○緒方
政府委員 局長並びに警察の方から御答弁がございましたが、若干
先生の御指摘の点に補足的にお答えをさせていただきます。
第一に、そもそも罰則をこの
法律の
改正案の中に入れたのはいかなることであるかということでございますが、これは御指摘のとおり、
条約の第七条を履行するため、かつそれに必要な限度において
規定を取り入れたということにとどまっております。それ以上のものでもそれ以下のものでもございません。
それから、
先生御指摘の点で、特に七十六条の二の危険犯について構成要件があいまいで、運用いかんによっては何か非常に抑圧的に使われる危険性があるのではないかという御指摘ではないかと思いますが、七十六条の二の危険犯、
言葉では俗に危険犯と申しておりますが、これは構成要件がはっきりしているわけでございまして、要するに、特定
核燃料物質をみだりに取り扱うということが第一の要素、したがいまして、適法に扱う場合には対象になりません。それから、特定
核燃料物質の核分裂反応あるいは放射線を発散させるということ、そういうことを行うという認識かつ認容していることが二番目でございます。それから三番目には、それによって人の
生命、身体または
財産に危険を生ぜしめようという認識と認容が必要なわけでございます。こういう三つの要件から成り立っているわけでございまして、このいずれを欠きましても本罪は成立しないわけでございますから、これを乱用するというような危険性はおよそ
考えられないのではないかと
考えております。
それから、刑罰の重さについて
お話がございました。量刑の問題については法務省からあるいはお答えをいただくのがよろしいのかもしれませんが、危険犯、これは七十六条の二は十年以下の懲役という罰になっておりますが、本条はいわゆる公共危険罪的な性格を持つものでございまして、同じような性格のものであります放射線障害防止法の五十一条の危険犯と同じ量刑、これも十年以下の懲役ということになっておりますが、同じ懲役になっております。また、
国内で類似の危険犯でございます火炎びん処罰法の第二条の危険犯というのは七年以下の懲役ということになっておりますが、放射性物質である特定
核燃料物質と火炎瓶とを比べた場合に、潜在的危険性が非常に高いわけでございますし、危険の範囲も非常に広範囲に及ぶということから、こういう点でも量刑は一応相当なものではないかというふうに
考えているわけでございます。
七十六条の三の脅迫罪、三年以下の懲役ということになっておりますが、これも特定
核燃料物質の危険性を
利用した加害行為を
内容とする脅迫でございまして、単に人の意思
決定であるとか行動の自由を奪うということにとどまりませんで、こういう脅迫が行われますと、特定
核燃料物質が持っております潜在的危険性のために大変広く社会的な不安というものも生ずるおそれがあるわけでございまして、その
意味で刑法の脅迫罪の特殊類型、加重類型として
規定しているわけでございます。同じような行政法で加重類型をとっておるものに、例えば商品取引所法、証券取引法等がございますが、これも三年ということになっておりまして、それらの
法律間のバランスはそれなりによく吟味してやっていると
考えております。