運営者
Bitlet
姉妹サービス
kokalog - 国会
yonalog - 47都道府県議会
nisalog - 東京23区議会
serelog - 政令指定都市議会
hokkaidolog - 北海道内市区町村議会
aomorilog - 青森県内市区町村議会
iwatelog - 岩手県内市区町村議会
miyagilog - 宮城県内市区町村議会
akitalog - 秋田県内市区町村議会
yamagatalog - 山形県内市区町村議会
fukushimalog - 福島県内市区町村議会
ibarakilog - 茨城県内市区町村議会
tochigilog - 栃木県内市区町村議会
gunmalog - 群馬県内市区町村議会
saitamalog - 埼玉県内市区町村議会
chibalog - 千葉県内市区町村議会
tokyolog - 東京都内市区町村議会
kanagawalog - 神奈川県内市区町村議会
nigatalog - 新潟県内市区町村議会
toyamalog - 富山県内市区町村議会
ishikawalog - 石川県内市区町村議会
fukuilog - 福井県内市区町村議会
yamanashilog - 山梨県内市区町村議会
naganolog - 長野県内市区町村議会
gifulog - 岐阜県内市区町村議会
sizuokalog - 静岡県内市区町村議会
aichilog - 愛知県内市区町村議会
mielog - 三重県内市区町村議会
shigalog - 滋賀県内市区町村議会
kyotolog - 京都府内市区町村議会
osakalog - 大阪府内市区町村議会
hyogolog - 兵庫県内市区町村議会
naralog - 奈良県内市区町村議会
wakayamalog - 和歌山県内市区町村議会
tottorilog - 鳥取県内市区町村議会
shimanelog - 島根県内市区町村議会
okayamalog - 岡山県内市区町村議会
hiroshimalog - 広島県内市区町村議会
yamaguchilog - 山口県内市区町村議会
tokushimalog - 徳島県内市区町村議会
kagawalog - 香川県内市区町村議会
ehimelog - 愛媛県内市区町村議会
kochilog - 高知県内市区町村議会
fukuokalog - 福岡県内市区町村議会
sagalog - 佐賀県内市区町村議会
nagasakilog - 長崎県内市区町村議会
kumamotolog - 熊本県内市区町村議会
oitalog - 大分県内市区町村議会
miyazakilog - 宮崎県内市区町村議会
kagoshimalog - 鹿児島県内市区町村議会
okinawalog - 沖縄県内市区町村議会
使い方
FAQ
このサイトについて
|
login
×
kokalog - 国会議事録検索
1987-12-15 第111回国会 参議院 外交・総合安全保障に関する調査会 閉会後第1号
公式Web版
会議録情報
0
昭和六十二年十二月十五日(火曜日) 午後一時五分開会 ――
―――――――――――
出席者
は左のとおり。 会 長
加藤
武徳
君 理 事 坂元 親男君 堀江 正夫君 最上 進君
志苫
裕君 和田
教美
君
上田耕一郎
君 関 嘉彦君 委 員 石井 一二君 植木
光教
君 大木 浩君
鈴木
貞敏君
中西
一郎
君 永野 茂門君 林 健太郎君 真鍋 賢二君 松浦 孝治君 山内
一郎
君 矢田部 理君 山口 哲夫君
中西
珠子君 田 英夫君 青島 幸男君
事務局側
第一
特別調査室
長
荻本
雄三君
説明員
防衛庁長官官房
防衛審議官
村田 直昭君
防衛庁防衛局調
査第二課長
伊藤 康成君
外務省国際連合
局長
遠藤
實君
外務省情報調査
局安全保障政策
室長 森本 敏君
参考人
国際連合事務次
長
明石
康君 ――
―――――――――――
本日の
会議
に付した案件 ○
外交
・
総合安全保障
に関する
調査
(
国際情勢
の
認識
に関する件) ――
―――――――――――
加藤武徳
1
○
会長
(
加藤武徳
君) ただいまから
外交
・
総合安全保障
に関する
調査会
を開会いたします。
外交
・
総合安全保障
に関する
調査
のうち、
国際情勢
の
認識
に関する件を
議題
とし、
INF条約
と
我が国
の
安全保障
について
参考人
から
意見
を聴取いたし、
政府
から
説明
を聴取いたしたいと存じます。 本日は、
参考人
として
国際連合事務次長明石康
君に御
出席
をいただいております。 この際、
明石参考人
に一言ごあいさつを申し上げます。 本日は、御多用中のところを本
調査会
に御
出席
をいただきまして、まことにありがとうございます。
INF条約
と
我が国
の
安全保障
について忌憚のない御
意見
を拝聴し、今後の
調査
の
参考
にいたしたいと存じます。 それでは、本日の
議事
の進め方といたしまして、まず
明石参考人
から二十分
程度
御
意見
をお述べいただき、次に
外務省
から三十分
程度
、
防衛庁
から二十分
程度
それぞれ
説明
を聴取いたし、その後、
委員
の質疑にお答えいただく
方法
で進めたいと存じますので、何とぞよろしく
お願い
をいたします。 まず初めに、
明石参考人
に
お願い
をいたします。
明石康
2
○
参考人
(
明石康
君) ただいま御紹介にあずかりました
明石
でございます。 このたびはこういう形でお招きいただきまして大変に光栄に存じております。 私は
国連本部
におりまして、
世界各国
の
議員団
が次から次と超党派の形で
国連
に参りまして、そのような
人たち
と会う機会も多々ございますけれども、そういう形で
各国
の
国会
の方々とお会いするということについて、私は非常に重要なことではないかと思っております。 その
一つ
の理由としましては、
政府
の
関係者
が鋭意
国際条約
ないしは
協定
を結ぶわけでございますけれども、そういうふうにして
署名
された
条約
ないしは
協定
を批准するのは
各国
の
国会
の
義務
でございます。それから第二には、
国際協力
、
技術協力
ということについても、
各国
が
外交政策
の重要な一端として
取り決め
を結ぶわけでございますけれども、そういうことについて
予算措置
をするのは
各国
の
国会
の
義務
でございます。それから第三には、
各国
の
当事者
というのは目前の問題ないしは短期的な問題にどうしても忙殺されます。そういうふうな
意味
で、中期的、長期的な
観点
からその国の
外交政策
、
国際政治
全体の問題について考え、いろいろ提案するという
役割
は
各国
の
国会議員
の
役割
ではないかというふうに考えております。 そういう
三つ
の点で、我々
国連
の
当事者
としましては、
各国
の
国会議員
の
皆様方
との
意見
の
交換
というものについて非常に
重要性
を付与しております。 きょうの私の話は大体
三つ
に分けてお話しいたしたいと思っております。 第一点は、ついこの間
署名
されました
米ソ
の
中距離核戦力
、いわゆる
INF
の
取り決め
についてでございます。それから第二には、最近終わりました第四十二回
国連総会
におきます
軍縮討議
がどういうものであったかと、その特徴の
幾つ
かについて触れさせていただきたいと思います。第三には、来年の春、五月末から六月に予定されております第三回
国連軍縮特別総会
というものについて
見通し
を述べさせていただいて、私の話の締めくくりにさせていただきたいというふうに考えております。 第一には、
米ソ
の
中距離核戦力
、
INF
の
取り決め
てございますけれども、一九八五年三月から二年
半余り
の
交渉
を経て、本年十二月八日、
米ソ両国
の首脳によって
署名
されたこの
INF取り決め
は、射程五百キロから五千五百キロの
両国陸上配備
の
核戦力
の
廃棄
を内容としております。すなわちこれまでの
軍備管理
に関する
国際条約
、
国際協定
は数あまたございますけれども、実際の
核戦力
の
廃棄
を意図しておるという点において、極めて歴史的な
意義
を有していると言えると思います。この
合意
は、
核兵器
不
拡散条約
、いわゆる
NPT条約
の第六条を引くまでもなく、
国連
の場を
中心
に
核兵器国
に対し
核軍縮実現
を呼びかけてきた
国際社会
にとっても大いに歓迎すべき出来事であります。
廃棄
されます
核兵器
の実際の数は、現在存在する
核兵器総数
の一〇%にも満たないものではありますが、その及ぼす政治的、心理的な
意義
は極めて大きいものであることは否定できないと思います。
本件取り決め
において特に注目すべき点は、
検証面
で新しい
進展
を見せていることでございます。 今時
取り決め
によって
米ソ両国
は、
条約
の発効後、
該当兵器
の位置とか
兵器生産施設等
について詳細な
情報交換
を行い、三年後の
完全廃棄
、さらにその後の十年間にわたって
現地査察
を行うことに同意しております。また、必要に応じて短期間に
相手側
の
施設
を何らの障害もなく
チャレンジ査察
という形で
現地査察
を行い、また
相手側
の国家的な
検証手段
、いわゆる
スパイ衛星
ないしは
査察衛星
による
査察
を妨害しないという点にも
合意
がなされております。これはこれまでタブー視されてきた軍事的に機微な
情報
を公開すること、それをまた
現地査察
によって確認するという道を開いた点において極めて画期的な
成果
であります。これらの
原則
の
受け入れ
が将来例えば
化学兵器
の撤廃というほかの
軍縮交渉
にも適用されるということになりますれば、
検証
問題の解決を促進し、
軍縮条約
の
権威
の維持と
信頼醸成
の
見地
からも極めて有
意義
であると申せると思います。
軍縮
を行うことによってかえって安全が損なわれるというようなことがあっては本末転倒となります。
INF取り決め
の
対象
は
米ソ両国核兵器
全体の数%にしか相当しませんが、たとえこのようなわずかな量の
兵器
の
削減
でありましても、これによって
相互
の
均衡
が崩れたり安全が損なわれたりするということが予見されたならば、この
取り決め
は成立しなかったはずでございます。 今回の
米ソ
・サミット及び
INF取り決め署名
によって得られた
両国
間の厳格な
検証
への
合意
に基づいて
相互
の安定と
信頼
を維持しながら、
軍備
の水準を下げていくということが確保される
見通し
がつきましたならば、対
弾道弾ミサイル制限条約
、いわゆる
ABM条約
の取り扱いをめぐって紆余曲折がこれからもあるとしても、
戦略核
の五〇%
削減
ということも、明年前半には
現実
のものになる
可能性
がこれで生まれてきたというふうに考えてよろしいかと思います。
国連
としましては、
INF合意
が
実効性
のある
戦略核
五〇%
削減
への弾みを与え、また今回の詳細な
検証
への
合意
が他の
多国間交渉
へ好
影響
を与えるということを期待したいと思います。特に今回
合意
された
検証条項
は、将来の
軍縮協定
を締結する上でのかぎないしは前提ともなり得べきものだと思います。 それから、第四十二回
国連総会
第一
委員会
のことしにおける
動き
について触れさせていただきたいと思います。
国連加盟国
が
軍縮
問題を
審議
する
中心
的な場所であります
国連総会
第一
委員会
においては、ことしも十月から十一月にかけて
軍縮
に関するほとんどあらゆる問題が
検討
され、六十三本の
決議
が採択されました。今
会期
におきましては、
会期直前
の九月、
INF廃棄
に関して
米ソ
が
原則
的に
合意
をなし遂げたということを背景としまして、そういう好ましい環境のもとで開催されたこともございまして、政治的な
論争
が回避されまして、同一
事項
を取り扱った
決議案
の一本化ということが行われまして、例えば採択された
決議
の
総数
は、昨年の四十七本に比べまして、ことしは四十三本と四本城でございました。 それから数多くの
決議案
が無
投票
で、いわゆる
コンセンサス
で採択されたということも顕著な点でございました。無
投票
で採択された
決議
の数は二十二本から二十五本にふえております。 この
関連
で、一方においては
検証
とか
遵守
、
化学兵器
を扱った
決議
のように、
東側
、
西側
間の
歩み寄り
が非常に見られました。そういう
歩み寄り
の面が見られた反面では、アジア、アフリカ、ラテンアメリカの非
同盟諸国
は多くの
軍縮分野
での
即時交渉
を求めるなど、今までの
立場
を維持し、また
東側
、
西側
が支持しております第一
委員会
の
合理化決議案
というものに約二十カ国の非
同盟諸国
が棄権するなど、
米ソ
ないしは東西両
陣営主導
型の
動き
に非
同盟
が反発するという
動き
も出てきております。アメリカは
核実験全面停止
、
宇宙軍備競争防止
、
軍縮
と
開発
との
関係
などの
分野
におきましては、
我が国
を含む
西側諸国
初め、多くの
国々
が賛成しても一国だけ独自の
立場
を貫くという
姿勢
を
幾つ
かの点で見せたことも注目されました。 新しい
傾向
としましては、従来のように核の
軍縮
を
優先事項
として維持しながらも、
非核分野
の
重要性
に対する
認識
が深まったことが挙げられると思います。その例としましては、
通常兵器
の
軍縮措置
を解明しようという
動き
、それから
信頼醸成措置
のガイドラインを
検討
しなければいけないという
動き
がございまして、いずれも明年五月の
国連軍縮委員会
の場でさらに
検討
されることになっております。
軍縮
は多くの場合、
国際緊張
と不信の結果でありまして、その原因であるとは必ずしも言えないと思います。
軍縮措置
に
合意
するためには
検証措置
とその
遵守
ということが不可欠でありまして、その点についての
共通
の
認識
が広まりつつあるということは、
一つ
の
現実主義
の芽生えとして歓迎してよい点ではないかと思います。この二つの
分野
の
決議案
はいずれも無
投票
で採択されてきておりまして、カナダが
中心
となって推進しております
検証
につきましては、先ほど述べました
国連軍縮委員会
での
審議
を経て第三回の
軍縮特別総会
でも取り上げる予定になっております。
軍縮分野
におきます国際的な
意見表明
の場ともいうべき第一
委員会
は
軍縮
の
交渉機関
ではございません。しかしながら、単なる
論争
の場ではなく、
作業
の効率を高め、実現可能な
措置
についての
世界
的な
共通
の
認識
を今後とも広げていくことが第一
委員会
に関しては期待されておると思います。 それから、来年五月から六月にかけて予定されております第三回の
国連軍縮特別総会
について触れたいと思います。 本年の
国連総会
は、一九七八年の第一回
総会
、それから一九八二年の第二回
特別総会
に引き続く第三回の
軍縮特別総会
の開催を、明年五月三十一日より六月二十五日まで四週間にわたって開催することを決定いたしました。
米ソ
間の
INF取り決め
のような二
国間交渉
の
成功
は、
国連
の場における
多国間協議
の
交渉
に好ましい
影響
をもたらすことは言うまでもございません。しかしながら、
現実
問題としましてこれが直ちに
多国
間の
交渉
の
成功
を保証するものだとは言えないのではないかと思います。言いかえますと、二
国間交渉
の
進展
は
多国間交渉
を
成功
させる
必要条件
ではありましても、十分な
条件
とは言えないとも思われます。歴史的に見ましても、二国間の
交渉
が
進展
しているとき、その
交渉
の
当事国
はその
成果
を守り、
多国間機関
の関与を好まないという
傾向
を示すことがございます。
INF交渉
が、
我が国
も
メンバー
になっております
多国間軍縮交渉
の
機関
でございます
ジュネーブ
の
軍縮会議
における
核軍縮
問題の
交渉開始
につながっていくかは必ずしも判然といたしません。同時に、
米ソ
間の
核実験
に関します
交渉開始
が先月始まったわけでございますけれども、これが
国連
の
軍縮会議
での
核実験禁止
問題の
実質的作業開始
を
意味
しないということにも留意する必要があるかと思います。
米ソ両国
のこの問題への対応を別にしまして、
核実験禁止
に関しましては非
同盟諸国
は独自の
アプローチ
を提案しております。
国連軍縮特別総会
は、先回の第二回の
特別総会
におきましては
我が国
の
鈴木総理
を含めます十八名の元首、
総理クラス
、四十四名の
外務大臣クラス
の参加を含めまして、
軍縮
問題を極めて高い
レベル
から集中的に
検討
する極めて重要な
会議
でございました。しかし、
特別総会
はあくまで
軍縮協議機関
でございまして
交渉機関
とは言えないものであります。したがって、特定の
軍縮措置
についての具体的な
合意
が
特別総会
において成立するといったような期待は慎むべきではないかと思います。これまでの
軍縮
が停滞しておる過去の
責任
を
お互い
に問うということではなくて、
国連
を
中心
として将来、
軍縮
の点でいかなる行動がとれるかということについて、未来的な
見地
から取り組むべき場ではないかと考えます。
一つ
例えてみますと、核不
拡散条約
、
生物兵器禁止条約
、
化学兵器使用禁止
に関する一九二五年の
議定書
など既に存在します
条約
の
遵守
と
権威
を高めるといったようなこと、ないしは
軍縮会議
において鋭意行われております
化学兵器交渉
並びに
戦略核削減
、
核実験等
、
米ソ
間の
交渉
を促進するということを横から進めるという点、ないしは
検証
とか
通常兵器
の
軍縮
、客観的な
情報公開
、ないしは
地域軍縮
といったような比較的新しい
分野
での
原則
、
アプローチ
、これからの
国連
の
課題
に関して青写真をつくり
共通
の理解を得るようにする、そういうグローバルな場としての
国連軍縮特別総会
の
目的
を達成することが非常に大事ではないかと考えております。 もう
一つ
、
軍縮特別総会
におきましては
軍縮機構
の見直しも焦点となるかと思います。
ジュネーブ
にございます四十カ国の
軍縮会議
、この中では
我が国
も非常に有力な
メンバー
の
一つ
でございますけれども、現在の四十カ国の
構成国
を若干拡大することの可否ということ、それから
コンセンサス
が
原則
になっておりますけれども、それと
作業改善
の問題、
合理化
の問題といったような手続問題についても
軍縮特別総会
において
検討
が行われるのではないかと思います。 それから、
国連総会
、その第一
委員会
の
補助機関
であります
国連軍縮委員会
につきましては、やや総花的に
議事
を
審議
する
傾向
がございますけれども、
議題
をもっと絞って
成果
を上げる
方向
で
努力
するというふうな提案もあるのではないかと思いますし、それから
著名人
で構成されております
軍縮諮問委員会
、これは我が方からは前
ジュネーブ
の
軍縮大使
であります
今井大使
が参加されておりますけれども、この
軍縮諮問委員会
についても、単に
軍縮研究
のみならず
国連
における
軍縮
問題全体に取り組む、また、一般的な形でのアドバイスを
事務総長
に提出するという新しい任務を付与すべきことが議論されるのではないかと思います。 それから、機構問題の
最後
としましては、
軍縮分野
における
国連
の
役割
との
関連
で、私の担当しております
国連軍縮局
の機能の
強化
といったような点も
検討
の
対象
となろうかと思っております。
最後
に、まとめとしまして、
軍縮交渉
におきます二国間の
アプローチ
と
多国
間の
アプローチ
というものは、
お互い
に排他的なものではなくて
相互
補完的なものだと思います。どちらが欠けても国際平和と
軍縮
の達成は不可能であると思います。
核軍縮
は、
米ソ
を初めとする
核兵器国
、
軍事大国
の
努力
にまたなければなりませんし、
多国
間の
機関
はこれらの
国々
の
努力
を奨励し要請するという
立場
にございます。また
他方
、
拡散防止条約
、
NPT
を柱とするそういう核不
拡散体制
の
強化
とか
化学兵器
の
全面停止
とか、
地域軍縮
を推進するとか、こういう問題は明らかに
世界
のほとんどの国を含む
多国
間の
アプローチ
がどうしても必要とされる
分野
でございます。そういう
意味
で、
ジュネーブ
の
軍縮会議
や
国連自体
の
会議
をする余地は非常に大きいものがあると思われます。
核実験禁止
に関しましても、地震学的な
検証
の
方法
の
開発
とデータの
世界的伝達
及びすべての
核実験停止
の確保という
見地
からも、二国間の
交渉
と並行しまして
多国
間の
努力
が必要とされる
分野
だろうと存じます。そのためにも、
日本
を含む
地震学専門家委員会
も既に十一年間
ジュネーブ
で
活動
をしております。
日本
としましては、
軍縮会議
、
国連
の場で、
核実験禁止
、
化学兵器禁止
に活発な
活動
を続けてきておりますが、今後さらに
西側
の
一員
、
米国
の
同盟国
という
立場
に立ちながらも、唯一の
被爆国
としての、また
平和憲法
を持つ国として、その持てる
経済力
、
政治的安定性
、進んだ
科学技術
というものを利用し、
西側
内の
立場
の調整、
検証
問題への寄与、
多国
間の
交渉
において今後とも積極的に
貢献
されることを期待したいと存じます。
最後
に、
軍縮
というものは国の
安全保障
と表裏一体をなすものでございます。したがって、非常に複雑なものであり、大きな困難を伴う問題でございます。
均衡
を保ちつつ
検証措置
を伴った実現可能かつ具体的な
軍縮措置
を粘り強く探求する
努力
を通じて、
軍備
に依存することによる
安全保障
を徐々に
軍縮
による
安全保障
によって置きかえていく、そのことは第一回
軍縮特別総会
の
最終宣言
にもうたってございます。現在の平和が不十分な形であり、戦略的な
均衡
によって保たれておること。しかし、それをより
軍備
の低い
段階
の戦略的平等に持っていくということが
目的
である点においては、
西側諸国
も
社会主義圏
も一致しておるわけでございます。
INF
に関する
米ソ
の
共同声明
も「戦略的安定」という言葉に何度か触れております。
検証
につきましては、今までのような
原則論
ではなくて、今後は具体的にいかなる
義務
を
お互い
に
受け入れ
得るか、例えば
機密情報
の提供は可能であろうかといったような問題。例えば
化学兵器
に関しましては、
化学工業
の
企業秘密
の問題なんかが具体的な問題となってくると思います。
ゴルバチョフソ連書記長
が、
ソ連
も
透明度
を大きくするという点から
西側
が驚くような
検証措置
を提案するようになってきております。そういう
意味
で、単なるスローガンではない
軍縮
へのきめ細かい
現実
的な
アプローチ
、それに伴う政治的、財政的その他の負担の
受け入れ
ということが今後の
各国
の
課題
になってきております。この
関連
で、
国連
の将来持つ
役割
と、それからその中で
日本
の果たし得る大きな
貢献
というものも真剣に
検討
されるべき
段階
に入ってきているというふうに考えられると思います。 どうも長くなりまして失礼いたしました。
加藤武徳
3
○
会長
(
加藤武徳
君) ありがとうございました。 それでは次に、
外務省
に
お願い
をいたします。
遠藤国際連合局長
。
遠藤實
4
○
説明員
(
遠藤實
君)
外務省国連局長
の
遠藤
でございます。 本日は、
INF条約
の
交渉経緯
、
署名
の
意義
及び
我が国
の
安全保障
についての諸問題ということで御
説明
を申し上げたいと思います。 大別いたしまして、第一に
INF交渉
の
経緯
と
意義
、次にグローバルな
観点
から見ました
INF交渉
と
我が国
の
安全保障
という順序で御
説明
を申し上げたいと思います。 御案内のように、十二月八日、ワシントンにおきまして、
レーガン大統領
と
ゴルバチョフ書記長
との間で
INF
の
条約
が
署名
されました。これによりまして一九八一年十一月三十日から
ジュネーブ
において開始され、途中
ソ連
による
交渉
の離脱といった期間がございましたけれども、これを含めまして約六年間にわたった長期間の
中距離核戦力
に関する
米ソ交渉
が妥結したわけでございます。 ここで、
本題
に入ります前に若干前置きといたしまして、
我が国
にとって
米ソ交渉
の
意味
、それから
軍備管理
・
軍縮問題一般
に対する
我が国
の
基本姿勢
について一言触れさせていただきたいと思います。
我が国
といたしましては、
米ソ交渉
の帰趨が
我が国
の
安全保障
にも重大な
影響
を及ぼすということから、これを重視いたしまして、
INF交渉
の行方に重大な関心を持ってきたわけでございます。 そもそも
軍備管理
・
軍縮
は、
軍備
を可能な限り低い
レベル
で
均衡
させるということによりまして、
関係国
の
安全保障
を高めるべきものでありまして、また当然、その
合意
につきまして効果的な
検証措置
が確保されていることが重要であるというのが
我が国
の
基本的認識
であります。
米国
もかかる
方向
で
対ソ交渉
を進めるべく
努力
してきていると理解しておりまして、
我が国
は
西側
の
一員
として、
米国
のかかる
努力
を支援してきたところであります。
現実
に
世界
の
核兵器
の大宗を保有いたします
米ソ
間の
核軍縮交渉
が、
軍縮
なかんずく
核軍縮
の促進にとりまして重大な
意味
を持つことは当然でございまして、その
意味
で
我が国
といたしましても、
米ソ両国
が特別な
責任
を有するということを強調してきたところであります。
他方
、
軍備管理
・
軍縮
は、
米ソ両国
のみに任せておいてもよいというものではありませんで、
多国
間における
軍縮
への
努力
が重要なことも言をまたないところであります。 先ほどの
明石国連事務次長
の話もございましたけれども、
我が国
といたしましては、
国連
、
ジュネーブ軍縮会議等
の場を通じまして、国際的な
軍縮努力
に積極的に参加するということを
基本政策
としてきております。このような
多国
間の
軍縮努力
においても、さきに述べました
軍縮
に対する
基本姿勢
は同じでありまして、単なる宣伝的な行為ではなく、実効的かつ具体的な
措置
を着実にとっていくべきであると訴えてきたところであります。このような
観点
から、例えば
検証措置等
につきまして、
地震探知
についての
我が国
の
貢献等
は特筆さるべきではないかと考えております。
我が国
といたしましては、今後ともかかる
努力
を続けていく所存でございます。 そこで、
本題
に戻らせていただきますと、まず
交渉妥結
に至る
経緯
でございますが、一九七〇年代の半ばに至りまして、
ソ連
は
戦略核兵器
の
分野
、特に
大陸間弾道弾
につきまして
米国
に追いつき、いわゆる
戦略核
の
均衡
、パリティに達したと
認識
されるに至ったということに加えまして、一九七七年からは、
飛距離
、
命中精度
、
移動性等
の面ですぐれた性能を有する三弾頭の
中距離核ミサイル
、
SS
20の
配備
を開始いたしました。 これに対しまして
欧州
の
NATO諸国
内では、この
SS
20の
配備
を契機に、それまでの
ワルシャワ条約機構軍
の
通常戦力面
での優位に加えまして、
SS
20の
戦力
が、これに対抗する
米国
の
ミサイル
がないままに増強されるということは、
米国
の
戦略兵器
を
欧州防衛
から切り離し得ると
ソ連
が信じるに至るのではないかという
懸念
が抱かれたわけであります。これがいわゆる
米欧
デカップリングの
懸念
であります。
NATO諸国
は、このような状況におきまして集中的な論議の末、一九七九年十二月、いわゆる
交渉
と
配備
という二重決定を行ったわけであります。すなわち、
ソ連
の
SS
20
配備増強
に対抗して、一九八三年末より
米国
は長距離の
INF
ミサイル
五百七十二基のヨーロッパ
配備
を
段階
的に行う、同時に
ソ連
との間で、
米ソ
長距離
INF
ミサイル
の最も低い
レベル
でのグローバルな
均衡
の達成、及び短距離
INF
ミサイル
に規制を目指すという
交渉
を行う、これがこの二重決定の内容であります。 その後、
米国
はこの
NATO
の二重決定に基づきまして
ソ連
との間で
SS
20に代表される
中距離核戦力
規制のための
交渉
を求めまして、一九八一年十一月三十日から
米ソ
INF交渉
が開始されたわけであります。 なお、
交渉開始
に先立つ八一年の十一月十九日に、
レーガン大統領
はワシントンのナショナル・プレス・クラブでの演説におきまして、
ソ連
が
SS
20等の
INF
を撤廃すれば
米国
もパーシングⅡ、地上発射巡航
ミサイル
の西欧
配備
計画を中止するという、いわゆるグローバル・ゼロ・オプション提案を行ったわけでありますが、
ソ連
側は同提案を拒否いたしました。この一九八一年十一月十九日の
レーガン大統領
提案が今次
INF条約
における
INF
グローバル全廃のそもそもの発端であるということは御案内のとおりでございます。 当時、この
レーガン大統領
提案に対しまして、
我が国
は外務大臣談話を発出いたしましてこれを歓迎いたしました。しかしながら、
米ソ交渉
が
進展
を見せないまま
ソ連
の
SS
20
配備増強
が続けられましたために、
米国
は西欧防衛のための抑止力の
信頼
性を維持
強化
するべく、さきの
NATO
二重決定に基づきまして、一九八三年末から西欧へのパージングーⅡ及び地上発射巡航
ミサイル
の
配備
に着手いたしました。
ソ連
はこれを不服として、一九八三年十一月、一方的に
交渉
を離脱し、
INF交渉
は中断いたしました。 その後、
米ソ両国
は一九八五年一月、
INF交渉
を含む新たな
軍備管理
交渉
、通常、核及び宇宙
兵器
交渉
といっておりますが、これを開始することで
合意
いたしまして、八五年の三月から
INF交渉
が再開されました。そして、紆余曲折を経まして、先般の
条約
署名
に至ったわけであります。 この間、一九八五年十一月の
ジュネーブ
での
米ソ
首脳会談におきまして、
米ソ両国
は
INF合意
に向けての
作業
をSDI、
戦略核
という他の
分野
とは切り離して促進するということで
合意
に達しまして、翌八六年十月のレイキャビックでの
米ソ
首脳会談におきまして、
両国
首脳は長射程の
INF
、すなわち
SS
20、パージングーⅡ、地上発射巡航
ミサイル
につきまして双方グローバル百弾頭、
欧州
ゼロとすることで
原則
的に
合意
したものの、
ゴルバチョフ書記長
が
INF
をSDI等の他の
分野
とリンクさせるパッケージ
合意
を会合の最終
段階
に至り主張いたしましたために、右は潜在的な
合意
にとどまったわけであります。 その後、本年二月に至りまして、
ソ連
は
INF交渉
をSDI等の他の
交渉
分野
と切り離して進めるという
立場
に戻りました。また
ソ連
は、本年七月には、
米国
が一九八一年の
INF交渉
開始以来提案し、
我が国
が一貫して主張してまいりました
INF
のグローバル全廃を
受け入れ
る旨表明いたしましたことから、
交渉
上の主要な障害が取り除かれたわけであります。 以上の
経緯
を経まして、本年九月の
米ソ
外相会談において
INF条約
締結に関する
原則
的な
合意
が成立し、その後三たびの
米ソ
外相会談と
ジュネーブ
における
交渉
によりまして、十二月八日に
INF条約
署名
の運びとなったわけであります。 次に、
INF条約
署名
の
意義
に移りたいと思います。 この
条約
は、初めて
米ソ
間の
核兵器
を
削減
するという
意味
を持つものであります。今次のご
条約
は、従来の
軍備管理
交渉
あるいは
軍縮交渉
が
核兵器
の上根を設けるといったところにせいぜいとどまったわけでございますが、今回は既存の
核兵器
を
交渉
を通じて初めて
相互
に
削減
するというものでありまして、
核軍縮
の第一歩として画期的な
意義
を有するものと考えております。 さらに、この
INF条約
におきましては、アジアも含めてグローバルな全廃を規定しているものということであります。今次の
条約
は、
交渉開始
以来、
米国
が提案し
我が国
が主張してきた、アジア部を含む
INF
のグローバルな全廃をもたらすものでありまして、
我が国
としてはかかる最終
合意
をもたらした
米国
の
交渉
努力
を高く評価するとともに、これが
西側
結束の
成果
であると考えております。 アジア部の
SS
20に関する
ソ連
の主張は、
交渉
当初は
欧州
撤去分の
SS
20をアジア部に移転する、これは八三年一月十七日のグロムイコ外相の発言でございますが、こういう
立場
であったわけでございますが、その後、アジア部の
SS
20は凍結する、これは八三年八月二十七日のアンドロポフ書記長の発言でございます。 こういう
立場
に変更されまして、さらに一九八六年のレイキャビック首脳会合以降は、
欧州
はゼロにするがアジアに百弾頭残すという
立場
に変わりまして、しかし結局、本年七月、
ゴルバチョフ書記長
がインドネシア「ムルデカ」紙とのインタビューにおいてグローバルな全廃への同意を表明したわけであります。
ソ連
が最終的にグローバルな全廃に同意するに至った背景に関しまして、
ソ連
自身は、アジア諸国民の要望にこたえるためと言っておりますが、その真意に関して種々の見解があることは御案内のとおりでございます。
ソ連
が
INF交渉
開始以来何度か
立場
を変えてきている背景といたしまして、本件
交渉開始
以来
我が国
を初めとする西欧諸国、
西側諸国
が結束いたしまして
米国
の
交渉
努力
を支持し、断固たる態度を示してきたことに負うところが大であると周時に、
ソ連
の
SS
20
配備
への対抗
措置
として、
米国
が
NATO諸国
へパーシングーⅡび地上発射巡航
ミサイル
の
配備
を行ったことも
影響
を与えたものと考えられるところでありますが、
ソ連
アジア部の
SS
20に関しては
米国
の
交渉
努力
のほかに、
我が国
が機会あるごとに
ソ連
指導部・
外交
当局に対しまして
SS
20のグローバル全廃を申し入れてきた
外交
努力
の積み上げも、
ソ連
指導部に一定の
影響
力を与えたものと考えております。 次に、この
INF条約
のさらにもう
一つ
の特徴でございますが、今回初めて本格的な
現地査察
について
合意
したという点がございます。この
条約
には本格的な
現地査察
を含む詳細な
検証
規定が初めて盛り込まれているということでございますが、これは今後、
戦略核
、
化学兵器
等の
条約
を作成する際に、
検証
に関する前例となり得るものと考えております。なお、この詳細は、
条約
の内容についての
説明
でお配りしてありますところに箇条書きで書いてあります。もし必要でございましたら後ほどさらに詳細触れたいと思います。 次に、
INF条約
の内容といたしまして、
条約
は本文が全部で十七条、
廃棄
手続に関する
議定書
、
査察
に関する
議定書
、その他了解
事項
等の
関連
文書から成るものでありまして、その概要につきましては配付されております資料にあるとおりでございます。
条約
の
対象
となる
INF
につきましては、射程五百から五千五百キロの地上発射の弾道
ミサイル
及び地上発射の巡航
ミサイル
ということであります。それから
廃棄
される
ミサイル
数、これは米側高官の記者会見によりますと、米側が八百五十九、
ソ連
が千七百五十二。 それから、
廃棄
の手順といたしましては、長射程
INF
は二
段階
に分けて三年間で
廃棄
、それから短射程の
INF
は
条約
発効後十八カ月以内に
廃棄
ということでございます。それから
廃棄
の
方法
につきましては、地上での爆破によって行われるけれども、発射による
廃棄
、展示物としての保存等も一定の
条件
のもとに認められるということでございます。 それから
検証
のシステムは、ここに項目が掲げられてありますように、非常に広範かつ詳細にわたるものであります。この点につきましてはまた御質問ございましたら御
説明
いたしたいと思います。 それから一言ちょっと、お配りいたしました資料の二ページ目にございます表で、中に黒枠で囲っておりますのが今回の
INF
撤廃
条約
の
対象
となる
ミサイル
でございます。これはごらんいただければおわかりになるかと思いますので、詳細の
説明
は省略させていただきます。 次に、グローバルな
観点
から見ました
INF条約
と
我が国
の
安全保障
につきまして御
説明
申し上げたいと思います。 まずその中で、第一に東西
関係
全体の中における
INF条約
の位置づけてあります。
INF
のグローバル全廃が
合意
されたということを弾みといたしまして、今後
米ソ
軍備管理
交渉
の他の
分野
、特に
戦略核
の五〇%
削減
についての
進展
が注目されるところでありますが、先日ワシントンで行われました
米ソ
首脳会談においては大きな
進展
は見られなかったと言えるかと思います。
戦略核
の
削減
につきましては
米ソ
とも前向きの
姿勢
を示しておりまして、首脳会談後の
米ソ
共同声明
におきましても、一九八八年前半の次回首脳会談での
署名
に間に合うよう
条約
を完成させるべく
作業
を行うよう、
ジュネーブ
の
交渉
団に指示することで
合意
したというふうに言っておりまして、次回の首脳会談までに五〇%
削減
の中身、特に
戦略核
の内訳等につきまして
交渉
の
進展
が期待されるわけでございますが、
戦略核
の問題は
米ソ
双方にとりましておのおのの
核戦力
体系の根幹をなすものでございまして、
合意
が得られるまでにはさらに紆余曲折があり得る、今後の展開については予断を許さないものがあるというふうに考えております。 また、
軍備管理
交渉
、
軍縮交渉
に不可欠の
検証
につきましても、
INF合意
での
検証措置
というのは
参考
にはなりますけれども、同時に
INF
の場合は全廃でありまして、全廃の場合と半分残る場合これは
検証
の難しさは質的に異なる、はるかに難しいという問題もございます。 なお、防御・宇宙の
分野
におきましては共同ステートメントによりますと、まず第一に、一九七二年に
署名
された形で
ABM条約
を
遵守
しつつ同
条約
で認められる研究、
開発
及び試験を必要に応じ実施する、一定の期間は同
条約
から離脱しない。それから第二点といたしまして、今の右の一定期間終了の少なくとも三年前までに戦略的安定に関する
検討
を開始する、その間に双方が他の
合意
に至らない限りその一定期間終了後双方は自由にみずからの行動を決定することができる。第三に、かかる
合意
は、戦略攻撃
兵器
に関する
条約
、
ABM条約
等と同様、法的ステータスを有するものとするという
合意
が見られております。 そこで、
INF条約
と東西
関係
でございますが、
INF条約
の
署名
それ自身はさきに述べましたような
意義
を有するものでございますが、これを東西
関係
全体の文脈の中でとらえる際には、以下の
観点
から十分な注意を払う必要があるわけでありまして、核弾頭全体からいたしますと数%と言われる今回の
INF
の全廃
条約
の
署名
をもって東西
関係
の
進展
に過大な期待を抱くということには慎重である必要があろうと考えております。 すなわち、
軍縮
は東西
関係
の重要な要素でございますけれども全部ではありません。東西
関係
はトータルな
関係
でなければならないわけでありまして、
INF条約
に関して
ソ連
側がしばしばその
立場
を変更してきたにもかかわらず、
我が国
を初めとする
西側諸国
が当初より主張してきた
INF
のグローバル全廃につき、最終的に
ソ連
との間で
合意
が得られたことは、ウィリアムズバーグ・サミットにおいて確認されたように、
西側
の安全は不可分でおるという
認識
のもとに、
西側諸国
がその結束を維持しつつ
米国
の
対ソ交渉
努力
を一貫して支持してきたこと。したがって、今後
INF条約
署名
を契機として真の東西
関係
の
進展
が実現するには、
戦略核削減
はもとより、
化学兵器
、通常
戦力
をも含めた
軍縮
問題全体についての協議の
進展
、アフガニスタン、カンボジア問題を初めとする地域問題の実質的な解決、さらには人権、二国間問題における
米ソ
間の協議の
進展
等が肝要でありまして、この過程において
西側諸国
としては、
ソ連
との対話の道を維持しつつ、
西側
の結束を維持することによりまして
米国
の
交渉
努力
を引き続き支援していくことが必要と考えております。その際、東西
関係
の将来に希望を抱く必要がありますが、真に東西
関係
が
進展
するかどうか見きわめていかなければならないという、一貫した態度を維持していくことが重要であると考えております。 次に、
INF条約
後の
西側
の
安全保障
につきまして、西欧諸国に広がっております
安全保障
上の
懸念
の問題と、それから
我が国
の
安全保障
と
INF条約
について
最後
に触れたいと思います。 まず、西欧諸国の問題でございますが、今般の
INF条約
署名
によりまして
INF
のグローバル全廃が
合意
されたということは、一九七九年の
NATO
のいわゆる二重決定に沿ったものでありまして、西欧諸国、特に
NATO諸国
としては
協定
それ自体は評価できるとしているところであります。しかしながら、そもそも通常兵力の面で
ワルシャワ条約機構軍
が
NATO
軍に対して圧倒的に優位にあった状況に加えて、
ソ連
が
SS
20を一方的に
配備
したことに
INF交渉
の発端があったということからいたしますと、
NATO諸国
としては、かかる
通常戦力面
での脅威にいかに対処していくかは引き続き重要な問題でありまして、加えて
米国
の
INF
も
欧州
から撤廃されることによって、
米国
の
欧州
における核抑止力が今後いかにして維持されていくかにつき、深刻な
懸念
が
NATO諸国
内に広がっているということが指摘されております。 以上を踏まえた
NATO諸国
の
立場
は次の諸点に集約されるかと思います。 すなわち、一、
INF
のグローバル全廃を歓迎し、これを支持する。二、今次
合意
は長期にわたる
同盟諸国
の決意と団結によりなし得たものである。三、
NATO
にとり柔軟反応戦略は不可欠であり、その維持のために通常・核両面において必要な防衛
努力
を継続する。今後、
NATO諸国
が
INF
後の西欧の
安全保障
につきいかなる対応を行っていくかについては、
西側
の
一員
としての
我が国
にとっても関心の高いところであります。
最後
に、
我が国
の
安全保障
と
INF条約
について御
説明
したいと思います。 今般の
INF条約
署名
によりまして、
ソ連
の
中距離核戦力
、特に
SS
20の
我が国
に対する脅威が取り除かれたということは、
我が国
の
安全保障
上も歓迎し得るところであります。しかし、
我が国
としては、
我が国
固有の北方領土を
ソ連
が引き続き不法に占拠しており、かつ北方領土のうち、国後、択捉、色丹島に
ソ連
が一九七八年以来地上軍を再
配備
しており、その規模も師団級であると推定されること、さらには、
我が国
周辺における極東
ソ連
軍の増強及びその
活動
の活発化には変化が見られないことから、
我が国
周辺の状況には依然として厳しいものがあると考えております。
ソ連
側は、昨年七月の
ゴルバチョフ書記長
のウラジオストク演説に見られるように、アジア・太平洋地域への関心の高まりを示してはおりますが、これまでのところ
我が国
周辺における
ソ連
側の行動には何ら変化がないということから、今後
ソ連
側が言葉ではなく具体的にどのような行動を示してくるかにつき慎重に見きわめていく考えであります。 いずれにいたしましても、今後とも
我が国
はその
安全保障
を、日米安保体制の円滑かつ効果的運用を図るとともに、自衛のために必要な限度において質の高い防衛力の整備を行い、同時に、
我が国
を取り巻く国際環境をできる限り平和で安定的なものにするための積極的な
外交
を展開することにより確保してまいりたいと存じております。 どうもありがとうございました。
加藤武徳
5
○
会長
(
加藤武徳
君) ありがとうございました。 それでは次に、
防衛庁
に
お願い
をいたします。村田
防衛審議官
。
村田直昭
6
○
説明員
(村田直昭君) 今御紹介いただきました
防衛庁
の村田でございます。 若干のお時間をいただきまして、本日の
課題
でございます
INF条約
が
我が国
及びアジアの
安全保障
に及ぼす
影響
等について御
説明
させていただきます。 まず、本件についての基本的な
認識
について申し述べます。 去る十二月九日開催されました
米ソ
首脳会談において、
レーガン大統領
と
ゴルバチョフ書記長
は、アジアを含むグローバルな
INF
ミサイル
全廃
条約
に
署名
いたしました。地上発射の
INF
ミサイル
という特定の
核兵器
に関するものとは申せ、現存の
核兵器
が撤廃されることとなり、かつ、
現地査察
を含む厳格な
検証
を行うこととされたことは画期的なものでありまして、
軍備管理
・
軍縮
の実質的な
進展
を強く期待してまいりました
我が国
としても歓迎しておるところでございます。しかし、
INF
ミサイル
が撤廃されたといたしましても、アジアにおきましても巨大な核及び通常
戦力
が存在することには変わりがなく、依然としてアジアの軍事情勢には厳しいものがあると申せます。 いずれにしましても、
我が国
の防衛力整備は、
通常兵器
による限定的かつ小規模な侵略に有効に対処し得る防衛力の保有を目標とするものでございまして、
INF
ミサイル
の撤廃によって
我が国
の防衛政策に変更を生じるといったものではないと考えております。 第二に、
SS
20の軍事的
意義
と撤廃に向けての
努力
についてでございます。 今般の
INF
ミサイル
全廃
条約
によりましてアジア地域から撤廃される核
ミサイル
は、
ソ連
の
SS
20、
SS
12等でありますが、その能力、軍事的機能等から
SS
20
ミサイル
が最も注目されてきたところでございます。極東地域への
SS
20の
配備
は、
欧州
への
配備
と相前後しまして一九七七年から開始され、その後急速に増強が重ねられまして、現在では、
ソ連
全土に
配備
されている四百五基のうち約百六十二基の
SS
20が極東
ソ連
に
配備
されておりますことは御案内のとおりでございます。
SS
20は、射程が約五千キロに及び、三弾頭のMIRVを搭載し、
命中精度
が高く、再装てんが可能ということで、移動性のある画期的な
ミサイル
でございまして、それまで極東
ソ連
に
配備
されていた旧式の
SS
4、
SS
5
ミサイル
と比較しまして格段に能力の向上が図られております。極東においては、シベリア中央部とバイカル湖周辺地域に
配備
され、
我が国
及び中国を含むアジアのほぼ全域を射程内におさめており、これらの地域に対する至短時間での攻撃能力を大幅に向上させてまいりました。 このような
SS
20の能力から見まして、
SS
20の
配備
は、その射程内に置かれた
我が国
を含む自由主義諸国内に
米国
の抑止力への
信頼
性に対する不安を醸成し、
米国
とこれら諸国との分断を図っているものであるとも見られておりました。 これに対し
米国
は、アジア地域に
SS
20に相当する核
ミサイル
を
配備
しておりません。このようなご軍事的
意義
を有する
SS
20の増強に対しまして、中国を初めアジアの
国々
は、アジアの
安全保障
に重大な
影響
を与えるものとして深い
懸念
を常々表明してまいっておりました。
我が国
としましても、
SS
20の増強を含む極東
ソ連
軍の質、量両面にわたる増強とその行動の活発化は、
我が国
に対する極東
ソ連
軍の潜在的脅威を増大させるものと
認識
しまして、
米ソ
の
INF
ミサイル
削減
交渉
に対しましては、アジアを含むグローバルな撤廃を強く要請してまいったところでございます。今般
INF
ミサイル
が撤廃されることとなりましたことは、
我が国
を含めた
米国
を初めとする
西側諸国
の一体となった
努力
の
成果
と申せると思います。 第三に、
INF
が全廃された場合のアジアの軍事情勢について申し上げます。 極東に
配備
されております百六十二基の
SS
20は、
我が国
や中国等を射程内におさめており、発射後十数分以内に
我が国
などに到達できる性能を有しておりますが、今後これが
廃棄
されるということになりますれば、このような機能を果たし得る
ソ連
の軍事能力が減少することは事実でございます。しかしながら、今般
廃棄
の
対象
となる
INF
ミサイル
は全地球上の核弾頭
総数
の数%にすぎないと言われておりまして、巨大な量の
核兵器
が依然としてアジアを含めました
世界
に存在するという冷厳な事実が変わるものではありません。 また、通常
戦力
については、従来から東西の間に大きな不
均衡
があるとの
懸念
がありますが、これに対し、
米国
を初めとする自由主義諸国は
核兵器
の抑止力を背景として対処しているところでございます。さらに、できるだけ
核兵器
に頼ることなく抑止効果を向上させるため通常
戦力
の整備に努めておりますが、この面では
軍備管理
・
軍縮
については話し合いは行われているものの、いまだ将来の
課題
にとどまっております。
他方
、アジアにおいても
ソ連
の巨大な軍事力が展開している状況に変わりはなく、また、通常
戦力
について
軍備管理
・
軍縮
の端緒も見られておらず、強大な軍事力が展開し、各地で対峙している状況にございます。 このような基本的な
認識
に立って、以下
INF
ミサイル
が全廃された場合の
影響
を踏まえて、アジアの軍事情勢についてその概観を申し述べますが、
米ソ
の
INF
ミサイル
全廃によって現在見られる軍事的対峙の状況、軍事情勢の厳しさに基本的な変化が見られることを予測するのは困難だと考えております。 第一に、
米ソ
関係
について見ますと、この地域においても
米ソ
のグローバルな軍事的対峙の一環としての対峙が存在をしております。
ソ連
は極東地域に
ソ連
全体の四分の一から三分の一に相当する軍事力を
配備
し、引き続き質、量両面にわたる増強を行っております。この地域に
配備
されている約八十五機のTU20Mバックファイア爆撃機は、地上目標や
我が国
周辺海域に対するすぐれた攻撃能力を有しておりまして、核の搭載も可能なものでございます。一方、
米国
は紛争を抑止し、
米国
及び
同盟諸国
の利益を守る政策をとってまいっており、この地域においても太平洋軍隷下の陸、海、空軍の一部を前方展開しております。
米ソ
二国間の
関係
全般においては、今般の
INF
ミサイル
全廃
条約
の締結や
戦略核兵器
削減
交渉
の
進展
等改善の兆しが見えまするものの、以上申し上げましたように、この地域においても
米ソ両国
は軍事的に厳しく対峙しておる状況にございます。 第二に、中ソ
関係
につきましては種々の
関係
改善の
努力
が行われているにもかかわらず、中ソ国境においては、引き続き双方合わせて百八十万人以上という大規模な軍事力が
配備
されており、
両国
の基本的な軍事的対峙の状況に変化は見られておりません。
ソ連
は、中ソ国境周辺において現在五十七個師団、約五十万人以上の地上兵力を
配備
しております。一方、中国は、
ソ連
アジア部に
配備
されている
SS
20が中国を含むアジア
各国
に重大な脅威となっているとの
認識
を示し、かねてから
SS
20の
削減
を求めてまいったところでありまして、今般の
ソ連
の
INF
ミサイル
の撤廃を基本的には歓迎しております。しかしながら、依然
ソ連
を最大の軍事的脅威と
認識
していると見られ、中ソ国境周辺には、百三十万人以上という大規模な兵力を
配備
しているところでございます。 第三に、朝鮮半島におきましては、昨年一月に対話が中断されて以来、その再開の
見通し
は立つておりませんで、依然として百二十万人を超える地上軍が非武装地帯を挟んで対峙しており、軍事的緊張が続いている状況に変化は見られません。 このような軍事情勢の中にあって、極東
ソ連
軍は、通常
戦力
につきましても質、量両面にわたり顕著に増強されております。海上兵力は、三隻のキエフ級空母のうち二隻、さらにキーロフ級原子力
ミサイル
巡洋艦が
配備
されておるなど、
ソ連
海軍最大の太平洋艦隊はその能力を一層向上させつつあります。また、航空兵力は、戦闘機の約八割が第三世代航空機によって占められ、最新型のスホーイ27戦闘機などが
配備
され始めているなど、引き続き近代化が進められております。さらに地上兵力の増強近代化も着々と進められております。 また、
ソ連
は、一九七八年以降、
我が国
固有の領土である北方領土に地上軍部隊を再
配備
し、現在では師団規模と推定される地上軍部隊や、約四十機のミグ23戦闘機を
配備
している状況でございます。
ソ連
は、以上のような軍事力増強とともに、
我が国
周辺におきまして艦艇及び航空機の
活動
を活発化させておりますが、去る十二月九日には、
ソ連
のTU16バジャーJ型一機が沖縄本島上空及び徳之島-沖永良部島間の領海上空を侵犯したことは先般御承知のとおりでございます。このような事実は、この地域の国際軍事情勢を厳しくしているのみならず一
我が国
に対する潜在的脅威の増大と受けとめざるを得ず、
ソ連
の
INF
ミサイル
の撤廃によってこの状態が変わるものではないと考えております。
最後
に、今後の
我が国
の防衛政策についてでございます。 冒頭に申し上げましたように、
我が国
は今般の
INF
ミサイル
全廃
条約
を歓迎しておりますし、今後さらに、
米ソ
間において
戦略核
戦力
等の
分野
についても
軍備管理
・
軍縮
が
進展
することを強く期待しておるところでございます。いずれにしましても、
我が国
は核の脅威に対しては
米国
の核抑止力に依存することとしております。
他方
、
我が国
の防衛力整備は、御承知のとおり、
通常兵器
による限定的かつ小規模な侵略に有効に対処し得る防衛力の保有を目標とするものでございます。したがいまして、アジアを含む
INF
ミサイル
の全廃によりましても、このような防衛政策を見直すといったことにはならないわけでありまして、今後とも厳しい国際軍事情勢にかんがみ、非核三
原則
を堅持しつつ自衛のため心要最小限度の防衛力を保有し、核及び通常
戦力
から成る
米国
の抑止力と相まって、
我が国
に対する侵略の未然防止に努めてまいる所存でございます。 以上でございます。
加藤武徳
7
○
会長
(
加藤武徳
君) ありがとうございました。 以上で
参考人
からの
意見
聴取、
政府
からの
説明
聴取を終わります。 それでは、これより質疑に入ります。 質疑のある方は順次御発言願います。
堀江正夫
8
○堀江正夫君 ただいまはお三方から大変貴重な御
意見
を拝聴しましてありがとうございました。まず御礼を申し上げます。 私は、今回の調印は確かに
世界
人類にとって画期的なことであって、まさに人類の希望、悲願に沿うものであることを高く評価するのにもちろんやぶさかではないわけであります。これが
米ソ
ともにただ人道主義で行ったなどというそういう所論もありますが、そのような説にはにわかに賛同できないわけであります。そこには
両国
の国益が大きな基本となっておる、これは当然でもありますし、間違いないことだと、私はそう受けとめております。特に最近、北大の木村教授も指摘しておられましたが、
ソ連
の一貫した力の信奉がこれによって変化をした、あるいは近く変化をするだろう、こういったようなことは到底考えられない。したがって、
両国
の今後の
努力
に期待をし、その推移を希望を持ちながら注意深く見守ってまいりたいと思うのでありまして、一部の平和攻勢等によって
日本
はその対応を誤まることがあってはならないと思うわけでございます。 以下、四つの点につきまして、
外務省
及び
防衛庁
にお尋ねをしたいと思います。 その第一は、今いろいろと御
説明
もございましたが、今回の
検証
の
合意
内容によって、本当に全面的な確実な廃絶ができて、また従来SALTI、
ABM条約
等で行われましたような抜け道を生じて、これにかわるようなものが新たに出現する
可能性
は絶無であると言えるのかどうかという点でございます。 と申しますのは、本年六月に、
加藤
会長
以下私ども若干名で訪米をいたしました。そのときに、エメリー
軍備管理
軍縮
局次長とお会いいたしましたときに、この
検証
の問題につきまして、私の記憶によりますと、大筋で大切なことをやっておけば小さな細部のことまでする必要はないのだといったような印象の言葉がありました。私はそれを聞いて大変衝撃を受けたわけであります。当時の状況からいいますと、アメリカはなるべく早い時期の両首脳の会談を望んでいる、あるいはこの
INF
の調印を志向しているという印象を持ったわけでありますが、それと今度のこの
検証
、これのシステム、このかかわり合いというものをどう見たらいいのかなということでございます。 さらに申し上げますと、従来から、先ほどSALTⅠあるいは
ABM条約
で申し上げましたが、この種の
協定
というものはできるだけ全部を終えんするように決められるわけでございますが、実際の実効ということになりますと終えんできない面が出てくるんじゃないか。実際に
検証
をやってみますと、そこにはあらかじめ
協定
をした範囲では律せられないようなものが出てくる
可能性
が十二分にあるんじゃないかということ。 さらに、この
SS
20というのは、何しろ広大な
ソ連
の国土の中で移動性を持ったものである、それが本当に
検証
できるのかということ。
検証
段階
におきましても、今日までの長い
両国
の国民の不信感というものがどのように作用するのか。あれこれ思いますと、確実な
検証
によるその実効というものを心から願うものでありますけれども、本当にその願いが確実に達成されるというふうに見ていいかどうか、こういう点でございまして、
外務省
からお答えを願いたいと思います。
遠藤實
9
○
説明員
(
遠藤實
君) お答え申し上げます。 これをかいくぐって何らかの違反行為がなされる
可能性
が絶無か、こういうふうに質問をされますと、実はこれは私は、個人的にはちょっと一〇〇%と申し上げるのはちゅうちょいたしますけれども、少なくとも長期間にわたる
交渉
の末に、およそ考え得る抜け道はふさいだというのが
両国
間の
当事者
の感じであろうと思いますし、特に
米国
の場合は、
検証措置
に抜かりがあるということになりますと、議会がその点を問題にしてこの
条約
の批准というものが得られない
可能性
があるわけであります。したがいまして、その
意味
では
交渉
当事者
は少なくとも万全を期したということは言えると思っております。 そこで事実、従来にない例えば
現地査察
でありますとか、あるいは抜き打ち
査察
といった制度も盛り込まれておりますし、それからさらに、仮に予見し得なかったような事態、そういった事態に備えまして、特別
査察
委員会
が一方の要請によって開催されるということであります。したがって、
我が国
としては少なくとも現
段階
においてこれ以上のものは望み得ないというふうに考えております。
堀江正夫
10
○堀江正夫君 私が今御質問したのは、やはり国民の中で従来の
経緯
から大変心配しておるという声を
外務省
当局も十分に了解していただいて、今後の
米ソ
のこの廃絶の進行の中で何らかの
役割
を果たしていただきたい、こういう願いを込めて質問したわけでございます。 次は、これは
外務省
、
防衛庁
両当局にお尋ねをします。 それは、今日まで
世界
の常識でありました核を含む軍事力の
均衡
の上に立った抑止論に対して、既にお二人とも若干の見解は示しておられるわけでございますが、今年の春、
ゴルバチョフ書記長
が、モスクワで行いました国際フォーラムで核抑止論否定の見解を述べておることは御承知のとおりでございます。この
INF条約
が調印をされた直後から国内でも一部で、もうこの抑止論というのは成り立たなくなったのだ、いや低下するんだ、あるいは抑止論そのものが間違いだったんだといったような議論も出ておるわけでございます。私は決してそうは思わないわけであります。やはり軍事力の
均衡
の上に立った抑止論行動というものは基本的に変わっていないし、これは低
レベル
に持っていくということは必要だけれども、それでなければ
世界
の平和は保てないと思っております。その辺につきまして、結論だけでよろしゅうございます、
外務省
、続いて
防衛庁
から承ります。
森本敏
11
○
説明員
(森本敏君) 今先生の方から御指摘になりました問題につきましては、結論から申し上げますと、今日の
国際社会
というのは、依然として
核兵器
を含めた力の
均衡
に基づく抑止が平和と安定を支えているというのが冷厳な
現実
でございまして、核の使用を含めて武力衝突を未然に防止するためには、力の
均衡
を通じて有効な抑止力を維持するために
努力
しなければならないと考えております。今回の
INF
の
合意
も結局、八一年にレーガン政権が成立しまして、まさに米大統領が言っておるように力を背景にした
対ソ交渉
、きちっとした核の抑止力を維持し、その背景に立って
対ソ交渉
をやってきたその
成果
というものがあらわれたものであると考えております。したがって、そういう
観点
に立って今回の
INF合意
というのは、アメリカのそういう
対ソ交渉
というものが正しい
方向
にあったということを証明するものであると考えております。
軍備管理
につきましては、まさに先生御指摘のとおり、こういう
現実
を踏まえて
軍備
の水準を可能な限り
均衡
な、かつ低い
レベル
に下げるというために
努力
することは当然のことでございまして、その点については御指摘のとおりでございます。
村田直昭
12
○
説明員
(村田直昭君) ただいま
外務省
の方から御答弁ございましたけれども、私どもとしましても、今日の
国際社会
において
核兵器
を含めた力の
均衡
に基づく抑止というものが平和と安全を支えているということは、冷厳な事実であろうと考えております。
堀江正夫
13
○堀江正夫君 今後いろんな議論が出てくると思います。その議論に対して、全く
外務省
、
防衛庁
に今お答えいただきましたのと私同意でございますし、そのような考え方を少しでも崩すようなことがあったならば、それは極端に言いますと国民に対する反逆にもなるぞ、このような思いも持っておるわけでございますので、ひとつしっかりと腹を決めてやっていただきたいと思うわけであります。 三番目は、
遠藤
局長
からも御
説明
いただきましたが、西欧におけるところの
米国
を含む
関係国
の戦略の再構築の
方向
とその問題点ということでございます。 率直に言いますと、西ヨーロッパが今日までとってきた柔軟反応戦略に対して、この
INF
を全廃したということは大きなダメージだった、私はそう率直に感じております。確かに
NATO
の
各国
首脳はこれに対して、従来からの発言
経緯
もあります、全面的に賛成しておりますが、戦略家と言われる
人たち
、軍事事情に詳しい
人たち
から、大きな問題点として懸命を表明されるに至っておる原因となっておることについても、私は当然だと思っております。一部で既に、
米国
のプレゼンスの後退に対する西ヨーロッパ諸国の反応というものも見られるやに思われます。今後のこの西ヨーロッパにおけるところの抑止力を維持し、平和を確保するための
戦力
の構成というものが、通常
戦力
の
強化
というような問題に進んでいくであろうということは当然予想されるところであります。しかし西ヨーロッパ当局の財政事情や、そして
ソ連
の今後さらに熾烈に行われるであろうところの平和攻勢ということを考えますと、なかなかそう簡単なことではないだろうと思われます。
化学兵器
や通常兵力や、そして戦術核の
軍縮
の問題も当然考えられなければなりません。しかし、これは従来の
NATO諸国
とワルシャワ
条約
諸国との長い間の歴史的な
経緯
を見ても、そう簡単にいくはずのものではありません。第一、戦術核においては、両者持っていますけれども数も質も違います。通常兵力においてはなお大きな隔たりを持っております。
化学兵器
はもうほとんど一〇〇対○といったような状況にあります。そういう中で本当にこういった
戦力
、兵力がまともに
均衡
ある姿でもって減少されていくのかということについては、大変な難しい問題だろうと私は思っております。 そのようなことを踏まえた場合に、本当に
世界
にとって重要な地域の
一つ
であります西ヨーロッパにおけるところの平和を確保するための、抑止力を維持するための戦略はどのような
方向
でもって構築をされていくんだろうかということについて多大の関心を持たざるを得ないわけであります。ひとつ
外務省
、
防衛庁
両当局、お考えがあればここでもってお聞かせ願いたいと思います。
森本敏
14
○
説明員
(森本敏君) 今先生の方から御指摘になりました
INF条約
締結後の
欧州
における核の抑止力に対する
懸念
というものについては、先生御指摘のとおりでありまして、今回の
INF条約
というものを、西欧の諸国は一様に
条約
の締結というものを評価し、この
条約
そのものがグローバルな撤廃を達成したという点について、かつ
INF
の
条約
の締結そのものが
一つ
のサクセスストーリーであるというふうに評価していることは御指摘のとおりでございます。
他方
において、
NATO
の将来、
NATO
の特に
安全保障
の問題というものについても、専門家の一部に
懸念
が広がっているということも事実でございます。 これについては、従来から
NATO
の中で非常に長い議論が行われておりますが、十一日に行われた
NATO
の外相理事会の後で採択されました理事会のコミュニケの部分では、今回の
INF条約
を歓迎する、右
条約
は
同盟
全体の団結と決意の
成果
であり、また
安全保障
にかかわる西欧
同盟
の要求を完全に満たし、
同盟
の重要かつ長年の目標を達成するものであると評価しつつ、かつこれが
NATO
の柔軟反応戦略と整合しているという点を指摘し、さらに今後
NATO
としてはどういう
方向
で戦略を進めなければならないかという点について四つの問題を提起しているわけであります。
一つ
は、
米ソ
の戦略攻撃
核兵器
の五〇%
削減
、いわゆるSTART
交渉
の妥結。二番目は、
化学兵器
のグローバルな撤廃。三番目は、全
欧州
における通常
戦力
の安定かつ安全な
レベル
の確立ということであり、
最後
に通常
戦力
バランスの確立及び
化学兵器
のグローバルな撤廃との
関連
において、より短射程の
米ソ
地上
配備
核
ミサイル
の実質的かつ
検証
可能な同等の
レベル
までの
削減
を求めております。この背景には、今先生御指摘のように、
一つ
には、
東側
、ワルシャワ
条約
機構が
西側
すなわち
NATO諸国
に対し通常
戦力
の部分ではるかに優位にあるという
認識
があり、二番目には、
INF条約
締結後において
西側
の核の抑止がどうなるかということ、それに対する
懸念
というものがベースにあるんであろうと思われます。 いずれにしろ
欧州
は、今後通常
戦力
、核双方の抑止力をいかにして高めるかという点について、今御
説明
しましたように、
戦略核
の大幅
削減
、
化学兵器
、通常
戦力
の大幅な
削減
、及び短距離核の同等な
レベル
までの
削減
というものを求めつつ、それぞれの自国の防衛力整備に努めるものであるというふうに理解をしております。
村田直昭
15
○
説明員
(村田直昭君) 今
外務省
当局の方から御
説明
あったとおりでございまして、特につけ加えることはございません。
堀江正夫
16
○堀江正夫君
最後
に私は、
日本
を含む極東地域の防衛戦略に及ぼす
影響
と
日本
の対応という問題を取り上げてみたいと思いますが、この問題につきましては、既にただいま
遠藤
局長
、村田
審議
官から具体的に、またはっきりとそのお考えが述べられました。私もお二人の御
意見
に全く同意でございます。そこでこの際、少し私の
意見
を付加して述べさせていただきたいと思います。 今度のアジアにおけるところの
INF
の全廃は、一方的に
ソ連
のみが持っていた地上
配備
戦域核が
廃棄
されるわけでありますので、その
意味
においては、我々にとって、アジアにとっては大変なプラスだったと評価するわけでございます。しかし、お二人から御
意見
がございましたように、これによって
現実
的に極東の
米ソ
を
中心
としたところの軍事情勢が変化するわけじゃない、基本的には厳しい状況が依然として続くであろうということについては、だれも疑いを差し挟まないと思います。しかし、国内の一部では既に、これによってデタントが急速に
進展
をする、
日本
もそれに対して積極的に寄与しなきゃならないという論があります。その寄与しなきゃならないという論の中には、一部では、中国を含む
日本
の
ソ連
との
軍備管理
交渉
の提案などというものも見受けましたが、言ってみれば、そんなことは絵にかいたもちであって、
現実
的でないことは言うまでもございません。そういうようなことをやる前に、やはりいろいろと
日本
としてはやることがあるのじゃないかなと思います。 もう
一つ
は、この
INF
の
交渉
の結果、私が個人的に心配している問題がございます。それは、
米国
のそのデタントのムードが高まってくる中で、在韓米軍の撤退という問題がカーター当時に引き続いて再燃するおそれはないかなということでございます。既に私の承知しているところでは、ほかのいろんな情勢から、
一つ
の選択肢としての在韓米軍の撤退がスタディーとして
米国
のある研究所等で行われておるということも聞いておりますが、仮にそういうことがあるとしたならば、これはアジアにとって、
日本
にとって大変大きな問題になる。その辺をよくわきまえてしっかりとやる必要があるんじゃないかなということが
一つ
でございます。 もう
一つ
は、先ほど特に
防衛庁
当局から御
説明
がありましたが、我々が現在進めておるところの中期防衛力整備計画というのは平和時の防衛力であって、それもまだまだ未達成部分が余りにも多い。私をして言わしむれば、中期防衛力整備計画を仮に完全に行ったからといって、平和時の
日本
の安全を確保するに足る防衛力にはまだ欠けているところがたくさんある。そのような状況下で、やはり
日本
は腹を決めて、国民の理解を求めながらしっかりと着実な防衛
努力
をやる。同時に、日米の
信頼
関係
の確保を図るための施策をしっかりやっていく。それこそが今日の、また近い将来における
日本
のとるべき政策ではないか。 防衛力整備につきましては、全く違う次元から、
米国
の国力が明瞭にかつての
米国
よりも低下しつつあるというこの
現実
の上に立って、中長期的に
米国
のプレゼンスが減少をするかもしれない。その
可能性
についても十分な
検討
をしておく必要があるんじゃないかということを思っておるわけでございます。 今申し上げたのは私の
意見
でございます。もしそれに対してお二人からコメントがあれば、コメントを承りまして私の質問を終わります。
森本敏
17
○
説明員
(森本敏君) 特にございません。
遠藤實
18
○
説明員
(
遠藤實
君) 特にございません。
加藤武徳
19
○
会長
(
加藤武徳
君) 村田
審議
官、何か御
意見
ございませんか、今の堀江さんの御発言について。
村田直昭
20
○
説明員
(村田直昭君) 先ほど来御
説明
しておりますとおり、従来の防衛政策に従って平和時における必要最小限度の防衛力である大綱の水準の達成に鋭意
努力
する所存でございます。
最上進
21
○最上進君 堀江
委員
から既に質問がございました。重複を避けまして簡単に御質問を申し上げたいと思います。 今回の
条約
調印、
署名
の前後にアメリカの
レーガン大統領
は、今回のこの締結は史上初めて
軍備
削減
を
現実
のものにしたという論評をいたしております。
ゴルバチョフ書記長
は、
核軍縮
の分水嶺であるという表現をしたというふうに報道されているわけでございます。この御両者の発言を伺う限りでは、やはり今後
戦略核兵器
削減
あるいはまた
通常兵器
の
均衡
という大きな目標に向かう決意をあらわしておられるというふうに私は理解をいたしているわけでございます。 そこで、まあ
日本
国民一億総評論家ということが言われております今日でございますので、いろいろなことが言われております。
成功
だとか、あるいは歓迎するとか、あるいはまた
ソ連
が優位であったとかアメリカが勝ったとかいろいろ勝手に言われておりますけれども、少なくとも既存の
一つ
の
兵器
体系の全廃に
合意
したというこの事実は、やはり事実として歴史的な
成果
であると私は実は評価をいたしている一人でございます。そういう中で、ただいま堀江
委員
も触れられたわけでございますが、人道主義もあったかもしれません、あるいはまた、当然
両国
の国益を踏まえた
交渉
であったと、これは否定するものではございませんけれども、なぜ今この時期にこの
交渉
が長い
交渉
経過を経て締結されたか、
交渉
が成り立ったかという、その政治的な要因、背景というものをやはり感じざるを得ないわけでございます。この政治的な背景というものは一体何であるのか、ひとつ
外務省
側から御
説明
をいただければありがたいと思います。
森本敏
22
○
説明員
(森本敏君) 今回の
INF条約
の妥結というものは、
米ソ
の双方がそれぞれの政治的かつ軍事的な利益という点において
共通
の利益を持ったということによるものである。もちろんその他の要因もたくさんございまして、
遠藤
局長
の方から御
説明
申し上げたとおりでございますが、
米国
の
レーガン大統領
にとりましてはこれが
最後
の任期であり、御存じのとおりイラン・ゲート事件、経済問題その他、レームダックと言われているレーガン政権の
最後
の任期で、歴史的な大統領としての足跡を残したいという政治的な目標と申し上げますか、そういった考え方、基本的なねらいというものがアメリカにはあったであろうと思われます。
他方
において
ソ連
の方としても、ゴルバチョフ政権が進めておりますペレストロイカ、すなわち一連の改革計画というものも必ずしも期待したほどは
成功
に至っておらず、ゴルバチョフ政権にとってみれば、今年前半に党評議会を迎え、一応政権の中で自分の地位を確立した後、
ソ連
としてはアメリカと対等に
交渉
して
外交
上の
成果
を得るということが現在のゴルバチョフ政権にとって最も重要な目標であったであろうと推測されるわけですが、そういった
意味
で、
米ソ
の政治的な目標といいますか、ねらいが見事に一致したということも今回
INF条約
妥結に至った要因の
一つ
であると考えております。
最上進
23
○最上進君
レーガン大統領
の場合には、任期少なくなってまいりまして、当然ここで歴史的なひとつ大きな仕事をしたいという、そういう考え方が背景にあったということも理解できますし、また、
ゴルバチョフ書記長
の場合のペレストロイカとの
関連
性というものも当然理解できるわけでございます。単なるいわゆる経済改革だけでなくて、既にゴルバチョフ路線のこのペレストロイカは、当然幅広い
外交
にまで直結をした
動き
になってきているというふうに言われているわけでございますけれども、今回の
INF交渉
とペレストロイカとの
関連
性というものをもう少し深く掘り下げて御
説明
をいただければありがたいと思います。
森本敏
24
○
説明員
(森本敏君) 今の
ソ連
の進めてまいっておりますペレストロイカというのは、私、必ずしも
ソ連
の専門家ではなくて詳細に承知しておらないわけですが、現在の
ソ連
の国内でゴルバチョフ政権が政権成立後、国内の一連の改革計画として進めておるもので、これについての我が方の評価というものは、国内でゴルバチョフ政権そのものが進めて、かつ当初に期待していたほどの
成果
が必ずしもまだ上がっていない、全く初期の
段階
であるというふうに評価しておりますが、
他方
において、今申し上げましたように、政治的にはここで何らかの
外交
上の
成功
といいますか
成果
というものを上げる必要があるということが、今申し上げたように、ゴルバチョフ政権にとっての当面の非常に大きなねらいであるということを御
説明
申し上げたとおりであります。
最上進
25
○最上進君 少なくとも
ゴルバチョフ書記長
になりましてから、大きくその政策というものが変わりつつあることは事実でございますし、こうした
外交
に直結したその
動き
の中で、
西側
で歓迎すべき点は、今回の
INF交渉
もしかりでございますけれども、こうした点については即座にこれに対応して、究極
世界
の平和と安定に結びつけることができれば、これはやはり結びつけるということが大変肝要であろうというふうに私は思っております。
米国
を
中心
にして、やはり
日本
を含めて
西側諸国
の協議を早急に進めていくという
意見
が一部にございますけれども、こうした点についてはどのようにお考えか、お聞かせをいただきたいと思います。
森本敏
26
○
説明員
(森本敏君) 今の御質問の点につきましては、今回の
INF条約
の締結というのは、いわゆる
軍備管理
・
軍縮
問題としては
一つ
の
成果
ではありますが、
米ソ
関係
、東西
関係
というものの中で、
軍備管理
・
軍縮
問題というのはその
一つ
でありまして、決して全体の要素ではないということであります。東西
関係
というのは、今申し上げましたように、
軍備管理
・
軍縮
問題以外に、地域問題や人権問題あるいは
米ソ
の二国間問題といった
分野
がございまして、トータルな
関係
として東西
関係
をとらえる必要があると考えております。今回の
米ソ
首脳会談が
米ソ
の首脳による第三回目の率直かつ忌憚のない
意見
交換
であったということについては、
両国
間で対話が着実に進んでおるという点において評価しておりますが、今、
遠藤
局長
から御
説明
申し上げましたように、今回の
米ソ
会談は
INF条約
の
署名
という以外に、実務
関係
においてとりたてて顕著な
進展
がなかった模様であり、我々としましては、
INF条約
の
署名
というそういった平和的なムードというものの中にある東西
関係
の
現実
というものを、厳しく見詰めていく必要があるというふうに考えております。
最上進
27
○最上進君 これは
防衛庁
にお伺いをしたいのでございますが、
検証
の問題あるいはまた
査察
の問題、これにつきましては堀江
委員
から既に質問がございましたけれども、要するに、どういう
取り決め
をされても当然
米ソ
間の
相互
信頼
というものが
最後
まで貫けるかどうかということがやはり土台になっていくんだと思うのです。 そこで、
ミサイル
の
廃棄
の問題、これは相手国の
査察
員が二十人ぐらい立ち会ってやるそうです。ロケットの種類や数を確認するということでありますけれども、実際に相手の国の
ミサイル
というものをまだ見たわけでもないわけですから、今回初めて見るということでありますから、本当に本物が今
廃棄
をされている、壊されているんだという、そこに立ち会ってみてもこれは判定ができないのじゃないかという
意見
が事実ございます。同時にまた、弾頭部分の構造とかあるいは配線だとかということは、これはどちらの国にとっても大切な軍事機密でございますから、こうした核弾頭の
廃棄
の確認をするというようなこと、これがやはり実際に軍事機密に触れることでもありますだけに大変難しい問題じゃないかというふうに思うわけでございますが、こうした点を実務としての
防衛庁
ではどういう判断をされておられるのか、ひとつお伺いをさせていただきたいと思います。
村田直昭
28
○
説明員
(村田直昭君) ただいま先生から御質問がありましたことについてでございますけれども、おのおのの
相互
検証
の
段階
においては、双方とも現在まで
核兵器
を製造し
配備
をしてきた国でございますから、それぞれの十分な知識を持った者がその衝に当たると考えますので、そういう御心配もあろうかと思いますけれども、それを克服して進められるものと考えております。我々自身、
核兵器
がいかなるものかという実体的なものについては、いまだかつて触れたことがないわけでございまして、その辺についてはちょっと申しかねることでございます。
最上進
29
○最上進君
最後
の質問でございますが、
米ソ両国
の今後の
条約
発効までの手続、そしてその
見通し
、いつ、ころになるのか。特に、
レーガン大統領
を支えてまいりましたタカ派、これは上院には大変多いわけでありますけれども、この辺での
動き
、また
国会
での批准承認が得られない場合、かつてSALTⅡの問題のときに、これはアフガンへの
ソ連
侵攻がちょうどございましてカーター大統領が提案を取り下げたという経過がございますけれども、いわゆる
条約
発効までの今後の
見通し
、これらについてお聞かせいただきたいと思います。
森本敏
30
○
説明員
(森本敏君)
条約
につきましては、双方の国で批准の手続をし、批准成立後に
条約
発効になるという点については、
条約
発効後の手続を
条約
の中で決めてあるとおりでございますが、
米国
におきましては、先生今御指摘のとおり、共和党保守派の一部にこの
条約
そのものについての反対があることは事実であると思います。 御存じのとおり、
米国
においては
条約
の承認は上院百名の三分の二以上の賛成を得ることが必要であります。したがって純理論的に申し上げますと、三十四名以上の反対者があれば
条約
の批准は否決されるわけでございます。現在のところ、恐らく来年の一月以降に上院において同
条約
の批准のための公聴会等が進められると考えております。必ずしも正確に数字がわかりませんが、十五名ないし二十名の共和党保守派の議員が本
条約
に反対しているという
動き
があることについては承知しております。
見通し
いかんと聞かれました場合については、御存じのとおり
米国
の上院議員は、それぞれの
決議
、レゾリューションについての採決が
米国
のそれぞれの上院議員の出身州にまでわかるようになっており、現在のような
米ソ
のいわゆる平和的なムードというものが
米国
の中にあるという状況の中で、なかなか本
条約
の否決の方に票を投じるということが政治的に難しい面もあると思われますし、また、この
条約
が
米国
において否決されるということになりますと、これは我々
同盟国
にとっても大変なことでございます。したがって、政治的にはどうしても批准してもらわなければ困る。
NATO
も、先日の
NATO
外相理事会において、本
条約
が速やかに批准されることを期待するということを冒頭に述べておりますが、このように
世界
全体が注目する
条約
が
米国
の中で批准されるということについては、我々は期待と一応の
見通し
を持っているわけでございます。
最上進
31
○最上進君 終わります。
志苫裕
32
○
志苫
裕君 率直な感想を申し上げますと、あれもこれも少し聞こうかなと思ってきたんですが、
外務省
のお話、
防衛庁
のお話を聞いていまして、
外務省
までもそんなことなのかなという感じを持ったんです。何か素直に喜ばない。私なんかごく普通の市民として、普通の国民として、まずはよかった、
核兵器
の一
分野
ではあるけれども、全廃ということですから。 物には
一つ
のきっかけがあって、弾みをさらにつけながらどんどん雰囲気も広めていく。もちろん冷厳な目を失わないようにしなければなりませんが、そういう
姿勢
が率直に言って余り感じませんで、何か邪悪の帝国
ソ連
を
西側
のあの手この手の団結でやりむり封じ込めて、恐れ入りましたと言わせたと。何か防衛サイドは年がら年じゅうそんなことを言っておるからそう不思議でもなかったけれども、
外務省
がそういう
外交
姿勢
なのかなということに、率直に言って非常にがっかりしたというか、そんな感想を持ちました。
外交
姿勢
というのは、むしろこういう平和のきっかけというようなものを大事にしてさまざまな
分野
にどんどん広げていくというものなんじゃないでしょうか。水をぶっかけて、あれも心配だこれも心配だといっていくものじゃないのじゃないでしょうか。まずはその辺から
外務省
に聞きたいのですが。
遠藤實
33
○
説明員
(
遠藤實
君) 今回の
INF
全廃
条約
調印につきましては、素直に喜んでおります。
政府
全体として、総理初め外務大臣もこれを心から歓迎するということを内外に述べておりますし、その点につきましては素直に喜ばないのではないかといったことはございません。 それから、私どもといたしましても、当然これが
一つ
のきっかけになりましてさらに
戦略核
、
化学兵器
といった面で
軍縮
があるいは
軍備管理
が進められていくということを期待し、また我々もできるだけの支援をしたいというふうに考えておりますけれども、同時に、
軍備管理
・
軍縮
といったものはやはり
安全保障
を損なうものであってはならないという点を申し上げたわけでございます。
志苫裕
34
○
志苫
裕君 ずっといきさつも先ほどお話がありましたが、一時期、アジア部にヨーロッパの方から持ってきた分も含めて百残すということなどの時期もありまして、最終的にはゼロになりましたけれども、どうも
米ソ
いずれも白人でありますだけに、やっぱりヨーロッパ正面というものを絶えず大事に考えていて、そこでの処理を考える。したがって、背中に当たるアジアの方は割合に鈍感なところがあるという点にかねがね我々なりに不満を感じているわけです。であればあるほど
外務省
は、少なくとも今度はグローバルゼロになりましたが、かつて中曽根さんのあそこに百置くんならアラスカに置けというような発想ではなくて、ヨーロッパがそういう形で解決へ向かうのであればアジアもということで、アジアのそういう平和構想というようなものについて提起をするという、いわば
外交
のスタンスというようなものが必要なんじゃないでしょうか。 後ほども触れますけれども、先ほど
防衛庁
から、
米ソ
、米中、朝鮮半島、そのほか北方領土及び
日本
海周辺における
ソ連
軍の増強のお話がありましたけれども、それは
ソ連
側から見るとやっぱり、アジア大陸を取り囲むようにアメリカの基地がある、さまざまな
兵器
体系の配置もある、その後ろの海にはうようよと核があるというふうに、
ソ連
側が言えばこれは同じことなんであります。ですからこれは、
西側
の
一員
のスタンスもさることながら、アジアにおいてそのような核を海からも撤去してくれぬかというような発想を、こういう機会に
日本
の
外交
当局は持つべきなんじゃないでしょうか。そういう点はいかがなんですか。
遠藤實
35
○
説明員
(
遠藤實
君) まず、
INF交渉
の過程の一
段階
におきまして、アジア部に百残すという
ソ連
側の提案がありまして、これに対しては
我が国
としては、もちろんアジアと
欧州
は同じでなきゃいかぬという強い主張をしたわけでありますけれども、ただ、いわゆるカードとして、もし
ソ連
側が百をアジア部に残すんであれば、アラスカを含む米本土にも百残さざるを得ないというアメリカ側の考え方を一時容認したことはございます。しかし、あくまでこれはカードとしてでありまして、
目的
はアジア部の
SS
20を全廃させるという
一つ
の過程あるいは手段の問題ということでございます。 それから、アジアにおきまして
核軍縮
あるいはその他の
軍縮
を進めるべきではないかという御
意見
でございますけれども、
我が国
としては、一般的にアジア・太平洋地域におきまして真に
実効性
のある
軍備管理
、あるいは
軍縮
が実現することは長期的な目標としては当然適切なものであると考えております。しかし、現状におきましてこの地域におきます
国際政治
情勢等を考えますと、現
段階
においては、この地域におきます
軍備管理
あるいは
軍縮交渉
といったものはまだ熟していない、いわば
現実
性がないということでありまして、まず
国際政治
状況といったものの改善に
努力
すべきであるというふうに考えております。 御案内のように、日ソ間には領土問題もございますし、それ以外にも、先ほどもちょっと触れましたけれども、
我が国
としては当然、北方領土から
ソ連
軍は撤退すべきであるというふうに考えておりますし、そのほか朝鮮半島の緊張緩和の問題とか、それから若干遠くなるかもしれませんが、アフガニスタンあるいはカンボジアの問題等々もあることは御高承のとおりでございます。
志苫裕
36
○
志苫
裕君 今、率直に言って感じたところで
外務省
の
外交
姿勢
についてお伺いしたんですが、ちょっと具体的に聞きますが、これは
明石
さんの方がいいんでしょうか。 先ほどアメリカの議会筋の動向のことは伺いましたが、我々はマスコミを通じて知る以外にないのです。素直に言ってアメリカの国民の動向はどんなものなんでしょうか、これに対する評価は。
明石康
37
○
参考人
(
明石康
君) 今の
志苫
先生の御質問に対しましては、アメリカの新聞、雑誌、テレビを通じて散見する限りにおきましては、アメリカ国民は圧倒的にこの
INF
の締結というものを歓迎しておるという感じがいたします。 先ほど森本室長から上院の批准の
見通し
についての話がありましたけれども、上院に関する限り大体室長の言うとおりだと思います。共和党保守派の一部、ヘルムズ議員その他、強いて言えば約二十名前後反対するかもしれませんけれども、現在までのところ、民主党の大統領候補に出ております候補は全員こぞって
INF
は賛成の模様でございます。共和党に関しましてもジョージ・ブッシュ副大統領、この候補が賛成。
一つ
のかなめはもう一人の大統領候補でありますドール上院議員なんです。非常に言い方は慎重でございますけれども、ドールさんもあえて反対はしないという意向のようでございます。ある
程度
了解
事項
をつけ加える
可能性
はありますけれども、はっきりとこの
条約
を修正しないとだめだと、修正条項なんかをつけるような
傾向
は今まで見られないようでございます。 しかしながら、
一つ
の不確定要素は、さっきもちょっとお話がありましたけれども、アフガニスタン問題で例えば
ソ連
が一切の妥協を排するという
立場
を続けましたならば、それが
INF
の批准に悪
影響
を与えはしないかということが
一つ
気がかりな材料としてはございます。しかしながら、
ゴルバチョフ書記長
はアメリカで行
政府
、
レーガン大統領
に会うほかにも、上下両院議員と精力的に会いまして大変にいい印象を与えております。そういう
意味
ではアメリカ人によくあることなんですけれども、一種のゴルバチョフ・ブームが起きておりまして、そのブームがいつまで続くかわかりませんけれども、今のところ
見通し
は楽観的であるということが言えると思います。
志苫裕
38
○
志苫
裕君 先ほど最上
委員
の質問に室長がお答えになっておりまして、今度の調印にこぎつけた政治的背景のお話がありましたが、経済的背景はそれぞれの国にあるんじゃないのでしょうか。一応その辺を補足していただけますか。
森本敏
39
○
説明員
(森本敏君) 先ほどの先生の御質問につきまして政治的な背景というものを
説明
申し上げましたが、今回の
INF条約
の妥結には、それ以外に軍事的な側面と、先生御指摘のように経済的な側面ももちろんあろうかと存じます。 軍事的な側面というのは、
ソ連
にとって
SS
20というのは大変優秀な
兵器
システムでございまして、正直申し上げて、
ソ連
の軍部はこれを全廃するということは展開の当初は考えてもみなかったであろうと思われます。
他方
において、先ほど
国連
局長
より御
説明
申し上げましたとおり、
ソ連
が
SS
20を
配備
したことにより、
NATO
が七九年の末に二重決定を行い、八三年より
SS
20の脅威に対処するという形でパージングⅡと地上発射の巡航
ミサイル
を
配備
したわけですが、
ソ連
にとってみれば、このパージングⅡと地上発射の巡航
ミサイル
というのは軍事的に見ても想像以上に大きな脅威であったであろうと考えられます。さらに推測すれば、
ソ連
にとってみれば、
SS
20を撤廃してもアメリカ側のかかる
INF
を撤廃することができれば、プラス・マイナス得であるといった駆け引きを考えたからであるという見方もできるのであろうと思います。 経済的な面から申し上げれば、先生今御指摘のとおり、当然経済的な側面というものがありまして、
ソ連
にとってみれば次々に新しい
兵器
を
開発
するということは経済的に大変な負担でありまして、今回
ソ連
が
戦略核兵器
の五〇%
削減
に応じているのも、こういった経済的な側面というものは無視できないものであるというふうに考えております。
志苫裕
40
○
志苫
裕君 ちょっと
防衛庁
、
防衛庁
は雨が降ってもやりが降っても防衛力増強なんですけれども、一時期、
INF
というのは割合に中距離、短距離ですから、シベリアにあれば
日本
へ届く、これは危ないと、そういういわば
ソ連
脅威論の道具立てになっていたわけです。しかし、今度はそれはなくなる。なるほど長いやりは持っていますが、あれは
日本
あたりには落ちてこない、ずっと遠くへ行く、大陸間を飛ぶわけですから。そういう事情の変化というものは、
防衛庁
の一種の状況の想定といいますか、そういうものが幾ら変わっても何も変わらない、通常兵力による限定的な侵略というものに今せっせと対応するのだと。ただそれだけでいけば、よくこれはしばしばこの
調査会
でもやるんですが、ソビエトが艦隊を仕立てて何もない
我が国
へやってくるという事情なんかさらさらありません、あるとすれば
米ソ
が腹ぐあいの悪くなったときだ、こういう話なんです。どうもその辺のつじつまが合わない話になるんですが、それと海の核、これをどのように見ておられるんでしょうか。
村田直昭
41
○
説明員
(村田直昭君) まず最初に先生御質問の
SS
20について、
防衛庁
はこれを脅威の理由として大いにあおっておったんじゃないか、唱えておったんじゃないかということでございますが、この点については御承知のとおりでございますが、
SS
20は
我が国
や中国などを射程内におさめておりまして、発射後十数分内には
我が国
に到達できる性能を有している
兵器
だということで、当然のことながら潜在的脅威の一側面として考えておったわけでございます。 そういう
意味
で、
SS
20がこれから将来にわたって
廃棄
されていくということになれば、そのような
役割
を果たし得る軍事能力はその部分減じてきたということは事実でございますが、ただ先ほどから申し上げておりますように、
INF
ミサイル
というものは全地球上の弾頭のうちからいえば数%にすぎないものであるということ。それから私どもが極東
ソ連
軍の潜在的脅威ということを申し上げておりますのは何も
SS
20だけじゃなく、それを含めますところの質、量両面にわたる増強に対して、それからまた、その
活動
が非常に活発化しているということを踏まえて、全体としてそのように申し上げてきたということでございます。
志苫裕
42
○
志苫
裕君 海の核は。
村田直昭
43
○
説明員
(村田直昭君) それから、それじゃ核のことをどう考えているのかということについては、先生おっしゃられましたとおり、
我が国
としては非核による通常の局地戦に対するものとして考えておりまして、核の問題につきましては米軍の核抑止力に依存するという考え方でございます。
志苫裕
44
○
志苫
裕君 先ほど
国連
の事務次長は、いろいろと先のことを考えれば不安定要因もあるかもしらぬが、そういうことを予見できるのであれば
署名
はしなかっただろうというお話もあったし、私はこれから紆余曲折もあるだろうしさまざまなこともあると思いますが、とにかくいい雰囲気で少なくとも
世界
のトップクラスがテーブルについておるということが一番大きい平和の保障だと思うのです。そういう
意味
ではさまざまな
レベル
でそういう
努力
を続けていかなきゃならぬものだろう。 それでは
日本
は何もやることはないのかという
意味
で、そういうさまざまな場を提供する、雰囲気をよくするという
意味
で、先ほど
信頼醸成措置
の話が
国連
の
会議
でありましたが、例えば
日本
の防衛当局にしても
信頼醸成措置
の一環としてやることはないのか。こういうところで軍事演習をしますよ、例えばそういう
情報
の
交換
だけだって相当の私は
信頼醸成措置
になると思います。ただ、そういう発想は
日本
の防衛当局というのは全く持たないものなんでしょうか。
防衛庁
、どうですか。
伊藤康成
45
○
説明員
(伊藤康成君) ただいまの
信頼醸成措置
で、例えば演習の通報というような御質問でございますが、確かに
欧州
の方におきましてはそのような
措置
がとられておるということは承知しております。
NATO
並びにワルシャワ
条約
機構正面におきましては、御承知のとおり、地続きのところでございまして、それぞれの演習についてかなりの通報の体制が整っておるわけでございます。先ほど
外務省
の方からも御
説明
ありましたけれども、極東正面におきましては、特に
日本
におきましては、これは海を隔てておるというような事情もございますし、いまたそのような環境にはないのではないかというふうに判断をしておる次第でございます。
志苫裕
46
○
志苫
裕君 いやいや、全体が少しでも緊張緩和に向かえば向かうなりに
日本
の防衛当局だって何か緊張緩和へ
努力
すべきなんであって、
軍備
を縮小するというわけでもなし、世の中の
動き
に
貢献
することは何もないじゃないかという話になってしまうのでちょっと聞いてみたんですが、それは結構です。
最後
でいいのですが、先ほど室長、
INF
の
署名
以外に顕著な
進展
が
一つ
もなかったと。マスコミ
情報
しか私たちは得るところはないのですが、若干失望したようなマスコミの論評もないわけでもなかったんです。もうちょっと何かその辺、
国連
の事務次長でもいいし
外務省
でもいいのですが、
INF
の
署名
以外のほかの問題で、これだけが東西問題でもないわけですから、何かその辺でもうちょっとコメントがありましたら……。
森本敏
47
○
説明員
(森本敏君) 先生の御指摘は、今回の
米ソ
会談において我が方から大きな
進展
が必ずしも見られなかったという答弁に対して、それ以外の、つまり
INF条約
の
署名
以外に何か
進展
が見られなかったのかという御質問の趣旨であろうと理解しております。 今回の
米ソ
会談では、
INF条約
の
署名
以外にその他の
軍備管理
問題、特に
戦略核兵器
の
削減
交渉
及び地域問題、人権問題及び
米ソ
二国間問題という四つの
分野
について
交渉
が行われたわけでございますが、今御指摘のとおり、
戦略核兵器
削減
交渉
につきましては若干新しい要素が見られたわけでございます。
一つ
は、双方の
戦略核兵器
を五〇%
削減
するということ及びその五〇%の
削減
の中で弾頭数を六千、運搬手段を千六百にするということについては従来
米ソ交渉
の中で既に
原則
的には
合意
されていたものでございますが、これを今回新たに増したということなんですが、今申し上げました弾頭六千という
総数
枠の中で弾道
ミサイル
、すなわちICBMとSLBMの合計を四千九百弾頭とすることを含む戦略的安定のための
措置
というものが
戦略核兵器
交渉
の中で新しい要素であろうと思います。それ以外にもちろん細かく申し上げれば
幾つ
かあるわけでございますが、今申し上げましたように、
戦略核兵器
削減
交渉
については若干の新しい要素が見られたわけでございます。 その他の地域問題及び人権問題につきましては、双方で相当広範囲にわたる問題が取り上げられて双方の
意見
交換
が行われたようでございますが、
共同声明
に見る限り、例えば人権問題につきましては、人権、人道的問題につき徹底的かつ率直に討議した、地域問題については、アフガン、イラン・イラク紛争その他の問題につき広範かつ率直な討議を実施した、
米ソ
間には大きな相違があるものの、定期的な
意見
交換
の
重要性
につき
合意
したと述べられているだけで、我々としても本件
米ソ
会談の内容につき米側から
説明
を受けておりますが、
国連
局長
より冒頭に御
説明
いたしましたとおり、
レーガン大統領
が当初に実質的な
進展
があることを希望すると述べられていた、それほどの実質的な
進展
が見られなかったということは先ほど申し上げましたとおりでございます。
明石康
48
○
参考人
(
明石康
君)
INF
協定
が事実上
合意
に達したということを除きましては、今、安保室長から御
説明
のあったとおり、
戦略核兵器
に関するいろんな突っ込んだ話し合いがあった。恐らくこれは、
ABM条約
の取り扱いの問題さえ解決すれば次期モスクワ会談で恐らく
合意
の
可能性
の最も大きな問題じゃないかと思います。そういう
意味
では、今回のワシントンにおけるレーガン・ゴルバチョフ会談の大きな山は、
INF
についてはもう事前にシュルツ・シェワルナゼ両大臣の間でほとんど詰められておったわけでございますが、この
戦略核
の問題は一番大きな問題でありましたし、今後一番期待の持てる問題ではないかというふうに考えております。 それから地域問題、人権の問題はほかの主要な問題でございましたけれども、
軍縮
に関しましても、例えば地下
核実験
の問題については、
お互い
にそれぞれの国の実験場において合同の
査察
を行おうじゃないかというところまで話が進んでおりますし、それから拡散防止に関しましても話が行われております。それから
核実験停止
、禁止
協定
については、私の冒頭の話でも申し上げましたとおり
ジュネーブ
の
軍縮会議
において話が相当進んでおりまして、七割から八割方もう
合意
ができております。こういう場合、残っておる二割ないし三割というのは一番難しいことなんですけれども、うまくいきますとこれは来年の来ないしは再来年までにできるものであります。現在あります大量殺りく
兵器
の中では、それはやっぱり毒ガスその他の
化学兵器
の問題は非常に大きな問題でございますので、これについて現在
国連
としては非常な
重要性
を置きまして、鋭意
交渉
しておるわけでございます。 そのほかに、
米ソ
の間では核危機管理センターというものをつくって、誤解とか偶発的な形で核戦争が起きないようにということで双方のコミュニケーションをよくするということをやっております。 それから先ほど話も出ましたけれども、
通常兵器
、これは
INF
以上に
米ソ
が
核軍縮
をやろうとしますと、何としてもヨーロッパにおけるワルシャワ
条約
諸国の北大西洋
条約
諸国に対する
通常兵器
における優位の問題が出てくるわけでございます。それについては
ソ連
もよく承知している様子でございまして、兵力においてはほぼ等しいかもしれませんけれども、戦車の数においては約二倍、大砲その他の数においては約三倍というふうにワルシャワ
条約
諸国の優勢が伝えられておりますし、その半面、戦闘機とかヘリコプターの数では北大西洋
条約
諸国の方が多いということです。 私も、
ソ連
の
軍縮
を担当しております。ある大使に、おまえのところ何でそんなに戦車をやたらに持つんだ、そのことで
NATO諸国
に不信感を持たれてもしょうがないじゃないかと言いましたら、その大使は非常に率直に、いや
明石
、おまえの言うとおりなんだ、ところがおれのところの軍人さんたちはやっぱり第二次大戦のことばかり考えておる、第二次大戦のときにドイツの戦車に
ソ連
がじゅうりんされたということがこびりついておって、そういう戦車に固執するんだということを言っておりました。そういう
意味
では
相互
の
均衡
のなさということについては
認識
がございまして、できれば
相互
のそういう不
均衡
を、弱体な方の
戦力
を上げる形じゃなくて、持っている優勢な方の国の兵力を下げるという形でシンメトリー、
均衡
状態をつくらなくちゃいかぬ、それが本当の
軍縮
であるということを
軍縮
のプロである
ソ連
の
外交
官は十分に
認識
しているように見受けられます。 そういう
意味
では、
通常兵器
の問題はこれから大きな
一つ
の山になるであろう。それがまた第二期におけるより広範な
核軍縮
にまで持っていく
一つ
のきっかけになるだろう。そういう
意味
ではいろんな
兵器
、いろんな核体系が
お互い
に絡み合いながら
軍縮
の状態につながっていくという感じがいたします。
矢田部理
49
○矢田部理君 二、三問だけ伺います。 最初に
一つ
は、先ほど
INF条約
が妥結に至った
米ソ両国
の政治的、軍事的、経済的背景などについて御
説明
をいただきましたが、国際世論の動向といいますか、ヨーロッパを初め
各国
の反核運動とか民衆の声とかというものが果たした
役割
について
明石参考人
はどんなふうにお考えでしょうか。
明石康
50
○
参考人
(
明石康
君) 国際世論というものは非常に計量しがたいものでございますから、そういう世論が
軍縮
というものについてどれだけの
影響
力を持ったかということはみだりに言いがたいのでありますけれども、やはり、特に民主国家にとっては世論の
重要性
というのは疑いもないところでございますし、
INF廃棄
というものについては、ヨーロッパの世論がやはり
一つ
の
影響
力を持ったであろうということは言えると思います。
矢田部理
51
○矢田部理君
防衛庁
の先ほどの
志苫
委員
に対する答弁にも
関連
するんですが、防衛白書などを見ますと、極東
ソ連
軍の潜在的脅威ということを盛んに言われ、少なくとも、それはすべてではないにしても、重要な内容として
SS
20の極東
配備
、ここで百七十基と言っております。少しく過大見積もりでもあるわけですが、先ほどの百六十二に比べますと。少なくとも重要な内容にしてきたのではないかと思われるわけです。それが全廃をされるということになると脅威が相当
程度
減殺されるということは、これは紛れもない事実なんであります。もともと東西の軍事力の
均衡
はおおむね均等というふうに見てこられたし、それからアジアもそういう評価だったと私は思うのですが、そうだとすれば、少なくともその分だけ減るということになると、アジアの軍事情勢は一定の変化が出てきているというふうに見ていいのではないでしょうか。基本的に変化がない、軍事情勢に変わりはないということを余り強調し過ぎることはいかがかという感じが
一つ
はいたします。その点についてどう考えられるか。 それから、もう一点追加して
関連
して申し上げますと、この
INF
の全廃に引き続き今度は
戦略核
の半減という状況が出てくる
可能性
があるわけです。先ほども話がありましたが、
戦略核
はもともとアメリカ本土をねらっているんだから、
日本
は直接
関係
がないという言い方もできるのかもしれませんが、こういう半減の状況などが出てくることになれば大きく
世界
の軍事情勢は変わり、かつ、
日本
を初めとするアジアにおける軍事情勢にも変化が出てくるのではないかと思われますが、この辺も含めて
防衛庁
としてはどんな
認識
に立つのか。
外務省
にも答弁をいただきますが、両者からお答えをいただいて私の質問を終わります。
村田直昭
52
○
説明員
(村田直昭君) ただいまの御質問でございますが、先般来申し上げておりますとおり、
INF
につきましては、極東に私ども当時約百七十基と申し上げておったわけでございますが、
配備
されておったわけでございまして、これは当然のことながら
ソ連
側にのみ
配備
されており、自由国側と申しますか、についてはこれが
配備
されておらなかった、非対称の状態にあったものでございまして、これが
廃棄
されたからといって直ちに全体の
均衡
状態に変化が生ずるというものではないというふうに
認識
しています。 それから、
戦略核
が半減する
方向
に進むのではないかというような御質問でございますが、これについては
INF
の推移いかんというようなことがまず先行すべき問題ではないか、デタントは直ちにそのような
方向
に進むかどうかは慎重に見きわめた上で判断すべきではなかろうかというふうに考えています。
森本敏
53
○
説明員
(森本敏君) 今の御質問の件につきましては、まず今回の
INF条約
によって撤廃されるいわゆる
中距離核ミサイル
というのは、累次御
説明
申し上げているとおり、一〇%に満たない数でありまして、さらに現在
世界
が持っておる
核兵器総数
というのは人類を数回以上殺りくできるというぐらい、いわゆるオーバーキルの状態になっております。そういう
核兵器
の現状というものに照らしまして、今回
INF条約
によって総弾頭数の数%が撤廃されることによっても、東西の核バランスというものは基本的に大きな変化があるとは考えておりません。 また、
戦略核兵器
の
削減
につきましては、先ほどから累次御
説明
しているとおり、これは
米ソ
が双方に持っておる戦略攻撃
核戦力
を五〇%
削減
するという極めて大幅な
削減
でありまして、これが全体として核の、いわゆる
米国
が申し上げているような戦略的安定というものが達成できるものであるというふうに考えております。
矢田部理
54
○矢田部理君 時間がないから、別の機会にまた質問します。
和田教美
55
○和田
教美
君 まず、
明石国連事務次長
にお尋ねいたします。
明石
さんが先ほど指摘されましたように。今度の
INF
全廃
条約
の調印ということは、私はやっぱり歴史的な
合意
だというふうに考えます。既に御指摘になりましたように、なるほど五万発以上もあると言われる核弾頭の、核のまあ約数%という、量はそうでございますけれども、しかし初めてのとにかく
軍縮条約
である、今までの
軍備管理
条約
というものではなくて質的に違ったものだというふうに私は
認識
いたしております。 しかし、
日本
を取り巻くアジアの周辺ということを考えますと、今度の調印された
条約
は中距離核についても陸上核であって、最近
日本
で非常に問題になっております海上杉、水中核という問題は中距離核についても除外されておるわけです。今度の
米ソ
共同声明
を見ますと、SLCMについても、つまり巡航
ミサイル
についても保有上限を設けるとか、あるいは効果的な
検証
方法
を
検討
するという点について
合意
をしたということが書いてありますから、全く
合意
がなかったということではございませんけれども、この問題はまだ全くこれからだというふうに感じるわけです。ですから、このままほうっておくと、悪くいけば、全般に緊張緩和の状況が進むにしても、アジアにおいては海の核というものを
中心
に非常に緊張状態が続くという危険性もあるわけで、現に
日本
のトマホークの問題、それに対抗して
ソ連
も
SS
NX21というのを今
開発
試験中だという報道がございますね。ですから、この海の核というものをアジアの周辺からなるべく減らしていくということは、我々にとって当面の
一つ
の目標だと思うのですけれども、これについてどういうお考えなのかということが第一点です。 それから先ほど、それとも
関連
ございますけれども、
明石
さんの
説明
でも、
国連
の第一
委員会
で、新しい
分野
のいわゆる
軍縮
の問題、
非核分野
の
軍縮
、
通常兵器
の
軍縮
という問題とか
信頼醸成措置
のガイドラインをつくるという問題とか、そういう問題が討議されているというお話を聞きまして大変興味を持ったんです。さらに、来年の
軍縮特別総会
で今のような問題のほかに、
地域軍縮
の問題を取り上げるというお話がございましたので、これは非常に結構なことだと思うのです。 それと
関連
してお尋ねしたいのは、こういう状況の中で
日本
として一体何ができるか、つまり
地域軍縮
という問題についてもっと
日本
としてイニシアチブをとらなきゃいかぬのじゃないかということを非常に切実に感じるわけです。ヨーロッパにおいてはとにもかくにも
軍縮
問題についてのパイプがいろんな形でできておるわけだし、現に先ほども議論がありましたように、
信頼醸成措置
についての一応の
合意
もできておるという状況ですけれども、アジアにおいては全くそういうものがないわけです。これは
防衛庁
も指摘されておることなんですけれども、そういう状態のままでいいのか。今すぐアジアの海を、アジアを非核地帯化するということは、これは非常に実現困難だとしても、何かやるべきことがあるんではないか、
日本
がイニシアチブをとって。
国連
においても、例えばアジアにおいて
軍縮
センターみたいなものをつくるとか、そういうこともお考えにないのかどうかという問題も含めて、
日本
としてこれから
地域軍縮
を進める手がないかどうか。その二つについてお尋ねをしたいと思います。
明石康
56
○
参考人
(
明石康
君) 和田先生のお話、非常に興味深く拝聴させていただきました。 海の
軍縮
の問題は、ここ数年の間に
国連
に新しい
軍縮
の
議題
として出されておりまして、特にスウェーデンとインドネシアがこの問題で非常に熱心に動いております。しかしながら、やはり基本的な問題は、海と
安全保障
に関しましては、
ソ連
という国が基本的にランドパワーである、陸上大国であるという事実、それに反しましてアメリカは圧倒的にやはりシーパワーである、海を背景に
安全保障
を確保しなくちゃいかぬという基本的な事実がございまして、
国連
の
軍縮
委員会
における海の
軍縮
の問題に関する
作業
委員会
に昨年アメリカは
出席
しておりません。そういう
意味
で、この海の
軍縮
の問題をどうとらえるかというのは緒についたばかりなものですから、
国連
としてもまだ十分な話し合いが進んでおらないという状況にございます。しかし、これから非常に大きな問題になるであろうということは、先生のおっしゃるとおりであるんじゃないかと思います。 それから、
国連
の
軍縮
の非常に間口が広くなったということは事実でございまして、確かに核は最重要の問題でございますけれども、核以外の
兵器
というものも大量殺りくの
兵器
でございまして、どの
兵器
で殺されるにしろ殺される身にとっては同じということであります。第二次大戦を終わってから四十二年の間に百五十を超える戦争が起きておりますけれども、これは全部
通常兵器
による戦争でございます。それによって二千万人以上の人間が死んでおります。これも全部
通常兵器
による死者でございます。そういう
意味
で我々は核を避けて通らぬ、同時に
通常兵器
軍縮
の問題も真剣に取り上げるべき時期に達しておるんだと思います。 それから、私が冒頭の話で申し上げましたけれども、
軍備
というのは
国際緊張
の結果であって、必ずしもその原因ではないということなんでございますけれども、そういう
意味
では
軍縮
を可能にさせるような周囲の
条件
をつくる必要がある、そういう
意味
では
信頼醸成措置
というのは極めて
重要性
を持ってくるわけでございます。 それで、先ほど
防衛庁
の方からも指摘がありましたけれども、ヨーロッパではもうアメリカの軍人が
ソ連
の軍隊の演習にオブザーバーとして
出席
する、
ソ連
の軍人が
NATO諸国
のそういう軍事訓練にオブザーバーを派遣するというところまで来ております。しかし、残念ながらアジア、アフリカ、ラテンアメリカに関してはそこまで来ておらないわけなんです。そういう
意味
では、ストックホルム
条約
その他の教訓をいかにして
世界
のほかの地域にまで広めていくかというのは
一つ
の新しい
課題
になってきておるんじゃないかと思います。それは、ヨーロッパのように国境がはっきり画定された地域と違いまして、特にアジアの場合、問題は難しいわけでございますけれども、そういう
信頼醸成措置
について真剣に考えていく一足飛びに
軍縮
という状況はなかなか来ないわけでありますから、その前提
条件
をみんなで懸命に考えるということが大事ではないかと思います。 それから、和田先生がまたいみじくも指摘された
地域軍縮
は私も非常に重視しておりまして、ここで
一つ
ニュースを申し上げますと、この秋の
国連総会
で、アジア地域平和
軍縮
センターというのをネパールにつくることが決まりました。昨年はラテンアメリカに同種のセンターをつくる、ペルーの首都のリマにつくることが決まりまして、一昨年にはアフリカの地域センターをトーゴという国につくることが決まりました。アジアのセンターといいましても、これは
国連
の通常予算からは金が全く出ないわけでございまして、そういう
意味
では、こういうセンターをつくり、中国と
ソ連
とインドないしはパキスタンというかなり大きな国に囲まれておる小さな中立国であるネパールの、そういう平和を実現しようという悲願をいかにしてかなえてやるか、また、そういう平和の念をアジア諸国にまでいかにして及ぼすかということについて、あるいは
我が国
が
貢献
し得ることがいろいろあるかもしれませんし、そういう
意味
では、そういう事態を醸成していくということも平和に対するそんなにドラマチックなものではございませんけれども、具体的な
一つ
の道ではあろうかというふうに考えております。
和田教美
57
○和田
教美
君 次に、
外務省
にお尋ねしますけれども、今度の
条約
、それから
米ソ
首脳会談の経過を見ておりまして、私は、戦略的安定というのがキーワードの
一つ
ではないかという感じがするんです。これは先ほど
明石
さんも触れられましたけれども、
条約
の前文にも出てきますし、
米ソ
の
共同声明
にも「戦略的安定」という言葉が出てくるわけです。一体この戦略的安定というのはどういう
意味
なのかということです。 先ほどの
明石
さんの
説明
ですと、より低い
レベル
での
均衡
ある
軍縮
をやって安定するという
意味
にとれるような発言があったんですけれども、
日本
の論評なんかを見ておりましても、この戦略的安定というのを、いわゆるMAD、
相互
確証破壊戦略、これを再確認しているんだという見方もあるし、あるいはまた、
INF
というものが核の敷居を低くする、非常にそういう危険性があったから、まず
INF
を全廃することによって、再び核の敷居を高くするというねらいがあるんだという
意味
にとっている人もおる。そういう見解からいけば、当然一番問題なのは戦術核をどうするかという問題が出てくるわけです。そういう問題いろんな論評があるわけですけれども、それをどう考えておるかという問題が
一つ
です。 それからもう
一つ
、それと
関連
して、先ほど
日本
政府
としては核抑止論はあくまで堅持するような見解でございましたけれども、
ソ連
の一連の発言、先ほど堀江さんの発言がありましたように、ゴルバチョフのことしの春の発言などから見て、
ソ連
はこの核抑止論というものに対する一定の批判を展開をしている。それはあるいは多分に宣伝的な
意味
があるのかもしれませんけれども、しかしどうも私は、
ソ連
の新しい新思想といいますか、そういう考え方からいって、今までのような、要するに抑止論絶対信仰というものから転換しつつあるんではないかという感じがするわけで、その点を
外務省
はどう考えておられるのか、その二点です。
森本敏
58
○
説明員
(森本敏君) いわゆる戦略的安定という問題は、
米ソ
双方が核の抑止力によって安全を維持しているという基本的な考えに立つ戦略でございます。したがって、今御指摘のとおり、
米ソ
が双方に
核兵器
を持ち、しかも相手から攻撃をされないように
核兵器
によって抑止をすることによって安全が保たれているという考え方があるわけでございます。 今御指摘のとおりなんでございますが、その
核兵器
の中で、特に
戦略核兵器
というものは双方にとって極めて致命的な打撃を与えるという
意味
で、はるかに戦術核その他の
核兵器
よりも
安全保障
上重大な
意味
を持つということについては十分御承知のとおりであろうと思いますが、そういう双方の
戦略核兵器
をより低い
レベル
で、かつ
均衡
された状態で
削減
していくということは、双方が持つ核報復力というものをより低い
レベル
にするということで、今申し上げた双方の
戦略核
、攻撃
戦力
の
レベル
を低い
レベル
にすることによって、双方の抑止力をさらに安定させるということが、ここで述べている戦略的安定という
意味
でございます。 御存じのとおり、
米国
としては現有
核戦力
の近代化を図りつつ、核の抑止を維持していく一方で、戦略の重点を将来次第にSDIというものに移行していき、いわゆる非核の防御手段によって抑止を高めるということに最終的な目標を置いているわけでございますが、現在の
米ソ
の
核兵器
のシステムというものは、今申し上げました戦略的抑止力というものに双方の
安全保障
を依存している限り、今回の
INF条約
によって双方の核戦略というものが変更するものではないというふうに我々は理解をしておる次第でございます。
和田教美
59
○和田
教美
君 それから、もう
一つ
の
ソ連
のゴルバチョフなんかの一連の発言及び新思想といわれる考え方は、抑止論をある
程度
批判し、否定しているものではないかという質問はどうですか。
森本敏
60
○
説明員
(森本敏君) これは、
ソ連
の方が最近になって主張していることの背景そのものを必ずしも十分に我々として理解していないわけですが、いずれにしろ、
ソ連
の
核戦力
というものが
米国
の核攻撃
戦力
に比べて質的にやや劣勢な部分があるということと、
科学技術
力その他の問題もありましょうが、
米国
が進めておるいわゆるSDIというものに非常に脅威を感じておるということで、まさにアメリカがSDIを進めている際に、アメリカの今御指摘のMADというものが本来的に排除し切れない不確実性があるのではないかという一般の議論に対して対応する考え方でありまして、今御指摘の、
ソ連
の方の発言がそのまま
ソ連
の核戦略というものを規定しているものではないというふうに考えております。
和田教美
61
○和田
教美
君 基本的にはMADの考え方に立っているということですか。
森本敏
62
○
説明員
(森本敏君) そのとおりでございます。
和田教美
63
○和田
教美
君 次に、もう時間もなくなりましたから
防衛庁
にお尋ねしたいのですけれども、私も先ほどの答弁を聞いておりまして、
防衛庁
の考え方というのは、全く古びたレコードをそのまま何回も何回もかけているというふうな印象を持つわけです。端的にとにかく申し上げますと、
SS
20の脅威ということを防衛白書などでも盛んに強調されたわけで、もちろん
SS
20だけではなくて、バックファイア、これも脅威を強調されたということもあるんです。先ほどの発言を聞いておりますと、
SS
20がなくなっても通常
戦力
の増強だとかそういうこと、あるいはバックファイア八十五機というものを総合的に考えると潜在的脅威は増大をしているという発言さえあったわけですけれども、増大しつつある、これからも増大するであろうという
認識
なのか。その点は少なくとも脅威は、先ほど別の質問ございましたけれども、
SS
20が全廃される、あるいはまたざらに
戦略核
の半減というものが行われ、
通常兵器
の
削減
交渉
というものがとにもかくにも軌道に乗るという将来図を見た場合に、それは増大するのではなくてむしろ減少するというふうに考えるのか、その辺の判断をどういうふうに考えておるかということが
一つ
です。 それともう
一つ
、先ほどからこれも出ておりますけれども、今度の
INF条約
の調印という背景には、やっぱり経済的要因が大変私は大きな
意味
を持つというふうに思うのです。アメリカは御承知のとおり双子の赤字で、カールッチ新国防長官さえ国防費の
削減
ということを言明せざるを得なくなってきているような状況。それから
ソ連
も最近の石油の値下がりで国際収支が非常に悪くなってきて、相当対
西側
に対する債務もふえておるという状況が報ぜられておる。ここでやっぱりどうしてもペレストロイカで
軍備
削減
というものをやらなきゃいかぬ必然性があるというふうに思うのです。そういう経済的な要因というものがあるわけで、先ほど
外務省
でしたか、
ソ連
の経済的要因というものについては触れられましたけれども、より我々の目から見るとアメリカの方が深刻ではないかというふうに思うのです。ドルの暴落、それから今言ったようなとにかく
世界
一の純債務国になってしまったというような現状です。そういう状況から見ると、今言ったようにアメリカとしてはアメリカ自身の軍事費を減らしていかなきゃいかぬわけです。そのしわを、
日本
なりその他の
同盟国
に負担を増大させるという問題が当然出てくるだろうと思うのです。 現に今、今度の予算の問題として米軍の駐留経費の負担増という問題がクローズアップされてきているわけですけれども、そういうアメリカの肩がわりという問題について
政府
として一体これからどう対応していくのか。今までと同じように、なるべく防衛費をふやして、アメリカの要求もなるべくのんでいくという
姿勢
のままでいいのかどうか。その辺のところの問題についてどう
認識
しているか、この点をお尋ねしたいのです。
村田直昭
64
○
説明員
(村田直昭君) 先生の御質問にお答えするわけでございますが、先ほど来申し上げておりますのは、私どもとしては
SS
20のみをもって
ソ連
の潜在的脅威ということを申し上げているわけじゃございませんで、これは一九七〇年代末の戦域司令部の設置でありますとか、それから先生御指摘のバックファイア爆撃機の
配備
とか、陸、海、空通常
戦力
の質、量両面にわたる増強、あるいはこれらに伴う航空機の
活動
の活発等、全般的に判断してこのように申し上げておるということで、
SS
20の増強の一事をもって潜在的脅威の増大としてきたわけじゃございません。 そこで、
SS
20が今般、将来にわたって
廃棄
されるということについて言えば、そのこと自体はそのものによる脅威というものがなくなってくるということは申し上げられると思いますけれども、全般的に判断すれば、なお膨大な量の極東
ソ連
軍というようなことを考えれば、将来の動向をよく見なければ直ちに脅威が減るというような判断をすることはできないのじゃないかというふうに判断しております。 それから、
我が国
の防衛力整備については、当初から申し上げておりますとおり、
通常兵器
による限定的かつ小規模な侵略に有効に対処し得る防衛力の整備を目標として、現時点においてはその過程にございまして、その達成をまだ見ておらないわけでございまして、これは平時における最小限度の防衛力の保有を目指しておるものでございます。したがいまして、それに達するに至るまではなお鋭意防衛力の整備に努めていかなければいかぬということで、決してアメリカの防衛費の減少に伴うものを肩がわりしていくというような性格のものではないと考えております。
和田教美
65
○和田
教美
君 まだあと二、三分ありますから
外務省
にお尋ねしたいのです。 SDIの問題、アメリカからいろいろ
情報
をとっているだろうと思うのでお答えを願いたいのですけれども、この問題はやっぱり今後の
戦略兵器
五〇%
削減
の
交渉
に非常に密接に絡む問題だというふうに私は思うわけです。それと
関連
していわゆるABM制限
条約
の問題について、一体今度の首脳会談でどの
程度
の
進展
があったか、あるいは
進展
がなかったのか。
ABM条約
については、アメリカは広義の解釈、それから
ソ連
は厳密な狭義の解釈ということで今まで対立をしてきておったわけですけれども、
共同声明
を見る限りは、七二年の調印時のままに解釈する、それを確認するということが書いてあるだけですね。七二年の調印時のままに解釈するというのは一体どういう
意味
なのか。全体としては私はABMの問題、SDIの問題というのは先送りになったと思うのですけれども、今後、これが非常にネックになって、
戦略兵器
削減
交渉
がだめになるという
可能性
もあるのか、その辺をどう
見通し
ておられますか。
遠藤實
66
○
説明員
(
遠藤實
君) 防御・宇宙
兵器
につきましては、今回の
米ソ
会談で
両国
が非常に突っ込んだ
意見
交換
をしたと承知しておりまして、結果といたしましては、
ABM条約
等に関しまして
ジュネーブ
の
米ソ両国
の
交渉
団に対して
合意
を作成しろという指示を与えることになったと承知しております。したがいまして、
ジュネーブ
における
交渉
の推移を見守りたいと思っております。
ABM条約
の解釈につきましては、いろんな解釈があったことは事実でございますけれども、
ソ連
のSDIに対する
立場
というのが実は種々変化しておりまして、今後、首脳会談における話し合いを踏まえて
ソ連
側が
ジュネーブ
の
交渉
の場においてどういう態度をとるかということを見守っていきたいというふうに考えております。
上田耕一郎
67
○
上田耕一郎
君
明石
さんにお伺いしたいのですが、
明石
さん、この三月から
国連
の
軍縮
担当の次長になられたそうで、新聞を拝見すると、これまで中立国スウェーデンがこのポストをとっていた、スウェーデンでは、なぜこの重要ポストを
日本
に明け渡したのかと
国会
で問題になったということが書かれていて、
ソ連
などは、
日本
人だからアメリカの傘のもとに立つのではないかという危惧もあるということです。我が
外務省
と
防衛庁
は、きょうの発言を聞いていてもかなりコンサーバティブで、ときにアナクロニズムの臭いも発散しておりますので、私は、知識がないのですけれども、非常に重要なポストでお仕事される際、
日本
の
政府
との
関係
はどうなっているのか、また、どういうお
立場
でこの非常に重要なポストのお仕事をされようとされるのか、まずお伺いしたいのです。
明石康
68
○
参考人
(
明石康
君) 私は国際公務員でございますから、
日本
政府
の訓令のもとに仕事をするのではなくて、
国連
事務総長
によって任命され、
事務総長
の指示に従って中立的な
立場
から仕事をするということになっております。
国連加盟国
は百五十九カ国ございますので、そのすべての加盟国の意を体しながら、できるだけ中立不覊な
立場
から仕事をするというのが我々の職務だというふうに考えております。 しかしながら、
国連
の現在の
事務総長
デクエヤルさんが特に
日本
出身の人間に
軍縮
を担当させたということは、
事務総長
によりますと、
日本
の増大する国際的な発言力と
役割
、平和に対する
貢献
、それからやはり広島、長崎というものの洗礼を経た
日本
というものの平和に対して持つ非常に深い信念というものにかんがみて任命したんだということをおっしゃっておられます。そういうことですから、私は問題によっては、
軍縮
問題について
日本
政府
のとるすべての問題に関してすべてを同意する必要はないと思いますし、しかしながら、
国連
全体の総意に基づきながら仕事をすべきだというふうに考えております。
日本
の
国連
における
軍縮
に対するスタンスを眺めますと、やはり
日本
もいろいろ気をつけて
軍縮
を大事にしながら行動しておりますから、そういう
意味
では
日本
人として自分の肩身が狭くなるような場面には幸いにして今まで遭っておりませんし、その点、自分の国籍と仕事が非常に矛盾するという状態には現在なっておらないというふうに申し上げてよろしいかと思います。
上田耕一郎
69
○
上田耕一郎
君 矛盾が生まれたときには、ひとつ勇気を持って仕事をしていただきたいと思います。 我々は、今度の
INF条約
は二つの側面があると思っています。
一つ
は、戦後初めての
一つ
の
分野
での
核兵器
を廃絶する
核軍縮
だという点で、これは非常に積極的に評価します。 もう
一つ
の側面は、しかし必ずしも
核兵器
全廃にはまだつながっていない。特にレーガン政権は、去年の十一月十七日のシカゴ大学でのシュルツ国務長官の演説、これは非常に重要なものだと思うのですけれども、それを見ても、簡単に言うと、
ソ連
が追いついてきて非常に不安定になった
分野
は大幅に
削減
したりやめたりしよう、
西側
が優位に立っている航空機、またクルーズ
ミサイル
の
分野
に力を入れていこうという態度表明をしておりますので、まだまだ多くの問題を持っているというふうに見ているのです。 和田
委員
も指摘しましたが、今度の
条約
の冒頭にはこう書いてある。「核戦争が全人類に破滅的結果をもたらすことを強く念頭に置き 戦略的安定の
強化
という
目的
をもって」と、二つ書いてあるんです。私はこれは形容詞じゃないと思うのです。
共同声明
にも「両首脳は、核戦争に勝利者はなく、決して起こしてはならないという厳粛な確信」ということにも触れております。だから私は、
米ソ
の間でまだまだ大きな
意見
の違いはあるけれども、少なくともこういう核戦争は防ぐ、それから勝利者はない、戦略的安定を
強化
しなきゃならぬという点では一致点ができて、これが
INF条約
と
戦略核
の五〇%
削減
、さらには全廃までいくかどうかわかりませんけれども、そういう目標がレイキャビクでも
合意
されたのではないかというふうに思うのです。 私が見たものの中で非常におもしろかったのは、シュルツ長官のもおもしろいのですけれども、
ソ連
のノーボスチ通信社のファーリン社長が、
SS
20の
配備
というのは政治的に最善の形の行動じゃなかったという多少反省的な言葉を述べたと。しかし、それが最善じゃなかつたからこうなったというのじゃなくて、やっぱり「核の冬」、ニュークリアウインターが地球の壊滅の
可能性
を証明したことが
ソ連
がこういう態度に変わった原因なんだということを述べている点です。これは非常に重要だと思うのです。 それで、シュルツ国務長官も、抑止が失敗したら人類全体にとってこの上なく破滅的になるということも述べていますし、先ほどMADの話も出ましたけれども、MAD、
相互
確証破壊戦略に基づく、三十分でICBMを撃ち合えば本当に人類壊滅というような非常に不安定化した状況から、やっぱり
米ソ両国
とも抜け出す必要があるという
認識
が生まれたということじゃないかと思うのです。シュルツ演説を読みますと、とにかく先制攻撃用の迅速殺りく能力を取り除く、第一撃で
お互い
に破壊し合うというのは取り除くことを考えて言っているのです。ここら辺になってくると、言い分をそのまま信じられるかどうかは別として、
国連
の
軍縮
担当としてごらんになっていて、抑止力理論のある変化が
米ソ両国
あるいは
国連
の中で強まりつつあり、今は転期の時期ではないかというふうに思うのですけれども、そこら辺どうごらんになっていらっしゃいますか。
明石康
70
○
参考人
(
明石康
君) 私は、
ジュネーブ
とレイキャビクで
レーガン大統領
と
ゴルバチョフ書記長
の、核戦争に勝者はない、したがって核戦争を戦ってはいけないという言葉は、非常に玩味させられる言葉でありますけれども、あの言葉の前文は不必要ではないかと思うのです。勝者があったら、じゃ戦っていいのかということになりますと、決してそうではないので、核戦争は戦ってはいけないということが一番の命題ではないかと思うのでございます。
ゴルバチョフ書記長
がしきりに言っておりますのは、
世界
が非常に
相互
依存の時代になったということなんでございますね。それで、
安全保障
の面でもそうであるし、経済面でもそうであるし、それからエコロジカルな生態系の
意味
でもそうであるということを言っております。私は、
ソ連
のペトロフスキーという外務次官と中曽根総理が
国連
でこの秋演説された直後に会ったんですけれども、中曽根総理がグローバルビレッジ、地球的な村に
世界
がなってしまったという言葉を言われたんです。ペトロフスキー外務次官は非常にいい言葉だと感心しておりまして、そういう
世界
が小さくなったという意識をやっぱり相当強く持っておるんじゃないかと思うのです。 それから、さっき軍事的、経済的な必要が
米ソ
ともにあって今度の
INF
協定
になったという話がありまして、私も全くそれには同感でございますけれども、
ソ連
にとっては近代化の要請というのが非常に強い動機じゃないかというふうに思うのです。今のままでいくと、
ソ連
社会がもうにっちもさっちもいかなくなるという危機感があって、やはりそういう
軍備
費の縮小、それから
国際緊張
の緩和ということが、どうしても全くみずからのセルフインタレストとして出てきているんじゃないかという感じが強くするわけでございます。 それから「核の冬」でございますが、これに関しましては、「核の冬」というのはややジャーナリスチックな言葉でありますけれども、昨年の秋から
国連
の中に我々は専門家
委員会
をつくりまして、
日本
の学者も一人その中に入っております。この
委員会
に来年の春、最終的な報告書を出すことにしてもらっておりますけれども、「核の冬」に関する科学者間のいろんな
意見
の総合的な、最も客観的な結論を
国連
の
立場
から出したいと思っております。 それから、核抑止政策というものの行き詰まりを感じたからこういう事態になったんじゃないかという御指摘であります。ある
意味
で言えば全くそれはそのとおりでございますけれども、私はさっきから、そういう抑止理論は正しいか間違っておるかということについては、それは言葉の問題ではないかという感じをちょっと持っております。 実は、
国連
の中にまた
一つ
、抑止の問題についての専門家
委員会
をつくりまして、その報告書が去年出たわけでございます。残念ながらこの抑止の問題については
一つ
の係結論が出ませんで、結局、
西側
の専門家、
社会主義圏
の専門家、それから非
同盟
の国の専門家の三者の三論併記の形になって終わってしまいました。その三論の中で
社会主義圏
の専門家の言葉を引用さしていただきたいと思うのですけれども、それを読みますと、
西側
の国が抑止と言っているものとそんなに違わないという感じも持つわけでございます。 ちょっと引用させていただきますと、「ワルシャワ
条約
機構の
国々
は核抑止の政策は追求しておらないが、そういう
条約
機構が非常に強力な防衛力を持っておるということが敵側にとって抑止力と見られているということは事実である。それで、軍事的な
均衡
というものが現在の状況では平和を維持するファクターになっているということは必要である。」ということを
一つ
言っております。それから、これも
社会主義圏
の専門家の言っておることなんでございますけれども、現在の平和というものは戦略的平衡、イクイリブリアムですね、バランスによって保たれておる、第一義的には軍事的な対立を大幅に減少することがどうしても必要である、それで、現在の
世界
においては、本当の平等な安全というものは決して最高の
レベル
の軍事的な平等によって保たれるんじゃなくて、最も低い
レベル
の軍事的なパリティによって保たれなくちゃいかぬのだと。そのパリティからは核その他の大量殺りく
兵器
は除外されなくちゃいかぬということでございます。 ですから、核の危険性については十分に
認識
しておるわけなんでございますけれども、軍事的な
均衡
とかバランスという事実は否定しないわけでございます。そういう
意味
では、
西側
の言っておることと
東側
の言っておることはそんなに違わない。
方法
論的にはどちらも
均衡
状態をより低い、より安定した
均衡
に持っていこうという考え方に基づいているという
意味
では、
共通
の基盤があるというふうにも考えてよろしいかと思います。
上田耕一郎
71
○
上田耕一郎
君
外務省
に、もう時間が余りございませんので一問だけ。 先ほど言いましたように、シュルツ国務長官は、核のより少ない
世界
というのは核抑止力の終わりを
意味
しない、航空機と巡航
ミサイル
を多数維持することで、それで強力な核能力を持ち続けるということを言っているんですね。それで先ほどからも話になっておりますように、
日本
周辺は核積載の航空機とトマホークの巣みたいになっているわけです。三沢のF16もそうだし、ミッドウェーもそうだし、トマホーク積載の原子力潜水艦もそうですね、攻撃艦だけじゃなく。 そこで、今度
共同声明
で、SLCMについて上限を設けようという一致点が書き込まれたわけです。この中には、SLCMを将来上限を設けようとする際に、国家技術手段の行使や協力手段、
現地査察
などを含めて
検証
方法
を探求するということになっているんです。そうなりますと、私の非常に気になるのは、アジアで
日本
はこのSLCMの最前線の基地になっている。十月、十一月にはトマホーク発射実験をやったギタロという攻撃型原潜がもう既に横須賀に二回入っているというような状況です。もし
現地査察
を含む
検証
ということになると、
日本
の横須賀に入ってきているスタージョンクラスとか、そういう攻撃型原潜も
査察
、
検証
をやることになるわけですな。 そうすると、
日本
政府
は非核三
原則
でないということで、大体事前協議が来ないから
日本
には
核兵器
は持ってきておりませんという態度を、
国会
じゃそういうことをずっと言っているんですけれども、これは国際的には私は通用しないペテンだと思うのです。それを、いや
日本
にはない、ミッドウェーにもないし、攻撃型原潜、トマホーク積載のこれもないということで、
検証
や
査察
を拒否しかねないという危険を私はずっと感じているんです。六月にアメリカへ行ったときも、国務省でこの問題を私は聞いたことがあるんだけれども、どうですか
外務省
、そういう際、
現地査察
を
日本
のトマホーク積載の攻撃型原潜、SLCM、あるいはミッドウェーもそうですけれども、あれなどが国際的に問題になってきたとき、SLCMの
現地査察
なんか
受け入れ
るんですか、拒否するんですか。
森本敏
72
○
説明員
(森本敏君) 先生の今御指摘のSLCMの問題につきましては、今回の
米ソ
会談で、
米ソ両国
は長距離核搭載のSLCMの
配備
の制限に関する問題について
相互
に受諾可能な解決策を見出すこととする。かかる制限は弾頭数六千、戦略攻撃
兵器
運搬手段千六百の制限内に今申し上げた長距離核搭載SLCMを数として含めないということを
合意
し、かつ
米ソ両国
はかかる
ミサイル
の上限を設定し、かつかかる制限につき
相互
に受諾可能で効果的な
検証
方法
を探求することにつきコミットした。
検証
方法
は、今先生御指摘のとおり、NTM、いわゆる国家
検証手段
の使用、協力的な
措置
、
現地査察
を含み得るものとするということを
共同声明
の中で述べておるわけですが、御承知のとおり、SLCMの
検証
という問題は技術的に非常に難しい面があり、我々としては、今後
ジュネーブ
における
米ソ交渉
の成り行きを注目したいと思っております。 今申し上げましたように、SLCMの
検証
というのはどういう
方法
になるかということは、必ずしも
米ソ
双方ともまだ話し合っておるとは承知しておりませんで、技術的に非常に難しいものがあるということについては、先生御指摘のとおり我々としても承知しておるところでございます。
上田耕一郎
73
○
上田耕一郎
君 もう時間があれですけれども、私が聞いたのは、これからやるんでしょうけれども、万一
現地査察
ということになって、横須賀のトマホーク積載のSLCMの
現地査察
ということになったらどうするんですかと言うのです。非核三
原則
があるからうちは要らないよという態度をとるのかどうかという質問なんです。
森本敏
74
○
説明員
(森本敏君) 現在
米ソ
で行っております
戦略兵器
削減
交渉
につきましては、今私が御
説明
申し上げたとおり、まだこれから行われる問題でありますが、核の持ち込みにつきましては従来から
政府
で御
説明
しておるとおりでございます。
上田耕一郎
75
○
上田耕一郎
君 終わります。
関嘉彦
76
○関嘉彦君 きょうは
外務省
、
防衛庁
からも来ておられますけれども、
外務省
、
防衛庁
に対しては、質問したいこともありますけれども、いずれまた後の機会があると思いますので、きょうは忙しい中をわざわざ御列席いただきました
明石参考人
に対して専ら質問したいと思います。 私のちょっと聞き間違いかもしれませんけれども、
明石参考人
の言われたことの中に、非
同盟諸国
は
米ソ両国
主導の
軍縮交渉
に反発をしているんだというふうなことを言われたように思うのです。
核兵器
の
軍縮交渉
と言えば、やはり
米ソ両国
が超大国ですから、これが直接
交渉
するのは当たり前であって、そういう場に非
同盟諸国
が入っていくというのは、かえってその
交渉
のまとまるものもまとまらせないようにするんじゃないかということを考えるんですけれども、どういう点で反発をしているのかということが第一問でございます。 それから第二問は、
日本
の
外務省
の
説明
としまして、この
INF交渉
がまとまった、つまり
ソ連
の方の
立場
が変更してきた、かなり
ソ連
が譲歩してきた、その理由として
一つ
は、一九八三年以来レーガンがヨーロッパにパーシングⅡであるとかクルーズ
ミサイル
であるとかそういうものを
配備
したということと、それから
西側
の結束がこの
交渉
を
成功
させる原因であるというふうな
説明
をされましたけれども、
国連
筋と申しますか、あるいは
明石
さん自身はその解釈に同意されるかどうか。
国連
事務次長としてあるいはおっしゃりにくい点があるかもしれません。そのときにはお答えにならなくても結構ですけれども、可能な限りにおいてお答え願いたい。 それから第一二番目は、私はゴルバチョフになってから確かに
ソ連
の態度に多くの変化が見られるように思うのですけれども、
国連
内部における
ソ連
の
国連
大使を初め
ソ連
側の人々の態度に何か大きな変化が見られるかどうか、そのことが第三問。 それから第四問、これは
INF
と直接の
関係
はございませんけれども、
日本
がやはり
国連
を
強化
していく上において、単に金を出すというだけの協力では不十分ではないか。やはり
国連
の平和維持機能なんかに対しても、単に機材の派遣だけではなしに、人員なんかも派遣していくことが
国連
の平和維持機能を助けることになるんじゃないか。もちろん国内法の制約がありますから、現在ではできないことはわかっております。しかし、
日本
としてもっと積極的に
国連
の平和維持機能なんかに寄与すべきではないかというふうに私は考えているんですけれども、
明石
さんとしてはいかがお考えでしょうか。 以上、四点御質問したいと思います。
明石康
77
○
参考人
(
明石康
君) 今の関先生の第一問でございますけれども、私が申し上げた点は、ことしの秋の
国連総会
第一
委員会
の
軍縮討議
におきまして、この第一
委員会
の
審議
を
合理化
、簡素化するための
決議
が採択されたわけでございます。そのときに
西側諸国
、それから
社会主義圏
の諸国がこれを支持したわけでございますけれども、非
同盟諸国
中有力な
幾つ
かの国、インド、パキスタン、スリランカ、ブラジル、アルゼンチン、ユーゴスラビア、メキシコ、これらの
国々
が棄権に回りました。ちょっとびっくりしたんでございますけれども、どうしてそうなったかということを考えてみますと、
合理化
ということはそれ自体はいいのだけれども、やはり
国連
の全加盟国が
審議
に参加できる第一
委員会
を余りにも
合理化
するという名目のもとに、いろんな問題の
審議
が十分にできないままに大国
中心
に処理されてしまうと非常に困る、そういう大国
外交
、頭越し
外交
に対する不信感というものが非
同盟諸国
の中にあったんじゃないかと思うのです。 そういう
意味
で、
国連
は
世界
の最高、最大の
審議
機関
でございますけれども、
審議
機関
はそういう大きな形で維持しておく必要がございますし、その一方、
ジュネーブ
の四十カ国
軍縮
委員会
、
我が国
も参加しております
軍縮
委員会
のようなものはやはり軍事的に、政治的に発言権のある国を
中心
に
交渉機関
として維持しておく必要もあるわけでございます。そういう一般的な
審議
機関
と
交渉機関
とのバランスをはっきり維持しないと、その両者の
役割
があいまいになるわけでございます。そういう
意味
で非
同盟諸国
は、第一
委員会
は一般的
審議
機関
として維持したい、余り
合理化
の名前において自分たちの口をふさぐような、そういう
合理化
だったらこれは困るという疑念が、不信感があったから棄権に回ったということが言えるんじゃないかと思います。 そういう
意味
で、
国連
は
米ソ
の意向、
日本
も含めたかなり大きな国の意向だけで動くんではなくて、小さな国の中にもいっぱい小じゅうとがおって、その
人たち
の
意見
もそんたくし、そのことにおいて
世界
的な世論をつくっていく場であるということは念頭に置いておく必要があるんじゃないかと思います。
関嘉彦
78
○関嘉彦君 ちょっと、それじゃよろしゅうございますか。つまり、
国連
の
合理化
なんかによって
軍縮
第一
委員会
なんかが縮小されるということに対する不満であって、
米ソ
が
核兵器
の直接
交渉
を我々の頭越しにやることに対する不満ではないわけですか。
明石康
79
○
参考人
(
明石康
君) おっしゃるとおりでございます。その証拠としまして、
米ソ
の
INF
に関しましては、これを歓迎するという
決議
が満場一致で採択されております。 先生の第二問でございますけれども、私は、
INF
がどうしてできたかということになりますと、原因、動機を究明しますと幾らでもあります。国内的な要因、国際的な要因、軍事的な要因、経済的な要因、いろいろあるんだと思いますけれども、やはりこれは時期が熟したとしか言いようがないので、
米ソ
の国内における要因、特に先ほど申しました
ソ連
のペレストロイカというものに対するそういう近代化の欲求、これがやはり国際政局の安定なしには達成できないという計算がかなりあったのではないか。あったからこそ譲歩に次ぐ譲歩を
ソ連
が重ねたということが相当あるのではないかというふうに考えます。アメリカの方としましても、カーターの時代に
米ソ
の軍事的なそういう
均衡
が
西側
に不利に崩れた。それに対して当初の
段階
においては、
レーガン大統領
はそれを
均衡
の状態に戻すということに懸命に
努力
して、それがある
程度
できた。そういう心理的な余裕から
INF
に応じるという
姿勢
に転じ得るきっかけが出てきたんじゃないかというふうに感じます。
米ソ
ともに軍事的な国内的な必要はございますけれども、私は
ソ連
の方の必要がより大きいのではないかという感じが、全くこれは私見にすぎませんけれども、いたします。 それから、先生の第三問は、
国連
における
ソ連
人の態度が変わったかどうかということでございますけれども、私の非常に限られた接触からいたしましても、これは最近とみに変わったという感じはいたします。非常にイデオロギー的なこちこちした態度の
人たち
が少なくなって、テクノクラートといいますか、非常に実務的な、当たりのやわらかい、問題についても相当造詣の深い専門家としての
ソ連
の人間がふえてきている。先ほど申しましたとおり、国内の事情についていろいろ率直に話してくれる人間も出てきておりますし、そういう
意味
では、対話の相手として不足のない人間が非常に出てきておるし、能力とが専門的な造詣からいっても相当よく勉強している人間がふえてきていもという感じがいたします。 それから、先生の
最後
の第四問でございますけれども、
国連
における
日本
のイメージでございます。
日本
は
国連
では現在優等生でございまして、
国連
を支持してくれるし、会もきちんと出すし、そういう
意味
では期待が確かにございますけれども、特に
日本
の場合は、戦後
日本
の国の成り立ち方からいっても
国連
主義であり、
国連
を重視する、より
強化
された
国連
なしには
日本
の平和も経済的な繁栄もあり得ないという国是に立っておりますから、そういう
意味
では
日本
のイメージは確かに悪くはございませんし、また分担金が大きくなったということで
日本
に対する財政的な期待もございますけれども、決してそれだけではなくて、やはり平和のために大局的な
見地
に立っていろいろ政治的にも行動してほしいという気持ちは
事務総長
あたりにございますし、イラン・イラク問題なんかでの
日本
の調停のためのいろんな
努力
というものも非常に高く評価しております。 それから、在来
日本
がジャパン・アイテムともいうべき
日本
独自の提案を
幾つ
かしてきております。
国連
大学をつくることもその
一つ
のイニシアチブでございましたし、天然資源探査回転基金というものをつくる上でも、
日本
は
中心
的な
役割
を果たしましたし、ごく最近では、自然災害救済のための国際的な調整を
国連
の手でやったらどうだという
決議
をやはり
日本
が
中心
になってつくりましたし、こういったことは先進国にも途上国にも一様に歓迎されておることだと思います。
最後
に、平和維持に関しましては、確かにお金を出すだけで、人も出さないし、機材も出してくれないしということでは、
日本
に対して注文があることは事実でございますけれども、
日本
の国内法上の制約とか心理的ないろんな要因、野党の態度なんかも
国連
側としても承知しておりますし、
日本
の世論が変わってくればもっと財政的以外にもやってくれるようになるだろうし、またそうなってほしいという期待はありますけれども、無理強いに
日本
に現在こういうふうにしろとか、そういう態度ではないと思います。
田英夫
80
○田英夫君 大変短い時間でありますので、若干感想、
意見
を最初に申し上げたいと思います。 先ほど矢田部さんの質問に
明石
さんがお答えになった国際世論ということの視点、これはぜひ
国連
の
軍縮
担当というお
立場
から重視していただきたい。これは
外務省
、
防衛庁
の
姿勢
の中にはほとんどそういうものがゼロでありますが、今度なぜ
INF
であったのかということを考えましても、もちろん
明石
さんの言われるとおりいろんな要因があって、ついにここに時期的に来たということでしょう。しかし、振り返ってみると、
ソ連
が
SS
20をヨーロッパに配置していくという中でパージングーⅡあるいはトマホークということに対抗上なって、それに対して西ヨーロッパのいわゆる草の根の市民運動というものが猛烈な勢いで燃え上がって、二十万、三十万という集会が国を越えてあちこちで起こったという、その辺にさかのぼってみますと、これは一にかかって
対象
が
INF
であったわけです。そこから
INF
というところに結びついてきたと私は思っています。したがって、この
米ソ
の
交渉
の中で、
INF
が妥結したから延長線上に
戦略核
の五〇%はできても、ゼロではもちろんない。あるいはSLBMまで含めて、そういうものが
削減
から廃絶へとつながるかというと、私は大変悲観的に見ざるを得ない。 これはかつて、おととしですか、ニュージーランドに行きましたとき、オークランドの女性の市長が、
米ソ
の
交渉
によって核が廃絶されるとは思わない、核を廃絶できるのは
世界
の草の根の市民の力しかないという言い方をされたのを私は覚えているんです。これは、女性の市長で表現が大変情緒的かもしれませんけれども、ある
意味
で真理をとらえているのではないか。
米ソ
自身今度、政治的、経済的、軍事的という言い方でさっき森本さんから
説明
がありましたとおり、利害が一致したわけです。そこであそこまで行った。しかし、核を完全に廃絶するということは、
米ソ
、しかもその指導者の側からは絶対に出てこないと思います。自分の右腕を自分で切り取ってしまうという人はいないという表現もそのときにその女性市長はしておりましたし、殺す側と殺される側という厳しい表現もありました。つまり、
米ソ
の指導者は殺す側であって、我々は殺される側だ。したがって、殺される側の論理が優先しなければ核廃絶にはつながらないという言い方もありました。こういう点が私は今後非常に重要なことになると思います。 実は、
明石
さんは第二回
国連軍縮特別総会
のときにはまだ
軍縮
担当ではなかったと思いますけれども、
日本
の
鈴木総理
の演説も大変立派でありましたが、むしろ
国連本部
の建物の中よりも、ニューヨークの町を埋めた、
世界
じゅうから集まった二百万の市民の
動き
の方がすさまじいものがあったということを、当時私も行って記憶に残っています。それから
日本
から
軍縮
議員連盟が行きまして、そのときに
各国
のそうした
議員団
と交流をして、そこに
米ソ
の
軍縮
担当の大使を呼んで話を聞いたときに、
米ソ
は
お互い
にすさまじい勢いでなじり合ったわけです。これに対して、カナダの若い議員が突然手を挙げて発言を求めて、あなた方は一体何を考えているんだ、あなた方が核戦争をやれば我々の頭の上を核が通って、そしてそのおかげで我々全員が死ぬんだ、そういうことを考えたときに、こんなところで非難し合っているのはわからぬ、何を考えているんだとどなりまして、
米ソ
が頭を下げたという光景がありました。我々も、
明石
さんが目冒頭に言われたとおり、
国会議員
というのは要するにそうした国民、市民の声を代表していると思いますので、そのとき見る限り、
米ソ
の
軍縮
担当大使はみじめにもそのカナダの国民の批判の前に黙ってしまったという図式だったという気がいたします。こういう視点というのをぜひひとつ
外務省
、
防衛庁
、行
政府
もそうですし、
国連
の場におられればもう御存じのことと思いますけれども、重視をしていただきたいというのが私の気持ちです。 そういう
意味
で、もう時間がありませんので大きな問題について御質問することはできませんが、第三回の
軍縮特別総会
が来年五月にある。第二回のときには、それと前後しまして
世界
の各地で地域
会議
を
国連
主催でおやりになったという記憶があります。アジアのものは、前任者のスウェーデンの次長ですがおいでになって、バンコクで開かれて、
日本
からは
軍縮
議連と
国連
協会の中川さんが行かれ、大石武一さんと私と行ったんですが、そういうことをまたおやりになる計画があるのかどうか。そしてその場合、
総会
は残念ながらニューヨークということになっているようですが、以前から第三回は広島で開いてほしいということを広島市長などは要望しておられた。アジアでもし地域
会議
を開くとすれば、それを広島、長崎でやることができないか、そういうお考えはないかということを最初にまず伺いたいと思います。
明石康
81
○
参考人
(
明石康
君) 田先生とは随分長い間のおつき合いで、国際世論と
軍縮
との
関係
については先生の方がよく御承知のとおりだと思います。確かに
軍縮協定
を結ぶのは
各国
政府
でございますけれども、それを背景から支えるのは、何と申しましても
各国
の草の根の民衆の要望、世論でございます。そういう
意味
では、第二回
軍縮
特総に劣らず第三回の
軍縮特別総会
におきましても、そういう
世界
じゅうの民衆の声というものが、直接的には
各国
の民間団体、非
政府
団体の代表の声を通じて
特別総会
に反映されるんではないかというふうに考えております。 私は、第二回
特別総会
はあんな二百万人の人間がニューヨークでデモ行進を行ったということは、それ自体大きなドラマチックなことであったと思いますけれども、それが持続しなかったということが非常に残念なことだったと思います。
軍縮
への熱意を情緒的にあらわすということも大事でございますけれども、
米ソ
の
立場
をいかにして近づけるかとか、
軍縮
という目標においては一致しておるけれども、それをいかにして達成するかという
方法
論について、やはり民間の団体の方々にもよく研究していただいて、そういうより具体的な、より実際的な提案をどしどし出していただきたいということで、今度の第三回
軍縮
特総には、そういうNGOの方々にも
お願い
してございますし、学界、科学者団体その他の方々にも、現在の
段階
では全く夢事にすぎないかもしらぬけれども、五年後、十年後の
世界
には
現実
のものになり得るような
軍縮
提案をどしどし考えていただきたい、そのために科学者の
会議
その他もぜひやってほしいというふうに言っております。そういう
意味
では量的な参加も大事でございますけれども、質的な参加、知的な参加というものを
各国
の民衆の
人たち
に求めたいというのが我々
関係者
の
一つ
の願いでございます。 それから、アジアでそういう
軍縮特別総会
ないしはそれに類するような
会議
ができないだろうかということでございますけれども、ことしの三月に北京でアジア地域の
軍縮
地域
会議
というのをやりまして、それが大変有
意義
なものでした。
日本
からも
軍縮
議連の議員さんが三人御
出席
いただいたわけですけれども、できればこれも
軍縮
特総の後であっても、ひとつ
日本
でやりたいということを
軍縮
議連の方々から私の方にも申し入れがございましたし、私はぜひこれはいつかやってほしいと思っております。
日本
の
軍縮
論議の非常に不幸な点は、一方の
人たち
がハト派という烙印を押され、もう
一つ
の
人たち
がタカ派という烙印を押され、その両者の間に対話がない、本当の
意味
のかみ合った議論がないということではないかと思うのです。そういう
意味
ではこんなに不幸なことはないので、この両者の間の
共通
の広場というものをつくり、本当にかみ合った具体的な議論をする時期に今なりつつあるんじゃないか。そういう
意味
で
日本
で外国人もいっぱい含めた、
世界
じゅうの
軍縮
の専門家を含めた大会をやる、その中に政治家の方々にも入っていただくし、民間団体、マスコミ、学界の方々にも入っていただく、そういうことで
軍縮
の
共通
の広場をつくっていただければ、
国連
の場でも
日本
に対する漠然たる期待はあるわけなんですけれども、これを具体的な
日本
の提案に持っていくためにぜひかんかんがくがくとした議論を展開してほしいというふうに思っております。ですから、時期的には来年の後半部ないしは再来年あたりにそういったような
会議
を、場所についてもいろいろ議論があるかとも思います。広島でも長崎でも東京でも京都でもどこでもいいと思いますけれども、そういうことを考えていただければ
国連
側としても非常に幸せだと思っております。
田英夫
82
○田英夫君 ありがとうございました。
青島幸男
83
○青島幸男君 御
出席
いただきました皆さんのお話と各
委員
との間の質疑等で、私、かねがね疑念に感じておった部分もかなり消化いたしまして、理解も行き届いたと思って、
出席
したことに大変感謝をしている次第でございます。 今度の
INF
の全廃を見ましても、たったこれが数%にしか満たないということで、あとICBMだのSLBMだのというものの数の膨大さと、よくもこんなにたくさんのものをつくってきてしまったものだなというその量と力に愕然とした思いがしたんです。これはどなたもそういう
認識
はお持ちになっているだろうと思うのです。 それで、これが全廃になるということは大変すばらしいことだという
認識
で私もいるんです。あだをなすものはとにかく頭をつぶしておかなきゃいかぬ、殺しても生き返ってくるかもしれないからということなんですけれども、今度も全廃はする、しかも
お互い
に
査察
もするんだけれども、そのロケット部分は地上で爆破さしたり、あるいはここの文書にも、発射によって
廃棄
するというようなことも言われております。弾頭部の部分の処置、これはそれが残っていりゃいつだってロケットなんかつくれるんじゃないか、一回話が壊れたらどうなるんだろうという恐ろしさもまたぬぐい切れなくあると思いますので、これはどなたにお聞きすればお答えいただけるのかちょっと私もわかりませんけれども、その弾頭部の処理についてはどのように双方の国ともこれを行っていくのか。それもどういう
査察
の仕方で、ただロケットが発射できる状態であるというのを
お互い
にやめにする、あるいはそういう状態をつくり出すことがないように
査察
するというのはわかるんですけれども、弾頭部分の処置についてはどういうふうに双方の国は考えておるのかというのが疑点として残るのです。どなたかおわかりいただける方がおいででしたら、その一点だけお答えいただければ、私の質問は終わりたいと思います。
遠藤實
84
○
説明員
(
遠藤實
君) 実は詳細は私どもも必ずしも十分把握しておりませんけれども、弾頭部分は取り外しまして、つまり核弾頭、核物質が詰まっている部分、それから計器の部分、接合部分等がございまして、そのうち計器の部分は取り外す、それで接合部分はたしか破壊する、それから核物質の部分は別途の処理をする月これはむしろ核物質そのものをやたらにまき散らされても困るわけであります。したがってそのような手続をとるというふうにごく大ざっぱに理解しておりますけれども、詳細は、現在ちょっと手元に資料がございません。もし御入用でございましたら、さらにもう少し詳細
調査
いたしたものをお届けするなり何なりいたしたいと思います。
青島幸男
85
○青島幸男君 かなり難しい問題のようですね。つくるのは大変手間がかかる、破裂させれば一瞬のうちに終わってしまうのですけれども、これを安全な形でもとに戻す、あるいは安全な形で保存するということが大変に難しいということを私は聞いておりましたんで、その疑念はぬぐい去れないので今話題にしたわけです。今でなくても結構ですけれども、この疑念はどなたもお持ちかと思うので、わかる限り御
調査
になって、もし理解の行き届くような資料がいただければ
お願い
したいと思います。 終わります。
加藤武徳
86
○
会長
(
加藤武徳
君) 以上で質疑は終了いたしました。
明石参考人
に一言御礼のごあいさつを申し上げます。 御多忙の中を長時間貴重な御
意見
をお出しいただきましてまことにありがとうございました。本
調査会
を代表いたしまして厚く御礼を申し上げます。 拝聴いたしました御
意見
は今後の
調査
の
参考
にいたす所存でございます。 また、
外務省
、
防衛庁
、御苦労さまでございました。厚く御礼を申し上げまして、ごあいさつといたします。 本日はこれにて散会いたします。 午後五時三分散会