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1988-05-09 第112回国会 衆議院 決算委員会 第5号 公式Web版

  1. 会議録情報

    昭和六十三年五月九日(月曜日)     午前十時四分開議  出席委員    委員長 野中 英二君    理事 近藤 元次君 理事 杉山 憲夫君    理事 鈴木 宗男君 理事 谷津 義男君    理事 渡部 行雄君 理事 草川 昭三君    理事 小沢 貞孝君       天野 光晴君    岡島 正之君       片岡 武司君    小泉純一郎君       武部  勤君    中島  衛君       古屋  亨君    小川 国彦君       渋沢 利久君    新村 勝雄君       小川新一郎君    古川 雅司君       大矢 卓史君    野間 友一君  出席国務大臣         大 蔵 大 臣 宮澤 喜一君         国 務 大 臣         (国土庁長官) 奥野 誠亮君  出席政府委員         内閣参事官   河原崎守彦君         警察庁長官官房         会計課長    半田 嘉郎君         大蔵大臣官房会         計課長事務取扱 吉川 共治君         大蔵大臣官房総         務審議官    角谷 正彦君         大蔵大臣官房審         議官      尾崎  護君         大蔵大臣官房審         議官      瀧島 義光君         大蔵省主計局次         長       寺村 信行君         大蔵省理財局次         長       藤田 弘志君         大蔵省証券局長 藤田 恒郎君         大蔵省銀行局長 平澤 貞昭君         大蔵省銀行局保         険部長     宮本 英利君         大蔵省国際金融         局長      内海  孚君         国税庁次長   日向  隆君  委員外出席者         内閣総理大臣官         房参事官    坂東眞理子君         内閣総理大臣官         房参事官    中川 良一君         大蔵省主計局司         計課長     兵藤 廣治君         農林水産省経済         局農業協同組合         課長      今藤 洋海君         農林水産省農蚕         園芸局農産課長 清田 安孝君         運輸省地域交通         局自動車保障課         長       村上 伸夫君         郵政省放送行政         局業務課長   團  宏明君         自治省財政局財         政課長     遠藤 安彦君         自治省税務局府         県税課長    小坂紀一郎君         会計検査院事務         総局第一局長  疋田 周朗君         会計検査院事務         総局第五局長  三原 英孝君         国民金融公庫総         裁       吉本  宏君         日本開発銀行総         裁       高橋  元君         日本輸出入銀行         総裁      田中  敬君         決算委員会調査         室長      大谷  強君     ───────────── 委員の異動 四月二十七日  辞任         補欠選任   新村 勝雄君     新盛 辰雄君   大矢 卓史君     米沢  隆君   野間 友一君     村上  弘君 同日  辞任         補欠選任   新盛 辰雄君     新村 勝雄君   米沢  隆君     大矢 卓史君   村上  弘君     野間 友一君 五月九日  辞任         補欠選任   金丸  信君     中島  衛君   中曽根康弘君     片岡 武司君   松野 頼三君     小泉純一郎君   渡辺美智雄君     武部  勤君 同日  辞任         補欠選任   片岡 武司君     中曽根康弘君   小泉純一郎君     松野 頼三君   武部  勤君     渡辺美智雄君   中島  衛君     金丸  信君     ───────────── 本日の会議に付した案件  昭和六十一年度一般会計予備費使用調書及び各省庁所管使用調書(その1)  昭和六十一年度特別会計予備費使用調書及び各省庁所管使用調書(その1)  昭和六十一年度特別会計予算総則第十三条に基づく経費増額調書及び各省庁所管経費増額調書(その1)  (承諾を求めるの件)  (第百八回国会、内閣提出)  昭和六十一年度一般会計予備費使用調書及び各省庁所管使用調書(その2)  昭和六十一年度特別会計予備費使用調書及び各省庁所管使用調書(その2)  (承諾を求めるの件)  昭和六十二年度一般会計予備費使用調書及び各省庁所管使用調書(その1)  昭和六十二年度特別会計予算総則第十三条に基づく経費増額調書及び各省庁所管経費増額調書(その1)  (承諾を求めるの件)  昭和六十一年度一般会計国庫債務負担行為調書(その1)  昭和六十年度一般会計歳入歳出決算  昭和六十年度特別会計歳入歳出決算  昭和六十年度国税収納金整理資金受払計算書  昭和六十年度政府関係機関決算書  昭和六十年度国有財産増減及び現在額総計算書  昭和六十年度国有財産無償貸付状況計算書  (大蔵省所管国民金融公庫日本開発銀行日本輸出入銀行)      ────◇─────
  2. 野中英二

    野中委員長 これより会議を開きます。  昭和六十年度決算外二件を一括して議題といたします。  本日は、大蔵省所管国民金融公庫日本開発銀行及び日本輸出入銀行について審査を行います。  次に、大蔵大臣概要説明会計検査院検査概要説明国民金融公庫当局日本開発銀行当局及び日本輸出入銀行当局資金計画事業計画についての概要説明を求めるのでありますが、これを省略し、本日の委員会議録に掲載いたしたいと存じますが、御異議ありませんか。     〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
  3. 野中英二

    野中委員長 御異議なしと認めます。よって、さよう決しました。     ─────────────    昭和六十年度大蔵省主管一般会計歳入決算並び大蔵省所管一般会計歳出決算、各特別会計歳入歳出決算及び各政府関係機関決算書に関する説明  昭和六十年度大蔵省主管一般会計歳入決算並び大蔵省所管一般会計歳出決算、各特別会計歳入歳出決算及び各政府関係機関決算書につきまして、その概要を御説明申し上げます。  まず、一般会計歳入決算について申し上げます。  昭和六十年度収納済歳入額は五十二兆三千三百九十一億三千三百五十七万円余でありまして、これを歳入予算額と比較いたしますと七千百九十二億二百六十八万円余の増加となっております。  以下、歳入決算のうち、主な事項についてその概要を申し上げます。  第一に、租税及印紙収入でありますが、その決算額は三十七兆三百四十二億八千六百十三万円余で、これを予算額と比較いたしますと三百十二億八千六百十三万円余の増加となっております。これは、申告所得税等において課税額の伸びが見込みを上回ったこと等によるものであります。  第二に、公債金でありますが、その決算額は十二兆三千七十九億九千七百七十万円余で、これを予算額と比較いたしますと千三百億二百二十九万円余の減少となっております。これは、日本銀行納付金等が見積りより増収となることが見込まれたこと等により、公債発行額予定より減額したことによるものであります。  以上のほか、官業益金及官業収入百三十四億七千八百六十五万円余、政府資産整理収入千五百四十二億八千七百九十一万円余、雑収入二兆千二百六十三億二千百十一万円余、前年度剰余金受入七千二十七億六千二百五万円余となっております。  次に、一般会計歳出決算について申し上げます。  昭和六十年度歳出予算現額は十一兆千六百五十一億三百七十三万円余でありまして、支出済歳出額は十一兆六百八十億九千五百八十二万円余、翌年度繰越額は三百七十八億二千三百九十一万円余でありまして、差引き、不用額は五百九十一億八千三百九十九万円余となっております。  以下、歳出決算のうち、主な事項についてその概要を申し上げます。  第一に、国債費につきましては、国債整理基金特別会計へ繰り入れるため十兆千八百五億三千三百六十万円余を支出いたしましたが、これは、一般会計負担に属する国債の償還及び利子等の支払並びにこれらの事務取扱費の財源に充てるためのものであります。  第二に、政府出資につきましては二千百二十億円を支出いたしましたが、これは、海外経済協力基金等への出資であります。  第三に、経済協力費につきましては五百五十一億七千百九十八万円余を支出いたしましたが、これは、開発途上国等に対する食糧増産等援助等のためのものであります。  この支出のほか、食糧増産等援助費につきましては、相手国国内事情等のため三百七十億千二百五十三万円余が翌年度へ繰越しとなっております。  以上申し述べました経費のほか、科学的財務管理調査費国家公務員等共済組合連合会等助成費国庫受入預託金利子公務員宿舎施設費アジア開発銀行出資国際金融公社出資国民金融公庫補給金特定国有財産整備費及び特定国有財産整備諸費として六百九十七億九百三十三万円余並びに一般行政を処理するための経費として五千五百六億八千九十万円余を支出いたしました。  なお、以上の支出のほか、公務員宿舎施設費につきましては八億千百三十八万円余が翌年度へ繰越しとなっております。  次に、各特別会計歳入歳出決算についてその概要を申し上げます。  まず、造幣局特別会計におきまして、収納済歳入額は百六十五億五千九百十二万円余、支出済歳出額は百六十五億五千六百六十八万円余でありまして、損益計算上の利益は千三百四十六万円余であります。  この会計の主な事業である補助貨幣製造につきましては、十五億千万枚、額面金額にして八百一億七千万円を製造し、その全額を発行いたしました。  次に、印刷局特別会計におきまして、収納済歳入額は八百七億七千七百十四万円余、支出済歳出額は六百七十八億九千五百七十四万円余でありまして、損益計算上の利益は百四十九億八千百五十九万円余であります。  この会計の主な事業である日本銀行券製造につきましては、三十二億八千万枚、額面金額にして十四兆四千百五十億円を製造し、その全量を日本銀行に引き渡しました。  以上申し述べました各特別会計のほか、資金運用部国債整理基金外国為替資金産業投資、地震再保険及び特定国有財産整備の各特別会計歳入歳出決算内容につきましては、特別会計歳入歳出決算によって御了承願いたいと存じます。  最後に、各政府関係機関決算書についてその概要を申し上げます。  まず、国民金融公庫におきまして、収入済額は三千九百五十七億九千百五十九万円余、支出済額は三千九百九十四億千五百十一万円余でありまして、損益計算上の損益はありません。  この公庫貸付けにつきましては、八十二万件余、金額にして二兆七千七百四十五億千七百七十九万円余を貸し付けました。  このほか、住宅金融公庫農林漁業金融公庫中小企業金融公庫北海道東北開発公庫公営企業金融公庫中小企業信用保険公庫環境衛生金融公庫沖縄振興開発金融公庫日本開発銀行及び日本輸出入銀行決算内容につきましては、それぞれの決算書によって御了承願いたいと存じます。  以上が昭和六十年度における大蔵省関係決算概要であります。これらの詳細につきましては、さきに提出しております昭和六十年度歳入決算明細書及び各省庁歳出決算報告書等によって御了承願いたいと存じます。  なお、会計検査院検査の結果、不当事項として税務署における租税徴収に当たり、徴収額過不足があったこと等の御指摘を受けましたことは、誠に遺憾に堪えないところであります。これらにつきましては、すべて徴収決定等適切な措置を講じましたが、今後一層事務合理化改善に努めたいと存じます。  何とぞよろしく御審議の程お願い申し上げます。     …………………………………    昭和六十年度決算大蔵省についての検査概要に関する主管局長説明                 会計検査院  昭和六十年度大蔵省決算につきまして検査いたしました結果の概要を御説明いたします。  検査報告に掲記いたしましたものは、法律政令若しくは予算に違反し又は不当と認めた事項一件及び本院の指摘に基づき当局において改善処置を講じた事項一件であります。  まず、法律政令若しくは予算に違反し又は不当と認めた事項について御説明いたします。  これは、租税徴収に当たり徴収額過不足があったものであります。  これらの徴収過不足事態は、課税資料の収集、活用が的確でなかったため収入金等を把握していなかったり、法令適用の検討が十分でなかったため税額計算等を誤っていたり、納税者申告書等において所得金額税額計算等を誤っているのにそのままこれを見過ごすなどしていたりして徴収額過不足を生じていたものであります。  次に、本院の指摘に基づき当局において改善処置を講じた事項について御説明いたします。  これは、農地等に係る相続税納税猶予制度に関するものであります。  この制度は、相続人相続により取得した農地等に係る相続税について所定の額の納税猶予し、この農地等を二十年間農業の用に供した場合などにはその納付を免除するものでありますが、この制度運用状況について検査いたしましたところ、農地等を譲渡したり、転用したりしていて納付すべき税額があるのにこれを納付していない者が見受けられました。  このような事態は、納税猶予を受けている者の本制度の理解が十分でなく、転用等を行った場合の所要の手続きなどをしていなかったこと、税務署農業委員会等との連絡調整が十分でなかったこと、税務署当該農地等の現況の把握が十分に行われていなかったことなどによると認められましたので、当局の見解をただしましたところ、国税庁では、各種広報紙活用により本制度の趣旨の周知徹底を図るなどの処置を講じ、また、同庁と農林水産省との協議の結果、農林水産省においても、農業委員会税務署との連絡調整を密にするなどの処置を講じたものであります。  以上、簡単でございますが説明を終わります。     …………………………………    昭和六十年度決算国民金融公庫についての検査概要に関する主管局長説明                 会計検査院  昭和六十年度国民金融公庫決算につきまして検査いたしました結果、特に違法又は不当と認めた事項はございません。     …………………………………    昭和六十年度決算日本開発銀行についての検査概要に関する主管局長説明                 会計検査院  昭和六十年度日本開発銀行決算につきまして検査いたしました結果、特に違法又は不当と認めた事項はございません。     …………………………………    昭和六十年度決算日本輸出入銀行についての検査概要に関する主管局長説明                 会計検査院  昭和六十年度日本輸出入銀行決算につきまして検査いたしました結果、特に違法又は不当と認めた事項はございません。     …………………………………    昭和六十年度業務概況                国民金融公庫  国民金融公庫昭和六十年度業務概況についてご説明申し上げます。  昭和六十年度わが国経済は、年度末にかけて拡大のテンポが次第に緩やかになったものの、民間設備投資増加等を背景に全体として拡大を続けました。しかし、中小企業の景況は、輸出が高水準ながらおおむね横ばいになったことを反映して生産が力強さを欠き、また、円高の急速な進展により輸出関連中小企業を中心に大きな影響が出る等、全体として弱含み基調で推移し、中小企業経営環境は依然として厳しい状況にありました。  このような状況におかれた中小企業者に対して、当公庫は、貸付限度の引き上げ、貸付利率引き下げ等により、中小企業金融円滑化のために積極的に対処いたしました。  昭和六十年度貸付につきましては、計画三兆一千四百五十億円に対しまして、二兆七千七百四十五億一千七百七十九万円余の実行をいたしました。  貸付種類別貸付実績を申し上げますと、普通貸付は、五十八万七千件余二兆六千二百四十八億三千六百六十三万円余、恩給担保貸付は、十六万三千件余一千百五十八億八千四百七十七万円余、記名国債担保貸付は、五百八十二件四億三千二万円余、進学資金貸付は、七万件余三百十九億三千九百八十七万円となりました。  なお、普通貸付貸付実績のなかには、生鮮食料品等小売業近代化資金貸付流通近代化資金貸付等特別貸付が、九千件余三百八十六億六千六百八十九万円、小企業等経営改善資金貸付が、十四万三千件余三千四百六十一億八千三百八十六万円含まれております。  一方、六十年度において貸付金回収が、二兆六千四百四十四億九千八百十七万円余、滞貸償却が、二十七億四十七万円余ありましたので、六十年度末現在の総貸付残高は、二百四十五万件余五兆三百四十二億六千五百七十八万円余となり、前年度残高に比べますと、一千二百七十三億一千九百十三万円余二・六パーセントの増加となりました。  貸付金延滞状況につきましては、六十年度末において延滞後六カ月以上経過したものが、一千七百五十七億三千百八十六万円余でありまして、総貸付金残高に対する割合は、三・五パーセントとなっております。  昭和六十年度貸付に要した資金は、二兆七千七百三十二億一千二百五万円余でありまして、その原資は、資金運用部からの借入金一兆七千二百九十五億円、簡易生命保険及び郵便年金特別会計からの借入金一千四百億円、一般会計からの借入金百十一億円のほか、貸付回収金等八千九百二十六億一千二百五万円余をもってこれに充てました。  受託業務につきましては、環境衛生金融公庫からの受託貸付は、六十年度における貸付実績が、五万二千件余一千三百九十八億九千二百二十七万円余、回収額が、一千八百七十五億七千九百九十八万円余となり、六十年度貸付残高は、三十七万一千件余五千四百五十七億六千四百五十七万円余となっております。また、労働福祉事業団からの受託貸付の六十年度における貸付実績は、百三十五件一億八千五百八十八万円となっております。  最後に、六十年度収入支出決算及び損益計算について申し上げます。  まず、収入支出決算について申し上げますと、収入済額は、三千九百五十七億九千百五十九万円余、支出済額は、三千九百九十四億一千五百十一万円余となりました。  次に、損益計算について申し上げますと、貸付金利息等の総益金は、四千五百九十四億五千二百万円余、借入金利息事務費、滞貸償却引当金繰入等の総損金は、四千五百九十四億五千二百万円余となりました。この結果、利益金は生じなかったので、国庫納付はいたしませんでした。  以上をもちまして、昭和六十年度業務概況のご説明を終らせていただきます。     …………………………………    日本開発銀行昭和六十年度業務概要  昭和六十年度における日本開発銀行業務概要についてご説明申し上げます。  一、先ず、六十年度資金運用計画は、当初計画として一兆一千五十億円を予定しておりました。  これに対し、六十年度中の運用額は、出融資実行額が一兆一千五十億一千九百五十万円となっております。  これの項目別内訳は、資源エネルギー四千七百億三千万円、技術振興一千六百三十四億一千五百万円、海運八百四億四千七百万円、都市開発一千五百十二億九千六百五十万円、地方開発一千八十七億五千三百万円、国民生活改善八百七十六億三千二百万円、その他四百三十四億四千六百万円であります。  以上の六十年度運用額原資といたしましては、資金運用部資金からの借入金七千六百九十億円と貸付回収金等三千三百六十億一千九百五十万円をもってこれに充てました。  二、次に六十年度出融資運用の特色を申しあげますと、  (1) 資源エネルギーについては、原子力発電推進のための融資水力発電液化ガス発電等電源多様化をはかるための融資石油産業集約化石油及びLPG備蓄タンクに対する融資都市ガスの高圧、高カロリー化設備に対する融資石油代替エネルギー利用促進のための融資の他、資源エネルギー有効利用産業の省資源省エネルギー等促進するための融資を引き続き行ったこと  (2) 技術振興については、わが国自主技術開発促進及び技術水準の向上ならびに経済社会情報化の健全な発展をはかるため、産業技術振興融資情報化促進融資等を行うとともに、「基盤技術研究円滑化法」に基づき設立される基盤技術研究促進センターに対し出資を行ったこと  (3) 海運については、貿易物資安定的輸送確保の観点から計画造船による外航船舶の建造に対し引き続き融資を行ったこと  (4) 都市開発については、都市交通整備改善市街地開発整備及び流通機構近代化に寄与する事業等に対し引き続き融資を行うとともに、市街地開発事業及び地域冷暖房事業に対し、出資を行ったこと  (5) 地方開発については、九州、四国、中国、北陸の四地方開発のため引き続き融資を行うとともに、地方都市圏機能整備地方適地産業の育成、工業の適正配置促進について特に留意したこと  (6) 国民生活改善については、公害防止推進のための融資重度障害者雇用施設ビル防災等安全対策設備に対する融資及び食品供給体制近代化のための融資を引き続き行ったこと  (7) その他については、「構造改善」、「工場分散」、「輸入体制整備・対日投資促進」及び「航空輸送施設」等の融資を引き続き行ったことなどがあげられます。  三、次に六十年度における既往貸付回収は、八千五十九億一千九百四十七万円余となっております。  なお、六十年度貸付金債権償却は行わず、この結果、六十年度末における出融資残高は、七兆六千七百九十六億二千八百九十五万円余となりました。  貸付金延滞状況につきましては、六十年度末におきまして弁済期限を六カ月以上経過した元金延滞額は二百六十九億七千五百七十四万円余で、前年度末に比して七億七千五百五十万円余の減少となっております。  貸付残高に対する割合は、〇・四パーセントとなっております。  四、また、六十年度において、新規の外貨債務保証はなく、年度保証残高は一千三百七十二億四千四百八十六万円余となっております。  五、最後に、六十年度決算概要について説明いたしますと、五百九十三億五千二百七十八万円余の純利益を計上し、このうち二百三十億五百三十九万円余を法定準備金として積立て、残額三百六十三億四千七百三十九万円余を国庫納付いたしました。  以上、六十年度における日本開発銀行業務内容につきましてご説明申しあげた次第でございます。     …………………………………    日本輸出入銀行昭和六十年度業務概況  一、昭和六十年度における日本輸出入銀行業務状況につき概要をご説明申し上げます。  まず、昭和六十年度年度当初の事業計画において一兆千三十億円の貸付予定いたしました。  これに対し昭和六十年度貸付額実績は七千七百五十九億二十七万円余で、年度当初の事業計画における貸付予定額を三十パーセント程下回りました。  なお、この昭和六十年度貸付額昭和五十九年度貸付額八千八十七億四千二十万円余に比較いたしますと四パーセント程度の減少となっております。  以下、昭和六十年度貸付額の内訳につきまして、金融種類別に前年度との比較において申し述べます。  まず、輸出資金貸付は、二千七百九十三億四千二百七十六万円余で、昭和五十九年度の四千百三十億九千五百七十万円に対し、千三百三十七億五千二百九十三万円余の減少となりました。これは、産油国の資金繰り悪化、発展途上国の累積債務問題によるプラント市場の低迷により、プラントの輸出に対する貸付が低調に推移したことによるものであります。  次に、輸入に必要な資金貸付は、千三十五億七千四百九十一万円余で、昭和五十九年度の三百八十八億七千五百三十三万円余に対し、六百四十六億九千九百五十七万円余の増加となりました。これは、製品輸入について大型案件の貸付があったことによるものであります。  また、海外投資資金貸付は、千八百九十八億五千二十六万円となり、昭和五十九年度の千八百四十二億七千七百四十九万円余に対し、五十五億七千二百七十六万円余の増加となりました。  このほか、外国政府等に対する直接借款に係る貸付は、二千三十一億三千二百三十三万円余で、昭和五十九年度の千七百二十四億九千百六十七万円余に対し、三百六億四千六十五万円余の増加となりました。これは、アンタイドローンの貸付額増加したことによるものであります。  以上の結果、昭和六十年度末の貸付残高は、五兆八千百三十八億千三百二十五万円余となっております。  なお、この貸付残高のうち、弁済期限を六箇月以上経過した元金延滞額は、二百十八億千八百十一万円余となっております。  昭和六十年度貸付資金原資といたしましては、資金運用部資金からの借入金五千億円のほか、自己資金等二千七百五十九億二十七万円余をもってこれにあてました。  以上申し述べました業務の運営により昭和六十年度の一般勘定の損益計算上における利益は、五千三百二億五千八十六万円余、これに対し損失は、五千六億七千四百十四万円余となりました。  この結果、昭和六十年度の一般勘定利益金は二百九十五億七千六百七十一万円余となりました。  一般勘定利益金は、法令の定めるところに従い、うち百七十三億九千三百二十七万円余を法定準備金として積立て、残額百二十一億八千三百四十三万円余を国庫納付いたしました。  なお、既往のインドネシア債務救済措置の実施に関する業務につきましては、日本輸出入銀行法による貸付金の利息の特例等に関する法律により一般の業務と区分して特別の勘定を設けて経理することといたしておりますが、昭和六十年度の特別勘定の損益計算上、二億九千百十三万円余の利益金を生じ、法令の定めるところに従い、これを全額同勘定の積立金として積立てました。  二、以上、昭和六十年度における日本輸出入銀行業務概況につき、ご説明申し上げました。     ─────────────
  4. 野中英二

    野中委員長 これより質疑に入ります。  質疑の申し出がありますので、順次これを許します。渡部行雄君。
  5. 渡部行雄

    ○渡部(行)委員 まず最初に大蔵大臣にお伺いいたしますが、その第一点は、現在審査に付されている昭和六十年度一般会計歳入歳出決算外同年度関係案件、特にきょうは大蔵省所管中心に審議されるわけでございますが、この審議が六十三年度予算にどう連関し、どのような役割を果たしているだろうか、こういうふうに考えてみますと、何か非常に時間のずれがあり過ぎて、どうもその役割が全うされているように思えないわけでございます。本来、決算というのは予算と裏腹の関係にあるべきだろうと思うのでございますが、六十三年度予算が決定されてしまってから、今六十年度決算審査をしておるわけでございます。一体この二つの問題の間にどういうかかわり合い、関連というものがあるだろうか。地方公共団体の場合は、御承知のように地方自治法第二百三十三条で、次年度予算審議に入る前に議会の認定を得なければならないと義務づけられているわけです。あるいはまた、株式会社等企業の決算を見ましても、決算予算あるいは事業方針というものが必ず連動しておるわけでございます。そういう観点からこの問題を見てまいりますと、我々は、決算審査の中から問題点を引き出し、そしてその問題点の解決を次の予算で処理していくというのが当然なされるべき姿ではないだろうかと思うわけでございます。しかるに、最も重要な国の財政体制がこのような状態でよいでしょうか。もちろん議会側にも一半の責任はありましょうが、しかし、その大半の責任は政府側にあると思うのでございますが、大臣の御見解をお聞かせ願いたいと思います。
  6. 宮澤喜一

    ○宮澤国務大臣 国会における決算の御審議は、予算の御審議と同様に重大なものと政府としても心得ております。御指摘のように多少時間的なずれが出る場合がございますけれども、これはしかし、必ずいつの時期にか国会の御審議があるということを政府はもとより十分承知いたしておりますので、過去における御審議の経過あるいは御発言等々を十分承りながら、新しい予算の編成あるいは新しい予算の執行にも努力をいたしておるつもりでございまして、その点は十分国会の御審議の意のあるところを含みながら予算の編成あるいは予算の執行に当たっておるつもりでございます。
  7. 渡部行雄

    ○渡部(行)委員 国会の審議の意のあるところを含みながら予算編成に当たっておると言われておりますけれども、その国会の審議が、予算編成され、さらに確定されてから後にその前の決算審議されるというこの形態は、まさに逆さまじゃないかと思いますが、この点はいかがでしょうか。
  8. 宮澤喜一

    ○宮澤国務大臣 さらにつけ加えまして政府が決算を国会へ御提出する問題でございますが、その点についても御言及になられましたが、国会への提出につきましては、会計検査院検査を経ました上、翌年度開会の常会において提出するのを常例といたしております。昭和四十七年度決算及び五十八年度決算の場合は、常会の召集が比較的早うございました。この場合は例外でございますが、それ以外は、各年度とも常会の初めに提出をいたしておりまして、この点は政府としても最善を尽くしておるつもりでございます。
  9. 渡部行雄

    ○渡部(行)委員 これは大臣、提出時期にかかわらず提出後直ちに決算委員会を開いて審査に付されるということであればこういう問題は起きないわけですが、各委員会との審議がダブったりする関係上、どうしても常任委員会の方に大臣がとられる。そういうことで決算は結局大臣がとれないということで、委員会を延び延びにしながら今このような事態になっているわけです。そこで、法改正か何かされてもっときちっとした決算審査制度というものを打ち立てる必要があろうかと思うのですが、その点はいかがでしょうか。
  10. 宮澤喜一

    ○宮澤国務大臣 政府の国会に対する決算の提出の問題でございますが、ただいま申し上げましたように各年度とも常会の初めに提出するのを例といたしております。これは各省庁あるいは大蔵省における事務処理の手続、会計検査院における会計検査の時期、取りまとめ等の関連もございますわけですが、したがいましてそれらを終了しました後国会に提出するということで、おのずからそういう限度がございますけれども、なお今後ともさらに早期提出について政府としても努力を続けていきたいと存じます。  なお、もう一つの問題は、決算委員会における御質問に対しての閣僚の出席の問題でございますが、もとよりこの点も政府としては最善を尽くしまして御審議におこたえをいたすべきものと考えております。
  11. 渡部行雄

    ○渡部(行)委員 次に、減税問題でお伺いいたしますが、これは与野党国会対策委員長会談で三兆円程度の減税に前向きに取り組むというお話であったわけですが、けさの新聞を見ますと、自民党は五兆円の大型減税をやりたいという記事が載っておりました。しかしこの五兆円というのは次に来る税制改正法と絡めて考えておられるのか、これを分離して早目に今国会あたりに提出するおつもりなのか、それとも野党から要求されている三兆円程度の減税について応ずる構えがあるのかどうか、その辺についてお聞かせ願いたいと思います。
  12. 宮澤喜一

    ○宮澤国務大臣 この点につきましては御指摘のように与野党の国対委員長会談が累次にわたり行われまして、最終的には四月十二日に合意がなされておると承知をいたしております。それに基づきまして、ただいまのところ五月十二日及び十八日であったかと存じますが、政策担当者の間で御協議が行われると承っておりますので、政府といたしましては、そのような経緯がございますので、この御協議の結果というものを見守ってまいりたいとただいま考えておるところでございます。
  13. 渡部行雄

    ○渡部(行)委員 結局、減税問題も、提出される場合の責任者は大臣だろうと思いますが、ただ見守っているということはどういうことでしょうか。今国会でとりあえず税制改革法と切り離して減税をやる気があるのかどうか、この辺を明らかにしていただきたいと思います。
  14. 宮澤喜一

    ○宮澤国務大臣 政府の本来の考え方は、やがて税制調査会あるいは私どもの党内の税制調査会の問題もあるわけでございますが、その結論を得まして税制の抜本改正につき御提出をいたして御審議を仰ぎたい、それが政府の基本的な考え方でございますが、その際に、御審議に当たりまして、その全体の構想の中で六十三年度の減税というものをあるいは場合によりまして考えるということがあり得ることであるということを基本的には政府は思っておるわけでございます。しかし、それに先立ちまして既に幾たびか与野党の国対委員長会談が三月八日以来回を重ねて行われておりますので、これは事実上共産党以外の各党の御意向を代表して行われておるものでございますので、やはりこのお話の推移を見守りまして政府としても考えを決めていかなければならない、こういうふうに思っておるわけでございます。
  15. 渡部行雄

    ○渡部(行)委員 奥野国土庁長官がお見えになったようですから、一応ここで大蔵省関係は打ち切って、早速奥野大臣にお伺いしたいと思います。  大臣は、この間の靖国神社公式参拝に関する発言についていろいろと国際的な一つの問題を醸し出したようでございますが、これについては現在どのようにお考えですか。
  16. 奥野誠亮

    ○奥野国務大臣 中国の新聞がいろいろ反発しているようでございます。私自身は十分用心して申し上げているつもりでございますけれども、報道の仕方にもあるのじゃないかな、しかしそのこと自身は残念なことだったな、こう思っているわけでございます。私は、国民の皆さん方に御理解を深めてもらいたい、こんな気持ちでいろいろな前提を置いて申し上げているにもかかわらず、中国の新聞が反発する、いわんや韓国が反発する。私は韓国に関する反発を招くような中身は全くないのに、やはり報道の仕方によるのだな、こう思っているところでございます。
  17. 渡部行雄

    ○渡部(行)委員 私は、奥野大臣はそれこそ昔の東京帝国大学を卒業されて、大臣も何回かなされて、本当に常識といい良識といいすぐれた方だと思っておったわけですが、あなたほどの人物がいまだに自分の言ったことについて中国や韓国がなぜあんなに騒ぐのだろうか、理解に苦しむということは、私はその理解に苦しみますよ。一体、自分のやっていることがどういうものを意味しておるのかということを考えたことがあるでしょうか。私はあなた個人の衆議院議員奥野さんの発言ならば我慢しますけれども、あなたは閣僚の一人なんです。国務大臣なんです。その方が国際的な発言をして、それが一つの大きな問題となって国家関係がぎくしゃくするようになれば、これでもあなたは全然その内容が理解できないとおっしゃるのですか。
  18. 奥野誠亮

    ○奥野国務大臣 私が進んで発言したわけじゃございませんで、記者の方の方からお尋ねがあったわけでございます。私は、もう政治部の記者の皆さん方は大人になっているじゃありませんか、そんなことを聞く時代は過ぎているんじゃないかという意味合いで申し上げたわけでございました。そういたしましたら、実は社の方からぜひ聞けとこう言うてきているものだからぜひ答えてください、こういうことから始まっている点も御理解をいただいておきたいと思います。
  19. 渡部行雄

    ○渡部(行)委員 大臣、本社の方から聞けと言われたから聞いたという、話をしたという、こういう関係を言われましたけれども、しかし何も聞かれたら答えなければならないという義務はないんですよ、どんな国民でも。聞かれたから必ずそれに答えなければならないという義務はないんです。ましてやあなた、大臣として自分のとった公的行動がどういう波紋を投げるかということくらいはわかっているはずです。しかもこれは初めてじゃないんですよ。あなたは前に大臣をやったときもこういう問題があったのです。だから私は、これは偶然ではなくて何かあなたが意図した、そういう行動ではなかったかと思うわけですが、その点についてはどうでしょうか。
  20. 奥野誠亮

    ○奥野国務大臣 これは人の考え方、いろいろあろうと思うのでございますけれども、私は強いて聞かれればなるだけ率直にお答えをして関係はスムーズにしていきたいな、こう思っているわけでございます。私の発言の中身についてどこが不適切であったとおっしゃっているのか私にはわかりませんけれども、海外において反発が起こってきていることについては残念だと申し上げているわけでございまして、私の発言の中身についていろいろおしかりございますなら遠慮なしにおしかりをいただいたら結構だと思います。
  21. 渡部行雄

    ○渡部(行)委員 私の発言したどこが悪いんだと言われますが、あなたはこの靖国神社に戦争を起こした張本人のA級戦犯が祭られていることは知っているでしょう。これは極東裁判でも侵略戦争の責任を負わされて絞首刑にされた方々ですよ。この方々の命令によって命を亡くした別の将兵がいるわけですよ。被害者と加害者が一緒に祭られているその靖国神社にあなたは何の矛盾も感じませんか。
  22. 奥野誠亮

    ○奥野国務大臣 私は記者の質問に答えました際に、我が国の神道においては人間が死ねばみんな神様になるんですよ、こういうことも申し上げました。そういうことで祖先を神として祭っているのですよということも申し上げました。靖国神社には亡くなった方々を神としてお祭りしているんだというふうに考えているわけでございまして、ここは渡部さんと私と全く考え方の違う点だと思います。我が国では国会で遺族に対しましては年金が支給されておりますし、また巣鴨で拘禁されておった方の中にはその後において国政の上で重要な役割をなさっている方々もたくさんあるわけでございます。  東京裁判をどう評価するかということでございますけれども、私は勝者が敗者に加えた懲罰だ、こういうふうな理解をしているわけでございます。しかし日本が過去いろいろ迷惑をかけていることはたくさんあるわけでございますので、それは謙虚に反省して今後の我が国の行方によい反省の指標にしていかなければならないということは十分考えているつもりでございます。
  23. 渡部行雄

    ○渡部(行)委員 これは私は重大な発言だと思うのです。この東京裁判が勝者が敗者に加えた懲罰である、この言葉の裏にはあなたは侵略戦争を認めないという思想があると思いますが、そのとおりですか。
  24. 奥野誠亮

    ○奥野国務大臣 全く別問題でございます。同時に、私は侵略戦争という言葉を使うのは大変嫌いな人間でございます。言葉の使いようは個人個人どう使ってもいいと思うのでございますけれども、侵略という中には侵入して土地を取り上げる、土地を奪い取る、財産を奪い取る、侵略の略にはそういう言葉が含まれておる、そういう意味合いで日本では古来使われてきているように思っているものでございますから、私自身は侵略戦争という言葉を使うのは大変嫌いでございますけれども、海外ではいろいろ言っておられるわけでございます。したがいまして、侵略戦争であったとかないとかいうことの論争をするつもりはございませんけれども、私の気持ちを率直に申し上げさせていただきますと、侵略という言葉を使うのは嫌だし、あの当時日本にはそういう意図はなかった、こう考えておるものでございます。
  25. 渡部行雄

    ○渡部(行)委員 侵略戦争という言葉を好きだとか嫌いだとかで私は言っているのじゃないですよ。あの盧溝橋事件以来――満州国をつくり上げたのは日本じゃないですか。現実の歴史が示しているでしょう。日本の国土からみんな将兵が出ていって中国の国土の中で何千万という中国人を殺りくしたんじゃないですか。これは侵略じゃないですか。こういうことについてもっと、私はあなたは良識ある解釈がされると思うのです。  そしてもう一つは、日本は全員神道ではないのですよ。それぞれ憲法によって宗教の自由、信教の自由が保障されているのです。それをあなたはまるで日本全国が神道によって統一されているような発言をされましたが、その点についてはどうなんでしょうか。
  26. 奥野誠亮

    ○奥野国務大臣 侵略戦争であるないの問題は大東亜戦争に関して言われていることだと私は理解しておるわけでございます。そういう意味合いにおいて、あの戦争、不幸にしてアメリカとイギリスに対して当時は宣戦を布告したものでございまして、日中戦争と言われておりますけれども、昭和十二年の盧溝橋事件から問題が発展していったわけでございますけれども、政府は常に不拡大方針、不拡大方針を指示してまいったことも私からあえて申し上げる必要はないと思うわけでございます。  同時に、私は日本人が全部神道だと申し上げているわけじゃございませんで、神道というものはこういうものだと申し上げたわけでございます。同時に、参りたくない者は信教の自由も保障されているのだからそういう人はお参りにならなくていいじゃありませんかということは新聞記者の席でも申し上げておるわけでございます。殊にキリスト教などは一神教でございますから他の宗教に礼拝することもできないだろう、こう思っておるわけでございます。
  27. 渡部行雄

    ○渡部(行)委員 先ほども言ったように、あなた個人が個人の立場でいろいろ言うなら私は何も口をつける資格はありませんよ。ただ、日本国の大臣だから私は言うのです。あなたは自分が大臣であるという重要な公的な職責を忘れているんじゃありませんか。大体、侵略戦争というものの歴史も否定するし、そしてかつまたA級戦犯というこの事実も否定する、そういう考え方。それはあなたの個人的な一つの自由でしょうけれども、事大臣として自分が行動する際には国民の利益、国民の考え方、そして国家の、いわゆる閣内の意思、そういうものが代表されなければならないのではないでしょうか。閣僚というのは勝手ばらばらな行動をしていいのでしょうか。そうでないからこそ今度外務大臣が中国に渡って大変気まずい思いをされながら、こういう問題については帰国してからよく言っておく、こういう話まで報道されておりますし、これは遺憾であるという言葉さえ出ているわけですよ。それは明らかに国際問題に対してあなたの発言は非常に遺憾な発言であったということを意味しているのではないでしょうか。  そしてあなたは具体的に指摘しろと言われますが、少なくとも大臣は自分の言っていることが仮に正しくとも、仮にそういうふうに感じてもその言葉が相手の国の文化や歴史の中で必ずしも正当に理解されるとは思われないのです。その証拠に毛沢東の批判でさえ中国においてはなかなかできません。最近それが政権がかわってきてちらほら聞くことがありますけれども、しかし、ましてや今の、実際には元首的存在と言っても過言ではないかもしれません鄧小平の名前を出して、そしてこの鄧小平に引きずられるようなことでは困る。どこが日本が引きずられたのですか。どこが引きずり回されたのですか。しかも中国の歴史、中国の習慣、そういうのは名前を出して批判するときには最後のときなんです。それまでは名前を出さないのです。いろいろな比喩によって非常にえんきょくに、間接的に批判してくるのが中国の慣習です。それをまともに日本の大臣が向こうの最高実力者と言われる鄧小平の名前を挙げてそういう批判をするのはおかしいのではないですか。
  28. 奥野誠亮

    ○奥野国務大臣 中国の国民の立場に立って物を言うのなら言わない方がよかったとおっしゃる。それはあるいはわかるかもしれません。私は日本国民の立場に立って日本国民に理解を求めるためにあえて質問に対してお答えをしたわけでございます。侵略戦争と呼ぶ、呼ばないという、これは言葉の使い方でございますから、私、先ほど申し上げましたようにこのことについて論争する意思はございません。また、中国が侵略戦争と呼んでいることもそのとおりだと思います。同時に、戦犯という言葉も、極東国際軍事裁判で戦犯と呼ばれたこともそのとおりだと思います。そのことまで私は否定しておるつもりはございません。しかし、国会においてはその後全会一致でいろいろな立法措置が講じられたことは御承知いただいていると思います。私は、内閣の一員でありましても思想、信条の自由は許されている、こう考えているわけでございまして、率直に私の考え方を述べたわけでございまして、そのことが閣内の一致を乱すとか乱さないとかいう問題にはかかわりはないものだ、こう考えているわけでございます。
  29. 渡部行雄

    ○渡部(行)委員 私は何も思想、信条を曲げろと言っているのではないのです。あなたが大臣の立場として国際関係にぎくしゃくをもたらすようなことをしてもらっては困るということなんです。現実にぎくしゃくしているではないですか。中国では大変失礼な話だといって怒っているではないですか。韓国もそうではないですか。それは韓国に触れなくともあなたの思想の中にはいわゆる右翼的な、そして好戦的な思想が入っていると判断したから韓国まで腹を立てているのではないでしょうか。そしてまた現実に外務大臣が行くやさき、そしてこれから竹下総理も訪中するわけですが、そういう前にタイミングとしても私は政治家のやるべきタイミングではないと思うのですよ。そういうところで一つの問題を醸し出して、そしてそのために外交交渉が非常に難航する、あるいはおもしろくない思いをしながら帰ってこなければならない、こういうことでは困るのではないですか。あなたは一体責任を全然感じませんか。
  30. 奥野誠亮

    ○奥野国務大臣 先ほども答えましたように、私のお話しした中でどの点がいけないのだということをおっしゃっていただきますとわかるのですけれども、私にはわからないものでございますから、いわんや韓国がなぜ反発をするのか一層わからないということを国会でもお答えしてまいったわけでございます。  中国の問題につきましては、殊さら私は中国の悪口を言うつもりはありません。また共産主義の関係者は宗教のことについての理解は薄いと思いますよとお断りをして、それなりの配慮をして申し上げたつもりでございました。  私は、参議院の本会議で社会党の方のお尋ねに対しまして答えさせていただいたのでございますけれども、日中両国は非常に大切な関係にあるわけでございますので、殊に日本国民は中国人民に深い親愛の感を持っているわけでございますので、それだけに日中両国はいたずらに迎合し合うのではなく、いたずらに反発し合うのではなく、考えの違いは議論をして理解を深めていくことこそ真の日中友好の道につながると思っておりますと答えさせていただいたわけでございますけれども、そういうことで、ときには激論になりましても日中両国ができる限りお互いの理解を深める努力をし合うことが大切だ、中国の立場に立って常に物を考えていかなければならないというふうには私は思ってはいないわけでございます。
  31. 渡部行雄

    ○渡部(行)委員 私は中国の立場で物を考えよなんて一言も言ったこともないし、私自身、そんなことを思ったこともありません。  問題は、日本の国がかわいいからこそこの国際場裏の中で波風を起こさないように、そして平和な日本をつくり上げたい、そういう意味であなたが今国際関係に波風を起こしておるから、そういう行為は悪いのではないか、問題があるのではないかと指摘しているのです。具体的に言いなさいって、私は言ったでしょう、一つは。  もう一つは、あなたはA級戦犯を祭っている靖国神社に堂々と国務大臣という肩書で参拝しているのでしょう。これは何を意味するかというその裏側ですよ、問題なのは。軍国主義が日本に復活しつつあるという認識が中国や韓国にあるときに、それを刺激するような大臣の行動が問題じゃないかと私は言っているのです。まだ日本は完全に国際的に信頼されている国家にはなっていないのです。そういう過去の歴史の流れの中から大臣としての行動は当然考えられるべきじゃないでしょうか。だから現実に外務大臣が謝罪しているではないですか。そのことについてはどう思います。
  32. 奥野誠亮

    ○奥野国務大臣 犯罪者でございますと遺族には年金を差し上げられないのでございます。それをあえて絞首刑に処せられた方々の遺族に対しましても年金を差し上げる立法措置を日本国会がとったわけでございます。そういうような事情もございますし、神道は犯罪者であれ何であれ亡くなった方はみんな神と祭るわけでございます。そういう考え方に立って靖国神社で祭られている方々、私は靖国神社にだれを祭ろうかは靖国神社がお決めになることだと考えておるわけでございまして、あえて政治がそれに介入してまいりますことは政教分離の憲法の精神にも反することじゃないかなと常日ごろ考えているものでございます。  そういう意味合いにおいて国のために命をささげた方々につきましてはそれなりに慰霊の誠を尽くす、そして私たちが今後さらに力を尽くしてこの国を発展させていきますとお誓いを立てることは何も悪いことじゃないと私は考えているわけでございます。もちろん違った宗教を持っておられる方々に参拝を強制することはこれまた不適当だと考えるわけでございまして、その参拝している者に対しまして、おまえは公的な立場で参拝したのか私的な立場で参拝したのか、こう聞かれますと、もうそんなことを言うのはやめたらどうですかと申し上げたくなる気持ちは私は御理解いただけると思うのであります。そんなことを言い出したのは敗戦のときに、昭和二十年の十二月に占領軍が命令を出して始まっているのですよ、こう申し上げたのであります。それまでは公的な身分で参拝するとか私的な身分で参拝するとかそんなことは問題になったこともない。私自身素直な気持ちで参っています、そんなこと意識したことはありません、こう申し上げておりました。占領軍の考え方も、米ソ対決が始まりだんだん変わっていったのですと申し上げたのです。だからあの命令を出しておきながら、占領下、昭和二十六年に吉田総理大臣は内閣総理大臣吉田茂と記名して靖国神社にお参りになっているのであります。占領軍は何にもとがめていないのであります。そういう経過も我々よく理解しながら、今後の日本を過ちのないように期していきたい。私なりにやはり政治家として心配すべきことは心配していかなければならぬ、そういう気持ちもございまして、率直にお答えをさせていただいたようなわけでございます。
  33. 渡部行雄

    ○渡部(行)委員 最後に、時間もありますからこれで終わりますが、私はあなたの答弁は非常に支離滅裂だと思いますよ。大体、公式参拝が憲法に違反するか違反しないかということはずっと議論されてきておるとおりでございまして、あなたが公的立場で参拝をしたから問題になるのであって、それは私人として参拝するのはだれも問題にしませんよ。毎日参拝したっていいんです。  それから今度恩給の問題ですが、これは罪人にはくれない。しかし、私はこれは内閣委員会でただしたことがあります。A級戦犯になぜ恩給をくれるのか、これは間違いではないかということで、すぐに外しなさいということを迫ったことがあります。A級戦犯と認めない、認めさせないという方向で流れているからそういうことが問題になるんじゃないですか。  それから信教の自由にしてもそうです。真言宗は真言宗、あるいはキリスト教はキリスト教、それぞれにみんな自分の子供や親族が亡くなった場合祭ってそして霊を慰めているでしょう。そのことにだれが文句を言いますか。ところが、そういう問題を令度は逆に、信教の自由に違反しているんじゃないか、靖国神社参拝に文句をつけるのは違反しているじゃないか。個人的なら構いませんよ。公的だから違反していると言っているのであって、むしろあなたの行動が信教の自由を侵し、憲法の立場を踏みにじっていると私は思うのですが、その点はいかがですか。(発言する者あり)あなたは黙っていなさい。理事のくせして何だ、その態度は。
  34. 奥野誠亮

    ○奥野国務大臣 公的参拝、私的参拝というような問題は、昭和二十年十二月の占領軍の神道指令に発しているわけでございます。この神道指令は占領軍の命令でございますけれども、この中で、公務員は国家公務員であれ地方公務員であれ、公務員の資格でいかなる神社にも参拝してはならない、こういう命令が下ったわけでございまして、その命令の下っている中で、昭和二十六年に吉田内閣総理大臣は内閣総理大臣吉田茂と記名して靖国神社に参拝されているわけでございます。その辺の問題がどこから起こってきたかということを御理解いただきたいと思って、あえて答えたわけでございます。  日本の神道は多神教でございます。やおよろずの神様がいらっしゃいます。しかしキリスト教は一神教でございます。他の宗教にお参りすることはできません。だからしばしば宗教戦争がヨーロッパで行われていることも言うまでもないことだと考えておるわけでございます。仏教も多神教でございますし神道もそうでございまして、私は一神教の方に靖国神社にお参りしろと言ったわけでもございませんし、また神道はすべて亡くなれば神様でございますので素直に参ってしかるべきだ、こうも思っておるわけでございます。  いずれにいたしましても、私はあなたとは考え方はかなり違うわけでございまして、あなたの考え方はあなたの考え方として私はあえて批判する意思はございません。しかし、私にもまた私なりの考え方があるんだということは御理解をいただいておきたいと思います。
  35. 渡部行雄

    ○渡部(行)委員 時間がありませんからこの程度で終わります。きょうは大変ありがとうございました。私もこれで矛をおさめたわけでございませんから、これからもひとつよろしくお願いします。  それでは次に、大蔵大臣に引き続いてお伺いいたします。時間がありませんので、今税制改革が問題になっておりますが、これをもっと哲学的な立場で、なぜ国民の中で議論をしないのか、私は非常に不思議でならないのです。シャウプ勧告というものがあって日本がシャウプ税制でやってきたけれども、今日までの日本の税制史というものをよく検討してみると、シャウプ税制を実際に完全に行うという姿勢ではなくてこれの崩壊を図ってきた。つまり、この租税特別措置とかその他の制度の導入によってシャウプ税制の崩壊を図ってきた歴史ではないかと思うのです。その結果がこのような不公平税制、もうこれ以上続けることのできないところまで矛盾が拡大したと思うのです。そういうことを考えると、この税の公平、公正あるいは正確さ、そういうものについてどう考えているのか。または担税能力というこの担税力というものをどういう立場でとらえているのか、そういう点についてはいかがですか。
  36. 宮澤喜一

    ○宮澤国務大臣 昭和二十四年にシャウプ博士一行が来られまして、非常に広い範囲にわたって調査をされ検討されてシャウプ勧告がなされました。それは立派な仕事であったと思います。また、その基本になります考え方は政府によって実行に移されその多くのものは今日まで残っております。しかしまた、その後日本は何ぴとも予想しなかったような成長を遂げてまいりましたので、昭和二十四年の日本は十年たてば変わっておった、二十年たてばまた変わっておった、三十年たてばもっと変わっておる。これは自明のことでございますが、それに従いまして租税特別措置法等を設けたりあるいはシャウプ勧告の一部を、実施をしたものを途中で取りやめたりいろいろな経緯はございました。いろいろな経緯はございましたが、やはり今日の我が国の税制の基本というのはあのときに定められたと考えてよろしいのではないかと思います。  それで負担能力、担税能力のお話もございましたが、国民の担税能力は昭和二十四年に比べますと格段に大きくなっておりますから、最初の十何年あるいは二十何年間かの間には何度か減税も行いまして、それでも我が国の財政はそれに耐えてまいったようなことでございます。今日国民の担税力はさらに大きくなっておりますが、そうかと申しましてこのシャウプ税制が定めました所得税の累進あるいは法人税の負担の水準というものは実はかなり高いものになっている。それは所得が毎年これだけ上がりますのに、それに従いましてその累進の刻みあるいは負担水準をその都度変えてまいりませんから当然にそうなるわけでありまして、この点は今日の直接税は我が国の個人、法人に対して過重な負担を負わせておる、国際的に見ましてもそういうことは言えると思います。他方で国民全体の負担能力がふえてまいっておりますから、それはやはり消費税のような形で広く薄くもっと負担をしてもらってもいいのではないかというふうに考えておるわけでございます。
  37. 渡部行雄

    ○渡部(行)委員 あと時間が余りありませんので、この問題は私は本当は徹底的に議論するつもりで来たのですが、これに余り深入りすると、とてもこれは抜け出すことができなくなるような感じもしますので、これはまたいつか機会を見て議論をしたいと思います。  今この税制、所得税の十二段階を五段階に直すことによって五〇%以上今まで納税していた人の金額はどのくらいになりますか。
  38. 瀧島義光

    ○瀧島政府委員 御質問の趣旨がちょっとつかみかねたのでございますが、恐縮でございますが……。
  39. 渡部行雄

    ○渡部(行)委員 いわゆる五〇%までに今度抑えるわけでしょう、累進課税を。それを今までは七〇%までやっていたわけでしょう。そうすると、今度はその分二〇%の税金がかからなくなるわけだね。その分の全体の徴収額はどのくらいになるのかということ。
  40. 瀧島義光

    ○瀧島政府委員 お答えいたします。  昨年九月の税制改正によりまして、委員指摘の最高税率は、実は六〇に下がっております。これを今後どう改めていくのか、あるいはいかないのか、今後の問題でございまして、最高税率を昨年の二月に国会に御提案し、廃案になりましたあの案におきましては、最終的には五〇に下げるということになっておりました。  今手元に数字がございませんが、最高税率それ自体を六〇から五〇に下げるということによりまして減収が生じますが、最高税率を下げれば、それに伴いましてそれより下の方の税率もそれとのバランスをとりながら直していく、つまり全体としての税率構造の改正ということになりますので、その点だけを下げて減税額が幾らになるのかという計算は、今手元に持っておりません。
  41. 渡部行雄

    ○渡部(行)委員 私が言いたいのは、つまり担税力のある者ほど減税されて、担税力のない者にそれがどんどんと負担させられていく、つまり大型間接税などが導入されると、これはむしろ逆進性であるというふうに考えてよいと思うのですよ。そうすると、税の公正という立場と担税力という立場、この二つをどう調和させるかというのが問題じゃないか。この辺の問題を国民に納得させるように説明しなければなるまいということを言っているわけです。  それから、大臣に最後にお伺いいたします。  一九八六年十月三十一日ベーカー財務長官と宮澤蔵相の間で会談され、合意された問題がありますね。これはグループ・オブ・ツー、いわゆるG2ということですが、国際経済研究所長でカーター政権の財務次官補を務めたC・フレッド・バーグステンという人が非常に高く評価されているわけですね。G7とかG5というようなものも大事だが、このG2というものは今、日米関係の問題処理に非常に重要である、こういうことをある本に論文として載せているわけです。  それで、宮澤大臣は、この問題を今後継続しながら、今、日米間に横たわっている懸案事項の処理にまずもって具体的な、仮に公式でなくともそういうものを続けながら、今後日米間の問題解決に努力する御意思があるかどうか、これが第一点。  第二点は、この予算の使い方です。  あなたはかつて外務大臣をされ、在外公館の様子はだれが知るよりも知っておられると思うのです。しかし、この財政支出を見ると、今円高のこの時期こそ在外公館の財産を国有化すべきじゃないかと私は思うのですよ。ところが、大したことをされていないわけです。依然として日本の在外公館の現状というのは、外国のいわゆるフランス、西ドイツ、イギリス等と比べて問題にならない。こういうことを思うと、日本が経済大国と言われるにふさわしい在外公館をつくるべきじゃないか。この二点について最後にお伺いいたします。
  42. 宮澤喜一

    ○宮澤国務大臣 一昨年の十月三十一日に私とベーカー長官との間で出しました声明につきまして、フレッド・バーグステン氏の論評を御引用になったわけでございますが、いわゆる変動相場というものが御承知のようないろいろな不安要因、あるいは場合によりまして好ましくない結果をも生んでおるといういろいろな批評が長年ございます中で、何とかこれをもっと安定する方法はないかということは、多くの経済学者あるいは実務家が考えてきたところでありまして、バーグステン氏もその一人でございます。  十月三十一日の両国の共同声明によりまして、この変動相場をお互いの協力によって安定させていこう、そのような合意が生まれたことは変動相場を将来考える上で非常に意味のあることである、したがってそれはその後のルーブル合意あるいはサミットの合意になっているそのもとであった、というのがバーグステン氏の主張するところであると理解をいたしております。  そういう意味では、この変動相場制を今後とも安定的に運営してまいりますためには、二国間だけでなく少なくとも先進七カ国の間で政策協調並びに市場における共同行動が、もし必要ならば求められるという全体の合意が今日生まれておりますことは、変動相場制のために喜ぶべきことだというふうに考えておりまして、そのような努力は今後日米ばかりでなく七カ国の間で続けてまいりたい、我が国としてもそのように考えております。  次に、在外公館のお話でございますが、これはまことに同感でございます。  前回、昭和五十一年ごろで不況のときでございましたが、やはり何とか在外公館をできるだけ借りておるものを買うとか、取得をするとかいう努力をいたしました。今回もまた円高になっておりますから、できるだけそういう努力をいたしたい。ただ、今回の場合はいかにも予算上円の方に実は制約がございまして、それで思うとおりに十分にはできておりませんけれども、おっしゃいますように、この際、先のことも考えまして、財政事情もございますが、できるだけ在外公館の取得、施設の充実をいたしてまいりたい、さように考えております。
  43. 渡部行雄

    ○渡部(行)委員 以上で終わります。どうもありがとうございました。
  44. 野中英二

  45. 新村勝雄

    新村委員 大臣にお伺いいたします。  税制は、言うまでもなく内政の上で最大の問題であろうと思いますし、このように国際化をされてまいりますと、単なる内政の問題だけではなくて、対外的にもやはり日本の税制が大きな意味を持つ時代になっていると思います。  そこで、まだ具体的な政府の案も示されておりませんけれども、大臣は、今税制改革を断行しよう、おやりになろうという決意をお持ちですか。
  46. 宮澤喜一

    ○宮澤国務大臣 先ほど渡部委員にも申し上げたところでございましたが、シャウプ税制以来四十年近くたっておりまして、抜本的な改革を必要とする、また、将来を展望いたしますと十数年先に高齢化社会の到来がもう確実になっておる、両方の点から考えまして、この際、将来を展望して抜本改正をさせていただきたいというふうに考えております。
  47. 新村勝雄

    新村委員 抜本改正の中心は、やはり今までの税体系を根本的に変えていく、そういうものを含んでおるようであります。要するに、大型間接税、新型間接税あるいは消費税と言っても内容は同じだと思いますけれども、そういう今まで日本にない新しい税体系を導入されるということであります。  この問題については、今まで歴代の政府が常にといいますか、ずっと継続的に取り組んでこられた、あるいは取り上げられたわけでありますけれども、その間に大型間接税あるいは消費税、新しい税体系、新しい税を導入することについての考え方が必ずしも一貫していないというふうに、我我はそういう印象を持っておるわけでありまして、かつて大平さんがこれを企図されたときは、その主たる目的は財政再建だというふうにおっしゃったと思います。それから、中曽根前首相は所得税、法人税を減税する減税財源として大型間接税を導入するのだというふうに言われたと思います。それから、現在の政府あるいは大臣がこういう大改革をするについて、それはどういう目的でやるのか。基本的な方針についてはまだ御明示がないようでありますけれども、そういうふうに過去の内閣によって考え方が一貫しないという印象があるわけでありますけれども、大臣はどうお考えですか。
  48. 宮澤喜一

    ○宮澤国務大臣 大平内閣が御提案をいたしました際に、ただいま御指摘のような説明を申し上げたことは事実でございます。また、事実当時財政がそのような状況にございました。しかし、これは国民の入れるところとならず、また、国会が五十四年の十二月に決議をされまして、そのような考え方には問題がある、少なくともまずいわば財政の節約、合理化、行財政の改革をして、民間のように政府も減量経営をすることが先決である、そういう国会の御決議がございました。それはまことにそのとおりであったと政府も考えざるを得ませんで、その後行財政改革が御承知のように今日まで進行したわけでございます。それから間もなく十年でございますが、そういう経緯がございまして、財政再建のための税制改正ということは、国会のそのような御決議のもとに、政府はまず行財政改革に取り組んだという経緯であったと存じます。  次に、中曽根内閣のときに、直接税、所得税、法人税等々の減税を必要とする、その財源は、そういう発想がありました。その発想は今日でもないわけではございまぜん。財政事情、歳入に多少の余裕はございますものの、赤字公債を発行していることに変わりはございませんから、ネットの減税をこの際大きく実現する状況にはないわけでございます。したがって、そういう要素は今日もないわけではございません。  ただ、この際申し上げておりますことは、これからが政府の考え方を述べよ、現政府の今の考え方を述べよということでございますから、やはり一つは、殊に所得税には重税感がある、法人税も国際的には少し高過ぎる水準にある、したがってこれは何とかしなければならない。そこからは、その財源をどうするかという問題が当然あるわけでございますが、同時に間接税そのものが、いわゆる個別間接税、物品税でやってまいりましたから、もうこれでは実はもたなくなっている。それ自身にいろいろなゆがみがありますことは御承知のとおりでございます。  他方で、二十一世紀を展望いたしますと、いわば高齢化が進みまして、現在に比べますと今より半分の若い人がほとんど二倍に近い年寄りをしょわなければならないということになってまいるわけでございますから、そうなった場合に、それを若い人の所得税で負担をしてもらうということは到底可能なことではないということもあり、かたがた、これだけ国民の生活水準あるいは所得水準も高くなり、かつ、我が国は世界的に最もそれが均等化している国でございますから、そのような来るべき高齢化社会の負担は広く薄く国民に負担をしてもらうことが可能である。ということは、いわば何かの間接税の形で負担をしてもらうことが可能であるし、望ましいのではないか。それによりまして、個別間接税のゆがみも直すことができますし、また、重過ぎると思われます所得税、法人税の軽減もできる。  大体そのような構想のもとに、所得、消費、資産、バランスのとれた抜本的な税制改正をいたしたいというのがただいまの政府の考え方でございます。
  49. 新村勝雄

    新村委員 そうしますと、今政府あるいは大臣が意図されておる税制改革は税制論あるいは税体系論ということであるのか、あるいは財源論であるのか財政論であるのかということですけれども、今の大臣のお話では両方にかかっているようには伺っておりますが、このどちらにウエートを置いておやりになるのですか。
  50. 宮澤喜一

    ○宮澤国務大臣 どちらかといえば、前者にウエートを置いて考えておると申し上げるべきでございましょう。ただ、その結果として、所得税、法人税等々を減税のしっ放しでございますと、今の財政状態では、赤字国債を発行しているようなことでございますから、財政がもちません。したがいまして、その減税分はいわば補てんをしておかなければならないという問題は、それはあるわけでございますが、問題を変えて申しますならば、何かの事情で今の税制のままでいいと仮にいたしましたら、財源的にはそれはやっていけないかといえば、私は必ずしもそんなことはない、ただ、実は今の税制ではいけないという問題がございますので、それで先ほどのようなことを申し上げたわけでございますから、新しい財源を求めるために税制改正を、抜本改革を考えておるというそれが主たる理由であるということはございません。むしろ御指摘の前者であるというふうに御理解をいただきたいと思います。
  51. 新村勝雄

    新村委員 大臣は政治家でありますから、国民に対して何とか耳ざわりのいいことをおっしゃりたいということはあると思いますね。しかし、現在は国民負担が六十三年度三六・六%くらいだと思いますね。ところが、これは大臣ではないと思いますけれども、政府の別の筋では、近い将来、十年あるいは十五年後であろうと思いますけれども、国民負担が五〇%ぐらいになるだろうという試算もあるわけです。  ですから、仮に五〇%というと、今アメリカを除いて先進工業諸国の水準だと思いますけれども、そういう水準にどうしても日本がなるということになれば、それは必然的に増税を意味するのだと思いますが、そういう将来の日本の財政をにらみながら今回の改革をやるのか、あるいは現在の税体系のゆがみを直していくのかということでありますけれども、やはり国民は政府の意図なりあるいは将来の日本の財政の展望なりをできるだけ知りたいという気持ちがあると思うのです。単なる耳ざわりのいい言葉だけではなくて、日本の財政は将来こうなっていくのだ、これは不可避的にこうなっていくのだというものがあると思うのです。そういったものを国民は知りたいと思っていると思います。  それから、現在の税財政改革がどういうものを意図しているのかということについても、これは国民としては率直なところを知りたいわけですね。そういった点で、政府あるいは大臣あるいは総理大臣も過去において何か、一時的に国民をだますとは言いませんけれども、何とか当たりさわりのないことを言って、一方では税制改革をやって財源を獲得していく、そういう形がないわけではないわけです。ですから、もう少し政府は率直に国民に語りかける、あるいは国会に対してそういう態度が必要なんではないかというふうに感ずるわけでありますけれども、大臣はいかがですか。
  52. 宮澤喜一

    ○宮澤国務大臣 ただいまの御指摘は、二十一世紀になれば高齢化社会になる云々ということを申しながら、したがって税制改革を必要とするという御説明をしながら二十一世紀の姿というものが計数的にもう一つ明確でないではないか、こういうことに関するお尋ねでありまして、私は、そのお尋ねは基本的にごもっともな御質問であるというふうに考えます。  ただ、大変に正直を申しまして、政府の経済見通し、あるいは長期経済計画というものが、ただいま作業をいたしておりますものもたかだか五年でございます。その五年間というものが、実は過去の経験では、なかなか正確に予知し得ないというのがほとんどの長期計画の経験でございます。したがいまして、二十一世紀にわたっての国の経済の長期計画あるいは長期見通しを得るということは実際上不可能である。それは、やってやれないことはないという御議論はあろうと思いますけれども、その正確度については極めて低いというふうに考えざるを得ませんので、そのようなものを国がつくるということの意味合いが実は問われなければなりません。したがいまして、政府はそういうものを持っていないということでございます。  問題はそこから出てきますわけで、そういうものがございませんから、二十一世紀における国民負担がどのようになるかということについての推計の根拠を得ることができないというのが現実の実情でございます。  そのような観点から、過般本院の予算委員会におきまして、しかし、そうはいっても多少機械的であっても何か推計ができないのかという、いわば資料要求の形での御質問がございまして、それにつきまして厚生省、大蔵省が自治省も合わせまして共同で作業をいたしましたものを御提出いたしました。これは注にございますとおり、いろいろな前提を、いわば機械的に現在の現状を引き伸ばした性質のものでございます。並びに国民所得につきましては、昭和八十五年度ぐらいまでの推計はますます困難でございますから、一応幾つかの仮置きをいたして計算をしてみました。そういう注をつけまして国会に御提出申し上げましたのが、先ほどお話しになられました数字でございます。昭和六十三年度の国民負担が三六・六であるというところはもう問題のないところでございますが、この御提出いたしました仮定試算によりますと、昭和七十五年度には仮に四一とかその辺になるのではないか。昭和八十五年度には四五から四六になるのではないか。重ねて申しますが、これは一種の仮定計算でございますが、そのような計数を御提出いたしました。  しかしこの際、かねて臨調等々の答申の中で、直接にではございませんが、しばしば言われておりますことは、この国民負担が五〇%に達するようなことは日本の社会の活性化のためになるべく避ける必要があるということを言われておるわけでございますが、この試算によりますと四五ないし四六というふうになっております。それが税と社会保障の負担とにどのように分かれるかということはいわんや明確でない部分でございますが、結局のところ、今後我が国の経済がどのような推移をたどるかということが一つ。他方で、今後国民が社会保障について高負担高給付を求めるか、あるいは給付も負担も比較的高くない方を求めるかということは、文字どおり国民の選択の問題でございますので、ただいま政府としてはそれを有権的に決められない種類の問題だ、こういう事情がございます。  幾らか説明がましくなったわけでございますけれども、それが実は現状でございまして、今の政府といたしましては、あるいは私個人とむしろ申し上げるべきでしょうか、この社会保障、税を合わせました国民負担が五〇%を超える、あるいは五〇%に達するということは、やはり我が国の全体の活性化のためになるべく避けたいことである、私個人はそのように考えております。
  53. 新村勝雄

    新村委員 大改革をやられるわけですから、それに対する基本的な考え方はいずれ示されると思いますし、それを明確にお示しになって、その基本的な原則についてまず与野党が徹底的な論議をするということでないといけないと思うのですけれども、ぜひ改革についての基本的な考え方を政府の統一見解として明確に、国会にも国民にも示していただきたいわけであります。それが前提になって税の議論が先に出るのではないかと思います。  次に、税制改革が今準備されておりますけれども、その中で我々の目から見ていろいろ疑問があるわけでありますが、その一つは税制改革あるいは税財政の責任体制の問題ですね。  今政府・自民党がおやりになっているのは、一方には総理の諮問機関として政府税調がある。そして与党である自民党の中には自民党税調がある。それから大蔵省があるということですけれども、この三つの関係、現在の日本の議院内閣制という基本的な制度あるいは憲法体制、民主主義といったものを踏まえた場合に、この三つの立場がどういう性格を持っており、そしてどういう関連があるのか。そしてこの三つがあることによって、日本の民主主義なり議院内閣制なりがどういうふうに補強されるのか、あるいはマイナス要因になるのか。そこらの点がいろいろ疑問があるわけでありますけれども、まずその点の三つの関係、そして責任体制がどこにあるのかということについて伺いたいと思います。
  54. 宮澤喜一

    ○宮澤国務大臣 これは現実の制度と、それが運用されます政治、行政の面と問題は二つあるわけでございます。  申し上げるまでもないことでございますが、政府税制調査会は法令に基づいて設置されております。国税並びに地方税について学識経験者が総理大臣の諮問に応じて審議、答申をされるということでございます。したがいまして、これは総理府の所管で、諮問は総理大臣がされます。今回の場合も、昨年の秋に総理大臣から諮問がなされまして、ただいまその答申について、先般中間報告がなされたということでございますが、これは結局税というのが国民生活に非常に大きな関係を持ちますので、政府だけでなく学識経験者あるいは各界の方々の御意見をぜひいただきたいというのが設置の趣旨でございますし、また今日そのように機能していただいておりまして、極めて精力的に今回も中間答申にこぎつけられたところでございます。  そこで、私どもの党内には、これはどこの党でも同じことでございますけれども、政策審議の機関がございます。税は特に問題が大きゅうございますから特別に税制調査会を政策審議の機関の中に置いておりまして、ここは長年私どもの党内の人々が、かなりの専門家もおられまして、いわば自分の選挙区を通じて国民が税に対して持っておられるいろいろな考え方、要望等を反映して税制改正に当たる、こういう機関でございますから、これは政党としては当然のそのような仕組みでございます。  私ども大蔵省はその行政府の中にありまして、国税を担当しておるわけでございますが、直接には税制調査会の答申を受けてそれをできるだけ実現を図る。しかし、その場合に、政党政治でございますから党の方にいろいろ強い意見がございます。したがって、税制調査会のお考えを自民党の方にも伝えながら、最終的に政府が国会に法律案を提出いたしますときには党の了承を得て提出いたしますのが政府・与党間の慣行でございますので、最終的に国会に御提案いたしますものにつきましては党、具体的には税制調査会ということになるわけでございますが、その了承を得るという慣行を踏んでおります。したがいまして、結果といたしましては、政府税調から答申がありそれを党の方でもいろいろに審議をされて、最終的にはそれらのものを反映した形で党の了承を得て私どもが国会に政府案を御提出する、そういう仕組みに、これはもう御承知のことでございますが、なっております。現実の動き方といたしましては、したがいまして政府税調におかれましても党の税調のいろいろ考え方等々は大蔵省の者がしょっちゅう連絡をいたしております。また、政府税調の考え方も党の方にはしょっちゅう連絡をいたしておりまして、その中から政府税調、党税調の合意のあるところに従って政府が最終的な案をつくり、国会に御審議をお願いするために提出をする、そういう仕組みになっております。
  55. 新村勝雄

    新村委員 自民党の中に立派な人物がいらっしゃるということについては疑いを持ちませんし、また政府税調の専門家の立派な見識もそういう意味では疑いを持つわけではありませんけれども、責任体制ということになればやはり内閣は国会に対して責任を持つ、大蔵大臣ももちろん内閣の一員として国会に対して責任を持つわけでありますから、やはり大臣が主体になって税制改革案なり議案なりを提案するということが筋なわけですよね。ところが、そういう筋はあるのでしょうけれども、今の状況を我々から見ておりますと、何か政府税調あるいは自民党税調が大きくクローズアップされておって、失礼ながら大蔵大臣あるいは大蔵省はその税調の意見を調整するあるいは税調の意見を受けてすべて行動しておるというような印象を受けるわけでありますけれども、そうではなくて、やはり大臣が先頭に立ってほかの税調なり、与党はこれは与党でありますから尊重しなければいけないのでしょうけれども、その意見を総合的に調整をして主体的にリードし行動していくということ、そういうふうになさっているのかもしれませんけれども、国民にはそう見えないわけですよ。ですから、これでは責任の所在がどうも明確でない、ぼやけてくるという印象があるわけでありますけれども、そういう点についてはどうでしょうか。
  56. 宮澤喜一

    ○宮澤国務大臣 そういう印象をお持ちになっておられる向きがあるかもしれないと思います。  ただ、政府といたしましては、これだけ大事なことはやはり政府税制調査会のような学識経験者の御意見をぜひ諮問をして求めることが適当であると考えておりますので、そのようにいたしておりまして、その答申につきましては基本的にはできるだけ尊重するということで諮問をいたしておるわけでございます。今回も、やがて最終答申がございますればそのようにいたしたいと思っております。  党との関連は、結局政党政治における党と政府との関係一般ということになってまいるわけでございますが、そこはいわばあうんの呼吸とでも申しますか、両方でよく相談をしながら運んでおる、こういうことでございます。しかし、最終的に国会に対しまして責任を持っておりますのはもとより政府でございます。御提出いたしますものにつきましては、これはもう政府以外に責任のある者はございませんで、私どもの責任でさせていただかなければならないし、過去もそうさせていただいてまいりました。
  57. 新村勝雄

    新村委員 次に、今の大臣あるいは政府が意図されておる税制改革の中核といいますか最も重要な点は、やはり一般消費税あるいは大型間接税、要するに一般的な間接税を導入しようということなわけですね。これが中核というかすべてであると言ってもいいくらい大きな意味を持っていると思うのですけれども、この問題について予算委員会で総理が六つの懸念ということを表明されたわけですが、実は確かにそういう懸念があるわけで、この懸念を竹下さんがみずから表明をされたということについては、その率直さというか、ある意味では誠実さということは評価をされていいのじゃないかと思いますけれども、この六つの懸念は確かに国民が持っておる懸念の大体をカバーしていると思いますし、また今回の税制改革の懸念のすべてであると言ってもいいと思うのですね。そこで大臣は、竹下さんが表明されたこの六つの懸念について全く同感であるとお考えですか。
  58. 宮澤喜一

    ○宮澤国務大臣 総理大臣の答弁の中に、逆進的な税体系となり所得再配分機能を弱めるのではないかということを初めとして、六つ目は、物価を引き上げ、インフレが避けられないのではないか等々六つの問題を提出されまして、それに対して政府はこたえなければならない、こう言っておられるわけでございます。これらの懸念及びそれに対して政府はこたえなければならないという点について私は同様に考えております。
  59. 新村勝雄

    新村委員 この懸念にこたえなければならないということは同感だ、それからまた大型間接税がこの六つの懸念を持っておる、基本的にこういう欠点を持っておる、長所もあるでしょうけれども欠点を持っているということについても同感でいらっしゃるわけですか。そうしますと、この六つの懸念について大臣はどういうふうに克服されようとしておるのかということでありますが、時間がありませんから一々全部について詳しくお伺いする時間はありませんけれども、一の逆進性があり所得再配分の機能を弱めるということでありますが、これはだれでも真っ先に感ずることです。言うまでもなく、税制というのは、所得の再配分をする機能が非常に重要な機能としてあるわけでありますから、その機能を弱めるあるいは害するということになりますと、これをクリアするそれに対する施策がなければならないし、税体系全体の中にその問題を解決する他の税収あるいは他の施策が当然必要なはずであります。そういう点で、大臣はこれをクリアされるためのどういう施策をお持ちでありますか。
  60. 宮澤喜一

    ○宮澤国務大臣 間接税自身は累進構造になっておりませんから、それが累進的でないということは、これはそれ自身もう定義上そうであるということは否定できないところであると思います。  ただ、問題は、政府が御提案しようとしておりますのは、すべての税制の中で広い間接税だけがただ一つの税であるわけではもとよりございませんで、同時に所得税、法人税あるいは相続税等等、いろいろな税制の中でのこの間接税ということでございますから、逆進的であるかどうかということは税制全体を見て判断をすべきものである、これは当然のことであろうと存じます。その場合に、所得税ではなお相当強い累進性を残しておる等々、また資産課税もございますから、私は、政府が今度御提案いたそうとしておりますもの、税制全体としてはこの非難は当たらないのではないか、まだ御提案をいたさないわけでございますけれども、少なくともそういうものを御提案しなければならないと考えております。  それからもう一つ、これは少し余計なことになりますが、近代、殊に先進工業国家、我が国のようなあるいはイギリスでもアメリカでもややそういう傾向が見られますが、余りに高い累進的な税制というものは社会の活性化をむしろそぐのではないかという考え方がこのごろかなり広くございます。それは、すなわち全体が大衆消費社会になってきたという先進国の共通の一種の特色であろうと思いますけれども、垂直的な公平というものもあるけれども、むしろ水平的な公平というものがやはりあるのではないか。高額所得者の方が消費が大きければそれだけたくさんの消費税を払ってもらう、昼飯を食うにしても高い昼飯を食う人は――ちょっと昼飯というのは適当でない例かもしれませんけれども、一定の比率でございますから、それだけ高い税金を納めてもらう、そうでない人も安い物を食ってそれだけ安い税金を納めてもらう、それはそれでいいのではないかという考え方もかなり広まってきておることも事実と思います。  それからもう一つは、税制の問題ではございませんで、そのように得られました税収が歳出の面でどのように使われておるか、社会保障等々にどのように使われておるかということによりましても、全体のいわゆる所得の再配分ということに国の財政がどれだけ寄与しておるかということは、歳入面ばかりでなく歳出面もあわせて検討せられるべき問題であると考えておりますので、政府がやがて御提案をしたいと考えております税制全体は、そのような視野から、逆進的なものにならないようにいたしてまいらなければならないと思っておるところでございます。
  61. 新村勝雄

    新村委員 一般消費税が逆進性を持つということは疑いのないところでありますね。これは明らかに短所だと思いますけれども、今、はしなくも大臣が言及されたのですが、ほかの税収で補完し合う、全体の税体系の中で公平さを保っていくんだということはそのとおりだと思います。  そこで、これも横道にそれますが、今大臣の言われた相続税ということでありますけれども、相続税についても、今政府としては相続税全体として率を下げようというお考えがあるようですね。一方では大型間接税を実施することによって逆進性を促進するということですね。そうしますと、それを補完する、それと逆の効果を持つ税をあるいは税率を考えていかなければいけないと思うのです。大型間接税を実施するということは逆進性でありますから、その逆進性に対して別の要素ということになれば、相続税はむしろ強化をしなければいけないのではないかという気がしますけれどもね。一番下の基礎控除は別としても、世代間の公平を保つということになれば、逆進性によって所得の多い人が有利になるわけでありますけれども、そういう現象を和らげるためには、相続税は税率をむしろ強化すべきではないかという感じがするわけでありますが、いかがでしょうか。  一説によりますと、間接税をかなり大規模にといいますか、直間比率の中で間接税のウエートをかなり多くすることも許されるかもしれない、その場合には相続税を強化すべきだ、こういう理屈が一部の人に行われておりますけれども、そういったことを考えた場合に、大型間接税を導入するとすれば、そうして一方では相続税を軽減するということは理屈に合わないような気がしますが、いかがでしょうか。
  62. 宮澤喜一

    ○宮澤国務大臣 それも私は大切な意味を持っておるお尋ねだと思って伺っております。OECDなどの分類によりますと、我が国の直間の比率が極端に直の方に高いということは、よその国との比較で、アメリカ以外ではもう明白でございますが、どうも我が国の資産課税の比率はほぼ先進国並みというふうにOECDあたりの分析では出ておりまして、あるいはその辺がいいところではないかという感じがいたしておるのでございます。  今回、相続税について政府税調等々が考えておられますのは、いかにも相続財産の中で土地を中心とした財産価格が暴騰してしまいまして、いわば配偶者が後に残されまして安定した生活ができないような状況が、殊に大都会地には起こりつつある。このことは相続税の本来意図しているところではあるまいということは、この土地問題との関連でしばしば国会でも御議論になっておるところでございます。かたがた、今の相続税は大体昭和五十年に定めまして、それがほとんど動いておりませんから、その間の物価あるいは諸価格の、殊に土地はそうでございますけれども、変動については、今回調整をいたしませんと先ほどのような問題にこたえられないということがございますので、そういう観点から相続税の見直しはさせていただきたい。それによりまして相続税全体が租税全体の中に持っておる機能を弱めるといったようなことは私どもの意図しているところではございませんで、ただいま申しました緊急のいろいろな問題にこたえたいというのが主として相続税改正の方向でございます。
  63. 新村勝雄

    新村委員 相続税についてはいろいろ問題があるし、現在の運営そのものにも大変問題があるし、税率だけではなくて問題があると思いますけれども、時間がありませんので、別の機会にしたいと思います。  次に、今総理府の世論調査等によりましても、税に対する不公平感が所得税が重いということに集中していることは周知のとおりでありますけれども、所得税といいましても内容がいろいろあるのですね。所得税のうちで、勤労性の所得が一つあります。それから資産性の所得があります。それから、資産性の所得の中にも譲渡所得と資産から発生する所得とがあるわけでありますから、これは別であります。それから、勤労性の所得の中でも、雇用者、被用者、いわゆる給与所得に対する所得、それから非給与所得、自営業者に対する所得があるわけですね。ですから、こういう所得の中でも性格が、大別しても四つぐらいになりますから、この四つの所得に対する課税、それから課税対象の捕捉率というものが相当みんな違うという条件があります。こういう中で所得税の公平化を図るために、これは大変難しいと思いますし、この中にはクロヨンというものも入っておりますから難しいと思いますけれども、この所得税を下げるということ、これは全体としてはもちろん必要でありますが、この所得税の中の大きく分けて四つ、細かく分ければもっとあると思います、性質別に分けた各別の所得に対する所得税の不公平さ、これがかなりひどいわけですよね。これに対する是正をどう大臣はお考えになっておりますか。
  64. 宮澤喜一

    ○宮澤国務大臣 それは、結局税制そのものの制度の問題と、それから執行の問題と両方あるわけでございますが、執行の問題から申しますれば、これはいわゆる実査を大いに励行する、足で調べて回るという、その励行が大事だということになってまいりますし、あるいは記帳の指導、青色申告とかいうようなこともそういうことの助けになるわけでございます。これは今後ともやってまいらなければなりませんが、制度の問題といたしましては、例えば配偶者特別控除でありますとかみなし法人につきまして、給与と認められる額を青天井でなく一定のところで抑えるとかいったようなことを制度の面でも改正をしてまいらなければなりません。それによりまして、いわば源泉で取られます給与所得とそれ以外の営業所得等々との捕捉の差を制度上できるだけ直せるだけ直していこう、こういうことでございます。しかし、それにも実際は限度がございますから、やはり執行上できるだけ実査率を高めていく、あるいは記帳、帳簿の指導をしてそういう整備をしていっていただくといったようなことが大切であろうと思います。
  65. 新村勝雄

    新村委員 次の問題でありますけれども、税制というのは、これは繰り返しますが、内政上の最大の課題であると同時に、今日の国際化の時代では国際的な意味でも大変重要な政策だと思いますけれども、そういう超重要案件だと思いますが、これについての立案から決定までの過程において、どうも国会が十分にというか、国会の権能というか権威が軽んぜられているというような気がするわけですよね。政府税調があり、自民党税調があり、大蔵で原案をつくり、提案をする、そして国会、政府・与党たる自民党さんは別ですけれども、国会そのものの十分な機能がそこで果たされていないといううらみがあると思うのですね。アメリカあたりでは、税法の重要な面についても議員立法みたいな形でやることが多いそうです。それは、議会の能力なりあるいは一人一人の議員の能力なりそういったものにもあるのでしょうけれども、やはり国権の最高機関としての国会の機能をこういう極めて重要な課題の審議については、もっとその審議の過程で国会の機能を十分発揮できるような、そういう運用、運営の仕方が必要ではないかと思うのですね。  ですから、先ほど大臣が言われたように、政府税調等内外朝野の知恵を集めて、衆知を集めてと言われましたけれども、その衆知を集めるのは、国会そのものが中心になって審議をして、国会が朝野の知恵を集めるという形にならなければ本当の意味の国民的な審議にはならないのではないか、また、国会が、あるいは政府もそうですけれども、国民に対して本当に責任を果たすゆえんではないというふうに考えるわけです。ですから、大臣は衆議院議員であるし、国会の信任を得て大臣をなさっておるわけでありますから、議院内閣制の建前からいっても国会にもっと活躍の場を与える、審議の場を与えるということでなければいけないと思うのですが、これが必ずしもそういう形にいっていないといううらみがあります。税法のような重要案件については、政府・自民党も完全な審議の保障をする、途中で審議の打ち切りなんということは絶対にやらない、半年でも一年でも集中審議をずっと続けるというような環境をつくっていく、国民の前で、開かれた国民の前で徹底的に税制論議を国会の中でやる。政府税調あるいは自民党税調でもいいのですけれども、それは前段のものであるし、これは理論的に言えば政府税調にしても自民党税調にしても国会に、あるいは国民に責任を負う立場ではないわけですから、国民、国会に責任を負うのはやはり大臣であるし、内閣であるわけですから、そういう意味での国会運営というか国政の運営というか、そういう点で何か国会の審議が形骸化されているという気がするわけでありますけれども、大臣はいかがお考えですか。
  66. 宮澤喜一

    ○宮澤国務大臣 国会の御運営につきまして私どもがかれこれ申し上げるべきでないことはもとよりでございますけれども、昨年以来の経緯にかんがみますと、ただいま新村委員が御指摘になられましたようなことはごもっともな御発言であると存じます。それにつきましては政府としてもいろいろ反省すべきことがあると存じます。昨年来の経緯からあるいは各党間の、共産党はお入りになられませんでしたが、税制改革協議会であるとか、あるいは各党の国対委員長会談、政策担当者会議であるとか、いろいろな場がございますのも、ただいま言われましたような意味での国会活動を側面から補充するということであろうかと存じます。  いずれにいたしましても、まさに国会こそは、沿革的に見ましても税金のことから国会というものが生まれたというふうに歴史は示しております。このような税制の抜本改革につきましては十分国会において御審議をお願いをいたし、政府もまた御審議に誠実にこたえてまいらなければならないと思っております。
  67. 新村勝雄

    新村委員 以上で終わります。  大臣にお願いしますけれども、やはり革命的とも言える新しい税制の導入、これについてはあくまで拙速を避けて、十分国民の合意あるいは国会の合意を得ておやりになるようにお願いしたいと思います。  それから、警察庁おいでになっておりますけれども、時間がありませんので、午後に回したいと思います。済みませんでした。
  68. 野中英二

    野中委員長 午後零時四十分から委員会を再開することとし、この際、休憩いたします。     午前十一時五十分休憩      ────◇─────     午後零時四十九分開議
  69. 野中英二

    野中委員長 休憩前に引き続き会議を開きます。  質疑を続行いたします。渋沢利久君。
  70. 渋沢利久

    ○渋沢委員 時間が非常に短いものですから、簡潔にお尋ねをいたします。率直な御答弁をお願いしたいと思います。  大蔵大臣、政府税調の中間答申が出たわけですけれども、本答申はいつごろと想定されておるわけですか。
  71. 宮澤喜一

    ○宮澤国務大臣 実はこの点はまだ調査会自身でも決めておられないようでございまして、したがって、私ども今そのことを承知いたしておりません。
  72. 渋沢利久

    ○渋沢委員 中間答申という政府税調の出し方というのは、まあ一言で言えば異例なことで、めったにないことのように思うのでありますが、これはどういうわけでこうなったのか、それは会長に聞けばいいのでしょうけれども、事務方の大蔵省の御判断もあるわけで、午前中大蔵大臣もさまざま税制改革についてのスケジュールをお述べになっておられたが、なぜ中間答申なのかということを、まずお尋ねしたい。
  73. 尾崎護

    ○尾崎政府委員 ただいまいただいております答申は中間答申ということになっておりますが、今回の税制調査会の取り組み方、確かに御指摘ございましたように例年と変わった形になっておりまして、一番最初に基本課題というのをおまとめになって、それで地方公聴会を開き、その次には素案をつくりまして、それからまた地方公聴会を開き、それから中間答申を作成するという手順を踏まれているわけでございます。  確かに例年と比べますと異例のことかもしれませんが、税制調査会の運び方全体がいつもの年と変わっているところがございまして、中間答申と名づけられましたのは、まだ最終的に一つに絞り込まれていないような問題もございますし、定性的な記述にとどまって、必ずしも定量的に明らかに示されていないというようなところもございますので、それを中間答申という形で明らかにされたものというように理解いたしております。
  74. 渋沢利久

    ○渋沢委員 いろいろあったのでしょうが、それにしてもなぜ中間答申という形で決めて出さなければならなかったかというのがわからないのです。いろいろ問題の詰めが残っておれば、時間をかけて本答申をお出しになればいいんであって、そうすると最初から、今言われたように基本課題、素案、中間答申、本答申、こういう段取りが、事務方でも確認して、そのスケジュールでやっておる、こういうことですか。  そうすると、私はそこで大臣に聞きたいわけなんですが、本答申というのはどの時期に想定されておるのかな。同時に、なぜ問題を残したまま中間答申という出し方をこの時期にしなければならないのかな、これがちょっとわからないですね。
  75. 尾崎護

    ○尾崎政府委員 基本課題にいたしましても素案にいたしましても、実は政府税調が審議を始めました当初からそういうスケジュールが決まっていたというわけではございませんで、御審議を進めます中でそういう御意見が出てまいりまして、皆さんの御意見がそろってそういう手順になったということでございます。中間答申で全体像は明らかにされていると思いますが、これをさらに最終答申という形で、例えばより具体的な数字を含めて明らかにもう一度その答申を出すということも当然考えられるところでございますが、先ほど大臣から御答弁ございましたように、そこのスケジュールにつきましては、まだ政府の税制調査会でも決めている段階でないわけでございます。全体に議論をしながら、そこで世の中にその議論の内容を順次明らかにしていくという手順が今回とられておりまして、内容についての議論と同様に、その手順についてもお話し合いで順次進められているというのが、今回の政府税制調査会の運営の仕方でございます。
  76. 渋沢利久

    ○渋沢委員 本答申が出されないままで、このまま党税調の作業に入って大綱の決定、新聞に伝えられるところによれば二十日ごろをめどに、こういう言われ方をしておりますが、そういうこともあり得るのですね。  これは先ほど来言うように、中間答申ではなしに――中間答申があればあるで、何か一定の必要な討議かプログラムがあって、しかる後に残余の問題の整理をして最終答申、それを受けて、大臣の先ほどの説明を聞くまでもなく、党税調、政府の法律案、こういう流れは慣習としてやってきた、こうくどいように説明をされておりましたが、そういうことが頭にしみ込んでおるものですから尋ねるのですが、やはりわからない。本答申、最終答申というものを受けてから党税調が動くという従来の流れとは違った形で作業が展開している、しようとしているように、さまざま伝えられております。  そうすると、本答申、最終答申なしにいく、こういうこともあり得るということですか。
  77. 尾崎護

    ○尾崎政府委員 従来からも政府税調と党税調の審議は並行的に進められる方がむしろ通常でございまして、政府税調の結論が出てからそれを受けて自民党税調の審議が行われるという方がむしろ、ちょっと私はそういう例を知らないわけでございますけれども、既にこの中間答申が出る前、昨年末から自民党税調は審議を進められているわけでございますので、それは最終答申を待ってというお話ではないのではないかというように存じます。
  78. 渋沢利久

    ○渋沢委員 大臣、そこで私はお尋ねするんだが、その中間答申というものが特に出て、党の税調とのすり合わせを、今の審議官説明のようにそれもあり得ることで、あって悪いことじゃないが、特に大変念入りな、基本課題だ、素案だ、いや一次、二次公聴会だと、確かに形は今までにないリズムで税調の展開がある。そういうことの中で中間答申が出まして、五月末にはこれも作業としては終わるというリズムかな。中間答申があって、最終答申の間に何をやるのかな。何のための中間答申かな。党税調、党の側との腹合わせを、いわば、これは乱暴な言い方に聞こえるかもしれぬが、密室――よく私ども、どこかから密室、密室ということをしばしば言われるものだから、同じ次元で密室という言葉を余り使いたくはないが、しかし、事実上、今の審議官の言われるように、政府税調は中間答申、党税調の作業も始まる。どこかですり合わせというような、それはいわば密室協議なんだが、そういうこともあるだろうが、そういった上で、やるとすれば中間答申が出たところでいよいよ本格的に国民の声を聞く。ここで、気配りの何とか政治と大変売っていらっしゃるんだから、あなたの内閣は。気配りの内閣だと、こうおっしゃるんだが、それで、まあそれらしく公聴会をやってきた。案のないところで公聴会をやってきたのね。基本課題というのは、あなた、ページにして一ページか、紙二枚でしょう。それで公聴会でもあるまいがと思いましたがね。まあ、おやりになった。そして、いよいよ中間答申、これは紙にして五十枚、六万余字を超えるまとまったものを中間答申としてお出しになったんだから、ここで大臣、気配りの何とかと言うなら、本格的な公聴会が始まるのかな、初めてここで本気で国民の声を聞くという作業に入る、そのための中間答申かな、こう私は思ったんだが、それは違いますか。そういうスケジュールは大蔵省にはないのですか、あるのですか。
  79. 宮澤喜一

    ○宮澤国務大臣 私はこういうふうに理解をしておるのでございますが、昨年のいきさつもございましたものですから、税制調査会としては非常に慎重に何度か地方にも行かれて、いわば白紙の状態でまず物を聞かれたり、次にはある程度の考えを持って聞かれたり、いろいろなことをされまして中間答申に至ったわけでございますが、それでなぜ中間なのかというお尋ねは、恐らく昨年の経緯もございますから、できるだけ慎重に各方面の動向を見定めたい。各方面の中には、私はやはり自民党の党の税調というものも政府税調としては各方面の一つの有力な考え方として考えておられるであろうと思うのであります。したがいまして、あの中間答申にはまだ数字が入っていないところ、控除等々につきましても定数的には言っておられません。それは、いわば片っ方の間接税の方との関連もございますし、いろいろな全体のことを見ながら、やはり所得税等々の最終的な構造を定数的にも、いずれ言われなければならないことでございますけれども、それは党の税調等にあらわれる意見も十分に聞いてからでないといかぬという御配慮ではないか。それはけさほど新村委員に申し上げましたように、いろいろなにがございますものですから……(渋沢委員「公聴会をやるのかどうか」と呼ぶ)いや、地方のモニターの話は多分聞かれるのであろうと思いますが、もう公聴会という予定はしておられないと思います。
  80. 渋沢利久

    ○渋沢委員 だから、党税調とのすり合わせや協議はおかしいと言っているわけじゃ全くないので、それは党や政府との関係においてあってしかるべきことで、そういうことを言っているわけじゃないのです。  ただ、常識的には、国民各層の議論に耐える中身が出て、それで意見を聞くというのが公聴会。国民の声を聞くというなら常識なのです。今まで、率直に言って討議に耐えるほどの中身でないものをお出しになって、盛んに国民の声を聞くという形をおとりになったのだが、中間答申が出たという段階で、まさにその気配りの、国民の声を聞く、これだけ重大な税制改正、だれよりも直接影響を受ける国民各層の声を聞くときだとすれば、まさに中間答申が出てからのことであって、これは大蔵省事務方として当然そのスケジュールがなければいかぬ。本格的にローカルな地方へ出向いて、前におやりになったようなものをここで本格的におやりになるべきもの、こう考えているのです。そう考えるのが普通ではないでしょうか。大臣、それはおやりにならない、そういう計画はないというのはちょっとおかしいのではないでしょうか。後は、そうすると、あの答申が出てからは、主として聞くのは党の税調。国民の声とおっしゃるけれども、一番大事な国民の声を本気で聞こうと言うなら公聴会をおやりになるのが筋じゃないですか。どうお考えですか。
  81. 宮澤喜一

    ○宮澤国務大臣 その点は考えようでございますけれども、お互い、渋沢委員におかれましても、また私どももそうでございますけれども、国民を代表して国会に参っております。でありますから、自民党の中の党の税調というものは、そういう意味では私どもの同僚たちが国民から受けておるいろいろな声を税調の審議という形で反映するわけでございますので、それはある意味でやはり国民の意見を聞いておるということかと存じます。もとより、それから後、国会で御審議いただくのは民意に聞くという一番終局的な正式の形でございますけれども、党の税調というような形も、やはりある意味で国民の意見を聞くという場になっておるのではないかと思います。
  82. 渋沢利久

    ○渋沢委員 それは拡大解釈すれば党の意見――党の意見というのは、党に集まっている国民から選ばれた国会議員を含む党であり、したがってその民意を聞くことになるという、そんな物の言い方は、宮澤さん、それはおかしいですよ、拡大解釈すればおっしゃるとおりだが。法律案として出される前にさまざまな国民各層の意見を聞くということもあり、それから法律案になってからでも、まさに議会の信託にゆだねられてから後も、これは我が国だけでなく、内外ともに民主主義が進んでいる国ほど、たくさんの国民の声を、公述を受けて聞き取っておる。とりわけ税制改革というような直接国民各層に利害関係の大きい課題については、いずれの国もそういう配慮をしておるということは天下の常識だ。党の意見を聞くことも議員の話を聞くことも、それ自体が国民の民意を問うことだと言うなら、何で公聴会をそんなにおやりになったか。逆に言えば、あれだけ公聴会に力をお入れになったならなぜもっと案がきちんとしたところ、つまり今中間答申が出たところでこの素案で討議を求めるということをしなかったのかと思うのです。今の大臣の御答弁は言い逃がれにしてもちょっとひど過ぎるお話かなと私、思います、率直に申し上げて。  それから、特に一つ聞いておきたいのは、今までおやりになった過去二回にわたる公聴会が非常に乱暴というか無責任というか、評判も非常に悪い。それだけに私、先ほど来言うように中間答申こそ今おやりになったらどうなのか、だから中間なのでしょう、こういうふうに思っておるわけなのですね。それはおやりにならない。そうすると、過去おやりになったのは、案もなしにしかも限定した公述人を決めて、それで広く国民の声を十分に聞くなどというやり方で、公聴会をやっているとは言えないですね。たくさん時間がないから言いませんけれども、例えば地方で非常に民主的に各層のさまざまな、政府にとっても都合が悪いかもしれないさまざまな意見も十分に聞く、そういう公正なやり方で地方の公聴会がやられているとは全く思わない。地方で公述の申し入れをいたしたり傍聴して発言の申し入れをいたしたりさまざましておりますが、具体的な事例がたくさんあります。ところが、そういうものはほとんど受け付けられない。地方の財務局は、これは大蔵省で決めておることでとやかく言えないというような扱い方で受け付けておりません。どういう公述人の選定基準があるか示してもおらない。例えば、あるところでは間接税導入論、大賛成論をぶち上げた税理士さんの公述人は元大阪の国税局徴収部長だ。これは税理士という資格だ、専門家という資格で堂々と意見を述べられる。それは、そういう方もあっていいのかもしれないが、例えばこのように公聴会自体が、まじめに国民各層の、特に批判的な意見を聞くというような謙虚な姿勢がないということが幾つもあるようであります。あるところでは大学教授が女性だということで主婦という肩書で出ておる。大学の先生ですよ。非常に無理があるのですね、今度の公聴会。こんなことは大臣自身が知っておられることじゃないと思うが、今度の公聴会の中でさまざま取材をしてみると非常に今までにない無理がある。竹下政治の気配りというのは宮澤蔵相の手元に移しかえてくるとこういうことになるのかな。一番気配り、国民の声を大事にというようなことを言葉の上で言いながら、公聴会はろくに案がまとまってない、紙一枚の素案の中でさあ御意見をと言って派手ににぎやかに宣伝をしておやりになるが、しかし公述人についてはさまざま地方の業界その他団体がぜひ意見を述べたいと言っても受け付けないというような扱いをしております。  ちょっと参考までに、これは大臣に聞くまでもないんだが、担当の方でいい。例えばスポーツの選手、私もファンの一人だから、江川さんが公述人になったことを別にとやかく言うつもりはない。しかし参考までに聞くが、あの方が特に税制問題に詳しいというふうに思ってない。しかし、この間の納税のあれを見るとスポーツ界のナンバーワンであったりして、大蔵省には大変協力している立場であることはわかるが、例えばああいう人を選ぶというのは何か特別な基準、選定基準、どういう基準でお選びになるのですか。今度の、それからあわせて地方の公述人の選び方なんというのはどういうやり方、尺度でおやりになっていますか。簡単でいいからポイントのところだけちょっと。
  83. 尾崎護

    ○尾崎政府委員 公聴会で御意見を発表していただきました方々の選定の方法でございますが、具体的には、税調の事務当局におきまして公聴会開催地の財務局などを通じて地元の経済界とか労働界それから地方公共団体の関係者の方々と御相談をしてもらいまして、幅広く御意見を聞いた上で候補者を選定し、それから御本人に当たりまして、その御内諾をいただいた方に対して税制調査会の会長からお願いをするという手続を踏んでおります。  二回公聴会が行われたわけでございますが、最近行われた公聴会を例にとって申し上げますと、御承知のように後半五カ所で公聴会をやったわけでございますけれども、それはいずれも各地における主要都市でございました。そこで、同一の構成でお願いしようということで人数は八人ということにいたしました。その構成といたしましては、例えば製造業あるいは流通業とかいう業種、それから大企業、中小企業等の企業規模、それから地域性、その土地におきます、例えば農業地域であれば農業ですとかその地の地場産業とか、そういうものに配慮いたしまして、主として生産や流通などに携わっている方三名お願いするということにいたしました。それから労働界、主婦、サラリーマン、そういう方は主として消費者サイド代表のお立場と考えられるわけでございますが、その分野から三名お願いする。それから学者、文化人などの方から特にこのようなことで御意見をお持ちの方を選びまして二名お願いするということで、各地八名ずつお願いをするということにいたしました。  したがいまして、御質問の江川さんなどもそういう地元におけるいろいろな御相談の中から適当な方として選び出されてきて、御本人も御承諾いただき、意見発表者として御意見をいただいたという次第でございます。
  84. 渋沢利久

    ○渋沢委員 重箱の隅をつつくような議論をするつもりはありませんけれども、私が調べた地方公聴会での対応というものは、いわばマスコミ受けの配慮というようなものはあったりするが、それ以外に本当の意味で一番関係が深い業者団体その他の意見を十分に聞くという配慮で行われているというようには全く思えない。現実に中央では地方で組んだとおっしゃるが、地方では実際は玄関払いという実例を幾つも私どもは承知をいたしております。このことで大蔵の局長にこのさなかに私ども社会党の山口書記長が余りにもひど過ぎますよと言って厳重に注意を申し入れたという事実もある。私も同行しているからわかっているが、そういう事実もある。そのくらい今度の公聴会はひどいやり方、ポーズばかり。しかも、意見を述べるための素材というのは素案があるという程度のことである。実にポーズ、形だけの見せかけの公聴会と言われてもしようのないようなやり方をやっておる。公述人の選定も数が八人とか何とか今あなたはおっしゃったけれども、そういうものを文書できちんと出せるような、一貫して決められるような基準があるのですか。その都度その都度思いつきでやっているのですか。それともきちんとした基準があるのですか。私は、当然大蔵省に公聴会についての一定の物差しがあるのは当たり前だと思っている。きのう、きょうのことじゃないのですからと言って求めましたけれども、文書で示すようなものございませんというにべもないお返事、実態はそんなことですか。もしそうなら、例えば国民の声を聞くなどと言葉でおっしゃるけれども、実際には事務方はまじめに取り組んだ姿勢があるというふうにも思えないし、そういう公聴会だとは思えないわけです。非常に批判が出てくるのはという姿勢に問題があると思うのです。  公述人選定基準というのは何か明確にあるのですか、やはりないのですか。
  85. 尾崎護

    ○尾崎政府委員 基準ということについての意味合いでございますが、先ほど申しましたように、例えば全体の人数であるとかそれから大体どの分野から何人ぐらいお願いするというような意味での基準というものはございますが、具体的にどういう方をお願いするかにつきましては、その地域地域の特性もございますし御事情もございますから、地元の経済界、労働界それから地方公共団体等と御相談をして具体的に候補者を決めていったということでございます。そして、一番最初に基本課題の段階で御意見を承り、それをもとに素材に進み、素材についての御意見を承って中間答申に進んだということでございまして、基本課題の段階でいただいた御意見が素材に生かされ、素材の段階でいただいた御意見がさらにそれに加わりまして中間答申の中に取り入れられているという審議の進め方を今回なさったという意味でございます。
  86. 渋沢利久

    ○渋沢委員 専門家相手ですからいろいろなことを言いませんが、アメリカなどで公聴会、国民の民意を重要法案について聞くというシステムはかなりきめ細かくやられておると思います。傍聴についても、聞きたい、見たいという人に開かれたシステムになっておる。公述したいという者については、たしかいわゆるレーガン税制と言われるものも大統領案が出てから本格的な公聴活動というものに取り組んで、公述を希望した者全員に公述させておる。そのために三十何日、一カ月を超える期間を費やして公聴会をやっているでしょう。長きにわたって国民各層の暮らしを縛るシステム、税制ですから、やはりそれだけ念入りな国民の声を聞くというものを法律にする前も法律になってからもやるのが、決まった段階で国民の中に深い理解をしみ込ませた、そういう経過と背景の中で国民が理解する法律、国民が理解する税制が生まれてくる、こういう認識に立って、急がば回れという手続を非常に大事にしておる。そのためにさまざまな傍聴や公述や公聴会のあり方等について、物を言いたい人が十分に物の言える、そういう場づくりに神経を使っておる。それが民主主義というものなのです。そういう意味では全く場当たりで後ろ向きだなと思うのです。東京でやった場合など、私も東京の下町の議員だからよくわかるが、何で荒川を選んだのかと思うのです。あそこは家具の業者や何か物品税を納める業者のたくさんいるところだからそれで選んだのか、東京なら日比谷でやったらいいじゃないかと思ったり、そういうこともある。細かいことで言うと非常に変に手の込み過ぎた手法が、今度の地方公聴会への取り組みで、間違っても、政府税調あるいは大蔵省事務方の取り組みの中で、少なくとも今の段階で、国民の声を念入りに聞いて、その声を、世論を積み上げた、そういう答申作業をやっているなんということはおっしゃらない方がいいと思うのです。むしろ私は、最初のことに戻るが、中間答申が出た段階でこそ、あとは党とのすり合わせでそれでもう何とかだということでなしに、ここでこそ改めて本格的な国民の声を聞くという作業をやるべきだと思うのです。  これは大蔵大臣、率直に御意見を言ってください。そんな必要は全くないと、今までのことはいいです、これからどうするか、そういう処置をこれはぜひとるべきだと思うのです。これが常識ではないかと思うのです。大蔵大臣の常識はいかがなものか。
  87. 宮澤喜一

    ○宮澤国務大臣 実際に公聴会に臨まれました税調の委員の方々のお話を私は伺いましたのですが、大変に意味があった、と申しますのは、結論として賛成、反対ということもさることながら、どういうことを国民が考えておられるのかという話の中から自分たちが問題を検討するのに非常に参考になるものがたくさんあったということを言っておられました。また、実際そうであったのだろう、それが最終的には中間答申になって出てまいっておる。でございますから、正直を申しましてこういう税法でございますから、その減税の部分については恐らく反対をされる方は少ない、しかし新税とか増税の部分についてなかなか賛成と言われる方はこれもそうそうはきっとないのでございます。そのことはだれが考えましても普通想像のできることでございますから、したがって賛成、反対ということを伺うと申しますよりは、こういう問題についてどういう考え方をしていらっしゃるかということを聞けて大変に参考になったと税調の委員の言っていらっしゃいますことはそのとおりであろうと私は思います。したがいまして、それが中間答申になって出てまいったということでございますから、この中間答申以後は地方にお願いいたしましたモニターからまた御意見を伺ったりすればよろしいのではないかと思っております。
  88. 渋沢利久

    ○渋沢委員 それは意見が全く合わないのだが、時間がないのでこの議論はきょうはこれまでにせざるを得ない。  あと四分ですね。一つ伺っておきます。この中間答申の一部にこういう部分がある。「今回の税制改革は全体としての租税負担率の上昇を目指すことなく行われるものであって、税制のゆがみを是正する点に主眼があり、しかも、国・地方とも巨額の借入金残高を抱え極めて厳しい状況にあることにかんがみ、改革に伴う税収の変動によって国及び地方団体の財政運営に基本的に影響を与えることのないよう配慮して処理することが適当である。」これはどう読むんですか、自民党の税調で基本方針、ちょっと宙づりになったようですが、この中にもこれは非常に明確に「この税制改革の実施に当たっては、国及び地方団体の財政運営に支障が生じないように措置する。」こうなっておる。全く同じ文章で出されておるわけですけれども、これは要するに時差はあるにしても、今回の税制改正を通して、具体的に言えば増減税ゼロというこの枠組みでやるのが望ましい、こういう読み方になるのですか。
  89. 尾崎護

    ○尾崎政府委員 今回の税制改革が税制、税の制度それ自体についての見直しを目的としているわけでございまして、現在の経済社会とそれから税の制度、つまり国の必要な財源を税という形で国民が負担し合う、その負担の分け合いの仕方が必ずしも現在の社会経済としっくり合っていないところがあるのではないかというそこを見直していこうというところが主眼でございまして、全体としての税負担率の話と離れまして、仕組みそれ自体を考え直してみたいというところにポイントがございます。したがいまして、税負担といたしましては特に増税を目指すとかいうことではなくて、仕組みそのものに焦点を合わしていこうということがそのような表現となってあらわれているわけでございます。
  90. 渋沢利久

    ○渋沢委員 まだその中身に立ち入っていろいろ議論する段階でも立場でもありませんから終わりますが、最後に一分残っているので一言……  地方自治体に対する国庫補助金カットの暫定措置について、これは六十三年度までと我々は理解をしているわけでありますが、六十四年度以降も引き続いてカットを継続するという宮澤蔵相の方針がさまざま伝えられておる。地方は大変ですよ。最近急速にさまざまなデータが地方財政のこのことの影響、悪い影響を物語っておりますので、この点について、さようなことがあってはならないという立場で最後大蔵大臣の意見を伺っておきたいと思います。
  91. 宮澤喜一

    ○宮澤国務大臣 本件は、決定するに当たりまして関係各省庁の間で検討会というものを設けまして、かなり長いこと検討してもらいました。また、その結果をそのまま閣僚会議で採用いたしたわけでございますが、その言われるところは、やはりいろいろ問題があるのでとりあえず三年間ということにして、その間に地方と中央の行財政の配分等々についてさらに検討を重ねるべきである、こういうことでございました。したがいまして、措置そのものは三年間でございます。その三年が切れますので、できるだけ早く各省庁におきましてその後の措置をどうするかということを検討をいたしたい、こういうふうに考えておりまして、できるだけ早く各省庁の間でこの問題についての検討をいたしたい、こう考えておるところでございます。
  92. 渋沢利久

    ○渋沢委員 終わります。
  93. 野中英二

    野中委員長 小川国彦君。
  94. 小川国彦

    小川(国)委員 私は、大蔵省の金融行政の中で銀行局の行っております銀行指導のあり方について、大臣及び担当の皆さんに御質問したいというふうに思うわけです。  その中で、先般来当委員会でも二度ほど、私が国会の委員会の中で取り上げさせていただいたわけでございますが、第一相互銀行が最上恒産グループに対して行っている過剰融資の問題につきまして、現在、大蔵省検査部の方では代表取締役四人に対する事情聴取といいますか面接と言っておりますが、そういうことを開始している、こういうことを伺っているわけでございます。新聞紙上でも国会でも最上恒産グループに対する過剰融資というのは非常に大きな問題になっておりまして、この際すっきり説明がなされるべきではないか、こういうふうに思っているわけでございます。特にこの六十三年、従来八月に行う大蔵省検査部の検査が繰り上げて行われるという異例の事態ということで注目をされているわけでございますが、この点について、面接といいますか事情聴取というのはどういう形で今行われているのか、その点を御説明願えたらと思います。
  95. 平澤貞昭

    ○平澤政府委員 第一相銀に対しましては、従来から定期的に検査を実施してきたところでございます。今般は四月四日から検査に入りまして、現在実施中でございます。ただ、具体的な検査内容あるいは検査に基づく指導の実態等につきましては、従来からも具体的に御答弁申し上げることは差し控えさせていただいているわけでございますけれども、当局といたしましては、やはり金融機関の公共性ということを十分に念頭に置きながら、検査等の過程で金融機関の経営の実態を把握いたしまして、問題があればその是正を求めるとともに、改善状況につきましても引き続き報告を求める等厳しく指導しておるところでございます。
  96. 小川国彦

    小川(国)委員 従来ですと定期的には毎年八月に行われているようでございますが、今般、これが三カ月繰り上げて行われるということは那辺に事情があったのでございましょうか。
  97. 平澤貞昭

    ○平澤政府委員 相互銀行等に対します検査につきましては、平均いたしますと二年前後に一度行っているわけでございます。  今回の第一相互の場合を見てみますと、前回やりましてからたしか一年八カ月程度たっておりまして、それまでの過去の検査の周期を見ますと、先ほど申し上げましたように二年程度でございまして、その他の相互銀行等の場合も、早い場合はやはり一年八カ月ぐらいたって着手する場合もございますし、遅い場合ですと二年三カ月とか四カ月たってやるという場合もあるわけでございまして、その周期につきましてはいろいろな事情を勘案してやっているわけでございます。その事情その他につきましては、通例の場合は、例えば検査官の人繰りの問題もございますし、それから、その後の金融情勢の変化等々も考えながら検査の日程を決めているところでございます。  ただ、具体的に第一相互の場合、若干通例より早いと言えなくもないわけでございますが、じゃなぜ早くしたかという点等々につきましては、やはり先ほど申し上げましたように、個別の具体的な中身に関係することもあろうかと思いますので、その辺につきましては、申し上げることは御容赦いただきたいと存じます。
  98. 小川国彦

    小川(国)委員 前回私が最上恒産に対しての過剰融資について六十二年十一月十九日の土地特別委員会で質問をさせていただいたときに、局長さんからの御答弁では、「一般論として申し上げますと、通達あるいは法令違反等の事態が明らかになりました場合には、その後それを是正させるために厳しく指導しているということでございます。」こういう御答弁があったわけでございます。この私の質問当時、六十一年八月で五百五十六億円の過剰融資があった、こういう事実を私は指摘させていただいたわけでありますが、その後、六十二年の十二月現在でこの過剰融資はもう七百二十三億円に及んでいた、そして、ピーク時には七百六十億円にも上ったとも言われておりますし、現在は約八百億円に上っているとも言われているわけでございます。  こういう状況を見ますと、この第一相互銀行の最上恒産グループに対する貸し出しというものは、私ども、国会の質疑の経過の時点において既に八百億近いような状況というものがあり、そういう状況にあったとするならば、こういう異常なふえ方、なぜ膨れ上がっているのか、こういうことに対するその大蔵省検査というのは一体どういうふうになっておったのか、この点に非常に疑問を感ずるわけであります。検査のあり方、検査の姿勢、これはどういうふうに取り組まれてきているのか、その点をひとつ伺いたいと思います。
  99. 平澤貞昭

    ○平澤政府委員 銀行の検査を行います場合には、検査官は常に厳正な態度で検査を行っているわけでございまして、その意味では、いかなる金融機関に対しても例外なくそういうことで行っているわけでございます。したがいまして、現在第一相互について検査中でございますけれども、それもそういう中で検査が行われるということでございます。  前回、たしか土地問題の特別委員会だったと思いますが、委員からいろいろ御質問もあり、御指摘もあったわけでございます。そのような委員のお話につきましても、我々としては十分念頭に置きながら検査官としても検査をやっているものと考えている次第でございます。
  100. 小川国彦

    小川(国)委員 その後この実態が明らかになってくるにつれまして、第一相互の最上恒産グループに対する貸し付けは、同銀行の貸付金全体の約一三%を占めているというふうに言われているわけであります。また、この会社の借入金の金利分の融資も行っているということも言われているわけであります。そうしますと、この第一相互銀行という一つの銀行の貸付対象として同行の総融資額の約一三%を占めるというのは、かなり大きな比重を持つものと思われるわけです。  そういう中で、この最上恒産が六十三年の三月十六日には、国土法違反ということで東京地検に起訴をされております。さらにまた、六十三年の二月十日付で東京都から、宅建業法違反で免許の取り消し処分を受けているわけであります。こういうことになると、実質的にこの最上恒産の営業というものは完全に行き詰まってきているんじゃないか。そういうことになりますと、この約八百億円と言われる貸付金回収というものは一体できるのかどうか、この焦げついた銀行というものは一体どうなっていくのか。こういう点では、こうした地上げ融資に対する銀行の放漫経営といいますか無責任経営といいますか、こういうものを放置してきた大蔵省の責任も大きいと考えるわけであります。  こういうこれまでの経過をずっと見ますと、わかっていながらここまでずるずるとしてしまった、こういう大蔵省の対応というものについてはやはり決断というものが必要なのではないか、こういう銀行経営に当たる首脳部のあり方に対して、ずるずるとこうした過剰融資拡大していくという事態に歯どめをかけなければならない大蔵省の行政指導という立場を考えてみますと、この辺でやはり、前回の局長答弁ではございませんが、違反等の事態が明らかな場合には是正に厳しく指導するといった精神が貫かれていかなければならないのではないか、こういうふうに思うわけでございますが、この点についてはどのようなお考えを持っていらっしゃるか、承りたいと存じます。
  101. 平澤貞昭

    ○平澤政府委員 先ほども申し上げましたように、今、検査を実施している最中でございます。  一般論といたしまして、検査の結果問題があります場合には、これにつきましては、法令等の規定に従いまして行政当局として厳正に対処してまいったわけでございまして、これも一般論としてしか申し上げられませんが、検査の結果問題があれば、今後もそういうことで対処してまいりたいと考えているわけでございます。
  102. 小川国彦

    小川(国)委員 この第一相互銀行の最上恒産グループに対する貸し付けと似通った問題として、先般、二つの新聞に金融グループに対する貸し付けの問題が取り上げられました。これは誠商グループに対する過剰融資問題ということになっておりまして、一つは五月一日の読売新聞で、八十七億の限度外融資が社長の直接指示で行われたということで報じられておりますし、五月七日の朝日新聞では、過剰融資先が複数で、最上以外に東京都内の金融会社グループに対しても百億円前後の過剰融資がなされた、こういう報道がなされているわけであります。  このような事件の報道に対してどのような見解を持ち、どのような指導を行われているのでございましょうか。
  103. 平澤貞昭

    ○平澤政府委員 今委員から御指摘がございました新聞報道につきましては、我々もその報道を拝見いたしております。ただ、それでは具体的にどういう内容かという点につきましては、こちらからコメントを申し上げることは差し控えさせていただきたいのでございます。  いずれにいたしましても、金融機関が法令あるいは通達の規定に従いまして本来融資すべきものを、そういう法令、通達等に違反しまして過剰な融資を行っているということは問題であるわけでございまして、具体的にそういう事案があれば、これに対しましては行政としても適正な措置をとってまいるということになるわけでございます。
  104. 小川国彦

    小川(国)委員 最上恒産の場合には、十社に分割しての迂回融資がなされていた。今度の誠商グループに対する貸し付けの場合には、二十一社、八個人の名義に分けて、やはり迂回融資と見られる分散融資がなされたのではないか、こういうふうに指摘をされているわけであります。しかも、この融資においては、本来支店とか本店の営業部というところがそれぞれ稟議を出し、窓口になって貸し出されるべきであるのに、債権回収等に当たる本店の管理部が窓口になってこの貸し付けが行われた、こういうことが報じられているわけでありますが、この点はいかがでございますか。
  105. 平澤貞昭

    ○平澤政府委員 今の委員のお話は、やはり一金融機関の個別具体的な問題についてでございますので、それについての行政としての考え方を申し述べることは御容赦いただきたいと存ずる次第でございます。
  106. 小川国彦

    小川(国)委員 共通して指摘されるのは、分散融資、迂回融資こういう形が一つの類型として見られるわけでありますが、一般的に、こういうあり方についてはどのように御判断をなすっておりますか。
  107. 平澤貞昭

    ○平澤政府委員 今お話がございました点につきまして、一般論として、企業グループの中の幾つかの会社等に資金を融通し、実質的にその資金が同一のものに対する融資と認められる場合につきましては、やはり法令、通達の趣旨に照らして十分に実質性その他を検討してみる必要があるわけでございますけれども、仮に実質上そういうものと認定できる場合には、やはりこれは法令違反または通達違反の可能性があるわけでございまして、そういう場合にはそこで規制されております趣旨に従って是正を図るべきものと考えておる次第でございます。
  108. 小川国彦

    小川(国)委員 誠商グループに対する融資については、去年の八月ごろ日銀の考査でもこの点が指摘されていた。しかし、実態は明らかにされないまま推移してきた。この中で二十九に分散された理由というのは、貸し付けを、一件を五億円未満にすると、銀行の中で役員会、いわゆる常務会等の決裁がなしに行える、こういうことで、この融資が一社を除く二十八社においては全部五億円以下という形で行われてきたという実態が伝えられておるわけでございます。  いずれにしましても、実質上法令違反、通達違反が認定できた場合には、そういう法令や通達の趣旨に照らした措置を考えたいという御答弁があったわけでありますが、この法令違反、通達違反に対する法に照らした具体的な措置というものは一体どういうふうなことが考えられるのか、その点をひとつ伺いたいと思うのです。
  109. 平澤貞昭

    ○平澤政府委員 一般的にそのような融資があると認められる場合には、仮に検査等でそういう事態が認識された場合には、検査の公表あるいは示達等でその是正について当該金融機関に指示を行うことが多いわけでございます。  それから、先ほど二年ごとにと申し上げましたが、検査を実施してないその中間期におきましてそういう事態が発見されました場合には、当該金融機関に対しまして、行政上具体的に是正を指導するとともに、その是正につきまして是正計画等を提出させ、以後是正状況について行政上指導監督を行っていくというふうな取り扱いになることが通例でございます。     〔委員長退席、杉山委員長代理着席〕
  110. 小川国彦

    小川(国)委員 最上恒産グループに対する事実関係を振り返ってみますと、ここの過剰融資、異常な融資については、五十九年の定期検査で事実が判明している。それから、六十一年の定期検査でさらに悪化している状態が明らかになってきている。そして六十一年の定期検査でこの状況を見た大蔵省の方では、今度は三カ月ごとに定期報告を求められてきた。そういう状況で今度六十三年の定期検査を迎えるわけでありますが、振り返ってみると、既に五十七年から事実関係が起こってきており、そして六十一年の定期検査以後は三カ月ごとに定期報告を求められてきた、こういうことから見ますと、大蔵省当局においてもこの異常な事態というものは十分把握されてきているのじゃないか。そういうふうに考えますと、今おっしゃられた検査の公表なり、要請状を具体的に出すなり、そういう措置がなされてもよかったのではないか。そういう思い切った措置がなされたならば、こうした過剰融資拡大してくるということに歯どめをかける、問題があったにせよそれが次次と先送りされてくるのじゃなくて、ある時点で歯どめをかけることができたのではないかというふうに思うわけです。  今日の時点において、そういう差し迫っている状況の判断を大蔵省当局はどういうふうにお持ちになっていらっしゃるか。それから大蔵大臣におきましても、こうした検査のあり方、指導のあり方については一体どういうふうにお考えになっているのか、この点も伺いたいと思うわけでございます。
  111. 平澤貞昭

    ○平澤政府委員 現在第一相互につきましては検査中でございますので、通例の場合と同様、その検査の結果を見まして、行政として適切に対処してまいりたいということでございます。
  112. 宮澤喜一

    ○宮澤国務大臣 ただいま御指摘の案件につきましてお答えを申し上げることは差し控えますが、金融機関は、本来法令、通達に沿って適切な業務運営を行うべきものであり、それによって金融機関としての信用を損なうことのないように十分に留意すべきものであります。大蔵省といたしましては、このような考え方に立ちまして検査を常にいたすわけでございますが、検査結果等も踏まえまして、不適正なことがありますと、その個別事情に応じて適切な指導、対応を行ってまいらなければならない、従来もそのようにやってきておりますが、これからもこの原則は変わらないというふうにお考えいただきまして結構でございます。
  113. 小川国彦

    小川(国)委員 先ほどの銀行局長の御答弁の中で、いずれの場合も要請として対処してきたと言われたのでしょうか。そこのところ、ちょっと局長の御答弁のところが不明確だったものですから、もう一遍先ほどの御答弁を繰り返していただきたいと思います。
  114. 平澤貞昭

    ○平澤政府委員 ちょっと具体的な言葉の言い回しにつきましては定かに覚えておりませんが、全体の今のお話の論理の中で申しますと、行政当局として適正に対処してきている、これからも対処してまいりたいということだと存じます。
  115. 小川国彦

    小川(国)委員 適正に対処してきているということであれば、今日までこういう事態が延引して、その中に過剰融資が膨れ上がってくるという事態は起こらなかったのではないか。既に今日、今検査に取り組まれているということでありますが、定期検査で三回目、しかも二回目の定期検査以後は定期報告を三カ月ごとに求めているということであれば、その後の過剰融資の膨れ上がっているものは、当然それを抑えることができたのではないかというふうに私は思うわけですし、こういう放漫とも言うべき銀行経営にチェックをするということは、もっと適切な処理がなされてきて――適切な処理をなすというのであれは、今日までの時点にもう適切な処理というものがなされることが当然あってしかるべきでなかったのか、私はこういうふうに思うわけでございます。そういう意味では、やはり大蔵省の銀行局においても、もうこの辺で検査のあり方、指導のあり方というものをもう少し徹底させる必要があるのじゃないか。そういうことがずるずると引き延ばされてくるということになると、なぜ三カ月ごとの定期報告を行っているのか、定期報告というものは全く有名無実になってしまうのじゃないか、そういうふうに思うわけでございますが、この定期報告を受けてきている形の中で、この定期検査以前に、定期検査を超えても、その時期を外しても適切な処理をする、こういう判断はもう当然あってしかるべきではなかったかという、事実経過に照らして私どもは判断をするわけでございますが、大蔵省当局ではそういう御判断は生まれていないのかどうか、その点はいかがですか。
  116. 平澤貞昭

    ○平澤政府委員 今の委員の御質問は、やはり具体的な答弁をお求めのようでございます。しかし、先ほど来申し上げておりますように、具体的に第一相互についてどうこうということをここで申し上げるわけにはまいりませんので、その点につきましては御容赦いただきたいと存じますが、一般論といたしまして申し上げますと、検査等を行いまして、十分に問題点ありということが明らかな場合には、それにつきまして適正に対処してまいるということでございます。
  117. 小川国彦

    小川(国)委員 さらに私は、こうした問題点の公表の問題について伺いたいと思うわけでございますが、この第一相互における過剰融資、迂回融資、分散融資そういったあり方の事例はこのほかにもほかの銀行、金融機関においてもこういったケースというものがおありになるのかどうか。そういう皆さんの検査なり銀行の指導の中でこうした問題点というものは第一相互に限らず、日本の金融機関、銀行業務の中でこうした懸念とか問題点というものはどのぐらいの件数があるのか、御答弁願えればと思うのですが……。
  118. 平澤貞昭

    ○平澤政府委員 同一人に対します大口融資の問題につきましては、これまでもたびたび御議論があったところでございます。海外におきましてもそういう問題が多々起こってくる事例があるわけでございます。ただ、その中にはいろいろ理由がある場合もございまして、例えば、ほぼ限度いっぱいに貸しております場合に、急に資金需要が起こりまして、これに対して融資をしませんとその企業が倒産等になるというときに、緊急時として貸している場合もございます。過去におきましては商社等にかなりの大口融資をしておりまして、これは当時大口融資規制について現在ほど法令上厳しい規定がないときでございますが、その後きちっとしようということで法令その他で手当てをしたわけでございまして、過渡的に漸次これを減らしていかせるという事例もあるわけでございます。その他、検査等を行いまして、やはり実質的にこれは同一人に対する融資ではないか、その融資をまとめてみるとやはり限度を超えているという事例もないわけではないのでございます。
  119. 小川国彦

    小川(国)委員 私は、最後に大臣と局長に伺いたいと思うのですが、大蔵省の行政指導のあり方として、国税庁などでは脱税事件については公表しているわけですね。この場合は社名や個人名は秘しておりますけれども、しかし、その事件の件数とかそれから具体例とか傾向とか特徴とか、こういうものを非常に具体的に公表している。そういうことは、やはりこういうことはあってはならないという一つの大きな啓蒙というか、そういう意味を持っているのじゃないか、大きな一つの警鐘的な意味を持っているのじゃないかというふうに私は思うわけです。  そういう意味では、やはり大蔵省が行っていく銀行や金融機関に対する検査、指導内容についても、そうした具体的な社名や氏名は秘すにしましても、こうしたあり方に対しての一つの正し方としてこういった銀行の検査、指導内容を公表していくということは当然あってもいいのじゃないか、そういう中でこうした事態が起こらないための予防措置というものも講じられていくのじゃないか、私はこういうふうに考えられるわけでありますが、こうした点について大臣や局長は今後こうした金融指導、銀行指導のあり方、検査、指導のあり方の中で、こうしたものの公表への姿勢とか考え方はどういうふうにお考えになっていらっしゃるかを伺いたいと思います。
  120. 平澤貞昭

    ○平澤政府委員 御存じのように、金融機関というのは大きな金融の流れ、仕組みの中で存在するわけでございまして、仮にどこかで問題が起こりますと、連鎖的にその信用不安が伝わっていく可能性もあるわけでございます。したがって、個別金融機関の具体的な問題点につきまして、仮に公の場でこういう問題があるのだということを公表いたしましたときに、その金融機関に対する信用不安が起こるという可能性もゼロではないわけでございます。戦前におきましても公の場での御発言が金融恐慌の引き金になった事例もあるやに聞いておるわけでございまして、これは非常に大きな事例でございますが、したがって行政当局といたしましては、やはり金融機関は零細な多数の預金者のお金をお預かりしているということもあるわけでございますし、それから、金融機関と取引先との間ではその取引内容が外に明らかにならないという信頼関係に基づいて取引が行われている部分が大部分であるわけでございますし、今申し上げましたようなもろもろのことを考えますと、やはりこういう問題につきましては公の場で言及するのは適当ではないということでこれまでも御答弁を差し控えさせていただいているということでございます。
  121. 宮澤喜一

    ○宮澤国務大臣 ただいま政府委員が申しましたように、信用というものはそういうふうに非常に隠微なものでございますので、その点は大切にしなければならないと思いますが、もとより大蔵省の立場といたしましては、行政は厳正にやってまいらなければならないと思っております。
  122. 小川国彦

    小川(国)委員 これで質問を終わりますが、そういう社会不安とか問題を起こさないために大蔵省は各金融機関に対して二年ごとの定期検査、問題があれば三カ月ごとの定期報告というものを求めておられるわけでありますから、これが徹底して行われればそういう社会不安を起こすような心配はないのじゃないか。むしろ、国税庁の行っているような氏名や社名を伏せてもそういう事例を公表していくことで適切な行政指導ができるのじゃないか。これは今後の大蔵省当局の検討課題としてひとつ御検討願うように要望申し上げて、質問を終わりたいと思います。
  123. 杉山憲夫

    ○杉山委員長代理 小川新一郎君。
  124. 小川新一郎

    小川(新)委員 新型間接税に関するNHKの世論調査についてちょっとお尋ねしておきたいと思います。  NHKは放送法第四十四条二項の規定に「協会は、公衆の要望を知るため、定期的に、科学的な世論調査を行い、且つ、その結果を公表しなければならない。」したがって、世論調査を行っているということでございますが、間違いありませんか。
  125. 團宏明

    ○團説明員 お答えいたします。  放送法四十四条、その第一項に「協会は、」NHKでございますけれども、NHKは「国内放送の放送番組の編集及び放送に当つては、次の各号の定めるところによらなければならない。」ということで、その第一号で「豊かで、かつ、よい放送番組を放送することによって公衆の要望を満たすとともに文化水準の向上に寄与するように、最大の努力を払うこと。」ということがございます。それから二項に「協会は、公衆の要望を知るため、定期的に、科学的な世論調査を行い、且つ、その結果を公表しなければならない。」ということになっております。
  126. 小川新一郎

    小川(新)委員 大蔵省にお尋ねしますが、NHKのこういった国民要望的な重要課題の調査については参考にすることがあるのですか。
  127. 尾崎護

    ○尾崎政府委員 新聞、雑誌それから放送機関等が世論調査などをいたしました結果につきましては、一般的な情報としていろいろな意味で参考にさせてはいただいておりますけれども、NHKの調査だから特別にそれを参考にするというわけではございません。
  128. 小川新一郎

    小川(新)委員 一般的にはするということは、しないということではない。ただ特別にはしない。そうすると、政府は、こういう重大な国民的な要望を確認するときの世論調査というのはどういうところでやるのですか。
  129. 坂東眞理子

    ○坂東説明員 政府が行います世論調査は内閣総理大臣官房広報室で行うことになっております。
  130. 小川新一郎

    小川(新)委員 それは総理府ですか。
  131. 坂東眞理子

    ○坂東説明員 さようでございます。
  132. 小川新一郎

    小川(新)委員 NHKの問題はさることながら、政府は、大蔵省に言っているのですが、私は政府とあえて言いますが、この新型間接税に関する世論調査をやったことがありますか。
  133. 坂東眞理子

    ○坂東説明員 新型間接税については世論調査は行っておりません。
  134. 小川新一郎

    小川(新)委員 そうすると、政府は何を国民の要望の参考にするのですか。一般のことは参考にするが政府としてはまだやってないというのですね。すると、昭和六十三年三月に発表した税制改革に関する有識者調査というのは総理府が行う通常の世論調査とはどこがどのように違うのか、坂東さん。     〔杉山委員長代理退席、委員長着席〕
  135. 坂東眞理子

    ○坂東説明員 通常の世論調査は国民の意見を正確に把握しなければならないということで、統計的に非常に厳密な手法が定められておりまして、国勢調査区を層化いたしまして調査区をまず選びまして、その中からさらに個人を住民票から選ぶというふうな層化二段無作為抽出法というものでやっております。今先生から御指摘のございました税制改革に関する有識者調査の方は、そういう厳密に国民が平均的に何を思っているかというのを選ぶのではなくて、いろいろな立場にいらっしゃる方たちがそれぞれどういう御意見をお持ちかということを伺うために有識者調査をいたしたもので、世論調査とは考えておりません。
  136. 小川新一郎

    小川(新)委員 坂東さん、そこにいてくださって結構ですが、それは大蔵省の要請によってやったのか。
  137. 坂東眞理子

    ○坂東説明員 一般に私どもが調査をいたしますときは政府の各行政機関とかかわりのあるものにつきましては要請を受けてやっておりまして、特にこの問題だけではなしに、例えば環境問題に関しては環境庁からの御要望とか、そういう形で御相談しながらやっております。
  138. 小川新一郎

    小川(新)委員 環境の問題は環境庁の要請、こういった新型間接税及び売上税というような国民の世論を全く二分するような税制改革については当然その主管省庁であります大蔵省の強い要望による、これは、今言った有識者調査、税制改革に関する有識者調査が行われたというふうに我々は認識しておりますが、一言で結構です、間違いありますか、ないか、それだけでいいです。
  139. 坂東眞理子

    ○坂東説明員 そのとおりでございます。
  140. 小川新一郎

    小川(新)委員 そういう調査というものは正確を期さなければならないし、設問は当然一方に偏った設問は非常にまずいわけです。そこで、昨年十二月のNHK調査では新型間接税に賛成四六%であるのに対し、反対は幾らであったか、これをちょっと聞いておきたいのです。
  141. 團宏明

    ○團説明員 大ざっぱな分け方としまして賛成と分類するのが四六%でございますが、ちょっと反対の数字を持っておりませんが……。
  142. 小川新一郎

    小川(新)委員 困るのですな。新型間接税という大問題を昨年十二月NHKさんが調査したときに賛成が四六であるのに反対が幾らだかわからない。わからないというふうに発表したのかどうか知りませんが、この三月のNHK調査では賛成が一八%に対して反対が四八%、十二月と三月とはどう違うのですか。
  143. 團宏明

    ○團説明員 お答えいたします。  三月の調査でございますが、これにつきましては問いの十というのがございまして、「賛成」「反対」「どちらともいえない」「わからない」というふうになっておりますが、「賛成」が一八・二%、「反対」が四八・二%、「どちらともいえない」一九・五%、「わからない、無回答」が一四・一%というふうになっていると承知しております。これは設問の仕方等が若干違うということも関係しているかというふうに考えるところでございます。
  144. 小川新一郎

    小川(新)委員 賛否がそういうふうに、あなたは賛成しますか反対ですかというのに人間の頭は二つも三つも分かれるわけがないでしょう、賛成か反対かを聞いているんだから。賛成が幾ら、反対が幾ら。前の十二月のときにはNHKでは電波、テレビに公表しておきながら、三月になったら全然電波、テレビには報道しない。だから、先ほど私が言ったように「科学的な世論調査を行い、且つ、その結果を公表しなければならない。」公表していないから聞いているんだ。これに対してはNHKでは、三月の調査の結果はNHK放送文化調査研究所編の研究誌「放送研究と調査」五月号に載っているから発表したんだと言っておりますが、対象は三千部ぐらい。こういう重大な問題が、賛成四六%であって反対がわからない十二月のものは公表しておいて、今度完全に大型間接税、新型間接税に関しては、反対が四八%で賛成が一八%だというものは電波の力を利用しなかった。ただ雑誌の力を使った。こういうことは甚だ不公平であると思うのですが、それは公表の義務及び第三項の不偏不党性についての解釈に抵触してきますが、この辺は大臣、ちょっとお尋ねしておきますが、あなたに聞いているのですけれども、どうなんでしょうか。NHKだからおれは知らないんだ。今大変な間接税の問題でこういうふうな世論調査をいろいろなところでやりますね。新聞紙上だとかNHKだとかいろいろなところでやります。だけれども、先ほどお話があったように、国、政府がやるときには総理府が非常に厳格な調査をやるんだという御答弁でございますね。そうすると、今のような数字が出てきたことをなぜ発表しなかったかということについては、大蔵省は今度の問題については一番責任のある中心的役割を果たさなければならない立場として、大臣として、このような問題をどうお考えなのでしょうか。所見をひとつお尋ねしておきたいのです。
  145. 宮澤喜一

    ○宮澤国務大臣 私といたしましては、税制改正に関する世論調査はどういうものでも非常に注意深く大切なものとして注意をいたしております。  なお、今お尋ねのNHKの件でございますが、どういう案件でございますか、私存じませんので、あるものが発表され、あるものが発表されなかったというようなそういうお尋ねでございましたが、内容をよく存じませんので意見を申し上げかねます。
  146. 小川新一郎

    小川(新)委員 大臣のお言葉でございますが、昨日の新聞には一面に大きくこのことが報道されております。お忙しくてお見逃しになったと思うのでございますが、これは非常に大事なことでございますので、私が唐突にこの問題を聞いているのではございませんので、どうか御了解をいただきたいと思います。――では、どうぞ。
  147. 團宏明

    ○團説明員 お答えいたします。  三月の調査の関係でございますが、これはNHKが広く国民の意識を把握して番組編成等に資するというふうなこと、それから番組素材として活用するということで随時行っているものでございますが、その調査につきましてことし三月十二、十三日に実施したということでございます。  この公表についてでございますが、公表の仕方というのは、これは法律上は明定しておりませんで、いろいろな公表の仕方がございます。一般に放送することもございますけれども、こういう調査研究誌によりまして一般に公表するということもあるわけでございます。今回につきましては、三月初旬の調査でございますが、三月二十二日に政府税調の税制改革の素案の骨格が発表されるという直後でございましたので、これはNHKの編成判断としまして放送上の誤解を招くために放送しなかったというふうに聞いております。
  148. 小川新一郎

    小川(新)委員 大臣、今お聞きのような事情があったということをNHKは言っているのです。だけれども、そういうことは詭弁なんですね。今一番大事な法案が出るか出ないか。もうあとわずかで今国会も終わらんとしている。そういう大事なときに、NHKはそういう世論調査をしておきながら自分勝手に都合のいい判断をして、大きく発表したり、小さく発表したり、しなかったり、それは我々の自由であるなどというような思い上がった行き方は断じて許せないと思うんですね。三月には発表できなかったけれども十二月には発表した。都合のいいことだけ発表して都合の悪いことは発表しない。だから、疑惑を招くようなことをやれば政府にも御迷惑がかかるし、国民も疑惑の目で見るようになります。堂々と発表したらいいじゃないですか。政府税調の中間答申が出た、またその時点でやったときにはこうなった、その推移を見ながら、竹下総理は国民の合意を得ながら民主主義の手法を用いてこれだけの大事な問題は、大切な問題は判断をしていくんだということを常々申しているではありませんか。私どもは中曽根総理と竹下総理の違いをそこに見ているわけでございますから、私は大事な問題であると思ってきょうあえて大蔵大臣に御所見を聞いているわけでございます。いかがでございましょうか。
  149. 宮澤喜一

    ○宮澤国務大臣 報道機関、言論機関には機関としての責任も義務もございます。機関としての見識もございます。したがいまして、どういう理由でどうなったかということを私存じませんので、論評をいたしかねます。
  150. 小川新一郎

    小川(新)委員 そういうふうに言われちゃいますと私も返す言葉がなくなっちゃうのですが、ここでわずかな時間でこの問題をいつまでも切り結んでもしようがありませんが、では、今後の調査、設問、公表の仕方についてはどのように考えられるのですか。
  151. 團宏明

    ○團説明員 お答えいたします。  NHKのこういう関係の調査というのは毎年いろいろ行っておりまして、例えば全国の視聴率の調査であるとか国民世論調査、全国放送意向調査、そういうことを年に数回やるということにしておりまして、例年やっております。この趣旨は、先ほど先生も御指摘ありましたし、放送法の趣旨のとおり豊かでよい番組をつくっていくというために実施するものでございます。ただ、その具体的な調査の内容につきましては、これは番組編集の責任を持っておりますNHKにおいてやることでございます。税制問題につきましても、その他の国民の関心を呼んでいるテーマにつきまして、よい番組をつくっていくためにいろいろな調査を行うということでございますので、今後とも引き続きそういうことにつきましての関心を持って、その時点での調査を引き続き検討し行っていくというふうに聞いております。
  152. 小川新一郎

    小川(新)委員 していただくのは結構ですが、その公表の仕方も大事、内容も大事、だからといって余り我々が言論の自由の中に立ち入ることは憲法問題にも抵触してまいりますので十分注意しなければなりませんが、この問題については不偏不党性をもって公正なる判断のもとに発表しなければならぬということをつけ加えておきたいと思います。  そこで、これ大蔵省にお尋ねしたいのですが、政府の新型間接税案を明らかにした段階で竹下総理の言う六つの懸念について国民世論を問うべきではないかと思いますが、これはいかがお考えでございましょうか。
  153. 尾崎護

    ○尾崎政府委員 先般税制調査会から税制改革についての中間答申をいただいたところでございますが、政府といたしましては今回の答申の内容につきまして広く国民の皆様に理解していただけるよう努力してまいりたいと存じますし、また今後とも広く国民の皆様の御意見を拝聴していきたいというように考えております。  例えば全国各県大体五人ぐらいの割合で税制モニターというのを現在お願いしているわけでございますけれども、例えば税制モニターを通ずるなどによりまして広く国民の皆様に接し、その内容の周知を行うということもしてまいりたいと思います。  しかしながら、間接税を含みます税制改革の問題につきましては、それぞれの立場にあるいは税という非常に専門的なものでもございますので、その知識の度合いによりまして意見がいろいろと異なってくるものでございますので、ある一つの案に対する賛否を問うというような形での調査がなじむものかどうかというようなことも含めまして今後慎重に検討してまいりたいというように考えております。
  154. 小川新一郎

    小川(新)委員 これは大臣にお尋ねいたしますが、四月二十八日に政府税制調査会が中間答申をまとめ上げ、竹下総理に提出いたしました。宮澤大蔵大臣としてはこれをどのように受けとめておられますか。
  155. 宮澤喜一

    ○宮澤国務大臣 昨年秋の諮問以来非常に御熱心に、御存じのように全国あちこちの意見も聞かれまして素案として、中間答申としてまとめていただきまして、政府としては基本的にこれを尊重しなければならないと思っております。  なお、御承知のように、同時に私どもの党内の税制調査会におきましても同じ問題の議論をただいま続けておりまして、その結果を待ちまして、また政府税調のあるいは最終答申というものも予想されるのでございますから、そういうことがもしございますればそれも待ちまして、できるだけ早く政府案を決定をいたしたい、かように考えております。
  156. 小川新一郎

    小川(新)委員 この新型間接税についての方式、根拠、税率等は自民党税制調査会にげたを預けた形になっておる。不公平税制についても同じで、あいまいであり不徹底であるという批判がございまして、政府の税制調査会、税調というものの見識が社会に今問われております。  そこで、大臣はこの中間答申を受けて会談して、今後の税制改革の進め方について協議したその結果、自民党と政府とは大筋で一致している部分については大蔵省に指示し、法案づくりの準備を進めていくことになったと伝えられておりますが、それにまずお間違いがないのか。それでは一体間違いがないとするならば、政府と自民党で大筋で一致している部分とはどのような部分なのか、これが一つであります。二番目は、大蔵省の法案づくりの準備はどのぐらい進んでいるのか。三点目は、税制改革法案の提出時期は一体いつなのか。今国会への提出は断念すべきであると思うかどうか。この最後の、今国会への提出は断念すべきであるということは竹下総理、金丸前副総理、安倍幹事長も断念を示唆しておりますが、これは責任ある立場の大蔵大臣としての確たる御見解を含めた中で、ただいま申し上げたような問題について、大臣が御答弁できるものと局長がお答えする分とは分けて結構ですから、御答弁いただきたいと思います。
  157. 宮澤喜一

    ○宮澤国務大臣 例えば有価証券の売買差益については原則として課税をすべきであるといったようなことは、政府税調の中間答申におきましても私どもの党内の税制調査会の考え方におきましてもほぼ一致をいたしております。また法人が当面入り用のない土地を買って実は値上がりを待っておる。しかしそのために借りた借金の利子は経費になるといったようなことはいかにも甘過ぎるではないかといったようなことにつきましても、両者の考え方は一致しております。あるいはまた相続税につきまして、養子を何人か、いわば擬制をすると申しますか、それによって相続税の軽減を図るといったようなことも、これも対処する方法があってしかるべきではないかといったようなことにつきましても、両者の意見は一致いたしております。  これはいずれもいわば新しい立法の内容になりますので、そういったようなものをどのように法律として構成するかといったような作業は既に進めるように私から指示をいたしてございます。  それからこの国会との関連でございますが、私どもの党内におきましても、なおこの連休が明けましてまた再び税制調査会の検討が進められておるような状況でございますし、税制調査会の最終答申につきましても、まだいつということがはっきりいたしておりません。それらのこともございますので、この国会との関連につきましては何ともただいま申し上げかねますけれども、私どもといたしましてはそういうことができる情勢に仮になってまいりましたら、仕事がおくれて間に合わぬというようなことがありましては申しわけございませんので、もうできるだけ急いでその準備を進めつつございますので、最終的にどうなりますかはただいま申し上げかねておりますが、準備がおくれないように督励をいたしております。
  158. 尾崎護

    ○尾崎政府委員 ただいまの大臣の御答弁で尽きていると思いますが、法案の準備につきましては先ほど大臣からお話ございましたように、内部におきまして取りかかっているところでございます。  御承知のように、廃案になりました前回の法案がございまして、一部はそれと一致しているものもございますので、その前回の法案に含まれていないような部分、ただいま大臣が例として挙げられましたようなところを中心に細部の検討をしているところでございます。
  159. 小川新一郎

    小川(新)委員 大臣、そうしてちょっと聞き漏らしたのですが、まことに失礼いたしますが、その改革法案の提出時期は今おわかりにならないというように聞いたのですが、今国会への提出はあり得ない。これはまあ延長して出すのか出さないのかということは別として、リミットまでにはお出しにならない、こう理解していいんですか。
  160. 宮澤喜一

    ○宮澤国務大臣 私どもとしてはできるだけ早く提出をして御審議を願いたいというのが本意でございますので、準備だけは少なくともおくれないように督励をいたしております。最終的にどうなりますかということをただいままだ申し上げかねる、こう申し上げておるわけでございます。
  161. 小川新一郎

    小川(新)委員 総理大臣が外遊先で提出されないようなことを示唆されたような新聞が出ております。これは大臣のお立場というものと総理のお立場というものはまたおのずと異なってまいりますが、そういうことからいたしますとまだ時期不明、そういうものは示唆に値しない、本当に大臣としては一日も早く出したいんだけれども、まだまだその準備もでき上がってないから出すとも出さないともまだわからない、私は端的にそう物を聞いているのですけれども、それでよろしいでしょうか。
  162. 宮澤喜一

    ○宮澤国務大臣 そのように御理解をいただきとうございます。
  163. 小川新一郎

    小川(新)委員 財政再建についてちょっとお尋ねしておきますが、これは地方自治体との問題でお聞きしておきます。  大蔵省昭和六十年度以降、補助金の補助率の引き下げを行ってきておりますが、昭和六十四年度以降は約束どおり昭和五十九年度の補助率の水準に戻すべきであると思いますが、どうなんでしょう。
  164. 宮澤喜一

    ○宮澤国務大臣 この点は昭和六十年に各省庁で検討会というものを設けまして、かなり長いことかかりまして検討をいたしました。また、その結果は年末に閣僚会議を開きまして確認をいたしておるわけでございますが、それによりますと、三年間の措置としてその間に行財政の再配分等々についてもいろいろ検討する必要がある、こういうことで三年間の暫定措置になっておるわけでございます。したがいまして、その暫定が切れますので、できるだけ早く各省庁再び集まりましてこの問題の後の処理を検討いたしたい、こう考えております。
  165. 小川新一郎

    小川(新)委員 昭和六十年度から昭和六十三年度までの地方自治体への補助率の引き下げの額というものは総額どのくらいになっているのです。
  166. 寺村信行

    ○寺村政府委員 補助負担率の引き下げによります地方財政への影響額は、投資的経費事業拡大分によります地方負担増を含めまして、六十年度は五千八百億円、六十一年度一兆一千七百億円、六十二年度一兆四千九百七十億円、六十三年度一兆六千五百六十九億円となっておりまして、合計額は四兆九千三十九億円でございます。
  167. 小川新一郎

    小川(新)委員 この四兆九千何がしは地方自治体の財政への影響が出ているわけですが、この間地方自治体の地方債すなわち借金がふえた分と理解していいのですか。どれくらいの地方債がこの三年間にふえたのでございましょうか。
  168. 遠藤安彦

    ○遠藤説明員 お答えを申し上げます。  全部の集計がちょっとできておりませんので、個別の年度の数字を申し上げましてお許しをいただきたいと思いますが、昭和六十年分につきましては、臨時財政特例債及び調整債合わせまして四千八百億を建設地方債の増発に充てております。  それから六十一年度につきましては、一兆一千七百億の影響額のうち、臨時財政特例債及び調整債の発行額は九千三百億でございます。  それから六十二年度でございますが、約一兆五千億円の中で建設地方債の部分は約一兆二千三百億でございます。  それから六十三年度につきましては、一兆六千五百億の影響額のうち、約一兆四千億でございまして、総額はそれらを足したものでございます。
  169. 小川新一郎

    小川(新)委員 大臣、総額それらを足したものが要するに直接自治体の負担分になっていると私は理解しているんですが、これは恐らく、五十九年度だけという覚書によって単年度の暫定措置として約束されたことが延びたりまた加算されたりして、非常に国の財政を助けるための皮肉な策として逆に国債がその分負担軽減されたといっても地方の方に借金がふえていったのでは同じだと思うのでございますが、そういった自治体の苦情、自治体の陳情、こういうものを踏まえてそれらについて大蔵当局はどのように対応なさるんですか。それは今、お話し合いをこれからするということでございますが、現実的にはどうなんでございましょうか。
  170. 宮澤喜一

    ○宮澤国務大臣 おっしゃいますように、国の財政の事情から地方にいろいろ御負担を願っておる、御理解を願っておるということはもうおっしゃるとおりでございまして、まことにどうも申しわけないことでありますけれども、御協力を願っておるということでございます。  なお、その負担関係につきましてはいろいろ両省間の約束がございますので、政府委員から御説明いたします。
  171. 寺村信行

    ○寺村政府委員 補助率の見直しにつきましては、基本的には補助金問題検討会の報告の趣旨等を踏まえまして、特に六十一年度に行われました総合的な見直しでございますが、社会保障を中心に事務事業の見直しを行いまして補助率の総合的な見直しを行ったものでございまして、単に財政事情からだけということではなくて、例えば地方に同化定着いたしました事務事業の一般財源化とか民間団体向けの補助金の整理合理化とか類似目的の補助金等の統合メニュー化等を行っておりますし、一方、六十一年度におきましては法律を制定いたしまして、地方への権限移譲等を定めまして推進をしてきたところでございます。  この補助率の見直しによります影響を織り込んだ上で生じます地方財源不足につきましては、地方財政の運営に支障を来すことのないよう地方財政対策をこれまでも講じてきているところでございまして、具体的に申し上げますと、例えば六十三年度の場合、補助率の見直しの影響額は先ほど申し上げましたように一兆六千五百六十九億円でございますが、経常経費の関係が六千六百六十九億円でございまして、それにつきましては地方たばこ消費税の特例千二百億円、地方交付税の特例千四百九十五億円と一般財源で措置をしておりまして、その残りにつきましては建設地方債の増発により対処することといたしております。また投資的経費の関係につきましては九千九百億円でございますが、このうち国費減額相当分七千四百億円につきましては臨時財政特例債を発行いたしまして、その元利償還額相当額の一定割合を後年度一般会計から交付税特会に繰り入れることといたしておりますし、事業拡大分二千五百億円につきましては調整債により措置をすることといたしております。  これらの地方債の元利償還金はいずれにせよ将来の地方財政計画の歳出として計上されまして、その段階におきまして地方財政対策に遺憾なきを期してまいるように今後とも努力をしてまいりたいと考えております。
  172. 小川新一郎

    小川(新)委員 時間がありませんのでこの問題についての議論ができないことは残念なんですが、いずれにしてもこの問題については相互の信頼関係が崩れたときは大変なことになりますので、そういう中での財政論議を十二分にし尽くして、負担増にならないような御配慮を今後お願いしたいと思っております。  それから、大臣は総裁選挙のときに、「ふるさと創生論」という竹下さんの考え方に対応した、それに見合ったような政策を出されております。しかし、今総理大臣におなりになった竹下総理のいわゆるふるさと財団、ふるさとづくりの財団、地域総合整備財団、これに対して大蔵省が反対しておるようでございますが、自治省といたしましてはこのふるさと財団をやっていきたい、その機構についていろいろ構想等があって、その問題についてお金を出す側の大蔵省では御反対になっていらっしゃる。何もこれは私どものげすの勘ぐりではございませんが、総裁選挙のときの政策の不一致をこういうところでかたきをとろうとしておるなどというようなやぼな考え方はいたしませんが、どういうところを大蔵省が反対していらっしゃるのか、その理由をお聞きして、終わらせていただきます。
  173. 宮澤喜一

    ○宮澤国務大臣 これは実は私のところまでまだ話は参っておりませんで、大蔵省ばかりでございません、自治省、大蔵省、建設省、各省庁の間でいろいろ事務当局が検討中の由でございます。話がまとまりましたら何か私のところにも報告があろうと存じますが、ただいままだその段階に至っていない模様でございます。
  174. 小川新一郎

    小川(新)委員 上がってきた場合は賛成してくださるのですか。
  175. 宮澤喜一

    ○宮澤国務大臣 上がり方によりましてまた考えます。
  176. 小川新一郎

    小川(新)委員 上がり方って、てんぷらを揚げるのじゃございませんので、たこが揚がったりてんぷらを揚げたりするのではなくて、国家のために総理大臣の必要な政策の裏づけというものを大蔵省が合理的であると言うことは、総理大臣、総裁の言っているものが余り外れているようなことをまさか言うはずがないのであって、それはそれなりの論理というものを展開しながら財政の裏づけだとか規模というものを出してくるのであろうから、当然お互い両者話し合って出されると思うので、そうなれば賛成せざるを得ないのだろう、こう思っておるわけでございます。それが上がり方だろうと思うのでございます。そこはひとつ、おおらかな大人物、次期総理大臣候補、また、総理になられるであろう宮澤大先生の御見解をもう一回お尋ねして、終わらせていただきます。
  177. 宮澤喜一

    ○宮澤国務大臣 十分納得がいくようなものでございましたら、よく考えさせていただきます。
  178. 小川新一郎

    小川(新)委員 終わらせていただきます。
  179. 野中英二

    野中委員長 草川昭三君。
  180. 草川昭三

    ○草川委員 草川であります。  まず最初に、日英首脳会談についての対応をお伺いしたいと思うのでございますが、私ども、この連休にいろいろと地元を歩いておりますと、国際問題というのが地域の方々に非常に敏感に反映をしているということを改めて痛感をしたわけであります。日米農作物問題もそうでございますし、この竹下首相とサッチャー首相との首脳会談でも酒税をめぐる問題というのが報道されまして、酒税に関して、関係者の方々の反応というものは随分速いわけであります。  きょう大蔵大臣、あるいはまた大蔵省関係者の御答弁を聞きたいと思うのでございますが、その時期ではないとおっしゃるかもわかりませんけれども、少なくとも、新聞報道によりますと、会談後の日英双方の受けとめ方に微妙な食い違いがある。これは、いわゆる日本の酒税制度の改革をめぐるやりとりについての報道でございますが、英国側は、非常に満足できる解決を個人的に約束されたというような受けとめ方、日本側は、それなりの意味があるんだけれども約束まではしていないというような微妙な食い違いがある、こういうことを言っておるわけでございますが、本日は、大蔵大臣としていち早くこのようなことについては承知をなすっておみえになると思うのでございますが、どのような御判断を持っておみえになるのか、お伺いをしたいと思います。
  181. 尾崎護

    ○尾崎政府委員 新聞等で報じられているところによりますと、日英両首脳の会談の席上で竹下首相が個人的関心を持つということを述べられ、それについての見解が日英双方でやや違うというようなことが報じられているということを承知いたしております。
  182. 草川昭三

    ○草川委員 承知をしておみえになるわけでございますが、これはいずれ具体的な対応が迫られてくると思うのでございますが、その際はどういうようなスタンスになるのか、お伺いしたいと思います。
  183. 尾崎護

    ○尾崎政府委員 酒税の問題につきましては御承知のとおり昨年ガットから勧告をいただいておりまして、そのガットの勧告の趣旨に従いまして抜本的税制改革の中の一環として酒税法の見直しを行うこととなっております。  既にその基本的な方向につきましては閣議決定までいただいておりまして、例えば従価税を廃止するとか、ウイスキーの特級、一級、二級という級別制度を廃止するとかいろいろ基本方針は定められているわけでございます。  先般、政府の税制調査会からいただきました中間答申の中におきましても、この基本方針に従いまして酒税の改正をするようにということでございます。それで、自由民主党の税制調査会におきましてもこの問題について近く論議が行われるというように承っております。  そのようなことを全部よく勘案をいたしまして、具体的に改正の方向を定めていきたいというように考えております。
  184. 草川昭三

    ○草川委員 要するに、現実に両国間での障害がなくなれば約束をしたとかしないとかというのは問題ではない、こういうように理解をしていいわけでございますか。
  185. 尾崎護

    ○尾崎政府委員 ガットの勧告を守るという方針のもとで基本的な方針が定められているわけでございますが、その具体化されましたときの評価の問題であろうかと思います。私どもといたしましては、基本方針の示します方向に従いまして具体的な改正案を決定してまいりたいというように存じております。
  186. 草川昭三

    ○草川委員 では次に移りますが、同じく英国側は、日本の大蔵省あるいは東京証券取引所に対して、英国証券会社の東証会員権の追加開放を認めてほしい、でなければ対抗措置をとる用意があるというような意見を表明されておりますが、その点についてどのような対応をされるのか、お伺いをします。
  187. 藤田恒郎

    藤田(恒)政府委員 東証会員権の問題につきましては、昨年十二月に二十二の新しい会員を東証に迎えるという決定をいたしまして、そのうち外国証券会社が十六、国内の証券会社が六社ということは委員も御承知のとおりだと思います。その際、英国系の証券会社は六社が東証会員になりたいという希望を出しまして、うち四社が認められたということでございますけれども、今回、総理訪英に際しまして首脳会談で、残りの二社についてもできるだけ早く東証会員になることを認めてほしいという要望があったように聞いております。これに対しまして、総理も個人的関心を十分持って検討していきたいというようにお答えになったと新聞報道等で我々も聞いているところでございます。  これに対しまして我々としてどういうふうに対処するかという御質問でございますけれども、委員も御承知のようにこの問題は東証という民間の団体が基本的には決めるべき問題でございまして、私どもが余り関与すべき性格のものでは必ずしもないわけでございますけれども、東証といたしましても、これまで二度にわたりまして東証会員権を拡大いたしまして、東京市場の国際化に伴いまして対応するような措置をしてきているところでございます。私どもといたしましては、今後とも東証もこの方向に沿って、日本の株式市場の動向とか、さらには東証の機械化の進展とかいう問題を考えながら、前向きに対処してくれるものだというふうに期待をしているわけでございます。
  188. 草川昭三

    ○草川委員 一義的には東証だという、こういうお話でありますが、私は基本的には大蔵省の考え方だと思うのですね。  たまたまここに、ことしの一月十二日、日本記者クラブでのイギリスのハウ外相のスピーチがあるわけでございますが、その原稿の中で、かなり厳しく向こうの外相は日本に要求をしておみえになりますね。我々は、ドアをより激しくたたいているのである、こういう言い方になっておりますね。そして、日本経済は今や世界最強である、だからもっとオープンになるべきではないだろうか。しかも、英国内に設立をされた日本企業の数は七十二社に達している。同じように開放的な姿勢が資本市場並びに証券取引所についてもとられるべきである。ロンドンには、ほぼ百社に達する日本の銀行や証券会社が進出している。三十一のうち十五の席が国際証券調整機構によってノミネートされたメンバーとなっている云々というようなことがあるわけでございまして、我々は会員資格の取得を望むすべての有資格企業が早い時期に参入を認められるよう希望している、というようなことが長々と言われております。非常にはっきりとした記者クラブでの外務大臣の説明なんですね。  こういうことは、去年来から非常に向こう側は何回か言っておりまして、私も一昨年英国へ行きまして、シティーを訪問をして向こうの方々と名刺を交換すると、ほとんど日本語の名刺の交換をされて、あなたたちも早く我々を受け入れろというような一般的な雰囲気にじかに接してまいりまして、非常に厳しい意向だということを承知をしておるわけでございますが、私は東証、いわゆる東証に問題をぶつけるのではなくて、これだけ国際的な意向があるわけですから、もっと大蔵省自身がリーダーシップを発揮すべきではないだろうかと思うのですが、この点、大臣、どのようにお考えになられるのか、お伺いします。
  189. 宮澤喜一

    ○宮澤国務大臣 ということを、恐らくサッチャーさんが言われたのだと思います。  ただ、正直を申しまして、昨年の十一月でございましたか、新たに外国証券会社、十六社でございますか、これを東証もいろいろ考えまして、認めるということをいたした。これはクラブでございますから、東証としての意向になるわけでございますが、そうしたところで、その中で英国系は六社ございました中で、東証が考えます日本における実績とか、いつからいるとかいうことを物差しで、四社でございますか、選んだのでございますから、随分思い切ったことをやっておるというふうに私なんぞは実は思っておりましたんで、それもつい昨年の暮れのことでございますから、何かそう新しい事情がその後に起こったのかどうか、ちょっとその辺をつまびらかにいたしておりません。  いずれにしても、総理大臣帰られましたら、どういうお話であったか、よく承ってみたいと思っております。が、それは政府としての問題の理解でございまして、さらに問題は、実は申し上げるまでもなく、クラブとしての東京証券取引所にそれが可能であるかどうかということになってまいると思います。
  190. 草川昭三

    ○草川委員 日英問題だけではなくて日米にも関係することでございますが、この外相の演説ではございませんけれども、国際社会で最強の経済国家ではないかという詰め寄り方をされているわけですから、私はそれなりの対応は、やはり大蔵省自身がきちっと御指導をなさるべきではないだろうか、こう思います。  第二番目の問題に移りますが、いわゆるプリペイドカードの普及の問題でございます。  これは、NTTのテレホンカードを初めといたしまして、これはNTTだけでも三億三千万枚発行したと言われておりますが、さらにJRあるいは私鉄、市バス、最近ではガソリンスタンドあるいは清涼飲料水のメーカー、ゲームセンター、クリーニング、喫茶店、こういうところまで導入をされ始めてきております。非常に便利なことでございますけれども、私どもはJRだとかNTTには信用がございまずけれども、その他のクリーニング業あるいは小さなサービス業が発行するプリペイドカードについてはどの程度まで信頼できるのか、大変心配な事態があります。いわゆる消費者保護の問題であります。  何か、商品券取締法だとか紙幣類似証券取締法、こういうものもあるようでございますが、一つは、大蔵省はどのようにこのプリペイドカードについて現状をつかんでおみえになるのか、お伺いをしたいと思います。
  191. 平澤貞昭

    ○平澤政府委員 今お話がございましたように、五十七年十二月にNTTのテレホンカードが発売されまして、その後、鉄道や高速道路等に順次導入が図られておるわけでございます。ところが、最近では、このような単用性といいますか、サービスを提供する者、サービスを受ける者とが一対一の関係ではなくて、汎用性のあるプリペイドカードを発行したいという企画が出てきておるわけでございます。したがって、今後このプリペイドカードというのは恐らく相当広く利用されていくことが予想されるわけでございます。  そうなりますと、今委員の御指摘がございましたように、仮にカードを発行した後で発行会社が倒産するというような場合に消費者の保護をどうするかという問題がございますとともに、これは一種の、現金、紙幣にかわるものでございますから、既存の決済システムに非常な影響があるわけでございまして、これをどう考えるかという問題もございます。さらにまた、御指摘のような法律が幾つもございますので、その法律上この問題とどう取り組んでいったらいいかということもあるわけでございまして、したがって、こうしたもろもろの問題あるいは考え方等踏まえまして、先般、学識経験者や関係業界を委員といたしますプリペイドカード等に関する研究会を設けたのでございます。現在、ここでこれらの問題について鋭意御審議をいただいておりますので、恐らく一年たたないうちにはある程度のまとまったお考えが報告書として出てくると思います。それを受けまして行政上必要な措置をとる、あるいは法令等の改正が必要だということになれば、それにも対処してまいりたいと考えておるわけでございます。
  192. 草川昭三

    ○草川委員 私、この席に来る前に通産省あるいは経済企画庁の国民生活センターに、プリペイドカード問題について苦情はどの程度上がっておるかということを念のために問い合わせてまいりました。まだまだ全国的にたくさんの不満は出ておりませんけれども、消費者センター等においてはかなりの数が、プリペイドカードについての不満が出ておるわけです。  それはなぜかといいますと、私自身の経験ですが、テレホンカードを車のボックスに入れたんですよ。それで、ポケットベルが鳴りますから、差し込んだわけです。そしたら、たしか千円のカードなんだが、全然使えないわけですよ。戻ってくるわけです。いわゆる車の磁気に害されて、磁気がなくなってしまうのですね。だから、取られてしまうというのですか、無効になってしまうわけですよ。この話をしたら、いや、実は私もそういう経験があるんだ。銀行のCDにカードを入れたら、不正、エラーのサインが鳴って、担当者が飛び込んできて、あなた、何のカードを出しているんですかと言うから、いや、これは私のカードですよ。ところが、裏のマジックというのですか、磁気は消えておるわけですよ。それはなぜ消えるかというと、車の磁場の影響を受けて消えてしまうわけです。これは、私、現実にそういう経験があるわけです。  そうしたら、これまたおもしろいのですが、たまたまその話をしましたら、マグネットプロテクターというのがもう既に開発されておるのですね、これは私持っていますが。これは非常に薄い。これは名前を挙げてあれですが、私の地元の大同特殊鋼という会社があるのですが、もうそれを承知しておりまして、薄い鉄板を入れましてこのようなカードを全部保護するわけです。これならば車の中にほうり込んでおいても磁気は安全だ、こういうカードは出ているわけです。今の大蔵省局長の答弁を聞いていると、学者先生を集めて一年間かかって議論すると言いますが、恐らくことしじゅうに、二、三カ月の間に通産省は乗り込んできますよ。通産省は消費者保護で何らかの対応を立てますよ。あるいは通産省でなくて経済企画庁の方が、消費者センターから問題提起をするかもわかりません。一年なんというのは遅いと私は思うのですが、これは大臣どうですか。もう局長の答弁はいいです。これは実例なので、どのようにお考えになられるか。いわゆる使われないカードは発行者の利益になる、一体それでいいのかどうか、こういう問題がありますが、どうですか。
  193. 平澤貞昭

    ○平澤政府委員 今までプリペイドカードの研究会を二度ほどやっておりまして、それぞれの場合に、今委員指摘の点も問題点として大きく指摘されたわけでございます。  特に磁気が消えてしまうという点につきましては、NTTの技術者の方が、最近そういうのができるだけないような特殊な加工をしたカードを検討している。現在もかなりの程度に進んだ技術でやっておるそうでありますが、強い磁気のところに持っていくとやはり消えてしまう可能性があるということでございます。したがって、その面での技術もさらに進んでいくのではないかと思うわけでございます。  それから、もう一つ御指摘がございましただんだんテレホンカードがたまっていってしまってどうなのかという点につきましては、NTTの方では、例えば電話の毎月の請求のときにカードを充当することがどうかとか、その他もろもろのことをやはり検討中ではあると聞いております。ただ、具体的にそれではいつ実施するとか、どういう方向でという点につきましては、まだ結論が出てないやに聞いております。
  194. 草川昭三

    ○草川委員 大臣、これは非常に細かい話ですけれども、これから非常に新しい伸びる場面ですね。ですから、大蔵省造幣局の決算書を見ていましても一円硬貨の発行数というのはうんと少なくなっていますね。もう何分の一になっていますかね、これを見ますと。結局カードの方が便利ですから、貨幣、補助貨幣からカードヘの移行というのは一面国民のニーズでもあるわけです。だとするならば、私は、基本的に目新しい問題ということではなくて、非常に日本の通貨制度にもかかわる問題として受けとめるべきではないだろうかと思うのですが、その点はどうでしょうか。
  195. 宮澤喜一

    ○宮澤国務大臣 これは、私は決して小さい問題と思っておりませんで、むしろなかなか大きな問題になっていくのではないかと思います。そうなりますと、今おっしゃいましたようにカード自身の有効性とか持っておる人の保護でございますとかいろいろな問題が出てまいりますし、そもそもそういういわば貨幣にかわるような多種の機能を持たせることがどの程度までいいのかとかいろいろな問題がございまして、決して一年というのはのんびりという意味ではございませんですけれども、やはり将来を展望いたしますと大変にいろいろな問題が出てきそうな感じがいたしておりますので、御発言、御指摘は私はまことにごもっともだと思っております。そのような趣旨で早急に対応を考えさせていただきたい。その検討をただいまお願いいたしておるところでございます。
  196. 草川昭三

    ○草川委員 では、今の大臣の答弁でなるべく早くやっていただかないと、先ほど申し上げましたように消費者相談という立場からは他の省庁も関心を持っておみえになるようでございますから、ぜひ急いでいただきたい、こう思います。  次は、いわゆる株の買い占めの問題と証券業のあり方、あるいは現在問題になっておりますインサイダー取引の問題に関連をして質問したいと思います。  実は私、過日の衆議院土地特別委員会におきまして、不動産業者の株の買い占めの例というのを有価証券報告書から引き抜いてまいりまして、何社かの実例を挙げて国土庁長官の御意見を求めたことがございます。これはたくさんの企業があるわけでございますが、私の言いたかったのは、土地転がしによって莫大な利益が生まれた、その金が株転がしというような、同じような手法によって買い占めに向かっている。日本の株式市場は自由でございますからだれが何を買おうと全く自由なのですけれども、企業側にとってみれば、前を向いて経常をしているのに後ろから突如として全くわけのわからない人間が大株主として登場してくる。そのことによって大変不安感を持つということがいいのかどうかという議論をしたいわけなのですよ。でございますから、そういう市場で株の売り買いは自由だということはわかり切った上での対応はどうか。しかも、それに対して日本の証券業界が非常に大きな影響力を持って株価形成をする、その主流であるところの四大証券の経営姿勢がいいかどうかということを議論したいというのが私の考え方なのです。  たまたまこれは不動産業者でございますけれども、不動産業者以外の株の買い占めもございます。これは昭和五十九年と六十三年二月の現状を見てきたわけでございます。これは有価証券報告書に出ておりますから名前が出ておることでございますが、例えば第一不動産という会社は、五十九年に占有率二・六%のミツウロコの株式が二位になったとか、鉄建建設の場合も八位から六位になったとか、協同飼料の株主に一位になったとか、大丸百貨店の株を六位まで占めたとかいうような例を一つ申し上げたわけでございます。そのほかたくさんの企業がございます。巴組鉄工というのも知らない間に一位の地位を原田不動産というところに買い占められている、あるいは勝村建設というところも三位の株主に関東ビルという会社がなっている、あるいは理研ビタミン等についても一位の株主の地位を不二建設というのにとられているというようなさまざまな例を過日の衆議院特別委員会で申し上げたことがございます。たまたま三井埠頭という会社も東証二部でございますけれども、株式は一時七千円ぐらいまで上がったのですが、会社側のお話を聞きますと、幾ら含み資産を考えても二千円ぐらいだろう、しかし七千円とか八千円の声を聞くと経営者として非常に困るんだというようなことをこぼしておみえになるわけであります。そのほか新聞等でも報道されておる例は山ほどあるわけでございますが、最近こういう例があるのですが、この点は大蔵省御存じかどうかでございます。  先ほどから東京証券取引所という話が出ました。この東京証券取引所のビルのオーナーは言うまでもございませんけれども平和不動産ですね。特定銘柄として有名でございます。この平和不動産の株が地価高騰でもうけた不動産業者によって買い占められておるというような例もあるわけでございますけれども、そういう点はどのように御判断になっておられるのか、お伺いをしたい、こう思います。
  197. 藤田恒郎

    藤田(恒)政府委員 ただいま御指摘の具体的な点につきまして私ども承知しておりません。  ただ、株の買い占めの問題につきましてはいろいろと御議論はあろうかと思いますけれども、証券市場、先ほどから委員も御指摘ございましたように、基本的に自由な市場であるというのが大原則でございまして、買い占めに伴いますいろいろな問題が出ているということも私どもも承知はしておりますけれども、果たしてその買い占めというのがいい買い占めなのか、問題のある買い占めなのか、こういったことを議論するのは非常に難しいところが多々あるのではないかと存じます。したがいまして、私ども買い占め一般につきますいろいろな問題点について決して無関心でいるわけではございませんで、いろいろな機会をつかまえながらこれからも勉強してまいりたいと思いますし、また必要なことがあればできるだけこういったものに対する措置も今後検討する方向で努力をしてまいりたいと思っております。繰り返すようでございますけれども、いろいろと難しい問題を内包している課題でございますので、現在のところ我々は検討課題として頭の中に置きながらいろいろ議論をしておるという状況でございます。
  198. 草川昭三

    ○草川委員 今海外からも相当批判が出てきておるようでございますが、英国のお話をさっき申し上げましたけれども、日本の株式市場に対する参加希望というのは非常に多い。ところが、日本の株価の変動を見ていると、明らかに資産内容あるいは経営内容とはかかわりなく株が急騰しておるという例がある。それの説明を日本側に求めてもなかなか明快な答弁がない、不可思議なことだというような議論があるやに私は聞いております。大蔵省証券局としても近くそのような価格形成問題あるいはまた日本の四大証券の価格形成に対する影響力の強さ等について勉強してみようじゃないかという話があると聞いておりますが、その点はどうでしょうか。
  199. 藤田恒郎

    藤田(恒)政府委員 ただいま御指摘の問題につきましては、御承知のように証券取引審議会というのがございまして、そこに不公正取引部会というのを設けていただいております。この不公正取引部会は昨年の十月以来精力的に議論をしていただきまして、今国会に提出して御審議をお願いしている内部者取引規制の問題についての御報告をいただいたわけでございますけれども、今後どういう問題を議論していくのかということについてはまだはっきりは決めておりません。ただ、先ほどから私も申し上げておりますけれども、御指摘のような買い占め等の問題というのはこれからの検討課題であるということが念頭にあることは事実でございますので、その辺を踏まえて今後この問題を取り上げていくかどうかにつきまして検討してみたいと思っております。
  200. 草川昭三

    ○草川委員 国際的に通用する株式市場にしなければいけないと思うのですが、今の答弁は審議会の中の不公正取引特別部会のことを指しておみえになるのか、いま一度答弁を願いたいと思います。
  201. 藤田恒郎

    藤田(恒)政府委員 証券取引審議会の中に不公正取引に関する特別部会というのを設けておりますけれども、私が申し上げましたのはその特別部会を指しておるわけでございます。
  202. 草川昭三

    ○草川委員 ぜひそれは早急に開いていただいて、私どもが今から問題提起するような内容も含めて議論をしていただきたいと思うのです。  その前に、三月一日に新規上場になりました小糸工業の株について、主幹事会社というのですかメーン幹事会社というのですか、日興証券に証券局は検査班を送って小糸株に絡む不正捜査あるいは水増しの架空注文があったのではないだろうかという検査を行ったと言われておりますが、その間の事情についてお答えを願いたいと思います。
  203. 藤田恒郎

    藤田(恒)政府委員 小糸工業の問題につきましては、それ以前に新規公開された株券につきまして、その初値の形成までに非常に時間がかかるとか形成されたその初値が公開価格に比べて二倍、三倍にも及んでおるとかいろいろと問題点がございました。したがいまして、小糸工業につきましてもその株価形成に当たって問題があるのかどうかにつきまして、たまたま日興証券に検査に入っておったということもございますけれども、その際にいろいろと調べてみたということでございます。ただ、その検査の結果につきましては個々の証券会社にわたる問題でございますので、ここにつぶさに申し上げることは御容赦いただきたいと思います。
  204. 草川昭三

    ○草川委員 少し具体的な事例をお伺いしたいと思うのですが、昭和四十六年二月二十四日に、これはたしか大蔵省の証券局長の通達だと思うのですが、「内部者取引の受注について」、「不公正な内部者取引を防止するよう適切な措置を講ずること。」という証取法百八十九条の規定に反する行為が多いのではないかという立場からの通達が出ておると思うのですが、ごく簡潔にどういう内容であったのか、そしてそれが現実に現在証券業界によって忠実に守られているのかどうか、フォローしておみえになるのかどうか、お伺いをしたいと思うのです。
  205. 藤田恒郎

    藤田(恒)政府委員 四十六年の通達の件でございますけれども、これは当時上場会社の役員等の株式売買がかなり極端と申しますか目立ったということもございまして、この点につきまして注意を喚起する意味で証券局長より証券業協会連合会長あてに、現在の証券業協会長でございますけれども、発出した通達でございます。その内容につきましては、要するに、各証券会社は発行会社の役員あるいは幹部職員または主要株主等から当該会社の株式の売買注文を受けた場合に内部者取引が行われないよう厳重に注意する必要がある。この場合には、必要に応じて当該注文の背景、目的の確認に努めることとし、当該取引が法令に違反するおそれがあるときは相手方に注意を喚起するとともに、要すれば売買取引の受託を拒否するなど適正な措置を講ずるものとするということでございます。  私ども、証券会社の検査に当たりましては、この通達が守られているかどうかということにつきましても十分配慮しながら検査実務を行っているところでございますけれども、証券会社はこの通達を守ってやってくれているものだと思っております。
  206. 草川昭三

    ○草川委員 そうではないという事例を、余り個別の名前を挙げて言うのはいかがなものかと思いますので、そこは適当な表現を私はします。  実は、私の地元のところにある中小メーカーがあります。これは二部に上場の企業であります。それはかなり著名な企業なのでありますが、たまたまそこの会社の専務という方の背任的な行為があるのです。残念ながらその専務が亡くなってしまったものですから、今トラブルが発生しておるわけでございますが、相手側の証券会社は日興証券なのですね。日興証券の部長でございますが、こういう企業などを担当してみえる部長でございますが、その部長と、私が言おうとするある有名な企業でありますけれども、そこの専務と結託をして株の売り買いを始めた。だから、今の会社の専務ですから、当然のことながらさっきの四十六年の通達に違反をするわけです。株の売り買いをして、とにかく高値になってくる。それで会社の幹部が驚いて、どないしたんだというので証券会社にも問い合わせをする。ところが、東京筋の方からこういう時代だから資産内容がいいから買いが入って値が上がっておるのでしょうというような答弁を企業の幹部も言うし証券会社も言うわけですね。証券会社がその会社の社長から問い合わせがあったときに、あなたは何を言うのですか、あなたのところの専務が買っておみえになるのですよ、こう言えば済むことですけれども、それを隠していた。という間に、あれよあれよという間に上がっていって最終的に、バイカイを振るという言葉があるのだそうですが、私は株をやりませんからわかりませんけれども、当事者間で二百円ぐらいの株を八百五十円のところでバイカイを振って固定をして、その株を何と驚くなかれ傍系の企業にはめ込むわけですね。今これを買わないと乗っ取りに応ずるから、この際会社が引き取ろうではないかというので傍系の会社が引き取ったという事例がある。もちろん引き取った後は値が下がることは当然。会社がこれはえらいことだということで今度は日興証券に対してどういう経過なのか、おかしいじゃないかということ。それで、肝心の専務はそこで亡くなってしまうものですから、遺族に対して損害賠償の請求をするというような事例が今一つあるわけです。私はその事例を長々と申し上げる気はないのですが、少なくとも日本の四大証券の一社であるべきこの日興証券が、少なくとも会社の社長さんが真相を聞かせてくれといってお見えになったときにそれを言わない。しかも、だれがある時点で売ったのか買いを入れたのか、顧客名簿を明らかにしろと言ってもおっしゃらない。こういうことは、私は、日本の株価形成に対する四大証券のあり方というのは非常に影響力が大き過ぎる、そのために零細な、零細というよりも一般国民の投資家というのはいつも損をする結果になるのではないか、こういう議論をしたいわけなんですね。  これは大変長く、演説になって恐縮でございますが、私がなぜあえて日興証券の名前を出すかというと、私は余りこういう個別の名前を出すことを好みませんが、たまたま私の地元の中で半プロと称する株の大変好きな方である程度の金額を動かす人がいます。その人が苦情を言ってきたのです。どういう苦情かというと、お金をある程度店に任せておけば一割とか二割とか必ず後でプラスにして戻してくれるというこういう約束がある。ほう、いい話ですね、それはどういうことですかと聞くと、店が独自でいろいろな株の取引をする、しかし顧客名簿にインプットしなければなりませんから、そのときに何のたれべえという人の名前の口座にはめ込む、それでもうかればそのまま。もうからなければ新株割り当てなり転換社債の割り当てでその損金を埋めるというシステムになっている。それがうまく回転する間はいいけれども、回転をしないとあくまでそれは個人の責任だというので証券会社が逃げてしまう、けしからぬじゃないかという問い合わせがあったわけです。そこで、私がその問題を一回取り上げたんですが、取り上げるというんですか、問題提起をしたのですが、それが非常に不誠意な態度になって、私もそういうことを取り上げることは好ましくないと思ってやめたわけですね。大蔵省に対して、証券局の方に対して、もう私は相手が半プロだからこの問題は聞くだけ聞いて取り上げませんよ、こう言ったら、それが回り回って証券会社の政治力によって草川はこの問題を取り上げることをやめたというように伝わっていくわけです。私は先物取引業界の中でも問題提起をして腹の立つことを何回か経験しておりますが、証券会社の世界ではそういうことはないだろう、四大証券というのはそういうことをまさしくやるようなところではないと思っておったのですが、そういう事例が出ていくわけでございまして、非常に私はこの問題について腹を立てておるわけですが、そういう問題提起に対して証券局はどのようにお考えになられるのか、お答えを願いたい、こう思います。
  207. 藤田恒郎

    藤田(恒)政府委員 ただいま御指摘のございました案件につきましては、私ども承知しておりませんので至急調べてみたいというふうに思っておりますが、今のお話を承っておりますと、幾つか問題があろうかというふうに思います。  まず、当該専務の株式の売買についてでございますけれども、四十六年の通達の趣旨は、発行会社の役職員等が短期の売買をして不当に利益を上げておるというものをチェックしたいということでございまして、その場合に証券会社が売買の背景、目的等を十分調査するようにという趣旨の通達でございますが、その専務という方がどのくらい頻繁に日興証券で株式の売買をされておられたのか、ちょっとその辺がはっきりいたしかねるということでございます。  また、日興証券が専務と結託をしてという御指摘ございました。その辺も、どこまでが一緒に結託してやったのかどうかというような点等につきましても調査をしてみないとはっきりしたことはわかりかねると思います。いずれにいたしましても、証券会社は免許制のもとに置かれまして、法令違反等の事実がございますれば営業の停止あるいは免許の剥奪というものを含みまして厳しい処分をするということになっておりますので、今御指摘のございました点、法令違反があるのかないのかという事実も含めまして私ども至急に調べてみたいというふうに存じております。  それから、日興証券に対しまして取引の実情を教えろということで行ったけれどもなかなか教えてもらえないというお話がございました。これは、証券会社は顧客の取引の内容について第三者に明らかにしてはならないという守秘義務もございますので、その辺はむしろ余り、顧客の取引内容について照会があったからといってそれを直ちに教えるというようなことはかえって問題の行為ではなかろうかというふうに思います。いずれにいたしましても、委員の御指摘がございましたので、私ども至急に調査をして適正な措置をとりたいというふうに考えております。
  208. 草川昭三

    ○草川委員 ちょっと私の発言を正確に聞いておっていただきたいのですが、会社が売買をしたんです。たまたま窓口が専務だった、その方が亡くなった、社長が、一体どういう経過でどのようなボリュームでどういうことがあったんですかという、当事者が聞いているわけです。それは第三者でも何でも全くない、ここをお間違えのないように。私も、株は素人ですけれども、その程度のことは十分承知をしているつもりであります。  それから、念のために証券局にも物を言っておきますが、我々がかかる問題を提起をしようとしますと、必ず先輩の議員を通じて質問をやめろというお話があるわけであります。それは同級生がどうだとかああだこうだということは必ず言ってくるのです。私は大変不愉快なんです。そういうことは、ここは言わずもがなの話ですけれども、証券局長として少なくとも正確な情報をつかむ、これが第一だと思うのです。それで、つかんでいただいたのを我々に御報告を願う、我々が納得すればそれでいい話なんです。それを、変な迂回をするような小手先細工をとる限り私は証券業界の倫理観というものを疑うわけですよ。今他の産業でそんな産業はございませんよ。堂々とお話をされて、いい点はいい点、我々の質問が間違っておれば間違っておることを堂々とおっしゃるわけです。私は、それでいいと思うのですね。それが日本の将来の国際市場の中における証券業界のきちっとしたあり方だと思うのです。しかもこれからは本当に国際的な時代になるわけですから、証券業界に対する指導を厳格にお願いをしたい。  時間がございませんので、次に移ります。  国税当局にお伺いをしたいわけでありますけれども、国税当局は今後いろいろな税務の摘発の重点をターゲットを絞られておると思うのでございますが、その中の一つに海外脱税ということが挙げられているというように聞いております。  そこで、海外脱税のあり方というのでしょうかいろいろな企業が海外との連絡をいたします、連絡というよりも支店を持つ場合もあるでしょうし、営業所を持つ場合もあるでしょうし、海外で物を売る場合もあるだろうし、向こうから物を買う場合もあるでしょう、さまざまなのがあると思うのですが、そういう流通の過程の中で脱税が発生をするあるいは利益の隠ぺいをする、日本の国内で得た利益を海外に蓄積をするというようなことがあると思うのでございますが、国税はどのような調査をするのか、お伺いをしたい、こう思います。
  209. 日向隆

    ○日向政府委員 昭和六十二年七月一日現在で見まして、これは調査部所管法人について申し上げますが、今委員指摘になりましたように、海外に所在する子会社の数は八千四百、また支店、出張所の数が四千三百五十七社、合わせて海外事業所等の数は一万二千七百五十七社という数に達しておりまして、御指摘のように海外取引は急速に拡大しておりまして、これに関連する脱税も増加しておるということでございます。  これに対応いたしまして、私どもといたしましてもこのような海外取引に関連した脱税の摘発に努力しておりまして、直近の昭和六十一事務年度で申し上げますと、一件当たり三千万以上の大口不正について集計してみますと、その不正取得金額は百十六億円に達しております。  その態様の主なものは、委員がいろいろと御指摘になりましたところでございますけれども、ごく簡単に申し上げますと、売上除外、架空支払い手数料等架空経費、架空工事原価、こういったものでございまして、私どもといたしましてはこういった不正の態様を十分見きわめまして、まず第一には国内の親会社におきます調査、これはその経理担当部門だけではございませんで、外交部門とかあるいは営業部門等の実際の現場部門に対する帳簿や帳票、テレックス等の調査を十分いたしまして、これによって問題点を把握いたしまして、この問題点の実態を解明するために、これは相手先の海外において調査をする必要がありますので、これに関連いたしましては委員も御承知と思いますが、日米租税条約等の各国税務当局間との間で結ばれております租税条約を活用いたしまして、この個別的情報交換ということを効率的に実施しているところであります。また、加えまして、必要な場合には我々の調査官を実際に海外に派遣いたしまして、その支店、出張所等の経営の実態等を把握して、これによって脱税の姿を具体的につかんで摘発してまいりたい、かように考えておるところでございます。
  210. 草川昭三

    ○草川委員 最後にもう一問ありますが、海外の国の税務当局とはどのような連携になるのか。今、日米のお話が出ましたけれども、その他の例えばヨーロッパでございますけれども、そういう国々ともうまくいっておるのですか、お伺いしたいと思います。
  211. 日向隆

    ○日向政府委員 委員御承知のように、現時点で租税条約は全世界規模におきまして三十六カ国と結んでおりまして、このうち個別的等の情報交換の規定のないのが二カ国、したがいまして逆に言いますと、三十四カ国とは情報交換の規定を持っております。これを十分活用してまいりたい、かように考えております。
  212. 草川昭三

    ○草川委員 時間が残りございませんので、最後になりますけれども、総理府にお伺いをいたしますが、この決算書を見ますと、総理府の政府刊行物等の予算というのが相当ございますね。六十一年度で百十七億、六十三年度で百十八億、テレビ、ラジオ等放送関係経費、広告及び出版関係経費等があるわけでございますが、いろいろな出版物等もあると私ども思っておりますが、この政府広報物の業者に対する発注をめぐる権限というのは相当絶大なものがあると思うのでございますが、適切に行われているのかどうか、お伺いをしたいと思います。
  213. 中川良一

    ○中川説明員 お答え申し上げます。  総理府が執行いたします広報関係の予算、その執行に当たりましては、代理店の選定等につきまして所定の方式を定めておりまして、それに合った方式で適切に毎年度執行いたしておる。具体的にはそれぞれの企画に応じまして、その企画に対します企画内容のコンぺ等を実施いたしまして、慎重に検討の上、業者を選定して行っているところでございます。
  214. 草川昭三

    ○草川委員 この問題はまた別に、次の機会に譲ることにします。  最後になりますが、農水省にお伺いをしたいと思うのでありますが、いわゆる農業経営基盤の特別会計というのがございます。ここに、六十一年度決算書を見ますと、百三十三億二千八百万円の不用額が生じているわけです。この理由は簡単で結構でございますが、私が申し上げたいのは、六十一年度、六十二年度に実は中央競馬会の方から三百億を百五十億、百五十億と二年間に分けて、政府の方にもお金がないというので競馬会からお金を入れたわけですね。農業経営基盤特会というのに入れた。ところが、農業経営基盤の特会の方は百三十三億の不用額を出した。結局、借り手がなかった、こういうことなんですが、いわゆる競馬を愛する方々は二五%のテラ銭を取られているわけでありますが、一〇%は国庫納付金、その他の積立金の中から、政府がおっしゃるから、本来はファンに還元をすべきものなんだろうけれども、それを特会の方に入れた。ところが、特会の方は、今申し上げましたように不用額が出た。何となく納得しづらいものがあるということを言いたいわけです。簡単でございますが、時間が過ぎましたので、課長の方から簡潔な答弁をいただいて終わりたい、こういうように思います。
  215. 清田安孝

    ○清田説明員 お答えいたします。  農業改良資金につきまして、昭和六十一年度に補助から融資へという考え方を踏まえまして農業者に対する貸付枠を約六百億円と想定し、これに必要な政府貸付金予算措置したところでございますが、ただいま先生御指摘のとおり百三十三億余りの不用額を出したところでございます。  このような不用額が生じた理由は、六十年度資金種類を再編拡充し、また六十一年度におきましても資金内容の充実と貸付枠の増大を行ったところで、農家に対する資金内容の周知に時間を要したこと、あるいはまた農家経済を取り巻く環境の厳しさから農業投資に対しまして非常に慎重となりまして、資金需要が停滞したということで貸付予定枠を下回ったことが原因と考えております。  先生御指摘のとおり、中央競馬会の御理解をいただいて繰り入れていただいた貴重な資金でございますので、今後とも補助から融資へという考え方を踏まえ、農業者の自主性と創意工夫を発揮させる無利子資金という本資金の特殊性を生かして制度の充実を行うとともに、農家に対しまして本資金制度の周知を図り、一層活用するように努めてまいりたいと考えております。  以上でございます。
  216. 草川昭三

    ○草川委員 終わります。
  217. 野中英二

  218. 大矢卓史

    大矢委員 まず大蔵省所管国民金融公庫を初めといたしまして、中小企業向けのいろいろな金融施策を政府はされておると思います。そのうちで、特に今申しました国民金融公庫以外で大蔵省が監督をしていらっしゃるところはどこどこでございますか。
  219. 平澤貞昭

    ○平澤政府委員 現在、中小企業金融のうち政府関係金融機関として主なものといたしましては、国民金融公庫中小企業金融公庫それから環衛公庫等があるわけでございます。そのほか保証保険関係で、いわゆる保険公庫がございます。
  220. 大矢卓史

    大矢委員 半官半民で中小企業のために商工中金等もございますし、またそれ以外に各都道府県の、また市のやっております保証協会についても監督権限があると聞いておりますが、いかがですか。
  221. 平澤貞昭

    ○平澤政府委員 保証協会につきましても、中小企業庁とたしか共管で監督権限があるかと思います。主として権限は地方公共団体にたしか委任していると存じております。
  222. 大矢卓史

    大矢委員 私、冒頭にお聞きいたしましたのは、大蔵省が監督権限があるんだというふうに御説明を聞いておりますから、それらを含めて当然検査をされることもございましょうしということでお聞きをいたしたのです。  そこで、中小企業向けのこういう公的な金融機関がなぜ必要なのか、どういうような必要性に基づいてやっていらっしゃるのか、その御認識をお伺いをいたしたいと思います。
  223. 平澤貞昭

    ○平澤政府委員 御存じのように、小規模零細事業者層を含みます中小企業の大部分は、一般的に経営が大企業に比べまして不安定な面があるわけでございます。したがって、また担保力も十分とは言いがたいということ等から、所要資金を有利な条件で民間金融機関からなかなか調達できないということがございます。したがいまして、国民公庫、中小公庫等の政府系中小企業金融機関は、このような中小企業等に対しまして主として長期の資金、これには設備資金と長期運転資金がございます。これを安定的に供給するということで民間金融を補完するという役割を持っております。さらに、公庫等は、中小企業近代化公害防止あるいは最近ではいわゆる円高特別貸し付け等特定の目的に即した政策金融、緊急融資を行って、そのときどきの中小企業政策を金融面から裏づけし促進していくという役割も果たしているわけでございます。  したがって、このような公庫貸し付け等のメリットはいろんな面で生かしていく必要があるわけでございますが、特に別の観点から整理いたしますと、一つは、民間に比べまして割合に低い金利の資金を供給できるというメリットがございます。それから二つ目は、先ほども申し上げましたが、長い資金を供給できる。それから、民間は最近変動金利制になってきておりますが、固定金利でございますから、将来の金利負担が当初から明確になるといった利点もあるわけでございます。それから、国民公庫の経営改善貸し付け等、いわゆるマル経と言っておりますが、こういうものは無担保、無保証による融資を行うということでリスク補完もしております。さらにまた、公庫等の融資を受けている中小企業ということになるとそれで信用力がつきますから、民間からの融資も受けやすくなるといったような信用力を補完するという役割も果たしているということでございます。
  224. 大矢卓史

    大矢委員 ただいまの説明によりますと、中小企業の人たちは担保力が非常に弱いのでそれを補完をしておるんだ、また長期のお金を貸しておって金利が非常に安いんだ、そして固定金利制をとっておるので金利が上がったときにはこれが非常に有利なんだということでございますけれども、そのほかにございませんか。
  225. 平澤貞昭

    ○平澤政府委員 そのほかは、先ほど申し上げましたように、中小企業のいわゆる政策誘導的な役割もこういう機関が果たしておるという点があるわけでございます。
  226. 大矢卓史

    大矢委員 もっと政府がやっておる中小企業向けのPRをしていただきたい、いかに有利にやっているかということをしていただきたいということでお聞きしておるのですけれども、局長さん、それがすべてだとお思いでございますか。例えば、俗に言われておるように、民間では担保の評価が六掛けですけれども公的なところは八掛けなんだとかいうようなことは前々から私どもはよく聞かされておるのですけれども、その点はいかがでございますか。
  227. 平澤貞昭

    ○平澤政府委員 担保掛け目の問題につきましては前にたしかお話があったかと存じますが、民間金融機関も大体今八割でございまして、それより少ないところもあるわけでございますが、このような政府関係金融機関もたしか八○%前後というふうに理解しておるところでございます。
  228. 大矢卓史

    大矢委員 そうしますと、担保の見方につきましては八割、八割で変わらないんだということで理解してよろしゅうございますか。
  229. 平澤貞昭

    ○平澤政府委員 私も細かいことは存じませんが、一応政府関係金融機関は担保掛け目につきましては民間金融機関とほぼ同様の処理をしているというふうに聞いておるところでございます。
  230. 大矢卓史

    大矢委員 私が申し上げておるのは、そういう公的な機関というのはより以上に有利に中小企業者に対して努力をしておるということは、恐らく局長さんの答弁の中から出てくると思っておりましたけれども、やっておらないんだという逆な答弁をいただきまして、それはそれなりで私はお聞きをして、これからの質問を続けていきたいと思います。  そういたしますと、先ほどの中で公害防止事業団等もございましたけれども、固定金利制のことも利点の一つだと言われましたけれども、そのために公害防止事業団が非常に多くの返済があった。ですから、金利が固定をしていくことが、これから上がっていくんだという前提に立ちましたらこれは利点ということでございますけれども、逆に言いますと、それは利点であると思ってやっておったけれども、利点でなくなったら当然借りかえをして安い金利に変えていくというのがそれを使っておる者の方の立場でございますけれども、そうすると、政府の方としてはそういう固定金利制を有利だからやっておるので、もし不利になれば変えてもいいということでよろしゅうございますね。
  231. 平澤貞昭

    ○平澤政府委員 委員御存じのように、政府関係金融機関の資金はいわゆる郵貯のお金でございまして、この郵貯のお金を資金運用部が長期に預託を受けて、したがってそれを財源にして国民金融公庫中小企業金融公庫等から融資しているわけでございます。したがって、調達面において長期な点があるわけでございまして、仮にその点を考慮いたしませんで、変動金利を全面的に採用いたしまして、金利が下がってきたときに借りかえをやっていくということになりますと、今度は国全体として大きな逆ざや、いわゆる金利リスクを大幅に負うということもあるわけでございます。ただ、逆に金利がどんどん上がっていくときは、固定されますので、中小企業者にとってはその分有利という点もあるわけでございます。先ほど私申し上げましたのは、むしろ固定金利であるために長期的に金利の変動リスクを考えないで中小企業事業計画を立てられるというメリットがあるという点を申し上げたわけでございます。
  232. 大矢卓史

    大矢委員 あえて局長の方からこの固定金利制が非常に有利なんだということをおっしゃいますから、現実にその有利を利用するという意味で、固定金利制が有利でないからどんどんと公害防止事業団等は返還があるのだということでございますので、その点もそれほどこれが有利だということで強調して言われることはなかろうと思います。今いろいろ有利なことがあるということをおっしゃいましたが、もっと有利な面があろうかと私は思いますけれども、そういう中に立って、最小限そのようなことがあるということを前提に、厚い中小企業対策の一環として中小企業に対する政府の金融政策をやっておるというふうに理解させていただいて、大臣よろしゅうございますか。
  233. 宮澤喜一

    ○宮澤国務大臣 ただいまお聞き及びのようなことで結構でございます。
  234. 大矢卓史

    大矢委員 そこでお聞きをいたしたいのですけれども、商売のやり方の中で融通手形というのがございます。融通手形をお互いに発行し合いながら企業がもっていくというやり方があるわけであります。これは非常に危険なやり方でありまして、この融通手形を出すようになりますと企業の経営が危ないと言われている。もし事業がうまくいかなくなりますと、片一方の事業も完全にそのあおりを食らって銀行取引等ができなくなって、これが倒産に追い込まれるわけであります。そういう融通手形をするような企業というのは果たしていかがなものであろうかと思いますけれども、いかがでございますか。
  235. 平澤貞昭

    ○平澤政府委員 一般に融通手形につきましては、その裏づけとなるいわゆる商取引等がございませんので、信用力において問題があるというふうに言われているのも事実でございます。
  236. 大矢卓史

    大矢委員 そこで、けさちょうだいいたしました国金の六十年度業務報告書、その中の貸付状況を見てみますと、無担保が九一・六%、金額の構成比が八五・五%でございます。それ以外にも保証協会等いろいろな金融機関でのやりとりがあると思いますけれども、その中で一番新しい六十一年二月のを見ますと、無担保が件数にいたしまして九〇・三%、金額にして八二・九%のようであります。そして無担保無保証人というのが、六十年度では件数が二四・四%、金額が一三・二%。それが六十一年度は減っておりまして、無担保無保証人の件数が二三・一%、一一・八%が金額の比率だということであります。そうなりますと、件数にいたしまして六七・三%が六十年度であり、金額は七二・三%が六十年度保証人を要するものだということであります。六十一年度はこれまた少しふえておりまして、件数は六七・二%であります。  そうなってまいりますと、私が申し上げたいことは、せっかく中小企業のために貸し出していただくのはありがたいのですけれども、無担保無保証人が占める割合が非常に小そうございます。そしてその保証人といいますと、保証人を要求いたしますと、恐らく必ずその保証人に、相保証といいまして、今度は保証人の方がお金を借りたいときには自分が保証しなければならぬということであります。そうなりますと、先ほどの実際の売り掛けのやりとりの間の融通手形と同じように、保証をお互いにすることによって片一方の企業がもし万が一のことがあるといたしましたら、その片一方の方にも累が及ぶということがございますので、この点非常に難しい問題だと思いますが、どのようにお考えになりますか。
  237. 平澤貞昭

    ○平澤政府委員 今もお話がございましたように、国民金融公庫等が融資をいたします場合に、原則といたしまして保証人を立てていただくということになっているわけでありますが、その場合に相保証ということも行われていると聞いております。ただ、この相保証の場合には、いわゆる企業相互間の信頼関係とか取引関係等の事情によりまして、申込人と保証人とが相互に了解し合って行われるわけでございます。そして支払い能力等において両方とも適格性があると互いに認め合いながらやっているわけで、そういう意味では直ちに問題があるということではないかと存じます。かつまた、お金を貸します国民金融公庫の立場といたしましても、そのように問題のある者同士が相保証を行うというような先に貸すということは、貴重な郵貯等のお金でございますのでこれは問題があるわけでございまして、審査に当たっては、相保証の当事者がやはり信用力が適度にあるという点は審査しながら行っているということでございますので、そういう意味では、実際上問題がほとんど起こってないのではないかと考えているわけでございます。
  238. 大矢卓史

    大矢委員 保証人になってくれと言うことはなかなか難しいことでございまして、信用がないからおまえは保証をつけてこいと言われておるその信用のない人が保証をお願いするということになりますと非常に難しい問題でありまして、一時、大阪でも商売として保証を金銭をもらってやるということがあったようであります。お金を多少高く払ってでも保証人を頼むというようなことをやらなければお金が借りられないということになりますと非常に問題があろうと思います。それでは保証人がなくてもいいかということになると非常に難しゅうございますけれども、現実にそういう相保証ということもありますし、保証人を頼んだら、自分が頼まれたときに必ず保証し直さなければならぬ。そういたしますと、互いに万が一のときがございますと二つの企業ともが共倒れになってしまう、こういうようなこともあるということを十二分にお考え願って、何かいい方法がないのかということをこれからも御研究願うようにお願いしたいのですけれども、いかがでございますか。
  239. 平澤貞昭

    ○平澤政府委員 中小企業者の中には、適当な保証人がなかなか見つけ出せないために融資が受けられないということも間々あるとのことでございますので、いわゆる中小企業者事業資金借り入れにおける保証金にかわる制度といたしまして、現在、中小企業信用保険公庫及び信用保証協会で構成される中小企業信用補完制度の中にそのための仕組みをつくっているわけでございます。いわゆる信用保証協会が無担保無保証人で保証できる特別小口保険制度というものをつくっているのでございます。それからまた、国民公庫等の政府系金融機関そのものにおきましても無担保無保証人の小口貸付制度、通常マル経と言っておりますが、そういう貸付制度もつくっております。そして環衛公庫もこれと同様の小企業等設備改善資金貸付制度というのを実施しておりますので、保証人がなかなか見つからない、しかししっかりした中小零細企業である場合にはこちらの制度を現在使っていくように中小企業庁その他も指導していると聞いております。
  240. 大矢卓史

    大矢委員 今おっしゃられましたように、保証協会で無担保無保証制度がございます。国金は四百五十万やっておりますけれども、国金で四百五十万でできない人が保証協会にいきますと、保証協会の枠は幾らですか。
  241. 平澤貞昭

    ○平澤政府委員 いわゆる一人当たりの保険限度額でございますが、従来は三百万円でありましたのを、今委員もたしか言っておられましたように四百五十万円に引き上げてやっているわけでございます。特別小口保険制度でございます。
  242. 大矢卓史

    大矢委員 大臣、よく聞いてください。今国民金融公庫で四百五十万で、それ以上は保証人が要るという。その人は保証協会でやっておりますからという答弁をされるから、幾らですと僕は聞いた。そうしたら四百五十万です。四百五十万でできるのなら、それは国民金融公庫でできるのです、無担保無保証制度がありますから。同じことをいかにも保証協会でもやっておりますからというような答弁をされると困るのです。国民金融公庫も四百五十万の無担保無保証人の制度があるわけです。これをやっていただいているのです。しかし保証人をつけるのはそれ以上のものをつけるわけです。その場合にどうなんですかと聞いたら、保証協会がやります。保証協会も一応限度は四百五十万なんです。その程度のことで答えられては困るのです。それはなるほど銀行局長さんは大企業のそういう大きな銀行さんのことだけで、中小企業向けの金融のことを余り御存じなくてもいいかもしれませんけれども、そのために私はそのことを中心に聞いているのですから、もう一度そのことを答弁してください。
  243. 平澤貞昭

    ○平澤政府委員 さらに詳しく申し上げますと、国民金融公庫等の無担保無保証人で先ほど申し上げましたように四百五十万でございますが、保証協会を使いますとさらに四百五十万、こういうことでございます。それからさらに、国民金融公庫では原則といたしまして保証人というふうになっておりますが、しっかりした中小零細企業の場合は必要に応じて担保を徴求して、十分な担保があれば免除することも可能というふうになっておりますので、その辺は国民公庫あるいは環衛公庫等において、その実情に応じて対応しているというふうに聞いているところでございます。
  244. 大矢卓史

    大矢委員 保証人がなかったら今度は担保を出してもらったらいいんだということですが、局長は一番初めに、担保力等が非常に不足している中小企業だから国がこういう政策をやっているんだということを言われた。担保があったらそれこそ銀行が黙って貸しますよ。そういうものがないから国の方の中小企業政策としてやっていらっしゃる。  そこで、担保の問題までいきましたのでお伺いをいたしたいのですけれども、有担保の場合にどういう担保のとり方をいたしますか。
  245. 平澤貞昭

    ○平澤政府委員 細かい御質問でございますので、詳しくはまだ私も承知しておりませんが、多くの場合不動産担保であろうかと考えております。
  246. 大矢卓史

    大矢委員 その不動産担保の中に、抵当、根抵当等があるようでございますけれども、この点いかがですか。
  247. 平澤貞昭

    ○平澤政府委員 不動産の場合には、おっしゃいますように、普通の抵当権の場合あるいは根抵当権の場合、両方法律上は担保権設定が可能と存じます。
  248. 大矢卓史

    大矢委員 どういう場合に抵当で、どういう場合に根抵当でございますか。
  249. 平澤貞昭

    ○平澤政府委員 これは具体的な事案を調べてみないとよくわかりませんが、多くの場合、貸し付ける公庫の担当者と借り入れる債務者との間で話し合った上で、担保権の種類を決めているというふうに理解いたしております。
  250. 大矢卓史

    大矢委員 これは大臣、この問題で私、何遍も何遍も大蔵省の人に来ていただいてお話ししているわけで、当然このことで質問させていただくのですから、答弁をされる方には十分にこういうことがおわかり願っておると思っておりましたけれども、御承知のように民法が四十六年に改正になりまして、根抵当という条文が加わったわけであります。本来でありますと、一つの融資を受けますときに、その債権の保全をいたします場合に抵当権をつけていただくということでいいと思うのでありますけれども、それがいつとはなしに根抵当がいいんだいいんだということでつけておられる保証協会等がある。それからもう一つ、先ほど言われましたように、非常に担保力が不足をしておるということでございますと、当然銀行で借り入れる担保というのは銀行が先位でございまして、保証協会等は後順位でもいいのだというこの二つのことについてお答え願いたいと思います。
  251. 平澤貞昭

    ○平澤政府委員 根抵当権につきましては、民法の三百九十八条ノ三という規定が後で入ったわけでございます。最初は三百七十四条の抵当権の規定であったわけでございます。その後、この根抵当権の方が結果的には普通の抵当権よりも、借り入れの場合、割合がふえてきておることも委員のおっしゃるとおりでございます。  それでは、その根抵当権をなぜ利用するかというメリットといたしましては、一定の与信枠を確保するということで、普通の抵当権ですと、債務が減ってまいりますと、法律上限度が落ちて減ってしまうわけでございますが、根抵当の場合は繰り返し使用できるというメリットがあるわけでございます。したがって、普通の場合には何回か設定するたびに登録税その他が要るわけでございますけれども、根抵当の場合は設定時の費用が一回で済むというメリットもあるわけでございます。  それから、普通の抵当権の場合ですと、何度も手続をとらなければいかぬわけですが、根抵当の場合は二回目以降の保証が迅速に受けられるわけでございまして、そういう意味で手続の簡素化、迅速化にも役立つ、さらに複数金融機関の利用も可能という点等々がございまして、根抵当権がふえてきているというふうに聞いているところでございます。  また、政府金融機関の方も、相手との話し合いの上ではございますが、多くの場合こういうメリットを説明しているという事情もこういうふうにふえてきている理由に挙げられるかもしれません。
  252. 大矢卓史

    大矢委員 それでは、済みませんけれども、もう少し根抵当権のメリット、デメリットを御説明願いたいと思います。
  253. 平澤貞昭

    ○平澤政府委員 恐らく、今根抵当権のメリットを申し上げましたが、委員がデメリットではないかとおっしゃいますのは、普通抵当権の場合ですと、損害金やそれから利子等を後で担保するために、法律の規定に従いまして、二年分のそういうものを最初の抵当権で超えて担保されるというふうに法律上の規定になっているわけでございます。ところが、根抵当権の場合はそういう規定がございませんので、通例設定します場合に、それに相当する、元本に対しまして二割程度の金額を多目に限度額を設定しておるという点が問題として委員から御指摘があるのではないかと考えられるわけでございます。その点が考えようによってはデメリット的な要素もあるわけでございます。
  254. 大矢卓史

    大矢委員 もっと明快に説明していただかないと困るのですけれども。大臣が聞いていらっしゃる、大臣がわかるように説明をしていただかないと。  ですから、お金を借りるときに担保を提供しなさいと言われたときに、抵当権の場合はこうこうこうなりますよ、根抵当の場合はこうですよということをはっきりその当事者にわからせて、そしてその選択を任す。普通、抵当を出しますようなときには非常に大きな金額が多かろうと思います。それは建築資金でございますとかいろいろな固定した長期にわたる資金だと思います。それについてお借りするときに、当然私は原則抵当権であると思いますけれども、ただ銀行等で毎月毎月手形の差し入れがある場合には、これはやはり根抵当にしておって、やる場合には毎月毎月変えていかなければならぬ、そんなことをしなくてもいいということで、これは根抵当が便利な場合がございます。しかし、そういうはっきりとした説明もなしに、根抵当の方が便利ですよということだけで根抵当をつけていく、だから利用が多いというような形になっていく。決して利用が多いのじゃなしにそういうふうに持っていっておる。それが、一つには毎回毎回つけ直さなければならぬから便利ですと言いますけれども、大体三年から五年お借りして、次お借りするときに一体今月借りて来月また貸し増しができるような状態になるわけがないわけであります。  そういうことでございますから、やはり少なくとも三分の二お返ししたとき、ですから二年後にならなければならぬとかそういうようないろいろな条件のもとでこれを借りかえをしていくわけである。そのときに、前回一千万だから今回も一千万ということになりますと、事業の伸びがございませんが、当然それはつけなければならぬものにはつけなければならぬわけであります。そして、高くつきますよと言いますけれども、やはり一般と違って公的な国民公庫はその印紙税がゼロであります。千分の四がゼロでありますし、また保証協会等は千分の四が千分の一であります。その千分の一、一千万でございますと一万円の印紙税を払う、そのためになぜ二割、二百万の担保を押さえておられなければならぬのか。このことの不便さを考えますときに、私は、根抵当がいいんだという説明をして、それを根抵当にしていくということ、まずこのことについては承服しかねますけれども、大臣、今のお話を聞いておられていかがでありますか。
  255. 平澤貞昭

    ○平澤政府委員 窓口におきましては、今委員の御指摘がございましたように、この借入者が参りましたときは、根抵当権にするかあるいは普通抵当権にするかという点については相談して選択を行っているというふうに我々は聞いております。  ただ、それにつきまして、今ここで私が御答弁申し上げましたようなメリットあるいは委員が今おっしゃいましたようなデメリットもあるわけでございますので、そういう点を十分相手に説明して、その上でこの借入者が選択するということは、これは重要なことでございます。したがいまして、我々といたしましても、公庫等が適切にこういう問題に対応するように、必要に応じさらに指導をしてまいりたいと考えております。
  256. 大矢卓史

    大矢委員 そういう御答弁でございますと、やはりこれは民法改正にいたしましても、債務者を保護するためにこれだけのものができておると思いますので、その線に沿って、やはり債務者の十二分な納得を得て、そういう担保をつけていただきたい。  そこで、この二〇%という根抵当の割り増しをつけなければならぬというのは、これは銀行の方に聞いても、抵当権の場合には二年間の金利がもし万が一のときにはもらえるということ、そのことだけでなぜ契約の当初に二割増しを取らなければならぬのか、私は不思議でならないわけです。きょうならきょう、まずお貸しをして、その日のうちにつぶれてしまう、だから二〇%、大体一〇%が一年間と見て二〇%を押さえておけばいいんだという、そんなずさんな調査をしているわけがないわけであります。三年でいいますと、これが二〇%といいますと、六カ月でございますか、六カ月もしない間にこれがつぶれていくというようなことが、一体、貸し出しの中でどれくらいの倒れがあって、そして、その倒れの中でも、六カ月以内にどれだけのその不渡りを出す企業があるのか、その点をお答え願いたいと思います。
  257. 平澤貞昭

    ○平澤政府委員 根抵当権の場合に二割程度元本に対して上回る金額を設定させるということにつきましては、民間金融機関も同様にやっているわけでございます。そして、そのようにやっている趣旨は、今委員もおっしゃいましたように、片方の普通抵当権の場合、元本しか抵当権は保証できませんけれども、それ以降の、まあ二年分については利息、損害金等が法律上の規定の第二項によって保証できる。それに実質的に合わせる意味で、一応計算上二割程度ということでやっているわけでございまして、その意味では普通抵当権の場合とこの根抵当権の場合と均衡をとって債権の確保を図っているということでございます。
  258. 大矢卓史

    大矢委員 そういうことを聞いているのじゃないのです。有担保で借りておられる方のどの程度が事故を起こして、そのうちで六カ月なり七カ月の間に事故を起こしたのはどの程度のパーセンテージかということです。
  259. 平澤貞昭

    ○平澤政府委員 これは保証協会の全国の初年度の代弁発生状況でございまして、六十一年度で見ますと、初年度代弁総額分の承諾年度の初年度代弁額が三・%ということになっております。
  260. 大矢卓史

    大矢委員 それは一年間に三・一%ということですか。
  261. 平澤貞昭

    ○平澤政府委員 今の数字は、年度の代弁総額という数字が分母と先ほど申し上げましたが、それを分母にとりまして、承諾年度の初年度分だけの代弁額の比率が三・一%ということだそうでございます。
  262. 大矢卓史

    大矢委員 全体では幾らですか。
  263. 平澤貞昭

    ○平澤政府委員 全国で初年度代弁発生金額は六十八億程度というふうになっております。
  264. 大矢卓史

    大矢委員 何%ですか。
  265. 平澤貞昭

    ○平澤政府委員 先ほど申し上げましたように三・一%、六十八億が三・一%ということになります。したがって、年度代弁総額といいますのはそれの約三十倍ということになります。
  266. 大矢卓史

    大矢委員 ちょっとわかりませんが、担保をつけて貸したものの中でどの程度倒れが、全体で何%ありますか、そして、その中で六、七カ月以内に倒れるのが何%ですかということをお聞きしているのです。
  267. 平澤貞昭

    ○平澤政府委員 この数字につきましては、現在手持ちがございませんので、後ほど委員に御説明に上がりたいと思います。
  268. 大矢卓史

    大矢委員 そのこともちゃんとお話をしてあるわけです。ですから、私が言いたいのは、借りたうちでどれぐらいの担保の人たちが取引不能になっていくのか。また、そのうちで六、七カ月の間、俗に今言われました二〇%といいますと三年でございますと六、七カ月になるわけですから、その六、七カ月の間にどれだけの事故率があるのか。それによって、今の三・一%というのがそういうことで一年間ということですから、これよりも少ないと思いますけれども、そういうことであるなら、担保をつけておる全体の中で三・一%しかないのに、その残りの九七%の人たちに二割増しの担保を強要しておるというばかなとり方はないと思います。何も事故を起こさない人たちが二〇%余計に担保をとられておる。こういうような運営そのものが私は不思議でならないし、そういうことがあってはならないと思います。大臣、いかがでございますか。
  269. 平澤貞昭

    ○平澤政府委員 仮に年間に貸したものの三・一%が貸し倒れいたしますと、その部分をロスとして計算いたしますと、結局その分が次回以降の保証料としてはね返ってまいりまして、結局ぐるっと回りますと中小企業者への保証協会の保証料を上げるということにならざるを得ないわけでございまして、その部分のある程度は財政資金で無利子の金を保険公庫あるいは保証協会に間接的に流れるようにいたしておりますので、保証料を引き下げる方向で政府としてはたしか年間百億円以上のそういうお金を入れているわけでございます。したがって、そういう点を考えますと、保証協会で保証をいたします場合も、通例の部分につきましては、そういう部分の保証を常識的に必要な範囲におきましてはそれを保証する、こういうことで対処していかざるを得ないのではないかと考えるわけでございます。
  270. 宮澤喜一

    ○宮澤国務大臣 それは非常に具体的なことで私にもわかりにくいのですけれども、要するに、優先弁済の範囲について民法三百七十四条によるのか三百九十八条ノ三によるのかということの問題だと思うのですから、確かにしようとすれば三百九十八条ノ三で根抵当を設定する。それが限度額二割ぐらい大きくなるということはございますでしょうけれども、優先弁済を確保しようとすればやはりそういうことになるということではないのかと思います。しかし、もしそれはいかぬではないかということになれば、それだけリスクが大きくなりますから、今局長が申し上げましたように保証料が大きくなる、こういう循環ではないかと思いますけれども、私も実は定かにはわかりかねております。
  271. 大矢卓史

    大矢委員 大臣がわかりにくいような説明局長がしてもらったら困るのです。局長が先ほどから言うておるのは、この三百七十四条は、債務者が話し合いの上で決めるべきだ、選択はその債務者にあるのだということを言われたのです。ところが、大臣の答弁がまた逆に戻って、三百九十八条の根抵当でいいのだというようなことを言われたら困るのですわ。もう少し聞いておいていただかないと困りますわ。  そして、この二割増しについても、保証協会なり中小企業信用保険公庫ですか、こういうものの存在価値が一体どこにあるのか。そのためにおのおの保険においても損害率というものを認めておりますから、またこの保険公庫もそれだけのものを国から出資して、そのために、中小企業のためにやっておるのです。それが、今言われますと銀行と同じような形でやるのだということなら、こういう制度そのものが要らない。だから、当初私がお聞きしたのは、何のためにこういうのが要るのですかということをお聞きしたのです。こうこうこういうことで担保力の弱い中小企業のためにやるのだと言っておきながら、しまいには要らないような話をする。一体中小企業対策はどういうことになっているのですか。銀行局長は確かにいろいろな全部のことをやらなければならぬので小さいことまで行き届かないことはわかりますけれども、そういうことを、現実に中小企業の方たちが毎日毎日利用しているこの問題について、いろいろな問題を私も三十八年から大阪府会でやってきて、浪人の間も続いてこの問題をお世話してきて、いろいろな矛盾な問題を抱えてきたからこの問題を解決しなければならぬということで、常にこの問題について各委員会で言っておるのです。当然保険公庫、また保証協会については、通産省のときにも申し上げますけれども、やはり大蔵省とも共管でやっておられるということですから私は聞いておるのです。  また、これから後の処理の問題につきましても、この問題で非常に不愉快な、不明朗な処理の仕方がございます。普通銀行でございますと、やはり事故が起きましたらそのときにいろいろなお互いの話し合いの中で解決をしていく。しかし必ず保証協会が言いますことは、私どもの返済金というのは金利には充当いたしません、元金の方に全部返すんですよ、ですから元金の方を返すから安心して納めてくださいということを言って、最後まで参りますると、今度はこの一二〇%の根抵当がございますからこれから話し合いをしようということで、この保証人なりそこらが代位弁済をいたしますものについても一二〇%の担保力を盾に最後まで迫っていくわけであります。個人なり、また企業として倒産をする、中には悪い人があるかもわかりません。それは例外であって、まじめにやっておった人が倒産をした場合に、これが整理をしていくときに、一つの人間が死んで、また企業がなくなっていく、それは非常なことであって、そこをまた再起できるようにやっていただく温かい処置をしていただくのが当然だと思いますけれども、その根抵当の一二〇%があって、その段階で話をしないで、金利につきましては最後に話をしましょうということで金だけ入れさせて、最後になったら一二〇%あるからここから話をしようということは余りにもえげつないやり方だということで、私はこれらのことについても保険公庫に聞きますと、私どもはそのような考えはございませんので、それは保証協会の窓口がたまたまそういうことを扱っておるので、減免措置というのがございますから、理由を付して出していただいたら、それは私ども認めるのにやぶさかではございませんということを言っておるわけであります。それらについていま一度、もし万が一のときがございましたら、そのときの処置についてもっと温かい現実的な解決を、都市銀行ではそのようなことで解決を幾らでも見ておるわけであります。保証協会でそのようなえげつない解決をしておる。それは会計検査院なり、また保険公庫がと言って責任を転嫁いたしますけれども、そういうことは一切言っておりませんということで私はお答えをもらっておって、それについてはまた通産省のときにお聞きいたしたいのですけれども、少なくとも大蔵省、指導される場合に、今の局長さんのように、それが保証料に回っていくんだということの考え方でなくして、やはりこうやって予算も認めて、追加してどんどん予算を出しておって、それが中小企業対策なんですから、それを出しておるのに、今のようにまた話が、中小企業の人にみんなに回っていくんだからこれは仕方がないんだというような答弁では私は納得できないのです。いかがでございますか。
  272. 宮澤喜一

    ○宮澤国務大臣 今のようなときは比較的金が緩んでおりますし、民間の金融機関の金利も非常に低うございますけれども、御承知のようにいっでもこういうときではありません。戦後を顧みますと、大体こういうときではなかったわけであります。そういう中で中小金融機関がいろいろな役割を果たしてきた。殊に中小企業は信用も担保も弱うございますから、いわば近代化資金であるとか、あるいはその後公害のためであるとか円高であるとかいろいろな制度でやってまいる。大矢委員がその実態について非常によくお世話なすっていらっしゃって、私どもが気のつかないところを御指摘いただいたことは私は感謝いたします。いたしますが、恐らく金融機関の立場あるいは信用保証協会の立場になりますと、まさに会計検査院もありますし、保険公庫もございますから、やはり金を貸すとなると、それは貸す側の論理というものがあってどうしてもかた目かた目ということになってくるということは御理解いただけることではないかと思います。ルースにしていいということをおっしゃっていらっしゃるのではありませんけれども、しかし民間の銀行のように自分の裁量で勝手にできるという金ともこれは違いますものですから、幾らかその辺が大変窮屈になっていて、場合によっては非常に零細な借り手でございますだけにいかにも残酷ではないかというような感じを持たれる場合があるかもしれない。あるいはひょっとして数多くの中には現実にそういうこともあるかもしれません。私どもよくその点は注意をさせていただきたいと思います。
  273. 大矢卓史

    大矢委員 時間が参りましたので、非常に声を荒立てて、失礼なことを申したかと思いますけれども、やはり保証協会なり保険公庫というのはそういう万が一のことがあってはならぬということでの保険でありますから、その保険に基づいて各府県なり市は倒れを予算でちゃんと見ておるわけです。私はいつでも決算等で言っておりましたけれども、府なり県なり市が認めておる金額、それをできるだけ少なくしたらいいんだということでなくして、与えられた金額いっぱいにそういう危険性のある企業も保証していくべきだ。ですから保険公庫も、これは保険公庫が出そうと思っている倒れではないわけでありますから、政治の動向によって、また景気の動向によって中小企業が倒れていって、それだけの代弁ができたわけでありますから、その点予算でどんどん認めていっておる中においては、それは私は保険公庫を責め保証協会を責めるのでなしに、やはり基本的にこれができた時点でのその精神をもっともっと生かしていただきたい、このことを最後にお願いして、終わらせていただきます。
  274. 野中英二

  275. 野間友一

    野間委員 私はきょう大蔵所管最後の質疑者でございます。宮澤さん、大変お疲れだと思いますけれども、よくお聞きいただきたいと思います。  日米の税金摩擦、税金戦争といってもいいと思います。非常に深刻であります。トヨタ、日産の自動車メーカーの例、中心がいわゆる移転価格の課税の問題であります。これで終わるのでなくて、今後ますますこれが深刻になるというようなことが昨今の情勢の中で非常に問題になっております。そこでこの問題について私の方で幾つか質疑をしたいと思いますので、よろしくお願いしたいと思います。  今挙げました日産あるいはトヨタについてでありますが、大蔵省国税庁は両社に対しまして、既に徴収済みの法人税、合わせて約八百億円を還付いたしました。これは、アメリカの内国歳入法四百八十二条、いわゆる移転価格課税を両社の米国子会社に対して発動し、日米租税条約による当局間の相互協議の合意に基づく措置としてこういうのがやられたわけであります。日産について言いますと、一九七五年度から一九八五年度までの十一年間、約五百八十億円、トヨタについて言いますと、一九七九年度から五年間分約二百二十億円、合計国税だけで合わせますと約八百億円を昨年からことしにかけて両社に還付したわけであります。まずこの事実について確認を求めたいと思います。
  276. 日向隆

    ○日向政府委員 日米租税条約に基づく相互協議をいたしました結果、それぞれの合意に基づきまして、それぞれの国内法に基づいて処理した内容についてのお尋ねでございますけれども、私どもといたしましては、御承知のように、日米租税条約第二十六条で条約上の守秘義務を負っておりますし、またこの移転価格課税と申しますのは、委員も御承知と思いますけれども、企業の価格形成についてそれが国外関連者間との取引において価格が設定された場合、純粋の第三者における価格と比較いたしまして恣意的に価格設定が行われる可能性がある、それで、アメリカは御案内のように四百八十二条というかなり強力なこういった場合における措置をする規定を持っておりまして、既に歴史は相当古いわけでございまして、一九六一年から国内取引のみならず国外取引についてもこれを強力に適用しようとしてきているわけであります。したがいまして、そういったアームズ・レングス・プライスと国外関連者間の取引の場合の価格設定の差によりますいわば利益調整というものに対する課税ということでございますので、こういった問題につきまして私どもがこれを具体的に相互協議の場でいろいろ協議しますときには、よほど突っ込んだ事実関係、これを前提として協議する必要があるわけでございまして、私どもといたしましても、今回こういった事実関係に関するデータを収集するに際しましては質問検査権というものを使いまして企業の価格形成の実態を的確に把握した上でこれに対応しているわけでございます。したがいまして、これについて具体的に申し上げることになりますと、その質問検査権に基づいて収集したデータ等について申し上げるということにも相なりかねないわけでございますので、したがって国内法に規定されております、つまり所得税法、法人税法、資産税法等に規定されております守秘義務の観点からいたしましても、これについて私どもから具体的に申し上げることは差し控えさせていただきたいと思うわけであります。  ただ、委員が御指摘になりました還付金額等につきましては、私どもも去る昨年の十一月二十七日以降各種の新聞報道等で報道されていることは承知しておりまして、その報道されている内容につきましてはこれをあえて否定するまでには至らないという実情でございます。
  277. 野間友一

    野間委員 あらゆるところでこれはオープンになっておりますので、ただ、今、日向さん言われたように、私が申し上げた事実関係については新聞報道という形であえて否定しないと、これは昨年十二月の大蔵委員会での矢島質問に対する答弁、まさにそうですけれども、これは認められたわけであります。  これは大変なことだと思うのですよ。日産については十一年間遡及しておるわけですね、五百八十億。トヨタについては五年間遡及して二百二十億。つまり一たん徴収した国税がこれだけさかのぼってトータルで約八百億円が還付される。みんなの税金ですよね。国税収納金整理資金からこれは還付されたわけですがね。だから、これは一体どうなっておるのかということをみんな国民が知らなければならぬのは当然だし、この事実をぜひ明らかにするべきだと思うのです。まあ、あえて否定しませんでした。  そこで、自治省にお聞きします。  この国税還付にリンクして今度地方税でありますが、この還付が行われました。私もかなり調べました。その結果、還付された自治体が十六都道府県、五十五市町村であります。日産で言いますと約三百五億円、トヨタで言いますと百十七億円、これまたトータルしますと四百二十二億円という膨大なものが還付されたわけであります。これは私は、法人事業税それから法人県民税、市町村民税、このトータルで申し上げたわけでありますが、少し内訳を言いますと、日産が十四都道府県で二十八市町村、トヨタが十一都道府県で三十二市町村、私もかなり相当調査をした結果こういうのが明らかになっておりますが、まずこの事実を確認していただきたいと思います。
  278. 小坂紀一郎

    ○小坂説明員 ただいまのお話の自動車メーカーの二社に対しまして移転価格税制の適用によりまして法人事業税、法人住民税の還付が行われたわけでございますが、その団体はそれぞれ十一都道府県、三十二市町村並びに十四都道府県、二十八市町村でございます。  なお還付の総額は、都道府県分が三百二十億円、市町村分が百三億円、合計四百二十三億円と承知しているところでございます。
  279. 野間友一

    野間委員 これまた膨大なものなんですね。  これはいずれも「自治省にお聞きしますが、これは補正予算で既にオープンになっておりますから問題ないと思いますが、先ほど申し上げた日産の場合には一九七五年から八五年にかけて十一年間、トヨタについては七九年から八三年、この五年間ですね、こういうことになっていますね。
  280. 小坂紀一郎

    ○小坂説明員 国税当局からそのような説明を受けているところでございます。
  281. 野間友一

    野間委員 ですから、国税とリンクしていますから、自治省の掌握の中でも、これは各予算案の中でもう明らかになっておりますから否定のしようがないわけで、それとリンクして今指摘したような遡及した期間、これは還付されたということですね。
  282. 小坂紀一郎

    ○小坂説明員 地方団体の法人関係税の仕組みとして、既に御承知のように法人の住民税はこの課税標準が法人税額そのものでございます。それから法人事業税の方は国税の法人税の所得の計算の例により所得を計算するということになっております関係上、国税における措置がそのまま自動的に地方の法人関係税にはね返るということになります。  なお地方団体においては、これは過年度分の税額の還付でございますので、すべて歳出予算に計上して予算から支出をしている、こういう実態でございます。
  283. 野間友一

    野間委員 これは日向さん、本当に大変だと思うのです。大蔵大臣もよくお聞きいただきたいと思うのですが、これは前代未聞なんですよ。OECDでもいろいろなモデル計算して、どうするべえかというようなことで、これからこれをガイドラインなり何らかのそういう国際的な一つの基準をつくらなければならぬというような状況なんです。まだ固まってないわけですね。  しかもこれだけさかのぼって、十一年間もさかのぼって、そして既に徴収済みの税金を還付する。これはトータルして地方税合わせますと千二百億円ですからね。それはもうむちゃくちゃなんですよ。これは前代未聞です。  なぜこうなったのか。こういう事態が本当に定かになっていない。先ほど日向さんも、新聞報道を介して先ほど申し上げたように事実を認めましたけれども、この中身はやはり明らかにするのが行政の責務だと私は思いますし、あるいはこの国会での私たちの責務だというふうに思うわけであります。  そこで、まずこの問題の経緯についてお聞きしたいわけですが、この発端は一九七五年なんですね。昭和五十年。日産あるいはトヨタ初め世界で二十八社、自動車メーカー、これはヨーロッパもおりますが、この対米輸出の価格が不当に安い、つまりダンピングだ、こういうことでこれが提訴されました。ところが、これは間もなく日本の会社についてはその事実はないということでシロになったわけですね。これは翌年であります。  ところがその直後に、今度は百八十度転換して、一九七八年ごろですが、今度は日産、トヨタ、本田、これは日本の自動車メーカー、この三社の対米輸出価格は今度は不当に高い、その部分米国内の三社の販売子会社の利益が圧縮されている。したがって、米国に納めるべき税金が過少申告になっておる。こういうことで、アメリカの内国歳入庁、IRSが税務調査を始めたわけであります。日本側はいろいろ反論しましたけれども、結局、らちが明かずに租税条約の二十五条に基づく相互協議に持ち込まれた、こういう経過ですね。  つまり、日本の会社がアメリカに輸出する価格が不当に安過ぎる、ダンピングだということで関税局がどんどん調査しまして、そうじゃありませんと言っていろいろ資料を出したところが、今度は逆に、それはシロだ、しかし高過ぎるのではないかということで、向こうの方から四百八十二条を使ってきたという経緯ですね。この事実は間違いありませんね。
  284. 日向隆

    ○日向政府委員 先ほども申し上げましたように、米国歳入法第四百八十二条によりますと、いわゆる独立第三者間の取引価格、これをアームズ・レングス・プライスといっておりますけれども、これと比較いたしまして、関連者間の取引価格が不当に高い、ないしは安い場合には、そこに所得の調整あるいは利益の調整があるというふうにみなしまして、これを事後的に調整するように、訂正するようにということで、日本から輸出する場合にはこれは高い価格だというふうに判断いたしまして、日本の国内における親会社の所得が多過ぎて、アメリカの中に所在する日本の子会社の所得が少な過ぎるということで、所得の調整を要請してくるわけであります。逆の場合もまたあり得るかと思います。
  285. 野間友一

    野間委員 いや、私はいきさつ、経緯を聞いたわけです。  ダンピングでやってきて、それがシロと出ると、今度は逆に高過ぎるといういわゆるトランスファープライシングにひっかけてきた、こういう経緯でしょう。
  286. 日向隆

    ○日向政府委員 私ども国税庁といたしましては、日米租税条約を誠実に執行する観点から、納税者ないしは米課税当局から相互協議の申し出があった場合に相互協議に応ずるというスタンスでございますので、それ以前の事柄につきまして責任を持って答えかねることを御理解いただきたいと思います。
  287. 野間友一

    野間委員 先月十日のNHKテレビをごらんになったでしょうか。特集番組がありましたね。「世界の中の日本・なぜ税が問われているのか」、私もビデオを撮りまして何遍も見ました。この中で、日産の海外経理部長の白井忠弘さん、この方自身が登場しまして、インタビューに答えて自認しておるわけです。こう言っております。これは正確です。「私ども自動車業界が、ダンピング問題で調査を受けたことがございまして、このダンピング問題というのは、シロの判定が出たわけでございますけれども、その直後に、今度は、それまでとは百八十度いわば変わった問題として、この「移転価格問題」が出てきたわけでございます。当然、私どもは、私どもの価格適正さにつきまして、いろいろと主張したわけでございますけれども、IRSの了解を得られるに到らなかったものですから、この問題は、私どもにしても、先例のないことであるし、それから二重課税のおそれもあるということで、日米租税条約にもとづいた当局間の協議をお願いしたわけでございます。」はっきりその日産の担当の幹部が述べておるわけですね。自認しておるわけですよ。今さら日向さん、別に隠す必要はないわけですよ。経緯はこうでしょう。
  288. 日向隆

    ○日向政府委員 今委員が御引用になりましたNHKテレビでそのような事実が放映されたということは、私も間接的に承知しておりますが、本席で私がその経緯についてお答えするだけの正確な知識は持ち合わせておりませんので、重ねて恐縮でございますが、それについてお答えすることは差し控えさせていただきたいと思います。
  289. 野間友一

    野間委員 こんなことで突いたり引いたりするのは嫌ですけれども、NIRAの本がありますね。「国際租税法上の諸問題」、御存じでしょう。これは政府機関ですからね、NIRAそのものが。総合研究開発機構ですね。この中でちゃんと、アメリカのIRC、内国歳入法四百八十二条とオートケーセス、ここでトヨタ、日産の名前を挙げてはっきりいろんなことを全部書いてありますよ、今のいきさつについても。百二十一ページからです。読んでいないという法はないわけで、日向さん、全部知っておるわけですよ。そうでしょう。
  290. 日向隆

    ○日向政府委員 私の不勉強を露呈するようで大変答えにくいのでございますけれども、今委員指摘の本及びその箇所については私は現時点では読んでおりません。
  291. 野間友一

    野間委員 これは政府機関ですから、シンクタンクですからね、ちゃんと活字になっていますよ。それは隠したってだめですよ。なぜ隠さなければいけないのかよくわかりません。後からまたいろいろな角度から取り上げてみたいと思います。いずれにしてもそうなんですよ。日産の人はちゃんと言っております。  そこで、まずこの所得の再配分、つまり調整について具体的にお伺いしたいと思います。今、日向さん見ておりましたか、この合意ができたのは去年の六月、あなた自身が飛びまして九日から十四日まで滞在して合意をした、これは間違いありませんね。
  292. 日向隆

    ○日向政府委員 今委員が御指摘になりました期間、私がワシントンに滞在してIRS当局といろいろな交渉をしたことは事実でございます。
  293. 野間友一

    野間委員 ここで合意したんですよ。当時は調査査察部長をやっておられたわけですね。あなたは国際租税の大変なエキスパートのようですけれども。結局、去年の六月に、さかのぼって日産の場合には十一年間、トヨタも同じようなケースですから、日産について私申し上げたいと思いますけれども、ここで合意がされたわけであります。間接的には日向さんも認めたわけであります。  IRSのロサンゼルスの税務署が調査を開始したのが先ほど申し上げたNIRAの書物の中にも出ておりますが、昭和五十三年の二月ごろですね。そうしますと、十一年間さかのぼって、つまり年度ごとの所得調整、税金の調整じゃありませんから所得の調整ということでやったわけでしょう。
  294. 日向隆

    ○日向政府委員 既に本院において私再三御説明を申し上げておりますが、日米租税条約に基づきます二重課税の防止といいますのは、四百八十二条の移転価格課税の性格からいいまして、そこにおきます所得の適正配分ということでございますので、今委員指摘のとおり所得の配分の問題でございます。
  295. 野間友一

    野間委員 いきさつそのものが全くアメリカが理不尽なことで終始をしてきた。シロとクロと全然逆のことでやってきたわけですけれども、これではたまったものじゃない。まさしくジャパン・バッシングと言ったって差し支えないと思うのですね。  そこで、調整の時点というか遡及の問題について聞くわけですが、IRSでは、輸出価格が不当に高い、米国の販売子会社の利益が圧縮されておったとして十一年間も遡及したわけでありますが、遡及せずに現時点から将来に向かって何らかのガイドライン、ルールづくり、こういうようなことでけりをつける、合意をするということが政府のとるべき態度であった。十一年間もさかのぼって所得の調整をするとはとんでもない話だ、こう言わざるを得ないと思うのです。なぜこういう事態を招いたのか。私はアメリカの圧力に屈したとしか考えようがないわけですね。遡及しないで調整するというのがそもそも世界の常識じゃありませんか。
  296. 日向隆

    ○日向政府委員 今御指摘の点につきましては、額が巨額であるということとも相関連する面がありますので、私から委員の御理解を得たいと思いますのは、よく御存じと思いますけれども、アメリカにおきます制度と日本におきます制度とは多少様相が違っておりまして、少なくとも二つの点で違っております。  一つは、アメリカにおきましては、挙証責任は納税者側にあるわけでございまして、日本は逆に課税当局にある。したがいまして、アメリカの課税当局がある課税措置を行ってこれを納税者に通知いたしました場合、納税者といたしましては、これに不服がある場合には、まさに委員指摘のように額が大きければ大きいほどやはり問題があるわけでございますので、これについて不服であるということを米国課税当局に証明する必要があるわけでございます。そのためにはやはり相当な期間をかけて資料、情報の収集をしなければいかぬということでございますので、通例は過少申告の場合アメリカにおきましても時効は三年でございますけれども、こういう場合には納税者の方から課税当局との間で時効の延長に同意するということを行います。そういう時効の延長の同意が行われますと、この期間だけは時効が延びるわけでございまして、こういった時効の延長に同意するという制度があること及び挙証責任が納税者側にあるという日本と違った事情がこの間に介在しているということについて御理解をいただきたいと思うわけであります。
  297. 野間友一

    野間委員 そんなこと知った上で聞いておるのですよ。それはもう前提ですよ。挙証責任は納税者にあることは知っていますし、三年の直前になれば向こうは時効中断のいろいろな手続をするように要請も来るわけですよね。そんなことじゃないのですよ。これは、遡及して所得調整するというのは別に義務じゃありませんから、合意そのものは遡及してもいいし、現時点だっていいわけですからね。だから、それをなぜ十一年間もさかのぼって遡及したのか。私はアメリカの圧力に屈したとしか考えようがないということを申し上げておるわけですね。  五味雄治さん、既に五十九年に国際租税担当の審議官がやめられましたね。この人は国際租税のエキスパートであったと思いますが、いかがでしょうか。
  298. 日向隆

    ○日向政府委員 大変恐縮でございました。私は今の答弁で後半の部分を十分に答弁いたしませんでしたので、補足して答弁をさせていただきます。  時効の延長に同意した場合、その期間が延びるということについては御賢察いただいたと思いますけれども、なぜ将来にわたってしなかったかという点でございますが、四百八十二条といいますのは、むしろ事後的に、その既に行われた所得なり利益について行われるわけでございまして、将来にわたってそういう所得の調整を行うということではございません。したがいまして、これは過去において行われた事実に対して事後的にそういう米課税当局の判断が行われ、これについて条約上の義務によって相互協議をしたということでございますから、この点はぜひ御理解をいただきたいと思うわけであります。  それから、今お尋ねの五味氏につきましては、私も国際租税に関する専門家としてよく聞いているところでございます。
  299. 野間友一

    野間委員 先ほど申し上げたように、こういう移転価格の課税の問題についてはこれからどうするかということ。アメリカは確かに国内では州間でいろいろやっていました。しかし、国際的にはこれからの問題なんですよね。OECDだって、今申し上げたようにこれからどうしたらいいのかということを今いろいろ協議しておりますよね。そういう段階ですよ。だから、これはさかのぼってやらなくたって、合意というのは一つの妥協ですから、今の時点でルールづくりをするということで合意はできるわけですよ、可能なんですよ。  先ほど申し上げた五味さん、この方が「インターナショナルタクセーション」という雑誌にいろいろインタビューに答えて書いておられます。これは一九八五年の十二月号、ですからもうやめられた後ですけれども。この人が国際租税について当時は一番よく知った方だったと思うのです。こう言っていますよ。特に自動車の名前を挙げながら、こうした自動車の取引価格のような多量の取引の価格の更正は遡及しないで、今後の価格設定について納税者側と米国の課税当局さらには日本の課税当局とも話し合って是正していくことによって、今日のような税金摩擦の問題とか二重課税の問題も排除していくべきじゃないかと思います、これは随所に言われておるわけですよ。これはインタビュー記事ですがね。やはりこれからの問題ですから、過去は問わないで、今後はこうした価格設定にすべきではないかということにすれば問題は解決する、随所にそういうことが書いてあるわけです。これは当時の国際租税の最もエキスパートが、あなたの先輩がちゃんとこういうふうに言っているわけですよ。ところが実際には、けりのついた合意を見ましたら、今申し上げたように十一年間もさかのぼってやっておる。私は、これはやはりどうしても不可解で、認めるわけにはいかぬわけです。  SGATARというのがありますね。これは日本、オーストラリア、韓国、ASEANの税務担当の長官会議。五味さんのこの書き物を見ましても、「SGATAR加盟の各国の経験豊かな長官の話を聞いても、遡及しないで、進行年度或いは、それ以降の年度で調整するのが本筋という意見が定着しています。」だから、SGATARでは少なくともこういうことで各国の長官の意思は定着しているというふうに書いているわけですね。私はそうだと思うのです。ですから、なぜさかのぼってやられたのかということで、私はますます不思議になってくるわけです。しかも宮澤さん、あなたは当時大蔵大臣だったのですよ、去年の六月、日向さんが行ったとき。だから、今申し上げたように、行政担当のエキスパートがさまざまなことで現時点において将来に向かってけりをつけるのだ、それが正しい解決だと、自動車の名前まで挙げながら、はっきりこう言っていられるわけですよ。  これは去年の十二月に我が党の矢島さんが大蔵委員会で質問したときに、日向さんが答えて、その後宮澤さんは、国税当局の言うのは理路整然としているということを言われていましたけれども、私はやはり、遡及せずに新しいルールをつくるという観点から去年の六月になぜ合意しなかったのか、その点について宮澤さんは権限ある最も直接の責任者ですから、お答えいただきたいと思うのです。
  300. 日向隆

    ○日向政府委員 委員のおっしゃるのは、私、もっともだと思うこともございます。といいますのは、ある日突然事後的にこの四百八十二条を適用されて移転価格課税を行われるということになりますと、それは企業にとっては大変困った問題でございますし、二重課税も発生すれば、私ども日米租税条約の誠実な執行という観点からこれに対して誠実に協議をし、合意が達成されればこれに対してそれぞれの国内法に基づいてその手続をとるということになるわけでございまして、そういうことがある日突然事後的に行われることはやはり双方にとって決して好ましいことではございません。  したがって、委員に御理解いただきたいのは、そういう課税事実がなければ私どもそういうことはしませんから、したがって問題を発生しないわけでございますけれども、将来に向かってそういった問題が発生しないように日米課税当局間でこの移転価格課税についての共通の認識を持つための努力をするという必要は御指摘のとおり大いにあろうかと思います。現にそのために日米間におきまして、これは産業別共同研究といいまして、私の記憶では昨年の一月からこれがスタートしておりまして、私ども移転価格課税という税制を一昨年のたしか四月以降開始する事業年度からいただいておりますので、日米両国間において移転価格課税の共通の認識を得るために産業別の共同研究をしよう、それによって両当局間ないし納税者がいわば安心してといいますか、将来に向かってある程度の安定感を持っていろいろな問題を考えることができるように努力しようということで、これは日米両課税当局間で既にその共同研究はスタートしているところでございます。この点は委員のおっしゃることを踏まえての措置である、かように考えております。
  301. 野間友一

    野間委員 いや、私が聞いたのは、日産の場合を特に言いますと、十一年間さかのぼっているわけでしょう。いろいろな経緯はあるのですよ。向こうが課税してきたからそれはそうなったという答弁のようでしたけれども、合意するときに、遡及しないで、現時点で新しいこれからの課題としてそのルールづくり、そういうものを中心にやるべきだし、やらなければならなかったということを申し上げているわけです。だから、私はその点で大蔵大臣宮澤さんの責任も非常に大きいと思うわけであります。時間がありませんから後でまた触れますが。  ちょっと済みません。私のつくった資料を参考までにお配りしたいと思います。  その前に一言だけ主税局長にお聞きしておきたいと思いますが、所得調整をしますよね、これは遡及してやります、十一年間やりました。この為替レートですが、これはその都度事業年度、取引が行われたその時点のレートで所得の調整をするということは間違いありませんね。
  302. 日向隆

    ○日向政府委員 所得の調整は、先ほどから申し上げておりますとおり各事業年度の所得について行われておりますので、その金額はまずドルで行われるわけでありますから、したがってそれを円価に換算する場合は、その事業年度における為替レートで円価に換算するわけでございます。御指摘のとおりでございます。
  303. 野間友一

    野間委員 宮澤さんも日向さんもちょっとこれをごらんいただきたいと思います。これは、私がいろいろな人の知恵をかりて非常に苦労してつくった試算であります。これは日産自動車グループのケースです。結論からいいますと、この移転価格の課税によって、私どもの計算では、日産が二百十六億円、これは国税の分ですね、法人税、それから地方税の還付金が約三百億ですから、これを合わせますと五百十六億円、これだけ差益やその他でもうかった、こういうことになった試算であります。  ちょっと若干説明しますと、為替レート、これは大体その事業年度の平均をとったわけであります。今も例の円高でずっとこういう推移をたどっております。一九七五年から八五年まで、昭和六十年までやったわけですね。米国での所得調整によります各年度ごとの所得のふえた分、これがドルで表示をしております。合計五億七千八百万ドルであります。これに見合う分を日本で既に納入済みの法人税から引かなければならぬ、税金ではなしに所得を減額しなければならぬ、こういうことになりますよね。この米国での増額所得と日本での減額所得、これはイコールです。そうしますと、五億七千八百万ドル、これだけアメリカで所得が増額される。日本でこれに見合って千三百三十七億三百万円、これだけ所得が減額されるわけですね。  あと説明を書いておりますが、日本の法人税率、これは七五年度からいろいろあるのですが、一応非常に高目で四三%というふうに組みまして、千三百三十七億三百万円に税率四三%を掛けますと五百七十四億九千二百万円、約五百七十五億ですね、これが日産自動車に還付された額であります。冒頭に申し上げた五百八十億円というのはほぼこれに合うわけですね、計算してもちゃんと合うわけです。  次に、二番目ですが、米国の法人の連邦所得税率、これは同じ期間を四六%、最高に見たわけです。五億七千八百万ドルにこれを掛けますと、二億六千五百八十八万ドル、これだけ追徴されるということになるわけですね。  ところで、これは要するに日本で還付されて、これをアメリカの歳入庁に税金を払うわけですからね。そうすると、去年の十一月にこれは実は還付して向こうへ追徴を納入しているわけです。当時はドル百三十五円ですから、二億六千五百八十八万ドル、これが百三十五円で約三百五十九億円というお金が出てくるわけですね。五百七十五億円還付されて、実際にアメリカに送ったのは三百五十九億で済んでおりますからね、円高差益で。五百七十五億から三百五十九億を引きますと二百十六億円、だから、国税のこういう所得の調整による操作で二百十六億円、円高差益で日産がそれだけもうかる、こういうことになるわけですね。それに先ほど申し上げた地方税、これは還付金、自治省認めましたけれども、約三百億円、五百十六億円になるわけですね。だから、差し引きとんとんとかだれが得だれが損でなくて、結局、日本の既に納付した税金からごっそりアメリカに持っていかれる。それじゃ日産は得したのか損したのかというと、こういう格好で五百十六億円ももうかっておる。地方税についていいますと、カリフォルニア州はユニタリータックスの制度、合算税制をとっておりますから、今度の調整はほとんど関係ないわけで、地方税で還付を受けた分は丸々日産の懐に入る、五百十六億円ももうける、こういうふうになるわけですね。いかがですか、日向さん。
  304. 日向隆

    ○日向政府委員 ただいまこの資料を初めて本席で拝見しましたものですから、その数字の的確性等についてお答えすることは差し控えさせていただきたいと思いますけれども、今委員がおっしゃいましたような所得の調整が各事業年度において行われ、そこにおいて現在のレートと当時の事業年度における為替レートの間に差が存在し、それに基づいて為替差益が発生するということは事実だと思います。
  305. 野間友一

    野間委員 そういうことですね。今まで私もいろいろな物の本を読んだのですけれども、差益で日産がこれだけ得をすると書いたものはなかったですね。それで差益が出ることは、日産の工場があります福岡県の苅田町、そこでも公式に議会で江島という課長さんが答弁しておるのですね。「企業に問い合わせた結果、為替差益については企業の所得になる。」そうなのですよ。だから、私のいろいろな勉強の結果ですが、地方税は丸々日産に入る。国税だって差益で、私の計算によりますと、これはラフな計算ですから多少誤差はあると思いますが、しかし、比較的私は精査して検討して、いろいろな数字を調査研究した上でつくったものでありますから、そう誤差はないと思うのです。  こんな解決が許されるかということですね。これは恐らく日向さんも、アメリカで公表されて、あなたまじめですから、いろいろな矛盾を感じながらやはりしょうがないということでやられたと私は思うのです。こんなことを許してはならぬ。まさしく国の税金は持っていかれるわ日産は得するわ、地方税はがっぽり持っていかれて、座間においても、私もいろいろな資料がありますが、高額な税還付によって財政は逼迫しておる。国保に対して一般会計からの繰り入れが三〇%も昨年に比べて減額する、どこでも四苦八苦なのですよ。福岡の苅田町でもそうですよ。ここでもいろいろな公式な答弁がありますけれども、えらいこっちゃ、どうしたらいいのかね、本当に迷う。この間のNHKのテレビでも、苅田町の町長さんが出ましていろいろ言っておられました。こう言っておりますよ。「どうしてこんなことになるのか信じられない。そういう制度あることも知りませんでした。町税の約一割を超える金額で、大変大きな負担になることは間違いない。」これが苦悩の表情を浮かべた沖さんという苅田町の町長さんのインタビューの中身であります。これも私もビデオに撮りましてつぶさに見ました。つまり、地方自治体でもいろいろな形でしわ寄せが出ているのです。これは例えば財政調整基金の取り崩しをしたらいいではないかとか、あるいは自然増収があるから何とかいけるのじゃないかとか、いろいろなことを自治省は言われますけれども、実際今まで十一年間ずっと税金を受けてそれでいろいろな事業をしてきたわけですよ。それがごっそり、苅田町のごときは予算の一割還付しなければならない。これは還付していますよ。ここはたしか五億七千七百六十一万円です。これは補正予算で手当てして日産に還付をしているわけです。これはもうえらいことなのですね。だから、私はこういうようなことをどうしても納得できぬ、この実態を公開し明らかにする、しかも所得の配分が一体どうなっておるのか、このあたりも非常に問題なのですよ。  日向さん、日本の親会社とアメリカの子会社、これは七十八対二十二の所得の配分がアメリカは五対五にしろといって、結局は六対四でけりをつけた。ちょうど合うのです、これが。そういう私の調査の結果もあるわけです。違いますか。所得の再配分。
  306. 日向隆

    ○日向政府委員 それぞれの御質疑に対してそれぞれ答えておりまするものですから、全体として私の答えを達観してといいますか、通観して御判断いただきたいと思うわけでございますけれども、ただいま御指摘の為替差益につきましても、差益が発生すれば当然これは課税対象になるわけでございます。  それから、全体としてどういう姿になったかということにつきましては、これは一番最初に申し上げましたように、協議の内容に直接かかわりますから、お答えすることは差し控えさせていただきたいと思いますけれども、やはり、この問題はそういう観点から判断するのではなくて、先ほど申し上げましたように、アームズ・レングス・プライスに比較して実際の取引価格が適正かどうかという点から判断するわけでございまして、その判断の結果といたしまして所得の調整が行われますと、前におきます所得のグループ間における配分の比率が、その後においては当然変わってくる、こういう問題であろうかと思います。
  307. 野間友一

    野間委員 独立企業間の取引とか、いろいろなそういう一定の抽象的なものはあります。アームズ・レングス・プライスですね。しかし、ではそれは具体的に、一体適切なものは何なのかということが問題なんですよ。あなたは御専門だからよくおわかりなんですよ。それが問題なんですよ。だからこそ本件についても、米国内国歳入庁とトヨタ、日産自動車メーカーあるいは国税庁の間でもいろいろなすり合わせをやったわけです。それがルールが確立されていないから大変大きな問題なんですね。  それで、前のIRSの長官のロスコー・エガー氏、これは日向さん御存じですよね。この人が去年日本に参りまして講演をしております。これは八七年十二月発行の「租税研究」に全部テープが起こしてあります。これを見て私、また大変驚いたわけですね。これは移転価格税制を含む国際課税の分野から、一九八七年は九十億ドル、一ドル百四十五円で換算しますと一兆三千億円になりますが、この税の増収を図った、こういうことを言っておるわけですね。つまり、税法の運用の強化、これを今アメリカではどんどんと図っておるのだということをはっきり書いてあるのです。びっくりしました。それで、しかも日本をターゲットにして、これは具体的に業種を挙げられております。自動車、オートバイ、コンピューター、エレクトロニクス、こういう特定業種を挙げまして、ここからさらに税の増収を図る方針、こういうことをはっきりロスコー・エガーさんが日本へ来て言っているわけですよ。まさしく今日本の税金が狙われておるわけですよ。ですから、日米の摩擦というのは、この税金の面ではこういうことがこれからどんどん起こり得るというのが最大の問題なんですよ。ですから私は、日産、トヨタの為替差益の問題を言いました。これだけにとどまるものじゃないのですよ。これからどんどん出てくるわけですよ。そこで私は、これにきっちりとしたけりをつけないことには国民は納得しない、このことを強く申し上げたいわけであります。  日経産業新聞、四月二十六日付、ピートマーウィック港米国公認会計士の浅川洋一さん、これが同じようなことをずっといろいろ書いておられます。これも「家電、エレクトロニクス業界を対象に厳しい調査を開始したのは当然の成り行きと言える。」これは既に日本の企業に対して調査を開始しているわけですよ。御存じでしょう。「金融業界に集中的に調査が入るとのもっぱらのうわさである」。どんどんこれが広がるわけですよ。  私、これはカリフォルニア州で発行している新聞をきょうはお持ちしましたけれども、サンホセ・マーキュリー・ニュースというのがあるのです。これは三月二十日付です。これは地方紙、カリフォルニアの新聞ですから、恐らく日向さん、まだ見ていないと思いますけれども、これを見ましたら、やはり同じようなことが書いてあるのですね。「内国歳入庁は、いくつかの日本の大手のエレクトロニクス企業がアメリカの税金を逃がれていると疑っており、それは当然とり戻される予定である。同庁は、シリコンバレーに工場のある日本企業を含むすべての外国に本拠のある多国籍企業について集中的な検査を行なっており、内部的な調査によって、アメリカで得た利益を過少申告している企業のあることが判明した。」そしてこの新聞報道の中には、日本企業に目をつけていることを日産、トヨタのケースも伝えつつ具体的名前の挙がっておるのはサンヨー・フィッシャー、NECコーポレーション、これは家電と半導体、それからNECエレクトロニクス、日立アメリカ、富士通アメリカ、具体的にこういう日本の企業、向こうに進出しておる企業の名前を挙げながら、これはカリフォルニア大学のミッシェル・グランフィールドという人がこの新聞報道の中で書いておるのですけれども、具体的にそういうふうに前のIRSの長官とか、あるいは先ほど挙げましたアメリカの公認会計士の浅川さんの記事とかこの新聞報道、ですからトヨタ、日産について次から次へとどんどんやってくるわけですよ。しかも一方ではダンピング容疑で日本でいろいろやられておるわけでしょう。これは通産の所管ですけれども、やられておるわけですよ。だからとにかくもう往復ビンタです、片っ方はダンピング、片一方はこういう移転価格の課税ということで。  ですから、宮澤大蔵大臣、これは日産、トヨタ、単にここの二社が、まあ千二百億円、非常に大きい。二社が差益でもうけた、あるいはユニタリータックスで地方税を向こうで払わぬで自分のポッポに入る。確かに日向さんおっしゃるように、これは次の事業年度でそれも所得に合算して法人税がかかってくるのは知っております。しかしそれは一〇〇%かからぬことは間違いないわけですね。そうでしょう。だから四十数%ですか、その税率でかかるだけですよね、全体について法人税が。それで宮澤さん、今申し上げた幾つかの新聞報道等、あるいは前IRS長官の日本での講演等を引きましたけれども、これはどんどん大変なことになるわけですよ。現に今調査が始まっておるわけですね。ですから、こういう過去にさかのぼって、しかもこれだけの大きな金額の合意、しかもこれは地方税についてはそういうことでしょう。これは私は、この解決、処理の仕方、合意の仕方は間違いだというふうに言わざるを得ないと思うのです。そういう意味では私は大蔵大臣の責任というのは非常に重いと思いますね。いかがでしょうか。
  308. 宮澤喜一

    ○宮澤国務大臣 いろいろ伺っておりましたけれども、まず、日本もアメリカも独立国でございますから、両方に課税権があるわけでございます。両方でもって課税権をいっぱいに行使したら、それは納税者はたまったものじゃありません。両方からダブって取られてはいけませんから、それで租税条約というものがあって二重課税の回避をしておることは御承知のとおりでございますけれども、その際に移転価格という問題が出てきて、じゃ移転価格をどういうふうに両方に割り掛けるかということになるわけでございますから、両方の、つまり日本の国税庁とIRSがその間のいわば、恐らくこれはネゴシエーションである、私はそう申していいのだろうと思いますけれども、そういうことで合意をして、それを対応的調整と言うそうでございますけれども、それで調整をしたというのが今の結果でございますね。まあ恐らくアメリカのIRSにも日向次長に劣らない俊敏なのがおりますから、なかなかこれは大変なネゴシエーションであったろうと想像いたしますが、それで両国の間の話がついたわけであって、遡及の問題もございましたけれども、これはさっき日向政府委員が御説明いたしましたような事情で、遡及ということはこれは認めるということでそういう結果が成立をした。そうなりますと、我々としては租税条約実施特例法に基づいてその分は還付をするということになった、そういうことでございますね。  そこで一つおっしゃっている問題は、これはアメリカの日本バッシングであるということをさっきおっしゃいましたが、日産の方がどうおっしゃったかはそれとしまして、片っ方でダンピングが成立しなかったから今度は過大であるということで、両方で連携プレーがあったという話は、どうもアメリカの役所というのは日本の役所と同じくらいお互いの連絡がよくありませんので、私にはどうも、どうもいかがかなという感じがします。意図的に……(野間委員「ビラに書いてあるのです」と呼ぶ)それはそういうことを書く人は幾らもいますけれども、だれもそれは知らないことですから、意図的に日本をいじめるためにやったか、私にはにわかにそう信じがたい点があります。  それからもう一つ、こういうことが将来起こらないように先のことは考えておいた方がいいと言われるのは、私もそうだと思うのです。それは第一、納税者が一番迷惑いたしますから、納税者自身が恐らく両国の国税当局にやはりいろいろ話をしていくでありましょうし、両国の国税当局もこういうことが将来起こらないように努力をすることは、私はそれはよろしいことだろうと思うのでございますが、要するに国税庁というのも大変に大きな税金を国民からいただいておるわけですから、理屈でどうしても返さなければならぬときは潔く返さなければなりません。そうでないと本当の行政はできませんので、私はこの日米の話というのは、両国がよく話し合いをして、こういう結果になった、なりましたらその結果にやはり忠実に従わなければならない、我が国としても精いっぱいの話をアメリカ側として、恐らく答えというのは、ある意味で両方とももうここで仕方がないかという妥結できっとあったのであろうと思いますから、それはそれを尊重するしか仕方がない。多分、おっしゃいますように、日産にその結果として為替差益が出たかもしれません。しかし、これも長い間のことで、円が高くなりましたからやむを得ないことであって、それはまたしかし、課税の対象には当然なるのだと私は思います。ですから、どこかに、アメリカに不要な妥協をしたとか、何かアメリカが日本をねらっているとか、そういう目でごらんにならないで、素直にこの話をフォローしますと、どうも残念だがこれしかしようがない、残念だというのは、日本からそれだけ取れる、取れるはずではないが、こういうことがなければあるいは取れたかもしれない税金がアメリカへ行った、しかしこれは両方取ったのでは納税者はたまりませんから、一これはやはりやむを得ない解決だった、しかも大変に筋道の立っている解決だというふうに私は思います。
  309. 野間友一

    野間委員 時間がありません。今長々と大蔵大臣がしゃべられたので、やむを得ずあと一言最後につけ加えておきますけれども、宮澤さん、いろいろとおっしゃるけれども、だって、アメリカヘどっと還付して、これを日本から返すわけでしょう。トヨタ、日産というのは差益でもうかるわけですよ。地方財政も大変ですよ。それもやはり還付でしょう。そういう解決が自然な方向でいいとおっしゃるなら、これからどんどん来ますよ。宮澤さん、これは本当に大きな責任をかぶることになりますよ。どんどん来ますよ、もう現に来ていますからね。私は、そうでなくて、今やはりこういうことについてはどう対処するかというのは国際的にも大きな問題で、国際租税についてルールをどうつくるかということは、今最大の課題なんですよ。だから、将来に対して新しいルールをつくるという点で合意するならともかくとして、こういうことではやはり納得しませんよ。もしそうおっしゃるなら、私は、これは今後大変な問題が出てくると思います。  だから私は、少なくとも日産、トヨタが差益でもうかった分だけでもやはり国税なり地方税で自治体に返還するべきだし、そういう指導を大蔵省がやられたらどうかと思うのですが、最後に一つだけ聞いて、質問を終わりたいと思います。
  310. 宮澤喜一

    ○宮澤国務大臣 その最後におっしゃいましたことは、全く論理としては成り立たないお話で、私はそういうつもりはありません。
  311. 野間友一

    野間委員 終わります。      ────◇─────
  312. 野中英二

    野中委員長 次に、昭和六十一年度一般会計予備費使用調書及び各省庁所管使用調書(その1)、昭和六十一年度特別会計予備費使用調書及び各省庁所管使用調書(その1)、昭和六十一年度特別会計予算総則第十三条に基づく経費増額調書及び各省庁所管経費増額調書(その1)、以上三件の承諾を求めるの件、昭和六十一年度一般会計予備費使用調書及び各省庁所管使用調書(その2)、昭和六十一年度特別会計予備費使用調書及び各省庁所管使用調書(その2)、以上二件の承諾を求めるの件、昭和六十二年度一般会計予備費使用調書及び各省庁所管使用調書(その1)、昭和六十二年度特別会計予算総則第十三条に基づく経費増額調書及び各省庁所管経費増額調書(その1)、以上二件の承諾を求めるの件及び昭和六十一年度一般会計国庫債務負担行為調書(その1)、右各件を一括して議題といたします。  この際、大蔵大臣から各件について趣旨の説明を求めます。宮澤大蔵大臣
  313. 宮澤喜一

    ○宮澤国務大臣 ただいま議題となりました昭和六十一年度一般会計予備費使用調書及び各省庁所管使用調書(その1)外二件、昭和六十一年度一般会計予備費使用調書及び各省庁所管使用調書(その2)外一件並びに昭和六十二年度一般会計予備費使用調書及び各省庁所管使用調書(その1)外一件の事後承諾を求める件並びに昭和六十一年度一般会計国庫債務負担行為調書(その1)の報告に関する件につきまして、その概要を御説明申し上げます。  初めに、予備費使用総調書等の事後承諾を求める件につきまして御説明申し上げます。  まず、昭和六十一年度一般会計予備費予算額二千億円のうち、昭和六十一年四月十一日から同年十二月十二日までの間において使用を決定いたしました金額は、四百八十三億六千七百三十三万円余であり、その内訳は、災害対策費として、河川等災害復旧事業に必要な経費等の六件、その他の経費として、衆議院議員総選挙及び最高裁判所裁判官国民審査に必要な経費等の二十一件であります。  また、昭和六十一年度特別会計予備費予算総額三兆八千九百十二億二千二百三十二万円余のうち、昭和六十一年九月九日から同年十二月十二日までの間において使用を決定いたしました金額は、百二十億千四百三十万円余であり、その内訳は、食糧管理特別会計国内麦管理勘定における国内麦の買い入れに必要な経費等二特別会計の三件であります。  なお、昭和六十一年度特別会計予算総則第十三条の規定により、昭和六十一年九月九日から同年十二月十二日までの間において経費の増額を決定いたしました金額は、六十七億千七十四万円余であり、その内訳は、治水特別会計治水勘定における河川事業及び砂防事業の調整に必要な経費の増額等四特別会計の七件であります。  第二に、昭和六十一年度一般会計予備費予算額二千億円のうち、昭和六十二年一月九日から同年三月二十七日までの間において使用を決定いたしました金額は、千四百六十二億八百九万円余であり、その内訳は、災害対策費として、河川等災害復旧事業等に必要な経費等の三件、その他の経費として、国民健康保険事業に対する国庫負担金の不足を補うために必要な経費等の十件であります。  また、昭和六十一年度特別会計予備費予算総額三兆八千九百十二億二千二百三十二万円余のうち、昭和六十二年三月二十七日に使用を決定いたしました金額は、千七百五十九億九千七百四十二万円余であり、その内訳は、食糧管理特別会計輸入食糧管理勘定における調整勘定へ繰り入れに必要な経費等一特別会計の三件であります。  第三に、昭和六十二年度一般会計予備費予算額二千億円のうち、昭和六十二年四月二十四日から同年十二月二十一日までの間において使用を決定いたしました金額は、六百三十六億二千六百九十八万円余であり、その内訳は、災害対策費として、河川等災害復旧事業等に必要な経費等の六件、その他の経費として、沖縄県において開催される第四十二回国民体育大会等に伴う警備活動等に必要な経費等の十八件であります。  なお、昭和六十二年度特別会計予算総則第十三条の規定により、昭和六十二年九月二十二日から同年十二月十八日までの間において経費の増額を決定いたしました金額は、百二十億三千九百六十九万円余であり、その内訳は、産業投資特別会計産業投資勘定における株式の売り払い手数料に必要な経費の増額等五特別会計の五件であります。  以上が、予備費使用総調書等についての概要であります。  何とぞ、御審議の上、速やかに御承諾くださいますようお願い申し上げます。  次に、国庫債務負担行為総調書につきまして御報告申し上げます。  昭和六十一年度一般会計におきまして、財政法第十五条第二項の規定により、災害復旧その他緊急の必要がある場合に国が債務を負担する行為をすることができる限度額一千億円のうち、昭和六十一年発生直轄道路災害復旧事業につきまして、昭和六十一年十月九日の閣議の決定を経て、総額四億六千九百九十万円余を限度として債務負担行為をすることといたしました。  以上が、国庫債務負担行為総調書についての概要であります。
  314. 野中英二

    野中委員長 これにて説明は終わりました。     ─────────────
  315. 野中英二

    野中委員長 これより質疑に入ります。  質疑の申し出がありますので、順次これを許します。新村勝雄君。
  316. 新村勝雄

    新村委員 国費の使用について国会がこれに統制を加える、議決をするということは国会の最も重要な権能の一つでありますが、予備費の使用についてはその基本的な権能が排除されるということでありまして、予備費の使用については最も厳しく厳格に解釈をされ運営をされなければならないわけでありますけれども、そういう趣旨から御質問いたします。  警察庁の六十一年九月九日閣議決定六十七億三十九万、これはサミット警備ということであります。それからさらに六十二年九月二十五日閣議決定の五十億七千六百四十八万、これは沖縄国体の警備ということで使用されておりますけれども、これは明らかに予見される費用と考えられます。そこで、予見される費用について予備費が使用されたということについての御説明をいただきたいと思います。
  317. 寺村信行

    ○寺村政府委員 ただいま御質問のございました件でございますが、六十一年度東京で開催されました主要国首脳会議及び六十二年度におきまして沖縄で開催されました国民体育大会の開催に伴う警備活動に必要な経費を予備費で支出しているということでございますが、これはそれぞれ当初予算編成の時点では参加国の首脳の日程や、あるいは国民体育大会につきましては行幸啓の御予定が一切不詳であったということ、それからまた極左暴力集団の動向も不明であったということもございまして、あらかじめ警備にどの程度の経費を必要とするかということが予見できなかったという事情に基づくものでございます。したがいまして、それぞれの警備情勢等諸般の情勢を勘案いたしまして具体的な警備体制が決定をされました後、そのために必要な警備活動に要する経費及び車両、通信機器等の警察装備の緊急整備に要する経費につきまして予備費をもちまして対処したものでございます。
  318. 新村勝雄

    新村委員 そうしますと、この部分については車両あるいは装備があるわけですけれども、その事後の配備、使用についてはどこの県警がどういう形で使うことになるわけですか。
  319. 半田嘉郎

    ○半田政府委員 サミットの警備あるいは沖縄の国体の警備に使用いたしましたものは、その後各県におきまして必要なところに管理がえをいたしまして使用をさせていただいているということでございます。
  320. 新村勝雄

    新村委員 次に、六十二年六月五日閣議決定、総理の外遊の費用でありますが、これもやはり予見されたのではないかと思うのですけれども、いかがですか。
  321. 寺村信行

    ○寺村政府委員 内閣総理大臣の外国訪問は、国際情勢等諸般の情勢を勘案して決定されるものでございまして、予算編成の時点ではあらかじめどの程度の経費を必要とするかを予見することが困難であるという事情がございます。外国訪問が実際実施される場合には、訪問国、時期、期間等の具体的な計画が決定されました後にその所要額につきまして確定をいたしまして、原則として予備費をもって対処することにいたしております。  ただいまの御質問はサミットについての御質問ではないかと思われますが、サミットについても毎年行われることが通例とはなっておりますが、その日程等の詳細が開催日近くまで明らかにならない、したがいまして金額について確定できないという事情がございまして、予算編成時点での所要額の積算が困難になっているということでございます。
  322. 新村勝雄

    新村委員 これに関してですが、物資あるいは役務の調達については普通は競争入札あるいは見積もり合わせということだと思いますけれども、これが総理のチャーター機については大体いつも随意契約になっておるのはどういうわけですか。
  323. 河原崎守彦

    ○河原崎政府委員 総理府の会計課長でございまますが、お答えをいたします。  航空機のチャーターにつきましては、会計法の二十九条の三の五項それから予決令の九十九条八号に掲げてございます運送というのが随契の対象になるということでございますので、扱いといたしまして随意契約で行っております。
  324. 新村勝雄

    新村委員 細かいことですけれども、そのときの大臣初め政府委員は当然旅費が出る、無料でありましょうけれども、同行の記者団とか政治家、国会議員、そういった方々からは旅費は徴収するのですか。
  325. 寺村信行

    ○寺村政府委員 総理大臣が外遊される際に同行されます国会議員あるいは記者の旅費につきましては国は負担をいたしておりません。サミットに同行される場合に、同行議員、記者はそれぞれ航空会社と契約をしていただきまして、そちらに航空運賃を支払っていただく、国はチャーター料総額から同行議員、記者に係る所要額を差し引いた額で契約をいたしております。
  326. 新村勝雄

    新村委員 次に、六十二年九月十六日の岸元首相の葬儀費でありますが、岸氏の功績ということについてはこれはそれでそれなりにですが、内閣と自民党の合同葬という形になっておりますが、これは国務と党務の混同という印象を与えておるようですけれども、内閣なら内閣だけの葬儀とすることがいいのではないかと思うのですけれども、その趣旨はいかがですか。
  327. 寺村信行

    ○寺村政府委員 これは六十二年九月一日に内閣によりまして閣議決定を行ったものでございますが、その趣旨は、岸信介氏は、我が国が経済の復興を終えて新しい発展を迎え国際社会における役割もまた次第に重きを加えつつあった重要な転換期に、三年五カ月にわたりまして内閣総理大臣の重責を担われ、その間日米安全保障条約の改定、国民皆保険、皆年金の実現、活発な外交活動の展開等世界の平和と我が国の安全及び住民の安定のために大きな足跡を残されたということでございまして、以上のことによりまして、内閣は自由民主党と合同して葬儀を執行することにつきまして閣議決定を行い、その葬儀のために必要な経費の一部を国費で支弁することといたしたものでございます。
  328. 新村勝雄

    新村委員 いや、そうじやなくて、国務と党務をきちっと区別をしてやるべきではないかということでありますけれども、その点については大臣はどういうお考えですか。
  329. 宮澤喜一

    ○宮澤国務大臣 今政府委員が申し上げましたような閣議決定を行った上でいたしたことでございますが、実は自由民主党においてもこの葬儀についてはこれを主催したいという気持ちが当然のことながらございました。これを別々に行うということは現実的でございませんので、両者がいわば一緒になりまして葬儀を行った、その間政府の出資すべき分を支出をしたということでございます。
  330. 新村勝雄

    新村委員 終わります。
  331. 野中英二

    野中委員長 草川昭三君。
  332. 草川昭三

    ○草川委員 草川であります。二十分間の持ち時間でございますので、簡潔な御答弁を得たいと思います。  まず予備費についての考え方をおさらいの意味でお伺いをしたいわけです。私が今から申し上げるのは六十三年の話で六十一年度とは違うのですが、ごく最近上海で列車事故がございまして大変な多くの学生の方が犠牲になられました。それでいち早く日本の東京大学附属病院の救急医療部の三名の先生が派遣をされまして大変な御活躍をされました。その成果については我々も高く評価をするわけでございますが、この問題について過日の決算委員会で私は文部省に対して、外務省所管でございましたが、その費用はどこから出たのですか、文部省ですかとこう尋ねましたところ、実は外務省の文化人等派遣外国旅費から出したという答弁でございました。八十七万六千円出たわけです。私は実は今回のこの上海における高知学芸高校の列車事故等の救命救急というのですか、日本から派遣されたドクターの方々の費用こそ予備費、すなわち予見をしがたい事件でございますから、これは外務省でもいいしあるいは文部省の予算でもいいしあるいは国立大学附属病院の特会でもいいのでございますが、そういうところがら出るべき筋ではないのだろうかと思うのでございます。そういう点についてひとつ大蔵省主計局の方から、どのような予備費の使い方を各省庁に流しておみえになるのか、答弁を願いたいと思います。
  333. 寺村信行

    ○寺村政府委員 憲法及び財政法上の要件といたしましては、予備費の使用は予見しがたい予算の不足に充てるために行われるものでございます。したがいまして、予備費の使用の対象となる経費が予見しがたい予算の不足に該当すれば足りるわけでございます。ただその使用に当たりましては各省各庁の長から要求を受けて、大蔵省はこれを調整して決定しているところでございますが、その際にはまず既定予算の中でのやりくりができないかということは当然検討するわけでございます。  今般文化人等派遣外国旅費を使用いたしましたが、六十二年度予算ではこの文化人等派遣外国旅費は外務省の職員以外の方が外国へ出張する旅費でございまして、例えば外国に医師団を派遣する場合にもこの旅費から出ているわけでございまして、今回の経費が八十七万六千円ということでございましたので、その中で外務省におきまして調整をされたものと理解をいたしております。
  334. 草川昭三

    ○草川委員 我々国民としては予備費の使用というのは今回のような事件がまさしくなじむ使途の方法ではないか、こういう感じがいたしましたので、この問題の提起をさせていただいたわけであります。  二番目に、この六十一年度の予備費の使用について私なりに大変理解ができない問題の一つとして自賠責特会の問題がございます。これは予備費全体の使い方についてその他の特別会計一般会計も同じような考え方になるのではないかと思いますので質問するわけですが、六十一年度の自賠責特会の予算は一兆七千四百億円であります。この予算に対して予備費の占める率が七一%なんですね。一兆二千四百億円というのがこの特会の予備費に組まれているわけですが、七一%というのはいささか予備費のウエートが高過ぎるのではないか。しかもその七一%に当たる一兆二千四百億円というものはすべて不用額に計上されまして、その他のものをプラスをした金額になって計上をしております。これはその前年度の六十年度も同様な傾向になっておるわけでございますが、この自賠責特会の予備費の七〇%を超すという、そういう特別会計の組み方は正常なものかどうか、これがごく当たり前なのか、そういう考え方で他の特別会計も組まれているのか、念のためにお伺いをしたいと思うのです。
  335. 寺村信行

    ○寺村政府委員 自動車損害賠償責任再保険特別会計におきましては、保険料収入と保険金の支払いの間に時期的なずれがございますので、歳入歳出にかなりギャップを生ずることが通例になっております。従来、六十一年度におきましてもそうでございますが、この収支差額を予備費として計上しているという取り扱いをしてまいりました。しかしながら、この取り扱いにつきましてはかねて本院でも種々御議論をいただいているところでございまして、確かにこれはすべての特別会計におきましてこの収支差額を計上しているわけではございませんが、この種の保険会計につきましては従来そのような取り扱い方はされてきたわけでございますが、やはりこれは問題があるのではないかという国会での御指摘も踏まえまして、実は六十二年度予算から従来の収支差額を計上する方式を改めまして、予見しがたい予算の不足に充てるための予備費として相当と認める金額を計上するということに改めました。具体的に申し上げますと、六十二年度予算からは不測の保険事故に対処するために必要な相当額として保険勘定に八百億円の予備費を計上する、こういうふうに改めたわけでございます。
  336. 草川昭三

    ○草川委員 今おっしゃいましたように、六十二年度予算からは、八百億というのは定額という意味で今後も続くのか、その点は実は運輸省の方にお伺いをしたいと思うのですが、いわゆる自賠責の設計方法としてこういうあり方でいいのかどうか、お伺いしたいと思います。
  337. 村上伸夫

    村上説明員 お答え申し上げます。  今大蔵省の方から御答弁にあったことに尽きるわけでございますけれども、保険特有の問題といたしまして保険料の収入が入ってくる時期と支払いの時期にずれがある。具体的に申しますと、保険期間が自家用車の場合三年ということもございますし、また事故が起きてから保険金の支払いまでに相当日数がかかる、こういう事情もございます。今、先生おっしゃられましたように六十二年度からは一定額方式ということに改めたわけでございまして、今後の問題といたしましても、これまでの保険金の支払いの実績等々を勘案いたしまして一定額方式で考えていきたい、こういうふうに思っております。
  338. 草川昭三

    ○草川委員 私がなぜそういう質問をしたかといいますと、自賠責の保険料の設計方法に、かなり基礎的な資料に問題があると私は思うのです。それは、自賠責は言うまでもなく民間保険会社を通じて我々が掛けるわけですが、農協共済というのが一方にはございます。この農協共済の事故率は一般よりはかなりいいわけでございまして、それだけに潤沢な予算内容があるわけですが、その農協共済の事故率等の資料というのが大蔵省所管の自動車損害賠償責任保険審議会の資料の中に加えられているかどうか。例えば六十三年一月二十二日の資料等の数字を持っておりますが、その中に農協共済の資料は入っているかどうか、お伺いしたいと思います。
  339. 今藤洋海

    ○今藤説明員 六十三年一月に行われました自賠責保険審議会の資料でございますけれども、農協の行っております自賠責共済に関します事故率でございますとか収支状況等のデータについては、特に審議会の方から要求がございませんでしたので提出しておりません。今後審議会の御意見を踏まえまして対処してまいりたいと思っております。
  340. 草川昭三

    ○草川委員 今おっしゃいましたように、大蔵省どうしますか。大蔵省は主管局ですよね。これからいろいろな意味での設計がありますが、農協共済出してない、請求がないから。どうお考えですか。
  341. 宮本英利

    ○宮本(英)政府委員 ただいま先生御指摘の点につきましては、自賠責審議会の御意向も踏まえ、関係省庁とも協議の上、適切に今後処理してまいりたいと思います。
  342. 草川昭三

    ○草川委員 ぜひやっていただきたいと思うのです。きょう農協課長おいでになりますから嫌みでなくて聞くのですが、自賠責共済の農協の場合は特別の対策基金というのを持っておみえになりますね。百四十一億という別枠の財布があるわけです。私は、農協は事故率が少ないので、掛金は民間損保と同じですから、だから支出が少ないわけですから、農協共済は懐は暖かくなってくるわけです。ですから、余り目立ってはぐあいが悪いので特別の基金をつくって新しい財布をつくったのではないか、こう思うのですが、その点はどのようにお考えになっておられますか。
  343. 今藤洋海

    ○今藤説明員 ただいま御指摘ございました全国共済農業協同組合連合会、全共連が持っております交通事故対策基金、これは自賠責保険審議会から、昭和四十四年でございますけれども、滞留資金の運用益等の活用等により救急医療体制の整備充実等交通事故対策にも活用すべきであるという答申をいただいております。この答申を受けまして、交通事故対策を共済金の支払いに支障を生じさせず、安定的かつ継続的に資するため昭和四十七年度に創設したものでございまして、ただいま御説明ございましたように、現在百四十一億円保有しておるわけでございます。この基金につきましては、先ほど申しましたような目的を達成するために、交通安全の啓蒙活動、交通安全施設の整備、被害者の救済のための搬送施設の整備等に今後とも活用してまいりたいと思っております。
  344. 草川昭三

    ○草川委員 今度はこれは大蔵省聞いていただきたいのですが、私は今度は農水省を褒める意見になるのですが、この交通事故対策基金の運用利回りは、五十七年七・五三、五十八年七・五二、五十九年七・三八、六十年七、六十一年六・六四という利回りをしているわけであります。それに対して大蔵省所管の損保会社の運用は、五十七年六・〇一、五十八年六・一二、五十九年六・二六、六十年六・二二、六十一年五・九六、明らかに差があるわけです。農協共済の方は大変うまく運用してみえるわけです。ちなみに自賠責特会の方は、五十七年は七・〇四、五十八は八・五四、五十九は七・二六、六十年七・三〇、六十一年六・七三ですから、自賠責特会、運輸省の方も財投を通じてだと思いますけれども、利子が高い。損保会社の方の運用利率というのは低い。我々の三つの掛金、農民の方々の掛金を合わせると、この利子が三つも違うというのは今後いかがなものかと思うのですが、どうでしょう。
  345. 宮本英利

    ○宮本(英)政府委員 この特別会計の場合でございますが、損保会社からの資金の出入りが毎月一定日に所要の額があらかじめわかるような仕組みになっておりまして、したがいまして、その資金の流動性についてはほとんど考慮する必要がないというふうなことで、ごく一部を除いてすべての利回りが相対的に高い資金運用部への預託というふうになっているわけでございます。また全共連の交通事故対策基金の場合におきましても、この自賠責の特会と同様に当面の支払い準備の手当てをしておく必要がないことに加えまして、さらに生命共済のような長期資金と合同で運用されておるというふうな事実がございまして、そのためにも相対的に高い利回りとなっておるわけでございます。  これに対しまして損保会社の場合は、契約者、被害者に対しまして日々保険金を支払っておる、資金的にはいわば特会の再保険部分の支払い代行を行っているとも見られるような実情にあるわけでございます。これらの保険金の支払いのために常に各損保会社におきまして現預金、コールローン等利回りは大変低いのですが、流動性の高い資産に運用を図っておく必要があるというふうな事情があるわけでございます。このようなことから、この特会等は長期運用であるため利回りは相対的に高いわけでございますが、損保の場合には分散して資産を保有しておる、各損保会社でも先ほど申し上げましたとおり支払い準備のための短期運用も行う必要がある、こういった短期の平均利回りを用いているために全体として相対的に低いというふうな実情にあるわけでございます。  ただ、いずれにいたしましても損保会社の資産運用につきましては、他の場合と比べて株式に対する運用比率も比較的高いというふうなことで、キャピタルゲインを含んでないことからどうしても利回りが低いというふうなことになりますし、かつまた、一般的に言いましても、昨年五月の保険審議会の答申でも、損保会社の場合の運用能力あるいは運用の整備充実について指摘されておるところでもございますから、大変重要な問題であるという認識を持っておりますので、今後とも損保会社の資産運用力の強化あるいは人材の育成、こういったことについて指導してまいりたいというふうに思っておる次第でございます。
  346. 草川昭三

    ○草川委員 おっしゃる趣旨はよくわかりますので、損保会社の運用利率というのは全共連の交通事故対策基金と同じにしろとは言いませんけれども、我々もエンドユーザーの立場から強く関心を持っておりますので、今後の指導を要望しておきたいと思います。  それで、農協共済は今後も黒字がふえてくると私は思うのです。それでこれの交通事故対策基金の運用益の使途は今後どうされるのか。ちなみに、今交通事故対策にもろもろの費用を出しておるというお話でございましたが、これは私の意見で聞いておいていただきたいのですが、五十八年度岩手でパトカーを一台あるいは六十年に宮崎でパトカーを一台寄附してみえますね。こういうところからぱトカーを寄附することがいいか悪いかという議論はまた別にございますが、寄附をするなら寄附をするで継続的に寄附をされたらどうでしょう。たまたま私が中断する理由は何かと聞いたら、たまたま農協の組合長さんがスピード違反でそのパトカーにつかまった、パトカーの名前は自分たちの共済、そんなばかなことがあるか、そういう御意向から断続的なパトカーの寄附になったと聞いておるわけです。これは答弁は結構です。そういう話を私は承知しておりますから、そういう使い方で農協共済の基金が今後も続くかどうかということについて私はかなりの疑問がありますので、一言苦言を呈しておきたいと思います。  最後になりますが、時間が来ましたので、実は御存じのとおり自賠責の特会のあり方については、今度の六十二年度の第二次補正予算大蔵省は大変気持ちよく二千四百三十八億のお金を一括して返済してくれましたね。これは私どもが国会で何回か大蔵省のやり方は汚いじゃないか、我々の金をなぜ持っていくのだという議論をいたしまして、黙って持っていけば泥棒だから法律をつくってお借りをするのだ、そして六十一年から六十七年まで七年間で無利子で返済をしたい、三年据え置きを頼むというのが当時大蔵大臣と運輸大臣の覚書にも書いてあったわけです。それは我々も承知をしております。ところが、突如として昨年の六十二年の第二次補正で二千四百三十八億一括して返していただいた。これは非常に我々にとっていいわけですが、もし一括して返していただけるならば、六十年の自賠責の値上げのときに、二九%値上げをしたわけですから、値上げをしなくても済んだのじゃないか。あるいは二九%の値上げが二五%で済んだかもわからない。  今回返していただいてけちをつけるわけじゃありませんけれども、それは自然増収というのが見込まれるから、この際減税財源でうるさいことを野党に言われる先に、払うべきもの、返済すべきものは返済をしろという考え方で返却をされたのではないかと思うのですが、要するにこの自賠責特会のあり方というものについては非常に歴史があるのです。我々も車を持っておりますから、これは強制的にこれに加入をするわけでありますから、その金の使途については私は加入者の理解がいくような自賠責特会の運用の仕方にしていただきたい。たまたま六十二年度からは八百億に変わったのだが、六十一年は七一%も予備費に計上するというような組み方は、私はどう考えてもそれは国民を愚弄するような予備費の組み方ではないだろうかというような考え方を持っておるわけであります。  最後にこの件についての大臣の見解を賜って、時間が来たようですから終わりたいと思います。
  347. 宮澤喜一

    ○宮澤国務大臣 これは実際上は保険料を一般会計がお借りしたわけでございますから、保険金支払い等々考えますと、本来できるだけ早くお返しをしなければならなかったものでございまして、今度幾らか財源の余裕がございましたのでお返しをしたということでございます。別にそれ以外の他意はございません。
  348. 草川昭三

    ○草川委員 以上で終わります。
  349. 野中英二

    野中委員長 これにて各件の質疑は終了いたしました。     ─────────────
  350. 野中英二

    野中委員長 昭和六十一年度一般会計予備費使用調書及び各省庁所管使用調書(その1)外二件の承諾を求めるの件、昭和六十一年度一般会計予備費使用調書及び各省庁所管使用調書(その2)外一件の承諾を求めるの件、昭和六十二年度一般会計予備費使用調書及び各省庁所管使用調書(その1)外一件の承諾を求めるの件について、一括して討論に入ります。  討論の申し出がありますので、順次これを許します。谷津義男君。
  351. 谷津義男

    ○谷津委員 私は、自由民主党を代表いたしまして、ただいま議題となりました昭和六十一年度一般会計予備費使用調書及び各省庁所管使用調書(その1)外二件、昭和六十一年度一般会計予備費使用調書及び各省庁所管使用調書(その2)外一件並びに昭和六十二年度一般会計予備費使用調書及び各省庁所管使用調書(その1)外一件の承諾を求めるの件について、承諾を与えることに賛成を表明するものであります。  申すまでもなく、予備費は、憲法で規定されているように、予見しがたい予算の不足に充てるために、内閣の責任において支出されるものであります。しかしながら、重要な支出の増額などの場合には、国会に補正予算を提出し、その審議を受けることは当然のことであります。  昭和六十一年度の予備費等について見ると、一般会計の(その1)においては、衆議院議員総選挙及び最高裁判所裁判官国民審査に必要な経費、河川等災害復旧事業に必要な経費等二十七件に使用決定されたもので、その使用総額は四百八十三億円余であります。また、特別会計の(その1)においては、食糧管理特別会計国内麦管理勘定における国内麦の買い入れに必要な経費等二特別会計の三件に使用決定されたもので、その使用総額は百二十億円余であります。また、特別会計予算総則第十三条の規定に基づく経費増額(その1)においては、治水特別会計治水勘定における河川事業及び砂防事業の調整に必要な経費の増額等四特別会計の七件に経費の増額を決定したもので、その増加額は六十七億円余であります。  次に、一般会計の(その2)においては、国民健康保険事業に対する国庫負担金の不足を補うために必要な経費、河川等災害復旧事業等に必要な経費等十三件に使用決定されたもので、その使用総額は千四百六十二億円余であります。また、特別会計の(その2)においては、食糧管理特別会計輸入食糧管理勘定における調整勘定へ繰り入れに必要な経費等三件に使用決定されたもので、その使用総額は千七百五十九億円余であります。  次に、昭和六十二年度の予備費等(その1)について見ると、一般会計においては河川等災害復旧事業等に必要な経費、沖縄県において開催される第四十二回国民体育大会等に伴う警備活動等に必要な経費等二十四件に使用決定されたもので、その使用総額は六百三十六億円余であります。また、特別会計予算総則第十三条の規定に基づく経費増額においては、産業投資特別会計産業投資勘定における株式の売り払い手数料に必要な経費の増額等五特別会計の五件に経費の増額を決定したもので、その増加額は百二十億円余であります。  これらの予備費等の使用は、予見しがたい予算の不足に充てるために予備費の使用を決定したもので、承諾を与えることに賛成するものであります。  なお、今後予備費等の使用に際しては、憲法、財政法の規定に基づき厳正に行うことを希望いたしまして、私の賛成討論とさせていただきます。
  352. 野中英二

  353. 新村勝雄

    新村委員 私は、日本社会党・護憲共同を代表して、昭和六十一年度一般会計予備費使用調書及び各省庁所管使用調書(その1)外六件について反対の討論をいたします。  予備費の支出については、真にやむを得ない場合に限るとともに、項目の設定等についても厳格な検討が必要であります。  岸元首相の葬儀費については、政府と政党の区別を明確にすべきものと考えます。  警察庁の経費は十分予見されるものと考えられ、当初予算において措置すべきものであります。その額が六十一年度六十七億、六十二年度五十億を超えており、現下の財政事情における各省庁配分のバランスを崩す結果ともなっています。  首相の海外出張についても、主要国首脳会議等十分予見できる経費であります。  政府において予備費の使用を行ったときは、国会の承諾を求める制度になっておりますが、既に支出済みの後であり、実質的には国会が予算を通じて政府の活動を事前に統制するという権能は、予備費に関しては排除される結果になるわけであります。  このように予備費なるものは、元来国会が本源的に保育する予算の実質的内容の審査及び議決権行使に対する制約であり、特例でありますので、運用を厳しく解釈し、軽々に歳出需要を予備費によって支弁することなく、可能な限り、当初予算において措置をし、または予算補正措置により国会の審議を得るよう努力すべきものであると考えられます。この点を特に指摘して、政府の反省を求めるものであります。  以上をもって、反対の討論を終わります。
  354. 野中英二

    野中委員長 草川昭三君。
  355. 草川昭三

    ○草川委員 私は、公明党・国民会議を代表して、ただいま議題となりました予備費使用総調書及び各省各庁所管使用総調書等の承諾を求める件について不承諾の意思を表明するものであります。  我が党は、予備費使用についてこれまでも憲法第八十三条に定められた財政の国会議決主義の原則に基づき、予備費使用の基本原則を主張してきました。予備費の使用は憲法及び財政法にも明記されているように、「予見し難い予算の不足」に限定されるべきことは言うまでもありません。しかし、我が党のたび重なる指摘にもかかわらず、六十一年度決算にはその反省が見出せないことは極めて残念であります。例えば、一般会計における予備費歳出予算昭和五十六年度より毎年三千五百億円が計上されていますが、毎年補正予算の際に半分近くが減額され、あたかも当初より補正予算の財源として見込まれているような予算編成技術となっています。また、六十一年度自動車損害賠償責任再保険特別会計を見ると、歳出予算額は一兆七千四百八億二千六百七十三万四千円になっていますが、その七一%、すなわち一兆二千四百六十八億五千七百六十二万一千円は予備費であります。しかも、その予備費は全く使われていません。かかる予備費のあり方は極めて乱暴であり、国民なかんずく自賠責保険加入者を愚弄する何物でもありまぜん。強く政府に反省を求め、不承諾の意を表明し、討論といたします。
  356. 野中英二

  357. 大矢卓史

    大矢委員 私は、民社党・民主連合を代表し、ただいま議題となりました昭和六十一年度一般会計予備費使用調書及び各省庁所管使用調書(その1)外二件、昭和六十一年度一般会計予備費使用調書及び各省庁所管使用調書(その2)外一件、昭和六十二年度一般会計予備費使用調書及び各省庁所管使用調書(その1)外一件の承諾を求めるの件について、賛成の討論を行うものであります。  昭和六十一年度の予備費事項の主たるものにつきましては、主要国首脳会議の開催に伴う警備活動等に必要な経費、スモン訴訟における和解の履行に必要な経費、伊豆大島噴火に係る緊急観測監視体制の整備に必要な経費などは、やむを得ないものであるとともに使用目的を逸脱していないものと考えます。さらに、退職手当、災害経費、選挙費用などその他の事項についてもおおむね妥当なものであると判断をいたしました。  昭和六十二年度につきましても、予防接種事故損害賠償請求事件第一審判決とかかわる賠償償還及び払戻金の不足を補うために必要な経費、中曽根総理大臣のアメリカ合衆国訪問に必要な経費、竹下内閣総理大臣の日本・東南アジア諸国連合首脳会議出席等に必要な経費など、福祉や国際協調などの点から不可欠なものと考えるものであります。しかしながら、総理の外国訪問につきましては、我が国の国際舞台における責任と役割がますます高まっている現状にかんがみ、予算で事前に措置すべきものとの要望を一言付しておきます。  最後に、税制改革への高い関心により国民の税金の使われ方に対する目が厳しくなっている今日においては、国費が正しく有効に活用されることが一層重要となっていることを強調して、私の討論を終わります。
  358. 野中英二

  359. 野間友一

    野間委員 私は、日本共産党・革新共同を代表し、ただいま議題となりました予備費等承諾案件のうち、昭和六十一年度一般会計予備費使用調書(その1)及び(その2)、同年度特別会計経費増額調書(その1)、昭和六十二年度一般会計予備費使用調書(その1)、同年度特別会計経費増額調書(その1)の五件について、不承諾の意を表明いたします。  この理由として、これらの予備費使用の多くは確かに退職手当、スモン等賠償金、社会保障関係費、災害関係費、選挙経費などであり、当初予算で十分措置しておくべきものなどの問題はありますが、いずれも必要な経費であり、予備費の使用目的は承諾できるものであります。  しかし、同時に本予備費使用調書中には、我が党が認めることのできないものが幾つか含まれております。  例えばベネチア・サミット席上でアラスカに中距離核兵器を配備するようアメリカに提案するなど、核兵器配備の旗振り役を積極的に買って出たことに見られる総理の一連の外国訪問に要した経費、警察装備の整備と称して治安関連部門の増強を図り強大な政治警察づくりを進めるための予備費支出等々は到底承諾できるものではありません。  また、昭和六十一年度及び同六十二年度特別会計経費増額のうち、国土総合開発事業調整費は、実際に使われている事業の中には地域住民に役立つものが少なくありませんが、他方、大企業本位の大型プロジェクト推進のためのものが含まれていること、さらに当初予算には目未定で計上し、年度途中で配分するやり方は、国会の予算審議権を狭める不当なものであります。  以上のような不当な予備費使用を含むこれら調書承諾することに我が党は反対であります。  昭和六十一年度特別会計予備費使用調書(その1)及び(その2)の二件は、伊豆大島噴火に係る観測監視体制の整備に必要な経費等々であり、使用目的、予備費使用等の理由は特に問題がないと認められるので、承諾いたします。  以上で私の討論を終わります。
  360. 野中英二

    野中委員長 これにて討論は終局いたしました。     ─────────────
  361. 野中英二

    野中委員長 これより採決に入ります。  まず、昭和六十一年度一般会計予備費使用調書及び各省庁所管使用調書(その1)、昭和六十一年度特別会計予算総則第十三条に基づく経費増額調書及び各省庁所管経費増額調書(その1)、以上両件について採決いたします。  両件はそれぞれ承諾を与えるべきものと決するに賛成の諸君の起立を求めます。     〔賛成者起立〕
  362. 野中英二

    野中委員長 起立多数。よって、両件は承諾を与えるべきものと決しました。  次に、昭和六十一年度特別会計予備費使用調書及び各省庁所管使用調書(その1)について採決いたします。  本件は承諾を与えるべきものと決するに賛成の諸君の起立を求めます。     〔賛成者起立〕
  363. 野中英二

    野中委員長 起立多数。よって、本件は承諾を与えるべきものと決しました。  次に、昭和六十一年度一般会計予備費使用調書及び各省庁所管使用調書(その2)について採決いたします。  本件は承諾を与えるべきものと決するに賛成の諸君の起立を求めます。     〔賛成者起立〕
  364. 野中英二

    野中委員長 起立多数。よって、本件は承諾を与えるべきものと決しました。  次に、昭和六十一年度特別会計予備費使用調書及び各省庁所管使用調書(その2)について採決いたします。  本件は承諾を与えるべきものと決するに賛成の諸君の起立を求めます。     〔賛成者起立〕
  365. 野中英二

    野中委員長 起立多数。よって、本件は承諾を与えるべきものと決しました。  次に、昭和六十二年度一般会計予備費使用調書及び各省庁所管使用調書(その1)、昭和六十二年度特別会計予算総則第十三条に基づく経費増額調書及び各省庁所管経費増額調書(その1)、以上両件について採決いたします。  両件はそれぞれ承諾を与えるべきものと決するに賛成の諸君の起立を求めます。     〔賛成者起立〕
  366. 野中英二

    野中委員長 起立多数。よって、両件は承諾を与えるべきものと決しました。  次に、昭和六十一年度一般会計国庫債務負担行為調書(その1)について討論に入るのでありますが、討論の申し出もありませんので、直ちに採決に入ります。  昭和六十一年度一般会計国庫債務負担行為調書(その1)について採決いたします。  本件は異議がないと決するに賛成の諸君の起立を求めます。     〔賛成者起立〕
  367. 野中英二

    野中委員長 起立総員。よって、本件は異議がないと決しました。  なお、ただいま議決しました各件についての委員会報告書の作成につきましては、委員長に御一任願いたいと存じますが、御異議ありませんか。     〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
  368. 野中英二

    野中委員長 御異議なしと認めます。さよう決しました。     ─────────────     〔報告書は附録に掲載〕     ─────────────
  369. 野中英二

    野中委員長 次回は、来る十三日金曜日午前九時五十分理事会、午前十時委員会を開会することとし、本日は、これにて散会いたします。     午後六時三十一分散会