○緒方
政府委員 お答え申し上げます。
条約の二条で
条約の適用範囲が規定してございますが、いわゆる罰則の適用につきましては、
先生御
指摘のようにいわゆる核ジャックの場合にのみ適用するのではなくて、それ以外の場合であっても不法に
使用したような場合には刑罰はかけろというのがこの
条約の適用の問題でございます。
そこで、先ほど申し上げたこれを実施するために
国内法が要るわけでございますが、
国内法上どういう手当てになるかと申しますと、罰則の刑罰のことでございますから、例えば
核物質を不当に盗取、盗むというようなことは現行の刑法で対処するということになります。これは手当て済みでございます。
ところで、御
指摘のありました危険な場合、おそれがあるような場合にまで処罰するようなことになっているのではないかという御
指摘でございますが、それは
条約の七条の1の(a)のことではないかと思いますけれども、この
条約の七条の1の(a)は
法律に基づく権限なしにこれこれを起こすおそれがあるものという書き方になってございます。
そこで、先ほど申し上げました、これは現行の刑法ではカバーしていない罪になりますので、今回原子炉
規制法の改正の中で、新たに処罰規定を設けるように御提案をしているところでございますが、その提案の書き方はこういう書き方になってございます。「
特定核燃料
物質をみだりに取り扱うことにより、その原子核分裂の連鎖
反応を引き起こし、又はその放射線を発散させて、人の生命、身体又は財産に対する危険を生ぜしめた者は、十年以下の懲役に処する」、こういう構成要件になってございます。
そこで、「みだりに」とか「おそれ」ということが書いてあるわけでございますが、これはどういうことかといいますと、「みだりに取り扱う」というのは、いわゆる社会通念上、正当な理由があるのではない場合、
つまり「
法律に基づく権限なしに」ということを受けたものでございます。
したがいまして、
法律に基づく権限がなくて不法行為をしよう、人に危険を生ぜしめようという意思を持って違反をしたような場合、これに限って刑罰を適用するということでございまして、違法に取り扱うという意思、それから核連鎖
反応を引き起こし、または放射線を発散させようという意思、そしてそれによって危険を生ぜしめるという意思、この三つの故意が必要な構成要件になってございますので、それが乱用されて御懸念のようなことに使われることはもちろんないわけでございます。
したがいまして、その本人の持っている意図なりなんなりが問題になるのではなくて、あくまでもこの
法律に掲げております構成要件、その中に規定されている三つの故意、これの存否というものがこの罰則の適用の
対象になるかならないか、こういう判断材料になる仕掛けになっているわけでございます。