○田
英夫君 この問題は、先ほどから私の
意見をむしろ申し上げたわけで、
政府のおとりになっている措置に対しては私は納得できないということを繰り返して申し上げたいと思います。
時間がありませんので、
宇野大臣にはきょう初めて御質問をするわけで、私も、多分福田
外務大臣かと思いますが、佐藤内閣当時から外務
委員をやらせていただいておりますが、参議院の
外務委員会がこうやって座って
質疑をする、議論をするというのもかなり古い歴史があります。それも、つまり
外交権というものが行
政府にあることは憲法ではっきりしているわけですから、
日本の
外交が誤りなきようにということを期するために、
国民の代表である外務
委員が衆参でいろいろ
意見を言う、こういう中で初めて本当に正しい
方向に進むんじゃないか、そんなことを思うわけであります。
したがって、
委員長にもお願いしたいことでありますが、行
政府の方々がおられて、それに対して、きょうは条約の
審議ですけれども、
委員が質問をする、行
政府のお
考えを述べられるというやりとりが
日本の国会では通常の形になっておりますけれども、少なくとも参議院の
外務委員会はもっと
意見を交換する。ぜひお願いしたいことは、
外交権を持っておられる行
政府の
外交の責任者である
外務大臣は、こういう機会に、むしろ唯一の
意見を言う場ですね、野党にとって、こういうところで
意見を吸い上げていただきたい。そういうことで、もし仮に
政府・与党の進めていらっしゃる
方向が誤ったものであるとするならば、それに修正を加えていただきたい、そういう場を、しかもいきり立った議論ではなくて、座った姿勢で語り合うということで、そういうことを先輩の皆さんが
考えられてこういうシステムをつくられたんだと私は理解しているわけです。ぜひひとつ新
外務大臣にこのことを御理解いただきたいと思います。
その
意味で、来週は
外務大臣もフィリピンへおいでになるということでありますので、私も十一月半ばに
日本・フィリピン友好議員連盟の
代表団の一人として訪比いたしましたので、広中
委員もそのメンバーのお一人でしたけれども、そのときの体験を若干お話をして、ぜひ参考にしていただきたいというふうに思うわけです。
それは、超党派の
代表団でありましたから、もちろん
考え方にいろいろ違いがあるわけですが、しかし
一つの友好という目的のために参りました。私はその
代表団の日程とやや外れて、深夜や早朝を利用していろいろ各方面の人にもお会いをしてきたわけであります。そんな中で感じたことを申し上げておきたいんです。
一つは
日本からの
経済協力です。このことは今回も恐らくいろいろな機会で話し合われると思いますし、大切な問題だと思います。しかし、例えば我々
代表団とフィリピンの新聞記者との記者会見がありました、
日本の記者もおられましたけれども。ところがそこで質問として出てくるのは、
日本からの
経済協力の問題はついに一時間ほどの記者会見の中でゼロです。質問が
一つも出ないんですよ。これは角谷大使以下大使館員の皆さんもおられましたからよく御存じのはずです。
それから上院議員との懇談会がありました。これは二時間ほど我々と、二十四人の上院議員のうちの半分ぐらいが出てきておられた。野党であるエンリレさんもおられたわけですが、そこで出てきたのは、八百二億の円借款ということを
日本側からも団長である小坂善太郎先生から説明をしたんですけれども、これについてはほとんど言及がありません、向こうの上院議員からは。ある人は、
経済協力ももちろんありがたいことだけれども、むしろ教育とか文化とか、そうした問題についてもっと
日本の協力が欲しい、こういう発言があり、また、じゃぱゆきさんの問題について触れられた婦人議員もおられました。あるいは、非常に
日本に詳しい人ですが、あのアキノさんの弟ブッツ・アキノ上院議員は、青函連絡船が今度廃止されるそうだけれども、そうした船をひとつフィリピンに譲ってもらえないかというような、そういう
意見も出されておりまして、
日本からのいわゆるODAの問題については全く触れられない。
しかも、その懇談会の議長役をしておられたのはサロンガ上院議長でありまして、言うまでもなくマルコス疑惑の
調査の
委員長であった方ですね。
こういう雰囲気というものをぜひひとつ頭の隅に入れていっていただいた方がいいのではないか。つい
日本からは
経済協力をややもすると恩に着せるような形で言うおそれがあるのではないかと思います。それに対するフィリピン側の受け取り方は今申し上げたような空気であるということをぜひ御理解いただきたい。
聞くところによりますと、百四十億の日比友好道路の援助を用意されているということも聞きますけれども、これももちろん向こうにとってはありがたいことと思いますが、果たして民衆の側から見れば何が一番緊急かということをきっと言いたいのだろうと思います。
それでは一体フィリピンの側にとって何が一番今大きな問題なのかといいますと、記者会見で驚きましたことには、若い女性の記者が多いんですけれども、その若い女性の記者の口から米軍基地の問題について矢継ぎ早に我々に質問が浴びせられたわけです。直接
関係ないようですけれども、まず、あった方がいいか、廃止した方がいいか、
意見を聞きたい、こう言うわけです。これに対しては当然小坂団長から、それはフィリピンの皆さんがお決めになることだと思いますという答弁をされたところが、それでは納得しませんで、こういうことを言うんですね。
もしクラーク、スービック米軍基地が廃止されるということになれば、
アメリカの
アジア戦略の上で重要な空白ができるでしょう、そうなったら
アメリカは放置しないはずだ、必ず
日本に肩がわりを求めるんじゃないでしょうか、それは
日本の軍国主義化につながるんじゃありませんか、したがってあなた方に無
関係ではないと思いますと、若い女性の記者がそういう言い方で質問をしました。これに対して
日本側から、フィリピンの皆さんはそこに空白をつくるような選択をなさらないのではないでしょうかという答弁を団長がされましたところが、それは存続しろということですか、こういう詰め方をします。もちろんその質問をした記者は、そういう質問の空気からして、廃止した方がいいと
考えている新聞の記者だと思います。そういう
意見の新聞が多数あることもまた事実なんですね、左の側の新聞といいますか・
もう
一つ申し上げておきたいことは、今アキノ政権は左右の板挟みといいますか、そういう中で大変苦しい立場にあることは御存じのとおりでありますが、ややもすると
日本では、左イコール新人民軍イコール悪、右の旧マルコスグループも困る、こういう判断をしがちでありますけれども、左と一括して言っていいかどうかの問題ですね。サロンガさんもある
意味では左かもしれません。やめられたアロヨ官房長官もそういう攻撃を受けてやめざるを得なくなったことも事実であります。
私が会いましたのはロドルフォ・サラスという、文字どおりこれは軍によって逮捕されて今獄中におりました。その獄中を訪ねてみたわけです。独房の中で彼と二人で会ったわけですが、彼は実にアキノ批判もいたしますけれども、同時に、自分
たちも停戦交渉の一方の責任者だったわけです、左側の。この人が停戦交渉のさなかに軍に逮捕されるというまことにおかしなことが起こっているわけです。自分
たちも停戦を求めていたんだ、にもかかわらず、自分
たちも米軍基地即時撤去というようなことを要求した、しかしアキノ政権側も自分
たちに対して即時投降ということを求めた、
双方が極端な
意見をぶつけ合ったんじゃないか、もっと農地の改革とか
経済の改革とか、民衆の生活にとってプラスになることを徐々にやるような
提案をし合ったならば話し合いはうまくいったかもしれない、こういうことを獄中で私に語ってくれたわけです。
こういうような事情で、時間が来てしまいましたけれども、今のフィリピンの状態というのは、必ずしも残念ながら
日本のマスコミの紙面にあらわれているだけの空気でもないということをぜひ御配慮をいただきたい。これは出先の大使館で十分につかんでいらっしゃることと思いますから、外務省は御存じでしょうけれども、ある
意味では外務省が接触し得ない部分の声も若干は聞いてきたつもりでありますので、この機会に申し上げて、
大臣のフィリピン訪問の
一つの参考にしていただければ幸いであります。
終わります。