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1987-12-17 第111回国会 参議院 決算委員会 閉会後第2号 公式Web版

  1. 会議録情報

    昭和六十二年十二月十七日(木曜日)    午前十時開会     —————————————    委員異動  十二月十六日     辞任         補欠選任      諫山  博君     内藤  功君   出席者は左のとおり。     委員長         穐山  篤君     理 事                 井上  裕君                 大島 友治君                 杉山 令肇君                 柳川 覺治君                 菅野 久光君                 峯山 昭範君     委 員                 井上  孝君                 板垣  正君                 河本嘉久蔵君                 沓掛 哲男君                 斎藤栄三郎君                 鈴木 省吾君                 寺内 弘子君                 永野 茂門君                 福田 幸弘君                 二木 秀夫君                 松尾 官平君                 宮崎 秀樹君                 守住 有信君                 一井 淳治君                 佐藤 三吾君                 山本 正和君                 片上 公人君                 刈田 貞子君                 佐藤 昭夫君                 内藤  功君                 関  嘉彦君    国務大臣        労 働 大 臣  中村 太郎君    事務局側        常任委員会専門        員        小島 和夫君    説明員        法務大臣官房審        議官       米澤 慶治君        社会保険庁医療        保険部船員保険        課長       川邊  新君        農林水産省経済        局統計情報部水        産統計課長    白石 吉平君        林野庁林政部森        林組合課長    芳田 誠一君        水産庁海洋漁業        部遠洋課長    小野登喜雄君        通商産業省産業        政策局産業構造        課長       松藤 哲夫君        中小企業庁小規        模企業部参事官  市川 祐三君        運輸大臣官房国        有鉄道改革推進        部長       井山 嗣夫君        労働大臣官房長  清水 傳雄君        労働省労政局長  白井晋太郎君        労働省労働基準        局長       野見山眞之君        労働省婦人局長  佐藤ギン子君        労働省職業安定        局長       岡部 晃三君        労働省職業能力        開発局長     野崎 和昭君        会計検査院事務        総局第四局長   吉田 知徳君     —————————————   本日の会議に付した案件昭和六十年度一般会計歳入歳出決算昭和六十  年度特別会計歳入歳出決算昭和六十年度国税  収納金整理資金受払計算書昭和六十年度政府  関係機関決算書(第百八回国会内閣提出)(継  続案件) ○昭和六十年度国有財産増減及び現在額総計算書  (策百八回国会内閣提出)(継続案件) ○昭和六十年度国有財産無償貸付状況計算書  (第百八回国会内閣提出)(継続案件)     —————————————
  2. 穐山篤

    委員長穐山篤君) ただいまから決算委員会を開会いたします。  この際、中村労働大臣から発言を求められておりますので、これを許します。中村労働大臣
  3. 中村太郎

    国務大臣中村太郎君) このたび労働大臣を拝命いたしました中村太郎でございます。決算委員会の御審議の前に一言あいさつを申し上げたいと存じます。  労働行政の本分というものは、勤労者が本当に心身ともに健康で物質的にもあるいは精神的にも恵まれた豊かな生活ができるようなもろもろ環境整備を図ること、あるいはその先導役を務めること、それが仕事ではないかと考えております。そうなりますれば、まず労働者皆さん安全衛生面確保対策、さらには福祉の向上、あるいはまた職業能力開発等もろもろ仕事があるわけでございますけれども、わけても今喫緊の課題といいますのは雇用確保ではないかと思っております。雇用の安定なくして何の福祉ぞやということにもなろうかと思うわけであります。その意味では、本年度策定いたしました三十万人雇用開発プログラムにつきましては、おかげさまで、皆さんの御協力のたまもので、大方その所期の目的を達成しつつあるわけでございます。  しかし、御承知のように円高、あるいはまた構造改革、いろんな問題があるわけでございまして、特に私ども最近の円高の様相を眺めますると新たな雇用失業情勢を生みはしないかなという危惧を持っておるわけでございます。したがいましてこの面におきましては、三十万人雇用開発プログラムにかえまして、新たな地域間あるいは産業間、さらには年齢間、このミスマッチを生じないためにも、新しい考え方に立ちましてさらにこの面の一層の強化充実を図っていかなければならないと考えております。  さらには、ゆとりある生活の実現の一環として労働時間の短縮を今日的な課題としてとらえていかなければならない、このように考えておるわけでございまして、この面につきましても積極果敢に取り組んでまいる決意であります。  いずれにいたしましても、労働行政のあるべき方向に向かって誠心誠意、全力を挙げて頑張る決意でございますから、委員各位の今後一層の御指導、御鞭撻を賜るようお願いをいたしまして、一言あいさつといたします。ありがとうございました。(拍手)     —————————————
  4. 穐山篤

    委員長穐山篤君) 委員異動について御報告いたします。  昨十六日、諌山博君が委員を辞任され、その補欠として内藤功君が選任されました。     —————————————
  5. 穐山篤

    委員長穐山篤君) 昭和六十年度決算外二件を議題といたします。  本日は、労働省決算について審査を行います。     —————————————
  6. 穐山篤

    委員長穐山篤君) この際、お諮りいたします。  議事の都合により、決算概要説明及び決算検査概要説明は、いずれもこれを省略して、本日の会議録の末尾に掲載することにいたしたいと存じますが、御異議ございませんか。    〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
  7. 穐山篤

    委員長穐山篤君) 御異議ないと認め、さよう取り計らいます。     —————————————
  8. 穐山篤

    委員長穐山篤君) それでは、これより質疑に入ります。  質疑のある方は順次御発言を願います。
  9. 菅野久光

    菅野久光君 大臣御就任おめでとうございます。また、今、現下の労働問題について積極的な労働行政に取り組む決意をお聞かせいただきまして、御健闘を心からお祈りし、また期待もいたしたいというふうに思います。  きょう、まず振動病の問題についてお尋ねをいたしたいと思います、  林業労働者の間に多数発生しております振動病問題でございますが、この振動障害予防対策について、労働省昭和四十五年それから五十年と相次いで指導通達を出されたわけでありますが、十数年を経た今日なお十分な成果をおさめるに至っておりませんし、毎年新規認定者が後を絶っていないわけであります。これは一体どういうことなのか。一生懸命やっておられるとは思いますけれども、この責任は一体どこにあるのか、その点についてまずお伺いいたしたいと思います。
  10. 野見山眞之

    説明員野見山眞之君) 林業労働者におきます振動障害につきましては、労働省といたしましても、従来からそういう予防及び適切な治療、職場への復帰まで通じまして重点課題として取り組んできたところでございます。  特に、振動障害実情をよく把握し、的確な雇用管理を行うというための振動特殊健康診断など予防対策等を初めといたしまして努力をしてきているところでございますが、近年、徐々にではございますが、新規発生数につきましては減少をたどっておりますけれども、しかしまだ少なからぬ数が発生しているということでございますので、さらに振動障害対策についての充実強化を図ってまいりたい、かように考えております。
  11. 菅野久光

    菅野久光君 特に振動機械を使う、林野庁、ここにもちょっとお尋ねいたしたいわけですが、林野庁もがなり私は責任があると思うんですけれども林野庁担当者の中には、あたかも労働省主管省であって林野庁には責任がないかのような態度をとっている者がいるやに私は聞いております。林野行政には労働災害あるいは振動病対策、そういったようなことについて全く責任がないのかということになると、そうではないというふうに思うんですが、この際はっきり伺っておきたいと思います。
  12. 芳田誠一

    説明員芳田誠一君) 林野庁森林組合課長でございます。  先生おっしゃいますように、林業に関する労働安全衛生対策は、林野庁においても大変重要な課題であると考えて各種施策をいろいろ講じておるところは先生も御承知のところと思います。
  13. 菅野久光

    菅野久光君 担当者の中に、これはもう労働省の所管だから林野庁が何か責任がないかのような発言をしている者がいるということを聞くわけですよ。ですから、その点については十分林野庁としても責任があるわけですから、その点はしっかり徹底をするようにしてもらいたい、そのことを林野庁には要望しておきます。  特に国有林関係などについてちょっと申し上げますと、どうも役所全体そういう点はあるわけですけれども、何かあると通達を出すわけですが、通達出しっ放しということが非常に私は問題ではないかというふうに思うわけです。林野の問題につきましても、個別企業主振動病予防措置については責任を負わなくてもよいと言わんばかりの何か風潮があるのではないかというふうに思われます。特に、一般林業企業体では、すべて雇用契約上の問題であって、予防対策個々労働者が守ることであって、企業主雇用主責任はないという態度をとっているようでありますが、一体雇用主には振動病予防対策について責任があるのかないのか、その点はいかがでしょう。
  14. 野見山眞之

    説明員野見山眞之君) 林業労働者における健康を確保するために必要な措置をとるということは、労働者自身ももちろんありますけれども事業主自身義務でもございます。そういう観点から、関係労働者に対する健康管理実施義務というのは事業主にございますので、必要な管理対策等についても講ずべきものと考えております。
  15. 菅野久光

    菅野久光君 雇用主にも十分責任があるんだということでありますが、ではその責任をどのように課しているのか、その辺はいかがでしょうか。
  16. 野見山眞之

    説明員野見山眞之君) まず振動障害予防を図るための必要な措置といたしまして、チェーンソーの規格を定めまして、チェーンソーの業務に係る特別な教育を義務づけるというような規制を行っていることを初めといたしまして、工具につきましても予防上必要な工具を使用するということで、例えば低振動工具の普及ですとか、あるいは振動工具操作時間を一定時間以下に制限をする、あるいはこの操作方法についての適正化など、作業管理適正化推進するということなどを定めているわけでございますし、また健康診断の面におきましては委託巡回方式によります特殊健康診断実施することなどの事業主責任があるわけでございます。
  17. 菅野久光

    菅野久光君 経営者の中には今言ったようなそういった規制などをきちっと守っている経営者もおるわけですが、中には、先ほど申し上げましたように、これは個々労働者が守ることであって企業主あるいは雇用主責任ではないんだと言わんばかりの態度をとっている、そういうことで振動病やあるいは労災患者がふえて、労災の面からも経営基盤が脅かされかねないということで、雇用主みずからの首を絞めるといいますか、そういったような状況になっていくわけですね。ですから、いろいろ規制をしていることについて、労働省としてきちっとそれを検証しているかどうか、その辺はいかがですか。
  18. 野見山眞之

    説明員野見山眞之君) ただいま申し上げましたような事業主の講ずべき措置等についての実施につきましては、関係労働基準監督署等の必要な監督その他の措置によって実行を図っているわけでございます。ただ、これの問題につきましては労働行政だけでは対応できないことは先生指摘のとおりでございまして、林業振動障害防止対策会議を現在三十二労働基準局に設置いたしておりまして、この中には営林局、営林署、関係市町村、もちろん労働基準局も入っておりますが、これらの関係行政機関森林組合その他の林業団体と、さらには災害防止協会の支部あるいは事業主代表等、それぞれが連携をとってただいま申し上げましたような予防措置の的確な推進が図られますように努力をしている状況でございます。
  19. 菅野久光

    菅野久光君 いろいろ規制をしているのですから、いろいろ努力はされるんですけれども、果たしてそれがきちっと個々雇用主までいっているかどうかということについては疑問なしとしない。その点はまた後からいろいろ申し上げたいと思います。  林野行政の中では、昔から林業労働自立労働と、そういうような企業を守るような論があるわけですが、林業労働が山奥で分散して働く、いわゆる一人の仕事ということになるわけですから、監督が行き渡らないことをもって、個別契約の際に賃金出来高払いを強いて、一山幾らという請負制を取り入れる。そして、競争意識をあおって無理な労働をさせてきたわけです。我々の現地調査でも、個々林業労働者振動病の恐ろしさや二時間規制を守らなくてはならないことも知っています。しかし、それでも二時間規制を守りたくても守れない、それは守っていれば生活ができない、そういうことなんですわ。四時間から六時間使用しているというようなことが一般的だというふうに、私ども現地調査の中ではそのような状況であったわけです。ですから、自立労働という、山 の中で一人で働くんだから、労働者自身がやらなければだめなんだという、そういう発想を転換しなければこの振動病というものを根絶するということはできないんじゃないかというふうに思いますが、林野庁の方はいかがでしょう。
  20. 芳田誠一

    説明員芳田誠一君) 林業労働はおっしゃるとおり自立労働という面がございます。なかなか目が行き届かないということもございますけれども、やはり基本的には雇用主あるいは自立して働く労働者の方々に自覚していただいて予防対策を自分で講じていただくということが大事だ。そのために私どもは、具体的に言いますと、例えば巡回指導員だとか安全パトロール員というような方をお願いして、現場に行っていろいろそういう安全衛生確保されるような仕事やり方を御指導するようなレベルから、あるいは地域災害防止協会でいろんなマニュアルを出して雇用主なりあるいは実際に働く人たち講習会をしたり、あるいはセミナーをしたりというようなこと、あるいはさらにそういう協会で毎月毎月出します刊行物の中で、あるいはさらにそのポスターを張ってというようなことで、いろいろなレベルでそういう安全衛生を守らなくちゃいけないということを浸透させているつもりでございます。そういう中で、もし具体的にこういうところで実際に守られていないというようなケースがございましたら、これは個々に是正していくようにそれはしなくちゃいけないと思っております。  それから、出来高払いの問題につきましては、これはまたそれぞれの仕事の性格から必ずしもそれが一律にいけないということではなくて、やはり林業労働実態あるいは林業仕事実態からして、出来高が一律にいけないということではなかろうと思いますけれども、そういう形態であるがゆえに、そういう安全衛生の面がもしおざなりになっているとすればいけません。そちらの面は労働安全衛生の面から十分に是正していきたいと思っております。
  21. 菅野久光

    菅野久光君 林業労働実態は、他産業屋内労働と異なって、個々労働について、先ほど申し上げましたように監督指導が非常に難しいということは私も十分に承知しております。しかし、どちらかといえば自立労働ということを口実にして、個々労働者通達を守りたくても守れない旧態依然たる作業形態、それを押しつけて温存するような雇用契約企業体質に問題があるというふうに私は思うんです。このままでは労働災害振動病が山積して、林業産業としての存立基盤が問われかねないというふうに思うんです。雇用主仕事のさせ方、賃金の仕組み、作業環境改善、そして無振動機械の備えつけなど、雇用契約の中で企業側責任改善すべき事項が私は多いというふうに思います。国の援助措置を含め、産業存立基盤が問われているという危機意識を持って早急に抜本的見直しを行わなければならないというふうに思うんですが、いかがでしょうか。
  22. 芳田誠一

    説明員芳田誠一君) 基本的に雇用契約はやはり経営者あるいはその使用者の側と労働者の側との相対納得ずくで決まるものでありますから、そこに大幅な規制というものをなかなかかけるということは難しいかと思います。ただ、先生おっしゃるように、労働安全衛生面でなおざりにされている点が大変乱改善されてきていると思いますけれども、なお、なおざりにされているということもありますので、今後とも今までの施策を拡充するとともに、さらに新しい御指摘いただいたような点についてもできるだけの施策を積極的に講じていきたいと思っております。
  23. 菅野久光

    菅野久光君 なおざりにされているというところがあるのでというふうに、ここの部分については認められたような発言がございましたので、何とか抜本的な見直しについて積極的に取り組んでいただきたいということを申し上げておきたいと思います。  次は、ちょっと具体的な問題に入りますが、もう何とか振動病というものをなくしたい、なくさなければならない、そういう立場でこれから具体的な問題についてお尋ねをいたしたいと思いますが、特に林業の中でこの振動病潜在患者が非常に多いわけです。それは健康診断あり方だとか、あるいは認定あり方に多くの問題が今日なお解決されていないところにあるというふうに思います。その結果、症状を悪化させ、慢性的症状に追い込んで長期療養を余儀なくして、労災保険収支悪化を招いているというのが現状だというふうに思います。そこで、労働者振動病から守るためにも、そして労災保険収支改善立場からも、この仕組みをひとつ断ち切って、早期発見早期認定早期治療、それが極めて大切だというふうに、振動病患者をなくしていくというために、そういったようなことを何でもとにかく早期発見をして早期認定をして早期治療していく、それが何よりも大事だというふうに思いますが、ここのところはひとつ大臣いかがでしょうか。
  24. 野見山眞之

    説明員野見山眞之君) 先ほどからお答え申し上げておりますように、ただいま先生の御指摘のような早期発見早期認定早期治療、適切な措置をとるということは先生のおっしゃるとおりでございまして、私どもも、御承知のとおり、昭和五十六年度以降、振動障害対策についての総合的な対策をこれまで二次にわたって進めてきているところでございまして、特に早期発見につきましては後々の対策にも影響してくることでございますので、先ほど来お答え申し上げておりますような健康診断の適切な実施等を通じまして、予防対策をスタートとする適切な対策を講じてまいりたい、かように考えております。
  25. 菅野久光

    菅野久光君 早期発見に当たっては、これまでも長期間の使用者振動機械使用者チェーンソー使用者、それから使用頻度の高い者から健康診断を行ってきたわけですが、その考え方に変わりはございませんか。
  26. 野見山眞之

    説明員野見山眞之君) 振動障害に係る健康管理実施につきましては、事業主がその労働実態に応じて適切に実施することはもちろんでございますが、特に特殊健康診断に関しましては六カ月ごとに一回実施していくということで指導してまいっているところでございます。
  27. 菅野久光

    菅野久光君 いや、私が聞いていますのは、長期間使用者だとか、それから使用頻度の高い者、それを優先して診断を行っていくという考え方に変わりはないかということを尋ねているわけです。
  28. 野見山眞之

    説明員野見山眞之君) この実施を委託しております林業災害防止協会に対しては、今先生のおっしゃったような方針に基づいて実施するように指導しているところでございます。
  29. 菅野久光

    菅野久光君 これは常識的にはそうでなければならないというふうに思いますね。  長期間使用者だとかあるいは使用頻度の高い順位、これは何によって判断し、決定しているのか、その辺をお聞かせください。
  30. 野見山眞之

    説明員野見山眞之君) 林業地におきまして、受診者の分布が市街地とかあるいは山間部の間に隔たりがないかどうか、そういう就業実態等につきましても十分把握いたしまして、健康診断運用上につきまして、その実態を反映したような形で運用上の改善その他をしてまいっているところでございますし、今後とも今申し上げましたような就業実態等に応じまして必要な改善のための検討を進めてまいりたいと考えております。
  31. 菅野久光

    菅野久光君 ここのところがなかなかちゃんとなっていないんじゃないかというふうに私ども現地調査の中で思うんですよ。  それでは、その実施結果、健診予定者とそれから健診の済んだ者、それのチェックはしておられるのでしょうか。現場では、健診を受けている者は毎年受け、受けない者は一度も受けていない。そういうことで極めて重症者も放置されるなど、企業及び林災協任せになっているということが私ども現地調査の中で明らかになっているわけです。このチェック方法はどうなっているのかお聞かせください。
  32. 野見山眞之

    説明員野見山眞之君) 事業主が行います健診の実施状況等につきましては、監督署職員等に よる現場への監督指導等によって把握できる面もございますが、必ずしもこの辺が十分でないということもございますので、今後とも事業主から監督署等に対する報告その他実情点検等について改善できるような措置について検討してまいりたいと考えております。
  33. 菅野久光

    菅野久光君 健診予定者が健診を受けたかどうか、健診が済んだ者のきちっとしたチェックというのはできてないというふうに認識してよろしいですね。
  34. 野見山眞之

    説明員野見山眞之君) この健康診断実施自体事業主に課せられている義務でございますので、事業主自身がその実施を的確に行うということをまず前提にいたしておりまして、個々ケースについて監督署が把握しているという状況ではございません。
  35. 菅野久光

    菅野久光君 私は、振動病潜在患者がまだずっとたくさんいるということを先ほど申し上げたのはそこにあるんですよ。そこのところをやっぱりきちっとやらなければ、早期発見ということには私はならないというふうに思うんですね。早期発見のためには何とかもう少し今までのやり方を変えていかなきゃならない。  そういうことで、私はこれからこうやればいわゆる漏れなく健診を受けさせて早期発見ができるのではないかということについて考え方を述べてみたいというふうに思います。よくひとつ聞いてみてください。これならいいぞというような私は方法を申し上げたいと思うので、ぜひ考えてもらいたいと思うんです。  まず、監督署ごと市町村協力を得て、林業労働者名簿、それからチェーンソーなどの使用歴、それから使用頻度報告事業主義務づけて公表、閲覧ができるようにするということ。  二つ目は、この報告に基づいて、使用歴の長い者、使用頻度の高い者から優先して二カ年で完了するように健診計画を組むこと。  三つ目に、健診計画及び健診実施に当たっては、雇用主、自治体代表、労働組合代表を入れた協議会を設置して、健診優先基準、健診実施の公平を期すこと。  四つ目に、健診予定日には対象者の受診を雇用主義務づけること。  五つ目に、健診予定者受診者との照合が事業場でもわかるように公表すること。  このことをきちっとやれば、チェックされているかどうかきちっとされてないというようなことを防ぐことができて、私は早期発見ということが可能になってくるのではないかというふうに思うんです。  この健診の関係についてもいろいろ調査をしてみますと、一人で仕事をしているものですから、山奥だから受けに行くのが面倒くさいだとか、あるいは自分の体は今何ともないから健診など受けなくてもいいだとか、そういったような理由があって受けない人がたくさんいるわけですね。ですから、ある程度の数を確保するためには、先ほど言いましたように、毎年同じ人間を受けさせる、受けない者は全く受けないというような状況が生まれてくるのではないでしょうか。私は、やはり振動機械を使っている者全員が健診をきちっと受ける、そういうことをしてこそ早期発見ができるというふうに思うんです。  まず一番目の、名簿をつくって使用歴使用頻度報告事業主義務づけるというような、こういったような問題についてはどのようにお考えですか。
  36. 野見山眞之

    説明員野見山眞之君) 今、全体として先生から早期発見についての御提案がございました。基本的な方向といたしまして、受診漏れがないというようにしていくことを通じて早期発見をしていくという基本的な方向については先生のお話のとおりでございまして、その面につきまして、私どもとしても各種の事業主に対する指導あるいはその他の会議の開催等による連携体制の強化等を通じて努力をしてまいりたい、かように考えているわけでございまして、ただいま第一点として御指摘になりました点につきましては、先ほど来お答えを申し上げておりますように、まず基本的には個々事業主の適切な管理ということが行われるように監督行政機関といたしましても十分な指導をしてまいりたい、かように考えておりまして、これを監督署ごと報告させるという御提案でございますが、私どもといたしましては、監督署個々の事業場に対して受診の状況等について必要な監督指導をさらに徹底していくということ、あるいは健康診断結果については、その結果を事業主から監督署の方に報告をしていただくというようなこと等をさらに強化していくということを通じて、受診状況についての把握は改善していくのではないかというふうに考えているところでございます。
  37. 菅野久光

    菅野久光君 昭和四十五年と五十年に通達を出してやってきたわけでしょう。それでも今なお十数年経て、いまだにこういったような状況なんですよ。だから、幾ら会議を開いて、そうして指導監督を強めると言っても、監督署の人員には限りがあるわけですよね。それから、個々事業主がそれにきちっと対応しなければ、対応している、していると言って現実やっていなければ、この実効は上がらないんじゃないですか。だから、今までやってきたけれどもだめだから、ここで抜本的にやり方を変えなければ私は早期発見ができないと言っているんですよ。なぜ名簿をつくったり、それから照合する、チェックをするということができないんですか。やれないんですか。その理由を言ってください。
  38. 野見山眞之

    説明員野見山眞之君) ただいま申し上げましたような方法で私どもも事態の改善について努力をしているところでございますけれども、今先生の御提案になりました方法も、今後の受診の徹底を図る上での一つの御提案ということで検討させていただきたい、かように考えております。
  39. 菅野久光

    菅野久光君 検討するということですから、ぜひ検討してもらいたいというふうに思うんですよ。一つずつ聞いていくつもりでおりましたけれども、あと二、三、四、五も全部これは関連する問題ですから、そこを含めて全部検討するということでいいですね。
  40. 野見山眞之

    説明員野見山眞之君) 私どもが行っております対策との関連を含めまして、受診率の向上のための施策につきましてさらに検討してまいりたい、かように考えております。
  41. 菅野久光

    菅野久光君 参考までに申し上げておきますが、私ども実態調査をした段階で、何か自主健診のような形でやられるものですから、重症者雇用主によって健診が受けられないような実態があったり、あるいは故意に知らされない、そういうことがあったり、それから振動病認定されるような者を受診させないというようなことがあったりしまして振動病患者の病状をいよいよ悪化させていく。そして、もういよいよどうにもならなくなって、いろんな手を尽くして認定をしてもらって、そのことが結局労災にかかってくるわけですね。ですから、この早期発見ということは何よりも大事だということは先ほど答弁になっているわけですから、それはやっぱりきちっとできる体制をつくっていく。そのことが私は何よりも大事だというふうに思いますから、ただ単に会議を開いた、指導するということだけではこの問題については解決がしないということを強く申し入れて、検討するということですから、ひとつ前向きにこのことが実効の上がるように検討してもらいたい。そのことを申し上げております。  今までも何とかチェックしようというようなことで、五十九年の五月に民間林業労働者振動病対策について、民間林業労働者に手帳の制度化をしてチェックするというようなことが前にあったわけですね。そのための実態調査を二カ年で行うということで六十年と六十一年、二カ年間にわたって九つの基準局で事業主労働者実態調査が行われましたが、その結果、どのような対策を講じたのか、お聞かせください。
  42. 野見山眞之

    説明員野見山眞之君) この調査に基づきまして、制度の問題等はございますけれども振動障害防止対策の浸透度を把握するという面からはあ る程度有益な情報が得られたというふうに考えているところでございまして、その後、私どもといたしましてはこの調査結果等も踏まえまして、先ほど申し上げましたような予防から補償までの所要の対策の充実を図っているという状況でございます。
  43. 菅野久光

    菅野久光君 相当参考になりましたか。
  44. 野見山眞之

    説明員野見山眞之君) 御指摘実態調査につきましては、予算あるいは定員の事情等の制約の中でできるだけ適切なものを行うということを努力したわけでございますが、この調査の相手側の協力の問題、あるいは数の問題等ございまして、必ずしも制度面につきまして精緻なものというわけにはまいりませんけれども、今後の対策を図る上で、対象者に対する振動障害の防止を図るという趣旨についての浸透を図る面では意味があったというふうに考えております。
  45. 菅野久光

    菅野久光君 役所が調査をするときには、よほど注意をしてかからなければ認識に誤りを来すということになるのではないかというふうに思うんです。私は前に、この委員会で航空安全制度の問題についてちょっと質問したんですが、会社側が自分の会社の者に航空安全の問題について何かないかということを調査してもさっぱり上がってこない。あるいは運輸省が直接やったとしてもなかなか上がってこないわけです。ですから、労働省がそういうことで調査をしたときに、自分の事業場がいい状況にないというようなことを思われたくないという、基準局にそう思われたくないという意識が働くわけですよ。ですから、まともな数がやっぱり上がってこないんです。この数が上がってきたからといって、それが正確だというふうに認識をされると誤りを来すのではないかというふうに思うんです。  例えば同じような時期に基準局を通じてやったチェーンソーの二時間使用の問題、どのくらい二時間という規制をきちっと守ってやっているかという調査、これは労働省の調査では三五・二%いたという調査ですね。ところが、全山労協という組合で調査をしたら、二時間規制を守っているのは九・二%しかいないという実態が出ているわけですよ。ですから、相当ここには開きがあるわけです。ですから、いろんな面で調査される場合に、役所で調査するときに、物によってですけれども、信頼できるかできないかという問題はやっぱりありますから、それによって判断を誤らないように今後行政を進める上ではやってもらいたいというふうに思います。  では次に、早期認定の問題についてお尋ねをいたしたいというふうに思います。  振動病早期発見早期認定の立ちおくれが結果として症状を悪化させる、重症かつ慢性化に陥れて長期療養を余儀なくさせているというふうに思いますが、その辺はそういう認識お持ちですね。
  46. 野見山眞之

    説明員野見山眞之君) 振動障害に関する認定につきましては、従来から迅速適正に行うということで努力してきたところでございますし、今後ともその面についても必要な改善等を図ってまいりたいと考えております。
  47. 菅野久光

    菅野久光君 私の方も、現在健診をしてから認定までどのくらいの期間を要しているのかということでちょっと問い合わせたわけですけれども、その辺は調査をしたことがないということですが、それは間違いありませんね。
  48. 野見山眞之

    説明員野見山眞之君) 調査いたしたことございません。
  49. 菅野久光

    菅野久光君 ですから、早期認定と口では言っても、実態がどうなっているかということについては調べていないわけですから、これはわからないわけですね。そこのところがまた私は大きな問題だというふうに思うんです。人によっては一年以上たっても結論も出さないで経過観察としている、そういう者もいるというふうに聞いております。早期認定立場からしてもこれは適当ではない。振動病を重症かつ慢性化させていることにつながっているというふうに思うんです。経過観察期間を極力短く、早期認定することが必要だというふうに思いますが、いかがでしょうか。
  50. 野見山眞之

    説明員野見山眞之君) 認定に必要な経過観察はもちろん必要だと思いますけれども、先ほど来お話がございましたように、できるだけ迅速に認定をするということは重要なことでございますので、御承知のとおり従来から認定基準を示しまして、それに基づいて迅速に行う、そのためにまた必要な関係職員の研修等を実施いたしまして、迅速かつ公正な認定が行われるように努めてまいりたいと考えております。
  51. 菅野久光

    菅野久光君 先ほども例で申し上げましたけれども、一年以上なんというのはどう考えてみても、私は幾ら経過観察とはいえ余りにも長期に過ぎるのではないかというふうに思いますが、いかがですか。
  52. 野見山眞之

    説明員野見山眞之君) 個々ケースになろうかと思いますので、ちょっとここでは一概にお答えすることは難しいと思いますけれども、できるだけ早期認定をするという基本方針については、先生の御指摘に沿って努力をしたいと思っております。
  53. 菅野久光

    菅野久光君 現在長期の経過観察中の者にもチェーンソーを使用させている、経過観察中の者にもですよ。そういうような実態があるわけです。これでは症状を慢性化させて治療も長期間を要することになるのは当たり前です。経過観察期間を何とか六カ月以内ということに限定すべきではないか。六カ月たって再検をしたときに、再度その疑いのある者は認定して治療を開始すべきであるというふうに思いますが、どうでしょうか。春健診して秋再検査して、そうすると大体六カ月ぐらいになりますね。このときに回復していない者、そして再度疑いのある者はそこで一応認定して治療を開始させることで療養期間も短くなるというふうに思うんです。どうでしょうかね、大体六カ月ぐらいが私は限度ではないかというふうに思いますが。そういう形にすれば重症者というものをなくしていく、そういうことにつながっていくのではないでしょうか。
  54. 野見山眞之

    説明員野見山眞之君) 特殊な鑑別を要するような事案では必要な経過観察ということはあるかと存じますけれども、しかし認定におきましては、現在の症状、病状等に基づきまして行うということでございますので、いたずらに認定を延ばすというようなことは私どもとしても行っていないわけでございまして、必要な症状、病状等に基づいて的確にかつ早期認定を下すということにつきましては今後とも努力をしてまいりたいと思っております。
  55. 菅野久光

    菅野久光君 現場へ行くと、今局長が答弁したようなことになかなかなっていかないんですね。そこがやはり問題なんです。行政は縦の組織でずっといくものですから、そういう方針でということで通達を流していっても、なかなかその通達が、あるときはひとり歩きをしていき、あるときは寝かされてしまうというようなことが起きるものですから、ある程度こういったようなものは基準をはっきりさせた方がいいのではないかというふうに思うんです、そういう意味では、春に健診をして回復していない者、あるいは再度疑いのある者、そういう者をその六カ月の段階でどうするかということを一つの目安にして考えていくということではどうかなということで申し上げたんですが、再度そこのところをひとつお聞かせください。
  56. 野見山眞之

    説明員野見山眞之君) 認定に当たっては、それぞれの時点における健診の結果に基づく症状といいましょうか、状況に応じて認定をしていくということでございますので、まずは必要な健診を定期に行うということによってその後の認定についても迅速に行えることにつながりますので、先ほど申し上げましたような健康診断等についてできるだけ受診を義務づける、的確に行うということを前提に進めてまいりたいと考えております。
  57. 菅野久光

    菅野久光君 ここのところはできるだけ早期認定をするという立場で、認定しなきゃならぬ者は認定をするということで、一年以上も経過観察なんというひどいことは、個々ケースによって違う部分はあるのでしょうけれども、私は本来的 にちょっとうまくないんじゃないかなというふうに思いますので、十分その辺はひとつ踏まえてやっていただきたいと思います。  それから、振動工具の使用制限者についてお伺いをいたしたいというふうに思います。  主治医から制限事項を指示されても、制限されたことによって雇用の場だとか収入の道が閉ざされているのが林業実態なわけですね。使用を制限された者の雇用及び収入の確保は、これはだれが責任を負うのか、その辺はいかがですか。
  58. 野見山眞之

    説明員野見山眞之君) 使用制限をされた者に対する雇用でございますが、私ども労働基準行政におきましては、できるだけ障害を防止するという観点で必要な指導をいたしているところでございまして、その制限された者に対する雇用機会等につきましては、職安等関係行政機関と十分に連絡をとりながら、所要の雇用機会が得られるように努力をしてまいりたいと考えております。
  59. 菅野久光

    菅野久光君 振動工具の使用を制限された者、これは結局収入の道がないから、またチェーンソーを使う仕事、やっぱり山で働いた者は山でなきゃなかなか生きていかれないし、雇用の場というのが極めて制限されているわけですね。ですから、そういうことによってまたこの症状が悪化すると、従来のパターンを繰り返すことになるというふうに思うんです。この点については雇用主責任を負うということで、負えるような体制になるのか、あるいは認定をされないということで労災で面倒を見るということもできないということになって、いよいよこれは症状を悪化させることになるんでは古いかというふうに思いますが、主治医から振動工具使用制限ということになれば、これは労災として認定されるという状況になりますね、この場合は。
  60. 野見山眞之

    説明員野見山眞之君) 振動障害ということで使用制限をされた者が療養を要するかどうか、また治療を受けることが必要であるかどうかという観点から労災認定が行われるということでございます。
  61. 菅野久光

    菅野久光君 使用制限者が労災認定を受けられない、使用は制限されても労災認定は受けられない、治療の問題がある、そこでこの雇用の問題が出てくるわけですね。だから結局、チェーンソーをまた使う仕事をやらなきゃならぬということで、いよいよ本当の振動病になっていくという状況になるわけですよ。ここのところが、またこれどうするかという問題は、振動病をなくしていくということからいけば非常に重要な部分になってくるという認識はお持ちですか。
  62. 野見山眞之

    説明員野見山眞之君) 今お話しのように、振動障害に至る前段階として、予防措置として使用制限をかけられた労働者にとって働く道が閉ざされるということは、これはぜひ避けなければならないことでございますし、また、それがために振動工具を使うということになればこれはもう悪循環になってくることははっきりいたしております。したがいまして、先ほど来申し上げましたように、まずは事業主が自己の雇用している労働者に対して適切な作業の提供ということはもちろんのことでございますが、当該作業において他に適当な雇用機会がなければ一関連の業務等につけるよう事業主あるいは関係行政機関協力して努力していくべきものというふうに考えております。
  63. 菅野久光

    菅野久光君 なかなか努力だけできちっとなるのであればいいんですけれども、口では言ってもなかなか実態はそういうふうになっていないんですね。ここのところはまたどのようにするのか、今後十分検討をして、制限者はせめてチェーンソーを使わなくても収入の道が得られるような、悪化させることのないような、そういうことで施策を講じていかなければならないものだというふうに思いますので、その点については要望しておきます。  いずれにしても、振動病予防早期発見早期認定について立ちおくれている実態は私は否めないというふうに思います。予防とかあるいは早期発見早期認定は、これは治療補償問題と一体のものでありまして、振動病予防措置について、これは関係省庁挙げて総合的な検討を急いでほしいというふうに思います。特に、三省庁協議が形骸化して年一回程度というのでは、これは真剣に検討しているとは言えないのではないか。しかも持ち回り開催、そういうことになっているんですね。それはもってのほかだというふうに思います。責任省庁の所在を明確にするべきだというふうに思いますが、見解を伺いたいと思います。
  64. 野見山眞之

    説明員野見山眞之君) 三省庁連絡協議会につきましては、振動障害に関する各種の対策について協議検討するために設けられているわけでございまして、協議を要する事柄が生じた場合に随時開催されるということで、開催の頻度につきましては、今お話しのように、年一、二回程度ということでございまして、今後とも必要に応じ緊密に連絡がとれるようにしてまいりたいと考えております。
  65. 菅野久光

    菅野久光君 責任省庁というのを持ち回りなんということじゃなくて、責任省庁を明らかにすべきではないかということについてはいかがですか。
  66. 野見山眞之

    説明員野見山眞之君) 振動障害に対する予防診断治療等の対策全体にわたるものでございまして、私どもとしては、どこの省庁ということよりも、林野庁労働省、厚生省それぞれが、それぞれの所管事項について三者で緊密に連絡をとるということで措置していくことが必要ではないかと考えております。
  67. 菅野久光

    菅野久光君 いや、それぞれの省庁がそれぞれの立場でやることはいいけれども、どこかやっぱり責任省庁というのを明確にして、そこが中心になっていろいろ連絡をとってやるべきではないかというふうに思うんです。それをあるときは厚生省、あるときは林野庁、あるときは労働省というような持ち回りということでは、これは総合的な検討ということにはなっていかないんではないかというふうに思うんですよ。どうですか、その辺は。
  68. 野見山眞之

    説明員野見山眞之君) 現在、各省庁の窓口担当課がございますので、そこを通じまして、責任を持ってこの協議会が運営されるようにさらに改善をしてまいりたいと考えております。
  69. 菅野久光

    菅野久光君 のれんに腕押しみたいな何か感じです。責任を持つのは当たり前なんですよ。ただ、どこが中心になってやるのかという、いわゆる本当の中心になる責任省庁というものをはっきりさせなきゃおかしいんじゃないですか。いろんな問題があったときにはプロジェクトというものをつくっていくわけでしょう。そういうときなんかもやはりそこが中心になってやっていくわけですから、何かそんな形というものをとるべきではないか。ここはひとつ検討してもらいたい。検討課題の一つだというふうに思いますが、そういうことで受けとめられますか。あくまでもさっきの答弁を変えるつもりは一切ないというかたくなな態度ですか。
  70. 野見山眞之

    説明員野見山眞之君) 三省庁で相談させていただきたいと思います。
  71. 菅野久光

    菅野久光君 相談して前進的な方向でひとつ取り組んでもらいたいというふうに思います。  特に林野庁にも申し上げておきますが、何か他人事のような態度を改めて、林業という産業存立基盤が問われているという立場で、みずからも真剣かつ早急に今の問題も含めて、例えば労働省責任省庁だということで余り責任がないような形になっても私は困ると思うんですが、そんなことにはならないと思いますけれどもね、その辺の林野庁としてのこの問題についての考え方、それは言えますね。
  72. 芳田誠一

    説明員芳田誠一君) 冒頭にも申し上げましたけれども林業労働安全衛生対策あるいは災害防止対策、さらには雇用労働確保対策というようなものは、林野庁関係省庁とも連絡をとりながら責任を持って一生懸命やっております。先ほどの三省庁会議につきましても、その一メンバーとして労働省、厚生省と協調してやっております。  それから結局、その他各種林業の振興というこ とを通じて雇用確保、それからさらにはその中での労働安全衛生が図られるということをしなくちゃいけないということで、一般的な林政の振興策についても今後とも努力してまいりたいと思っております。
  73. 菅野久光

    菅野久光君 それじゃ、次に移ります。  治療補償の問題でございますけれども振動病という病気はけがだとか、あるいは急性的な疾患とはちょっと性格が違うわけですね。まああえて質問したらなんですが、慢性疾患というものではないかと思うんですが、いかがでしょう。
  74. 野見山眞之

    説明員野見山眞之君) 振動工具を長期にわたって使用することから生じてくる障害という意味では、継続的な症状というふうに考えていいと思います。
  75. 菅野久光

    菅野久光君 そこで、お尋ねいたしたいわけですが、今日のこの労災補償法というのは、法の性格及び発足の経緯からして、急性疾患を念頭に置いてできたものだというふうに認識しておりますが、それは間違いございませんね。
  76. 野見山眞之

    説明員野見山眞之君) けが等業務上の災害に基づく補償その他が中心ではございますが、しかし業務に起因する職業上の疾病につきましても補償するという法の対象は変わっておりません。
  77. 菅野久光

    菅野久光君 今日、振動病長期療養者は、一日も早く全快することを望んで、病んで夜も眠れない苦しみから解放されたいというふうに願っているわけです。とりわけ日常的に見たときに、この人は振動病患者だなんということはわからないわけですね。ですから、仕事ができないということで休んでいると、何かぶらぶらして、そして補償の金をもらっているというようなことで、精神的にも大変な苦痛を受けております。しかし、新しい治療指針が出されたということで、何か治療を途中で打ち切られるのではないかということで非常に不安が高まっております。したがって、安心してこの治療に専念できるようなシステムというものをぜひ確立していかなければならないというふうに思うわけです。少なくともこのような労働災害について、大臣にちょっとここのところはお尋ねをしたいわけですけれども、やはり労働災害ですから、まず先に治療ですね。先に治療ということで、先に補償打ち切りありきというような考えということは本来あるべきではないというふうに思いますが、その辺は大臣、いかがでしょうか。
  78. 中村太郎

    国務大臣中村太郎君) 仰せのように、この治療のためにはまず第一に早期発見早期治療、それから早期軽快という順序でいくことは当然のことだと思っておりますが、補償につきましては、私どもは初めから、初めに補償の打ち切りというようなことは毛頭考えておりません。今仰せになったように、新しい治療基準に基づいて、これはもう本当に的確迅速に給付を行わなきゃいけないという方針は変わりませんし、そして最終的には効果の上がる治療によって早期軽快ということを目標にすることが順序でありまして、初めに打ち切りありきということは現在も考えておらないところであります。
  79. 菅野久光

    菅野久光君 温かいそのお言葉を患者人たちが聞いたら本当に安心するというふうに思うんです。何か治療指針が出たということで自殺した患者もいるということを聞いておりますが、今の大臣のお答えを聞けば、患者人たちも安心できるのではないかというふうに思います。それだけに何とか患者をつくらないように私どもも頑張っていかなきゃいかぬという思いを強くしております。  また、現行の振動病の軽快者雇用対策、これは極めて不十分なんですね。特定不況業種指定の考えだとか、あるいは身障者の雇用対策等の措置を含めたことで実効ある措置をやりたいというようなことを言われておりますが、私はあえてここで、これも提案したいわけですけれども、軽快者の受け皿対策です。受け皿の雇用創出についてちょっと申し上げてみたいと思いますので、検討願えないかというふうに思うんです。  まず、二十一世紀国産材時代と言われておりますけれども、現在、間伐が非常におくれております。これでは二十一世紀国産材時代といっても全くおぼつかないような状況だというふうに思います。また、松枯れ対策についても現在、薬剤の空中散布は、健康被害等も含めて大きな批判が出されております。そうしたことも受けて、前国会では空中散布縮小の方向も打ち出されたわけです。しかし、なお薬剤防除に傾斜していることはこれは否めないことです。  したがって、来るべき国産材時代に向けて年次計画をしっかり立てて間伐を実行していくということではどうか。また、松枯れについても伐倒防除を徹底してはどうか。こうしたことは大変重要であると同時に、この林業労働者雇用創出、軽快者の受け皿としての具体的な対策になっていくということで、二十一世紀に向けた緑豊かな森林づくりにつながるなど、一石何鳥にもなるのではないか。  石炭で失業した人たちはやっぱり山が恋しい、減船でおかに上がらなきゃならなくなった船員はやっぱり海での仕事をしたい、そういう気持ちを持っている。山で働いた人たちはやっぱり山で何とか仕事がないかという気持ちになるわけですね。そういう意味では、これらの間伐あるいは松枯れの伐倒防除などはチェーンソーを使わなくても、のこでそれはやれるわけですから、そんなことを考えてはどうかというふうに思いますが、この辺はこれは林野仕事になりますが、いかがでしょうか。
  80. 芳田誠一

    説明員芳田誠一君) 来るべき国産材時代のために間伐対策をしっかりやれ、あるいは松枯れ対策をしっかりやれということにつきましては全く私ども同感でございまして、私ども対策をいろいろ進めているところでございます。  それから、それとまた軽快者との関係でございますが、なかなかのこでやることが本当に効率的にうまくいくのかとかいろいろ問題がございます。片一方では、軽快者対策につきましては、やはり山の中がいいということであれば、キノコの栽培だとか、あるいは木工品をつくったりとか、あるいは木の苗をつくったりとか、あるいは薬草をつくったりとかというようなこと、あるいはそのほか公園の管理だとか、いずれにしても木にかかわりのあるような仕事、そういういわば軽快者に向いた仕事があるのではないかというようなことで、そういうことにつけるような講習だとか、いろんなことをやっております。  そういう意味で、なかなか軽快者対策と先ほどの間伐対策あるいは松枯れ対策と直ちに結びつくかどうかということにつきましては、若干私の方から必ずしも肯定的にはお答えできないんですが、先ほどおっしゃいましたように、国産材時代を前に控えまして、そういう対策に努めなくちゃいけないという点につきましてはおっしゃるとおりでございまして、施策の充実を今後とも期してまいりたいと思っております。
  81. 菅野久光

    菅野久光君 キノコ栽培といっても、もうキノコ自体も円高や何かの関係を含めて、国内で果たして販売できるかどうかというような問題などもあるわけですね。しかし、先ほど申し上げた間伐だとか、あるいは振動病の問題……。大分激震。私が言ったのはこんな激震ではなかったはずなんですが、先ほどの間伐あるいは松枯れの伐倒などは、これは後々にやっぱり残っていく問題だというふうに思いますので、ただ単なあこれは林野の問題ということではなくて、雇用創出という問題も含めて労働省あたりもひとつ真剣に考えていただければというふうに、この点については私は提案を申し上げておきます。何か特段ありますか、いいですね。  また、この際、雇用安定、労働条件の改善、あるいは振動病予防治療、そして補償問題は、これはばらばらの問題ではなくて、一体のものとして相互に関連づけた総合的対策が必要だというふうに思います。少なくとも労働省にそれぞれ関係するところでプロジェクトチームというものを編成して総合検討をお願いしたいというふうに思いますから、これも強く要望しておきたいというふうに 思います。  以上で、地震もあったことですから、振動病の問題については終わらせていただきます。  次に、地方労働委員会の審査の実効確保措置勧告の問題についてお尋ねいたしたいと思います。  各JRの会社を相手取って国労関係の地労委に申し立てた不当労働行為事件は、十二月一日現在で百四十五件、その中で審査の実効確保措置勧告、要望書、口頭勧告、口頭要望が出向差別事件を中心に四十三件出されております。一つの事件で二度あるいは三度出されているものもあるわけですが、このような事態を労働省としてどう見られておるのか。それから、運輸行政をやっておられる運輸省としてどのように見ておられるのか。そこをまずお聞きしたいと思います。
  82. 白井晋太郎

    説明員白井晋太郎君) お答えいたします。  今、先生指摘の地方労働委員会によります審査の実効確保措置の勧告等は出ておりますが、これは不当労働行為事件の審査手続の一過程で労働委員会なり担当の審査委員が発するものでございまして、御承知のとおりでございますが、その実際の運用を見ますと、勧告が履行されている例もございますし、これが契機となって和解に移行する例とか、そういうこともあるわけでございますが、いずれにせよ、実効確保の勧告等には法的強制力はございませんけれども労働委員会としてはこの勧告等を当事者が尊重することを期待していると承知しております。  労働省としては、基本的には個別の労使問題に介入する立場にはないわけでございますけれども、不当労働行為があってはならないのは当然であり、これまでJRにもこのような考え方を伝えてきたところでございます。
  83. 井山嗣夫

    説明員(井山嗣夫君) お答え申し上げます。  先生指摘のように、ただいま地方労働委員会でJR関係の不当労働行為事案がかかっていることは先生指摘のとおりでございます。  私どもも、新会社の労使関係というのは国鉄の当時いろいろあったようでございますが、最近全体として安定的な関係になっているとは思っておりますけれども、まだやはり一部の組合との間で多少今おっしゃった出向等の問題につきましてなお考え方に不一致があって地労委のお世話になっているという事案があるようでございます。労使関係一般に円滑にいくことが望ましいわけでございますが、先生指摘のように、運輸省はどのように考えているかという御質問につきましては、ただいま現に個別の事案がかかっておるところでございますので、ちょっと運輸省としてのコメントというのは差し控えさしていただきたいと思います。
  84. 菅野久光

    菅野久光君 運輸省としては労使の関係が安定の方向に向かっているということですね。ですから、そういうことからいくと、この四十二件も勧告だとかあるいは要望書、口頭の部分もありますが、地労委がそういったようなものを出したということについて、正常な労使関係といいますか、そういったようなことからいけば、やはり勧告が出されたものについてはその勧告を尊重してもらいたいという考えはございませんか。
  85. 井山嗣夫

    説明員(井山嗣夫君) 確かに、先ほど労働省からもお話がございましたように、地労委としてはそういうことを尊重して正常な関係を保ってほしいという御希望かと存じます。  ただ私ども、会社側等から若干聞いております話では、会社としましても、いわゆる今余剰人員と言ったらしかられるんですが、過員を若干抱えておりまして、その方々にあちらこちらで働いていただかなきゃいかぬということと、それからいわゆる民営化いたしましたので、民間のセンスといいましょうか、こういうものを養っていきたいということで、希望者あるいは場合によってはおまえさんはどうだということで指定いたしまして出向をお願いしているという事情にございます。  その場合に、相手の会社の方でもその人たちを受け入れるためにいわば空席をつくりまして待っていていただいているというようなこともございまして、JRとしてはやはりみんなが一度は民間の空気に触れてほしいということもございまして、本人に出向をお願いしている、発令をしている、こういう状態にあるわけでございます。  先生おっしゃったように、労使関係がスムーズにいくということが一番望ましいことでございますけれども、以上のような状態でございまして、若干地労委の勧告に従っていないといいましょうか、御要望に沿っていないという点はあるようでございます。
  86. 菅野久光

    菅野久光君 ただ一度の勧告だけじゃなくて、二度も三度もあるものもあるわけですね。やはり地労委が勧告あるいは要望書を出したものについては労使がそれを尊重するということがやはり正常な労使関係を確立していく上で大事だというふうに思うんです。それがこのような形でたくさん出ているということは、どう考えてみても正常ではない、異常だということで、非常に困った事態だというふうにお考えだと思いますが、労働省としてはやはり地労委のこういったような勧告や要望書については労使がきちっと守ってほしい、尊重してほしいということですね。いかがですか。
  87. 白井晋太郎

    説明員白井晋太郎君) お答えいたします。  先ほどもお答え申し上げましたとおり、今先生おっしゃいましたとおり、個別の労使問題につきましては労使が自主的に解決していくべきものでございまして、基本的には労働省としては介入できないわけでございますけれども一般的に不当労働行為があってはならないということは当然でございますので、JRにもこのような考え方を伝えてきているところでございます。  これを踏まえながら、いずれにしても労使間で十分意思疎通が行われ、問題の解決が図られることを労働省としても期待している次第でございます。
  88. 菅野久光

    菅野久光君 この勧告は、労働委員会規則の第三十七条の二、「(審査の実効確保措置)」に基づいてこれは出されたんですね。この決定は、これは公益委員会議の決定によるもので、公益委員会議で決定されたものなんです。ですから、まさにその地方の有識者といいますか、そういう人たちの決定で出されたものですから、それは労使ともこの勧告とか要望書というものについては、私は尊重しなければならないものであるというふうに思います。  この趣旨は、会社側の行為が不当労働行為に当たるものか否かの判断は、これは審査の結果出されるものではありますが、これを放置しておけば審査の実効が確保されなくなるおそれがあることを労働委員会が認めて、この審査の実効を確保するため必要な措置をとることを勧告しているということですね。この点は間違いありませんわ。
  89. 白井晋太郎

    説明員白井晋太郎君) お答えいたします。  今、先生指摘の規則によりまして、労働委員会なり担当の委員がその審査の手続の一過程として出しているということについては、先生のおっしゃるとおりでございます。
  90. 菅野久光

    菅野久光君 これは、労働委員会が必要と認めなければ勧告は出されないわけです。先ほども言いましたように、公益委員会議の決定に基づいてこれは出されるものですから、したがって地労委の勧告は、ただ単に不当労働行為の一環だから、あるいは審査過程の手続だからということだけで見過ごされない重みといいますか、そういうものがあるのではないでしょうか。個々の事案によって違うから、二度も三度も勧告だとかあるいは要望書、そういうものを出されても、それはいたし方ないんだと、そういうお考えですか。
  91. 白井晋太郎

    説明員白井晋太郎君) お答えいたします。  いたし方ないんだということではございませんで、審査手続の過程の中で、審査を解決するという過程の中で労働委員会の判断で出されたものでございます。したがって、先ほど申し上げましたように、労働委員会としてはこの勧告が当事者間で尊重されることを期待しているというふうに理解できるわけでございますが、これは法的強制力があるわけではございませんし、一方この個別の案件について見ますならば、そこで個別の不当労 働行為事件はまだ審査の中に係っているわけでございますので、その解決自体については労働委員会の解決にまつというのが行政としての立場だろうというふうに思うわけでございます。
  92. 菅野久光

    菅野久光君 ここでちょっと今の地震のことについて情報が入りましたのでお知らせしますが、東京、横浜が震度四、千葉、銚子が震度五、震源地不明ということだそうでございます。  では、質問を続けさせていただきますが、先ほど申し上げましたように、使用者側とか労働者側の委員が入らない公益委員だけの会議で決定されて勧告や要望書というのが出されるわけですから、それだけに法的拘束力だとかそういうのがないとしても、十分これは労使とも尊重しなければならないものだというふうに私は常識的に思うんですが、尊重しなければならないものだということについてはいかがですか。簡単に答えてください。
  93. 白井晋太郎

    説明員白井晋太郎君) 当事者が尊重することを労働委員会としては期待しているというふうに思っております。
  94. 菅野久光

    菅野久光君 だれが考えてみても常識的に私はそうだと思うんですよ。それを二度も三度も何か出されるというのは全く地労委を無視したJRの態度ではないかというふうに思うんですね。こんなことであっては私は困るというふうに思うんで、地労委の関係を所管する労働省としてもこの辺については十分お考えをいただきたいというふうに思います。こういうものの勧告あるいは要望書の趣旨が尊重されてこそ地労委の権威が保たれて、地労委というあの機関が機能していくというふうに思うし、またJRといういわゆる人の命を預かる仕事ですね、こういうところであるからこそ、やはり労使関係がきちっとなっていくということが私は非常に大事だというふうに思うんです。そういう点では、どこまで指導できるかどうかということは別にして、一般的な形としてはやはりそういうものを尊重するような風潮といいますか、そういう考えというものを十分JRの方にも伝えておいてもらいたい、そのように思います。  そこで、この問題にかかわって国鉄地域雇用対策室長さんが、こんなような状況を踏まえて、何かJR東日本の担当者を呼んで説明して話し合っているというようなことを聞いているわけですけれども、それがどのようなことになっているのか、ちょっとお聞きいたしたいと思います。
  95. 白井晋太郎

    説明員白井晋太郎君) お答えいたします。  国鉄地域雇用対策室長というのは、労働省の審議官が兼務していることを指されているんだと思いますが、この問題につきましては、労政局の方におきまして、JR東日本の幹部等に来ていただきまして、労使が信頼関係に立つべきであること、それから不当労働行為があってはならないこと、さらには労働委員会が勧告等を当事者が尊重することを期待していることについて伝えてございますし、そういうことで労政局でやっているということでございます。
  96. 菅野久光

    菅野久光君 この状態を放置しないで、できるだけこういったようなことが取り下げられる、あるいは解決されるというような方向で可能な限りのひとつ努力をしていただきたいと思います。  次に、大阪地裁の出向命令に対する仮処分の問題についてちょっとお尋ねをいたしたいと思います。  私は別に法律家でもありませんから、きょうは法律論争をするつもりはありませんが、実態などを申し上げて、常識的な面でお考えを聞きたいというふうに思います。  これは十一月三十日にJR東海の八名の社員に対する出向命令に対して大阪地裁が出向命令を停止する決定を出したわけです。会社側はこれに対して仮処分異議を十二月三日に申し立てました。会社側の大阪地裁仮処分決定に対する考え方ということで何か文書で、仮処分決定は本件の出向命令について暫定的にその効力を停止せよということにすぎず、本件の出向命令が無効であるとか取り消しを命じたものではないと考え方の中では述べております。しかし、私も判決を読ませていただきましたが、本件各出向命令は人事権の乱用として無効であると言わざるを得ないというふうにはっきり書いてあるわけですね。出向命令が無効なんだから停止の決定が出たというふうに思います。きょうJR東海の関係者を呼んでいませんから、会社側に対してはまた別な機会に尋ねることとして、本日はこの判決の内容を論じようとするものではなく、この事件の中身をちょっと申し上げたいというふうに思うんです。  提訴した八名のうちの一人に南林木さんという人がおります。この人の例を申し上げて、これはちょっとどうかなというふうに思うんですが、この人が出向命令を出されたその状況がどんな状況か、私もお聞きをいたしましたが、この人は大和郡山市に両親と奥さんと小さいお子さん二人で住んでいる、今回整備会社に出向命令が出されたが、この会社に行くと夕方の六時から翌日の四時二十分までという夜勤がある、仮眠時間はない、ですから十時間二十分ということですかね、これが五日間続く。南林木さんの場合、通勤に車で往復四、五時間かかる、だから在宅時間はわずか七、八時間しかない、これでは十分な休養がとれるわけはない、そうなれば単身赴任するしかなかったというようなことで提訴をしたわけですね。それで裁判所の決定が出たということなわけです。そこで、裁判所の決定が出たわけですから、常識としては最終決定が出されるまではこれはもとの職場に戻すことがこの種の解決には必要なことだというふうに思うんですが、いかがでしょうか。
  97. 井山嗣夫

    説明員(井山嗣夫君) 先生指摘の方、固有名詞、私、存じ上げませんが、大阪の運転所の方から出向を命ぜられまして、今の仮処分の決定がございましたので、もとの運転所の方に戻っているというふうに聞いております。その場合、従来自分のやっていた職務にほかの方が入っていらっしゃいますので、今はちょっと違う仕事でございますが、同じ多分第一運転所だと思いますけれども、そこで働いていると聞いております。
  98. 菅野久光

    菅野久光君 また地震情報が入りましたのでお知らせしますが、震源地は千葉県東方沖、震源の深さ七十キロメートル、マグニチュード六・六ということだそうです。  じゃ続けさせていただきますが、今の問題、六名のうち二名は運転士、四名は車両係や車両技術係で、いずれも専門的な労働者であることは裁判所の判決でも認められているところです。だが、聞くところによりますと、この六名は雑用的な仕事をしているということなんですね。専門的な技術を持っている労働者を雑用的な仕事に充てる経営者、全くむだなことだというふうに思うんですが、こんなことをどのように考えられるか。せっかくの技術を持っているものを生かされない、常識的に私はどうもおかしいんじゃないかというふうに思うんですが、いかがでしょう。
  99. 井山嗣夫

    説明員(井山嗣夫君) 私、個別の方の事情を細かく知りませんので、一般論で申し上げなきゃいけないんでございますが、会社でその人にどういう仕事をしていただくかというのは、その会社なりの考え方でやっているんだろうと思います。一般的に、先生おっしゃったようにせっかくの技術を持った方をほかの職務に使うというのは、会社としても非常に何といいますか、余り得なことではないなという気がいたしますけれども、何らかの事情があってそういうことをやっているんだろうと思います。一般的に私どもがそういう、この会社のこの人をこういうふうに仕事をこうしてやれというような個別の話は非常にしにくうございますので、承りましてちょっと考えてみたいと思います。
  100. 菅野久光

    菅野久光君 一般的に、せっかくの技術が生かされないというようなことは全くむだな経営をしているとしか言いようがないんです。国民の大事な財産を分けてもらってやっているのが今のJR会社ですから、もっとその辺はしっかりやってもらわなければならないというふうに私は思うんですよ。自分たちが出資してやっているんじゃないんです。  そこで、今ちょっとお話ししたようなことで、 本来的にはもとの職場に戻すということが建前だと、私はそうでなければならないと思うんですね。それがそのようになっていない。そうなりますと、今のJR全体とまでは言いたくはないんですけれども、裁判所のこのような決定も、それから労働委員会の勧告なども無視をするというような風潮があるのではないか。こんなことでは正常な労使関係が育つはずがないと思うんですね。安全輸送を目指さなければならない会社として、労使関係を大切にしなければならないことは言うまでもない。組合も出向を否定しているのではないわけですから、しっかりこの出向の人選基準だとか、そういったようなことを交渉で決めさせる、そして勧告や判決等を尊重させる、こういったような労使関係の正常化に向けて、これは厳しくやっぱり指導するということが大事だというふうに私は常識的に思うんですけれども、ここのところ大臣いかがでしょうかね。
  101. 中村太郎

    国務大臣中村太郎君) 労使間の問題につきましては、これは原則としまして労使間の話し合いで進めるという建前でございまして、中身につきまして個々具体的に労働省が意見を挟むべきではございませんけれども、御説明の範囲内におきましては、私どもも、労使の間におきまして少なくとも委員会から勧告が出されたようなことにつきましては尊重されることが望ましいと考えておるわけであります。
  102. 菅野久光

    菅野久光君 それでは、この関係については終わります。地震が来ましたので大分時間が地震の関係でとられましたが、運輸省結構です。  次に、身体障害者の雇用問題についてお尋ねをいたしたいというふうに思います。  時間の関係もありますので、いろいろ用意いたしましたが、ちょっとはしょって申し上げますが、去る十月九日に労働省が発表いたしました身体障害者の雇用状況を見ますと、雇用率が一・五%と義務づけされております民間企業における身障者雇用率はわずか一・二五%と、法定雇用率を達成していないのはもちろん、六十一年の一・二六%をも下回るという厳しい雇用環境に置かれております。  そこで、まずお伺いしたいのは、現在における身障者の雇用実態をどのように考えておられるのか、見解をお伺いいたしたいと思います。
  103. 岡部晃三

    説明員(岡部晃三君) 民間におきまして一・五%の雇用率が課されているわけでございますが、それがこの一年、六十一年、六十二年を比較いたしました場合に、一・二六が一・二五というふうに下がりましたのは、円高不況というふうな背景があったわけでございますが、非常に残念なことと考えている次第でございます。  ただ、その状況を個別に見てまいりますというと、例えば規模別に見ますというと、企業規模の小さなところで実雇用率が高くて企業規模の大きなところで案外この実雇用率が低いという従前の傾向に変わりはございませんけれども、六十二年におきましては、千人以上規模の企業のところで雇用率を達成する企業が一・一ポイント増加というふうな改善面も見られるわけでございます。それから、従来低かったサービス業、卸売・小売、飲食店業でございますが、これは〇・七六という非常に達成率が悪かったのでございますが、これも〇・四ポイントの改善を見るというふうな部分的には改善を見ている部分もあるわけでございまして、今後とも雇用率達成につきまして全力を挙げたいと考えております。
  104. 菅野久光

    菅野久光君 今お答えのように、割と規模の小さいところは一・五ポイント以上達成しているわけですね。それで、千人以上のところが非常に悪い。わずかばかり上昇したとはいえ、とても上昇したというように胸を張って言えるような上昇ではないというふうに私は思います。大企業が低いというのはどのような理由からだとお考えですか。
  105. 岡部晃三

    説明員(岡部晃三君) 大企業におきましては、言うなれば、いうところのエリートを集めて仕事をするというふうな従来からの慣行と申しますか、そういったような考え方が根っこにあるのではなかろうかと思うわけでございます。しかしながら、やはり身体障害者の雇用というのは、規模にかかわらずこれはもちろん達成してもらわなければならぬということであろうかと思います。大企業雇用慣行といたしましては、いわゆる新規学卒を生涯雇用するということでございまして、その新規学卒採用の際に障害のない人を採用して、それがそのまま定年まで雇用する、こういったことの実はあらわれではなかろうかと思うのでございます。しかしながら、最近は労働市場、流動化しておりますので、中途採用もふえてきております。そういう中で大企業にも一段の努力をしてもらう、新規採用のときももちろん努力をしてもらうと、こういう姿勢でまいりたいと存じます。
  106. 菅野久光

    菅野久光君 大企業の問題についてはまだ後から申し上げたいと思いますが、諸外国における身障者の雇用対策を見ますと、フランスは十人以上の従業員のいる民間企業及び公的機関は一〇%の身障者雇用率となっております。イギリスは二十人以上の従業員のいる民間企業に三%の身障者雇用率を課しておりますし、加えて解雇制限、さらには障害者の雇い入れ、または解雇制限に違反した場合は最高五百ポンド、これは日本円に換算すると十二万千五百円ぐらいになるわけですが、この罰金刑または最高三カ月の禁錮刑というふうになっております。フランスの雇用率が一〇%と高いのも、イギリスが障害者雇い入れ、または解雇制限に違反した場合、最高三カ月の禁錮刑という刑事罰を適用しているこういう趣旨は、健常者、身障者の区別なく、ともに社会参加をしようという人間本来のあり方を徹底させようとしているところにあるというふうに思います。  こうした諸外国における身障者雇用対策と我が国の対策を比較すると、取り組み方から大きな違いがあるように思います。そんな点で労働省は現在の身障者雇用対策は万全と考えているのかどうか、お尋ねいたしたいと思います。
  107. 岡部晃三

    説明員(岡部晃三君) 雇用率設定の方式でございますが、各国において身体障害者というものの定義がそれぞれ異なるというふうなこともございまして、フランスあるいはドイツというあたりの身障者の範囲と、それから日本における身障者の範囲が違うということがまずあろうかと思います。したがって、雇用率、日本では一・五%でございますが、例えばドイツでは六%等々、差が出てくることでございますが、実質的内容は私どもそう遜色があるものとは思ってはいないわけでございます。  解雇制限の問題でございますが、これは日本におきましても身障者の解雇につきましては届け出制がしかれておりまして、これについて罰則云々のお話になりますと、これはどうも日本の法制としてそこまで一足飛びにいけるかどうかというふうな実態上の問題もあるわけでございますが、日本におきましては雇用納付金制度、つまり身体障害者が規定数雇われていない場合におけるところの言うなれば雇用納付金、これは罰金とも税金ともつかない性格のものでございますが、そういうものを徴収いたしまして優良な採用企業にこれを奨励金として回すというふうなユニークな制度も働いているわけでございまして、これらの制度を通じまして遜色のない水準に引き上げてまいりたいと思っているところでございます。
  108. 菅野久光

    菅野久光君 他国に比べて遜色のないということでこれからも努力をしていきたいということでありますが、日本を取り巻く経済、雇用環境というのは非常に厳しい状況に置かれておるわけで、総務庁の労働力調査によりますと、ことし十月現在の失業率は二・六%、失業者は百六十二万人と、相変わらず厳しい雇用情勢が数字にもあらわれております。  しかし、政府としてよく考えてもらわなければならないのは、景気が悪く雇用情勢が悪化しても民間企業は一・五%の雇用率を守ってもらわなければならない。そうでなければ身障者が能力に適した職業につくことを目的とした身体障害者雇用促進法の趣旨は生かされないし、ましてや障害者の社会参加はできなくなってしまいます。一・ 五%の法定雇用率を適用される民間企業は四万三百九十一企業あるんですね。これを規模別に身障者の雇用状況を見ますと、先ほど局長が答えられましたが、一・五%を超えているのは従業員六十七から九十九人までの小企業の一・七四%のみで、それ以外はすべて下回っております。特に千人以上の大企業雇用率はわずか一・一六%、雇用率を達成していない企業は実に七五・七%にも達しております。この数字をどのように受けとめるか、これは大臣いかがでしょうか。
  109. 中村太郎

    国務大臣中村太郎君) お説のように、大変残念であります。したがいまして、私どもとしましてはこれからも、身体障害者雇用率制度、同時にまた障害者雇用納付金制度、この二つの面を十分に活用いたしまして努力してまいりたいと思いますし、特に身体障害者雇用促進法につきましてはさきの通常国会において職業リハビリテーションの推進等を内容とする改正法が成立したところでございますので、これに基づく施策を一層強力に推進してまいりたいと考えておる次第でございます。
  110. 菅野久光

    菅野久光君 身体障害者雇用促進法の第十五条第一項によりますと、労働大臣は法定雇用率未達成の事業主に対し法定雇用率を達成するよう身障者雇用計画の作成を命じることができることになっておりますし、さらに第四項では、雇用計画が不適当であれば計画の変更を勧告することができ、加えて雇用計画を適正に実施させるための勧告ができることになっておりますね。最近五カ年間においてまず雇用計画の作成を命じた企業数は何社が、すぐ出ますか。そして、不適当な雇用計画を変更させたのは何社が。三つ目として、雇用計画の適正実施を勧告したのは何社が。もしも五カ年間のがわからなければ、ごく最近のでも結構です。
  111. 岡部晃三

    説明員(岡部晃三君) まず、計画の作成命令の発出状況でございますが、五カ年ということで五十七年から六十一年まで申し上げます。五十七年度五十三件、五十八年度五百六十九件、五十九年度三百二件、六十年度百四十三件、六十一年度三百八十二件でございました。さらに、その適正な実施を勧告するという強い措置に出ましたものが、五十七年度五十八件、五十八年度四十一件、五十九年度九件、六十年度三十八件、六十一年度二十五件でございます。
  112. 菅野久光

    菅野久光君 今の御説明ですと、勧告した企業数はちょっと低下傾向にありますね。特に五十九年度はたった九企業でありますし、次に少ないのが六十一年の二十五企業ということになっております。このように極端に少ないのはどういう理由によるのか、いろいろあるんでしょうが、時間がございませんので、ここのところはお聞きしません。  特に大企業において身障者の雇用率が悪いのは、これは身障者を雇うよりも身障者雇用納付金を納めた方がましだというような企業エゴがまかり通っているからではないでしょうか。身障者雇用納付金は現在月額四万円となっておりますが、この額では事業主の身障者雇用に関する社会連帯責任ということは余り感じないのではないか。また、罰則的意味を持つ身障者雇用納付金の存在意義が失われているのではないかというふうに考えざるを得ません。まず雇用させることを最重点に考えるということで、納付金を納めさせることが目的ではないわけですね。お金さえ納めればあとは法定雇用数は雇用しなくても何とか済むのだというような考え方が強くあるのではないかなというふうに思うんです。そういう意味では、思い切ってこの納付金を引き上げるということをやるべきではないかというふうに思うんですね。法を守らない企業に対してはやはり、法律違反をしているわけですから、それ相当のペナルティは科した方がいいのではないか。そして、法を守っているところにしっかりした手当てをしていく。手当てをすればいいというものではない、本来的には雇用させる、雇用率を達成させるということにあるわけですが、こういうことでいくべきではないかというふうに思うんです。ほかの国なんかでもそれ相当のことをやっぱりやって雇用というものをしっかり守っていっている。そういうことで、もっと納付金の問題について考えてみる必要があるのではないかということを提起いなしたいと思いますが、いかがでしょうか。
  113. 岡部晃三

    説明員(岡部晃三君) 納付金の額につきましては、一定の法律の趣旨に基づきました算定方式に基づきまして算定されるわけでございます。しかしながら、物事の本質を考えまするというと、やはり先生のおっしゃいますように、納付金を上げて徴収額を多くするということに目的があるわけではもとよりございませんで、雇用率を達成せしめるということが本旨であろうかと存じます。したがいまして、先ほど来御議論がございますように、納付金の徴収は十分にこれはまた行うわけでございますが、一方、行政措置といたしまして先ほど出ましたような計画作成命令でございますとかあるいはまた適正実施の勧告でありますとか、行政措置をさらに強化いたしまして本件に臨みたいと考えております。
  114. 菅野久光

    菅野久光君 それじゃ時間が来ましたので、これで最後にいたしますが、今の一・五%でさえも守らない企業がたくさんあるわけですね。今度六十三年の四月からさらに法定雇用率を〇・一%上げるわけで、今でさえも守っていないのに、上げて本当に大丈夫なのかなという私は気持ちを強く持たざるを得ません。この目的や理由は一体何なのか。それから、現在でも守っていない企業に対しては本当に本気になってやるのか、どのように指導するのか、その辺をお聞かせいただいて私の質問を終わります。
  115. 岡部晃三

    説明員(岡部晃三君) この雇用率設定そのものにつきましても一定の算式、基準がございます。それに基づきまして計算をいたしますというと一・五九六という数字が出てまいりますので、一・六%にするということで〇・一のポイントアップでございます。  この問題につきましては、既に本年半ばぐらいから各事業者団体等に強力にPRを行っておりまして、今度は来年の四月一日から〇・一上がるんだぞということを懇切に説明をいたしまして協力を求めておるということでございます。十分に浸透しつつある過程ではないかと思うわけでございます。もとより〇・一上がるわけでございますので、一層行政姿勢を強めてまいりたいと考えております。
  116. 菅野久光

    菅野久光君 実効を期待しております。  終わります。
  117. 一井淳治

    ○一井淳治君 昭和六十二年十一月二十七日付の「外国人の就労に関する意識調査の概要について」という法務省入国管理局の調査がなされておりますけれども、この調査をされた動機と目的についてまずお尋ねいたします。
  118. 米澤慶治

    説明員(米澤慶治君) お答えいたします。  国際化社会を反映して、御承知のとおり、我が国でも外国人の雇用問題が各般の関心を集めておるところでありまして、当局といたしましても、我が国で就労する外国人の入国、在留についての基本政策が社会の実情に適合しているかどうか、あるいはまた将来にわたり妥当なものと言えるかどうかに関しまして従来から有識者の意見を聴取するなど、鋭意調査検討を行ってきておりましたところでございますが、今般その一環といたしまして、外国人の就労に関する委員指摘の意識調査を行ったものでございます。  なお、本調査は、御承知のとおり出入国管理行政そのものに資するための調査でございますので、他局あるいは他省庁とは何ら意見調整あるいは下相談はいたしておりません。
  119. 一井淳治

    ○一井淳治君 この調査報告書の一の「背景」のところで、この問題についての内部的な研究会とかあるいは懇談会を設けているということが書いてあるわけでございますけれども、どんな研究会あるいは懇談会があるのでしょうか。
  120. 米澤慶治

    説明員(米澤慶治君) まず一例を挙げさせていただきますと、例えば労働問題あるいは外国人労働者の出入国に御関心を有しておられます大学の先生とがあるいはジャーナリストの方々に随時集 まっていただきまして、いろいろな御意見を聞かせていただくというようなことをやってきておるところでございます。これは一例でございます。
  121. 一井淳治

    ○一井淳治君 そういたしますと、入国管理の問題、特に今回の意識調査を対象とした問題について恒常的な委員会を設けているとか、そういうわけではないんですね。
  122. 米澤慶治

    説明員(米澤慶治君) そういった有識者の方々の御意見をお聞きするという全く内部的なものでございまして、恒常的と言えるかどうか、随時やらせていただいておるということでございます。
  123. 一井淳治

    ○一井淳治君 この「背景」でございますけれども、「これらの者に係る入国・在留についての基本政策」、これが妥当なものであるかどうかを考えるために調査をしたというふうに書かれておるわけでございますけれども、入国とか在留についての基本政策はもちろん入国管理局としても重大な御関心をお持ちなのはわかるのでございますけれども、やはり労働省とか厚生省とか、その辺が最も基本政策とすればかかわりを持っている官庁ではないかと思うわけでございます。  先ほどのお話によりますと、ほかの官庁との協議はまだやっていないのだということでございましたが、この調査が済んでしまっておるわけでございますけれども、今後はやはり労働省あるいは厚生省等とよく論議をしていただきまして、労働行政というのは非常に我が国の国民にとっては生活にかかわる重要な問題でございます。また、治安問題とか、あるいは先進ヨーロッパなどを見ますと、スラムができて、スラムの外国人労働者だから帰ろうにも帰れない、そのためにいろいろ国費をつぎ込むというふうな問題があって、大変な社会問題のようでございます。今後進めるについては、やはり労働省とかほかの官公庁ともよく御協議いただきたいというふうに思うわけでございますが、その点いかがでございましょうか。
  124. 米澤慶治

    説明員(米澤慶治君) ただいま委員指摘のとおり、諸外国で外国人労働者を単純労働等で非常に多数入国させた結果として、今おっしゃいましたように、その後治安問題等に非常に問題が生じておるということは私も承知しておるところでありますし、かつまた、現在の我が国政府の外国人労働者の入国をさせるかどうかにつきましての政策決定につきましては、委員承知かと思いますが、関係省庁と十分協議をいたしまして、当然それを参考にして入管行政にも反映させていただいておるところでございます。したがいまして、将来にわたりましても委員指摘のような観点から十分関係省庁と協議をしながら遺憾なきを期していきたいと考えております。
  125. 一井淳治

    ○一井淳治君 労働行政との関係もあるわけでございますけれども、現在技術を持っている者、これについてはある程度国内に入れて日本の産業の振興に資しようというふうなお考えもあるようでございますけれども、建設機械のオペレーターですが、これについては現在どういう扱いになっていましょうか。
  126. 米澤慶治

    説明員(米澤慶治君) その点につきまして先ほどいろいろな統計等を調べてみましたけれども、オペレーターとして稼働するということで入国した例は、私の知る限りではないようでございます。
  127. 一井淳治

    ○一井淳治君 ただいまのお話によりまして、ほかの官公庁ともよく御協議いただくということをお聞きして安心したわけでございます。  もう一つ、不法入国者に対する対策、これは入管の方で積極的にやっていただかなくちゃならないことであるというふうに思います。その点につきましてはこの調査報告書の第三項の(1)に書かれておるわけでございますけれども、現実に日本に入ってくるじゃぱゆきさん等の不法入国者、これは責められるべきではありましょうが、やはり個人的に見ると気の毒な人が多いというふうに思うわけで、日本でこういった人たちをうまく利用しようということで雇用したり、あるいは営利的にあっせんする業者、こういった人の活動を阻止していくという意味で、不法入国が起こる背景の素地をなくすという方向での努力が一番必要ではないかと思います。そのために、そういったふうな業者の処罰とかあるいは業界の自粛運動とか、関係業界を監督する官庁とのいろんな協議とか、いろいろあると思いますけれども、そのあたりについてお尋ねをいたしたいと思います。
  128. 米澤慶治

    説明員(米澤慶治君) 委員指摘の不法入国と一口に申しましてもいろいろな種類がございますけれども、不正な入国の手段で入ってまいりまして、例えば資格、目的を偽って入ってまいりまして、それから資格外活動をする、いわゆる不法就労者というのが目立ってきております。  その動機、原因についてはなかなか分析難しゅうございますが、私の考えますところでは、日本の経済力が非常に伸びたということ、あるいは円高で円の価値が非常に高くなったということ、あるいはこうしたじゃぱゆきさん等が、かっては中東地方で就労していたわけでございますが、あの地方の経済情勢が悪くなったために日本に向かってきたというようないろいろな原因があろうかと思うわけでございます。そういうふうな原因をよく究明いたしますだけでなくて、今委員指摘のように、そうした不法就労者を自己の利益を図る目的で送り出したり受け入れたり、あるいは自分のところで働かせたりというような雇用者側の問題もあろうかと思うわけでございます。  そういった面をいろいろ考えましてそれに対応する措置をとる必要があるわけでございますが、殊のほか、この不法就労者を放置いたしますと、例えば我が国の労働市場に混乱が起きるとか、あるいは治安に悪影響を与える、あるいは風俗について悪影響を与えるというような重大な影響もございますので、当局といたしましては、まず上陸審査のときに厳正な審査をして不法入国者を締め出すということをする。それから逆に、かろうじて我が国に入ってきてそのような不法な活動をする人がおります場合にはこれを徹底的に摘発するというようなことをもちまして、当局としてはそれらの不法就労者を払拭するための最善の努力をいたしたいと思いますし、他方、雇用者あるいはそうした供給業者というようなものにつきましても、関係労働法規等に触れるか触れないかよく検討いたしまして、関係省庁と協議の上、十分連携をとって、その摘発あるいは対応措置を実現してまいりたいと思っております。
  129. 一井淳治

    ○一井淳治君 次に、労働省の方にお尋ねしたいと思いますけれども、外国人の労務提供者の入国問題について、これはこれまで労働省として確立した方針があるわけでございます。そして、それについてはこれまで繰り返し国会等でも御説明があったんですが、こういったふうな調査もありましたので、もう一遍、どういう方針をお持ちなのか確認する意味で、簡単で結構でございますから御説明願いたいと思います。
  130. 中村太郎

    国務大臣中村太郎君) 御承知のように、またただいま法務省から御報告がありましたように、外国人の不法就労者が最近とみにふえておるわけでございまして、いろんな問題も発生をいたしております。また一方におきましては、企業等におきましては外国人の優秀な技術者の招請をいたしておるわけでございます。そういう中で外国人労働者に対する関心も非常に強まっておりまして、この機会に労働省といたしましてもこの取り組みのあり方を検討しなければならないと思っているわけでございます。  かねがね労働省におきましては、御承知のように単純労働者は受け入れない、これが基本原則でございます。単純労働者の受け入れということになりますると、これまた我が国の労働市場に重大な影響を及ぼすことは必至でございますので、労働省としましてはあくまでも従来の原則を踏まえつつ、なおかつ最近の動きへの対応のあり方をどうするかとかいうことを実は検討課題といたしておりまして、つい先般、省内に外国人労働者問題研究会を発足させて、新たな観点でこの問題への対応のあり方を研究してまいりたいと考えておるわけでございまして、年度内にもその結論をお願いしたいということで要請をいたしたところでございます。
  131. 一井淳治

    ○一井淳治君 そのような委員会が構成されたと いうふうなことで、現在委員会の結論が出てないわけですから非常に言いにくいという状況もあるかとは思いますけれども、非常に重要な問題ですからお尋ねするわけでございますが、これまで確立されております、今大臣がおっしゃいました単純労務者は原則として入国を認めないという、そういう方針を現在変える御方針をお持ちなのかどうか、変える御方針はお持ちでないというふうに私は思うんですけれども、それについて確かめる意味でお尋ねしたいと思います。
  132. 中村太郎

    国務大臣中村太郎君) この問題は、我が国の労働市場だけではなしに、経済社会全般への波及あるいはまた外国への影響も考えられますので、極めて重大であり、かつ慎重でなければならぬと思っております。特に我が国におきまして、最近の雇用不安の中で、今日の状態の中で直ちに単純労働者を受け入れるということについては、私どもは反対であります。将来課題としてそのこともあり得るかもしらぬけれども、少なくとも現状の雇用情勢、失業情勢の中におきましては不適当であると考えております。
  133. 一井淳治

    ○一井淳治君 単純労務者については入国を原則としてさせるべぎではないというのが我が国の国民の合意を得ている、非常に積み上げられているところじゃないかというふうに思いますけれども、そういう方向を維持していただきたい。  それからまた、この入国問題につきましては、我が国の労働問題、社会問題等、重要な問題でございますので、やはり入国管理局の方でも非常に御関心があるようでございますけれども、主体は労働省であるというふうに思いますので、もう少し入国管理局よりも労働省が前に出て全体をリードしていただくということが非常に望ましいのじゃないかというふうに思うわけでございます。今後の進め方について大臣の方から御説明をいただきたいと思います。
  134. 中村太郎

    国務大臣中村太郎君) 今年度のうちにその学者研究グループに結論を出していただきたいというのは、非常に問題が焦眉の問題になっておりますので、その結論を踏まえて、その段階で関係省庁との協議を持って政府としてのあるべき方向を確認いたしたいという段取りを進めたいと思っております。
  135. 一井淳治

    ○一井淳治君 質問を育児休業制度の方に移させていただきます。  現在雇用されて働く女性の数は全国で約千六百万人に達しておりまして、その六割近くが共働きという状況でございます。働く女性の地位の向上にとって育児休業制度の確立が極めて重要であることは論をまたないところでございます。継続して働きたい意欲を持ちながら、出産、育児のためにやむなく離職しなければならない、そして一度離職しますと再就職は極めて困難でございますし、仮に再就職できても大変不利な条件を余儀なくされているのが実情であると思います。  そこで、文明国においては有給、場合によっては無給のこともあるようでございますけれども、相当長期間の育児休業というものが法律で強制されておるところでございますが、ヨーロッパ諸国など外国の育児休業、これは先進国の様子の説明をいただきたいという趣旨で、外国の育児休業についての法制度の状況についてまず御説明をいただきたいと思います。
  136. 佐藤ギン子

    説明員佐藤ギン子君) 把握しております限りでは、現在、西ドイツ、フランス、イタリア、スウェーデン、オーストリアその他の国で育児休業請求権が法制化されております。  その内容は国によってまちまちなのでございますけれども、おおむね生児が一歳になるまでの間に父母のいずれか一方あるいは母親のみが育児休業を請求できることになっております。それから、休業中の手当につきましては、有給のところと無給のところがあるという状況になっております。
  137. 一井淳治

    ○一井淳治君 日本の状況につきましては、これは御説明するまでもなく大臣御存じと思いますけれども、日本の育児休業制度と諸外国の今御説明のあったような状況を比べまして、大臣はどのようにお考えでございましょうか。私は、どうも諸外国と比べてこういうふうなおくれた状況であるということは、余り日本が文明国とは言えないということを示しておるのじゃないかというふうな感じがするわけでございますけれども大臣はどういうふうな御感想をお持ちでございましょうか。
  138. 中村太郎

    国務大臣中村太郎君) まず育児休業制度でございますけれども、率直に申し上げまして発足間もないわけでございます。これが今急速に発展しない原因には、やっぱり企業におきまして代替要員がないという問題、あるいはまた人件費の増高というようなことが障害になっておると思うわけでございます。  省といたしましては、育児休業奨励金制度を導入いたしまして、六十年度からその支給額も増大をいたしまして、その普及徹底を期しておるわけでございますけれども、この問題に対する審議会の御意見も、まず法制化よりも現実に普及させることの方が大事ではなかろうか、それを見て判断すべきだというような御意見もありますので、私どもとしましては、今後ともこの育児休業奨励金制度を活用いたしまして、十分な浸透を図っていくような努力を払う所存であります。
  139. 一井淳治

    ○一井淳治君 現在の育児休業制度の運用によって普及を図るという御趣旨の説明があったわけでございますけれども、現在の雇用機会均等法二十八条の育児休業制度の普及のために労働省としてはどのような方策をお立てなのか、御説明をいただきたいと思います。
  140. 佐藤ギン子

    説明員佐藤ギン子君) 先ほど大臣からも申し上げましたように、育児休業制度の導入を図りますために奨励金制度を設けておりまして、特に六十年度からはその額を大幅にふやしておるわけでございます。  また、婦人少年室には、すべての室に育児休業制度を普及するための普及指導員というのを置きまして、各企業での導入のためのお手伝いをさせていただいております。  それから、こうした制度について、労使はもちろんのこと、国民の皆様に御理解をいただくということが重要だという考え方から、毎年五月に育児休業制度の普及促進旬間を設けておりまして、その期間にマスコミ等の御理解もいただきながら全面的な御協力をいただいてPRに努め、また労使への指導をいたしているところでございます。
  141. 一井淳治

    ○一井淳治君 統計の数字を見ますと、育児休業制度の実施事業所の割合が一五%どまりというふうな状況が継続しているのじゃないかと思います。このうち強制適用の事業所が約半分ありますので、民間企業は七%に達しない状況で頭打ちというふうな状況ではないかと思うんです。先ほど御説明があったんですけれども、現実にはなかなかこれが拡大しないというのが実情ではないかと思います。  今のままではとても日本が批准しておる国連の女子に対するあらゆる形態の差別の撤廃に関する条約を守っているということにならないのじゃないか。また、ILOの一九八一年の条約勧告を尊重したことにならないのじゃないかという気がするわけでございますけれども、いかがでしょうか。例えば指導員が何人おるのか私知りませんけれども指導員を五倍も十倍もふやすとか、よほど人数をふやさないと、また来年は助成金について相当額をふやすようないろいろな概算要求をなさっておられるようですけれども、それくらいではとても育児休業の普及はできないように思うんですけれども、その点はいかがでございましょうか。
  142. 佐藤ギン子

    説明員佐藤ギン子君) 先ほど御指摘ありました女子差別撤廃条約につきましては、男子と比べて女子に差別をするということをなくしていこうということでございますので、女子差別撤廃条約の問題ということではないと思いますが、私どもとしても、育児休業制度は先生指摘のとおり大変重要な制度でございますので、ぜひ普及を図ってまいりたい。また、先ほど大臣からも申し上げましたように、審議会でもう少し普及が進まなければ法制化が困難であるという御指摘をいただいておりますところから、現在精いっぱいの努力を いたしているわけでございますけれども、さらに私どももこの普及のためにはいろいろと工夫をしてまいりたいと考えております。
  143. 一井淳治

    ○一井淳治君 大いに工夫をされまして、強力な施策を遂行していただきたいというふうにお願いしたいと思います。  しかし、幾ら努力なさいましても、今までの経験からして限度があるのじゃないか。企業としても大変な負担があるわけですから、やはり育児休業制度というものは強制適用に持っていかなければどうにもならぬのじゃないかという気がするわけでございますけれども、いかがでございましょうか。  また、先ほど、四野党が共同して育児休業法案というものを提出いたしておりますけれども、これについての評価についてもあわせてお尋ねしたいと思います。
  144. 佐藤ギン子

    説明員佐藤ギン子君) 請求権の法制化につきましては、先生御存じのとおり、雇用機会均等法案をつくりますときに、審議会で育児休業の請求権を法制化するかどうかということで延々と御議論いただきました結果、先ほど大臣が申し上げましたような御意見をいただき、それに基づいて現在施策をとっております。  それから、野党の各党の皆様方が共同提案されております内容は十分に私ども承知をいたしておるところでございまして、国会での御審議を見守らせていただきたいと思っております。
  145. 一井淳治

    ○一井淳治君 任意的な制度ではとても十分な制度の確立ができないということがそろそろ証明されてきているのじゃないかというふうに思いますので、その点の御検討もよろしくお願いしたいというふうに思います。  次に、同様に働く女性の地位の向上との関係でもう一つ最近心配しておりますのは、この雇用機会均等法の施行と同時に、その対応策として企業で取り上げられるようになりましたコース別人事管理制度の問題でございます。私は、これは企業内に女性を差別する新しい身分制度を導入して男女差別を巧妙にカムフラージュするものではないか、結局雇用機会均等法一条の目的、二条の基本的理念に反するものだというふうに思いますけれども労働省はどのように評価なさっておるんでしょうか。
  146. 佐藤ギン子

    説明員佐藤ギン子君) 企業雇用管理をいたしますときに、各人の意欲と能力に応じてコース別に区分して行うということ自体は、不合理だというふうには言えないのではないかと存じます。  均等法では、一定の募集、採用区分や職務から、女子であることを理由として女子を排除しないように努めるということを事業主に求めているわけでございます。したがいまして、コース別の雇用管理制度を導入するに当たりまして、女子に対しても男子と均等にそれぞれのコースの門戸が開かれるということが求められているわけでございますので、一定のコースに女子を排除するようなことがございましたら、これは適切な指導をしてまいりたいと考えております。
  147. 一井淳治

    ○一井淳治君 このコースの分け方でございますけれども、総合職と一般職というふうな呼び名が多いようでございます。コースを分ける要件として一番よく挙げられているのが広範な転勤に応じ得るかどうか、それからもう一つの要件が責任のある管理系統の仕事につき得るかどうかという点のようでございますけれども、結婚前の女性にとりましては、あちこち転勤させられると現実に困るわけでございますし、結婚後は夫を置いて転勤というわけにもいかぬでしょうし、子供ができると特に母親が子供を残して転勤ということは現実の問題でできないわけでございまして、現在の現実に働く女性の置かれた立場からすれば、転勤が可能かどうかということは結局女性を振り落とすための要件ではないかというふうに思いますし、これはだれが考えてもそうなんじゃないかと思います。  それからもう一つ、責任ある管理系統の仕事につき得るかどうかという問題でございますが、やや古いんですけれども昭和五十六年の総務庁の調査によりますと、共働きの夫婦におきまして、女性は家事、育児、買い物のために合計三時間五分の時間を使い、男性は合計十二分というふうになっておりますけれども、結局女性は家事労働の負担がありますから、職場で責任を持った管理職的な業務がやろうにもできないというふうな現実があるわけです。  したがって現実を見据えて、それで考えたならば、二つの要件いずれも女性を対象にしているというわけでありまして、ただいまコースの中に入れる入れ方において男女差別があったら問題だというふうに言われましたけれども、コースの立て方自体が、コースに分けること自体が男女差別を巧妙に隠しているんだと、私はそういうふうに思うわけでございます。  時間が来ましたのでこれで終わりますけれども、その点だけについて御回答をいただきたいと思います。
  148. 佐藤ギン子

    説明員佐藤ギン子君) いわゆる総合職のコースといいますのは、仕事の内容もかなり高度である、そしてそれに伴いまして、仕事に必要な訓練の一環ということもあるかと思いますけれども、転勤が伴うことが多い、労働時間もやや長目になることが多いということになるわけでございますが、また反面、労働条件、あるいはよりよい地位につける機会があるということになるわけでございまして、先生御存じのとおり、日本のサラリーマンの場合には転勤というのはどうしてもついて回るもので、男にとってもなかなかつらいものでございます。女性が男性と同じように扱われたいということであれば、そういうものを全く避けて通るということもなかなか難しいわけでございまして、そういうものに進んでチャレンジしていただく精神も大事だと思いますし、また責任のある地位につこうということであれば、当然に仕事の内容は難しくなるということでございます。  また、女性は家事があるから仕事ができないというお話でございましたが、機会均等法では、女は家事をしているのだからこういう重要な仕事にはつけないよというのは差別になるわけでございまして、女性の方たちにも、もし男性と同じようによりよい仕事をしたいというのであれば、それと裏腹であるより重い責任というものにもチャレンジしていくという、そういう精神がこれからは必要になってまいると思いますので、そういう点で大いに男性の意識も変えていただきたい。家庭における意識というものもだんだんに変わっていかなければならないと思いますが、女性自身もチャレンジングな生き方というものを考えていかなければならない時代になっているのかなという感じがいたしております。
  149. 穐山篤

    委員長穐山篤君) 午前の審査はこの程度とし、午後一時三十分まで休憩いたします。    午後零時二十五分休憩      —————・—————    午後一時三十分開会
  150. 穐山篤

    委員長穐山篤君) ただいまから決算委員会を再開いたします。  休憩前に引き続き、昭和六十年度決算外二件を課題とし、労働省決算について審査を行います。  質疑のある方は順次御発言を願います。
  151. 松尾官平

    ○松尾官平君 質問をさせていただきます。  さきの臨時国会で労働基準法一部改正案がめでたく成立したわけでありまして、法制定以来四十年を経過しての改正であります。労働省御当局は大変な御努力があったことと拝察するわけでありまして、敬意を表したいと思います。  ところで、労働基準法が改正になりまして、それに対する対応が今後どのような形でとられていくかということが大変問題になると思うのであります。私は、時間が余りございませんのでストレートに質問をさせていただきますが、今度は週の所定の労働日数が少ないパートタイムの労働者にも年次有給休暇が与えられることになったわけであります。  私は、この措置は大変いい措置だと思うのでありますが、これらに比較して、私が従来から主張 してまいりましたいわゆる出稼ぎ者に対しても年次有給休暇を与えるべきであると思うわけであります。再三の私の質問に対して、基準法では一年という縛りがかかっているからできないんだと、こういうことになっているわけでありますが、諸外国の例を見ましても、継続して一年を働かなければ有給休暇をやらないというような先進国の規定はないようでありまして、日本独特の一年の縛りだというふうに思うわけであります。  そういうことで、法はその点は今度改正されませんでしたので、法的にはぜひやらなきゃならないということにはならぬわけでありますが、いろんな行政指導等でだんだんそういう形をとってもしかるべきではないか。特に、参議院の社労委員会におきまして、先般の改正案成立時における附帯決議の五項に、「出稼労働者に関し、パートタイム労働者との均衡を考慮し、これらの者にも年次有給休暇が付与されるよう関係業界等を指導すること。」と、こういう附帯決議もついているわけであります。どうぞ、そういう意味におきまして今後労働省でしかるべき措置をとっていただきたいと思うわけでありますが、御見解を伺いたいと思います。
  152. 中村太郎

    国務大臣中村太郎君) 出稼ぎ労働者に対する年次有給休暇の付与につきましては、実はこの道の専門家でもございまする松尾先生が一番難しい問題であることは御認識せられておると思っておるわけでございます。  しかし、労働者福祉という面から考えますれば、与えることが望ましいには違いありません。そういう意味で、お話のように附帯決議の趣旨もございますし、特に松尾先生の御発言でございますから、労働省としましては入念に関係業界と話し合いをいたしまして善処をしてまいりたいという取り組みをこれから行っていく予定でございます。
  153. 松尾官平

    ○松尾官平君 ありがとうございました。大臣から直接答弁いただけるとは予想しておりませんでしたが、力強い御答弁をいただいて感激をいたしております。  労働時間の短縮という世界の大きな流れはこれはどんどん進むと思うわけでありまして、それはそれで結構なんですが、それが進みますと、どうしても事業所自体が休む日にちがふえてくる、事業所が休めば出稼ぎ労働者労働日が減る、これが収入にストレートに響くわけでありまして、これからの出稼ぎ者はなかなか大変だと思うわけであります。  依然として青森県は約六万に近い出稼ぎ者を抱えておりまして、その働く方々の将来が心配でございますので、せめて、福祉向上といいますか、こういう社会的な弱者と目される出稼ぎ労働者について有給休暇等の措置がとられるならば大変ありがたいことだと思いますので、よろしくお願いを申し上げたいと思います。  次に、中小企業の対応がまた問題になるわけでございますが、中小企業といってもピンからキリまであるわけでありまして、中ぐらいのところはいいと思うんですが、問題は、心あるいは小規模事業者と言われるところに働く方々の週休二日制あるいは労働時間の短縮というものが問題になってくると思うわけであります。日本のいろんな統計を見ましても、大規模なところと小規模なところでは大きな格差があるわけでありまして、これを一括して法制上では緩和措置といいますか、猶予期間を設けて指導に入るようでありますが、それにしても今から準備してかからなきゃならないと思うわけであります。こういう労働時間の短縮とか週休二日制に直ちに入っていけない小規模な小売商業者に代表されるこういう業界を労働省ではどのように指導してくださるのかということを伺いたいし、あわせて、中小企業庁にもお考えがあろうと思いますので、伺いたいと思います。
  154. 野見山眞之

    説明員野見山眞之君) ただいま御指摘にありましたように、週休二日制の普及状況あるいは労働時間の実態等規模間の格差が大きいことにつきましては、今後労働時間の短縮を進めていく上で大きな問題だというふうに考えておるわけでございます。このため、労働省といたしましては、完全週休二日制に相当する週四十時間労働制を目標といたしました労働基準法の改正が行われたわけでございますが、実態はいまだ大きな格差があると。しかしながら、目指すゴールは週四十時間労働でございます。したがいまして、中小企業あるいは零細企業実態に配慮しながら段階的に法定労働時間を短縮していくなど猶予措置等も講じておりますけれども、いずれにしても、ゴールを目指してできるだけスピードを上げていただくというために、私どもといたしましても、中小企業の集団を対象にいたしました自主的な取り組みができるように専門の指導員なども使いまして取り組みを強化、援助を促進していくというような措置をとりたいというふうに思っておるわけでございます。  また、商業、サービス業等の分野につきましては、消費者の意識にも関係するところもございますので、こういった分野におきましても労働時間の短縮に向けて国民的なコンセンサスの形成ができますように努めてまいりたいと考えておるところでございます。
  155. 市川祐三

    説明員(市川祐三君) 先生指摘のように、週休二日制の導入につきましては、規模間における大きな格差があるということも認識してございます。また、この前改正されました労働基準法におきまして、三年後におきまして週の労働時間につきましての見直しが求められているということもまた十分承知しているわけでございます。基本的には、労働時間の短縮につきましては、労使のコンセンサスのもとにその実現が図られていくということが望ましいと考えているわけでございます。  ただ、中小企業庁の立場で申し上げますと、厳しい国際環境のもとでのまた対応も一方ではしなくてはならないということもございますので、通産省の立場から申しますと、中小企業経営基盤の強化あるいは生産性の向上というところにつきまして、先ほど申し上げました労働時間の短縮のための基盤となるものという認識のもとにこれを一層進めていく必要があろうかと思っております。通産省といたしましては、中小企業経営基盤の強化あるいは設備投資の促進、技術力の向上、人材の養成などなど、さまざまな生産性の向上を図る見地からの税制あるいは金融上の措置を従来講じてきたわけでございます。  今後の三年後の見直しに向けての対応でございますが、こうした中小企業労働時間の短縮につながるような施策につきましては、今後とも積極的に推進していきたいというふうに考えております。また、三年後の見直しということを踏まえまして、さらに労働時間の短縮に向けて中小企業が円滑にこれに対応できるというような中小企業施策あり方について勉強する必要があるかどうかということを十分検討していきたいというふうに考えております。
  156. 松尾官平

    ○松尾官平君 大変立派な答弁をいただいたわけでありますが、少なくとも今答弁したような内容については、来年度の予算措置においても十分な対応をしてそのとおりやっていただきたいと思うんであります。  しかし、とはいうものの、問題は近ごろの何といいますか、国民のライフサイクルといいますか、こういうものがパターンが変わってきているようは私は思えてならぬのです。ということは、例えば銀座の商店街におきましても、営業時間を延ばすべきだということで営業時間を延ばす方向にある。これが実は全国的にそういう傾向にあるわけでありまして、どうしても店をあけておけば、交代制とがいろいろ言いますけれども労働時間の短縮には私つながらぬと思うんです。やっぱり思い切って店を閉めることによって働く人も事業主も安心して休める。ところが一方では、消費者のニーズはいつでも自分の好きなとき行って買えるような体制をとれと、こういう両者の相反する立場があるわけです。それを乗り越えるような工夫がされなければ、真の意味の労働時間の短縮もあるいは週休二日制の実現も、あるいは有給休暇の 消化も私はできないと思うんです。  そこで、基本的にこれには大きな立場から取り組んでいただきませんとぐあいが悪い。例えば、労働省の労政局中小企業労働対策室で出しております「中小企業労働施策のしおり」を見ましても、「一般的に、週休二日制に踏み切れないのには、企業の横並び意識のようなものが影響しています。そこで、同一地域や同業種の企業で一斉に導入するという工夫が考えられます。」こう書いてあるわけで、こういう考え方で実は中小企業集団が労働省の指定を受けていろいろ御援助いただいた過去の経緯もあるわけであります。ところが、近ごろは一斉定休日というものをやりますと、消費者の方からの苦情があるわけであります。みんな休みでぐあいが悪い、買い物できないというような苦情、これらにどう対応していくかということで実は我々苦労しているわけであります。  そこで時間がありませんので、提案を申し上げたいと思うんですが、この際、思い切って日曜日は店を全部閉めるという法律をつくったらどうか。何となれば、一般のサラリーマンの方々は日曜は休みだからといって買い物に出る、出た先の労働者はその日は休めないわけです。一緒に休むことが働いている方々の願いであるとも思うし、また、かわりの休日があるからなんてすぐ言いますけれども、物の時代から心の時代へ、日本列島ふるさと論が今展開されようとしているとき、親子の対話をしようとすればどうしても日曜というものが中心になると思うんです。そこに並みいるお役所の方々も、恐らく毎晩夕食を子供と一緒に食べている方はごく少ないと思う。せめて日曜日ぐらい親子の対話をするべきではないかと思う。そういうことになれば、私の提案は一見こっけいな提案にも聞こえるかもしれませんけれども、本当の意味の週休二日制、あるいは労働者の地位向上、そして日本をふるさとにするためには思い切ったそういう施策が必要ではないかと思うんでありますが、局長、いかがですか。
  157. 野見山眞之

    説明員野見山眞之君) 週休二日制あるいは日曜閉店制等につきましては、単に労働時間の問題が労使間の問題だけではなくて、家庭生活あるいは余暇、さらには消費者等の利便といいましょうか、国民生活全般にわたる問題だというふうに私ども理解しておるわけでございまして、今般、労働大臣を中心といたしまして、労使だけではなくて国民の代表をも含めまして、労働時間問題に関する懇談会を実は計画しているわけでございますが、そういう場におきまして、今お話しのような問題につきましても、国民的なコンセンサスの形成につながるように努めたいというふうに思っております。もう既に先生御存じのように、外国では日曜日デパートが休みとか、商店が休みとかというのは当たり前のことになっているようでございますし、これは習慣の違いがあるにいたしましても、今後そういう意味で、広い視野から、大局的を観点から御議論いただくテーマではないだろうかというふうに思っております。
  158. 松尾官平

    ○松尾官平君 さすがは基準局長、大変視野の広い答弁で、私もこれで納得しなきゃならぬわけですけれども。本当に大変だと思うんですよ、小売商業店に働く従業員なんというのは大みそかの七時、八時まで働いて、二日の初売りに備えて元日は午後から出勤、そうして三日休みになるわけですが、やっぱり四日の開店に備えてまた準備があるというようなことで、二十八日に早々と御用納めをして三日までのうのうとお休みになる階層の方々に比べれば、まことに恵まれない立場にあるわけであります。そういう方々は、もちろん二月、三月に入って代休をとりますから、法律上は問題はなくなるわけですけれども、私がさっき申し上げましたように、皆さん楽しむときには、一緒に楽しむべきだと思うわけであります。先ほどの出稼ぎ労働者にしても、仮に正月三日有給休暇がもらえるならば、安心して国へ帰って家族に会ってくることもできますし、いろいろなそういう効果もあるわけであります。どうぞ恵まれない立場にあります未組織であり、小さな規模の事業所に働く労働者の諸君のために、そしてまた、自分の生まれ故郷にいては仕事がなくて出稼ぎに出る忘れない諸君のために、労働省においても一層のひとつ御研究と御精進をお願いをして、質問を終わります。
  159. 寺内弘子

    ○寺内弘子君 質問に入ります前に、中村労働大臣、このたびの大臣御就任まことにおめでとうございます。  最近三代の労働大臣、政務次官を見ますと、御両者とも参議院の御出身でいらっしゃいます。これはまさに労働行政は参議院が支えていると言っても過言ではないのではないでしょうか。中村大臣の今後の御活躍を心から期待をいたしておるものでございます。  なお、私はきょうが初めての質問でございますので、何とぞよろしくお願いいたします。  初めに週休二日制と余暇の問題についてお伺いをいたします。  私は、労働の質、内容が今日では大きく変化していると思いますが、その労働とあわせて国民生活をただ物質面だけではなく、いかに精神面から豊かにしていくか、そして心にゆとりを持たせるかという点から、この週休二日制の完全実施と余暇の使い方についてお伺いをいたします。  御承知のように、昭和六十年九月に始まった円高は、日本国民に大きな影響を及ぼしておるわけでございます。そして、昭和四十年代後半から五十年代前半にかけて発生したあの石油ショックが外的要因によって引き起こされたものであったのに対しまして、今回の円高はアメリカ経済に一端の責任はあるといたしましても、日本経済の体質に根差すものであると私は考えているわけでございます。  こうした戦後我が国のこれまでの経済発展の成果をもとに国民生活の質的改善を最優先させる経済運営への転換が求められましたし、また、国民の側から見ても、これまでは個々の人が産業企業の成長発展に沿った仕事に励むことによって所得が上昇し、物的な生活上の満足も得ることができるようになりました。  しかし、経済の効率を優先する産業企業の論理だけでは国民の生活の豊かさを求めることはできなくなっております。物があふれる中で心の豊かさを、心の安定を求めようとする考えがふえてきております。そして、生きがいとしても仕事と家庭、余暇の両方を考える時代に入っていると思うのでございます。  去る十一月二十二日、総理府が発表しました「勤労と生活に関する世論調査」によりますと、会社のために精いっぱい働きたいと回答した人が七六・一%もいるものの、単身赴任はすべきでないと回答した人が四八%あったほか、勤務時間以外の過ごし方でも四一・七%が仕事以外の人と多くつき合いたいと希望しているのでございます。この回答結果から考えますと、会社のために自分の生活を犠牲にすることや会社の人とのつき合いなどは敬遠されるなど、多くの日本人の労働についての国民の意識が大きく変化している実態がうかがわれるわけでございます。  このように、仕事から離れて自分の精神的リフレッシュをするためには余暇の活用が重要になってくると考えますが、労働大臣は、この余暇とは何か、またいかにあるべきかについてどのような御見解を持っていらっしゃいますか、お伺いをいたします。
  160. 中村太郎

    国務大臣中村太郎君) 経済的な豊かさの充足を大きな目的とした時代におきましては、余暇は労働のための単なる休息の時間であったと思います。しかし、本来の余暇は肉体的な休息のみではなくて、精神的な安息やあすへの活力、生きがいをつくり出すものでなければならぬと考えております。特に価値観が多様化しました現在におきましては、余暇は勤労者がみずからの意思に基づいて自由な活動を行い、生きがいを感ずるものであることが必要だというふうに存じておるわけであります。
  161. 寺内弘子

    ○寺内弘子君 ありがとうございます。  私も、週休二日制の完全実施ということを考えますときに、まずこの余暇の問題を解決しておか なければならないと思うのでございます。  実は、この余暇の問題につきまして、昭和四十八年三月十六日の参議院の予算委員会におきまして、当時の田中内閣に対し、元総務庁長官をしていらっしゃいました玉置和郎先生が質問をいたしておるのでございます。当時、私は秘書をいたしておりまして、この余暇について調べるようにと仰せつかりまして、一つの考え方をまとめました。そのまとめたものが時の質問要旨になったわけでございます。そして、あれから既に十五年を経過したわけでございます。私は今日その後の経緯につきまして改めて考えさせられているわけでございます。  きょうは時間が制約されておりますので、御参考までに申し上げてみますが、その中で、ギリシャ人は古代からこの余暇を非常に大切に扱っているということでございます。では、なぜこの余暇という時間を大切に扱ってきているかと申しますと、余暇という時間は、心を学び、体を鍛えるということが主目的でありまして、そして働くという経済行為は従であるという考え方、つまり働くための余暇であるという考え方なんですね。  当時の予算委員会で田中元総理は次のように御答弁をなさっていらっしゃいます。  我が国でも、昭和四十七年から余暇開発センターをつくって本格的にこの余暇の問題について取り組んでいる。そして、余暇というのは、労働をしたために休養をする、また、あすの労働の源泉を得るために休養をするというような状態の余暇や、国際競争力が強過ぎるから二日制にしろというようなことでは能がないと思う。そして、週休二日制になるというような場合の余暇は、家族サービスでもって、よりくたくたになってしまって、これなら会社に行っていた方がよかったというようなことではなくて、社会連帯的な観念を静かに養ったり心を養うという立場の余暇でなければならない。このようにおっしゃっていらっしゃいます。そして、そういう理念をしっかりと確立をして、新しい国際人の感覚を身につけるといったような、日本人の生き方そのものの中にプラスをもたらすような余暇というものをつくろうということで、政府も国民の合意を待とうということで、広く検討を進めている。このように御答弁をなさっていらっしゃるのでございます。  そこで、余暇開発センターについてお伺いをいたします。  余暇開発センターは設立以来十五年を経過いたしましたが、今日まで余暇に対してどのような基本的な考え方を持って研究活動をしてこられましたか。また、今日まで余暇に関する啓蒙をどのように実施してこられましたか、御説明をお願いいたします。
  162. 松藤哲夫

    説明員(松藤哲夫君) お答え申し上げます。  余暇開発センターは、国民一人一人がゆとりと生きがいを持って生活できるような、そういう豊かな余暇時代の実現に寄与するという目的を持ちまして昭和四十七年に設立された公益法人でございます。以来、同センターは、非常に余暇についての多面的な調査研究を行ってきております。  具体的には、例えば国民の余暇の意識調査、あるいは余暇の現状に関する調査、そしてレジャー白書の出版等、まずいろいろな調査をやっております。それから、この余暇を有効に過ごすために必要な地域環境の整備あるいは機器の開発といったものについての基本構想の策定とか概念設計等についてもいろいろな研究を行っているわけでございます。さらにまた、余暇とか文化、あるいは人間の価値観等につきましていろいろ国際的な会議を行うなどしまして、余暇意識の啓蒙普及に努めてきたわけでございます。  そうした努力を今まで続けてきておりますが、最近、大変余暇時代が到来いたしまして、いろんなところで余暇あるいはリゾートの議論がされるようになったわけでございます。  通産省といたしましても、やはりもっと労働時間を短縮して国民が余暇時間を持ちやすくするという観点から、以上のような調査研究に加えまして、ことしは新たな試みといたしまして、企業経営者が自主的に自発的に労働時間の短縮あるいは週休二日制等に取り組まざるを得なくなるような仕組みというものを現在試行錯誤でございますがやっております。すなわち企業のゆとり度診断制度というのを新しく発足させたわけでございまして、従業員のゆとりが各社ごとにどの程度であるか、これを指標化いたしまして、いい企業を国民に公開していく。そうしますと、逆にそのゆとり度がない企業には優秀な人材がなかなか行かないということになりますから、企業としても、企業経営者としても真剣に労働者、従業員のゆとり、時間的なゆとりというものに取り組まざるを得なくなる。通産省といたしましては、こういう経営という角度から何とか国民あるいは企業の従業員の方々がよりゆとりを持ちやすいような仕組みというものを余暇センターを通じて今試行錯誤的にやり出したところでございます。  今後とも通産省といたしましては、余暇センターをこのような形で、国民の余暇がさらに一層充実され、利用の方向でいろいろと指導してまいりたいと考えておる次第でございます。
  163. 寺内弘子

    ○寺内弘子君 東京の八王子市で工業用の強力瞬間接着剤を開発して、海外でも広く業績を伸ばしております千五百名ほどの中小企業があります。この会社の名前はスリーボンドというんですが、この会社は既に昭和三十五年から週休二日制を実施しているのでございます。会社が週休二日制を実施するまでの概要をかいつまんで申し上げますと、昭和三十四年には終業時間の一時間繰り上げ、そして午後四時終業体制。そして三十五年には交代制による土曜休日制度。そして三十六年には隔週五日制。三十九年には週四十時間の実施。そして四十四年の二月には完全週休二日制を実施している会社でございます。  大臣に聞いていただきたいのは、この会社がなぜ既に昭和三十年代で週休二日制を実施したかということでございます。会社の経営必携によりますと、四十年前我が国では月二回程度の休みしかなかったけれども、それは当時としては産業経済界のテンポにマッチしていたというんですね。そして戦後三十年ころから日本経済は激しいテンポになり、仕事の内容も複雑化、スピード化し、それに伴って時間で仕事をする時代になったと。そして活動密度の高度化に伴い日本人が仕事に追い回されるようになり、それがあたかも当たり前と感じるようになったというんです。しかしそういう状態ではよい仕事ができなくなりかつ疲労も大きくなってきたということが書いてございました。それには活動密度を高度化し、よりよい環境をつくり、そして自分も成長し、家族をも含めたすべての幸せを形成するには、十分な休養によって疲労をとり、あすへ備える必要があったからだと、こう述べております。そして休養とはただ単に惰眠をむさぼるのではなく、常にあすへの飛躍のためにあり、また休養と英知を養いよりよい仕事をするために週休二日制は実現しなければならなかったとしております。  労使大臣、この精神が私は余暇にとって重要なポイントではなかろうかと思うわけでございます。従来日本人が描いていた労働についての考え方はこの辺で改めなければならないのではないでしょうか。日本人全体にあすへの飛躍のための休養、そして休養と英知を養い、よりよい仕事をする余暇を実現しなければならないのではないでしょうか。労働大臣の御見解をお伺いいたします。
  164. 中村太郎

    国務大臣中村太郎君) 先生指摘のとおりだと思います。余暇というものは勤労者福祉の向上のために必要なことはもちろんでございますけれども、我が国が今後も活力ある経済社会を維持していくためにも、広い視野を持ってなおかつ柔軟性と創造力に富んだ人材を確保することが必要であると思います。このような創造力に富んだ勤労者をはぐくむためにも労働とバランスのとれた内容の充実した余暇が必要ではないかというふうに存じておるわけでありまして、こういう観点から労働時間の短縮につきましてはより一層努力してまいる所存であります。
  165. 寺内弘子

    ○寺内弘子君 ありがとうございます。  財団法人余暇開発センターの「レジャー白書87」によりますと、現在日本人の余暇の過ごし方は、五六・二%、約六〇%の人がテレビを見ながらごろりと横になっていると、これをテレ寝と言うのだそうでございますけれども、これで貴重な時間あるいは一日を過ごしているというのが現状でございます。  我が国の家庭生活を見てみますと、高度成長期に世帯の分割が進み、核家族世帯が大幅に増加いたしました。その結果家庭における教育機能など伝統的な家庭の機能が低下してきていることは否めない事実であると思います。余暇をテレ寝で過ごしていて家族の対話ができるでしょうか。私は、家族がともに過ごす時間を十分確保することによって失われた家庭の機能の回復を図る必要があると思います。  労働省にお伺いいたしますが、日本人の約六割がテレビを見ながらごろりと横になるテレ寝で一日を過ごしている原因はどこにあるとお考えでございましょうか。また、たまの日曜日に家族一家団らんということを希望しましても、父親がテレ寝をしていては団らんどころではありません。ましてやテレ寝をしなければならないというのは、休日が少なく、一週間に一度の休日では精神的、肉体的疲労はとれないという現実があるからではないでしょうか。私は、その具体的な取り組みの一つとして、今こそ週休二日制を広げ、定着させる好機だと思うのでございます。そして、現在の我が国における週休二日制の実施状況はどのようになっておりますか、御説明をお願いいたします。労働省にお願いいたします。
  166. 野見山眞之

    説明員野見山眞之君) テレ寝の原因につきまして御説明するには問題が余りにも大きいものですから、私には手に負いかねますけれども、やはり週日の勤労時間の問題との関係があることも事実でございますし、また国民の意識あるいは社会的環境あるいは条件の整備等非常にいろいろな要素があるかと存じます。そこで、今後休養を十分にとれるようにしていくというような意味におきましても、週休二日制の普及ということが非常に重要な問題になってくるかと存じますが、現在の六十一年末現在におきます週休二日制の普及状況について見てまいりますと、五〇・九%の企業が何らかの週休二日制を実施し、労働者の七八%がその適用を受けているところでございますが、このうち完全週休二日制になりますと、企業の割合が六%強、またその適用を受ける労働者が二八%強という状況になっております。
  167. 寺内弘子

    ○寺内弘子君 ただいま御説明いただきましたように、余暇開発センターができて既に十五年が経過したわけでございます。この間余暇開発センターから何度も余暇に関する報告書が出されております。ことしも「レジャー白書87」が公表されまして、日本人の余暇の少なさ、余暇の使い方、まずさなどについてきめ細かく分析したものが公表されております。こうした報告書を参考に労働行政を積極的に実施していれば、私は現在の日本人の余暇に対する認識ももっと変わっていたのではないでしょうかと、かように思うわけでございます。いまだに週休二日制が週休二日制ということだけで定着していないその理由はどこにあるとお考えでございましょうか、大臣にお伺いをいたします。
  168. 中村太郎

    国務大臣中村太郎君) 御承知のとおり、我が国における週休二日制の普及度合いを見てまいりますると、高度成長期におきましてはかなりの普及を見たわけでございます。しかし、それが昭和五十年代に入りまするとむしろ普及テンポは鈍化しておるというのが実態でございます。昭和五十八年の労働省賃金労働時間制度等総合調査を見ますると、企業が週休二日制を実施しない理由の中に、関連企業、取引先との関係、これが一番多うございまして、次いで同業他社が余り実施していない、それからその次は生産高、売上高の減少などを挙げるものが多くなっておる状態でございまして、これらのことにつきましてこれからの啓発指導が大事ではないかなというふうに感じ取っております。
  169. 寺内弘子

    ○寺内弘子君 ただいま御答弁をいただきましたように、その理由はやはり週休二日制は一種の仕事の分かち合いというような要素があるためにどうしても一定規模以上の人員が必要となってくるわけでして、中小企業にとっても今日のような低成長下においては新規採用も思うに任せられないというような実情もあると思います。中小企業は特に景気の変動が直接に影響するために敏感に対応しなければならず、週休二日制を労働協定で厳格に規定できる職場環境にないということもあると思うのでございます。  しかし、日本人の総実働労働時間を、一九八五年の統計ではありますが、先進諸国と比較をいたしますと、日本は二千百六十八時間であるのに対しアメリカは千九百二十四時間、イギリス千九百五十二時間、西ドイツ千六百五十九時間、フランス千六百四十三時間となっており、日本とフランスでは一年間に五百時間以上も日本人は多く働いているということになっております。  去る十二月一日、衆議院で竹下総理は、所信表明に対する各党の代表質問への答弁の中で、週四十時間への移行は一九九〇年代前半にできるだけ速やかに行いたいと御答弁をされていらっしゃいます。私は、週四十時間労働を実現して国民に精神的な豊かさを取り戻し、家庭の円満を充実させる余暇をふやしてもらいたいと要望するものでありますが、労働省としてもこの竹下総理の発言を実現させるべく今後の労働行政実施されていくことと思いますが、日本が欧米の先進国並みの労働時間になり、余暇を十分活用できるようになるのはいつごろとお考えになっていらっしゃいますか、お聞かせをいただきたいと思います。
  170. 野見山眞之

    説明員野見山眞之君) ただいま御指摘のとおり、労働時間の短縮を図るということが、国際的な協調を図る中で国民生活の質的な充実を実現していく上で不可欠な課題でございます。  本年五月の経済審議会におきます建議におきまして、「二〇〇〇年に向けてできるだけ早期に、現在のアメリカ、イギリスの水準を下回る一八〇〇時間程度を目指すことが必要である。」という目標が提言されているところでございます。したがいまして、このような目標に向けまして労働時間の短縮の行政的努力を続けていくわけでございますが、先般改正されました労働基準法の目標といたしております週四十時間労働制に向けて、一九九〇年代前半にできるだけ早く移行できるよう各種の施策を強力に進めてまいりたい、かように考えております。
  171. 寺内弘子

    ○寺内弘子君 ありがとうございます。  これからはますます技術革新が進み、また猛スピードで高齢化社会へと進んでいくことと思われます。それにはまず何よりも健康でなければなりませんし、ゆとりをつくり、文化的にも豊かに、家庭の調和も考えていかなければ働けなくなると思うのでございます。そして、自己啓発、能力向上のためにも休養と自由時間が必要なことは目に見えておるわけでございます。社会も企業も生き生きとした活力あるものにするためには、働きバチの状態から一日も早く脱却しなくてはならないと考えております。それには十分な余暇をつくること、その一つが週休二日制の完全実施であると私は考えるわけでございます。たびたびで恐縮でございますが、大臣の御見解をもう一度お聞かせいただきたいと思います。
  172. 中村太郎

    国務大臣中村太郎君) 労働省としましては、労働時間の短縮の重大性にかんがみまして、週休二日制の普及を基本としまして中小企業の実質的な取り組みに対する援助等を実施しているところでございます。また、波及効果の大きい金融機関の完全週休二日制あるいは公務員の閉庁方式による週休二日制の推進のため、関係機関、関係省庁への働きかけも今行っているところでございます。  御承知のとおり、来年四月からは完全週休二日制に相当する週四十時間労働制へ向けて段階的に法定労働時間を短縮することとした労働基準法が施行されるところでありまして、さらに一層週休二日制が普及するよう努力する所存であります。  なお、労働時間の短縮は国民生活あり方全般にかかわる問題でもありますので、今後の労働時間短縮の進め方につきましては、国民全体のコンセンサスを得るためにも、学識経験者等の代表者による会議を来年早々にも開催をいたしたいと考えております。
  173. 寺内弘子

    ○寺内弘子君 ありがとうございます。  私は、かねがね心の回復ということを訴えてまいっております。今は物は余るし、経済的には何の不自由もない時代であると思います。今政治家が第一に考えなければならないことは、物がなかった時代の、つまり物量的な意味での経済成長のみの考え方を改めて、国民がいかにしたら恒心を得ることができるかということを真剣に考えなければならないときである、かように思うのでございます。そして、心をもう少し豊かに持たなければならないと思います。せっかく一生懸命働いて手にした恒産の価値を失ってしまうようなことであってはならないと思うのでございます。心の平和、安定を得るためには、私は従来のようなGNPがどうのこうのという考え方を根本的に改めていく必要があると思いますし、と同時に、それは二十一世紀の国際社会に向けて日本が活力ある国家として栄えるためにも不可欠なことであると思います。二十一世紀に向けての大臣の所信をお聞かせいただいて、余暇に関する質問を終わります。
  174. 中村太郎

    国務大臣中村太郎君) 経済が発展しまして所得水準が向上する中におきましては、国民は物質的な豊かさよりも心の豊かさ、心の安定を求めてきていることは先生の御指摘のとおりだと思います。  二十一世紀に向けまして、国際化のみならず、高齢化や意識、価値観の多様化が進展する中では、国民生活の質的向上を支え、心の豊かさを追求していくことが勤労者の活力を生み出し、ひいては経済社会の活力につながることと思っておるわけでございまして、この点につきましてはお説と全く同感でございます。
  175. 寺内弘子

    ○寺内弘子君 ありがとうございました。  それでは次に、男女雇用機会均等法施行後の効果についてお伺いをいたしたいと思います。  女性労働者への採用、配置、昇進に当たっての諸差別の廃止を骨子としました男女雇用機会均等法が施行されてことしで一年半を経過いたしました。今日では男性と全く同じ条件で働く女性キャリアもさほど珍しくはなくなりまして、職場における女性の戦力化に本格的に取り組む企業もふえてきたのではないか、このように思います。  男女雇用機会均等法は、女性保護と男性との平等との兼ね合いなどをめぐりまして法案成立については非常に賛否が渦巻いておりましたが、均等法の施行後一年半を経過しました現在、募集や採用についてある程度の成果があらわれてきているのではないかと思いますが、労働省は均等法施行後、法律の目的どおり、職場内においても男女平等という効果が本当に上がっているかどうか、データがあったらお示しいただきたいと思います。労働省で結構です。
  176. 佐藤ギン子

    説明員佐藤ギン子君) 労働省実施いたしました調査によりますと、男女雇用機会均等法の施行を契機といたしまして、男女を問わない求人の増加、新入社員研修の男女同一の取り扱い、男女別定年制の是正といったような雇用管理を法の要請に沿ったものに改善した企業が多数見受けられているところでございます。さらに大卒女子の就職率も上昇しておりますし、女子の就業分野の拡大も見られるということで、女子を積極的に活用していこうとする機運が高まっておりまして、法の趣旨は着実に浸透しているものと考えております。
  177. 寺内弘子

    ○寺内弘子君 今御答弁いただきましたように、職場内における男女の平等はまだまだ確立していないけれども、そういう法の目的が達せられるような企業努力、そしてまた前向きになっているという御報告をいただきました。でも、やはりまだそれはごく一部の報告であろうかと思うのでございます。  私は、この法施行後二年目の節目として、業種別にもっと本当に法律の精神が生かされているかどうかについて実態調査をしてみてはどうかと思うわけでございます。せっかく法律をつくったわけでございますから、法律をつくるだけで事足れりというものではないと思いますので、労働省は今後実態調査を実施するお考えがありますかどうか、労働省にお伺いをいたします。
  178. 佐藤ギン子

    説明員佐藤ギン子君) 均等法の施行状況を把握いたしますために六十二年の二月に女子雇用管理調査を実施いたしました。また、そのほかにもあらゆる機会をとらえて企業や女子労働者等に対するヒアリング、訪問調査等を行いまして実態の把握には努めているところでございます。また、昨年度から女子労働者の活用を進めるための雇用管理について業種別の調査研究を委託して実施をいたしておりまして、昨年度は百貨店、チェーンストアを行いました。また、今年度は金融、証券、保険業を取り上げているところでございまして、今後とも的確な法の施行状況の把握にさらに一層努めてまいりたいと考えております。
  179. 寺内弘子

    ○寺内弘子君 大臣にお伺いをいたします。  ただいま御答弁にありましたように、この調査された結果を今後の女性労働のために生かすべきではないかと思うのでございますが、大臣の御見解と御決意のほどをお聞かせいただきたいと思います。
  180. 中村太郎

    国務大臣中村太郎君) 今後の政策を講ずる上で、調査結果を十分勘案してまいりたいと考えております。
  181. 寺内弘子

    ○寺内弘子君 ありがとうございます。  実は、私の地元であります埼玉県の志木市に女性のタクシーの運転手が数名いらっしゃいます。私とのつき合いは均等法が成立する以前からで随分と長いわけでございますが、このタクシーの運転手たちが午後十時以降になっても女性が働けるようにということで男女雇用機会均等法の一日も早い成立を望み、そして仕事をする傍ら、国会への陳情あるいは男性たちの理解を得るために猛烈な運動を展開してまいりました。  先日、この女性たちにお会いをしまして、均等法が成立して職場環境などがどのように変わったか、その話を聞きました。彼女たちの話によりますと、午後十時以降も仕事ができるようになったために収入が六〇%もふえたというんです。そして、法律の改正前は午後の十時までにある程度の収入を稼がなければならないということから時間に追われて仕事をしていたのが、今はそうしたことがなくなり気分的にも非常に楽になった、深夜労働をしても肉体的疲労はないと均等法施行を大変喜んでおりましたけれども、彼女たちが何よりも均等法施行を喜んでいるのは、同じ職場内の男性運転手を刺激して男性に競争心が出てきたこと、さらに、女性の運転手たちが地域で倍にふえたことを挙げておりました。ちなみに収入のトップクラスはいつも女性であるとも話をしておりました。  その一方で、タクシーの客から十時以降も女性が働いていいのかといった均等法施行を知らない質問を受けることがあり、一般的には均等法に対する意識がまだまだ薄いことを知らされることは悲しいことであるとも語っておりました。  こうした現実はなくさなければならないと大臣も賛成していただてると思うのでございますが、均等法は施行されてまだ一年半ではないかということもありましょうけれども、施行されて既に一年半ということも見方によってはできるわけですので、雇用における男女平等の意識の啓蒙に労働省はどのような対策を講じてこられましたか。  加えて、企業に対しもっと積極的な対策を行っていくことが必要なのではないのかと考えますが、大臣はどのようにお考えになっていらっしゃいますでしょうか。
  182. 中村太郎

    国務大臣中村太郎君) 男女雇用機会均等法の趣旨、内容等につきましては、特に毎年六月を男女雇用機会均等月間としまして集中的な広報啓発活動を展開しておるほか、四月の婦人週間におきましても啓発活動を行う等の、あらゆる機会をと らえまして男女の機会均等に関する啓発に努めておるところでございます。  特に来年度から、法の一層の定着を図るためにも、事業主に対し機会均等を推進する責任者の選任を勧奨しまして事業所内における男女の均等取り扱いの進捗状況についての自主点検を促すこと等をいたしたいと考えておるわけであります。
  183. 寺内弘子

    ○寺内弘子君 ありがとうございます。  最後に、また労働大臣にお伺いをいたします。  政府においては、去る五月七日、中曽根前総理を本部長とする婦人問題企画推進本部の会議を開き、「西暦二〇〇〇年に向けての新国内行動計画」を決定されております。さらに労働省においても五月三十一日、昭和六十二年から六十六年における女子労働者福祉対策基本方針を決め、今後の婦人行政を進めることとされていることはまことに好ましいことでありますが、これが計画倒れではなく実際にその実効が上がらなければならないと思うのでございます。  昭和六十二年八月九日、総理府は「女性に関する世論調査」を発表しております。この内容を見ますと、就業機会と地位の関係では、八六・九%の女性が就業機会は多くなったと回答しており、企業側の門戸が女性に対して広がっていることがうかがわれるものの、職場での地位となると、平等になっていると回答したのはわずか八・一%しかありません。  女性の職場での平等が確立していないのは労働省自身の調査からも明らかになっていることは先ほど述べたとおりでありますけれども、いずれにいたしましても、男女雇用機会均等法の趣旨が我が国の社会で完全に定着するにはまだまだ時間がかかるのではないかと思うのでございます。  労働大臣は、女子労働者福祉対策基本方針に基づいて具体的施策をどの程度実施されてこられましたか、また今までやり残した施策をどのように推進されようとしていらっしゃいますか、その御決意をお伺いいたしまして、私の質問を終わりにしたいと思います。
  184. 中村太郎

    国務大臣中村太郎君) 御指摘のように、本年六月策定されました女子労働者福祉対策基本方針に基づきまして、労働省におきましては婦人の地位向上や雇用における男女の均等な機会と待遇を確保するための啓発指導、育児休業制度、女子再雇用制度の普及促進等、女子の就業に関する環境条件の整備等に全力を尽くしておるところでございます。  今後とも婦人行政の第一線機関でありまする都道府県婦人少年室や婦人労働関係施設の充実強化等を図り、基本方針に盛り込まれた各般の施策等を一層推進してまいりたいと考えておりますし、また御指摘がありました女子の昇任あるいは昇進の問題につきましては、確かにほかの面から見ますると立ちおくれが感じられます。そういう面では、企業に対しましては婦人の登用をこれからも積極的に活用するよう促したり、あるいはまた女子労働者自身に対しましても、昇任機会にはチャレンジするような点を強調してまいりたいと考えております。
  185. 寺内弘子

    ○寺内弘子君 ありがとうございました。終わります。
  186. 片上公人

    ○片上公人君 政府は首都機能の地方分散として一省庁一機関の地方移転構想の基本方針を固め、国土庁の昭和六十三年度予算に一括して調査費を計上し具体化に向けて検討を進めているようでございますが、労働省には関係機関はどういうものがございますか。また、関係機関の地方移転につきましてはどの程度まで労働省内で検討が進んでおるのか、地方移転可能な関係機関名、移転先等、おおよその予測がわかればお伺いしたいと思います。
  187. 清水傳雄

    説明員(清水傳雄君) お答え申し上げます。  この件につきましては、新聞等でいろいろと取り上げられておるところでもございますし、また関係省庁で検討が行われておると伺っておるわけでございますが、まだその基本的な方針なり具体的な基準というものが示されてきておらない、こういう状況でございます。労働省関係機関としては、本省あるいは外局、附属機関として産業安全研究所、産業医学総合研究所、労働研究所、特殊法人として労働福祉事業団、雇用促進事業団、中小企業退職金共済事業団、日本労働協会等があるわけでございますが、対象機関の範囲等についての基準ということもまだ明らかではございませんし、私どもとしてまだ検討する段階には至っていない、こういう現状でございます。
  188. 片上公人

    ○片上公人君 労働大臣に要望いたしたいのでございますが、労働省関係機関が地方移転する基準は、国全体の基準に加えまして、やはり労働省でございますので、地方移転した関係機関が移転先の雇用創出、拡大に大きく貢献するようなものでなければならぬのではないか、このようにも考えますが、大臣の御見解をお伺いいたします。
  189. 中村太郎

    国務大臣中村太郎君) 今、官房長から話がありましたように、地方移転の基本的な考え方につきましては私どももまだ具体的に承知しておりません。しかし、御説の趣旨は十分心得て実施してまいりたいと考えております。
  190. 片上公人

    ○片上公人君 去る十一月二十八日午前九時過ぎ、インド洋上のモーリシャス沖で南アフリカ航空のボーイング747型機が日本人四十七人を含む百五十九人の乗員乗客を乗せまして墜落いたしました。犠牲者並びに御家族の方々には心より哀悼の意を表します。  ところで、この南アフリカ航空機墜落事故は、日本の遠洋漁業の厳しい状況を改めて浮き彫りにしたものと言えます。二百海里時代に入りましてことしでちょうど十年でございますが、入漁料の引き上げや漁獲割り当ての相次ぐ規制によりまして漁場は年々に狭められておる一方で、日本の漁船は新たな活路を求めて、より遠くの海域に出かけざるを得なくなってきているのが現状であると思います。  まず水産庁にお伺いいたしますが、遠洋漁業による漁獲量は最近五カ年間はどのような状況であるのか、御説明願いたいと思います。
  191. 白石吉平

    説明員(白石吉平君) お答えいたします。  最近五カ年間におきます遠洋漁業の生産量でございますが、二百十万トン前後で推移してきております。この二百十万トン前後という水準の高さでございますが、過去の最高が四十八年の三百九十九万トンでございますので、これに比べれば、最高時の六割程度となっております。
  192. 片上公人

    ○片上公人君 現地企業との合弁企業の設立が進められる一方で、水産庁や海洋水産資源開発センターなどを中心に、新たな漁場の開拓あるいは深海魚など利用可能な魚種の開発などが続けられております。しかし、漁業基地が地球の裏側にまで広がるなど、豊かな漁場を開発し確保するのはなかなか容易なことではございません。  日米、日ソ漁業交渉で、北洋漁業を初めアメリカ、カナダ沿岸からも締め出され、やむを得ず南転したトロール漁でございますが、そこで、水産庁にお伺いしますけれども、海外の漁業基地及び遠洋漁場で働く漁業従事者の数はどの程度なのか、お伺いしたいと思います。
  193. 小野登喜雄

    説明員小野登喜雄君) お答え申し上げます。  昭和六十一年におきます我が国遠洋漁業の漁業従事者数は、およそ五万五千人と推定されております。このうち補給のために海外に基地を持っている漁業種類というのは、エビトロール漁業、南方トロール漁業、それからカツオ・マグロ漁業、大型イカ釣り漁業等ございまして、これら海外基地を利用しております漁業の従事者数はおよそ三万三千人、したがいまして全体の遠洋漁業従事者の約六割を占めている、かような状況でございます。
  194. 片上公人

    ○片上公人君 今回の四十七名の漁船員また商社員等、業務にかかわる人だもの補償等の扱いにつきまして説明願いたいと思います。
  195. 野見山眞之

    説明員野見山眞之君) 南アフリカ航空の事故に遭遇した方々のうち、漁船員の方々は船員保険の方の所管になりますが、国内から出張した方あるいは海外で勤務している方々の労災補償の問題でございます。  これらの方々につきまして、まず国内の企業から海外に出張する途中で事故に遭われた方々につ きましては、国内の出張と同様に、寄り道だとか特段の事情のない限りは、一般に業務上の災害ということになろうかと存じます。  また、海外の支店におられる方々が事故に遭われた場合でございますが、一般的には、海外の企業で働く方々につきましては日本の国内法は適用されないので、当該事業につきましては我が国の労災保険法は適用が及ばないわけでございます。しかしながら、日本の国内の企業から海外の支店とかあるいは工場あるいは現地法人等に派遣されて行っている方々につきましては、これらの方々の保護を図るために、労災保険法におきましては任意加入の方法によりまして労災保険に特別加入する道が開かれているわけでございます。  これらの特別加入が認められた海外派遣労働者につきましては、国内の労働者に準じて取り扱うということにしておりまして、飛行機を利用して出張する場合の事故は、通常業務災害ということで、労災保険による補償が行われることになるわけでございます。
  196. 川邊新

    説明員(川邊新君) 船員保険の関係のお答えを申し上げます。  今回事故に遣われました日本水産関係の方、三十八名でございますけれども、現在までの調査で、全員の方が船員保険の被保険者であるということは判明しておるわけでございますけれども、現時点ではまだ請求書類等の提出がございませんので、個別の判断はできかねるところでございますけれども、今回のような、今お話ございましたように、会社の業務命令に基づいて行動している途上での事故であるということであれば、船員保険の所定の給付の対象になるものと考えているところでございます。
  197. 片上公人

    ○片上公人君 今回の場合は対象となるというわけでございますね、もう一度確認しますが。
  198. 川邊新

    説明員(川邊新君) 個別の関係は今調べているところでございますけれども一般的にはなるものというふうに考えているところでございます。
  199. 片上公人

    ○片上公人君 職場を海外に求めまして世界じゅうを飛行機で飛び回るのは漁船員だけではなくして、商社マンあるいは外交官等々、日本が国際の場で大きく活躍し大きな比重を占めている今日、多数の日本人のそういう方がいらっしゃいます。  労働省に伺いますが、職場が日本国内にはなく海外にある、今回の日水の漁船員のような場合を考えますと、これまでの国内中心であった労働行政も、国際的観点も重要視しなくてはならなくなってきておる、こう考えるわけでございますが、労働省はこのような労働の国際化、海外での労働者の安全等をどのように認識されていらっしゃるかお伺いしたいと思います。
  200. 野見山眞之

    説明員野見山眞之君) 海外に派遣され、また海外で活躍しておられる労働者の方々に関して安全衛生上の諸対策あるいは法規の適用につきましては、当該国の労働法規が適用されるわけでございますが、最近のように、多くの方々が日本から派遣されて海外に出ていっているという場合につきましても、これらの労働者安全衛生対策について我が国自身がやはり十分な配慮をしなければならない、かように考えているわけでございまして、最近の例でいきますと、アフリカ等から帰ってきている方々の中に肝機能障害その他の疾患が認められるような状況も見受けられるわけでございます。したがいまして、私どもといたしましてはこれら海外派遣労働者の派遣する前あるいは帰国した後の健康診断等を適切に実施いたしまして、あるいは安全衛生に関する教育等の実施等につきましても十分配慮した対策が必要ではないだろうかというふうに考えております。  また、海外における安全衛生水準の向上ということ自体が日本から派遣される労働者にとっても好ましいことでございますので、私どもといたしましては、東南アジア諸国を中心にいたしまして安全衛生に関する技術協力も現在実施しているところでございますし、今後ともこの面での充実に努めてまいりたいと考えております。
  201. 片上公人

    ○片上公人君 次に、身障者の雇用率についてお伺いしたいと思います。  これは午前中も触れられましたが、法定雇用率が民間企業と官公庁では違っております理由につきまして、民間が低いのはなぜか、この辺の御説明をお願いしたいと思います。
  202. 岡部晃三

    説明員(岡部晃三君) 身体障害者雇用促進法におきましては、身体障害者雇用率制度によりまして雇用義務事業主に対して課しているわけでございます。  この雇用率の設定の方式は法律の十四条におきまして定められているわけでございますが、身体障害者についても健常者と同水準でその雇用確保されるように、一定の算式をもって算出するようになっているわけでございます。  この数字に対しまして、官公庁につきまして特段に高く、すなわち〇・四高くしているわけでございますが、これは官公庁につきましては民間企業に対しまして率先垂範、身体障害者の確保に努めるべきである、こういう意味合いをもちまして定められているわけでございまして、身体障害者の雇用という観点からいたしますというと、この民間の雇用率で必要かつ十分なはずのものであるということで法律上定められているわけでございます。  なぜ〇・四の差を設けたのかということは、これは歴史的なところから理解するしか仕方がないわけでございますが、そういうことで官公庁につきましては特に率先垂範ということで高くしている、こういういうことでございます。
  203. 片上公人

    ○片上公人君 民間の実雇用率が大体一・二六%で、官公庁が非現業で一・八九、現業部門で一・九七となっておりますが、民間が極めて低いが、その中で企業規模別に見ますと、未達成企業は圧倒的に大企業が多い。しかも納付金で済ませるという姿勢が見られるわけでございますが、労働省はその理由についてどのように考えていらっしゃるのか伺いたいと思います。
  204. 岡部晃三

    説明員(岡部晃三君) 御指摘のとおり、民間におきまして、大企業において未達成割合が多いのでございます。これは、大企業におきましては新規採用を学卒を中心として採用いたしまして、これを生涯雇用をもって一生涯雇用するということで、スタート時点におきまして健常者中心に採用が行われるというふうなこと、それからそれにプラス日本的雇用慣行ということで、勢い健常者割合が高いと申しますか、逆に言えば、身体障害者雇用率が低い、こういうふうなことになっているのであろうと思われるのでございます。  しかしながら、この身体障害者雇用ということにつきましては、これは規模の大小にかかわらず、すべての企業の社会的責務でございます。法律もそのような趣旨から設定されているわけでございます。  御指摘の大企業の問題につきましては、さらに我々鋭意努力して、雇用率アップに努めてまいりたいと思うのでございまして、御指摘の納付金さえ払えば事足れりとしているのではないかと、そのようなことではなかろうと思いますが、そのような弊に流れませんように、納付金は納付金といたしまして、その究極の目的でございます雇用率達成という面に向きまして我々最善の行政努力を尽くしてまいりたいと考えております。
  205. 片上公人

    ○片上公人君 大企業こそ、先ほど答弁にもありましたように、社会的責務が本来大きいわけでございますから、例えば、この雇用率の低い企業につきましては企業名を公表するとか、また納付金につきましても額がちょっと低過ぎるんではないか、もう少しそれを見直して一余り高いのもいろいろ問題があるかもわかりませんけれども、欧米に比べてもうんと低いんではないかというようなことを感じますが、その検討が必要なのではないか、こう思いますがいかがでしょうか。
  206. 岡部晃三

    説明員(岡部晃三君) 雇用率の特に低い企業に対しましては雇い入れ計画の作成を命じまして、計画的に身体障害者を雇用するように指導いたしますとともに、計画の実施状況の極めて悪い企業につきましてはその適正な実施を勧告するということで現在までのところ厳しい行政指導を加えておるところでございます。  この勧告を受けました企業に対しましては、昭和五十八年度以降特別指導期間を設けまして、これも行政の幹部職員による直接の集中的な個別指導を行うという手法をとっているところでございます。これまでの指導の結果、これら勧告企業雇用状況におきましては、全般的にはかなり改善をされてきておるというふうに見れるわけでございます。  企業名の公表ということでございますが、単に社会的制裁を加えるということのみを目的とするわけにはまいらないことでございまして、公表という一つの伝家の宝刀を持ちながら、それを前提とするところの指導によりまして、企業が自主的に、積極的に身体障害者の雇用に取り組むということこそ本旨ではなかろうかということでございまして、指導に当たりましては、公表ということもちらちらさせながら指導することももちろんあるわけでございますけれども、今までのところ五十八年の制度の改善以来効果を上げつつあるというふうに判断しているところでございます。  なお、納付金の額でございますが、雇用漏れ一人につきまして一月四万円という額でございます。これは、例えば同様の制度をとっております西ドイツでは百五十マルクでございまして、これは一万五千円程度と申しましょうか。したがいまして、我が国の四万円という額につきましてはかなり高水準の額ではなかろうかと思うわけでございます。
  207. 片上公人

    ○片上公人君 随分高水準だそうでございますけれども、お金の問題については物価の問題とか、私よく調べていませんけれども、国によってあると思うんですね。なぜ納付金云々ということになるかというと、それを若干上げることによって、大企業は安易さをなくすようにしてもらいたいというのがお考えの趣旨だと思うんですよ。私は、何とかこれ御指導していただいて、大企業こそ率先してそういう身体障害者とか弱者を大事にする優しさを持つことによって、日本に対する、国に対する貢献が大きく違ってくると思うんですよ。御指導をさらにひとつ進めていただきたいことを要望したいと思います。  次に、身障者の求職登録状況を見ますと、六十一年では求職登録者数三十四万人、有効求職者数が四万七千人、五十年では求職登録者数が十七万人、有効求職者数が一万五千人となっております。求職登録者数が五十年から六十一年比で二倍に伸びているのに対しまして、有効求職者数は三倍になっております。これは身障者の就職が年々厳しくなっていることを示していると思います。この改善を図るために民間企業雇用率をさらに高める必要があるんではないか。私は民間の法定雇用率を官公庁並みにすべきであると思いますが、どうでございましょうか。御意見を伺いたいと思います。
  208. 岡部晃三

    説明員(岡部晃三君) だんだん障害者の雇用が厳しくなってきているというのは御指摘のところでございます。これは、一つには重度の障害者の方が労働戦術に出てこられるというふうな率が高くなってきている。それから、高齢の障害者の方も労働市場に出てこられる。これは非常にある意味では障害者の積極的な意欲のあらわれとして望ましいことでございますが、その反面、その職探しというのは困難をきわめてまいるわけでございます。  そこで、さらにそういったところに重点を置きまして公共職業安定所等におきましても指導を行っているわけでございますが、この雇用率の問題でございますが、五年ごと見直しの時期に来ているわけでございます。その結果、先ほどの算式によりますというと、雇用率は現行一・五でございますが、これを〇・一ポイント上げまして一・六にする。〇・一ポイント上げるということが妥当であるという数字が出ております。したがいまして、来年の四月一日から雇用率につきましては〇・一ポイントアップという措置をとりたいというふうに考えております。
  209. 片上公人

    ○片上公人君 次に、パートタイムの労働者の件でございますが、このパートタイム労働者の多くは中小企業就業しておるわけでございまして、労働基準法の適用もままならない方々も見られますが、これはどのような対策が講じられていらっしゃるのかお伺いしたいと思います。
  210. 佐藤ギン子

    説明員佐藤ギン子君) 先生の御指摘ありましたように、事業主の中にはパートタイム労働者労働基準法等の労働関係の諸法令は適用がないんだという認識を持っておられる方も一部見られるわけでございます。そこで、現在労働省におきましては、パートタイム労働者にも労働基準法その他の労働関係法令が適用される旨の周知徹底を図りますとともに、パートタイム労働者労働条件の改善雇用の安定等を図ることを目的にいたしましたパートタイム労働対策要綱に基づきまして啓発指導を進めているところでございます。
  211. 片上公人

    ○片上公人君 パートタイム労働対策を強化するためには法的措置が必要であると考えますけれども、先般の労働省の委託によります女子パートタイム労働対策に関する研究会の報告におきましても、パートタイム労働者福祉法の制定が提言されておりますけれども労働省としてはどのように考えていらっしゃるのか、御所見を伺いたいと思います。
  212. 佐藤ギン子

    説明員佐藤ギン子君) パートタイム労働者は近年著しく増加をいたしておりまして、今後とも増加していくことが見込まれているところでございますし、また最近は特に質的に見ましても勤続年数が長期化すること、また就業分野が拡大すること、労働力としても基幹的なあるいは専門的な仕事をしている労働力がふえているというような状況になっているわけでございます。  こうした状況を踏まえまして、本年の十月に今御指摘ございました労働省委託によります女子パートタイム労働対策に関する研究会からパートタイム労働を我が国の経済社会にとって欠くことのできない雇用就業形態の一つとして位置づけるとともに、パートタイム労働者福祉を図るための法的な整備を含めました総合的な対策推進すべきだという御提言をいただいたところでございます。  労働省といたしましては、この研究会報告を十分に参考にさせていただきまして、今後ともパートタイム労働対策につきまして研究を深めてまいりたいと考えております。
  213. 片上公人

    ○片上公人君 ぜひとも積極的にお願い申し上げたいと思います。  次に、産業構造の実態をいかに認識するかによりまして労働行政も大きく変わってくると、私はこのように考えておりますが、産業構造の変化を無視して硬直的な労働行政を行っていたのでは国民の安定した雇用確保されません。  そこで、労働省にお伺いしたいわけですが、我が国の産業構造は六十年九月のG5以降の円高ドル安によりまして大きく変化いたしてきました。この産業構造の変化が雇用に大きな影響を与えたと思いますけれども雇用情勢はどう変わったのか、現在どういう状況なのか、御説明願いたいと思います。
  214. 岡部晃三

    説明員(岡部晃三君) 産業構造の変革の時期を迎えまして、先生指摘のように、いわゆる重厚長大型から軽薄短小型に変わってきているわけでございます。したがいまして、例えばその典型でございます鉄鋼業を見ましても、これはこれからも約四万人からの雇用調整が必要であるというふうなことでございます。それから造船も、御承知のとおり、既に数千人規模の雇用調整が発生をしているわけでございます。それから石炭、第八次合理化計画に基づきまして閉山が相次ぐ中で、これまた雇用問題が発生をしておる。さらにまた、いわゆる企業城下町と言われておったようなところが、その中核的な企業の縮小に伴いまして、もろもろ雇用上の影響を受けると、こういうことでございます。  一方第三次産業におきましては、非常なこれはむしろ拡大を見ているわけでございます。このように大きな雇用情勢の変化が現在起きつつあるわけでございまして、この傾向はさらに続くものというふうに認識をしているところでございま す。
  215. 片上公人

    ○片上公人君 そこで、職業訓練についてでございますが、その内容や対象者によりまして養成訓練、向上訓練、能力開発訓練、この三つに分けられておると聞いておりますが、私がちょっと疑問に感じるのは、これら公共職業訓練が、社会や経済のニーズに対しまして的確に対応しているのかどうかという点でございます。資料を見る限りにおきましては、公共職業訓練施設におきまするところの訓練内容は、社会や経済のニーズあるいは産業構造の変化といったものには、余りそういうことを重視されておらずに、旧態依然とした内容のように思いますけれども、訓練内容は時代の要請にどのように対応しておるのかお伺いしたいし、時代の要請に応じて改廃した訓練内容がありますればお伺いしたいと思います。
  216. 野崎和昭

    説明員(野崎和昭君) 先生指摘のとおり、職業訓練は時代の変化に対応したものでなければ労働者生活の安定充実に十分効果を上げることはできませんので、今日のような変化の特に激しい時代におきましては、それに的確に対応した訓練内容にしなければいけないということで種々努力をいたしているところでございます。  幾つか申し上げさせていただきますと、一つは技術革新に対応するという意味で特にME機器、ME関係の訓練を拡充するということ、もう一つはただいま話に出ましたけれども、第三次産業関係の職場が非常に広がっておりますので第三次産業関連の職種の訓練を拡大する、さらに労働者が高齢化しておりますので高齢者でもつき得る仕事の訓練を拡大する、そういう努力をいたしております。増設いたしておりますのは今申し上げましたような情報処理関係、第三次産業関係でございますし、具体的に最近廃止いたしました例を幾つか申し上げますと、縫製関係、それから塗装関係、木工関係、板金関係というような伝統的なものにつきましては、いろいろな事情でニーズも減ってきておりますので、こういうものについては逐次廃止しながら、必要な分野の訓練をふやしているという状況でございます。
  217. 片上公人

    ○片上公人君 労働省職業能力開発局は、毎年技能労働者需給状況調査結果報告を公表いたしております。  六十一年三月公表のものでは、職種別不足数の多いものを五つ挙げますと、システムエンジニア、プログラマーが六万九千九百人、ミシン縫製工は五万三千四百人、旅客、貨物、自動車運転者四万七千二百人、電子・電気機械器具組み立て修理工三万二千二百人、製図工、写図工二万七千二百人の順になっております。  これを一年後の六十二年五月の公表のものを見てみますと、不足数の第一位は変わらずに、システムエンジニア、プログラマーの五万六千四百人、旅客、貨物、自動車運転者が四万五千六百人、製図工、写図工二万八千百人、タイピスト、ワープロ操作員二万六千五百人、会計事務員二万五千三百人となっておりまして、一年といいましても技能労働者が不足する職種に変化が見られております。このデータを職業訓練にどのように反映させたのか、技能労働者需給状況調査結果報告は単なるデータで終わっているのか、この辺をお伺いしたいと思います。
  218. 野崎和昭

    説明員(野崎和昭君) 先生指摘のとおり、私ども昭和三十三年から毎年技能労働者需給状況調査を行っておりまして、大きな傾向といたしましては、ただいま御指摘のとおり、システムエンジニアとかプログラマーというような情報処理関係労働者の不足、それからその次は建設関係の不足というのが非常に多いわけでございます。その他いろいろございますけれども、この調査結果につきましては、ある意味では中期的な技能労働者の不足状況の傾向を見るということに主眼を置いております。  具体的にそれぞれの職業訓練校の訓練科目を改廃いたします場合には、それぞれの都道府県におきまして、年々の過去の入校者の推移とか、あるいは地元に地場産業等いろいろございますので、そういうものの必要性とか、そういったことを審議会等で労使の方の御意見も伺いながら決めているわけでございます。そんな形で利用をいたしているわけでございますが、確かに年々によって若干の出入りはございますけれども、基本的な大きな傾向はこの調査でうかがえるというふうに思っております。
  219. 片上公人

    ○片上公人君 昭和六十二年、ことしのこの公共職業訓練施設への入校者の状況はどのようになっておるか伺いたいと思います。
  220. 野崎和昭

    説明員(野崎和昭君) 昭和六十二年度における公共職業訓練校への入校状況でございますが、まず養成訓練について申し上げますと、定員は三万一千三十人でございましたが、入校者は二万七千八百八十四人でございまして、入校率は八九・九%でございます。  なお、能力再開発訓練、離転職者に対する訓練は、入校時期が四月、六月、十月、一月とばらばらになっておりまして、六十二年度分は出ておりませんので、六十一年度、前年の状況を申し上げますと、定員が五万五千八百四十人に対し、入校者は五万一千三百二十四人、入校率九一・九%ということになっております。
  221. 片上公人

    ○片上公人君 私は、この公共職業訓練施設がこれまでいろいろ努力もされた、またその役割をすべて否定するものではございませんけれども、しかし公共職業訓練施設が訓練科目におきまして、時代の要請のなくなったものまでも存続されていることもまたこれは事実だろうと思います。現在、全国に専修学校及び各種学校は七千七十校ほどあると聞いておりますが、こうした専修学校、各種学校も公共職業訓練と同様、離転職者、就業前の若者に対して技能習得、さらには労働者職業能力の開発及び向上を目的とした授業をするわけでありますから、公共職業訓練としましても、専修学校、各種学校等、訓練内容の充実、時代のニーズへの対応に関しましては、これらに対してもっと充実して、むしろ模範となるようにする必要があると思いますが、御所見を伺いたいと思います。
  222. 野崎和昭

    説明員(野崎和昭君) 先生からも御指摘ございましたように、時代のニーズに合わせる努力は鋭意いたしているつもりでございますけれども、確かに現実に人がおり、施設がございますので、それを一挙に変えるというのはなかなか難しい点がございまして、若干あるいはそういった部分も残っているかと思いますが、そういった点については今後とも努力をさせていただきたいと思っております。  なお、専修学校、各種学校との関係でございますけれども、大きく分けますと、公共職業訓練校の方は大体工業的な科目が中心でございまして、これは機械、設備等相当お金がかかりますので、公共職業訓練校はどちらかというとそちらを重点にしております。  それから専修学校、各種学校はどちらかといえば第三次産業関連の職種、簿記とかそういうようなことを充実いたしていると思います。  そういった点を考えまして、私どもも今後は三次産業関係の職業訓練を充実していく必要があると思っておりますけれども、その場合には専修学校、各種学校の施設を活用させていただきまして、そこへ委託をするという形で三次産業関係の訓練も充実していきたいと、そんな形で連携を深めていきたいというふうに思っているところでございます。
  223. 片上公人

    ○片上公人君 公業職業訓練におきましては、社会経済のニーズあるいは産業構造の変化に対応した、さらには先取りする形で職業訓練が実施されない原因のもう一つに、指導員の問題があるのではないかと考えます。  公共職業訓練施設では、産業構造に対応した訓練カリキュラムを編成するだけの指導員がいないというのもこれは事実だと思うのでございますが、指導員がいないからといいまして時代に乗りおくれたような訓練をやっておりますと、就職することもできませんし、何のための職業訓練かということにもなってくると思うんです。  指導員につきましては、新しい技能習得教育はどのように行われておるのか。例えば、大学、専門 学校等の教師を公共職業訓練施設に非常勤講師として招くのも一つの方法でありましょうし、今説明のありましたように、逆に専修学校、各種学校に訓練生を委託するという方法、そうして先端技術を習得させる方法もあると思いますが、労働省の見解をお伺いしたいと思います。
  224. 野崎和昭

    説明員(野崎和昭君) 御指摘のとおり、現実に指導員がそれぞれ科目を担当していらっしゃるわけでございますが、いろいろに訓練ニーズが変化いたしました場合にこれをどうするかということでございますけれども、やはり一番効果的なのは、研修によりましてその指導員の方に教科の幅を広げていただくということが一番効果的のように思います。そういうことで、ここ数年特に研修には重点を置いておりまして、現在職業訓練大学校におきまして年間約千二百人の指導員を、一人一カ月ないし六カ月間の研修を行っておりまして、こういう形で訓練ニーズの変化に対応していきたいというふうに思っております。  なお、この職業訓練大学校と申しますのは、職業訓練指導員の養成を行っているところでございますが、その大学校自体の訓練科の編成につきましても、現在、技術革新等に伴いまして見直しを行っているところでございます。  そのほか、部外の活用といたしましては、ただいま専修学校、各種学校に委託するということを申し上げましたが、そのほか最近では、むしろ採用の見込みのございます企業に直接訓練を委託してしまう、そして訓練を三カ月なり六カ月やっていただく中でその方の人柄もわかり採用されていく、そういう事態も多うございますので、そういうことも行っているところでございます。
  225. 片上公人

    ○片上公人君 昭和六十年に職業訓練法が内容を改正しまして今日の職業能力開発促進法になったことはよく承知しておりますが、六十年に改正されたといいましても、労働省におきますところの職業訓練行政の骨子は、正直言いまして訓練科目はまだまだ旧態依然としたものになっていると思います。社会や経済がどういう人材を望み、産業構造がどのように変化したか、こうしたニーズや将来予測をはっきり見きわめる力が現在労働省の職業訓練行政には強く求められておると思います。  今後、一層の社会、経済のニーズを先取りした職業訓練実施に対しまして、労働大臣はどのような施策を講じるおつもりなのか、お伺いしたいと思います。
  226. 中村太郎

    国務大臣中村太郎君) 職業能力開発を実施するに当たりましては、産業社会がどのような人材を求めているかということを常に的確に把握しつつ、科目、訓練内容等を考えていくことが極めて重要でありますことはお説のとおりだと考えております。このような観点から、現在は、今後とも不足が予測されまする情報処理技術者等マイクロエレクトロニクスに関連のある労働者を初め、第三次産業関連労働者の育成を重点に職業能力開発を進めているところでございます。  今後とも、職業能力開発に対する中長期的なニーズの把握に努めまして、これにこたえる効果的な職業訓練を実施してまいる所存でございまして、この点で足らざるところは補ってまいりたいというふうに考えております。
  227. 片上公人

    ○片上公人君 次に、造船、鉄鋼などの不況業種に依存した企業城下町を中心にする地域的な厳しい雇用情勢がまだ続いております。我が兵庫県の相生などもそうでございますが、このような地域に対しましてどのような対策を講じていらっしゃるのかお伺いしたいと思います。
  228. 岡部晃三

    説明員(岡部晃三君) 不況業種に依存した地域におきましては、雇用機会が不足をいたしておりまして、大変に困難な状況が続いているわけでございます。そのため、先般国会で成立をさせていただきました地域雇用開発等促進法に基づきまして、雇用情勢の厳しい地域雇用開発促進地域等に指定をいたしまして、地域雇用開発助成金というものも創設をさせていただきまして、それを活用して総合的な地域雇用対策推進しているということでございます。  中でも、特に造船、鉄鋼などの不況業種に依存して大変に困難な状況のもとにある地域、例えば先生のおっしゃいました相生安定所管内でございますとか姫路南安定所管内、これらにつきましては、特定雇用開発促進地域ということで、特に厳しい状況にあるという地域に指定をいたしまして、地域雇用開発助成金の支給期間の優遇による雇用開発の促進、雇用調整助成金等の活用による失業の予防、再就職の促進といったような手厚い施策実施しているところでございます。  なお、不況業種の問題につきましては、特定不況業種法の改正を行いまして産業雇用対策の一層の充実強化を図っていきたいということで、労働大臣の指示のもとに現在法律の改正につきまして検討を始めておるというところでございます。  特定不況地域、特定不況業種、この地域、不況両法律相まちまして地域における雇用の安定に努めてまいりたい、このように考えております。
  229. 片上公人

    ○片上公人君 次に、中小企業勤労者福祉の現状を御説明願いたいと思います。
  230. 白井晋太郎

    説明員白井晋太郎君) お答えをいたします。  中小企業の現状で申し上げますと、まず大企業との比較でございますが、企業が独自に行っております法定外福利費で見てみますと——法定外福利費というのは、いわゆる法定で決まった以外に独自に行う福利厚生、例えば体育館、保育所、保養所等の施設の設置や健診、健康管理実施に要する費用でございますが、総体的に見ますと、昭和六十年の賃金労働時間制度等総合調査で、従業員数三百人以下の中小企業勤労者一人当たりに支出する費用は、五千人以上の規模の企業の約三割、千人から五千人未満の規模の企業に比べますと五割という水準でございます、  個別にちょっと見てみますと、退職金制度等につきましては、五千人以上の規模の企業が九九・九%の制度を持っておりますが、これは三十人−九十九人でも八六・一%、三百人未満では九四・九%と、かなり普及いたしておりますけれども、体育施設や文化教養施設等におきましては、大企業が九〇%以上であるのに対しまして、三百人未満では六〇%以下四〇%というような形になっているところでございます。
  231. 片上公人

    ○片上公人君 中小企業勤労者福祉は、今お話もございましたように大企業と比べまして格差が大変大きく、今後ますますこれは拡大する傾向にあると思いますが、この点につきましてどのような取り組みを考えていらっしゃるのかお伺いしたいと思います。
  232. 白井晋太郎

    説明員白井晋太郎君) お答えいたします。  中小企業と大企業との間の福祉制度等の格差につきましては、今先生おっしゃるとおりでございまして、今後なお、産業構造の転換や円高等で中小企業を取り巻く環境は非常に厳しくなっておりますので、格差が拡大することも十分懸念されるというふうに思っております。この格差を縮小して、中小企業勤労者が生きがいのある、また働きがいのある勤労者生活を送るということが基本でございますが、このため、中小企業におきます人事労務管理の改善が重要であることから、共同して自主的にその改善に努めている中小企業の団体に対する助成措置等を講じてまいっております。  なお、高齢化の進展、福祉ニーズの多様化に対応いたしまして、勤労者の生涯にわたる総合的な福祉の拡充が必要であるということで、市区町村単位に中小企業勤労者のための総合的な福祉事業を推進してまいりたいというふうに考えているところでございますが、既に従来からのいろいろな施策の中では、例えば退職金制度につきましては中退金の共済制度を設けておりますし、それからいろいろな施設等につきましては、雇用保険特別会計の中から体育館その他の施設を各市町村につくっていくというようなことで対応してまいっているわけでございますが、これらの面におきましてもさらに充実してまいりたいというふうに考えております。
  233. 片上公人

    ○片上公人君 さきの臨時国会におきまして、労働時間に関する四十年ぶりの労働基準法の改正が行われましたが、改正労働基準法では、法定労働 時間を週四十時間に向けて段階的に短縮していくこととされております。このスケジュール、特に週四十時間労働制実現の時期を明確にしていただきたいと思います。
  234. 野見山眞之

    説明員野見山眞之君) 労働基準法改正案の国会における審議におきまして、政府御答弁といたしまして何度も申し上げているわけでございますが、四十時間労働制への移行時期につきましては、経済審議会の建議で示されました目標を達成するために、一九九〇年代前半にできるだけ速やかに移行できるよう努力してまいりたいと考えております。
  235. 片上公人

    ○片上公人君 全体として労働時間短縮を進めていくに当たりましては、波及効果の大きい金融機関、公務員の完全週休二日制を早期に実現する必要があると思いますが、労働省としてはどのように取り組んでいらっしゃるのか、大臣の所見をお伺いいたします。
  236. 中村太郎

    国務大臣中村太郎君) 金融機関につきましては、昨年八月から月二回土曜閉店制が順調に実施されておりますけれども、先般私から全国銀行協会連合会長あてに、完全週休二日制への早期移行を要請したところでございますが、早々に検討が開始されたと承知をいたしておるわけでございます。銀行協会ではなしに、相互銀行、信用組合、信用金庫等におきましても同様の要請を行ったところであります。  また、公務員につきましては、本年十月二十三日に、四週六休制への本格実施昭和六十三年度中に土曜閉庁方式を導入することを目途に諸般の準備を進めるということが閣議決定をされておるところであります。  労働省としましては、波及効果の大きい金融機関の完全週休二日制、公務員の閉庁方式による週休二日制推進のため、今後とも関係機関、関係省庁への働きかけを積極的に行ってまいりたいと考えております。
  237. 片上公人

    ○片上公人君 次に、高年齢者雇用安定法の施行後一年を経過いたしましたんですが、六十歳定年の状況はどのようになっているのか御説明願いたいと思います。
  238. 岡部晃三

    説明員(岡部晃三君) 六十歳定年制は、昨年十月に施行されました高年齢者雇用安定法におきまして事業主努力義務とされたわけでございます。  その状況労働省雇用管理調査で見ますというと、六十歳以上の定年制を採用する企業の割合は五八・七%でございまして、前年に比較いたしますと、前年が五六・六%でございますので、改善を見ておる。  さらにまた、定年年齢を六十歳以上に引き上げることを決定しまたは予定をしているという企業も含めますると、近い将来六十歳以上の定年制を採用する企業の割合は七四・五%と見込まれるわけでございまして、これは一年前のときの数字が六九二八%でございましたので、既に現在四社に三社は六十歳以上の定年となると見込まれるということでございまして、高年齢者雇用安定法の施行によりましてこの六十歳定年制と申しますものは着実に進展をしているものと認識しているのでございます。  今後とも、この法律に基づきまして定年引き上げのための指導を積極的に行いたいと思っておりまするし、また個々企業における定年引き上げのための取り組みに対しまして、高年齢者雇用安定センターに置かれております雇用アドバイザー等によるきめ細かな援助を行うというふうなことも通じまして六十歳定年制の定着に一層努めてまいりたいというふうに考えております。
  239. 片上公人

    ○片上公人君 今後の高齢化の進展を踏まえますと、六十五歳までの高齢者の雇用確保が大変重要と考えますが、六十歳を超えますと、労働者の体力、能力その他の状況が多様化することになりますから、短時間勤務等の就労形態の多様化を図りながら雇用の場の拡大に努めるべきではないかと思いますが、この御所見を伺いまして質問を終わります。
  240. 岡部晃三

    説明員(岡部晃三君) 御指摘のように、本格的な高齢化社会の到来を迎えまして、活力のある社会を維持していくという上で、高年齢者、特に現在高齢化の波が移行しつつございます六十歳代前半層の方々の雇用就業の場の確保が重要であるというふうに認識をいたしております。  この場合、六十歳を超えますというと、体力でありますとかあるいは労働能力の状況が非常に個人差が出るということはそのとおりでございまして、また就業志向も多様化をするということも客観的に明らかなことでございます。したがいまして、この年齢層につきましては、その就業ニーズの多様性に応じた多様な就業の機会の確保という意味におきまして、その一つにこの短時間勤務の導入ということも考えられていいのではないかということは、そのとおりでございます。  例えば労働省におきましては、本年から高年齢者短時間雇用助成金というふうなことで、短時間の就労を希望する高齢者に対しまして既に制度を発足させているわけでございますが、これにつきましてさらにその内容の実質的な充実を図るべく現在予算要求中というふうなことでございます。  いずれにいたしましても、御指摘のような観点を踏まえつつ今後の高齢化社会に対処してまいりたいと考えております。
  241. 内藤功

    内藤功君 まず、労働大臣、御就任に当たりまして、労働省設置法の定める労働者保護、労働者生活と権利を守るということにつきましての大臣の抱負と決意をお伺いしたい思います、
  242. 中村太郎

    国務大臣中村太郎君) 労働行政におきましては、雇用の安定とともに、勤労者福祉の増進を図ることが基本であると考えております。  現在、我が国経済社会におきましては、円高の進行の中で経済構造の転換が進み、さらには中長期的には高齢化、技術革新、情報化、国際化などの構造変化が進展し、勤労者生活全般にさまざまな影響が及ぶものと考えております。今後ともこうした変化を踏まえつつ、働く人たち一人一人の生活の向上を図り、名実ともに豊かな勤労者生活を実現していくべく労働政策の推進に努めてまいる所存であります。
  243. 内藤功

    内藤功君 今の御答弁の中にも出ましたが、円高不況を背景とする大企業の人員削減、さらに出向等の状況の御認識、それから雇用確保生活防衛についての大臣対策の基本を伺いたいと思います。保
  244. 中村太郎

    国務大臣中村太郎君) お説のように、最近の雇用、失業情勢は求人倍率が上昇し、雇用調整の実施状況も次第に低下する見通しとなるなど総じて改善の動きが見られます。しかし、一歩踏み込みますと、不況業種におきましては、なお雇用調整の実施を予定する事業所も多く、これら業種やその関連地域におきましては依然として厳しい状況が続いておるわけでございます。また、円高構造転換が進む中にあっては、産業地域、年齢間における労働力需給のミスマッチによる各種の雇用問題が生じることも懸念をされておるわけでございます。  このため、労働省としましては、来年度において構造転換に伴う新雇用対策を強力に推進することとしまして産業地域高齢者雇用プロジェクトを取りまとめておるところでございます。その実現を図ることによって雇用の安定に万全を期してまいりたいというふうに存じております。
  245. 内藤功

    内藤功君 私の調査によりますとなかなか生易しいものじゃないですね。もうこれもやってくれ、これも突いてくれという要望がいっぱいありますが、大企業労働者の問題として、まずJR東日本東京電気工事事務所というところがあるんです。大臣よくお聞きいただきたいんですが、これは旧国鉄の東京電気工事局というところで、首都圏の電気関係設備の設計・工事監督業務を行っております。新宿駅南口近くの十三階建て庁舎の十一階と十二階で、約百五十人労働者がおるわけです。ここに国鉄労働組合の支部がありまして、昭和四十九年十月以来、支部の機関紙「おはよう」というのを創刊して十三年間続いているんですね。特に昭和五十七年ごろからは日刊体制で全職員に配っている。本日号をもって千四百八十六号になります、 ここに持ってきています。  毎日原稿を書いて印刷して配っているんですが、これ自体は一般論として団結権に基づく当然の活動だと思うんですね。これはそうですね。毎日組合が機関紙を配る、これは当たり前のことです。
  246. 白井晋太郎

    説明員白井晋太郎君) 機関紙を配ること自体はそうだと思います。
  247. 内藤功

    内藤功君 最後、聞こえなかった。
  248. 白井晋太郎

    説明員白井晋太郎君) 先生のおっしゃるとおりだと思います。
  249. 内藤功

    内藤功君 語尾がちょっと聞こえませんでしたが、当然のことだと、私の言うとおりだということですね。  配布の方法も時間外です。毎朝八時半から九時まで、始業時刻の前または昼休み、あるいは終業時刻後に従業員全員の机の上に配っている。内容は、特に民営化以後非常に目立っておりますのが超勤に対して超勤手当をきちんと支払っていない、こういう問題について繰り返し問題点を指摘する。あるいは職場の労働条件など、みんなが関心を持っている事柄を取り上げて知らせておる。十三年間続いて、しかも時間外でやる。これ自体全く当然のことなんです。  ところが最近、JR東日本は、民営化されてからですが、現場課長らが前面に出てきまして、時間外でもこういう機関紙を配るなと、十三年続いてきたものを配るなということを言ってきておる。さらに七月の三日に支給された夏季手当を、国鉄労働組合の役員の方、それから国鉄労働組合に復帰した組合員の万十五人に対して五%、平均二万円をカットしたんですね。二人については、「おはよう」を配っているから、ほかに仕事のミスなどの理由はない、この二人は機関紙を配っていることが理由だと。二万円削られちゃった。十月上旬に至りますと、「おはよう回収箱」というものをつくりまして、これを机の上に置いてそこにみんな捨てると。国労以外にも組合があるんですが、国労以外の組合の配布には干渉しない。これはもう差別であって、不当労働行為だと私は思うんですね。  労働省一般的にこれは不当労働行為に明確に当たるでしょう。
  250. 白井晋太郎

    説明員白井晋太郎君) お答えいたします。  先生今突然具体的に挙げられましたので、中身についてはよくわかりませんが、配ること自体等については時間外とかいろいろお話してございますけれども、一つはその施設の管理規程と申しますか、そういう管理についてどういうふうになっているかというような問題等もあるかと思います。具体的にはよく調査してみないとわからないと思います。
  251. 内藤功

    内藤功君 施設の妨害なんかないから十三年やっていたわけです。例えば通行の妨害になるとか、職場の機器、施設に損傷を与えるとか、人とぶつかって仕事のじゃまになるとかということは全然ないわけですからね。ですから、十二年間、旧国鉄当局も認め、そして十三年といったら大変なものだと思いますよ。つくる人も大変だし、配る人も大変だ。やってきたわけですからね。これは通告なしの質問ですからよく調査をしていただいて、いやしくも団結権の基本が侵されるようなことがないように。民営化以後ここにJRが来ないものだから、こういうことを十分吟味する機会がないのでいい気になってそういうことをやるのは本当にいかぬと思うんです。  そこで、十一月の一日付で、今度は支部執行委員、分会の役員、こういう中心の人四人を総務課分室に配転させました。私もこの間、昼間行きたかったが忙しいものだから夜行って見てきたんです。ここに写真もありますが、総務課分室とは名はかりで、実際は無人の——大臣、遠くで恐縮です。後でお見せしますが、新大久保倉庫というところですよ。電線の資材置き場として使われているところです。四人のうち二人は旧国鉄入社以来一人は二十年、もう一人は十数年の間信号機それから通信機器の工事の設計、監督等技術をやってきた優秀な技術マンですよ。国鉄を支えてきた人です。こういう人を技術職の仕事を奪って資材置き場の番人にしているわけです。資材管理業務は普通は新宿南口の本所で行われて、このような資材置き場で常時仕事をするというのは異常そのものだ、四人も置くのは異常そのものだ。しかも技術屋の優秀な人を置くのは異常そのものだとみんな言っています。これも明白な不当労働行為そのものだと私は思うんですね。局長はベテランで頭がいいんですから、こういうのはどうですか。一般的に不当労働行為に当たるんでしょう。
  252. 白井晋太郎

    説明員白井晋太郎君) お答えいたします。  ベテランではございませんが、先生のおっしゃる点から言えばそういう疑いもありますけれども、よく中身を見てみないとわからないと思います。
  253. 内藤功

    内藤功君 そこで、これは不当労働行為の申し立てをしたわけなんです。労働委員会規則の三十七条の二に基づく審査の実効確保の申し立てというのを十一月二日に労働委員会に出したんです。ところが、直後の十一月十二日、十三日付で二人の支部役員を今度はまた千葉と立川に転勤の内示をさせたんですね。労働委員会の問題だから、私細かいことをここで聞こうというんじゃないんです。問題はここに絞られるんですね。労働委員会は十二月三日に、公益労使三者委員協議の上、組合員四名の人事異動に係る不当労働行為救済申し立てがあった直後に、さらに組合員二名の人事異動実施したことは、労使関係の安定を阻害する要因となる可能性なしとしない。今後紛争の拡大を防止する意味から、会社としては、組合員の人事異動について慎重な配慮を払われたいという内容の要望書を住田東日本社長に対して発したわけなんですね。これは報道もされましたが、この事実は局長知っておりますか。
  254. 白井晋太郎

    説明員白井晋太郎君) 存じておりません。
  255. 内藤功

    内藤功君 こういう要望書が出たと。要望書が出たにかかわらず、十二月四日にまたもや二人の分会役員を今度は武蔵境というところに転勤するという事前発令をしてきたんです。たび重なる労働委員会の勧告無視がここのところ続いているわけなんですね。  七月二十三日、本院予算委員会で、私の質問に答えまして当時の労政局長は、あなたの前任者の方でございますが、こういうふうに答えております。「この勧告が履行されたり、あるいはこの勧告を契機として和解が進むといったような実際的な効果が期待できるというふうにも考えておりまして、そういう意味では、法律的な効果という意味では必ずしも強制力を持つものではございませんが、実際的な効果を期待できるというふうに考えております。」と、こう答弁しておるんです。  局長に伺いたいんですが、実効確保措置のつくられた趣旨、その出される手続、それからどのようにしてこういう実効確保措置が守られて実行されるかという保障、こういうものは、今前の局長の答弁ありましたが、このとおりでよろしいですか。
  256. 白井晋太郎

    説明員白井晋太郎君) お答えいたします。  前の局長の答弁でいいと思います。さらにつけ加えてお答えするならば、不当労働行為の審査継続中に、経済的その他の原因のため、そのまま放置すれば労働者の救済の実効が阻害され、または困難となるような事態が生ずるおそれがある場合がないとは言えないことから、これを避けるために労働委員会規則で設けられた制度であると。手続についても、前の局長が答えているとおりでございまして、「委員会は、当事者から申立てがあったとき、又は会長が必要があると認めるときは、公益委員会議の決定により、当事者に対し、審査中であっても、審査の実効を確保するため必要な措置をとることを勧告することができる。」というふうになっております。ただ前局長が答えておりますように、内藤先生からの法的効力はどうだというものに対しまして、今内藤先生が読まれたようなことで法的強制力はないと。しかし、審査の実効の措置で、労働委員会としてはその勧告を当事者が尊重することを期待しているというふうに思っているという回答をしているところでござ います。
  257. 内藤功

    内藤功君 労働委員会の審理が長引いて、転勤が争われているのに、その間にまた別の転勤が重なってくる、こういうことをやはりやめてもらいたい、慎重にしてもらいたい、こういう勧告が出たわけなんですね。  塚本重頼さんという元の最高裁判事、元都労委会長の方が、その著書で「むげに拒否しかねるという道義的な圧力によって、当事者の遵守を期待している」と書いておりますが、これも同じ趣旨だというふうに思います。ところがJRの東日本は、六月からごく最近十一月二十一日までの間、国鉄労働組合から提訴された不当労働行為救済申し立て事件について、私の調べたところでは、この東日本管内十一の労働委員会から勧告と要望が合計二十四件出されています。ここに私持っていますが、二十四件出ておるんですね。ところが全くこれに従ってないと、こういうふうに私聞いておるわけですね。いわば勧告無視、労働委員会無視の、言葉を強く言えば暴走族ですね、無視ですから。常習者と言うべきなんです、これは。さっきの塚本重頼元最高裁判事の著書に言う「道義的な圧力」を最大限にかけないと、こういう二十四件も労働委員会の勧告を無視するということについてはつける薬がないんじゃないかと私は思うんですね。労働省は、こういうような勧告無視というのが重なる場合には、やはり何らかの方法で厳正に対処すべきじゃないかと私は思うんですね。特にJRというのは国から財政上その他至れり尽くせりの保護を受けておりますよ。一方、労働法規は無視する、労働法制は軽視するという、もってのほかです。どう対処するか。こういう問題では我関せずとか手をこまねいているということはこの際許されないと私は思うので、あえてこの点をお尋ねしたいと思うんです。
  258. 白井晋太郎

    説明員白井晋太郎君) お答えいたします。  その点についても前小粥局長が答えておりますように、御質問のいわゆる趣旨は十分理解できますが、不当労働行為の審査制度というのは地労委あるいは中労委といった仕組みの中で行われているわけでございますので、基本的には個別の労使関係に介入する立場労働省はないというふうに思っております。しかし、不当労働行為があってはならないということは当然でございますし、これまでJRにもこのような考え方を伝えてきたところでございますので、その点を踏まえて、いずれにしても労使間で十分意思疎通が行われ、問題の解決が図られることを期待したいというふうに思っております。
  259. 内藤功

    内藤功君 手をこまねいて待っているということは許されないと思うんです。少なくとも、局長ね、この国会の中でここまでやっぱり議論をし指摘をされているということを、正確にあなたからJR社長、責任者にはっきり言ってもらいたいと思いますよ。いかがですか。
  260. 白井晋太郎

    説明員白井晋太郎君) お答えいたします。  そういうような御指摘先生以外からもいろいろあったわけでございまして、この勧告問題につきましては、JR東日本の幹部を呼びまして、労使が信頼関係に立つべきこと、それから労働委員会が勧告等について当事者が尊重することを期待していることを常に伝えてきているところでございます。
  261. 内藤功

    内藤功君 きょうの指摘も再度はっきり言ってくださいよ。
  262. 白井晋太郎

    説明員白井晋太郎君) 必要に応じてそういう場面をつくってまいりたいというふうに思っております。
  263. 内藤功

    内藤功君 大体勧告とか要望とかいうのは三者協議でしょう。公益労使三者連名で出るものなんですよ。使用者側の委員使用者の代表として出ていって、使用者の常識としてこれはひどいというから連名しているわけなんで、それに従わないなんというのは私はこれはもってのほかだと思いますね。  このいわゆる東電工につきましては、昨年の国鉄国会で我が党の東中議員がここにおける職員管理台帳、組合差別の振り分け名簿を追及したのでございます。民営化に向けて露骨な特定労働組合への攻撃、差別が行われたと理解をしております。しかし、全国でそれにもかかわらず機関紙を毎日つくって配っているというところは珍しい。それから民営化になってから十九人がこの国鉄労働組合に復帰したのも珍しい。会社側が脱退工作をしたが四人しか成功してない。恐らくこういうようなことでJR東日本がこれを非常に意識して、ある意味では嫌悪して、敵意を持ってこういう行動に出たと私は見ておるんです。  政府、労働省は、こういうやり方をJR東日本から相談を受けて、何か法律に違反しない方法はないかということを逆に相談を受けたり、あるいはこういう方法でやればいいとかいうことをアドバイスをしたりということは、私は労働省としては絶対ないしあり得ないだろうと思いますが、念のため私は、大変失礼な質問かもしれませんが、局長、伺っておきたいと思うんです。
  264. 白井晋太郎

    説明員白井晋太郎君) お答えいたします。  少なくとも私が労政局へ参りましてからはそういうことはございません。
  265. 内藤功

    内藤功君 国が一〇〇%出資しておる日本有数の大企業ですから、このJR東日本のこういうやり方を私はやめさせるべきだと思うんです。  特に社長は元運輸省の高級官僚で、法令はこれは熟知している人ですよ。法を守って他の模範となるべき人ですよ。ところが、あえてこういう労働委員会の勧告などを軽視する、無視するということは非常に重大だと思うので、さっき局長は必要に応じこの議論を伝えるということを言いましたが、私はぜひ厳重警告の意味でこれを速やかにやってもらいたいということを要望しておきたいと思うんです。  都労委の勧告には率直に全面的に従って、組合員の人事異動を中止するようにすべきだと思うんですね。特に、十三年間続いた、従来の方法によってずっと行ってきたこの機関紙配布への妨害の点については調査をして、ぜひこういうような団結権侵害の方法をやめさせるように、あわせてそのときにJR東日本の幹部にも指摘をしていただきたいと思いますが、重ねてお伺いをいたします。
  266. 白井晋太郎

    説明員白井晋太郎君) お答えいたします。  個別の案件について行政の立場からこうしろああしろということを申し上げるのはいかがかというふうに思うわけでございますが、先ほどからお話がございましたように、現在労働委員会にかかっている個別案件でございますので、その勧告等につきましては労働委員会の趣旨を、恐らく労働委員会はこれを尊重することを期待しているのだというようなことで、そのほか不当労働行為があってはならないというような一般的な問題については、今先生がおっしゃったようなことを必要に応じて申し上げていきたい、このように思っております。
  267. 内藤功

    内藤功君 大臣も冒頭一人一人の労働者を大事にするという基本姿勢を示されて、お言葉は全く私はそのとおりだと思うんですが、これはやっぱり局長以下が実際に生かしていくということをしなくちゃいけないと思うんです。  この役所は、労働省設置法三条に書いてあるように、労働者福祉雇用確保等を一体として実行する、そういう行政機関だとうたっておる特別のやっぱり任務を持った役所で、労働者は政府の中でこの役所に行けば労働者の味方をしてくれると。労働者の味方をしない、会社の味方をするんだったら名前を変えたらいいのでね、会社省とか経営省とかすればいい。  ここのところが大事なところですから、今の言葉を実際に言っていただくように要望をし、私も引き続きこれに関心を持ち、また必要に応じて国会質問等でこれをやめるまで、そういう悪いことを、違法行為をやめるまで取り上げて私はやろうというふうに思っているということを申し上げておきたいと思います。  次に、石川島播磨重工業、ここでも同じようなことが起きているんですよ。八月の六日に、東京第二工場の組立課溶接部門、略称F工場を閉鎖して、九月一日から在籍労働者十九人を関連会社に 出向させるということを発表して、翌七日に出向先を示して通知してきた。  この出向の問題点は、名前は言いませんが四つの関連会社に出向を命じた、全国各地の工事現場での作業や保守点検などのサービス業務のために、ここに出向させられれば同時に長期間の出張が繰り返されることが必至だというところなんです。長期の単身赴任、不規則な勤務時間、労働者自身の健康や家庭生活に重大な支障があるという主張に対して、会社側はその程度は我慢すべきだと、その程度は我慢しろということでずっと来ているわけですね。出向に応ずることのできなかった五人には、死刑宣告に等しい懲戒解雇が下っておりますよ。  私は、よしんば、このF工場の閉鎖が避けられないとしても、百歩譲って避けられないとしても、現にそこに在籍する十九人の労働者から十分希望を聞いて、東京第二工場の中あるいは東京地区内の他の事業所で仕事ができる、今のところで大体通勤圏内で仕事ができるところに職場を確保してやるのは経営者として最低の責任じゃないかと思うんですね。長年企業のために貢献してきた人の労に報い、その雇用を守る大企業の私は社会的責任だと思うんですが、これはいかがでございましょうか。  特に、大臣は御自身事業の経営もされた御経験があると漏れ承っておりますが、最低限こういう局面にぶつかった場合は、経営者としてその出向先の確保について、そういうことぐらいは世界の大企業はやるべきだと私は思うんですよ。いかがでございますか。
  268. 野見山眞之

    説明員野見山眞之君) 出向につきましては、雇用確保あるいは労働者の長期的な教育の見地、もろもろな見地から行われるかと存じますが、その出向を行う場合にも、労働者の同意がどの程度かということ等についてはいろいろ学説、判例分かれておりますけれども労働者の何らかの同意を経て行っていくという点では一致しているかと存じます。  企業におきまして出向をさせる場合にも、これらの点を十分理解しつつ、また出向の目的等が達せられるように行っているものと理解しております。
  269. 内藤功

    内藤功君 そういうふうにいってないのがこの問題なんですね、懲戒解雇を受けた五人の方を含めて九人の方が、これまた現在労働委員会に不当労働行為救済の申し立てを行うとともに、出向命令の強行実施が事件審査に重大な支障を生じさせるということで、委員会規則三十七条の二に基づいて実効確保措置勧告の申し立てをしておる。せざるを得ないですね。  労働委員会は、九月の二日に、「会社内に職場を確保することが可能であるという申立人らの疑問及び出向に応じることが事実上不可能であるという申立人らの健康問題、家庭生活上の問題等の事情について、相互に協議を尽くした上、九月二二日に双方より報告を受けることとしたい」という口頭勧告を一たんやった。しかし、会社側は、今の局長の答弁とは違って、労働者を呼んで出向に応じられない事情を述べさせて、それを聞いているだけと。労働者側から会社内にもっとほかに職場があるんじゃないかと、そういうところを見つけてくれないかという疑問にも答えない。いわば事情聴取というものですね、協議じゃないです、事情聴取をやった。その事情聴取も打ち切った上で、さっきお話しのように、五人に対して九月十四日に懲戒解雇をしてきたということですから、明白なこれは勧告無視ですね。  さらに、十一月二十四日に、再度公益労使三者の口頭要望を発して、「本件について、申立人らと会社は、円満解決に向けて、改めて別途話し合いをされたい」という勧告がまた出されたんですね。十二月の三日に、労働者側は文書をもって協議の日時その他協議の場所を返答するように申し入れたんですが、会社側は追って代表の方に返事をすると約束をしたんですが、しかし、私がきのう現在調べたところでは、いまだに会社側から代表に協議の日時、場所等の返事がないということであります。口頭要望にある円満解決に向けて改めて別途の話し合いをせよということは、単なる事情を聞くというものじゃなくて円満解決に向けてお互い話し合うと、要すれば譲歩もし合うということだと私は思うんですね。こういうものが形だけじゃなくて魂の通った話し合いというのが行われるように、これは労働委員会の責任ですけれども、相次いで勧告無視が行われていますからね。労働省としてこの実態を注目して、特に大企業ですから、一般に与える影響はこれは大きいですからね。適切なやはり対処を指導すべきじゃないかと思いますが、労働省いかがですか。
  270. 白井晋太郎

    説明員白井晋太郎君) お答えいたします。  不当労働行為で上がっている事案ということでございますが、解雇そのものについてはどういうふうなことであったのかつまびらかにいたしませんが、労働組合活動等で不利益に扱われたということであれば不当労働行為に当たっていくというふうに思います。先ほどから申し上げておりますように、繰り返しになりますが、地労委、中労委という仕組みの中で行われている問題で、審査が現実に行われている問題でございますので、行政としてはとかくの指導はできる立場にはないということを御理解いただきたいと思います。
  271. 内藤功

    内藤功君 ですから私は、その委員会の中で出された実効確保措置、これに対して厳正にやはり守るようにという指導は、これはしてしかるべきじゃないかと。その点はいかがですか。
  272. 白井晋太郎

    説明員白井晋太郎君) その点がその委員会の中で言われておることでございますので、それを守るかどうかということにつきましては委員会の勧告の趣旨をよく理解していただくということでございまして、行政がそれを守れという立場での指導は難しいというふうに考えております。
  273. 内藤功

    内藤功君 先ほどのJRの問題とやっぱり基本は同じですよ。実効確保措置という労働委員会、三者構成で、使用者の代表も入って言っているんですから、これをやはり守らないというのは使用者の最低の責務に反することだと思いますね。  そこで、私は今そういう答弁を伺ったので、ちょっとこれは念のために聞いておきますが、石川島播磨重工業は海上自衛隊の艦艇の建造、修理を行っているんですね。これはもう公知の事実です。特に東京第二工場では、いわゆる洋上防空に使うと称するイージス艦の機関部の製作をやろうとしておるんですね。石川島が労働問題で非常に硬直的な面がある、柔軟性を欠くと言われているのは、こういう政府、特に防衛庁からの発注を受けて、いろんなそういう面から労務管理を厳しくしろというような要請あるいは圧力というものがあるんじゃないかと言う人もいるわけですわ、という論評もあるわけです。まさかそういうことは私はあり得ないと思うんだけれども労働省としてはこれはいかがですか。
  274. 白井晋太郎

    説明員白井晋太郎君) 私、つまびらかにしませんが、あり得ないというふうに思います。
  275. 内藤功

    内藤功君 あなたがこの石川島播磨の問題になってくると途端に行政は介入しないという答弁になったので、私は今その質問を一つ出してみたんです。この企業が世界的な大企業で、そこの技術、そこで働く労働者、技術者の優秀な人が多いこと、それから機械、設備のすぐれているという点は私は少しも否定をするものじゃありません。されば、労働法規にのっとった労使関係の点でも他企業の模範となるべき大企業でありますよ。ところが、この面ではかような労働者に対して非常に冷たい。同意を得て新しい出向場所を決めるというふうなそういう温かさがない。既に過去二回、私は、本院の社労委員会及び決算委員会でこの石川島における労務管理の他の二つの例をここで質問しております。労働法制の無視、軽視は、私はもってのほかだと思うんです。これもやはり、国から至れり尽くせりの契約発注、補助金、税のいろんな特別の優遇を受けている大企業の一つであります。政府が強力にやはり、ここでの労務管理については十分に注目をし、必要に応じ指導し、再びこういうことが国会の話題にならぬようにやっぱり十分な留意をするべきだということを要 望しておきたいと思うんです。  事例の三つ目として、私はぜひここで大臣局長に知っていただき、正面からの御答弁をいただきたいのがあるのは、川崎重工業の大阪工場の問題です。これは、ボイラー、工作機械、ごみ焼却機の製作で非常に著名な業績のある工場であります。  ところが、会社は昨年十一月に経営再建対策として、大阪工場を売却して関東地区へ業務移管、ボイラー製造部門は千葉県の千葉工場へ集約するということなど、大阪工場は前年まで黒字なのに全面閉鎖をするという提案をしてきた。そして一年間希望退職、配転、出向を進めてきた。労働組合も基本的にはこれに協力をしてきたんですね、ここの労働組合は。今当面最も深刻なのは、千葉工場への配転予定者となる大阪工場の現業職の人であります、平均年齢が四十二歳で年収三百万から四百万、家族構成の上からも、子供の教育、親の扶養、共働きなどの困難な問題があります。もし単身赴任となれば、二重生活による負担増で、例えて言えば生活保護基準以下の生活を余儀なくされることにもなりかねません。このため、千葉にどうしても行けない人が、通勤範囲内なら出向に応じてもよいし、集団で働ける場所を確保してほしいということが最後の要求で今やっているわけですね。  ところが、会社提案から一年たった今に至るも、「千葉へは行けない」とする人に対する対応は具体的に何ら示されておらない。労働組合の同意の上で個別説得を行ったんですが、千葉工場への現業職配転予定者の八割に上る八十名余が、「行けない」という明確な意思表示を署名の形でやったんです。ここに全部、八十何人が「行けない」という署名がここにもう全部あるわけですね。もうこれでもって、会社の計画がいかに無謀かということが明らかになった。  しかし、十一月二十日に配転予定者全員に内示をして、千葉に行くかやめるか、真ん中の道はないというんですね。この寒空に、十二月十四日に辞令の交付があった。十二月二十一日には発令を強行しようとしています。あと四日後ですよ。  こういう事実は労働省耳にしておりますか。
  276. 野見山眞之

    説明員野見山眞之君) 承知いたしておりません。
  277. 内藤功

    内藤功君 関西では大きな問題なんですね。大阪の支分部局を通してやっぱりこれはしっかり把握しておいてもらいたいと思うんです。非常に深刻な問題になってますね、やっぱりこういうことを親身になって把握するという姿勢が必要ですよ、大臣、大事だと思うんですね。知りませんというのは情けないと思うんですね。  会社は二者択一を迫る。しかし労働者の要求は、一つ、大阪工場の一部を残してほしい、四万七千坪全部売らなくていいじゃないか。二つ目は、もし仮にどうしてもそれができないならば、大阪にずっと働いているわけなんだから、大阪で生まれて大阪で育って働いている人がほとんどだから、通勤圏内で働くところを見つけてほしいということ。三つ目には、今までの仲間が集団で働ける場所を確保してほしい、という三項目で、決して無理な要求じゃないと私は思うんですね。八割もの人が、千葉へは行けないが大阪から実現可能なところという具体的対案を出しているのにこたえるべきじゃないでしょうかね。四万七千坪の土地を全部売ってつぶすのは何とも無法じゃないかと思うんです。  今回の会社提案は、会社は生き延びるが労働者は犠牲になってくれ、八十人は犠牲になってくれということじゃないでしょうかね。大企業は生産を通じて労働者、国民の生活の発展に寄与貢献すべき社会的責任を負っていると思いますよ。大企業は一方で利益を得る、しかし同時に社会にそういう責任を負っているのだと思いますね。労働省労働大臣、これは手をこまねいて見ていちゃなりません。実情をもう至急調べて、私の指摘があった以上これについて調べて、会社に対して、十分事情を聞いて、可能な限り、労働者がぎりぎり譲った最後の線ですから、強力に勧告指導していただけないでしょうか。このことを訴えるものですが、大臣局長いかがでしょう。
  278. 野見山眞之

    説明員野見山眞之君) 今お話のありましたような事案、例えば雇用確保、あるいは企業の移転問題、あるいはそれに伴う配置転換等々、基本的には企業の内部において労使の間で十分話し合いが行われ、その中で雇用の維持の立場その他労使の納得いくような形で進められていくのが基本的に重要だろうというふうに思っているわけでございまして、これらの問題につきまして行政の立場個々企業の運営等につきましてそれぞれ介入していくのはいかがかというふうに考えるわけでございます。  しかし、労働者の方が雇用の安定あるいは労働法規上の問題等に関連いたしまして、行政当局に対する相談あるいは援助要請があった場合には、行政としても十分事情を聞くという立場は維持したいというふうに思っております。
  279. 内藤功

    内藤功君 ここで私が川崎重工業の労働者たちのやっぱり大きな要請と報告を受けて、労働省に対して正式にこれはお願いしているわけですから、これは電話をして、こういう質問、指摘があったと。もう少し労使間で話を尽くしていけないのかということぐらいは私は言ってほしいと思いますね。
  280. 野見山眞之

    説明員野見山眞之君) 国会の場において事情のお話があったということにつきましては会社側に伝えたいと存じますが、その後の処置等につきましては、会社その他の状況等について、それぞれの立場で話し合いが行われているというふうにも思いますので、その間の事情については必要な限り事情を聴取したいと思っております。
  281. 内藤功

    内藤功君 二十一日に発令をするかもしれぬという状況ですから、ぜひ至急にやっていただくようにお願いをしたいと思う。  最後に、時間が迫ってまいりましたので、労働基準局関係でありますが、十月二十六日に労働基準局通達で「脳血管疾患及び虚血性心疾患等の認定基準について」という通達が発せられたと報道されております。報道によれば、新基準は旧基準と比べて労災認定の幅を広げたものであると、こういうふうに評価をされておるようですが、どのように改善されたか、改善点をお示しいただきたい。
  282. 野見山眞之

    説明員野見山眞之君) 改正点の主なところは三つでございまして、まず第一は、脳血管疾患及び虚血性心疾患等の認定基準に関しまして、疾患名を掲げて、取り扱う疾病の範囲を明確にしたことが第一点。次に、業務に起因することの明らかな脳血管疾患及び虚血性心疾患等の判断に当たっては、発症前の業務による明らかな過重負荷の有無により判断することとしたこと。三番目は、業務による明らかな過重負荷として、異常な出来事に遭遇したこと及び日常業務に比較して、特に過重な業務に就労したことを掲げたことでございます。  さらに、この過重な業務であるか否かの評価に当たりましての発症と業務との医学的関連性につきまして、発症直前から前日、それから、発症前一週間以内及び発症前一週間より前に分けて明らかにしたこと等でございまして、これらの改正点に基づきまして、業務上・外の迅速、適正な認定を行うための担当職員の参考として、さらに認定マニュアルも作成いたしたところでございます。
  283. 内藤功

    内藤功君 この内容、詳細については別途社会労働委員会等で、私は、非常に進んだ面と、それから、まだ非常に足りない点と両面を考えておるので、手放しに全面的にこれはいいとは思いませんが、改善の面も、今局長言ったようにあると、両方に分けて別途これは質問したいと思っております。  最後に、大臣に伺いたいのですが、私は実は昭和六十年の四月二十三日の本院内閣委員会においてこの問題を質問して以後五回ぐらい質問しているんです。旧基準が救済の範囲が狭過ぎるという質問をしたんです。当時、総務庁長官は後藤田さんでしてね、後藤田長官はこう言っているんです。議事録から引用しますと、「私は二十四時間勤務 の人間ばかり使っておったわけですが、認定が大変厳しいんですよ。気持ちとしてはもう少し思いやりのある処置をとることが望ましいんでないかなと、私はかような考え方です」と、これ後藤田氏の答弁。これ以来二年半後に今度の新基準が出たわけですね。これは二十六年ぶりで改正された。  最近、大阪の社会保険労務士の方がある新聞の投稿でこう言っています、「「業務上にならない要因」のみに目をむけず、公平な温かい担当係官の調査、認定を切望します。」ということを訴えているんですが、私は現場でやはりこういう労災認定のため努力している人の言葉だと思いますね。実感だと思います。  大臣には細かいことを私聞くつもりはないんですが、こういう労働災害の適用に当たって、本人が特に亡くなった場合が多いですから、遺族の身になってこの新基準の運用に当たってはできるだけ温かい行政の姿勢というものを要望したいと思うんですがいかがでしょうか。
  284. 中村太郎

    国務大臣中村太郎君) お説のとおりであると思っております。  もともと労災保険制度というものは被災労働者に対しまして迅速でかつ公正な給付を行うということが趣旨でございまして、御質問のような脳血管疾患及び虚血性心疾患等につきましても、担当職員に改正認定基準の内容を十分に徹底をさせまして迅速、適正な認定を行ってまいるよう、そのような方針で進んでまいりたいと思っております。
  285. 関嘉彦

    ○関嘉彦君 きょうは労働省に四つほど質問いたしたいと思っています。  一つは、ILO条約の批准の問題でございます。国際条約で多くの先進国が批准している条約に対しては日本もやはり進んで批准することが日本が何か特殊な国であるというふうに見られないために必要なことではないかというふうに考えております。特にILO条約というのはヨーロッパ——労働問題の起源はヨーロッパでございますので、ヨーロッパ諸国は、先進国は大部分の国が多くの条約を批准しているわけでございますが、これに対して日本がもしおくれているとしますならばやはりECなんかの諸国との摩擦の一つの原因にもなるんではないかというふうに考えております。  実は、昨年の決算委員会でもこのILO条約批准が日本は先進国に比べると劣っているんではないか、加盟国全体の平均をとりますと、加盟国が批准している条約の数ですね、その点からいいますと、日本は必ずしも劣っているとは言えないけれども、先進国だけをとりますと、例えばILO条約百六十二のうちで、フランスは百十、イタリーは百一、イギリスは七十九、西ドイツは六十六に対して日本は三十九であります。まあアメリカはちょっと州ごとに違いますので、これは別個になると思いますけれども、その点からもっと批准を急ぐべきではないか、特に百十一号条約、百三十五号条約、百四十四号条約、この三つを取り上げて、批准してないのはどういう理由によるかということをお聞きいたしました。そのときの一般的なお答えは、日本では条約と国内法の整合というのを非常に重視する、非常に厳格に考える、それで国内法との関係を十分調べなくてはいけないので批准がおくれているというふうな答弁がありました。しかし同時に、今後前向きの姿勢を維持していきたいという答弁もあったんでございますけれども、今回また同じような問題を取り上げます。その後余り進捗していないんではないかという印象を受けますので、同じような質問を取り上げるわけでございますが、まず最初に百十一号条約、これは一九五八年に採択されたもので、雇用及び職業における例えば訓練であるとか労働条件であるとか、そういう職業における人種、皮膚の色、性、宗教、政治的見解、あるいは国民的出身、社会的出身などによる差別を除去するためにとるべき方針についての原則を定めたものでございます。これが一九五八年採択以来批准されていないその理由について、その当時の職業安定局長は、雇用、職業の範囲が広範であって、国内法の整備ができているかどうか、ほかの省庁とも検討中であるというふうに答えられましたが、その後どういうふうな検討を進めておられるのか。それからまた、どの点が国内法なんかと抵触するのであるか、そのことを最初にお伺いしたいと思います。
  286. 岡部晃三

    説明員(岡部晃三君) 昨年十月のこの決算委員会におきまして、先生の御質問にお答えしたことを私自身思い起こしておるところでございます。  この百十一号条約でございますが、突き詰めますというと、概括的には前局長がお答え申し上げましたところと同じように、やはり雇用、職業に関する差別の範囲が広範にわたっている。それから、法令をどのように制定ないしは廃止すべきか、なかなか意味内容が条約上読み取れないということでございますが、しかしぎりぎり技術論でまいりますというと、例えば雇い入れという場合、雇い入れの際の差別というのはどのように考えたらいいかというのは一つの難しい問題点でございます。  端的に申しまして、例えば自分は山口県出身である、したがって企業におきまして、おれは山口県出身の者を優先的に雇いたいんだ、こういうふうなことがあったといたします。これは例えばこの社会的出身等についての差別というふうになるのかとか、つまり雇い入れの自由という一つのこれは概念があろうかと思います。  そのことと条約との矛盾、抵触関係が条約成立以来多年を経てもまだわからぬということが一つと、それからもう一つ、政治的見解という文言もこの条約の中にあるわけでございますが、これにつきましては西ドイツが現在ILOの場におきまして非常に困難な立場に立っております。すなわち、西ドイツの連邦公務員法におきまして基本的秩序に対する公務員の忠誠義務が規定されておりますが、このこととこの条約の政治的見解との関係いかんというふうな問題で提起されておりまして、これは本年の理事会におきましてもいまだ決着を見ておりません。ここ五、六年にわたりましてILOの場において論争が行われている問題でございます。  この百十一号条約の基本的な部分につきましてそのような疑念が存在して、なおかつ係争中の国もあるというふうな状況でございまして、どうも私どもこの条約について、おおむね我が国国内法が既にある程度の線までこれは整っているというふうには考えるわけでございますが、なおそのような疑念が存します以上、直ちにお答えを申し上げる段階にはないということでございます。
  287. 関嘉彦

    ○関嘉彦君 特定の県の出身者を優先的に雇い入れるというふうなことは、ヨーロッパあたりでも、例えばドイツであれば、バイエルン地方の人を優先的に雇い入れるとか、イギリスあたりではスコットランドであればスコットランドの人を優先的に雇い入れるとかというふうなことは、これはあるんじゃないかと思うんですけれども、これは抵触するというふうにILOの方では考えているわけですか。
  288. 岡部晃三

    説明員(岡部晃三君) 今のは仮に例え話で申し上げたわけでございますが、この条約自体国内の事情及び慣行に適した方法でやりなさい、こう書いてございますので、おおむね大丈夫なことではなかろうかなと思いますが、しかしながら、例えば宗教によって雇い入れ時に何らかの区別を設けるというふうなのは一体どのようなことであろうか。性につきましては、これは雇用機会均等法によって既に問題は我が国としては方針を明確にしたところでございます。例えば政治的見解等々あるいはまた、この人種というのはどんなふうに考えるべきか、困難なまだ未解決の問題が存しようと思うのでございます。
  289. 関嘉彦

    ○関嘉彦君 その人種というのは私も非常に定義のしにくい言葉で、これは厳密に考えていけばいつまでも議論尽きない問題だと思うんですけれども、むしろこういう問題は日本よりもヨーロッパあたりで非常に問題のあることではないかと思います。しかし、それにもかかわらずヨーロッパではそれをクリアして批准している。それから宗教の問題は、日本では宗教的信条によって差別をす るというふうなことはほとんどないんじゃないか。むしろこれもやっぱりヨーロッパあたりでイスラムの人がラマダンで長いこと昼間絶食するとか、ユダヤの人が金曜日休むとか、そういうふうなことでヨーロッパで私はむしろ問題になる条項じゃないかなと思って、日本ではこういうことはほとんど問題にならないことじゃないかと思うんですが、日本でもやっぱりこういうこと問題になる可能性ありますか。
  290. 岡部晃三

    説明員(岡部晃三君) それは今条文に掲げてあります一つ一つの概念を取り上げまして論じていきますと、全くないとは言い切れない、こう思うわけでございます。
  291. 関嘉彦

    ○関嘉彦君 こういう問題、私考えると余り障害になるようなことはないと思うんですけれども、よく検討していただきたいと思います。  その次は、百三十五号条約、これは企業内において労働者代表が不利益処分を加えられないような保護及び便宜の供与を規定しているものでありますけれども、これも批准できないのは、細部の点について不明確な点があるので批准ができないというふうにお答えになっていると思うんですけれども、例えばどういう点が不明な点であって、あるいはクリアしなきゃならない点であるかというふうにお考えですか。
  292. 白井晋太郎

    説明員白井晋太郎君) お答えいたします。  この点についても先生から先般御質問があって、今、先と言われましたようなお答えを申し上げているわけでございますが、このILO百三十五号条約は、もう既に御存じのとおりでございますが、企業における労働者代表に対しまして、その労働者代表としての地位を理由としてとられる不利益な措置に対する保護、それから二つ目には、その職務の迅速かつ能率的な遂行を可能にするために適当な便宜を供与することというふうに、この二つが大きな柱として規定されているものでございます。  本条約の内容自体につきましては、我が国法制の関係としては、先生のおっしゃるとおりおおむね妥当なものと考えているわけでございますが、すなわち第一点の労働者代表が不利益な措置から保護されるという点については我が国の不当労働行為制度でカバーされるのではないかというふうに考えております。  ただ問題は、本条約についてはその解釈が細部にわたって十分に明確になっていないということが、御指摘の点でもございますけれども、その点について、例えば本条約の第二条の一では、「労働者代表がその任務を迅速かつ能率的に遂行することができるように、企業における適切な便宜が労働者代表に与えらる。」と規定されておりますけれども、その便宜の内容、程度が明らかでない。したがって、どの程度で満たすことができるかということになるわけでございます。具体的には、我が国では労働組合法第七条によりまして、使用者労働組合に対する経理上の援助は不当労働行為として禁止されております。この禁止規定との関係。  それから、本条約の採択と同時に勧告百四十二号がILO総会で採択されておりますが、これは労働者代表勧告でございますけれども、この勧告の中では、労働者代表に供与されるべき便宜が非常に詳細にたくさん列挙されております。その中で、例えば労働者代表に対しその任務を遂行するための有給休暇の付与、それから労働者代表に対し労働組合の会合、訓練コース、セミナー、会議及び大会に出席するための有給休暇の付与。事業場内での労働組合の文書等の掲示等、詳細なその便宜供与が書いてあります。このようなことすべてを使用者労働者代表に与えなければならないのか。そうしなければ本条約に反するかどうかという点が明らかでないということで、まだ詳細に検討する必要があるということでございます。
  293. 関嘉彦

    ○関嘉彦君 労働者代表に対する不当な取り扱いに対する保護の点は、局長言われたとおり、私日本の法規では問題ないんじゃないかと思う。ただその便宜の供与というのが、これまた度を過ぎると御用組合化する、そういう危険があるので慎重にしなくちゃいけないと思うんですけれども、まあ日本の労働慣行から見まして、組合に対して特別に金銭的な援助なんかしているようなところはないと思いますし、この点も、今の労働法規のままで一向差し支えないんじゃないかというふうに考えるんです。これなんかも進んで批准して一向差し支えないんじゃないかと思うんですけれども、やはり今おっしゃった点がどうしてもひっかかりますか。
  294. 白井晋太郎

    説明員白井晋太郎君) お答えいたします。  今、勧告の点で申し上げた点が、やはり経費援助の点でもひっかかるのではないかというふうに考えている次第でございます。
  295. 関嘉彦

    ○関嘉彦君 もしそういう点で心配があれば、やはりこれはILOに直接問い合わせるなり何なりして、こういう事例はどうなのかというふうなことを積極的に問い合わせて、そしてそれを早くクリアするようにしていただきたいというふうに考えます。  それから百四十四号条約、これは国際労働基準の実施を促進するための政労使三者の協議に関する事項で、十年ほど前に採択されております。これは、労使は賛成したんですけれども政府が棄権したためにまだ批准に至ってないんですけれども、昨年の答弁は、「第二条の「効果的な協議を行うことを確保する手続」というのを定めなければならない」が、どの程度にそれを確保すればいいかということがわからないというふうなお話でした。しかし、ILOの中の調査で、サーベイの結果によって解釈が明らかになるので検討中であるというふうなお答えがありましたけれども、その後のILOのサーベイの結果どういうふうになっているのか。この点でも日本は外国に比して決して劣っているとは思えないんですけれども、なぜ批准できないかということをお答え願いたいと思います。
  296. 清水傳雄

    説明員(清水傳雄君) 前回の御質問の際に、本条約の批准につきましては解釈上の問題点があり、その一つの例示として、第二条の「効果的な協議を行うことを確保する手続」、その内容が明確でないというような答弁であったわけでございますが、この解釈を明らかにしていく場合には、今お話しがございましたように、ILOの条約勧告適用専門家委員会の作成いたします総合調査を中心としつつ、条約の審議経緯、あるいは各国の状況等を通じて、文意を分析して行っていくことになるわけでございます。  それで、その後も持続的に検討いたしておるわけでございますけれども、この「効果的な協議を行うことを確保する手続」ということといたしましては、各国の国内慣行に従い、文書の交換、意見の提出、あるいは関係者による討論、こういった形態をとってもいいし、確立された機関を通じるか、あるいはより弾力的な方法を用いてもいいと、まあこういうようなところが明らかになってきつつございます。ただしかし、どのような形態が効果的なものと判断をされるのかということはやはり問題であろうかと思うわけでございますし、また、協議を通じて表明をされました見解というものは方針決定への参加でなくてもいい、決定の過程における一つのステージにすぎない。また、協議の結果は拘束力のあるものと見るべきではなくて、最終的な決定なりは政府または立法府にゆだねられるべきである、こういうようなことであるということも明らかになってきつつあるわけでございます。さらに、この第二条のこの部分だけではなしに、いろいろと調べて検討を進めれば進めるほどその他の条文におきましても不明確なところが随所にございまして、やはり慎重な対処が必要である、このように考えているところでございます。
  297. 関嘉彦

    ○関嘉彦君 そういう不明確な点はILOの方に照会して、これはどういうふうに解釈するかということを問い合わせておられますか。
  298. 清水傳雄

    説明員(清水傳雄君) ゼネラルサーベイを通じてその文意の分析を行っておるところでございます。
  299. 関嘉彦

    ○関嘉彦君 「効果的な」とか、法律の条文という のはどうしてもあいまいな言葉が出てくるものですけれども、大体のヨーロッパの慣行を調べて、それと著しく違っているものがなければ、特に日本が効果的な方法をとっていないとサーベイされることもないんじゃないかというふうに私は考えておりますので、もっと積極的に取り組んでいただきたい。  大臣にお願いしておきますけれども、一番最初に申し上げましたように、やはりこういう問題は厳密さを要求していけばこれはもうなかなか、いつまでたっても批准できないんじゃないかと思います。既にヨーロッパあたりで多くの国が批准している、先進国が批准している条約であれば、解釈の点については念を押すなり何なりして、もっと積極的に、前向きの姿勢でこの問題について取り組んでいただきたいというふうに考えますけれども大臣のお考えいかがですか。
  300. 中村太郎

    国務大臣中村太郎君) 条約の批准につきまして、我が国におきましては、ILO条約に限らず全般的な条約の批准に当たりましても国内法との整合性を十分考えまして、批准した以上は厳密にそれが実効の上がるような方向でやってきておるのが基本的な立場でございまして、そのことを踏まえつつ先生の御趣旨を十分検討させていただきたいと思います。
  301. 関嘉彦

    ○関嘉彦君 次は二番目の質問で、交通災害なんかで父親を失った遺児の家庭の母親の雇用の問題についてお尋ねいたしたいと思います。  実は三、四日前の月曜日に東京で交通遺児と母親の全国大会というのが開かれまして、そういった遺児の、大部分は学生でしたけれども、その学生の代表が集まった会合に出席して非常に心を打たれたわけでございます。  その大会の主たる目的は、そういった災害遺児が高等学校なんかに進学ができやすくするように奨学資金を制度的につくってもらいたいというふうな話が主でした。交通遺児については奨学資金ができておりますけれども一般災害によって遺児になった学生が高等学校で勉強できるように、そういう奨学制度がまだできていないのでそれをつくってもらいたいということで、我が党としましてもその問題については努力しておりますが、その問題のほかに、そういった遺児の人たちの作文なんかを朗読したんですけれども、やはりそういった子供たちが高等学校に行きたいけれどももし高等学校に行くとなるとお母さんがもっとたくさん内職しなくちゃいけない、今でも昼間はどこか外で働いて、夜帰ってくるとまたいろんな内職をして遅くまで働いている、もし自分が高等学校に行くようになったらもっとお母さんが働かなくちゃいけない、それを思うと高等学校に行くかどうか迷わざるを得ないというふうな、そういった作文なんかも朗読されました。私は、やはりそういった人たち、社会保障で救済する点なんかもあるかと思いますけれども、そういったお母さんたちが仕事を持って、そして働いて生計を維持しあるいは子供を高等学校に進めていくというのがやはり一番いい方法じゃないか、そういうふうに考えておりますので、そういったお母さんたちの就職の問題、雇用の問題、それについてお願いしたいというふうに考えております。つまり、そういったふうなお母さんたちは、運よく就職した人でもパートー先ほどパートタイマーの問題、同僚委員からも質問出ましたけれども、何かパートタイマーというのはいろんな種類があるんだそうですけれども、実際上はほとんど正規の労働者と変わらないような仕事をしている、そういったパートタイマーで働いている人が多いにもかかわらず労働条件はそういうのに比べると劣っているし、しかも円高不況なんかで雇用調整が行われるとなると真っ先にそういう人たちが失業せざるを得ない、あるいは新しく就職するにしましても、そういった人たちは特別の技能を持っているわけでもないし、突然仕事につくわけですからなかなか仕事を見つけることができない、そういう気の毒な事情にある人が非常に多いわけです。  この人たちに対して、雇用をできるだけ安定していくあるいは雇用確保していく、そのことについて労働省としてはどういうふうなお考えをお持ちでありますか、そのことをお聞きしたいと思います。
  302. 中村太郎

    国務大臣中村太郎君) おっしゃられるように大変お気の毒な立場にありまする交通事故や災害等による母子家庭のお母さんの就職の問題であります。労働省といたしましても最重点として考えていかなければならないと思っております。  現在やっぱりお母さんたちが保育等の家庭生活上の制約があるという点、もう一つは、職業経験が乏しく技能が十分でないということから就業条件の面で制約を受けるのじゃないかというふうに考えておるわけでございます。  労働省としましても、現在も寡婦等担当職業相談員を配置する等によりまして、家庭環境等に配慮したきめの細かい職業指導、職業紹介等に努めておるところでございます。母子家庭の母等を雇い入れる事業主に対しましても、特定求職者雇用開発助成金の支給や訓練手当を支給しながら職業訓練、職場適応訓練の実施等によりその雇用の促進を図っていきたいと思っております。  今後ともこれらの措置の積極的な活動によりまして母子家庭の母等の雇用の促進に十分努力をしていく所存でございます。
  303. 関嘉彦

    ○関嘉彦君 ちょっと聞き漏らしましたけれども、何か奨励金を雇用主に対して、そういうお母さん方を採用した人に対する奨励金を出すという趣旨でございましたですか。
  304. 岡部晃三

    説明員(岡部晃三君) 大臣から申し上げましたように、まず特定求職者雇用開発助成金でございますが、これは雇い入れ後一年間の賃金の四分の一、中小企業におきましては三分の一、六十三年度はこれをさらに倍に支給率を高めておりますが、そのような賃金助成の制度によりまして困難な就職状況にある方々の就職を促進するという制度が完備しつつあるわけでございます。  また、訓練手当と申しますのは、訓練手当の平均月額約十一万六千三百七十円でございますが、これは基本手当、技能習得手当、寄宿手当というふうな項目になっております。このような給付金あるいは助成金によりまして、母子家庭の母等の雇用対策に役立てていきたい、こういうことでございます。
  305. 関嘉彦

    ○関嘉彦君 この問題については、非常に熱心な公明党を中心にいたしまして昭和五十二年でしたか、他の野党とも共同いたしまして、あのときの法律の名前ちょっと忘れましたけれども、母子家庭の母等の雇用の促進に関する特別措置法でしたかね、何かそういったふうな法案を野党提案として出したことがあるんですけれども、特別にそういう法律をつくるというふうな考えはございませんですか。
  306. 岡部晃三

    説明員(岡部晃三君) この問題、母子家庭の母等に関しましては、非常にその対象の把握と申しますか、立場が変動する方々でございます。例えば再婚をなさるというふうなこともございます。そうしますというと、母子家庭の母等ということではなくなるわけでございます。それから、子供が成人をするというふうなことになりますとこの概念から外れるというふうな立法技術的な問題もございまして、立法化につきましては、ちょっと困難な事情があろうかと思います。  要は、この母子家庭の母等に対する対策を手厚く今後も考えていくという御趣旨であろうかと思うわけでございまして、その点につきましては我々大いに力を入れてまいりたいと考えております。
  307. 関嘉彦

    ○関嘉彦君 その点ぜひ温かい配慮をお願いしたいと思います。  それから、あとの二つの質問は、一つは外国人労働者の受け入れ、もう一つは今度の新しい労働基準法、時間短縮の法律ができたんですけれども、それを中小企業にいかに適用していくかという問題ですが、外国人労働者に対しては一井議員、それから中小企業労働時間短縮については松尾議員から、いずれも既に質問がございましたので、できるだけ簡略に質問いたしまして、労働基準法に従いまして質問時間の時間短縮を図りたいとい うふうに考えております。  外国人労働者の受け入れにつきましては、基本方針としましては私ども現在の政府の立場と同じでございまして、科学者であるとか技術者であるとか学者であるとか、そういったような人は積極的に受け入れていく、あるいは日本人ではできないような技能、これは積極的に受け入れていく。しかし、単純労働者は受け入れるべきではない。これはへたに受け入れますと、何かいかにも国際協力やっているように見えますけれども、結果においては、ヨーロッパ諸国の例を見ましても、かえって人種的な偏見を生み出すとか労働条件を悪化させて国際協力に逆行する、結果としてそういうことになると思いますので、単純労働者は少なくとも今の段階においては受け入れるべきではない。ただ問題は、その中間のところといいますか、非常に高度の技術者ではないけれどもある程度の技術者、ある程度の技術を持っていてそして国内においても需要があるような産業、これをどうするかということは非常に問題でございますが、研究会を組織して労働省の中でも検討を始められたということでございますので、私もその検討の結果をまちたいと思いますが、ただ一つだけ、この不法就労者、入管法に違反して不法就労して摘発された人は強制送還されるんですけれども、今の日本の法制では、それを採用した雇い主、これは全然罰則がないわけですね。この罰則は法務省の所管であるのかあるいは労働省の所管であるのかよくわかりませんけれども、不法就労者であるということを知っていながらそれを雇うというふうな雇い主に対しては、やはり何らかの罰則を加えるべきじゃないか。そうでないと、いかに入国管理局の方が水際で防いだにしても、国内においてそういう抜け穴があれば、何とか入ってくれば雇ってあげますよというふうなところがあれば、やっぱり何とか口実を設けて入ってくるのではないかと思いますので、それについての罰則をつくることは労働省としてどのようにお考えでございますか。
  308. 中村太郎

    国務大臣中村太郎君) 実はそのことも一つのテーマとして研究会の方で御検討をいただきたいと思っておるわけでございます。その検討結果を踏まえながら、先ほどもお答えしたんですけれども関係省庁で十分協議をしてみたいと考えております。
  309. 関嘉彦

    ○関嘉彦君 最後に、労働基準法の改正に伴いまして四十時間制に向かって第一歩を踏み出した。もう遅かったというふうな気がいたしますけれども、改正されたことは結構なことだと思いますが、中小企業、殊に零細企業、これは法律をつくっただけで果たして実際にそれが励行できるかどうか。やはり労働時間を短縮すれば人件費がどうしても上がっていかざるを得ない。ただでさえ苦しい中小企業の場合には、もしそのためにその企業が破産してしまうというふうなことになれば、これはたらいの水を流すと同時に赤ん坊を流してしまうのと同じになってしまいますので、啓蒙指導、それから助言、それから環境整備、銀行なんかの週休二日制なんかを実施していく、そういうことはもちろん必要ですけれども、それだけで十分だというふうにお考えでしょうか。
  310. 野見山眞之

    説明員野見山眞之君) 中小企業における労働時間短縮の問題についていろいろ困難な事情にあることは私ども承知いたしておりますし、そのために段階的に週四十時間労働制に向けて努力をしていただくということを基本にしているわけでございますが、その際、私どもといたしまして中小企業における経営が難しいという理由でこれを財政的な面から云々するということは、これは労働基準を守っていただくという本旨からいっていかがかというふうに考えておりますので、やはり私どもとしては必要な情報の提供、あるいは中小企業の方々が集団でいろいろな会議あるいは研究等をやる場合に必要な場所の提供とかあるいは資料の提供というようなことを通じまして、できるだけ時間短縮に容易に取り組めるような援助等を中心に進めてまいりたいというふうに思っております。
  311. 関嘉彦

    ○関嘉彦君 私もできるだけその方法をとるべきだと思いますけれども、あと三年ですか猶予期間はありますけれども、そのときになってもなかなか実行できない企業なんかも出てくるんじゃないか。やはりあらかじめ何かの対策を講じておく必要があるんじゃないか。  実は我が党でもいろんな方法を検討しているんですけれども、やっぱりそれぞれに欠点があって、例えばその助成金の方法であるとか減税の方法であるとか、減税にしましてもどういう方法で時短減税をやるかというふうなのをいろいろ研究しているんですけれども、なかなか難しい問題があって結論得ていないんですけれども、やはりあらかじめ研究しておられることが必要ではないかというふうに考えております。そのことをお願いいたします。  余り大して時間短縮になりませんでしたけれども、これで私の質問を終わりたいと思います。
  312. 穐山篤

    委員長穐山篤君) 他に御発言もないようでありますので、労働省決算についての審査はこの程度といたします。  本日はこれにて散会いたします。    午後四時五十七分散会      —————・—————