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1988-03-22 第112回国会 衆議院 科学技術委員会 第2号 公式Web版

  1. 会議録情報

    昭和六十三年三月二十二日(火曜日)     午前十時五分開議  出席委員    委員長 大坪健一郎君   理事 榎本 和平君 理事 小宮山重四郎君    理事 佐藤 敬夫君 理事 粟山  明君    理事 若林 正俊君 理事 上坂  昇君    理事 貝沼 次郎君 理事 小渕 正義君       唐沢俊二郎君    櫻内 義雄君       竹内 黎一君    中山 太郎君       原田昇左右君    山下 元利君       上田 利正君    野坂 浩賢君       村山 喜一君    近江巳記夫君       春田 重昭君    矢島 恒夫君  出席国務大臣         国 務 大 臣         (科学技術庁長         官)      伊藤宗一郎君  出席政府委員         科学技術庁長官         官房長     見学 信敬君         科学技術庁科学         技術政策局長  加藤 昭六君         科学技術庁科学         技術振興局長  吉村 晴光君         科学技術庁研究         開発局長    川崎 雅弘君         科学技術庁原子         力局長     松井  隆君         科学技術庁原子         力安全局長   石塚  貢君         科学技術庁原子         力安全局次長  緒方謙二郎君         資源エネルギー         庁長官官房審議         官       逢坂 国一君  委員外出席者         原子力安全委員         会委員長    内田 秀雄君         外務大臣官房外         務参事官    法眼 健作君         外務省国際連合         局原子力課長  中島  明君         資源エネルギー         庁長官官房原子         力産業課長   大宮  正君         資源エネルギー         庁公益事業部開         発課長     小林 盾夫君         資源エネルギー         庁公益事業部原         子力発電課長  梅沢  泉君         資源エネルギー         庁公益事業部原         子力発電安全審         査課長     山本 欣市君         科学技術委員会         調査室長    西村 和久君     ───────────── 委員の異動 三月二日  辞任         補欠選任   上田 利正君     城地 豊司君   春田 重昭君     大久保直彦君   矢島 恒夫君     不破 哲三君 同日  辞任         補欠選任   城地 豊司君     上田 利正君   大久保直彦君     春田 重昭君 同月八日  辞任         補欠選任   不破 哲三君     矢島 恒夫君 同日  辞任         補欠選任   矢島 恒夫君     不破 哲三君 同月九日  辞任         補欠選任   春田 重昭君     池田 克也君 同日  辞任         補欠選任   池田 克也君     春田 重昭君 同月十日  辞任         補欠選任   春田 重昭君     坂口  力君   不破 哲三君     矢島 恒夫君 同日  辞任         補欠選任   坂口  力君     春田 重昭君     ───────────── 三月十一日  核原料物質核燃料物質及び原子炉規制に関する法律の一部を改正する法律案内閣提出第五一号) 同月三日  放射線被曝線量基準緩和反対等に関する請願外一件(野坂浩賢紹介)(第五七七号)  同外二件(小澤克介紹介)(第六一〇号) は本委員会に付託された。     ───────────── 本日の会議に付した案件  核原料物質核燃料物質及び原子炉規制に関する法律の一部を改正する法律案内閣提出第五一号)  科学技術振興基本施策に関する件      ────◇─────
  2. 大坪健一郎

    大坪委員長 これより会議を開きます。  科学技術振興基本施策に関する件について調査を進めます。  質疑の申し出がありますので、順次これを許します。佐藤敬夫君。
  3. 佐藤敬夫

    佐藤敬夫委員 きょうは、自由民主党を代表いたしまして、大臣並びに関係皆様方に御質問させていただきます。よろしくお願い申し上げます。各協力協定の問題や、あるいは最近になりまして大変さまざまな原子力関係の事故や今後の原子力に対する困難を見通される問題もあるようでございますので、少し突っ込んだ議論になると思いますが、どうぞよろしくお願い申し上げたいと思います。  まず質問を始める前に、アメリカ大統領候補でありますドール氏が、日本には技術はあっても科学はないということを話しております。この言葉をその所信の中で大臣はどう受けとめられるか、印象で結構でありますから、簡単にお聞かせをいただきたいと思います。
  4. 加藤昭六

    加藤政府委員 今御質問科学技術のポイントでございますが、科学技術かかわり合い、これは古来いろいろな形で非常に密接なかかわり合いを持ってきた時代もございますし、また全く離れた形でそれぞれの開発、進展が行われた場合もございます。概して申し上げますと、古代においては科学技術というのは全く隔絶した形でそれぞれ存在し、進んできたというふうに見られておりますし、近代に至って次第に科学技術が接近し、融合してきているというふうなことが言われております。現代におきましては、特に先進国におきましては、こうした科学技術というのはまさに融合した形で運営が行われていくべきであり、また行われつつあると私ども認識しておりまして、科学技術政策大綱におきましても、科学技術と一体化した形で三つの柱、基礎研究の重視、国際貢献、自然と人間との調和というものを掲げて進めているところでございます。
  5. 佐藤敬夫

    佐藤敬夫委員 実は私は難しいことをお聞きしているのではなくて、大臣所信をお伺いしている。要するに、これからの日本が国際的な信頼や協調体制をとっていくために一体科学技術庁分野というものをどういうふうに再構築していくのかな。アメリカから見ると、ドールという大統領候補までも技術はあって科学はないという印象で話しているということは、まさに日米科学技術協力協定の中でさまざまなただ乗り論だとか知的所有権移転の問題だとか、そういう一つ一つのことに対して日本は今後一体どういうふうにこの分野の問題に対して予算を配備し、あるいは基本的な考え方としてどうやって科学技術の問題を進めていくのかなという印象について、私は極めて興味深い言葉だという感じがするのです。ですから、科学技術がどうだというのじゃなくて、その言葉に対してどういう印象大臣が持たれるのかな、こういうことをお伺いしたかったのでありまして、できれば大臣から一言その言葉に対する印象を聞きたいと思います。
  6. 伊藤宗一郎

    伊藤国務大臣 まあ科学というのはもちろん学問ですから、あくまでも真理探求なりそういうものに奉仕するというか、そういうものが学問だろうと思いますけれども技術となりますと、そういう科学真理探求の結果得られたものを今度は人類あるいは産業の福祉なり幸せなり、そういうものにその芽をそのまま技術として生かしていくということだろうと思います。ただ、今も局長の方からお話し申し上げましたとおり科学技術というものが一体化になりつつあるわけですから、特にまた科学というのは真理探求でありますから、それを政治分野でどうするかということは、私はある意味では極めて微妙なことだと思います。それを科学技術庁という役所なり政府がどういう調整をしていくかということは、極めて大事でもありますけれども、またある意味においては慎重にしなくてはいけないのじゃないかなというふうにも考えます。
  7. 佐藤敬夫

    佐藤敬夫委員 何か非常にかたい御答弁になったのでありますが、そうではなくて、例えば、今アメリカでは民官合わせまして昭和六十一年度においても約二十兆円の研究開発費投資というものをしておられるのですね。政府負担で見ても、本年の二月に発表された一九八九年度会計の予算教書では、科学技術宇宙開発費は一兆七千億、前年度対比二〇・二%増しになっている。そういう状態の中から日本科学技術庁関係というのですか総体予算というものを見ると、まさに口ではいろいろなきれいごと総体をまとめようとしてみても、実際にどうなんだといったときに、そのことが非常に向こうにとっては頼りないような感じに見えるのじゃないかなという気がするわけです。例えば去年とことしの予算、決算という状況の中で見て、日本科学技術に対する総投資額というのはどういうふうになっておりますか。
  8. 加藤昭六

    加藤政府委員 これは総務庁統計でございますが、したがいましてやや年次が古うございますが、一九八六年におきまして我が国におきましては研究開発投資は八兆四千億円でございます。諸外国と比べますと、米国は十九兆三千と極めて高水準にございますが、西ドイツフランスイギリス等の数字を見ますと、西ドイツが四兆二千、フランスが二兆八千、イギリスが二兆三千ということで、日本西ドイツフランスイギリスを合わせた額の研究投資を最近においては行っているという状況でございます。
  9. 佐藤敬夫

    佐藤敬夫委員 比較して、例えば二十兆というような大きな研究開発投資を行っているアメリカが、さらに政府科学技術宇宙開発費というものに対して、率だけで言いますと二〇%も超えるような大きな投資をしようというときに、日本が前年度の比較において一%わずかぐらいの投資アップ率というようなことを向こうが考えてみたら、それはまことにお粗末だなという印象を持つに違いないと私は思うのでありますが、そのことに対しての御印象はどうですか。
  10. 加藤昭六

    加藤政府委員 ただいま申し上げましたように、研究開発投資額では各国比較が以上のようでございますが、政府負担分というもので見た場合に、一九八六年でございますが、日本は一兆六千五百億、これに対しまして米国は九兆三千億と圧倒的な高水準にございますが、ヨーロッパ、例えば西ドイツは一兆六千八百、フランスは一兆五千、イギリスが一兆一千、年次が多少差異いたしますが、アメリカを除けば西ドイツフランスイギリス日本政府負担分におきましてはほぼ同額かやや下回るような状況であるということでございます。
  11. 佐藤敬夫

    佐藤敬夫委員 しつこいようでありますが、要するに私ども外から、外国から見た日本印象というものは、私は経済人でありましたから一つ会社企業という中に日本の国というものを押しやって見ますと、健全な赤字部分をどう持っているかということで、その企業が将来に向かって、あの企業は必ずいつかは大きな貢献あるいは大きな発展をする会社だなという印象に私どもは受けとめているわけですね。その場合に、日本の国というものを見て健全な赤字部分というのは何かといったら、やはり科学技術分野だとか文部省の人をつくる分野とかそういうものに、今は赤字だけれども将来に向かって必ず花が開くだろうというものに、どれだけ政治政府が大きな今果たすべき役割をしているかという部分については、その予算とかそのものに対応する金額というものも、物を見るときの一つの視点に値すると思うのです。今果たして日本科学技術分野とか人づくり分野というものがそういう目に映っているのかいないのかという印象からいくと、私はやはりそういう印象に受けとめられていないというような感じがしてならないのです。だから、確かに国土庁が提案をされて一省庁一移転とか、合理化とか行政改革とかいろいろなことをおっしゃっておりますけれども、二十一世紀に向かって科学技術庁というものがどうあるべきなのか、本当に現在のような形で、このままこのままという形でいって周りを説得できるのかというと、どうも私はそういうふうに思えないのです。思い切って科学技術庁を省に切りかえていく、文部省の持っている学校関係、例えば大学関係に出している予算なんかは科学技術庁分野に引っ張ってくるとか、あるいは通産省の持っている資源エネルギー部分のものを科学技術庁のところに持ってきて、外国から見ると、庁から省に移ってこういう形で二十一世紀に向かうのだなんという改革の方が、むしろ外国にとって非常にわかりやすい問題の提起になっていくのではないかな。あるいは、もしそれが従来の惰性の中で無理だというのであれば、本当にもっと全部すべてのものを切り捨てて、科学技術庁というものが完全に調整役の権限を持って、そしてそれらの分野調整機能だとか交渉窓口だとかいうものをきちんとした形で持っていくとか、どうしても科学技術庁というイメージからもう一つ大きく飛躍をしていくということの考え方を持たなければならぬのではないかなということを、さまざまな交渉事の中を外側から見ておりまして感ずるわけであります。  大臣でも結構でありますが、またどなたでも結構であります。できるだけ大臣にお答えいただきたいのでありますが、そういう意味科学技術行政に対する総合調整機能強化について今後どのように取り組んでいかれるのか、お気持ちを聞きたいと思います。
  12. 伊藤宗一郎

    伊藤国務大臣 先生おっしゃるとおり、全く同感でございまして、科学技術庁日本政治なり行政中心に置く、科学技術なしにはすべての政治考え方進め方行政進め方も成り立たないというお考えには全く同感でございまして、私もできれば省に昇格できるようなそういう科学技術庁自身の奮発を、我々自身を含めまして、ぜひ努力をしてまいりたいと考えております。そのための我が役所に課された調整能力強化でございますが、その立場を踏まえまして我々は今までも研究開発の相互の連携、整合性が保たれるような調整を行っておりますけれども、さらに自分立場をしっかり踏まえながら、総合的に推進することに努力をしてまいりたいと思います。  また、そのために、先生篤と御案内のことでございますけれども政府としては科学技術政策大綱というものを六十一年の三月に決定をしておりますし、またその前には科学技術会議政策委員会というものを設置して、機動的な科学技術政策企画立案に当たっております。また科学技術庁内部部局の再編成なども行いまして、これらの政策推進に当たっております。また科学技術振興調整費も拡充を図っておりまして、六十三年度の予算でも皆様方の御協力を得ているところでございまして、今後総合調整機能の一層の充実強化に一生懸命になって努めてまいりたいと思いますし、目指すところは今お話しのとおり、科学技術庁という役所を本当に日本政治なり行政中心あるいはまた根底に置くというくらいの意気込みで当たってまいりたい、このように考えております。
  13. 佐藤敬夫

    佐藤敬夫委員 これはある雑誌で大臣が東北大学の西澤潤一先生対談をされた。すごく明るいのですね。私は大臣科学技術というものに向かってどんなふうに考えておられるのかということが、今の答弁よりむしろこっちの方がはるかにわかりやすく印象づけられて、大事に大事にコピーをとって持っておったのです。確かに私は今、お金のことだけ、あるいは日本が抱えている省の縦割り意識の中でのそういう問題を統合調整したらどうだというお話を申し上げたのです。この対談お話のように、根本的には一体基礎科学あるいは基礎研究費とかさまざまな問題があっても、それをどういう方向に位置づけていくのかという極めてはっきりした方向が見えてくることが一番大事なことじゃないかなという感じがするわけです。  例えば、今までのように国境のある時代から国境のない時代に変わってきたのだ。日米原子力協定にしても科学技術協定にしても、肝心なところがどうしても一歩不透明でわかりにくいということは、やはりお互いの国の事情というものを本当に知り合うという環境がまだ整っていない。太平洋を小さな湖にするのだというくらいな迫力なら、一方はやはりそういう研究費投資金額も問題であるけれども、その方向お互いが、日米協力し合ってどういう方向に求め合っていくのだ、今自分の足りないところは補ってくれ、向こうの足りないところはこっちが補おう、それが金の交流になったり知識の交流になったりして、こういうぎすぎすした、何かおどかしながら、これをやらなければこっちというような関係でなくて日米科学技術のあり方というものを考えていかないと、本当にこれからお互い関係がますますエキサイトしていくような、ぎすぎすした環境がますます増幅されていくのじゃないかな、こういう心配がしてならないわけであります。その予算にしても、いかに使うか、どのようなものにどういうふうに使っていくのかという基本的な問題はあるにしても、どうぞ大臣もそういう腹をきちっと据えていただきまして、庁から省へ、そしてそういう一つの大きな枠組みに向かって今後どのような方向に向かっていくのかということを、この委員会を通じて極めて正確に御指示いただければ大変ありがたいというふうに思います。  基本的なことにつきましてはこれでやめたいと思いますけれども、もう一つ頭体操で、私も科学技術委員会へ入りましてまだ日が浅いわけでありますが、どうも科学技術分野お話というものは、先ほど最初の局長答弁にありましたように、非常にさわりにくいし温かみがないわけであります。例えば同じ世代なんかにしても、もっと基本的な科学技術あるいは原子力、そういうものに対して、広島、長崎のイメージじゃなくて、もっと違う意味で人々がさわっていく環境をつくり上げていかなければならないなという気がしてならないのであります。大臣に頭の体操をしていただきたいのでありますが、DINKカップルという言葉わかりますか。これはそんなに難しく考えないでお答えいただきたいと思います。わからなければわからないということで結構です。
  14. 伊藤宗一郎

    伊藤国務大臣 申しわけありませんが、ちょっと勉強不足でわからないです。
  15. 佐藤敬夫

    佐藤敬夫委員 勉強不足でも何でもないのです。ちょっとかたくなな答弁ばかりですので、少しもっとやわらかいお話をさせていただこうと思って……。  若い人たちは、もうDINKカップルと言うとすぐわかってしまうのです。ダブル・インカム・ノー・キッズというのだそうです。二人がとにかく結婚しているかいないか別にしまして、一緒になりましょう、二人で共稼ぎをしてたくさん収入を上げて子供はつくらない、優雅に一生送りましょう。こんなのは別に何もこの委員会で取り上げるような話ではなくて、ふっと言っただけで、そのことが体験的に何も説明を加えなくてわかるというような感じ。その世代に向かって原子力の話をしたって、やはりなかなか納得をしようとしない世代になっております。  こんな本を委員会で出してはいけませんけれども、最近創刊された「デイズ」とかあるいは週刊誌の「タッチ」でしたか、何かほかの部分でも、それからあすかあさって、また今度はテレビ朝日の10チャンネルでもって原発のこういういわゆる一般の人たちが興味を持っている中身の問題について、我々からするとかなり無責任な分野まで含めていろいろまた報道しよう。こういうものでも二十万部売れています。あるいは伊方の原発の問題なんかにしても、私どもは、あれがマスコミ分野があそこでおさまったというのは、要するにやっていいか悪いかというのじゃなくて、あれを大胆に公開したということがマスコミのいわゆるある意味における嫌がらせみたいな分野も封じ込めて、正しくそのことを理解したということにつながっていくのじゃないか。やはりこれからは大胆に公開すべきことは公開していく。そしてそういうものを一つ一つ秩序立てていきながら、小さい時分から科学のいろいろな分野に対して手ざわりをしていく、あるいはそのことを見たことによって宇宙開発分野なら子供たち冒険心を持っていく、そういう感覚になっていくようなPR活動というものについて、どうやってお互い産学官協力し合った形をとっていくかという感覚も非常に大切になってくるのじゃないか。これはまた後ほど質問させていただきます。  その中で特に今お聞きしたいことは、日米科学技術協力協定の問題とか新日米原子力協定の問題、この二つについて簡単にお聞きをしたいのでありますが、日米科学技術協力協定の場合には、今度七度目の訪問でこの協定推進を急ぐということであります。中身外務省交渉ですので、詳しくは申し上げられませんというような、私が御質問申し上げたらそんな答えが返ってまいりました。中身は結構でありますが、しかしアメリカ側公聴会を開いてどんどんやっておりますから、いろいろな報道は逆に我々に向かってきているわけであります。その中で特に、海外から研究者を大量に日本がこれからお迎えするのだということが一つ向こう提案条項にもなっているようでありますが、この問題については今後どういう考え方でどういう対処をしていかれるのか、そのことについてお聞きをさせていただきたいと思います。
  16. 吉村晴光

    吉村政府委員 ただいまお話がございましたように、研究者交流というものがこれから非常に大事になっておるところでございまして、科学技術庁といたしましても従来からある程度の努力はしておるわけでございますが、不十分であるというような御意見をいただいておるわけでございます。特に、こういった情勢になってまいったということもございまして、従来一般的にやっておりました外国人の招聘のほかに、六十三年度からは科学技術振興調整費を充当いたしまして、若手の外国人研究者を対象にしたフェローシップ制度をつくるということを計画いたしておりまして、受け入れの数も百名程度を考えておるところでございます。それでもまだ全体の数からすればいかがかというお話があろうかと思いますが、いずれにいたしましても、私どもは国の研究機関にそういった数のものを受け入れるというのはかなり思い切ったことであると思っておるわけでございまして、まずはこういった計画を円滑に進めていきたいというふうに思っておる次第でございます。
  17. 佐藤敬夫

    佐藤敬夫委員 外交交渉中の話であって、答えにくい面もあるのだと思いますが、このような改定交渉アメリカが要求してきた背景というものは一体どの辺にあるのでしょうか。要するに、そのことを政府としてどのように認識しておられるのか。外務省がおったら外務省の方にお聞きしたいのであります。おりませんか。
  18. 吉村晴光

    吉村政府委員 協定交渉そのものというよりは、むしろ日米科学技術関係全般という感じで御説明を申し上げますと、アメリカの認識といたしましては、現在の科学技術協力協定というものは日本アメリカの間にかなりの格差があった時代を踏まえてでき上がっておるということでございまして、その後日本経済力技術力が非常に伸びておるということもありまして、そういったことを背景にしていわば対等の立場での科学技術協力推進するというための枠組みにすべきであるという理解でございまして、そういった意味でも、現在日本外国から受け入れている研究者の数がそういった観点から見ても非常に少ない、そういったものを広げるべきであるといったようなことを向こうから言われておるということでございます。
  19. 佐藤敬夫

    佐藤敬夫委員 本当は中身をもっと聞きたいのですけれども、今度七回目に向こうへ行ったときには大体まとまる可能性があるのですか。
  20. 吉村晴光

    吉村政府委員 これも交渉事でございまして、相手方の対応というものについても予想はできないということもございまして、私どもといたしましては、一応三月末に期限が参りますので、できるだけまとめたいということで、通常よりも長い期間と申しましょうか、通常三日とか四日という感じで動いておりますが、今週は月曜日から一応土曜日までを目途に進めておるという状況でございます。
  21. 佐藤敬夫

    佐藤敬夫委員 中身の問題で少し詳しく触れてもいいなと思う部分というのは、こういう研究者交流のために、はっきりした数字は今ちょっとここへメモしてあったのですが、五十八、九年のときでも約二万六千名近い研究者を我々はアメリカに派遣している。アメリカから受け入れている研究者交流というものはたしか二千百五十人くらいじゃないかな。やはりこれは向こうから見れば当然そういうバランスが崩れているという印象にはもちろんなっているのでありましょう。しかしそれは今までの時代でして、アメリカの方に研究する材料がいっぱいあって、日本には研究する材料が極めて少ないということで、数が多く来たからといって、別に誇ったり誇られたりするものではないというふうに私なんかは実は考えておったのでありますが、しかしやはり時代は変わってまいりまして、本当に日本にもそれに対して研究に値するものがたくさん出てきたのだ。そのときに、ただ単に建物をつくればいい、この程度の予算でこう受ければいいというのじゃなくて、本当に科学技術者たちが研究し、逆に言えば定住したくなるような環境を整えてあげることが大事なんじゃないでしょうか。この予算を見てもとてもそんな環境状況になっていないという気がするのですが、その辺についてはどうお考えでございますか。
  22. 吉村晴光

    吉村政府委員 御指摘のとおり、研究者というものは自分の研究が一番やりやすい、最も成果が上がる場所に行くという傾向にあるわけでございまして、外国人研究者日本にたくさん来るということのためには、立派な設備と立派な指導者とやりやすい研究環境というものが不可欠であることはそのとおりでございます。私どもといたしましても、幸い筑波におきましてはかなりの国の研究所が集中立地し、設備もかなり近代化をされておるということもございまして、筑波を中心にして外国人研究者を受け入れていこうというふうに考えておるわけでございまして、その中でも研究設備だけではなくて、生活環境の問題がいろいろ出てくるのではないかということを予想をしてございます。住居につきましても、現在できるだけの環境の整備をいたしておりますが、まだ不十分でございますから、これからも十分努力をしなければいけないと思っておりますが、そういったことだけではなくて、いわゆるソフト面と申しましょうか、全く違った文化の方が来られるわけでございますから、非常に細かなところでいろいろな問題が出てくるというふうに理解をいたしております。そういった問題につきましては一つ一つ解決をして、そういったものを積み重ねていくということによって、外国人にとって日本という国がやはり研究をやるのにやりやすい環境になるようにしていきたいというふうに考えております。
  23. 佐藤敬夫

    佐藤敬夫委員 ぜひ頑張っていただきたいと思いますし、またこれからは、お金があればどういう整え方もできるのだということについてはあいまいにしないで、一日も早く積極的にそういうものを進めていくという態度にどうか切りかえていただきたいというふうに思うわけです。  時間が一時間ということで十分あるのだと思っていたら、もう大変時間も少なくなってきました。一番聞きたいことの部分に少し突っ込んだ質問をさせていただきたいと思います。  次に、原子力協定の問題でありますが、一番最初に、私は皆さんといろいろなお話をさせていただいたのでありますが、これはおとといですか、参議院の予算委員会外務省の有馬局長がプルトニウムの空輸地で三沢も有力だというような、新聞ではそう書いてあるのですけれども原子力局長もそれについては答弁をしているようでありますが、こんなことを今しゃべっちゃっていいのですか。
  24. 松井隆

    ○松井政府委員 今度の日米原子力協定によりますと、プルトニウムを飛行機で輸送する場合、その附属書五で一定のガイドラインが決められておりますけれども、その場合には包括事前同意と申しますか、そういう形でプルトニウムを日本に空輸で運べるというふうになってございます。  それで、ただいま先生御指摘の三沢の件でございますけれども、私どもこの輸送をする場合にどういう手順になるかということを御説明申し上げますと、まず航空輸送を実施する場合には事前にまず輸送計画書をつくる。その輸送計画書の中でどういった輸送方法をとる、あるいはどういった輸送ルートをとる、そういったことを具体的に決めていきまして、そういった輸送計画書につきましては、当然日本政府あるいはアメリカ政府も関与いたします。それから出発地の国の政府も関与いたしますし、あるいはその経由地の国の政府も関与いたします。そういう形でそれを決めていくわけでございます。それで、これから輸送計画をつくるわけでございまして、そういう意味では三沢空港をプルトニウム航空輸送の国内着陸空港というふうに決めた事実は全くございません。  それで、先生御指摘の参議院の予算委員会での御質問でございますけれども、では三沢空港はその可能性があるのかないのかという御質問に対しまして、全く国内の空港を決めたわけではございませんけれども、現時点では理論的可能性としては三沢空港も排除されないというような説明をしているわけでございます。いずれにせよこういう問題は今後の課題でございまして、政府としてはそういうことを決めた事実はございませんものですから、ひとつ新聞にキャリーされた仕方があるかもしれませんが、事実としてはそういうことでございます。
  25. 佐藤敬夫

    佐藤敬夫委員 それは答え方がまずかったのじゃないですか。例えば、こんな雑誌なんか別にどうでもいいのですけれども、こういうところへプルトニウム輸送基地は三沢なんだとこう書いて、そしてこういうものに対して皆さんにお聞きしたときは、いやそれはまだ全く検討の対象にも入っていないのだ。では現実にプルトニウムというのはあしたから大量に飛行機で何十台も持ってくるのか。そうではなくて、これからの「もんじゅ」の研究なりなんなりに対して少量のものをどうしていくか。それも数年先なんだというふうに私どもは受けとめているわけですね。それを今この基地問題で、例えば原子力協定の中に、アメリカでさえアラスカの上空は飛ばしてはならぬ、よしんば航路を変更して何かするときでもキャスクの落下地点を実験をしてみろ、その衝撃に耐え得るのかどうかとか、あるいは飛行機を実際に落としてみろ、こんなことが議論になっているということはマスコミ報道ではちゃんと出ているわけでしょう。そういうときに、あの進歩しているアメリカでさえもそんな厳重にやらなければいけない研究をいきなり、六ケ所もつくった、何もつくった、あそこはもう原子村なんだから、その三沢に向かって、新聞を見ると大変有力なんだなんというようなことを書いたら、これは地域住民や国民感情をもう一回逆なでするようなことになっていくのじゃないか。一番慎重に答弁をしなければならないことに、できれば本当は有馬局長にお見えいただいて、どういう意図でそういう新聞が誤解なら誤解みたいなような書き方をしたのか、その真意を問いたいな、こう思っておったのです。  現実に、今の答弁では私は納得をいたしません。本当にこれは新しい日米原子力協定の締結を進めていく段階の中で日本がこれからきちんと解決をしていかなければならない課題なのでありまして、本当にどこであるかということは全く白紙の状態であります、そうおっしゃるなら、ここでそう言っていただきたいのです。
  26. 松井隆

    ○松井政府委員 先生の御忠告ありがとうございます。まさに先生のおっしゃるとおりでございまして、これから先ほど申しましたような輸送計画をつくるわけでございますけれども、それをするにしても、いずれにしろ先生御指摘のとおりマコウスキー修正案が通っておりますし、輸送容器をどういうふうにするかという問題もございます。そういった問題を多々含めてこれから検討していかなければいけない。また一方、日本でもプルトニウムにニーズがございますから、そういったものも見合いながら逐次固めていく段階でございまして、しかる意味ではこの空港問題、全く白紙でございます。
  27. 佐藤敬夫

    佐藤敬夫委員 数年後という言葉の解釈はありますけれども、我々はとても嫌な思い出がたくさんあるのですね。例えば原子力船「むつ」の問題にしたって、現実には、もっと早く実験をして調査データを出して新しい時代に向かってこういう開発をしていこうというのが、一千億もお金を使って、一般の人たちから、要するに国民の側から見ると、またこれから三カ年かけて三百億近い予算を使っていく、何でそんなことをするのかなということの素朴な疑問というのはやはり国民の側にあると思うのです。ですからこういう問題は、先のことだから今は構わないでというのではなくて、どうしても新しい科学技術の進歩のために必要なんだということになったら、大胆に公開をして本当に世論を問いながら一つ一つ枠組みを決めていく、そういう状況にこの分野感覚を切りかえていかないと、いつまでたっても、例えば低レベル廃棄物の問題、高レベル廃棄物の問題にしても、話は出たけれども一歩も前へ進まない、そしてその間にいたずらな経費だけが先行していくという状況がこれからも続いていくのではないかなという気がするのです。  一つ一つの項目について実はお伺いしたかったのであります。しかし、どうもあと時間が十五分ぐらいしかございませんので、どうかひとつこういう問題に対してできるだけ公開型でいろんな考え方を聞きながら詰めていくという、もう一つの解決の方法をもう少し大胆に取り上げていただきたいなという気がいたしますので、その辺についてできれば大臣から一言……。
  28. 伊藤宗一郎

    伊藤国務大臣 原子力の平和利用推進にはいろいろの原則がありますけれども、そのうちの大事なことは先生お話しのとおり公開の原則だろうと思います。そしてまた、その原則をしっかり守りながら、またそういうことによって国民の理解をなお一層深めながら進めていくという態度を私自身も強く進めていきたいと思っております。それには、原子力開発利用はあくまでも平和を求めているわけでございますから、科学技術庁としてこのことが国民の福祉なり幸せの向上につながるのだというある意味での自信なり誇りをしっかり持って、しかし進めていく場合においては安全性をもう大前提の大前提に置いて、私はよく申し上げておるのですけれども、あつものに懲りてなますを吹くというぐらいの慎重さをもって、そしてそのためにやはり国民の理解を求めるということで本当にオープンに、ぜひひとつどこからでも原子力行政を見てくださいと言って謙虚に国民の御理解をいただくということで、公開の原則は一番大事な原則だろうと思いますので、そのためにはPRもぜひまた強力に進めてまいりたい、このように考えております。
  29. 佐藤敬夫

    佐藤敬夫委員 どうぞひとつ大胆にそのように取り組んでいただきたいというふうに思います。  簡単にお答えいただきたいのでありますけれども、これからの時代、新長期計画の中で下方修正をされまして、九千万キロワットから五千三百万キロワットに位置づけていくんだ、そしてプルサーマル計画だとかあるいは核融合の新しい研究開発なんというものも、どうも時間的に見ますと今まで我々が予測したものよりも十年とか十五年単位で後ろの方へずれていきそうだ。そういうことになりますと、今現在この原子力発電というものを基軸にしながら日本のエネルギーというものは考えていかなければならない。そうなっていきますと、より多く国民からの理解を正しく求めていかなければならないという気がするのです。  例えば、毎日の仕事の中で低レベルだ、高レベルだという廃棄物の問題一つにしたって、この処理をどうしていくのか。じっとしているだけではますますそのものがふえてしまって、どうしてもそういうものの解決が遅くなっていく。いつかの時代になったらどうしてもこれはピークになって、トイレなきマンションを日本はつくっているんだ、こういう見方をされていく。幾つか四段階における方法論とかいろいろお考えのようであります。特に高レベルの廃棄物等について幌延の計画なんというのは調査が全部終わったと私は聞いておるのでありますが、これからどんな日程でどういうふうに進めていかれようとしているのか、この辺についてひとつお考え方を聞かしていただきたいと思います。
  30. 松井隆

    ○松井政府委員 幌延の問題、これは放射性廃棄物のうちでも高レベルの放射性廃棄物を最終的にどういうふうに処分するか、その一つのステップとしてある計画なわけでございます。それで先生御案内のとおり、この問題につきましてはまだいろいろと地元の理解を十分得られていない問題が多々ございまして、一昨年いろいろと動燃事業団が、あそこでの地元からの疑問や不安がございました、そういうものに対してまじめに科学的にあるいは技術的に調査した結果でお答えするという形で調査をやらしていただいたわけでございまして、その結果を今動燃事業団が取りまとめしている段階でございます。それで私どもとしては、まず地元の方に正確なデータ、正確な資料をお知らせして、本問題につきましてなるべく正しく理解していただくということをするのが大事ではないだろうかと思って、そういうことをしながら着実にこういうことを理解と協力を得ながら進めるというふうに考えている次第でございます。
  31. 佐藤敬夫

    佐藤敬夫委員 大変なことはよくわかるのです。しかし、現実の問題としてもう一つお聞きをさしていただきますが、低レベルの廃棄物にしても現在ドラム缶数にして六十七万本という数に聞いております。その六十七万本の中には、新しいセメント改良型になる前の古いものがどの程度入っておるのですか。
  32. 松井隆

    ○松井政府委員 原子力発電所から発生する低レベルの放射性廃棄物のお話でございます。  ちょっと古い六十一年度末現在で御説明さしていただきますと、トータルとして約四十四万本ぐらいございますけれども、いわゆるセメントで固めたものが約十四万五千本ぐらいございます。その他はいろいろな形でありまして、いろいろな態様であるというふうに承知しております。もちろんそれは一応ドラム缶換算というふうになってございますけれども
  33. 佐藤敬夫

    佐藤敬夫委員 これは科学技術庁が出された「放射性廃棄物の処理処分」というものですね、これを読んだのですが、六十七万本と聞いていたのです。現実には四十何万本ですか、ちょっとしつこいですが。
  34. 松井隆

    ○松井政府委員 今申した約四十四万本というのは原子力発電所から出されるものでございまして、それ以外に研究施設、具体的には原研とか動燃とかそういうところもございますし、その他のものも入って全部でそういう本数になる、こういうことでございます。
  35. 佐藤敬夫

    佐藤敬夫委員 もっともっとお伺いしたいこともたくさんあるのですが、時間がありませんので……。しかし、これから予想されるものとして原子力発電所の例えば消却、実際に十五年なら十五年、三十年なら三十年の時間が来てこれをつぶしていかなければならない。確かにエネルギー源としていろいろなものをつくったり壊したりあるいは消却をしたりということが続いていく中で、こういう一番肝心なその処理をどうしていくのかということに対してもっとPR活動や、もっと皆さんの常識や意識が高まっていくような、本当に危険なものは危険なんだ、そうでないものはそうでないのだということを対応してやっていきませんと、これは本当にまさにトイレなきマンションみたいな形になりまして、日本国じゅうがいつか大変大きな騒動を招くことになっていくのじゃないかな。この辺に対してももう少し具体的なPR活動や何かを大胆に進めていただきたいというふうに思うのです。  時間がないのでだんだん焦ってきましたのですが、そういう意味で、例えば今プルトニウムの空輸問題なんかを含む日米原子力協定改定の問題は、さらにこれからいろいろな委員会の中でほかの先生たちからもいろいろ御質疑があるのだというふうに思います。近々にアメリカの方の議会ではこの問題に対して一つの決断を図るやに聞いておりますが、その辺についてはアメリカの方の議会の動向はどういう状況になっておるのでございますか。
  36. 松井隆

    ○松井政府委員 御案内のとおり昨年の十一月に本協定が署名されましてから、アメリカ政府は直ちに議会に提出したわけでございます。そこでの議会の議論がいろいろとあったわけでございまして、一つは、この協定アメリカの国内法、原子力法あるいはそれを修正した核不拡散法、そういうものに合致してないという議論でこれは反対という議論と、それからもう一つは、プルトニウム輸送について本当に安全なのかという面で懸念する向きと、そういった二つの大きな反対の流れがあったというふうに承知しております。  それで特に上院と下院と分けまして、上院についてはむしろそういった意見が非常に強いわけでございまして、下院の方はどちらかというと、外交委員会中心にいたしまして、むしろ事実を的確に把握しようという形で公聴会をやろうという動きが強いわけでございまして、そういう意味で上院の動きをとりあえず非常に心配していたわけでございます。これにつきまして実は上院の中にも、これは今申しましたようにアメリカの国内法を満たしてない、したがってこの協定は承認すべきでない、不承認とすべきだという決議案も出されておりました。それで、これにつきまして実は、日本時間で言うときょうでございますけれどもアメリカ時間では前になりますけれども日本時間のきょう、上院で裁定がなされまして、私どもの方でただいま聞いた情報では、この協定を不承認とすべきという決議につきまして上院で表決に付されまして、三十対五十三で否決されたというふうにただいま聞いております。これが一番新しい情報でございまして、そういう意味では、心配した上院の動きもむしろ不承認案を否決という形で出てきたというふうに承知しております。
  37. 佐藤敬夫

    佐藤敬夫委員 向こう側の心配はわかるのでありますが、そういう米議会の動向に対して我が国としてはこれからどういう対応をしていこうとしているのか、その辺についてできればもう少し具体的にお聞かせをいただきたいと思います。
  38. 松井隆

    ○松井政府委員 この件につきまして問題は、今アメリカ国内で審議されているアメリカ政府と議会との関係ということでございます。したがいまして、私どもは基本的にはアメリカ政府にいろいろとよくお願いしているということはございますけれども、直接議会にということは考えておりません。そういう意味では今まで、一つは御案内のとおりあの日米首脳会談においても竹下総理からもよくお願いしてございますし、さらに、ついせんだっては原子力委員の中江委員にもやはりアメリカへ行っていただきまして、アメリカ政府の方々にお会いしましてその重要性をよくお願いしてまいりました。そういう意味アメリカ政府も非常に一生懸命議会とのお話を続けているようでございまして、ただいま申しましたような表決というのは一つのそういった成果が逐次あらわれているのではないだろうか、こういうふうに考えております。
  39. 佐藤敬夫

    佐藤敬夫委員 この新日米原子力協定締結に向けて、できれば原子力委員長所信をお伺いしたい。
  40. 伊藤宗一郎

    伊藤国務大臣 この協定は、復習の意味で申し上げますけれども昭和五十六年の鈴木総理とレーガン大統領との日米首脳会談を契機に、五年余りにわたって日米政府間において交渉をいたしました。その成果として昨年の十一月署名が行われたところでございます。また新協定は、核拡散の防止に対する日米両国の積極的な姿勢を改めて内外に明らかにするものでありますとともに、核燃料の再処理等に関しましても包括同意方式を導入するなど、昭和五十二年の日米再処理交渉以来の懸案でございました長期的、安定的な日米原子力協力枠組みを構築するものでございまして、六ケ所村の大型の再処理工場の建設、運転、高速増殖炉等におけるプルトニウムの利用の推進にも重要なかぎを握っております協定であると認識をしております。  アメリカでの議会の模様につきましてはただいま原子力局長から申し上げたとおりでございますが、我々としても今後アメリカの議会の動きを見守りながら、新協定の早期発効に向けて最善の努力を積み重ねてまいりたい、このように考えております。また、我が国におきましても先般新協定を国会に提出を申し上げたところでございまして、何とぞできるだけ本協定が早期に御審議をいただきまして、国会におきましてもまた御承認いただけるように鋭意努力をしてまいる所存でございます。
  41. 佐藤敬夫

    佐藤敬夫委員 なれないのでちょっと大事なことを忘れておりましたが、伊方の出力調整の問題がありましてから後、敦賀の二号とか、何か作業員の操作ミスだということで話題になったのでありますが、この作業員というのは要するにどういう立場の方なんでしょうか。本当に専門的に長くお勤めになっておられて、そして何かのはずみでこういうふうにスイッチを二つ切っちゃったなんということをおやりになったのでしょうか。この辺、我々が受けとめる中で働く人たちというのはどういう仕組みになってどうなっておるのか、ちょっとお聞かせをいただきたいと思います。
  42. 石塚貢

    ○石塚政府委員 ただいまの御質問の件でございますが、原子力発電所の規制の問題でございますので詳しいことは通産省の方が承知しているわけでございますが、私どもが通産省の方から聞いておりますところでは、相当経験を積んだ、その道ではベテランというような方々がそういった作業をされていたというふうに聞いております。
  43. 佐藤敬夫

    佐藤敬夫委員 こういうことが重なってくるようであれば、やはりそういう従来の組織構造なり内部点検というものをもう少し充実していきませんと、ベテランだからという感じでおって、例えば手動方式でやるもの、そういうものに対してそのベテランの人間がそういう事件を起こすということは、やはり何かこれから取り組んでいかなければいけない新しい課題があるのではないか。そういうものが消えていかないと、なかなか国民大衆が原子力発電所というものに対しての信頼感を持ち得ないということになっていくような気がするわけであります。後ほどまたこの分については詳しくお聞かせをいただきたいと思います。  時間が参りました。なれない質疑で大変に御迷惑をおかけしたと思います。しかしどう考えてみてもこれからの日米関係は、今までの物による摩擦あるいは経済摩擦というものの次に制度摩擦みたいな時代に入ってきた。そういう制度摩擦が起こす諸現象というのは、もう日米間に青空論というものはないのだ、摩擦が当たり前なんだという考え方の中で、これから一つ一つの仕組みを丁寧に、外交上に大きな亀裂が生じない形で、しかし言うべきことは言って、言いながら前向きに解決をしていかなければならぬという時代に入ったという認識をするわけであります。どうぞひとつ日米関係を、決して卑屈になる必要はないと思いますが、五月雨くらいは結構でありますが暴風雨にならないように、お互いの担当窓口もよく心を引き締めて、この二つの協力協定、そしてまた新しい課題に向かって突き進んでいただきたい。お願いを申し上げまして、与えられました一時間の質問を終えさせていただきます。ありがとうございました。(拍手)
  44. 大坪健一郎

  45. 野坂浩賢

    野坂委員 きょうは科学技術庁長官所信表明に対する質問でありますので、それに従って質問をいたしますから、できれば長官みずからお答えをいただきたい、こういうふうに思っておるわけであります。  長官は、所信表明の演説の中で、科学技術政策大綱に従ってこれからの科学技術の振興を図っていく、こういうお話があったわけであります。そこで科学技術政策大綱をよく熟読玩味をいたしますと、総括をして「科学技術の進展が国民生活、人間の尊厳、倫理との関係等広範な領域に影響を与えているとの認識の下に、人間及び社会のため」に尽くすのだと、こう規定づけられておりまして、結びでは特に「人間を重視し、人間あるいは社会により良く適合しその健全な発展を促す」こういうふうにございます。快適で安全な社会の形成、人間の心と体の健康の維持増進、これが集約されることだろうと思うのでありますが、そのとおりと解釈してよろしゅうございますか。
  46. 伊藤宗一郎

    伊藤国務大臣 先生おっしゃるとおりでございます。
  47. 野坂浩賢

    野坂委員 そうすると、先ほども質疑の中でありましたが、原子力の問題等は公開を原則とする、しかも原子力問題については超安全対策を確立していきたい、こういうふうにお話があったと思いますが、そのとおりだと確認してよろしゅうございますか。
  48. 伊藤宗一郎

    伊藤国務大臣 先生おっしゃるとおりでございます。
  49. 野坂浩賢

    野坂委員 大変明快にお答えをいただきましてありがたいと思っておりますが、科学技術庁から示されました科学技術の白書を読みますと、今後の科学技術に対してはあらゆる分野で期待が大きいが、とりわけ宇宙や海洋への人間の活動領域の拡大、がん等疾病の克服、長期的な食糧問題への対応等がその最たるものである、こういうふうに述べられておるわけであります。したがって長官は、科学技術庁を省にも格上げをしたいという熱意と迫力を持って所信を述べられたわけでありますから、これらに対してどのような考え方でこれからリーダーシップをおとりになるのか、この辺のことを、白書の上に立って決意の表明をお願いをしておきたい。
  50. 伊藤宗一郎

    伊藤国務大臣 改めてまた私から言うまでもなしに、日本が、日本というよりも世界全体がそうでございますけれども科学技術の振興発展なしに二十一世紀に我々は到達はできないだろうというのが政治家としての、皆様方同様の認識を持っております。したがって、科学技術に対する価値観といいますか、見方というものを日本政治あるいは行政の基盤に置くというぐらいの意気込み、またそういうためのPR等も進めていかなければならないと思います。ただ、それにはやはりまず隗より始めよでございまして、科学技術庁全体が日本の国民の本当の幸せに奉仕する役所であるという、そのための努力を積み重ねるとともに、それだけのプライドなり自信を持たなければならないというふうに考えております。それらの総合成果として科学技術庁が認められまして、なお一層高い地位に、あるいは省という地位に向かう方向に全力投球をしてまいりたい、このように考えております。  また、いろいろな研究の調整をやるというのが我が役所に与えられた一つの大きな目標でございますけれども、そのための産学官の研究の連携、提携あるいはまた調整というものをやれるぐらいの力を持った役所にしなければならない。繰り返しますけれども、そのためにはやはり科学技術庁役所の方々にそういう地位に自分たちがおるのだという誇りを持った意識を強めてもらいたいというのが、長官として終始申し上げておるところでございます。
  51. 野坂浩賢

    野坂委員 一般論でお話しをいただいたわけですから、後で今の御答弁に対しての具体論をお話しをいただきたい、こういうふうに思っておるわけでございます。  原子力研究開発予算というのが全体の六一・七%を占めていますから、やはりこの問題に触れないわけにはいかぬと思っているわけでございますが、今電力事情というのは、火力、水力、原子力を合わせてどの程度の最大出力を持つ設備がなされておるのか、また最も近い最近の電力の需要量、それを御発表をいただきたい。
  52. 松井隆

    ○松井政府委員 ちょっと手元にある資料が、一番最新というよりも六十一年度末ということでございますが、それで説明させていただきたいと思います。  六十一年度末の総発電設備容量、これが一億五千八百二十六万キロワットでございます。その構成につきましては今ちょっと持ってございませんけれども原子力につきましては、そのうち二千五百六十八万キロワットというのが原子力の割合になっています。  それから、六十一年度になりますけれども、そのときの最大の需要電力、これは変動するわけでございますけれども、最大が一億一千五十四万キロワットというのが現状でございます。     〔委員長退席、粟山委員長代理着席〕
  53. 野坂浩賢

    野坂委員 私が聞いておるのは、火力、水力、原子力を合わせて一億五千八百二十万キロワットですけれども、最近の需要量はそんなにないのじゃないですか。六千ぐらいじゃないですか。
  54. 松井隆

    ○松井政府委員 これもやはり六十一年度でございますけれども、六十一年度の最大の需要電力が先ほど申しましたように一億一千五十四万キロワットでございます。なお、六十一年度の総電力需要は六千十八億キロワットアワーというふうになってございます。これは六十一年度の話でございます。
  55. 野坂浩賢

    野坂委員 そうすると、考え方としては一億五千八百万キロワット、これが最大出力で、設備はそれだけあるということですね。需要は、キロワットアワーでお話がありましたが、この大体三分の一程度、こういうことになりますか。
  56. 松井隆

    ○松井政府委員 最大のピーク時の需要で申し上げますと一億一千五十四万キロワットでございます。したがって、一億五千八百二十六万キロワットに対して最大の需要が一億一千五十四万キロワットということでございます。
  57. 野坂浩賢

    野坂委員 いや、私が聞いておるのは、設備は一億五千万、いわゆるピーク時の需要量というのは一億一千万だ。平均をして年間流すものは一体どの程度の需要量があったのか。六千八百万ぐらいですか。
  58. 松井隆

    ○松井政府委員 今の総電力需要はキロワットアワーでございまして、これは平均するためには割らなくてはいけないわけでございます。それで、御案内のとおり電力は貯蔵ができないという性質があるものでございますから、やはり設備容量というのは最大電力需要に対して合わせておかないといけないという問題があることをぜひ御理解いただきたいと思います。
  59. 野坂浩賢

    野坂委員 平均すればずっと少なくなるけれども、夏の暑いときとか甲子園とか、そういう場合は非常に上がってくる。そのピーク時に合わせておかなければならぬので、それは最大の場合だ、平均すればその半分ぐらいになるだろう、こういうふうに私たちは理解をしておりますけれども、今一億五千万と一億一千万の最大出力の問題といわゆる最高の需要量という関係からして、火力、水力、原子力とありますけれども、あなたの意見の上に立っても四千万、約五千万ぐらい残っておりますね。そうすると、この五千万を節電をするために水力とか火力とか原子力というのを休止をさせますね。どの程度休止をするか、どういう状況になっておりますか。
  60. 松井隆

    ○松井政府委員 基本的に原子力はベースロードという考えでやっておりますから、基本的に原子力はずっと動かすというのがあれでございます。それ以外につきましては、私ちょっと今詳細については承知しておりませんけれども、やはりそのときのニーズに合わせて柔軟に運用していくということになろうかと思います。  それから、もう一つ説明さしていただきますと、確かに御説明したとおり総発電設備容量が一億五千八百二十六万、最大の電気の需要は一億一千五十四万で随分余っているのじゃないかという点がございますけれども、普通発電設備というものにつきましては、例えば水力の場合には渇水による出力の低下ということもございます。それからもう一つ大きいのは、設備の定期点検というシステムがございますものですから、そういうためにどうしても休むものがあるということでございます。それからそのほか所内電力という要請もございますし、もう一つ大きいのは、常に供給予備力というものを用意しておかなくてはいけないということがございます。これが大体一〇%ぐらいと言われておりますけれども、そういったものを考慮いたしますと、一般的に最大の需要電力の一・三から一・四倍ぐらいの設備を持っているということが適正である、こういうふうに言われておるわけでございます。そういう意味では規模は大体適正なのじゃないだろうかというふうに考えている次第でございます。
  61. 野坂浩賢

    野坂委員 この電力というものは、東電を初め九電力各社がやるわけですが、今重厚長大型から軽薄短小型に産業は変わって電力は余っておる。したがって電力の事業協会等でも、見通しとして七十年度まで年平均電力需要は二・七%伸びる、そういうふうに決めておったのを二・三%に修正されておりますね。だから、これから電力需要というものについてはそう大きな伸びはないということを新聞紙上でも何回となく発表されておるわけであります。したがって、これからの設備をするに当たって、今の電力業界の事情その他から考えて、どのように科学技術庁としては考えていくのか、その辺はどうですか。
  62. 松井隆

    ○松井政府委員 これは通産省が主管官庁でございますけれども、私どもよく御相談しているわけでございます。  今後の電力需要でございますが、恐らくオフィスオートメーションの普及であるとかあるいはサービス産業の非常に高い伸び率があるわけでございまして、堅調な伸び、二・七から二・三ということはあるかもしれませんけれども、そういった堅調な伸びが見込まれるというふうに考えてございまして、現在私ども昭和七十五年というのを一つのあれで見ますと、総電力需要が先ほど六千億と申しましたけれども、七十五年では大体八千三百億キロワットアワー前後、つまり現在の約一・四倍くらいというふうに見ております。それから最大の需要電力でございますけれども、そのときには大体約一億六千万キロワット、約一・五倍くらいに増加するというふうに考えている次第でございます。
  63. 野坂浩賢

    野坂委員 私が言ったことは三月三日の新聞に発表されておりますけれども、「電気事業審議会は昨年、電力需給見通しを四年ぶりに見直し」と書いてありますね。「年平均二・七%と見込んでいた昭和七十年までの伸び率を二・三%に下方修正。七十年段階で必要な原発設備についても七百万キロワット低めに修正、標準規模で七―十基分が不要になった形だ。」こういうふうに明確にされておるわけです。あなたの言われたことと随分違いますけれども、電気事業審議会はそういう決め方をしておるんじゃありませんか。
  64. 小林盾夫

    ○小林説明員 電気事業審議会は通産省の所管でございますので、私からお答えしたいと思います。  先生今御指摘になりましたように、電力の総需要、前回電気事業審議会が昭和五十八年に策定いたしましたが、それを今回、昨年の十月に見直しまして、やはり最近の円高による構造変動ですとか重厚長大型産業からサービス型産業への移行といったような需要構造の変化といったものに合わせまして、需給の見直しをいたしました。御指摘のように、七十年度までの伸びは平均して二・七%が二・三%と修正されたわけでございますが、その後七十年から七十五年までの伸び率は二・六%、こういった伸びを見込んでおります。  これに対応する電源構成でございますが、やはり需要が下方修正されましたことに伴いまして、全体の必要な設備量というのも当然私どもとしては修正いたしたわけでございます。御指摘のように、昭和七十年度におきます原子力発電の電源設備の量といたしましては、前回の電気事業審議会は四千八百万キロワットでございます。それに対しまして、昨年十月の電気事業審議会におきましては四千百万キロワットということになっております。なおちなみに、昭和七十五年度の電源構成につきましても今回の電事審では行っておりますが、それによりますと、原子力発電は五千三百万キロワットという構成になってございます。
  65. 野坂浩賢

    野坂委員 修正をされて、そう電力は必要でないということは確認されたわけです。七十五年度に向けてこれから進めるということですが、原発、石油火力、石炭火力、水力ということにして一番原子力発電をやるという意味は、コストが安いということですね。しかし最近の円高・ドル安の状況、そして最近は火力が簡単にとめられるものでありますから、原子力というのは調節がなかなか難しくて、ずっと継続的にやらなければコストに大きな影響があるということで石油火力や石炭火力をとめておるのですが、最近は余りコストは変わらぬですね。コストは変わらなくて、むしろ原発の場合は、設備及び耐用年数が来たときの廃棄のところに一番大きな金がかかるという結果になるわけですね。そうすると、今の場合では原発はキロワット時当たり九円で石油火力が十一円とか石炭火力が十円、水力が十三円と言いますけれども、現時点では石油火力八円五十銭で原発人円二十銭というのが現状なんですね。余り変わらないという結果になりはしませんか。 そういうふうに新聞にも書いてありますね。
  66. 小林盾夫

    ○小林説明員 お答えいたします。  私どもで電源別の発電コストというのを試算しております関係で私からお答え申し上げますが、先生御指摘のように、私どもで試算いたしました発電コストは、原子力が九円程度、石油火力が十一円ないし十二円程度ということになってございまして、先生今おっしゃいました八円何がしという額については私どもつまびらかにしておりません。なお、私どもで行っておりますコスト計算はあくまでもモデルプラントでございまして、昭和六十二年度近辺に運転開始しましたモデル的プラントを前提にいたしまして、さらに幾つかの前提条件等を置きまして試算をいたしましたものでございますので、個別の発電所等にわたりましてどのようになるかということまでについては、私どもとしては承知しておらないわけでございます。
  67. 野坂浩賢

    野坂委員 余り時間がありませんが、今お話があったように、モデルプラントで計算をして、内容的には余り変わりはないということは明確になっておるわけです。  今、世界の原発というのは約四百基ありますね。日本は東電の今度やるのを含めて三十六基ということになりますね。フランスは約七〇%でありますが、韓国が五三%程度、日本が今三一・七%というのが原発の現状ですね。今申し上げましたように、これで日本は基数としては世界第四位という位置を占めておるわけであります。 したがって、今日のスリーマイル島問題あるいはチェルノブイリ問題等から考えられて、フランス等では、世界的には原発は低迷期に入った、こういうふうに評価できるのじゃないかと思うのです。時間がありませんから続けて言いますと、欧米ではやはり反原発の世論が燎原の火のように広がって、アメリカのゼネラル・エレクトリックという会社がありますね。この原子力部門は、今回東電が発注した原子炉用の機器を除きますと新規契約というのはほとんどない、したがって組織の縮小と解散話も出ておるというのが今日の現況であり、世界の状況であって、原子力低迷の時代というふうに我々は位置づけなければならぬじゃなかろうかと思うのです。しかも先ほど申し上げましたように、石油の値下がりで石油から原子力は急ぐ必要はないじゃないのかという声があるわけであります。     〔粟山委員長代理退席、委員長着席〕  そういう意味で、科学技術庁としてはあるいは通産省としては、この実態を見てこれ以上当面原子力発電の設備の拡大とか新しく立地する必要はないじゃないか、コストの面から考えても、あるいは長官がお話しになった超安全度という面から考えても、今そういうふうに考えた方がいいではなかろうか、私たちはこういうふうに思いますが、いかがですか。
  68. 梅沢泉

    ○梅沢説明員 お答えいたします。  原子力発電につきましては、供給の安定性でございますとか経済性等にすぐれた電源でございますので、先ほどから御説明のとおり、ベース供給力の中核としてこれまで開発を進めてきたわけでございます。当省といたしましても、昨年十月に先ほど御説明申し上げました電気事業審議会需給部会の中間報告でうたわれてございますように、今後着実に増大する電力需要に対しましては、今後とも安定性確保に万全を期しつつ原子力開発を積極的に推進していきたいと考えておるところでございます。
  69. 野坂浩賢

    野坂委員 推進するということですが、それでは、日本原子力開発の中核であります動燃開発事業団は去年の八月、内部指針として中長期事業計画をまとめておるわけですね。これの内容は我々よく承知しておりません、部外秘だと聞いておりますけれども、今お話が長官からありましたように、公開を原則としたいという決意を述べておられるわけでありますから、この開発事業団の中長期事業計画というものを指導の立場に立つ科学技術庁としてはどういうふうに把握をされておりますか。発表していただきたい。
  70. 松井隆

    ○松井政府委員 動燃事業団が検討している将来計画のお話だと思いますけれども、これは、昨年の六月に原子力委員会原子力開発利用長期計画を示したわけでございますけれども、そういった示された基本的方策に動燃がどういうふうに対応したらいいかというものを内部で検討した資料と承知をいたしております。  それで、具体的にどういうことかと申しますと、動燃事業団、これは新型動力炉の開発あるいは核燃料サイクルの問題等のいろいろの研究開発を行っている団体でございます。そうすると、そういった新しい将来の方向に向けて動燃の個々のプロジェクトを今後どういうふうに進めたらよろしいか、その際にどういうことを検討したらよろしいか、そういったものを取りまとめたものと聞いているわけでございます。それで、その問題につきましてはまだそういった性格のものでございますから、あくまで動燃内部における検討資料と我々承知しておるわけでございます。具体的にこれをどうするかというと、つまり、これに基づきまして動燃では個々のプロジェクトごとにどういうふうに進めていくかということを具体的に検討しなくちゃいけないわけです。当然その検討は関係する者、例えば動燃の成果を民間がやる場合には民間がどういうことで話を進めていくか、それに対して動燃はどういうふうに貢献したらよろしいか、そういったものにつきましても十分に関係する者と検討しなくちゃいけない。そういうことで、そういうものの成果を経て個々のプロジェクトをどういうふうに進めていくかという実施計画ができる、こういうものと承知しておりますものですから、そういう意味ではまだ動燃の中で内部資料という位置づけでおるというふうに承知しておるわけでございます。
  71. 野坂浩賢

    野坂委員 新聞等で書かれておりますのは、ウラン濃縮や新型転換炉などの大型プロジェクトから動燃がいつ手を引くか、その見通しを検討したいわば撤退計画書であると書いてありますね。いわゆる電力の事情から見て、そして価格、コストの問題から見て、そう大型ではだめではないのか、だから撤退計画書だというふうにあって、我々はそう承知をしておるわけです。今局長の話では、これからどんどん伸びるので、そのプロジェクトをこれからやるんだということですけれども、もしそれがあればこの委員会にこの内容を、公開原則論でありますから、中間報告としても文書で提起をしてもらいたい。時間がありませんから、その点についてだけ示してもらいたい、内容について。そういうことを要求しておきますが、よろしゅうございますか。
  72. 松井隆

    ○松井政府委員 先ほど申しましたように、この動燃の中長期将来計画と申しますか、これは長期計画に基づきまして動燃事業団がみずから課せられた業務を進めていく上で各プロジェクトを今後どういうふうに進めたらよろしいか、あるいは重点の移動もあるかもしれません、そういうものを検討課題というか取りまとめたものというふうに承知しておりまして、これはあくまで動燃の内部資料でございますけれども、先ほど実は私申しますのは、恐らくこういう問題はそれを決めるに当たって関係の方とも相談しなくてはいけない、それからそういった重点がシフトする場合には、当然動燃の中にも組合がございます、組合とも恐らく相談しなくてはいけない、そういう多々の問題があらうかと思っております。そういう意味では、動燃は出したくないと言っておりますけれども先生の御指摘もございますので、一応私動燃とも相談したいと思っております。
  73. 野坂浩賢

    野坂委員 科学技術庁は指導監督機関でありますから、その中間の状況も把握する必要がある。したがって、それは我々の論議の対象にしてもらいたいと思うわけでありますから、ぜひ出していただきたいということを要求しておきます。  それから、今長官は超安全対策ということを言われたわけですが、東京大学の若林宏明助教授等が超安全なという意味でプロジェクトをつくって勉強しておりますね。提起しておる。そういう点については科学技術庁等は率直に受け入れていかなければならぬ。ところが、安全炉ということについていろいろなところから持ち込まれるとまた疑惑の解明等をやって面倒なものですから、それらに余り乗り気でない。超安全にするために提起があれば喜んでその提案を受け入れる、そして徹底的に解明をしていく必要があるんじゃなかろうかと私は思うのです。そういう研究提言について科学技術庁としては受け入れる用意があるかないか、お答えをしていただきたい。
  74. 松井隆

    ○松井政府委員 先生の御指摘の超安全炉、あるいはよく一般的には固有安全炉とか申しておりますけれども、これにつきましては、まず原子力委員会の昨年六月の長期計画の位置づけでございます。それにつきましては、原子力委員会としてはそういった固有の安全の炉、そういうものについてやはり基礎、基盤に立ち返った研究開発推進する必要がある、こういう認識を示してございます。そういうものを受けまして、私ども具体的にはそういった若林先生の研究も承知しております。それからさらに日本原子力研究所におきまして、そういったいろいろな軽水型安全炉とかいろいろなタイプがあるわけでございますけれども、そういったものの調査研究もやっておる次第でございます。さらにもう一つは、高温ガス炉もいわゆる固有安全炉の中のカテゴリーに入っておるわけでございまして、そういうものにつきましても、これから基礎、基盤に立った工学試験研究炉の実施設計を来年度からやりたいというような考えでございまして、そういう意味では私どももそういう問題についても広く門戸を広げて、それなりに対処していくことが必要かと思っております。
  75. 野坂浩賢

    野坂委員 局長お話では、そのような提言は積極的に受け入れて十分対応したい、こういうふうに考えていいわけですね。そのとおりですね。
  76. 松井隆

    ○松井政府委員 そういう提言は承知しておりますし、そういう提言も十分我々も聞いております。それからさらに、実際日本原子力研究所等でもそういう研究をする必要があろうということで、今そういうこともやらしております。それで先生御案内のとおり、まだそういうものは基礎的、基盤に立った研究と理解してございますけれども、そういう研究はちゃんとプロモートするということは必要かというふうに思っております。
  77. 野坂浩賢

    野坂委員 最近の新聞に原発の安全のために、ウィーンに本部を置く国際原子力機関というのがありますね、IAEA、これが安全指針を発表して、これからガイドラインをつくるということであります。科学技術庁としては既にこの内容については入手をされておると思うのですが、このIAEAガイドライン、原子力発電所の基本的な安全原則ですね、これについて御存じだと思うのです、よく知っておられるはずですから。このガイドラインと今の日本原子力問題とは、このガイドラインに従ってこれ以下のところはないのか。話としては、大体日本原子力問題についてはガイドラインに示された範囲内のことは十分やっておるという話でありますけれども、その辺について直すべき点、是正すべき点、これらについては御検討があったと思いますので、この点については明らかにしてもらいたい。
  78. 石塚貢

    ○石塚政府委員 このIAEAが取りまとめました安全の原則でございますが、この原則で示されております考え方といいますものは、基本的には我が国の安全確保の考え方に沿ったものであるというふうに私どもは認識をいたしております。
  79. 野坂浩賢

    野坂委員 放射線の防護、管理責任、深層防護、事故防止、人的要因、安全評価等は十分にそれに対応されておるという御認識でございますね。もう一遍だけ。
  80. 石塚貢

    ○石塚政府委員 まさにその深層防護といったような考え方につきましては、日本考え方とほぼ同一、全く同一と言ってもいいくらいかと思います。  なお、基本原則の中には防災対策の考え方あるいはシビアアクシデントの考え方といったものも述べられてございますが、こういったより具体的な幾つかのアイテムにつきましては現在なお世界各国が研究し、検討しているといったものも含まれてございまして、そういったものにつきましては日本も現在なお検討を鋭意進めておるところでございます。こういった問題につきましては、チェルノブイルの原子力事故の後、原子力安全委員会の事故調査特別委員会において改めて心に銘ずべき事項としていろいろ指摘されました事項とも重なり合っておるわけでございまして、我が国におきましてもなお検討中のものが幾つかございます。
  81. 野坂浩賢

    野坂委員 さらに検討するということでありますから、きょうはもう時間が十分程度しかありませんから多くを申し上げませんが、その辺を明らかにしてこれから御検討いただきたいと思います。  それから、日米原子力の平和利用に関する実施取極の問題がありますね。先ほども話がありましたが、マコウスキー上院議員等は反対しておる。最近の情報では、きょうですか、三十対五十三でその案は否決をされた、通ったということでありましたが、プルトニウムの輸送ということになれば、アラスカを通るようなところは絶対にいかぬ、一遍落とせ、飛行機もろとも落としてみろ、こういうふうに非常に激しい意見があった。しかも、もし落ちて汚染されるということになればアラスカ州等は重大な問題だからという危機感を持っていらっしゃるというのは、三十の表決というものも等閑視できないと私たちは考えておるわけであります。  これについては、実施取極では「北極経由又は自然の災害若しくは社会の騒乱の生じている地域を避けるように選定されたその他の経路」と書いてありますね。例えば今英国とかフランスとかから持ち出すということになりますね。その英国またはフランスから北極またはその他の地域ということになれば、大体どこを通るということが想定をされるわけでありますか。これについてが一点と、それから中江要介さんもアメリカに行かれたのですが、伊藤長官もお行きになっていますね。――行ってないですか。新聞には書いてある、伊藤長官も行ったって。そうですか。それならばどういう経路で専用貨物航空機でやれるのか、その点が一点。  それと武装した護衛者が同行するということになっていますね。それは英国及びフランスから武装護衛者がつくのか、あるいは日本が迎えに行くのか、その辺はどういうことになるわけですか。
  82. 松井隆

    ○松井政府委員 先生の御質問、まず輸送ルートが一つあったと思います。これについては、出るところはイギリスないしはフランスでございまして、日本に来るということで一般的には北極経由ということになろうかと思っております。ただ、具体的にどこのところをどういうふうに通ってくるかということは、これから輸送計画をつくるときに具体化する話でございまして、まだそこまで詰まっている話ではございません。  それから大臣の話につきましてはただいま大臣から御説明が――行っておりません。  それからもう一つは武装警護、アームドガードと言っておりますけれども、その件でございますが、これもこれから詰める話でございます。ただ一般論として言いますと、日本国籍の飛行機にお願いした場合には当然やはり日本国籍になるわけでございますから、日本国からそういったアームドガードが搭乗していただくということになるのではないだろうかというふうには考えておりますけれども、いずれにしろ、これももう少し具体的に輸送計画を決める段階でさらに詰めていく問題だというふうに承知しております。
  83. 野坂浩賢

    野坂委員 日米原子力協定というものは、これから我々は承認するかどうかという問題ですから、何もわかりません、まだ交渉中でありますというわけにもならない。日本の飛行機が貨物輸送機であるときには武装護衛機というものがつくわけですね。その場合は武装護衛機というと、「武装護衛者が同行する。」というのはその飛行機に乗るのですか。それとも他に飛行機がついていくのか。武装護衛者という意味、定義、これについて明らかにしてもらいたい。
  84. 松井隆

    ○松井政府委員 武装の護衛者のお話でございますけれども、それについては、飛行機に武装した護衛者が乗っていかなくちゃいけないというのがこのプルトニウム国際輸送のガイドラインになってございます。それで、先ほど申しましたように、もし日本国籍の飛行機を使う場合は、当然日本国籍の飛行機でございますから、日本の武装した警官にお乗りいただくということになるのではないかというふうに思っておるわけでございますけれども、それにつきましてはまたこれから、いずれにしろ輸送計画を決める段階で確定していくものであるというふうに考えております。
  85. 野坂浩賢

    野坂委員 これからこれからという話ですけれども、これを我々何も承知しないで承認するというわけにはいかぬと思うのです。武装護衛者というのは、例えば日本で言えば自衛隊員ということになりますか。どういうことになるのですか。
  86. 松井隆

    ○松井政府委員 これからと言うとおしかりを受けるわけでございますけれども、常識的に、私どもそういう今の自衛隊の方の警護ということは考えておりません。
  87. 野坂浩賢

    野坂委員 そうすると、自衛隊員でない武装護衛者というのはどういうところの人ですか。
  88. 松井隆

    ○松井政府委員 警察官であろうというふうに思います。
  89. 野坂浩賢

    野坂委員 警察官が武装護衛者。飛行機は一機だけで飛ぶというわけにもいかぬと思うのですね、撃たれたりしたら。そうすると護衛機というものは全然ないわけですか。そういうものは考えられないのかどうか。
  90. 松井隆

    ○松井政府委員 日米協定で、これは附属書五に書いてございますけれども、そういったガイドライン、指針に従ってやりなさい、そういう場合には包括同意取り決めになります、こうなっておるわけでございまして、それには先ほど先生の御指摘の飛行機の護衛というのですか、それは書いてございません。したがって、私どもとしてはそういうことは必要ないだろうというふうに思っております。
  91. 野坂浩賢

    野坂委員 いろいろ航空機の墜落とかあるいは盗取または妨害行為という――それは一機で、貨物輸送機がひとりで飛んでくるわけですね。攻撃を受けたりいろいろなことがあったということについては日本政府は考えていない、こういうふうに理解していいわけですね。
  92. 松井隆

    ○松井政府委員 ここにも書いてございますけれども、要するに、飛行機については常時連絡をとり合う体制ということにしていこうじゃないかというのがこのガイドラインに規定されている事項でございます。
  93. 野坂浩賢

    野坂委員 私は、いわゆる単独飛行である、武装護衛者というのは警察官である、こういうふうに認識をいたしておきます。したがってこれから北極または紛争その他のない、避けて通るというところでありますから、予想される経路はまず北極だ。その場合、日本に着陸をする場合というものは今からやはり考えていかなければならない。そうしなければこういうことを承認してもらうということはなかなか難しくなってくると思いますね。  そこで、うわさとして出ておるのは、先ほどありましたけれども青森県の六ケ所村ですか、いわゆる三点セットの分があるから三沢、こういうふうに言われるわけであります。その辺は全く白紙だということですけれども、これについては大体こういう方針で臨みますということがなければ、いやこれから細部は詰めてやりますからお任せをと――極めて超安全で公開をするということになっておるわけですから、その点はやはり明らかにしてもらわなければならないのではないかと思うわけです。今はどこを考えておるのか。
  94. 松井隆

    ○松井政府委員 先ほどの佐藤先生の御質問に答えましたとおり、国内の着陸空港については全く白紙の状態でございます。前回の予算委員会でも少し御質問がございましてお答えしたのですけれども、では一体そういった空港のどういうところ、どういう条件かというお話がございまして、そこで私があれしたのは、もちろんこういう問題につきましてはいろいろと関係省庁と打ち合わせなければ決まらない話でございまして、まあ科技庁としてあえて一般的留意事項として言えばそういうことだということで三つの条件を申し上げた次第でございまして、そういったものに従って関係省庁とも相談して、これから逐次決めていく話でございまして、そういう意味ではこの空港問題は全く白紙ということでお答えをさせていただきたいと思います。
  95. 野坂浩賢

    野坂委員 それでは日米原子力協定については、その中身についてはこれから相談をしていただきますが、我々が審議をして採決をするまでには、各個について具体的に御報告ができるようにしていただきたいと思いますが、いかがでしょうか。
  96. 松井隆

    ○松井政府委員 日米原子力協定というのは、そもそも協力枠組みあるいはその条件を決めるものでございまして、その具体的な実施につきましては、そういった協力枠組み、条件に従いましてその後具体的に決めていくものというふうに私ども承知しております。
  97. 野坂浩賢

    野坂委員 それは想定としては、先ほど佐藤さんの話もありましたけれども、五年、十年先のことであるかどうかということが一点。  それから、時間が参りましたので長官に要望を兼ねて申し上げておきたいと思いますが、今電力事情というのは低迷期である、原子力発電のメーカー等は解散なり組織縮小を行いつつある、これが世界の情勢。しかもフランスその他各国においても、原子力発電はしばらくおくという状況というふうに我々は認識しております。これが一点。  さらに、昭和六十二年度の下半期の故障及びトラブルのリストは見せていただきましたけれども、ぼやを含めて十一件ありますね。なれた人がやっておる。ガイドラインも、先ほどガイドラインの話を申し上げましたけれども、やはり人の問題。この事故も人の作業というものが一つの問題であります。あるいは、相当の年数がたっておるので耐用年数が近くなってきた、腐食もある、こういう点が問題になっている。そういう点をなかなか明らかにされないままである。例えば三月六日の敦賀原発の一号機の手動停止の発表は、特に発表の中で黒く塗りつぶしたところがたくさんありますね。ああいう点については非常に余計疑惑を持つ。原子力は極めて危険だという認識があるわけでありますが、それに黒く塗りつぶすというような格好になりますと余計神経を逆なでする。あるがままの内容について、先ほどお話があったように原則は公開でありますから、不十分な点は不十分として発表してもらわなければならぬ、こういうふうに私は考えるわけであります。その点をお尋ねして私の質問を終わりたいと思います。
  98. 伊藤宗一郎

    伊藤国務大臣 まず後段の方からお答えを申し上げますけれども、公開の原則はあくまでも守っていかなければなりません。また、世の中に絶対というのはなかなかないわけでございますけれども原子力発電の事故だけは絶対に起こしてはならない。安全の上にも安全を傾け、そういうお話があったならば私どもの方から出向いて、頭を低くして教えを請うというような謙虚な気持ちで安全性の確保に努めていきたい、このように考えております。  また、電力事情等のことに関係してお話が出たわけでございますけれども、何といっても我が国のようにエネルギーの九〇%近くを輸入に頼っているという国では、やはり経済性、供給安定性から見まして、原子力発電というものが我が国の準国産エネルギーとして、また基軸エネルギーとしての地位は固まってきているわけでございますから、そのことを国民の皆様方になお一層親切に、また謙虚に御理解、御協力を賜りながら、原子力発電というものを着実に進めていかなければならない、このように考えております。
  99. 野坂浩賢

    野坂委員 きょうはこれで終わります。
  100. 大坪健一郎

    大坪委員長 村山喜一君。
  101. 村山喜一

    ○村山(喜)委員 私は、原子力をめぐる問題につきまして、国民的な関心の高い問題を中心にしながら長官の御意見をいただきたい、そして問題をただしてまいりたいと考えているところでございます。  まず長官にお尋ねいたしますが、一つの種類のエネルギーというものが全体のエネルギーの何割ぐらいを占めたらエネルギーの安定的な供給としていいのだろうか。あなたは原子力委員会委員長でいらっしゃいますから、長期エネルギー計画というものを見てまいりますと、原子力による発電の割合が四〇%から六〇%というところを年次計画に基づいて長期のプランをつくって、原子力発電が基軸エネルギーだ、こういう位置づけをされておりますね。日本の場合は九電力を中心にして発電がなされているわけでございますが、私たちは最近の動きを見ておりますと、どうも原子力エネルギー、これに発電が余りにも頼り過ぎているのじゃないか。六割もやがて頼らなきゃならないというような状態になってくると、伊方の場合の二号炉の調整がこの前ございまして、私も高松まで行ってまいりましたが、三号炉が建設をされたらもう本格的に原子力の出力調整をやらなきゃならないような時代になる。六〇%にもなったらフランス並みに出力調整を年がら年じゅうやるような格好に持っていくことになるであろう。私たちもそう思わざるを得ません。向こう原子力の責任者に聞いてみましたら、第二回目の試験が済んだら当分はやらないのです。やらないような試験をなぜやったんだというようなことで意見を出して、相手の言い分も聞いたのでございますが、一つのエネルギーで六〇%も賄う。日本という国は今三十五基が動いているわけでございますが、もしチェルノブイリのような大事故が起こった場合には、核分裂によるエネルギーを取り出すことに対して国民の中から拒絶反応が出てくるということで、大変供給上不安定な状態になるのじゃないかというのが第一点でございます。  したがいまして、長期計画というのは、やはりベースロード方式の発電になっております原子力の場合と、それから、負荷追随が大変難しいわけでございますから、その負荷追随がしやすい電力、それは火力等がしやすいわけでございますから、そういうような調整用の電力というものとうまくかみ合わせなければならないのじゃないか。大体原子力によって調整をするということは、既に過剰な電力が存在をするから調整をせざるを得ないのであって、一〇〇%稼働していく姿の中でエネルギーの原価が下がっていく。それを五〇%に下げたりすることによりまして電力の単価が上がってくるわけでございますから、出力調整ということは経営的に見たら効率的なやり方じゃないわけです。経済的にはロスになる。そういう点を考えると、電源構成のあり方という問題で、あなたは原子力委員会委員長として、二〇〇〇年には四〇%、その後二〇三〇年には六〇%、こういうような計画をおつくりになることが果たして日本の場合には実情に合うことになるのだろうか。その点についてやはり長官ももう就任なさって大分過ぎておいでになりますし、前にも防衛庁長官もなさった方でございますから、そういうような意味では、基本的なあり方の問題としてどうあるべきかということをまず第一にしっかりと踏まえておかなくてはならぬのじゃなかろうか、こういうふうに思いますので、大臣の御所見をお聞きをしたい。
  102. 松井隆

    ○松井政府委員 私から最初に御説明させていただきたいと思います。  原子力委員会が昨年六月に決めました原子力開発利用長期計画、そこでの認識でございますけれども原子力を基軸エネルギーとして確立する、そういった形で言ってございます。それで、これはもう先生を前にして釈迦に説法でございますけれども原子力のいろいろなエネルギーとしての特色、もちろん安いという問題もございますけれども、さらに燃料の備蓄性が高い、つまり供給プロセスに対して非常に強い構造を持っているとか、あるいはその他幾つかの原子力のエネルギーのメリットがあるわけでございます。ただ、石油危機後のエネルギー構造のいろいろな変化もございますものですから、やはりエネルギー対策としては、その長計にも書いてございますけれども、安い、安全である、クリーンである、それから用途に応じて使いやすい、そういった幾つかのファクターを考慮いたしましてどういうふうにやったらよろしいか、つまりエネルギーセキュリティーの問題もございます。それから経済性の問題もございます。それからニーズへの適合性、そういったようなファクターもあろうかと思います。そういったものを適当にその要件の中で均斉のとれた形にして、それで強靱かつ柔軟なエネルギー供給構造をつくり上げるということが認識でございます。それで原子力につきましては、そういったベストミックスを考えるとしても、やはり今後の基軸エネルギーとして当面二〇〇〇年には少なくとも五千三百万キロワット、全体から見て約四〇%の割合になるわけでございますけれども、そういうことを決めたという次第でございます。
  103. 伊藤宗一郎

    伊藤国務大臣 科学技術庁中心としてこのような計画を定めて、閣議にも報告をして、閣議の了承を得て決めております原子力開発利用長期計画でございますので、この線に沿って計画的に着実に進めていくというのが今の我々の基本的な立場でございます。それにはどういうメリットがあるかということにつきましては今原子力局長が詳細に申し上げましたけれども、もちろん安全対策というのが大前提にあることはこれまた言うまでもないことでございまして、絶対に事故を起こさないという確信、自信、またそのための対策の慎重性等をあわせまして、この計画をこれからも着実に進めてまいりたいと考えております。  その割合、パーセンテージの問題につきましては、我が科学技術庁を初め日本政府の総力を結集しての計画でございますので、我々としてはこの線に沿って進むのが国策に沿い、また国民のニーズにもおこたえするゆえんであるというふうに考えております。
  104. 村山喜一

    ○村山(喜)委員 現在の原子力発電の占める割合の中で、もう既に関西電力は正月の二日ごろのボトムの時期には、ほかの火力発電所等を全部とめまして、原子力発電所の出力調整にいかなければならないようなそういう状態でございます。四〇%なり六〇%に順次引き上げていくということになりますと、そこには原子力発電による出力調整ということをやるんだという方向でなければ、それはできないことになる。  しからばその出力調整という問題についてはどういうような問題があるのかということを踏まえながら、国民が安心してそれを見守るというようなことにならなければならないのに、この前伊方には全国から自分のお金を使って四千人も五千人も、もうそんなことはやめてくれということで集まってくるわけですね。それは市民運動のグループで、だれが大将かわからぬわけです。そういうような状況が我々の前に出てきた。これはチェルノブイリの原発事故がありました後、ヨーロッパやあの地域における反対運動と同じような動きだと見なければならぬと私は思うのであります。これに対してたしか伊藤長官はコメントをされたと思うのですね。それは一言で言えばPRが足らないのじゃないかということでございました。そういう動きは非常に厳しい目でみんなが見るようになってきたのです。原子力については不安だというのが八〇%を超えておりますね、ただしやらなければならないという内容のものもあるようでございますが。立地されているところでは大変不安がっておるわけです。国民の中にも不安の気持ちがだんだん高じてきてそういう行動になってあらわれている。私はどこかにその問題の本質的な問題があるんじゃないだろうかという気がするのです。  伊方の二回目の出力調整うまくいきましたという報告書を私もここにもらっています。それはいわゆる加圧水型の出力調整が硼素の濃度調整と制御棒の調整によりましてやられて、一〇〇%から五〇%に時間をかけながら調整をするというやり方をやったのは初めてでございますが、沸騰水型の場合にも、そのことを調べておりましたら新聞にも書かれましたし、また私もここに持ってきておりますが、原子力学会報の記事なんかを見てみますと、沸騰水型の場合の実験の結果のデータがここにございます。この場合には制御棒を使わないで再循環の炉心の流量調整によりまして調整をやっておる。しかもそれを見てみると、そんなにひどく下げているのじゃなくて二〇%程度の形でやっている。しかも炉の構造から見まして制御棒はなかなか入れられない構造になっていますから、制御棒は使っていないということで、沸騰水型でも何回もやっているのだ、ATRでもやっているのだということが調べてみて初めて私たちはわかる状況でございます。皆さん方の場合は大変なれっこになっておられるでしょうが、電力会社だけが通産省なり科学技術庁に連絡をして、うまくいきましたという格好で今まで事務的な処理をし過ぎてきたのじゃないか。原子力というものは自主、民主、公開という三原則があるわけですから、そういう点から、前もってこういうような仕組みでやるんですよ、だからこれについてはどうだということを十分に理解をしてもらうような措置が足らなかったのじゃないか。それは四国電力だけの問題ではなくて、先にやった東京電力やそのほかの電力会社では沸騰水型のものでやっているわけですから、そういうことを事実を事実として国民の前に明らかにしていくということがなければ、これから四〇%、六〇%というふうになっていくその原子力委員会の長期のエネルギー計画は私は必ずどこかでストップすると思うのでございますが、これに対する大臣の所見をお聞きいたしたいと思います。
  105. 伊藤宗一郎

    伊藤国務大臣 伊方の出力調整試験が予定どおり済みまして、大事な試験の成果、結果を電力会社が得たという報告を得まして喜んでおるわけでございますけれども、反面、今村山先生からるるお話しのとおり、今までない形の反対運動が展開をされて、現場には参りませんでしたけれども、テレビ等を通じましてその模様を知ることができまして、私も科学技術庁長官として、原子力委員長として、こういう反対運動がどういう形で起こるのかということで私なりにまた役所なりにいろいろ検討、分析をさせていただいております。  それで、先ほど私のコメントについてお触れがございましたけれども、公開というものをもっともっと広めて、住民の側に立ったあるいはまた地元の側に立って懇切丁寧に、PRというのはちょっと安っぽく感じますけれども、そうでなしに、出力調整試験というのはこういうものだということを図を示したりあるいはまたビデオでもつくって、本当に親切に懇切にPRを進めるという態度については、いささか欠けておったのではないかというような反省を我々は持っております。またそういう指導を電力会社に十分なし得たかということにつきましても、まだまだ足りなかったような気がいたします。公開、それには原子力発電なり原子力行政が長い目で見て、長期的に国民のためになるんだ、国民の幸せにそのままつながっていくんだ、そういう誇りなり自信なり、もっと言うなら使命感というものを行政の側が持たなければならない。及び腰あるいはへっぴり腰ではなく、村山先生御承知のとおり二〇〇〇年の四〇%、二〇三〇年の六〇%というようなこれだけの長期計画を着実に進めていくためには、それの推進者である原子力委員会なり科学技術庁がしっかりしたバックボーンを自分行政の中に打ち立てていく、そういう気持ちが大事だろうというふうに考えております。伊方の問題を通じまして我々も新しい形でのいろいろな問題があることを十分承知いたしましたので、これらを大きな教訓としてこれからの原子力行政に素直にまた謙虚に対処をしてまいりたい、このように考えております。
  106. 村山喜一

    ○村山(喜)委員 伊方の一号炉の設置許可申請書添付書類を見てみますと、「原子炉の使用の目的に関する説明書」の中で「伊方発電所に設置する原子炉は、商業発電用として使用するものである。」その中の「運用計画」の中に「伊方発電所は、基底負荷用として高負荷率運転を行なう予定である。」ということで、ベースロード方式の発電の炉であるから高負荷率の運転をずっとやっていくんですよということで許可を得て、そして実際にやっている。したがいまして、そういうようなことから、これは二号炉もそうだと思うのですが、使用目的が添付書類の中で明記されておるわけです。そこでは、原子炉は発電用である、ベースロード方式を確保するために高負荷率運転をやるんだということの、許認可を得るのにはそういうようなので、認可を得ておきながら、実験を野放しでやっているのは一体どうなのか。これは自由裁量で電力会社がやって、通産省の方には届け出程度で足りるんだ、こういうようなことであったようでございますが、私たちの方でも四国の通産局に参りまして局長にも会いましたら、いや、私のところはただ通知が来るだけで何も連絡は義務的にはないことになっておりまして、それはエネ庁の方に直接会社が連絡をすればいいことになっているのでございますというような話でもございました。したがいまして、そういうような届け出をしておきながらこういう出力調整をやる。これは違法だというので裁判にもなっているようでございますから、まあその結果も見なければならないと思うのでございますが、第一回の硼素が非常に高い濃度であるときの実験、それから今度は硼素がその二分の一くらいの濃度になったときの実験、二回やっているわけですが、公開の原則にもかかわらずそんなことは知らしめもせず、ただ報告だけでやりますよというような非常に安易な考え方で処理がなされ過ぎてきたのではなかろうか、私はそう思うのです。単にそれが成功したとかしないとかというような問題は、なお科学的にこれから論じていかなければならないと思いますし、一片の事例だけでそれが成功したというふうに見ることもどうであろうかと思います。  ですから、ジルコニウムの外と中の温度差が大変激しいわけでございますから、そういうようなものからくる金属疲労の問題等が今後どういうような形で出てくるかというような問題等は後に譲るとしましても、今のような形で株式会社の四国電力が自由にやれるというようなことでこれからもぼんぼんやられるようになってきたのでは、しかもみんなには知らせないという形でやるようなやり方を続けておれば、なお信用を失うのではなかろうか、こう考えるわけでございますが、これはエネ庁の関係でしょうか。
  107. 山本欣市

    ○山本説明員 お答え申し上げます。  出力調整の運転を日常的に実施するかどうかにつきましては、電源構成とか需給の状況とか、そういうことによって決まるわけでございますが、当面そういうような必要性はないというふうに考えております。通産省といたしましては、今後出力調整運転が実施されるというお話を電力会社から聞きました段階で、その必要性も含めまして、安全性について十分検討をしてまいりたいというふうに考えております。
  108. 村山喜一

    ○村山(喜)委員 四国電力は、今自分で発電した電力を売らなければならないような過剰な電力設備になっている。したがって伊方三号も許可を受けたけれども、着工は向こう三年間だったと思いますが、延期願いたいということで延期している。そういうような状況の中にあって、そこでまた三号炉が許可に基づいて設置されるとなると、この三号炉はしょっちゅう出力調整をやるような炉になるんじゃなかろうか。これは住民の危惧している点でもございます。したがいまして、原子力発電というもので出力調整を常態とするようなことにならないようにしないと、私はチェルノブイリの事故の跡にも行ってまいりましたが、これは日本とは若干違いますけれども、安全上の配慮が足らなかった点もございますし規則違反もたくさんありますが、いずれにしましても低出力下の原子炉の核暴走なんだ。そのことを考えますと、出力調整というのは研究課題としては大変大事だろうと思いますが、原子炉の制御棒まで使いましての出力調整というのは避けるようなやり方の方が望ましいんじゃないか。意見だけ申し上げておきたいと思います。  それから、限られた時間でございますからあと一、二お尋ねをいたしますが、先ほども日米原子力協定をめぐる問題のお話が二人の委員からございました。これは確認をいたしますが、現在の日米原子力協定は二〇〇三年までは有効だということでございますか。
  109. 中島明

    ○中島説明員 そのとおりでございます。二〇〇三年まで有効でございます。
  110. 村山喜一

    ○村山(喜)委員 先ほど原子力局長の方からの三十対五十三というのは、明確にどういうことでございますか。承認をしないという修正案を否決して、それでレーガン大統領と日本との間で協定を結んだことに対する賛成が五十三だ、こういうことでございますか。その中身はどうですか。
  111. 松井隆

    ○松井政府委員 先ほども申しました三十対五十三ということは、上院におきまして、この日米の新協定アメリカの国内法を満たしてないとか、そういう理由で協定は不承認とすべきであるという決議案が提出されておりました。その決議案が上院本会議で表決に付されたということでございまして、つまり三十対五十三で協定不承認の決議案が上院で否決されたということでございます。
  112. 村山喜一

    ○村山(喜)委員 わかりました。  それはアメリカ原子力法に基づく条項に違反をしているんじゃないかということで指摘をされていたものが、そうじゃないんだということになったんだろうと思いますが、一連のアメリカの議会の動きを見ておりますと、新協定に対しましては、三十年間の事前同意というのがあるかい、先例がないじゃないかとか、あるいは初めはNRCも賛成でなかったし国防総省も賛成でなかったようなことなどもございますし、今のお話もございますが、私は、どこのルートを通って運ばれていくのか、運ばれていくプルトニウムが安全に輸送される状況があるのかどうかというようなことから問題が提起をされているんだと思うのでございます。  輸送用のキャスクの問題は、これはNRCの厳しい安全基準で見れば、実際に墜落をしてテストをしなくてもよろしいということの承認を得ているようでございますが、マコウスキー修正案ですか、それは通って、NRCが認可すれば墜落テストは必要ないということになっているんだというふうに聞いております。そうしてまた、米国の参加がない米国の領土にかかわるプルトニウム輸送はあり得ないということも言っておるようでございます。これに対してアラスカ経由とかアリューシャン列島の軍事施設を経由してとかというような問題の論議をしているんだが、一体日本は受け入れ空港については何にも手がついていないじゃないかという意見があるようでございます。先ほど三沢の空港の問題は白紙でございますということでございましたが、そういうようなふうにしてイギリスなりフランスなりで再処理をされたプルトニウムやウランやあるいは放射能の廃液が日本に送り返されてくる。そのときにどういう輸送手段で運んでくるかということも、空輸でやるあるいは船もまだ可能性があるとかいろいろな意見がございますが、それを入れて輸送用のキャスクを実際にテストしてみたら失敗をした。それは動燃とアメリカのバッテル・コロンバスが開発をしたPAT3というのがキャスクとして一番新しいやつだけれども、これの墜落破壊テストをやったらうまくいかなかったという報道を得ているわけでございますが、それは事実でございましょうか。
  113. 松井隆

    ○松井政府委員 プルトニウムの輸送容器の開発の御質問でございますけれども、勤燃事業団が開発の主体でやっております。まず一つは、米国の既存のプルトニウムの航空輸送容器がございます。これはPAT1、PAT2という二つあるわけでございまして、そういった設計なども参考にいたしまして、昭和五十九年から我が国に適したプルトニウムの航空輸送容器の開発ということを行っておるわけでございます。  それで、御案内のとおりこの輸送容器というのは、プルトニウムを収容する中側の容器と、それから外側からの衝撃を吸収するあるいは中のものを保護する、そういった外の容器、主としてそういうものから構成されているものでございます。それは多重構造と申しますか、そういった容器から成っておるわけでございますけれども、動燃事業団はこれまでアメリカで二回ばかりテストしてございます。一つは、これは場所はアメリカのサンディア国立研究所でございます。そこで一九八六年に一回、それから一九八七年に一回、計二回の試験を実寸大の模擬輸送容器を用いて実施しています。この試験の内容につきましては、現在アメリカにありますNRCのNUREG〇三六〇という基準がございまして、その基準をもとにして試験をしたわけでございます。  その結果でございますけれども、確かに一回目につきましては多少問題があったというふうに聞いております。その後そういう点をもう一回修正いたしまして、二回目、一九八七年の方でございますけれども、万一の航空機事故においてもプルトニウムの収納健全性が維持される、それから環境安全性も保持し得るような航空輸送容器の開発の見通しがおおむね得られたというふうになってございます。ただ、先生先ほど御指摘のとおり、これは現在ありますアメリカのNUREG〇三六〇でございまして、それに新たにマコウスキー修正でございますか、それが決まっているわけでございます。そこで少し内容がまた変わってくるわけでございます。そういう意味合いで、そういったマコウスキー修正条項、そういうものも加えて、それに適合するにはどうしたらいいかということがあるわけでございまして、またそういった新たな問題がありますものですから、そういうものもこれからNRC当局と事務的に少し専門家レベルで、どういった試験にするのか、そういうものも含めて相談していかなくちゃいけない事項であろうというふうに考えております。
  114. 村山喜一

    ○村山(喜)委員 二回目のテストはおおむね成功した。しかしマコウスキー修正案も出てきたし、NRCがこれは大丈夫と保証すれば、もう実際の墜落をさせるテストはやらなくてもいいからということの信用性を高めるようなことになってきたんだろうと思いますが、そういうような意味で成功した。となればPAT3の場合、成功するとなると、コンテナに詰めてボーイング747の飛行機で運んでくる一回のプルトニウムの輸送量というのは、二百五十キログラムぐらいであろうというようなことが言われておるわけですが、そのような747の貨物専用の飛行機が日本のある飛行場に着くということになりますと、その747のボーイングの飛行機は、滑走路やそういうようなので考えてみれば、大体三千メートルぐらいの滑走路のある飛行場でなければ離着陸ができない。こういうことになってきますと、それによって飛行場は大体どの辺だろうかという想定ができる。それから、運んできたものを保管をしなくちゃいかぬわけでしょう。管理をして、そして放射能が低減していく状態に合わせて厳重にそれぞれの処理をしなくちゃならぬということになってきますと、そうなれば三沢のあたりじゃないかな、こういうふうに見るのは、向こうの方で六ケ所村を中心にして三点セットの計画が着実に原燃サービスや原燃産業で進められているわけでございますから、そこと結びつけて物を考えるのは、これはおかしいことになりますか。さっきは全く白紙でございますと言われたんだけれども、その白紙ということは、可能性もあれば可能性もないという意味の白紙であろうと思うのでございます。747のボーイングの飛行機が離着陸ができる、しかもそういうような送られてきた核物質を保管をする場所というようなのを考えると、当然そういうことしか想定がされないわけでありますが、それはどのように皆さんはお考えになっているんですか。
  115. 松井隆

    ○松井政府委員 一つ先生、ボーイング747というふうに特定なさっておりますけれども、私どもまだそういうふうに決めたわけではございません。いずれにしろやはり大型貨物機ということになろうかとは思っておりますけれども、まずそれをちょっと説明しておきたいと思います。  それから、プルトニウムを運んできた場合どこかに貯蔵するであろうというお話でございますけれども、確かにそのとおりでございます。ただ、どこに貯蔵するか、それから当然貯蔵ということはどこで使うかということもございますものですから、そういった問題もございます。そういういろんなファクターをもちまして決めるわけでございますが、いずれにしろ、先ほど申しましたように三沢ということにつきましては政府としてはまだ全く決めたわけではございませんで、白紙でございまして、これからのいろいろな諸検討を含めて行うということになるかというふうに思っております。
  116. 村山喜一

    ○村山(喜)委員 海外の返還廃棄物の一時貯蔵の問題でございますが、これは昭和六十五年以降、一九九〇年以降ということでございます。プルトニウムとかウランとかその他の放射性廃棄物で、ウランとプルトニウムは六ケ所村の再処理施設の中の製品貯蔵施設に貯蔵される計画、一時的という意味は三十年から五十年の間までの貯蔵で、地層処分が実用化されるまでの間、一時的に保管を六ケ所村の再処理場の製品貯蔵施設に返還物質は貯蔵される計画だというふうに聞いているのですが、それは間違いございませんか。
  117. 松井隆

    ○松井政府委員 英仏に再処理に出しておりまして、そこから出てくる放射性廃棄物の話でございますけれども、これにつきましては、民間の電力会社が英仏に出しております放射性廃棄物の廃液でございますか、それをガラス固化したものを日本に持ってくるとなってございます。それでその場所でございますけれども、最終的処分をするまでの間、したがって三十年から五十年と我々は申しておりますけれども、その間は青森県六ケ所村の施設の中に貯蔵するという計画になってございます。
  118. 村山喜一

    ○村山(喜)委員 六ケ所村の近くに三沢の飛行場があるわけでございますから、そういうような意味で三沢も非帯に有力な候補地だというふうに想定ができるわけでございます。  ただ、ほかの飛行場から持ってくる場合は、その核物質の運送の方法について、アメリカでは核廃棄物の輸送法案という法律案提案をしているようでございますが、日本の場合は、従来核物質の輸送についてはもうとにかくみんなに知らせるな、そして護衛つきでこっそりと輸送をしていくというスタイル、これがとられてきた輸送体系の問題でございます。アメリカの場合には原子力規制委員会、NRCが許可制をとっておりまして、そしてNRCが輸送の経路上の地方当局に対してもあらかじめ知らせるというような形をとりながらやっているようでございます。日本の場合、一体これからどういうふうにその輸送の問題を考えているのだろうか。これは大変重要な問題でございますので、きょうはもうあと時間がございませんからこのあたりでやめておきますが、アメリカの場合にはそういうような立法措置をとって、自主、民主、公開といいましょうか、知らせていく。日本の場合は自主、民主、公開なんかはもう法律の建前だけになってしまって、何も知らせないでばんばんやっちゃえというのが、出力調整の問題にしても出てきているような雰囲気でございます。私は、やはり原子力基本法という法律が制定をされたことのその原点に立って、自主、民主、公開の問題をいかにして行政の中で生かしていくかということを長官もお考えをいただきたいということでございます。答えがあれば事務当局の方からお答えをいただいて、私の質問を終わります。
  119. 石塚貢

    ○石塚政府委員 核燃料物質の輸送でございますけれでも、IAEAがっくりました輸送の基準というものがございまして、各国ともこれを法制に取り入れて規制を行っているわけでございます。我が国の場合につきましても、このIAEAの基準というものを放射線審議会でも審議をしていただきまして法制化をしているということで、各省庁が分担をして輸送の規制を行っております。陸上輸送につきましては原子炉規制法によりまして規制を行っておりますが、輸送物、つまり輸送のキャスクでございますが、そういったものにつきましては科学技術庁の方で確認をするということでございますし、輸送の方法につきましては運輸省の方で確認その他規制を行っております。なお海上輸送につきましては船舶安全法、それから航空輸送につきましては航空法という法体系で運輸省が規制をしております。
  120. 大坪健一郎

    大坪委員長 この際、暫時休憩いたします。     午後零時四十六分休憩      ────◇─────     午後四時開議
  121. 大坪健一郎

    大坪委員長 休憩前に引き続き会議を開きます。  質疑を続行いたします。貝沼次郎君。
  122. 貝沼次郎

    貝沼委員 質問の順序を、通告のときは、原子力安全委員会の方をやって、それから宇宙開発をやって、そして日米科学技術協力協定の話というふうに考えておりましたが、順序を変えまして、科学技術協定の方を真っ先に、ちょっとだけですからやらせていただきまして、それから安全委員会の方に入りたいと思います。  けさもいろいろお話が出ておりましたが、これは現在交渉中のお話でございますから、恐らくどうなっているかと聞いても答えはないだろうと思います。アメリカ科学技術宇宙小委員会、一九八七年十月十五日の上院の小委員会におきまして意見を聴取しておるわけでありますが、このときのヒアリングの目的は、米国提案の細部や特定の条項の検討に入ることではない、協定はマル秘であり、交渉もまたそうである、そのことを尊重しなければならないということで、それを尊重しておるようでありますから、私もその内容までとは申し上げません。しかし、それならば何も聞かないでいいかというとそうもいきませんので、簡単に日米科学技術協力協定、この交渉というものが現在どのような状況にあるのかということだけ、差し支えない範囲で教えていただきたいと思います。
  123. 法眼健作

    ○法眼説明員 ただいま先生から御質問ございました科学技術協力協定の協議の現状でございますが、御案内のように、科学技術先進国たる日米両国がこの分野協力することが非常に大事であるということで、さきの日米首脳会談でも両首脳の認識が一致いたしまして、そして政府といたしましてもかかる認識を踏まえて今一生懸命やっているところでございまして、現実に今週もワシントンにおきまして日本側とアメリカ側におきまして交渉しているところでございます。  交渉の内容につきましては、先生ただいまおっしゃいましたように、まさに交渉の途中なものでございますから、内容をつまびらかにいたすことは、私どもとしてもまことに申しわけないのでございますができない状況にございますが、私どもといたしましては、協力強化するための一般原則を盛り込むということ、それから協力活動にかかわる知的所有権の保護の問題、こういった問題を含めまして、将来におきます日米両国の科学技術関係が発展的にかつまたスムーズにいくように一生懸命努力している途中でございます。
  124. 貝沼次郎

    貝沼委員 わかりました。  それで私、予算委員会のときもちょっとお尋ねしたのですが、今まで知的所有権の話はついに出てこなかったのですね。言葉自体が出てこなかった。それを言うと内容に入るという話であったものですから、どうやって聞こうかと思ってきょうは悩んだわけですが、ただいま知的所有権という言葉が出ましたから、後でこれはお尋ねいたします。  先ほど申し上げましたように、一九八七年十月十五日、米国上院の科学技術宇宙小委員会がヒアリングを行いました。ここでコントロール・データ社のウィリアム・C・ノリス氏が発言をいたしております。いろいろ日本について、日本アメリカ関係につきまして発言しておりますが、主な項目、これはどういうことだったのでしょうか。外務省の方……。
  125. 法眼健作

    ○法眼説明員 ここのところずっと日米間で科学技術交流が進んでおるわけでございますが、今の先生の御質問を一言で簡単にお答えすれば、日米の間でより均衡のとれた科学技術交流を目指していく、不均衡があればそういうものをできるだけ解消して均衡のとれた科学技術協力関係を目指していく、こういうことであると考えております。
  126. 貝沼次郎

    貝沼委員 それはまとめて言えばそういうことであって、具体的にこの方はいろいろ述べていますね。例えば日本のただ乗り論であるとかあるいは政府はもっと予算をつけるとか、アメリカの大学に対して援助せよとかいろいろなことを言っているでしょう。それはどういうことですかということをお尋ねしております。
  127. 法眼健作

    ○法眼説明員 まさに日本アメリカの両国の間では、科学技術の問題につきましてアメリカ側日本側にいろいろ今まで協力してきた、もちろん日本側も協力してきておるわけでございますけれども、その過程において、アメリカ側の方が日本側に協力するその度合いがより強過ぎたのではないか、したがって、これから長い目で日本アメリカ科学技術関係を見た場合に、日本も大変な先進国になっておるわけだから、これはアメリカ側から言っておるわけですけれども交流の際には日本側もアメリカ側が今までやってきた点をよく踏まえて、今まで以上に日本側としては協力の質と量、要するに協力の度合いを強めるべきである、こういうのがアメリカ側の根本的な考え方背景にあると思います。
  128. 貝沼次郎

    貝沼委員 その背景は私承知しておるわけです。その背景はあくまでも協力協定の中での話なんですね。それは秘密だから私は聞きませんというのです。そうじゃなしに、この公聴会においてウィリアム・C・ノリスという方がいろいろ発言をなさっておる。それは一般論的に、協力協定とは別個に、アメリカの意見として、まあこれはアメリカの意見なのかどうかわかりません、その人の意見として出ておりますから。その具体的なものとして、先ほど申し上げましたように、例えばアメリカの大学に対して援助せよとかあるいは日本の民間の研究所をもうちょっと開放せよとか、あるいは知的所有権の問題とかも含めていろいろあったようですが、どういうような項目がありましたかということをお尋ねしております。
  129. 法眼健作

    ○法眼説明員 例示的に申し上げますと、ただいまの先生の御指摘のノリス氏の御指摘は、大体次の三点について日本側にもっとやってもらうべきではないかということでございまして、まず、日本政府支援の研究開発プロジェクトにアメリカ研究者の参加の機会を与えるべきだというのが第一点。それから、日本は在日の米国科学者、工学者の人数を増加させるべきではないかというのが第二点。そして第三点が、日本米国の研究成果を利用して日本において開発された技術に対する米国企業のアクセス権利を与えるべきであるという三点が主な点だと私ども承知しております。
  130. 貝沼次郎

    貝沼委員 私も大体その三点だと思いますが、そのうちの日本アメリカ研究者を受け入れる方法、これは先般総理大臣が二百名もの約束をされたわけですから、まあまあアメリカだってある程度感謝しなければならぬのですね。理解しなければならぬと思います。  それから、問題は第三番目のところです。この第三番目のところで、米国技術研究の成果を用いて日本でそれをもとにして発展させた技術に対しては、日本はその権利を米国企業に認めるべきである。今あなたがおっしゃった第三番目ですね、これはちょっと問題なんですね。アメリカが勝手に言っていることですから何もこっちは驚くことはないのですけれども、問題です。そこで、こういうことを言っておるそうですねと言うだけではいけませんので、協定交渉とは別に、一般論的に外務省としてはこういう考え方に対してどういう判断をしますか。
  131. 法眼健作

    ○法眼説明員 御質問の点は、先ほどの先生の第三点、先生と申しますかノリスさんの第三点を言いかえますと、恐らく先生の御質問の趣旨は、アメリカで得た研究成果を利用して日本開発された技術、こういったものがあればアメリカ側企業がそれを利用したい、それをどういうふうに考えているのだ、こういう御質問だと理解いたしますが、それで先生よろしゅうございますか。
  132. 貝沼次郎

    貝沼委員 いいえ、私が言っているのは、公聴会で言った言葉を今言ったのです。要するに、米国技術研究の成果を用いて日本でそれをもとにして発展させた技術に対しては、日本はその権利を米国企業に認めるべきであると米国の方から言っているわけですよ。そうでしょう。日本アメリカで研究をしてきたことはたくさんあるわけですよ。それが向こう企業に認められるようになりますと、これは日本としてはゆゆしき問題になってきますので、外務省としてはこれをただ聞いているわけじゃないでしょう、何かお考えを持って聞いているのではありませんかということをお尋ねしております。
  133. 法眼健作

    ○法眼説明員 大変重要な御指摘でございまして、これは一般論的に申し上げれば、日米協力いたしましてそこで何らかの成果が出て、仮にこれを発明という呼び方でいたしますと、発明がここで行われたという場合でございますけれども、これをどういうふうに利用するかということにつきましてはアメリカアメリカ考え方がございまして、ここにまさにノリスさんが言っているような、これはうんと利用すべきだ、自分も全部利用すべきだという考え方なのでございましょう。一方私ども日本立場がございまして、これを今の協定という面で申し上げれば、私ども自分たちの考えが十分反映されるように一生懸命頑張っているわけでございまして、それを離れてどういうふうに考えるかという点につきましては、私どもが今申し上げられることといたしましては、日本側としてはできるだけ自分の考えている立場を貫くということで一生懸命やっているということにとどまらざるを得ないのでございまして、アメリカアメリカの方としてそういうふうに強目に言ってというか、ノリス博士の考えのようにできるだけ全部アメリカができるようにという考えはあるかもしれませんが、一般論におきましても、それはアメリカ考え方であって、日本日本考え方にのっとってやっていかざるを得ない、こういうことだと思います。
  134. 貝沼次郎

    貝沼委員 こんがらがってはいけないのです。私は今協定の話をしていないのです。協定の話をするとマル秘になるのですから、これは言わない。そうではなしに、これはアメリカ公聴会でノリスさんがおっしゃった言葉、これは協定関係があるかどうか私は知りません。向こうもマル秘だと言っているのですから、知りません。しかし、言ったことだけはお互いにわかった。そのことに対して日本日本立場というふうに言いますけれども、その日本立場というのはアメリカのそういう一つ考え方に対してどういうような立場なのですかということをお尋ねしております。
  135. 法眼健作

    ○法眼説明員 ごく一般論として申し上げますと、協力活動の結果何らかの発明ができたと想定されますが、そのような発明は、言ってみればお互いの共同作業といいますか共同研究の結果であろう。そういたしますと、それについての権利、具体的に言いますと、どのような特別な権利、特許申請権というものがあるのかということになるのだと思います。問題はその配分になるのだと思うのでございますけれども、一般的に申し上げますと大体三つ考えられて、協力の一方の当事国における特許申請権がどうなのか、それから他方の当事国における特許申請権がどうなのか、それから第三国における申請椎がどうなのか、この三つの場合が想定されるわけでございまして、これをどのように分けるかということが一般的な問題として存在するわけでございます。  それで、現在我々はどういうふうにそれに取り組んでおるかと申しますと、これは実施取り決めにおいて定められておるわけでございますけれども、大まかに申しますと、情報の移動のみの場合は発明者の属する国が今申し上げました三つの特許申請権のすべてを得ておりまして、それから研究者が派遣される場合には派遣国が派遣国における申請権を持っておって、それから研究者を受け入れた場合は受け入れ国が受け入れ国それから第三国における申請権を得る、こういうことで整理されておると承知しております。
  136. 貝沼次郎

    貝沼委員 大体俗に言う二対一というものですね。それはよろしいのですが、これも一般論ですけれどもアメリカの方では、今言ったことが関係するのかどうかこれも明確ではありませんが、要するに特許の属地主義という考え方がどうもあるようですね。内容がどういうふうになっているのか私つまびらかではありませんけれども、どうもそういうことがある。ところが我が国にはそういう考え方は法的にはありませんね。我が国の場合は属人主義ですね。そこで外務省、もしそういうことについて承知しておることがあれば、どういう内容のものであるかをお知らせいただきたいと思います。
  137. 法眼健作

    ○法眼説明員 協定がない場合には、例えばアメリカの例をとりますとアメリカ側が全部取得してしまうわけでございますが、協定がありますとその限りではないわけでございまして、そこで区別がついておる、こういうふうに私どもは承知しております。
  138. 貝沼次郎

    貝沼委員 これは余り時間をかけられませんので、私の言いたいことはこれから申し上げるわけですが、例えばこれは三月七日付のニューヨーク・タイムズの報道でございます。コンサルタント会社コンピューター・ホライズン社、これが連邦機関である全米科学財団と協力して開発した手法による調査というものが発表になっておりました。その結果、日本の発明者に与えられた特許がその後他の発明者に引用された回数は、米国人が取得した特許に対する引用回数を七六年初め以来上回っておるという記事ですね。日米の差はその後開き続けていることがわかった。これを指数化した順位で見ると、トップが日本。要するに日本人が取った特許を引用していろいろやったというのが一番多い。その次はアメリカ、それから英国、フランス、ドイツ、こういうふうになっておるという、これは米国のニューヨーク・タイムズの記事です。したがって、日本は模倣国家であるという考えはうそであるという記事なんです。大変頼もしい記事だと私は思って読んだのですが、どういうふうに受け取られますか。
  139. 法眼健作

    ○法眼説明員 かねてから私どもが申し上げていたようなラインがその記事に含まれておると私どもも考えておりまして、先生と同じ考えでございます。
  140. 貝沼次郎

    貝沼委員 それで、アメリカにもこういう考えあるいはこういう調査が出てきておる。アメリカでは既に公聴会もやっておる。ところが日本の場合は政府交渉のみが今行われておりまして、議会においての議論とか意見とかあるいは一般国民の意見とか、学者とかそういう方々の意見はマスコミ等いろいろな面であらわれてはおります。あらわれてはおりますけれども、正式な場での発言はないように私は思うわけでございます。  そういうような点から、これは委員長にお願いしたいと思いますけれども、当委員会においてそういう意見を聞く場をひとつ御配慮願いたい、こう思う次第でございます。詳しく申し上げればいいのですけれども、この日米協力協定は単なる科学技術だけというふうになっておりますけれども、実はこれは、宇宙の関係あるいは科学技術あるいは軍事技術というものが別々に行われるとはいうものの、それをずっと突き詰めていきますと、日本国とアメリカ合衆国との間の相互防衛援助協定に基づくアメリカ合衆国に対する武器技術の供与に関する交換公文などが今ごろようやく息を吹き返したりしてまいりますと、実はこれはもう非常に難しい状況が出てくるわけでありますので、日本の有識者の意見を聞く場を委員長にひとつ御配慮いただきたいと思いますが、いかがでしょうか。
  141. 大坪健一郎

    大坪委員長 貝沼君の御提案理事会において協議をいたしたいと存じますが、よろしゅうございましょうか。
  142. 貝沼次郎

    貝沼委員 それでは、こちらの方の問題はこれで一応終わりたいと思います。  次に、原子力安全委員会の方の問題であります。私は、原子力発電、原子力の平和利用、これは進めなければならないという立場でございます。しかし、であればこそやかましく言うところはやかましく言わなくちゃいけない。科学技術庁長官の就任のときのインタビューでも念には念を入れて、それから今度の安全委員長の談話でも念には念を入れて、両方同じ言葉が使われておりますけれども、念には念を入れて私もお尋ねをしたいと思っております。  そこで、昭和六十三年二月十日夜、原子力安全委員会は異例の緊急記者会見をいたしまして、内田委員長は「四国電力(株)伊方発電所二号炉の出力調整運転試験について」という談話を公式発表いたしました。私はこれを眺めまして、なぜ今急にこういうことをしなければならないのだろうかと大変不思議に思ったわけでございます。しかもこの談話を見ますと、一、二、三とありまして、一のところでは「基本的設計方針の範囲内であり、安全上の問題はない。」こう言っておりながら、二番目に「しかし」というのかついて、「念には念を入れる観点から」というのがあるわけでございます。必要ないなら書く必要ないことなんですが、やはり書かなければならなかった背景があっただろうと思うのですね。そこを御説明願いたいと思います。
  143. 石塚貢

    ○石塚政府委員 その辺の事情につきましては最初に私の方から御説明申し上げます。  安全委員会は、日常的な出力調整運転を行う場合でございましても、それが設置許可申請時の安全審査でカバーされておる限り、申請書あるいはその添付書類に記載された条件の範囲内で運転される、そういうものである限り安全性は確保されるという立場でございました。しかしながら、一方今回の伊方の二号炉の出力調整試験につきましては、伊方二号炉の設置されております地元市を中心にいたしまして出力調整運転の安全性についていろいろな考え方が交差していたということ、それからさらに出力調整試験に対する原子力安全委員会の立場というものにつきまして誤解を与えるような報道が一部でなされたということを勘案いたしまして、原子力委員会の御判断によりまして、本件に係る原子力安全委員会の考え方を明らかにされたものであるというふうに承知いたしております。
  144. 貝沼次郎

    貝沼委員 これは公式談話ですよ。また、そのあなたのおっしゃる意図であれば一だけでいいのです。なぜ二、三が出ているのか。三はチェルノブイルの原子力発電所との関係ですからいいですけれども、二は、これがまた非常にわかりにくい言葉が並んでおります。例えば出力調整運転というものは運転試験なのか運転なのか、私はよくわかりませんが、これが初めて行われたわけではない。今まで既に昭和六十一年から六十二年、これはPWRで言いますと関電の方が既に四基やったという報道もありますし、あるいはBWR、東電関係でも五十五年以降二十七回にわたっているという報道もある。まんざらうそじゃないだろうと私は思うのです。そういう状況があったにもかかわらず、今回急にこの談話が出てきた。では今までのはどうなのかということになる。これからは念には念を入れてというのだろうけれども、では今までどんなになっておるか。どうもこの辺がつり合いがとれないですね。キジも鳴かずば撃たれまいという言葉がありますけれども、これが出てきたばっかりに疑いが出てくる。私はどうもおかしいと思うのですけれども、どうでしょう。
  145. 石塚貢

    ○石塚政府委員 今回の伊方の出力調整運転はあくまで試験であるということでございますし、過去におきますBWR、PWRの出力調整運転といいますものも試験の範疇である。抑制運転といいまして、電力需要の少ない期間には数日間出力を一〇%あるいは二〇%落として運転をしたという、出力抑制運転というものが一部あったかもしれませんが、しかし、いずれにいたしましても、日常的な出力調整運転というのはこれまで行われたことはないわけでございます。  そこで、将来そういった日常的な調整運転を行う場合はどうなんだろうかというような御懸念もございましたので、この点につきましては、原子力安全委員会が審査をいたしましたその範囲内であれば安全であるという立場は変わりませんけれども、しからばその安全審査の段階でカバーされているその範囲内であるというのは一体どういう形で担保されているのだろうかというところを考えてみますと、それは設置許可の段階以降の工事計画の認可あるいは保安規定の認可、検査、品質管理、そういったいわゆる行政庁で行われる規制が確実に行われることによってそれが担保されているということでございますので、原子力安全委員会といたしましては、将来日常的な出力調整運転が行われる場合であっても、そのあたりの行政庁がとった措置、そういったものも含めて改めて確認をすることにしておるので安心ですという趣旨のことを申し述べたものでございます。
  146. 貝沼次郎

    貝沼委員 この談話の中に、今回のは今までと違うということは何も書いていない。先ほどの答弁だと、マスコミその他で今回伊方の場合はいろいろ特殊な状況があらわれたので、談話を発表したみたいなことを言うでしょう。今の答弁はそうじゃないでしょう。日常的に今後出力調整運転が行われるための試験として今回初めてやったんだというような話でしょう。ところがこれは本当に試験なんですか、運転なんですか。現行はテストか何かなんでしょう。どうなんですか。あくまでも試験ですか。試験というのは要するに運転試験なんですか、それとも運転の確認なんですか。どうもはっきりしませんね、その辺が。
  147. 石塚貢

    ○石塚政府委員 試験とは言っておりますけれども、それは安全性の確認とかそういうことではございませんで、運転操作上のデータを蓄積するという趣旨で行ったものでございます。したがいまして、出力調整運転ではございません。
  148. 貝沼次郎

    貝沼委員 きょうは安全委員会の方ばかり言いますけれども、この前原子力委員会の方は予算委員会で一生懸命にやりましたから。人事のやり方が悪いと言ってやったのですから、きょうは安全委員会。それで順番にこの次からまたやるようにします。きょうは安全委員会の番です。  それで、この言葉でちょっとお尋ねいたします。「将来出力調整運転を日常的に行う計画があればその時点で通商産業省から説明を受け、安全性を確認していく所存である。」こうなっておりますが、「将来」とはいつのことですか。
  149. 石塚貢

    ○石塚政府委員 私どもが通産省から聞いている話では、当面そのような事態には至らないということでございまして、将来いつごろかということにつきましては明らかに承知いたしておりません。
  150. 貝沼次郎

    貝沼委員 ところが業界はそう言っていませんね。ここで「将来」と言っているのは、電力会社はこれは数年先である。原子力安全委員会は今当分はないと言っておりますけれども、その当分といったって何のことやらさっぱりわかりません。当分というのはどこまでが当分なのか、こういうわからない言葉でこの文章というのはでき上がっているのですよ。東電では六十六年以降、正月あるいは四月から五月のゴールデンウイークなどには何とかやりたいというような意見もあるようですし、その辺の調整はやったのですか、どうですか。これは通産省エネ庁ですか。
  151. 山本欣市

    ○山本説明員 出力調整運転の必要な時期ということでございます。  原子力発電につきましては供給安定性、経済性等にすぐれる電源でございまして、従来からベース供給力として開発してきたところでございます。当省といたしましては、昨年十月に策定をされました電気事業審議会需給部会の中間報告にもうたわれておりますように、着実に増大いたします電力需要に対応するために今後とも安全性の確保に万全を期しつつ、原子力発電の開発を積極的に推進する必要があるというようなことで考えてございまして、出力調整運転の必要な時期ということでございますが、原子力発電によります出力調整運転を日常的に実施する必要性につきましては、当面必要ないということでございます。電力会社によりましては需要が低下いたします年末年始等におきまして、先ほど安全局長からもございましたように、数日間継続するものを出力抑制運転と言っておりますが、そういうものにつきまして一時的に実施するというのは、それよりも早い機会、要するに現在も必要があるというふうに考えてございます。
  152. 貝沼次郎

    貝沼委員 今、最後の段がちょっと大事なところなんですが、一時的に例えば正月とか、あるいは四月から五月のゴールデンウイーク等のときには電力会社等で出力調整運転をやりたいという希望があるから、それは一時的に実施することはあるということですね。
  153. 山本欣市

    ○山本説明員 負荷調整につきましては通産省といたしましては言葉を分けてございまして、一つは出力抑制、これは年末年始とかゴールデンウイークで期間が長期間でございますので、負荷の降下それから負荷の上昇についてはゆっくり実施をするということでございまして、そういう出力抑制につきましては過去も実施をしてきておりますし、今後とも一時的に必要であるという考え方でございます。それから日常的に出力調整運転を実施するというのは、当面必要はございませんということでございます。
  154. 貝沼次郎

    貝沼委員 今、日常的には当面必要ないということですが、この「日常的」がまたわからないのです。「日常的」というのはどういう意味ですか、これは。毎日ということですか、一週間単位ということですか、一月単位ですか、年単位ですか。日常といったら日ですよ。一日、一日。日常的といったら、毎日御飯を食べるとか、ああいうのが日常的なんだけれども、日常的にやるといったら、これは相当なことじゃないでしょうか。期間的とかそういうことはないのですね。この意味がわからないから今お尋ねしているのです。
  155. 山本欣市

    ○山本説明員 まず、出力調整運転試験と出力調整運転との違いということで御説明させていただきたいと思いますが、伊方で実施しました出力調整運転試験というのは、需給上必要はございませんけれども運転保守上のデータをとるために実施をしたものということでございます。出力調整運転と申しますのは、これは需給上、その電源の構成と需要の状況によりまして原子力発電所をとめなければならない状態に立ち至るということで、需給上必要になった時点で出力調整運転を実施をするということでございます。
  156. 貝沼次郎

    貝沼委員 いや、それはわかっているのですよ、需給上じゃなかったらそんなことやるわけないですから。何も趣味で原子力発電をやっているわけじゃありませんから、需給上の関係でそれは出てくるのですよ。出てくるのだけれども、それはやらなくちゃならなくなることは私もわかっております。ただ、今回原子力安全委員長が談話を発表されたから、じゃ今までとは違うのだな、違うとすればどこが違うのか、何が変わったのかということを今この文言を一つ一つ確認しながら尋ねておるわけです。「将来」「日常的に行う計画があれば」、ここのところは今あなたは需給上の問題で出力調整運転をする場合にはということのようですね。  そこで安全委員長にお尋ねしたいと思います。そうであるならば、「日常的に行う計画があればその時点で通商産業省から説明を受け」となっておりますが、現在の安全審査の範囲ではこれはカバーし切れないという問題があるということを示しておりますか。
  157. 内田秀雄

    ○内田説明員 現在の安全審査で確認しております基本設計並びに基本的設計方針の中で運転がされるものでありましたならば、その出力調整運転は安全上問題ない、こう理解しておる次第でございます。しかしながら一方安全委員会は、基本設計以降の段階におきます安全規制におきましても必要に応じて行政庁から説明を受け、安全の確保のため慎重な対応をしておるということは、こればかりでなく今までも数多い例がございます。この方針に基づきまして安全委員会は、当該出力調整運転が基本設計、基本的設計方針の範囲内でありましたけれども、念には念を入れて、それが日常的な運転計画でありましたならば念には念を入れるという立場から確認をするという態度でございます。
  158. 貝沼次郎

    貝沼委員 よくわからないのですね。念には念を入れるのはよくわかるのですけれども、この第一で「安全審査の段階で安全性が確認された基本設計及び基本的設計方針の範囲内であり、安全上の問題はない。」ここまでわかるのです。ところが、念には念を入れてそういう場合は云々、こうなっておりますので、その場合には今と違うのではないのか、こういうことなんですね。しかもその違いというのは「日常的に」。この「日常的」の意味はまだ答弁は返っておりません。毎日なのか一週間なのか一月なのか一年なのか旬間なのか、それはまだ返っておりません。それは答弁していただきたいと思いますが、とにかくそういうときになったら通商産業省から説明を受ける。恐らく、これは私の勘ぐりでありますが、そういうようなときには例えば今以上に安全上の計器、観測の機械でありますが、そういうものが必要になるとか、あるいは運転上のもう少し細かいことが必要であるとか、いろいろなことが出てくる可能性があるので、それこそ念には念というのは、むしろ今のもので法的にはいいとは思うけれども、しかし技術上こういうことが必要なことが起こるのではないかという点から、そのときにはもう一度見させてもらいます、聞かせてもらいますということなのか。もしそうであるならば、それはどういうことが考えられてそういう心配が出てくるのか、これをお尋ねしたいわけです。
  159. 石塚貢

    ○石塚政府委員 まさに今先生御指摘のとおり、将来日常的な出力調整運転を行う場合には、それに備えてより運転をしやすくするという立場から、計器の補強でございますとか一部施設の変更といったものもあるいは出てくるかもしれませんが、そのときはもちろん設置変更あるいは工事計画の変更ということで規制法上の処理をする必要がございますし、そのときには安全審査も場合によっては必要になると考えられます。ただそれ以外にも、例えば今回の伊方の出力調整試験は、あくまで十二時間一〇〇%で保持し、その後三時間で下げ、六時間五〇%で保持して、さらに三時間でまた一〇〇%に上げるいわゆる十二―三―六―三といった運転モードがこの試験の際の運転であったわけでございますが、将来出力調整運転を行う場合には果たしてそれと同じような運転モードでやることになるのかどうか、その辺も含めまして、当初の設置許可段階での安全審査でカバーされている制限値以内におさまるかどうかといったことについて、改めて念には念を入れて確認するという趣旨であろうかと思います。
  160. 貝沼次郎

    貝沼委員 今局長答弁されましたけれども、概念的なことはわかりました。概念的なことはわかりましたが、もう少し具体的に、例えばこんなものが必要なんだというのはございますか。
  161. 山本欣市

    ○山本説明員 二点お答えさせていただきたいと思うのです。  まず一点目の日常的な出力調整運転ということでございますが、これは電源構成とか需給というようなことでございまして、各電力会社によって事情が異なってございます。ある電力会社につきましては春とか秋とかピーク需要の少ないとき、またある電力会社につきましては夏場というようなことでございますが、いずれにいたしましても当面ということで、必要になる時期のことを考えてみますと毎日ということは考えられない、毎日という必要性はないと考えております。それでは何日ぐらいなのかということでございますが、理論的に考えますれば一日というようなことも考えられないわけではないわけでございますけれども、需要の方といたしましては、特約の制度で安い電気につきましては需要家に買っていただくような制度とか、各電力会社間で融通という制度がございます。そういうようなことで、原子力の出力調整運転をしなくともいい場合が出てまいります。そんなようなことで考えますと、当面一日よりももうちょっと日数の多い時期ということでお考えいただければというふうに考えております。  それからもう一点の、念には念を入れて日常的な出力調整運転のときには安全委員会でも御検討いただくということでございますけれども、安全審査におきましては、現在の十二―三―六―三というものについての安全性は一応カバーをされておるというような認識をしてございます。ただ、実際的に出力調整運転を実施をする場合には、例えば設置許可の段階で制御棒につきまして新しい考え方がとられるとか燃料の組成を一部変更するとか、そんなようなことも考えられますし、工事計画の認可ということで考えますと、出力調整につきまして自動化をするような装置をつけるとかいうことで、将来的に新たな許可なり認可なりが必要なものがあるということでございます。
  162. 貝沼次郎

    貝沼委員 安全委員長にお尋ねいたしますが、今まで通産省からそういうようなことをいろいろ報告があった上でこの談話が出たということなんでしょうか。
  163. 内田秀雄

    ○内田説明員 この委員長談話に書いてあります、将来日常出力調整運転を運転計画に入れるという運転計画がどのようなものであるかということは、私たちは計画の報告を受けた時点でないと何とも申し上げられません。
  164. 貝沼次郎

    貝沼委員 商業炉については通産省というふうになっているわけですから、通産省は思うように進めているかもしれませんが、原子力安全委員会というのは極めて高い地位にある。今のような話は本当は逐一報告されていなければならない、私はそう思うのです。原子力安全委員会のあり方につきましても、これはちょっと古い話になりますが、原子力船「むつ」のときに既に随分と議論がございました。そして、当時「原子力行政体制の改革強化に関する意見」というのが原子力行政懇談会から出されておりまして、そのときに原子力安全委員会のあり方についての意見があるわけでございます。これは私が申し上げるまでもなく、当時の原子力委員会を二つに分けて原子力委員会と安全委員会にする、そして安全委員会は「原子力安全委員会の事務局については同委員会行政庁の規制をダブルチェックするという機能を持つことからして、そのあるべき姿としては独立の事務局を設けることが望ましいが、その体制整備には期間を要すること等の事情を考慮し、当面は、各省庁から中立的な立場を保障して、科学技術庁原子力安全局に置き、委員を補佐する相当数のスタッフを置くものとする。」そういうふうに原子力安全委員会の事務局は独立してやるべきである。これは九年前です。どうですか、その後検討されましたか。ただ聞いただけですか。
  165. 石塚貢

    ○石塚政府委員 ただいま御指摘の原子力行政懇談会の意見を受けまして、原子力安全委員会の事務局といったものを各省庁から中立的な立場を確保するため、科学技術庁原子力安全局の中に専任の事務局といたしまして、科学技術庁規制行政事務を行う課とは別に、原子力安全調査室を設置いたしまして十一名のスタッフを置いたところでございます。そして、その後も中立的な立場の確保に配慮しながら、スタッフの拡充、それから重要事項についての調査を行う安全調査管理官、そういった人たちの配置等に努めてきたところでございまして、現状では、原子力安全調査室十五名及び安全調査管理官三名によりまして十分に事務局機能を果たしているというふうに考えております。今後とも行政懇の指摘を踏まえまして、その中立性には十分配慮しながら機能の拡充強化に努めてまいりたいと思っておるところでございます。
  166. 貝沼次郎

    貝沼委員 十分にやっているとあなたは言わなければいけませんけれども、そうじゃないのです。  先般、原子力安全委員長の御園生先生が大変勇気ある発言をいたしまして、炉の停止を命じたことがございました。けれども、あれも原子力安全委員長をやめる前日だった。やはりそれだけ通産省に対して物を言うのは遠慮しているのです。通産省が一たん決めたことをそうじゃないと言ったためしはない。原子力安全委員会というのはもっと高い地位にあるわけですから、やはり独立した事務局を持たなければいかぬと私は思うのです。そうしなければ恐らく日本原子力安全論議というものは納得しないでしょう。そういうようなところから、さらにこれを強化していただきたいと思います。この点につきまして原子力安全委員長、どういう御所見かお聞かせいただきたい。
  167. 内田秀雄

    ○内田説明員 安全委員会が発足しましてから現在十年目を経ているわけでありますけれども、私の経験からいたしましても、原子力安全委員会の現在の事務局が中立性を欠いているとは思ってはおりません。しかしながら、一層この安全確保に対する規制行政の基本を定めるという安全委員会の任務の重要性を認識いたしまして、ますます科学技術的な見地から客観的な判断ができるように、事務局と一緒に努力していきたいと思っている次第でございます。
  168. 貝沼次郎

    貝沼委員 それから通産省の方にお尋ねいたします。  通産省編の「21世紀原子力を考える」という書物があります。この中で「我が国の原子力開発利用は、研究開発を開始してから約三十年、商業用原子力発電所が運転を開始してから約二十年が経過した。」こういう実績を言い、さらに原子力発電は全発電量の約四分の一を占め、石油火力を上回ったというシェアの話が出ておりまして、そして「このように、原子力は、我が国における石油代替エネルギーの中核として本格利用段階に到達し、「研究開発」段階にある「特別な産業」から、経済原則の働く「通常産業」としての「エネルギー産業」に発展しつつあり」ということで、「通常産業」ということでずっと言っているわけですけれども、通産省の判断というのは、もう原子力発電の技術は完成したものであるという判断に立っているわけですか。完成した技術でなかったら一般産業になんかなるわけないのですから。今まで特別な産業というのは、放射能を扱い非常に危険な要素がある。こういう安全委員会までつくって監視してきておるわけですから、そういう特殊な産業を通産省では、これは一般産業としてこれからやらなければならないという判断を示されておるわけですけれども、一般産業という判断に今立ったのですね。その辺どうなんですか。
  169. 大宮正

    ○大宮説明員 ただいま先生から御指摘がありましたように、昭和六十一年の七月に総合エネルギー調査原子力部会から「原子力ビジョン―21世紀原子力を考える―」と題する報告書が提出されております。先生御指摘のように、内容はほぼそのとおりでございますけれども、若干補足させていただきますと、この中で「「研究開発」段階にある「特別な産業」から、経済原則の働く「通常産業」としての「エネルギー産業」に発展しつつあり、原子力エネルギーに関する政策も、「通常産業」として」云々、こういう表現でございます。  そこで、ここで私ども申し上げたいのは、原子力は既に通常産業として確立しているということではなくて、そういった方向に向かって発展しつつあるという意味でございまして、いわゆる過渡期にあるという認識を持っております。しかしながら、この点につきましては今先生から御指摘がありましたように、原子力については特に安全性の確保等は大前提でございまして、技術開発についてもまだまだいろいろな開発すべきものが安全あるいは経済性の面からございます。したがいまして、そういうものを引き続き踏まえてやっていくということでございます。
  170. 貝沼次郎

    貝沼委員 特殊な産業と一般産業の主たる違いはどこにありますか。
  171. 大宮正

    ○大宮説明員 これは先生お読みいただいておると思うのですが、この報告書の中にもいろいろ書いてございますが、まず私が最初に申し上げましたように、安全確保ということには何をおいても万全を期さなければいかぬというようなこととか、あるいは技術につきましては非常に大きな投資でございまして、開発するのに非常にリスクを伴うとか、あるいは建設に非常に長期間を要するというような幾つかの特徴がございまして、そういった視点から先生おっしゃいますような特殊な産業、特別な産業というふうに従来位置づけていたわけでございます。こういった見方は我々現在もまだ変わっておらないというふうに認識しております。
  172. 貝沼次郎

    貝沼委員 それでわざわざ括弧をつけて一般産業の話が出てきまして、そうしてさらに「三つの視点」というのがありまして、この三つ並べてあるのが「経済性の向上」、これは当然のことですけれども、ここへくるとやはり経済優先という感じが出てくるのです。それからもう一つは民活の導入、あるいは「国際化の推進」、これは当然ですが、こういう経済性の向上とか民活導入ということになってきますと、これは今まで大変リスクの多い、研究の多い分野だから国家財政でもっていろいろやってきたことが、今度は補助金政策に変わってくるのかなという感じが出てきます。ということは、技術に対してそれこそ一〇〇%に近い開発がなされていないと、そう簡単に補助金政策はできません。産業を育てるのは結構です。産業を育てるためにはそういうのをやればいいと思うけれども、しかし原子力技術というものは、研究段階かどうかははっきりわかりませんが、まだまだ一般産業などと軽々に言えるようなものではないような気が私はいたします。これについて通産省、それから安全委員長からもしコメントがあればお願いします。
  173. 大宮正

    ○大宮説明員 まさに先生御指摘のとおりでございまして、そういう一般的な産業が発展しつつあるということでございますけれども、その過程においては、例えば技術開発につきましては御承知のように動燃事業団が従来からいろいろな技術開発をしております。しかし、そういうものの中で一部実用、商業用に使えるものは使っていくというような関係で、民活というのはまさにそういう趣旨でございまして、例えば既に燃料の開発でありますとか濃縮でありますとか、そういうものについては一部動燃の技術を導入しながら新しい商業用のプロジェクトを進めていくという趣旨でございます。  それから、補助金、委託費の問題でございますが、これは大きく分けまして、非常にリスクを伴うような技術開発、御承知のようにFBRとかATRにつきましては、いろいろな確証実験をして安全には安全を期するということでございますが、こういったものは国が行っておりますし、それから安全確保上重要な技術、例えば審査に必要な安全解析コードの改良といったようなものは、これは国がやる。しかしながら、一部そうではなくて、例えば発電所の信頼性向上のための軽水炉の関連装置の開発等につきましては、民間がそれなりの技術の蓄積もございますので、そういったものは補助金ということで、仕分けをしながら慎重に対処しております。
  174. 内田秀雄

    ○内田説明員 原子力開発利用は安全確保を旨とするという立場でございますし、それはどうしても尊重しなければならないことは今さら申し上げるまでもございません。原子力安全委員会としますと、原子力安全の確保を旨とするという立場で、その産業が一般産業であり、あるいは特殊産業であるということの区別は、私たちはするわけにもまいりません。
  175. 貝沼次郎

    貝沼委員 大臣、今話がありましたように、通産省はそういうふうに二つに分けているのです。これは原子力行政です。これを決めるのは原子力委員長原子力委員会ですね。原子力委員会ではこういうことを議論されましたか。
  176. 松井隆

    ○松井政府委員 先ほど先生、通産省の二十一世紀ビジョンについての御指摘がございまして、原子力委員会が昨年の六月、長期計画をまとめたわけでございます。それで、そこでも考え方をはっきりさせたのでございますけれども、通産省の二十一世紀のビジョンもある、その他関係各界の意見がある、そういうものも参考にしながらいわば日本としての原子力開発利用の進め方を決めたわけでございまして、そういう意味では、そういうことも全部踏まえた上で現在の原子力委員会の長計にまとまっているというふうに御理解をいただきたいと思います。
  177. 貝沼次郎

    貝沼委員 いろいろなのを踏まえてやるのは結構なんだけれども、もともと決めるのは原子力委員会が決める。この次チャンスがあれば、今度アメリカとの交渉日米原子力協定のときのことも具体的に聞きたいと思っておりますが、例えば外務省が内閣総理大臣から指示を受けてアメリカ交渉したとか、いろいろな記事が出るんですね。内閣総理大臣なんか指示することないのですよ。原子力委員会がどう決定したかなんだ。その辺のところが、原子力委員会にしても安全委員会にしても大変高い地位にあるのですから、重要な地位にあるのですから、面倒くさいようでも、きちっと踏むべきところは踏んでいかなければならぬというのが私の今言わんとするところなんです。それは後日また申し上げます。  時間がもうなくなってまいりましたから、宇宙の話はきょういたしません。  そこで、最近のトラブルを見ますと、人為的単純ミスが多いということなんですね。原発事故、人為ミス七割が定期点検中に起こっておるとか、単純ミスが多い。例えばアメリカにおける化学工場の事故なんか見ましても、二百件についての調査結果というのが出ておったことがありますが、このうちヒューマンファクターに基づく事故が大変多かった。なぜそんなことが起こったかということですが、一つは、なすべきことを忘れた。これは全部ベテランの人ですよ。二番目は、操作手順を誤った。三番目は、なすべきことを無視した。これは忘れたというのではなくて、知っているけれども無視した。四番目は、操作手順を忘れた。五番目は、しなくてもいいことをした。やらなくていいことをやってそういう問題が起こっている。これは結局人間というのは間違うものであり、忘れるものであり、そして誤操作をするものである、やらなくていいことをやったりするものである。そういうものが人間であるなら、それが当然あるという前提のもとに安全性の問題は議論しなければならぬと思いますね。それで、日本の場合もこれはいろいろやっておると思いますけれども、単純ミスが多いということはそういうことではないか。特に先般の敦賀の問題、これなどはスイッチを切ったというんですね。こっちの方で眺めて二番目だな、裏へ回って二番目の方のスイッチを切ったらこっちから見たら三番目であった、そういうつまらない失敗なんです。けれども、人間というのはそういう錯覚を起こすものなんです。  そこで、こういう事故を防ぐために、例えば人間は優秀であるから、こういうランプかついた場合にはこれを考えて処置しなさいというやり方は私は間違いだと思う。例えば火にさわって熱いと思ったら手を放しなさい、こういう判断を人間にゆだねる方法は間違いである。そうじゃなしに、火にさわった途端に手を放せ、こういう指示がなされる仕組みになってないとこれは大変なんじゃないか。しかもこういうような巨大技術というものは、現在携わっておる方々は初めからやってきた人たちがまだおるわけですね。ところがこれから後十年、二十年たったら、すべて失敗も成功も知っておる、ノーハウを知っておる方々がいなくなってくるわけです。ちょうどアメリカのチャレンジャーみたいなことが起こりかねない。そうなったら困るわけですから、そうならないために、専門家でなければ携われない巨大技術ではなく、ある程度の知識を持った人であれば運転できる、そういう巨大技術にならなければならないのではないか、私はこういうふうに考えるわけですけれども、いかがでしょうか、安全委員会委員長のお考えをもし聞かせていただければ。
  178. 内田秀雄

    ○内田説明員 原子炉施設の安全設計の基本には、今先生のおっしゃいましたようにヒューマンエラー、ヒューマンファクターというものが非常に重要な要素として大きな技術システムの中に存在するということは十分理解しておる次第でございます。したがいまして、ヒューマンエラーあるいはミスオペレーション等がありましても安全上重要な結果にはならないように、安全寄与の政策としてフェールセーフとかインターロックという基本方針を取り入れて設計し、あるいはさらに品質保証をしている次第でございます。そのような多重の防護という思想の中にはヒューマンファクターを十分考慮しているわけでありますが、今先生の御指摘のように、その運転員についてどの程度の知識を期待すれば十分であるかということは、我が国ばかりでなしに各国とも今非常に議論を呼んでいるところでございまして、それなりにやはり教育訓練の重要性が論じられていると同時に、機械設計の方に人に頼らない自動化をどの程度まで期待するか、した方がよいかというオプティマイゼーションといいますか、ということも議論されている次第でございまして、その方向でぜひ考慮したいと思っております。
  179. 貝沼次郎

    貝沼委員 もう時間が参りましたから終わりたいと思いますが、一言だけ申し上げたいと思います。  先般アメリカに行かしていただきましたときに高温ガス炉の話を聞きまして、アメリカはなぜこういうものをどういう判断でもって考えておるかということを、その物差しを聞いてまいりました。それは六つありまして、一つは、人間の過失に耐え得るものでなくてはならない。人間というのは間違うものですから。二番目は、いかなる状況下でも住民、環境を脅かす放射能を放出してはならない。これは当然のことです。三番目は、安全性は複雑な工学技術に依存するだけでなく、むしろ単純な自然の法則に基づくべきである。高温ガス炉の場合はもう単純なんですね。あるいは、異常事態に際してはそれ自身で自然に停止されなければならない。何かが起こってから三日ぐらいみんなで考えて、それから対策を立てられるぐらいの方がいい。冷却材が失われても炉の溶融があってはならない。いかなる化学爆発も火災も誘発してはならない、こういうことが基本になって設計されておるようでございます。これからいきますと、高温ガス炉であるとかあるいは午前中お話のあった固有の安全炉につきましてはそういうのが考えられておりますが、現在のPWRあるいはBWRについて果たしてそこまでできておるかというのは、私は一〇〇%ではないと思っておるわけです。したがって、こういう炉につきましてもこういう条件が満たされるようにひとつ研究を進めていただきたい、これを希望申し上げまして、終わりといたします。
  180. 大坪健一郎

    大坪委員長 小渕正義君。
  181. 小渕正義

    ○小渕(正)委員 飛び入りですけれども、けさ方からの質疑のやりとりをいろいろ聞いておりまして、ぜひひとつ理解をしたいために一つだけ質問いたします。原子力発電所の出力調整の問題がいろいろな角度から議論されておるわけでありますが、さっき政府側の答弁その他を聞いておって私もちょっと理解しにくい面がありますので、端的にお尋ねいたします。  原子力発電所における出力調整試験、また出力調整運転、こういう出力調整という問題は、原子力発電所を設置されていろいろな基準の中でスタートして運転されておるわけでありますが、そういう中での新たな安全基準を必要とするような項目なのか、それともそういうことでない従来の、現在運転という形でされている中で考えられていっていい項目なのか、そこのところが一つはっきりしないのです。そこのところをはっきりすれば、またおのずから議論のいろいろな展開の仕方もできると思うのですが、その辺はどっらともつかないように先ほどの政府答弁を聞いておると感ずるのです。大体どちらなんですか。出力調整の項目は新たな安全審査基準に該当するということで取り扱われるものか、そうでないのか。この問題はそこのところさえはっきりしていけば、またそれによって議論の仕方がいろいろ出てくるわけですが、その点いかがですか。
  182. 石塚貢

    ○石塚政府委員 出力調整運転という運転の仕方というのは、保安規定上も何ら特別の運転操作を必要とするものではないということでございまして、通常運転と全く同じ範囲のものでございます。設置許可の際の安全審査の段階でいろいろな制限値といったものを検討いたしておるわけでございますけれども、そういった範囲内で運転されるものであれば問題ないということでございまして、まさにこの出力調整運転はその範囲内で実施されておるものである。特殊な運転あるいは特殊な試験というものは保安規定上それなりの手当てをして行うものでございますけれども、この出力調整運転はそういった特別の操作上の配慮は一切必要ない通常の運転でございます。
  183. 小渕正義

    ○小渕(正)委員 はっきり今言われてわかりました。そういうことであるならばまたいろいろとこの問題に対する議論の仕方も出てくるわけでありますが、きょうはそういうことを抜きに、ほかのことを準備いたしておりますので、とりあえずこれでやめます。  ただ、これは後の「むつ」の質問にもつなかってくるのですが、こういう問題は皆さんお互いに素人です。だからそういう技術的な、今回は出力調整がどうだという問題がありますが、原子力船「むつ」の問題のときも放射線が漏れたという問題を発して、ああいう形で混乱していったわけです。そういう中で言われているのは、例えば原子力安全委員会とか、そういうきちっとした機関がこういう問題に的確にその都度きちっとした対処をしなかった関係から、いたずらに非常に混乱を招くという問題指摘もされておるわけですね。特に今度の伊方問題についても、きちっとそういう見解を述べるのが遅かった。そういうのも一部マスコミの論調の中では指摘されておったわけでありますから、そういう点からいくならば、特にこういった原子力関係の問題については、そのときそのときの状況に応じて機敏にそういうきちっとした機関で見解を出していくということが必要ではないか。そういう意味では午前中の大臣答弁の中でそういうものに触れられておったようでありますが、特に今回の伊方原発の問題でのああいったものについても、先ほどからやっと見解が出されたようでありましたが、そういうタイミングが非常に遅いということが当時のマスコミの論調の中にも出ておったと思います。そういう意味で、ここらあたりというのはもっときちっとして、物事が素人にはっきりわかるような形でいろいろと対処をしていただきたいということをお願いしておきたいと思います。  それでは最初の質問に入りますが、まず大臣にお尋ねいたします。  利根川博士のノーベル賞受賞の問題でありますが、大臣所信表明の中で利根川博士のノーベル賞受賞についての見解を述べられて、お祝いするということを述べられておりました。この利根川博士のノーベル賞受賞に際しまして、これは御承知のように米国で研究なされて、そうして海外での大きな評価を受けて今回の受賞になったわけでありますが、こういうことが残念ながら日本の中で、一部専門家の方たちはわかっておられたかどうかわかりませんが、一般国民についてはそういったレベルでそういうものが行われているということを全然知らないわけでありまして、なぜ日本人の科学者が我が国でそういったものをやらないでアメリカに行って、そしてアメリカの中で評価を受けて最高のノーベル賞受賞という栄誉に輝くようなことになるか。頭脳流出その他が一部いろいろ言われておりましたが、日本の今の科学技術のこういったいろいろ基礎技術の研究その他の問題で、そういう部門については日本ではやはりいろいろ問題があるのではないか。だから結果的には、無名であられたでしょうが、そういう優秀な人たちアメリカ等に行って、そこでそういった研究に没頭されて、そして成果を上げて評価される。そういう意味では、日本の現状とのつながりの関連の中で、大臣はこういった問題をどのように考えておられるのか、また大臣科学技術庁所管大臣としての御見解を承りたいと思います。
  184. 伊藤宗一郎

    伊藤国務大臣 今お話しのとおり、利根川氏のノーベル賞受賞は国際的にも日本研究者の活躍が認められたものでございまして、科学技術行政を預かっている私としても大変喜ばしく思っております。しかしながら、今先生も御指摘のように、利根川氏の受賞も、日本人とはいえ海外における活動の成果によるものでございます。そこで、こういう方が日本で研究をし、その成果が認められるというような創造性豊かな科学技術の振興というものが、そのための施策の強化が望まれるところでございます。  私自身も利根川さんにお目にかかりまして若干の懇談をしたわけでございますけれども、利根川さんのおっしゃるのには、三十代の後半ぐらいが一番研究者が伸びるときだ、そういうときに自分で思うように自由に、濶達に研究できるような環境、利根川さんの言葉でございますけれども、そういう環境日本にはなかなかないので、ついアメリカその他の方に、研究のしやすいところに行ってしまうということを利根川さん自身おっしゃっておりましたし、私どももいろいろな角度から今の大学の問題あるいはその他の研究所の問題で、私自身も筑波とかその他の研究所を視察しまして、非常に若い方々が一生懸命やっておりますけれども、そういう方々が本当に自分の研究に没頭できるかどうかということになりますと、いろいろ問題があるようにも承っておるわけでございます。  そのために政府として一体何をすべきかということに相なるわけでございますけれども、そういう創造的な研究は一人一人、個々人の能力というものに大きく依存するものでございますので、政府の役割はそういう能力を最大限に目いっぱい引き出させるような研究の環境を、制度面でもあるいはまた予算の面でもそういう環境の整備というものをしなければならないというふうに考えております。そうは言いながら、なかなかそういう環境の整理というのは一朝一夕に達成されるものではございません。しかし、先生方の叱咤鞭励もございまして、科学技術庁もいろいろ知恵を出しまして、我が国にそういう伸び伸びとした研究環境、風土がだんだんでき上がりつつありまして、今後なお一層我々も努力の限りを尽くしまして、研究交流の促進あるいは研究基盤の整備を初め創造性豊かな人材、しかも若い三十代の方々が伸び伸び研究できるような環境というものをつくり上げてまいりたい、このように考えているところでございます。
  185. 小渕正義

    ○小渕(正)委員 今大臣は、利根川博士ともお会いをなされて直接に御感想をお聞きなさったというお話でありますが、新聞紙上等でも利根川博士の見解として、日本には技術政策はあっても科学政策はなかったとか、そして科学政策の中でも現在の大学制度のあり方とか研究所のあり方とか、若手研究者が本当に伸び伸びと能力を発揮できるような体制にないとか、いろいろそういう問題の指摘をなさっておられるわけであります。これは報道でありますが、大臣もその点は今の御答弁の中で承知なさっていると思います。したがって、今いろいろ御見解をお述べになりましたが、ひとつそういう角度からもう一度見直していくという形で、何かただ単なる見解というか、そういう気持ちのあらわれだけここで表明していただいても、これはそれで終わりですから、そういうものに向かって例えば検討委員会か何らかのそういうものの中で、具体的にひとつ取り組んでみようじゃないかというところまで今行きつつあるのか、今後行こうとしているのか、その辺の点についてはどういう状況でございますか、その点をお伺いします。
  186. 加藤昭六

    加藤政府委員 ただいま大臣が御答弁されましたような方向で現在私ども鋭意努力しておるわけでございまして、具体的に二、三の事例を申し上げますと、例えば科学技術会議の場におきまして、産官学の交流のさらに一層の密接化あるいは国際問題、今後欧米ばかりでなくてNICS、LDC等とも十分な科学技術協力を深めていかなければならない、そうした観点に立っての国際的な科学技術の問題の検討等々基本的な問題を検討しておりますとともに、もう少し具体的には、例えば既に昨年、国立試験研究機関の中長期的あり方の基本というものを科学技術会議から答申をいただきまして、内閣総理大臣決定を十月にしておるわけでございますが、それのさらに一層の個別具体的な実施あるいは個々の政策大綱に指摘されました重要な研究分野、十八分野ございますが、その分野につきましての逐次基本計画の策定、既に四分野の基本計画を定めております。エネルギー、防災、ライフサイエンス、物質・材料系の科学技術の計画でございますが、さらに現在は情報・電子系の科学技術分野につきましての検討を進めております。また研究開発基盤についての今後のあり方につきましても、既にことしの一月、科学技術会議で諮問を受けまして、現在検討中であるという状況でございます。
  187. 小渕正義

    ○小渕(正)委員 今お聞きいたしましたが、恐らくこういった我が国の研究者といいますか日本のこういった関係人たちにとっては、この利根川博士のノーベル賞受賞は大きなショックでなかったろうかと思うのですね。そういう意味で、日本のそういった科学陣といいますか、この種の人たちはここで思いを新たにして、官学一体となってそういうことのないような我が国のあり方について早急にひとつぜひどんどん話を詰めていただきたいということを期待しておきます。  それから次の質問でありますが、科学技術行政の総合的な展開ということでお尋ねいたします。  科学技術政策研究が総合的にまた効率的に行われなければならないのは当然のことでございます。この点については大臣所信表明にも触れられているわけでありますが、この総合的な科学技術行政の展開というのは、単に科学技術会議の方針に沿って運用される科学技術振興調整費の拡充というようなことだけではなしに、科技庁、文部省、通産省、外務省等各省庁間の枠を超えた科学技術振興に関する総合調整能力を充実させなければならないわけであります。特に、こういった問題ではさきの行革審においても強く指摘されている点でありますが、いまだにこれについての改善の足跡がないような感じもします。これについてはどのような状況でありますか、お尋ねいたします。
  188. 伊藤宗一郎

    伊藤国務大臣 これから科学技術行政を進めるに当たっては幾つかの柱があろうと思いますけれども、私はその中の大きな柱は、今先生が御指摘のとおり、産学官といいますか産官学といいますか、そういう三位一体というか提携、連携が一番大事だと思いまして、就任以来事務当局に産官学の研究の連携プレーあるいは提携というものが、今までも努力はされておりますけれども、より調和のとれた形になるようにぜひその枠組みなり提携、連携の仕方を考えるようにということで、今科学技術会議の中の一つの部会にお願いをいたしまして、既に何回か討論を重ねていただいております。いずれ先生方にもその内容をお示しして、特にお話しのとおり基礎的な研究というものが一番大事なわけでありますから、そういう基礎的な研究が産官学の連携プレーの中に推進できるような体制を早速つくりたい、このように考えております。
  189. 小渕正義

    ○小渕(正)委員 そういった角度から見ますならば、科学技術会議のあり方についてもやはりもう一度見直す必要があるのではないかという感じがするわけです。というのは、現在構成は、議長は内閣総理大臣で、あとは大蔵、文部、経済企画庁、科学技術庁日本学術会議等いろいろありますが、政府の中でこういった科学技術会議の正規メンバーには、現在の国際的な環境等の状況を考えますならば、やはり外務省とか通産省とか農水省といった部門も常時参加されるような構成にする必要があるのではないかという見方もあるわけであります。この点についてはいかがお考えなのかをお尋ねいたします。
  190. 伊藤宗一郎

    伊藤国務大臣 科学技術立国を目指して進んでまいりましたし、二十一世紀というものに我々がソフトランディングするためにはさらに科学技術の振興を図っていかなければなりません。その総元締めの科学技術会議は、科学技術政策の最高の審議機関として各般の問題を扱うわけでございますから、今お話しのとおり外務大臣あるいは通産大臣等も御参加をいただくように制度上もなっておるわけでございますけれども、今後も内容に応じましては幅広い観点から議論ができますように、科学技術会議の運営に科学技術庁としても十分取り組んでまいりたい、そのように考えております。
  191. 小渕正義

    ○小渕(正)委員 次は研究開発の基盤整備の問題であります。  現行の研究交流促進法に基づいて外国人の研究公務員の登用というものが、特に産学官等の研究交流の促進とあわせて国際交流の観点から必要なことは言うまでもありませんが、そういう意味で見ますならば、現在の政府の姿勢は若干消極的ではないかという感じもするわけであります。すなわち、同法三条の適用を受けた外国人研究公務員の実績は、厚生、通産、科技でそれぞれ一名ずつの三名にとどまっております。同法は外国人研究公務員の受け入れ態勢の整備を図るものでありましたが、運用面の課題として、積極的に受け入れ計画をつくるには、もっとこれらの基盤整備の中での中身を充実すべきではないかという見方もあるわけでありますが、この点に対する所見をお伺いいたしたいと思います。
  192. 吉村晴光

    吉村政府委員 ただいまもお話ございましたように、外国研究者を受け入れるということは日本研究者にとりましても大変刺激になるということもございますし、それから国際的にも貢献ができるという点を持っておるわけでございまして、従来から政府といたしましては外国からの研究者の招聘ということをやっておったわけでございますが、ただ単にお客さんとして来ていただくということだけではなくて、外国人研究者を公務員として任用するという道を研究交流促進法をもって開いたわけでございます。これはいわば外国並みにするといったことでございまして、確かに御指摘のように、研究交流促進法によりまして正規の公務員になっておる者は三名だけでございますが、私どもといたしましては外国側の研究者がどういう道からでも日本に入ってこれるという観点から、両方の制度の整備を進めておるところでございます。特に外国人研究者の招聘ということにつきましては、午前中も答弁させていただきましたが、六十三年度予算におきまして百名の研究者を国立試験研究機関などに受け入れる、そういったフェローシップのプログラムを来年度予定をいたしておるところでございます。御指摘のように大変重要な問題でございますので、今後ともこの拡充に努力をしてまいりたいと思っております。
  193. 小渕正義

    ○小渕(正)委員 今のお話でありますと、積極的にといった姿が感じられるわけでありますが、やはりこの点はぜひ外国から誤解のないように、日本は何か閉鎖的でないかという感じですぐとられがちでありますので、そういう意味ではぜひひとつ積極的に取り組んでいただきたいと思います。  それから、時間がございませんので先に進みますが、ヒューマン・フロンティア・サイエンス・プログラムについてちょっとお尋ねいたします。  政府は本年六月のトロント・サミットにおいて、さきに中曽根首相がベネチア・サミットで提案いたしました本プログラムを改めて再提案する予定であるというような話を聞いております。事務レベルで詳細を詰めている段階だろうと思うわけでありますが、サミット各国の反応は日本の出方を待つ、あるいはお手並み拝見という姿勢に終始しているのではないかという見方もあります。こうしたサミット各国の姿勢の背景には、いまだなお根強い日本技術ただ乗り論に対する批判と、本プログラムが新たな日本技術戦略にすぎないのではないかとする懸念がその底流にあるのではないかという説もあるわけでございます。したがって、本プログラム実行に当たっては、まずこうしたサミット各国の不満や懸念を払拭するようなことが必要でありますが、これらに対してはどのような姿勢でこれから対応しようとしておられるのか、その点をお尋ねいたします。
  194. 加藤昭六

    加藤政府委員 ヒューマン・フロンティアの目的につきましては既に御承知のとおりでございまして、生体機能の解明を中心とした国際的な共同による大がかりな研究でございますが、昨年の六月、ベネチア・サミットで各国の賛同を得まして、現在科学者によりますフィージビリティースタディーを進めております。十一月、十二月、三月と三回行ってまいりました。先ほど先生の御指摘のように、第一回目のときには各国からいろいろな懸念が表明されました。一回、二回、三回と回数を重ねるにつれまして、そうした懸念も解消してきつつございます。最初の段階には、各科学者はそれぞれアイとかマイとかミーとか第一人称でいろいろ議論がなされていたわけでございますが、第三回目、三月四日、五日に行われました最終の会合でございますが、その際は皆それぞれウイ、我々というふうな認識で、サミット主要国の科学者は一体となった感じで現在運営されてきております。今日末から来月にかけてこの内容を取りまとめまして、またしかるべき今後の新しい前進に向けて努力してまいりたいと考えております。
  195. 小渕正義

    ○小渕(正)委員 国際協力体制の整備という点でお尋ねいたします。  今お話のありました事業内容については各国ともそれぞれ研究を進めているわけでありまして、各国の研究機関と密接な協力体制を整備していくことがまず不可欠な条件になるわけでありますが、肝心の我が国の研究機関においてこの点についての十分な協力または連絡体制を整備しているのかどうか。一部の見方では、とてもじゃない状況にあるというような見方もありますが、本プログラムの実施に当たりその責任の所在の明確化、実行部隊の構成など最も基本的な面が欠けたまま諸外国と折衝を行っているようにも見えてならないわけであります。特にこの点は、我が国自身がややもすると国際的なふろしきばかり広げて、実際に中身のない結果になるような批判もありますが、我が国国内におけるそういった協力体制の問題については問題ないのかどうか、その点についてはいかがなっておるか、お尋ねいたします。
  196. 加藤昭六

    加藤政府委員 このプログラム推進につきましては、科学技術会議政策委員会の場におきまして関係各省庁、これは七省庁ございますが、七省庁が連携をして進めておるものでございます。また一方、科学者レベルのサイド、これは業界の方々、国立試験研究機関の方々、大学の方々も入りますが、別途国内委員会を組織いたしまして、そこで科学著レベルの意思の疎通を図っておるという状況でございます。その国内委員会は既に一昨年から検討を始めてきておりまして、一昨年は研究分野の策定等を行ったわけでございまして、ことしはサミットへ向けての国際フィージビリティースタディー委員会のバックアップ体制として国内委員会が機能しているという状況でございます。
  197. 小渕正義

    ○小渕(正)委員 その点で、特にこの問題は当初はサミット各国の研究交流ということが中心になると思いますが、中長期的に見ると、やはり我が国としてはアジア諸国との連携という視点に立ってこの問題を進めていくべきではないかという意見もあります。この点に対する大臣の所見等あったらお伺いしたいと思います。
  198. 加藤昭六

    加藤政府委員 このテーマは昨年のベネチア・サミットでの提唱のテーマでございますので、まず第一義的にはサミット国の科学者の参加を得ましたフィージビリティースタディーで意見を取りまとめていくということであることは言うまでもございません。しかし、内容自体が生体機能の解明を中心とする基礎研究を国際的に共同して進めていく、またその成果を広く人類全体の利益に供しようというわけでございますので、この趣旨にかんがみますと、先生御指摘のように、将来的には広く各国の参加を得て進めていくことが望ましいという考えでございますが、このフィージビリティースタディーの結果を踏まえて今後具体的に検討してまいりたいと考えております。
  199. 小渕正義

    ○小渕(正)委員 この点は先ほどもちょっと私見を申し上げましたが、ひとつそういった批判がないような形での体制を整備していただきたいと思います。  時間が余りございませんので、超電導問題についてちょっとお尋ねいたします。  これは未来の大変な改革になるという、今までのすべての常識を吹き飛ばすようないろいろな改革が出てくるわけでありますが、この超電導研究の促進についてであります。特にこの国際協力については、レーガン大統領が日本を超電導開発における米国の最大のライバルというような指摘をしたという話も聞いておりますが、一方ではまた日本に対して共同研究を求められているということも聞いております。政府は基本的にこの超電導開発に対して日米共同研究というものをこれからどのように進めようとされているのか、展開されようとしているのか、その点に対する考え方をお尋ねいたします。
  200. 川崎雅弘

    ○川崎(雅)政府委員 私の方からお答えを申し上げます。  御案内のとおり、超電導につきましては新しい技術革新の種だということで、昨年あるいは一昨年来フィーバーが全世界的に巻き起こったわけでございますが、実は超電導の中に二種類ございまして、既に一部において利用されておりますのは液体ヘリウムという極低温を使って行われます超電導分野、それから現在フィーバーになっておりますのは、従来は絶縁体だと考えておりました金属酸化物、いわゆるセラミックスでございますが、これを使ういわゆる新超電導体、この二つの種類がございます。  前者のいわゆる在来型とでも言うべき超電導分野においては、御案内のとおり、核融合炉の中の磁場を発生するためのコイルというような形で、アメリカと私どもの金属材料技術研究所が既に具体的に共同実験を行うに至っておりますし、さらにベルサイユ・サミットで合意されましたプロジェクトの一つとしまして新材料と標準問題ということがございます。これにはアメリカ以外にフランス、ドイツ等も加わっておりますが、そういう中で、いわゆる超電導材料というものについての標準化の問題といいましょうか、標準あるいは規格といったような点についての協議を進めている状況でございます。  それから、先生御指摘の新超電導材という問題については、当然のことながらアメリカもその相手国として一つ重要でございますが、私どもとしてはむしろヨーロッパをも含めて広く世界から協力を求められるような素地を国内につくるべきだと考えまして、六十三年度から金属材料技術研究所、無機材質研究所等当庁所管を含めまして、内外に開かれたマルチコア・プロジェクトを推進する、ここで拠点づくりを行っていこうという考えを進めておりまして、広く外国にも御紹介をしているところでございます。  なお一例として、研究者のフォーラムとして新超電導材料研究会というのが発足をいたしております。ここでは既にECあるいはアメリカ大使館の担当官などもメンバーとして加わっておりますので、そういう意味では、まず外延的な研究者レベルでは開かれた器が整っているという状況でございますので、今後とも御指摘のラインに沿って鋭意努力をさしていただきたい、かように考えております。
  201. 小渕正義

    ○小渕(正)委員 これはこれからの大きなあれですから、長期的なビジョンの中で基礎的な研究開発はいろいろ推進されなければならないと思います。そういう意味で我が国の場合には、事本年度の予算だけ見ましても超電導は、科技庁が金属材料技研とか日本原子力研究所、通産省は電子技術総合研究所、文部省、運輸省、郵政省と、それぞれ部門が違うと思いますが、このような形で今年度予算の中にもこの超電導研究開発のプロジェクトの予算が繰り込まれておりますが、こういうものを総合的に有機的に推進していくという形では、我が国の場合どこがその取りまとめとしてのあれになっていくのか。何か科学技術会議政策委員会の中で超電導に関する懇談会というものが設置されて、昨年の十一月六日ですか、基本的な推進方向についての報告書が提出されたという報告を受けておるわけでありますが、これからの我が国のそういったものの総合的な調整、その他長期スケジュール等の中での推進というものはどこがメーンになってやっていくのか、そこらあたりはどのようになっているのか、その点をお尋ねいたします。
  202. 加藤昭六

    加藤政府委員 御指摘のように超電導につきましては、昨年の秋、科学技術会議に超電導の問題について検討する委員会を設けてとりあえずの取りまとめをしたわけでございますが、今後ともそのフォローアップは科学技術会議のしかるべき場で進めていくつもりでございます。  先生御指摘の点は、それ以外のいろいろな分野でもどのように総合調整を図っていくかということではないかと思いますが、科学技術会議の中にはそれぞれそうした分野に応じて検討する場を既に設けているものもありますし、これから設けていくものもございます。例えば、現在は情報・電子系につきましては新しい部会を設けてやっております。エネルギーについては既にエネルギー部会がございます。またライフサイエンスについてはライフサイエンス部会がございます。というふうに適宜的確にその時期に応じて科学技術会議の場に適切な検討グループを設けて、関係の各省の総合調整に努めてまいりたいと考えております。
  203. 小渕正義

    ○小渕(正)委員 もう時間が来ましたので、「むつ」問題をちょっとお聞きしたかったのですが、また次回に回します。  これで一応質問を終わります。
  204. 大坪健一郎

  205. 矢島恒夫

    矢島委員 伊藤長官にお伺いいたします。  先ほども話題になりましたけれども、十年前、昭和五十三年の第八十四国会であったと思いますが、我が国の原子力行政始まって以来の原子力基本法についての大改正が行われた。当時の状況を振り返ってみますと、分析化学研究所データ捏造事件だとか、あるいはまた原子力発電所や再処理工場での事故の続発、そして原子力船「むつ」の異常放射線漏れ事故、こういうような事故の続発の中で国民の原子力行政全般に対する不信というものが頂点に達した。こういう背景のもとで、当時緊急に改革を実行しなければならない課題として、開発規制の機関を分離することや、あるいはまた安全審査及び規制部分を専門に受け持つ機関というものは、基本設計だけでなくて詳細設計から建設、運転まで一貫して担当できる行政権限を持った体制でなければならないという指摘で、学者あるいは知識人、関係団体、政党がほぼ一致していたわけです。ところが、政府はそれらの指摘を受け入れずに、逆にそれまで内閣総理大臣が持っていた原子炉設置の許認可権を、発電炉につきましては通産大臣、それから舶用炉につきましては運輸大臣、そして試験研究炉は科学技術庁長官が責任を持つというようにしたわけであります。  そこで長官、先ほど来各委員からの質問にもありますような内容ですが、私はまた別の観点からちょっと質問したいのですが、今回の四国の伊方の原発二号炉、これにおける出力調整について試験ということを先ほど来言っていらっしゃる。試験というわけですから、建前からいって当然監督官庁は科技庁でなければならぬ。こういう試験をするのになぜ科技庁が所管する試験炉で行わなかったか。科技庁としてはいつからこういう実用炉で試験をやっているのか、長官の御答弁を。
  206. 石塚貢

    ○石塚政府委員 事実関係でございますので私からお答え申し上げます。  伊方の出力調整、これは試験と言っておりますが、これは安全性の確認とかそういうことではございません。あくまで運転操作上の各種データを蓄積するという趣旨の運転を行ったものでございまして、これは研究炉でやるという性格のものではなくて、やはり実用炉といいますか、そういったものの通常の運転の範囲内の運転でございますので、これからそういった運転を始めるに当たって必要なデータ等の蓄積を行ったというものでございます。
  207. 矢島恒夫

    矢島委員 今の答弁の中で二つの重大な問題があると思うのです。一つは、通常の運転だと言われましたね。いわゆる原子力発電というのは、一定の出力で運転しているときが燃料棒への影響というのは一番少ない。だから通常二週間なら二週間以上かけて出力を上昇させていく、こういうやり方をとっているわけですし、一年ぐらいは出力を下げないでいわゆる基底負荷運転をしている。今回の運転が十二―三―六―三という形というのは、これは通常運転というふうに本当に言えるのかどうか、ここが非常に問題だ。これから後ずっと質問で解明していきたいと思います。  それからもう一つの問題はデータの入手の問題ですね。このことは一月の二十二日ですけれども、我が党の山原議員を初め地元愛媛県の住民代表が四国電力にこの試験の中止を申し入れたときに、四国電力の原子力部の千葉代表はこういうことを言っているのですね。一つは、今回の実験は伊方三号炉が完成する昭和七十年から出力調整運転を実用化するための実験である。二つ目、第二次実験は硼素濃度が三〇〇ないし二〇〇ppmの時点でやりたい、十月の実験だけでは実用段階のためには不十分である。これくらい今度の実験の目的というものをあけすけに言っているわけです。将来の日負荷運転のための必要なデータをとる試験だ、このように電力会社自身が言っているわけですから、実用炉で特別なデータの集積ということになれば、これは実用炉でやるのではなくて実験炉でやるべきだし、同時にこういう実用炉でやっている試験は行きがけの駄賃式に、例えば東京電力でやったとか、あるいは四国電力でやったとか、電力会社がやりたいほうだいのことをしている。まさに野放しにしているではないか。実用炉での試験はやめて当然試験炉でやっていくべきだと思うのですが、答弁をお願いします。
  208. 逢坂国一

    ○逢坂政府委員 お話しの出力調整運転が実験であるのか通常の運転であるかという御質問でございますが、実際に行われていることは、一〇〇%出力のものを三時間かけて五〇%に下げて、それで六時間運転して、また三時間かけて一〇〇%に上げる、こういうことでございまして、通常一〇〇%出力で十分運転できるといういろいろな安全などの観点から審査しておるそういう内容を逸脱しておりません。通常の運転の範囲内で行われているものでございまして、たまたま試験という言葉を使っておりますが、これは通常の運転のデータをとるということと何ら変わらない操作でございます。お話しのような出力調整運転が野放しになっているということでございますけれども、これは一〇〇%出すことを認可されているわけでございますから、その中の出力を下げるあるいは上げるというその範囲内で行われることは、当然運転する電力会社の自主的判断で行われるべき内容である、そのように思います。
  209. 矢島恒夫

    矢島委員 その上げ下げが問題なんです。その問題にだんだんと入っていきたいと思うのですが、その前に伊藤長官にちょっと質問したいのです。  この伊方二号炉の実験を前にして、地元の住民、それから原子力研究者マスコミがこの種の実験の危険性というもので、いろいろとお耳に達していることだと思いますけれども、厳しい追及があった。伊藤長官が一日二十九日の閣議後の記者会見で、安全については問題ないんだという会見をしているわけですが、本来、今私が申しましたように出力調整試験というものは研究用の原子炉で十分データをとって、絶対安全という言葉は、先ほどの御答弁の中でも絶対というのはなかなか難しいけれどもということで、念には念を入れるがあるわけですけれども、安全性を十分に確認するということでの慎重を期すべき問題だと思うのです。それは当然だと思うのですが、長官、いかがでしょうか。
  210. 伊藤宗一郎

    伊藤国務大臣 今回の伊方の二号炉の出力調整運転試験につきましては、安全上問題はないということで既に事務当局から確認を何度もとっておりましたし、そういうことについて私が国務大臣科学技術庁長官として表明をするのはむしろ国民に対しての私の責任を果たすことだということで、そういう閣議後の記者クラブでの御質問に答えて申し上げた次第でございます。
  211. 矢島恒夫

    矢島委員 この出力調整試験、これにかかわるところの安全だという裏づけ、つまりいろいろな分析データ、こういうものはどういうふうに今現在蓄積されているのか、その辺を。
  212. 石塚貢

    ○石塚政府委員 設置許可段階の安全審査におきましては、制御性能、つまり動特性でございますが、そういったもの、あるいは出力ピーキング係数、最大線出力密度、最小限界熱流速比、あるいは被覆管のひずみな一%以内におさめるというような安全にかかわるさまざまな条件につきまして安全解析を行いまして、そしてこういった条件の範囲内であれば安全であるということを安全審査の段階で確認いたしたわけでございます。また、この安全解析は計算コードを用いて行うわけでございますが、これらの計算コードにつきましては、米国などにおきます実験あるいは長年の開発過程を通じたそういった経験によりまして整備され、またその妥当性が十分確認されたものを使用して計算を行ったものでございます。また燃料あるいは機器の疲労などの耐久性につきましても、通産省の告示等に基づきまして製作あるいは検査がなされるものでございまして、安全上支障がないということを安全審査で確認をいたしております。これらの内外における実験結果、そういったものを含んでのこういった通産省の告示といったようなものを使用しているわけでございまして、そういったものは既にいろいろな研究成果の裏づけがあってなされたものであるということでございます。  なお、審査の根拠になりました研究成果につきましては、例えば燃料照射試験あるいは炉物理試験あるいは熱水力学的試験、材料等の疲労試験、そういった数々の試験等がその基礎となっていると承知いたしております。
  213. 矢島恒夫

    矢島委員 常々ノルウェーの重水炉であるハルデン炉、こういうところの研究結果が蓄積されているというような話をするわけでございますけれども、我が国の発電用軽水炉で出力調整運転が安全だとして実施することは、こういう外国のいろいろな試験結果ではなくて、我が国独自の研究体制というものが非常に重要だと思うわけです。そういう点では、どうも日本における安全研究体制の欠落をこういう外国のハルデン炉あたりのことを持ち出して合理化しているにすぎないのじゃないか。事前の厳重な安全のチェックということもなくて安全性に全然問題がないというのは、極めて非科学的ではないかと言わざるを得ないわけです。  そこで私が言いたいのは、試験研究段階での十分な安全確認というステップを踏んでいくべきだ。つまり、いきなり営業炉で実験をやるというようなことではなくて、安全優先の手順を踏むべきだ、今回のやり方はその手順を踏み間違えているのではないか、こういう点を指摘したいわけです。過去に原子力船「むつ」の放射線漏れ事故でも、陸上での十分な試験研究等の万全の研究体制と経験を踏まずにいきなり海上実験に乗り出していった、その結果事故を起こした、こういう轍を踏まない意味でも、そのことが重要だという点を指摘したいわけです。  申し上げるまでもなく、原発における出力調整運転というのはいろいろな問題を持っている。まず第一に、出力調整に伴う急激な核反応を繰り返すことによっての応力、それからペレット・被覆相互作用、いわゆるPCI、こういうことで核燃料棒の健全性が損なわれるという危険性を持っているということが指摘され、このことは依然として解明されてない問題だと聞いております。また、出力調整を繰り返すことにより燃料棒の金属疲労を起こすということも指摘されている。  私ここに日本原子力学会誌を持ってきたわけなんですが、この中にもいろいろと問題点が指摘されているわけです。例えば二十九ページ以降「原子力発電所の負荷追従運転」という項目で書かれているわけですが、「PWRでは、制御棒が頻繁に動くため、燃料に対する局所的な繰返し熱衝撃と、炉停止系の信頼性や故障が問題になる。」こういうことも書かれている。また「計画出力変更をボロン濃度」いわゆる硼素濃度「の制御のみで行えば問題はないと考えられるが、制御棒操作を併用する場合は、出力分布の歪に対する制約との兼合いで問題が生ずる可能性がある。」さらには「負荷追従運転を、新設発電所から行うべきか、既設の発電所でも行うべきかは議論の分かれるところと思う」、恐らく安全性の問題での議論の分かれるという点を指摘しているのだと思います。それからもう一つ「ホウ素濃度の低くなる炉心寿命末期においては負荷追従運転が制限される。」さらにこういうことも言っています。「従来までの基底負荷運転に比較した場合、負荷追従運転方式は運転員の負担も相対的に大であり、安全性の確保にはより広い視点に立脚した技術開発が今後とも必要なことはいうまでもない。」  以上、問題となるようなところだけ取り上げてみたわけですけれども、まさにここにも書かれているように、この論文は四国電力の石井一典さんもまとめにかかわり合いを持っている論文なんです。ですから、まさに出力調整の問題点を電力会社の当事者自身が認めているわけです。出力調整試験による核燃料棒の健全性、あるいはまた原子炉システム全体について我が国での安全研究体制を確立すべきではないか、まずそのことが先決だと思うのですが、長官、いかがでしょう。
  214. 逢坂国一

    ○逢坂政府委員 最初に事実関係だけを私から御説明させていただきます。  今御引用のレポートは恐らく学会に発表されたのだと思いますが、その前文には、日常的に出力調整を行う場合、またはAFCのように負荷に追随した運転をする場合にどういう点が問題と考えられるかというところをまとめたものである、そういうふうに理解しております。  先生御指摘のいろいろな技術的問題は、詳しい御説明は時間がかかりますけれども、まず疲労の問題でございますが、疲労は、今の原子炉の安全審査におきまして、炉の寿命期間中に遮断する回数あるいは出力上下する数を想定いたしまして、例えば燃料体については三年間入っていて毎日出力上下する、熱応力が働くでしょう、そうしますと、千三百二十回ぐらいの安全率を見て疲労は大丈夫であるということを安全審査で検討するわけでございまして、本件のように日常的でもございませんし、年に何回か行うという程度の出力の上下について疲労の問題は全くない、そのように思います。  それから制御棒のゆがみの問題とかいろいろなことが御指摘ございましたが、出力の調整に当たりまして、PWRの場合は制御棒とボロン水と両方でやっております。その制御棒のゆがみの問題は前にも一度質問を受けたことがございますが、これは調整プラスマイナス五%の範囲内で上下のゆがみがないように運転いたします。ですから実際上は五%もございませんで、あったとしても一%ぐらいであらうというふうに私どもは想定しておりますが、これは毎日やった場合でございまして、出力を下げたからといってすぐゆがみが出てくるというものでもございません。  それから制御について、薄くなると安全上非常に問題ではないかという御指摘も、恐らく出力調整を行うものは炉心末期の場合に制御上非常に難しくなるのではないか、こういう指摘だと思います。これはボロンを薄めるときに水の量がたくさん要りますので、そういう炉心末期の発電所の場合には水の量との関係で、薄くなりますときき方が遅いという問題がございますので、時間がかかるとかそういうことが問題なのでございまして、操作上特別の難しい面があるということではございません。ただ、制御棒の方は自動でございますが、その薄め方は手動でございますので、それは何もしないよりも、水で薄めるという操作をするわけですから、運転員に負担になるということは事実でございます。したがいまして、こういう問題を今後日常的に行う場合には、運転員の負担をどういうふうに軽減していくかということは一つの問題であるとは思いますが、それは安全上非常に不安全になるとかということではございませんで、運転員の負担になる部分を自動化していくということは今後の課題であろうか、こういうふうに思っております。
  215. 矢島恒夫

    矢島委員 安全審査上のデータの問題なのですけれども原発がいわゆる基底負荷運転で例えば冷却水漏れだとかポンプの事故、そういう事故が起きたという場合を想定して、基底負荷での運転というものでの事故解析や安全審査をしてきた。今回のように、出力調整試験にも基底負荷の運転を当てはめて安全だというところが非常に問題があるのじゃないか。長官、この出力調整試験のような状況下で、もし事故が起きたらどうなるかというような解析というのは、安全審査上していないのではないかと思うのです。もう一つは、今までの事故解析というのは、今出てまいりましたが、人間が介在してなくてもよい場合、ですからマン・マシン・インターフェース、人間が介在したときの事故解析は安全審査上これからの研究課題ではないかと思うのですが、その点はいかがですか。
  216. 逢坂国一

    ○逢坂政府委員 安全審査での範囲はどういう仮定で行うかという御質問でございますが、一〇〇%で想定して過渡変化を解析し、さらに事故に発展するようなものはどうかという検討はもちろんいたします。ですが、それ以外の出力が低い場合に、もし過酷な条件になりそうであればその想定も間に入れる、こういうことでございます。今の御指摘の出力を下げて運転するという操作あるいは上げるという操作につきましては、これは通常の操作でございますので、出力が低いから過酷な条件になるということではございません。エネルギーの高い段階での一〇〇%の方が厳しい条件であるから、そういう条件でチェックしているわけでございまして、五〇%で運転する分には何の問題もないわけでございます。  それから、人が介在することによる心配というお話でございますが、頻繁に行った場合に何が問題になるかといいますと、普通の場合ですと考えられますのは、出力を上げるときの燃料に対して過酷な条件になるのではないかということでございますが、これは先ほど御指摘のPCIという現象でございます。これについては十分検討しておりまして、その他実験データを得ております。ですから多分この程度のことでは燃料の破損、ピンホールが出るということはないというふうに確信しておりますし、また事実、一回ぐらいでは出なかったわけでございます。これがもし出たとして安全上非常に問題かといいますと、そうではございませんで、もし燃料がそういうふうに破損したとすれば、そこのリークによりまして炉水の中に放射能が出てくるわけでございますので、そこはよく監視をしておりますから直ちに検出できる、こういうことで程度に応じて停止もできるということでございますので、安全上の問題はないというふうに考えております。
  217. 矢島恒夫

    矢島委員 いわゆる出力を上げるとき下げるとき、そこの問題なんです。盛んに通常運転、通常運転ということを言われて、一〇〇%から五〇%に下げるのだから安全性があるというようなお話もありましたけれども、長官、一月二十五日の愛媛新聞で四国電力がこの実験についての意見広告を出しているのですが、ごらんになったでしょうか。
  218. 伊藤宗一郎

    伊藤国務大臣 正確には見ませんでしたけれども、出したということと出すということは知っております。
  219. 矢島恒夫

    矢島委員 その中に書かれていることなんですけれども、「十分間で五〇%の出力変化を行っても十分安全性が保てるようになっており、そのことは国の安全審査で認められています。」となっているわけです。  そこでお伺いするわけですけれども、この伊方の原発安全審査書、私ここへ持ってまいったわけでございますけれども、この中には「負荷変化に対して具体的には、定格負荷の一五%から一〇〇%の範囲内でプラスマイナス一〇%ステップ」という書き出しで、出力変化は一分間当たり上下五%の範囲で認めている。つまり四国電力はこれを十倍してしまって、十分間で五〇%の変化が認められているというようにごまかしているのじゃないか。安全審査書によりますと、五〇%以下の出力の急減少だけを認めている。安全審査書では、このキセノンによる出力分布の振動は炉心寿命末期に発生する可能性がある、こういうようにも言っているわけです。こういうように国の安全審査を電力会社が勝手に解釈して、新聞という公器を使って宣伝するということが許されていいのかどうか、内田委員長、御所見をお伺いしたい。
  220. 内田秀雄

    ○内田説明員 今の先生質問の出力変動の問題でありますけれども、伊方二号の安全審査に対して認めました基本的設計方針と申しますのは、一五ないし一〇〇%出力の範囲ではプラスマイナス五%パー分、あるいは一〇%ステップの範囲ならば制御能力が十分あるということの審査でございます。なおその際に、そういう負荷の変動の際に圧力容器等冷却材圧力バウンダリー、あるいは先ほど逢坂審議官が言われました燃料が機械的に壊れないということは、原子炉の寿命期間中に想定されます繰り返し応力をもとにして設計されておりますので、十分安全も確認され、確保できるという結果でございます。
  221. 矢島恒夫

    矢島委員 四国電力は二月二十二日に記者会見をして、出力調整運転試験結果というものを発表したのです。その「まとめ」のところに「今回の試験結果および前回の試験結果から現在の設備を使っての「一二―三―六―三運転」は実施可能であることが確認された。」と書いてある。  そこで通産省にお聞きしたいのです。今も安全委員長が十分安全で燃料体についても大丈夫だというお話があったのですが、この実験で使った燃料体を取り出して分析してこういう大丈夫だという結論を出したのですか。その辺どうなんですか。
  222. 逢坂国一

    ○逢坂政府委員 燃料体が健全であるかどうかというのは、運転中に常時監視しているモニターでもって核種分析をしますとよくわかるようになっております。なお、非常に小さいピンホールでございまして運転中には出てこないようなものでも、定期検査で圧力を減らしましてやりますと、中の方から出てくる場合がございます。これはシッピングテストと言っております。そういうテストをやって健全性を確認するということでございます。今の段階は運転しておりますので定期検査の実験はしておりませんが、炉水レベルは何の異常もございません。
  223. 矢島恒夫

    矢島委員 時間が来ましたので最後の質問になりますけれども、この伊方二号炉はそろそろ定検に入るのだろうと思うのですが、この定期検査に入れば燃料棒をいろいろと引き出して検査もある。ぜひその検査結果を公表する資料をもらいたいのです。伊方の二号炉の定検の中での燃料棒における検査結果、もう一つはハルデン炉に対していろいろと分析試験をやってもらっている。そのハルデン炉の試験結果、分析結果についての資料、こういうものをいただきたいと思うのですが、いかがですか。
  224. 逢坂国一

    ○逢坂政府委員 実験の結果は公表されているところでございまして、特に問題ないということでございます。今の定期検査の結果どうであったかという結果につきましては、当然公表してしかるべきというか、可能だと思います。ただ、実験しましたハルデン炉の実験データその他につきましては、これは企業の費用でもって企業が契約に基づいてやっているものでございますので、直ちにその全文と言われるとこれはちょっと不可能かと思いますが、その結果取りまとめてどうであるかというような内容のものであれば、何か検討して提出できるものがあるのではないか、そのように考えております。
  225. 松井隆

    ○松井政府委員 ハルデン炉の実験でございますけれども、これは日本原子力研究所もかなりやっておりますものですから、その辺のデータにつきましては時期が来たら全部公表することになっておりますものですから、それにつきましては少し原研の方に見せていただきまして、また御相談したいと思います。
  226. 矢島恒夫

    矢島委員 時間になりましたので、終わります。      ────◇─────
  227. 大坪健一郎

    大坪委員長 内閣提出核原料物質核燃料物質及び原子炉規制に関する法律の一部を改正する法律案を議題といたします。  趣旨の説明を聴取いたします。伊藤国務大臣。     ─────────────  核原料物質核燃料物質及び原子炉規制に関する法律の一部を改正する法律案     〔本号末尾に掲載〕     ─────────────
  228. 伊藤宗一郎

    伊藤国務大臣 核原料物質核燃料物質及び原子炉規制に関する法律の一部を改正する法律案につきまして、その提案理由を御説明いたします。  我が国は、これまで、官民挙げて原子力開発利用を推進してまいりました結果、今や、核燃料サイクル事業の本格化の時代を迎えようとしております。しかしながら、一方、原子力施設における核物質取扱量や核物質の輸送機会の増加が予想されており、我が国の基軸エネルギーの一つである原子力研究開発及び利用を引き続き推進していくためには、今後とも適切な核物質の防護措置を講じていくことが極めて重要な課題となっております。  一方、国際的に見ましても、核物質の防護は、原子力活動を行う上での基本要件として認識されており、昨年二月に発効した核物質の防護に関する条約に早急に加入し、そのために必要な体制整備を行うことは、原子力先進国としての我が国の責務でもあります。  我が国においては、核物質の防護に関し、昭和五十六年に原子力委員会が行った決定の内容を踏まえ、既に国際水準を満たす核物質防護措置が講じられておりますが、核物質の防護に関する条約への加入に際し、核物質防護に取り組む我が国の意図を内外に明らかにし、さらに万全の核物質の防護のための体制整備を行うことが重要であります。  このことは、昨年十二月及び本年三月の原子力委員会におきましても、決定をいただいているところであります。  この法律案におきましては、同条約への加入に当たって、我が国における核物質の防護に関し、所要の措置を講ずるための改正を行うこととした次第であります。  以上、本法案を提出いたします理由につきまして御説明を申し上げました。  次に、本法案の要旨を述べさせていただきます。  第一に、原子力施設における核物質の防護に関する規定の整備であります。まず、核物質を取り扱っている原子力事業者に対し、核物質の防護のための区域の設定を初めとする核物質の防護のために必要な措置を講ずる際の基準の明確化を行うことといたしております。  また、核物質の防護措置は、各事業者の行う原子力活動の態様を踏まえ実効あるものとする必要があることから、事業者は核物質防護規定を定め、核物質の取り扱いを開始する前に、認可を受けなければならないものとすることとしております。  さらに、各事業者に対し、核物質に関する業務を統一的に管理する者として、核物質防護管理者の選任を義務づける等の規制を行うこととしております。  第二に、輸送時の核物質の防護に関する規定の整備であります。核物質の輸送を行う者に対し、核物質の防護措置の義務づけを明確化するとともに、原子力事業者に対しては、輸送に先立って、輸送の全行程における核物質の防護に関する責任体制の明確化を行い、内閣総理大臣の確認を受けなければならないものとする等所要の規定の整備を行うこととしております。  第三に、核物質の防護に関する条約が処罰を求めている核物質を用いた犯罪に関し、所要の罰則の整備を図ることとしております。  以上、この法律案提案理由及びその要旨を御説明申し上げました。  何とぞ慎重御審議の上、速やかに御賛同あらんことをお願いいたします。  終わります。
  229. 大坪健一郎

    大坪委員長 これにて趣旨の説明は終わりました。  次回は、公報をもってお知らせすることとし、本日は、これにて散会いたします。     午後六時二十七分散会