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1988-05-12 第112回国会 衆議院 交通安全対策特別委員会 第6号 公式Web版

  1. 会議録情報

    昭和六十三年五月十二日(木曜日)     午前九時三十分開議  出席委員    委員長 近江巳記夫君    理事 粟屋 敏信君 理事 加藤 卓二君    理事 片岡 武司君 理事 亀井 善之君    理事 柳沢 伯夫君 理事 関山 信之君    理事 正木 良明君 理事 伊藤 英成君       岡島 正之君    北川 石松君       小泉純一郎君    左藤  恵君       佐藤 静雄君    山村新治郎君       緒方 克陽君    永井 孝信君       新井 彬之君    辻  第一君  出席政府委員         警察庁交通局長 内田 文夫君         総務庁長官官房         交通安全対策室         長       原田 達夫君  委員外出席者         参  考  人         (日本交通心理         学会会長)   宇留野藤雄君         参  考  人         (交通評論家) 生内 玲子君         参  考  人         (財団法人全日         本交通安全協会         専務理事)   池田 速雄君         参  考  人         (全日本運輸産         業労働組合連合         会執行委員長) 田井 二郎君         特別委員会第一         調査室長    諸岡 昭二君     ───────────── 本日の会議に付した案件  交通安全対策に関する件      ────◇─────
  2. 近江巳記夫

    近江委員長 これより会議を開きます。  交通安全対策に関する件について調査を進めます。  本件調査のため、参考人から御意見を聴取いたします  本日御出席願っております参考人は、日本交通心理学会会長宇留野藤雄君、交通評論家生内玲子君、財団法人全日本交通安全協会専務理事池田速雄君及び全日本運輸産業労働組合連合会執行委員長田井二郎君の方々であります。  この際、参考人各位に一言ごあいさつを申し上げます。  参考人各位には、御多用中のところ本委員会に御出席くださいまして、まことにありがとうございます。  交通事故死を八千人以下に抑えるための施策等努力を重ねているところでありますが、それにもかかわらず、死亡者数が六年連続して九千人を超えるという事態は、第二次交通戦争とも言われております。また、本年も、交通事故死亡者数が著しく増加いたしております。  これらを踏まえ、交通安全対策につきまして、本日は、参考人各位の忌憚のない御意見をお述べいただきたいと存じます。  なお、議事の順序でありますが、まず各参考人からそれぞれ二十分程度意見をお述べいただき、その後、委員の質疑に対して御答弁をお願いいたしたいと存じます。  それでは、宇留野参考人にお願いいたします。
  3. 宇留野藤雄

    宇留野参考人 宇留野でございます。  私は、ヒューマンファクター、特に心理学の立場から、研究者として交通問題にかかわってまいりました。そのため、きょうお話し申し上げることも、実務的レベルからちょっと離れることが多いかもしれませんけれども、その点どうぞお許し願いたい、こういうふうに感じております。  さて、今も委員長からお話がありましたように、本年四月三十日の警察庁新聞発表によりますと、交通事故死者三千人を突破、過去十年で最悪のペースであるという報道がございました。本日の話題は、多分、なぜ事故は起こるのか、その安全対策は何かといったことが話題になるのではないかと思いますが、実は私にとりましてこれに明確にお答えすることは非常に困難なことでございます。正直言ってなぜかといいますと、いろいろな事故分析をしてまいりますと、事故はさまざまな因子が複雑に絡み合っている場合が多いので、事故対策に直結するような抜本的原因対策を指摘することは至難のわざだと思うからでございます。  こうしたことを前置きにしまして、あえて事故原因となるであろう危険因子をどうしたら排除できるか、その安全対策考え方は何かについて、主として心理学的側面から述べてみたい、こういうふうに思います。  私は、いろいろな研究者の考えを参考にして、事故原因となる三つ危険因子を想定しました。これに対してそれぞれ三つ安全対策を考えております。  まず第一に、危険因子についてでありますけれども、第一の危険というのは危険状態を言います。音読みするとデンジャーという言葉でありますが、既に人間側にエラーがございまして、そのまま放置すれば死傷が発生することが現実にわかっている場合でございます。例えば道路に大きな穴があいているとか、酒に酔って、あるいは過労や居眠り運転をしている場合でございます。これは客観的にもわかる顕在性の危険と言うことができましょう。  第二の危険というのはいわゆる潜在的危険でありまして、ハザードと称します。これは落とし穴のように、その場を通れば落とし穴に落ちて死傷することが客観的にはわかっているのに、しかし当事者はそれを予知していない状態の場合でございます。例えば、交差点でこちらに優先権があるのに、直交する左右の車が一時停止せずに進入してくるのに気がつかないといった状態を指すかと思います。  第三の危険というのはリスクでございます。これも危険という意味でありますが、これはやや冒険がかった意味がありまして、当事者が当面する危険を予測するのに、危険発生確率をどの程度判断するかというその判断基準でございます。例えば、交差点の直前で信号が黄に変わったとき、そのまま直進するかブレーキを踏んで車をとめるか、一瞬迷うことがあります。この場合、ドライバーがそのまま直進したとすれば、直交する車との衝突の危険性を低く見積もったと考えられますし、もしとまるならば、むしろ危険性を高く見積もったからだと解釈します。つまり、このように次に起こるであろう危険発生確率的に判断するわけでございますが、この危険発生確率をどう判断するかということは、過去の経験、教育、性格、またそのときの心理状態、例えば急ぎの場合とかによって左右されるということが言われております。  次に、これらの危険因子に対する安全対策考え方について簡単に申し上げたいと思います。  結論から申しますと、私は、結局安全対策というのは、例えば道路施設車両といった物と、それから交通の場合ですとドライバー歩行者その他の人、この物と人の改善に集約されるのではないかと考えております。  その考え方について申しますと、第一は、道路及びその附帯施設車両などの改善でございますが、これについては、私の専門外のことでございますし、行政当局が必死になっておやりになっていることも知っておりますので、触れないことにいたします。  第二の問題は、その対策の仕方であります。初めに述べた道路施設及び車両などをつくるときは、ぜひユーザーが、つまり使用する側が喜んで、上手に、しかも安全に使えるようにしてほしいということでございます。これを安全人間工学的改善とでも言うことができると思います。  事例を挙げますと、我々は、昭和五十九年に北海道北見市で学会を開催しました。そのとき、市の依頼を受けて、事故多発横断歩道交通診断照明専門学会メンバーを中心にして行いました。ここは、道路照明をしたにもかかわらず、横断歩行者事故が頻発して困っておりました。いろいろ調べた結果、照明器具設置場所が悪いため、ドライバーから横断歩道上の歩行者を十分に視認できないということがわかり、その照明器具を十メートルほど前方に移すことによって万事解決したのでございます。その研究者の説明によると、道路照明の仕組みというのはヘッドライトとは違って、ポジフィルムのように横断歩道全体を照明し、その中に歩行者をシルエットのように浮かび上がらせるものなのだそうでございます。  それから、ちょっと古い話でございますが、そしてまた、そのアイデアによってやったことが日本じゅうに広まっておりますが、神戸市郊外の道路カーブ路外転落事故が相次ぎました。人間工学専攻学会メンバーの一人はこれを診断して、夜間ヘッドライトではカーブのあるのが見えないということに気がつき、カーブの手前からカーブを予告する黄色の反射板を、それからカーブの最もきついところには赤色の反射板を路面の立ち上がり部分につけて視線誘導の役目もさせたところ、事故が激減したということでございます。  いずれも安全のために人間工学的改善を行ったということでございますが、この安全人間工学というのは、幾ら性能のいい物的施設や機械をつくっても、これを利用する人間性能特徴を無視した場合は、結果的に使われなかったり、物の方の性能がよ過ぎてかえって事故になったりしますので、物や施設をつくる前にユーザー特性を十分に調べることを研究している学問領域だと言うことができると思います。しかし、最近は交通工学学者先生方もこういうことに気がついて、施設をつくるときにだんだんとこういう配慮をとるような気配が見えてまいりました。これは大変喜ばしいことだと私は思います。  また、特に最近気になるのは、車社会高齢化に伴って高齢ドライバー増加することでございます。高齢ドライバー向けの車の開発が急がれるわけでございますけれども、その際、平均的高齢ドライバー特性、特に運転機能、ニーズなどについても早急にデータをつくることが必要ではないかと感じております。  最後になりますが、第三番目に道路利用者改善の問題でございます。交通ではこれが最も困難なものだと私は思っております。なぜかと申しますと、教育や管理によって事故防止のために安全行動をするように仕立て上げるということはそれほど簡単なことではないからでございます。しかし、やる気になればできたという事例もございますので、御紹介しましょう。幾つかあるケースの中から、長崎県の川棚町の場合と、既にそのモデルケースとして成果を上げた埼玉八潮市の場合を挙げてみたいと思います。  川棚町というのは、人口が一万四千七百八十七名という小さな町でございます。文部省、県の教育委員会指導を受け、昭和六十二年から事業を始めましたので、その成果を評価する段階ではありませんが、これを指導した文部省先生によるといろいろの点から見て効果が期待できるということで、なお昨年は死亡事故がゼロだったそうでございます。その中間報告から、川棚町のやり方の二、三を御紹介したいと思います。  第一に、組織づくりがうまくいっているということでございます。今まで交通安全運動は一部の関係者によるものだったのですけれども、これによって町全体に拡大されつつあるということでございます。組織は、幼稚園から高校、それに県立の養護学校まで参加し、これにより関係団体の気持ちが通じ合い、資料、情報交換が強力に行われるようになりました。また、役割分担の目標が明確で、例えば環境部会は、危険箇所の指摘、安全施設通園通学路、遊び場などの環境整備など、それから地域部会の中の交通安全母の会は、「交通安全は家庭から」を合い言葉に、家庭子供老人、青少年、ドライバーなど家族の構成内容に応じて、事故防止の話し合い、不安全行動などを反省し合っているそうでございます。  第二の特徴は、教育内容が単に交通安全教育だけではなく、生活安全の教育も行ったということであります。例えば幼い子供に、耐える能力心理学的には耐性と言いますが、この指導によって、例えば、道路向こう側から友達が呼んでもすぐに飛び出したいのを待ち、危険がなくなってから渡るというように、待つということのできる心を養わせる生活習慣が結果的に事故防止に役立ったということでございます。  第三番目の特徴は、信号の見方も含めて毎月の行動をはっきりさせたカリキュラムをつくって訓練したことでございます。これを生涯教育の一環として家庭にいる高齢者にも参加させ、訓練させたので、特に学習の場を離れた高齢者や主婦に効果があったということでございます。  このような地域ぐるみの安全で豊かな郷土づくりは、川棚町全体をすばらしい安全環境に変貌させるだろうと思うわけでございますが、もっと大事なことは、町民の一人一人の心の中に安全への心構えが芽生えてきたことでございます。  それから、既に同様のモデル地域だった埼玉県の八潮市、ここは六万九千人の人口だそうでございますが、この八潮市の場合は、昭和六十年から二カ年間行った成果は次のようでございます。六十年は死亡事故が十名、六十一年は七名、六十二年は三名、ことしは、今五月でございますが、今までゼロでございました。すばらしい成果ではございませんか。川棚町も必ずこれ以上の成果を上げていただきたいと祈っておるわけでございます。  さて、以上のような地域ぐるみの場合も、また学校のような教育の場においても、その基本となる教育プロセスというのは、第一は知識を与える、第二は訓練する、第三は熟練者にする、最後に、そういうことをひっ提げて安全態度を形成させるという四つプロセスが考えられますが、この四つプロセスの中で直接事故防止効果のあるものを二つ挙げて、私のお話を終わりたいと思います。  第一は、予知能力、先ほども触れましたけれども、危険を知らずにいるのをいち早く知るという能力でありますが、その予知能力の訓練でございまして、隠れた危険をいち早く発見し、これに対応できるようにすることでございます。これは、我々の仲間もそうでありますが、このためのトレーニングペーパーなどもございますし、また私の希望では、そういうことを訓練するためのアクシデントシミュレーターのようなものの開発が望まれるわけでございます。  第二は、安全態度の形成でございます。人々の安全行動はちょっとしたことで崩れ去るものでございます。アメリカの交通心理学者プラットという方によりますと、一般道路運転中、どのルートを選ぶか、速度をどのぐらいにするか、前車との車間距離をどうするかといった意思決定のチャンスが一マイルにつき二十回ぐらいあるということを報告しております。つまり、大体八十メートルに一回ということになります。この意思決定の際の判断基準というのは、さきにも触れましたように、その場の状態危険率をどのように見積もったかによって関係してくるということでございます。これはドライバーだけではなくて、歩行者の場合も同様でございます。  このようにして、道路利用者を安全へ改善するには、この大切な意思決定の際に危険率を高く評価し、常に安全側を選ぶような態度を形成させることがいわゆる安全マインドというのではないかと私は思っております。  最後に、二十世紀は不安の時代だとよく言われております。不安というのは対象のない恐怖だと私は思っておりますが、この不安の一つは、車社会を吹き荒れる事故であろうかと思います。この不安を車社会から一掃して二十一世紀の次の世代にバトンをタッチしたいというのが私の切なる願いでございます。  以上、終わります。(拍手)
  4. 近江巳記夫

    近江委員長 どうもありがとうございました。  次に、生内参考人にお願いいたします。
  5. 生内玲子

    生内参考人 おはようございます。生内玲子と申します。私はマスコミ出身者でございまして、今は交通関係のことを勉強させていただきながら交通安全思想普及のお手伝いなどをしておりますが、各地へ参りまして地域活動の実情なども見ておりますので、そういった地域の庶民の声の一端をきょうはお聞きいただきたいと思います。  御存じのように、交通事故死者増加しております。このまま増勢を続けていきますと一万人を突破することはほぼ確実と言われております。それで、まず第一にお願いしたいことは、この際、交通事故非常事態宣言国レベルで出していただきたいと思うわけです。  理由三つあります。一つは、国民交通事故に対して余り危機感を持っていないということ、これがこの宣言を出せばやはり危機感を持つようになる。それから同時に、国民がそうした危機感を持つためにはマスコミさんの御協力が大切でございますが、これも非常事態宣言というようなきっかけがあれば大変活動しやすいと思うのです。それから、ここが実は大事なところなのですが、特定交通安全施設整備予算増額のためにもぜひともこの非常事態宣言を出していただきたいと思います。  ところで、きょうお話しすることは大体三点でございまして、一つは安全に対する投資予算の問題です。二番目に交通環境整備の問題。それから三番目がソフト面でございまして、これは時間のある限り思いつくままに問題提起を並べてみたいと思います。  まず交通安全への投資の問題ですが、私、各地交通安全のいろいろな講習会などに出席いたしますと、交通のマナーだとか譲り合いだとかソフトの面をいつも強調しております。ところが、きょうはこうした諸先生方の前で話を聞いていただけるということでございますので、得がたい機会でございますから、ハードの面、交通安全への投資についてぜひお願いしたいと思います。  安全は金で買えるかといえば、ノーです。でも、安全は金がなければ達成できないということも確かでございます。交通安全施設整備安全思想普及それから交通教育、こういったことに大変大きなお金がかかるわけです。御存じのように、昭和四十五年をピーク交通事故死者が減ってまいりました。十年間減り続けましたものが今また逆転して増勢に転じております。これはなぜだろうか、国民は不思議に思っているに違いないと思うのです。これを見ますと、昭和四十五年の交通事故死者ピークだったときから十年間に、昭和五十四年ですが、交通事故死者が半減いたしました。ところがこの間車の数は一・八四倍、すなわち、ほとんど二倍になっております。車の数が二倍になったのに交通事故死者が半減した、なぜだろうか。国を挙げて努力をしたからでございますけれども、その裏にといいますか、ここにもやはり数字が登場しておりまして、この間、交通安全施設の拡大のために、車の増加のスピードのほぼ二倍の設備投資施設整備が行われてきていたということなんです。そしてその後、御存じのように国の財政事情のために安全施設への投資が鈍ってきたために、きたためにとだけは言いませんけれども、鈍ってきてまた事故死者数増加に転じております。これではいけないと思います。  しかも、交通安全施設に対する投資と今申し上げましたけれども、交通事情が複雑になるにつれて投資効果が確かに落ちてきております。一人の命を救うために幾らかかるかということですが、これはもちろん国レベル地方レベル、そして個人個人努力でいろいろなお金がかかっているわけでございますけれども、単純に交通安全施設等整備事業費用で比べてみますと、四十五年のピークのときからの五年間の交通事故死者の減少が一人一億八百万程度でした。ところが次の五年間、一人の人の命を救うために六億六千五百万ぐらいかかっていると聞いております。  昔は交通といいましても、まだまだ交通発展途上国でございましたから、例えば、カーブのところで人がはねられた、このカーブが暗くて見えなかったからということで、幾らするか知りませんが、一万円くらいで一つライトをつける、そうするとそこの事故がなくなるというような単純な事情でしたけれども、だんだんに歩行者も車も交通になれてくる、そうして車の性能もよくなってくる、そうしますと複雑な複合的な事情によって事故が起こるようになりますので、したがって、この事故をなくすために大変な費用がかかるということが言えると思います。こういったことで、ぜひ安全に対する投資を進めていただきたい、それがきょうのまず第一番のお願いです。  次に、これも投資と関係ありますが、交通環境整備です。歩車道分離のおくれなどについては皆さん方つとに御存じと思いますので、きょう私がお願いしたいことは、高規格道路幹線道路整備についてです。  交通安全のための道路整備といいますと、例えば、町の生活道路の中の歩車道分離とか信号増設とか標識の増設、こういうことを当然皆さん方おっしゃっていると思うのですが、それ以外に幹線道路整備ということをきょうお願いする理由は、幹線道路が渋滞すると、生活道路の方に通過車両とか大型車があふれてまいります。その結果、歩行者事故が起こる。また、生活道路にこういった大型車が入ってまいりますと、怖くてそこを走れないために、自転車歩道に上がってきてまた対歩行者事故を起こす。ある老人クラブのアンケートによりますと、交通社会の中で今老人が一番怖いと思っているのは自転車だというのですね。生活半径が狭くなっておりますから、ダンプカーとか大型トレーラーとかに老人が直接出会う機会はない。一番怖いのは歩道自転車が上がってくる。自転車の飛び出しが怖いということも聞いておりまずけれども、これもやはり幹線道路整備がおくれていることが原因一つではないかと思います。ちなみに、高速道路交通事故死者人身事故について申しますと、台キロ当たり人身事故率一般道路の十五分の一でございます。ですから、なるべく車は自動車専用道路を走っていただくということのために幹線道路整備をお願いしたいと思うわけです。  次に、思いつくままに順不同で問題提起をさせていただきます。  まず最初に、交通監視能力アップということです。これは、具体的に言えば交通警察能力アップということになります。やはりドライバーにしても歩行者にしても、お巡りさんにしかられるというのが一番怖いのですね。しかられなくても、お巡りさんが見ているということだけでも怖いのですね。例えば、以前町の中でシートベルトを締めている人はほとんど見かけませんでしたけれども、それが法律が変わってシートベルト着用が義務化され、そして行政処分点がついた。そうなるとお巡りさんにしかられる、おきゅうを据えられるということになりますので、シートベルト着用率が最近のように上がってまいりました。もっとも、これでは本当はいけないのですね。お巡りさんにしかられるからシートベルトを締めるというのでは困るのです。お巡りさんが見てないような夜中の山道のラリーなんかでシートベルトを締めないということによる事故が頻発しておりますから、しかられるから締めるのじゃ困るので、本当は自分の命を大切にするために締めるのでなければ困りますけれども、とりあえずの頓服薬として、やはり監視能力アップということをこの際お願いしたいと思います。  それから、同時に交通警察への期待ということがもう一つございます。これは安全指導の面でございます。御存じのように全交母、全日本交通安全母会連合会というのがございますけれども、そこで私ども、小中高校生対象調査をしたことがあります。この調査はいろいろありましたけれども、その一つは、あなたは交通安全についてだれに注意してもらうのが一等ありがたいですかと聞いたのですね。だれだと思いますか。お巡りさんというのがトップで三五・〇、それからお母さん二八・六、お父さん一七・四それから次は気の毒みたいでちょっと申し上げにくいのですが、先生は七・五という結果が出ておりました。ということで、やはりお巡りさんお話を聞くということは大変効果がある。子供はもちろんですけれども、御老人なんかもあのユニホームでぴっちりと身を固めたお巡りさんはあこがれですから、そして、特に優しい婦警さんなんかのお話を聞くということが大変効果があるのではないかと思います。  ここで、子供のことに触れたついでにもう一つ子供のことを申し上げますと、子供交通安全教育にはやはり家庭教育が大切であるということなんです。今お巡りさんトップだと申しましたけれども、二番目と三番目のお父さんお母さんを合わせると四六・〇になってお巡りさんを超えるわけですね。やはり家庭での交通教育が大切であるということです。それで、特に家庭での交通安全教育お母さん方が一生懸命やっていらっしゃいますけれども、お父さんがどうも余り参加していないのです。このお父さんについてなのですが、今の調査で見ますと、小学生から高校生まで調査をしたわけですけれども、お父さんに対する人気といいますか、お父さんがありがたいと言っているのは小学校から中学、高校まで変わらないのですね。ところがお母さんの方になりますと、小学生はお母さんありがとうというのが四〇・五なんですけれども、高校になるとだんだん生意気になってしまって一七・八なんという数字が出ております。今男女平均の数字を申し上げましたけれども、高校生も男の子になるとどうもお母さんの人気がますます落ちてきてしまうということを考えますと、交通安全でのお父さんの言葉は家庭の中でも大変重く受けとめられているということなので、ぜひともお父さん方も、もっと交通安全の家庭教育に協力していただきたいと思うわけです。  ちなみに、この全交母の調査でもう一つおもしろい数字が出ているのですが、お母さんが安全のための地域の集会などに出るときにお父さんはどんな態度をとりますかということなんです。いいから行ってきなさいと言うお父さんもあるし、家事をちゃんとやってから行きなさいなんと言うお父さんもあったわけですが、その中で家事をかわりにやってくれるというお父さんは六・五%にすぎなかった。だから、お父さん自身がもうちょっと子供交通安全教育に協力していただくと同時に、お母さんがこういう活動をするときにもっとバックアップしてあげてほしいということなんです。  今、お父さんお母さんがもっと交通安全教育に熱心であってほしいという話をしましたけれども、そこで諸先生方にお願いしたいことは、このお父さんお母さんがよき交通安全教育者になるための教育の場を設けていただきたい。ただ思いつくままに、危ないよ、気をつけろよみたいなことをがみがみ言っているだけではだめなのですね。やはりこの調査の中で、交通安全についてがみがみ言うので嫌だとか、いつものことなので全然気にしないなんという答えが多いのですけれども、それが新しいユニークな情報が入っている教育内容であれば子供も耳を傾けてくれるということで、教育の場をぜひつくっていただきたい、またここで予算が必要ということになるわけなんですが。  それから、私は各地域の安全活動を見ておりますけれども、どうしても地域の安全活動が高齢化したりボス化して、一部の人の活動になってしまっているという傾向が見受けられます。それで、ぜひ地方の安全活動の活性化を進めていただきたい。特に、この間JC、青年会議所なんかの活躍に大いに期待したいと思っております。  その次に、交通安全活動はボランティアでいいのかという問題です。  ここで二輪安全運転指導員の問題にちょっと触れますが、これは実は次にお話しくださる池田さんの方で所管しておられるので、私はちょっと思いつくままに触れるだけにとどめますけれども、二輪安全運転指導員これは二輪車安全運転推進委員会という、池田さんの安協さんの中に事務所がありまして、ここで認定されて指導員になるわけです。これが原付事故防止指導とか、それから二輪の安全指導で大変活躍していてくださる。全国に三万人ほどいらっしゃいますけれども、この方たちがお弁当程度で、ほとんどボランティアでやっていらっしゃるわけですね。その方たちの声を聞きますと、二輪の販売店の方でこの資格を取ってやっていらっしゃる方が多いのですが、そうすると、お店の仕事を犠牲にして行かなくてはならないので時間がないという悩み、それからこの指導員が高齢化してしまっているので、したがって、若い者が余り言うことを聞いてくれないというような悩みもあるようです。それから同時に、販売のために、二輪を売りたいがためにやっているんじゃないかというふうな目で見られるのがつらい。したがって、先生として尊敬されていないと受け取っていらっしゃる方も多いのじゃないかなと思うのです。  こんな実情を含めまして、実はこの指導員についてどういうふうにしてくださいというお願いをしているわけではなくて、全国で交通安全のために活躍していらっしゃる方がほとんど自分の乏しい時間を割いてやっていらっしゃるボランティアだけでいいのかという問題です。具体的にこの指導員に対してどんなお手当てをというようなことを今申し上げているのではなくて、例えばの話でございます。  それから、その次に国際化の問題です。国際化が進んでまいりまして大変喜ばしいことですが、一部、国際化のために交通ルールが乱れているところが見受けられます。というのは、日本人というのはスピード違反、駐車違反を盛んにやっておりますけれども、それにしても世界的には大変よく交通ルールを守っております。例えば信号が赤であれば、夜中に周りに車が全然いなくて歩行者がいなくてもそこで車はとまる。それから歩行者にしましても、周りに車が全然来ていないときでも赤ではとまっている。ところが外国へ行ってきた方などは、外国ではおのれの危険において車がいないと思えば歩行者だって歩くんだよ、そういうのが文明開化なんだよというようなことを一部言っておりました。それで、そういう外人が日本の国内にふえてきて、どうもこういう方たちがルールを守らないのです。六本木、原宿等外人の多いところで私もしばらく立って見ておりますと、外人の若い者なんかが赤信号でぱっと車の前を通る、うまくすり抜けて通るのを格好いいとするものですからそれを日本の若者がみんなまねをする、こうなってきますと、これまで半世紀かかって培われてきた遵法精神がここで崩れてしまうのではないか、ひとっこの辺も御注目いただきたいと思うのです。  次に、三ない運動はこれでよいのか。余り深くは申し上げませんけれども、交通社会人としての第一歩の集団教育機会を失うのではないか。高校を出てしまえば、大学へ行く方もありますけれどもばらばらになります。ですから、高校でまとまって席についている間に交通安全教育運転者としての教育をすべきだ。そうなると、三ないということでそっぽを向いているのはおかしいではないかということです。  その次に、子供交通事故が十二年ぶりで再び増加しております。これはいろいろ原因があると思いますが、最近、母親が仕事を持つなどして社会的な進出の機会がふえて、どうも子供の面倒を細かく見られないのも一つ原因ではないかと思うのです。それで、やはり地域ぐるみ子供を守るという姿勢、風潮をつくっていただきたい。それから同時に、車内事故、自動車乗車中の事故がふえておりますが、子供のためのシートベルト、チャイルドシートの普及についても推進しなければならないと思います。  次に、高齢者の問題です。高齢運転者の事故がいろいろと問題になっておりますけれども、その中でシルバーマーク、私は若葉マークに対して枯れ葉のマークなどと言っているのです。こんなことを言うと怒られるかもしれませんけれども、私もそろそろシルバーに近いので大っぴらに言っていいのかと思いますが、こういう問題があります。これは、国際交通安全学会調査などによりますと、シルバーマークを義務化すべしというのが一般で一五・二%、御老人自身の場合は十二・一%とまだまだ低くなっておりますので現段階では難しいかと思いますけれども、マークをつけてシルバーであることを示せと言う前に、やはり高齢運転者保護義務というようなものをつくって、そうした上で、全員でなくてもつけたいと思う方がつけるというふうに持っていくのがいいのではないかと思うのです。  それから、交通安全運動でございますけれども、長い間大変熱心に行われてきておりますが、これ以外に、できることならば高齢者安全旬間とか、そういったものを別に設けて、テーマ別の安全運動を実施してはいかがかと思います。  それからまた、最近運転者に対するメカニックの勉強が、すべてコンピュータで制御するようになっておりますので、今までほど厳しく行われておりません。これでいいのだろうかという問題なのですが、実はAT車の事故も、取り扱いがわからないことによる事故ということも聞いておりますし、同時に、最近クラッチつきの車の故障が大変ふえているそうです。これは日本自動車連盟のサービス隊から得た資料で、きょうちょっと数字を持ってきておりませんけれども、そのための事故というより故障でサービス隊を呼ぶということだそうでございますが、これも車のメカを知らないためではないかと考えております。  最後に、これから交通安全対策を進めていただくためには、いろいろな施策の効果測定をし、分析をし、それを次の施策に科学的にフィードバックするようなやり方をぜひとっていただきたいと思います。  以上です。ありがとうございました。(拍手)
  6. 近江巳記夫

    近江委員長 どうもありがとうございました。  次に、池田参考人にお願いいたします。
  7. 池田速雄

    池田参考人 全日本交通安全協会池田でございます。  この機会をおかりいたしまして、諸先生方には平素から交通安全に対して大変な御尽力をいただいておりますことに敬意を表しますとともに、平素の御指導を感謝申し上げたいと思います。  私の方からは、きょうは、同じような事情にございますヨーロッパの例を若干御紹介させていただきまして、御参考に供させていただきたいというふうに思うわけでございます。  まず第一に申し上げたいことは、事故減少の難しさというのはやはり世界共通であるということでございまして、ヨーロッパでも事情はほぼ同じだということでございます。私どもも加盟しております国際安全協会というのがございますが、そこの会長のことしの新年のメッセージによりますと、一九八六年のヨーロッパの交通安全年、これは共通の安全五則等をつくりまして大変活発に活動されたわけでございますけれども、それが予期したような成果を上げ得なかった、したがって、我々はこれまでの伝統的な方法を再考して新しい交通安全の路線を開発しなければならない、こういうことを述べております。  ヨーロッパでは、八五年までは大体順調に事故は減少いたしております。一番模範的だと言われました西ドイツは、七〇年を一〇〇といたしますと、八五年は四三・七%まで下げてまいりました。しかし、八六年は対前年で六・五%の増、オランダも四五・二%まで下げてまいりましたけれども六・三%の増加、フランスも六九・五%まで下げてまいりましたが、対前年で四・九%の増、イギリスも七一・二%まで下げてまいりましたが五・二%の増、八六年単年度で急に上昇してまいったわけでございます。その理由につきましては、まだ必ずしも検討十分ではございませんでなかなか説明が難しいと思いますけれども、やはり施策の効果が上がりにくい時期に差しかかってきているという認識を持たざるを得ないというふうに思うわけであります。  一つだけ一例をスウェーデンにとってみますと、八五年の死者は八百八人でございますけれども、これは七〇年の千三百七人の約六二%でございます。しかし、内容を見ますと、例えば年齢別では、六歳以下が一九%にまで減っているわけでございます。七歳から十四歳までは四七%にまで減っている。しかし、十五歳から十七歳ですと六五%、十八歳、十九歳は七七%、二十歳から二十四歳は六七%、二十五歳から六十四歳は六一%、六十五歳以上になりますと六七%という実態になっております。今まで減ってまいりましたのは幼児が非常に多いということでございます。また、状態別で見ますと、歩行者は三七%にまで減っておりますが、その五〇%は六十五歳以上の者である。自転車の場合も六五%にまで減っておりますけれども、その五二%は六十五歳以上の者である。二輪車は一〇八%と逆に増加しております。自動車につきましては七八%にまでしか減っていない、同乗者は七五%である、こういう数字でございます。したがいまして、減りにくいところが残ってきておるというのが実態であるというふうに考えます。大まかな傾向としては、皆様御案内のとおり日本の事情も同じであるというふうに考えておるわけでございます。  しからば、どういう対策を考えているのだろうかということでございますけれども、先ほど申しました会長のメッセージによりますと、昨年の十一月に開かれましたヨーロッパ運輸大臣会議でもこのことが問題になったのですが、政策担当者は、一九七三年以来多くの国で成功をおさめてきた交通安全対策――これは、七三年以降この運輸大臣会議がいろいろな勧告を出しております。飲酒の問題でございますとかシートベルトの問題でございますとか速度制限の問題でございますとか、単発的な施策につきまして決議を行っているわけでございますが、それらの安全対策が今では限界に来ているということで、八六年には道路利用者行動を根本的に変えるという観点からの対策を出しておりまして、そのことをやはり重視しなければいかぬのじゃないか、こういう意味のことを述べておるわけでございます。  その話に出ました一九八六年の決議ナンバー四十八というのは、大変恐縮でございますけれども、お手元に翻訳いたしたものを差し上げてございますので御参照していただければ幸せと思うわけでございますが、要するに、これまでは個々の特定のテーマを対象にしてやってきたのだけれども、それぞれの交通安全対策というのは全般的な防止戦略の一部としてでなければ永続効果がないという認識に立ちまして、交通事故の大きな三つ原因の中で一番重要な、人間的要因に影響を及ぼすような包括的な対策を取り上げているというところに特徴があるわけでございます。決議は十五項目にわたっておりますけれども、その中の一から二までは事故原因の分析とその対策、三から十四が具体的な対策でございますけれども、これは次に申し上げます四つ対策に限られているわけでございます。それから最後の十五は、施策の実施に当たっては民間組織の役割を重視しろ、こういうことを述べておるわけでございます。  決議は十五項目でございますが、その決議の基礎をなします報告書は五章から成っております。  第一章では、事故分析に基づく対策の立て方を述べておるわけでございますが、三十一ぺージに結論的なものを三点挙げております。これまでのような斉一的または一面的な対策では必ずしも解決できないこともあるといたしまして、一つは、教育道路環境の技術的改善、情報、規則、管理制裁に及ぶ全体的戦略を明確にするということ、それから、いろいろなカテゴリーの道路利用者に対し選別した対策をとるということが二つ目でございます。三番目には、より効果的防止プログラムを策定するため、地方及び地域事故の実態をより十分考慮する必要があるということでございます。抽象的に言いますと、これからの対策はこの三つに尽きるのではないかというふうに思うわけでございますけれども、ただ、注意しなければいけないのは、最も効果的な矯正策というのは必ずしも事故の主要原因に直接関係する場合だけに限らず、先ほどもお話がございましたとおり、他のカテゴリー、例えば人間的な要因が重視されましても、道路環境的な要因を改善することによって直るというところもあるので、複眼的に物を見ろ、こういうことだというふうに理解するわけでございます。特にこの点につきましては、日本の実情に合わせますとまだまだ交通工学の矯正策に期待するところが大きいというふうにも思いますし、また、ストレートに物を考えるなという点では非常に学ぶべき点が多いのじゃないかというふうに思うわけでございます。  一つだけ例を挙げますと、スウェーデンでは、八六年から後部座席のシートベルトにつきましても強制の措置をとったわけでございますが、ただ、十五歳以下の子供につきましては免除しております。その免除がいいのか悪いのかということは随分議論になったようでございますけれども、実際上、現在では相当成果を上げておるという報告がされております。それはなぜかと申しますと、スウェーデンの場合には九カ月までの子供に対して保護装置を無償で貸し付ける制度がございまして、一遍それで習慣をつけますと、その後の成長に伴いましても自分で自発的にそういうものを買う、あるいは少し大きくなりましてもシートベルトをつけるという習慣が広報その他と相まってついている、したがって相当成果が上がっている、こういうような報告がされておるわけでございます。  三番目の点の地域を重視するということにつきましては、先ほどのお話にもありましたとおり、大変大切なことじゃないかというふうに考えているわけでございます。  第二章では、交通安全教育のあり方について述べているわけでございます。四十五ページに結論らしきものが書いてございますが、その中で、一般の教育につきまして二つほど挙げております。それは、幼児のときにスタートし、運転免許取得後に至るまで継続する訓練システムを採択する、それから学校における交通安全教育の内容と方法を改善すること、その場合、両親と教師の重要な役割を発展させることが重要であるということでございます。従来、子供事故防止につきましては、子供事故防止そのものを究極の目的とした対策がとられていたような感じがあるのだけれども、これからはそれでは不十分だ、将来、態様が変わるにしても、子供の時期にそれぞれの道路利用者としての基本的なマナーと申しますか、そういうものを身につけさせるべきだという考えが非常に強いわけでございまして、その分野に進むべきだということが強調されておるわけであります。このことが後に青少年になった場合、なかなか態度改善が難しいわけでございますけれども、その伏線としては、やはり幼いうちに教育しておいた方がいいんじゃないかという考え方が非常に強いと思います。これは十分参考になる点じゃないかというふうに考えております。  それから、次は専門教育についてでございますけれども、自動車学校教育を安全な行動パターンの学習を推進するよう改善したらどうだ、それから、新規運転者のフォローアップと再訓練のシステムを導入するようにしたらどうだということを述べておるわけであります。これは、自動車学校教育、まあ免許を得るためでありますけれども、基本的な教育内容としましては安全な行動パターンというものが一番大事なんだ、そういうことを重視してほしいということと、それから、免許を受けてもそれが全部安全を保障したことにはなっていないのだ、自後の教育、再訓練がぜひ必要だという認識を持て、こういうことだというふうに理解するわけであります。  それから、第三章では公衆に情報を提供することについて述べているわけでございます。結論は五十七ページに書いてございますけれども、オランダの報告の例等を挙げまして、広報、情報提供そのもので成果を上げるということはなかなか難しい、やはり他の対策と結合した場合に広報、情報提供というものは効果が上がる、あるいはそれだけでは難しい、全国と地方との問題を十分考える必要があるというような点が結論だというふうに考えるわけであります。  第四章では、これも先ほどお話が出ましたけれども、監視とペナルティーについて述べております。結論としましては六十一ページにございますけれども、黄金則ということで、監視の頻度、それから違反者がペナルティーを受ける確実さ、ペナルティーが迅速に科せられることとその効果を公衆に納得させることが重要だということを述べ、同時に、常習者の再訓練の必要性、執行に当たっての広報の重視といったようなことが述べられているわけであります。  第五章では、民間の役割について述べております。七十五ページに結論がございますけれども、マスメディア、車の製造業者と輸入業者、自動車保険業界、道路利用者交通安全協会、医師、企業の果たす役割を歓迎し、これをさらに発展さすべきであるということを述べ、また、民間のあらゆる部門の代表者を含む混合勧告委員会の有効なことを示唆しておるわけでございます。結論といたしましては、民間団体は当局の自然なパートナーとして、公衆との中継者としての役割をこれからもますます果たすべきであるということを言っておるわけでございます。  以上、非常に早口で申しまして恐縮でございますけれども、この項目自体につきましては、恐らく日本の場合につきましても特に目新しいものはないと思うわけであります。そうだといたしますと、これからの問題は、いかに適切にこれらの項目の実施の方法なり内容なりにつきまして成果を挙げていくかということが恐らく各国の一番の大きな問題、勝負どころであると考えるわけでございます。PRIによりますと、世界じゅうで四十万人が毎年交通事故で亡くなり、千二百万人が負傷しているということが述べられております。そして問題は、こういった交通事故死というものが余りにも日常化してしまったために、これを人々が陳腐な事実として受け入れるということが一番怖いのだ、こういうことを絶対に許してはいけないということを述べておるわけでございます。  日本の場合も、これから対策を立てていただきます場合に、交通事故死交通事故というものがいかに悲惨なものであるか、これを防止することが大事であるかということを強く訴えていかなければならないと考えておりますし、特にその内容を見ますと、日本の場合でも、十五歳から十九歳までの死亡者の中で実に半分近い四六%は交通事故で亡くなっている。二十から二十四までの若者の二七%が交通事故で亡くなっている。死者のうちの占める比率がそういうことだということを考えますと、青少年の問題のトップ交通事故死というものを挙げるべきじゃないかと考えているわけでございます。こういった事柄の重大性を十分認識するような広報をこれから続けていただかなければならぬと思いますし、あるいは、これから何ができるかということを国、県、地方の段階あるいは民間は民間の段階それぞれで検討してまいりますと、必ずやいい結果を生み出す方法が見出せるものと考えておるわけでございます。  民間といたしましても、交通安全運動のたびごとに五十万人ほどの人に出ていただいております。先ほどお話がございましたとおり、二輪車の関係につきましても、自動車の関係につきましても、ボランティアの方が大いに活動されております。また、多くの方々がそれぞれの地域で御活躍いただいております。これらの方々の活動には心から頭の下がる思いがするわけでございますけれども、そういったボランティアの方々を勇気づけるためにも、事態が悪くなったのだということではなくて、成果は上がっておる、しかし事態はこれだけ厳しいのだ、ますます努力すればますます成果が上がるのだということを実感として受けとめてもらうようなことを私どもも期待しておるわけでございます。  これからの御指導を切にお願いいたしまして、話を終わらせていただきます。(拍手)
  8. 近江巳記夫

    近江委員長 どうもありがとうございました。  次に、田井参考人にお願いいたします。
  9. 田井二郎

    ○田井参考人 ただいま御紹介をいただきました私は、トラックの運送を中心といたします貨物輸送に従事する労働者約十二万五千人で組織しております略称運輸労連と申しますが、そこの代表であります田井と申します。よろしくお願いいたします。  本日、出席いたしましたのは、交通安全対策に関する件につきまして、トラック運送に携わる労働者として、営業用トラックの立場からこの問題についていろいろと申し上げたいと思っておるわけであります。  営業用と申しますか、事業用トラックの事故特徴を申しますと、最近つとにトラックの事故がふえておりますが、その中でも営業用のナンバー、いわゆる緑のナンバーをつけた車の事故がふえております。新しい公表されました数字は知りませんが、手元にある六十年の発表されました数字によりますと、営業用トラックが二千六百九十四件の事故を起こし、その中で死亡しましたとうとい人命は千百四十二人だというふうに書いてあります。二回に一回は必ずトラックの事故は人を殺すというようなまことに悲惨な事実、しかもこれは営業車でありまして、プロと称する運転者がこういう事故を起こしておるわけであります。私ども、同じ仕事をしている者としまして、心から残念に思えてならないわけであります。また、このトラックの事故というものは単独で事故を起こしておりません。例えば、山の中で居眠り運転でがけにぶつかったとか谷底に転落したなんという話はありますけれども、その数字はまことに少ないわけであります。ほとんどが都心に入る、いわゆる大都市であるとか中都市であるとか消費活動が大変盛んなところに進入をしてまいりますその都市周辺の路上で、前方を走る車あるいは停車をしている車に追突をするという、いわゆる複数以上の車に大きな被害を与えるような事故を起こしておるわけであります。  先ほどから多くの参考人の方からお話がございましたように、事故は必ずしも一つの要件で起きるわけではありません。ある条件下にありまして幾つかの要件が重なり合って発生されるものでありますけれども、私どもが職場に参りまして、事故を起こした運転手あるいはそういう環境等についていろいろ調査をいたしますと、その最大の原因は、過労運転、過積み運転に尽きると私は思います。このことにつきましては、私ども、この交通安全対策特別委員会で今まで幾つかの御討議をいただいておりますのを議事録等において見させていただいておりますけれども、先生方から御指摘がありますように、私は、まさしくトラックの事故の最大の要因は過労、過積み運転であると思っておるわけであります。  トラック運転労働者の労働時間は一体どのぐらいなんだということになりますが、昭和六十一年のトラック運転者の労働時間は、年間で、路線大型、これはバスで言えば路線バスみたいな対象を考えていただけばよろしいと思いますが、これが三千百七十時間であります。そして区域大型、これは貸し切り車です。バスで言えば観光バスのように貸し切って行くという車でありますが、これが二千九百十時間であります。これは決して労働組合が調査した数字ではありません。業界の全ト協という事業者団体が調査いたしました数字でございます。同年におきます全産業平均の年間の労働時間は二千二百八十時間でありますから、これは路線で八百九十時間、区域で六百三十時間いわゆる全産業労働者の平均労働時間よりも多いわけであります。しかも、年間の総出勤日数は、全産業は二百七十五日でありますけれども、トラックに従事します労働者は二百九十二日でありまして、これも全産業から見れば十七日、そして非常に労働時間の少ない電気、ガス供給事業に働く労働者に比べますと、三十四日間多く出勤をしておるわけであります。言葉をかえれば、他の労働者よりも一カ月余計に働いているということであります。  長時間労働の問題についてはそれにしましても、一日の労働内容が問題になってくるわけであります。昭和四十七年より私どもは、全国の主要幹線道路を通過しますトラックを対象にいたしまして調査を続けてまいりました。毎年同じ時期、十一月九日というふうに設定をしておりますが、秋冬繁忙期で忙しくなる時期をねらって実態調査をやっておるわけであります。大体一万一千枚のアンケートを集約することができるということは、一万一千人の運転労働者に意見を聞いたわけでありまして、北海道から鹿児島に至るまですべての幹線道路調査しておるわけです。  昨年度の調査の中で、九時間を超えて運転をしている運転者が何人おるかということでありますが、一万五百十九人の対象の中で三七・一%と申しますから三千八百九十五人、約四千人近いトラックの運転手は九時間を超えて運転をしておる。運転ということはそれだけが労働ではありません。トラックを走らすためには運行の指示も受けますし、車両の点検もいたしますし、また大きな問題は荷物を積むということであります。これは大変な時間と労力を必要とするわけであります。それに当然に食事をする時間もあるわけでありまして、こういうことから考えると運転時間九時間ということは、この運転者の労働時間、いわゆる拘束時間というのは恐らく十六時間を超えておるだろうと私どもは見ておるわけであります。それならまだいいのですが、その中で十二時間を超えて運転をしている者が一五・八%、千六百五十九人おるわけでありまして、これが毎年毎年ふえておるわけであります。五十八年の調査では九・九%、約一〇%だったのですが、六十一年には十三・三%、そうして昨年度には一五・八%というふうに、いわゆる長時間労働が非常にふえておるわけであります。昨年度の場合には十二時間以上というものが余りにもふえておりましたから、十二時間を超えてもっと上を調べてみようじゃないかといって十四時間まで調べましたところ、十四時間運転をしておるのは七百四人おりました。六・七%であります。この運転手は、恐らく二十四時間中、食事をとるかトイレに行くかその他以外にはほとんど休んでいなかったのではなかろうかというふうに私どもは見ざるを得ないわけであります。  殊にこういうトラックの運転が目立つのは、農漁産物を送る白トラの大型トラックに見られる状況であります。例えば、石巻であるとか八戸の方から魚介類を積んで走っている車は、東京方面に向かって走っておりますけれども、運転手にはどこへ行くかはわかっていないのです。これは逐一公衆電話から自分の出荷をするところに問い合わせをしまして、漁業組合の命令によって、横浜に入るかあるいは東京に入るかはその直前までわからないのです。そのときの相場いかんによっては横浜に入れ、あるいは引き返して東松山に入れ、こういう指令が出て走るわけでありますから、運転手はとにかく西の方に向かって走っていく、こういう状況で走っているわけであります。これが今の長時間労働を生む一つの大きな問題であろうと私は思うわけであります。  そのように、今のトラック運転者の特徴的な勤務態様というものは単なる長時間労働ばかりじゃなくて、今言いましたように目的がはっきりしていない、あるいは慢性的な長期の出勤状態であるわけです。二百九十二日といいますから恐らく日曜日もろくに休んでいないのです。こういう状況で働かされているわけであります。それに出勤、退社時間が明確じゃありません。そして、自分がどこに行くかというのは出勤してからでなければわからないわけであります。きょう出かけるのだけれども、自分の奥さんにどちらに行くのかと聞かれてもわからない。会社に行ってみないことには、おれは大阪に行くんだか仙台に行くんだかわからないというのが実態であるわけであります。そして夜間運行がほとんどでありまして、その途中において食事をとる場所などは皆無であります。こういう状況の中で働かされておりますので、私どもはよく言うのでありますけれども、事故、けが、弁当自分持ち、こういうのがトラック労働者の実態であります。  最近の特徴的なことを申し上げますと、交通渋滞それから出荷時間のおくれ、そういう中でも到着時間だけは厳格に言われております。かつての東京は、隅田川の清洲橋あたりには営業倉庫が乱立をしておったわけでありますけれども、今その地域はすべてしょうしゃなマンションかあるいはビジネスのビルディングに変わっております。昭和の初期にあれほど必要であったあの営業倉庫が、今日その百倍に近い経済活動があるにもかかわらずなぜないのだろうかといいますと、これこそ現在の日本のコンピューター情報によりますところのいわゆる無在庫営業活動といいますか、経済活動が徹底をされておるということであります。そして一方では、デパートにしろスーパーにしろ、夜の営業時間を延長しております。私は決してそのことが悪いと言っているのじゃありません。多くの方々が共稼ぎをし、働く時間も非常に不規則になっておりますから、できる限りお店を開いて利用しやすくすることはいいことでありますけれども、それは同時に、そこで売られる商品を翌日注文する時間が遅くなるということであります。したがって、そこで集約をしまして問屋に行く、問屋で荷づくりをする、出るというのは、かつては営業車両は七時にはもう各方面に向かって出発をしておりましたが、今は十時であります。東京から大阪に向けて出ていくとすれば十時、十時半であります。しかし、到着する時間は間違いなく朝の何時までということでありますと、どこでアジャストされるかというと、走っている時間でアジャストせざるを得ないわけであります。  かつて、私はチャップリンの「モダン・タイムス」という映画を見ました。労働者が機械に振り回されているということであります。今様に申し上げますと、トラックの運転手はまさしくコンピューターに振り回されておるわけでありまして、その情報によって自分たちが荷物を取りに行ってもまだできていない、しかし到着する時間は間違いなく決められる。そうすると、その到着時間にもし行き先で交通渋滞があると大変なことになって、もうおまえのところは使わないというふうに言われるので無理をしてその町の近場まで走っていく。途中には適当な休養施設もない、車を駐車する場所もない、そうすると何でも近くまで行こうということになって、それが今日の都心周辺におきますトラック事故の最大の理由だと私は思っております。  今、若い者はトラックの職場に職業を求めようとしておりません。先ほどから申し上げておりますように、四十七年の調査では、トラックの職場というのは五三・七%が若者だったのです。二十代のもう本当にエネルギーにあふれた、多少一日ぐらい寝なくたって平気で走っていけるような若者がトラック運転をしておりました。しかし、六十一年の調査では、この五三・七%の率は二六・八%に下がっているわけであります。そして四十歳台が二五・二%、五十一歳以上のトラックの運転手が五・六%、足しますと三〇・八%、今はもう高齢者運転手でトラックが運転をされているというわけであります。私どもの調査の数値でありますから、これでもってすべてがそうだと言うわけではありませんが、大ざっぱに言って、私どもが調査をするごとに年齢が高くなっていくわけであります。昭和四十七年ごろは約三十六万人の営業用トラック運転手がおりました。仮にこの五三%といいますとその半数以上、約十九万五千人が若者の職場であったわけですけれども、今七十万人と言われている営業用トラック運転手の中で若者は十八万八千人ですから、かつての絶対数すら割っておるわけであります。そして、四十一歳以上のトラックの運転手は今三〇・八%を占めておるわけでありまして、現在では二十一万六千人。この階層はかつてはわずか二万人ぐらいしかいなかったのです。約十倍にふえておる。現状ではこの人たちが日本の経済を支えているのだということであるわけでございます。一日に十二時間も運転をさせられる、あるいは休みもとれない、こういう中で若者がどうしてデートができましょう、こんな職場をなぜ選びましょうか。今やこの職場は、人生を達観した高年齢者がこの仕事をやっているということであります。  この間も新聞を読みましたら事故を起こした記事が載っておりましたが、それは、予定した運転手が出勤をしない、ポカ休みだ、だからおまえ行ってくれと言われたその運転手が事故を起こした。確かにポカ休みは悪いと思います。しかし、二百九十二日も出勤をさせておいてポカ休みもないだろうと思うのです。運転手も一般の常識のある社会人でありますから、冠婚葬祭にも出ましょう、あるいは子供学校の参観日にも出なければならないと思いますけれども、そういうような休みさえとれないままに出勤命令を出して、たまたま休んだらポカ休みだと言う。言うならば通常の社会人と同じような休みを与えておいてのポカ休みなら別でありますけれども、私は、そういう新聞を読みますといささか憤りを感ぜざるを得ないわけであります。ドイツの組合でアンケートをしましたのを見ましたけれども、トラックの運転手が退職する最大の理由は、地域のいろいろな行事に参加できないからだ。例えば子供の運動会であるとか、地域で何かいろいろと催し物があってもそれに参加できない、そうすると地域の人からけげんな目で見られる、だから私はもうトラックの運転手はやめるんだというようなことが出ておりまして、私はなるほどなと思って感心した次第であります。  したがって、私はここでトラックの運転手の立場から、もしこの事故を減らすということならば、冒頭申しましたように、過労と過積み運転をなくすことだと思います。そのためには、諸先生方にお願いをいたしまして、ぜひともそういうような規制をつくっていただきたいと思います。どんなに口で言っても、どんなに業者を集めて、あるいは関係します行政機関がそれぞれお集まりになってお話しになっても、運転をする労働者に長時間労働をやめさすことはできないのです。過積み運転をなくすことはできないのです。殊に、数年前に過積み運転に対します両罰規定が強化された際に、過積みが一時激減をしたことがありました。まさしくそのことが実態をあらわしているのじゃないでしょうか。過積みをしようとしたのは運転手じゃなかったんだ、両罰規定が強化されて、安全管理者や荷主がびっくりしてもうやめようと言ったから一時過積みがなくなったんだということから見ましても、そういうような規制をぜひともひとつつくっていただきたいと私は思っておるわけであります。  ことしの四月から基準法が改正をされました。そして、ことしから四十六時間、一九九〇年代のある年に参りましたら週間の労働時間は四十時間だと言われておりますが、残念なことに、一番事故を起こし、世間に御迷惑をかけております私どものトラック運転手の労働時間は、三年間四十八時間で据え置かれておるわけであります。一方において事故をなくせ、あるいは交通の労働者は非常に社会悪を生み出しているのじゃないかと言いつつも、ほかの労働者が四十六時間、四十四時間の労働時間を受けておるときにいまだに長時間労働の中で働かされているというこの実態の中で、その労働者におまえ交通事故を起こすなと言って、それがどのように聞こえるでしょうか。もちろん、私たちは真剣にこの問題を取り上げてやっております。しかし、そのことは耳にうつろに聞こえると言っても言い過ぎではないのじゃないかと私は思っております。どうか諸先生方にお願いするのは、この交通の労働者の労働時間をぜひとも少なくしてもらう。そのことがもしできれば、私はここで、少なくとも営業トラックの事故の激減はお約束できると考えておる次第であります。  時間が参りましたのでこの辺でやめますが、どうかひとつよろしくお願いをしたいと思います。
  10. 近江巳記夫

    近江委員長 どうもありがとうございました。  以上で参考人の御意見の開陳は終わりました。     ─────────────
  11. 近江巳記夫

    近江委員長 これより質疑を行います。粟屋敏信君
  12. 粟屋敏信

    ○粟屋委員 本日は、参考人の諸先生方にはお忙しい中を御出席いただき、貴重な御意見を拝聴させていただきまして、まことにありがとうございました。  冒頭、委員長からお話がございましたように、交通事故の激増により、ここ数年連続して九千人を超える死者、また身近な例では、最近のゴールデンウィーク中に二百九十人の死者が発生をしたということで、本当に憂うべき状態であると思っております。  この原因は何かということを我々も常に考え、また本日は先生方からいろいろ御高見を拝聴したわけでございますが、私なりに考えますと、日本経済の規模が大きくなった、特に、最近景気が上向きまして人と車の流れが多くなった。これは諸外国も同様であろうと思います。池田参考人からお話がございましたけれども、同様な傾向にあるのではないかと思うわけであります。同時に、最後に田井参考人からお話を伺いましたけれども、物流形態の大きな変化、これもこの激増にある程度寄与しているのではないかと思うわけでありますが、基本的に物を考えます場合に、この原因は、参考人の諸先生の御意見にありましたように、私は三つあると思っておるわけであります。まずは物の面から申しますと道路関係、特に交通安全施設整備の問題、それから車の欠陥またはそれに対する知識が十分でないという面、それと、何と申しましても人の心の問題であろうと思うわけであります。  生内参考人からは高規格道路整備についてもお話がございました。かねがね道路問題について深い御造詣をお持ちの先生でございますので傾聴させていただきましたが、これを交通安全施設という立場から考えた場合に、確かに、政府も何次かの交通安全施設整備計画をつくってその整備に努めておるわけでございますが、その中で特に整備を急がなければならないものは何であろうかという点についてお聞かせいただければと思います。  もう一つは、いかに立派な交通安全施設ができても、交通信号がたくさんできても、同時に物の運用という面が十分でなければならぬと思うわけであります。私ども、地元でいろいろ経験をさせていただいておりますと、交通信号の点滅の問題がございます。我が郷里の交通信号の点滅を見ておりますと、どうも東京よりも歩行者の青信号の点滅の時間が長い。それでついつい無理をして横断をしょうとするような傾向が出てくるのではないか、それと今度は車の通行信号との連関そういう問題もある程度事故に役立っているのではないかと言ってはおかしいですが、そういう感じがいたします。その辺につきまして、まず池田参考人の御意見を伺わせていただきたいと思います。よろしくお願いいたします。
  13. 池田速雄

    池田参考人 安全施設を含みます道路整備の問題につきましてのお尋ねでございます。  基本的にはやはり道路網をつくっていただかなければいけませんが、同時に安全施設もぜひお忘れなくということです。しかし、狭い意味安全施設だけでなくて、全体を見ての広い意味での安全施設ということになりますと、例えば街路の問題、住宅地の取りつけの問題、バイパスのつけ方の問題、いろいろあると思います。大変に御努力いただいておることも私ども承知いたしておりますので、その方向をぜひ広げていただきたいと思うわけでございます。  例えば交差点一つをとりましても、現状のままでいいのかどうかというのは非常に大きな議論をしておられるようでございますし、検討されております。と申しますのは、車の混合度がひどくなりましたり、あるいは車が長大化いたしますと途端に状況が変わってくる。あるいは、市街地が一つできましたり工場が一つできただけでそこの流れが変わるということで、交差点自身もどうするかということを、例えば警察のサイドでございますと、交差点はむしろ縁石回りと申しますか、専門的によく存じませんけれども、これが小さい方がいいのか、あるいは車が回りやすいように大きい方がいいのか、横断歩道が近い方がいいのか、遠い方がいいのか、大変熱心に御検討いただいておるという事情もございます。仮にそれが結論に達しましても、実際の用地買収の問題でお困りになっておられるというような御努力も存じておるわけでございますが、安全施設の関係につきましては、特にヨーロッパに比べますと、いろいろなデータを見ましてもまだまだ少ないのではないか。道路整備、広く言えば都市計画を含めまして問題点が多いのではないかと考えておりますので、ぜひその点もお願いいたしたいというふうに考えております。
  14. 粟屋敏信

    ○粟屋委員 生内先生、いかがでございましょうか。
  15. 生内玲子

    生内参考人 お答えいたします。  緊急に整備していただきたいのはやはり歩車道の分離でございます。歩道整備状況なんですが、整備が必要とされている区間の四〇%しか現在整備はされておりません。特に、緊急に整備するもののうち七八%しか整備がされていないという状況でございますので、これをぜひ急いでいただきたい。  それから、青信号の点滅の問題ですが、大変お恥ずかしいことに、地方の方が東京より長いということを知りませんでした。私が考えますのに、アメリカあたりへ参りますと、特にニューヨークというのは、これは信号に限らずなんですが、歩行者の歩いている流れが非常に速いのですね。私など、短足であることも含めてなかなかその流れに追いつかないわけなんです。それがまた信号のところに行きますと歩行者信号の青が大変短くて、青になった途端に最初に出た人が無事に向こう岸にたどり着くくらいのところで終わってしまうわけですね。ですから一番手だけしか渡れないという状況なんです。それに対して東京はかなりゆとりがありますけれども、それに比べてまた地方の方は幾らかのんびりしているので、これは地方のサイクルに合わせているのではないかと思います。  いずれにしても、信号機のハイテク化という研究が今進められているそうでございまして、この研究と実施を急いでいただきたいと思うわけでございます。  以上です。
  16. 粟屋敏信

    ○粟屋委員 交通安全施設整備、運用の問題は、行政当局がそれぞれ研究をして一生懸命やっておられるわけでございますが、また、平素交通安全問題に御関心のある先生方の御意見もいろいろ拝聴して進めたらどうかと思っておるところでございます。  それから、人の心の問題ですが、先ほど池田参考人も報告を御引用になってお述べになりましたけれども、私は、幼児教育というのは非常に大事だろうと思っております。  私どもがしょっちゅう見ておるところによりますと、どうも最近母親が子供の手を引いて歩くのが少なくなった。もう一つは今の信号の問題でございますけれども、歩行者信号は既に赤信号になっているのに車信号がまだ青だからというので、子供の手を引っ張って、あるいは子供をせかして渡っていくという風景をよく見るわけでございます。私は、やはりこの辺、特に家庭教育というものをもう一遍見直すべきではないかと思うわけでございまして、先ほど来、先生方からの御意見で、家庭ぐるみ、地域ぐるみというお話がございましたけれども、これをより徹底していく必要があるのではないかと思います。宇留野先生心理学の立場からいろいろとお触れになってお聞かせをいただきましたけれども、あるいは重複するかもしれませんが、この問題につきまして重ねて先生の御意見をお伺いいたしたいと思います。
  17. 宇留野藤雄

    宇留野参考人 私の考えを簡単に申したいと思いますが、確かに、小さいときから交通安全行動をすることは非常に大事なことだと私は思います。つまり、簡単に言えば、条件反射ぐらいまで高めた習慣行動に高めていくことが必要であろうかと私は思います。  今御指摘のあったように、最近の若いお母さん方は余り子供さんの面倒を見てないことは同感でございます。私は、女子高校のときに交通安全教育も含めた安全教育をカリキュラムの中に入れてもらったら、高校を出れば、あるいは大学を出れば間もなく何年かして結婚して母親になるわけですから、その辺からまずお母さんにそういう安全教育をすることができないかな、これはもう随分前から思っているのでございますが、そういう考えでございます。
  18. 粟屋敏信

    ○粟屋委員 交通事故でたくさんの人が亡くなっておるわけでございますけれども、これはその人の不注意というようなこともありましょうし、あるいは道路環境が悪かったということもありましょうし、よその車の事故によって巻き込まれるということもあると思うわけであります。そういう方々がほとんどだと思いますが、私は、やはり常に事故を起こす因子を持った方といいますか、そういう方々が原因事故が発生する場合があるのではないかと思うわけでございます。そういう意味においてこれらを防ぐためには、免許を取ったからもうそれで万能だというのではなくて、ある段階で再訓練をする必要があるのではないかと思うわけでございます。  そういうことに関連をいたしまして、宇留野先生、そういう事故を発生させた人の中に、心理学の立場から考えて本来ならば免許を与えるべきでなかったというような者が存在するのかどうか、そういう点についてお聞かせをいただきたいと思います。また池田参考人からは、そういう方々に対する再訓練を交通安全の立場からどうお考えになるのか、お聞かせをいただきたいと思います。
  19. 宇留野藤雄

    宇留野参考人 ただいまのお話は、事故ドライバーの再教育あるいはチェックをするということだと思いますが、道路交通法八十八条ですか、あれには免許を受けることはできませんよというフィルターがかかっておりますね。例えば、精神的に障害を持っているとか手足がどうだとか機能がどうだとか、そういうことがありまして、そのフィルターを過ぎて免許をもらったのだけれどもうまくいかない、それで事故を起こしてしまった、我々はそういうことをチェックする方法を適性検査と言っております。いろいろな適性検査がございますが、その中で、一つは機能を見る適性検査がございます。何かやることが速いとか、そんなことでございますが、そのほかに、そういうことも含めて性格的にどうもうまくいかない、そういう事故頻発の性格を持った人がおるということでございます。したがいまして、事故を起こしたならばまずそういうふうな適性検査をやって、そして果たしてどうかというようなことがあると思うのです。  それから、先ほど申し上げた道路交通法の八十八条でフィルターがかかったはずなのに、その後免許を取った後でうまくいかない人もまた発見されるわけです。例えば、てんかんとか精神分裂病みたいなものですね。そうすると、免許を取った後にそういうものが出てくるのをじゃ、どこでチェックするかということになりますが、これもなかなか難しい問題ですけれども、これはぜひどこかでチェックして、それも通ってたまたま環境とか疲れとかそういうことがあったために、つまり、その人の適性が合っているにもかかわらず事故を起こした場合には再教育をする、こういうふうな方法があろうかと思います。
  20. 池田速雄

    池田参考人 御指摘がございましたとおり、事故を人の面から見ますと、大きく二つに分かれるのじゃないかという感じがするわけでございます。常に違反を繰り返す者あるいは軽微の事故を起こすようないわゆる常習者の占める比率が非常に高いということが統計的に出ているわけでございますが、なかなか事前にそれを知るということが難しいので、結局結果論で判断せざるを得ないということであろうかというふうに思うわけでございます。そういう者につきましては、制度上も現在、講習の制度がございます。それから一般の方につきましても、青少年につきましては、一回目の更新時には正規の講習を受けていただくということになっております。そういうチェックの面のほかに、諸外国の例を見ておりますと、これからは実際の運転訓練を伴う講習、教育というものがどうしても必要であると考え、またそのことが実証されているというふうに思うわけであります。できれば一般の方も全部ということでございますが、なかなかそこまではいかないにしても、常時運転されるような方等につきましては、もう一段高い訓練を受ける機会がぜひ必要である。そういう意味で、再訓練の機会が何とか準備できるようにということで当局の方でも御検討中のようでございます。これからの問題としましては、幼児からの一貫した態度の問題と、それから車を運転するようになりましたら、その技能が具体的にその態度にあらわれるような訓練というものがぜひ必要であると考えているわけでございます。  ただ、その問題ともう一つ離れまして、その問題の範疇に入りますものは概して言えば善意のものでございますけれども、青少年の問題はまたちょっと色彩が違うのであろうという気がいたします。平素は純良な者でもそういうことをする可能性が非常に高い、あるいは初めから、非常に悪い言葉で申しますと、車を使わなくても非行に走りやすい者がいるということでございまして、その対策というものは総合対策でなければ非常に難しいのではないかという感じがいたします。アメリカの例で申しますと、若者といいましても、たしか十九歳から二十九歳ぐらいまでだったかと思いますけれども、死亡者の中で占める比率が、交通事故がたしか三六%ぐらい、それから十二、三%がそれぞれ自殺と殺人で殺された者ということで、私どもが統計を見ましても非常にびっくりするような記録がございます。それを見ていただきましても、青少年問題がいかに深刻かというふうに思うわけでございます。日本の場合はそこまではいっておりませんけれども、青少年の場合はまた別な観点も加えて対処していただく総合的な配慮が必要じゃないかというふうに考えている次第でございます。
  21. 粟屋敏信

    ○粟屋委員 時間が参りましたので質疑を終わらせていただきますが、最後に、田井参考人がチャップリンの「モダン・タイムス」を御引用なさいましてお話がございました。私は、交通事故というのは一種の文明病であろうと思いますが、しかし、そうだからといってほっておくわけにはいかないのでありまして、これからまた諸先生方の御意見をもとにしながら施策を確立していかなければならないと思います。  田井参考人お話の中で過積載あるいは過剰労働のお話がございました。これはこれとしてまた十分検討すべき課題であると思いますが、私は、若い人が働く意欲を失って、高齢者の方ばかりでやっておられるということに非常にショックを覚えたわけであります。特に流通というのは我が国経済を支える大事な仕事でございますので、今後ともどもに勉強させていただきたいと思います。  ありがとうございました。
  22. 近江巳記夫

    近江委員長 粟屋君の質疑は終了いたしました。  次に、関山信之君。
  23. 関山信之

    ○関山委員 きょうは、大変お忙しい中を参考人先生方には大変貴重なお話を承らせていただきまして、本当にありがとうございました。大変啓発される部分が多うございまして、お話を伺いながら質問の取りまとめもできないまま、若干お尋ねをさせていただきたいと思うのです。  生内さんから冒頭お話がございまして、交通事故の現状を見て、今まさに緊急事態宣言を発すべきだという御指摘があったわけですけれども、この通常国会でも本委員会で先ごろから議論がございまして、いままさに緊急事態の認識を持つべきではないかという議論が既にございました。また、宇留野先生にはきょうおいでをいただいておるわけでございますが、サンデー毎日で先生の御紹介がございまして、そこでも「第二次〝交通戦争〟の到来」という見出しで、死者一万人時代に逆戻りの現状について御指摘があったわけですけれども、そう申しながら、今の事態を一体どうとらえたらいいのかということはもう一つ突っ込んで考えなければいかぬということがございます。  交通事故は絶えざるゼロへの挑戦でございますから、交通事故対策というものは、それこそ四六時中さまざまな観点から、まさに総合的に、複眼的にさまざまな手だてを積み重ねていく以外にないのだろうと思いますけれども、第三次、第四次交通安全五カ年計画の中では、お話がございましたように八千人という抑止目標がございます。緊急対策と申します以上はやはり抑止目標というものをきちっと持ちまして、そして効果測定ということのお話がございましたが、緊急事態の認識に伴ってかなり具体的な緊急対策というものがついてまいりませんと、これは余り意味がないということにもなってしまうのじゃないか。  実は、九千人を超えて一万人にという数字がございますが、これは、ともかくヨーロッパなどでは全体的に死亡事故が減っている趨勢というものと比べてみましても日本は憂慮すべき事態であるとか、当初、九千人を八千人に目標を掲げた昭和五十六年時点におきますれば、間違いなく絶対数はふえているわけですからその面ではいいのですけれども、しかし、例えば自動車の走行台キロ当たり事故率の推移だとか、自動車一万台当たりあるいは人口十万人当たりの事故率の統計なんかも警察庁から出ておりますけれども、こういうものを見ますと、率の面ではそう悪化しているという数字にならないのですね。そこから問題をどう考えたらいいかということにぶつかるわけでございます。つまり、死亡事故ゼロを目標にしながらも、交通事故というのは近代社会においては絶対にゼロにはなりっこないというのが一方にありまして、しかも、この間八千二百人ぐらいまで減ったものですから、八千というものを抑止目標にしている。  そこで、きょうはハードの面、ソフトの面、いろいろと対策が指摘されておるわけでございますけれども、ハードの面というのは、全体的にすべてを解決するとなりますと非常に膨大なお金を用意しなければならない、そうすると、どうしても重点的に何をやるかというふうに絞らざるを得ないと思うのです。もう一つソフトの面で、この八千という数字は決して不可能ではない、むしろ今までの交通事故対策というものが、これは全体的に何もかも大事なんですけれども、しかし、ハードの面に対策が偏っていた嫌いがあるのではないか、多少そういう問題意識を持ってこの数字を押さえませんと今後の緊急対策のウエートの置き方も違ってくると私は思うものですから、今日の事態をどのようにお考えになるか、まず宇留野先生からお聞かせいただけるとありがたいと思います。
  24. 宇留野藤雄

    宇留野参考人 大変大きな問題なのでうまくお答えできるかどうかわかりませんが、第一は、哲学といいますか考え方といいますか、一体事故はふえたと考えた方がいいのか、あるいは減ったというかそのままだと考えていいのか、その辺が問題だと思うのです。今おっしゃるとおり、交通量とか走行台キロとか、あるいは車両を分母にした場合とか、そういう相対的な値というのは必ずしもふえているとは言えない。一方、死亡者だけの事故を見るとこれはどんどんふえてきておる。そういう絶対値で考えるとどんどんふえてこれは大変だという考えになるわけでございますが、我々はどう考えたらいいかということをまず考えていかなければいけないのじゃないかと思うわけでございます。それにしても、人間の命というのはかえがたいものでございますから、一人でも絶対数を減らしていかなければならぬということは当然前提にあるわけでございます。  それから、事故のパターンを見ますと、最近、人と車との関係の事故というのは、若干ですがむしろ減っている状態だ。あとの車対車だとか車がひつくり返って自分で事故になったというようなものは莫大にふえておる。それから、おっしゃるとおりこれは莫大な費用がかかったと思うのですが、踏切の死亡事故が四十五年に比べて六十一年は九八%も減っておる、というのは踏切がなくなってきたためだ、これはもう非常に簡単な論理でございます。  そんなことを考えますと、私は、一番最初に先生方お考えになられる場合に一体どこに焦点を置いてこの問題を考えるか、大変遠回しの言い方でございますが、そういうことが必要ではないかということを感じておるわけでございます。
  25. 関山信之

    ○関山委員 ありがとうございました。  そこで、生内先生にもお伺いをしたいのですけれども、先生は主としてハードの面での御指摘があったわけです。もちろん、それだけのお話じゃないことは十分承知しておりますけれども、率直に申し上げて、車社会、モータリゼーションというものについて、これは当然のこと、当たり前のこと、避けられないことという前提で議論をしがちなんですね。また、私ども商売柄、現実の中で言えば、そういう問題意識を超えた発想というのはなかなかとりにくいのですけれども、しかし、いっかどこかでモータリゼーションそのものについて考えないとこれはもうだめなところへ来ているのじゃないだろうか。これは何も交通安全、事故という側面だけでなくて、今日の事態というのは、そういうことも含めてどう考えるかというところへ来ているのではないか。先ほどお話ございましたように、高規格道路あるいは幹線道路整備、私、新潟なんですけれども、高速自動車道が関越あるいは北陸で入ってまいりますと、その影響が地方の幹線道路に非常に出ているということはこの前の委員会でも申し上げたりしているのですが、その辺の対策ということになりますと、これはもう今の現実的な予算のシーリングの中ではちょっとやそっとでは簡単に片づかないということがございまして、もっともだというふうにお伺いもしながら、それは長い目で解決をしていく以外にないだろう。しかし、そうこうしているうちに今のモータリゼーションの進行というものについてどこかで警告を発していないとだめなのじゃないかという感じもするものですから、こんな機会ですのでお考えをお聞かせいただければありがたい。  それから抑止目標ですけれども、先生、緊急事態とおっしゃったときに八千という数字でしょうか。私は、この間委員会で申し上げたのは、この際八千という数字を横に置いても、ここは異常な決意ということなら九千人なら九千人にことしは抑える、あるいは一万人は絶対超させないというような、そういう目標設定をおとりになったらどうかという議論もしたのですが、この抑止目標、八千という数字についてはいかがでしょう。
  26. 生内玲子

    生内参考人 八千人という目標については、その数値を立てて今年度の計画が発足しておりますので、とりあえずこのままでとは思いますけれども、確かに、絶対に一万人を超させないというのも一つのキャッチフレーズにはなると思うのです。いずれにしても、まさに今発想の転換のときだと思うわけです。  新潟の御出身だそうでございますけれども、七月には名立谷浜と朝日の間が開通して北陸道が全線開通するということで、まさにハイモビリティー時代、高速道路のネットワークが開通するわけです。国土の均衡ある利用というためにもこういったハイモビリティー時代というのはまことに喜ばしいわけなんですけれども、それについて心配されるのは交通事故ということなんですが、この発想の転換の中に幾つかのポイントがあると思うのです。  一つは、第一次交通大戦と言われた昭和四十五年あたりは、ドライバーというのは、もちろんオーナードライバーも相当出てきておりましたけれども、まだまだプロのドライバーが非常に多かった。ということになりますと、やはり被害者の人と車の対立の時代であったわけですね。したがって、幼児の交通安全教育子供交通安全教育などにいたしましても、被害者にならない教育ということが中心になっていた。そして、怖いから車から逃げ隠れしようというような考え方がまだまだ強かった時代だったわけですけれども、幼児もすぐに大人になり、すぐにドライバーになるわけですから、人と車の対立の中でこういった交通事故の問題、交通教育の問題をとらえてはいけないと思うのです。それから同時に、交通弱者ということをよく言われておりますけれども、交通弱者を救え、守れということでなくて、交通弱者を出さないような交通社会をつくるということの方が大切だと思うのです。  それから、もう一つ発想の転換なんですが、以前には交通安全といいますとムード的な訴えが多かった。かわいそうな、いたいけな子供交通事故から守ろうというようなムード的な訴えが多かったわけですが、やはりこれからは科学的な訴えに徹していかなければいけないと思うのです。例えば、当時は女性ドライバーがまだ大変少なかったわけでございますけれども、現在は母親、二十代、三十代の女性の七〇%、七割がドライバーでございますから、車についての科学的な知識も持っているというところで、やはり科学的な分析、そして科学的な訴え方ということをこれから考えていく時期だと思います。  以上です。
  27. 関山信之

    ○関山委員 田井さんから改めてトラックの長時間労働のお話があったわけですけれども、これはこの委員会でも何遍か議論をさせていただいております。この決め手というか、田井さんの方からおっしゃられれば、この対策はどこにポイントをお求めになるのか。二七通達とか法制化だとか、あるいはさっき労働基準法の問題もございましたけれども、現実問題、何遍指摘してもなかなかなくならないという実態の中でせめてこれだけはということがございましたら、もう一つつけ加えて御指摘をいただけるとありがたいと思うのです。  それから、高速道路の休憩施設は随分整備もされてきていると思うのですけれども、現状についてなお不備な点があれば、この機会ですから御指摘をいただいてはいかがかと思います。  それから過積みの問題、これもなかなか指摘をされながら答えが出てこない問題なのですが、この点についても何か決め手はないものか。  今申し上げました三つの点で補足的にお尋ねをしておきたいと思います。
  28. 田井二郎

    ○田井参考人 お答えします。  まず、労働時間が長いというのを急激にあしたに減らすなんということは、これは現在の制度といいますか労働慣行といいますか、あるいは運送企業の就業実態といいますか、それは私はできないと思います。ただ、言えるのは、連続ハンドル時間を絶対に四時間以上させない、これはもう諸外国で五十年前から言われておることなんです。  日本は、このことについて初めて二七通達の中で取り上げたわけでありますけれども、これすらも今守られていないわけですね。守られないのは、これを守らなくても別に罰則も何もないわけでありまして、やはり経済活動の方が優先をするわけなんです。どうしてもこの荷物を何時までに着けろと言われたら、先ほど言いましたように、確かに伝票には八時に行って、そして翌日の早朝六時なら六時に着けるということになるのですけれども、実際に行ってみると八時にはまだ荷物はできてない。十時、十一時になる。さあ、それから走れというと、やはり今の運送事業の過当競争の中で、運賃すら収受料金が実勢運賃としては六〇%を割っているときに、こんな遅く出せというなら私は帰りますなんて言ってその運転手は帰ってこれるわけではないのです。その中でも、わかりました、ではその時間に着けますと言ってやる。どうしても連続運転時間四時間を守り切れないということですから、この連続運転時間だけでも守るようにきちんとさせるということ、それには運転手にみんな運行手帳を持たせて、そして長距離運転の場合にはどこかでそれをチェックする場所をつくるぐらいのことはぜひやってもらいたいと思うのですね。それが私は事故をなくす最大のことだと思うのです。  そういうことから、連続ハンドル時間を四時間以上持たせないとなればもう一人運転手を乗せるとか、あるいは場合によっては途中で運転手を交代させるとか、こういうふうないわゆる運行管理というものがどうしても生まれてくるわけですけれども、今はもうトラックに乗れば、後はその運転手の器量でおまえどこへでも行ってこいというようなもので、前にもこの委員会で取り上げられました、例の函館から出まして七十時間一睡もせずに走っていたなんということはそういうことから生まれると私は思いますから、ぜひその点をひとつお願いをしたいと思うわけであります。連続ハンドル時間を規制する、そしてそれをきちっと守らせる、その後これだけは法律的に、いわゆる安全管理者がそれを違法と知りつつやった場合には罰則を受ける、あるいは私は運転手自体もそれでいいと思うのです。そういうような連続ハンドル時間を犯した場合には罰則を受けても差し支えないと私は思っておるわけであります。  それから、高速道路上について申し上げて恐縮でありますし、このことは、今の状況の中の当該携わっている人がどうだということで受け取られますと大変御迷惑を与えますから、その点につきましては私、十分慎重に申し上げたいと思いますけれども、例えばの話、高速道路上にはサービスエリアというのがあります。ここには必ず無料休憩所というものがあります。日中はきちんとあいておりますし、そこに女性の方もいらっしゃいまして、湯茶のサービスといいましても、自分でお茶を飲めるような装置があるわけでありまして、その場合には十分お茶も飲めますし、地図もありますし、あるいは、多少でありますけれども道路上の情報もそこで受けることができるわけなんです。ところが、高速道路は二十四時間活動しておるわけなんですけれども、通常で言う一般の勤務時間であります九時から五時というその五時を過ぎると、なぜかそこには湯茶のサービスもなければ電気もついてないわけであります。私どもが一たんそのことを申し上げましたら、確かにドアだけはあいているのです。ですから、真冬でもガラッとあければ中に入れるのですけれども、これは寒くてそんなところにおれる状態にない。夏は蚊が随分入っておりまして、そんなところに入ろうものならば蚊にも悩まされてしまう。ですから、日中だけそこを利用する乗用車の方々を対象にした無料休憩所じゃなかろうかと思うのです。  しかし、夜間には乗用車に倍するトラックが運行しておるわけであります。そのトラックは夜間にお茶を飲もうと思ってもございません。ですから自分で魔法瓶といいますかジャーというのですか、ああいうものを持っている。そういうところにおったのではゆっくり休息はできませんから、エンジンをかけっ放しで、そしてトラックの中で睡眠をとっておるわけなんです。ですから、ああいうサービスエリアに行きまして大型車がとまっているところを見ると異様に感ずるわけですね。エンジンがうなって自動車はアイドリングをしているけれども中にだれもいない。いないんじゃなくて寝ているのですね。こういう状況は環境的に悪いと私は思うのです。ですから、少なくとも二十四時間勤務であるとするならば、またそういうトラックの運転手に事故を起こさせないということを十分慎重に考えていただけるのならば、そうしたサービスエリア等におきますところの無料休憩所などは、せっかくの設備があるのですから、何か対策はないものだろうかと私は思っておるわけでございます。  それから、過積みの問題でございますけれども、これも行政の方が大変御苦労なさって、たしか五年ぐらいかかっていわゆる過積防止のための大型車両を対象にいたしました装置を御研究なさって、そうしてストロンゲージという方式ならばたしかプラスマイナス五%ぐらいで重量測定ができるというような計量器ができました。しかし、これはそれで終わったわけでありまして、本来ならばそれからどうつけるかということになるのですけれども、今つける話はないわけでありまして、研究だけが終わってそれはどこかにしまわれてしまっておると思います。だから、私はすべての車両にその重量計をつけろなんということは言いませんけれども、一番過積みをして事故を起こす十トン車以上の車にはぜひつけてもらいたい。また、最近の規制緩和のお話の中では、現在の二十トンという大型車両を二十五トンまで上げたらどうだろうかなんという御意見があるように聞いておりますけれども、もし仮に二十五トンになって過積みをするようになったら、まさしくD51の機関車が道路を走るようなものだと私は思います。ブレーキをかけても、ブレーキなんていうものの作動はほとんどしないだろうと思うのですね。ですから、そういう車を考えた場合、ぜひとも十トン以上の大型車両にはそのストロンゲージという方式の重量計をつけて、そして荷主さんに、もう重量がいっぱいになったから、これ以上積むと私も免許を取り上げられますからということを運転手が言えるようなものにしてもらいたい。また、先ほど話をしました運行手帳を持つと同時に、荷主さんであるとか安全管理者は必ず出荷伝票を渡すようにして何トン積ましたということを明確にして、だれがそれを命令したかということをきちんとしてもらいたいと思うのです。そうしないと、トラックの運転手は事故を起こすと間違いなくこれは刑務所行きになってしまう、これが実態でなかろうかと思います。  それから、これは御質問がないけれども申し上げたいと思うのです。これはトラックに限りませんが、ただ運転手の注意だけで事故を防ぐということじゃなくて、これだけ機械文明が発達したのですから何か方策はないものでしょうか。アメリカでは、接地面が雪であるとか雨でぬれているとかということでブレーキの作動が変わるような、コンピューターを利用したものがもう既に開発をされて利用されております。そういうものがブレーキにつくとか、あるいは居眠り運転をしてハンドルの握力がなくなったときにそれを運転手に感知をさせる方法だとか、そういう二重三重の装置の開発を、これほど大きな事故を起こして人を殺しているのですから、それを防ぐための方策として、居眠りがあなた近くなりましたよというような、そういう状況になったということを知らせるような装置もぜひ開発をしていただきまして、すべての車とは申しません、長時間運転をしておりますトラックにはぜひそういうもの一を一つけていただきたいということをお願いをしたいと思います。  ありがとうございました。
  29. 関山信之

    ○関山委員 どうもありがとうございました。時間がなくて意を尽くせませんが、今後ともまたいろいろと勉強させていただきたいと思います。よろしくお願いいたします。
  30. 近江巳記夫

    近江委員長 関山君の質疑は終わりました。  次に、新井彬之君。
  31. 新井彬之

    ○新井(彬)委員 本日は、各参考人先生方に貴重な御意見を賜りまして、心から感謝を申し上げる次第でございます。  各参考人先生方の御意見、おのおの専門分野からのお話でございます。そういうわけで、私は、きょう発言なかったことに対しての質問もしたいと思っておるわけでありますが、よろしくお願いしたいと思います。  私はやはり先生方と一緒で、この平和な日本の国の中で今何が一番つまらぬことか、もうこれだけは何とか直さなければいけない、正さなければいけない、それはやはり交通戦争であり、交通事故死あるいは負傷者をなくすということだろうと思います。これほどだれもが悲しみ、みんなが損をして大変な状況である、このように認識しているわけでございますが、今の状況を見ますと、ほとんど全部の方が免許をとろう、したがいまして、加害者、被害者がもう一体である、そして交通というのは、それこそ赤ちゃんからお年寄りまで全部がかかわる問題である、こういう観点から、やはり国民的な大きな合意のもとにこれを撲滅するという決意がなければならないな、このように感じているわけでございます。  具体的に質問に入ります。初めに田井参考人にお聞きしたいと思うのですけれども、私たちの認識といたしましては、労働基準法も比較的整備されております。今、四十八時間から四十時間ということで時間を少なくしょうというような法律も通っておりますし、また過積みの問題にいたしましても、もう警察も一生懸命に過積みがないかということでところどころでチェックもされているというような中で、先ほどからいろいろお話があったわけでございますので大体理解いたしますけれども、そういう中で、幾ら商慣習といえどもこんなことが許されていいのかと僕は本当にびっくりしたような状況でございます。そういうことで、今のお話では、四時間以上運転はしない、もしそんなことをした場合は本当に罰則規定も設けてやるというようなことでございます。警察もあれだけ一生懸命チェックし、労働基準監督署からもそういうことに対しては再々にわたって、もしもあれだったら忠告もあったと思うのですけれども、その点の今までの経過についてちょっとだけお話を聞いておきたいと思います。
  32. 田井二郎

    ○田井参考人 私は、この交特の議事録を読ませていただきまして、たしか社会党の永井先生が御質問なさって、また御指摘をされたことに尽きると思うのですけれども、名古屋でトレーラーが大きな事故を起こして多くの死傷者を出しました。その際、その運転手は禁錮二カ年の実刑を受けておりますが、その運行命令を出しました企業は罰金五万円で終わっておるわけであります。私は、罰金をふやせと言っているのじゃないのです。これで社会的にその人は責任を負えたのだろうかと私は思うのです。警察の方も大変です。あの大きな車を一々とめて、そしてはかって、それから本人からいろいろ聴取をしてやっているのを見まして本当に大変だと思いますけれども、要は、そういうことをさせないことがまず大事だと私は思うのですね。  それは、安全管理者、運送事業法で言うなら運行管理者であります。それと荷主さんの方なんです、荷主さんは承知の上で澄ましておるわけなんですから。そうすると、荷主さんの方は運賃負担能力ということをおっしゃるわけですね。それじゃとてもじゃないけれども持っていったって売れないんだからということになると思うのです。これはイタチごっこだと私は思うのですが、だから余計積んでいいんだという理屈にもならなければ、だから事故を起こすのはやむを得ないんだということにならないと思うのです。私は、社会的な規制はきちんとして社会的な制裁を受けるべきだと思うし、そのことの重要性を運転手は認識をしたら、運転手はその荷主さんに大きく胸を張って、これは過積みですから私は運行できませんと言えるような運行慣習というものをつくっていきたいというのが私たちの念願なんです。しかし残念なことに、あの両罰規定ができたときには確かに一時はよかったのですけれども、最近はこういう厳しい経済活動の中で、警察だからといってすべての車を摘発するというような状況ではないんじゃないかと思っておりますので、そういう点につきましては、冒頭申しましたように、そういう事故を起こした業者に対しての現在の罰則は余りにも低過ぎるんじゃなかろうか、私はこう考えておるわけであります。
  33. 新井彬之

    ○新井(彬)委員 AT車の欠陥というのが指摘されておるわけでございますが、この前も運輸省より、オートマチック車の急発進・急加速に関する試験調査中間報告が出ております。今までの状況から見ますとドライバー運転ミスというものも大分あったようでございますけれども、今免許の講習を行うときに、AT車についてもっと時間を長くした方がいいんじゃないかというようなことも大分言われておるわけでございます。このAT車の教習時間と教習内容をどういうぐあいに変えたらいいのかということ、あるいはまたAT車の限定免許ですね。これは、今AT車がどんどんふえているわけでございますから、限定免許でも十分役に立つ方もたくさんいらっしゃるだろう。特に両方乗る方もいらっしゃいますけれども、ほとんどAT車で間に合う方もいらっしゃると思いますが、この限定免許について池田参考人にちょっとお伺いしておきたいと思います。
  34. 池田速雄

    池田参考人 免許制度一般の問題でございますので、どうも私どもの方がお答えできるあれにはございませんけれども、従来の経緯を見ますと、免許の種別は多い方がいいのか少ない方がいいのか、またそれがどちらが合目的的なのかという観点から今までの制度はつくられているようでございまして、歴史的に見ますと、外国ではもともと自家用、オーナードライバーが多かった時代には、その車についての免許だというような考え方から免許が出たようでございます。日本の場合には、そういうほかに職業運転者の方がお見えになりますものですから、それをもとにして免許をつくられたというようなこともございますが、中身はどちらが将来にわたってより安全か、こういうことに尽きるのじゃないかと思うわけでございますので、制度を変える方がいいのか、それとも両方勉強していく方が御本人のためにも全体から見てもいいのか、その辺の判断が一番難しいところで、御苦労されているのじゃないかと推察しております。  私どもとしましては、やはりできる限り教育で解決できる部分は教育で解決していただくことが、御当人の将来の運転生涯の問題からいきましても適当なのじゃないかと考えておりますので、にわかにその部分だけに限りましての当否というのは私どもとしましてもちょっと判定できかねるところでございますが、いずれにしましても、必要性のある教育はやっていただく、こういうことが前提ではなかろうかと思っております。
  35. 新井彬之

    ○新井(彬)委員 高齢者ドライバーの問題についても御発言があったわけでございますが、これはいろいろと言われております。若い人たちの高齢ドライバーに対する理解が必要であるというようなこととか、総理府の世論調査を見ますと、やはり高齢者の方々の視力、聴力、運動能力などの衰えを指摘するものが四九・七%、また一定の年齢で免許を制限するというのが三一・三%、それから免許更新期間を短縮する、一五・九%、こういうような世論調査も出ておりますし、この前、梶山国家公安委員長は、初心者マークと同様にシルバーマークの義務づけを考えておられるようでございます。そういう問題についてはどうなのか。この高齢者ドライバーについてのお考えを、どの参考人でも結構でございます。御意見がございましたらお伺いしておきたいと思います。――それでは、宇留野参考人にお願いします。
  36. 宇留野藤雄

    宇留野参考人 私も高齢者に入るのでございますが、高齢者は何歳からというようなことは、機能の面から見ても非常に難しいことがございます。大体、自分がもう年とったな、疲れたなというときが高齢者の範疇に入るということらしいですけれども、そんなわけで、高齢ドライバーの問題というのは今後大変な問題になってくると私も認識しております。  その場合に、免許を制限する前に、高齢者が自分は運転をやめたら困る、いろいろな用事を足す、病院に行く、あるいは老妻を連れてどこかへ行くというようなことができなくなるので免許を取り上げられたら大変困るというドライバーが、かなりの高齢、例えば八十歳以上の高齢者にもそういう方がいるわけでございます。ただ、その場合に非常に怖いのは、循環器系の病気とか脳の病気などで突然に運転ができなくなる、そういうふうな高齢ドライバーが非常に問題になるわけでございまして、ある年齢になったら大体私はこのぐらいはどうかなという感じがしますけれども、ある時期に、免許を取るあるいは更新のときにお医者さんにチェックしてもらうということがまず必要かと私は思います。そして、どうもこの人は突然心臓麻痺みたいなそういう循環器系の病気でもあるよということであれば、本人によく納得させて考えてもらう。まず免許を取り上げるのではなくて、やはりそういう段階があるべきではないか、こういうふうに感じております。それと、先ほど申し上げたように彼らの生きがいといいますか、そういうものを突然奪うことのないように十分配慮すべきである、こういうことを感じております。
  37. 近江巳記夫

    近江委員長 関連して、正木良明君の質疑を許します。正木良明君。
  38. 正木良明

    ○正木委員 もう時間がありませんから要約して申し上げますが、生内先生お話を承っておりまして、実はこの間この委員会がありましたときに私が質問したことと同じことをおっしゃったのです。それは、俗に言う第一次交通戦争の時期、あの時期にハード面も非常に整備をされたということもありましたが、同時にソフト面というか、あのときに初めて車が走る凶器であるという言葉が生まれたりいたしまして、それで、ドライバーは常に自分が加害者の立場にいるのであるということの認識を持たせようということで、これは先生もおっしゃいましたが、マスコミを通じて大キャンペーンが行われたわけです。毎日毎日の新聞どれを開いても交通事故に関する安全キャンペーンの特集記事のない日はなかったというぐらい、雑誌も週刊誌を含めてどんどんキャンペーンをやりましたし、テレビ、ラジオもそれをやりました。それで見事に事故が減るのです。その先例から、今第二次とか第三次とかと言われておるこの交通戦争の時代において、やはりもう一度自覚を持たせなければならないのではないか。要するに、世間一般の国民の注目を交通安全というところに集中させる必要があるのではないか。そのためには政府がまず非常事態宣言をやりなさい、それを通じて、やはりマスコミに要請をしてどんどんキャンペーンをしてもらうということで、ドライバーの認識というもの、また車に対する歩行者を中心とする人たちの認識というものも改めさせるようにしなければならぬというふうに言ったのですけれども、それと同じ趣旨のことを先生から承りまして、私も非常に心強く思ったわけです。実は、その非常事態宣言の問題はこの委員会理事会でも問題になっておりまして、非常事態宣言をやるべきか、この交通安全対策特別委員会で何らかの決議をすべきであるかということが言われておったわけです。  そこで、生内先生のお気持ちはもうわかったわけですが、他の三人の参考人先生方は、今そういう非常事態宣言をやってそういう認識を一般国民に対して大きく植えつける必要があるというふうにお考えになっておるかどうか。我々の今後の物の考え方参考にしたいと思いますので、宇留野先生から順番にお願いします。
  39. 宇留野藤雄

    宇留野参考人 お答え申し上げます。  私は、大変結構なことだと思います。理由は、確かにおっしゃるとおり、当時ハード面は整備されました。それで事故は減りました。しかし、その後、ハード面は整備されたにもかかわらず、これを使うソフト面人間の方に新しいドライバーなり人間が最近どんどん入ってきた、つまり、整備されないまま入ってきたという考え方があると思うのです。そういう方々に非常事態宣言をして大いにキャンペーンをしていただければ、いろいろな認識が生まれて、安全への関心が非常に高まってくるのではないかということでございます。ただ、やり方が問題だと思うのです。つまり、交通事故というのは道路利用者の一人一人の手の中に握られているわけですね。だから結局本人が自覚しないとだめで、そこまで掘り起こさないと意味がない。日本はスローガンを掲げてやるのは割と得意なのですけれども、やりっ放しのところがありますので、それをやったならば必ず評価をする。これだけやったからこれだけの効果があったよというような考え方で評価をしながら、それからもう一つは、我々専門の心理学の立場からいいますとこれを動機づけと言いますが、安全への動機づけをどうしたらいいか、そういうことをよく考えて新しい企画でやらないと、ああ、またあれかというふうな意識に陥って結局宣言だけで終わってしまうことになるので、そういうことになってはならないというふうに思います。そういうことでなければ大いに賛成でございます。
  40. 池田速雄

    池田参考人 現在の事態をみんなに理解してもらうという意味で何らかの活動をしていただくということにつきましては、これはもう一番いい機会であろうというふうに考えるわけでございますが、非常事態宣言ということになりますと、その期間の問題もあろうかと思いますし、具体的に何をやるか、その成果をどういうふうに期待するかという問題もあろうかと思います。交通対策につきましては、先ほども申しましたように、これを機会に長期的な対策の芽をつくっていくという点もありましょうし、即効的なものを期待するためのものもありましょうし、中期的なものとか、いろいろあろうかと思うわけであります。したがいまして、その辺の、何をやるべきかということをまず検討すべき段階であろうかというふうな気がいたしますので、十分な検討期間をお持ちいただいて結論をお出しいただくのがいいのじゃなかろうかというふうに思います。  ただ、現状をよく知ってもらうということについては本当に大賛成でございまして、絶対数を申し上げますとびっくりされないのですけれども、先ほども申しましたように、若者の亡くなられる方の半分近くは交通事故なんですよ、こう申しますと、そんなことは初めて聞いたという方が多いわけでございます。先ほども申しましたように、一方的な広報だけではなかなか届きにくい、効果が上がりにくい、それをどういうものと結びつけてやるかということでなければその人の行動に結びつかないという点もありますので、十分御検討いただければありがたい。それから、繰り返し申しますが、これは中央の姿勢もですけれども、それぞれの段階で、極端に言いますと一番末端の段階での活動それを刺激し活動するということが一番重要であろうかというふうに思うわけでございまして、中央でそういうものを出したときに末端が本当に動いてくれるだろうかどうか、末端の活動を活発化するにはどうしたらいいだろうかというサーベイを十分おやりいただきまして、意見を結集してということで、宣言意味が何かということも含めまして御検討いただければ大変にありがたい。大変おこがましいことを申し上げましたけれども、お願いをいたしたい次第でございます。
  41. 田井二郎

    ○田井参考人 私、趣旨についてはまことに結構だと思っております。問題は、ただいま池田参考人の方からお話がありましたけれども、単なる中央段階ではなくて、あるいは地方ということではなくて、それぞれ交通に携わる業界であるとか業種であるとか、そういう人たちに、具体的にその業種に今起きている問題をきちんと取り上げて、そこをどうすれば解決するかということもあわせて出していただきたいと思うわけであります。私どもも、ただ運転労働者の労働時間が長いよということだけを叫んだから時間が短くなるとは考えておりません。そのためには、今の流通業の中でもっと改善をしなければならぬ問題は何かということまで含めてお互いが論議のできる場というものをつくってもらいたいと思いますけれども、どうしてもそういうことについては、それぞれの業界ごとに、あるいは荷主と運送屋とか企業と労働組合とかいうように分かれた中でどうも論議がされているような気がしてなりません。とにかく事故を起こすと、刑務所に入るのは間違いなく我々なんですよ。私たちはだれ一人そういうところに入りたくないのです。そして、そういうところに入るともう世間の目から抹殺されてしまうのです。子供学校にも行けないのです。家はかわらなければなりませんし、転校もしなければなりません。そういうことを考えますと、私は、そういう趣旨に基づいてより具体的なことを取り上げて、そしてそれぞれの立場で何をしなければならないかということを討議する場をつくっていく、そしてそれがどう解決されるかというところまで見届ける、そういうような宣言をぜひひとつお願いをしたいと思っております。
  42. 正木良明

    ○正木委員 貴重な御意見をありがとうございました。
  43. 近江巳記夫

    近江委員長 新井君、正木君の質疑は終了いたしました。  次に、伊藤英成君。
  44. 伊藤英成

    ○伊藤(英)委員 四名の参考人皆さん方に貴重な意見を伺いまして、本当にありがとうございました。既に自民党、社会党、公明党のそれぞれの代表の方がいろいろと御質問等もしておりますので、できるだけ重複しないような形で質問をいたしたい、こういうふうに思います。  私は、まず何よりも最初に、生内先生から交通安全施設への投資の問題について言われましたけれども、私も全く同感であります。そういう意味では、本日、そのことそのものについてあえて御質問はいたしませんけれども、ぜひ、また皆さん方からもいろいろなところで強調していただきたいと思います。  最初に、宇留野先生にちょっとお伺いしたいのですが、先ほど言われた中で、例えば照明器具の位置の問題だとか路面の問題等、人間工学的な改善が必要だという話をされました。非常に重要な話だろうと思いますし、そういう意味で、現在の行政面での努力、実際にやっている状況についてどんなふうに評価をされているのか。そして、例えばこういうふうにすればその効果があるということがわかっているような問題についてなかなか実行が進んでいないものにはどういうものがあるのか、具体的にあれば、そうしたアイデアというか具体的な方法論についてもう少しお伺いできればと思いますが、いかがですか。
  45. 宇留野藤雄

    宇留野参考人 お答えするだけの資料を持っておりませんので、ここでこの点に関してはちょっと御遠慮申し上げたいと思うのですが……。
  46. 伊藤英成

    ○伊藤(英)委員 私が今お聞きしたかったのは、人間工学的な改善と言われた問題について、具体的にもっとこういうことをすべきだという問題がありますでしょうか。先ほど照明器具の問題とか路面の話をされましたけれども、まだまだとても進んでいないとか、あるいはもっとこういうこともあるとかという具体的なことはありますかということです。
  47. 宇留野藤雄

    宇留野参考人 そういうことでしたら思いついたことは幾つかございますが、今の安全人間工学という考え方は、人間と物との関係、物といいますか施設、要するにそういう物との関係でございますから、その関係がうまくいくことが望ましいわけでございます。そういう考え方でいきますと、例えば案内標識やいろいろな標識がありますが、これの立て方一つについてもやはり使う人の身になってつくるということ。それから、先生方は余り御使用にならぬかもしらぬが、横断歩道橋というのがございますね。あれは第一段が同じように割と高くなっておるものですから第一歩が非常に難しいので、第一歩から三歩ぐらいまでをもっと低くすれば割とすっと歩けるのではないかというような考え方というか、そういうもの。それから、私、日本坂トンネルの火災事故調査に関係しておるのでございますが、あの中で非常口へ行くまでにどのぐらいの距離があるか内照式照明により距離を出せるようにして、中で事故に遭った人は外から指示を受けなくても、左が近いな、右が近いなということがそこで判断できるようなことをやったらどうかという話を申し上げたことがございます。それで、今それがついてきております。こういうふうなことも安全人間工学考え方ではないか。  それから、そのとき気がついたのですが、トンネルの中で一番心配、不安なのは何かといいますと、あそこにいろいろな近代設備の消火器その他があるのですけれども、それの使い方がわからないのが不安だ、こう言っています。では、実際にその使い方を教育するのは一体どこかというと、どうもなさそうなんです。ですから、こういうことも含めていろいろと周りを見渡す必要があるのではないかというふうに思います。
  48. 伊藤英成

    ○伊藤(英)委員 先ほどAT車の問題が出まして、池田先生からはお話も伺いましたが、これは生内先生にちょっとお伺いしたいのです。  このAT車の問題で、免許証を取得するときの自動車教習所の話が出ました。現在は若干改善はされてきておりますが、基本的な問題はこういうことになると私は思うのです。これは乗用車の場合には余計にそうなんですが、教習所では基本的にはマニュアルで勉強し、そして初めて自分が車を所有して乗るときにはAT車だという方が実は非常に多いのですね。そういう意味で、私は、先ほどの池田先生お話ではちょっと不十分かなという気もいたしたりするものですから、生内先生に、このAT車の免許の取り方の問題について御意見をお伺いしたいと思います。
  49. 生内玲子

    生内参考人 お答えいたします。  AT車の限定免許の問題については、実は十数年前いろいろ意見が出まして、かなりいい線と言っていいかわかりませんが、かなり具体化しかかっていたのですね。ところが、これが二つの点でだめになってしまいました。一つは、当時まだAT車の普及が不十分であったということ、それからもう一つは、当時非常に事故が激増しておりましたために、この上免許をやさしく取れるようにするのかということで、一部の大手ジャーナリズムの反対ということもありまして立ち消えになってしまったわけでございますけれども、情勢が変わりましたので、AT車の限定免許をつくるのがいいのかどうかという議論は別にいたしましても、やはり再検討の時期に来ていると思います。  それから、一般教習の中でAT車の教習を加えたということは大変よいことだと思いますけれども、これが不十分なのかどうかの評価は別にいたしましても、既に免許を取っている者、そして長い間MT車、マニュアルを運転していた者がAT車に乗りかえる場合、全く知識のないものを扱うことになりますので、そういうものがやはり極めて危険と考えられます。したがって、そういうものをさかのぼって義務的に教習させるということは無理かもしれませんけれども、AT車を買った場合には、有料で構いませんから、自分なりに何時間かの教習を受けられるように、教習所を開放して、有料でAT車の追加教習をだれでも受けられるような体制をぜひとっていただきたいと思うのです。一部の教習所では既に実施されておりますけれども、まだまだどこでもというわけにはいかないように思います。  以上です。
  50. 伊藤英成

    ○伊藤(英)委員 安全教育の問題についてお伺いいたしますけれども、まず歩行者教育ということを考えたときに、そのベースに車を凶器扱いにしてやしないかなということを私は恐れるわけであります。先ほどちょっとニューヨークの話が出ました。私もニューヨークに生活をしておりましたからその例で考えますと、例えば交差点に行きます。そういたしますと、歩行者行動を考えたときに、自分が車のために急いで渡ろうとする行動もある。これは信号のタイミングということもあるかもしれませんが、そういうこともある。それからもう一方では、曲がる車に譲ろう、車を先に通そうとする行動歩行者の方にあるという状況は非常に多いと思うのですね。これはそもそも、それぞれのいわゆる思いやりというか、そういうマナーの問題になっている。これは基本的な考え方の問題になってくると思うのですが、そういうことが非常に多いなということを感じます。そういう意味での歩行者の問題ですね。  それから、先ほど交通安全教育地域での取り組みという問題がありました。この地域の取り組みでもう一つアメリカの例を申し上げますと、ニューヨークの近くの住宅街を車で走るといたします。そのときに、例えば制限スピードが二十マイルになっているところを三十マイルぐらいで走っておりますと、そこを歩いている人、例えば散歩なんかしている人がスピードを落とせという合図をしたりするのを私は何度も見たりいたしました。そういうふうに、その地域の人たちみんながある意味では人ごとだというふうに考えないで、そういった車に対して速度を守らせようとするような努力が結構見られるのですね。もちろんこれはすべてではありませんが、そういう状況を何度も私は見たりいたしました。そういうふうに日本ももっとPRするというか、啓蒙をすることが必要なんじゃないかというふうに思います。  それから、物の考え方という意味で、例えばスローガンでも今いろいろなことをやったりしますが、私が今なお一番印象に残るスローガンは、「せまい日本 そんなに急いで どこへ行く」というのがありました。ああいうのはいつまでも残るのですね。これは物の考え方というか、そういうものに非常に影響を与える問題だというふうに思うのです。  この交通安全教育の問題で、先ほどの歩行者教育の問題あるいは地域での取り組みの問題あるいはスローガンの効果の問題等について、生内先生宇留野先生に、簡単で結構ですが、御意見をお伺いしたいと思います。
  51. 宇留野藤雄

    宇留野参考人 交通安全教育の問題はいろいろなことがございますが、私は、今お話しの中で三点か四点、意見を申し上げたいと思います。  第一は、渡るときの歩行者教育では譲りの精神といいますか、ヨーロッパ、特にイギリスなどではギブウエー、あなたに道路を上げますよ、そういうことで教育をしておるようですね。そこで立体交差ができる、こういう感じでございます。これは相手の立場で物を考えるということですから、共感性と言っていいと思うのです。その共感性を持つということは安全教育一つのポイントだと私は思っております。そういう意味で、ギブウエーというのはいいスローガンというか、そういう考え方だと思います。  二番目に、おっしゃるように地域ぐるみでやっている、もっと言えば地域ぐるみで監視をしている。つまり交通マナーの悪いもの、ルールに違反したものを全部指摘するという、お巡りさんにかわるようなことですね。私もチューリッヒで二回ほど経験したのですが、一つは、私がタクシーに乗って横断歩道のところを渡ろうとしたら、そこへ三人ばかりおばあさん連中が来て渡ろうとしたときに邪魔したものですから、えらい勢いでタクシーを怒ったその顔は今でも浮かびます。それからもう一つは、やはりタクシーが、オーナードライバーの車ベンツでしたけれども、それが優先順位を間違えて行ったところ、二、三キロ追いかけていってとうとうそれを捕まえて、私は余り言葉はわからなかったのですけれども、おまえは悪いといってえらい勢いで怒りつけたという、つまり地域ぐるみの監視ということがございました。そういう意味でおっしゃるとおりでございます。  それから三番目に、先ほど生内参考人も言われたように、車を凶器扱いすることは、かつてはそうだったのでございますが、やはりそれはまずい安全教育ではないかというように思います。  それから、今度は自己防衛のための安全教育でございますが、大勢で渡ると車はとまってくれるのですね。例えば、我々が調べた中では、一人で渡ったときは一七%の車は横断歩道の手前でとまります。ところが、五人になりますと五〇%以上車がとまるというようなことがございますので、そういうことも安全教育一つとして考えていくべきかと思います。
  52. 生内玲子

    生内参考人 お答えいたします。  時間がないので簡単に二点だけ申し上げます。  まず一点は、交通社会教育ということなのですが、これはやはり相互理解というのが第一番だと思うのです。どういうふうに相互理解するかというと、まず車と人なんですが、免許を持っていない者ももう少し車について知ってほしい。例えば幼児教育の場合なんかも、危ないから気をつけろということでなくて、ドライバーの目から見ての死角だとかブレーキの性能だとか、こういったことをよく教育してほしい。これには、やはり幼児も車に乗る機会がたくさんありますので、車から見たらどういうところが死角になるのか、飛び出しがどういうふうに危ないのか、自転車の二入乗りがふらっいて危ない、こういったことを車の中から見せる教育が大切だと思うのです。  相互理解の中のもう一つは、現在、二輪四輪の混合交通による事故が大変多くなっておりますけれども、二輪のドライバーは四輪の特性を知らない、四輪ドライバーの心理も知らない、そして逆に、四輪のドライバーは二輪の特性ドライバーの心理を知らないということなんです。やはりこれをよく知って相互に理解するということが大切だと思うのです。  それから、地域の問題でございますけれども、地域交通安全運動を活性化するポイントは、まず、安全な住みよい町づくりをみんなでしょうという意識を持たせることだと思うのです。具体的には、例えば交通環境の点検です。この標識はいつも見えないとか、木が伸びていて信号が見えにくいとか、こういうことを常に点検するということ。それから、悪いお手本にならないということなんです。これは先ほどの全交母の調査によりますと、子供に、あなたのお母さん交通違反をするのを見たことがありますかと聞くと、見たことがあるという子は非常に少ないのです。ところが、よそのお母さん交通違反をするのを見たことがありますかというようなことを聞くと、大変たくさんの子供が見たことがあると言う。ということは、自分の子供を連れているときはちゃんと信号を守るのですけれども、子供をうちに置いてきてしまうと勝手なときに横断する。そうするとよその子が見ていて、ああ、大人はああいうことをするんだな、格好いいなと思って見てしまうので、そういう悪いお手本が町じゅうにあふれていてはよい地域にならないということ。  それから最後に、他人の子供にもよく注意してよい町づくりをしょうということなんですが、これも先ほどの調査によりますと、他人の子供が危ない横断なんかをしているときに注意しますかとお母さんに聞くと、ほとんどの方が注意すると言っているのです。ところが、危ないことをした場合によそのお母さんに注意されたことがありますかと子供に聞くと、ほとんどないということなんですけれども、これはやはりお母さんが格好いいことを言っているだけだと思うのです。やはり住みよい地域をつくるということにもっと情熱を持っていただきたいと思います。  以上です。
  53. 伊藤英成

    ○伊藤(英)委員 池田先生にお伺いしますけれども、先ほど監視と処罰ということについて触れられました。そこで、今違法駐車が非常に多い、駐車場が圧倒的に足りないから違法駐車をたくさん生み出している状況になっているんだ、私はこういうふうに思うのですが、御意見はいかがですか。
  54. 池田速雄

    池田参考人 駐車、特に違法駐車の問題につきましては、世界のどの国でも大変苦労しているところだというふうに理解しております。基本的には全部なくなればいいのでしょうけれども、なかなかそれが担保できないということでございまして、たまたま昨日放映されておりましたテレビを見ておりますと、東京大学の越先生が中心になられまして、いろいろな渋滞と違法駐車の関係を検討しておられましたけれども、重要な交差点の大体五十メートル以内の駐車を排除すれば非常に円滑になる、こういったような調査結果をお出しになっておられましたので、こういうことはこれから非常に参考になるのじゃなかろうかと考えております。
  55. 伊藤英成

    ○伊藤(英)委員 田井参考人にもいろいろとお伺いしたかったのですが、先ほど関山先生も、過労の問題あるいは過積の問題等々についていろいろな具体的な要望も含めて詳しくお伺いしましたので、今後私も勉強させていただきたい、こういうふうに思います。  それから、時間もなくなりましたけれども、最後に簡単に生内先生に御意見だけお伺いしたいと思うのですが、この交通事故多発の問題と非常に関連する問題で自賠責保険の問題があるわけです。私は、これはこの委員会でも何度も取り上げたりしてきているのですが、きょうは細かいことを詳しく説明することは省略いたしますけれども、まず第一点は、診療報酬基準というのを何としてもつくらなければいけないということで進めているわけです。これは昭和四十四年の自賠責審議会の答申以来提起され、そして最近、医師会と損保との関係で三十回近くもこの問題について協議がされたりしております。しかし、今日まだほとんど具体的になっていないという状況でありまして、これは極めて問題だなということが一つ。  それと、それに関連いたしまして、ここで累積運用益というのが非常に膨大な額が毎年上がっております。ざっと年間一千億ぐらい上がり、そして若干の活用する分を除きますと、年間約六百億円ぐらいの金額がどんどん累積されているわけであります。こういう問題は保険料率にちゃんと反映をさせていかなければいけないだろう、こう思うのです。  そういう意味で、生内先生は、自賠責審議会ではありませんが、保険審議会のメンバーもされたりしておりまして、こうした問題についても非常にお詳しいと思いますので、きょうは時間もありませんからその結論というか考え方のみお伺いし、これからもぜひいろいろなところでこの問題についても御発言され、活動していただけたら、こういうふうに思います。それだけお伺いして終わります。
  56. 生内玲子

    生内参考人 簡単に一言だけお答えいたします。  保険審議会の委員をやらせていただいておりまして、自賠責の方は専門ではございませんけれども、今先生からお伺いいたしました貴重な御意見を保険審議会の席上でもまた委員に伝えさせていただきたいと思いますので、またよろしくお願いいたします。
  57. 伊藤英成

    ○伊藤(英)委員 どうもありがとうございました。
  58. 近江巳記夫

    近江委員長 伊藤君の質疑は終了いたしました。  次に、辻第一君。
  59. 辻第一

    ○辻(第)委員 きょうは参考人先生方、お忙しいところを御出席いただきまして、また貴重な御意見を拝聴いたしまして、ありがとうございました。  冒頭に委員長の発言がありましたように、今交通事故をめぐる状況というのは極めて深刻な事態を迎えているわけでございます。私ども、何としても交通事故を本当に減らしていく、安全な交通を確保するために頑張りたい、このような決意を新たにしているわけでございますが、きょう、いろいろと貴重な御意見を拝聴する中で、もっともっと原因を分析し、対応を考える、こういう点で努力をすれば十分な改善を図ることができる、そのような確信のようなものを感じさせていただいたわけでございます。  さて、私どもこういう状況の中で昨年から、身近なところで、交通事故の約四割を超える半数近いものが交差点並びに交差点の近くの事故だというようなことでございましたので、いろいろ調査もいたしました。また地域の方、住民の方と一緒にいろいろ運動もさせていただいたわけでございますが、その中で、青信号で歩いているときに大変な事故に遭われるというようなこともあるわけですね。ですから、そういう問題をいろいろ見てまいりまして、「安心して渡れる交差点を目指して」という運動をやってきたわけでございます。そういう中で私どもは、人命尊重とか交通安全優先というよりも、交通のスムーズな流れでありますとか経済活動というようなことがやや優先されているのではないか、そういうことも感じたわけでございます。交差点でいえば、ドライバーが高度な注意力だけでカバーするということはもうとても無理な状況だと思うわけです。  それで、交差点信号の問題で言いますと、歩行者の横断と車の右左折時間をずらすスクランブル方式などで歩行者と車の完全分離を原則とするということ。それから二番目に、お年寄り、子供、障害者が安心して横断できる青信号の時間を十分確保する。三番目に、信号機のない交差点横断歩道には早急に信号機をつける。四番目に、信号機があっても道路構造上や交通状況から危険のあるところには、必要な時間帯に交通警官を配置をすること。こういうことを警察庁あるいは政府に要望をしてきたわけでございます。もちろん、立体化の問題でありますとか、歩道橋をつくるというような問題も当然そういうことに加わってくるわけでございます。  こういうふうに、身近な交差点の問題を取り上げましても、きょう、生内参考人からお話がありましたように、予算をふやさなくてはならないという問題もあろうかと思います。そういうことで、まず生内参考人にお尋ねをいたしたいのですが、交差点問題についてどのようにお考えになっているのか、少しお尋ねしたいと思います。
  60. 生内玲子

    生内参考人 お答えいたします。  確かに交差点事故は多いのです。特に高齢者ドライバー、女性ドライバーなどの交差点事故が多くなっております。これは、高齢者とか女性ドライバーは余り遠くへ行かないで生活圏内での運転が多いせいであって、別にこの方たちが特に交差点の横断の仕方が下手だということではないと思いますが、いずれにしても大きな問題だと思うのです。  それで、これから交差点をどういうふうにしていくのがいいかというような科学的な研究です。例えば、歩行者の青信号の時間などにいたしましても、やはり個々の交差点の人の動態によって変わってくるので、その辺を調査して実施していただきたいということと、青信号の残り時間の表示などを一部やっている県がありますけれども、長い棒状の青い色がありまして、それがだんだん短くなってくる。そうすると、歩くことの遅いような方たち、とても行き切れる自信がないというような方たちは信号を一回待ってでも安全に渡るというようなことで、また一つそういった新しい機器の開発によっても変わってくるのではないかと思うのです。  それからもう一つ、先ほどもお母さん方の子供教育ということを申しましたけれども、やはり自分の家の近くの交差点について、お母さんが実際に子供の手を引いて、そして安全な歩き方、それからここはどこがどういうふうに死角になって危ないのだとか、そういうことを具体的に教育していただきたいなと思う次第です。  以上です。
  61. 辻第一

    ○辻(第)委員 宇留野参考人にお尋ねをしたいと思います。  長崎県の話でありますとか埼玉の話、非常にすばらしい話だなというふうに感じました。住民ぐるみといいますか地域ぐるみといいますか、そういうことが本当に重要だなというふうに考えます。それと同時に、これから高齢化社会を迎えるわけでありますが、高齢者の対応です。昨年はお年寄りが大変たくさん事故に遭われたということであります。そういうことも含めまして、高齢者の対応について先生のお考えを聞かせていただきたいと思うのです。
  62. 宇留野藤雄

    宇留野参考人 高齢者全体の問題と地域ぐるみの問題でございますね。これはさっきもちょっと触れましたけれども、これから紀元二〇〇〇年になればどんどんふえてくるし、その場合に、交通問題というのが非常に大きな問題になってくることは確かだと思うのです。  それで、二十一世紀は豊かな社会だ、こう言われておりますけれども、豊かな成熟社会では一体どういうことがあるのか、こう考えますと、交通媒体のいろいろなメニューがあって、そのメニューの中から、高齢者も含めてどれを選んだらいいかというメニューができることがまず第一に必要だと私は思うのです。しかし、そうはいっても、いろいろと問題があると思います。今地方で高齢者用のタクシーをバス的に使用するところが新聞に出ておりましたが、あれなんかは高齢者が自分でどこかへ行きたいときに割とうまくいく方法なので、これもメニューの一つになってくるのじゃないかというふうに思います。そんなわけで、高齢者を抑えるのではなくて、どうぞ行ってください、しかし、そのためにはこういうふうなやり方がありますよというような条件をそろえてやることが必要だと思うのです。  それから問題は、交通事故歩行者である高齢者が非常に多かったわけでございますが、これは一つは、交通信号の使い方やいろいろなことがわからないので、やはりそういう意味交通教育というものをどこかでやっていかないとますます高齢者は取り残されて、そして事故死に追いやられることがあるのじゃないか。こういう意味で、そういう教育の場を持っていくことを切望するわけでございます。
  63. 辻第一

    ○辻(第)委員 今いろいろハードの面ソフトの面に対応しなければならないと思うのですが、ことしの一月の「人と車」の中で、「新春座談会」ということで、きょう見えております池田さんと原田交通安全対策室長、それから内田交通局長との鼎談が載っておりました。生内参考人からももっと予算をというお話がありましたが、原田交通安全対策室長の話で、これまで車の伸びを上回る予算の伸びがあったときにはどっと減った、しかしその後予算が非常に苦しくなっていっている状況の中でまた増勢に転じた、こういうようなことだと思うのですが、そういう話が出ておりました。またその中で、いわゆる安全施設の問題だけじゃなしに人の対策教育の問題で、イギリスの資料では昭和六十年には交通安全教育広報のための予算が九億、日本は一億八千万という話が書いてありまして、私もびっくりしたわけであります。  そこで、池田さんにお尋ねをしたいのですが、こういう面では大変おくれているのではないかというふうな感じがするわけですけれども、諸外国を見てこられていかがでしょうか。
  64. 池田速雄

    池田参考人 施設の面でございますけれども、御案内のとおりの日本の歴史的な現状でございますので、そういう意味では、諸外国に比べて立ちおくれていることはもう厳然たる事実でございますが、それを抜本的に直すということは今の何十倍かけてもなかなか難しいので、その中でいかに知恵を働かせて最小限のものでも効率を高めていくかということが問題であろうというふうに考えておるわけでございます。したがいまして、急な増加は無理にしましても、特に安全施設につきましては、先ほど来お話がございましたとおり、現在あるものを使う場合にどうやったら一番安全に使えるかという配慮をしていただきたいというふうに考えているわけでございます。  それから、新たに道路をおつくりになりましたり都市をおつくりになりますときには、それがいかに安全につくられるか。例えば市街地一つをおつくりいただきますのでも、最近では検討が進んでまいりまして、大きな通りで囲んでしまって市街地の真ん中を道路が通るということのないように、その中では専ら歩行者自転車というものが主役になるというような町づくりが考えられております。大きなことで言えばそういうことでございますが、小さなことで言えば、先ほどちょっと御指摘もございましたけれども交差点交通事情が変わってまいりますと、どうしても直さなければいけないというようなところがございます。そういうものは重点的に一つ一つ個別につぶしていく必要があるのではないかと考えております。  それから、広報予算につきましては、外国との比較ということになりますと、基準をどこに置くかというのが非常に難しいわけでございます。外国では、例えば地方の広報まで国の段階でやられるという国柄もございますし、国の方はほとんどやらずに州と申しますか県と申しますか、あるいは市町村がおやりになるというところもございますので、トータルの数字になりますとどうかという感じはいたしております。ただ、従来からの反省といたしましては、広報というと私ども、スローガンをつくりポスターにし、あるいはチラシをつくりということで配布いたしておりますけれども、マスメディアの関係ということでの対策が手おくれではないかということをたしか室長は御指摘になっていたのではないかという気もいたしますので、多角的に考えるということはこれから必要であろうと考えます。  それから、必要な情報を提供するにつきましても、私どもが必要と考えて流すというものではなかなか受け取られにくいという面がございます。例えば交通関係の情報にいたしましても、渋滞情報といったようなものは大変に聴視率が高いし、要望が強いわけでございます。その地域ではこういうことがありますよ、今どこそこではこういう事故がありましたよというようなことを、必要な場合にはお願いして加えさせていただいておる次第であります。そういうことで、金額ももちろんでございますけれども、内容もこれから考えていかなければならないのではないかと考えております。
  65. 辻第一

    ○辻(第)委員 内容の問題もございますが、金額の問題も重要な問題だなということを私は改めて感じさせていただいたわけでございます。  最後に、田井参考人にお尋ねをしたいと思います。  トラック労働者の大変な長時間労働でありますとか過労の状態、過積載の状態、改めて認識をさせていただきました。実は私も、二、三年前でありますが、トラック労働者の問題を国会でただしたことがあるのですが、その時分より一層事態は深刻になっているのではないかというような感じもしているわけでございます。何としても労働者の労働条件を改善するということは、この交通安全だけではなしに本当に重要な課題だなと思うわけでございます。こういう問題もこれから我々一生懸命やっていきたいと思っているわけですが、私はこの前の国会では、過積や無理な運行をなくすために荷主や元売企業は、貸し切りトラックの利用に当たって、積載量、発時間や到着指定時間などを明記した輸送状を発行しなければならないことを法律で義務づけるべきではないかということを言ったわけでありますが、こういうことは実際問題として無理でしょうか、いかがでしょうか。
  66. 田井二郎

    ○田井参考人 お答えしますが、どこでも荷物を送ってくれと依頼をすれば何か書いたものを渡さなければ、第一どこに行くのだかわからないと思います。おまえが持っていくものはこういうものだよと品名が書いてあると思うのです。何個あるのだ、これも大切なことだと思うのです。数を途中でごまかされては困りますから。そうして一個当たりの重量は幾らだよという、ここらあたりはせめて運転手に渡してほしいのです。行き先と品名は書いてありますけれども重量の方はなかなか書かないのですね。これは決して荷主さんが作為的に過積みをしょうと思ってということではないと思うのです。恐らくそういう商習慣がないからでしょう。また、倉庫の出荷係の人はあるいは重量を御存じないのかもしれませんけれども、私どもはできる限りそういうことを、形式にとらわれずに荷主さんから直接に書いていただきたいと思います。そしてもし事故があったときには警察官にそれを提示する。私はこういうものをこういうふうにして積んで運んでおります、だれに依頼されてこうやっておりますということを申し上げること、これはほかの国ではごく当たり前のことなんです。そういうことはぜひひとつやっていただきたいと思っております。  以上です。
  67. 辻第一

    ○辻(第)委員 これで終わります。
  68. 近江巳記夫

    近江委員長 辻君の質疑は終了いたしました。  どうもありがとうございました。  以上で参考人に対する質疑は終了いたしました。  参考人各位には、御多用中のところ貴重な御意見をお述べいただき、まことにありがとうございました。委員会を代表いたしまして厚く御礼申し上げます。  次回は、公報をもってお知らせすることとし、本日は、これにて散会いたします。     午後零時四十七分散会