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沢田一精君
産業と
資源エネルギーに関する諸問題の実情
調査のため、去る十一月十一日から十三日まで三日間にわたって行われた
委員派遣について御報告申し上げます。
派遣委員は添田理事、
宮島理事、
及川理事、
馬場理事、神谷理事、橋本理事、
小野委員と私、
沢田の計八名であります。
まず、派遣日程初日は、熊本県テクノポリスセンター及び本田技研工業株式会社熊本製作所を視察した後、熊本県庁において福岡通商
産業局から管内概況
説明を、熊本県から経済概況
説明をそれぞれ聴取いたしました。
熊本県テクノポリスセンターは最新の設備と高度の情報システムを備え、熊本テクノポリス計画の中核的拠点として、地元
産業に対する情報提供、人材育成を行っております。また、同センターに隣接して電子応用機械技術研究所が開所しており、自主・受託・共同研究を初め、広く一般企業や大学への設備提供等を行っております。
次に、本田技研工業株式会社熊本製作所は、同社
四番目の工場として
昭和五十一年から操業、豊かな森に囲まれ、百七十万平方メートルの広大な敷地を持ち、最新の
生産設備によって各種オートバイ、バギー車等の製造、海外工場への部品
供給等を行っております。同製作所の製品の輸出比率はほぼ八〇%となっており、近年の急速な
円高進行の
影響を大きく受けております。このため同製作所としては、来年から国内
需要向け軽四輪エンジンの
生産ラインの
導入、製品の多角化により、
円高の
影響を受けにくい体質にしていく計画であります。なお、オハイオ第二工場の設置等、海外
生産へのシフトにより、国内雇用の維持ができるのかとの質問に対しては、
生産の再編成等の
努力により、今のところ本田全体としては、空洞化は避けられると考えているとのことでありました。
次に、福岡通商
産業局からの管内概況
説明であります。九州地方での景気は総じて回復基調にあり、鉱工業
生産指数、民間設備投資、住宅投資及び個人
消費は、いずれも緩やかな上昇
傾向を示しております。また、雇用
情勢も、有効求人倍率は本年九月時点では〇・四〇まで高まっており、厳しいながらも
改善傾向がうかがえます。しかしながら、
産業構造の
変化や、
円高の進行という荒波の直撃を受けている企業城下町や産炭地域の社会経済
情勢は、依然として極めて深刻な様相を呈しております。
次に、熊本県の経済概況であります。工業については、
昭和六十年時点における事業所数、従業員数、出荷額等、いずれも全国の
伸び率を上回っており、テクノポリス地域指定後の同地域への進出企業数は、
昭和五十九年度から三カ年の間に三十三件であり、今年度も九月末現在で七件と順調であります。
しかしながら、荒尾市、長洲町のいわゆる構造不況地域においては
産業構造の
変化等により、セメント工業の撤退や化学工業の事業縮小等が見られ、特に最近では造船業、黒鉛電極ご製造業、紙・パルプ製造業などにおいて大幅な事業縮小や人員削減、さらには企業の撤退等が行われております。なお、熊本県全体の有効求人倍率は全国
平均を大きく下回っており、本年九月時点で〇・四五、荒尾、長洲地域においては〇・二一にすぎません。
派遣日程第二日目は、熊本県荒尾市の三井グリーンランドにおいて荒尾市、大牟田市、三井
石炭鉱業株式会社三池鉱業所からそれぞれ概況
説明を聴取し、さらに、熊本県から九州アジアランド構想についてその概要
説明を聴取いたしました。その後、三井鉱山株式会社三池港務所貯炭場及び長洲町にあります日立造船株式会社有明工場を視察いたしてまいりました。なお、同工場では長洲町からも概況
説明を聴取いたしました。
まず、荒尾市及び大牟田市の概況
説明であります。両市は三池炭鉱を
中心に、
石炭を原料とした化学工業、亜鉛、アルミ等の非鉄金属製錬業などに大きく依存してまいりました。しかるに、一昨年秋以降の
円高により、非鉄金属製錬業など構造不況業種の操業中止等があり、千五百人にも及ぶ人員合理化が実施され、さらに、
石炭産業におきましても、三池炭鉱で年間四百五十万トン体制から三百五十万トン体制への縮小及びそれに伴う人員削減があり、両市の雇用
情勢の悪化と地域経済の停滞をもたらしております。
次に、三井
石炭鉱業株式会社三池鉱業所からの概況
説明であります。同鉱業所の三池炭鉱は
生産体制を縮小する一方、採炭切り羽の集約や大型機器の
導入を初めとする種々の合理化対策を実施し、コストの低減を図るなど最大限の
努力を傾注しているが、累積赤字は現在の二百十五億円からさらに
増加することは必至であり、貯炭も現在二百七十二万トンに達しているとのことでありました。
次に、九州アジアランド構想についての
説明を熊本県から聴取いたしました。これは、大牟田、荒尾、長洲地域にアジア諸国との文化的、技術的、物的交流の拠点を設け、これによって地域開発を目指すものであります。昨年から三井物産を
中心とする三井グループ内で企画、検討され、現在、国や九州経済界に対する働きかけが行われております。おおよその計画では、用地三百ヘクタール、資金約千八百億円で敦煌の石窟及び壁画を一部再現し、敦煌研究所、西遊記遊園地、アジア技術研修センター、アジア各国産品の常設見本市及び同加工基地等々を建設する計画であり、完成まで今後十年間を見込んでいるとのことでありました。
なお、三井グリーンランドは、三井鉱山株式会社が
石炭産業低迷の中で遊休地の活用や地域おこしをねらって設立した遊園地で、順調な発展を続け、各地域からの誘致も相次いております。
日立造船株式会社有明工場は、長さ六百二十メートルと三百八十メートルの二基のドックや七百トンの揚荷能力を持つガントリークレーン等を備えており、船舶、海洋構造物及びその他プラント機器を製作しております。同工場では、現在二十二万六千重量トンの鉱石運搬船を建造中であり、また、近々二千五百個積みのコンテナ船に着工するとのことでありました。さらに、来年四月からの建造開始予定で二十六万重量トンクラスのオイルタンカー二隻を受注いたしております。しかしながら、同工場の現在の手持ち仕事量は建造能力に比べわずか五分の一ほどしかなく、従業員数も三年前のおよそ二千四百名から、現在、およそ一千名まで
減少しております。そこで同工場では、CADによる新しい
生産システムや
生産技術の開発に取り組み、また、船舶のインテリジェント化を進め、国際競争力の強化、高付加価値化を目指しているとの
説明でありました。また、対韓国競争力の今後の
見通しについては、一ドル百五十円ならば対抗し得る段階に来ていたが、このところの円急上昇の
影響は大きい、韓国では人件費安のほか鋼材費も
政策的に安くなっているとの答えでありました。
長洲町は、その工業出荷額の約六割を日立造船及びその関連企業に依存しております。したがって、同工場の
生産規模の縮小及びそれに伴う一昨年からの二次にわたる大規模な人員合理化は地域経済に多大な
影響を与えており、町全体の工業出荷額も現在では
ピーク時の六〇%にすぎず、八百九十三億円にまで落ち込んでおります。そして、離職者の再就職先の開拓など、雇用対策が緊急の課題となっております。
派遣日程最終日は、三菱重工業株式会社長崎造船所香焼工場を視察、次いで長崎県庁において長崎県から経済概況
説明聴取の後、長崎オランダ村を視察いたしました。
三菱重工業株式会社長崎造船所香焼工場は、三菱重工が新造船の工事を集中して行っている工場であり、長さ九百九十メートルの建造ドックと長さ四百メートルの修繕ドック、つり上げ能力六百トンのゴライアスクレーン等を備え、世界で最新鋭の設備を持つ大規模な工場であります。長大な建造ドックをフルに生かした三ステージ建造法、エレクトロニクスを大幅に取り入れた自動化、省力化設備など、数々の新しい試みを取り入れ、船舶、橋梁その他の海洋構造物、陸用プラント機器等を製作しております。現在は大型の自動車運搬船と二十五万重量トンクラスのオイルタンカーを建造中でありました。しかしながら、同工場におきましても、大幅な
生産規模の縮小と人員合理化を余儀なくされており、
昭和四十九年の最盛期には、同社長崎造船所全体で一万六千人ほどであった従業員数は、現在およそ八千人にまで
減少しております。今後の対策としては、陸用プラント機器等の
需要開拓と、配置
転換等により雇用面に
十分配慮しながら、
生産工程の一層のFA化、工程数の圧縮を進め、国際競争力の維持、
向上に努めております。さらに、造船は未成熟技術であるとの認識のもとに、現在、さまざまな先端技術の開発や吸収に努め、省
エネ船の建造などに取り組んでいるとの
説明でありました。
長崎県の経済概況は、近年、観光が順調に
伸び、また、公共事業の
拡大や住宅着工数の
増加など、非製造業
部門が堅調に推移しているものの、製造業
部門は、造船業など長引く構造不況と
円高等により厳しい
状況に置かれており、
石炭業も、昨年十一月に高島砿が閉山し、唯一残っている池島鉱についても
生産体制の
見直しが行われるなど、厳しい
状況にあります。このため、同県においては、
長崎県造船対策本部、高島砿閉山対策本部を設置する等、経営安定対策、事業
転換対策、雇用対策など、地域住民の
生活安定を図るため総合的な施策を講じております。
長崎オランダ村は、江戸時代、出島が長崎にあったという歴史に着目し、新たな日蘭文化交流の拠点となることを目指す大型のリゾート施設であります。大村湾の入り江を利用して十七世紀のオランダの町並みを再現し、その中に当時のオランダに関する民俗資料館や博物館等を設けております。また、周囲の自然との調和を図り、その美しい景観を生かすと同時に、諸施設の建設に当たっては海の埋め立てを行わないなど、海水汚染防止のためさまざまな
配慮がなされております。
昭和五十八年オープン以来これまでに累計百三十五億円の資金を投入し、本会計年度においては来場者数百九十五万人を目指しております。また、佐世保市に長期滞在、永住型の大規模リゾートを建設するというハウステンボス計画を打ち出したところであります。
以上で報告を終わりますが、最後に、今回の
調査に当たり御協力をいただきました現地の関係各位に厚くお礼を申し上げます。
なお、各派遣地の要望等については、これを
会議録末尾に掲載することを
会長において取り計らわれますようお願いいたします。