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1988-04-01 第112回国会 衆議院 運輸委員会 第6号
公式Web版
会議録情報
0
昭和
六十三年四月一日(金曜日) 午前十時五分
開議
出席委員
委員長
関谷
勝嗣君
理事
小里 貞利君
理事
柿澤
弘治君
理事
亀井
静香君
理事
亀井
善之君
理事
二階 俊博君
理事
吉原 米治君
理事
長田 武士君
理事
河村 勝君
岡島
正之
君 加藤 六月君 鹿野 道彦君 北川 正恭君 鴻池
祥肇
君
杉山
憲夫
君 田中 直紀君 津島 雄二君 平林 鴻三君 増岡 博之君
山村
新
治郎
君 若林 正俊君 小林 恒人君 左近 正男君
新盛
辰雄
君 戸田 菊雄君 浅井 美幸君 西中 清君
中村
正雄君 中路
雅弘
君
藤原ひろ子
君
出席国務大臣
運 輸 大 臣
石原慎太郎
君
出席政府委員
運輸省国際運
輸・
観光局長
中村
徹君
運輸省貨物流通
局長
中島 眞二君
運輸省海上技術
安全局船員部長
野尻 豊君
委員外
の
出席者
大蔵省主計局主
計官 田谷 廣明君
大蔵省主税局税
制第一
課長
杉崎 重光君
大蔵省銀行局銀
行課長
高橋
厚男
君
大蔵省銀行局特
別
金融課長
浅見 敏彦君
労働省労働基準
局監督課主任
中
央労働基準監察
監督官
石川 勝美君 参 考 人 (
社団法人日本
船主協会理事
長)
山元伊佐久
君 参 考 人 (
全日本海員組
合組合長
)
土井
一清
君
運輸委員会調査
室長 荒尾 正君 ─────────────
委員
の異動 三月三十日
辞任
補欠選任
魚住
汎英
君
柳沢
伯夫君
同日
辞任
補欠選任
柳沢
伯夫君
魚住
汎英
君 四月一日
辞任
補欠選任
魚住
汎英
君
杉山
憲夫
君
山村
新
治郎
君
岡島
正之
君
村上
弘君
藤原ひろ子
君 同日
辞任
補欠選任
岡島
正之
君
山村
新
治郎
君
杉山
憲夫
君
魚住
汎英
君
藤原ひろ子
君
村上
弘君 ───────────── 本日の
会議
に付した案件
参考人出頭要求
に関する件
船員
の
雇用
の
促進
に関する
特別措置法
の一部を
改正
する
法律案
(
内閣提出
第六二号)
船員法
の一部を
改正
する
法律案
(
内閣提出
第六三号) ────◇─────
関谷勝嗣
1
○
関谷委員長
これより
会議
を開きます。
内閣提出
、
船員
の
雇用
の
促進
に関する
特別措置法
の一部を
改正
する
法律案
及び
船員法
の一部を
改正
する
法律案
の両案を議題といたします。 この際、
参考人出頭要求
に関する件についてお諮りいたします。 両
案審査
のため、本日、
参考人
として
社団法人日本船主協会理事長山
元
伊佐久
君及び
全日本海員組合組合長土井一清
君の
出席
を求め、
意見
を聴取いたしたいと存じますが、御
異議
ありませんか。 〔「
異議
なし」と呼ぶ者あり〕
関谷勝嗣
2
○
関谷委員長
御
異議
なしと認めます。よって、さよう決しました。 ─────────────
関谷勝嗣
3
○
関谷委員長
質疑の申し出がありますので、順次これを許します。新
盛辰雄
君。
新盛辰雄
4
○
新盛委員
船員法改正法案
、
船員雇用促進特別措置法
一部
改正法案
にかかわる
審議
に入る前に、本日、
大変お忙しいところ
を本
委員会
に御
出席
をいただきました
山元伊佐久日本船主協会理事長
、
土井一清全日本海員組合組合長
のお二方には、大変ありがとうございます。 当面しております、
危機的状況
を醸し出しております
海運業全般
にわたる大事な問題だけに、きょうは十分に
経営者側
いわゆる
使用者側
、そして
船員
の
立場
で、これらの問題に取り組んでおられる
皆さん方
に率直な御
意見
を賜りたいと存じます。時間の都合もございますので、
参考人
の方から冒頭に
お願い
をしたいと存じます。
船主側
の方にまずお聞きしますが、最近の
北米航路海運業
を初め、全く
海運
の
危機
というのはここ数年、まさに
業界
も
再建
の視界はゼロと言われるぐらいに大変厳しい
現状
であります。さらには、
空洞化現象
が最もはっきりしてきております
海運業界
の中で、安い労賃に頼る
仕組み船
にシフトされた
海運業界
、こういうことなど、当面するこの
環境
について、
船主協会
としてどういう御
理解
をされているでしょうか、お聞かせをいただきたいと存じます。
山元伊佐久
5
○
山元参考人
御
説明
申し上げます。 本日、主として
外航海運
の
立場
で御
説明
申し上げたいと存じますので、あらかじめ御了承をいただきたいと存じます。
日本海運
は、オイルショック後、国際的な情勢のもとでございますけれ
ども
タンカー
、続いて
不定期船
、そして
定期船
と、三
部門同時不況
に見舞われてまいりました。そのために、
海運各社
は体力が相当弱ってまいっておりました。そのやさきに、一昨年の秋以来、大幅かつ急激な
円高
に見舞われまして、
経営
は
危機
的な局面に立ち至った次第でございます。 ちなみに、
大手主要海運各社
の
決算状況
を見ますと、六十一年度におきましては前年度に比べまして九百六十億円ばかり
損益
が一挙に悪化いたしております。そういう
状態
のもとでさらに
円高
が進んでおりますので、六十二年度
決算
はより
損益
が悪化するというように見込まれている次第でございます。 それと同時に、
日本船
の
国際競争力
という
立場
から見てまいりますと、従来からも
日本船
の
人件費
は、
東南アジア船員
が乗り組んでおります船に比べまして
コスト
が約三倍程度高かったわけでございますけれ
ども
、この
円高
によりまして六倍ないしは七倍というような
状況
になっておりまして、とても
競争
ができないというような
状況
に立ち至っているわけでございます。このようなことから
日本船
の
海外流出
が
増加
いたしまして、五十八年当時には
日本船
は千百四十隻、三千四百十万総トンあったわけでございますけれ
ども
、六十二年には八百十六隻、二千八百二十万トンということで、隻数におきまして三〇%近く減少いたしております。この
円高
はさらに進行をいたすと思われますので、今後さらに
日本船
が減少するのではないかということで、強く危惧の念を持っている次第でございます。
新盛辰雄
6
○
新盛委員
そういう厳しい
環境
にありますだけに、
日本船員
を確保されるという面でも大変だろうと思いますが、巷間言われております便宜置籍船、
FOC
でございますが、このあり方について
船主側
としてはどういう御
理解
をしていらっしゃいますか。
山元伊佐久
7
○
山元参考人
御
説明
申し上げます。
海運各社
におきましては、
経営
上何とか
日本船
を保有していきたい。その優秀な
日本人船員
の乗った
日本船
というのは、各
産業界
、荷主の方々から大変な信頼を得ているわけでございます。しかし一方におきまして、先ほど申し上げましたように
日本船
が減少してきますと、
船員
の
雇用
の問題に大変な
影響
を及ぼすわけでございまして、
一定
の
日本船
を保有しておく
必要性
は十分認識しているわけでございますけれ
ども
、
現実
はなかなかそうはいかないという
状況
でございます。
海運各社
は、こうした未曾有の
危機
に対処するために、あらゆる
緊急対策
を打ちつつあるわけでございますけれ
ども
、その
生き残り策
の
一つ
といたしまして、既存の
日本船
を
FOC
にするとか、あるいは
仕組み船
を
建造
するというようなことで
対応
していかざるを得ない
状況
でございます。このように、企業が生き残っていくためと一
定数
の
日本人船員
の
雇用
の確保という
立場
から、ぎりぎりの選択といたしまして、
日本船
の
国際競争力
を高めるために
日本船
への
混乗
というものを何とか実現して、この
危機
を乗り切っていきたいというように
考え
ている次第でございます。
新盛辰雄
8
○
新盛委員
今出されました
混乗
の問題ですけれ
ども
、これからそうした厳しい
要員対策
を含めて、あるいは
コスト減
のために、
結論
が出ているかどうかわかりませんが、
混乗体制
ということについてはもう具体的に
仕組み船
を初めとして進められているんでしょうか、
結論
が出ているんでしょうか。
山元伊佐久
9
○
山元参考人
御
説明
申し上げます。 現在、
運輸省
におかれまして、
一つ
は
海上安全船員教育審議会
の中に
船舶職員部会
がございまして、その中に
船舶職員法
第二十条問題小
委員会
というのがございます。そこで先生御
承知
のとおり、五年前に
マルシップ
に関する
特例措置
が設けられましたが、それが今月の二十九日に
期限切れ
となるわけでございます。そこで、ただいま申し上げました小
委員会
で、
期限切れ
となる
マルシップ
の
特例措置
をどうするのかということを御
審議
しておられまして、それに関連しまして、我々
船主サイド
といたしましては、単に従来認められておりました
特例措置
だけでなくて、その
措置
を
外航一般
につきましても
適用範囲
を拡大するとか、あるいは
乗組員定数
をさらに極力少数化してほしいというような
お願い
を申し上げて、御
審議
をいただいております。ただ、これは緊急避難的な問題の解決でございまして、それはそれとして
経過措置
的な意味で何とか実現していただきたい。 一方におきまして、本格的な新しい
船舶登録制度
を
ヨーロッパ
と同じようにひとつ何とか御
検討
をいただきたいということを、やはり
運輸大臣
の
諮問機関
でございます
海運造船合理化審議会
、そこの
海運対策部会
の中にフラッギングアウト・ワーキンググループがございまして、昨年の末から基本的な、根本的な
改革
につきまして御
審議
をいただいております。 両方ともまだ
結論
が出ておりませんけれ
ども
、私
ども
としては、
船主
の
立場
からぜひこうしていただきたいというようなことを
お願い
申し上げている次第でございます。
新盛辰雄
10
○
新盛委員
新
造船建造
の意欲がどうしてもわいてこないという最近の
環境
は確かにそうですが、このことでお伺いしますけれ
ども
、
金利
が横並びで五・二%という安い
金利
ということにはなっているんですけれ
ども
、昨年四十三次の
造船計画
で七百億ぐらい一応つけられていたのですが、一隻だけ
建造
された。六十三年度も四百二十億、金としてはこういうふうに融資の
状況
が出されておるのですが、この
建造
、これは
船主側
の方がどうしても
建造
することに対する
理解
といいますか
積極性
といいますか、そうした面がなければならないわけですが、この件についてはどういうふうにお
考え
でしょうか。
山元伊佐久
11
○
山元参考人
御
説明
申し上げます。
官公労使
が協力いたしまして、五十四年からいわゆる
近代化船
というものを進めております。従来、一隻について二十三、四人乗っておりました
乗組員
を十八名にするというところからスタートいたしまして、現在は既に十四名
体制
の
実験
を行っております。十八名につきましては既に実用化いたしておりまして、これは
一つ
完結いたしているわけでございますが、パイオニアシップという形で十一名の
乗組員
の
体制
を目指して、
労使
協力しましてその
実験
を進めようとしているわけでございます。 それはやはり、
技術
の
革新
に
対応
いたしまして
日本人船員
を維持していくという
一つ
の大きな試みでございますけれ
ども
、この十一名の乗り組み
体制
でありましても、
東南アジア
の
船員
が乗り組む船から見ますと
コスト
が大体四倍近く高くなるわけでございます。しかし、それはそれとして、やはりそういう
技術革新
に
対応
した乗り組み
体制
が必要でございますので、今後進めてまいりたいとは思っておりますけれ
ども
、先ほど来申し上げましたように、一般的に申し上げまして
船員
の
コスト
が
東南アジア船員
の乗り組む船に比べまして大変な割高な
状況
でございます。
計画造船
の形で何とかつくりたいとは思うのですけれ
ども
、
現実
はなかなかそうはいかない、そういう事情がございまして、やはり先ほど申し上げましたように
日本籍船
への
混乗
というものが認められますれば、
日本船
の
建造
ということも復活し、優秀な
日本人船員
を確保していくという我々の
希望
もかなえられるかと思うのでございますが、よろしく御
理解
、御支援をいただきたいと存じます。
新盛辰雄
12
○
新盛委員
続いて、きょうこれから論議をいたします
船員法
の一部
改正
の中で、
労働
時間
短縮
の問題が当面の急務でございますが、
前川レポート
でも示されていることでございますし、船中労で
使用者側
あるいは
労働者側
の御
意見
が出されている
内容
も十分
承知
しておりますし、
公益側
のそれに対する発言の
内容
もよく存じているわけです。 今回、四十年ぶりにこの
労働
時間問題で
改正
をすることになったわけですが、率直に申し上げて、七百総
トン未満
の
小型船舶
にかかわる
労働
時間問題、小
労則
と言っておりますけれ
ども
、こうしたものに対しては除外をされて特別な変形勤務的なものをされている。この際、一挙に直すというのはなかなかかもしれませんが、本法に位置づけられるということは、これは
労働
時間もですが、あるいは
適用範囲
、休日、そして
有給休暇
、こういうことに対して
使用者側
としてはどういう御
理解
をしていらっしゃるでしょうか、総括的に
お願い
します。
山元伊佐久
13
○
山元参考人
御
説明
申し上げます。
日本海運
の
現状
は先ほど来申し上げたとおりでございますけれ
ども
、
労働
時間の
短縮
あるいは休日・
休暇
の
増加
ということにつきましては、社会的な要請もございますので、その
方向
につきましては異論がないところでございます。しかしながら、
海上労働
というのは
陸上
の
労働
と違った
実情
にございますので、これは
一般論
としてでございますけれ
ども
、この
海上労働
の
特殊性
というものを十分にごしんしゃくいただきまして、弾力的な運営をお
考え
いただきたいと存じます。 個々の問題について申し上げますと、まず
法定労働
時間でございますけれ
ども
、
労働
時間の
短縮
、その結果生じます休日の大幅な
増加
というのは
コスト
の増大につながりますので、
外航
、内航、旅客船、
フェリー等
、各
関係業界
がこの
法改正
に円滑に
対応
できるように、
経過措置
を設けていただきたいというのが
お願い
でございます。 それから、補償休日の問題でございますけれ
ども
、休日の与え方につきましては
船員中央労働委員会
の場で今後具体的に
検討
されるというぐあいに聞いておりますけれ
ども
、この休日がすべて
陸上
で
付与
されるということではなくて、休日の事前の
付与
とか乗船中の
付与
とか半日休日の
付与
とか、そうした
制度
を取り入れていただきたいというぐあいに
考え
ているわけでございます。
考え
として申し上げますれば、
日本人船員
が直面いたしております
国際競争力
の
低下
に拍車をかけるようなことのないように配慮をいただき、また
船舶運航
の
実態
に即した弾力的な方法によって休日をとりやすくするように御配慮いただきたい、こういう
考え
でございます。
新盛辰雄
14
○
新盛委員
最後に、またもとに返って恐縮ですが、
FOC
は先ほどの御
説明
でよくわかりましたが、
日本人船員
の
一定
の職域という認識の上に立ちまして、
日本船員
をある程度行政的に
定数
、定員を決めてそれを義務づけするような、いわゆる
日本船員
が
FOC
に乗れる、乗せるための義務づけ、そんな拘束をもってすることについてはどうお
考え
ですか。
山元伊佐久
15
○
山元参考人
御
説明
を申し上げます。
船主サイド
といたしましては、先ほど来、
日本船
の
国際競争力
が国際的に見まして禁止的なレベルに達しておりますので、基本的には
混乗
の
日本船
あるいは
近代化
の
実験
・
実証船
、それから
仕組み船
、
外国用船
、こういうものを適宜組み合わせまして、そして全体として
日本商船隊
の
競争力
を維持していくというのが我々の
希望
であるわけでございます。 その点をもう少し補説いたしますと、
日本
の
海運
が置かれております
状況
というのは、
先進海運国
もやはり同じく
国際競争力
の
低下
と
自国船
の
海外流出
ということに悩まされているわけでございます。
欧米
におきましては、ここ数年の間に
自国船
がおよそ半分に減っていることもございまして、
国防
上の
見地
も含めまして、その
対策
が講ぜられているかもしくは真剣に
検討
が行われているという
状況
でございます。 例えば、
ノルウェー
では新しい
船舶登録制度
が導入されまして、
ノルウェー人
は船長だけでいいというような
制度
まで踏み切りまして、
船員費
の
コスト
の引き下げが可能となっております。一方、
アメリカ
におきましては、
国防
上の
見地
が強いとは思われますけれ
ども
、従来から
特定
の
航路
につきまして
運航費差額補助
というような形で、
船員費
の格差を埋めるべく年間三億
ドル
の
補助金
が交付されているという
状況
でございます。また、ほかの
ヨーロッパ諸国
では、
特定
の
分野
で既に適用されております
所得税
の
減免措置
が
船員
にも適用され、
船主
、
船員
の負担の軽減を図ろうという国もございます。こうしたことで、
欧米
の国におきましては
船舶
の
登録制度
を新しく
改革
する、
アメリカ
は従来
どおり運航費差額補助
を出すというような形で、それぞれ国の
実情
に応じた
措置
がとられて、
自国船
の
競争力
の回復あるいは
自国船
の維持という法則がとられているわけでございます。
日本
におきましても、先ほど申し上げました二つの
審議会
で今御議論をいただいておりまして、ぜひ私
ども
が期待する
結論
が出ることを念願している次第でございます。その場合に、
FOC
の位置づけでございますけれ
ども
、さっき基本的な
立場
を申し上げましたように、あらゆるタイプの船を適宜組み合わせてやっていくという柔軟な
対応
が我々の望むところでございまして、
FOC
に
日本船員
は何名乗せなければならないという義務づけは、この非常に厳しい
状況
のもとでは
現実
に即さないかと思いますので、ひとつ弾力的な施策というものをおとりいただきたいというぐあいに私
ども
は念願している次第でございます。
新盛辰雄
16
○
新盛委員
山元参考人
には、
大変お忙しいところ
ありがとうございました。貴重な御
意見
を聞かしていただきまして、これからまた
審議
の中でも十分活用させていただきます。お引き取りいただいても結構でございます。ありがとうございました。 次に、今
船主側
の方をお聞きしましたが、
船員
さんの
立場
に立って
土井組合長
にお聞きしたいと思います。
船員
の
雇用
について
労使
で設立しました
外航船員雇用開発機構
、こうしたことで積極的に
労使
の間で取り組んでいらっしゃるわけでありますが、最近の長引く
海運不況下
で、
船員
の
雇用
にも大きな
影響
が出ているわけですけれ
ども
、
船員
の
立場
から見た現況、そしてこうしたことの
背景
についていかがお
考え
でしょうか、お聞かせをいただきたいと存じます。
土井一清
17
○
土井参考人
海員組合
の
土井
でございます。 平素は、
委員長
初め各
委員
の
皆さん
には
大変お世話
になっておりますことを、心からお礼を申し上げておきたいと思います。 今日、我が国の
外航海運
で、極めて厳しい
状況
の中で
生き残り策
として相当大幅な
合理化対策
をとってまいりました。その中で一番大きいのは、何といっても
船舶
の不
経済船
の処理、それから過剰になった
船員
の
雇用調整
、こういった問題が大きな
対応
でございました。これらの諸
対策
を精力的に進めてみましたけれ
ども
、今日なお
円高
あるいは
アメリカ
の新
海運法
の発動等々の
影響
で、それらの
合理化努力
がほとんど実を結んでいないというのが
実態
でございます。 その実を結ばないという
背景
の
一つ
の大きな問題は、依然として
過剰船腹
であるという点であろうと思います。既に御
承知
と思いますが、今日、
タンカー
においても二九%、
一般貨物船
において二〇%、これが過剰だと言われております。
海運造船合理化審議会
で、これらの
過剰船腹
の
解撤促進
ということについて答申がなされ、鋭意
海運
、
造船
両
業界
において
解徹作業
が進められております。しかしながら、
海運市況
の波動の中で、係船するものあるいは解撤するものが一時
市況
に出て、それらの動きが鈍ってしまったというような
点等
もありまして、
現実
には
過剰船腹
が依然として重く
海運経営
を圧迫しておる
状況
にございます。 特に、
日本
は世界一の
海運国
、世界一の
造船国
ということで、五十八年当時大変な
不況
でございましたけれ
ども
、当時の
造船
の
発注規模
というものは、それ以前の十年間の
建造量
を上回るほどの大量の
建造
をいたしました。しかも、その
建造
をいたした中で、
計画造船
とかあるいは
自己資金
による
造船
とかいろいろな形があるわけですけれ
ども
、やはり一番大きな問題は、商社、
金融
あるいは
リース会社
等々による大量の
自己資金建造
が行われました。それらの
影響
が今日までずっと続いているというのが
実態
でございまして、この
過剰船腹
を解消しない限り、
海運経営
の
再建
というものはまずおぼつかないという点が一点であります。 二番目には、
円高
・
ドル安
でございます。
円高
によって我が
国外航海運
の
経営
が極めて圧迫されたことは、もう既に御
承知
のとおりだと思います。
外航海運
三十八社が
計画造船等
による
政府
の助成を受けておる
会社
でございますが、この
外航海運
三十八社を見ましても、
円高
・
ドル安
の
差損
というものは膨大なものでございまして、七百億円ぐらいに達すると言われております。しかも、一円の
円高
で
差損
は大体十四億円と言われておりますから、今日のように百二十円という
円高
・
ドル安
の
状況
の中では、この
差損
の大きさというものは膨大なものだろうと推測されるわけであります。特に
外航海運
は、
御存じ
のとおり約六割が
ドル収入
でありまして、支払いはほとんどが円で支払われるというようなこの
状況
が改善されない限りは、
ドル安
・
円高
というものは
外航海運
にのしかかってくる大変な重荷であると思います。 今日、世間では、
ドル安
・
円高
は
外航海運
だけではない、
陸上
の諸
産業
においても同じだということで、我々の真意を十分見ていただけない空気が支配的でございますけれ
ども
、このように
ドル
が安く、円が高くなった
現状
において、各
委員
、諸
経済指標
を見られたらおわかりのとおり、今日の
景気拡大傾向
は、恐らく
昭和
六十四年の
決算期
まで続いていくだろうと言われている
好況ブーム
がもう既に起こっておるわけであります。 ところが、その中で
外航海運
だけが
三角印
であります。
御存じ
のとおり、
収益状況
は
外航海運
だけ
造船分野
においても極めて
不況
を強いられておるわけでございますけれ
ども
、
中小造船
も同じだと思いますが、
大手
の
造船
の場合はまだ
陸上
の
内需部門
に
相当転換
をいたしておるわけです。したがって、
収益状態
も
外航海運
よりは改善されておる。ましてや、
鉄鋼
においても
不況産業
と言われましたが、今日では
海運
、
造船
、
鉄鋼
という
不況
の陣営の中から、
鉄鋼
はもう抜け出しておるんではないかと思います。
ひとり外航海運
だけが、もろに
円高
・
ドル安
の一番大きなしわ寄せを受けておるんではないかというぐあいに思います。 私
ども組合側
といたしましても、
経営側
に対して
多角経営
をやるべきだということを強く主張いたし、この
内需拡大傾向
、
前川レポート
に基づく
経済構造
の
改革
の
方向
に向けて
経営努力
をすべきだという主張をいたしておりますけれ
ども
、いかんせん今日まで長い間、
外航海運
は
外航海運
を専門としてやってきたという、言うならば純血主義的な
経営
をやってきたという体質が、今日の
状況
の中でにわかに多角化するというようなノーハウも力もないというのが
実態
だろうと思います。こういう
状況
で、
円高
・
ドル安
の重圧というものは、
外航海運
にとってきわめて大きな問題であるという点が第二番目の問題であります。 第三番目の問題は、
北米
定航の問題でございます。
御存じ
のとおり、
アメリカ
の新しい
海運法
が施行されて以来、インデペンデントアクションとかサービスコントラクトとかいうような独自な手段で
運賃競争
が行われる。そういう
状況
の中で、
日本
の
船社
は
アメリカ
の
船社
あるいは昨今の
アジアNICS諸国
の
新興海運諸国
との
競争
の中であえいでおります。これも既に御
承知
のとおり、
外航大
手六社の
北米
における赤字は約六百億円、最近に至りまして大体五百億円ぐらいの赤字に、多少縮小傾向にはありますけれ
ども
、依然として膨大な赤字を抱えております。 そういう
状況
の中で、
北米
における
日本商船隊
の
競争力
をつけるため、私
ども
は
大手
船社
の協調
体制
というものを強く求めてきたわけでありますけれ
ども
、先般の
海運造船合理化審議会
では、これまた
前川レポート
あるいは国際的な規則緩和の動向に連動をいたしまして集約
体制
を解除いたしまして、それ以来この数年間、各定航
会社
が独自の
経営努力
で
北米
航路
の安定的な維持発展に努力をしたわけでありますけれ
ども
、いかんせん集約
体制
を解除した直後に
円高
・
ドル安
というこのG5の
影響
をもろに受けまして、今日、先生方御
承知
のとおり
外航海運
大手
六社のうちもう三社が
金融
の特別な支援を受けて、事実上倒産
状態
に陥ってしまいました。 しからば、残った
大手
三社は健全かといいましても、これまた
御存じ
のとおり、今日の段階で配当
会社
は一社だけでありまして、他の二社においてはもちろん無配であるというような
経営
状態
でございます。また、配当
会社
の一社についても、
海運
業によって収益を上げているということではありません。これは
海運
業以外の収益によって辛うじて配当を維持しておるという
状況
でありまして、
北米
航路
における
海運
業の
経営
実態
は、すべてが赤字たれ流しで今あえいでおるという
状況
でございます。特に昨今、極東地域における荷物は増大傾向にあります。そういう中で、
日本
の
船社
と極東NICS諸国の
船社
との競合が一層激しくなっております。そういう
状況
下での
北米
航路
というものが、我が国の
外航海運
の
経営
を大きく圧迫している三番目の要因だというぐあいに思います。 そういう中で、
船員
の
雇用
問題ということが極めてシビアな形であらわれてまいりまして、私
ども
も
政府
が適切な助成政策を講じてくれれば、今日のような
海運
の苦境と
船員
の
雇用
というものがある程度確保できたと思いますけれ
ども
、既に五十九年来の海造審で答申をしてまいっております中身に書いてありますように、
政府
の適切な財政的あるいは政策的助成への期待というものがあったわけでありますけれ
ども
、それが今日までほとんど手つかずであるというようなこと等から、
労使
やむなく緊急
雇用
対策
ということで、
船員
の自主選択による退職を含む
雇用調整
に着手をいたしました。
労働
組合といたしまして、
労働
者の
雇用調整
をみずからの手でやるということは耐えられないことでございます。しかしながら、依頼するところがない、頼るところがないという
状況
の中で、あるいは政治経済
状況
の中では、やはりみずからその道を選ばざるを得ないという判断をいたしまして緊急
雇用調整
をいたしました。これはもう暫定的な処置ではございますけれ
ども
、昨年来約一年の間に、その結果、
日本
の
海運
助成
会社
三十八社のうちほとんどの
会社
で実施をいたしまして、今日、
船員
が海上を離れたのが平均して四二%程度になります。 したがって、五十四年当時、
外航海運
の
船員
が三万三千ぐらいおりましたが、今日では一万二千名になっております。しかし、これは
労使
関係を持っておる
外航海運
でございますので、その他の
労使
関係のないところはわかりませんけれ
ども
、
労使
関係のある
分野
で既に半分以上の
船員
が海上を去ったという
現実
でございます。しかも、今日なおこの
雇用調整
は進行中の
会社
もございます。私
ども
はみずから血を流しながら、
外航海運
の生き延びる策として
雇用調整
に取っ組んだという
現状
を、どうかひとつ御
理解
をいただきたいと思います。 以上です。
新盛辰雄
18
○
新盛委員
海運
及び
船員
の厳しい
現状
が
理解
できました。これから先の展望も決して明るくないというふうに思われます。そのことを思えば、
船員
及び家族の悲痛な声が聞こえてくるような気もするわけであります。 今、お話ございましたように、
労使
の自助努力で
雇用調整
を初めとしてあらゆる手だてをされる、あるいは海造審の中間報告に沿って
対策
を立ててこられた。こうした一貫の政策も、結果的には今おっしゃいましたように自助努力を超えて政策支援が必要だ。具体的に、
近代化船
の問題にしても
FOC
の問題にしてもそうだと存じますが、国がどうしてくれれば立ち直れるのだ、もっと積極的な
対策
をというそのことについて、何か御要望ございますか。
土井一清
19
○
土井参考人
一つ
は、税制の問題でございます。先ほどの
参考人
からも話がありましたように、諸外国ではいろいろ施策を講じておるところであります。私
ども
率直に申し上げて、
日本
の場合、
アメリカ
と似たような形で直接
政府
の助成を
お願い
できれば一番いいというぐあいに思っております。
アメリカ
の場合は極めて厳しいレーガン経済の中で、ほかの
分野
を縮めながらも価格差補給だけはふやしております。八七年度経済教書によると、二千七百万
ドル
ふやしておるというようなことで、そういう姿勢が我が国の
政府
にも必要ではなかろうかというぐあいに思っております。 二番目には、
近代化船
の
建造
を容易にするような
政府
の必要な施策を求めたいと思います。 三番目には、
FOC
が約千五百隻あるわけですけれ
ども
、この
日本
の
船社
が支配をしておる
FOC
を
日本人船員
の職場としてもらいたい、そのためには必要な政策手当てをしてほしいというぐあいに思います。 こういったことを通じて、
雇用
の安定へ結びつけていただきたい。再び緊急
雇用
対策
のような
船員
の
雇用
に手をつけるようなことは、絶対やってはならない。そのことは、我が国の基幹的な輸送機関としての
外航海運
を維持存続する上からも、これ以上の
船員
数を削減することによっての
海運経営
の
再建
策をとることは、絶対反対であるということだけは申し上げておきたいと思います。
新盛辰雄
20
○
新盛委員
大変ありがとうございました。 きょうはお忙しいところ、お二方には十分な御
意見
をいただきまして、これからの
審議
の中に生かしてまいりたいと存じます。本当にありがとうございました。 さて、そうした
背景
を中心にして、
船員法
の
改正
の部分から入らさせていただきます。 冒頭に、
労働
基準法が四十年間にいろいろな変遷を繰り返しながら、そして
改正
案が先ごろ国会で成立をしました。その横並びあるいは同等、準じて、いろいろな手法がございますが、現行
船員法
は戦後、
昭和
二十二年九月に制定されて以来、四十年の間に基本的な
改正
はほとんどなされませんでした。
船舶
の構造や港湾荷役等に関する
技術
的
革新
の進展があったにもかかわらず、また
船員
労働
の
実態
も大きく変化をしてきた、それに
対応
するものでなかったことは、御案内のとおりです。
労働
時間
短縮
の趨勢というのは、週休二日制あるいは四十時間
労働
への
前川レポート
が示しましたように、
労働
者の福祉増進、
雇用
機会の確保、こうした面から、今や
経済構造
調整、内需拡大等に大きな役割を果たすことは論をまちません。 今回の四十年ぶりの
船員法
改正
に伴う
内容
については、船中労でも議論されてきた経緯もございます。私
ども
にとっては非常に不満でございます。
法定労働
時間
短縮
、
適用範囲
、補償
休暇
、あるいはそれらに伴う、これからまだ論議をしなければならない問題もあります。さらには、一番問題になりますのは、小
労則
と言われ、漁
労則
と言われています省令によって定められている七百
トン未満
の
小型船舶
に対する勤務が極めて、ある意味では我々が
労働
時間
短縮
と全体的に言うこれからの目標にそぐわない、適用除外されている。そういうこと等もありまして、先ほど
使用者側
の方からもお話がございましたように、段階的に
経過措置
でというお気持ちはわからぬわけではありませんが、ここでまだ、ある人ではありませんが、日暮れてなお道遠しという感のする今回の
労働
時間の取り扱いであるようであります。 こうした全体的
内容
について、
運輸大臣
としてはどういう御感想をお持ちでしょうか、お聞かせをいただきたい。
石原慎太郎
21
○石原国務大臣
労働
時間の
短縮
は、近年、
労働
者の福祉や長期的に見た
雇用
機会の確保という観点だけではなくて、国際経済情勢を
背景
としての内需拡大、御指摘のように
経済構造
調整の観点からも、国家的な政策課題となっております。いわゆる
前川レポート
を受けまして、去る百九回の国会では
労働
基準法の
改正
案が成立をいたしました。 一方、現行の
船員
の
労働
時間に関する規定は、航行中、停泊中等の別に応じて細かく定められてもおりますが、
昭和
二十二年の法制定後、四十年がもう経過いたしまして、その間、
技術革新
の進展を
背景
とする
船舶
の運航形態の変化、船内の就労
体制
の変化等によって、これらの規定と
実態
との間でかなりの乖離を生じている面もございます。このため、今回の
制度
改正
に当たっては、
船舶
を下船した後あるいは停泊中の休日を中心として、航行の
状況
に応じて
一定
期間での休日給付を義務づける補償休日
制度
を設ける等により、航海中は連続
労働
を認めざるを得ない
海上労働
の
実態
との調和を図りながら、
労働
時間の
短縮
を図ろうとしておるわけでございます。
労働
時間
短縮
は重要な国家的政策課題であり、新しい人材を集め、
海運
界の活力を維持するという点から見ましてもその意義は大きいと
考え
ております。私としましては、経済
審議会
の建議を念頭に置きまして、大体西暦二〇〇〇年くらいに向けて、できる限り早期に四十時間
体制
を達成するように努力したいと思っております。 なお、
労働
時間の
短縮
スケジュールにつきましては、
労働
基準
法改正
案の
審議
の際に焦点となりましたことは十分
承知
しておりますが、
船員法
の場合には、その
審議
の際に示されましたように、確定的な目標年度を約束するというのはいろいろ困難もございまして、この問題が重要な課題であるとの認識のもとに、積極的に
対応
してまいりたいと思っております。また、七百
トン未満
の
船舶
に関しましても、これはまた違ったなかなか困難な細かい事情がございますので、それを配慮しながら対処していきたいと思っております。
新盛辰雄
22
○
新盛委員
労働
省、来ていらっしゃいますか。
陸上
勤務
労働
者と海上
船員
労働
者の違いを、
労働
省が把握をするとすればどういう
理解
をしていらっしゃいますか。
石川勝美
23
○石川
説明
員 お答え申し上げます。
労働
基準法は、一般に
労働
者の
労働
条件の最低基準を定めたものでございまして、
船員
につきましては、その
労働
の
特殊性
にかんがみまして、特別法である
船員法
によって
労働
条件の最低基準が定められているものと
理解
いたしております。
船員法
に定めてあります
労働
時間等の
労働
条件の基準につきましては、
船員
が航行中は
船舶
上で生活するといったような
特殊性
があることから、
労働
基準法で定める各種の基準とは異なる面があるものと思っております。しかしながら、いずれにしましても、基本的な線で今回の
船員法
改正
法律案
におきましても、週四十時間
労働
制を目標に段階的に
短縮
していくという点では、
改正
労働
基準法と同じであると
理解
しております。
新盛辰雄
24
○
新盛委員
船員
の諸条件の
特殊性
というのは、今もお話ございますように長期間の
労働
力の売買である、拘束時間が非常に長い、これは
陸上
と完全に違ったところであります。したがって、
船員法
の
労働
時間は原則として
労働
基準法と同等と
考え
る、こう
理解
してよろしゅうございますか。
石川勝美
25
○石川
説明
員 先ほ
ども
申し上げましたように、特別法としての
船員法
で規定されているところでございますが、基本的な
考え
方なり大枠のところでは同じものであろうかと思いますし、あるいはその特殊な勤務の
実態
にかんがみて、いろいろな細部では異なる面が多々あるのではないか、こういうふうに思っております。
新盛辰雄
26
○
新盛委員
陸上
という表現ではちょっとなんですが、
労働
基準
法改正
がさきの国会で成立したわけでありますが、四十時間を一九九〇年前半までに、社労
委員会
ではこの
内容
では一九九三年ごろが目安という目標値が一応確認されたように聞いております。そして当面四十六時間、これは
法定労働
時間の推移であります。そして、それに近づけていくための「可及的速やかに」という文言を参議院の段階で修正として入れました。また衆議院の方でも、三年以内に変形勤務を初めとする全体的な見直しを行うということも修正をいたしました。
船員法
改正
では当面四十八時間ということになるわけでありますが、同じように
理解
をするのはこれは当然でありまして、そのことについてどうお
考え
でしょうか。これは
運輸省
、ひとつ
お願い
します。
野尻豊
27
○野尻
政府
委員
労働
基準法と
船員法
との基本的な違いは、
労働
基準法は現在、
改正
前の段階で四十八時間からスタートしまして、四十時間に向けて段階的に
短縮
するということでございます。しかしながら、
船員法
に関しましては、
昭和
二十二年に制定されて以来、今日まで四十年間手をつけなかったということもありまして、現在の法
体制
は船の運航
実態
に合わせて
労働
時間を決めているわけでございます。したがいまして、船で当直している人、あるいは当直に立たない人、あるいは航行中、停泊中、こういうようないろいろな
船舶
の類型別に
労働
時間を決めているわけでありまして、例えば
船舶
の航行中で当直に立つ人は、一週間五十六時間というような定め方をしているわけでございます。 先ほど大臣からも答弁がありましたように、この四十年間にわたりまして、
船舶
の就航
実態
あるいは
労働
実態
が大きく変わりまして、昔は停泊時間が長くあったわけでありますけれ
ども
、最近は停泊時間も短くなってきているということで、実質的には五十六時間
労働
という
状況
になっているわけでございます。そういった五十六時間
労働
の中で四十時間
労働
に持っていくことにつきましては、
労働
基準法と比較すれば、端的に言っていわば八時間のハンディキャップがあると我々は
考え
ているわけでありまして、そういう面からも
労働
基準法と同一歩調で
短縮
スケジュールを組むというのはなかなか困難ではないだろうかと
考え
ております。 それからもう
一つ
、後ほどまた恐らく御議論になろうかと思いますけれ
ども
、今回
労働
時間の
短縮
に当たりまして私
ども
が一番頭を痛めましたのは、船の運航というのは四六時中、二十四時間運航しているわけでございまして、その中でどのようにして
労働
時間を
短縮
していったらいいかということで、いわゆる補償休日という新しい概念を導入したわけでございます。こういう新しい概念の補償休日がこれから定着するということについても見きわめなければならないと
考え
ておりまして、そういう各般の
立場
から見ますと、今先生がおっしゃいました、
労働
基準法の
審議
過程において一九九三年にというお話があったことは私
ども
十分
承知
しておりますけれ
ども
、
船員法
に関しましては五十六時間からスタートすること、あるいはまた補償休日
制度
という新しい概念を導入したというようなこと、こういうことから
考え
てみますと、
船員法
として独自の
立場
で順次段階的に
労働
時間の
短縮
に取り組まざるを得ないであろう。そういう観点から、「可及的速やかに」という文言を外しまして御提案申し上げた次第でございます。
新盛辰雄
28
○
新盛委員
労働
省の方は
労働
基準法、
船員法
は同等という
理解
の上に立つ、こういうことをおっしゃっているのですが、あなたは、
運輸省
としては、ある意味では五十六時間というのは四階だ、四十八時間というのは二階だ、清水の舞台から飛びおりるような話で、八時間のハンディキャップがあるから、可及的速やかといってもこれは四十時間を達成させるためにはなかなか時間がかかります、だから補償
休暇
の問題も新しく
考え
ているんだという話もございますけれ
ども
、それは私は非常に矛盾をしていると思うのですよ。四十年ぶりに
船員法
を
改正
するのでしょう。だから、ここできちっとしておかないと将来に禍根を残しますよ。 今言われておりますことは、それは
技術
的にも大変だ。
船主側
の
雇用
の問題もいろいろございますから、大変だと思う。しかし
現実
は、時の流れという現象の上では、こうしてどんどん時間
短縮
という
方向
に向かっていることは間違いないのです。だから、後ほど議論します小
労則
の問題についてもそうでございますけれ
ども
、全体の
労働
時間を縮めていくわけですから、最低の
労働
時間をどう確保していくかという、その保証というのは当然あるべきでございます。 そこで、提案の際になぜ「可及的速やか」を外したか、今御
説明
ございましたけれ
ども
、これは納得できませんよ。これは出すのですか出さないのですか、省令を。今、私
ども
に提案されました今度の
労働
時間
短縮
の中では、基準法の論議の過程を通じて修正が可能であったわけですね。成立しました。今回のこの
船員法
改正
では、そのことはできないのですか、できるのですか、どっちですか。はっきりさしてください。
野尻豊
29
○野尻
政府
委員
週四十時間
労働
制ということが国家的政策目標であることを私
ども
十分
承知
しておりますし、そういう観点から
労働
基準法の今回の
改正
と基本的理念は全く同一の
立場
に立っております。ただ、問題になりましたのは、
労働
基準法と同じテンポで、
船員法
につきましても基本目標である四十時間
労働
制へ到着できるかどうかということでございます。私
ども
は、もちろん四十時間
労働
制ということを目標にして掲げているわけでありますから、できるだけ早くその時期に達すべきことは当然であろうと思っております。ただ、先ほど申し上げました事情がありますので、
労働
基準法で
短縮
されるようなそのスケジュールと同じテンポで
船員法
について
短縮
していくのは、なかなか困難であろうということを御
説明
申し上げたわけでございます。 なお、ちなみに、いわゆる新
前川レポート
におきましては二〇〇〇年に向けて週四十時間、いわば年間総
労働
時間を千八百時間に近づける、こういうような御提言もあるわけでございまして、私
ども
としましてはこういった新
前川レポート
を念頭に置きながら、今後の
短縮
スケジュールについて
検討
してまいりたいというように
考え
ておるわけでございます。
新盛辰雄
30
○
新盛委員
労働
の
特殊性
、
船員
の福祉、
船員
の
労働
時間、これは週四十時間
労働
制ということで、可及的速やかにということは段階的にというお話もございますが、そこで、小型船等に乗り組む海員の
労働
時間及び休日に関する省令、一般的には小
労則
と言われております。これは本法に適用させるように再
検討
をということになっているようでありますが、廃止をして七百
トン未満
も全部この
船員法
で適用させるというお気持ちございませんか。
野尻豊
31
○野尻
政府
委員
ただいま先生が御指摘になられましたことは、本案につきまして
船員中央労働委員会
で
審議
の際に大きな議論の焦点となったものでございます。特に問題とされておりますのは、先生おっしゃいますように、七百
トン未満
の
小型船舶
については省令で定めている、この省令を法律規制に引き上げるべきではないかということが
労働
側
委員
から特に主張されました。私
ども
がお答え申し上げましたのは、基本的な
方向
として法律で規制をするということ自体については私
ども
は異論を申し上げているのではなくて、問題は、現在省令で定めておりますことは、法律でないことにかなりの部分がわたっております。例えば、一週間五十六時間であれば一日の
労働
時間は八時間を超えてもいいとかいうような、いろいろ法律にない規定が省令にあるわけでございます。 そういう省令に基づいて現に
労働
時間というものが定着しているという
現状
の中で、そういう
実態
をどういうように把握し、また今後どういう
方向
に直すべきかという議論を抜きにして、ただ単純に省令を法律に持ってくるのか、あるいは省令をいじらずにそのまま法律に持ってくるのか、そういう議論はなかなか難しいのではないか。まず、現在あります省令の規定ぶりにつきましてどういうように手を加えるべきか、そして法律に持っていくとする場合にはどういう形で法律に持ってきたらいいか、そういった基本的なことについてまず
審議
をすべきであろうということを申し上げたわけでございまして、最終的には
船員中央労働委員会
から、三年以内をめどにもう一度
審議
をして適用拡大について今後
審議
を進めていこうという御答申をいただいておりますので、私
ども
はその御答申に沿って今後も
検討
してまいりたいというように
考え
ております。
新盛辰雄
32
○
新盛委員
ここの小
労則
に適用される
船員
というのは何名ですか。
野尻豊
33
○野尻
政府
委員
小
労則
で定めている規定ぶりと同じような形での統計を私
ども
しておりませんので、一応商船で七百トン以上の
船舶
というようなとり方をいたしますと、
乗組員
で三万五千百六十人になります。ただ、そのほかに予備員という
制度
がございます。予備員の数は二万一千百八十一名ございますけれ
ども
、この中のほとんどの者が七百トン以上に関係している
船員
だと
考え
られます。私
ども
、推定値としますと一万七千人ぐらいではないかと思います。したがいまして、七百トン以上の
船舶
に関連しております
船員
の数は、今申し上げました三万五千人余りと一万七千人余りを加えた五万二千人程度ではないかというように
考え
ております。
新盛辰雄
34
○
新盛委員
それと、指定漁船に乗り組む海員の
労働
時間及び休日に関する省令、漁
労則
と言っておるわけでありますが、法の
改正
の水準に見合った
内容
で格差を圧縮すべきである、そう
考え
るのですが、
考え
方をお聞かせいただきたいと存じます。
野尻豊
35
○野尻
政府
委員
漁船については、先生もよく
御存じ
のように非常に
労働
実態
が違うわけでございまして、操業中は
労働
時間という問題よりはむしろ泳いでいる魚を追いかけていくということになってくるわけでありまして、漁
労則
におきましても、そういう観点から
船員法
本則あるいは小
労則
とは違った規定ぶりをしております。したがいまして、今回の法律
改正
によりまして、当然小
労則
については何らかの手当てをしなければいけないだろうと思いますし、また漁
労則
についても手当てをする必要が生じるかと思いますけれ
ども
、ただ、今申し上げましたように漁業につきましては、普通の商船とは運航
実態
あるいは
労働
実態
が大きく違っているという点については御
理解
いただきたいと思っております。
新盛辰雄
36
○
新盛委員
次に、未組織の
船員
に対する黄犬契約の強要というのがあるわけでありますが、この
実態
は把握しておられますか。また、これについての指導監督はどういうふうにされておられますか。
野尻豊
37
○野尻
政府
委員
黄犬契約というお話についてうわさとしてはお伺いしておりますけれ
ども
、具体的な事案として私
ども
の耳に達したことはございません。ただ、巷間言われる黄犬契約というのは、一般的な事例として申し上げれば、多分不当
労働
行為に該当するであろうと
考え
られます。不当
労働
行為に該当すれば、当然関係者から申し立てがあれば
労働
委員会
でしかるべき調査をし、場合によっては救済命令を発するということになろうかと思うわけでありますが、残念ながら私
ども
、今の段階で黄犬契約の
実態
、あるいはまたそういった正確な事実に基づく情報には接していないというのが
現状
でございます。
新盛辰雄
38
○
新盛委員
小
労則
あるいは漁
労則
あるいは黄犬契約、いずれをとりましても全く
労働
時間
短縮
の恩恵を受けないという方が正しいでしょう。そういう形のもの、
運輸省
、行政
措置
としてこれからどういうように指導されるのですか。 小
労則
の場合は、私
ども
はもうこんなのは廃止して、七百
トン未満
といったって、大抵形は六百九十九トンとか四百九十九トンとか二百九十九トンとかいっておりますけれ
ども
、七百トン超えれば六人の甲板
船員
が乗っかる、それ以下はだめ、そして時間の
短縮
の恩恵を受けるというのも、七百トン以上はこうですと
船員法
でぴしっとやる。以下の方は小
労則
、いわゆる省令で指導するということになっているから、こういうものはひとつ外してしまって、適用除外というようなのはつくらないで、省令で決めないでもっと近づける方法はないか。漁
労則
だって、これは変形勤務その他把握は非常に難しい。しかしこれは指導とすれば、画期的な四十年ぶりの
改正
なんだから、それだけにやはり
船員法
に
対応
する
内容
にしてほしい。 さらには黄犬契約だって、これは不当
労働
行為にかかわる。申請がないから
実態
はわからぬというわけですけれ
ども
、それこそ行政指導が必要になるのじゃないか。その面の把握ができないでおって、
日本
のこの経済基盤あるいは内需拡大をということにはつながらないでしょう。
前川レポート
が泣きますよ。どうお
考え
ですか。
野尻豊
39
○野尻
政府
委員
まず
小型船舶
に対する適用問題、これは先ほど私から御
説明
申し上げましたように、
船員中央労働委員会
での
審議
の際には、現在の法
体制
の違いから即座に適用拡大に踏み切ることはできないという
結論
から、三年以内をめどに改めて
審議
し直して
結論
を得るというような船中労からの答申をいただいておるわけでございまして、私
ども
といたしましては、この船中労の答申に基づきまして、今後鋭意
検討
させていただこうと思っております。 それから黄犬契約の問題でありますけれ
ども
、今私も御答弁申し上げましたように、私
ども
の方で具体的な事実に基づく情報に接していないという段階で、今後行政指導をどうするかということはなかなか言いにくい問題であります。ただ、そういう黄犬契約が望ましくないことは当然のことでありますので、私
ども
これから折に触れて使用者等に啓蒙をしていかなければいかぬというように
考え
ております。
新盛辰雄
40
○
新盛委員
小
労則
にかかわる問題でありますが、休日の買い上げについてどう思いますか。そして、定員については小
労則
に定められていないわけでありますし、具体的な
実態
がつかめないという話がありますけれ
ども
、一体どうお
考え
ですか。
運輸省
は振りかえ休日の買い上げを考慮しているように聞いているのですけれ
ども
、それこそ時代に逆行することじゃないか。休日を与えるなら休日をぴしっと与える。これを買い上げるなどということは、世間でも言われているのですが、まさしく時代に逆行じゃないか、こういうこともございますので、お答えいただきたいと思います。
野尻豊
41
○野尻
政府
委員
基本的には先生のおっしゃるとおりであります。休日というのはあくまでも休日でありますから、その休日は職から離れてゆっくり休まる、それによって新たな活力を生むと私
ども
考え
ております。 ただ問題は、
船舶
の運航というのは、荷主からあるいはそのほかのいろいろな事情から、きちんとしたスケジュールに基づいて運航できないという
実態
にあるわけでありまして、そういった事態の場合に、きょうは休みだからもう船を動かさないというわけにはいかないという事実がございます。そういう観点から、ある日数の範囲内において、時間外
労働
となりますけれ
ども
、いわゆる休日の買い上げというものはやむを得ないのではないかというように
考え
ております。また、現に
全日本海員組
合と
船主
団体とで結ばれております
労働
協約の中でも、休日の買い上げという
制度
が導入されておるわけでございまして、いわば
労働
慣行の
一つ
として休日の買い上げという
制度
があるということも念頭に置きますと、
一定
の日数を限度とした買い上げ
制度
は
制度
としてやむを得ないものとして、私
ども
今回の
改正
案に盛り込まさせていただいたわけでございます。
新盛辰雄
42
○
新盛委員
この七百トンという基準ですね。あなた、もう
実態
に合わないのじゃないですか。実際は、七百トンといいましても重量トンでしますと恐らく二千五百ぐらい、全くもう昔の木
造船
じゃないのですから、
鉄鋼
船になって
状況
が変わったのですね。四十二年にこの小
労則
ができたのですけれ
ども
、それから以降も随分変わっているのですよね。どうお
考え
ですか。
野尻豊
43
○野尻
政府
委員
船員法
七十条で、総トン数七百トン以上の船につきましては甲板部員六人以上を乗せなければいけないという規定がございます。実は、今回の
船員中央労働委員会
の
審議
の際に
使用者側
委員
から、この七十条の規定は陳腐化しているから撤廃すべきだという強い意向が出されました。また一方、
労働
側
委員
からは逆に、定員規制を強化すべきだという趣旨のお話がありました。 いずれにしましても、この問題はある意味ではもう長年にわたる懸案事項ということで、
労働
委員会
におきましても短時間のうちで
結論
を出すことはできないということで、先ほど申し上げました小
労則
の
検討
とあわせまして、今後三年以内をめどに
検討
していこうという御答申をいただいておりますので、私
ども
もその線に沿って今後
検討
してまいりたいというふうに
考え
ております。
新盛辰雄
44
○
新盛委員
最後に、この
労働
時間
短縮
の問題は、基準
法改正
に伴って
船員法
改正
の場面でもより積極的に目標値が達成できるように、段階的にということをおっしゃいますけれ
ども
――我々は法の手続上、これは後ほど修正案も出るそうですからその
方向
で見守ってまいりますけれ
ども
、ただ
現実
問題としてこれからの
船員法
、これが
一つ
の基準になるわけですから、ぜひひとつ積極的に、小
労則
の基準をつくり省令をつくるにしても、来年の四月からということになれば早く取り組まなければならないでしょう。その
審議
も早急にやらなければならないでしょう。そういうことを含めて、ぜひとも本法に近づけられ得る最大限の御努力を要望しておきます。 さて、次の
船員雇用促進特別措置法
の一部
改正
の
内容
に入っていきたいと存じますが、先ほどから
経営者側
さらには組合の代表からいろいろと御提言もございました。大臣もよくお聞きになったと思います。 そこで、この深刻な
海運
状況
の中で、最近は海離れが始まっている。それは、商船大学、専門学校卒業生の
船舶
への
希望
者が減少しているという、まさに憂えるべき
状況
であります。六十二年の商船大学卒業者は百二十九名おりました。そして、この求人の方は六百四十二名と殺到しているわけであります。ところが、
海運
事業を
希望
された、現に決まったと言われている人はわずか三十五名。高等専門学校卒業者は三百四十八名、その求人の方は大変な数でございまして千八百六十八名、しかし
海運
事業の方に行かれた方は七十三名しかいない。 この
状況
から見ますと、今の
海運
事業にはもう魅力がない。これから十年後、二十年後は一体どうなるのだろうか。後継者が不足をしてくることは当然でありますが、同時に心配されるのは年齢構成の偏りであります。いわゆる要員構成が大変なことになりはしないかと思うのであります。このままでいったら壊滅するのじゃないか。要員構成がちょうちん型の
状況
ならいいんですが、逆ピラミッド型ですね。この方々が退職された後、一体
日本商船隊
の維持というのができるのかどうか。
外航
路、内
航路
また
海運
事業全体にわたる深刻な問題だと思うのでありますが、どう
理解
をしておられるでしょうか。大臣、どんなふうに思われますか。
石原慎太郎
45
○石原国務大臣 御指摘の点、確かに私たち本当に深く憂慮しております。
海運
は非常に今苦しい
状況
にございますけれ
ども
、何といっても
海運
というのは
日本
のような国家にとっては欠かすことのできない手段でございまして、それを支える同胞の専門家が減少していくということは、国家にとっても非常に大きな不安だと思います。何とかこの確保に努力をしたいと思っております。
新盛辰雄
46
○
新盛委員
そうした
現状
認識の上に立って、
対策
を立てていただく当面の課題でありますが、先ほど出ました
FOC
、便宜置籍船を
日本人船員
の
一定
の職場に定めてほしい、行政
措置
として
日本人船員
を
定数
を決めて配乗させることはできないか義務づけてほしい、こういう悲痛な御提言もございました。私が試算しますと、千五百隻くらいいるのだそうでございますが、
日本人船員
が定員の五名から六名乗るというふうにしますと、約七千人から八千人の
雇用
創出になるわけですね。
雇用
対策
上もいいのであります。このことをどうお
考え
になっているのか、大臣ぜひひとつお聞かせいただきたいと思います。
石原慎太郎
47
○石原国務大臣 御指摘の点は確かに有効な手段であるとは思いますが、何といっても便宜置籍船は外国の法人の所有
船舶
でございまして、
雇用
関係について
日本
の行
政府
が直接行政指導するということは事実上難しいと思います。そのために、外国船に乗船するのに必要な訓練の実施あるいは助成金の支給等で、
日本
人の
船員
がこういった外国船に乗りやすくなるような
環境
の整備を、これからも整えていきたいと思っております。
新盛辰雄
48
○
新盛委員
運輸省
としてはこの問題、今大臣お答えになったのですが、外国の船であるからと。しかし、ある意味では
コスト
をどう見るかで決まるわけですね。
日本
の
船員
は五倍だとか六倍だとかという話がありますが、外国の
船員
さんというのは、
東南アジア
とかそうしたところから連れてきて乗っけるわけですから、海上保安あるいは運航上のそうした緻密な
技術
を持つわけではございませんから、私
ども
も非常に不安であります。 しかし、こういう事態に対してどういうふつにすればいいかとなると、今
海員組合
長がおっしゃいましたように、便宜置籍船に乗っける義務づけをしてほしい、そうおっしゃっているわけです。具体的に
船主側
の
意見
もございます。
船主
の方は、やはり
混乗
を初めとして全体的な中で随時
考え
ていかなければならないが、
結論
はなかなか出しにくいというふうなお話もございましたけれ
ども
、行政の側として具体的に、もう今当面の課題ですから、どうお
考え
ですか。
野尻豊
49
○野尻
政府
委員
今、大臣からお答え申し上げましたように、基本的な
考え
方といたしまして、便宜置籍船といえ
ども
外国の法律に基づいて設立されております
会社
が運営している船でございますから、
日本
の行政権限によりまして、
FOC
に対しまして
日本人船員
を乗せることを強制することはできないということになるわけであります。 ただ、私
ども
、外国船に対しまして
日本人船員
が少しでも多く乗れるような
環境
整備はしなければいけないということで、かねてから各般の施策を講じているわけでございます。例えば、離職
船員
が外国船に乗る場合に、就職奨励金というものを交付しておりますけれ
ども
、従来十二万円でありましたのを六十三年度からは五割増しの十八万円にするとか、あるいは厚生省では
船員
保険特別会計から、
雇用
船員
を外国船に派遣した場合に派遣助成金という賃金助成をしておりますけれ
ども
、これも六十一年度までは月二万円限度でありましたのを、六十二年度から三万円にするとかいうような施策を講じております。また、税制面におきましては、
外国用船
にかかります源泉徴収課税を
減免措置
にするということを今回の六十三年度の税制
改革
で決めた、とかいうような
対策
を講じているわけであります。 ただ、そういうような形で外国船へ
日本人船員
を乗船させるという施策についてもいろいろな限界があるわけでありまして、基本的にはやはり何といっても
日本船
が外国船にならないように、いわゆる
海外流出
にならないような
措置
を講ずるということが重要なことであろうかと思うわけであります。そういう意味では、ただいま
海運造船合理化審議会
におきまして、
海外流出
問題について御
検討
いただいているところでございますので、私
ども
その海造審の
審議
状況
を踏まえながら、今後
対応
を
考え
ていきたいというふうに
考え
ております。
新盛辰雄
50
○
新盛委員
それと、老朽化した
FOC
の解徹
促進
という関係での行政指導といいますか、そんなのがありますか。
中村徹
51
○
中村
(徹)
政府
委員
我が国に対する船につきましては、六十一年六月に施行されました
特定
外航
船舶
解徹
促進
臨時
措置
法という法律に基づきまして、解徹のための債務保証
制度
等が設けられておるわけでございますが、外国法人の所有にかかります外国置籍船であります便宜置籍船については、これを適用することはできないというふうに
考え
ております。
新盛辰雄
52
○
新盛委員
大蔵省、来ていらっしゃると思いますが、第四十三次
計画造船
の際に七百億の財投で新
造船計画
をされたんですが、わずか一隻しか
建造
されなかった経緯がございます。その理由は
金利
が五・二%、先ほどから御提言もあるわけでございますが、このことについてどういうようにお
考え
かをお聞かせいただきたいと思います。
浅見敏彦
53
○浅見
説明
員
日本
開発銀行から
海運
業者に対します融資条件についてのお尋ねでございますが、この点につきましては既に過日も当
委員会
におきまして
新盛
先生から熱心な御質疑がございまして、
運輸省
御当局から御答弁があったと
承知
いたしておりますが、お尋ねでございますので、改めて御
説明
させていただきたく存じます。 まず、開発銀行の
海運
融資
制度
でございますけれ
ども
、
新盛
先生御高承のとおり、
昭和
二十八年に
制度
創設以来、貿易物資の安定輸送確保という
見地
から、
外航
船舶
の新船
建造
あるいは既存船の改造を融資対象としてまいったわけでございます。特に近年では、オイルショック以降のエネルギー多様化に伴いまして、LNG船でございますとかLPG船等に対する融資、あるいは我が国
海運
業の
国際競争力
を確保するという観点から、高度合理化船等に対する融資というようなことを進めてきておるわけでございまして、大変歴史のある
制度
である、かように
理解
をいたしております。 お尋ねは、この融資条件についてでございますけれ
ども
、貸付
金利
は開発銀行の最優遇
金利
で、私
ども
特利五と呼んでおりますが、六十三年三月末、昨日現在では五・〇%となっております。これは、御
承知
のように
日本
開発銀行は収支相債の原則ということをとっておりますので、この原則のもとにおきます可能なぎりぎりの条件である、私
ども
かように
理解
しております。また、融資比率につきましても御疑問がおありかと思いますが、これは原則五〇%程度となっておりまして、特に超省力化船及びLNG船等につきましては六〇%程度ということで、この融資比率も他の融資
制度
に比べますと最も優遇された
制度
となっているわけでございます。 このように、
海運
融資
制度
につきましては、
日本
開発銀行のもろもろの融資
制度
の中でその重要性にかんがみまして最大限の配慮を払ってきておる、かように私
ども
としては
理解
し、運営をしてきておる次第でございます。
新盛辰雄
54
○
新盛委員
中小
船社
の倒産が非常に多いわけでありますが、これを回避するためにも、今御
説明
がございましたけれ
ども
、確かに
金利
を安くしていくというのは望ましいことだけれ
ども
、全体的な横並びの関係もあってというお話もございます。
金利
を三%程度引き下げるとか、あるいは無担保低利融資借入金の返済の繰り延べを若干行政的に
金融
支援をする、こういうことはやはり
海運
不況
を助けていく一助になると思うのですが、いかがお
考え
ですか。
高橋厚男
55
○高橋
説明
員 ただいまの先生の御質問、民間
金融
機関の中小
船舶
業者に対する貸し付けについての御指摘かと存じますので、その観点からお答えをさせていただきます。 当然でございますが、民間
金融
機関が貸し付けを行う際の条件等につきましては、貸し付け先の信用力等を勘案いたしまして
金融
機関の自主的判断によって決められるものでございます。今、先生御指摘の中小
船舶
業者でございますが、中小
船舶
業者も含めました中小企業
金融
につきましても、基本的には
金融
機関の自主的判断に基づいて
対応
するということでございます。他方、資金仲介機関としての公共性という
立場
がございますので、
金融
機関の公共性にかんがみまして、そのときどきの経済
金融
情勢等を踏まえまして、中小企業者の個別具体的
実情
に応じまして弾力的に対処する等、中小企業
金融
の円滑化ということにつきましては、
金融
機関といたしましても十分配慮することが求められているというふうにも
考え
るわけでございます。 私
ども
といたしましても、日ごろからこうした趣旨の徹底ということに努めているところでございまして、今後とも中小企業
金融
の動向というものにつきましては、十分注視してまいりたいというふうに
考え
ております。
新盛辰雄
56
○
新盛委員
大蔵省らしい御答弁で、やはり金は出したくないのでしょうけれ
ども
、
現実
問題として非常に厳しい
環境
なんです。だから、ぜひひとつ前向きにこうした処置をとっていただくように
希望
しておきます。 それで、こういう
海運
不況
の中で助成
措置
というのは
考え
られないか。ほかの国がやっているから
日本
はそれに倣ってということを申し上げているわけではありませんが、先ほ
ども
土井組合長
の方から出ました、米国では一九三六年制定の
船員法
に根拠を置いて運航差額
補助金
というのをつくっているのであります。これは、米国籍の船が運航費用を外国の
競争
の中で均衡を図っていくために、
コスト
差額を
政府
が補償するという
内容
のものであります。例えば昨年、この会計年度予算教書で見ましても、運輸関係の予算が前年度対比六%削減をされている中でも、運航差額
補助金
は三億二千万
ドル
計上されている。そして、前年度対比では二千五十万
ドル
も上回っている。それほど心がけて
海運
業進展のために米国は
考え
ている。 さらには一九八四年、OECDの通運
委員会
でも加盟諸国の
海運
税制調査の年次報告をしております。この中で、租税目的あるいは社会保障の保険料その他、賃金の強制控除ができるような
措置
をと、
船員
はほかの職場と違うという意味で諮問をした経緯がございますね。
日本
はそれにイエスかノーか与えたかどうかわかりませんが、そういう国際的な動きもあります。さらに
ノルウェー
では、
船員
は毎月定額の雑損控除と大幅な免税がされている。スウェーデンでも、
船員
の
特殊性
を考慮して税率が決定されている。こういう国際的な
環境
の推移にかんがみて、
日本
でも特殊な
労働
環境
だということから、将来の職場確保だとか
雇用
の維持の点から、
日本人船員
の現行課税
制度
は抜本的に
考え
られないかどうか、これが
一つ
。 それから、現在の
所得税
法は、第五条で居住者を納税義務者として指定してありますね。居住者とは国内に限られているというのが第二条でもあるわけですが、同法の施行令第十五条では、国内に住所を有しないと推定される場合、「その者が国外において、継続して一年以上居住することを通常必要とする職業を有すること。」そういうことになりますと、この観点から
船員
にも拡大をして、一年以上二年かかって
外航
路を回っておられる
船員
の方々もいらっしゃるわけですから、船の中を居住区というふうにしている規定はどこもないですね。
所得税
、地方税が免除されるべきではないかと思うのでありますが、そういう具体的な問題で御
検討
されたことがあるかどうか、第二点目にお答えいただきたいと思います。
田谷廣明
57
○田谷
説明
員 最初、私の方から、商船に対する運航補助についてお答えを申し上げたいと思います。 御指摘のございました
アメリカ
の
制度
について私
ども
つまびらかにしておりませんが、
運輸省
から聞いたところによりますと、米国の
制度
は
国防
上の配慮からの助成
措置
であると聞いておりまして、これを参考として我が国の商船について議論することはどうかなと
考え
ております。 それから、一般的に申し上げますと、私
ども
も我が国の
外航海運
が現在非常に厳しい
環境
にあることはよく
承知
しておりますが、いわば構造的な
不況
要因に対する
対応
が先決ではないかと
考え
ておりまして、財政援助によって打開できるような
状況
にはないと
考え
ております。なお、厳しい財政事情の中ではございますが、
海運
不況
に伴う離職
船員
対策
等につきましては、所要の予算をできる限り計上いたしているところでございまして、よろしく御
理解
を願いたいと存じます。
杉崎重光
58
○杉崎
説明
員 税制の問題でございますけれ
ども
、これは税制調査会でいろいろ御
審議
いただいておりますが、基本的な
考え
方というのは、同じ所得をもらった場合には同じような課税を受けるという
考え
方に立ちまして、
特定
の控除等はなるべく
考え
ないという
方向
になっておるものですから、そういう
船員
ということに着目して特例をつくるのはなかなか難しいわけでございます。 しかしながら、最近給与所得者を中心にいたしまして税の重税感、不公平感があるというようなことから、
所得税
について中堅所得者層を中心に思い切った負担の軽減を図るということで、昨年の九月にもそうした減税を行わせていただいたわけでございます。その後、税制調査会において、さらに総理の諮問を受けまして、
所得税
について中堅所得者層あるいは低所得者層を中心に、一層の負担軽減を図ることを現在
検討
している段階でございます。
新盛辰雄
59
○
新盛委員
検討
していただいていることもわかりますが、国際的な
状況
変化あるいは国内のこうした
海運業界
における
危機
的な
状況
、そして将来の
日本
の経済活動の展望に依拠すれば、何としても政策的に
船員
の確保とか、あるいはこれからのこうした税制の
措置
でもってカバーしてやる以外に
雇用
の確立はできないだろう、そういう面のとらえ方もあるわけですから、これは御
検討
いただいている上にさらに加えて、今申し上げました諸点について十分な御配慮をいただきたい。 今、税制
改革
問題が議論されているわけですから、下手に間接税などに踏み込んだ議論はしたくありませんが、我々はいかなる場合といえ
ども
、
船員
関係の間接税問題となると厄介なことになるのですから、なお壊滅的な打撃を与えることにもつながりますから、心してこの面も含めて今後の税制のあり方を、この
船員
の場合、優遇
措置
ということじゃなくて、
現実
的に諸外国で取り扱われている諸点あるいは
所得税
法上の矛盾、そうしたことをとらえて処置をしてほしい、こう言っているわけですから、ぜひとも大蔵省の方でも御
検討
いただきたいと存じます。 しつこいようですが、
運輸省
に
近代化船
の
建造
促進
について、いま一度
考え
方をお聞かせをいただきたい。というのは、
一つ
は、
外航海運
政策の根幹として、戦後一貫して今日まで、新
造船
を初めとする
計画造船
がなされたわけであります。六十三年度も四百五十億計上されている。しかし、昨年は一隻しか
建造
されなかった。このような
状況
で、今後もこの計画は存続をされるお
考え
であるかどうか、お聞かせいただきたい。
中村徹
60
○
中村
(徹)
政府
委員
運輸省
といたしましては、
計画造船
制度
は
日本海運
の柱となっていくべきものと思っておりますので、
計画造船
制度
は今後とも維持していくべきものと
考え
ております。
新盛辰雄
61
○
新盛委員
これを存続していきたい、
制度
活用をやっていきたい、こういうことでありますが、こうした
日本商船隊
の中核として
近代化船
を活用するという、これは変わらないとおっしゃっているわけですが、実際に昨年が一隻、ことしはどうなるかわかりません。だから、先ほど融資の問題、
金利
を引き下げる問題を質問したわけであります。現在、二百数十隻いるんだと思いますが、新
造船
にかかわる今度は
船員
の新しい
技術
の養成、そういうものもされて、七千人、八千人近くいらっしゃるわけですね。だから、今後こういうような計画を具体的にどう継続していくかということは、全体とかかわり合いがありますから、
運輸省
としてはどうされようとするのか、お聞かせいただきたい。
中村徹
62
○
中村
(徹)
政府
委員
計画造船
制度
の中で
近代化船
をこれからどう整備していくかということは、まず現在の
近代化船
というのが
国際競争力
のある船として、実際に
海運
事業者が
建造
意欲を持つかどうかということが問題になるわけでございますが、ただいまの
制度
の中での
近代化船
では、
建造
意欲を生じさせてないという
現実
があるのは御指摘のとおりでございます。したがいまして、これをいかに
国際競争力
を有するようにするか、そこが今後
検討
すべき課題だというふうに
考え
ておりまして、
国際競争力
のある邦船というものを中核とした商船隊をつくるべく、
計画造船
制度
もその中に組み入れましてこれから
海運
政策を
検討
していきたい、かように
考え
ておるところでございます。
新盛辰雄
63
○
新盛委員
さきの
運輸大臣
の所信表明でも「
船員
制度
の
近代化
を一層推進する」こう述べていらっしゃるわけでありますから、換言すれば、ただいまの
近代化船
の
建造
を
促進
をしていくんだ、こういうふうに確認をしてよろしいわけでございますね。
中村徹
64
○
中村
(徹)
政府
委員
近代化船
を中核としてこれまで
日本船
の整備を
考え
てきたわけでございますが、
建造
意欲等がないために
近代化船
の整備が行われていないという
現実
もあるわけでございまして、これは
国際競争力
が
近代化船
についても著しく
低下
しているという
状況
を
背景
としているわけでございます。したがいまして、今後、
国際競争力
のある邦船というものをいかに整備していくかということは、ここで
検討
していかなければいけないし、そういう
国際競争力
のある邦船を中核として
日本商船隊
を整備していかなければならないということは、認識しているわけでございます。
新盛辰雄
65
○
新盛委員
これもまたくどいようなんですが、便宜置籍船、
FOC
への
日本人船員
配乗の問題で、これまた所信表明で
運輸大臣
は「緊急
雇用
対策
として、外国船への配乗等海上職域の確保」を積極的に推進をすると述べておられるわけであります。六十三年度の
雇用
対策
費で新設されたもの、再就職あっせん受け入れ助成金、
雇用調整
執行給付金、いずれも
陸上
職域開拓費であるわけでありますが、どのような手段で海上職域を確保されようと
考え
ておられるのですか、お聞かせをいただきたい、大臣もしくは
局長
。
野尻豊
66
○野尻
政府
委員
現在の厳しい
船員
雇用
情勢のもとで
日本人船員
の海上職域を確保するためには、外国船への配乗を
促進
する必要があるという点につきましては、先生と同感でございます。 外国船への配乗の
促進
策につきましては、従来から
船員
福利
雇用
促進
センターで、外国船を開拓するあるいは部員の職員化訓練を行う、就職奨励金の交付といったような
対策
を講じてきたわけでございます。
昭和
六十三年におきましては、最近の厳しい
船員
の
雇用
情勢にかんがみまして、就職奨励金の単価を先ほど御答弁申し上げましたように十二万円から十八万円に増額する、あるいは外国船の裸用船料に係る源泉徴収課税の不適用
措置
を実施する、あるいは部員の職員化訓練の充実を図るといったような、各般の施策を講ずることにしております。また、国内の海上職域の開拓を
促進
するために、
船員
職業安定所にテレホンサービスあるいはファクシミリを設置する等、その機能の充実強化を図ることにしております。
新盛辰雄
67
○
新盛委員
さらに、離職
船員
の外国船就職奨励金、先ほど御
説明
ございましたように十二万円から十八万円というふうに増額をしましたよということでございますが、これによって何人ぐらいが海上職域の確保の場面で可能なんでしょうか。
野尻豊
68
○野尻
政府
委員
予算上は、約四百人と想定しております。
新盛辰雄
69
○
新盛委員
だとすれば、六十一年から六十二年の間、もう既に集計できていると思いますが、一年間の
船員
職業安定所による海上職域あっせん件数はどれぐらいになっているんでしょうか。
野尻豊
70
○野尻
政府
委員
昭和
六十二年におきます
海上労働
求職者に対します
船員
職業安定所の紹介による就職成立数は、延べ三千七百六十六件となっております。
新盛辰雄
71
○
新盛委員
こうした
現状
から見ますと、巷間四万名の
船員
の失業といいますか、ある意味では職を失ってしまった、そう言われているわけですが、これは
海運
産業
全体にかかわる問題でありますから、
政府
の方で積極的にお取り組みいただいているわけですが、数の面でも余り出てこないというのはどういうことか、お
考え
になっていらっしゃいますか、あるいは調査しておられるのですか。
野尻豊
72
○野尻
政府
委員
申しわけございませんでした。今、質問の趣旨を十分
理解
できませんでした。もう一度
お願い
いたします。
新盛辰雄
73
○
新盛委員
今、
説明
ございましたように、こうした外国船就職奨励金が増額をして海上職域確保ができたとか、
船員
の職業安定所を通じて新しく職域開拓をしたりしてやって、いろいろな努力をされているわけですが、それでも実際的にはもっとたくさん出てこなければならないわけですね、失業
船員
というのは非常に多いわけですから。そうした面の具体的な指導というのを、数字を言うと大蔵省がちょっと妙な目で見るかわかりませんけれ
ども
、
現実
の仕組みとして救済の
措置
という面で、何かそこに
状況
がいろいろあるのだろうと思うのです。その辺どう
理解
をして指導されているか、お聞かせをいただきたいと思います。
野尻豊
74
○野尻
政府
委員
今まで
船員
であった方々が、先ほど
土井組合長
のお話の中にも相当数の
船員
の方が職を失うというようなお話がありました。そういう方々は、やはり今まで自分が持っておりました技能を中心として生きていきたいという
希望
に燃えているわけでありまして、私
ども
としましては、できる限り海上職域の開拓という点に重点を置きたいというように
考え
ておるわけであります。 しかしながら、海上職域につきましては、昨今の
海運業界
の
状況
から見まして、そう簡単に開拓できるものではないということになりますと、
陸上
職域への転換も図らなければならないというように
考え
ているわけであります。
陸上
職域への転換につきましては、従来から職業訓練等によりまして、
陸上
で就職した場合に就職しやすくするような
措置
を講じてまいりましたが、さらに六十三年度におきましては、例えば離職
船員
につきましては受け入れされる
陸上
事業主に対して、国と関係
船主
との共同によりまして賃金の一部を補助するとか、
船員
保険特別会計からは出向という形で、
陸上
の事業主に派遣される
海運
事業主に対して賃金の一部助成をするとかいうような形で職域開拓をしていく、いわば海上職域、
陸上
職域全般にわたって職域開拓について万全の
措置
を講じていきたいというように
考え
ているわけでございます。
新盛辰雄
75
○
新盛委員
海運
労使
が血のにじむよう自助努力をして、
外航
船員
雇用
開発
促進
機構をおつくりになって積極的に
雇用調整
をやっておられる。本来あるべき姿じゃないと
土井組合長
も強調しておられました。全くそのとおりだと思うのです。そういう努力をされているわけでありますが、この陸転の場面を含めまして極めて厳しい
状況
だ。また、陸の方でも、
円高
不況
によって起こっている失業者群、こうした中で、とりわけ海の関係では厳しい
環境
にある。この求職登録をした者が海上職域を
希望
する、そういう場合、どうしても自分の
技術
を生かして海上に残りたい、それでも船はいない、そういう深刻な
状況
ですから、今、財団法人であります
日本船員
福利
雇用
促進
センター、SECOJと言っておりますが、この実施する技能訓練の対象者など、どういう推移になっているか。こうした面からも、やはり全体的
雇用
の保障あるいは
雇用
の創出、
雇用
のこれからの安定した
状況
をどうつくっていかなければならないのか、大前提ですね、これを最後にぜひお聞かせをいただいて、この二法にかかわる問題の締めくくりにしたいと存じます。
野尻豊
76
○野尻
政府
委員
今、先生御指摘になられました
日本船員
福利
雇用
促進
センターにおきましては、いろいろな技能訓練を実施しております。 二、三例示を申し上げますと、外国船に乗船させるために必要な知識、技能を習得することを目的とするもの、部員の研修あるいは海事英語研修、
タンカー
研修、こういったような研修、あるいはまた
雇用
船員
の技能、能力の開発を目的としまして
船舶
職員の養成訓練、STCW条約適用訓練あるいは外国語教育訓練、特殊無線技士研修あるいは中高年
船員
等職業訓練というような、いろいろな訓練を実施しているわけであります。ちなみに、今申し上げました訓練につきまして、第一のジャンルに属する受講生は五百四十九人、それから第二のジャンルに属する者は一千七百四十九人、合わせて二千二百九十八人というような実績を残しているわけでございます。 今後も、こういった形で技能訓練を施すことによりまして、離職された
船員
が新たな世界で生きていけるように、私
ども
も万全の努力を尽くしたいというふうに
考え
ております。
新盛辰雄
77
○
新盛委員
終わります。
関谷勝嗣
78
○
関谷委員長
午後一時から再開することとし、この際、休憩いたします。 午後零時六分休憩 ────◇───── 午後一時
開議
関谷勝嗣
79
○
関谷委員長
休憩前に引き続き
会議
を開きます。 質疑を続行いたします。長田武士君。
長田武士
80
○長田
委員
それでは、
船員法
の一部を
改正
する
法律案
につきまして質問をいたします。 今回の
船員法
の
改正
は、海で働く
皆さん
の今後の生活
環境
を大きく左右する
法律案
だけに、関係者の方々は本
委員会
の
審議
を非常に重要視しておるわけであります。海の
労働
基準法と呼ばれております本法は、ともすると閉鎖的になりがちな
労働
環境
をより安全に、より効果的に維持発展させるためには欠くことのできない法律であることは論をまたないわけであります。 今回の
審議
では、こうした今までの枠を乗り越えまして、より人間的な職場づくりを行う観点から種々の点についてお伺いをしたいと思っております。そういう意味でありますから、大臣初め関係当局の誠意ある御答弁をまず
お願い
するわけであります。 では、まず初めに、週四十時間の導入についてお尋ねをいたします。 六十四年四月に
改正
法が施行されるといたしまして、この四十時間実施の第一段階といたしまして、条文に当分の間四十八時間とする事項がありますけれ
ども
、この「当分の間」というのはどのぐらいの時間を
考え
ておるのか、まずお尋ねをいたします。
野尻豊
81
○野尻
政府
委員
四十時間に向けての
労働
時間の
短縮
につきましては、提案理由
説明
でも御
説明
申し上げておりますように「
船員
労働
の
特殊性
、
船員
の福祉、
船員
の
労働
時間の動向等の事情を考慮して、段階的に
短縮
を図る」というように決められております。 「当分の間」というのは今、四十八時間から四十時間の間で政令で定める時間というようになっておりまして、段階的に四十八時間から四十時間に向けて
短縮
していくというスケジュールになっておるわけでございます。そうした事情から見まして、現段階で将来を見通すことができないということでこの「当分の間」という言葉を使っておるわけでございますが、
船員
の福祉を図るという観点から、この四十時間の目標をできるだけ早く達成できるように今後努めていくべきであると
考え
ております。
長田武士
82
○長田
委員
昨年五月にいわゆる新
前川レポート
が発表されました。それによりますと、西暦二〇〇〇年に向けましてできるだけ早い時期に年間総
労働
時間を今の二千百時間から千八百時間に
短縮
する点が提言されておるわけであります。これを実施するには当然ある程度の段階を踏まえて
短縮
しなければならない、私はその点はよく
理解
するわけでありますが、今回の
船員法
につきましても、週四十時間の導入に当たりまして今後の段階的スケジュールについてはお
考え
ですか。
石原慎太郎
83
○石原国務大臣
労働
基準法は一九九三年までに四十八時間を四十時間に
短縮
するということをうたっておりますけれ
ども
、
船員法
の場合には、先ほど部長も申し上げましたが、その倍の、つまり十六時間を
短縮
するという非常に難工事でもございます。 同時に、航海の
実態
が
陸上
の業務とかなり違っておりまして、それに応じて
制度
も改め、補償休日という新しい
制度
も導入しますし、またその定着
状況
を見きわめる必要もございますし、その時間
短縮
に伴う要員の確保の問題もございまして、陸の
労働
基準法とは
状況
がかなり異なっております。そういう点からも明確なスケジュールを今から設定することはかなり難しいと思いますので、ともかくできるだけ早期に、午前中申し上げましたけれ
ども
、目途とすれば西暦二〇〇〇年を目指してできるだけ早期に週四十時間の
制度
を達成するように努力してまいるつもりでございます。
長田武士
84
○長田
委員
週四十時間の実施時期につきましては、昨年の
労働
基準法の
改正
のときに、新
前川レポート
のできるだけ早い時期の解釈が問題になりました。今、
運輸大臣
が言われたとおりに、当初
労働
大臣は一九九〇年代の半ばをめどにしたい、この実施を
考え
ている、このように答弁をいたしました。 ところが、再三にわたる実施時期についての具体的な答弁の要求に対しまして、
労働
大臣からは一九九三年を目標にする旨に見解が明らかになりました。こうして一応の目標が設定された経緯がありますから、私は、今回の
船員法
につきましてもある程度の具体的なめどを立てるべきである。本来ならば、私は一九九三年同時実施というのが一番正しいと思っております。この点については、大臣、もう一度はっきりと答弁していただけませんか。
石原慎太郎
85
○石原国務大臣 今申し上げました
海運
という業務の
特殊性
にもかんがみまして、また経済
審議会
の建議を念頭に置きまして、西暦二〇〇〇年に向けてできるだけ早く実現をするつもりで努力いたします。
長田武士
86
○長田
委員
二〇〇〇年に向けてということでありますけれ
ども
、一九九三年で、
船員
の方は二〇〇〇年だということになりますと、七年も格差があるのですか。
運輸大臣
、そういう甘い
考え
方で海で働く人たちの
労働
条件の改善ということが本当にできるのでしょうか。
石原慎太郎
87
○石原国務大臣 二〇〇〇年までだめだということでなくて、それをタイムリミットと心得て、その事前にできるだけ早期に目的を達成するように努力をするつもりでございます。
長田武士
88
○長田
委員
今回の
改正
で週四十時間を最終目標として順次
労働
時間を
短縮
していくわけでありますが、週四十八時間以降の
短縮
スケジュールがどうも明確になっていない、その点私は非常に気がかりであります。
運輸省
の
説明
によりますと、そのときどきの社会情勢を勘案して、必要があればその都度
船員中央労働委員会
に諮問をし、出された答申に基づいて
労働
時間を四十六時間そして四十四時間と段階的に
短縮
したいという
考え
方であるようであります。しかし、これは船中労依存の極めて消極的な態度であると言わざるを得ないわけであります。加えて、
委員会
に諮問する以上そのたたき台というのはあくまでも
運輸省
でつくるのでしょう。ただ
審議
を
お願い
する、諮問するということでなくて、ある程度のたたき台というのは
運輸省
で作成するわけでありますから、大まかでもある程度のスケジュールができてしかるべきである、私はこのように
考え
ております。 そこで、
運輸省
として今後どのような決意でこの問題に取り組もうとされておるのか、くどいようでありますけれ
ども
、大事な問題ですからもう一度御答弁いただきたい。
野尻豊
89
○野尻
政府
委員
一言御
説明
申し上げますと、
労働
基準法と
船員法
との違いでございますが、
労働
基準法は現行四十八時間を段階的に四十時間に
短縮
していく、一九九三年まで六年間あるわけですけれ
ども
、その間に八時間
短縮
するということになるわけであります。ところが、
船員法
の現行規定は、航海中あるいは停泊中、当直者、非当直者の別に
労働
時間を決めておりまして、航行中、当直者につきましては週五十六時間、つまり毎日毎日八時間ずつ働いて一週間ずっと働きづめということを前提にした
労働
時間の決め方をしておるわけでございます。そういう決め方をしましてこの四十年来参ったわけでございますが、そういう規定ぶりについては昨今の
労働
時間
短縮
という世の中の流れに即してないのではないかということから今回私
ども
これを見直しいたしまして、補償休日制という新しい
制度
を導入することによって週四十時間
労働
制というものが実現できるような仕組みを
考え
たわけでございます。 そこで、まず今申し上げました五十六時間がスタートであるわけでありますけれ
ども
、そうしますと、十六時間を順次
短縮
していくということになりますと時間がかかり過ぎてしまうだろうということで、私
ども
といたしましては、まずスタートを四十八時間に一挙に
短縮
してしまう、つまり現行五十六時間を、来年四月一日からもしこの法律が施行になりました場合には、まず一挙に八時間
短縮
してしまうということでありまして、そういう意味ではこれは大英断ではないかと思うわけであります。したがいまして、八時間
短縮
した後にこの
労働
時間規制が今後一体どういう
状況
になっていくだろうか、あるいはまた先ほど大臣が御答弁申し上げました補償休日
制度
というものがうまく円滑に進んでいくのかどうか、あるいはまた補償休日
制度
を導入することによって必要になってくるであろう要員確保の問題はどうかといったいろいろな面につきまして
検討
を加えなければいけないわけでございまして、この時点で具体的なスケジュールということはなかなか申し上げにくい
状況
について御
理解
賜りたいと思います。
長田武士
90
○長田
委員
労基法と比べまして一年おくれて
船員法
の
改正
がスタートする、こういうことになりますと、働く者の
立場
から
考え
ますと、どうも海の方は劣悪な条件で過酷な
労働
を強いられておる。今までは相当厳しい
状況
であったからそう簡単に
短縮
できませんよというような、どうもそういう思想が
運輸省
にあるような感じがするのですね。働く者は同一です。同一条件で働かなくてはならないというのは当たり前じゃありませんか。今までが今までだからこれも簡単にはいきませんよという思想というのは、
運輸省
、間違いじゃないですか。
野尻豊
91
○野尻
政府
委員
私
ども
今回
労働
時間
短縮
に当たりまして
労働
委員会
にお諮りする段階で、原案を一応用意いたしましてお諮りしたわけでございます。 今回私
ども
が一番頭を痛めましたのは、先ほど申し上げましたように、現行の
船員法
は実
労働
時間と申しまして、実際に働いている時間を前提にした
労働
時間の決め方をしているわけでございます。これは
労働
基準法も全く同じ
考え
であります。しかし、そういう
考え
方でまいりますと、船が四六時中運航しているということを前提にして
労働
時間を決めるということになりますと、いつまでたっても
労働
時間の
短縮
は図れないという問題があるわけでございます。 そこで、そういう
船舶
の運航
実態
を前提にして、なおかつ
労働
時間の
短縮
を図るという道はないだろうかということにつきまして内部で
検討
したわけでございます。特に問題になりましたのは、補償休日
制度
という
制度
が一体
労働
時間の
短縮
スケジュールの一環としてなじむものであるかどうかということでありまして、これは
労働
基準法にない新しい
制度
、概念であるわけであります。したがって、法律上の観点からの
検討
も必要だということで、実は
船員中央労働委員会
にお諮りする前に、私
ども
昨年の三月から半年かけまして
労働
界の学者先生方にお集まりいただきまして、法律上問題がないかどうか、こういうことについて各般の御議論をいただいた上で、ようやくこの
制度
であれば問題ないだろうということで
労働
委員会
にお諮りしたという経緯があるわけでございまして、私
ども
は
労働
時間の
短縮
にそういう意味で真摯な努力を重ねているということについて御
理解
いただきたいと思うのであります。
長田武士
92
○長田
委員
そこで、
運輸大臣
、陸と海では施行が一年ずれますね。
労働
基準法では一九九三年を目途に四十時間を実施したい、実現したいということでありますけれ
ども
、当然海においても一九九三年を目標にするという努力は必要じゃないのでしょうか、労基法との整合性の問題においても。どうでしょうか。
石原慎太郎
93
○石原国務大臣 労基法の
改正
案のときに
労働
時間
短縮
スケジュールが、つまり一九九三年という目的の時間設定について、それが
審議
の焦点になったと聞いておりますけれ
ども
、ただ、繰り返して申しますが、
船員
の業務という
特殊性
からしましてもちょっと確定的な目標年度を今から約束することは大変難しい。それからまた、
短縮
時間も倍ということになるわけでございますから、いろいろな困難もございますし、それから補償休日
制度
の定着の度合い、そのために生じます要員の確保、いろいろな難しい問題がございますので、九三年はまず無理。しかし、何年かかるかということは非常に形容しにくいわけでありますが、繰り返して申しますけれ
ども
、西暦二〇〇〇年を目途に、しかしできるだけその以前に早く事を実現したいというのが本音でございます。
長田武士
94
○長田
委員
大臣の二〇〇〇年までにやるみたいな答弁ではちょっと納得できませんね。 大臣、どうでしょうか、一九九三年の実施は無理のように私も思いますけれ
ども
、少なくとも一年や二年おくれて何とかしようというような前向きなお
考え
はございませんか。
石原慎太郎
95
○石原国務大臣 それはでき得れば一九九三年にあわせて事が実現するのが
日本
の
労働
界全体にとって非常に好ましいと思います。ですけれ
ども
、それがまず非常に
技術
的にも困難だということでございますから、とりあえず二〇〇〇年という目標を設定いたしましたけれ
ども
、一年でも二年でも三年でも早く事が実現して、その一九九三年との実現の時間的な差が縮まる努力をしたいと思っております。
長田武士
96
○長田
委員
次に、時間外及び補償休日の
労働
についてお尋ねをいたします。
改正
案の六十四条第一項関係の中に、「船長は、臨時の必要があるときは、」「
労働
時間の制限を超えて」、または「補償休日において海員を作業に従事させることができる。」という事項がございます。これは二項と違いまして、あくまでも予期、すなわち予定されていない事柄が発生した場合のみに限定した範囲で船長が命令をするものだという解釈のようですね。 そこでお伺いしますけれ
ども
、「臨時の必要があるとき」というのはどういう場合を指すのでしょうか。
野尻豊
97
○野尻
政府
委員
改正
法六十四条第一項は現行の六十七条を踏襲したものでございまして、六十七条の「臨時の必要」というのは、従来から
船舶
航行の安全を図るために必要な業務が含まれることはもちろんであるが、その他
船舶
の運航の確保を図るために必要な業務を排除するものではないといった解釈、運用が確立しておりまして、今回の
改正
に当たりましてもその
考え
方は変わっておりません。 どういうような場合があるのかという御質問でありますが、例えば、具体的な例として
考え
られますのは、濃霧の発生によりまして航海当直に立つ海員の数を
増加
しなければいけないというような場合、あるいは機器等に故障が生じまして修理をしなければいけないといったようなとき、あるいは
乗組員
の病気等によりまして欠員が生じたといったようなときにかわりに作業を行うといったようないろいろな事情の変更による運航スケジュールの変更、こういうようないろいろな場合が想定されるというように
考え
ております。
長田武士
98
○長田
委員
こうした事項は、ともすると船長の職権乱用によって、
労働
時間や補償休日等の定められた時間、日数の行使が不可能になるというふうに私は懸念をするわけであります。せっかく海員の
皆さん
の
労働
環境
の改善を目指して
船員法
の
改正
を行うわけでありますから、逆に海員の
皆さん
を拘束するようなことになっては絶対相ならぬ、このように
考え
ております。 そうした意味から、「臨時の必要」についての具体例を少しでも条項に盛り込んだらどうだろうか、私はこのように
考え
ております。 また、
船主
、船長に対しては、本条項を決して乱用しないように、そういう行政指導、監督というものが必要ではないか、このように
考え
ておりますが、どうでしょうか。
野尻豊
99
○野尻
政府
委員
今御指摘の六十四条第一項の「臨時の必要があるとき」における船長の命令による時間外
労働
については、先ほど申し上げましたように、現行の六十七条第一項と同一の趣旨に立つものでございます。 先生御指摘のように、今回の
改正
に当たりまして
船員中央労働委員会
で議論した際に、「臨時の必要」という定義をもう少し明確にする意味で何らかの修飾語をつけるということはどうかという議論もあったわけでありますけれ
ども
、既にこの「臨時の必要」に関するくだりの条文につきましては運用が定着しているということもありまして、規定ぶりを改めて変更する必要はないということが
労使
双方で合意されまして、今回の
改正
ではその点について触れなかったものでございます。 なお、先生が今御指摘されました指導監督を徹底させるべきではないかという趣旨の御質問でございますけれ
ども
、
改正
後の六十四条第一項による時間外
労働
は「臨時の必要があるとき」ということに限られているところでありまして、恒常的な時間外
労働
を認めるものではないことは言うまでもないわけであります。この規定が遵守されるように、今後とも
船員
労務官の監査等を通じて指導監督を行ってまいりたいと
考え
ております。
長田武士
100
○長田
委員
今回の
労使
協定による補償休日
労働
、これは六十五条で新しく定められることになったわけでありますが、今回なぜこの六十五条の項を起こしたのでしょうか。
野尻豊
101
○野尻
政府
委員
船員
の福祉という観点から申し上げますと、補償休日は必ず休ませるということが望ましいことは言うまでもありません。これはけさの
新盛
先生の御質問に対しても同じお答えを申し上げたわけでありますが、ただ、
船舶
の運航というのは荷主側の要請によりましてスケジュールが決まってくるという面があります。運航スケジュールの都合等によりまして補償休日においても働かさなければいけないといったケースも生じ得るわけであります。定められた休日において就労する、いわば休日出勤というようなことになるわけでありますけれ
ども
、こういうことにつきましては実は
一つ
の
労働
慣行として定着しておりまして、現行の
労働
協約でもこういった趣旨の規定が認められているところでございます。
船舶運航
の
実態
との調和を図るという観点から補償休日
労働
はある程度の範囲内で認めることが至当であろうと
考え
ております。ただ、
船主
の恣意的な都合で働かせるということになってはなりませんので、そういう意味で
労使
協定の締結といったことを要件としているわけであります。また、先ほ
ども
触れましたが、補償休日の趣旨が生かされるように、たとえ
労使
協定であろうとも無制限であってはなりませんので、
労働
させることができる日数の限度については命令で定めて、しっかり守らせようと
考え
ております。
長田武士
102
○長田
委員
この六十五条は
労使
協定による補償休日
労働
を定めたものですね。これはよく読んでみますと、私はどうも
労使
協調が
船舶
所有者側に有利に働くような感じがしてなりません。と申しますのは、この協定を結ばないと、
船員
は恐らく乗船できないのじゃないかという感じがするのですね、拒否されてしまう。そうしますと、この六十五条は、今まで健全な
労使
関係にあったところにもどうも余計な摩擦を生じさせる原因にならないか、そういう点を私は心配するのですが、その点、どうでしょうか。
野尻豊
103
○野尻
政府
委員
今お話しの
労使
協定というのは、
船舶
所有者と、その使用する
船員
の過半数で組織する
労働
組合との協定またはそういう
労働
組合がない場合
船員
の過半数を代表する者との間で結ばれる協定でありまして、個々の
船員
と
船舶
所有者との間の採用における
雇用
の問題など個別の問題が生じることは
考え
がたいと
考え
ております。また、
労働
条件の問題につきましては、例えば就業規則を定める場合にはこういった人たちの
意見
を聞くことを義務づけられているといったようなことになっておりまして、今回の補償休日
労働
だけではなくて、そういった
制度
があるということをお含みおき願いたいと思います。 なお、
陸上
の
労働
基準法におきましては、従来から第三十六条に基づく時間外
労働
あるいは休日の
労働
、さらにまた今回
改正
法によって新しく導入されましたフレックスタイム制を初めとする変形
労働
時間制、こういった多くの
制度
におきまして今申し上げました
労使
協定という
制度
が適用され、運用されているという
実態
にあります。
長田武士
104
○長田
委員
次に、この六十五条の
労使
協定を結ぶ場合、
船舶
所有者の一方的な協定
内容
となることを未然に防ぐ意味からも、補償休日
労働
を行う際の条件としまして、あくまでも本人の
希望
に限定した協定となるような条項を盛り込んだらどうだろうか、こう私は
考え
るのでありますけれ
ども
、この点、
運輸大臣
、どうでしょうか。
野尻豊
105
○野尻
政府
委員
ちょっと私の方から御
説明
させていただきますが、一般的に
労使
協定を要件としますのは、
労働
基準法でもそうでありますが、一方の当事者である
労働
者代表が個々の
船員
の
希望
を総体として具現しているという
考え
に立つものであります。
労働
基準法でもそのような定めはありませんで、その意味から第六十五条に本人の
希望
を要件とするような条項を盛り込む必要はないと
考え
ております。ただ、
労使
の合意に基づきまして個々の
船員
の意思が反映し得るように定めるということは妨げるものではないと
考え
ております。
長田武士
106
○長田
委員
船員
部長、ちょっと甘いのじゃないですか。
労使
の間でいろいろ決めるわけでありますけれ
ども
、そういう中で私はこういうふうな
希望
がありますなんて言った場合は、じゃ、あなたはもう船に乗らなくて結構ですと断られる場合が往々にしてあるのじゃないですか。
現実
は、簡単に
希望
を取り入れて、はい、そうなりましたかというほどそんなに甘くないですよ。
野尻豊
107
○野尻
政府
委員
この六十五条の規定は、先ほ
ども
申し上げましたが、まず補償休日
制度
ということで、いわばまとめて働いてまとめて休みをとらせるということで、休みをとらせる部分を補償休日と称しておるわけでございますが、その補償休日の一部についてある程度の限界を設けて働かせることができるようにしようということでありますが、ただ、それを
船主
の、船
会社
側の恣意に任せておくということでは、今先生がおっしゃっているような事態になりはしないかということで、
船主側
のそういった恣意を防ぐために
労使
協定ということを持ってきたわけでございます。 なお、この
労使
協定という問題につきましては、私も先ほどちょっと申し上げましたが、例えば
労働
基準法の第三十六条で、先生よく
御存じ
だと思いますが、時間外
労働
あるいは休日
労働
の規定がございます。
船員法
につきましては、
労働
基準法に定めておりますような一般的な時間外
労働
規定というのはございませんけれ
ども
、補償休日
労働
については
労働
基準法に言ういわば時間外
労働
に相当する
制度
であるわけでありますが、その
労働
基準法の第三十六条におきましても今申し上げました
労使
協定を
一つ
の要件としているわけでありまして、今回の六十五条はそういう意味では
労働
基準法に倣った
制度
でありますので、私
ども
としましては、個々の本人の
希望
ということではなくて、
労使
協定という形で要件をかぶせれば万全を期することができるのではないかと
考え
ております。
長田武士
108
○長田
委員
今回の
法改正
に伴いまして、今後さらに重要な
立場
に立つのは
船員
労務官ではないかと
考え
ております。この
船員
労務官
制度
は
昭和
三十九年六月に発足いたしておりまして、どうも一般的にはなじみの薄い
制度
ではないかと思います。
船員
の
皆さん
の
労働
環境
向上の推進役とでも言われるような重要な
立場
に立っている人たちでございます。そこで、この
船員
労務官の具体的な職務
内容
並びに人数の推移、また年間の違反件数の
状況
についてお尋ねいたします。
野尻豊
109
○野尻
政府
委員
船員
労務官は、
船員法
、
労働
基準法、賃金の支払の確保等に関する法律、
船員
災害防止活動の
促進
に関する法律及び最低賃金法の施行に関する事項をつかさどるということになっておりまして、必要があると認めるときには
船舶
所有者あるいは
船員
に対しましてこれらの法令の遵守に関する注意喚起を行うとか勧告あるいは
船舶
そのほかの事業場へ臨検しまして、
船舶
所有者に対しましてあるいは
船員
に対して出頭命令等を行うことができるようになっております。また、これらの法令に違反する罪につきましては、刑事訴訟法に基づく規定によりまして
船員
労務官は司法警察員という職務も行い得るようになっておるわけでありまして、いわばかなり大きな権限を持っております。したがいまして、
船員
労務官というのは一般の我々のような事務官とは違いまして、いわば警察官並みの権限を行使できるというような
立場
になるわけであります。
船員
労務官につきましては、
昭和
三十九年までは我々一般職員と兼務という形で両方の仕事をするということで来たわけでありますが、やはり
船員
労務官の本来の職務を全うするためにはそういった兼任制ではなくて専任制が望ましいということで、三十九年以降専任制に改めております。当初は八十名でありましたが、その後五十九名の増員を図りまして、ことしの三月現在でありますけれ
ども
、百三十九名を全国の運輸局及び
海運
支局に配置しております。 なお、どういうような違反事件等の取り締まりを行っているかというような御質問でありますが、
昭和
六十一年におきまして、
船員
労務官は、一万二千九百五十六の
船舶
及び
船舶
所有者の事業場に入りまして監査を行っております。そして百九十七件の違反、四百二十一件の指導事項を発見いたしまして、これらについて所要の
措置
を講じているといったところでございます。
長田武士
110
○長田
委員
最近の違反件数はおおむね四百件を突破しておるようですね。今御答弁のとおりであります。しかし、
船舶
数が毎年減少している
状況
におきましては、言いかえれば実質的には件数はふえておるという
状況
ではないかと
考え
ます。せっかく
法改正
を行いましても、現場では実際隅々まで目が行き届かない、こういうことになったのではどうも片手落ちになるのじゃないか、このように私は
考え
ております。労務官の人数にいたしましても、年に一、二名の増員だそうでありますけれ
ども
、これではどうも
対応
できないようであります。そこで、この労務官の増員については具体的なスケジュールを持っていらっしゃるのでしょうか。
野尻豊
111
○野尻
政府
委員
今お答えする前に、私、違反の指導事項についてちょっと言い間違えたようでありますが、四千二百一件ということでございますので訂正させていただきます。 さて、今御質問の件でありますが、
船員
労務官の配置につきましては、的確かつ十分な情報収集あるいはまたきめ細かで効率的な監査を実施するためには
状況
に応じて複数の、つまり二人以上の
船員
労務官による監査が必要となります。災害の発生あるいは
船員
からの申告に対して即時即応に対処する必要があるという観点から、今申し上げました二人以上の配置、複数配置ということで順次増員を行っているところでございます。六十三年度の増員を含めまして、現在六十七の
海運
支局のうち三十三の
海運
支局が一人配置となっております。つまり、三十三は今私が申し上げました複数配置という計画に反してまだ一人しか配置されていないという
状況
であります。これらの
海運
支局の管轄する区域の
状況
だとか、あるいは
船員
労務官が行っております業務の
状況
などを勘案いたしまして、今後こういった三十三の残された一人配置局につきまして複数化に向けて努力してまいりたいと
考え
ております。
長田武士
112
○長田
委員
どうかひとつ前向きに増員の
検討
をしていただきたいと思っております。 大臣、今お聞きのとおり労務官が非常に人手が足らないという
状況
でございまして、その点については大臣もひとつ増員についての御
検討
をよろしく
お願い
いたします。 では実際に労務官が臨検監査をした結果、その違反
内容
について、ワーストスリーを内航と
外航
に分けて御
説明
いただけましょうか。
野尻豊
113
○野尻
政府
委員
船員
労務官が
昭和
五十九年から六十一年までの三年間に
船舶
及び事業場における監査で発見しました違反件数千百十三件のうちで、最も多いものは
船員
の安全及び衛生に関するものでございまして、これが六百三十五件ということになっております。次いで
船員
の雇い入れ契約等に関するものが二百八件、それから船長の職務に関するものが七十件といったような順になっておりまして、これがワーストスリーということになるわけであります。 統計上はあえて内航、
外航
の区別を行っておりませんが、内航船がほとんどすべてを占めております機船の七百
トン未満
とそれ以外の七百トン以上の
船舶
を取り出して比較してみますと、七百
トン未満
の船については、四百十四件のうちで
船員
の安全及び衛生に関するものが二百九十七件と最も多くなっております。また、
船員
の雇い入れ契約等に関するものが三十七件、
船員
の職務に関するものが三十五件といった順になっております。それから七百トン以上のものにつきましては、合計三百七件のうちで
船員
の雇い入れ契約等に関するものが百二十一件と最も多く、次いで
船員
の安全及び衛生に関するものが八十二件、
労働
時間あるいは休日、定員に関するものが三十六件といったような
状況
になっております。
長田武士
114
○長田
委員
非常に数が多いようですね。この労務官は、現在は人員不足から船とかあるいは事業場のすべてを臨検できない
状況
のようであります。いわゆるサンプリング方式をとっておりまして、違反の
内容
全体の正確な把握という点ではちょっと不可能であろうと
考え
ております。にもかかわらず、こうした
現状
ではどうしてもきめ細かな行政監督をやろうというのは大変な
状況
だろうと私は
考え
ております。 そこで、少なくともサンプリングされてきた
内容
については十分に
検討
、分析をする、そして違反を未然に防ぐ、こういう
措置
が必要だろうと私は思いますが、具体的にはどうなんでしょうか。
野尻豊
115
○野尻
政府
委員
全国に配置しております
船員
労務官の業務の遂行に当たりましては、地万運輸局を通じまして逐次情報交換を行っているところでありますし、毎年、各所におきまして
船員
労務官
会議
を開いて、情報交換を密にするという努力を図っているところでございます。
船員
労務官が取り扱いました個々の事案につきましては、必要なものにつきましては本省にまで報告させているところでございます。今後ともこういった情報の収集、分析に努めると同時に、またいろいろな
会議
等を通じて適切な監査
体制
をとり行うことができますように指導してまいりたいと
考え
ております。
長田武士
116
○長田
委員
次に七百総
トン未満
のいわゆる小型船についてお尋ねをいたします。 今回の
船員法
が仮に施行された場合、小
労則
、漁
労則
で決められております
法定労働
時間の週五十六時間との間に八時間もの格差が出ておりますわね。総トン数では七百
トン未満
でも重量トンでは七百トン以上の積載量を有する
近代化船
が多い今日、例えば百九十九総トン型は六百五十から七百重量トン、それから四百九十九トン型では千五百から千六百重量トン、六百九十九総トン型では二千トンから二千百重量トンまで実際はあるわけですね。総トン数だけで
労働
条件に
一つ
の線引きをするというのは非常に無理があるのじゃないか、そういうふうに
考え
ております。 そこで、今回の
船員法
改正
に伴いまして小
労則
、漁
労則
についても
労働
条件の
改正
に踏み切る
考え
はあるのかどうか、この点はどうでしょうか。
野尻豊
117
○野尻
政府
委員
現行
船員法
におきましては、先生御指摘のとおり、七百総
トン未満
の船については小
労則
、漁
労則
という省令で定めておりまして、七百総トン以上は本法で定めているということでありまして、御質問の趣旨は、そうした省令で定めているものについて、これを省令をやめて法律で定めるようにすべきではないかという趣旨であろうかと思います。この点につきましては、
船員中央労働委員会
にお諮りして
審議
した過程におきましても大変議論が集中したところでございます。もちろん
労働
側
委員
からは先生の御指摘のような御
意見
を賜りました。 ただ、現行の小
労則
におきましては、
船員法
の本則にないいろいろな規定がございます。例えば、週五十六時間であれば一日の
労働
時間が八時間を超えてもいいとかいったような、本法にないいろいろな規定が省令にあります。そうした省令に基づいて既に
労働
の
実態
が定着しているというところで、わずか半年ぐらいの
審議
で一挙にそうした省令を廃止してしまうのは少し性急ではないだろうかという
意見
もありまして、今後三年をめどに
審議
いたしまして、三年以内には
結論
を得るように努力すべきだという趣旨の答申をいただいております。私
ども
といたしましてはそうした
小型船舶
の
労働
実態
等を勘案しながら慎重に
検討
し、かつ
労働
委員会
の答申の精神に合わせてしかるべき時期に
労働
委員会
にお諮りして御
審議
していただこうというふうに
考え
ております。
長田武士
118
○長田
委員
今御答弁のありましたとおり仮に三年後に
結論
が出たと仮定をいたしましても、
改正
法施行後三年をめどにさらに
労働
時間が
短縮
されるわけです。というのは、
労働
基準法では三年後ですから既に四十四時間を実施しておるわけであります。そうなりますと、実際十二時間も格差が出てくるわけです。したがいまして、こうなる前に有効な手だてというものを当然講ずるべきだというふうに私は
考え
ております。そこで、この問題について具体的にいつごろまでどのような方法で
検討
されるのでしょうか。
野尻豊
119
○野尻
政府
委員
今申し上げましたように省令で定められております七百総
トン未満
の
船舶
について、本法を適用し得るように適用拡大することにつきましては、
労働
実態
を見ながら
検討
しなければいけない部分もありますし、さらにまた法律的にそういうことが法律事項になじむのかどうかといったような法律的な観点からの
検討
も必要であります。そういう意味では三年という期間が必要だろうと思いますが、それとは別に現在あります小型船に関する省令、その
改正
がされるまでの間どうするかという問題が別途あろうかと思います。今回はまず法律を御
審議
いただきまして、私
ども
の
政府
原案どおり成立いたしますと、来年の四月一日から施行するということに相なるわけでございます。私
ども
といたしましては、そういった適用拡大問題は適用拡大問題として別途
審議
することにいたしますが、それまでの間小
労則
をほっておいていいというわけではありませんので、今回の法律
改正
の
状況
を見ながら小
労則
の
改正
については別途
検討
いたしまして、願わくは来年の四月一日同時施行ということを目指して、
労働
委員会
にお諮りしたいというふうに
考え
ております。
長田武士
120
○長田
委員
この間も
船員法
改正
についてある
海運業界
が発刊しております雑誌の三月号に
労働
基準
課長
さんが投稿いたしておりました。その中でこの問題を取り上げまして、来年四月一日の施行をターゲットとして二省令の見直しについて
結論
を出す必要がある、このように発言をしております。そのとおり受け取って四月一日から実施でいいのですか。
野尻豊
121
○野尻
政府
委員
その
方向
で最大限努力をいたします。
長田武士
122
○長田
委員
今私が一番心配していることは未組織
船員
の問題でございます。組合に加入している場合はある程度幅のある話し合いを行うことは容易であります。ところが、未組織
船員
はそのときどきによりまして
労使
協定の
内容
が変わってくるのは当然なんですね。どうも変わってきているようであります。勢い生活のためならと、多少条件が悪くても個々に協定を結びまして劣悪な
労働
環境
にさらされておる、したがって体を壊してまでもそれに従事しなくてはいけない、そういうせっぱ詰まった思いで仕事をしている方も大勢いらっしゃいます。こうした
労働
環境
は特に若年層に嫌われまして、若者の定着率は他の業種に比べて非常に
低下
しておるということが
現状
であろうかと
考え
ております。このまま放置しますと
船員
の高齢化が進みまして、あすを担う若者の海離れに一層の拍車がかかるような気がいたしてなりません。今現場で働く
船員
の
皆さん
に、安心してしかも夢と
希望
を持って仕事に従事できる
環境
づくりに本腰を入れて取り組む必要がある、私はこのように
考え
ておるわけであります。こうした未組織
船員
の
皆さん
に対して今後
運輸省
はどのような姿勢で臨まれようとしておるのか、ひとつ具体的にお聞かせ願いたいと思います。
野尻豊
123
○野尻
政府
委員
確かに先生御指摘のように、未組織
船員
というのは
労使
交渉の場合でも非常に弱い
立場
であることは否定できないだろうと
考え
ております。しかし、おっしゃるように未組織
船員
の
労働
条件が劣悪であってはいけないわけでありまして、私
ども
、先ほど先生の御指摘がありました
船員
労務官の監査等を通じまして、
労働
条件適正化について十分指導監督してまいりたいと
考え
ております。
長田武士
124
○長田
委員
次に、便宜置籍船問題についてお尋ねをいたします。 近年急激な
円高
傾向の中で
日本
の
外航海運
業界
は深刻な
経営
危機
に陥っております。加えまして便宜置籍船の
過剰船腹
は
経営
悪化にさらに拍車をかけておる
状況
でございます。特に十一万人の中の約四万人を超える
日本人船員
は乗る船もない、完全失業者も非常に多いということを聞いております。したがいまして、残された方々も日々失業の
危機
にさらされておる、そういう
状況
でございます。したがいまして、こうした人たちの一日も早い救済策を講じなくてはならないと
考え
ておるわけであります。そこで、この便宜置籍船の
現状
について
運輸省
としてはどのような認識をされておるのでしょうか。
中村徹
125
○
中村
(徹)
政府
委員
便宜置籍船の隻数トンにつきましては今これを正確に把握することは難しいかと思いますけれ
ども
、
日本
の商船隊の中に入っております便宜置籍船を推定いたしますと、おおむね千隻、二千万総トン程度ではないか。総トン数にすると我が国商船隊の三分の一程度を占めているというふうに見ております。このように我が国の商船隊は事実上便宜置籍船に相当程度依存しているわけでございますが、これは海外の主要
海運国
においても便宜置籍船がその商船隊の相当な部分を構成しているということから見て特異な
状況
ではないというふうに思っております。我が国といたしましてもこうした海外の
海運
諸国と
競争
していくためには、
国際競争力
のある
日本籍船
を中核としながら便宜置籍船も適宜組み合わせて商船隊を維持していくことが必要である、かように
考え
ております。
長田武士
126
○長田
委員
この便宜置籍船については国連貿易開発
会議
、UNCTADでありますけれ
ども
、各国別の受益
船主
国を調査した結果、一九八七年の七月現在
日本
は重量トンでは世界第三位ですね。ところが、船隻数では第二位のギリシャの一千三百十一隻をはるかに超えておりまして一千五百九十一隻を保有している
現状
であるわけであります。これは世界全体の二二%を占めることになりまして、いわば五隻のうち一隻強の割合で
日本
の便宜置籍船が世界の海を航行しておるということが明らかであります。こうした便宜置籍船の
実態
について
運輸省
はこれまで公表を避けておったようでありますけれ
ども
、そろそろ
実態
の公表を行うべきではないか、このように
考え
ておりますけれ
ども
、どうでしょうか。
中村徹
127
○
中村
(徹)
政府
委員
UNCTADの資料につきましては先生のお話のような数字が出ておると思います。しかし、その
内容
が本当に正確かどうかにつきましては私
ども
も若干わからないところがございまして、正確な数を確定することは難しいというのは先ほど申し上げたとおりでございまして、私
ども
の推定では約一千隻ではないかというふうに
考え
ております。UNCTADでは千五百隻程度と言っておりますので、そこに若干差が出てきていることは事実でございます。 私
ども
の方で便宜置籍船を国籍別に見てみますと、パナマ籍が一番多くて約八百隻、千二百六十万総トン、次にリベリア籍が約二百隻、六百六十万総トン、キプロス籍が約三十隻、四十万総トン、あとバハマ籍が十隻程度というような
状況
になっていると推定いたしております。
長田武士
128
○長田
委員
これは、UNCTADの資料というのは余り正確でないという意味ですか。
中村徹
129
○
中村
(徹)
政府
委員
UNCTADの資料が正確でないということを申し上げているわけではございませんけれ
ども
、どういう形でとっておるかというとり方の問題、
日本
の実質的な
船主
としてどういうものを取り上げるかというそのとり方の問題だろうと思いまして、いわば外国法人が実質的な
日本
の所有に属しているかどうかという判断の違い等があると思うわけであります。私
ども
で一応推定しておるのは先ほど大体千隻程度ではないかというふうに
考え
ておるということを申し上げたわけでございます。その内訳は先ほど申し上げたような
内容
になっております。
長田武士
130
○長田
委員
今後、
運輸省
として便宜置籍船の公表をするお
考え
はありますか。
中村徹
131
○
中村
(徹)
政府
委員
私
ども
は
内容
を正確には把握できないわけでございますが、私
ども
の把握できるあるいは推定できる範囲の
内容
については、もちろん申し上げるつもりでございます。
長田武士
132
○長田
委員
UNCTADの資料によりますとそういう
状況
でございまして、大体一隻当たり二十人から三十人
乗組員
が乗るわけでありますから、数からいきますと、大体二万人から三万人の外国人
船員
が現在乗り組んでおるということのようであります。 いろいろ午前中も論議したわけでありますけれ
ども
、
日本
の四万人の
船員
の
皆さん
が失業されて困っておる、こういう
状況
を
考え
ますと、こういう手だてをもう一度
考え
直す必要があるのではないか。例えば、何人かをきちっと乗員させる義務づけを行うとか、ある程度そういう施策というか、そういう点も
考え
ることができないかどうか。この点、どうでしょうか。
野尻豊
133
○野尻
政府
委員
便宜置籍船等外国船に対して、
日本人船員
の乗り組みを行政指導あるいは何らかの
措置
で義務づけることができないかという御趣旨の御質問であります。 ただ、便宜置籍船といえ
ども
やはりこれは外国船であることには違いないわけでありまして、外国の法律に基づいて設立された
会社
が持っている船に対しまして私
ども
の方で乗船を義務づけるということは、なかなか限界があるというように
考え
ております。私
ども
といたしましては、別途財政上の
措置
によりまして、何とか
日本人船員
が外国船に乗れるようなそういう手だてをしたいということで各般の施策を講じているところであります。 二、三例を申し上げますと、
一つ
は、離職
船員
につきまして就職奨励金と称しまして、外国船に乗るときには一回当たり十二万円支給するという
制度
がございます。実は、これは六十二年度まで十二万円でありましたが、昨今の情勢、特に便宜置籍船に対して
日本人船員
が乗りやすくしろという御要望を踏まえまして、六十三年度からはそれの五割増しの十八万円に増額ということで
政府
原案に計上しているところでございます。 あるいはまた、厚生省が所管しております
船員
保険特別会計からは、
海運
会社
が外国船に
雇用
船員
を派遣した場合には、賃金差額の一部を助成する派遣助成金という
制度
がございます。これは従来はその限度額が月二万円ということになっておりましたけれ
ども
、昨年から、つまり六十二年度からこれを三万円に引き上げるというようなことで、いわば財政上の
措置
を講じておるわけであります。 さらにまた、
外国用船
をした場合に、従来は源泉徴収課税がされておりましたけれ
ども
、六十三年度の税制
改革
によりまして、この源泉徴収課税を不適用にするといったような
措置
も講じているわけであります。 直接的に便宜置籍船に対して行政上の
措置
で乗船を義務づけるということは、なかなか現行の法域の中で処理が難しいかと思いますが、今申し上げましたいろいろな
対策
によりまして、一人でも多く外国船で
日本
の
船員
の方が働くことができるように、私
ども
もこれからも万全を期していきたいというように
考え
ております。
長田武士
134
○長田
委員
それでは、時間がなくなりましたので、次に、
船員
の
雇用
の
促進
に関する
特別措置法
の一部を
改正
する
法律案
についてお尋ねをいたします。 ここ最近における
海運業界
、特に
外航
部門での
経営
悪化は著しいものがあります。合理化の問題は後ほどお伺いいたすわけでありますけれ
ども
、合理化に伴う離職者数は年々
増加
の一途をたどっておるという
現状
でございます。こうした時期に就職
促進
給付金の給付期限を現在の五年から七年に延長されることは
船員
の
皆さん
にとっては朗報でございます。 そこで何点かお尋ねするわけでありますけれ
ども
、給付金の予算額を見てまいりますと、今年度は五千六百万円、来年度は三億五千四百万円と大幅な増額となっております。来年度は何人程度の離職者を見込んでおられるのか、まずお尋ねをいたします。
野尻豊
135
○野尻
政府
委員
六十三年度におきましては就職
促進
給付金の支給対象者は、六十二年度末までの継続分が約干人、六十三年度に新たに発生する者約千四百人ということで、合わせて二千四百人を見込んでおります。
長田武士
136
○長田
委員
離職者への給付
状況
を見てまいりますと、
外航
部門の指定がなかった
昭和
六十年度では十人だったのですね。ところが、
外航
部門が指定された六十一年度では四百六十人、六十二年度は、ことしの一月末までに八百九十二人と、急激な
増加
の傾向を示しておるわけであります。こうした
状況
を見てまいりますと、
外航
関係の
不況
ぶりはこの数字で一目瞭然であります。そうして、今後もさらに離職者がふえるものと予想されます。トータルで二千四百人を見込んでおる、こういう
状況
であるようでありますけれ
ども
、恐らくこれでは予算が足りないのじゃないかなという感じが私はするのですが、その点は大丈夫ですか。
野尻豊
137
○野尻
政府
委員
先生先ほど御指摘がありましたように、六十三年度の予算額は三億五千万円余りであります。 六十三年度に新しく発生する離職
船員
につきましては、まず離職後に
船員
保険特別会計から失業保険金が支給されることになっております。したがいまして、私
ども
の就職
促進
給付金というものはその失業保険金が切れた後ということになるわけでありまして、そういう意味で本予算で十分に
対応
できるというように
考え
ております。
長田武士
138
○長田
委員
この給付金
制度
は、海で離職した人が海に復職した場合にだけ適用されるわけですね。したがいまして、陸に復職する場合においては
労働
省の所管となりまして、別の給付金が支給される、こういうことです。私もいろいろ調べてみましたけれ
ども
、海で一たん離職して陸で働く、それでまた海へ戻りたい、こういう人たちがいましても、そういう場合にはこの給付金
制度
というのは適用されません。 現在の
海運業界
は確かに厳しい
状況
ではありますけれ
ども
、私は、将来展望は必ず開けてくるだろう、このように
考え
ております。そうした意味で、陸で働いていた人がいずれはまた海に戻るケースというのは当然出てくるような感じが私はいたしております。こうしたときにすぐ
対応
できるように、私は柔軟な
制度
の拡充を図った方がいいのではないかというふうに
考え
ますが、どうでしょうか。
野尻豊
139
○野尻
政府
委員
確かに先生おっしゃるとおりであります。 御指摘のようなケースにつきましては、個々のケースごとに求職者の
希望
に沿いまして、所要の職業紹介をするとか就職指導を行うとか職業訓練を行うといったような援助
措置
を弾力的に行うようにしてまいりたいというように
考え
ております。
長田武士
140
○長田
委員
それでは、当面の
船員
雇用
対策
は、
現実
をよく見据えて、どうかひとつしっかり行っていただきたい、このように
考え
ております。 とりわけ、
日本
は島国でありまして、
海運
は不可欠であります。しかも、長引く
海運
不況
で若手
船員
の採用もなく
船員
の高齢化が進んでいる中で、大臣は将来に向けまして
日本
の
船員
の確保についてどのように
考え
ていらっしゃるか、最後にこの点だけお尋ねをいたしまして、私の質問を終わりたいと思います。
石原慎太郎
141
○石原国務大臣
日本
のような島国にとりまして
海運
というのはまさに不可欠の業務でございまして、それをだれが担当してもいいじゃないかという人もいるかもしれませんけれ
ども
、私は決してそうは思いません。やはり、こういう国家社会にとって致命的な仕事を同胞が担当してくれることで私たちも安心もできるわけでございまして、この間も河村
委員
からもナショナルミニマムについての御質問もありましたが、そういうことももう一回
考え
直しながら、若い
船員
、要するに後継者といいましょうか、これから長い将来、
日本
のために
日本
の
海運
を支えてくれる
日本
人の
船員
の確保のために多角的な努力をしていかなければならないと思っております。
長田武士
142
○長田
委員
終わります。
関谷勝嗣
143
○
関谷委員長
河村勝君。
河村勝
144
○河村
委員
けさから主として
船員法
改正
案についてずっと
審議
が続いております。私もそれについて質問いたします。なるべく重複を避けて質問するつもりですけれ
ども
、非常に基本的な大事なことでもありますので多少は重複をすることがありますが、その点はお許しをいただきたいと思います。 まず、大臣にお伺いをいたします。 この
法律案
改正
に伴って週四十時間
労働
制への移行をするわけでありますが、いつ四十時間に到達をするかというその道筋について先ほどから大臣、
船員
部長から話がありました。
船員
部長に至っては、今まで五十六時間を一遍にやるのだから、一遍に四十八時間に持っていくのですら大英断であるなんという厚かましいことを言っております。しかし、
陸上
が早くから四十八時間になっているのに
船員
だけが五十六時間であったということ自体が
運輸省
の大怠慢であって、それを逆用して四十八時間が大英断なんて言っている精神ではとてもこの
労働
時間
短縮
がスムーズに運ばれるとは思わない。 大臣もどこまで
実態
を
承知
して言っておられるのかわかりませんが、
海運
の
労働
条件の
特殊性
を強調されてなかなか一遍にはいかないんだというようなことを言っておられますけれ
ども
、実際
陸上
と比べてそんなに違うのだろうか。先ほど
船員
部長は、一日二十四時間ぶっ通しで働かなければならぬこともあるというようなことを言っているけれ
ども
、これは
陸上
だって、鉄道は二十四時間動いているので、二十四時間、一昼夜交代勤務なんという勤務時間もあるけれ
ども
、やはり八時間
労働
であり、今度四十時間に移行することに全然特別の条件は与えられていない。若干運輸関係について道程に多少の段階はあるかもしれないけれ
ども
、おおよそ同じような条件で扱われている。二十四時間じゃないかもしれないけれ
ども
、長距離トラックのようなものでもやはり
労働
基準法の適用になっているわけですね。 だから要は、
運輸省
が頑張っておるというのは、内航
海運
が非常におくれた条件にある、
運輸省
の、国の許可事業である内航
海運
がおくれた条件にあることを当然のことのようにして、それを理由になかなか勤務時間
短縮
が進行しないんだ、こういうように聞こえるのですよね。ところが実際は、
海運
全体を見れば、
外航
は既に
労使
間の協約によって四十時間ができ上がっているのですね。内航でも
労使
関係の確立しているところは既に四十二時間
体制
に移行している。残るところは内航の小型船ですよね。これは確かに劣悪な条件にある。だけれ
ども
、こんなものはほっておいた
運輸省
の責任なんですよ。それを
考え
たら、今までのいきさつを理由にしてそれで他の
陸上
よりもおくれてもいいということが当たり前であるかのように話をされるというのは不見識だと私は思うのです。ですからこの際、当面二〇〇〇年を目途とするとおっしゃるけれ
ども
、
陸上
の方では三年間で四十四時間、四十時間までは一九九三年という確認がされているようでありますが、一九九三年と言わないまでも、少なくとも二〇〇〇年目標などと言わずに一九九〇年代のなるべく早い時期に実現しましょうというぐらいのことは言ってしかるべきだと思いますが、
運輸大臣
いかがですか。
石原慎太郎
145
○石原国務大臣 過去のいきさつを私必ずしもつまびらかにいたしませんが、例えば補償休日の
制度
な
ども
別に画期的などと私必ずしも思いません。
海運
という業務の
特殊性
を
考え
ればこういう思いつきというのはもっと早く出てきてしかるべきだったのではないかという気もしないでもございませんが、いずれにしろこの時点で
改正
をして、時代のニーズもございまして
労働
時間を
海運
においても
短縮
しようという決心をしたわけでございまして、これはできるだけ、一日でも早く、早期に実現されればこれにこしたことはないわけで、二〇〇〇年と申しましたけれ
ども
、一九九〇年代のできるだけ早い時点にでも完成したいと思いますし、またその努力を一生懸命しようと思います。
河村勝
146
○河村
委員
二〇〇〇年目標は取っ払って、一九九〇年代なるべく早い時期ということで進めていただきたい、それをぜひとも
お願い
をいたします。 先ほどから
船員
部長が、補償休日を運用することによってスムーズに時間
短縮
をやっていくんだということをしきりに強調されるものですから、これが非常に気になる。補償休日を使って、補償休日もなるべく休ませないで、それで人員の
増加
を防いでいこうという魂胆が見え見えでありまして、そうであれば大変危険なことで、それでは何のために休日を与えたかわからない。 補償休日について伺います。
改正
法の六十二条四項に、「補償休日の
付与
に関し必要な事項」を命令で定めると書いてありますが、大体どういうことを予定していますか。
野尻豊
147
○野尻
政府
委員
第四項の「補償休日の
付与
に関し必要な事項」ということでありますが、これについては、
付与
されるべき補償休日の形態につきまして、例えば停泊中に休ませるとかあるいは下船中に休ませるとかいろいろな休ませ方があるわけでありますが、そういった補償休日のとり万についてまず定めたいというふうに
考え
ております。私
ども
といたしましては、乗船中に休日をとるというのはやはり拘束時間内における休日でありますから余り望ましいことじゃないということで、
労働
協約によって定める場合に限るというようにしたいと思っております。そのほか、補償休日のとり方につきましては今申し上げました下船中あるいは停泊中ということを原則にするというような規定、あるいは、補償休日を与える場合に必要な手続、そういったものについてここで定めたいというふうに
考え
ております。
河村勝
148
○河村
委員
六十五条の方の、補償休日に作業に従事させることのできる日数。補償休日の日数を命令で定めると書いてありますが、これは何日を
考え
ていますか。
野尻豊
149
○野尻
政府
委員
補償休日はあくまでも休日、いわば振りかえ休日に相当するわけでありますから、なるたけ働かさせないというのが原則であり、ゆっくり休んでいただくことが望ましいことは言うまでもありません。しかしながら、
船舶運航
の
実態
から見ますと、多少の休日出勤という形での
労働
はやむを得ないであろうというふうに
考え
て六十五条を設定したものであります。ただ、今先生御指摘のように、ルーズにやりますと、いつまでも働かせるという心配がありますので、日数制限をしたわけであります。 どの程度にまでするかということにつきましては、これから
船員中央労働委員会
で御
審議
いただくわけでありまして、今私のところで確定的な日数ということについては申し上げにくいわけでありますけれ
ども
、例えば
労働
協約で言いますと、百十八日の休日のうちでたしか三十八日就労をさせることができるというような規定があったと記憶しております。そういう
労働
慣行といいますか
労働
実態
、こういうようなことを勘案しながら今後
検討
してまいりたいと
考え
ております。
河村勝
150
○河村
委員
六十四条の「時間外及び補償休日の
労働
」に規定している補償休日
労働
と、六十五条の協定で定める補償休日、これとの関係はどうなるのですか。これは、協定で定めたもの以外に、臨時に必要がある場合には船長の判断によってさらに補償休日に働かせることができる、プラスになる、こういうふうに
理解
してよろしいですね。
野尻豊
151
○野尻
政府
委員
六十四条の規定によります補償休日の
労働
というのは、乗船中において補償休日が与えられた場合でありまして、臨時の必要がある特別の場合に限られるのに対しまして、六十五条の
労使
協定による補償休日の
労働
というのは、乗船中の補償休日に限らず、下船しての補償休日が含まれております。また、臨時の必要があるとかないとかいうことにかかわらず行い得るというものでございます。
労使
協定を締結し、行政官庁に届け出ること、あるいは命令で定める日数を限度とするといった制約がございます。
河村勝
152
○河村
委員
しかし、要するに協定で定められた補償休日を超えて、臨時必要のあるときには休日に働かせることができる、こういうことになるわけでしょう、六十四条を適用した場合には。
野尻豊
153
○野尻
政府
委員
そのとおりでございます。
河村勝
154
○河村
委員
だから、もしこれを乱用すれば、補償休日は決めたけれ
ども
、結局みんな
休暇
を買い上げしてしまって、それで休日ゼロにすることも可能になってしまうわけです。だから、これは一般の時間外
労働
と補償休日の
労働
とを同じ項目に書いているけれ
ども
、特にこの「臨時の必要があるとき」というのは厳格に解釈をすべきである、こう
考え
ますが、いかがですか。
野尻豊
155
○野尻
政府
委員
新法といいますか、
改正
後の第六十四条第一項というのは、現行法の六十七条を踏襲したものでございます。 現行の六十七条の「臨時の必要」ということにつきましては、従来から
船舶
航行の安全を図るために必要な業務が含まれることはもちろんであるが、そのほか
船舶
の運航を確保するために必要な業務を排除するものではないといった解釈、運用が確立しているわけでありまして、今回の
改正
に当たりましても、こういった
考え
は変えておりません。
河村勝
156
○河村
委員
この時間外
労働
をどんな場合にできるかということについては、過去にも随分論議をした経緯がありまして、十年余り前に私もこの問題について議論をしたことがあるのです。どうもその当時においてもこれが非常に拡大解釈されて、相当幅広く運用されている
実態
があったものですから、これを限定しようと思って、その
船舶
の安全運航のために必要があるときは当然として、そのほかについても項目を列記して限定的に扱おう、そういう約束がされていたと思うのですけれ
ども
、さっきの答弁だと、その他
船舶
の運航を確保するために必要な場合は排除するものではないというようなことで、必ずしも限定的な表現でないように思われるけれ
ども
、その点は一体どうなんですか。
野尻豊
157
○野尻
政府
委員
先生の以前の議論というのは、ちょっと今資料を捜しておったのですが見当たらないのです。たしか四十八年の運輸
委員会
での御議論だと思います。私も十分その議事録を読んでおります。その質疑を通じて今後通達を出してはっきりさせるということで五十年に通達を出しました、これも先生御
承知
のとおりだと思います。 そういう観点から今日まで来ておるわけでありまして、この十年来いわば「臨時の必要」ということの解釈については固まっている、定着しているというように
考え
ております。 じゃ、具体的にどんな例かという御質問でありますが、
考え
られる事態としましては、例えば濃霧の発生によりまして航海当直に立つ海員の員数を
増加
する場合とか、あるいは機器の故障が生じて修理する場合とか、
乗組員
の傷病などによって欠員が生じてそのかわりに作業を行う場合とか、あるいは何らかの事情の変更に
対応
するために、急遽運航スケジュールを変更せざるを得ない場合といったような事態が
考え
られると思います。
河村勝
158
○河村
委員
私が心配しているのは、内航の
小型船舶
のことで、こういうところでは
労使
関係が必ずしも対等の
立場
にないものですから、補償休日の運用が恣意的に行われても抵抗力が乏しい。だからそれをチェックする方法はないかということであって、補償休日の協定届け出の際によくチェックするとか、そういうような方法を
運輸省
としても
考え
るべきだと思うのですけれ
ども
、その点の配慮をどう
考え
ていますか。
野尻豊
159
○野尻
政府
委員
私
ども
といたしましても、先生御指摘のとおりにしたいと思っております。
河村勝
160
○河村
委員
くれぐれも、この補償休日の運用いかんによってはどんどん休日の買い上げがふえてしまって、事実上勤務時間
短縮
の目的からは完全に外れるようになってしまいますから、特に念を入れて今後取り扱ってほしい、それを要望しておきます。 次に、内航全般の問題についてお尋ねをいたします。 これがやはりこれからの
船員法
改正
案の適用について一番問題になるのだと思いますが、この
船員
中労委の公益
委員
の見解の中に、趣旨としては要するに本法をなるべく早く適用しろということにあると思うのですが、一体今七百
トン未満
の、本法を適用除外になっている
船員
の数というのは
船員
全体の中の何%になっていますか。
野尻豊
161
○野尻
政府
委員
七百総トンで切った場合に、実は統計のとり方でございますのでかっちりした数字がなかなかとりにくいのでございますが、商船につきまして七百総トン以上の
船員
数が、
乗組員
として三万五千人余り、それから七百
トン未満
、今先生は七百
トン未満
の
船員
は何人か、こういう御質問だったと思いますが、それが四万二千九百名余りということになっておりまして、これに若干の予備員の数、ざっと四千名ぐらいであろうと思いますが、加えたものが七百
トン未満
の商船に乗り組んでいる
船員
の数ということになります。
河村勝
162
○河村
委員
これに漁業関係を入れるとこれは膨大なものになりますから、結局全体の
船員
の八割ぐらいが
労働
時間、休日、定員については
船員法
の適用除外になってしまう。せっかく法律があるのに適用除外する方が圧倒的に多いなんという法律はめったにないのです。だから、もう極力早く本法適用に踏み切るべきだと思うのですけれ
ども
、漁業関係はともかくとして、商船に関する限り本法を適用して支障になることというのは現在もう余りないのではないですか、いかがですか。
野尻豊
163
○野尻
政府
委員
現在七百総トン以上の
船舶
については
船員法
本則で定めておりまして、七百
トン未満
の商船、小型船については省令で定めているということになっております。しかし、本法と省令とでは規定の
内容
がかなり違っております。細かい規定を言い出すと切りがないので二、三例を申し上げますと、例えば七百
トン未満
の船につきましては変形
労働
時間制がしかれております。一週間の航行時間五十六時間、停泊時間四十八時間の範囲内であれば一日の制限
労働
時間八時間を超えることができるとか、あるいはまた四週間を平均いたしまして一週間五十二時間の範囲内であれば一日または一週間の制限を超えて
労働
させることができるとかというような規定がございます。そのほか小型の旅客船等についてもいろいろな本法にない規定があるわけでございます。 今先生御指摘の点はこういった小型船につきましては省令をやめて本法に移したらいいではないか、こういうお話だろうと思います。確かにそういう議論もあったわけでありますけれ
ども
、先ほど申し上げました、たくさんの
船員
の
皆さん方
はこの小
労則
に基づいて
労働
時間が決められているという
実態
にあるわけでございます。そういう
実態
を無視して、直ちにこの省令を廃止して本法に持っていくというには時期が早過ぎるのではないか、もう少し
実態
を踏まえつつ、この小
労則
をどういうような形で変えて、仮に本法に持ってくるとすれば本法をどういうような法律体系にするかというような地道な議論が必要であろうという観点から、
船員中央労働委員会
で一応三年という期限を付してもう一度
審議
し直そうという御答申をいただいているわけでありまして、私
ども
といたしましては、この
労働
委員会
の答申の趣旨に従いまして今後鋭意
検討
し、しかるべき時期に改めて
労働
委員会
にお諮りして
審議
していただこうというふうに
考え
ているわけでございます。
河村勝
164
○河村
委員
内航の
労働
条件が特に悪いというのは結局
経営
内容
が悪いということとの裏表になるわけですね。かつては、
昭和
二十二年、
船員法
制定当時はこの内航
海運
というのはほとんど小型の機帆船だったわけです。それがその間に急速に変わって今では、さっきも話が出ましたけれ
ども
、六百九十九総トンといっても実力は積載トン数、重量トンでは二千トンぐらい運べる。四百九十九トンというのでも千五百トンから千六百トンぐらい運べるという、非常に大型鋼船化してしまっているのですね。だから企業の
実態
、中身は変わってきているのです。ところが内航
海運
業法というものをつくって、
運輸省
の許可事業になっているにもかかわらず、どうも
経営
内容
の改善ということには
運輸省
は
一つ
も関心を払ってなくて、今もって荷主支配、荷主が非常に強く、それで荷主に対して対等に口をきけないような企業ばかりがある。それが
経営
内容
を悪くし、かつそれが当然
労働
条件の悪化にも
影響
を及ぼしているという
状態
が続いているわけです。陸の長距離トラックと対比されるのですけれ
ども
、陸の長距離トラックだって随分成長して大きな長距離トラックの
会社
もできて対抗力ができているのに、海の方はさっぱり進歩しないで相変わらず荷主に隷属しているような
状態
が続いている。これを
運輸省
は一体どう見て、これをどう改善しようとしているのかをお尋ねします。
中島眞二
165
○中島(眞)
政府
委員
貨物流通事業一般を所管しております
立場
から申し上げます。 内航
海運
にしろトラックにしろ、ただいま御指摘のとおり我が国の
産業
経済なり国民生活にとって大切な役割を果たしているわけでございます。ただいま内航
海運
について御指摘がございましたが、内航
海運
についてもお話しのように機帆船の時代から今日に至るまで法規制としてもいろいろな変遷がございました。
昭和
二十七年の木船運送法に始まりまして、三十七年に小型船
海運
業法ということで五百総
トン未満
のものを鋼船も含めて対象にいたしました。さらに三十九年には五百総トン以上のものも対象にいたしました内航
海運
業法を制定いたしております。当初は登録制でございましたけれ
ども
、四十一年にこれを許可制に移行させまして、需給についても著しく過剰な場合には調整を行うという原則にいたしました。 それから、内航
海運
については宿命的な課題でございますけれ
ども
、慢性的な船腹過剰の
状態
にありまして
競争
が非常に激しい。そういうことで、御指摘のように荷主に対しても弱い
立場
にある。そういうことから、運賃等についてもかなり低目に抑えられるという制約があるわけでございます。しかしその点については、現在の
制度
で申しますと内航
海運
業法に基づいて許可
制度
がとられておりますが、一方この法律に基づいて船腹量調整の
一つ
の目安にするために適正船腹量の
制度
がございます。これによりまして毎年度、それから五年間の各年度ことの適正船腹量、
産業
経済の動向とかそういうものを踏まえまして、内航全体として、これも
一般貨物船
とか
タンカー
とか特殊タンク船とか、それぞれの船の種類別に適正船腹量というものを策定いたしておりまして、これを
一つ
の目安にいたしております。 それから最高限度量という
制度
もございます。著しく供給過剰になる場合については、許可
制度
によります許可をストップするというような
制度
もございます。そういうことで、現に
昭和
五十八年から六十二年にかけましては、この最高限度量を策定いたしましてストップした時期もあったわけでございます。 そういうことで運用も行っておりますし、また内航
海運
組合法というものがございます。これによりまして内航総連合会を中心にいたしました調整事業を行っております。ほとんどの内航
船主
はこの組合に加入しているわけでございまして、ことで船腹調整事業を行っており、いわゆるスクラップ・アンド・ビルド
制度
を実施いたしております。現在は
一般貨物船
については一の船腹を新造する場合には一・三のものをスクラップしなければいけないということでいたしておりますが、これも時代時代に応じてこの比率を変えてまいっております。 そういうことで逐次船腹量の調整は進んでまいっておりまして、ちょっと今数字は持ち合わせておりませんけれ
ども
、ひところに比べればかなりその船腹量の調整も進んでまいってきておる
状況
でございます。 今後、内航
海運
についていえば、我が国
産業
構造の変化に伴いまして、内航
海運
は何といいましても重厚長大型の貨物を運送するわけでございまして、我が国の素材型の
産業
が次第に加工型に変わっていく、あるいは経済のソフト化、サービス化が進んでいくという中では将来的にはやはり貨物輸送量はどうしても減ってくるということが見込まれるわけでございます。昨年の九月に策定いたしました適正船腹量におきましても、五年間についてそれぞれの船腹量を策定いたしまして、これを目安にしてこの船腹調整を実施していこうとしているところでございます。そういうことで、我々としても現在の
制度
をいろいろ活用しながら、この内航
海運
が我が国
産業
にとって大変大切な機能を果たしているわけでございますので、的確に事業が遂行できるようにいろいろと努力をしてまいりたいと
考え
ております。
河村勝
166
○河村
委員
いろいろおやりになっているようであるけれ
ども
、
実態
がちっとも改善をされていないように思われる。 そこで、運賃。
陸上
のトラックは認可料金制をとっていますね。それ以上に大きなウエートを持っている内航
海運
について、運賃は標準運賃というものをつくって、
業界
で調整運賃というようなものをつくった例があるように思いますが、今どうなっているのか。どうしてこれは、ここまで荷主の圧力で運賃がダンピングに近い
状態
にされることが多いにかかわらず、認可運賃
制度
がとれないのか。許可事業でなければいいですよ。もう野放しにしてほっておくというなら別だけれ
ども
、役所が法律で許可制をとってやっている以上、そのくらいのことはやらなければおかしいのじゃないかと思うけれ
ども
、どうなんですか。
中島眞二
167
○中島(眞)
政府
委員
御指摘のとおり、トラックについて運賃は認可
制度
をとっておるわけでありますが、内航
海運
については標準運賃
制度
ということでございまして、いわゆる強制力を持ったものではない
制度
になっております。また、内航
海運
組合法によります組合の調整事業の一環としての調整運賃というのがございますが、これに違反した場合もその組合の内部規律によるということでありまして、いわゆる法律に基づいての罰則を伴った強制運賃ではないという点が違うわけでございます。 なぜそういうことになっているかという点でございますが、内航
海運
の場合におきましては、船の種類、船種と私
ども
言っておりますが、それから船型、船の型でございますね、それから船齢、あるいは船価というようなものが非常にばらばらでございまして、大きな幅がございます。また、港湾の荷役能力といったものも非常に区々でございまして、運送原価というものが非常に差が著しいわけでございまして、トラックのようなほかの輸送機関のように画一的なあるいは類型的な運賃や料金が決定しにくいという
特殊性
がございます。そういうことで標準運賃
制度
を現在法律で用意しておりますけれ
ども
、この標準運賃
制度
も過去に
昭和
四十一年と四十六年の二回設定されたことがございますが、この場合におきましても
特定
の
航路
、貨物、停泊日数、船型というものを前提としました
一つ
のサンプルとしての運賃を算出しているわけでございまして、すべてのケースについて適用できるというものではございません。そういうことで、非常に一般的あるいは類型的な運賃料金というものを
技術
的に設定できない、それが非常に困難である、こういうところから現行の
制度
になっているわけでございます。 一方、先ほど申し上げましたように、内航
海運
組合総連合会を法律に基づいて設置されておりまして、そのほか幾つかの
海運
組合がございますけれ
ども
、そういうところの組織的活動によりまして、御指摘のとおりまだ十分ではないかもしれませんけれ
ども
、体質の強化ということも図られてまいっております。運賃につきましても、例えば
鉄鋼
とか石油とかというものにつきましては、関係の荷主
業界
との間で話し合いの場が確立されておりまして、あるいはまた専用船などにおきましては、個別の
船社
と荷主との間で具体的な運賃交渉が行われるというようなルールがかなりできてまいってきております。そんなことで、この標準運賃
制度
も
制度
としては現在法律上ございますけれ
ども
、設定されたものが五十年の五月には廃止されたという経緯がございます。また、調整運賃につきましても、これは
昭和
四十二年に内航
タンカー
組合、内航輸送組合、大型船輸送組合などの
鉄鋼
、石油、石炭のその三品目について
航路
そのほかの運送条件を
特定
いたしまして実施したわけでございますけれ
ども
、先ほど申し上げたような経過によりましていずれも
昭和
四十八年から四十九年にかけて廃止されたという経緯がございます。
河村勝
168
○河村
委員
どうも私はその
説明
は納得しがたい。船種、船型、その他の条件がばらばらだから同一の運賃がつくれないというのでは、それは運賃そのものの法律から外れてしまうのじゃないのですか。運賃というのはやはり同一のものを同量、同じ距離を運んだら幾らというふうに決めて、その運賃を目安にしてそれで船種、船型、商売のやり方、そういうものをお互いに
競争
して企業をやっていく、そういう性質のものでなければいけないので、相手の
競争
条件がばらばらだから運賃は同一ではならないというのでは運賃というのはそもそも決まらないのじゃないですか。
中島眞二
169
○中島(眞)
政府
委員
ただいま申し上げましたように、船種とか船型とか船齢とか船価とかそういうものが船によってばらばらである、つまり提供するサービスそのものがばらばらでございまして、運送事業者サイドの方の原価の差が非常に著しいということから画一的なあるいは類型的な運質や料金の設定が困難であるということを申し上げたわけでございます。
河村勝
170
○河村
委員
きょうは
船員法
の問題ですから、運賃論をここでもっていつまでもやる気はないけれ
ども
、相手の
競争
条件が同一でないから同一の、均一の運賃は決められないという理屈はないので、運賃の方が先におおよそのところで決まって、それを条件としてお互いに
競争
してほかの条件をあわせていくということになるはずで、どうもちょっとそれは私には大変おかしいと思う。もう一遍これは
考え
直す必要があるのじゃないですか。
運輸大臣
はこういう議論だけではちょっと答弁は無理ですか。
石原慎太郎
171
○石原国務大臣 議論を拝聴していて、それぞれ言われることに互いに理があるような気がしました。大変難しい問題だと思います。しかし、
業界
の発展安定のためにもこれから鋭意
検討
していきたいと思います。
河村勝
172
○河村
委員
運賃と密接に関連する用船料が非常に値切られて、これが
船舶
経費を賄うに足りないようなものができているものだからこれが
経営
を圧迫するということも非常に大きいようでありますが、用船料については役所としてのコントロールは
考え
ていないのですか。
中島眞二
173
○中島(眞)
政府
委員
用船料につきましても、今申し上げたのと同じ理由によりまして、画一的、類型的なものにしがたいというようなことがございまして、今日まで用船料についても、調整の用船料ということは
制度
的には可能でございますけれ
ども
、これまでも設定されたことがないわけでございます。
業界
の中では、そういうことについての議論も行われておりますが、なかなか
技術
的にも難しい面があるようでございます。ただいまの先生のお話も踏まえながら、私
ども
今後
業界
の方ともよく相談してまいりたいと思います。
河村勝
174
○河村
委員
運賃も用船料も結局はコントロールできない、適正船腹量なんといっても、一応数字を出すだけでもって、これまたどうにもならぬということになれば、何のための許可事業にしているんだかわからない。非常にその点は不満でありますが、これはまた日を改めてお尋ねをしたいと思います。 そこで、
船員
関係に戻りますが、そうしたもろもろの要件も加わって、内航の
小型船舶
の
船員
は、確かにすべての面で悪い
労働
条件下に置かれていることは事実でありましょう。そこで、
運輸省
の方で「小型内航
船員
の
労働
時間等に関する監査指導の強化について」という通達を六十一年の四月に出しておりますね。これでもって
労働
時間、休日、
休暇
等についての監査をおやりになったそうだけれ
ども
、実際そこで出てきた結果は一体どうだったのです。
野尻豊
175
○野尻
政府
委員
本通達の趣旨は、七百
トン未満
の小型内航船の
労働
時間等については、
昭和
四十二年に制定されました小型船等に乗り組む海員の
労働
時間及び休日に関する省令により規定されているものの、その
労働
実態
については、長時間
労働
が目立つといったようなことで問題が多いということにかんがみまして、
船員
労務官が
船舶
を臨検しまして、航海日誌、時間外手当簿、海員名簿あるいは
船員
手帳など、書類のチェックを行いまして、省令の運用について問題があると認める場合には所要の
措置
を講ずるというものでございます。
船員
労務官は
昭和
六十一年には七百
トン未満
の
船舶
七千六百十七隻を臨検いたしまして、
労働
時間につきましても時間外手当簿を中心としまして指導を行ったところでございます。今後も引き続き
労働
時間の適正化を図るために
船員
労務官等による監督指導を強力に実施してまいりたいというふうに
考え
ております。
河村勝
176
○河村
委員
実際調べてもその範囲というのは非常に小さいでしょうから、なかなかわからないかもしれないけれ
ども
、いかに規則が守られておらないかという
実態
が明らかになったと思うのです。さっき
船員
部長は、いわゆる黄犬契約の存在は風の便りには聞いているけれ
ども
、見たことないとおっしゃいましたね、本当ですか。組合活動は絶対にいたしません、もし組合活動をやっていることがばれたら直ちに首になっても全く異存はありませんというような種類の誓約書を
雇用
に際して出している現物を私は見たことがあるけれ
ども
、私
ども
が見たことがあるものを
船員
部長が知らないというのはどうも大変わかりにくいけれ
ども
、どうなんです。
野尻豊
177
○野尻
政府
委員
内航
海運
の事業者の数というのは、昨年の三月末現在で八千社以上あるわけでございまして、その大多数が小規模企業であります。これらの企業に
雇用
されている
船員
はざっと四万人だと言われているわけであります。しかもそのうちの七〇%が未組織
船員
だという
状況
の中にありまして、
労働
協約がないということから、その就労
実態
が把握しにくいという
状況
にあることは事実であります。そういう観点から、今お話にありました黄犬契約につきましても、そういううわさがあるということは聞いておりますけれ
ども
、事実として黄犬契約が存在しているということについての確認をしたことがないという意味でお答え申し上げました。
河村勝
178
○河村
委員
あるのですよ、実際。だから、ないなんて言わないで、もうちょっと本当のところをつかんでやってもらわないと困ります。これは細かいことだけれ
ども
、業者の中に、自分ところの保有船を裸貸し渡しをしてチャーターバックして使うことによって、所有を別の企業に移して、それぞれの企業が十人未満になるようにして、十人未満になると就業規則をつくらなくてもよろしい、そういうことによってこういう
労働
規則の違反をやっておるという事実があるように聞いていますが、それはあなた、知っていますか。また、知っているとすれば、就業規則を十人未満でもつくらせるとか、あるいはそういうものも見せかけの分割は認めないとかなんとか、どちらかの方法をとらないとだんだん抜け穴が大きくなると思うのですが、いかがですか。
野尻豊
179
○野尻
政府
委員
就業規則を免れるという目的で、今御指摘のような形態がとられるというような事実については私
ども
聞いておりません。
河村勝
180
○河村
委員
検討
してみてください。 次に、小
労則
の
改正
について伺います。 この
改正法案
が成立をしたら小
労則
の
改正
には速やかに取りかかるということに相なっておりますが、どういう段取りになりますか。
野尻豊
181
○野尻
政府
委員
七百
トン未満
の小型内航船につきましては、小
労則
で
労働
時間が定められているところであります。この省令につきましては、
船員法
の定めに準じた規定となっている部分もあります。したがいまして、補償休日制の創設等、本法の
改正
に伴いまして当然その見直しが必要になると
考え
ております。 この省令の
改正
につきましては
船員中央労働委員会
の
審議
を経ることとなっておりますので、具体的
内容
について今ここで申し上げるという段階ではありませんけれ
ども
、本
改正
の趣旨が省令に反映されるように最善の努力をしてまいりたいというように
考え
ております。
河村勝
182
○河村
委員
今まででも小
労則
には定員の規定はありませんね。定員については、法の条文をちょっと忘れたけれ
ども
、要するに七百
トン未満
の船に対しては六人以上の甲板部員を乗せるという規定が適用除外になっておりますので、そのためにわざわざ六百九十九トンなどという船ができて、それが大勢を占めているということであって、要するに定員の規定を外されることによって非常に小人数で船を運航する、それで内航
海運
が成り立っていると言ってもいいかもしれない。しかし、その程度がひど過ぎて、
現実
に内航
船舶
においては船長以下三人配置、多くても四人ないし五人配置で、一人が一日十二時間当直をして走っておるというのが
実態
になっておりますね。こういう
実態
があるからこそ勤務時間
短縮
がなかなか難しいという話になっていくわけで、こういう
実態
を改善をしていくためには、やはり定員を決めていかないと、三人や四人でやっておればこれはどうやってみても休憩時間なんかとれるわけがないので、自然と
労働
時間は長くなりますね。それから、当直を十二時間継続しておれば当然眠くなる、居眠りをして事故を起こすという例も間々あるわけです。だから、この際、六人以上ということを特に私は言うわけではないけれ
ども
、小
労則
改正
に当たって適当な定員を決めてそれを守らせるということを
考え
ないと、勤務時間
短縮
の目的も達せられないし、いつまでも安全上の欠陥を抱えたまま動いているということになるであろうと思うので、その点は一体どう
考え
ていますか。
野尻豊
183
○野尻
政府
委員
現行におきましては、
小型船舶
については就航する
航路
が短いものもありますし、航海の態様も多種多様であるということから、一律に定員を定めることが難しいということで定員
制度
が定められていないわけであります。ただ、先ほど申し上げました
船員中央労働委員会
の答申の中では、小
労則
に関しまして法律への適用を拡大すべきだということとあわせて定員についても見直しをすべきだ、それを三年以内をめどに
結論
を用意しなさいというような御答申をいただいておるわけでございます。この見直しについての
労働
委員会
からの御指摘に合わせまして、私
ども
今後小型内航船の定員の問題についてもあわせて
検討
してまいりたいと
考え
ております。
河村勝
184
○河村
委員
この
船員
中労委の答申で公益
委員
の見解としてある中に、本法の「
適用範囲
、小
労則
の扱い等について」という見出しの前半の方で、「
適用範囲
の拡大については、三年以内を目途に
結論
を得るよう当
委員会
の
審議
を求めるべきものと
考え
る。」と書いて、その次に「その際、時間的余裕がないため今回
審議
しなかった定員に関する規定の見直し等についてもあわせて議論を行うべきであると
考え
る。」これは読んだとおりであって、書いておる
内容
というものは、
小型船舶
について、本法適用について三年以内に
結論
を出せ、同時にその中に定員の規定を入れるということを言って、
小型船舶
に定員の規定を入れることについて、入れるとは書いてないけれ
ども
、議論をなすべきであるということを言っているわけです。そう
理解
してよろしいですね。
野尻豊
185
○野尻
政府
委員
このくだりについて、公益
委員
見解が出された経緯について私の
承知
している限りで御
説明
申し上げますと、まず二の表題については「
適用範囲
、小
労則
の扱い等について」と「等」というのをつけて、なぜ「等」をつけたかと申しますと、
労働
委員会
で
船員法
改正
について
審議
している際にいろいろな問題が起きました。今問題になっております小
労則
を廃止して本法へ持っていくという
適用範囲
拡大の問題、それと同時に
使用者側
からは、現在の
船員法
七十条で甲板部員六人以上を乗り込ませなければならないという規定はもう陳腐化しているので、これを改めるあるいは撤廃すべきだというような御
意見
もあったわけであります。しかし、いずれもそういう
審議
をしていく時間的余裕がないので、この際は
労働
時間についてのみ答申をしまして、今申し上げました
適用範囲
の拡大の問題あるいは七十条見直しという問題についてはまた改めて
審議
しようというようなお話になりまして、表現としてはなお書きで、こういう形に入ったと
承知
しております。したがいまして、ここで言っているなお書きは、先生が御指摘になられたような意味でも解釈できますが、一方
使用者側
からは、七十条の規定が現在の運航
実態
に合っていないという面からの見直しも含まれるべきだというふうに解釈されているとも
考え
ております。
河村勝
186
○河村
委員
どうもその議論は
日本
語の読み方としては正しくないですね。「
適用範囲
、小
労則
の扱い等について」と書いて、七百
トン未満
の
小型船舶
に対する問題をここで取り扱っているわけでしょう。「等」というのは、「等」なら何でも入るというけれ
ども
、それはその前に書いてある字句につながって、それとの脈絡のある「等」でしょう。だから、それが突如として七百トン以上の
船舶
の定員の見直しまでこれに入っているんだというのは、どう歪曲してもとてもそうは読めないように思うのですけれ
ども
、一体だれがそういう解釈をしているのです。
野尻豊
187
○野尻
政府
委員
この公益
委員
見解というのは
船員中央労働委員会
からの答申でございますから、当然
船員中央労働委員会
がこの解釈についての第一義的な解釈権限があるということになりますが、私が申し上げましたのは、この公益
委員
見解が出るいきさつ及び
審議
の過程における議論等を踏まえて
考え
ると、このなお書きについてはそのような解釈になるというふうに申し上げたわけでございます。
河村勝
188
○河村
委員
ここで水かけ論をしてもしようがないから、一遍
船員
中労委の見解を公式にとってください。 それはともかくとして、本法
適用範囲
と小
労則
の取り扱いについて「三年以内を目途に
結論
を得るよう当
委員会
の
審議
を求める」というふうになっておりますが、これは日程的にはどのようにやっていくつもりですか。
野尻豊
189
○野尻
政府
委員
まず第一に、私
ども
といたしましては当面の問題は、今御
審議
いただいております
船員法
改正
案が成立いたしますと直ちに政省令の作成に取りかからなければなりません。同時にまた、本法の
改正
に伴って必然的に直さなければならない小
労則
の
改正
にも取りかからなければいけないということで、私
ども
非常にこれから作業スケジュールがいっぱいというところでございます。しかし一方で、先ほど申し上げました小
労則
の
適用範囲
拡大の問題については、法律上の問題あるいは
実態
面からの
検討
問題、いろいろな問題を抱えておりますので、私
ども
はいろいろな観点からの
検討
をあわせて行うつもりでありますが、いずれにいたしましても、
労働
委員会
では三年以内をめどに
結論
を出すように
審議
しろということでございますので、その
審議
に合わせることができるようなしかるべき時期に
労働
委員会
にお諮りをするようにしたいと
考え
ております。
河村勝
190
○河村
委員
時間が来ましたのでこれで終わりたいと思いますが、
運輸大臣
、これまで議論しておりまして、
労働
時間の問題について
海運
のガンは内航の
小型船舶
であることはおわかりだと思います。だから、これを単に
労働
条件だけの問題としてあるいは
船員
だけの問題としてとらえるのではなくて、内航
海運
業全体をこれからどういうふうに改善をし
近代化
していくかというのが最大のかぎになるわけですから、ぜひともこの問題について、これを契機に一遍見直しをして今後の方策をつくってほしい、こう要請をしたいと思いますので、最後にそれに対する決意を伺って質問を終わりたいと思います。
石原慎太郎
191
○石原国務大臣 御趣旨を体しまして、
日本
の
海運
の大事な部分を占めております内航の問題に関しましても、その
近代化
に精いっぱい努力をしたいと思います。
河村勝
192
○河村
委員
終わります。
関谷勝嗣
193
○
関谷委員長
中路
雅弘
君。
中路雅弘
194
○中路
委員
船員法
の
改正法案
を中心に御質問したいと思いますが、最初に今回のこの
改正法案
が出てきた
背景
といいますか、提出された根拠についてお尋ねしたいと思います。
野尻豊
195
○野尻
政府
委員
今回の
法律案
を提案させていただきました
背景
につきましては、先日大臣から提案理由
説明
で申し上げたところに掲げてあるとおりでございまして、まず、
労働
時間の
短縮
が、国民生活の向上あるいは
労働
者の福祉の増進の観点のみならず、国際経済情勢を
背景
としまして、
経済構造
調整、内需拡大の観点からも重要な課題となっているというのが第一の理由であります。 それから第二の理由としまして、
船員法
の
労働
時間に関する規定は航海中あるいは停泊中といった別に細かく定められております。しかし、この
船員法
という法律は、
昭和
二十二年に制定されまして既に四十年を経過しておりますけれ
ども
、その間にこの
労働
時間に関する規定は
改正
されていないということで、一方、その間に
技術革新
の進展によりまして
船舶
の運航形態が変わってまいりました。その端的な例が、いわゆる停泊時間の減少という形になってきているわけであります。あるいはまた、
船舶
の
技術革新
の進展によりまして就労
体制
も変わってきているということで、四十年前の
労働
時間法制と
労働
実態
とが変わってきているという面がございます。こういうようなことを
背景
にいたしまして、今回この法案を提出するに至ったわけであります。
中路雅弘
196
○中路
委員
直接は労基法の
改正
を機会にこの法案の
検討
を開始されたと思うのですが、八七年九月に
運輸省
が
船員中央労働委員会
に諮問された、そういう形で、
運輸省
の側から提起をされて
検討
されてきたというふうに
理解
していいわけですね。
野尻豊
197
○野尻
政府
委員
そのとおりでございます。
中路雅弘
198
○中路
委員
この
船員法
の
改正
の
法律案
を提出するに当たって、
運輸省
として、現在の
船員
の
労働
実態
、
労働
時間あるいは休日・
休暇
等をどのように把握されていたのか、あるいは調査をされたのか、調査されたとすればどういうふうに
実態
を
理解
されているのか、簡潔に。
野尻豊
199
○野尻
政府
委員
私
ども
、もちろんその
労働
の
実態
を、つぶさにというわけにはまいりませんけれ
ども
、できる範囲で調査をし、さらにまたいろいろな統計等を通じて
船員
労働
の
実態
がどうであるかということを
検討
した上で今回の法案提出に至ったものでございます。
中路雅弘
200
○中路
委員
六十一年九月から、
運輸省
の
船員
部の
労働
基準
課長
等も参加されていますけれ
ども
、
船主協会
あるいは
海員組合
等も入って、財団法人
海上労働
科学研究所で
船員
の
実態
調査というのをされたわけです。この結果が「六十二年度
船員
労働
実態
調査」ということでまとめられているとお聞きしていたのですが、
運輸省
へこの
実態
調査書を資料で出していただきたいという
お願い
をしていたのですが、提出いただけないのです。これは理由があるのですか。
野尻豊
201
○野尻
政府
委員
今、職員に聞きましたところ、そういう形での要望を受けていなかったということでございますが……。
中路雅弘
202
○中路
委員
それは全く違うのですよ。レクに来られたときも要請したのですよ。そうしたら、こういう回答なんですよ。調査が、把握数も少ないし、
実態
を正確にあらわしていないという点もあるので、あえて正式に出すことはしないのだといぅ話なんですよ。わかりませんか、事情は。
野尻豊
203
○野尻
政府
委員
私
ども
は別に故意にこれを隠そうというわけではございませんが、先生が今御指摘になられた、つまり私
ども
の職員が
説明
をいたしましたように、あの
実態
調査に当たりましては、いわゆる全数調査といいましょうか、すべての
労働
実態
を反映した形で調査結果が出ているかというと必ずしもそうではない面がございまして、これをもとに議論されますと誤解されはしないかという配慮を私
ども
はしております。
中路雅弘
204
○中路
委員
海上労働
科学研究所で直接いただきましたから持っているのですけれ
ども
、この
実態
調査、それは全般の
実態
を正確に詳細に調査をすることは容易ではありませんね。しかし、この
実態
調査書は、調査の
委員
に
海員組合
の役員の方も入っておられますし、もちろん
船主協会
から各
関係業界
、組合、それから
船員
部の
労働
基準
課長
を初め関係の
皆さん
が参加して調査をされているわけですけれ
ども
、それなりに一応、今の
船員
の
労働
実態
の一部を統計的にあらわしているものだと私は思うのですね。そういう観点で二、三これを読んでみて、本当に
労働
実態
、特に長時間
労働
等がひどい
状況
にあるということを痛感するわけです。 例えば
労働
時間は、これは一週間でとらえているわけですけれ
ども
、一週間の総
労働
時間で四十八時間以上が圧倒的に多いのです。例えば
外航
船の五千トン以上でとってみますと、四十八時間以上は七四・一%ですが、特に今の五十六時間を超えているのでも合計しますと三四・八%になります。この中には一週間に九十六時間から百時間、百四時間というのもあるのですね。内航船になるとさらにひどくて、四十八時間以上ですと八六・二%、五十六時間以上になっても半分以上ですね。今の五十六時間、これを半分以上が超えて、一週間の
労働
時間ですから、年間にすると三千時間というのもこれを読むと出てくるわけです。現在の
船員法
さえ守られていない。また、小さい船ほどひどい
実態
にあるというのがこの統計の一部でもわかるのです。これは確かに抽出でやっていますから全体の
実態
というのは出ていませんけれ
ども
、
労働
省も加わった調査の
実態
ですから、一応それなりにこういう事実があるということはお認めになるでしょう。
野尻豊
205
○野尻
政府
委員
今突然の御質問でございますので、私のお答えが場合によっては誤りがあるかと思います。その点はお許しいただきたいと思います。 今御指摘の
労働
時間の調査は、一週間の
労働
時間の調査であります。
労働
時間は、通常、
陸上
の作業の場合ですと一週間タームで決められると思いますが、海上の場合には航行の
実態
に合わせて
労働
時間を把握しなければならないわけであります。つまり、一週間ずっと船が動いている場合には
労働
時間は当然五十六時間ということになってしまうわけであります。したがって、年間ならして総
労働
時間は一体どのくらいであるか、逆に言えば、年間、休日を
付与
されているわけでありますから、
付与
される休日は幾らかという観点からもやはり
検討
しなければならないだろうと思います。ただ、いずれにしましてもかなり
現実
において、特に小さな船について
労働
時間が多いということは多分事実であろうと私も思っております。
中路雅弘
206
○中路
委員
今休日のお話が出ましたけれ
ども
、統計を見てみますと、例えば一カ月の休日・
休暇
の取得
状況
を例にとりますと、航行中は、
外航
船五千トン以上で一・三、一カ月一日の休日がやっと、小さな船で見ますと、例えば五百トンになりますとゼロですね、七百トンで〇・一、航行中は休みがないというのが
実態
調査で出ている
状況
だと思うのです。 このたびの
改正
で、航海、停泊及び職種の区別なく、
経過措置
はありますけれ
ども
労働
時間を一日八時間、週四十時間にしていこうと六十条でなっていますし、休日
制度
の導入、それから振りかえですか補償休日
制度
が入ってきているわけです。それなりに大きな改善なわけですが、こうした休日が保障され、あるいは時間
短縮
が法制上保障されても、実際に実行できるのかといえば、やはりそれなりの裏づけが必要でありますし、その中で定員の問題というのが大変大きいのじゃないかと私は思うのです。
船員
労働
に週休制を導入しようとすれば、予備員を乗船させない限りこれは航行中は無理があるわけですし、そういう点で補償休日を本当に確保するためには、
船員
の定員を定めるようにしなければなりませんし、せっかく基準
労働
期間を定めても、実効性という点でこうした裏づけかないと難しいと思うのです。労基法には定員は定めてないのですが、そもそも労基法で
船員
の
労働
条件が担保できませんから
船員法
という
制度
があるわけですから、今度のこうした
改正
を実際に実効あるものにしていくという点では、予備要員の確保ということが絶対必要条件だと思いますが、この点はいかがでしょう。
野尻豊
207
○野尻
政府
委員
船舶
所有者ごとに企業規模あるいは使用する
船舶
の大きさ、就航する
航路
、就労形態がさまざまであります。これらすべての要素を考慮しつつ予備
船員
も含めて
船舶
所有者単位での要員の基準を設定する、そしてこれを法律で定めるというのは
技術
的に困難であると
考え
ております。そういうことでございます。
中路雅弘
208
○中路
委員
実際に
現状
は今言ったような
実態
ですから、今度は法文上それが改善されても、そういう裏づけがはっきりと担保されない限りこれは実効あるものにならないと私は思うのですね。また、そういうことが守られているかどうかということをチェックしていく。例えば
船員
労務官の問題もついでにお聞きしておきますが、今
船員
労務官は全体で何名おられるわけですか。
野尻豊
209
○野尻
政府
委員
全体で百三十九名でございます。
中路雅弘
210
○中路
委員
配置ですけれ
ども
、本局、支局、どういう配置になっていますか。
野尻豊
211
○野尻
政府
委員
百三十九名の内訳を御
説明
申し上げますと、本局では四十五名、支局に九十二名、合わせて百三十七名でございまして、そのほかに沖縄に二名を配置しておりまして、合計百三十九名と相なります。
中路雅弘
212
○中路
委員
船員
労務官が一人もいないという支局も五カ所ぐらいあると聞いているのですが、どこですか。
野尻豊
213
○野尻
政府
委員
今の無配置局は五カ所でありまして、調べるのにちょっと時間がかかりますので二、三例示いたしますと、苅田、相生、三崎といったところでございます。
中路雅弘
214
○中路
委員
一人しか配置されていないというのが圧倒的に多いのですね。私がいただいた資料ですと三十四の支局が一名の配置になっていますが、間違いございませんか。
野尻豊
215
○野尻
政府
委員
そのとおりでございます。
中路雅弘
216
○中路
委員
陸の方の
労働
基準監督署はよく行くのですけれ
ども
、企業等へ立入調査に行く場合は必ず二名で行っていますね。大きな船の船内で一人で臨検するのもいろいろ大変だと思うのですね。そういう点で
船員
労務官は、少なくとも一人のところは増員して二人、複数配置すべきではないか。
船員
労働
行政のこれからの一層の充実が必要になってきているわけですし、
労働
実態
からいっても、その改善のためにもぜひ必要なわけですが、この労務官――その前に、例えば今まで扱った申告、苦情件数ですね、受理した件数がどれぐらいになっているのか、あるいは立入検査といいますか臨検の件数はどれぐらい扱われていますか。
野尻豊
217
○野尻
政府
委員
御質問の趣旨は
船員
労務官の監査実績はどうかということだろうと思いますので、御
説明
申し上げます。 監査のために
船舶
、事業場に入った件数は、六十一年の数字でございますけれ
ども
、一万二千九百五十六カ所、違反した
船舶
等で指摘しましたのが九十七カ所、違反件数が百九十七件、指導件数が四千二百一件といったところでございます。
中路雅弘
218
○中路
委員
船員
労務官は大変な仕事なんですよね。先ほど私ちょっと質問しかけたのですが、少なくとも支局に二名、複数配置という
方向
を基本にして増員の
体制
を
検討
する必要があると思うのですが、いかがですか。
野尻豊
219
○野尻
政府
委員
私
ども
としましても、先生御指摘のとおり、従来から複数配置にすべきものということを前提にいたしまして増員計画を組み、最近のような情勢でございますのでなかなか思うようにはまいりませんけれ
ども
、逐年少しずつではありますけれ
ども
増員がされているという
現状
でございます。
中路雅弘
220
○中路
委員
努力はされているのですが、実際は三十四支局が一名配置ということで圧例的に多いのですね。そして一名も配置されていないのが五支局もあるということですから、ぜひこれは一日も早く増員を、特に二名配置を実現しなくてはならない、強く要請しておきたいと思います。 次に、
船員法
の適用
船舶
の数、
船員
等の関係ですけれ
ども
、まず
船舶
なんですが、七百総トン以上の
船舶
、そして七百総
トン未満
の
船舶
、それぞれ何隻ありますか。
野尻豊
221
○野尻
政府
委員
商船について御
説明
申し上げますと、七百総トン以上の
船舶
は六十一年十月現在で二千四十二隻、七百総
トン未満
の
船舶
は一万一千九十三隻ということになっております。
中路雅弘
222
○中路
委員
合計しますとこれで一万三千百三十五隻になるのですが、指定漁船はどのぐらいありますか。
野尻豊
223
○野尻
政府
委員
漁船は九千七百四十六隻であります。
中路雅弘
224
○中路
委員
今お話しのものを合計しますと二万二千八百八十一隻になるわけですけれ
ども
、結局総トン数七百
トン未満
及び指定漁船、これは
労働
時間、休日、定員等の適用対象外のままになっていますね。七百トン以上の対象の船は、これで見ますと、ちょっと今計算しますと一八・七%、二割ないですね。法の適用対象が二割の船だということが言えるわけですね。 七百トン以上の
乗組員
数あるいは未満を含めて
船員
数はどのぐらいの数字になりますか。
野尻豊
225
○野尻
政府
委員
船員
数について御
説明
申し上げますと、まず七百総トン以上の商船に乗っております
乗組員
の数は三万五千百六十人、七百総
トン未満
の商船に乗っている
船員
数は四万二千九百二十三名でございます。ただ、このほかに
会社
ではそれぞれ予備員を抱えているわけでありまして、予備員の数を加えなければなりません。予備員総数は二万一千百八十一名でありまして、これを七百総トン以上と七百総
トン未満
とに振り分けをすることになるわけですが、これまでのいろいろの経験値等から
考え
てみますと、おおよそ二万一千のうち一万七千人程度は七百総トン以上の商船に属するものと
考え
ております。したがいまして、それで計算いたしますと、ざっと、七百総トン以上の商船に関係しております
船員
は五万二千人余り、七百総
トン未満
につきましては四万六千余りといったところであろうかと思います。
中路雅弘
226
○中路
委員
先ほど
船舶
のあれで聞きましたから、漁船の方の
乗組員
数は幾らになりますか。
野尻豊
227
○野尻
政府
委員
漁船の方の
船員
数は、
乗組員
数が八万六千百八十三名、予備員数が二千二百八十三名ですので、これを加えますとざっと八万八千余りということになろうかと思います。
中路雅弘
228
○中路
委員
今、
船舶
数それから
船員
数等でお聞きしましたけれ
ども
、
船舶
数では法律の対象になるのが二割――一割ですね。八・九%。
船員
ではさっきの予備
船員
がありますから少し変わりますけれ
ども
、いずれにしてもこの適用対象外が圧倒的に多いわけです。そういう点で、こういう
状況
のままでこれが本当に
労働
者の保護になるのだろうかという疑問さえ持つわけです。これは先ほ
ども
御質問がありましたけれ
ども
、特に内航
海運
、小型、こうした
分野
は省令でやられているわけですから、これを見直す、さらに本法に一本化していくということがぜひとも法の適用からいって重要だと思いますけれ
ども
、改めてお聞きしておきたい。
野尻豊
229
○野尻
政府
委員
船員中央労働委員会
からは、今御指摘の点について三年以内をめどに
審議
をし
結論
を得るべきであるという答申をいただいておりまして、私
ども
はこの答申に従いまして今後
対応
していきたいと
考え
ております。
中路雅弘
230
○中路
委員
本法案はいわゆる省令、命令で定める箇所が非常に多くなってきているわけです。
改正
部分で、
改正
以前と以後ではいわゆる命令で定める箇所数はどうなっていますか。数ですね。わかりますか。
野尻豊
231
○野尻
政府
委員
多少ふえておるのかもしれませんが、数まで私
ども
まだ検証しておりません。
中路雅弘
232
○中路
委員
多少じゃないのですね。私ちょっと見ましたら、今度の
改正
部分で二カ所が十九カ所あるのですね。圧倒的に命令、省令になっているということなのです。だから、実際に
審議
してくれといっても中身はこれから――恐らく聞いてもおっしゃらないでしょうが、中央の
労働
委員会
で
審議
を経てというお話でしょうから、実際の
労働
条件の中身が示されないまま論議をするということにもなってくるわけです。 就業規則、または
船舶
所有者が
船員
の過半数を代表する者との協定で定める部分、これはどのくらいありますか。これもわかりませんか。
野尻豊
233
○野尻
政府
委員
今資料を手持ちで持っておりませんので、御勘弁願いたいと思います。
中路雅弘
234
○中路
委員
労働
協約に定める部分の箇所もあるわけですし、
船員
労働
の最低基準を定めるこの法案が命令や就業規則、
労働
協約に多くをよりどころとすることになっているわけですね。これはどういう経過からそうなっておるのですか。
野尻豊
235
○野尻
政府
委員
基本的な
考え
といたしまして、先ほど来御
説明
申し上げておりますように、今回の
労働
時間に関する規定の
改正
は、単に
労働
時間を四十時間にするということではなくて、従来の航行中あるいは停泊中、あるいは当直者、非当直者別といったような決め方をやめてしまいまして、一律に
労働
時間法制に切りかえようということになったわけでございます。その過程において補償休日という概念を導入したわけですが、補償休日の計算をするに当たりましては、非常にきめ細かな
技術
的な事項が多岐にわたるわけでございます。したがいまして、基本的な
考え
方につきましては法律の本文ではっきり定めておりますが、それを具体的に計算するという段階あるいは補償休日を
付与
する仕方といったような、いわば
技術
的な問題につきましては命令で定めさせていただこうという
考え
でございます。
中路雅弘
236
○中路
委員
考え
方として、今の
船員
の
労働
実態
に
船員法
を合わせるという
考え
が基礎にあると思うのですね。国の責任として今の
船員
の
労働
条件改善のために
船員法
をどのように適用していくのかという姿勢でこの問題と取り組んでいかないと、今の長時間
労働
や休日も
付与
されない
実態
を根本的に改善することができないのじゃないかと思うのですが、いかがでしょう。
野尻豊
237
○野尻
政府
委員
今回の
改正
に当たりましては、ある
一定
期間を通じて、将来目標になりますが、週四十時間
労働
制ということに移行できるような仕組みを
考え
ているわけでありまして、そこでは
一定
の基準期間と書いてありますが、基準
労働
期間について週平均四十時間になるように
労働
時間を定める。したがいまして、個々の一週間をとらえてみます場合によっては五十六時間
労働
をする場合もありますが、超過
労働
時間については別途休日という形で補償する、あるいはまた一週間当たり一日の休日は保障するという形で大幅な改善がされていると私
ども
は
考え
ております。
中路雅弘
238
○中路
委員
この問題は、私が強調するのは、
御存じ
のように憲法二十七条で勤労者の権利義務、勤労条件の基準の項がありますが、その二のところに「賃金、就業時間、休息その他の勤労条件に関する基準は、法律でこれを定める。」となっているのですね。
労働
条件の基本は法律で定めるということになっているわけです。だから、何から何まで法律で定めるということはもちろん不可能ですけれ
ども
、国の責任で
船員
労働
を改善していくというならば、やはり
労働
条件の法定主義を守って、できるだけ省令等にゆだねる、落としてしまうというのでなくて、こういう省令等にゆだねる部分が少なくなっていくということが
船員法
の権威を高めることにもなるわけですね。それが今回の場合、逆にどんどんみんな命令で落としてしまうという、中身もわからないという
状況
なのですね。これは
労働
条件、賃金、就労時間、休息その他の勤労条件、いわゆる基準は法律で定める、こういう法定主義を後退させてしまうということになるのじゃないかと思うのですが、いかがです。
野尻豊
239
○野尻
政府
委員
私
ども
といたしましては、今回の
改正
は何といいましても
労働
者の保護という観点から
労働
時間を
短縮
すべきであるというように
考え
ておるわけであります。ただ、
労働
時間の
短縮
につきましては、先ほど来申し上げておりますように、
労働
基準法のように週の
労働
時間というものを決めまして、それで時間を
短縮
するということが船の場合は事実上不可能だ。そこで
考え
出しましたのが補償休日
制度
ということでございます。 ただ、補償休日
制度
の場合は、一週間働いた場合に、例えば四十時間なら四十時間とした場合に、四十時間を超えて働いた分については別途の振りかえ休日という形で補償するとか、あるいはまた一週間当たり一日は休日として必ず保障しなければいけないとかというような、非常に
技術
的な
内容
にわたる規定が盛り込まれているわけでございます。したがいまして、そういう基本的な
考え
方については、すべて法文で書かれておりますけれ
ども
、その補償休日について具体的にどういう形で計算をし、どういう形で
付与
していくかということになりますと、これをすべて法律では書き切れないということで、必要最小限の範囲内で命令で定めるようにさせていただいているわけでございます。
中路雅弘
240
○中路
委員
いや、その命令の部分が少なくなるのじゃなくて、どんどんそれをふやす、しかも対象の範囲もまた非常にわずかですからね。だから本当に
労働
条件をこういう法律で決めていくということになれば、もっとそういう意味では国会で論議が――省令ということになれば、法律事項でありませんから、こういった
改正
案等の論議の対象に直接はならないわけですね。そうでなくて、やはり国会で十分その中身についても論議していける、そういう
立場
での法定主義を基本的には守っていくということを強く要請しておきたいと思います。 時間もそうありませんから、あと一、二お聞きしたいのです。個別の問題ですが、
特定
船舶
に対する変形
労働
時間制、七十二条の二で残されているわけですが、これまでは旧国鉄の青函、宇高連絡船ですか、これが廃止をされたわけですから、この特例は必要がないと思うのですが、これを廃止しなかったのはどうしてですか。
野尻豊
241
○野尻
政府
委員
今回は旧法を大幅に
改正
をいたしまして、いわば
労働
時間、休日に関する規定は全面
改正
に近いというように
考え
られます。今御指摘の点につきましては、旧法にあって新法にない規定がかなりあります。例えば端的な例で言いますと、旧法では旅客船の事務部の部員につきましては十二時間
労働
も許されるような規定になっておりました。それが今回は一律八時間
労働
に移すとかいうような形で大幅な
改正
をしているわけでございます。そうしますと、今後例えばクルーズ船とかいうような形で新しく出てくるであろう船の場合に、旧来の法律であれば
対応
できたものが新法では
対応
できなくなってしまうというような事態になりかねないわけであります。そういう意味もありまして、今御指摘の条文が残っているというように御
理解
いただきたいと思います。
中路雅弘
242
○中路
委員
使用者の
皆さん
のいろいろ書いた
意見
等を見ますと、フェリーだとか旅客船だとかそういうものもこの中の対象に挙げているのですね、今石油掘削の船の話が出ましたけれ
ども
。私はこうした特例は必要ないと思いますが、適用する場合に当たっては極めて限定して対処をしていかないと、これが規則緩和の道をあけることになりはしないかという心配もするわけです。その点はいかがですか。
野尻豊
243
○野尻
政府
委員
具体的な
船舶
あるいはその類型としての
船舶
、そういうような指定基準につきましてはこれから
労働
委員会
で十分
審議
していただいて決めていこうというように
考え
ております。
中路雅弘
244
○中路
委員
もう
一つ
。時間外
労働
は、船長の必要、
労使
協定、
船員
の過半数を代表する者との書面による協定ですか、これを届け出る場合定められることになるわけですけれ
ども
、この場合の基準をどうするわけですか。
労使
双方の合意があればいいということでは、時間外
労働
の事実上の延長が可能となるのではないかと思うのですが。
野尻豊
245
○野尻
政府
委員
今の御質問は、補償休日における時間外
労働
のことだと思います。 補償休日につきましては、先ほど申し上げましたように、
船舶運航
の
実態
から見ますと、一週間に一日とか二日とか休日を与えることは難しいということから、ある
一定
期間はまとめて働いて、そのかわり休日をある意味ではまとめて取得するというようなことを
考え
たわけでございます。ただ、
船舶
というのは、荷主サイドからいろいろな要請もありましょうし、あるいは
船舶
の運航のスケジュール等もありましょうから、画一的に補償休日には絶対に働いてはいけないと言うわけにはいかないだろうということで、ある程度の補償休日における時間外
労働
というものは認めざるを得ないであろうということでそういうことにしたわけであります。 ただ、それを
船主
の恣意のままにしてしまいますと、せっかく補償休日という
制度
を設けたにもかかわらず休みがとれないという事態が
考え
られます。したがいまして、いろいろな要件を課しているわけでありまして、
一つ
は日数制限を課そうと思っております。命令で定めるということになりますが、これからどの程度の範囲がいいか、いろいろ
考え
ます。例えば、現在
労働
組合と
船主
団体とで
外航
関係で結んでおります
労働
協約によりますと、年間休日百十八日に対して、私の記憶ではたしか三十八日間は就労することができるというような決めになっていると思いますが、そういうようなことも
一つ
の参考になろうかと思います。そういった
労働
慣行あるいは
労働
の
実態
において定着しつつあることを踏まえて日数制限を
考え
なければいかぬと思いますし、さらにまた、
労使
間の協定でその点についても十分制約できるというように
考え
ております。
中路雅弘
246
○中路
委員
そろそろ時間ですので、終わりに私は、この
改正
案について二、三見解を述べておきたいと思います。 補償休日の法定化あるいは
有給休暇
の取得の条件の緩和など、
労働
条件を改善する
一定
の面がありますけれ
ども
、やはり
労働
諸法規の規制緩和の一環となるものですし、
船員法
の緩和といいますか、既に
船主
の方では甲板六名の定員も外す論議も出ているわけですし、こうした
方向
に道を開くという心配もあるわけです。また、先ほど指摘しましたが、命令によってどんどん定めるということが多くなってきて、
労働
条件の法定主義があいまいにされてくるということも指摘しておきたいと思います。
船員
労働
の
特殊性
と言われる変形
労働
が一層
促進
されて、
船員
の人減らし等に新たに根拠になるということを強く感じるわけです。 法案についての
意見
を述べて、質疑を終わりたいと思います。
関谷勝嗣
247
○
関谷委員長
これにて両案に対する質疑は終了いたしました。 ─────────────
関谷勝嗣
248
○
関谷委員長
ただいま議題となっております両案中、まず、
船員
の
雇用
の
促進
に関する
特別措置法
の一部を
改正
する
法律案
について議事を進めます。 これより討論に入るのでありますが、別に討論の申し出もありませんので、直ちに採決に入ります。
船員
の
雇用
の
促進
に関する
特別措置法
の一部を
改正
する
法律案
について採決いたします。 本案に賛成の諸君の起立を求めます。 〔賛成者起立〕
関谷勝嗣
249
○
関谷委員長
起立総員。よって、本案は原案のとおり可決すべきものと決しました。 ─────────────
関谷勝嗣
250
○
関谷委員長
ただいま議決いたしました
船員
の
雇用
の
促進
に関する
特別措置法
の一部を
改正
する
法律案
に対し、
柿澤
弘治君外四名から、自由民主党、
日本
社会党・護憲共同、公明党・国民
会議
、民社党・民主連合及び
日本
共産党・
革新
共同の五派共同提案による附帯決議を付すべしとの動議が提出されております。 提出者から趣旨の
説明
を求めます。
柿澤
弘治君。
柿澤弘治
251
○
柿澤
委員
ただいま議題となりました
船員
の
雇用
の
促進
に関する
特別措置法
の一部を
改正
する
法律案
に対する附帯決議を付すべしとの動議につきまして、自由民主党、
日本
社会党・護憲共同、公明党・国民
会議
、民社党・民主連合及び
日本
共産党・
革新
共同を代表いたしまして、その趣旨を御
説明
申し上げます。 まず、案文を朗読いたします。
船員
の
雇用
の
促進
に関する
特別措置法
の一部を
改正
する
法律案
に対する附帯決議(案)
政府
は、本法施行に当たり、次の事項について配慮すべきである。 一 深刻な
外航海運
不況
等に伴う厳しい
船員
雇用
情勢に対処するため、新たな職域の確保に努めるなど積極的な
対策
を講ずること。 二 我が国貿易物資の安定輸送の確保を図るため、
国際競争力
のある我が国商船隊の整備に努めること。 以上であります。 本附帯決議は、当
委員会
における法
案審査
の過程におきまして、
委員
各位からの御
意見
及び御指摘のありました問題点を取りまとめたものでありまして、本法の実施に当たり、
政府
において特に留意して
措置
すべきところを明らかにし、
船員
雇用
の安定に万全を期そうとするものであります。 以上をもって本動議の
説明
を終わります。
関谷勝嗣
252
○
関谷委員長
以上で趣旨の
説明
は終わりました。 採決いたします。
柿澤
弘治君外四名提出の動議に賛成の諸君の起立を求めます。 〔賛成者起立〕
関谷勝嗣
253
○
関谷委員長
起立総員。よって、本案に対し附帯決議を付することに決しました。 ─────────────
関谷勝嗣
254
○
関谷委員長
次に、
船員法
の一部を
改正
する
法律案
について議事を進めます。 この際、本案に対し、
亀井
静香君から修正案が提出されております。 提出者より趣旨の
説明
を求めます。
亀井
静香君。 ─────────────
船員法
の一部を
改正
する
法律案
に対する修正案 〔本号末尾に掲載〕 ─────────────
亀井静香
255
○
亀井
(静)
委員
私は、自由民主党を代表して、本
法律案
に対する修正案について、その趣旨を御
説明
申し上げます。 修正の案文はお手元に配付してありますので、その朗読を省略させていただきます。 修正案の
内容
は、 一 海員の一週間当たりの
労働
時間を定める政令は、週平均四十時間
労働
制に可及的速やかに移行するため、制定され、及び
改正
されるものである旨を明らかにすること。 二
政府
は、この法律の施行後三年を経過した場合において、新法の規定の施行の
状況
を勘案し、必要があると認めるときは、新法の規定について
検討
を加え、その結果に基づいて必要な
措置
を講ずるものとすることであります。 何とぞ御賛成くださいますよう
お願い
申し上げます。
関谷勝嗣
256
○
関谷委員長
以上で趣旨の
説明
は終わりました。 修正案につきましては、別に発言の申し出もありません。 ─────────────
関谷勝嗣
257
○
関谷委員長
これより原案及び修正案について討論に入るのでありますが、別に討論の申し出もありませんので、直ちに採決に入ります。 これより
船員法
の一部を
改正
する
法律案
及び修正案について採決いたします。 まず、
亀井
静香君提出の修正案について採決いたします。 本修正案に賛成の諸君の起立を求めます。 〔賛成者起立〕
関谷勝嗣
258
○
関谷委員長
起立多数。よって、
亀井
静香君提出の修正案は可決いたしました。 次に、ただいま可決いたしました修正案の修正部分を除く原案について採決いたします。 これに賛成の諸君の起立を求めます。 〔賛成者起立〕
関谷勝嗣
259
○
関谷委員長
起立多数。よって、本案は修正議決すべきものと決しました。 ─────────────
関谷勝嗣
260
○
関谷委員長
ただいま議決いたしました
船員法
の一部を
改正
する
法律案
に対し、
柿澤
弘治君外三名から、自由民主党、
日本
社会党・護憲共同、公明党・国民
会議
及び民社党・民主連合の四派共同提案による附帯決議を付すべしとの動議が提出されております。 提出者から趣旨の
説明
を求めます。吉原米治君。
吉原米治
261
○吉原
委員
ただいま議題となりました
船員法
の一部を
改正
する
法律案
に対する附帯決議を付すべしとの動議につきまして、自由民主党、
日本
社会党・護憲共同、公明党・国民
会議
及び民社党・民主連合を代表いたしまして、その趣旨を御
説明
申し上げます。 まず、案文を朗読いたします。
船員法
の一部を
改正
する
法律案
に対する附帯決議(案)
政府
は、本法施行に当たり、次の事項について配慮すべきである。 一 省令により
労働
時間等が規制されている小型船等に乗り組む
船員
に対する
船員法
の
労働
時間等の規定の適用に関して、できる限り早期に
検討
すること。 二「小型船等に乗り組む海員の
労働
時間及び休日に関する省令」及び「指定漁船に乗り組む海員の
労働
時間及び休日に関する省令」については、
法改正
の
内容
を十分考慮して、その
改正
について速やかに
検討
すること。 三 漁船
船員
に対する
有給休暇
制度
については、当面漁船
分野
の
実態
の正確な把握に努めること。 四
労働
時間に関する規定の適正な履行確保に配慮しつつ、第七十条を初めとする定員制に関する規定の見直しをできる限り早期に
検討
すること。 五 時間外
労働
については、
船員
労働
の
特殊性
にかんがみ、
改正
法第六十四条の規定が適正に運用されるよう十分な指導監督を行うこと。 また、補償休日の
労働
に関しては、可能な限り休日を確保するように努め、その運用に当たって十分な指導監督を行うこと。 六 各種
労使
協定の締結当事者である
労働
者代表の選出については、
労働
者の意思を適正に反映した選出が行われるよう指導すること。 七 十人未満の
船員
を使用する
船舶
所有者についても、就業規則の整備が行われるよう、適切な指導を行うこと。 八 内航
海運
における
船員
の
労働
時間
短縮
を
促進
し、併せて
労働
条件の改善・向上を図るため、内航
海運
業の一層の健全化を図るよう適切な指導監督を行うこと。 九
船員法
の履行確保、
労働
時間
短縮
の一層の
促進
を図るため、
船員
労務監査業務の徹底、必要に応じた
船員
労務官等の増員など
船員
労働
行政
体制
の一層の充実強化を図ること。 以上であります。 本附帯決議は、当
委員会
における法
案審査
の過程におきまして、
委員
各位からの御
意見
及び御指摘のありました問題点を取りまとめたものでありまして、本法の実施に当たり、
政府
において特に留意して
措置
すべきところを明らかにし、我が国
船員
の
労働
条件のより一層の改善に資そうとするものであります。 以上をもって本動議の
説明
を終わります。
関谷勝嗣
262
○
関谷委員長
以上で趣旨の
説明
は終わりました。 採決いたします。
柿澤
弘治君外三名提出の動議に賛成の諸君の起立を求めます。 〔賛成者起立〕
関谷勝嗣
263
○
関谷委員長
起立多数。よって、本案に対し附帯決議を付することに決しました。 この際、
運輸大臣
から発言を求められておりますので、これを許します。石原
運輸大臣
。
石原慎太郎
264
○石原国務大臣 ただいまは、
船員
の
雇用
の
促進
に関する
特別措置法
の一部を
改正
する
法律案
及び
船員法
の一部を
改正
する
法律案
につきまして、慎重
審議
の結果御可決いただき、まことにありがとうございました。 また、それぞれの附帯決議につきましては、その趣旨を十分尊重し、
政府
として十分の努力をしてまいる所存であります。 どうもありがとうございました。 ─────────────
関谷勝嗣
265
○
関谷委員長
お諮りいたします。 ただいま議決いたしました両
法律案
に関する
委員会
報告書の作成につきましては、
委員長
に御一任願いたいと存じますが、御
異議
ありませんか。 〔「
異議
なし」と呼ぶ者あり〕
関谷勝嗣
266
○
関谷委員長
御
異議
なしと認めます。よって、さよう決しました。 ───────────── 〔報告書は附録に掲載〕 ─────────────
関谷勝嗣
267
○
関谷委員長
次回は、来る十三日水曜日午前九時五十分
理事
会、午前十時
委員会
を開会することとし、本日は、これにて散会いたします。 午後三時五十分散会