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1987-12-07 第111回国会 参議院 土地問題等に関する特別委員会 第2号 公式Web版

  1. 会議録情報

    昭和六十二年十二月七日(月曜日)    午前十時一分開会     ―――――――――――――   出席者は左のとおり。     委員長         河本嘉久蔵君     理 事                 志村 哲良君                 下条進一郎君                 増岡 康治君                 森田 重郎君                 小川 仁一君                 志苫  裕君                 馬場  富君     委 員                 井上  孝君                 石井 一二君                 小野 清子君                 久世 公堯君                 沓掛 哲男君                 古賀雷四郎君                 斎藤 文夫君                 下稲葉耕吉君                 田辺 哲夫君                 永田 良雄君                 野沢 太三君                 水谷  力君                 稲村 稔夫君                 安恒 良一君                 渡辺 四郎君                 片上 公人君                 和田 教美君                 近藤 忠孝君                 内藤  功君                 三治 重信君                 山田  勇君                 野末 陳平君    国務大臣        内閣総理大臣   竹下  登君        法 務 大 臣  林田悠紀夫君        大 蔵 大 臣  宮澤 喜一君        文 部 大 臣  中島源太郎君        厚 生 大 臣  藤本 孝雄君        農林水産大臣   佐藤  隆君        通商産業大臣   田村  元君        運 輸 大 臣  石原慎太郎君        郵 政 大 臣  中山 正暉君        建 設 大 臣  越智 伊平君        自 治 大 臣  梶山 静六君        国 務 大 臣       (内閣官房長官)  小渕 恵三君        国 務 大 臣        (総務庁長官)  高鳥  修君        国 務 大 臣        (経済企画庁長        官)       中尾 栄一君        国 務 大 臣        (環境庁長官)  堀内 俊夫君        国 務 大 臣  奥野 誠亮君    政府委員        内閣法政局長官  味村  治君        内閣法制局第一        部長       関   守君        公正取引委員会        事務局経済部長  柴田 章平君        警察庁刑事局長  仁平 圀雄君        警察庁刑事局保        安部長      漆間 英治君        総務庁長官官房        審議官        兼内閣審議官   百崎  英君        総務庁長官官房        審議官      新野  博君        総務庁行政監察        局長       山本 貞雄君        経済企画庁物価        局長       冨金原俊二君        経済企画庁調査        局長       勝村 坦郎君        国土庁長官官房        長        清水 達雄君        国土庁長官官房        審議官        兼内閣審議官   荒木  寛君        国土庁計画・調        整局長      長沢 哲夫君        国土庁土地局長  片桐 久雄君        国土庁土地局次        長        兼内閣審議官   藤原 良一君        国土庁大都市圏        整備局長     北村廣太郎君        国土庁防災局長  三木 克彦君        法務省民事局長  藤井 正雄君        法務省刑事局長  岡村 泰孝君        大蔵大臣官房総        務審議官     角谷 正彦君        大蔵大臣官房審        議官        兼内閣審議官   土居 信良君        大蔵大臣官房審        議官       瀧島 義光君        大蔵省主計局次        長        斎藤 次郎君        大蔵省理財局次        長        藤田 弘志君        大蔵省証券局長  藤田 恒郎君        大蔵省銀行局長  平澤 貞昭君        大蔵省銀行局保        険部長      宮本 英利君        大蔵省国際金融        局長       内海  孚君        国税庁次長    日向  隆君        文部省初等中等        教育局長     西崎 清久君        文部省高等教育        局長       阿部 充夫君        厚生大臣官房総        務審議官     黒木 武弘君        厚生大臣官房審        議官       川崎 幸雄君        農林水産大臣官        房長       甕   滋君        農林水産省構造        改善局長     鴻巣 健治君        食糧庁次長    山田 岸雄君        運輸大臣官房国        有鉄道改革推進        総括審議官    丹羽  晟君        運輸省運輸政策        局長       塩田 澄夫君        建設大臣官房長  高橋  進君        建設大臣官房総        務審議官     田村 嘉朗君        建設大臣官房審        議官        兼内閣審議官   福本 英三君        建設省建設経済        局長       牧野  徹君        建設省都市局長  木内 啓介君        建設省道路局長  鈴木 道雄君        建設省住宅局長  片山 正夫君        自治大臣官房総        務審議官     小林  実君        自治大臣官房審        議官        兼内閣審議官   前川 尚美君        自治省行政局長  木村  仁君        消防庁長官    矢野浩一郎君    事務局側        常任委員会専門        員        荒木 正治君    説明員        農林水産大臣官        房審議官     青木 敏也君     ―――――――――――――   本日の会議に付した案件 ○土地問題及び国土利用に関しての対策樹立に関 する調査     ―――――――――――――
  2. 河本嘉久蔵

    委員長河本嘉久蔵君) ただいまから土地問題等に関する特別委員会を開会いたします。  土地問題及び国土利用に関しての対策樹立に関する調査を議題といたします。  本日は、竹下内閣総理大臣を初め土地対策関係閣僚皆様全員の御出席をいただいての質疑でございます。委員長といたしましては、この際、充実した審査が進められますよう委員皆様の御協力をお願い申し上げます。  それでは、これより質疑に入ります。  志苫君。
  3. 志苫裕

    志苫裕君 総理総理となっては初めての対面でありますから、当面する国政の重要な課題についていろいろとお伺いしたいことがありますが、予算委員会等が後に控えておりますからそちらに譲りまして、直接土地問題に入ります。  総理歴代政府土地対策はさいの河原の石積みのようなものだったのじゃないんでしょうか。これをちょっと聞いてください、二つ文書を読みますから。  法人土地取引について格別の措置が講じられていないため、土地が取得されたまま投機的に留保され、最終的な供給増加になっていない。特に、例を見ない金融緩和を背景に法人土地取得が顕著になるに及んで、これが地価高騰に拍車をかけ国民土地取得の希望を阻んでいる。  もう一つ文書を読みますよ。総合的な土地政策重点は、大都市及びその周辺の土地を中心として、総合的かつ具体的な土地利用計画を策定し、ある程度の私権制限を伴う土地利用規制を制度的に確立することにあると考えられる。  これはいつの文書だと思いますか――時間の関係で、今読んだ前段の文書昭和四十八年のもので、後段のものが昭和四十三年、いずれも政府税調土地税制に関する答申なんです。今の事態に物を言ったと同じような感じがするでしょう。言いかえれば、それほど何も変わっていないんですよ。何にもしていないということだ。このために、御存じのように、昭和四十七年前後にもこういうことがあって、そしてそれなりの教訓も蓄えたはずだし、また幾つかの法律もつくって、行政府権限も義務も与えられたはずです。にもかかわらず今日のこのありさま。一体行政府は何をしておったんだというのが率直に言って国民の声だと思いますね。  法律の効力がないのならつくりかえなきゃならぬし、行政が怠けておったのであれば責めを負わなきゃならぬ、こういう事態だと思いますが、とにかく今度の東京圏土地高騰というのはここ二、三年のことなんで、何をやっておったのか。まあ、今こんなことをやっていますというのはこれから聞きますが、この高騰の間に何をしておったのか、ひとつ関係省庁そして総理から、きょうは幸いテレビも入っているようですが、国民にわかるように説明をしてください。いかがですか。
  4. 竹下登

    国務大臣竹下登君) 先ほど御指摘がありましたように、私が内閣総理大臣になりましてから初めての本院における委員会でございます。どうぞよろしくお願いいたします。  土地問題に関する四十三年、四十八年の例示を挙げてのお尋ねでございますが、当時、いわゆる過剰流動性という時代と、それからもう一つ日本列島改造論が出ました後過剰流動性のその際も問題であって、なおる油ショックよりはちょっと前、こういうことであったと思います。その当時から、もとより我が国の国土面積にいたしまして例えばアメリカの二十六分の一とかいろいろなことが言われます。あるいは可住地面積になるとおよそ六十分の一であろう、こういうような土地に関する基本的な問題というのは私は、古くて新しい問題とでも申しましょうか、古くから議論されておったところであると思います。  なかんずく今次の問題につきましては、私自身地方出身でありますこともございまして、土地がむちゃくちゃに高騰するところと、まるっきり上がらないところ、あるいは下がるところ、すなわち日本列島の中に二つの体制の違った国が存在するような印象をかねて受けておりました。これではいけないという問題意識は持っておりましたが、過去の事例をさかのぼってみますと、そのときどきに、あるいは重課税の問題、税制上から来る問題、あるいは既存の幾ばくかの私権制限を伴う、国土利用計画法にいたしましても都市計画法にいたしましてもそれぞれ手直しが行われ、最近においてはやはり、国土利用計画法における監視区域の設定、前々国会、すなわち去る通常国会で、本院でも議了いただいた問題でございますが、そういう措置を絶えず行ってきてはおる。  しかし、その行ってきたものが結果として実効を上げておるかと言われれば、私が最初に申しました問題意識のように、実効を上げておるとは言えない。さように思いますので、新しい内閣ができまして以来、国土庁において、あるいは設置法調整権限等はございますものの、さらに土地対策担当閣僚としてそれを指定することによってなお政府としてのいわば統一的な施策を打ち出すべく今閣僚会議等を設置し、また、絶えず申し上げますが、両院に土地対策特別委員会等ができて、いろいろな建設的な建言が行われることが土地対策を進めていくための環境を整備していくために私は非常に評価すべきことではなかろうか、こういう考えで対応してきております。
  5. 志苫裕

    志苫裕君 各大臣からも聞きたいところだが、今の総理お話、私は、何をしてきたのですかと聞くんで、これからどうしますかというのはこれからやります。  今のお話で聞く限り、何にもしてはいませんでしたというような話だわね。いろいろやってきたけれどもうまくいかなかったんだと。関係大臣に聞いてもしようがありませんが、国土庁長官にだけ聞いておきましょう。  今までここ二、三年ずっと上がってきたんですが、その間何をしていましたか。
  6. 奥野誠亮

    国務大臣奥野誠亮君) 戦後四十二年でございますけれども、目まぐるしく日本経済情勢も変わってきておりますし、国際社会における日本の地位も変わってきていると私は思います。そのときどきに最善と思われるような対応をしてきたと思うんですけれども、後から振り返ってみますと、何であんなことをしておったのかということになりかねぬ問題もたくさんあろうかと思います。国土総合開発計画そのものにいたしましても、先般閣議決定いたしましたものが第四次総合開発計画でございまして、多極分散型の国土総合開発計画。しかしこれとても、いまだかつて国土の均衡ある発展を願わなかった時代はないのでございます。ないのでございますけれども、殊さら東京一極集中を避けて多極分散型の国土総合開発計画をつくらなきゃならない。これが四回目でございます。  でございますので、私は、そのときどきに最善を尽くしてきた、こうは言えるのじゃないかなと思うんですけれども、今考えますと何をしておったのかということにもなろうかと思います。経済構造そのものをとりましても、大きく今変革を続けているわけでございまして、卑近な言葉で言いますと、重厚長大型産業構造から軽薄短小産業構造に変わってきて、工場用地は要らなくなったんだ、事務所用地は要るようになったんだということでございまして、広大な土地は必要ないんだ、反対に空調の非常に緻密な計画の整った部屋が大切なんだ、こういうことになったりしているわけでございますので、これからも最善を尽くす努力をしていきたい、こう思っているところでございます。
  7. 志苫裕

    志苫裕君 そのときどきに最善を尽くしたというんですが、国土利用白書によりますと、六十一年においては、監視の必要があると判断された地域において土地取引動向地価動向調査したが、投機的取引集中という事態が生じた地域は見当たらず、規制区域指定は行われなかった。百三十五ページに書いてありますね。皆さんが見当たらないときに人々は地上げで苦しんでいたんですよ。これはどういうことを言っているんですか。説明してください。
  8. 片桐久雄

    政府委員片桐久雄君) 先生御指摘国土利用白書当該部分でございますけれども、これは国土庁が毎年実施しております規制区域指定事前調査の結果について記述した部分でございます。これにつきましては、六十一年度におきまして全国にわたって二百六十四地域、八百八市町村においてその調査を行ったわけですけれども、その結果、東京の一部地域におきましては投機的取引活発化が見受けられ、規制区域指定要件一つである投機的取引が相当範囲にわたり集中しているという状況が明確に確認できる地域は見られなかったので、御指摘のような表現になったわけでございます。  ただ、この調査の中で一部いろいろ疑問が出ているという点がございましたので、私ども、東京都と国土庁東京都心地価高騰対策連絡会議というものを六十年の十二月に発足さしておりましたけれども、その中で規制区域指定につきましても十分検討した次第でございます。そこでいろいろ検討した結果、東京都のような既成市街地が非常に広域に連続しているような地域でこの規制区域を発動することはいろいろ問題が難しいというようなことで、小規模の土地取引についても届け出勧告制の対象にしようではないか、そういう方針で臨んだ次第でございます。
  9. 志苫裕

    志苫裕君 今のは簡潔に言ってもらえばいいです。何か、あったようなないような話をしていますが、地価上昇はあったんでしょう。しかし、投機的取引集中というのがどうも見当たらなかったということなんですか。どっちもなかったんですか。
  10. 片桐久雄

    政府委員片桐久雄君) その調査の中で、地価高騰状況及び投機的取引状況等をいろいろ指数化して判断することになっております。それで、その指数の中で一部疑問に思われる指数も出てまいりましたので、私どもとしては東京都と十分検討を行った次第でございます。集中的取引というところまではいきませんけれども、投機的取引も一部見受けられたという状況でございました。
  11. 志苫裕

    志苫裕君 原因論を余りやる気はありませんけれども、これは六十年から六十一年のいわば地価上昇率を見て疑問に思えるなんという数字じゃないですよ。多いところは四〇、五〇でしょう。四割も五割も上がって、下手をすれば倍というところもあるのに、疑問に思えるという状況じゃなかったはずですよ。ただ、今、後段に言ったように、集中的取引投機的取引というのがわかりにくかったというのであれば、これは我々の方でも法改正を出していますけれども、一方でも網にひっかかったらやるという課題になったという認識だけはしておいてください。  しかし一方、国土庁清水官房長は、これは日本記者クラブ報に載っておったのであれですが、東京都知事に対して神田に規制区域をかけないかと持ちかけたが、そうならなかった。その次に大事な点があるんですね。国土利用計画法規制区域は、新しい市街地をつくるためのものと考えておった。既成市街地がばんばんと上がるというのじゃなくて、何か新しいニュータウンのようなものをつくる、そのときにそれを目当てにどっと上がるかもしれないということを想定して網をかぶせるという法案のように考えられていたと。こうなってきますと、法の読み方や運営の仕方に重大な誤りがあったことになるんですが、この点はどうなんですか。
  12. 片桐久雄

    政府委員片桐久雄君) 国土利用計画法規制区域の運用につきましては、法制定当時のいろんな議論も踏まえまして国土庁指導通達を出しているわけでございます。その中で、規制区域重点的に指定すべき地域というのは、計画的に市街地開発するとか、町の中で高度に特別に再開発をするとか、高度利用を特に促進する必要があるとか、そういう土地利用の転換を促進することが計画的に予想されるというような地域重点指定するように指導している次第でございます。それで、その通達を六十一年四月に改正いたしまして、既成市街地におきましても今後高度利用を促進する必要があるというような地域については規制区域指定し得るようにということに、通達を改正していたした次第でございます。
  13. 志苫裕

    志苫裕君 今の六十一年の通達、一口に言うと、既成市街地でも指定できるというふうに通達を出したということは、それ以前は新しいニュータウンのようなものをつくるための規制道具だというふうに考えていた節があるので、この辺はやっぱり少し物の考え方に甘さがあった、あるいはとんちんかんなところがあったというふうに私には思えてならない。これはやっぱり大事なことだと思うんですね。  この間の委員会でも安恒委員長官がいろいろやって、いつごろから地価が上がってきたんだろうと。五十七年というか八年というか、その辺からだなということになりますと、問題意識はもうあったわけで、伝家の宝刀を持っていたわけで、しかし、抜くときにさびついていたか、あるいは抜くべきじゃないという判断があったか、その辺の判断違いというようなものを指摘しておきたいと思うんです。  ともあれ、今度の地価高騰原因、いろいろ諸説はありますけれども、それはいずれを主としいずれを従とするかという程度の違いであって、大体東京への集中を過大視した情報が都心での投機をあおって、金余り金融機関がそれを支えたという見方はほぼ一致しているようですね。  今さら犯人捜しに念を入れたくありはしませんが、今までちょっと触れましたように、行政対応にはけじめをつけておきたいというのが私の質問の趣意でありまして、地価高騰はいわば折からの行革シンドロームの中で発生をした。土地という公共財をもうけの種にする資本の論理行政が、やれ規制緩和だ、公有地払い下げだと火をつけて油を注いだという事実はもう否定できないんでして、五階しか建てられぬというところに十階もいいですよということになれば、そこから上がる利益を考えれば、底地が少々高くたって勘定は合うわけですから、やっぱり高値でもお札でほっぺたをたたいてでも買うという結果になることは、今考えてみれば当然の話だけれども、あのころは何か行革シンドロームの熱に浮かされていましたから、冷静に見る目がなかったと言っていいんでしょうね。  あるいは国有地払い下げは、この間大蔵大臣は、いや、何千件もある民間土地取引の中で数件なんだから、それが大きい影響を与えたとも思えませんがというようなことをおっしゃっていますけれども、正常な値段でない投機値段というのは評判で上がっちゃうんですから、わずか一件でも二件でも、それが持つアナウンス効果というふうなものがその土地を上げていくというのが投機という奇妙なメカニズムなわけでありますから、そういう点ではやっぱりこの間副総理大蔵大臣がお答えになったのも余り素直じゃないなという感じがしますよ。  ついでですから全部言っちゃいますと、国土庁オフィスの需要の見積もりも、足りませんよ足りませんよと言って回るんですから、それは今買おうと思うのは当たり前のことなんで、他の民間調査機関はおろか、同じ役所の経済企画庁だってその半分のことを言っているわけでしょう。一方は五千だと言い、一方は二千だと言っているんでしょう。投機をあおる連中は調子のいい材料を見るんですから、そういう意味では国土庁もやっぱりこれは投機熱をあおった犯人だ。  等々考えてみますと、要は土地公共物だという認識に欠けておって、地価需給関係だけで決まるというほかの商品と同じ論理しか持っていないで、反社会的行為があっても、従来の惰性でしか見ていなかったという行政責めは免れぬと私は思いますよ。総理、どうですか。
  14. 竹下登

    国務大臣竹下登君) 土地問題もいわば経済合理主義といいますかメカニズム、やはり基本的には需給関係というメカニズムが機能すべきものだと思いますが、それが投機思惑等の、率直に言ってメカニズムと言えますのか、メチャニズムと言えますのか、そうした傾向がある商品であるということは私も否定をいたしません。
  15. 志苫裕

    志苫裕君 否定をしないんじゃなくて、先ほど幾つ指摘しましたね。行政にもやっぱり手抜かりがあったなという認識はどうなんですか。大事なことです。
  16. 竹下登

    国務大臣竹下登君) 対応する行政に、後から考えてみればあのときああすればよかった、こうすればよかったという点はございます。
  17. 志苫裕

    志苫裕君 マネーゲームの張本人は何といっても金融機関だというのがもうしばしば出ておる声でしてね。彼らが社会の公器として振る舞えば、だれが投機をたくらもうと成立しない話なんです。しかも今度の場合は、大きいやつは後ろに隠れておったかどうか知りませんが、表へうろうろ出ておったのは大体中小の不動産業ですよ。彼らにこんなに大きいお金を動かす資金なんかないのでありましてね。金融機関がやっぱり片棒を担ぐというか、前へずっと走ったということなんでしょう。ですから庶民が悲鳴を上げるということになっちゃったし、また一方で少々の土地持ちが花見酒の経済に浮かれているような形になっちゃったと思うんです。  そこで国税庁、中央信託銀行の元不動産部次長が土地転がしで得た莫大な利益を脱税しておたくに摘発をされた。さまざまな情報で見る限り、今日の土地問題の縮図のような事件ですね。当の銀行そのものが無縁だということはあり得ないだろうという論評もあるんですが、告発は行ったんですか。可能な限りこの事件を説明してください。
  18. 日向隆

    政府委員(日向隆君) 個別事件の具体的な調査内容について答弁することは差し控えさしていただきたいと思いますが、都心部の土地の売買に関して金融機関が融資等を行い、これに関連して多額の利益を得た複数の法人、個人に対して、脱税の疑いで目下東京国税局が鋭意査察調査を行っているところであります。  なお、一般論として申し上げますと、委員も御承知のとおり、査察事件につきましては、偽りその他不正な行為により税を免れることを企てたことと、その脱税行為についての刑事立証のために必要な証拠収集が行われればこれを検察当局に告発することになろうかと存じます。
  19. 志苫裕

    志苫裕君 告発することになるんだろうかと思いますと、何かあなたは他人事のように言っておりますが、この事件は半年前ですよ。私はとっくにもう告発が行われていると思って、検察当局においでいただいて話を聞こうと思ったら、何かまだ荷物が来てないというようなことを言っていますがね。鋭意調査をしておるんだし、個別具体の案件は言わないんだし、国民は個別具体の案件をつぶさに知って、それを他山の石とするといいますか、ということなんだけれども、これは国税庁はなかなか言わぬし、聞いても時間がかかるだけです。  信託銀行は、ほかの銀行とちょっと違いまして、土地の鑑定評価をします、そして不動産の取引をします、そしてそれに金を貸しますね。だから不動産に関する鑑札を全部持っているんですよ。値段をつけて、売り買いして、銭を貸して、こげつきゃまた貸せるんでしょう。そして、これらはほかの銀行にもないし、外国にも例がないでしょう。不動産の子会社、孫会社というふうなやつをいっぱい持っていて、相互間の売り買い、すなわち土地転がしをしようと思えばいつでもできる場所にいるわけだ。こう考えてみますと、今度に限らず地価高騰メカニズムというのはあの会社一つを調べてみればこれはわかっちゃうんだ。だから、私はこの半年前の事件を取り上げて、そのメカニズムをみんなわかる意味で少し聞こうと思ったけれども、言いませんがね、これは。  そういう意味で、信託銀行のそういう機能について大蔵大臣いかが思いますか。
  20. 宮澤喜一

    国務大臣(宮澤喜一君) 御指摘のように、信託銀行は、法律の規定によりまして、融資はもとよりでありますが、不動産の売買等の媒介並びに不動産の鑑定業務を行うことができることになっております。したがいまして、今回のようなことが起こりますと、志苫委員の言われますような事件に非常に発展しやすい、そういう仕組みを持っておりますことはおっしゃるとおりでございますから、しばしば、投機的な土地取引を媒介等々の結果から助長するようなことがないように厳しく申してまいりました。今後とも、融資、媒介、鑑定、これらについてはそのおのおのの管理をきちんと峻別いたしますように指導してまいらなければならないと思います。
  21. 志苫裕

    志苫裕君 国税庁、今私と大蔵大臣が少しやりとりしました。あの中に、いわば土地問題がみんな字引のように詰まっているということを私は言いましたけれども、そういうことにも着目をしていますか。
  22. 日向隆

    政府委員(日向隆君) 私どもといたしましては、いろんな関係者がいろんな取引を行いましてそこで所得を得て、それが適正に申告されているかどうかという観点から調査を行っているわけでありまして、そういう観点から問題がありますれば、委員が今御指摘になりましたことを含めて調査において十分検討しておるところであります。
  23. 志苫裕

    志苫裕君 これは通告しておかなかったかな。この間大蔵省からは、各銀行の不動産に対する融資残高、それから不動産を担保にした融資残高の資料をちょっともらいましたが、今さっと挙げられますか。ほかの銀行に比べて信託銀行は特に不動産に対する貸し出しが多いとか、あるいは担保にした融資残高が多いとかという数字は何かありますか。
  24. 平澤貞昭

    政府委員(平澤貞昭君) 今手元に、ほかの金融機関と比べた場合の不動産融資が多いかどうかという点についての数字は持っておりませんが、全国銀行で約三十二、三兆不動産融資をしております中で、信託銀行が八兆弱ということでございます。したがいまして、全体的にはじきますと恐らく普通の銀行に比べれば不動産融資の額は多いんじゃないかというふうに考えております。
  25. 志苫裕

    志苫裕君 三十兆のうち八兆ですから、でかいですわな。銀行はせいぜい幾つもないですから。これは一応問題点の指摘にしておきますので、これからの信託銀行のありようについても再検討の課題になるということだけは指摘をしておきます。  きょうは捜査当局を呼びませんでしたけれども、国税当局が告発することを前提にするというのを建前にしているようだけれども、国税当局はまだ告発をしていないというような話でしたがね。だけれども、重大な反社会的な行為だという認識があれば独自の判断があってもよいわけであって、きょうは特に呼んではおりませんが、法務大臣が余りしかしか答えると指揮権みたいになっちゃうんだけれども、法務大臣の一般的認識を伺っておきましょうか。
  26. 林田悠紀夫

    国務大臣林田悠紀夫君) 検察当局といたしましては、地上げなどに関連しまして刑罰法規に触れる行為が認められる場合には適時適正に対処するものでございます。
  27. 志苫裕

    志苫裕君 適時適正に対処をして、この中央信託銀行の元不動産部次長の件については適時適切に対処していないですよね。これは余り問題じゃないんですか。
  28. 林田悠紀夫

    国務大臣林田悠紀夫君) これは、国税犯則の事犯がありまして、国税庁の方から告発し、それに基づきまして検察当局は処分をする、こういうような次第でございます。
  29. 志苫裕

    志苫裕君 余り長くやっておれないんで、これは指摘だけにしておきます。  建設省は、土地臨調に対しての説明なんでしょうか、住宅確保に必要な宅地は十分供給できますという見通しを明らかにしておるようだし、国土庁も、先ほどの需要予測は別にしまして、訂正した分によりますと、需要を満たすどころか余っておつりが来るというそういう説明、資料にもなっておるようですが、実はこういう情報こそいち早く表に出して、少しでも冷やし玉に使うということがあっていいんじゃないでしょうかね。何かその辺でごそごそ偉そうな人に説明をしている前に、やっぱり外に自分たちの責任で公表すれば冷やし玉にもなるわけだし、代表してどっちかお答えになりますか。
  30. 奥野誠亮

    国務大臣奥野誠亮君) 需要だけ明らかにしておきますと、幾らでも土地が必要だというふうな誤解を招くおそれが私もあると思います。そういうこともございまして、需要を明らかにする以上は供給がどうなるかという見通しも明らかにすべきだ、こういう建前に立って先ほど来その数字を明らかにしたところでございます。今後ともそういう姿勢で国民に不要の誤解を与えないように努力をしてまいりたいと思います。
  31. 志苫裕

    志苫裕君 さっき私が引用をした国土庁房長日本記者クラブ報に載っているのを見ますと、これは新聞にも出ましたが、六十一年度の土地取引動向特別詳細調査というのを、これは東京都が中心なんでしょうかね、東京都にお願いしてやったというのかな、その官房長の話だと、登記簿を全部洗って、一年間に二回以上土地転がしをした者を調べて、それに融資をした金融機関も、取引にひっ絡まった不動産業者も全部調べてある、これを大蔵省に示したので、データがそろって銀行局の指導も迫真力を持ったんだ、抽象的に金を貸すなど言うとったってだめなんだと。具体的なデータ、生のデータを突きつけてやることが大事なんだという意味なんでしょうね。大事な点だと思うんですよ。ここの機会に公表したらどうですか、個々に全部調べ上げたやつですね。そうしますと大分手助けになりますよ。いかがですか、局長
  32. 片桐久雄

    政府委員片桐久雄君) 地価高騰の著しい地域であって規制区域とか監視区域とかを発動したらどうかというふうに思われる地域につきましては、国土庁が各都道府県と協力しながら取引についての詳細な調査を実施しているところでございます。  先生御指摘の件は、六十一年度に東京都の十一区につきまして、不動産登記簿に掲載されている事項をもとにして網羅的に転売状況等調査したものでございます。この調査結果を踏まえまして、関係省庁と十分連絡をとりながら、金融機関の指導それから不動産業界等に対する指導、それからまた場合によっては国土利用計画法の届け出義務違反等につきまして、いろいろ検討それから調査指導にも活用している次第でございます。  この調査の結果につきましては、ことしの九月二十五日に、面積規模別の土地の取引件数とか法人の取引件数、転売件数等につきましては公表した次第でございますけれども、個別具体的な内容につきましては、それぞれの企業のプライバシーの問題もございますので、公表を差し控えているわけでございます。
  33. 志苫裕

    志苫裕君 一番後ろだけ言えばいいんでしてね。いや、その差し控えているところを表に出す方が、A、B、Cだっていいじゃないの、そうすることの方が問題の決まりが早い。率直に言いまして、私はプライバシーのことを軽視しているわけじゃありませんが、これから後の対策によりますけれども、みんな腹を立てているわけですから、反社会的行為にはある意味での制裁が要るという意味で、それは何々会社というのがA、Bに名前が変わったって構いませんけれども、そういうことは大事なんじゃないかなと思って聞いたんです言いそうもないですけれどもね。  総理、私はいろいろ三十分以上行政対応について事例を挙げてやりました。先ほど総理からも、言われてみれば、終わってみれば手ぬるさがあったかなという御発言がありましたから、あえてこれ以上のことは言いませんが、思惑で土地を買おうとする反社会的な行為が直接の原因なんだけれども、それを野放しにしないというのがまた行政の役割なんでしてね。そういう点で、これからのこともありますし、やはりきちっとした姿勢を、あるいは責任のある姿勢を国民に示してこれからいろんなことをやって信頼関係を取りつけていくということが、新内閣の特に発足に当たって大事なことだというふうに思いますが、改めて所信を伺っておきたい。
  34. 竹下登

    国務大臣竹下登君) 最終的におまとめになって、思惑等が先行することは少なくとも反社会的な印象を受けるものであり、行政がそういうものを事前に制御すべきものであるという基本的な考え方は私も等しくしております。  そこで、短い時間でございますが、この緊急土地対策要綱というものが大体どのような経過でできたかと見てみますと、当面の土地対策の答申を行革審でちょうだいしたのが十月の十二日。それから十六日に閣議決定をしましてこの緊急土地対策要綱というものを決めておるわけでございますが、新内閣ができますや、そこで野党提言というものを、これは私がなり詳しく読ましていただきましたが、十一月の十日にいただきました。その後、対応の仕方として、奥野大臣からのサゼスチョンもありまして、やはり閣僚会議総理みずからが座長になって指揮すべきものであろう、こういうことで私もその趣旨にのっとって今日に至っておる。  したがって、この緊急土地対策要綱というものはまさに当面、中期、長期、こういう分け方をしておるわけでありますが、それについてもこれは今のようなもろもろの御提言があることによってその行政が執行しやすい。現行法の中でもできるものがたくさんあるわけでございますが、そういう環境が最も大切であるという考え方に基づきまして本委員会の御提言等について私どもも耳を傾けておるところでありますだけに、これが終わりましたら、まさに国土庁を中心とした当面の具体策について足をさらに踏み込んでいかなければならないという問題意識の上に立っております。
  35. 志苫裕

    志苫裕君 そこで、ではこれからどうするということについて少し提案もありますし論議をしたいと思います。  率直に言って、緊急土地対策要綱が出たころは規制というニュアンスが相当出ていました。けれども、何かここ一カ月ぐらいたつうちに幾分か落ちついてきたことも背景にあるんでしょうか、規制というニュアンスが少しトーンダウンして、土地供給とかそっちの方に向かっておるという感じが払いたしております。しかし、需要供給論というメカニズム土地といういわばこの自然物には余り作用しない。資本と労働を加えて時計を見ながら一分間に幾つつくるというそういう商品であればもろにこれは響きます。しかし需給論だけで土地は機能しない。後ほどもやりますが。  早い話が、供給をふやそうというので一階建てを五階建て、十階建てにすれば供給はふえます、面積を出す限りにおいては。しかし、その供給の結果どこか土地が下がったか。霞が関ビルができたら、あれは供給をふやしたわけだ。どこか下がりましたか。サンシャインで下がりましたか。新宿タワーで下がりましたか。何にも下がらないで、上がるばかりですよ。そういう意味では、土地という自然物はふやすこともできなければ動かすこともできない。これを需給論だけで割り切るとだめなんです。もう一方の土地の規制というものと一緒に持っていかないと機能しないということが、私はどうもさいの河原の石積みだった、非常に穴じゃなかったかという感じがいたします。  そこで規制の問題に少し入りますが、総理土地問題を解決するためには私権制限も必要だろうかという口火を切ったのはあなたが一番早い。一月中旬の訪中先の記者会見。その後ここにおいての宮澤さんも、今党の幹事長をしておる安倍さんも何か同じような御発言をなさった。「竹下登著」、これはまだ白表紙ですが、あなたはこれにちゃんと色をつけて売っていなさるが、「素晴らしい国・日本」、この中にも、「新しい種類の使用権を考えるのも一つの方法かもしれない。」と。ただ、あなたらしく、一人で何でもやるんじゃなくて、みんなの知恵を集めたいものだと言っておりますが、この総理私権制限論というのはどういう問題意識なのかなということを少しこれから伺おうと思うんです。  抽象的、一般的に私権制限というだけならば、現行の多くの法制は私権制限の法理を盛り込んでおるわけでありまして、ことごとく制限法と言っていいですよ。ですから、新しいことを考えるというのだったら、従来の枠を超えなければ何にも言っていないのと同じ。言っている分だけ人に期待を持たせるだけ罪悪だ。そういう意味では、恐らく総理は枠組みを超えたいという問題意識があろうと思うんですが、いかなる御所見なのか、まず伺いたい。
  36. 竹下登

    国務大臣竹下登君) 一月でございました、確かに御指摘のように記者懇談がございまして、この私権制限問題を申し上げたことは事実でございます。それまでも、いわゆる憲法二十九条というものに対しまして、御案内のとおりの三つの、一項、二項、三項から成っておりますが、結局その公共性というものをどう見るかというような、そのときの環境による兼ね合いとでも申しましょうか、そういうことによってこれが運用されてきておるという事実が確かにございますので、私は、財産権は侵すべきものでないが、もとより利用権ということについてはかなりの制限というものが、既存の法律はおっしゃるとおりみんないわば私権制限法律でございますが、必ずしもそれが全部機能しておるとは言えないかもしらぬ、権限上の問題あるいは自治体等における考え方等もございましょうから。  さらに、そのとき念頭にありましたのは、本当は使用権の問題、さらに公の機関とかいうようなものが使用制限に対する一つの枠をはめるというようなことから、思いつきでございますけれども処分権みたいなものも考えておったことは事実でございます。したがって、あれは書きおろしの書物でございますけれども、例えば登録制にして、市場をつくって、そこで市場取引に土地というものがなじむかどうかというようなことも研究すべきだと。だから、結論から言いますと、先ほど申し上げましたように、これぐらい複雑なものはないから、それこそ最高裁長官経験者ぐらいな人を小委員長ぐらいにして、基本的にさかのぼって議論もしなきゃならぬじゃないか、こういうようなことも書いております。やっぱりこれこそみんなの衆知を集めることがその解決の糸口をつかむことであるというふうなことを書きおろしておるわけでございますが、十分な自信がないがゆえに多くの方々の議論をいただかなきゃこれはまとまらないということも書いておるわけでございます。  書物、書きおろしのものについての私の考え方はその辺ではないかなと思っております。
  37. 志苫裕

    志苫裕君 所有権問題は、古いことを言えばフランス革命にまでさかのぼらぬといかぬことになるんですが、ここでそんな歴史の勉強をしておる時間もないのでね。だけれども、所有権の絶対という近代法の原則は、その後いろんな時代の変遷を経てそれを制限する法理が生まれました。やがて、私権は公共に従うという所有権の社会性が認められるようになったことはもう御存じのとおり。我が日本憲法では、所有権のみならず地上権や賃借権なども含む財産権の社会性、つまりは財産権の内容が公共の福祉に適合するように法律で定められるということになって、要するに十九世紀末から現代までの間に所有権制限の土台は築かれているわけです。にもかかわらず改めて所有権を中心とする土地私権制限が問題となるのは、やっぱり土地の持つほかの財産などとの特殊性というものを背景にするのでありましょう。だから、これまでの所有権制限理論だけでは現段階の土地問題には対応できないということから、現段階に適合しこれからをリードしていく新しい枠組みが要るという問題意識に基づいて恐らく総理も言われるんだろうし、私もそう思います。  そこで、今も総理は利用権を注視するお話をなさっておりましたが、何というのか、やっぱり問題になりますのは、土地の特質から見て、公共の福祉の判断基準というのが制限の対象ごとに個別化、細分化されていかないと土地問題にはなかなか対応しにくいというのが恐らく今日の問題点ではないかなというふうに思います。ですから私権制限の方法を新しく開拓する必要があるんでしょうね。  ですから、私は一つは、土地所有権のあり方を一般の財産の所有権と区別して扱って、いわば近代的なあり方を考える、近代的土地所有論といいますか、そういうものを一つ描く。それから、土地の所有と利用が対立、分離をしている場合には、土地所有権が利用権を圧迫しないあり方を定める。他人に貸しもせず、みずからに利用もせず、社会的損失を招いて、ただ値上がりを待っているような場合には、より有益に土地を利用する者にかわらせる。公共がかわれば一番いいわけですけれども、そういう法制とか、自分の土地であると借地であるとを問わず実際に利用している権利が保護をされる法制とか、そういうふうなものを恐らく時代は求めているんじゃないか、こう思いますが、いかがですか。
  38. 竹下登

    国務大臣竹下登君) 私は基本的にはおっしゃる意見と一緒でございます。  もう一つ落としましたのは、二十九条の財産権で、一項の「財産権は、これを侵してはならない。」、あるいは三項の「私有財産は、正当な補償の下に、これを公共のために用ひることができる。」、それから今おっしゃっている二項の「財産権の内容は、公共の福祉に適合するやうに、法律でこれを定める。」、さらに、片仮名時代の民法ではございますけれども、民法の第一条には「私権ハ公共ノ福祉二遵フ」、こういうのが実は私のささやかな知識の中に存在しておったわけでございますので、基本的には今おっしゃる趣旨と全く意見を同じくいたします。  いつも議論にあります私権制限問題について、この規定のもとで土地に関する私権を有する者に対してどのような負担または制約を課することができるか、あるいはどのような場合に補償しなければならないかについては、負担または制約を課する合理的な目的があるか、負担または制約の程度とその目的とが相応しているか、補償の内容、手続が適正であるかなどの見地から判断されることになるというようなかって法制局の統一見解を出したことがございますが、したがって私、言葉足らずでございましたが、とかくその時代社会的環境の中の兼ね合いでその判断基準が定められるというところに私も幾ばくかの疑問を感じておりますので、今の御意見のような整理整とんをしたものの中でこの私権制限の位置づけをさらに勉強したらどうか、こういう気持ちで今日もおるということであります。
  39. 志苫裕

    志苫裕君 現行法にもいろいろと制限条項はありますけれども、やはり基本的には、日本土地法制というのは観念的な土地支配を中心にして組み立てられておる。これは資本の活動からいっても非常に古臭い話なんでありまして、自由に土地の上にさまざまな経済活動が伸び伸びとやれればそれほどいいことはないので、一番底地に全部拘束を受けるなんというのはばかばかしい非近代的な話だと思うんです。ただ、日本は明治維新のときに既成地主と一緒になってブルジョアジーが権力を持ってやってきたから、どうしても地主に気兼ねしたみたいな残りかすが残っておるし、国民土地願望もそれで醸成されてきたようなことは否めないと思うんです。  法制局長官、例えば今国土利用計画法でも、ぶらぶら遊んでいる土地はもっと有効に使え、これは社会のものなんだから。だめなやつはがっぽり税金を取るとかあるいは先買いしてしまうとか、有効利用しないものは公がそれを適当な補償で買い取る。そうすれば非常に計画的な利用もできますし、地価問題の解決になる。それを推し進めていくというと土地国有化になりますね。土地国有化というのは別に社会主義の施策でも何でもないんで、もう資本主義の初めのころから、資本家は土地はこういうぐあいにして我々に地代なしで使えるようにしてくれ、それがまた一番いいわけですから。そういうことになっていくわけですが、土地の公有、先買い権をとってどんどん広げていく、最終的には全部一種の国有みたいになるというふうになると仮定をして、憲法違反になりますか。
  40. 味村治

    政府委員(味村治君) 憲法二十九条一項は私有財産権を保障しております。これは私有財産制を制度的に保障している。それと同時に国民の財産権を保障している。土地の所有権もその財産権の中に入るということは、もう委員の先ほどから御指摘されているとおりでございます。それで、委員指摘の問題は恐らく憲法二十九条三項に関係すると思います。憲法二十九条三項は、私有財産は正当な補償のもとで公共のために用いることができるというふうに規定をしておるわけでございます。そういたしますと、公共のために用いる必要があるということがまず第一に要件となってまいります。それからもう一つは、正当な補償が必要である。憲法二十九条三項の規定上、土地を仮に国が、現在でも収用等いたしておるわけでございますが、収用したりそういうことをいたしますのにはそういう二つの要件が必要だ、こういうことになるわけでございます。  したがいまして、問題は、先ほど委員が御指摘になりましたような例におきまして、果たして「公共のため」ということの必要があるかどうかということが問題になろうかと存ずるわけでございます。これの解釈といたしましては、「公共のため」というのは普通の私的な利益を超えました一般社会の公益の実現のため、こういうふうに理解されておりますので、そういう公益の実現のために土地をその用に供することが必要かどうかということがまず問題になってこようかと存ずるわけでございます。
  41. 志苫裕

    志苫裕君 ですから、公共目的であれば国有化もできる、社会有化もできる。これは日本国憲法に抵触をしないところであって、そうすれば私権制限社会公共に余り利用されていないようなものについてはできるだけ公有化を広げていって有効利用を図るということになっていけば、基本的に土地問題は出てこなくなる。しかし私は国有化論を今直ちに支持しているわけではありません。コストの問題等を考えて、必ずしもいいばかりでもないでしょう。  だけれども、そういうこともできるということを考えれば土地の公共的利用、公共的所有というものにどんどんどんどん拡大をしていける。そういういわば私権制限、今もっと先買い権を強化するとかそういう立法だって可能なわけで、私先ほど三項目ばかり言いましたが、そういう観点での立法をやらないと、皆さんのおやりになっておる需要供給論だけでは、少々仮に供給があっても地価問題の対策にはならないということを指摘しておきます。いずれにしても、せっかく――せっかくと言うと土地の値上がりをしてみんな困っている人に乱暴な言い方ですが、しかしこの機会は、総理自身が所有権問題を口にされたように、やっぱり土地問題を日本人の心の中にある土地観というふうなものにまでさわりながら決まりをつけていくべき時期だと思いますね。ですからこの際、総理はみんなの知恵を集めようと言うんだけれども、土地国民の共有財産と見る土地観を公的に宣言することによって国民合意を形成していくという、そういう基本的な政策が要ると思いますね。それがやっぱりこれからの土地対策の基本に据わらないと、土地を持っていたらもうけますよ、土地を持っていれば食いっぱぐれがないですよというだけではだめだ。土地は自然物なんですから、その上に人間があらゆる営みをすることによって価値が出る、その営みの方を重視するということを基本的にしないで、ただ頑張っていれば何とかなるようなことは、国民の意識も変えていかなきゃならぬだろうと私は思うんです。  非常に乱暴な言い方をすれば、土地が上がった、隣の土地が上がった、自分も物持ちになったようににんまりしている。けれども、似たような税金をよこせ、何を言うかと文句を言う、こういう状況はたくさんありますわな。これだって二律背反ですよ。土地が上がって喜ぶんなら税金を余計納めぬといかぬですよ。しかし、自分はじっとしておって、駅が近くなったわけでもなければ道がようなったわけでも何でもないのに余計税金を取られるという不合理なら、隣の土地が上がって喜ぶんじゃなくて腹を立てぬといかぬですよね。  こういうふうに土地観を変えていくような、いわば公的に総理がやはり宣言をすることから土地対策に入る。容易ならぬ仕事でありますが、理堀で土地観が変わるものじゃありませんけれども、これはひとつこれからやっていこうじゃないですか。いかがですか。
  42. 竹下登

    国務大臣竹下登君) 土地観の問題も、確かに今の現象を見ますと、いわば東京を中心とする地域と地方とにおいての幾ばくかの相違も出ておるという感じがないわけでもございませんが、基本的には私は今の御意見に賛成でございます。  ただ、公的宣言をしろ、それがいわゆる土地基本法等に対する御提言あるいはその中身に対する御議論というようなことにもなっていくわけでございましょうが、おっしゃるように、宣言をすることによって国民的合意をそこに持っていくのか、こういう議論の場の中から国民的合意、コンセンサスが生み出されていくのか、その手法についてはなお議論を詰めていく必要があるではなかろうかというふうに考えております。
  43. 志苫裕

    志苫裕君 私はやっぱり宣言法は宣言法で、もう一つ、今総理お話にあった、現在に求められておる近代土地所有論というようなものがあるとすると、一般の商品とは違う所有論、いわば個別、同じ土地一つもないわけで、みんな違っていくわけですから、そういう意味で個別具体のものに対応できる規制法というふうなものの二つでないと、土地問題の決まりはつかないという意味で、宣言法すなわち基本法の提唱を社会党はしているわけです。いずれそれは具体的にやりたいと思います。  なかなか面倒なようですけれども、我々はかつて経験があるんですよ。農地改革によっていわば創設農地をつくりました。ただ同然の値段でいわば耕作者に渡しました。これの法理を考えてみますと、耕作という公共目的に合致をしておる限りただ同然の土地なんです。しかし、耕作をやめる、すなわち公共的利用をやめるときには公共にお返しをしてもらいますよという仕組みだった。これが創設農地だった。これは農地のみならず一般の土地に対する法理だったと思うんですよ。  ところが昭和二十七年に、その農地を、すなわち公共目的利用をやめるときに、宅地に売るとかなんとかするときに、売っ払ってよろしいというふうに変えちまいました。それで昭和四十四年に、それでも国が持っておった国有農地も二円五十銭か何かでもとの地主に売っ払っちゃいました。私は土地政策の基本的な失敗はここだったと思うんですよ。もしその農地が耕作という公共目的をやめて社会公共に戻る、国に戻るということがあったとすれば、今日の都市経営も都市建設も土地問題は起きなかった。これが私は土地制度に関して言えば、保守党政権の一番大きい失敗だったと思うんですよ。  ですから、農地と同じような考え方で土地を扱えばいいと思うんですね。しかし、それにも限度があって、東京のビルのど真ん中、商業地、四つ角で、あそこが仮に一億円しようと一兆円しようと、その上に営みをしてそれで何とかとんとんになるというのであれば、おかしいような気もするが別に邪魔にもならぬと。しかし、生存権にかかわる宅地となりますとそうはいかぬのであって、ですから宅地という、住居という公共目的に利用する限りはそれで、農地と同じような考え方を土地法制に持っていけば、そんなに私権制限その他で頭を悩ますことはない。あれは立派な私権制度だったわけですから。  農林大臣、あなたが大臣のときにやったわけじゃないけれども、耕作という公共目的のために農地は事実上ただで使えた。それで、公共目的をやめたら、やめるときにはやっぱり社会にお返しせぬといかぬですよ。それをデベロッパーだのヘチマにみんな売っ払っちゃって今日の事態をつくったということについてどう考えますか。
  44. 鴻巣健治

    政府委員(鴻巣健治君) 昭和二十一年に農地改革を遂行するために今委員指摘の自作農創設特別措置法をつくりまして、その際地主から買収をいたしまして、自作農をつくるために売り渡した農地は、その売り渡しを受けました者が耕作をやめようとする場合には、政府がその農地を一たん買い取りましてまた別の自作農に売るということで、その農地ができるだけ長く自作地のまま継続して、小作地にいわば再び転落するといいますか、そういうことを避けようとしたわけでございます。これが昭和二十五年になりますと、いわゆるポツダム政令ができまして、その規制が改まりまして、転用する場合には十年間転用はしてもいいと。十年間は安く買って転用して売買差益が出ればその差益を徴収するという形に変わりまして、その後二十七年、今お話しのようにその規制もなくなってしまった。なくしたわけですが、それの理由は恐らく、今私どもが考えますに、もう広範に自作農がつくられまして、その自作農同士の売買になるわけですから、やはり他の自作農の規模拡大になる。そういう意味では当初の目的を十分達成できる。そういう形で十分な、完全な所有権も認めようと。  当時はまだ高度経済成長が始まる十年ぐらい前でございますので、今日のような地価問題、土地問題も出なかった時代なので、二十七年、農地法を直したときにはそういう形で規制もなくして、普通の土地所有権と同じ扱いにしたと思います。これが今になってどうなのかというと、やっぱり今地価が上がり高度経済成長時代の、それ以来の問題が出ますと、あの規制をなくしたことが本当によかったかどうかというのは、今の時点で改めて検討しなきゃいけない重要な問題を含んでいたと思っております。
  45. 志苫裕

    志苫裕君 私は、農地でつくり上げた実定法というのは、土地に対する一つの法理であったと思うんですよ。それは、悪いけれども解放農地二円五十銭で今何十億、何百億、何兆円という資産家がいるでしょう。これを社会的不公正と言わずして何と言いますか。それは結局土地の公共性というふうなものをおろそかにしていたということから来ることを私は指摘したので、あの創設農地の法の理屈、仕組みというのは一般の土地にも十分通用をする。私権制限についてこれから新たな立法とか、新しい社会的な状況に合わせてつくろうというのであれば、あれは随分参考になるという意味で私は申し上げておきます。  時間が迫ってきたので、次に、当面の対策のうち幾つかへ行きます。まず土地対策要綱を見てみますと、あれもこれもということで――もちろん地価が上がって受ける影響はさまざまあるのでして、上がってみんなが困っているわけでもないんで、喜んでおるのもおるわけですから、なかなか面倒でしょうがない。ですが、あれもこれもというのは、結局あれもこれもしないことになってしまう。庶民の側、国民の側から見てこれをやってくれぬかなということから急いでもらいたいというのがまず希望で、そういう意味ではまず住宅のない人に住宅をやれば土地問題は決まりがついちゃうわけですから、という意味で、あと小川さん等も取り上げますが、私はまずは値段を下げることだと思いますね。それも宅地に絞ってでもいいです。  それで、私も提案があるんですが、総理は、適正、安定の地価にしたらいかがなものか。この間奥野長官に聞いたら、GNPの伸びぐらいなのが大体いいところじゃないかなと、こう言う。経済企画庁土地対策要綱を見ましたら、サラリーマンの取得価格は三十五キロ圏で平米十五万円ぐらいがいいんじゃないかと言う。それからきのういただいた資料になりますと、十五万円というと距離圏が五十キロから先にいってしまったと。私、念のために東京で五十キロ圏がどこかなと思って調べてみたら、ありましたな、一カ所。それは西多摩郡日の出町だ。だれかがいるところですがね。あれはもっと安かったのにあの人が行ったので上がったのかもしらぬが、本当にそこだけですよ。神奈川県はゼロです。五十キロ圏にはないですね。山手線の内側は大体平米六百六十万円が最低ですからね。こういう状況になっていますと、一体どこに値段の目安を置くか。どんな方法でそうするか。安くなってもらいたいなというのはみんな言うのでありまして、どうやってそうするかという問題になってまいります。  総理、適正、安定の水準はどの辺だと思いますか、そしてどうしたらそれにいけると思いますか。
  46. 竹下登

    国務大臣竹下登君) 当面対策としてまずは鎮静化、そうしてやっぱりそれを適正価格にまで引き下げなきゃならぬ、こういうことを申し上げておりますわけですが、その適正価格とは何ぞやということになりますと、今御質問の中で引用になりました奥野大臣の答弁のGNPの、今はちょっと物価が落ちついておりますから名目成長にするか実質成長にするかは別として、その一つの考え方があるのかな、それからもう一つは定期預金金利というものが一つの水準としてまた議論されるべきものかなと、こんな感じもいたしておりますが、基本的にはやっぱり需給関係というものがその底辺にあることはもとよりのことでございますので、この地域は適正価格は幾らか、こう言われた場合、私はそれに対して明快にお答えするだけの自信はございません。  それから経済企画庁等の勉強の資料を読んでみますと、徐々に広がって、今は山梨県の方へ大体その十四、五万というのが、あの十四、五万も野党の共同提言の中にもございますいわば年収の約五倍強ぐらいでございましょうか、そういうことをめどとしてやった場合の価格として掲示されておるものを当てはめると、山梨県の上野原から向こうの方ぐらいになるのかな、こういう印象を持っておりますが、この場所の適正価格とは何ぞやということについては私は直ちにお答えする明確な定量的な見識は残念ながら持っておりません。
  47. 志苫裕

    志苫裕君 だから、適正、安定といっても、しばしば言われるがどうもやっぱり意味不明ですね。みんなが意味不明、意味不明と言うから余りこの言葉の重みもなくなってきたけれども。  そこで、私いろいろやっているうちに、これは共通しているんですね。今金利の話がありましたね。奥野さんはこの間GNPと言ったんで、GNPも名目と実質じゃこんなに開きがありますね。安倍幹事長が六年前の水準と言うんでしょう。経済企画庁の十五万円でしょう。それからあなたの言ったのを善意にとって低い方の実質にしますか、それと似ている数字に卸売物価があるんですよ。卸売物価、実質成長、大体同じ数字です。さらに経済企画庁の言う十五万円を、交通距離圏で今五十キロですが、これを三十キロくらいまでに持ってくる。いろいろ操作をして、勘ですけれども、安倍さんの言う六年前というのは大体現在より四割下がった数字にいくんですね、これも。そういう数字が出ているので、長官はこの間その辺を知っておってGNPと言ったのかなと。しかしあの人のことだからそこまで考えていなかったんじゃないか、こう思ったりしたんですが、率直に言って私は、水準はとりあえず現行の半分と。  そうしますと、例えば昭和四十年を基準点にしまして、三十五年でもいいですよ、昭和四十年を基準点にしまして、卸売物価指数なりGNPの実質成長率なり、それを使った数字がいわば今から約半分ぐらいの数字になるのではないか。ですから、それを一応水準と考えて、それを実現する方法で手っ取り早いのは地価統制ですよ、地価の統制です。宅地の統制でいいでしょう。いわば公定価格ですね。乱暴など言いますけれども、国土法の規制区域では適正な値段というのを言わなきゃいかぬのですから、その値段を幾らにするかというふうに考えてもいいわけですよ。  そうしますと、この地価の統制で、公定価格方式で宅地については水準を決める。その水準というのは、ある一定の時点の卸売物価か何かの指数を使うというやり方なら当面の地価対策にはなる。これは憲法違反になりますか。簡単でいいですよ。
  48. 味村治

    政府委員(味村治君) 地価の統制ということは、非常に難しい問題を含んでおります。現在ただいま私どもの考え方といたしましては、地価が異常に高騰いたしますとかあるいは高騰するおそれがある場合、地価の異常な高騰を防ぐために土地の取引価格に対して制限を課する、そういう合理的な必要性が存するし、さらにその規制の内容がその必要性に応じて合理的であるというような範囲内のものと認められます場合には、土地の取引価格に対して制限を課するということも憲法二十九条一項及び二項の許容する範囲であると存じております。しかし、委員の御指摘のような地価の統制が果たして憲法二十九条二項の認めるところであるかということにつきましては、疑問なしといたしません。
  49. 志苫裕

    志苫裕君 では、あえて私は異論を唱えておきますが、憲法上ちっとも問題はないですよ。むしろ問題のあるのは、例えば現行の土地利用計画法のように、ある特定の地域を限って値段の規制をする、それは特定の地域に入ったものと入らぬものとの不公平が出ますよ、不平等ですよ。こっちの方が憲法何条でしたか、そっちの方にかかるのであって、今言う地価に全国的に同じ網をかぶせれば、自分だけ下がるんじゃない、全部が下がるんですから、憲法上何ら問題にならない。現に物価統制令や地代家賃統制令やそういう法制はあるし、過去にもあったんだから、合理的な理由と言いますけれども、今の一平米六百万円だ一千万円だと十分の一にしたって合理性はないですよ、もっと下げなければ。実勢が一億だから、じゃ五千万ならどうだ六千万ならどうだ。こんなものは意味がないですよ。六千万でも五千万でも、国民の生存から見れば手が出ないことに変わりがないんです。ですから私は、地価統制はできる。そうでない限り、合理的水準を十五万円に決めようと六年前に決めようとGNPの何とかを持ってこようと、実現する手段がなければ何も意味がないということを主張しておきたいと思います。  総理、大胆にそういう踏み切りはどうですか。
  50. 竹下登

    国務大臣竹下登君) 自由経済社会というものを基本的に考えた場合、私はいわゆる公定価格というものを設定することには問題があるのではないかというふうに思っております。勉強の資料として、実質成長率とかあるいは昭和五十五年を一〇〇としての物価指数の統計をよくやりますので、六年前というのはあるいは七年前かもしれませんが、そういう根拠のとり方とかいうような、お互いが検討していくことは大変大切なことであるというふうに考えております。
  51. 志苫裕

    志苫裕君 ですから、今言う五十五年の数字を私も持ってきましたけれども、五十五年を一〇〇としますと実質成長で一一〇ですから一割です。それから、全国はだめですから六大都市を見ますと、地価の方は一九〇だから倍です。だけれども、卸売物価指数は九〇ですからちょっと下がっています、あべこべに下がる。等々、五十五年でもいいんですよ、五十年でもいいんですが、どこか合理的なところに基点を置けばいいのでして、あとどういうファクターを使うかということはそれぞれ衆知を集めればいい。だけれども、それを実現する手段は誘導政策か規制がということになってくるわけです。誘導政策は歴代政府が四十年やってだめだった。だから私は、宅地については規制価格を考えなければいかぬ、規制価格という考え方は国土法の中にもある、あるいは合理的に改良する方法だってあるということを主張しておきたいと思います。  幾つか用意をしましたが、あと一、二問に絞ります。住宅その他のことは小川委員に関連でやってもらいますから、国公有地の利用の方法について私はもう一度だけ言わしてもらいます。  今度は国有地を十年とめるとか、JRの方もしばらくとめるとか、いろいろやっています。だけれども、そもそも売っ払うということに問題があるという意味で問題を提起しますが、総理、覚えておられるんじゃないでしょうか。昭和六十年四月四日の参議院予算委員会で、総理大臣は中曽根さんでした、あなたは大蔵大臣。折しも民活がもてはやされて、その列車に乗りおくれぬようにみんなわあわあ騒いでいるころでした。私は、国公有地払い下げは国家百年の計を誤る、今銭があるとかないとか、そんな問題じゃないということを主張しました。私は民活が悪いと言っているんじゃないんですが、都市計画民間活力を導入する場合には官民の役割をはっきりさせておいての都市計画、官の計画、リードでいかないとだめになるということを前提にしまして、それで都市計画を成功させるには公有地がかぎになる。ヨーロッパの都市の歴史というのは公有地拡大の歴史だった、だからあれだけの都市が今完成をしているんじゃなかったかということを主張しました。  だけれども、どうも民活シンドロームの最中でしたから、中曽根さんに至っては、それはあなたと私との思想の違いです、ヨーロッパの都市は社会主義の思想でできたんじゃないですよと私は退けられたけれども、しかし、私の主張はちっとも間違っていなかったと思っています。何人かの閣僚からも、なかなか閣議では言いにくいけれどもいいことを言ってくれたというお話も伺いましたよ、本当に。当時の新聞だって、閣僚の中でも半分以上は財産の売っ払いには反対だということが出たぐらいでしたからね。あなたは別のことを褒めたのかもしらぬけれども、あなたも私をちょっと褒めてくれた、本当のことを言うと。  しかし、公有地の扱いはこれを基本にしましょうよ。自治体に先買権を与える公有地拡大推進法ができたけれども、銭があるとかないとか言っていてさっぱり広げてもいないしね。これからの土地対策というのは公有地をふやすことだ。市街化農地のことが問題になっていますけれども、いろいろ意見があるでしょう。しかし、意思を確認して手放すのであれば、あれは公有にすべきです。そして貸し出して有効利用を図るべきです。土地が事実上ただであれば、その上に上屋に幾らでも投資できるんですから、銀行はそれにどんどん融資したらいい。五階でも十階でもいいでしょう。そういうことによって、土地にかける経費がない分だけ経済活発化しますよ。  そういう意味で、公有地の利用についてこの点だけは確認してください。売るとかなんとかじゃなくて、できるだけふやして、それを貸すなり有効利用をしてもいい、直接使ってもいいです。公営住宅も必要でしょう。しかし売っちゃいかぬ、ふやすことだ。ヨーロッパでは七割、八割がいわば都市の所有なんですから。西ドイツあたりのBプランなんかを見ますと、その辺の人が高い値段土地を売りたい、公定値段以上であればそれは自治体が買い上げるわけです。そうやって町をつくっているんですから土地対策なんか問題がないわけですよ。  総理、どうですか。国土庁長官も、大蔵大臣公有地の問題は答えてくださいよ。
  52. 奥野誠亮

    国務大臣奥野誠亮君) 国公有地で地方団体が公用目的、公共用の目的に使いたいということで譲渡を求める場合には、随意契約で譲渡するという建前になっていることは御承知のとおりでございます。同時に、豊かで住みよい地域社会をつくっていきますことが本来の地方公共団体の任務でございますし、土地がなければそれはできないわけでございますので、できる限り地方団体の所有にゆだねておくことが必要だ、そういう意味で公有地拡大に関する法律まであるわけでございますし、また、ある時期、地方財政にゆとりのありましたときには、まず土地を買っておきなさいよということで五千億円を超える金を基準財政需要額に算入して、公有地拡大をさせたわけでございます。  十月十六日の閣議決定で、国鉄清算事業団の用地の処分につきましては今、地方団体に随意契約で譲るもの以外は地価高騰地域については入札を見合わせることになっているわけでございますけれども、あとう限り地方公共団体に利用してもらいたい。公用、公共用に適しない地域、あるいは住宅を建てるんだ、私的な使用にゆだねるんだという場合であっても、信託方式で利用する道があるんじゃないか、私はこう思っているわけでございまして、できる限り地方公共団体の所有にゆだねて豊かで住みよい地域社会をつくっていける、状況の変化に応じてもそれを役立てていけるというふうに土地を保有してもらいたいものだ、またそういう方向で努力をしていきたいと思います。
  53. 竹下登

    国務大臣竹下登君) 大要、基本的には奥野大臣から申し上げたとおりでございます。  あれは民活に対することを肯定しつつも、たしか河本。大臣に御質問なさった後、総理大臣に対して、ヨーロッパの都市計画等の実例を挙げながらのこの場所における御質疑であったと思っております。私が率直にそのとき感じたことは、素直に、いわゆる都市とそうでない地方との考え方には必ずしもあれは一致しないなどいう感じを持ちながらあの意見は承らせていただきました。基本的には奥野大臣からお答えしたとおりであります。
  54. 志苫裕

    志苫裕君 時間が来ましたから、私は終わります。
  55. 河本嘉久蔵

    委員長河本嘉久蔵君) 次に、小川仁一君の関連質疑に入ります。小川君。
  56. 小川仁一

    ○小川仁一君 中曽根前総理のおやりになった土地政策、これが失敗であったということは既に天野元建設大臣もおっしゃっていたところでありますが、土地問題についてはここ数年もう非常に厳しく社会的な問題になってきた。しかし、例えば四十四年の農業振興地域の整備に関する法律あるいは地価公示法、四十七年の公有地の拡大の推進に関する法律、同じく新都市基盤整備法、都市緑地保全法、四十九年の生産緑地法、国土利用計画法等々を数えてみますというと、こういったものを確実に、しかもその事態対応して最も適切に実施をしてくれば今日のような地価暴騰を抑えることができたのじゃないか。何かしら今までの政府のやり方の中に、土地暴騰に対して、何といいますか、それを商品として大きな商社あるいは金融機関がそこの中で利潤を得ているということなどを思惑に入れてかどうかわかりませんが、適切な措置を欠いてきた、こういう印象を非常に強くするわけでございます。  したがって、今言ったような法律を運用できなかった最大の理由は何であったのか、お伺いしたい。
  57. 奥野誠亮

    国務大臣奥野誠亮君) 今の地価高騰は、御承知のとおり、二極分化と言われているわけでございます。三大都市圏を見ますと昨年の七月からことしの七月まで高騰率が三四・四%でございますけれども、その他の地方は全体で一・三%の上昇にとどまっているわけでございます。三大都市圏の場合でも東京だけをとりますと八六%の上昇になっているわけでございます。まさしく東京一極集中がもたらした地価高騰、その東京地価と比較してアンバランスになっているものでございますから、次々に他の地域地価を引き上げさしているわけでございます。  でございますので、やはり根本的には需給関係のバランスを図れるようにしていかなきゃならない。そういう意味合いで、さしあたり地価の鎮静化に全力を尽くす意味において監視区域の設定でありますとか、金融の引き締めでありますとか、超短期の譲渡所得課税の重課でありますとかいうことをやっているわけでございますけれども、根本的には土地の供給をふやしていかなきゃならない、需要をばらしていかなきゃならない、そういう意味において一極集中を改めて多極分散型の国土総合開発計画、これは積極的に進めていかなきゃならない、こういう考え方で国会におきましても大体合意を見つつあるのじゃないかな、こう思っているところでございます。  今御指摘になりました法律それぞれの適正な運用に努力していかなきゃならないことについては異論はございませんけれども、根本的に私はそういうところに問題があるんじゃないか、それに従って対応していくべきじゃないか、こう考えているところでございます。
  58. 小川仁一

    ○小川仁一君 私は、今までのこういった法律の適切な運用が行われなかったところに今日の原因がある、こういうふうに認識していますし、大方の世の中の意見もそういう感じがするんです。したがって、土地政策に関する限りは前内閣の中曽根内閣の責任というものは非常に大きいということをあえて申し上げておきたいと思います。  続きまして竹下総理、「私の「ふるさと創生論」素晴らしい国・日本」、こういうものを拝見させていただきました。いろいろお聞きしたいこともございます。例えば「創生」という意味もよくわかりませんし、百八ページの「新しいコンセプトに挑戦するような「ゆらぎ」を」などという「ゆらぎ」というふうな言葉の意味もよくわかりませんけれども、これは後にいたしまして、土地問題だけに限って御質問申し上げます。  開巻第一ページに総理は、「東京などの地価は、狂気染みた高騰を示し、一般の人びとから住宅取得の夢を奪いかねないほどである。」、こういう一つ認識を示しておられます。それが九ページに参りますと、「大都市における地価の異常ともいえる高騰も重大な問題だ。ごく普通の住宅が何千万円、何億円もするのは、大都市住民から持ち家の夢を奪うものだ。」、こう断定しておられる。総理、この二つの言い方は、片っ方は奪いかねない、片っ方は奪うものだ、非常に認識にずれがあるような感じがいたしますが、総理になられての住宅問題、土地問題に対する現在の基本的なお考え、夢を奪ってしまったのかどうかということについてお尋ねしたいと思います。
  59. 竹下登

    国務大臣竹下登君) 長い時間をかけての書きおろしてございますので、当初奪いかねないというのが適切だろうと思っておりましたが、ある時期、もう奪ってしまったと見るべきじゃないか、こんな印象を受けたことも率直にそのとおりであります。書きおろししたものでございますので言葉の違いがありますが、そんな印象を受けておることは事実でございますだけに、これをいま一度、可能性の範囲内に何とか誘導政策等において持ち入れなきゃならぬというふうに考えておるところでございます。
  60. 小川仁一

    ○小川仁一君 奪ってしまったものだという現状認識であれば、それに対する新しい対策が出てくると思います。  土地問題の基本は、どうしたら市民が住みよい都市空間をつくるか、そこに住めるかということが中心だと思います。オフィスがどうのこうのということよりも先に、一般市民、勤労者の住宅をどう確保するか。それがなければお互いの人権的な問題としての、生活の条件としての論議が不毛の論議になってしまいます。かたぎの人間が一生働いても自分の家も持てない、自分の住む場所も持てない、こういったような状況というものをどうしてもなくしていく。したがって、そのことに関してこういり言い方を総理が同じ本の中でしておられる。「立ち遅れが著しいといわれる住宅も、近年はかなり改善されており、土地問題を是正することができれば将来は明るいものになろう。」、こうおっしゃっておる。どういうふうにこの土地問題を是正し、国民に住宅を与える将来の明るさがあるだろうか。そういうことについて、総理としての具体的なあるいは基本的なお考えがあったら伺いたいと思います。
  61. 竹下登

    国務大臣竹下登君) これも最初の方でございますが、私もいつの日か、後から読み直してみて、これは問題を提起される書き方だなと思ったことは率直に言ってございます。ただ私は、西欧のいわゆる面積が、かつてよりも一人当たりの面積が広がった住宅というものの方向に志向されておるというところに改善の核を見出したわけであります。  それから、明るいものという表現は、やはり最終的には第四次全国総合開発が志向しております、いわば一極集中から多極分散へというところにロマンを求めていくべきではないかというふうに基本的には考えております。
  62. 小川仁一

    ○小川仁一君 明るい方向を打ち出すために、特にそれを住宅に限ってお話を申し上げますというと、今の持ち家制度という形での住宅制度というのは、現状の中では一定の限界が出てきたのではないだろうか。むしろ、今おっしゃったように、一定以上の面積を持った住宅を働く人たちや一般市民に持たせようとするならば、大量なかつ安い賃貸住宅を国または公共団体の責任でつくり出していく。こういうことが明るい方向になると思いますが、そういう点についてのお考え、政策は今ございませんでしょうか。
  63. 奥野誠亮

    国務大臣奥野誠亮君) 先ほどちょっと申し上げましたように、東京を中心にする地価高騰が、マイホームの夢をくじいてしまったという悲痛な叫びになっているわけでございます。そういうことから考えますと、今東京の二十三区は地価が落ちついてきた、幾らか下がってきたと言われているわけでありますけれども、私はまだ下がりようが足りない。ほかの地域でも、今の東京地価と比較して地価が安過ぎるということで、どんどんそちらが上がっていっているわけでございますから、もっと都心地価を下げる努力をしていかなきゃならない、そう思っているわけでございまして、今賃貸住宅のお話もございましたけれども、ぜひマイホームの夢が砕かれないような社会を取り戻していかなきゃならない。それに向かって最善の努力を払うべきだ、こう思っているところでございます。
  64. 小川仁一

    ○小川仁一君 先日、建設委員会で大川端リバーシティを見学いたしました。あそこでは都営住宅で三DK五万七千円、公団関係の住宅は十八万円、三井が新しくつくっているのが二十万を超すだろう、こう言われております。今の平均のサラリーマンの給与、四十歳代で約六百万。十八万円の公団住宅に入れるでしょうか、私は入れないと思う。管理費が入ったら二十万もかかっちゃう。そうすると、西ドイツのような思い切った国の住宅政策というのがとられなければならない時期だと思うんです。そういう思い切った安い、そして最低居住水準を保障するような住宅で政府が持っているあるいは事業団体が持っているものを、地方公共団体と共同してつくり出していく、こういった大胆な発想をお考え願えないものでしょうか。
  65. 奥野誠亮

    国務大臣奥野誠亮君) 大胆な住宅政策につきましては、また他のお方からお話があろうかと思うのでございますけれども、まずは東京に対する需要を散らしていきたい、そのために最善を図るべきだと。同時に、供給も思い切ってふやしていきたい。供給をふやすためにニュータウンの建設や、それにあわせて鉄道の新線、複線、複々線化なども行われているわけでございます。  一つの話で申し上げますと、私は常磐新線を早くつくってくださいと言っているんです。そうしますと東京都知事が、あの辺が空白地帯なんです、こうおっしゃいました。さらに取手新線もつくってもらいたいんですよと、こうおっしゃっておりました。だから、やればまだまだ私は土地は出てくるんじゃないか、努力すれば土地は出てくるんだと。土地が出てくるということになれば、地価は私は下がってしかるべきじゃないか、こう思うわけでございまして、土地問題の立場からお答え申し上げているわけでございますけれども、私たちは希望を捨てないでこれからも一層の努力を続けていきたいな、こう考えているところでございます。
  66. 小川仁一

    ○小川仁一君 土地はあるんですね。大蔵省の一般会計、普通財産を見ますというと、東京二十三区で四・八ヘクタール、東京二十三区以外で、島嶼を除いて四十・三ヘクタール、神奈川八十・七ヘクタールといったように、四百ヘクタールの土地が現在未利用地帯として存在をいたします。そのほかにも、文部省とかあるいはその他の省が持っている土地があるわけでございます。文部省の一橋講堂あるいは六本木の防衛庁の跡地、渋谷神宮前の日本社会事業大学の二千六百平方メーターの土地、こういったような国有の土地があるわけです。  この土地を思い切って住宅に回す、こういうことが今考えられてしかるべきだと思うんです。東京一つの都市機能を持っております。都市機能というのは、オフィスビルも大事でしょうし、いろいろ大事でしょうが、それに完全な機能として十分な活力を持たせるためには、そこにあらゆるサービスを行う人たちが存在することが必要なんです。そのうちどれが欠けても機能は発揮されない。こうなると、その都市機能を発揮するために働く、しかも非常に安い賃金で働いている勤労者一般、こういう人たちに安心して住めるような土地を与える、住宅を持たせる、これが大事なんです。  だから、今ぜひ考えていただきたいことは、今持っているような多くの国公有地、これを文部省は、何か大蔵省の一橋講堂の跡に貸しビルをつくって、そして文部省が収益を上げるわけではないでしょうけれども、その上を幾らか住宅にするような話をしておりますが、思い切った高層住宅に切りかえていく、こういうふうに発想を変えて東京土地を利用する。そうしなければ、マイホームの夢どころか、現在年間平均六百万程度の収入で住宅資金に回すお金が三千万くらいしかないと言われる人たちの夢はもうなくなってしまう。明るい希望を築くために、思い切って国有財産を地方団体と一緒になってあるいは公社公団と一緒になって大きな住宅地に変えていくという考え方はございませんか。
  67. 奥野誠亮

    国務大臣奥野誠亮君) 御指摘になりましたように、土地はあるよというお考えに私も大賛成でございます。自治大臣も、譲渡所得課税の特例を開いたらたくさんな工場用地があるんですよ、それを出してくれますよと大変熱心に言ってくださるわけでございまして、利用されない土地を積極的に利用してもらえるような体制をつくっていかなければならない、そういうことで励ましていただいたような感じがするわけでございますけれども、そういう気持ちで努力を続けていきたいと思います。
  68. 小川仁一

    ○小川仁一君 総理、明るい展望を築くために今言ったような国公有地土地をただで提供する、そこに民間の資金でもいいし公社公団の資金でもいいから建物をつくる、そしてそれに給料の一五%以内で住まわせるようにする。不足分があったら、どうせ今住宅手当もくれているんですから、住宅手当を増額するとか、あるいは国の補助金で西ドイツのように保障してやる。そうして職場から通勤三十分から六十分以内ぐらいのところにおさめようとすれば、私の計算では可能なんです、その土地とそこにつくられる住宅と。本日は一々細かいことを申し上げませんが、ぜひそういうことをお願いしたい。  「大胆な発想」とこの本でおっしゃられている。今までのしきたりを継承しては今言った住宅問題は解決しない。大胆な発想で、私が申し上げたような構想をあなたのお考えの中に取り入れていただけるかどうか、お考えを伺いたいと思います。
  69. 竹下登

    国務大臣竹下登君) 住宅の基盤であります地価問題等につきましては、奥野大臣からお答えがございました。今の問題は言ってみれば住宅政策という範疇に属するかと思うのでありますが、野党共同提言の中でのコンセンサスを拝読してみますと、年間所得の五倍強というようなものといま一つは月収の二〇%というのが住居費というようなのがおおむねの提言の基礎にあるような感じで読ましていただきました。ただ私はそれがさらに、三十分圏、一時間圏というようなものが言ってみれば、リニアモーターカーがあしたできるとは思いませんけれども、そういうものによって範囲自身が広げられていくというようなことも私は大いに考えなきゃならぬ課題であるというふうに思います。  それからいま一つの国有財産、これはもとより国民共通の財産でございますから、したがってこれの無償ということになりますと、おのずからそれの論理性が存在しなければならないわけでございます。例えば、地方公共団体が公園等に借地として利用するというようなときにその例が過去にもあるわけでございますものの、国民共有の財産に対しましてのおのずからの無償供与というものについての限界は存在しておるということを御理解賜りたい。  さらに、いま一つは、持ち家政策がいわば公営住宅政策か、こういう二つに分けて、昔は自由民主党は大体持ち家政策で、そして日本社会党は公営住宅政策だなどといった議論が三十年ぐらい前になされたことがございますけれども、私はそれぞれの兼ね合いでそれなりに今日順調に住宅政策はその限りにおいては行われておると見ております。公営住宅をおろそかにするなどという考えはもとより持ちませんが、持ち家の夢というものを摘むようなことをしてはならぬというのは基本的にやはり私ども、底辺に存在しておる考え方であります。
  70. 小川仁一

    ○小川仁一君 私は、国公有地を無償でと考えていないんです。土地というものを無償で個人に与えられないけれども、しかし公営住宅という形で物を考えます場合には、分譲しなければその土地に対する値打ちは依然として持っている人の中に貸借対照表で言えば残るわけですから、あえてそれに大きなお金をいただかなくてもいい、住宅をつくるために土地を提供するのだ、こういう考え方と、もしそれが必要ならば、かつて農地証券があったように、一定の自治体に対してあるいは交付国債でもいいです、いろんな形でそれの面倒を見てやる、こういう形もあり得るかと思うんです。  そして、もう時間もありませんから言いますけれども、例えば、そういったような住宅をつくることと逆の方向が出てきている。これは新聞記事ですから正確なことはわかりませんけれども、住宅公団では、東京都の八王子の約百五十八ヘクタールの丘陵地をハイテク産業ゾーンにする、こういうふうな記事が出ている。住宅都市公団は、当初ここを公団住宅にしようと考えておったらしいんです。いろいろな、インターチェンジあるいは首都、中央高速道路という関係もあるかもしれないけれども、そういう変え方にしていくと。  私は、今非常に大事なことは、そういうハイテクゾーンも必要でしょうが、住宅に考えたものを切りかえてそこまで持っていく必要はない。したがって、建設省としては、こういったような住宅用の土地を産業用の土地に切りかえるような指導をしておられるのか、それともそれを戻して住宅にお使いになるという指導方向でいかれるのか。これは建設省からお伺いしたいと思います。
  71. 福本英三

    政府委員(福本英三君) お答えいたします。  そういう土地土地状況によりまして、住宅は中心でございます、特に大都市圏の通勤可能なところの土地はもちろん住宅で使いやすうございますが、お話土地はちょっと確かではございませんがかなり遠い土地でございまして、そういうところは、住宅と同時に工場とか研究所とかいうものを入れまして、複合開発という格好で住宅地と職場とセットで開発するようなことも考えながら対応していきたいと考えておるものでございます。
  72. 小川仁一

    ○小川仁一君 以上で終わります。
  73. 河本嘉久蔵

    委員長河本嘉久蔵君) 午前の質疑はこの程度にとどめ、午後一時まで休憩いたします。    正午休憩      ―――――・―――――    午後一時開会
  74. 河本嘉久蔵

    委員長河本嘉久蔵君) ただいまから土地問題等に関する特別委員会を再開いたします。  休憩前に引き続き、土地問題及び国土利用に関しての対策樹立に関する調査を議題とし、質疑を行います。  これより古賀君の質疑に入ります。古賀君。
  75. 古賀雷四郎

    古賀雷四郎君 土地問題、非常に重要な問題につきまして代表の質問をしろということでございまして、よろしくひとつお願いしたいと思っております。  その前にまず、きょうの朝日新聞をほとんどごらんになったかと思いますが、最上恒産の土地転がし問題も含めまして金融の問題、いろんな問題が書いてあります。これで土地高騰する理由が具体的にはっきりしたという気がいたしております。そしてしかも、関係会社あるいは最上恒産も含めて巨利を得たと書いてありまして、そういう意味では、きょうの新聞をよくごらんになって土地問題についてどういう点が問題であるかをひとつ御理解をいただきまして、我々にも検討の結果を教えていただきたいし、さらにこれによって真剣な土地対策をひとつぜひ確立していただきたいと心からお願いする次第でございます。答弁は要りません。  まず、私は総理にお伺いしたいと思いますが、土地政策はどうあるべきか、基本方針についてであります。  東京の国際化、情報化に伴い、東京都心、商業地に端を発しました地価高騰は、都心では幾らか鎮静化の傾向が見えているという御報告でございますが、ただその周辺地域、さらには主要地方都市へ波及いたしております。私は郷里は佐賀県の鳥栖でございますけれども、鳥栖にも地上げ屋が入ったことのようなうわさも聞きますし、私らは心配をいたしておるような現況でございます。このような状況では、まじめに汗して働くサラリーマンのマイホームの夢は遠くなるばかりでなく、これから行われる四全総の社会資本整備にも重大な支障を来すというふうに考えます。土地や家を既に持っている者と持たざる者の社会的不公平をどうしていくかという問題も非常に重要な課題でありますし、私は事態はもう放置できないという関係大臣と同じ認識でおることもひとつ御理解を願いたいと思っております。  私は、このときこそ政治が勇気を持ってこの難題に取り組む必要があるというふうに痛感をいたしておる次第でございます。竹下総理はこのような事態を深く認識され、みずから土地対策関係閣僚会議を主宰され、さらに今次臨時国会を召集して土地問題に真正面から取り組まれる姿勢を拝見しまして、まことに意を強くするところでございます。  まず総理に、この異常とも言える地価高騰状況をどう受けとめ、これにどう取り組まれるのか。また、土地が自然に造成されたものであって有限であるという前提に立って、土地に対する国民の考え方がどうあるべきかという指針も必要ではないか、いわば土地倫理といったものが今後必要になってくるのではないかという気がいたしております。そういう点につきましてひとつ総理の御所見をお伺いしたいと思います。
  76. 竹下登

    国務大臣竹下登君) 御指摘のように、この土地対策は現下の内政上の最大の課題一つであるという問題意識を持っておりましたから、新たに土地対策担当大臣を設け、その御助言等もあり閣僚会議を設けてこれに対応していこうと。したがって、前内閣時代でございますが、十月十六日に決定いたしました方針というものは、大まかに申しますならば、当面対策、中期対策、長期対策と、このように分けられると思いますが、当面の対策というものに遺漏なきを期すと同時に、前国会において両院に土地対策特別委員会が設置された、それらの建言等がまた対策を進めていく上に大いに環境整備等に役立つであろう、こういう評価と期待のもとに今日取り組んでおるところであります。  問題の所在というものは、自由主義経済の原則からいえば、これも需要と供給のメカニズムから、地価というものの基本はそこにあるにいたしましても、確かに東京を中心といたしましてまさに一極集中、機能あるいは情報ともにそういうことになっておりますので、これが大きな要因の一つになり、さらに金余り現象とそうして投機的な動きというのがそれに拍車をかけて今日の異常な状態をもたらした。したがって、反省を含めて申しますならば、例えば私が大蔵大臣をしております当時、金融機関に対して通達を出したことがございます。その通達は、ああして世界の三大金融センター、こういう位置づけからいたしまして世界じゅうの金融機関都心のオフィスを求めてくるであろうというような感じを持っておったことも一つの要因となるわけでありますが、最近の大蔵省で行われておりますヒアリングでございますとか重ねてお出しになった通達でございますとかいうことが実効を上げておるということを考えますと、あのときにさらにヒアリング等もやっておったらなお実効が上がったではないかなと、こういう反省もいたしておるところであります。  したがって、今土地の倫理というお言葉がありましたが、土地がもとより私有財産制を認めております今日、「財産権は、これを侵してはならない。」ということではありましても、憲法二十九条の第三項にもありますごとく、可能な限り公共の用に供するといういわば土地概念の変更とでも申しますか、そういう意識転換とでも申しますか、そうしたものができるようなコンセンサスが当委員会等の一問一答の中に形成されていくことを心から期待して、それを受けて責任自体は行政府の我々が果たさなきゃならぬ課題だというように問題意識を整理しております。
  77. 古賀雷四郎

    古賀雷四郎君 次に、土地の定義というものがどういうぐあいになっておるのか、私いろいろ土地問題に関する各個の法律につきまして検討してみたんですが、どうも明確でない点が多過ぎる。  そこで、既に御承知のように、法律上の規定は、私法では民法、借地法、不動産登記法などに、また公法では国土総合開発法、国土利用計画法などに見られます。我が国の土地法制はそれらの点についてはかなり完備したものではなかろうかというふうに理解がされます。しかし、土地とは一体何かということになりますと、法制度上基本的な概念が定義づけられておりません。これは関係法律をほとんど見たんですけれども、そういうことであります。今後、土地の利用の見地から、土地の上、土地の下の権利義務問題を議論する場合、この土地の概念がはっきりしないことにはいろいろな不都合が生ずると思います。御案内のとおり、一方、土地の所有権については民法二百七条で「土地ノ所有権ハ法令ノ制限内ニ於テ其土地ノ上下ニ及フ」ということに規定されております。これが土地所有権の基本的な規定であることは異論の余地がありません。具体的にどこまでが土地であるのかというのは明確でないというふうに理解をしております。  土地の上つまり空中権、空中については、法令の制限は建物を建てる場合であれば御案内のとおり高さ、容積率等がありまして、ある程度規制できる対象になっている。さらにその上については航空法の規定がありますので、これも制限がされるという制限の法律土地の上についてはあります。  それから土地の下の問題つまり地下については、法令の制限も鉱業法、これは地下五十メーターと言われておりますが、採掘権の問題だと思いますし、温泉法の規定があるものの、どこまでが私的な領域として保障され、どこからが公的な領域なのか不明なのであります。特に地下の利用についてはこれからだんだんと起きてくるでしょうし、道路を地下につくるとかあるいはいろいろな問題がありますし、また地下室をつくるケースも多くなってくると思います。そういう意味で地下の利用問題に関する具体的な規定がない。地下の仕事をすれば土地が傾くとか、いろいろな問題は簡単な補償で処理されているというのが現状ではないでしょうか。  地下は、御承知のように、先ほど自然造成物と言いましたが、多様な構成要素があります。例えば、所構わず大きな地下ビルあるいは地下街をつくると、地下水脈が変化したり地下水の採取で地盤が沈下するおそれがある。この大切な国土に回復不能な損傷を与えることになります。例えば江東三角地帯、私が三十四年に建設省に参りましたときに江東三角地帯はマイナス二メーターまで下がっていた。そのとき私は江東三角地帯の高潮の問題でいろいろ関係しました。その後、ある企業の集中的な地下水くみ上げでさらに沈下が二メーター加えられた。したがって満潮面から六メーターになった。さらにキジア台風では八メーターになる、二階の屋根のひさしまで全部水がいくことになる。これでは私法人の行為が土地の利用する可能性を非常に少なくした、また危険を与えたということでありまして、これらの問題につきましては私も相当額の金融を大蔵大臣からいただきまして、運輸省と建設省で相ともに協議しながらやってまいりました。恐らく数千億を超えるのではないかというふうに私は理解しております。  今ここに土地問題に関して総括審議が行われておりますけれども、このように実にあいまいな規定しかない土地の概念をどうとらえるべきなのか、また土地について基本的な定義づけが国政上、法制度上この際必要ではないかと思います。法制局長官及び国土庁長官の見解をお伺いしたいと思います。
  78. 味村治

    政府委員(味村治君) 土地とは何かということを直接的に定義いたしました法律がございませんことは委員の御指摘のとおりでございまして、土地に関します現行の法制は、土地に関する社会通念上と申しますか、そういう概念を前提にして定められているものというふうに考えるのかなと思っております。  基本的な問題は土地所有権の及ぶ範囲ということでございまして、これはただいま委員が御指摘されましたとおりに、民法二百七条が「土地ノ所有権ハ法令ノ制限内ニ於テ其土地ノ上下ニ及フ」と規定しておるところでございます。これは、土地の所有権は法令によって制限されない限り無限の上空あるいは地球の最深部までいく、そういうことではございませんで、その行使について利益の存する限度で地上及び地下に及ぶと、そういうことを意味するのであって、高空あるいは地下の深部などで土地所有権の行使につきまして利益がないところには土地所有権は及ばない、このように解釈されているところでございます。この土地所有権の限界がいわば定量的に定められているということは事柄の性質上やむを得ないことかなと、このように存じているところでございます。  また、委員が地下の利用の規制について御指摘になりましたが、ただいま私が申し上げました所有権の及ぶ地下についてまで規制をする必要があるという場合には、この民法の二百七条の「法令ノ制限内」ということでございまして、この「法令」と申しますのは法律があるいはその委任を受けました命令というふうに解釈されておりますが、その法令によって規定をすることが必要であると。ただ、その法令による制限につきましても、午前中から議論になっておりますように憲法の制約がございまして、憲法二十九条の二項によりまして公共の福祉に適するように定めるということは必要であろうかと存じます。
  79. 奥野誠亮

    国務大臣奥野誠亮君) 今土地の定義に関しましていろんな場合をお取り上げになったわけでございます。やはりいろんな場合に応じて土地の定義が決まってきてしかるべきじゃないかなと、こう私は思っているわけであります。例えば水面を埋め立てて土地をつくる、どの時点から土地になるのか、どの時点から課税権が発生するのか、あるいはまた二百海里水域の問題がございまして、島嶼が沈んでしまう、大変なことだ、二百海里の利用区域を失ってしまうじゃないかと大問題になっている地域もあるわけでございまして、それじゃどの時点で島でなくなるのか、こういう問題もあろうかと思います。  今さしあたって私たちが一番関心を持たなければならないのは、今法制局長官からもお話がございましたように、土地の所有権は法令の範囲内においてその上下に及ぶ、この限界が地下について定まっていない。だから地下鉄をつくるときに一々地上権を設定しているんだろうと思うのでございますけれども、莫大な補償金が要る。ある程度以下であれば私は補償金を払わないで使わせるべきじゃないかなと、こんな感じもするわけでございまして、やはり個々についてこの際所有権の絶対権みたいなものに対する反省をいろんな面で公共の福祉の見地を加えて制約させていただくべきじゃないかなというふうに思っているところでございます。
  80. 古賀雷四郎

    古賀雷四郎君 法制局長官にお伺いしたいんですが、例えば、私は地盤沈下問題に長く関係しておりますが、江東三角地帯である企業が地下水をくみ上げた、そうするとうんと下がってきた。それがほとんどその原因でございますけれども、そういう場合に江東三角地帯におる方の地上権の補償という問題が起きてくるだろうと、そういう取り扱いをどうされますか、お伺いします。
  81. 味村治

    政府委員(味村治君) 先生御指摘の問題は非常に深刻な問題でございますが、所有権は使用収益及び処分をする権利の言ってみれば包括的な権利だというふうに言われております。したがいまして、土地をどのように使用するかということも、別にその用益権者がおりますれば別でございますが、所有権者の自由に決定するところであるというのが私法上の原則になっているわけでございます。そして、土地の所有権の範囲は先ほど申し上げましたようなことでございますが、その所有権の範囲内に属しております限りにおきまして、その土地を構成しております岩石、砂だけではなくて、そこから流れ出ます水、地下水、これも土地所有権者の自由に利用できるところであるというのが今までの考え方であろうかと存じます。  しかし、先生が御指摘のように、そのために地盤沈下が生じたというようなことになれば、これは公共の福祉に大変関係することでございますので、公共の福祉の観点からその使用につきまして、地下水のくみ上げ、そういったことにつきまして規制を加えるということもこれは憲法の容認するところであろうかと存じます。
  82. 古賀雷四郎

    古賀雷四郎君 非常に難しい問題のようでございますから、このくらいにして理解をさしていただいておきます。  そこで、地価動向についてお伺いします。  最近の地価動向でございますが、都区部は鎮静化傾向であると言われております。ただ、東京周辺都市その他の大都市ではいまだに上昇傾向が若干あるということでございます。現在上昇ぎみのところ、あるいは今後上昇のおそれのあるところをどう見通しておられるのか、またその上昇、高騰の要因をどう見ておられるのか、さらには東京地価高騰を地方に波及させないための具体的方策をどう講じようとしているのか、緊急を要する問題として、ひとつ国土庁長官にお伺いしたいと思っております。
  83. 奥野誠亮

    国務大臣奥野誠亮君) おっしゃいましたように、都心地価は幾らか下がりぎみになっているわけでございますけれども、周辺地域でありますとか、あるいはその他の都市方面――大阪におきましては商業地区が四割も上がったということでございます。やはり地価の上昇は都心三区から始まった、私はこう思っておるわけでございまして、五十八年ごろから上がってきているじゃないか、それが次々に玉突き状態で波及してきていると。大阪あたりでは、関東勢が土地を買いに来ている、こういう言い方をいたしております。東京地価と大阪の地価とを比べてみますと、東京は上がり過ぎているものでございますから、やっぱり割安だ、今のうちに買っておこう、こういうこともあり得ると思うのでございます。  そういう意味合いにおきましては、周辺が上がらないように監視区域を設定して厳しい規制の日を光らしていく、金融面においても御協力をいただくという体制をとっていかなきゃなりませんけれども、都心地価をもう一段下げてもらわなきゃいけないんじゃないかな、やっぱりバランス感覚というものは続いていくんじゃないかな、こう思っておるわけでございまして、都心、二十三区は下がりぎみだと申し上げておりますものの、土地対策としてはとてもとても気を許せるような状態ではないという気持ちで真剣に見守り、それぞれに対応した措置を後手にならないようにとっていかなきゃならないと思っておるわけでございます。基本的にはやっぱり都心の需給、このバランスをとっていく、都心における需要を減らして供給をふやす、そのことを通じて、今よりはなお下げてもらわなきゃいけないんじゃないかな、それが日本全土にわたる地価の安定のための最大の課題じゃないかなと考えているところでございます。
  84. 古賀雷四郎

    古賀雷四郎君 再び奥野大臣にお伺いするんですが、大臣は実質五十八年ぐらいから土地価格の上昇が起きてきたと言われておりますが、この西新宿の地上げ屋問題につきましては既に五十七年度から始まっておる。だから、必ずしも五十八年度が初期だというわけにはまいらないような気がいたします。  私は、この調査の結果を見て、結果的に土地価格の公示価格に反映するめどは一年間と見られておりますが、一年間調査をして決める、しかし実態的に土地が上がりかける、あるいはそういう傾向があるときには臨時に調査期間を短くしてやるという手もあるだろうと思うんです。そういうものを着実に把握しながら地価対策を合理的にやっていくということが必要ではなかろうかと思いますが、それらについてひとつ御見解をお伺いしたい。
  85. 片桐久雄

    政府委員片桐久雄君) 先生御指摘のように、地価公示価格は毎年一月一日に過去一年間の地価動向を加味して決めております。それからまた、七月一日に都道府県地価調査というものを実施いたしておりまして、これは七月一日現在で過去一年間の分を反映させまして公表しているわけでございます。年に二回地価調査というものを公表しているわけでございますけれども、最近のように地価動向が非常に著しい、地価の動きが非常に大きく動くというような場合には、半年間ずつの調査ではなかなか私どもの行政の参考資料として少し古過ぎるんじゃないかということも考えまして、最近は、地価のモニターシステムといいますか、一カ月ごとに地価動向を把握するようにいろいろ工夫をいたしておるところでございます。
  86. 古賀雷四郎

    古賀雷四郎君 御努力の傾向が見られますので、地価上昇の傾向がある場合には速やかに、ぜひひとつ、短期間の調査も含めましてひとつ頑張って地価対策に御協力をいただきたいと思っております。  それと関連しまして、土地融資の問題について宮澤大蔵大臣に若干御質問したいと思っております。  地価高騰原因は、よく一般的には言われておりますが、基本的にはやはり東京圏一点集中、行財政あるいは情報、経済、金融すべての中心でございますので、そういった問題と、さらに国際化に伴うオフィスビル、住宅の需給の逼迫という問題も大きな要因であろうと思います。しかし、見逃すことのできないのが、悪質な地上げ屋による土地転がし暗躍、金余り現象のもとでの金融機関の不正過剰融資によるマネーゲーム的な取引であるというふうに理解される点が多い。株もマネーゲームに荒れていますし、いろいろな点でマネーゲームが非常に盛んになってきた。この問題は国民的な理解が得られないとなかなか私は難しいだろうと思うんです。したがいまして、こういった問題についてどういうぐあいに考えていくのか、教えていただきたいし、またそのほかにも、住宅金融公庫貸し付けの不正利用とかあるいは住宅・都市整備公団の目的外の利用といった問題もございますし、新聞紙上で報道されております。  特に私がお願いしたいことは、金融機関は当然公共的責任を有するわけでございます、ただ金を融資すればいいというようなものじゃないだろうという気がしますが、節度ある公正な姿勢をひとつ貫いてほしい。幸い、金融機関に対する大蔵省の特別ヒアリングの実施は地価鎮静の一助となったと思います。地価高騰は今や地方の主要都市へ広がりつつありますので、地方のすべてにそれらの問題につきまして注意を払ってやっていただくようなことをお願いしなきゃならぬと思います、特別ヒアリングもひとつ継続してほしいと思いますが。さらに、審査体制も随分と強化されているようでございますが、問題は過剰融資にならないかどうかという点でございます。どの程度を価格の目安として、土地規制も含めて、例えば公示価格を基準として融資額を決めるとか、坪数に相応した融資額を決めるとか、過剰投資が起こらないようにひとつぜひしていただきたいというのが私のお願いでございます。また、不良金融機関につきましては、制裁のために公表する等の措置を検討していただく必要があるのではないか。  以上二点につきましてひとつ御答弁をお願いしたいと思っております。
  87. 宮澤喜一

    国務大臣(宮澤喜一君) このたびの土地価格の異常な高騰につきまして、金融機関がそれに一つの役割を演じたということは疑いを入れないところと存じます。したがいまして、かねて通達はいたしておりましたけれども、ことしの七月からかなり立ち入りまして個々のケースにつきまして個々の金融機関からヒアリングをいたしました。その結果として、正すべきは正し、また金融機関側も今後のこの種の融資についてその管理なり審査なりはなるべく本店、中央機関において行うということも決定いたしておりまして、そういう意味では相当に自粛の効果があらわれておるというふうに考えております。  ただ、御指摘のように、その後地価上昇が地方に波及をしつつあるということもございますので、中央で起こってならないことは地方で起こってもなりません。したがいまして、金融機関に対する審査あるいはヒアリングは必要に応じまして地方にも広げ、かつ強化をいたしてまいりたいと考えております。各金融機関とも今後ともこういうことが再度ありませんように、これを機会に十分注意をしてもらいたいと考えておるところでございます。  ところで、そのことをまず申し上げました後、この二、三年間、実は我が国自身が内需振興あるいは住宅建設といったような命題を持っておりましたために、どちらかといえば正常な状況でございますと金融機関はそれに協力をしてもらいたいというのが私どもの考え方でございました。また、国民的な要請でもあったと思います。したがいまして金融機関が、例えば中小企業であるとか、あるいは住宅ローンを必要とするいわば個人に対して土地を担保に金融を行うということは、そのこと自身はむしろ推進をし、かつ奨励をしてまいったところだったと思います。  このような事態になりましたので、それを弁解に申すつもりはさらさらございませんが、そういう正常な金融ということになりますと、これはやはり土地が担保に供されるというそのこと自身は間違ったことではなかろうと。殊に年末になりますと、これはしょっちゅうあることでございますが、中小企業庁が金融機関に対して、なるべく中小企業等々にひとつ融資をしてほしい。で、その場合に、いわば掛け目と申しますか、そこらあたりもできるだけ親切に考えてやってほしいというようなことを申しますほど、実は一般に金融機関というのはなかなか融資態度が中小企業等に対していわば大変に厳しいということが片方でございますものですから、不正常なことをしてもらっては困る。しかし、正常なことはひとつ、殊に個人の住宅であるとか中小企業の設備資金あるいは営業資金であるとかは面倒を見てもらいたいという、いわばちょっと二律背反するような状況が今度の問題の背景にございました。  したがいまして、もう誤りは誤りとして正してまいらなければなりませんが、ただいま御指摘のように、この土地を担保とするその掛け日を一般的な水準を何かつくって、それを超えてはならぬといったようなことをいたしますと、実は正常な金融、それも零細な金融がまず切られるという心配がございますので、その辺のことも十分に考えてまいらなければならないと思います。
  88. 古賀雷四郎

    古賀雷四郎君 時間が余りありませんので、ひとつ答えは簡単にお願いします。宮澤大蔵大臣の懇切丁寧な御答弁をいただきまして、かえって恐縮します。  御承知のように、四全総は閣議決定されましたが、この四全総は均衡ある国土の発展のために非常に大事な課題であるし、これは実行しなきゃいかぬと思います。私も田舎の住まいでございますので、活力も何も起こらないような状態が続いている。これはここにおる議員の先生方もまさにそれを痛感されているだろうと思います。私は、閣議において省庁一機関の地方移転等につきまして速やかに対策を出すようにということで総理が指示をされたと聞いております。当然これをやっていただいて東京集中を防ぐとか、いろんな問題もあわせて考えていただかなければならないだろうし、ともに例えば行政権限をももっと地方へ、あるいは地方建設局に移してしかるべきではなかろうかと思います。  例えば、実施計画のヒアリングなどは地方建設局長に征したらどうか、もっと各省にもあると思います。そういった問題を取り上げて、地方建設局は全部地方に密着しているわけですから、よく実情のわかった人がヒアリングすることが望ましい。そういう意味でひとつぜひそういうことを考えていただきたいし、さらにこれを実行するためには四全総あるいはふるさと創生論にも言われておるように地方財源を強化する必要がある。これをひとつ財源配分につきましてぜひやっていただきたい。地方はこの前、補助率をカットされたことも二回ありました。そういうことで大変動きができないようにできている。地方が自分の力で活力を出せないような状態になっている。これを本当に真剣にひとつやっていただくようなことにしていただきたいなと思います。  そこで、総理はふるさと創生論というのを提唱されました。しかも、それに精神的な要素も加えて心豊かな創造のために創生していきたいという論文を発表されている、まことに結構なことです。心豊かでなければ立派な社会はでき上がりません。そういう意味におきまして教育改革も大事でありましょう。しかし考えてみますと、過去三回全国総合開発計画をつくって必ずしも成功したとは言えない場面もたくさんあります。何が悪くて成功しなかったのか、あるいはいろいろの世界的な情勢もありましょうし、国内の情勢もございましょうから、必ずしもうまくいくとは私は思いませんけれども、そういう意味でそういうこともひとつ検討していただいて、これを推進していただきたいと考えるものであります。  以上の点について総括的にひとつ総理からこの問題の進め方についてお伺いしたいと思います。
  89. 竹下登

    国務大臣竹下登君) まず、四全総の推進、この問題についての御意見を交えた御質疑であります。  地域の創意と工夫を生かしながら多極分散国土の形成を目指そうとする点におきましては、これは私が十年以来言っておりますふるさと創生論というようなものはまさにそれそのものだなという印象を絶えず持っておるところであります。具体的手法といたしまして、一機関を地方へ分散する、こういうことをも申し述べております。ただ、一省庁一局削減というのが佐藤内閣のときに行われまして、非常にごろもよかったし、私はそういう観念からそういう言葉を使わしていただいておりますが、必ずしも全く分散する機関のない省もそれはあろうかと思いますが、精神はそこにあるわけであります。  ただ、この際一番注意しなければならぬのは、いわば行政改革の問題、すなわち地方への権限移譲、そうした問題と相反する格好になってもいけないし、それからそのまままた本体の中に少数といえども複雑な仕組みで残って、かえって行革の精神に反するようなことになっちゃいかぬということは十分心得てやろうと思います。  それから地方へ権限を移譲する各自治体そのものの関係を見ますと、当然おっしゃるようになかなかその税源が偏っておりますので、困難な問題はありましょうが、地方へのいわば自主財源と、こういうことを念頭に置くべきだとおっしゃるのはそのとおりでございます。それで今日までいろいろやってきたが、必ずしもその実効を上げていないではないか、こういうことでありますが、当初私は、昭和五年の統計と昭和五十五年の統計の五十年間の統計というものをよく経済企画庁等からもつくっていただいて見ておりますと、この五十年間における地域所得水準の格差是正というのは、それは他の世界のどこの国にも見ない顕著なものがあって、かつて例えば県名を申しますと福島県でありますとか千葉県でありますとか、現在中以上に位するところが東京の九分の一だというような状態から見れば、大変な所得の均衡がなされた日本である。それも主としてその地域地域の工業の分散がそれをなした要因ではないかという点において評価される点がございますものの、近時ちょっとそのせっかく縮まった格差がまた開いていくという懸念をだれしも持っておるところであります。  その懸念の原因がどこにあるかということになってまいりますと、おっしゃるように産業構造の大きな変化等ももたらしてまいりましたが、ハードの問題のほかにもう一つソフトの問題というのに、若干の手抜かりみたいなのがあったのではなかろうか。したがって、ハードの問題に基づく高規格道路でございますとか、そうした問題を整備するのはもとよりのこと、それぞれソフトの問題について地域の方々の知恵と情熱を吸い上げて政策に生かすということが四全総本来のいわゆる多極分散型になり得る考え方の根本ではなかろうか、このように考えております。
  90. 古賀雷四郎

    古賀雷四郎君 どうもありがとうございました。私らのふるさとがよくなることはみんな賛成でございます。皆さん方も御賛成だと思う。どうかそういう意味で多極分散型の国土づくりにつきまして、閣僚の皆様方も総理と一緒になってひとつ頑張っていただきたいと心からお願いしたいと思います。  予定した大臣に対する質問も省略させていただきます。  次に、住宅供給促進対策について、特に公営住宅、公団住宅の問題につきましてお伺いいたしたいと思っております。  土地問題の解決のためにも土地取引の適正化、住宅宅地供給の促進、諸機能の地方分散等各種の施策を総合的に推進することが必要でありますが、中でも住宅宅地の供給を促進し、需給バランスの確保を図っていくことが重要であります。特に由民生活の基盤である住宅の供給促進は強く要請されているところであります。住宅対策は持ち家対策、借家対策をそれぞれバランスよく展開していくことが必要でありましょうが、大都市地域においては公営住宅や公団賃貸住宅等の公共賃貸住宅に期待するところは大きいものがあります。  ところで、公営住宅の現状を見てみますと、過去において建設された木造住宅などを中心に低度利用のままに老朽化しているという現状もございますし、狭いもの、設備の悪いものが相当数存在しております。こうした状況に対し、建設省においても、公営住宅建てかえ事業の実施など、従来から公営住宅の再開発を進めているようでありますが、現下の情勢にかんがみ、さらに一層公営住宅の再開発、高層化を図るべきだと考えます。建設大臣の御見解をお伺いしたいと思っております。さらにまた、公団住宅についてみましても、初期に建設されたものについては六十一年度から建てかえを開始していますが、その進捗状況はいかがでしょうか。  また、大蔵省にお伺いしますけれども、公務員住宅の建てかえ、あるいは高層化等もあわせて検討が要るのではないか。都内にも相当公務員住宅があちこち、国会も含めて散在しております。そういったものもある程度統括する方式のもとにひとつ考えていく必要があるのではないかと考えますので、気のついたことを提言さしていただきます。よろしくひとつ、簡単にお答えをお願いできれば結構です。
  91. 片山正夫

    政府委員(片山正夫君) 公営につきましては、御指摘のありましたように、もう二十年来以上建てかえの促進を図っておりまして、また住宅・都市整備公団につきましては、六十一年度から古いものについての建てかえに着手しております。六十一年度二団地五百三十七戸について着手いたしましたが、現在順調に工事が進捗しているところであります。
  92. 越智伊平

    国務大臣(越智伊平君) お説のように、住宅は生活の基盤である、この認識のもとに、建設省といたしましては、すべての国民に良好なゆとりのある住宅を供給するべく努力をいたしております。ただいまお話のございました公営あるいは公団住宅につきましては、御説明いたしましたように、老朽化したものは極力建てかえ、あるいは増築、これを図ってまいりたい、かように思います。また、午前中総理がお答えいたしましたが、持ち家政策につきましては、住宅金融公庫の融資あるいは税制の拡充、こういうことを進めてまいりたい、かように思います。特に東京都周辺では公団、公営住宅、大いに力を入れて進めてまいりたいと存じます。
  93. 藤田弘志

    政府委員藤田弘志君) お答えいたします。  公務員宿舎の設置に当たりましては、従来から老朽、狭隘な宿舎を中心に集約、高層化を進めてきておりまして、特に最近は国有地の有効活用を図る観点から合同宿舎を原則としまして、これによって生み出される用地を有効活用しているところでございます。ただ、こうした宿舎の高層化に当たりましては、かなりの規模の敷地面積が必要であることと、それから建築に当たりまして種々の法的規制をクリアする必要があるということもございます。予算の効率的な使用の観点からは、やはり建てかえる宿舎はある程度の老朽、狭隘な宿舎であることとかというような条件もございまして、ここら辺の条件を満たすものから漸次計画的に進めているところでございます。
  94. 古賀雷四郎

    古賀雷四郎君 住宅供給の促進を図る上から解決すべき問題として借地借家法がございます。従来から法制審議会で検討されておりますが、まだ結論は出ていないようでございますし、速やかな成案が得られるようにひとつお願いをしたいと思います。特に我が党の同僚議員田辺哲夫氏、東京都の御出身の参議院議員で、しかも弁護士をやっておられたということで、これらの問題の取り扱いを十分了知されておりますので、御意見をひとつ議事録で参照していただきまして、御理解を願っておきたいと思っております。法務大臣にお聞きするつもりでございましたけれども、時間の関係上、これは結構でございますから、ひとつお許しを願いたいと思います。  都市再開発問題について若干質問をさしていただきます。  都市再開発都心部において特に重要だと考えるわけでございますが、住宅を中心に事務所、業務施設等を合わした複合的な機能を有する住宅型再開発プロジェクトを積極的に促進すべきだと思います。建設大臣のお考えをお伺いします。  関連しまして、最近のオフィスビル需要の急増に伴い都市の立体化、空間の複合利用傾向が進んでおります。一方で大都市の災害に対する脆弱性が指摘されているところでございまして、四全総におきましても地震に強いものをつくっていくというようなことが言われております。大地震が発生した場合におけるビルの耐震性が十分確保されているかどうか懸念されます点が多々見受けられます。建設省としてはこのようなビルの耐震性の確保についてどのような施策を講じてきているのか、また既存ビルの耐震性に問題が多いと思うが建設省は具体的にどのように対応しているか、あわせて御答弁を願いたいと思います。  また、つけ加えまして、木造住宅密集地区の車も通れない狭い道路など、火災が起きたら大事故が発生する、そういう問題の対策もあわせて御検討を願えるようにひとつお願いしたいと思っております。簡単に御答弁をお願いできればありがたいと思います。
  95. 越智伊平

    国務大臣(越智伊平君) お説の再開発問題は、良好な地域はどんどん進めてまいりたい、かように思います。また、木造住宅等の地域につきましては、でき得る限り区画整理等を進めてまいりたいと思います。また、耐震その他の問題につきましては、十分技術的な検討を加えて万遺漏ないように進めてまいりたい、かように存ずる次第であります。
  96. 古賀雷四郎

    古賀雷四郎君 次は、旧国鉄用地及び国公有地の処分問題でございます。  旧国鉄用地の売却については、現に地価高騰地域については鎮静化するまでこれを見合わせるということになっております。国公有地の売却も大体これに準ずることになっております。私もこの趣旨には同感でありますが、その見合わせを行う地域、期間など具体的な方針はどうなっているか、運輸省、大蔵省より説明を求めます。  さらに、国公有地につきまして、私は大都市にある国公有地等は都市にとって残された貴重な資源であると思います。それだけに、すぐ売却するのではなく、住宅計画、都市計画、公共施設用地として、また保留地として残しておき、将来都市再開発等に有効利用を図る際適切な対策を講じて交換すればいいというふうに考えまして、これについて大蔵大臣の所見をお伺いしたいと思っております。よろしくお願いします。
  97. 宮澤喜一

    国務大臣(宮澤喜一君) 国有地につきましては、公用、公共用の希望がございますればそれには使ってもらいたいと思っておりますけれども、そうでございませんときは、殊に大都市におきましてはしばらく国有地の処分は見合わせておきたいと思っております。
  98. 石原慎太郎

    国務大臣石原慎太郎君) 国鉄清算事業団が抱えております土地に関しましては、さきの緊急対策要綱に従いまして、目下特に大都市にあります土地に関しては凍結状態でございますが、しかし地方の、それを販売する、売りますことで地価に影響のない地域では既に幾つか売却もしております。ただ全体的に申しまして、画一的にいつまでこれを凍結し、いつから解除するということではなしに、ケース・バイ・ケースでその該当地のあります地域地価動向を見合わせながら判断してこの事業を進めていくつもりでございます。
  99. 古賀雷四郎

    古賀雷四郎君 運輸大臣大蔵大臣関係しますが、旧国鉄用地は国民の貴重な出資によってできたわけでございますから、これらに対しまして、旧国鉄の赤字対策のためにこれを売るということも一つの考え方ではありますけれども、私はこの際、旧国鉄の土地を何らか土地債券といったもので国が買い上げて、それをひとつ具体的に活用するような方法はないのかどうか、この辺も大蔵大臣から御返事をいただければありがたいと思っております。
  100. 宮澤喜一

    国務大臣(宮澤喜一君) 旧国鉄の債務、二十五兆でございますが、それを事業団において財産処分をしてできるだけ小さくしよう、それでも十数兆の債務が残るのではないかと言われております。それが国鉄再建の基本でございます。こういう状況になりまして、そうは言っても地価問題に火をつけるようなことはどうかなということはもっともだと思いますので、私はしばらくの間、旧国鉄の所有地の払い下げについて、せんだってのような緊急対策をされるということは、そうあってしかるべきだと思っておりますが、国鉄再建との関連で申しますとそれは先々いろいろ考えてもらわなければならない。ただいまのようなことでございますと、もう一遍国がそれを買うとなりますと、これはさらにその債務の償還ということは難しくなりますので、これはなかなか簡単なことではなさそうに存じます。
  101. 古賀雷四郎

    古賀雷四郎君 ごもっとものことでございますけれども、国鉄再建も大事でございますし、また土地問題も大事でございますので、御相談の上にひとつしかるべき措置をとっていただきたいものだと思います。  土地税制の中で特に固定資産税、相続税について、土地の異常高価によりまして大変みんな困っております。したがいまして、この窮境はひとつぜひ救っていただきたい。固定資産税が払えないために土地を売らなければならぬというような悲惨な状況もございましょうし、まさに相続税についてはそのような状況が生まれると思いますが、大蔵大臣もいろいろと考えておられるようでございますし、また自治大臣からもいろいろ答弁がございますので、これの負担調整措置をひとつぜひ考えていただきたいと思っております。これは従来議員の質問によって承知しておりますので、そういう希望をしておきます。  もう大分時間が詰まってきましたので先急ぎで恐縮ですが、次は遷都の問題について総理の御意見を伺いたい。  東京は政治、行政経済の中心として我が国の経済社会の発展に貢献してきましたし、またこれからも貢献するでしょう。近年、人口、産業を初めとする諸機能の過度の集中が見られ、居住環境の悪化、異常な地価高騰等について深刻な問題が顕在しています。このような現象を踏まえて、東京の一極集中構造を脱して国土の均衡ある発展のために遷都も考える必要があるのではないかという意見が日増しに大きくなっております。遷都するとすればかなりたくさん新しい問題が生じますが、総理はこういう問題についてどういう認識とどういうお考えを持っておられるか、ひとつ教えていただきたいと思っております。
  102. 竹下登

    国務大臣竹下登君) 首都圏機能の移転、再配置につきましては、東京圏への諸機能の過度の集中を是正して国土の均衡ある発展を図る上からも重要な課題であるという問題意識は十分持っております。ただし、遷都ということになりますと、国民生活に大きな影響を与えます関係はもとより、国土政策だけでこれを決定できるかどうか、こういうことになると国土政策だけで遷都問題を定義づけるわけにはいかない、こういう感じを持っております。したがって、政治、行政機能と経済機能との相互関係のあり方を含めて、言ってみれば国民的次元で議論をさるべき課題であって、そういう国民的次元の議論をされる課題としての検討をまずは進めていくというのが私は今日時点におけるお答えの限界ではなかろうかというふうに考えております。
  103. 古賀雷四郎

    古賀雷四郎君 遷都問題は非常にいろんな問題がつきまとってまいりますので、いろいろと総理の御答弁のようなことだろうと思います。しかし、一極集中の不合理性というのは解決しなければなりませんし、それをどうしていくかというのは、政府におきましても十分御検討の上にいいお考えを出していただきますようにひとつお願いしたいと思っております。  私権の制限の問題でございますが、土地の所有者とそれを使う方とはいろいる利害が相反するという点でございまして、土地の制限ができれば所有者はこれを嫌うという状況にございます。公共の福祉のためには土地収用法の発動も可能でありながら実際は執行されていないという面も見受けます。例えば東京の環八のところで、わずか一部分が通れないために非常に混雑を招いているということで、こういう問題は美濃部都政のところの問題もあったでしょうけれども、やはりこれは公共財としての道路の機能を発揮するように早急に解決してほしいと考えますので、建設大臣ひとつよろしくお願いします。――結構です、答弁は要りません。  新行革審では去る十月十二日、「当面の地価土地対策に関する答申」、中間答申を出されました。現在、土地対策の理念、首都機能、土地、住宅の供給、土地取引の適正化等、核心に触れたテーマについて引き続き検討中とのことでございます。今後のスケジュールはどうなっておりましょうか。まず総務庁長官より御説明を承りたいと存じます。
  104. 高鳥修

    国務大臣(高鳥修君) 古賀委員にお答え申し上げます。  現在、行革審では土地対策検討委員会で精力的な御審議を願っているところでありまして、参考人に対するヒアリングは大体終わりまして、フリーディスカッションをしていただいております。この十二月十六日には、論点整理と今後の審議スケジュールを御決定になるというふうに承知いたしております。  なお、審議会の方でありますが、ちょうどきょうの午後審議会をお開きいただきまして今後の調査審議予定について御検討いただいておるところであります。  いずれにいたしましても、総理の方からも一日も早く結論を持ってきてほしいという御要請もございますので、鋭意御検討を願っておる段階でございます。
  105. 古賀雷四郎

    古賀雷四郎君 総務庁長官のお答えで、総理が早くやれということでございますので、私も強くそれを要望いたしておきます。  特に、先ほど第一番に申し上げましたように、この際、土地に関する倫理を含めまして土地対策の法制化も必要ではないかと考えておるわけでございますが、そういった点につきまして総理の御所見をお伺いしたいと思っております。
  106. 竹下登

    国務大臣竹下登君) いわゆる土地倫理、ある意味においては土地に対する概念の意識転換あるいは変更とでも申しましょうか、そうしたことをも踏まえて、土地対策基本法とでも申しましょうか、(仮称)と申しておきますが、そういうものの議論が展開されておるということは私も十分承知しておりますので、その御提言も大いに意にとどめさせていただきます。
  107. 古賀雷四郎

    古賀雷四郎君 御答弁大変ありがとうございました。取り急いで質問いたしましたのでお許しを願いたいと思います。  これから続きは同僚の永田君が質疑をいたしますので、よろしくひとつお願いします。
  108. 河本嘉久蔵

    委員長河本嘉久蔵君) 次に、永田良雄君の関連質疑に入ります。永田君。
  109. 永田良雄

    ○永田良雄君 自由民主党の永田良雄であります。時間が限られておりますので、幾つかの問題点について総理及び関係の閣僚にお伺いしたいと思います。  まず第一は、今大変土地の問題が緊急の問題として取り上げられておるわけでありますが、私も土地の問題は今の政局の中で最も緊急を要する重要事項であるというふうに考えております。ただ、この土地の問題を検討する際に、その土地問題に対する基本的な考え方をはっきりして対処しなければいけないというふうに思うわけであります。  私の考えを申し上げますと、もともと我が国は自由主義経済の国であります。それがいいか悪いかは別にいたしまして、土地は自由主義経済の中で一つの動きをしておるわけでありまして、自由な取引の中で価格が形成されていくのが常態であります。ただ、土地はいろいろ言われておりますように再生産がきかない、あるいは代替性がないという特殊な性格から、国民に大変密接な関係を有するものでありますし、異常な事態には政治が出てきて断固強力な介入をしてその異常事態を解消すべきものと考えております。ただし、それはあくまでも異常事態の臨時、限時的な措置に限らるべきでありまして、恒常的にそういう国なり公的機関が強制的に規制を加えるというのは間違いであると思っておるわけであります。  現在の異常事態に対しては、当面の緊急措置としていろんな対策がやられております。しかも、それはいろいろ効果を私は発揮してきていると思うわけであります。本当の対策は、やはり需給関係土地の価格は決まっていくわけでありますから、需給関係をバランスせしめる努力をこれから中期的、長期的にやるのが一番基本の問題だと考えるわけであります。そういう中において、場合によれば需給関係から土地値段がかなり下がるということも当然私はあり得ると思うわけであります。  そういう考えに立っておるわけでございますが、竹下総理の基本的な御見解をお伺いしたいわけであります。
  110. 竹下登

    国務大臣竹下登君) 土地問題に二面性がある。私も、いわゆる現在の地価高騰等に象徴されるような地価問題、そうしてもう一つは、いわゆる土地国民の共有の暮らしと生産の基盤としていかに利用するか、こういう二面性があると私も思っております。  しかしながら、基本的には、憲法二十九条に示されておりますごとく、我が国の基本は、「財産権は、これを侵してはならない」、旧憲法で申しますならば、財産権は神聖にして侵すべからずでございましたか、そういう考え方があるわけでありますが、土地については、第二項で定められておりますいわゆる公共性の問題、こういうものがございますだけに、完全な、現象を見て、その現象もすべて需給のメカニズムだけに頼ることはできないというのが土地の持つ特性ではなかろうかというふうに思います。したがって、中長期的に見ますならば、需給がバランスする形の一極集中から多極分散へと、こういういわば誘導政策というものが基本にあるべきものではなかろうか、このように私は考えます。
  111. 永田良雄

    ○永田良雄君 次に、土地問題が大変大事だから、土地に対する公的規制をもっともっと強化すべきではないかという議論が盛んに行われておるわけであります。  国土庁長官にお伺いしたいわけでありますが、これについてどのように考えておられるか。それから公的規制を強化するとすればどういう方向が考えられるのか、あるいは検討しておられるのか、これについてお伺いしたいと思います。
  112. 奥野誠亮

    国務大臣奥野誠亮君) 公的な規制を通じて土地がなるべく早い時間で有効に公共の用に供されるようにしていく。  例えて言えば、区画整理の方式によって環境を改善する、あるいは再開発方式で道路も広げる、緑地もつくっていく。なかなかこれが、三分の二の賛成があればできることになっているんですけれども、全員賛成でなければ実際動かないという状態になっている。これはやっぱり法の定めるとおりに動いていくようにしなければならないんじゃないか、場合によっては事業の着手と紛争の処理と切り離せるような方法も考えられるじゃないかということもあるわけでございまして、そういう意味合いにおいて私はぜひ着実に仕事が進んでいくような法改正が必要じゃないか。同時に、これを支える土地倫理というものを国民の理解に植えつけていくことじゃないだろうか。やっぱり国民皆様方がそれに理解を示して支えてくださいませんと、幾ら法律をつくってもなかなか簡単に実行されないと思います。  この二面の措置が今大変大事なことじゃないかなと、こう思っております。
  113. 永田良雄

    ○永田良雄君 多少国土庁長官の見解とは違う面もあるわけでありますが、私は現行制度でかなり精緻な土地に対する公的規制は整っておると思うわけであります。一番強烈なやつは土地収用法の問題であります、強権的に個人の持っている土地を公共のために収用できる権限を持っているわけでありますから。その他都市計画とか区画整理とかいろいろ法制は完備しておりますが、御承知のように、国土庁長官もおっしゃったように、現実にはなかなかうまく進まないという状況であります。私も地方庁へ出て現実に土地を買収するという経験は多々あったわけでありますが、一般論として、土地は公共の制約に服さなきゃいかぬ、個人のものではない、こういう理論は一般論として皆さんなるほどそうであると、こうおっしゃるわけでありますが、事自分の土地になって、かつその自分の土地が公的規制に服さなきゃならぬといったときはなかなかうまくいかないわけであります。これは、私は身をもって体験したわけであります。  現実に、例えば東京の外郭環状がいまだにできなくて東京の交通渋滞の原因になっていることとか、あるいは成田空港がなかなかうまく進まなかったこととか、そういったことは枚挙にいとまがないわけであります。私は、これは制度あるいは法律の問題ではなくて国民の意識の問題だと思うわけであります用意識の問題というのは、終戦後四十数年間こういう状況でまいったわけで、その間に培われた国民意識でありますから、すぐ変わるということはなかなか考えられません。やはり、長い時間をかけて国民一人一人がそういう公的なものも大事にするという意識を培っていく必要があると思うわけであります。  私がこれを申し上げたかったのは、新たな公的規制をすぐやるというのは余り得策ではない、こういうことを申し上げたかったわけであります。  次の質問に移りますが、国土庁の事務当局にお伺いするんですが、国土利用計画法に基づいて規制区域指定するかどうかについての問題点を関係都道府県と協議しておられるというふうに聞いております。今すぐ規制区域指定しろ、そして地価を凍結して対処すべきであるという議論がいろいろなされているわけでありますが、これとの絡みでお伺いしたいと思いますので、どういうことを検討しておられるのか。それからもう一つ規制区域指定するには現在の法律が不備であるのかどうか、法律を改正しなきゃできないものなのかどうかという点についてお伺いしたいから聞くわけでありますので、その点を踏まえてお答えをいただきたいと思います。
  114. 片桐久雄

    政府委員片桐久雄君) 現在の東京を中心とする地価高騰に対しましては、監視区域制度を現在運用強化いたしまして対処しているわけでございますけれども、これによってなお地価の急激な上昇がとまらないというような場合には、遅滞なく規制地域指定を行い得るように所要の準備を進めている次第でございます。  先生御指摘のように、私どもと関係都道府県の職員とでいろいろ具体的な検討を進めているわけでございますけれども、その検討の中身といたしましては、規制区域の、実施するとした場合のその線引きの考え方をどうするか、それからまた、規制区域を実施して許可制になるわけでございますけれども、これが不許可になった場合には都道府県に対する買い取り請求というものが出てくるわけですけれども、その買い取り請求に対してどう対処するか、そういうような具体的な問題についていろいろ検討を進めているわけでございます。  それから先生御指摘の、規制区域指定をする場合の要件の問題でございますけれども、現在規制区域指定の要件は、地価の上昇が著しい、またはそのおそれがある、かつ投機的な土地取引が相当範囲にわたって集中しているか、またはそのおそれのある地域、こういう考え方になっているわけでございますけれども、私どもといたしましては、この規定の仕方はかなり弾力的に判断ができる、そういう規定になっているというふうに判断いたしておりまして、必要がある場合には弾力的に機動的に発動ができるものであるというふうに判断いたしております。  したがいまして、この規制区域指定の要件を緩和すべきである、こういう議論があるわけでございますけれども、私どもといたしましては、この指定区域の発動要件については、国民の権利義務に関する非常に重大な問題でございますので、慎重に判断すべきものであるというふうに考えております。
  115. 永田良雄

    ○永田良雄君 私も同感であります。今の国土利用計画法の規定で十分規制区域指定はできると思うわけでございます。ただ、なぜしないかというのは、規制区域指定した場合に起きる経済的混乱が極めて大きいからであります。規制区域指定しなくても監視区域指定によってかなり東京地価は鎮静化してきております。したがって、規制区域指定するための準備、検討はいろいろ行わるべきでありましょうが、直ちに規制区域指定するということは厳に慎まなきゃいかぬだろう、かように思うものでございます。したがってそういう質問をしたわけであります。  次に、金融上の問題についてお伺いいたします。  先ほどからも御議論がありましたが、東京都の商業地の地価高騰は、私もその立場におりましたので覚えておりますが、五十八年ごろからだったと思います。ただそのときは、五十八年、九年は専ら東京の港、中央それから千代田、この三区に大体限られておりました。しかも、それは一等商業地でありますから、商業地の地価高騰は直ちにそれが国民生活に大きな影響を与えるものではないというふうに理解をしておったわけであります。ところがそれが徐々に徐々に住宅地、高級住宅地、さらにはその周辺地域へ移っていったわけであります。  国土庁にお伺いしたいんですが、住宅地へ地価高騰が移っていった時期と、それからそれ以外の近郊住宅地に移っていった時期はいつごろと見てよろしいんでしょうか、教えていただきたいわけであります。
  116. 片桐久雄

    政府委員片桐久雄君) 委員指摘のように、東京都心の商業地が値上がりを始めましたのは五十八年ごろでございましたけれども、これがまず東京の中心部の住宅地ないし区部の南西部の高級住宅地、これに最初に波及したわけでございますけれども、これが六十年から六十一年ごろに波及し始めたというふうに考えております。それからまたさらに東京の郊外の周辺部に波及したのは、六十二年の初めごろから波及したのではないかというふうに認識いたしております。
  117. 永田良雄

    ○永田良雄君 今御答弁がございましたように、近郊地帯に、住宅地に波及したのは六十年から六十一年にかけてということでございます。そうしますと住宅地に波及してから一年少々であります。私もその衝にあったときにいろいろ心配はしながらお願いもしたわけであります。大蔵省さんにも金融の規制をひとつやっていただけないかというお願いはいたしました。そのときは大蔵省も通達を出していただいたと思っております。二回か三回出していただいたと思っておるわけでございます。しかし余り効き目はなかったというのが実態だろうと思うわけでございます。ことしになって特別ヒアリングという強烈な指導をやっていただいたおかげで、金融面からの土地への規制が強烈に加わって、都心地域地価の鎮静化につながった、これは大成功だと思っているわけであります。ただし、多少時間がかかったなというふうに思うわけでございますが、いずれにせよ、規制を強化していただいて都心地価が鎮静化の傾向を見せ始めたのはまことに結構なことだと思っているわけであります。  問題は、このような特別ヒアリングをやっていただけば効果は出てくるということが実証されたわけであります問題は、それをやるタイミングを将来どのように間髪を入れずやるかということと、それから、今回は東京周辺の問題でありますが、これがほかの地域、あるいは別の時期に出てきたときに、さあ金融の締めの出動だという判断をするかということになるわけで、その問題をどうするかだろうと思うわけであります。一つは、これはやっぱり国土庁土地に対してどのような判断をするかということにかかっておるわけでありますが、それと同時に、大蔵省が協力していただいて一致してそういう指導的な対処の方法をとっていただくことが一番大事だと思うわけでありますが、大蔵大臣いかがでございましょうか、その問題について。
  118. 宮澤喜一

    国務大臣(宮澤喜一君) 御指摘のとおりと思います。
  119. 永田良雄

    ○永田良雄君 国土庁長官にそのタイミングを間違わないように的確にやっていただきたいということをお願いしておきたいと思います。  それでは次の問題に移りたいと思いますが、その次は借地借家法の改正の問題であります。  法務省にお伺いするわけでありますが、現在法制審議会で借地借家法の改正問題が議論されておると聞いておるわけでございますが、どういう観点から審議が行われているのか、めどとしていつごろに成案を得るという目途でなされているのか、お伺いしたいわけであります。
  120. 藤井正雄

    政府委員(藤井正雄君) 借地法、借家法は貸し主と借り主との権利関係、私権の関係を決めたものでございますので、これの私権の公平な調整を図るにはどのようにしたらよろしいか、そういう観点から昭和六十年六月以来検討を始めております。  かねてより各方面からいろいろな問題が提出されておりましたので、問題点を取りまとめまして同年十一月に各方面にこれを提示いたしまして、御意見をちょうだいし、昭和六十一年後半から法制審議会民法部会の財産法小委員会で御審議をいただいております。六十三年中には、六十三年の終わりぐらいにはできれば試案を作成し、それをさらに各方面に御提示して御意見を賜り、答申をいただくという運びに持ってまいりたいと思いますが、それはその時点よりさらに二年ぐらいはかかるのじゃなかろうかという見通してございます。
  121. 永田良雄

    ○永田良雄君 私が借地借家法に言及いたしましたのは、借地借家法は御承知のとおり大正十年に制定され、昭和十六年に改正されてその後今日に至っている法律であります。もちろんそのときの状況社会情勢と現在とはまるっきり違っておると思うわけであります。  当時の土地の所有の状況は、少数の地主が多くの土地を持っておりまして、多くの庶民が土地を持たないで土地を借りあるいは家を借りて生活をしておったという状況であります。現在はどうかと申しますと、土地の所有は非常に広がっております。的確な資料はないわけでありますが、国土庁の資料で一つありますのは、東京都二十三区の土地を持っておる人の世帯数が三〇%近くであります。それから全国で見ますと全世帯数の六割五分ぐらいの人が宅地を、農地ではありません、宅地を持っておるという状況であります。東京に関して言うならば、その所有状況は非常に零細であります。持っている人の四十数%、五〇%近くが百平米未満という土地所有であります。東京が非常に容積率が都市計画法に定めた規定より下であるというのはここに私は一つ原因があると思うからであります。  現在、地主と借地人あるいは借家人と建物の所有者との関係は在来と逆であります。昭和初年代では借りておる方が弱いわけであります。持っている方が強いから弱い方を保護しなきゃいかぬという趣旨でかなり強烈に保護的な性格の立法になっておったのは否めないわけでありますが、現在はむしろ借りている方が逆に言えば強くて貸している方が弱いという状況もあるわけであります。それがいわゆる土地を有効に利用するということを物すごく妨げていることは間違いありません。土地の利用ではなくて保有だけになるわけであります。一たん人に利用させたら後はもうだめよ、もう返ってきませんと、こういう状況でありますからだれも貸す人はありません。したがって、土地を持っている人は利用しないで保有だけということになるわけであります。したがって、この借地借家法の基本構造に私はメスを入れなければ東京土地問題はなかなかうまく進まない、かように思うわけであります。  本委員会で私の同僚の田辺さんがその一つの解決方法として、借地人が地主から底地を買い取るときに、限時的に買い取るときの譲渡所得税を安くしろ、そうすれば土地所有が借地の関係がなくなっていって進展するよという大変示唆に富む提案をしていただいたわけであります。私はそれとともに、居住用のための借地等については別の考え方があるかもしれませんし、その他在来から続いておる借地あるいは借家の関係については在来どおりの法律制度をそのまま適用していいわけでありますが、これから新しく借地にするあるいは借家に出すという場合、特にいわゆる住居用以外についてはやはり基本的には契約で自由に決めるという方向に改正をする必要があるのではなかろうかというふうに思うわけであります。現実に土地を貸したり借りたりしているのは大企業同士はやっておるわけであります。あるいは貸し主農民と、すかいらーくとか外食産業みたいなやつは土地を貸すというような話もできているわけでございます。あとの関係についてトラブルがないという保証があれば、借地はあるいは借家はスムーズに出てくるわけであります。  したがって、これは非常に緊急の話でありますから、本当は借地借家法というのは民法の特別法でありまして、もともと民法というのは国民の大法典でありますから、そう軽々しく改正などということを私どもが言うとおしかりを受けるわけでありますが、臨時緊急の措置として、この宅地あるいは土地が緊急に払底しているところにおいては、特に住居用以外のものについては特別にそういう自由な原則で貸し借りができるような方法を考えるべきではないかと思うわけでありますが、法務省当局、法務大臣の御見解を承りたいわけであります。
  122. 林田悠紀夫

    国務大臣林田悠紀夫君) 現在の借地借家の問題は、土地の価格が異常に高騰いたしまして、それが地代、家賃との間で均衡を失しておるというのが根本問題でございます。  それに対処いたしまして、法務省としては現在その改正を鋭意検討しておるわけでありまして、この借地借家法はもともと弱者保護という一面があり、あるいはまた権利を保護していくという面もあります。したがって、そのためには相当長期的に考えていかなければならぬということでありまして、いろいろな面からこれは検討をしなければなりませんので、現在鋭意検討しておりまするが、なお時間を要しまするので、緊急にこれによって地価の対策をとるということにはちょっとなじまないものでございます。
  123. 永田良雄

    ○永田良雄君 私は、民法の原則は特別法としての借地借家法は長期的な観点からやる必要があるということはよくわかるわけでありますが、臨時緊急に大都市に限って、しかも特定の種類の土地あるいは建物に限ってそういう臨時緊急の措置をやっていいんじゃないかなということを申し上げたわけでありまして、そういう点について国土庁長官のお考えを承りたいと思います。
  124. 奥野誠亮

    国務大臣奥野誠亮君) 御熱心な意見、私も同感のところもいろいろございます。法務省に対しましては早急に解決をしてほしいとお願いをしておるわけでございますけれども、法制審議会の問題もございましたりして、私たちが考えるようには早急にはなかなか困難なようでございます。
  125. 永田良雄

    ○永田良雄君 時間もなくなりまして、二つだけお伺いし、お願いしたいと思います。  総理が、ふるさと創生、こうおっしゃいまして、一極集中をぜひ排除して日本国土を均等に開発、発展させなきゃいかぬというふうにおっしゃっておりますし、今度できました第四次全国総合開発計画も多極分散ということを命題にして国土開発を進めていくべきだという方針を出しております。その中で、特に国が行うべき、責任を持つべき大プロジェクトとして、高速交通体系を整備するということが一番重要なポイントになっておるわけでございます。高規格の高速道路と新幹線であります。高速道路につきましてはこの間七千六百キロから一万四千キロに延長して整備するという方針が決まりまして、この計画に従って着実に進めていただくことを私どもは期待するわけでありますが、新幹線につきましては残念ながらまだ方向が出なくて、私ども地元民としては大変困っておるわけでございます。  私どもも自民党の公約として、昨年の同時選挙で新幹線の整備ということを声を大にして言ったわけでありまして、一日千秋の思いで待っておるわけでございます。もちろん難しい問題はいろいろあろうかと思うわけでありますが、この際ひとつ勇断を振るって竹下総理に整備新幹線の着工についていいお答えをお伺いしたいわけでありますので、よろしくお願いいたします。
  126. 竹下登

    国務大臣竹下登君) 新幹線の問題につきましては、今御説のように強い要請があるということは十分わきまえております。ただ、御案内のように、一昨年八月でございましたか、いわゆる財源問題等検討委員会というものができて、そこで種々議論がなされておるというのが現状の姿でございますので、今御指摘のあった強い要請ということは随分私なりにも踏まえておるつもりであります。  それからこの機会に、まことに失礼でございますが、先ほど古賀さんの質問に対して、財産権の問題に触れ、旧憲法の条項に触れて御答弁いたしましたが、正確には旧憲法第二十七条第一項で、「日本国民ハ其ノ所有権ヲ侵サル、コトナシ」という規定があるということで、正確を期するためにちょっと今申し上げておきます。申しわけありません。
  127. 永田良雄

    ○永田良雄君 終わります。どうもありがとうございました。
  128. 河本嘉久蔵

    委員長河本嘉久蔵君) 次に、馬場君の質疑に入ります。馬場君。
  129. 馬場富

    ○馬場富君 総理はさきの所信表明で、内政の最大の問題は土地問題であると言われましたし、そのために奥野土地対策担当大臣を設けられまして、総理が中心となった土地対策会議も設置されました。政府としての取り組みの決意を示されたことは大変敬意を表する次第でありますが、ところで土地対策に対してもやはりこの臨時特別委員会が設置されて、今日のように審議が深くなったことは、大変私は喜びだと思っております。  今までの審議の過程をずっと見ておりまして、国会の意見を聞いて考えるという態度で実はおられるように見受けられるわけですけれども、政府が目的を持って土地問題を積極的に論議するという点では一抹の寂しさを感ずるわけです。土地高騰の問題等は、緊急にして即効性を必要とするものが多いわけでありますので、やはり国民の期待にこたえるためにも、たとえ法案はなくとも積極的に取り組むという姿勢が私は必要だ、こういうふうに思いますし、また政府側の答弁の中にもそういうものがぜひ必要だと、こう考えますが、総理と担当大臣である奥野長官の御意見をお伺いしたいと思います。
  130. 竹下登

    国務大臣竹下登君) 今御指摘いただきましたとおり、新内閣ができましたその組閣の際、奥野国務大臣にこの土地問題の担当を特にお願いし、また奥野大臣の助言も得て、私が座長となってこれに取り組むということでもって、いわゆる重要意識をしておることを形の上でお示し申し上げて今日に至っております。たまたま本委員会ができたということは、私は所信表明でも申し上げましたように、いわゆる私権を伴う問題であるだけにいろいろ困難がある、それにはやはり環境というものの熟していくことが大変大切である、その意味において委員会が設置されたということに対して評価し、またこれの提言に対し心から期待しておる旨を所信でも申し上げたわけであります。  しかし、今馬場さんおっしゃったように、いわばもう少し、それはそれの姿勢ならばなお自分らの問いに対して答えが、問答がもっと迫力あるものであってほしいということが一抹の寂しさという表現になっておるではなかろうかという実感を持って拝聴をいたしました。精いっぱいお答えすることにより、そしてまたその建言を吸い上げるようにすることによって国民の負託にこたえたい、このように考えております。
  131. 奥野誠亮

    国務大臣奥野誠亮君) 御指摘いただいたとおりに思います。国会での取り組み、政府での取り組み、それが関係者に対しまする非常な激励になっていると思います。同時に、国民も深く理解をしていただいて、少なくとも土地転がし、またそれに協力をする者、それは国民の敵だという気持ちが私はだんだん深まってきているんじゃないかなと思います。全体的な力でこの問題の解決に当たっていくべきだと思っております。
  132. 馬場富

    ○馬場富君 先般の本会議の答弁の中でも総理はしばしば、今回の土地高騰は同じ一つ日本の国で二つの国があるような感じがすると実感を述べられておりますが、全く私も同感であります。だから、今回の土地対策は、その狂乱する東京を中心とした東京圏と、比較的安定的な土地状況の地方の問題とは分けて私は考えるべきだと思います。そういう点で、土地高騰の対策はやはり東京問題であるとして、そのことは私は緊急に対処せねばならない問題であると、こういうふうに思っておりますし、やはり今回の東京土地問題を教訓といたしまして、我が国の土地対策のもろさを実は反省しなきゃいかぬと思うんです。  そういう点で、今後の日本国土全体を住みよい国土にするための二十一世紀を見渡す基本的な恒久的な私は対策を考えるべきであると思いますが、その点総理長官にお願いいたします。
  133. 竹下登

    国務大臣竹下登君) 私が所信表明あるいは質疑でお答え申し上げておりますのは、変動率を見ますと五七・五%が東京圏、それから三大都市圏を除く地方では前年に引き続き一・三%という低い変動率、したがってまさに日本列島の中に体制の違う二つの国があるような錯覚すら起こすと、こういう表現を申し上げたわけでございます。  確かに御指摘のように、言ってみれば、当面東京あるいは三大都市圏中心に地価高騰をもたらし、そしてそれが地方へ波及していきつつあるとはいえ、全く波及とはほど遠い地域というものも面積的には相当なものでございますだけに、その考え方は頭の中で絶えず整理して対応しなきゃならぬ課題であるというふうな問題意識はおよそ等しくいたしております。
  134. 奥野誠亮

    国務大臣奥野誠亮君) 御指摘いただいておりますように、国土の均衡ある発展を図るということは法律にも明記されておりますし、全国総合開発計画、常にその立場に立って立案されておるわけであります。ところが、今指摘されておりますように、東京一極集中というような事態を招いているわけでございます。それじゃこの四全総をどういうような手法で担保していくか、絵にかいたもちにしないようにするかということで私たちいろいろと努力を重ね、知恵を絞っているところでございます。ぜひ何か工夫をしなければならないなど考えているところであります。
  135. 馬場富

    ○馬場富君 そこで、この最近の土地高騰要因は一つ東京問題としてとらえています。そしてその結果としては、やはり東京中心のオフィス用地の需要の高まりに対して用地供給の迅速かつ適切な対応ができなかったことが問題点の一つだと思います。それからもう一つは、中心部である商業地の地価が上昇したために、容易にやはり住宅地へのこれが波及効果になってあらわれていったというのが二点だと思うんです。三点目は、この土地を利用目的としないようないわゆる悪質な土地投機が頻繁に行われて、そしてこの地価を押し上げていった。私はこの三点がこの問題点の大きい要素だと思いますが、奥野大臣はどのようにお考えですか。
  136. 奥野誠亮

    国務大臣奥野誠亮君) お挙げになりました三点、それぞれ重要な要因になっていると思います。
  137. 馬場富

    ○馬場富君 ここで私は具体的な例を明示しながら東京土地高騰の問題について質問していきたいと思うんです。  特に今回は投機的な土地効果が地価を押し上げたという点についての実例の中で申し上げてみますと、現在、国土計画法第二十三条第一項の違反の疑いで告発されております最上グループに対しての西新宿開発については、国土庁はどのように理解されてみえますか。
  138. 奥野誠亮

    国務大臣奥野誠亮君) その事案につきましては、脱法的な行為によって届け出の義務を免れようとしたわけでございますので、東京都が告発の処置をとったと承知しております。
  139. 馬場富

    ○馬場富君 次に、建設大臣にお尋ねいたしますが、こういう行為をする業者は不動産業者として適格であるかどうか、どのように判断してみえますか。
  140. 越智伊平

    国務大臣(越智伊平君) 宅地建物取引業の免許を受けておる者に対しては十分指導をしてまいりたいと、かように思います。ただ、無免許でやっておる者、これについては私の方の取り締まりで非常に難しいわけであります。宅地建物取引企業につきましては、さらにこれを強化していこうということで今検討をしておるような次第であります。
  141. 馬場富

    ○馬場富君 次に警察にお尋ねをいたします。  警察庁においては告発によってこの問題については捜査されておると聞きますが、その概要と経過について御説明願いたい。あわせて、このような地上げに絡む事件が多発していると言いますが、問題になった件数と検挙状況を御説明願いたいと思います。
  142. 漆間英治

    政府委員(漆間英治君) まず、最上恒産に関する東京都からの告発の処理でございますが、現在東京都から警視庁が告発を受けまして捜査中でございます。  告発の概要は、国土利用計画法上、市街化区域内の土地を二千平米以上売買する際には事前に都知事への届け出を要するにもかかわらず、最上恒産株式会社が昭和五十八年七月ごろから新宿区西新宿六丁目の市街化区域内の土地を購入し他へ転売した際に、この規定に違反をしまして所定の届け出をしなかったというものでございます。これを受けまして、警視庁におきまして国土利用計画法違反の疑いで最上恒産株式会社等の捜索などを行いまして、事実関係を明らかにするため所要の捜査を進めている段階でございます。
  143. 仁平圀雄

    政府委員(仁平圀雄君) 全国の警察におきまして受理いたしました地上げに絡む相談件数は、昨年は百六件で、ことしは九月末現在で既に昨年の三倍近い三百九件に達しております。  また、地上げに絡む不法事案の検挙件数でございますが、昨年は八件でございましたが、ことしは九月末現在で昨年の三倍を超える二十七件となっております。
  144. 馬場富

    ○馬場富君 ここで、この取引に関しまして、このグループの問題になった土地に対して第一相銀が多額の融資を行い、融資のあり方についても問題があることがマスコミ等の報道並びに私どもの調査でもはっきりしておりまして、大きな疑問を持っておるわけでございますが、監督官庁の大蔵省においてはこれをどのように掌握してみえますか。
  145. 平澤貞昭

    政府委員(平澤貞昭君) 金融機関の公共性にかんがみまして、今委員が言っておられますようないわゆる土地転がしなどを助長するような融資を行うことは厳に慎むべきものと考えているわけでございます。したがいまして、大蔵省といたしましては、本委員会にもたびたび御答弁がございましたように、通達を何度か発出いたしますとともに、特別ヒアリングを実施する、あるいは検査の活用等によりまして、個別の取引まで踏み込んでこのような投機的な土地取引がないように厳しく指導をしているところでございます。  したがいまして、仮にそのような事案があれば、まずその是正を強く求めていきたいと考えておりますとともに、今後そのようなことが起こらないように、そのための防止措置もあわせて厳しく指導して確立させるという方向で臨んでいるところでございます。
  146. 馬場富

    ○馬場富君 私も調査していろいろと資料も持っておりますが、詳細については、やはり一企業の問題でございますから詳細にはできませんが、概略に申しましてどのような点に問題があったのか、その程度はひとつ御説明願いたいと思います。
  147. 平澤貞昭

    政府委員(平澤貞昭君) 具体的に申し上げますと、例えば具体的な土地の利用計画、これを十分に確認しないで金融機関が融資を行うという事案がございます。それから、融資を行いました後でその土地を十分に利用されないまま長らく放置されている、しかも融資を続けているという問題もあるわけでございまして、このような場合にはできるだけ回収させる、あるいは融資の借りかえを認めないようにするという指導を行っているわけでございます。
  148. 馬場富

    ○馬場富君 そういうわけで、詳細については私は担当当局の大蔵省も難しいと思います。じゃ、大蔵省が一応こういう相互銀行や一般銀行については検査が行われておるというわけでありますが、それについてはどのように行われておりますか。
  149. 平澤貞昭

    政府委員(平澤貞昭君) 金融機関に対する検査は、通例二ないし三年に一回行われているわけでございますが、このような土地投機が問題になりましてから、金融機関の検査のたびに特に土地融資につきましては厳しく検査をしておりまして、問題がある融資があれば、先ほど申し上げましたように、是正を求める等の厳しい措置をとっているわけでございます。
  150. 馬場富

    ○馬場富君 そこで、検査した場合には必ずそれに基づいて検査官がやはり大蔵大臣に報告する義務があると思います。そしてまた、その報告に対してはやはり講評というものがなされることになっておりますが、その点はどうだったでしょうか。
  151. 平澤貞昭

    政府委員(平澤貞昭君) 通例、検査が終わりますと示達書というものを相手金融機関に示しまして改善を求める、あるいは改善事項について報告を求めるよう指示しているところでございます。  今委員がおっしゃいました講評とい、いますのは、検査が終わりました段階で、主任検査官等が検査した結果の内容等につきまして金融機関の経営者に対していろいろの角度から感想を述べるというのを通例講評と言っているわけでございます。
  152. 馬場富

    ○馬場富君 この件についての講評と示達があったかどうか、御説明願いたい。
  153. 平澤貞昭

    政府委員(平澤貞昭君) 第一相互銀行につきましても、検査を行いました後、示達と講評をそれぞれ行っております。
  154. 馬場富

    ○馬場富君 講評事項、示達事項については説明できれば問題点を説明していただきたいが、それが無理ならば、銀行には必ずそれに対する回答の義務があると思うので、これがあったかどうか、両面、御説明願いたい。
  155. 平澤貞昭

    政府委員(平澤貞昭君) 通例の場合、示達いたしますとその中で改善すべき事項を指摘しておりますので、それにつきましてまず金融機関の方から改善の計画を出してくるわけでございます。続きまして、その後それに従って十分措置がとられているかどうかという点につきましてたびたびヒアリングを行っているということでございます。
  156. 馬場富

    ○馬場富君 回答があったかどうかという問題をはっきりお願いしたいと思います。銀行当局からその示達に対しての回答があったかどうか。
  157. 平澤貞昭

    政府委員(平澤貞昭君) 通例ですと、示達がありましたら適当な間隔を置いて回答がございますので)本事案につきましても回答が当然あったと考えられるわけでございます。
  158. 馬場富

    ○馬場富君 その点はわかりましたが、示達事項に対して回答があったということは問題点があったと私は理解いたしますが、そうでしょうか。
  159. 平澤貞昭

    政府委員(平澤貞昭君) 示達事項は極めて多岐にわたっておりまして、例えば融資体制等も示達事項に入っているわけでございます。したがいまして、示達したから必ず大きな問題があるというわけではないのでございまして、通例、示達があればいずれの場合も回答は受けているということでございます。
  160. 馬場富

    ○馬場富君 次に、西新宿の地上げ問題に対しましては、農業協同組合系の協同住宅ローングループがやはり関係があったと言われておりますが、この協同住宅ローン株式会社あるいは同系の協住不動産サービス及び協同ホームの相互関係について説明していただきたいと思います。    〔委員長退席、理事下条進一郎君着席〕
  161. 青木敏也

    説明員(青木敏也君) お答え申し上げます。  協同住宅ローンは、最近におきます住宅宅地の需要の増大に対処いたしまして、系統農協が行います住宅資金貸付業務、これを全国的な視点から個別農協で対応できないようなものにつきまして補完する、そういう趣旨で系統機関、さらに農林中央金庫の出資により設立されたものでございます。  それから協住不動産サービス株式会社、この会社は、ただいま申し上げました協同住宅ローンの債権の買い取り及び回収を行うという視点から協住ローンの全額出資により設立された会社でございます。  また、協同ホームというのがございます。これは、ただいま触れました協住不動産サービス会社の前身、協同不動産サービス会社ができるまでの間、ただいま触れましたような役割を果たす趣旨から設立されたものでございますが、現在は協住不動産サービス会社がその機能を行っておりますので、協同ホームとしては事業をやっておりません。
  162. 馬場富

    ○馬場富君 この会社が設立されたのは五十四年の設立でありますが、当時はこの出資者である農林中金は国の特殊法人でもありました。また、設立に当たりましては、そういう関係でありますから、農林省と大蔵省に届け出がされておると思いますが、その点はいかがでしょうか。
  163. 青木敏也

    説明員(青木敏也君) 農林中央金庫が協同住宅ローンに出資をするに当たって農林水産省に届け出があったかということでございますが、この点は、農林中央金庫に対しましてこの種の協同会社の設立について出資関係等を私どもに届け出るように指導してまいっておりまして、届け出がなされているわけでございます。
  164. 馬場富

    ○馬場富君 先ほど来説明のように、いわゆる農林中金、あわせて農業協同組合の出資といっても、結局出資は農業協同組合法による関係の出資であるということになるわけです。だから、これは農業協同組合法に基づきまして、やはり事業内容につきましては農業協同組合の事業内容を補完するものでなければならぬということになっておりますが、この点はどうでしょうか。
  165. 青木敏也

    説明員(青木敏也君) ただいま協同住宅ローンの設立目的につきまして御答弁申し上げたわけでございます。先生御指摘のとおり、系統組織の行います住宅資金等の貸付業務を補完するという設立目的を持っているわけでございますので、協同住宅ローンの事業分野等はおのずとその設立目的から来る一定の事業展開の場なり一定のフィールドがある、こういうふうに私ども、考えているわけでございます。
  166. 馬場富

    ○馬場富君 農林省当局は、この協同住宅グループが問題の土地取引関係があったということは御承知ですか、どうですか。
  167. 青木敏也

    説明員(青木敏也君) 協同住宅ローンが御指摘土地取引にかかわりがあったのではないかといういろいろ御指摘も受けておりまして、私ども行政監督の立場から協同住宅ローンから諸般の事情について現在聴取をいたしておりますけれども、その具体的な中身等につきましては、個別企業の特定の取引の問題でございますから答弁は差し控えさせていただきたいと思っております。
  168. 馬場富

    ○馬場富君 じゃ、概括的に言いまして、この取引は融資なのか土地売買なのか、どちらですか。
  169. 青木敏也

    説明員(青木敏也君) 御質問は、協同住宅ローンの金銭の供与が融資に基づくものであるか、あるいはその担保的な手法、譲渡担保の手法として売買によるものかというお尋ねだろうと思うのでありますが、この点は、やはりそこに触れますと個別具体的な取引の問題に入ることになりますので、私どもからこの場で御答弁することは控えさせていただきたいと思います。
  170. 馬場富

    ○馬場富君 じゃ、ここで建設省にお尋ねいたしますが、協同住宅ローンは宅建法による免許がきょう現在あるかどうか、どちらでしょうか。
  171. 福本英三

    政府委員(福本英三君) 協同住宅ローン株式会社は宅地建物取引業法上の免許は持っておりません。
  172. 馬場富

    ○馬場富君 許可がなければ土地取引ということはできないと思いますし、もし今後においても土地取引をしたとしたら、そういうことについては告発ができますか。
  173. 福本英三

    政府委員(福本英三君) 私どもといたしましては、協同住宅ローン、金融会社でございますが、そういう金融会社がどういう取引をしておるかという状況については把握しておらないわけでございます。ただ、一般論で申し上げますと、一回限りの売買でありますとかあるいは債権保全の売買でありますと、これは宅建法上の免許を要する行為にはならないわけでございます。あるいはまた、法律上、業としてその宅地建物の売買を行う場合には宅地建物取引業の免許は必要でございます。
  174. 馬場富

    ○馬場富君 ここで、私は時間がございませんので国税庁にお尋ねいたしますが、土地取引に係る所得隠しというのが空前な数字で進行していると言われておりますが、東京国税局管内での状況調査説明されたいと思います。
  175. 日向隆

    政府委員(日向隆君) 都心部を中心とする地価高騰を背景にして、不動産取引業者、これは建て売り、土地売買等不動産代理仲介業でございますけれども、多額の利益を上げているという事情から、これに対して、これらの地域を管轄する東京国税局が直近の六十一事務年度において相当重点を置いた調査を実施しております。  その結果を資本金一億円未満のいわゆる税務署所管法人について申し上げますと、実地調査件数は二千四百七十六件、申告漏れ件数は二千百六十八件、ほとんどが申告漏れでございます。申告漏れ所得金額は三百九十三億円、そのうち不正所得金額は百六十九億円、脱税額は加算税を含め百八十七億円という状況になっております。これを一件当たりの申告漏れ所得金額で見ますと、一千八百万円に達しておりまして、これは前年に比べ六割増しとかなり大幅にふえているとともに、企業種平均の一件当たりの申告漏れ所得金額六百三十七万円に比べて約三倍という状況になっております。
  176. 馬場富

    ○馬場富君 今まで質問いたしましたことは個々の問題として今質問いたしましたが、今までの論議の中を通し、私たちがこの東京土地問題を実態調査した結果の中で、いろんな何点かの疑問点が出てきたわけです。やはりこの土地問題というのは大事な問題でありますので、これはしっかりとただしておかなければならぬ問題であると、そう思うわけでありますので、これから何点か、その我々の調査に基づいた問題点について関係官庁にお尋ねいたしますので、御答弁願いたいと思います。  大蔵省に最初お尋ねいたしますが、銀行が検査された内容の中に、いろんな検査の内容がありますが、そういう中で、三つの会社に対する融資を粛正せよというような、そういう現場での問題点を私は聞きましたが、これはどういう場合にそういう指示がなされますか。
  177. 平澤貞昭

    政府委員(平澤貞昭君) 通達で、一定の投機的取引に対して融資を自粛するようにと言っておりますので、そういう事案に該当する場合には委員がおっしゃるような指示をするわけでございます。
  178. 馬場富

    ○馬場富君 同じ検査で、銀行が貸し出した二十一社のうち、実質上同一債務者とみなされるものへの貸出金と、これに支払い承諾を合わせると、総与信の両方で銀行法及び基本通達に定める限度を数倍超えているものが二グループもあると言われるような問題が指摘されておりますが、これはいかなる法律で、いかなる問題がありますか。
  179. 平澤貞昭

    政府委員(平澤貞昭君) 今委員がおっしゃいました件は、いわゆる大口融資規制の問題であろうかと思います。  これにつきましては、銀行法及び銀行法を準用いたしました相互銀行法におきまして、自己資本の一定率、例えば二〇%以上を一債務者に融資してはならないというふうになっているわけでございます。その場合に、実質的に同一債務者である場合には、これにつきましてはそれを一つの債務者と考えて行政上も措置をとるようにというふうに規定がなっているわけでございますので、そのような場合には、検査等でそういう事例が仮に見つかった場合にはその是正を強く求めているところでございます。
  180. 馬場富

    ○馬場富君 もう一点は、今質問の中で、銀行法十三条、相銀法十四条の大口貸し出しとあわせまして、基本通達第二章第二項第三号の迂回融資とも考えられる向きがあるのではないかと我々は疑うわけですが、どうでしょうか。
  181. 平澤貞昭

    政府委員(平澤貞昭君) いわゆる迂回融資といいますのもいろいろな態様があろうかと思いますけれども、先ほど申し上げましたように、実質的に結局その融資したお金が一債務者に行くという場合には、先ほど申し上げたような場合と同様、検査等で発見いたしました場合にはその是正を厳しく指導しているところでございます。
  182. 馬場富

    ○馬場富君 同じくその検査の中の一つは、内容の中で、銀行が一会社に貸し付けた商業手形の割引で、相銀法十四条には触れないが、しかし別会社振り出しの手形がほとんどで、金融手形か融通手形とみなされ、融資の形態であると指摘しているが、これはどういう疑いがあるのか。
  183. 平澤貞昭

    政府委員(平澤貞昭君) 今委員の御質問は、大口融資規制を行う場合に割引手形の扱いをどうするかという問題だろうと考えられますが、割引手形にはいろいろの種類がございまして、いわゆる商業手形というものはその手形の裏に実質的な取引がございます。したがいまして、これは非常に信用力もあるということで、大口融資規制の場合にはその部分を融資金額から控除することを認めているわけでございます。
  184. 馬場富

    ○馬場富君 これに対しても、先ほど申し上げました迂回融資の通達に対するやはり問題点はあるんじゃないですか。
  185. 平澤貞昭

    政府委員(平澤貞昭君) 今委員指摘の点は、いわゆる割引手形の中に融通手形的なものがあるわけでございまして、こういうものはその割引手形の中に入れるのは適当でないというふうになっているわけでございます。
  186. 馬場富

    ○馬場富君 私はこの一部の調査の中の一問題点をとらえたわけですが、まだたくさんいろんなものがありますが、この調査の中でも、これらの土地取引の中で、一つの取引の差益が数十億円もあったり、あるいはその処理に非常に問題が多い。またその中には、十数億円に及ぶ金額においてはB勘処理をされたりという疑いも出ておりますし、また個人的取引の相手方から借りた金が会社の経費で落とされておるとかという疑わしい問題が実に多くあるわけです。こういうことに対しては、これはまさに土地転がしに絡む暴利の悪質な所得隠しである、私はそのように実は考えておるわけですけれども、この乱脈ぶりについては、資料があれば国税当局は調査されますか。
  187. 日向隆

    政府委員(日向隆君) 個別の企業や個人について調査するかどうかについて直接お答えすることは差し控えさしていただきたいと思いますが、私ども国税当局といたしましては、常日ごろから課税上有効な資料、情報の収集に努めまして、これと申告書とを突き合わせまして、課税上問題がある場合には実地調査を行いまして適正に処理するつもりでおります。
  188. 馬場富

    ○馬場富君 このような脱税行為に対して、もし国税庁の告発があれば警察当局もこれはやはり問題にされますか。    〔理事下条進一郎君退席、委員長着席〕
  189. 岡村泰孝

    政府委員(岡村泰孝君) 検察といたしましては、これまでも不動産取引をめぐります悪質な脱税事犯につきましては国税当局の告発を受けまして厳正な処理をいたしているところでございます。今後とも、この種事犯につきましては国税当局とも緊密な連絡をとりつつ迅速、的確に厳正な方針をもって対処するものと理解いたしております。
  190. 馬場富

    ○馬場富君 私たちのこのような幾つかの調査を要する事実関係が実はたくさんあるわけでありますので、警察当局としてもこれについて承知してみえるかどうか、お尋ねいたします。
  191. 仁平圀雄

    政府委員(仁平圀雄君) 地上げに絡む問題につきましては警察としても十分関心を持って情報収集に努めているところでございまして、もし刑罰法令に触れるような事実があれば厳正に対処していく方針でございます。
  192. 馬場富

    ○馬場富君 私は、実際あった問題について、私たちが資料を持っておる問題について今論議いたしましたが、現場ではこのような実態が実はたくさんあるわけですし、今私が申し上げたものは氷山の一角であります。だから、東京圏土地投機にこういうような問題が一つは大きくあることを関係当局も考えられまして、やはり東京日本の首都でございますし、総理の言葉をかりれば、東京都民のふるさとでもあります。また、我々日本国民の中心地でもありますが、こういうところでこのような問題が起こっておることは私たちはまことに遺憾にたえないと思うわけです。  だから、この点につきまして、土地の担当大臣である奥野担当大臣、あわせまして農業関係の担当である農水大臣、そして竹下総理にも、この問題についてどのような決意で向かわれるか、その決意のほどをお示し願いたいと思います。
  193. 奥野誠亮

    国務大臣奥野誠亮君) 不正な事案を防止いたしますために、不動産登記も時には見せていただきながら、事態の深刻なものにつきましては適宜所要の告発等の手続は進めていかなければならない、そういう決意で臨んでいきたいと思います。
  194. 佐藤隆

    国務大臣(佐藤隆君) 投機的な土地融資、このことについて系統金融機関に対していろいろ報道をされておる、また特にこの国会でこのように取り上げられておるということについては、中身は先ほど来議論がありますように、なかなか言いにくい部分でございますが、どうであったにしても、このような議論が展開をされるということは甚だ遺憾に存じております。行政指導の徹底に努めたいと思います。
  195. 竹下登

    国務大臣竹下登君) 今二人の国務大臣からそれぞれお答えがありましたが、私どもも、法令に従い厳正に対応すべき問題である、このように考えます。
  196. 馬場富

    ○馬場富君 ここで、もう一つ東京地価高騰の大きい要因は供給のやはり不足だという点にあると思いますが、この点について奥野大臣はどのようにお考えになっておるか、一遍お聞かせ願いたいと思います。
  197. 奥野誠亮

    国務大臣奥野誠亮君) 急速な需要の増大に対処できたかどうかとなりますと、やはり供給についてさらに積極的な努力で対応し切れなかった点は指摘されざるを得ない、こう思っております。そういう意味におきまして、現在でも供給増加につきましていろいろな手法で一生懸命それぞれが努力していただいているわけでございますけれども、これからもそれぞれの努力を強く求めていきたい、こう思っているわけでございます。  できますならば、さらに関係方面の御理解を得て、譲渡所得課税の特例を開いて誘導措置がとれればいいがな、こんなことも相談をしている最中でございます。
  198. 馬場富

    ○馬場富君 その中にもう一点は、都市計画の見直しや容積率の拡大あるいは土地の譲渡所得税の大幅軽減によっての東京での供給対策をやるとおっしゃっていますけれども、その点はどうでしょうか。
  199. 奥野誠亮

    国務大臣奥野誠亮君) 御指摘の点につきましても、それぞれの当局で見直しを進めてくれているわけでございまして、東京都におきましても鋭意努力を続けていただいているところでございます。
  200. 馬場富

    ○馬場富君 私は奥野長官の当座の供給対策については理解しますけれども、何せ結局これほど高騰した土地です。先ほどもある方が質問されましたが、我々がこの前土地委員会で視察に行っても、もう地価高騰して、そこに建てた住宅については、到底今の勤労生活者では生活ができない、入れないというような状況下にあるわけです。  だから私は、その問題をそのままで考えていきますと、問題はやはり東京のこの過密な、集中的な問題を排除する考え方で臨まなければ、幾ら都内の再開発を考えてみても、先ほどもお話があった十八万円も二十万円もする家賃の住宅が建ったとしても果たして入れるかどうか。こういう点で、よしんば東京であいておる土地を再開発してつくっていくという考え方は理解はできますけれども、また再びそのために東京集中が加速化されてきて、今鎮静化しておるものがまた加速されてくる、こういう懸念すら実はあるわけです。そういう点で、やはり開発やそういう問題については、東京都の環境というものがこれは許さなければ私は失敗に終わると思うんですが、長官はどうでしょうか。
  201. 奥野誠亮

    国務大臣奥野誠亮君) 私も同様に考えております。これまで国の施設をつくるということになりますと、その立地を東京に求めましてもだれも疑問を挟まなかったと思います。やはりこれから国土全体をにらんで、国の施設でありましてもそれぞれの地域に立地をするように努力していかなきゃならないと思います。それをどのようにして今後担保していくかというような問題があろうかと思います。  同時にまた、東京に立地しておりますものにつきましても、東京に立地しなくてもいいものまで何が何でも東京に立地をそのまま続けるんじゃなくて、できる限り東京二十三区から外に立地をかえるような工夫、努力もできないものだろうかなと考えておる最中でございます。
  202. 馬場富

    ○馬場富君 その都市の状況を知るためには、一つは、一人当たりの公園面積とか水を見ればわかると言われておるんです。水の需要と供給がうまくいくか。もう一つは、一人当たりの持つ公園面積、空間がどれだけあるかによって、その都市の機能はここに限界があるかないかということが実は専門家からも言われておりますけれども、この点につきまして、私はまず公園を担当してみえる関係大臣にお尋ねいたしますが、日本の中でも大都市と言えばやはり大阪、名古屋、あるいは地域が違いますが札幌とか福岡というものがありますけれども、ここらあたりの一人当たりの公園面積東京都の一人当たりの公園面積をまず御説明願いたいと思います。
  203. 木内啓介

    政府委員(木内啓介君) 我が国の昭和六十年末の一人当たりの都市公園面積は四・九平米でございますけれども、主要都市の一人当たりの公園面積を若干拾って申し上げますと、東京二十三区では一人当たり二・二平米でございます。それから名古屋市で四・八平米、大阪市では二・八平米でございます。それから欧米諸国で、どれを拾ったら適当かと思いますけれども、例えばアメリカのニューヨークでは十九・二平米でございます。それからイギリスのロンドンでは三十・四平米、それからフランスのパリで十二・二平米となっております。
  204. 馬場富

    ○馬場富君 もう一つは水の問題ですが、ことしも水危機が言われました。そういう点で担当当局から、日本の中でも主要都市、東京、大阪、名古屋あたりでも結構ですが、一人当たりの負荷量というか率というか、そういう水の数値をちょっとお示し願いたいと思います。
  205. 奥野誠亮

    国務大臣奥野誠亮君) 水の担当の者が参っていないようでございますけれども、やはり水の使用量は文化のバロメーターだと言われておりますとおりに、東京都の水の使用量もどんどんとふえていくわけでございますが、なおこれが増加するものとして、水資源をどう確保していくかということについては関係機関の間で鋭意検討を続けておるわけでございまして、将来を見通した計画をしっかり立てていきたいと思っております。
  206. 馬場富

    ○馬場富君 これは後から資料をいただければ結構ですが、東京に対する水危機というのは極端に迫っておる。もう水源が限定されておるわけですから、ここにふえればふえるほど問題が大きくなってくるということで、これは非常に限界が来ておるというふうに見た方がいいんじゃないかと思います。だから人口の集中ということは困難だ。  それから、例えばいろんなアクセスの問題なんかにしましても、道路でも、建設省等の統計を見ましても、用地費が地方道では一三・八%、国道では一九%とか、都市計画道路においては五〇%ということですけれども、先般も私どもがこの委員会で視察に行きましたが、新橋から今度東京湾の方に環二ができる計画があるわけですけれども、あれは実は用地費が、ずっと聞いてみますと九十何%というほとんどが土地代にいってしまうというようなことで、道路すらも、高速道路は常に渋滞の状況でありますし、これ以上やっぱりこの高価な土地のところに道路をふやす、アクセス、それからごみとかいろんな問題を考えても、私は到底これはしょい切れぬ問題ではないかと思いますが、この点どうでしょうか。
  207. 奥野誠亮

    国務大臣奥野誠亮君) おっしゃいますように、道路をつける場合にも用地費にほとんど使われてしまうという事態は本当に問題だと思います。そういうこともございまして、土地区画整理方式でありますとか再開発方式でありますとかという手法を通じましてできる限り道路敷地を捻出していくというような努力も払われておるわけでございます。できる限り密集を避けていくということ、過密を避けていくということは基本だと思いますけれども、その中で文化的な環境をつくり上げていかなきゃなりませんので、今申し上げますようないろんな知恵を働かせながら道路を広げていくことが大切なことだ、また緑地をつくっていくことは大切なことだと思っております。
  208. 馬場富

    ○馬場富君 マスコミでも毎日のように地価高騰に対する悲劇が報じられております。私どもはそんな意味で何カ所か中心部で、実質的にそういうことで問題の起こっておる声をずっと拾ってみましたが、本当に実は社会問題、先ほど犯罪の件数も多くなっていることを言いましたが、一つはそういう大変な問題に発展してきておる。借地料やあるいは家賃の値上げ、あるいは固定資産税の増加あるいは相続税の問題等、問題は山積しておるわけでありますが、特に私が気の毒に思ったのは、中心部にあるアパートに住んでいらっしゃる母子や老人の方々、やはりこれはどうしても今地価が高いために、その建物が古いためにみんな立ち退きを言われています。そうした場合どこに行っていいかわからぬというような状況ですし、到底、高いところで、そこが建て直されたとしてもそこに住めない。また、移っていくについては相当の費用がかかるということで、私はこういう生活者が本当に多くあると思うんです。そういう人に対して、問題点が起こった以上は行政で温かい手を差し伸べるべきであると私は思うし、また行政の責任でもあると思うわけです。  そのために、住宅相談とか、あるいは低所得者に対する家賃補助制度の確立だとか、あるいは住宅あっせん制度の補充などを、早急に私はそういう具体的な事例について行政が前向きで取り組む必要があると思うが、この点はどうでしょうか。
  209. 片山正夫

    政府委員(片山正夫君) 借家の建てかえ等によりまして老人でありますとか母子世帯の方々が住宅に困窮することは確かに大きな問題でございまして、こういうことのためには、まず地方公共団体の方で、御指摘の中にもありましたように住宅相談所の体制を充実しまして適切な対応をしていく、そういうこともございますので、現在各都道府県はすべて、それから主要な市、区につきましても住宅相談所を創設しましてその対策を強化しております。  それからまた、御指摘の中にございました家賃補助制度でございますけれども、個々の世帯に対します家賃補助制度につきましては、対象となります世帯の家賃の支出能力の把握でありますとか、あるいはそれぞれの状況におきましてどのような家賃を適正と認定するかというような事柄、あるいはその制度の管理運営のために大変膨大な組織なり費用等がかかることでもありますので、なおこれは研究を要する課題と考えております。
  210. 馬場富

    ○馬場富君 ここで、東京は今地価高騰一つは一点集中のもたらした影響によるということははっきりしてきておるわけでありますから、東京内部での開発一つは考えなきゃなりませんが、どうしてもやはり、四全総に示しております多極分散型の政策というのは私は適切な提案だと思うんですが、ところがこの多極分散型というのはかってもう全総ができて以来の大きな課題ですけれども、これが実行されたということはなかなか少なくて、かえって今東京集中が進んできてしまっておる。ここらあたりが私は、幾ら提案、表題を掲げたとしても、その実行がなされなければどうしょうもないと思うんです。  だから私は、この土地国会を通しまして、やはり東京での対策も一つは考えながら、早急に多極分散型の政策の具体的な実施に全力を挙げて各省庁が取り組むべきだ、こう考えておりますが、その中で、総理は一省一機関の地方分散については通常国会までに計画を策定するよう指示されたとかいう話も聞いておりまして、総務庁長官が難しいと言っておるとかそういう記事も出ておりますけれども、やはり総理が提唱されたことだし、四全総でも示されたことでございますので、どうかこの問題についてはぜひ通常国会に間に合うように、何かの形で、政府はこれだけ真剣にこの土地問題について取り組んだという証拠を私は示していただきたいと思いますが、総理大臣国土庁長官の見解をお聞きしたいと思います。
  211. 竹下登

    国務大臣竹下登君) 私のいつも感じますのは、いわゆる一極集中から多極分散へと、こういうときに何か東京いびり出し政策という印象を与えるのはこれまた現実の問題としては避けなきゃいかぬ。しかし方向としては申すまでもなく、四全総が示しておりますとおりに、一極集中から多極分散である。そして、私が書物等でも書いておりました一機関分散というのは、言ってみればそのはしりにすぎないかもしらぬ。しかしこれは政治の姿勢として大切なことであるということにおきまして、今国土庁を中心にしていわゆる基準づくりとか、東京にあらなければならない必然性というものが必ずしもないものもあるわけでございますので、これらの具体策は可能な限り早く、今時限の御指定がございましたが、いわば今度の通常国会の議論に十分供し得るような努力を続けたい、このように考えております。
  212. 奥野誠亮

    国務大臣奥野誠亮君) 第二回目の土地対策関係閣僚会議で、与党の安倍幹事長の方から移転問題、これをやるということを決めようじゃないかという御提案まであったわけでございました。いろんな事情で次回ということにお願いをしたわけでございましたけれども、ぜひ具体的な方針をだんだん固めていかなければならないな、そういうことで相談をさせてもらおうと思っておるところでございます。
  213. 馬場富

    ○馬場富君 今総理がいびり出しと言われましたが、いやそういう意味じゃなくて、東京東京でやはり住める環境づくりをしっかりお願いしたい。だがそれでもやはり一つは、集中の傾向が、国際化だしもう世界の中の東京ですから、東京だけでコントロールできないものがあるわけです。そういう意味からもやはりそれに対応する考え方を持たなきゃいかぬということで私は今この質問をしたわけですが、これは大変困難な問題があるわけですけれども、それはどなたが先に引っ越しなさるかということよりも、我々がまずもってこういう対策を実践しましたということが国民に対する信頼感だと考えるわけです。そういう観点でこの問題はぜひ取り組んでほしいと思います。なかなか困難な問題でありますけれども、ひとつよろしくお願いしたい。  そこで私は、従来から建設委員会で何回もこの点を指摘しておりますが、多極分散型は大変結構だ、それからまた一時間交通圏を確立していくということも結構だと。だからそういう意味で、実は東京の一点集中がある、そういう状況からいたしましてやはり今、日本の中で、この前国土庁長官もおっしゃっていましたが、例えば官庁が引っ越すについても受け入れ態勢がなけりゃいかぬということで、それは山の中に行くわけにいかぬでしょう、それを受け入れる都市機能を持ったところでなければいかぬと私は思うんですね。それとまた交通等の問題も一つあります。そういう点で、日本幾つかの地域、ゾーンに分けて、そして多極分散型の政策を行っていかなきゃいかぬのじゃないか。  その一つが、実は手っ取り早い話は、東京と大阪と名古屋、この三つは日本の主要都市ですし、太平洋ベルト地帯です。ここには非常に人が多くおりますし、かつてもう多くの受け入れ態勢もできております。この三つの都市を世界の中の日本の中心ゾーンとしてとらえて、三極が一体となっていくような形のそういうゾーン体制をひとつつくり上げてはどうか、こういう意見はかなり識者の中にもたくさんあります。だから私は随分建設委員会でもこの形を申し上げてきましたが、そのためには、まず考えやすいのは、先ほども議論がされておりましたけれども、第二東名とか、高速道路のもう一本短距離のものが提案されています。これはぜひ実現していただきたいと思いますし、それから地方新幹線の計画もありますけれども、これは運輸大臣の方でございますけれども、リニアカー等が時期的に間に合っていけば、そういう方法でこの三極間の時間的距離を縮めていけば、先ほどおっしゃった一省庁一機関の問題もそうですし、自然的にそれは私は多極分散型の方向性が一応出てくると思うんです。  そういう形で三極を一つとして、九州とか四国とか北海道とか、おのおのをブロックに分けての分散型に対する政府の施策というのを組んでいけば、私は四全総の実施ということも実は無理ではないし土地対策にも役立つと思いますが、この点につきまして総理並びに関係の運輸大臣と建設大臣国土庁長官に、この問題は大事な問題ですからひとつ御意見をお聞かせ願いたい、こう思います。
  214. 竹下登

    国務大臣竹下登君) 私はこの場所でも一度申し上げたことがございますが、昭和五年の統計と昭和五十五年の統計を比べてみますと、例えば御出身でございます愛知県は日本で相当裕福なところであっても、当時一人当たり所得は東京の三分の一という位置づけがなされております。ところが昭和五十五年の統計を見ますと、一番低いところでもほぼ六〇%のところまで来たというので、大変これは喜んでおりました。しかし近年、今御指摘のとおり、いわゆる国際化、情報化の点から、また新しい過疎過密というのが別の意味においてできてきた。これを何とか直さなければいかぬという考え方がございまして、四全総、こういうことになったであろうというふうに考えております。  したがって、これを実行に移す際には、かねての御主張でございます、もともと近畿圏整備委員会、中部圏整備委員会等がありましてそういう基本的な考えはありましたものの、比較して都市機能の整備した地域に対するいわば多極分散方式というものも私は十分考え得ることではなかろうか。しかし最近は、東北地方を中心にいたしましてはいわば仙台を中心とする新たなる構想も出ておりますし、また国鉄で申しますならば三島に値します北海道、九州、四国等についても新しい開発の芽生えというものが出ておる。これらブロックごとにそれぞれの特徴を生かしながら住民の知恵と情熱に対応して、これはどうしてもまず計画倒れに終わらない、実行が大切であるというお考え方には全く同感であります。
  215. 奥野誠亮

    国務大臣奥野誠亮君) 今総理からお話しございましたように、四全総を絵にかいたもちにしないようにして、仰せいただいた点を十分考慮しながら努力していかなければならないと思っております。
  216. 越智伊平

    国務大臣(越智伊平君) 総理国土庁長官からお答えをいたしましたが、道路網につきましては、お説のようにまず高速自動車道、高規格道路、それから国道、県市町村道に至りますまで整備を図ってまいりたいと思います。このために、御承知のように第十次五カ年計画を準備しておるような次第であります。  また、特に御指摘のありました東名、非常にふくそうをいたしておりますので、いろいろ調査をいたしまして緊急を要するところから進めてまいりたい。お説のとおりに道路網の整備に全力を尽くしてまいりたいと思います。
  217. 石原慎太郎

    国務大臣石原慎太郎君) 磁気浮上型のリニアモーター力ーというのが一つの範疇でございまして、これは主に遠距離というものを目的に研究されておるようでございますが、あるところまで来ているんですけれども、何分七キロの長さのレールといいましょうか軌道で実験しておりまして、これから先さらに長い施設を設け、すれ違いと、何かトンネルの中での風圧の実験をクリアしませんと実用に供し得ないということで、ドイツもだんだん追い上げてきておりますし、これに負けずに一刻も早くこれを開発することで、旧来の整備新幹線の技術に頼らずに、コストもむしろ安い、傾斜にも強い、こういった未来型の交通機関が四全総計画実現のための、いわゆる多極分散型の国土をつくるために非常に有効な手だてになるということはもう御指摘のとおりでございます。  この期待を乗せまして今鋭意研究開発中でございますけれども、何か、あるところまで来ますと、どういうんでしょうか、一気がせいにということにはなかなかならないうらみもあるようでありまして、予算を含めましてこれから運輸省としましても、この来世紀的な、近未来的な技術の開発に鋭意努めていくつもりでございます。
  218. 馬場富

    ○馬場富君 土地問題につきましては、基本的に大切なことはやはり理念や考え方になってきます。日本では土地問題を通しまして大きいいろんな反省の声が出ております。土地神話に見られるような問題とか、あるいは我が国の制度の土地に対する特異性があるわけです。これは無視することはなかなかできないわけでありますが、そういう点で私は国民の合意の形成が必要だと思うんです。  そこで、私は一つは教育にここのポイントがあるのではないか、こう考えるわけです。二十一世紀を見渡す国際化の中の有力な日本として、そういう考え方に立った日本国土ということを考えてみたときに、私たちは吸う空気、それから私たちが飲む水、そして私たちが歩いて住む土地は、人間だけじゃなくて生物あらゆるものが生存する共有な資産であると私は思うんです。そういう点で、そういう原点に立ちまして、私たちはそのもとに一つは理念を考えて、そういうことで土地に対する今までの考え方と変わった新しい、国際の中に生きていく日本として土地問題は今までと考え方を変えた分野から一つは改革を推し進めなきゃならぬ。その原点は、先ほど申しましたような観点に立って一つは教育の点からもその点に力を入れなきゃならぬ、こう思うんですが、文部大臣の御所見をお願いいたします。
  219. 中島源太郎

    国務大臣中島源太郎君) 土地に対しましては、私的な所有権を前提といたしておりますけれども公共の福祉の視点から各種の制約を受けるものと、こういう理念からいろいろのコンセンサスを図ってまいる、これはお説のとおりだと思いますが、学校教育に関しましては公共心を養うという教育をいたしておりまして、初等中等教育を含めまして、今後とも公共心の教育を徹底させるということでさらに努力をいたしたい、こう思っております。
  220. 馬場富

    ○馬場富君 先進諸外国ではアメリカを初めといたしまして、大学教育の学科の中に不動産学科がほとんどあるというのが現状のようですけれども、日本はどうでしょうか。
  221. 福本英三

    政府委員(福本英三君) 先生今御指摘のように、外国には不動産関係の学科が随分たくさんございます。アメリカなども非常にたくさんの学科を設けております。  ただ、日本ではまだ残念ながら二、三の私立の大学にそういうコースが置かれてとるだけでございます。
  222. 馬場富

    ○馬場富君 最後に総理に、そういう今国民の合意をつくって進めていかなきゃならない土地問題は、根深い要素を持ったものがあります。そういう点については、ぜひ一つは教育の面でもこれは力を入れて取り上げていただきたい。  それからもう一つは、先ほども話しましたように、一つ土地は共有財であるという考え方に立って、そういう理念のもとに、今回の土地の問題につきましても、所有権は例え個人にあったとしてもその使用については公共的目的が優先していくんだという、そういう一つの考え方を今後施政の中でも基本として生かしてもらいたい、こう思うんですが、総理大臣の御所見をお伺いしまして私の質問を終わります。
  223. 竹下登

    国務大臣竹下登君) お説のとおりであると思います。  まず、私有財産制の基本というものも今お述べになりました。その中においても、ある意味における土地の倫理、そういう土地というものに対する一つの意識転換、これを行うためには教育の場が大きな役割を果たすことは言うをまちません。この場を通じて意識転換を図る一つの場所とすると同時に、いま一つは、いかなる政策、施策といえども国民の理解と協力なくしてこれが実施には移されない。したがって、国会の議論、あるいはそれに呼応しての言論界のいろんな世論、こういうようなものも、どちらが卵かどちらが鶏かは別といたしまして、そういう議論の中に環境が熱されていくというのがまた当面の意識転換の大きな場所になるのではなかろうかというように私は心から期待をし、これからもその方向で努力すべきである、このように考えます。
  224. 河本嘉久蔵

    委員長河本嘉久蔵君) 次に、内藤君の質疑に入ります。内藤君。
  225. 内藤功

    ○内藤功君 今回の地価狂乱は、列島改造論による昭和四十八、九年の地価高騰と異なりまして、東京を中心にした異常な高騰がさらに東京、京都、大阪、名古屋と波及をして重大な社会問題になっているというところに特徴があります。  東京では、今や勤労者の方が都内に住宅を持つということは夢とされ、相続税、固定資産税、地代、家賃の負担の増加、悪質な底地買いによる立ち退きの強要、これらが住民を脅かしております。地域社会が崩壊して商店はお客を失う、成り立ち行かない、小中学校は正常な規模を確保できないで統廃合する、さらに年金生活の高齢者の方は住める家がなくなる、区内に特別養護老人ホームや福祉作業所をつくろうとしても用地確保ができない等々、深刻な事態であります。  ところで竹下総理の「私の「ふるさと創生論」」、この著書を拝見いたしましたが、この中で、「今の東京は、国際都市とか全国都市としての比重が大きすぎるため、そこに生活する人の東京が埋没してしまっている。」、「「ふるさと」としての東京を盛り上げなければならない。」、こういうことを書いておられるわけであります。その限りでは私はそのとおりだと思うんですね。しかし、底地買い、地上げ、そして高層オフィスビルの相次ぐ建設というものが野放しになった結果、さきに述べたような深刻な状況が生まれておるのであります。政府がこれを放置するならば、東京もふるさとどころではなく、生活と営業の本拠を失って、ふるさと東京の破壊につながるものと私どもは深く憂えているわけですが、この点の御認識を伺いたいと思います。
  226. 竹下登

    国務大臣竹下登君) 確かに国際都市として、あるいは国際的中心都市としての傾向から、その中でいわばふるさとというものが埋没してしまう、こんな感じを持っておることは事実であります。私が大蔵省におりますときに、大蔵省へ入ってまいりました二十五名の新入の方々に、ふるさととは何ぞやというアンケートを出したことがございます。地方出身の人は例外なくと言っていいぐらい、ウサギ追いし山、小ブナ釣りし川、こういう自然環境であります。ただ東京出身の方は、あの広場でけんかをした思い出とか、隣のばあさんが優しかったとか、先生がおっかなかったとか、人間関係というものにふるさとの原点があるなど、こんな感じで見させていただいたことがございます。  東京は、鈴木都知事さんが「マイタウン東京」と言われたときに、私は実はしめたと思いました。そういう物の考え方が行政の中心に置かれることはまことに結構なことだと実は思ったわけですが、どこに住んでおっても本当にふるさとと意識できるという意味において「マイタウン東京」、あるいは東京ふるさとというものはどうしても創生、というよりも再生していかなきゃならぬという気持ちでいっぱいでございます。
  227. 内藤功

    ○内藤功君 東京都心部ではやはり人間関係というものがふるさとの中心だと思うんです。それとやはりお祭りですね。地上げ屋さんに追い出された人がお祭りのときだけ帰ってくるということを私はいろんなところを歩いて聞くんです。こういうことは、やはり東京にもちゃんとふるさとがあるんですね。再生とか創生とかわかりませんけれども、私は、そういう東京のふるさとを守っていっていただきたい、お互いに守っていかなくちゃいけないというふうに思うわけなんです。  この三年間で千代田、中央、港、新宿、渋谷、いわゆる都心五区の方から約三万一千人の方が転出、流出、ちょっと言葉は悪いんですが、転出しておられるわけですね。この間港区へ行きましたらば、今でも毎月五百人、ことしになると七百人ずつ出ていかれる。深刻な事態ですね。現在住んでいる人が長年住み、生活し、また働いてきた都市、我々にとってのふるさとに住めなくなって、事実上追い出されているというのが現状なんです。総理はよく合理的な土地利用の確保とおっしゃいますけれども、地価を引き下げて住民が安心して住み続けられるようにする、これが今の東京を初めとする都市の土地政策の一番の政治の責務だと思いますが、総理はいかがですか。
  228. 竹下登

    国務大臣竹下登君) 私は、国際都市あるいは中心都市東京の場合、現状固定というところで暮らしと活動の基盤を固定さすという考え方は必ずしもとりません。時にはそれが流動するということも、どこに住んでおってもふるさとという意識を持てるような地域づくりというものに専念するならば、それは流動性というものも私は許容できるものではなかろうかと思いますが、基本的な考えを否定しておるわけではございません。
  229. 内藤功

    ○内藤功君 具体的な事実を、私も都内いろんなところを回りまして調べました。今の御答弁では、大企業の買い占めで東京都民が追い出されているという深刻な事実をまだ深く受けとめていらっしゃらないように思うので、私はここに、(地図を示す)例えば西新宿の八丁目、これは青梅街道をずっと行きまして、そして成子坂というところです。ここに天神様があります。それから青梅街道の南側には大きな東京医大の病院があります。そういうところであります。ここに色で示しましたけれども、共立エステート、住友不動産、新都心リアルエステート、それから勧業不動産、関東不動産、こういった各社が入り乱れて、二四ヘクタールの土地でありますが、ここにもう本当に食い込んで土地をとり合っているというのが現状であります。これは公図を参考にして、そこに登記簿を調べて落としたわけで、つくった人は大変な苦労をしたわけであります。  この一帯は、従来勤め人や学生さんのアパートが多くて、六十歳以上の高齢者の方もかなり住んでいて、商店も多く、便利な住みよい町だったわけであります。私、ここに古い五十九年の住宅地図、現在の住宅地図を持っていますが、もう全然変わってきておるわけであります。地価は基準価格だけでも一年間に一・三三倍上がって、とても庶民に手が届かない。総理、こういうような事態を放置しておいていいか、次々にアパートに住んでいる人が追い出されていく、ここは歯どめをしっかりかけなきゃいけない事態だと私は思うんですが、再度伺いたいと思います。
  230. 竹下登

    国務大臣竹下登君) これだけ狭隘の土地でありますならば土地の合理的利用によっていわば現状固定に必ずしも固執しないという考え方は私にもございますが、それがいわゆる今御指摘にありましたような形で推移していくということには私もくみしません。
  231. 内藤功

    ○内藤功君 過日、衆議院での御答弁で総理は、都心に家を持つ考え方を変更すべきではないかと。家族と住むところとワーク、つまり仕事をするところとを分ける考え方を本気で考えなければいけないとおっしゃったと伺っております。庶民の苦しみがわからないんじゃないか。私、昨日何人かの下町に住んでいる人のお話を聞いたんですね。みんなおっしゃるんです。セカンドハウスなどを勤労者や商店主に持てるか。土曜も休まず働かなきゃならない人は金帰火来なんてできない、往復の交通費だって大変だよと、こういうふうにみんな非常に怒っておられるのでございます。これにどうお答えになりますか。
  232. 竹下登

    国務大臣竹下登君) たしか経済企画庁の勉強の中に、いわゆるウィークシェアリングというのが書いてあったことを私も読ましていただきました。金帰火来という言葉は我々地方出身の国会議員の生活体系からできたものでございますが、それは別といたしまして、いわゆる頭脳、情報労働をする方が都心の高層住宅の中で、今おっしゃった言葉をおかりしますならばワークして、そうして金曜日の夜から火曜日の朝までそれぞれの地方におるというような、正確な言葉はたしか複合住宅という言葉でございましたか、そういう住宅政策というものが勉強の結果として出されたときに、これから考え得る一つの方向だなと思ったことは事実でございますので、それを素直にそのとき申し上げたわけでございます。
  233. 内藤功

    ○内藤功君 しかし、その御説明でも東京に現に住んで苦しんでいる人は納得なさらないと思いますが、ここに東京出身の大臣はおられないですか。――運輸大臣はおられませんか。それでは後でお伺いいたします。  次に、政府が盛んに再開発のことを言っておられるんですね。私は、再開発が本当に地域住民の生活環境を改善して、住民の意見が反映されて、住みよい町づくりになっておるのかどうか。全員一致でないとにっちもさっちもいかないとおっしゃる大臣もいらっしゃいますが、事例は私の知っているので無数にありますよ。  一つだけ示しましょう。西新宿六丁目の南地区の再開発の例でございます。これは昭和四十九年の準備組合の設立当時と現在と比較して、土地所有者、借地人、借家人の数が非常に変化しておりますが、建設省、通告しておきましたが、法人、個人別にどういうふうに変化しているか、お答えいただけますか。
  234. 片山正夫

    政府委員(片山正夫君) 西新宿六丁目南地区の状況でございますけれども、四十九年の十一月現在で、個人の権利者は所有者、借地権者を含めまして六十人、それから法人が十人、合わせまして七十人でありますが、六十二年十一月現在では個人が四十一二人、法人が二十一人、合わせまして六十四人とこれは聞いております。
  235. 内藤功

    ○内藤功君 調査不十分ですね。私の方で調べたのはもっと具体的であります。この十三年間の統計をとりますと、個人の土地所有者が五人減り、借地人が十一人減った。逆に、法人土地所有者が十人ふえて、借地人が一人ふえた。具体的にはどういうところがふえたか。問題は、一人というような言い方をしましたが、大きなところばっかりですね。住友不動産、鹿島建設、森ビル産業、大成建設、清水建設、日本土地建物等々不動産会社、建設会社の大手ばっかり十三社が新たにふえて、この大手会社の所有だけで全面積の七〇%を占めるに至っているんですね。最初は、みんなでビルを建てましょうで始まった。まず住民本位で始まったのでありますけれども、次第に実態は大企業主導となってきた。  こういうのはやはり、大企業による土地買い占めを今みたいに許して、再開発法上も参加組合員という形でこういう企業ははいれるんですね。土地を持っていても持っていなくてもはいれるというふうな仕組みになっている限りは、住民本位の意向が反映しない。住環境がこの再開発ではよくならないということを意味していると思うんですが、この点いかがでしょうか。これは建設大臣
  236. 越智伊平

    国務大臣(越智伊平君) 私どもはやはり地域分散、それから再開発、あるいは新しいプロジェクト、あらゆる手法をもってやりますので、再開発のみをとって、これがいいとか悪いとかは、再開発も私はやはり一つの手法としてやっていくべきだと、かように。思う次第であります。したがいまして、再開発地の地価、これはすぐ下がらないかもわかりませんけれども、全体的に言いますと、供給をふやしていく、こういうことであろう、かように思います。でありますから、要はあらゆる手法を使って供給をふやしていく、こういう方針でやっておる次第であります。
  237. 内藤功

    ○内藤功君 やっておる次第はいいんですけれども、住民本位になっていないというこの事実を私は今指摘したわけです。  もう一つ、西新宿六丁目の東地区という開発地区がある。これは青梅街道の南側で東京医大病院の東側になって、三・五ヘクタールあります。ここは住都公団が超高層四十三階のビルを建てようとしておるようでございます。その計画概要と、土地所有者、借地人、借家人が法人、個人別に現在幾ら、どのくらいおられるかという点、お答えいただきたい。
  238. 片山正夫

    政府委員(片山正夫君) 西新宿六丁目東地区でありますけれども、この地区は東京都の都市再開発方針に基づきまして、新宿副都心開発促進地区の一環といたしまして再開発の整備を行うこととしておりまして、これの計画につきましては、先ほど三・五ヘクタールとお話しございましたけれども、当方の調べでは約二・九ヘクタールの地区におきまして、地上四十三階の業務商業ビルを中心に、二十戸の住宅棟を含め、合わせて五棟、施設建築延べ面積が約二十四万平方メートル。あわせまして開放的なグリーンスペースでありますとか広場、集会場等地域交流の場を整備する、こういう計画になっております。  なお、当該地区の住民及び権利者はということでございますけれども、土地所有者につきましては五十五名、借地権者が二十八名、それから借家権世帯が百七十一、こういうことであります。
  239. 内藤功

    ○内藤功君 ここにも木賃アパート、それから古くからの飲食店、それから戦後ずっと、あるいは戦前から住んでいる平家建てあるいは二階建てのお宅があって、それで一つの町並みをつくっているところであります。百七十一人の借家人がおられるのに、この広大な面積で建てる四十三階建ての中で住宅がわずか二十戸というんですね、今のお話で。どういう人が一体入れるんですか。これは賃貸ですか。分譲ですか。  もう一つ関連をして、ここにおられる借家人にはどういう具体的な補償をするお考えなのか、あわせて伺いたいと思います。
  240. 片山正夫

    政府委員(片山正夫君) 先ほども御説明を申し上げました二十戸は、これは権利者用の住宅でございまして、なおそこに居住されております借家権者の方々につきましては、世帯も少しはおられますけれども、独身が主体でございますので、そういう方々につきましては、まず地区外への公営とか公団住宅に対するあっせん、さらには移転に伴う補償等により対応をするということになっております。
  241. 内藤功

    ○内藤功君 賃貸ですか分譲ですか。
  242. 片山正夫

    政府委員(片山正夫君) 二十戸につきましては地権者用でございますので持ち家となります。
  243. 内藤功

    ○内藤功君 これはもう本当に補償なしに百七十一人の方がみずからの居住権を奪われる、こういう今の再開発の実態を示していると思うんですね。この点に深く触れるいとまがありませんが、このほか、既に当委員会でも出ております赤坂アークヒルズは家賃が最低でも二十九万円と言われている。三井不動産主導の大川端開発、公団で十八万円以上の家賃。このような住宅に勤労者は入居できるか。一体だれのための再開発であるかということを私は思いますので、先般来閣僚がお答えになっている三分の二では問題がある、全員一致というものでもってにっちもさっちもいかなくなる、私はむしろ逆だということをここで申し上げたいと思います。  次に私は国土庁にお伺いしたいんですが、現状の把握を政府は一体やっておるのかということです。  それは、東京土地取引動向の網羅的調査というものを不動産の登記簿をもとに調査をした、さっき志苫議員が同じ問題をお聞きになった。私はさらに突っ込んで聞きたいんです。秘密でも何でもないんですよ。登記簿は公開であります。件数だけの発表じゃなくて、九月にやったのは件数だけの発表であります、そうじゃなくて調査結果を具体的に公表する。プライバシーと言いますけれども、これは公簿に載っているものでありますから実名で出ていいわけですよ。どういう傾向をこの中で把握できるのか、この登記簿を読んで。登記簿というのは生きていますから、活字が並んでいますが、読めば、合わせればどういう土地が動いているか読めるはずなんです。それを国民に公開すべきだ。また同時に、これは反社会的作用をしている一部悪徳企業に対する抑制作用もあるというふうに思うんですが、そのお考えはないんですか。
  244. 片桐久雄

    政府委員片桐久雄君) 先生御指摘調査につきましては、六十一年は東京の十一区につきまして、それから六十二年につきましては東京二十三区及び武蔵野、三鷹市におきましてやっておるわけでございます。  この調査の目的は、国土利用計画法の無届け取引等がないかどうか、それからまた投機的な取引がどの程度あるかどうか等につきまして調査をいたしまして、これを用いまして不動産業者及び金融機関の指導、それからまた国土利用計画法の遵守等を指導しているわけでございます。  この調査の内容につきましては、先ほど御指摘がありましたように件数等を集計したものを公表いたしておりますけれども、個別具体的なものにつきましてはプライバシーの問題もありますので公表を差し控えているわけでございます。
  245. 内藤功

    ○内藤功君 納得できませんね。そういうことであるので我が党、日本共産党の東京委員会は、ことしの七月から九月にかけて二十一行政区四十二地域土地投機の実態調査を、我々は野党であるが政府がそういうことであるので調査に入った。二万筆に上る登記簿調査を大変な苦労をしてやりました。さっき出したこれもそのときの調査に基づくものであります。関係者の聴取を行いました。私も一部これに自分で参加をいたしました。  その結果、土地買収に直接名前の出てきた企業は約四百社であります。そうしてこういう資料をつくったんです。これは衆議院の委員会で我が党の議員が明らかにしておりますが、一つは全部登記簿を分析して、大企業、地上げ業者による土地買い占め状況、各区ごと、それから地上げ屋、ダミー業者の転売、土地転がしの例、それから大企業など業者の土地買い占めの例、内容に入るいとまがありませんが、こういう資料を野党である共産党もつくっているわけですよ。こういう資料をつくれと私は言うんです、政府にも。分析しろと言うんです。私たちはまず、登記所で働く職員の方から話を聞いたんです。そのときに、閲覧、謄本請求数が激増しているということを聞きましたが、法務省、これは通告していませんが、大体の傾向として、閲覧、謄本請求がふえているという事実はいかがですか、お認めになりますか。激増しているんです。
  246. 藤井正雄

    政府委員(藤井正雄君) 登記簿の閲覧及び謄抄本の請求が急増していることはそのとおりでございます。
  247. 内藤功

    ○内藤功君 港の登記所へいろいろお聞きしたところ、ある人は八千五百八十六枚に上る謄本を請求したそうですね。六本木から西麻布、南麻布、元麻布、南青山というところの一帯ですね。超一等地です。そしてこれは二メートルになったそうです、全部コピーすると。これぐらい。そうして病気になる人も出てくる。頭が疲れてちょっと変になってくる職員も出てくる。国会では毎年決議しているんです、登記所の増員を。ところがこういう実態であります。特に、汐留、西新宿、恵比寿など、国の、あるいは東京都の、あるいは大企業の再開発計画が動いている地域には土地買い占め、投機が特に集中的に見られたというのがこの私どもの調査の分析結果であります。  総理、こういう大規模な民活プロジェクトが周辺への投機を誘発している、こういうふうにお認めになりますか。
  248. 竹下登

    国務大臣竹下登君) 民活というものの大規模な都市再開発とか都市計画の中へ、一定の公的部門以外のところへ参画していくというのがやはり土地の値上げに私は影響はあったというふうに問題意識としては持っておりますが、それをだからやめようという考え方には立ちません。
  249. 内藤功

    ○内藤功君 影響があったらやめろ、こういうふうに論理的にはつながるんじゃないかと私は思うんです。  そこで、総理の所信表明演説では、地価上昇原因一つ東京への人口や諸機能の一極集中である、こうおっしゃっている。自然現象のように何か一極集中してきたというふうに私には聞こえたわけなんです。しかし私は、総理、あなた御自身の責任も重大だと思いますよ。金融機関など内外の大企業の本社機能の東京への一極集中、これは外国為替管理法改正による外国為替取引の自由化、それから日米金融自由化、こういったことを契機にして激化しているのじゃないんでしょうか。中曽根内閣大蔵大臣として、また引き続き与党の幹事長として中曽根前総理を支えて推進してきた竹下さん、総理、あなた御自身の責任は、自然に一極集中で集まってきたという言い方では済まされないと思いますが、どういうふうに感じておられますか。
  250. 竹下登

    国務大臣竹下登君) 一極集中は自然にできたとは私も思っておりません。したがいまして、衆議院の委員会でもお答え申し上げておりますが、私が、五年ぐらいでございますか、長い間大蔵大臣を務めておりました当時、金融の国際化、なかんずくロンドン、ニューヨーク、東京という国際金融センター、そういう構想が念頭にあったことは事実であります。したがって、それなれば、まさか国際金融機関が世田谷にあるわけにもまいりませんので、都心集中するという結果を招いたであろう。したがって自分の携わっておった仕事としても一つの反省があったということを素直にお認め申し上げておるということでございます。
  251. 内藤功

    ○内藤功君 お言葉を返すようですが、世田谷云々おっしゃるならば、なぜさっきの西新宿、ああいった昔から人の住んでいるところを壊して、そして大きな事務所、オフィスビルをつくるために犠牲にならなきゃいけないか。これは東京都民の気持ちであるということを申し上げたいと思うんです。  こうした東京集中が進み始めたときに、政府としてはこれをそのときに何とか抑制するという具体策をとるべきであったと思うんですが、逆に昭和六十年の七月に首都改造計画というものを発表されて、基本理念として国際中心都市を目指すと掲げて、東京大都市機能は特に金融、情報などの機能を中心として一層拡大していくであろうと打ち上げたんです。これが東京集中を一気に加速する原因になったことは私は非常にはっきりしていると思うんです。これは国土庁長官
  252. 奥野誠亮

    国務大臣奥野誠亮君) 東京が世界の金融センターになってまいりますとそれにふさわしいような対応をしていくことも必要だと思います。その結果過密になってくるわけでございますから、東京に立地を必要としないようないろんな機関は外へ出すような努力もあわせ行われればよかったんじゃないだろうか、こう思っておるわけでございます。
  253. 内藤功

    ○内藤功君 当時の国土庁長官は、今そこにおられる河本先生じゃなかったかと私は思います。ただ、委員長ですから私が質問するわけにはいかない。こういう批判が出ておる。  それから問題は、それまでの三全総は集中の抑制策を明記していたのに対して、首都改造計画では、集中抑制は経済を先導していくことが期待される機能をも減殺するおそれがあるとして、企業の立地規制を否定しておるわけですね。ここからも、東京集中の責任は当時のこの首都改造計画にあると思うんですが、もう一回どうですか。
  254. 奥野誠亮

    国務大臣奥野誠亮君) 首都改造計画も必要でしょうし、多極分散型の国土総合開発計画を進めていくことも必要、両方同時に努力して行われるべきものだと思っております。
  255. 内藤功

    ○内藤功君 私は、かれこれ考えできますと、この地価狂乱の、言葉は悪いですがラージAですね、A級責任者、これは一体だれなんでしょうか。  私は、中曽根内閣だと思うんです。特に第一に、環状七号線の内側の建物をみんな五階建て以上にして容積率を上げろと言った、そういう趣旨のことを言って民活規制緩和で企業の土地投機を事実上野放しにした中曽根前総理。そうして、その中曽根内閣を支えた、経済政策、財政政策の責任者である竹下総理。そうして土地買い占め資金の融資を、通達を出したけれどもそれ以上のヒアリングの時期を非常におくれさせたという点で、私は宮澤大蔵大臣の責任も免れないと思いますよ。そうして大企業奉仕の大型プロジェクト推進のマイタウン計画を推進した首都東京の知事の鈴木さん。私は、少なくともこの四氏がA級の責任者というふうに思いますよ。  これはまた、その土地の買い占め、底地買いでもって巨利を得た人にとっては大変な功労者でしょうが、犠牲になった人から見れば、これは大変忘れることのできない責任者だと思います。  ところで竹下総理、著書の中で、東京の過剰負担を軽減させるとして、まず東京土地需要を抑制することが絶対必要だとおっしゃっていますが、企業の東京集中を抑制する具体策をお示しいただきたいと思います。
  256. 竹下登

    国務大臣竹下登君) 私がお答えするのが適切であるかどうかは別といたしまして、私は地方出身でございますので、国土の均衡のとれた開発ということから、かねて農村工業化導入促進法でございますとか、あるいは、かつてはそれなりの意義があったと思います新産都市でございますとか、あるいは工特の法律でございますとか、それぞれ携わってきた経験がございます。必ずしも東京にあらなければならない必然性を持たない企業というのは可能な限り私は地方へ分散した方が、まさに均衡のとれた国土になっていくのではなかろうか、こういう考えを前々から持っております。
  257. 内藤功

    ○内藤功君 いわゆる誘導策と言われるものでありますが、これは私は、言葉は大変品が悪くて失礼ですが、お聞きいただきたいのは泥棒に追い銭のようなものだと思ったことがございますよ。大企業にとって集中すればするほど集中のメリットが大きくなる、これは優遇措置をとらざるを得ないでしょう。補助金とか減免税とかをやらなきゃこれは応じませんです。私は、集中のメリット以上にこういう優遇を拡大していかなければならぬ。そんなことで本当に集中を防げるかという疑問を強く持っておるわけでございます。これを提起しておきたいと思うんです。  さらに、ことしの六月に四全総が決定されましたが、五月の国土庁試案の段階では、都心へのアメリカ、日本などの多国籍企業の二十四時間活動の営業拠点である事務所集中の抑制策として、東京中心部等に立地する事務所に対して、その便宜の享受に応じて負担を求める等の措置というものが織り込まれたんですが、最終決定でこれは骨抜きになっちゃいましたね。国土審議会の会長、安藤太郎住友不動産会長の方から、事務所の費用負担のあり方等の検討に当たってはいたずらに東京からの事務所の追い出しをねらいとすることなく、また我が国の国際的役割の発揮を阻害することのないように十分配慮することという、こういう枠までつけられてしまいました。  中島議員が衆議院で追及しましたが、東京での土地買い占め第一位と記録される住友不動産の会長さんの言うままになるんじゃなくて、東京中心部に立地する大手企業に対しては適正な費用負担、例えば負担金を課するということを真剣にお考えになっていいんじゃないでしょうか。こういうお考えはないんですか。
  258. 奥野誠亮

    国務大臣奥野誠亮君) 大きな都市につきましては、通称追い出し税と言われているんですけれども、事業所税があることは御承知いただいていると思います。それに加えてさらに追い出し税を加えていこうというのが御指摘課題だと思います。いろんな考え方があろうと思うんですけれども、私は、そういうことよりも国際金融センターにふさわしいような体制を整えていくことが我々に課された責任じゃないだろうか、こんな思いがするわけでございまして、そういう意味で大規模のいろんな開発計画も今日鋭意建設に努力されているところだと、こう思います。同時に、過密にならないように適度に事務所用地も住宅用地も確保されるようにしていかなければならないということも大事なことだと考えております。
  259. 内藤功

    ○内藤功君 それならば聞きますけれども、先ほどから東京が革新都政の時代のことをいろいろ言われておりますが、この革新都政時代にやったいいことはまたたくさんあるわけなんですね。当時の試算によりますと、東京で従業員が十万人ふえると上下水道、ごみ処理などで公共投資が二千百億円かかるという試算を当時の東京都は発表したんです。ところが、この間十一月二十七日でございましたか、政府が発表されました東京中心部における事務所床の需給に関する見通しによりますと、昭和七十五年までに二十三区で千六百ヘクタールないし千九百ヘクタールの需要があり、事務所従業員は三十万から五十万ふえるという試算でございます。五十万人、この数字に従って計算しますと一兆五百億円の公共負担増です。首都改造計画では百七十万人ふやすといいますから、これによると三兆六千億円、これだけふえるわけですね。しかも、これには道路は入っていませんし、現在の地価を考慮しますとこれは五兆円ぐらいになるという巨額の公共投資の負担になるだろうと思うんです。  こういう点から見ても、首都東京に対する立地企業というものには負担金をかけるべきだ、私は重ねてこの点を真剣に検討していただきたいと思うんですね。
  260. 奥野誠亮

    国務大臣奥野誠亮君) 世界の金融センターにふさわしいような姿として発展していきますと、それだけ国民経済発展に影響がございましょうし、また国民所得の増大にもつながりましょうし、その結果は税収入の増加にもはね返ってくるわけでございましょうし、いろいろな関連がございますので、今お挙げになりました数字だけで比較することは私は当を得ないのじゃないだろうかなと、こんな気持ちがいたします。
  261. 内藤功

    ○内藤功君 それならば、私のこれを覆す数字をお出しください。
  262. 奥野誠亮

    国務大臣奥野誠亮君) 私は、金融センターの中心になっていくことは当然いろいろな公共施設を整備していけるだけの財政力の増加がもたらされるものだ、従来からの世界各地の姿を見ていますと理解できるんじゃないか、こう思います。
  263. 内藤功

    ○内藤功君 結局、お出しになれなかったわけですね。  そこで、私はこれから抜本的改革の問題をお尋ねしたいと思います。  今のこの時期におきましてお腹の底にお互いしっかり入れておかなくちゃいけない問題は、土地問題の抜本的改革を腹を据えてやるためには都市に住んでいる都市住民の組織、その運動と結びついて町づくりをやっていくという大胆な思想方法を用いなきゃならぬ、政治手法を用いなきゃいかぬということであります。  調べてみると、西欧の先進諸国では、住宅や土地利用に関して長いこういう運動の歴史がございます。労働運動なんかは常に住宅運動と結んでおります。西欧諸国の住宅は立派だな、町並みがきれいだなと我々思います、居住環境が豊かだなと思いますが、それは長い歴史、住民運動の歴史と申していいでしょうね、これがあるんです。この言葉は抵抗があるかもしれません。しかし事実なんです。日本でもこれだけ大企業が、またそのダミーが地上げに出てきますと、住民が結束して自分の権利を守る運動を起こさざるを得ないんじゃないでしょうか。住民の運動と一体となった町づくりをやるという姿勢が必要だと思いますが、話し合いの政治とか国民皆様の声に耳を傾け衆知を集めとか言っておられる総理、この大胆な発想をおやりになるお考えはありませんか。
  264. 竹下登

    国務大臣竹下登君) 地上げ問題は別といたしまして、私は大企業というものを、また位置づけを考えますときに、そこには多数の勤労者が存在し、それぞれの人がそれぞれの地域で暮らしと活動の場としての位置づけというものがあろうと思いますので、したがって大企業だからいけないという考え方には基本的にまず立たないということを申し上げておきたいと思います。さて、それぞれの地域開発に関しまして住民の方々の意見を聞くという、聞く耳は行政の府にある者としては当然持っておるべき課題であります。ただ、先ほど来。革新都政とか、あるいは鈴木さんを名指しで私どもと同列の戦犯の一人であるとかという御指摘がございましたが、元来、人様をそれぞれ戦犯と指定するような手法は私自身はとらないことにいたしております。したがいまして、住民の意見を聞くということに対しましては、十分それがコンセンサスが那辺にあるかを認めながらこれに対応していくべき課題であろうというふうに考えております。
  265. 内藤功

    ○内藤功君 よくお聞きいただきたいと思うんですね。だれが戦争犯罪人と言いましたか。この地価高騰をもたらした責任者の一番重いのはだれかと。私が思うのにそうだと申し上げたんですから、その点はよく私の質問を理解してお答えをいただきたいということを申し上げておきます。  さて、十二月二十日の当委員会で私は、文京区小石川三丁目二十三、二十四番、約八千平米、フジタ工業系の藤和不動産が昨年四月、底地買いをして、百三十七世帯三百五十七人の住民に対してダミー業者を使って借地権の買い取り、明け渡しの攻勢をかけていることを指摘したのであります。古くからの地場産業、製本印刷関連中小企業に重大な支障を来す事態であります。また、この藤和不動産は借地権を買い取って、住民が明け渡しますと家を壊して、土地の周辺を高さ三メートルぐらいの鉄板で囲んで、美観、風致、通風、日照を破壊したわけなんであります。  先日総理はお見えになりませんでしたから、総理に私は写真をお見せしたいと思うんです。こういうぐあいであります。(写真を示す)裏が断崖絶壁、八メートルの高さですね。そして二万をこの三メートルの塀で囲まれますから、一階は完全に目隠しですね。火事のときにどうなるのかという問題です。  もう一枚。(写真を示す)これはひさしにぴったり三メートル余の塀がついておりますね。こういう事態は人道問題であるということで私は質問をした。建設省、これに対して厳正に対処をするという答弁をされたのでありますが、その後どういうふうにこの点については対処をされたかということを御報告いただきたい。
  266. 牧野徹

    政府委員(牧野徹君) 先生がただいま御指摘されました件につきましては、私どもが藤和不動産から事情をお聞きしたところでございます。  当該会社からは、日ごろから業務の遂行に当たりまして違法、不当な行為のないよう留意しているところでありますが今後とも十分注意してまいりたいというお話がございました。その際、私どもといたしましては、法令等に従い適正に業務を遂行するよう御注意を申し上げたところでございます。  なお、御指摘の、お示しになったその鉄板の件でございますが、これにつきましては、防災あるいは防犯あるいはごみの不法投棄の防止のために設置したという御説明がございましたが、その後、通風等を考慮してネットフェンスに切りかえることとして順次鉄板の撤去を開始したという連絡を受けたところでございます。
  267. 内藤功

    ○内藤功君 わかりました。  時間が迫ってまいりましたので、私は最後に、まだまだお聞きしたいことがたくさんありますが、都市計画のあり方についての基本問題を問いたいのであります。特に政府の姿勢をただしたい。私は、政府の政策によってつくられた事務所床不足、これによって引き起こされた商業地の地価暴騰がなぜ住宅地の方に暴騰の影響をもたらすのか、そうならないような仕組みをどうしてもつくることが必要じゃないのかというふうに思うわけなんです。  西ドイツでは、先ほどもお話がありましたが、連邦建設法で、新たな建築は地区詳細プラン、Bプランと申します。そうでありますが、そういう計画に従った建築でなければ許されないとされております。連邦建設法等でそういうふうに定められていると言われておるのであります。私はその意味で提起したい問題は、地域のあり方、将来像について、住民が合意した計画がないまま企業の思惑のままに虫食い的な開発が進行するのを許さない、こういう制度上、法令上の仕組みがどうしても必要じゃないか。これは欧米では今当たり前のことになっておるようであります。  そこで、現在の建築基準法や都市計画法には地区計画というのがあるんですけれども、これは住民の意向が制度上反映するような保証が全くない。東京都が作成しています地区計画案作成手続条例の例文では、これは各区に行きましても大体同じようにできていますが、一つは、住民参加については公告の日から二週間以内の原案縦覧ができること、二が、自治体の長が必要と認めるときにのみ説明会を行うこと、三番目として、公告の日から三週間以内の意見書提出しか定めていないわけであります。たった三週間で地域のあるべき姿、規制のあり方などについて住民の側から積極的な意見が出せるわけがありません、三週間以内に出せったって。まして住民の合意形成などは到底不可能だと思います。  例えば、港区では一昨年の二月に六本木、虎ノ門、赤坂地区計画というものが出されましたが、これは六日と七日に原案説明会を開いて、住民は初めてそこで聞かされる。そうして一週間たって二月十四日に早くも公告を行う。住民の合意などできる余地がない。こういう仕組みになっておるわけであります。私は、地域の将来像を決定すべき第一の権利というのは住民にあると思いますね。そういう考え方に立たなくちゃいかぬ。西ドイツのさっきの地区詳細計画決定では、詳細な情報が住民に公開される。住民の話を自治体が援助して論議を巻き起こす。時間をかけて合意できる案をまとめた上で議会で決定する。我が国の地区計画制度を、こういう徹底した住民合意の尊重のやり方に改善すべきだという提言をしたいと思うんです。  私はなおきょうは借地借家の問題、それから固定資産税の問題、都市計画税、相続税の問題について、大蔵、自治、法務各大臣にお聞きしたかったのでありますが、残念ながら時間の関係で、これは明後日の近藤議員の質問の中にゆだねたいと思います。今の点についての総理並びに関係大臣の御答弁を願いまして私の質問を終わりたいと思いますが、御答弁をお願いしたい。
  268. 越智伊平

    国務大臣(越智伊平君) ただいまお話がございましたように、我が国の都市計画決定につきましては、事前に閲覧あるいは意見書の提出、さらには必要に応じて公聴会、こういうことでやっております。先生お話しのように住民の意向を酌んでいないじゃないか、こういうことでありますけれども、そういうことではなく、やはり地域住民の方々の御意見を十分聞いて進めてまいっておりますし、今後もそういうふうにいたしたいと思います。欧州のやり方とはちょっと慣習その他違っておりますので、日本型で進めさしていただきたいと、かように思う次第であります。
  269. 竹下登

    国務大臣竹下登君) 基本的には担当である建設大臣からお答え申し上げたとおりでございます。  西独の問題につきましては、その実態の相違などというものがございますだけに慎重を期すべき課題だというふうに建設大臣当時に私も勉強したことがございます。ただし随分古い話でございますけれども、勉強したことはございます。
  270. 河本嘉久蔵

    委員長河本嘉久蔵君) 次に、三治君の質疑に入ります。三治君。
  271. 三治重信

    ○三治重信君 私は、民社党を代表して土地対策の質問をしたいと思います。  まず最初に、私たち野党で土地対策を検討したときの基本的な考え方として、土地対策の必要性を述べておりますが、それをかいつまんで申し上げますというと、結局この大都会または都市における地価高騰というものは、土地所有者と土地を持たない者との資産格差が非常に増してくる。これは非常に不公平、不平等を国民感情として増す。その結果、勤労意欲が大変衰えるんじゃないか。特に大都市のサラリーマンについては、るる質問者が申し上げているとおりでございます。それが一つでございます。  もう一つは、何といっても住宅を取得する価格、いわゆる国民の住宅取得能力というものが大都市においては望みがなくなってきた、こういうことに対してそれではどういうふうな住居の提供をやっていくか、こういう対策がかわりに述べられないと、地価がそのうちに下がるでしょう、こういうことではやはり大都会のサラリーマンの安心が得られない。  それからもう一つは、二十一世紀の高齢化社会を前にして、どうしても社会資本はいっときを許さぬわけです。しかし非常な地価高騰で公共事業費がえらいかかる、こういうものに対する対処の仕方、これについては具体的に私は後からまた論議を提供したいと思っておりますが、こういう三つの土地対策が基本的に必要だ、こういうふうに思っているところでございます。  国土庁長官以下関係大臣には御質問という通告をしておりますが、後でいろいろ具体的に御質問しますので、ひとつここでこういう国民感情やサラリーマンの状況を見て土地対策の必要性というものについてどうお考えになるか、厚生大臣総理にごく簡単に御答弁をお願いしたいと思います。
  272. 藤本孝雄

    国務大臣(藤本孝雄君) 今後の人口の高齢化に伴いまして、寝たきりなど介護を要する老人が急速に増加することが見込まれます。このため特別養護老人ホームであるとか、また老人保健施設であるとか、その整備が急務となっておりますが、現在の土地高騰はこれらの社会福祉施設の整備にとりまして極めて重要な問題であると認識しております。我々は大都市の用地取得に関しましては特例でもって対応しておるところでございますけれども、基本的には地価高騰が抑制されまして大都市における社会福祉施設の整備が確保されることを強く希望しているところでございます。
  273. 竹下登

    国務大臣竹下登君) 御指摘にありましたように、地価高騰がいわゆる資産格差を個々人に大変気持ちの上でも与えておるということは御指摘のとおりであります。そしてまた、社会資本整備の支障になっておる、これも否定しがたいことでございます。なるがゆえにこそ、今度内政上の最重要課題としての位置づけを行って、こうしてそれにまた呼応して国会等で御議論をいただき、それらを吸い上げながら環境を整えつつ、やっぱり強力な施策を行うべきものであるという問題意識の上に立っております。
  274. 三治重信

    ○三治重信君 我々野党三党の土地対策の必要性というものと政府のお考えと大体合致をする、こういうことでございます。  そこで私は、土地が上がるというのは、やはり売り買いが非常に起こるから、売るという人よりか買う人が非常に強いから土地が上がるんで、そういう公共投資やなんかをやっていく場合に、土地の売買がなくて公共投資ができるような方策というものを私は考えるべきだ、こういうことを思っているわけなんです。公共用地をずっと見ていると、やはり公共用地は、一定の公共事業がある、予算化する、そうするとそれまでに工事をやっていかなくちゃならぬからどうしても買う。そうすると、そこでその公共用地を買うのがその近くでは一番高い土地になりつつある。  じゃ、一般の公示価格で買うために土地収用法をどの程度活用しておるのか、こういうことについてひとつ、公共用地をそう地価よりか上げなくて買えるような方策というものを建設省はどの程度やってきたか。
  275. 福本英三

    政府委員(福本英三君) 先生御指摘ののは、公共用地につきまして利用権の設定方式を活用すべきではないかというお話だと思います。しかし、そのような方式には次のような問題があると私ども考えております。  例えば一つは、河川とか道路のような半永久的に所有権の利用が排除されることなどから所有者の同意が得られにくくて、また一方、買い取り請求がありますとこれを拒むことができないとか、あるいは例えばもう一つは、被補償者の生活再建の確保を図るためには借地権価格の補償をしなければいけないが、それでは不十分ではないか、借地権価格の補償では不十分ではないかというようなこと。あるいはまた、一財源対策からも、当初の経費の節減にはなりますが、借地権設定時の一時金とかあるいは後年度の借地料の財政負担も大きいというような問題などがあろうと思っております。したがって、一般的にはそういう方式は非常に困難だと思われております。しかし、事業用地を完全に取得する必要がない場合には、例えば河川の遊水地事業でありますとか、その場合には地役権設定方式をやれますし、あるいは導水路の事業につきましては区分地上権設定方式とか、あるいはまた、公団の住宅等でも借地方式というようなことなどを採用しているところであります。あるいはもう一つ大都市地域の道路の整備につきまして、人口密集地帯におきまして用地買収が非常に困難になってまいっておりますので、土地の道路としての利用と他の目的の利用とを調整する方策として、道路と建物とを立体的、一体的に整備する制度というようなことなどについて現在検討を始めておりまして、これをそういう格好でこれから考えていきたいというようなことを考えておる次第でございます。したがいまして、利用権設定方式によることが可能と思われるものにつきましては、実情に応じて採用してまいりたいと思っております。
  276. 三治重信

    ○三治重信君 今述べられたような努力はされておるわけなんですが、最近そういうことをさらに一歩進めて、土地信託をして公共用地を確保したらどうか、こういう提言が衆議院の建設委員会においても決議をされているし、我々参議院において国民生活の調査会の報告、これは先日、本会議でも自民党の代表が触れられたところでございますが、こういう公共用地のやつについて土地信託制度を活用したらどうか、こういう提言をしているところでございます。  それで、よく調べてみたら、建設省の建設経済局はもう六十一年四月に、学者やその他役人が集まって宅地開発、都市再開発での信託手法の活用に関する研究会、こういうようなものをつくって厚い本を出してもうやっておられる。だから、今御答弁になった、いわゆる本当の河川の敷地とか道路の敷地とかいうのと、建設省の経済局で言う宅地開発、都市再開発だから用途が若干違うけれども、これでもまだ一番土地が高くなる宅地開発や都市再開発についての土地信託の制度というものが利用できる、こういうことを証明しているわけなんですが、こういうふうな決議や報告があるのに対して政府としては積極的な対応をとっていただきたいと思うんですが、奥野長官、建設大臣、よろしくお願い申し上げます。
  277. 奥野誠亮

    国務大臣奥野誠亮君) 今建設省の事務当局からお答えがありましたように、いろんな手法を考えているようでございます。また信託報酬のお話もあったわけでございます。いろんな知恵を働かしながら、できるだけ仕事が進んでいくように、そして地価高騰を招かないように努力していかなきゃならないことは当然のことだと思います。
  278. 越智伊平

    国務大臣(越智伊平君) 用地の確保は非常に重大な問題であります。道路にいたしましてもあるいは河川、ダムにいたしましても、用地が取得できればもう八〇%仕事ができたと、こういう状態であります。  そこで、供出していただく方には非常に安いと言われ、その他の方は高いと言われ、これは非常に難しい次第でありますけれども、建設省といたしましては適当な価格、安くも高くもない価格、こういうことで決定をしてまいりたい、こういうふうに思う次第であります。  住宅用地の信託の問題等御意見をちょうだいいたしましたが、いろいろ勉強をしておりますので、今後よく研究をして進めてまいりたい、かように思う次第であります。
  279. 三治重信

    ○三治重信君 そこで、先ほどの答弁とも関連しますが、私はひとつ大胆に、新幹線の要望もありますし、道路公団の高速道路もあるし、大都市の都市計画の拡張のための道路用地、こういうようなものをやっていくと膨大な用地費がかかるわけなんですが、こういうものを今やっていかぬと先ほど厚生大臣がおっしゃったように、高齢化社会を迎えてそれに対する対応の公共施設ができないというために、案としてどうしてもやはり土地信託、そういう用地確保のための、市街地とかなんかは建設省の研究でできるわけなんですが、道路とか新幹線の用地というものはどうもやはり今の信託法では私は地主が喜んで提供しないだろうと思うんです。  より地主が喜んで提供するためには、国が立法で、そうして国が使う公共用地についての土地信託をきちんとした会社なり公団なり第三セクターなりで管理をする、こういう立法をぜひやるべきではないか。事実いろいろやってみても、地主は先祖代々の土地だから売りたくないというのが基本的な立場ですよね。そうすると、土地信託ならば一応その所有権は信託会社に移るけれども、しかしそれはいずれのときかいつでも売れるし、いずれのときかまた返してもらえるという一つの利益、それが道路用地になろうが河川用地になろうが、一たんなっちゃえばそれでそれは自分の土地だと、こういうことになれば私はそれはそれで、しかも年々きちんとしたレントが入ってくれば、買い上げるよりかいい方法じゃないか。  どうしてもそういうふうな大々的な公共用地が、こんなに地価が上がったので公共事業が進まない、また予算もできないというときには、こういう特別立法をやれば、金がなくても公共用地の取得が図れるのではないか。事実、私がいろいろの地主に聞いてみても、そういうのなら提供するのにやぶさかでないという人が大分あるんですが、どうですか。
  280. 奥野誠亮

    国務大臣奥野誠亮君) 今伺っていますと、一般の土地信託、それは土地を信託に出してそこへビルディンクをつくる。六十年だては今度は土地を返すと。だから、信託に出しやすいということで言われているんだと思うのでございます。今三治さんのお話を聞いていますと、信託に出す、しかしその土地は永久に返せないんじゃないかと思うんです。鉄道をやめてしまうわけにもいきませんし、河川を廃止するわけにもいきません。そうすると実際は売り渡してもらったと同じことになるわけですから、信託ということのメリットがちょっとなくなってくるんじゃないかという気がするわけでございます。そんな疑問を持つわけでございますけれども、なお研究はしていくべきだと思います。
  281. 三治重信

    ○三治重信君 そこで、今のお話の疑問は、結局信託会社は毎年の地代の支払いをやる、それから地主の相続だとか売りたいときにはその信託会社へ申し出ればいつでも公示価格で買い上げができる。それから、そういうためにそういう土地信託にやる場合には特別に譲渡所得も免除をするというふうな優遇措置も考えてやっていく。予算が二十年なり三十年なり均等化していくし、それで二十年たってまたさらにやりたいというなら再契約をすればいい、ごく簡単なこと。中身はいろいろ議論してやってもらってもいいと思うんですが、そういうことでもやらぬと土地問題で公共事業は行き詰まってくるんじゃないか、予算的にも行き詰まるんじゃないか。ぜひ土地の売買をやめて私は一番、十年前までは借地でやれと言っておったけれども、借地はいろいろ権利義務の関係があるし、だから一括して管理をする、そういう特別立法の信託管理会社をこの公共事業のために各道路は道路、鉄道は鉄道、それから地方は地方ごとにやるべきじゃないか。  その中でいろいろ今度のこの資料を見ると、いわゆる各府県や市町村にも土地を買う公団ばかりあるわけだね、土地を買い上げるばかりなんだな。だから、どんどんどんどん高くならざるを得ない。公共事業をやるためには土地が要るから、それで土地が一番難しいからといって四十四の都道府県にも土地の、土地開発公社といってもこれはみんな買うやつですよね、それから全都市町村まで含めると千四百五十五というような土地開発の、まあ開発というけれども土地買収だけの機関が県、市町村にできているわけだ。これを土地信託に切りかえれば、特別立法が要ると思うんですが、それは土地を買うよりそういう信託契約の交渉をやればいいじゃないか、こういう考え方ですが、いかがですか。
  282. 奥野誠亮

    国務大臣奥野誠亮君) 今も申し上げましたように、有限である場合には信託方式で信託してもらうという手はあるんじゃないか、こう思います。ただ、永久にその用途を廃止できないようなものについては疑問があるじゃないかということで申し上げたわけでございます。  いずれにいたしましても、今は土地を確保するために土地開発公社などがあるわけでございますけれども、その後はその土地に活力ある運用をしていきたい、そんなことからその土地を信託に出す、逆な信託ができるように先ほど立法、改正が行われたわけでございます。しかし、今の御提案の点も十分検討課題だと思います。
  283. 三治重信

    ○三治重信君 建設大臣、御意見を。
  284. 越智伊平

    国務大臣(越智伊平君) ただいま奥野大臣からお答えをいたしましたが、今の土地公社につきましては、各都道府県あるいは市町村、一年なり二年で仕事をしようと思いましても、用地の確保ができないから事前にそこで買っておくというような機能を果たしておられます。でございますから、我が建設省から言うと非常にありがたい制度であります。これを信託に持っていくかどうかの問題には、道路とか河川とかというのは少し難しいのではなかろうか。住宅の場合はその住宅の耐用年数、耐用年数といいましてもこれも先ほど来議論のありました借家権等のこともこれあり、今から勉強をさせていただこうと、かように存じます。
  285. 三治重信

    ○三治重信君 ぜひひとつ、私は素案なんだけれどもそんなことがいいんじゃないかという感じを非常に持っていますし、信託であれば財産として売買もできれば、資産としても持っていける。みんな公共団体が買ってしまうと国民の財産から離れてしまうんじゃないか、こんなことも考えての提案でございますから、今後検討していただきたいと思います。  それから、地価高騰とまた土地対策で問題になってくるのが土地課税の問題でございます。  これは各委員からも質問が行われておるんですが、私は、何と申しますか、六十一年の十月の税制調査会の答申には、土地の評価水準が公示価格や市場価格等に比べてかなり低い、適正から離れていると。だから、負担の公平の見地から見てこういうふうな土地の評価水準を上げて課税をすべきだ、相続税の土地の評価においても同様である、こういうふうなのが政府に対して出されているわけですよね。これに対して政府はどう対応してきたのか。自民党の税調ではこれの実現をやっていない。それから学者の中でも、評価額が急に上がるということに対する土地税制対応について、一つは、そう上げなくて、いまだ実現しない価値なんだからそれに対して課税するのはどうかという意見。だから、むしろ土地を売買したときに譲渡所得でこれは不労所得だから課税すべきだ、こういうふうな二つに分かれておる。  政府税制調査会は前者をとっているわけなんですが、私も土地の譲渡課税だけで土地の対策をやるのは非常に安易過ぎるんではないか。だからどうしても、もう一つ税制の根本改革からいっても、大宗である資産課税、よく税制で言われる所得、資産、消費、この三つを税源として均衡を持って税制改革をやるべきだ、こういうことが言われるわけなんです。そのうちの資産課税を、こういうふうに土地が高くなったから、それは負担が多くなるから全然上げないでおこうというやつは、やはり負担の公平からいって資産課税を、国民の資産価値が上がったりもうけの対象として非常に上げているということに着目すれば私は上げるべきじゃないか、こういうふうに思うんですが、大蔵大臣と自治大臣の御意見を。
  286. 宮澤喜一

    国務大臣(宮澤喜一君) 実現しないいわゆる含みに対して課税をするということになりますと、それは結局所得課税というよりは保有課税に私はなるのではないかと思います。そういたしますと、実現しておりませんから税率についてはおのずからやっぱり制約がありまして、現在固定資産税が一・四でございますか、そのほかに特別保有税のようなものがございます。それすらもなかなか高いという世評が多いので、その上に保有税というものを取れるかという、私はやっぱり問題があるのではないかと考えております。
  287. 前川尚美

    政府委員(前川尚美君) ただいま未実現利益といいますか、そういうものに課税ができるか、資産課税としてできるかという点について大蔵大臣から御答弁がございましたけれども、私どもは地方税の分野で考えてみましても、いわゆる固定資産税として未実現利益といいますか、含み益的なものを対象にして課税するというのは、現在の固定資産税の性格から考えてこれはなかなか難しい問題があるのではないかというふうに考えております。  それから、先ほど御指摘がございました、評価額を上げて課税をすることによって均衡を図っていくべきでないかという御指摘もございましたが、この点については、委員御承知のとおりでございますが、固定資産税におきましては三年に一度固定資産の評価がえを行いまして資産間の評価の均衡、あるいはそれに対する税負担の公平ということの確保を図ることといたしておりまして、明六十三年度がまたその評価がえの時期に当たっているということで、現在市町村でそういった観点から作業をいろいろ進めさしていただいているというところでございます。  それから資産課税に比重を置いた地方団体の財源構成ということを考えていくべきでないかという御指摘もございましたが、地方税につきましては住民に密切な関連を有します行政サービスを行う地方公共団体の基本的な収入であるということでございますので、従来から収入に安定性、伸長性があること、あるいは地方団体の行政との関連性、応益性といいますか、そういったものがあること、あるいは課税客体が地方団体間で偏在していないこと、そういう特性を持っていることが地方税としては望ましいというふうに考えられております。  それで、現在どういう形になっているかと申しますと、これは昭和六十年度の決算でございますけれども、地方税収のうちそれぞれ所得課税、これが全体の五八%、消費課税あるいは資産課税合わせまして残る四二%という姿でございますが、かなり前になりますけれども昭和三十年の時点で比較をいたしてみますと、所得課税が四七%、消費課税、資産課税合わせまして五三%ということで、いわば経済社会の変化とともに所得課税のウエートが地方税においても高まってきている、一方反面として消費課税あるいは資産課税においては低下しているという実態がございます。  私ども、これから高齢化社会の急速な進展を控えまして、やはり経済の活力を維持しながら長寿福祉社会をより確実なものとするために、地方税の分野においても、地方税の特性に配慮しながら所得、消費、資産等の間に均衡のとれた税体系を確立することがぜひとも必要であるというふうに考えておりまして、現在税制調査会においていろいろ望ましい税体系のあり方について御審議をいただいているところでございますので、ひとつその結論を踏まえて対処してまいりたいというふうに考えております。
  288. 三治重信

    ○三治重信君 大蔵大臣の御答弁で、みずから税制調査会の答申を否定するような御答弁なんですが、土地の急激の値上がりに対することまで三年に一遍の土地の評価額を決めてそして固定資産税をかける、先ほど特別保有税とかなんとかおっしゃったけれども、私は固定資産税、正常なことを言っているわけなんで、特別対策の方じゃなくて正常な固定資産税のやつ。ただ問題は、三年ごとに評価をし直してやるというこの原則を曲げて、特別に一・五上がったやつを一・一にしたり一・三上がったやつを〇・九にしか上げないというように今の現行法制を曲げてやるのはどうか、こういうことなんですよね。  だからそれは、今から私も申し上げますが、大蔵大臣のおっしゃるように、個人の負担が急激に増加するということについてどうかと思う、それは非常に必要なんです。だから私は、地方税の中で固定資産税と住民税との割合が逆転してきちゃっているわけなんですよね、だから住民税を下げて、固定資産税は上がるけれどもそのかわり住民税を下げて、全体としての各個人の負担、各家庭の負担はそう変わらぬようにやらなければ、税制の根本改革、不公平是正といったって、それはもうみんな取れるところから取るというばかりになるじゃないか、こういうことから私は申し上げているわけなんです。  税の不公平の是正からいっても、私はこの地方税の固定資産税というものは今の現行法を少なくとも最低限は守っていって、上がったから下げてやるということも若干は必要かもしれぬけれども、それよりか、勤労者の住宅とかそれから生活保護世帯のやっとかいうようなものは住民税で下げていって、それから家屋税を下げていく。土地が上がったのは家屋税を下げていく、こういうような全体の負担の変化というものを今度の税制改革でぜひ考えてやっていかぬと、資産が急に上がると税率を下げるというのは資産課税と所得課税との非常なアンバランスをますます助長するんじゃないか、こういう見地からお尋ねをしたわけでございます。  急激な負担についてサラリーマンやなんかが持ち家を放したりローンができなくなったり、こういうことで我々の党もみんな、そういう意味において固定資産税を上げるべきでないという意見を出しておりますが、そこをひとつ固定資産税を上げた場合には個人住民税を下げる、こういうふうな代替的な措置を考えていかないと資産課税というものが貫けないし、所得課税と資産課税との均衡が破れてしまってきつつあるので、その是正が必要ではないか、こういうことを申し上げているわけなんですが、大蔵大臣再度ひとつよろしく。
  289. 宮澤喜一

    国務大臣(宮澤喜一君) ただいまおっしゃっていらっしゃる意味は私よくわかりました。ただ、これは私がお答えするのはちょっと越権でございますので……。
  290. 三治重信

    ○三治重信君 そこで今度は具体的に、固定資産税の急激な上がり方について、個人住宅はなかなか上げにくい、私が今言ったみたいに住民税を下げるといっても急には間に合わぬかもしれぬ。少なくとも固定資産税は私はそういう個人住宅用を配慮して上げないということに、ただそれと一緒に法人も全部それから遊休地も全部上げぬようになっちゃうわけですよ。特別土地保有税をかけているじゃないかと言っているが、中身を見るとほんの特殊なやつだけしかかかっていない。だから私は、少なくとも個人住宅用を現状で維持するならば法人はきちんと規定どおり固定資産税を上げたらどうか、こういうふうに思うんですが、自治省、ひとつお願いします。
  291. 前川尚美

    政府委員(前川尚美君) 固定資産税において個人の資産と法人の資産とを区別して課税すべきではないかという御趣旨の御質問かと思いますけれども、固定資産税につきましては、従来これは住民の生活環境を維持向上させる施策を行っております市町村の基幹的な税源でございまして、資産の保有と市町村の行政サービスとの関係に着目をして、いわば資産価値に応じて課税されるいわゆる物税として構成されているという、固定資産税としての固有の性格がございます。そういう性格にかんがみてみますと、資産の所有者が個人であるかあるいは法人であるかということによって、例えば評価額を変えたり、あるいは税負担に差を設けるということはやはりいかがなものかというふうに考えております。
  292. 三治重信

    ○三治重信君 これは議論になるけれども、ニューヨークやほかの外国ではみんなそうやっているから言うわけなんで、大都会の中で、先ほど共産党の質問者からもあったけれども、それだけ高度利用してやれば、人がたくさん集まればそれだけ地方公共団体からの特別サービスを受けているわけなんだから、特別の費用負担を固定資産でやるべきじゃないか、こういうのは理屈上出てくるのじゃないか、こういうふうに思います。  それから新聞で見ると、譲渡所得税の源泉課税の問題や、買いかえの用地の譲渡課税の減免のやつを再検討するというふうなことが新聞に出ておるんですが、これは奥野大臣二つとも再検討するということでいいんですな。
  293. 奥野誠亮

    国務大臣奥野誠亮君) 今検討をお願いしていますのは、土地の買いかえ特例、都心土地を売って郊外にそれだけのお金を投じて土地を買い求める、それが土地高騰に拍車をかけているのじゃないか、青天井でいいものだろうかどうだろうか、これが一つの検討課題でございます。  もう一つは、土地を売ると譲渡所得が生まれてくる、それに対して相当な税負担がかかってくる、それなら土地はそのままに持っていたい、そういう方々に対しまして譲渡所得課税の特例を開くことによって土地を提供してもらい、住宅用地、事務所用地に使えるようにならないものだろうか、これも検討課題としてお願いしている、この二点でございます。
  294. 三治重信

    ○三治重信君 その中で、検討していただくのはいいんだが、一般的に民間のやつまで免税にするというのはまた資産の軽課になるので、公共事業の公共用地だけぐらいは譲渡所得を、ゼロなんていうのはおかしいが半分軽課するというのはいいけれども、民間のデベロッパー、民間のやつはぜひ譲渡所得は現行のまま置いておいてほしい、こういうふうに私は思っております。  それから、時間がないからちょっと飛ばしまして、土地利用の関連立法について、これは今度土地の関連立法を調べてみると実にたくさんある。殊に私は一番入り口でおかしいなと思うのが都市計画法と農地法。  御存じのとおり、大問題になって大体落ちついたんですけれども、都市計画市街化区域内の農地の問題と、それから最近、この間のNHKの土地に関する大討論会の記録を見ると、やれ市街化区域内に農地を千八百も持っているじゃないか、法人は千四百も持っているじゃないかというような議論になっているんですが、どこにあるかという議論がなかったんですね。それで調べてみると、大法人が持っているのは調整区域でえらい持っている。それから農地は市街化区域の中、町のど真ん中に持っている。この差が非常にあるわけなんですが、こういうようなのはひとつ線引きを変え、そうして調整区域のやつは、いろいろの問題はあろうけれども、土地提供からいくというと開発計画を指導すればできるというようなやつは勇敢に緩和したらどうか。  それから、農振法による農振地域指定を調整区域内で随分行われている。これは農林大臣ですが、行われている。こういうことになっているんですけれども、農振地域でやって、大法人や何かが持っているとこれはまた農地の転用が非常に不可能かと思うんですが、こういうような調整を、奥野大臣、しっかりやってもらいたいと思うんですが、どうですか。
  295. 奥野誠亮

    国務大臣奥野誠亮君) 御指摘のような問題で、相矛盾した法制のもとに置かれている土地、これをさばくのに大変暇がかかっている。中央でいろいろ話し合いをしているようでございますけれども、私はできる限りもう地方分権、都道府県知事に権限移譲してもらって早く片づけてもらう、それが土地開発も促進する一番の力になるのじゃないかなと、こんな思いを抱いているところでございます。
  296. 越智伊平

    国務大臣(越智伊平君) 調整区域内の所有地の開発でありますが、これはしばしば言っておりますように、線引きの見直し、これはできるだけ早くやりたい。それから、五十八年に御承知のように政令改正されまして二十ヘクタールから五ヘクタールになった。どちらかといいますと開発をさせようという方針でこういうことにしたのでありますけれども、各都道府県では、長い間規制をしておりましたから頭の切りかえができていないというのが実態であります。これをよく指導いたしまして、五ヘクタール以上のものについては速やかに各都道府県知事の認可をするように指導してまいりたい、かように思う次第であります。
  297. 三治重信

    ○三治重信君 それからもう一つは、三大都市圏に対する立法がたくさんあるんですが、これは実際どういうふうに機能してきたんですか。法律はつくったけれども、三大都市圏はこの法律によってどの程度整備されたのか、ひとつごく簡単に。
  298. 北村廣太郎

    政府委員北村廣太郎君) 三大都市圏の整備、それぞれ基本的な事項を定め、また個別的な事項にも立ち入って定めておるわけでございますが、特に効果があったと言えますのは工場制限法がございます。これによって、首都圏の既成市街地それから近畿圏の既成市街地につきましてこの二十年間に、例えば例示をいたしますと、首都圏では全国に占めます工場の工業出荷額が二〇%から一〇%に低下しております。それから大学生の数がこの十年間に三十数%から二十数%、一〇%ほど低下をしておりまして、その点では集中排除に効果があったかと考えておる次第でございます。
  299. 三治重信

    ○三治重信君 私は都市計画で中核的なことは、再開発にしても何にしても、低層住宅や商業地の改革でも、結局は区画事業をやらぬことには都市の再開発も改革も近代化も進まぬと思うのですが、この区画整理事業をひとつもう少し見直して進める方法はないか。それでこの区画整理の事業の中のいわゆる地権者の統合のやつは、先ほど言った建設省が研究している地権者同士の土地信託でやれば非常にスムーズにいくという実例も出ている。区画整理に大幅資産税を軽くすることなくしてこっちへ使っていけば再開発ができると思うんです。区画整理と土地信託との連携をやっていくと非常にスムーズにいくと思うんですが、どういうものですか。
  300. 木内啓介

    政府委員(木内啓介君) 先生最初に御指摘のように、市街地の中では、例えば高層化あるいは容積率を緩和するというようなことがありましてもなかなか区画が小さくて、インフラが区画街路等が少ない場合にはそういった方向ではいけないわけでございますので、どうしても区画整理あるいは再開発ということを先行させねばならないということになるわけでございます。そのために、区画整理事業等を行いますと減歩という問題がございまして、先生年来御指摘の滅多を下げる、あるいは区画整理の事業費に対してもう少し思い切った相当な補助をしろというお話、御指摘が再々ございましたけれども、私どもとしましては、例えば既成市街地の中において幹線道路用地をとる場合には先行的に用地を取得して渡歩の緩和措置をするとか、今までいろんな措置をしてまいりましたけれども、これからも助成はできるだけ強化してまいりたいというふうに考えているわけでございます。  もう一つ指摘の区画整理に土地信託制度の活用ができないかという点につきましては、私ども検討しておりまして、現在千葉にモデルケーススタディーを行っているところでございまして、かなりいけそうな感じがしておりますので、これから区画整理に信託を採用するという方向でPR活動等を推進してまいりたいと考えておるところでございます。
  301. 三治重信

    ○三治重信君 ひとつ農林大臣にお願いするんですが、今の市街化区域内の農地のやつは一応落ちついたわけなんですが、三大都市圏の中でいわゆる転作用地の処理を、転作をもっと三大都市圏へ集中して、本当の農業県の転作を少なくして、そしてそういう三大都市圏だけには転作用地を宅地化しても結構だと、こういうように転用基準を緩める、こういうような方向を検討してもらいたいと思うんですが、どうですか。
  302. 佐藤隆

    国務大臣(佐藤隆君) お答えいたします。  地域農政ということで進めておりますけれども、今おっしゃるような三大都市圏、これは線引き政策などとの整合性、こういうものを当然考えなきゃならぬと思いますし、今米の問題をちょっと触れることになるわけでございますけれども、大体飯米農家が多うございまして、例えば減反政策、生産調整、これの対象にいたしましても飯米農家が多いものですからそう実効は上がらない。しかし、さっき申し上げるように、線引き政策との整合性というものを考えながら努力してまいりたい、こう思っております。
  303. 河本嘉久蔵

    委員長河本嘉久蔵君) 次に、野末君の質疑に入ります。野末君。
  304. 野末陳平

    ○野末陳平君 土地問題に入ります前に、相続税と絡めまして路線価のことを先に質問します。  来年六十三年分の路線価ですけれども、ことしに比べてどのくらいの上昇率となりそうか。それについて国税庁から……。
  305. 日向隆

    政府委員(日向隆君) 六十三年に適用されます路線価につきましては、委員御承知のとおり、本年七月一日現在における地価動向、つまり地価公示価格、精通者意見価格並びに売買実例価格等をもとにいたしまして、仮にその土地を相続税納付のために売り急いだといたしましてもその評価額が売買価格を上回ることのないようにかために評価いたしまして、大体土地の公示価格の七割ぐらいを目途に評定していることにしているわけであります。  したがいまして、現時点で六十三年に適用される路線価がどのくらいになるかということについて具体的な計数を申し上げることは困難でございますけれども、国土庁が発表いたしました本年七月一日現在における基準地価格の対前年上昇率、これを見ますと全国平均で九・七%・東京圏、これは東京都ほか神奈川県、千葉県、埼玉県、茨城県の一部地域でございますが、ここで五七・五%となっておるわけであります。  先ほど申し上げましたように、昭和六十三年分の路線価は本年七月一日におきますこのような地価動向等を参考にしつつ評定することにしているわけであります。
  306. 野末陳平

    ○野末陳平君 今お答えの中にありました数字を当てはめますと、六十二年分の路線価は、去年に比べまして東京で約六三%、それから全国平均で二〇%でしたから、今のお答えから推測しますと六十三年分の路線価も多分このあたりに行きそうである。ただ、東京の場合でいえば、東京の二十三区よりもむしろ多摩地区、あるいは横浜とかいわゆる首都圏ですね、そちらの方の路線価の方がぐっと二十三区よりも上昇率が高そうである、そんなような見通しを立てるんですけれども、大体この程度で妥当だと思いますか、国税庁に聞きますが。
  307. 日向隆

    政府委員(日向隆君) 東京圏におきます地価の上昇の実態につきましては、私どもよりもむしろ国土庁の方が専門でございますが、私どもが路線価の策定に際しましていろんなデータを見ておりますところでは、今委員が仰せになりましたように、初めのうちは都心部の地価高騰でございましたが、それがだんだん周辺地域に波及していったということでございまして、周辺地域に波及していったというその実態は六十三年分の路線価の策定に当たって反映されてくる、かように考えております。
  308. 野末陳平

    ○野末陳平君 そこで、いわゆる首都圏において来年相続が発生しますと住宅地、商業地を問わず相続税の負担というものが非常にきつくなるんですが、ことしは二十三区を中心とした相続が一番悲鳴を上げた。ところが来年は、今の政府委員の答えにありますとおり、来年はその周辺の方の路線価の上昇率の方が高そうですから、となると相続税で悲鳴を上げるのは二十三区はもとより周辺に及んでいく。ですから、相続税でダメージを受ける人、あるいはおびえる人、不安がる人というのがかなり広範囲に広がっていく、こういうような心配がこれは当然出てくるわけですね。  そこで大蔵大臣にお聞きしますけれども、そういう心配を踏まえまして、私、前から主張しておりますけれども、相続税の改正案の提案がいつになるか気になってしようがないんですが、いつごろになりそうですか、大蔵大臣
  309. 宮澤喜一

    国務大臣(宮澤喜一君) それは実は関係者の間におきましてまだ最終的な結論が出ておりません。と申しますのは、現在の相続税の税率、その他の控除等々が昭和五十年のものでございますので、改正をいたしますと相当大幅に大きな改正をする必要があると思われます。そうでないとまた意味がなかろうと思います。ということは、それが相当大きな税源を必要とするということと、たまたま租税制度の抜本改正を考えております資産、所得、消費という、その中で資産のこれ大宗をなすものでございますので、そういうこととの関連もあるので抜本改正と一緒でないと無理ではないかという有力な考え方がございまして、その辺のところが最終的には結論が出ておりません。
  310. 野末陳平

    ○野末陳平君 そうなりますと、かなり無理だという意見が有力になってまいりますと、これはかなりおくれるであろう。おくれるということは、抜本改革は来年の秋というようなお話も聞いておりますから、もし相続税法の改正も来年の秋ぐらいにということになりますと、本会議大蔵大臣の答弁にありましたとおり――さかのぼるということがちらっとありましたね、遡及してくるというか。ですから、仮にさかのぼるのであればどの辺までさかのぼるか、その範囲を早いうちに明示していただかないと、相続税法改正がただいたずらにおくれているというのでは不安をますます募らせる、そう思うのでひとつ、この成立が仮に来年の秋ぐらいということになりますと、一月一日までさかのぼるのか、それとも四月ごろなのか、大体その辺はアバウトで結構ですけれども、どうですかね。
  311. 宮澤喜一

    国務大臣(宮澤喜一君) というわけでございますものですから、もし遅くなったときには今野末委員の言われるような問題が起こるんじゃないか、そういうときにはやはり遡及を考えなければいかぬのじゃないかなということを私が申し上げたことで、関係者の間で出過ぎたことを言うなといろんな意見が実は出まして、私もちょっと申し上げにくい立場になっておるのでございますが、いずれにいたしましても、もしかなりおくれるようなことになりますと、やはりそれはそういうことを考えておきませんと納税者にフェアでないんではないかという気持ちを持っております。  そんなことでございますので、どこまでということは今御容赦を願いたいのでございますが、なるべくならばそういう気持ちを多くの方に、つまり適用できるようにしたいなということを私は思っております。
  312. 野末陳平

    ○野末陳平君 今範囲を明示というところまで焦ってはいないんですが、しかしいずれにしても近いうちにそれをはっきりさせないと、相続税問題は高齢者の方が非常に心配し不安に思っておりますから、ですから、できるだけ早い時期に、出過ぎた発言じゃなくて僕は当然だと思うんですけれども、明示してほしいと思うんですよ。  大体来年の相続を仮に考えますと、現実問題として、相続が発生しますと半年以内に申告を出す。その場合に、秋ごろは減税の法案が成立しそうだなんということになりますと、どうしたらいいんですかね。つまり半年の間に一回出して後で修正をするのかやら、それとも何となく待っていてずるずるした方が得なのかやら、しかもこの遡及の範囲いかんによっては、人によっては年の途中で運不運が大きく分かれまして、減税になる人とならない人があったりということが当然起きると思うんですよ。だから、年のかわりだったらばこれは当然今までの相続税の改正につきものですけれども、今回秋になりますと年の途中でそういう運不運とか負担の差が出るということはどう考えても好ましくない。  そんなことで総理大臣、こういうわかりにくい状況を踏まえて相続税法改正を考えるのはちょっとまずいんじゃないか。もっと単純に、はっきり言いますれば六十三年度の改正でこれは切り離してやるべきだ。財源の問題を云々しておくらせていいのかどうか、そこが一番お聞きしたいところなんです。だから六十三年度にやってほしいと思うんですが、どうですか。
  313. 宮澤喜一

    国務大臣(宮澤喜一君) ただ、こればかりはなるべく長生きをしていただく方がいいということのところは、だからという問題はないのでございますが、今おっしゃいましたことは、ただ私思い当たりますのは、確かに申告の時期が半年でございますから、そうして納付になる。そのときに、後で更正すればいいとは申しましても資産処分をされるかもしれませんね、納付のときに。そうしますと、これは確かにちょっといかにも納税者にお気の毒でございますので、そうなりますと今度は申告期限の六カ月というものも場合によって考えておかないと野末委員の御心配のようなことが起こるかもしれない、その辺のことはよく考えさせていただきます。
  314. 野末陳平

    ○野末陳平君 これはどうもこの相続税問題は国民の数からいえばそれほど多いものじゃありませんから、第三者から見ると何を慌てて大騒ぎしているというふうに思われるようなんですが、しかし当事者にとってはこれは大変なことになりますので、今大蔵大臣の答弁の中にありましたようなことも事実起きる。しかし問題は、長生きしてもらえば確かに相続は発生しない、改正まで頑張れればいいんですけれども、不安になってきますと長生きだってできない。いろんな方に相続税問題で聞きますと、あるいは相続問題で聞きますと、不安におびえているんですね。もう頭が痛くなっちゃって不安で夜も眠れないと。オーバーかもしれませんがそういう状態にある。  これが去年そしてことしから来年にかけて路線価の上昇という、しかも相続税法の改正はおくれているという、ここがやっぱり僕は一番まずいと思うんですよ。ですから総理大臣、要するに不安をこういうふうに与える、いたずらに高齢者の方を不安がらせるというところ、それを取り除くのが政治の急務だと考えるので、いろんな事情があっても切り離して六十三年度でやって三月に成立させなきゃいけないだろう、こう思ってお願いしているんですが、どうでしょうか。
  315. 竹下登

    国務大臣竹下登君) いわゆる相続税の問題を議論しますときには、まず日本の相続税の基本的理論はどこにあるだろうかというと、よく西郷南洲の児孫のために美田を買わずというところに存在すると。したがって、この相続税の問題というのは基本の問題にさかのぼるからただ特別措置だけで対応すべき性格のものではない、こういう議論が一つございます。それからもう一つは、これは野末さん百も承知の上のことでございましょうが、将来やって仮に遡及をするといった場合に、当初予算に対する財源がいずれ更正される可能性があるんじゃないか、こういう議論もまた誘発するだろうと思うのであります。  かれこれ考えて、あなたの場合は、六十三年度税制のあり方についてという答申をどうせいただくわけでございますから、抜本策とは別に六十二年度税制のあり方についてという中でこれは議論をちょうだいして結論を得るべきだろうと、こういうお考え方だと思いますが、何分相続税ということになりますと、これは五十年に改正してから五十一年以来一遍もやっていないわけでございますだけに、やはり相続税の基本の議論からおきますと、途中で中小企業承継税制というのがありましたものの、これは私はちょっと、六十三年度税制のあり方についてというところの答申をいただけるよりも、やはり抜本策の中に入るのかなと。予見を申し上げないことになっておりますから、税制調査会には予見ではございませんが、感じとしてはそんなような受けとめ方をいたしております。
  316. 野末陳平

    ○野末陳平君 私の個人的な感情を言えば、相続税を切り離した方が抜本的な税制改革にはプラスだと見ているわけなんです。それこそまさに総理のおっしゃる予見ですけれども、やはり相続税は国民にとってはいわば減税ですからあめのようなものですが、これといろいろ問題のある間接税その他を全部ひっくるめて、セットにして一括処理していくというようなやり方がすなわちもう予見を与える、国民には。間接税は怖いものと思うかもしれないし、僕は間接税に対する正しい理解をする妨げとなると思うんです。だから、はっきり言えば、相続税を切り離す方が、後でいろいろな問題はあるにしても、しかし今後の税法大改革に向けてはプラスだ、こう考えているんで、むしろ好意的にお話ししているわけなんです。  食い逃げして相続税だけとかそんなことは絶対思っていませんけれども、それにしてもちょっと見解が違うので、余りにも消極的なのであえてお聞きしますが、相続税というのは一回こっきりだし、それから特に土地の問題がここまでクローズアップされているんですから切り離してもよかろうと思うんですが、後で財源の問題とか予算の問題、それが相続税を六十三年度でやらないという理由なんですか。
  317. 宮澤喜一

    国務大臣(宮澤喜一君) 先ほど二つ申し上げましたんですが、一つは相当大きな財源を必要とするということ。もう一つは資産、所得、消費というそういうバランスをとって税制の抜本改正を考えたいと存じまするにつきましては、そういう関連において御提案をし、御審議をいただいたらと、こういう議論が有力だと、二つ理由がございます。
  318. 野末陳平

    ○野末陳平君 わかりました。それでは、今後どうなるか、それはまだきょうの時点でははっきりしたお答えがいただけないわけですから、仮に来年の秋ぐらいまで相続税法の改正が延びたとしても救済措置はしっかりとしておく。それも後になってから言うのではなくて、できるだけ早い時期に、来年になったらすぐにでもある程度のアバウトな範囲で救済のめどを国民に知らす方が不安を取り除くことになるから、それだけをお願いする、こういうことにしておきましょう。それ、いいですね。  さて、土地の問題なんですけれども、これはきょうもいろいろ議論が出まして、いろんな角度から対策は必要だししかしまだ難しい面もあると痛感していたんです。国土庁長官にお聞きしますが、そもそも今回の土地対策ですが、全国の指標である東京の事情に限ってお聞きしたいと思うんです、余りにも格差がありますから。東京地価ですが、この上昇を抑制するというのが政府の目的なのか、それともこれをかなり厳しく下落させる、どちらに政策の重点を置かれるのか、それはいかがでしょう。
  319. 奥野誠亮

    国務大臣奥野誠亮君) 今の都心地価高騰は高過ぎると思っています。幸いにして少し下がりぎみになってきているわけですけれども、なお下がるべきである。そうでなければこの東京地価と比較して地方の地価高騰を続けていく、こう思っているわけであります。
  320. 野末陳平

    ○野末陳平君 まさにそのとおりでして、東京地価を頭に置いていくと地方都市はどこでも安く感じちゃうから東京のお金がみんなそっちへ行っちゃうという、そういうおかしな現象が起きていることは事実です。  そこで大臣、今東京地価は下がりつつある、そのとおりですが、これから政策がもっと効いてくるわけですから、どの辺まで下がるのか、もちろんこれは異常とも言えるあのピーク時に比べてですが、東京地価はどの辺まで下がるというふうに見通されているか、その辺をひとつ、ここ半年、一年の間に。
  321. 奥野誠亮

    国務大臣奥野誠亮君) 日本における東京の地位というものは私は変化してきていると思うんです。地位の変化はやはり土地価格の変化にもつながっていくと思うんです。ですから、どれが妥当であるかということは、これは安定したときの地価を見るより仕方がないと思います。ただ、言えますことは、昭和十年から昭和五十七、八年ぐらいまでは、全国を見ておりますと地価は名目国民総生産の上昇率と大体合っているんです。それからがたっと変わってきているわけですから、これはまさに異常だと、こう思っているわけであります。  どの辺で落ちつくかということは、今申し上げましたいろんな事情が重なってきますので、予断をすることは適当でないと思っております。
  322. 野末陳平

    ○野末陳平君 落ちつくのが高値に近いところで落ちつかれても困るんで、そこでどういう政策をこれから打たれるかというところに関心を持つんですが、総理にお聞きしますけれど、東京土地は一年でもう二倍以上なんという異常なのが確かにあったですね、これは取引実例であったわけですから地価と言えるかどうかわかりませんけれども。  そういう異常なのはほうっておいてもある程度はメッキがはげますよね。しかし、政策よろしきを得ればさらに下がっていかなきゃおかしいと僕も思っているわけです。そこで、総理認識としては、東京地価は異常なるピーク時に比べて何割ぐらい下がったらばこれが政策の成功と言えるのか、地価が安定した、落ちついたと言えるのか、その辺のめどといいますか認識といいますか、それをちょっとお聞かせいただきたいと思うんですよ。それがわからないと、いやそのうち下がるだろうと言われてもちょっと国民も安心しないと思うんですね。
  323. 竹下登

    国務大臣竹下登君) 基本的には、需給関係等において決まる性格のものでありますだけに、中長期的に見るとやはり一極集中から多極分散へという姿が定着する時期であろうと私は思っております。したがって、私も書き物にしたり答弁するときにいつも困りますのは、いわゆる適正価格という言葉までは使えますが、適正価格とは何ぞや、こう言われたときにお答えする当面の自信がない。あと一年でどれぐらいになるか、半年、一年と言われますと、それだけの自信がない。奥野長官からもお話がありました名目成長率も一つの問題だ、それからまた定期預金金利というものも一つの水準だ、各物価指数等において昭和五十五年というものを経済企画庁ではよくとられますので、それも一つの基準がなということで、本当は一生懸命勉強しておるというのが現状でございまして、総じて言って、片や五七・四%、地方は一・数%というこの格差についての異常性は問題意識を等しくいたしますが、幾らまでは下げ得るという目標を設定するだけの自信はきょう現在私は持っておりません。
  324. 野末陳平

    ○野末陳平君 お答えを聞いていますと、目標を設定した方がむしろ政策を立案しやすいのかなと思ったりするんですが、先ほどから志苫委員のときにも出ていましたけれども、ひとつこの適正な価格水準というものを、東京の場合に限って結構ですから、それをやはりある程度政府の方で明確にして打ち出してみるということは必要なんじゃないでしょうか。そういうことで、土地対策というのはこういうところを目標に政府はやっているんだなと国民も思うと思うんですよ。  私は、経済企画庁の試算なども参考にしますが、この異常なる高騰をする以前の状態、ですから五十八年から五十九年ごろの値段がやはり適正なところじゃないか、レベルがですね。だから、そこへ向かって価格が下落するような政策をどんどん積極的にやったらどうかなと思っているわけなんです。そこでお聞きしますけれども、一例ですが、政府として目指すべき適切なる地価の水準というものを東京でモデルケースのようにして設定して、その目標に向かってこれから政策を進めていく、これはどうでしょうか、総理
  325. 奥野誠亮

    国務大臣奥野誠亮君) 先ほど私が申し上げましたように、東京日本の中における地位が変化してきている、東京の中でもまたいろんな場所によって変化してきているわけでございます。今おっしゃいました五十八、九年ごろ、それまでは先ほど私が申し上げましたように名目国民総生産と大体歩調を合わせて上昇してきておったときでございますから、それをめどにするんだということも一つの考え方でございましょうけれども、いろんな要素がございますので、私たちがそれを目標にするんだと言い切るわけにもいかないんじゃないか、いずれにしても今の状態は適当でない、なお一層引き下げる努力をしていかなきゃならない、こう思っているわけでございます。
  326. 野末陳平

    ○野末陳平君 国民は、上昇を抑制するということよりも、地価をもっと下げてほしいということを望んでいるように思うんです。そこで、各大臣によって、あるいは有力政治家によって適正な価格水準がばらばらですけれども、できるだけこれは政府の方で統一して、これを適正と見る、ここまで頑張ってみるということを示した方が国民が納得するであろう、そう思うので、その点を研究していただきたいとお願いをして、これで質問をやめたいと思います。どうもありがとうございました。
  327. 河本嘉久蔵

    委員長河本嘉久蔵君) 本日の質疑はこの程度にとどめます。  次回の委員会は明後九日午前十一時に開会することとし、本日はこれにて散会いたします。    午後六時散会