○渡部(行)委員 この問題
一つなら私も一体どうなのかなというふうに
考えますけれども、ところが、これは先ほども言われたように百数件の地労委に対する不当労働行為の訴えが出ているのですよ。しかも福島県においては、不当労働行為というより人権問題としてこれが
指摘され、そして勧告を出されているのです。
そこで、組合バッジ着用者に対する人権侵害と福島県人権擁護委員会に対する救済申し立てに至る経過を若干申し上げてみます。
一、一九八七年四月一日午前零時を境にして組合バッチ着用者に攻撃開始。その具体例。①組合バッチ着用を理由に、
就労意思を無視し、火の気のない詰所に追い立てる。②講習室に軟禁し、反省文の強要、就業規則の書き写しの強要。③倉庫に椅子を運ばされ、倉庫に押し込められ、腰痛になった人も、などの行為が約五十日から六十日続く。
二、五月十一日、十一名の組合員が福島県人権擁護委員会に救済申し立て。三、五月二十七日以降、組合バッチ着用者の妻あてに各現場から脅迫文が届く。これは後で読んでみます。四、六月十二日、組合バッチ着用者に不当処分。二百四十九名、福島県支部。五、七月三日、組合バッチ着用を理由に夏季手当五%カット。二百八十四名、総額五百五十八万四千二十九円。六、七月十日、十名の家族代表、福島県人権擁護委員会に救済申し立て。七、十一月九日、組合バッチ着用者に不当処分。百八十八名、福島県支部。八、十二月十四日、組合バッチ着用を理由に年末手当五%カット。百八十九名、総額五百六十万円。
こういうような経過のもとに、今度人権擁護委員会から一々
指摘がされて勧告を受けたわけでございます。それを読んでみます。
「人権救済申立事件の処理結果の御報告」、これは時間の関係で一部省略します。「
昭和六三年四月二三日の当会の
理事会の承認を得て、別紙の勧告書を
東日本旅客鉄道株式会社本社および東北地域本社に送付致しましたので御報告申し上げます。」こうなって、その「勧告書」です。
一、当弁護士会(人権擁護委員会)は、
東日本旅客鉄道株式会社の郡山保線区に配属勤務していた加藤充彦、金沢勝美、堰上一司、五十嵐敬および二瓶修爾、郡山第一信号通信区に配属勤務していた島津隆、梅宮繁、斎藤和範および弓田力、福島運転所に配属勤務していた竹村直樹および佐久間郁夫の各申立てにかかる人権救済申立事件につき、詳細に
検討して参りましたが、その結果次の事実が認められました。
こういうことで、「次の事実」を今度読んでみますと、
(一) 郡山保線区の件
郡山保線区に配属勤務していた右加藤充彦外四名は、
昭和六二年四月二日田崎栄一保線区長及び助役から国労バッチを外すよう執拗に迫られ、翌三日、堰上一司、五十嵐敬および二瓶修爾は午前八時四〇分頃から、同区長の指令の下に「国労バッチを外さなければ業務指示はしない」と言われた後、同日午後五時頃まで詰所に待機させられ、その間監視下におかれ、「話をするな」「机から離れるな」「顔に手をあてるな」「机の上に手を置くな」「業務指示にないことをするな」等、その行動
一つ一つを注意され、トイレに行く際は許可を受けなければならず、外部からの電話も取り次いで貰えなかったものである。
(二) 郡山第一信号通信区の件
郡山第一信号通信区に配属勤務していた右島津隆外三名は、伊藤宏区長の指示の下に国労バッチを外さなかったことを理由とし、
昭和六二年四月二日午前八時四五分頃から終業時まで、作業道具、油缶などを入れていて、油とホコリの臭いのする倉庫内に入れられ、昼食をそこで取るよう指示され(実際は取らなかった)、翌三日から五日までも年休で休んだ者以外は同様の指示を受けて軟禁に近い状態にされたものである。
(三) 福島運転区の件
福島運転所に配属勤務していた右竹村直樹外一名は、
昭和六二年四月一日午後九時三〇分頃、夜勤入りの際、国労バッチを外さないことを理由に夜勤勤務を外され(出勤簿に出勤の押印をさせられない)、やむなく詰所に待機中、安斎三郎運転所長から、「お前らが居ると悪影響を与えるから、さっさと出ていけ」、「電気料がもったいないから早く出て行け」などと言われ、さらに翌二日午前〇時一五分頃、両名は同所長に「二日の勤務はどうなるのか」と尋ねたところ、同所長は「分からない」旨答え、さらに「あんた達みたいな奴にちゃんと対応する現場長はいない。いいから帰れ、帰れ」と言われ、両名が「西部詰所で待機している」旨伝えると、同所長から「西部に行っても勤務やってる人の邪魔になるから帰れ。西部にいるようならつまみ出すから早く帰れ」と言われた上、同日午前六時頃、両名は関沢助役から「佐久間君と竹村君については業務指示を出していないので点呼に出さないで下さい。邪魔になります」と言われたものである。
以上の事実は、業務指示の名の下に
労働者に対し侮辱的かつ差別的な取扱いをなしたものと認められ、
労働者の人格を無視ないし軽視するものであって人権の基調にある個人の尊厳を不当に侵すものといわざるをえません。
よって
東日本旅客鉄道株式会社の
管理者が救済申立人らに対してなした上記各行為は、いずれにしても健全な労働関係、近代的労使関係の業務命令の範囲を逸脱したいわゆる「いじめ」的なものと認めざるをえず、内容的にも憲法一三条が保障する個人の尊厳を、また憲法二八条が保障する
労働者の団結権を侵害するおそれのあるものと認められますので、早急な是正措置を勧告するものであります。
二、また右の件と関連して、夫が
東日本旅客鉄道株式会社の福島第一電力区に配属勤務していた貝沼博子、斎藤えみ子、橘孝子、堀部洋子、夫が郡山保線区に配属勤務していた五十嵐朝子、夫が郡山運転所に配属勤務していた橋本典子、夫が郡山第一信号通信区に配属勤務していた
佐藤恵子、小田裕子、夫が会津若松保線区に配属勤務していた坂内禮子、夫が会津若松駅に配属勤務していた渡部アヤ子からも人権救済申立事件が申立てられましたので、当弁護士会(人権擁護委員会)で詳細に
検討して参りました。
これらの一〇件の申立事実は、いずれも勤務中に国労バッチを着用し、
東日本旅客鉄道株式会社がこれを外すよう注意、指導しても応じない当該社員の妻はじめ家族の者に宛て、「右行為は会社のイメージをおとしめるものだから、厳正な
処置をとらざるを得ない。当該社員が規則に従うよう協力してほしい」旨の文書を郵送したものであります。
これは本来、
東日本旅客鉄道株式会社と何ら
法律関係のない家族の者に対し、その家族の働き手で一家の柱である社員が規則違反によって、会社のイメージをおとしめているので厳正な
処置をとることになるということを告知するもので、これは被告知者をいたずらに困惑させ、不安をいだかせるとともに、家族の当該社員に対する信頼を低下させ、ひいては家庭騒動をも起こさせかねないものであり、また社員が
雇用関係にあることのみをもって、当該社員およびその家族個々人の思想、信条にまで踏み入るもので、基本的人権の基調にある個人の尊厳を著しく侵すものと認めざるをえません。基本的人権の保障を最高の理念とすべき民主憲法下において、公共的使命をもおびる
東日本旅客鉄道株式会社がこのような事態を生じさせていることは由々しい問題であり、早急な是正措置をとられるよう勧告するものであります。
以 上
こういうふうになって勧告書が出されているのです。
今読んだけれども、あなたどのようにお
考えですか。どういう感じを持たれましたか。