○渡部(一)
委員 次に、私は
予算委員会におきまして御
質問申し上げようと思ったわけでございますが、旅券の問題について触れたいと存じております。
旅券の問題につきまして、実は私は昭和五十四年の十二月十四日、外務
委員会において
質問いたしたことがあるわけでございます。といいますのは、旅券が大量に発給される
状況にございましたし、その旅券の
状況を見ておりますと、
日本の旅券が在外地において大量に売却されておる、偽造されておる、偽造工場があるというような
状況を迎えているのがわかったわけであります。
どれぐらいの代価で売却されているかは、当時の私のうろ覚えで明快ございませんが、当時もう一万円を超しておったと思います。
日本のパスポートというのは高く売れるものだなと言っておった人
たちとぶつかった思い出があるわけであります。ところが、この旅券の数が、発給件数がふえてくるという
状況を迎えますと、どうしても今の旅券というのは古いシステムで、それで、この旅券制度でいいのかということが検討されなければならないと思うわけであります。
現在の
状況を今からお尋ねするわけでありますが、私の知っているところでは、どうやら千二百万というような
日本国民の十分の一に当たるような膨大な旅券がつくられているそうでございますし、その旅券を見て空港でチェックするチェック機能が日に日にだめになっております。
人間の物事に対する注視能力というのは、この間ビール瓶の中身を検査する工場を見て笑っておったのでありますが、余りたくさんビールが通りますと、中が濁っているのか、ごみが入っているのか、しまいにはわからなくなるそうでありまして、あるレベルがある。そのビール工場の方では何個に一個なら発見できるかというのをチェックしておりまして、スピードアップを余りしますと、目で検査するというのはこれはだめになってくるということを言っておりました。
同じことが旅券担当の方にも言えるようでございまして、旅券を持ってくる人の顔をぱっとにらんで、旅券をぱっとあげて、ぱんぱんと判こを押して、もう一にらみしてぱっと渡すというのが一体旅券制度を有効に運用していることなのかという素人的な疑問にとらわれるわけであります。だから、旅券発給数が多過ぎてきた。
それから偽造が極めてたやすい。特に典型的な例では、
日本の今の旅券は、ほかの二つの旅券を持ってきまして中とじのひもを引っぱがして入れかえるというやり方で十分にごまかすことが可能であります。これはもう
日本が紙幣印刷技術の最高度を発揮されて印刷されているのはわかりますけれ
ども、中抜きといいまして真ん中を抜いて偽造するのに一番易しい旅券と言われて、世界の偽造業界で愛好されているのが
日本旅券なんだそうでございます。
この愛好されている中抜きを妨害するためにはどうしなければならないか。パンチで穴をあげてしまって上から下までみんな穴をあげてしまうか、あるいは中の方も数字を同じく印刷するかなのであります。ところが、当時私がその問題を丁寧に御
質問したのでありますが、印刷局に払うお金がかかるというような低次元のお答えでございまして、それをボイコットされたわけでございます。ところが、そのときの御様子と全く
状況が変わっておるわけでございます。
一九六八年の五月、ICAOにおいてカードパスポートに対する、つまりマシン・リーディング・パスポートですね、MRPに関して
協議が行われ、その方向が決められたのだそうでございます。つまり、私の
質問の十一年前、既にICAOにおいてその議論が始まっておったわけでありますが、
我が国はその席上には正式なメンバーとしては参加していなかった。ただ、その
状況を十分踏んまえて観察をしてこられた。ところが、最近に至りまして、そのMRP、機械読み取り旅券についてどうやら
協議が成立された御様子に承っておるわけであります。
私の言いたいことは、もう今全部ひっくるめて一発で申し上げましたが、要するに私の言いたいことは、そういう中抜き旅券の偽造旅券が発生しやすい
日本の旅券というものは、
我が国の安全にとって感心しない。
それから、旅券がある程度以上多過ぎて機械読み取りの方向へ行かなければ、
日本の旅券をチェックする機能は今や形骸化しておる。ただ風に当てているにすぎない。そういうことを言うと御担当者を非常に怒らせるかもしれませんけれ
ども、それでもなおかつ頑張っておられるその御努力に敬意を表するとしても、この機械読み取りの方向でないと対応できない。そして、今千二百万の旅券を持っておる人々が将来さらに二千万になり三千万になることはもう目に見えておる、空港機能も阻害するようになるという
状況でありますから、
我が国として早急の対策が要るのではないかと私は思っているわけであります。
さて、私がここまで申しましたので、今の旅券の発給
状況はどうなっているのか、MRPについて前進する意図がおありなのか否か、そして今後もパスポートの偽造に対して何らかの対策を立てられるや否や、その三点について固めてお答えをいただきたいと存じます。