○岩垂
委員 その話に余り深く立ち入るつもりはございませんが、率直に申し上げて今度の事件――事件と言っては大変恐縮ですが、奥野発言をめぐるさまざまな問題がございますね。私はいつも感ずるのですけれ
ども、
日本政府なり
外務省というのは、アメリカに対しては、例えば円高・ドル安の問題でも、今度の牛肉、オレンジのことでも、あるいはいわゆる貿易摩擦の問題全般を含めて、あるいは防衛
分担のことを含めてえらい弱腰で、言われっ放しになっているというような感じがしてならない。
それはそれとして、一方、中国だけではなしに、アジア諸国に対する対応の仕方というのは、アメリカとの
関係でいえば極めてアンバランスではないか。例えば貿易摩擦の問題や何かのことについて言えば、もうちょっとアメリカ並みに考えてくれたらどうだろうかという気持ちは強くあるだろうと私は思います。ここのところを直していかなければならないと思うし、時に
日本人は傲慢だということが言われるようになってきました。中国語で財大気粗というのですか、財政の財に大きい、気が粗いという、金があるのをかさに着てということで訳すそうですが、そういうふうに見られていることも現実にあります。私は、その意味ではもう一遍日中共同声明や日中平和友好
条約とその精神を再確認する必要があると思うのです。
その中で、実は
大臣は時々かわります。まあ時々と言っちゃ悪いけれ
ども、それほど長いことやっていらっしゃらない。私は外務官僚というふうにあえて申し上げたいのは、その人
たちの対応ということが非常に重要な要素を占めているだろうと思うのです。
たまたま私、前の中国大使の中江さんの日中
関係の
見通しについて述べられた関西における講演がございまして、その中から感銘を受ける言葉を見つけました。それは長いお言葉ですけれ
ども、
私は三年あまり大使を務めておりましたが、その間、つくづく感じましたのは、
日本と中国が
お互いに理解し合うのは大変に難しいということです。まして相互信頼に至ってはまだまだ不十分です。
というお言葉を述べられて、そしてその講演の最後に、それならば
どうしたら相互理解と相互信頼を打ち立てられるか、その方策を考えてみたいと思います。それには、私は青年の交流がいちばん迂遠なようで実は早道だと思います。私
たちの世代ではもう遅いのです。いくら言っても残念ながら、間に合いません。次の世代が中国を
指導し、
日本を
指導するようになったときに、彼らの間で相互に信頼
関係があるかどうかです。という言葉を述べられて、中略いたしますけれ
ども、私が大変感動したというのは、
日中正常化を実現された二十世紀の周恩来、廖承志、郭沫若などはいずれも
日本で勉強したことのある人
たちです。こういう人
たちに当たるような立派な二十一世紀の
指導者を中国に期待するのであれば、われわれはもっと寛大に、中国の多くの青少年を
日本に迎え入れて勉強してもらい、
日本の友人をたくさんつくってもらって、
日本の若者
たちとの間で相互信頼と相互理解を深めてもらうことが不可欠です。そして中国に帰って、その中から第二の周恩来が生まれれば心強い限りです。
という言葉を述べられて、特に留学生
制度の問題について触れておられます。
留学生を受け入れる学校の数も少なく、それに閉鎖的です。留学を終えた後の
日本側による就職
制度も完全でない。ですから、なるたけ早く、こうしたいろいろな問題を解決していただきたいのはもちろんですが、また同時に、
日本人の心の中に、アジアの青年を受け入れられるような、そういう気持ちがもっともっと充満してもらいたいのです。
というふうに語っておられるわけです。中江さんのお言葉でございますが、そういう意味では非常に重要なことを
指摘なさっていらっしゃるなというふうに私は思います。
大臣は訪中に当たってもこのことをぜひ念頭に置いていただきたいなと思うし、その辺についての具体的な話し合いをしていただきたいなというふうにも思っております。
翻って、日中の政府
関係には、御存じのように最初は三原則というのがありました。これは平和友好、平等互恵、長期安定の三つです。その後、相互信頼というのがつけ加えられたわけです。そういうことを考えれば考えるほど相互信頼というものが重要だなというふうに考えますので、その点について
大臣がどんなふうにお考えになっていらっしゃるか、御答弁をいただきたいと思います。