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1987-11-30 第111回国会 衆議院 本会議 第2号 公式Web版

  1. 会議録情報

    昭和六十二年十一月三十日(月曜日)     —————————————  議事日程 第二号   昭和六十二年十一月三十日     午後一時開議  一 国務大臣演説に対する質疑     ————————————— ○本日の会議に付した案件  国務大臣演説に対する質疑     午後一時二分開議
  2. 原健三郎

    議長原健三郎君) これより会議を開きます。      ————◇—————  国務大臣演説に対する質疑
  3. 原健三郎

    議長原健三郎君) これより国務大臣演説に対する質疑に入ります。金子みつ君。     〔金子みつ登壇
  4. 金子みつ

    金子みつ君 私は、日本社会党護憲共同を代表いたしまして、去る二十七日行われました竹下総理所信表明に対しまして質問を行うのでございますが、その前に、一昨日起こりました南アフリカ航空機事故により遭難された方々と御家族の皆様に心から御見舞いを申し上げたいと思っております。  竹下総理総理大臣御就任おめでとうございます。(拍手)  質問に先立ちまして、総理、あなたが真摯に心をめぐらしていただきたいことがございます。  総理、あなたはこのたび宰相になられ、我が国政治を担当なさるに当たって、最も心を砕かれたことは何でございましょう。総理は「ふるさと創生」を訴えられ、思いやりとか豊かさを共有する社会を目指すことを再三強調なさいますが、その根底に流れているものは人間愛にほかならないと私は思います。私は、総理国づくり基本として、人間愛に基づく国民を大切にする精神を基盤に歩まれることを強く求めるものでございます。  いま一つは、間違っても国民に対してうそをついたり、欺いたり、裏切ったりしては絶対になりません。(拍手)これは中曽根総理の大きな欠陥の一つでございました。売上税法案が挫折いたしましたのもそのためであったと思っております。総理、あなたはまさかこのような姿勢を継承なさるのではございませんでしょうね。どうか国民を失望させないように、温かい政治を誠実に実行されることを強く要望いたします。(拍手)  さて、竹下総理、あなたを初め政府・与党は、中曽根内閣当時の大型間接税に関する政府統一見解を白紙に戻して、新たな解釈のもとに新型間接税の導入を画策しておられるとか伺っております。総理、あなたが大蔵大臣として中曽根総理と一緒につくられたこの統一見解は、そのように軽々しいものだったのでございましょうか。  私は、前総理が示された見解、「多段階、包括的、網羅的、普遍的で、縦横十文字に投網で全部ひっくるめて取ってしまう」という大型間接税に関する見解は、この新税の本質と性格を非常に正確に表現し、その意味においてはよくできていると思います。前総理は、そのような大型間接税は導入しないと、かたく国民に約束して選挙に勝利したはずでございます。  さきの通常国会売上税関連法案が廃案になりましたのは、政府自民党がこの公約を破り、全国民から総批判を受けたからにほかなりません。(拍手)それなのに、総理、あなたはこの統一見解を白紙撤回して、国民の審判の機会をあえて避けて、再来年の参議院選挙の前に新型間接税を導入したいとおっしゃっております。これは国民に対する二重の裏切りです。到底国民を大切にする政治などとは申せません。(拍手)  総理考えておられる新型間接税は、さきの統一見解とどこが同じで、どこが違うのか、明確に御答弁を承りたいと思います。(拍手)  そして、その導入にあくまで固執されるのであれば、解散・総選挙によって国民に信を問う、そのことが先決であると思いますが、いかがでしょう、お考えをお聞かせ願いたいと思います。(拍手)  さて、世界は今新しいページを開こうとしております。十二月八日にワシントンで米ソ首脳会談が開かれ、核兵器の削減という歴史的な第一歩が踏み出されようとしております。さらに来年、モスクワでも米ソ首脳会談が開かれ、米ソ間の信頼関係は一段と前進しようとしております。INF全廃は、世界に存在する核兵器の数%を対象とするにすぎませんけれども、現在ございます核システム一つが完全に廃棄されることの意義は極めて大きいと思います。総理は、これについてどのように評価をなさるのでございましょう。私は、平和憲法を高く掲げている日本役割がかつてなく重要になってきたと思います。  そこで、非核三原則についての竹下内閣の決意についてお伺いをいたします。  INF全廃条約では、米ソ双方が互いに現地査察をすることに合意しております。ところが、日本への核持ち込みについては、ライシャワー証言にあるようにしり抜け同然ではございませんか。アメリカの艦船や戦闘機などによる核持ち込みについて、日本がチェックすベきではないでしょうか。また、核支援システムとしての通信レーダー施設などの撤去を求め、SDI研究への参加も中止すべきだと思いますが、どのようにお考えでいらっしゃいましょうか。(拍手)  政府は、これまで、青森県三沢基地のF16戦闘機の配備につきましては、シベリア地方のSS20に備えたものとの答弁をされてまいりました。米ソ合意でそのSS別が廃棄され、その分の脅威が減らされることになります。したがって、三沢のF16撤去もアメリカに求めるべきだと思いますけれども、総理の御所見を伺わせてください。(拍手)  総理は、軍事大国にならないことを強調されておられます。それが真意であるならば、防衛費GNP一%枠内に戻すことこそ平和国家日本の何よりのあかしてはないかと思うのですが、いかがでございましょう。(拍手)  総理日本防衛費は、既に米ソに次ぐ世界第三位にまで迫っているのでございます。この上さらに米軍肩がわり予算の増大を図り、しかもこれを中期防衛力整備計画の枠外に計上するということは、軍事大国化への道を歩まないとおっしゃる御見解とは余りにも矛盾すると思いますけれども、いかがでございましょう。(拍手)  竹下総理、あなたは所信表明で「アジア太平洋の一員として地域の安定と発展に貢献する」とおっしゃいました。日本は、明治の日清日露戦争から昭和日中戦争、さらには太平洋戦争に至るまで、一貫して遠交近攻、つまり遠くと交わり近くを攻めるという外交戦略でございました。その結果、身近なアジアを常に犠牲にしてきたのだと思います。この考え方を総決算しない限り、日本国際的貢献経済大国日本の傲慢さと映るばかりで、到底アジア諸国理解信頼を得られないのではないでしょうか。  総理、あなたはまた長い間自民党の、みんなで靖国神社に参拝する国会議員の会の会長を務められ、朝は私人、昼は公人として二度も参拝するという大変な気配りをお示しになりました。しかし、総理中国アジア諸国人々にとって靖国神社がどのような意味を持つものかお考えになったことがおありになるのでしょうか。心の優しさとは、他人の痛みを自分の痛みとして共感することでございます。それが外交の基本でなくてはならないと思いますけれども、総理の御所見をお伺いいたします。(拍手)  総理、とりわけ日中関係は非常に重要でございます。先般、我が党の土井委員長中国を訪問いたしました際、光華寮の問題が改めて提起されました。歴史教科書靖国神社公式参拝光華寮問題など、日中間のあつれきの発生源がすべて日本側にあるということは、日中共同声明並びに日中平和友好条約の諸原則日本側がないがしろにしている結果にほかならないと思います。総理の英断をもって、この際、光華寮問題を早急に解決されるよう特に望むものでございます。(拍手)  一方、韓国では、今初めて、軍事独裁に終止符を打って、民主的な大統領選挙が行われようとしております。このときに当たり、来年のオリンピックを成功させることは、南北対話を前進させ、朝鮮の自主的平和統一の機運を高めることにつながります。したがって、我が国といたしましては、でき得る限りの協力をするべきであると思いますが、いかがでございましょう。  なお、第十八富士山丸事件につきましては、我が党の土井委員長の努力にもかかわらず、一向に解決のめどはついておりません。一体政府はこの問題について朝鮮側とどのように折衝をなされたのか、明らかにしていただきたいと思います。(拍手)  米ソ関係が好転し始めている今日こそ、日ソ関係を改善する絶好のチャンスではないでしょうか。北方領土返還問題については、まずソ連脅威論といった虚構を捨てて、政治経済文化、また技術など、あらゆる分野での交流に政府が積極的な役割を果たし、信頼関係を増進することが前提条件と存じますが、総理の御見解をお聞かせください。  総理は、ASEAN、すなわち東南アジア諸国連合拡大首脳会議にこのたび出席なさるそうですが、結成二十周年を迎えたASEAN非核地帯化、非同盟中立化を目指して努力していることにも十分留意していただきたいと思います。  日本社会党は、オーストラリア、ニュージーランド両国労働党及び朝鮮労働党との間で、それぞれ非核平和地帯化について合意いたしております。米ソ交渉が進展し始めております今こそ、日本政府が率先してアジア太平洋地域非核化に積極的な役割を果たすべきだと存じますが、総理はどのようにお考えでございましょう。(拍手)  ところで、日本対外経済協力には多くの問題がございます。経済協力費は年々大幅に増額されておりますが、西欧諸国からはひもつき援助だと批判され、発展途上国からは人権抑圧政府を支えているといった厳しい批判がございます。とりわけ前内閣は、レーガン政権世界戦略を補完する戦略援助の色合いを深め、この結果、日本対外経済協力は極めてゆがんだものとなっております。したがって、あらゆる面での抜本的な見直しが迫られていると思いますが、総理の御所見はいかがでございましょうか。(拍手)  また、OECD環境配慮勧告に見られるように、開発援助における環境アセスメントも極めて重要でございます。特に、地球は今一分間に三十八ヘクタールが砂漠化していると言われております今日、木材の大量輸入国である我が国は、地球規模での緑の破壊を防ぎ、森林伐採跡地にも責任を持つべきではないでしょうか。それと同時に、国内の森林資源を守り育てるとともに、砂漠化しつつある大都市の緑化に積極的な対策が求められておりますが、総理はどのようにお考えでいらっしゃいましょう。(拍手)  日本人が心の貧しさを国際社会から批判されているその原因は、一体どこにあると総理はお考えでいらっしゃいますか。それは、大人も子供も、競争に負けると人間らしい暮らしができなくなるのではというおそれをみんなが抱いているためではないでしょうか。言いかえますならば、政府も企業も学校も、福祉人間の水準を低いところに抑えて、人を競争に駆り立てる役割を果たしてきたのだと思います。  日本社会党は、昨日まで二日間にわたってアジア人権フォーラムを開催いたしました。近隣諸国から参加された皆さんは、なぜ日本アジア人権条約の準備に消極的なのかと言われます。一九八二年、スリランカのコロンボに国連の呼びかけでアジア諸国の代表が集まり、この問題を討議いたしましたが、日本政府がこれに出席すらしなかったのはどういうわけだったのでございましょうか。(拍手)  また、人種差別撤廃条約も、国連の人権規約選択議定書も、日本はいまだに批准しておりません。定住外国人皆さんが雇用の場からはじき出されるなどといった事態も、その根源は、政府のこのような消極的な姿勢にあると言わなければならないと思うのでございます。総理は、今後これらを批准する意思がおありになるのかどうか、お尋ねいたします。  総理が心の豊かさを重視され、また、そのために創造的で多様な教育を目指すことは、大変に結構だと思います。それならば、それぞれの学校や自治体の創意と工夫に基づくという原則、言いかえるなら、政府は最低の基準だけを示し、あとは財政面での支えに徹するという原則をどうしてお認めにならないのでしょう。教育委員の準公選という手続を各地で妨害しているのも、教科書の検定によって言論や出版の自由さえ奪っているのも、皆あなた方自民党とその政府ではございませんか。(拍手)  先ごろノーベル賞を受賞された利根川進教授は、ユニークな考えの人を奇人だとか変人だとかの扱いをする日本社会は科学の進歩の妨げになるとおっしゃっております。この言葉は、多様な個性を受け入れない社会文化の構造をよくあらわしているのではないでしょうか。国際化というのは、みんなが異質な文化とともに生きる時代であるということが言えるのでございます。  政府は、帰国された中国残留者方々に、日本生活習慣などを理解してもらうよう努力しておりますが、逆に、中国生活について理解を深めスムーズに受け入れるための取り組みについて、日本側は極めて不十分でございます。定住希望地公営住宅を確保することなど基礎的なことさえできていない現状を、総理はこれでもよいとお考えなのでしょうか。  私どもの社会排他性というのは、同じ日本人同士の間にも見られます。障害や難病を抱えた人々、被差別部落やアイヌの人々、そしてまた母子家庭や非婚の母たちが深く傷ついていることにもよくあらわれていると思います。しかも、政府政策自体がこれを助長していることに、総理、お気づきになりませんか。福祉対象となる人々が、貧困とか障害者とかいった社会的な烙印を押されないよう、行政は細心の配慮をする必要があることは御理解いただけると思います。  この考えに基づいて、生活保護制度をなくして年金制度に一元化できないかという声が上がっていることもお耳に入っていると思います。ところが、最近発表されました福祉医療制度の構想は、国民健康保険制度の中で低所得者だけを対象とした新しい別の制度をつくろうとしているものなので、これは行政による公的差別拡大につながると言わなければなりません。(拍手)  もう一つは、定年退職制が年齢による雇用差別であるという理解総理におありになるでしょうか。政府長寿社会対策大綱などにそれが全くうかがえないのはまことに残念なことだと思います。年金支給開始前の年齢の方々に退職を強制することを認めないという制度をなぜおつくりになれないのでしょうか。  さらにいま一つ竹下内閣は女性を排除しているというふうに思えるのでございます。閣僚も政務次官も竹下人事男性一色、それで「婦人の能力を生かす社会環境を整備する」などと、よくも所信表明でおっしゃったものでございますね。(拍手)  さて、ウサギ小屋、鳥かごと呼ばれる貧困な住宅問題を解決する上で最大の隘路は地価の急騰でございましょう。この結果、平均的サラリーマンが東京で土地つき住宅を建てることは一〇〇%不可能になり、これが勤労意欲さえ阻害しているという深刻な状態になっております。  地価急騰原因は、中曽根内閣行革路線による国公有地払い下げと建築に関する規制緩和が発端であり、金余り金融機関不動産業者土地投機がこれを促進させているものだと言えます。そして何よりも、総理も東京一極集中の弊害を認めておられるように、歴代自民党内閣都市計画国土計画の失敗が大きな要因だと考えられます。  土地問題の解決のためには、野党四党が共同で提案いたしております国土利用計画法改正案の成立が緊急の課題でございます。中長期的には、土地公共的性格計画的有効利用を前提とする土地基本法の制定が必要と存じます。なお、土地税制についても抜本的改正をなすべきだと考えておりますが、これら地価対策具体案についての総理のお考えを聞かせていただきたいと思います。(拍手)  ところで、今、世界的に株式の大暴落が発生し、ドル安・円高が進んでおります。総理は、所信表明で、対外経済問題の処理が日本の抱える最大課題一つだと言われ、日本経済輸出依存型から内需主導型に転換していくことを強調されました。その転換のためには、通貨の安定が不可欠であることは申すまでもございません。大蔵大臣をなさっておられた総理は、通貨不安の原因が何であり、その安定のために何をなすべきかについても十分に御承知のはずでございます。このまま推移いたしますと、ドルの崩壊が進み、世界金融恐慌に突入するとの見方も強まっております。総理は、今の世界経済をどのように認識され、日本は何をなすべきだとお考えでいらっしゃるのでしょうか、お聞かせいただきたいのでございます。  今のドル安最大の要因は、アメリカの双子の赤字、すなわち財政赤字貿易赤字に起因することは、だれも否定できないところであると存じます。日本政府は果たしてその抜本的改善策について対米折衝を行ったことがおありになるのでしょうか。他方、ドル安定のためには、日本集中豪雨型の対米輸出を抑えて、物と金を内需拡大に振り向けることが緊急の課題だとして叫ばれておりますにもかかわりませず、総理所信表明では何らの具体策も提起されておりません。六兆円の緊急経済対策ですべてが終わったとでもおっしゃるのでございましょうか。  総理は、日本経済国民生活の間に大きなギャップがあるとの認識のもとに、「真の豊かさを実感できる社会の創造を目指したい」とも述べておられます。内需拡大型の経済とは、最終的にはこのキャップをどのようになくすのかにかかっていると思います。日本国民一人当たりGNP世界一になったと言っても、時間当たりの賃金で何をどれだけ買えるかという政府の調査によりますと、日本アメリカの六割という低さであり、OECDの調査でも八割にすぎません。GNPが大きくなっても、それが国民の所得につながらないという構造は一体どこに原因があるのか、総理対策を明確にお聞かせ願いたいと思います。(拍手)  なお、明日からガットの総会で日本の農産物十二品目の輸入自由化を求めるパネル裁定が審議されることになっております。政府は、日本農業を崩壊させるような自由化要求に追従するはずはないと思いますが、総理の御決意を伺いたいのでございます。(拍手)  総理内需拡大が進まない最大原因は、この数年間続けられてきました国民生活抑圧軍拡志向縮小均衡型予算によるものだと思います。したがって、総理、あなたが日本経済内需拡大型に転換し、国民生活の真の豊かさを本気で実現するおつもりならば、まず、来年度予算編成に当たって、マイナスシーリング方式をやめて、国民生活向上を中心に積極型予算に切りかえるべきだと思いますが、いかがお考えでございましょう。  とりわけ、生活の豊かさを実現するためには、生活関連の、例えば下水道の整備、福祉あるいは文化スポーツ施設の充実、また都市の緑化など社会資本の拡充を中心とした予算編成にするとともに、大幅減税の実施、労働時間の短縮などが不可欠だと思いますが、総理の御所見を伺いたいと思います。(拍手)  こうした財政の積極的運営経済活性化が進む中で、財政再建は無理なく着実に進むものだと考えられます。このために、昭和六十五年度赤字国債依存の脱却という目標には固執しないで、五年程度繰り延べるべきであると思いますが、いかがでございますか。  ところで、総理、あなたが官僚ではなく党人派と言われるからには、政党政治のもとで国会の機能を高め、政治に対する国民信頼を取り戻すその努力をなさる方だと信じてよろしいでしょうか。そうだとすれば、一つには、お金のかかり過ぎる政治を改めることでございます。  総理御自身が二十億円を集めたと言われるパーティーを開かれたことは余りにも有名でございますが、問題なのは、町長の地位を悪用して、町の公金を選挙資金にして国会に出てくる議員さえもあるというように、政治倫理が乱れに乱れているのでございます。このようなときに、自民党内部では……(発言する者あり)静かにしてください。静かにしてください。だれとは言ってない。そんなにお騒ぎになるとおかしいですよ。自民党とは言ってない。このようなときに、自民党内部では、企業献金拡大するための政治資金規正法改正案が検討され始めていると聞いております。このような政治倫理の確立と逆行する法改正は直ちに取りやめるべきだと考えますが、いかがでしょう。(拍手)  次に、国会議員の定数を是正し、違憲状態を解消することでございます。昨年の本院決議におきましては、速やかな抜本改正で合意し、前総理も再三公約してこられたはずでございます。竹下総理人心一新の今こそ議員定数問題の抜本改正の最善のときだと存じますが、いかがでしょう。  三つ目は、行政の情報を公開することです。例えば、政府税調を初め各種審議会が密室の中で運営されておりますが、議事録の公開はなぜなさらないのでしょうか。御自分たち発言に責任を持てないような方が委員に選ばれていらっしゃるためなのでしょうか。情報公開プライバシー保護を推進していただくとともに、これに逆行する国家秘密法自民党議員から再び提案されるといった事態を回避するよう努力なさるのかどうか、総理・総裁のお立場を明確にしていただきたいと思います。  さて、質問を終わるに当たりまして申し上げます。  軍事大国にならないとおっしゃる竹下総理が、戦争への道をひた走ってきた日本の過去の姿をどのように考えておられるのかということが、そのお書きになった著書の中で次のように書かれております。「太平洋戦争は、感情的になった日本が犯した最大の誤りでもあった。」総理、これで侵略された国々や犠牲になった方々が納得できるとのお考えたとすれば、それはとんでもないことでございます。  しかも、日本平和憲法があなたにとってどういう意味を持っているのか、この御本の中でも、また、先日の所信表明におかれても全く触れられていなかったというのはどういうことなのでございましょうか。平和主義民主主義国際主義に立つ日本国憲法を守り抜くということを、今この場で、総理世界じゅうの人々に向かってはっきりと言明していただけないでしょうか。  御清聴ありがとうございました。(拍手)     〔内閣総理大臣竹下登君登壇〕
  5. 竹下登

    内閣総理大臣竹下登君) まず、金子さんの御質問に先立っての御発言にもありました、去る二十八日未明に起こりました南ア航空事故についての御報告を申し上げます。  南ア航空事故関係者の御家族に対しましては、深く御同情を申し上げるところであります。  現地における捜索活動が進展することに、政府といたしましても万全を期した体制をとりたいと思っております。既に官房長官を通じまして外務省に指示いたしましたとおり、政府としては、邦人保護に万全を期すべく、在プレトリア総領事館、それから在英、在仏、在マダガスカル各大使館より館員を現地に派遣いたしまして、現地事故対策本部を設置して、現地に赴かれる御親族の方、これらに御協力、御支援をする体制を整えております。また、渡航に際しましても、旅券発給等に万全を期してまいるつもりでございます。  さて、金子さんは、まず最初に私に、人間愛を基礎に置いた政治ということを申されました。人間愛を基調とし、心のこもった政治を行うべしとの要請、御激励、これに対してはまず心からお礼を申し上げます。  いわゆる中曽根総理発言及び間接税問題についてのお答えを申し上げます。  このことにつきましては、あらかじめ国民の信を問うべしとの御意見を交えながらのお尋ねでございますが、まず、昭和六十年二月の中曽根総理の御発言は、当時の税制論議の中において、時の内閣考え方国民に明らかにしたものでありまして、私も当時その内閣大蔵大臣でもありました。重要な意味を持っておるということは十分認識をしております。  ところで、中曽根発言は、「多段階、包括的、網羅的、普遍的で大規模な消費税投網をかけるようなやり方はとらないという立場でございますので、これに該当すると考えられるようなものは、中曽根内閣としてはとりたくないと考えている」旨答弁をされております。そのような考え方に基づきまして、本年二月に法案を提案いたしたわけであります。この法案をめぐりましては、御案内のようにさまざまな御批判があり、結果として審議未了、廃案となったという厳然たる事実がございます。  このような経緯を踏まえて、私は、竹下内閣としては、国民理解を得られるような税制の確立という観点に立って、間接税の問題につきましても、論議に先立って予見を与えるようなことはなく、国会における各党各会派の意見はもとより、幅広く国民各界各層の御意見を伺いながら、成案を得るべく今後とも努力を続けてまいりたい、このように考えております。(拍手)  次は、外交問題についての御発言でございます。  まず、INF全廃条約に対する評価でございます。  来る米ソ首脳会談におきまして、INF協定が署名され、交渉開始以来米国が主張し、我が国の念願でございましたINFのグローバルな全廃が合意されることになったことは、私も心から歓迎をいたしております。  本件協定は、既存の核兵器を初めて削減するものであって、核軍縮の第一歩でありますが、今後、戦略核兵器の大幅削減のための米ソ交渉が進展することを心から期待をしております。また、軍備管理・軍縮交渉は、軍備を可能な限り低いレベルで均衡させることによって関係国の安全保障を高めるべきものでございまして、また、その合意につき効果的な検証措置が確保されていることが重要でございます。我が国といたしましては、かかる交渉のための米国の努力を西側の一員として引き続き支持していく考え方は、所信表明でも申し述べたとおりであります。  次は、核持ち込み等の問題についてであります。  日米安保条約上いかなる核兵器の持ち込みも事前協議の対象になる、これは変わらざる方針であります。事前協議を行うことは安保条約のもとにおける米国の義務であり、政府としては、核兵器の持ち込みについての事前協議が行われない以上、米国による核兵器の持ち込みがないことについては、全く疑いも持ちません。なお、核兵器の持ち込みについての事前協議が行われる場合には、常にこれを拒否するという考え方は今日まで一貫して通してきた考え方であります。  非核原則を堅持しながら、安保条約により核を含む米国の抑止力に国の安全保障を依存するということは、これは基本的な政策であります。日米安保体制の効果的な運用を図るため、米軍我が国において必要な設備、機材等を維持することは、抑止力の維持向上にとって必要なことであるというふうに考えております。  また、SDI参加中止の御意見もございました。  米国は、軍備管理・軍縮交渉努力と並行しながら、非核の防御システムについて研究を行って、究極的には核兵器を廃絶しようという基本的理念のもとに、現在SDI研究計画を推進しておるところであります。これは我が国の平和国家としての立場に合致するものである、こういう基本認識に立っております。そのような認識をも踏まえて、昨年九月、我が国の同計画への参加を円滑なものとするように所要の具体的措置について米国政府と協議することを決定して、さらに同協議を踏まえて、本年七月、日米政府間協定を締結したところであります。政府としては、これを撤回するという考えは全くございません。  次に、三沢のF16の問題に御言及がございました。  我が国核兵器が持ち込まれることはあり得ず、したがって、ソ連のSS20の撤去と在日米軍の装備とを関連づけて論ずるということは、私は当を得ていないと思います。そもそも米ソ間のINF交渉は、米ソの地上配備のINFミサイルを対象として行われてきたものでありまして、ソ連のSS20に対応して論じられるべきは、米国の地上配備のINFミサイルでございます。それ以外の兵器システムと無原則に結びつけていくというような立場はとらないところでございます。(拍手)  次に、いわゆる防衛費の一%問題の御言及がございました。  政府は、六十二年度防衛予算がやむを得ずGNPの一%をやや上回ることとなったため、慎重な検討の上、本年一月、新たな閣議決定を行いまして、中期防に定める所要経費の枠内において各年度の防衛関係経費を決定するということにいたしました。昭和五十一年十一月の閣議決定の節度ある防衛力の整備、これを行うというこの精神は引き続いて尊重することは言うをまたないところであります。  さて、次は、駐留米軍経費の問題でございます。  米国がペルシャ湾を含め国際的な平和と安全の維持のためにグローバルな役割を果たしている状況のもとで、我が国の安全保障にとり不可欠な日米安保体制のより一層の効果的運用を確保する見地から、十月七日の政府・与党首脳会議におきまして、適切な対象について在日米軍経費の軽減の方途について米国と協議を行う旨を決定いたしました。政府としては、在日米軍経費の軽減の具体的な方途、これにつきましては今後慎重に検討していくべき課題だと存じております。  次は、アジア問題等の御質疑でありました。  いわゆる靖国神社問題についての御意見を交えての御質疑でございましたが、公式参拝の実施を願う国民や遺族の感情を尊重するということは、また政治を行う者の責務である、このことをまず一つ考えなければなりません。他方、国際関係を重視して近隣諸国国民感情をも適切に配慮しなければならない。したがって、公式参拝というものは、これは制度化されたものではございませんので、今後これを実施するか否か、この問題はまさに諸般の問題を総合的に考慮して自主的に決定すべきものである、このように考えております。(拍手)  次は、アジア外交の基本の問題であります。  地理的、歴史的、文化的に緊密な関係にあるアジア諸国との友好協力関係の促進は、これは我が国外交の重要な課題であります。今後とも、過去の歴史に謙虚に学び、アジア諸国の多様性と自主性を尊重しながら、その発展のために協力し、また、交流と対話を一層推し進め、相互信頼を深めていきたい、このように基本的には考えております。  光華寮問題、この中国側の主張というものは、私どもも十分認識はいたしております。しかし、本件は、現在法律上の問題として我が国司法府の中で審理が係属している問題であります。したがって、三権の建前を考えますならば、もとよりこの審理を見守る必要があります。  いずれにせよ、政府としては、日中共同声明日中平和友好条約、そして日本政府の立場、また中国の唯一の合法政府として承認した中華人民共和国政府との間で友好協力関係を発展強化していくとの立場を堅持しておりまして、今後とも基本的にはその立場を堅持していくという決意は変わりません。この点につきましては、中国側に誠意を持って説明し、その理解を得るべくこれからも努力をすべきであると考えます。  朝鮮半島問題についてもお触れになりました。  一九八八年ソウルで開催予定のオリンピック、これの問題につきましては、一九六四年東京オリンピックの当時を思い出しますと、これが日本国民の精神的にも大きな支えになりました。したがって、我が国としては、八八年のソウル・オリンピックが、政治的体制や理念的差異を超越して、世界のすべての国家の参加のもとに成功裏に開催されることを心から期待するものであります。したがって、その大会の成功のためには可能な限りの協力を惜しまない、こういう考え方でありますし、今後とも、朝鮮半島の平和と安定及び南北対話促進の環境づくりというような点につきましては、関係国と緊密な協力をしながら可能な限りの貢献をしたい、このように考えます。  それから、第十八富士山丸問題でございます。  政府としては、本件を日朝間の最大の懸案の一つとして重視して、これまであらゆる方途を尽くして、日本人二人の早期釈放、帰国のため北朝鮮側に働きかけておりますが、残念ながら釈放、帰国はまだ実現をいたしておりません。  御指摘にもございましたように、土井委員長が団長となられた訪朝もよく承知しております。そして私は、今の立場ではございませんでしたが、責任者の方とは絶えず情報交換をしてまいりました。しかし、いまだ実現せずの事実は、私にとっても残念なことでございます。御家族及び関係者の心労はいかばかりのものか、まことに心痛にたえません。事柄の性質上、政府努力の詳細を明らかにすることは差し控えさせていただきますが、今後とも、一刻も早く釈放、帰国が実現できるように、御協力もいただきながら努めていきたい、このように考えております。  次は、日ソ関係問題であります。  来月八日から米ソ首脳会談が開催される運びとなるなどで、米ソ間に建設的対話の方向が出てきておりますが、かかる東西関係の雰囲気の改善は、東西関係の一局面であります日ソ関係にもよい影響を与えるものであると期待をいたしております。他方、日ソ間には北方領土問題など日ソ関係独自の問題があります。我が国としては、日ソ双方の努力によって日ソ関係を改善していくことを希望いたすものであります。  次に、ASEAN非核等の御意見がありました。  ASEAN諸国の対外政策は域内諸国がみずから決めるべき問題でありますが、我が国としても、東南アジアの平和、安定を重視する立場から、それらの諸国の対外政策を見守っていく考え方であります。  さらに、アジア太平洋地域についてもお触れになりました。  我が国は、従来から核の究極的廃絶のため種々の努力を傾注しております。国連でも核廃絶を強く訴えてきております。一般的に、アジア太平洋地域においても真に実効性のある軍備管理・軍縮が実現することは、長期的に適切な目標であると思います。ただし、この地域における国際政治状況等にかんがみまして、現段階においては、まず国際政治状況等の改善に尽力することが先決ではなかろうか、このように考えております。アフガン問題、カンボジア問題等々、それぞれの問題が存在しておるからであります。  対外経済協力のあり方についてお触れになりました。  我が国は、援助の適正かつ効率的、効果的な実施を確保するための種々の措置をとってきておりまして、我が国の援助は、基本的には順調に実施され、所期の目的を達成しておると考えます。引き続き、より一層適正かつ効果的な援助の実施に努めてまいりたい。いろいろ御質問等がございますので、事前調査の充実でありますとか、アフターケアの問題でありますとか、きめ細かな配慮をいたしておるところであります。  地球の緑を守ることについてのお話がありました。  熱帯林等の地球の緑を守ることは、地球環境を保全する上で重要な問題であります。我が国は、これまでも二国間協力や国連環境計画等の活動を通じまして努力をしてまいりましたが、今後とも、各国と協力して、一層その役割を果たしたいと思います。  さらには、国内の森林資源の問題にも言及がございました。  森林は、木材供給のみならず、まさに国土の保全、水資源の涵養等公益的な機能を有しておることは申すまでもありません。林業の活性化を通ずる森林の健全な育成、これは国政上の重要な課題だという認識を持っております。このため、森林・林業をめぐる厳しい状況を克服してその振興を図る観点から、需要の拡大、林業生産基盤の整備、これらを今後とも積極的に推進してまいりたいと考えます。  さらに、同じように言及のございましたところのいわゆる都市緑化の問題もお答えいたします。  緑豊かな潤いのある都市環境の整備、これは各省庁からなります緑化推進連絡会議、ここで推進を図っているところでありますが、この推進会議をより密にいたしまして、第四次都市公園等整備  約五カ年計画、この計画に基づいて都市公園等の整備、公共施設の緑化、民有地の緑化等、総合的な都市の緑化推進に参加していくつもりでございます。  さて、次は、日本人の心と国際社会ということについてのお尋ねでありました。  戦後、我が国は多くの分野で目覚ましい発展を遂げてまいりましたが、これまでの発展は、所信でも申し上げましたように、どちらかといえば物の豊かさを追い求めてきたものではないかと思います。私としては、そこで申しましたように、この心の豊かさというものを重視して、日本国際社会と調和し、そして国際社会において信頼を得られるようにこれからも全力を尽くす所存でございます。  次に、人権条約問題についてお触れになりました。  アジア地域における人権条約については、これまで具体化への動きは必ずしもございませんでした。同地域における条約作成の環境が熟するというのがまず前提ではないか、昨日まで行われました会議もその一つではないかと伺わせていただきました。  人種差別撤廃条約につきましては、条約の趣旨にかんがみてできるだけ早期に締結すべく作業中でありますが、本条約に規定する処罰義務と表現の自由など憲法の保障する基本的人権との調整等、困難な問題があります。これらの点を含めて、現在鋭意検討中ということに尽きると思います。  それから、よくおっしゃいます頂規約選択議定書の問題でございますが、個人の通報に基づく国際的な検討制度が有効に機能するかどうか、これは必ずしも疑問なしといたしません。国会の附帯決議もございます。今後とも締結に向けて検討していく所存であります。  次に、多様な教育のための財政支出の問題についてお触れになりました。  児童生徒の個性を生かす教育の充実を図ることは重要であります。国は、教育における地方自治を尊重しながら、全国的見地から必要な指導等を行ってきております。教育諸条件の整備についても適切に対処すべき問題である。今までの教育が、あるいは自由民主党政府が悪かったとかよかったとか、あるいは特定の教育団体がよかったとか悪かったとかいうよりも、国民全体の課題として取り組むべきものである、このように考えておるところであります。(拍手)  さて、中国残留孤児問題でございます。  この定着、自立は国民課題であります。今後とも、関係各省が一体となって、住宅対策など各種施策に一層努めてまいります。  それから、福祉医療の問題で御意見を交えての御質問でありました。  国保制度の長期的な安定を確保するため、その見直しを行うことが必要であると認識しております。このため、現在、国保問題懇談会、ここで福祉医療制度を含め幅広く基本的な検討が行われております。この検討結果を待って対処するという考え方でありますが、いずれにせよ、制度の見直しにおいて被保険者の差別につながるようなことは検討されていない、このように私は考えております。  それから、年金問題でございます。  本格的な高齢者社会の到来を控えて、高齢者が安んじて生活を送れるようにするためには、年金政策とともに高齢者の雇用の場を確保していくことが重要な政策課題であります。このため、高齢者雇用安定法において努力義務とされた六十歳定年の定着に向けて企業への指導を強力に実施しますとともに、六十歳定年を基盤とした六十五歳程度までの継続雇用の推進に努めていく、これは六十一年に抜本改正していただきました法律に基づく考え方であります。  それから、御婦人の社会役割、これは現在一段と高まっておると思っております。閣僚、政務次官の人事だけをもって論ずるものではなかろうと思います。今後とも女性の活躍を阻害する原因の排除に努めるとともに、社会参加のための条件整備に努めてまいりたいと考えます。  次に、土地問題等からの国土利用計画法につきましては、先般の通常国会におきまして監視区域制度の創設、それから国等の適正な地価形成についての配慮規定の新設を内容とする改正がなされまして、現在、まずその積極的な活用を図って地価対策に取り組んでおります。野党四党共同提案の国土利用計画法改正案につきましては、内容のあらましは私も承知させていただいておりますが、これこそ特別委員会等、国会における取り扱いというものをまずは見守っていくというのが私どもの姿勢ではなかろうかと考えております。  それから、土地税制でございます。  先般決定した緊急土地対策要綱において、相続税その他国税、地方税の問題について税制調査会に諮るなど所要の措置を講ずることとしております。税制調査会での今後の検討状況を踏まえながら、これに対応していくべきものだと考えております。  世界経済に対する日本の貢献の問題でございます。  世界経済には、主要国における対外不均衡、これを背景とする保護主義の動き等、多くの問題が存在しております。これらの問題は、各国がそれぞれの置かれた経済情勢に応じて政策協調と構造改革を進めることによってのみ解決可能であると思っております。  いろいろ、株価暴落から世界不況への御懸念の向きもお話の中にありましたが、一九二九年、三〇年当時と違いますのは、私は、世界的な情報量の増加とこれに対応して国際協調がとり得る環境にあるということがまず基本的な違い方であると思います。  我が国としては、自由貿易体制を維持しながら、今後とも世界に開かれた市場形成をしていきますとともに、やはり内需主導型に転換していくということが基本であると考えておるところであります。今日までもアクションプログラム、内需拡大経済構造調整、いろいろやってまいりましたが、これからも全力を挙げて取り組むべき課題だと考えております。  米国の双子の赤字の問題であります。  この問題は従来とも指摘をしております。私も、当時のG5でございますとか、あるいはG10でございますとか、そういうときには、お互いがそれぞれの国の財政経済運営につきまして、時には内政干渉というような懸念も持ちながら、忌憚のない意見交換をいたしたことがあります。したがって、今回財政赤字削減に対して議会と行政府との間で合意に達した、このことが今後着実にまずは実行されていくことを私は期待をいたしておるものであります。  次の問題は、内需拡大具体策であります。  我が国経済にとりましては、構造調整の推進と内需主導型成長への転換、定着が必要なことは申すまでもありません。御意見にもあったとおりであります。内需の拡大は、単に量的な拡大にとどまってはなりません。経済成長によって実現した豊かさを、各般の施策によって国民生活の質的向上の中へどう生かしていくか、このようなことであろうかと思います。  なお、中長期的な経済運営の指針については、十一月二十日に、長期経済計画も少し古くなりましたので、経済審議会に諮問をしたばかりのところでございます。  一人当たりGNPの大きさと生活の豊かさ、これは私の所信にも触れさせていただきました。したがって、住宅、土地問題、労働時間の短縮の問題等に取り組んで、経済発展の成果を国民に還元する、真の豊かさを実感できる社会の創造にお互い衆知を集めてみたいと思います。  次は、農産品十二品目の輸入制限措置等についての御質問であります。  ガット総会まで残された時間は非常に少なくなっております。しかし、我が国としては、国内農業の実情、国際的な経済関係等を十分踏まえて、二国間協議による現実的解決を目指して最大限の努力を傾注しておるところでございます。  それから、積極型予算を組め、こういう御意見を含めたお尋ねでございます。  我が国は、財政的に見ますと極めて厳しい状況にあります。したがって、大蔵大臣時代にも申し上げましたが、次の世代に過剰な負担を残さぬよう、やはり一日も早く財政の対応力を回復する、これは基本的に過ちではないと思っております。六十三年度予算編成においても、六十五年度までの間に特例公債依存体質を脱却するという、せっかくその可能性が論ぜられるようになった今日、努力目標達成に向けて行財政改革をさらに進めるとともに、経済情勢に対してはこれに適切に対応していくという考え方をとるべきであると思います。  社会資本の整備につきましては、社会経済の動向などを踏まえバランスのとれた整備をすることが必要でありますが、生活関連社会資本につきましても、こうした考え方に基づきまして引き続き着実に実施に移したいと思います。  減税問題についてでございます。  去る九月の税制改正による減税規模は、六十三年度において住民税を含めますと二兆円を超えるものとなります。今後、所得税負担のあり方を含め、税制の抜本改正につきましては、これは早急に成案を得、その速やかな実施を図るべく、それこそ各方面の御意見を伺いながら引き続き検討していくべき課題であると思います。  労働時間の短縮、これは国民生活の質的向上、国際協調の観点から重要な課題と認識をいたしております。このため、さきに改正されました労働基準法の円滑な施行等を図って、週休二日制の普及等に努めてまいる所存であります。  財政再建目標の繰り延べ問題についてでございます。  六十五年度特例公債脱却の努力目標の達成は容易ならざる課題でございますが、NTT株式売却収入の活用など財政運営上の工夫を図りながら、経常経費の節約など歳出削減の努力を続けていきますならば、必ずしも目標の達成は望みなきにあらず、このように考えております。したがって、今後とも引き続きその実現に向けて最大限の努力を尽くします。  次は、政治資金の問題であります。  さきに公表されました政治資金規正法の改正要綱は、私も承知しておりますが、自由民主党選挙制度調査会の小委員会がまとめられた案であります。この問題は、事柄の性質上、各党間において十分協議を尽くしていくことが必要であります。政治資金規正法改正の際の附則八条等もよく承知いたしております。  衆議院の定数是正の問題でありますが、この問題につきましては、一番大事なことは、いわゆる衆議院本会議においての決議が存在しておるという事実であります。これこそ選挙制度基本にかかわる問題でありますから、まずは各党間で十分論議していただく、この考え方が、いろいろ議論をいたしましてもお互いのコンセンサスになるものではなかろうか、このように考えておるところであります。  情報公開の問題でございます。  これはいわゆる国民信頼を確保するために重要なことであるという認識は、私も否定するものではございません。従来から、白書の発行等のほか、いろいろ文書閲覧窓口を設けるなど積極的に努めております。しかし、その際、プライバシーの保護に十分配慮すべきは当然のことであります。したがって、審議会議事録の公開等は、設置目的、任務、性格に照らして、それぞれ個別に決定さるべき問題であると私は思います。  スパイ防止法、これは自民党においてこの種の立法が必要であるとの立場から、現在種々検討を行っているものと承知をいたしております。この種立法については、国民基本的な人権やいわゆる知る権利あるいは知らす義務、こうした大きな問題にかかわることでございますので、国民の十分な理解が得られることが望ましいと考えております。各般の観点から慎重に検討さるべき課題であると思います。  それから、憲法の遵守についてでございます。  憲法の基本原則であります民主主義平和主義あるいは国際協調主義、人権尊重、この基本理念は、私は過去も現在もまた未来にわたっても高く評価していくべきであろうと思っております。国の基本法であります憲法を改正することについては、極めて慎重な配慮が必要であります。  私は、それこそ学生時代に戦争裁判をたびたび傍聴に参りました。当時の憲法論争も、この国会で、一傍聴者として参りまして、よく承知させていただいております。しかし、諸原則がまさに定着した今日、政府が憲法の規定を遵守することはもとよりでありますが、ただ、憲法改正について研究してはならぬというものではないと思いますが、今日、私といたしましては、憲法改正政治日程にのせるという考え方は全く持っておりません。(拍手)     —————————————
  6. 原健三郎

    議長原健三郎君) 松永光君。     〔松永光君登壇
  7. 松永光

    ○松永光君 私は、自由民主党を代表して、竹下総理大臣の所信表明に対し質問を行うものであります。  まず、質問に先立ち、インド洋モーリシャス沖で南アフリカ航空機の墜落事故が発生し、現時点では乗客乗員の安否は即断できませんが、全員絶望視されております。事故に遭遇された方々の御家族関係者皆様に対し、心よりお見舞いを申し上げます。私は、国際的協力態勢による捜索と乗員乗客の生存救出を念じてやみません。  また、大韓航空機がビルマのラングーン南方で消息を絶ち、最新の情報によれば、タイ国内に墜落したことが確認されておるとのことであります。  このたびの航空機事故の発生は、不自然に思える要素もないではありません。私は、我が国はもとより、世界の各国が事故原因を究明するとともに、このような悲惨な事故の再発防止に万全を期すべきであると考えます。  さて、竹下総理は、夫お十月三十一日、自由民主党第四十八回臨時党大会において、挙党体制のもとに第十三代自由民主党総裁に就任され、続いて十一月六日、第百十回臨時国会において内閣総理大臣に指名されました。今国会は、竹下総理にとりましては最初の国会であります。  顧みれば、総理は、ふるさと島根において青雲の志を抱き、弱冠二十七歳にして県会議員に当選されて政治の道に入られ、以来三十数年にわたり営々たる努力の末、今総理に就任され、感無量の中にもその使命感の大きさに燃えておられることと存じます。  私は、この意義深い国会の冒頭において、極めて率直な竹下総理の御所信を伺いたいと思いますが、その前に一言、中曽根総理の五年に及ぶ御労苦に対して謝意を申し述べたいのであります。(拍手)  中曽根総理は、二十一世紀を望む大きな転換の時代、激動する国際情勢の中にあって、勇気を持って内外に山積する問題に対処され、国民の高い支持と負託にこたえながら、国の内外に多くの輝かしい業績を残されました。ここに深甚なる敬意と御慰労を申し上げるものであります。(拍手)  さて、竹下内閣は、国民の広範な支持と期待を担って誕生いたしました。その後の各種の世論調査はいずれも高い支持率を示しておりますが、これは新総理に対する支持と同時に、総理の指導力と調整カに対する国民の強い期待のあらわれであると思います。私は、竹下総理が強いリーダーシップを発揮して、中曽根総理が掲げた幾多の歴史的改革の火を受け継ぎ、これを充実発展させ、輝かしい我が国の未来を切り開かれんことを切に期待するものであります。(拍手)  総理は、所信表明で述べておられますように、今日、外には世界への貢献、対外経済問題、内には土地対策、税制改革、教育改革など、当面する問題が山積しており、その対応が強く求められております。私は、このうち重要な課題につきまして総理の御所見と御決意を伺いたいと思います。  第一に、竹下内閣政治基本姿勢についてお伺いします。  総理は、かねがね、「竹下登の政策大綱」の中で、これからの日本は、世界人々に敬愛され、開かれた社会と真の豊かさを持つ、世界に開く文化経済国家の創造を目指すべきである、そのためには、平和で安心して暮らせる日本世界、そして誇りと活力に満ちたふるさとの創生が必要である、これを実現するため、衆知を集め、合意を求めながら、大胆な発想、賢明な継承、誠実な実行を基本としてたゆみない努力を続けていくことを政治基本姿勢とされていますが、この際、さらに国民にわかりやすく、明快にお示しいただきたいのであります。  また、総理は、だれよりも国会運営に精通しておられます。今までの国会運営は、ともすれば政党間の党利党略が先行し、実りある審議も行えないままいたずらに空転を繰り返し、国民批判を招いている事実も無視するわけにはまいりません。この際、竹下内閣のスタートを契機に、野党との間に胸襟を開いて重要政策について十分な話し合いを行い、合意を求めることが重要でありますが、なお合意が得られない場合は、いたずらに結論を延ばすのではなく、多数決によって結論を得るという議会制民主主義原則を貫くことも肝要であります。(拍手)そのことが安定多数を与えられた我が自由民主党の国民に対する責務であると考えるのでありますが、総理の御所見を伺いたいと思います。  次に、当面する内外の重要政治課題についてお尋ねいたします。  今日の国際社会において、米ソ両国は巨大な軍事力と経済力を背景に依然として大きな影響力を有していますが、日本、西欧、中国等の比重も着実に増大しています。また、第三世界の動向も考慮に入れる必要があります。もちろん米国が依然国際政治経済の両面で中心的な役割を果たしていることは明らかですが、その国力、特に経済力が相対的に低下を示しているやに見られる現在、国際秩序をより円滑に維持するためには、主要自由主義諸国が政策協調を強化しつつ、それぞれ応分の国際的責任を果たしていくことが一層重要になっていると言えます。また、現在の国際関係において、軍事力の持つ意味が依然大きいことは否定できませんが、経済、科学技術、文化などの比重も顕著に高まりつつあります。  このような潮流の中で、日本を取り巻く現下の国際環境は、その巨額な経常収支黒字を背景とした経済摩擦、なかんずく、かつてないほど深刻化した米国との貿易不均衡問題等を中心に厳しさを増してきております。さらに、保護主義圧力の増大、開発途上国の累積債務問題など、現在の国際経済秩序は極めて厳しい局面に立ち至っております。  他方、国際政治の分野では、去る十一月二十四日、米ソ外相会議で中距離核戦力のグローバルな全廃を内容とする最終合意が成立するなど、東西関係において大きな進展が見られます。しかし、一方、世界各地における地域紛争は依然として続き、イラン・イラク紛争とペルシャ湾における緊張の高まり、アフガン問題、カンボジア問題、中米情勢等々、未解決の紛争や問題が山積し、国際社会の平和と安定を脅かしております。  このように厳しくかつ変動しつつある国際社会において、日本としては、今日までの日本の発展に寄与してきた国際秩序は、各国の協調と不断の努力なくしては維持できない状況に立ち至っていることを正しく認識し、従来の受け身的な姿勢でなく、長期的視野に立って、国際秩序を支える重要な担い手の一員として、世界の平和と繁栄に積極的に貢献する国家となるよう努めることが必要であると考えます。  特に対外経済問題に関しては、日米欧の絶えざる対話と政策協調とともに、我が国自身も積極的に内需拡大を図り、また、日本経済世界経済と一層調和のとれたものとするため、市場アクセスの一層の改善、金融・資本市場の自由化、経済構造の調整等を積極的に推進していかなければなりません。しかし、このことは我が国にとっても痛みを伴うものであります。その意味で、まさに総理の主張されるように、内政と外交は一体であり、国民理解協力の上に立った内政上の諸問題の解決我が国の対外関係に直結するとの認識が、従前にも増して必要であると言えましょう。かような国際情勢の変化とその中での我が国役割について、総理基本的な認識をお伺いしたいと思います。  次に、日米関係についてお伺いいたします。  言うまでもなく、安保体制を基盤とする日米関係は我が国外交の基軸であり、我が国の平和と繁栄のため、良好な日米関係の維持拡大は必要不可欠であります。また、日米協力は、世界の平和と繁栄を図っていく上でも一層重みを増しております。  ところで、現下の情勢を見るに、日米関係は昨今極めて厳しい局面にあることも事実であります。経済面においては、巨額の貿易不均衡を背景に、米国議会を中心として保護主義的機運が引き続き強まっており、また、個別問題でも、日米間で解決を要する極めて重要な課題が残っております。さらに、政治、安全保障面においては、我が国の国際的平和に対する一層の貢献が求められており、我が国の自衛力向上と並んで、ペルシャ湾安全航行維持に対する貢献等の具体化がますます重要となっております。  こうした日米間の諸懸案の解決は、幾多の困難を伴うものでありますが、しかし、かかる問題ゆえに、これまで築き上げてきた日米の協力関係を損なうことがあってはなりません。日米関係が極めて重要な局面にある折、総理として今後の日米関係をどう構築していかれるのか、お聞かせ願いたいと思います。  次に、今後の対アジア太平洋外交推進の基本方針についてお伺いいたします。  今日の情勢を見ると、まず政治面では次のような新たな要素が見られます。すなわち、朝鮮半島では、本年十二月十六日の韓国大統領選挙、明年秋のソウル・オリンピック等、極めて重要な日程が予定されております。中国では、先般第十三回党大会が開催され、そこで打ち出された改革と開放の方針、政治経済体制改革が今後大きな成果を上げていくことが注目されるところであります。また、アジア太平洋の諸国は、幾多の政治上の困難な問題を抱えております。経済面では、いわゆる新興工業国の躍進が見られるものの、多くのアジア太平洋の国々は、一次産品価格の低迷等により経済的試練に直面をしております。  我が国アジア太平洋の一員として、これら近隣諸国との友好協力関係強化に努め、我が国の対アジア太平洋外交を積極的に展開することは、アジア太平洋のみならず、世界全体の平和と安定にとり極めて重要であることは言うまでもありませんが、その前提として、総理は、これらアジア太平洋諸国の情勢をいかにとらえ、また今後いかに対アジア太平洋外交を推進していかれるのか、御所見をお伺いいたします。  次は、内政の諸問題についてであります。  東京都心に端を発した未曾有の地価高騰は、驚くべき勢いで周辺の住宅地に波及し、まじめなサラリーマンのマイホームの夢を打ち砕き、土地を持つ者と持たざる者との格差を異常なまでに拡大しております。我が国経済の発展と政治の安定は、声なき大多数のサラリーマンの勤勉な働きによるところが極めて大きいのでありまして、このような方々に働く喜びとゆとりある住生活を確保することこそ現下の政治最大の使命であると確信いたします。(拍手)  竹下総理は、従来の地価対策関係閣僚会議をみずからが座長を務める土地対策関係閣僚会議に拡充し、土地対策内閣全体として取り組む決意をお見せになりました。  ここで改めて竹下総理土地対策に臨む決意をお伺いしたいと思います。  私は、土地問題を解決するための対策としては、投機的土地取引の防止のため、国土法の監視区域を積極的に指定し、必要に応じて規制区域の指定の準備をする等土地取引規制の強化を図ること、また、この機に乗じて不当な利潤を上げている業者、金融機関等に対する指導を徹底的に行うことが必要であると考えます。これらの緊急措置により、異常な地価の高騰を抑えるとともに、地価基本的には土地の需給関係で決定されることにかんがみ、住宅用地及び事務所用地等の供給を思い切って拡大することが必要であると考えます。さらに、今後二度とこのような異常な地価高騰を起こさないよう、東京への諸機能の一極集中を排除し、地方分散を積極的に推進する必要があると考えますが、総理の御見解をお伺いしたいと存じます。  我が国の税制につきましては、今後における高齢化社会の到来や経済社会の一層の国際化を展望するとき、抜本的な改革の実現は避けて通ることのできない国政の最重要課題であります。我が党は、早くから、このような認識のもと、抜本的税制改革の実現に向け努力してきたところであり、さきの第百九回臨時国会では、中堅サラリーマンのための所得税減税、利子課税の抜本的な改組等を実現しましたが、残された問題はなお多く、税制改革はやっとその第一歩を踏み出したにすぎません。  税制改革につきましては、去る十月十六日、政府・与党首脳会議において「税制の抜本的改革に関する方針」を決定し、国際的にも通用する抜本的税制改革についての決意を確認したところであります。この「方針」にありますように、経済活性化を図り、長寿・福祉社会をより確実なものにしていくためには、国民の税に対する不公平感を払拭し、広く薄く負担を求め、世代間の相互の協力によって社会を支えることのできる税制を実現することが必要であります。この見地から速やかに制度全般について見直しを行い、直間比率の是正を含め、所得、消費、資産等の間で均衡がとれた安定的な税体系の構築を図らなければならないと考えますが、税制改革に取り組む上での総理決意をお聞かせ願いたいと思います。  二十一世紀に向けて、我が国が創造的で活力ある社会を築き、国際国家日本として世界に貢献していくために教育改革を推進することは、竹下内閣においても最重要政策課題一つでありましょう。次代を担う青少年の教育こそは、国の命運を左右する重大事であり、いつの時代においても、政権を担当する者は教育に最大の関心を払い、情熱を傾けてきたことは言うまでもありません。  今日の我が国の発展と繁栄が、我が国のすぐれた教育制度のもとで育てられた国民によってなし遂げられてきたことは疑いのないところであります。  しかしながら、近年における社会経済の急激な変化、科学技術の発展、国際化の進展などは教育の分野にも大きな影響を与えており、今日、学歴偏重の社会的風潮や過熱した受験競争、知育偏重、徳育、体育の軽視、画一的になりがちな教育制度等の問題が指摘されております。このため、時代の進展に適切に対応するための教育改革を図ることが国民の強く期待するところであります。(拍手)  このような状況のもとで、臨時教育審議会は、去る八月に最終答申を行いました。政府は、これを受けて、去る十月六日、教育改革推進大綱を閣議決定したところでありますが、教育改革は今まさに総力を結集して実行に取り組むべき段階に来ておると思います。  私は、今次教育改革は、我が国の未来を担う子供たちを、豊かな個性と創造性に富み、公共の精神を持ち、さらに我が国のよき伝統と文化を継承しつつ、日本人としての自覚と国際的感覚を兼ね備えた、心豊かなたくましい人間に育成することを目指して、全力で取り組まなければならない大事業であると考えるものであります。(拍手)教育改革に対する国民の熱い期待にこたえるために、今後どのような決意をもってこの大事業に取り組んでいかれるのか、総理の御所信をお伺いいたします。  次に、内需拡大社会資本整備の推進についてお尋ねいたします。  我が国内外の経済諸情勢は依然厳しく、我が国の経常収支は大幅な黒字の状態にあります。また、国内景気は回復基調を示してはいるものの、その先行きは不透明であり、予断を許さないものがあります。政府は、さきに総額六兆円を上回る規模の緊急経済対策を決定し、補正予算の成立を受け、現在その推進に努めているところであり、これを高く評価するものでありますが、今後、国際経済に対して積極的な貢献を果たし、また、国内景気を着実な回復軌道に乗せていくためには、今後とも引き続き積極的な内需拡大を図っていくべきであると考えます。幸い、ここ数年に及ぶ行財政改革の努力が着実に実りつつあります。その成果を踏まえながら、六十三年度予算においても内需拡大の方策を進めるべきであると考えますが、総理の御所見をお伺いいたします。  また、我が国は、世界経済の一割を占める経済大国と言われておりますが、国民の実生活の面ではいまだに真の豊かさを実感し得ないのが実情であります。これは、我が国の住宅、社会資本整備が極めて不十分な状況にあるためにほかなりません。まじめに働く人々が豊かさを実感できるようにし、また、二十一世紀を生きる我々の子孫に良好なストックを継承するためにも、現在の我が国経済力を活用し、計画的かつ着実に住宅、社会資本整備を進めていくことが必要であると考えます。総理の御所見をお伺いしたいと思います。  今や日本世界も大きな変革期に入っております。変革期における政治最大の使命は、時代を乗り切るための創造的な政策を確立し、勇気を持ってこれを実行し、日本の進路に誤りなきを期すことであると信じます。いわゆるニューリーダーのトップを切って宰相になられた竹下総理が、強いリーダーシップとすぐれた調整力を発揮して、希望に満ちた日本の未来を切り開かれることを強く期待して、私の質問を終わります。(拍手)     〔議長退席、副議長着席〕     〔内閣総理大臣竹下登登壇
  8. 竹下登

    内閣総理大臣竹下登君) 松永さんの御質問にお答えをいたします。  最初に、世論調査についてもお触れになりましたが、これは、私は、政策の継続性というものを国民の皆様方が評価していらっしゃるものではなかろうか、このように基本的には考えております。したがいまして、中曽根内閣以来掲げられておりまして懸案事項になっておる諸問題につきましては、引き続きその解決最大努力をいたすべきものである、まず基本的にそのように考えておるものであります。  さて、政治基本姿勢でございますが、究極的には誠実な実行というのがモットーであろうかと思います。世界の平和と国民の幸せが究極の政治の目標であることは言うまでもないことであります。その実現に際しましては、何よりも衆知を集め、国民的合意を求めながら政治を遂行していくコンセンサス主義というものを私はよく申し上げてきております。しかしながら、コンセンサスを得るために、ただ聞く耳を持っておるだけではいけません。行政府の最高責任者として、決断すべきときはみずからの責任で大胆に決断すべきものである、このように考えておるところであります。  それから、次の問題は、いわゆる議会そのもののあり方についてであります。  多数決、これが議会制民主主義原則である、これは選挙によって議席を得ておる者だれしも共通の認識を持っておることであるということは言うをまたないところであります。それだけに、安定多数を与えられた私ども自由民主党の国民に対する責任の大きさというものは、いつも痛感していなければなりません。ただ、私どもが若いころから先輩に教わっておりますことは、すなわち、与野党の差が開けば開いたほど野党の皆さん方の少数意見に十分耳を傾ける、この姿勢は引き続き持つべきものである、このようにも考えておるところであります。そうした野党との間の胸襟を開いた話し合いというものには、お互いそこに節度が働いてくるというのも、これは当然のことであるわけであります。  さて、次の国際情勢と我が国役割でございます。  今日の国際社会において、我が国の地位の向上と国力の増大に伴い、我が国の果たすべき役割責任は増大しております。それに対する諸外国の期待と関心の高まりもまた顕著なものであります。このような状況のもとで、我が国としては、世界に貢献する日本、この姿勢を確立し、平和への寄与と繁栄への国際協力を積極的に推進していく所存でございます。この過程で幾多の痛みを乗り越える必要がありましょうが、我が国を取り巻く内外の厳しい環境にもかんがみ、私としては、国民の皆様の理解と支持を得て、果敢に諸施策を遂行していかなければならないと考えております。そのようにして、豊かさと活力に満ちた、世界に貢献していく日本、このようにならなければならないと思います。  次は、対外経済問題に対する御質問でございます。  高度工業化社会をつくり得たということは、やはり自由貿易体制というものがあったからであります。言いかえるならば、今日の高度工業社会をつくったということは、一番恩恵を受けておるのは日本経済であるとも言えましょう。したがって、対外経済問題の処理に当たりましては、自由貿易体制を維持しながら、世界的に開かれた日本市場を形成していくとともに、我が国経済内需主導型に転換していく、このことが基本であると考えます。我が国としては、緊急経済対策経済構造調整推進要綱あるいはアクションプログラム等によりまして、内需拡大経済構造調整、市場アクセスの改善等の着実な実施に全力を挙げて取り組んでいるところであります。今後とも、我が国の国際的責務を果たすためにも、国民協力理解を得ながら、引き続き努力をしてまいる所存であります。  それから、日米関係についての基本姿勢の問題でございますが、日米関係は我が国外交の基軸であります。日米友好協力関係の基盤を一層強固なものとすべく、私は、早期に訪米してレーガン大統領と胸襟を開いた意見交換を行うつもりであります。良好な日米関係を基軸としつつ、国際秩序の主要な担い手の一人として、我が国は、世界の平和への寄与と世界経済の安定的発展のために、国際協力をより積極的に推進してまいらなければならないことは当然のことであります。  次は、日米経済問題の対応策でございますが、米国の貿易赤字を背景として、米議会を中心に保護主義圧力というものが高まっておることは事実であります。日米経済摩擦解決のためには、日米双方の努力が必要であります。我が国としては、引き続き、我が国に課せられております内需拡大、輸入拡大国際社会への貢献、個別案件の具体的な処理等に努めますとともに、米国に対しましても、財政不均衡の是正あるいは競争力強化の努力等の重要性を絶えず指摘していかなければならない課題だと存じます。  次は、ペルシャ湾安全航行問題でございます。  ペルシャ湾の安全航行の最大の受益国であります我が国としては、今後とも安全航行確保のために、可能な限りの外交努力を継続すべきであります。また、去る十月七日の政府・与党首脳会議におきまして決定されました安全航行援助施設、湾岸及び周辺国への経済技術協力の拡充、国連特別拠出金等の同湾の安全航行確保のための貢献策につきましては、可能な限り早急な実施に努めてまいります。なお、在日米軍経費の軽減の具体的な方途につきましては、これは先ほども申し上げましたように、今後慎重に検討すべき課題であります。  アジア太平洋諸国におきましては、韓国における政権交代に向けての動きや、中国における近代化政策の進展あるいはASEAN諸国間の協調などが見られまして、一部に流動的な要素はあるものの、総じて安定化の方向であると思っております用地理的、歴史的に密接な関係にありますアジア諸国との友好協力関係の一層の促進は、我が国外交のまさに基本政策の一つであります。我が国は、アジア諸国の自主性を尊重しながら、その発展のために協力して、また交流と対話を進めて相互信頼を一層深めてまいりたい、このように考えます。  次は、土地対策であります。  土地対策は、現下の内政上の最大課題一つであります。このため、土地対策担当大臣を設けますとともに、土地対策関係閣僚会議を設置して、土地問題と取り組むことを強化したところでございます。今後、現下の地価高騰を抑制するため、緊急土地対策要綱を着実に実施いたしますとともに、良好な都市環境に恵まれた住宅宅地の供給、多極分散型国土の形成に努力をいたしてまいります。  さらに、監視区域の問題についても御言及がありましたが、積極的に国土利用計画法に規定する監視区域の指定を行いますとともに、既に監視区域が指定されている地域については、面積要件の引き下げ等を行うべく関係地方公共団体を指導しているところであります。そして、所信表明でも触れましたように、本院にも特別委員会ができて、閉会中にも熱心な御討議が行われております。そのことを評価し、また期待をいたしておるものであります。  不動産業者に対する問題につきましては、これは臨時行政改革推進審議会の答申や十月十六日に閣議決定を行いました緊急土地対策要綱等を踏まえまして、不動産関係業界団体に対して投機的土地取引を行うことのないよう指導いたしますと同時に、不動産業者の自主的なこれに対する対応も求めておるところであります。今後とも連携を密にして、関係省庁間で指導の徹底に努めるという考え方であります。  金融機関土地関連融資、これは従来からも厳しく指導しておるところでございますが、先般の対策要綱等を踏まえまして、一層内容を厳格化して指導しようということで踏み切ったところでございます。今後、これらの土地関連融資の一層の適正化というものが行われるように期待をいたしております。  それから、住宅用地と事務所用地等の供給問題についての御言及がありましたが、現下の地価の異常な高騰の影響するところは極めて大きくて、これに対処して良質な宅地の供給を促進することは緊急な課題でございます。このため、十月十六日の要綱に基づきまして、都心及び臨海部の大規模プロジェクトの推進、都市再開発の促進を図りますとともに、都市計画法の線引きの見直しなどによります開発適地の拡大、地方公共団体の開発抑制方針の転換等によりまして宅地供給を推進していく所存であります。また、さき土地対策閣僚会議におきまして、いわゆる事務所床の問題につきましても、国土庁からいろいろな資料を出され、十分検討をいたしておる段階でございます。  やはり基本的には、近年、国際化情報化等の進展によりまして東京圏への人口や諸機能の一極集中が進みますとともに、地方圏では産業構造の転換等によって雇用問題が深刻化するなどの事態が生じております。このため、本年六月に、特定地域への人口や諸機能の過度の集中のない多極分散型国土の形成、これを目標として策定したものが第四次全国総合開発計画であると考えております。今後は、地価高騰に基本的に対応するためにも、四全総を強力に推進していかなければならぬ、このように基本的には考えております。  税制改革でありますが、これは、今後の高齢化社会の到来、経済の一層の国際化を展望するときに、抜本的な税制改正の実現は避けて通れない課題であって、経済活性化配慮しながら、長寿・福祉社会をより確実なものとして維持していくためには、所得、消費、資産などの間で均衡のとれた安定的な税体系を構築することが急務である、このような認識は絶えず申し上げておるところでございます。その認識に基づいて、所得、法人、資産及び消費課税等についてのあり方ということを税制調査会に諮問を行ったところであります。今後、税制の抜本的改革の全体につきましては、早急に成案を得て速やかな実現を図るという基本的な考え方を持っておりますが、各方面の議論等を踏まえて引き続き検討されるべき課題である、このように考えます。  教育改革につきましては、今、豊かな個性と創造性に富み、公共の精神を持ち、さらに我が国のよき伝統と文化を継承しつつ、日本人としての自覚と国際感覚を兼ね備えた必要な人間教育することを目指して、全力で取り組むべき大事業であるという表現をもって、これに対する重大さの認識の御表明がありました。その考え方がまさに政府として持つ決意ではなかろうか、このように考えております。当面は、臨時教育審議会の答申を受けて閣議決定した教育改革推進大綱に基づいて、着実な指導を行っていきたい、このように考えております。  次は、六十三年度予算の問題でございます。  我が国財政の極めて厳しい現状にかんがみまして、六十三年度予算の編成に当たっても、これまでの努力と成果を踏まえて、引き続き六十五年度特例公債依存体質脱却という努力目標を掲げて財政改革を進める考えであります。同時に、内需拡大等の内外経済情勢には引き続き適切な対応をしてまいります。したがって、概算要求基準におきましても、まさに投資部門については基準を見直しますとともに、それこそ行政改革の果実ともいうべきNTT株式等の売り払い収入を活用することによって、まず当初予算比二〇%増の要求枠を確保しておるところであります。  住宅整備の促進につきましては、居住水準の向上を図る、これは政策課題として大きな問題であります。したがって、質の向上に重点を置いて、公的住宅の建設、金融、税制上の措置の改善等によって良質な住宅建設の促進に努めます。おっしゃるように、今後とも、良質な住宅ストックの形成と良好な住環境の整備、これを基本に対応していきたいと考えます。  社会資本整備、これについては、厳しい財政事情のもとではございますが、今日もできる限りの配慮をしてきておるつもりでございます。今後とも、重ねて申しますが、まさに行革の果実ともいうべきNTT株式売却収入等を活用しながら、種々の工夫を図って、やはり整備を着実に進めていきたい、このように考えております。  以上でお答えを終わります。(拍手)     —————————————
  9. 多賀谷真稔

    ○副議長(多賀谷真稔君) 矢野絢也君。     〔矢野絢也君登壇
  10. 矢野絢也

    ○矢野絢也君 私は、公明党・国民会議を代表し、さき所信表明に対して質問をいたします。  竹下総理、あなたの総理就任につきまして、まず、私は、一政治家として、党派、政策の違いを離れ、総理並びに閣僚の皆さん方に心から祝福を申し上げたいと存じます。そして、内外の時局多難な折、国民の期待にかなう誠実で公平な政治を推進されますことを強く御要請申し上げる次第でございます。  総理就任当初は、あなたは、国民合意とか少数野党の声を尊重するなどと、ああ、竹下さんはどうやら低姿勢な謙虚なお方らしいという印象がありました。しかし、一カ月もたっていないのに、どうも最近の動き、御発言は、大型間接税の来年導入とか政府統一見解の白紙撤回など、一見優しい顔つきで、こっそりすり足忍び足、気がついてみたら、かなり強引なことをなさるのではないだろうか、これは油断もすきもならない内閣になるのではという印象が強まってまいりました。  先日、総理所信表明を拝聴いたしました。しかし、内外の課題を問題として提起はされておりますが、残念ながら抽象論であり、診断書はあっても処方せんが見当たりません。国民に平和と自由のためのコストや我慢を押しつけられる御発言など、衣の下によろいがちらちら見えます。国民の心配、危惧を払拭するものではなかったことはまことに残念でありました。  そこで、私は、総理基本的な姿勢を確認するため、外交、内政の基本問題に重点を絞って質問をいたしたいと思います。  中曽根総理は、内閣発足直後訪米されました。いわゆるロン・ヤス外交なる外交を展開されたのであります。しかし、そのための代償は極めて大きなものがありました。いわく、日本列島を不沈空母にする、日米は運命共同体である、いわく、三海峡を有事には封鎖するなど、日本外交の主体性喪失につながりかねない対米約束を乱発されました。そして、その後、対米軍事技術供与の特例、シーレーン洋上防空の強化、集団的自衛権の拡大解釈、スターウオーズ、SD夫への理解協力、とりわけ、昨年末はとうとう日本政府の大原則でありました防衛費GNP比一%枠の撤廃など、平和憲法の精神と我が国の国是を踏みにじるのではなかろうかという行為が相次いだのであります。  竹下総理、あなたも近く訪米を予定されておられますが、これらの問題につきましてどのような御所見をお持ちなのか。中曽根さんと同じ意見をアメリカで開陳されるのでしょうか、違うのでしょうか、まず伺いたいのであります。  とりわけ、経済摩擦でのアメリカの不満を防衛問題にすりかえて解決を図るなどということは、あってはならないことであります。来年度においては、防衛費の一%枠は断じて守るべきであると思います。総理の御決断を強く求めます。  イラン・イラク戦争をめぐる情勢につきまして、近く最大のクライマックスを予想する声もあるようでございます。米ソ欧などに慌ただしい動きが目立ちます。ペルシャ湾の安全航行に今後ますます危険が高まると見られています。これを政府はどう分析しておられるのか、伺いたい。  確かに、ペルシャ湾の安全確保は我が国にとって極めて重要でございます。しかし、我が国の平和原則を逸脱したり、日米の軍事的一体化との批判を受けるような対応はなさるべきではありません。総理は、ペルシャ湾での軍事的協力は今後とも一切行わないことをここに明らかにし、さらに、今後の見通しと方策について御説明いただきたいのであります。  米ソの核軍縮交渉が一応の進展を見せ、今後のより前進した軍縮交渉が合意されることを全世界が待望しております。そういった観点から、対ソ連外交は今後ますます重要性を増してきますが、残念ながら、日ソ関係はここ数年来前進を見せておりません。政府は、例えば、一連のソ連の平和攻勢と見られる動き、国内雪解けムードと見られるペレストロイカの動きなど、ゴルバチョフ路線をどう見ておられますか。また、対ソ外交にどのように取り組まれますか。具体的な青写真をお示しいただきたいのであります。  また、新体制となった中国との関係についてでありますが、両国の関係はおおむね良好であります。しかし、やはり克服し、解決されなければならない問題は残されております。例えば、中国側は、光華寮問題が日中両国で合意された一つ中国原則に違反することにならないかと強い懸念を表明しております。また、靖国公式参拝や防衛費の異常な突出に対しても警戒を強めているのであります。日中外交をどのように進めていくのか、総理外交日程も含めて、具体的な外交方針をお示しいただきたいのであります。  さらに、イスラエルとの外交でありますが、第一次石油ショック以来、後遺症が大きく、いまだ閣僚級のイスラエル訪問は実現していないとのことであります。イスラエルは自由貿易なくして成り立たない国家であり、我が国と共通する点も多くございます。そして、ユダヤ民族は欧米などの世論形成に大きな力を持っております。決して一辺倒になる必要はございませんけれども、現状は改善されるべきであります。日本外交の幅が広くなることは間違いございません。御意見を伺いたいのでございます。  総理我が国は、アメリカ、ヨーロッパに追いつけ、追い越せということで、とうとう世界一の債権大国、貿易黒字大国となりました。経済大国日本は、有色人種であり白人ではありませんが、白人社会で今や名誉白人あるいは特別会員のごとき待遇を受けつつあります。しかし、冷徹に見れば、白人クラブにレギュラーとして迎えられることは将来ともないと私は思います。それはあり得ないことであり、また望む必要もありません。かつてのユダヤ民族の苦しみに満ちた歴史は、まさにこれと似た背景、事情があったと言えましょう。  総理我が国は、中国、韓国、ASEANなどアジア及び有色人種の世界に日を向けるべきであります。それらの国々は日本を必要としております。民間レベルも大切でしょうが、やはり政府レベルで、アジア及び有色人種重視の外交に転換し、これらの国々の理解と尊敬を受けられる日本にならなければ、このままの惰性では、白人社会からも突き放され、有色人種社会からもそれ見たことかということになりかねません。我々の子孫の時代に大変な苦難が待ち受けているような気がしてならないのであります。総理の御所見を伺いたいのでございます。  次に、基本的な政治姿勢についてお伺いをいたします。  総理は、憲法は国民の手で書いた方がよいという御主張をお持ちのようでございますが、これは誤解を招きやすい御発言でございます。日本国憲法について、なかんずく、基本的人権、国民主権、平和主義の三原理に対する率直な見解決意を憲法改正論を含めまして明確にお聞かせをいただきたいのであります。特に、総理は、みんなで靖国神社に参拝する国会議員の会の初代会長であられました。総理に就任された以上、公式参拝はおやめになるべきであります。さらに、スパイ防止法案は断念されるべきであると思います。  総理は初閣議で政治信頼を強調し、政治倫理、綱紀の粛正について特に意を用いられるよう切望すると述べられたようであります。しかし、そのような抽象論ではなく、具体的な方策と決意が必要だと思います。これら諸点につきましてのお考えをお示し願いたいのでございます。あわせて、自民党政治資金規正法を改正し、企業献金の限度額を緩和しようとしておられますが、総理としてのあるいは総裁としての御方針を伺いたい。  第百四国会における衆議院の定数是正は、いわば緊急避難的な措置でございました。しかも、国会終盤の衆議院本会議で「昭和六十年国勢調査の確定人口の公表をまって、速やかにその抜本改正の検討を行う」との国会決議を行っております。一日も早く抜本改正を断行する必要があります。憲法に規定する選挙権の平等の確保は、議会制民主主義の根幹であります。先ほど総理は、各党各派の御意見を聞いてとおっしゃいましたが、解散とか選挙の執行とか内閣にも関係のある問題でございます。総理の率直な御所見を承りたいのでございます。  アメリカが国を挙げて日本たたきをしておるという印象があるわけでございます。日本がなすべきことをなすということは、これは当然必要なことであります。しかし、今日の国際経済の混迷はアメリカ財政赤字が大きな原因一つであることは、もう皆さん周知の事実でございます。それを、なぜドル安・円高だ、ココムだ、米の自由化だ、十二品目だと、日本にばかりツケを回すのかという憤りが国民にあります。総理、訪米されたら、ぜひこのような国民の声をアメリカにお伝えいただきたいのであります。こうした素朴な疑問に総理はどのようにお答えになりますか。  さて、総理、今回のニューヨーク株式暴落についてでございますが、これを一過性のものと見るか、それともドルの暴落、株式の暴落という最悪の国際的な連鎖反応が今後に起こる予兆と見るかは極めて重大な問題でございます。ぜひとも最悪の事態を避けるために、何としても具体的な手を打たなければなりません。  それには、まず世界の基軸通貨たるドルが不安定であり、その役割を果たし切れていない状況を変える必要があると思います。今や世界最大の債務国となったアメリカドルにかわる新しい国際通貨のあり方を世界各国は求めているのではないでしょうか。とするならば、早急に新しい通貨制度を定めるための国際会議が開かれるよう日本が提案すべきだと思いますが、いかがでございましょうか。  もちろん、この問題は重大な問題でございます。アメリカが簡単に応じるはずがないと思います。しかし、我が国は西ドイツなどに呼びかけ、じっくりとアメリカを説得するほかありません。総理の御所見を承りたいのであります。  なお、今後ますます円高になるのではないかという不安は根強いものがあります。見通しを含め、通貨安定策についてわかりやすく御答弁をお願い申し上げます。  総理我が国は国際的役割を果たすためにも、また子孫に国民的資産を残すためにも、内需拡大、とりわけ減税と福祉社会資本の充実は最重要の課題であります。税収が予想以上に順調、NTT株式売却益も相当な額が見込まれておる今日、不公平税制の是正、徴税の適正化、特に資産所得やキャピタルゲインへの課税強化などで財源を充足し、来年度予算において所得税、法人税の減税、相続税、固定資産税の適正な是正、軽減を断行すべきであります。御所見を伺いたいのであります。  また、国民生活に密着する道路、下水道、公園などの生活関連社会資本整備はおくれております。その原因の一端は、予算配分と各省庁の縄張り意識にあると言えます。この十年間一貫して、公共事業関係予算の各省別、分野別のシェア、予算の配分構造は何ら変わっていないのであります。各省庁の権益争いやセクト主義を排除し、国民の意識の多様化、高度化に対応し、国民のニーズを踏まえた生活関連社会資本整備長期計画を策定し、予算配分の構造を大胆に転換すべきことを改めて提案いたしたいと存じます。  また、地方自治体の事業推進を阻害する要因は、国庫補助負担率の引き下げによる地方への負担転嫁であります。これでは地方自治の本旨に反するばかりか、地方自治体の借金を増大させ、単独事業が削減されてしまいます。緊急課題である内需拡大をさらに進めるために、国庫補助負担率の引き下げを直ちに取りやめるべきであります。  また、地方自治体の施設の効率的整備行政の効率的運用を阻んでいるのが各省庁の縦割りによる複雑な補助金制度であります。この弊害を取り除くため、補助金の統合メニュー化が図られねばならないと存じます。国、地方間の機能分担、権限分散、費用負担について、総理の御見解を伺いたいのであります。  こういう公共事業と補助金の非効率的なむだを省くのが行政改革の課題であります。これもやらないで大型間接税など国民に負担を押しつけるのは、とんでもないことだと私は申し上げたいのであります。どう対処されるか、お伺いをしたいのであります。(拍手)  電電公社、専売公社、国鉄の民営化がなされ、一定の成果を上げてはおります。しかし、行革はまだ道半はにも達しておりません。昨今では行革のたがが緩み始めているという批評もあり、行革はエンドレスに、より一層推進すべきものであります。  総理は、首都圏一極集中の機能分散を図るため、首都機能分散推進本部を設置し、中央省庁の一部を地方に移転する方針であると伝えられております。この問題は土地問題ともかかわり、私どもも賛成であります。行政改革への決意と具体的展望を明らかにしていただきたいのであります。  さらに一歩踏み込み、金余り時代と言われる今日、民間の豊富な資金をマネーゲームから実物投資へと誘導していくことが必要です。そのためには、民間企業に課せられておる各種事業規制あるいは新規参入や業務の拡張を実質的に阻害しておる法的規制については全面的にこれを洗い直し、規制緩和を徹底的に推進すべきであります。あわせて御所信を伺いたいのでございます。  完全週休二日制の実施による消費支出増加による国内総生産額は約五兆円強と計算されております。それに伴う雇用創出効果は約五十万人と政府は試算しておられます。問題は、完全週休二日制を早期実現させるための推進策であります。波及効果の大きい官公庁、金融機関の土曜休日を積極的に進めていく必要があると思います。しかし、公務員については閉庁に伴うサービスの低下、中小零細企業につきましては経営基盤が弱く労働時間短縮が困難であるなど、いろいろ問題があります。これらの問題点をどう克服して、いつをめどに週休二日制の完全実施をお図りになるのか、お考えをお聞かせいただきたい。  さらに、国際化時代、サマータイムを導入しておる諸国と冬と夏とで時差が違うなどというのは不合理であります。サマータイムの導入によって夏季の就業時間を繰り上げ、余暇をつくるべきだという提言もありますが、お考えを承りたい。  さて、最近の円相場の高騰は、中小零細企業の経営を一段と著しく追い詰めております。この年末をいかに越せるかと、仕事探しに金策にと、中小零細企業の経営者は大変苦しんでおられるわけであります。官公需の追加発注、年末緊急融資の拡大並びに返済猶予、下請中小企業対策等、十分万全の対策を講じていくべきだと思います。総理のお考えをお伺いしたいのであります。  竹下総理は、来年秋に臨時国会を開催し、新型間接税導入政治日程として決められたやに報道されております。これは事実なのか、まずお答えをいただきたいのであります。  総理、間接税を云々する前に、現行の直接税の中に渦巻く不公平の是正を解決すべきであります。通常国会で、直接税におけるこのような不公平の是正、すなわち総合課税への徹底した論議を行うお考え総理におありかどうか、しかとお答えをいただきたいのであります。  新型間接税導入を六十三年度予算審議と全く切り離し、通常国会終了後改めて税制国会を開くというのがもし本当であるとするならば、それは、対決法案一本に絞って三百議席の力で突破しようとする力の姿勢のあらわれであります。この姿勢は、みずからの政治哲学と公言した少数党の意見尊重とは相入れないのではありませんか。もしそうであるならば、私たちも是々非々の非々に重点を置かざるを得なくなるのであります。ぜひそういうことのないように、総理、お考えをいただきたいと思います。  総理、あなたが大蔵大臣であられたときの昭和六十年二月五日でした、予算委員会で、私は、大型間接税政府答弁の不一致をただしました。残念ながら、予算委員会は政府答弁の食い違いにより空転をいたしました。事態打開のため、当時の竹下大蔵大臣は、「多段階、包括的、網羅的、普遍的で大規模消費税投網にかけるようなやり方でやることはしない」との御見解をその晩私に内示されたのであります。結局、それが翌日、政府統一見解となったわけであります。  総理、あの見解は、中曽根総理のお約束であるとともに竹下大蔵大臣のお約束でもありました。この政府統一見解が白紙撤回されるならば、生活必需品など消費や福祉、医療にまで課税され、中小零細企業も一網打尽、縦横十文字に課税されることに道を開くことになってしまいます。弱い者いじめそのものではありませんか。このような大事な政府統一見解を簡単に白紙撤回、これは絶対に容認することはできません。真意を伺いたいのであります。(拍手)  さらに、昨年の衆参同日選挙における「大型間接税はやりません」の政府・与党の選挙公約の背景は、この政府統一見解がペースとなっておったのであります。内閣がかわったから白紙撤回では、あの選挙において主権者を欺いたことになるのではありませんか。内閣がかわってもこの責任は免除されるものではありません。どうあってもこのような大型間接税をおやりになるというのであれば、衆議院を解散し、選挙によって主権者である国民にその是非、よいか悪いかを判断していただく必要があると思いますが、総理の明確な御所見を伺いたいのでございます。(拍手)  人生八十年時代、確かに高齢化社会社会保障に重大な影響をもたらしております。後世代の負担強化に拍車がかかることになります。公的年金に対する国民の不安と不信を取り除くためにも、年金制度のあり方を根本的に見直す必要を痛感いたしております。しかし、これは福祉目的税などという大型間接税によって解決される問題ではありません。  私は、本年一月の代表質問の際にも、トンチン年金方式を例にして提案をいたしました。それはつまり、現行の公的年金が、後の世代が先行世代を扶養する、いわば世代縦型の相互扶助となっておりますけれども、この年金制度を、後世代の負担軽減を図るため、老人、中年、同世代間の、いわば横の相互扶助、連帯の年金制度と併用するよう改正することを改めて提案をいたします。  国民からお預かりした年金積立金は、自主運用の規模の大幅拡大で財源の確保、充実を図るべきであります。そして、積立金の自主運用部分の一定割合を世代ごとにプール、その財源をもって基礎年金に上積みをする長寿加算制度を検討すべきであると考えております。このような年金制度の提案について、総理の御所見をお伺いしたいのであります。  次に、今政治の最重要な緊急課題土地住宅問題であります。東京中心に大阪、名古屋、横浜、神戸など大都市地域地価高騰は徐々に周辺部に拡大し、異常な高い地価は、国民生活経済全般に極めて悪影響をもたらしております。すなわち、地価高騰で土地を持つ人と持たざる人との資産格差がますます拡大され、不公平を助長し、勤労意欲を喪失させているという面が強くございます。  さらに、地価高騰に伴い、年々評価がえされる固定資産税の負担増で、一般の住宅所有者はもとより賃貸住宅の入居者まで家賃の上昇が見込まれ、生活が脅かされているのであります。相続税の著しい負担増で、住みなれた自宅を手放さなければならない人々も出てきております。そればかりではなく、地上げ屋や一部の悪徳な不動産屋などの横行で地域コミュニティーが破壊されていることも、絶対に見逃すことができません。  我が党は、かねてから、国土利用計画法の改正と運用の強化で地価を抑制すること、企業の投機的活動の規制、国公有地の有効活用、地方自治体主導による土地利用、東京一極集中の是正など、具体的な提言をいたしてまいりました。  政府は、どうやらさしあたり地価高騰は鎮静化しつつあると、最近いささか及び腰の印象なきにしもあらずでございます。鎮静したといいましても、それはしょせん高値で安定しつつあるということで、国民から見て到底許される状況ではありません。この臨時国会におきまして、確たる立法措置を含めて対処されるべきであります。決意のほどを伺いたいのでございます。  あすからジュネーブで開かれるガットの総会におきましてその結論が下される農産物の輸入制限十二品目の問題についてお尋ねをいたします。  農業は、食糧の安全保障や国土保全、地域社会の安定などの大切な任務を持っております。したがって、ただ経済原理のみでは律し切れない側面があります。にもかかわらず、我が国のみを対象とした今回の措置は、理不尽と言わざるを得ません。日本農業が大変な苦境に立たされている現状だけに、輸入制限措置が撤廃されることのないよう、政府は最後まで全力を挙げるべきであります。とともに、政府は、国内農業者のこれからの経営、生活をどう守っていこうと考えておられるか、明確な御答弁をお願いいたします。  質問の最後に、教育問題、とりわけ大学入試制度の問題について伺います。  入試制度の改革は必要であります。その改革は、あくまでも受験生を第一義に考えてのものでなければなりません。過日、国立大学協会が、共通一次の複数受験制度の手直しを行い、来春の試験より連続方式、分離方式の二本立てを採用するとしたのであります。当然教育には改革は必要でありますけれども、こうした猫の目のごとく変わることは不見識きわまりないことであります。受験生にとって迷惑千万であります。総理は、いかなる所感を持たれているのでありましょうか。  また、国際社会の中で我が国の果たすべき役割は、経済的、政治的な面に限らず、教育面における国際交流の重要性はますます高まってきております。そのためには、留学生問題の改善は緊急の問題であります。円高の中で留学生の生活は苦しい勉学を強いられており、これから日本に来たいと考えている留学希望者に二の足を踏ませております。政府は、ただ単に十万人留学生受け入れとおっしゃるだけではなく、具体的、質的な充実を伴う方策を早急に講ずべきであり、でないと、日本はますます国際的に孤立してしまいます。  結びといたしまして、一昨日、インド洋のモーリシャス近海で南アフリカの航空機が墜落いたしました。この航空機で遭難されました皆様方の御家族及び関係者に対しまして、その御心痛に心からお見舞いを申し上げます。  また、大韓民国航空の遭難も伝えられております。情報も少なく、関係者の御心配、いかばかりかと思います。  以上で私の質問を終わらせていただきますが、どうか総理、めり張りのある、わかりやすい御答弁を心からお願い申し上げまして終わります。どうもありがとうございました。(拍手)     〔内閣総理大臣竹下登登壇
  11. 竹下登

    内閣総理大臣竹下登君) 矢野委員長から意見を交えた御質問の数々がございました。  まず最初の問題は、対米関係についてでございます。  我が国といたしましては、防衛分野における米国との技術の相互交流を図りますことが、日米安保体制の効果的運用を確保する上で必要なことであるということを、まず基本的に考えております。このことは、日米安保条約及び関連取り決めの趣旨に沿うゆえんでもあり、また、我が国及び極東の平和と安全に資するものであるとの認識のもとで、昭和五十八年以降、対米武器技術供与の道を開いた。これは私も閣僚のときでございます。この認識は、私も完全に今日も共有しておるものであるということを申し上げます。  続いての洋上防衛問題についてのお答えになりますが、この洋上防衛のあり方につきましては、近年の航空機やミサイルの性能向上等にいかに効率的に対応するかという観点から、中期防に基づいて検討を行っておるものでございます。この検討は、憲法及び専守防衛等の基本的な防衛政策の枠組みのもとで、諸外国の技術的水準の動向に的確に対応して、最も有効かつ効率的な防衛力の整備を図るという大綱の基本的な考え方に従って進められているものでございます。  SDI協力の問題でございますが、SDIの基本理念は、レーガン大統領を初め米国政府が累次説明しているとおりで、軍備管理・軍縮交渉努力と並行しながら、非核の防御システムについて研究を行い、究極的には核兵器を廃絶せんとするもの、米国がこのような基本的理念のもとで研究を行っているということは、我が国の平和国家としての立場にも合致するものであるという基本認識を持っております。以上の認識を踏まえて、ことしの七月に日米政府間協定が結ばれたものである、このように承知をいたしております。  次は、来年度防衛予算の問題でございます。  我が国の防衛力整備については、あくまで我が国の自主的判断に基づきまして、大綱に定める防衛力の水準の達成を図ることを目標としますところのいわゆる中期防の着実な実施に努力しているということが現状でございます。昭和六十三年度の防衛関係費につきましては、今後の予算編成過程において調整されていくものでございますが、いずれにせよ、本年一月の閣議決定に基づきまして引き続き節度ある防衛力、これを整備していく考え方でございます。  イラン・イラク紛争情勢についての、これまた御意見を交えての御質疑がありました。  陸上戦闘は基本的に膠着状態にございますが、ペルシャ湾では航行船舶に対する攻撃が頻発し、域外国の軍事プレゼンスが増大しております。こういう緊張した状況が継続しておりまして、紛争の早期平和解決を望む国際世論が高まっております。こういう状況下におきましては、まず、国連事務総長の調停努力が継続中のところ、我が国としてはこの努力を全面的に支援していくという基本的な考え方に立っております。  安全航行確保のための施策につきましては、これは非軍事的手段による貢献を行うという基本考え方に基づきまして、去る十月七日の政府・与党首脳会議で決定をされました安全航行援助施設、湾岸及び周辺国への経済技術協力国連特別拠出金等の同湾の安全航行確保のための貢献策については、引き続きそれらを検討するとともに、決めたことは早急に実施をしよう、こういうことでございます。  それから、ゴルバチョフ路線の評価という大きな問題がございました。  ゴルバチョフ政権のペレストロイカ路線、この立て直し路線というものにつきましては、その政策がソ連国民の民生の向上及び対外行動の改善につながることを私も期待しております。ただ、その政策は、ゴルバチョフ書記長自身が述べておりますように、社会主義の枠内で行われているものでありまして、一定の限界があることも事実ではないか。いずれにせよ、ソ連の言葉より実行、これが重要ではなかろうかと思います。  ソ連の対日政策については、現在のところ、領土問題など基本問題について残念ながら変化が見られておりません。我が国としては、今後とも、そうした基本的な北方領土問題を解決して平和条約を締結するという基本方針だけは堅持していかなければならぬ課題である、このように思います。  次の問題は、対中外交政策の取り進め方でございます。  これは日中関係国交正常化以降順調に発展しております。そして、矢野委員長の考え方と私どもの考え方に大きな相違はない、こういうふうに基本的には認識しております。関係の緊密化に伴いましてさまざまな問題が生起していることもありましょうが、対中関係重視は我が国外交の重要な柱の一つであります。これらの問題が日中関係発展に影響を及ぼさないように、双方で最大限の努力を行う必要があると考えます。今後とも、日中共同声明日中平和友好条約及び日中関係原則、これに従いまして中国との関係の発展に努めてまいる所存であります。来年は日中平和友好条約十周年に当たります。双方の都合のよい時期に私も訪中を希望しておるところであります。  それから、イスラエル外交の問題でございますが、近年、日本の国力の伸長に伴いまして、日本外交が着実に幅を広げております。中近東においては、同地域の各国との関係は次第に緊密の度を深めております。イスラエルにつきましても、貿易や要人の往来も増加しております。我が国としては、その他の中近東諸国との適正な均衡が得られることを配慮しながら、今後とも関係の着実な進展に努力してまいりたい。おっしゃったように幅を広げる、こういう考え方基本的に賛成であります。  次は、有色人種問題についての御意見を交えた外交政策でありますが、我が国外交の目標は、我が国の平和と繁栄を確保しながら、国際社会に対し建設的貢献を行って、世界各国の尊敬と信頼を得ていくということにあります。その際、政府としては、いかなる人種的、宗教的差別や偏見にも反対しながら、多様な文化や価値観を持つ諸外国との間で相互理解と友好協力関係を進めていくように努力する、こういういわば大枠についてのお答えをいたしておきます。  次の問題は、憲法の問題でございます。  憲法の基本原則であります、御指摘どおり国民主権、基本的人権、平和主義、これは高く評価しております。この理念は将来においても堅持すべきものであると思います。  御指摘のございました点につきましては、私が学生時代、この議場で憲法改正議論を傍聴しておりました当時、いわば翻訳憲法論議を通じて、同じものでも我々の手で書きたい、こういう考えを持った過去の思い出話をしたことは事実ございます。したがって、私は、今日憲法改正問題を政治日程にのせる考えは全くございません。  それから、靖国問題でございます。  これは、昨年、そして本年八月十五日、内閣総理大臣は、国際関係等諸般の事情を総合的に考慮して、靖国神社公式参拝を差し控えられたという事実がございます。一方、昭和六十年八月十四日の内閣官房長官談話は現在も存続しております。公式参拝は制度化されたものではありません。したがって、今後公式参拝を実施するかどうか、それこそ、その都度、諸般の情勢を総合的に考慮して、慎重に検討して自主的に決定すべきものである、このように考えております。  スパイ防止法案につきましては、これは、この種の立法が必要であるという意見から、現在種々検討を行っておる向きもございます。この種立法につきましては、国民基本的人権とかいわゆる知る権利などにかかわる問題もございます。したがって、国民の十分な理解が得られることが望ましいものであります。各般の観点から慎重に検討さるべき課題であると思います。  清潔な政治は、政治に対する国民信頼の原点であります。そのためには、やはり政治家の一人一人が各人の良心と責任において政治倫理の確立に努めるべき課題であるというふうに思います。  さきに公表されました政治資金規正法改正案、この要綱骨子は、自民党選挙制度調査会の小委員会でまとめられたものでございます。この問題は、事柄の性質上、それこそ各党間において十分論議を尽くしていく必要のある課題であるというふうに思っております。これが成立当時、附則八条が存在しておることも十分承知をいたしておるところでございます。  定数是正問題、これは昨年の第百四回国会におきまして行われました際に、「昭和六十年国勢調査の確定人口の公表をまって、速やかにその抜本改正の検討を行う」旨、本院の本会議において決議をされております。この問題は選挙制度基本にかかわる問題であります。したがって、いろいろな御議論もございますが、まず各党問で十分な論議をしていただくということが、やはり私の経験からして最も大切なことではなかろうか、こういうふうに考えております。  次は、国際経済の混迷と米財政赤字等についてのお考えに対してであります。  国際経済が直面する諸問題の解決のためには、日米両国の協調と努力が不可欠であります。我が国としては、引き続き、内需拡大、輸入拡大国際社会への貢献、個別案件の処理等に努める決意でありますが、米側においても、引き続き、財政不均衡の是正、競争力強化のための自己努力、これが強化されることを期待いたすものでございます。訪米した際には、こうした点を含めて、世界経済の安定的発展の観点から、両国の協力関係の強化を目指して率直な意見交換を行いたい、このように考えております。  それから、通貨制度の問題がございました。  現行の変動相場制のもとで、経済の基礎的諸条件を反映させながら為替レートをより安定させるため、プラザ合意、ルーブル合意、これに沿って各国間の政策協調と為替市場における協力を行って今日に至っておる。今後とも、このような経験を積み重ねることによりまして、為替相場の一層の安定に向けて努力してまいりたいというのが基本的な考え方でございます。  そこで、為替相場の見通しについて、これは慣例上コメントを差し控えさせていただきたいと思います。ただ、為替相場の安定のためには、主要国間で積み重ねられてきた合意、プラザ合意、ルーブル合意、これらを踏まえた政策協調が最も大切であることは論をまちません。  国際通貨会議の御提案がございましたが、これは御意見としてだけ承らせていただいておきます。  来年度税制改正は、経済活性化配慮をしながら、長寿・福祉社会をより確実なものとして維持していくためには、所得、消費、資産等の間で均衡がとれた安定的な税体系を構築することが喫緊の課題であります。このような認識のもとで、政権発足後直ちに税制調査会に、所得、法人、資産及び消費課税等について、望ましい税制のあり方を諮問いたしまして、現在精力的に御審議が進められております。したがって、六十三年度税制改正の内容につきましては、今後、税制調査会を初め各方面での議論を通じて検討していこうというふうに思っております。  今後の税収動向につきましては、具体的な見通しを現段階で申し上げるというのは非常に難しい点がございますが、仮に原則論を申し上げますならば、税の増収が生じた場合には、現在の極めて厳しい財政事情から、まずは公債減額に充てるというのが基本的な考え方であると思っております。したがって、NTT株の売却代金にいたしましても、この使途について国債の償還に充てるということは原則でありまして、この原則は無利子貸付制度というものの導入によって一時活用されておるのであって、基本が変わっておるものではないというふうに御理解をいただきたいと思います。  それから、生活関連社会資本整備計画については、御指摘の意見に、私どもも率直に肯定したいというような御意見もたくさんございました。しかし、結局、これを整理してみますと、道路、下水道、公園等の生活関連社会資本整備については、国民のニーズやいわば社会経済情勢の変化に対応しながら長期的計画を作成して今日までやってきた。したがって、その延長線上で今後やっていきます。しかしまた、公共事業の配分に当たって、おのおの社会資本整備水準、社会経済の動向等を踏まえて適切に対処するというのが優等生の答弁になるわけでございますが、その適切な対処ということについては、私は、先ほど来御意見としてある議論というものは、絶えず私どもも耳を傾けなければならぬ問題だというふうに理解をしております。  それから、国と地方は車の両輪であるというのが、いつも私が申し上げておる言葉でございます。補助金等は政策遂行の上で重要な機能を担うものでありますが、他方、ややもすれば地方行政の自主性を損なったり、財政資金の効率的使用を阻害する要因ともなる等の問題点があるために、国、地方間の機能分担や費用負担のあり方を含め、これは見直しを含め、絶えず私どもは念頭に置いて対応する課題だと思っております。統合メニュー化を含む補助金等の整理合理化につきまして、今後とも統合メニュー化というようなものは積極的に推進していかなければならぬ課題だと今でも思っております。なお、六十二年度における公共事業に係る補助負担率の引き下げの際には、所要の財源措置を講じまして、地方行財政の運営に支障が生じないように対処はしてまいりました。いずれにせよ、この問題は車の両輪であるという基本認識に立って対応すべきものであると考えます。  それから、行革の問題について、決意が少したるんだではないかという御指摘であります。  確かに、予算編成等を通じまして、補助金等の整理合理化を含め、逐年行政改革の具体的な方策の推進に努めてまいりました。その意味におきましては、やはり国鉄の民営化あるいは電電株というようなものは、まさに行革そのものの生んだ果実であると私は思います。そして専売もまた民営化しました。そういう実績がありますと、これで済んだという感じになっては、これは一番危険なことであります。やはり行革というものは、本体の問題につきましてもなおざりにすべき課題ではない。したがいまして、政府機関の移転、再配置、こういう問題も申し上げておりますのは、これは四全総においてもその推進を図ることとされておりますので、今後、検討協議の場の設定を含めて具体的な推進方策の検討をしていきたい、このように考えておるところであります。  規制見直し、これはかねてからの御持論でございますが、この問題につきましては、民間企業が自由に活動し得るような領域を一層広げる、これは重要な課題であります。また、設備投資等反間投資の喚起に寄与するものと考えます。行政改革の推進、累次にわたる経済対策等を通じて規制緩和の着実な推進を図ってきたところでございますが、この問題もまさに行革の大きな柱の一つでございますので、今後とも努力を続けてまいります。  さらに、週休二日制の問題でございます。  週休二日制の完全実施については、その前提として週四十時間労働制を実現することが重要であるとの認識をまず持っております。そのため、さき国会で改正されました労働基準法の目標でもあるこの週四十時間労働制に、できるだけ速やかに移行できるよう努力することがまず必要であると考えます。  その一環として、国家公務員等公務部門において週休二日制によります労働時間短縮を推進することが必要であることは言うをまちません。諸外国における官公庁の状況を見ますならば、我が国政府機関においても完全週休二日制の実施を目標として努力することは必要であると私も思います。そのために、いわゆる土曜閉庁方式を導入せざるを得ないものと考えますが、その過程にありましては、経営基盤が弱くて労働時間短縮が容易でない中小零細企業の実態をも踏まえたきめの細かい指導援助をするなど、国民理解支援を得ながら段階的に進めることが肝要である。したがって、当面、明年四月をめどに四週六休制を実施して、それからこの閉庁方式についても六十三年度中に導入することを目途として諸般の準備を今進めておるというのが、あの法律審議の際からずっと今日まで続いてきておる現状であります。  それから、サマータイムの問題でございますが、これは経験もある問題でございますけれども、古くて新しい議論とでも申しましょうか、経済活動の各方面に与える影響そのものが多様でございますので、仮に導入するという前提の上に立っても、慎重な検討というものは必要ではないかというふうに考えております。  さらに、官公需問題に対する中小企業等の問題でございます。  円高等内外の厳しい経済情勢に直面する中小企業に対しましては、従来から新転換法、特定地域法の制定を初めとする構造転換対策を総合的に講じておるというのが基本的な認識でございます。今後ともこれらの施策を一層推進しますとともに、融資については、まずは年末融資における資金量を十分に確保する、これをまず第一に行わなければなりません。それから、下請中小企業対策について、下請取引あっせん体制の充実と低利融資制度の創設等に今日まで努めております。そこで、中小企業向けの官公需につきましては、本年七月に閣議決定された国等の契約の方針に従い、毎年毎年変更しながら設定してまいりますが、中小企業者向け官公需契約目標の設定されたものの達成に鋭意努力する、こういうことでございます。  それから、不公平税制の問題でございます。  税負担の公平確保は、税制に対する国民理解協力を確保する上での不可欠の前提でありまして、政府は従来からこれには努力してまいりました。所信表明演説において述べましたとおり、「急速な経済社会の変化に対応していくため、視点を新たにして国際国家にふさわしい、日本経済の活性を高める税制、国民が納得して負担できるような簡素で公平な税制、本格的高齢化社会の到来を控えて、安定した歳入基盤を提供し得る税制、これを追求しなければならない」、このように基本的には考えます。そのためには、開かれた議論を通じて税制改革についての国民的合意を形成しながら、所得、消費、資産の間で均衡のとれた安定的な税体系を構築することが必要だ。その意味において、御指摘のありました不公平税制や総合課税の問題を含めて、グリーンカード問題等の反省ももとよりございますけれども、幅広く議論をちょうだいしたいというふうに考えておるところでございます。  また、重要なポイントとして、矢野委員長が当時書記長であられたときの六十年二月六日に私どもも一緒に御議論をした問題でございますが、国民の信を問うというような御議論をも含めての御意見を交えての御質問でございます。  前内閣時代に、「多段階、包括的、網羅的、普遍的で大規模消費税投網をかけるようなやり方はとらないという立場でございますので、これに該当すると考えられるようなものは、中曽根内閣としてはとりたくない」、こういった発言がございます。私も当時大蔵大臣でございました。政府としても、これらの経緯をも踏まえ、したがって、これは重い意味を持つものであるということは、私は否定する考えは全くございません。そこで、そういう趣旨を踏まえまして、いわゆる売上税法案というものを提案したわけでございます。  しかしながら、この法律をめぐってはさまざまな御批判がございまして、結論から申しますと、私も幹事長として議長あっせんをお受けいたしました。その結果、審議未了のまま廃案、こういうことになったわけでございます。あの見解に基づいて種々工夫して出された案が、結果として審議未了、そして廃案となった。こうした経緯を踏まえて、新内閣としましては、国民理解を得られるような税制の確立という観点に立って、岡接税の問題に限らず、論議に先立って予見を与えることなく、広く各方面の意見を伺って成案を得てまいりたい、こういう考え方でございます。(拍手)  その場合には、国会における各党各会派の御意見はもとより、税制調査会における論議その他、国民各界各層の意見に幅広く耳を傾け、国民理解を得られるような税制の確立に努めてまいるというのはやはりお互い共通の使命ではなかろうか、このように考えておるところであります。  それから、あとわずかでございますが、かねて私も承ったことのありますいわゆる長寿加算制度、例のトンチン年金の問題を提起されました。  この問題は、トンチン年金というものが、たしかあれは一七〇〇年代でございましたが、結局やめられたという事実もあるわけでございます。研究の課題でございますが、そもそも老後生活の基礎的な部分を六十五歳以上のすべての国民にひとしく保障するというのが、いわゆる基礎年金制度基本的な考え方であります。したがって、加齢に伴って老後生活の基礎的支出が増大するという議論とは直接結びついてこないではないか、こういう嫌いがございます。したがって、長寿加算制度というものと基礎年金制度というものは、趣旨からいって、ちょっと整合性を見出すことがなかなか難しい課題ではないかなというふうに思います。  それから、次の土地問題の立法措置を含めた対処の方法でございます。  地価は都心部等で鎮静化の兆しがあると言われますが、周辺地域や他の主要都市等では上昇しておりまして、土地対策は現下の内政の最大課題一つであるという認識は十分しております。今後、現下の地価高騰を抑制するため、土地取引の適正化を初めとする緊急土地対策要綱の諸施策をまずは着実に実施する。そして、幸いにして特別委員会が設置されたわけでございますから、今国会の審議等を尊重して、法制化が必要な事項につきましてはできるだけ速やかに法案を提出すべく、与野党の御理解もいただきながら準備を進めていこうというのが基本考え方でございます。  それから、農産物の十二品目問題についての御質疑がありました。  いわゆる意見としてお述べになりました問題は、私どもにも気持ちの上で理解のできる問題もたくさんございます。あすからのガット総会まで残された時間は大変少なくなっております。しかし、我が国としては、国内農業の実情、国際的な経済関係等を十分踏まえて、二国間協議による現実的解決を目指して最大限の努力をしていくというのが当面申し上げるべきことであろうと思います。  それから、最後が大学入試と留学生問題でございます。  国立大学の受験機会の複数化につきましては、その趣旨は評価されつつありますものの、各方面からいろいろな要望のあることも事実でございます。  このため、改善に向けましては、これはやはり国立大学協会においても抜本的な改革について今鋭意検討されておるというふうに承知しております。いずれにせよ、受験生の立場に立って十分配慮しながら、適切な改善が行われるよう、私どもの立場からいえば、これに期待をしておるということでございます。  留学生受け入れ体制の問題でございますが、この問題は、諸外国との教育交流、相互理解の促進のために、大変大きな実績も上げ、役割も果たしたと思います。現在、我が国では一万八千人余りの留学生を受け入れておりますが、二十一世紀初頭におきますところの十万人受け入れを目標に、留学生の受け入れ体制整備努力をしてきております。私もこのたびASEAN会議に出席をいたしますが、その際にも留学生の皆さんから、その都度訪問の要請も出ております。  最近の円高に伴いまして、留学生対策として本年秋から授業料減免措置等が拡大されてまいりました。また、大学での教育研究指導の充実とか宿舎の整備、奨学金の充実等にも一層配慮されていかなければならぬ。やはりこの問題につきましては、いわば十万人というのは国際公約ともいうべきものでありますので、これからも鋭意拡充に努むべき課題である、このように考えます。  以上でお答えを終わります。(拍手)      ————◇—————
  12. 自見庄三郎

    ○自見庄三郎君 国務大臣演説に対する残余の質疑は延期し、明十二月一日午後二時から本会議を開きこれを継続することとし、本日はこれにて散会されることを望みます。
  13. 多賀谷真稔

    ○副議長(多賀谷真稔君) 自見庄三郎君の動議に御異議ありませんか。     〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
  14. 多賀谷真稔

    ○副議長(多賀谷真稔君) 御異議なしと認めます。よって、動議のとおり決しました。  本日は、これにて散会いたします。     午後四時一分散会      ————◇—————