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1988-04-13 第112回国会 衆議院 安全保障特別委員会 第3号 公式Web版

  1. 会議録情報

    昭和六十三年四月十三日(水曜日)     午前十時開議  出席委員    委員長 箕輪  登君    理事 有馬 元治君 理事 椎名 素夫君    理事 月原 茂皓君 理事 宮下 創平君    理事 山崎  拓君 理事 左近 正男君    理事 米沢  隆君       柿澤 弘治君    谷川 和穗君       玉沢徳一郎君    中川 昭一君       増岡 博之君    松野 頼三君       三原 朝彦君    武藤 山治君       安井 吉典君    渡部 行雄君       神崎 武法君    鈴切 康雄君       神田  厚君    和田 一仁君       東中 光雄君  出席国務大臣         国 務 大 臣         (防衛庁長官) 瓦   力君  出席政府委員         内閣法制局第一         部長      大出 峻郎君         防衛庁参事官  小野寺龍二君         防衛庁参事官  福渡  靖君         防衛庁参事官  児玉 良雄君         防衛庁参事官  鈴木 輝雄君         防衛庁長官官房         長       依田 智治君         防衛庁防衛局長 西廣 整輝君         防衛庁教育訓練         局長      長谷川 宏君         防衛庁人事局長 松本 宗和君         防衛庁経理局長 日吉  章君         防衛庁装備局長 山本 雅司君         防衛施設庁長官 友藤 一隆君         防衛施設庁総務         部長      弘法堂 忠君         防衛施設庁建設         部長      田原 敬造君         防衛施設庁労務         部長      山崎 博司君  委員外出席者         外務大臣官房審         議官      小原  武君         外務大臣官房外         務参事官    渋谷 治彦君         外務省北米局安         全保障課長   岡本 行夫君         外務省欧亜局ソ         ヴィエト連邦課         長       茂田  宏君         外務省中近東ア         フリカ局中近東         第二課長    木村 光一君         特許庁総務部工         業所有権制度改         正審議室長   山本 庸幸君         海上保安庁警備         救難部警備第二         課長      児玉  毅君         特別委員会第三         調査室長    寺田 晃夫君     ───────────── 委員の異動 四月十三日  辞任         補欠選任   神田  厚君     和田 一仁君 同日  辞任         補欠選任   和田 一仁君     神田  厚君     ───────────── 本日の会議に付した案件  国の安全保障に関する件      ────◇─────
  2. 箕輪登

    箕輪委員長 これより会議を開きます。  国の安全保障に関する件について調査を進めます。  質疑の申し出がありますので、順次これを許します。中川昭一君。
  3. 中川昭一

    中川(昭)委員 それでは日本安全保障について若干の御質問をさせていただきます。  防衛局長はお時間の都合で十時二十分ごろ御退席ということでございますので、初めに防衛局長に対しての御質問をさせていただきたいと思います。  昨年十二月九日、日本領土であり領海領空であります沖縄上空ソ連偵察機が二度にわたって領空侵犯をしたという事件がございました。これにつきまして、まず、過去に日本領空領土をどのくらいソビエトを初めとする国々侵犯をしたのかについてお答えを願いたいと思います。
  4. 西廣整輝

    西廣政府委員 この五年間の領空侵犯または自衛隊として確認をいたしました領海侵犯の実績について申し上げますと、領空侵犯の方でございますが、昭和五十八年十月以来、五十八年に二回、五十九年に一回、六十一年に一回、六十二年に二回というような状況でございます。これらは相手方機種等がどこのものかわからないというものもございますけれども、ほとんどがソ連機によるものというように考えております。四件についてははっきり機種等もわかっておりますけれども、これらはベアないしはバジャーといったような機種のものもございます。
  5. 中川昭一

    中川(昭)委員 昨年十二月の領空侵犯についてどういう点で今までに比べて日本にとって大きな問題があるか。つまり国会でももう既に七回ほどこの問題で質問が出ておりますけれども、私もあえて今回質問させていただくのは、私なりに非常に大きな意味が今回の領空侵犯にはあったというふうに考えますけれども、その辺は防衛庁はどのようにお考えでしょうか。
  6. 西廣整輝

    西廣政府委員 従来の領空侵犯事案というものは、相手方がどうも誤ってといいますか、たまたま我が国領空をかすめた、そして領空侵犯に対応するためのこちらの方の航空機等が間に合わない時点で領空侵犯が行われておるという事案が大部分であります。今回の場合は、我が方が近づいてくる航空機に早く気がつきましてたびたび警告をしておる。しかも、こちら側の戦闘機が間に合って、領空に入る前に、お前はこのまま進むと入るぞということで、こちらも姿を見せて通信をし、かつ羽を振るといいますか、そういった形の信号を送り、あるいは信号弾まで撃つという領空侵犯措置が十分行われたにもかかわらずなおかつ侵犯がされたという点が非常に特異な点であろうというふうに考えております。
  7. 中川昭一

    中川(昭)委員 我が国として領空侵犯をされた場合にとるべき措置というのが自衛隊法その他でいろいろ決められておるわけでありますが、今回合計十一分以上にわたって、しかも一たん出てまた戻ってきたということでありますけれども、今回のソ連機行動というのは日本自衛隊機がとった行動によって国外に出ていったというふうにお考えになるでしょうか。
  8. 西廣整輝

    西廣政府委員 必ずしもその辺は明快でないわけでございますが、二度目の侵犯につきましては、一度沖縄東方海上公海上に出ましたので、その後もう一度沿海州方面に帰還しようと思いますとどうしても通らざるを得ないといいますか、さらに領空侵犯を起こさないで回り道をしますと恐らく燃料切れになってしまうような状況だったと思いますので、その点は向こうもせっぱ詰まってやったのかなという気がいたしますが、その途中段階においてどういうことで彼らが領空侵犯をしたのか、あるいは退去したときの状況についても、我が方の指示に従えば着陸しなければいかぬかったわけでございますが、着陸しないままに少なくとも自衛隊機を避けて公海上に出たのかという点についてもつまびらかにいたしておりませんが、いずれにいたしましても、領空侵犯に至る過程において再三再四、あるいは領空内に入ってからも再三再四警告ないしは着陸命令を出しておる、にもかかわらず、こちらの命令に従わずに飛び去ったという点についてまことに遺憾であるというふうに考えておる次第であります。
  9. 中川昭一

    中川(昭)委員 今の局長お話では、二度目については燃料切れかもしれないからショートカットをして通った、その場合には領空侵犯も仕方がないというふうには言わないのだと思いますけれども、しかし過去の事例を見ても、一九八三年のあの大韓航空機事件、もちろん民間機でありますが、何も知らないままにソ連領に入っていっていきなり撃墜をされたというようなことでありまして、これは軍用機民間機を問わず、ほかの国では、領空侵犯されたものについてはいかなる理由にかかわらず撃墜をするという国もありますし、また一般国際法にのっとってあらゆる措置をとる、あるいはまた日本のように極めて異常な事態でありながら黙って出ていくのを見過ごすというようないろいろな国があると思いますけれども、今回のような場合に果たしてそれでよかったのかどうかということについてはどのようにお考えでしょうか。
  10. 西廣整輝

    西廣政府委員 まず、結果的に見まして領空侵犯をされる、しかもその領空侵犯態様というものは私に言わせるならかなり悪質なものである、そういう状況下でなおかつ強制着陸させ得なかったということは大変まずかったというか遺憾であると言わざるを得ないと思います。しからば、撃墜した方がよかっただろうかというようなことになりますと、これはまたいろいろ問題がありまして、私どもとしても今回のような状況であるいはやむを得なかったのか、撃墜するかどうかという二者択一であればやむを得なかったのかなということもございます。ただ、こういうことが再三繰り返されるようなことがある、あるいは今回たまたま電子偵察機一機でございましたけれども爆撃機等を含む編隊だったらどうするかとか、いろいろな事態考えますと、このままで果たしてよかろうかということで今深刻に反省をし検討をいたしておるところであります。
  11. 中川昭一

    中川(昭)委員 海上保安庁にお伺いいたしますけれども領海侵犯をした外国艦船に対してはどのような措置をとることができるのでしょうか。
  12. 児玉毅

    児玉説明員 海上保安庁の行っております領海警備について御説明申し上げます。  海上保安庁は、我が国領海を航行する外国船舶のうち、領海内におきまして不可抗力あるいは海難によらず停泊したり、領海内を正当な理由なく徘徊するなど不審な行動をとった外国船舶や、領海内で操業するなどの不法行為を行った外国船舶の監視、取り締まりを実施しております。このうち、我が国国内法に照らし不法な行為を行った外国船舶につきましては直ちに警告の上退去させる、悪質なものにつきましては国内法規により検挙することといたしまして、単に不審な行動をとった外国船舶につきましては、それが我が国の平和、秩序または安全を害すると認められました場合にはいわゆる無害航行には当たらないということで、当該船舶に対しまして不審な行動の中止を要求し、あるいは警告の上領海外へ退去させるための断固とした措置をとっております。  ただし、軍艦につきましては、非商業目的のために運航する政府公船とともに国際法上立入検査あるいは検挙、そういった強制的な措置をとることができませんので、海上保安庁といたしましては、国際法に認められている範囲におきまして退去要求を行うなど必要な措置を講じておる次第でございます。
  13. 中川昭一

    中川(昭)委員 先ほど局長が申しましたように、別に私は入ってきたやつを全部撃墜しろということは毛頭考えておりませんし、もちろんそういうことをやることによって人命が失われることでありますから、そういうことはやるべきではない。今回の事件に対するアメリカの論評も、日本は極めて高度な自制を発揮してやった行為だということでありまして、若干私がこの文章を読ませていただきますと、前の在日米軍司令官発言は、文明人ならばとるべき行動の典型的な例を示された、自制心に富んだ立派な態度で、大変忍耐の要る行為であった、ただしその前段として、日本政府はTU16Jバジャー撃墜してもいい立場にあったということに続いての発言でありますけれども、もちろん撃墜なんということはこれはもう最後のぎりぎりの選択の中で許される行為であると思いますが、しかし撃墜するにしろ強制着陸をするにしろ、あるいはまた必要な措置をするにしろ、今の自衛隊法八十四条では、「自衛隊の部隊に対し、これを着陸させ、又はわが国の領域の上空から退去させるため必要な措置を講じさせることができる。」とありまして、局長の御答弁では、必要な措置をすべてやった、そしてその結果として出ていってしまった、こういう御発言国会でされておりますが、現場第一線で勤務されております航空自衛隊皆さん、あるいは海上保安庁海上自衛隊皆様方にとって、どういう場合にどういう適切な措置をとれるかという範囲というものはどの程度段階まで許されているのか、そのぎりぎりの段階にいったときにはどうなるのかということについて今自衛隊内部ではどういうふうに決まっておるのでしようか。
  14. 西廣整輝

    西廣政府委員 細部の内規につきましては、今後の相手側といいますか、そういう対応の問題もありますので御答弁を控えさせていただきたいと思うわけですが、いずれにしましても現状では通常の形としては警告射撃までがやり得る範囲である。それ以上を超えて実際に相手撃墜する、そういったことになりますと、領空侵犯対処に飛び上がった我が方の戦闘機攻撃をされた、あるいはその爆撃機等地上攻撃をするために弾倉を開くとか、そういった、明らかに向こう武器使用なり武力行使に及ぶということが確認されない限り、こちらが相手方に対して直接武器を使用することができないような状況になっております。その点、警告射撃とそういった撃墜との間のやり得る措置が何らかあり得るかということになりますと、例えばできるだけ被害の少ないところに撃ってみるということもあるかもしれませんけれども、何せ一万メートルといったような高度でございますので、それによって落ちないという保証がほとんどない。ちょっとした傷がついても空中分解するとかいろいろな問題がございますので、なかなか難しい問題がございますが、もう少し今回のような事案があったということを前提にして我々としては考えてみなくてはいかぬなというのが現状でございます。
  15. 中川昭一

    中川(昭)委員 今回の事件を契機といたしまして今後自衛隊内部で、あるいはまた日米の両国間で、今回はこれで一件落着したというふうに政府はお考えになっているかもしれませんけれども、今後に対しての教訓をもとにして内部の体制を少し変える、あるいはまた日米との間で何か話し合いをするというようなことはされているんでしょうか。
  16. 西廣整輝

    西廣政府委員 内部的に措置し得ることといいますか、この種の研究というのはかねがねやっておりまして、要はどこまで政治的な問題も含めて決心をするかという問題が一つあろうかと思います。  それからもう一つは、今回の事案を通じて、例えば領空侵犯に対する対ソ抗議の内容でございますが、これらについても防衛庁外務省といろいろ御相談をして、従来に比べても極めて異例なぐらい強い、はっきり申せば、このような事態であれば撃墜されてもそうおかしくない状況であるということも含めて抗議を申し込み、相手方も遺憾の意を表しておるというようなことで、外交的にもとり得る措置はとり得る範囲の最善のものをとったというように考えておりますけれども、いずれにしましてもその種のいろいろな手段を講じて、なおかつ所期の目的を達成し得なかったというのは厳然たる事実でございますので、ここをどうするかというのが今後の課題であろうと思っております。
  17. 中川昭一

    中川(昭)委員 弾倉を開くとか、あるいは向こうが撃ってきたという場合に初めてこちらから反撃ができるということでありますけれども、それはむしろ、自衛隊の人がむしろ向こうから撃たれそうになったことに対して、急迫不正の迫害を除去するためにやる行為である。むしろ民法上に認められた行為であって、国の安全保障上あるいは自衛隊法上の国の安全保障、国の国益を守るという観点からの措置ではないのじゃないかという感じがするのですが、その辺はいかがですか。
  18. 西廣整輝

    西廣政府委員 自衛隊に与えられております領空侵犯対処のための権限なり領空侵犯対処行動そのものが、防衛というよりも警察行動に類するものであるというような解釈なり規定のもとに私どもは動いております。その点は、先ほど御答弁のあった海上保安庁の方の領海侵犯についても同様であると思いますが、武器使用等については、警察行動範囲内ということになりますと、他に手段がない場合といいますか、正当防衛なり緊急避難に近い状況で使われるということはやむを得ないのではないかというように考えておる次第であります。
  19. 中川昭一

    中川(昭)委員 そういたしますと、今回は今回と仮にいたしましても、今後ソビエトとしては、こういうことがあっても日本としてはただ通信で、あるいはまた飛行機の機体を振って、あるいは警告弾を発射する程度で、何にもしないということが実証されたので、これから先例えば偵察機沖縄からずっと九州、四国本州を通って北海道を通って抜ける、縦断をしていく。東京を通る、横須賀の上を通る、三沢の上を通っていく。これも迷走であったという理屈のもとでやる。あるいはまたソビエト海軍艦船横須賀の沖合にじっと停泊して、日本艦船日本の情勢を見ておる。あるいは、もっと極端な例でありますけれども、例えばソビエト軍が完全武装して日本領海侵犯領土に上がってくる、そしてまた日本交通法規を守りながら粛々と東京を目指してやってくるという場合には、これは自衛官としては自衛隊法上認められた警告を発することはできるけれども国益の侵害に対して何ら実力をもって阻止することができないというのが今の法体制であると理解してよろしいのでしょうか。
  20. 西廣整輝

    西廣政府委員 まず今回の事案を通じてソ連側日本領空侵犯しても大丈夫だというような認識を持たれるということは我々にとって大変遺憾なことでありますので、そういうことがないような抗議の仕方、もうこのようなことは二度と許されませんよということが十分認識されるような形で抗議をしたというふうに私どもは思っております。  実際問題としてそれではどれだけのことができるかということでございますが、これは先ほど申し上げたように、領空侵犯態様なり機種なりあるいは機数なりそういったものを総合的に勘案して決断をせざるを得ないと思いますが、いずれにしましても、現在の領空侵犯のための必要な措置を講ずるという極めてある意味では漠然とした規定だけの中でどこまでできるかということが運用者判断に任されるということについては相当な問題があるというように考えておる次第であります。
  21. 中川昭一

    中川(昭)委員 日本国益を守るために第一線にいる人たちのぎりぎりの段階判断が、今の局長お話では、実際の現場人たち判断に任されるというのでは、仮に警告弾を撃とうとした、あるいは信号弾を撃とうとしたのが相手機体に当たってしまって、先ほどのお話のように、一万メートル上空で、粉々になって、死んでしまった。そうするとその自衛官殺人罪に問われてしまうということになってしまう危険性もあるわけであります。  要は、日本国民自衛隊に対して寄せておる信頼、つまり我々の財産、生命そして平和を守るために自衛官皆さん第一線で御苦労されておるということの上に立って我が国の平和と繁栄があるんだということに自衛隊国民との信頼関係というのがあるわけでありますが、そういうぎりぎりの状況が起きなければいいのでありますけれども、これから先仮に起きた場合に、少なくとも世界の国々がとっておるような必要最低限措置がとれるのだ、とるとらないは別でありますけれども選択の余地としてとれるんだという程度整備というものは私は必要だと思うのです。  時間でございますので、この質問局長にお伺いをし、同じ質問大臣にお伺いをいたしまして、局長への質問を終わらせていただきます。
  22. 西廣整輝

    西廣政府委員 先生のおっしゃる趣旨というものは私ども大変よくわかり、我々としても何とかしかるべき方法はないかということで苦慮いたしておるわけでございますが、やはり運用者に与えるレギュレーションといいますかマニュアルとしては、余り運用の幅のないものである必要がある。彼らにとっては与えられた任務というものがきちっと迷いなく遂行できるような形で与えられなければいけないというように私どもはかねがね考えております。その点、法そのものについては先ほど申し上げたようにかなり幅のあるものでございますので、現在のオペレーションとしてはやや慎重に過ぎるくらいのところでレギュレーションが定められておるわけでございますが、今後その点についてどこまでよりシビアなものにするかということについて私どもも十分検討いたしますし、皆様方とも御相談をさせていただきたいというように考えておる次第であります。
  23. 瓦力

    瓦国務大臣 ただいま防衛局長から答弁がございましたが、先般のソ連機による沖縄領空侵犯、十二月九日でございますが、私も内閣委員会出席をしておりました折でありまして、寸時を待たず報告がなされたものでこざいます。極めて遺憾な事態でございましたが、ただいま防衛局長からも答弁がありましたとおり、南西航空混成団司令がうちの内訓に基づきまして適切な措置を講じた、かように判断をいたしております。その後の措置につきましても、防衛局長から答弁がありましたとおり、外交手段を通じまして厳格に抗議を申し入れた次第でありますが、今後の運用につきましては、まさに教訓といたしまして我々はいかに取り組んでいくか、このことも検討してまいらなければならぬ問題である、かように考えております。  なお、我が国防衛はまさに国民からして信頼し得るものでなければならぬわけでありますし、また相手国からして、主権国家たる日本に対しまして領空侵犯等の問題を起こして平気であるというようなことであってはならぬわけでありますので、先般の厳格な抗議、さらにまた我が国主権国家としての防衛力整備の問題、さらに国民理解を得るべく、そうした努力によりまして防衛力整備がなし遂げられるわけでありますので、今後一層私どもも意を配しながら、国会におきましての議論また御理解をちょうだいしながらそれらの整備にも努めてまいりたい、かように考えておるものでございます。
  24. 中川昭一

    中川(昭)委員 それでは同じ質問につきまして外務省にお伺いいたします。  今回のソ連機領空領土侵犯問題に対しまして日本政府としてはどのような措置抗議をされたのでしょうか。
  25. 茂田宏

    茂田説明員 お答えいたします。  十二月九日に発生しましたソ連軍用機による沖縄領空侵犯に関しましては、二度にわたって領空侵犯した、領土上空も飛んだということで、これを重視しまして、十二月の十日ですけれども在京ソ連大使を呼びまして、まず第一にこの領空侵犯の事実に対して厳重に抗議をしました。それとともに、この事件を引き起こすに至ったことについて責任を有する者の処罰を求める、今後こういう事件が再度発生しないように再発防止措置をとるようにという要求をいたしました。  その際に日本が従来よりも強い形で抗議をいたしまして、この事件を非常に重大視しているということとともに、かかる行為は重大な結果を惹起しかねない、ソ連側注意を強く喚起するということを申し上げました。それに加えまして、口頭ですけれども沖縄日本安全保障にとって重要な施設が多数存在することは周知の事実であるということ、それから今回の件については自衛隊機は抑制された行動をとったが、他の国であれば撃墜等事件にもなりかねない事案であるということについてもソ連側注意口頭で喚起したということでございます。  これに対しまして、ソ連側からは、事件の発生について遺憾の意の表明をまず行ってきました。それから、責任者処罰という観点からは、パイロットを降格処分にするということを通告してきました。それから一連の再発防止措置をとるということを言ってまいりました。この再発防止措置は、具体的には、単独でかかる飛行を行わないようにするとか、僚機との間隔については三キロメートル以上離れないようにするとかいうようなことで、具体的な措置を言ってきたということであります。  我々としては、こういう事件というのは二度と起こってはならないというふうに考えておりまして、ソ連側が約束した再発防止措置を実際の行動によって裏づけて、こういう事件を二度と起こすことがないようにということを強く期待していますし、そういう観点からソ連側行動を今後監視していきたい、見守っていきたいというふうに考えております。
  26. 中川昭一

    中川(昭)委員 外務省抗議をされて、すぐ答えがあった。その後の機長等の降格処分については、日本側からのどういう措置をとるんだという抗議、申し入れに対して、まずソ連にいる日本人の報道関係者にそれを公表した。その後になって機長を降格処分するということをGGベースで答えてきたということのように私は聞いておりますけれども、これは外交儀礼上も、物事の本質からいっても極めて異例なというか、ばかにされた話ではないかと思いますが、その辺はどうでしょうか。
  27. 茂田宏

    茂田説明員 今先生御指摘のとおり、日本側からいろいろな抗議それから措置の申し入れをしたわけですけれども、これにつきまして遺憾の意の表明というのは向こう側からすぐあったわけです。ただ、それ以外の、パイロットの処分を行うという話につきましては、十二月十五日にソ連のチェルボフ参謀本部局長がモスクワにいる日本人記者の方に話をしたということであります。通常の外交のやり方としましては、外交ルートで通報があって、その後で記者に発表するというのがやり方であるということですので、我々はこれは一体どういうことなのかということをソ連側にただしました。ソ連側の答えといいますのは、チェルボフさんが言ったのはパイロットの処分を行う予定であるということであって、外交ルートで通報する場合には、処分を行い、それと名前等確定した事実に基づいて正式に通報したいと思っていたんだという釈明をしまして、その後十二月二十五日ですけれども、具体的な再発防止措置、パイロットの降格処分等について外交ルートで通報してきたということでございます。
  28. 中川昭一

    中川(昭)委員 この件は極めて遺憾であると思いますので、我々としても見過ごすわけにいかないというふうに思います。  ところで、この領空侵犯事件というのは、原因がどうであれ少なくとも日本領土の上を極めて長い時間飛んだ日本の主権に対する侵害であると同時に、もう一つ見逃せないのは、これはアメリカ軍の嘉手納空軍基地あるいはハンセン海軍基地等、アメリカの極東防衛にとって極めて大きな基地の上をソビエト電子偵察機が飛んでいった。偵察活動をしていたのか、あるいは単なる迷走なのか、場合によっては酔っぱらっていたのかよくわかりませんが、少なくともこれはアメリカ軍にとってみても極めてゆゆしき問題である。ゆゆしき問題であるけれども、主権が日本にある以上は第一義的な行動ができないということで、アメリカとしては日本に対して不満を持ちながらも極めて自制した態度で日本に対していろいろな論評、政府、民間を含めて論評されていると思います。それと同時に、アメリカではテレビでもこの事件が報道されたそうでありますし、また韓国や中国でもこの事件が報道されておるということで、自分の国にこの問題が起きたらどうなるだろうかということは、やはりこれは他山の石としてとても無視できるものではないというふうに思うのは当然だと思うのであります。  その中でも特に日米安保条約に基づく日本防衛にとって極めて大きな役割を占めております米軍基地、そしてアメリカそのものにとってもこれは極めて大きな、無関心でいられない、ある意味では当事者と言ってもいいのだと思います。そういう意味で今回の事件に関して米軍との間でどのような連絡をとられたのでありましょうか。
  29. 岡本行夫

    ○岡本説明員 本件領空侵犯は言うまでもなく第一義的には我が国の主権に対する侵害でございまして、この問題はまずその角度からとらえられるべきであることは当然でございます。他方、先生御指摘のように、領空侵犯機が通過いたしました下には嘉手納基地を初めといたします米軍の重要施設があったわけでございます。それに対する米側の懸念が私どもに非公式なレベルで伝えられてきていることも事実でございます。  我が国領空侵犯に対処する日米の体制でございますけれども、これは少し古くなりますけれども昭和二十八年に岡崎・マーフィー往復書簡というのがございまして、時の外務大臣の岡崎さんから合衆国側に対して、領空侵犯が発生した場合には米関係当局においてこれを排除するための有効適切な措置をとらんことを要請いたしますということを要請いたしまして、これに対しまして米側から、安保条約のもとで必要かつ適当とされる一切の可能な措置日本政府の実際的援助のもとにとるよう極東軍総司令官に命令いたしましたという返書がございます。ただ、それから我が国自身の防空体制の整備が進みまして、現在は自衛隊が専ら我が国の防空の任に当たって、米軍のそのための援助を要請するということは行っておりません。ただ、その後行われました取り決めの中で米軍との間では連絡体制がとられておりまして、今回の場合も那覇基地に設定されております防空連絡員から、これは自衛隊の方でございますけれども、米軍にレーダー航跡情報の通報があったというふうに私ども承知しております。
  30. 中川昭一

    中川(昭)委員 この岡崎・マーフィー書簡でありますけれども昭和二十八年、いわゆる日本が実質的に主権を守るための自衛力を持ち始めたときからのものでありますが、今担当課長がおっしゃられたようにあくまでも日本の防空能力が向上するということが前提だということだと思います。そういう意味で今回の事件が、単に防空能力を発揮して、早目に見つけてお出迎えをしてお供をして、そして十一分一緒に飛行機が飛んでお送りをしたということが、この岡崎・マーフィー書簡の本来の目的に合致するのかどうか。こんなことじゃだめだから自分たちは自分たちでやるということになれば、これはまさにある意味では主権の侵害にもなりかねない微妙な問題だと思いますけれども、しかし実質が日米安保条約に基づいて日本に正当の目的のない航空機が不法に入ってくることを防止するのが目的であるとすれば、私は二十八年のときの趣旨からいってももう一度考え直さなければいけないのじゃないかという感じがしますけれども、この辺はいかがでしょうか。
  31. 岡本行夫

    ○岡本説明員 先ほど御説明いたしましたとおり、今日我が国航空自衛隊は自身で領空侵犯に対処する能力を十分持っているということでございまして、実際上、米軍に来援を要請するという事態を私ども必ずしも想定しておりませんが、ただ、先ほど御紹介いたしました岡崎・マーフィー書簡の趣旨自体は、なお不測の事態が発生しましたような場合には米軍の行動を必要とする場合もあるわけでございまして、安保条約の第六条に基づきまして米軍は我が国の安全のために施設、区域を利用しつつ駐在しているわけでございますから、重大な侵犯等の場合には将来の理論的な可能性といたしまして米側に要請する可能性は常にあるということでございます。
  32. 中川昭一

    中川(昭)委員 この事件のもう一つの大きな側面といいますのは、ある意味ではマスコミはこれが一番大きいのじゃないかと取り上げておりますけれども、同日の数時間前に例の米ソ首脳会談で両国の軍備管理についての大きな合意があった、その直後になぜこんなことが起こったのだということでありました。だからこれは全くの偶然というか、迷走というか、さっきもちょっと申し上げたように一部マスコミでは、機長が酒を飲んで酔っぱらっているんだというような論調さえ出ておるわけでありますけれども、私は過去のいろいろな事件を見てみますと必ずしもそういうふうに結論づけることはできないのじゃないか。  例えば、ことし二月のシュルツ長官が訪ソする前に、黒海で米国の艦船ソ連艦船がぶつかった事件。あるいはまたソビエトのシェワルナゼ外相が訪米する前にNATOのニコルソン少佐がNATOの第一線でいきなり東ドイツの兵士に射殺されるというような事件があった。これはまさに友好ムードとそれから緊迫ムードをやはり総合して考えなければならないのじゃないかというふうに考えるわけであります。そういう中で今回の米ソ首脳会談も、これは世界的に見れば極めていい話だと思いますけれども、それがこういう国際法上極めて許されない事件がほぼ同時に起こったということは、これは偶然と片づけたいところでありますけれども、我々日本安全保障を真剣に考えてみますと、どうも過去の例からいってそうではないんじゃないかというふうに思わざるを得ないような過去の例が幾つもあるわけであります。  そもそも平和攻勢、世界を平和にしょうというのは我々もだれもが思っておることでありますけれども、平和に最終的にたどり着くバスに乗りおくれるな、世界の緊張緩和のバスに乗りおくれるなというのが合い言葉になっておりますけれども、これは同じバスに乗ることが目的ではなくて、その緊張緩和の目的地に着くことが目的でありまして、それは米ソ間のバスと、あるいはアジアのバスとそれぞれ目的は同じにしたって、何も同じように一緒くたにバスに乗る必要はないのじゃないかというふうに思うわけであります。そういう意味で今回の領空侵犯事件が、むしろINFというか、米ソ首脳会談の成功によって隠されてしまうということが私にとってはこれは極めて無視してはならない事件だと思うわけであります。  今いろいろ申し上げましたけれども、こういう観点から今回の領空侵犯の本質は一体何だったのだろうか、今後に与える教訓というのは日本の外交にとって何であるかということをひとつ外務省からお伺いをしたいと思います。
  33. 茂田宏

    茂田説明員 今回のソ連機による沖縄領空侵犯は、まさに先生御指摘のとおりに米ソ首脳会談が開かれている最中に起こったことであります。ただいま先生御指摘のとおり、米ソ間での話し合いのときにもいろいろなことが起こったという経緯がございます。私は、INF妥結、それから戦略核兵器の半減交渉というようなものが今進展してきておりますけれども、結局、戦後の国際政治の基本構造といいますか、米ソ関係を中心とする東西間の対立という基本構造が変わっていないということがあるのだと思います。そしてその変わらない基本構造の上で、その対立のレベルをどこまで下げていくか、ないしはその対立が武力の紛争等に発展しないようにどういうふうに運営していくかということが今米ソ間で行われ、かつ東西間で行われている話し合いであろうと思います。したがって、本質的に現在行われている過程の中には、そういういわば対立と、それからその対立を何とか運営しようという二つの要素が含まれている。それが、ある局面ではニコルソンに対する射撃、沖縄侵犯というようなことになって出てくるものであろうと思います。というのは、そういう対立関係があり、かつ極東におけるソ連軍の活動の活発性というものがこの事件の大きな背景としてあることは否めないだろうというふうに思います。  ただ、この事件そのものについて、例えば米ソ首脳会談をサボタージュするために行われたのではないかとかいろいろな憶測があります。こういう点については率直に言ってよくわからないということだと思います。したがって、そういう点に関しましては、外務省としましては今次の事件に関しては米ソ首脳会談を念頭に置いてそれに影響を与えることを故意に目的として行われたものというようなことを言うだけの証拠を持っていないということであります。
  34. 中川昭一

    中川(昭)委員 今回の事件がサボタージュなのかどうなのか、もちろん私もわかりませんし、外務省御当局もわからないと思いますが、八三年の大韓航空機のときも、あれは別に政府最高首脳が指令を出して五百キロも領空侵犯したからやっちまえとやったとは私もどうも考えられないわけでありますが、しかし、現場のある程度責任者あるいは少なくとも実行したところの指揮官が冷静な判断のもとで撃墜したことだけは間違いないわけでありますので、そういう意味政府としては、平和攻勢ですよ、あるいはゴルバチョフさんは非常にいいことを言っておりますよ、だから心配はないということではなくて、少なくとも現場では撃墜をした、民間機であることで撃墜した。  あるいは今回も実際に機長がどういう状態だったのかわかりませんけれども、しかし、ごめんなさいで済むのであれば警察は要らないという言葉があります。政治の舞台というのは、結果において我が国がどう見られているか。特に友好国から見てどう見られているか。日米安全保障条約があり、そしてそのもとで日本必要最低限防衛力と、そして世界じゅうの国々とできるだけ仲よくしていこうということと、日米安全保障条約という三つの柱があるわけでありますけれども、その日米安全保障条約を有効に機能させる信頼関係に傷のつくような体制を少なくとも日本外国から見たらとっておるというふうに見られておることは私は極めて遺憾なことではないかと思うわけでありますけれども、その辺について外務省の御答弁をお願いします。
  35. 岡本行夫

    ○岡本説明員 ただいまの御議論は私どもとしても常々心に踏まえておることでございます。日米安保体制のもとで有事の際にはその兵士たちの命を賭して我が国を守るべき立場にある同盟国、米国に対しましてまず私どもとして要求されておりますことは、我が国自身の国防の努力、そしてそのための体制の整備であります。今回の件はともかくといたしまして、私どもの現在のそのような体制というのは米国に大きな信頼感を持って迎えられつつあるところでございます。  それからもう一点、先生の御指摘の中にございました外からどう見られるかという点が大事なことは申すまでもございません。我が国自身のそのような国を守る体制、決意というものそのものがこのような事件の再発を抑止する力になる、私どももそのような認識でおります。
  36. 中川昭一

    中川(昭)委員 先ほども防衛庁にお伺いしましたが、今回の事件の反省の上に立って日米間であるいはまた日本の外交政策の中で今後に向かって何か体制を見直す、あるいはまた考え方を変えるというようなことはあるでしょうか。
  37. 瓦力

    瓦国務大臣 我が国防衛政策、なかんずく日米安保体制の信頼性を維持してまいる、そういう中で、今委員質問のありましたようにすき間のない体制は今後一層の努力をいたしましてつくり上げていかなければならぬ、防衛大綱のもとでそうした主体的な努力というものをなしていかなければならぬということで今日努力をしておるわけでございます。  また、我が国は平和であること、さらに自由を確保してまいること、さらに民主主義という今日の体制というのは私は大変貴重なことだと思いますし、この体制を私どもはしっかりと守っていくことが重要なことでございます。何から守るかといえば、まさにこうした高い価値感、これを国民理解を得てしっかり守っていくということに尽きるわけでありまして、また外からの侵犯に対しまして毅然たる態度をとる、そしてまたその備えを怠ってはならないということは先ほども申し上げたところでございます。  こういう観点に立ちまして先般のソ連機による我が国侵犯事件というものを重く受けとめましていかにあるべきかということも検討してまいるわけでございますが、いずれにいたしましても我が国の平和を維持して、なおかつ他国が我が国侵犯し得ない、そういう体制をつくり上げるということは広く国民の力を必要とするわけでございますので、防衛政策を進める上でさような努力を一層傾注してまいる、私はそのことが大切かと考えておるわけでございます。  その他のどう取り組むかの課題につきましては、これまた先ほど防衛局長からも答弁がありましたが、これが一機、二機というような状況であれば現在の体制でもこれを排除し得る能力を持ち合わせておるわけでございますが、機数がふえるというようなことになりますとまだまだ考えてまいらなければならない問題もあるわけでございまして、そういう点も踏まえながらまた一層研究をさせたいと考えております。
  38. 中川昭一

    中川(昭)委員 今回の問題は三カ月、四カ月前に起こってしまったことを後から質問をしているのではなくて、今後に向かって二度とこういうことを起こさせないようにということで日米の友好、そしてまた本当の意味での日ソの友好のためにも、こういう問題を起こさせないようにするために必要な、もちろん自衛隊内部のまた検討等を含めてぜひともお願いをしたいというふうに思います。  続きまして、余り時間がございませんけれども、この日米安保条約に基づく日本の独立と平和の維持のためにいろいろな方策があるわけでありますが、日米共同訓練についてちょっとお伺いをいたしたいと思います。  この日米共同訓練の目的と過去どのくらい行われたのかということについてお伺いしたいと思います。
  39. 長谷川宏

    ○長谷川(宏)政府委員 お答えいたします。  日米共同訓練は日米それぞれの部隊の戦術技量の向上あるいは米軍との戦術面等におきます相互理解あるいは意思疎通を促進するということを通じまして有事における共同対処能力の維持向上ということを目指すものであります。そして、日米安保体制の信頼性あるいは抑止効果、これに寄与していくということでございます。  過去におきまして相当数の日米共同訓練が行われておりますが、例えば過去三カ年で申し上げますると、六十二年度は三十回、六十一年度は二十五回、六十年度は二十七回というふうなことでございまして、特に陸上自衛隊におきましては五十六年度以来毎年指揮所演習及び実動訓練を実施いたしまして、日米の部隊相互間の連携要領あるいは調整要領の練度向上に努めてきたところであります。なお、過去三カ年度につきましては、陸上自衛隊は指揮所演習を三回、実動訓練を四回、それぞれ計七同ずつ実施してまいりました。特に昨年度は九州の日出生台の演習場や北海道の然別演習場等におきまして初の実動訓練を実施いたしまして、これによりまして北は北海道から九州まですべての方面隊が経験を積むことができるようになりまして、日米の陸上部隊同士の共同訓練は練度の均一化が図られたという点におきまして一つの段階を画することができたもの、こういうふうに考えております。
  40. 中川昭一

    中川(昭)委員 今の局長の御答弁は私は若干不満でありまして、目的について、共同対処能力をアップするために日米でやるんだ、日米安全保障条約に基づいていろいろやるんだ、これはもちろん当然でありますが、私はこれをやるに当たってどうしても地域住民の人たち理解と協力がなくしてはできないだろうというふうに思います。過去の例でも、やろうと思ったけれども地元の大変な反対で中断になったということもございましたし、またやるにしても非常な反対運動の中でいろんな突発事故が起こりながらやってきたということもあるわけでありますから、真の日米安全保障条約の目的というのは、日米間の国民ベースの理解の上に立って日米安保条約があるんだ、日本日米安保があるからアメリカとこうやって仲よくやっていけるんだ、あるいはまたアメリカも日本という国が好きだから、日本人が好きだから日米安保というものが必要なんだというベースで考えていかないと、単に自衛官と米軍との間で一緒に演習をして、そして汗を流して夜一杯やったり懇親を深めるだけでは、本当の意味日米友好あるいはまた日米安保の意味には私は合わないと思うのであります。  そういう意味で、ことしの二月から北海道の然別湖、これは私の選挙区なんですけれども、でやりました。ハワイの軽師団が三百人来られた。そして第五師団と雪中訓練をやりました。これはもちろん担当の師団長あるいはまた連隊長にお話を伺っても、今局長がおっしゃったような共同訓練、各自衛官と米軍兵士との間の向上というものはもちろん大成功だったけれども、何よりもうれしかったのは地元の皆さんが大変な御協力をしていただいた。  この典型的な例が、三百人の隊員全員をその地元の家庭に呼んで泊めたり、あるいは家でパーティーを開く、家庭料理を食べさして一晩泊める。それまでは、もちろん隊舎の中の日本のベッドでありますから窮屈なベッドの中に寝ていたのですけれども、とにかく自宅に呼んで北海道の名物料理だとかあるいはまた日本の名物料理をごちそうしたわけであります。その結果、帰った兵士からいろんな楽しかったというようなお礼の手紙を含めて、もちろんダイク在日米軍司令官を初め何百通という手紙が来ております。その中には、日本人がきょうこうやって大事なお客さんが来たんだから先祖の皆さんに御報告をしょうといって家族が仏壇で先祖を拝んだ、それを見て、私も一緒にやりましょうといって初めて仏壇を一緒に米軍兵士が拝んだといろこと、これが非常にうれしかったというようないろんなエピソードが出ておるわけであります。  やはりアメリカにとっても、アメリカにいる日本人の大使館の人なんかに聞きますと、どこへ行っても日米感情がいいというのは、昔軍隊にいてそして日本に駐留していた人たちのいい思い出をその地域に持ち帰って、日本という国はこういう国なんだよ、非常にいい人たちの国なんだよということがあって初めて真の日米友好というものがあるんだと思います。そういう意味で今回の冬季訓練というのは、ウインドノース作戦につきましてはもっと深い意味で非常にうまくいったということだと私は思いますので、その辺局長、もう一度御答弁をお願いをして、時間でございますので長官からひとつ御答弁をお願いをいたします。
  41. 長谷川宏

    ○長谷川(宏)政府委員 積雪寒冷地訓練につきまして、今おっしゃいましたようなことで地元の方々に大変御協力いただきましたということを存じております。過去にも青森あるいは仙台等におきましても大変歓待されたということを伺うにつけても、日米共同訓練が幅広い動きとして非常に重要な力を持った動きになってきているなということを感じる次第でありますが、この辺は政治家の方のお感じの方がすぐれているかと思いますが……。どうも失礼いたしました。
  42. 瓦力

    瓦国務大臣 中川委員から日米安保体制の各般にわたる御質問がございましたが、実は、さきに行われました日米共同訓練におきまして帯広で大変お世話になった。私は、日米安保体制の信頼性を確保してまいる、そういう意味で共同訓練は大切でありますし、隊員にとりまして練度の向上ということを踏まえましてもこれは積極的に取り組んでいかなければならぬことでございますが、しかし、地域住民の方々の理解を得る、協力を得るということは本当に大切なことでございまして、帯広におきまして三百名、それも常夏の国と言われるハワイから参りました部隊に対しましてホームステイであるとかあるいはそれぞれ自宅にお招きをして郷土料理を振る舞う、こういうようなことはかつてないことでございまして、私は今もここにその当時の新聞を持ってまいっておるわけでございますが、これこそ日米共同訓練の実を上げるものだと実は感謝をしておるわけでございます。  よく地域を理解していただくと同時に日本そのものを理解していただく、そういう中で西側は共通の意識を持つとかまた安保体制を維持するというより以上に、日本に対する深い愛情といいますか、日本という国を支援することに値する大切なことだ、こういうぐあいに理解をしていただくことが、市民レベルでそういう御協力をいただくということは実は大変ありがたいことだと感謝をしておるわけでございます。なれない手でもちつきをやったとかということをその後聞きましたが、えてして私ども一生懸命防衛政策に取り組んでおる者にとりましては、かような記事というものはニュース記事になりにくい今日でございますが、関係紙が大変大きく報道をいたしておりますし、また地域の皆さんからも今度の共同訓練は非常にうまくいったという、市民サイドからも評価いただいたことにつきましてこの席をかりまして御礼を申し上げる次第でございます。かような訓練がこれからも常続的に行われればありがたい、そういう面での努力もしてまいりたいと考えておる次第であります。
  43. 中川昭一

    中川(昭)委員 終わります。
  44. 箕輪登

    箕輪委員長 次に、渡部行雄君。
  45. 渡部行雄

    ○渡部(行)委員 最近、日本防衛力の増強というものを見ておりますと、一体これがどこまで進んでいくのか、その限度がわからないくらいになってきておるわけでございます。  そこで、この辺で、もう一遍憲法というものをよく考えてみる必要があるのではないか。そこで、私自身も憲法を読み直していろいろ考えてみたわけですが、憲法には軍事力というものは否定しておる。交戦権を否定しておる。しかし、自衛権というのは憲法上何も触れていない。私は今、自衛権という基本的な権利と憲法上の交戦権を否定している軍事力とを混同しているのではないか、こういう感じがしてならないわけです。  そこで、自衛権というのは、これは法律以前のもので、あらゆる生物が持つ基本的な権利と申しましょうか、自然権と申しましょうか、これは何ら法律で規定する必要はないわけです。それなのに、なぜ憲法がこの交戦権と戦力というものについて否定しているのか。これはいわゆる自衛権という大きな一つの枠の中で、一部分である軍事力というやり方で身を守る、国を守る、そういう方法論について私は憲法が規定しているものだと思うのです。したがって、憲法は特に国家間の問題処理については外交上処理すべきであるということを指摘しておるわけでございまして、軍事力によって処理するという考えは全く否定しておるわけです。  そういう点で、よく、今の自衛力の程度では合憲である、これ以上進むと憲法上問題がある、こういうような答弁をされておるようですが、私はその論理がわからないのです。なぜこの程度の自衛力という、しかもそれは自衛力というだけでなしに、それは直ちに戦力として評価できるわけですよ。こういう一つの点について今はっきりとすべきじゃないか。私は、少なくとも自衛権の中の防衛力として位置づけていくならば、それは国民の認知を受けるべきである、そうでなければ憲法上違反を免れないと思うのです。そういう点について長官のお考え方をひとつ披瀝していただきたいと思います。
  46. 依田智治

    ○依田政府委員 長官に先立ちまして、憲法の話がございましたので、法制局も来ておられますが、ちょっと防衛庁の方から申し上げますと、私どもとしましては、憲法九条は我が国が主権国として持つ固有の自衛権まで否定したものではない。したがって、この自衛権の行使を裏づける自衛のための必要最小限の防衛力を保持することは同条の禁ずるところではないということで一貫してきておるわけでございますが、これは政府等で、しばしば国会等でも一貫して申しておるところでございます。  いろいろ国民の認知というようなお話もございましたが、私どもは、本憲法の基本的な理念というものに従いまして、毎年毎年国会等の大変な御審議等もいただき、いろいろな形で国民の支持も得ながら今日まで防衛力の整備我が国防衛という任務を全うしてきておりますので、まずその立場を申し述べさせていただきたいと思います。
  47. 大出峻郎

    ○大出政府委員 憲法第九条に関連をいたしましたお話が出ましたので、重ねて私の方からも申し上げたいと思います。  憲法第九条は、いわゆる戦争を放棄しておる、いわゆる戦力の保持を禁止しておるということでありますが、これによって我が国の主権国として持つ固有の自衛権まで否定をしておるものではなく、自衛のための必要最小限度の実力を行使するということは認められているところであるというふうに考えております。  また、この自衛権の行使を裏づける自衛のための必要最小限度の実力組織を保持するということも憲法九条の禁止するところではないというふうに考えておるわけであります。自衛隊我が国の平和と独立を守り、国の安全を保つための不可欠の機関でございまして、さきに申し上げました自衛のための必要最小限度内の実力組織でございますから違憲のものではないということは、従来から政府はこれを表明してきておるところでございます。
  48. 渡部行雄

    ○渡部(行)委員 長官は……。
  49. 瓦力

    瓦国務大臣 ただいま法制局並びに官房長より答弁をいたしましたが、我が国が主権国として固有の自衛権までも否定しているものではございませんで、我が国の自衛権を裏づける自衛のための必要最小限度の防衛力を保持することは許されておる。他方、この範囲を超える実力を保持することは許されないということは言をまたないわけでございます。  具体的な我が国が保有する防衛力、これは予算であるとかそうしたことにおきまして、また法律、こうした点におきましては国会にお諮りをする。まさに民主国家におきまして国会国民を代表する機関でございますから、国会の御審議を通じまして審査される、こういう手順を経ておるわけでございます。よって私は、この憲法の解釈につきまして、今ほど法制局並びに官房長からも答弁ありましたとおり、主権国家として固有の自衛権、これを否定するものではない、必要最小限度の自衛のための防衛力を保持することができる、このことにつきまして、かような認識をいたしておるものでございます。
  50. 渡部行雄

    ○渡部(行)委員 私も、自衛権というのは全然否定していないんです。自衛権というその範疇というのは、これははかり知れないほど広いもので、文化も自衛権であり、経済も自衛権であり、その他もろもろの要素があるわけですよ。ただ、そういう中で、事軍事に対してのみ憲法は触れて、これはやっていけないと。これは敗戦の反省から来ているのですね。ですから、その敗戦のときの日本国民の心情というものをもう一度振り返ってみれば、この憲法九条というものは理解できると私は思うのですよ。  ただしかし、それでも守り切れない、その他もろもろの、総動員してもその要素では守り切れない、どうしても軍備が必要だ、軍備によらなければ守り切れない、こういう場合には、そういう状況国民に説明して国民の了解を得なければならない。そこで初めて憲法というものの精神が防衛、自衛というものに結びついていくと思うのですよ。ところが、そういう手続は一切なされていないわけです。ただ、国会議員というものを通して議論はされております。国民の代表だからという理屈はつくでしょうけれども、しかし、こういうものは間接的なものでなしに直接的に国民に問う必要がある、また、そういう手続をする必要がある、こういうふうに私は思いますが、その点はいかがでしょう。
  51. 大出峻郎

    ○大出政府委員 先ほども申し上げましたように、自衛隊は自衛のための必要最小限度内の実力組織であるということで、これは違憲のものではないということは従来から政府はしばしば申し上げてきておるところであります。このように、自衛隊が合憲であり、しかもその存在が国会により制定された自衛隊法というものに基づきまして、かつその財政的な裏づけは年々の国会の議決した予算というものに基づくものでございますから、自衛隊の存在というものは法律上は何ら問題がないというふうに考えておるわけであります。  国民的支持というような面の御指摘がございましたが、これはいわば政策論でありまして、法律論としては先ほど申し上げたとおりというふうに考えております。
  52. 渡部行雄

    ○渡部(行)委員 それでは、必要最小限度ということは一体どういう限度ですか。自衛ということ、守るということは負けないということじゃないでしょうか。逆に言うと、勝つことでなければならないということでしょう。そうするには最小限度などという言葉が出てくるはずがないのですよ。最小限度とは一体どういう限度ですか。
  53. 大出峻郎

    ○大出政府委員 憲法九条の解釈といたしまして、必要最小限度という問題があるわけであります。  その一つは、まず、憲法九条第一項の解釈として、ここでいわゆる戦争を放棄しているけれども、しかし、必要最小限度の実力の行使は認められる、すなわち自衛権は認められておる、否定をされていないという意味での必要最小限度という問題が一つあるわけであります。  もう一つは、九条第二項によりまして、いわゆる戦力を禁止いたしておるわけでありますが、禁止されているところの戦力といいますのは、言葉どおりのすべての戦力、戦う力というものを禁止しているということではございませんで、必要最小限度の実力組織、それを超えるものを禁止いたしておるというふうに考えておるわけであります。  そこで、その必要最小限度ということについての問題でございますが、この必要最小限度というのは何かということは、具体的に数量的にこれを申し上げるというわけにはいかないと思います。これは周辺諸国の軍事情勢とかその他の国際情勢あるいは科学技術等の諸条件によって判断されるべきことでありまして、これを一律定量的に申し上げるということはできないことであると思います。  しかし、その判断につきましては、これらの各種の情勢というものを考慮に入れて判断することになるわけでありますが、防衛庁なり安全保障会議なりあるいは閣議なり、さらには予算、法律案等の審議を通じまして国民の代表である国会においてコントロールされることになる、こういう形で必要最小限度内であるかどうかということが判断をされていくということになろうかと思います。
  54. 渡部行雄

    ○渡部(行)委員 いや、必要最小限度が、それでは世界でどのくらいになっているかというと、アメリカのロックフェラー上院議員の報告では、世界第四位となっていますね。そして、今度アーミテージ米国防次官補の発言では、第三位に近づきつつあるとなっているのですね。これが必要最小限度の防衛力と言えるでしょうか。  私は、そういう国民をごまかすようなことはもうやめるべきだと訴えるわけですよ。そういう言葉の上でごまかすのでなくて、もうこうなんだ、裸になって、国民がこれを認めるか認めないか、そういうことをはっきりすべきではないですか。そして、日本の今までの防衛戦略の推移を見ても、一番最初は領海防衛を唱えておって、そしてだんだん、今度はシーレーンだ、さあ一千海里だ、今度はインド洋までというようなことまで議論されてきておる、そして、防衛に関する空母はつくってもいいのだ、最初は空母は攻撃兵器だからつくらないと言っておったのが、今度はいいのだという理論にどこからなってきたのですか。その辺に対してどうお考えですか。
  55. 依田智治

    ○依田政府委員 必要最小限というのは、我が国が独立国である以上、我が国を守るために必要最小限のものは持たなければ守れないという問題でございますが、しかし、我が国の場合には、国防の基本方針ということで四本の柱を立てております。外交とか内政を安定しつつ日米安保体制を堅持し、必要な最小限の防衛力整備を進めつつ我が国の安全を守っていくということでおるわけでございます。現在「防衛計画の大綱」に基づく中期防というようなことで、今一%ちょっとのGNPの中での防衛力整備をやっているわけでございますが、我々としては我が国を守っていくために現在の状況下における必要最小限の努力ではないかというように考えております。  この必要最小限についての考えが年々変わってきておるのではないかということでございますが、我々としましては、自衛、必要最小限というものは、先ほど法制局の方からも話がございましたように、具体的にはやはりそのときの国際情勢とか軍事技術水準等によって相対的にある程度変わるものであって、数値でここが必要最小限だというものではないと考えております。そのときどきの情勢の中で、我が国として我が国を守っていくための必要ぎりぎりのところはどこか、これは毎年国会等でも審議を受けながらやってきておるというようなことでございまして、空母の問題につきましても御指摘がございましたが、我が国が専守防衛に徹して軍事大国にならない、平和憲法のもとにこの政策は一貫してとっておるわけでございます。したがいまして、ICBMとか攻撃的な、他国に壊滅的な打撃を与えるような兵器は持たないということで一貫してきているわけであります。  先般来の国会で空母の問題が、特に防御的な面ではいいのではないかというような話が出ましたが、これは全く理論上の問題としまして、例えば全く相手攻撃するという要素がない対潜のヘリコプターみたいなものを積んだ空母、事実上そんなのは一発弾を受けると死んじゃいまして余り現実性がないわけですが、理論的にはそういうことも考えられる。しかし、我が政府としては現在これを持つ考えがないというようなことで、我が国の必要最小限の中における防衛力整備という問題につきましてはずうっと一貫して私どもは堅持してきておるというように考えておるわけでございますので、ひとつ御理解を賜りたいと思うわけでございます。
  56. 渡部行雄

    ○渡部(行)委員 理論的には空母が防衛の兵器として成り立つと言われましたけれども、それではその防衛の空母というのは一体どういう形の空母なんでしょうか。そして空母というのは全体で普通どのくらいの人員がそこに乗って任務についているのか、そういうことについて少し御説明願いたいと思います。
  57. 小野寺龍二

    ○小野寺政府委員 ただいま空母のいろいろな種類について御質問ございましたのでお答え申し上げます。  空母につきましては世界で大体九カ国が持っておりまして、隻数にいたしますと大体三十数隻ないし四十隻ぐらいあるのではないかと存じます。九カ国と申しますのは米、ソ、英、仏のほかにイタリー、スペイン、インド、ブラジルそれからアルゼンチンというような国々も持っております。ただ、我々がいつも空母として頭に描きますのはまさに攻撃型空母と申します主としてアメリカが持っております空母でございますけれどもこれは大きさにいたしますと、基準排水トンで例えば日本に参っておりますミッドウェー、これは小さい方でございますけれども五万トンをちょっと超えているぐらいでございます。大きいもになりますとニミッツ級というのが八万トンぐらいの大きさになっております。乗員はミッドウェークラスで航空要員を除きまして大体二千八百名、ニミッツクラスですと三千名を超えております。それから、こういったような攻撃型空母になりますと航空機を七十機とか八十機とか積んでおリますけれども、そのうちの相当数がまさに攻撃機という形のものでございます。  他方、例えばイギリスの空母インビンシブルというのは、これは垂直離着陸機を積んでいる空母でございますけれども、これになりますと、大きさにいたしますと一万六千トンぐらい、乗員にいたしますと航空要員を除きまして六百七十名ぐらい、航空機は二十機ぐらいですけれども、いわゆる垂直離着陸の飛行機でございます。さらに小さなものになりますと、例えばフランスのジャンヌ・ダルクという、これはヘリコプター空母でございます。ヘリコプター空母というのは、先ほど来官房長からも答弁ございましたとおり、主として潜水艦作戦を行うための空母でございます。これは大きさにいたしますと一万トン級、乗員にいたしますと大体八百名などが乗っております。装備といたしましてはヘリコプターが八機というような形になっております。スペインそれからインドといったような国々が持っております空母というのは、いずれもアメリカのようなああいう攻撃機を積んだものというよりは、むしろこういうヘリコプターを積んだ小型の空母ということでございます。     〔委員長退席、有馬委員長代理着席〕
  58. 渡部行雄

    ○渡部(行)委員 フランスが小さなヘリコプター空母を持っているというのは、攻撃型空母とともに作戦できるから意味があるので、全く攻撃力のない空母を走らせて、そして向こうから戦闘機攻撃されて、一体ヘリコプターで守れるでしょうか。私はそういう考え方自体が非常におかしいと思うのですよ。  結局最初はそういうことで、これも防衛なんだ、シーレーンを守るためにはどうしても対潜水艦作戦をしなくちゃならない。しかも潜水艦がうようよ海底を走っている中で、ヘリコプターだけの空母でやっていけるのですか。そういう理論は私はどうも理解できないのですよ。     〔有馬委員長代理退席、委員長着席〕
  59. 小野寺龍二

    ○小野寺政府委員 ヘリコプター空母を持っております国々がどのような運用をしているか私ども必ずしも承知しておりませんし、先生御指摘のとおりヘリコプター空母程度であると非常に脆弱性がございまして、簡単に攻撃されてしまうというような問題も確かにあると存じます。ただ、こういった形の空母を持っている国々としては、恐らく相手国に打撃を与えるというような意図は全然ない国々でございますし、恐らく船団護衛のために、しかも陸上基地からの距離が余りにも遠過ぎて船団護衛なんかが十分にいかないというような観点から、対潜作戦を行うプラットホームとして恐らく空母を使っているということだと思います。したがって、本質的には、我が国の例えばフリゲート艦でありましても対潜のヘリコプターを二機、三機持っているといったようなものを一つの船に集めて大型にして作戦に当たっているという運用の仕方ではないかというふうに想像されます。
  60. 渡部行雄

    ○渡部(行)委員 大体、国の交戦権を認めないという枠のはまっていない国では自由だと私は思うのですよ。交戦権を認めないという枠のはまっている中で、どうして空母が必要なんでしょう。それで、どういう作戦を展開するのですか。例えば、先ほども領海侵犯の話がありましたけれども領海侵犯されて日本自衛隊航空機と戦闘が起こった、これは交戦ではないのでしょうか。戦闘をやっても、これは交戦と言わないのですか。その辺は何と言うのですか。
  61. 依田智治

    ○依田政府委員 交戦というのは、事実上戦いを交えるという意味では自衛のためでも交戦はあるわけでございますが、法制局がおられるのであれですが、交戦権と言っております場合には、これまでいろいろ国会等でも答弁していただいておりますが、ただ単に戦いを交える権利という意味ではなく、交戦国が国際法上有する種々の権利の総称である。単に相手国兵力の殺傷のみならず、相手国領土を占領し、そこに占領行政をしくとか、中立国船舶の臨検、敵性船舶の拿捕等の点も含むものというように解されておるわけでありまして、私どもが現在やっております我が国の自衛というためのシーレーン防衛等のいろいろな検討につきましても、それはあくまでも自衛のための必要、もし万が一の場合にその必要な範囲での交戦というか、そういうことを前提としているわけでございます。
  62. 渡部行雄

    ○渡部(行)委員 それでは、仮に日本はどんなことをされたとしても宣戦布告というのはあり得ないわけですか。
  63. 依田智治

    ○依田政府委員 これがどういう形なのか、私どもも検討したことはありません。我が国はあくまでも専守防衛ということに徹しておるという立場で行動するという基本原則に立っておりますので、その範囲で、その時点でそれぞれ考えることになるであろうというように考えているわけでございます。
  64. 渡部行雄

    ○渡部(行)委員 宣戦布告というのはあり得ないのかと聞いているのですが、その辺はっきり、あり得ないならあり得ない、そうすると、攻撃に対して抵抗戦だけをやるのだ、そう言うならそれなりに話がわかるけれども、一体その辺はどうなのですか。国の意思として戦争をやっていくのか、攻撃を受けた部分的なところで抵抗戦をやっていくのか、その辺はどうなのですか。
  65. 依田智治

    ○依田政府委員 ちょっとこの宣戦布告という国際法上の観念について深く研究しておりませんので、有権的な解釈ができなくて申しわけないのですが、先ほど申し上げましたように、私どもとしましてはあくまでも専守防衛我が国を守るために必要な個別的自衛権というものの発動の範囲で専守防衛に徹して我が国を守るということでございまして、その際に、相手攻撃してきた場合にこちらがやむを得ず受けて立つということ、それは宣戦布告という形式的行為がないとできないのか、それとも事実上の行為でできるのか、このあたりのところにつきましてはちょっと今お答えする知識を持ち合わせておりませんので、御寛恕をよろしくお願いしたいと思います。
  66. 渡部行雄

    ○渡部(行)委員 法制局では、法的に考えてどうですか。
  67. 大出峻郎

    ○大出政府委員 ただいま、自衛権の行使といわゆる戦争ということに関連した御質問であるかと思いますが、自衛権といいますのは、もともと外国からの急迫不正の武力攻撃に対しましてほかに有効適切な手段がない場合、これを排除するために必要最小限度の実力を行使するという考え方、概念であると思います。そういう意味の自衛権を我が国は行使することが憲法上否定をされていない、こういうことで考えております。
  68. 渡部行雄

    ○渡部(行)委員 同じことを繰り返しているのですね。私の質問は違ってきているのですよ。変化してきているのですよ。それに対して同じ答弁で、あなた、法制局らしくないじゃないですか。法律家というのはもっと厳格に人の質問答弁しなくちゃならないでしょう。この宣戦布告というのを、いろいろ国際法上の法律的な解釈とか、あるいは自衛隊の方では今までの戦争の歴史の中における宣戦布告というものはどういう役割を果たしてきたとか、そういういろいろなものがあるでしょう。そういう中から答えてもらわないと、ただ同じことを、憲法解釈と同じようなことを何回繰り返したって、ちっともそれは答えになっていないじゃありませんか。
  69. 大出峻郎

    ○大出政府委員 大変失礼をいたしました。  先ほど申し上げましたように、自衛権の概念というものはそういうことでございまして、それを我が憲法九条のもとにおいては否定をされていないということでございまして、いざという場合にはこういう自衛権の行使をする。具体的には、自衛隊法の七十六条によって防衛出動という手続がとられまして武力の行使が行われる、こういう形になるわけであります。  ただいまお話のございましたいわゆる宣戦布告というものは、従来国際法上のいわゆる戦時国際法的な考え方でできている概念であるかと思いますが、そういう意味の宣戦布告というようなものは、我が国においてはこれを行うことはないというふうに考えております。
  70. 渡部行雄

    ○渡部(行)委員 それでは、その自衛隊法の七十六条ですか、これの発動がされれば日本はその国と外交の断絶をするのかどうか。これは外務省からお願いします。お答え願います。
  71. 岡本行夫

    ○岡本説明員 突然のお尋ねでございまして、私から答弁申し上げることが適当かどうか存じませんが、他国との間に設定されております外交関係を断絶するかどうか、これはあくまでもそのときどきの政府判断によりまして具体的な状況において行われることでございます。戦時国際法規というものが、交戦権を否定しております我が国におきましてそのまま適用されることがないことは先ほど法制局の方の御答弁でもございましたが、戦時国際法上宣戦布告、それがそのまま外交断絶に至るといったような形態がそのまま我が国の場合に観念されるわけではございませんで、それはあくまでもそのときどきの政府が、我が国の置かれました国際環境、その事態の深刻性等々を総合的に判断して決めるものであろうと存じます。
  72. 渡部行雄

    ○渡部(行)委員 そこで、これははっきりしておきたいと思うのですが、先ほど理論的には防衛的な空母もあり得ると言われて、しかし今はつくる意思はない。今はつくる意思がないのか、将来についてもそういう空母は持つ意思がないのか、その辺はっきりしていただきたい。
  73. 瓦力

    瓦国務大臣 先ほど来答弁をいたしておりますが、防御型のものであれ空母を持つ計画、これは現在有していないわけでございまして、防御型の空母がどのようなものか、具体的検討は行っておるわけではございません。先ほど国際参事官から、かような空母がそれぞれの国にある、かようなことは申し上げておるわけでございますが、我が国は現在その空母を有するという計画は持っていないわけでございまして、よって、具体的な検討は行っていない。  将来につきましてどうかということでございますが、将来のことにつきましては、私、将来にまでわたりまして答弁するものを持たないわけでございまして、現在その計画を有していない、かようなことで御理解いただきたいと思います。
  74. 渡部行雄

    ○渡部(行)委員 そこで、先ほど、情勢によって最小限度の防衛力を保持する、こういうふうに言われましたが、それじゃ今国際情勢は非常に緊張が高まっているでしょうか、あるいは日本の周辺が非常に危なくなってきておるでしょうか、その辺の判断ですね、それをひとつお聞かせ願いたいと思うのです。INFの締結の問題など、私どもは、国際情勢は非常にいい方向に、いわゆる平和の方向に、軍縮の方向に傾きつつある、こういうふうに考えておるのですが、それとは逆な方向に考えておられるのかどうか。
  75. 小野寺龍二

    ○小野寺政府委員 世界情勢は、確かにINF合意が締結されたということ、米ソ間で戦略核兵器の五〇%削減交渉が、これは今度のモスクワにおける首脳会談で締結までこぎつけるかどうかというのは問題はございますけれども、確かに交渉が進展しているという事実はございます。さらには、明日アフガンからのソ連の撤兵に関する合意というものがジュネーブにおいて調印されるというようなこともございます。これらはいずれも、米ソ対立の中でそれをどうやってマネージしていくかということについて米ソ間で話が進展してきた。非常に結構なことではないかと思っております。この点本国会におきましても、防衛庁長官からも何回も、我が国として現在行われている米ソ交渉の進展を評価するということを申し上げている次第でございます。  ただ、今まで合意されております分野というのは、米ソの全体的な対立の中でごく一部のものでしかないわけでございます。INF一つとりましても、核兵器のうちの四、五%が削減されるだけにすぎないわけでございます。戦略核兵器五〇%が実現いたしますと核兵器の数といたしましてはかなり減るのではないかという感じがいたしますけれども、それにいたしましても残りの戦略核がございますし、INFでカバーされない、戦略核交渉でカバーされないもろもろの核というのは依然として残るわけでございます。その一部はアジア、極東にもあるわけでございます。さらには通常兵力の問題。これは特にヨーロッパにおきましては不均衡が非常に大きいということ、これがかえって不安定を招くという懸念も一部でなされているわけでございます。アジア、極東を見ましても、いろいろな交渉の進展にかかわらず、現実に我が隣国ソ連の極東に配備いたしております戦力というものは、依然として強くなりこそすれ、弱まっていくということはございません。量さらには質においてその改善はされておるわけでございます。  そういった観点から、国際情勢の非常にいい動きは確かにございますけれども、全体として緊張が緩和されたという状況ではないというふうに判断せざるを得ないと思います。緊張の中で、その緊張をどのようにマネージしていくかということにおいて一部の進展が見られるというふうに見てよろしいのではないかと思います。
  76. 渡部行雄

    ○渡部(行)委員 国際情勢を見きわめるのは、特に政治家の任務だろうと思うのです。  そこで、今のこの世界というのは、やはり何といってもアメリカとソ連というこの二大超大国がどういうふうに世界の将来を考えているか、このことにかかわりなしには私は考えられないと思うのです。そういう点でゴルバチョフとレーガン大統領の会談、そして今度のINF条約の締結、こういう動き、それから軍縮会議の成り行き、今後のいろいろな提案を見ていると、やはり世界は平和でなければならないのだという方向でこの両巨頭が考え始めているというふうに私は考えるのです。ですから、まだ残っているから危ないのだというような考え方でいくと、これは際限のないものになってしまうし、節度のないものになってしまう。  そこで政治家というものは、そういう世界の動きを見通した上で、それに国内の体制をどういうふうにしていくか、情勢に合わせてむだのないような運び方をしていくということが大事だと思うのです。そう考えると、私は今度の予算を見ましても、決して国際情勢が予算上に反映されていないじゃないか、こういうふうに思うのです。しかも、軍備というのは非常にむだ遣いなのです。こういうところに集中的に金を使うならば、もっと平和産業に金を使いあるいは技術開発に金を使い、将来の先端技術をもっと強力なものにしていくとか、そういうところに金を使うということを考えるのが政治家のあり方ではないか。偉い政治家というのはその決断が大事なんです。  東郷平八郎が、あのバルチック艦隊がどこを通るかというときに、最後の決断で対馬海峡を通ると決断した。そこでむだのない戦闘行動を指揮することができたわけです。あれが津軽海峡を通るというような判断をしたら、全くどうにもならないばか将軍になってしまうのです。だから今、日本が決断することは、当面戦争があるのかないのかというその判断なのです。戦争になる可能性があるのかというその判断なのです。それがなければ、なるべくこんなむだな軍備を買い込むようなことをしないで、アメリカの古くなったのを買い込むようなことをしないで、それではもっと技術的にすばらしいものに力を入れたらいいではないですか。私は性能論争をしておるこの国会の姿を見て、ばかばかしく思いますよ。性能の悪い飛行機に乗せて自衛隊の隊員を殺すなら初めから乗せない方がいいのだ。やる以上は性能のすぐれたものにして守らなくてはならないのですから、だからそういう点での技術開発をやっていって可能性を持っていれば、絶対に外国日本攻撃しませんよ。そういうところに金を使うなら私はまだわかる。  ところが、今度の支援戦闘機の話でも、アメリカからぎりぎり押し込まれて、そしてこのF16の改造型をやろうなどという。しかも共同開発でしょう。共同開発の意味は何だというと、日本の技術をアメリカはどういうふうに取得していくかというそのねらいがあるということも忘れてならないですよ。そういう多面的にもっと解釈しながら、そしてむだのないやり方が必要じゃないかと私は思うのです。
  77. 瓦力

    瓦国務大臣 渡部委員から、政治家の判断が大切であるということも踏まえての御質問でございますから、お答えいたします。  国際情勢につきましては先ほど国際参事官から答弁いたしましたが、INF後の国際軍事情勢、このことにつきまして私どもは最大の関心を持ちながら米ソ間の交渉を見守っておるわけでございまして、確かにINFが署名されたということは、我が国といたしまして歓迎すべきことでございます。米ソ超大国が軍備の面におきまして縮小均衡、デタントの方向に確かな歩みを続けてくれるということは我々の願望でもあるわけでございますが、しかし振り返ってみますと、デタントが訪れた、かように考えますと、またソ連におきましてはその間に軍備の増強が行われたりかような歴史も一方におきましてはもう我々の知るところでございますし、また地域紛争等で今日なお決着を見ない問題がたくさんございます。でありますから、我が国といたしましては慎重にこれらの帰趨を見きわめる、そうしたことも踏まえまして米ソ間の交渉というものを私はぎりぎりまで見届ける必要があるだろう、かように考えておるものでございます。  また、我が国防衛力の整備につきましては、先ほど以来答弁申し上げておりますとおり必要最小限度の装備は必要でございまして、これは大綱に基づき、現在中期防のもとにおきましてその努力をいたしておるわけでございます。こういうような点を御理解いただきたい、かように存ずる次第でございます。  またもう一つは技術革新、日本も相当に高い技術を持つ国になった。装備品につきましては今日まで確かに米国から求めることが多かったわけでありますが、このたびのFSXにつきましても、私ども我が国の地理的条件さらに運用等を踏まえまして、我が国に適した戦闘機を擁したい、そしてまたこれが二十一世紀にわたって我が国防衛に役立つものにしたいということでこの問題に取り組もうといたしておるわけでございます。まさに委員御指摘のように、我が国の技術もこれだけの技術を擁する国になったわけでありますから、私どもは国土の安全を期するために、かような見地に立ちまして技術開発に努力をしたい、かように考えております。おのずから武器輸出三原則等があるわけでありますし、我が国の憲法のもとにおける制約も踏まえるわけでございますが、やはり経費面におきましてもその効果が発揮されるものでなければならぬわけでございます。これらの点につきましても留意しつつ、技術の開発に伴う共同研究、共同開発を進めてまいりたい、かように考えておるところでございます。  以上申し上げまして、委員質問にお答えをしたいと思います。
  78. 渡部行雄

    ○渡部(行)委員 私がこの前航空自衛隊調査したときに、将官の話ですが、アメリカから輸入してそれを改良して共同開発するというのは決していいことではない、日本独自の技術で今や開発しなければならないと思う、しかもアメリカが出してくる時点では次の新鋭機がちゃんと用意されているんだ、したがってまるで中古を買うような結果になり、開発費もかえって余計にかかるのではなかろうかというような話を私は聞いたことがあるのです。これはもちろん公の場でなくて、個人的な話で聞いたことがあります。そういうことを考えると、この折衝を見ていると日本はどうも独立国家のプライドが少ないのではないか、そういう一つの独立国家意識が少ないのではないか、こんなふうに考えられてならないのです。その他いろいろ、もろもろの話もそのうち出てきますけれども、とにかく私はそういう点で非常に今の防衛政策の進め方は、日本の意思というよりもアメリカの意思で動かされているような感じがしてならない。そういう点は長官はどういうふうに感じておられますか。
  79. 瓦力

    瓦国務大臣 もとより我が国防衛につきましては我が国判断に基づいてなすべきことでございまして、今委員から御指摘のように米側への意識的な対応の仕方であるというふうなことはないわけでございます。我々といたしましては、我が国防衛は極めて重要な問題であり、先ほど以来申し上げておりますとおり憲法のもとにおける制約された中でございますが、総力を挙げて国の安全を図るための努力をしなければならぬ。重ねて申し上げれば、世界の最先端を行くような戦闘機まで我が国は開発する必要もないと思うのでありますが、防衛のためにおいては万全を期してその機能を発揮できる戦闘機を要するわけでございますから、今度のFSXの開発につきましては、委員の御質問の中における激励といいますか、それらを踏まえて、我が国の地理的要件をも踏まえながら、防衛に確かな歩みができるようなものに仕上げさせてもらいたい。今度の作業というものを一つの転機と実は考えておるわけでございます。
  80. 渡部行雄

    ○渡部(行)委員 長官は何か私に激励されたような答弁をしていますが、私、決して激励しているのじゃなくて、全くそれは心外ですが、ただ私の言いたいのは、独立国家というのは、武器であれ何であれ、そう共同開発というようなものだけでいったのではだめじゃないか、独立国家として、装備するにしてもどうあるべきか、仮に憲法上の制約の中でやるにしてもやはりそういうことが私は言いたいわけでございます。  それで、時間の関係もありますから前に進みますが、今端的に言って日本防衛範囲というのはどこまでですか、その点を明らかにしてもらいたいと思います。
  81. 西廣整輝

    西廣政府委員 我が国防衛の地理的範囲考える場合に、二つの側面があると思います。一つは防衛力整備という点、ここまでを考え防衛力整備をするという場合には、従来から申し上げているように、我が国の国土、領空領海、及び海上交通保護を考える場合には我が国周辺海域及びシーレーン等、航路帯等を考える場合には一千マイルぐらいまでというようなことで防衛力整備を行っておるわけであります。  一方、それでは実際に日本防衛行動を行う場合に運用範囲としてどこまでを考えるかということにつきましては、これは一にそのときの状況によるということでございまして、その行動範囲というものが当然公海あるいは公海上空まで及ぶということは従来から申し上げておるところであります。しかしながら、それがどこまでであるということはやはりそのときの状況によりけりということで一概に申し上げられないというのが、従来からの政府の申し上げておる地理的範囲でございます。
  82. 渡部行雄

    ○渡部(行)委員 そこで、米国のウェッブ海軍長官が先ごろ行った講演で、日本はインド洋までのシーレーン防衛を行うべきだ、こういう発言をしておるようです。しかも、これは日米シンポジウムでも米海軍の現役の方から、太平洋、インド洋における日米の海域分担を明示した地図が示されたということでございますが、この点については、どうなんでしょうか。一体インド洋に対してどういう防衛日本にさせるというのか、あるいは分担金だけを求めているのか、また、ここで示された地図というものはどういうものなのか、その辺をひとつお聞かせ願いたい。
  83. 岡本行夫

    ○岡本説明員 安保条約のもとで有事の際に我が国防衛する立場にございます米国が我が国防衛力整備につきまして関心ないし興味、期待といったものを有することは、私ども自然のことと考えております。他方、我が国防衛力整備は、先ほど防衛庁長官からも御答弁ございましたように、これはあくまでも我が国の自主的な判断に基づきまして、憲法、基本的な防衛政策といったものの枠の中で行っていくものでございます。ウェッブ元海軍長官が行いましたそのような私的な場での御発言といったものも、米国の中にございますそのような期待感を反映してのものではございますけれども、私どもはそのような米国の関心の所在というものには常に政府当局としてフォローはしておりますけれども、どのようなものがあるのか、それは確認はしてございますけれども我が国防衛政策の整備ということは、これまた別のものであろうと思うわけでございます。
  84. 渡部行雄

    ○渡部(行)委員 ここまで具体的に言われて地図まで示されたとなれば、それではどういうそれについての検討、検討したとすればその結果はどんなふうに集約されているのですか。
  85. 岡本行夫

    ○岡本説明員 米国は、先ほど申し上げましたように我が国をいざという場合に防衛する立場にございまして、みずからの厳しい経済的な困難の中ではございますけれども、米国自身のみならず自由主義諸国全体を守るための防衛努力を行っているところでございます。私どもあるいは防衛庁との間で米軍と公式、非公式にいろいろな双方の防衛体制についての意見の交換があることは日米安保体制のもとで当然のことでございますけれども、いわばそのような米国の関心、期待というものも総合的に私どもとしては受けとめ、あくまでも自主的に我が国防衛政策を策定していくということでございます。  お尋ねの具体的な点につきましては、米国政府から私どもあるいは防衛庁の方に正式な申し入れがあったという話は承知しておりませんし、ウェッブ長官の発言に基づいて具体的にどうこう我が方として対応を検討しているということではないと存じます。
  86. 渡部行雄

    ○渡部(行)委員 この地図を見ると、カムチャツカ半島から南アフリカの先端までの間の海域全部日米共同分担となっているのですが、この点についてはどうなんでしょうか。
  87. 西廣整輝

    西廣政府委員 御承知のように、我が国の場合、集団的自衛権というのは行使し得ませんので、ある海域を限ってどこを日本が分担する、どこはアメリカの分担であるというような海域分担という考え方はございませんので、その種の取り決めとかそういうものは全くないわけであります。
  88. 渡部行雄

    ○渡部(行)委員 そうすると、今問題になっておるペルシャ湾の防衛について、これは日本に対してどういう要求がアメリカから来ておるのか、その点を明らかにしてもらいたいと思います。
  89. 小原武

    ○小原説明員 ペルシャ湾におきます我が国の安全航行につきましては、御承知のような我が国独自の貢献策を決定して、今実施努力中でございます。我が国が船舶の安全航行の最大の受益国であるという観点から独自で決定したものでございまして、特定の国の特定の行動に協力するという性質のものではございません。
  90. 渡部行雄

    ○渡部(行)委員 アメリカから今そういう問題についてどういう具体的な話が来ておるのかと聞いているのです。
  91. 岡本行夫

    ○岡本説明員 先生御承知のとおり、昨年ペルシャ湾でアメリカのスターク号という船が被弾いたしましたことを契機としまして、米国の議会等を中心にペルシャ湾の安全航行から受益している国々は、アメリカのみではなくすべて応分に負担を分担すべきであるという声が出てまいったわけでございます。そのような米側の背景も踏まえまして、米国政府から私どもの方に公式、非公式に一体、日本政府としてペルシャ湾を航行する船舶の安全航行のためにいかなる手段、政策が可能かということを打診してきた事実はございます。  私ども、米側との話し合いも総合的に踏まえまして、先ほど中近東局審議官からお答えしたような航行安全支援施設というものを設置したわけでございますけれども、米側の具体的な要求がどのようなものであったかという点につきましては、これは外交上のやりとりでもございますし、御勘弁いただきたいと思います。
  92. 渡部行雄

    ○渡部(行)委員 ここは国会ですから、国会議員から聞かれたらできるだけ明らかにしていただきたい。絶対、国の秘密というならいたし方ないけれども、何も日本は秘密外交をやっているわけではないのだから、そういう点ではひとつできるだけ明らかにしてもらいたい。  そこで、去年の六月十三日の毎日新聞の朝刊で、日本船がイランから攻撃を受けても米海軍はこれを護衛しないと国務次官が発言しているのですが、これは日本にこういう通告があったのですか。
  93. 岡本行夫

    ○岡本説明員 アメリカ政府のペルシャ湾への中東艦隊派遣の目的があくまでも米国船籍の船舶の護衛にあって、他国の船を防衛することが目的ではないというような発言がなされたことは、私どもも承知しております。  ただし、そのような正式な通報が我が国に対して、つまり、貴国の船舶は米国中東艦隊の防衛対象には含まれていないというような通告があったわけではございません。
  94. 渡部行雄

    ○渡部(行)委員 そこで、国際海軍の創設というのがアメリカから提案されているようですが、これは読むまでもなく知っておられると思いますが、一体、こういう問題について日本としてはどのように対処するおつもりか、お聞かせ願いたいと思います。
  95. 岡本行夫

    ○岡本説明員 ただいまお尋ねの国際海軍構想なるものがどのようなものか、私どもつまびらかにしておりません。  ただ、申し上げられることは、もう先生御承知のとおり我が国は憲法上集団自衛権を行使しないこととしておりますので、あくまでも我が国の専守防衛防衛政策のもとでいかなる事態にも対応していくということでございます。
  96. 渡部行雄

    ○渡部(行)委員 これはカールッチ米国防長官がペルシャ湾の船舶保護の対象を広げるため、米、欧州、アラブ諸国で構成する国際海軍の創設を提案したと書かれているのです。そして、その後に日本も同海軍の維持費を負担することになっており、タンカー護衛に米国が支出している費用を軽減することになる、こういうふうに報じておるのですが、こういう負担については承諾を与えているのですか。
  97. 岡本行夫

    ○岡本説明員 ただいま申し上げましたとおり国際海軍設立構想なるものについて私どもとしては承知しておりません。米側が先ほど来御答弁申し上げておりますように我が国に対してもペルシャ湾の船舶の航行の安全のために応分の寄与を行ってほしい、そのためにどのような方策が可能なのかということを私どもに聞いてきていることは事実でございます。ただ、今先生がおっしゃられたような形での費用の分担といった要請は我が方の政府には全く接到しておりません。
  98. 渡部行雄

    ○渡部(行)委員 そういう相談が来たことが事実だとすれば、それに対してどの程度まで検討されているのですか。
  99. 岡本行夫

    ○岡本説明員 御承知のとおり、昨年十月七日の政府・与党首脳会議におきましてペルシャ湾の航行安全の確保のための我が国としてのとるべき施策が幾つか提示されておるわけでございます。ジョルダン、オマーンに対する経済協力でございますとか国連への協力でございますとか、それから船舶の航行の安全支援施設、こういったものでございます。今政府としてペルシャ湾の安全対策として日本がとり得る措置として考えておりますのは、その決定の中に尽きておるわけでございます。  先ほど来お尋ねの我が国としての米軍の防衛負担を軽減するための貢献につきましては、これはペルシャ湾対策そのものではございませんが、例えば今、国会にお諮りしております在日米軍のために働きます日本人労働者の雇用安定のための労務費協定といったような手段考えているところでございます。ただ、これはあくまでも安保条約の効果的な運用のために我が国として行っているものでございまして、ペルシャ湾に関連しての米国の要請に直接応じてといった性質のものではございません。
  100. 渡部行雄

    ○渡部(行)委員 そこで、大分アメリカは最近日本に軍備の増強を要求して、つまりGNP比三%に引き上げろ、そしてその引き上げができない場合は二%をアメリカによこせ、こういうことを言ってきておると言われておりますが、それについてはどうなんですか、本当にそういう話し合いが持ち込まれているのですか。
  101. 岡本行夫

    ○岡本説明員 ただいまお尋ねの点は、昨年の六月に米下院本会議で可決されました国務省の権限法案に対するいわゆるリッター修正条項を指しての御質問と思いますが、この修正条項は実は最終的に採択されました国務省の権限法案の中には取り入れられなかった次第でございます。最終的に成立いたしました国務省の権限法案では、大統領はNATO諸国及び日本とより公正な分担のための合意を得るための協議に入らなければならないということのみが記載されております。そして、そのようなこともございまして米国と我が国との間では広義の防衛負担というものにつきまして、つまり米国が日米安保体制の中で背負っている荷物を一体我が国として財政的に軽減してやれるのかどうかといったような点を中心にこれまでも話し合いは行ってきておるわけでございます。そして我が国が自主的にとっておりますそのための種々の政策、例えば在日米軍施設の提供でございますとか、先ほどの労務費協定とかを米側は高く評価しているところでございます。
  102. 渡部行雄

    ○渡部(行)委員 そこで、具体的にはまたフィリピンの米軍基地貸与料を日本が肩がわりしろ、こういうことが新聞等で明らかになっているのですが、これについては具体的な申し入れがあったのですか。
  103. 岡本行夫

    ○岡本説明員 フィリピンは、言うまでもなく米国のみならず日本にとっても大きな関心を有する地域でございます。フィリピンの繁栄、安定、独立、安全は、私どもとしてもその確保のために積極的に支援していかなければならないものでございます。そのために、私どもといたしましては累次の円借供与等によりましてフィリピンの経済を支援する措置を講じてきているところでございます。米国との間でフィリピンに対する支援について日本側と非公式に話が出ることはるるあるわけでございます。ただ、私どもその際に米側にも明らかにしておりますけれども、米比基地協定というものはあくまでも米国とフィリピンとの二国間のものであって、我が国がとやかくそれに手を出す筋合いのものではない、私どもが行うフィリピンに対する経済援助はあくまでもフィリピンの民生の安定、経済の繁栄を目指した純粋な経済協力として行うということを明らかにしてきているわけでございます。
  104. 渡部行雄

    ○渡部(行)委員 そこで、これは長官はどういうふうに思いますか。こういうふうに一方でフィリピンの基地貸与料まで日本によこせとかあるいはペルシャ湾の防衛分担金を負担しろとか、またGNP三%になる足らない分を安保料としてアメリカに納めろ、こういうようなことを次から次へとアメリカが議会で議決したりいろいろして日本に迫ってくるこの態度については、長官はどういうふうに思いますか。
  105. 瓦力

    瓦国務大臣 我が国防衛する立場にあります米国、安保体制がございますが、そういう中におきまして、議会関係者が我が国防衛努力につきまして常に関心を有しておるということは私は自然なことだと思っておりまして、それらの動きにつきまして、議会内のことでございますからコメントする立場にはないわけでございます。いずれにいたしましても、我が国防衛につきましてあくまでも自主的判断に基づいて憲法及び基本的な防衛政策に従って取り組んでまいる、かように考えるものでございます。  なお、ただいま外務省の方からフィリピン等についての見解が述べられたところでございますから、私はこれ以上加えることはないと思います。
  106. 渡部行雄

    ○渡部(行)委員 これは長官、私はコメントする立場でないなどということでなしに、こういうふうに安保条約があるから何を言われてもいいんだという態度ではだめですよ。アメリカの言うことは余りにも理不尽だと私は思う。この理不尽なことについては、はっきりと日本政府として物を言わなくてはならぬと思うのです。そうでなければ安保条約そのものが非常に問題になるし、安保条約があるために日本が逆にアメリカの隷属国になって、経済、文化、すべての面で従属化されてしまう危険性だってないとは言えないですよ。だから、仕方ないんだでなくて、こういう点については、これは本当に全然理由にならないというものについてははっきりこういう場で答弁しないと、何をやられてもいいんだという印象を与えるだけだと私は思うのですよ。  アメリカはその辺非常に上手ですよ。自分たちの口から言えないことは議会にどんどん火をつけて話をさせて、そして議会の圧力を利用しながら日本にいろいろな形の圧力をかけてきているわけですから。そうすると日本はどうですか、政府だけでおたおたして。政府が言えないことを議会で堂々と議論させたらいいんですよ。そういう点について、日本の今の政府の態度というのは、独立国日本ということを考えた際には非常に心もとない、私はこういう感じがするのです。
  107. 瓦力

    瓦国務大臣 政府間の応答におきましては、なすべきこと、なさざること、これらにつきましては率直にお互いに述べ合っておる。今私答弁申し上げましたのは、議会というのはいろいろな考えを持ち合わせながらそこで収れんされていくという機能も有しておるわけでございますが、米国議会内におきましてのいろいろな議論につきましてコメントする立場にない、かようなことを申し上げたわけでございます。そういう意味合いにおきまして、これからも議会人同士がいろいろな立場で防衛問題について率直な意見交換がなされる、言ってみますれば議員外交という面もあるわけでございますので、そうしたことを積み上げて日米間におきまして理解が深められるということは私は結構なことだと思っておるわけでございまして、決して意のままに動いておるというようなことでないことを申し述べさせていただくものでございます。
  108. 渡部行雄

    ○渡部(行)委員 そろそろ時間が参りますので、別の問題に移ります。  今度アメリカの軍事秘密に関する特許の問題について日米間に交換公文ができたようでございますが、これについて、特許情報をどこの機関で一括して管理するのか、これはどういう方法で管理されるのか、特許庁の審査権限が大きく制限されはしないのか、あるいは我が国の特許制度にある変化をもたらさないのか、その影響等についてお伺いいたします。
  109. 山本雅司

    山本(雅)政府委員 今回締結いたしました交換公文は、アメリカで秘密に保持されている特許資料を防衛庁が援助として受けるというのがその内容でございます。ただ、それと並行いたしまして別途一九五六年協定というのがございまして、これはアメリカの方から秘密に保持されている特許について日本に出願をした場合には同様の取り扱いを受ける、こういう趣旨の協定がございまして、それを実行に移すという二本立てになっているわけでございます。  今委員御指摘の点については、アメリカの特許資料がいわゆる特許の出願として来たという場合には特許の手続で処理されます。一方、私どもが交換公文で受けますのは、アメリカから秘密として保持されている特許資料を私どもが受ける、こういう交換公文に基づいた手続がございますが、それにつきましては、防衛庁の中で援助として受けたものは保管いたしましてこれを利用する、こういう形になるわけでございます。  それからさらにお尋ねの、それでは日本の特許制度について制約があるのではないかということにつきましては、これは純粋に特許の手続の問題でございまして、私どもといたしましては直接的にはこれには関与していない、こういう状況になっているわけでございます。
  110. 渡部行雄

    ○渡部(行)委員 そうすると、仮に日本の企業や個人でも構いませんが特許の出願があった場合、その内容がアメリカの軍事機密に非常に類似しておるという場合にはどういうふうになりますか。
  111. 山本庸幸

    山本説明員 今のお尋ねでございますけれども、特許庁といたしましては、五六年協定と言っておりますこの条約が実施された後でございましても、この条約上議定書第三項の規定から考えますに、アメリカからの出願、いわゆる協定出願と無関係に日本で独自に開発された技術につきましては、たとえその内容が類似しておったりあるいは同一でありましても、それは通常の手続に従って公開するものと理解しております。
  112. 渡部行雄

    ○渡部(行)委員 そうすると、今まではアメリカの秘密技術というのは、よく航空機なんかで見るようにブラックボックスという形であったわけですが、今度はブラックボックスの中を開いて日本に利用させる、そういうことはアメリカにとってどういうメリットになるのですか。
  113. 山本雅司

    山本(雅)政府委員 今お尋ねのブラックボックスの点につきましては、これは実は特許とは関係が別の問題でございます。通常いわゆるブラックボックスと称しておりますのは、ある一定の部分については手を触れないでほしい、分解したり修理などするのは必要があれば供与したところでやりたいというような一定の部分を示している、これが通常ブラックボックスと言っている問題でございます。  今回の特許資料を援助として受けるというのは、今までも多分そういうブラックボックスの中あるいはそれに関連するものあるいは一般の装備品でございますが、特許資料というものが入っていた可能性がございます。しかし、私どもといたしましてはその中のどれが秘密特許資料であったかということがうかがい知れなかったわけでございます。さらに、今までは全く来ていなかった秘密特許資料というものが今度両国政府が合意すれば来るようになる、こういうことでございます。したがいまして、ブラックボックスと今度の特許資料の交換との関係では、必ずしも一義的に今度の特許資料を受けることによってブラックボックスがなくなるということではございません。ただ、一般的に言いまして、両国政府が合意できれば今まで非常に機密度の高かったものも資料として来る可能性は高まった、そういう筋道ができたというのが今回の実態でございます。
  114. 渡部行雄

    ○渡部(行)委員 そうすると、日本だけがアメリカのそういう秘密資料を獲得して、アメリカは日本からそういう資料を獲得はしない、こういうことになるのですか。
  115. 山本雅司

    山本(雅)政府委員 非常に当然の御指摘かと思いますが、今の両国の制度といたしましては、これは前提といたしましては双方が合意するというのが前提にございますが、合意した場合には日本からアメリカに対しては武器技術供与の枠組みがあって渡すことができるわけでございます。なお、特許資料につきましては、これは大変有用な資料でございますが、日本の場合はすべて公開されておりますから、アメリカが日本でどういう特許資料があるか、これは仮に非常に高度な機密のものがあっても全部公開いたしますから、アメリカは自由にこれを利用できるわけでございます。今回、今まで私ども向こうでどういうものが秘密で保持されているかすらわからなかったものがアメリカ政府と我々が合意すればとることができるということになって、ある意味で同じ立場に立てる、こういうことになるわけでございます。
  116. 渡部行雄

    ○渡部(行)委員 そうすると、これはこういうふうに受け取っていいですね。この秘密特許については、この交換公文の問題については、いわゆる受益者というのは日本だけである、アメリカは別段このことによって得はしないんだ、こういうふうに解釈していいんでしょうか。
  117. 山本雅司

    山本(雅)政府委員 秘密に保持されている特許関係資料を利用できるという意味では、確かに受益者は私どもだけでございます。ただ一方、一九五六年協定で特許の手続の方が決めてございますが、これにつきましては今まで実施手続が決まっておりませんでしたから、仮に向こうで秘密に保持されている資料につきましても日本にそれが援助として来た場合でも、アメリカ側としては日本で先願権を確保するといいますか、秘密特許の同じような扱いを受ける道がなかったわけでございますが、今回向こうが手続をとればそういう道が開けたという意味では特許手続の面ではアメリカ側は受益者である、こういうふうに私ども考えておるわけでございます。
  118. 渡部行雄

    ○渡部(行)委員 そうすると、これから日本はどっちみち公開の原則を守っていくんだ、アメリカのまねをして秘密特許という特殊な軍事部門について設けるということは考えていない、こういうふうに思っていいんですか。
  119. 山本庸幸

    山本説明員 私どもとしては今回の措置といいますものは条約に基づきます非常に限定的な措置だと考えておりますので、私どもとして国内にいわゆる一般的秘密特許を設けるというようなことは一切考えておりません。
  120. 渡部行雄

    ○渡部(行)委員 それでは時間がそろそろ参りますから先に進みますが、そこで予算を見てみると思いやり予算というのがついているんですが、思いやりというのはどういうわけでこれを思いやり予算と言うのですか、長官。
  121. 瓦力

    瓦国務大臣 たしか金丸長官当時そういう言葉で思いやりという言葉があったかと思うわけでございますが、先般ちょっと調べておいたのですが、きょうはその経緯を持ってきませんでした。大体この程度でよろしいかと思いますが……。
  122. 渡部行雄

    ○渡部(行)委員 私はどう考えても思いやりという言葉が適切に感じてこないのですよ。むしろ思いやられる予算だと思うのです。このまま、こんなことでやっていったら将来どんなふうになるかと思うと本当に将来が思いやられる予算で、これはやはり考え直してもらうわけにいかないでしょうか。
  123. 岡本行夫

    ○岡本説明員 外務省の方から御答弁することが適切かどうか存じませんが、地位協定上我が国は安保条約の第六条に基づきまして米国に施設、区域を提供する義務がございます。そのための義務経費とは別に、地位協定上は我が国が負担しても米国が負担してもいい、このような性質の経費がございます。それが五十三年から始まりました労務費負担であり、五十四年から始まりました施設整備のための予算でございます。そして、思いやりというのがそのときに政治的につけられた通称と存じますけれども、あくまでも私どもは米側との間で話をいたしますときは単に労務費分担あるいは施設改善計画という名で呼びならわしておりまして、思いやりといった言葉を英訳して米側に伝えているわけでもない、あくまで便宜的に使われているものと御承知おきいただきたいと思います。
  124. 渡部行雄

    ○渡部(行)委員 やはり私は内容そのものももっと検討する必要があると思うのです。こういうことでずるずる予算をふやしていって、結局もう一%枠という取り決めは、毎年毎年一%枠を超えていくと、ないと同じくなるのですよ。わずか〇・〇〇五%と言うけれども、幾ら超えたかの問題ではなくて、何でもそうだが、守らなければならない問題を守らないことがずっと続けば、守らなくていいことに変わっていくんですよ。そういうことが非常に恐ろしいのです。法律だって、あってもその法律を破ってだれもこれを取り締まらなかったら、もうその法律はないに等しいのですよ。だから、そういう点で日本防衛の節度ということから考えた場合、今度の防衛予算については長官はどういうふうに思いますか。
  125. 瓦力

    瓦国務大臣 日米安保体制の効果的な運用、こういうことで対処してまいりますと、昨今の経済情勢の大きな変動というのがございます。また、一方に雇用の問題といいますか、駐留軍に勤めます労務者対策というものがございまして、私どももこれらの対策というものをいろいろ考えてまいらなければならぬ、こういったことを踏まえながら取り組んでまいっておるわけでございます。  また、防衛関係費全般につきまして、これまた先ほど以来答弁申し上げておりますが、大綱に基づく防衛力整備、中期防の半ばにあるわけでございますが、節度ある防衛力整備、こうしたことを心得つつ取り組んでおるわけでございまして、他の政策課題もいろいろあるわけでございますが、限られた予算の中で、もちろん調整を図りつつ、年度年度要請をしながらその防衛費を予算に計上しておるようなことでございまして、私は、防衛関係費といたしましては御理解をいただきつつ中期防の達成に向けて、今回の予算はその所期の目的といいますか、その目的を達し得る予算である、かように考えておるものでございます。
  126. 渡部行雄

    ○渡部(行)委員 日米の軍事関係は、わりかた日本向こうの言うことを素直に聞いているからそう問題が噴出してこないようだけれども、貿易摩擦という面から見ると、東芝事件を初めココム、ガットというものを通して制裁を加えるぞとか、加えられたり、いろいろと我々の我慢できないようなことを言ってこられるわけです。それはどういうことだろうか。一方において軍事的には日本をかっちり押さえておいて、他方では今度は無理難題を吹っかけるアメリカの姿全体を映し出して判断していかないと大変なことになるのではないか、私はこんなふうに思うのです。  そういう点で考えると、日本の法律と国際関係について、国際的には国際法というものがあるわけですが、この国際法と、日本の特に国際法の中でも突出しておる憲法体制というものとのかかわりを今後どういう調整をすべきなのか。例えば、ここから先は憲法違反になるが、国際的な条約やいろいろな関係で話を進めていくとどうしてもそれをやらないと孤立させられる危険性がある、こうした場合にはどちらが優先すべきなのか、その辺についてお伺いします。
  127. 大出峻郎

    ○大出政府委員 ただいまの御質問日本国憲法と条約あるいは外国との関係ということについての御質問かと思いますが、御承知のように日本国憲法はその前文において国際協調主義というものを掲げております。また、憲法の第九十八条第二項におきまして、条約及び国際法規の遵守を規定しているところであります。日本国憲法の規定国際法と矛盾することが生じるということは、こういうような意味におきまして一般的には考えにくいところではないかというふうに思うわけであります。しかし、日本国憲法は国の最高法規でございまして、政府としてはこれを尊重し擁護すべき義務を負うところでありますから、政府行為は、先ほどいろいろ御論議のありました自衛権の行使を含めまして、憲法の枠内のものでなければならないというふうに考えておる次第であります。
  128. 渡部行雄

    ○渡部(行)委員 最後に長官に、これからの防衛行政を進める上で、平和の問題についてどのようにお考えなのか、それを聞いて私の質問を終わります。
  129. 瓦力

    瓦国務大臣 私は、平和を確保する、平和を維持するということは、国民生活の向上を考えましても、我が国は資源の乏しい国でございますし、また技術立国、また貿易立国ともいいますが、世界各国とも協調してまいる、このことから考えましても、平和が維持されるということは極めて大切なことと考えます。我が国防衛力整備が戦争を惹起するものではなくて抑止するというような中で平和が維持されるということは国民にとりまして大切なことである、かような観点から防衛庁長官としての職責を果たしてまいりたい、かように考えておるものでございます。
  130. 渡部行雄

    ○渡部(行)委員 終わります。どうもありがとうございました。
  131. 箕輪登

    箕輪委員長 午後一時三十分より再開することとし、この際、休憩いたします。     午後零時四十六分休憩      ────◇─────     午後一時三十分開議
  132. 箕輪登

    箕輪委員長 休憩前に引き続き会議を開きます。  質疑を続行いたします。神崎武法君。
  133. 神崎武法

    ○神崎委員 それではお尋ねをいたします。  初めに「防衛計画の大綱」の関係で何点かお尋ねをいたしたいと思いますけれども、総理並びに防衛庁長官は我が党の冬柴委員にことしの二月二十四日の衆議院の予算委員会におきまして、総理は「現在、大綱の見直しとか別表の修正とか、それは全く考えておりません。」という御答弁をされておりますし、防衛庁長官も「当然、国際情勢であるとかあるいは経済財政情勢であるとか、こういったものを踏まえながら考えなければならぬことではございますが、私は大綱の基本的な枠組みを見直すというようなことの必要はない、かように考えております。」このように明確な答弁をされているわけでございます。     〔委員長退席、有馬委員長代理着席〕  ところが、参議院の予算委員会での質疑が報道されておりますけれども、この別表の見直しに含みのある御答弁を長官もされているというような報道もされているところでございます。さらにまた、昭和六十二年版の防衛白書によりますと、大綱の生命線ともいうべき別表の内容の修正に初めて言及されているわけでございます。これは近い将来別表の修正はあり得るのだ、こういう立場に立っているように思われるわけでございますが、総理、防衛庁長官のこの見直し、別表の修正は全く考えていないという衆議院予算委員会におきます明確な答弁と、それから参議院予算委員会における答弁ぶり、さらにはこの防衛白書の記載は矛盾しているのではないか、このように思うわけでございますけれども、その点長官いかがでございましょうか。
  134. 瓦力

    瓦国務大臣 昨年の防衛白書は六十一年度白書と同様国会等における論議を踏まえ大綱の仕組み等について整理して記述したものでございます。このような仕組みのもとで具体的に別表の修正を考えているかいないかということにつきまして、現在これを考えていないということは累次申し上げてきたとおりでございます。  また、昭和六十六年度以降の防衛力整備のあり方につきまして、大綱の前提とする国際情勢等に基本的に変化がない限り大綱の基本的な枠組みを見直す必要はないのではないか、かように考えておるわけでございまして、現在その具体的な方針について述べる段階ではございません。したがいまして、防衛白書の記述と国会答弁に御指摘のような矛盾といいますか、そういったものはないと考えております。
  135. 神崎武法

    ○神崎委員 そうしますと、現在はこの修正等は考えていない、こういうお立場であるというふうに理解してよろしいわけですね。
  136. 瓦力

    瓦国務大臣 さようでございます。大綱の基本的枠組みを変える考えはないということであります。
  137. 神崎武法

    ○神崎委員 そこがちょっとわかりにくいところですね。基本的な枠組みは変えるつもりはないんだ。これは基本的な枠組み以外の部分では修正もあり得る、そういう含みを残しておられるわけですか。
  138. 西廣整輝

    西廣政府委員 今お尋ねの件は恐らく別表についてであろうと思いますが、実はまだ次期防等の検討を始めておりませんが、現在いろいろな形でそれぞれの部署で研究はいたしております。その関係から直ちに別表を変える必要があるとかそういった問題は浮かび上がってきておりません。
  139. 神崎武法

    ○神崎委員 昭和六十二年版防衛白書によりますと、この別表等の修正について二つ挙げているわけでございますが、第一の「装備体系等の変化に伴う別表等の内容の修正」、これは具体的にどういう場合を想定されているのでしょうか。
  140. 西廣整輝

    西廣政府委員 本件につきましては、当時既に整備しておりました防衛力、装備体系、あるいは当時想定をしておりました装備体系、例えばF15であるとかP3Cであるとか、そういったものが整備された状況というものを想定した部隊編成等を念頭に置いた別表をつくったわけでありますが、同時に、古い話になりますけれども、例えばF104という戦闘機防衛庁整備したことがございますけれども、その当時F104というのは最後の戦闘機である、将来は戦闘機等は逐次防空の任から離れていってミサイル化されるのではないかというようなことも言われておりました。そういうような状況になれば、当然のことながら現在の戦闘機、レーダーサイト等を中心にした防空装備体系というものがミサイルを中心にした防空装備体系に変わるというようなこともあり得るのではないかというように思うわけであります。  また、例えば陸上部隊につきましても現在世界的な趨勢として師団編成というものを基準にして物を考えておるわけでありますけれども、これは例えばヨーロッパでありますと、フランス等で新しい考え方としては、もっとずっと小さな小隊レベルぐらいの対戦車ミサイルといったものを中心にした小さなグループ、それと対戦車ヘリコプター、そういったものを中心として機甲師団を中核とするソ連の侵攻に備えるというようなことで、師団対師団でぶつかり合うということではなくて、それぞれの小部隊が対戦車ミサイルあるいは対戦車ヘリコプター等でおのがじし戦って、弾を撃ち尽くした段階で逐次離脱していくというような編成があるのではないかというようなことで一時相当喧伝をされ、研究されたことがあり、実際には採用されなかったわけでありますけれども、そういった常にそのときどきの装備の状況、軍事技術の状況というものを踏まえながら部隊編成というものは最も効率的なものはどうだということは検討されていくものだろうと思います。  そういう意味も含めまして、装備体系なり部隊編成のあり方というものは時代に応じて変わっていくものであるという前提で規定されておるもの、かように考えております。
  141. 神崎武法

    ○神崎委員 この防衛白書のこの部分に、さらに「科学技術等の進歩に伴い装備体系等が変わるようなことがあれば、別表に掲げた部隊や主要装備の数量が変動し得ること」という記載があるわけでございますけれども、ここの科学技術等の進歩に伴って装備体系等が変わる場合、この変わる場合というのは大綱制定後に新しい装備体系が開発された場合を指しているのか、あるいはその時点においては既にそういった装備体系はあったけれども政府が採用していなかった、後に政府が採用するような場合を含めて意味するのか、その点はいかがでしょう。
  142. 西廣整輝

    西廣政府委員 具体的な例で申し上げますと、例えば対潜水艦の装備体系というもので考えますと、当時はP2Jという固定翼対潜機あるいはS2Fという中型の固定翼対潜機というものを主体にした対潜水艦兵器体系というものがあったわけですが、それがP3Cというものの導入を既に大綱策定当時念頭に置いておりましたので、そういったものに移り変わっていくことを前提にして別表そのものはつくられていたということで、この大綱決定時よりも固定翼対潜機等の数は少ないものが別表に書かれておる。しかし、現実には当時はそれ以上のものを持っておったのが、その後十年かかって逐次当時頭に描いておった装備体系に今移りつつあり、ほぼ完成に近づきつつあるというものもございます。それ以後のものということになりますと、現在までのところ、この別表に直接かかわるような装備体系の変化は今のところないというようにお考えいただきたいと思います。
  143. 神崎武法

    ○神崎委員 もう一つの場合として、この防衛白書で挙げているのは「防衛力の効率化のための別表等の修正」ということでございますが、これは具体的にどのような事態を想定されておられますか。
  144. 西廣整輝

    西廣政府委員 これも一つの例示をもってお答えさせていただきたいと思います。  例えば、現在の防空任務については、航空自衛隊が全般防空なり、地域防空のうちの高高度のものについて担任をする。陸上自衛隊については、地域防空の低高度のもの及び自分の部隊の防空を担任するというような仕切りで考えられておりますし、またそういう形で別表もつくられておるわけであります。ところが装備の進歩等に伴いまして、かつてはナイキとホークというように高高度用あるいは中高度以下のものというように二種類要ったものが、例えばペトリオットというものが逐次ふえてまいりますと、低高度についても有効な装備になってくるということになりますと、必ずしもそういった分け方が適当でなくなってくるということになろうと思います。その際に、それではどうするかということになると、地域分担なりをさらに見直しをするといったようなことで、それぞれの陸空で分け持っておるものをどちらに所属させるか、あるいはどちらかがまとめて持ってしまうかとか、そういった面で効率化を図っていくということも当然出てくるのではなかろうかというふうに考えておる次第であります。
  145. 神崎武法

    ○神崎委員 この二つの場合をあえて六十二年版の防衛白書の中で取り上げたのは、この二つの場合であれば、先ほど防衛庁長官が御答弁されたような枠組みの修正には当たらないのだという基本的な考え方に立っておられるわけですか。
  146. 瓦力

    瓦国務大臣 大綱の基本理念に反しない限度におきまして別表の一部を変更するというようなことは、本文と別表の一体性を損なうものではない、こういうぐあいに理解をするものでございます。
  147. 神崎武法

    ○神崎委員 そうしますと、ここで挙げられている二つの場合以外の修正、これはもう大綱の枠組みにかかわる修正である、それは考えていない、こういうことでございましょうか。
  148. 西廣整輝

    西廣政府委員 ただいま防衛庁長官からお答え申し上げたように、当時の議論というのは、別表というものが必ずしも固定し動かしがたいものではなくて、論理的にあるいは大綱をつくった当時の物の考え方から可変的なものであるということについて御説明を申し上げ、その一、二の事例を挙げたものでありまして、実際動かしたい、そういうこととは別だということは御理解いただけたと思います。  それでは大綱別表なりが変わり得る要因として今のようなもの以外ないかどうかということでありますが、あと考え得ることは、御存じのように大綱というのは、直接侵略につきましては小規模・限定的な事態にみずからの力で対応できることというのが一つの力の上限として、能力の上限として示されておるわけでありますが、その能力、防衛力水準というものを維持するために、先ほど申し上げたような効率化なり装備の革新というようないろいろな形で質的な面でこれを満たしていくということを追求していくわけでありますが、状況によってはやはり量によって対応せざるを得ない場合があり得ないことではないということだろうと思います。そういう場合もあり得るということは御理解を賜りたいと思います。
  149. 神崎武法

    ○神崎委員 今防衛局長が挙げられたものも含めて、六十二年版の防衛白書で挙げられている点というのは、大綱のうちのどの記載部分を根拠よりどころとしているわけですか。
  150. 西廣整輝

    西廣政府委員 別表で装備体系の変化云々と書かれていることはもう御承知のとおりでありますが、それ以外に、要は我が国整備しようという防衛力の目標というものについて日米安保と相まってすき間のない体制をつくる。そしてその体制としては、平時及び有事におけるもろもろの態勢が書いてありまして、そういったものを満たし得るものでなくてはいけない。そういったことを前提として、最後の留意事項のところでございますが、その中に「前記四及び五に掲げる態勢等を整備し、諸外国の技術的水準の動向に対応し得るよう、質的な充実向上に配意しつつこれらを維持することを基本とし、」というように書かれておりまして、そこにいろいろな質的な変化なりを十分考慮に入れながら目標としての体制というものを維持するというように書かれておると理解をいたしております。
  151. 神崎武法

    ○神崎委員 同じく「防衛計画の大綱」の中で国際情勢の認識という問題がこれは前提としてあるわけでございますが、この大綱策定当時の国際情勢、国際政治構造が今後当分大きく変化しないことを前提にして取り扱うということになっているわけでございます。昭和六十二年版の防衛白書は、極東ソ連軍の軍事力増強と潜在的脅威の高まりという点を指摘しながらも、大綱の前提とする国際情勢の基本的な枠組みは変わっていない、こういう認識を示しておるわけでございます。さらにその後INF全廃の合意、さらに本年には戦略核半減の合意の可能性というものが強くなっているわけでございますけれども、この国際情勢の認識が大綱策定時と昭和六十三年の現在において大きな変更があったのかないのか、その点を確認しておきたいと思います。
  152. 小野寺龍二

    ○小野寺政府委員 第二次世界大戦後今日に至るまで国際情勢は、政治体制を異にし、かつ圧倒的な軍事力を有する米ソを中心とする東西対立と協調のそういう構図の中で推移してまいってきたわけでございます。その中で、ソ連は一九六〇年代以降一貫して軍事力の増強を図っております。一九七〇年代にいわゆるデタントの時期というのがございまして、SALTI協定ができたりSALTIIの署名ができるという事態もございましたけれども、その中にあってもソ連の軍備増強というのは継続されてきたわけでございます。たまたま大綱が策定されたのはその時期に相当するわけでございます。  ただ、その後、昨年夏にはINF全廃条約の署名、さらには現在START条約の交渉が進展している、アフガンにおいて停戦が行われるというような新しい情勢も確かにございますけれども、全体として米ソを中心とするそういう対立状況というのは依然として変わっておりませんし、かつ一九六〇年代、七〇年代のデタントの時期においても継続されたソ連の軍備増強の状況というのは現在においても変わっていないというふうに認識いたしております。  しかし、西側においてそういう状況を座視していたわけではなく、一九七〇年代末、一九八〇年代に入りまして、特に米国を中心といたしまして、ソ連の動向をにらんだ防衛力の増強というものが行われてまいりました。その結果として、抑止というものが機能していて、それで大規模な軍事衝突というのが起こっていない、かつ現在起こるような状況にあるということではございません。また同時に、双方が保有しております核のある程度の均衡による核戦争の抑止という事態も効いているわけでございます。そういった状況で、我が国周辺一つとりましても、ソ連の通常戦力を中心といたします軍備増強、これは緩和の傾向はございませんで、現在においても継続しているわけでございますけれども日本の周辺においても侵略が差し迫ったという状況ではないということではないかと存じます。そういった意味で、大綱の枠組みというものは変わっていないというふうに見てよろしいと思います。  もう一つつけ加えさせていただければ、大綱の中では地域紛争等のそういう流動的な状況ということも述べておりますけれども、この点につきましても御承知のとおり中東情勢、イラン・イラク紛争、朝鮮半島についてもいろいろな不安定材料が依然として続いております。そういったような観点から、国際情勢の枠組みというものには変化はないというふうに見ております。
  153. 神崎武法

    ○神崎委員 そういたしますと、大綱制定時の前提といたします国際情勢の基本的な枠組みというものは大きな変化がない。そういう観点から、この大綱の見直しとか別表の修正というこういう実態的必要性は生まれてこない、このように理解してよろしいでしょうか。
  154. 瓦力

    瓦国務大臣 ただいま国際参事官から答弁も申し上げましたが、グローバルな東西関係、そうした中における変化、あるいは我が国周辺におきましての変化といいますか、日米安保体制の存在によりまして大規模な紛争が生起しにくい状況、こういったことが防衛計画大綱が前提とした国際情勢の基本的枠組みでございますから、現時点におきましても、私は、今ほどの答弁を踏まえましてお答えいたしますと、防衛計画大綱が前提としております国際軍事情勢の基本的枠組みには変化がない、かように考えるものでございます。
  155. 神崎武法

    ○神崎委員 これに関連しまして、極東ソ連軍の増強、それがまた潜在的脅威になっているかどうかという点に関して若干議論をしたいと思うわけでございますが、ことしの四月十一日付のある新聞によりますと、「極東ソ連軍、増強続く」という見出しのもとに、「防衛庁はこのほど、ゴルバチョフソ連共産党書記長が八五年三月に就任して以来の極東ソ連軍の配備状況の推移をまとめた。」ということで、その具体的な内容が書かれておりまして、「中距離核戦力(INF)全廃条約調印後の軍縮ムードとは別に、防衛庁は「依然として極東ソ連軍は強化されている」と判断、今後も情報収集に努める方針だ。」こういう記事が掲載されているわけでございます。  まずお尋ねをいたしたいのは、防衛当局としてこの極東ソ連軍の最近の配備状況についてこのような取りまとめを行っているのかどうか、またINF全廃合意後も確実に極東ソ連軍はふえているとこのように認識をしておられるのかどうか、その点いかがでしょうか。
  156. 小野寺龍二

    ○小野寺政府委員 四月十一日付に報道されましたソ連極東軍の増強についてのいわゆるその防衛庁の取りまとめというものでございますけれども、実は予算委員会におきまして民社党の関先生からの御質問で、これはまさにゴルバチョフ書記長になってからソ連の極東の情勢というのは変化があるのかどうかという御質問がございまして、それに対してお答え申し上げた内容がほぼその新聞に載ったものというふうに見ております。  内容自身につきましては、確かにゴルバチョフ書記長ウラジオストク演説等でいわば平和攻勢のようなことをたびたび行っておりますけれども、現実問題として、極東に存在しておりますソ連軍の陸海空いずれをとりましても減っているということは全くございませんで、量、さらには質の上でもかえって増強されているという状況が続いていると思います。  ちょっと繰り返しになるかもしれませんけれども、地上兵力につきましては一九八五年度は三月にゴルバチョフが就任いたしました後においても、現在と比較いたしますと二個師団、二万人ぐらいの増強が行われておりますし、海上兵力につきましては約七万トンぐらいの増強が行われております。昨年報道されましたとおり、年末には新しいミサイル駆逐艦二隻が回航されてくるというようなこともございますし、それから航空兵力につきましても百九十機ほど増強されまして、これも量だけではなくて質的にも、SU25フロッグフット、それからSU27フランカー等のいわゆる第三世代の非常に新しい航空機が極東に配備されているという状況でございます。  これも、いずれもゴルバチョフ書記長の就任後に起こっている事態でございまして、したがって、その観点から申しますと、増強の趨勢というものについてまだ変化がないというふうに見ざるを得ないということでございます。
  157. 神崎武法

    ○神崎委員 私が今、後段でお尋ねをしたのは、INF全廃合意後も確実に極東ソ連軍はふえているのかどうか、こういう点でございますけれども、今、ゴルバチョフ政権後にどうだったかという御答弁ですね。私の質問に対する御答弁がないのですが。
  158. 小野寺龍二

    ○小野寺政府委員 INF合意がなされましたのは昨年の十二月でございまして、まだ数カ月しかたっておりません。短期間の間に兵力がどういうふうに動いたということを見ても、それほど意味のあることではないような気が私はいたします、もう少し長い趨勢で見ざるを得ませんし。ということで、ちょっとそれだけ短期間の間ということでは御勘弁願いたいと思います。  ただ、先ほど申し上げました、例えば新鋭駆逐艦の回航というようなことは、これは現実として、INFの合意成立のたしか直後だったというふうに私は記憶いたしております。いずれにしても、時期的には同じころに出てきた事態でございます。
  159. 神崎武法

    ○神崎委員 どうも今の御答弁ですと、ゴルバチョフ書記長政権下になってふえたということはわかりましたけれども、INF合意後にどうなのかということははっきりしたことはわからないわけでございますが、この新聞記事を見ると、何か今もなお極東ソ連軍の増強が続いているという、こういうニュアンスの記事になっているものですから、どうなのかと思ったわけでございます。  実は、この記事の内容は昭和六十二年版の防衛白書の内容を見ても、全部この昭和六十二年版防衛白書に出ているのです。兵力、地上兵力にしても海上兵力にしても航空兵力にしても、この六十二年版の防衛白書の数字が全部、最近のこの増強続くという極東ソ連軍の配備状況の推移と称するものに出ているわけで、新しいものは何もないのですね、この記事を見てみますと。ところが、ことしの四月の記事を見る限りにおいて、「極東ソ連軍、増強続く」と、いわゆるINF全廃条約調印後の軍縮ムードとは別に、防衛庁は「依然として極東ソ連軍は強化されている」というと、これを読者が見ると、INF合意後も、またことし戦略核の半減がなされるのではないかという世界的な核軍縮の機運の中にあって、極東ソ連軍だけがなおも増強されているのではないか、このように受けとめる、そういう可能性が強いわけですけれども、実際は、ただ六十二年版の防衛白書の中に全部出ている話のように思うわけですが、この中で、この六十二年版防衛白書と異なって、新たに最近の極東ソ連軍の増強が続いていると見られるそういう記載があれば御指摘をいただきたい。     〔有馬委員長代理退席、椎名委員長代理着席〕
  160. 小野寺龍二

    ○小野寺政府委員 ただいま申し上げましたとおり、余り短期間でその装備を見るというのはちょっとミスリーディングになるおそれがあるかと存じます。装備はもちろん生産、配備についても、どこの国においてもかなり長期間にわたって行われるものでございますので、趨勢という形で見ざるを得ないということで、先ほど申し上げましたとおり、INFの調印後という短期間の間だけの動きを見るというのは必ずしも適当ではないと思いますし、先生おっしゃるとおり、数字自体につきましてはその六十二年版の防衛白書に載っておるものと一致しているものでございます。  ただ、先ほど申し上げましたとおり、ソブレメンヌイ級のミサイル駆逐艦それからウダロイ級のミサイル駆逐艦という新鋭駆逐艦の極東への回航というのは、これはごく最近起こっている事実でございます。
  161. 神崎武法

    ○神崎委員 この「ソブレメンヌイ級及びウダロイ級ミサイル駆逐艦といった新型艦艇が極東に新たに配備されたことが注目される。」ということも、昭和六十二年版の防衛白書に載っておりますよ。
  162. 小野寺龍二

    ○小野寺政府委員 そのとおりでございます。  最初に回航されてきたわけではございませんけれども、新たに増加配備されたわけでございます。したがって、最新鋭のものの数がふえてきているということを私は指摘させていただきたいと思います。
  163. 神崎武法

    ○神崎委員 もう一度確認します。  要するに、この新聞記事の中で、防衛当局が御答弁された、また最近の最新の極東ソ連軍の配備状況だとして明らかにしたこの数字の中で、昭和六十二年版防衛白書の記載と異なる、そういう数字の部分がありますか、ありませんか。その点だけお答えいただきたい。
  164. 小野寺龍二

    ○小野寺政府委員 数字の上ではございません。
  165. 神崎武法

    ○神崎委員 そうしますと、確かに昭和六十二年八月の防衛白書の段階ではこういう極東ソ連軍の増強が続いていた、ここまでは間違いないわけですね、これは防衛白書にそのように記載されているわけですから。その後どういう変化が生じたのか、それについての防衛当局の情報収集というのは全くないのですか、どうなんでしょうか。
  166. 小野寺龍二

    ○小野寺政府委員 特記すべき数字の変化というようなもの、新たに発表すべきような内容は防衛白書後についてはございません。ただ、先ほど来申し上げますとおり、もう少し長い趨勢で見ていった場合に、増強、増勢というものに変化がないという判断はできるのではないかと存じます。  さらに、つけ加えさせていただきますと、極東に限ったことではございませんで、ソ連の軍備の全体の状態、さらには軍事、何と申しますか生産については、例えばSS20の生産が停止されたとか、SS20の後継機の開発が停止されたということは、これはいろいろ言われますけれども、それ以外においてソ連の装備の調達、開発というもののスピードが鈍ったということはないというのが西側全体の見方でございます。
  167. 神崎武法

    ○神崎委員 私がお願いしたいことは、私たちは具体的な数字というのはわかりませんから、これは防衛当局として日本安全保障に関係するいろいろな動きについては正確な情報、最新の情報というものを入手して、それを国民の前に提示する努力というものが必要だと思うのですね。古い情報、一年前の情報、それで今大きくINFの全廃、そして戦略核の半減という大きな核軍縮の中で、一体この極東ソ連軍というものは依然として増強を続けていっているのか、あるいはそこで大きな変化が生じているのか、国民が非常に関心を持っている点だろうと思うのですね。そういう最新のデータというものを国民の前に明らかにして、国民判断の材料を提供するという義務が防衛当局にはあるのじゃないかと私は思うわけでございます。その点、長官、いかがでございましょうか。
  168. 西廣整輝

    西廣政府委員 まさに先生のおっしゃるとおりでありますが、やはりどうしても軍備管理あるいは軍縮というようなことは実態よりもムードが先行するというようなことがございます。我々の最近の経験にしましても、一九七〇年前後のデタントの時期でございますが、当時は今回のINFの全廃合意以上に世の中が平和になったのではないかというふうに喧伝されたわけであります。しかしながら、一、二年の経過を見ますと、少なくとも極東においては当時二十数個師団だったものがわずか二年足らずの間に二十個師団もソ連の配備がふえたというような実態もございました。そういう過程の段階で、一、二年の間、アジアに急激に軍備が増強されたためにヨーロッパで若干の軍縮ということが行われたかもしれませんが、二年後になりますと、今度はヨーロッパ正面、アジア正面ともに同時並行的に増強されているという状況に移っていったということで、ある意味では西側がかなりデタントムードの中で立ちおくれてしまったという事態もあったわけでございますので、先生のおっしゃる点は重々わかっておるわけでございますが、我々としては、おっしゃるとおり、より目を光らせてといいますか、強い関心を持って今後の推移を見守りつつ正確なデータを出していきたいというふうに考えております。
  169. 神崎武法

    ○神崎委員 ぜひ国民に、今の日本の置かれている現状というのですか日本を取り巻く軍事情勢というものを正確に国民が認識できるような最新のデータを収集して、国民に提示していただきたいということをお願いする次第でございます。  国際情勢の認識の絡みでもう一点お尋ねをしたいわけでございます。  ハンス・ヤコブセンというボン大学の教授が昨年四月十日に防衛研究所で講演をしております。この方はボン大学の政治学部長であると同時に、国防省の内面指導委員会議長のほか西ドイツの国防、外交関係の多くの要職を兼ねている国際政治、安全保障問題の権威であると言われておる方でございます。その人の講演を読みますと、「現実的・客観的側面において、日本も西ドイツも現在いかなる国からも侵略の脅威には晒されていない、というのが私のテーゼである。」そういう認識を述べているわけでございます。また、ヨーロッパを例にとって、「ソ連の通常戦力が西側より強大であるためソ連の軍事的脅威が想定され得るとは考えるが、実際問題として、ソ連は今日西側を侵略する意図を持ってはいないという見解を持つ。 西側諸国とソ連は現在、平和裡に体制の優位競争をしているのである、というのが私のテーゼである。 そもそも、なぜソ連は強大な軍備に固執するのであろうか。これについては、(1)歴史的体験、(2)同盟諸国に対する信頼性の欠如、(3)自己の弱点を軍事力で補おうとするバランス感覚、という三点が考えられる。」というような分析もされておるわけでございます。  日本よりもはるかに東西の激突と申しましょうかそういう渦中にある西ドイツの安全保障問題の権威が、西ドイツも日本も脅威にさらされていないのだ、こういう認識をしている点に大変興味深く拝見をしたわけでございますけれども、この方の認識についてどういう御感想、御意見をお持ちでしょうか。
  170. 小野寺龍二

    ○小野寺政府委員 ハンス・アドルフ・ヤコブセン教授は私もよく存じております。大変尊敬している西独の政治、歴史学者でございます。学者の個人的な講演でございますので、防衛庁としてコメントするのは余り適当ではないかと存じますけれども、ちょっと二点ばかり申し述べさせていただきたいと思います。  ヤコブセン先生は大変な信念の持ち主でいらっしゃいまして、自由民主主義というものが共産主義ないし社会主義よりもすぐれているという信念を持っておられて、それで全体としてはやはりすぐれた体制の方が結局は優位にあるという思想から出発しておられる方だと私は承知しております。その点に関しましては、確かに脅威というものを軍事的な側面だけでとらえるというのは明らかに間違いでございまして、総合的に見なければいけないという点で、先生の説は大変傾聴に値する点があるかと存じます。  ただ、同じヤコブセン先生の、今委員が引用されました防衛研究所における講演におきましても、西側が十分な防衛力を有する限り、ソ連の西側侵略はないであろうということを言っておられるわけでございます。したがって、軍事についてもそれなりの体制を整えているということを前提として、そういう東西の競争という中で結局は西側の方が有利ではないかという考え方を持っておられるということだと思います。     〔椎名委員長代理退席、委員長着席〕  それから、もう一つつけ加えさせていただきますと、ヤコブセン先生はドイツにおける、確かに権威の高い方でいらっしゃいますけれども、これがすべての意見ではないということも申し上げておきたいと思います。例えばドイツの国防白書においては、ソ連というのは西欧に対する政治的、軍事的脅威の中心であるというような言い方をいたしております。おっしゃるとおり、東西の対立の一番正面にあります西ドイツでございますので、NATOの体制のもとでできるだけの防衛力というものを整備し、数の上での不均衡というものを質それから士気等によって補うという大変な努力をしているわけでございます。そういったものを前提としてやはりその抑止というものも可能でございましょうし、その西ドイツの立場からいういわゆる緊張緩和、東方外交というものが可能になっているというふうに私どもは見ております。
  171. 神崎武法

    ○神崎委員 次に、昨日締結された米軍事機密特許の問題について簡単にお伺いしたいと思うわけでございます。  一九五六年協定の実施のための細目取り決めが昨日締結されますとともに、日米相互防衛援助協定に基づく日本国に対する一定の防衛分野における技術上の知識の供与に関する交換公文が締結されたわけでございます。今回のこの取り決めによりまして、特にFSXの日米共同開発に当たって日本側にとって大変メリットがある、そういう報道もされておるわけでございますけれども防衛当局としてはどういうメリットがあるというふうにお考えになっておられるのか、また今後どういう影響が出るのか、そういう点も含めてお尋ねをいたしたい。
  172. 山本雅司

    山本(雅)政府委員 今委員御指摘のように、十二日にアメリカと秘密に保持されている特許資料についての導入に関する交換公文を結んだわけでございます。この交換公文を結ぶに至りました経緯でございますけれども日米は御承知のように非常に緊密な連携を保ってきておりまして、私どもといたしましては技術的な面でいろいろの観点から交流を深めたいということで今まで話し合いを続けてきたわけでございます。その中の一環といたしまして秘密特許と申しますか、アメリカの方で秘密に保持されている特許資料につきましてもこれをぜひ日本としては導入したいということを常々話してきたわけでございます。  と申しますのは、秘密特許資料というのは、実は特許資料は先端技術に関する大変重要な技術資料でございますし、またそれを見ることによってどういうような形の技術開発が進められる可能性があるかということもうかがい知れるわけでございます。したがいまして、そういう観点からできるだけアメリカにおけるそういう公開されてない技術資料も私どもとして入手できれば、日本の装備品の開発についても非常に益するところがある、こういうふうに考えたわけでございます。いろいろ交渉しました結果、今回それが枠組みとしてでき上がったわけでございまして、今後日米当局が合意いたしますればFSXの開発も含めまして一般的に秘密特許資料が入ってくる、こういうことになるわけでございます。これは、今後日米の技術交流がますます盛んになる中で、こういう秘密特許資料についても入ってくるということはそれ自体非常に有益なことでございますし、ひいては日米関係の技術交流にも資するものであるというように考えておるところでございます。
  173. 神崎武法

    ○神崎委員 この秘密特許の問題について国内法整備の問題でございますけれども、新聞報道等によりますと、どうも国内法整備考えていないというようなお考えが示されておりますけれども、果たして秘密特許条項等、こういう特許法の改正も含めて、そういう国内法整備というものが今後も将来にわたっても全く必要がないというふうにお考えでございましょうか、その点をちょっと。
  174. 山本庸幸

    山本説明員 昨日実施に移されましたのは五六年協定と言っておりますこの協定の第三条に関する措置でございます。そして、この五六年協定と申しますのは、昭和三十一年に国会の御承認を受けて締結された条約でございまして、一般論として、条約の規定といいますものはそのまま国内法としての効力を有するものと考えております。そういうわけで特許法の改正はこの点については考えておりません。  それから、特に申し上げたいことは、特許法第二十六条におきまして「特許に関し条約に別段の定があるとさは、その規定による。」と特段に示されておるわけでございまして、こういうことで私どもは法律の改正は考えておりません。
  175. 神崎武法

    ○神崎委員 今回の取り決めの関係では考えていないということですけれども、これは近い将来こういう秘密特許問題ということを契機に我が国の特許法、公開特許制度というものに秘密特許条項を加える、そういう秘密保護という観点が今後必要になってくるのかどうか、その点はいかがですか。
  176. 山本庸幸

    山本説明員 私ども特にこれは今回の措置の実施ということでございますので、いわゆる戦前のような一般的な秘密特許制度というものをつくることは考えておりません。
  177. 神崎武法

    ○神崎委員 最後に、次期防衛力整備計画について何点かお尋ねをいたしたいと思います。  中期防後の次期防の検討に取り組む方針であるということが言われておりますけれども、まずこのスケジュールについて、いつごろ開始し、いつごろまでに検討を終わらせるのか、現在までのところのスケジュール、これについてはいかがでしょうか。
  178. 西廣整輝

    西廣政府委員 次期の中期計画につきましては、実はまだ政府としてどういう期間を限ってあるいはどういう形式のものをつくるかという論議をいたしておりませんので、私どもとしてまだ具体的なスケジュール等を申し上げるわけにいかないわけでございますが、我々としては、先般政府決定を見た中期計画と同等な中期的な、より具体性を持った防衛力整備のプログラムというものがあってしかるべきであろうということで、その種のものが今後の合理的な防衛力整備のために必要であるという考え方を持っております。  そこで、仮にそういったものをつくるということになりますれば、当然のことながら、現在の計画が六十五年度までのものでございますので、六十六年度予算がつくられる時期、つまり六十五年の年末になると思いますが、その時期までには次の計画というものができてしかるべきであろうというふうに考えております。ということから逆算をいたしますと相当長期にわたる見通し等もこれから研究をいたさなくちゃいけない、それに基づいて五カ年間の整備計画なら五カ年間の整備計画をつくるということになりますと、やはり一年余の準備期間が要る。さらにそれを政府部内でいろいろ調整をし、安全保障会議あるいは閣議等で御審議をいただくということになりますとさらに一年くらいの年限が要るということになりますので、遅くも年内には政府で次の計画をどうするのかというようなことをお決めいただいて、作業が整々と進められるようにする必要があろうというように考えている次第であります。
  179. 神崎武法

    ○神崎委員 中期防の総額明示方式、これは次期防でも採用するという方針はもう既に決まっているのですか、あるいは基本的にこういう考え方に立っておられるのですか。
  180. 西廣整輝

    西廣政府委員 先ほど申し上げたように、次の政府計画をつくるのかつくらないのか、つくるとすればどういうものにするかということについてはまだ決められておりません。今後安全保障会議等で御論議があって決まるものと考えております。  ただ、御承知のように昨年の予算後に、防衛費の枠組みとしてのいわば歯どめともいうべきものについては、計画の総額というものが従来の一%というものにかわるものであるというようなことが閣議決定されておりますので、何らかのそういった形の計画としての総枠、金額の総枠といったものは必要であろうというように私ども考えておりますが、それが五カ年間として総額が決まるのか、あるいは三カ年で決まるのか、どういう形でなるかということについては今後の御審議の結果によろうというように考えております。
  181. 神崎武法

    ○神崎委員 防衛関係費の歯どめの問題として、いわゆる総額という考え方のほかに、いろいろな歯どめというのですか、一つのメルクマールというのですか、そういうものはお考えになっているのでしょうか。
  182. 西廣整輝

    西廣政府委員 防衛費の枠組みの決め方について、従来はGNP対比で考え考え方、あるいは財政支出といいますか財政なりあるいは一般会計なりいろいろなものを分母として考え考え方、いろいろあろうと思いますが、この件に関しては現在の五カ年計画をつくる際にもいろいろ論議をされました。さらには、昨年の一月の閣議決定に際してもいろいろ論議されたわけでございますが、最も合理的かつ正確なものとしては、ある程度の期間の具体的な整備内容というものを踏まえて、そしてそれを前提とした防衛費の枠組みというものを決めるということが最も合理的であり、かつしっかりした枠組みになるのではないかというのが現在の政府考え方でございます。
  183. 神崎武法

    ○神崎委員 それから、中期防の達成率ですけれども、今年度末で大体どのぐらいになるというふうに見通しでおられますか。
  184. 西廣整輝

    西廣政府委員 中期防のこの三年間、六十三年度予算までの進捗率でございますが、成立予算ベースで申し上げてそれを六十年度価格に直したものということになろうと思いますが、防衛関係費という考え方、歳出予算ということで考えてみますと、おおむね五七%ぐらいの進捗率ではないかと思っております。また、かなり具体的に中期計画として定められております正面装備品等の契約ベースで考えますと、おおむね五五%程度の進捗率であろうというように考えております。
  185. 神崎武法

    ○神崎委員 そうしますと、今次中期防では「防衛計画の大綱」の求める水準は達成されるというようにお考えになっておられるのか、あるいはまた次期防までかかるというように見ておられるのか。
  186. 瓦力

    瓦国務大臣 大綱の基本的枠組みのもとでこれに定める防衛力の水準達成、このことを目標とするものでございますが、計画が達成されれば、防衛力水準を一部を除きおおむね達成することができる、こういうぐあいに考えておるわけでございます。  なお、目標水準が達成されたといたしましても、その水準を維持するということは大変な努力がまた伴うわけでございまして、これは委員御承知のことでございますが、こうしたことも踏まえて考えてみなければならぬと思っております。
  187. 神崎武法

    ○神崎委員 次期防の策定に当たっての現段階における主要な整備目標は、主としてどういうことをお考えになっておられますか。
  188. 瓦力

    瓦国務大臣 中期防後の整備計画いわゆる六十六年度以降の防衛力整備につきましては、先ほど防衛局長から答弁もいたしましたが、私ども予算委員会等も通じまして、具体的な方針についてまだ述べられる段階ではない、こういうぐあいに申し上げながら今日に至っておるわけでございますが、現在庁内におきましてそれぞれの分野で各種の検討をいたしておるわけでございまして、そうした検討も勘案しつつ、我が国の地理的特性を十分に踏まえ、なおかつ国際軍事情勢、諸外国の技術水準、こうした動向に有効に対応し得る効率的な防衛力整備、こういったあり方を追求してまいることが重要だと考えておるところでございます。
  189. 神崎武法

    ○神崎委員 この次期防との関係でも問題になってくるわけでございますけれども、今般長官がアメリカで有事来援の共同研究について合意を見た、あるいは武器技術の共同開発、共同研究ということについても合意を見たということが言われておりますし、ガイドライン安保と言われるように、その後、共同作戦計画、インターオペラビリティーにしても、今回の有事来援の問題にしても、日米共同して我が国に対する侵略に対処する、そういう流れというのですか、そういう基調が最近顕著になってきておると思うわけであります。ところが、大綱の考え方というものは限定・小規模侵略に対しては独力で対処するのだ、これを原則とする、単に防衛力整備の方針だけではなくて、対処方針としても原則として独力対処、それを補完するものとして日米安保、いわゆる共同対処というものがあるように理解しているわけでございますけれども、ガイドライン安保になってからこれがすべてあらゆる侵略に共同対処する、こういうふうに考え方が大きく変わってきたように思うわけでございます。  この問題についてはちょっと時間をとってじっくり今後議論をさせていただきたいと思いますが、一点だけこの関係で、いわゆる大綱で言うところの限定・小規模侵略に対して独力で対処するという原則と、それから日米安保に基づいて日米共同して対処するという考え方と、防衛当局としてそこをどういうふうに基本的に頭を整理しておられるのか、その点だけお尋ねいたします。
  190. 西廣整輝

    西廣政府委員 御承知のとおり、この「防衛計画の大綱」、これは防衛力整備の大綱というように御理解いただきたいと思いますが、と同時に、一年ほどおくれてつくりましたガイドライン、これは、片方が防衛力整備のための基本的な指針であるのに対しまして、防衛力の運用構想といいますか運用についての指針、ガイドラインというように御理解いただきたいと思います。したがって、この両者は両々相まって日本防衛体制を基本的にどう枠組みするかというようなものでございます。したがって、私どもは大綱とガイドラインの間にそごはないというように考えております。  大綱の方は、我が国みずからが整備する防衛力及び日米安保体制によるアメリカの支援、そういったものと両々相まちまして、例えば間接侵略あるいは軍事力による示威行動そういった極めて軽度の軍事的脅威から核戦争に至るまでのすべての我が国に対する脅威を抑止し、かつ、実際に何か生じた場合にはこれに対応するという構えになっておるわけであります。そして、そういった日本に対する軍事的な脅威のさまざまなスレッシュホールドといいますか段階の中で、小規模・限定的な事態までは独力でやり得るようにしようというのがこの考え方の基本になっておるわけであります。  一方、ガイドラインの方にありますのは、そのような防衛力整備という、日本自身が持っておる防衛力というものを前提といたしまして、これが今申し上げたさまざさまな段階にある我が国に対する予想される侵略に対してどう有効に能力発揮ができるか、するためにはどうするかということが示されておるものでありまして、当然のことながら、今申したような限定的な侵略以下であれば我が国独力で、あるいはほとんど独力でこれに対応することができましょうし、それ以上のものになった場合は当然のことながら米側の支援を受けるわけでございますが、それらの支援が十分に効果的に発揮され事態に対応できるように、ひいてはそういうことによってその種のもろもろの事態が未然に防止されるようにということを考えてつくられておるものであるというように御理解をいただきたいと思います。
  191. 神崎武法

    ○神崎委員 この点についてはまた後の機会に議論をしたいと思いますが、きょうはこれで終わらせていただきます。
  192. 箕輪登

  193. 和田一仁

    和田委員 今の日米地位協定に関する特別協定、私先般本会議でも質問いたしましたが、いわゆる在日米軍労務費に関する特別協定、この協定は日米の地位協定の特別措置であるというふうに私ども考えておりまして、その地位協定の原則を逸脱するものではないという説明を従来とも受けてきたわけですけれども、今回の改正もそれと同様の、趣旨に反していない、逸脱はしていないということでしょうかどうか、これをまず御説明いただきたいと思います。
  194. 岡本行夫

    ○岡本説明員 お尋ねの点でございますけれども、今回国会にお諮りしておりますのは先生御指摘の昨年国会で御承認いただきました労務費特別協定の改正案でございますけれども、その労務費特別協定は地位協定の第二十四条に基づきまして期間が限定されました暫定的かつ特例的な措置を定めているものでございます。いわば地位協定の特則と観念しております。したがいまして、二十四条に申します経費負担についての基本原則そのものを変えるものではございません。今回お諮りしております現行の労務費特別協定の改正というのは、この特別協定の性格すなわち地位協定の特則としての性格を変えるものではございません。
  195. 和田一仁

    和田委員 同じだ、逸脱はしないのだという御説明のようですけれども、そうでありましたら、こういった特別協定を結べば労務費そのもの、本給、こういうものも、では半分ぐらいは日本が持とうかというようなことも将来可能と考えてよろしいのか、その点についてお尋ねしたいと思います。
  196. 岡本行夫

    ○岡本説明員 今後こういう特別協定方式によりまして政府の米軍経費の肩がわりがいわば無制限に進んでいくのではないかとの御疑念と思いますけれども、今般の労務費特別協定改正に関します政府の方針は、あくまでも日米両国を取り巻きます経済情勢が最近において一層の変化を見せておる、そして、そのために在日米軍経費が著しく圧迫されているという事態、この中で在日米軍労務者の方々の雇用の安定を図るためにも暫定的、特例的そして限定的な性格の措置として行うものでございまして、今般明らかにされました措置以外の措置をとることは検討しておらないところでございます。
  197. 和田一仁

    和田委員 アメリカの経済事情も必ずしもよくございませんし、また軍事費も減らしていこうという傾向の中で今の特別協定以外には考えていないという御答弁ですけれども、前回も半分ということでこういう特別措置ができたのを全額に、これは特定の手当等ですけれども全額になっている。そういうことを考えますと、これからもそういう事態があればやはりそういう措置をとるのではないかという気がするものですから、こういう際に駐留米軍の労務関係の費用についての我が国としての負担の原則とか限度とか、これを明確にしておく必要はないのかどうか。あるとすれば、この際それを御明示いただければありがたい、こう思います。
  198. 岡本行夫

    ○岡本説明員 在日米軍経費負担の文脈の中におきまして現在の措置以外の措置考えていないと先ほど申し上げましたが、それはほかの場でも大臣を初めといたします政府側の答弁によりましても繰り返し申し上げているところでございます。  さて、御指摘の無制限な拡大をさせないための一定の基準が必要ではないかという点でございますけれども、私どもは、在日米軍経費の負担といいますものは、まず第一に厳しい財政的な制約、そして社会的、経済的な影響の範囲の中で安保条約の目的の達成を図るという観点からのみ国会の御審議を得てこれまでお願いしてまいっておるところでございまして、その負担についてはおのずから限度がある。それは国会の御審議の過程の中で明らかになってきているところでございまして、私どもはこのまま無制限に拡大していくというような懸念は有しておらないところでございます。
  199. 和田一仁

    和田委員 事務的にはそういう御答弁になろうかと思うのですけれども、いわゆる国際情勢の変化と経済情勢等を勘案しますと、将来においてもそういう負担をどこかで求められるというときに、こういうところで負担をするからということになりかねないような気がするものですから、心配はないということだけでなしに、はっきりした原則、限度というものを考えておく必要があろう、こう思って御質問したわけでございます。  この特別協定の改定に当たりましては、その理由として円高であるとか経済情勢の変動に対応したものであって、かつてペルシャ湾の安全確保として何かやりますと約束をしたそのこととは関係はないんだ、こういう説明もあったわけですね。しかし、そういうことであるならば、そのペルシャ湾の安全確保の一環として何とかしますといった米軍に対する財政的な措置、外交措置は別として財政的な措置というものは、ではこの特別協定とは別に何かやろうとなさっているのか、御計画があるのかどうか、この点についてお伺いしたいのです。
  200. 木村光一

    ○木村説明員 お答えいたします。  先生も御承知のとおり日本は原油の輸入量の約五五%をホルムズ海峡に依存いたしております。国際社会の責任ある一員として非軍事的な分野で応分の役割を果たしていくということにいたしております。こういう認識のもとに既にペルシャ湾の安全航行確保のために、これまで先ほども先生から御指摘がありましたとおり紛争当事国であるイラン、イラク両国に自制を強く求めておりまして、これからもこういう働きかけは行っていくつもりでございます。  それと同時に、湾の情勢の最終的な安定のためには、その背後にございます紛争自体を終わらせる必要がある。我が国としましてもかねてから平和的解決のために環境づくりを行う、その努力を継続していく所存でございます。  さらに昨年の十月七日の政府・与党会議の決定に従いまして、政府といたしましてその貢献策の早急な実施に今努めているところでございます。  ペルシャ湾における日本人乗組員や日本関係船舶の安全の確保についてでございますけれども、これまで我が国の海運労使に対しまして湾内における航行安全対策、具体的な安全対策の実施を指示してまいりました。今後とも関係省庁や海運労使と緊密に連絡いたしまして、湾内外の航行安全に関する情報等を海運労使に対して迅速に伝達する等具体的な措置を講じまして、湾内の安全航行の確保が図られるように努力してまいりたいと考えております。
  201. 和田一仁

    和田委員 この前の本会議でも外務大臣が、安全航行確保のための施設ですか、これを考えているという御答弁、それはどのくらいまで現実にいっているのでしょうか。
  202. 木村光一

    ○木村説明員 航行安全装置につきましては、政府決定以降関係の六カ国から原則的に受け入れるという同意を今年の初めごろまでにいただきました。具体的に施設を調達して供給する関係会社とそれから各国の政府との間で現在細かい契約交渉の詰めが行われております。そういう状況にございます。
  203. 和田一仁

    和田委員 それは、日一日あそこを通らない日がないくらいに航行しているわけですし、そういうことをやると決めたらやはり早くやって、一日も早く安全に航行できるようなそういう安心感を与えたいわけなんですよね。それが今のお話ですとだんだん進んではいるようですけれども、見通しとそれからそれに対する費用、それはどれくらいのことでできるのですか。
  204. 木村光一

    ○木村説明員 技術的な細かい詰めが残っておりまして現在まだ契約締結に至っておりませんけれども、特に湾の奥等におきましては契約が進捗の状況にございます。それから費用でございますけれども、若干当面の計画に各国の希望等がございまして、今のところ正確に申し上げる段階ではございません。見積もりが若干違っておりまして、正確にただいまここで申し上げる段階にはございません。
  205. 和田一仁

    和田委員 見積もりもとったりしているのですから、大体の費用は胸算用はあるのだろうと思うし、それはどういうところの費用から調達するのですか。
  206. 木村光一

    ○木村説明員 現在までのところ、経済協力または特別の緊急援助ということを考えております。
  207. 和田一仁

    和田委員 どこへのですか。
  208. 木村光一

    ○木村説明員 費目といたしましては緊急援助ということでございます。
  209. 和田一仁

    和田委員 これは、せっかく日本が大変な危険を冒してあそこを、日本の生命線ともいえるエネルギー源を運んでいる、そういう中でほかの国は大変な犠牲を払い努力をしながらやっているのに、一番最大の受益国である日本が受益国としての対応が少し緩慢ではないかなという感じがするものですからお聞きをしたわけでございまして、できるだけ早く、なるほど日本もやっておるというような対応をぜひしていただきたい。日本の掃海艇は大変優秀だと聞いていますけれども、法律的には出せても政治上出せない。これはこういうことに対する代償としての措置ですからぜひできるだけ早くやっていただきたいものだ、こう思うわけでございます。  それで、この問題はこれだけにいたしまして、この国会冒頭、予算委員会から大変議論になっております米軍の有事来援ですね。これは長官が行かれてこの研究を進めることになってきたわけですけれども、いろいろ国会でのやりとりも伺っているのですが、いま一つここで整理して教えていただきたいわけなんです。  この米軍の有事来援に関する共同研究と、今までやってきた、在来というか日本自衛隊についての有事法制の問題、この関連と、それから駐留米軍、駐留米軍と来援米軍とは別々だとは思わないのですが、とにかく駐留している米軍とそれから何か有事のときに来援してくる米軍のそのときの、これは有事のときに来るのですから、もちろん有事の際にどうやってもらうか、有事来援の法制の問題、これがホスト・ネーション・サポート、戦時のWHNSの方の協定と関連をしてどういう図式で考えたらいいのか。本当なら、こういう委員会ですから、もっと前にパネルでもつくっていただいてこれはこうこうこういう関係だというように御説明いただければ一番のみ込みやすいし、私らも国民にあの問題はこうだよといって、わかりにくいなという人たちにもきちっと説明できるように整理したものがお答えいただければありがたいと思っておるのですけれども、きょうはそこまでは御用意していただけないと思いますけれども、今申し上げたような関係、この来援の図式というものをちょっと御説明いただきたいと思います。
  210. 西廣整輝

    西廣政府委員 先生御指摘のように、先般の予算委員会で有事来援に関連をいたしましてさまざまな御質問をいただいたわけであります。御質問の中には、有事来援研究そのものとの直接関連で聞かれた御質問もありましたし、また、今先生がお話しになったWHNSあるいは有事法制ということで御質問もあったわけでございまして、その都度、私どもお答えする際に、有事来援研究との関連なりあるいはこれは一般論としてなりということでお断りをしてお答えをしておりますが、その辺必ずしも明確に伝わっていないという点もあろうかと思います。  そこで、私なりに整理をして申し上げますと、まず、今回の衆参の予算委員会で論議された点で幾つかの点を申し上げますと、まず一つは、有事来援研究とポンカスという事前集積との関係ということであります。このポンカス、特に陸軍部隊のポンカスについては過去数回、ここ数年間に御質問を受けております。それは、おおむね日本側からポンカスの申し込みをするのかどうかといったような御質問が従来何度かあったわけであります。その都度、政府側としては現在のところポンカスを日本からアメリカに申し入れるつもりはないということできておったわけであります。今回たまたま瓦防衛庁長官が訪米された際に有事来援研究をこちらから申し入れて向こうも同意をしたということで、これがポンカスの申し入れとやや混同されておる向きがあります。この点は非常に違いまして、ポンカスを申し入れるということは、ポンカスという政策をこちらが採用し、アメリカ側にその具体的実施を申し入れるということになりますが、今回防衛庁長官から米側に申し入れたのは、現在、作戦計画研究というのをやっております。作戦計画研究の中で、米側の来援がどの時点でどの規模で行われるかというものは作戦計画研究の中の非常に重要な部分でありますが、その部分の研究が必ずしも進んでいない、ここについてより促進方、その部分に着目した研究の実施を申し入れたというのが実態であります。したがって、もちろん有事来援をスムーズにする手段の一つの手段としてポンカスということもありますけれども、これは幾つかある手段のうちの一つであるということであると同時に、あくまで今回の申し入れは研究の申し入れであるということで、政策実施の申し入れとは全く違うという点が第一点であります。  第二点は、先生の今の御質問にもございましたように、これと駐留米軍に対するホスト・ネーション・サポート、これは有事及び平時のものが含まれますが、それとどういう関連にあるかという問題であります。  米側に対する支援の問題につきましては、この有事来援に伴う支援というものも当然何らかのものが出てくると私ども思っております。と同時に、作戦計画、作戦に伴う日本側からの支援ということも当然有事には考えられるわけであります。もろもろのオペレーションに関連をして、日本側から支援をすることあるいは日本側が支援を受けることというのが出てまいると思います。これらのことについては、前々からいずれこの問題も研究しなければならないということでガイドラインに別に定めがございまして、例えば作戦計画なりそういう研究をやる、そういう研究の結果、相互に支援をすべき内容というものが出てくるだろう。そういったものがある程度出そろった段階で改めて相互支援のための研究、それを取り上げようじゃないかということで、これはガイドラインの中にその旨記されておりますので、現在も作戦計画の一部の研究が終わっておりますけれども、それに関連してどういう支援が相互に必要であるかというようなことが、ファクトファインディングといいますか、事実としてどういうことが必要になってこようかということで書き出してございます。  こういったものが、今後例えば来援研究をやる、その他の研究をやってまいりますと、それぞれの場面で相互の支援関係について必要事項というものは出てまいると思いますので、それらがある程度出そろった段階で改めて相互支援のための研究というものをやる必要があるのではないかなというふうに考えております。それは平時及び有事を通じてのものだというふうに考えております。  したがって、御質問のWHNSはガイドラインに基づく一つの研究として将来あり得るものであり、現在やっておる各種の研究、あるいは今度やろうとしておる来援研究に伴ってその種のことも出てくるであろうけれども、これらは問題点として挙げておいて、いずれまとまったというか、ある程度出そろった段階で改めて研究項目となるというように御理解をいただきたいと思います。  最後に、有事法制の問題でございますが、駐留米軍の有事における行動に伴う法制的な措置というものについては、当然これは我々としては必要なものであり、重要なものであるというふうに考えております。しかし、これはあくまで国内法との問題でございますので、米側と協議をして決める研究をするというよりも、日本政府内で研究しなければならない事項ではなかろうかというように考えておりますし、またガイドラインそのものが現行法規そのものを前提として書かれておりまして、日本の法規そのものをどうするかというようなことはやらないことになっておりますので、これはガイドラインに基づく研究ではない、別途の研究であるという理解に立っております。  そこで、それでは在日米軍、これは有事来援したものも平時から駐留しておるものも含めて、彼らが有事行動するための法制をどうするかという問題につきましては、当然いずれの日にかそれに必要な研究を行い、必要なときにそれが法制化できるような準備をしなければいかぬと思いますが、いずれにしましても、日本防衛のために支援をしてくれる米軍の行動というのは、自衛隊が主体になって防衛活動をするわけでございますから、自衛隊行動と重なり合う部分が非常に多いというふうに私ども考えております。したがって、現在自衛隊行動にかかわる有事法制の研究をいたしておりますので、これをまず完成をさせる、しかる後に今度は米軍にそれをアレンジする場合どうなるかというようなことになろうと思います。そういった順序でやってしかるべきではなかろうかなということで考えておりますが、いずれにしましても、これは有事来援研究とは直接的にかかわりがないけれども、別途の重要な研究であり、いずれやらなければいけないものだろうというように考えておる次第でございます。
  211. 和田一仁

    和田委員 御説明を聞いておりまして、ぐるっと回ってきて最終的に、日本自衛隊のまず有事法制化、これが整ったら、それに準じてというか、それをべースにして米軍の救援行動というものがここできちっとできるような法制化をする、そのとおりだと私も思います。  まず基本の、現在の自衛隊が有事の際のいろいろな行動をとるための法制化の問題、第一分類、第二分類、こういうところまではだんだんと研究、検討が進んでおりますけれども、一番肝心なのは、民生と関係の深いような第三分類の点について、これは大変なことだとは思うのですけれども、余り進んでいないというか、これからということになると、第一、第二ももちろん含めて、この第三分類まで含めてでき上がったら米軍の来援の際の有事法制もやる、こういうことですか、結果は。これは西廣さんにお尋ねするのが適当かどうかわかりませんけれども、ひとつ……。
  212. 西廣整輝

    西廣政府委員 まさに私どもだけではなくて、政府全体として取り組んでおりますので、具体的なスケジュール等申し上げる立場にないわけでございますけれども、先ほども答弁申し上げたように、まずみずからの自衛隊の有事における必要な法制的な研究というものが終われば、そこでほとんどのものは問題点なりやるべきことは明快になるであろうというふうに私は思っております。それを米軍に自衛隊というものを置きかえた場合にどの種の、テクニカルな問題というのはあろうかと思いますけれども、やるべきこと、何が問題かということについては大部分が明確になるということで、まずやはり自衛隊の有事における行動に必要な法制面の研究というものを完成させることが焦眉の問題であろうというふうに考えているわけでございます。  その進捗状況等につきましては、先生も御承知のように現にある法律、第一分類なり第二分類に属します現にある法律との関連の問題点等の整理は終わっておりますが、要は、現にない法律、全くない法律あるいは考えたことのないような問題についてどうするかということが一番雲をつかむような話になりますので、時間がかかっておるわけでございますが、現在安全保障室の方で、我々が過去及ばずながら勉強した成果等を御説明しておりますので、これを踏まえて、この問題であればこの省庁が取り扱う、勉強するのが一番いいだろうとか、そういう仕分けをやっていただけるのではないか。それが終わりますれば、あとはそれぞれの持ち分の中で精いっぱいやっていくという段階に移るのではないかというふうに考えております。
  213. 和田一仁

    和田委員 大変なことだということは私もわかるわけなんですが、これが非常に大変ではありますが大事だ、こう思います。  防衛庁長官、有事の話になったので、これは特殊なことでございますけれども、何か有事があったときに自衛隊は本来の任務を果たしていただかなければいけませんね。その、何か事があったときにやる、そこまではわかっているのです。そのためにいろいろな有事法制というのも必要だ、これはもう今おっしゃるようにぜひ早くやってもらう。しかし事が起こったときに、終結する方法というのは一体法的にどうなっているのですか、何かあったときに。これは今の法制上どういうふうに理解して、だれがどこでどう宣言したらそういう紛争が終結するのか、この辺どういうことでしょうか。法制の中でも大変これは特殊なことなので……。
  214. 瓦力

    瓦国務大臣 和田委員の御指摘の有事法制の研究というのは、法治国家として私は極めて大切なことだと思っております。  防衛庁は現在ガイドライン等に沿いましての研究であるとか、あるいは今防衛局長から答弁いたしましたような第一分類、第二分類等につきましても問題整理等はいたしておりましても、本来シビリアンコントロールが作用されるということになりますと、こうした問題は国会でもいろいろ御議論をちょうだいしたいところでありますし、また国民世論の理解というものも必要でございますが、でき得れば平時にこうした問題を冷静にいろいろ研究をしておく準備というか心がけというか、そうしたことが適切である、かように考えるものでございます。シビリアンコントロールが本当に発揮されるということでありますれば、立法府がこうした問題にも着目をしていただきましていろいろ御議論をいただく、そういうようなことがあることもふさわしいものではないかな、私はこういうぐあいに考えておるのでございます。
  215. 西廣整輝

    西廣政府委員 ただいまの件、防衛出動下令がされておる自衛隊が撤収するというような、これは自衛隊法に基づきまして撤収命令が出されるということでありますが、要は先生の御質問は、自衛隊のそういった行動にかかわる研究が今なされているわけでございますけれども、有事における自衛隊行動あるいは米軍の行動とはまたかかわりのない国民一般のための法制というものが別途あろうと思うのです。  この研究は実はまだ全く着手されていないわけでございまして、第三分類といえども自衛隊行動にかかわるものでありまして、そうでない法制というのは全くない。これについても、やはり非常に重要なものがたくさんあろうかと思います。極端な例を申し上げるようでありますが、例えば六年以上も戦争が続いて選挙も行われない状況があるというようなことになりますと、大変失礼な話でございますが議員の先生方一人もおられなくなってしまう、ということになると国会も内閣も構成できなくなってしまうようなことになるわけでございます。そういう場合にどうするか、いろいろな問題があろうと思うのです。これは自衛隊行動とかかわりのないというかまた別途の問題でありますが、非常に重要な問題がたくさんあって、我々にとってはどうしていいかちょっとわからないという問題もたくさんあるわけでございます。
  216. 和田一仁

    和田委員 そういうことも含めて、さらにもっと深刻な局面も頭の中に置きながら、万全の法的なものを真剣に考える場をどこかでやっておかなければいかぬ、こういう思いで私も脱線した質問をしたわけです。  先ほどの有事来援にもう一回戻ります。  有事来援の研究が進めば進むほど、何かこれは、もちろん日米安保を本当に機能させるために研究が進むはずなんですが、逆に有事来援をだんだん詰めていくと、これはなかなか法制的に不備だな、したがって我々アメリカの軍隊が行って身動きがとれないのではないか、こういうところに結論がいってしまったら大変なことなので、研究をすればするほど来援が難しいというような結果になる心配があるかどうか。私は素人なりにいろいろ法制上の問題を聞いていると、そこへ行き着くような気がするのですが、長官どうでしょう。
  217. 瓦力

    瓦国務大臣 有事来援につきましては、日本有事の場合、先ほど来答弁申し上げておりますとおり、共同作戦研究の一環といたしまして太平洋を越えて米軍が来るわけでありますから、輸送の問題とかいろいろそういった問題でガイドラインの中に研究をしていこう、こういうことでございます。まさに委員御指摘のように、有事の際すべて超法規的というようなことよりは、物事が静かなときに冷静に対応し得る法律があるというようなことが準備されることは、私は法治国家としてふさわしいことである、こういうぐあいに考え、これを政府考えるということになりますとまたいろいろありますが、世論の理解を待たなければなりませんが、立法府たる国会におきましても、こういう問題にいろいろ御提議いただくことはありがたいことだ、かように考えておるところでございます。
  218. 和田一仁

    和田委員 この問題は先で時間がいっぱいあるときに御質問させていただきたいと思います。きょうはもう一つだけお聞きして終わらせていただきます。  先般、アメリカから国務次官補がお見えになりまして、フィリピンの軍事基地の問題について、我が国に、何とかこの米軍基地を存続させるためのアメリカの経済的な問題を含めて援助してほしいという要請があったと聞いております。こういったことが法制上、一体できるのかどうか、できるとすれば、どういう方法でやろうとされているのか。国際的な何か新しい機関をつくって、そういうところで対処すればいいというようなことであるならば、それは一体どういうものであるかをお聞かせいただきたいと思います。
  219. 渋谷治彦

    ○渋谷説明員 米軍基地の存続のための費用、例えば借料につきまして日本に肩がわりしてもらいたいという要求はアメリカ側から出ておりません。我が方も基地の維持費を直接支出するということは考えておりません。一般的に申し上げますと、そのような種類の支出は、我が国の制度上行うことが困難であるというぐあいに考えられます。  それからもう一つ、フィリピンに対する経済援助につきましては、基地の問題とは関係なくフィリピン側とも話をしておりますし、アメリカ側とも話をしております。ただ、国際的なものがどういうものになるかにつきましては、特にアメリカも具体的な考えは今のところないと承知しております。
  220. 和田一仁

    和田委員 何かサミットのテーマにもなり得るような感じで、この対比援助の問題が大きくクローズアップしてまいりましたが、こういった問題についてもきちっとした対応をしていただきたいということを御要望して、時間が来てしまいましたので、終わらせていただきます。
  221. 箕輪登

    箕輪委員長 次に、東中光雄君。
  222. 東中光雄

    ○東中委員 予算委員会でもちょっと質問したのですが、昨年十一月十六日から十八日までの北海道における三沢のF16の訓練及び昨年八月の奈良県十津川におけるEA6Bプラウラーの訓練による被害、この両方のいわば戦闘航空訓練といいますかその結果どういう被害が施設庁に届いておるのか、それについてどういう補償がされたかという点についてお伺いしたいと思います。
  223. 弘法堂忠

    弘法堂政府委員 お答え申し上げます。  まず最初に、昨年の十一月十六日から十八日にかけまして北海道で行われましたF16の飛行訓練に関します被害でございますけれども、静内、浦河、新冠等の北海道南部地域を中心に、九市町村十一カ所におきまして、牛馬等が暴れたりすることによりまして軽種馬の打撲傷等七頭、それから流産が二頭、そのほかに流産のおそれのあるもの三十頭ほどございます。さらにはウサギの死亡等二十四羽及び豚の死亡三頭などの被害が生じております。これらの被害につきましては、因果関係が確認されたものから順次地位協定第十八条五項に基づきまして賠償処理を行うということで現在処理を進めているところでございます。  なお、次に、奈良県の十津川流域におきます米海軍機の航法訓練中に、谷底から二百メートルほど上空に張られましたワイヤロープの切断事故でございますけれども、これにつきましては木材運搬用のワイヤロープ、いわゆるテール線と呼んでおりますけれども、太さ十二ミリメートルほどのものでございます。それを切断いたしまして林業上の被害を与えたということでございますが、去る三月末、十八条五項に基づきまして被害者に対し賠償金を支払いまして賠償事務は完結しているわけでございます。
  224. 東中光雄

    ○東中委員 北海道の場合もそうだと思うのですが、結局地位協定十八条五項の(e)の(i)の適用による賠償でしょうね。
  225. 弘法堂忠

    弘法堂政府委員 十八条五項に基づく公務上の事故による賠償でございます。
  226. 東中光雄

    ○東中委員 これは十八条五項の(e)の(i)ということになると、「合衆国のみが責任を有する場合」ということだと思うのですが、そうですね。
  227. 弘法堂忠

    弘法堂政府委員 北海道の事故につきましては現在なお調査をしておるというところでございまして、まだ最終的には決定はしておりませんけれども、米軍の行為による事故ということで進めておるところでございます。  なお、奈良県の十津川の事故につきましても米軍に責任があるということで措置したものでございます。
  228. 東中光雄

    ○東中委員 (e)の(i)だから「合衆国のみが責任を有する場合」ということなんで、そういう趣旨で答えられたと思うのですが、それであの訓練は、訓練空域外において無通告で、しかも超低空で、そして例えば反転とか急旋回とかあるいは急降下というふうなことを伴うそういう訓練は米軍の訓練である。だからこれは安保条約上許されてないものをやって米軍のみが責任を持つ、そういう訓練をやっておったということが結果から見てはっきり言えるんじゃないかと思うのですが、北米局どうでしょうか。
  229. 岡本行夫

    ○岡本説明員 先生つとに御承知のとおり、安保条約第六条に基づきまして我が国の安全、極東における国際平和と安全のために駐留しております在日米軍は、その軍隊の特性上必要な訓練というものを我が国で安保条約、地位協定に基づいて行うことができるわけであります。  お尋ねの訓練空域外の演習についてでございますけれども、安保条約と申しますのは、地位協定もさようでございますが、訓練や演習といったものを特に取り上げてその実施の態様の細目について規定しているという格好にはなっておりませんで、したがいまして、実弾射撃等を伴うものはもちろんだめでございますけれども、そのほかの一般の例えば慣熟飛行のようなものは施設、区域外でも行うことが当然の前提とされているものでございます。
  230. 東中光雄

    ○東中委員 そんな一般的なことを聞いてないですよ。具体的に、この間行われた十津川の訓練及び北海道の訓練でそういう被害が起きた。それで、今までの答弁で基地外でもできるという話はありましたけれども外務大臣答弁では、我が国の公共の安全等に十分妥当な考慮を払った上でできるんだと。そういう考慮を払わないでやるということは許されないんだ、答弁を反対から解釈すればそういうことですが。今度の場合は米軍のみに責任があるようなそういう被害が起こっておるということなんだから、これについて米軍擁護ではなくて、もっと厳格に見るべきだと私は思うのです。  去年の十津川の問題が起こったときに、当時の倉成外務大臣ははっきりと、「事故原因を徹底的に究明する、また、かかる事故の再発防止及び飛行訓練の際の安全確保について既に米軍に申し入れをいたしておるところである」という答弁をしています。だから、その立場からいけば、それからもう半年以上たつわけですから、こういう訓練は米軍のみに責任のある被害を及ぼした、そういうものであるということをはっきりしなければ、「事故原因を徹底的に究明する、」と言った外務大臣答弁からいくと、今の答弁では甚だ、この時点においてまだ全部あれは結構なんですという姿勢をとっているのはどうかと思うのです。
  231. 岡本行夫

    ○岡本説明員 私どもが承知しておりますところでは、当該米軍機は十津川流域におきまして有視界飛行による慣熟飛行の訓練を行っていたということでございまして、先ほども申し上げましたとおりそのような訓練は地位協定上何ら問題がないというふうに私どもは解釈しているわけでございます。ただ、その結果あのような事故が起こったことはまことに遺憾でございまして、そしてそのための事故原因の究明でございますとか補償の措置というのは、地位協定上米軍機にそのような訓練が許されているのか許されていないのかといった議論とは全く別の問題として、あくまでもその事故の処理の問題として行われているところでございます。  それから、後者の北海道におきます低空飛行におきましても、米軍側から陳謝の意が住民の皆様方に表明されたわけでございまして、それに従って補償手続が進んでいるわけでございますけれども、私どもの地位協定、安保条約上の解釈は、両方の訓練について先ほど来申し上げているとおりでございます。
  232. 東中光雄

    ○東中委員 それは全く米軍のための弁解にしかすぎない。基地内における業務は米軍は全体として我が国の公共の安全に十分妥当な考慮を払った上でなければと地位協定三条三項に書いてあります。そういう条文上の規定があるわけです。それを、十分考慮を払わなかったからこそこういう事故が起こっているのです。だから、そういう点で外務省の姿勢は極めて遺憾だということを私は申し上げて、これは何ぼ安保課長とやり合いをしたって変わりそうにないと思いますから、指摘をしておきます。  次に、ソ連原潜のいわゆる静粛化に対する対応ということで昨年六月二十八日の栗原・ワインバーガー日米防衛首脳会談以来何回か会談が重ねられてまいりました。ソ連潜水艦の静粛化に関し対応を考えていく必要があることについて意見が一致したというのが六月二十八日の栗原・ワインバーガー日米防衛首脳会談の状況であります。これは防衛白書に書いてあります。続いて七月十五日にウェッブ海軍長官と栗原防衛庁長官の会談、これもソ連潜水艦の静粛化に対応するため米海軍と海上自衛隊の専門家会議が提案されて実施することになった。七月二十九日から三十一日までやはりソ連潜水艦の静粛化に対応するための日米専門家会議というものがハワイで開かれて、十月一日は西廣さんがアーミテージ国防次官補と事務レベル協議をやられて、結局十月二日に日米防衛首脳会談で四項目の合意がされたと伝えられておるわけでありますが、その内容を正確に明らかにしてほしいと思います。
  233. 西廣整輝

    西廣政府委員 今先生の御質問にありましたように、昨年六月ワインバーガー長官が来日された際に、防衛庁長官当時の中曽根総理大臣等とお会いになった際に、ソ連の潜水艦の静粛化に伴って日米できるだけ協力してこれに対応措置を講じようということで合意を見まして、その後先生のおっしゃるように事務当局の調整を行った結果、昨年の十月栗原防衛庁長官が訪米された際に私随行いたしまして、アーミテージ国防次官補と四項目についてともかく合意を見たわけであります。  その第一項目は、海洋観測関係の情報の交換を一層緊密にしようということであります。  現在、海洋観測いわゆる海洋の温度分布であるとか、あるいは海中雑音の問題であるとか、各種の調査をそれぞれの立場で、米側は米側で、日本日本でやっておるわけですが、そういったものを定期的な資料交換をやったり情報交換をするということはありませんでしたので、これをひとつ今後は定期的にといいますか、そういった資料交換の密度を上げて十分な協力体制をとろうというのが第一点であります。  第二点は、対潜装備関係技術の交流を促進することということであります。  対潜装備につきましては、具体的なソーナーとか、そういったものもございますし、そういったもののさらに基礎になるもろもろの基礎技術というものがあろうかと思いますが、これらについては現在までのところ米側が非常に進んでおりまして、我が方は一方的にほぼ向こう側の技術支援を受けていた状況であります。いずれにしましても、従来からあります技術協力の枠組み、技術交流の枠組みの中で対潜装備ということに着目した技術交流というものをより促進を図っていこうじゃないかということで合意をしたわけであります。  第三点は、いわゆる音響測定艦の建造についてであります。  SURTASSという、船が曳航します精密な音響測定具というのがございます。これは、我々前々からぜひ手に入れたいものだということで考えておったわけですが、米側はなかなか秘密度も高いものであるし、その提供をしなかったわけでありますけれども、これについての提供を我が方から提案をし、米側も考えてみるということで、今後音響測定艦の建造についてできればこれを実施すべく早急に研究してみようということで合意を見たわけであります。  それから第四番目は、ASWセンターの整備をするということであります。  ASWセンターと申しますのは、艦艇なり航空機が日ごろの訓練等で収集しております各種の音響データ、海洋情報等でございますが、そういったものをそこのセンターに集中をして、そこで高度の分析なり評価をするという意味で、データバンクとしての性格と、それをさらに利用するためのいろいろなソフトを開発する、そういう性格のものでありますけれども、これを早急につくろうということで合意を見まして、米側もそれに必要な技術的な支援をするということで、これは六十三年度予算にその着手についての経費が計上されているというものであります。
  234. 東中光雄

    ○東中委員 その第一の海洋観測関係情報の交換を一層緊密にするという問題でありますが、日本が海洋観測関係情報を得る方法は下北の海洋観測所と沖縄の勝連の海洋観測所の活動だと思うのですが、そこで得た情報、データを米側に提供するということのように理解していいのかどうか。  それからもう一つ、データ交換ですから、米国側からも来るということになるのじゃないか。そうすると、米国側でということになれば、西太平洋海洋情報センター、WPOCですか、ハワイにあるのですか、交換ということになるとその情報をこっちへ、そういうことになるのかなと思うたり、それにしても海洋観測所は私たちが見に行っても中へも入れませんわね。そういうふうに、国会議員が視察に行っても、見ても情報がわかるわけでもないのに入れない、しかしその情報は米側と緊密に交換する、どうも一体どういうことなんだろうという感じを持っておるのですが、実態はどうなんですか。
  235. 西廣整輝

    西廣政府委員 海洋観測で海洋情報等の交換といいますが、それは何も海洋観測所で得られておるデータというだけではございませんで、御承知かどうかわかりませんが、例えば我が方の艦艇等が訓練等で外洋に出る場合に、必ずある地域、ある時間に応じて、例えばBT観測をさせる、要するに深度別の海水温等を調べさせる、そういうことの蓄積で初めて海洋の温度分布等のデータがそろい、いわゆるチャートがつくれるわけです。そういったものは密度が濃ければ濃いほどいいわけであります。これは、お互いにどこの国も観測艦を出したりあるいはそれぞれの艦艇等が行動するに際してその種のデータというものを常にとっておるわけであります。そういったものがお互いにプラスされればより精密な潜水艦チャートなりその他のものができてくるということで、その種のデータ交換といいますか、それを大いにやりましょう、こういうことであります。
  236. 東中光雄

    ○東中委員 その種ということは書いてないのですね、海洋観測関係情報ということですから。  ただ、西太平洋海洋情報センター、WPOCというのは私はどんなものかちょっと見当もつかないのですが、ことしの一月二十六日の毎日新聞によりますと、瓦防衛庁長官向こうへ行かれて視察を申し入れたが何か米側が最高機密として拒否したというような記事があるのです。こっちは、日本の海洋観測所は我々が行ってもなかなか中へ入れてくれない、瓦防衛庁長官はハワイで向こうへ言うても入れてもらえなかった、そういう海洋観測所というのはえらいぶっそうなところなんだなという感じを持っておるのです。そういう報道もありますので、長官、そういうことはあったのですか。
  237. 西廣整輝

    西廣政府委員 恐らくその報道は、先般瓦長官が訪米される際にハワイに立ち寄ったわけでありまして、長官の視察日程には先生御指摘のその場所は入っていなかったわけですが、我が方で、六十三年度予算で六十三年度に建設に着手しようとするASWセンター、これと同種のものだと思います。そういったことで、記者さんの中で見たい方がおられて申し込んだけれども断られたというのが実情じゃないかと思いますけれども、いずれにしましても、防衛庁長官から見せてほしいという申し込みをしたこともございませんし、もちろん断られたわけでもございません。  したがって、今先生の御指摘の西太平洋云々というのは、アメリカの西太平洋にあるASWセンターであるというように御理解いただければいいのであって、そこのデータと交換をするということよりも、そこは、先ほど申したようにデータバンクであり、かつ、そういったソフトをつくっておるところであろうというふうに私ども考えております。
  238. 東中光雄

    ○東中委員 それは体験されたというふうにここに書いてあるからね。それをそのまま聞いたわけですよ。  それで、これは海洋情報だけなのか。西廣さんの去年の九月十日の参議院の内閣委員会答弁では、海洋なり音響等の調査データというものの交換というような趣旨の答弁をされておりますね。とれは音響情報についても交換を、緊密かどうか知らぬけれども交換することがあるんですか。
  239. 西廣整輝

    西廣政府委員 音響そのものといいますと、例えばある今まで見たこともない潜水艦の音響をたまたまキャッチをしたというようなことがあれば、音響についてそれなりの必要があれば、我が方にとってメリットがあれば交換するということもあろうかと思いますが、一般的には、ここで申しますのは年々変化する、あるいは四季によって変化する海洋の温度のレーヤーであるとか海水の密度であるとか、そういったことによって音響が屈折をするわけです。そういうことで、潜水艦探知のためにどうしても必要なものとしてASW作戦のためのチャートをつくらなければいけない。そのためには、先ほど申し上げているように各種の海洋データが数多くそろえばそろうほどいいというものであるということを御理解いただきたいと思います。
  240. 東中光雄

    ○東中委員 いや、これはソ連の潜水艦の静粛化に対応する手段としての交換、こういうわけですから、だから単にチャートが詳しくなればいいという一般的な問題ではなくて、具体的には日米間でわざわざ防衛首脳の会談を何回か重ねた結果出てきたものですから、それとあわせまして、海洋観測だけではなしにソ連の潜水艦のということが前提になっているわけですから、そういう点でいうならば音響情報の交換もその中に含まれる。それから同時に、今P3Cによるオホーツク海の哨戒も六十三年度からふえますね。二日に一機だったのを一日一機、倍にするということでやっています。そういうことで得た動静情報といいますか、そういうものの交換もやるのかやらないのかということをお伺いしておきたいのです。
  241. 西廣整輝

    西廣政府委員 潜水艦というものはそう数の多いものではございませんから、我が方だけが音紋等を探知し得てアメリカが探知し得ないということがどれほど例としてあり得るかということはわかりませんが、そういう音響データというものを交換してもそれはそれなりにおかしくないというふうには考えておりますけれども、一般論としては、先ほど来申し上げておりますように潜水艦の音というのは逐次小さくなってまいります。潜水艦というのはそれぞれ潜む場所というものが、先ほど申したように海水の温度なり密度分布の中でそこに潜んでいると真上を通ってもなかなか音の屈折でわからないという現象が起こるわけです。そういったものがこの海域であればどこにこちらが探知のソーナーを置けば一番わかりやすいかということは、先ほど来申しておるようなその種海洋データというものがそろって初めてこちらの対潜探知機材の能力が十分に発揮できるものであるということでありますので、何も海洋の基礎的データだからソ連の潜水艦の音が小さくなってくるのと関係がないということではなくて、非常に関係が深いということを御理解いただきたいと思います。
  242. 東中光雄

    ○東中委員 そのことはわかったのです。さらに海洋観測データだけではなくて音響データも新しいものが出てきたら交換してもおかしくないとおっしゃいました。それもわかりました。そのほかに動静情報といいますか、対潜哨戒をやっておればソ連潜水艦の情報も、これはソノブイをまいてやることもあるわけです。あるということは認めておられるわけですし、そういう対潜情報、動静情報についての交換もあり得るということなんですか。それはどうなんでしょう。
  243. 西廣整輝

    西廣政府委員 現在日米間にいわゆるオペレーションに関連したそういうソ連の潜水艦なりあるいはその他のものについての動態情報をリアルタイムに交換をするというシステムがありませんので、そういうことをやってもいないし、やろうとも思っていないわけです。  いずれにしましても得られた特異な動態情報というものを、それなりの我が方の国益考えて、情報交換というのはある意味ではギブ・アンド・テークみたいなところがございますので、そういうものとして利用するということは何ら不思議でもなければあってもおかしくない、こういうことを申し上げたわけでございます。
  244. 東中光雄

    ○東中委員 ちょっと今言われたこと、それは平時においてそういう動静について交換するということはあってもおかしくないということですか。
  245. 西廣整輝

    西廣政府委員 平時なり有事を問わないと思いますが、これは直接の武力行使とかそういうことではございませんので、情報というものを常に我が方の国益に即して交換したりいろいろ利用するということはあっておかしくないことであるということを申し上げておるわけでございます。
  246. 東中光雄

    ○東中委員 西廣さんのことですから十分御承知の上で今言われているんだと思うのですが、これは答弁の変更になるわけですね。今までは有事において動静あるいは戦術情報ですかを交換することはあり得る、しかし平時においてはどういう情報を交換するかあるいは提供するかということについては答えられないという政府答弁が何回かありましたね。するともしないとも答えない。今、情報が二つある、音響情報と動静情報と、両方とも交換ということがあり得るということ、平時においても有事においても、こうおっしゃったのですね。
  247. 西廣整輝

    西廣政府委員 私は全く従来の答弁を変更した覚えはございません。情報なりというものは平時、有事を問わず我が国国益考えてこれを提供したりあるいは交換をしたりということはあり得るし、やっておかしくないことであるということを申し上げておるわけでございます。
  248. 東中光雄

    ○東中委員 その情報で、潜水艦で言えば三種類ある。潜水艦に関係して言えば、今話に出てきている海洋観測情報といいますか、これは相手方の位置を知る上で海洋の状態をはっきりしておく、軍事的に非常に重要な必要なことなんで、これも交換するかどうかということですね。それから音響情報ということになれば、これは音紋の問題ですから、それもあり得る。それから今度は動静情報ということになれば、いわゆる戦術情報になるわけですね、動向情報ですから。それも平時、有事を問わずあり得る、こういうふうに言われたので、今までのものとは大分大きな違いですよ。これは何回か私も聞いたことがありますし、不破議員も聞いたことがありました。  その点は改めてもう一回お伺いしておきますが、「平時の場合にどういう情報交換をしているかということにつきましては公表することを差し控えさせていただきたいと思います。」これに対して前の伊藤防衛庁長官は、「情報を提供するかしないか、そういうことについては一切申し上げないということになっております。」というふうに言われて、宮澤当時の官房長官ですが、「防衛庁長官の見解は内閣の見解でございます。」ということを答弁されたのは五十七年の二月二日です。これはいわゆる動態情報です。今言われたのはそれと違うのですか。そこのところがどうも……。
  249. 西廣整輝

    西廣政府委員 全く同じでございまして、私は、この情報をこういうときにこういう手段で交換しています、そういう具体的なことは何度お聞きになっても申すわけにはまいらない、こういうふうにお答えするわけでございます。しかし、一般論として情報交換ということは国益に即してあってしかるべきであるし、ありましょうということを申し上げたわけです。その際、先生が三つというように分けられましたけれども、それぞれについて同じようなことが申せますということでありまして、決してこの情報はやるけれどもこの情報はやらないとかということを決めておるわけではないし、これは常にやらなくちゃいけないと決めておるわけでもございませんで、それぞれが同じように国益に即し我が方が必要と思うものについては交換することもあり得るということを申し上げておるわけであります。
  250. 東中光雄

    ○東中委員 初めからこの議論では、情報の中身を公表せいというようなことを不破議員も私も前から聞いたことはないのです。あの情報、この情報というのは、内容について聞いているのではなくて、情報交換、その情報の性格が海洋観測情報あるいはタクティカル情報あるいは音響情報、こういうことで聞いているわけですから。  もう一つだけ最後に聞いておきたいのですが、平時、有事を問わずということでありましたが、日本が平時でアメリカ有事の段階における、しかし日本は平時で今はオホーツク海を含めての対潜哨戒をやっていますね、そうして得た情報もあるわけですから、そういう場合にその情報をアメリカに提供することは、日本国益から見て必要だと思った場合はやるし、そうでないときはしない、やるかやらぬかは日本考えるんだ、やることもある、こういうふうに聞いていいわけですか。
  251. 西廣整輝

    西廣政府委員 要は、集団的自衛権とのかかわりの問題であろうと思うわけですが、私どもは、情報というものについては、一般論としては、集団的自衛権というものが武力行使に直接かかわる問題であるので自由に情報等の交換提供等はできるというふうに考えております。  ただ、情報というのにも非常に種類がございまして、あるぎりぎりの段階になって、例えばある目標、何度何分、角度何度で撃て、こういうふうなことがあるとしますと、これも一種の情報の伝達になるわけです。それはしかし最後の、例えば大砲なら大砲を発射するための情報といいますか、そういったものを言うことになると、これは果たして情報の提供になるのか、武力行使とも密接不可分のものになるのかというようなものもあろうかと思います。そういう点で、すべてのものが情報であれば提供可能であるというふうに私は申し上げておりません。ただ、一般論として大部分のものは国益に即してそのときどきの判断で情報の交換なり提供はし得るということを申し上げておるわけであります。
  252. 東中光雄

    ○東中委員 そうすると、一般論としてですが、タクティカル情報といいますか戦術情報、あるいは発射せいというそういう情報じゃなしに、これは共同正犯ですね、ともに行動しておることになるわけですね、そうではなくて、公海上におる相手を知った、それを撃てとも何とも言っているわけではないけれども相手がどこにおるかということを知らせるいわゆる動静情報、それを送ってもそれは武力行使に直接結びつかぬからいいんだというふうに防衛局長が御答弁あったというふうに聞いてよろしいですね。これは非常に重要な問題だと私は思っているんです。
  253. 西廣整輝

    西廣政府委員 ただいまの見解にしても、私、例を挙げてお答えしたことがあると思うのですが、例えばある国が、Aという国とBという国があって戦争状態にある、あるいは戦争状態にないけれども片方がしかけようとしておる、奇襲をかけようとしておるということで、明らかにA国がB国に対して奇襲攻撃のためにある行動をとっている、それをたまたま我が方が探知し得たということでございますね。そのときに攻められる方のBに知らせればそれはBを助けたことになるじゃないかということになります。黙っていれば今度Aを助けたということになるわけですから、黙っていようが言おうがどちらかに加担したことになるということはよくおわかりだと思うのです。これは刑法なんかでもたくさんある話でありますけれども、そういう状況考えますとそれはやはり国益から考えてどちらを判断するかという問題であって、先生のような、そういうものはどちらかの戦闘に有利に作用するということであれば言っても言わなくても集団的自衛権に違反をする、こういう話になりますと、それはどうも聞こえませんというのが私の見解でありまして、前から申し上げておるわけであります。
  254. 東中光雄

    ○東中委員 終わります。
  255. 箕輪登

    箕輪委員長 次回は、公報をもってお知らせすることとし、本日は、これにて散会いたします。     午後三時四十五分散会