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永末委員 私は、台湾戦没者、すなわちかつて
我が国が台湾を領有いたしておりましたときに、あの
戦争の時代に
日本人として従軍せられた
方々に関する問題につきましてお伺いいたしたいと思います。
我々
日本の国は、一八九五年に
日本と当時の清国との
戦争が終わりまして以来、この台湾を領有しており、台湾の
方々は
日本国民になったわけでございますが、特に四十数年前の
戦争のときに
日本国の軍人軍属、軍夫等という、職務はそれぞれ変わりますけれども、
戦争に従事をして、あるいは戦死をされあるいは負傷せられる、そういう
方々が二十万人以上に上っておるわけでございます。
ただその後、私ども
日本の国とこの地域との
関係がいろいろ変わるわけでございまして、我々平和
条約を結び、また日華平和
条約を結びまして、二十年間は国と国との交際はございました。しかしその後、
昭和四十七年に日中共同声明が行われて以来、この地域と我々の
政府とは国交がなくなりました。したがって、日華平和
条約の中でいわゆる請求権の問題が存在しておったのでございますが、
政府はそれを
昭和四十七年以来は、かつての
条約に基づく条項に基づいて処置する能力を失った、こういうことでございました。
しかしながら、我々
日本人が
日本の国家をつくって、統一国家は百数十年でございますが、その一こまの中に、
日本人として籍を持った人々が
日本国のために戦に出、戦死をし負傷をされる、その
方々に対する補償をなさないで歴史の月日をけみすることは、
日本人として
世界歴史に対してまことに不名誉なことである、こういう
意味合いで、このことを心配するいろいろな人々が、何とか解決しなければならぬと
努力をいたしてまいりました。
私どもは、
昭和四十三年に、亡くなりました故岡沢完治議員がこの問題を取り上げ、特に戦死者に対する弔意の誠を表することが必要ではないかとただしました。また、
昭和五十年に私がこの衆議院の外務
委員会におきまして、当時の宮澤
外務大臣にこのことをただしました。宮澤さんは、債務は
日本政府としては必ず履行しなければなりません、こういう答弁をされました。
この問題の重要性にかんがみまして、
昭和五十二年、超党派のこの問題解決のための議員懇談会が設けられまして、何とかこの問題の解決をいたしたいと諸般の
努力がされてまいったのであります。この間、
政府の態度は、福田総理
大臣のときには処理しないんだというような意思を発表せられたこともございますが、超党派の各党に属せられる議員の有志の
方々は熱心にこの補償問題の解決に
努力をいたしました。この懇談会の基本的な立場は、我々
日本の国が
昭和四十七年に日中共同声明を結び、さらにまた
昭和五十三年には日中平和友好
条約を結んでいる、その枠組みの中で問題を解決しなければならぬという立場に立ちまして諸般の
努力をいたしました。
また、
昭和五十二年には、台湾におられる元
日本軍籍にあった人々の中で負傷せられた方、トウ盛さんほか十二名の
方々が
日本の東京地方裁判所に台湾人元
日本兵戦死傷補償請求の提訴をされました。したがって、これは
日本の裁判所の裁判にかかったわけでございますが、五十七年に棄却の判決を受けました。即刻東京高裁に控訴をされましたが、これまた六十年に棄却の判決をされました。それは、
日本の法律上その補償をすることができないという理由でございました。しかし、これらの提訴した
方々はかつて
日本人であり、
日本人であるならば当然死者に対する弔慰金や遺族扶助料、あるいは負傷者に対するそれぞれの法律に基づくものを支給されるのは当然である。ただ、たまたま
日本人という国籍がない、したがってそれに適用する法律がないという理由でできない。
しかし、この問題は、当時の東京高裁の判決によりますと、そういうことで棄却はするけれども、「現実には、控訴人らはほぼ同様の境遇にある
日本人と比較して著しい不利益をうけていることは明らかであり、」したがって「予測される
外交上、財政上、法技術上の困難を超克して、早急にこの不利益を払拭し、国際信用を高めるよう尽力することが、国政関与者に対する
期待であることを特に付言する。」こういう言葉が付されたのでございまして、国政関与者の第一線に立つのは国
会議員でございますから、国
会議員の有志がともかくあらゆる困難を克服してこの問題を解決しようということで懇談会をつくり、
努力をいたしてまいりました。
その結果、昨年の九月には台湾戦没者遺族等に対する弔慰金に関する法律が全会一致で成立をし、自民党・
政府もやっとこの法律に基づいて弔慰金等に対して一人当たり二百万円を支給するという決心を十二月に固められ、そしてこれを交付国債で渡す、事務は
日本赤十字社と台北の紅十字会が行うという内容を盛っているものでございますが、この
国会にはこの実施に関する法律が提案をされております。
さて、これらを振り返りましたときに、私どもは、なるほど
政府は、
政府と
政府との交渉においてできないということは全く無能力でございますが、
日本の
国会が国政の基本に関する問題だということで各議員が
努力をされ、そして、この法律が全会一致で
国会で成立をいたしたという事実は
日本の政治史上特筆大書せられるべき問題であると私どもは思います。
二月の終わりに、この懇談会の会長である自民党代議士の有馬元治君、それから野党の各副会長に呼びかけたのでありますが、それぞれ御事情がございまして、私が副会長の職にございましたので御一緒に台湾へ参り、我々がやってきたことを現場のそれぞれの
責任者に御
説明を申し、今後のいろいろな御尽力をお願いしてまいりました。このことは
国会の記録にきちんとしてとどめておきたいというので経過を御報告申したのでありますが、さて
外務大臣、かつて遺骨葬祭料というものが積み立ててあるがという話がこの議場でもございました。しかし今回は、そういうものとは変わった弔慰金という形で遺族には支払われ、負傷者の
方々には見舞金という形で支給せられるわけでございますが、これでいわゆる台湾の元
日本兵の
方々の問題がすべて終わったとお考えですか。