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1988-03-22 第112回国会 衆議院 社会労働委員会 第2号 公式Web版

  1. 会議録情報

    昭和六十三年三月二十二日(火曜日)     午前十時四分開議  出席委員    委員長 稲垣 実男君    理事 高橋 辰夫君 理事 戸井田三郎君    理事 丹羽 雄哉君 理事 野呂 昭彦君    理事 畑 英次郎君 理事 池端 清一君    理事 沼川 洋一君 理事 田中 慶秋君       相沢 英之君    粟屋 敏信君       伊吹 文明君    今井  勇君       小沢 辰男君    大野  明君       大野 功統君    片岡 武司君       木村 義雄君    近藤 鉄雄君       佐藤 静雄君    自見庄三郎君       高橋 一郎君    中山 成彬君       堀内 光雄君    三原 朝彦君       箕輪  登君    持永 和見君       伊藤 忠治君    川俣健二郎君       田邊  誠君    永井 孝信君       新井 彬之君    大橋 敏雄君       草川 昭三君    吉井 光照君       塚田 延充君    児玉 健次君       田中美智子君  出席国務大臣         労 働 大 臣 中村 太郎君  出席政府委員         防衛施設庁労務         部長      山崎 博司君         労働大臣官房長 清水 傳雄君         労働大臣官房審         議官      齋藤 邦彦君         労働省労政局長 白井晋太郎君         労働省労働基準         局長      野見山眞之君         労働省婦人局長 佐藤ギン子君         労働省職業安定         局長      岡部 晃三君         労働省職業能力         開発局長    野崎 和昭君  委員外出席者         警察庁刑事局保         安部生活経済課         経済調査官   五十嵐忠行君         総務庁人事局参         事官      河野  昭君         総務庁統計局統         計調査部消費統         計課長     伊藤 彰彦君         経済企画庁調整         局産業経済課長 柴崎 和典君         経済企画庁国民         生活局国民生活         政策課長    宮地  治君         経済企画庁国民         生活局国民生活         調査課長    川名 英子君         経済企画庁総合         計画局計画官  上野 達雄君         法務省入国管理         局入国審査課長 大久保 基君         法務省入国管理         局資格審査課長 柴田 博一君         法務省入国管理         局警備課長   書上由紀夫君         外務大臣官房領         事移住部査証室         長       旭  英昭君         外務省中近東ア         フリカ局中近東         第二課長    木村 光一君         大蔵大臣官房参         事官      中井  省君         厚生省健康政策         局看護課長   矢野 正子君         通商産業省産業         政策局企業行動         課長      広瀬 勝貞君         通商産業省機械         情報産業局情報         処理振興課長  近藤 隆彦君         運輸省国際運         輸・観光局外航         課長      岩村  敬君         郵政大臣官房人         事部給与課長  磯井 正義君         郵政省電気通信         局電気通信事業         部監理課長   品川 萬里君         労働大臣官房政         策調査部長   甘粕 啓介君         建設省住宅局民         間住宅課長   荒田  建君         参  考  人         (日本電信電話         株式会社労働部         長)      朝原 雅邦君         参  考  人         (日本銀行総務         局長)     若月三喜雄君         社会労働委員会         調査室長    石川 正暉君     ───────────── 委員の異動 三月四日  辞任         補欠選任   片岡 武司君     小坂徳三郎君   自見庄三郎君     佐藤 文生君   高橋 一郎君     後藤田正晴君 同日  辞任         補欠選任   小坂徳三郎君     片岡 武司君   後藤田正晴君     高橋 一郎君   佐藤 文生君     自見庄三郎君 同月九日  辞任         補欠選任   川俣健二郎君     井上 一成君 同日  辞任         補欠選任   井上 一成君     川俣健二郎君 同月二十二日  辞任         補欠選任  平石磨作太郎君     草川 昭三君 同日  辞任         補欠選任  草川 昭三君     平石磨作太郎君     ───────────── 三月十一日  社会福祉・医療事業団法の一部を改正する法律案内閣提出第五四号)(予) 同月十五日  労働安全衛生法の一部を改正する法律案内閣提出第六七号)(予)  勤労者財産形成促進法の一部を改正する法律案内閣提出第六八号)(予) 同月二十二日  国民健康保険法の一部を改正する法律案内閣提出第一九号) 同月三日  高齢者福祉充実等に関する請願吉井光照紹介)(第五三六号)  同(井上普方紹介)(第五六七号)  同外一件(河野正紹介)(第五七五号)  保育所制度充実に関する請願石橋一弥紹介)(第五三七号)  同(村岡兼造君紹介)(第五四八号)  覚せい剤麻薬等薬物乱用防止対策強化に関する請願羽田孜紹介)(第五三八号)  同(村井仁紹介)(第五五〇号)  医療費抑制反対及び医療福祉拡充に関する請願石田幸四郎紹介)(第五四九号)  同(安藤巖紹介)(第六〇九号)  福祉国庫負担金削減反対等に関する請願外一件(上原康助紹介)(第五七九号)  同外二件(辻一彦紹介)(第五八〇号)  同外二件(池端清一紹介)(第六一八号)  腎疾患総合対策早期確立に関する請願寺前巖紹介)(第五八一号)  同(粟屋敏信紹介)(第六一九号)  同(井上泉紹介)(第六二〇号)  同外二件(井上喜一紹介)(第六二一号)  同(井上普方紹介)(第六二二号)  同(伊吹文明紹介)(第六二三号)  同(池端清一紹介)(第六二四号)  同(石破茂紹介)(第六二五号)  同(上田卓三紹介)(第六二六号)  同(江田五月紹介)(第六二七号)  同(衛藤征士郎紹介)(第六二八号)  同(小野信一紹介)(第六二九号)  同(大石千八紹介)(第六三〇号)  同(大野功統紹介)(第六三一号)  同(大原一三紹介)(第六三二号)  同(加藤紘一紹介)(第六三三号)  同(片岡武司紹介)(第六三四号)  同外一件(金子原二郎紹介)(第六三五号)  同(亀岡高夫君紹介)(第六三六号)  同(川俣健二郎紹介)(第六三七号)  同(菊池福治郎紹介)(第六三八号)  同(小坂善太郎紹介)(第六三九号)  同(古賀誠紹介)(第六四〇号)  同(鴻池祥肇紹介)(第六四一号)  同(左近正男紹介)(第六四二号)  同(佐藤静雄紹介)(第六四三号)  同(斉藤斗志二君紹介)(第六四四号)  同(櫻内義雄紹介)(第六四五号)  同(自見庄三郎紹介)(第六四六号)  同(塩崎潤紹介)(第六四七号)  同(嶋崎譲紹介)(第六四八号)  同(関谷勝嗣君紹介)(第六四九号)  同(田中直紀紹介)(第六五〇号)  同外二件(田邊誠紹介)(第六五一号)  同(谷洋一紹介)(第六五二号)  同(玉沢徳一郎紹介)(第六五三号)  同(月原茂皓紹介)(第六五四号)  同(辻一彦紹介)(第六五五号)  同(戸井田三郎紹介)(第六五六号)  同外二件(土井たか子紹介)(第六五七号)  同(友納武人紹介)(第六五八号)  同(中沢健次紹介)(第六五九号)  同(中島衛紹介)(第六六〇号)  同(中西啓介紹介)(第六六一号)  同(中村正三郎紹介)(第六六二号)  同(中山成彬紹介)(第六六三号)  同(野口幸一紹介)(第六六四号)  同(野坂浩賢紹介)(第六六五号)  同(野呂昭彦紹介)(第六六六号)  同(橋本龍太郎紹介)(第六六七号)  同(長谷川峻紹介)(第六六八号)  同(畑英次郎紹介)(第六六九号)  同外二件(原田昇左右紹介)(第六七〇号)  同(平沼赳夫紹介)(第六七一号)  同(平林鴻三君紹介)(第六七二号)  同(福田一紹介)(第六七三号)  同(堀之内久男紹介)(第六七四号)  同(牧野隆守紹介)(第六七五号)  同(増岡博之紹介)(第六七六号)  同(三野優美紹介)(第六七七号)  同(宮下創平紹介)(第六七八号)  同(武藤嘉文紹介)(第六七九号)  同(村田敬次郎紹介)(第六八〇号)  同(村山喜一紹介)(第六八一号)  同(持永和見紹介)(第六八二号)  同(森喜朗紹介)(第六八三号)  同(森下元晴君紹介)(第六八四号)  同(安田修三紹介)(第六八五号)  同(山崎拓紹介)(第六八六号)  同(山下元利紹介)(第六八七号)  同(山下徳夫紹介)(第六八八号)  同(山村新治郎君紹介)(第六八九号)  同(綿貫民輔紹介)(第六九〇号)  同(渡部恒三紹介)(第六九一号)  同(渡辺栄一紹介)(第六九二号)  同(渡辺省一紹介)(第六九三号)  国民健康保険制度改悪反対等に関する請願安藤巖紹介)(第五八二号)  同(石井郁子紹介)(第五八三号)  同(岩佐恵美紹介)(第五八四号)  同(浦井洋紹介)(第五八五号)  同(岡崎万寿秀紹介)(第五八六号)  同(金子満広紹介)(第五八七号)  同(経塚幸夫紹介)(第五八八号)  同(工藤晃紹介)(第五八九号)  同(児玉健次紹介)(第五九〇号)  同(佐藤祐弘紹介)(第五九一号)  同(柴田睦夫紹介)(第五九二号)  同(瀨長亀次郎紹介)(第五九三号)  同(田中美智子紹介)(第五九四号)  同(辻第一君紹介)(第五九五号)  同(寺前巖紹介)(第五九六号)  同(中路雅弘紹介)(第五九七号)  同(中島武敏紹介)(第五九八号)  同(野間友一紹介)(第五九九号)  同(東中光雄紹介)(第六〇〇号)  同(不破哲三紹介)(第六〇一号)  同(藤田スミ紹介)(第六〇二号)  同(藤原ひろ子紹介)(第六〇三号)  同(正森成二君紹介)(第六〇四号)  同(松本善明紹介)(第六〇五号)  同(村上弘紹介)(第六〇六号)  同(矢島恒夫紹介)(第六〇七号)  同(山原健二郎紹介)(第六〇八号) 同月十一日  心身障害者対策基本法の一部改正に関する請願桜井新紹介)(第七三六号)  覚せい剤麻薬等薬物乱用防止対策強化に関する請願若林正俊紹介)(第七三七号)  同(中村茂紹介)(第八一七号)  腎疾患総合対策早期確立に関する請願外二件(石橋政嗣君紹介)(第七三八号)  同(今井勇紹介)(第七三九号)  同(小澤克介紹介)(第七四〇号)  同(小渕正義紹介)(第七四一号)  同(大矢卓史紹介)(第七四二号)  同(川端達夫紹介)(第七四三号)  同(塩谷一夫紹介)(第七四四号)  同(田中慶秋紹介)(第七四五号)  同(高村正彦紹介)(第七四六号)  同(武村正義紹介)(第七四七号)  同(中野寛成君紹介)(第七四八号)  同(中山太郎紹介)(第七四九号)  同(西村章三紹介)(第七五〇号)  同(林保夫紹介)(第七五一号)  同(平泉渉紹介)(第七五二号)  同(町村信孝紹介)(第七五三号)  同(松田岩夫紹介)(第七五四号)  同(米沢隆紹介)(第七五五号)  同(水田稔紹介)(第七六五号)  同(相沢英之紹介)(第七七六号)  同(愛野興一郎紹介)(第七七七号)  同(石橋一弥紹介)(第七七八号)  同(臼井日出男紹介)(第七七九号)  同(小沢辰男紹介)(第七八〇号)  同(大村襄治紹介)(第七八一号)  同(木村義雄紹介)(第七八二号)  同(倉成正紹介)(第七八三号)  同(左近正男紹介)(第七八四号)  同(田村良平紹介)(第七八五号)  同(戸塚進也紹介)(第七八六号)  同(岩佐恵美紹介)(第八一八号)  同(戸塚進也紹介)(第八一九号)  同(沼川洋一紹介)(第八二〇号)  同(大坪健一郎紹介)(第八三〇号)  同(近藤鉄雄紹介)(第八三一号)  同外三件(塚田延充紹介)(第八三二号)  同(渡海紀三朗紹介)(第八三三号)  同(三原朝彦紹介)(第八三四号)  同(箕輪登紹介)(第八三五号)  保育制度の維持、充実に関する請願高沢寅男紹介)(第七六四号)  国立腎センター設立に関する請願愛知和男紹介)(第七七五号)  建設季節労働者対策充実に関する請願児玉健次紹介)(第八一二号)  国民健康保険法改悪反対に関する請願岩垂寿喜男紹介)(第八一三号)  同(金子満広紹介)(第八一四号)  同(井上普方紹介)(第八三六号)  保険医インターン制度導入反対医師卒後研修の改善に関する請願児玉健次紹介)(第八一五号)  福祉国庫負担金削減反対等に関する請願不破哲三紹介)(第八一六号) 同月十六日  歯科保険医療制度改善に関する請願柴田弘紹介)(第八七四号)  同(早川勝紹介)(第九八八号)  医療費抑制反対及び医療福祉拡充に関する請願柴田弘紹介)(第八七五号)  腎疾患総合対策早期確立に関する請願笹山登生紹介)(第八七六号)  同(遠藤和良紹介)(第八八四号)  同外一件(小川新一郎紹介)(第八八五号)  同(武田一夫紹介)(第八八六号)  同(山下洲夫君紹介)(第八八七号)  同外一件(吉井光照紹介)(第八八八号)  同(愛知和男紹介)(第九八九号)  同(新井彬之君紹介)(第九九〇号)  同(貝沼次郎紹介)(第九九一号)  同(河野正紹介)(第九九二号)  同(児玉健次紹介)(第九九三号)  同(高橋辰夫紹介)(第九九四号)  同(日笠勝之紹介)(第九九五号)  同(平石磨作太郎紹介)(第九九六号)  同(保利耕輔君紹介)(第九九七号)  同(正木良明紹介)(第九九八号)  同(森本晃司紹介)(第九九九号)  同(山原健二郎紹介)(第一〇〇〇号)  福祉国庫負担金削減反対等に関する請願沼川洋一紹介)(第八八三号)  難病患者などの医療及び生活保障等に関する請願粟屋敏信紹介)(第九六八号)  同(五十嵐広三紹介)(第九六九号)  同(伊吹文明紹介)(第九七〇号)  同(今井勇紹介)(第九七一号)  同(小沢辰男紹介)(第九七二号)  同(大石千八紹介)(第九七三号)  同(大野功統紹介)(第九七四号)  同外一件(岡田利春紹介)(第九七五号)  同(加藤紘一紹介)(第九七六号)  同(片岡武司紹介)(第九七七号)  同(戸井田三郎紹介)(第九七八号)  同(中山成彬紹介)(第九七九号)  同(野口幸一紹介)(第九八〇号)  同(野呂昭彦紹介)(第九八一号)  同(畑英次郎紹介)(第九八二号)  同(原田憲紹介)(第九八三号)  同(三野優美紹介)(第九八四号)  同(持永和見紹介)(第九八五号)  同(山下元利紹介)(第九八六号)  同(渡辺省一紹介)(第九八七号)  国民健康保険制度改悪反対等に関する請願中島武敏紹介)(第一〇〇一号)  国民健康保険法改悪反対に関する請願外一件(児玉健次紹介)(第一〇〇二号)  同(中路雅弘紹介)(第一〇〇三号) は本委員会に付託された。     ───────────── 本日の会議に付した案件  参考人出頭要求に関する件  特定不況業種関係労働者雇用の安定に関する特別措置法の一部を改正する法律案内閣提出第二〇号)  駐留軍関係離職者等臨時措置法及び国際協定締結等に伴う漁業離職者に関する臨時措置法の一部を改正する法律案内閣提出第二一号)  労働関係基本施策に関する件      ────◇─────
  2. 稲垣実男

    稲垣委員長 これより会議を開きます。  労働関係基本施策に関する件について調査を進めます。  この際、お諮りいたします。  本件調査のため、本日、参考人として日本電信電話株式会社労働部長朝原雅邦君及び日本銀行総務局長若月三喜雄君の出席を求め、意見を聴取いたしたいと存じますが、御異議ありませんか。     〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
  3. 稲垣実男

    稲垣委員長 御異議なしと認めます。よって、そのように決しました。     ─────────────
  4. 稲垣実男

    稲垣委員長 質疑の申し出がありますので、順次これを許します。永井孝信君。
  5. 永井孝信

    永井委員 まず冒頭に、労働大臣雇用問題についてお伺いをいたしたいと思うわけであります。  円高不況に陥りましてから、労働省も挙げて雇用対策を積極的に進めていただきました。このことについては私も高く評価をしておきたいと思うわけでありますが、最近の雇用状況、裏返していえば失業状況といいましょうか、昨年の五月の完全失業率は三・二%というふうに言われておったわけでありますが、それが最近の統計資料を見ますと、かなり改善されてきている、このように見受けられるわけであります。この現状と今後の見通しについて、まずひとつ明らかにしてもらいたいと思います。
  6. 岡部晃三

    岡部政府委員 最近の雇用失業情勢でありますが、御高承のとおり、求人倍率上昇傾向にございますとともに、雇用者が大幅に増加をいたしております。失業者も前年水準を下回るというふうなこともございまして、両々相まちまして改善を見ておりまして、しかも今後についてもさらに改善が続くものと見込まれるわけでございます。  しかしながら、構造的な不況に陥った業種やそれらが集積する地域等につきましては、改善がはかばかしくないということでございまするし、また高齢者層について見ましても、依然としてかなりの雇用機会不足が見られるわけでございます。また産業構造転換等の進展に伴いまして、種々の雇用問題の発生も懸念されるところでございます。  今後の雇用失業情勢の推移につきましては、十分に業種別地域別あるいは年齢別に注目をして見守りますとともに、雇用の安定につきまして全力を尽くしてまいりたいというふうに考えております。
  7. 永井孝信

    永井委員 かなり好転はしてきておりましても、構造的な不況に陥っている企業とか地域はまだまだ問題がある、こういうことなんですね。そうすると、産業構造調整が終わったということではない、このように理解してよろしゅうございますか。
  8. 岡部晃三

    岡部政府委員 まだ終わっていないと同時に、さらにこれから産業構造転換が続く、そのさなかにおきまして、これからの課題であると心得ております。
  9. 永井孝信

    永井委員 そうすると、不況特定業種間あるいは特定地域間などの格差の問題は依然として残っているということなんですね。そうすると、従来以上のきめ細かい対策が必要になってまいります。全体的に雇用状況は上向いてきた、産業界の全体の景気も上向いてきた、しかし円が高くなってきた、その流れの中から、そういうところについては依然としてその谷間に置かれている、こういうことになりますね。そのためには特段の努力が必要、こういうことになってきますが、それはこれからどのように対応されようとするのですか。
  10. 岡部晃三

    岡部政府委員 まさに先生指摘のような努力を要する状況が続いているわけでございます。  六十二年度におきましては、三十万人雇用開発プログラムというふうなことで対応してまいりましたが、さらにこの努力を引き続いて行う必要がある。しかもそれに産業別あるいは地域別あるいは年齢者別の要素を加味していく必要があるということで、ただいま御提案申し上げております予算案産業地域高齢者雇用プロジェクトを策定をいたしたわけでございます。昭和六十三年度の新施策として御提案を申し上げているところでございます。労働力需給の各般のミスマッチの解消を目指しまして、このプロジェクトによって進めてまいりたいと思っておるわけでございますが、これには各種の助成金制度を新たにいろいろ設けますとともに、基本的には特定不況業種法改正も盛り込みまして、万全を期したいと考えているところでございます。
  11. 永井孝信

    永井委員 そうすると、例えば政令で指定されている緊急雇用安定地域ですね。この緊急雇用安定地域については、三月末日でその指定が切れる、期限切れになるわけですが、これは四月以降はどのようにされるおつもりでございますか。
  12. 岡部晃三

    岡部政府委員 先生指摘緊急雇用安定地域につきましては、これは昨年四月から施行されております地域雇用開発等促進法に基づきまして指定を行っているわけでございますが、これは円高等の影響を受ける中で急速に雇用失業情勢が悪化している地域指定するという趣旨でございまして、昨年四月から一年間の期限で百三十一市町村について指定をしているところでございます。指定は一年限りでございますので、三月三十一日をもって指定が切れる、こういうことでございます。
  13. 永井孝信

    永井委員 いや、私の聞いておりますのは、その指定された地域指定がこの三月末で期限が切れる、今言われたように、全体的に景気は浮揚してきた、雇用状況改善をしてきた、しかし特定地域特定業種不況ということについてはまだ改善されていない、そういう御見解が表明されたわけでありますから、そうすると、その不況地域指定したところなどの期限切れを目の前に控えて四月以降はどうされるんですか、こう聞いているのです。
  14. 岡部晃三

    岡部政府委員 期限切れの後のことでございますが、ただいま検討中でございまするけれども、緊急雇用安定地域指定につきましては、その雇用動向地域ごとに踏まえながら、必要があると認められた地域につきましては、もとより引き続き緊急雇用安定地域として再指定を行う、あるいは延長を行う等の措置を講じてまいりたいと考えております。
  15. 永井孝信

    永井委員 検討してこれから必要なものについては継続されるというお話でございますけれども、要は、そういう不況地域が存在をして、片方で景気が浮揚してくるということになると、なお格差がそこについてくるわけですからね。そうすると、その格差を解消するという立場からも、むしろ積極的に継続するという立場を基本的にとってもらいたい、そういうスタンスをとってもらいたい、こう思うのですが、もう一回念のためにひとつお答えいただきたいと思います。
  16. 岡部晃三

    岡部政府委員 必要性のある地域につきましては、法の趣旨にのっとりまして、もとよりその再指定及び延長を続けてまいりたいと考えております。
  17. 永井孝信

    永井委員 そこで新聞の記事でありますが、三月十四日の日経の新聞の切り抜きをここに持っているわけでありますが、製造業は大変な人手不足になってきた、円高合理化がやり過ぎだったのではないか、中途採用が急増、こういう見出しなんですね。これはごらんになっていると思うのでありますが、そういう実態を受けて、労働省としては本格的な雇用拡大にはまだつながっていないと分析されていることも報道されているわけであります。今局長がお答えになったような御答弁で前へ前へと進んでいこうとするわけでありますが、そのこと自体は私は評価するわけであります。しかし、その中で気になりますのは、中途採用が急増しているということなんですね。中途採用が急増しているのでありますが、中途採用であるだけに、この雇用というものが安定的なものになっていくんだろうか。いわばそのときの景気調整弁的にそういう中途採用が扱われていきはしないか。いわば浮き草のように、そのときそのときに働く人々が適当に企業の側の安全弁として使われてしまうという危険はないだろうか。このことを非常に心配するわけでありますが、そのことについてどのような御見解をお持ちですか。
  18. 岡部晃三

    岡部政府委員 この中途採用の増加という現象は非常に真新しい現象であろうかと思うのでございます。これはいろいろな分析ができようかと思います。一つは、この円高不況下におきまして、人員整理の合理化を進め過ぎたというふうなところから来る問題点もございましょうが、一つには、最近の目まぐるしい経済構造の転換という時期でございますので、新しい角度から新しい技術者、技能者等を求めたいという企業の側の要請もあろうか。そこで中間的な時期ではありましょうとも、中途的な採用ということで、それらの技術、技能を補う、いろいろな分析ができるわけでございます。  問題は、それらの人たちが、言うなれば使い捨てとかあるいは不安定な就労に陥らないようにという御指摘でございます。これはごもっともな御指摘でございまして、労働省におきましても、雇用管理あるいは人事労務管理行政をスタートさせておりますので、その中でそのような問題が生じないように努めてまいりたいというように考えております。
  19. 永井孝信

    永井委員 この中途採用と関連をして、今局長も言われましたように、合理化をやり過ぎたのではないかという懸念もある、新聞もそういうように報道しているわけであります。これを裏返して言いますと、企業の側がそのときの景気に左右されて、安易に労働者の首を切る、必要なときは直ちに採用する。労働者に対して、企業のいろいろな営業の立場からすると、そこにしわ寄せを持っていくことが依然として続いている。もう少し労働者というものを大切に扱うということが基本にあっていいのではないか、こう思うのですが、どうでしょうか。
  20. 岡部晃三

    岡部政府委員 その点は全く同感でございまして、その辺がいわゆる日本的雇用慣行のよさでもあったかと思うのでございます。この日本的雇用慣行というものが最近崩壊が伝えられておりまして、これは労働省といたしましても懸念をいたしているところでございます。いろいろ情勢が移り変わる世の中ではございますが、これまでの伝統のよいところは残すという考え方で人事労務管理行政を進めてまいりたいと考えております。
  21. 永井孝信

    永井委員 そこで、私は中高年労働者のことについて一つ二つ尋ねてみたいと思うのでありますが、雇用状況が上向いてきたといっても中高年齢者の雇用機会は極めて少ないわけでございますね。したがって、その対策としては定年延長という問題があります。  これはずっと以前からこの委員会で議論がされてきたことでありますが、労働省昭和六十年に六十歳定年制を到達させたい、これが労働省としての一つの基本的な政策であったわけでありますが、現実は一体どうなっているだろう。六十歳定年制というものがある程度拡大はされてきたと思うのでありますが、現在の進み状況というものを簡単に御提示願いたいと思います。
  22. 岡部晃三

    岡部政府委員 高齢化が非常に急速に進展していくと同時に、産業構造の転換、技術革新が進展をいたしておるわけでございまして、両々相まちまして、高齢者には非常に厳しい雇用情勢と相なっていることは御指摘のとおりでございます。  先ほど申し上げましたような産業地域高齢者雇用プロジェクトと申しますのも、その一つには、高齢者雇用対策をさらに充実させようという意図で行っているものでございまするが、現在の状況、定年制だけについて申し上げますと、現在六十歳定年が施行されているところあるいは近い将来に施行されることを予定される企業、これは企業の七五%にまでなってきておりまして、徐々にではございまするが、六十歳定年制というのは一般社会に定着を見つつあるということであろうと思います。しかしながら、まだ二五%のものがその計画すらないという状況でございますので、この六十歳定年制につきましては、さらに努力を傾けて定着化に向けたいと思う次第でございます。
  23. 永井孝信

    永井委員 七五%まで六十歳定年制が拡大をされてきた、非常に結構なことでありますが、当初の目的からまだテンポが遅いわけですね。  ところで、その七五%と言われている六十歳の定年制をしいている企業、そういう企業で、実際には四十歳代あるいは五十歳代からいわゆる勧奨退職制度というものがあって、肩たたきでやめさせられていくということが中高年齢者の失業率を極めて高いものにしてしまっている、こういう現実があるわけですね。そのように私は現実を見ているわけでありますが、労働省の御認識はどうですか。
  24. 岡部晃三

    岡部政府委員 実際の定年制と肩たたき等による企業外への労働者の移転という問題は確かに存在するように思われるのでございます。特に不況産業と言われている産業におきましては、その傾向がまたひときわ色濃く見られるところでございます。これは企業の労使によっていろいろお決めになっておられる場合が多いわけでございますが、労働省といたしましては、そのような途中における退職につきましては、あるいは出向等につきましては、労使間において十分に話を煮詰めて、それを処理いただきたいというふうに考えておるところでございます。
  25. 永井孝信

    永井委員 今御答弁いただいたわけでありますが、六十歳末満の勧奨退職制というものが存在することは、高年齢者雇用安定法の趣旨にもとると私は思うのですね。したがって、むしろ労働省が前から主張してきましたように、六十歳定年制を少なくとも早期に定着させたい、制度化したい、こういうことであるとするならば、この六十歳定年制ということについては、一定の法律上の強制力を持たせるべきではないかと思うのですが、その御見解はどうでございますか。
  26. 中村太郎

    中村国務大臣 六十歳定年につきましては、昭和六十年の十月の雇用審議会におきまして全会一致の結論に沿いまして、昭和六十一年の法改正において努力義務とされたものでございます。私どもは現段階で社会的コンセンサスが得られる現実的かつ妥当なものと考えておるわけでございます。  いずれにいたしましても、六十歳定年が法律上の社会的責任として明確にされたということ、かつそれを推進するための行政措置が法律に明確にされたことは、六十歳定年の推進に大きな効果があると考えておるわけでございます。この法律を踏まえまして、企業、労使が積極的に取り組まれることを心から期待をいたしておるわけでございます。
  27. 永井孝信

    永井委員 今大臣の御答弁いただいたわけでありますが、努力義務とは言いますけれども、七五%まで一応そういうふうに前進をしてきた、進捗してきたという現実から踏まえて、もうそろそろ強制力を持たせるところまで踏み切っていくべきではないかという立場で私はお聞きをしているわけでありますから、もう一言お願いいたします。
  28. 中村太郎

    中村国務大臣 お説につきましては十分配慮をいたしておるわけでございます。労働省としましては、もう少し行政指導によりましてその率を上げていきたい、その上で検討いたしたいというふうに考えておるわけでございます。
  29. 永井孝信

    永井委員 時間の配分がありますので、余り細かく議論はできませんが、これに関連をして、最近問題になっている外国人の労働問題についてお聞きをしてみたいと思うわけであります。  最近、かなり大きな社会的な関心を実は呼んでいるわけでありますが、この外国人労働者の受け入れについては、定められた者は別にして、原則としてこれは認めないということを閣議で了解してきている経過があるわけですね。しかし、現実に多くの外国人労働者が単純肉体労働などに従事をしているという事実がありますが、これについて労働省は、現在どのような見解を持っていらっしゃいますか。
  30. 岡部晃三

    岡部政府委員 先生お説のとおり、最近外国人の入国がふえまして、しかも単純労働に従事する外国人の不法就労が増加をしているわけでございます。この原因をどのように考えるかということでございますが、やはりこれはその送り出し国の失業情勢の悪化、それからまた賃金格差の円高による増大等々の経済的な背景が一番大きなものであろうと考えているところでございます。しかしながら、あくまでもこれは不法就労でございまして、特にこれが労働関係法令違反を伴う場合が多うございます。したがいまして、労働省といたしましては、これまでの閣議了解、単純労働は受け入れないという考え方を基盤としつつ、しかも現に入っているそういう不法就労の方々をめぐる労働関係法令違反の諸問題、これに対しましては、厳正に対処すべきであるということで、地方機関に先般通達をいたしたところでございます。とともに、さらに不法就労の問題の解決を図るためには、国内の事業主の十分な理解を得ることが必要でございます。したがいまして、経済諸団体に対しましても協力要請を行っているというところでございます。
  31. 永井孝信

    永井委員 ことに一つの資料を持っているわけでありますが、「在留資格一覧表」というのがあります。これは法務省が出しているものでありますが、その中の短期滞在あるいは研修のための滞在、そして特定の在留資格、ここに滞留者の数が集中しているわけです。とりわけこの短期滞在は大幅にふえてまいっております。この短期滞在の人たちのパスポートの中身というのは、観光であり、保養であり、あるいは親族の訪問、そういうものに主として集中しているわけでありますが、この人たちの中に実は不法就労している人が非常に多いわけですね。この事実はもう御認識のとおりだと思うのでありますが、私はここに一つの問題点があると思うのですね。それはどういうことかというと、外国人が入国をする、滞在をする、居住をする、こういう関係のチェックは全部入管局がやっているわけですね。国内で労働することを許可するか否かは、これは入管局の担当ではないわけですね。いわば、日本の場合は二元的に処理がされている。――失礼いたしました、外国の場合ですね。外国の場合には、滞在、居住関係の場合は入管局がやって、国内で労働することを許可するか否かは別の行政機関が担当している。日本の場合はそういうものがないので、入管法に基づいていわば一元的に処理されているから、在留資格に基づいて働いているかどうかが把握できない。また労働省には出先においても把握するだけの機能を備えていない。だから、不法就労をつかむことができない、こういうことが基本的な問題ではなかろうかと私は思うのです。したがって、外国人の出入国は自由という関係があったといたしましても、それは国際的には流れでありますけれども、少なくとも労働省として、外国のように二元的に処理ができるような道を探るべきではないか、こう思うのですが、どうでございますか。     〔委員長退席、野呂委員長代理着席〕
  32. 岡部晃三

    岡部政府委員 御指摘のように、欧米諸国におきましては、一般に入国、滞在許可の制度と並行いたしまして、別に労働許可制度というものが採用されているようでございます。この労働許可制度を通じまして、国内の労働市場の状況等を勘案しながら、外国人労働者の受け入れをコントロールするというふうな形であると承知をいたしておるわけでございます。  それで、我が国の場合どうであるかといいますと、入国、滞在許可の制度、これをもちまして行っているわけでございますが、諸外国におけるような外国人労働者についての労働許可制度というものをどう考えるかということも、これは一つの問題提起がなされていると承知をいたしております。現在、労働省におきましては、学識経験者から成りますところの外国人労働者問題研究会を設けているわけでございまして、近く検討成果を取りまとめることにいたしておりますが、御指摘の国内労働市場の状況に照らして労働力のコントロールをするというふうな受け入れ方策につきましては、これまた研究課題として現在検討が進められているところでございます。その検討の結果をもちまして、私どももまたいろいろと考えてまいりたいと考えております。
  33. 永井孝信

    永井委員 ILO百四十三号条約というのがございまして、まだ日本は批准しておりませんけれども、いわゆる移民条約と呼ばれているものであります。その移民条約を見ますと、外国人の出入国は自由という国際的な流れをその条約に盛り込んでいるわけです。入国した人がその国で働けるということもまた自由に認めるべきだということを位置づけているわけでありますが、しかし、その中の第十四条に、国益に照らして規制することができるという条文ももちろん入っているわけですね。したがって、まだこの百四十三号条約は未批准でありますけれども、少なくとも国際的にも説明のつくそういうルールといいますか、制度というものを一日も早く確立すべきだと私は思うのですね。そういたしませんと、現状ではどうかというと、不法就労させた雇い主はそのことのゆえをもって罰則を適用されることもないわけですね。これは一つにはルールがないために、いわばしたいほうだい、こういうことになっていくのではないかという気がいたします。建設業界でも随分と特集を組んでおりますが、このままでは建設業界が悪者にされてしまうとか、いろいろな危機感を持っておるようでありますから、ひとつそういうルールというものを一日も早くつくってもらいたい。そうして外国人労働者が無制限に不法就労することによって、日本の労働者の労働条件の引き下げということの役割も持たされてしまっておるわけでありますから、この辺については労働省はひとつきちんとした対応をしてもらいたい。重ねて要望をしておきたいと思います。
  34. 岡部晃三

    岡部政府委員 外国人労働者の問題につきましては、御指摘のように、国内的な観点とともに国際的な観点が非常に重要なことになると考えております。したがいまして、ILOの条約、先生指摘の百四十三号条約のほかに九十七号条約あるいは六十一号勧告、六十二号勧告、八十六号勧告、百五十一号勧告、もろもろの国際的な文書もあるわけでございますが、それらの点も踏まえ、十分に参考にしながら、今後における外国人労働者問題の検討に当たってまいりたいと考えているところでございます。  御指摘のように、国際的な非難云々というふうな点につきまして、私どもは、単純労働者につきましては、この受け入れにつきましては、相手国の経済発展のためには、むしろ単純労働者というふうな形でその失業者をお引き受けするよりも、当該国に投資あるいは技術協力を行って、そこに雇用の場を起こして、そこに就労していただくというふうな考え方が正道であろうというふうに考えておりますし、また、そうすることが相手国の経済構造の改善のためにはなるわけでございまして、失業が発生をしたからそれを引き受けるというふうな形では、やはりその国の経済構造の改善、進展に資さないものであるという立場を従来とってきているところでございますので、この点につきましては、国際的な観点からも強調をしてまいりたいと考えているところでございます。
  35. 永井孝信

    永井委員 今局長言われましたように、このODA、海外経済援助のあり方について、大臣、再考すべきだと私は思うのですね。金さえ出せばいいというものではなくて、その国における雇用創出が着実に前進していくような、そういう援助の仕方を模索すべきだと思うのですが、大臣、一言でその考え方をお答えいただけますか。
  36. 中村太郎

    中村国務大臣 お説のとおりであると私どもも承知をいたしておるわけでございます。外国人の単純労働者を受け入れる、そのこと自体は直ちに相手国の経済の繁栄、これにつながるものではないと思っておるわけでございます。基本的には技術協力、技能者の養成等につきまして協力を申し上げる、そして相手国の雇用機会の開発あるいは経済発展に資する、そういう方向で協力することが本筋であるというふうに思っておる次第であります。
  37. 永井孝信

    永井委員 次に、今雇用状況が非常に好転してきたというお話をしたわけでありますが、日本の経済の実態というものも、これまた大変な回復にありまして、三月十五日の日経新聞や毎日新聞、朝日新聞などに出ておりますが、経常利益三八%の増加で、いわば史上最高の売上高を示しているというふうに報道しているわけですね。そのことが、内需の拡大とうたっている現在、当然のこととして国民の生活に反映されなくてはいけないと思うのです。  私は、去年の七月二十八日の当委員会でその問題についてかなり議論したことを覚えているわけでありますが、新前川レポートに言っておりますように、経済成長の成果というものが国民生活に反映をされていない。いわゆる貧弱な居住環境、そして高い物価、そして長い労働時間、この三つが日本の特徴だというふうに新前川レポートも指摘をしているわけであります。かなりこの問題については昨年もここで議論をいたしましたが、もう一回そのことについて、私はあえてここで大臣の見解なり労働省の見解を聞いてみたいと思うのであります。  その一つは、先日、二月の初めでしたか、日経連が春闘を目前にして、日本は世界一の金持ち国になった、日本の労働者は世界一の高い賃金をもらっている、だから安易に賃上げはすべきでないという見解を表明いたしました。しかし、それは円高による為替レートの上からの計算のことであって、現実は、消費購買力平価でいうと日本の労働者の賃金というものは世界一であるわけがない。これは昨年の論争でも、当時の平井労働大臣が私の質問に対しまして、現実から遊離しているという意味の答弁をされた経過があります。現在の円は、ドルに対して大体百二十七、八円ぐらいのところを推移しているわけでありますが、そういう推移から見て、果たしてその名目的な円の価値というものがそのとおり国民生活に反映していると大臣はお思いになりますか。どうでございますか。
  38. 甘粕啓介

    ○甘粕説明員 賃金の国際比較ということにつきましては、これは厳密な点で非常に難しいところがございますが、最近の為替レートで換算いたしますと、我が国の賃金水準は、西独は下回ってございますが、イギリス、フランスをかなり上回る、アメリカとほぼ同程度というふうに推測されるところでございます。ただ、勤労者の生活という面からいたしますと、そのもらった賃金でどれだけ購買できるかということが問題になるわけでございまして、アメリカで一ドルで購入できる消費財と同種のものを日本で購入する場合にどうかといたしますと、大体一ドル二百三十円程度と試算されますので、消費購買力という面では、先生指摘のとおりアメリカをかなり下回っている、こういう状況がございます。そういう意味では、円高差益を一層還元いたしまして、物価の安定あるいは引き下げということで実質的な賃金の消費購買力を高めるということが非常に重要ではないかというふうに考えているところでございます。
  39. 永井孝信

    永井委員 今お答えになりましたように、これはOECDの資料でも明らかになっているのですが、消費購買力でいいますと、アメリカと同じような水準で見ますと、一ドルが大体二百三十円程度ないと同じ水準の消費生活ができない、こういうことはもう既に明らかになっているわけであります。しかし、世界一の賃金ということが前面に出されて、働く人々の賃金を引き上げることは抑制しようという動きが依然として続いている、私はこれは大変な問題だと思うのです。輸出依存型から内需拡大型へ積極的に政策を転換するんだという内閣の姿勢からいきまして、その責任の一翼を労働大臣は担っているわけでありますから、春闘で働く人々に対して思い切った賃金の引き上げを図って、消費購買力を高めることにつなげていくべきだと思うのですが、これについてお伺いしておきたいと思います。  またあわせて、減税問題なども当然のことでありますが、これについても大臣の御見解を伺っておきたいと思います。
  40. 中村太郎

    中村国務大臣 先生御案内のように、賃上げの決定ということは、原則として労使の自主的交渉によって解決すべき問題と承知をいたしております。それだけに私どもはこのことにつきまして、労使が本当に腹を割っての真摯な話し合いをいたしまして、合理的かつ円満裏の中に解決することを望んでおります。  ただ、私どもとしましては、勤労者の生活の質の向上あるいは福祉の向上という点からいいましても、さらにはまた内外から要請をされておりまする内需主導による均衡ある経済の発展という点から考えましても、経済成長の成果というものを時間の短縮とか賃金等に適正に配分されることは望ましいことであるというふうに承知をいたしておるわけであります。
  41. 永井孝信

    永井委員 問題は、今の為替レートによって、日本の国際競争力だけの問題ではなくて、国民の生活にかかわる部分が数字だけでひとり歩きをしている、そのことを是認した上で、労使間で賃金は決めるのでありますが、政府はそれに対して極端なことを言えば手をこまぬいているのではないかという気がしてならぬわけです。労働分配率を高めるためにも、労働省は単に労使関係の問題だけではなくて、積極的なそういう消費購買力を高めるための行政的な内面指導があっていいのではないかと思うわけでありますが、これについてどうでございますか。
  42. 中村太郎

    中村国務大臣 かねてから申し上げているのですけれども、労使双方いろいろな御意見がありますが、私どもとしましては、本当に企業の実力に合った十分な話し合いを遂げて労使間で決定していただくことをこいねがっておる、こういうことでございます。
  43. 永井孝信

    永井委員 労働組合の側は昨年の十一月二十日に民間先行で連合という組織ができました。今までのナショナルセンターが今度形を変えて一つの大きな組織になっていったわけですね。来年の暮れには労働界が全部一本化しようとしています。そういう状況の中での春闘でありますが、ここに連合白書を持っておりますが、この連合白書でも消費購買力というものを極めて重視している姿勢がうかがえます。あるいは総評が出している国民春闘白書を見ましても同じことが出されておりまして、そのタイトルはいずれもゆとりある暮らしを求めているわけですね。だから、これだけ経済大国と言われている日本が国民の暮らしにゆとりがない、このことをことしの春闘の特徴としてとらえるべきだと私は思うのです。したがって、労働行政も労働時間の短縮を図ることも含めてゆとりある暮らしにつなげるような政策をとってもらいたい、このように思うのですが、どうでございますか。
  44. 中村太郎

    中村国務大臣 経済大国にふさわしい勤労者のゆとりある生活実現のためにも、それにふさわしいことが実現するよう労使間の話し合いを期待いたしておるわけでございます。     〔野呂委員長代理退席、委員長着席〕
  45. 永井孝信

    永井委員 大臣、期待だけではなくて、積極的にとれる指導性というものを発揮をしてもらいたい、このことを強く要望しておきたいと思います。  その次に、経済大国日本の中において官民を問わず労使関係が極めて異常な状態が多くなってまいりました。昨年も不当労働行為問題をこの委員会で私が集中的に取り上げたことがあるのですが、この労使関係というものは見かけと違って内容的には極めて後進性を持っているものではなかろうかと思うのです。  とりわけ、私は時間がありませんから、ここで集中的に質問を申し上げるのですが、昨年の四月から発足しましたJR、これは国鉄がJRになるその途中の段階で、当時の労務管理が大変な問題になってきました。今もそのことは変わっていないと思うのですが、労働大臣の認識は、労使関係という点においてどのような認識を持っていらっしゃるか、初めにお伺いしたいと思います。
  46. 中村太郎

    中村国務大臣 JRの労使関係につきましては、全体としては安定的な関係の確立に向かっていると承知をいたしておりますけれども、一部組合との間におきましては、出向の問題について労使双方の意見や考え方に不一致があり、紛争が生じておるということを承知をいたしておるわけでございます。
  47. 永井孝信

    永井委員 過日、JR東日本の職場の中で起きた事件について都労委が命令を出しましたね。御存じですね。都労委の命令が出されて、そのまま決着がつけばよかったのでありますが、これが中労委に持ち上げられているわけです。もちろん手続上からいえば地労委があって中労委があるからいいのでありますが、しかし、地労委、中労委のあり方の問題についても、このJRの救済命令に関する現状というものは大変大きな問題を提起していると私は思うのです。  そこで、ずばり初めにお聞きしますが、労働省は労働委員会に対して、これは地労委、中労委、国労委がありますね、こういう労働委員会に対して全面的に信頼をおいていらっしゃるのかどうか、初めにお伺いしたいと思います。
  48. 白井晋太郎

    ○白井(晋)政府委員 お答えいたします。  信頼をおいて運営をお願いしているところでございます。
  49. 永井孝信

    永井委員 当然なことだと私は思うのであります。  そこで、私はお伺いしたいと思うのでありますが、労働問題というのは、直ちに法廷に持ち込むということにはなじみにくい問題がありますね。だから、労使間で起きた問題でありますから、イギリスの労働裁判所ではありませんけれども、そういう労働事案について提訴されたものを調査し、あるいは事情聴取し、円満に解決するための一定の命令を出したり勧告を出したりする、こういう仕組みになっているわけです。そうしますと、地方労働委員会などで扱われた事案の結果については、可能な限りそこで決着をつけるということが本来の筋道ではないですか、どうですか。
  50. 白井晋太郎

    ○白井(晋)政府委員 お答えいたします。  地方労働委員会その他の出した結論は、もちろん先生おっしゃるとおり尊重さるべきものだと思います。しかし、それに対しては不服申し立てその他ができることになっておるわけでございますから、準司法的な手続と申しますか、そういうところで労使それぞれの言い分を十分提出して、そこで審査がされることも、これも制度の一環の上で必要なことだというふうに思っております。
  51. 永井孝信

    永井委員 手続上は言われたとおりなので、私はそのことを否定するつもりはないのです。しかし、最近の労使間の紛争というのは、地労委で一定の結論を出された、それに従わないで中央労働委員会に持ち出す、中央労働委員会で一定の結果が出された、それに従わずに今度改めて裁判所に持ち出す、地方裁判所、高等裁判所、そして果ては最高裁まで行く、こういうケースが随分あるわけです。去年も私がこの委員会で取り上げた広島の第一学習社の労使紛争などの問題は典型的な例ですね。地労委で労働側の主張が認められ、中労委で労働側の主張が認められ、そして地方裁判所で全面勝利し、高等裁判所で全面勝利し、そして最高裁で全面勝利して、実は今なお解決していないのです。一体そういうことでいいのだろうかということを基本的に私は思うのですね。したがって、労働裁判所的な性格を持つ中央労働委員会で問題が処理された場合は、可能最大限それに従うという基本的な姿勢が必要ではないか、こう私は問いかけているわけです。どうでございます。
  52. 白井晋太郎

    ○白井(晋)政府委員 お答えいたします。  そういう制度があって、その制度で労使それぞれの事件が審査されているわけでございますので、先生のおっしゃる意味もわかりますが、それぞれの立場から意見が対立しているということであれば、労働委員会の手続を十分に利用して事件の解決を図るということが必要であるというふうに思いますし、それについて労働省としてとかく見解を申し上げることは差し控えさせていただきたいというふうに思います。
  53. 永井孝信

    永井委員 よく不当労働行為問題で労働省に当該組合から陳情があったりあるいは要請行動があったりいたします。そのときに押しなべて言われることは、いわゆる第三者機関にかかっている問題なので、労働省としてはその推移を見守りたい、簡単に言えばそういうことになっていくのですね。そうすると、労働省は推移を見守るにすぎない。かかった事案について結論が出されても、それになかなか従ってもらえない。何年も何年もその問題の解決に時間を要する。その間に労働者の方は不利益な扱い、不当労働行為を受けたそのことの救済がされないままに結果として時間が過ぎてしまって取り返しがつかないことになってしまう。私はこれは大変な問題だと思うのですね。だから、第三者機関にかかっている問題であっても、労働省として、労働行政を推進する立場から、少なくともその段階で一定の行政指導はなされて当然だと思うのです。  時間がないから走りますけれども、この間朝日新聞の「今日の問題」というところにこういう記事が出ました。後で見てもらったらいいと思うのでありますが、JRの職場のことについて「組合差別とも見える露骨な働きかけを現場管理者らがおこなう例が少なくない。分割・民営をテコにした」ここでは具体的な組合の名前を出しているわけでありますが、「国労切りくずしの構図が、いまだに残っている。」「都労委が救済命令を出した事件は氷山の一角だろう。」このようなことを放置しておいて事故に結びつくようなことがあれば大変だ、経営の安定どころではなくなるという問題を「今日の問題」として朝日新聞指摘をしているわけです。まさにこの都労委の救済命令が出された事案の内容というのは氷山の一角でありますが、これをいつまでも時間をかけて放置をしておく、もちろん片方では中労委がかかわる問題でありますから、中労委がずっといろいろな作業を進めていくのでありましょうが、その間は現状がどんどん固定されてしまう。そのまま労働者側にとれば悪い方へ推移してしまう、こういうことになるわけでありますから、そのことはもう歴史として取り返しがつかぬわけですね。これを私は労働省が手をこまぬいて見ている手はないと思うのです。  そこで、一挙に問題を申し上げますが、最近のJRの特徴的な一つの事柄に、かつては現場の管理者でありました助役、前は助役まで全部管理者でありました。今も管理者であることには間違いないわけでありますが、今度は民営化したということから、この助役も組合に加入する資格を持ちました。そしていずれかの組合に入っているわけです。この助役の行為が大変職場のいわゆる円満さを欠くようなことにつながってしまっているという現実が極めて多い。それは助役に例えば現場の労働者がちょっと来てくれと言われると、助役の命令だから助役のところに行きますね。そうすると、その助役が、おれも組合員だから組合員の立場で君に忠告をするけれどもということで、国労や鉄産労からの脱退をほのめかすあるいは脱退をすることを条件にその人の労働条件のことにまで言及してくる。それに対して労働者が反発すると、今度は助役という立場に返って、君、そんなこと言うのならどこそこに転勤させるぞとかいうことを巧妙に使い分けるわけです。まさに職権乱用なんですよ。これは今JRの職場の至るところで起きているという事実。私の手元だけでも随分と資料が来ています。その資料の中身がすべて一〇〇%私のところに要望してきたとおりだと私は言わないまでも、大方そのことについて間違いない。これはいろいろな職場でそういう事実を私も聞いてまいりました。あるときは労務指揮権を持つ助役として管理者の立場で労働者に対していろいろなことを言う、途端にある場合には組合員という立場に返って、おれは組合員だから不当労働行為じゃないよ、君に忠告しているんだよ、こういうことの使い分けをする。  今労働者は雇用問題、あるいはJRのように非常に幅の広い、地域の広い職場の場合は、家から通勤できないようなところに転勤させられるおそれもある。職種も非常にたくさんに分かれている場合に、全く知らぬ職種に持っていかれたときは大変だ。こういうことが結果として助役の言うことを聞かざるを得ない状況に追い込まれていく。こういうケースは随分あるのですが、こういうことについてどのように労働省は実態を把握され、どのようにお考えになっていらっしゃるか、お聞かせいただけますか。
  54. 白井晋太郎

    ○白井(晋)政府委員 お答えいたします。  今先生いろいろおっしゃった中で、そのケースがどういうケースかということにつきましてはなかなか実態把握が難しい面があるわけでございますが、一般論として述べれば、労働組合の組合員の立場で所属組合の組織拡大等が行われる、まあ労働組合の活動の一環として認められるものであれば、それは正当な行為になるわけでございますが、一方、今先生がおっしゃいましたような違った立場での支配介入というようなものがあれば、不当労働行為の問題になるというふうに思われます。しかし、この問題は労使の問題だけではなくて、労労の問題もあるようでございまして、いわゆる行政機関の立場として公正な立場から介入するのはなかなか難しいというふうに我々は理解しているわけでございます。
  55. 永井孝信

    永井委員 私は介入してくれと言っているのじゃないのですよ。そういう不当労働行為がもう日常茶飯事にのさばっているという事実に労働省はきちっと対応してもらいたい、こういうことを私は言っているのです。どこの組合の味方をしてどこの組合を敵にする、そんなことを言っておるわけじゃないのです。複数の組合がある場合に、労働者が自主的にどこの組合に加入するかは、これは労働者の自由でしょう。全く自由でしょう。しかし、それが本人の自由ではなくて、職権乱用のもとでそこへ行かざるを得ないように持っていかされることまで労使の問題だから労働省はただ黙って見ているということでは、労働行政のあり方を根本的に問われると私は思うのです。  私は具体的な名前を申し上げませんけれども、おとといの晩私のうちへあるJRの職員が参りました。奥さんを連れて参りました。もしその人がどこのだれべえかということを聞きたいというのなら、それは後で申し上げてもいいのですが、いろいろな差しさわりがあるでしょうから、ここで名前は申し上げません。その人が言ったことは、JRに採用されるときに希望調書を出しているわけです。その人は自分のうちから一時間二十分ほど電車で通勤する箇所にずっと長年勤めてきました。しかし、自分のうちの近くにも職場があるわけですから、希望調書でできればその近くに勤務したいということを一行書いておりました。今度いわゆる助役が本人を呼び出して、君の希望調書にこういうことが書いてある、そこへ帰らしてやろうと思うけれども、君が国労にいる限りは、それはできない、国労にいるのならもっと遠いところへ転勤せざるを得なくなる、だからこの際国労をやめるべきではないか、こういうふうに言われた。大分悩んだけれども、私に今まで大変お世話になってきたけれども、この際、私も家族を持っておりますから、国労から抜けたいと思う、了解してほしいとおとといの晩私のうちへ奥さんを連れて参りました。その人は非常に気にしておったのですが、私はそれが一つの現実だと思うのです。  しかも、ある助役が言っていることは、これは西日本のある職場の助役でありますが、どういうことを言っているかというと、今一番大きな労働組合は組織率が六〇%を超えている、七五%を超えればユニオンショップ制をしくことができる、だからそうなったときは君は働けなくなるよ、ことまで言っているのです。ユニオンショップ、オープンショップの関係はあったとしても、ユニオンショップは自発的に労働組合とあるいはその経営者側が相談をして決めるべきことであって、七五%を超えたら君はおれなくなるから、今のうちに組合をかわったらどうかということを言うことは、あらかじめ特定の組合、特定の組合員をJRの職場から排除する目的でユニオンショップ制という問題を持ち出してきているのです。これは今の労使関係を規制している法律の悪用であるし、恫喝であるし、労働組合を特定のイデオロギーにまとめ上げるということを経営者がやっておることになる。こんなことは労使関係の問題として放置できますか、どうでございますか。
  56. 白井晋太郎

    ○白井(晋)政府委員 お答えいたします。  今先生指摘の問題はなかなか事実としてはつかみにくい問題でございまして、一般的には、JR当局に対して労働省としましては不当労働行為等の行為が行われないように常に注意しているところでございまして、個別の問題につきましては、それぞれ労働委員会等の権威ある機関で判断すべき事柄でございまして、労働省としてはそれにタッチするのはなかなか難しいということでございます。
  57. 永井孝信

    永井委員 局長、難しいだけではなくて、労働省としてそういう事実をできるだけ把握する、把握をした上で行き過ぎた労務管理になっていかないように、職権乱用になっていかないように、特定の組合だけを排除することになっていかないように指導するのが労働省の務めでしょう。  例えばボーナスの問題があります。私が今ここに持っている資料を見ますと、ある職場で夏期手当の五%カットということが去年なされました。その五%カットは六十九名がカットの対象になったのですが、複数の組合があって、そのカットされた六十九名はすべて国鉄労働組合員である。私はかつて国鉄時代に総裁以下を呼んでいろいろな質問をしたことがありました。一切差別をしておりません、勤務成績を勘案して公平に扱っています、言葉ではこう答弁をするのですが、しかし、まじめに仕事をしているのに、複数の組合の中で特定の組合だけがすべて成績が悪くて、あと全部成績がいいということになるわけがない。これはこの職場だけではないのです。全国調べてごらんなさい。国鉄労働組合とか鉄道産業労働組合に所属する組合員に集中的にそういうことがなされています。  あるいは職場そのものは建物も土地も経営者側が管理をしている。確かに管理はしているのです。しかし、休憩時間中の労働組合の集会までも経営者の許可がない限りは一切認めない。あるいは休憩所で労働組合が加盟している組合員に自分の組合の機関紙あるいは宣伝パンフを直接本人に渡そうとしたら、それはこの休憩所は他の組合員もいることだし迷惑だからということで、そのビラを回収する、管理者が出てきて取り上げてしまう。一体労働運動はどこですればいいのですか。家へ帰れば全部地域はばらばらです。労働組合に加盟している者が、どの労働組合であれ自分の職場の中で昼休みなどに自由に労働運動ができないところがほかに民間のどこにありますか。私は、そういう事実を労働省が把握をして、行き過ぎたことについてはそれを是正して、とりわけJRは人命を預かる輸送業務でありますから、そんなことが結果として安全上に波及しないように、労働省が適切に指導するのは本来の務めだと思うのです。大臣、どうですか。大臣、ひとつお答えください。
  58. 白井晋太郎

    ○白井(晋)政府委員 先に私からお答え申し上げます。  JRにおきましては、国労等を中心に中央労働委員会に多数の不当労働行為の救済申し立てが出ておりまして、個々の具体的な行為等につきましては、労働委員会の判断に任せなければならないと考えております。  労働省としては、全体としては不当労働行為があってはならないということは、当然指導いたしておるところでございますけれども、基本的には個別の労使関係に介入する立場にないわけでございまして、いずれにしましても、関係労使が十分話し合って早期に円満な労使関係が形成されることを期待しているところでございます。
  59. 永井孝信

    永井委員 私は大臣に政治家としてお答えいただきたいのです。  私は、どの労働組合をよくせよとか、どの労働組合に特別の援助を与えるとか、そんなことを言っておるわけではないのです。残念なことでありますが、JRには今たくさんの組合が存在しています。そのたくさん存在している労働組合の中で、特定の目的を持って、特定の意思を持って経営の側が排除するとか弾圧するとか不当労働行為に走るとかということをしないように経営者の側に求めることがあっていいわけでしょう。単に行政機関が介入すべきではないということだけで事を済ませるわけにはいかない問題を持っておるわけでありますから、ひとつ大臣として、政治家としてお答えいただきます。
  60. 中村太郎

    中村国務大臣 労働省としましては、今労働委員会に係属中の案件につきましては、とかくの発言をすることは公正を欠きますので、従来から発言を慎んでおるのが実態でございます。  一般的に申し上げまして、不当労働行為はあってはならない、してはいけない、こういう基点に立ちまして今までも指導しておるわけでございますけれども、今後におきましても、実態を踏まえながら一層強力な指導を行ってまいりたいと考えております。
  61. 永井孝信

    永井委員 最後に一言だけ。中央労働委員会とかそういうところに百五十何件もかかっておるようでありますが、かかった問題についてはコメントを避けたい。しかし不当労働行為をしないようにしたい。表向きはそうでありますが、少なくとも全国にまたがる国有鉄道から民営に法律によって移したという企業が不当労働行為問題でどんどん地労委に提訴されること自体が異常なんですよ。だから事前の段階で、提訴されないように、そういうことになっていかないように指導するのが労働省の務めではないか、私はこう言っているのです。もう一言だけ大臣からお答えください。
  62. 中村太郎

    中村国務大臣 御指摘の点におきましては、十分念頭に置きながらこれからも指導してまいりたいと考えております。
  63. 永井孝信

    永井委員 まだまだ不十分でありますけれども、具体的な問題については改めて担当の方と話をすることにいたしまして、質問を終わります。
  64. 稲垣実男

  65. 池端清一

    池端委員 まず最初に、労働関係調整法の改正問題についてお尋ねをいたします。  御案内のように、日本電信電話公社は、昭和六十年四月以降民営化されまして、日本電信電話株式会社として新たなスタートを切ったわけでございます。これに関連して過ぐる百一、百二の両国会で関係法案の審議が行われたわけでございますが、労働関係調整法についても一部改正案が提案されたわけであります。その中身は、労働関係調整法第三十八条の公益事業に対する総理大臣の緊急調整、五十日間の争議行為の禁止に加えて、日本電信電話株式会社関係についてのみ新たに附則第三条を設けて、労働大臣による十五日間の禁止措置を課す、いわゆる特例調停制度が新たに設けられたわけでありまして、これはまさにスト権についての二重規制でありまして、まことに不当なものでございます。したがって、この国会審議の中でもこれが大きな論議を呼んだわけでございまして、その結果、附則第四条を追加挿入し、「三年後に、同条の規定について見直しを行うものとする。」こういうふうに修正されたわけであります。その三年後が目前に迫っておるわけであります。この四月一日で三年を迎えるわけでございますが、労働省としては、この問題について現在どのような対応をされているのか、御見解を承りたいと思うのであります。
  66. 白井晋太郎

    ○白井(晋)政府委員 お答えいたします。  今先生指摘の労調法附則第三条の特例調停制度につきましては、経過は先生が述べられたとおりでございまして、この四条におきまして「施行の日から三年後に、その施行後の諸事情の変化を勘案して、見直しを行うものとする。」とされております。労働省では四月一日からの見直しに向けて関係者からのヒアリングを行うなど内部で鋭意作業を進めているところでございます。
  67. 池端清一

    池端委員 昭和五十九年七月十九日の衆議院逓信委員会において、同僚議員の質問に対して、当時の総理、中曽根首相から、この規定により、すなわち、この附則第四条が新たに追加修正されたことにより、与野党合意を踏まえ、三年後に新会社に係る特例措置について見直すことになるが、その際には電気通信事業分野における状況の変化等を勘案し、この措置の廃止も含め見直しを行う、こういう答弁があったわけでございます。本来、私はさきに申し上げたとおり、この制度はそもそもスト権についての二重規制を行うという極めて不当なものである、直ちに撤廃さるべきものだと考えておるものでございますが、施行後の状況についても諸事情の変化を見ると、この特例調停制度はその必要性は全くなくなっていると私は考えるわけでございますが、労働省としてはどのような認識をお持ちになっているのか、その御見解を承りたいと思うのであります。
  68. 白井晋太郎

    ○白井(晋)政府委員 お答えいたします。  特例制度の見直しに当たりましては、今先生御摘の、当時の国会審議の状況や民営化後のNTTの労使関係その他の事情を踏まえまして検討を進めているところでございますが、NTTの状況を見ますと、電話の通信等の基本業務については自動化が図られ、通常の争議行為では直ちに通信の途絶を招くおそれは少なくなっている。労使関係につきましても、もう御存じのとおりでございまして、安定的に推移しているというふうに認識いたしております。また、そのときに問題になりました独占というような問題につきましても、第二電電等の新会社が昨年九月から電話サービスを開始する、まだシェアは低うございますが、そういう競争市場が徐々に形成されていると承知しているところでございます。これらの問題を勘案しながら、いずれにしましても、四月一日以降できるだけ速やかに検討を進めてまいりたいと努力しているところでございます。
  69. 池端清一

    池端委員 検討を進めてまいりたいという話でありますが、検討するのは当然であります。要は結論であります。結論を得るように努力する、こういうふうに理解してよろしゅうございますか。
  70. 中村太郎

    中村国務大臣 この法案が成立するときの経緯につきましては、私も十分承知いたしておりますし、当時の中曽根総理あるいは当時の大蔵大臣の発言も承知をいたしております。本来的には四月以降検討するということでございますけれども、御意見等も十分承知をいたしておりますので、できるだけ早い時期に結論を出したいと考えております。
  71. 池端清一

    池端委員 この問題について監督官庁としての郵政省はどういうようなお考えをお持ちですか。郵政当局の御見解を承りたいと思います。
  72. 品川萬里

    ○品川説明員 お答え申し上げます。  電気通信関係は当省で所管させていただいておりますけれども、先生今御指摘労働関係調整法の条項につきましては、見直しそのものは申し上げるまでもございませんけれども、労働省においてその結論を出される責にあられるわけでございまして、郵政省としましては、その結論についてとやかく申し上げる立場にないわけでございますが、いずれにしましても、先生指摘の総理答弁の方向もございます。したがいまして、郵政省としても、そうした状況を踏まえまして、労働省と関連する必要な情報について交換をするなど対処してまいりたいと考えております。
  73. 池端清一

    池端委員 確かに今お話がありましたように、第一義的には、これは労働省の判断にまつものになると思います。しかし、NTTの監督官庁は郵政省であることは紛れもない事実でございますし、この改正案が審議されたのも、実は社会労働委員会ではなかったのであります。逓信委員会で行われた、百一国会、百二国会。そういう経緯も無視することはできない、私はそう思うのです。  そこで、重ねて郵政省にお尋ねしますが、五十九年十二月七日、参議院の連合審査における当時の左藤恵郵政大臣の答弁、すなわち、我々としては、暫定期間に労使のよりよい関係を続けていただくことで、廃止される方向で検討されることを希望している、こういうお答えがございますが、その立場は今も変わっていないと確認してよろしゅうございますか。  また、ただいま労働省の白井労政局長から答弁がございましたように、通常の争議行為では直ちに通信の途絶を招くおそれは少なく、労使関係についても、民営化後も引き続き安定的に推移しているという認識をしている、こういう答弁をされておりますが、郵政省としては、この問題についてはどういう御認識をお持ちになっておられるか、その御所見を承りたいと思うのであります。
  74. 品川萬里

    ○品川説明員 お答え申し上げます。  第一点の電気通信事業の現況でございますが、先生今御指摘のとおり、事業運営も労使関係も大変良好に推移しておるわけでございます。電気通信の重要性、これは今までにもさるとも劣らないものになっていくわけでございますが、先ほど申し上げましたように、それが労使関係を法においてどのように判断されるかというのは、一義的に労働省で御判断になることでございますけれども、ただ、私どもとしましては、今国会におきましても、小沢官房副長官の方から「見直しの際には廃止の方向で検討する、こういう基本的方針は竹下内閣におきましても変わらないものであると思います。」という政府答弁がございました。私どももこれを十分念頭に置いて労働省と意思疎通を図っておるところでございます。
  75. 池端清一

    池端委員 それでは、この点について会社側にお尋ねしたいと思います。  本日は、参考人として日本電信電話株式会社の朝原労働部長さんにおいでを願っておりますので、会社側としては、この問題についてどのようなお考えであるのか、その点についてお尋ねしたいと思います。
  76. 朝原雅邦

    朝原参考人 お答えいたします。  ただいま労働省、郵政省からも御説明ございましたけれども、NTTといたしましては、従来から労使関係の安定、自主的な労使関係ということで長年努力してまいっておりますし、ただいまでも安定はしておるかと思います。片や、電気通信設備というのは非常に年々自動化が進んでおりますので、こういうストライキ等の事態が生じましても、影響は非常に少なくなってきております。さらに万が一にもこういう事態が起きましても、労使間におきまして労使協定、つまり基本的通信設備については影響を与えないという労使協定も結んでおりますので、我々といたしましては、この規定が廃止されましても、事業運営上は十分対処可能であろう、かように考えておる次第でございます。
  77. 池端清一

    池端委員 今の御答弁ですと、附則が廃止されても、事業運営上NTTとしても十分対処できる、こういうお答えのようでございましたが、そのことは会社側としても四月一日以降この附則第三条は早急に廃止されることを希望している、こういうふうに理解してよろしゅうございますか。
  78. 朝原雅邦

    朝原参考人 お答えいたします。  事業運営している当事者の答弁としてはちょっと限界があろうかと思いますが、状況といたしましては、先ほど御説明したとおりでございまして、事業運営上は十分対処できるということを申し述べておきたいと思います。よろしくお願いいたします。
  79. 池端清一

    池端委員 本来この問題は国会が決めることでございますが、今のお答えを聞きますと、労使協定もあり、労使関係のより安定的発展のためにも廃止されることが望ましいというニュアンスの御答弁であった、私はそのように理解をしたわけでございます。  そこで大臣、先ほどもお答えがございましたが、ちょっとまた重ねてお尋ねをしたいと思うのであります。  竹下総理も当時大蔵大臣でございましたが、五十九年十二月七日の参議院の連合審査におきまして、そもそも立派な労使関係にあるという認識を持ちながらも、万が一に備えての暫定措置である、したがって、より以上の労使関係が続いて、事実上その問題が必要なくなるという環境が生ずることを私は心より期待をしている、当時の竹下大蔵大臣はそのような答弁をなされておるわけでございますが、私は労働大臣も当然同様な認識であるというふうに考えておりますが、その点はどうでございましょうか。所信のほどを承りたいと思うのであります。
  80. 中村太郎

    中村国務大臣 先ほども申し上げましたように、当時の竹下大蔵大臣の発言内容も十分承知をいたしておるわけでございまして、その御意見と私はいささかも変わりありません。私としましては、ただいま先生の御意見やあるいは参考人や郵政省の御意見を踏まえながら、早い時期に結論を出すよう積極的にこれから検討を進めてまいる所存であります。
  81. 池端清一

    池端委員 ただいままでの労働大臣あるいは労政局長、それから郵政省あるいは会社側の皆さんのお答えを聞いておりますと、附則第三条、すなわち特例調停制度は即廃止されても、事業の公共性が損なわれることはないという確信を私はますます強めることができたわけでございまして、もはやこの問題は議論の段階ではないと思うのであります。要は労働大臣、あなたの決断だと思うのでございます。円満な労使関係を維持するためにも、四月一日以降廃止するということで、その廃止の法案を今国会に提出すべきである、こう思いますが、大臣の決意のほどを承りたいと思います。
  82. 中村太郎

    中村国務大臣 今国会に提出をという、そのこと自体ここでお約束はできないわけでございますけれども、いろいろな相談する機関、関係機関もありますので、十分連携をとりながらできるだけ早い時期ということで御理解をしていただきたいと思うわけであります。
  83. 池端清一

    池端委員 いろいろ申し上げましたけれども、私が今申し上げた趣旨を踏まえて対処していただける、そのように理解してよろしゅうございますか。
  84. 中村太郎

    中村国務大臣 大方そういう方向でありますことは間違いないと思うわけであります。
  85. 池端清一

    池端委員 今国会の会期は五月二十五日まででございまして、あと二月余りもございます。期間は十分あるのでございますから、早急に結論を出して、必ず今国会に労調法附則第三条についての廃止の法案を提出していただくよう重ねて強く強く求めて、この問題についてはこれで終わりにし、次の質問に移りたいと思います。  次に、五月四日の休日の問題についてお尋ねをしたいと思うのでありますが、五月四日の休日については何とお呼びするのですか。
  86. 野見山眞之

    ○野見山政府委員 六十年に改正されました国民の祝日に関する法律の第三条におきまして「休日」とございまして、趣旨は五月三日と五日に挟まれた五月四日を休日とするという内容のものでございます。
  87. 池端清一

    池端委員 今労働基準局長からも答弁ありましたように、昭和六十年の十二月の国会で、そこにおられます丹羽雄哉代議士が当時小委員長をしておりまして、私たちも参画をして議員立法で実は国民の祝日に関する法律が改正をされたわけであります。祝日と祝日の間に挟まれた日というんですか、谷間の日ですか、この日を日曜や振りかえ休日ではない限り休日にするという一項が実は新たに加わったわけであります。具体的には五月四日が不定期の特別休日になったわけでございます。これは不十分ながらも海外からの批判が強い我が国の長時間労働解消のねらいも実は込められていたのでございます。ところがこの五月四日、御案内のように、昭和六十一年は日曜日と重なり、六十二年は三日の振りかえ休日となったために、実際に適用されるのはことしが初めてということになるわけでございます。  しかし、この五月四日は国民の祝日ではなくて、いろいろな言い方もありますけれども、国民の休日といったような呼び名もされている。カレンダーでは休日でも、実際事業場では、休みにするかどうかはそれぞれの事業場によって異なる、対応がまちまち。労使協定にない、協約にない、あるいは就業規則にない、こういうことで、実際に法律改正をしても、この日を休日として休むというような企業は、全部の企業ではないんですけれども、この日を出勤扱いにするという企業も大分あるようであります。あるいは指定休日とする、あるいは振りかえ休日とする、従来どおりの出勤扱いにするというような事業場、企業が多いわけでございます。これではまさに仏つくって魂入れず、あるいは画竜点睛を欠く、私はこういうことになると思うのでありますが、今労働省としては、この五月四日を休日とするかどうかという問題についての全国的な実態をどういうふうに把握されておりますか、その点についてお尋ねをしたいと思うのであります。
  88. 野見山眞之

    ○野見山政府委員 五月四日を休日とするということにされました趣旨に沿いまして、私どもとしては、今後連続休暇を普及していく上でも、この普及啓蒙は非常に重要であろうと考えておるわけでございます。  実は、私ども昭和六十年からゴールデンウイークにおける連続休暇の取得状況についての調査をいたしております。例えば昨年についてその調査を見ますと、ゴールデンウイーク中、昨年までは四月二十五日から五月五日、この間に三日以上の連続休暇を実施する予定の企業は九三%という結果を当時得ておりまして、昨年の平均連続休暇日数は四・二日という状況でございました。  ことしにつきましては、五月四日が実質的に初めての休日になるということもございまして、従来の調査では五月四日と関係なしにゴールデンウイーク中の連続休暇というだけでございましたけれども、今回は五月四日をどのような形で連続休暇の中に入れ込んでいるか等も含めまして、現在調査をいたす予定でございまして、ゴールデンウイークの前には、その結果をまとめまして公表いたしたい、かように考えております。また労働経済動向調査におきましては、特に五月四日の取り扱いについて別途調査をする予定にいたしているところでございます。  これらの方法によりまして、五月四日が実質的に初めての休日になるということのために、実はことしからリーフレット等をつくりまして、ごらんのような連続休暇を普及するということで、特にこの下には、ことしから五月四日は休日であるということを明記をいたしまして、関係企業等にも十分PRしながら進めてまいりたい、かように考えております。
  89. 池端清一

    池端委員 いろいろPRされておることは私も承知をしておりますけれども、例えば民間の労働問題調査機関であります労務行政研究所が去年の十二月に調査したところによりますと、全企業九十三社を対象にして調査をしたわけでありますが、約三分の一の三十二社がどうするか未定、こういうふうに答えているという実態もあるわけであります。新たに休日として追加した企業は、その時点で三十三社、指定休日は十八社、振りかえ休日は二社、七社は従来どおり出勤、こういう調査結果も実は出ているわけであります。  こういう指定休日であるとか振りかえ休日では休日増にはならないわけでございまして、六十年の法改正の意義はあくまでも我が国の長時間労働解消への第一歩を踏み出したものでございますので、この法改正の意義がぜひ十分徹底されるように指導をお願いをしたい、このように思うわけでございます。  五月四日までまだ一カ月以上ございますので、すべての労働者にとって休日増となるように、その指導を徹底的に行ってもらいたい、こういうふうに思うのでありますが、重ねてその所信のほどを承りたいと思います。
  90. 野見山眞之

    ○野見山政府委員 この法律の趣旨に沿いまして、国民の働く人たちができるだけ多くこの連続休暇をエンジョイできるように、私どもといたしましても精いっぱい努力をしてまいりたいと考えております。
  91. 池端清一

    池端委員 次に、私先般の三月九日の予算委員会分科会でもお尋ねをしたのでありますが、どうもその内容が具体的でないので、この点について改めてお尋ねをしたいと思うのであります。  それは季節労働者の皆さん方に対する冬期雇用援護制度の問題でございます。これが、経過は省略いたしますけれども、この制度は六十三年度限りとなっておりまして、六十四年度以降どうなるのか、非常に不明でございます。北海道の季節労働者三十万人と言われておりますけれども、この方々は、この制度がどうなるのか、非常な不安を持っておるわけでございます。  この点についてお尋ねをしたのでありますが、明確な回答がございませんでした。改めてこの問題について労働省はどのように対応されるのか、具体的明確にお答えを願いたいと思います。
  92. 岡部晃三

    岡部政府委員 季節労働者の雇用の安定を図りますためには、通年雇用の推進が基本であるわけでございます。季節労働者の通年雇用の促進を目的といたしました通年雇用奨励金制度の活用を図るほか、季節労働者の生活の安定のための基盤整備が進むまでの暫定措置といたしまして、先生指摘のように、昭和六十三年度までの措置といたしまして、冬期雇用安定奨励金制度及び冬期職業講習助成給付金制度を設けまして、通年雇用化の基盤整備に努めているところでございます。  そこで、昭和六十四年度以降はどうなのかということでございまして、お尋ねでございますが、この給付金制度のあり方につきましては、これらの制度の創設の経緯や関係自治体及び事業主の工事の通年施工化への努力、関係労働者の雇用の実態等を十分に検討いたしまして、従来からお答えを申し上げますとおり、誠意を持って対処してまいりたいと考えているわけでございます。
  93. 池端清一

    池端委員 誠意を持って対処するというお答えでございますが、その誠意の中身がはっきりしないのです。いまいちきちっとしたものが出てこない。もちろんこれは財政当局とのいろんな折衝等も残されているから、今余り具体的なことは言えないという事情もわかります。しかし、単に誠意を持って対処するというのでは一体どうなるのか。誠意を持ってやったけれどもだめだった、これではお話にならないわけでございますので、もっと具体的な内容、方向、そしてまた、この問題については北海道でも通年施工、通年雇用というものに向けて、厳しい財政状況でありますけれども、冬季工事については一〇%の増高経費を見るというようなことも昭和六十三年度やろうとしているわけであります。そういう地方自治体の努力なんかというものも、やはり評価をしていただきたいと思うのでありますが、それだけではまだまだ不十分でございますので、もっと具体性のある回答をお願いしたい、こう思うのであります。
  94. 中村太郎

    中村国務大臣 北海道の季節労働者の問題については、先生大変御熱心にいろいろな面で御協力いただいておりまして、ありがたく思っているわけでございます。全国の季節労働者の約半分を占める北海道でございますだけに、私どもも重大な関心を持っておるわけでございます。  雇用の通年化ということは、その前提として公共工事あるいは民間工事等を含めて工事の通年化が図られなければならないわけでございまして、このことのために、まだ一年ございますので、私どもを初め関係省庁あるいは民間関係者、ぎりぎりの線まで努力をしなければいけないというように思っているわけでございまして、そこで前回誠意を持ってということでございますけれども、本当にぎりぎりの線まで努力いたしましても一向に改善されないというような事態を把握の上で、さらに一層強い誠意を持って取り組んでまいりたいと思っております。
  95. 池端清一

    池端委員 さらに一属強い誠意を持ってという大臣のお言葉でございますので、これ以上はお尋ねをしませんが、何とかこの季節労働者の願いにこたえる対策を六十四年度以降も樹立していただきたい。そのことを重ねて強く要望しておきたいと思うのであります。  次に、これまた分科会で取り上げたのでありますが、どうも私の質問の趣旨も理解されていなかったと思うので、また改めてちょっとお尋ねをしたいと思うのであります。  ILO五十号条約、これは特殊ノ労働者募集制度ノ規律ニ関スル条約ということで、五十年前の一九三八年七月二十七日、時の枢密院会議でこれが批准されているわけでありまして、同年の九月八日に登録をされたわけであります。ところが、この条約の適用について、戦後ILOに報告を行った際、本条約の適用を受ける労働者は我が国には存在しなくなった、こういうふうに言っておるわけでございまして、これは私は事実誤認も甚だしいのではないかと思いますが、これは何を指してこういうような報告をしたのか、そのことをひとつ明らかにしていただきたいと思うのであります。
  96. 清水傳雄

    ○清水(傳)政府委員 ILO第五十号条約は、御承知のように、いわゆる土民労働者を募集する場合の規律を定めたものでございまして、国の属地または本土地域の自立していないいわゆる土民の労働者の募集を伴う経済開発計画を承認するときには、関係住民に圧迫の危険が加えられることを避ける、そういうふうな措置をとることを定めたものでございます。この条約が対象としているいわゆる土民労働者は二種類ございまして、一つは、属地の土民、これにつきましては、我が国は本条約を批准いたしました際に、適用を受ける属地として太平洋諸島を挙げておったところでございまして、第二次大戦後、こうした属地は失ったことによりまして、適用を受ける土民の労働者は存在しなくなった旨の報告をいたしております。いま一つは、本土の非自立土民でございまして、これにつきましても、本土地域の非自立土民も存在しない旨あわせて報告をいたしておるところでございますが、この部分につきまして、この結論に達した経緯につきましては、当時の資料が乏しく、つまびらかではございません。
  97. 池端清一

    池端委員 本条約の適用を受ける属地として太平洋諸島を失ったから適用を受ける労働者が存在しない、これは本当に認識不足でありまして、いわゆる我が国は単一民族国家、そういう立場をとった論法であると思うのであります。アイヌ民族の存在を無視したものである、こういうふうに思うものでございます。この際、ILO五十号条約に言う労働者には当たらない、そういう考え方を当然今日的な時点で改めていかなければならない。国会でもいろいろ議論をされている。先般の参議院の本会議あるいは予算委員会等でも、政府は明らかにアイヌ民族の存在というものを認め、独自の言語、文化、習慣、宗教を持った民族であるということも明確に答えておるわけでありますから、そういう立場に立った報告の見直しをすべきである、こう思いますが、その点についてはどうでしょうか。
  98. 清水傳雄

    ○清水(傳)政府委員 この条約は戦前に批准をいたしておる条約でございますし、また政府が最終的な報告書を提出いたしましたのも三十五年も前のことでございまして、我が国においてこの条約の適用の余地がなくなった、こういう結論で報告をいたしておるわけでございますが、その結論に達した経緯等につきましては、さらに検討をいたしてまいりたいと思います。
  99. 池端清一

    池端委員 経緯等ではないのですよ。この報告の内容について再検討を行うべきである、経緯でないのです。この結論、この報告の内容、これは全く事実と相違しているということから、再検討、見直しをすべきであると考えます。その点について、大臣、どうですか。
  100. 清水傳雄

    ○清水(傳)政府委員 いわゆる非自立的な土民が存在するかどうか、こういう点について当時そういう報告を出した経緯については、先ほど申しましたように、つまびらかではない面がございます。経緯等と申し上げましたのは、本条約の今日的な意味合いについてはいろいろな議論もあるところと存ずるわけでございますし、またこの条約の適用対象がどうであるかということにつきましては、この条約の意味、内容を含めまして、それとの対象の範囲とのかかわり合い、ILOとの関係、そうした中で議論になる事柄だろうと思うわけでございまして、そういうことが現時点でILOとの関係では問題が出てきているということではないというのが実情でございます。ただ、私どもといたしまして、先生の御指摘の意味合いということもよくわかるわけでございますが、先ほど申しましたように、報告との関係におきましてはそういうふうな状況にございますので、そういった経緯等についてさらに検討いたしてまいりたい、このように御答弁を申し上げておるところでございます。
  101. 池端清一

    池端委員 今日までの国会における総理なり外務大臣の答弁等も踏まえて、ひとつこの問題について労働省内部においても真剣に見直しの方向で再検討してもらいたいということを強く私は求めておきたいと思います。  次に、この問題に関連をいたしまして、現在、ILO百七号条約の改正問題が起きているわけでございまして、日本政府に対しても八十項目から成るILO当局からの質問等も出されておるわけでございます。このILO百七号条約の改正問題の背景には、少数民族の文化、宗教的伝統、生活様式等を尊重するということが基本でございまして、同条約の基調となっていたものが同化政策であった、この同化政策に各方面から批判が生じてきたことによって、この百七号条約の改正問題というものが今国際的にクローズアップされているわけでございまして、この国際的な考え方の変化について、労働省としてはどのように考えておられるか、その点をお伺いしたいと思います。
  102. 清水傳雄

    ○清水(傳)政府委員 ILOの報告書によりますと、百七号条約の改正問題の背景には次のようなものがあるというふうに述べられておるところでございます。第一は、年月の経過とともに、この条約が基本的に目指しております同化政策について多方面からの批判が生じてきたということ。第二は、この条約の採択以来、原住民なりあるいは種族民が自分自身の利益を保護あるいは促進をする諸機関を自分の手で組織するようになってきたということ。それから、原住民及び種族民も、この条約が極めて時代おくれになっていると感じている。この三点が指摘をされておるところでございまして、労働省といたしましても、この問題を検討するに当たって、こうした報告書に述べられているような背景を踏まえまして、ILOの討議には積極的に対処してまいりたいと思っております。
  103. 池端清一

    池端委員 先般の予算委員会の分科会でも、労働大臣は、本年あるいは来年六月のILO総会へ参加しつつ、この問題は検討していきたい、こういう答弁があったわけでありますが、これでは非常に消極的な態度ではないか。アイヌ民族が我が国の先住民族であるという厳然たる事実を踏まえて、もっと前向き、積極的に対処して法改正に臨むべきではないか、私はこう思うのでありますが、労働大臣の見解を承りたいと思います。
  104. 中村太郎

    中村国務大臣 先般の予算委員会における私の答弁は、百七号条約の改正に消極的に取り組む、こういう意味ではございません。ILO条約の討議は本来的に政府、労働者及び使用者の各代表により総会の場で行われるのがILO活動の本来の姿でありまして、政府としましても、そうした機会を通じまして、条約改正案の不明確な部分を明確にして、積極的かつ適切に対処をしたいということであったわけでございます。  なお、先生指摘のアイヌの人々については、独自の宗教及び言語を有し、独自に文化を保有しているということについては、私は十分承知をいたしているわけでございまして、先生の御主張も頭の中に入れながら、積極的に取り組んでまいりたいと思っております。
  105. 池端清一

    池端委員 時間も経過をしましたので、あと一、二、林業労働の問題についてお尋ねをしたいと思います。  この林業労働が過酷な労働条件のもとで今日労働災害が多発をしております。三十人以下の事業規模では鉱山など地下産業の労働災害発生率をはるかにしのぐ突出した数値をあらわしているのでございます。これは林業の分野での労働安全の問題が非常に軽視をされている、こういうところにも起因をしておりますし、企業及び監督行政のあり方が問われている問題だと私は思います。  この際、事の重大性にかんがみ、企業及び林災協任せの安全指導あるいはパトロール、こういうようなあり方及び現在の林業振動障害防止対策会議の運営のあり方等について全面的に見直しを行って、自治体単位に自治体や労働者代表を含めたきめ細かい防災システムを確立すべきでないか、こういうふうに考えるわけでございますが、ひとつこの点についてお尋ねをしたいと思うのであります。
  106. 野見山眞之

    ○野見山政府委員 林業におきましては、屋外労働あるいは作業の立地場所等々、非常に難しい分野にございまして、その中でやはり災害の発生が他の産業に比べて高いというのは御指摘のとおりでございます。したがいまして、林業における安全対策、これは従来から労働基準行政における重点対象の一つとして取り上げてきたところでございまして、特に昭和五十六年以降は振動障害防止総合対策を三次にわたりまして策定し、予防あるいは補償あるいは社会復帰等の対策を講じてきたところでございます。  このうち、この予防対策等につきましては、単に監督指導のみならず、やはり企業、労働者、そして災害防止関係団体の総合的な協力の中で進める必要があるということで努力をしてまいっておるところでございまして、特に作業管理の推進につきましては、全国三十二地方労働基準局単位に林業振動障害防止対策会議を設置いたしまして、原則として、関係事業主あるいは労働者代表、さらには自治体の代表も参加するという前提で会議の運営をしておりますけれども、なお十分に会議のメンバーの点で徹底していないところがございまして、これらにつきましては、さらに関係団体の参加を求めながら振動障害防止対策の一層の推進に努めると同時に、地方局単位に進められております関係上、それぞれの自治体特有の問題があるとすれば、それらの問題も取り上げながら、さらにきめ細かな会議の運営ができますように努力してまいりたいと考えております。
  107. 池端清一

    池端委員 最後になりますが、いまお触れになりました振動病問題でございます。竹下総理も「ふるさと創生」を力説されておるわけでありますが、そのふるさとでは振動病に苦しめられる多くの林業労働者が後を絶たない。重症かつ深刻化しておるわけでございます。先般、新治療指針なるものが出ましたけれども、労働大臣は、初めに医療や補償の打ち切りありき、こういう姿勢はとらない、こういうことを先般も言われておりましたが、その考え方については、今も変わらないというふうに確認してよろしゅうございますか。  なお、振動病軽快者の雇用対策、これが非常に不十分でございます。これについても、先般の要請に対して、昨年成立をした地域雇用開発等促進法、この考え方を念頭に置いて実効ある対策をとっていきたい、こういうふうに大臣はお述べになっておりましたが、今日もその考え方に変わりはないと思いますが、いかがでございましょうか。念のためにお伺いをしておきたいと思います。
  108. 中村太郎

    中村国務大臣 最初の問題でございますけれども、基本的には前の答弁と変わっておりません。ただ、私どもは、早期に治療、治癒をいたしまして正常な業務に復帰することを前提にいろいろと努力しておる、こういうことでございます。  なお、後段の問題につきましては、御承知のように、林野庁における各種の林業振興施策との連携を図りつつ、通年雇用奨励金制度等の活用によりまして通年雇用の促進に努めるとともに、地域雇用開発等促進法に基づきます地域雇用開発のための施策をこれからも積極的に取り入れてまいる所存であります。
  109. 池端清一

    池端委員 時間でございますので、終わります。ありがとうございました。
  110. 稲垣実男

  111. 草川昭三

    草川委員 草川であります。  午前中に三十分間、本日の質問の中での外国人労働問題をまず最初に取り上げさせていただきたい、こう思います。また午後、賃金問題、また外国人労働問題等を行いたいと思います。  そこでまず、経済企画庁がお見えになっておられると思うので、経済企画庁にお伺いいたしますが、最近、我が国における外国人雇用と国民生活に関するアンケート調査、こういうのが経済企画庁によって行われまして、日本の各民間企業の中における外国人労働に対する期待というものがかなり鮮明にこのアンケートには出ておるやに聞いておるわけでありますが、経済企画庁の方から簡潔に御答弁を願いたい、こう思います。
  112. 宮地治

    ○宮地説明員 今先生指摘調査でございますけれども、これは昨年の十月の後半に、企業、特に上場企業を中心にいたしまして千社、それから一般国民三千名を対象に調査したものでございます。  その結果を見ますと、企業が受け入れたらよいと考えておるような職種を見てみますと、日本人が代替できないような技術あるいは技能を必要とする職種、これが四九・七%の企業が答えております。そのほか、外国人の方が効率的な職種というのが四四・七%ございます。ただ、一方、単純な肉体労働の関係の職種につきましては三・一%にすぎません。職種に制限を設ける必要はないと答えた企業も三五%ぐらいございますけれども、これはほかの調査項目で見ますと、これにつきましては、単純な肉体労働でもいいというようなことではなくて、技術あるいは技能があれば日本人が代替できるような職種でもいいのではないか、そういうような解釈ができるのではないかと思います。  以上でございます。
  113. 草川昭三

    草川委員 今経済企画庁の方からお話がございましたように、今日の国際的な相互依存関係、物と情報、人の国境を越えた移動が非常に増大をしているという立場からのかなり積極的なアンケートだと思うのです。労働省の方はこういうアンケート調査というのはやっておみえになるのですか、お伺いしたいと思います。
  114. 岡部晃三

    岡部政府委員 アンケート調査という形ではございませんが、昨年十二月に外国人労働者問題研究会を発足させまして、その場に労使各側あるいは各業界の代表者等にお見えいただきまして、それぞれの意見聴取を行うというふうな形において各界の意見を聴取しているところでございます。
  115. 草川昭三

    草川委員 その外国人労働者問題研究会の取りまとめが三月の末ごろに一応検討結果が出るという見通しになっております。しかもまた、サミットが近く予定をされるわけで、経済企画庁の方も、経済審議会というのですか、新しいいろいろな展望がそこの中でも出てくるのではないか、こう思うのです。また労働省の方も、今の外国人労働者問題研究会以外にも雇用審議会の答申というのが五月ぐらいにまとまると思っておりますが、今までの対応ではなくて、外国人労働者の問題については何らかの一つの方向というものを出さざるを得ないのではないか、こう思っております。また一方、これは今度の予算委員会等でも議論になっておるわけでありますが、外国人の不法就労者というのがついに一万人を突破をしたという状況が出てきておるわけでありまして、政府の本格的な対応ということが必要ではないだろうか、こう思うわけであります。  そこでもう一度、民間企業のアンケート調査の中で、先ほど来単純労働の問題等についても若干の答弁があったわけでありますけれども、特に単純労働者と有技能労働者、技能を持つ労働者の扱いというのは、ここの中でどうなっているのか。  ついでながら、これは言葉の定義として労働省にも一遍お伺いしたいと思うのですけれども、単純労働というものは定義があるのかないのか。何となくわかったようなわからぬようなことで、単純労働というと、私自身の頭の中には単純労働というのはそれらしき人なのかなという意識はあるのですが、この単純労働というものも言葉として定義の位置づけをどこかでしないと、今後非常に問題が出てくるような気が私はしてなりません。そんなことも含めて、とりあえずこのアンケート調査の中における単純労働者と有技能者の扱いというのはどういうことになっておるのか、経済企画庁にお伺いしたいと思います。
  116. 宮地治

    ○宮地説明員 お答えします。  単純労働につきましては、この調査の定義では、いわゆる一般の建設関係の労働者あるいは店員等という格好でとらえております。技能・技術につきましては、かなり高度な技術あるいは技能を持っている方と定義しておりまして、具体的な職種につきましては定義をしておりません。
  117. 草川昭三

    草川委員 この問題はまた後ほど労働省の方にもお伺いをするといたしまして、もう一問、先ほどちょっと触れましたように、経済計画というものが検討中だと思います。これはサミットに向けていろいろと議論になるところでありますが、今度のこの経済計画については諸外国でもかなり関心が深まっておると思うのです。その中で、日本の外国人有技能労働者の受け入れ等の問題あるいは外国人労働者の受け入れ自由化等の問題についてどのような扱いになるのか、私は一つの将来展望として非常に重要な位置づけになると思うので、それをお伺いしたいと思うのですが、どうでしょう。
  118. 上野達雄

    ○上野説明員 お答えいたします。  本年一月に経済計画でどういった問題を検討するかということの中で、外国人労働力もあわせて経済計画の中で位置づけるという話になりまして、現在幅広い視点から単純労働あるいは有技能労働それぞれどういう立場であったらいいかというような議論をやっておりまして、結論的には、大体五月ぐらいまでに最終的に計画の中で明確にしたいと考えております。
  119. 草川昭三

    草川委員 今五月ぐらいまでに何らかの位置づけをしたい、こういう大きな方向が出たと思うのです。この前、総理がフィリピンを訪問なされたときに、フィリピンの大統領でございますか、日本の中における位置づけをもっと明確にしてもらいたい、あるいは地位を確保してもらいたいというような要請を受けたと新聞報道では言っておるわけであります。これが合法であろうと非合法であろうと、含めて私は申し上げておるのですけれども、労働省は当然今のような大きな流れは御存じでおみえになるわけでありますが、今小池先生が中心になっておる研究会でございますか、これも三月ぐらいに結論が出るということになっているようですけれども、大体どういうような方向でこの外国人労働というものを位置づけていかれようとしておるのか、お伺いをしたいと思います。
  120. 岡部晃三

    岡部政府委員 現在の作業をまず申し上げますと、先ほど申し上げました研究会が三月末を目指しまして報告の取りまとめが進もうかと思うのでございますが、予算が成立いたしますれば、引き続き正式の調査会を労使の方も入っていただいて四月から発足させたいということでございます。  それからもう一つ、先ほどから御議論のございましたように、経済計画におけるこの問題の論議とあわせまして、現在雇用審議会におきまして第六次雇用対策基本計画の改定作業が進行中でございますが、その中におきましても、さらに詳細にこの外国人労働力の問題を御論議いただく、こういうふうなことで、そのような作業の中から一つの方向というものが生まれてこようと思うのでございます。その方向はどのようなことかということでございますが、現在検討中でございまして、具体的な内容につきましては申し上げる段階ではないわけでございます。  それから、一点補足いたしますと、単純労働という言葉はなかなか定義が難しかろうということでございますが、まことにさようでございまして、諸外国の法令あるいは方針等を見ましても、単純労働という言葉を用いてこの外国人労働力のコントロールを行っているところはないやに承っております。むしろどういうような労働者を入れるか、つまり頭脳労働あるいは技能労働、知識労働、いろいろございますが、そういった入れるような類型を明らかにしていく過程において、その反対の極にあるものとして、この単純労働という言葉がむしろ間接的に定義をされるのではなかろうか、このように考えます。
  121. 草川昭三

    草川委員 労働省への質問はちょっとそこで中断して横に置きますが、法務省がお見えになっておられるので、いわゆる不法就労者の問題についてお伺いをしたいのです。もう法務省の方から我が国にいるところの不法な就労者の各国別のデータ等については発表されておりますので、私の方も今ここでは改めて聞こうとは思いません。しかし、聞きたいのは、いわゆる観光ビザ等で入国をする、これは当然のことながら観光ビザですから入国するわけです。ところが、その後日本語学校というのに入学をして、そこで日本語を勉強する、こういう一つの手を使いまして、不法残留をしてしまうという方々が現実には随分我が国の各職場にもいるのではないか、こう言われているわけです。この観光ビザというのは九十日以内でありますから、最近は在留期間十五日間の観光ビザしか発給されてないケースが多いと言われておりますけれども、今私が申し上げましたように、日本語学校への入学手続をとって就学ビザに変更するというのが急増しておる。中にはこういう方々だけでも不法就労者が一万人だと言いましたが、一万人ではなくて五万とも言われる、あるいは男女合わせるとそれをもっと超すのではないかと言われておるわけでありますけれども、法務省の方から、いわゆる隠れみの的な日本語学校の現状というのは一体どういうことになっておるのかお伺いをしたい、こう思います。
  122. 柴田博一

    柴田説明員 お答えします。  日本に日本語を勉強するという目的で入ります外国人、それからただいまおっしゃいましたように、観光の名目で来ましてから日本語学校に入るという形の外国人とかいろいろございますが、日本語学校に在籍している外国人で専ら建設工事の労働に従事している、あるいは風俗営業関係の店舗で稼働している、こういう事実が判明いたしまして、私の方で強制調査をしたことがございます。  数としましては、こういう形で調査をしたのは昨年百四十七名になっております。これは学校がそれを承知しながらしているということも調査の結果わかりましたので、現在では学校側に報告を求め、学校の状態、学生本人の出席状況その他を調査して、定員についても管理をしながら処置しているところでございます。
  123. 草川昭三

    草川委員 外国人の就学生の事前審査というのを法務省はやられてみえると思うのですが、それを六十年の許可あるいは六十一年、六十二年と分けてどの程度学校がふえてきておるのか、あるいは不許可の学校もあるのかどうか、お伺いをしたいと思います。
  124. 柴田博一

    柴田説明員 六十年から申しますと、入国者の数が八千九百四十二名、六十一年が一万二千六百三十七名、六十二年が一万三千九百十五名、このようにふえております。
  125. 草川昭三

    草川委員 そういうように非常にふえてきておるわけでありますし、先ほど法務省の方も調べたことがあるというようなことを言っておみえになりますが、外国人の就学生の受入機関をもう少しまとめて、非常にしっかりとした、いわゆる学校教育法に基づく学校ではないわけですから、これは文部省の所管にはならぬようでございますので、私は窓口としては法務省がこのような外国人に日本語を教えるという関係者の方々を集めて、不法就労等のことのないように何らかの対応を立てるべきだと思うのですが、その点どのような考えを持っておられるのか、お伺いします。
  126. 柴田博一

    柴田説明員 先ほど申しました日本語学校に在籍している外国人の不法就労が問題になりましたのが一昨年の八月から十月にかけてでございます。一昨年の十二月に外国人の日本語教育をしている関係者有志がこういった事情を深刻に受けとめまして、真に日本語を勉強しようとする外国人の利益を守り、またさらに数多くの外国人の日本語の勉強をしようとする者を日本に入れるためには、日本語教育の関係者が結集してこういった人々の受け入れを行うこと、受け入れの体制を整備することが必要であるということで外国人就学生受け入れ機関協議会というものができました。この協議会がその後就学生の受け入れに関する提案とか研修会の開催、さらには入国管理に関する手続の指導などをしておりまして、法務省もこれに協力をしております。
  127. 草川昭三

    草川委員 何回か申し上げますけれども、いわゆる不法就労の隠れみのとしてかかる学校というものが利用されないように厳正な対応をお願いしたい、こういう趣旨でございます。  そこで、もう一回今度は話を労働省の方へ戻します。今いろいろと経済企画庁の方のアンケート調査等の報告も出ております。これは当然労働省の方も十分読んでみえると思うのでございますけれども、私は、外国人労働者問題は、先ほどから出ております単純労働においては認めるべきではないという立場をとっておるものです。ただ、専門的な職業を持つ方々の場合にもっと門戸を開いてもいいのではないだろうかと私は思います。  そこで、きょうは厚生省に来ていただいておりますので、まず、これは午前中にちょっと詰めておきたいのですけれども、今医療現場においては看護婦さんというのは大変不足をしておることは厚生省の万も十分承知の上だと思うのです。私ども地元においてもいろいろと民間の団体から、看護婦の教育が非常に不足をしておるので、国、県、地方自治体の助成ももらいながら、そしてまた定着をするようなことを考えてほしいという陳情を随分受けております。そういう中で、例えば外国人労働、東南アジアの方々に日本に来ていただいて、日本で看護婦さんの資格を取っていただく、そして日本で看護婦さんの資格を取っていただいて一定期間日本の病院で働いていただいて、そしてその資格を取っていただいた上で本国へ帰っていただき、本国の医療に従事をしていただく、これは大変役に立つ方法ではないだろうか、私はこう思うわけであります。しかし、残念ながら現在では、外国人労働者の方々を看護婦として日本で採用するということはできません。この点について厚生省の方の見解をお伺いしたい、こう思います。
  128. 矢野正子

    ○矢野説明員 外国の看護婦につきましては、現在の保健婦助産婦看護婦法におきまして、その第二十一条で看護婦の国家試験の受験資格を決めておるわけでございますが、向こうで技術を学んで看護婦になった者につきましては、認定を行って受験資格を与えているという状況でございます。
  129. 草川昭三

    草川委員 せっかくのことですから、日本の医療機関においては看護婦さんというのは大変不足をしておるというように聞いておりますが、それは間違いございませんか。
  130. 矢野正子

    ○矢野説明員 現在におきましては不足しております。
  131. 草川昭三

    草川委員 それで、労働省の方にちょっと今度は質問を向けるわけですが、医療現場ということについては、もうどこの町に行っても、私ども病気になれば看護婦さんの世話になるわけでございますけれども、確かに若年の方々が不足をしておるということは素人が見てもわかるわけですね。そこで、こういう専門的職業、例えば看護婦さんの場合というように断定をしますと、労働省も答えづらいと思うのでございますけれども、いわゆる先ほど来出ております単純労働という言葉あるいは専門的な職業、そういう余り形にとらわれずに、何か労働省に聞きますと、最近労働省は中間技術者というような言葉を開発をして、開発という言葉かどうか知りませんが、使うようになってきておるようにも伺うわけでありますけれども、要するに、外国人の場合、専門的な職業の人たちに、雇用主に許可制というものを設けたらどうか。雇用主に外国人労働者を雇ってもいいというそういうことを与えたらどうか。あるいはやり方としては、外国人に労働許可制というものを与えたらいいのかどうか。それは私もちょっとわからぬのですよ、そのやり方がどちらがいいのか。外国人がひょこっと来て、日本でひとつ働きたい、しかじかかくかくの私は資格を取りました、日本の企業も足りないから働かせてくれという労働許可をとる方が優先なのか。労働許可はちょっと後に置いておいて、どういう企業に対して外国人労働を雇ったらいいのか、それをまず認めようじゃないか。本当に、隠れみの的に外国人労働というのを日本の労働者よりも非常に低賃金で雇おうという趣旨企業にはもう許可は与えない。これは明確に与えない。また、これは午後に議論をしたいと思うのですが、これは職安法でかかるのか、何法でかかるのかどうかわかりませんが、そちらの方には罰則を厳しくする。だから、労働許可でいくべきか、企業の経営者に対して外国人労働を雇うということを許可をすべきなのか、この際、労働省もある程度の展望を明らかにされたい、私はこう思うのですが、どうでしょう。
  132. 岡部晃三

    岡部政府委員 まず、前段の看護婦に関するお尋ねでございますが、そのような職種を特定いたしましてお答えすることはなかなか困難でございますが、一般的な労働省といたしましてのスタンスは、単純労働力は受け入れないということを基盤に置いて考えてきているところでございます。  そこで、それでは中間的なものはどうかというのは、これはなかなか難しい問題でございまして、ここのところは現在研究会あるいは今後の調査会等においてその辺がだんだんに煮詰められていく一つの大きな分野であろうというふうに考えるわけでございます。いずれにいたしましても、労働力不足の状態に仮にあったといたしましても、安易に外国人労働力の導入に頼るのではなくて、人材の養成、適切な需給調整等によって解決が図られるべきであろうというのは、これは一般論でございます。しかしながら、個々の具体的な国民的ニーズにこたえてどのようにすべきかというのは、これからのまさしく検討課題であると考えるわけでございます。  そこで、仮に今、どういうことに発展するかは別といたしまして、何らかの形でいわゆる有技能労働と申しましょうか、何らかの分野について拡大が図られる場合における労働許可制度あるいは先生のお言葉をかりますれば、企業に対する許可の制度というふうなことを考究すべきではないかという御指摘でございます。現在、研究会等におきまして、そのようなことも議論が行われているわけでございますが、しかしながら、どのような方向であろうとか、どのようになろうとかいうふうなことは、まだ申し上げる段階にはないことを御了承いただきたいと存じます。
  133. 草川昭三

    草川委員 時間がないので、午前中の議論はこれで終わりますが、労働省は率直に言って一番この問題の中心省庁だと私は思うのです。その割には腰が重いと私は思うのです。その腰が重いというのは、先ほど経済企画庁あたりも積極的に民間企業のアンケート調査を出しておりますね。私はたしか決算委員会でもいわゆる男ジャパゆきの非常に劣悪な労働条件の現状を御報告をしたことがあるのです。その当時からもう少し本当に日本の国内における中小零細企業における男ジャパゆきの現場の実態を労働省は把握をしろということを言ってきたわけでございますが、それからも随分時間がたつのです。今のお話だと、五月、答申案が出るから持て、こういうことでございますけれども、これはやはり日本の労働行政にとっても非常に大きな曲がり角になっておりますし、現実にはもう入り込んできてしまっているわけですから、その入り込んできた人をどう法務省は法務省で水際で抑えるのか、あるいは認めるべきものは認めようじゃないかという大体新聞報道等の世論もそういうところに来ておるようでございますので、私が申し上げましたように、例えば看護婦さんのようなそういう職種についてもしそういうことが行われるならば、アジアの友好のためにも役に立つのではないだろうか。ですから、ただ入国を断るというような態度を日本はとるべきではない。せっかく来ていただくならば、相手の国に喜ばれるような雇用という場を提供し、あるいはこちらもそれにお願いをする、こういう趣旨でないと、エゴイズムの日本ということしか残りませんし、孤立化ということになります。そういうことだけを十分考えていただきたい。  では、これで午前中終わりますので、以上で終わります。      ────◇─────
  134. 稲垣実男

    稲垣委員長 この際、内閣提出特定不況業種関係労働者雇用の安定に関する特別措置法の一部を改正する法律案並びに駐留軍関係離職者等臨時措置法及び国際協定締結等に伴う漁業離職者に関する臨時措置法の一部を改正する法律案の両案を議題とし、順次趣旨の説明を聴取いたします。中村労働大臣。     ─────────────  特定不況業種関係労働者雇用の安定に関する特別措置法の一部を改正する法律案  駐留軍関係離職者等臨時措置法及び国際協定締結等に伴う漁業離職者に関する臨時措置法の一部を改正する法律案     〔本号末尾に掲載〕     ─────────────
  135. 中村太郎

    中村国務大臣 ただいま議題となりました特定不況業種関係労働者雇用の安定に関する特別措置法の一部を改正する法律案につきまして、その提案理由及び内容の概要を御説明申し上げます。  我が国の景気は現在のところ拡大局面にあり、最近の雇用失業情勢求人倍率が上昇を続けるなど総じて改善傾向にあります。しかしながら、こうした中でも石炭、造船、非鉄金属等の構造的不況に陥った業種においては、相当程度の雇用調整が行われるなど依然として厳しい状況にあります。また、円高や対外貿易摩擦を背景に、内需主導型の産業構造への転換を図ることが国民的課題となっており、その過程において、産業・職業間の労働力需給の不適合の拡大や雇用調整の増加など各種の雇用問題が発生するおそれがあります。  このため、構造的不況業種の労働者や今後の産業構造の転換の過程において雇用面での影響を受けることとなる労働者に関し、失業の予防を中心とした雇用の安定のための施策を積極的に進めていくことが重要な課題となっております。  政府といたしましては、こうした課題に適切に対処するため、特定不況業種関係労働者雇用の安定に関する特別措置法について、その廃止期限延長を図るとともに、失業の予防対策充実等を図ることとし、その案を関係審議会にお諮りした上、この法律案を作成し、ここに提出した次第であります。  次に、この法律案の内容につきまして、概要を御説明申し上げます。  第一に、法の廃止期限を七年間延長して、昭和七十年六月三十日までとすることとしております。  第二に、特定不況業種に係る事業所以外の事業所のうち、事業規模の縮小等に伴い相当数の労働者が離職等を余儀なくされるおそれがあると労働大臣が認定した事業所を、特例事業所として本法の失業の予防措置の対象とするとともに、下請事業主の範囲を拡大することとしております。  第三に、特定不況業種事業主が作成することとされている現行の再就職援助等計画を、雇用の維持及び再就職の援助のための措置に関する計画、すなわち雇用維持等計画とするとともに、特例事業所の事業主は、失業の予防のための措置に関する計画を作成し、公共職業安定所長の認定を受けることができることとしております。  第四に、事業の転換による雇用機会の確保など関係労働者の失業の予防に特に資すると認められる措置を講ずる事業主について、雇用保険法の雇用安定事業として特別の措置を講ずるとともに、事業主が在職者の職業の転換のために必要な教育訓練を円滑に実施できるようにするため、職業訓練の実施について特別の措置を講ずることとしております。  なお、この法律は、一部の規定を除き、本年七月一日から施行することとしております。  以上、この法律案の提案理由及び内容の概要につきまして御説明申し上げました。  何とぞ御審議の上、速やかに御可決あらんことをお願い申し上げます。  続きまして、駐留軍関係離職者等臨時措置法及び国際協定締結等に伴う漁業離職者に関する臨時措置法の一部を改正する法律案につきまして、その提案理由及び内容を御説明申し上げます。  駐留軍関係離職者及び漁業離職者につきましては、それぞれ駐留軍関係離職者等臨時措置法及び国際協定締結等に伴う漁業離職者に関する臨時措置法に基づき、特別な就職指導の実施、職業転換給付金の支給等各般の施策を講ずることにより、その再就職の促進と生活の安定に努めてきたところでありますが、これら二法は、前者が本年五月十六日限りで、また、後者が本年六月三十日限りで失効することとなっております。  しかしながら、駐留軍関係離職者及び漁業離職者につきましては、今後においても、国際情勢の変化等に伴い、なおその発生が予想されますので、政府といたしましては、現行の駐留軍関係離職者対策及び漁業離職者対策を今後とも引き続き実施する必要があると考え、そのための案を中央職業安定審議会にお諮りして、その答申に基づき、この法律案を作成し、提案した次第でありみす。  次に、その内容を御説明申し上げます。  第一に、駐留軍関係離職者等臨時措置法の有効期限を五年延長し、昭和六十八年五月十六日までとすることであります。  第二に、国際協定締結等に伴う漁業離職者に関する臨時措置法の有効期限を五年延長し、昭和六十八年六月三十日までとすることであります。  以上、この法律案の提案理由及びその内容につきまして、御説明申し上げました。  何とぞ御審議の上、速やかに御可決あらんことをお願い申し上げます。  以上であります。
  136. 稲垣実男

    稲垣委員長 以上で趣旨の説明は終わりました。  この際、暫時休憩いたします。     午後零時三十六分休憩      ────◇─────     午後四時五分開議
  137. 稲垣実男

    稲垣委員長 休憩前に引き続き会議を開きます。  労働関係基本施策に関する件について調査を進めます。  質疑を続行いたします。草川昭三君。
  138. 草川昭三

    草川委員 午前中に引き続きまして、不法就労外国人の問題を二、三まず頭で質問をいたします。  いわゆる資格外活動者及び不法残留者の稼働内容というのが法務省から出ておりますけれども、これは六十二年の一月から六月までの数字であります。その数字を見ますと、トータルで五千八百二、こういう数字が出ております。国別では、フィリピンが四千四百三十六、タイが五百六十一、パキスタンが二百八十八、中国が二百二十九、バングラデシュが百三十九、こういう上位からの国別になります。しかも、その稼働内容というのですか、働いておる内容は、ホステスが三千四百一、土木作業員が八百六十三、ストリッパーが百三十七、売春婦が百二十九、工員、一般工員ということでしょう、四百八十五、雑役が二百七十三、給仕が百四十六、店員が九十六、料理人が四十九、その他二百二十三、こういう内容になっているわけでありますけれども、これらの不法残留者がどういう労働条件で働いているのか。あるいはピンはね、あるいは一部、暴力団等によって稼働をしておるのではないかという非常に深刻な問題が日々の報道でも紹介をされておるわけであります。  そこで、警察庁にお伺いをいたしますけれども、このような不法就労の外国人の就労に対して、暴利で悪質なブローカーがばっこする、こういうものはとりあえずは現在の職業安定法違反、こういうもので取り締まるべきだと思いますが、どのようなお考えか。あるいはごく最近の顕著な検挙事例が明らかならば、二、三報告をしていただきたい。
  139. 五十嵐忠行

    ○五十嵐説明員 お答えいたします。  最近、職を求めて来日する外国人が増加していることに目をつけまして、暴力団や悪質なブローカー等が外国人労働者の就労に介入して暴利を得ている例が見受けられるところであり、警察といたしましては、この種事犯に対して職業安定法、労働者派遣法等を適用して厳しく取り締まってきたところであります。  警察庁に報告のあったものでは、例えば在日フィリピン人ブローカーが関東、中部の工場やスナック等にフィリピン人男女を有料で職業紹介し、紹介を受けたプラスチック工場経営者が下請業者にフィリピン人労働者約五百人を供給していた事件を昭和六十一年十月に愛知県警察が職業安定法違反で検挙した事例、あるいは芸能プロダクションの実質的経営者がフィリピン人の義理の姉にフィリピンでタレント養成所を経営させまして、多数のフィリピン人女性を芸能ビザで入国させた上、ホステスとしてスナック等に派遣していた事件を本年一月に神奈川県警察が労働者派遣法違反で検挙した事例などがございます。  警察といたしましては、今後とも悪質ブローカー等が介在する不法就労事犯に対しましては、厳正な取り締まりを行ってまいる所存であります。
  140. 草川昭三

    草川委員 今警察庁から非常に厳しい態度の明快な答弁がございました。  そこで、今度はこれを労働省が受けていただいて、かかる外国人労働者の不法就労に対して雇用主なりあるいは手配師等に罰則を科すべきであると思うのでございますけれども、その点はどう考えておられますか。
  141. 岡部晃三

    岡部政府委員 不法就労に当たる外国人労働者の就職をあっせんする仲介者に関しまして罰則を考えるべきではないかという御趣旨でございます。この点は非常に重要と申しますか、外国人労働者問題を処理するに当たりまして最も重要なポイントでもあろうかと思うわけでございます。現在、研究会におきまして、その点も含めまして実効的な対応策を検討されているという状況でございます。  また、あわせまして、雇用主そのものについてどうであろうか。雇用主に対する罰則の問題も法制化の問題があり得ようかと思うのでございますが、これは各国、西ドイツ、フランス、米国、罰則規定が設けられておるような諸外国の情勢にもございまして、この点につきましても検討すべきポイントであろうかと考えております。
  142. 草川昭三

    草川委員 私は、現実に外国人労働者を雇っている雇用主というのは、中小零細が多いという実態は十分承知した上での発言をしておるつもりでございます。しかし、いかに中小零細企業が厳しい条件にあるといって、やみの外国人労働者、しかも雇用するには当然差別という意識がなければ雇用できない環境にあるわけでありますから、それを安易に認めるべきではない。それは必ず将来大きな国際的なトラブルに巻き込まれることになるという立場から、厳正な対処をお願いしたいと思うわけであります。  そこで、この種のものについて、時間がございませんので、最後に労働省にお伺いいたします。  今不法残留者の稼働内容という中で、いわゆる男ジャパゆきの問題は別にいたしまして、いわゆるストリッパーだとか売春婦だとかということを法務省の統計資料で私が申し上げました。随分いかがわしい状況の中で、いわゆるジャパゆきさんというのが日本国内に来ておるわけでありますけれども、これを労働省の婦人少年局というものはどういうふうに受けとめているのか。外国人が日本に来て売春行為をするということだからそれはいいのか。国際的な差別をすべきではないということは当然ですが、もっと婦人少年室というものは積極的に今の日本のかかる現状というものを事前に調査をするあるいは売春対策として、これは総理府なり厚生省なり労働省なり関係省庁があると思うのでございますけれども、そういうところとよく連絡をとられて警鐘を乱打する。今新聞等でよく報道されておりますが、現実にはフィリピンの女性の方々に対して、町のボランティア活動、いろいろな活動があるわけでございますが、そういう方々が駆け込み寺をつくって、それで相談に応じてみえるように聞いております。そういうように、そういう方々に任せっきりでいいのかどうか。これもどこかの外人記者がそういう実態をレポートしたとするならば、世界最大の工業国家であるところの日本の現状は一体どうなんだろうかという国際的な批判を起こすことも間違いないのではないか、私はこう思うのです。  そういう意味で、売防法等のかつてのいろいろな経験があるわけでありますから、労働省としてかかる実態についてどう対応するのか、お答え願いたいと思います。
  143. 佐藤ギン子

    佐藤(ギ)政府委員 売春のおそれのある女性ですとか保護更生を望む女性につきましては、一般には婦人相談所、婦人保護施設等において必要な相談、指導、あるいは収容、保護等が行われているものでございます。  売春問題につきましては、労働省といたしましても、社会福祉、法務、警察、教育など関係機関と緊密な連絡をとりまして、毎年社会の風紀、環境を浄化する運動というのをいたしているわけでございますけれども、今後ともこの運動を中心に売春防止、社会環境の浄化のための啓発活動を粘り強く推進していきたいと考えております。  なお、御指摘の問題につきましては、婦人少年室等におきましても御相談があれば積極的にこれに応じまして、警察、法務等関係行政機関と十分御連絡をとりまして、人権等について、そごのないように注意をしてやっていきたいと考えております。
  144. 草川昭三

    草川委員 おっしゃることはわかりますけれども、現実に日本で不法残留をしている方々は外国人の方でありまして、そんなに日本の内情について熟知をしているわけではありません。新聞等でも報道されておりますように、暴力団から逃げるときにかなり苦労して逃げられるとかいうこともあるわけですから、労働省がきちっと、各県にもいろいろな出先があるのですけれども、そこに来れば相談に乗るというような条件ではないことは事実であります。  だから、私が言うのは、もう少し各地区で、警察庁なり入管なりあるいはいろいろな懇談会などを活発に開いていただいていろいろな事例研究をしていただくとか、あるいはどこかに立て看板をして、英語なら英語あるいはその他の外国語で、困ったことがあるならばどこどこにいらっしゃいとかいうくらいの積極的なPRくらいはされることが大切ではないだろうか、私はこう思うわけであります。  これは難しいことですけれども、日本のいろいろな役所がありますけれども、警察庁は取り締まる方ですが、しかし外務省にもこれはお願いをして、ビザを発給するときに、そういうことがないようにというような運動をしなければいかぬ場合もあるでしょうし、もう少し総合的な対応ということを考えられて、今後の対処をしていただきたいということを要望して、この問題は終わりたい、こういうように思います。  次に、賃金の件に入っていきたいと思います。  いよいよ春闘が始まるわけでございます。春闘というのは非常に国民的な影響力があるわけでございまして、私どもも大変な関心を払うところであります。しかし、春闘というのは、あくまでも労使関係が基礎でございまして、労使がいろいろと客観的な条件を判断をしながら一定の結論が出るわけでございますけれども、それはそれといたしまして、まず最初に経済企画庁にお伺いいたします。  経済見通しによりますと、雇用者所得の対前年度の伸び率というのが昨年は四・四%だったと思います。雇用者所得の伸びと賃上げとは必ずしも一致をいたしません。それは私ども十分承知をしておりますけれども、それはそれといたしまして、これも重要な数字だと思うのでお伺いをするのですが、六十三年度は四・四から五・二に上がっておるわけであります。これはどういうような背景から四・四から五・二に上昇しているのか、その客観点な背景をお伺いをしたい、こう思います。
  145. 柴崎和典

    ○柴崎説明員 お答え申し上げます。  毎年の政府経済見通しにおきまして雇用者所得の推計を私どもいたしておりますが、六十二年度の数字あるいは六十三年度の見通し、先生指摘のとおりの数字でございます。私どもこの雇用者所得の推計を行う際に、主としましてマクロ的に大きな指標、例えば経済成長率がどうなるかあるいは労働需給がどういう状況になるかあるいは消費者物価がどういうトレンドをたどるか、このような点を中心にいたしまして、いわばマクロ的に推計をいたしておる、かような方法でございます。  それで、六十三年度が六十二年度に比べまして多少、先生指摘の数字に明らかなとおり、雇用所得の伸びが高まるのではないか、かように私どもが見ておる理由は、まず先ほど申し上げたような、この指標のどれをとりましても少し高目というのが考え得るのではないか。例えば経済成長率ということでいいますと、昨今の景気状況は拡大局面にございますし、労働力需給という点につきましても、かなりの改善が見られつつある、こういうような最近の状況を踏まえまして、先ほどのような雇用者所得の伸びを推計いたしたわけでございます。
  146. 草川昭三

    草川委員 日銀さんに来ていただいておりますので、日銀の「情勢判断資料(六十三年冬)」でございますが、「わが国金融経済の分析と展望」これがことしの一月に出ております。これを拝見いたしますと、「物価動向の展望」の中で「今春のベア率は、前述のとおりこのところ労働需給が急速に引締まりに向かっていることや、企業収益の改善傾向」云々ということがございまして、「昨春(日経連ベース、十三・四%)と比べ高まる方向にあると見ざるをえない。」という、これも明確にことしの賃金値上げ、いわゆる春闘というのですか、ベア率という表現になっておりますが、ベア率は昨年に比べて高まるという表現がございます。この点について日銀としての背景をお伺いしたい、こう思います。
  147. 若月三喜雄

    ○若月参考人 お答え申し上げます。  これまでの各年のベア率の推移を見ますと、もちろんそのときどきのいろいろな情勢によりまして変化をしているわけでございますが、これを経済環境との関連でとらえますと、主として物価動向あるいは労働需給、それに企業収益など、こういったものとの関連が非常に深いように思われるわけであります。そうした観点から最近の賃金をめぐる環境を見ますと、まず物価でございますが、これはこのところ大変落ちついているわけでございます。しかし、景気が内需中心に非常に力強い拡大を続けているということから、雇用情勢は急速に改善を示しておりまして、したがいまして、労働需給も引き締まりの方向にございます。また企業収益も全体といたしましては増益の基調でございます。  そこで、ことしのベア率ということでございますが、もとよりこれは先ほど先生が御指摘のとおり、労使の間で自主的に決定をしていくというものでございましょうが、こうした物価、労働需給あるいは企業収益というものが一つの背景になるかと思います。もちろん私どもから具体的に予測めいたことを申し上げるのは、ただいまのような自主的な決定ということからいたしまして差し控えなければならないと思いますが、先ほど申しましたような経済情勢から判断いたしますと、ことしのベア率というのは、程度はともかくといたしまして、、昨年よりはどちらかといえば高目の方向で決まっていく、そう見るのが自然なように思われるわけでございます。  繰り返しになりますけれども、もとよりこうした情勢を踏まえまして、労使の自主的な決定にゆだねられるべきものでございますので、私どもといたしましても、経済の実態に見合った形で決定が行われる、そういうことを期待している次第でございます。
  148. 草川昭三

    草川委員 もう一問日銀さんにお伺いしたいのですが、今もお話がありましたように、日銀としては毎年ベア率の予測をやっておみえになるわけでありますが、経済企画庁の予測率もありますし、民間のいろいろな各種団体の予測率もありますが、春闘の妥結率と日銀さんの予測数字というのは非常に今までよく当たるわけですね。当たると言うと大変恐縮ですが、非常によく当たっているのですよ。それで私はきょうわざわざおいでを願ったわけでありますけれども、今お話がございましたように、いわゆる労働需給あるいは企業収益、その他物価上昇、かけるいろいろなことがあると思うのでございますけれども、そういう上に立って、ことしは数字は別としてプラスアルファではないだろうか、今こういう御答弁だったと思うのです。しかし、ことしというよりも、今の景気というのはかなり今後持続するのかしないのかというのも、ことしの春闘の妥結率には影響するのじゃないかと思うのでございますが、将来の景気動向を少し御説明願い、あるいはまた過去の日銀さんの率直な見通し論が大変うまくいっておった最大の理由は一体何か、これもちょっと言わずもがなのことになって恐縮でございますが、ついでですから御説明を願いたい、こう思います。
  149. 若月三喜雄

    ○若月参考人 ただいま予測につきまして大変精度が高いのではないかというお褒めの言葉をいただいたわけでありますが、先ほど申しましたように、大変微妙な時期でございますので、私どもといたしましては、むしろ予測めいたことは申し上げない方がいいのではないかということで、先ほど御指摘のありました私どもの「情勢判断資料」にもそういったことはむしろ避けているのでございまして、その辺の事情は御賢察いただきたいと思います。  先生の御質問の私ども景気動向をどう見ているかという点でございますが、私ども、現状は景気は内需を中心に非常に力強い拡大を続けている、そのように判断しております。この点は私どもが四半期ごとに行っております企業からのアンケート調査、私どもはこれを短期経済観測と呼んでおりますけれども、この調査結果からもうかがわれるところでございます。先般二月に行いましたこの調査結果によりますと、企業の景況感というのは非常によくなっておりまして、非製造業は引き続き前からいいわけでありますが、製造業もこれまでの過去二回の景気拡大期、これを上回るような好転ぶりということを見せているわけであります。また、先週発表されました、これは企画庁から発表されましたGNP速報を見ましても、十―十二月の実質成長率は、速報ベースで年率七%ということで、その前の七―九月期八・四%に続きまして相当高い伸びとなっていることは御高承のとおりでございます。  こうした私どもの短期経済観測あるいはGNPの速報値あるいはそのほかの経済指標、こういったものをあわせますと、先行きにつきましても、よほど大きな環境の悪化がない限り、当面内需中心の力強い景気拡大の持続が十分期待できるのではないか、そのように考えている次第でございます。
  150. 草川昭三

    草川委員 どうもありがとうございました。もうこれで結構でございます。  そこで、今のような経済の見通しのお話がございました。労働界のいろいろな要求等を見ておりましても、昨年に比べると実質一%なり一%を超す要求、そういういろいろな数字も出てきておるわけでございますが、問題は、私が今から取り上げたいのは、単なるベースアップの見通しではなくて、日本の各企業あるいは産業あるいは職場の労働者の間でどのようにベースアップが配分をされていくのか、あるいはまたどういう産業構造の方々に分厚く、手厚く賃金というのが配分をされていくのか、その一つ具体例をお伺いいたしますが、いわゆる格差が増大をするのではないかという心配の立場からの質問でございますけれども、総務庁がお見えになっておられますが、昭和六十一年の家計収支を勤労者世帯で年間収入を五分位階級別に分けて見ると、第一分位と第五分位との格差状況というのがどのように変化しておるのかをまずお伺いしてから質問をしたいと思います。
  151. 伊藤彰彦

    伊藤説明員 御説明いたします。  総務庁が毎月実施しております家計調査の結果によりますと、勤労者世帯の年間収入、五分位階級の収入の最も低い第一階級の平均実収入に対する収入の最も高い第五階級の平均実収入の比率は、もう既に昭和六十二年の数字も出ておりますので、昭和六十二年の数字を使わせていただきますと、昭和五十五年平均では二・六五倍でございましたが、六十二年平均では二・八九倍となっております。
  152. 草川昭三

    草川委員 今答弁がありましたように、二・六五から六十一年で二・八七、六十二年で二・八九、こういう形で開いてきておるわけであります。  そこで、先ほど経済企画庁の方から答弁をいただきましたが、もう一度経済企画庁にお伺いをいたします。このような格差が開いてきておるという事実をどのように受けとめられるのか、これは日本の国民経済全体の立場からどういう判断をするのか、お伺いをしたいと思います。
  153. 川名英子

    ○川名説明員 お答えいたします。  家計調査によりますと、六十二年の勤労者世帯の家計動向は、実収入は確かに高所得層で高い伸びを示しております。しかし、これは世帯主の勤労収入が高い伸びを示したということではなくて、妻の収入とか事業収入、こういう世帯主の勤労収入以外のものの収入が伸びたことによって起きているものです。
  154. 草川昭三

    草川委員 経済企画庁の方からは、必ずしも格差が私が指摘をするような形での格差ではないというような御答弁があったと思うのでございます。  では、今度は労働省にお伺いをしてみたいと思うのですが、労働省企業規模別常用労働者の賃金格差を把握しておみえになると思うのです。この企業規模別、これはいろいろな規模があるわけでございますが、例えば四十五年ぐらいからの分でもいいのですが、どれとどれを比べていただきましょうか。私が申し上げる数字の出所は労働省の毎月勤労統計調査という資料ですが、一番小さい零細企業の五人から二十九人の賃金水準と五百人以上のところとを比べてみます。五百人以上を一〇〇とする場合に、製造業昭和四十五年では六二という格差ですね。それが六十二年の方へいきますと五七というように格差が開いてくるわけです。これはこれでいいと思うのですが、念のために労働省に確認をします。
  155. 甘粕啓介

    ○甘粕説明員 今ちょっと手元に資料を持ってございませんけれども、大体先生の言われたような数字ではないかと思っております。
  156. 草川昭三

    草川委員 これは労働省の数字ですけれども、五人なり二十九人の小さな零細企業では明らかに収入がだんだん開いてくる、格差が開いてくるという事実は、私の実感でもわかるわけであります。日本の労働者全体を見てみて、大きい会社だから給料が高い、中小零細だから給料が安い、私はそれは必ずしも当然だというわけにはいかないと思うのです。賃金というのは、本来は働く意思があってそれなりに一生懸命やれば、労働の質と量によって変化があるのは当然です。しかし、企業規模によって格差があるというのはおかしいわけです。どこかでその構造にはゆがみがあるわけです。これは一つは中小企業対策でもあるかもわかりませんが、本来は一時間当たり千円なら千円、二千円なら二千円というのは、電気代、水道代と同じように、どこで働こうと労働の単価は同じであってしかるべきだと思うのです。たまたま質が高ければ、それに上乗せをするということがあってしかるべきだという賃金論を私なりに持っておるわけでございますが、このような格差が増大をしていくという方向について労働省はどう思われるか、これはひとつ労働大臣からきちっと一回答えていただきたいと思います。
  157. 中村太郎

    中村国務大臣 お説のように、規模間の格差、とりわけ高度成長期におきましては、賃金など格差が縮まってきたわけでございますけれども、最近に至りまして御指摘のような傾向にあることは事実だと思うわけでございます。これは労働行政の中におきましても大変な課題でございます。したがいまして、労働省としましては、この格差縮小のために、従来においても中小事業主等に向かいまして、人事労務管理の改善とかあるいは最低賃金法の適正な運用等を通じまして指導してきたところでございます。今後におきましても、環境整備のために積極的な努力をなさなければいけないというふうに感じておるわけでございまして、これからも懸命な努力をする所存であります。
  158. 草川昭三

    草川委員 格差が増大をすることは好ましくない、こういう答弁でございますが、いずれにいたしましても、単なる親会社、子会社、下請という関係でいきますと、残念ながら格差は増大せざるを得ない方向にあると思うのです。そういう段階の中で、労働賃金の格差縮小のためには行政上のいろいろなリードというものが必要になってくるのではないかと私は思います。ぜひそれを具体的に展開できる対応を求めていきたいと思うわけであります。  それから、これも労働省に聞くのがいいかどうか若干問題があるわけでありますけれども、日本が高度成長をした大きな支えとしては、一つは終身雇用というのが前提にあり、終身雇用を裏づけするのに年功型賃金というのがあったと思うのです。ところが、この年功型賃金というのが、いわゆる高度成長段階で初任給がどんどん上がってくるために壊れてくる。そして一部平準化する。若年層と高齢者層との対立が始まる。それをいろいろな経営手法の中で何とか吸収をしてきたわけであります。それが今日の状況の中で、先端技術がどんどん参加する、あるいは事務所のOA化というものがどんどん進展をして、またそれが壊れてきておるわけでございますが、一体日本は、このよき伝統であった年功型賃金というものを今後持続するような方向でいくのか、あるいはヨーロッパ型、アメリカ型のような職種、職能別の形の賃金に移行するのか、我々としても非常に難しい判断を持つわけですが、全国的な立場に立つ労働省としてはどういう御見解を持っておみえになるのか、お伺いをしたいと思います。
  159. 甘粕啓介

    ○甘粕説明員 ただいま先生のお話にありましたように、技術革新あるいは高齢化、国際化、企業の経営多角化、いろいろな経営環境の変化の中で能力給を導入するというような考え方、意識というのは次第に強まってきております。  ただ、実態的にそういう中で運用等がどういうふうに行われているかということになりますと、私どもの調査の関係で見てまいりますと、賃金というのは学歴の問題とか勤続年数の問題とかいろいろありまして比較が難しいわけでございますが、男子の高校卒あるいは男子の大学卒という格好で学歴別に見てまいりますと、五十―五十四歳がピークで、その賃金カーブというものにつきましても、それほど大きな変動はないというふうに統計的には出てございます。これは背景的には、定期昇給制度というものがほとんどの企業で普及しておりまして、そういう定期昇給制度のもとでは、やはり年功賃金体系が維持される。それからもう一面、給与体系の中では属人給か能力給かというふうな議論がございますけれども、基本的には総合給的な格好で併用というふうな格好での給与体系の是正があるということで、実態的には年功賃金カーブはそれほど変わっていないのではないかというふうに認識しているところでございます。  なお、こういう国際化とか経営環境の変化の中で、非常に特定の職種等につきまして、そういう人たちを部外から採用する、内部養成できないというふうな事例等ございますけれども、こういう人たちにつきましては、従来の枠を外した年俸制度とかいうふうな格好の中で採用するとか、一時金を支給するとかいうふうな格好で基本的な年功賃金体系につきましてはかなり維持されるのではないかというふうに認識しているところでございます。
  160. 草川昭三

    草川委員 大変難しい議論でございますから、私自身も別にどうあるべきだという提案を持って質問したわけではないので、労働省の見解をこの際とっておこう、こういうつもりで質問したわけであります。  そこで、私がなぜそういうことを言ったのかといいますと、今お話が出ましたように、特殊技能者というのは大変今不足をしておるわけです。ですから、スカウトというのはもう活発に行われております。大企業同士の間においても、産業スパイとは申し上げませんけれども、引き抜きというのは大胆でありますね。過日、私、人材派遣業の人とお話をしましたら、人材派遣業は一切名簿を公開しないというのですね。なぜ人材派遣業が名簿を公開しないかというと、優秀な技能者というのが家庭でどんどん勧誘をされて、貸金がどんどん上がってとても対応できないから名簿は全部非公開だというふうなお話を聞きました。有能技術者の引き抜きというのはそこまできておるのかということがわかったわけであります。  そういう非常に不足をしておる有能技術者に対して、日本の行政としての職業訓練は的確であるかどうか、労働省の職業訓練というのはかなりの予算を持っておりますし、世界的にも有能ないろいろな職能訓練をやっておりますけれども、十分現場の需要に応ずることができるかどうか、まずその自信のほどを労働省職業能力開発局の方からお伺いをしたいと思うわけです。
  161. 野崎和昭

    ○野崎(和)政府委員 先生指摘のとおり、技術革新の進展に対応した職業訓練というのは非常に重要な問題でございまして、私どもも最重点にしているところでございます。  具体的には、生涯能力開発給付金制度によりまして、事業主が企業内の教育訓練でそういったことを進めていただくことにしておりますほか、公共職業訓練につきましても、一般の職業訓練校につきまして訓練用のME機器の計画的整備を図りながらME関連の訓練料を拡充するとか、特に不足しております情報処理の技能者を養成するために、すべての職業訓練短期大学校に情報処理科を設置するとか、あるいは第三セクターで情報処理技能者養成施設を運営していただくとかということをいたしております。  さらに、在職労働者につきましても、中小企業の中堅技術者の方々が技術革新に対応できますように、六十五年度開設をめどに高度技能開発センターの建設を進めているところでございます。     〔委員長退席、高橋(辰)委員長代理着席〕
  162. 草川昭三

    草川委員 通産省お見えになっておられますので、通産省にお伺いをいたします。  通産省は最近情報処理技術者試験制度というのを発表しております。いわゆる情報処理大学校というのですね。大学という名前は使っておりませんけれども、情報処理技術者試験制度というのを、これも相当な予算を出しまして、各種の専門学校に委託をしておるわけでございますが、これをつくる経過あるいは概要を簡単にお答え願いたいと思います。
  163. 近藤隆彦

    近藤説明員 御指摘の情報大学校構想でございますけれども、六十二年度から新しく発足させました制度でございます。情報処理技術者の教育を質的、量的に拡大していくということにつきましては、大変に重要でかつ緊急の課題だと思っておるわけでございますけれども、この制度は、産業界のニーズを踏まえた情報処理技術者教育ができるような環境をつくるということと、同時に、地方におきまして情報処理技術者教育ができるような環境をつくりまして、地方の情報化というものに一つの手だてを与えたいということで発足したものでございます。  制度の概要でございますけれども、中央に中央情報教育研究所というものを設置しました。これは従来から情報処理技術者教育につきましていろいろな研修とかあるいは調査研究をしておりました日本情報処理開発協会の情報処理研修センターというものがございましたけれども、これを抜本的に改組しまして、新しく中央情報教育研究所というふうにしたわけでございます。  それで、ここにおきまして情報処理技術者教育に関しますいろいろな調査研究をしますと同時に、標準的なカリキュラムの開発研究でありますとか、あるいは教材の研究開発ないしは普及あるいは先生方、インストラクターの研修をするといったこと等でありまして、中央におきます中核的な機関としての事業を開始したわけでございます。同時に、地方との連携をとりまして、一緒に情報処理技術者教育の質的な向上を図ろうということで、地方におきます優良な情報処理技術者の教育機関、主として専門学校でございますけれども、一緒にこういった仕事をしていくという意味で、連携機関としまして通産省から委嘱をしまして、今言いましたような教材を実験的に使ってその評価をしていただきまして、もっといいものにしていくとかあるいは先生方の研修を実行していただくとかということを考えておりまして、この三月一日に百五の学校を通産省から委嘱した次第でございます。  このように、中央と地方と一体になりまして、情報処理技術者教育の質的な向上を図りたいということで、既存の教育機関の最大限の活用を図りまして、情報処理技術者教育のレベルを上げていきたいという趣旨でございます。
  164. 草川昭三

    草川委員 時間がないので、私が言いたいことを労働省ちょっと聞いておってもらいたいんですが、今通産省の方は情報化のための人材が非常に不足をしておるので、独自でやるというよりは、専門学校を通じてやる。需要が非常に多い。これは先ほど労働省の方も答弁で、情報処理の人材はつくりたい、こう言っておみえになるわけですね。同じ立場なんですが、もう少しうまくやれないのかどうか。しかも情報処理の有資格者は通産省が持っておるわけですね。一級なり二級なりというのはやると言っておみえになるわけです。労働省の方は職業訓練でどういう人材をつくろうとしておるのか。卒業した者が通産省の言うようなところへすぐ供給できるのかどうか。私はそこら辺の総合的な職業訓練というのが今非常に不足をしておるのではないかということが言いたいわけですよ。その点はどうでしょう。
  165. 野崎和昭

    ○野崎(和)政府委員 先生指摘のとおり、情報処理技能者は不足はしておりますけれども、また逆に需要もあり、かつそれに従事したいという労働者側の供給もあるということでございますので、すべて職業訓練という形で行うことは適当でないというふうに思っております。そういう意味で、民間の教育訓練機関との競合をしないように十分注意しながら、私どもの公共訓練施設等の設置も進めているところでございます。  なお、私どもの訓練の目標としておりますのは、通産省の方の資格で申し上げますと、第二種の情報処理技術者のレベルを目標として訓練をしているところでございます。
  166. 草川昭三

    草川委員 職業訓練の問題はまだちょっと質問が足りませんけれども、時間があと五分しかございませんので、建設省が来ておみえになると思うので、日本勤労者住宅協会の問題を質問したいと思うのです。  いわゆる労働組合自身がみずからの福祉活動のために住宅をつくろうという運動は当然のことでございますし、そういういろいろな努力をすることは当然であります。私自身もそういう経験があるわけでございますが、しかし、日本勤労者住宅協会の中には長期にわたり土地を保有している例がございます。例えば五年以上放置をされたままの土地があるわけでございますが、ひどいのになりますと、四十八年以降五ヘクタールのような大きな土地がそのまま放置をされている。しかも、中を見ると、取りつけ道路が小さいために袋小路の土地を買っておる、そういう事例がございます。私は非常に問題だと思うのでございますが、ひとつ建設省住宅局の方から日本勤労者住宅協会の土地保有についての問題点をお答え願いたい、こう思います。
  167. 荒田建

    ○荒田説明員 お答えいたします。  日本勤労者住宅協会は、勤労者の蓄積された資金を活用いたしまして、勤労者向けに安くて良質な分譲住宅を供給するということで、四十一年から約二十年にわたりまして合計で十万戸に上る住宅供給を行ってきているわけでございます。  そこで、先生指摘の長期保有土地でございますが、現在約二百ヘクタールぐらいの土地を全国にわたってそれぞれ持っておりますけれども、保有期間五年以上の土地でまだ開発できないで保有しているというものが四団地で十七ヘクタールほどございます。御指摘のように、この放置といいますか開発できないでいる理由というのが、やはりその土地の立地選定ですとか、あるいは当該地域の住宅需要に対する見方、そういったものについていろいろ後から考えると、必ずしも十分じゃなかったという面も見受けられるわけでございます。私どもといたしましては、日本勤労者住宅協会の設立の趣旨にかんがみまして、それらの長期保有土地につきましてできるだけ関係行政機関の調整ですとか、あるいは公共施設の整備の推進ですとか、各方面とよく調整をした上で速やかに開発し、分譲するようにということで指導させていただいておりますし、勤住協の中にもそういった体制をつくりまして、今後ともできるだけ早期に所期の目的を達成するように指導を強めていきたい、かように考えている次第でございます。
  168. 草川昭三

    草川委員 これで終わりますが、最後に労働省に、これは大臣から答弁もしていただきたいのですが、今のようなお話もあります。これはもとを言いますと、労働金庫からいろいろと出資をしていく、こういう関係になるわけです。労働金庫の方も最近借り入れ等に関して新聞紙上を騒がすような、刑事事件に発展するような例もあるわけであります。このような問題について労働省として、監督官庁としてどういうような対応を立てていくのか。やはり職場の労働者が納めた資金、そういうものが基礎になって運営されておるわけでありますから、それは万疎漏のないように対応を立てていただきたい、こう思うのでございます。そういう点について、最後に労働省の意見を聞いて終わりたい、こういうように思います。
  169. 中村太郎

    中村国務大臣 労働金庫の貸付事務に関するいろいろな事故防止につきましては、私どもも従来から、とにもかくにも信用、信頼というものが第一な金融機関のことでありますだけに、都道府県あるいは労働金庫協会を通じまして指導を行ってきたところでございます。  御指摘のような借り入れに関する幾多の問題が起きていることも承知をいたしておるわけでございまして、残念に思っているわけでございます。これからも特に融資の審査体制の強化という面を重視いたしまして、労働金庫協会あるいは都道府県を通じまして一層強力に指導をしてまいりたいと考えております。
  170. 草川昭三

    草川委員 以上で終わります。     〔高橋(辰)委員長代理退席、委員長着席〕
  171. 稲垣実男

  172. 田中慶秋

    田中(慶)委員 私は、このたびの労働大臣の所信表明を含めて一般質問を行うわけでありますけれども、最初に外国人労働者問題について質問さしていただきたいと思います。  最近の外国人労働者の急増が大きな社会問題になっているわけであります。このような外国人労働者の不法就労の現状について、労働省はどのように認識しているのか、さらにまた、その職種別、男女別不法就労の実態がおわかりであればお答えをいただきたいと思います。
  173. 岡部晃三

    岡部政府委員 近年大きな社会問題となっております外国人の不法就労の状況でございます。  入管法違反による摘発件数を見ますると、昭和六十二年は一万四千百二十九人でございまして、前年に比べて三〇%以上の伸びとなっておりまして、しかも依然として増加傾向が続いているわけでございます。最近の傾向といたしまして、特にアジア諸国から入国した男性の不法就労者による違反事件が首都圏を中心に急増しているのが現状でございます。  男女別に見ますると、昭和六十二年における女性の摘発件数が七千十八人で、前年比一八%増であったのに対しまして、男性は四千二百八十九人でございまして、前年のほぼ二倍という著しい増加を示しているわけでございます。  摘発された不法就労者の職種を見ますると、男性は、土木作業員千八百六十二人、部品製造等の工員千三十六人、雑役五百十五人と多岐にわたっているわけでございますが、いずれも単純な作業を内容とするものとなっております。女性の場合は、ホステスが六千七十六人で、全体の八七%を占めるという状況でございます。
  174. 田中慶秋

    田中(慶)委員 このような状態を見て、これからの外国人労働者において、一つには今お話にもあった低賃金の問題や、さらには今長時間労働が実態というふうに聞いているわけであります。私も、この質問をさしていただく調査の中で、土木作業現場を数カ所見て回ったわけでありますけれども、そこにはやはりアジア諸国からの労働者といいますか、単純労働者がどの現場にもおられたわけであります。なおかつ、そういう中で賃金の実態はというと、今公共事業を初めとするそれぞれの仕事の関係で、一般的な単純労働者でも約二万円近い賃金をちょうだいしている。ところがこれらの人たちは、大体その三分の一近い六千円から七千円ぐらいの賃金である。こういうふうに実態がなっているということを私自身把握したわけでありますが、これらについてどのように認識され、どのように対応されているのか、お伺いをしたいと思います。
  175. 野見山眞之

    ○野見山政府委員 我が国の労働関係法令につきましては、御承知のとおり、日本国内で労働をしておりました場合には、日本人であろうが外国人であろうが適用されるわけでございまして、労働条件等において異なる取り扱いを受けるものではないわけでございます。したがいまして、外国人の就労に関しまして、今お話しのような中間搾取あるいはさらに賃金不払い、最低賃金法違反等各種の法違反等につきましての情報収集に努めているわけでございますが、これらの法違反に対しましては厳正に対処しているところでございます。今お話しのような事案等につきましても、事業所に対する臨検、監督あるいは労働者からの申告等によりまして、労働基準監督機関がこれらの違反事実を発見いたしました場合には、例えば賃金不払いにつきましては、所要の支払いを命令する、あるいは最低賃金違反の場合には、これらの是正勧告をするなど法に基づいた厳正な措置をとっているところで乙ざいます。
  176. 田中慶秋

    田中(慶)委員 少なくとも日本のこのような現状というものを認識しながら、かつまた国際的にも日本がそのような差別のような形にとらわれていたのでは、これから大きな外交上の問題も残すのではないか、こんなふうに考えているわけであります。そういう点では、この就労の実態調査、賃金の実態調査というものをおやりになる考えがあるかどうか、その辺についてお伺いしたいと思います。
  177. 野見山眞之

    ○野見山政府委員 現在、これらの単純労働者の就労がいわゆる不法就労の状態でございますので、先生がお考えのような統計調査的あるいはアンケート調査的なものを画一的に行うということは非常に困難であり、また実施不可能ではないかと思うわけでございます。ただ、私どもといたしましては、これらの不法の実態を放置するわけにいきませんので、重大な法違反等についての情報をできるだけ的確に収集できるよう今後とも努力をしてまいりたい、かように考えております。
  178. 田中慶秋

    田中(慶)委員 いずれにしても、このような実態があるということは私も確認してまいりましたし、当然こういう問題について労働省として掌握しておく必要があろう。法違反そのものは、確かに不法就労という形の中で現在日本の法律はそうさせているわけでありますけれども、その法律は法律として、しかし現状はどこの現場へ行ってもそういうことが見られる、これが実態なんですから、そういう点では、やはりその実態というものをよく認識される必要があるでしょうし、その実態に基づいてこれからも指導や監督というものを当然行っていかなければならない問題だろうと思います。そういう点ではアンケート調査をできないということであるならば、それなりに実態調査を何らかの方向でおやりになって把握する必要があるのではないか、こんなふうに思いますけれども、いかがですか。
  179. 野見山眞之

    ○野見山政府委員 現在まで各労働基準監督機関におきまして把握いたしております法違反の事実等につきまして、現在私どもで取りまとめをしているところでございますが、これらの実態を十分把握いたしまして、情報収集にさらに努めまして、これらの事実に対する国内法令に基づく適切な対応を考えてまいりたいと思っております。
  180. 田中慶秋

    田中(慶)委員 ぜひそういう問題について努力をお願い申し上げたいと思います。  そこで、こういう実態になるのは、やはり外国人労働者が観光ビザで入国をし不法就労している実態、これは法務省の出入国管理の面からもこれらに対してどのように把握をされているのか、お伺いをしたいと思います。
  181. 書上由紀夫

    ○書上説明員 ただいま先生から御指摘のございましたように、明らかに就労が認められていない観光等のビザ、短期在留資格でございますが、これをもって入国した上、許可された在留期間を大幅に超過いたしまして不法に滞在し、その間就労しているという、いわゆる不法就労者がこのところ急激に増加しているわけでございます。私ども出入国管理当局といたしましては、上陸審査の段階あるいは入国後の在留期間の更新、資格の変更、いわゆる在留管理の面でございますが、こういったあらゆる場を通じまして、こうした違法在留者の管理、防止等に努めておるわけでございます。  先ほど労働省の方から昨年一年間の大まかな数字を御披露になったわけでございますが、そうしたかなりの数になっておりますので、私どもは、こうした急激な増加の背景には、もちろん言われるところの経済的な事情等もあるやに考えておるわけでございますが、そのほか最近では、こうした方々の送り出しとか受け入れのブローカー等の介在というものもかなり言われているわけでございます。こうした悪質な背後関係等のあるものにつきまして、警察機関あるいは労働省当局と協力しながら鋭意その防止、取り締まりを行っているところでございます。
  182. 田中慶秋

    田中(慶)委員 いずれにしても、このような実態があるわけでありますけれども、外国人労働者の受け入れについて、労働省の方は単純労働者は原則として受け入れない、こういう方針が出ておるわけであります。しかし、このような形で単純労働者が非常に多いというこの実態をどのように認識され、今後どのような形で対処していくのか、これは大臣ですか、答弁をいただきたいと思います。
  183. 中村太郎

    中村国務大臣 外国人労働者の受け入れ問題につきましては、先生御承知のように、我が国におきましては、昭和四十二年以降一貫いたしまして政府の方針として単純労働者は受け入れないということを基本方針といたしておるわけでございます。最近の雇用失業情勢を眺めましても、あるいは労働市場への影響を考慮いたしましても、今後ともこの基本方針は維持されてしかるべきであると承知いたしておるわけでございます。ただいま労働省におきましては、学識経験者によります外国人労働者問題研究会を発足させまして、今仰せになりましたような御指摘の点等を含めて検討を進めておるわけでございまして、最近のうちにこの研究成果が結論づけられるというふうに考えておるのが実態でございます。
  184. 田中慶秋

    田中(慶)委員 いずれにしても、今大臣から述べられたように、国内の雇用に与える影響もこれから出てこようかと思います。一方においては世界に貢献する日本という立場、こういうことも総理が表明されている。そういう点では、こういう因果関係の中で外務省はこれらに対してどのように対処していくのか、お伺いをしたいと思います。
  185. 旭英昭

    ○旭説明員 ただいまの御質問の外国人労働者受け入れに関する問題につきましては、問題が多岐にわたりまして、その中には先生指摘のとおり、対外的にも無視し得ぬ影響を及ぼし得る側面もあるということで、外務省におきましてもこれまで種々検討してきております。あわせ政府部内におきましても、関係省庁と密接な連絡を保ちつつ多様な角度から慎重に対処してきている次第でございます。このような中で国民的なコンセンサスも必要であるということでもって、あわせ他方面での意見、考えも十分注視し、現在慎重に取り組んでおります。
  186. 田中慶秋

    田中(慶)委員 そんな形で国際的な責めを日本が果たせるかどうか大変疑問だと私は思うのです。  今お話があるように、単純労働者がいるというこの実態、そして年々ふえているという問題、一方において法務省は外国人労働者の受け入れについては入管の面からもそれぞれ厳しく行うという問題、あるいはまた法務省は入管の規制や資格外活動の規制について国際的な反響への配慮も当然考えていかなければいけない問題だろう、こんな形でそれぞれいろいろな因果関係があるのだろう、こんなふうに思うわけであります。  そこで私は、それぞれ労働、法務、外務、少なくとも外国人労働者の受け入れについて政府内部におけるいろいろな考え方があり、コンセンサスができていないような気がします。一方においては、日本がGNP世界第二位という形の中で、日本のこの国際的な、少なくとも外国人労働者という一つの問題、あるいは一方においては国内の雇用の問題、こういう点ではやはり企業や労働組合等を含めてそれぞれのコンセンサスも必要だろう、こんなふうに思う。ですから、一つには国内的な問題、外交問題あるいは法律問題、それぞれ三者三様、多少ニュアンスの違いがあるわけです。そういう点では、よそから見たら日本という国は一つの政治指針というものと大変違うのじゃないかというとらえ方もされるのではないか、こんなふうに思います。  そこで、労働、法務、外務のそれぞれの立場で、これらの問題について一つのコンセンサスを図るべきじゃないかというふうに私は思いますけれども、それぞれの見解をお伺いしたい。
  187. 中村太郎

    中村国務大臣 外国人の労働者受け入れ問題につきましては、今までも実は外務省、法務省、警察庁、労働省、随時協議を行って連絡をとり合っておるわけでございます。御指摘のように、今後におきましても政府部内の意見の一致を図るということが大前提でございますので、これからも各省庁間の連絡を密にして協議をしてまいりたいというふうに考えております。  また、労働省自身としましては、先ほど申し上げました外国人労働者問題研究会の研究成果が出ました時点を踏まえて、新たに労使の代表あるいは学識経験者を含めまして外国人労働者問題調査会というのを発足させまして、この中で多様な角度からの十分な御論議をいただきたいというふうなことで準備を進めておるわけでございます。
  188. 大久保基

    ○大久保説明員 稼働を目的として入国しようとする外国人は、今後とも増加しまして、またその稼働の目的も多様化していくものと考えます。我が国は、先ほど来説明がございましたとおり、いわゆる単純労働は認めない、恐らく今後この方針も継続していくことになると思います。他万、外国人労働者のうちでいわゆる技能者とか技術者については、我が国におきます需要の動向等を勘案して弾力的にその入国を認める方針をとってきております。  先生指摘のとおり、この問題は、私どもの世代だけでなく、次の次の世代まで影響のある問題でございまして、先生がおっしゃったような企業、組合関係ともよく相談いたしまして、国民的なコンセンサスが必要だということは私ども十分認識しております。このような観点から、関係各省の間で協議を密にいたしまして、この問題についてどういうふうに取り組むかということを検討してまいりたいと思っております。
  189. 旭英昭

    ○旭説明員 先ほど申し述べましたとおり、問題が多岐にわたりますものですから、その点を十分踏まえつつ関係省庁の中で密接な連絡をとり慎重に対処していく所存でございます。
  190. 田中慶秋

    田中(慶)委員 いずれにしても、この決め手がないわけであります。一方においては、文部省は十万人の留学生受入計画を出しております。その人たちは、やはり今日の円高では到底生活が困難であろう、こんなふうに考えてまいりますと、やはりここにも外国人労働者の住む場所やあるいは就労の場所というのも確保しなければいけない、こういう問題が現実にあるわけであります。そして現実には単純労働者が働いている。こういう実態を踏まえて、大臣が今後この外国人問題に対する積極的な意見調整を図るということでありますから、これを了としますけれども、これは早急に内部の検討をして、少なくとも全体的には政府の方針、そして文部省やあるいは現状の実態を踏まえて幅広い角度から企業や労働組合等も含めて一日も早くコンセンサスがとられるように要望しておきます。  そこで次は、ちょうど今の時期になってまいりますと、賃金問題が論じられるわけでありますけれども、昨年の十一月、民間労働組合が連合という形の中で五百六十万の組織のもとに新たにスタートされているわけであります。そういう点では、この大きな問題というのは、制度、政策問題を中心としながらも、さらにまた今日我が国の労働分配率が欧米に比較しますと低下をしている、これが現実であります。こういう一連の問題を含めながら、今度の賃金引き上げの問題というのは、円高で悩む問題やらあるいはそれぞれの労働環境における大きな取り組みとして大変重要な時期を迎えているのではないか、こんなふうに考えているわけであります。そういう点では、近年の労働分配率が下がっているという現状、そしてまた個人の消費が拡大し、ひいては内需拡大という問題から考えてみますと、この分配率は当然引き上げられてしかるべきではないか、こんなふうに思いますけれども、見解をお伺いしたいと思います。
  191. 甘粕啓介

    ○甘粕説明員 まず労働分配率の問題でございますが、労働分配率につきましては、一般的に景気上昇期には低下をする、景気下降期には上昇する、こういう性格を持っているところでございます。先生の方もこういう労働分配率の時系列の動きにつきましては十分お手元で見ておられると思いますが、この労働分配率を長期的に見てまいりますと、第一次石油ショック、こういう非常に経済が混乱しましたときに非常に急速に上昇して、五十年代前半にかけまして低下をしたわけでございますが、大体五十年代後半以降はほぼ安定的に推移しているのではないかというふうに思っているところでございます。  先生の御質問のもう一つは、こういう長期的に見てあるいは五十年代の、第一次石油ショック以降の低下傾向あるいは欧米諸国の分配率の動き等から見まして分配率を引き上げるべきではないかというふうなことでございました。こういう点につきましては、欧米諸国との比較という面からまいりますと、これも就業構造の違いですとか経済活動の違いだとかいろいろございますので、直ちに水準を比較いたしまして評価するということは適切ではないのではないかというふうに思っております。ただ、一般的には経済の適正な活動の成果というものが適切に労働者に配分されるということは非常に好ましいことではないかというふうに思っておるところでございます。
  192. 田中慶秋

    田中(慶)委員 今のあなたの答弁はどうしても私は納得いかない。例えば一方においては国際的にいろいろなものが評価をされるわけですね。例えば今度の時短の問題についても、時間そのものが国際的に見た場合、日本は二千百時間、長いという評価が来ますね。あるいはいろいろな形で、国際的に見て日本はどうだ、少なくともそういう評価がされる事態になってきたわけでありますから、そういう点では分配率も当然そうあるべきだろう。数値はわかります。しかし物の基本の考え方がそうあるべきだと私は申し上げているわけであります。  例えば日経連はこの円高によって日本の労働者は世界一金持ちだと言う。しかしはっきり申し上げて中身がないわけでしょう。そういう点ではゆとりのない暮らしを強いられているわけですね。働きバチだと言われ、ウサギ小屋だと言われ、国際的に見た場合それぞれの環境は決していい環境ではない。なおかつ労働分配率もそういう点では低い。そんなことから考えてみますと、全体的には労働省として皆さんの分野の中で、日経連やいろいろな働きかけるところについては、それぞれ基本的に賃上げというものが今の経済に与える影響からして、内需拡大の問題さらには貿易摩擦がこういう形になって新たな国内の産業の転換を求めたときに、どうしても賃金というものが消費という中で大きな影響を与えてくるであろう。こんなことからして、少なくともこの単なる分配率というものが、今あなたがおっしゃったような形だけではなくして、もっともっとこういう点でそれぞれ皆さんのできる、範囲の限られた中かもわかりません。労使の中での話し合いとかいろいろな問題があろうかと思いますけれども、日経連が賃上げ抑制論を言うような形ではなくして、そういう点での啓蒙というか、分配率や賃金を抑えるという形ではなくして、もっと向上させるようなことを指導といいますか、そういうことをやってしかるべきではないか。その辺について、大臣でも結構ですけれども。
  193. 中村太郎

    中村国務大臣 先ほど来いろいろな経済指標が示されました。しかし個々の産業企業の実態というものを一番よく承知しているのは労使双方であろうと思うわけでございます。したがいまして、賃上げ等の決定につきましては、従来からもそうでございますけれども、労使双方の真剣な話し合いによって自主的に決められることが原則でございまして、そういう意味で、私どもは、お互い労使の間におきまして真摯な話し合いがなされまして、円満、合理的な結論が出ることを期待をいたしておるわけでございます。  常識的に申し上げまして、勤労者の福祉の向上、特にまたゆとりのある生活の質の向上という面、さらにはまた内外から要請を受けております内需主導型による均衡ある経済の発展、このことに資するためにも、経済成長の成果というものを時間、賃金等に適正に配分されるということは好ましいことであるということを理解いたしているわけであります。     〔委員長退席、野呂委員長代理着席〕
  194. 田中慶秋

    田中(慶)委員 良識ある労使の話し合い、そしてまたそういう積み重ねだと思います。しかし、労働省として皆さん方の限られた中でのそういうものに対する取り組みも、またこのインパクトとして大きいのではないかというふうに私は思うのですね。  それでは常識という問題から考えてみますと、例えば福島県にある不当労働行為の問題があるわけですよ。今常識的に不当労働行為なんというのは当然考えられる時期ではないと思うのです。ところが福島県にあるアルプス電気の関連企業の清和電気産業株式会社、これは会社が現在組合つぶしを行っていると聞いております。この事実というものを労働省として把握していると思います。そしてまた、その紛争の過程の中で福島県の地方労働委員会が不当労働行為の救済命令を出されているという問題が現実にあるわけです。しかし、これは常識外ですね。賃上げの問題もそうであろうと思いますけれども、現実にこういう問題もある。そういう点も含めて労働省というものがこれらに対してどう認識をされて、例えばどういうふうに対処されているのか、お伺いをしたい。
  195. 白井晋太郎

    ○白井(晋)政府委員 お答えいたします。  今先生指摘の清和電気産業株式会社でございますが、昭和六十三年一月十日に労働組合が結成されて以来、現在まで団体交渉を求める組合と組合の労組法上の適格性に疑問があるとする使用者側との間で団体交渉拒否の紛争が続いているというふうに把握いたしております。この間、組合は団体交渉の申し入れが拒否されたことを理由とし、また会社の脱退勧奨行為によって組合員数が大幅に減少したとして福島県地方労働委員会に対し不当労働行為の救済申し立てを行っております。この件につきましては、福島県地方労働委員会がその組合の六十三年一月二十九日の団交応諾、支配介入禁止の不当労働行為救済申し立てに対しまして、団交応諾を求める部分を分離いたしまして、去る三月二日会社に対し速やかに団体交渉に応じなければならないとの救済命令を出しております。会社はこの救済命令を不服として三月十六日に中央労働委員会に対し再審査の申し立てを行い、現在に至っているわけでございます。  労働省といたしましては、組合と使用者側との問題につきまして、県の労政課当局等を通じながら団体交渉その他組合に対する対応が的確に行われるように情報の聴取を含めまして指導を進めていたところでございますが、中身がもつれまして、このような労働委員会への問題というようになったわけでございます。しかし、労働委員会の問題に対して直接行政が関与するわけにはまいりませんが、従来からの指導その他を通じまして、側面的にこれらの問題に対応できるように、さらに現在話し合い等を進めさせている状況でございます。
  196. 田中慶秋

    田中(慶)委員 局長のそのような答弁というのは私も存じ上げています。しかし、それでははっきり申し上げてなまぬるいですね。現実のこのような実態が起きている。あなたたちは調査にも行ってないでしょう。我々は調査に行っているのです。それだけではありません。アルプス電気の関連企業はみんなそのような形で、アルプス電気は知らないと言っておりますけれども、大体そこの関連企業はみんな同じことをやられているのです。ところがアルプス電気そのものはそこに融資もし、機械もいろいろな形で――現実には丸抱えです。しかし労務政策としてそういうことを行っている。親会社は何も知らないと言っておりますけれども、そういう実態を踏まえながら、少なくともこういう一連のものというのは、労働省としてもっともっと徹底した指導やあるいはまた監督というものも行われてしかるべきではないかというふうに私は思います。親会社に対しても何もしてないでしょう、どうですか。
  197. 白井晋太郎

    ○白井(晋)政府委員 お答えいたします。  親会社、いわゆるアルプス電気でございますが、アルプス電気に対しましても、三月十日、十八日と二回にわたりまして人事本部勤労部長を呼び事情聴取を行い、協力会社である清和電気産業株式会社の当該紛争が当事者間の話し合いにより早期に円満に解決するように、可能な限りでの指導助言を要請しておるところでございますが、先生のおっしゃるとおり、当初非常に労使関係がもつれまして、県の県同盟その他の折衝の中でも、会社が拒否したり、直接調査が十分に行われないというような状況があったということはお聞きしております。労働省を初め福島県におきます労政課においても、そういう事情を踏まえながら、非常にもつれた問題でございますが、それを解きほぐしつつ県による事情聴取をさらに進めてまいりたい。会社からも今週中には事情聴取に応じる旨の連絡が入ったと聞いております。従来、先生の御指摘のように、対応がおくれた面もあったかと思いますけれども、それらの対応を十分進めてまいりたいというふうに考えております。
  198. 田中慶秋

    田中(慶)委員 そればかりではありません。要するに大変非現代的ですよね。例えばそこの組合員に対してまず職制から圧力をかける。それで聞かないと親戚縁者から圧力をかけて、そして組合を脱退させるような、こういうこと自体が本当に現実に行われているわけです。そして話し合いを申し入れても全然話をしない、こういうことが現実にあるのです、はっきり申し上げて。あなたたちはお互いの話し合いを待つような考え方でおられるかもわかりませんけれども、そこに働いている人たちは、大変このような行政に対する不満やあるいはまた法に対する不満というものを今持っているわけであります。こんなことではいけないのじゃないか。もっともっときめの細かい労働行政、例えば組合についても同じことではないかと思うのですが、その辺をもう一度お聞かせをいただきたい。
  199. 白井晋太郎

    ○白井(晋)政府委員 この問題そのものは既に労働委員会へ持ち込まれまして、労働委員会での公正な命令その他が行われることになっているわけでございますけれども、今先生の御指摘の点も踏まえながら、先ほどから申しておりますように、使用者側に対する事情聴取、指導その他も側面的にさらに進めてまいりたいというふうに思っております。労使関係そのものは、もうこれは先生には釈迦に説法でございますけれども、こじれてまいりますと解きほぐすのに非常に困難な問題があるわけでございますが、十分に努力してまいりたいと考えております。
  200. 田中慶秋

    田中(慶)委員 いずれにしても、こういう実態を踏まえて、いま少し反応が遅過ぎる。例えば中労委に行くのだって、その前にあなたたちはもうそういうことを知っているわけでしょう。我々もあなたたちに申し上げましたし、こういう実態調査にも行きますよ。そういうことでもっともっと前向きに労働行政というのはあってしかるべきじゃないか。後追いではしようがないのです。後追いになればなるほど複雑になったりもつれてしまうわけですから、こういう点では、親会社とかいろいろなことをもっとやっていけば、事前にこういうものが解決できているわけです。一連の組合つぶしを私はデータとして申し上げてきているわけですから、そういうことを含めてこれから積極的にやっていただきたい。これは要望しておきます。  そこで、次に時短の問題に入りたいと思います。  四月一日から労働基準法の改正による時間短縮が本格的に進展することになったわけであります。一九九〇年に週四十時間、こういう大前提でこの労基法の改正が質疑をされてまいったわけでありますけれども、こういう一連の問題についての意気込みについて、まず労働大臣として決意のほどをお聞かせいただきたい。
  201. 中村太郎

    中村国務大臣 労働時間の短縮は、我が国の経済的地位にふさわしい豊かでゆとりある勤労者生活を実現するために必要不可欠な課題であると考えております。このため、週四十時間労働制の早期実現に向け、改正労働基準法の円滑な施行に全力を挙げますとともに、労働時間短縮のための社会的、国民的合意の形成と労使の自主的な努力に対する指導援助等につきまして一層努力を行ってまいる所存であります。
  202. 田中慶秋

    田中(慶)委員 ぜひ大臣として一九九〇年に週四十時間に完全移行されるように改めて努力をしていただきたい、要請しておきます。  そこで、先般郵政省の方では、昭和六十四年から、二月からですか、完全週休二日制実施に踏み切るということが対外的に発表され、各方面から高く評価され、そして週休二日制の実現というのは少なくとも週四十時間への移行ということで、私どももこの基本的な考え方について評価をしながら、その経緯について郵政省の方で答弁をいただきたい、こんなふうに思います。
  203. 磯井正義

    磯井説明員 今日の週休二日制をめぐる情勢でございますが、先ほどお話ございましたように、労働基準法がこのたび改正されまして、労働時間の短縮を目指しているというような状況、また「昭和六十三年度の経済見通しと経済運営の基本的態度」というものの中におきまして、週休二日制の推進というのが挙げられているというようなこと、あるいは、これは昨年でございますが、人事院が勧告の際に、完全週休二日制を具体的な課題として取り組む必要がある、そのような報告もございました。またさらに、昨年の新前川レポートあるいは経済審議会建議、これなどにおきましても、週休二日制の普及促進に寄与するという観点から金融機関と公務部門の閉庁、閉店が求められておるというようなことがございます。このような諸情勢を踏まえまして、今日また民間金融機関におきましても、全土曜日の完全閉店に向けての動きもあるという状況でございます。  私どもとしましては、週休二日制につきましては、今日社会的なあるいは時代的な趨勢であるというような認識に立ちまして、このたび、去る三月十五日でございますが、方向をお示ししたわけでございます。お客様に御迷惑をかけないよう、サービス面での改善、この辺は十分対策を講じつつ、六十四年二月を頭に置いているわけでございますが、毎週土曜日において貯金、保険を中心としての窓口を閉じるという方向での具体的な検討にこれから取りかかるということにしたものでございます。
  204. 田中慶秋

    田中(慶)委員 いずれにしても、金融機関なり役所が土曜閉庁ということになれば、中小企業初め皆さんがそれに付随して週休二日制というものに移行されてくると思います。そういう点では、この金融機関の問題、すなわち日銀を含めた民間の金融機関について、これは大蔵省がそれぞれ指導されていると思います。時間の関係もありますので、大蔵省さらにはまた総務庁ですか、これから土曜閉庁問題、こういう一連の問題を含めて、ぜひそれぞれの方針を聞かしていただきたいと思います。  さらに、こうした現状を踏まえて、労働大臣として、これから労働省はどのようなPRをされていくかということ、この問題についてお伺いをしたいと思います。ということは、やはり国際的に日本は時間が長い、こういう形で指摘をされていることがあります。今この日米の貿易摩擦というのは随所に見られるわけでありますけれども、このままでいったならば必ず労働時間に対する干渉までしてくるのではないか、こんなことが報道されていることも事実でありますから、とういう一連の問題を含めて見解をお伺いしたいと思います。
  205. 中井省

    ○中井説明員 金融機関の週休二日制の拡大につきましては、昨年秋以来、民間金融機関の間で完全週休二日制の実現へ向けて検討が行われております。また昨年十一月には労働大臣から全国銀行協会連合会等に対して、その旨の要請もなされたところでございます。  大蔵省としましては、金融機関の完全週休二日制の実施のためには二つの大前提があると考えております。第一は、これは至極当然のことではございますが、広く利用者たる国民や企業等の理解を得ることが必要なこと。第二には、金融機関の業務の性格や過去の経緯を踏まえれば、郵便局を含めた全金融機関が同時に実施できるような環境が整うことが望ましいということでございます。  第一の点につきましては、昨年秋以来、民間金融機関の検討が進められておりますが、第二、第三土曜日の休業の経験もございまして、一部に確かに御異論がございまして、金融機関側としましてもサービスの面等でいろいろ検討すべきことがあろうかと思いますが、全般的には大蔵省としても新聞論調、世論の動向等注視していますが、比較的一般の国民の皆様方に温かく受けとめていただいていると考えております。  第二の点につきましては、先般、郵政省が他の金融機関の完全週休二日制の実施に合わせて、来年二月を目途に郵便局の貯金、保険部門の窓口についてすべての土曜日を閉庁する方向で具体的な検討を進めることを決定されたことによりまして、金融機関の完全週休二日制実施に向けての環境が整いつつあるのではないかと考えております。  今後でございますが、民間金融機関といっても種々雑多の業種がございまして、それぞれの業種の間で、今回の郵政省の決定をも踏まえ、完全週休二日制の実施時期等について具体的な調整が図られることになるものと考えております。大蔵省としましても、週休二日制の拡大は時代の流れと理解しておりまして、郵政省の決定をも踏まえ、金融機関の週休二日制の実現に向けて今後とも努力してまいりたいと考えております。     〔野呂委員長代理退席、委員長着席〕
  206. 河野昭

    河野説明員 官庁の土曜閉庁方式の導入でございますが、先生御存じのように、この件は既に昨年の十月に閣議決定されておりまして、昭和六十三年度中に導入することを目途に諸般の準備をするということになっております。その後、十二月になりまして週休二日制・閉庁問題関係閣議会議が開催されまして、具体的にどういう問題があるかという検討がなされたわけですが、その場では特に民意の反映を十分するようにという御指示がございました。そこで、特に現在総務庁では経済団体、労働団体等の意向を把握しておりまして、また各省庁におきましては、それぞれ関係団体等から意向の把握に努めております。現在、こういう把握結果をもとに、具体的にどういう官署を閉めるのか、あるいは閉めた場合、緊急時の対応をどうしていくのかというようなことを検討しております。私どもとしては、できるだけ早く取りまとめまして、改めて閣僚会議でお諮りいただき、政府としての具体的方針を決めたい、そういうふうに考えております。
  207. 田中慶秋

    田中(慶)委員 時間の関係もありますから、それぞれ時代の趨勢であり国際的な常態でありますから、ぜひそういうことを含めて皆さんの努力を期待しておりますので、頑張っていただきたい、こんなふうに思います。  最後の質問になりますけれども、実はペルシャ湾を航行するタンカーの乗務員が大変危険な目に遭っておる。先般の三月十八日、パナマ船籍のタンカーの日本人船員が被弾を受けて炎上された中でとうとい命を失っている。私も予算委員会でこれらの問題を質問さしていただきましたけれども、大変対応が甘いし、また国際的にもこういう問題について、ただ声明を出したからとか、あるいは外務省がそれぞれ日本の立場を申し入れたからといってこの紛争は解決するものじゃない、こんなふうに思うわけであります。  そこで、ぜひ運輸省なり外務省がこれらの問題についてもっと積極的な姿勢を示すなり、あるいはまた現在乗務されているそれぞれの機関員や乗務員に対しても、やはり何らかの形の対応というものがあってしかるべきではないか。ねぎらいの言葉だけではなくして、これらの危険を冒して仕事をしている、それはその仕事そのものが日本の経済や産業の発展に大きく貢献をされている、こういうことでありますから、こういう一連の問題について外務省あるいは運輸省、そしてまた政府としてこれらに対してどのように対応していくのか。もっともっと具体的に、弔慰金を出してやるとか何かの方針があってしかるべきではないか、こんなふうに思いますけれども、それぞれの見解をお伺いしたいと思います。
  208. 岩村敬

    ○岩村説明員 マリア2号のペルシャ湾内での被弾事件でございますが、先生指摘のように、現地時間の十七日、ペルシャ湾内で、ドバイ沖でございますが、被弾をいたしまして、日本人の乗組員新ノ居静士さんが亡くなられたということでございまして、まことに残念な出来事でございます。また御遺族の方々には心よりお悔やみを申し上げたいと思います。  最初に、私から事件の概要だけちょっと御説明申し上げますが、本件、共和産業海運という会社が用船をいたしておる船でございますが、サウジアラビアのジュベールからタイのバンコクへ向けて航行中のことでございましたが、現地時間の三月十七日の夜半、国籍不明の高速艇からロケット砲、機関銃による攻撃を受けて被弾をいたしまして、残念ながら新ノ居さんという方が亡くなられたということでございます。  運輸省といたしましては、これまでにもこういう事件が起こっておりますのでペルシャ湾の安全航行の確保を図るため外交ルートを通じまして関係国への働きかけをいたしますとともに、関係省庁それから海運労使とペルシャ湾安全対策官民連絡会を開催いたしまして、関連情報の伝達、交換、それから安全対策の協議などを行っております。具体的には、夜間航行を行うとか、逆に昼間航行を行うとか、それぞれ対策を講じておるところでございます。  本件のマリア2号につきましては、事件の詳細につきまして、現在、現地の警察当局の方の調べもまだ終わっておりませんし、事件の概要ははっきりいたしておりませんが、本件につきましては、事前に運輸省に対する連絡もなかったような事情もございますし、この点につきましては、船主協会、それから当該船主に対しまして、そういう情報の連絡徹底などを図るように、これはとりあえず、事情がわかる前でございましたけれども、指示をいたしたところでございます。  今後は、本件の事件の概要等々の情報の収集、分析を図りまして、安全対策がさらに必要であれば検討するということで、今後一層湾内における航行の安全確保に向けて運輸省としては最大限の努力をしてまいりたいというふうに考えておるところでございます。
  209. 木村光一

    木村説明員 先生御質問の点でございますが、本件につきましては、ペルシャ湾内で御承知のとおり船舶攻撃というのは八四年以来ほぼ四百件に達する頻度になっております。そのうち日本人乗組員が死亡いたしましたのは、昭和六十年にアル・マナク号という被弾事件がございまして、それに続きまして二度目でございます。我が方といたしましては、このような船舶攻撃を極めて遺憾と考えておりまして、お亡くなりになりました新ノ居乗組員の御家族に対しまして心から哀悼の意を表したいと思います。  現実に今回の事件が起こりまして、外務省といたしましては、発生直後でございますが、アラブ首長国連邦、被弾した場所に最も近いアラブの国でございますが、そこの大使に訓令を発しまして、現地官憲と接触いたしまして情報収集等に当たらしめると同時に、イラン、イラク両国政府に対しまして、在京の大使を招致いたしまして、我が方の中近東アフリカ局長から厳重な申し入れを行いました。この申し入れにおきましては、遺憾の意を表明するだけではなく、事件の事実関係の調査を要請するとともに、湾内の安全航行確保のためのできるだけの配慮を求める申し入れを行いまして、また現地におきましても同様な申し入れをいたしまして、先方の回答を求めているところでございます。  それから、紛争自体でございますけれども、先生御承知のとおり、紛争の平和的解決のための環境づくりということで、私どもその一環として国連の場を通じまして湾内の安全航行確保の必要性を強く訴え続けてきております。また、直接当事国でありますイラン、イラク両国に対しましても、機会あるごとに、このような我が国の大きな関心を伝えまして、自制を働きかけているところでございます。今後とも最大限、このような外交努力を継続していく所存でございます。
  210. 田中慶秋

    田中(慶)委員 時間が参りましたので、終わります。そのほかに雇用問題を通告しておりましたが、時間の関係でできませんので、また次回にしますが、いずれにしましても、このペルシャ湾問題というのは、もっと日本として、この乗組員の人たちが日本の産業やあるいはまたエネルギー問題を支えているのだという前提に立って、これらに対するきめの細かい配慮や対処も必要だろうと思います。そんなことを要望して、私の質問を終わらしていただきます。ありがとうございました。
  211. 稲垣実男

  212. 田中美智子

    田中(美)委員 「国連婦人の十年」のときに国内行動計画をつくられまして、そのときに女子の差別定年制など五カ年計画で就業規則の中からなくしていくという指導をなさって一定の成果を上げたということがありました。一九八六年四月一日から均等法が施行されたわけですけれども、その後法に違反しているようなものや差別撤廃条約の趣旨に反しているような就業規則を改定するというふうな指導はしていらっしゃいますでしょうか。
  213. 佐藤ギン子

    佐藤(ギ)政府委員 雇用機会均等法が施行されましてから、労働省ではその周知徹底に全力を挙げておりまして、毎年六月には男女雇用機会均等月間ということで、これを中心に年間を通じましてあらゆる機会をとらえて啓発活動を行ってきておりますし、また事業主、労働組合、女子労働者等に対する集団指導も行ってきているところでございます。  また、各都道府県の婦人少年室には、女子労働者や事業主等から法に関する相談や問い合わせが多数寄せられておりまして、室ではこれらの相談者に対しまして法の詳しい説明を行いますとともに、紛争等の解決の方法あるいは女子の雇用管理の改善につきましてのアドバイスを行ってきているところでございます。  さらに、これらの相談を端緒といたしまして、室では女子労働者と事業主の間の紛争解決の援助ですとか企業雇用管理制度の改善を目的といたしました助言指導等を行ってきておりまして、その数は相当数に上っているわけでございます。  その内容といたしましては、男女別の定年制や結婚、出産を理由とする解雇など定年、退職、解雇に関するものが最も多くなっておりまして、その多くがこれまでに解決を見ているところでございます。
  214. 田中美智子

    田中(美)委員 一定の努力はしていられると思うのですけれども、三年たちましてもまだまだ十分になされてなく、就業規則の中におかしなものが入っているというのはまだたくさんあると思うのです。  今特に結婚、妊娠などの退職について非常に成果を上げられているというふうにおっしゃいましたけれども、一つの事例ですが、ノースウェスト航空では、就業規則の中に「勤続一年未満で結婚したときには退職しなければならない。」という二十八条がありますが、これは明らかに均等法の十一条二項に違反していると思いますが、時間がありませんので、違反しているかいないか、一言でお答えください。
  215. 佐藤ギン子

    佐藤(ギ)政府委員 その規定は均等法の規定に抵触すると解されます。
  216. 田中美智子

    田中(美)委員 抵触するというので東京婦人少年室長は是正の勧告を昨年の九月に求めております。ところが均等法には罰則がないということで、ここの会社の社長は全くこれに応じない、呼び出しにも出てこないというようなことを私は聞いております。  それで、基準局にお尋ねしたいのですけれども、九十二条の二項によって変更命令を出すということができるようになっておりますけれども、今婦人局長が言われたように、明らかに法令に反しているものであるならば、変更命令を出すべきだと思いますけれども、至急出していただきたいと思いますが、いかがでしょうか。
  217. 清水傳雄

    ○清水(傳)政府委員 大変申しわけございません。労働基準局長は今ちょっと席を外しておりますので、後ほど答弁させます。
  218. 田中美智子

    田中(美)委員 そんな失礼なことはないじゃないですか。初めから呼んでいるはずです。じゃ労働大臣、お答えください。法に違反しているならば九十二条二項を発令していただきたい。
  219. 清水傳雄

    ○清水(傳)政府委員 ちょっと用を足しに参っております。
  220. 田中美智子

    田中(美)委員 どうしていないのですか。それならそう言ってください。今の時間は入れないでください。
  221. 野見山眞之

    ○野見山政府委員 申しわけございませんが、まだ具体的な事態を承知しておりませんので、事実を承知いたしましてから、改めてお答えさせていただきたいと思います。
  222. 田中美智子

    田中(美)委員 話にならないじゃないですか。幾ら生理的現象といっても、あなたの質問を今やっているときに出ていくということがありますか。一分、二分我慢できないということはないでしょう。もう一度同じことを言わなければなりませんので、今の時間は超過させていただきたいと思いますが、委員長、よろしいでしょうか。
  223. 稲垣実男

    稲垣委員長 ちょっと待ってください。――はい、わかりました。
  224. 田中美智子

    田中(美)委員 もう一度同じことを申し上げますが、「勤続一年末満で結婚したときには退職しなければならない。」という就業規則がノースウェスト航空の二十八条にある、これについて今婦人局長が均等法に違反しているというふうに言っておられます。それで労基法の九十二条の二項で変更命令を出していただきたい、これをお願いしているわけです。
  225. 野見山眞之

    ○野見山政府委員 労働基準監督機関といたしましては、さらに事実を聴取した上で必要な措置をとるべきものがあれば措置をとりたいと考えています。
  226. 田中美智子

    田中(美)委員 これも二重になりますけれども、局長、ちゃんと聞いておいてください。東京婦人少年室長が是正勧告を出しているにもかかわらず、社長は全くそれに応じない。ということは均法等に罰則がないからです。罰則がなければ何をやってもいいということでは、これはもう私は許せないと思うのです。しかし労基法では罰則があるわけです。今婦人局長が明らかに抵触していると言っているわけですから、同じ労働省の中で連携しているわけでしょう。そうでしたら、調べてみてそうだったらということは、もうわかり切っていることじゃないですか。そういう意味で、もう一度お調べになっていただいて結構だと思いますけれども、変更命令を出していただきたいと思うのです。変更命令を出しても言うことを聞かないということでしたら、百二十条の三号に罰則があるわけですので、厳しくこの点をやっていただきたいと思いますが、もう一度局長からはっきりおっしゃっていただきたいと思います。
  227. 野見山眞之

    ○野見山政府委員 先ほどお答えしましたように、事実を聴取いたした上で、どのような実態があるかを認識した上で措置を考えたいと思います。
  228. 田中美智子

    田中(美)委員 それでは調査した結果どうであったかということを、私のところに御報告願えますでしょうか。
  229. 野見山眞之

    ○野見山政府委員 事実を調べた結果、必要な報告をさせていただきます。
  230. 田中美智子

    田中(美)委員 また、このノースウェスト航空では、労働協約の中にこういうのがあります。「既に一児を有する女子が妊娠したときは、退職しなければならない。」、もう一つは、「客室乗務員が妊娠したときは、直ちに公認欠勤とし、その期間中は無給である。」と書かれております。これは明らかに法に違反しているわけですけれども、これは労働協約ですので、これを解約させる。この労働協約の第一部の四十九条に、これは一年間有効であるというふうに書かれているわけです。六十一年から労働組合がこれは違法であるから、この協約を訂正しようということを申し入れているわけです。ところが六十一年も六十二年も申し入れましたけれども、これを改定しようとしない。そしてことしもまた申し入れておりますけれども、まだ改定するという返答がないわけです。労働基準法の二条では、こうした労働協約で結んだものは、その義務を誠実に履行しなければならないと書かれております。そうすれば、この労働協約の一部四十九条の中では、一年間有効で、その後は労使いずれかの側によって変更をしていく、話し合いをしていこうということが決まっているわけですので、当然そこで変更していくべきではないでしょうか。明らかに法律に違反しているような中身が協約でなされているわけですね。その点の御見解を聞かせていただきたいと思います。
  231. 野見山眞之

    ○野見山政府委員 私ども労働基準監督機関といたしましては、まだ事実を詳細に承知いたしておりませんので、これを確認した上で必要な法的判断その他をさせていただきたいと思います。
  232. 田中美智子

    田中(美)委員 今大分問題になっているのに何も御存じないのですね。本当に驚いてしまいます。これはぜひ調査いたしまして、その結果も御報告していただきたいと思うのです。  それで、もう一つ婦人局長にお聞きしたいのです。  均等法の見直しという問題で、均等法が、罰則がなければ相手は何をやっても構わないんだということでは、結果的にそうでは、指導もできない。そういう会社もたくさんあるということ。そういう意味で、この法案ができるときに、罰則がなければ実効あるものにならないということは、各党の先生からの御意見としても出されたわけです。そしてまた五十一もの婦人団体が一貫して罰則がなければだめなんだと言った。それがまさにこのノースウェスト航空のところに端的に出ていると思うのです。もとの婦人局長も、均等法を審議しているときに、いずれ見直しをしたい、十分ではないけれども見直しをしたいから、今度の国会では通してほしいというような発言をしておられるわけですね。そういう意味で、この均等法の見直しをぜひしていただきたいと思いますが、その準備があるのか、お気持ちを聞かせていただきたいと思います。
  233. 佐藤ギン子

    佐藤(ギ)政府委員 男女雇用機会均等法に基づく婦人少年室の室長の助言指導によりまして、これまでのところかなり多くの事例につきまして改善が進んでおるわけでございます。もちろん先生おっしゃいますように、ごく一部には均等法に抵触するようなものが残っているものもございますけれども、私どもでは引き続きそういうものにつきましては粘り強く指導していきたいと考えておるわけでございます。  それから、均等法ができましたときに、国家公務員の郵政Bという事務の職種でございますとかいわゆる添乗員の業務というものにつきましては、三年後に措置するということが定められておりますし、独身寮につきましても、三年後には措置するということが同意されているわけでございますが、それ以外のものにつきましては、特に具体的な御指摘はないわけでございまして、今後法の施行の状況をさらに十分に見ながら検討を続けていきたいと考えております。
  234. 田中美智子

    田中(美)委員 三年後ですか、部分的に検討せよ。それからちょうど三年になるわけです。ほかのことには言われていないと言われますけれども、差別撤廃条約の中では、これを科学的に検討しながら変更していけ。やはりみんなの意識というものは少しずつ変わるわけですから、特に「国連婦人の十年」で女性の意識の変化というものは非常に目覚ましいものであった。それにつられて男性の変化も相当あったというふうに私は思っているわけですね。ですから、その意識は年々変わってきているわけですし、条約の中でもそれをやれと言っていますので、言われていませんという言い方はちょっとおかしいのではないかと思うのですね。まだ早いとかこれからだと言うならわかりますけれども、言われていないのでやりませんということでは、局長としてはちょっと疑問を感じますが、その点いかがでしょうか。
  235. 佐藤ギン子

    佐藤(ギ)政府委員 先ほど申し上げましたことは、三年後に措置するとされているものにつきまして挙げたわけでございまして、それ以外のことにつきましては、今後法の施行状況を十分に見ながら検討していくべきことと考えております。
  236. 田中美智子

    田中(美)委員 私は今三年だからやれと言っているわけではないのですよ。このように呼びつけても出ても来ない。話にもならない。では、このノースウェスト航空に対して粘り強くどのようにやるおつもりですか。
  237. 佐藤ギン子

    佐藤(ギ)政府委員 今後さらに工夫を重ねてまいりたいと考えております。
  238. 田中美智子

    田中(美)委員 どういう工夫をなさるのですか。
  239. 佐藤ギン子

    佐藤(ギ)政府委員 私どもも知恵がなかなか十分ではないのでございますけれども、さらに連絡をとり、文書等も必要があれば出すようなことも工夫してまいりたいと考えております。
  240. 田中美智子

    田中(美)委員 必要があればという言葉はおかしいんじゃないですか。明らかに法に抵触しているならば必要があるわけですから、文書を出していただきたいと思いますが、やっていただけますか。
  241. 佐藤ギン子

    佐藤(ギ)政府委員 現在私どもの方からノースウェストの方には文書を投げかけておりますので、まだ私どもは御返事をいただいておりません。したがいまして、御返事をいただいた上でまた考えるということでございます。
  242. 田中美智子

    田中(美)委員 大臣に最後に、今のをお聞きいただいたと思いますが、基準局長と婦人局長がともに連携をとりながらこのノースウェスト航空の問題を解決しないと、これが逆の意味の反面教師になりまして、罰則のないものはほっておいたって構わないんだ、まじめな人は指導によってかえって成果がある、しかし、ふまじめな者は全然知らぬ顔ということでは困りますので、この点は、やはり今これだけ社会問題になっているわけですので、これはきっちりと御指導いただくように大臣の御決意も一言お願いいたします。
  243. 中村太郎

    中村国務大臣 先ほど先生指摘になりました点につきましては、労働基準局長から御答弁申し上げましたように、実態を十分把握の上で検討してまいる。そのとおりにいたしたいと思っております。
  244. 田中美智子

    田中(美)委員 その次に、これは週刊誌だとか新聞だとかいろいろなところで報道をされているものです。  三重県の伊勢志摩国立公園内に渡鹿野島という島があります。この小さな島は国立公園の中ですので大変美しい環境のところです。人口が六百人という小さな島です。この島の海岸には千三百人を収容できるようなホテルが十五軒もありますし、旅館が軒を並べているという観光の島なわけです。ここには置屋のスナックが二十四軒ありまして、ホステスさんと言われる人が、もっといるのかもわかりませんが、私の調べたところでは百六十人おるそうです。そしてこの大半が売春をしている。公然と売春をしている。この海岸には警察官もだれもいないわけですので、ホテルの朝などというものは、そうした売春をした女性が客を送っているという風景が当たり前のように見られている。私は島の方たちにもちょっと伺ったんですけれども、あそこは明らかに売春をしているんだということは、島の人ほとんどが公然の秘密というよりも公然に言っているというところです。この中の四分の一、四十名というのはフィリピンの若い女性だそうです。あとタイとかからも来ているそうですけれども、こうした外国の女性がたくさんいる。これは私は怒りに感ずるというよりも悲しい、本当に悲しいことだというふうに思います。これをどうしたらいいのかということを私は大臣初め政府の方たちに考えていただきたいのですけれども、日本女性が売春するということも大変なことですけれども、こうして外国の女性を、入れてと言って入ってきたのかもわかりませんけれども、この人たちが売春をする場になっているということで、やはり職業安定法で雇ったということですね。そしてその人が売春しているかどうかは別として、雇った、紹介してくれる人がいるんだ、こういうことは職業安定法三十三条違反、四十四条違反ではないかと思うのですが、局長、いかがでしょう。
  245. 岡部晃三

    岡部政府委員 先生指摘の事案は、詳細は承知していないのでございまするが、今職業安定法の形で紹介を受けたというふうな御指摘でございます。恐らく有料職業紹介事業違反あるいは労働者供給事業の禁止違反というふうな形での紹介であったという御指摘であろうかと思います。  私ども先般来、外国人の不法就労問題に対しまして、労働関係法規違反がある場合には厳正に対処するよう地方に通達をしたばかりのところでございますが、さらに徹底をしてまいりたいと思います。その一環といたしまして、本件事案を私まだ十分よく存じませんが、地方においてどのような把握状況か、直ちに検査をしてみたいと思います。
  246. 田中美智子

    田中(美)委員 それでは直ちに調べていただいて報告をしていただきたいと思います。そういう職業安定法違反がないか、フィリピンの女性をどうしてだれが紹介したのか。そしてあそこの置屋がそれを雇ったというと両万が罰せられるわけですからね。こういうことは幾らやってもモグラたたきみたいで、ここをたたけばこっちがやる、ここをたたけばこっちがやるというような形で、ニーズがある限りはこういうことがあるのかもしれません。しかし本当に恥ずかしいことだと思うのです。私は一度このジャパゆきさんという問題で外務委員会で質問をしましたときに、当時の安倍外務大臣が、外国に対して非常に恥ずかしいというふうに言われました。本当にそうだと思うのですね。ですから、幾らモグラたたきであろうとも、このように大々的に新聞に報道されたり、大々的に週刊誌でやられているというものは、やはり政府が必死になって、そういうことが起きないように何らかの法律を使って、この場合でしたら、それは売防法もあるでしょうけれども、やはり職業安定法で、人を雇わなければそういうことは起きないわけですからね。  そこで、まずこういう問題になったところはちゃんとやるということをやっていただきたいと思うのですけれども、大臣、これをどう思われますか。そしてどのように一生懸命やろうというふうに思われるか、大臣の御決意をお願いいたします。
  247. 中村太郎

    中村国務大臣 大変遺憾なことでございまして、具体的な問題につきましては、調査を進めてまいりたいと思います。
  248. 田中美智子

    田中(美)委員 調査をきちっとして、職業安定法違反があれば、これは罰則もついているわけですので、厳しくやっていただけますね。
  249. 中村太郎

    中村国務大臣 まず調査を徹底的にやってみまして、事実違反がありますれば対応してまいりたいと思うわけでございます。
  250. 田中美智子

    田中(美)委員 調査はどれぐらいかかりますでしょうか。御報告いただきたいので、どれぐらいお待ちすればいいでしょうか。
  251. 岡部晃三

    岡部政府委員 できるだけ迅速に行いたいと存じます。
  252. 田中美智子

    田中(美)委員 迅速というのはどういうことですか。一年に対して半年なら迅速ですけれども、今のノースウェスト航空の場合ははっきりしていますので、その就業規則を見、会社に聞けばわかることですから、まさに迅速ですね。しかし、こっちの方はどれぐらいかかりますでしょうか。そういう抽象的に言わないでもっと具体的に言ってください。何日とはっきり言わなくてもいいですけれども、少なくとも一週間ぐらいとかというふうに、迅速ということではいつになるかわからないですから。
  253. 岡部晃三

    岡部政府委員 何日までというふうにはっきり今申し上げる段階ではございませんが、一月以内に調査をせしめたいと考えます。
  254. 田中美智子

    田中(美)委員 必ず一カ月以内にこの詳細を私のところに報告していただき、どのように処理したかということの御報告をいただきたいと思います。それでよろしいですね。――うなずいていらっしゃいますので、よろしいということですね。  それでは、その次の問題です。これは皆さん御存じだと思いますけれども、東芝事件という形で今も週刊誌で語られ、新聞にも大きく報道され、また、婦人団体が非常にこれについての怒りを爆発させまして、何が何でも徹底的にこれは明らかにしなければならないと言っている事件の問題についてです。  これは御存じだと思いますが、去年の五月、北海道旭川市の大雪山白金観光ホテルというのでしょうか、ここで起きたことですが、東芝の取締役勤労部長と全東芝労組の執行委員長、この二人が単なる友人として出かけたのではなくて、業務視察、いわゆる社用ですね、公用という形でこの地に行かれたようです。私がいろいろなものを読んだり聞いたりしたところでは、それ以外にも東芝の関係の大物の人が二人いたということですが、これは名前などははっきりしておりません、前の方のははっきりしておりますけれども。この人たちが業務視察ということで午前中どのような業務を視察なさったのかわかりませんが、お昼から午後四時までゴルフをした、それから六時半から十時半まで宴会をした。その後、その土地にあります東芝の関連会社のホクト電子工業というところの社長さんから接待を受けたというのですが、そのときに二人の少女を紹介されまして、この二人、勤労部長と中央執行委員長とが少女買春をした、一人に対して三万円の金を払った。ところがその少女たちには一万五千円ずつしかいかないで、あと一万五千円は接待でこの少女たちを紹介した人が取ったということで、紹介した人は売防法にひっかかりまして罰則の対象になった。そういうところからこの少女が十五歳の未成年の家出中の少女であったということが判明して、この事件が明るみに出たわけです。  ──────────────────────婦人団体などは非常に大きな怒りを持っていることは事実です。そういう中でこれがはっきり出たのが、事もあろうに、相手の女性が十五歳の未成年の少女であった。私もかつては教師をしておりましたけれども、今の子供たちというのは、親の期待に沿えないのではないか、先生の期待に沿えないのではないかという重荷で非常に苦しんでいるということは、皆さん方も子供を持っていらっしゃる方はよくおわかりのことだと思うのです。そういう子供たちが重圧に耐えられなくて、つい非行に走ったり、ちょっと家出をするというようなことは、本当に最近ではたくさんあるわけなんですね。しかし、社会全体がそれを上手に誘導してやれば、またすぐ一週間で家へ帰ってくる、親のところへ帰ってくるということもあって解決していく例もたくさんあるわけですけれども、こういう形で、私は少女が売春の相手に使われたということを見ますと、怒りを超えてただただ本当に悲しいということで胸がいっぱいになります。こういうことが起きないように一体どうしたらいいのかということですが、私はどうしたらいいか私自身の案としてちゃんとあるわけではありません。  それでお聞きしたいわけですけれども、──────────────────────それはけしからぬというふうに私は思いましたけれども、今まではなかなかそれは直りっこないんだというような私は絶望的な気持ちでいたわけですけれども、今度の事件からは許せないという気持ちになったわけです。十五歳の少女がこんなふうにおもちゃにされていいんだろうか、政治家は、また政府は一体これをどういうふうにしたら少しでも防げるんだろうか、こういうことを私は感ずるわけです。  それで、まず労働大臣にお聞きしたいのですけれども、何らかの手はないのか。──────────────────────まず労働大臣に、この事件についての御感想と、大臣としてどうしたらいいかということをお答え願いたいと思います。
  255. 中村太郎

    中村国務大臣 事実としますれば、これは個人のモラルの問題でございますから、大変遺憾に思う次第であります。
  256. 田中美智子

    田中(美)委員 多分そのように言われるだろうと私に陳情のあった婦人団体は言っておりました。個人のモラルならば、この部長と執行委員長が、私は名前は申しませんけれども、この何さんと何さんが友人であってどこかに旅行してやったというならば、これは個人のモラルということだと思います。婦人団体は必ず大臣はそう答えるだろうと私に言いましたが、ぴたりと当たったという感じがするのです。これは業務視察ですから公用なんですね。公用で行っているということなんです。それは個人のモラルでは片づけられないと思うのです。ですから、公務でやるということを何とか大臣は考えられないのか。残念なことだけれども、個人のモラルだからおれは知らぬ、そして十五歳の少女がおもちゃにされたことに対しても、おれは知らぬでは済まないのじゃないですか。もう一度お答え願いたい。
  257. 中村太郎

    中村国務大臣 突然のお尋ねでございまして、いい知恵が浮かびません。
  258. 田中美智子

    田中(美)委員 突然のお尋ねというふうに大臣はおっしゃいますけれども、質問取りには何一つ隠さず全部きちっと話しているのですよ。質問取りの人は大臣に伝えてないのですか。今質問中ですから、不規則発言はやめてください。そうじゃないですか。きちっと言っているんです。だから、突然だから何もできないということはおかしいでしょう。幾ら考えても何もできないというなら、これは三分の理があります。しかし、全部質問取りで言っているのですから、突然だからということはないでしょう。もう一度お答えください。
  259. 中村太郎

    中村国務大臣 私が通告を受けた段階では、これに対する感想を述べてくれ、方策はどうかということはありませんでした。
  260. 田中美智子

    田中(美)委員 感想及びその対策はないかということを言っているのです。ないということですか。もう一度。突然じゃないですよ。
  261. 清水傳雄

    ○清水(傳)政府委員 先生の今御指摘、御質問ありました問題、これはまさに労使関係以前の問題だと思いまして、まさに大臣がお答えになりましたように、個人のモラルの問題だ、このように考えております。
  262. 田中美智子

    田中(美)委員 私は大臣に聞いているのであって、個人のモラルだけではありません。もちろん個人のモラルもあります。私は、──────────────────────ですから、みんなで考えようと言っているのです。十五の少女が男のおもちゃにされたのに対して、みんなで考えようということがなぜそんなに嫌なんですか。あなたたちはなぜそれが嫌なんですか。一緒に考えたらいい。  通産省に伺います。私は、通産省いいですか、企業に対してこういうことはできないのか、企業に対してこのような勧告はできないのか、通産省の御意見もお伺いしたいと思います。
  263. 広瀬勝貞

    ○広瀬説明員 お答え申し上げます。  労使の関係におきまして、労使双方が関心や主張を日ごろの対話の中で理解し合うということは大いにあることだし、そのことについてどうこう言うことはないと思います。ただし、その過程におきまして、社会通念に著しく逸脱したような行為があったり、あるいは法令に違反するような行為があってはならないということは申すまでもないと思います。  しかし、本件につきまして、今御指摘の件につきましては、そういう労使の対話の過程で起こった問題ではございますけれども、双方のモラルの問題であると思いますので、行政がむやみに立ち入るべき問題ではないのではないかというふうに考えております。
  264. 田中美智子

    田中(美)委員 私は行政には法律だけじゃないと思うのですね。モラルの問題についても注意をするということは、私は入っているというふうに思います。十五の少女がこのようになったことについて、国会でみんなでどうしたらいいかということを考えるというのは、まじめに考えてほしいと思うのです。モラルだから仕方がないということで済まないじゃないか。だから、どうしたらいいかということは、私にもちゃんとしたものはないわけですよ。どうしたらいいか。だからみんなで考えようじゃないか。ですから、労働組合にいろいろとアドバイスのできる立場労働大臣や、また通産省の通産大臣などが企業に注意をするということもあるのではないかと思うのです。  それでは、一言申し上げますが、売春対策審議会というのがあります。これは御存じだと思いますが、ここでいろいろと売春の問題を先生方に審議いただいているわけです。そういうところで、──────────────────────というようなことについての審議を一度売対審にお願いしてもらうということはできないでしょうか。売対審の方は、労働大臣なり通産大臣などからこういうことを審議してもらえないか、どうしたらいいだろうかということを審議してもらえないか、こういうふうなことというのはできないものでしょうか。大臣に御相談しているわけです。お考えになってみてください。
  265. 清水傳雄

    ○清水(傳)政府委員 労働行政の立場から、この問題についてどうこう対処するというような筋合いかどうか、私疑問に考えているところでございます。
  266. 田中美智子

    田中(美)委員 私は大臣に聞いているのです。これをどうしたらいいかということをみんなで考える。ですから、売対審にかけて、公務で出ていながらそういうふうなことが行われるということは、──────────────────────たまたまこういう形でこれが大きく報道されたということから明るみに出た。だから、これをチャンスにして、何とか売対審で考える道というのはないかと言っているわけです。大臣のお答えを聞かせてください。
  267. 中村太郎

    中村国務大臣 労働大臣としましてはどうかな、いささか行き過ぎではないかなという懸念を持っております。
  268. 田中美智子

    田中(美)委員 どうして行き過ぎなんですか。ちょっとお答えください。
  269. 中村太郎

    中村国務大臣 行政の中の問題ではないと判断をいたしますから。
  270. 田中美智子

    田中(美)委員 私は行政の中じゃないと思うと言うのですね。運輸大臣は、共産党の中路議員が、この問題ではありませんけれども、さっきのノースウェストの問題もありますよね。労働大臣が動けば動きやすいと言っているんですね。ですから、売対審に対して、労働大臣が何か考えてくれないかと。こうしてくれと、こういうことを言っているのじゃないのですね。そこでいいアイデアを出してくれないかというようなことは、売対審は労働省も関係しているところですから、そういうことは言えるのじゃないですか。どうですか、大臣。
  271. 中村太郎

    中村国務大臣 少なくとも私の段階では、そのことはいたしかねる、こう判断をいたします。
  272. 田中美智子

    田中(美)委員 じゃ通産省、お願いします。
  273. 広瀬勝貞

    ○広瀬説明員 労働大臣のお考えと同じでございます。
  274. 田中美智子

    田中(美)委員 そうすると、結局これは日本の国会では、こういうことが起きても、その十五歳の少女がこれからも出てくるかもわからないということをどうしようもない。こういう質問をすれば、それはここの場ではない。じゃ一体どこでやったらいいんですか。国会の中でどこでこの問題をやったらいいんですか。(「文教委員会だ」と呼ぶ者あり)文教だけではありません。文教じゃありません。子供の教育じゃありませんよ。子供の方の問題ではないのですよ。大人の問題なんです。婦人局長の御意見を伺いたいと思います。
  275. 佐藤ギン子

    佐藤(ギ)政府委員 性の問題というのは、人間の生理とか本能とかかわり合い、また一つ間違いますと、人間の尊厳を傷つけるというまことに難しい問題でございまして、私もこの方面につきましては経験や知識が十分にございませんので、今いい知恵がなかなか浮かばないわけでございますけれども、こういうことにつきましては、先ほどからたびたび言われておりますが、もう成熟した大人についての問題でございまして、その個人個人がモラルを高めていっていただく以外には解決の方法がないのではないかと思います。そういう意味で、毎年五月に社会の風紀、環境を改善していくための運動というのをいたしておりますので、そういう運動の中で啓発活動に力を入れてまいりたいと思っております。
  276. 田中美智子

    田中(美)委員 ──────────────────────その陰でいたいけな少女たちが傷ついている。この子の人生にとってはどれだけ大きな事件だったかと私は思います。今彼女たちはそれほどに考えていないかもしれません。しかし、もう少し大人になって、自分のやった行動、それは自分も承知してやったことですから、やった行動に対して、どうしてこんな――それはどんなに心を傷つけるかわからないと思うのですね。そうした女性たちが今の社会の中でたくさんいるということを私は大臣に考えていただきたいと思うのです。それをどうしたらいいか。労働大臣一人の力でできるとは思いません。ここにもたくさんの議員がいられます。全部男性の議員しかおりませんけれども。皆さんだって、自分の娘たちを持っていらっしゃる方はたくさんいるのじゃないでしょうか。そういう意味で、それをどうしたらいいか、どこでどうしたらいいかということを投げかけているんです。ですから、労働大臣は、全く手がない、私はできない、こういうことですし、婦人局長は、これから啓蒙するよりしようがないということですが、モラルの問題も確かにあります。これは徐々にモラルを変えていく以外にはないのかもしれません。しかし、公務でもってこういうことをするということは、それだけでも少しは何とか何らかの形で手が打てないかというふうな気持ちから、私は、あの少女たちの顔を、顔は見ておりませんけれども、目に浮かべながら国会で取り上げたわけですが、ぜひ皆さんたちがきょうのこの質問に対しては――きちっとしたこれに対してどうする手は私にもないわけです。せめて売対審でこの問題を、──────────────────────大臣は全くそのつもりはないというお答えでしたので残念ですが、大臣も心の中には考えることが多いと私は思います。どうかこういうことが起きないように、私は政府とそして国会とがともに力を合わせてこの問題が解決できるように頑張っていただきたいし、私もそのために頑張りたいというふうに思います。  それでは、質問を終わります。
  277. 稲垣実男

    稲垣委員長 次回は、公報をもってお知らせすることとし、本日は、これにて散会いたします。     午後六時四十一分散会