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1988-03-18 第112回国会 衆議院 外務委員会 第2号 公式Web版

  1. 会議録情報

    昭和六十三年三月十八日(金曜日)     午後五時八分開議  出席委員    委員長 糸山英太郎君    理事 甘利  明君 理事 北川 石松君    理事 田中 直紀君 理事 浜野  剛君    理事 高沢 寅男君 理事 永末 英一君       天野 公義君    大石 正光君       鯨岡 兵輔君    小杉  隆君       坂本三十次君    椎名 素夫君       塩谷 一夫君    水野  清君       村上誠一郎君    山口 敏夫君       岩垂寿喜男君    河上 民雄君       伏屋 修治君    正木 良明君       森本 晃司君    渡部 一郎君       岡崎万寿秀君    松本 善明君  出席国務大臣         外 務 大 臣 宇野 宗佑君  出席政府委員         外務大臣官房審         議官      福田  博君         外務省中南米局         長       坂本重太郎君         外務省経済局次         長       内田 勝久君         外務省経済協力         局長      英  正道君         外務省国際連合         局長      遠藤  實君         大蔵省国際金融         局次長     岩崎 文哉君  委員外出席者         外務大臣官房審         議官      久保田 穰君         外務委員会調査         室長      藪  忠綱君     ───────────── 委員の異動 三月十八日  辞任         補欠選任   神崎 武法君     森本 晃司君 同日  辞任         補欠選任   森本 晃司君     神崎 武法君     ───────────── 本日の会議に付した案件  国際復興開発銀行協定第八条(a)の改正受諾について承認を認めるの件(条約第一号)      ────◇─────
  2. 糸山英太郎

    ○糸山委員長 これより会議を開きます。  国際復興開発銀行協定第八条(a)の改正受諾について承認を求めるの件を議題といたします。  これより質疑に入ります。  質疑の申し出がありますので、順次これを許します。高沢寅男君。
  3. 高沢寅男

    高沢委員 初めにお尋ねをいたしたいことでありますが、その前に一言ごあいさつをしなければなりませんね。きょう夜の時間で、また外務大臣大変御苦労さまでございます。  初めにお尋ねをしたいことは、今回我が国世銀に対する増資をいたしておりますが、これは世銀加盟のどこかの国からもっと日本はふやせ、こう言われてなさったのか、日本側から自発的にこの出資増額をされたのか、その辺の経過はどうでしょうか。
  4. 久保田穰

    久保田説明員 お答え申し上げます。  今回の世銀協定改正につきましては、先般、国際開発協会新規融資の財源を手当てするために昭和六十一年に行われました第八次増資交渉におきまして、我が国カナダイタリア等増資について特段の貢献を行うかわりに、当該諸国の従来からの銀行への貢献などが銀行における地位及び発言力に適切に反映されるべきであるという観点から、銀行における当該諸国出資比率を引き上げることを主張した次第でございます。  このような交渉過程におきましてこの改正の問題が話し合われ、そしてこの出資比率の引き上げは、銀行において最大の出資比率を占める米国出資比率を引き下げることにより手当てをするということが合意されて、この合意に至る過程協定改正発効要件を厳格にしまして協定安定性を高めるための改正が提案された、こういう次第でございます。
  5. 高沢寅男

    高沢委員 今の御説明で、今度我が国出資比率は五・一九%から六・六九%に上がったわけでありますが、しかし今の日本が国際的に黒字大国と言われておるこの現状から見ると、まだこのシェアは小さいのじゃないかというふうな感じもいたします。したがって、今回の出資増額はこれはこれとして、将来またもっと出資増額しようというような問題は、日本からそうする、もっと増額したいと言えば世銀の機構としてそれが実現されることになるのか、その辺の関係はいかがですか。
  6. 久保田穰

    久保田説明員 お答え申し上げます。  世銀におきまして、我が国は現在米国に次いで第二番目の出資国となっております。我が国としては世銀の果たす役割というものを高く評価しておりまして、その役割に対する日本としての応分貢献をしたいと考えまして、先ほど申し上げた増資という決定に踏み切ったわけでございます。今後とも世銀の果たす役割に対しまして応分貢献をしていくという方向で対処していくというふうに考えております。
  7. 高沢寅男

    高沢委員 我が方からの大いに貢献しようという、これは自発的なこちらからのイニシアチブでそういう出資増額という問題が進むと思いますが、その場合に、国際的にもっと日本はやれと言われる側面と、それから世銀の中で日本出資比率が、シェアがますます大きくなっていく、場合によればアメリカシェアと同じくらいに仮に進むようになるとすれば、今度は逆に何か日本ばか世銀イニシアチブをとろうとしておるのじゃないのかという、そういう意味日本に対する加盟各国からの一種の抵抗というか、俗に言えばやっかみというか、そういうふうなことは一体ないのかどうか。これも国と国といっても人間の問題ですから、そういうことは一体あるのかどうか。どうでしょうか。
  8. 久保田穰

    久保田説明員 お答え申し上げます。  先生指摘のような問題に対します我が国の現在の姿勢でございますが、二国間援助国際機関援助というものをなるべくバランスをとって行うという姿勢で対処しております。国際機関につきましては、日本のODAの中で、援助供与国DAC加盟十八カ国あるわけですが、そこの比較におきましてDAC平均よりもかなり上回ったパーセンテージで国際機関に対する拠出を行っております。したがいまして、この二国間の援助と多数国間とのバランス、それから、これは財政当局の所管になると思いますが、当然のことながら日本財政事情、そういったものを勘案しながら、先生指摘のほかの国々の動向というものも見きわめながら対処していくということになると思います。
  9. 高沢寅男

    高沢委員 非常に丁寧なお答えですが、何かずばっと私の聞いたことに当たっていない気がするのです。  つまり、日本がそうやって大いに出資増額して役割を果たすことが国際的に非常に評価される、日本はよくやっている、こうなるのか、それとも、ばか日本がしゃしゃり出て何か国際機関主導権をとろうとしておるじゃないか、こういう意味一種警戒心のような目で見られるのか、その辺のニュアンスは一体どうかということをお聞きしているわけです。
  10. 久保田穰

    久保田説明員 お答えいたします。  先生指摘の問題の見る角度がいろいろあると思いますけれども、先ほど申し上げましたことに加えまして、世界全体としまして、援助を受ける途上国側、それから先進国側もやはり援助の額の増額ということに対しては一般的に非常に強い期待を持っておりまして、なかんずく第二位の経済大国と目されている日本に対する期待は年々高まっております。したがって、一般論としては、日本は二国間援助であると国際機関を通じる援助であるとを問わず増額期待されていると思います。  ちなみに、今回の出資増加におきましては、日本を初め他の主要な供与先進国もそれぞれ増額するという形になっております。一言で申し上げまして、期待にこたえているという形をとっていると思います。
  11. 高沢寅男

    高沢委員 それでは期待にこたえる形で非常に評価される、こういうふうに見ていいと思いますね。  それで、我が国世銀に対する出資の額なり、あるいはそのシェアと申しますか、我が国世銀加盟して以来今日までの大まかな時代の流れの中でそういう額やシェアがどういう推移をたどってきたか、少し数字的な面で説明願いたいと思います。
  12. 岩崎文哉

    岩崎(文)政府委員 お答え申し上げます。  世銀加盟して以来の我が国出資額及びシェア推移でございますが、昭和二十七年に我が国世銀加盟した当時の額及びシェアは、二・五億ドル、二・七七%でございまして、加盟国中第九位でございました。その後若干間を置きまして、昭和四十五年には十・二億ドル、四・〇二%と加盟国中第五位に上がりました。それが今回、ただいまお願いしております増資が実現いたしますと、増資後で六十三・五億ドル、六・六九%ということで、加盟国中二位に上がる、こういう推移になっております。
  13. 高沢寅男

    高沢委員 かなり大幅に上がってきているという推移がよくわかると思います。  それから、今度は世銀と別に、通貨なり短期の資金関係ですが、IMFの中では日本のそういう出資シェア推移はどうなっていますか。
  14. 岩崎文哉

    岩崎(文)政府委員 お答え申し上げます。  IMFにおける我が国出資額及びシェア推移を先ほどの年に合わせてお答え申し上げますと、昭和二十七年、我が国IMF加盟いたしましたときが二・五億ドル、二・八六%で、加盟国中第九位でございました。その後四十五年に十二億ドル、四・二二%ということで、加盟国中第五位になりました。現在は四十二・二三億SDR、SDRというのは特別引き出し権でございまして大体一・三ドル相当額でございますが、四十二・二三億SDR、四・七三%でございまして、加盟国中第五位でございます。
  15. 高沢寅男

    高沢委員 中曽根前首相の昨年の訪米に当たって、世界銀行日本特別基金を創設するということをお約束されたというふうに聞いていますが、この日本特別基金というのは現在はどういうことになっていますか。もうできているのか、その額はどれくらいで、どういうふうに運用されているのか、その辺のことを説明してください。
  16. 岩崎文哉

    岩崎(文)政府委員 お答え申し上げます。  昨年中曽根総理が訪米された際表明いたしました世銀日本特別基金は、我が国開発途上国の債務問題に適切に対処するため、我が国民間資金世銀を通じて途上国還流するということを促進するために特別基金を創設したということでございます。  さらには、どのような仕組みになっておるかということを御説明いたしますと、我が国から世銀に対し三年間で三百億円の無償資金拠出いたします。この拠出された基金は、途上国世銀融資に関連したプロジェクトの組成、実施を行う場合に必要となる技術援助資金等に充てられるということで、世銀我が国の協議の上使用されることになっております。これら技術援助資金により開発される途上国プロジェクトに対して世銀融資が行われるということにより、世銀融資がふえ、世銀の追加的な資金需要が生ずる、この増加する資金需要に対し、我が国金融資本市場において三年間で三千億円程度の追加的資金調達を認める、こういう仕組みになっております。以上により、我が国は全体の仕組みといたしましては三年間で官民合わせて総額三千三百億円、約二十億ドルの追加的資金世銀を通じ還流させる、こういう仕組みになっております。  この基金のうち実行されましたるものは、昨年、当初予算で六十億円、補正予算で三十億円追加いたしまして、合計九十億円の財政資金拠出しております。その裏におきまして、東京市場において現在まで一千六百五十億円の追加的資金調達世銀に認めております。  なお、ただいまお願いしております六十三年度予算におきましても、同様の拠出百五億円を計上し、御審議をお願いしておるところでございます。
  17. 高沢寅男

    高沢委員 もう一度ちょっとお尋ねをしたいのですが、今、日本特別基金民間資金でというあれがありましたね。今言われた三百億、それから今度は三千億、この関係は、三百億は財政資金でやって三千億は民間資金で、こういう関係になるのですか、いかがですか。
  18. 岩崎文哉

    岩崎(文)政府委員 お答えいたします。  御説明が足りませんでしたが、いわゆる黒字還元途上国に対する我が国黒字還流というものは官民合わせた資金還流が必要でございます。その際におきまして、政府資金財政資金によります拠出によって民間資金の追加的な調達を誘導する、こういう組み合わせになっております。先生おっしゃいましたように、三年間で三百億円の政府資金、それによりまして三千億円の民間資金還流を促す、こういう仕組みでございます。
  19. 高沢寅男

    高沢委員 わかりました。  そうすると、三百億というのは要するに井戸の水に例えれば呼び水で、それによって今度は三千億の民間資金を呼び出す、こういう関係と見ていいですね。その場合の三千億の民間資金は、一般民間金融機関というふうなところからの資金と考えていいわけですか。
  20. 岩崎文哉

    岩崎(文)政府委員 従来より世界銀行日本資本市場におきましていろいろな形で資金調達をしております。例えば銀行生命保険会社等からの長期の借り入れ、いわゆるシンジケートローンという形で借りておるものもございます。それから、東京市場において債券を発行する、いわゆる世銀債発行ということで調達しておるものもございます。このような従来の発行あるいは借り入れによる資金調達の流れ、これと同様の形で量的には追加的にそれを借りていただく、こういうものが今申し上げた資金でございます。
  21. 高沢寅男

    高沢委員 次へ進みますが、アメリカ対外援助姿勢といいますか、これは最近、マルチ援助というものをできるだけ手を抜いて、そしてバイの二国間の援助というものに重点を向けるという傾向があるのではないのか。しかも、その場合の二国間の相手というのは、アメリカの非常に世界的な一つ軍事戦略というか政治戦略というものをバックにしてそういう選択がなされているという傾向があると私は見るわけですが、我が国対外援助の対マルチあるいは対バイ、二国間、その辺の位置づけは総論的にどういう位置づけをされているか。先ほどの久保田審議官のお話でもちょっと触れられましたが、その点をもう一度説明をお願いしたいと思います。
  22. 久保田穰

    久保田説明員 お答え申し上げます。  二国間援助と多数国間援助を比較してみますと、それぞれ長所短所がございますが、二国間援助には我が国外交政策意図に沿って機動的に相手国事情によってきめ細かな援助を実施することができます。また、我が国援助努力相手国に直接に日本援助であるということが印象づけられまして、二国間の友好親善関係が深まるという効果がございます。  他方国際機関を通じる援助でございますと、国際機関がそれぞれ持つ専門性というものを活用して援助を実施し得るということ。それから、国際機関の持つ中立性を利用できる、中立性が確保できるということ。それにまた、アフリカのように我が国と遠く、我が国としても余り人的な交流がなかったというような地域に対しまして、いろいろな意味でパイプが通じるというような長所がございます。したがいまして、先ほども申し上げましたように、我が国としては二国間、多数国間、それぞれ活用しながら援助を実施している状況でございます。  そして、現在の日本の位置でございますが、OECDDAC開発援助委員会でございますけれでも、そこの中で多数国間援助に占める比率は、この十年間で九・〇%から二〇・四%と急速に拡大してきております。それからまた、日本援助の全体に占める中でも、先ほど申し上げましたが、DAC加盟国平均二二・五%なんですが、我が国は三二・一%とこれも上回っております。このように、我が国の場合、多数国間を通じる援助というものは国際的に見まして比較的高い。これは我が国としてもこの面をかなり重視しておるということが言えると思います。
  23. 高沢寅男

    高沢委員 今回、日本出資増額によって日本シェアがふえた。しかし一方、今度はアメリカシェアが減った。そういう関連の中で、改正を発議できる発効要件が今度は八〇から八五%へ改正されるということが今ここで審議されているテーマであるわけですが、こういうふうな改正は例えばIMF、これもまた同じような改正がなされたのか、これからなされるのか、この辺はいかがですか。
  24. 久保田穰

    久保田説明員 お答え申し上げます。  まずIMFでございますが、IMFの場合には昭和五十三年に同様の改正が採択されました。IMFの場合には世銀の場合と異なりまして、当時の事情によりまして、IMF協定の中にございます採決方式各種ばらばらにたくさんございまして、過半数、その他八〇%、八五%、その一番厳しい八五%というところに統一したという経緯がございます。  他方世銀協定改正の場合は、先ほど申し上げましたように、我が国を初めその地位に応じた出資比率を増大したいという意思が第二世銀IDAの第八次増資という六十一年の交渉過程において持ち上がりまして、それをどうするか、アメリカの持ち分である出資を減らすことによりまして、それをほかの国に割り振るという形をとって実現したという経緯でございます。
  25. 高沢寅男

    高沢委員 今の経緯はわかりましたが、そうすると、つまり今度こういう八〇から八五%という改正をやったということはアメリカシェアが減ったということとの見合いであるとすれば、つまり今度の世銀協定の何らかの改正という論が出たときに、アメリカがそれが気に入らないというときにアメリカがノーと言えばできない、こういう一種拒否権的なそういう枠を、垣根を八〇から八五へ高くした、こういうふうに私は見れると思うのですが、やはりそういう性格のものと理解していいのですか。
  26. 久保田穰

    久保田説明員 お答え申し上げます。  協定上は、ただいま先生指摘米国拒否権という形のものが規定されているわけではございません。現在の出資比率を前提としますと、この改正によりまして結果的には米国意思に反した協定改正することができなくなるというのは事実でございます。他方、他の国々改正を阻止するために所要の投票権数を集めやすくなるということがございます。米国だけが裨益するということではなくて、例えば我が国につきましても、出資比率増加によりまして今後は改正を阻止しやすくなるという立場に立っております。
  27. 高沢寅男

    高沢委員 今の御説明ですが、我が国が仮に八五%ラインで改正を阻止しようと考えれば、日本は、例えば西ドイツとかあるいはフランスとかイギリスとか、そういう他の出資比率を持っている国と組んでそういうふうにできるということになるわけですね。  そういたしますと、つまり世銀というものはその協定をこう変えよう、こう変えようと、要するに発展途上国側立場とかあるいは援助を与える先進国側立場とか、やはり世銀の中にも結構そういう政治という問題があって、そういう競り合いというものがあるんだ、そこで今度のこの八五%は意味があるんだ、こういうふうに理解していいのか。その辺はどうでしょうか。
  28. 久保田穰

    久保田説明員 お答え申し上げます。  世銀の場合、過去、この協定改正という経験がただの一度あったわけでございますが、一般的には加盟百五十一カ国の間におきましては、世銀を安定的なものにしたいという意思が強く働いていると思います。したがいまして、総務会本件改定提案がされて議論されました際にもこれが全部賛成されたわけでございまして、世銀設立そもそもの経緯以来、この世銀に対しては安定的な運営というものが強く期待されておりまして、今回のこの協定改正の真意もそれを実現するための一つのあらわれというふうに読み取っていいのではないかと思います。
  29. 高沢寅男

    高沢委員 余り時計を見ずに質問しておりまして、もう時間が迫りました。まだお尋ねしたいことがありますけれども、それは横へ置いて、どうしても一度大臣の御所見をお聞きしたいと思います。  今、発展途上国のいわゆる固定債務、これが恐らく今の世界経済の中における一種時限爆弾、こういう性格を持っているわけですが、そういう固定債務の問題を、今度は日本なりアメリカなりその他の先進国側からこれをどう解決していくのが一番妥当な方法であるのかということが今非常に大きな課題だと思いますが、これだけの黒字大国となった日本として、そういう問題の解決一つの国際的なイニシアチブがあっていいんじゃないか、私はこんなふうに思うわけでありますが、そういう問題解決一種国際機関をつくったらどうだとかいろいろのそういう案などもありますが、この辺は大臣としてどういう御所見をお持ちか、ひとつお尋ねしたいと思います。
  30. 宇野宗佑

    宇野国務大臣 確かに現在、途上国の何カ国かは累積債務で非常にそのことが災いになっているということは御指摘のとおりでございます。現在は、いろいろな条件に関しましてはパリ・クラブでいろいろと話し合いがなされている。もちろん我が国民間銀行の方が多いわけでございますから、したがいまして、やはりそうした面におきましても世界民間銀行といろいろ話し合いをしておるということでございますが、なかなからちが明きません。  とりあえず日本といたしましては、先ほど大蔵省説明もございましたが、世界銀行に二十億ドルの日本特別ファンドも設け、なおかつ昨年二百億ドルの還流資金を設けることにおいて、それもひとつ思い切って累積債務に充てていただいて結構ですよ、なおかつそのためには自主努力で新しい経済復興に努めていただきたいものである、こういうようなことでアンタイドで出したような次第でございます。  世界にはいろいろな学者がおられまして、何かの機関を設けて、思い切って割引して民間銀行の持っておる債権を買ってあげたらどうだ、そういう話が出ますと、実はどれだけで買うんだという話等々になりまして、私も、ちょいちょい各国の方がお越しになりますから、黙って話を伺ったりあるいは各国の胸算用を聞いてみたりするのでございますが、まあ五分五分かと言う人もいますし、いやそれは余りにもひど過ぎる、やはり割引は八割ぐらいがよかろうと言う人もいますし、中には債務国で、いや一割でいいんだ、九割はもう返済不能だ、こういうようなことが先行してくる面も多々ございます。したがいまして、ひとり日本だけで何らかの割引方法等を講ずることもあるいは日本イニシアチブになるかもしれませんが、もしそれを言い出した場合にどのようなことになるだろうかということを考えますと、非常に慎重を要する問題ではなかろうか、こういうふうに私自身は考えております。  とりあえず、現在の二百億ドル還流資金を十二分に御用立てください、そうしたことで今のところは対処していきたい、かように存じておる次第であります。
  31. 高沢寅男

    高沢委員 大臣も近くまたOECD会議にも出られる御予定もあるように聞いておりますが、ひとつまたそういう面で大いに努力をいただきます。  これで私、質問を終わります。
  32. 糸山英太郎

    ○糸山委員長 次に、伏屋修治君。
  33. 伏屋修治

    伏屋委員 最初に、この改定外務省から出されました説明書を読みますと、いわゆる世銀協定第八条(a)の改正というものが、協定安定性の向上に資する、また銀行の業務の円滑な運営に資する、こういうふうに説明されておるわけでございますが、日本の現在の経済力にふさわしい出資をということで出資調整がされたようでございます。それと同時に、この協定改正発効要件、いわゆる八〇%を八五%に改正されるということがこの改正の主たる目的でございますけれども、これとシェア調整とはどういうような結びつきがあるのか、その辺の御説明をいただきたいと思います。
  34. 久保田穰

    久保田説明員 お答え申し上げます。  この協定改正につきましては、先生指摘のように、我が国カナダイタリア等増資につきまして特段の貢献を行うかわりに、従来から銀行において果たしております役割発言権地位、こういうものが適切に反映されるようにすべきであるという観点から、出資の増大を要求したわけでございますが、その形としましては、アメリカ出資比率を引き下げまして、そのかわり我が国その他の出資比率を引き上げるという形をとったわけでございます。  そして投票権は、基礎票二百五十票というのがございまして、それぞれの出資比率に応じてそれに加えられるという形で、全体的に見ますとこの出資比率投票権というのはほぼ比例しておるわけでございますが、そういう形で日本以下の投票権が増大しまして相対的にアメリカシェアが減った、こういう形になったわけでございます。
  35. 伏屋修治

    伏屋委員 今回のシェア調整については、いわゆるアメリカの従来の出資シェアに対して現実的に出資がなかった、そういう面においてアメリカ分の二%をカットしてその分の一・五%が日本シェアに含まれた、こういうような経緯があるようでございますが、何かそこら辺の操作が、それと改正発効要件とが密接に絡み合って、アメリカ側がそういう二%のシェアをカットしたことの分だけ発効要件改正することによってアメリカのいわゆるイニシアチブを保持していきたい、こういう考えがその底流にあったのじゃないか、こういうふうにうかがえるわけですが、その辺はどうでしょうか。
  36. 久保田穰

    久保田説明員 お答え申し上げます。  交渉自体は六十一年の第八次国際開発協会新規融資のための増資交渉の場において行われたわけでございます。その過程で、先ほどお答え申し上げましたそういうやりとりがあったわけでございますが、この協定改正の決定につきましては総務会で議論されまして、全員反対なく採決されたわけでございます。  その底流には、世銀加盟のすべての国において世銀というものを安定的に運営してほしいという総意が働き、その中で最大の出資国であるアメリカ及び第二位にある日本その他大口の出資国役割というものに対する評価、期待というものが強く働いていたという点におきまして、このような結果というものは全員の期待している形であるというふうに解釈しております。
  37. 伏屋修治

    伏屋委員 では次の問題に移りますが、日本経済力にふさわしい地位というものがこのシェア調整によって確保された、六・六九%になった、これがいわゆる今後の世銀における日本発言力あるいは地位の確保あるいはまた世銀運営に対する影響力にどのような反映を及ぼすのか、その辺はどうお考えでしょうか。
  38. 久保田穰

    久保田説明員 お答え申し上げます。  日本シェアが、先生指摘のように一・五%出資シェアが引き上げられるということによりまして、先ほど申し上げました投票権シェアは現行の四・九八%から六・四二%というところに増加が見込まれております。この投票権の六・四二%という数字は、全加盟国中第二位の数字でございます。  で、この第二位の数字というものは銀行におけるいろいろな場においての発言力というものの裏づけとなって、それだけ日本発言力増加しておるというふうに我々は見ております。我が国は自由世界第二位の経済力を有する国であるという立場からも、今後とも活発に世銀の中におきまして貢献を行っていきたいというふうに考えております。
  39. 伏屋修治

    伏屋委員 このようにシェア調整されまして、六・六九%のシェアが現在の日本の国力、経済力において妥当なものなのかどうなのか、その辺は大臣はどうお考えでしょうか。
  40. 宇野宗佑

    宇野国務大臣 金額から申しますと、あるいはその六・六九というのはアメリカと比較した場合少ないのじゃないか。しかしながら、先ほど政府委員も申し上げておりますとおり、今回の出資増額に当たりましてはアメリカシェアを分けてもらってそれぞれがシェアをふやしたというような経緯もございます。したがいまして、そういう総務会における平和的な、極めて合理的な話し合いの中の誕生でございますので、不服を申し上げることはできない。ただ、第二番目になったということが一つの大きな魅力ではなかったであろうか、かように考えております。
  41. 伏屋修治

    伏屋委員 最大のシェアを占めるアメリカが八七年末に世界最大の債務国に転落をしたわけでございますので、そういう面から考えますと経済先進国と言われる日本期待するものは非常に大きいものがあると思うのですけれども、そこらあたりで今のような六・六九%、平和的にそういうふうに決まったんだから、こういうふうになるのだろうと思いますが、国際的に見ていくならばさらにシェアを拡大してもらいたいという期待感というものはあるのではないか、こういうふうに考えるわけですが、その辺あたりはどういうお考えでしょうか。
  42. 宇野宗佑

    宇野国務大臣 もう言わずもがな、世界じゅうからあらゆる面においてもっと日本経済的に協力をせよという要請がございますから、当然そうしたことで世界も眺めるのではないか、かように思います。
  43. 伏屋修治

    伏屋委員 ちょっと話題を変えますけれども、去年の百八国会で世銀グループの一つとしていわゆる多数国間投資保証機関、MIGA、この設立条約が締結されましてこの委員会において検討されました。そのときに私も質問させていただいたわけでございますが、MIGAは発効したのか、現在の批准状況はどうなっておるのか、そのあたりを御説明いただきたいと思います。
  44. 久保田穰

    久保田説明員 お答え申し上げます。  MIGAの設立条約は、先進国五カ国以上、途上国十五カ国以上の国が条約を締結しまして、かつ、これらの国の応募資本の合計が全体で授権資本の三分の一以上となるということで発効することになっております。  三月九日現在、先進国七カ国及び途上国十九カ国が本条約を締結しまして、これらの国の応募資本の合計は授権資本の二七・五一六%という状況でございます。このことは、途上国及び先進国の国の数につきましては要件を満たしておりますけれども、応募資本の合計のパーセンテージが授権資本のパーセンテージに比べまして足りませんので、まだ発効していないという状況でございます。  アメリカにつきましては、近く本条約を締結すべく現在準備しておる、いつでも大統領がサインできる状態にあるというふうに承知しております。  以上でございます。
  45. 伏屋修治

    伏屋委員 昨年の委員会で質問したときには、政府側の答弁としましては、いわゆるアメリカの態度というものは、米国予算にMIGAの応募額の払い込み措置は既に盛り込まれておるということで何ら問題なく発効するだろう、こういうような答弁であったわけでございますけれども、アメリカがいまだに批准しておらないという理由はどこにあるのですか。
  46. 久保田穰

    久保田説明員 お答え申し上げます。  ただいま米国は本条約を締結すべく準備中であるとお答え申し上げましたが、米国の場合、MIGA設立条約の締結権限を大統領に授権する国内法を包括貿易法案に盛り込んでいたわけでございますが、昨年末、これを包括歳出法案に盛り込むということによって成立させたわけでございます。したがいまして、本年二月以降締結が可能になったという状況になってございます。
  47. 伏屋修治

    伏屋委員 次に、今一番問題になっております中南米諸国の累積債務問題、当面の危機というのは新規融資とかあるいは債務の債券化等々で避けられたわけでありますけれども、開発途上国の債務累積の合計が一兆二千億を突破しよう、こういうような実情であるわけでございますが、今後ますますその問題については深刻化していくのではないか、そういう中で世界一の黒字国である日本への期待は非常に大きいわけでございます。  先ほど大臣の御答弁にもありましたように、三百億ドルの還流計画、こういうことがございましたが、百億ドルの還流計画についてはやや具体的な措置がとられたように思いますが、あと二百億ドルの還流計画については今どのような進捗状況になっておるのか、御説明いただきたいと思います。
  48. 宇野宗佑

    宇野国務大臣 詳細は政府委員から御説明したいと思いますが、とりあえずASEANに参りまして二十億ドルを下らない還流資金、これを使っってください、なおかつ中南米に対しましても四十億ドル程度のものを考えておるというのが現状でございます。そして私たちの考えでは、三年間でこれを消化しようということでございますが、今までの実績から申しまして、大体そのようになるんじゃなかろうかと思っております。  政府委員から、数字がございますから、説明してもらいます。
  49. 内田勝久

    ○内田(勝)政府委員 お答えいたします。  途上国累積債務の問題につきましては、先生指摘のとおり、最近メキシコ、ブラジル等で若干積極的な動きもございまして、一部改善の傾向が見られることは事実でございますけれども、なお世界経済の安定的な発展にとって累積債務の問題は大変重要な問題であると私ども考えておりまして、政府といたしましても、先進諸国と協調いたしまして積極的に対応する必要がある、このような考え方から、私ども、昨年、緊急経済対策の一環といたしまして二百億ドル以上の官民のアンタイドの資金還流の措置を決定いたしました次第、先生御承知のとおりでございます。  そこで、その措置のもとで、これまでにアジア、中南米等の開発途上国に対しまして経済政策支援のための円借款の供与、輸銀による融資及び世銀等国際開発金融機関を通じた官民の資金協力という形で既に約三八%が具体化しております。  また、一昨年に発表いたしました約百億ドルの資金還流の方は、既に約九割が達成されております。  以上でございます。
  50. 伏屋修治

    伏屋委員 なお具体的な進捗を図るように御努力を願いたい。  まだ時間が残っておるようでございますが、以上で終わります。
  51. 糸山英太郎

    ○糸山委員長 永末英一君。
  52. 永末英一

    ○永末委員 宇野外務大臣にお伺いいたしますが、戦後組み立てられました国際経済秩序、中身はいろいろと変わってまいっておりますが、大筋の枠組みは変わっていないと思います。我々は敗戦国家としてこの経済秩序の中へ入っていったわけでございますが、我が国経済的実力はまさに近年非常に大きく拡大をし、そういう変化を生じました。  さて、そういう意味合いで、この国際経済秩序の変化に伴って我が国の果たすべき役割もまた変化をしておると思いますが、この辺の御認識について、外務大臣はどう思われますか。
  53. 宇野宗佑

    宇野国務大臣 私、よく申すのでございますが、戦前の我が国の貿易額は極めて微々たるものでありまして、昭和初期には、金解禁問題を通じましていろいろな政党が争ったという時代がございました。つまり、金解禁をすれば、輸出の極めて小さな日本は、金はすべて海外へ流出するではないか、片一方では、いや、思い切ってデフレ政策をとって対外競争力をつけるべし、しからば出た金は再び戻ってくるであろう、こういうようなことが真剣に昭和初頭に繰り返されました。しかしながら、依然我が国の貿易は余り振るわなかった傾向でございましたから、日本もドイツも、あるいは諸外国が、言うならば自国通貨の切り下げをいたしまして輸出振興を図ったということは歴史に歴然たるところがございます。  その結果、各国は、外国製品が入ってくることは自国製品の妨害になるというので関税を高めました。さらには非関税障壁をつくったと私は考えております。そういう結果、むしろ世界貿易はシュリンクした、シュリンクの結果新しいマーケットを設けたい、こんなことが第二次世界大戦の一つの動機になったというような歴史もありますし、私たちもそれも一つの話だろうと考えております。  そうした中において、戦後アメリカのGNPの二十分の一でございました日本が、四十三年たった今日、二分の一であり、なおかつ実質ナンバーワンというふうにいわれております。この間は、どういたしましても、やはり自由貿易というものが盛んになったおかげである、私はこういうふうに断定してもよいのではなかろうか。もちろん資源小国あるいはまた食糧小国の日本でございますが、国民のたゆまざる技術革新、さらには経営改善、これが今日の立派な経済体系をつくり上げてきたのではなかろうか。  しかしながら、やはり貿易でございますから、要は自由貿易主義というものが戦前のあの保護主義にかわって誕生いたしました。それがガットであり、今御審議を願っております世銀であり、さらにはIMFである、こういうふうに私は考えますと、そういう波に乗って日本は大きくなった。したがいまして、その波に乗り切れない独立国もまだまだたくさんいらっしゃるわけでございますから、私たちはやはりそういう意味におきまして、開かれた日本、さらには世界貢献する日本でなくてはならないというのが今日の私たちの考え方でございます。  特にそれは、途上国のみならず先進国も、日本に対しましてこの四十数年間にわたりまして非常に協力を願った、そういうような感謝の念もどこかにあらわさなくてはならない、ひとりで大きくなったんじゃないということが大切ではなかろうか、私はかように存じております。
  54. 永末英一

    ○永末委員 戦前との比較ではなくて、戦後の変化の中における我が国役割の変化はどうごらんになるかということを伺ったのでありますが、戦後、我々は経済力がございませんから、言うならばアメリカの主導下にできた国際経済秩序のおかげをこうむっておった。しかし、今やおかげをこうむるような受益者の立場ではなくて、我々が積極的に我々の経済力を使ってこの国際経済秩序の発展のために貢献をしなければならぬ、そういう段階に立ち至っておると私は思いますが、あなたはどう思われますか。
  55. 宇野宗佑

    宇野国務大臣 今申し述べましたとおり、同感でございます。GNP一つでも二十分の一が二分の一になっておるという現状でございますから、やはりお返しをしなくてはならない時代が来ておる、かように存じます。
  56. 永末英一

    ○永末委員 さて、我が国が、国際経済秩序でございますから、それに対する積極的貢献といえばどんなものがあると思われますか。
  57. 内田勝久

    ○内田(勝)政府委員 ただいま先生指摘のとおり、日本の国力は非常に大きくなってまいりましたが、世界経済体制の構築のために日本がどういうことができるかという御質問であると理解いたしました。  政府といたしましては、我が国自身の経済の構造調整を推進していく、内需を拡大して、日本のより開かれた市場を達成していくということが第一点かと思いますが、さらにガットのウルグアイ・ラウンドを通じまして世界の自由貿易体制の秩序の再構築と申しますか、一層の強化のために積極的に参加している次第でございますし、また途上国との関連におきましては資金還流計画、その他ODA等を通じます政策努力を行ってきているところでございます。今後ともこのような努力を一層強化する必要があると考えている次第でございます。
  58. 永末英一

    ○永末委員 おっしゃったことは我が国の積極的努力の一端でございますが、その中で、今審議をしておりますのは世銀の問題でございますが、この国際金融機関役割というものを我が国は一体どう判断をしておられますか。
  59. 宇野宗佑

    宇野国務大臣 今政府委員が申しましたとおり、やはり大きくなった日本はODAというものを一つ頭に置いておかなくてはなりません。ODAは、もう百も承知でございましょうが、政府みずからが行うところの二国間の贈与、もう一つ国際機関に対する出資拠出、さらには二国間の借款、こう三つに分かれますので、そのうちにおきましても特に世銀あるいはアジア銀行等々に対する拠出出資というもの、これが言うならば世界に対する大きな役割を果たしておる、だからそれに対しましても日本は積極的でなければならぬ、かように考えております。
  60. 永末英一

    ○永末委員 我々日本の国が果たしておる国際協力、確かに経済協力は、二国間のものもございますし、こういう国際機関を通じてのものもございます。また、それぞれのベースのもとに技術協力も行っておりますし、あるいは人的な知的開発も行っております。  さて、今国際金融機関に対する出資一つの大きな貢献だと言われました。確かに世銀ないしは国際開発協会に対する出資は上がってもまいりました。また国際金融公社もそうでございますが、その他、アジア開銀やアジア開発基金、さらには米州開発銀行ないしは米州開発公社、アフリカ開発銀行並びにアフリカ開発基金等、一応概算をいたしますと、この全体の出資額の中の日本出資額シェアは約一割なんですね。  私が伺いたいのは、このそれぞれに対する日本人の職員数を調べてみましたところ、世銀関係世銀IDAとでは、全体で五千六百五十七名おるが、日本人の職員数は七十二名である。それから国際金融公社につきましては、全体で五百十七名であるが、日本人は五名である。これの出資比率は五%ございますが、人の従業比率は一%ないということですね。それから我々のアジアに近いアジア開銀やアジア開発基金、これの全体の職員数は千六百一名であるが、我が国は五十八名である。出資比率は二つを並べましても二六%以上ございます。しかし人の比率は三・六二%である。さらにまた米州開発関係につきましては、日本人の職員比率は〇・一六%である。アフリカ関係の二つにつきましては、全体の職員数は千百四名おりますが、我が国の職員数はゼロである、こういうことなんですね。  そこで、国際金融機関等に対する我が国貢献出資だと言われたが、人の方はもうやらないでいいのですか。
  61. 宇野宗佑

    宇野国務大臣 その点が我々といたしましても甚だお寒い限りであると考えておる次第でございます。特に、日本アメリカだけでGNPの三分の一でございますから、にもかかわらず、そうした面から今永末委員が申されましたような比率を考えました場合に、まだまだ努力をしなくてはならないのだという点を私たちは考えなければならぬと思っております。したがいまして、出資のみならず人の問題につきましてもやはり今後いろいろな面で努力をいたしたいと思います。  詳細はひとつ政府委員から申し上げます。
  62. 久保田穰

    久保田説明員 ただいま宇野大臣から申されましたように、我が国としてもこの国際機関に対して、出資のみならず人的な面でも努力をいたしておりまして、外務省としましても、国連、国際金融機関におきます日本人職員の増加、それから高級ポストの獲得というような質の向上にも努力している次第でございます。  このために国際機関人事センターというものを設けまして、国際機関職員採用に関する情報を収集し紹介するということを行いますと同時に、応募者の推薦、それから日本人職員の統一的な送り込みというようなことを推進しております。国連、国際機関の採用ミッションというものを受け入れまして、我が国の経費負担で有能な人材を送り込んで、将来の正規職員候補者を育てるといういわゆるジュニア・プロフェッショナル・オフィサー制度というものも実施しております。このようなことを通じまして、機会あるごとに先生指摘のような人の面における国際機関への我が国貢献というものに努めてまいりたいと考えておる次第でございます。
  63. 永末英一

    ○永末委員 その話だけを伺いますと、我が日本人の仲間が国際的な仕事をどんどんとやっておるように聞こえますが、そうならば、今挙げました機関における日本人従業員数を十年前、五年前、現在と比較してちょっと知らせてください。
  64. 岩崎文哉

    岩崎(文)政府委員 お答え申し上げます。  世界銀行におきましては、十年前、すなわち昭和五十二年には五十九名でございました。五年前、昭和五十七年には六十三名でございました。ただいまは先ほど先生に御説明いただきました七十二名ということで、若干ずつではございますが、ふえております。国際金融公社、いわゆるIFCでございますが、五十二年には一名、五十七年には七名、六十二年には五名、若干増減がございます。アジア開発銀行におきましては、五十二年二十九名、五十七年四十五名、六十二年五十八名。米州開発銀行におきましては、五十二年二名、五十七年二名、六十二年三名。アフリカ開発銀行におきましては、残念ながら三つの期間、いずれもゼロ名でございます。  先ほど外務省の方からるる御説明ございましたけれども、一つは語学のハンディキャップ、それから先方の要求する学歴が、マスターあるいはPhDというような学位を要求されるというようなこと、あるいは昨今におきましては、円高によりまして円ベースでの手取りの給与がこれら国際機関の給与ベースと日本の国内のそのような同種の職種の給与と比べますと余り魅力が多くないというようないろいろな困難な問題がございますけれども、我々できるだけ多くの職員を送り込むように努力をいたしております。
  65. 永末英一

    ○永末委員 外務大臣、今の数字を聞かれたら、努力をしておるということは大蔵省外務省も言うておりますが、その努力に応じて我々日本人が海外に雄飛しておるとは思えませんね。一体どこにその原因があるのか。語学もございましょうし、我が国のいわゆる企業の終身雇用制、老後に対する年金制度、あるいはまた雇用形態が違いますから、我が国における国際機関からかわってくる就職転換の困難性、いろいろございましょう。  しかし、我が国世界貢献するというのならば、お金を出すだけではだめです。やはり日本人がそれにふさわしい人間としての活動をするというのが日本政治の大きな柱でなければならない。青年海外協力隊の諸君は、現在既に八千名の人々が海外へ行った経験を持っておりまして、あるいはその中にも、ヘッド、幕僚はすぐにはできないかもしれませんが、現場の仕事はできる人もおり、そういう希望も持っておるかもしれません。そういういろいろなところに手を広げまして、先ほどは国際機関人事センターなどを一つ言われましたが、やはりもっと我々日本人が世界で働くことを日本政治の方針にしていただきたい。  それはまた裏返せば、我が国経済活動が世界的になっていっておるのでありますから、我が国を知ってもらう、世界の人々を迎えるシステム——留学生に対するやり方も参議院で我々の仲間があなたに質問したと思いますが、不十分である。あるいは技術研修の制度も決して十全とは言えない。したがって、人と人との交流、そしてまたその中には、今取り上げておりますように国際機関に金を出すだけではなくて、我々日本人が出した金を背負いながら活動していく、こういう大きな意味での世界に広がる日本をつくる。どうですか、外務大臣
  66. 宇野宗佑

    宇野国務大臣 御指摘のとおりでございます。  今後、財政当局も十二分にこうした今の日本立場を認識してもらっておると思いますので、さらにそうした面の努力もいたしたいと思いますが、今永末さんが申されました青年海外協力隊なんかは、私たちが青年局のころに創設した一つの大きな遺産ではないかと思っておりますが、本当に頑張ってくれております。だから、過般もそうした問題、さらには留学生を含めまして、現在、国家は赤字である、日本黒字である、こういうような情勢ですから経済界の力もかしてほしいということで、二度にわたりまして経済界の団体ともいろいろとお話をして、今申し上げましたような留学生、さらには青年海外協力隊、これが帰ってきた場合どうするか、いすを保証してやってほしい、そうすればもっと質のいい、もっと立派な人がたくさん行くからということ等々もお願いしておる次第でございます。  もちろん、国際機関における人材の登用もやっていかなければいかぬ。だから、これから私は、政界は政界、あるいはまた経済界は経済界というだけの問題では済まないと思うので、ぜひともお互いに理解し合うところは大いに協力しよう、アメリカははっきりそういう点はもうやっております。したがいまして、私も数次にわたる外交交渉等々を通じまして今おっしゃることの重大性を十二分に認識いたしておりますので、さらにいろいろとまた御指導を賜りまして立派な成果を上げるように今後も努力を続けたい、かように思います。
  67. 永末英一

    ○永末委員 努力を続けていただいて、そしてまた私もよく見ておりまして、御努力の成果が上がったかどうかを検討させていただきます。  質問を終わります。
  68. 糸山英太郎

    ○糸山委員長 松本善明君。
  69. 松本善明

    ○松本(善)委員 外務大臣にまず伺いたいのですが、世銀への出資を含めまして今年度のODA事業予算は一兆三千四百八十七億円、ドルベースでいきますと百億ドルぐらいなのですね。八八会計年度のアメリカのODA事業予算は、推計ですけれども、八十八億ドルぐらいじゃないか。まさに世界で第一ということになりましょう。  同時に、世界経済や南北問題が非常に大きな変化をしておる。アメリカの七十年ぶりの債務国転落、ドル安への急激な転換、それから発展途上国の一兆二千億ドルに近い累積債務というような資本主義諸国の矛盾というものも非常に顕著になってきている。それが例の昨年十月十九日の暗黒の月曜日に始まった株価の乱高下あるいはドルの下落というところにあらわれていますし、それからその中でドルの基軸通貨としての信頼も非常に急速に低下しているし、発展途上国の深刻な飢餓とか発達した諸国との格差の拡大という諸問題が非常にありますので、今までのような考え方だけではいかぬのではないか。今の事態に直面した政府開発援助の基本方針というようなものを最初に外務大臣から伺っておきたいと思います。
  70. 宇野宗佑

    宇野国務大臣 この間もしばしば同様の質問が出ておりますが、ことしの予算で特筆大書すべきは、ODA予算が初めて七千億円台に上ったということでございます。また、政府全体で六・五%ふえた、これにさらに他の資金を加えますと一兆二、三千億円というような実効を上げることになるであろう、こうしたことは一応諸外国には話は通じます。  しかしながら、それだけではまだ足りない面がたくさんあるというのが現在の日本に対する諸外国の要請でございます。なかんずく南北問題はいろいろと複雑な問題を絡めて今日に至っておりますが、あくまでも南北問題において、その根底には人道上の考慮をしなくてはならぬ、そしてまた南北は互いに相互依存でなくてはならぬという趣旨が言うならば援助でございまして、その援助の代表的なものはODA以外にない。これが世界の通念でございますから、我々といたしましてもそういう面におきましてやっていきたい。  一口にODAと申しましても有償、無償ございますし、できたならば無償をふやした方がいい。また、永末委員がさきに御質問なさいましたが、技術協力も、これは無償に属するODAでございますし、そうした面もさらに広げなくてはならぬ、技術移転もしてあげなくてはならぬ、本当にあれこれ勘定いたしますといっぱい仕事があるのではないか。我々といたしましても、一つ一つ着実にやっていきたいと思います。  今まででございますとアジアだけで済んだのでございますが、過般来もアフリカからいろいろな国々の外務大臣がお越しであります。アフリカも、サハラ以南だけで黒人のアフリカ諸国四十五カ国勘定すると人口四億三千万、私、いつもこう言うのであります。したがいまして、アジアのみならず、そうした国からもあるいは中南米からも日本に対する要請は大きい。  これをどのように処理していくかということになりますと、従来の実績が一%ふえた、いやシーリングだ、二%ふえたというふうなことでは、日本といたしまして言うならば世界貢献することは不可能である、こういう気持ちで、先ほど来お話しいたしますとおり、日本じゅうの方々の、議会を含めまして衆知を集めていただいた結論を得て日本はさらに努力をしなければならない時代がやってきた、かように考えております。
  71. 松本善明

    ○松本(善)委員 一九八一年五月に鈴木・レーガン共同声明がありました。ここでは「世界の平和と安定の維持のために重要な地域に対する援助を強化していく」、これはその後の外交青書などにずっと出ていくわけですけれども、この立場が基本になっておりますか、この点を伺いたいと思います。
  72. 宇野宗佑

    宇野国務大臣 そうした両首脳の互いの認識というものは生きております。ただ、よく言われますが、では、何かアメリカの戦略的な問題に日本援助が加担しているのじゃないかというようなお話がございますが、あくまでも自主的な判断によって援助をやっております。したがいまして、戦略的とかそうした意味合いの位置づけをしたことはかつてなし、これが我が国援助である、かようにお考え賜りたいと思います。
  73. 松本善明

    ○松本(善)委員 やや先回りしてお答えをいただいたわけでございますけれども、八七年一月の「アメリカの国家安全保障戦略」という文書には「日本対外援助は、引き続き戦略的に重要な国を対象としている」ということが書かれてあります。それから、本年一月十二日に発表されました「米大統領長期統合戦略委員会報告」では、日本はその投資決定だけで戦略的環境に影響を与える。「米国の同盟国や友好国(フィリピン、トルコ、エジプトなど)に対する日本経済援助増額は、われわれの安全保障に有益である」、こういうふうにアメリカ側では言っているわけですね。  そういう点で、日本経済援助は、アメリカの文書でははっきりそういうふうにアメリカの戦略と結びついているということが言われているわけであります。私どもも実際に行われているものはそのようになっているのではないかと思いますが、このアメリカの諸文書についての御見解を伺いたいと思います。
  74. 宇野宗佑

    宇野国務大臣 今の文書、恐らくキッシンジャーさんとかブレジンスキーさんとか、アメリカのそうそうたるお方が十三名ばかりでおつくりになった民間の意見ではないかと思います。私も詳細読ませていただきましたが、二十年たてば日本経済大国から軍事大国になる、こういうような想定のもとに書いてございますが、詳細に読みますると、しかしながらそれはあくまで日本の自主判断である、今松本さんが言われましたとおりに、日本の技術がもしソ連に向けられるのならば我々にとって不利であろうし、もし日本援助が今申されたような方面に使われるのならば我々にとっては有利であろう、こういうふうな論文であると存じます。  しかし、それの詳細を読みますると、今の政府が言っておることではございませんから、民間の方々の言っていらっしゃることである。だから私たちは一々コメントするには及ばない、かように存じておりまするし、私たちは経済大国であると言われましても軍事大国の道は選ばず、これは常に申し上げておることでございます。むしろ、そういう方々に出会ったならば、私も親しい人ばかりです、キッシンジャーさんもブレジンスキーもよく出会っておりますが、今度は、あなたたちはちょっと言い過ぎよ、書き過ぎよというぐらいのことは言ってもいい、かように思っております。
  75. 松本善明

    ○松本(善)委員 そうすると、私は世界の平和とか安定というのは、どうも今の話でも外務大臣は西側というニュアンスではないかというふうな気もするのですが、そうではありませんか。西側の世界世界といいましてもそういうニュアンスで日本政府は考えているんじゃないかということを思うんですけれども、いかがでしょう。
  76. 宇野宗佑

    宇野国務大臣 これは歴代自由民主党内閣が申し上げておることでございますし、私もその継続性という立場におきまして、本年度の当初予算審議の本会議におきまして衆参両院で外交方針を申し述べておりますが、そのとき明らかにいたしております。我が国は西側である、同時にまた太平洋・アジア諸国の一員である、これが日本立場である、こういうふうにもうはっきり申し上げておりますので、そのように御理解賜りたいと思います。
  77. 松本善明

    ○松本(善)委員 そうすると、そういう立場からODAもやっていくということになるのではないかと思います。  ちょっと確認をいたしますが、八三年二月十七日にアメリカの上院外交委員会の公聴会ではシュナイダー国務次官の証言によりまして三十六カ国が戦略重要国ということで言われました。日本でちょっと調べてみますと、昭和五十九年四月に外務省経済協力局政策課のつくりました「経済協力に関する基本資料」の中で、世界の平和と安全の維持のために重要な地域として十四カ国が挙がっています。そのうち、アメリカの方で言った国と日本の言った国と十二カ国がダブっているんですね。マレーシア、韓国、フィリピン、タイ、インドネシア、パキスタン、トルコ、エジプト、スーダン、ジャマイカ、ケニア、ソマリア。日本の十四カ国は、そのほかにタンザニアと中国が入っている。  この十四カ国に対するODAのパーセンテージは、私の計算では八二年が五五・八%、八三年が五四・九%、それから八四年が五九%、八五年が五七・六%、八六年は四九・一%、ことし少し減っていますけれども、全体として半分ぐらいということで、やはりアメリカが戦略重点国というふうに言っているのと日本のODA予算の方向とは重なっている。結果としては、やはり先ほど申し上げましたように、日本のODA予算アメリカの戦略に沿っているという結果になっているのではないかというふうに思いますが、いかがでしょう。
  78. 宇野宗佑

    宇野国務大臣 詳細はひとつ政府委員から申し上げますが、そのようにお考えになると、先ほど私が申し上げていることを曲解していただいているわけでございまして、決して戦略的という位置づけをすることなく、あくまでも我が国の自主的判断に基づいてやっております。  現にお隣の中国にも我々は一番大きな借款等々を結んで、中国の経済発展に協力もさせていただいておるということでございますから、ひとつ政府委員から申し上げたいと思います。
  79. 英正道

    ○英政府委員 大臣の御答弁で尽きておりますので、繰り返しません。  私どもが実際にやっているときに、この国は戦略的な地位を占める国だというようなことで一定の国をクラシファイしてやるというようなことはいたしておりません。
  80. 松本善明

    ○松本(善)委員 それでは、具体的にフィリピンでお聞きしたいと思うのです。  フィリピンは両方とも大変重要な援助国というふうになっていますね。フィリピンは今三十五億ドルの援助を要請しているというふうに言われております。五カ年間で毎年七億ドル。これがアメリカの米軍基地貸与契約の肩がわり問題が論議をされたアメリカ議会の動向などからアメリカの意向を反映したのではないかということも言われております。これは使途の決まっている円借款ではなくて、一般的な財政援助の要求の形をとっている。これがもし認められるということになると、事実上在比米軍の基地使用料の肩がわりにも使われ得るということになるのではないかと思うのですね。  そういう点でいうと、実際にこういうODAの問題について日本政府がどう対処していくかということ、それが事実としてあらわれてくるのではないか。これについてはどういうふうに対処されるおつもりでいらっしゃいますか。
  81. 宇野宗佑

    宇野国務大臣 まず、今までの経緯だけ簡単に言いますと、昨年ASEANの会議がフィリピンのマニラでございまして、総理と行きました。その際に、ASEANの会議が終わりましてから日比間の国際的な会議が行われまして、そこで第十四次借款八百三億円をつけたわけでございます。これは我々は円借款のときには本当に相手国プロジェクトを十二分に審査して、それがどのように具体的に使われるかということに対しましては実にきめ細かくやっておる所存でございます。  御承知のとおり日比道路というのがございますが、日比道路は二千キロでありまして、私よく言うのですが、東京から下関、往復ですよと。その間、日比道路もつけて、そしてそこら辺の方々が皆それぞれ就業をしていただいて、言うならば地方的な、ローカルの内需拡大等々もやってまいりまして、フィリピンの経済の大きな進展に役立っておるのではないか。今回の八百三億円は、それをさらにもう一度修理しましょうという内容も含まれているわけでございますが、はっきり申し上げまして、米軍基地との問題は、この委員会で申し上げましたとおり、あくまでもフィリピンと米国との話であって、我々が関与する問題ではございません。第一点。  第二点。この間、アメリカの議会におきまして、いかにもカールッチさんが何かそのような肩がわりを日本に求めた方がいいわねというような発言があったという報道がなされたのですが、これは全く誤りでございまして、アメリカの国会はいろいろな方がいろいろな話をなさっております。サッサーという名前の議員だったと記憶しておりますが、サッサー議員が日本に肩がわりさしたらどうかねという話をしたのであって、カールッチさんはそんなことは考えておらないという答弁をいたしておりますし、私たちはあくまで肩がわりをするというふうなことは毛頭考えておりません。  したがいまして、何億であろうとも、その使途に関しましては詳細をきわめて我々が分析をする。特にフィリピンに関しましてはパネルをつくりまして、小委員会をつくりまして評価をしておるわけでございます。その評価の結果いろいろと今日までの援助を続けてきておりますから、今フィリピンが新しい援助を申しておるかどうか、まだ私たちは耳にいたしておらないというのが現状でございます。
  82. 松本善明

    ○松本(善)委員 それでは、アフリカの援助問題で具体的にお聞きしたいと思うのですが、外務大臣にちょっと私のつくりました表をお見せして、時間の節約のために申し上げたいと思うのです。委員の皆さんにも差し上げてください。  私のつくった表は、「サハラ以南のアフリカLLDC諸国、後進開発発展途上国の諸国に対する日本援助推移」ですね。上の方に書いてございますのが、アメリカと軍事条約を結んでいる国に対する日本援助であります。下の方に書いてあるのが、その中で軍事条約を結んでいない国に対する日本援助であります。これの八二年から八六年までの変化を見ますと、八二年を一〇〇といたしますと、八六年は軍事条約を結んでいる国に対して三三八と三倍以上です。それから、軍事条約を結んでいない国に対する日本援助は、逆に一割ばかり減っております。  LLDC諸国は非常に困っているから、ここに対する援助というのは非常にふえなければならぬわけですが、時間がないので私の方で言いますけれども、これは一三%ぐらいで、ODAの中で占める比率は非常に少なくて、しかもDAC開発援助委員会十八カ国の中で八五年で十六位。非常に少ない中で、しかも軍事条約をアメリカと結んでいるところにはたくさん行く。これは事実がやはりアメリカの戦略援助と結びついているということを示しておるように思いますが、この表をごらんになって、外務大臣、いかがお考えになりますか。
  83. 宇野宗佑

    宇野国務大臣 途上国、特にLLDC等々からは非常に感謝をされておるのが現状でございます。決して軍事がどうのこうのということで援助をするわけではございません。特にアフリカに対しましては、サハラ以南が黒人国でございますから、本年度も五億ドル、これはもう無償ですよということで、最初から無償で御協力申し上げる。この間もザンビアが参りました。非常に喜んで帰られました。ザンビアは社会主義を標榜する国家でございますが、決してそのような意味合いでいろいろとやっておるわけではございません。あくまでも先ほど申し上げましたとおりに、援助は南北間の人道上の考慮というものが必要だ、これが私たちの判断の基礎でございます。
  84. 松本善明

    ○松本(善)委員 それじゃ、もう一つ具体的な例をお聞きしましょう。  今ニカラグアとホンジュラスがえらい大問題になっていますが、ニカラグアに対する援助は、八七年が出ていれば八七年を聞きたいのですが、もし出ていなければ八六年でいいですが、ニカラグアに対する援助は幾ら、ホンジュラスに対しては幾らか、これをお聞きしたいと思います。
  85. 宇野宗佑

    宇野国務大臣 その前に、ちょうどきょうニカラグアとホンジュラスとの戦闘行動がございましたから、このことも日本外務省としてその立場を明らかにいたしておきます。その後、政府委員からお話をしたらいかがであろうか、かように存じております。  もう経緯は御承知であろうと思いますが、ニカラグアの軍隊があるいはホンジュラスの領土に一部侵入したかもしれぬ、こういうふうに言われておりまして、これはまことに遺憾であると存じております。特に三月二十一日にニカラグア政府はコントラ、反政府勢力との間で停戦交渉をしようというこの貴重な段階に、ニカラグアの政府軍が大規模に反政府勢力を攻撃したということは、中米和平の機運を後退させることであるとして遺憾に存じております。  早速、本日ニカラグアの大使を外務省に呼びまして、憂慮にたえない旨のことを、遺憾である旨を伝えました。そして、日本政府としては憂慮の念をもって事態の推移を見守る、なおかつ戦闘行為が直ちに中止され、平和的解決を目指して停戦交渉が早期に再開されることを希望、このことだけは申し上げましたので、まず両国に対して我が国がこの問題でそうした措置をとったということだけは御報告申し上げておきます。
  86. 久保田穰

    久保田説明員 先生ただいま御質問のニカラグア及びホンジュラスに対する八六年の経済協力の実績でございますが、ホンジュラスにつきましては無償資金協力、技術協力合わせまして二十二億八千五百万円、それからニカラグアにつきましては技術協力を一千八百万円供与してございます。
  87. 松本善明

    ○松本(善)委員 今の外務省の数字の報告で、いかにけた違いにホンジュラスとニカラグアが違うかということがおわかりと思いますが、ニカラグアの場合は八三年から八五年まで五万ドルずつ、八六年が十六万ドル、日本円で言えば先ほどのお話ですが、それからホンジュラスは八二年は六百五十万ドルだったのが、八六年に三千六百二十万ドルと実に大変な変化をして、量としても違うわけです。ここにも日本援助の方向というのがわかると思いますし、今の外務大臣のホンジュラス、ニカラグアについての考え方については、私ども全く反対であります。  紛争についてはニカラグアの大統領が声明を発表して、侵入していない、その事実については見てほしい、国連に対して、国連の監視団を出してほしい、調査をしてほしいということを言っているということでありますが、この国連で調査をしてほしいという要求に対して日本政府はどういう態度をとるつもりです。
  88. 宇野宗佑

    宇野国務大臣 きょうこの問題に関しまして安保理が開かれる予定であるということでございます。それに対しまして、局長から答弁させます。
  89. 坂本重太郎

    坂本(重)政府委員 お答えいたします。  ただいま大臣の方からお話がございましたけれども、きょう十八日、ニューヨーク時間午後三時から、このニカラグア問題を検討するために国連の安全保障理事会が開催されることになっております。これはニカラグア政府の要請によるものでございます。  なお、先ほど先生の方からニカラグアの大統領が越境の事実はない、こういうことを言われたということでございますが、第一回目の記者会見では、オルテガ大統領は越境の事実を明確にしておりません。むしろ読み方によっては、ホンジュラス領内にもあるコントラの基地を攻撃した、これらの基地を攻撃したというぐあいに読める発表をしております。  それから、これはCNNのニュースでございますけれども、けさ我々が聞いたところによりますと、ニカラグアの外務大臣はニカラグア軍が越境したかもしれないという発言をしております。  それから、けさ現地から寄せられました電報によりますと、ニカラグアの政府系の新聞及び反政府系の新聞も、ニカラグア軍がコントラを追ってホンジュラス領に侵入したということを現地の新聞も報道しておるようでございます。  以上でございます。
  90. 松本善明

    ○松本(善)委員 ニカラグア問題は、例えば一九八六年六月にはアメリカの封鎖も国際法違反だという判決が司法裁判所で出たり、それからコントラ援助についてはアメリカ議会で再々否決をされるとかというような状況であります。これはやはり民族自決権を尊重するということが世界の世論になっているんだと思いますが、中米のコンタドーラ・グループの中心であるパナマに対する干渉もいろいろ行われている。パナマについては日本は中南米諸国の中では一番貿易量も大きいと思いますし、それからパナマ運河を通過する貨物量も日本向けが非常に多いと思います。そういう点で、中米のこの問題については非常に慎重な対処が必要だというふうに思いますし、基本は民族自決権の尊重ということでやるべきだということを申し上げて、この協定の問題をちょっと伺いたいと思います。  先ほどもちょっと出ましたが、今度アメリカ世銀出資シェアを二%引き下げることによって、出資シェア投票権アメリカはどうなったのかということについて、数字を両方明らかにしてほしいのです。
  91. 岩崎文哉

    岩崎(文)政府委員 お答え申し上げます。  アメリカ出資シェアは、このたびの日本の一・五%増資に伴いまして二〇・九一%から一八・九一%に下がるということでございます。  他方投票権シェアにつきましては、アメリカ投票権は二〇・〇一%から一八・〇七%に下がるということでございます。この差というものは、基礎票というものがございまして、小さい国にも特別の投票権を与えるということで配分したものがその間の差になってございます。
  92. 松本善明

    ○松本(善)委員 そういたしますと、今回の協定改正がなければ、今度の出資シェア投票権の変化によって、アメリカ一国だけが反対しても協定改定はできないということになったのではありませんか。
  93. 久保田穰

    久保田説明員 お答え申し上げます。  今回のこのパーセンテージの改定がございません場合には、御指摘のようにアメリカ一国では協定改正は阻止できなくなったということだと思います。
  94. 松本善明

    ○松本(善)委員 そうすると、結局アメリカ拒否権を与えるというために今度の協定改定が行われるということになるのだと思いますが、これはアメリカが提起したのですか。
  95. 久保田穰

    久保田説明員 お答え申し上げます。  現在の出資比率を前提としますと、この改正によりまして結果的にアメリカ意思に反して協定改正することはできなくなるというのは事実でございますが、他方、他の国々改正を阻止するために所要の投票権数を集めやすくなるということになりまして、米国だけが利益をこうむるということではございません。  また、アメリカが言い出したのかという点でございますが、この改正の背景となりました我が国カナダ等の出資比率引き上げの交渉過程におきまして、米国が引き上げの見返りに、協定改正発効要件を厳格にするための改正の進捗を条件としまして示唆したということは御指摘のとおりでございます。  いずれにしましても、本件改正につきましては、昨年六月に、先ほども申し上げましたが、総務会におきまして多数の開発途上国を含めまして多数国の間で採択されておりまして、世銀加盟国の間で広いコンセンサスが得られたというふうに思っております。
  96. 松本善明

    ○松本(善)委員 しかし、あなたの説明で、他の国も集めれば改定を阻止できると言うけれども、それはこの協定改定がなくたって、もともと集めれば日本だってほかの国と合わせてやれば改定はだめだということは言えるというのは、これは前と今と何の変わりもないのじゃないですか。アメリカだけが今度の改定によって拒否権が続くということは変わりないのじゃないですか。
  97. 久保田穰

    久保田説明員 お答え申し上げます。  他の国、特に日本につきましては、今回の協定改定によりまして第二位の出資シェアになりまして、その他英仏等、比較的に発言権シェアがふえました国につきましては、以前に比べまして、先生指摘のような、反対ということになればそれだけそういうことがしやすくなるという状況になっていると思います。
  98. 松本善明

    ○松本(善)委員 しかし、私の言ったアメリカ一国だけの拒否権ということについては否定はされなかった。この問題を、今おっしゃったようにアメリカが示唆したということは八七年度の世界銀行年次報告にも出ていますけれども、なぜアメリカはそういうふうに頑張るのでしょう。ちょっと御説明をいただきたいのですが、どういうことを予想してそういうことをやろうとするのでしょう。
  99. 久保田穰

    久保田説明員 お答え申し上げます。  世界銀行における米国及び日本と主要な出資国役割というものに対しましては、加盟しておる途上国を含めまして全加盟国の間からの期待が非常に強いわけでございますが、その中身としましては、やはり世銀の果たしておる重要な役割にかんがみまして、安定的に世銀運営されるという面に対する期待が非常に強いわけでございます。大きな出資シェア、それに応ずる投票権を有しておる米国、その次に位置する我が国、その他主要国の意向というものに対する安定的な運営に果たす役割というものの期待を反映している面があると思います。ちなみに、この協定改正というのは過去一度あったというのみでございます。
  100. 松本善明

    ○松本(善)委員 どうも余り明確な御説明じゃないですね。提案理由のときには協定安定性の向上に資する、今の答弁もそうですけれども、アメリカだけが特権的な地位を占めるということがなぜ安定的な運用になるのか、我々には理解ができないし、それからやはり世銀運営米国主導で、アメリカ本意に行われているのではないかという疑いを持たざるを得ないのですが、その点についてどう思いますか。
  101. 久保田穰

    久保田説明員 お答え申し上げます。  先生指摘の点につきましては、世銀の総裁は歴代アメリカ人から任命されており、かつ出資シェア投票権ともにアメリカが一位を占めておりますが、これはブレトンウッズ体制に基づきましてアメリカがそもそもイニシアチブをとっての戦後の国際復興の面での組織づくりという経緯を反映したものであるというふうに思っております。  他方我が国の場合をとりましても、理事及び理事代理、幹部、中堅幹部職員その他を出しており、先ほども御答弁申し上げましたように、今後とも人的な面でも我々として強化していきたいというふうに思っておりますし、また、出資の面におきましても、できるだけの努力をして世界期待にこたえていきたいという努力を続けておりまして、応分役割を果たしておるというふうに考えております。
  102. 松本善明

    ○松本(善)委員 リーガン財務長官が八一年四月十日に下院歳出委員会海外活動と当該機関委員会で証言したところによりますと、   世界銀行貸し付けの上位十カ国のうち七カ国とアメリカは相互防衛関係を維持している。すなわち、ブラジル、トルコ、韓国、タイ、コロンビア、フィリピン、メキシコである。これらの諸国だけで八〇年世銀による総貸し付けの半分近い三十六億ドルを借り入れている。三十六億ドルに上るその世銀貸し付けのうちアメリカが払い込んだ資金は約七千万ドルである。また、IDA融資上位十カ国のうち七カ国はインド洋外周の諸国、タンザニア、ケニア、スリランカ、パキスタン、スーダン、エジプト、インドである。これらの諸国はソ連の拡張政策にさらされている。 というふうに証言をしています。  また、アメリカ財務省報告の「国際開発諸機関に関する報告」、これは八二年二月ですが、   国際開発諸機関の国別貸し付け・融資先がアメリカの外交政策上の優先順位とおおむね合致しているという事実は、アメリカと友好関係のある諸国がアメリカの二国間援助だけであれば不可能と思われる開発資金を享受していることを示している。例えば、中南米ではメキシコとブラジル、北アフリカではエジプト、アジアでは韓国である。   国際開発諸機関の価値は主に費用の点での効率性にあり、それらはアメリカ経済的並びに政治的・戦略的利益を実現するための主要な機関一つである。 こういうふうにアメリカでははっきり言っているのですね。  私は、だから外務大臣に一番最初に、日本経済的な地位の向上、それから世界情勢の中で、世銀運営を含めてODAのあり方について根本的に考えなければならぬのじゃないかということを御質問したのです。  私が今申し上げましたアメリカのリーガン財務長官の証言やアメリカの財務省報告との関係で、日本世銀運営あるいはODAのあり方について考えるべきではないのか、アメリカ主導にいつまでも追随すべきではないのじゃないか、日本立場からこの運営の方向を変えるという立場に立つべきではないかということを外務大臣に伺いたいと思います。
  103. 宇野宗佑

    宇野国務大臣 いろいろ今ずっとお述べになりましたが、この世銀の参加国は先ほど来皆さんが御承知のように百五十一カ国に及んでおりますし、それぞれの国からも役員が出ておるということでございますから、決してアメリカに追随して事を行っておるという問題ではない、私たちはかように心得ております。  また、世界の戦後復興の第一番目にIMF並びに世銀が生まれて去年で四十三年目を迎えましたので、三年目にしてさらにガット体制が生まれてくるということでございますから、これはおっしゃるとおり我々は大切にして、今後、世界が東西あるいは南北を問わずお互いが繁栄するという道を選んでいく、これが日本だ、このように考えておりますので、そうした気持ちは決して失っておりませんので、そのような姿勢で今後も世銀に対しましてもいろいろと私たちはやるべきことはやらねばならぬ。先ほど申し上げましたとおり、日本独特のファンド等々も預託をする、拠出をするということもあったわけでございますので、そういう姿勢でやっていきたいと考えております。
  104. 松本善明

    ○松本(善)委員 納得できる御答弁ではありませんでしたが、今後また引き続きこの問題については御質問をしていきたいということで、終わりにしたいと思います。
  105. 糸山英太郎

    ○糸山委員長 これにて本件に対する質疑は終了いたしました。     ─────────────
  106. 糸山英太郎

    ○糸山委員長 これより討論に入ります。  討論の申し出がありますので、これを許します。岡崎万寿秀君。
  107. 岡崎万寿秀

    ○岡崎委員 私は、日本共産党・革新共同を代表して、国際復興開発銀行協定第八条(a)の改正受諾に反対する討論を行います。  第一に、今回の改正は、米国がIBRDへの出資比率を引き下げることによって、世銀における米国政治地位が相対的に低下することがないよう、米国協定改正に対する拒否権を引き続き保証しようとするものであり、世銀米国主導の非民主的な運営を一層拡大し、固定化するものであります。  第二に、本改正と一体のものである日本世銀への増資は、まさに米国の負担の肩がわりであり、同時に、海外進出、多国籍企業化のために世銀の持つ情報やノーハウに対して強い関心を持ち、これらの機関での発言力強化を求めている日本の財界、大企業の要求にこたえようとするものであります。  以上、本協定改正は、専ら米国日本の財界、大企業の要求にこたえるものであり、断固反対するものであります。
  108. 糸山英太郎

    ○糸山委員長 これにて討論は終局いたしました。     ─────────────
  109. 糸山英太郎

    ○糸山委員長 採決いたします。  本件は承認すべきものと決するに賛成の諸君の起立を求めます。     〔賛成者起立〕
  110. 糸山英太郎

    ○糸山委員長 起立多数。よって、本件は承認すべきものと決しました。  お諮りいたします。  ただいま議決いたしました本件に関する委員会報告書の作成につきましては、委員長に御一任願いたいと存じますが、御異議ございませんか。     〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
  111. 糸山英太郎

    ○糸山委員長 御異議なしと認めます。よって、さよう決しました。     ─────────────     〔報告書は附録に掲載〕     ─────────────
  112. 糸山英太郎

    ○糸山委員長 次回は、来る二十三日水曜日午前九時二十分理事会、午前九時三十分委員会を開会することとし、本日は、これにて散会いたします。     午後六時五十五分散会