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1988-03-24 第112回国会 衆議院 社会労働委員会 第3号 公式Web版

  1. 会議録情報

    昭和六十三年三月二十四日(木曜日)     午前十時四十分開議  出席委員    委員長 稲垣 実男君    理事 高橋 辰夫君 理事 戸井田三郎君    理事 丹羽 雄哉君 理事 野呂 昭彦君    理事 畑 英次郎君 理事 池端 清一君    理事 沼川 洋一君 理事 田中 慶秋君       相沢 英之君    粟屋 敏信君       伊吹 文明君    今井  勇君       小沢 辰男君    大野  明君       大野 功統君    片岡 武司君       木村 義雄君    佐藤 静雄君       自見庄三郎君    高橋 一郎君       中山 成彬君    三原 朝彦君       箕輪  登君    持永 和見君       伊藤 忠治君    大原  亨君       川俣健二郎君    田邊  誠君       永井 孝信君    新井 彬之君       大橋 敏雄君    薮仲 義彦君       吉井 光照君    塚田 延充君       児玉 健次君    田中美智子君  出席国務大臣         厚 生 大 臣 藤本 孝雄君  出席政府委員         厚生政務次官  長野 祐也君         厚生大臣官房総         務審議官    黒木 武弘君         厚生大臣官房審         議官      佐藤 良正君         厚生省健康政策         局長      仲村 英一君         厚生省保健医療         局長      北川 定謙君         厚生省保健医療         局老人保健部長 岸本 正裕君         厚生省生活衛生         局長      古川 武温君         厚生省薬務局長 坂本 龍彦君         厚生省社会局長 小林 功典君         厚生省保険局長 下村  健君         厚生省年金局長 水田  努君         社会保険庁医療         保険部長    土井  豊君  委員外出席者         内閣官房内閣審         議官      谷口 正作君         内閣総理大臣官         房参事官    村岡 輝三君         外務省アジア局         北東アジア課長 田中  均君         大蔵省主税局税         制第二課長   薄井 信明君         文部省体育局学         校給食課長   石川  晋君         郵政省電気通信         局電気通信事業         部業務課長   濱田 弘二君         郵政省放送行政         局業務課長   團  宏明君         社会労働委員会         調査室長    石川 正暉君     ───────────── 委員の異動 三月二十三日  辞任         補欠選任   片岡 武司君     橋本龍太郎君   自見庄三郎君     長谷川 峻君   高橋 一郎君     中川 秀直君   中山 成彬君     福島 譲二君   三原 朝彦君     熊谷  弘君   伊藤 忠治君     伊藤  茂君   川俣健二郎君     緒方 克陽君 同日  辞任         補欠選任   熊谷  弘君     三原 朝彦君   中川 秀直君     高橋 一郎君   橋本龍太郎君     片岡 武司君   長谷川 峻君     自見庄三郎君   福島 譲二君     中山 成彬君   伊藤  茂君     伊藤 忠治君   緒方 克陽君     川俣健二郎君 同月二十四日  辞任         補欠選任  平石磨作太郎君     薮仲 義彦君 同日  辞任         補欠選任  薮仲 義彦君     平石磨作太郎君     ───────────── 三月二十三日  児童扶養手当法等の一部を改正する法律案内閣提出第六九号)  原子爆弾被爆者に対する特別措置に関する法律の一部を改正する法律案内閣提出第七〇号)  戦傷病者戦没者遺族等援護法及び戦没者父母等に対する特別給付金支給法の一部を改正する法律案内閣提出第七一号) 同月二十四日  難病患者などの医療及び生活保障等に関する請願池端清一紹介)(第一〇〇九号)  同(江田五月紹介)(第一〇一〇号)  同(左近正男紹介)(第一〇一一号)  同(中沢健次紹介)(第一〇一二号)  同(大石千八紹介)(第一〇七六号)  同(大野明紹介)(第一〇七七号)  同(大矢卓史紹介)(第一〇七八号)  同(奥野一雄紹介)(第一〇七九号)  同(川端達夫紹介)(第一〇八〇号)  同(佐藤静雄紹介)(第一〇八一号)  同外七件(佐藤徳雄紹介)(第一〇八二号)  同(鈴木宗男紹介)(第一〇八三号)  同(田中慶秋紹介)(第一〇八四号)  同(武部勤紹介)(第一〇八五号)  同(中川昭一紹介)(第一〇八六号)  同(藤原房雄紹介)(第一〇八七号)  同(正森成二君紹介)(第一〇八八号)  同(三原朝彦紹介)(第一〇八九号)  同(森田一紹介)(第一〇九〇号)  同(上草義輝紹介)(第一〇九三号)  同(大石千八紹介)(第一〇九四号)  同(左近正男紹介)(第一〇九五号)  同(佐藤敬夫紹介)(第一〇九六号)  同(笹山登生紹介)(第一〇九七号)  同(小林恒人紹介)(第一〇九八号)  同(月原茂皓紹介)(第一〇九九号)  同(安井吉典紹介)(第一一〇〇号)  同(川俣健二郎紹介)(第一一〇六号)  同(田邊誠紹介)(第一一〇七号)  同(村岡兼造君紹介)(第一一一九号)  育児休業法の制定に関する請願外三十五件(塚田延充紹介)(第一〇六八号)  同(米沢隆紹介)(第一〇六九号)  高齢者福祉充実等に関する請願日笠勝之紹介)(第一〇七〇号)  腎疾患総合対策早期確立に関する請願小川新一郎紹介)(第一〇七一号)  同(大野明紹介)(第一〇七二号)  同(川崎寛治紹介)(第一〇七三号)  同(森田一紹介)(第一〇七四号)  同(佐藤敬夫紹介)(第一〇九二号)  同(奥田敬和紹介)(第一一一七号)  同(村岡兼造君紹介)(第一一一八号)  国立腎センター設立に関する請願三塚博紹介)(第一〇七五号)  アスベストの撤去・処理等に関する請願斎藤邦吉紹介)(第一一一四号)  保育所制度充実に関する請願江藤隆美紹介)(第一一一五号)  同(奥田敬和紹介)(第一一六号)  保育制度の維持、充実に関する請願東中光雄紹介)(第一一六二号) は本委員会に付託された。     ───────────── 本日の会議に付した案件  国民健康保険法の一部を改正する法律案内閣提出第一九号)  厚生関係基本施策に関する件      ────◇─────
  2. 稲垣実男

    稲垣委員長 これより会議を開きます。  厚生関係基本施策に関する件について調査を進めます。  質疑の申し出がありますので、順次これを許します。永井孝信君。
  3. 永井孝信

    永井委員 先日、厚生大臣所信を表明されたわけでありますが、今この厳しい財政状況の中で、ともすれば福祉関係がどうしてもなおざりにされやすい、こういう環境にある中で、大臣厚生省を挙げて大変頑張っていただいていることに敬意を表しておきたいと思うわけであります。  きょうは全般的なことをお聞きしたかったわけでありますが、時間の関係もありますので、私の質問したいこと、問題点にずばり直接入っていきたいと思うわけであります。  御承知のとおり、最近のモータリゼーションの発達によりまして、交通事故というものが非常にふえてきているわけですね。私は交通安全委員会にも籍を置いているわけでありますが、毎年毎年一生懸命交通事故撲滅のための対策をとってきましても、交通事故死というのは年々九千人台という大変な数に上っているわけであります。先日発表されたところによりますと、昨年よりもさらに八日間も早く二千人を超える交通死亡者が出ているわけであります。負傷者も毎年七十万人から八十万人にも上っておるわけでありまして、交通事故をもちろん撲滅しなくてはいけないわけでありますが、この交通事故に伴う医療費というものが非常に見過ごせない状況になっているわけであります。したがって、交通事故激増に対する医療費の増加ということから考えました場合に、医療費そのもの適正化ということが極めて大切だと私は思うのであります。  昭和四十四年の自賠審答申にもありますように、その当時からこの問題が提起をされてきたわけでありますが、昭和五十九年十二月には自賠審答申の中で、速やかに診療報酬基準を策定し、その制度化を図るべきだということが提起をされているわけであります。この答申医療行政を担当される厚生大臣としてどのように受けとめていらっしゃるか、所信を表明していただきたいと思うのです。
  4. 藤本孝雄

    藤本国務大臣 まず、御激励をいただきましてありがとうございます。微力ではございますけれども、精いっぱい努力をいたしたいと考えておりますので、よろしくお願いいたしたいと思います。  交通事故激増は、御指摘のように、毎日のように新聞等でも報道されておりまして、非常に心配な問題の一つでございます。今御意見を交えての御指摘でございますが、自賠責診療報酬基準問題、これは自賠責という制度そのものの問題でございまして、基本的には、御承知のように大蔵省運輸省の問題であると心得ております。しかしながら、この問題を解決するために、私どもといたしましても、協議機関があるわけでございますので、そういう場におきまして適切な助言とか協力をする、それはもうやぶさかでないわけでございまして、今後ともそういう立場で努力していきたい、かように考えております。
  5. 永井孝信

    永井委員 交通事故に係る医療関係は、今大臣が御答弁の中でも申されておるわけでありますが、自賠責保険関係に伴うものは運輸省所管なのですね。そのことは十分承知をしているわけでありますが、しかし国民の側から見ますと、自賠責であれ、あるいは一般健康保険適用される疾病であれ、医療を受けるという側からすると、そんな区別はないわけですね。しかも医療行政そのものについてはだれが見たって厚生省が統括をしているというふうに受けとめておりますが、これはむしろ私は当然なことだと思うのです。そういう立場からいたしますと、自賠責という保険制度の関連から、その関係運輸省所管であったといたしましても、医療行政を進めるという面では、どの保険適用しようと、やはりそのことが医療費の高騰に関係があるわけでありますから、医療費適正化するという面から言うと、厚生大臣が積極的な役割を果たすべきだと思うのですが、どうでございますか。
  6. 藤本孝雄

    藤本国務大臣 まさに御指摘のような考え方に立ちまして、三省協議機関をつくり、厚生省協力を申し上げておるわけでございまして、そういう御趣旨につきましては全く同感でございます。
  7. 永井孝信

    永井委員 実は、この自賠責にかかわる問題は、今までも何回も国会で取り上げられてまいりました。私も、自分の記憶は定かではないのですが、数回にわたってこの問題について国会質問をしてきた経過がございます。そこでこの交通事故における健康保険の利用問題が浮かび上がってきているわけであります。  これは五十九年六月二十六日の参議院社会労働委員会議事録でありますけれども、そこで交通事故の場合に健康保険適用になるのかどうなのかという質問がなされているわけであります。これに対して、当時の政府委員として出席いたしました吉村さんが、「健康保険適用されます。」と、まさに単純明快に答弁をされているわけであります。また、ずっと古い話でありますけれども昭和四十三年十月十二日に「健康保険及び国民健康保険自動車損害賠償責任保険等に対する求償事務の取扱いについて」という通達が出されておりまして、その中でこの健康保険関係について触れているわけでありますが、ちょっと御紹介申し上げますと、  最近、自動車による保険事故については、保険給付が行なわれないとの誤解が被保険者等の一部にあるようであるが、いうまでもなく、自動車による保険事故一般保険事故と何ら変りがなく、保険給付の対象となるものであるので、この点について誤解のないよう住民、医療機関等周知を図るとともに、保険者が被保険者に対して十分理解させるよう指導されたい。 こういう通達であります。この通達と、この通達を出すに至った当時の経緯、あるいは昭和五十九年の参議院社会労働委員会において、健康保険交通事故についても適用されますと明快に答えたこととの関係について、厚生省現時点における基本的な考え方を御説明願いたいと思います。
  8. 下村健

    下村政府委員 現時点におきましても、交通事故等について健康保険適用されるあるいはその取り扱いについての基本的な考え方には何ら変わりはございません。私どもとしては、交通事故等による傷病の場合でありましても、健康保険適用されるという正確な知識についてはその周知徹底を図ってまいりたいということに、当時も今も何の変わりもございません。
  9. 永井孝信

    永井委員 その周知徹底を図ることについて今も変わっていないという御答弁でありますから、それはそれで私は了承いたしますけれども、しかし現実はどうなっているのか。現実は、健康保険では診てもらえないという認識社会通念一般化しているのではないですか。それはどのように御認識されていますか。
  10. 下村健

    下村政府委員 正確な状況は私どももつまびらかでない面もございますが、健康保険が使えないということは恐らくそうはないのではないか。ただ、実際の状況を見ておりますと、事故が起こった場合に、被害者と申しますか、実際に医者にかかられる方の方でどっちを選択されるかという問題があるわけでございますが、どうも現実の動きを見ておりますと、健康保険選択されるというのがもうちょっとあってもいいかというふうに私どもとしては思っていたわけですけれども現実の問題としては、健康保険を使うよりも自賠の方、損害賠償の方で医療を受けるという方を選択される事例の方が多いというふうに承知いたしております。
  11. 永井孝信

    永井委員 本人の、診療を受ける側の意思に基づいて、保険診療ではなくて自由診療の方を選択される数が極めて多い、そういう趣旨の御答弁ですね。数字の上ではそういう形が出てくるといたしましても、実態はそうではない。このことは、すべての医療機関調査する能力を私どもは持っておりませんから、全部を調査したわけではありませんけれども、私の知る限りにおいては、交通事故病院受診をする場合に、健康保険はだめですよということがまず前提で窓口のやりとりがある、こういうケースが極めて多い。このように私は自分の体験から承知をしているわけでありますが、そのことについては厚生省認識をどう持っていらっしゃいますか。
  12. 下村健

    下村政府委員 これは私どもも個別の事例について必ずしも詳しい調査をやったというふうなことでもないのでわかりませんが、もしも医療機関窓口において健康保険が使えないというふうな誤った話をして患者選択を求めているというふうな事情がありますと、これは問題でございますから、健康保険が使えるということもちゃんと患者の方に教えた上で選択を求めるべきではないか。もしもそのような医療機関があるということであれば、具体的な事例を御指摘いただければ、私どもとしては十分に指導してまいりたいというふうに思います。
  13. 永井孝信

    永井委員 自動車保険料率算定会資料でありますが、いわゆる病院診療所などの開設者別自由診療及び社会保険診療取扱件数というものの実態調査が出ております。ここに資料を持っているわけでありますが、それでいきますと、国立病院などについては社会保険利用率昭和六十一年度で実に三五・三%に上っています。公的病院、これは日赤とかあるいは県立病院市民病院ども入っておりますが、こういう公的病院では二四・五%です。ついでのことに全部言いますと、社会保険医療団体が開設しているところでは二〇・五%、法人の病院では一五・九%、個人医院診療所になると、これが一二・七%と極めて低い数字になってくるわけです。総トータルは一五・六%になっておりますが、国と個人の間でなぜこれだけの差が出るんだろうか。  例えば病院診療所とか医院へ行きますと、待合室保険取り扱いとかいろいろなことがパンフレットとかあるいは大きなポスター受診者皆さんに知ってもらうように掲示がしてあります。どこの病院へ行っても掲示がしてあります。どこの病院へ行っても掲示がしてあるけれども交通事故の場合でも一般社会保険が利用できますということの掲示は残念ながら私は見たことがない。なぜなんだろう。ほかのことはどんどん掲示はするけれども、この交通事故にかかわって一般健康保険を利用できますよという周知徹底は、厚生省は図っていると言うんだけれども医院あるいは病院待合室でそういう掲示は私はお目にかかったことがない。これはやはり自由診療の方が極端に言えば病院経営者あるいは医院開設者にすれば利益が大きいから、利益の大きい方に自分たちはできるだけ診療を受けさせるようにしたい、そういう心があるからそうなっているのじゃないですか。周知徹底させているというのなら、その辺のところは厚生省はどこまでやり切る決意があるのか、お伺いしたいと思います。
  14. 下村健

    下村政府委員 御指摘のような面もあるいはあろうかと思われるわけでありますが、現実問題として考えてみますと、病院にとってもその方が有利という場合も当然あろうかと思いますが、医療を受ける方にとりましても、いろいろな手続的な面におきましても、最初から最終負担者である損害賠償の方で医療を受けた方が便利だという面も当然あるわけでございます。それから病院の方にいたしましても、一遍健康保険請求をして、これは最終的には健康保険の方からもう一遍加害者と申しますか、あるいは自賠責の方に対してその医療費請求をし直すことになるわけでございます。そうすると、当然また余分な手数健康保険組合とかいうふうな保険者の方にもかかる、医療機関にもかかる、患者にも手数がかかる、当然そういう問題も起こってまいります。したがって、現在の建前からいいますと、健康保険とどちらを選択するか、当然健康保険選択すべきものだというふうな認識一般的でない。これはあるいはそうではないかと思います。そのような事情もありまして、健康保険を使ってほしいという自賠責側考え方もわからないではないのですけれども現実問題としては、健康保険を使うということがなかなか普及をしないということになろうかと思います。
  15. 永井孝信

    永井委員 局長、私ここで健康保険を使うのがいいのか自賠責を使うのがいいのか、その論争もありますよ。その論争もしてみたいとは思うのですが、私がここで言っておりますことは、健康保険適用できる、厚生省は従来からそういうことを国会の場でも答弁してきている。そしてそのことについては、周知徹底を図るとしている。ところが正直言って周知徹底を図っているとは思えないのです。もし周知徹底を図っているとするなら、本人がどちらを選択するか、仮に本人自由意思であったといたしましても、健康保険適用できますよということは、ほかの国民健康保険健康保険取り扱いの変わったときあるいは点数の変わったとき、いろいろなことは全部大きなポスター掲示してあるのだけれども、この関係だけはなぜ掲示ができないのか。全部周知徹底を図った上で、本人がどちらかを選択するということがあるとするなら、それはそれでいい。しかし周知徹底を図るとしながらも、実際は他の保険業務医療業務に対することと同じレベルでのそういうPRはされていない。このことをまず私は今問題にしているわけですから、その辺の関係をひとつ明確に対応することについてのお答えをいただきたいと思うのです。
  16. 下村健

    下村政府委員 周知徹底の方法については、なお具体的にいろいろ考えてみたいと思いますが、現実問題としては、そのような問題もありまして、関係者に必ずしも歓迎されないような事情があるということも実態としてございますので、その辺の問題もひっくるめて、私どもとしては周知徹底の仕方という問題につきましても十分考えてみたいと思います。
  17. 永井孝信

    永井委員 もう一つお尋ねしますが、古い議事録で恐縮ですけれども、五十九年の参議院における議論の中で、交通救急医療特殊性というものがあって、「そういうものから自由診療の方にいっているという場合が多いのではないか」というふうに、当時説明員福島さんが説明をされているわけです。その特殊性というのは、今言われた立てかえ払いでありますから、そういうことにかかわる事務が煩雑になるとか、そういうことを指しているのですか、どういうことなんでしょう。
  18. 下村健

    下村政府委員 ちょっとこれだけでは私どももよくわかりませんが、実際問題といたしましては、こういう交通救急医療というふうな場合には、恐らく被保険者証も持っておられないということもございましょうし、保険適用をするにいたしましても、通常の保険診療でありますと、窓口に被保険者証を提出して受けるというふうなことが通例になりますので、そういった事情も考えてということではないかと思います。  なお、確かに健康保険適用を受けられるということを知らない医療機関があるとは考えにくいわけでございますが、実際問題として、最終的な負担者に対して直接請求する方が簡単だし、おっしゃるように、その方が有利だというふうに判断をする場合も医療機関側としてはあろうかと思われるわけでございます。普通、事故が起こりますと、加害者被害者両方そろって病院に行ったりするというふうなことが多いわけですから、その場合に、被害者に対して、あなたの健康保険医療を受けてください、なかなかそうは言っていないのではないかと思います。そんなふうなことも考えられるわけでございます。
  19. 永井孝信

    永井委員 私がなぜこの自賠法に絡んでこの問題をきょう執拗にお尋ねしているかといいますと、医師皆さんは、あるいは病院開設者などは、ほとんどの人はもちろんまじめなんでしょう。しかし、一部の人たちの中には、不正請求をやったりいろいろな問題を起こすところが毎年マスコミをにぎわすように存在するわけです。  例えば、現に私はこの委員会で、もう二年も前になりますか三年も前になりますか、私の地元のある病院暴力団と結託して交通事故以外は一切受け付けない交通事故専門病院で、しかも一たん入院したら、軽い軽い追突事故であっても半年も入院をさせる、とことん治療費を吸い上げるという悪徳病院がありまして、私がこの委員会問題提起をして、警察庁も厚生省も乗り出してもらって、その病院長事務長が逮捕されるまでに一年余年月がかかったわけです。そして逮捕されて有罪が決定をして、その病院は閉鎖をされました。しかし、その医師にすればわずか三カ月程度の営業停止だけの処分で済んでしまうわけです。交通事故という加害者があって、そしてその被害者を救済する場合に、えてしてそういう暴力団が入り込む余地をたくさん持っておるわけです。そんなことは私がたくさん見てきているわけでありますから、あえて私はこの問題を特に執拗に聞いているわけでありまして、だから、自由診療というそこに一つの、どういいますかつけ込むすきをかえって与えてしまっているということがなきにしもあらずだ。私はそのことからこの自由診療について大変問題にしているわけです。  もう一つは、自由診療でないとまともな治療を受けることができないのではないかという概念を持っていらっしゃる方が極めて多い。健康保険ではまともに診てもらえないから、後で後遺症が残るのではないかとか、そういうことを私はよく耳にいたします。そういうことは社会的一般にかなり根強いものがあると思うのです。それはどういうことかといいますと、健康保険なら治療そのものに一定の限度がある。交通事故加害者がいるのだからとことん金を使ってでもやってもらえというそこと自由診療をする側とが連結をしてしまう。このことについて厚生省はどういうふうに理解をされていらっしゃいますか。
  20. 仲村英一

    ○仲村政府委員 患者さんがどういう種類の医療費の支払い方をするかによって提供される医療の質が変わるということは、私どもとしては考えにくいわけでございまして、かつてのような、社会保険で言われておりましたような制限診療というようなものも今は撤廃されておりますし、そういう形で診療に手心を加えること自体は、やはり医の倫理にもとる部分もあるかと思いますし、そういうことは現実には非常に起こりにくいかと思いますが、先ほど例を引かれましたようなごく一部のそういう方々が事件を起こしたとか、そういうふうなことはあり得るのではないかと思いますが、提供される医療の質そのものについての差があるとは、私ども現在考えておらないところでございます。
  21. 永井孝信

    永井委員 今のことに関連してですが、最前私がちょっと指摘しましたように、国立病院では三五・三%もの人が健康保険を利用されていらっしゃる。個人医院ではわずかに一二・七%しか利用していない。私はここに問題の原点があるような気がしてならぬわけです。  さらに、開設者別自由診療の料金について、これも自動車保険料率算定会資料でありますけれども、これで見ますと、六十二年十月現在で国立病院は単価が一・二四。これに対して私立、私的病院、私的診療所といいましょうか、こういうところは実に二・〇七、こういう数字が実は出ているわけです。  同じ自由診療をやってもこれだけ差があるのです。ということは、自由診療だから、この際、悪い言葉で言うと金もうけをさせてもらおうかということになっていくのじゃないですか。ここに私は自由診療について、この自賠審答申で明らかにしておりますように、早急に、速やかに診療報酬基準を策定して、その制度化を図るべきだと指摘したことは、私はここに問題があると思うのです。問題点指摘していると思うのですね。ところがいまだにそのことはできていないのでしょう。  事のついでに言いますけれども自由診療に比べて健康保険を使った場合おおむね、これはおおむねの話でありますが、二分の一ないし三分の一で済むのです。自賠責保険というものも、これは国民が、もちろん自動車の利用者が保険料を納めていくわけでありますが、この自賠責保険保険料の料率の引き上げという問題も過去何回かありました。結局、自由診療ばかりでどんどん治療をしてもらうと、自賠責保険財政に大きな影響を与えることになってしまう。  例えば、自賠責では限度額が百二十万円となっております。この百二十万円はあくまでも治療費であって、すべてこの百二十万円まで使い切ればいいと考える人が多いのですが、実はこの百二十万円を全部治療費に使われてしまうと、加害者の場合は、この百二十万円の限度内で休業補償を行うとか慰謝料を払うとかいうことも全くできなくなる。したがって、事故の内容によっては、それは加害者が悪いのですけれども、実際は加害者が生活上被害者になってしまうということも随分あるのですね。交通事故を起こしたために一家心中をするとか、あるいは家屋敷も売り払ってしまうとか、無理やりに会社を退職して退職金でその始末をするとか、私自身もそういうことにお手伝いをさせてもらった経験があるわけでありますが、そう考えますと、自賠責を使わずにすべて健康保険を使えと言っているのではない、自賠貴保険があるのですから。しかし本人たち健康保険を利用させてもらいたいと言えば、自由に利用させていただいて、もちろん立てかえ払いでありますから、そのための請求などについては事務的な処理にかなりの人手も金もかかるかもしれません。しかし国民の暮らしを守る立場からすると、この健康保険自賠責関係についてはもっともっと一元的に運用できるような方向に進むべきではないか、私はこう思うのですが、どうでございますか。
  22. 下村健

    下村政府委員 現在の自賠責が抱えている問題点あるいはその背景についての御指摘は、ただいまおっしゃったとおりではないかと思います。  ただ、現在の制度でいきますと、健康保険はそういった種類の傷病を本来対象にするようになっていない。実は、健康保険の方の医療費適正化というのは重要な問題でございまして、そういった交通事故等の第三者による行為によって発生した傷病について、後から求償権を行使するというために医療機関からの請求書を点検するというのが、実はこれもまた私どもにとっての一つの大きな業務になっておるわけでございます。したがって、そこは何か制度的に解決する余地があるのかどうか。現行制度のままで健康保険を使えということについて、それだけでやっていくという点ではなかなか無理があろうかと私は思います。したがって、おっしゃるように、健康保険がもう少しその両者の関係をうまく調整する余地があるのかどうか、これはなかなか難しい問題だと思いますけれども、そこは今後さらに議論を深めるべき点ではないか、このように考えております。
  23. 永井孝信

    永井委員 ことしのこれは何日でしたか、予算委員会でこの問題が取り上げられまして、そのときにこういう答弁をされていらっしゃるわけですね。局長答弁されていらっしゃるわけでありますが、診療内容の差がどうなるのか、これは私ども自賠責の方に出ている請求内容を子細に点検をしたことがございませんので、なかなか確実なことはわからない、こういう趣旨答弁をされていらっしゃいますね。しかし、医療行政をつかさどる立場からすると、あるいは不正を防ぐ立場からすると、自賠責そのものは運輸省所管であったといたしましても、不正を防ぐためには調査をすべきではないのか。それがサンプル調査なのかどうなのかわかりませんけれども、そのぐらいのことは厚生省としてやるべきではないかと思うのですが、どうですか。
  24. 下村健

    下村政府委員 三省の協議ということで、その協議に参加しておりますのは健康政策局長でございますので、具体的なところはあるいは健康政策局長からお答え申し上げた方がいいのかもしれませんが、ただいまの答弁は私いたしましたので、私がお答えいたしますが、そこの三省協議の席上で、自賠の方で行われておる診療内容について具体的にどこが問題なのかというふうな検討までやっている、そういうふうには聞いていないので、私はそういうふうに申し上げたわけでございます。そこまでの立ち入ったデータの提供があって厚生省協力を依頼されておるというふうな話は私としては聞いておりませんでしたので、そのように答えたわけでございます。  ただ、ただいまの問題に即して考えてみますと、自由診療という一応法律上の建前になっておるわけでございますが、自由診療ということでいきますと、当事者間の協議と申しますか、当事者間の話し合いによって診療内容あるいは診療報酬が決定されるというのが本来のルール、こういうことになろうかと思います。それについて診療報酬基準を決めたらどうかというふうな審議会の答申が出ているわけでございますが、自由診療ということと診療報酬基準という考え方とどういう意味で両立させることができるのか。私としては、保険診療をやっておる経験から申しますと、その辺についてもう少し制度的な検討が十分必要なのではないだろうか。例えば医師会がこれについても協力をするということで協議に入っておるわけでございますけれども医師会自体が、現実問題としては、法律的に申しますと、その会員に対して、おまえのところの自由診療の料金はこういうふうにするというふうに決定をする権限も何もないんだと思うのです。また逆に医師会がそういう協定料金をつくりますと、現在の法制度でいきますと、医師会自体が独禁法で言う事業者団体、こういうことになっているわけですから、そういった面も出てくるかもしれない、こういう種類の問題だと思います。したがって、自賠責適正化は、確かに今伺っておる話からすると、私どももそこに一つ問題があるというふうな感じがするわけでございますが、もっとその辺は自賠員の制度自体あるいは診療報酬基準というふうなものの性格、その辺をはっきりさせていかないと、厚生省あるいは医師会が協力するといってもなかなか難しい問題がいろいろ含まれておるように感じられるわけでございます。  そういう意味で、私は先般そういったことを申し上げたくて言ったわけでございますが、私どもとしても自賠責自体の健全な運営あるいは適正な診療報酬ということについて全く無関心ということではございませんので、いろいろ御協力はいたしたいと思いますが、現行制度で申しますと、なかなか難しい問題がなお残されている、こんなふうに感じているわけであります。
  25. 永井孝信

    永井委員 今言われたように、非常に困難な問題点が多いとは思うのですが、それをやはり乗り越えてもらうのが厚生省の務めだと私は思いますから、あえて御要望申し上げているわけでありまして、例えば診療報酬基準の設定についても、ここに日刊自動車新聞というのがありますが、それで見ますと、医師会との関係においても一定の前向きの姿勢が出てきていることは出てきているのです。しかし「かねてから指摘されているのが医療費の過剰請求による不正医師の横行」であるということも、この中で言っているのですが、私はこれは決してオーバーなことではないと思うのですね。まして交通事故については当たり屋とかいろいろなことがありまして、にせの入院をしたり、いろいろなことが、これは刑事事件として摘発されている件数も多いのですよ。そうすると、医療行政をつかさどる立場からもっときちっとそこにメスを入れるようなことも、やはり積極的に厚生省自体が乗り出すぐらいのことをやってもらいたいということ。あるいは注射一本しても、健康保険適用するのと自由診療とで仮に請求額が違うということになると、これは大変な問題ですね。極端なことを言えば、自由診療ということは、私なりに言えば、昔で言うと、金持ちでないと病気を診てもらえない、貧乏人は医者にかかれないというかつての封建時代と同じようなことが今でも残っている残滓ではないかと私は思うのですね。極端なことを言えば、そういうことをなくするために、国民保険健康保険を、国民健康保険も含めて、保険制度に加入するようにしているわけでありますから、国民保険を片方でうたいながら、片方で自由診療を認めているということは、私はどうしても医療行政に納得ができないのだ。まして自由診療保険適用とでは同じ治療をしても単価が違うというようなことは、これはべらぼうな話であって、人間の命を扱うのにそういう差別があってはならぬ、私はこう思うのです。そういうことをやった上で、医師の経営が成り立つように、必要なことであれば技術料でも診療報酬でも改定すればいいじゃないですか。そう考えていくと、この自賠法に基づく治療についても、当然自賠法の中で診療単価というものはきちっと決めるべきだ、こう思うのですが、これはひとつ国民の命を守る立場に立つ厚生大臣として所感を表明していただきたいと思います。
  26. 藤本孝雄

    藤本国務大臣 御指摘の点につきましては、私もよくわかっておるつもりでございます。ただ、先ほど局長が御答弁申し上げましたように、これは自由診療という制度と健康保険という制度、そういう制度そのものにまでさかのぼった議論になってくるわけでございますし、また厚生省のこの問題についての関係、かかわり合いということもあると思います。しかし、そういう問題をまさに三省協議機関で詰めようとしておるわけでございまして、そういう中で大いに私ども考え方を整理して努力をしていかなければならないと思っておりますので、今後できるだけ努力をするということで御理解いただけたらありがたいと思います。
  27. 永井孝信

    永井委員 まだこの問題については議論をしなくてはいけない面がありますが、きょうは時間の関係でやや中途半端になりましたけれども、またの機会にこれは譲りたいと思います。  最後に、別の問題を一つだけお聞きしておきたいと思うのですが、非常に気になることがあるのですね。それは医療に使った廃棄物、これの処理の問題でありますが、規制法、現在ございますか。
  28. 古川武温

    ○古川政府委員 病院の場から出た廃棄物も廃棄物処理法によって規制されるわけでございます。
  29. 永井孝信

    永井委員 その規制というのは、例えば注射針であるとかあるいは処置をした後の廃棄物であるとかいろいろなものについては、完全に滅菌をして廃棄することになっていますか。
  30. 仲村英一

    ○仲村政府委員 廃棄物処理法は、御承知のように、廃棄されたものをそれ以降処理するための規制でございまして、飛散をしてはいけないとか流出をしてはいけないとか、そういうふうなことでの規制はございますが、捨てる前に――捨てる前にと申しますか廃棄する以前に消毒しろとかいうふうな規制は今のところございません。
  31. 永井孝信

    永井委員 そうすると、病院から廃棄物を出す場合に、完全に安全を確保するということは、実は規制法はないと同じことなんですね。エイズであるとかあるいはB型肝炎、B型肝炎なんか医師自身が患者に注射しておってちょっと注射針が自分の手にさわっただけで死亡したという例もありますね。そう考えていくと、そういう新たな病気がどんどん発見されて問題になっているときに、無造作に注射針とか、その処置をしたものがどんどん捨てられて、それを収集する立場に立つと危険この上ないわけですよ。注射針が手袋の上から入ったりすることがあるわけですから、これはやはり処理段階での事故を防ぐためにも、ちょっと私の調べたところでは、注射針だけでも一年間にざっと十八億本廃棄されているそうでありますから、そういう二次災害を防ぐためにも規制法については見直しをすべきじゃないですか。どうでございますか。この一問だけで終わります。
  32. 古川武温

    ○古川政府委員 委員指摘のように、いろいろな心配な面も出ておると思っております。これにつきましては、そうした法律の上では、廃棄物として善良なしっかりした管理で処理する、こうなってはおりますが、やはり廃棄物処理業者における処理の実態あるいは処理技術上の問題等もっと明確に調査する必要がございます。そうしたことで、その辺の実態をしっかりと調査した上で対処してまいりたいと考えています。
  33. 永井孝信

    永井委員 早急に調査してもらって、手おくれになったら遅いですから、とにもかくにも廃棄する際にきちっと処理をするということを早急に年月をかけずにやってもらう、このことを要望して終わります。ありがとうございました。
  34. 稲垣実男

    稲垣委員長 大原亨君。
  35. 大原亨

    ○大原(亨)委員 私は、最初に二問題ほど緊急問題を質問いたしまして、それから国民負担、年金、医療改革の全体の問題と税制協議の問題について質問いたしたいと思います。  当面の問題で第一は、私もずっと今まで機会あるごとにフォローしてきたのですが、韓国に広島、長崎で原爆を受けた人が二万人余りおられるわけです。それで韓国被爆者協議会をつくっているわけですが、最近非常に活動が活発になってまいりました。これは今までたくさんの願いがありながら、要求がありながら、自己抑制を含めて抑えてきたと思います。今までの議論の中で、昭和五十六年、日本の厚生省と韓国の担当省が合意をした中に三項目がございまして、その中には、渡日治療、それから二として日本から専門医の派遣、三として韓国医師の原爆病院での研修、それから三項目の合意以外に覚書で、韓国での専門医療機関の設置ということが約束をされておったわけですが、これが途中で中断をしたあるいは消えた、こういうことになっておったわけでありますが、最近韓国の被爆者協議会の辛会長が政府を通じまして、日本に対しまして二十三億ドルの賠償請求提起した。これは日本の政府にもその賠償問題が来ているはずであります。これはいろいろな総合政策のはね返りなのでありますが、最近三月二十一日に日韓外相会談がございまして、そのときにいわゆる議題といいますか、話し合いがされた、こういうふうに伝えられておるわけですが、どういう話し合いがされたかということについて、外務省の方から御答弁いただきます。
  36. 田中均

    田中説明員 お答え申し上げます。  委員指摘のとおり、三月二十一日にソウルにおきまして日韓外相会談が行われまして、その席上、先方の崔外務部長官から原爆被爆者問題について以下の問題提起がございました。  すなわち、在日韓国人で被爆した者の治療については両国間で協力が行われてきたところであります。本件は、韓国の国内問題ではありますけれども、韓国内で社会問題化している様相もあり、日本には原爆被爆者の治療という蓄積された経験があることでもあり、こういう点から日本側の綿密な検討をお願いしたい、こういう問題指摘がございまして、宇野外務大臣から、本件については人道的問題としての関心を十分日本側としても有している次第であり、実務者レベルで調査団を派遣して対処を考えていきたい、こういうやりとりがございました。
  37. 大原亨

    ○大原(亨)委員 これは昭和五十六年当時の合意が、御承知のように事実上打ち切られたわけでございまして、合意いたしましたことがしり切れトンボに終わっているということとも関係があるわけでございます。日韓基本条約で戦争状態の終結に当たって両国間で合意したことについては、私も承知をいたしております。     〔委員長退席、畑委員長代理着席〕 ただ、原爆被爆者の問題は、原爆の後障害があるという特色があるわけであります。したがって、日本においてもこれは議論になっておるわけですが、しかし特別の措置として原爆二法が、医療法と特別措置法があるわけでございまして、そういう点からいいますと、原爆の後障害というのは、他の戦争による今までの被害とは違ったところがあるわけであります。ですから、請求権を基本条約で消滅させたとはいいましても、後遺症は残るわけですから、人道上の見地から韓国被爆者の問題については処理をすべきである。そういう点で、打ち切られた事情の中には韓国側の事情があるわけですけれども、しかし、その経過はともかくとして、韓国の被爆者団体の強い要請に対しましては、誠実にこれに対応すべきであると思いますが、厚生省の見解はどうですか。
  38. 北川定謙

    ○北川政府委員 先生よく御存じいただいておりますように、従来の経過は韓国側の事情で打ち切りがなされた、こういうことになっておるわけであります。厚生省といたしましては、現在におきましても、人道上の見地から、韓国側から要請があれば、渡日治療の再開ですとか、あるいは専門医の派遣ですとか、さらには研修医の受け入れですとか、場合によっては韓国側からの被爆者の日本における治療の問題だとか、柔軟に対応していく用意を持っておるわけでございます。
  39. 大原亨

    ○大原(亨)委員 これは韓国政府の方の態度も変わった、韓国側の被爆者団体の要求もクローズアップされた、そういう二つの情勢の展開があった、変化があった、そういうことによって話し合いが進む、こういう段階に来ているというふうに理解してよろしいですか。
  40. 北川定謙

    ○北川政府委員 厚生省といたしましては、まだ韓国側から具体的な御相談を受けておりませんが、そういうことがあれば十分に連携をとっていきたい。今後とも外務省と、従来もそうでございますが、十分連絡をとって対応してまいりたいというふうに考えております。
  41. 大原亨

    ○大原(亨)委員 韓国の被爆者団体の二十三億ドルの補償の根拠について私は説明はいたしません。二十三億ドルの賠償の要求と、それから渡日治療とか施設の提供とか、従来からも問題となったいろいろな問題は、私は直接は関係ないと思うのです。ないと思いますが、実質的には日韓双方の政府間の話し合いが打ち切られたということに対する被爆者の要求が出たわけですから、これらの問題は内部ではつながっておる、一体の問題であるというふうに私は理解をいたしておりますから、そういう問題については、今までの経過を踏まえて、誠実に日本の政府は対処すべきであると思うが、厚生大臣の見解を最後に聞きたいと思います。
  42. 藤本孝雄

    藤本国務大臣 御指摘のとおり、誠実に人道上の見地からできる限りの対応をすべきものだと私は考えております。
  43. 大原亨

    ○大原(亨)委員 次の問題ですが、この国会にエイズの法律案が出ておるわけです。しかし、これは前へ進んでおらぬわけです。これには日弁連やその他から行政介入と人権問題についての議論も多いわけです。しかし、最近厚生省は、一部の新聞、朝日新聞に大きく出ましたが、予算措置でこれに対応する措置をとられた、こういうことなんですが、この対策の内容についてポイントだけをお答えいただきたいと思います。
  44. 北川定謙

    ○北川政府委員 三月十九日付の朝日新聞の報道は、六十三年度予算におきましてHIV感染者、つまりエイズに感染した人たちの発症予防と治療に関する研究の進め方についての一つ考え方を報道されたわけでございます。この研究は既に六十一年、六十二年と続いてきておるわけでございますが、これをさらに拡大をして、希望する感染者全体を対象にしながらやってまいりたい、こういうことでございまして、まだこの治療の方法というのは研究段階でございますので、私どもとしては医療費という考え方は持っていないわけでございますが、報道はそのように理解をされて書かれた、こういう経緯だろうと存じます。
  45. 大原亨

    ○大原(亨)委員 今まで衆参両院の予算委員会分科会や他の機会に議論されてきたのは薬害救済法との関係です。この問題は、前厚生大臣藤本厚生大臣も、確かにこの問題を放置できないから何らかの措置をとりたい、こういうふうに抽象的な答弁をしておられるわけです。しかし、これは答弁を通じまして約束をしておられるわけです。  問題となっているのは、エイズの発病者じゃなしに感染者があるわけですが、これは二千名台と言われておりますけれども、その中の大部分は血液製剤の熱処理の問題と関係があると言われているわけですね。この熱処理の問題は言うなれば、薬剤を広義に解釈すれば、血液を無害な状況、感染しない状況で提供するということは当然の行政の責任であると思います。ですから、薬害救済法を拡大解釈するなり、若干の原資はあるのですから、条文を修正するなりいたしまして、これを適用すれば、救済の範囲が広がってきまして、そして血液製剤に関係をしてエイズに感染するのですから、そういう経路がはっきりしているのですから、そのことをクローズアップして対策を立てていきますと、エイズに対する国民の理解、バックグラウンドというものが出てくるから、非常に政策としては、法律案の形式的な審議よりも実質的に具体化するものではないか。だから、その薬害救済法による救済措置と今度の予算措置、それの程度の差というか内容の差というものはどの程度なんですか。
  46. 坂本龍彦

    ○坂本(龍)政府委員 医薬品副作用被害救済基金の目的につきましては、法律に明記されておりますように、医薬品の副作用による健康被害について迅速に救済することというものでございます。今お尋ねの血液凝固因子製剤によって引き起こされたエイズの感染、これは医薬品そのものの作用ではなくて、そこにエイズウイルスが混入しておった、こういうことによって引き起こされたわけでございますので、この医薬品副作用被害救済基金法の適用によってこれを救済することは、やはり法律上できないという結論でございまして、これは既に昨年来、私どもの方でいろいろな御質問に対してお答えをいたしておるわけでございます。  しかし同時に、それでは国としてこういった被害に遭われた方々に対して何もしないということではございませんで、先ほども答弁ありましたように、これからこういった方々に対する対策を考慮していく必要があろうということは私ども十分認識しておるわけでございます。しかしながら、このエイズ感染という被害にかかった方の実情あるいはそのプライバシーというような、従来の医薬品被害とはまた異なった性格を持っている面、こういうところに着目しまして、いろいろな角度から十分これを検討していく必要があろうかということで、今対策を検討中でございます。先ほどのお答えは、その中の一つとして、新しい医薬品を用いた発症予防を実施していこうというものでございまして、そのほかに相談事業も今計画をしておる段階でございます。さらにそのほかにもどういう対策がとれるか、今いろいろと検討を進めておる段階でございますが、いわゆる医薬品副作用被害救済基金における救済対策、これとの比較というのは、私どもの検討した内容が今後固まった段階においてどういう関係になるかという点は、まだ今の段階では具体的に申し上げられるまでには至っていないというのが現状であります。
  47. 大原亨

    ○大原(亨)委員 行政上、予算上の措置の問題についての是非もいろいろあるのですが、しかし今の答弁一つも前進していないわけですよ。これは時間がございませんから、血液製剤の中に混入すべからざるものがあったわけですから、菌があったわけですから、それが製剤を通じて感染して感染者がいるわけです。これがほとんどのシェアを占めておる。そうすると、一般的には同性愛とか性行為を通じてエイズ患者は伝染したのだという先入主があるわけですから、これは不治の病ということで一緒にこれが非常に先行しているわけです。ですから、血液製剤の中に混入したエイズ菌の問題についての厳然たる事実があって、この処理をしていなかったということによって、この熱処理をしたならば目的を達成するのだということであれば、これは言うなれば薬害、副作用、薬害作用と考えてよろしいのではないか。それは解釈できないことはない。救済法に条文の足りない点があれば、どこかの字句を修正すればいいのではないかということを指摘しておきます。  それで、もう一つは、やります、やります、何らかの形で検討してやりますということの答弁の繰り返しではいけないと私は思うのですよ。大体いつまでにやるのだ、どういうふうにしてやるのだというぐらいはちゃんと答弁しなければいかぬ。そうしないと、法案を出しておいても宙ぶらりんになっておって前へ進まないのですよ。小沢辰ちゃんいないのですけれども、あれはあの法律自体に欠陥があるのですから、その欠陥を補うためにも私が言ったようなことをやるということで、これは国民のエイズに対する認識、定着度というものは一変するわけですから、そのことについては対策をきちっとして結論を出して国会答弁してもらいたいと思います。大臣、どうですか。
  48. 藤本孝雄

    藤本国務大臣 エイズ対策の最も重要な点は、まずかかれば九〇%死亡するという、しかも治す薬もまだ開発されていないこの恐ろしい病気の蔓延をいかに防いでいくかということが最も重要なことだと私どもは考えております。  その対策を進めていく中で、御指摘のように、血液製剤によるエイズの感染につきましては、これはまことに不可抗力でございまして、お気の毒なことであるわけでございますので、エイズ対策を進めていく中で、血液製剤によるエイズ感染者の救済という問題は解決していかなければならない問題であるという認識を持っておるわけでございまして、私は事務当局に対して、六十三年度で多少の予算を計上して対策を立てておりますけれども、それだけではなくて、どういう救済ができるかということを検討するように指示したわけでございます。  その後、予算委員会で先ほど御指摘のような、副作用ではない、したがって薬害ではない、いや薬害だ、こういう質疑がございまして、それを受けた形で総理から、この問題は薬害の救済基金に適用させようということでそこに当てはめてみると、やはり薬害と認定することには無理があるようだ、しかし非常にお気の毒なことでもございますので、まさに政治の力でこういうお気の毒な方に対しては救済すべきだ、こういう御答弁があったわけでございます。私どもの考えと総理のお考えも全く一致するわけでございますので、将来どういう救済対策現実に可能であるかということを現在検討しておるわけでございまして、そのめどにつきましては、例えば今月中であるとか来月中であるとかいうことをここで正確に申し上げることはまだ困難でございますけれども、責任を持ってこの問題の解決には当たりたい、私はかように考えておりますので、そういう点で御理解いただければまことに幸いだと思います。
  49. 大原亨

    ○大原(亨)委員 これは大体いつごろまでをめどにしてどういう内容の検討をしているというところまで答弁されることが本当の質疑応答になると思うのです。それは極めて不満ですけれども、二億三千万円の予算措置をして、感染者がエイズの患者として表面化するのを防ぐ方向について限られた手を尽くす、こういうことに今終わっているわけで、これもしっかりした治療方法ではまだない、それが確立されていない、こういうことだと思いますが、今の御答弁だけに終わらないで、これは速やかにやってもらいたいと思います。  さて、これから質問を続けていくわけですが、先般の予算委員会で永末委員の要求で国民負担率の資料が出てまいりました。この国民負担率の資料を見ますと、現在を起点といたしまして二〇〇〇年から二〇一〇年、昭和八十五年まで、保険などによる国民の負担と税金による負担を並べまして、保険料などによる負担の問題については、年金や医療等に分類いたしまして将来の推計を出しておるわけです。  これは簡単に言えば、六十五歳以上の高齢者が、千二百万人が、ピーク時には、二〇三〇年ぐらいには三〇%を超えるわけです。これは八十五年までしかない、二〇一〇年までなのですけれども、高齢化が進んでいくわけですから、年金給付も医療給付もどんどん膨らんでいって負担がふえていくわけですね。これは私も前から私として資料を要求して答えをもらっておったわけです。  これを見てみますと、大筋で二つの問題があると私は思うのです。  その第一は、租税負担率と社会保障費の負担はこれからどんどん伸びていきまして、合計して三六%ですが、中身が変わりまして、租税を上回って社会保険の負担率が上がっていくような構造になっておるわけです。そしてその社会保険の負担率が上がっていくのは、高齢化と一緒にずっと上がっていくわけですから、国民医療費も上がっていくのです。しかしそれを超えて年金の給付費が上がっていくわけです。そういうふうになりますと、租税負担率よりも保険料の負担率が、これは二六%、最後には逆転いたしまして保険料負担率は二七%になる。合計して五〇%を超えるということになるわけです。そうすると、御承知のように保険料は定率であるか例外的に定額ですよ。所得税や住民税は累進税率です。保険料は定率なのですから、中以下の人、低所得階層の費用負担が比較的大きいわけです。その上に保険料には所得税のように生活費非課税の原則がないわけです。控除がないわけです。ですから、保険料の負担率が租税を超えて増大するということは非常に大きな問題ではないか。  直間比率の見直しということが盛んに今言われているのですが、直間比率の見直しということの前に、租税で負担するのか保険料で負担するのか。負担をする国民にとってみれば、皆負担するのですから変わりはないわけですから、国民負担率のこの表を見る場合には、そういうふうに保険料の負担がふえるということは非常に逆進的である。不公平である。ですから、その問題について正しい認識を持って処理しないと、大蔵省の圧力で国庫負担をカットいたしまして、そして保険料に転嫁するというふうな万法をとったわけですが、そういうやり方というものは、国民から見ますと非常に不公平なやり方ではないかということがあるわけです。直間比率よりも、租税と保険料の負担率をどうするかということを分析をして考えていかなければならぬと思いますが、この点について厚生大臣はどういう考えを持って対応しているのか、お聞きをいたします。
  50. 黒木武弘

    ○黒木政府委員 今回長期推計をお示ししたわけでございますけれども、確かに社会保障負担、保険料の負担がかなり大きく伸びていくわけでございます。御指摘のとおりでございます。  今後、社会保障の財源をどのように賄っていくのか、これは私ども厚生省の最重要の政策課題だと認識をいたしております。ただ、御案内のように、我が国の社会保障は、基本的に年金も医療社会保険方式をとっているわけでございます。この社会保険方式は、受益と負担の関係が非常に明確になるという意味ではメリットがございますし、あるいはいろいろな意味での経営努力等が反映できるとか、国民にもう既に定着をしているとか、そういうことで私どもはすぐれた方式であるというふうに考えております。  今後の国庫補助と保険料のバランス、組み合わせをどうするかということでございますが、これは一般論としてはなかなか申し上げにくい事柄でございまして、それぞれの制度ごとに趣旨、沿革、必要度を見ながら国庫補助のあり方を考えていくのが正当ではないかと思っております。一般論としましては、社会保険料を基本としながら国庫補助を適切に組み合わせていく、そういう形で国民の負担が公平になるという視点から私ども社会保険料と税負担のあり方をこれから考えていかなければいけないのではないかというのが基本的認識でございまして、まさにそのために、現在の税制改革も、高齢化を控えました安定的な歳入基盤の確保、こういうことで税制改革について高齢化現象というものを視野に入れて国民的に議論が行われているところでございますので、私どもは今回の試算をお示しいたしまして、国民が幅広い角度から社会保障の財源あるいは国民負担のあり方の御議論をぜひお願いしたいものだというふうに考えておる次第でございます。
  51. 大原亨

    ○大原(亨)委員 それで大蔵省の主税局、あなたは税金を取る方、主計局は予算編成する。大蔵省は行政改革だといえば国庫負担をへずるわけですよ。そして医療保険に転嫁してきたわけですよ。あるいは自己負担に転嫁してきた。そういうことは、国民の負担率を全体から考えてみた場合に、あるいは国民一人一人から考えてみた場合には、このままずっと高齢化が進んできて今の制度の改革がないということになると、これは大変なことになるのではないか。国民から見れば非常に不公平ではないか。直間比率の是正ということを盛んに言う前に、租税と保険料の負担率についてどういうふうに案分をしていくか、そういう将来計画についての考え方を持って大蔵省は税金を取ったり予算を編成したりしなければいけないと思うが、主税局の考え方はどうか。自分の方は非常に認識不足であったというように思うかどうか。
  52. 薄井信明

    ○薄井説明員 税の立場から御答弁申し上げます。  先生、御指摘のように、現在税制改革をどうするかということで議論を進めさせているわけでございますが、その中心的な考え方は、現在の税制自体が国民、特に納税者にとって非常に重税感とかあるいは不公平感を強く持たれている税制だということに着目いたしまして、一つ一つの税金についてよりよい税金をつくっていく検討を進めているわけでございます。つまり不公平の是正をどうするかということに大きな主眼を置いている税制改革ということをまず申し上げておきたいと思います。  ただ、その際には、せっかくの税制改革でございますから、将来の、これからの日本の国民生活なり経済というものも考えながらいかなければいけない。そういう意味では、高齢化社会が近々到来するということも頭に置きながら、私どもも税制改革を進めていきたいと思っているわけでございます。したがいまして、御指摘の点につきましては、私どももただいま厚生省から御答弁がありましたのと同じような考え方でおりますが、当面の税制改革に当たりましては、不公平是正を図っていくということに主眼を置きながら、かつ将来を踏まえてよりよいものができればいいなと思っております。
  53. 大原亨

    ○大原(亨)委員 不公平税制の是正になっておらぬじゃないかと私は言っているのですよ。租税の負担と社会保険料の負担そのものを比較してみて、将来推計をした場合には、保険料のウエートが非常に高くなるような仕組みになっておる。保険料も、言うなれば、広い意味では税金ですからね。それは非常に不公平になっているのじゃないかということを指摘をしているのです。きちんと認識をしてやらなければいかぬ。予算編成のときだってそうです。マイナスシーリングのときだって大蔵省は非常に間違った考え方ではないか、非常に独善的ではないか。  もう一つ国民負担率の資料で、これは厚生省大蔵省が一緒につくったというのですが、中身は大体私は推定できるのですが、もう一つの問題は、税制協議会の議論のときに、我々野党の方は、社会党も所得税の減税についてはキャピタルゲインその他不公平税制の是正で徹底的にやる、そして年金とか医療とか高齢化社会の在宅福祉その他の福祉サービスについては、その構想を早く決めて、その構想、方向の中で財源負担をどうするかという議論をすべきである。それは二年、三年かけてやるということは、例えば昭和六十五年という年は非常に画期的な年、重要な年になるわけですが、そういうふうに議論をすべきである。厚生省の方もそういうふうにやってもらいたい。初めに売上税ありき、新型間接税ありきということで、福祉目的税とかいろいろなことをえさにいたしまして、それで国民を誘導するようなことをやってはいけない。そういうことは本末転倒であるという考え方ですね。  厚生省は、そういう私どもと同じような主張をすべきじゃないか。厚生大臣、どうですか。あなたは閣議でそういう主張をしていますか。直間比率の是正であるとかいろいろな議論をしておりますけれども、所得税減税は不公平是正の一つなんですから、不公平是正の財源で手当てする。そして年金とか医療の改革のビジョンを早く決めておいて、この財源をどうするかという議論を国民的にしていくということが順序ではないかということを社会党も野党も主張しているわけですから、これは厚生省立場と一致するのじゃないかと思うのですね。これは政治的な議論ですから、厚生大臣はどう思いますか。国民負担率を見まして、私はそういう分析的な視点を持つ、こういうことです。
  54. 藤本孝雄

    藤本国務大臣 まず、前段の不公平税制に対する対応策としての御議論は、かねがねそういう御議論をされておられることは私も承知をいたしております。  それから後段の、高齢化社会の進行に伴いまして社会保障経費というものが増大する、それをいかに安定的に確保していくか。これは社会保障制度というものが国民生活の長期安定のための基盤でございますから、必要な給付はぜひ確保していかなければならない、これは厚生省の基本的な立場でございます。したがって、その財源をいかに安定的に確保してまいるかということについては、将来の最も大きな課題であると心得ているわけでございまして、そういう問題が今回の税制改革の中で十分に御議論願えるものと考えておりますし、また国民皆さん方に十分にお考えいただかなければならない大きな課題であるというふうに私は考えております。
  55. 大原亨

    ○大原(亨)委員 そういうふうになっていないと私は思うのです。それはまた最後の方で言います。  そこで問題は、これは厚生省の責任なんです、厚生大臣の責任なんです。現行の年金とか医療の制度をそのまま延長して推計するとしたわけです、国民負担率の材料というのは。それはそれなりに意義があるのですけれども、それ自体としては問題を抱えているんだという点を私は指摘しているわけですね。  そこで、一つ一つの大きな問題について申し上げるわけですが、第一は、例えば年金の問題ですね。厚生大臣、あなたがいる前から閣議決定で公的年金一元化は昭和七十年にやるんだということを決定したわけです。国会でも答弁しているわけですね。昭和七十年にやるという公的年金の一元化のビジョン、公的年金一元化をやるんだということについての構想ができておるのですか。そういう構想を年金の分野においてもちゃんとつくっておかないと、福祉に金が要るんだ金が要るんだといいましても、どういう財源の仕組みになるかということについては全然見当がつかないという話になるわけです。現状のままで、矛盾したままで延長するということになる。公的年金一元化についてのビジョンは厚生省としてはあらかた大筋で決まっておりますか。
  56. 水田努

    ○水田政府委員 先生御案内のとおり、五十九年の閣議決定で公的年金の一元化を進める、おおよそ七十年で完了するという政府の方針を決めているところでございまして、これを推進する場として公的年金閣僚会議というものも設けられ、既に六十年の大きな年金改革で一階部分は給付、負担両面にわたる完全な公平を期しました基礎年金の導入を図り、二階部分の被用者につきましては、共済組合において将来に向かって厚生年金との給付の整合性を図る改正をしていただいたところであるわけでございまして、残るのは二階の被用者部分の負担の不公平をどう是正していくかということが七十年までに向かって解決していかなければならない課題である、私どもこう考えているわけでございます。  そのための手順といたしまして、昨年の九月に公的年金の閣僚会議を開いていただきまして、その一つは、七十年に公的年金の一元化を完了させるという五十九年の閣議決定の方針を関係閣僚すべてに再確認をしていただいたということ、それからもう一つは、六十四年に被用者年金は再計算期を迎えますので、その再計算期に被用者年金の負担の調整を図る、極力その地ならしすべきものを地ならしすることを申し合わせまして、その地ならしの作業に向かって、既に公的年金閣僚会議を構成しております関係各省の関係局長から成りますところの調整連絡会議というものを開きまして、その地ならし作業についての検討の着手に既に入っているところでございます。     〔畑委員長代理退席、委員長着席〕  最終のゴールの被用者年金の姿をどうするかということが先生の御質問のポイントであろうかと思うわけでございますが、六十年の改正で基礎年金の導入をしていただいたわけでございますが、国家公務員については大蔵委員会、地方公務員については地行等々の各委員会で、それこそ超党派で共済組合の今後の存置というものを附帯決議しておられるという、それぞれ歴史、沿革を持つ中で負担の公平をどう進めていくかということは、やはり六十四年の地ならし作業というものをまずきっちりとやって、それを踏まえながら七十年のゴールの姿を描いていくことの方が事柄を円滑に進めるゆえんではないか、私どもそう考えておりまして、当面六十四年の被用者年金の再計算に向かっての地ならし作業に全力で関係各省で取り組む、こういう姿勢で事柄を進めている次第でございます。
  57. 大原亨

    ○大原(亨)委員 重要なことを答弁しているのですが、財政再計算を五年ごとにやるのですから、昭和六十四年に財政再計算の方針を決めて法律を改める、そして六十五年から七十年までの五カ年間の収入と支出について保険料負担と給付についての五カ年計画をつくっていく、それでゴールである七十年の公的年金一元化に向かうのだという今の答弁です。これは形の上の答弁なんですね。今の答弁は、それでは来年の国会の始まる昭和六十四年一月には、再計算について必要な法的な措置をとる、法案を出す、こういうことになるわけですね。
  58. 水田努

    ○水田政府委員 被用者年金の各制度は、向こう五年間についての再計算をするというよりは、長期にわたってどう収支の安定を図るか、こういう観点で再計算をすることも先生は専門家でございますので御案内のとおりでございまして、その再計算の結果に基づきまして、負担、給付の面で被用者各制度がどういう措置を具体的にとるか、その間にどう整合性のある処理をかみ合わして処理をしていくか、こういう問題ではなかろうかと考えている次第でございます。
  59. 大原亨

    ○大原(亨)委員 そうすれば来年ですね、もう目の前の問題です。昭和六十四年の一月に財政再計算についての法律案を出すと思うのです。そのときには、例えば厚生年金の保険料の負担については、五カ年間の期間を見通して、今までは法律の内容では大体一・八%の保険料値上げをやったわけですね。その保険料値上げは一・八%でおさまるのか。五年ごとにやる物価スライドにプラスいたしまして賃金スライド、政策スライドがあるわけです。これは国会でも修正いたしまして賃金というものを入れたわけです。スライドは年金の生命ですから、その賃金スライドは的確に予定どおりやるのかどうかということがあるわけです。そこで保険料負担については、厚生年金だけではない、国民年金は毎年定額を上げているわけです。ですから脱落する人がどんどんふえているわけです、これは後の問題。厚生年金をそういうふうに決めるとするならば、共済の方も負担をそろえるというのであれば、共済はばらばらになっておるわけですが、これも来年の四月にはそろえるのですか。そういう問題の処理をきちっとするというのが昭和六十四年の財政再計算の法的な措置なんですか。
  60. 水田努

    ○水田政府委員 まず、二つの立場から答えさせていただきたいと思います。  一つは、私、年金局長として厚生年金及び国民年金を所管しているわけでございますので、まずその立場からお答えをさせていただきますと、厚生年金及び国民年金につきましては、御案内のとおり、年金審議会で事前に十分御検討いただいて、その御提言に従って改正を行うというのが厚生年金及び国民年金の過去からの慣例となっているところでございます。その点につきましては、今回も同じでございまして、既に昨年の九月から年金審議会を開きまして、現在鋭意御審議をいただいておりまして、ことしの秋くらいまでに御意見をいただき、それに即して措置をなしていく、こういうスケジュールでやっているわけでございます。  もう一つは、厚生大臣は年金担当大臣をしておられまして、私はまた年金担当大臣を補佐する立場にあるわけでございまして、その補佐する立場答弁をさせていただくわけでございますが、これにつきましては、先ほどからお答え申し上げておりますように、被用者年金について残された課題というのは、負担の不均衡を是正する、こういう問題でございまして、七十年まで手をこまねくということではなくて、その中間地点でありますところの六十四年の再計算期に、その費用の負担の不均衡について極力地ならしできるものはするという公的年金閣僚会議の昨年の申し合わせに従ってその作業をやっているところでございまして、それはそれで政府部内の検討として関係各省の間で鋭意その検討を進めているところでございます。私どもも年金審議会の方で、公的年金閣僚会議で検討しているいわゆる地ならし作業という視点、すなわち七十年に向かって被用者年金の負担の不均衡を是正するという視点も踏まえながら御検討をお願いしているということで、私どもが公的年金閣僚会議の下部機関として進めていることと年金審議会で御検討いただいている検討事項は、クロスする面が必ず出てくるのではなかろうか、このような予想を立てながら現在事柄を慎重に進めている、こういうところでございます。
  61. 大原亨

    ○大原(亨)委員 あなた、いいかげんな答弁をしてはいかぬよ。あなたは、私があらかじめ通告したものだから、こういうことを答弁しなければやられるだろうと思って答弁しているから非常に慎重なんだけれども、中身がないんだ。  あなたは年金局長として、四共済について、ばらばらなんですよ、保険料負担は。国鉄もそうなんですよ。自衛官もそうなんですよ。全部ばらばらなんですよ。その保険料の負担についてそろえるということになりますと、全部の法律を変えなければいかぬ。あなたは年金局長として、四共済の負担で歩調をそろえるということについて大臣を補佐する権限があるのですか。何もないでしょう。設置法のどこに書いてあるのだ。あなたにないから今日まで厚生省は何の役もしなかったということになるのです。  きょうは官房から谷口審議官を呼んでいますけれども、これは厚生省から出たんだから、あなたの部下だというくらいに思っているかもしれないが、そうじゃないんだ。全然関係ない。官房長官の部下なんだ。  そこで、年金閣僚懇談会は、この間まで、最初大平内閣のときに伊東官房長官が年金閣僚懇談会の座長をやっていたのですよ。最初出るときに、国会対策でつくったんだ。伊東さんに、年金について私が質問するが、あなたは答弁できますかと言ったら、この人は正直な人だから、いやとんでもないと言って手を振りました。年金一元化については、大体は官房長官が審議官を掌握しているのですよ。あなたの方は、それは兼任している人はおるけれども、指示する権限はないわけです、厚生大臣は。それが年金担当大臣だということを閣議決定だけで、設置法も何も改正していないものだから何もできない。だから年金閣僚懇談会を開いても、関係各省の懇談会を開いても、小田原評議になっておるわけだ。  そこで、公的年金一元化を昭和七十年にするというビジョン、それは形だけできておって中身は何もない、あなたの答弁の通りなんだ。それでは日本の年金制度、基礎年金をどうするか、その財源をどうするかということで税制との関係が出てこないわけです。  厚生大臣、あなたは年金担当大臣ですよ。たまたま厚生大臣になったからそうなったわけだけれどもね。そうでしょう。別に実質はないということをよく知っておられると思うのですけれどもね。それは増岡さんのときにもそうだった。あの人は答弁しなかったですから、年金問題全体については。四共済のときに、私は官房長官と総理大臣を連合審査で話をいたしましたが、打ち合わせのときも厚生省は全然出てこないんのです。これは厚生年金と国民年金の担当だから。それじゃ年金の改革はできないわけです。  年金担当大臣というのは、年金全体の担当大臣なんだということになれば、官房にある年金担当審議官厚生省に持ってきて、保険庁かどこかの一部に置くとか、そういうふうにして、各共済に対しても資料を要求したり方針を示したりするような調整能力がなければいかぬわけですよ。そうしないと、あなたは浮いてしまっておるのですね。あなたが悪いのじゃないですよ。制度が悪いし、政府の方針が悪いのです。非常におざなりなことをやっているのですよ。私が指摘したことについては、そのとおりだと大臣、思うでしょう、いかがですか。
  62. 水田努

    ○水田政府委員 いや、私も公的年金閣僚会議を主宰しておられます厚生大臣を支える部下でございますと同時に、公的年金閣僚会議の下に構成されております関係各省の局長から成ります連絡調整会議の、主要なとは申しませんが、一員であることは間違いないわけでございまして、公的年金閣僚会議の下の関係局長で構成しますところの調整会議、これは的場室長が主宰者でございますが、私どもも大いに協力をして、先輩が六十年の大きな改革を公的年金の閣僚会議をフルに円滑に使ってなし遂げられたので、後輩である我々も決してそれに劣らないように一生懸命やりたいと思っているわけでございますので、谷口内閣審議官答弁の前に、厚生省としても一生懸命協力する決意であるということだけは答弁をさせていただきたいと思います。
  63. 大原亨

    ○大原(亨)委員 谷口審議官、あなたは官房長官の命令を受けるようになっているのでしょう。厚生大臣の命令を受けるの。厚生省へ帰ったら命令を受けるのだろうけれども、今はそうじゃないんだろう。厚生大臣が指示しようと思ったってそれは聞かないよ。あなたは官房長官の言うことを聞くんだ。だからこれはねじれておって前へ進まないのだよ、全然。設置法も何もないのだからね、年金担当大臣は。  それじゃ質問しますが、昭和六十四年の財政再計算のときには、従来から議論されましたが、四共済を統合するという従来の方針があったのですよ。それは途中で消えたわけですよ。完全に消えたのです。四共済統合ということはもうないんでしょう。
  64. 水田努

    ○水田政府委員 私どもが現在公的年金閣僚会議を通じてやっておりますことは、先ほどからお答え申し上げておりますように、被用者各年金制度が現在の形のままで存在する中で負担の不均衡をどう是正するか、こういう観点での検討を進めているということでございます。
  65. 大原亨

    ○大原(亨)委員 国家公務員グループ、国家公務員と三公社が一緒になって、昭和五十八年に統合したというのですが、統合したのじゃないのですよ。これはうそであって、そのグループで国鉄共済を救済するという法律なんです。財政調整の法律なんですね。そこで国鉄の共済年金の保険料の負担は、標準報酬に直しまして八%台ですから、一番高いわけですよ。本俸に直しましたら一割を超えるわけですよ。それから自衛官の共済は、年金は五十五歳開始の特例が国家公務員共済組合法の中にあるのですよ。五十五歳なんですよ。これは六十歳とか六十五歳になったら自衛官は役に立たぬから、五十五歳から支給開始という特例があるわけですよ。そういうものをそろえるということを昭和六十五年にやらなければならぬわけですよ。そういうことについては厚生大臣は権限がありますか。法案についてこうしなさい、ああしなさいというふうな調整権限はありますか。ないでしょう。何にもないですよ、あなたは。ですから、昭和六十四年に財政再計算の方針を出すといっても、何を出していいかわからぬわけですよ。年金局長は私のように体が大きいから威張っておるけれども、何にもない。何分の一かの発言しかないわけですよ、あなた。言うておることは全然何も実行できないわけですよ。今までだってそうだった。関係閣僚も、これは何回会議を開いてもまとまらなかった。最後に、私は連合審査のときに官房長官と総理大臣との間において質疑応答をやって統一見解を出してもらったわけですよ。それでまとまったわけです。ですから、昭和六十四年の財政再計算期に一元化を目指してどういうふうな年金統合をやっていくんだということについて方針を出さなければいかぬですよ。それは来年早々出すのですか。出すと言っているのだ。それを出すと、基礎年金の財源をどうするかという問題が出てくるのだ。そうすると、税制協議会で議論している問題が出てくるわけだ。あるいは中曽根総理大臣のときから売上税が行き詰まったら、高齢化社会の年金のために税制改革が必要ですと言って、演説を本会議で何回もしているのです。テレビを通じてずっと流れているから、ああそうかなと国民はそういう気持ちになっているのだが、中身は何もないわけだ。その一半の責任は厚生大臣が負うべきである、こういうふうに私は思うわけですよ。年金についても医療についても同じですよ。後で時間のある範囲内でやりますが、あなたはこの間就任されたばかりで、しばらくしたら去っていかれるかどうかわからぬが、頑張るかどうかわからぬけれども、いずれにしましても、そういうことでは日本の年金改革とか高齢化対策というものはできないのじゃないかというふうに私は思うのですよ。私の言うことがわかりますか。あなたは政治家ですから、水田さんのようなことは、ああいう中身のないことで大きな声をするようなことはないと思うのですが、いかがです。
  66. 藤本孝雄

    藤本国務大臣 年金問題担当大臣、その最大の任務は、公的年金制度の一元化に向けて円滑に推進していくための各省庁間の調整役と私は心得ております。その点についていろいろ御激励をいただいたわけでございまして、私も私なりにこれから努力してまいりたい、かような覚悟でおります。
  67. 大原亨

    ○大原(亨)委員 これだけで時間をとってはいけませんが、そこで公的年金一元化のために、私は三つの解決すべき前提条件があると思う。項目を挙げます。  第一は、基礎年金の構造を変えて普遍的な最低保障年金にしなければ、一階の基礎年金としての機能を発揮しないような段階になる。その一番大きなのは定額保険料で、保険料を納めない人や納められない人がたくさん出ておるということが一つです。それからいろいろな年金の仕組みで、婦人の年金権を含めまして、基礎年金の構造を変えて普遍的な最低保障年金にしていかないといけない。段階的にやる場合に、財源としてはどのくらい要るのかということについて、今までの基礎年金を踏まえて、今の基礎年金は給付するときに保険料の上に三分の一の国庫負担を出すわけですから、出口でやるわけですから、これを普遍的な年金ということになると、特別の会計を設けてやるということであります。それから基礎年金についても、見直しの規定があるわけですから、年金水準と費用負担のあり方について検討することというのが議会の最終段階で私どもの修正で入っておるわけです。だから基礎年金をまず改革しなければいけない。これが第一。  第二は、国鉄共済年金についての再建プランを明確にしなさい。昭和六十四年までは今までの国会答弁どおり一応曲がりなりにやっております。六十五年から七十年の公的年金一元化までは空白です。一年間に約三千億円の国鉄共済年金の不足額が出てまいります。五カ年間で一兆五千億円ですね。これをどうして埋めるかということを政府は責任を持ってやりますというのが統一見解ですが、しかし何でやるかということについて検討していますか。この点だけ一つ質問をいたします。
  68. 水田努

    ○水田政府委員 まず、国鉄共済、検討をちゃんとやっているか、こういう御指摘でございます。  先生御指摘のとおり、六十五年から六十九年までの五カ年間で毎年三千億ということで、この間で一兆五千億です。私ども承知しておりませんが、恐らくその後はなおふえるのだろうと思いますが、この不足した財源をどう穴埋めをしていくのか、これはやはり大変大きな問題であると思っております。ここに至るまでの国の監督責任の問題もあろうかと思います。それから清算事業団がどう絡んでくるかという問題もあろうかと思います。それから公的年金の一元化がどう絡んでくるかという問題もあろうかと思います。また自助努力がどう絡んでくるかという問題もあると思います。これの解決策についての国民のコンセンサスを得るということが何よりも最も重要であると私ども考えております。そのため、一昨年の国鉄再建の特別国会が行われたときに、これは特に社会党からやはり国鉄の財源問題を解決するための国民のコンセンサスを得る場を設けるべきだという提言が再三なされたわけでございまして、私どもそれを受けまして、国鉄問題を解決していくための四閣僚会議、これは内閣官房長官、それから国鉄共済を担当しておられる大蔵大臣、それからこれまで監督してこられた責任のある運輸大臣、それから年金担当大臣であるところの厚生大臣、この四閣僚会議の下に新内閣発足と同時にハイレベルの有識者懇というものを設けまして、ここで一つの問題の解決についての大まかな方向の提言をいただくということでスタートし、既に再三にわたる御検討をいただいておりまして、秋口くらいまでには御提言をいただけるものと私ども考えているわけでございまして、それを受けて四閣僚会議でこの問題の解決の具体的な方向を示していただこう、こういう手順で現在考えている次第でございます。
  69. 大原亨

    ○大原(亨)委員 メンバーは、大来さんが座長なんですよ。それで宮崎さんとか非常に見識のある人が多いのですよ。多いのですが、年金についてはよくわかっていらっしゃらないのですよ。これはほとんど中身がないのです。だから、厚生大臣が、年金担当大臣がどういう考え方を持つかということが大切なんです。そういうことを議論しなければ前へ進まないわけですよ。そこへもたれかかっておったのでは何も出てこない。こういうふうにしたいと思いますがいかがですかというふうにここだけはやっていかないと、財源が絡むのですから。それは簡単ではないですよ、将来の問題が絡むのですから。あの懇談会では私は中身は出てこないと思う。  それで、日本の歴史で一番古い、大正時代からある国鉄共済年金をつぶしたら日本の皆年金体制は崩壊しますよと言っているのです。それほど重大な問題です。国鉄共済年金も再建しようと思うと基礎年金から変えていかなければいけませんよという議論も私どもはしているわけです。ですから、そういう問題について今のようにアバウトな議論では、来年の発足についてめどをつけるわけにはいかぬのじゃないのですか。  それから、もう一つの問題は、前提条件は、厚生省と労働省の関係です。きょうは労働省も来ているわけですが、つまり六十五歳年金開始という法律になっておるわけですよ。この問題は、議事録を調べてみましたら、昭和五十何年でしたか、当時村山委員がやっていますけれども、これは定年制との関係があるわけです。定年は六十五歳まで段階的に延長していかなければいかぬわけです。労働時間短縮の方は進んでいるのですが、定年制は延長しまして、それでワークシェアリング、全体としては余暇を開発しながら年金の開始年齢と合わせていかなければならぬわけです。そういう方針は労働省、労働大臣との間でとれておるのですか。雇用と年金の関係どうするのですか。  そしてその中で問題になるのは、在職老齢年金というのは、低い賃金に抑えると年金の一部を出しましょうという法律であって、これは非常にいびつで共済にはほとんど適用できないわけですね。これが問題なんですよ。私どもは、これは部分雇用部分年金に変えて、労働時間短縮に合わせて一週間の労働時間でだんだんと年をとるに従って労働時間が短縮すると、年金の肩がわりをするという部分雇用部分年金の考え方で改めるしかないのではないかという提案をしているわけです。在職老齢年金の改正を含めて、年金開始年齢の準備をするということになると、六十五歳にソフトランディングするような条件をつくらなければいかぬ。それは全部歩調をそろえなければいかぬということになると、そういう問題について厚生大臣一つの展望なり考え方を持っていますか。
  70. 水田努

    ○水田政府委員 被用者年金の開始年齢の繰り下げ問題というのは、今後の後代の方の費用負担を考えた場合避けて通れない課題であると私ども思っているわけでございますが、この問題につきましては、今先生が御指摘のとおり、雇用問題と密接な関連を持つわけでございますので、私ども今後やはり労働省の方と密接な連携をとってこの問題を考えてまいらなければならないと思っているわけでございます。  いずれにいたしましても、この開始年齢の問題については、国民の老後生活に大きな影響を与えるわけでございますので、相当の準備期間、雇用との密接な対応関係、それから先生が御指摘になった問題を含めたソフトランディングする方法、もろもろを総合的に検討していかなければならぬ課題でございまして、先ほど申し上げましたように、次の再計算期に向けまして年金審議会でも最も大きな課題の一つとして、現在この問題の御検討をお願いしているという次第でございます。
  71. 大原亨

    ○大原(亨)委員 六十五歳年金開始については、厚生年金も共済年金も全部法律はそろっているわけですよ。附則で二階の所得比例年金を前に倒しまして六十歳開始にしておるわけです。そういう仕組みになっておるのですが、しかし保険財政からいいますと、保険料負担がずっとふえてくるという情勢があるわけですから、六十五歳年金開始に延ばせということを臨時行政調査会は何回も勧告しているのですよ。六十五歳開始、それは昭和六十五年という年限まで指定してやったことがあるのです。そうしないと年金財政は保っていけませんよ、維持できませんよということを言っているのです。それについて雇用との関係についてはもう抽象的に触れているだけなんです。大臣、雇用との関係なしに六十五歳年金開始ということはよもやないと私は思いますが、いかがですか。
  72. 藤本孝雄

    藤本国務大臣 その前に国鉄共済年金の問題。まさにこの国鉄共済年金が崩壊いたしますと、国民の公的年金に対する信頼は失われるわけでございまして、そういう点もこれあり、我々といたしましては、これは必ず解決しなければならない課題だということで今取り組んでおるわけでございます。そのためには国民の理解と御協力が必要であるという意味で、この問題の閣僚懇の下部組織として、御承知のように有識者懇を設置いたしまして今やっておるわけでございまして、その結果を踏まえまして、責任を持って国鉄共済の問題については解決をいたしてまいる所存でございます。  それから、次の御指摘でございますが、一番大事な問題は、やはり年金制度の長期安定ということが何よりも大事な問題だと考えておるわけでございまして、そのために御承知のような大改正を昭和六十年度に行ったわけでございます。そしてその結果として、今御意見を含めての御質問にありましたような定年制との問題、これは将来当然考えなければならない大きな課題であると私は思っております。
  73. 大原亨

    ○大原(亨)委員 基礎年金の中身を変えていく、構造を変えていく、これは法律の附則にあるわけです。それから国鉄共済年金の再建のプランを明確にする、それから雇用と年金をきちっと整合性のあるように改革しまして、年金開始は六十歳を維持する、そして定年を六十五歳に順次移行すれば、年金の開始年齢はソフトランディングができる、六十歳以上は雇用については個人差がある、こういう前提で政策を立てるべきではないか、私どもはこういう議論であります。ですから、三つの点についての改革の意見をまとめないと、昭和六十四年の財政再計算期において七十年を展望することができないのではないか。これは重要な問題であるけれども、非常に急ぐ問題ではないかということで、時間的な問題を含めて厚生大臣の見解を簡単に御答弁ください。
  74. 水田努

    ○水田政府委員 基礎年金の問題は確かに附則に検討事項が入っているわけでございますが、後代の負担等を考えますと、私ども現在、国民の老後の生活の基礎的な部分を賄うという現在の基礎年金の考え方が妥当ではないかな、こういうふうに一応考えているわけでございますし、また費用の負担の面につきましても、社会保険方式が国民の中に定着しているわけでございます。基礎年金における国庫負担、これは現在一般会計で行われておるわけですが、これを税の方式に改めるという問題、これはやはり国民選択の問題ではないかな、こういう気がいたしておるわけでございます。仮に税に改めるとした場合にも、やはり大原先生が御提言しておられるような、いわば直接税という方法を言っておられる方もあるし、藤田晴先生みたいに間接税という形で対応すべきだという御意見を言っておられる方もあるわけでございまして、ここの一般会計負担を目的税あるいは間接税、直接税、そういう形に切りかえていくということは、国民のコンセンサスを得ていくのには相当慎重かつ時間を要する問題ではないか、こう考えているわけでございます。  それから、次の六十四年の再計算期に、国鉄の問題あるいは開始年齢の問題、これは非常に強く結びついてくる話であるというふうに私どもは受けとめている次第でございますが、いずれにいたしましても、先生御指摘の三つの問題は、年金審議会の御意見を最終的に承って政府の態度を決めるというのが私どもの基本的な姿勢でございますので、御理解をいただきたいと思います。
  75. 大原亨

    ○大原(亨)委員 今の基礎年金の方式は北欧型を入れたわけですが、これは私どもは意義を認めているのです。しかし、これは税主、保険料従にすべきである。日本の場合は保険料主、税従であるわけです。出口で国庫負担でやる。そうすると、今の制度でございますと、無年金者、低年金者が数百万人出てくるということになる。四、五百万人ではないと私は思っています。それはなぜかといいますと、年金の掛金を免除された者以外で未納者がどんどんふえているわけですから、都会を中心にふえているのですから、これは無年金につながるわけですよ。基礎年金の実質にならぬわけです。ですから、このことも頭に置いて考える。そういうことを全体を見ながら日本の税制をどうするかということを考える。  医療についても同じですよ。時間も限られておりますから、最終的に申し上げますが、医療の問題については、だんだんと高齢化して老人がふえるわけですから、老人医療費をだれが負担するのかという問題なんです。今の被用者保険を延長してやるのか。それから別建てで、公費負担、税金でやるのか。これは国保中央会と健保連の意見等が最近たまたま一致してきましたね。別建て・国庫負担論があるわけですよ、老人医療費については。しかしながら、ヨーロッパのように、ドイツやフランスのように現在の被用者保険を延長するという考えがある。しかし、いずれにしても、今の老人保健法の拠出金制度というのは、これはねじれ現象であって、受益者が参加する制度ではないわけですよ。そしてこの拠出金のウエートがずっと高くなってくると、保険料の中に五〇%以上の負担が近い将来入り込むというようなことになれば、保険制度の自殺行為ではないかということになるわけです。だから、老人医療費をだれが負担するのかということについて、制度の改革をどうするかという問題が非常に重要である。その期間は昭和六十五年ではないか。年金と同じ昭和六十五年。昭和六十五年までにビジョンを決めて、保険制度とそして医療供給面についての総合的な改革をすべきであると思うが、厚生大臣の見解を聞きます。
  76. 岸本正裕

    ○岸本政府委員 老人医療費につきましては、老人人口の増加に伴いまして、その増大は避けられないわけでございます。この医療費国民が公平に負担していくということが極めて重要な問題であろうと思います。老人医療費の財源の持ち方につきましては、老人保健法の創設のときからいろいろな御議論があったわけでございますけれども医療保険制度が分立をいたしておりまして、保険者間に老人の加入割合に著しい格差があるという現状から、いわば各保険者の共同事業という形で、老人医療費の七割部分につきましては各保険者から拠出金を御負担願う。そして保険者間の公平の見地から、加入者按分率により調整を図っているわけでございまして、こういう公費と拠出金で賄うことが老人保健事業の性格から見ても最もふさわしい現実的な財源方式ではないかというふうに考えておるところでございます。  法律の附則の規定によりまして、先生が今御指摘になりましたように、六十五年度までの間に加入者按分率また一部負担等々の問題につきまして見直しを行うということになっておりまして、私どもといたしましても、老人医療費の動向、各医療保険の運営状況等を勘案いたしまして、各界各層の御意見を幅広くお聞きしつつ、老人保健制度全般についての検討を進めてまいりたいと考えております。
  77. 大原亨

    ○大原(亨)委員 今の制度を説明したのですよ。加入者按分率一〇〇%というやつ。拠出金の制度というものがいいんだというようなことを言われたわけです。あれは観念的には、高齢者の比率で加入者按分率を一〇〇%にするというのは、そして按分してみんなが負担するというのは、いかにも公平そうに見えるのだが、保険制度のメリットから言えば、皆さん方が答弁したことは全く逆なんです。保険局長が言ったことは逆なんですよね。これは受益と負担の関係のバランスをとって、そして医療費適正化を図っていくという考え方とは違っているのですから。だから、今の老人保健法の拠出金制度というのは、国民健康保険中央会――齋藤君がやっておられますね。市町村長、その方も、これでは老人医療費は賄えない、こういうことを最近言い出したのです。これは別建てで公費負担にする、全国民が負担するのが望ましい、こういう意見になったわけです。たまたま健保連と同じような意見になってしまったわけだ。全国市長会も大体それに応ずるような意見を言っているわけですよ。だから、老人保健法の拠出金の分配率を八〇、九〇、一〇〇にする、これがいいんだと、部長が今言ったようなそんな見解を言っておる者はおらぬわけです。ですから、今の拠出金の制度を変えてどうするかというのは大変な問題なんですよ。日本の保険制度の問題なんです。  特に一番いけないのは、いつも言うように、政府管掌の健康保険の中で、国民健康保険はできておるけれども、政府がやっておる健康保険の中で、一人当たりの医療費で都道府県別のデータを出せと言っても、出さないわけです。政府がやっているのだから出せるじゃないか。支払基金があるのだから、社会保険事務所があるのだから出せと言っても、出さないわけです。国民健康保険の材料だけあるのです。政府管掌の健康保険は一人当たりの医療費がアンバランスになっているのはひどいわけですから、それに対する是正措置を政府みずからがやらないで、国民健康保険だけを責めるのはおかしいじゃないか、こういう議論が出ているわけです。時間がないから議論できませんが、医療供給面について、全体について改革しなければいけない。そのことは昭和六十五年にやらないといけない。六十五年にやらないと、国民健康保険の時限も切れるということでしょう。  ですから、今私が指摘をいたしましたが、その点について厚生大臣は、老人医療費の負担について、今の制度全体を見直して、そして高齢化社会に対応できるような制度をつくっていくべきではないかという点について所見を聞かせてもらいたい。
  78. 藤本孝雄

    藤本国務大臣 老人医療費の問題につきまして、先ほど御答弁いたしましたように、昭和六十五年に見直しをするわけでございまして、そういう見直しの中で、その負担をどういうふうにしていくかといういろいろな意見があるわけでございまして、そういう御意見も十分に念頭に置きながら、私どもといたしましては見直しをしていかなければならないものと存じております。
  79. 大原亨

    ○大原(亨)委員 政府管掌健康保険の一人当たりの医療費について、その実態と是正の対策について厚生省自体はデータと方針を持っていますか。
  80. 土井豊

    ○土井政府委員 ただいまの点でございますが、お説のとおり、正確なデータというのはございません。各県の支払基金で、その県内の医療機関に払っている医療費を、事業所が県内にある被保険者一人当たりについて見てみますと、一番高いのは奈良県でございまして、昭和六十一年度でございますが二十三万円、それから一番低いのが東京都で十万九千円、その間に約二倍の開きがございます。ただ、御指摘のとおり、これは正確な数字ではございません。例えば東京、大阪等の事業所で勤務している被保険者は、住所地が千葉県であるとかあるいは奈良県であるとか周辺のところに住んでいるというようなことから、必ずしも正確な数字ではないということで、私ども現在これを補正をしまして、より正しい数字を把握したいということで作業中でございます。その作業結果は近く出てくるものでございますけれども、それに基づきまして、新年度、地域的な医療費対策を政管健保についても実施したいという考えでおりますので、よろしくお願い申し上げたいと思います。
  81. 大原亨

    ○大原(亨)委員 この現状における資料を出してください。私のところへ下さいよ、いいですね。――はい、了承。  最近政府が出している中で、非常に関心のある問題が一つあるのですが、組合管掌の健康保険の枠内に異業種間の地域総合保険をつくるというのです。今は同業種間で秋葉原の電機商が地域総合保険組合をつくっている。それで健保運に入っている、連合会に。そういうのがあるのですが、しかし、異業種間の地域総合保険をつくるということになると、政府管掌から抜けて組合管掌の健康保険に行くことになるのです。私どもが議論しているのは、政府管掌をやはり組合方式で運営するために、都道府県とかその下の医療圏とかいうもので地域の総合保険にして、そして連合体をつくっていく、そういうふうにすると、レセプトの点検その他について非常に大きな効果があるのではないか。レセプトの点検というのは支払い基金もやっているのですが、しかし、その関係事業体がやるところに組合管掌の健康保険一つの非常なメリットがあるわけですよ。国民健康保険の中だって、建設国保などは自分のところでレセプト点検をやっているのですよ。そうすると、広島市の国民健康保険の一人当たりの医療費と建設国保の一人当たりの医療費は、国民健康保険でありましても、一人当たり二割違うのです。それは何かといったらレセプトの点検をするわけですよ。そういうことがはね返ってくるようにしているわけです。ドイツやフランスでも、それは非常に大きな議論になって、例えばお医者さんは一回に医薬品を三剤までしか調剤してはいけない、こういうふうに規定したりしておるわけです。いろいろな苦労をしておるわけですよ。レセプトの点検ということは、政府管掌はもうほとんど事業体がやらないんです。これは支払基金がやるだけなんですよ。そうしてもう一歩進めれば、ICカードの問題が今始まりかけて、あるんですが、異業種間の地域健康保険をもって政府管掌の再編成をやったらどうだという考えを私は持っておる。そうすると、皆さん方は飛びつくと思うんだ。一六・四%の政府管掌の国庫負担がなくなるじゃないか。それで大蔵省が喜ぶということになる。そうじゃない。その財政調整は財政調整で、所得の差や年齢の差に従って財政調整するルールを確立しなければいけない。そういうことだ。ですから、そういう問題についてやる場合に、見直しをするというのなら、そういうことを整合性のあるようにやる。そしてそれは租税で負担するのか保険料で負担するのか。財源問題を考えるについて総合的な考え方があって、初めて国民的な討議を得るのではないか。高齢化社会に対応する税制問題の議論も前に進むのではないか。そのことを野党社会党は言っておる。所得税減税については不公平税制の是正、不公平税制ですから。そして高齢化社会の問題については二年、三年かけて、昭和六十五年をめどにいたしまして財源問題と一緒に考えて、そして国民的な討議を進めるべきではないかということを言っておる。社会党の考えや野党の考え方はそういうことです。厚生大臣考え方に最も近いのが私ども考え方ですから、厚生大臣はもっとしゃんとしなきゃいかぬということになるわけです。そういう年金でも医療でもあなたが責任持っているんだから、やってもらいたい。これが最後です。
  82. 藤本孝雄

    藤本国務大臣 三十八年に当選をいたしまして、以来社労委員会におきまして大原先生のいろいろな御質疑を承ってまいりまして、非常に勉強になっております。ただいまの御意見につきましても、非常に貴重な御意見として受けとめさせていただいたわけでございまして、十分勉強してまいりたいと考えております。
  83. 大原亨

    ○大原(亨)委員 以上で終わります。予定時間よりも二分早いですけれども、放免します。
  84. 稲垣実男

    稲垣委員長 この際、暫時休憩いたします。     午後零時五十六分休憩      ────◇─────     午後二時二十一分開議
  85. 稲垣実男

    稲垣委員長 休憩前に引き続き会議を開きます。  この際、内閣提出国民健康保険法の一部を改正する法律案を議題とし、趣旨説明を聴取いたします。藤本厚生大臣。     ─────────────  国民健康保険法の一部を改正する法律案     〔本号末尾に掲載〕     ─────────────
  86. 藤本孝雄

    藤本国務大臣 ただいま議題となりました国民健康保険法の一部を改正する法律案について、その提案の理由及び内容の概要を御説明申し上げます。  国民健康保険制度は、我が国の国民保険体制の基盤となる制度として重要な役割を果たしておりますが、制度を取り巻く社会経済が大きく変化し、人口の高齢化等を背景に医療費が増高する中で、運営上さまざまな問題を抱えるに至っており、その解決を図ることが重大な課題となっております。  そこで、保険料負担能力の低い被保険者の加入割合が高いという問題や医療費の地域差問題等、国民健康保険制度が当面している不安定要因に対して、国、都道府県及び市町村が共同して取り組む仕組みをつくることにより、国民健康保険事業の運営の安定化を図ることを目的として、この法律案を提出した次第であります。  以下、この法律案の主な内容につきまして御説明申し上げます。  第一は、指定市町村における国民健康保険事業の運営の安定化の推進であります。厚生大臣が指定する医療給付費等が著しく多額な市町村は、安定化計画を作成し、国及び都道府県の指導及び援助のもとに、給付費等の適正化等運営の安定化のための措置を講ずることとしております。  この計画の実施状況を踏まえ、指定市町村の給付費等が特別の事情を勘案しても、なお被保険者の年齢構成等をもとに定める基準を超える場合、その基準を超える著しく高い給付費等の一定部分について、国、都道府県、市町村が六分の一ずつ共同で負担するものとしております。  第二は、保険財政基盤の安定化措置であります。市町村の国民健康保険の財政基盤の安定のため、市町村は、保険料負担能力の低い被保険者保険料軽減相当額を基礎として算定した額を一般会計から国民健康保険特別会計に繰り入れることとし、国はその二分の一を、都道府県はその四分の一をそれぞれ負担することとしております。  第三は、高額医療費共同事業の強化、充実であります。高額な医療給付が市町村の国民健康保険の財政に与える影響を緩和するため、国及び都道府県は、国民健康保険団体連合会が行う高額医療費共同事業に対してその費用の一部を補助することができることとし、これにより同事業の強化充実を図ることとしております。  第四は、老人保健医療費拠出金の国庫負担の見直しであります。保険財政基盤の安定化措置等を通じ、国民健康保険の運営の安定化が図られることから、その財政運営への影響に配慮しつつ、特例的に高くなっている老人保健医療費拠出金に係る国庫負担率を調整することとしております。  こうした改正のほか、被保険者資格証明書の交付を受けている場合の療養について社会保険診療の扱いとするなど、その他所要の改正を行うこととしております。  以上申し上げた制度改正のうち、保険財政基盤の安定化措置、高額医療費共同事業に対する補助及び老人保健医療費拠出金に対する国庫負担の見直しの措置は、昭和六十三年度及び昭和六十四年度における措置としております。  最後に施行期日でありますが、本年四月一日から施行することとしております。  以上が、この法律案の提案理由及びその内容の概要であります。  何とぞ慎重に御審議の上、速やかに御可決あらんことをお願い申し上げます。
  87. 稲垣実男

    稲垣委員長 以上で趣旨説明は終わりました。      ────◇─────
  88. 稲垣実男

    稲垣委員長 引き続き厚生関係基本施策に関する件について調査を進めます。  質疑を続行いたします。新井彬之君。
  89. 新井彬之

    ○新井(彬)委員 先日の厚生大臣所信表明をお聞きいたしました。いろいろと書かれているわけでございます。そういう中で本当にどれもこれもみんなやってもらわなければいけない、このように思うわけでございます。特に二十一世紀、間もなくでございますが、二十一世紀に向かいましては当然高齢化社会の到来でございます。今大臣所信表明にも言われておりますけれども、この長寿社会を本当に立派な社会にしなければいけないというようなことが言われているわけでございますが、長寿社会について大臣はどのような姿をお考えになっておるのか、所信表明の中でどういうことを思われてこう言われているのか、初めにちょっと具体的に内容をお聞きしておきたいと思います。
  90. 藤本孝雄

    藤本国務大臣 これから本格的な長寿社会を迎えるわけでございまして、その長寿社会のイメージがまず大事であろうと思うわけでございます。ややもいたしますと、そういう長寿社会になりますと高齢者が非常にふえる、したがって、社会保障の経費が増大する、そういう経費に対して特に働く人たちの負担がふえるわけでございまして、大丈夫かな、こういうお金にまつわる暗いイメージが先行するわけでございますが、私は長寿社会というのは、健康で人生経験豊富、しかも賢明なお年寄りがふえる、そういう社会でございますから、これは家庭にとっても地域社会にとっても、ひいては国にとってもすばらしいことでございまして、明るい社会というのがイメージとしてはまず必要でございまして、お年寄りが肩身の狭い思いをするような社会であってはいけない、かように考えておるわけでございます。  そこで、皆だれもお年寄りになるわけでございますので、そのお一人お一人が自分の老後について安心して生きがいを持てる社会をつくっていくということが望ましいことでございます。そのためには、今日まで人生五十年型社会であったわけでございますけれども、今後老後が長期化するわけでございますので、言ってみれば、人生八十年型の経済社会のシステムをつくって、そういう活力のある社会をつくりながら、その社会の中で生きがいを持って安心して高齢者が生活できるようにしていかなければならぬということを申し上げておるわけでございまして、具体的な指針につきましては、御承知のように、長寿社会対策大綱を六十一年に政府全体としてはまとめておりますし、厚生省といたしましては、同じく高齢者対策企画推進本部報告という形で具体的にまとめておるわけでございまして、その線に沿って努力をしていかなければならないと考えておる次第でございます。
  91. 新井彬之

    ○新井(彬)委員 今大臣言われましたけれども、とにかく高齢者の方々というのは大変な知識もお持ちでございます。そういうことで、健康であって、そして社会に本当にどのようにしたら貢献していただくことができるか、そういうシステムをきちっとつくっていったときには、非常に安定した立派な社会ができるんじゃないか。もちろん経済的に不安定な方もいらっしゃるでしょう。あるいは健康を害する方もいらっしゃいます。そういう方というのは全体のパーセントから見るとやはり少ないわけでございますので、欧米諸国なんかもそうだと思いますが、お年寄りの方を若い方が見るというよりも、お年寄り同士なんかでやっていく方がよっぽど活力があるんじゃないかな。  例えて言いますと、福祉センターなんか行きますと、将棋とか碁をやっておりますけれども、お年寄りの方が元気はつらつ一生懸命に将棋をおやりになっている。何か社会に貢献するようなことがあればすぐに参画できるような態勢にあるわけでございます。あるいはゲートボールにしましても、そこで朝からみんなで楽しんでいらっしゃる。そういうわけでございますので、やはり地域で本当にお年寄りの方を――昔、ちょうど私らの小さいころはよく餓鬼大将がおりまして、勉強もしろよ、よく遊べよということで、案外よく調整をとっていただいたものでございますが、本当にそういう形で、地域でも本当にお年寄りの方が交流をし合って、だれか病気になったらみんなで行く。あるいはその中には非常に食べ物に関してやなんかの本をよく読んでおられまして、こういうものを食べると高血圧になりますよというふうなこととかいろいろ教えて、その人がああそうですかと非常に感銘する。あるいは運動というのはこうなんだ、ラジオ体操を一緒にやろうとか歩こう会で行こうかとかいろいろやっておるわけでございます。そういうことに対していかにみんなで協力し合っていくか、そういうことが非常に大事ではないかなということを思うわけでございます。  そういうことで、ただお金だけかけて何かするというよりも、それも大事ではございますけれども、病人の方を本当に精神的にみんなで支えて激励すると、いろいろなことにおいて半分くらいそういう問題が解決する要素があるのではないか、こいうことを一つ私は感じているわけでございます。そういうことでどうぞよろしくお願いしたいと思います。  それからもう一つ、これは総理に聞かなければいけない問題でございますけれども厚生大臣所信表明をいろいろ言われました。各市長さんとか町長さんは四年間の任期がございます。ところが四年間で一生懸命何か目標を持ってやられるのですけれどもなかなかできない。やはり二期、三期とやって初めてこういうことをしなければいけないと言ったことができるということがあるわけでございます。また来年になりますと、それは決定じゃありませんけれども大臣がおかわりになる。そうすると、せっかく昨年厚生大臣がこういういいことを言っているのに、まあ違ったことを言うわけはないのですけれども、やはりそれだけの仕事というのは、二年か三年あるいは四年くらいやらないと、なかなか今これだけの時代でできるような時代じゃないと私は思っております。  したがって、本来、総理大臣以下内閣は、これだけの問題をこういうぐあいに解決しますという一つのタイトルを掲げた以上は、それだけの任期一緒にやって、そして本当に国家に貢献をしたよというのが本当だなと思うのです。大臣からお答えしにくいと思いますけれども、私はそう思っておりますけれども、そういうことについてはいかがお考えになっているか、お伺いしておきたいと思います。
  92. 藤本孝雄

    藤本国務大臣 前段の老人の方の生きがい、社会参加、またみんなで一緒になってレクリエーションをしてコミュニケーションを広げていく、またその中で生きがいを感じていく、こういう御指摘、私も全くそうだと思っておりまして、そういうことには今後特に力を入れていきたいと思います。  それから、後段の問題でございますけれども、御指摘の点はよく理解できるわけでございます。ただ、御承知のように、政策の継続性、内閣の継続性というものがございまして、私も前大臣、元大臣国会におきましてお約束されたことを忠実に具体化してまいっておるわけでございまして、そいう点では一貫して、そういう方針を決めた以上は、その方針が継続して、しかも実行していけるもの、私はそう確信いたしております。
  93. 新井彬之

    ○新井(彬)委員 次に、血液の問題について若干お伺いしておきたいと思います。  今までずっとエイズの感染者につきましては、いろいろな経過がございました。その中で加熱処理製剤ということが言われたわけでございますが、二月二十七日の新聞で、アメリカでは加熱処理製剤で十八人のエイズ感染者があった、このように報道されておるわけでございます。その後の調査では、事実かどうか、事実だとすれば何が原因なのか。日本の加熱処理製剤の製造万法と、その安全性についてはどのようになっているのか、お聞きしておきたいと思います。
  94. 坂本龍彦

    ○坂本(龍)政府委員 アメリカにおきまして、加熱の凝固因子製剤からエイズの感染者が出たというニュースが伝わったわけでございますが、この新聞報道とこれまでの私ども調査によりますと、米国における防疫センター、CDCという略称で呼ばれておりますが、そこで収集されました報告の中に、加熱の濃縮凝固因子製剤を用いたものからエイズ抗体が陽性になったものが一九八五年二月から一九八七年十月までの間に十八例見られたという結果になっております。この十八例につきましては、現在、我が国で承認をしております加熱製剤の条件よりも短い時間で加熱した製剤を用いたり、あるいは抗体のスクリーニング検査を行わなかったものを原料血漿として用いているということも判明いたしました。またその問題の製剤につきましては、我が国に輸入されていないということも確認をしております。  こういったような状況でございまして、アメリカで感染したという例について見ますと、やはり加熱の度合いが低かった、あるいは原料血漿の際に検査を行わなかった、こういうところに問題があったようでございます。一方、現在我が国におきましては、製品または原料血漿の輸入に当たりましては、すべての血液につきましてエイズの抗体検査を実施して、それが陰性のもののみを使用することを義務づけておりますし、さらに六十度C、十時間といったような液状加熱やあるいは六十度C、七十二時間あるいは六十五度C、九十六時間といったような乾燥加熱したものを承認しておるわけでございまして、現在ではまだ加熱凝固因子製剤によってエイズ抗体が陽性になったという事実は我が国にはないわけでございます。  しかしながら、私どもとしては、いずれにいたしましても、さらに有効な不活化方法の検討を企業に対して指導してきておりまして、現在、企業の側でもいろいろ改良した製品の開発を進めておるところでございます。今後ともできるだけ安全性をより高めてまいりたいと考えておる次第でございます。
  95. 新井彬之

    ○新井(彬)委員 そうしますと、日本に輸入する血液製剤は全部点検もされるし、問題もない。それから日本で製造されている分についても問題はないということが一点でございますね。  それからもう一つは、血液凝固因子製剤は、血友病患者だけではなしに、たくさんのところで使われておると聞いておるのですが、そういうほかの方については、今まで問題があるようなことはないんですか。
  96. 坂本龍彦

    ○坂本(龍)政府委員 血液凝固因子製剤は、やはり血友病の治療に使うというのが主たる目的でございますから、その他の疾患については余り用いられる例はないわけでございます。しかし、血液凝固因子製剤にもいろいろ種類がございますので、その中の特定の種類につきましては、ケースによっては他の疾患に用いられる場合もございます。しかし、いずれにいたしましても、最近の新しい加熱製剤によってエイズの感染が起こったということは、我が国においてはないわけでございます。
  97. 新井彬之

    ○新井(彬)委員 今血友病患者の方というのは日本で約五千人おられるということで、エイズにかかられた方も、本当にお気の毒なことでございますがいらっしゃるわけでございまして、政府としては、別に法律的には問題はなかったのだ、仕方がないのだという答弁でございます。  そこで、昨年、斎藤前厚生大臣も、また本年二月三十三日の予算委員会で竹下総理、また藤本厚生大臣も、政治的な救済ということを考えているということを答弁されているわけでございますが、現在までにどのような検討をされて、いつごろまでにそういう救済措置というものが発表されるのか、お聞きしておきたいと思います。
  98. 坂本龍彦

    ○坂本(龍)政府委員 血液凝固因子製剤によってエイズに感染された方々はまことにお気の毒でございまして、私どもとしても同情すべき点が多々あるという認識を持っているわけでございます。そのために、厚生省におきましては、そういった方々のための対応策を従来から考えてまいっておりまして、既にエイズに感染された方に対する発症予防、治療研究事業、それからいろいろと医療上あるいは生活上の問題についての相談を受ける相談事業、こういったものを実施することにいたしまして、所要の経費は六十三年度予算案に盛り込んでいるところでございます。  なお、そのほかにさらにどのような方策が考えられるかということを現在患者さんの実情なども踏まえつつ、また治療に当たっておられる主治医の御意見なども伺いつつ、いろいろな角度から検討を進めているところでございます。現在の段階では、まだ具体的な内容あるいはその実施の時期等について申し上げられるところまで至っておりませんが、今後できるだけ検討を進めまして結論を出すように努力をいたしたいと考えておる次第でございます。
  99. 新井彬之

    ○新井(彬)委員 もう本当に何とも言いようのないことでございます。そういう状況でございますので、何とか一番いい方法をとっていただきたいということをお願いしておくわけでございます。  これは新聞報道でございますが、「献血六十四万人分宙に浮く」こういうことで、私たちは血液がどうなっているのかなんてことは全然わかりません。わかりませんから、交通事故に遭ったり、あるいはまた手術のときは、お金は少しは要るかもわかりませんが、血液はちゃんとしてもらえるものだ、このように思っているわけでございます。今日赤が一生懸命に献血運動をやって、年間九百万人でございますか、もう世界でもトップクラスの献血が日本では行われている。そういうわけですから、生血については何ら問題はないというぐあいに僕は認識しているわけでございますが、この新聞によりますと、   血友病患者治療に使う濃縮凝固因子製剤をはじめグロブリン、アルブミンなど血しょう製剤は原料血、製品輸入の違いはあれ九六%が米国からの輸入で賄われている。このため血友病患者のエイズウィルス感染が起き、乱用から世界の血しょうの三分の一を消費する事態になっている。海外からは「日本は自国の献血を血しょう製剤に使わず、金にあかせて血を買い集めている」との批判が出ていた。 ということが出ておりますが、日本の血液が不足している分というのは一体どのようになっているわけですか。
  100. 坂本龍彦

    ○坂本(龍)政府委員 我が国の輸血に必要な血液製剤はすべて献血で賄われております。問題は、最近医学技術が非常に進歩いたしましたので、血液製剤に対する需要が急激にふえてまいりました。従来は、いわば全血輸血という、採血した血をそのまま全部輸血するという方法が主流でございましたが、最近では血液の成分ごとに分けまして、それぞれのケースの状況に応じて必要な成分を患者に使っていくという手法が非常に発達してきております。そのうち特に血漿分画製剤と言われております、血液の成分を抽出して凝縮いたしました製剤が非常に多く使われるようになってまいりまして、そのために我が国の献血だけでは不足を来しておるという状況にございます。特に血液凝固因子製剤について見ますと、従来血友病の治療は、病院におきまして輸血あるいは点滴のような形で時間をかけて行っておったわけでございますが、最近では自己注射もできるようになり、患者さんにとっては社会的活動が非常に向上するという大きなメリットもあるということから、需要が非常に増加してまいったというような状況でございます。  実情を申しますと、そういった凝固因子製剤については国内である程度確保しておりますけれども、それはほぼ一〇%程度でございまして、残りの九〇%ぐらいは輸入に頼っているというのが現状でございます。
  101. 新井彬之

    ○新井(彬)委員 この新聞報道によりますと、そういうことで日赤がメーカーに委託をいたしまして、六十四万人分の血液をそういう製剤にしようということでやった。しかし、値段が輸入のものと違って全然合わないので売りようがないのだ。これも二年ぐらいの在庫しか持たなくて、つくるのに一年くらいかかっているので、あと一年ぐらいたつと廃棄処分になるというようなことが言われておるわけでございますが、その値段の方との兼ね合いはどのようになっているのですか。
  102. 坂本龍彦

    ○坂本(龍)政府委員 日本でもできるだけ国内で献血された血液を用いて血液凝固因子製剤をつくっていこうという考え方のもとに、日本赤十字社が民間企業の技術を活用いたしまして製造委託しているわけでございます。その際に、やはり製造委託でございますから、一定の手数料を民間企業に払うことになっておるわけでございます。これについては、日本赤十字社と民間企業との話し合いで委託料が決まったわけでございますが、現実にはその委託料について今後もう少し低いものにできないかという問題は残っておりまして、現在なお将来に向けて協議をしているという段階でございます。  そのようなことで、ただいまのお話にございましたような新しい日本赤十字社の製品については、できるだけ合理的な価格で供給できるように私どももいろいろと考えてまいりたいと存じますし、現在できました製品については、できるだけ多くの医療機関に使っていただくように、これも私どもとして努力をしてまいりたい、こう考えておる次第でございます。
  103. 新井彬之

    ○新井(彬)委員 私が非常に不思議に思いますのは、世界の三分の一を日本が使っている、日本は最高に献血運動が高まっている国であるが、なお血液がこういうわけで不足しているということになれば、僕らの知っている範囲でもまだまだ献血してあげますよという方はたくさんいらっしゃると思うのです。そういうわけですから、あとどのくらいの数が足らないのかわかりませんけれども、そういうことに対して厚生省としてはもっともっとPRをして、私たちがいつ何があっても血液は大丈夫です、安全な血液が使えますよということをひとつきちっとやっていただきたいなと思います。  それから、献血というのは基本的には無料で奉仕していると僕は認識しております。したがって、外国でも売っているところもあるし無料のところもあろうかと思いますけれども、基本的には原料としては条件は同じである。したがって、日本の製薬会社がつくるのと外国の製薬会社がつくるのにそんなに価格の差というのがあるわけないと思うのですけれども、そういう面についてはどうなっていますか。
  104. 坂本龍彦

    ○坂本(龍)政府委員 まず、日本でもできるだけ血液の自給体制を確立すべきであるということは、私どもも同じ考えでございまして、できるだけ今後そのような方向に向けて進むべく、いろいろな努力をいたしております。例えば献血量をふやすために、従来二百ミリリットルの献血を行っておったわけでございますが、これに四百ミリリットルの献血をあわせて実施する、あるいは血液の全部を採血しないで、その中の成分を分けて採血するというような方法も考えております。またいろいろな広報手段を通じて国民に献血の必要性を理解していただくように努めておるわけでございます。  同時に、問題がございますのは、やはり日本での血液の使用量が非常に多い、こういう問題でございます。これは私どもも専門家の御意見を聞きまして、現在の血液の使用の際に、もう少しこれを適正化できないかということをいろいろお聞きしたわけでございますが、やはり少し血液の使用において不適正な使用が見られるということもございましたので、専門家にお伺いをして適正化の基準をつくっております。これによって使用の適正化を図るという、需要面での対策もあわせて行っておるところでございます。  なお、血液製剤の価格の問題でございますが、日本で献血によって製剤をつくる場合に、血液そのものは無料でございますけれども、やはりどうしてもそれに伴う人件費でありますとか物件費、その他いろいろとコストがかかるわけでございます。これが他の国のコストに比べると高いという面があるようでございまして、この辺は、採血の具体的な方法を今後できるだけ合理化することによって、適正なコストに下げていくという努力をする必要があろうかと考えておる次第でございます。
  105. 新井彬之

    ○新井(彬)委員 世界各国がどういうやり方で、そしてどれだけの値段でやっているかは知りませんが、日本でも決してそれはできないことはない。それは血そのものの原価が高ければ別でございますが、献血でございますので、後の製法については日本の技術というのは決してそんなに劣っているわけでもないと思いますし、それから血液をそんなに使うというのは、世界と比べて、医学はどういうぐあいになっているのか私も余りわかりませんが、そういう面で、とにかく輸血する場合は安心して輸血が受けられるということについて、全般にわたってひとつよろしく御検討願いたい。このことをお願いしておきたいと思います。  次に、丁寧な質問をしようと思ったのですけれども、時間がちょっとなくなってきたのでございますが、障害者対策についてお伺いをしたいわけでございます。  総理府に障害者対策推進本部というのがございまして、そこで昭和五十七年に障害者対策に関する長期計画が策定されましてちょうど六年目に入る、こういう状況で、いろいろと一生懸命に頑張ってやっていただいているわけでございます。  きのうも、質問通告をしましたら、厚生省の方は、これは総理府のそこへ聞いてくれ、そこへ聞いたら、今度は運輸省に聞いてくれ。要するに、私本当に残念に思いましたことは、だれに相談したらいいのかというところがなかったということでございます。例えて言いますと、そういうことはたくさんございました。自分の子供が大変悪い。そのために一体この子をどうしたらいいだろう。相談相手がない。そういうときに、二十四時間体制で県政五〇八番制度というのをつくっておりまして、そこへ電話すると状況を聞いてもらえて、あ、それは警察の少年課へ行きなさい、いや、それは学校のどこへ行きなさい、教育委員会へ行きなさい、そういう場所というのを明確に教えていただけるわけでございます。確かに障害者対策というのは、町づくり、都市づくりから始まってあらゆる面にわたるわけでございますから、これはもう各省庁にまたがることは間違いありません。したがって、各省庁がおのおのの分野で、総理府のこの推進本部を中心にしまして打ち合わせをされる、そういうことで進められていることは当然だと思いますが、どこか、そこへ聞けば、その問題はどこへ聞きなさい、この問題はここに言いなさいというような窓口ぐらいはきちっとつくってあげないと、私でもたらい回しされるわけでございますから、まして一人の障害者の弱い方が本当にどこへ聞いたらいいかということはわかりにくいのではないかということをつくづくと感じたわけでございます。  そういうわけで、そういう問題については厚生省でやっていただけるのか、あるいは総理府障害者対策推進本部に聞けば、そこが受けて各省庁に一生懸命言ってくれるのか、その辺のところの仕組みはどのようになっているのか、まずお伺いしておきたいと思います。
  106. 村岡輝三

    村岡説明員 障害者対策の推進につきましては、先生ただいまお話ございましたように、昭和五十七年に障害者対策推進本部をつくりまして、各省、現在におきましては十九省庁でございますけれども事務次官をメンバーといたします、内閣総理大臣を本部長といたします本部を設置をいたして、総合的な推進に努めておるところでございます。私どもも昨年、このよりどころとなりました障害者対策に関する長期計画を見直しまして、後期重点施策を策定したわけでございますけれども、その策定の検討の過程でも、御指摘ございましたように、各省いろいろ関係をしておりますので、長期計画に基づく施策がどのように進んでおるか、どこの省でどのようにやられておるかというようなことも取りまとめておりますので、私どもはそういうことがないようにしなければいかぬと思っておるところでございます。  私ども先生からお聞きいたしましたのがきのうの遅くだったもので、ちょっとそごがあったかとも思いますけれども、もちろん各省庁におきましても、御照会があれば担当のことについては対応をいたすかと思います。私どもに御照会いただいても、どのような省庁でどういうことが行われておるということは、具体的にはあれですけれども、わかるようになっておるわけでございます。
  107. 新井彬之

    ○新井(彬)委員 どうぞそういうことで、厚生省に問い合わせがあるか総理府に問い合わせがあるかわかりませんが、とにかく問い合わせしたところで親切に受けてあげて、そして逆に言えば、そこからこういうことになっていますというような報告がされるぐらいでなければ、障害者の方々と本当に一緒になって、みんな平等でやれるようなことにはならないのじゃないかなと思いますので、どの省に行きましても、ひとつよろしくお願いしたいと思うのです。  この前、障害者の方といろいろと懇談をしたのでございますが、そのときに障害者の方が、車いすとかそういうものでいろいろなところに行きたい、こういうときにどうしても洋式のトイレでなければ行きようがないそうでございます。したがって、官公庁にありましても、あるいは駅でも洋式トイレがちゃんとないと、そこに行くにも行けない、これが実態だそうでございます。  昨日、総理府の方から、後期重点施策というのはこういうのがありますということで、夜もらったものですから、まだ余り細かく読んでおりませんが、一つは、駅のトイレの状況とか、今こういうことになっておりますという報告をいただいたわけでございます。こういう一つの目標について、例えて言うと、日本全国のこういう駅には全部障害者用のトイレを運輸省なら運輸省がつくるというような一つの目標を持って、そして進捗率がどのくらいかというようなことで進められているのかどうか、その辺、ちょっとお伺いしておきたいと思うのです。
  108. 村岡輝三

    村岡説明員 障害者、特に身体の不自由な方々に対しましては、先生おっしゃいましたような、特にそういう方々が社会的な活動を行うあるいは社会に出ていくためには、トイレが必要であるということは非常に大切であるということは言うまでもないことでございますが、私ども取りまとめております長期計画は、この障害者対策全般におきます基本的な方針というものを定めまして、それに基づきまして各省一丸となって障害者対策の推進を図るというものでございまして、特に目標何カ所というようなことは考えておりませんけれども、その推進に努めておるところでございまして、後期重点施策におきましても、こういった面について、例えば公共機関における問題につきましては、公共交通機関におけるターミナル施設あるいは車両等の整備に当たっては、障害者の利用に配慮するというようなことも推進をして、障害者の自立を促進し、社会参加が図れるということを進めてまいるということにしておるところでございます。
  109. 新井彬之

    ○新井(彬)委員 いろいろ質問を通告していましたけれども、もう時間がありませんので、一方的に申し上げますけれども、例えて言いますと、盲人の方にお会いをして、皆さんは何にお困りですかと聞きますと、誘導ブロック、これは道路ですから建設省あたりが今きちっと大分つくっていただいていると思いますが、途中で切れているところがあるそうですね。そういうわけですから、そこからどういうぐあいに行ったらいいのかわからない。なれている道だったらいつも行けるんですけれども、やはり誘導ブロックというものは、ここがあそこまでつながっていますということになれば、もう大変違うそうでございます。ところが切れてしまっている。だから何とかそれをそこまでつないでほしいという要望が各所にございます。それから音声信号機ですね。これは横断歩道を渡るときに盲人の方がその音を聞いて渡るわけでございますが、一つの例を挙げますと、淡路島で、あれだけ長い国道があって音声信号機はたった三カ所です。あそこにおるとわかりますけれども、トラックが終始物すごいスピードでぶんぶん走っている。だから音声信号機をつけてもらわないと渡りようがないのですと、あの広いところで三カ所というのは、そんなことはないでしょうと言ったのですけれども、それもそういうお話でございます。あるいは道の上にふんをよくしているそうでございますね。私たちは見えるわけですから、気がついてちゃんとよけてしまうから余り気にしないのかわかりませんが、やはりふんをよく踏むことがある。あるいは点字図書で、今いろいろ読みたいんですけれども、値段が非常に高くて、値段の違いがある。今川崎市が中心になって、その点字図書に対しては日本全国いろいろなことに貢献されているようでありますが、とにかくそういう私たちにも本が読めるようにしていただきたい、何とか皆と同じような値段にしていただきたい、こんな要望もございます。あるいは放送局なんかで外人がしゃべっています。下に字幕が出るわけですね。それがわからない。こんなのでも日本語で言っていただきたいとか、あるいはぱっと表示が出まして、今映っている、ごらんのとおりでございますと言われても、私たちには全然わからないとか、本当に聞けば聞くほど身にしみて、御不自由を感じているんだなということを思ったわけでございます。  それからもう一つは、今度は聾唖者の関係でございますけれども、聾唖者の方も、今そういう難聴者の方に対する電話があるようでございます。その電話も、兵庫県でずっと見ても、西宮の福祉事務所ぐらいしか気のついたところはついていないということがあるようでございまして、やはり官公庁とか駅とかにはそういう難聴者用の電話をつけていただきたい、あるいはテレビとかそういうものについては、手話通訳も何とかしていただいて、私たちも同じようにテレビが見られるようにしていただきたい、こんな要望がございますが、郵政省、これは一体どうなっておりますか。
  110. 濱田弘二

    ○濱田説明員 先生御指摘の耳の御不自由な方のためにNTTでは福祉的な電話機の開発、提供を行っておるところでございます。  種類といたしましては、先方からかかってきた電話の声を普通の十数倍のボリュームまで上げるとか、あるいは音を上げただけでは非常にお聞き取りにくい方につきましては、頭の骨を使いまして通話が可能になるようにするとか、あるいは先生御案内のことかと思いますが、手や目を使って電話をする機器も開発しておるところでございます。  それからまた、公衆電話につきましても、普通の音声よりも十数倍声が大きくなって聞こえるというものもNTTでは現在配置しておるところでございます。公衆電話の今のようなもの、シルバーホンの公衆型でございます。六十一年度現在で一万四千台ほど配置しておりますが、今後とも利用の実態に配意しつつ、NTTにおいて必要な設置が行われますよう郵政省といたしましても適切に対応してまいりたいと考えておる次第でございます。
  111. 團宏明

    ○團説明員 放送の関係でございますが、六十年末以降に文字放送を導入いたしまして、絵と同時に文字が見られる字幕放送でございますが、これにつきましては、一月末現在でNHKで週に三番組、それから在京の民放テレビ社五社が各週一番組を実施しております。  また、手話の入っております番組につきましては、NHKにおきまして週一番組、それから在京の民放テレビ社におきましては、五社のうち三社が週一番組から四番組を放送しているという現状でございます。
  112. 新井彬之

    ○新井(彬)委員 終わります。
  113. 稲垣実男

  114. 薮仲義彦

    薮仲委員 本日は、我が党の社労部会の先生、そして当委員会委員長初め委員の皆様の御了承をいただきまして、厚生大臣質問をする機会をつくっていただきましたこと、厚く御礼申し上げます。  私は、当選させていただいて以来、亡くなられた園田大臣から歴代の大臣にずっと質問を続けてまいりました。それは歯科の問題に限って五回にわたって歴代の大臣質問してきたわけでございますけれども、本日も大臣に歯科の問題について何点か質問をさせていただきたい。もう一点は劇薬の問題について質問させていただきたいと思うわけでございます。  私が質問したいのは、私はこの質問を通じまして、歯科材料の安全性、そして導入のあり方について再三にわたってずっと質問をしてまいりました。今回保険導入されました、歯科材料の床用材料としてポリサルホンの導入があるわけでございますが、この導入に関連して補綴学会の専門の先生あるいは臨床の先生からいろいろと問題の提起がございました。私は昭和五十六年以来この質問をしてまいりましたけれども、鋳造用ニッケルクロム合金の冠用についても、その導入のあり方についてはいかがなものかということを質問してまいったわけでございますが、厚生省は歯科材料の保険導入についてどう考えておるのか。特に歯科材料というのは口の中に直接入ります。国民の健康と生命にもろにかかわっておることなのでございまして、私は何回かこの導入は慎重かつ安全には細心の注意を払ってほしいということを提言してまいりました。しかし、その点に関して厚生省考え方がもう一つはっきりしないといいますか、国民に対して責任ある行政であるのかなと考えられる節が何点かございますので、きょうはその問題を中心に質問したいわけでございます。  最初に、厚生大臣にお伺いしたいと思いますが、厚生省としての歯科材料を保険に導入する際の基本的な考え方を聞きたいわけでございます。やはり口腔内に入りますと、これは完全なる人工臓器です。総義歯にいたしましても、欠損補綴の鋳造冠にしましても、完全なる人工臓器として人体の一部になるわけでございます。そうしますと、これが直接内臓へかかわってくるわけでございますから、安全性は大丈夫なのか、あるいは口腔内において加工性あるいは人工臓器としての機能性、こういう問題について厚生省は確かな見識を持って導入しているかどうか、大臣にまずお伺いしたいと思います。
  115. 藤本孝雄

    藤本国務大臣 確かに御指摘のように、歯科材料の保険導入につきましては、何よりもその安全性、これが大事でございまして、薬事法に基づいて確認がなされること、また承認が行われるということが大前提であろうと思います。保険診療上の有用性につきましては、専門学会の意見を踏まえまして、中医協で御審議をいただいた上で保険導入を図っていく必要があるものと考えておるわけでございます。今後ともこの方針に沿いまして、慎重に対応してまいりたいと考えております。
  116. 薮仲義彦

    薮仲委員 今大臣の御答弁の中にあったわけでございますが、確認のためにもう一度質問させていただきますけれども、今大臣は専門学会の意見を聴取してとございました。これはもう大臣も御承知のように、我々の口腔内にいわゆる歯科材材を装入するときに、材料の安全性は理工学会が主たる専門学会でございます。またその材質が臨床の先生が加工しやすいかあるいは臨床の先生が通法として、通法というのは、もう術式が決まっておりまして、患者さんに適正な治療行為ができるという術法が決まっていることで、その術法やそのほかの治療行為を歯科の先生に専門的な見地から指導しているのが補綴学会でございます。理工学会と補綴学会、これは非常に大事な学会でありますし、ただ単に学会で専門的に研究したといっても、これは我々一般国民に生かされるわけではございません。必要なのは、臨床の歯科の先生が導入された材料であるとかあるいはその術式、術法について果たして練達し、あるいは知識を十分に持っているかということが国民にとって非常に重要でございます。いわゆる専門学会というお話がございましたけれども、専門学会と臨床の先生の意見については、大臣、どうお考えですか。
  117. 下村健

    下村政府委員 具体的な手続といたしましては、日本歯科医師会を通じて学会の意見を聞く、こういう形をとっておるわけでございます。これは歯学会というのがございますが、これは医科の方も同じような組織になっておりますけれども、日本歯科医師会の中に歯学会がありまして、その歯学会の中で幾つかの専門分科会に分かれる、こういうふうな構成になっております。したがって、歯科医師会を通じまして、そういう専門学術的な見地と、それから臨床医家の集まりとしての歯科医師会の意見も聞く。なお、中医協で審議をする際には、当然歯科診療を代表する委員も含まれておりますので、そういった面からの御意見もいろいろその段階でも出てまいる、こういう形になっております。
  118. 薮仲義彦

    薮仲委員 局長にはきちんと聞きますけれども、一番いけないのは、すぐ日歯を通じてというあなたの言い方なのですよ。歴代の保険局長も私にそうやって答えてきた。私は本当にそうかと思って理工学会の先生に会ってきた。歴代の補綴学会の学会長にお会いして意見を聴取してまいりました。しかし、日歯も保険局もほとんど聞いていない。これは日歯の中で理工学会や補綴学会の専門学会の意見を聞かなかったなんというそんな内部事情ではないのです。我々は患者なんです。大臣患者です。患者が直接かかわる問題に対して、日歯から聞いておりますと言って、我々だって専門学会の学会長に聞けるのです。当時の学会長は三谷さんです。今は津留さんです。局長なら当然知っているし、私だって直接御意見を聞けるのです。日歯を通じてなどとそんなことを言ってないで、国民の生命、健康にかかわる問題だったら専門学会の意見をきちっと聞くのが保険局長立場です。また大臣の姿勢であっていいと私は思うのです。私はずっとこの問題をやっているのですから、細かいことは結構ですから、ニッケルクロム保険導入の経緯を、いわゆる大臣も今承認とおっしゃいましたけれども、薬務局の立場、それから保険導入の日時、保険局の立場、簡単に日時を追ってこうこうこうと言っていただけば結構です。細かいことはわかっていますから、時間がありませんから。
  119. 坂本龍彦

    ○坂本(龍)政府委員 歯科鋳造用ニッケルクロム合金につきまして、薬事法の承認をいたしました経緯について申し上げます。  このような合金が最初に日本で承認されましたのは昭和四十五年の三月二十日でございます。この歯科鋳造用ニッケルクロム合金が承認されました当時は、それ以前に歯科用ニッケルクロム合金線と歯科用ニッケルクロム合金板というものがございまして、既にJIS規格が定められ承認を受けていたものでございます。この新しい歯科鋳造用ニッケルクロム合金につきましては、今申し上げましたJIS規格が定められているものと成分及び組成が類似していると認められたためにこれを承認いたした次第でございます。当時既にそのような歯科材料がございましたので、問題なしという考え方で承認をいたしたものでございます。  なお、今日までこの歯科鋳造用ニッケルクロム合金での有害作用というのは、私どものところには報告は参っておらないわけでございます。しかし、さらに安全性確保のために、例えばベリリウムを検出してはならないという安全基準を盛り込みまして、新たな承認基準を昭和六十年三月三十日付で制定いたしまして、現在はそれによって承認を行っているというのが実情でございます。
  120. 下村健

    下村政府委員 ニッケルクロム合金が薬事法上承認されたのは、ただいまお話に出てまいりましたように、昭和四十五年の三月でございます。以来、実際上保険診療以外の歯科診療では使われてきたということではないかと思いますが、保険に導入いたしましたのは五十八年の三月でございます。この間相当の時間がございますが、実際上の経緯といたしましては、ニッケルクロム合金が薬事法上承認されたけれども、直ちに一般保険診療として導入するには材質の点でいろいろ難しいというふうなこともございまして、相当内容が改善されてきたということで五十八年の二月に歯科材料価格基準に収載した、こういう経緯になっております。保険導入に当たりましては、歯科医師会を通じて補綴学会、歯科理工学会等の関係者の意見を聴取したというふうに聞いております。
  121. 薮仲義彦

    薮仲委員 厚生省は、今の薬務局長の御答弁にもございましたけれども、六十年に初めてニッケルクロムの承認基準を決めたわけでございます。ニッケルクロム鋳造用の冠は承認の品物でございます。JIS規格に合っておるのは、昭和三十一年あるいは四十五年当時はそうであったのです。しかし、保険局長よく聞いておいてくださいよ。そのときニッケルクロムを初めて薬務局が承認したのは、いわゆるニッケルクロム、軟質なんですね。三金工業、サンコリウムというニッケルクロムを初めて承認したのでございますけれども、当時のニッケルクロムは、六十年に承認基準が決まるまで、ニッケルの含有量は三〇%から多いのは九〇%まであるのです。きょうは時間がありませんから申し上げませんけれども、それほどばらつきがひどくて、これを即そのまま使うようなわけにはいかなかったわけでございます。このことを指摘しまして、厚生省薬務局は五十五年に「医療用具の製造又は輸入の承認申請に際し添付すべき資料について」という薬務局長通達を都道府県知事に出されたわけです。これは一体どういう趣旨で出されたのか。これが一つ。  それからもう一点は、五十五年以前は今保険局長も言いましたけれどもJISです。これは工業標準化法によって決められているのです。これは製造する工場、人的マンパワー、あるいは設備というのが整って一定の品物さえできればいいということであって、安全性について、毒性であるとか催奇性、変性毒性とかそういうことについては必ずしもきちんとした、安定した材料を承認したことにはなっていないのです。今の点、薬務局長ちょっとお伺いしたいのです。五十五年の通達趣旨と、以前と以後の材料についての考え方を、要点だけ簡潔にお答えください。
  122. 坂本龍彦

    ○坂本(龍)政府委員 最初に昭和五十五年六月三十日付の通知でございますが、医薬品、医療用具の安全性を確保するために昭和五十四年に薬事法改正がございました。この薬事法改正の施行に際してこの通知が出されたわけでございます。その内容といたしましては、医療用具の承認申請に際して提出すべき資料の範囲を明らかにいたしまして、これによって厳格な承認審査を行い、医療用具の安全性、有効性の一層の確保を図ろうといたしたものでございます。例えば申請に際し添付すべき資料といたしまして、「起源又は発見の経緯及び外国における使用状況等に関する資料」でございますとか「物理的、化学的性質並びに規格及び試験方法等に関する資料」「安定性に関する資料」、その他数項目にわたりまして資料の提出を要求することにいたしたわけでございます。  それから、従来の審査につきましては、最初にも申し上げましたように、JIS規格というものを一つの基準にしていた時代があったことは事実でございます。このJIS規格につきましては、当時としてはこういった金属等の製品についての一つのよりどころと申しますか、そういったものについての成分、組成、形状といったところで、やはり一つのスタンダードなものという認識があったために、これによって実際に使用するに適しているであろうという判断をいたしたものであろうと考ええておるわけでございます。
  123. 薮仲義彦

    薮仲委員 もう少し簡潔に要点だけお答えいただきたいですね。もう時間がないですから、次に進みます。  保険局長、今御答弁の中で、大臣の中にもあったのですが、専門的になりますから局長で結構ですけれども保険局としては、鋳造用ニッケルクロム合金に対して補綴学会は賛成であった、学会の意見も聴取してよかろうということであったということでございますが、今でも同じ認識ですか。
  124. 下村健

    下村政府委員 その当時の意見は、保険導入に反対するものではないという意見であったというふうに聞いているわけでございます。その後私どもの方では公式にこういうニッケルクロム合金について意見を変えたというふうな話は聞いておりませんので、私どもとしてはまだそのままその意見を受けとめているところでございます。
  125. 薮仲義彦

    薮仲委員 それでは、その辺の経緯をちょっと。  これは保険局長御存じですね、補綴学会の専門雑誌です。これは大臣も御承知と思いますが、日本補綴歯科学会のきちんとした専門雑誌でございます。この中で、クラウン・ブリッジ用材料に対する考え方でございますけれども、この中にニッケルクロム合金の問題について書いてございます。ここをちょっと読みますと、「昭和五十七年十二月末、全く突然にニッケル・クロム合金を鋳造歯冠修復用材料として保険診療に採用することが中央社会保険医療協議会において決定された、後に述べるごとく、鋳造修復用合金としては種々問題が指摘されていた金属であるだけに、高度に専門的な判断を要するニッケル・クロム合金の採用については、専門学会である補綴学会に事前に諮問があって然るべきであると考えるが、実際には中医協での決定の直前に保険導入に同意して欲しい旨の電話が日本歯科医師会から学会長宛にあったとのことである。しかも即答を求められるという慌しさであったので、三谷学会長は取敢えず常務理事の範囲内で意見をとりまとめ、」ここからが大事ですよ、「ニッケル・クロム合金の保険採用には同意できない」とはっきり言っているのですよ。これは専門誌の公表された資料です。あなたのおっしゃっているような根拠のない話は全く当を得ないと思うのです。  しかも、明けて昭和五十八年一月二十一日の常務理事会において三谷学会長から報告が行われ、この事態を非常に重要視して常務理事会として学会見解を表明した。「ニッケル・クロム合金の保険導入について学会の意見は、適合性、硬さ、生体反応、高温鋳造、口腔内操作性、その他の問題があるので、なお検討を要する。したがって金銀パラジウム合金に準ずるものとしての保険導入の時期に至っていない」こういう判断をきちっと補綴学会が出しているのですよ。これを保険局長は御存じないのですか。知っているか知らないか、簡単に答えてください。
  126. 下村健

    下村政府委員 その当時の経過は私ども必ずしもつまびらかではございませんが、当然歯科医師会等に事実は確認してあるというふうに考えております。したがって、そういうふうなことが学会の公式見解ということであれば、さきの意見を撤回するなり変えるというふうな話が私どもに参ってしかるべきではないかと思っております。
  127. 薮仲義彦

    薮仲委員 では局長、確認しておきますけれども、学会としてニッケルクロムは使うべきでないという公式見解が出たらば、厚生省は変えるのですね。
  128. 下村健

    下村政府委員 私どもとしては、診療報酬に現在取り入れている話でございますので、学会の意見がありましたら、その学会の意見を踏まえて中医協で審議をお願いするという手順を踏むことになると思います。
  129. 薮仲義彦

    薮仲委員 では、厚生省の今の考えをちょっとお伺いしたいのですが、厚生省は今の時点でもニッケルクロム合金というものは金銀パラジウム合金に準ずると考えているのですか。ここには当時の読売新聞もあるのですよ。五十七年の十二月二十日、これはニッケルクロムの不正事件のときです。このときにばたばたと保険に導入されて、世間を騒がせたのです。この記事の中に、天下の読売さんの記事をそのとおり読みますが、このとき大分の歯科医師会長、この方は日歯の専務理事ですけれども、毛利さんはこう言っているのですよ。これについても見解をちょっと聞きたいのです。「ニッケルクロムは金銀パラジウムに劣らず、」これは「劣らず」になっているのですよ。「あるいはより優れた性質を持った材料。そのニッケルクロムで治療した以上、医療の質は保たれていると考えている」これは日歯の専務理事の意見なんです。今の厚生省のお考え、金銀パラジウムに準ずる材料とニッケルクロムを考えておられるのか、率直に答えてください。
  130. 下村健

    下村政府委員 ニッケルクロム合金と金銀パラジウムというのは、これは物が違うわけですから、加工性でありますとか、使用した面で差が出てくるということは当然あると思います。しかし、当時の認識としては、また今も私どもとしてはそのように考えているわけでございますが、ニッケルクロム合金は保険診療の上で使って十分実用にたえるものだ、こういうふうに考えております。
  131. 薮仲義彦

    薮仲委員 そこで、学会と言いますから、学会長の意見を権威のためにお話ししておきます。時間がないから結論だけ申し上げますと、薬務局がニッケルクロムの基準化について理工学会と補綴学会に意見を求めたのです。当時の歯科理工学会の会長は山根先生です。補綴歯科学会は平沼先生です。文章を読んでみます。これは薬務局に来ているのですから、知らないはずはないと思いますよ、隣の局なんですから。「全部鋳造冠としてのニッケルクロム合金は適合性、硬さ、生体反応、口腔内操作性などの点で、未だ適切な組成のものはみられないので、臨床応用の段階に至っていない。」これは五十九年一月三十一日、日本補綴歯科学会会長平沼謙二先生の厚生省薬務局審査課長あてのきちんとした公式の答弁ですよ。この中でも、ニッケルクロムは臨床応用の段階には至っておらぬ。「専門学会において金属学的および生物学的にみた前臨床試験によってまず基礎的な安全基準を設定すべきである。」こうやって、学会ではきちんと薬務局に来ているじゃないですか。  しかも、これも保険局長、よく聞いておいてください。これはあなたが中医協へ保険導入をやったときに日歯がどういう会員指導書を出したか読みますから。なぜこんな指導書を出したのですか。会員指導書の全文ですからね。「歯科用鋳造用ニッケルクロム合金として薬務局に認可を受け、市販されている商品全部が対象となっているが、規格が全く定められていないため、現状では、口くう内での安全性を得るようなクロム量を含有しているものを使用すべきである。」一番ですよ。二番が、「どの商品を選ぶかは、会員の判断するところであるが、」お医者さん一人一人が勝手に判断しなさいと言うのですよ、基準がないから。「操作性に問題があるので製作行程の各ステップをより正確に能書の指示どうりに行うよう心がけなければならない。」三番目に、「完成した製作物は、この合金の持つ物性の為、歯牙の高径、」高さの調整です。「接触点の回復が非常に困難であるので、装着時の調整にあたり十分な配慮が必要である。」さらに四番目には、「鋳造、研磨、調整にあたり、粉塵による人体への影響が有るので十分注意すべきである。」これは薬務局がその後ベリリウムの検出についてゼロでなければならないと言っておるのです。  なぜこんな――保険局長はいい材料があったとおっしゃるなら、そのときの商品名を一つ言ってください。このニッケルクロムというのはみんな融点が高いのです。千三百度前後なんです。厚生省の薬務局の方は千度前後のものがあると言ったけれども、そんなものは当時で一つしかなかったはずです。私は全部調べてみた。あなたはその商品名を何とおっしゃるのか。そしてなぜ日歯がみずから導入しておいてこんな会員指導書を出すのですか。こんな悪い材料。こんな物性が固くて、高径の調整ができない、粉じんに注意しなさい、こんな危ないものを人間の健康にかかわる厚生省保険局が承認したのですか。この見解、きちっとお答えください。
  132. 下村健

    下村政府委員 保険局といたしましては、歯科材料として薬事法上の承認が得られているということで安全性については一応大丈夫、こういう判断をしたわけでございます。商品名については、私ども特定の商品を対象にして指定したということでございませんので、その当時どの商品がどうだというふうな個別の商品についての判定をしたということはございませんので、これは私も特に商品名を挙げてどうこうということは申し上げることはできません。  それから、後の硬度でありますとか安全性についていろいろ出ている問題につきましては、そのニッケルクロムを導入したときに、会員の中でいろいろそういう点について危惧の念が表明されたということがあったのではないかと覚えております。したがって、会員の間でいろいろそれについての疑問が提出されたので、それについて答えるという形で日歯はそういうふうな指導通知を出した、たしかそのような経緯であったと記憶いたしております。
  133. 薮仲義彦

    薮仲委員 薬務局長、あなたはしっかり答えなさい。私への答弁にあなたはさっき正確じゃないけれども、もっとずばっと言いなさい。  五十五年以前は、JIS規格だけで安全性については入っていないのですよ。標準化法だけですよ。五十五年に初めて安全性の添付資料をつけなさいと言ったのです、あなたのところで。このニッケルクロムの基準が決まったのは六十年三月ですよ。今保険局長は薬事法と言ったけれども、薬事法上の承認はないはずなんだ。中央薬事審議会の議を経ていませんよ、三十一年も四十五年も。四十五年のものは、ただ三十一年の板と線ということだけで、薬事法の審査を受けていないのですよ。きちんとお答えください。時間がないから結論だけでいい、もうわかっているのだから。
  134. 坂本龍彦

    ○坂本(龍)政府委員 当時JIS規格が定められておりましたので、この歯科用ニッケルクロム合金線及び歯科用ニッケルクロム合金板とその成分及び組成が類似しているという観点に立って承認をしたわけでございます。したがいまして、当時といたしましては、このJIS規格に基づいて、現実にそれまで使用されていたものと同じものという判断をしたわけでございます。
  135. 薮仲義彦

    薮仲委員 薬務局長、今度もう少しその辺の経緯を改めてきちんとあなたと懇談しましょう。時間がないから、きょうは大事な話をちょっとしますけれども、これはやはり補綴学会の雑誌にこういうことが載っているのです。  「”歯科用金属の規格並びに銅合金に関する見解”の公表にあたって」――これはどういうために書かれたかというと、前の補綴学会の会長の平沼謙二先生がこの前文に書かれておるのです。ここでは、「本報告書は昭和四十年五月三十日に日本補綴歯科学会歯科用金属規格委員会が提出した報告書案を一部修正し、報告書とした」。これはなぜやったかというと、ニッケルクロムを導入したときに、これを学会として出したのです。その趣旨が書いてあるのです。この本は、「各種歯科用合金の適否について検討し、歯科医療向上に対しての学会の立場を明らかにし、世に問う」という趣旨なんです。それで、「学会の歩みの中で、本報告書は貴重な業績であり、歴史的にも重要なものであると考えている。新しい歯科用合金の出現とその利用についてはその時々に補綴臨床を混乱させてきたが、この特集号”補綴用材料”と本報告書は学会としての姿勢、あり方に対する指針として多くの事項が述べられているものと考える。また、学会としてはこの態度を引続き尊重していくべきものと確信している。」この中に、歯科用材料の安全性についてすべてワークショップをおやりになって、一つずつ検討されているのです。時間がないからニッケルクロムのところだけ私が抜粋して読みます。  「ニッケル・クロム合金」について「金属冠の場合には帯環に対する加工性が劣るため不適合金属冠の原因となり易く、我国補綴臨床の大きな欠陥となったことは周知の事実である。したがってニッケル・クロム合金の」ここですよ。「冠用としての使用は当然中止されるべきである。」この考えは今でも変わってない、補綴の御専門の先生がはっきり私に申しておりますよ。しかも「帯環材料として加工性の劣った」――「加工性の劣った」ですよ。「ニッケル・クロム合金の使用は望ましくないことは明らかで、少なくとも金・銀・パラジウム合金以上を使用すべきである。」金、銀、パラジウム以上を使いなさい。これは国民のために私は使ってほしい。後で時間があればやりたかったのですけれども、全くこの導入はなってないのですよ。「以上により本委員会はニッケル・クロム合金冠が金・銀・パラジウム合金以上の材料による鋳造冠によっておきかえられるように切望する。」  学会の意見はきちんとここに表明されているのじゃないですか。あなたがこれを読んでいないと言ったら不勉強過ぎますよ。私はそこにいらっしゃる佐治さんなどの歯科の勉強をした博士でもなければ専門家でもない。しかし、一人の国民としてまじめに歯科材料の安全性を考え、国民の健康を考えたら、このニッケルクロムに対するまじめな専門の先生、臨床の先生の意見をあなたが知らんぷりをしているということは、ある意味では国民に対して全く無責任であり、薬務局長だってこれは許されないことだと私は思うのです。本当にこの専門の先生の意見を一回読んでいただきたい。私は専門家じゃないけれども、専門の先生のところにも行ってきた。皆さんの意見は本当にまじめだった。  さらに、もう一つあるのです。これも読んでおきたい。ニッケルクロムの毒性について毒性学の専門の佐藤温重先生、私はお会いしました。東京医科歯科の佐藤温重先生、厚生省のいろいろな規格の検討委員会に入っていらっしゃる。でも、この先生がニッケルクロムについて何とおっしゃっているか。これを読みます。「変異原性」――変異原性というのは発がん性です。「ニッケル・クロム合金の成分金属のうち動物実験で発癌性が証明されている金属は、ベリリウム、コバルト、クロム、銅、マンガン、モリブデン、ニッケル、亜鉛などであり、また疫学的にヒトでの発癌性が明らかになっているものに、ベリリウム、ニッケル、クロムなどがある。これらの金属は、細胞の腫瘍化を開始する作用と、腫瘍を増強化する作用とがある。」これは「ニッケル、クロム」ですよ。しかも、この先生は、さらに最後にニッケルクロムの結びで「溶出金属量は微量であり」、これは規格もそうなっている。「体内に吸収される金属量は少ないので、ニッケル・クロム合金は安全であるという考えがある。」ここから大事なんです。「しかし、毒性は濃度の関数であるばかりでなく時間の関数であり、ニッケル・クロム合金の慢性毒性試験を実施し、微量長期摂取の安全性を確認した上で結論を導くべきである。ニッケル・クロム合金のみならず、歯科材料は前臨床試験により安全性が保証されたものについて、小規模の臨床試験を行い、既存の歯科材料と比較し優れた材料を選別し、一般臨床に使用することが、医の倫理からして必要であろう。既存の補綴材料と比較しニッケル・クロム合金は安全性の優れた材料とはいえない。」毒性の専門家の佐藤温重先生もこうおっしゃっておるのです。これを保険局長が知らないと言うのだったら、余りにも無責任であり不勉強である。私は学会の先生の名誉のためにきょうははっきりしておきますけれども、これだけ言われても、まだニッケルクロムがすぐれていると――私はきょうも電話で確認しました。補綴学会はこの考えは今でも変わっておりません。保険局長の御答弁を求めます。
  136. 下村健

    下村政府委員 私どもとしては、薬務局で承認された歯科材料のうちで、歯科については保険診療の上ではいろいろな制約がございますので、薬務局で承認された歯科材料について保険診療の上で十分実用にたえるものという材料については、これは大体においてすべて保険の方で収載をしていく。これが基本方針でございます。あと実際にどういう材料を使うかというのは、これは歯医者さんの選択という問題になってまいります。  問題のニッケルクロムにつきましては、導入に際して、私どもとしては学会の意見を歯科医師会を通じて聞いた。これも間違いのない事実でございます。そういう手続を踏んで歯科材料の収載をやっておるということは、これは学会の方も十分御承知のことでございまして、それだけ自信を持ってニッケルクロムを使うべきでない、あるいは使わせることが適当でないと言うならば、当然そういうルールがあるわけですから、歯科医師会を通じて厚生省に前の意見が間違っていた、あるいは手違いがあったとしかるべき訂正をされるのが筋道ではないか。私どもは残念ながらまだそういう手続を踏んでの御意見を承っておりませんので、歯科の問題を議論する際に改めてその点については確認をしてみたいと思いますが、学会の方でそれだけの自信を持ってこう言っておられるということであれば、しかるべき手続を踏んでルールどおりにやっていただきたいということをお願いいたしたいと思います。
  137. 薮仲義彦

    薮仲委員 あなたはそうおっしゃっておるから、では今の手続どおりにやりましょう。  きょうはできなかったのですけれども、ポリサルホンの導入もおかしいのです。エーテルサルホンの導入もおかしいのです。薬務局長、今度は腹を据えてお答えをいただきたいけれども、このポリサルホンとポリエーテルサルホン、これも補綴学会の先生の御意見は、金属床にかわり得ないときちんと学会の方針を出していらっしゃるのです。それをあなたが知らないはずはないと思うのです。  ほかの問題に入ります。  薬務局長、あなたもう少し勉強してもらわないと困るから、きょうは穏やかにやろうと思ったけれども、私は薬務局長にちょっと言いたいことがあるのですよ。最近睡眠剤のメタカロンが大分社会問題になりましたね。ああいう睡眠剤、特に劇薬、毒薬、そういうものについての取り扱いは非常に重要だと思うのです。私は、薬というものは、当然効くということは逆に反作用があって、副作用があって、これは効くけれども反作用もあるよ、こういう点があろうかと思うのです。しかし、やはり人間の生命の上から、厚生省は劇薬とか毒薬の取り扱いというのは、それなりにきちんとしていらっしゃると思うのです。毒薬、劇薬の取り扱いについて薬務局はどういう取り扱いをしておるか、ちょっとお答えください。
  138. 坂本龍彦

    ○坂本(龍)政府委員 毒薬、劇薬は薬事法におきまして販売面でのいろいろな規制をいたしております。例えば薬局の開設者におきましては、購入者の氏名、住所、使用の目的、職業等を記載して署名または記名押印のある文書の交付を受けた上で販売しなければならないというような規制も行っておりますし、十四歳未満の者、その他安全な取り扱いをすることについて不安があると認められる者には販売しないことになっておる、こういうような販売上の規制をいたしまして安全を期している次第でございます。
  139. 薮仲義彦

    薮仲委員 では、一つ伺いますけれども、ブロムワレリル尿素は劇薬だと思うのですが、この取り扱いは今の取り扱いの範疇に入るのですね。入るか入らないか、すぱっと言ってください、あなたは専門家でしょう。
  140. 坂本龍彦

    ○坂本(龍)政府委員 今先生がおっしゃったことちょっとよく聞き取れなかったのですが……(薮仲委員「ブロムワレリル尿素」と呼ぶ)私も余り専門的な言葉になれておりませんので、失礼をいたしました。  実は、これを含んだ製剤については、劇薬になつているものとなっていないものとございます。これは薬の効能に着目いたしまして、乱用されやすいような効能になっておるものについては劇薬に指定をいたしました。効能によって使用の形態が違いますので、こういう区分がなされているというのが現状でございます。
  141. 薮仲義彦

    薮仲委員 我が党の社労の部会長は薬剤師の先生ですから専門なんですけれども大臣、ちょっとこれをごらんください。これはブロバリンです。今言ったブロムワレリル尿素は劇薬の指定になっているのですね。私薬屋でこれを下さいと言ったら、私の氏名、住所、全部調べたのです。この中の効能書きをちょっと出してみますと、これはさっき薬務局長には教えておいたのですが、大臣、ちょっとごらんいただきたいのです。やはりこれは気をつけなければいけないと思うのです。というのは、こう書いてあるのですよ、ブロバリンには。「本剤は一錠中に日本薬局方ブロムワレリル尿素百ミリグラムを含有する。」一錠中百ミリグラムでも劇薬になっているのです。これは薬屋さんに行くと簡単には買えないわけです。劇薬、指定薬、習慣性があります、こうなっているのです。これはどういうことかといいますと、ちゃんとお医者さんに聞いて使いなさいよ、薬局でもお医者さんの処方せんによってしか出しませんよというのです。ところが、これはリスロンSという薬なんですが、これの効能書きを開きますと、ブロムワレリル尿素三錠中三百ミリグラム、ということは一錠中百ミリグラム。同じ効能で買えるのです。これは今衆議院の薬局へ行って、これ下さいと言えば、はいっと黙ってくれるわけです。片や劇薬であり、片や普通薬です。何にもしなくて買えるのです。こういうことは国民にとって非常によくない。しかもこっちには習慣性があると載っている。しかも酒を飲んで飲んではいけませんよとかいろいろ注意がある。これも僕は薬剤師の方に聞いたのですが、これはたくさん飲んだらどうなるの、これは飲まないでください、やはり危険ですよ、劇薬ですから極量もあるし致死量もある、こういう点の注意があったのです。私は国民の生命の安全のためにも、片や劇薬、片や普通薬で売られるようなことがあっては問題だと思うのです。  もう時間が来ましたから、最後に大臣に御答弁いただきますけれども、先ほど私はニッケルクロム合金の問題を指摘いたしました。局長は手続を踏んでくればニッケルクロムあるいはポリサルホン、ポリエーテルサルホンについても検討するとおっしゃった。これは非常に重要な御発言だと私は思っているわけでありますが、大臣に私の指摘したニッケルクロムについて政治家として御判断いただきたい。私は患者立場からこれは何とか改めてほしいと願っております。その立場で、こういう劇薬の取り扱いや歯科材料の安全について、もう一段と取り組みをしっかりしていただきたいと思いますが、最後に大臣の御答弁を聞いて終わりたいと思います。
  142. 藤本孝雄

    藤本国務大臣 最初に申し上げましたように、安全性を確保するということは、まず何よりも重要なことでございまして、その点は十分に配慮してまいらなければならないと考えております。いろいろ局長から御答弁をいたしたわけでございますが、私も専門家ではございませんので、率直に申し上げましてよくわかりませんので、よく調べてみたいと思います。  手続手順の点につきましては、今まで、そういう学会内部のことでございますから、日本歯科医師会を窓口にしていろいろと連絡をとっておったわけでございますが、しかし、その内部の意見と日本歯科医師会の厚生省に対する報告が必ずしも一致しないというような御指摘でございますので、その点については十分に調べてみたいと思います。  それから、リスロンSの問題につきましては、私はやはり使用形態、つまり連用性があるかどうかということも一つの問題だと思います。ですから、そういう使用実態を踏まえまして、必要であればそういうことも検討してまいらなければならない、かように考えております。
  143. 薮仲義彦

    薮仲委員 終わります。
  144. 稲垣実男

    稲垣委員長 沼川洋一君。
  145. 沼川洋一

    ○沼川委員 メラミン食器の安全性についてお伺いします。  文部省から見えていますか。――学校給食で使用されておるこのメラミン食器ですけれども、発がん性のあるホルムアルデヒドを溶出するということから、東京、岐阜、それから福岡などで特に父母の間から猛烈な反対運動が起こっておりまして、ある学校に至っては、食器持参の児童生徒、先生が続出する、こういうことでマスコミでも大々的に取り上げられまして、全国的に波紋を呼んだわけでございます。現在でもなお学校現場では、この問題のトラブルがあるやに聞いておりますが、文部省として、こういう実態についてどのように把握していらっしゃるのか、またこの大きな問題となった原因が一体どこにあるのか、さらにどういう指導をされるのか、まずお伺いしたいと思います。     〔委員長退席、野呂委員長代理着席〕
  146. 石川正暉

    石川説明員 お答えいたします。  文部省におきましては、学校給食、食事は器であるということで、食器具の改善ということをこの間進めてきておるわけでありますが、現実にどのような食器具を使うかというのは、各市町村の御選択にゆだねているという経緯がございまして、そういうことで相当数の市町村におきましては、アルミ等の食器からメラミンへの改善ということが行われている現状でございます。  そういう中で、先生御指摘のように、東京とか福岡とか三、四の市町村におきまして、メラミン食器への改善ということについて御指摘のような点から反対運動が起きておるという事実を承知しております。  なお、学校給食を実施している市町村というのは、全国で三千二百市町村ほどございますので、我々が承知していないところでも、さっき先生が御指摘されたような父母の不安というようなことから、メラミン食器への切りかえをためらっているとかいうようなところは、なお相当数あるのではないかというふうに承知している次第でございます。  どうしてこういうことになるのかということでございますが、食器が陶器とか漆器ということであれば、使いなれているものですから、お父さん方、お母さん方から見て何も不安がないわけでございましょうが、メラミン樹脂というようなことを聞きますと、これが一体何でできているかよくわからない、そういった一般的な不安というものがあろうかと思うわけであります。特に御指摘のように、メラミン食器の場合には、そこからホルムアルデヒドが溶出するというようなことを言われますと大変不安になる、こういった点について現場の市町村において的確かつ迅速な対応、要するにお母さん方が不安であるというようなときに、直ちにそういったものを解消するというような点での的確さ、迅速さというような点について問題があったのではないかというふうに感じておる次第でございます。  私どもといたしましては、メラミン食器と申しますのは、厚生省が定めております安全基準に十分適合しており、かつ、私どもが日常、学校給食でもそうですが、摂取している食品、例えばトマトであるとかタマネギであるとか、こういったものの中に含まれているホルムアルデヒドの量と比べてもごく少ないものであるし、また現実に学校給食以外でも病院給食等広く使われている食器であるということで、この使用上安全性について問題がないということについては都道府県教育委員会を通じて指導しているところでございますが、今後ともその的確、迅速な対応というものが学校現場でできますように、厚生省等とも連絡をとりながら、指導の強化ということに努めていきたいというふうに考えておる次第でございます。
  147. 沼川洋一

    ○沼川委員 厚生省はこの問題についてどう考えていらっしゃるのか、さらにメラミン食器についてどのような規制を行っていらっしゃるのか、お伺いしたいと思います。
  148. 古川武温

    ○古川政府委員 まず、メラミン樹脂は食器として非常に使いやすいということから、我が国だけでなく、世界的にも大変大きな数が使用されているものであります。食品用のプラスチック容器、包装等につきましては、食品衛生の観点から、規格基準を定めて、基準を超えるものがあれば、これを規制するということで安全性の確保を図っております。  御指摘の食品用メラミン樹脂についても幾つかの検査方法、一つは材質試験あるいは溶出試験、こうしたものを細かく決めておりまして、ホルムアルデヒドにつきましても、溶出試験を厳しく決め、規格基準に適合したものしかこれを流通させない、こういう措置をとっております。
  149. 沼川洋一

    ○沼川委員 厚生省の規制についてでございますけれども、非常に規制の内容が甘い上、検査方法が古い、こういう批判がございますが、一体どうなっていますか。  さらに、これはある新聞に載った新聞記事でございます。「メラミン食器の安全性厚生省、検査法不備認める」こういう大きな見出しで出ております。中をちょっと読みますと、要するに反対する「市民団体側が、現行のホルムアルデヒドの公定検査法は二十年以上も前のもので、検査技術や機器の進歩の結果、現在ではより高感度の検査法があることを指摘すると、厚生省は「見直し作業を進めている」と発言。」「現行の検査に不備な点があることを認めた。」こう書いてあるわけですが、これは事実ですか。また見直し作業をやるわけでございますか。
  150. 古川武温

    ○古川政府委員 ただいまの事実ですかということに関しましては、西日本の新聞にそういう記事が出たのは事実でございます。  ただ、この点については説明する者、受け取る側のいろいろな誤解等があったように思います。メラミン樹脂につきましての基準について、二十年前に決めたものではないか、こういうふうなことでございますが、確かに検査法につきましては四十一年に決めたものではございますが、この方法は世界的にも認められ、イギリスでも西ドイツでも我が国と同様な方法、名前はアセチルアセトン法と申しますが、これはどこでもそういう方法でやっております。  御指摘の点は、別の方法をとっておりますが、これはその注釈では、気体のものを検査する、こういうふうな場合に使う検査方法だという注釈もあるわけで、食品におけるこうした検査は世界的にもただいま御説明したような方法でやるように定められております。そこでこういうふうな方法でしっかりと決められたものであり、その範囲内であれば全く心配がないということは、これは各学会でも共通な意見になっております。
  151. 沼川洋一

    ○沼川委員 そこでお尋ねしたい。私の一番言いたい問題なんでございますけれども、非常に検査も厳格に行って、きちっとした基準を定めていらっしゃるわけです。厚生省の基準ですと、四ppm以下ならば安全である、こういうことになっておるわけです。こういうことも非常に大事なんですけれども、先ほどもちょっと文部省の方から御答弁いただいて、どうしてこんな問題が起こったのかという質問の中で、文部省の問題が起こった後の的確さ、迅速さ、処理の対応のまずさというのをどうも私感ずるわけです。そういうのがないために何か無用の混乱を巻き起こしている。これはかつてエイズが問題になったときがまさにそうでした。どんどん波紋が広がってパニック状態になっていく、そういうときに行政がきちっとした的確な対応をする、どうもこういう問題に厚生省としては欠けているんじゃないか、率直にそのように思います。  特に、反対の声を幾つか拾ってみますと、例えばホルムアルデヒドは発がん性物質だから絶対だめだ。またたとえ基準以下でも毒は毒、こういう反対の声があるわけです。ホルムアルデヒドは御承知のように自然界の中にもたくさん含まれています。例えば日常生活で我々が口にする魚類とかあるいは野菜にも含まれていますし、またキノコなんかにも多量含まれております。そうなってきますと、この論法でいけば、すべてだめ、こういうことになるわけです。例えばビタミンAなんかにしたってそうです。薬として使っていますけれども、多量に飲めば、これは発がん性があります。こういう点を考えてみますと、何か発がん性だからだめだあるいは基準以上でも毒は毒、こういう声がどんどん広がっていく。それに対して何か対応がなまぬるいような感じがするわけです。またこれは体内に蓄積されるからだめだ、こういう声もあるようです。ホルムアルデヒドの場合は、確かに気化した場合は微量でも危険だと私は思います、五〇ppmから一〇〇ppmくらいで気管支炎になるわけですから。さらに大量に吸入すると、これは動物実験等では発がん性がある、こういうふうに認められております。しかし、一方で経口摂取した場合、すなわち口に入れた場合はどうかといいますと、これは世界の学説でも一酸化炭素と水になる、体内に蓄積されない、排出される、これが大体世界の学界の常識なんです。ですから、そういう問題、そういう知識に対してもっと厚生省が具体的な対応をやってよく認識をさせていくという努力があるならば、こういう問題がもっと大きな問題に波及せずにおさまるんじゃなかろうか、そういうことを非常に私は思うわけです。  これはある専門家の言をかりるまでもございませんけれども、天然物にしても合成物にしても、どんな物質でも毒性のない物質はないわけでして、こういう専門家に言わせると、問題は無害な使い方だ。要するに問題は、使用レベルの安全性の確認というのは、食品衛生上やはり厚生省国民の健康と命を守るという上できちっとすべき問題であって、何から何まで疑えば今日の社会、人間生きていけません。ところがえてして何か問題があるとどんどんエスカレートして収拾がつかなくなる。こういう問題に対してもっと厚生省は毅然とした対応をしてもらいたいと思いますし、さらに私がお願いしたいのは、やはりこういう添加物とか食器等についての正しい知識の普及といいますか、そういう面での努力も足りないんじゃないかという気がするわけでございますが、いかがでしょうか。
  152. 古川武温

    ○古川政府委員 率直に申し上げて、委員指摘の点について強く反省をしております。生活衛生行政というのはまさに科学技術行政でございます。そういう意味で、ただいま委員が仰せられたホルムアルデヒドについての体内の代謝の関係あるいはそのものの自然界における分布、そうしたものを事細かく説明しながら、国民にわかりやすく、しかもしっかりした行政が行われていたならば、こういうふうなことは生じなかったと思います。委員の御指摘を肝に銘じまして、今後とも生活衛生行政というのは科学技術行政だ、学問にしっかり基礎を置いた行政であるということを国民にもわかってもらいながら、私自身も、我々自身もまたしっかりと行政に取り組んでまいりたいと思います。
  153. 沼川洋一

    ○沼川委員 非常に明確な答弁をいただきました。特に先ほど引いたエイズの場合も、一番強調されたのが正しい知識の普及、これがエイズ対策のまず第一歩だと言われました。この問題エイズとまた全然違いますけれども、これからこういう問題がますますいろいろなところで起こってくると思うのです。そういう場合に、えてして誤解誤解を生み、知識がないために、だれか一言言ったことがだんだん大きく膨らんでいって起こらぬでいい混乱が起こってしまう。特に今回の場合なんか、教育現場で学校を二分して、しかも家庭で夫婦げんかまであったという話も聞いております。どうかそういう面で正しい知識の普及ということについて厚生行政の上でしっかりひとつ対応していただきたいと思います。  かてて加えて、現在世界各国でもこのメラミン食器の使用量というのはたしか二十億個くらいと聞いております。日本でも調べてみますと、何と年間五千七百万個のメラミン食器がつくられておるわけです。ですから、先ほどもちょっとおっしゃったように、これは何も学校だけじゃなくて家庭でも使われておりますし、レストランでも使われておりますし、ホテルとか病院などでも使われておるわけです。したがって、今度こういう全国的に波紋を呼んだために、一般の消費者からもメラミン本当に大丈夫か、そういう不安の声もございますし、学校現場だけでは決してございません。どうかひとつそういうところも踏まえて、しっかりした正しい知識の普及とともに御指導方をお願いしたいと思います。  最後に、これは大臣に一言お伺いをしておきたいと思います。  特に、これから二十一世紀に向かって健康という問題が国民の最大の関心事となってまいっております。そういう中で食生活も非常に多様化されてまいりますし、今までもあったわけですけれども、例えば食品添加物なんかについても、不安が増大すればこそ、なくなるということは恐らくないと思います。いろいろとこういう問題が今後とも想像できると思うわけです。また今申し上げた食器あるいは容器、包装などについても、新しい素材の開発がどんどん今進んでいます状況の中で、新たな不安、こういう食器は大丈夫だろうか、こういうものを使って大丈夫だろうか、こういう不安がやはり次から次に生じていることも事実でございます。特に最近医学技術の進展といいますか発達はすさまじいものがありますし、研究体制等についてもすごい進歩を遂げております。そういう中で国民の知識といいますか、発がん性物質等についても国民の間でいろいろと話題になる今日です。そういう中でございますので、ある物質を白黒と決めるのはますます困難であり、難しい時代に入ってくるのではなかろうかと私は思うわけです。  したがいまして、特に国民生活に密着した食品添加物とかあるいは食器、容器、包装などに対する安全性の確保、またそういった教育、こういう問題については、厚生省としてもこれは非常に重要な課題になってくると思うわけでございますけれども大臣のお考えを最後にお聞かせいただきたいと思います。
  154. 藤本孝雄

    藤本国務大臣 沼川先生のおっしゃいますように、国民の健康を守るためのいろいろな方策の大きな課題であると思います食品添加物の問題、それから食器、容器、包装の問題、大きな重要な課題だと思っておるわけでございまして、今までも御承知のように、十分に規格、基準等をつくりまして対応してまいったわけでございますが、これからも御指摘のように、新しい素材によるそういったものがどんどんできる状況でもありますので、十分に力を入れて対応してまいります。同時に、国民皆さん方が正しい知識、また御理解いただくために、十分に広報活動にも気をつけてまいりたい、かように考えております。
  155. 沼川洋一

    ○沼川委員 以上で終わります。
  156. 野呂昭彦

    ○野呂委員長代理 三原朝彦君。     〔野呂委員長代理退席、委員長着席〕
  157. 三原朝彦

    三原委員 きょう私は、昨年の四月から厚生省が新しいテストケースとして始めました中間施設、老人保健施設のことにっいて少しばかり質問させていただきたいと思う次第であります。  私どもは団塊の世代の生まれでありまして、我々が今から三十年たったことを心配する必要はないかもしれませんが、二十一世紀のことを考えますと、老人医療、老人福祉というのが今よりさらに難しい問題でもあるし、また充実もさせなければいけないと思う次第であります。今日でも既に寝たきり老人が六十万人にもなる、それが今から十三、四年もしますと、二十一世紀になりますと、百万人を超えるであろう、痴呆性老人も六十万人近くいて、それもまた百万人を超える、そういうことが言われておるところであります。特に、こうして老人化が進む中で、老人が求めている医療福祉を拡大し多様化していかなければならない、そういう状況にあると思うのであります。例えば老人が施設に入るにしても、病院であったり、そしてまた特養の老人ホームとかいろいろなホーム、老人の保健施設、そしてまた今までずっとやってこられたような在宅、それもただ昔風の在宅ではなくて、ホームヘルパーがあってみたりとか、ホームドクターのシステムをより充実させたりとかいうような、いろいろそういうような老人に対するケアというものが必要になってくる、考えていかなければならないと思う次第であります。  そこで、老人に対する世話、ケア、サービスというようなものに関して、私は少しばかり質問させていただきたいと思う次第であります。  今さっき申し上げました、昨年から七カ所ですか、テストのような形で新しい老健施設ができました。それができた経緯というのは、昨年けんけんがくがくの中でスタートしたわけですけれども、一方では医療費が増大する中で、このまま放置しておくというのも財政的に難しいし、また我々国民の一員としても、それにたえるだけのものが今から先あるのだろうかというような状況もあります。しかし、反面、福祉というものをだからといって低下させるわけにはいかない、よりよい社会、住みよい社会をつくるためには充実させなければいけないという、二律背反と言うと語弊があるかもしれませんが、そういう二つの問題を解決できる道はないだろうかということで始まったのがこの老健施設であり、またもう一つは、何とかして家に帰っていただくという中間的なものもあるというものを含めてつくられたのでありましょう。  そこで、この制度創設時の国会の審議においても、医療福祉もレベルが下がるのではないかということをいろいろ危惧されてきたわけですけれども、実際に約一年モデルが月日を経たわけですが、サービスのレベルについてどういうふうに当局としてお考えになっておられるか、そのことをちょっとお聞かせいただきたいと思う次第であります。
  158. 岸本正裕

    ○岸本政府委員 六十二年度に実施いたしました全国七カ所のモデル施設につきましては、老人保健審議会の御審議の過程におきまして、それぞれの施設から運営の実際についてヒアリングを行ったところでございます。そしてその審議会において、適切な医療ケアと生活サービスが提供されているというような評価を得ているものでございます。  モデル施設の実態を踏まえまして、老人保健審議会や中医協の意見も聞いて、施設、人員、運営等の基準を定めたところでございますが、今後全国に普及する老人保健施設についても、行政指導等を通じまして、適正なサービスが確保されるように努力してまいりたいと思います。
  159. 三原朝彦

    三原委員 もちろん老健施設の適切な運営をしていただいて、中に入っておられる方により快適な福祉といいますかサービスをしていただくことは、こちらからお願いしなければいけないのですが、もともとのできた経緯は、病気になった方が自分の家に帰られる、その間にあっていろいろ社会復帰のための訓練あたりもするというのにも主眼を置かれてあると考えるところでありますけれども、その基本理念であります何とか元気になって社会復帰、家庭にいて生活できるようにするという、そういう訓練みたいなことはどういう状況なんでしょうか。そのことをちょっとお聞かせいただきたいと思います。
  160. 岸本正裕

    ○岸本政府委員 要介護老人の多くが住みなれた家庭での生活を送ることを望んでいることでございますけれども、老人保健施設の運営は、入所者の自立を支援し、家庭への復帰を目指すものでなければならないというふうに考えております。このために老人保健施設におきましては、要介護老人の日常生活動作能力の改善を目的としたリハビリテーション、日常生活の指導ということに重点を置いたケアを提供することといたしております。  モデル施設におきましても、こうした観点に立って運営を行っていただいているところでございまして、全国七カ所のモデル施設では、昭和六十三年一月までの時点で、延べ入所者四百三十三人に対しまして家庭に帰った者が九十八人、二割強という実績になってございます。このようなモデル施設の経験を生かしまして、老人保健施設の諸基準等におきましては、OTとかPT、それから生活相談員の配置を義務づけるとともに、家族に対する介護の指導、それから退所後の主治医への情報提供等運営面で必要な事項を規定いたしたところでございます。  今後、全国で整備される老人保健施設につきまして、家庭への復帰を目指した運営が確保されるように指導してまいりたいと存じます。
  161. 三原朝彦

    三原委員 私も老人保健施設というのを見学したことがあるのです。病院あたりへ行きますと、例の何といいますか消毒液くさいにおいがしますし、また特養老人ホームあたりへ行きますと、今度は何といいますかおしめのにおいみたいな感じがしますけれども、確かに中間施設、においからしてもちょうど中間みたいな感じもしなくはなかったのですが、何といっても中に入っておられる方は、家に帰るということ、家族と一緒にいるということが心の安らぎになると私は思いますけれども、二割強の方が自分の家に戻られるということを聞いて、これは我々もありがたいことだと思うところであります。  ところで、話を進めますけれども、私が行ったところの施設では、二十一万の定額のあとに月々五万円利用料としてもらっているというわけだったのですが、それは最初の六十二年四月からできた七施設はみんな同じなんでしょうか。今度また七十六施設ですか、新しくできていますが、そういうところの利用料というのはどういう状況でしょうか。
  162. 岸本正裕

    ○岸本政府委員 先生御承知のとおり、老人保健施設におきましては、食費とかおむつ代、日用諸雑費等につきましては、利用料として入所者に負担していただくことにしているわけでございます。モデル施設におきましても、これらの費用を利用料として徴収しているわけでございますが、その実態は施設とか入所者によりまして、例えばおむつを使う人使わない人、使い方にも昼だけ夜だけとかいろいろ差がございますので、違いは個々にあるわけでございますけれども、平均をしますと、おおむね五万円程度ということになっております。
  163. 三原朝彦

    三原委員 では、それに関連してですけれども、五万円というお金は、入っている人にとり、またそこの家族の人にとって経済的にどういう影響があるか。いや、五万円ぐらいならすぐ出しますよという感じなのでしょうか。それともちょっときついなという感じがあるのでしょうか。そこのところをちょっとまた一歩踏み込んだ話をお聞かせいただきたいと思います。
  164. 岸本正裕

    ○岸本政府委員 利用料の水準につきまして、一部の施設で入所者に対しましてアンケート調査を行ったことがあるわけでございますが、その結果を見てみますと、入所者の大部分が自分のところの施設の利用料の水準が適正な水準であるという回答をしているわけでございます。またモデル施設側といいますか、経営者側からの意見といたしましても、利用料は食費とかおむつ代その他の生活サービスの実費程度ということでございまして、五万円というのがおおむね妥当な水準ではないか、こういう御意見になっております。
  165. 三原朝彦

    三原委員 私が訪問したところでは、今のところ月々百五十万から二百万ぐらい赤字だと言っていましたけれども、しかし、それは病院が横にあって、初めはまだモデルでいろいろなことを試行錯誤でやっているのだろうから、確かにそこでも五万円いただければ何とか今から先も老健施設、自分のやっているところもやっていけるんじゃないかということだったんですが……。  次に進みますけれども、七カ所つくられて、次に七十六カ所、そして一番最初にこのディスカッションをやっていたときには、病院の空きベッドを転用してゃろうじゃないかというようなこともいろいろ言われていたのですが、七カ所のところは、聞いてみますと、それはないようですね。みんな新しく建物を建ててやっているようですが、七十六カ所のところとか、今から先そういうところは空きベッドの転換あたりはあるのでしょうか。その点はどうでしょう。それとも新しく施設はつくっていってやるのでしょうか。
  166. 岸本正裕

    ○岸本政府委員 昭和六十二年度の補助先は七十六カ所でございますけれども、このうち既存病床を利用したものは十五カ所ということでございます。病床転換につきましては、老人保健審議会の御答申でも、資源の有効活用という観点から、療養室とか廊下幅等の基準につきましての特例を設けているところでございます。私どももこれからそういうものを進めていきたいという考えを持っております。
  167. 三原朝彦

    三原委員 確かにそれは効率ある方法としていいことじゃないかと私も思うのです。  次に進みますが、この老健施設ができてから、私はふるさとへ帰って特養老人ホームなどを回りますと、自分たちもやってみたい、その理由というのは、競合しているような面があるんじゃないか、それで何といいますか、入っておられる入所者の取り合いと言うと語弊がありますけれども、何だか競争に負けてしまうんではないか、入所者を奪われてしまうんではないか、一方では百人に一人のお医者さんというようなイメージがあるものですから、取られちゃうんじゃないかというような戦々恐々とした感じで話す人がいらっしゃるのですけれども、どうですか。競合するかもわからないような特養老人ホームの整備について、それはどういうふうにお考えになっていらっしゃいますか。
  168. 小林功典

    小林(功)政府委員 三原先生もよく御承知のことでございますが、老人保健施設は、病状回復期にある者に対しましてリハビリテーションを行い、家庭復帰を図るほか、在宅療養が困難な者に対しては医療ケアと日常サービスをあわせて行うものでございます。これに対しまして特別養護老人ホームは、介護を中心とする日常生活上の世話を行うことを目的とする生活施設でございます。したがいまして、老人保健施設と特別養護老人ホームはそれぞれの機能が全く異なるわけでございまして、特別養護老人ホームにつきましては、老人保健施設創設後も引き続き大変重要な役割を果たすというふうに思っております。特にこれからお年寄りの人口がどんどんふえてまいりますし、それに従って寝たきり老人、要介護老人の数もふえてまいります。したがいまして、特別養護老人ホームの役割はこれからもどんどんふえていくと考えております。そういうことで、今後とも緊急性の高い地域に重点を置きながら、従来ペース、具体的に申しますと年間百二十カ所、定員で八千人程度のペースで着実な整備を進めてまいりまして、昭和七十五年度におきましては、大体現在の倍程度の定員、二十四万人の整備を行いたいという計画を持っております。
  169. 三原朝彦

    三原委員 そういうことをはっきりと聞かしていただいたので、またふるさとへ帰ったら、特養を経営していらっしゃる方とか、それをやりたいという方にはいろいろなことをはっきりと説明できるのですけれども、大概特養の人が心配されるのは、老健施設の方ではお医者さんをいつも置いておかなければいかぬというようなことで、それが売り物になるのではないか、それで自分たちのが取られるのではないか。介護と家へ帰るためのリハビリをする施設とは違うというようなことを言ってもなかなか納得してもらえない面がありますけれども、そこのところは特養の側が危惧の念を持たないような感じではっきりとこれから先もまた大いに指導していただきたいと思う次第であります。  きょうは次官にいらしていただいておりますので、一言お伺いいたします。今まで私が聞いてきたことで、老健施設の創設の理念は家庭復帰にあるということを初めから一生懸命言われておるのですけれども、この理念が失われずに、今から先も整備、運用が図られるべきであると私どもは確信します。病気になっても寝ておっても、一番いいのはやはり家庭であり、家庭の愛であると私どもは思うのですけれども、そのことについて次官の御意見をお伺いをさせていただきたいと思う次第であります。
  170. 長野祐也

    ○長野政府委員 大臣参議院の予算委員会関係で退席いたしましたので、かわりまして答弁をさせていただきます。  老人保健施設は、お説のとおり要介護老人の自立を支援をして、その家庭への復帰を目指して医療ケアと生活サービスをあわせて行う施設として創設されたものであります。その設置、運営に当たりましても、入所をされましたお年寄りの家庭復帰が実現するように種々配慮しているところでありまして、例えばリハビリテーションを実施するため機能訓練室の設置、OTまたはPTの配置、入所者の自発的な活動を促すため食堂、談話室、レクリエーションルーム、あるいは廊下の幅を広くとるというような構造、設備の基準をつくっておる等々いろいろな配慮をしておるわけでありまして、今後とも老人保健施設が本来の機能を果たしてまいるように指導いたしてまいりたいと思っております。
  171. 三原朝彦

    三原委員 その理念をいつまでも実地に移していただきたいと思う次第であります。  今度は話はちょっと動きますけれども、社会的な入院の問題、また先ほど議論しました老人保健施設の家庭復帰の理念を生かすということに関しても、一方では入院医療の見直しが必要でありますし、それは社会的入院の問題に関してでありますが、また他方では、老人保健施設をつくる上では、もちろん在宅ケアというもの、それを動かして自宅に持ってきたときの在宅ケアというものの充実を図っておかないと、いつまでも入所者が中間施設から帰れないでありましょう。  そこで、入院医療及び在宅ケアの関係について少し質問させていただきたいと思います。  厚生省国民医療対策本部報告で、長期入院の是正、在宅医療の推進ということを柱にしておられますけれども、今回の診療報酬の改定では、そういうことに関してはどのような措置をなさったでありましょうか。
  172. 岸本正裕

    ○岸本政府委員 今回の老人診療報酬の改定は、老人の心身の特性を踏まえて、漫然とした長期入院の是正を図るとともに、在宅医療充実を主眼として行ったものでございます。  長期入院の是正につきましては、例えば入院時医学管理料の逓減制の強化でありますとか、老人病院の長期入院患者にかかる検査、処置等の適正化等の措置を講じたところでございます。  在宅医療の推進につきましては、退院時の指導の充実をする、また寝たきり老人に対する訪問診療とか訪問看護の充実を行う、また新たに訪問理学療法の新設を行う、こういうようなことを行っておりまして、老人の患者が在宅で十分な医療が受けられるような重点的な評価を行ったところでございます。
  173. 三原朝彦

    三原委員 社会的入院というと聞こえはいいのです、私はこの言葉が好きじゃないのですけれども、そういうふうに言っていますから。何だか老人が置いてきぼりで病院に入れらているようなことを、うまく言えば社会的入院とでも言うのかなと思うのです。そういうことがないような社会が一番いいのでしょうけれども、社会的入院というのがありますね。  それで、この是正のために、診療報酬面における経済的な誘導ということだけではなくて、退院について、もちろん受け入れ側の家族の側もいろいろ問題はあるでしょうけれども、しっかりとした基準が必要になってくるのではないかと思います。その点はどういうふうにお考えになっておられますでしょうか、聞かせていただきたいと思います。
  174. 仲村英一

    ○仲村政府委員 社会的入院という言葉は非常に日本的だと私も考えております。医学的に退院させてもいい患者さんが病院から出ないということで、長期滞在をしておる患者さんがいることも、また一方においては事実でございます。アメリカのように、一日の入院料が非常に高い場合には、そういう形でのインセンティブで出ていくという形があるわけでありますが、日本の場合には、医療側も患者さん側も、あるいは家族の側も、そういう形でのインセンティブが働かない場合がありまして、こういう形になっておるものと、それから日本の文化的風土と申しますか、そういうことで病院に預けておくということで非常に安心するというふうなこともあって、いろいろ問題が生じておることも事実でございますので、私ども入退院の在り方に関する懇談会というものをことしの一月から日本医師会と共同で設けまして、入退院をより合理的なものにするためにはどのような方策を講ずることができるか、これから検討いたしたいと考えておるところでございます。
  175. 三原朝彦

    三原委員 確かに、笑い話で、病院に行って、きょうはおじいちゃあん、おばあちゃんが来てないかと聞いてみたら、風邪を引いているから休んだなんという、病院に来なかったという話があるのです。それほど病院が、一面ではいいのかもしれませんけれどもね、それだけ豊かになってのんびりと病院にみんなで顔合わせに来て、健康だと言われると、その後気分よくしてゲートボールして、夕方帰っていくというような生活がいいのかもしれないです。  しかし、病院に行けば、やはり薬も出されるし、何かいろいろなことも必要ならもちろんしていただかなければいけないでしょうけれども、そうでない場面もあるでしょうから、やはりそうのんべんだらりとやられるのも大変かと思いますけれども、今検討しておられるということでありますので、結論を待たせていただきたいと思う次第であります。  今度は、老人保健施設に入っておられた方が在宅になる。そうしたときに、戻ってきたら、やはりその地域のいわゆるホームドクターの人の指導とか、OT、PTのことを言われましたが、そういう方の指導を十二分に受けて、本当に社会復帰をして、みずから生活できるような形になっていただかなければならないと思うわけですが、そのホームドクター制の必要性についてどういうふうにお考えでしょうか、お聞かせいただきたいと思います。
  176. 佐藤良正

    佐藤(良)政府委員 先生御指摘の在宅の老人の受けとめも含めまして、今後の地域医療においては、医療はもちろんのことですが、本人、家族を含めまして、日常の健康相談から予防、リハビリと一貫して受けとめる家庭医機能を持った医師を定着させることが非常に必要である、こういう認識に立っておるわけでございます。  このため六十三年度予算におきまして、地域医師会の協力を得まして、開業医を対象とした家庭医機能の普及定着を図るためのモデル事業等を実施する予定にいたしております。これもやはり今後日本医師会とも十分相談をし、またその協力を得ながら、その事業の円滑な推進に努めてまいりたいと思っております。
  177. 三原朝彦

    三原委員 やはり患者さんといいますか年寄りを持ちますと、病院にそのお年寄りの人を入れておくといいますか、入ってもらっておくのが家族にとっては一番何だか安心でもありますし、また何か嫌な言い方ですけれども、世間体も悪くない、こういう感じでやる場面もあるのです。しかし、その本人にしてみれば、病院にいて例え一日に一度家族が見舞いに来てくれたとしても、実際寝たきりでいたとしても、窓の外から孫たちの声が聞こえるような、そういうのを年寄りの人たちの方は望んでおられるのじゃないか、私はそういう気がするわけでありまして、そういう意味では、今佐藤議官からお答えいただきましたけれども、何とか在宅でもいろいろなことができるようなことを、これから先も我々は考えていかなければならないと思う次第であります。  次に移ります。  このごろ公的なことだけじゃなくて、民間の方でも民活というのがあらゆる場面で盛んになってきました。その中の一つに、社会福祉医療事業団あたりでも株式会社方式のシルバーホームといいますか、そういうのにもいろいろお金を出しますから、皆さん多様化する老人の施設のニーズのために御協力をお願いしますというようなことが慫慂されておるようでありますけれども、そのことについてどのような期待をしておられ、またどのような振興策をしておられるのか、ちょっとお尋ねをしたいと思う次第であります。
  178. 長野祐也

    ○長野政府委員 高齢者の多様なニーズにこたえるために、先生御指摘のような方向で民間の活力を活用していかなければならないわけでありまして、特に有料老人ホームでありますとか、入浴あるいはホームヘルプサービスなどの在宅でのサービスという分野に期待がきれているところであります。こういうシルバーサービスの健全な発展を図りますために、厚生省としましても、民間サービスにおける自主的な取り組みとあわせて民間事業所の指導を行っておるところであります。  来年度からは社会福祉医療事業団によります低利融資制度を創設することとしまして、このための法律改正をお願いしておるところでございます。
  179. 三原朝彦

    三原委員 老人福祉の階層化というとちょっとまずいような感じがします。しかし、ニーズが多様化してくるという要望がある以上は、食堂に行けばいろいろバラエティーなメニューがある、子供連れだと必ずデパートの食堂に行く一つの理由はそれでしょうけれども、そういう感じでいろいろなレベルのいろいろな種類のシルバーサービスみたいなものをやっていただくこと、これは一計ではないかと私は賛成する次第であります。その面でさらにまた御指導方をお願いしたいと思う次第であります。  最後になりましたけれども、これは今までのシルバーサービスとはちょっと話が変わります。  今我が党でも脳死の問題の小委員会あたりが行われております。私の友人の両親の年代というのは七十、八十ですから、病気だ、調子が悪いというようなことで、このごろ私もよくお見舞いに行ったり、最後の臨終の床に居合わせたりするようなことが起きてくる年代になりました。  そういうところでしみじみと思うのですけれども、ターミナルケアというのは、――生まれた以上はもちろん皆死ぬわけであります。これは避けて通れない、我々人間は。人の命というのは何よりも貴重であるということは、これはもう申すまでもないことであります。しかし現実問題として、だからといって社会的コストというのを無視してあらゆることをするというわけにもいかない。何か病の床で、ベッドで息も絶え絶えの人が腕にいろいろな管を通す、レスピレーションもくっつけておるというようなことで、何か人間でないような様相で寝ておられる。そういうのをこのごろたびたび見るにつけて、人間の生命、人間の死というのは何なんだろうかということを考えざるを得ないわけです。本人はもちろんもう意識もないわけでしょうから、みずからが生きるべきか死ぬべきかなんということは考えないでしょう。しかし生命というのは、先ほど申しましたけれども、何よりも大切なものであります。そのことを考えると、尊厳死といいますか、問題が起こってくると思うのですけれども、このターミナルケアに関して所感をお聞かせいただきたいと思う次第であります。
  180. 長野祐也

    ○長野政府委員 三原委員のお考えに私も全く同感でございます。現在の医療機関では延命を第一義とした医療が行われることが多いと聞いておるわけでありますが、もはや医学的な治療効果が期待できない場合に、病気による苦痛から解放されて、家族や友人との交流の中で穏やかに死を迎えることを望む方も多いのではないかと思います。  こういう状況も踏まえまして、厚生省といたしましては、昨年の七月に関係者によります検討会を設けて、末期医療のケアのあり方について今検討をお願いをしておるところでございます。
  181. 三原朝彦

    三原委員 では、どうもありがとうございました。     ─────────────
  182. 稲垣実男

    稲垣委員長 この際、御報告を申し上げます。  去る二十二日の当委員会における田中美智子君の発言中、不適当な部分につきましては、委員長において適当な措置をとることといたします。  次回は、明二十五日金曜日午前九時五十分理事会、午前十時委員会を開会することとし、本日は、これにて散会いたします。     午後四時四十四分散会