を行うことを国の責務」とするというふうに明白に言って、そうしてその後、「国の財政上の責任については補助の制度を、国庫負担制度に改め、」と、その次の行で書いているのですよ。このあたりは多くの方々の努力の結果だと思うのです。厚生省としては、それを進めていく上でお考えに変わりがありませんね。あえて大臣に一言お聞きしたいのです。
  219. 藤本孝雄

    藤本国務大臣 国民保険制度の中におきまして、国保制度は基本になる制度であるというふうに認識しております。
  220. 児玉健次

    ○児玉委員 きて、現在国民健康保険制度が非常に重要な困難に直面している、この点は恐らくどなたも意見が一致するところだ、こう思うのですが、市町村の赤字が随分議論されることがあります。  この二月の一日、ちょうど衆議院の予算委員会が開かれた日ですが、厚生省は各市町村の赤字を発表なさいました。その中でワーストワンが札幌でした。私は札幌に住んでいる者なんですが、札幌の現在の国民健康保険と他の健康保険との保険料の比較、三人世帯、札幌市がつくった資料なんですが、収入金額三百万円というポイントをとります。所得金額は百九十三万五千円です。国保国保料は幾ら課せられているかというと三十万二千円です。政管健保の場合は同じ収入で八万二千八百三十円、札幌市の共済は十一万七千三百九十円です。国保と政管健保を比べてみますと、負担は三・六倍です。そして自己負担は本人の場合三分の一です。全体として今国民健康保険の加入者の負担の限度を保険料が超しつつあるというふうに嵐うのですが、こういった現状について厚生省のお考えを聞きたいと思います。
  221. 下村健

    下村政府委員 ここ数年国保保険料相当上がってきておりまして、現在国裸の保険料相当厳しい状況にあるということはよく認識をいたしております。
  222. 児玉健次

    ○児玉委員 時間もありませんから、局長、端的に聞くので端的に答えてほしいのですよ。加入者の保険料負担が限度を超えていると思わないか、どうですかとお聞きしているのです。
  223. 下村健

    下村政府委員 限度ということになりますと、一体何をもって限度と考えるかというところで、先ほども医療費との関連でいろいろ申し上げておるところでございますが、何を限度と考えるかというのはなかなかまた大変難しい議論になると思います。したがいまして、限度ということについては、果たしてそれはどうかというふうに考えられますので、先ほど申し上げたようにお答えを申し上げたわけでございます。
  224. 児玉健次

    ○児玉委員 年収の一割を保険料負担が上回っている。他の健康保険と比較した場合に少々高いという程度のものでなく、三倍、三・六倍というふうな負担ですね。これはもう暮らしが成り立たない、そういう状態だ。私はそのことをはっきり指摘をしておきたいと思います。  そこで、各市町村における国民健康保険財政が急速に困難になってきた。この間の国産負担率を私たち調べたのでちょっと申しますが、国保医療給付費に対する国庫負担の率がどのように変わってきているか。昭和五十七年五七・八%、五十八年五六・一%、五十九年四九・八%、六十年四六・〇%、昨年四四・五%、この数字は間違いありませんね。
  225. 下村健

    下村政府委員 きちんと照合いたしませんでしたけれども、大体おっしゃるような数字になっていると思います。  ただ、国保国庫負担について申しますと、国保財政自体は国庫負担とそれから現在は拠出金、そういったもので賄われておりますので、総体の財政負担状況を見ないと、国庫負担だけで保険料の問題を論ずるというわけにはまいらない、このように考えております。  それから、先ほどちょっと申し忘れましたのでつけ加えさしていただきますが、国保と被用者保険の比較をやる場合には、被用者保険の方の標準報酬というのは、いわば税込みの収入で出てきているわけでございます。それから国保の方で所得と言っている場合は、通常はいろいろな控除等が入っておりますので、保険料負担水準を比較する場合に、先ほどの数字が正確かどうか、ちょっと手元に先生おっしゃった数字がございませんので申し上げかねますが、必ずしも先ほどのような数字にはならないのではないかというふうに考えられます。
  226. 児玉健次

    ○児玉委員 その点は先ほど私が言ったのをあなた聞いていないからですよ。収入金額が三百万円、所得金額が百九十三万五千円、収入金額三百万円で横に並べての話で、これは札幌市のつくった資料ですから間違いありませんよ。そのことは時間がもったいないから、これ以上言いません  そこで、医療給付費に対する国保負担率が急速に下がってきている。そのことに正確に照応して市町村の実質収支の赤字がふえております。これはさっきも議論がありましたが、大臣、ここはよく聞いていただきたいのですが、市町村国保会計の赤字額は、昭和五十九年が四百九十八億、昭和六十年が九百三十二億、六十一年が先ほど議論がありましたように千二百億を超している。そういう中で国保料の引き上げ幅は対前年度比で、五十八年から五十九年が五・七%、五十九年から六十年が一一・一%、そして六十年から六十一年が一二・九%です。国保財政が今坂道を転がり落ちるスピードで猛烈に破綻をし始めている。いろいろな議論がけさほどからありましたけれども医療費の増高の問題だとか老人の医療費、次第にそちらの方の相対的なウエートが上がっているだとか皆さんいろいろおっしゃっていますが、昭和五十九年に対医療費国庫負担率が四五%から三八・五%に引き下げられた、ことに最大の原因があると私は考えておりますが、この点どうですか。
  227. 下村健

    下村政府委員 退職者医療の影響のことを言っておられるんだと思いますが、五十九年度で退職者医療の私どもの算定見込みとの差に基づく影響額が約六百億台だったと思います。それから六十年度が約千四百億、六十一年度が千五百億、こんな数字であったかと思います。それに対して国が措置いたしましたのは、六十年度におきまして千三百七十億、大方六十年度の影響額を措置した、こういうことでございます。ということで、さらにその後五十九年度の影響額、六十年度の影響額につきましては、先般の補正予算でさらに一千億余りの措置をしたということで、退職者医療に対する影響が確かに国保に対して悪影響を与えたという面はあるかと思いますが、国庫負担の切り下げ分ということについては、そういった手当てもしているわけでございまして、それだけの手当てをしたということは、補助率は確かに名目的に下がっているわけでございますが、従前の国庫負担見合いのものは予算措置をしたということでございます。したがって、一時的な悪影響が確かに措置のおくれによって出ているということは考えられるわけでございますが、そういった面で、国庫負担の切り下げに伴う影響については、それぞれの措置も講じられておりますので、現在の国保財政状況の悪化というものの基本的な原因としては、高齢者の増加等に伴う高齢者医療費の増加ということが非常に大きな圧迫要因になっている、これが現在の国保の一番大きな問題である、こう考えているわけでございます。     〔野呂委員長代理退席、畑委員長代理着席〕
  228. 児玉健次

    ○児玉委員 あなたはいろいろと解釈をされているんですが、私は、全国市町村国保会計が特に昭和五十九年を画期として、六十年、六十一年と急速に悪化している事実を指摘しているんですよ。事実は頑固です。解釈でいろいろと見方が変わるようなものではありません。そしてそういった中で、国民健康保険の加入者の負担がもう生活実感から言ってもこれ以上無理だ、そうなっていることをよく理解した上で市町村が懸命の努力を続けられている。その努力一般会計から国保持別会計への繰入金の急増となってあらわれております。  これも時間がないから私から言いますけれども、六十年は市町村のものが千七百六十一億、都道府県を足すと二千百三十六億、六十一年は二千二百六十七億、都道府県も合わせますと二千六百三十七億、非常に困難な自治体の財政の中でこれだけのものが国保会計に繰り入れられております。  そこで、私はお聞きしたいのですが、今国民健康保険を再生するために何をなすべきか、ここがこの審議の中で議論されるべきだと思うのです。私たちは国民健康保険国庫負担率、先ほどちょっと議論しましたが、それをもとの四五%に戻す、減免措置に対する国庫負担を、今八割ですが、それをもとの十割に戻す、これではないかと思うのです。ところが今回厚生省が提起されたのは、その道ではありません。全く逆の道を提起されている。六百九十億円もの新たな負担を自治体に課す。しかもそれを一般会計からの繰り入れという形でなく法定化するという形で自治体に新たに課す。これは国保法の趣旨からいっても許されないことだと思うのですが、大臣、この点についてはどうですか。
  229. 下村健

    下村政府委員 国民健康保険が大変苦しい財政状況にある、これは御指摘のとおりだと思います。ただ、私どもとしては、その原因としては、高齢者問題等が非常に大きく影響している、このように申し上げておるわけでございます。医療保険制度全体といたしましては、やはり我が国の場合には、社会保険という考え方を基本にして皆保険体制を守っていきたいということを考えているわけでございまして、国民健康保険につきましても、保険制度としての本質を維持するという形で国保安定化を図っていこう、このように考えているわけでございます。そういった観点から考えますと、国庫負担につきましても、保険料国庫負担を一対一、対等の負担ということが原則ではないか。ただ、それだけをやりますと、国保財政にいろいろな影響が出てまいりますので、全体的な改革とあわせて国庫負担見直しも行っているというのが現在の姿でございます。
  230. 児玉健次

    ○児玉委員 私がここで問題にしたい最大のことは何かというと、国保加入者に対する市町村の責任からかなりの金額が繰り入れられている。それはそれで国の努力の不足を示していると私は思う。しかし、今度出されてきているのは、そういった性質のものではありません。法の改正という形で新たな負担を法定化して自治体に課そうとしている。さっきも言いましたように「国民医療保障を行うことを国の責務とし、これを市町村に団体委任するという考え方を基本とした。」と「国民健康保険四十年史」ははっきり言っているのです。そしてこの議論が行われた衆議院の社会労働委員会、いろいろと行われていますが、例えば昭和三十三年十月一日、厚生大臣は橋本龍伍さんで、そしてこの議論に参加された委員の中には、きょう午前中御質疑のあった大原亨先生のお名前もうかがうことができます。その衆議院の社会労働委員会議論の中で、国の責任とは何かということについて高田正己政府委員は次のように言っています。   今回の新法を一貫して流れておりまする思想といたしましては、やはり国保事業というものは社会保障の重要な一環としてやっていくのだ、しかもそこに国が責任を持っていくのだ、従って新法では費用の点につきましても、国の負担というふうな言葉を使って責任を明確にいたしますとか、あるいは調整交付金制度を設けて、負担力の少い被保険者をたくさんかかえておるところについては手当をしていくペナルティーを取るというのと逆なんですよ。「手当をしていく」、そこにこの国民保険の最も重要な部分としての現行の国民健康保険発足時における厚生省皆さん方の意気込みが込められていると思うのです。そしてこういった精神は国民健康保険法の全体を貫いている。特に出だしの総則のところで貫いている。そこのところは手をつけないでおいて、自治体に新たな負担を法定化してもぎ取ろうとする。これは国民健康保険の本来の趣旨が許さないのではないか。重要な問題ですから、私は大臣の考えを聞かしてほしい。
  231. 下村健

    下村政府委員 一般会計繰り入れの問題でございますが、私どもとしては、現在の国保制度というものの基本的な考え方は、国庫負担保険料で維持する、その基本的な考え方を一応今回は大きく変えていない、こういうことだというふうに考えています。  先ほど来いろいろ御議論があるわけでございますが、まさにそういう考え方があるので、地方負担導入をどうするかというところが地方団体も含めて非常に大きな議論になってまいった、こういうことではないかと思います。したがって、国保国庫負担を導入するに当たっては、国が出しております定率の国庫負担は現在四〇%でございますが、その一部一〇%を地方負担に回してはどうか、あるいは調整交付金を一部地方負担に回してはどうか、従来こういうふうな議論があったわけでありますけれども、今回はそういう形をとっていない。  確かに国保に対する地方負担という形でありますので、地方財政法等の関係等もありまして、その辺の法的な整理はいたしておりますが、基本はそうする。しかし、国保保険として考えた場合に、保険原理だけではなかなか対応が難しい低所得者の問題あるいは共同事業の問題、あるいは医療費の高い問題というふうな、国保を支える基礎条件のようなところで地方負担を入れよう、こんな考え方で今回の改革は整理をしてあるということで、国保の基本的な考え方は従来どおりということを先ほど来申し上げているところでございます。
  232. 児玉健次

    ○児玉委員 地方自治体に対して特別な措置をするというのは、先日の本会議でも議論があって、そしてそれはとりあえず六十三年度、六十四年度限りの措置だということが明らかにされています。今局長が最後に言われたように、ともあれ自治体に新たな負担を法定化する、これは国保法の趣旨に反するものだ、このことを強く指摘しておきますが、それとの関連で、新たに法定化される自治体負担六百九十億、これが加わったら、例えば昨年の一般会計からの繰り入れの二千二百六十七億がどうなっていくか。恐らく自治体としては従来の額で繰り入れていくということはしないだろう。そうなっていくと国保負担がさらに引き上げられていく、このことは火を見るよりも明らかだと思うのです。  そこで伺いたいのですが、厚生省は今回の改正保険料は全体として二百四十億円楽になる、一世帯千七百円の引き下げ要因になる、こういうふうに言われています。そう言われておきながら、一方ではことしの一月二十八日、厚生省保険局長名前で都道府県知事に対して通知なるものを出された。その中で「保険料(税)の引き下げ措置を取るようなことは厳に行わないこと。」「財政調整交付金の配分について一部見合わせることを考慮するものであること。」こう言われている。一方ではこれだけ楽になる、一世帯千七百円軽くなる、その要因があると言いながら、他方では局長通知で下げてはならぬ、こう言われる。これはどう考えても理解ができません。
  233. 下村健

    下村政府委員 私どもとしては、国民健康保険というのは単年度限りの事業ではありませんので、単に単年度収支だけを見て保険料を上げ下げするということではなく、やはりある程度の長期の見通し、長期とまではいわなくても、先行きを見ながら運営をしていただくのがいい、こう考えているわけでございます。  今回の制度改正で一世帯当たり千七百円というふうな負担軽減効果が出る、これはそのとおりでございます。ただ、現状から申しますと、医療費も上がっているということもありますので、やはりその辺は先行きを考えながら運営をしてほしいという意味でお願いをしているわけでございます。  ちなみに、今回の予算措置等も含めて考えますと、実際には後追いの形で一千億円の補正措置というふうなものもとられておりますので、六十三年度だけをとりますと、相当余裕が出てくるようなところもあろうかというふうに考えられるわけでございます。しかし、それを六十三年度の保険料引き下げだけで使い切ってしまうということは、安定的な運営から考えるとかえって問題を起こしはしないだろうか、このように考えているわけでございます。  実は、五十九年の問題、先ほど来退職者医療お話も出ているわけでございますが、ちょうど老人医療制度改革が満年度の効果を発揮したというようなこともありまして、五十九年度は、実は市町村の運営の状況からしますと、保険料を余り上げない、中には一部引き下げるというふうな市町村もございまして、そのことが逆に国庫負担の問題とも関連して、私どももその解決に大変苦労するというふうなこともございましたし、市町村もなかなか大変な問題になったという面も考えられるわけでございます。そういった経験もあるので、私どもとしては保険料についてはそういった先行きも考えながらやってほしいというふうに考えているわけでございます。  それから、一般会計につきましては、これも先ほど来申し上げているところでございますが、確かに厚生省国保関係国庫負担については四百五十億減った、こういう形になっておりますが、国の一般会計総体としていいますと、特別加算という形で交付税に別の歳出を組んでおりますので、国の負担自体が減って地方に新たな負担をふやしたという結果にはなっていない。総体として考えると、そういう効果がむしろ地方財政にとっても若干のプラスになっている面もある、こう考えているわけでございます。
  234. 児玉健次

    ○児玉委員 いろいろ今言われましたが、今度の法の改正の中でそれを法定化しているという問題が最大の問題だ、そこのところは私は重ねて強調しておきましょう。この後も質疑の機会があるでしょうから、ここで全部やるつもりはありません。そして今いみじくも局長おっしゃいましたが、今回の改正によって市町村国保財政が改善されないだろう、そこのところを皆さん方がだれよりもよく知っているから一月の局長通知が出たのだ、その点は私は指摘をしておきたいのです。  そこで、次の問題に入ります。  厚生省では、昨年の八月十九日に「長期入院者の家庭復帰等促進モデル事業の実施について」、こういう通牒をお出しになりましたが、それと今度の改正の本則に含まれております指定市町村における安定化計画基準超過費用額の負担の問題について御質問したい、こう思うのです。  まず最初に、先ほどからいろいろありましたが、きょう午前中の御質問にお答えになって、指定市町村というのが全国百二十市町村くらいになりはしないか、そして先ほど局長は、その平均額の二割程度とおっしゃったけれども、一・二倍という意味なのか、ここをちょっと聞かせてください。     〔畑委員長代理退席、委員長着席〕
  235. 下村健

    下村政府委員 百二十程度というのは、現在の数字をもとにいたしまして、地方負担が生ずることになりそうだと考えられる市町村数が百二十、このように申したわけでございます。  それから、二割程度というのは平均医療費、これは年齢別を加味した平均、こういうことでございますが、その一・二倍、こういうことでございます。  なお、ちょっと気になりますので、一言つけ加えさせていただきますが、私は今回の制度改正によって国保財政が改善されないと申し上げたつもりはありませんので、ちょっと一言申し上げさせていただきます。
  236. 児玉健次

    ○児玉委員 それをまた言っていると長くなりますから、次の機会にしましょう。  それで、これも先ほどの質疑の中で厚生省は非常に重要なことをおっしゃいましたが、基準超過費用額を積み重ねていった場合に十億から二十億のオーダーになるだろう、これは市町村のみでしょうか。それとも都道府県も含めてその金額になるということでしょうか。
  237. 下村健

    下村政府委員 これもあくまで現在の数字をもとにして、私どもの現在の想定数値、こういうことでございますが、市町村のみという数字でございます。
  238. 児玉健次

    ○児玉委員 そこで、厚生省は昨年の八月十九日に国民健康保険課長名で、先ほど言いました「長期入院者の家庭復帰等促進モデル事業の実施について」、モデル事業と略称させていただきますが、これを出されていますが、実施対象の国保連合会は十程度とありますけれども、現在どのくらいの国保連で実施されているか、そして実施されている都道府県の名前を明らかにしていただきたいと思います。
  239. 下村健

    下村政府委員 現在八市町村で実施をいたしておりまして、関係の連合会、北海道、茨城、石川、岡山、広島、山口、高知、熊本の各道県となっております。
  240. 児玉健次

    ○児玉委員 このモデル事業は大体いつどろまでやるのでしょうか。
  241. 下村健

    下村政府委員 現在のところ六十三年度も継続してやりたいというふうに考えております。
  242. 児玉健次

    ○児玉委員 八つの道県でモデル事業が行われている。課長の通牒によればかなり具体的な提起がされておりますが、道県でこれを実施するときの実施要綱について、厚生省に今届いているのはどことどこでしょうか。
  243. 下村健

    下村政府委員 これまで来ているのは北海道ということでございます。
  244. 児玉健次

    ○児玉委員 この通牒には「この事業の実施状況効果問題点、対策等をとりまとめ、年度末に国民健康保険課長あて報告する。」というふうに出ておりますが、この点については今どうなっているでしょうか。
  245. 下村健

    下村政府委員 これは初年度でございますので、大分全体の事業の実施がおくれてきているわけでございますが、最終になる前に一度中間的な各県の状況を調べてみたいというふうに思っているところでございます。
  246. 児玉健次

    ○児玉委員 このモデル事業についての厚生省の通牒に基づいて、北海道で昨年十月から老人の在宅療養にかかわる被保険者教育事業というのが開始されておりますが、その内容は御承知ですね。
  247. 下村健

    下村政府委員 一応承知しております。
  248. 児玉健次

    ○児玉委員 これは私たち今度の法の改正で、あえて言いますが、私はかぎ括弧をつけて言っているつもりなのですが、この法の改正の本則の中に含まれている安定化計画の先取りだと思いますので、そういった観点から私はこれをもう少しお聞きしたいと思うのです。  モデル事業の対象者をどのようにリストアップするか、道の国保連は今こういうふうな作業をしております。六十五歳以上の入院されている高齢者のレセプトデータを六カ月間累積されて、そして全国の老人医療費の前々年度一件当たり平均医療費以下の医療費で請求された月が三カ月間あった方、そういう人をレセプトデータからリストアップされているのですけれども、こういうやり方は厚生省がこの後いろいろ考えられているその考え方一つに含まれますか。
  249. 下村健

    下村政府委員 安定化計画でどういう形の対策を考えていくかということについては、モデル事業状況等も見ながら今後さらに検討していきたいと思っておりますので、ただいまの例をそのまま安定化計画でやるかどうかという点については、まだこれから検討する問題になろうかと思います。
  250. 児玉健次

    ○児玉委員 いうところの安定化計画の言ってみれば先行形態として、このモデル事業がされているということはわかりました。  そこで、今北海道で行われている作業なんですが、先ほど紹介したような作業でリストアップをしたのです。そうしたら九千六百六十五人がリストアップされました。そしてことしの三月二日現在で、その後どのように進んでいるかというのを国保連が集計なさいました。どうなっているか。九千六百六十五名中、医師会との協議中というのを含めて、継続調査が三千三百三十六名です。それから事前の調査の中で、結核、精神疾患、家庭事情、住宅事情など、そういった要素を勘案されてリストアップされたその名簿から事前に除かれた部分が五千四百六十九名です。除かれた人の中には調べた結果、既に死亡されていたという方三百三名を含んでいます。そこで皆さんがいろいろ言われている在宅医療への移行、または施設への入所、それが九千六百六十五名中何名になっているか。在宅療養に移行した方が十六名です。施設入所が十九名です。この後、在宅療養に移る可能性がある者が二十五名、それを全部足しても六十名です。九千六百六十五名中六十名です。そしてこの間一部の町村で無理やり高齢者を退院させようとなさって、かえって退院した後病状が悪化されて、都会の病院に再入院されたケースもありますし、退院はさせたけれども、家にいるのは病人だけで途方に暮れるという事態も生まれているのです。  それで、これとの関係でお聞きしたいのですが、厚生省が昨年八月十九日のモデル事業の中で対象者の(1)と(2)として挙げられた中で、老人保健法の規定により医療機関から市町村長に家庭事情等のため退院等が困難であるとの通知がされた者というのが対象者の(1)として挙げられていますが、この通知は全国で何名についてなされているか、できれば北海道では何名か伺います。
  251. 岸本正裕

    ○岸本政府委員 御指摘市町村長への通知の制度は、市町村長において長期入院患者の家族に対する適切な指導、在宅福祉サービスの提供等の措置を講じることによりできるだけ速やかに退院を可能ならしめようとする趣旨のものでございます。しかしながら、家族の意識や地域での受け皿の問題もありまして、この通知制度が広く活用されているとは言いがたい状況にございます。このため通知が行われた事例があることは承知しておりますが、全国的な件数の把握は行っておりません。  老人の長期入院を是正するためには、入院料の適正化を図るとともに、地域や家庭における受け皿としての施設や在宅ケアシステムの整備が必要であり、今後とも在宅医療の促進、老人保健施設等の整備、高齢者サービス調整チームの活用等に努め、この通知制度の進捗に努力してまいりたいと思います。
  252. 児玉健次

    ○児玉委員 老人保健法の規定による医療及び特定療養費に係る療養の取扱い及び担当に関する基準というのがあります。その中で、今部長がおっしゃったようなことは、これはこの趣旨からして出てこないと思いますよ。はっきりこう言っていますね。保険医療機関は、患者が「家庭事情等のため退院が困難であると認められたとき。」いいですか。「遅滞なく、意見を付して、その旨を市町村長に通知しなければならない。」「遅滞なく、ですよ。「意見を付して、」ですよ。通知があったという事例は承知しているけれども件数は知らないなんというのは、そんなことだったらこの「遅滞なく、」というのはどうなるのでしょうか。伺います。
  253. 岸本正裕

    ○岸本政府委員 この趣旨でございますけれども、老人の方が条件が整いさえすればできるだけ在宅で家族や友人に囲まれて療養生活を送りたい、生活をしたい、こういう希望が多いわけでございまして、そういうことをできるだけかなえるために市町村長に通知をいたしまして、それで市町村長といたしましては、その関係者といろいろ協議をして、その老人のこれからの処遇ということを考えてあげる、こういうような趣旨で行われているわけでございます。  ただ、今申し上げましたように、いろいろと家族の意識とか家庭の事情等で、家庭、地域での受け皿の問題等でなかなかこの通知制度が進捗していないわけでございますけれども考え方といたしましては、そういう老人の幸せということを第一に考えた制度でございまして、退院のための基盤づくりに取り組んでいる市町村もあるわけでございますから、そういう通知というものが行われれば、そのうちの何人かがまた病院から退院できて家庭に復帰したり、または病院でない、より適切なところに処遇されたり、こういうことがあるわけでございまして、そういうことを期待している、こういう制度でございます。  市町村に対しての通知ということでございまして、私どもといたしましては、実を言って市町村もなかなかそういう受け皿の問題等もございますから、通知を受けましても、その問題をうまく処理できかねるというようなこともございますので、そういうところの問題でこの制度は余り進んでいないという面があるわけでございます。今後今申し上げましたような方策を講じて、この制度をより進捗するようにしていきたいと思っているわけでございます。
  254. 児玉健次

    ○児玉委員 私も起きている事態を素直に見たいと思うのですよ。それでここはぜひ厚生省、皆さんが安定化計画を出され、基準超過費用額についての新たな負担を提起されている。そういう中で既に皆さん方が提起されているこの老人保健法の規定による通知、「遅滞なく、」とわざわざ書いているものについてそれが出ていないのですよ。出ているケースを承知しているというだけで、どのくらい出ているか、言うに足るほどの数は出ていない。そして部長は、今その事業が進捗していないということは率直にお認めになった。その通知をたくさん出せと私は言っているのじゃないのです。誤解しないでください。そうでなく、高齢の方々が今入院をされている、主治医の先生がその方の健康に責任を持とうと思えば、そう簡単に家庭事情だけの理由でこの人は退院させられないんだというふうな通知にはなっていかない。そしてそれは私の一方的な主張でないということを先ほどの北海道の十月からの模索が示しているのですよ。九千六百六十五名中六十名ですよ、多く見たとしても。そのうち中間報告をお求めになるのだから、それを確かめられたらいいですよ。以上のことは何を物語っているかという問題ですよ。老人医療費の高い低いの問題、それにはその地域の歴史と生活環境、これが重いものとして背負わされていますよ。それを簡単な数字的な計算ではじき出して、これだけいるはずだなんといって物が進むはずがないのですよ。  北海道の場合はどうか。いつも一番高いと言われます。北海道の高齢者人口は六十五歳以上が五十四万人です。九・七%ですから、率は全国より少し低いのです。しかし、世帯人数で言えば、全国は三・二二人ですが、北海道は二・九六人です。そして何より高齢者世帯、すなわち老人の一人暮らし、または老人夫婦だけでひっそり暮らしている世帯は、全国は三一%ですが、北海道は三八%です。七ポイント高いのです。以前からそうではないのです。いつからそうなったか。札幌医科大学の三木教授の論文によれば、経済の高度成長が出発する時期、その時期に北海道の出生率、死亡率、乳児死亡率、平均寿命、自殺率、これらは全国平均より下回りまして、以後は距離が開く一方なのです。そういう社会的な要因を無視して、安定化計画基準超過費用額、これをまた新たに法定化していく、これは国民健康保険再生の道筋では絶対にないと思うのですが、いかがでしょうか。
  255. 下村健

    下村政府委員 現在の老人の状況を見てみますと、大体特別養護老人ホームに十万人余り、病院に五十万ぐらい入っている、こう言われておるわけでございます。もちろん五十万という中にはいろいろな入院者もおられるわけですので、いろいろな状況はあると思いますけれども、仮に北海道、札幌なら札幌をとってみますと、五年以上入院あるいは十年以上入院という方がかなりの割合を占めておられるわけでございます。一方、では現在の病院というものが果たしてそういう場所かどうかということになってくるわけでございますが、今申しました五十万人ぐらいの老人というのが入っておられる病院というのはかなりの程度が一般病院という形でありまして、一般病院でそれだけの長期の老人の収容をして、これに対して保険給付をやっていくことが果たして正常かどうかというふうに私どもは考えております。確かに北海道にはいろいろな事情もあると思います。これは安定化計画という中で私どもが現在やっておるいろいろな分析というのは、かなり一般的な分析にとどまっている面もありますので、もう少し具体的に掘り下げていろいろな要素を研究していく必要があるだろう、こう思います。ただ、私が考えますのに、今の病院に老人をそうやって収容して長期間やっていくのが医療のあり方として、あるいはそれに対して給付を行っていくことが保険制度のあり方として正常かどうか、こういうことであります。  先ほど来のお話ですと、どうも厚生省はそういうことをやって在宅に切りかえるというふうなことをやろうとしているのではないか、こう言っておられるように聞こえるわけでございますが、在宅だけで解決がつく問題かどうかという面ももちろんこれにはあると思います。したがって、私どもとしては、総合対策という形で、福祉面やその他の問題も加えて老人問題を解決していくべきで、これは保険の問題であると同時に、そういったもう少し広い範囲の問題であるというふうに私は考えているわけでございます。  これはもう保険の面ということだけで申しますと、家庭事情だけで入院というのが果たして入院の給付保険制度の上で本来なすべきかどうかというのは、本質的には疑問があるところですけれども、私どもは、老人保健も同様だと思いますけれども、だから安定化計画で、それについて直ちに入院給付を切るべきだというふうなところは申していない。ある意味では、そういう意味では現実との妥協ということも頭に置きながら、しかし、今ある現状というものは変えていかなければならない。そういうことで、老人に適正な処遇を確保しながら、そういうことを考えていくということが国保財政にもあるいは医療のあり方としてもいいことではないか、このように考えておるわけでございます。
  256. 児玉健次

    ○児玉委員 もう時間ですから、私は最後に申したいのですが、私が在宅医療に全部持っていくと厚生省は考えているなんて考えていませんよ、私は。さっき札幌の例を言ったときに、在宅医療への移行が何人、施設への入所が何人、そこは正確に聞いてください。  そこで申したいのですが、この基準超過費用額の負担、もしこれが実施されたら、市町村や都道府県はこの新たな負担、私はあえてペナルティーと言うのが適切だと思うのだけれども、それを避けるために医療費の抑制、老人の長期入院の規制を猛烈にお互いに競い合うことになるだろうと思うのですよ。ところが平均医療給付費、これは全国市町村がその努力をしていけば、コンスタントでありませんから、医療費の伸び縮みで絶対額の変化はいろいろあるでしょうけれども、相対的にはこの平均医療給付費は下がっていきますよ。そうすると、今医療費が高い市町村が懸命に努力しても、言ってみれば、ゴールはどんどん先に行くばかり、これは逃げ水みたいなものだと思いますよ。そして結果はどうなるかというと、医療に対する自己規制、それがどんどん進む中で、国民が願っているよりよい医療、それに背を向けて医療供給体制の抜本的縮小再編、ここに進むことになるだろうと思うのです。その点について大臣見解を求めて、私は終わります。
  257. 藤本孝雄

    藤本国務大臣 今回の措置でございますが、安定化計画に基づきまして的確に取り組んでいただきますと、十分に適正化し得る、どく限られた高医療費部分についてその適正化を図ろうとするものでございますから、適正化が十分行われれば、指定市町村の指定からは外れるものでありますから、御心配の点はないと思います。
  258. 児玉健次

    ○児玉委員 それはやってみて後からそのようにならなかったということははっきりするのですが、やる前に直す必要があるので、私は今回の改正案については撤回されることを求めて、最初の質疑を終わります。     ─────────────
  259. 稲垣実男

    稲垣委員長 この際、参考人出頭要求に関する件についてお諮りいたします。  本案審査のため、参考人の出席を求め、意見を聴取することとし、その日時、人選等につきましては、委員長に御一任願いたいと存じますが、御異議ありませんか。     〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
  260. 稲垣実男

    稲垣委員長 御異議なしと認めます。よって、そのように決しました。  次回は、来る四月五日火曜日午後零時五十分理事会、午後一時委員会を開会することとし、本日は、これにて散会いたします。     午後六時十八分散会