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1988-04-14 第112回国会 衆議院 科学技術委員会 第5号 公式Web版

  1. 会議録情報

    昭和六十三年四月十四日(木曜日)     午前十時八分開議  出席委員    委員長 大坪健一郎君   理事 榎本 和平君 理事 小宮山重四郎君    理事 佐藤 敬夫君 理事 若林 正俊君    理事 上坂  昇君 理事 貝沼 次郎君    理事 小渕 正義君       唐沢俊二郎君    櫻内 義雄君       竹内 黎一君    中山 太郎君       羽田  孜君    原田昇左右君       山下 元利君    上田 利正君       小澤 克介君    野坂 浩賢君       村山 喜一君    近江巳記夫君       春田 重昭君    矢島 恒夫君  出席国務大臣         国 務 大 臣         (科学技術庁長         官)      伊藤宗一郎君  出席政府委員         科学技術庁長官         官房長     見学 信敬君         科学技術庁科学         技術振興局長  吉村 晴光君         科学技術庁原子         力局長     松井  隆君         科学技術庁原子         力安全局長   石塚  貢君         科学技術庁原子         力安全局次長  緒方謙二郎君  委員外出席者         警察庁警備局警         備課長     太田 利邦君         外務大臣官房外         務参事官    法眼 健作君         外務省国際連合         局原子力課長  中島  明君         資源エネルギー         庁長官官房国際         原子力企画官  田中 伸男君         資源エネルギー         庁公益事業部原         子力発電安全管         理課長     三角 逸郎君         運輸省運輸政策         局技術安全課長 山本  孝君         科学技術委員会         調査室長    西村 和久君     ───────────── 委員の異動 四月十四日  辞任         補欠選任   上田 利正君     小澤 克介君 同日  辞任         補欠選任   小澤 克介君     上田 利正君     ───────────── 本日の会議に付した案件  参考人出頭要求に関する件  核原料物質核燃料物質及び原子炉規制に関する法律の一部を改正する法律案内閣提出第五一号)      ────◇─────
  2. 大坪健一郎

    大坪委員長 これより会議を開きます。  内閣提出核原料物質核燃料物質及び原子炉規制に関する法律の一部を改正する法律案を議題といたします。  質疑の申し出がありますので、順次これを許します。貝沼次郎君。
  3. 貝沼次郎

    貝沼委員 私は、この法案審議に当たりまして、この法案が大変重要な法案であるということを理解をしておるつもりであります。ただ、その内容が機微にわたる面がかなりございまして、じっくりじっくりいろいろなことをやったがために、テロとかあるいはこの法律対象になっておる者に、盗んだりいろいろなことをやる方が大変効果があるというようなことを思わせてはいけないし、そういう言動の弾みをつけてもいけないというようなところから、まあ簡単な質問になるかと思います。それから、きょうの質問では、私、党の考え方というよりも私自身の信念に基づいてやるところがありますので、御理解をいただきたいと思います。  まず初めに、この法案が提案されましたが、随分と遅かったではないかというのが率直な感じでございます。なぜこんなに遅くなったのですか。
  4. 石塚貢

    石塚政府委員 この核物質防護に関します条約、これにつきましての加入のために必要な条約解釈、そういったものについてこれまで検討を進めてまいったわけでございますけれども、この加入のために必要かつ適切な国内法体制といったものの検討、これに非常に慎重にこれまで対応してきたということでございます。  この条約は昨年の二月に発効したわけでございまして、このほど政府部内におけるかかる所要の検討も了したということで、今国会において承認をお願いしているところでございますが、本条約への加入に当たりましては、その署名のために開放されましてから既に七、八年たっている、それは御指摘のとおりでございます。ただ、この条約の中には、核物質にかかわります犯罪行為、そういったものについての処罰義務、そういった刑罰関係の規定を有しているということでございまして、この義務の履行のためにいかなる国内法整備体制をつくっていくかということにつきまして、他の締約国国内法の制度、そういったものの調査を含めまして今日まで慎重な検討を必要とし、時間を要したという次第でございます。  特に、この条約処罰を求めております犯罪の中には、外国人国外犯等、従来の我が国刑法では担保できない部分もあったわけでございますが、これにつきましては昨年の刑法改正の第四条ノ二の新設ということで、刑法上の罪につきましては条約上の国外犯処罰が担保されるということにもなりました。こういった状況を踏まえまして、今回の条約の締結に当たっての条件が整ってきたということでございます。  以上、いろいろと慎重審議を要することがございまして、今日までかかってきたということでございます。
  5. 貝沼次郎

    貝沼委員 まあ説明をすればそういうことなんでしょうけれども、実際長過ぎるのですね。随分とゆっくりと、本当に日本の国はやる気があるのかないのかという感じで見られておったと思います。例えば大臣提案理由説明の中に「昨年二月に発効した核物質防護に関する条約に早急に加入し、そのために必要な体制整備を行うことは、原子力先進国としての我が国責務でもあります。」と言って、この裏に、二十一カ国が云々で要するに条約発効した、したがってもう仕方がない、やらなくちゃいけないのじゃないかというようなニュアンスがあるのですね。私はそうじゃないと思うのです。外務省の「核物質防護に関する条約説明書」の中でも、「我が国も、この条約の作成に積極的に参加した経緯があり」云々ということで、積極的に参加してきたはずなんですね。ところが、ほかの国がどんどんどんどんそれを批准してくるのに日本がどんどんどんどんおくれてきた。ついに条約発効するから早くやらなくちゃいけない。そうしてこういう規制法の中にこれをぶち込んで、何とか格好をつけようかというような感じに受け取れるわけです。こういう気持ちはなかったのですか、どうですか。はっきりしてください、ここは。
  6. 伊藤宗一郎

    伊藤国務大臣 ただいま政府委員からも御説明申し上げましたように、慎重を期すことが多かったものですからこの時期になりましたけれども先生指摘のようなことではございませんで、また先生も御承知のように、核物質防護対策というのは、核物質の盗取等による不法移転原子力施設及び核物質輸送に対する妨害破壊行為が公共の安全を妨げることとならないように必要な措置を講ずべきものであり、核物質防護措置原子力開発利用の円滑な推進を図る上で不可欠であると、既に昭和五十六年の原子力委員会決定で行っておるわけでございます。また、国際的にも核物質防護措置を講ずるべきことは共通認識となっておりまして、これまた原子力先進国でございます我が国国際的責務という観点から、慎重は期しましたけれども、この段階に国会提出をし、御審議を賜っておるということでございます。
  7. 貝沼次郎

    貝沼委員 それで、この法案が出てくる前提になっておりますのが六十二年十二月十八日の原子力委員会決定になるわけですね。この原子力委員会決定文言も「本年二月に核物質防護条約発効したことに鑑み」とこうなっているのですね。やはりこれは発効したことにかんがみておるわけですから、発効したことが先にくるわけですね。  そうじゃなしに、よその国がやってからやるというのじゃなしに、日本はもっともっと積極的に始めたのなら、本当はもっと早くできてよかったのではないか。しかも日本の国は平和国家であり、原子力平和利用ということについてあれだけ内外に宣言しておるわけでありますから、それならばはっきりと、もっと早くすべきであった。それをやらないから痛くもない腹を探られたり、いろいろなことをやられるのではないか。したがって、今回のこの法律は、今までのそういう感じを払拭して、もっと大々的な宣伝をしてやらなくちゃいけないのじゃないか、こう私は思うのです。したがって、この規制法の中に突っ込んだということは、これから申し上げますけれども、私は余り賛成ではないわけですけれども、とにかくそういう感じが否めないわけでございます。  この「鑑み」というのはどういう意味なんですか。
  8. 石塚貢

    石塚政府委員 IAEAがつくりました核物質防護の指針というものがございまして、これは各国に勧告をされているわけでございますが、その内容をもとにいたしまして我が国として核物質防護措置としてとるべき要件、そういったものを昭和五十六年に原子力委員会決定をしておる。そしてその際、本件については早く法体系に取り入れることを検討しなさいということを原子力委員会指摘をしておるわけでございまして、その趣旨に沿いまして私どもといたしましては、原子炉等規制法の運用あるいは行政指導等によりまして、実際には原子力委員会が決めましたこの要件を満たすように関係省庁によって措置をしてきたわけでございまして、現状においては、核物質防護措置というものは既に国際的な水準に達しているということでございます。この間、法律ができないからといって手をこまねいて何もやってこなかったということではございませんで、実際実質的な面におきましては十分な措置が既にとられているということでございます。  それで、その「鑑み」という点でございますが、発効をいたしまして現在二十二カ国が署名をいたしております。なおEC諸国といったところ、西欧先進国でございますが、そういったところはまだ加盟をしていないという状況でございますけれども、この発効をもって、これは加入を急がねばならないという一つのきっかけになったことは事実でございますが、そのことのみをもってこの際加入すべし、あるいは法律改正に踏み切るという決定をしたということでは必ずしもございません。御理解をいただきたいと思います。
  9. 貝沼次郎

    貝沼委員 遅くなっちゃったのですから今さらやり直しはききませんけれども、非常に残念である、こういうことを申し上げているわけでございます。  それから、なぜこういう例えばプルトニウムを中心にする核物質が特別に扱われ、そしてそのためにこういう法律ができるのかということを考えると、やはり核物質特殊性といいますか、そういうことがあるのだろうと思います。ところが、こういう文書の中にはそういうことは別に書いていないですね。ただふえたふえた、何とかしなくちゃ、こういう話なんですけれども、ふえたらなぜいけないか、またなぜ核物質にはこういう特別な考え方を持たなければならないのか、この点について説明をお願いいたします。
  10. 石塚貢

    石塚政府委員 先ほども申し上げました昭和五十六年の原子力委員会決定の中にございますとおり、仮にこういった核燃料物質が盗取等によりまして不法移転されたような場合には、やはりそのようなものが核分裂反応を引き起こすというような懸念がございますし、また原子力施設及び核物質輸送に対する妨害行為等が行われた場合には、結果として公衆に対する放射線障害といったものをもたらす懸念もある。そういったことが現実にならないように核物質防護対策を講ずべきであるということが、昭和五十六年に原子力委員会決定いたしました文書の中に記載がございます。  またさらに国際的にも、核物質防護措置につきましては、核物質防護に関する条約前文にもございますが、「核物質不法取得及び使用がもたらす潜在的な危険を回避すること」の重要性というものについて言及をいたしておるわけでございます。
  11. 貝沼次郎

    貝沼委員 外務省の方いらしていますか。ちょっとお尋ねいたしますが、この条約の第七条の二項のところに「その重大性を考慮した」という文言がございますが、この重大性というのは何が重大なんですか。
  12. 中島明

    中島説明員 先生指摘のとおり、第七条において核物質に係る犯罪処罰すべき旨規定しているところの最後部分におきまして、「締約国は、1の犯罪について、その重大性を考慮した適当な刑罰を科することができるようにする。」と規定されているわけでございます。お尋ねは「その重大性を考慮した」というのは何かということでございますが、先ほど科学技術庁の方からも一部指摘があったと思いますが、核物質を用いた犯罪につきましては、万が一にもこういった犯罪が起きた場合には、その結果として起こる事態、第七条の第一項の(a)では、人の死亡、重大な傷害、財産の実質的な損傷、そういったものが書かれているわけでございますが、結果としては甚だ大きいものがある。そういった核物質を用いた犯罪が非常に深刻なものである。そういったことを考慮してそれに見合う適当な刑罰を科することが必要である、そのように定めているというのがこの第七条第二項の趣旨であろうかと思います。
  13. 貝沼次郎

    貝沼委員 話を聞いておりますと、潜在的に非常に怖いとかあるいは重大だとか、わかったようでなかなかわからないのですね。一体何が問題なんですか。  プルトニウムならプルトニウムを例に出しますと、それは国際輸送の量がふえてきたという問題がありますね。あるいは今お話のありましたように、核物質不法取得とか使用危険性、これはありますね。それからプルトニウムそれ自体の問題として、例えば軍事転用の問題、それからそれ自体毒性の問題、その毒性もどれだけの毒性があるのか、ぱっとさわったら死んじゃうのかそれとも死なないのか、その辺の説明は何もないのですよ。何か怖いらしいなというだけ。あるいは例えばアルファ線を出すプルトニウム体内に入った場合に、どういうことで怖いものになるのかならないのかというようなことや、それから同じ体内に入っても入りぐあいによって影響が違うとか、例えば蓄積される場合と排せつされる場合とありますね。あるいはそれに加えて、今排せつの話をしましたけれども、化学的な性質によってなかなか体内から出にくいとか、その放射能の半減期がどれくらいあるとかというようなことで、だからこれは特別に扱わなければならないものなんだということが説明がないのです。ただ重大なものなんだ、あるいは潜在的に怖いんだ、それだけでは何となくお化けの話を聞いているようでわかりませんから、きちっと説明していただきたい。
  14. 石塚貢

    石塚政府委員 先ほども御説明申し上げましたとおり、原子力委員会決定の際には、核物質防護を行わなければならない理由といたしまして、こういったものが盗取され、あるいは不法使用されました結果、それが核分裂反応を起こす可能性がある。もっと別の言い方をすれば、あるいは核爆発装置をつくることが可能かもしれない、そういった懸念がある。そういうことになりますと、それから出てくる莫大なエネルギーによりまして人あるいは財産損傷を受ける、そういう危険性が一方にはあるわけでございます。  また、放射線というものの危険性に着目いたしますと、やはり破壊妨害活動といったもの、あるいは放射性物質プルトニウムといったものを散布いたしますと、それから受ける放射線による障害といったものはいろいろな形で出てまいると思います。個々にはいろいろなケースがあろうかと思いますけれども、そういったものに対します危険性に着目いたしまして、不法な盗取による移転とかそういった破壊妨害活動といったものを防止しなければいけないということ、これは特に条約あるいは規制法の文章の中には明確にはうたっていないかもしれませんけれども、精神としてはそういったことが基本的な動機ということであろうかと思います。
  15. 貝沼次郎

    貝沼委員 今私が質問をしておりますのは、そういう特殊な物質であるがために法体系も特殊にならなければならない、こういうところに行くためなんです。例えば窃盗罪にしたって、砂糖を盗んでくるのとプルトニウムを盗んでくるのは違うわけですから、どこが違うようになっているか後でお尋ねしようと思いますけれども、とにかくそういう特殊なものを対象にした法律である。  さらに外務省の方にお尋ねいたします。  第二条に、今回のものは「平和的目的のために使用される核物質であって」云々、こうなっておりますが、軍事目的のものであれ平和目的のものであれ核物質危険性は全く同じわけですね。軍事用は一生懸命ちゃんと守っているから心配ないという意見なんでしょうけれども、我々から見れば同じことであり、そして紛失事故であるとかあるいはまたその協力の仕方では、平和目的軍事目的各国がとらなければならないことはこれまた同じだと思いますね。それで、例えばもし軍事目的核物質がテロリストにとられた場合に、この条約以外にこれを回収する国際システムというものは存在するのかしないのか、そこのところをお願いいたします。
  16. 中島明

    中島説明員 ただいま御指摘のように、第二条の第一項におきまして、この条約対象としては平和的目的のために使用される核物質対象としている、そのように定めております。起草過程におきましては、平和的目的のための核物質以外の軍事的目的のための核物質についても対象とすべきではないか、そういう議論があったわけでございますが、そのような軍事的目的のための核物質につきましては、効果的な防護が重要であるという認識はございましたけれども、これに関連しましては核兵器国の方から、このようなものについては既に厳重な防護がなされているから、この条約対象とすることは必要ではないのではないか、そういう指摘がございまして、結果的にこの条約前文におきまして、「軍事的目的のために使用される核物質の効果的な防護が重要であることを認め、また、当該核物質が厳重に防護されており及び引き続き防護されることを了解して」、そういう文言が入ったわけでございます。  先生お尋ねの、それではそういった軍事的目的のための核物質万が一にも盗まれたときに、それを国際協力によって回収するあるいは対策を講ずる、そういう体制ができ上がっているのか、そういうことでございますけれども、私どもが承知している限りにおきましては、そういうような軍事的目的のための核物質に関する国際協力についての体制というものは、存在しているというふうには承知しておりません。
  17. 貝沼次郎

    貝沼委員 それで、例えば日本が今まで海上輸送をやる場合も、パナマを通ってきますね。そうすると、ここなどは大変ややこしい問題になってくるわけですので、それで今ちょっとお尋ねをしたわけでございます。  今は条約解釈でしたが、日本政府の姿勢はどうなんですか。
  18. 中島明

    中島説明員 ただいま先生お尋ねは、軍事的目的対象とするような核物質についての国際協力可能性について日本政府はどう考えるかというお尋ねかと思いますが、先ほども申し上げましたように、こういった軍事的目的のための核物質というものは、まず実態といたしまして、厳重に防護されているということを核兵器国説明しているわけでございます。  それから実際問題といたしまして、こういった軍事的目的のための核物質に関する犯罪処罰するための国際的な枠組みを設けるという問題でございますが、そういった枠組みにつきましては、本来そういった枠組みから受益するはずの核兵器国国際協力に関心を持っていないという現状がございます。例えば、これはあり得ないことかと思いますけれども核兵器を奪って逃げた者が国外に逃亡したというような場合に、核兵器国の側では、逃亡先裁判をやるというようなことになりますと、その核兵器の扱いとか防護状況といったものに関するいろいろな事実が保護の外に置かれるというような状況がございますので、逃亡先裁判をするというようなことはやはり拒否するのではないかというふうに予想されております。このように、軍事的目的のための核物質対象とした国際協力につきましては、いろいろ難しい問題があろうかと思います。
  19. 貝沼次郎

    貝沼委員 では、まとめて外務省の方にずっとお尋ねいたします。  第六条「締約国は、他の締約国からこの条約に基づき、又はこの条約実施のために行われる活動に参加することにより、秘密のものとして受領する情報秘密性保護するため、自国国内法に適合する範囲内で適当な措置をとる。締約国は、国際機関に対し情報秘密のものとして提供する場合には、当該情報秘密性保護されることを確保するため、措置をとる。」これがなかなかよくわからないですね。それで解釈を聞いておこうと思いますが、一体これはだれに義務づけたわけですか。そして日本はどういう立場なんですか、この解釈は。西ドイツはちょっとほかの国と違うようですね。
  20. 中島明

    中島説明員 第六条の一項では、締約国がこの条約に基づいてこの条約実施のためにいろいろな情報を受領する場合に、それが秘密のものであるということを指定して、秘密情報であるということで受領するものにつきましては、これは保護しなければいけない。しかしその保護の程度につきましては、自国国内法に適合する範囲内で差し支えないということを定めております。ここでは、締約国はそのために「適当な措置をとる。」というふうに書かれてございます。 したがいまして、義務をだれに課したのかというお尋ねにつきましては、これは締約国に対して、今申し上げた趣旨の適当な措置をとることを義務づけたというふうに言えると思います。  それから第二項は、締約国は、この条約によって以下のような「情報の提供を要求されるものではない。」ということを規定されております。そしてその情報の種類としまして、「国内法上伝達が認められていない情報」その他の情報を列挙しているわけでございます。ここの第二項で言っておりますのは、今申し上げましたような趣旨情報までも締約国義務として提供するということをこの条約は要求していない、そういうことを定めているということでございます。
  21. 貝沼次郎

    貝沼委員 それは日本国政府解釈ですね。私が知ったところによりますと、西ドイツとしては、国際機関との間に秘密保護に関する取り決めが行われれば、同国際機関秘密情報を提供し得ると解釈する、こういうふうに声明を行ったということでございますが、これは日本政府解釈とは全然違うわけですね。
  22. 中島明

    中島説明員 私どもが承知しているところによりますと、西ドイツはこの条約起草会議におきまして、国際機関情報を提供する場合には、当該国際機関との間で取り決めを締結した上で関係情報を提供する、そういう方針であるということを通報いたしております。
  23. 貝沼次郎

    貝沼委員 だから、これはいろいろ国によって解釈がちょっと微妙に違いますね。  では、ついでに七条です。いよいよ七条ですが、今度は科技庁の方にお尋ねします。条約法案となるわけでありますが、危険犯というのはこの七条のどの部分を指しておるわけですか。
  24. 緒方謙二郎

    緒方政府委員 条約第七条一項の(a)に「法律に基づく権限なしに行う核物質の受領」云々というのが書いてございますが、これを受けたものでございます。
  25. 貝沼次郎

    貝沼委員 この中には「財産の実質的な損傷を引き起こし又は引き起こすおそれがあるもの」となっていますね。この法案の方は「危険を生じさせた者」ですね。こちらは「おそれ」があるのですね。これは、法案のとおりであれば、危険が生じなければ罰せられないということになるわけですね。
  26. 緒方謙二郎

    緒方政府委員 法案の七十六条の二では、先生指摘のとおり「危険を生じさせた者」という書き方になっておりますが、これは先ほど読みました条約第七条一項(a)の後段、最後部分ですが、「引き起こすおそれがあるもの」というのと対応しているもので、条約と同義というふうに私どもは考えております。
  27. 貝沼次郎

    貝沼委員 「おそれがあるもの」と「生じさせた」というのは同じ意味だということですか。「おそれがある」というのは、まだ生じてないのじゃないですか。どうなんでしょう。
  28. 緒方謙二郎

    緒方政府委員 先ほどちょっと舌足らずだったかもしれませんが、法案に書いてございます「危険を生じさせた」ということと条約で言っております「実質的な損傷を引き起こすおそれがあるもの」というのが同じ意味であるということでございます。
  29. 貝沼次郎

    貝沼委員 例えば、それではプルトニウムならプルトニウムを権限なしに所持した。このことがどういうおそれがあって、どういう危険を生じさせたということになるのですか。
  30. 緒方謙二郎

    緒方政府委員 七十六条の二で書きました危険犯につきましては、構成要件が三つの要素から成り立っております。第一は、特定核燃料物質をみだりに取り扱うことということでございます。二番目は、特定核燃料物質の原子核分裂の連鎖反応を引き起こすこと、または放射線を発散させることでございます。三番目の要件は、人の生命、身体または財産に危険を生ぜしめること、この三つの要件がすべて満たされた場合に七十六条の二の危険犯の構成要件が満たされる、こういうことでございます。
  31. 貝沼次郎

    貝沼委員 どうもはっきりしないのですね、その辺が。  それからもう一つは、条約の第七条の(d)のところですね。これは法案にはないわけですけれども、「核物質を要求する行為」、これほどの法律にありますか。
  32. 中島明

    中島説明員 条約第一項(d)の「核物質を要求する行為」に対応します我が国国内での刑罰は、刑法第二百四十九条、恐喝罪でございます。
  33. 貝沼次郎

    貝沼委員 そこは核物質というふうになっておるのですか。
  34. 中島明

    中島説明員 刑法第二百四十九条には、核物質を要求するということはもちろん書かれておりません。しかし、核物質も含めてこれは対象としているというふうに考えております。
  35. 貝沼次郎

    貝沼委員 それは含めてというのはわかりますよ。それは運用すればいいのでしょうけれども、ただ、先ほど問題にしましたように核物質というのは大変特殊なものです。そこで私は、今これで手当てしていってもいいとは思いますが、近い将来、まあ早急にと言いたいところですが、これは単独立法にすべきであるというのが私の考えなんです。例えば窃盗罪にしたって、その辺の砂糖を盗んでくるのとプルトニウムを盗んでくるのは全然違うわけですから。そういうような差というものがあるからこそこういう条約があると思うのです。であればこそ今回のこの法改正があると思いますので、これは単独立法にすべきであると私は思います。まあ今回のはそのワンステップであるというふうに受けとめたいと思っておりますが、こういうお考えはございませんか。
  36. 石塚貢

    石塚政府委員 原子炉等規制法原子力基本法にのっとったものでございまして、原子力施設あるいは原子力事業者に対しまして所要の規制を行い、もって我が国における原子力の開発利用の推進を図る、そういう性格を持つとともに、もう一つの面、すなわち原子力に関する国際約束の実施法という性格もあわせ持っております。  一方、今回新たに処罰対象となる危険犯の規定を設ける、あるいは条約が求めております要件を満たすための法改正、それは核物質の固有の作用を直接あるいは間接に利用した犯罪でございまして、このような犯罪が発生すれば現実に原子力災害が発生し、あるいは原子力に対する国民の信頼が失われ、ひいては平和利用を前提とした我が国におきます原子力の開発利用の推進に大きな影響を与えるということになるものであることが一つ挙げられます。  さらに、もう一つの面でございます原子力に関する国際約束、今回の核物質防護に関する条約もその一つでございますけれども、そういった国際約束を実施するものであるということから考えますと、このことは明らかであろうと思います。したがいまして、これらの犯罪処罰する規定を設けることは原子炉等規制法の性格に合致するというふうに私どもは考えておる次第でございます。  さらに、核物質防護というものを実現する上で、これらの核物質に係る犯罪処罰、これは原子力事業者の講ずべき防護措置に対する規制をサポートする性格もあわせ有するということでございますから、こういった点からも、この犯罪処罰規定というものは、核物質防護の観点からの原子力事業者に対する規制とあわせて、原子炉等規制法の中に位置づけることが適当であるというふうに私ども考えておる次第でございます。
  37. 貝沼次郎

    貝沼委員 私はその意見、賛成ではないのです。やはり規制法規制法です。それは外国との約束を果たすのは当たり前ですよ、約束ですから。だけれども規制法の中でやらなければならないということはないのですね。規制法でできるものはやればいい。規制法というのは今何を規制していますか。この現在の規制法は何を規制しておりますか。
  38. 石塚貢

    石塚政府委員 原子炉等規制法規制しておりますのは、事業者に対し規制を行っているわけでございます。今回の核物質防護に関するいろいろな措置をとらせるということにつきましても、この原子炉等規制法改正で手当てをしようという点から見ますと、これは事業者にやらせるという観点から核物質防護措置をとらせるというのが基本的な考え方でございますので、私ども現在の社会情勢といったものから考えますと、やはり規制法で処理していくのが適当ではないかと思う次第でございます。  なお、将来そういった社会情勢等の変化に応じまして、あるいは特別立法が必要ではないかというような状況になりました場合には、またそういうことも別な観点から御検討いただくということがあるかもしれませんけれども現状ではこの規制法で対応することが適切であるというふうに考えた次第でございます。
  39. 貝沼次郎

    貝沼委員 特別立法を否定はしないということですね。ただ、今の規制法は、私が申し上げるまでもなく、事業に関する規制でしょう。あるいは加工の事業に関する規制でしょう。それから原子炉の設置、運転に関する規制。みんなこれはやる人ですよ。再処理の事業に関する規制あるいは廃棄の事業に関する規制、それから核燃料物質等の使用に関する規制、国際規制物資の使用に関する規制。扱う者ですね、皆。核防護、テロとかそういうものを規制するというのは、泥棒を規制するのですか。そんなことできるわけがないじゃありませんか。それを破った場合どうなる。この規制法に背いた場合には、例えば営業停止をするとか免許を取り上げるとか、いろいろなことがあるわけでしょう。泥棒の免許を取り上げるなんということはありませんよ。半年間泥棒をやめなさい、そんなことを言ってみたってしようがないことですから。これはやはりそぐわないのです。規制じゃないのです。全然違う範疇です。したがって私はこれはやはり、今はワンステップで結構だけれども、早い将来特別立法にすべきではないか、こういうふうに申し上げておるわけでございます。こう言うのはおかしいですか。どうですか。
  40. 石塚貢

    石塚政府委員 核物質防護措置そのものは事業者にやらせるということでございまして、事業者に対する規制の一環としてこの核物質防護措置というものを位置づけておるわけでございます。ただ、御指摘のとおり、犯罪処罰規定そのものは、事業者に対する規制というよりは、むしろ一般の人たちから核物質防護するという趣旨からすれば、事業者を縛るものでは決してございませんが、このような立法例はほかにもあるわけでございまして、例えば放射線障害防止法のような法体系の中では、放射性同位元素を使って危険な状態に陥れたような場合には、やはり刑事罰が科せられるというような例もございます。
  41. 貝沼次郎

    貝沼委員 ほかのところにもあると言うけれども、まあそれだってやはりそこに勤めておる人とか、運転に携わっておる人とか、その業者とか、そういうことが中心であって、テロとかなんとかを中心にしているわけではないのですね。事実、ハイジャックの場合は特別になっているじゃないですか。そうでしょう。まあそれはそのくらいにいたします。  それから次に、罰則の七十六条の三のところで「特定核燃料物質を用いて人の生命、身体又は財産に害を加えることを告知して、脅迫した者は、三年以下の懲役に処する。」となっておりますが、この脅迫というのは今まで世界的に大体どれぐらいの事例がございますか。
  42. 中島明

    中島説明員 ただいまのお尋ね核物質に関する犯罪の実例に関するものかと思いますが、諸外国において、核物質に関連いたしましてこれを不法使用するという脅迫が行われた事例は幾つかございます。例えば米国におきましては米国の原子力規制委員会、NRCの報告等におきまして、NRCの調査によれば、七八年から八五年にかけて、原子力施設に爆弾を仕掛けたといったたぐいの脅迫が約四百件以上あった、そのように伝えられております。
  43. 貝沼次郎

    貝沼委員 そういうふうに現実にあるのですね。日本ではそういう脅迫の事例はございませんか。
  44. 緒方謙二郎

    緒方政府委員 私どもの方では、そういう事実があったということを聞いてございません。
  45. 貝沼次郎

    貝沼委員 たしか数件あったように私聞いておりますけれども、うそですか。
  46. 緒方謙二郎

    緒方政府委員 この法案対象になります核燃料物質に関連した事例としては、私ども承知している案件はございません。
  47. 貝沼次郎

    貝沼委員 これはおどかしですから一々公表するわけじゃありませんが、あったという情報がございます。これは日本原子力研究所の黒井英雄さんの論文です。これによりますと、脅迫状事件は、米国ではこの十年間に三百件の脅迫状が送られたが、実際事件につながったのは一件のみ。日本でも数件の事例があるようである。それから核物質紛失事件、これは外国はあるのですが、日本のことはございません。こういうふうにかなり現実的な話なんですね、脅迫の方になりますと。そういう事例があったようでございます。  そこで、そういうことがわからないで立法しているということになるとちょっとぐあいが悪いのですね。どうですか、一回調べてみますか。
  48. 緒方謙二郎

    緒方政府委員 繰り返しで恐縮でございますが、私どもこの法律を立案するに際しまして若干の実態を調べたつもりでございますが、いわゆる放射性同位元素、RIでございますが、これについての盗難事例というのは過去若干のケースがあったようでございますが、今度の改正法の対象にしております核燃料物質についての盗難事件あるいはそれを用いた脅迫事例というものは、私どもが調べた限りではなかったわけでございます。
  49. 貝沼次郎

    貝沼委員 では、その問題はそれくらいにいたしましょう。世界的にこういうことが起こっておるようですから、やはり厳重にこの防護というものは進めていかなくてはならない。ただ単に空想の範囲ではないということを申し上げておるわけでございます。  次に、時間がだんだんなくなってきましたので、輸送の問題でございます。  これもアウトラインばかりですが、先日の委員会で原子力局長は、空輸があたかも決まったがごとき答弁のように聞こえましたが、あれは我が国としては空輸を決定したわけですか。その点を伺います。
  50. 松井隆

    ○松井政府委員 まず答えから申し上げますと、本件については、空輸に決めたということは、まだ決まっておりません。と申しますのは、新日米原子力協定においては、まず附属書五におきましてあらかじめ決めた条件があるわけでございます。その条件に従ってプルトニウムを航空輸送する場合には包括同意が得られるという仕組みになってございまして、その形は、日米間での話でも、あくまでハイジャック防止という面から見たら航空輸送の方がベターである、つまりそれは基本であるというふうには考えてございます。ただ、御案内のとおり、この日米協定の枠の中ではもう一つ別な方法、つまり具体的に申し上げますと海上輸送になると思いますけれども、それについては個別の同意があればできるということになってございまして、そういう意味では、私ども空輸を基本とは考えておりますけれども、同時に海上輸送についても個別同意という形でできるというオプションは持っておる、こういうふうに理解しております。
  51. 貝沼次郎

    貝沼委員 それで、これはどういうときにどこで決めるのですか。
  52. 松井隆

    ○松井政府委員 この日米新原子力協定が国会で御承認が得られましたらば、それに従いまして実施主体が、現在動燃事業団が航空輸送容器の開発を進めていると申し上げましたけれども、そういったいろいろな準備を進めているわけでございます。したがって、実施主体がまずどういう方法にするのがいいか、それは日本だけで決められるわけでございませんで、当然関係諸国との協議も必要でございます。もちろん国内では関係省庁との協議も必要でございます。そういう過程で決めていくものであるというふうに承知しております。
  53. 貝沼次郎

    貝沼委員 これは最終的には原子力委員会で決めるのですか。
  54. 松井隆

    ○松井政府委員 まだそこまでそう詰めて話を決めているわけではございませんけれども、いずれにしろこういった重要な話につきましては、原子力委員会が何らかの形で関与してそれなりに了解するとか、そういう方法が必要かなと、そういうふうに思っております。
  55. 貝沼次郎

    貝沼委員 原子力委員長が決めるそうですよ。  それで、空輸あるいは海上輸送、どっちにいたしましても、これは単なる確率論では計算できない危険感覚ですね。単なる確率論ではだめですね。そうなってくるとどっちがいいのかというのはよくわからなくなってくるのですが、先般アメリカのレーガン大統領が書簡で、あるいは回答ですか、あの中で、海上輸送を含む代替輸送形態についてもその可能性の研究を要請したとなっておりますが、これは日本としてはどう受け取っておられるのですか、アメリカの議会に出したものではありますけれども
  56. 松井隆

    ○松井政府委員 レーガン大統領がそういった趣旨のレターをアメリカの国会に出しているということは承知してございます。それで、その輸送検討につきましては、アメリカ国内では国防総省に検討させるという仕組みになっておるわけでございまして、そのペーパーも出てきております。その中には飛行機による幾つかのルートの案を示してその評価をしてございますし、また海上輸送についても幾つかのルートを示して評価をしておるというふうになっておるわけでございます。  私どもといたしましてそれをどういうふうに評価するかということでございますけれども、いずれにしろ私どもは、やはりそういったいろいろなルートを考えて、それなりにいろいろな面からの評価が必要だと思います。そういうものをしているということは非常に評価すべきことであろうというふうに理解しております。
  57. 貝沼次郎

    貝沼委員 何かわかったようなわからないようなことですが、とにかく両方考えておるということですね。  そこで、例えば日本からフランスなり英国へ使用済み燃料を持っていきまして、そこで再処理をやって、それからプルトニウムができ上がったとしますね。そうすると、現段階においてはそのプルトニウム使用する人というのは日本では決まっておりますから、ここにありますように動燃事業団が荷主になって運んでくるということなんですね。ということは、事業団の業務が第三章にありますが、その業務の第一項に「高速増殖炉及び新型転換炉に関する開発及びこれに必要な研究を行なうこと。」ずっと並んでおりまして、七番目に「前各号の業務に附帯する業務を行なうこと。」あるいは「前各号に掲げるもののほか、第一条の目的を達成するため必要な業務を行なうこと。」この七番目の「業務に附帯する業務」の中身をそういうふうに読んでよろしいということですね。
  58. 松井隆

    ○松井政府委員 それで結構でございます。
  59. 貝沼次郎

    貝沼委員 動燃事業団が何でそんなことをやるんだということについては、この条文がある。明快な答弁があったということですね。  そういたしますと、やはり一番理想的なのは、英国とかフランスとかへわざわざ持っていって再処理をして、それを日本に運んでくるという面倒くさいことをやるよりも、国内でそれがスムーズにできれば一番いいわけですね。それがまだそういう段階まで来ておらない。そこで六ケ所村で云々という話があるわけですけれども、この場合に原燃サービスで今考えておる再処理の方法、この技術について、ある部分は外国から技術移転を考えておるという、どうもうわさではフランスという話もあるのですけれども、そういう技術輸入を考えておるということでございますが、そういうお考えはあるのでしょうか。
  60. 松井隆

    ○松井政府委員 原燃サービス株式会社は青森県六ケ所村に建設する再処理工場の基本設計を進めているやに聞いておりますけれども、私ども承知しているのは、その基本工程に関する技術については、フランスから導入するというふうに承知しております。
  61. 貝沼次郎

    貝沼委員 そういたしますと、どうでしょうか、今まで日本の動燃事業団で再処理の研究をいろいろやってまいりました。現実に今もやっておりますけれども、この技術では間に合わないということなのか、それとも技術の輸入をした方が安上がりだからそれを考えるということなのか、その辺の御判断はどうなんでしょう。
  62. 松井隆

    ○松井政府委員 先生指摘のとおり、動燃事業団が現在東海村の再処理工場で運転して、いろいろな技術蓄積を持っているわけでございます。一方、フランスにおいてもかなりの再処理プラントを順調に運営している経験もあるわけでございまして、原燃サービスといたしまして動燃の技術あるいはフランスの技術、そういうものを比較考量をして決めたというふうに承知しているわけです。  しかし、基本工程はそういうふうになったわけでございますけれども、当然私どもとして、原燃サービスもそういう話を期待しているわけでございますけれども、動燃事業団で蓄積された技術、ノーハウ、そういうものをやはりこれから動燃事業団と原燃サービスとの間で、もう既に始まっておりますけれども、いろいろな形での基本的な協力取り決めを結んでおりまして、そこで動燃事業団の者がコンサルティングするとか、あるいは要員を訓練するとか、あるいは必要なものについては指導するとかいろいろなことをやって、そういう形でもって日本の蓄積された技術もそこにうまく生かされて、順調に六ケ所村の再処理工場が運営されるというような仕組みをつくっている次第でございます。
  63. 貝沼次郎

    貝沼委員 日本は非常にリスクの多い研究を今までやってきておるわけですね。そうしてそれが少しおくれておるということで外国のものを輸入していくとすれば、もう国産の自主技術の開発なんというものは、ただ言うだけであって、実際は成り立たないのですね。したがって、私は今このことを話題にしておるわけですけれども、とにかくリスクが多くても自主開発にやはり力を入れなければならない。  そこで、基本的な考え方として、我が国の再処理の技術というのは早く日本の技術でやる、そして外国から輸入するのはなるべくやらないという方向で進めるのか、それともある部分はいつまでもいつまでも入れていくということなのか、この辺が今のところまだはっきりしません。その辺のお考えはどうなんでしょうか。
  64. 松井隆

    ○松井政府委員 おっしゃるとおり、自主技術を開発しているわけでございますから、なるべくそれをベースにということは当然だと思っております。ただ、先ほど説明いたしましたように、今度の六ケ所村の再処理工場につきましては、そういう技術のレベルの問題も多少あったようでございますものですから、これは今回はもうやむを得ません。  ただ、主工程についてはそうなってございますけれども、ちなみに申し上げますと、使用済み燃料の貯蔵プールとかウラン、プルトニウムの転換施設とか貯蔵施設、それから廃液を処理するためのガラス固化施設がございますけれども、そういったものはなるべく国内技術で行うというふうになっている次第でございます。それからさらに、六ケ所村の今の八百トンの規模の再処理工場があるわけでございますけれども、さらにその次についてはなるべく国内技術でやっていきたいとかいうことを考えている次第でございまして、それはなるべく日本の自前の技術でやるということが基本というふうに考えたいと思っている次第でございます。
  65. 貝沼次郎

    貝沼委員 そういう方針であれば、やはりそれだけの体制が必要だと私は思います。例えば、日本の自主技術というものを育てるためには、そこに集まってくる研究者、この人たちは自分の一生をかけて来るわけですね。ところが自分たちが一生懸命やった結果が余り認められないで、外国からぽっと入れられるようなことがあれば、これはもう研究者として本当に情けないことだと思うのです。そういうところに果たして人材が集まるのか。私はそれでは人材は集まらないと思います。したがって、自主技術の面からいきますと、それだけの希望の持てる体制にしておかなければいけないということですね。  こういう話をして大変恐縮ですけれども、私たちが原子燃料公社に入ったそのときに、通産省からたくさん技官の方々が来ておりました。で、原子燃料公社はもうぽつぽつここまでかいというような話になったとき、通産省の出向の方は、じゃ、おれたちは帰ればいいんだからという話があった。そのとき、入った人たちは行くところがないわけですね。あれが発展的解消をして動燃になりましたからよかったようなものの、ああいう姿では優秀な人材はそろわない。優秀な人材がそろわないということは、技術は育ちません。  したがって、そういう体制をつくっておかなければならない。その体制のためには、例えば動燃の技術が生きる、それを技術移転して原燃サービスに持っていくというようなときに、一体技術移転というのはどうすればできるのか。ただペーパーに書いたのを渡したからといって、これはできないわけですね。そこはちゃんとノーハウがあるわけですから、できません。そうすると究極の中の一つとしては、人が動くということですね。今まで経験のある人が動くのか、それとも経験を積むべき人がそこへ来て一生懸命一緒にやるのか、とにかく何らかの交流がなければなりません。今の事業団法においては、事業団がどこかに研究とかそういうものを委託することはできるようになっておりますけれども、事業団そのものが原燃サービスのものを委託を受けるとか、あるいは人事の交流があるとかいうことになると、まだ体制というものははっきりしていないような気がしてならないわけであります。  そういうことで私は、自前の技術を育てるためには、まあちょっと無理な点もあるかもしれないけれども、やはり確固たる考え方というものを基本にした方法を講じていかなければならないのではないか。場合によっては団法改正もやむなしということになるかもしれませんが、きょうはそこまで話はしません。とにかくそういう体制で考えるべきではないかと思うのでありますけれども、いかがでございますか。
  66. 松井隆

    ○松井政府委員 先生の御指摘の点まことにごもっともでございまして、動燃事業団もおかげさまでみずから技術を開発する団体として非常に優秀な人材も集まって、着実に仕事をしていると思います。再処理につきましてはそういった経緯がございますけれども、例えばウラン濃縮につきましては、動燃事業団の成果がそのまま次の民間に移されるという仕組みにもなってございますし、また高速増殖炉もまさにそういう形で「もんじゅ」をやっておりまして、この次は民間中心で実証炉をつくる、こういう計画になってございます。私どもとしては着実にそのような方向で進んでいるというふうに理解してございますけれども先生の御指摘もっともでございますので、その点については今後とも頭に入れながら進めたいというように考えています。
  67. 貝沼次郎

    貝沼委員 ぜひひとつそういう点でお願いしたいと思います。  それから、さっき輸送のところでちょっと聞くのを忘れましたからお尋ねしておきますが、例えばフランスから我が国へ運んでくる場合、海上輸送なら海上輸送で運んでくる場合、いろいろな警備や何かがあると思いますが、費用はどこが負担するのですか。  それからもう一つは、空輸の場合もいろいろな金がかかりますね。ただ飛んでくるわけにいきません。しかもいろいろな警備をするということですから、そういう場合の費用はどこで負担するのか。この二点。
  68. 松井隆

    ○松井政府委員 プルトニウム輸送の場合、海外から持ってくる場合の費用の負担でございますけれども、私どもとしては、その輸送にかかる経費については、その輸送されるプルトニウムを入手して利用する者が負担するということが基本だというふうに承知しております。
  69. 貝沼次郎

    貝沼委員 そうすると、現在のものであれば、プルトニウムに再処理を終わった時点で所有権が契約によって変わりますね。例えば研究用であれば、動燃事業団で使うのであれば動燃事業団の所有物になりますね。そうすると動燃事業団が全部負担するということになるのですか。
  70. 松井隆

    ○松井政府委員 現状先生のおっしゃるとおりになっております。
  71. 貝沼次郎

    貝沼委員 それからもう一点、航空機の場合には今警備はいろいろなことを考えておりますが、例えば船、海上の場合にシージャックというのは対策はなされておるのですか。どうなんですか。
  72. 松井隆

    ○松井政府委員 新日米原子力協定におきましては、海上、つまり飛行機以外の輸送につきましては個別同意という仕組みになってございまして、この場合には輸送する方が事前に計画をつくりまして、アメリカの同意を受けるということになろうかと思います。そういう意味では、その過程でどういう話になるかということがあるわけでございますけれども、まだどうなるかということは決まっておる段階ではございません。ただ、昭和五十九年に動燃が晴新丸でプルトニウム輸送したことがございます。この場合には、その輸送の方法自体はIAEAの基準を満たした格好でやっているわけでございまして、問題なかったわけでございますけれども、アメリカ、フランスは独自の判断として護衛するという話がございまして、それにつきましては、その費用についての請求は来ておりません。
  73. 貝沼次郎

    貝沼委員 決まってない部分が大分多いようですね。  とにかく、時間もなくなってきましたから申し上げますが、私は、PPの根本はやはり政治的な対応だと思うのですね。政治的な対応といっても、日本は武力をもって云々というわけにもいきませんので、核を奪取しようとするその意図を起こさせない、そういうことだと思うのです。したがって、先ほどから申し上げておりますように、国会においても、日本の場合はこれだけ強力にその対応に皆真剣に取り組んでおりますよということを見せることが必要だし、そのためには、ただ一つのどこかの法律をちょこちょこっと直すのでなしに、単独立法をつくってまで頑張っておりますよという姿勢が必要だと申し上げておるわけでございます。あとは物的障害が考えられなければならないでしょうけれども、こういうものも、キャスクはかなり重たいようだし、ああいうものを持って逃げようといったって、クレーンか何か持ってこなければ逃げられないわけですから。ただ、飛行機が不時着なら不時着したときに、そんなものを持って逃げる人はいないでしょうけれども、救援隊が来るまでどれだけ時間を稼ぐかということなんですね。そういうことを考えると、ピストルで果たしてどんなことができるのか私わかりませんけれども、とてもそんな物理的なものではどうしようもない。したがって、今日本が最も力を入れなければならないのは、早期にそういう情報をキャッチして対応するということが最も大事なのではないかと考えるわけでありますが、いかがでございますか。
  74. 石塚貢

    石塚政府委員 ただいま先生指摘の緊急時におきますいろいろな対応、そういったことにつきましては、御指摘のとおり非常に重要なことであると私ども認識をいたしております。原子力委員会の専門部会が決定いたしました報告書の中にも、緊急時における対策といたしまして、今後検討すべき点、あるいは実施すべき点についていろいろと指摘がなされているところでございますので、私どもその線に沿って努力をしてまいるつもりでございます。
  75. 貝沼次郎

    貝沼委員 終わります。
  76. 大坪健一郎

  77. 小澤克介

    小澤(克)委員 核原料物質核燃料物質及び原子炉規制に関する法律の一部を改正する法律案についてお尋ねをいたします。  まず、今回この炉等規制法改正案を提出するに至った経過、理由、とりわけ核防護条約との関連性について、あるいは他の委員から既にお尋ねがあったかもしれませんが、端的にお答えを願いたいと思います。
  78. 石塚貢

    石塚政府委員 まず御質問の今回の法改正に至るまでの経緯でございます。  近年、核物質防護といいますか、核拡散防止の面も含めまして、これに関する国際的な検討の場におきましても、核物質不法移転の防止のための核物質防護というのは、非常に重要な課題の一つであるというふうに認識が高まってきておるところでございます。こうした状況を受けまして、ウィーンの国際原子力機関が核物質防護のための指針というものを取りまとめまして、昭和五十年に加盟各国に対し勧告を行い、さらに五十二年にはその内容の一部が改定されてきたという実情にございます。このIAEAの勧告は、現在核物質防護に関する国際的な基準として各国において運用されておるものでございます。さらに、国際輸送中の核物質に対しまして一定の防護措置が講じられるべきこと、こういったことを主眼といたします核物質防護に関する条約、これが昭和五十五年より署名のために開放されまして、昨年二月発効したということにつきましては御案内のとおりでございます。  我が国におきましては、この核物質防護につきまして、国際原子力機関における検討等国際的な動向を踏まえまして、各事業者において講じられるべき核物質防護要件というものが昭和五十六年に原子力委員会によって決定されているところでございます。現在この決定を踏まえまして関係行政機関が所要の施策を実施してまいっておりまして、その現状はおおむね国際水準に達しているというふうに私ども考えておる次第でございます。以上のように、核物質防護につきまして適切に対応していくということは、原子力先進国たる我が国の国際的な責務となっておるわけでございまして、昨年の十二月には原子力委員会が、この発効いたしました条約への早期の加入に必要な法体系等の整備を図る必要があるとの決定を行ったところでございます。  今回の法改正は、こういった状況を踏まえまして、我が国といたしまして核物質防護に関する条約への加入に当たり、核物質防護に取り組む我が国の政策意図というものを内外に明らかにし、かつ我が国原子力活動への国際的な信頼性の一層の向上に努めるということにしたわけでございます。  それから、今回の法改正核物質防護条約との関係についてお尋ねでございますが、今回の法改正のうち、輸送中の核物質防護に関する責任の移転に関する確認の条項、すなわち第五十九条の三の関係でございます。こういった点とかあるいは核物質を用いた犯罪処罰規定、これは第七十六条の二等でございますが、これは我が国核物質防護に関する条約加入する上で不可欠な規定でございます。さらにその他、国内施設等の核物質防護措置にかかわる規定につきましては、核物質防護に関する条約前文におきましてその重要性が述べられておりますし、また、先ほど申し上げました昭和五十六年あるいは昨年の十二月の原子力委員会決定等を踏まえまして、その内容法律上明確に位置づけたものでございます。
  79. 小澤克介

    小澤(克)委員 今の最後のところでございますが、結局のところ、PP条約というのでしょうか、核防護条約によって我が国が負うところの義務というのは、国際輸送中の核物質防護に関する義務、それともう一つは核物質に係る犯罪処罰する義務、この二つに尽きるかと思うわけです。  そういたしますと、今若干御説明ありましたけれども、今回の炉等規制法改正案の中で、この核防護条約に加盟するために絶対必要な国内法整備としての部分というのは極めてわずかな部分ではなかろうか、こう思うわけです。輸送について、国際輸送の前後にほんのちょっと国内での輸送部分がございます。ここに関して今回のこの核防護条約要件を満たさなければならぬ。いま一つは、犯罪についての処罰規定を置く。ここだけがこの核防護条約と関連するのであって、そのほかは防護条約とは全く無関係な我が国の政策としての法改正案の提出である、こう理解されるのですが、よろしいでしょうか。
  80. 石塚貢

    石塚政府委員 国際輸送中の予防措置につきましては、我が国の領域に入った部分だけではございませんで、国際輸送中の全期間にわたりましてその責任の移転等を明確にし、それを確認する必要があるという五十九条の三は、全文が条約の要求でございます。それから、さかのぼりますが、五十九条の二関係のもの、ここにつきましても条約が要求するところ。あとは先生指摘のとおり罰則、犯罪処罰規定がございます。  なお、その他条約が直接明示的に要求をしておるものではない点におきましても、我が国におきます施設の予防措置、それから国内の輸送の予防措置につきましては、その条約前文に、国内における施設の防護措置あるいは輸送防護措置についても重要性指摘されているところでございます。
  81. 小澤克介

    小澤(克)委員 要するに、今回の改正案の項目で見ますと、「目的」のところに核防護という目的が加わった。これは今おっしゃったような条約上の義務からする改正部分にもかかわることは理解できるわけですね。  その次の第二の「定義」はともかくといたしまして、第三の一の「特定核燃料物質防護のために講ずべき措置」、これについてはどうなんですか。核防護条約と必然的なつながりがあるわけですか。
  82. 石塚貢

    石塚政府委員 その点につきましては、原子力委員会昭和五十六年に決定いたしました防護措置の指針というのがございます。これは先ほども御説明したかと思いますけれども、ウィーンの国際原子力機関が昭和五十年に定めました国際的な指針をもとにしてつくられたものでございます。なお、その条約の中では、このIAEAの指針というものが別途あるということも加味した上で、その点につきましては国内としても十分そういう措置を講ずることが望ましいとの趣旨で、そういった条約前文の中に織り込まれているものというふうに理解いたしております。
  83. 小澤克介

    小澤(克)委員 端的に答えていただきたいのですよ。そんなこと聞いてないのです。つまり、今回の核防護条約に加盟することによって我が国が負うことになる義務義務に限定してですよ、それとこの「特定核燃料物質防護のために講ずべき措置」、これとはつながりがあるのか、義務に応ずる規定なのか、それとも義務とは直接関係がないのか、どっちなんですか。
  84. 石塚貢

    石塚政府委員 直接義務ということではございません。
  85. 小澤克介

    小澤(克)委員 では、次の「核物質防護規定」に関する部分はいかがですか。
  86. 石塚貢

    石塚政府委員 その点につきましても、条約との直接的な関係はございません。
  87. 小澤克介

    小澤(克)委員 三番日、「核物質防護管理者」についてはいかがですか。
  88. 石塚貢

    石塚政府委員 管理者につきましての規定も条約との直接の関係はございません。
  89. 小澤克介

    小澤(克)委員 四番目、「運搬に関する確認等」、これにつきましては、国際輸送に関する場合のみ今回の核防護条約によって負う義務の履行のための手当てという部分がある。国際輸送以外の目的における国内での輸送等は無関係である、かように理解してよろしいですか。
  90. 石塚貢

    石塚政府委員 国際間の輸送の定義でございますけれども、国内から国内の輸送でございましても、それが一たん公海上に出ますような場合には、国際間の輸送であるというふうに定義づけられております。
  91. 小澤克介

    小澤(克)委員 そうですかね、核物質防護に関する条約によるとこう書いてありますよ。――ああ、そうですね。「最初の積込みが行われる国の領域外への核物質の運送であって」とありますから、一たん公海に出れば確かにそうなりますね。  その点はわかりましたけれども、いずれにしても国内での、特に陸地の輸送については全く関係がないということになりますね、国際輸送のための初めと終わりの部分の国内輸送は除きまして。専ら国内で輸送する場合、しかも陸送については全く無関係、こうなりますね。
  92. 石塚貢

    石塚政府委員 国内だけの輸送、陸、海、空を含めまして、それは御指摘のとおり条約の要求するところではございません。
  93. 小澤克介

    小澤(克)委員 それから「第四 罰則の整備」、ここはもろにといいますか、この条約によって負う義務を履行するための国内法の手当て、こうなるわけでしょうね。そうでしょう。
  94. 石塚貢

    石塚政府委員 条約が要求しております犯罪処罰規定につきましては、我が国刑法でカバーされていない部分につきまして今回の法改正で手当てをしているものでございますが、法案の中にございます処罰規定は、条約が要求しているものそのものでございます。
  95. 小澤克介

    小澤(克)委員 そうやって見てきますと、今回のこの改正案の中で非常に大きな部分、核施設の防護のために講ずべき措置であるとか、そのための規定をつくるとか、あるいは防護管理者をつくるとか、それから運搬に関する確認等でも専ら国内に関する部分とか、これは一切この核防護条約とは関係がないわけですね。それは精神規定がどうのこうのとおっしゃいますけれども、その点はともかくとしまして、法律的な意味で国際法上我が国が負う義務の履行のための国内法の手当てとしては、今指摘した部分は全く関係がないわけです。  そうしますと、これがわからぬのですが、この法案提案理由説明でこう書いてあるのですよ。「この法律案におきましては、同条約」、「同条約」というのは核物質防護に関する条約ですが、「同条約への加入に当たって、我が国における核物質防護に関し、所要の措置を講ずるための改正を行うこととした次第であります。」これは全然間違いじゃないですか。どうですか。
  96. 石塚貢

    石塚政府委員 この「加入に当たって」というところでございますけれども先ほど来から御説明申し上げておりますとおり、条約が要求しておりますものに直接こたえる部分と、それから条約前文重要性指摘し、かつ我が国原子力委員会決定をいたしました趣旨に沿いまして、その他の部分につきましても今回、実際はもう既になされておるわけでございますが、法文上明確にするという部分がございますが、そういった部分も含めまして「同条約への加入に当たって」というふうに表現されておるというふうに承知しております。
  97. 小澤克介

    小澤(克)委員 官僚答弁の典型なんですよ。確かに同条約への加入のためにとは書いてないのです。「加入に当たって」と書いてあるのです。これはまさにそのことを意識してこういう表現をされたのだろうと思いますね。これがペテンだと私は思うのです。いいですか。「この法律案におきましては、同条約への加入に当たって、我が国における核物質防護に関し、所要の措置を講ずるための改正を行うこととした」、これを素直に読みますと、いかにも同条約への加入のために所定の国内法の手当てをしたと普通読んでしまうのですよ。そういう認識を持ってしまうのですよ。おかしいじゃないかと聞くと、いやそうではありません、ためにとは書いてはありません、「当たって」と書いてあります。これが実質的に見てペテンだと私は思うのです。こういうことをやるべきでない。どうして堂々と、国内でいろいろ核防護の必要が生じた、だからいろいろな手当てをするんだ、こう書かないのですか。
  98. 石塚貢

    石塚政府委員 核物質防護に関する条約前文でございますけれども、IAEAが勧告を行っております防護措置の指針、そういったものが既に各国において十分尊重されているといったことを前提としてこの条約は起草されているものというふうに理解しておりますので、国内における防護措置につきまして体制整備していくということも、直接の義務関係はございませんけれども条約を踏まえて体制整備を図っていくという観点からは、やはり重要な要素であろうというふうに考えておるわけでございます。また原子力委員会といたしましても、このIAEAの勧告といったものを踏まえて国内の指針をつくった。それを実施するに当たっては、十分体制整備も行いなさいというような原子力委員会決定もございますので、そういったことを踏まえまして今回の法改正を行った次第でございまして、その点につきましては、加入に際し、加入のために必要な法的な措置とともに、そういった直接関係のない、しかし重要な事項について今回手当てを行ったという趣旨でございますので、御理解を賜りたいと思います。
  99. 小澤克介

    小澤(克)委員 結局今回のこの改正案は、昭和六十二年、昨年の十二月十八日の原子力委員会決定の四項目のうちの一項目、条約加入することは本法では関係ないといたしまして、この二項目から必然的に生ずる部分というのは非常に限定的であって、大部分はこの三項目に基づくものなんですね。そのことをどうしてはっきりうたわないのか。「同条約への加入に当たって」、確かに「当たって」と書いてあります。ためにとは書いてないけれども、「同条約への加入に当たって、我が国における核物質防護に関し、所要の措置を講ずるための改正を行うこととした次第であります。」こういうことを大臣に読ませるというのは私はけしからぬと思いますよ。そうでしょう。  おまけに、これは外務省の作成した文書ですからあなた方には関係ないのですけれども、六十三年三月「核物質防護に関する条約説明書」「条約実施のための国内措置」として、「1 この条約実施するため、核原料物質核燃料物質及び原子炉規制に関する法律に所要の改正を加えるための法律案が今次国会提出される。」ここでは「条約実施するため」と書いてあるのですよ。これは外務省文書ですから、あなた方にどうこう言ってもしようがないですけれども、要するに、外務省も含めて皆さん、あたかも核防護条約加入するためには、今回の炉等規制法改正が必要なのだという口吻をもって国民の代表である議会に臨んでいる、そうとしか言いようがないのですよ。そうではありませんか。
  100. 石塚貢

    石塚政府委員 本法案提案理由説明でございますけれども、二ページ目の四行目以降、「我が国においては、核物質防護に関し、昭和五十六年に原子力委員会が行った決定内容を踏まえ、既に国際水準を満たす核物質防護措置が講じられておりますが、核物質防護に関する条約への加入に際し、核物質防護に取り組む我が国の意図を内外に明らかにし、さらに万全の核物質防護のための体制整備を行うことが重要であります。」というふうに述べてございまして、必ずしもその条約が要求しているものについてのみ限定的に法改正を行ったものではないという趣旨は、ここで明らかであろうかと思います。
  101. 小澤克介

    小澤(克)委員 確かにそう書いた部分もあります。しかし、決定的なのはここですよ。その後のところで「この法律案におきましては」と書いてあるのです。「この法律案におきましては」これこれを「講ずるための改正を行うこととした」、私はこれはペテンだと思います。こういうやり方はとるべきでない。  それでは、なぜ今回炉等規制法改正提出という手法をとったのか。核防護条約に基づく義務の一番大きいのは、結局核ジャックに対処するための刑罰等の整備ということになろうと思いますね。そうであるとすれば、これはまさに刑法もしくは特別刑法として手当てをするのが本筋だと思うのですよ。炉等規制法の目的を変えてしまう、つまり、炉等規制法は安全を確保するためのまさに行政規制法だったと思うのですけれども、それに防護という新たな観点を加えて、この法の性格、目的そのものを変えてしまう、そんなことをする必要は少なくともこの核防護条約との関係ではなかったのじゃないか。核防護条約のための必要な国内法を手当てするには、まず特別刑法でもって核ジャックに対応する犯罪類型を規定すれば足りる。それからあと国際間の輸送に関して、これはまさに核防護に関する何らかの手当てをすれば足りる。国内での原子力施設あるいは事業者に対する安全確保の観点からの規制法であるこの法案にこういう要素をつけ加えるというのは、木に竹を接ぐようなおかしなものになるのですね。これは極めてまずい。しかも核防護条約との、何といいますか、国内法整備として非常にオーバーなものがあると思うのですが、いかがでしょうか。
  102. 石塚貢

    石塚政府委員 先ほども一度申し上げましたので、繰り返して申し上げるようでございますけれども原子炉等規制法原子力基本法第一条並びに第二条にのっとったものでございまして、原子力施設原子力事業者に対し所要の規制を行い、公共の安全等を確保し、ひいては我が国における原子力の開発利用の推進を図るとの性格と、もう一つ原子力に関する国際約束の実施法としての性格をあわせ有しておるものでございます。  一方、今回新たに処罰対象となる危険犯等は、核物質の固有の作用を直接間接に利用した犯罪でございまして、このような犯罪が発生すれば現実に原子力災害が発生し、あるいは原子力に対する国民の信頼が失われ、ひいては平和利用を前提とした我が国における原子力の開発利用に大きな影響を与えるおそれがあるというものであること、さらに、原子力に関する国際約束を実施するためのものであること、今回の核物質防護に関する条約はまさに国際約束でございまして、これを実施するためのものであるということからして、これは明らかであろうと思います。したがいまして、これらの犯罪処罰する規定を設けることは、原子炉等規制法の性格に合致するものであるというふうに私ども認識をしておる次第でございます。  さらに、核物質防護を実現する上で、これらの核物質に係る犯罪処罰は、原子力事業者の講ずべき防護措置に対する規制をサポートするという性格も有するものでございまして、この点からも犯罪処罰規定は、核物質防護の観点からの原子力事業者に対する規制とあわせて、原子炉等規制法の中に位置づけることが適当であるというふうに私ども認識をしておる次第でございます。
  103. 小澤克介

    小澤(克)委員 原子力基本法のお話が出ましたので伺うのですけれども原子力基本法には、これはもう御存じのとおり民主、自主、公開という原則がうたわれているわけでございます。炉等規制法も、もちろん今お話ありましたとおり「原子力基本法の精神にのつとり」となっておるわけですね。そうすると、各種規制を加えていくということは、少なくともこの公開の原則、それから自主、民主いずれの精神とも合致しないものであることは明らかなんですね。しかも国際約束を実施するためだと言いましたけれども、今回のこの規制強化、核防護の観点からの規制強化の大部分は、国際約束を実施するためとは無関係なものがつけ加わっているわけです。まさに原子力基本法の精神に反するものではないかと考えるわけですが、いかがでしょうか。
  104. 石塚貢

    石塚政府委員 原子力基本法に述べております三原則と今回の核物質防護との関係についてお尋ねでございますけれども原子力三原則につきまして若干の説明をさせていただきたいわけでございます。  まず民主の原則でございます。これは、原子力における平和利用を担保するため、我が国における原子力の研究、開発及び利用は民主的な運営のもとに進められなければならない旨定めたものでございます。そしてその最も重要な具体策といたしまして、原子力委員会及び原子力安全委員会を設けておるわけでございます。また、原子力委員会及び原子力安全委員会の委員は、両議院の同意を得て、内閣総理大臣が任命するということになっておるところは御案内のとおりでございます。  それから自主の原則でございますが、これは、我が国における原子力の研究、開発及び利用が他国からの干渉によってゆがめられたり支配を受けることなく、自主的に進められなければならない旨を決めたものでございます。  それから公開の原則でございますが、原子力の研究、開発及び利用に関する成果を公開する、そのことによって原子力平和利用を確保するとともに、あわせて原子力の安全性についての国民の理解を深め、原子力の研究、開発及び利用の促進に寄与するということでございます。  以上がこの三原則の精神でございます。  今回原子炉等規制法の体系の中で位置づけようといたしております核物質防護は、これは昭和五十五年の原子力委員会核物質防護専門部会の報告書において明記されてございますけれども核物質の盗取による不法移転の防止、それから原子力施設核物質輸送に対する妨害破壊行為の防止、こういったものを目的といたしております。そこで、今回のこの法改正は、民主的な運営のもと、原子力利用を進めるため設けられた原子力委員会における決定を受けて行われるものでございますし、また我が国原子力活動を取り巻く内外の情勢を踏まえまして、我が国が自主的に行うものであることは当然でございます。また、従来からこの公開の原則の適用に当たりましては、財産権の保護あるいは核不拡散等の観点から、ノーハウ等の商業機密あるいは核不拡散上、核物質防護上磯微な情報につきましては慎重に対処してきているところでございます。我が国原子力平和利用担保の観点から、核物質防護にかかわる機微な情報について、その不必要な分散を抑制するということは、このいわゆる公開の原則には反しないというふうに私どもは考えております。  いずれにいたしましても、核物質防護に関する体制整備していくに当たりましても、従来どおり基本法第二条の原子力三原則を堅持してまいることは申すまでもございません。よろしく御理解のほどお願い申し上げます。
  105. 小澤克介

    小澤(克)委員 今のお話の中で、今回の改正原子力委員会決定を受けて行われるというのは間違いですよ。原子力委員会決定を受けて法案提出がなされたのかもしれませんけれども、法改正を行うのは立法府たる国会がやることですよ。委員会の決定を受けて国会がやるわけじゃないじゃないですか。基本的に間違っていませんか。
  106. 石塚貢

    石塚政府委員 御指摘の点は申すまでもないことでございます。
  107. 小澤克介

    小澤(克)委員 今の説明は全く納得できないわけです。要するに防護のために講ずべき措置、あるいは防護規定を設ける、管理者まで置く、これはすべて管理を強化するわけです。なるべく国民の目に触れないようにしよう、あるいは中にいる研究者に関しても不信の目を向けるといいますか監視の目を光らせよう、これがどうして民主的だということになるのか、どうして自主的な研究開発が確保できるのか、全く矛盾するわけです。私は今度のこの法案は、核防護条約に直結する部分はやむを得ないといたしましても、それと無関係な部分についてまで、まさにこの核防護条約加入するに当たってといいますか、便乗して、この原子力基本法、とりわけ第二条の精神と全く相反する条項を設けようとしている極めて危険なものだと考えるわけでございます。  そこで、時間もありませんので少し観点を変えてお尋ねいたしますが、この法案提案理由のところで、「一方、原子力施設における核物質取扱量や核物質輸送機会の増加が予想されており」、そこで「防護措置を講じていくことが極めて重要な課題となっている」ということがございますが、具体的にはどんなことを意味しているのでしょうか。つまり、今までだって核物質は盛んに使われている。研究開発だけではなくて、実用発電炉等で大量に使われております。しかし、特に法的な手当てをする必要はなかったわけですね。ないからこそ今までやってきているわけです。今回こういった核防護の観点をこの炉等規制法に加える実質的な必要性というのはどこにあるのでしょうか。具体的にお答え願いたいと思います。
  108. 石塚貢

    石塚政府委員 国内の原子力関係施設あるいは国内における輸送に対します核物質の予防措置、そういったものにつきましては、先般来述べておりますとおり、国際的な基準をもとにつくりました原子力委員会の指針にのっとって、現在実質的には原子炉等規制法の運用あるいは行政指導等において行われておるところでございます。実質的には既に国際的な水準に達しているということでございますから、今回法改正をすることによって何か新たに規制を強化するという趣旨では決してないわけでございます。  一方、こういった国内の施設についても防護措置を講ずることが重要であるという指摘は、国際原子力機関、原子力委員会決定でも明らかでございますし、今回の核物質防護に関する条約前文におきましても、そういったことは当然各国においてなされているのだ。これは多国間条約でございますので、各国内の措置についてまで直接言及はいたしておりませんけれども考え方といたしましては、各国においてIAEAの基準がきちっと守られることが重要であるということを前文の中で明記しておるわけでございますので、やはりそういったことについて国内法できちっと位置づけていくということは、原子力先進国たる我が国にとって国際的な責務であり、こういった政策を諸外国に示すことは、日本の国際的な信頼性を高める一つの重要な手段といいますか、必要なことであると私ども認識をしておるわけでございます。
  109. 小澤克介

    小澤(克)委員 端的にお尋ねしまして、結局今回のこの法案提出の背景には、プルトニウムの利用を今後考えていこう、そこがあるのではないかと思うわけです。つまり、現在もそうなんですが、これまで主として使われている原子燃料はウラニウムですね。ウラニウムは相当高濃縮をしないと、八〇%か九〇%か、私専門家でないからちょっとわかりませんけれども、いずれにしても相当高度の濃縮をしないと、核分裂反応を一挙に起こさせる、すなわち爆発させるということはできない。したがって、我が国内で一部の研究では相当高濃縮も行われている、あるいは高濃縮のものが取り扱われているということも聞いておりますが、大量に使われているものはせいぜい二、三%の濃縮ウランにすぎない。したがって、これまでは核ジャックという観点からは余り心配がなかった。ほとんどなかったと言っていい。  ところが、今後プルトニウムを再処理して抽出して使うということになってきますと、プルトニウムにもいろいろ種類はありますけれどもプルトニウム239の割合の非常に大きいものが単なる化学的な処理だけで抽出されることになりますと、これはもう何といいますか、いわゆる核爆弾として非常になりやすいという性質がございますね。それからまた、プルトニウムそれ自体は非常に猛毒である。一グラムの何千分の一という単位でも、人間の肺に沈着いたしますと肺がんを生ずるという、非常に毒性が強い。そういったウラニウムとプルトニウム物質的な性質の違いが今回の法案提出の背景にあるのではなかろうか。すなわち、プルトニウム利用体制が目的といいますか、整備しようというところにあるのではなかろうか。  さらに言えば、現在問題となっております日米原子力協定、ここでもこのプルトニウムに関しましてはアメリカが大変に神経をとがらせている。核拡散の観点及び輸送の安全の観点から、もちろん核ジャックの防止の観点から非常に神経をとがらせている。そういったことを背景になされたのではなかろうか。端的に言えば、プルトニウムを利用しよう、利用する体制をつくっていこうというところに本来的な目的があるのではないか、こう思うわけでございますが、いかがでしょうか。
  110. 石塚貢

    石塚政府委員 核物質防護条約の中での核物質の定義でも明らかなとおり、別にプルトニウムだけを対象核物質防護をやるという趣旨ではございません。対象になりますものは濃縮ウラン、あるいはそういったものの化合物、あるいはウラン233、そういった核分裂を起こし得る可能性のある核燃料物質対象になっておりまして、そういう意味からはプルトニウムだけが対象になっているわけではないということは明らかでございます。  それから、核物質防護について適切に対応していくということは、先ほどからも申し上げておりますとおり、やはり原子力先進国たる我が国の国際的な責務であるということでございまして、今回の法改正は、こうした状況を踏まえまして、我が国といたしましてこの条約への加入に当たり、核物質防護というものに取り組む我が国の政策意図、そういったものを内外に明らかにして、我が国原子力活動への国際的な信頼性の一層の高揚に努めるというのが目的でございまして、先生の御指摘にありますように、プルトニウムの利用を推進するためということでは決してございません。
  111. 小澤克介

    小澤(克)委員 今回の核防護条約も、確かにおっしゃったとおりプルトニウムだけを対象としておりませんし、やや不明確なところがあるわけですけれども、しかし第七条の処罰等を見ますと、やはりこれは核物質を用いて爆発させるぞとか、危険なものをばらまくぞというような犯罪類型を禁圧しよう、核ジャックあるいはそれに基づく核テロを禁圧しようというものだろう、それが本質だろうと思うわけでございます。そうすると、それに一番適したといいますか、そのような犯罪対象となり得る物質としては、高濃縮ウランとプルトニウムというのがだれしも頭にぴんとくるところだろうと思います。そうしますと、高濃縮ウランについては平和利用目的には余り意味はありませんので、まず国内では余りない。やはりプルトニウムを念頭に置いたものではなかろうか、こう思うわけです。プルトニウムだけということではないにしても、主としてプルトニウムを念頭に置いたものではなかろうか、こう思うわけでございます。  そこで、プルトニウムに関しまして若干お尋ねしたいのですけれどもプルトニウムをいかに利用するかということについて、研究開発段階だろうとは思いますけれども、その現状、それから見通し等について述べていただきたいと思います。
  112. 松井隆

    ○松井政府委員 プルトニウムにつきましては、日本という国はもともとすべてについて天然資源に乏しい国でございます。そういう意味合いから原子力発電の必要性が出てくるわけでございますけれども、さらにウランといえども日本国には非常に少ない、こういう現状がございます。そういう意味で、やはりウランについても有効利用を図る必要があるということが一つ。それから同時に、プルトニウムというのは原子炉で燃やした後出てくるものでございますから、そういう意味では自前のエネルギーになり得るもの、そういう意味で対外依存度の低減というメリットもあるわけでございます。そういった観点から、日本としてはやはりプルトニウムを大いに利用してまいりたいという考え方を持っておるわけでございます。  そういう意味で、日本といたしましては、まず軽水炉で使った燃料は再処理しよう。再処理をして、そこからプルトニウムないしはウランが取り出されるわけでございまして、そういうものをさらに再利用していこうということを進めているわけでございます。そのために動燃事業団で再処理工場を運転している。さらに、今後青森県の方で商業用の再処理工場を運営をする。またその一部については英仏へ再処理をお願いしておる、こういうような形をとっているわけでございます。  それで、プルトニウムにつきましては、資源の効率的利用という形では圧倒的にすぐれた高速増殖炉という形で利用するのを基本と考えております。そのために、先生御案内のとおり、現在茨城県で「常陽」という実験炉が動いていろいろと研究を進めているわけでございます。そういった成果を踏まえまして、原型炉の「もんじゅ」を現在福井県で建設をしておるという段階になっておるわけでございます。それからあと、新型転換炉というものが日本独自のアイデアで開発されてございまして、これが現在福井県で原型炉が運転されておる。その成果を引き継ぎまして、電源開発株式会社が青森県においてそのさらにステップアップしたATRの実証炉をつくろう、こういう計画になっておるわけでございます。それからもう一つは、このプルトニウムを有効に活用するために、さらにまたプルトニウムの利用技術というものを確立することも必要でございますもので、今後軽水炉でもプルトニウムを燃やしていこうといったような計画を持っているわけでございます。
  113. 小澤克介

    小澤(克)委員 プルトニウムの利用が本当に経済性を持つとすれば、それは高速増殖炉による利用だろう、これが本命であるという今のお話は、その限りではそうだろうと思いますね。新型転換炉というのは転換率が一以下でございまして、極めてあいまいな性格のものでございまして、これが経済的に今後主流になるとはちょっと私には思えません。それから、ウランとまぜて軽水炉で使うというのも、今のウランの供給状態からして経済性を持つとはとても思えない。再処理等の大変な費用をかけて取り出してということを考えますと、仮に実現性があるとすれば高速増殖炉だろうと思うわけでございます。  その高速増殖炉について、これは日本だけじゃなくて各国とも非常に開発が進んでいない、そういう状況があるわけですね。例えばアメリカでは、クリンチリバーの高速増殖炉はもうとっくにカーター政権時代に開発を中止してしまいまして、レーガン政権になってからもその政策はそのまま継がれております。アメリカでは再処理ということはもう行っておりませんね、商業炉の使用済み燃料に関する限りは。それから、フランスが一番トップを走っていたかと思うのですけれども、スーパーフェニックス、これが故障を起こして全然とまったままである。金属ナトリウムが漏れてしまうという大変重大な事故を起こして、めどが立っていない。そして新聞報道によりますと、昨年の十一月二十六日に各紙が報道しているのですが、フランスはとうとう次の計画であったスーパーフェニックスIIについて開発断念、こう報道されているわけですね。そういたしますと、何で今急いで再処理を行い、プルトニウムを抽出しなければならぬのか、そしてそのための法的整備までしなければならないのか、全く理解に苦しむわけでございますが、この点についてはいかがでしょうか。
  114. 松井隆

    ○松井政府委員 先ほど申しましたとおり、日本としては、ウランといえども資源の乏しい国でございます。そういう意味では、有効活用を図りたいという考え方で進めておるわけでございます。それで日本の計画といたしましては、今現在、高速増殖炉に関して申し上げますと「常陽」が動いてございまして、ここでいろいろ実験的なデータを取得しておる。それからさらに高速原型炉「もんじゅ」を建設中でございます。それで、その後実証炉をつくり、私どもの今の計画では、原子力委員会の計画にありますけれども、大体二〇二〇年から三〇年ごろ、少し長期でございますけれども、そのころまでにちゃんとした、実用的にかつまたコマーシャルベースでも現在の軽水炉に対抗できるような炉をつくっていこうというような計画で、着実に進めてまいりたいというふうに考えておるわけでございます。
  115. 小澤克介

    小澤(克)委員 諸外国の状況についてはどのような御認識ですか。
  116. 松井隆

    ○松井政府委員 諸外国の状況をちょっと簡単に御説明さしていただきますと、まずアメリカでございます。アメリカは高速増殖炉の開発については世界でも最も早く着手いたしまして、EBR1、それからEBRIIが大分前にできております。 それからエンリコ・フェルミ炉というのもございました。これはまだ実験炉でございますけれども、そういうものを建設しまして、広範囲な基礎的、工学的開発というものを進めてきました。またもう一つは、いわゆる材料、燃料の照射試験と申しますか、FFTFと言っておりますけれども、それも持っております。これは昭和五十五年に臨界して、その後順調にFFTFに関しては試験を続けておるというふうに聞いております。なお、先生指摘のクリンチリバー、これは電気出力三十八万キロという計画でございました。これにつきましては、おっしゃるとおりカーター前政権の核不拡散政策、あるいは国内のエネルギー資源が豊富である等々の理由だと思いますけれども昭和五十八年でございますか、その建設計画が中止されております。しからば現在全くやってないかというと、そうではございませんでして、小型の原子炉を数個組み合わせるといういわゆるモジュラータイプと言っておりますけれども、そういった設計を考えておりまして、燃料としても従来の燃料とかわりました金属燃料、そういう革新的なアイデアでございますけれども、そういうことを取り入れることによっていい炉ができるのではないかという研究を進めておると承知しております。  それからフランスでございますけれども、フランスにつきましてはフランスの原子力庁、CEAでございますけれども、そこが中心になりまして、一貫して自主開発路線で進めてきておるわけでございます。実験炉ラプソディーが昭和四十二年に臨界に達しております。それから原型炉フェニックスが昭和四十八年に臨界に達しております。なお、フェニックスは電気出力二十五万でございます。それからさらに、それに次ぎまして実証炉のスーパーフェニックス、これが昭和六十年九月に臨界に達しまして、六十一年十二月にはフル出力になったということでございますけれども先生指摘のような故障が起きておるというふうに承知しております。それで、その次の話でございますけれども、もともとスーパーフェニックスをつくるときに、これはヨーロッパ各国の連合でつくっておりまして、そのときに、スーパーフェニックスの次にはドイツのSNR2にしようという話もございまして、その辺の話もございまして、現在いろいろとまだ交渉があるというようにも聞いております。一方、独自にヨーロッパ連合で新しい経済性の向上をねらった高速増殖炉の設計をしようという動きもあるというふうに聞いております。  なお、御指摘にはございませんが、ソ連でも同じような研究がなされておりまして、実験炉BOR60というのが、これは昭和四十四年でございますけれども臨界に達して、これは海水脱塩も目的とした炉でございます。――失礼しました。海水脱塩はBN350というものでございます。それからさらにその上の原型炉BN600、これは電気出力が六十万キロワットでございますけれども、これが昭和五十五年に臨界に達しております。それに続く大型炉として、実証炉のBN800、電気出力八十万キロワットが着工したというふうに伝えられております。  そういうような世界の開発状況というふうに承知してございます。
  117. 小澤克介

    小澤(克)委員 アメリカにつきましては、モジュール炉というのはまだ概念設計の段階で、海のものとも山のものともですし、ソ連についてはお国柄もあって私どもも余り情報がありませんけれども、このヨーロッパの計画については、これはもう完全に、五年間凍結というようにも言われておりますけれども、要するにスーパーフェニックスIIについてはめどが立たないということで、フランス政府が白紙撤回という状況にあるわけです。また御承知のとおり、イタリアの国民投票で外国との原子力協力開発も事実上禁じられるということになりましたので、このスーパーフェニックスIIについてはイタリアの参加はもうあり得ない。そういう状況にあって、高速増殖炉というのは全くめどが立っていないわけです。  その中で、どうして再処理を進めなければならないのかということについては、産業界からも非常に疑問が出ているわけですね。これは前にも当委員会で私指摘しましたから繰り返し述べませんけれども、雑誌「エネルギーフォーラム」の一九八六年一月号に電力中研の研究者が、何が何でも再処理をやるというのは意味がないではないか、「使用済み燃料からウランとプルトニウムを回収して再利用することは、現在の条件下では経済的魅力がないのであるから、本格的な再処理によるプルトニウムの大量回収は、その利用技術の開発レベルを見極めて慎重に計画せねばならない。」なぜ再処理を行うのかという基本に立ち返って見直す必要があるというようなことを言っております。それから、ほかならぬ前の科学技術庁の中村守孝原子力局長さんが、「ウラン需給状況プルトニウム利用の経済性等を考えるならば、使用済み燃料をやみくもに再処理してしまうというのも如何なものか」、これは同じく「エネルギーフォーラム」の八五年十二月号にそういうことを書いている。  したがいまして、このプルトニウムについては全く疑問が大きい。このための法的整備を今急いでしなければならない理由は全くないのではないかということを指摘いたしまして、時間が来ましたので、質問を終わらしていただきます。大臣に御質問する予定だったのですが、時間切れになりまして大変申しわけありません。  それから、一つこれはお願いがあるわけでございますが、他の委員の質疑を通じまして、あるいはその要求によりまして、今回の法案にかかわる政令、総理府令等についての内容の予定が提出されております。今回の法案はほとんど政令に白紙委任するというような内容になっておりまして、これは国会の立法権に対する重大な疑義があろうかと思いますので、その点も含めて考慮して、このせっかく提出していただきました「政令及び総理府令について」と題する書面を何らかの形で記録に残していただく、議事録に添付していただくというようなことのお取り扱いを委員長を初め理事さん方にお願いをいたしまして、私の質問を終わらせていただきます。
  118. 大坪健一郎

    大坪委員長 この際、暫時休憩いたします。     午後零時二十六分休憩      ────◇─────     午後二時四分開議
  119. 大坪健一郎

    大坪委員長 休憩前に引き続き会議を開きます。  質疑を続行いたします。野坂浩賢君。
  120. 野坂浩賢

    ○野坂委員 原子炉規制に関する法律の一部改正についての質疑を行いたいと思います。  提案理由説明の中で、先ほども同僚議員が質疑をいたしましたように、核防条約への加入に当たってというような点についても触れたわけでありますが、まず「官民挙げて原子力の開発利用を推進してきた結果」「核燃料サイクル事業の本格化の時代」だというふうに規定されておるわけであります。この中で二ページに、「我が国においては、核物質防護に関し、昭和五十六年に原子力委員会が行った決定内容を踏まえ」、これは石塚さんが特に強調してお話しになりましたが、「既に国際水準を満たす核物質防護措置が講じられております」と明快に述べられております。したがって、今の核物質防護措置がそのまま法律として条文にうたわれたものだ、それ以外のものはない、より以上なものはないが、水準以上のものなのでこれを法制化したにすぎない、こういうふうに考えてよろしいわけでしょうか。
  121. 石塚貢

    石塚政府委員 現在我が国において実施されております核物質防護の水準は、昭和五十六年に原子力委員会が策定をいたしました我が国における核物質防護のための指針を満たしている、しかもその原子力委員会がっくりました指針は、国際原子力機関が昭和五十年に作成した国際的な指針を踏まえたものである、そういう趣旨で国際的な水準に達しているというふうに申し上げたわけでございますが、現在の我が国の水準は、講じられている防護措置という面からは、その水準に達しているというのが私ども認識でございます。  ただ、今回改正法案の中に盛り込まれております条項のうち、核物質防護のためにとるべき措置は、まさに現状において既に実施されておりますそのものをおおよそ規定するということになりますけれども核物質防護規定につきましては、現在の保安規定というものの中から分離独立させるという性格なものでございます。それから、新たに規定を設けます核物質防護の管理者、こういった制度につきましては、現在保安のためにその責任を負っております主任、原子炉でございますと原子炉主任技術者、あるいは核燃料取扱事業所でございますと核燃料取扱主任者といったような人たちがその責任を持っておるわけでございますが、そういった者の中から核物質防護についての責任を有する者を分離独立させる。そういう意味では新設ということに法律上はなろうかと思いますけれども、制度的にはそういった面は拡充をされるということに相なろうかと思います。
  122. 野坂浩賢

    ○野坂委員 非常に慎重な御答弁をいただいておりますが、原子力安全局長が慎重に御答弁いただいておるのは、国際水準には達しております、しかし今度の核防条約への加入を契機にして、今までやったことから以上なことは出ないけれども核物質防護の管理者を決めるぐらいなもので責任の明確化をやるが、内容的には変わらないものです、こういうふうに理解していいのでしょうか。
  123. 石塚貢

    石塚政府委員 御指摘のとおりでございます。
  124. 野坂浩賢

    ○野坂委員 そういたしますと、十二条の二、これは「内閣総理大臣及び通商産業大臣の認可を受けなければならない。これを変更しようとするときも、同様とする。」二項として「防護上十分でないと認めるときは、前項の認可をしてはならない。」こういうふうにありますね。また三項は「動力炉・核燃料開発事業団又は製錬事業者に対し、核物質防護規定の変更を命ずることができる。」その規定の内容というのは一体どこにありますかということが一つと、防護上十分でないと認めるというその一つの基準ですね、それは具体的にはどういう内容で、どこに書いてありますか。
  125. 石塚貢

    石塚政府委員 防護規定で定めます事項につきましては、本日午前の当委員会の理事会に御提出申し上げました今後政令あるいは府省令で決めるという、現在科学技術庁の中で検討を行っております素案といったものの事項について、その規定の中で将来定めていくということになろうかと思います。  それから、十分であるかどうかという点につきましては、核物質を取り扱います施設は大きなところもありますし、小さなところもございます。したがいまして、規定について事業者が認可申請をしてまいった際に、十分行政庁において内容を審査いたしたいと考えております。
  126. 野坂浩賢

    ○野坂委員 十分であるかないかという判断の基準というものがなければ判断ができませんね。勘ではできないわけです。その基準の中身は総理府令なり省令ということですが、この総理府令ではどこに書いてありますか。
  127. 石塚貢

    石塚政府委員 この防護規定についての定めがございますが、その前の方の段階で第十一条の三というのがございます。ここに「特定核燃料物質防護のために講ずべき措置等」というのがございまして、講ずべき措置の基準がそれぞれの府令または省令で定められることになってございまして、そういった省令で定められます基準に従って、十分であるかどうかということで審査をしてまいるつもりでございます。
  128. 野坂浩賢

    ○野坂委員 そうすると、総理府令、通商産業省令、そういうものを出してもらわなければ、この基準についてはなかなか理解できませんね。通産省の方ではその省令はいつごろ出されますか。
  129. 三角逸郎

    ○三角説明員 お答えいたします。  お尋ね防護措置の省令でございますが、これは三十五条の三項になろうかと思いますが、このことにつきましては、具体的には五十五年の原子力委員会核物質防護専門部会報告書に掲げられてございます「核物質防護要件」といったようなことの中から検討を進めてまいりたいというふうに今現在では思ってございます。  以上でございます。
  130. 野坂浩賢

    ○野坂委員 それは最近のうちには出せないというような印象を受けるわけですが、この原子炉規制法は非常に重要でありますし、この法案だけを読んでみても、総理府令とか通商産業省令とかあるいは規定とか、そういう規定がなければ審議ができない格好になっておるわけですね。不十分であるとか変更せいとか、そういうことが一つ一つ法律はありますけれども、そういう権限はあるけれども、その規定とか基準とか省令というものがないと、これを読んでも何か何かわからない。建前で中身がわからないという格好になっておるわけですから、もしこれを採決をするということになれば、それまでに、総理府令は今理事会に中身といいますか、その骨子が提案されておりますが、通商産業省令というものの骨子を出してもらわなければ採決になかなか参加しにくい、こういう仕組みになってくるわけでありますから、お出しになりますか。また、主務官庁である科学技術庁としてはそれに対してはどういう御見解ですか。
  131. 三角逸郎

    ○三角説明員 御説明申し上げます。  先ほど来の先生の御指摘でございますが、通産省といたしましては、当該主務省令につきまして、繰り返しになって恐縮でございますけれども、基本的には専門部会の報告書等の中から御決定いただいておるわけでございますから、その要件といったようなものを勘案して作業を進めていこうかということになりまするけれども、今のところできるだけ作業努力はしますものの、その母集団となりますところは、「使用中及び貯蔵中の核物質防護要件」等で示されております各項目といったようなことがとりあえず考えられるわけでございます。そういうことで御理解いただきたいと思います。
  132. 石塚貢

    石塚政府委員 政令または府省令で定めてまいります諸基準、これは昭和五十六年に原子力委員会が定めました核物質防護に関する措置について事業者がとるべき措置要件といったものを踏まえまして、そういったものが政令あるいは府令で整備されていくものであるというふうに私ども理解をいたしております。それから、実際に省府令にそういったものを制定してまいります場合には、原子力委員会にそういった内容について御報告申し上げ、御審議も得るということになっております。
  133. 野坂浩賢

    ○野坂委員 運輸省も今度の核防条約に基づいて輸送するわけであります。したがって、運輸省令もこれによっていかなければならぬし、七十二条の二では、内閣総理大臣、国家公安委員会、通商産業大臣及び運輸大臣協力をしなければならぬということも明確になっておるわけですから、その省令は当然出してもらわなければ本当の意味の慎重審議ができないというふうに考えるわけであります。我々が審議中に提案をしてもらわなければならぬ。一応その中身の要綱だけでも説明がなければ、この法律は読んでわけがわからぬというふうに考えますので、お出しいただけますか。
  134. 山本孝

    ○山本説明員 お答えいたします。  私ども、この法案の五十九条の二に関連いたしまして、運輸省令で技術上の基準を定める必要がございますが、これにつきましてあらかじめここで簡単に内容を御紹介させていただきますと、「使用者等が講ずべき陸上輸送中の防護措置を定める。」ということになります。具体的内容といたしましては、昭和五十五年の原子力委員会核物質防護専門部会報告の別表二に示されております  「輸送中の核物質防護要件」のうち、陸上輸送にかかわるものを定める予定でございます。  こういった要綱を提出することについては検討させていただきたいと思います。よろしくお願いします。
  135. 野坂浩賢

    ○野坂委員 原子力委員会の専門部会の報告に基づいて、その中から抽出をして検討して提案をしたい、こういうふうな状況です。  そこで長官にお尋ねをしたい。この法律文を読んでまいりますと、すべて府令なり省令なり政令なり規定なりに基づいて行われるということになっておるわけであります。我々としては法案だけでなく、原子炉問題や核燃料物質輸送、貯蔵、そういうものについて再処理の問題等は非常に重要でありますし、国民も強い関心を持っておるところでありますから、これらの省令、政令等がこの委員会の議論の対象になるように提案してもらわなければ審議が進まない、こういうふうに思います。主管庁としてはそのような努力をして審議に十分な体制を図ってもらいたい、こう思いますが、いかがですか。
  136. 石塚貢

    石塚政府委員 ただいま御指摘の政令及び府令、省令で定めます内容につきましては、科学技術庁分につきましては本日理事会に御提出申し上げたとおりでございますし、その内容についてはるる御説明申し上げておりますとおり、昭和五十五年の原子力委員会核物質防護専門部会の定めました要件、そういったものを織り込んでいくということでございますので、その資料も添付してございますので、御検討賜りたいと思います。
  137. 野坂浩賢

    ○野坂委員 石塚さん、私が言っておるのは、総理府令は出ました、あなたのところの科学技術庁としては総理府の関係、主務官庁としてはこれです、しかし、理事会等で議論があったように、通産省は通産省、運輸省は運輸省、これは縦割り行政だ。しかし、この法案を通すためにはそういうところの要求事項については積極的に努力して、それに対応して万全の審議対象というものをつくり上げておかなければならない、これが主務官庁としての任務だろう、こういうふうに思っておるわけです。  したがって、委員長に申し上げておきますが、そういう省令なり政令は審議対象として、大枠というか要綱というか、そういうものを早急に本会議が採決をするまでに出してもらいたいということを要望しておきます。
  138. 大坪健一郎

    大坪委員長 要望は理事会で検討させていただきます。
  139. 野坂浩賢

    ○野坂委員 それでは十二条の三、これについては「総理府令、通商産業省令で定めるところにより、特定核燃料物質の取扱い等の知識等について総理府令、通商産業省令で定める要件を備える者のうちから、核物質防護管理者を選任しなければならない。」こういうことがありますね。ここでも省令なり府令が出てくるわけであります。総理府令を読んでみますというと、この六の項に「一定の知識を有する者である」ということが書いてありますね。一定の知識というのは具体的に言って、国民にわかりやすく説明すると一体どういうことになりましょうか。
  140. 石塚貢

    石塚政府委員 一般的には、核燃料物質の取り扱いに対する知識を有し、また、核燃料物質が貯蔵されております施設、そういったものについての知識を有する者ということでございます。それは各施設によって必要となる知識は違ってくるであろうと思いますので、管理者に要求されます知識というのは、各事業所に一人ということでございますれば、各事業所の規模とか各事業所の性格によって変わってくると思いますけれども、一般的に申し上げましてそういうことであろうかと思います。  なお、管理者のために特別の試験とかそういうものを行うという予定はございません。
  141. 野坂浩賢

    ○野坂委員 その知識を有する者を任命をするというのは、基準その他は別段なくて、主務官庁である科学技術庁が指名する、内容的には、形式的には総理大臣が指名する、こういうことになるわけですか。
  142. 石塚貢

    石塚政府委員 基準が一応府令で定められる、あるいは省令で定められることになりますから、それに従って事業者が任命し、それを届け出るということになります。
  143. 野坂浩賢

    ○野坂委員 そうすると、いよいよ省令や政令がなければ、この防護措置なり管理者を選任する中身というものは我々には理解できない、こういうことになりますから、その点についても十分御認識をしておいていただきたいというふうに思います。     〔委員長退席、榎本委員長代理着席〕  それで、一番初めに石塚さんからお話があったのですけれども、国際水準にはもう達しておる、したがって、現状そのままの認識で来て法案としてつくっただけだ、こういう御認識でございますが、管理責任者というのは「誠実にその職務を遂行しなければならない。」こういうふうに書いてありますね。そうすると、原子力施設での基本的人権の侵害があるいは行われるのではないだろうかという危惧がありますね。例えばついこの間、私たちもあなた方と一緒に、緒方次長等もお行きになったわけですが、一定のフェンスのある区域内で完全に防護措置をしてということでありますけれども、そこで、管理責任者の考え方でこれは防護措置である、これはこうであるということになると、研究者の制約が出てくるのではないか。あるいは人権で、それはやはり防護措置として必要だ、そういうことはいかぬというようなことが具体的に出る可能性はないのかどうなのか。原子力研究所や動燃事業団等で過去そういうようなトラブルはあったのかなかったのか、その点について明らかにしてもらいたい。
  144. 石塚貢

    石塚政府委員 まず、この管理者がそれではどういった権限あるいは職務内容を持つものであるかということについて御説明申し上げたいと思いますけれども、事業者が行うべき核物質防護のための業務は大変広範多岐にわたっております。そして、その実効性を確保するためには、核物質防護のための権限、それからその責任を一元的に有する者、そういった人による統一的な管理のもとで、組織的、効率的に業務が行われるよう措置することが重要であるかと存ずる次第でございます。また、昭和五十五年の原子力委員会専門部会報告書におきましても、事業者による核物質防護のための組織体制整備というものの重要性指摘されておりまして、核物質防護管理者は同組織体制のかなめとなるものでございます。  核物質防護管理者が行う具体的な業務といたしましては、核物質防護規定の制定とか変更の立案、今回の法改正によって事業者に義務づけられることとなります防護措置に関する業務、こういったものが関係法令及び核物質防護規定に準拠して適切に行われるよう管理監督する、そして従業員等に対して必要な指示を行うということで、その業務範囲が非常に限定されたものでございまして、先生今御指摘のような御懸念は起こり得ないであろうというふうに思っておる次第でございます。
  145. 野坂浩賢

    ○野坂委員 研究者ですね、これから防護管理責任者等がその義務履行というか、そういう意味で自分の目で見て一つ一つ研究開発をやる。これから自主的に開発をするという姿勢で臨まれるわけですが、今原研の中等でも、日中は与えられた任務をやれ、そういう研究があれば家で帰ってやれというようなことがあって、むしろ研究開発に支障があるのではないか。また、防護管理責任者ができて今よりも厳しい、今言いましたように万全の体制をしくと書いてありますから、そういう意味で今まで以上に厳しさを増してくるのではなかろうかということを心配しておりますが、そういうことはありませんか。どうです。
  146. 石塚貢

    石塚政府委員 核物質防護というものに名をかりて人の管理を強化するのではないかという御懸念、御指摘かと思いますけれども、この核物質防護措置昭和五十五年の専門部会の報告、五十六年の原子力委員会決定にもございますとおり、盗取等によって不法核燃料物質移転され、あるいはそういったものが核分裂反応を起こさせる懸念がある、また原子力施設及び核物質輸送に対する妨害行為等が行われた場合には結果として公衆に対する放射線障害といったものを起こす懸念がある、そういったことが現実のものとならないような対策を講ずるというのが、この核物質防護の目的であるわけでございます。  そこで、核物質についての盗取等による不法移転が行われないような措置及び盗取等の前提となるような妨害破壊行為、こういうものを防止するためのものでございます。したがいまして、核物質防護措置というのは、基本的には核物質を盗取するといった不法行為から守る、そういったことに限定されるものでございますし、その核物質防護措置というのは、英語ではフィジカルプロテクションと呼んでおりますが、文字どおり物理的な防護ということでございまして、ハード面の措置というのが基本的な目的でございます。 これをより万全なものとするために、人の出入り管理等をあわせて行うということでございまして、人の管理そのものを主たる目的とするものではないという性格というふうに御理解いただきたいと思います。     〔榎本委員長代理退席、委員長着席〕
  147. 野坂浩賢

    ○野坂委員 人の管理ではなしに核物質防護のためにやる、こういうことですね。よくわかりました。そのとおりだと思うのです。  それでは、警備員というのがおりますね。警備員もみんな職員ですね。あの警備員というのは、私たちも見ましたけれども、あれは人がいらっしゃるところにはいらっしゃるけれども、人がいないところにはおりませんね。それから、ここの勤務時間というのは何時から何時までなのか、ちょっとお伺いをしたい。
  148. 石塚貢

    石塚政府委員 普通、警備員は職員の場合もございますし委託される場合もございますが、警備員は、やはり時間によって十分な警備をする度合いが違ってくるだろうと思います。それは、核物質というものがどのように取り扱われているか、昼間研究等が実際になされている期間にそういった監視が必要になるということでございましょうし、夜中でございますとかあるいは土曜、日曜といった時間帯でございますと、核燃料物質は厳重に保管されているわけでございますので、そういう時間帯にはあるいは警備員の巡視点検といったものは必要がないという実態であろうと思います。
  149. 野坂浩賢

    ○野坂委員 私は若干石塚さんと見解を異にするのですけれども、この条約でも、いわゆる輸送のものは核ジャックに遭いますね。特に今回は、これを契機にしておたくは水増しをやっておられるわけですね。いわゆる地域での原子力施設における核物質防護に関する規定が大部分なんですから。したがって、核物質を奪取するとか強奪するというのは、人がおるときではなしに、人がおらないときに来るのが普通ではないかと私は思うのですね。強盗でも家に泥棒に入るのに、人が山ほどおるときに入る、それでは何も強奪はできない。みんなが留守のころ、あるいは寝静まったころフェンスを乗り越えてやってくるかもしれない。いろいろなことをやっておる、そのときはちゃんと閉まっておるからいい。職員というたくさん信頼の置ける人たちがおる間はちゃんと警備員がおるけれども、夜中は全然空っぽだ、土曜、日曜はお休みだ、こういうのは核物質防護というのとちょっとロジックが合わぬような、合理性がないように私は思うのですが、その辺はいかがですか。人ではなしに物を管理するんだ、こうおっしゃったのですが、現実は人を管理しておるのじゃないのか、こういうことなんです。
  150. 石塚貢

    石塚政府委員 夜中でございますとか土曜、日曜は全く何もしていないということではなかろうと思います。それぞれの時間帯に適した巡視あるいは監視、そういったもの、人間だけではなくてテレビカメラでございますとかいろんなハード面での対策も講じられるわけでございますから、昼と夜あるいは休日、そういったような各時間帯に応じて適切な措置が講じられているというふうに私ども理解しておるわけでございまして、決して夜中とか土曜、日曜は何も警備がないということではなかろうと思います。
  151. 野坂浩賢

    ○野坂委員 石塚さん、見ておられぬでしょう。なかろうと思います、でしょう。ないんですね。テレビやカメラが写しておるからいいんだったら、持っていかれた後からテレビやカメラがあったってしようがないでしょう。事前に予防措置をするというのが核物質防護じゃないですか。とられてから、写真を撮ったから後から犯人捜査をしてつかまえる、これだったら本当の意味の核物質防護ということにならぬじゃないですか。日曜日等は一体どこに警備員が巡回しておられますか。ちょっとお話しをいただきたい。
  152. 松井隆

    ○松井政府委員 先生に御視察いただきました原研の施設についてちょっと簡単に御説明させていただきますと、そういったガードの警備体制につきまして、まず東海研究所全体、サイト全体については、正門に警備詰所がございまして、そこは職員が常時二十四時間張りつけです。もちろん職員は当然交代勤務になるわけでございます。それから施設、例えばFCAという高速臨界実験装置の施設がございます。そこは職員でなくてガードマンになりますけれども、やはり同じく二十四時間ずっと勤務しております。これはもちろん交代勤務になりますけれども、二十四時間勤務しているという仕組みで、休みであるといえども、そういうものがないようにしっかり警備をしているというのが実情でございます。
  153. 野坂浩賢

    ○野坂委員 正門前というのは我々も承知をしておりますが、中のそれぞれの警備、日曜日等の巡回ということについては若干の疑問がありますから、さらに検討していただきたいと思います。私たちも調べてみます。  それから、条約にもあります、この法案にもございますが、信頼性の確認された者、信頼ある人物でなければ出入りができない、こういうことでありますけれども、その基準並びに方法、どういうふうにして信頼性を確認するものであるかということを大枠お話しをいただきたい。
  154. 石塚貢

    石塚政府委員 昭和五十五年の原子力委員会核物質防護専門部会報告書の中にございます「事業者等の措置すべき核物質防護要件」におきましては、核物質防護のための出入り管理に関するものとして、臨時に当該区域の出入りを行う者は、事前に信頼性の確認の上許可を与えた者、そういう人に制限することとされております。ここで言う信頼性の確認といいますのは、あくまでも臨時に区域に出入りをする者に対するものでございまして、具体的には身分証明書等による身分の確認及びその防護区域への出入りの必要性、そういったものについての確認でございます。したがいまして、通常の事業活動を遂行するに必要な限度、すなわち核物質の取り扱い等特定の活動を行うことについて当該者が認められているかどうかの確認が行われれば、それで足りるというふうに考えております。
  155. 野坂浩賢

    ○野坂委員 動燃には労働組合というのがありますが、今度の防護措置の規定なりあるいは管理責任者ができたことによって、これは危険である、これは問題であるというようなことがその人自体考え方によって判断される場合があるではなかろうかということを非常に憂慮するわけです。これらのところの職員及び警備員も職員ですが、それらについては労働三権というものは認める、こういうふうに考えていいわけですね。
  156. 石塚貢

    石塚政府委員 核物質防護と労働組合との関係についての御質問でございますけれども、繰り返し申し上げるようでございますが、今回の法改正は、核物質防護に関する条約への加入に当たりまして、核物質防護に取り組む我が国の意図、そういったものを内外に明らかにし、一層万全な核物質防護のための体制を確保するために必要な措置を講ずるというものでございまして、改正自体につきましても、原子力委員会等において適当である旨の御判断をいただいておるところでございます。かかる趣旨から行います核物質防護、これは先ほども申し上げますとおりハード面の措置が基本でございまして、これを補完しあるいはより万全なものにするために出入り管理等を行うということでございまして、人の管理を主たる目的とするものではございませんし、いわんや労働組合運動というものに影響を与えるというものでもないというふうに理解をいたしております。
  157. 野坂浩賢

    ○野坂委員 防護措置でいろいろなことを規定や政令に基づいてやられるわけだろうと思うのですが、例えば一般的に見て過剰防護だなというふうに思う場合もあろうかと思いますね。そういう場合は一体どこに言っていったらいいわけですか。裁判所ということになれば、事件が起きてからでないとやらないし、事前にやるというような場合にはどこにそれを提起すればいいわけですか。例えば従業員あるいは学者、研究者、大学の研究者、それぞれがどうも基本的人権に影響がある、あるいはトイレまでついていかれるというようなことがあれば、なかなか容易じゃないということについての信頼性の問題も今石塚さんからお話があったとおりでありますから、それらについてきちんとするためには、過剰防護ではありませんかというような意見については今度はどこに言ったらいいですか。
  158. 石塚貢

    石塚政府委員 核物質防護という名のもとに、過剰に管理するというようなことがあるのではないかという御懸念かと思いますけれども、こういった防護措置につきましては、私ども監督官庁の指導のもとになされておるということからいたしますれば、そのような過剰な管理というのは考えられないのではないかというふうに思う次第でございます。
  159. 野坂浩賢

    ○野坂委員 幾ら防護措置を過剰に措置しても過剰と言われるほどのことはないだろう、できるだけより厳しくやるということなのかどうか。私はその辺が非常にあいまいに感ずるわけですが、その辺をもう一度お答えをいただきたいと思います。  時間が参りましたから多く質問することはできませんが、今のお話をずっと聞いておりましても、同僚議員の質問の中でも、府令なり省令なりあるいは規定なり、そういうものがすべてであって、それがなければこの法案というものの全面的な内容は明らかにならないということだけははっきりしたわけであります。したがって、これについては先ほど委員長に要求しましたように、その要綱を至急に委員会に提起していただきたいということが一点と、さらにこれから原子力の時代に入ってくる。そういうプルトニウム社会になるということについては、多くの国民が懸念と関心を持っておるわけです。したがって、私どもは参考人をこの委員会に招致をして意見も聞きたい、こういうふうに思います。我が党はいろいろと協議をいたしまして、石橋忠雄さんと高木仁三郎さん、この二人を参考人として要求をしておくということを委員長に申し上げておきますので、善処してもらいたい、こういうふうに思うわけであります。  以上申し上げまして私の質問を終わりますが、御答弁をいただいて終わりたい、こういうふうに思います。
  160. 石塚貢

    石塚政府委員 資料の提出の御要望につきましては、ちょっと一言申し上げたいと思いますが、政令につきましては各省庁共通の政令でございますので、しかもその内容条約で決められております定義、そういったものを引いてまいりますので、恐らく将来、けさ私どもが御提出申し上げました政令の内容が大きく変わるようなことはないと思います。それから、省令あるいは府令につきましても、原子力委員会が定めております事業者が守るべき要件、そういったものを統一的に各所管の省庁において省令あるいは府令に取り込んでいくということでございますので、横並びといたしまして、大差はないものであるというふうに一応御説明申し上げておきます。
  161. 大坪健一郎

    大坪委員長 野坂君御提案の参考人の件つきにましては、後刻理事会で協議をいたします。
  162. 野坂浩賢

    ○野坂委員 これで質問を終わりますが、今お話があったように、通産省令あるいは運輸省令は原子力委員会の範疇を出ないものであろう、横並びであるというふうなお話であります。科学技術庁はそういう見解でありましょうが、それぞれの各省においてはいわゆる縦系列であるわけですから、その範囲内であればより簡単に要旨、骨子というものは出し得るというふうに考えておりますので、それが審議対象にならなければ審議は進みません。そういう意味でお出しをいただくように強く委員長に要望をして、これで私の質疑を終わります。いいですね。
  163. 大坪健一郎

    大坪委員長 春田重昭君。
  164. 春田重昭

    ○春田委員 何点か質問をいたしますが、まず日米の新原子力協力協定の問題についてお伺いいたします。  その前に長官にお伺いいたしますけれども核物質防護条約に既に二十二カ国が加盟しております。我が国は今日まで加入しなかったわけでございまして、対応が非常に遅いのではないかという声がございます。政府の一省庁として長官の御所見をまずお伺いしたいと思います。
  165. 伊藤宗一郎

    伊藤国務大臣 先ほど来御質問いただいた先生方にも政府委員から御説明申し上げておりますとおり、これに対応する国内の諸般の問題についていろいろ慎重に準備をする必要がございまして、慎重の上にも慎重を期したために若干対応がおくれましたけれども、それは他意はございませんで、慎重を期したいということでございましたので、御理解をいただきたいと思います。
  166. 春田重昭

    ○春田委員 さて、この日米の新原子力協力協定でございますが、日本側の思惑と違いまして非常にスムーズに進んでないようでございます。米国議会では個別同意方式から包括同意方式には反対の議員が非常に多いと聞いているわけでございますが、その動向につきまして簡単に御説明いただきたいと思います。
  167. 松井隆

    ○松井政府委員 この新しい日米原子力協力協定、これはアメリカにおいては、アメリカの議会に昨年の十一月九日に提出されてございます。それでアメリカの場合には、この原子力協定につきましては、九十日の会期が過ぎて特にその間異存がなければ成立する、こういう仕組みでありまして、多分ことしの四月のおしまいごろにはその九十日が過ぎる、こういうふうに思っているわけでございます。それで、特に昨年提出されてからすぐでございますけれども、いろいろと米国の議会の中では議論が沸騰したように承知しております。  その大きな問題は、一つは包括事前同意方式というのをとっているわけでございまして、この新しい協定の包括事前同意方式は、アメリカの国内法に核不拡散法というのがございますが、その核不拡散法の要件を満たしていないのではないか、つまり米国の国内法違反ではないか、こういう議論が一つ大きな意見としてございました。  それからもう一つは、今度はそのプルトニウム日本が例えばフランスあるいはイギリスから輸送してくる場合に、航空輸送の場合には包括事前同意方式の中に入っているわけでございますけれども、その航空輸送の安全性の問題についての懸念というのですか、そういうものがありまして、大きく言いましてその二つが大きな反対ないしは懸念、そういう動きであったように承知しております。  プルトニウムの航空輸送の方につきましては、比較的早い動きといたしましては、アラスカ州選出のマコウスキーさんという上院議員でございますけれども、現在アメリカにプルトニウム輸送をするための容器の基準がございまして、これはNUREG〇三六〇と言っておりますけれども、それだけではなくてそれに少し追加して幾つかのテストをやるべきではないか、こういった趣旨のマコウスキー法案が出されまして、それが昨年の十二月二十二日でございますが成立しておるわけでございます。したがって、もうマコウスキ’法という格好でできておるわけでございます。  それからもう一つの核不拡散法の要件を満たしていないのではないかという問題につきましては、まず十二月十七日でございますけれども、上院の外交委員会におきまして大統領に対しまして、これはアメリカの国内法要件を満たしていないと判断するという書簡を送付しているとか、あるいは下院の外交委員会の有志もそういった趣旨の書簡を大統領に送付しているとか、それからさらにことしになりましてからは、上院のバード院内総務とドール院内総務、民主、共和両党の院内総務がこの協定は不承認しようという決議案を出したとか、そういうような動きがございました。そのほか幾つかのそういった同趣旨の動きもございます。  ただ、それに対しまして行政府としては、その辺をよく理解してもらうべく、まず一月二十九日にレーガン大統領から、新協定は米国の核不拡散法の要件を満たしているということの詳細な説明を出しまして、書簡を発出しております。それから、当時言われたのですけれども、どうも一部政府部内でもいろいろ意見がある、国防総省は反対ではないか、そういうような意見もあったのでございまして、それに対してカールーチ国防長官も、二月一日になりますけれども、これはサポートする、支持するのだということも出してございます。そういういろいろな動きがございまして、最終的には、三月二十一日でございますけれども先ほど申しましたこの協定を承認しないという決議案、その採決が行われました。これは上院でございまして、その協定不承認決議案が賛成三十、反対五十三で否決された。こういうこともございまして、私どもとしてもかなりの圧倒的票差でもって上院の意向も大体固まったというふうに承知しておりますものですから、このままいけば成立するのではないだろうか、こういうふうに考えて期待しておる次第でございます。
  168. 春田重昭

    ○春田委員 いろいろな問題があるけれども、成立の見通しは強いということでございますが、この協定が発効される時期は大体いつごろと見ておられますか。
  169. 中島明

    中島説明員 新しい日米原子力協定の第十六条第一項に発効に関する手続が書かれておりまして、そこには「この協定は、両当事国政府が、この協定の効力発生のために必要なそれぞれの国内法上の手続を完了した旨を相互に通告する外交上の公文を交換した日の後三十日目の日に効力を生ずる。」そのように書いてございます。ここに申します国内法上の手続といたしましては、米国におきましては議会における審議がございますし、日本におきましては国会の承認をちょうだいするという手続があるわけでございます。したがいまして、そういった手続が完了した旨を相互に通告し合うということが行われますと、その後三十日目に効力を生ずる、そういうことでございます。
  170. 春田重昭

    ○春田委員 さて、海外の英仏で再処理されたプルトニウム輸送の問題でございますが、同僚議員からもこの点につきましてはいろいろな質問が出たわけでございます。若干重複する点があろうかと思いますけれども、その点は御了解いただきたい、こう思います。  いわゆるこの空輸の時期ですね、実現される時期は大体いつごろと想定されておりますか。
  171. 松井隆

    ○松井政府委員 輸送の時期でございますけれども、まず我が国のそのときのプルトニウムの需要と申しますか、そこが一つの大きな問題になるわけでございまして、私どもで今プルトニウムを使っておりますのは動燃の「常陽」「ふげん」それから「もんじゅ」この三つが主たるものである。もちろんそれ以外に非常に数量の小さい研究開発用のものがありますが、大きなものはそういったところでございます。それからさらに一九九〇年代でございますけれども、そこに入りますと「ふげん」に続くATRの実証炉、それからFBR実証炉、それから軽水炉でのプルトニウム利用、そういうものが本格化するということで、需要がふえてくるというふうになるわけでございます。  一方、我が国の方でもプルトニウムは動燃の再処理工場でできております。そういうものもございます。その辺を総合的に勘案しますと、一九九〇年代前半になりますと、国内で回収されるプルトニウムだけでは不足するというような事態になるというふうに考えております。したがいまして、そのような見通しで、一九九〇年代のなるべく早い時期の方が望ましいわけでございますけれども、その時期に海外から輸送を開始したいというふうに考えておる。これは需要の方の要件からそういうふうに考えておる次第でございます。
  172. 春田重昭

    ○春田委員 五十九年には英仏で再処理されたプルトニウム海上輸送我が国へ持ち込まれたわけでございますが、この海上輸送については、空輸、航空機による輸送が実現した段階ではどうお考えになりますか。
  173. 松井隆

    ○松井政府委員 この新しい協定におきましては、航空輸送につきましては包括同意方式、海上輸送については個別同意方式という枠組みでできております。それで、その場合に協定附属書五でもって一定の条件が航空輸送についてございまして、そういう条件の場合には航空輸送が可能になってございます。そういう意味合いで、私どもとしては航空輸送が実現されるという段階になれば、まず航空輸送を行うのが基本ではないだろうかというふうには思っておりますけれども、やはりまだ少し、これからいろいろと条件もございますものですから、それを詰めなくちゃいけない。ただ、いずれにしろ私は航空の輸送が基本というふうには考えてございます。もちろんその場合には、船舶による輸送も排除されてないわけでございますから、それは実施可能で、そういうオプションを持っておくということは必要かなというふうに今考えている次第でございます。
  174. 春田重昭

    ○春田委員 航空輸送が実現されるまで海上輸送で行う計画はありますか。
  175. 松井隆

    ○松井政府委員 私どもとしては、現段階ではあくまで飛行機で運ぶという考え方で、まず諸般の準備を進めているというところでございます。
  176. 春田重昭

    ○春田委員 ですから、要するに一九九〇年代の前半、航空機輸送が実現されたならば、それを基本としながら海上輸送も全くないとは考えていない、こういうことですね。それで、それまでも海上輸送は考えていない、こういうことでございます。  ところで、ウラン濃縮は米国と並んでフランスでも行っているわけでございますが、この輸送海上輸送で現在行っております。将来プルトニウムの空輸が行われた場合、濃縮ウランの輸送はどうお考えですか。
  177. 松井隆

    ○松井政府委員 我々日本で使いますウランは、先生御案内のとおり、アメリカあるいはフランスで濃縮してもらうという格好で今出てきているわけでございます。もちろん今日本も開発しておりまして、今後日本独自でも生産できるというふうに持っていきつつあるわけでございますけれども、その場合には、いずれにしろ濃縮ウランにつきましては海で運ぶというふうに考えております。
  178. 春田重昭

    ○春田委員 次に、空輸のコースの問題、ルートの問題でありますが、先日の当委員会におきましても局長からの答弁がありましたように、北極回りでしかもいわゆる無着陸、ノンストップで考えている、米国側が要求しているから我が国でもそれを最優先的に考えている、こういうことでございますが、このノンストップのコースをとった場合、いわゆる航空機の機種、これは何を想定しておいでになるのですか。
  179. 松井隆

    ○松井政府委員 もちろん決めたわけではございませんけれども、今想定しているという御質問で、現在想定しているところで申し上げますと、まだできている飛行機ではないのでございますけれども、ボーイング747―400というのが今アメリカでボーイング社で開発中というふうに聞いてございます。それにも幾つかのタイプがあるようでございまして、まず旅客型というのですかパッセンジャーというのですか、これが一九八八年の第四・四半期ごろに就航するやに聞いております。それから貨客型、コンビというのですか、貨物とお客さんと両方できるというもの、このコンビというのが一九八九年の五月から六月ごろ就航するという話を聞いております。もちろん決めたわけではございませんけれども、一つはそういうものを大きな頭に置いて考えておるということは事実でございます。
  180. 春田重昭

    ○春田委員 ボーイング747―400の旅客型と貨客型が今開発中である、こういうお話でございます。このプルトニウム輸送につきましては、我が国としてはこの旅客型と貨客型のどちらを想定をしているのですか。
  181. 松井隆

    ○松井政府委員 想定でございますけれども、やはり普通だったらコンビの方になろうか。旅客専門のパッセンジャーではなくてコンビの方がよろしいのではないか。ただそれ以外に、まだできておりませんけれども、さらにその貨物型というのをボーイング社は考えているという話は承知しております。
  182. 春田重昭

    ○春田委員 一機当たりの購入価格というのは大体どれくらいと見通しているのですか。
  183. 松井隆

    ○松井政府委員 これはボーイング社の話でございますからあれでございますけれども、一応私どもの調べたところでは、ボーイング747―400パッセンジャー型というのですか、その標準価格で約百七十億円ぐらいと聞いております。
  184. 春田重昭

    ○春田委員 購入する主体というのは動燃事業団なのか、それとも民間の電力会社なのか、どちらなんですか。
  185. 松井隆

    ○松井政府委員 これもこれからの話でございますけれども、私どもとしては、これは動燃事業団が買うのではなくて、借りるということがよろしいかと思っております。したがって、民間の航空会社にお買いいただいて、それを貸していただくというふうにするのがよろしいかなというように考えております。
  186. 春田重昭

    ○春田委員 前後しますけれども、この空輸の事業主体というのはどちらなんですか。
  187. 松井隆

    ○松井政府委員 当面このプルトニウムのニーズを持っておりますのは動燃事業団でございます。したがいまして、当面輸送実施主体はやはり動燃事業団になると考えております。
  188. 春田重昭

    ○春田委員 もし航空機を購入する場合は民間の電力会社で買っていただいて、動燃事業団がリースしてお借りする、こういうお考えですね。そこで百七十億円、こういうことでございますが、相当な費用になるわけです。この航空機を購入することによりましてそれが消費者の方に負担がかからないかどうか、その点どうでしょうか。
  189. 松井隆

    ○松井政府委員 まず、ただいま動燃事業団は借りた方がいいと申し上げましたのは、私どもの頭にありますのは、やはり民間の普通の飛行機を運用する会社と申しますか、例えば幾つかございますけれども、そういった会社にそういうものを購入してもらって、その飛行機を動燃が運送するときだけお借りするというようなことを考えてございます。それで、もちろん動燃の開発に当面要するプルトニウムを海外から持ってくるわけでございまして、それにつきまして私どもが動燃事業団に対して出すのは国の出資あるいは電源特会からのお金、そういうところから出ているわけでありますから、そういう意味では回り回って国民一般に負担をお願いするということは事実としてはあろうかと思いますけれども、私どもはこれはあくまでもまだ研究開発のステップの段階である、動燃が当面やる仕事はそういうふうに承知しているわけでございます。
  190. 春田重昭

    ○春田委員 科技庁としては、空輸によるコストと海上輸送によるコスト、この辺の比較検討はされておりますか。
  191. 松井隆

    ○松井政府委員 申しわけございません。そういう比較はまだしておりません。
  192. 春田重昭

    ○春田委員 再処理されたプルトニウム先ほど局長からもお話があったように、現在は三基であるけれども将来は民間の軽水炉の方でも使っていきたい。それには動燃事業団でも国内で処理している。それとあわせて海外の再処理、将来は国内では民間の再処理工場もできる、こういう体制になろうと思うのです。ともあれ英仏で、海外で再処理されたプルトニウム使用量ですが、すべて動燃事業団ではないと思いますが、この辺の動燃事業団と民間の電力会社の使用量の割合はどんなものか。どう想定されておりますか。
  193. 松井隆

    ○松井政府委員 今海外で、つまりイギリスとフランスで再処理をお願いしているわけでありまして、そこでできましたプルトニウム使用は、大ざっぱに申し上げますと、まず動燃事業団の「常陽」、それから「もんじゅ」「ふげん」で約五トン、これはプルトニウム・フィッサイル、つまり核分裂性プルトニウムでございますが、五トンでございます。それから電源開発株式会社が新型転換炉実証炉という計画を持ってございまして、これがやはり約五トンぐらい必要。それから日本原子力発電株式会社が高速増殖炉、現在動燃が「もんじゅ」という原型炉をつくってございますけれども、その次の実証炉を電力が中心になってつくるという計画がございます。それに約五トンぐらい。それから電気事業者各社が現在持っている軽水炉にプルトニウムを使う、俗称プルサーマルと言っておりますけれども、それに十トンぐらい。その他細かい数字としては、動燃あるいは原研等の照射研究とか、そういう研究用に約一トン弱ぐらいになりますか、そういうものが必要であろうというふうに考えております。
  194. 春田重昭

    ○春田委員 プルトニウム再処理につきましては、今私が言ったように海外では英、仏、国内では現在動燃の東海村で再処理されている。将来青森の六ケ所村でも再処理ができる。こうなった場合、国内で東海村と六ケ所村でフル運転された場合その需給関係でございますが、海外での再処理は、国内での再処理工場がフル運転した場合要らなくなるのではないか。こういうことは考えられないのですか。
  195. 松井隆

    ○松井政府委員 今私どもが考えておりますのは、まず再処理でございます。これは我が国プルトニウム利用の自主性と申しますか、少し大げさな言葉になりますが、自主性というものを確実にするというような立場から、なるべく原則として国内で再処理を実施するのが望ましいという考え方をとっております。そういう意味合いで、今後のプルトニウムの需給状況というのがございますけれども、現在確かにイギリス、フランスに再処理を委託しておりますけれども、青森県六ケ所村で再処理工場もできますし、さらにできれば、その次に必要ならば再処理工場をもう一つつくるとか、そういうことでなるべく自前でやっていくというのが望ましいという考え方をとっております。
  196. 春田重昭

    ○春田委員 将来そういう形になれば航空機の輸送は必要なくなってくるわけですね。百七十億円の金を投じて、そして国内の再処理工場が完成するまで、完備するまでのつなぎとして、果たしてそういった航空会社が出てくるかどうか危惧するわけでございますが、その点心配はございませんか。
  197. 松井隆

    ○松井政府委員 先ほどども申しましたとおり、新しい飛行機は民間の航空会社が購入して、それをそのときだけリースで使わせていただきたいというふうに考えているわけです。その場合にも、当然のことながら民間の航空会社としては、プルトニウム輸送するときお借りする期間以外はみずからの商売としてできるわけでございますから、もちろんこれから先の話でございますから、できますというふうに断言はできませんけれども、何とかそういう格好でやらせていただきたいというふうに考えております。
  198. 春田重昭

    ○春田委員 次にプルトニウムをおさめる容器の問題です。  先ほども松井局長からお話があった、米国の基準でございますNURBG〇三六〇より厳しい基準で今開発中である、こういうことでございますが、空輸が実現するまでにそういった容器の開発というのは可能なんですか。その点どうでしょうか。
  199. 松井隆

    ○松井政府委員 現在動燃事業団がプルトニウムの航空輸送の容器を開発しているわけでございまして、一昨年と昨年、NUREG〇三六〇に合うようなテストを、これはアメリカでございますけれども、サンディア国立研究所において実施してございます。それで昨年、一九八七年の二回目のテストでは非常にいい成績が出ておりまして、そういう意味では、動燃事業団としてはこの容器の開発の見通しをほぼ得ているというふうに承知しております。  ただ、先生指摘のとおり、マコウスキー法が成立をいたしました。それでマコウスキー法が少し新たな条件をオンしてございます。そのオンされている条件に今後アメリカ政府が、具体的に原子力規制委員会がどのような考えでどういうふうに実際肉づけして決めていくのかという問題がございまして、その辺がどうなるかはまだわからないところがございますので、ちょっとその辺についての判断は差し控えさせていただきますけれども、少なくとも現行のNUREG〇三六〇に関しては、ほぼ満たし得るという容器の開発に、動燃事業団はかなりそういう意味では見通しが得られたというふうになっている次第でございます。
  200. 春田重昭

    ○春田委員 次に、空輸による護衛の問題です。どんな護衛体制をしいていくのか、その点お伺いしたいと思います。
  201. 松井隆

    ○松井政府委員 これは今回の日米原子力協定によりますと、附属書五で、必要な核物質を空輸する場合の核物質防護措置についての規定が書いてございます。細かくは申しませんけれども、ポイントだけ申し上げますと、まず積み荷の常時の監視、それから防護、そういうものに責任を有する武装護衛者の同行が必要でございます。それから飛行場における航空機の隔離措置、あるいは出発から到着まで継続的に航空機の位置とか状況、そういうものを監視できるオペレーションセンターの設置、そういうところの通信網というものがいろいろと詳細に規定されているわけでございます。それで、もちろんそういった内容を含んだ具体的な輸送計画をつくりまして、輸送計画の場合には国際間の輸送でございますから日本国内だけではできませんので、そういうものをベースにして相手国ともいろいろと協議の上、そこで具体化されるというものでございます。
  202. 春田重昭

    ○春田委員 要するに、具体的には警察官が航空機に乗り込む、こういうことですね。何名ぐらい乗り込むのか、どこの警察官が乗り込むのですか。
  203. 松井隆

    ○松井政府委員 武装護衛者の内容でございますけれども、それについては現段階ではまだ未定でございます。ただ、我々が日本の民間航空機を使用する場合には当然日本国籍になりますから、日本の警察官ということでございます。それから人数につきましては、ちょっとまだそこまで詰めておりません。
  204. 春田重昭

    ○春田委員 次に、受け入れ空港でございますが、これはどこを想定しておりますか。
  205. 松井隆

    ○松井政府委員 国内の受け入れ空港でございますけれども、現在のところ決定しておりません。白紙でございます。  それで、これにつきましては私ども科技庁としては、留意事項と申しますか、ある程度の基準というのがございます。例えば、恐らくそういった飛行機であろうからある程度の長い三千メーター以上の滑走路が欲しいとか、そういう飛行機を管制する施設が十分備わっていることとか、あるいは割と広くて十分隔離できるとか、そういった留意事項は持ってございますけれども、これは関係省庁ございますものですから、これからいろいろと相談して決めなくちゃいけないということがございます。そういう意味で、まだそういうことをしなくちゃいけないもので、現在日本でどこにつくるのかというのは、白紙の状態というふうにお答えさせていただきたいと思います。
  206. 春田重昭

    ○春田委員 一説によりますと、青森県の三沢が有力な候補地と言われておりますけれども、地元では反対の声が非常に強いということでございます。科技庁としてどう考えますか。
  207. 松井隆

    ○松井政府委員 先ほど申しましたように、まだ飛行場をどこにするか白紙でございまして、新聞紙上等でもちょっとお見受けしてございますけれども、私ども決めておりません。白紙でございますもので、個々の具体的なところについての評価というのは差し控えさせていただきたいと思います。
  208. 春田重昭

    ○春田委員 白紙の状態でございますが、地方自治体に打診していることはないのですか。
  209. 松井隆

    ○松井政府委員 そういう段階にまで至っておりませんし、そういう意味では全く打診もしておりません。
  210. 春田重昭

    ○春田委員 再処理されたプルトニウムは、東海村のいわゆるプルトニウムの加工工場に運ばれるわけでございますので、当然そういった受け入れ空港というのは距離の面、先ほどおっしゃった空港の要するに滑走路の問題等々で恐らく限定されると思うのですね。そういう点で、ひとつこういった受け入れ空港につきましても十分地元の声を聞いて決めていただきたい、こう思っておるわけでございます。  警察庁の方がお見えになっておりますので、警察庁の方へ若干お伺いしますけれども、要するに空港からプルトニウムが東海村へ輸送される。これは陸上輸送になるわけです。五十九年には海上輸送されまして、そして東京の港から東海村の方に陸上輸送の実績があります。どんな車両を使ったのか、警備体制は何名くらいで行ったのか、その辺概略御説明いただきたいと思うのです。
  211. 太田利邦

    ○太田説明員 警察といたしましては、核物質防護の万全を期するため警戒警備を徹底しているところでありますけれども、本件輸送に関しましては、東京湾周辺で極左暴力集団の反対行動等が見られたために、東京湾お台場埠頭から茨城県東海村動燃東海事業所まで、総計約百四十二キロメートルの輸送路を警視庁、千葉県警察、茨城県警察において警察官千百人を動員して警戒警備、交通整理等を行ったところであります。
  212. 春田重昭

    ○春田委員 そこに動員された警察官は何名ぐらいなんですか。
  213. 太田利邦

    ○太田説明員 警視庁、千葉県警察、茨城県警祭において警察官千百人を動員して警戒警備、交通整理等を行ったところであります。
  214. 春田重昭

    ○春田委員 警察の場合は、陸上輸送の場合、各県警が責任をとる体制をとっている。いわゆる県境ですけれども、県の警察の方が責任を持って輸送をする、こうなっております。しかし、これは確かに地元の警察が一番実情を知っておるわけでございますが、いわゆる一貫体制じゃないわけですね。そういった点で、連絡等は十分密にされていると思いますが、今後こういった空輸が行われた場合、恐らく五十九年のこの輸送体制というものが大体一つの基本として行われていくんじゃなかろうかと思います。私は、こういった各県警が責任を持ってやるよりも、やはり一貫体制を考えていくべきじゃなかろうか、こう思っておりますけれども、その点どうでしょうか。
  215. 太田利邦

    ○太田説明員 警察法の建前からは都道府県警察が建前となっておりまして、それに要する調整は警察庁及びそれぞれの管区警察局が行いますので、今後ともその調整権を十分発揮して一貫性を保ってまいりたいと考えております。
  216. 春田重昭

    ○春田委員 一千余名の方が動員されたということでございますが、これは今後もこれぐらいの人数というのは必要なんでしょうか。国民から見たら異常というか異様に見えると思うのですね。原子力につきまして最近は非常に不安と不信というのを国民の間にも招いておりますので、それを増幅するんではなかろうかと思いますが、警備の人員というのはどうお考えになっておりますか。
  217. 太田利邦

    ○太田説明員 一千百名の人員が多いというお話でございますけれども先ほど申し上げましたとおりこの経路は総計百四十二キロメートルでありまして、主として交差点等、あるいは台場付近における反対行動等、合わせて千百名ということでありまして、これは一つ一つの距離から見て決して多い数ではないと思っております。
  218. 春田重昭

    ○春田委員 輸送された車両はどんな車両を使ったのですか。
  219. 松井隆

    ○松井政府委員 ちょっと今手元に資料がないのですけれども、記憶をたどりますと、普通の輸送車両と申しますかトラックと申しますか、そういうものを使ったというぐあいに記憶しております。ちょっとそこのところは今具体的な資料を持っておりませんので、多少不正確かもしれませんけれども、そういうように記憶しております。
  220. 春田重昭

    ○春田委員 この陸上輸送の場合の責任は動燃事業団なんですか、それとも民間なのか、その点はっきりしてください。
  221. 松井隆

    ○松井政府委員 その輸送につきましては動燃事業団の責任でございます。ただ、実際は動燃事業団が輸送業者に委託しまして、そこでやったわけでございますけれども、責任はどこかと言われた場合には、やはり動燃事業団ということになろうかと思います。
  222. 春田重昭

    ○春田委員 まだ何点か質問したいわけでございますが、ちょっと時間が迫ってまいりましたので、この問題についてはこれで終わりたいと思いますが、いずれにいたしましても使用済み燃料の再処理につきましては、海外による再処理、東海村の再処理、そして将来は青森県の六ケ所の再処理となります。今いろいろな面で質問いたしましたけれども、まだまだ不安な面もあるわけでございます。原発の必要性ともあわせて、再処理につきましては万全の処理体制をまず整えていくべきであろう、私はこのように思っている次第でございます。個別同意から包括同意になり、核燃料サイクルがスムーズにいくような計画であったとしても、実際面では多くの問題も残されているわけでございますので、そういったものを十分把握した上でひとつ科技庁は取り組んでいただきたい、このように要求しておきます。  続いて、日米の科学技術協力協定の問題につきまして若干質問させていただきたいと思っております。  三月三十日でございますか、大筋で合意されたと報道されております。大筋合意というのは、小沢副長官と米国のホワイトヘッド国務副長官の間の政治決着であると言われておるわけでございます。政治決着というのは往々にして灰色の部分が多いわけでございますが、今後暫定延長期間の三カ月の間で細部の詰めが行われるということでございます。これが正式に署名されて発効される時期は大体いつごろなのか。また署名するのは、前回は両国の首相と大統領だったわけでございますが、今回も変わらないのかどうか。この辺からまずお答えいただきたいと思います。
  223. 法眼健作

    ○法眼説明員 先生おっしゃいましたとおり、前回は、日本におきましては総理大臣、アメリカにおきましては大統領であったわけでございます。署名者につきましては、今回もその線も考えられますが、今のところまだ日米間でそこの辺のところにつきましては確定しておりません。  それから時期でございますが、まさに御指摘のとおり三月三十一日に大筋合意したわけでございまして、三カ月間の現行協定の暫定延長でございますから、その間に文言だとかワーディング等を詰める作業をやっておりまして、それが三カ月の間にきちっと行われるということで今一生懸命やっております。それを前提といたしますと、それが終了してその後のしかるべき時期ということになりますが、その点につきましても何月何日という点にはまだ至っておりませんが、大体その辺をめどにして作業を進めております。
  224. 春田重昭

    ○春田委員 交渉の段階は今までも非公開だったわけでございますが、政府間レベルの交渉といえども、これに関与する日本側の学術会議の研究者並びに諸団体等の意見等も十分に私は聴取すべきであろうと思っておりますが、この点は怠りございませんか。
  225. 法眼健作

    ○法眼説明員 交渉の途中の期間におきましては、向こう側の立場もございますから、交渉の経緯、その間の状況につきましては公表することは差し控えていただいておりまして、この点については御理解を賜っているわけでございます。その間、御指摘日本の学術会議の方々とかその他の各方面につきましては、私ども外務省科学技術庁、通産省、文部省等の関係省庁皆それぞれの役割と申しますか、それぞれの範囲におきましてできる限り御意見等を承っていると私ども考えております。
  226. 春田重昭

    ○春田委員 そこで知的所有権の問題です。報道によりますと、要するに貢献度においてケース・バイ・ケースで判断していく。もう少し具体的に説明してくれませんか。
  227. 法眼健作

    ○法眼説明員 御指摘の知的所有権でございますが、今回の大筋合意の中で知的所有権につきましては、協力活動に関連した知的所有権について、その効果的かつ適正な配分が図られることとする、こういうことでございました。  もう少しこれを具体的に申し上げますと、大体知的所有権の帰属の問題は三つのケースが想定されると思います。つまり、研究者が派遣されますと、その派遣国と受け入れ国があるわけでございますね。したがいまして、その受け入れ国で何らかの発明が行われて知的所有権の問題が生じました場合には、ではその発明が受け入れ国においてどういうふうに取り扱われるのか、それから派遣国においてどういうふうに取り扱われるのか。つまり日本とアメリカの関係で申し上げれば、日本の学者がアメリカに派遣されたといたします。そこで共同研究の結果何らかの知的所有権にかかわる発明が行われたといたしますと、その発明のアメリカにおける取り扱いはどうなるのか、それから日本においての取り扱いがどうなるのか、それから第三国においての取り扱い、つまり受け入れ国、派遣国、そして第三国の取り扱いがどうなるのか、この問題が生じるわけでございます。  この点につきましては、まさに今文言の詰めとか条文の整理などを行っておりまして、最終的にまだ条文が確定したわけではございませんものですから、私詳細には申し上げる立場にもございませんし、材料もないのでございますが、先ほどの大筋合意いたしましたその貢献度の度合いでございますね、濃淡いろいろあろうかと思いますが、どちらがどの程度貢献しているかということをケース・バイ・ケースで、つまりそのケース、ケースに従って反映させ、そしてその結果、効果的かつ適正な配分が行われるようにということで大筋合意いたしておりまして、ただいまその大筋合意に基づきまして文言の詰め、条文の整理などを行っている段階でございます。
  228. 春田重昭

    ○春田委員 もう一つちょっとわからないのですが、この貢献度合いですね、その貢献要素というのは人だけなんですか。そこに投入される資金等もあろうかと思いますけれども、その辺どうなんですか。
  229. 法眼健作

    ○法眼説明員 そこにかかわります施設、資金、それからもちろん今の人の問題も入るわけでございますが、全部そういった面を総合的に勘案して判断されると考えております。
  230. 春田重昭

    ○春田委員 今の答弁では、貢献要素は施設と資金と人である、こういうのがいろいろなケースによって判断される、アバウトでございますが、そんな想定をするわけです。  ところで、従来から二対一の原則というのがあるのですが、これは今後とも厳守されるのですか。
  231. 法眼健作

    ○法眼説明員 まさにその点なんでございます。それが二対一でとり行われる場合もございましょうし、いずれにいたしましても、先ほどの繰り返しになりますが、その協力活動に関連した活動、貢献度、そういったものの濃淡、それをケース・バイ・ケースに従って判断するというわけでございますから、そういう場合もございましょうし、またそこを離れて、先ほど来申し上げておりますような貢献度の濃淡が反映されるような割合と申しますかパーセンテージと申しますか、そういった形で決められるというケースもあろうかと思います。
  232. 春田重昭

    ○春田委員 もう一回確認いたしますが、いわゆる二対一の原則が崩れることもあり得るということですね。
  233. 法眼健作

    ○法眼説明員 そのような場合もあろうかと思います。
  234. 春田重昭

    ○春田委員 例えばこんなことが考えられますか。米国がいわゆる自国アメリカと第三国では当然所有権を持つ。そして日本とアメリカで共同の研究開発をする。ところが、従来は日本が中心であった場合は我が国での所有権は日本にあったわけでございますが、いわゆる濃淡の割合によっては、日本とともにアメリカも所有権を主張する場合があり得るということはありますか。
  235. 法眼健作

    ○法眼説明員 理論的な可能性という面からいえばそういったケースも排除されないかもしれませんが、いずれにいたしましても、現段階におきましてはその条文の詰め、整理等を行っておりまして、それが最終的にどういった姿になるかということをまだ私ども持っておりませんものでございますから、ちょっと今この段階でどちらがどうだということを申し上げる立場にないものでございますから、その点御理解いただければ幸いと存じます。
  236. 春田重昭

    ○春田委員 それを明確に答えることができないということは、十分あり得ることを想定せざるを得ないと思うのです。ということは、今回のいわゆる大筋合意というものは我が国にとっては大きく後退といいますか、マイナスではなかろうかと思いますが、産業界等のそういった反対の声というのは上がっておりませんか。
  237. 法眼健作

    ○法眼説明員 私どもの承知する範囲では、特にそのような声があるとは承知しておりません。
  238. 春田重昭

    ○春田委員 参事官の印象としては、今回のこの知的所有権については、従来の我が国の所有権の主張から大きく後退しているのではなかろうかとという印象は持ちませんか。
  239. 法眼健作

    ○法眼説明員 適正かつ効果的な配分ということで大筋合意しておりまして、私どもといたしましては、日本の従来からの考え方というのが十分反映されていると考えております。いずれにいたしましても、先ほど来からの繰り返しになって恐縮でございますが、最終的な文言の詰め、条文の整理などが終わりまして、最終的にでき上がった姿をもう一回見てみませんと、私の判断は申し上げることができない点を御了承いただければと思います。
  240. 春田重昭

    ○春田委員 時間がございませんので、次は安全保障の問題ですね。この安全保障という言葉はこの条文の中に盛り込まれますか。
  241. 法眼健作

    ○法眼説明員 今回の三月三十一日に大筋合意された内容、これはもう繰り返しになりますからあえてここで申し上げませんが、情報の取り扱いについては、科学技術情報の公開の原則を確認するのが基本的な合意でございまして、安全保障という字句は今度の大筋合意の中で用いられております。おりますが、情報公開の原則を確認するというのが前提になっておりまして、その関連の一部で安全保障という言葉は使われてはおります。
  242. 春田重昭

    ○春田委員 我が国が民生用で開発したハイテク情報というのが、第三国のいわゆる軍事用に利用されるという名目のもとで、従来公開されていたものが今回米国側の要望によりまして網がかぶさってくる、そういったおそれはございませんか。
  243. 法眼健作

    ○法眼説明員 先ほど申し上げましたように、今度の大筋合意の中には安全保障という言葉は使われてはおるのでございますが、日米間の了解といたしましては、我が国の現行制度を何ら変えるものではないということが確認されております。つまり、現行の日本の法令の改正を求められているものでもなく、それは行わないということを私どももはっきり向こう側に申しておりますし、アメリカ側もその点を確認しております。したがいまして、新協定の内容は、現行協定と同じく現行法令の枠内のものになるということが確認されておるわけでございまして、ただいま先生が言われましたような点、つまり、法令の改正などということは私どもは考えていないという次第でございます。
  244. 春田重昭

    ○春田委員 もう少し詰めたいわけですが、ちょっと時間がございませんので、最後に、研究協力活動を適正に運営するために三つの委員会みたいなものを設けるみたいでございますが、この委員会といいますか、機関の中心省庁は我が国ではどこになるのですか。
  245. 法眼健作

    ○法眼説明員 今度、協定のもとにおきましては三つのレベルの合同委員会を設置するということで、今その点も織り込むべく条文を最終的に整理をしておりますが、先生御案内のとおり、今回の協定作成作業は、我が国におきましては外務省科学技術庁、通産省、文部省等のみんなが寄り集まって最大の努力をした結果何とかできたと、私ども自負するわけではございませんが考えておりまして、どこがどういうふうに中心になるのかという点につきましては、全員が協定作成の当時と同じような精神で協力してやっていこう、このように考えております。その意味からは、委員会とかそういうものにつきましてもちろん濃淡が出てまいりましょうが、現段階におきましては、その点どこがどうだということを決めておりませんが、極力四者を中心に一体となって協力してやっていこうと考えております。
  246. 春田重昭

    ○春田委員 研究者また諸団体を抱える科技庁としては、中心者は当然科学技術庁長官がなるべきだと私は思っておりますが、長官はどんな御所見をお持ちですか。
  247. 吉村晴光

    ○吉村政府委員 お答え申し上げます。  日米の協力をいろいろ進めるに当たりましては、それぞれいろいろな立場があろうかと思います。科学技術庁は科学技術に関する行政を総合的に進めるという任務にあるわけでございますが、そういった立場から全体的な拡充に積極的な役割を果たしていきたいというふうに考えております。
  248. 春田重昭

    ○春田委員 今回のこの交渉につきましては、科学技術庁や文部省では一部不満の声があるというふうに聞いておるわけでございますが、長官の率直なお考えといいますか、そこら辺はどうでしょうか。
  249. 伊藤宗一郎

    伊藤国務大臣 日本の科学技術行政の調整官庁として、その責任はぜひ果たさなければならないというふうに考えております。
  250. 春田重昭

    ○春田委員 長官、えらいおとなしいのですけれども、そういったいわゆる機関の中心として長官が座るべきである、こう私は思っておりますけれども、長官どうですか。そういうお考えは持ちませんか。
  251. 伊藤宗一郎

    伊藤国務大臣 各省との関係もありますから突出するわけにはまいりませんけれども、責任を果たすべきだなというふうに思っております。
  252. 春田重昭

    ○春田委員 最後になりますけれども原子力発電所の問題について若干お伺いしたいと思うのです。  ソ連のチェルノブイル原子力発電所が事故を起こしまして、我が国の原発に対する不安、不信が非常に高まっております。最近は婦人向けの雑誌、週刊誌等でも、そういった家庭の主婦の皆さん方が非常に原発につきまして関心を持っているわけでございます。我が国には原子力発電所は三十五基ありますけれども、昨年、一昨年ですか、十九件、十九件という故障、トラブルが起こっているわけでございます。点検中に起こった事故もこの中に入っておりますけれども、もし点検中にそれを見落としたならば運転中に事故が起こってくるわけでございます。トラブルになるわけですから、点検中のミスでも事故扱いにしておかしくないと私は思っております。そういった点で最近の原子力発電、人為ミスを初めとしていろいろなトラブルや故障が起こっておりますけれども、長官としてこの辺どうお考えになっておりますか。
  253. 石塚貢

    石塚政府委員 人為ミスの多発につきましてのお尋ねでございますけれども原子力安全委員会の事務局を預かります者の立場から申し述べますならば、人間の誤操作などいわゆるヒューマンファクターの問題といいますと、これはやはり原子力の安全確保上重要な問題でございます。このことは原子力の開発利用の当初から認識されてきておりまして、このために設計段階から誤操作の発生を前提として、それでも異常を起こさず、事故に至らないような設計上の配慮がなされてきておるわけでございます。  また、我が国原子力発電所では、運転員によります操作ミスを防止するとの観点から、訓練センター等における運転員に対しましてのシミュレーターによる教育訓練といったものを行いまして、その資質の向上に努めるということでございますとか、あるいは設計面におきましても、米国のスリーマイルアイランド、そういった事故等の経験を教訓といたしまして、操作ミス防止のための設備改善というものが行われてきたわけでございます。私ども原子力安全委員会といたしましては、従来からこのようなトラブルの原因究明と安全対策への反映を図る、それはもちろん重要なことであると考えておりますし、今後ともこれらの経験を謙虚に受けとめまして、なお一層の安全確保に資するということで対処してまいりたいということでございます。
  254. 春田重昭

    ○春田委員 最近の報告を調査しても、電力会社の中で関西電力が非常に故障やトラブルが多いように思うのです。最近の事例では、大飯発電所でボルト二十四本のうち二十本に傷があったということが見つかっております。また和歌山の日高原発の建設では地元漁協との断絶問題もありますし、また出力の調整試験に伴う混乱等、心配される点が非常に多いわけでございます。  こういった点で、関電だけでなくして、電力会社全体に原発に対する認識が甘いのではないかと私は危惧しているわけでございます。原発に対するアレルギーはまだまだ非常に強いわけでございまして、地元自治体や地元住民に十分納得される努力を惜しんではならないと私は思うのです。 通産省としても、二〇〇〇年には原発のエネルギー需要は現在の二九%を四〇%へ大幅にふやす計画を持っております。しかし、出力調整を見ても今非常に電力は余っているわけです。そういった点でも原発の需要をもう一回見直してもいいのではなかろうかと思っておりますけれども、通産省はどうお考えになっておりますか。
  255. 三角逸郎

    ○三角説明員 先生から御指摘のございましたトラブルについて、私の方から最初に若干御説明申し上げたいと思います。  御案内のように、原子力発電所の故障、トラブル等につきましては、電気事業法等に基づきまして報告が上がってくるわけでございます。先生から御指摘のございましたように、ことしそれから旧年度、実用発電所では十九件といったような報告がございます。これは一基当たりと申しますか、基数の平均で申しますれば大体〇・五件ぐらいかなということでございますが、そういう意味で、御指摘のようないろいろな要因でトラブル等が発生してございます。基本的には、先ほど来お話のございましたように設計上の対応、それから、これは車の両輪になりますが、人が運転するものでございまして人の訓練、あわせて誤操作の防止対策等々につきまして十分に電気事業者を通産省としても監督、督促してまいりたいということでございます。  なお、関西電力についての御指摘がございましたけれども、いわゆるPWR、加圧水型の炉でございますのでSGと称します蒸気発生器がございますが、そこで全数を定期検査中に、極めて正確な検査方法で検査する際に若干のエコーが出るといったようなものにつきましても、先生指摘のように一応トラブルだという件数に数えておるといったような関係もございまして、件数のあらわれ方は若干高うございますが、いわゆる運転中の停止もしくは自動停止といったことにつきましては、ほぼ他の電力会社と同じかなということでございます。いずれにいたしましても、一件でも原子力発電所のトラブルを少なくするのが我々規制当局の義務でもございますので、これから先、御指摘を踏まえてきっちりやってまいりたいと思います。  以上でございます。
  256. 春田重昭

    ○春田委員 時間が参りましたので、最後に長官、原発に対するトラブル、事故というのは非常に多い。これに対してどういうお考えをお持ちか。さらに、電力事情が相当余ってきておりますので、こういった見直しも必要ではなかろうかと思っておりますが、これについて二点、長官の御見解を伺いたいと思います。
  257. 伊藤宗一郎

    伊藤国務大臣 いろいろのミス、トラブルはありますけれども、幸い我が国では事故ということではございませんで、しかし、住民、国民に無用の不安を与えないためにも、今政府委員からも御説明申し上げましたとおり、ミスといいますかトラブルは一件でも、あくまでもゼロに近くなるように努力をしてまいらなければならないと思います。  また、電力が余っているというような御指摘もありますけれども、これも政府委員の方から御説明申し上げた方が正確でございますけれども、決してそういうことではございませんで、今の日本の発電量と需要とのバランスはちょうどとれているわけでございます。なお我々の原子力発電は、フル出力で常時運転をするということを基本としておりますいわゆるベース電源でございますから、これからもこのスタンスをしっかり守りながら、特に原子力発電は供給安定性あるいはまた経済性ということにつきましても特段にすぐれた電源でございますので、トラブル、ミス等に留意をし、安全性の確保により一層の留意をしながら、我が国エネルギー供給の基軸となるエネルギーとしての確保のためにさらに努力をしてまいりたい、このように考えております。
  258. 春田重昭

    ○春田委員 終わります。
  259. 大坪健一郎

    大坪委員長 小渕正義君。
  260. 小渕正義

    ○小渕(正)委員 打ち合わせ等で若干席を外しておりましたので、質問が重複する点があるかもわかりませんが、その点は御了承いただきまして質問いたします。  まず最初に、長官は今回のこの法律の提案の趣旨説明の中で、我が国原子力の安全性その他のいろいろな問題については、五十六年の原子力委員会決定内容を踏まえて既に国際水準を十分満たしておる、また核物質防護措置についてもそういった水準にあるというようなことを述べられておりましたが、我が国の諸施設の現状は、特にそういった角度から見ますならば、本法案が施行されたからといって、さらに新たに施設の増強といいますか補強といいますか、そういったものについての必要性はないのかどうか、そういった面は十分満たしておるというように現状はなっておるのかどうか、その点についての状況をお伺いいたしたいと思います。
  261. 伊藤宗一郎

    伊藤国務大臣 先ほど政府委員先生方に御説明を申し上げておりますとおり、我が国における核物質防護対策現状はおおむね国際水準に達しておりまして、十分なものと判断をしております。  今回の法改正は、こうした状況を踏まえまして、我が国核物質防護条約への加入に当たりまして所要の措置を講じることによりまして、核物質防護に取り組む我が国の姿勢を内外に明らかにし、我が国原子力活動への国際的な信頼性を一層向上させたいということで提案を申し上げておるものでございます。したがいまして、これらを踏まえて、各事業者が実施をしております核物質防護措置の実質的な変更を求める必要はないと考えておりますが、今回の法改正によりまして核物質防護規定の整備、責任者の明確化等を図りまして、核物質防護対策に一層万全を期してまいりたい、こういう所存でございます。
  262. 小渕正義

    ○小渕(正)委員 今のお話からいきますならば、設備的ないろいろな角度からの問題ではもう問題はなく、あとは精神規定じゃないですけれども、そういう規定の整備その他、より厳格な規定をするとか、そういうことだけで事足りる。言葉は悪いですが、ただそういうことをより強めていけばよろしいということのようですが、そういうことだけで果たしていいのかどうか。私は専門でございませんのでよくわかりませんが、その点は今後の状況を見ながら、また必要によってはいろいろ質疑を展開したいと思います。  そういう長官のお言葉を了といたしまして、次に、何といいましてもこの核物質防護で一番問題が多いと考えられるのは、国際間における輸送というものではないか、また一番考えなくてはいけないところではないかと思いますが、こういう国際間の核物質輸送における国際関係においては、我が国現状までに問題はなかったのかどうか。  それからあと一つ、ここに言われておりますが、要するに条約で求めておるのは核物質の量、そういったものが問題になるわけであります。その基準が示されておるわけでありまして、そういうものが運搬、輸送されているわけでありますが、その基準を満たしておるということをチェックする機関というのはどういうところでやるのか。そのチェック機能というのは果たして国際間の場合にはどのような形で行われておるのか、その点についての状況をお伺いいたします。
  263. 石塚貢

    石塚政府委員 国際間の核燃料物質輸送についての過去のトラブルでございますが、少なくとも日本の国に入ってくるもの、あるいは日本の国から出したものにつきまして、何らかの事故に遭遇したというような経験は私ども持っていないわけでございます。  それから、いろんなチェックといいますか確認の責任の窓口でございますが、今回、この核物質防護条約加入いたしまして所要の法令を整備いたしますと、国際間の輸送につきましては、その内容につきましてそれぞれの政府間で、条約が要求しております核物質防護の水準を満たしているかどうかについて確認をし合うというような体制ができ上がることになっております。
  264. 小渕正義

    ○小渕(正)委員 そういう体制ができ上がることが今回の条約の基本でしょうけれども、お互い人間同士でやることですから、フランスから持ち込んだものが所定の基準の量であったかどうか、我が国でチェックしたらその量の中身が基準どおりいってなかったというようなことについては、あり得ないことでしょうけれども、そういうこともまた仮定としては考えられることですが、そういう場合におけるものはどのような形での処理機関があるわけですか。
  265. 石塚貢

    石塚政府委員 量の確認につきましては、これは保障措置の一環として規制をされているということでございまして、その責任機関はウィーンの国際原子力機関でございまして、国際原子力機関と各国政府との間の取り決めによりましてチェックを行うということになっております。
  266. 小渕正義

    ○小渕(正)委員 この前、東海村の動燃等を視察したわけでありますが、要するに、こういう核物質を扱うそれぞれの場所にはIAEAの方からの担当者がおられて、そういう意味で相互のチェック機能が果たされておる。日本の場合は大体そういう形で来られておるような話を聞いておりましたが、そういう面では、世界的な形で権威あるものとしてそれが有効に機能しているというふうに考えていいのかどうか。その点どうですか。
  267. 石塚貢

    石塚政府委員 核燃料物質を移動いたします場合には、その正確な量につきまして国際原子力機関に事前に通報するというようなことで万全を期している状況になっております。
  268. 小渕正義

    ○小渕(正)委員 この話は仮定の話で恐縮ですが、映画もどきの話にもなりかねぬわけですけれども、IAEAの検査官、そういう者の身分の確認はどうなのかということになりますと、どうでしょうか。やはりこれはまた映画もどきのスリラー物になるかもしれませんが、身がわりでというか、かわって潜入していくということ等、そういう意味での身分的な保証というか確認というのは、ただIAEAの要員であるということだけではいかないし、そういうそれぞれの機関に派遣されて、そこでいろいろチェックされるでしょうけれども、そういう人たちのIAEAとして本当の身分の保証といいますか確認といいますか、そういうものはどういう仕組みになっておるのですか。これはちょっと予定外の質問になりましたけれども、答弁を聞いておってそういう疑問を感じましたので、質問いたします。
  269. 石塚貢

    石塚政府委員 IAEAが日本に派遣してまいります査察員につきましては、事前に査察員の候補者の詳しいデータに基づきまして日本政府の承認を求めてまいります。そういったことで、日本政府としてどういう査察員が日本に派遣されてくるかというのは事前にきちっと承知をいたしておりますし、その人が査察のために来日されるということにつきまして、日本政府として確認をいたしております。
  270. 小渕正義

    ○小渕(正)委員 要するに、俗に言う替え玉が入り込む余地はないということで理解していいわけですね。  この前一部の新聞に、ナミビアの天然資源に関する布告第一号ということで、そういった核物質を、これは何か国連の布告第一号において、そういうものはナミビアの場合には一種の盗品みたいな性格になるそうでありますが、こういう品物であるということから、イギリスではそれぞれの港湾労働者が荷揚げ拒否を行ったという問題が報道されておったわけであります。問題は、そういった国際的に盗品と思われるような品物が英国からアメリカに行って、アメリカからとにかくその分が日本に入ってくる。結果的には、日本も間接的にはそういうふうなものを買っているということになるようでありますが、そこらあたりは何か電力会社当事者は、自分たちの方はアメリカから買っているので、別にそういうことは関係ないということの態度を表明されているやにも聞いておりますが、やはり国際的な問題になっているようなものが一応アメリカに行って、アメリカを通じて日本に入ってくるということについて、それをそのままそういう形で受けとめていいのかどうか、その点に対する見解はいかがですか。
  271. 田中伸男

    ○田中説明員 お答えいたします。  外務省から在英の日本大使館に確認をいたしましたところ、二月下旬に米国向けの六弗化ウランのコンテナの一部がナミビア産のウランではないかということで、リバプールの港湾労働者に荷揚げが拒否されまして、予定どおり出港できなかったのは事実のようでございます。ただ、その六弗化ウランはさらに三月十日にイギリスを出港しまして、三月二十日にはアメリカに到着をしたという情報を得ております。  それから、先生指摘の問題でございますが、我が国の電力会社がナミビア領内の鉱山会社と天然ウランの購入契約を結びまして、ナミビアからウランを購入している事実はないわけでございます。ただ新聞報道に、RTZ社から購入しているウランについて、六弗化ウランの形態で購入しているわけですが、ナミビア産が入っているのではないかという御質問もあるようでございますけれども我が国の電力会社は、契約上原産国を知り得ない立場にあるわけでございます。ウランの貿易形態を見ますと、転換とか濃縮とかさまざまな工程を経ますものですから、製品からだけでは原産国を特定することは技術的に不可能であるということと思います。
  272. 小渕正義

    ○小渕(正)委員 ここでも荷揚げ拒否の問題をちょっとやっていましたが、今回の法案状況を見て、流れを見ながら一つ疑問に思うのは、国内でも運搬作業を拒否するという立場になった場合にはどういうふうになりますか。我が国のトラックの運転手または運搬作業に関係する人たちが運搬作業を拒否する、こういうことになった場合に、防護との関係でどのようにお考えになっていますか。これはあり得ないことでないですね。この点いかがですか。
  273. 石塚貢

    石塚政府委員 国際輸送の場合はもちろんでございますが、国内輸送の場合におきましても、輸送する前に輸送計画書というものを綿密に作成をいたしまして、それによりまして運送を担当する業者、それから荷主、それから受け取りの態様、そういったものについて事前の打ち合わせがきちっと契約のような形で行われますので、途中の段階でそういったようなトラブルが発生するということはちょっと考えにくいというふうに理解をいたします。
  274. 小渕正義

    ○小渕(正)委員 もちろんそういう運搬作業をする会社との契約できちっとされていることは当然でしょうけれども、問題は、会社がいかにきちっと契約されておっても、会社の中で働いている人たちが実際に運搬作業を拒否するという挙に出る可能性もあるわけでありまして、そういう場合に核物質防護との関係においては、これは単なる別次元の問題だという考え方で処理されていくのかどうか。何かいろいろ見ていると、拡大解釈的にこの問題がまたこの中に含まれるような可能性もなしとしないという感じもするものですから、そういう意味でお尋ねしたわけであります。もちろんこういうことはあり得べきことじゃないかもしれませんけれども、しかし、人間のやっていることですからいろいろのことが考えられるわけでありまして、そういう意味でこの問題についてお尋ねしたのですが、そういう点でいかがですか。
  275. 石塚貢

    石塚政府委員 通常では考えられないようなことでございますけれども輸送を行いますに当たりましては、緊急時の連絡体制でございますとか監視人とか、いろいろな組織を動員いたしまして輸送を行うということでございますので、仮にそういった事態になりましたような場合には、直ちにそれが関係者によってわかるわけでございますので、そのときにはケース・バイ・ケースで早急に対応策をとる。少なくとも核物質に対してPP上、核物質防護上の観点から問題がないような応急的な措置はとらなければいけないというふうに考えております。
  276. 小渕正義

    ○小渕(正)委員 要するに、核物質だからそういう運搬作業を拒否するという態度に出られた場合、核物質だから我々はそういう危ないもの、危ないことかどうかはいろいろありますが、そういうものの運搬は拒否するという挙に出られたときに、核物質防護という観点の法律との関係からいって、それは単なる別次元だから別に関係ない、だれかかわりの者を見つけてきて運搬させればいいという形の中で処理できるのか、核物質なるがゆえに、そういうものを拒否したということで防護との関係から若干問題があるという形の中でこの問題をとらえていくのか、これは非常に大きな違いが出てくるのです。そこらあたりに対して、どうも今の御答弁ではそこまで全然考えてなかったことのようですが、これは非常に大事な問題ですから、その点については、もし今見解が示されなかったら後日でも結構ですが、もし見解が示されるならばお示しいただきたいと思います。その点再度お尋ねいたしますが、いかがですか。
  277. 石塚貢

    石塚政府委員 輸送計画にのっとって輸送を行うわけでございますけれども輸送計画を作成する段階におきまして、やはり輸送業者はみずからの責任でそれを請け負っておるわけでございます。しかしながら、どういう事態になりましても早急にそういう事態に対応できるような体制を整えて輸送に着手するわけでございますので、いかなる事態が生じましょうともPP上の対策という意味では、それに対する具体的な基準というものは準備されていないかもしれませんけれども、応急の際のとるべき措置というのは原子力委員会の指針の中にも示されてございますので、輸送計画の中で、十分そういった場面も想定いたしまして計画を作成するということになっているというふうに理解いたしております。
  278. 小渕正義

    ○小渕(正)委員 私の質問の仕方が悪いのか、意味が半分わかってないような感じがしますが、要するに、そういう場合が生じた場合に、またそれに対する対応措置はいろいろできると思うのですね。問題は、今お話がありましたように、きちっと規則に基づいて契約して、きちっとしたあれの中でやろうとしているのが、結果的にそういう形でできなくなった場合に、そういう事態が発生したときに、この法律の適用という問題と絡めてみて、そういうことがこの法律の適用の何らかの形の中にひっかかってくるのじゃないか、そういう点を懸念しての質問なんですよ。だから手続的には、それは特に核物質の問題ですから、今定められた基準に従ってきちっとした手続をしながらやっている。それを実行できないような事態が発生した場合に、逆にそれが一つの、何といいますか、罰則の適用の対象になるような可能性が出てくるのじゃないかという感じがするのです。  それは全然もうそれとは別だ、次元の違う問題だということですべて理解されておれば問題ないのですが、そうじゃないとなれば、逆にやはりそこらあたりが非常に難しい微妙な問題ですから。法の運用というのは、今の皆さん方が思っておられることは、そういうことは考えてもおられぬし、そういうことは考えておりませんと言うかもしれぬけれども法律が決まって運用で動き出せば、運用する人たちはまたかわっていくわけですから、そういう人たちのいろいろな考え方の中で今のような問題が発生した場合に、場合によってはこの法律の適用を受けて何とかしようということになりかねないのじゃないかという、ちょっとそういう一つの懸念もあるものですから、そういう意味で聞いたわけですね。だから私の質問の中身というのは、そういう角度からの問題としてお聞きしておるので、今私が申し上げた点についての何か見解がありましたら、もう一度だけお尋ねいたします。
  279. 石塚貢

    石塚政府委員 輸送途中におきまして予防措置上の問題が生じたような場合には、それぞれの主務官庁、主務大臣は是正命令をかけるという規定がございまして、これは規制法の中にございますが、そういったことで輸送の責任者に対し命令を発する、あるいはその命令に従わない場合にはそれなりの罰則規定もあるわけでございます。 それから、輸送計画について承知しております治安当局におきましても、核物質防護するという観点から、何らかのそういった事態が生じました場合には、それなりの対応をなさるというふうに承知をいたしておるわけでございます。  なお、先生の御懸念が何かそういった危険犯、今度新たに設けられます犯罪処罰規定の中に危険犯という犯罪処罰規定がございますが、こういった事件に絡みましてそういった罰則の対象になるような場合があるかというような御指摘であるならば、危険犯を構成する要件といたしましては、みだりに取り扱う、それから放射線を実際に発散させる、そして危険な状態にするというこの三つの要件について、それぞれ認識と認容といいますか、故意というものがございませんと危険犯としての要件を満たさないということでございますので、危険犯として処罰できるかどうかというのは、そのときのまたケース・バイ・ケースの判断で処理されるというふうに期待をいたしております。
  280. 小渕正義

    ○小渕(正)委員 これは法務省から関係者を呼んでおけばよかったのですが、呼んでなかったので、行政当局からはそういうことだというような御答弁しかできないと思いますが、今の答弁の中でも逆に、あら、やはり問題だなと感じるのですよ。命令を遂行できない場合は、契約しておった命令を遂行できないのだったら、その代表者かなんか、そういう人が罰則の対象になろうなんて言うものだから、運搬会社の社長か責任者がその対象になってしまっては問題だと我々は逆に思うわけですね。だから、そういう意味ではひとつこれはもう少し研究して、実際には法律の運用という関係からいけばそれはまた別問題で、全然性格が違うから関係ないと言われるのも期待しておるわけでありますが、きょうは法務省を呼んでいませんでしたので……。今の局長の答弁でいくと、かえって逆に非常に問題を感じることになりますから、もう一度よく吟味して、今の答弁を検討していただきたいということだけ申し上げておきます。  次に、これは前からの質問者の中にも出ておりましたが、今回の法案の中では政令等に対する委任事項が非常に多いわけですね。この政令等の整備については、大体条約に盛られていること等の関係から、あとは政令の整備ということもあるわけでしょうが、大体どういったものを政令で考えられておるのか。大体政令の中で整備しようとしておるもののレベルといいますか、条約との絡みの中における基本的な考え方といいますか、そういう政令についての基本的な考え方等についての考えをひとつまずお伺いいたしたいと思います。
  281. 石塚貢

    石塚政府委員 この法律を受けましての政令あるいは府省令で何を決めるかといったことにつきましては、その素案につきまして、けさほどの理事会に科学技術庁で現在検討しておりますものを提出させていただいた次第でございます。  若干内容につきまして御説明申し上げますと、今回のこの改正案は、昨年十二月の原子力委員会決定を受けまして、核物質防護に関する条約への加入に当たりまして、核物質防護に取り組む我が国の政策意図というものを内外に明らかにする、また我が国原子力活動への国際的な信頼性の一層の向上を図る、そういう観点から法案の準備を行ってきたものでございますが、この原子力委員会決定に示されております具体的な措置、それから条約の履行のために必要な措置、こういったものを原子炉等規制法上明確に位置づける、こういった法的手当てを行いまして、一層の万全な核物質防護体制を確保するということにいたしておるわけでございます。したがいまして、例えば核物質防護対象となります核燃料物質範囲、それから防護措置を講じなければならない事業者の範囲あるいは防護措置の具体的な内容など、今回の法改正に伴いまして必要となる政令等につきましては、手続的なものを除いては、基本的には昭和五十五年の原子力委員会核物質防護専門部会の報告書に示されました「事業者等の措置すべき核物質防護要件」、そういったものがこの府令の中で規定をされていくというような形になろうかと思います。  具体的に申し上げますと、この政令では主として核物質の定義あるいはその足切りの値、そういったものを規定してまいることになりますけれども、そういった内容につきましては、既に核物質防護に関する条約の中で定義づけられております物質の種類あるいは数量そのものが政令の中に規定されていくというふうになってまいります。
  282. 小渕正義

    ○小渕(正)委員 次に、条文の中に入りますが、第五十九条の運搬に関する条文の中で「工場又は事業所」というふうに現在はなっておるのが、新しい中では事業所という言葉が抜けていますね。今までは事業所まで含めることになっていたのが、事業所というものが抜けたというのはどういう意味でこのようになったのか、なくなったのか。事業所というのはそういう意味では必要じゃなかったのかという感じもするのですが、今回事業所がなくなったその意味するものは、その理由はどういうものか。  それから、いろいろと保安に必要な措置についての具体的なものがかなり条文化されておりますが、これを見ますならば、特に次の第五十九条の三でも言えるわけでありますが、新たにいろいろ詳しく明文化されておるわけであります。この条文の中身を読んでみますならば、これは当然のことを書いておるような感じがします。何で今ごろこれを書かなければいかぬのか。今の法律の中に当然書いておってしかるべきようなことが今回、より細かく入れたということなのかどうかわかりませんが、私の方は新旧対比から見るならば、特別にこれだけまた明文化していったということは何か意味合い、理由がほかにあったのかどうか、そういうふうな感じを非常に受けるわけであります。そうじゃなかったら逆に、何で従来こんなところをきちっとしておかなかったのかということ、余りにも粗雑だったのかなということにもなりかねぬのですけれども、両方の角度から考えまして、ひとつこの点についてはどのようにお考えなのかお尋ねいたします。
  283. 石塚貢

    石塚政府委員 まず最初に、「工場又は事業所」となっておりましたものが「工場等」に変わっている理由でございますが、これは純粋に法技術的な作文上の理由によっております。現行法の第五十八条の二におきましては、条文の簡素化の観点から非常に長い文章を「以下こういう」というような整理をいたしております。すなわち「使用施設等、製錬施設、加工施設、原子炉施設、再処理施設又は廃棄物埋設施設若しくは廃棄物管理施設を設置した工場又は事業所」、これだけの表現を第五十九条の二第一項において引用するために、「工場又は事業所」というふうに現行の規制法では規定しているところでございます。 しかしながら、この「工場又は事業所」という簡略化した言い方を今回法改正により追加する第五十九条の三においてもし引用しようといたしますと、法律用語としての「又は」あるいは「若しくは」という接続詞の使い分けに従いまして非常に複雑なことになりまして、当該使用者等の工場もしくは事業所から運搬される場合または外国にある工場もしくは事業所から当該使用者等の工場もしくは事業所に運搬される場合ということになってまいりまして、「工場又は事業所」をそのまま引用することはできないということに文理上なってまいります。そこで、このような不都合を避けながら、かつ条文の簡素化を図るために、この五十八条の二におきます略称を「工場等」というふうにこの際改めたものでございます。  それから次に、五十九条の二第一項で保安のために必要な措置について括弧書きで説明が加わっているが、その理由いかんとの趣旨の御質問でございますが、昭和五十五年の原子力委員会核物質防護専門部会報告書において示されました「輸送中の核物質防護要件」、これを原子力事業者等に義務づけることを今回の法改正で予定をいたしております。そのためには、使用者、製錬事業者、加工事業者、原子炉設置者、外国原子力船運航者、再処理事業者及び廃棄事業者並びにこれらの者から運搬を委託された者が核燃料物質または核燃料物質によって汚染された物を工場等の外において運搬する場合にあって、当該核燃料物質に政令で定める特定核燃料物質を含む場合におきましては、「保安のために必要な措置」に加えまして「特定核燃料物質防護のために必要な措置」、今回新たに加わることになりましたこういった措置も講じなければならないというふうにする必要がございますために、このことを最も簡潔かつ明確に規定する観点から法律上の規定ぶりを検討した結果、このような形になったものでございます。  それから最後に、五十九条の三を新たにわざわざこの際設けた理由についてお尋ねでございますけれども、本条は核物質防護に関する条約の附属書において求められております防護の水準、こういった水準の防護実施するために必要な規定の一つでございまして、核物質防護に関する条約附属書Iの2の(a)にいいますところの輸送に係る責任の移転する日時、場所、手続を明記した事前の合意等を本条によって原子力事業者に義務づけることとしたものでございまして、これは条約加入するために必要な措置であったわけでございます。  以上でございます。
  284. 小渕正義

    ○小渕(正)委員 次に、この中で触れられた保管者の位置づけがちょっとあいまいじゃないかという感じもするのですが、委託者と保管者の防護上、安全上の責任関係はどういう関係になるのか。今回の規制法における委託というものの考え方はどういうことなのか。保管者は防護規定や防護管理者を必要としない、そういったものと考えますならば、ここの保管者と委託者とかいうこの関係についての中身をもう少し御説明いただきたいと思います。  それからあわせて、今度は「使用者」という言葉が消えておるのですね。これはまたどういう意味合いなのか。これも単なる条文整理上の、言葉上の整理ということなのかどうか。これはちょっと意味合いが違うのじゃないかという気もするのですが、その点を含めて御説明いただきたいと思います。
  285. 石塚貢

    石塚政府委員 お答えいたします。  まず最初に、委託者と保管者の防護上の責任関係についてのお尋ねでございますけれども、特定核燃料物質防護のための措置を実効あらしめるためには、やはり実際に特定核燃料物質を取り扱っている人、その者に対して防護措置義務づけることが有効であると考えられます。かかる観点から、今回の法改正におきましては、特定核燃料物質の保管を委託するような場合には、第六十条で、保管を委託され、実際に保管行為を行うそういった保管者に対して防護措置義務づけを行うということにしたものでございます。 したがいまして、原子炉等規制法に基づく防護措置実施にかかわる責任は、保管者の方に持ってきたということでございます。  それから第二の御質問でございますが、第六十条の冒頭から「使用者」が削除されているのはなぜかとのお尋ねでございます。  現行原子炉等規制法におきましては、核燃料物質を保管するに当たっては、使用者及び保管者は第六十条において同一の保管の基準に従うべき旨定められております。しかしながら、今回核物質防護のための措置を保管者及び使用者に義務づけるに当たりましては、保管者には、使用者と異なっておりますので核物質防護規定の認可及び核物質防護管理者の選任を義務づける必要がない。 すなわち、使用者にはこういう義務づけを行いますけれども、保管者にはそこまでは義務づけない。防護規定の認可でございますとか管理者の選任、こういったものは使用者には義務づけますが、保管者には義務づけない、そういう整理をいたしてございますので、規制の体系上の相違が両者の間では新たに生ずることとなったわけでございます。したがいまして、この使用者の保管の基準を第六十条から分離いたしまして、第五十七条に使用者の使用の基準とあわせて規定をするということにいたしたわけでございます。このように、この改正は単なる条文上の整理を行ったものでございまして、従来の使用者の保管の基準に何ら変更を加えるものではございません。
  286. 小渕正義

    ○小渕(正)委員 あと、これは何条だったか、ちょっと探しているのですが、言葉のあれですけれども、従来は故意にとなっていたのを今度は「みだりに」というふうに変わっているわけです。日本語というのは解釈次第でいろいろできるわけですが、故意にという言葉よりも「みだりに」という言葉の方が拡大解釈というか、乱用されがちな感じがするのですよ。そういう意味であえて変えたのはなぜか、この点単純な質問ですが。
  287. 緒方謙二郎

    緒方政府委員 お答えいたします。  御質問は、条約の七条に故意に犯した行為を罰すると書いてあるのに、法律の七十六条の二で故意にということが書いてないではないかという御指摘かと思います。七十六条の二は条約の七条の一項(a)を受けたものでございまして、条約実施のため必要かつ十分な範囲を決めたものでございまして、刑罰範囲を変えたものではございません。先生御案内のとおり、日本刑法の総則では、法律に特別の規定がない限り過失犯は処罰しないということになっておりまして、この条項が故意にと書いてないからといって、過失犯を処罰するものではないことは刑法の総則上明らかになっているわけでございます。御指摘の「みだりに」という言葉でございますが、これは条約の方では七条一項(a)の初めのところに「法律に基づく権限なしに」と書いた言葉を受けたものでありまして、例えば法定の許可を受けないで核物質を取り扱うような場合、これを「みだりに」ということで言っているわけです。したがいまして、「みだりに」という言葉を用いたからといって、故意犯のみならず過失犯が含まれるということはないわけでございます。  なお、ほかの立法例でも「みだりに」という言葉を用いた立法例は、例えば道路法、道路交通法あるいは放射線障害防止法などにも使われておりますが、いずれも当然のことながら故意犯のみを処罰するものでございまして、それらの立法例で過失犯を処罰することにはなっていない次第でございます。
  288. 小渕正義

    ○小渕(正)委員 では次に移ります。  こういう核物質以外に、放射性の同位元素で人の生命や身体等に危険を及ぼすようなものはほかにもあるわけでありますが、そういう点で考えますならば、罰則の中での規制法障害防止法といいますか、そういう法律との整合性というものが果たして今回の法律改正の中では十分保たれておるのだろうかというような疑念なしとしないわけでありますので、そういった関係の兼ね合い、特に障害防止法では未遂罪とか脅迫罪はないわけでありますので、そこらあたりの関係についてはどのようなことでこのようになっているのか、その点をお尋ねいたします。
  289. 石塚貢

    石塚政府委員 核物質につきましての罰則を整備するということは、核物質防護条約加入するためにぜひとも必要であるということで、今回の立法につきましても、現行法では十分に対応できない核物質を用いた危険犯あるいは脅迫等について、条約の要請に応じそれらを処罰する規定を設けることとしたものでございます。  一方、放射性同位元素につきましては、核物質と異なりまして核分裂性がございません。したがいまして、核不拡散上の問題もないということでございまして、現在、国内立法の契機となるような防護犯罪処罰に関する国際的なコンセンサスといったものはまだ形成されていないわけでございます。また、我が国といたしまして早急に加入すべきような本件に関係する条約といったものも現在存在しないというようなことから、御指摘のような危険犯あるいは未遂罪等は今回の立法の対象とはしていないということでございます。  なお、放射性同位元素につきまして、万が一放射性同位元素を用いた危険犯あるいは脅迫等の犯罪が行われた場合には、具体的な事案によりまして、現行の放射線障害防止法第五十一条では危険犯についての処罰規定がございますし、脅迫につきましては刑法第二百二十二条が適用されることになるわけでございます。
  290. 小渕正義

    ○小渕(正)委員 次は緊急時の対応といいますか、緊急時の体制整備についてお尋ねします。  これは原子力委員会の報告の中で触れられているわけでありますが、現状は十分これらにこたえるような体制ができておるのかどうか。緊急時の対策のいろいろな手順、それからいろいろな場合を想定してのそういった体制は万全なのかどうか、その点はどういう状況か、お尋ねします。
  291. 石塚貢

    石塚政府委員 先ほども若干御説明を申し上げたところでございますけれども原子力委員会におきましては、事業者にあらかじめ緊急時における対応体制を確立しておくことを求めております。そしてこれに基づきまして、現在各事業者は緊急時における治安当局への連絡体制など、必要な体制整備しているという状況でございます。
  292. 小渕正義

    ○小渕(正)委員 これは今まで実際にないわけですから、いかなる場合をも想定してそれに対応できるというような体制は十分か、こう問われたとき、はい大丈夫ですと言えるかどうか、私はその点もう一度お尋ねします。
  293. 石塚貢

    石塚政府委員 緊急時の対応につきましては、どういう核分裂性物質を持っているか、そういったことによりましていろいろな区分に分けまして、そのとるべき措置というものが原子力委員会の専門部会の報告書の中には記載がございます。例えば、施設の核物質防護要件のところでは、「緊急時における対応体制の確立」といたしまして、「治安当局等とあらかじめ打合わせを行った上で緊急時における対応体制を確立しておくこと」ということになっておりまして、必ずしも事業者がみずからすべて緊急時に対応するということではございません。緊急時が発生した場合には、やはり治安当局との連絡、治安当局の対応ということとあわせて対応するということでございますので、事業者は、治安当局が現場に駆けつけるまでの間、必要な措置を講ずるというのが基本となっております。
  294. 小渕正義

    ○小渕(正)委員 防護の関係で一番密接な関係があるのがそれぞれの施設における警備員の状況になりますが、今の我が国の国内において対象になる諸施設の場合には、警備員といえば大体民間の警備員を中心にして、機械化されたいろいろな施設の中でほとんど万全に近いような体制がとられております。それを警備しているのは、俗に言うガードマン的な民間警備員が大体配置されていると思いますが、そういうことだけで果たして大丈夫なのかな。今後いかなる事態がどのようなケースの中で発生してくるか、これはいろいろ考えられないようなことが起こってくるわけであります。そういう点でいくと、当然今の日本の警察力を中心にして、その間治安その他すべて警察に任せるということが基本原則になりながら、とりあえずの施設警備ということでの警備員の役割を果たしていると思いますが、やはりこれだけの問題を考えるならば、核防護に対する国際的なこれだけの大きなあれがある以上は、こういう地域に対する警備についても、また特別な地域としての地域指定とあわせて、その地域を警備する警備員については、特殊な警察的な何らかの権限を持たせるということも今後必要じゃないかという気が私はするのです。その点は全然もう考えないで、ともかく日本のそういったものは国の警察力によってすべてやるという基本の中で、一歩もそこから出ないということで今日まで考えておられるのかどうか、そこまで踏み込んで考えようとはしないのかどうか、しなかったのかどうか、その点はいかがですか。
  295. 石塚貢

    石塚政府委員 御指摘の点につきましては、日本の現在の社会情勢といったものを十分に吟味した結果、原子力委員会におきましてこの警備につきましての指針を取りまとめたものでございます。これは、我が国の現在の社会情勢がどうであるか、あるいは日本の国では一般の人は銃とかそういった武器は携行できないといった社会システムでございますので、そういった環境の中におきまして、核物質防護に関する現在の国際的な水準であるIAEAのガイドライン、こういったものも参考にしながら日本の指針ができ上がっているということでございます。  そこで、その中には、日本もそうでございますし、国際原子力機関の指針でも、武装した警備人でなければならないというようなことは求められていないわけでございます。しかしながら、事業者が講ずべき防護措置の中には、治安当局等への連絡通報体制及び緊急時の対応体制整備が含まれておりまして、これによって緊急時における治安当局の円滑な対応が確保されることになると思います。また、核物質防護のための規制に万全を期すためには、本改正案においては、一定の国家公案委員会等の関与を今回新たに定めたところでございます。
  296. 小渕正義

    ○小渕(正)委員 今のような考え方で運営されてくることが一番好ましいことではありますが、今までのいろいろな人間の常識を超えた、想定できないような新たなゲリラその他が発生するような時代ですから、そういう意味ではこれは若干疑念なしとしないという感じもしますが、一応その点はそういう問題提起だけ申し上げておきたいと思います。  次に、核防条約の中での護送者については、日米原子力協定では武装護衛者となっているわけでありますが、我が国の場合は、この日米原子力協定との関係ではこの問題はどのように対応なされるのか。その点はどうですか。
  297. 石塚貢

    石塚政府委員 核物質防護条約の附属書におきましては、国際輸送中の核物質防護の水準といたしまして、第一群のカテゴリーの核物質輸送する場合には護送者による常時監視の確保を求めておりますが、武装者による護送までは求めておりません。また、核物質防護の国際的な基準となっておりますIAEAの勧告につきましても、先ほど申し上げましたとおり、輸送中の警備員の配置は求めておりますけれども、武装者にすべきことまでは求めていないわけでございます。  以上のような国際的な要請、及び我が国におきましては一般的な私人は武器の携行ができない、これも先ほど申し上げたところでございますが、そういったことから、法令上は武装護送者までは要求していないということでございます。しかしながら、実際の核物質輸送に当たりましては、法令に基づき輸送内容を都道府県公安委員会または海上保安庁へ届け出ることが義務づけられておりまして、これらの当局は、当該輸送の際、パトカーあるいは巡視船の同行を含め必要な措置を講じておりまして、この点につきましては十分な体制が確立しているというふうに理解をいたしております。
  298. 小渕正義

    ○小渕(正)委員 この核物質を今後航空機輸送する場合に、何か人工衛星の監視で絶えずその状況を見ながら、必要によっては、緊急事態の場合には各国の空軍がこれに出動して協力するというふうなことになっているやにも聞くのですが、まずそういうふうになっているのかどうか。その点はいかがですか。
  299. 石塚貢

    石塚政府委員 核物質防護条約あるいは国際原子力機関が定めております指針によりますと、航空輸送につきまして特段の厳しいことを求めているということではございません。ただ、日本原子力安全委員会では、将来例えばプルトニウムの航空輸送というものが非常に有利な手段として考えられているという実情にかんがみまして、プルトニウムを航空輸送する場合の基準をどうすべきかということにつきましては現在検討をしておるところでございます。現状では特別なことは規定はございません。ただ、日米協定では附属書B、アネックス五におきまして、これが包括同意の対象になる場合には武装の付添人をつけるとか、いろいろな厳しい規定が設けられているというふうに承知をいたしております。
  300. 小渕正義

    ○小渕(正)委員 先ほど言ったように、人工衛星の探査でずっとその状況を把握しながら、必要によっては空軍が出動して協力するということの話し合いか何か、今のところはそういうことは一切ないのですか。あるんじゃないですか。
  301. 石塚貢

    石塚政府委員 ただいま申し上げましたとおり、核物質防護に関する条約とかそれから現行のIAEAの指針には、そのような規定はございません。ただいま先生が御指摘のそういった方法につきましては、新日米協力協定の中の包括同意の条件として規定されております、プルトニウムの航空輸送について規定されたものであるというふうに承知をいたしております。
  302. 松井隆

    ○松井政府委員 新日米協定の方の話でございますけれどもプルトニウム等をフランス、イギリスから日本輸送してくる場合、包括同意取り決めになっているわけでございます。そのときの条件がございまして、その条件の中のお話じゃないか、先生指摘じゃないかと思いまして、ちょっと内容説明させていただきたいと思います。  まず通信網でございますけれども、この附属書では、人工衛星を使った云々、そういう規定は全く書いてございませんで、申し上げますと、例えば、航空機は常に実用化された先端技術を用いた信頼性のあるもの、そういう通信経路を装備しなさいというような規定ぶりはしてございます。それは具体的に何かというのは、その時点で最も最先端でかつまた実用化され、信頼性の高いもの、こういうことになろうかと思っております。それから、オペレーションセンターが設置されるわけでございますが、そことの間の連絡につきましても、利用可能な先端技術を用いて出発から到着まで継続的に航空機の位置及び状況を監視する責任を有するオペレーションセンターが設けられて、そこと先端技術を用いた形で常にその状況が把握できるというふうにしなさいという規定ぶりはございます。
  303. 小渕正義

    ○小渕(正)委員 わかりました。  それでは、一応この警備関係の問題はこれで終わるといたしまして、きょういただきました原子力委員会核物質防護専門部会報告書は、かなりきめ細かくそれぞれの状況に応じたいろいろな規制のあれが出されておるわけであります。これを一読いたしまして感じているわけでありますが、例えば防護要件の中の「情報管理」、これは七の一と符号してありますが、「核物質防護措置の詳細に係る情報は不必要に分散されないこと。」これは一つの例ですが、こういうようにいろいろきめ細かく出ています。まずこれを見て感じるのは、今申し上げました「情報管理」の条項だけ見ましても、これを判断する人はだれなのか。ともかくこういうあれがあるのに対して、こういうことに対しての管理といいますか、明らかにこれに違反したとかどうだとかいうような判断をする場合に、だれがする、それからそういう人は今度はどういうような処置でこれをしていくのか、そのあたりの実際にこれを具体的に運用する場合の考え方についてちょっとお尋ねしたいと思います。
  304. 石塚貢

    石塚政府委員 核物質防護上重要な情報といいますか詳細な情報といいますか、そういったものの管理につきましては、原子力事業者が府令等の基準に照らして判断するということでございまして、最終的な判断の責任は事業者にあろうかと思いますが、日常の作業といったものについての指導監督は、今回新たに制定されます核物質防護の管理者が十分チェックをしていくという体制になろうかと思います。
  305. 小渕正義

    ○小渕(正)委員 これに違反したかどうかということを事業者が判断されて、もし違反した場合にはどういう手順でどういう形に、告発か何かしていくのですか。そこらあたり前もちょっと質問が出ていましたが、事業者がそういう判断をして、摘発か告発か知らぬけれども行うとなれば、運用次第ではこれの拡大解釈とか拡大運用、こういうことで適用されていく危険性もなしとしない。だから、第三者的に明らかにこれに該当したかどうかという意味での、摘発とか告発された場合には、どこ機関でそれを公正に判断するような何かそういうものがないのかどうか。必要ではないかという気もするのです。事業者がこれを判断したらそのまま司直ですか、司法の方、警察にすぐしていくのかどうか。そこのあたりの手順はどうなっているかということをお尋ねしているのです。
  306. 石塚貢

    石塚政府委員 情報管理につきましての規定は、核物質防護規定の中で定めるべきことにいたしておりまして、省府令で決めていくということにいたしております。したがいまして、情報の管理について核物質防護規定に違反した場合には、原子炉等規制法の行政処分の対象になりまして、許可の取り消しあるいは一年以内の事業の停止命令を主務大臣より発することができるという体系になっております。
  307. 小渕正義

    ○小渕(正)委員 ちょっと混同したのですが、要するに今のお話からいけば、事業者が処分されるということになるのですか。そういう行為をした人をではないのですか。どうなんですか。
  308. 石塚貢

    石塚政府委員 原子炉等規制法上は、秘密を漏らした個人ではなくて、事業者が主務大臣より罰せられるということになります。
  309. 小渕正義

    ○小渕(正)委員 では、そこの中で働いている、何かこういう仕事に関係した人たちがこれに該当するとなっても、最終的にはそこの責任者、事業者が主務大臣から処分というか譴責されるというか、そういう形になるので、当人には関係ないわけですね。そうですね。
  310. 石塚貢

    石塚政府委員 原子炉等規制法で処分の対象となりますのは事業者でございます。ただ、規定に違反した個人は、社内規定によりましてそれなりの処分を受けることになるというふうに理解をいたしております。
  311. 小渕正義

    ○小渕(正)委員 では、社内的な問題だけであって、対象になった個人は警察的には関係ないということですね。わかりました。  それでは、簡単な質問ですけれども原子力行政の中で科技庁とエネ庁とはどこで線引きしているのですか。何か原子力発電のいろいろなことについてはエネ庁所管だ。そういう意味では、現在日本で実際にいろいろやられているのは、燃料棒をつくったりいろいろする会社とか原子力発電所、電力会社とかということですが、そういうものはすべてエネ庁所管で、科技庁としては原子力行政についてはどこまでの形で線引きされてやっているのか、その点ちょっと明らかにしていただきたいと思います。
  312. 石塚貢

    石塚政府委員 原子炉等規制法上の所管大臣の区分でございますが、発電の用に供する原子炉、いわゆる実用発電用原子炉と言っておりますが、これは通商産業大臣でございます。それから船舶に設置する原子炉につきましては、実用舶用の原子炉でございますが、これは運輸大臣、それから試験研究の用に供する原子炉、これは内閣総理大臣、それから研究開発段階にある原子炉として政令で定める原子炉、これは仮に発電を行うものでございましても内閣総理大臣ということになっております。今回の核物質防護措置につきましても、このような区分に従いまして各所管の大臣規制を行うということでございます。
  313. 小渕正義

    ○小渕(正)委員 それでは、簡単に言うと発電用に関する部分がエネ庁、あと試験研究その他の部分については総理大臣、科枝庁、こういう形だということですか。
  314. 石塚貢

    石塚政府委員 私はただいま原子炉についての区分のみを申し上げました。もちろん核燃料サイクルに関する製錬事業、加工事業、再処理事業、使用、そういったものにつきましては内閣総理大臣が所管をいたしております。
  315. 小渕正義

    ○小渕(正)委員 お役所の関係はそれぞれいろいろあるからちょっとあれですが、大臣、私がきょうの質問事項を科技庁に出したのです。どこの省のどこを呼んでくれということで、要するに私はこういう質問をするということで出した。科技庁が判断して、これはエネ庁の関係だ、これはどこの関係だということになるわけですね。だから、そうなると科技庁からそこの関係に行って、こういう質問が出ておるからそこの担当者が出てくれということで横に行くのだろうと思ったら、もう一回戻ってくるのですね。それで、今度は私の方で、これはエネ庁関係ですからエネ庁関係、通産省の政府委員室を通じてまたやってください。こういうことがきょうもあったのですが、こんなばかなことが行われているのが今の行政の実際の日常的なことですね。まさにそういう意味では、少なくとも横のそういう風通しぐらいはすうすういくようなことをぜひひとつやってもらいたいと思いますが、その点ちょっと例示として申し上げたわけです。  それから、原子力発電所の問題についてお尋ねしますが、原子力発電だから正式に言うとエネ庁になるのですね。要するに原子力発電所の事故という表現、故障という表現。故障というのは今までにほとんど使っていないでしょう。みんな事故でしょう。原子力発電というのは、我が国の場合特に核アレルギーがありますから、より慎重に、より大事に、より安全にしていかなければいかぬということは理解しますが、要するにこれだけ我が国の今の原子力発電所が稼働しておる中で、事故、事故という言葉が出る。お互い何も知らない国民の皆さん方は、何か大変な何かがあっているのだという不安感を持つ。自動車の場合でも、故障はあっても、事故と言えば相手に何かしたときが事故でしょう、人身等、物件に何かやったとか。ところが原子力発電の場合には、もちろん発電用の炉の問題やいろいろありますけれども、外側の単なる機械、機器の一部、ポンプの軸にちょっとひびが入ったとかなんとかというのも、みんな事故という形で報道されておるわけですね。  そういう意味で私は、原子力発電に対する正しいものを国民の皆さんにもっとわかってもらうという努力をすべきじゃないかと思うのです。そういう意味では、これは所管からいけばエネ庁になるのか知りませんが、例えばこれはきのうもお話ししたのですが、原発というのですよね。原電といえばいいのに原発という。もう原発になってしまった。そういう関係で、必要以上に危険というか不安を感ずるような傾向なしとしないという面もありますので、そういう意味で関係省庁もう少し正しく、しかもより慎重にやらないといかぬのですけれども、物事をもっと正しく国民の皆さんにわかってもらえるような意味での行政としての努力が足りぬのではないかという気が私はするのです。原子力といえば一番元締めですから、ひとつ科技庁としての見解をお伺いして、私の質問を終わります。
  316. 伊藤宗一郎

    伊藤国務大臣 大変貴重な御意見をいただきまして感謝を申し上げておりますけれども、まずその前に、原子力あるいは原電等についての関係省庁の連絡は、先生方に御不便がないようにしっかり行政間の連絡をとらせていただきたいと思います。  また、今後段でお話がございましたこと、全くそのとおりでございまして、先ほどの御質問に対しましても、事故というよりもトラブル、ミスあるいはまた故障というものはあったかもしれないけれども日本は幸いにまだ事故というものはないし、いわんや人身事故などもございません。また今後絶対に起こしてはならないということで、我々はなお一層引き締めてやらせていただきますけれども、原発を原電、あるいはまたミス、トラブルというようなことで、無用な御不安は国民に与えないということが基本でございますので、今せっかく関係各省庁連絡を取り合って、いろいろな用語の問題、またPRといいますか、あるいはパブリックァクセプタンスというような社会的な受容をどうつくり出すかというようなことにつきまして努力中でございまして、間もなく成案を得て、その成案に基づいて原子力についての正しい理解を国民の中からかち取ることができますようになお一層努力してまいりたい、このように思いますので、今後ともの御声援をお願い申し上げたいと思います。  ありがとうございました。
  317. 石塚貢

    石塚政府委員 先生先ほど指摘の、運送の途上において作業者がそれを拒否するような場合についてのお尋ねでございますが、一応整理をいたしまして御説明をさせていただきます。  核物質輸送従事者等が例えば労働争議の一環といたしまして拒否するような場合は、いわゆるテロ行為ではございません。こういったものは、通常七十六条の二にございますような人の生命、身体、財産に対する具体的な危険を引き起こすというようなことにつきましての認識あるいは認容といいますか、いわゆる故意というものはないというふうに考えられますので、個別事案にもよりますけれども、同条は多分成立しないというふうに考えられます。ただし、このような拒否行為等によりまして災害が発生するおそれがあるというような場合には、現行の原子炉等規制法の六十四条によりまして、まず事業者が応急の措置を講ずることになっております。さらにまた、規制当局が事業者に対しまして適切な措置を講ずべき旨の命令をいたすということになっております。緊急時における核物質防護につきましても、法令上、事業者あるいは当局が一体となりまして所要の措置が講じられるということになっておりますので、特に問題は生じないものというふうに考えております。  ちょっと整理をいたしまして答弁をさせていただきました。
  318. 小渕正義

    ○小渕(正)委員 終わります。
  319. 大坪健一郎

    大坪委員長 矢島恒夫君。
  320. 矢島恒夫

    ○矢島委員 私は、適正な核物質防護は必要であるという立場から、伊藤長官にお聞きしたい。  まず、核物質防護における基本的な考え方の問題ですけれども、広島、長崎の原爆体験を持つ日本国民の核物質に対する厳重な管理、それから健康及び安全確保の要求は、ほかの諸国民よりも広く、かつ深いものがあると思います。その圧倒的な国民世論が、国内で核ジャック、あるいは原子力施設への不法な動きを抑止するという大きな役割を持ったことは間違いないことだと思うわけです。そして、この核物質の管理あるいは原子力施設の安全確保で重要なことは、それに直接携わるところの科学者あるいは技術者、そして労働者が安全上の専門的知識と技術あるいは必要な道具や施設に熟達して、しかも安全上の社会的責任を強く自覚することにあると思うわけですが、長官のお考えをお聞きしたい。
  321. 石塚貢

    石塚政府委員 実際に核燃料物質を取り扱っている従事者、そういった人たちが日常の作業を通じましてそういったものに熟達していく、あるいは正確な新しい知識を修得していくということが原子力の安全性の確保にもつながることでございますし、また核物質防護の観点からも、そういったことが非常に重要であるというふうに認識いたしております。
  322. 矢島恒夫

    ○矢島委員 長官も同じ考え方かどうか、ひとつ……。
  323. 伊藤宗一郎

    伊藤国務大臣 今政府委員が御説明申し上げたとおりでございます。
  324. 矢島恒夫

    ○矢島委員 そこで、核物質の管理あるいは国民の健康と安全には、何よりも実際に原子力に携わっている人たちの協力というものが欠かせないものだと思うのですけれども、この点はいかがでしょう。
  325. 石塚貢

    石塚政府委員 核物質防護、これはその名前のとおり、英語でフィジカルプロテクションと言っておりますが、物理的な防護でございますから、基本は核物質というものをどういうバリアで、どういうハード的な措置をもってきちっと貯蔵し、格納しておくかということであろうかと思います。ただ、それをより効果的ならしめるためには、やはり人の出入りチェックでございますとか各種装置の維持点検、そういったものに対する人の管理というものが付随的に必要になってくる。そういう意味では、事業者が何を行うにいたしましても、そういった人との間の理解といいますか、そういうものが必要になってくるというふうに感じております。
  326. 矢島恒夫

    ○矢島委員 基本的には、そういう原子力に携わる人たちの協力というものが必要だというお答えだろうと思います。  そこで、科技庁としては、こういう原子力施設に働く人たちの協力というものについて具体的にどういうやり方か、お考えがあればお聞かせいただきたいのです。
  327. 石塚貢

    石塚政府委員 予防措置につきましては、省令あるいは府令等でその基準あるいは水準、事業者が守るべき要件というものが規定されていくわけでございますから、そういったものがきちっと守られること、あるいはそれを守るための核物質防護のための規定、そういったものを主務大臣が認可をするわけでございますから、そういったものの遵守を通じてこういった核物質防護措置実施されていくということでございます。したがいまして、そのために特段何かそういった従事者との間でこうあるべきだ、これは組織あるいは管理組織といったものは規定の中にきちっと盛り込むことになりますけれども、それ以上の特別の配慮というものは現在のところは考えておりません。
  328. 矢島恒夫

    ○矢島委員 もちろん事業者とそこに働く人たちとの関係ということにもなってまいりますので、ひとつ科技庁といたしましては、よく現場の意見を聞きながら事業者もやっていくという方向での検討をぜひお願いしたいと思います。  次に入ります。  私は、三月三十一日のこの委員会で新日米原子力協定について質問したわけですが、今度の新原子力協定第七条に新しく核物質防護対策についての義務づけがされたわけです。これにかかわって科技庁に聞きますが、この新協定附属書Bの第一群レベルで規制されている「信頼性の確認された者に出入が限られ」という部分です。けさいただきました府政令の資料に四の「区域の出入管理」というところがあり、石塚局長も先ほどこの問題で答弁されていたわけですけれども、科技庁が所掌している事業所では、この実施に当たって今後だれがどのような基準に基づいて信頼性を確認するのか、その辺をひとつお聞きしたいと思います。
  329. 石塚貢

    石塚政府委員 施設の出入りに当たりましての信頼性の確認は、身分証明書等による所属の確認及び防護区域への立ち入りの必要性の確認という形で行われるのではないかというふうに考えております。そこで、ここで言う信頼性の確認は、核物質不法な奪取から守るというような核物質防護の目的の範囲内で行われるものでございまして、通常の事業活動を遂行するに必要な限度、すなわち核物質の取り扱い等特定の活動を行うことについて、当該者が認められているかどうかの確認が行われれば、それで足りるというふうに考えております。
  330. 矢島恒夫

    ○矢島委員 今御答弁された最初の部分については、現在やっている状況と同じだろうと思うのですけれども、今後どのような基準で実施するかということについて、今回出されております改正法の中には、この具体的な核物質防護区分とか水準が明示されてない。現在科技庁が所掌している事業所で実施している核物質防護というものは、原子力委員会決定、これを受けて行政指導で行っているのだろうと思いますが、その内容が今後も基準になる、こういうふうに考えてよろしいでしょうか。
  331. 石塚貢

    石塚政府委員 現在実施されております水準あるいは措置、これは原子力委員会が五十五年の専門部会で決定いたしました内容を踏まえて行っておりますし、今回の法改正におきましてもそれをもとに省府令を整備してまいることとなっておりますので、内容的には実質的な差異はございません。
  332. 矢島恒夫

    ○矢島委員 ここに原子炉等規制法規制にかかわる事業所の一覧があるわけですけれども、これらの二十四の事業所がそれぞれ取り扱う核燃料によって事業所ごとに防護規則が違っているわけです。原子力委員会決定したところの基準というものをベースと考えていくということになれば、昭和五十六年の三月二十日でしたか、あの原子力委員会決定にある「我が国における核物質防護体制整備について」、この内容を見ますと、五十五年六月の原子力委員会核物質防護専門部会の報告を承認したものになっているわけです。当然これはIAEAの防護水準を受けているものでございますが、IAEAはこの核物質防護実施基準を提起している。 その勧告内容を見ますと、核物質をその種類とか形態別、また量的にそれぞれ三つのカテゴリーに区分しています。カテゴリー別に輸送と施設における防護要件を定めていると思います。  第Iカテゴリーをちょっと読みますと、二キログラム以上のプルトニウムを保有するところの第Iカテゴリーですが、この施設は貯蔵区域、核物質取り扱い区域、防護区域の区分を行い、人と自動車の立ち入り制限、個人認識票の所持あるいは立ち入り者の信頼性調査、それから立ち入り者のエスコート、出入りするときの所持品の検査、かぎ類の発注、管理、二十四時間パトロール、独立二重の通信体制、非常時行動規定、計画の策定、教育訓練、さらに非常時不法移転の禁止、保安調査と機能点検の全項目の整備が要求されているわけです。  原子力委員会の五十六年三月二十日の決定であるところの核物質防護体制整備では、この一群から三群までのすべての区分についてIAEAの第Iカテゴリーとほぼ同一の内容になっている。この項目だけを見ても、事業所で働く人たちの労働基本権あるいはプライバシー、こういう人権が侵害されるような項目がすべてある状態である。  今回の原子炉等一部改正案の防護措置防護規定に関する府省令というものはけさ提出されたわけですけれども、この府政令の資料の四に当たると思いますが、核物質防護の細目については、一緒に出されました(参考二)に専門部会報告というものがあります。このとおりであるというふうに考えてよろしいですか。
  333. 石塚貢

    石塚政府委員 きょうお出ししました資料は、区分のI、区分のII、区分のIIIと全部くくりまして項目を提出してございますが、実際には区分に従って規定をしてまいるつもりでございます。
  334. 矢島恒夫

    ○矢島委員 それで、もう一つ資料で原子力委員会の専門部会の方がつけられて配られたわけなんですけれども、そうしますと、今私が質問した部分について結局このとおりだ、こう考えてよろしいかという質問です。これがさらに検討の材料として出されたのか。
  335. 石塚貢

    石塚政府委員 ほぼそのとおりの内容になろうか、今検討の段階ではそういうふうに考えております。
  336. 矢島恒夫

    ○矢島委員 現在の検討段階ということですので、これをベースにして検討中、こういうことだと思います。細目については検討中ということですが、先ほど私、いわゆる労働基本権やプライバシーの問題を質問の中で述べたわけなんです。この細目どおりということで検討中ということになりますと、そういう基本的人権の侵害ということが非常に懸念されるわけですが、その辺についてはいかがですか。
  337. 石塚貢

    石塚政府委員 先ほども申し上げましたとおり、信頼性の確認にいたしましても、それは核物質不法な奪取から守るといった核物質防護の目的の範囲内で行うということでございます。通常の事業活動を遂行するに必要な限度、すなわち核物質の取り扱い等特定の活動を行うことについて、当該者が認められているかどうかという確認が行われれば足りるというものでございますので、思想あるいは信条のチェック等、基本的な人権の侵害につながるようなことはあり得ないというように考えている次第でございます。
  338. 矢島恒夫

    ○矢島委員 ベースにしながら細目については検討中ということで、今局長は懸念がない、こういう答弁をしたわけですけれども検討中という状況にあっても、そのことははっきりと答弁できる状況検討中だというふうに理解してよろしいですか。
  339. 石塚貢

    石塚政府委員 本日御提出申し上げました原子力委員会の指針をごらんになるとおわかりのとおり、私がただいま申し上げましたような形で指針ができ上がっているということでございます。これを踏襲して府令を作成していくということでございますから、ただいまのような懸念は生じ得ないというふうに考えておる次第でございます。
  340. 矢島恒夫

    ○矢島委員 私、先ほどIAEAの第Iカテゴリーの内容を細かく述べましたのは、結局今度の、第一群から第三群までに分けてあるわけですけれども、それらの三つの区分すべてがこのIAEAの第Iカテゴリーとほぼ同じ内容になっている。専門部会報告書というものが検討のベースですが、となると人権侵害という部分が非常に懸念されて仕方がないわけです。そういうことですから、そういう懸念は心配ないという規制を政府は指導していく、そういうお考えがあるかどうか。
  341. 石塚貢

    石塚政府委員 ただいま先生、IAEAの指針のカテゴリーのI、II、IIIにつきまして、IAEAのカテゴリーIに述べられていることが日本原子力委員会が定めたカテゴリーのI、II、IIIすべてに内容として含まれているという御指摘かと思いますが、ちょっと調査してみませんとその点につきましては今ここで即答いたしかねますので、御了承いただきたいと思います。
  342. 矢島恒夫

    ○矢島委員 そこで、そのことをどうのこうのということじゃなく、それは非常に重要な部分ですからぜひ調べていただくとして、そういうプライバシーやそのほか人権を侵害するような懸念はないのだ、こうおっしゃられますので、ひとつ私が指摘したような懸念、そういう基本的な人権にかかわるような問題、こういうことは心配ない、こういう規制を政府は指導する気があるかどうか。あるいはそういうところを事業者に対してきちんと見守るといいますか、そういうつもりはあるのかどうか、そこをお聞きしたい。
  343. 石塚貢

    石塚政府委員 核物質防護という名のもとにそういった意味での管理の強化、過度な管理をするといったようなことはよくないといいますか、私どもはそういった観点からも、核物質防護の規定について申請がありました際には十分気をつけて審査をし、認可をしてまいりたいと考えております。
  344. 矢島恒夫

    ○矢島委員 ぜひそのことは強く要望しておきたいと思います。  次に移ります。これは「原子力工業」という月刊誌の一九八二年十二号ですけれども、この中に元外務省国連局原子力課の本園さんという方の「「核物質防護条約」の意義と問題点」、こういう文章が載っております。この中に条約に伴う国内法の問題について書いてある部分があるのですが、ちょっと読んでみますと「国内法整備作業が遅々として進まない理由は、ひとつは、この条約のいくつかの規定がわが国にとって対応のむつかしい事柄を含んでいるからで、それは例えば、次のような点であると考えられている。」「「信頼性が確保された者に出入が限られ」るとしていることは、原子力基本法第二条の定める公開の原則に照らして問題はないかとか、基本的人権を制限するものではないか、というような議論があって、関係当局としてはこの取扱いに苦慮している模様である。」これは、防護のやり方によっては原子力基本法に抵触するおそれが危惧されているということを言っているわけです。  当時の外務省の直接の当事者が国内法整備についてこういう懸念があるということを書いているわけですが、防護措置だとかあるいは防護規定の重要な部分が府省令によって現在検討されているというわけですから、それが原子力基本法の三原則とのかかわりで現在どのようにクリアされたのか。こういう論議が国内法をつくるに当たって遅々として進まないのは、こういう問題が出たんだと思う。現在この法案を出されてきたわけですけれども、この間この問題がどうクリアされたか、その部分について科技庁の答弁をお願いします。
  345. 石塚貢

    石塚政府委員 ただいま先生指摘の文献の内容につきましてはつまびらかにはいたしておりませんけれども、今日まで改正法案を御提出申し上げるのがおくれました理由は、本日幾度か答弁をさせていただきましたけれども、やはり核物質防護条約が要求しております主として刑罰犯罪処罰規定、そういったものを我が国法体系の中にどのように取り入れていったらいいのであろうか、その辺の検討に時日を要していたものでございます。  もう少し具体的に申し上げますと、特に外国人が外国で犯した罪も含めまして、国外犯の扱いについて日本刑法がカバーしていないという問題をどのように処理していったらいいのだろうかというような点についていろいろと議論がなされてきたわけでございますが、この件につきましては、幸い昨年の刑法改正によりまして第四条ノ二というのが追加されました結果、刑法の規定する犯罪について国際約束に基づくものであれば、それは日本刑法処罰できるという新たな規定が設けられたことによりまして、この核物質防護条約が要求します犯罪処罰規定も、それによって吸収されるという事態の展開があったわけでございまして、そういった情勢の進展を踏まえて今回提案ができた次第でございまして、今のような三原則に抵触するからというようなことでいろいろと議論がなされてきたということにつきましては、私はよく承知をいたしておりません。
  346. 矢島恒夫

    ○矢島委員 おくれた理由についての一つは刑法の問題、これは何回もお聞きしていますが、それは一つであって、おくれた理由としてもう一つあったのです。それが本園さんが書かれた文章の中に、原子力基本法第二条とのかかわり合いとして書かれているのだろうと思うのですね。局長、経過については御存じないようでございますが、この論議の中でどのようにクリアされてきたかという点については、これは非常に重要な問題だと思うのですが、そのことについても御存じございませんか。
  347. 石塚貢

    石塚政府委員 核物質防護条約の中では、例えばこの条約実施に基づいて得た秘密情報については、それを国内法の規定に従って守るようにしなければいけないというような規定がございます。そういったような意味で、公開の原則等に触れる可能性があるかどうかというような点については、審議検討がなされたというふうに私は承知いたしておりますけれども、そういった問題につきましても問題ないという結論に至ったものでございます。
  348. 矢島恒夫

    ○矢島委員 私がお聞きしたいのは、どういう経過で問題ないとなったのかということをお聞きしたいのですが、局長はそういうところについての細かいことについては御存じないようでございます。またの機会にそういう点については明らかにしていきたいと思いますので、先へ進めます。  今引用いたしました元外務省の方の文章というのは、言うなれば原子力基本法の三原則についての懸念というものを言っているわけです。防護のあり方についていろいろと述べているわけですが、この部分が今度の法改正に当たって非常に問題な部分だと思うわけです。もともとこうした防護というものは、核兵器保有国が核兵器の開発、生産のプロジェクトで用いてきた方法であります。その考え方をそのまま平和利用をうたう日本原子力活動に求めるというところに重大な問題があるからこそ、こういう懸念が出てくるわけです。検討を重ねてきたという先ほどの御答弁でございますけれども、こうした公開の原則というものに絶対抵触するようなことはないというのは、この法律のどこかに書かれているわけですか。
  349. 石塚貢

    石塚政府委員 IAEAの場でいろいろと検討を進めて、その結果でき上がった条約ということでございまして、IAEAの場では、核兵器国も入っておりましょうけれども、非核兵器国も大勢の国が集まりまして、皆さんで御検討いただいた末できた条約であるわけでございます。その条約を踏まえまして今回の法改正を行い、さらにIAEAが昭和五十年につくりました指針をもとに原子力委員会が定めました指針、そういったものを内容といたしますことについて、原子力委員会といたしましても妥当であるとの判断が示されたわけでございます。原子力委員会は、先生御案内のとおり基本法の平和三原則、そういったものをきちっと見ている委員会でございますが、そういった委員会でもクリアされてきたということでございます。
  350. 矢島恒夫

    ○矢島委員 三月三十一日のこの委員 会におきまして、私、最後の方でしたけれども、伊藤長官にいわゆる基本的人権、それから学問、研究の自由ということについて御質問申し上げたわけですが、そのとき長官は「基本的人権はあくまでも守らなければなりませんし、また研究の自由、学問の自由もこれまたあくまでも守るべきものだと思います。」というきっぱりとした答弁をいただいたわけです。  そこでお尋ねしますが、研究者にとって研究成果の発表の自由というものも学問、研究の自由の根幹をなすものだと思うのですが、長官、いかがでしょうか。
  351. 伊藤宗一郎

    伊藤国務大臣 研究者の自由の中で、発表の自由というのもこれまた根幹をなす自由でございまして、これも守らなければならない我々の努力目標でございます。
  352. 矢島恒夫

    ○矢島委員 なぜ私が改めてまたそのことについて長官にお聞きしたかといえば、以前日本原子力研究所が、中島篤之助氏の事故論文問題というので厳重注意という処分をしました。これは学術会議の学問・思想の自由委員会で、当局の措置というのは不当であると判断されました。もし核物質防護対策の名のもとにこのような研究発表とか交流の場、そういう機会、こういうものが狭められてしまうとしたら、それはもはや研究活動破壊以外の何物でもないと思うのです。研究者が研究のテーマを選ぶとかその成果を自由に発表する、その過程でいろいろと討論を重ねていくことは、研究という仕事についてはイロハだろうと思うのです。こういうことが懸念されるようなことはない、こういうように理解してよろしいですか。
  353. 石塚貢

    石塚政府委員 核物質防護の観点から管理しなければならない情報、これは非常に限られたものでございまして、例えばかぎをどこに隠してあるかその所在を明らかにしない、そういうたぐいの情報の管理でございますから、研究の自由とか研究の成果の管理、そういったものとは異質なものであるというふうに認識いたしております。
  354. 矢島恒夫

    ○矢島委員 例えば日本原子力研究所の場合、原研だけでなくて関係する大学とか研究所、そういったところの研究者も十分に知り得る状況でなければ、科学技術そのものの進歩ということは期待できないわけです。憲法二十三条の学問の自由あるいはユネスコ勧告の内容からしても、このことは原子力研究に携わる研究者にも当然適用されるものです。そこで、科技庁としては、この情報管理ということで、各事業所がみだりに拡大して公開の原則を侵すことがないように指導すべきだと思いますが、その点はいかがですか。
  355. 松井隆

    ○松井政府委員 先ほど先生日本原子力研究所の中島篤之助氏のお話がございましたけれども、私ども理解している限りにおきましては、原研の内部規定がございまして、そういうことでも問題があったというふうには承知しております。  御案内のとおり、もちろん原子力基本法に定めておりますとおり、成果の公開ということは守らなければいけないと私ども思うのです。ただ、今までもるる説明しておりますけれども、それについては幾つかの条件がございます。ノーハウとかそういった保護というものが一つ。もう一つは、こういった機微情報というのですか、核の拡散につながるようなことはやはり出してはいけない。そういう条件は当然あるだろう。もちろんそういうことがあるからといって、それをみだりに広げることはよくないと思っております。あくまで私どもはその辺は厳密にしなければいけないと思っておりますけれども、その辺の条件があるということはぜひ御理解いただきたいと思います。
  356. 矢島恒夫

    ○矢島委員 ぜひそういうように、みだりに拡大していくようなことのないように指導されたい、このことを要望しておきます。  次に、核物質防護ということにとって非常に重要視されなければならないことは、原子力施設で働く人との信頼関係、こういうものが重要だろうと思うのですけれども、この点についてはどんなふうにお考えですか。
  357. 石塚貢

    石塚政府委員 核物質防護は、そのハード面とソフト面、両方あろうかと思います。核物質防護するという観点からは、まず施設面においてこれを防護するというのが基本でございますが、そのためには、ソフト面における管理というものの補完的な機能も必要かと思います。そういったものを十分機能させるためには、そこには人の信頼関係というのがもちろん基本にあるというふうに認識をいたしております。
  358. 矢島恒夫

    ○矢島委員 確かにそこで働いている人たちとの信頼関係というのは、いわゆるソフト面におきましては非常に重要なウエートを置くだろう、こう思います。ところがこの日本原子力研究所では、大体昭和四十三年ごろから、そこで働く人たちとの間でいろいろと問題を起こしております。特に十年前、写真つき身分証明書問題では、職員への説明もないまま一方的にこれを進めた。それで原研の労働組合が団交を申し入れたけれども、これを拒否した。さらに組合役員を処分する、こういう事件を起こして、地方労働委員会でこれが不当労働行為と認定された。そこで、今回の法体系整備で、いやしくもこの労働基本権が侵されることが絶対あってはならないと思うのですが、この点、長官ひとつ御答弁いただきたいと思うのです。
  359. 松井隆

    ○松井政府委員 ただいま先生指摘の原研における労使の問題につきましては、これはあくまで労働委員会等で判断する事項でございますから、私ども申し上げる筋ではございませんけれども、このもともとの事案が、原研の例えばFCAとかそういう施設に出入りする人間に、IDカードというのですか、そういうものをつけさせるというところから始まったわけでございます。そのこと自体は、私ども理解では世界どこでもやっていることでございまして、それは極めて当たり前な話であるというふうに理解しております。ただ、どういう理由かそれが労使紛争になったということは事実でございまして、それは労働委員会でいろいろと御判断なさっているということでございます。
  360. 矢島恒夫

    ○矢島委員 先ほど来、信頼関係の問題をお聞きした上でこの問題をお聞きしたのは、世界各国当たり前のことだとおっしゃられましたが、やはりそういうような変更を行うときには、職員への説明とかそういうものは事前になされてしかるべきだ。地労委としてもそういう面を考慮したんだろうと思うのですけれども、いずれにいたしましてもそれは科技庁の守備範囲以外ですから、その経過そのものはそういう経過があったということを一言つけ加えておきます。  そして私のお聞きしたいのは、いわゆる労働基本権が侵されるというようなことがあってはならない、その点を長官にお願いしたい、こういうわけです。
  361. 伊藤宗一郎

    伊藤国務大臣 基本的人権あるいはまた労働基本権は、原子力行政を進めるに当たりましてもしっかり守っていかなければならない基本的権利だと尊重してまいりたいと思います。
  362. 矢島恒夫

    ○矢島委員 御答弁のように、原子力施設における労働者のいろいろな権利、こういうのは侵害されてはならないし、労働三権というのはしっかりと保障して、同時に基本的人権、特に思想、信条あるいは表現の自由、そしてプライバシーは決して侵してはならないものだ、この点は既に長官はそのとおりだとお認めですので、さらに重ねて御答弁はいただきませんが、そのことを確認して次の質問に入っていきたいと思います。  今回のこの改正案で、先ほど来出ている核物質防護管理者の選任の問題であります。このことが義務づけられているわけですが、この管理者というのは原則としてサイトごとに一人任命されるということですか。
  363. 石塚貢

    石塚政府委員 核物質防護管理者の選任は、工場または事業所ごとに行うというふうに考えております。
  364. 矢島恒夫

    ○矢島委員 ごとに行うということはその事業所で一人、こう判断してよろしいですね。
  365. 石塚貢

    石塚政府委員 工場または事業所ごとに一人ということでございます。
  366. 矢島恒夫

    ○矢島委員 きょう配付していただいた府政令資料、これの五と六の項目にあるわけですね。核物質防護管理者の選定は事業者が現在の職員の中から選出する、こういうようにこの資料を読んでよろしいですか。
  367. 石塚貢

    石塚政府委員 それぞれの工場または事業所において、関係する組織で責任のある地位にある人が選任されることになるというふうに考えております。
  368. 矢島恒夫

    ○矢島委員 そういう御答弁ですので、警察のOBだとかあるいは自衛隊のOBがその管理者になるということはない、こういうことでございますね。
  369. 石塚貢

    石塚政府委員 核物質防護管埋者の要件につきましては、詳細につきましては検討中でございますが、大きく分けまして次の事項を現在考えております。まず第一に「工場又は事業所において核物質防護に関する業務を適切に遂行することができる管理的又は監督的な地位にある者等であること。」それから第二に「防護対象となる特定核燃料物質の取扱い等について一定の知識を有する者であること。」こういったことからも明らかなように、核物質防護管理者は当該工場または事業所の従業員の中から選任することを考えております。
  370. 矢島恒夫

    ○矢島委員 この防護管理者の責任範囲はどういう内容になっておりましょうか。
  371. 石塚貢

    石塚政府委員 核物質防護に関するその工場または事業所内における監督ということでございますので、例えば核物質防護規定の案を作成するとか、あるいは核物質防護措置というものがちゃんと守られているかどうかということについて、日常監視するといったようなことが範囲だろうと思います。
  372. 矢島恒夫

    ○矢島委員 日常監視するという部分が出てまいりましたが、この防護管理者の権限といいますか、こういうものはどういうところに……。
  373. 石塚貢

    石塚政府委員 これは逆の言い方をしておりますが、「核物質防護管理者がこの法律若しくはこの法律に基づく命令又は核物質防護規定の実施を確保するためにする指示に従わなければならない。」施設に立ち入る者は、この管理者の指示に従わなければならないというふうに法律上明記してございます。
  374. 矢島恒夫

    ○矢島委員 次の質問に移ります。  これも既にほかの委員からの質問があった問題で、確認的な内容になりますが、改正案七十六条の二の「特定核燃料物質をみだりに」の問題です。「取り扱うことにより」という文章があるわけですが、この「みだりに」ということは、犯罪構成要件を規定するに当たって、いわゆる防護条約の方の第七条と同じことを指すということでよろしいか。
  375. 緒方謙二郎

    緒方政府委員 先ほども御説明したとおりでございますが、条約の七条一項(a)後段に規定されているのと同じでございまして、「みだりに」というのは過失犯を意味するものではなく、故意犯を意味しております。条約上の法律上の権限なしにというものを、「みだりに」という表現で法律で受けているものでございます。
  376. 矢島恒夫

    ○矢島委員 本来平和利用のもとでの核物質の管理ということは、日本独自でいろいろつくり出されるべきものであると思います、自主性を貫くという点で。その点、最近アメリカからいわゆる核不拡散の問題等の中でいろいろと働きかけがある、このように聞いておりますが、きょう長官からもまた局長からも、平和利用三原別の厳守、あるいは研究者、技術者、労働者の基本的人権、思想、信条の自由、プライバシーの擁護、こういう問題について明確にお答えをいただきました。さらに労働三権の保障の問題、学問研究の自由の問題、これらにつきましては、きょう御答弁いただいたようにきちんとやっていただくということを重ねて主張しておきたいと思います。  そこで、朝から相当皆さん頑張ってこの時間まで参りました。まだ時間は余っておりますが、最後質問をひとつやらしていただきたいと思います。  テロ行為など反社会的行為の根絶ということは極めて重要な問題であります。そのためにも国民的世論を喚起していく、これは私がきょうの質問の一番最初に申し上げたことなんですけれども、そのことが必要ではないかということ。それからそれと関連して、きょうもこの委員会でいろいろと質問が出てまいりましたが、いわゆる核物質防護条約、これは兵器の部分、つまり軍事利用の部分についてはより防護というのは厳重なんだからというような御答弁がありましたけれども、何といっても核兵器をなくしていくということが重要なことであり、全世界から核兵器の廃絶ということを私たちの科学技術委員会としても主導的にやっていかなきゃならないんじゃないか。この二つの点についての長官のお考えをお聞きして、質問を終わりたいと思います。
  377. 伊藤宗一郎

    伊藤国務大臣 核兵器の廃絶は人類共通の悲願でございますので、我々も大きな政策目標としてその方向に努力を続けてまいりたい、このように考えております。  また、いろいろ御指摘の基本的人権あるいは労働三権あるいは研究の自由等の諸原則については、さらに我々の大きな努力目標として、原子力行政を進めるに当たっての大きな要件としてこれを尊重して進めてまいりたい、このように考えております。
  378. 矢島恒夫

    ○矢島委員 終わります。     ─────────────
  379. 大坪健一郎

    大坪委員長 この際、参考人出頭要求に関する件についてお諮りいたします。  本案審査のため、来る十九日、参考人の出席を求め、意見を聴取することとし、その人選等につきましては、委員長に御一任願いたいと存じますが、御異議ありませんか。     〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
  380. 大坪健一郎

    大坪委員長 御異議なしと認めます。よって、そのように決しました。  次回は、来る十九日火曜日午前九時二十分理事会、午前九時三十分委員会を開会することとし、本日は、これにて散会いたします。     午後六時三分散会