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1988-04-12 第112回国会 衆議院 科学技術委員会 第4号 公式Web版

  1. 会議録情報

    昭和六十三年四月十二日(火曜日)     午後三時五十分開議  出席委員    委員長 大坪健一郎君    理事 榎本 和平君 理事 佐藤 敬夫君    理事 若林 正俊君 理事 上坂  昇君    理事 貝沼 次郎君 理事 小渕 正義君       唐沢俊二郎君    櫻内 義雄君       竹内 黎一君    山下 元利君       上田 利正君    野坂 浩賢君       村山 喜一君    近江巳記夫君       矢島 恒夫君  出席国務大臣         国 務 大 臣         (科学技術庁長         官)      伊藤宗一郎君  出席政府委員         科学技術庁長官         官房長     見学 信敬君         科学技術庁原子         力局長     松井  隆君         科学技術庁原子         力安全局長   石塚  貢君         科学技術庁原子         力安全局次長  緒方謙二郎君  委員外出席者         警察庁警備局警         備課長     太田 利邦君         法務大臣官房参         事官      東條伸一郎君         外務省国際連合         局原子力課長  中島  明君         科学技術委員会         調査室長    西村 和久君     ───────────── 四月六日  放射線被曝線量基準緩和反対等に関する請願(五十嵐広三君紹介)(第一三七三号) は本委員会に付託された。     ───────────── 本日の会議に付した案件  核原料物質核燃料物質及び原子炉規制に関する法律の一部を改正する法律案内閣提出第五一号)      ────◇─────
  2. 大坪健一郎

    大坪委員長 これより会議を開きます。  内閣提出核原料物質核燃料物質及び原子炉規制に関する法律の一部を改正する法律案を議題といたします。  これより質疑に入ります。  質疑の申し出がありますので、順次これを許します。上田利正君。
  3. 上田利正

    上田(利)委員 一九七九年、国際原子力機関IAEA核物質防護条約採択をしまして、条約加盟国国際核物質輸送上の犯罪防止対策を求めてまいりました。それは、一九六八年、昭和四十三年二月二十六日に日米間で日米原子力協定が調印されまして、そしてその改定米側から今日まで提案されておったときでもありました。  我が国原子力委員会は、このような情勢の中にありまして、一九八一年、昭和五十六年三月二十日に核物質防護指針決定をしました。その主な内容は、この中にもございますように、「関係行政機関において、必要に応じ核物質防護に係る法令整備等体制整備を進める」ということが一つでございます。二つ目は、核物質防護条約については、批准に備えて国際動向に留意をしながら諸般の整備を進めること、こういうふうな核物質防護指針決定をいたしたわけでございます。それから実に六年間、日米原子力協定改定交渉が行われたのでございますけれども、なかなか難航いたしまして、昨年の十二月に、御案内のように、昨年の二月核防護条約発効条件である二十一カ国の批准がなされたわけでございますけれども、これを理由にいたしまして、原子力委員会として核物質防護条約加入することなどの四項目の基本方針を定めたわけでございます。このような決定を受けまして政府は今回の一部改正法案を提案する運びになった、こう理解をしておるわけでございますけれども、そのことを前提にしながら質問をいたします。  一つは、五十六年の三月に原子力委員会核防指針政府に示しながら、先ほど申しましたように、今日まで実に六年以上もの長期にわたりまして法改正の提案が政府側からなされず、言葉が過ぎるかもしれませんが、一応放置をされたような形になっております。何かこの裏には重大な理由が存在しておったからではないか、こう私は思うわけでございますけれども、なぜこのように原子力委員会指針を決めながら条約締結あるいは法改正ができ得なかったのか、これをまず明らかにしていただきたいと思うのです。まずその点から政府側の見解をお聞きをしたいと思います。
  4. 石塚貢

    石塚政府委員 お答えいたします。  ただいま先生日米原子力協定につきまして言及なさいましたけれども、確かに昨年十一月四日に新日米原子力協力協定というものが両国間において署名されたという事実はございます。しかしながら、この核物質防護条約への加入というものがこの新日米原子力協力協定を実施する際の条件とはなっていないわけでございまして、新日米原子力協力協定とこの核物質防護条約というものは関係がございません。この日米協定核物質防護条約の間には何ら関係がないということでございます。  それから、ただいま先生御指摘のとおり、昭和五十六年には原子力委員会決定によりまして、関係行政機関が実施すべき核物質防護施策を示すとともに、必要に応じ核物質防護に係る体制整備を図ることといったことがまとめられたわけでございますけれども、この決定を受けまして、実態上必要な措置が講じられてきたところでございます。  また、核物質防護に関する条約については、加入のために必要な条約解釈等について検討を進めますと同時に、加入のために必要かつ適切な国内法体制について検討を行ってきたところでございます。特に、同条約核物質に係る犯罪行為処罰義務等刑罰関係規定を有しております。この義務の遂行のためにいかなる国内法体制整備すべきかということにつきましては、他の締約国国内法制度等調査も含めまして、慎重に検討する必要がございまして時間を要していたものでございますが、このほど政府部内におきまして所要の検討を終了いたしましたため、かつ同条約は昨年二月に発効したこともございまして、今国会において条約の承認を求めることとしたものでございます。  今回の法改正では、以上の検討結果をも踏まえまして、核物質防護条約への加入に際し、我が国における核物質防護体制をさらに万全なものとするため、法令核物質防護を明確に位置づけることとしたものでございます。
  5. 上田利正

    上田(利)委員 今局長から御答弁いただきまししたけれども、私思うに、いわゆる核保有国家、あるいは軍隊による核物質の管理・使用体制、こういう国と、御案内のように世界に誇る平和憲法核兵器を持たず、つくらず、持ち込ませずといういわゆる非核原則、これを持っておる我が国との中で、片方はそういう形の体制我が国は平和を原則とした原子力利用、こういう中でどういう形でこの法案をつくっていくのか、そういう点で六年もかかったのじゃないか、こう私自身としては思うわけでございます。  私、甲州でございますから申し上げますけれども、木へ竹を接ぐという言葉がございます。木も竹も甲州には多いのですけれども、同じような植物であるが相入れられない。接ごうとしても接ぐことができない。接いでも育たない。そういう関係と申しますか、矛盾があって今日まで法改正ができ得なかったのではないか。逆に言いますと、そういう点では法の内容についても問題があるではないかと、こう実は私自身が思ったわけであります。  核ジャック、これは絶対に許すことはできない犯罪行為であることはもう当然であります。だからといって、核ジャックを防止するんだということを前面に掲げて、そして今回このような法体系国是であるところの非核原則が侵されるということになると、これも大変なことでございますけれども、私自身はこの辺は非常に大きな疑問を持っておりまして、我が国原子力平和利用が根本的に崩れていくのではないか、こう思うわけでございます。その点について解明を願いたい、こう思うわけでございます。
  6. 石塚貢

    石塚政府委員 今回の法改正は、先生御承知のとおり、核物質防護条約といったものに加入するために必要な手当て、それから原子力委員会昭和五十六年に定めました核物質防護についての指針、そういったものを法制化するという内容になっております。  もちろんこの核物質防護条約にしても原子力委員会が決めました核物質防護指針にいたしましても、それらはすべて国際原子力機関IAEAの場で検討されたものでございまして、そのIAEAの場には、核軍備を持っている国のみならず、日本あるいは非核兵器国、大勢の国が集まってこの条約それから指針といったものを検討した結果でございます。また、原子力委員会が決めました日本指針は、そういった国際機関で定めました指針というものを我が国に適切に適用するという観点から専門部会検討した結果、指針を作成したものでございまして、そういった意味におきまして、先生御懸念のような形での制度、そういったものを法制化するということでは決してございませんので、御理解をいただきたいと思います。
  7. 上田利正

    上田(利)委員 私今申し上げましたように、核ジャック等によりまして核物質の不法な兵器転用が行われる、その結果世界における諸国民の平和と安全が脅かされていく、こういうことはいかなる理由があろうとも絶対に容認はできない、こう思うわけです。  このことを裏返しにして考えてみますると、我が国はそういう条件にございませんけれども、合法的に膨大な量の核兵器を製造し、配備をして世界国民の平和と安全を日々脅かしている核兵器保有国にも、これは向けられなければならないことは当然であると思うのでございます。すなわち、ちまたで言われておりますように、核抑止政策にも向けられるのが当然だと思うわけですけれども、この辺は長官どのようにお考えになっておりますか、所見をちょっと賜りたいと思っております。
  8. 伊藤宗一郎

    伊藤国務大臣 国内におきましてもこれから原子力施設核物質取扱量がふえる趨勢にあるわけでございますし、また、今お話しのとおり、国際的にも核物質が運搬その他の方向に向かっておるわけですから、国内的にも国民の健康や生命、あるいはまた公共の安全を守るためにも、こういう条約、またこういう法律を成立をさせて、国民の健康、生命を守る、また国際的にも、我々は原子力先進国でございますから、核物質核ジャック等からしっかり守るように、この条約にも加入をし、またそのための国内法整備を図りたいというのが今回の我々の考え方であり、また趣旨でございます。
  9. 上田利正

    上田(利)委員 ちょっと議論がかみ合わないようでございますけれども、時間の関係で次に移らしていただきます。  次の質問は、花崗岩地層であって高レベル放射性廃棄物処分候補地ということで巷間うわさをされております岡山県の哲西町が、三月三十一日に、ここに書類がございますけれども放射性核廃棄物持ち込み拒否宣言採択した、こういうふうに言われております。このことは事実かどうか、まずお尋ねをしたいと思います。
  10. 松井隆

    松井政府委員 岡山県の哲西町におきまして、放射性廃棄物持ち込み拒否宣言でございますか、その新聞報道は私ども承知しております。ただ、その詳細な内容については承知しておりませんけれども新聞報道ではそういうことがあったということを見ております。
  11. 上田利正

    上田(利)委員 ここにその全文の内容があるわけでございますけれども、これは読んでもしようがないですから申し上げません。  実は、我が山梨のことを言っては申しわけないのでございますが、いわゆる核の脅威から自治体を守っていかなければならぬ、あるいは住民の生活と生命財産を守っていかなければならぬ、こういうことで昨年、山梨におきましては六十四の自治体がございますけれども、この自治体がすべて非核平和自治体宣言というものを採択をしておりますし、県そのもの非核平和県宣言というものを採択をしております。核が持ち込まれては大変だという形の中から、今全国的に非核平和自治体宣言というものが広まってきております。  これが我が国のような原子力基本法に基づく平和利用、あるいは安全を必ず守る、そして民主、自主、公開、こういう原則に基づいてということであればそういう脅威感は持たないのでしょうけれども、いわゆる軍事に使っている核というものが世界に多いわけでございますから、そういう中から自治体がそういう非核平和自治体宣言というような形で核の脅威から生命財産、そして住む町を守ろう、こういうことでそういうものが出されてきております。言ってみますると、自治体そのものが責任を持って防護しようという意思結集の結果、そういうものがあらわれてきているのではないかと私は思うのでございます。これらにつきまして長官はどのようにお考えになっておりましょうか。
  12. 伊藤宗一郎

    伊藤国務大臣 我が国原子力開発利用につきましては、改めて申し上げるまでもございませんけれども原子力基本法に基づきまして、平和の目的に限ってこれを進めてきたところでございます。また国際的にも核兵器拡散条約批准をするなど、我が国原子力平和利用に徹する姿勢を内外に明示をしております。さらに、核兵器につきましては従来から、先生も再三お述べになりましたけれども、いわゆる非核原則国是として堅持をすることを明らかにしておりまして、このことは我が国の一貫した政策でございます。  先生御披露の地方自治体における非核平和宣言につきましては、その詳細を把握はしておりませんけれども原子力行政を預かる我々としては、今後とも原子力基本法の精神、非核原則にのっとりまして、平和の目的限り原子力研究開発利用を推進してまいる所存でございます。
  13. 上田利正

    上田(利)委員 大臣の答弁のように、ぜひ平和利用に徹していただくということを強く要望しておきます。  次に、プルトニウム空輸問題に関連しまして二、三御質問したいと思います。その一つは、プルトニウム空輸輸送主体、これは軍か民間かということになるわけでございますけれども、この輸送主体はどこになるのか、またその器材の空輸による安全性については完全に確保できるのかどうなのか、この辺をまずお聞きしたいと思います。
  14. 松井隆

    松井政府委員 二点御質問かと思います。  一つが、プルトニウム輸送するのはだれが行うのか、輸送主体の話だと思います。私どもこのプルトニウム輸送主体については、当面やはり動力炉・核燃料開発事業団実施主体になるものというふうに考えてございます。もちろん将来は動燃事業団以外にプルトニウムのューザーが出てまいります。そういうことで将来どうなるかという問題もございますけれども、いずれにしろ、現在プルトニウム輸送して、そのニーズを持っておりますのは動力炉・核燃料開発事業団でございますから、まず当面動燃事業団実施主体になるというふうに考えてございます。  それから、その次は輸送容器安全性お話だというふうに理解いたしますけれども、新しい日米原子力協力協定、これは現在国会で御審議いただいているわけでございますけれども、その実施取極の附属書五というところにいろいろとプルトニウムを航空輸送する場合の条件が書いてございます。その中に、一つは、「輸送容器は、航空機の墜落の際にもその健全性を維持するように設計され、かつ、認定される。」こういう規定がございます。それでまず、先ほど申しましたように動力炉・核燃料開発事業団が当面実施主体になるものでございますから、動力炉・核燃料開発事業団が現在プルトニウム輸送容器開発を進めてございます。  それで具体的に申し上げますと、これはアメリカ原子力規制委員会というところでかなり詳細な基準ができております。これは略称NUREG〇三六〇というナンバーのやつでございますけれども、そこで基準がございまして、その基準に合致するようにまず現在開発しているというところでございます。この中身は、いろいろと詳しくなりますけれども、一番ひどい例で申し上げますと、飛行機が落っこちた場合に、輸送容器もちゃんと健全で、中のプルトニウムが出ない仕組みであるかどうかということをテストするわけでございます。例えば、普通、飛行機の場合FAA規則で、空港近くは一万フィート未満で飛びなさい、かつまたそのときのスピードは四百二十二フィート・パー秒にしなさいという基準がございまして、それに従いまして、メートルに直しますと、例えばそれが一秒間に百二十九メートルぐらいの速さで物をぶつけなさい、それでも壊れないということを確認しなさい、そういうような規則がございます。  そういうものに合致した輸送容器開発できるかどうかということが要点でございまして、そういった開発、これは日本ではそういった施設がございませんものですから、アメリカのサンディアというところほ国立研究所がございまして、そこでいろいろと今開発テストを進めております。具体的には、一九八六年に一回、一九八七年に二回目という二回ばかりのテストをやりまして、輸送容器が落ちてぶつかった場合にそこに集まる衝撃エネルギー、それを容器の外側が吸収するわけでございます。吸収して中のものは大丈夫というふうにしたいわけでございますけれども、そういったデータをいろいろと集めてございます。二回目のテストの結果は、その中のプルトニウムの収納の健全性はかなり維持されてございまして、環境安全を確保するような輸送容器開発の見通しを動燃事業団は得たというふうになってきてございます。ただ、もう少し難しい話は、現在NU R EG〇三六〇でやっておりますけれども、昨年の十二月にアメリカ議会マコウスキーさんの提案するマコウスキー法が成立してございます。これはそれにさらに幾つかの試験をオンするような試験でございまして、具体的にそれをどういうふうに実施するかということについては、それを実施するのはアメリカ政府でございますから、アメリカ原子力規制委員会、NRCもまだ検討の過程でございまして、その辺がどういうふうな形でもって追加されるかという問題もまたあるわけでございます。  それで、一方日本といたしましても、原子力安全委員会の方におかれまして、そういった日本基準をどうするかというようなことについての調査審議を進めている段階でございます。いずれにしろそういった非常に難しい、非常に厳しい基準に従いまして、私どもは、もちろんそれは当然日本アメリカもあるかもしれませんし、それからフランスとかイギリスとか、そこから出てくるわけでございますから、そういうところの基準もあるわけでございまして、そういった各国の基準法令、そういうものに従って、安全確保ができるということを大前提にして進めたいというふうに考えておりまして、それに見合った容器開発を進めているというのが現状でございます。
  15. 上田利正

    上田(利)委員 まあ内容につきましては今研究開発中であるということでお伺いいたしましたけれども、そのような毎秒百二十九メートルの衝撃を食ってもびくともしない、落ちても大丈夫だ、こういうことでより安全をということで、今アメリカにおきましてそういうテストをしながらやっているという状況でございますけれども、なかなかそういっても、空を飛んで、それがミサイル攻撃を受けるとかさまざまな状況で、最近の大韓航空機ではございませんけれども、まだどうなったかもわからないというような状況もあるわけでございまして、そういう点では空輸というものについては非常な危険が伴う。まあどこにも危険は伴うのですけれども、とりわけ空の場合は海と違って一発で、しかも我が国の低レベル使用済み燃料の再処理のプルトニウムであれば、これは爆発しませんからいいのですけれども、しかしそれが空から降りてくるということになりますと、今医学上も言っておられますように、もう非常な発がん性物質で、強力な形でがんになっていくということが立証されておるわけですから、そういう点ではこの輸送体制というものが非常に重要です。我が国原子力平和利用を行い、かつ安全でなければならぬという中で、今度は空から空輸するという形になりますと、今までよりもこれは大変だな、こう実は私は考えているがゆえに、そういう点についての危険度国民にも知らせながら十分対応していかなければならぬと思うわけです。  まあ輸送主体動燃事業団ということで民間、恐らく航空機の場合も民間航空機ということになると思うのでございますが、軍用機ということはございませんか。時によりますと、アメリカ書類などを見ますると、貨物輸送機のC5であるとかC141であるとかというようなことをいろいろなデータなんかで見ておりますけれども、そういうアメリカ軍用機によってということはないかどうか、その辺を再度明確にしておいてもらいたい、こう思います。
  16. 松井隆

    松井政府委員 アメリカ軍用機ということは今考えておりません。
  17. 上田利正

    上田(利)委員 それで、空輸予定航路内容でございますけれども、それぞれに検討されていると思うのでございます。日米検討されておるその航路、三つか四つぐらいあるのじゃないかと思うのでございますけれども、これについてひとつ明らかにしていただきたいと思います。
  18. 松井隆

    松井政府委員 輸送ルートをどこにするかということは、最終的には、プルトニウムを航空輸送するときに輸送計画で明らかにする事項でございます。ただ現在、あるいは先生案内だと思いますけれどもアメリカ政府の部内でプルトニウムをヨーロッパから、つまりフランスイギリスから日本に運ぶわけでございますけれども、いかなる国の上空も通過しないで、かつまたノンストップ飛行が可能ではないだろうか、こういうことを考えておるということでございます。それで、それにつきましては、アメリカとしては近い将来それが利用可能になるというふうに判断しているやに聞いております。したがってアメリカとしては、緊急時の場合は別といたしましても、ノーマルな飛行の場合には、米国の上空を通らず、またどこの国も通らず、公海上を飛んで日本に持ってこられる、こういうルートがあるということの可能性を大体考えておるようでございます。  それで、もちろん日本としてもそういった事情を踏まえて、我が国にしてもこのルートが可能かどうかということについてはいろいろと確認を今進めているところでございます。その辺の確認がはっきりすれば、アメリカアメリカ上空を通らないでノンストップで行ってほしいという希望があるものですから、そういうものを我が方としても第一プライオリティーと申しますか、そういうふうに考えるべきである。その具体的なルートでございますけれどもイギリスまたはフランスから北極を通過いたしまして、それからベーリング海峡を南下いたしまして日本に入ってくる、こういうルートを第一プライオリティー考えておる次第でございます。
  19. 上田利正

    上田(利)委員 これは運輸省関係は関与はしないのでございますか、こういう航路関係は。
  20. 松井隆

    松井政府委員 もちろん飛行機の場合には、それぞれどこの国の飛行機かということはございますけれども日本飛行機の場合は、当然運輸省もこの問題については関与するということになるわけでございます。そういう意味で、私が今申し上げたのは、まだ運輸省と具体的に相談に入っておりませんけれども、今アメリカ議会で審議されている模様から見て、一つ可能性としてプライオリティーの高い路線としては考えられるのじゃないだろうか、こう申し上げた次第でございます。
  21. 上田利正

    上田(利)委員 ノンストップが一番いいのじゃないかというようなことで今お話がございましたけれども、今までのアメリカにおける空輸航路、これにつきまして日米交換公文などの内容というような形の中から——まあ最良の案は、イギリスなりフランスからノルウェー海を通って、先ほど局長が申しましたように、グリーンランドの沿岸東外側を渡って、北極を経由して、ベーリング海峡からソ連沿岸のやはり東外側を通って日本に入ってくるルート、これの航続距離は約六千六百マイル、こういうように言われておるのです。この航路が一番安全だということで、どこの国も通らないというふうなことですけれども、果たして今日の旅客機を見まして、ボーイング747の改良型をというようなことを考えておられるようでございますけれども、これを見ましても七千マイル近い航続距離ということはできない。どこかで給油しなければできない。給油の場合については、アラスカを通っていったらどうかというようなことの中で、アラスカ州を初め絶対これは反対だ、気象条件も悪いし危険であって、一歩ともアラスカへは入れない、こういうふうなマコウスキーのあれもございまして、それも挫折をしてきておるというふうな状況でございます。  その他二つ三つの航路の問題がありますけれども、今の日米の中で考えている航路というのは、局長が申しましたような形の中で、最長距離であるけれどもどこの国の上空も通過しないで海上を通る、ほぼその点で航空機開発を含めてすべての準備が進められておる、こういうふうに理解してよろしゅうございますか。
  22. 松井隆

    松井政府委員 まだ新しい、例えば先ほど先生御指摘のボーイング747—400という飛行機は実際には世の中にはないわけでございまして、そういう意味で、そういったものの開発状況を見なければいけません。つまり、どの程度まで性能が保持されるかという問題がございます。私ども聞いているところでは、これは空荷で大体どのくらい航続距離があるかということで申し上げますと、幾つかのタイプがございまして、旅客機については大体八千海里弱ぐらいであるというふうに聞いております。それからコンビ、つまり貨物とお客さんを両方運ぶタイプ、これについては約八千海里強というふうに聞いております。そういった幾つかの性能仕様がございますが、いずれにしろこれはこれからできる飛行機でございますものですから、まあその辺の距離があれば日本にも運べるのではないだろうかというふうに考えてございます。しかし、いずれにしろ今いろいろと調査をして確認している段階でございますものですから、まだはっきり断定的に申し上げる段階ではないというふうに御理解いただきたいと思います。
  23. 上田利正

    上田(利)委員 そこで、これが空輸される、安全でかつ危険のない区域を通ってイギリスフランスから日本に来るわけでございますけれども、その場合に、我が国におけるプルトニウム受け入れ空港はどこにするのか、これが一つの大きな問題になるわけですね。さあどこにするのか。ちまたでは、三沢がいいんじゃないかとかいろいろな形が言われておるわけでございますけれども、これらの候補地については、当然我が国の自主、民主、公開の原則に基づいて環境影響調査を何カ所かずっとやって、そしてそれを公開をして、これだからここの空港で、かつ、こういうことで安全でこうですよ、こういうものを明確にしていかなければならぬのじゃないかと思うのです。この環境影響調査などについてはどんなふうに考えておられるか、ちょっとお聞きをしたいと思うのであります。
  24. 松井隆

    松井政府委員 先ほど御説明いたしましたけれどもプルトニウム輸送する場合に、航空機事故が万が一起きてもそのプルトニウムの収納健全性が確保される、それでしたがって環境の安全を確保する、こういうような輸送容器開発する、こういう考えで進んでいるわけでございます。  それで、先ほど申しましたように、動燃事業団がいろいろとそういった容器を今開発している過程でございまして、またさらに、当然実際に輸送するに当たっては我が国基準と申しますか、関係国の法令基準等にも合致した格好で、安全確保を大前提に進めるというふうに今考えている次第でございます。したがって、基本的には私どもは、プルトニウム輸送容器の着陸と普通の航空機の着陸との間に、安全性の観点から特別の差異を設ける必要がないようにしたいなというふうに考えている次第でございます。もちろんこの安全のチェックということは大事なものでございますから、現在原子力安全委員会におきまして、そういった安全の基準をいかにすべきかということの検討を始めている次第でございまして、それに基づきまして関係行政機関の厳しいチェックを受けるという仕組みになろうかと思っております。そういうことで臨みたいというふうに考えておる次第でございます。
  25. 上田利正

    上田(利)委員 アメリカなどの状況を調べてみますと、やはり環境影響調査を行って安全を確認し、これを実施をするという民主的な方法をとっておるようでございます。  そこで、どの空港になるかわかりませんけれども、とにかく、もし飛行機で来れば空港がなければ運んでくることができぬわけでございますから、その場合に、とかく我が国の場合は官製の調査機関と申しますか、政府調査団を編成して、そこでやるという方法がしばしばとられるように見受けられるのです。この種初めての問題で、これは失敗は絶対に許されないわけですから、パーフェクトでいかなければならぬ、こういうことになるわけでございます。したがって、そういう環境影響調査などをする場合には、やはり政府とは関係のない独立した純然たる第三者機関による環境影響調査団をつくって、そこで専門的に学者とかいろいろな者を入れまして、そして調査をして候補地を決めていく、こういうふうにすべきだと思うのですが、これについてはどうかというのが一つ。  そして、同時にその場合に、関係自治体はもちろんでございますけれども、住民との協議を経て、その同意を前提として実施すべきだ、こう思うのですが、この二点について明確にお答え願いたいと思うのです。
  26. 石塚貢

    石塚政府委員 環境影響評価ということにつきまして、規制の立場から御説明させていただきたいと思います。  放射性物質の航空輸送に関する安全規制、これは航空法に基づいて行われておりまして、運輸省の所管ということが言えるわけでございますので、本件につきましては運輸省の当局で御判断されるというふうに考えておりますが、ただ一般論といたしまして申し上げますと、御質問の御趣旨が、プルトニウムの航空輸送にかかわるもののうち、プルトニウムの放射線による悪影響というような観点からのお話ということでございますと、これにつきましての環境への影響、ひいては人々の健康あるいは安全の確保といいますものは原子力の安全規制体系の目的そのものでございますので、環境影響評価と殊さら言わなくても、この安全審査の段階におきまして環境の安全は確保されるということであろうかと思います。
  27. 上田利正

    上田(利)委員 ちょっと内容が、そういうことでは安全確保ということはできぬと思います。  例えば三沢空港の場合を見ましても、今この三沢空港は、一九七一年からアメリカ海軍あるいは空軍の基地となっておりますね。そして先ほど御答弁がございましたように、附属書五に言う地上管理センターの設置にも好適であるということをアメリカ側が言っておるわけでございます、アメリカ状況から見ますると。そういう中で、三沢空港から二十七キロの地点に今後再処理工場を含むところの核燃料サイクル施設を建設しよう、こういう計画が進められてきておるわけでございます。三沢空港の場合、付近一帯が特別管制区域に指定をされております、これは軍事基地でございますから。従来より新聞にも出ておりますし、いろいろ報道されておりますけれども、誤射、誤爆あるいは軍用機の墜落事故すらも今まで何回かありました。さらに近くに射爆場もあるわけです。これらは本来原子力施設と共存し得ないものである、こう思うわけであります。  この点、日米両国政府は単に核テロからの防護、こういうことだけということの中で利便性を見ながら、そういう利便性のみで三沢空港を選定するということであったら、これは大変だと思うのです。したがって、今回の法改正に当たりましては、原子力基本法に言う、先ほど申しましたように、まず我が国原子力利用についても、平和利用でなければならないということと安全を絶対に確保していくということ、そして自主、民主、公開の原則に基づいて、まず住民の生命と健康、財産を守って国土を保全する、こういう立場から十分審議をしなければならぬと思うのです。そうなりますと、三沢については、今の状況から見ると日本プルトニウムを運んでくる飛行場としては不適格だ。そういう条件が取り除かれればいいのです。アメリカ海軍なり空軍の基地でなくなるということになればいいのですけれども、これは恐らく今の日米安保条約から見ても無理だと思う。そうなりますと、三沢はプルトニウムを運んでくるところの飛行場としては不適格だ、こう私白自は思うのですが、この点どうでございましょうか。
  28. 松井隆

    松井政府委員 本委員会で前にも御質問がございまして、国内の空港についてまだ私どもは白紙であるというふうにお答え申し上げてございますけれども、当然まずそれを決めるには幾つかの条件があるわけでございまして、科技庁で考えておりますのは、例えばそういった大型飛行機になるであろうから滑走路も長い方がいいとか、それからやはり管制でございますか、そういったものもしっかりしている方が望ましい、それからハイジャック防止という意味から見たらなるべくそういった飛行機を遠くに離せるような場所、そういう飛行場の方が望ましいとか、幾つかの条件は私ども考えているわけでございますけれども、いずれにしろこれはまだ私ども考えているあれでございまして、今後この辺につきましては、私どもだけではなくて、やはり関係省庁とも十分また御相談していかなければならぬわけでございます。  それからまたさらに、相談するに当たっても、そこの飛行場を白羽の矢を立てた場合には、空港管理者と申しますか、国の場合もありますし都道府県の場合もあるようでございますけれども、空港管理者ともやはり事前に実態上御相談しなければいけない。そういうことをするためには、先ほど先生の御指摘のようなプルトニウムを運ぶ輸送容器はどんなものか、どの程度安全なのか、国としてはどういうふうに考えているのか、あるいはどういう飛行機で来るのか、そういうことも全部御相談しなければいけないわけでございます。そういう意味では、まだ少しいろいろとこれから検討して固めなければいけない問題でございまして、まだ三沢がどうのこうのという段階ではないわけでございまして、先生の御意見としては承っておきますけれども、私どもとしてはまだそれを決める段階にはなくて、白紙の状態であるというふうに御理解いただきたいというふうに考えている次第でございます。
  29. 上田利正

    上田(利)委員 時間の関係上それ以上は申し上げませんけれども、しかし六ケ所村に核燃料サイクル施設をつくる、そして八百トンぐらいの再処理能力のものをやろう、こういう計画がもう現に出ているわけでございますから、そうすれば、使用済み核燃料をフランスイギリスへ持っていきまして、それを再処理をして我が国へ運んでくる。その場合、今は東海村でございますけれども、六ケ所村に核燃料サイクル施設ができるということになりますと非常に便利なんですよ、三沢からすぐなんですから。目と鼻の先なんですから、考えてみますると、大体日米の間では三沢を、こう考えていると私ども考えざるを得ないのです。しかしそうなると、今申し上げましたような多くの問題点があって、これは非常な危険を伴う。今まででもいろいろな航空事故その他があるという状況から見ますると、安全の面から見ると三沢は条件は最も悪い空港だ、こういうことになるがゆえに御質問したわけでございますけれども局長申されましたようにまだ白紙だということですから、これは別途重視しながら我々としては対応していきたい、こう思います。  時間がもうなくなりましたが、二、三の問題点についてお聞きをしたい。  それはプルトニウムの諸問題に関してでございますけれども、昨年抽出されましたプルトニウム、東海の再処理施設において昨年一年間にどれだけの量の使用済み核燃料が処理されたか、これをまずお聞きしたい、こう思います。
  30. 松井隆

    松井政府委員 動燃事業団が持っております東海村の再処理工場、そこで六十二年度に処理されたウランの量でございますけれども、五十一トンの使用済み燃料を処理してございます。そこから回収されたプルトニウムでございますけれども、二百九十キログラム・プルトニウム・フィッサイル、つまり核分裂性プルトニウムが二百九十キログラムということでございます。
  31. 上田利正

    上田(利)委員 このプルトニウムの一キログラムの再処理コスト、これは何円ぐらいになりましょうか。それからウラン一キロ当たりのコストは何円になるか、ちょっとこの辺を明確にしてもらいたいと思うのです。
  32. 松井隆

    松井政府委員 まずプルトニウム一キログラム当たり再処理コストいかんというお話でございますが、これは一つの非常に単純な計算ができるわけでございます。  まず最初にその答えから申し上げますと、使用済み燃料一トン当たり動燃事業団は一・八億円の値段を取っております。それで一トンから出てくるプルトニウムの量が、フィッサイルで言っておりますけれども、大体五ないし六キロ。これは燃料をどのくらい燃やしたかによって量が違うものですから、幅があります。それで非常に単純に割ってしまいますと、一キログラムのプルトニウム核分裂のものは三千万円とか、そういうふうな計算になるわけでございます。ただ、これは非常に単純な計算をしたわけでございますけれども、もともと再処理の値段というものは、プルトニウムはもちろん価値があるから取り出します。同時に、燃え残ったウランが大分ございます。天然ウランは大体〇・七%の濃縮でございますけれども、もう少し高い一%前後。その価値もございます。それから核分裂して出てきたいわゆるフィッションプロダクト、核分裂生成物を取り出します。そういった値段を込みにしての値段でございますから、再処理の値段をプルトニウムの量で割るということは少し無理かというふうに思いますけれども、単純に計算するとそうなるということでございます。  それからもう一点、ウランの方でございます。これも非常に難しいのでございますけれども、非常に単純に申し上げますと、現在日本原子力発電所で燃やしているのは軽水炉でございまして、一応平均をとって三%の濃縮ウランというふうに仮定いたします。それで三%の濃縮ウランが一キログラム当たり幾らかというのを計算してみますと、これもいろいろ前提がございます。つまり、天然ウランの価格を幾らに置くか、それから濃縮の値段を幾らにするか、それも量によって変わるかもしれませんが、そういった幾つかの前提がございますけれども、単純にそういう計算をしますと、三%濃縮のウラン一キログラムが約十二万円くらいというふうに見積もられるというふうに考えます。
  33. 上田利正

    上田(利)委員 わかりました。  そうしますと、東海の再処理施設が運転されてから現在まで、どれだけの使用済み核燃料が再処理されたかというのが一つ。また、それによって抽出されたプルトニウムは累積で何キログラムになるか、これをちょっとお聞きしたいと思います。
  34. 松井隆

    松井政府委員 まず全体の処理した使用済み燃料の量でございますけれども、三百七十三トンになります。そこから回収されたプルトニウムの量、核分裂性プルトニウムで申し上げますと、約千八百キログラムということになってございます。
  35. 上田利正

    上田(利)委員 そうすると、その抽出されましたプルトニウム千八百キログラムはどういうところに使われたのか、その残りはどんなふうになっているか、その点をお尋ねしたいのです。
  36. 松井隆

    松井政府委員 まず抽出されたプルトニウムにつきましては、動燃事業団がいろいろと使ってございます。具体的に申し上げますと、まず高速増殖炉の実験炉の「常陽」という炉がございます。そこで使ってございます。それから新型転換炉原型炉、「ふげん」という名前でございますけれども、そのための燃料にも使ってございます。あとその他は量的には非常にわずかでございますけれども、照射試験用の燃料と申しますか、いろいろと研究開発用と申しますか、そういうものにも使用されてございます。  それで量を申し上げますと、六十二年度末までに抽出されたプルトニウム全体が千八百キログラム・プルトニウム・フィッサイルでございますが、そのうちの約二百十キログラム・プルトニウム・フィッサイルが「常陽」の燃料として使われております。それから約四百七十キログラムが「ふげん」の燃料として使用されてございます。そうすると残りがまだ約千百キログラムございますけれども、これにつきましては、今申しました「ふげん」「常陽」の燃料にするためにプルトニウムを転換する、あるいは燃料加工施設で加工中であるとか、そういった加工工程ないしは加工用の原材料と申しますか、そういう形で存在しておるわけでございます。
  37. 上田利正

    上田(利)委員 そんなに千百キログラムも、六割近くも加工用の原材料というような形で残しておかなければならぬものでございましょうかね。
  38. 松井隆

    松井政府委員 これは当然やはり工場を順調に運営するためにランニングストックとして持っておるわけでございまして、もちろん工場の過程にあるものもございますし、原材料としてまだ持っておるものもございます。そういったものも含めて千百プルトニウム・フィッサイルということになります。
  39. 上田利正

    上田(利)委員 イギリスフランスへ再処理を委託いたしまして返還されたプルトニウム、これは電力会社に所有椎があるようでございますけれども、一キロ当たりの再処理コストは何円になりましょうか。いわゆる返還プルトニウムでございます。  それからまた、既に昭和五十九年に海上輸送を行っておりますけれども、この海上輸送費は幾らぐらいかかるのか。海上輸送費の中には護衛費がもちろん含まれていると思うわけです。いわゆる護衛艦づきで我が国へ運搬されたわけでございます。フランスの国の領海上はフランス軍が護衛をし、公海上へ来ましたら米軍がこの護衛をする、そして日本の領海上に来ましたら海上保安庁が護衛する、こういうようなことが言われておりますけれども、それは事実であるのかどうか、またそれぞれの護衛費用はどのようにして負担しておるのか、この辺を明らかにしていただきたい、こう思います。
  40. 松井隆

    松井政府委員 まずプルトニウムの値段の話でございまして、プルトニウムの価格というのはいわゆる市場があるわけでございませんものですから、そういう意味では随分幅がある。そのときのニーズによって変わってくるわけでございます。ちなみに申し上げますと、今動燃事業団が、先ほど申しましたように東海再処理工場でプルトニウムを回収しているわけでございますね。それはもともとの所有者は電力の燃料でございますから、それを買うわけでございます。それで値段を申し上げますと、現在購入している価格は、一キログラム・プルトニウム・フィッサイル、つまり核分裂性プルトニウム一キロ当たり約一万ドルで買っています。言いかえますと約百三十万円ぐらいになりますか、そういう値段で今動燃は電力から買ってございます。  それからもう一つの御質問の、五十九年に海外で再処理してできたプルトニウムを晴新丸でもって運んだわけでございますけれども、そのときの値段につきまして申し上げますと、この海上輸送の費用は、動燃事業団がみずからやったものでございますから動燃事業団が負担してございまして、その輸送費用は約五億円というふうに聞いてございます。それからなお、これは当然電力のプルトニウムを動燃が買って運んだわけでございますから、そのときのプルトニウムの値段は約十億円というふうに承知しております。  それからもう一つの御指摘の、この輸送に当たってアメリカフランスが護衛をしたのではないか、その費用はどうなっているかということでございますけれども、これは私どもアメリカフランスにお願いしたものでございませんでして、アメリカフランス独自の判断で護衛がなされたというふうに聞いてございます。したがいまして、これにつきましては私どもに護衛の費用の請求は来てございません。したがって、そういうものは支払っておりません。  以上でございます。
  41. 上田利正

    上田(利)委員 もう時間が来ました。終わります。
  42. 大坪健一郎

    大坪委員長 村山喜一君。
  43. 村山喜一

    ○村山(喜)委員 先ほどの質疑のやりとりを聞いている中からちょっと私も疑問に感じた問題がございますので、その点を初めにただしてまいりたいと思います。  国際間のプルトニウム輸送については動燃が責任を持って対処するんだということの説明でございましたが、それは一体動燃事業団法のどこでそのようなことが規定をされているのか、いろいろ諸政令や省令等を見てみますが、そのことがはっきりいたしませんので、それについての内容の説明を初めにお願いをしたい。  それからなお、日本が英国とフランス使用済み燃料の再処理を委託をした。その物件はだれのものなのかということが疑問になってまいります。したがいまして、これが発生源者である電力会社のものであるとするならば、その生産をしたプルトニウムを引き取る責任が日本側にある。これはもちろん契約に基づいてやっているのでしょうが、そのときに電力会社の財産であるものを動燃がかわって引き受けるということもおかしな話だなと思うのでございます。単なる燃料として使用ができるというプルトニウムもあれば、再生ウランもあることもわかりますが、そのほか、これから輸送されてまいります中に高レベルの廃棄物等があるわけでございます。そういうようなものは財産として資産価値を持っているというふうには我々は見ていないわけでございます。マイナスの要因というものを、また厄介な荷物を頼んだのですから、引き取らなければならないということでありましょう。  そういうようなものを引き取っていくときに、資産勘定は、先ほどプルトニウム国内生産の価格等については話を聞きましたが、一体そういうようなプラスマイナス分まで含めたものとして、トータル的に再処理の問題等を考えていらっしゃるのであろうかということについて疑問を感じながら、動燃が現在輸送についての責任まで持つような形で、八六年の夏にサンディア研究所で動燃とアメリカ側の方とPAT3の開発をめぐりまして、アメリカ側がバッテル・コロンバス社ですか、それが開発をしたんだというような記事もございますが、一体動燃はプルトニウムの、フランスイギリスに委託をしたものについてどれだけの責任と権限があるのであろうかということを初めにただした上で、お聞きをしてまいりたいと思います。
  44. 松井隆

    松井政府委員 先ほどの御質問で私、当面プルトニウム輸送は動燃が当たるというふうに申し上げました。それでまず法律の根拠でございますけれども動燃事業団法で、その二十三条第一項第一号では「高速増殖炉及び新型転換炉に関する開発及びこれに必要な研究を行なうこと。」というのがございます。それから第六号で「核燃料物質及び核原料物質の輸入及び輸出並びに買取り、売渡し及び貸付けを行なうこと。」という規定ぶりもございまして、そういう意味では本件は動燃が行うことも至当ではないかというふうに、私はまず法律の条項の方から考えてございます。  それからもう一つ財産権の問題かと思いますけれども、御案内のとおり、例えば使用済み燃料、これは当然それぞれの電力会社の所有に係るものでございまして、それを例えばフランスあるいはイギリスの再処理に出すということで、そこにできたもの、つまりプルトニウム、ウラン、それから廃棄物と申しますか、これもすべて当該電力会社の所有に属するものでございます。それで動燃事業団は、多分五十九年の晴新丸のときにそういうふうにしたわけでございますけれども、現地でその所有者である電力会社からそのものを買い取りまして、それを運んできた、こういうような仕組みでございまして、まずとりあえず、いずれにしろ日本プルトニウムのニーズを今一番持っておりますのはやはり動燃事業団でございます。先ほど申しましたように「常陽」がございます。それから「ふげん」がございます。それからさらに高速増殖炉の原型炉の「もんじゅ」を今つくってございます。そういったようなものにプルトニウム燃料が必要でございまして、まずそれを動燃事業団が買い取って、それで運ぶというのが極めて常識的な形じゃないかというふうに思っている次第でございます。
  45. 村山喜一

    ○村山(喜)委員 そこで、電力会社がイギリスフランスに委託をした使用済み燃料の再処理から生まれましたプルトニウムの量は幾らになっておりますか。
  46. 松井隆

    松井政府委員 全体といたしまして、イギリスフランスに再処理を委託している量から見まして二十五トン・プルトニウム・フィッサイル、つまり核分裂性プルトニウムが約二十五トンと言ったらよろしいかと思います。と申しますのは、バーンアップによってその量は大分変わるものでございますから、約二十五トンというふうに我々大体頭に置いております。
  47. 村山喜一

    ○村山(喜)委員 二十五トンということは二万五千キロということですね。それが返ってくる。日本においても最近、話を聞いておりますと千八百キログラムありますよ。そのうち今余裕として保管をしているのが千百キログラムあります。そういう状態の中でこれから九〇年の終わりまでに二万五千キログラムのプルトニウムが返ってくる。例えば増殖炉の場合、原子力委員会の長期見通しによりましても二十一世紀に入ってから、二〇三○年ごろではなかろうかということが言われておりますね。そういうような大量のプルトニウムを生産をし、そして燃料として保有をしておっても使い道がないのではないですか。そのような状態で、このプルトニウムの管理を必要とするというところから今度の原子炉規制法の法律が出てきたのではないのですか。そこら辺はどういうふうに判断をしているのですか。
  48. 松井隆

    松井政府委員 比較的長期に見た場合のプルトニウムのニーズの方からちょっと御説明させていただきたいと思います。  日本プルトニウムを必要とするものにつきまして申し上げますと、まず動燃事業団の「常陽」という原子炉がございます。これと「ふげん」、それから先ほど申しました「もんじゅ」、これがまず動燃事業団で必要になるわけでございます。それで、この用途から見ますと、私ども来世紀初頭といいますか、約二〇〇〇年に核分裂性プルトニウムで約十トン必要というふうに計算してございます。それからもう一つ先生案内のとおり、電源開発株式会社が青森県の大間の方でATR実証炉というのを計画しておるわけでございまして、それにつきましては約五トンぐらいが必要というふうに考えてございます。それから高速増殖炉の実用化をするために動燃の「もんじゅ」、それにつきましてその次に実証炉をつくろうという計画がございます。実証炉計画については、先ほど申しました年次のレンジで考えますと、約三トンぐらいというふうに考えます。それからあともう一つは、電気事業者が軽水炉でプルトニウム利用しよう、俗称プルサーマルと称するものでございますけれども、それで約二十二トンぐらいが予想されるわけでございます。  したがいまして、全体として約四十トンぐらいになるというふうに思います。だから、これから二〇〇〇年あるいは二十世紀初頭ごろまでに大体四十トンぐらいのプルトニウムが必要になるというふうに判断してございまして、先ほど申しました海外再処理で得られたものが約二十五トンでございます。それから動燃事業団の再処理工場も動いております。それからさらに、これから青森県の六ケ所村で再処理工場が動きます。そういうもの等でこれを賄っていったらどうだろうかというふうに我々考えている次第でございます。それが量的な根拠になっております。
  49. 村山喜一

    ○村山(喜)委員 軽水炉型のいわゆる再処理工場というのはフランスのラアーグ工場と東海村だけだ、英国の場合には今軽水炉型の再処理は中止している、こういうふうに聞いているのでございますが、これから海外に対する再処理の委託はいつまで続けていこうと考えているのであろうか、その見通しはどうなっておりますか。
  50. 松井隆

    松井政府委員 軽水炉燃料の再処理につきまして一点ばかり御説明させていただきたいと思いますけれどもイギリスは現在軽水炉用の燃料の再処理工場を建設中でございます。俗称THORPと言っておりますけれども、それを現在建設してございまして、今の予定では一九九二年に運転開始というやに聞いてございます。したがいまして、イギリスフランスそれから日本、そういうところは軽水炉燃料の再処理を行っているわけでございます。
  51. 村山喜一

    ○村山(喜)委員 ガス燃料の再処理は非常に処理のしやすいもので、英国でもフランスでもピューレックス法で処理がされているという話は聞くのですが、これから日本の場合、非常に燃焼効率を上げていくというようなやり方が進められておるようでございまして、その燃焼度の増大で再処理が非常にしにくくなってくる、こういうような技術的な問題が残っているのだというふうに聞いているわけでございますが、それらの技術上の難問の解消というのはどういうふうに解決をしようとしていらっしゃるのですか。
  52. 松井隆

    松井政府委員 御案内のとおり、動燃の再処理工場で我々いろいろトラブルもございました。そういうことで経験して、自前の技術という格好で進んできているわけでございまして、さらに今度は大型の再処理工場が六ケ所村で、動燃の技術も大いに活用しながら、基本的にはピューレックス法、フランスのCOGEMAの技術でございますけれども、それでもって進もうということでございます。先生御指摘のとおり、燃焼度が上がった場合にそういった少し難しい問題があるということは承知してございますけれども、基本的に私どもとしては、そういった今までの技術開発によりまして、この軽水炉燃料の再処理ということは安全に行えるものと理解している次第でございます。
  53. 村山喜一

    ○村山(喜)委員 我々が聞いているところでは、燃焼度の増大で超ウラン元素の核種が増大をしていくというような、技術上の解決をしなければならない問題が多いと聞いておりますが、最近は軽水炉の運転の日数を延ばしていく、そのために燃焼度を高めていくことも行われ、あるいは先ほどお話がありましたようなプルサーマルの計画等が進められていく中では、再処理の問題がなかなか問題になってくるのではなかろうかなという懸念をいたしておることを表明しておきたいと思います。  そこで私は、今度提案されました原子炉等の規制に関する法律と、それから日米原子力協定、さらに核防条約の三つの相関性をきちっと位置づけておかなければならないのではないかと考えているわけでございます。  まず、本委員会で論議されております原子炉等のこの法案内容と核防条約との関係はどのような位置づけをしておるのかということでございます。というのは、核防条約をつくることによって国内法整備をやらなければならないという義務が課せられたと受けとめてよろしいのですか。
  54. 石塚貢

    石塚政府委員 今回の改正法と核物質防護に関する条約への加入との関係につきましては、今回の法改正規定のうち、輸送中の核物質防護に関する責任の移転あるいはそれに関する確認の条項、今回の改正法案の五十九条の三のそういう条項でございますとか、あるいは核物質を用いた犯罪の処罰規定、これは改正法案の七十六条の二、こういったものは我が国核物質防護に関する条約加入する上で不可欠な規定でございます。さらにそのほか国内施設等の核物質防護措置にかかわる規定につきましては、核物質防護に関する条約の前文においてその重要性が述べられております。また、昭和五十六年の原子力委員会決定を踏まえまして、今回その内容法律上明確に位置づけたものということでございまして、大きく分けましてその二種類がございます。
  55. 村山喜一

    ○村山(喜)委員 国際間の核物質を運搬する、その防護規定整備するということと、それを受けての国内法整備条約の七条で義務づけられているようでございますが、この条約全体の考え方について、外務省の方が見えておりますので、お聞きをしておきたいと思います。  日本が今度批准をするということになれば二十三カ国目の批准国になるということでございますが、日米原子力協定の交渉のさなかに、まだ日本は核防条約批准していないじゃないか、だから日米原子力協定を調印するに当たって、プルトニウム等の使用、管理について日本側に包括的な委任を三十年間にわたってするに当たっては、核防条約批准されていないということが支障になってくるではないかということと、それから技術上の問題と、いろいろ懸念をされている核拡散の問題と、いろいろ言われてまいりました。先ほど話を聞いておりますと、そのことはないという話でございますが、外務省の方は、この条約を調印した時点から今日に至るまで随分月日はたっておりますね。それが今の段階で批准を求めてくるということになったのは何か理由があったのですか。
  56. 中島明

    ○中島説明員 お答え申し上げます。  核物質防護条約につきましては、先生御指摘のとおり、今を去る十年ほど前に政府会議が開かれまして、そのテキストについて内容が確定したところでございます。そして、このたび我が国が最終的にこれに入ることになったわけでございますが、それまでの間、この条約に基づきまして私どもが負うことになります義務をいかなる形で担保するかということについて検討をしてきたわけでございます。  最大の問題は、この条約の第七条に基づきまして設けることになります核物質を用いた犯罪の処罰規定をいかなる形で設けるかということでございまして、それにつきましては、外国人が外国において行った核物質を用いた犯罪、これもこの条約に基づきまして処罰の対象とするという考え方がございますので、それをいかに担保するかという問題があったわけでございます。これにつきましては、前の通常国会におきまして刑法の四条ノ二という規定が新しくできまして、条約その他の国際約束によって日本の外で行われた犯罪で処罰すべきものとされているものにつきましては、これを処罰することができるという形になりましたので、それを受けましてそれ以外の条項についても鋭意検討を進めまして、今回準備が整うことになりましたので、我が国として締結することにしたわけでございます。
  57. 村山喜一

    ○村山(喜)委員 刑法の三条及び四条ノ二によって国外犯が処罰されるような法律改正を待っておって、採択をされたのは昭和五十四年の十月ですから、十年ぐらいかかって出してきた。これは今出してきたのはどういうふうな環境が熟した——国内的な問題は刑事法上の問題だけですか。
  58. 石塚貢

    石塚政府委員 私、先ほども上田先生に御答弁申し上げましたとおりでございますが、ただいま外務省の方からも御説明ありましたとおり、国内法整備というものをいかに我が国にとって適当な形にまとめていくかということについての検討を進めてきておる、それがこの時点に至りましてようやくその成案を見るに至ったというのが、今回法律改正案を御提出申し上げた理由でございます。
  59. 村山喜一

    ○村山(喜)委員 第六条の秘密の保護とかあるいは要請、国外犯の規定やハイジャック防止、処罰規定は、原子力基本法の中で今まで私たちが進めてきた自主、民主、公開という原則が、これを批准をすることによって侵されることになり、また、民間の中で今反原発の市民運動等が大変起こりつつあるわけですが、そういうような運動等がこれによって抑圧をされるということにつながってくるのではないだろうか。特に、第七条の規定等によりまして未遂の行為とか加担行為等も犯罪として構成要件を持ってきて処罰をするということになってまいりますると、これはプルトニウム社会の中に国民を閉じ込めてしまうことになるのではないか。物が言えないような状態、国民の知る権利というものが抑圧をされていく。平和利用のために使った核物質であって、それを国際間の輸送に適用するための条約として、それに一部は国内において適用するところの法制化をやるということで設けられておりますこの条約が、そういうようなところにまで影響を来すのではないだろうかというふうに私たちは思うのでございます。そうなれば、今核兵器を所有をして、核の問題については非常に抑圧的な対策をとっておる核兵器の所有国と変わりがないような体制の中に押し込められていくのではないだろうかと思っておりますが、それについてはどのように考えているのか。これは外務省とそれから法律を制定をしました法務省、それに科学技術庁の三者の見解を承っておきたいと思います。
  60. 石塚貢

    石塚政府委員 原子力の三原則、民主、自主、公開の三原則意味はどういうことであるか、これにつきましては今さら私がここで申し上げるまでもございませんので、そこの御説明は割愛させていただきますけれども、今回原子炉規制法の体系の中で位置づけようといたしております核物質防護は、昭和五十五年の原子力委員会核物質防護専門部会の報告書において記載されております、すなわち「核物質の盗取等による不法な移転を防止すること。」、それから第二点は、原子力施設核物質輸送に対する妨害、破壊行為を防止するといったことを目的としておるものでございます。  そこで、今回の法改正は、民主的な運営のもとに原子力利用を進めるため設けられた原子力委員会、あるいはその原子力委員会決定を受けて法改正が行われるという性格のものでございますし、また、我が国原子力の活動を取り巻く内外の諸情勢を踏まえまして、我が国が自主的に本改正を行うということであることは当然のことでございます。また、従来から公開の原則の適用に当たりましては、財産権の保護あるいは核不拡散等の湖点から、ノーハウ等の商業機密、あるいは核不拡散上あるいは核物質防護上機微な情報につきましては慎重に対処してきておるところでございまして、我が国原子力平和利用担保の観点から、核物質防護というものにかかわります機微な情報について不必要な分散を抑制するということでございますので、これはいわゆる公開の原則には反しないというふうに考えておる次第でございます。いずれにいたしましても、核物質防護に関する体制整備していくに当たりましては、従来どおり基本法第二条の原子力原則を堅持していくという方針には変わりはございません。先生の御懸念といいますようなものは、私ども全くあり得ないというふうに思っている次第でございます。
  61. 中島明

    ○中島説明員 この核物質防護条約は、国際輸送中の核物質について適当な防護の措置というものがとられるようにすることを義務づけることによりまして、国際輸送中の核物質を不法な取得、不法な使用から守るということを目的としております。  それからもう一つは、核物質の盗取等の行為、これを犯罪といたしまして、容疑者が刑事手続を免れることがないように、この条約締約国に対して、裁判椎の設定とか容疑者の引き渡しあるいは当局への付託、こういうことを行うことを義務づけております。  以上のように、この条約におきましては核物質防護という観点から一定の義務というものが負わされておりますが、今申し上げましたように、この条約防護という趣旨に照らしまして、私どもはその防護を行うことによって原子力平和利用が推進されるというふうに考えておりまして、今科学技術庁の方からもお話がございましたように、この条約原子力平和利用を進めていく上での日本の諸原則といったものは矛盾しない、そういうふうに考えております。
  62. 東條伸一郎

    ○東條説明員 法務省の所管の関係では罰則部分でございますが、罰則部分は、条約の七条の規定を受けまして、それぞれ核物質の不正な操作による危険犯、それから核物質を使用するという脅迫、それから核物質を強取する旨の強要というような類型を定めたものにとどまるわけでございまして、その限りでは先生が御指摘のような御懸念というものは、罰則に関する限り全く当たらないものだと考えております。
  63. 村山喜一

    ○村山(喜)委員 国家権力に近い存在の人たちの立場から問題をとらえる考え方と、核の平和利用というものは否定しないが、それによってますますプルトニウム社会の管理下の中で核の問題について取り組みをしなければならない人たち、あるいは核物質が高速自動車道等を通りまして運行をされている中で、いつ災害を受けるかもわからないような状態に立たされている人たち、その立場からいえば、問題の指摘をきちっとしておかないと、核をハイジャックするのだというとらえ方で逮捕されたりするようなことになっては大変でございますから、その点から私は物を申し上げているわけでございます。  古い資料で恐縮ですが、ちょうどここに資料がございます。これは七九年十一月十四日の読売の記事でございますが、「核燃料輸送車を妨害 名神高速 原発反対の過激派か 京大生ら車四台割り込み・包囲」ということで、非常に大きなセンセーショナルな見出しで出ておりました。実態は、後でおわびの記事が出ておりますように、そうではなかったのだということがわかったのですが、こういうような「厳戒の中を搬入」とかというような形で新核燃料物質がサイトの方に運ばれる、あるいは使用済み核燃料物質を再処理工場まで運んでいく。  先ほどは委託をしたものを外国から引き取るプルトニウム輸送の問題で論議がございました。この前も私は申し上げたのですが、アメリカの場合には、法律によってそれぞれのセクションの地方公共団体等には連絡をしながらやってまいるわけでございますが、日本の場合には、法律でそのようなことをしないで政令等によって処置していこう、省令等によって規制していこうという構えが現在の姿であるようでございます。このような状態の中で、今度原子炉規制法が通過して罰則が整備をされてまいりまするならば、過剰な警備が生まれてくるのではないかということを心配している団体もあるわけでありますが、これについては警察庁の方はどのような考え方に立っているのか、お伺いをしておきたいと思います。  そこで、先ほど法務省の方からもお話がございましたが、今度の罰則規定等見てまいりますると、どうも刑法の改正案の中では処理ができない危険罪等を先取りして、この特別法の中で法律規制をやっているのではないか。例えば、そのほか財産の建造物の破壊罪等につきましては、刑法の場合には建造物は五年でございますが原子炉の場合は十年とか、そして刑法にはないような未遂罪の問題につきましても、非常に厳しく対象を考えながら処理しているとかいうような問題がございまするし、これらの罰則の規定は一体どこを基準にしてこのような法律規制をしようとしているのか、この点について明らかにしてもらいたいのであります。
  64. 石塚貢

    石塚政府委員 アメリカにおいては輸送の都度地方の自治体に連絡をしているのではないかとの先ほど先生の御指摘がございましたので、この件につきましてまず私からちょっと御説明をさせていただきます。  米国におきましては、州をまたがって高レベル放射性廃棄物輸送する場合、これはNRCの許可を必要とするということを内容とする核廃棄物の輸送法というものが、昨年の三月に米国の下院の公共事業・運輸委員会等に下院議員のガンダーソンという方から提出された。あるいはまたそれ以前にもそれ以後についても、同様の法案がいろいろな議員から上下両院で提案されたことにつきましては承知いたしておりますが、米国議会のことでもございますし、また法律として成立したわけでもございませんので、そういった地方自治体への連絡義務というものにつきましては、私ども内容についてはよく承知をいたしておりません。
  65. 太田利邦

    ○太田説明員 警察といたしましては、核物質奪取等の不法事案あるいはその輸送時の事故等、これを未然に防止いたしますため、そのときどきの警備情勢等に応じ、必要な警察措置を講じているところであります。今後とも適正な警備に努めてまいりたいと考えております。
  66. 緒方謙二郎

    ○緒方政府委員 局長並びに警察の方から御答弁がございましたが、若干先生の御指摘の点に補足的にお答えをさせていただきます。  第一に、そもそも罰則をこの法律改正案の中に入れたのはいかなることであるかということでございますが、これは御指摘のとおり、条約の第七条を履行するため、かつそれに必要な限度において規定を取り入れたということにとどまっております。それ以上のものでもそれ以下のものでもございません。  それから、先生御指摘の点で、特に七十六条の二の危険犯について構成要件があいまいで、運用いかんによっては何か非常に抑圧的に使われる危険性があるのではないかという御指摘ではないかと思いますが、七十六条の二の危険犯、言葉では俗に危険犯と申しておりますが、これは構成要件がはっきりしているわけでございまして、要するに、特定核燃料物質をみだりに取り扱うということが第一の要素、したがいまして、適法に扱う場合には対象になりません。それから、特定核燃料物質の核分裂反応あるいは放射線を発散させるということ、そういうことを行うという認識かつ認容していることが二番目でございます。それから三番目には、それによって人の生命、身体または財産に危険を生ぜしめようという認識と認容が必要なわけでございます。こういう三つの要件から成り立っているわけでございまして、このいずれを欠きましても本罪は成立しないわけでございますから、これを乱用するというような危険性はおよそ考えられないのではないかと考えております。  それから、刑罰の重さについてお話がございました。量刑の問題については法務省からあるいはお答えをいただくのがよろしいのかもしれませんが、危険犯、これは七十六条の二は十年以下の懲役という罰になっておりますが、本条はいわゆる公共危険罪的な性格を持つものでございまして、同じような性格のものであります放射線障害防止法の五十一条の危険犯と同じ量刑、これも十年以下の懲役ということになっておりますが、同じ懲役になっております。また、国内で類似の危険犯でございます火炎びん処罰法の第二条の危険犯というのは七年以下の懲役ということになっておりますが、放射性物質である特定核燃料物質と火炎瓶とを比べた場合に、潜在的危険性が非常に高いわけでございますし、危険の範囲も非常に広範囲に及ぶということから、こういう点でも量刑は一応相当なものではないかというふうに考えているわけでございます。  七十六条の三の脅迫罪、三年以下の懲役ということになっておりますが、これも特定核燃料物質の危険性を利用した加害行為を内容とする脅迫でございまして、単に人の意思決定であるとか行動の自由を奪うということにとどまりませんで、こういう脅迫が行われますと、特定核燃料物質が持っております潜在的危険性のために大変広く社会的な不安というものも生ずるおそれがあるわけでございまして、その意味で刑法の脅迫罪の特殊類型、加重類型として規定しているわけでございます。同じような行政法で加重類型をとっておるものに、例えば商品取引所法、証券取引法等がございますが、これも三年ということになっておりまして、それらの法律間のバランスはそれなりによく吟味してやっていると考えております。
  67. 村山喜一

    ○村山(喜)委員 時間がありませんので後の説明はよろしゅうございますが、私は長官に最後に、どうも今回出されたこの法律でも、あるいは先々国会でございますか、原子炉規制に関する法律の一部を改正する法律でも政令委任、非常に政令、総理府令、通産省令で定めるということになっておりまして、動燃事業団でも、あるいは製錬事業所でも加工事業所でも原子力発電所でも、あるいは再処理工場でも廃棄事業所でもそうでございますが、その内容が示されないで法律の審議をやれということであっては、これは十分な審議が尽くされたとは思われないのでございます。私は委員長にも要請をしておきたいのでございますが、本委員会に提出をされました法案は、今国会においてはこの規制法が一 つであるようでございます。したがいまして、この核物質防護規定の許可基準でもあるいは核物質防護管理者の選任基準でも同じようなことが言えると思いますので、少なくとも政省令の要綱ぐらいは法案の審議の段階で提出を願いまして、それまで含めた形で論議が行われるように取り計らいをしていただきたいということを委員長には要請を申し上げると同時に、当局の方ではその準備ができるかできないかお答えをいただいて、私の質問を終わりたいと思うのです。
  68. 石塚貢

    石塚政府委員 本改正案を受けましての政省令につきましては、現在科学技術庁におきましてもいろいろと検討中でございます。もちろん最終的な案につきましては、いろいろと関係するところとの調整も必要となりますけれども、当庁で現在検討中のものにつきましては、先生に御提出できると思います。
  69. 大坪健一郎

    大坪委員長 速記をとめてください。     〔速記中止〕
  70. 大坪健一郎

    大坪委員長 速記を起こして。  次回は、来る十四日木曜日午前九時五十分理事会、午前十時委員会を開会することとし、本日は、これにて散会いたします。     午後五時四十三分散会