○
猪熊重二君 ただいまから
委員派遣報告をさせていただきます。
去る十一月十六日から同月十八日までの三日間、
三木委員長、守住
理事、
橋本理事、下稲葉
委員、
安永委員、関
委員、
西川委員と私、
猪熊は、
検察及び
裁判に関する
調査の一環として、最近における司法行政及び法務行政に関する
調査のため、福岡県及び長崎県に行ってまいりました。
第一日は、福岡高等
裁判所において、福岡高等
裁判所、福団地方
裁判所、福岡家庭
裁判所、福岡高等
検察庁、福団地方
検察庁、福岡法務局、福岡矯正管区、九州地方更生保護
委員会及び福岡入国管理局の各機関から管内概況について
説明を聞きました。
第二日は、福岡刑務所の実情を視察し、次いで長崎地方
裁判所において、長崎地方
裁判所、長崎家庭
裁判所、長崎地方
検察庁、長崎地
方法務局、長崎刑務所、佐世保刑務所、佐世保少年院、長崎少年鑑別所及び長崎保護観察所の各機関から管内概況等について
説明を聞きました。
最終日は、大村入国者収容所と大村難民一時レセプションセンターの実情を視察いたしました。
まず第一に、司法行政及び法務行政に関する概況について申し上げます。
まず、
昭和五十九年度から同六十一年度までの期間の各
裁判所における
事件処理の概要につき申しますと、民事
事件におきましては、執行
事件等について増加傾向が見られるものの、他はおおむね横ばいの傾向にあり、特に調停
事件は各庁いずれも一時期、急増を示しましたが、
昭和六十年度から大幅な減少に転じました。これは、都市部においてサラ金
関係事件が増加し、これに対処するため、
昭和五十八年、いわゆるサラ金二法が施行されたことの効果によるものと思われます。
次に、刑事
事件におきましても、各庁の間で多少の増減はあるものの、全体的には、ほぼ横ばいないし減少傾向にあり、
事件の内容としては、覚せい剤取締法違反
事件や道路交通法違反
事件等が
相当部分を占めております。なお、略式
事件のうち道路交通法違反
事件について、
昭和六十一年の道路交通法一部
改正により、交通反則金通告
制度の
適用範囲が拡大されたため、最近は減少傾向を示してきたとの
指摘もございました。
次に、家事
事件及び少年
事件について申しますと、新受件数はおおむね横ばい傾向にあります。内容的には、家事
事件では子の氏の変更、保護義務者
選任、相続放棄の申述等が多く、また、長崎家庭
裁判所管内では離婚率が高いということでありました。少年
事件におきましては、窃盗が第一位、以下、業務上過失致死傷、傷害等の順で、年齢的には十四、五歳が最も多く、犯罪の低年齢化がうかがわれますとともに、性別では女子の占める割合が増加する傾向が認められます。
なお、いずれの
裁判所におきましても、
事件処理の
状況は順調に進んでいるということであります。
次に、同じく最近三年間の
法務省関係の概況について申し述べます。
まず、
検察当局の刑事
事件処理の
状況について申しますと、最近の犯罪情勢は全般的におおむね通常の状態にありますし、受理件数もほぼ横ばい傾向にありますが、内容的には、凶悪重大事犯、暴力団の対立抗争事犯、地方公共団体
職員らによる汚職事犯、あるいは韓国漁船による我が国専管水域及び領海内における違反漁業
事件等が多発し、しかも九州は、覚せい剤の供給源となっている近隣諸国と地理的に近いため、福岡空港や博多港を経由する出入国者や漁船等を使用した不法出入国者による覚せい剤の大量密輸事犯が後を絶たないとのことであります。
次に、法務局
関係について申し述べます。
福岡法務局管内には、長崎地
方法務局管内を初めとして、離島に所在する支局、出張所が少なくなく、小規模分散の機構であり、そのたか離島勤務
職員はその子弟の教育、医療、その他、生活上種々の不便を免れず、そのため離島勤務を希望する
職員はほとんどおらず、大事に苦慮していると
いうことであります。また、その業務については、登記申請等
事件及び謄抄本交付等
事件が大幅に増加し、内容的にも複雑困難なものが多く、他方、
関係職員の増員はほとんど認められていません。また、訟務
関係におきましても、水俣病
事件を初めとする幾つかの大型困難な
事件を抱え、その他、国籍、人権等に係る事務量も多いということであり、
関係職員の大層な努力によって事務を処理している
状況にあります。
次に、矯正管区
関係でありますが、各矯正施設が広大な区域に分散し、しかも離島に所在するものも幾つか存在し、また石炭、製鉄等の基幹産業が大きく変容して刑務作業の受注量が減少するなど、施設の適正な管理や刑務作業の円滑な実施に当たって困難な
事情が少なくありません。また、福岡刑務所を視察してまいりましたが、同刑務所は医療センター、分類センターとして当管区内で重要な
役割を受け持っており、さらに、ここはB級施設として犯罪傾向の進んだ者が主体を占めております。収容者は、暴力団
関係者がほぼ四〇%を占め、覚せい剤事犯に係る者が多く、また、再入者も少なくないのでありますが、
職員は厳正な規律のもとに、その更生改善のため日夜御苦労を重ねておられます。
次に、九州地方更生保護
委員会の
関係について申し述べます。
保護観察では、対象者にシンナー等乱用少年及び覚せい剤事犯対象者が多く、分類処遇、集団処遇等、処遇上の創意工夫を重ねて、保護観察の効果を高めることに努力しておられます。また、管内の全保護司のうち、女性保護司の占める率が徐々に高まってきているとのことであります。
次に、福岡入国管理局
関係について述べます。
本管内は、離島や半島が多いため、出張所の数も全国一ということであります。九州は、韓国と至近距離にあり、同国からの不法入国者の上陸地点ともなり、韓国、台湾等の漁船の領海侵犯等の違反
事件が多いとのことであります。また、福岡空港を初め、鹿児島、那覇、熊本、長崎の各空港で国際定期便が運航され、空港審査業務の伸びが著しく、
職員の派遣その他の対応策が急務となっております。さらに志布志港の入港船舶の増加が見込まれ、今年度の予算要求のうちにも、同港出張所の設置の項目が掲げられたとのことであります。
次に、大村入国者収容所について申し上げます。
本収容所は、被退去強制者を本国へ送還するまで一時収容する施設でありますが、
昭和二十五年以来今年七月の第百十二次集団送還までに二万二千百九十四名を集団送還し、その他個別送還した韓国人、朝鮮人、フィリピン人等は、今年十月までに二千三百九十八名に達しました。現在、収容者の数は百余名であり、収容期間はおおむね一、二カ月から四カ月であります。収容中の食費等及びチャーター機による集団送還に要する費用は、国が負担しておるということであります。入、出所人員は、
昭和五十七年以来減少の傾向にありましたが、昨年度に至り増加に転じました。出稼ぎ目的の不法入国者の増加がその主な原因と認められます。
次に、大村難民一時レセプションセンターにつき申し述べます。
同センターは、出入国管理及び難民認定法による一時庇護のため上陸許可を受けた、いわゆるボートピープル等の難民を定住先等へ送るまで一時収容する施設でありますが、その業務は
法務省の所管とされ、その実際の業務運営は財団法人アジア福祉教育財団に委託されております。また、費用
関係では、センターの運営経費を
法務省が、難民の生活費等を国連がそれぞれ負担し、その額はほぼ相半ばしているとのことであります。
在所者数は、今年十月末日現在百数十名で、入所者数はこのところ減少してまいりましたが、難民は今後も後を絶たない
状況にあると認められます。難民はその救難の経緯、気候風土の変化、風俗習慣の違い等もあって、
職員の方にはその日常の処遇や健康管理等に幾多の御苦労があるとお見受けいたしました。
第二に、庁舎施設及び宿舎の営繕
状況について申し上げます。
まず、庁舎施設でありますが、特に法務局におきましては、近隣の出張所の統合受け入れを行ったり、事務量が著しく増加したこと等により、事務室、書庫等が狭隘となり、そのため庁舎の新営や適地の
検討を進めているところが少なくありません。宿舎につきましても、法務局
関係を初めその他の部局も、民間借家や遠距離通勤を余儀なくされる等不十分な
状況が存在します。特に、離島宿舎については、気象条件等の特殊
事情からも早急な改善を図る必要があると見受けられます。
第三に、
関係諸機関から管内
状況等を伺った際、
派遣委員の方からも熱心に質問その他がなされましたが、その項目の概要について申し上げます。
暴力団に関する
状況、覚せい剤その他薬物事犯の
状況、拘置所、少年刑務所等の被収容者の
状況、刑務所における作業や宗教教講の実施
状況、刑務所に収容中の老人の処遇の
状況、戸籍公開とプライバシー保護の
状況、
簡易裁判所の統廃合が実施される場合及び特別養子法が施行される場合に備えての現場における対応の
状況、不法入国者の韓国への送還費用の負担
関係等の問題が取り上げられました。
第四に、本
委員会に対する要望事項について申し上げます。
特に、福岡法務局及び長崎地
方法務局から、増員、施設宿舎の整備、紋別定数の
改定等について強い要望がございました。その
状況については既に触れたところでありますが、当地は離島や半島が多い等特殊な
事情もあり、
相当の要望ではなかろうかと存ずる次第であります。
第五に、以上で概要を申し上げましたが、私
ども直接現地の
関係部局の方々にお目にかかり、種々勉強をさせていただきました。特に、人を収容して処遇するという困難なお仕事などは御心労もひとしおかと存じます。皆様の御健勝を祈念いたします。
また、
調査に当たり、現地
関係機関から御懇篤な御協力をいただきましたこと並びに
最高裁判所及び
法務省当局から手厚い御便宜をお図りいただいたことを、この席をかりて厚く御礼申し上げる次第であります。
以上であります。