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1987-11-13 第110回国会 参議院 決算委員会 閉会後第2号 公式Web版

  1. 会議録情報

    昭和六十二年十一月十三日(金曜日)    午前十時開会     —————————————    委員異動  十一月十二日     辞任         補欠選任      石井 道子君     柳川 覺治君     —————————————   出席者は左のとおり。     委員長         穐山  篤君     理 事                 井上  裕君                 大島 友治君                 杉山 令肇君                 柳川 覺治君                 菅野 久光君                 峯山 昭範君     委 員                 井上  孝君                 板垣  正君                 河本嘉久蔵君                 沓掛 哲男君                 斎藤栄三郎君                 鈴木 省吾君                 寺内 弘子君                 中曽根弘文君                 永野 茂門君                 福田 幸弘君                 松尾 官平君                 宮崎 秀樹君                 守住 有信君                 一井 淳治君                 佐藤 三吾君                 片上 公人君                 橋本  敦君                 関  嘉彦君                 抜山 映子君    国務大臣        自 治 大 臣        国 務 大 臣        (国家公安委員        会委員長)    梶山 静六君    事務局側        常任委員会専門        員        小島 和夫君    説明員        警察庁刑事局長  仁平 圀雄君        警察庁刑事局保        安部長      漆間 英治君        警察庁交通局長  内田 文夫君        警察庁警備局長  新田  勇君        防衛庁防衛局調        査第二課長    伊藤 康成君        国土庁計画・調        整局特別調整課        長        河手 悦夫君        国土庁土地局土        地利用調整課長  鈴木 克之君        大蔵省主計局主        計官       水谷 英明君        文部省高等教育        局医学教育課長  佐藤 國雄君        厚生省健康政策        局計画課長    入山 文郎君        厚生省健康政策        局医事課長    阿部 正俊君        厚生省保険局企        画課長      羽毛田信吾君        厚生省保険局国        民健康保健課長  加納 正弘君        建設省都市局都        市計画課長    伴   襄君        自治政務次官   森田  一君        自治大臣官房総        務審議官     小林  実君        自治省行政局長  木村  仁君        自治省行政局選        挙部長      浅野大三郎君        自治省財政局長  津田  正君        自治省税務局長  渡辺  功君        消防庁長官    矢野浩一郎君        会計検査院事務        総局第一局長   疋田 周朗君        会計検査院事務        総局第二局長   志田 和也君    参考人        公営企業金融公        庫総裁      近藤 隆之君     —————————————   本日の会議に付した案件理事補欠選任の件 ○昭和六十年度一般会計歳入歳出決算昭和六十  年度特別会計歳入歳出決算昭和六十年度国税  収納金整理資金受払計算書昭和六十年度政府  関係機関決算書(第百八回国会内閣提出)(継  続案件) ○昭和六十年度国有財産増減及び現在額総計算書  (第百八回国会内閣提出)(継続案件) ○昭和六十年度国有財産無償貸付状況計算書  (第百八回国会内閣提出)(継続案件)     —————————————
  2. 穐山篤

    委員長穐山篤君) ただいまから決算委員会を開会いたします。  この際、森田自治政務次官より発言を求められておりますので、これを許します。森田自治政務次官
  3. 森田一

    説明員森田一君) このたび自治政務次官を拝命いたしました森田一でございます。  委員先生方におかれましては、地方自治のためにいろいろ御尽瘁を賜りまして、本当にありがとうございます。心から御礼を申し上げますとともに、今後とも御指導のほどをよろしくお願い申し上げます。(拍手)     —————————————
  4. 穐山篤

    委員長穐山篤君) 委員異動について御報告いたします。  昨十二日、石井道子君が委員を辞任され、その補欠として柳川覺治君が選任されました。     —————————————
  5. 穐山篤

    委員長穐山篤君) 次に、理事補欠選任についてお諮りいたします。  委員異動に伴い、現在理事が一名欠員となっておりますので、その補欠選任を行いたいと存じます。  理事選任につきましては、先例により、委員長指名に御一任願いたいと存じますが、御異議ございませんか。    〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
  6. 穐山篤

    委員長穐山篤君) 御異議ないと認めます。  それでは、理事柳川覺治君を指名いたします。     —————————————
  7. 穐山篤

    委員長穐山篤君) 昭和六十年度決算外二件を議題といたします。  本日は、自治省警察庁及び公営企業金融公庫決算について審査を行います。     —————————————
  8. 穐山篤

    委員長穐山篤君) この際、お諮りいたします。  議長の都合により、これらの決算概要説明及び決算検査概要説明は、いずれもこれを省略して、本日の会議録の末尾に掲載することにいたしたいと存じますが、御異議ございませんか。    〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
  9. 穐山篤

    委員長穐山篤君) 御異議ないと認め、さよう取り計らいます。     —————————————
  10. 穐山篤

    委員長穐山篤君) それでは、これより質疑に入ります。  質疑のある方は順次御発言願います。
  11. 佐藤三吾

    佐藤三吾君 どうも森田さんおめでとうございます。政務次官になられてわくわくしておるところだと思うんですが、今までの実態を調べてみますと、二十九年から歴代の政務次官平均寿命というのは大体七カ月ぐらいですね。きょうはそういう意味で、ありきたりじゃなくて、七カ月の間で何をやろうとしておるのか、それをちょっとお聞きしたいと思います。
  12. 森田一

    説明員森田一君) ただいま佐藤先生から大変基本的なお尋ねがあったわけでございますが、自治制度が発足して四十周年になり、また近くは記念式典が行われることになっておるわけでございます。また、しかもこの地方行財政現状というのは大変厳しい状況にありまして、巨額の借入金等もあるわけでございます。  そのような中で、私はこの政務次官を拝命した以上は、梶山大臣を助けて力いっぱい地方自治の発展のために頑張ってまいらなければならないと、このように認識をいたしておるところでございます。佐藤先生の御指導を何とぞよろしくお願い申し上げます。
  13. 佐藤三吾

    佐藤三吾君 岳父の大平総理は、総理大臣になったときに田園都市構想を打ち出している。そして地方時代というものを、一つの夢を国民に与えたんですが、これは早く亡くなったこともございまして完全に夢に消えまして、その後の鈴木さんで焦点がなくなっちゃって、中曽根さんの五年間で今度は逆に地方は暗い時代に、冬の時代に今入っているわけですね。  そこで、率直に言って、私は今ほど地方自治体の財政の面から見ましても最悪の事態はないと思っておるんですよ。そういうときだけに、後ほどまた聞きますが、梶山さんの補佐でなくて、森田さんの若さとそしてフレッシュ感による地方自治活性化のそういった施策というものを私は期待したいと思うんですが、一つ挙げるとすれば、これだけはぜひやりたいというものがあればお聞きしておきたいと思うんですが、いかがでしょう。
  14. 森田一

    説明員森田一君) 田園都市構想の話は、今大平総理が他界したこともありまして下火になっておるわけでございますが、地方時代というのは、本来情報化が進めば進むほど実は地方時代がやってくる、このような期待があったと思うわけであります。ところが実際には、情報化が進んでまいりますと東京一極集中という現状になってまいっております。  私は一つと言われれば、この東京一極集中の問題を何とか取り上げて、地方時代ということが本当に内容的にもそのようになるように努力をしてまいるつもりでございます。
  15. 佐藤三吾

    佐藤三吾君 結構だと思うんですが、何もしなくても七カ月ですから、やはり七カ月おる間は何かやると、こういうことでひとつぜひ足跡の残るような有終の美をつくり上げていただきたいと思うんです。  私のあなたに対する御期待を申し上げて、あなたに対する質問を終わりたいと思うんです。  そこで、次に警察庁に伺ってまいりたいと思いますが、有楽町のいわゆる三億円の強奪事件ですね、この事件警察庁努力でどうも外国フランスギャングの一行というのが大体判明して国際手配になっておるわけです。これは警察庁の大変な御努力の結果だと思うんですけれども、同時に名画も絡んでおる、毛皮も絡んでおる、こういう点も報道に関する限り浮き彫りになっておるように思うのでございます。フランス捜査員も参られたことでございますが、これから具体的な追及に移っていくのではないかと思うんですけれども現状について、捜査中ですからなかなか詳しいことは言えぬと思いますが、お聞かせ願いたいと思うんです。
  16. 仁平圀雄

    説明員仁平圀雄君) 三億円強奪事件につきましては、今先生からもお褒めいただいたわけでございますが、現場周辺における聞き込み捜査を初め遺留品捜査等を長期間にわたり推進いたしました結果、現在までにフランス人被疑者三名を割り出しました。そのうち身元確認の裏づけができました二名につきましては、十一月九日、強盗致傷被疑事実によりまして逮捕状の発行を得て全国指名手配をいたしておるところでございまして、また国際的には国際刑事警察機構を通じまして、加盟各国に対しまして所在の発見通報方を要請いたしておるところでございまして、現在もなお鋭意捜査中でございます。  また、名画盗難事件につきましては、別件のミンク毛皮盗難事件被疑者としてことし九月十八日に逮捕いたしました藤曲信一という被疑者追及いたしました結果、この被疑者コロー絵画の我が国内における販売といいますか、さばきを担当いたしておるということがわかりまして、コロー絵画五点のうち四点につきましてはこれまでに発見、領置いたしているところでございます。残る一点につきましても鋭意発見に努めているところでございます。現在、フランスから四名の捜査員が来日いたしておりまして、約二週間の予定でございますが、警察庁警視庁と緊密な連絡のもとに情報交換を行ったり、あるいは日本警察の取り調べに立ち会うなど、協力捜査推進しているところでございます。  これらの事件は、いわば典型的な国際事件であり、国際化犯罪の面におきましてもこれだけ進んでいるのかということを知らしめられたわけでございますが、率直に申し上げますと、法制上いみいろな制約等もございまして、これからの捜査はなかなか困難だと思うわけでございますが、事案の真相を解明すべく全力を挙げて今後とも努力してまいりたいと思っております。
  17. 佐藤三吾

    佐藤三吾君 警察庁努力もさることながら、今お答えの中に出ましたように、国際的な犯罪であるだけに法制上の制約というのがかなり障害になるんじゃないかというような感じもするんですが、具体的にこの事件でどういう点が法制上含めて障害になるのか、そこら辺はお話しできませんか。
  18. 仁平圀雄

    説明員仁平圀雄君) 一つ身柄の確保、引き渡しという問題でございます。これは通常各国とも自国民保護という立場から、海外で犯罪を犯しまして自国に舞い戻っている被疑者につきましては、その身柄外国に対して引き渡さないという原則をとっておるということでございます。  それから、もう一つこの事件で問題になりますのは、現在領置いたしております名画の返還といいますか、措置をどうするかということでございまして、これにつきましては、当面は国際捜査共助法に基づきまして収集した資料としてフランス側に送付するという方向で、法務、外務両省庁と検討を進めておるということでございますが、最終的にはこの所有権の問題をめぐりまして善意取得という問題がございます。これまた各国間で法制上の違いもありまして、最終的にどうするかという、いわば民事上の問題でございますが、そういった問題があろうかと思います。
  19. 佐藤三吾

    佐藤三吾君 新聞報道ですからちょっと私もわからぬのですが、フランスマフィアがこの事件に絡んでおるんではないかということで、かなり図入り報道されておるんですが、この点はいかがなんですか。
  20. 仁平圀雄

    説明員仁平圀雄君) この点につきましては、来日いたしておりますフランス捜査官から聞いておるわけでございますが、いわゆるマフィアというものではないという答えでございまして、もっと組織の結束の緩やかな犯罪者グループというような説明をいたしております。
  21. 佐藤三吾

    佐藤三吾君 いろいろ聞きたいんですが、捜査中ですからそこら辺が限度じゃないかと思うんです。国際犯罪ですからなかなか大変なところもあると思いますが、私は、私ども国民の側から見ると果たしてこれだけなのか。例えば銀座の金塊強奪事件であるとか、壱岐、対馬で金云々とか、いろいろ最近不可解な事件が起こっておりますからね、そういう問題とも絡んでおるんじゃないかと思うので、それだけに徹底的な追及シロクロをきちんと出すことを期待しておるわけでございますから、ぜひそういう期待にこたえた捜査を強化してほしいということを一つつけ加えておきたいと思うんです。  そこで次の問題ですが、この三億円強奪事件については、非常にそういう意味では成果を上げておるんですが、その前に起こった大阪グリコ事件ですね。これは一向に、近ごろ報道すら音さたなしというような感じがして、一体何をしておるのかというのが国民の率直な気持ちじゃないかと私は思うんです。この点は一体それこそ何をしておるのかということを聞きたいんですけれども、どういうことでしょう。
  22. 仁平圀雄

    説明員仁平圀雄君) この事件につきましては、既に発生以来三年七カ月余を経過いたしておるわけでございます。刑事警察といたしましては現在も最重要課題として取り組んでいるところでございまして、近畿の大阪、兵庫、京都、滋賀の四府県及び警視庁におきましては、現在もなお発生当初の捜査体制を堅持して捜査をしているところでございますし、また全国警察組織も挙げて捜査をいたしているところでございます。  現在指定いたしております、推進しております捜査重点といたしましては、似顔絵の男の割り出し、それから犯人が使用いたしましたタイプライター及び活字の発見、それから無線機等遺留品についての追跡捜査などが主なるものでございます。いずれも極めて膨大な捜査ということになるわけでありますが、粘り強く、落ちのないように着実に推進していきたいということで取り組んでいるところでございます。
  23. 佐藤三吾

    佐藤三吾君 この事件は当初から非常に警察に詳しい、例えば大津で取り逃したように、絶えず警察無線を活用しておる、そういうことからいえば事情に詳しい人じゃないか、もしくはOBじゃないかとかいろいろ言われておるんですけれども、ここら辺は私は、足元の方の捜査がおくれて、その結果がこういう長引いている状況になっておるんじゃないかというような感じもするんですけれどもそこら辺がいかがかということが一つ。  今、タイプライターという話が出たんですが、先日ちょっと地方行政委員会で申し上げたように、私の大分の事務所捜査員の方がちょろっと来られて、きょうは何ですかと、こう聞いたら、いや、グリコ事件タイプライターを追っていたところが、佐藤事務所が同じ物を仕入れておるというような、そういう話ですが、えらいところを捜して歩きよるなと思ったんだけれども、これは病膏肓に入ったんじゃなかろうかというような感じもしたんですけれども、案外私はこれは大阪足元じゃないかと思うんですね。一遍大阪警察官の収賄や飲食店その他の関係事件がございましたね。特に刑事さんのいろいろな事件がございまして、その際の人事異動が逆に捜査のベテランを外すような結果になって、戸惑いをつくっているんじゃないか、こういううわさもあるんですね。そこら辺はいかがなんですか。
  24. 仁平圀雄

    説明員仁平圀雄君) 大阪府警におきましては、ただいま御指摘不祥事案を契機にいたしまして、思い切った人事刷新を行っておるわけでございまして、その後は府民の信頼回復のために全力を挙げて諸般にわたる警察活動推進しておると承知しておるところでございます。そういうことで、特に御指摘の不祥事が今回の事件捜査に影響しているというふうには私どもは思っておらないわけであります。  しかしながら、この事件捜査に寄せる国民皆さん方期待というものは大変強いわけであります。また、関係企業に与えました深刻な影響等を考えますと、何といたしましても私どもは検挙しなければならぬ最重要事件だと思うわけでありまして、第一線捜査員士気も衰えておりませんので、今こそ正念場であるという認識に立ちまして頑張っていきたいと思います。     —————————————
  25. 穐山篤

    委員長穐山篤君) 質疑の途中ではございますが、梶山国務大臣から発言を求められておりますので、この際、これを許します。梶山国務大臣
  26. 梶山静六

    国務大臣梶山静六君) このたび自治大臣国家公安委員会委員長に就任をいたしました梶山静六でございます。どうぞよろしくお願いをいたします。  決算委員会委員各位におかれましては、かねてより地方自治行政並びに警察行政推進に格別の御理解をいただき、厚くお礼を申し上げます。  今日の地方行財政を取り巻く環境は極めて厳しいものがありますが、行政改革推進地方財政健全化地方税源充実強化等解決をしなければならない多くの課題を抱えております。また、国家社会存立の基盤である治安維持につきましても、内外の諸情勢はまことに厳しく、現在の治安水準を低下させることなく国民生活の安全を確保していくためには、今後一層の努力が必要であります。  私といたしましては、これらの地方行財政の諸問題の解決治安維持に最大限の努力を傾注してまいる所存でございますので、何とぞよろしく御指導、御協力のほどをお願い申し上げます。(拍手)     —————————————
  27. 穐山篤

    委員長穐山篤君) それでは質疑を続けます。
  28. 佐藤三吾

    佐藤三吾君 大変な御苦労をなさっていることはわかりますが、また士気も衰えていないということで結構だと思うんですが、せっかく鈴木さんも現地へ乗り込んでおるわけですから、やっぱり広島大学事件のように、迷宮入りかと思ったところにぱかっと解決するというぐらいなことで期待したいと思うんですが、ぜひひとつ頑張ってほしいと思うんです。  もう一つお伺いしておきたいのは、朝日新聞襲撃事件です。これが約六カ月、これも何か全然姿も見えないまま六カ月というような雰囲気もございますし、神戸から名古屋、東京事件は広がっておるんですが、これは一体どこまで来ておるのか。どういう状況になっておるのか。いろいろ報道はされるんですが、さっぱり私どもにはわからない。これはいかがでしょうか。
  29. 仁平圀雄

    説明員仁平圀雄君) 一連朝日新聞社襲撃事件につきましては、広域的な組織捜査を展開する必要があるということから、警察庁指定第百十六号事件としたわけでございますが、現在、全国警察を挙げて、動機面捜査、それから散弾銃捜査犯行声明に使用されたワープロの捜査犯行文にある赤報隊解明等重点捜査推進しているところでございます。また、当然のことでございますが、発生県におきましては、現場採証資料及び目撃者情報に基づく捜査等推進しておるところでございます。  これまでの捜査の結果、本件犯行は、日本民族独立義勇軍別動赤報隊と称するものによる犯行であろうということは判明いたしておるわけでございますが、これまでの全国捜査にもかかわらず、その組織存在等実態につきましてはいまだ把握するに至っておらないという状況でございます。  この事件は大変反社会性の強い悪質な事件でございまして、また犯行声明等からいたしますと、第四、第五の犯行のおそれもございますので、何とか早期検挙するという決意のもとに取り組んでいるところで。ございます。
  30. 佐藤三吾

    佐藤三吾君 赤報隊というのは、この事件が起こるまでに警察庁としては実態をつかんでいなかったんですか。事件後に初めて捜査にかかったんですか。いかがでしょうか。
  31. 仁平圀雄

    説明員仁平圀雄君) 赤報隊という名前は当然承知いたしておるわけで、これまで幾つかの犯行におきましてもそういった名前が使われておった例があります。それから、幕末の赤報隊の件につきましては十分承知しておるところでございます。ただ、赤報隊というものが実在するのかどうか、そういう組織の内容がどうかというようなことにつきましては、これまでも把握しておらないところでございます。
  32. 佐藤三吾

    佐藤三吾君 私は、この事件の性格から見て、いわゆる赤報隊右翼という、この連想がどうしても出てくるんですが、事が言論の自由に対する攻撃であり、圧迫ですから、やっぱり恨み前みたいな考え方で捜査に当たるんじゃなくて、そういう視点から見れば、かなり私は焦点を絞って入れるんじゃないかというような感じがするんです。にもかかわらず、なかなか進んでいない。進んでおるかどうかわかりませんが、表にはそういう受けとめ方ができない状況になっておるんです。これは、そこら辺に何か警察当局自体にひっかかりがあるんじゃないかというような感じもするんですけれども、そういうことはございませんか。そこら辺がちょっと気になる点なんですけれども、いかがでしょうか。
  33. 仁平圀雄

    説明員仁平圀雄君) いわば赤報隊というのは右翼でございますので、警察の所管からいたしますと警備警察部門ということになるわけであります。現在、捜査本部体制におきましても、捜査本部長刑事部長がやっておりますが、その中に警備部体制も組み込んで、刑事部長たる捜査本部長の指揮のもとに統一的、一元的な捜査推進しておるわけでございまして、部内において引っ張り合っているというようなことはございません。
  34. 佐藤三吾

    佐藤三吾君 これは、刑事部長決意を表明しておりましたが、自由社会に対する一つ攻撃ですから、断じて許すことができないと思うんです。ひとつ徹底した捜査をお願いしたいと思うんです。  せっかく大臣もお見えになりましたから、ごあいさつございましたように、国民生活安定の意味で重視をなさったごあいさつもあったんですが、今有楽町の三億円の強奪事件なり、大阪グリコ事件、それから朝日新聞事件一連の問題についてお聞きしましたが、国家公安委員長としての決意というか、御見解があれば承っておきたいと思うんです。
  35. 梶山静六

    国務大臣梶山静六君) 御指摘の未解決重要事件については、警察当局としても当面の最重要課題として一日も早い解決に向けて取り組んでいるところであり、私といたしましても重大な関心を持って捜査の経緯を見守り、督励しているところであります。  また、近年の社会情勢、犯罪情勢の変化に対しましては、有効に対応できるよう捜査体制の整備充実に努めるとともに、警察の総合力を発揮できるように十分配慮してまいる所存でございます。
  36. 佐藤三吾

    佐藤三吾君 警察庁結構です。  次に、梶山大臣もお見えになりましたからそちらに質問の重点を移してまいりたいと思います。  まず、大臣おめでとうございます。私は一足お先に、十日の日に就任のごあいさつをお聞きしたわけですが、どうでしょう、自治体の現状に対する大臣認識、これをちょっとお伺いしたいと思うんです。
  37. 梶山静六

    国務大臣梶山静六君) ただいまは佐藤委員から御丁重な御祝辞を賜りましてまことにありがとうございます。  自治体の現状に対する認識ということでございますが、新しい地方自治制度の発足以来四十年が経過をし、関係者の御尽力及び国民の理解と協力によりまして、我が国の地方自治はおおむね定着しつつあると考えております。しかし、社会経済情勢の変化に対応して、地域社会の活性化と住民福祉の増進を図るため、地域の特性を生かした個性豊かな地域づくりが必要となっており、地方公共団体の果たすべき役割はますます重要になっていると考えております。  また、地方財政は、巨額の借入金残高を抱え、極めて厳しい状況に置かれており、今後その償還にもだえ得るように財政構造の健全化を図っていくためには、行財政の守備範囲の見直し、行財政運営の効率化等により地方歳出の節減合理化を図るなど、また地方税、地方交付税等の地方一般財源の着実な充実を図っていくことが基本的に必要であると考えております。  このように地方自治行政をめぐる環境は極めて厳しいものがありますが、地方自治行政は民主政治の根幹をなし、源泉でもございますので、内政の基盤をなすものであると認識をしており、地方自治行政の進展のため一層の努力を払ってまいりたいと存じます。
  38. 佐藤三吾

    佐藤三吾君 本会議の代表質問じゃないわけですから、原稿じゃなくて、やっぱり大臣が生の大臣として、六日に就任したわけですから、一週間ぐらいの感覚で結構ですから、こうだということで本当は聞きたかったんです。これからも大臣、ちょっと二、三お聞きしますけどね、あんまり原稿を読まないで、あなたの本音を、新聞等ではずばり言う人だという評があるんですから、その本音を聞きたい。そういうことでひとつよろしくお願いしておきたい。  田中角榮さんは県会議員出身の総理はないと言ったということが報道されておるんですが、竹下さんは総理になられたですね。しかも大臣も県会議員出身で、よく調べてみますと八名ですね。八名ということは、約半数の方が田中角榮さんの意見にもかかわらず今度は組閣に参加しておる。こういうことなんですが、これは私は一面見ますと、地方自治に携わった方々が内閣の半数近いということは、日本国の内閣制度の中で初めてじゃないかと思うんですよ。この時期に地方自治問題が重視をされて、そうしてよみがえってこなきゃ、この内閣でよみがえらないようなことなら、これは率直に言って将来でもないんじゃないかというような感じがする構成ですね。そして、しかも大臣は県議出身でもございます。そういう意味で私は、本当に安心していいのかどうか、やる気があるのかどうなのか、そこら辺が大臣の本音を聞きたいんです。
  39. 梶山静六

    国務大臣梶山静六君) 大変激励を兼ねた御質問をちょうだいいたしまして、ある意味で感激でもあり、戸惑ってもおります、率直に申しまして。  私も御指摘のように地方議員出身でございます。竹下総理大臣も県会議員出身者でございます。今御指摘のとおり閣僚にも多数の地方自治経験者が入っております。私は常日ごろ、やはり民主政治の根幹をなすもの、源泉をなすものは地方自治だというふうに確信をいたしております。ですから、地方自治の健全な発展なくして日本の民主化はあり得ない、そういう信念を持っておりますし、確かに今までの政治家の大半は、あるいは地方自治の経験をされなかった方も多かったかと思います。確かに一面中央からマクロ的に、鳥瞰的に地方自治を眺める方式も、私はある意味で効率化、能率化、画一化という意味一つの前進があったかと思います。  しかし、これからの民主政治というのは、やはり手づくりの、そしてまあ多少経費がかさむかもしれませんが、堅牢で絶対破れない民主政治の根幹である地方自治をつくり上げていくという極めて大切な時期に逢着をしているし、そういう社会背景が私は今日の政治的な分野における地方議員ないしは地方自治に関心を持っている方々の進出を許していると思います。そういう原点に返りまして、一生懸命これから地方自治の振興を図って立派な民主政治の源泉をつくっていきたいという決意に燃えておりますので、どうか各位の御協力をちょうだいしたいと思います。
  40. 佐藤三吾

    佐藤三吾君 その調子が本来の梶山さんの本音だと思うんですよね。ぜひひとつ頑張ってほしいと思うんですが。  たしか九月のこの委員会だったと思うんです。私の質問に当時の建設大臣天野さんが、中曽根内閣の最大の失政は土地問題だということで、閣僚の身でございましたが、決めつけた御答弁をいただいたわけですが、それが契機になりまして、後藤田さんも一緒におられたんですが、後藤田さんがこれはやっぱりゆゆしき問題だということで、土地臨調をつくって早急に対策しなければということが発展して土地臨調ということになっていったわけですがね、そういう意味で、梶山大臣も手八丁口八丁、竹下内閣の六奉行と、こういうことで、実力も天野さんよりあるんじゃないでしょうか。そういう意味では私は非常に期待しておるわけです。  率直に言って今地方実態というのは、御進講を受けたと思いますが、中曽根内閣五年間の中で行政改革というしわ寄せが全部地方に転嫁していく、そのために大変な財政悪化状況を招いておるわけですし、それから行政改革というのは本来地方自治、分権というものが伴っていかなきゃならぬのが、それが片手落ちになってきておる、そういうことで自治そのものが損なわれようとしておるというときだけに、あなたに期待するものが非常に大きいんです、率直に言って、これはうそ偽りじゃなくて。  そこで、さっき本音の決意をいただいたんですが、具体的に二、三ちょっとお聞きしておきたいと思うんですけれども、例えば今、国会で継続審査になっております地方自治法の一部改正、あの一部改正の中で一つだけ問題のところがあるんですね。いわゆる裁判の代執行のところ。それ以外は、それさえ除けば与野党の中でさっとこの法案が通る内容になっておるんです。ですから、問題はそこがなぜついたかといいますと、これは経過は御存じのとおりに、いわゆる機関委任事務に対する自治体の監査権とかいろいろな自治権の拡大の問題があの中に入っておりますが、それを心配した各省庁があの項を要求したというのが経緯としては出されておるわけです。  そういうようなことに対して、いわゆる実力派の梶山大臣として、これは何とかおれのときにひとつ片づけようというような決意で御奮闘をいただくとさっとこの国会を通る、そして成立する、こういうような雰囲気になっておるんですけれどもそこら辺に対してはどういう認識でしょうね、どうでしょうか。
  41. 木村仁

    説明員(木村仁君) 現在継続審査を決定していただきました地方自治法の行政代執行の手続につきましては、行革審の答申に基づきまして、政府としてこの改革を進めてまいりたいということで提案し、御審議をいただいていることでございまして、代執行の手続につきましては、全体としてこれを簡素化するとともに、事務懈怠の場合の知事あるいは市町村長の罷免という非民主的な制度を廃止していこうという形になっております。また、手続の中でも地方異議があります場合には、これを裁判に手続によって確認していこうということも準備されておりますので、全体として行政改革、機関委任事務の簡素合理化に資するための制度でございますので、提案いたしております法律案でお願いをいたしたいと考えておる次第でございます。
  42. 梶山静六

    国務大臣梶山静六君) ただいま事務当局から御説明をされましたけれども、確かに一挙にそこまでいければさらに民主政治が発達をするという理念はわかりますけれども、これによって一歩前進をすることだけはひとつ御了解を願いまして、漸進主義と申しますか、一挙にそういう問題を、いろいろなバランスを考えますとにわかに私も決断をいたしかねる問題でもございますので、せっかくの御提案でございますから、事務当局ともさらに打ち合わせをしながら勉強してまいりたいと思います。
  43. 佐藤三吾

    佐藤三吾君 去年あの中から信託制度というのを、内閣がらちが明かぬものですから、与野党議員だけで議員立法にしまして、それだけを抜き取って成立させたんです。私ども、どうしてもあの裁判代執行制度にこだわるのなら、それ以外を抜き取ってまた議員立法をやってもいいんですよ。しかし、そこまですると、せっかく梶山大臣が就任して、その分ぐらい私にさせろという気持ちもあるんじゃなかろうかと思ってお伺いしたんですが、また行政局長が出てそんなつまらぬことを言うものだから、ちょっと大臣が。しかし、それはいいでしょう。  慎重に検討してもらうのはいいんですが、大臣の在職年数というのは大体七カ月ぐらいですから、だから余り考えるとあっという間に過ぎてしまうので、ほどほどに決断して、ひとつこれはやっぱり国民のために成立させなきゃならぬ、地方自治のために成立させることが必要だという点の判断というんですか、この点は大臣、私はひとつ時宜に適してとお願いしておきたいというふうに思うんです。そういう意味で私は竹下総理大臣があなたを自治大臣国家公安委員長に御指名なさったんじゃないかという気がしておったんですけれども、何か組閣に当たって竹下総理から、これだけはひとつ頼むよと言われたことがあるんじゃないかと思うんですが、いかがでしょうか。
  44. 梶山静六

    国務大臣梶山静六君) 情勢の変化の厳しい状態の中で弾力的な思考ができるようにこれから対応をしろと、そういう華言葉をちょうだいしたわけでありますが、不敏な私でございますから、その中身が何たるかを実はまだ一生懸命考え抜いているんですが、あれもこれもと考え抜いて、弾力的対応とは何かということで、もう一回総理の胸をたたいてみたいという気持ちで現在はおります。
  45. 佐藤三吾

    佐藤三吾君 今はもう自民党中曽根派に戻りましたが、新自由クラブ出身の幹事長をやっておった山口さんが労働大臣になって、一年間に全都道府県を回ったんですね。大臣はどうですか。
  46. 梶山静六

    国務大臣梶山静六君) 機会があればぜひ努力をしてみたいと考えております。
  47. 佐藤三吾

    佐藤三吾君 どうもやっぱり紋切り型答弁が出てきますね。いろいろ尋ねたかったんだが、まあいいでしょう。  そこで、ひとつ個別の問題に入っていきたいと思うんですが、大臣、十一月十日というのはどういう日にちか知っていますか。
  48. 梶山静六

    国務大臣梶山静六君) 不敏にして十一月十日というだけで、それ以上のまた概念がわいてまいりません。
  49. 佐藤三吾

    佐藤三吾君 そうですか。  これは、昨年五月に衆議院の定数是正が成立した際に決議をしましたね。その際に、六十年国勢調査の公表をまって速やかに抜本改正を行うという決議をしたんです。その国勢調査の公表をした日が十一月十日なんです。これはことしの十一月じゃなくて去年ですよ。一年たったわけです。この点の中で八増七減という改正、これは当時二・九九倍というのが最低と最高のこれが一つの基準になっておるんですが、ことしの四月で既に三・○八倍になっておるんです。そして十月十二日に大阪の高裁が違憲の判決をしたわけです。こういうような経緯から見ると、これはやはり担当の自治省、そこを持つ大臣として相当な責任を感じ決意もしなきゃならぬ、私はそう思うんですが、いかがでしょうか、この問題について。
  50. 梶山静六

    国務大臣梶山静六君) 衆議院の議員の定数是正については、御指摘のとおり議長のもとに定数是正協議会をつくって各党が話し合いをして、昨年の暫定措置というか、緊急避難をいたしたことは皆さん方御案内のとおりでございますが、その本会議の決議、これは六十年国調後速やかに抜本改正の検討をする、それから、二人区・六人区の解消を図る、議員の総定数の見直しをする、選挙区画の見直しをする、それと、過疎過密地域の実情に配慮をするという、そういう実は内容になっているわけであります。ですから、これは抜本改正に向けて全力を挙げてやらなければならないことは当然であります。  しかし、この問題は選挙制度の根幹にかかわる問題でもございますので、事柄の性格上、各党間でそれぞれやっぱり真摯な話し合いを進めることによってそのたたき台をつくっていただきたい。そうしませんと、前回も選挙制度審議会が実際はあったわけでございますが、今有名無実になってしまいました。これも実はそれぞれの意見が、突出をするという言葉がいいかどうかわかりませんが、分かれて、結論を得ないで、意見の対立を見て、答申ではなく報告という形でなされたわけでございますから、実効を上げることがなかなかできないわけであります。ですから、この選挙制度の根幹でございますから、それぞれ、政党政治と言われる今、政党の谷間の意見を詰め合って、その動向を見守りながら私ども自治省としては懸命な対応をやっていきたい、そういうふうに今考えております。
  51. 佐藤三吾

    佐藤三吾君 ただ大臣、あなたの今のお話を聞いておるとまことにもっとものように聞こえるんですが、しかし、法の担当大臣としてはちょっと私はそれだけでいけないんじゃないかと思う。やっぱり最高裁の判例も出て、しかも二・九九が崩れた以上、これは当然担当大臣としては、各党の合意も必要でしょうけれども、やはりそのためのひとつ決意と行動に入っていい条件にあるんじゃないかと私は思うんです。そこら辺がこの一年間自治省全然動きがなかった。  今度あなたが選挙部長になったのですか。前任者は広島に行きましたね。そういう広島に行った大将も何にも動きがなかった。そこが問題なんですね。私はやっぱりそういう意味で、これは大臣、あなたが叱咤激励しなきゃ事は進まないと思う。  それともう一つは、この問題について最後まで、詰めまで各党合意でやるのはいかがなものかと私が思うのは、あの際に自治省の担当部長も知らないところで、私は出身は大分なんですがね、選挙区というのは郡単位に決めていくということが公職選挙法ではなっていますね、市郡単位、そのときに挾間町だけ抜き出して二区に入れてみたり、極めてゲリマンダー的なことをやっておるんですよ。これは何かといえば、やっぱり私は政治家のまことに政治的な妥協というのか、やった経緯から見るとそうとしか言えないんですがね。安外そういう意味では、例えば二倍以内なら二倍以内にする、こう基準だけを決めたなら、後は第三者の公正な機関に委任して極めて技術的にきちっとやっていくと、こういった方がいいんじゃないかと私は思う。そのための審議会も自治省の中にあるんでしょう、選挙制度の。そこをどうして活用しないのか、こういった点も私は問われておるんじゃないかと思うんですが、これはいかがでしょうか。
  52. 浅野大三郎

    説明員(浅野大三郎君) 選挙制度審議会がどうなっておるかという点につきまして御説明をさしていただきたいと思いますが、御案内のように、昭和四十七年、このときは第七次でございますが、そのときまでは委員が任命され、活動しておりました。しかし、先ほど大臣も申し上げましたように、四十七年の第七次の審議会は最終答申ということではなくて、一応報告をして終わったと。結局これはどういうことかといいますと、なかなか基本的な問題について意見がそれぞれ対立いたしまして合意ができなかったというようなことがあります。  それで第七次の審議会の後どうするかということをその段階でいろいろ検討もされたわけでございますが、一応選挙制度については大体議論もし尽くしただろう。それから、ただいま申しましたようないろいろな意見の対立がやっぱりその中である。基本的な事柄は結局、最後は立法府である国会でお決めいただかなきゃいかぬというところであるというようなことから、第八次の委員を任命するということをやらないで今日まで至っておるということでございます。  それから、先ほど御指摘もございましたように、まず基本的なところを各党で議論して、その後第三者機関のようなところでいろいろ議論をするということはどうかという点でございますが、確かにそういうやり方も一つの方法ではないかと私どもも事務的に思いますが、事柄がやはり国会の構成の基本にかかわることでございますから、どういうプロセスを経てやるかということを含めて、やはり各党でよく御論議いただきたいなというふうに私どもとしては思っておるわけでございます。
  53. 佐藤三吾

    佐藤三吾君 部長が答弁の中でそういうふうに言ったから、私は大臣認識を改める意味でお願いしておきたいと思うんですが、今言うように第七次まで選挙制度審議会があったんです。八次はつくっていないんですね。これだけ最高裁まで煩わして、そして問題になっておる。本来ならこれは政治の分野の中で立法府の問題としてきちんと片づけるべき問題ですよ、民主主義の根幹に当たるわけですからね、政党政治の。それを公正な立場からということを含めて審議してきた選挙制度審議会が、今実質ないというこの異常な状態、私は異常だと思うんですがね、大臣はどういう認識ですか。
  54. 梶山静六

    国務大臣梶山静六君) 選挙制度審議会が確かに今任命をされていないという現実は、決して原則的なものではないという認識をいたしております。しかし、その経緯を見ますと、結局意見が対立して結論が出なかったという現実。ですから選挙制度審議会が果たして有効に機能するのかどうなのかという問題をひとつ考えないと現実的な前進ができない。しかも昨年、一昨年のこの定数是正協議会の経緯を見ますと、やはりそれぞれ政党の浮沈をかけて懸命な討論をいたしていることは現実であります。そしてあの措置がなされたわけでございますから、衆議院の本会議の決議、これを見てみますと、言うべくしてなかなか困難な状況が幾つか内蔵をしております。この基本問題を解決をしない限り私は審議会にあるいは第三者機関に委任をしましても、一つのルールがつくられない限りできないという感じを持つわけであります。  ですから、一昨年来の同じメンバーでやるかどうかは別といたしまして、各党間が本当に国政のいわば最高の機関としての権威を保つためにもどうあらねばならぬかという真摯な話し合いをされることが一番望ましい。そして、自治省はその話し合いをするためのいろいろな基礎資料を整え、それからある程度のいわば話し合いが詰まってくるならば、その条件に合ったいろいろな案の作成というのは可能になろうかと思いますが、今の状態で言いますと、野放しで自治省にこれをつくれと言われても、およそ私は手段、方法はないという感じがいたします。ぜひひとつ、国民に責任を負う各党の御理解をちょうだいをしてこの問題に早急な取り組みをしてもらうように、これから自治大臣としても各党に要請をしてまいりたい、こういう決意でおります。
  55. 佐藤三吾

    佐藤三吾君 大臣、こういう各党が先に合意をして、そしてそれを補完する意味で選挙制度審議会なりいろいろのところで、自治省というところで材料を提供して議論をするということも確かに一つの方法でしょう。しかし、それは非常に難しいということが現実に出ておるから、いいですか、政党政治の基本にかかわるこの定数問題をこんなアブノーマルな状態に置いておってなおかつ平然としておる感覚が今、国会の現状なんです。ですから、選挙差しとめの訴訟が起こったり、国民の側からも次々にそういう不満が出ておるわけです。これがだんだん高じできますと私は政治不信に劣ると思う、率直に言って。そうなったときにはもう遅いんですよ。  ですから、政治不信にならないためにも、この問題の解決をしていくとすれば、あなたが考えている一つの方法というのではなかなかこれはいかないということは今までの経過が証明しておるわけです。私はやはり第三者の、もっと言うと学識経験者なり社会的ないろいろな意見を持った人たちを集合して、そしてこの問題に対する公正な審議をしていくという場をつくることによって、各党間の話し合いをまとめていく一つのプレッシャーをつくっていくということにもなるんじゃないかと思うんですよ。同時に私は、そういう意味で選挙制度審議会がつくられたのと、もう一つはやっぱりこれは利害が伴いますから、第三者の公正な人たちが集まって議論するという、ゲリマンダーをつくらぬ意味で、そういう意味での選挙制度審議会のねらいもあると思うんですね。  この機能が今全然破壊されておる。だから結果的にはこういう状態が現状になっておると言っていいんじゃないかと私は思うんで、私はそういう意味では選挙制度審議会というものもひとつあなたの検討材料の中に入れてもらって、早急にそこら辺を起こしていただく。そして、いずれにしてもあなたの任期中にこの問題については国民の納得する、選挙が済んだ後すぐ訴訟が起こることのないような、そういう政治不信が起こらないような、そういうような制度をきちっとつくり上げるんだと、こういう決意を私はしてほしいと思いますが、いかがでしょう。
  56. 梶山静六

    国務大臣梶山静六君) 大変真摯な貴重な御意見をちょうだいいたしまして、私も着任というか就任早々でございますので、全般の具体的な事象に実は疎いわけでございますけれども、最高裁の判決、こういうものを踏まえながら国民の信頼をつなぎ得る議会にしたい。そのためにはやはり各党間が本当の話し合いをしない限り政党政治が自滅をしてしまうという感じは同感でございます。  ですから、やがてこういう状態が続くならば違憲の判決が出まずし、場合によってはいわゆる選挙無効の判決すら覚悟しなきゃならない、こういう事情にまで各党間が追い込まれていいのかどうなのか。私はやはり一昨年のそういう危機感に立って各党間が話し合いをするならば妥結の道はあると確信をいたしますので、これから真摯な各党間の協議を整えながら、その間我々も公平無私な自治省としての見解なりあるいはいろいろな資料を整えて、ひとつその前進のために努力をしていきたいというのが、今々答え得る私の知恵でしかありませんので、御了解を願いたいと思います。
  57. 佐藤三吾

    佐藤三吾君 決意をいただいて結構なんですが、私は率直に言って、やっぱり立法府ですからね、立法府がこういう国民から不信を招くような、訴訟が起こるような状態の中でもなお解決のめどをつけ切らない、最高裁の判例をいただいて初めて動くというような、こんな情けない状況というのは本当に私は嫌であり、服したくないんですよ。しかし、そのためには大臣、やっぱり自民党さん、与党が人数が多いんだから、ここの皆さんがしないとなかなか立法府といっても動かない。だから、かかってこの問題は与党の自覚にあるような感じがしてならぬのです。同時にまた、それをさせるためには、選挙をあずかっておる自治省が担当省庁として、何か様子見をしてああでもない、こうでもないみたいな議論を繰り返しておったんじゃどうにもならぬと思うんで、ここはここで私はきちっとしてもらいたいということだけつけ加えてお願いしておきたいと思います。  そこで、それと関連する問題でもう一つお聞きしておきたいと思うんですが、自民党の西岡委員会が政治資金規正法の改正案をまとめて、そしてその中身を見ると、企業献金を倍増するという中身で、あとは何もないようなんですけれども、次期国会に提出する、こういう報道がなされておるわけでございますが、この点について大臣、どういう御理解なのかということが一つ。  それから、たしかこれは三木内閣のときに改正した法律なんですが、その際の、今大臣、各党間ということを盛んにおっしゃるんですが、各党間の合意に基づいて企業、団体献金についてはできるだけなくして、個人献金の方向に持っていこうじゃないかということで、五年以内の見直し規定が入っておるはずですね。そういうことの前提に立つならば西岡委員会の方向は逆行ということになる、こういうふうに私は思うんですが、この点は一体どうなのか。特にこの見直し規定ができてもう十数年たつんですがいこの間一回も自治省の側からこの問題を提起されていないんですけれども、これも怠慢ではないかと思うんですが、いかがでしょう。
  58. 梶山静六

    国務大臣梶山静六君) 御指摘の件については、自民党の選挙制度調査会の中の西岡パーティーとでも申すべきでしょうか、政治資金等に関する小委員会、西岡小委員長のもとで過日の試案がまとめられたというふうに聞いておりますが、まだ選挙制度調査会には正式にかかっておりません。ただ、中身は確かにパーティーのあり方や寄附の限度額、こういうものの見直しをすべきだということが言われているわけであります。見直し条項もございますから、これはこれなりにひとつ受けとめをいただく。  そして各党間、これも党のよって立つ財政基盤がそれぞれ異なります。ですから、確かに個人献金の方向に行くべきだという大きな方向づけはなされたということを聞いておりますが、それだからといって、一概に企業や団体からの献金が悪だというふうな決めつけ方もできないわけでございますので、これまた逃げ言葉になると言われるかもしれませんが、各党のよって立つ基盤、これを大切に考えるならば、これもひとつ、自治省何もやらないではないかと言われるかもしれませんが、各党が動いてくださらない限り、なかなかこの問題に関する案というものは、それぞれの党内の事情その他を踏まえていかなければなりませんので、大枠をひとつ各党間でお考えを願いたい。それによって自治省は対応してまいりたいというふうに考えておりますのでよろしくお願いをいたします。
  59. 佐藤三吾

    佐藤三吾君 きょうの新聞の「記者席」によると、この問題が出ておりますね。私パーティーというのは決して悪くはないと思いますよ。問題はそれに事寄せて資金集めをしようというのが悪いわけであって、いわゆる政治資金規正法をかいくぐってしり抜けにして資金集めをしようというのが悪いんであって、パーティーそのものは私は決して悪いとは思いません。励ますパーティーもあればいろいろ、あなたもまた今度は大臣就任パーティーか何かやられるんじゃないかと思うんですけれども、これは私は悪くはないと思うんです。  ただ、きょうの「記者席」にも出ておりますように、例えば竹下さんが二十一億集めたパーティーをやるとか、こういうまさに常識外のことが行われるところに問題があるんで、そこら辺があなたの「切れ味鈍るパーティー談議」とかいうことで、あなたはここら辺になるとしどろもどろというのがここに出ておるようですが、そこら辺が、私は本当に自重自戒していただくならば、何も西岡委員会というものがこんなことをしなくても私は片づくんじゃないかと思う。ですからそこら辺を履き違えぬようにしていただいて、同時にやっぱり基本は三木内閣でつくったときのいわゆる政治資金規正法の趣旨、これをどう生かしていくかという意味でまとめる役は私は自治省にあると思うんですよ、推進していくのは自治省にあると思うんですね。そういう意味で私は改正案をまとめて出すべきでないかと思うんですが、いかがでしょう。
  60. 梶山静六

    国務大臣梶山静六君) 先ほど来お話を申し上げているとおり、政治資金のあり方、これは選挙制度とも密接な関係もございますし、各党のよって立つ財政基盤も異なります。そういうことで各党間でひとつ真摯な御努力を願いたいということと、今御指摘をちょうだいしたパーティー、不幸にして私は実は新聞を読んでこなかったんですが、多分私が雑談のうちに、私も一遍パーティーをいたしましたと、ですからほかの人のパーティーをいわばなじる権利がないという発言を私したと思うんですが、確かに政治団体が事業活動を行うことはこれは当然であります。それが資金集めを目的とするならばこれまた別な角度があろうかと思いますし、また現実に今各界からいろいろな御指摘を受けていることも承知をいたしております。  しかし、これは議員あるいは各党間のいわば政治モラルの問題、倫理の問題でございますから、これをないがしろにしてその政党がよって立つ方法はないし、それぞれの政治家もまた国民の指弾を受けることは当然であります。そういうものを確信をいたしますので、お互いにこれは各党間で、自民党も恐らくこれから選挙制度調査会を中心にしてこの問題の検討が進められると思います。各党間においてもそういう問題の煮詰めが行われて、各党持ち寄って立派な国民の信にたえ得るような政治資金規正法がより前進をすることを望みたいし、我々も努力をしてまいりたいと思います。
  61. 佐藤三吾

    佐藤三吾君 断っておきますがね大臣、各党各党とおっしゃるけれども、現行の政治資金規正法で、これは額が小さくて困ると言っておるのは自民党さんだけなんですよ、そんなことを言っている党は。ほかの党はこれでも問題があるじゃないかと言っているわけです、企業献金は。ですから、各党各党じゃないの。あなたが主張しておる自民党、与党の皆さんが自重自戒して、そうして今政治モラルというお話がございましたが、そこをきちんと守っていただければ、今の規正法をさらに進めていくという方向で問題が片づいていくわけですから、そこをひとつ誤解がないようにしていただかぬと、何か社会党もそういうことを望んでいるような言われ方をするとちょっと困りますよ、これは。そんなことは考えてもいないんですから、そこら辺ひとつ認識を改めていただきたいというのが一つ。  もう一つは、大臣、ロッキード事件の問題でちょっと大臣国家公安委員長としてお聞きしておきたいと思うんですが、中曽根派に所属しておるのかどうかわかりませんが、佐藤孝行代議士ですね、この方は有罪がもう確定をしておるわけですね、本人が控訴を取り下げて。そしてしておるんですが、今度の総裁選挙について大活躍をしたということが報道されておるんです。これは真偽のほどはよくわかりませんが、報道されておるわけです。私はこういうありようというのは国民の皆さんに対してやっぱり政治不信を招く一番大きな様体だと思うんですが、この点について国家公安委員長という立場から見てどういう御認識、見解が、お伺いしておきたいと思うんです。
  62. 梶山静六

    国務大臣梶山静六君) もう御案内のとおり、民主政治は国民の信頼を基礎として成り立っているものでございますし、ロッキード事件佐藤孝行議員については有罪判決が確定をいたしているわけであります。これは厳正、厳粛に受けとめなければならないというふうに信じております。ですから、この政治倫理の確立というもの、これは議員一人一人、そして各党のモラルによるものだというふうに確信をいたしております。佐藤孝行議員は自民党を離党をいたしております。それから、今回の総裁選挙に活動をしたというふうに私は承知をいたしておりません。どうか御勘弁を願います。
  63. 佐藤三吾

    佐藤三吾君 まあいいでしょう。いずれにしても、あなたが承知していなくても報道されておるわけですから、国民はそれを見て判断していくわけですからね。そこら辺はひとつあなたも六奉行ですから、豊臣秀吉のときはあれ五つの奉行ですか。言いかえれば竹下政権を支える中心人物ですからね。これは国務大臣という観点からもひとつぜひそこら辺は留意して対処してほしいということだけ申し上げておきたいと思います。  そこで、時間がございませんから、二、三ちょっと当面の問題でお聞きしておきたいと思うんですが、一つは、これも報道で、定かのことは私はよくわからないんですが、十一月九日に大蔵省が六十三年度政府予算で地方交付税の総額を圧縮する特例減算を検討すると、こういう報道がなされておるわけですがね。これは事実かどうかということとあわせて、具体的にどういう内容なのか、あったら説明していただきたいと思います。
  64. 水谷英明

    説明員(水谷英明君) 六十三年度の予算編成は、先生御承知おきのように、要求のヒアリング等を行いました後、事務的なまだ作業を進めている段階でございます。  特に六十三年度予算編成の基本となります六十二年度税収につきましては、今まで経験しなかったような株でございますとか土地の関連のウエートが大きくなっているために、この六十二年度税収を見きわめるということがなかなか難しいということになっておるという事情もあるわけでございまして、まだそういう段階にございます。まして地方財政につきましても、そういうことで今後の収支の動向がなお明らかでない状況でございますので、今具体的にああこうと申し上げるような状況にないわけでございまして、先生よく御承知のことを申し上げて恐縮でございますけれども、現段階ではまだまだ基本的に五十九年度地方財政対策の改革の趣旨というものにも沿って交付税総額の安定的な確保に資するため、適切に今後やってまいりたいということを申し上げさしていただきたいと思います。
  65. 佐藤三吾

    佐藤三吾君 火元のないところにあんな大きな煙が出るはずがないんです。それはまあここだから言いづらければ別ですが、ああいう確定的なような表現というのはやはり確かにおたくの方からリークしておるに相違ないと私は思うので、しかし、今あなたが言うように、これ以上ここでやりとりしたって時間がたつばかりでしょうから、自治省はこの問題についてはどういうふうに受けとめていますか。
  66. 津田正

    説明員(津田正君) 新聞記事にございます交付税の圧縮についての検討をしようとか、そういうことを始めようというようなことは大蔵省からまだ全然話はございません。
  67. 佐藤三吾

    佐藤三吾君 話がございませんのに、何で自治省見解まで出ておるんですか。話があるから出たんじゃないの。
  68. 津田正

    説明員(津田正君) 自治省見解というような形で記事が出されたとすれば、恐らく記者が取材に来た際に、自治省としてこんなようなことがもし話が出たらどうするんだというようなことに対する見解を述べたのだと思います。私といたしましても、交付税は多額の借金があり非常に厳しい財政事情もあるというようなことですから、圧縮問題ということは、これは慎重に対処しなければならない問題でございますし、また作業といたしましては、大蔵省から答弁がございましたようにまだ予算要求の内容を大蔵省自体で点検中ということでございますので、具体的な作業にも入っておらない状況でございます。
  69. 佐藤三吾

    佐藤三吾君 そんな財政局長だめですよ、それは。現にときどき最近の大蔵省は無軌道なところがありますからね。あなたが無軌道だとは言いませんよ。あなたは立派なんだけれどもね。  なぜかと言うと、一つの例ですが、六十年から三年間補助金削減の問題で大蔵省、厚生省、自治省入って、そして一年詰めて、それではこの三年間これでいきましょうと、これをいくかわりにこれ以外についてはやらないという確認までしておって、去年はまたあれやったわけでしょう。ちょうど私は入院しておったものだからどうしようもなかったけれども、私が腹切っておる間にこれはやられたなと思ったけれども、そういう歯がゆい思いをしたこともある。だから、それは財政局長またそんなことを言いよると、いかれてしまった後でまた泣くようなことになると私は思うので、もっと、私は二度あることは三度あるというふうに思うので、そこら辺はひとつ、あってはならぬことですけれども、今主計官は、ないというふうに私は受け取りましょう。だからこの方が主計官である間はないかもしれませんが、しかしそういうこともあるので。  これは大臣、再三起こっていることなんです、あなたが就任するまでに。いつも約束しては裏切られてきておることですからね。大臣の見解を聞いておきたいと思うんです。
  70. 梶山静六

    国務大臣梶山静六君) ただいま大蔵省並びに自治省財政当局からお話があったわけでありますが、確かに国税三税についてまだ現時点においては定かな見通しが立っておりませんから、この議論は私はないものというふうに理解をいたしますし、この公的な決算委員会で大蔵省からの今言明もありましたから、それを信用する以外にございませんが、新聞に出たことは私も承知をいたしております。ですから、これが果たしてそういうものに該当するのかどうなのか、特別加算や特別減算、こういうものと厳格に照らし合わせをして、かつての今日までの大幅な赤字を補ってなお余りある場合は、これは自治体といえども多少は圧縮の方向で考えなければならないけれども、何せ大幅な赤字を抱えているわけでございますから、大蔵省の言うとおりに私も確信をいたしまして、この場をかりて大蔵省にお願いを申し上げておきます。
  71. 佐藤三吾

    佐藤三吾君 ぜひひとつそこら辺は大臣注意して対処してほしいと思います。  そこで、もう一つ問題があるのは、福祉医療制度というのは今検討なさっておる国保問題懇談会、これは自治、大蔵、厚生三省の間で去年つくられて議論されてきたんですが、十月二十八日に厚生省はこの福祉医療制度というものの創設を打ち出したということが報道されて、私もその中身をお聞きしたんですが、これはたしか昨年の予算編成の際に、大蔵省がなんかが持ち出して、いわゆる都道府県の負担導入問題が出てきて問題になった事件だと思うんですが、この中にもやはり都道府県の負担というのが導入されていますね。これは一体どういう内容として提起されたのか。時間がございませんので、簡単にひとつお願いします。
  72. 羽毛田信吾

    説明員羽毛田信吾君) 厚生省でございます。  今、先生の御指摘ございましたように、現在国保制度につきまして国保問題懇談会におきまして御議論を賜っておるところでございます。それは国保制度、大変財政的にも脆弱な体質を持っておりますので、この国保制度のあり方について学識者の御見解を賜るということで、御案内の経緯の中で検討をさせていただいておるのでございますが、今回十月二十八日に厚生省の試案として、今後の審議を賜りますときの一つの厚生省の基本的な考え方をお示しをしましたのが今御指摘の試案でございます。  この問題意識は二つございまして、やはり国保の制度を長期的に安定をさせるためには、現在一つは国保がやはり市町村、産業構造等の関係からどうしても低所得層を多く抱えるという形の中で、保険料が十分賄えなくて、給付は同じようにかかりますから、そのことによって保険体質を非常に脆弱にもし、またそのほかの人たちに対する保険料の負担が過大になってくるというような問題が一つございます。  それからもう一つは、これは御案内のとおり、医療費の地域差というものが非常にございまして、これが国保運営の上に暗く影を落としておる、こういう問題がございます。こういうことを解決をして、やはり今後に向けて高齢化社会を乗り切っていけるような医療保険制度を守っていくという観点からいたしますと、そこに一つの改革というものが必要であろうということからお示しをいたしましたのが今回の改革案でございます。  一つは、今申し上げました低所得層がおられるということでの問題につきましては、その低所得層の人たち、十分に保険料が払えない人たちの部分につきましては、保険料で貯えない部分については公費が持っていくという考え方で経理をしていく。その際に、やはり今申し上げた低所得者の方々の対応ということになりますと、一面保険という側面と同時に、やはり地域における住民の福祉あるいは健康という問題と非常に密接にかかわりのある問題という対応になってまいりますので、その際には国とともに都道府県、市町村もこの人たちを支えていくという分野で御参画を願いたいということでの御提案を申し上げておるわけです。そういう形で地方の御負担をひとつ賜りたい。  あるいはもう一つの地域差の調整ということにつきましても、やはり地域ごとに特有のいろいろ医療費の格差事情もございます。そういう意味ではそれぞれにおける地域の医療をどうしていくかという面と非常にかかわりの深い部分もございますので、そういった側面については、これまた地方もそこに役割を果たしてもらいたいという意味合いから御負担を賜りたいということで、今回の案でそういう意味地方のお果たしをいただけるような役割にふさわしい部分についてはひとつ都道府県、市町村もお加わりをいただいて、国保制度をしっかりしたものにしていくということでやっていっていただきたいという御提案を申し上げたわけでございます。  もちろんその際に、今回の改革によりまして最終的に生じまするところの国なり地方の間の負担のあり方というようなことにつきましては、できるだけ地方財政に悪い影響を及ぼさないようにということで、これは国の財政なり地方財政の全体の枠組みのお話もございましょうから、厚生省としましてもその点についてできるだけ悪い影響が及ばないようにという努力はこれからも続けていきたいということで一つの試案をお示しをしたということでございまして、これからこの試案を一つのたたき台としていただきまして国保問題懇談会を中心に御議論を賜る、こんなふうなことに現在なっておるわけでございます。
  73. 佐藤三吾

    佐藤三吾君 この点に対して自治省、どういう御見解なんですか。知事会の件も。
  74. 津田正

    説明員(津田正君) 厚生省試案はまだ何分にも懇談会の中で議論がなされておるわけでございますので、自治省としまして一々コメントするという段階ではないと思うわけでございますが、やはり基本的に自治省認識というものといたしましては、国民健康保険制度というのは国民皆保険の一環ということで国の制度として設けられたものでありまして、国に基本的な責任があるものではないか、かように考えておるわけでございます。  単に国庫負担の一部を地方へ転嫁するようなことではなくて、国保経営の安定化というものに向けて制度の改革を目指すべきものと考えております。単に地方負担があれば国保財政は助かるというような性格のものではなくて、やはり国民皆保険、このような仕組みの中で考えるべきではないか。今後におきましても知事会、市長会、町村会等々と協議をして適切に対処してまいりたい、かように考えております。
  75. 佐藤三吾

    佐藤三吾君 今厚生省の説明をお聞きして私もつくづく感じたんですが、地方の自治体としてどのようにこれに関与していくかということについて、この制度を創設してみたということで提起があったんですが、私はどうもやっぱり去年からこの問題でひっかかるのは、仕掛け人は大蔵省が去年予算編成のとぎにやったわけですね、この問題は。言いかえれば、単なる国民健保の財政赤字を、もしくは負担増を国から地方に移行する、こういうねらいが先行して、それに後に理屈をつけていったというふうにしかどうしてもとれない。  今あなたの説明を聞いてみると、財政についてはできるだけ自治体に迷惑をかけぬようにする、こういう後段のお話があったんですが、それでは大蔵省も来ていますからちょっとお聞きしたいと思いますが、大蔵省もそういう財政については地方自治体に一切迷惑をかけぬようにする、管理、監督の面でひとつ自治体にやってもらうというようなことで底意があるのかどうなのか。ここら辺はなかなか私がこう言ってみたってそうは答えが出てこないと思うんです。やっぱり根っこはそこにあるような感じがしてならないので、これはひとつ私は、さっき自治省財政局長の方からも御意見がございましたが、やはり基本は国民皆保険の一環としてできた制度の問題ですから、そこら辺を混同なさらぬように大蔵省もひとつ注意していただきたい。  同時にまた厚生省がいかにいい発想であっても、本音がそこにあるとかえって提案の意味も逆目になってまいるわけですから、せっかく懇談会がつくられてやっておるわけですから、そこで本筋の議論は本筋の議論としてきちっとしていただいて、そしてこれから高齢化社会に入っていくわけですから、そこら辺における総合的な医療制度なり福祉制度というものを確立するという詰めをしていかないと、何か赤字になったから、行き詰まったからどこかに財政負担をせぬかと、こういう式で、継ぎはぎ継ぎはぎでいけば必ず私はそれは破綻してくるような感じがしますから、そこら辺をひとつぜひ留意していただきたいなと、こう思っております。  いろいろお聞きしたかったんですが、時間が参りましたから、大臣、これは、今懇談会の議論のさなかでございますが、当然これは六十三年度予算編成に向かってこれがくることは私は予感するんですね。そういう意味で、ひとつ所信があればお伺いして終わりたいと思うんです。いかがでしょうか。
  76. 梶山静六

    国務大臣梶山静六君) ただいまのお話を拝聴いたしておりまして、高齢化社会に対応できる医療ということで国保問題懇談会が設置をされたわけでございまして、国保経営の安定化を図るという意味での私は評価は高くいたしますけれども、ただ単に一部財源を地方に負担をさせるというようなことで目的が塗りかえられるというようなことになれば、これは大変なことでございますので、本来国の責任において措置すべきものだということを念頭に置いて、これに対応してまいりたいと思います。
  77. 一井淳治

    ○一井淳治君 引き続いて地方財政の問題につい て質問してまいりたいと思いますけれども、大変厳しい状況でございまして、そういう中で国保制度の変革の問題が出てまいりました。また先ほどの大蔵省のお話では、これは新聞記者の走り過ぎということで、新聞記者の悪者で済みそうでございますけれども地方交付税の圧縮の問題がお化けみたいに出てきたわけで、とにかく国の財政負担を地方へ肩がわりさせようという方針が非常に根強くあるわけでございます。  ことしの予算編成の過程を見ましても、補助負担率の引き下げを行うに当たっての覚書や附帯決議があったにもかかわらず、公共事業についてああいうふうな補助負担率の切り下げが行われるように、何か国から地方へという方向で非常に疑心暗鬼になるような雰囲気があるわけでございますけれども、来年度の予算編成に当たって、現時点では大体もう状況が把握できておると思いますけれども、国から地方財政負担を転嫁する方策はこれ以上出てこないのかどうか。そこのところをせっかく大蔵省の方がおいでですからよく念を入れて確かめておきたいのですが、いかがでございましょうか。
  78. 水谷英明

    説明員(水谷英明君) 六十三年度の予算編成につきまして、もうこれ以上地方へ御迷惑をおかけすることがないんだなという大変に難しいお尋ねでございます。  六十三年度の予算編成につきましては、ただいまもお答えいたしましたように、まだ税収等の動向が非常に明らかでない段階でございますので、まだその編成の基本というところがはっきりしていないわけでございます。そういう段階でございますので非常に確たることを申し上げられませんわけでございますけれども、今先生指摘になられましたように、地方財政関係する重要な問題としては国保の制度改正があるということは御指摘のとおりでございまして、この問題につきましては、昨年度も今佐藤先生の方から御指摘がありましたようないろいろな経緯がございまして、大蔵大臣、厚生大臣、それから自治大臣という三大臣の合意で、安定した国保の運営が確保されるように医療保険制度全体の中においてその制度のあり方について国と地方の役割分担等を含め、速やかに幅広く基本的な検討を行うというような考え方で検討がなされているわけでございます。  また地方交付税の総額につきましては、当然地方財政の収支の動向が不分明な段階でございますので、基本的には五十九年度に地方財政対策の改革が行われましたが、その趣旨に沿いまして交付税総額の安定的な確保に資するために適切に措置してまいるということでございます。  なお、個々のいろいろな補助金がたくさんあるわけでございますけれども、その辺につきましては、補助金の性格から今さら申すのも何でございますが、常にやっぱり見直しを行っていくという必要があるわけでございまして、国、地方を通ずる行財政改革の推進をするためにも、臨調答申や行革審答申等にも指摘されていますように地方に同化定着した事務事業の一般財源化、統合メニュー化、終期の設定等の整理合理化を推進する必要があるということもあるわけでございます。いずれにせよ大事なのは地方財政の円滑な運営という点でございますから、その点については支障が生じないよう適切に対処してまいる考えでございます。
  79. 一井淳治

    ○一井淳治君 非常な名答弁でございまして、私はこれ以上のことはないというふうに聞かしていただきたいというふうに思いまして、お帰りいただいても結構でございます、ほかにもうございませんので。  きのうこの決算委員会は厚生省を対象としておりまして、やはり先ほどの国保制度の変革の問題がかなり論議されましたけれども、かなり強気の雰囲気というものが厚生省の方から出た嫌いもございます。そういう中で、最近地方財政が非常に危機的な状況に陥りつつあるわけでございますけれども大臣がおられるうちに、私はこれ以外に大臣にお尋ねすることはございませんので、地方財政を守っていくための方策といいますか、どのように対処されていくのか、その決意のほどをいらっしゃる間にお尋ねしておきたいというふうに思います。
  80. 梶山静六

    国務大臣梶山静六君) 地方財政を守り、なおかつ健全化を図っていくためには行財政の国、地方を通ずる、また地方自体の守備範囲の見直しをし、また行財政運営の効率化等により地方歳出の削減合理化を図るとともに、地方税、地方交付税等の地方一般財源の着実な充実を図っていくことが基本的には大切な問題であるというふうに考えております。また、地方交付税については、地方財政計画の策定を通じ所要額を確保し、地方財政の運営に支障を生じないように対処をしてまいらなければならないと思います。  それから、前段も御質問や御意見がございましたけれども国民健康保険問題については現在国保問題懇談会において検討がなされておりますが、この国民皆保険の一環としての国の制度として設けられたというふうに私は見ておりますし、国に基本的な責任があるというふうに理解をいたしております。ですから、単に国庫負担の一部を地方に転嫁をするというようなことではなくて、国保経営全般の安定化に向けて制度の改革を進めるべきであるというふうに考えております。  今後予算編成作業を通じまして、国から地方への単なる負担の転嫁等が行われないように適切に対処してまいりたいという決意であります。
  81. 一井淳治

    ○一井淳治君 適切に対処するというお話でございますけれども全力を挙げてこの地方負担がふえないように御努力いただきたいというふうに特にお願いしたいと思います。  それから、最近地価高騰が地方へ拡大しておるということは言うまでもないことでございますけれども、十月十二日の行革審答申でも、それに対する対策をということが答申で出ておりますし、また四日付の国土庁の土地局長からの緊急土地対策要綱というものにおきましても、いろいろな対策を速やかに講ずるようにということが出されておるわけでございますけれども自治省として地価上昇の未然防止のためにどのように対処しておいきになるのでしょうか。特にリゾートの予定地につきましては、地価が上昇いたしますと宿泊料とか利用料金がそれにつれて高騰するというようなことで、健全なリゾートの開発ができなくなるんじゃないかというふうな心配が強いわけでございますけれども、地価の地方上昇を未然に防止するためにどのような方策をお持ちなのか、どのようにお考えなのか、お答えいただきたいと思います。
  82. 小林実

    説明員(小林実君) 地価高騰が地方に拡大してきておりまして、私どもも大変憂慮いたしておるところでございます。  土地問題につきましては、十月十六日に緊急土地対策要綱が閣議決定されまして、自治省といたしましても各地方団体にその趣旨を通知いたしまして、地方団体においても積極的に協力していただくようにお願いをしたところでございます。現在のところ国土利用計画法に基づく監視区域の指定等が十一都県、指定市について行われておりますし、今後も検討が進められているところもあるわけでございます。  特に御指摘は、リゾート地につきましてのことがございましたわけでございますが、リゾート法に関連いたしまして、先般リゾート整備に関する基本方針というのが定められております。その中におきましても、リゾート地域におきましての地価対策といたしまして、監視区域を指定するなど現行法制の積極的な活用が盛り込まれておるわけでございまして、今後リゾート地域につきましても、その運用が今申し上げたようなことで行われる必要があるというふうに考えておるわけでございます。  今後におきましても、自治省といたしましては、本日、土地対策関係閣僚会議というものが改組されてでき上がったわけでございますが、その場におきまして有効かつ適切な地価対策のあり方につきまして検討を進めてまいりたいというふうに考えておるところでございます。
  83. 一井淳治

    ○一井淳治君 地価対策はいつも後手後手に回っておるわけで、一たん上がった土地が下がることはまずないというわけでございますので、地価の上昇を細かく監視していただくということと、いつでもその対策が発動できるように準備をしておく。これは行革審の答申にもあったわけでございますけれども、そのあたりの抜かりない対策ができておるんでしょうか、どうでしょうか。
  84. 小林実

    説明員(小林実君) 地価問題につきましては関係省庁力を合わせて対処していくことが必要でございまして、私ども、国土庁、建設省等と連絡を密にいたしまして、御指摘のような点を踏まえて抜かりのないように努力をしてまいりたいと思っております。
  85. 一井淳治

    ○一井淳治君 私ども、ほかの委員会でも抜かりなくやるということを聞かされながら、現実には建設資材の値上がりのときもそうでしたし、地価の場合もそうでございますけれども、本当に抜かりなくぜひともやっていただきたいというふうに思います。  それから、地価の地方への騰貴に関連いたしまして、建設省の方では土地収用法の見直しをなさっておられるというふうに聞いておりますけれども、宅地の供給促進、高度の都市形成を図るという観点から、あるいは相当実情に合わなくなるぐらいもう古くなったと思いますけれども、都市計画法や土地区画整理法の見直しをなさるお考えはないのかどうか、そのあたりについてお尋ねしたいと思います。建設省からお尋ねしたいと思います。
  86. 伴襄

    説明員(伴襄君) お答え申し上げます。  都市計画法とそれから区画整理法の御質問でございましたが、まず都市計画法でございますけれども、これにつきましては土地の供給あるいは住宅以下の供給というような観点から、かねてからその運用の中でいろいろ対応しておりまして、例えば線引きの見直しということで市街化区域を拡大いたしますとか、あるいは開発許可の弾力化をするとか、あるいは先国会では集落整備法の制定というようなことまでやりまして、いろいろな措置を講じてきているところでございますが、ただ、制度そのものにつきましてもいろいろ御議論がございまして、例えば行革審におきましても、先般の中間答申におきましては、都市計画が土地対策において非常に重要な地位を占めておるというようなことで、今後の検討課題として都市計画の制度なり運用について取り上げられておりまして、今本格的な検討がされております。  建設省といたしましても、建設大臣の諮問機関に都市計画中央審議会というのがございますので、その中に都市計画のあり方に関する検討委員会というのを設けておりまして、これを早速第一回目を今月末三十日に開きたいと思っておりまして、この中で都市計画法あるいは制度、そのあり方も含めて、特に土地対策との関連で都市計画のあり方について十分御議論いただこうと思っております。そういうものを受けまして、都市計画法についても所要の検討を行いたいというふうに考えております。  それから、第二番目に区画整理法でございますけれども、これにつきましても、区画整理事業そのものが良好な市街地の形成に貢献していると思います。特に近年の地価高騰下においては宅地供給の増加が切望されておるわけでございますので、それに対応するということが必要かと思っておりますが、区画整理法につきましても、特に民間活力を積極的に導入して区画整理をやるというような観点から、土地の権利者でない第三者、例えば公団だとかデベロッパーとか、優良なデベロッパーでございますが、そういったところに、例えば土地区画整理組合の組合員になっていただく、これは参加組合員制度と言っておりますが、そんな制度だとか、あるいはデベロッパー等の第三者に区画整理事業そのものを一括して委託するといったような、第三者施行と言っておりますけれども、そういった制度を含めて土地区画整理法の改正の検討に入っているところでございますので、結論を得ましたら所要の対応をしたいというふうに思っております。
  87. 一井淳治

    ○一井淳治君 次に、自治体病院に関連して質問いたしますけれども、自治体病院というのは、地域にあっては基幹的な中核病院として地域の医療のために非常に大きく貢献しているわけでございますけれども、この経営内容は、補助金やほかの会計からの繰り入れをあてがいましてもなお累積赤字が四千億円近くあるというふうな厳しい状況で、はっきりとした基盤を地域で持つということが非常に重要ではないかというふうに思うわけでございますけれども、最近進められております地域での医療計画の中で自治体病院をどのように位置づけていくのか、ほかの医療機関との連携の促進についてどうしていくのか、そういった点につきまして厚生省の方からお考えを伺いたいと思います。
  88. 入山文郎

    説明員(入山文郎君) お答えいたします。  医療計画でございますが、これは都道府県が地域の実情に応じまして医療資源の適正配置、医療関係施設間の連携等を図りまして、地域医療のシステム化を推進していくといったことを趣旨としているわけでございます。  自治体病院の位置づけにつきましても、各都道府県が医療計画の趣旨を踏まえまして、地域の医療供給体制実態に即して個別の自治体病院の機能を計画の中に盛り込んでいくということが考えられるわけでございます。一般的には、御指摘もございましたけれども、自治体病院の多くは地域の中核的な病院としての機能を有していると考えられるわけでございまして、そのほかの医療機関との連携あるいは病院の施設、設備等を地域の医師等が利用できますように開放化を図るといったようなことが、地域医療における積極的な取り組みとして望ましいというように考えているわけでございます。
  89. 一井淳治

    ○一井淳治君 公立病院の場合は民間の病院と競合関係にあって、自分から営業的な活動をするということが、非常に民間のお医者さんの目があるのでやりにくいということもあると思いますので、行政の方からある程度支援するということも必要じゃないかと思いますので、その点の御配慮をお願いしたいというふうに思います。  それから、僻地医療の関係でございますけれども、無理はないかもしれませんけれども、現実に僻地に勤務する医師が非常に少ない、これが僻地医療を充実できない一番大きな原因の一つでございますし、また自治体病院の経営を悪くしている原因になっているというふうに思います。  今までの医学教育を見ますと、専門的な知識や技術の学習に偏り過ぎておったんじゃないかと、もう少し地域医療に関心を寄せ、医の倫理なんかについて深く考える、そういうふうな医学教育を行う必要があるんじゃないかということが感じられますし、また研修の中に僻地医療を加えるとか、国家試験についてもそういったふうな問題意識を持って対応していく方がいいんじゃないかというふうなことを考えます。それから同時に、最近家庭医という言葉で呼ばれておるようでございますけれども、僻地の医療の場合には専門医よりもかえって何でも屋さんの医師が必要でございまして、そういった医師の育成ということも非常に重要ではないかというふうに思うわけでございます。  最近、医学教育の改善に関する調査研究協力会議というのができて、期待される医師像というものの内容の発表がなされておるようでございますし、また、家庭医につきましては懇談会の報告書というものも提出されておるようでございますけれども、活字だけであってはいけないと、なかなか内容的にはすばらしいものができておると思いますけれども、これを現実のものとして、僻地の方に率先してお医者さんが出ていって、僻地医療が充実されるようにならなくちゃいけないと思うわけでございますけれども、そういった方向に向けての文部省と厚生省のお考えをお尋ねしたいと思います。
  90. 佐藤國雄

    説明員佐藤國雄君) お答えいたします。  先生指摘のように、医学教育は確固たる倫理観に基づいて医学に関連をいたしました社会的な使命を有効に果たしていく、こういう人材を養成することを目的としているわけでございますけれども先生指摘の地域医療あるいは総合的、包括的な医療に配慮いたしました教育につきましても、医師養成を行う上で私どもも重要なことだというふうに考えておりまして、各大学においてもこれらの点に配慮いたしました教育というのをさまざまな形で実施はしてきているわけでございます。  地域医療に配慮いたしました教育では、例えば臨床実習の際に附属病院のみならず、各地域の病院やあるいは診療所における実習を取り入れたり、社会医学の実習を通しまして地域医療への配慮を深める、あるいは課外活動で僻地、離島における検診に参加する。また、僻地の医療を実際に担当しておられる医師の方から学習をするというような形をとって行われているわけでございます。  また、総合的な、包括的な医療に関しましては年前教育における講義や臨床実習等の際に随時取り上げられているわけでございますが、卒後教育におきましてもより実際的な修練を行うということで、先ほど申し上げましたように、地域の病院や診療所を使うといったことや、あるいは一部の大学で総合診療部あるいは総合外来、こういうものを設けてやっているところでございますけれども、先ほど先生の方から御指摘がございましたが、文部省の方の医学教育の改善に関する調査研究協力会議というものが広く社会一般から期待をされるよき医師の養成という観点に立ちまして、医学教育の改善について検討をいたしました。そしてこの最終まとめがことしの九月に出たわけでございますけれども、この中でも特に総合的な、あるいは包括的な医療に配慮した教育、あるいはまた地域医療に配慮するということで、かなり具体的な指摘をしておりまして、文部省といたしましてもこういった線に沿いまして推進をすべきものだというふうに考えておるところでございます。
  91. 阿部正俊

    説明員(阿部正俊君) お答え申し上げます。  ただいま文部省の方から年前の教育についてのお話があったわけでございますが、お医者さんは、その後で医師の国家試験を受験され、その後それに合格しますと、二年間の臨床研修というふうなことで、より実地に向けた教育を受けるということになるわけでございますが、先生指摘のように、最近の傾向として各科の専門志向というのが非常に高くなっていますので、そういったふうな傾向を是正するといいましょうか、そういったふうな各科専門化する傾向が指摘されておりますので、そういったことにならぬようにということで、まず例えば医師国家試験の上におきましても、もう少し臨床的な基礎的な知識、技能を重視した試験問題を出していこうというふうなことなどを中心にいたしまして、現在、医師国家試験の改善のための検討会議というのを行っているところでございますので、その結論を待って、できれば六十四年度の国家試験からそういった方向で改善を図っていくようにいたしたいと思っております。  それから、臨床研修制度につきましても、現在特に総合研修方式と言いまして、個別的な診療科で二年間を研修するということではなくて、かなり幅広い分野の研修を積むような方式、総合研修方式と言っていますが、そういったふうな制度がより定着発展するように臨床研修制度全体の見直しを現在進めているところでございますので、これにつきましてもできるだけ早く、できるところから具体的に取り上げて実施に移していきたいと考えております。  それから、第三点の家庭医という先生からお言葉がございましたけれども、やはり一番国民にとって大事なことは、日常的な疾病につきまして的確に対応していけるようなお医者さんがおっていただけるというのは大変必要なことでございます。現在、地域におきましては、特に開業医さんたちがそういったふうな任務を具体的に負っているわけでございますけれども、いわば家庭医の機能を持った医師の養成というのはこれからの大きな課題だと思いますので、こういったふうな点につきましては、来年度予算の中でもしかるべき予算をとりまして、関係団体との協議を進めながらその普及、定着を図っていくように努力したいと、こんなふうに考えているところでございます。  以上でございます。
  92. 一井淳治

    ○一井淳治君 次に、警察庁の方にお伺いいたしますけれども、最近暴力団が非常に、言葉が悪いかもしれませんが、はびこっている。そしてどこの社会、どこに行っても多様な様相を持って浸透しているという状況が出てきておるように思います。  私が最近体験いたしましたのは、土地に対する支配を確保して、これを財源にしていくために興行権を設定しているということがありまして、暴力団の頭のよさに驚いたわけでございますけれども、とにかく最近の暴力団は非常に利ざといといいますか、本当に営利を目的とした職業だというふうに思いますけれども、暴力団が年間どの程度の収益を上げているのか、そのあたりの御調査はどのようになっているでしょうか。
  93. 仁平圀雄

    説明員仁平圀雄君) 暴力団の資金獲得は合法、非合法を含めまして多種多様でございます。警察が把握いたしておりますのは、犯罪捜査等によって明らかになったものだけでございますので、その一部にすぎないと思うわけでございます。  暴力団が全体として年間どのくらいの収益を上げているかということについては、そういうことで掌握できないわけでありますが、昭和五十三年には特別調査を行っております、ちょっと古くなるわけでございますが。これも一種の推計でございますから正確なものではございませんが、そのときの結果では合法、非合法含めまして年間約一兆円を超えるという結果が出ておるわけでございます。
  94. 一井淳治

    ○一井淳治君 この暴力団対策は資金源といいますか、社会にいかに根を張っているかという、そこのところをまずはっきりと見ることが必要ではないかと思いますので、そういうふうな調査も暴力団対策の中で非常に大事ではないかというふうに思うわけです。もし仮に現在そういったふうな調査をして、これはっきりした数字は出ないでしょうけれども、恐らく衝撃的な大変な金額になるんじゃないかというふうに思います。そういったふうなことから本当に暴力団に対して真剣に対処せにゃいけぬという政策も生まれてくると思いますので、ひとつやってみていただきたいというふうに思います。  それから、暴力団の主たる収入源ですけれども、仮に上から五つ目ぐらいまで数えるとすればどういったものが財源になっておるんでしょうか。
  95. 仁平圀雄

    説明員仁平圀雄君) これも先ほど御答弁申し上げました昭和五十三年に行いました特別調査の結果でございますが、一番多いのは覚せい剤、次いでのみ行為、賭博といった順序になっております。
  96. 一井淳治

    ○一井淳治君 暴力団を経済団体というふうに見て、その多様な経済活動をトレースしていって、その暴力団の実情を確かめて、それに基づいて経済面から暴力団を封じ込めていくという対策が必要ではないかというふうに私は思うわけでございますけれども、そういう観点からすればどのような対策がとられておるんでしょうか。
  97. 仁平圀雄

    説明員仁平圀雄君) 御指摘のとおりでございまして、警察といたしましても暴力団を資金面から封じ込めていくということは極めて重要であると認識しているわけでございまして、暴力団の資金源封圧というのは、警察における暴力団取り締まりの重点項目として掲げておるわけでございます。  警察としては当然のことでございますが、各種資金源犯罪を徹底して検挙していくということが必要でございますが、この暴力団の資金源封圧は警察の検挙、取り締まりのみでは徹底できない面もあるわけでございます。そういうことで現在は関係機関、団体等とも連携を密にいたしまして、賭博、のみ行為の封圧のために公営競技場から暴力団を排除するという活動、それから建設業からも暴力団を排除する、それから、みかじめ料等を封圧するためには風俗営業等からもこの暴力団を排除するというような、各種暴排活動をあわせて推進しているところでございます。
  98. 一井淳治

    ○一井淳治君 暴力団は相手が弱いと見ればつけ込んできて、それに金を絡めてくるというわけでございますけれども、例えばゴルフ場とか、あるいは喫茶店とか、そういうふうなお客さんが出入りするようなところに暴力団が入り込んでいって、そうすると一般のお客さんが来なくなって寂れるということで、金にかえていくというふうなことも多々あるようでございますけれども、やはりそういう際に喫茶店とかゴルフ場とか、個々の人たちが暴力団に対抗するということはとてもできないわけで、各業界が業界ごとに結束していく、それでそういう暴力団の横暴を締め出していくということが必要ではないかと思うんですけれども、業界の指導ですけれども、これはどのようになっておるんでしょうか。
  99. 仁平圀雄

    説明員仁平圀雄君) これも御指摘のとおりでございまして、これまでに先ほど申し上げました建設業、それから保険業界、それから遊戯場、それからゴルフ場につきましても推進しておりますが、こういった業界におきまして、暴排の決議やそれから暴排の組織を結成するなどいたしまして、業界が一体となって暴力団を排除するということで、警察からも働きかけをいたしますし、また必要な指導も強化しているところでございます。
  100. 一井淳治

    ○一井淳治君 お金のあるところ、あるいは何か弱みのつかまりそうなという業界には、大抵もう今ごろは暴力団が入り込んでいるわけでございまして、銀行とか保険とか、その他各種の業界に対してそういうふうな指導を一層強めていただきたいというふうに思います。  それから、最近暴力団が浸透してきまして、暴力団が必要悪であるとか、あるいはやむを得ないという雰囲気も社会の一部にはなきにしもあらずというふうな状況がうかがわれますし、まだかなり指導的な立場の人にあるように思いますけれども、お金で済むならということで安易に妥協するという傾向もございます。そういったことが非常に暴力団にまとまった資金を提供することになっておるように思いますけれども、とにかく暴力団はそれ自体悪なんだと、社会からこういったものはなくならなくちゃならないんだというはっきりしたけじめをつけることが一番必要ではないかというふうに思うわけです。そういう意味で暴力団追放の国民運動といえば大げさかもしれませんけれども国民的な規模で意識の高揚ということも必要ではないかと思いますけれども、そのあたりはいかがでございましょうか。
  101. 仁平圀雄

    説明員仁平圀雄君) これも御指摘のとおりでございまして、暴力団の存在そのものを許さないという国民意識を盛り上げていくことは極めて大切でありまして、既にこれまでに三十八の都道府県議会におきまして暴力団排除の決議がなされ、また十八の道府県におきましては県民レベルの暴力団排除組織が結成され、活発な活動を展開していただいているところでございます。警察といたしましては、今後とも暴力団を恐れない、暴力団に金を出さない、暴力団を利用しないという、暴力追放三ない主義を中心にいたしまして、あらゆる地域、職域から暴力団を排除するよう、またこれが国民的な運動として展開されるように努力してまいりたいと、かように考えております。
  102. 一井淳治

    ○一井淳治君 十月十日の新聞記事を見ますと、警察庁が地上げ事件について実態をまとめたということが報道されております。私が特にここでお尋ねしたいのは、背後関係捜査とこれに対する処罰が十分になされておるかどうかという点でございます。  この新聞記事を見ますと、摘発された地上げ屋は大部分が暴力団であるということが記されておりますけれども、地上げを行う場合に、不動産を自分の所有に移してやるということが少なくないわけでございます。不動産を暴力団が自己名義にするためには、やはり数億円のお金を必要とすると思いますけれども、現実には暴力団もそんな数億円のお金を自由に動かせるような人はいないわけでございまして、やはり背後関係の資金提供者がいるんじゃないかというふうに思うわけで、そういった人たちの処罰、捜査ということも忘れてはならないというふうに思うわけです。  また同じく新聞記事を見ますと、大部分が立ち退き交渉に行き詰まって、そこで暴力団を頼んだんだということになっておりますけれども、暴力団を頼めば必ず脅迫や暴行に及んで、違法行為によって明け渡しをやるということははっきりしているわけでございまして、暴力団を明け渡しのために頼むということは、これはもうまさに暴行やあるいは脅迫行為の共犯ではないかというふうに思うわけでございます。仮に頼んだ人がそれまで善良な市民であっても、暴力団に頼むことによりまして相手方は大変な迷惑をこうむりますし、また暴力団の資金を提供したという、覚せい剤以上に悪いことをやっているわけでございますから、暴力団を頼んだ人、この人に対する捜査や処罰ということも忘れずやっていただきたいと思うわけでございますけれども、そのあたりはどうなっているでしょうか。
  103. 仁平圀雄

    説明員仁平圀雄君) 地上げ屋の調査の結果からいたしますというと、地上げに暴力団が絡んでいるという事案はかなり多いわけでございまして、六十一年度に検挙いたしました八件につきましてはすべて暴力団が関与いたしておりますし、ことし六月までに検挙いたしました二十件のうち十六件には暴力団が関与しておるという状況でございます。地上げに絡む違法行為につきましては、これまでもあらゆる法令を駆使いたしまして検挙に努めてきているところでございますが、今御指摘の暴力団を依頼した者はもとよりでございますが、資金提供者等背後関係につきましてもその実態解明に努めまして、刑罰法令に触れる行為が把握されました場合には厳正に対処していきたいと考えております。
  104. 一井淳治

    ○一井淳治君 これまでの警察捜査方針でございますけれども、現実に手を下した者は捕まえる、しかしその周辺については捜査が及ばないということで、悪い者がぬくぬくとしているという状況が本当にあるように思います。何というか殺人とか傷害とか、そういうふうなはっきりした事案については割合捜査がスムーズに早く行われるんですけれども、知能的な犯罪に対しては、いま一歩どころか、いま二歩も三歩も警察が控え目にしているというふうなことを感ずるわけですけれども、やはりそこのところを厳しく処罰していかないと、本当の意味での暴力団対策はできないと思いますので、一層の御健闘をお願いしたいというふうに思います。  それからもう一つ、暴力団対策で大切なのは一般市民の協力ではないかと思いますけれども、全般的に言いまして、警察に対する市民の信頼というのは非常に厚いというふうに私思います。市民の側でも、いざとなれば警察の方の保護がしてもらえるということで、暴力団を相手に民事紛争などもやっているわけでございますけれども、しかし現実にそういう場になってくると幻滅を感ずる。警察の方も大変忙しいし、人手が足らないというところはあるんでしょうけれども、渦中に巻き込まれると意外と警察は守ってくれない、頼りにならないということを身にしみてわかって、そこで警察に対する不信感を持つ人が非常に多いんじゃないかというふうに思います。暴力追放をおやりになるんでしたら、暴力追放のために協力している市民を本気で守るということで、場合によっては一人の警察官がつきっきりで守るとか、あるいは濃厚な見回りをするとか、相当何か思い切った方策を中央で考えていただいて、暴力追放のための協力者に対してはもっと具体的に、市民の方が協力しても損はないといいますか、協力しても自分に被害が及ばないということを現実に確保していかないと、やはりこれも正直な市民がばかを見るというふうになると思いますので厳重にやってもらいたいんですけれども、そのあたりはいかがでございましょうか。
  105. 仁平圀雄

    説明員仁平圀雄君) 暴力団対策を推進していく上におきまして、被害者はもとより協力者に対して保護を徹底することは極めて重要なことでございますので、これまでもそういった面につきましては十分努力してきたつもりでございますし、現実にお礼参り等の事案は年間ぼんの数件の発生を見ておるわけでございますが、こういった事案は一件たりとも発生してはならないわけでございますので、今後とも協力者等に対しましては保護の万全を期してまいりたいと考えております。
  106. 一井淳治

    ○一井淳治君 それから、悪がはびこるという言葉がございますけれども、そういった言葉は使いたぐないんですけれども、現実には犯罪が起こりながら警察の方でも対処されないまま放置されておるという事案が非常に多いんじゃないかというふうに思います。警察の人員をふやすということは非常に困難でございましょうけれども、現体制の中で効率的な捜査活動ができるように何か方策などお立てなんでございましょうか。  それからもう一つ、その関係で調書の簡略化についてもお尋ねしたいわけでございます。現在、警察のお書きになっている調書は非常に念入りでございまして、長々と書いてあります。もう、自白して公判においてもはっきり有罪と認めるということが諸般の状況からはっきりしているような場合には、そんな詳しい調書をとらなくても、調書をとる時間をほかの犯罪者の捜査に回したらいいんじゃないかというふうな気もいたします。  それからもう一つは、調書の横書きでございますけれども警察の主要なものは大部分がまだ縦書きになっております。警察が出発点として、検察庁、裁判所といくものですから、検察庁も縦書き、裁判所も縦書きということでずっと右へ倣えになっているわけでございますけれども、難しい事件、調書が厚くなる事件というのは、大体何年何月何日に幾ら幾らの金額をどうこうしたというふうに横書きに、数字が多いわけで、横書きした方が能率化するんじゃないかと思いますけれども、調書の横書きについてもあわせてお尋ねしたいと思います。
  107. 仁平圀雄

    説明員仁平圀雄君) 暴力団犯罪のみならず、最近の犯罪の質量両面の変化や社会情勢の変化に伴う捜査活動の困難化等に対処するために、昨年十月に刑事警察充実強化対策要綱というものを制定いたしまして、現在科学捜査力の強化とか広域捜査力の強化、国際捜査力の強化等に努めておるわけでございますが、御指摘捜査活動の効率化という面について考えてみますと、例えば申し上げてみますと、指紋自動識別システムというようなものを開発導入いたしまして、指紋の識別等はコンピューターにより自動的に行っておるわけでございます。大変敏速かつ正確に照合できるようになっておるわけでございます。このほか、コンピューターを活用したところの各種捜査支援システムの開発とか、あるいは高性能捜査装備資器材の導入等を行いまして、捜査をなるべく効率的に、しかも科学的に推進していくように努力しているところでございます。  それから、調書の簡素化の問題でございますが、先生も御存じだと思いますが、警察捜査におきましては、犯罪が単純であり、かつ証拠の明らかな特定の事件につきましては、司法警察職員捜査書類簡易書式例に基づく簡易な書式がございますし、また自動車による業務上過失傷害事件につきましては、司法警察職員捜査書類基本書式例の特例といたしまして、これまた簡易な書式が用いられることになっておるわけでございます。また、一般の事件につきましても、被害者が多数に上る軽微な事案等につきましては、捜査書類の作成に当たりましてその簡素化に努めておるところでございます。まあしかし、事案の内容によりましては、やはり立証のために詳細な供述調書が必要という場合もございますので、その辺につきましては御理解を賜りたいと思います。  いずれにいたしましても、捜査書類の簡素化の問題は、私ども警察にとりましても一つの重要な課題認識しておるわけでございまして、今後関係機関とも御相談の上、研究してまいりたいと思っております。  最後に、調書の横書きの問題でございますが、実は現在も自動車による業務上過失傷害事件につきましては、横書きの様式の供述調書等の捜査書類を用いておるところでございます。ただ、一般事件につきましては、裁判所関係書類等との関係もございまして縦書きとなっておるわけでございます。行政文書につきましては既にほとんど横書きが採用されているということでもございますので、一般の捜査書類の横書きにつきましても関係機関と御相談の上、将来の課題として研究してまいりたいと思います。
  108. 穐山篤

    委員長穐山篤君) 午前の審査はこの程度とし、午後一時三十分まで休憩いたします。    午後零時二十四分休憩      ————◇—————    午後一時三十一分開会
  109. 穐山篤

    委員長穐山篤君) ただいまから決算委員会を再開いたします。  休憩前に引き続き、昭和六十年度決算外二件を議題とし、自治省警察庁及び公営企業金融公庫決算について審査を行います。  質疑のある方は順次御発言願います。
  110. 片上公人

    ○片上公人君 警察庁にお聞きいたしますが、午前中にも触れられましたが、昨年十一月二十五日発生しました現金三億円強奪事件は、モネやコロー名画盗難事件に結びつくという予想外の事件内容となっているばかりか、両事件の犯人はフランス人が主犯格と見られているなど、国際大型犯罪に発展いたしました。事件の裏には日仏犯罪シンジケートが浮上するなど事件解明には大変な困難を見せております。犯人のフランス人が既に外国へ逃亡しているというわけでございますが、その身柄確保のためにどのように捜査を行っているのか、御報告願いたいと思います。
  111. 仁平圀雄

    説明員仁平圀雄君) 午前中にも御答弁申し上げましたように、現在までに身柄の確認ができました被疑者につきましては、既に逮捕状の発行を得て指名手配に付しますとともに、国際刑事警察機構を通じまして、加盟各国に対しましてはその所在の発見通報方を要請しているところでございます。  また、現在、御承知のように、フランスから捜査官が来日しておりますので、これら捜査官とも身柄確保についての情報交換を行っているところでございます。
  112. 片上公人

    ○片上公人君 盗難絵画についてでございますが、日本の捜査の結果、数点を国内において発見して押収していると聞いております。フランスからその送付を求められた場合でございますが、警察としてはこれに対してどのように対応するのか、お伺いいたします。
  113. 仁平圀雄

    説明員仁平圀雄君) 押収いたしました絵画はこれまでに四点でございますが、これらにつきましては、国際捜査共助法というものがございますが、この法律に基づきまして、フランス側に証拠として送付するという方向で目下関係省庁と協議をいたしているところでございます。
  114. 片上公人

    ○片上公人君 諸条件が整いましたらフランスに送付、返還するということになるわけでございますね。
  115. 仁平圀雄

    説明員仁平圀雄君) そのとおりでございます。
  116. 片上公人

    ○片上公人君 国家公安委員長にお尋ねいたします。  今後とも国際犯罪はますます増加していく傾向にあると思いますが、警察としてはそれに対してどのように対応していくのか、その御見解をお伺いいたします。
  117. 梶山静六

    国務大臣梶山静六君) ただいま御指摘のとおり、犯罪国際化が急速に進んでいることから、大臣就任直後に開催されました全国警察本部長会講の席においても、職員一人一人が国際感覚を持って犯罪に対処してほしい旨訓示したところであります。  国内においては、警察庁及び都道府県警察における国際捜査力の強化、関係省庁との緊密な連携に努めるとともに、外国捜査機関との関係につきましては、ICPO、国際刑事警察機構に対する積極的な貢献を含めて国際捜査協力の強化に一層努力を傾けてまいりたいと存じます。
  118. 片上公人

    ○片上公人君 警察庁ありがとうございました。  政治献金についてお伺いいたします。  自治大臣もよく御承知のとおり、自民党選挙制度調査会の政治資金小委員会が、企業、労組などからの献金の上限を一億円から二億円にするなど、現行の献金限度枠を二倍に引き上げるとの改正案要綱をまとめました。  政治献金の所管大臣でもある自治大臣は、こうした改正案に対しましてどのような見解をお持ちになっておるのか、お伺いいたします。
  119. 梶山静六

    国務大臣梶山静六君) 御指摘の件につきましては、自民党選挙制度調査会の小委員会、いわゆる西岡委員会において取り上げられた問題でございまして、パーティーの問題や寄附限度額などについて一つの考え方をまとめられたものと受けとめておりますが、今後自民党の選挙制度調査会等においてさらに論議をされるものと思うので、その論議を見守っていきたいと思っております。
  120. 片上公人

    ○片上公人君 この改正案の要綱の本当の趣旨は、これまで頭打ちの状態になっている企業献金の拡大をねらったものと思います。  献金枠を二倍にする理由として小委員会は、五十年の改正以来六十一年までの十一年間で消費者物価が一五八・九ポイント、名目賃金指数が一八六・七ポイントに上昇したことを挙げております。政治献金がいつまでも同額なら小委員会の理由も多少理解できるわけでございますが、六十一年の政治献金は自治省所管分だけでも千六百七十五億円、地方自治体の選挙管理委員会所管分を含めますと三千億円を超えるとも言われております。十年間に約三倍の超高度成長になっておるわけでございます。こうした実態があるにもかかわらず何ゆえ献金枠を二倍にする必要があるのか。なお、五十一年に現行の政治資金規正法が改正されたとき、同法附則の第八条に施行後五年後に個人献金を一層強化するよう法を改正することになっていたにもかかわりませず、五年後の見直しは無視されまして今日に至っているわけでございます。  経団連の斎藤英四郎会長は去る九月四日、政治家の資金集めのパーティーが横行している現状を非難しまして、正規の献金に加え、パーティー券の購入は交際費で支出するため、その支出に加え、課税対象にもなり、二重、三重の負担になることを強調しております。斎藤氏は今後の対応として、パーティーを自粛するだけではだめである。集まった金の使途を厳密に制限する方法があればチェックになると強調し、パーティーも対象になるよう政治資金規正法を改正すべきだと発言されております。私もいわゆるパーティーによる資金集め自体を政治資金規正法の対象になるように法改正することこそまず手がけなければならないと思いますが、大臣の御見解をお願い申し上げます。
  121. 梶山静六

    国務大臣梶山静六君) 確かに政治資金規正法、見直し条項もございますし、各党においてそういう見直しの機運が高まることは望ましいことだと思っております。今御指摘のとおり、政治献金の総枠において約十年間に三倍になったというのはもちろん事実でございますが、それぞれの企業その他において限度額が向上したということはございません。ですから、恐らく広く浅くということがなされているというふうに理解をすることも一つの方法ではございますが、やはり社会や経済状態の変動に即応した体制をとることも、また政党の財政基盤の確立に寄与するものではないかなという感じもいたします。いずれにいたしましても、いわゆる西岡小委員会が出した試案はこれから自民党の選挙制度調査会において議論をされるわけでございます。そういうものの変動を、動向をよく見定めながら対処していかなければならないと思います。  それから、いわゆる励ます会というパーティーについては、従来から政治団体の事業などとして行われておるが、最近これらのパーティーに対していろいろな御意見があることは今御指摘を受けたとおりでございます。いろいろな御批判のあることもよく承知をいたしておりますが、パーティーとは何か、政治活動の自由との関係をどう考えるかというような問題もこれあり、これからさらに自民党内でもあるいは各党内でも議論が深められて、それぞれの合意を得て、しかるべき結論を得て、国民の前に明々白々たるいわば信頼を確立できるような方式に御検討を願いたいと思っております。
  122. 片上公人

    ○片上公人君 次に、土地税制についてお伺いいたします。  十月七日の新聞報道によりますと、地価対策の一環として特別土地保有税の見直しを自治省が考えており、来年にも改正するとの方針が報道されましたが、事実かどうか、お伺いしたいと思います。具体的には、規制の対象となる土地のうち三大都市圏の土地については、現在特例で三百平方メートルを基準としているミニ保有税、これを二百平方メートルないし百平方メートルにし、また税率も取得分三%、保有分一・四%を引き上げようとするものであると報道されましたが、どこまで検討が進んでいるのか、お聞かせ願いたいと思います。
  123. 渡辺功

    説明員(渡辺功君) 特別土地保有税につきましては、土地政策の推進を税制面から補完するという立場から、土地の投機的な取引を抑制し、同時に土地の供給及び有効利用の促進ということを図りますために昭和四十八年に創設されまして、一定規模以上の土地の取得及び保有につきまして、土地の取得価額に基づいて課税するというところでございます。そういう制度をとっているところでございます。そしてまた一定の効果を上げてきたものと考えております。  特別土地保有税につきましては、三大都市圏の特定の都市の市街化区域に所在します土地に対する特別土地保有税の特例措置、これがいわゆるミニ保有税と普通言っているものでございますが、その適用期限の到来が参りまして、その到来に伴います期限の延長問題というものもございます。また、この特例措置のあり方につきましては、ただいま御指摘の基準面積などの問題も含めていろいろ御議論があるようでございます。この特例措置の趣旨、役割等を十分考慮しながら税制調査会等におきます審議を経まして今後適切に対処してまいりたい、こう考えているところでございます。
  124. 片上公人

    ○片上公人君 特別土地保有税は、昭和四十八年の狂乱地価の際にそれを教訓にいたしましてつくられた税であると思います。不動産取得税、固定資産税が課税台帳に登録された価格をもとに課税するのを、取得価額をもとに課税することから相当の重課税となるはずであります。しかし、最近の徴収実績を見ますと、昭和五十年当時から土地投機が行われようとしている六十年の実績は半減しておりますが、これは一体どうなっておるのか、この理由をお伺いしたいと思います。六十一年からは一挙にこの税に基づく徴収実績が増大すると考えていらっしゃるのかどうか、お伺いいたします。
  125. 渡辺功

    説明員(渡辺功君) 特別土地保有税の徴収実績でございますが、ただいま委員指摘のとおり、昭和五十七年度から六十年度まで減少してきております。これは売買による土地取引件数がこの間見ておりますとやっぱり減少している時期であったということが一つございます。それから同時に、特別土地保有税は御承知のとおり、土地の利用が進みますと、それは課税関係から落ちてまいります。そういったことが進んできたということがございます。  それからもう一点、昭和五十七年度におきまして市街化調整区域にある土地につきましては、有期間十年を超える土地については課税の対象外とすると、そういう改正が行われましたこと等がその原因であるというふうに考えております。  しかし、六十一年度になってきますと、また土地取引というものもふえてまいります。現在まだ確実に把握をしておりませんけれども、若干私どもが得ている見通しの中では、六十一年度の特別土地保有税の徴収実績につきましては、ある程度増加していくということが見込まれているところでございます。
  126. 片上公人

    ○片上公人君 自治省は、この税に基づく徴収を行うことにおきまして大変弱腰といいますか、納税の対象者に対していきなり課税を行うのではなく、二年間徴収猶予した後に免除するか、課税を行うことにしております。だが、このようなやり方では土地投機を行う者に対して実効が上がらないと思います。例えば二年間徴収猶予をしている間に土地の値段は二倍から三倍にはね上がっているのが今の現状であります。この点についても改正する必要があるのではないかと思いますが、この点についてお伺いいたします。
  127. 渡辺功

    説明員(渡辺功君) この特別土地保有税の徴収猶予につきましては二つ制度がございまして、一つは、特別土地保有税が非課税土地として法律上定められているものがございます。それは非課税土地、例えばある土地を買いまして、そこを開発して高層住宅をつくるというような場合を考えますというと、その高層住宅をつくるまでの間にやっぱり時間的なずれがございますから、直ちに特別土地保有税がかかるというのではこの税の本来の趣旨に合わない。そこで、その場合には徴収猶予をしておいて、本当にそういう非課税土地として使われるということになったら免除するという仕掛けになっている部分がございます。これが一つ合理的な理由でなされている徴収猶予でございます。  それからもう一点、恐らく委員が御指摘の点は、三大都市圏の特定の都市の市街化区域に所在する土地に対する特別土地保有税、つまりミニ保有税につきましての問題ではないかというふうに推察するわけでございますが、こちらの方は、土地の取得された日から二年を経過した日後に保有分として課税をする、住宅地として有効に利用されているものを除いて課税すると、こういう仕組みでございます。これはただいま御指摘のように、その間が少し時間がたち過ぎるではないかという御意見だろうと思いますが、三百平米の土地ということは、東京の町の中というと非常にもう大きな土地でございますけれども、実はこの制度ができたときは、個人が住宅用地として土地が取得されるということが大いに議論になりまして、そういう場合を考えますというと、例えばサラリーマンが土地を買ってすぐ家もつくれるという財力というのはなかなかないんじゃないだろうか、少々の時間的な余裕を与えていくというのが制度としてやはり本当じゃないだろうかという御議論がありました。しかし、そういう建前であるにもかかわらず、買ってずっと使わないでいるという段階になったら、そこはやはり課税をすべきではないか、こういうような趣旨で現行制度ができております。したがいまして、そこのところはやはりこの制度の趣旨に沿った考え方でいかなければいけないんじゃないだろうかということを考えております。  いずれにいたしましても、土地問題の解決のためには御指摘の土地税制を含みます幅広い土地政策を総合的に推進していく、こういうことがどうしても必要でございまして、土地税制のあり方につきましては、今後税制調査会等におきます審議を踏まえまして適切に対処してまいりたいと、こういうふうに考えているところでございます。
  128. 片上公人

    ○片上公人君 この税はそもそも狂乱地価が高騰したのを受けまして、政策的な歯どめをかけるべく設けられた税であったと思いますが、今回のような土地騰貴に際しましてほとんど役に立たなかったと思います。  これは今後の問題となりますが、自治省が考えておられるミニ保有税の対象の部分的な手直しだけではなく、特別土地保有税の改組を含む制度の抜本的な見直しが必要となってくるのではないかと思いますが、御見解をお伺いいたします。
  129. 渡辺功

    説明員(渡辺功君) 特別土地保有税につきましては、土地政策の推進を税制面から補完するという立場から、投機的な土地取引の抑制、土地の供給及び利用の促進ということのために四十八年に創設されまして、一定規模以上の土地の取得及び保有について土地の取得価額に基づいて課税されるというところでございまして、これは、この税制だけの効果がどれだけだということはなかなか測定できないのでございますが、確かに四十八年以降に一連の措置によって当時の土地取引の非常に過剰な状況といいますか、そういったものが鎮静化いたしましたので、この制度もその一翼を担ったというふうに私どもは考えておるわけでございます。  特別土地保有税のあり方につきましては、昨年の政府税制調査会でも、この特別土地保有税はその任務を終わったのではないかというような議論も一部にはあるものですから、政府税制調査会では、そうではない、やはりこの基本的な仕組みは維持すべきであるというふうに答申をいただいているところでございまして、私どもといたしましても、今後土地税制のあり方全体の中で、先ほど申し上げましたが、税制調査会等におきます審議をいただきまして、それに応じまして適切な対処をしてまいりたい、こういうふうに考えているところでございます。
  130. 片上公人

    ○片上公人君 現在緊急の政策課題となっておりますこの地価の高騰につきましては、政府の責任はこれは極めて重大であると思います。政府は、地価抑制に有力な有効な手を打たなかったばかりでなく、地方自治体の要望も聞かずに、民活の名目で国公有地を競争入札で払い下げたりして地価の急騰を加速いたしました。また金融機関は、不動産業者向けに巨額の資金を無節操に融資し続け、地価狂乱の主役を演じたわけでございます。  政府は去る十月の十六日、新行革審の答申を受けまして、緊急土地対策要綱を決定いたしました。しかし、地価の高騰は二年も前から始まっているのであり、大都市圏では周辺住宅地までがほぼ一巡し、土地騰貴で大もうけをした法人等がにんまりとしている現在、一般国民にとりましては、何を今ごろというのが実感ではないかと思うわけでございます。現在、各党の土地対策、さらには経済界等の意見、提言もそれぞれ発表されておりまして、あとは政府、自治体、金融機関がそれらの対策をいかに整然とかつ徹底して実施するかにかかっておると思います。  そこで、国土庁では、去る四日、都道府県知事、指定都市市長あてに緊急土地対策要綱について土地局長通達を出しておりますが、まずその内容を御説明願いたいと思います。
  131. 鈴木克之

    説明員鈴木克之君) 緊急土地対策要綱が閣議決定されましたことを受けまして、御指摘のようにこの十一月四日付で都道府県知事、それから政令指定都市の長あてに土地局長名で通達をしたところでございますが、その内容は、監視区域の積極的な指定や面積要件の引き下げなどの監視区域制度の運用の強化、それから規制区域の指定についての所要の準備、地価動向、土地取引状況の監視の強化、不動産業者に対する指導の徹底などというものでございます。
  132. 片上公人

    ○片上公人君 政府の対策要綱や各党の対策を見ましても、監視区域制度の機動的運用は当面の土地対策の柱となっております。  そこで、先ほどの土地局長通達では、「監視区域については、既に地価が相当程度上昇した時点で指定するのではなく、その前段階で指定し、未然に地価の上昇を防ぐことが極めて重要である。このため、地価上昇の兆しが見られる地域及び大規模開発プロジェクト、リゾート整備等が予定されている地域等においては、早急に積極的な指定を検討されたい。」とありますが、私もその点が大変重要だと思います。国土庁としましては、今後監視区域に指定すべき地域としてどのようなところを考えているか、関係地方自治体からこの件についでどのように聞いておるか、お伺いしたいと思います。
  133. 鈴木克之

    説明員鈴木克之君) 御指摘のように通達を発したところでございまして、これを受けまして各自治体におきましては積極的に所要の検討が進められておるところでございます。  ちなみに申し上げますと、この十二月の一日から宮城県が仙台市、それから泉市の一部において監視区域の指定をいたすということを予定しておりますとともに、また大阪市の環状線の内側の八区におきましても同様に十二月一日から監視区域の指定がなされるということで、それぞれ所要の準備が図られておるところでございます。また、これ以外の各地方公共団体におきましても、それぞれの地価動向、土地取引状況等に即しまして前向きで検討が行われているところでございます。
  134. 片上公人

    ○片上公人君 現在首都圏におきましては監視区域が拡大強化され、地価の安定に効果を発揮しつつあると、こう考えておりますが、今大阪の話が少し出ましたが、神戸、名古屋等におきましては、いまだに監視区域が指定されておりません。今後これらの地域で監視区域の指定を行う予定はあるのかどうか、検討されていると思いますが、御報告願いたいと思います。
  135. 鈴木克之

    説明員鈴木克之君) 大阪市がこの十二月一日から監視区域の指定をいたすということが公表されましたことに関連いたしまして、御指摘の関西圏のその他の地方公共団体、例えば大阪府、京都府、兵庫県、神戸市、それから愛知県、名古屋市、これらの各市におきまして鋭意検討が進められておるというふうに聞いております。
  136. 片上公人

    ○片上公人君 監視区域の指定も重要でございますが、同時に届け出対象面積を引き下げて監視の網を広げる必要があると思います。既に東京都や神奈川の一部地域では届け出対象面積を百平方メートルに引き下げておりますが、これによりまして土地取引件数の何割程度がカバーできることになったのか、お伺いいたします。
  137. 鈴木克之

    説明員鈴木克之君) 御指摘の土地取引のカバー率でございますが、これは地域によりまして、土地取引の状況などに差がございますために多少のばらつきがございます。しかし、東京、神奈川など、今回届け出対象面積を百平米に引き下げるところにつきましては、ほぼ五割ないし八割程度がカバーできるというふうに試算をしておるということを伺っております。
  138. 片上公人

    ○片上公人君 土地局長通達にも届け出対象面積の引き下げが要請されておりますが、監視区域制度をより効果あるものとするためにも、引き続き届け出対象面積の引き下げ指導が必要であると思います。埼玉県でも、一部地域での百平方メートルへの引き下げが検討されているようでありますが、現在どのような地域で予定されておるのか、お伺いしたいと思います。
  139. 鈴木克之

    説明員鈴木克之君) 埼玉県におきましては、この十月一日から十六市二町において監視区域の指定がなされたところでございまして、その届け出対象面積は現在のところ五百平米以上ということになっております。しかし、地価動向等を踏まえまして、この十一月二十日を目途に、それ以降、埼京線や西武線の沿線にございます七市につきましては百平米以上に、それ以外の九市二町については二百平米以上に引き下げる予定であるというふうに聞いております。
  140. 片上公人

    ○片上公人君 監視区域の指定、また届け出対象面積の引き下げは当然事務量が増大するわけでございますが、実際に事務処理をする各市町村では要員や経費の手当てが大変のようでございます。したがって、人件費増等に対する国による的確な補助が不可欠と考えますが、国土庁ではこの点にどう対応されておるのか、お伺いしたいと思います。
  141. 鈴木克之

    説明員鈴木克之君) 国土利用計画法の施行事務経費につきましては、従来から国土利用計画法に基づきまして交付金を交付してきているところでございますが、御指摘のように今回の監視区域の指定や、また届け出対象面積の引き下げによりまして地方公共団体の事務量、人件費を含む経費の増大は極めて大きなものとなることが見込まれておりますので、国土庁といたしましては、地方公共団体の事務量等の増加に対処いたしますために必要な措置を講じていきたいと考えております。
  142. 片上公人

    ○片上公人君 次に、要綱や通達では規制区域の指定について準備を早急に進めるよう求めておりますが、現実の問題として規制区域の指定となりますとさまざまな問題がありまして、事前に十分な検討準備が必要でございます。このため国土庁では、一都三県と規制区域検討会議を設置し、指定基準等につきまして検討を進めているようでございますが、今日まで何回の会議を持たれ、どのような事項について検討し、どのような結論を得ていらっしゃるのか、御説明願いたいと思います。
  143. 鈴木克之

    説明員鈴木克之君) 御指摘のように、規制区域の発動をいたしますに当たりましては所要の準備を十分整えておく必要があるわけでございます。そこで、去る十月二十七日に関係都県の実務者クラスを集めまして第一回の規制区域検討会議を行ったところでございまして、この会議では規制区域の指定に当たってどういうことが問題になるか、そういう検討事項や会議の今後の予定などが話し合われたところでございます。その詳細の検討につきましては、さらに課長レベルによります幹事会を設けて具体的かつ実践的な検討をいたすことになっておりまして、目下その検討を取り進めているところでございます。
  144. 片上公人

    ○片上公人君 土地取引を許可制にする規制区域の発動についてはその準備を既に進めておりますが、現在の土地現状から急がれることでありますが、一年以内に一部の地域であれ指定発動をするところがあるのかどうか、伺いたいと思います。
  145. 鈴木克之

    説明員鈴木克之君) 規制区域の発動をするかどうかにつきましては、今後の地価の動向や、現在運用をいたしております監視区域の効果などを見ながら検討をしてまいりたいというふうに考えております。
  146. 片上公人

    ○片上公人君 今回の地価問題は基本的には東京への一極集中に原因があると考えますが、政府におきましても四全総を策定し、多極分散国土の形成を図り、一極集中を是正することとしておりますが、その具体化の手段として今後の国会に提出を検討しておる法律があるかどうか、お伺いしたいと思います。
  147. 河手悦夫

    説明員河手悦夫君) 先生指摘のように、四全総の基本的目標、これは東京一極集中を是正し、多極分散型国土を形成するということでございます。このためには各地域がその特色を生かした発展、活性化を図っていくということが重要であるというふうに考えておりまして、国土庁といたしましては、四全総の推進施策の一環といたしまして、このような各地域の発展の核となる地域の創意工夫に基づいた地域拠点整備というものに対しまして、多極分散型国土形成の観点から政府が一体となって支援をしていくための方策につきまして、現在新規立法を含めて検討を進めているところでございます。
  148. 片上公人

    ○片上公人君 次に、長期営農継続農地の問題についてお伺いいたします。市街化区域内の長期営農継続農地の問題につきましては、市町村に営農の計画書を提出しておりますが、実際は農業を継続する意思がなく、単に土地の値上がりを期待し、その供給を出し渋っている農家も中にはいるために、中曽根前首相がその認定を見直すことを約束したと思います。そのため自治省は、去る九月十二日に通達を出しまして、長期営農継続農地の認定について厳格な制度の運用を市町村に求めたと思いますが、それに間違いはございませんか、お伺いいたします。
  149. 渡辺功

    説明員(渡辺功君) 御指摘の長期営農継続農地制度というのは、三大圏の百八十九市の市街化区域農地について適用されている制度でございまして、徴収猶予制度をとっておいで、そして、しかし長期営農をしないで途中で例えばそれをやめる、あるいは宅地にして売ってしまうというようなことが起きた場合には加算金を付してさかのぼって徴収する、こういう制度でございます。この制度を適正に運用を図る必要がある、こういうことでございまして、この制度につきまして、徴収猶予の運用実績等について自治省といたしましては調査いたしまして、その結果を踏まえまして、営農計画それから営農実績等の営農を裏づける資料の活用、それから現地調査の励行あるいは農地課税審議会の充実強化等の内容を盛り込みました通達を、お示しのように六十二年九月十二日付で関係地方団体に通知をいたしているところでございます。
  150. 片上公人

    ○片上公人君 長期営農継続農地の認定は、現在の法制度でいいますと、市町村の農業委員会を経由しまして市町村長が行うことになっておりますが、認定の実情はどうなっているのか、自治省に伺います。  農家から営農計画が提出されれば自動的に長期営農継続農地となっていたのではないか。通達では現地調査を行うよう要請しておりますが、これまでほとんど行われてこなかったのではないか。また、俗にクリの木とか桃の木が一本あれば認定されると言われておりますが、そんなことが実際にあったのかどうか、お伺いしたいと思います。
  151. 渡辺功

    説明員(渡辺功君) 市長はこの長期営農継続農地の申告に係る農地が長期営農継続農地として徴収猶予制度に乗せるというものに該当するかどうかということの認定を行います場合には、必ず農地課税審議会の議を経なければならないということにされております。  また、昭和六十年度におきます長期営農継続農地の認定の状況を見ましても、新規に認定申告されたもののうちで認定されたものの件数は九割ちょっとになっております。必ずしも申告しさえすれば自動的に認定されるという運用がなされているということではないというふうに私どもは見ております。  それから、通達では現地調査を行うように要請しているけれども、余り行われなかったのではないかという御質問があったと思います。先般取りまとめました長期営農継続農地に対する徴収猶予の運用実績等についての調査の中から見ますというと、毎年の現地調査につきましては多くの市が全筆について行っているということは見られます。ただし、全筆行わないで、長期営農継続農地として保全しているということについて何らかの情報でその市が疑いを持っているというものだけ現地調査をするという市もありましたし、また中には現地調査までは行っていないという市もございました。そういうようなことでございますし、また毎年行わない場合でも二年、三年のサイクルでやっているというような、いろいろな形態がございます。  そこで、そういう実情から見ますというと、地方団体のこの制度についての運用に若干ばらつきもあるというふうに判定しまして、現地調査の重要性にかんがみましてその励行を通達した、こういうことでございます。  それから、その営農の実態でございますが、クリの木、桃の木が一本ありさえすれば認定するというが、そんなことはあるのかというお話でございますが、これらは今回の営農継続の実態があるかどうかということについての調査の中からは市町村から具体的には聞いておりませんが、その営農の状態、農地を耕作し保全するという外形的なものでございますから、雑草が生い茂っているなど、肥培管理、通常で言う営農という実態でございますが、そういったものが悪いという状態にあって、これはやはり営農の継続とは認められないということで長期営農継続農地の認定が取り消されている例があるということは聞いております。  なお、宅地並み課税を免れるために営農を偽装している事例が見られるという指摘がございますけれども、これは今回の調査の中でも若干そういうのが出てまいりましたけれども、既に農地の中では宅地並み課税の税金を払っている農地が六千八百ヘクタールあります。この六千八百ヘクタールというのは相当な数量でございまして、東京二十三区の残っている農地が現在千八百ヘクタールでございますから、その四倍以上、四倍強と言っていいと思いますが、そういう大きさの農地が宅地並み課税の税金を払っておる。そういう状態からいいますというと、農家の方々の立場からいえばそれは宅地と同様の負担をしているので、それは自分の庭であるとかよそ様の庭と同じ状態なんだと。ところが、そういったようなものが何か農地の荒らしづくりとして人から指弾されているというようなことで話が市役所の方にも来て、調べに行ったらそういうものであったというようなこともないわけでもないようでございまして、その辺が農協あたりはきちっと長期営農継続農地は表示もして区分けをしようというようなことが起こった理由だと思います。そういったような例もございまして、必ずしもクリの木、桃の木一本あればということにはなっていないのじゃないかというふうに私どもは見ております。
  152. 片上公人

    ○片上公人君 農業委員会等に関する法律を見ますと、選挙権者及び被選挙権者とも農業従事者になっておりまして、悪い言葉で言いましたら、仲間うちで認定を行っているのではないかと心配されます。これでは幾ら自治省が通達を出されましても同じことになると思いますが、その点の心配はないかどうか、お伺いいたします。
  153. 渡辺功

    説明員(渡辺功君) ただいま御指摘のような点の心配というのを実は私どももしながら調査をしたことも事実でございますが、現行の固定資産税の農地のいわゆる宅地並み課税の制度の中では、農業委員会の占める役割というのが確かにその認定の申請の経由はいたしますけれども、その認定をするかどうかについては、先ほども申し上げましたように、農地課税審議会という制度をとっております。農業委員会を経由してその旨を申告されますと、そうすると市長はこの申告に基づいて認定を行うわけでございますが、これは農業委員会の持っている情報というものの活用を図ろうとする趣旨でございまして、認定は農地課税審議会の議を経て市長が行うということでございます。したがいまして、農業委員会が仲間うちであるからという心配はないのではないかというふうに考えております。  全体的な調査の結果でも何でもないのでございますが、先般も関西の方のある市で聞きましたら、農業会議の会長さんというような方々が、むしろ本当に都市農業というものを考えるならば、そういう本当に都市農業をしっかりやろうとする人たちの俗に言うなら足を引っ張ると申しましょうか、そういうようなことはやっぱり排除してもらわなきゃいかぬ、自分たちの中でもそこはきちっと区分けすべきだということを公の場で発言されたというようなことも仄聞しておりまして、そういったようなきちっとしたお考えの方もたくさんおられるわけでございまして、そういう心配はないのではないか。また、制度的にも農地課税審議会の方にかからしめておりますので、そういうふうな制度的な担保もあるわけでございます。  なお、そういう意味で運用がはっきりしないのではないかということにつきましては、私どももその実態をいろいろ見ておりますが、例えばこの徴収猶予制度というものは、営農の継続が認定されない、保全されていないということが明らかになりました場合には取り消されるわけでございますが、その取り消しの状況を見ますというと、六十年度では全体で二万四千六百八十三件の取り消しがあります。これのうち、やむを得ない事情ということで農業の継続が行われなくなったという場合は、徴収猶予にかかわる税額は追徴されません。例えば農業を継続したいと思ったけれども土地収用で収用されてしまった、こういうようなこともありますし、あるいは災害の場合とか、あるいは農業をやっておられた方が亡くなったとか、これは法律に書いてございます。そういったものを除きまして、通常の宅地にして売ってしまったとか、そういう典型的なものが普通でございますが、それは追徴になります。その追徴されたものは一万四千七十九件となっておりまして、かなりの部分を占めておりますので、運用がなおざりになっているということはないのではないか。しかし同時に、先ほど申し上げましたように、この運用についていろいろばらつきがあってはなお適切な運用とは言いがたいということで、通達を出しまして指導をきちっとしたい、こういう趣旨でございます。
  154. 片上公人

    ○片上公人君 農地課税審議会は、長期営農継続農地の徴収猶予を審議するものであると聞いていますが、通達は先ほどお話しありましたように、この審議会の調査審議についても充実強化をするよう求めております。農業委員会は他の委員会と同様、中立的な行政事務を行う機関でありますが、農地課税審議会はそもそもどのような構成になっておるのか、お伺いしたいと思います。
  155. 渡辺功

    説明員(渡辺功君) 農地課税審議会は、地方税法の方で定めておりまして、その附則二十九条の六というところで市町村に設置されることとなっております。その組織につきましては、農業に関し学識経験のある者、これが一つでございます。それから第二番目は、都市計画に関し学識経験のある者、それから第三には、その他の学識経験者のうち市町村長が任命する者、こういう構成になっております。このたびの通達におきましても、農地課税審議会の役割の重要性ということにかんがみまして、その委員選任に当たっては、調査審議の充実強化が図られるように特に留意するように求めたところでございます。
  156. 片上公人

    ○片上公人君 通達が出されまして以来二カ月近くを経過いたしましたけれども、通達の結果、長期営農継続農地の認定は厳格となったのかどうか。現在古い資料しかございませんが、全体の土地の八三%程度がこの認定を受けていることは変わっていないのかどうか。まとめていないとすれば、その報告はいつごろまでにまとまるかということをお伺いいたしたいと思います。
  157. 渡辺功

    説明員(渡辺功君) この農地の課税問題は、税金そのものは固定資産税でございますから、各年度ごとの税金でございます。したがいまして、この二カ月間で数字の上でどういう変化があったということは把握されていないところでございます。ただいま御指摘の八三%程度というのは確かにそうでございまして、ずっと大体そういう数字でございますが、ちょっと正確に申し上げますというと、最近の六十、六十一年の状態で申し上げますと、六十年が八四・八、それから六十一年が八四・五という数字になっております。  ただいま申し上げましたように、新規認定分については、今年度分についてはほぼ手続が終了しております。来年度から適用されるということなど、私どもとしましては今後もやはりこの制度の趣旨に沿った適正な運用がされるように指導を続けたい、こういうふうに考えているところでございます。
  158. 片上公人

    ○片上公人君 都市近郊農家がどうしても農業を継続したい、また都市環境の緑の保全の観点等からも農地が必要だとすれば、現在農業を行っている農地を市街化区域ではなく市街化調整区域に編入をするようなことは、これは考えられないかどうか、御見解をお伺いしたいと思います。
  159. 伴襄

    説明員(伴襄君) お答え申し上げます。  現在、いわゆる線引き、市街化区域と市街化調整区域の第二回目の見直しをやっておりまして、ほぼ九五%予定しておるところの線引きが終わったところでございますが、この見直しにおきましても、先生指摘の市街化の見通しの立たない市街化区域内の農地の扱いにつきまして非常に重要な課題として取り上げてきたところでございます。具体的には、我々逆線引きと言っておりますけれども、市街化区域に位置づけられている土地であっても、農家の営農意欲が非常に強いというようなことなどによりまして当分の間計画的な市街地の形成が図られる見込みがない、しかもある程度まとまった農地、そういったものにつきましては市街地整備上特に必要のある場合は除いておりますけれども、市街化調整区域に編入するいわゆる逆線引き、そういうものを積極的に行うように指導してきております。現在、その線引きの見直しの過程で全国で約五千六百ヘクタールほど、大体山手線の内側ぐらいの面積でございますけれども、この市街化区域内の農地を逆線引きによって市街化調整区域に編入し直したというのがございます。  この逆線引きにつきましては、臨時行政改革推進審議会の答申におきましても指摘が行われておりまして、建設省といたしましても、これを受けまして、先ほど十一月四日付で都市局長の通達を出したわけでございますが、その中でも、当分の間市街化が見込まれない土地について極力調整区域への編入に努めるよう通達をして指導しているところでございます。
  160. 片上公人

    ○片上公人君 大臣にお伺いいたします。  竹下新総理は、政権構想の一つとして、ふるさと創生というスローガンを掲げてまいりましたが、梶山自治大臣は竹下総理の側近中の側近と、こう聞いておりまして、でありますがゆえに、このふるさと論につきましても最も深く理解しておられる方ではないか。自治大臣のこのふるさと論について御見解をお願い申し上げます。
  161. 梶山静六

    国務大臣梶山静六君) ふるさと創生論は、申し上げるまでもなく竹下現総理が総裁選挙の候補者として打ち出した、いわば政治のロマン、構想でもあるわけでありますが、私もこの作成の一翼を担った一人として、現内閣においてこの考え方が実現されることが望ましいと考えております。  私のふるさと像としては、すべての人々がそれぞれの地域において安全で豊かで利便で、しかも誇りを持ってみずからの生活と活動を築くことができる幸せ多い個性豊かな活力ある地域社会を創造することを描いております。
  162. 片上公人

    ○片上公人君 ふるさと創生というキーワードの中には田中角榮元首相の唱えました日本列島改造論に共通するものを感じます。しかし、列島改造論がかつて全国的な地価の高騰とつながったことは記憶に新しいところでもあります。最近の地価の高騰には同じような背景を感ずるわけでございますが、そのことはどのように配慮していらっしゃるのか。また、構想実現に責任ある地位につかれました自治大臣として、具体的な施策をお示しいただきたいと思います。
  163. 梶山静六

    国務大臣梶山静六君) 確かに、ふるさと創生というその中には田中角榮元首相の唱えた日本列島改造論、この一面があることは間違いがございません。ただ、考えてみますと、当時の社会状況ともやや異なりますし、田中元総理の主唱した日本列島改造論というのはいわばハードの面を中心にしたものでございますし、今回の竹下総理の唱えているふるさと創生というのは、もちろんハードの面もございますけれども、むしろソフトの面に主軸を置いた考え方が多いというふうに私は理解をいたしております。  この考え方を具体化していくためには土地対策が必要であることは言うまでもありませんし、これについては、ふるさと創生論の中でも土地利用制限の緩和、供給の拡大など、幾つかの考え方が述べられておるところでありますが、土地対策については現内閣の最重要課題とされているところであり、地価問題も含めた土地対策のあり方について現在検討を進められているところでもあります。ふるさと創生のためには各地域が自主的、主体的に個性豊かな活力ある地域社会の実現を図る必要がございます。自治省としては、このような観点から、これまでまちづくり特別対策事業など、地域の創意工夫を尊重した地域づくりを進めているが、このふるさと創生にもつながるものであると考えて、これらの施策を一層推進することとし、地方の税財源の充実強化を図る必要があると考えております。  なお、ふる岩と創生のための具体的な施策については、今後とも関係省庁と十分に連携をとりながら、その実現に努めてまいりたいと考えております。
  164. 片上公人

    ○片上公人君 地方公共団体に大変な混乱と国に対する不信感を増幅させました国庫補助負担率の問題についてお伺いしたいと思います。  国庫補助負担率は六十一年度の引き下げの際に三年間の暫定措置として行われることとなりまして、その間は率を変更しないものとされながら、本年度も率の変更を見たところでございます。これから六十三年度予算編成期が近づいてくるわけでございますが、自治省としてはどのような対応をなされるのか、また率についての見通しはどうか、お伺いいたします。
  165. 津田正

    説明員(津田正君) 国庫補助負担率の引き下げ措置につきましては昭和六十三年度までの暫定措置であると、このように自治、大蔵大臣で覚書を取り交わしているところでございます。覚書による約束は当然守らなければならないと考えておるわけでございまして、来年度の予算編成において、私どもの見通しとしては大蔵省からさらに引き下げを行うような提案はあり得ないと、このように考えております。今後とも単に地方に負担を転嫁するような施策が行われることがないよう自治省としても必要な意見を述べ、適切な対応をしてまいりたい、かように考えております。
  166. 片上公人

    ○片上公人君 先般、六十二年度予算に関連しまして、緊急経済対策として公共事業の大幅な追加が行われたところでございます。公共事業の追加は今年度だけでなく、六十三年度予算におきましても大幅な計上は必要とされるのではないかと思います。その場合の財政措置でありますが、本年度の追加の場合には三千五百億円の地方交付税裏負担がなされたところでございます。これには六十一年度国税三税の自然増収という特殊な事情があったわけでございますが、既に地方公共団体の地方債残高が大変高まっているところでもあり、何らかの交付税の増額措置が必要とされますが、この点とうか、お伺いいたします。
  167. 津田正

    説明員(津田正君) 恐らく、国の予算編成でも同様でございますが、地方団体の財政運営におきましても、なるべくなら当初予算編成におきましてその年度間における対策というものを考えていくのが妥当かと思います。しかし、経済の動きというものは生き物でございますので、それに応じて適切、弾力的な補正措置ということも必要になる場合もあるわけでございます。  本年度におきましても緊急経済対策としまして大幅な公共事業の追加ということが行われたわけでございますが、先生指摘のように厳しい地方財政事情を踏まえまして、各地方団体が安定して追加の公共事業を消化できる、こういうような考え方のもとにおきまして、単に起債措置のみならず、六十二年度の場合には地方交付税も入れたわけでございます。したがいまして、来年度の予算編成におきましても、望むべくならば当初の予算におきまして年間の経済情勢等十分判断して必要な公共事業を組み込むべきものでございますが、経済の変動ということによりまして追加的に必要になる場合におきましては本年度と同様な考え方で対処してまいらなければならないのではないか、かように考える次第でございます。
  168. 片上公人

    ○片上公人君 今年度の税収につきましては国、地方とも好調であるということが伝えられておりますが、それぞれどのように見通していらっしゃるのか、また第二次補正についての考え方はあるのかどうか、その時期も含めましてお答え願いたいと思います。  先日の新聞報道によりますと、六十三年度予算では大蔵省が地方交付税を特例減額することを検討しているとされております。これは、本年度の地方財政についてもその心配があるわけでございますが、自治省はどのように考えていらっしゃるのかお伺いしたいと思います。
  169. 渡辺功

    説明員(渡辺功君) まず、地方税収につきましてお答えを申し上げますが、六十二年度の地方税収の見通しにつきましては、私どもの方は都道府県、市町村のうち、都道府県分の九月末現在の徴収実績というところまでを今把握しております。それによりますと、御指摘のように収入状況は好調でございますので、このまま推移いたしますと当初の見込みを上回る税収を確保することができるのではないかというふうに大いに期待しているわけでございますが、依然としてまだ年度半ばの現時点ということでございますので、こうしたものにつきましては、最終のところに至らないとなかなか的確な見通しというところまでまいりません。それを申し上げることは困難でございます。なお今後この動向をしっかり見きわめてまいりたいということが現在のところでございます。
  170. 片上公人

    ○片上公人君 大蔵省にお伺いいたしますが、地方財政は巨額の借入金残高を抱えて、個々の地方団体につきましても公債費負担比率が一五%を超える市町村が全体の三分の二を占めるなど、財政硬直化が著しいと思います。したがって、地方財政健全化のためには地方税、地方交付税等の充実が従来にも増して必要であると考えます。しかるに、新聞報道によりますれば、大蔵省は交付税の圧縮を検討していると聞いておりますが、事実であればその内容、理由を伺いたいと思います。
  171. 水谷英明

    説明員(水谷英明君) 六十三年度の予算編成については現在事務的な作業を進めているというところでございます。また、その予算編成の基本となります六十二年度税収につきましても、国税についても新たな、例えば土地でございますとか株の要素というのが大きく出てまいっておりまして、なかなか見きわめがたいという状況にあるわけでございますので、現在地方税については、自治省の方からお答えになりましたように、なかなか地方税収についてももちろん今の段階ではなおまだ非常に流動的な状況であろうと考えておるわけでございます。  こういう段階にありますので、六十三年度の地方財政についてもまだ具体的にどうこうと申し上げる段階ではないと考えておりまして、現段階では、五十九年度の地方財政対策の改革の趣旨に沿いまして、交付税総額の安定的な確保に資するため、適切に措置してまいるということをお答えさせていただきたいと思います。
  172. 片上公人

    ○片上公人君 国税の収入見通しや国の予算編成の基本フレームもまだ明らかでない段階で、大蔵省が地方団体の独立の共有財源である交付税の圧縮を云々するはずはないと思っておりますけれども、重ねて、そういうことはないのかどうかということをお伺い申し上げたいと思います。
  173. 水谷英明

    説明員(水谷英明君) 六十三年度の予算編成の状況については今申し上げたとおりの状況でございます。したがって今、重ねての答弁になりますけれども、六十三年度の地方財政について具体的なことを申し上げる段階にないということでございます。  今先生指摘になりましたように、地方財政も厳しい状況にあるということでございますが、ここで一言余計ではございますが、国の予算の場合にも多額の公債残高、特に特例公債の残高を抱えておるわけでございまして、引き続き六十五年度の特例公債依存体質脱却という努力目標に向けて最大限の努力をしてまいりたいということでございます。だからといって、地方財政の円滑な運営というのは、これは大事なこととして我々も慎重に考えてまいりたいと思います。
  174. 片上公人

    ○片上公人君 次に、国民健康保険についてお伺いいたします。  先般、厚生省が国保問題懇談会に同省の基本的な考え方を提示したということでございますが、その概要を説明していただきたいと思います。  なお、厚生省の示されましたこの案につきまして、自治大臣の御所見をお伺いしたいと思います。
  175. 加納正弘

    説明員(加納正弘君) 先般、国保問題懇談会に厚生省がお示しした国保制度の改革に関する基本的な考え方でございますが、国保と他の制度の間に高齢者が多いその他の幾つかの格差があるわけでございますが、私どもは年齢構成の格差ということに着目をいたしまして、老人保健制度の創設でありますとか退職者医療制度の創設、こういった改革を行うことによりまして年齢構成格差の大幅な是正に努めてきたところでございます。  そういった状況を前提にいたしまして、国保の今後の長期的な安定を図るという観点に立ちまして、国保で残された大きな不安定の要因であります低所得者の加入割合が高いという点、それから医療費に大きな地域差がある、こういったような問題点の改善を図りますために福祉医療制度の創設あるいは地域差調整システムの導入、こういつた改革を御提案をいたしたところでございまして、こうした改革を通じまして国保の体質の強化、運営基盤の強化を図ってまいりたい、そういうふうに考えているような次第でございます。
  176. 梶山静六

    国務大臣梶山静六君) 国民健康保険制度は、本来国民皆保険の一環として国の制度として設けられたものであり、国に基本的な責任があるものと考えております。  御指摘の厚生省の改革案については国保懇談会での今後の議論を注視してまいりたいと思いますが、自治省としては単に国庫負担の一部を地方へ転嫁するというようなことではなくて、国保経営の安定化に向けての制度の改革を目指すべきものと考えており、今後、知事会、市長会、町村会等と協議をして適切に対処をしてまいりたいと思います。
  177. 橋本敦

    ○橋本敦君 大臣は就任に当たって抱負をお述べになっておられますが、政治姿勢に関連をして、その点に関してまずお伺いをしたいと思います。  大臣がおっしゃっておられるのは、具体的には、一つは衆議院定数是正問題、二つ目には政治資金規正法問題、三つ目には治安維持と民主的な警察行政、これに全力を挙げる、こうおっしゃっているように報道されています。警察行政の問題は後で三億円強奪事件にも関連してお伺いしたいと思うのですが、まず最初の衆議院定数是正、この問題であります。  この問題については、言うまでもありませんが、前の総選挙はいわゆる暫定措置というもとで行われました。これは八増七減、これでいきますと一対二・九九、こういう関係での数字が出ておる状況のもとでの選挙であります。これについて、御存じのとおりことしの十月十二日でありますけれども大阪高裁判決は、一対二未満以内はこれは完全に合憲である、しかしそれを超すと違憲状況問題が出てくる、一対三以上になればこれはもう文句なしに違憲だと、こういう建前で判断をしておるわけであります。そういう基本的な立場に立ってこの八増七減における選挙について、これは選挙無効とはしなかったけれども、違憲状態であるとして速やかな抜本的改正を厳しく要請したわけであります。この判決を大臣としてはどう受けとめていらっしゃるか、まずこの点お伺いしたいと思います。
  178. 梶山静六

    国務大臣梶山静六君) 衆議院の議員定数是正の問題については前質問者にもお答えを申し上げたところでありますが、衆議院の院内に設けられた各党間の定数是正協議会において、八増七減案のもとに前回の選挙が行われましたことは皆さん方御案内のとおりであります。そして、六十一年五月二十一日の本会議での決議には、六十年度国調後速やかに抜本改正を検討する、それから二人区・六人区の解消をしたい、それから議員総定数の見直しをしたい、それと選挙区画の見直し、さらには過疎過密等の地域の実情の配慮、こういう内容の決議を行ったことは御案内のとおりであります。そして、今御指摘になりましたように、六十一年改正後の定数配分規定に対する各高裁の判断については、それぞれ多少ともニュアンスは違うものの、一つには合憲である、一つには違憲状態にある、あるいは違憲状態に近いが合憲である、それぞれ厳しい判断を下していることは私もよく承知をいたしております。ですから、自民党の伊東総務会長は、今竹下内閣の最大の課題はこの定数是正にもあるということを記者会見で答えております。  ただ、前回の定数是正の協議にも見られましたように、また選挙制度審議会の審議の状況を見ましても、なかなかこれは各党間のおおよその合意を見ない限り、一自治省が軽々にこれの判断を下して行うことはむしろ混乱を起こすだけだ。ですから、できるだけ早い機会に各党間でそれぞれの案を持ち寄って抜本的な改正ができるように精力的な努力を願うことを私たちは期待をいたしておりますし、またその助言やあるいは資料、判断基礎をいろいろな意味でひとつお示しを申し上げたい、かように考えております。
  179. 橋本敦

    ○橋本敦君 今お話がありました国勢調査の確定は十一月十日ということでできたわけでありますし、国会決議から見ても抜本的是正が早急に急がれる、これはまさに竹下内閣の最大課題一つであるということで、急いで憲法に適合するように主権者たる国民にこたえるという姿勢で臨みたいということは、これは間違いないわけですね。
  180. 梶山静六

    国務大臣梶山静六君) そのとおりでございます。  ただ、この問題は選挙制度の基本にかかわる問題でありまして、各党間で十分に議論をしていただきたい、まずこれをお願いを申し上げ、自治省としても議論等を踏まえて最大限の努力をしてまいる決意であります。
  181. 橋本敦

    ○橋本敦君 私も、各党協議が必要でないなどとは決して申すつもりはございません。その各党協議は、基本的には国調を踏まえて一対二未満以内、それから中選挙区制は守り抜く、小選挙区制はとらない、こういった原則で早く合意が整うということが一つは望ましいわけです。同時に、大臣は本気になって取り組むとみずからの抱負としておっしゃっています。各党協議が必要なのはそれとして、そしてまた同時に国会の公式の機関での議論もまた必要です。  それはそれとして、自治大臣として本気になって取り組む、こうおっしゃっていますので、その本気になって取り組むという意味は各党任せになっちゃいけないので、私は大臣の抱負として本気になって取り組む中身はどうなのかということについて重ねてお尋ねをしておきたい、こういうことです。
  182. 梶山静六

    国務大臣梶山静六君) 私も大臣である以前に衆議院議員でございます。そして自民党の所属議員でもございます。ですから、大臣という職責とオーバーラップいたしますけれども、議員個人としてあるいは政党人として、これから私はこの大臣という立場を十二分に意識をしながら各党、各人の合意を求めるべく努力をしてまいりたいと思います。
  183. 橋本敦

    ○橋本敦君 その点はその程度にしておきたいと思います。  ところで、政治家が選挙公報で国民にあるいは関係団体に意見表明や文書でいろいろ公約をいたしますが、もちろんこの公約というのは主権者たる国民に対する公的な約束でありますから、政治家にとっては極めて重いものである。このことは言うまでもないと思います。  昨日、竹下総理は政府税調に対して税の抜本的改革について諮問をされました。この問題は、そもそも中曽根内閣がし残した大きな課題として、廃案になった売上税にかわるものとして新たな税の抜本的改革、そういう方向をどう打ち出すか、竹下新総理の言葉をかりて言うならば、将来の財源確保に対応して、できるだけ国民に広く、また薄くという言葉もお使いになってますが、そういう税を創設をするということが望ましい、こうおっしゃっておるわけです。それはとりもなおさず、我々の言葉で言うならば、売上税と名前を変えた新しい大型間接税への道、こういうことになるわけであります。その大型間接税につきまして大型間接税反対運動推進行動委員会というたくさんの皆さんが集まってつくったところですが、昨年の同日選挙で、昭和六十一年の九月に「衆・参同日選挙における自民党議員の税制に関する選挙公約の内容」ということで刷り物にして出しているのがここにあるわけですが、これを見ますと、多くの自民党の皆さんの中で竹下総理は、顔写真入りでありますけれども、はっきりと「大型間接税の導入に反対します。」ということをきちっと載せていらっしゃるわけですね。だから、大型間接税導入反対は総理になられた政治家竹下登議員のこれは大事な公約である。こういう公約は、これは総理におなりになっても当然守るべきだということは、きょうは総理はいらっしゃいませんけれども、公約は重いという意味で、これはもう当然だと思うのでありますが、大臣どうですか。
  184. 梶山静六

    国務大臣梶山静六君) 総理に取ってかわってお話を申し上げるほどの資格はございませんけれども、公約の重いことは私も理解をいたしております。  それから、税体系全般については、確かに高齢化時代を迎えて安定的な財政基盤を確立をしなきゃならない、これはおおよそ国民の合意を得ている問題でありますと断定的に申せば御異議あるかもしれませんが、しかし私は、それは総論においては今の税制そのものでよろしいという判断をお持ちの方は少ないという気がいたします。  いずれにしても、直接税——住民税、所得税あるいは法人税等、外国と比べて過重な負担を強いられているという現実を考えますと、この点の国際的な競争意欲、こういうものも考えれば、直接税の減免はどうしても行っていかなければならない、それに見合う財源をどこに求めるかという問題が前回でも議論をされ、売上税という一つの結末を見て、国民の理解と協力を得ないでこれが廃案になったことは皆さん方御案内のとおりであります。  さりとて、これから直接税の減税をしなくていいということにはつながらないと思います。私どもは、この直接税の減税と引きかえに何を出して、行政サービスをどこまで限界として求めるのかどうか、こういう問題をお互いに真摯に検討し合わなければ社会の活力ないしは公平さというものを保つことができないという気がいたしますので、考え方はまだ星雲状態でございますが、いずれにしてもそういう方向を模索しながら努力をしていかなければならないという気持ちがいたしております。
  185. 橋本敦

    ○橋本敦君 そういう模索の中で公約を忘れてもらっては困るよというのが私は国民の声だと思いますよ。現在の税体系について議論があることは我々もあります。例えばキャピタルゲイン課税をきっちりやりなさい、あるいは大企業優遇税制の抜本的見直しをやりなさい、そして基本的には減税はもちろん大事ですが、増税なき減税をやりなさいというのが我々の立場、大いに議論していきたいと思います。  この大型間接税導入に反対ということを選挙公報やあるいは大型間接税反対中央連絡会議、こういうところに反対の意思を表明された閣僚が今度の竹下新内閣でどれだけいらっしゃるか、私どもが調べてみますと、これは林田法務大臣を初め、中島文部大臣、藤本厚生大臣佐藤農水相、石原運輸相、中山郵政相、越智建設相、小渕官房長官、高鳥総務庁長官、粕谷北海道・沖縄開発庁長官、瓦防衛庁長官、中尾経企庁長官、伊藤科技庁長官、奥野国土庁長官、ずらっとこうあるわけで、梶山自治大臣も大型間接税反対中央連絡会議に対して大型間接税反対であるという意思を表明されているように私どもは聞いておるんですが、事実はどうですか。
  186. 梶山静六

    国務大臣梶山静六君) その団体がどういう団体であったか、今残念ながら承知をいたしておりません。私は、税制に関してはおよそコメントらしいコメントをしていなかったというふうに理解をしておりますが、いずれ事実関係については調べて御報告をしたいと思います。
  187. 橋本敦

    ○橋本敦君 この団体は日本百貨店協会等十一団体が加盟しておりまして、大型間接税反対中央連絡会議でございます。一度お調べいただきたいと思う、お忘れになっているかもしれない。私どもの調査は間違いないと思っております。  そういうことで、大型間接税には反対だということは、これは重い国民への公約ですから、自治大臣も含めて竹下内閣はきちっとこれを守ってもらわなくちゃならないということで私は今質問をしているわけであります。もしも私が指摘したとおり大臣も大型間接税反対だという意思をこういう団体に表明されていたということがはっきりすれば、これは大臣にとっても重い公約でありますから、この公約は守るという立場を貫いてもらうのは当然だと思いますが、いかがですか。
  188. 梶山静六

    国務大臣梶山静六君) その公約の取材が私は、私の記憶によれば、私の前に来て討論を交わしながらやったという今記憶がございません。あるいは文書でなされたものか、あるいは通り一遍のイエス、ノーで出されたものなのか、その辺のところをひとつ調査をしてみたいと思いますので、この件に関する返答は保留をさしていただきます。
  189. 橋本敦

    ○橋本敦君 私どもは文書でお出しになったというように理解しておりますので、一度お調べいただきたいと思います。  いずれにしても、あの当時の騒然たる状況から見ますと、売上税問題を含んで大型間接税反対という国民の各界の意見というのは大変なものでありました。ですから、自民党の皆さんも含めて大型間接税反対だという意思を表示されたこと自体、私はこれは結構なことだと思っているんですよ。問題は、竹下内閣になって多数の閣僚がそういった公約をされている。これは竹下内閣として重視をして、国民に対する公約の重み、大臣もおっしゃったとおりですから、これはその立場を貫いてもらいたいということを要求して、次の質問に移ります。  三億円強奪事件について警察庁にお伺いしたいと思うのでありますが、この三億円強奪事件については具体的には三人の容疑者を割り出した。そのうち二人については逮捕状をとって国際手配も要請したということでありますが、新聞ではその二人はフィリップ・ジャマンとユセフ・キムーンというフランス人であるというように報道されておりますが、この事実は間違いございませんね。
  190. 仁平圀雄

    説明員仁平圀雄君) 間違いございません。
  191. 橋本敦

    ○橋本敦君 逮捕状をとられた罪名はどういう罪名でございますか。
  192. 仁平圀雄

    説明員仁平圀雄君) 強盗致傷容疑でございます。
  193. 橋本敦

    ○橋本敦君 この三億円強奪事件について今の国際手配というのは、ICPOを通じて、内容としてはどういうことの要請で具体的に出されていますか。
  194. 仁平圀雄

    説明員仁平圀雄君) 発見した場合の通報といいますかを依頼しておるわけでございます。ICPOで国際手配の種別が幾つかございますが、その中で奇手配というものでございます。
  195. 橋本敦

    ○橋本敦君 この犯人は犯行後直ちに日本を出国したという疑惑が濃厚ですが、そういう状況ですか。
  196. 仁平圀雄

    説明員仁平圀雄君) これまでの捜査で判明しておるところによりますと、犯行後、約四時間三十分の後に出国しているということでございます。
  197. 橋本敦

    ○橋本敦君 使った飛行機、出国先はわからないんですか。
  198. 仁平圀雄

    説明員仁平圀雄君) 日本航空でシンガポールに出国したということになっております。
  199. 橋本敦

    ○橋本敦君 そうすると、今の国際手配はシンガポールも含めて世界的に各国になされているわけですね。
  200. 仁平圀雄

    説明員仁平圀雄君) さようでございます。加盟各国に対してその所在の発見と通報を依頼する手配をしているわけでございます。
  201. 橋本敦

    ○橋本敦君 ところで、最近外国人の来日もいろいろなことでふえておりますから、そういう中で外国人の日本国内における犯罪もかなりふえているのではないかと、こういうように承知しておりますが、最近の検挙件数あるいはその増加ぶりはどうなっておりますでしょうか。
  202. 仁平圀雄

    説明員仁平圀雄君) 昭和六十一年中におきます来日外国人の刑法犯としての検挙件数は二千五百二十七件、検挙人員は千六百二十六人に上っておるところでございまして、ちょうどこの十年間で検挙件数におきましては約五・九倍、検挙人員におきましては約四・七倍になっておるところでございます。
  203. 橋本敦

    ○橋本敦君 そういった状況一つの重大犯罪の象徴的な事件として本件の三億円強奪事件があり、それからそれと結びついた名画の盗難犯罪があるというようになってきているように見受けられるんですね。この三億円強奪事件名画の盗難事件とはどこでどう具体的に結びつくということに今なっておるんですか。
  204. 仁平圀雄

    説明員仁平圀雄君) 三億円強奪事件につきましては、発生以来警視庁におきまして所要の捜査を進めてまいりましたが、その中で遺留品に基づく捜査におきまして、重要容疑者としましてフランス人四名が浮かんだというのが一つの経緯でございます。  もう一方、毛皮盗難事件被疑者として逮捕いたしました男を追及いたしましたところ、フランス名画コローの作品を日本国内で売りさばいておるということが明らかになりまして、この男を追及いたしましたところ、二人のフランス人からその売りさばきを依頼されたということが判明いたしたわけでございます。  一方、モネの絵画盗難事件というのがフランス発生いたしておりまして、この関係で日仏間におきましてこれまでの間所要の情報交換を行ってきておったわけでございます。そのモネの絵画関係の容疑者として、今回三億円強奪事件の犯人として判明いたしましたフランス人二名につきまして写真及び指紋が送られてきておったと、こういう状況でございます。  そういった中で、雑に申し上げますと、いずれもフランス人が関与した犯行であるということでございましたので、このモネの関係で送られてきましたフランス人の写真、指紋を三億円事件捜査で判明いたしておりました遺留指紋と照合いたしましたところ、これが一致を見た、こういう経緯でございます。
  205. 橋本敦

    ○橋本敦君 その一致を見たのは四人のうち二人ですか、名前を言えますか。
  206. 仁平圀雄

    説明員仁平圀雄君) さようでございます。二名でございます。
  207. 橋本敦

    ○橋本敦君 二人の名前は。
  208. 仁平圀雄

    説明員仁平圀雄君) フィリップ・エミール・ジャマンとユセフ・キムーンの二名でございます。
  209. 橋本敦

    ○橋本敦君 ですから、三億円強盗事件の容疑者はばっちりフランスの大規模な絵画窃盗を含む犯罪集団の一員であったということが明白にわかったということになったわけですね。  それで、このような大がかりな窃盗集団、これが日本に来て犯罪を犯す、そして直ちに出国をしていく。新聞の言葉によるとヒット・アンド・アウエー、つまり襲撃をし、よく準備して直ちに姿をくらますという国際犯罪集団だという、こういうことでございますが、先ほどお話しになった最近の犯罪の増加傾向の中でも、こういった大がかりな事件というのは今度が最初ではないかと思いますが、どうですか。
  210. 仁平圀雄

    説明員仁平圀雄君) 最近におきまして、私どもが記憶している限りにおいては、この事件ほど大がかりな国際犯罪というのはないように思います。しかし、ちょっと種類が違うかもしれませんが、いわゆるロス疑惑なんかも、やはりかなり大がかりな国際犯罪といえば言えるのではないかと思います。
  211. 橋本敦

    ○橋本敦君 そこで、こういったことに対応してこうした悪質な国際犯罪にどう我が国の警察あるいは捜査体制が対応していくかということが新たな課題になってきているわけですが、今フランスから来られたバレストラジ警視正を含めて、日仏の捜査協力体制会議等を通じて非常に強まっているというように報道されております。  この双方の協力というのは、具体的に日本からいえば三億円強奪犯人の情報、これを手に入れなくてはならぬ。フランスから見れば絵画、この問題について経路と証拠を収集するということになる。こういうことでの今の協議が進められているというように新聞で見れるのですが、そうですか。
  212. 仁平圀雄

    説明員仁平圀雄君) それぞれ国の立場がございますので、そういうことになろうかと思いますが、いずれにいたしましても絵画盗難事件と三億円強奪事件被疑者がクロスしたわけでございますので、両事件解決のために日仏両国が相互に捜査協力を十分行っていかなければいけないものと考えておるわけでございます。現在フランスから捜査官が参っておりまして、情報交換を行うなど相互協力を行っておるわけでございます。今後とも、国際捜査共助法という法律が、ございますので、これに準拠してやらなければなりませんけれども、可能な限り相互協力を行ってまいりたいと考えております。
  213. 橋本敦

    ○橋本敦君 現在フランスから来ている捜査に対する日本側の協力は、今あなたがおっしゃったように、日本の法律、つまり国際捜査共助法、これに基づいて行われているわけですね。これによりますと、第一条でその共助というのは「外国の要請により、当該外国刑事事件捜査に必要な証拠を提供する」、これが基本になっておりますね。したがって、フランスに対しては証拠の提供、こういう意味で問題の絵画は、これは一番大事な証拠ですから、これの押収ということが一つ協力の中で問題になる、こういうことで今絵画四点押収されている、こういうことですね。その押取手続は、これは任意の提出なのかそれとも令状による押収なのか、その点はどうなんですか。
  214. 仁平圀雄

    説明員仁平圀雄君) 押収いたしております絵画四点のうち三点につきましては任意提出を受けたものでございまして、差し押さえをいたしたのは一点でございます。
  215. 橋本敦

    ○橋本敦君 その一点の差し押さえというのが大阪の江戸堀画廊、社長は武市さんという方のようですが、ここで押収された「帽子をかぶった少年」という絵だと思いますが、間違いありませんね。
  216. 仁平圀雄

    説明員仁平圀雄君) そのとおりでございます。
  217. 橋本敦

    ○橋本敦君 任意提出と令状による押収と、なぜこういうばらつきが出たのですか。
  218. 仁平圀雄

    説明員仁平圀雄君) 普通はその絵画を所有しておる人の立場によるのではないかと思います。
  219. 橋本敦

    ○橋本敦君 具体的によくわかりませんが、任意提出に応じた人と任意提出に応じたくないという態度をとった人との違い、こういう意味ですか。
  220. 仁平圀雄

    説明員仁平圀雄君) さようでございます。
  221. 橋本敦

    ○橋本敦君 その点は、大阪の武市さんの場合はいきなり令状を示されて唖然としたという話も載っておりますから、事実はどうか、もう一遍正確に調べなくちゃならぬと思っておりますが、ここで問題にするのはその問題にとどまりませんで、この絵画を盗品、つまり犯罪によって取得されたものだということを知らずに、順次人の手を経て最終的に画廊の人たちが買っておる。つまり善意取得という可能性がある。これは局長もお認めになると思うんですね。そういたしますと、そこから任意提出を受けるおるいは令状で押収してもよろしいですが、所有権は依然として絵画を取得した人にあるわけですね。
  222. 仁平圀雄

    説明員仁平圀雄君) おっしゃるとおりだと思います。
  223. 橋本敦

    ○橋本敦君 それで、フランスの法律と我が国の法律、どちらによっても、三年を経過すれば、善意取得の場合は当然所有権が確定する、こうなっていますから、この事件は五十九年以来ですから、そういう意味でも確定をしている。そうなりますと、これから捜査協力として押収した絵画フランスの方の警察がこれからの調べ及びフランス国内での裁判の証拠としてこれは必要だということになりますと、フランスへ持っていきたいという、こういう要請になると思いますが、先ほどもそういう点では協力の中身として絵画フランスに送るということも含めて検討しているというお話でしたが、そのとおりですか。
  224. 仁平圀雄

    説明員仁平圀雄君) そのとおりでございますが、押収いたしました絵画につきましては国際捜査共助法に基づきましてフランス側に証拠として送付する方向で目下関係省庁と協議中でございますが、それは捜査手続上は一応そういう措置を講ずるということでございまして、事後その絵画所有権をめぐる問題は残るわけでございます。
  225. 橋本敦

    ○橋本敦君 おっしゃるとおりですね。  したがって、今あなたがおっしゃった国際捜査共助法でも第十三条では、これは法務大臣が最終的に措置をするんですが、「法務大臣は、」「必要があると認めるときは、証拠の使用又は返還に関し要請国が遵守しなければならない条件を定めるものとする。」と、こうなっておりますね。これはやっぱり善意の所有者保護という観点ですね。そして、この問題についてさらに相手国はこの「条件を遵守する旨の要請国の保証がないときは、共助をしないものとする。」と、しないことができるじゃなくて、しないものとすると、こうはっきり書いていますから、そういう意味でこの絵画所有権ということについては国際共助法のもとでも保障されていると、こう見られますね。したがって、協力はするけれども、必ず将来返還されるかあるいはフランスが、大事なものですから、改めて現所有者から補償金を出して買い取るというようなことを通じて話をつけて最終的に所有権を取得するか、いずれにしてもその問題との見きわめ、かかわり全然なしに法務大臣はそのまま出すというわけにいかないように私は思うんです。そういう点で警察庁の方としても、この所有権をめぐっては、善意で取得した人の権利を不当に侵害しない立場で、しかも国際共助が正しくできるようにやるべきだと、こう思いますが、いかがですか。
  226. 仁平圀雄

    説明員仁平圀雄君) 御指摘のとおりだと思います。
  227. 橋本敦

    ○橋本敦君 その点の話し合いはまだこれからという段階で、今具体的なめどはついておりませんか。
  228. 仁平圀雄

    説明員仁平圀雄君) 押収いたしました四点のうちの二点につきましては所有権放棄いたしておりますので、その問題はないわけでございますが、あと二点につきましてはそういう問題が残っておりますので、これから協議を尽くすということでございます。既に内々の話し合いはやっておるところでございます。
  229. 橋本敦

    ○橋本敦君 その内々の話し合いは、フランスが大事な国の財産とも言ってもいい名画だから、補償金を出しても所有権はもとへ戻したいという意向が強いんですか。
  230. 仁平圀雄

    説明員仁平圀雄君) まだ、その所有権をめぐる問題につきましてのフランス側の意向というものは聞いておりません。
  231. 橋本敦

    ○橋本敦君 基本的な立場はわかりました。  今度は三億円強奪事件の犯人の問題なんですが、我が国の刑法によりますと、もう強盗などというのは、これは文句なしに国外犯として処罰されることになるわけで、刑法の関係では、これはもう問題ないわけでありますが、フランス人が日本に来てああいう強盗事件をやった、そして日本ではもちろん日本での犯罪ですから刑罰権があるんですが、フランスにこの犯人が帰った、今どこにいるかわかりませんと、こうなった場合に、フランス刑法でこの三億円強奪事件の犯人を処罰するということが法制的に可能なのかどうかということが一つは問題があるんですね。  フランス法制を調べてみますと、フランスの刑法では第一条で、重罪ということで死刑、懲役、禁錮の自由剥奪、こういう刑に当たるのは重罪としているようですが、この強盗という定め方が日本と非常に違っておるようでございまして、第二章の財産に対する重罪及び軽罪というところを見ますと、三百八十二条で、暴力行為をして盗みの罪を犯した者は、十年以上二十年以下の懲役と、こうなっておりますから、これは重罪ですね。そのときに暴力行為を使って傷害を発生せしめる、こうなりますと無期懲役も含むと、こういうことですから、三百八十二条が日本の強盗罪に適合する条文がなというふうに見受けられる。それから、三百八十一条は、二人以上共同して凶器を用いあるいは逃走用の車を準備するなどすれば、そこで発生した事件についてこれを重罪として処罰すると、こうありますから、三百八十一条も日本の強盗罪に匹敵する罪かなと、こう思うんです。だから、いずれにしても三億円強奪事件は、フランスの法律で処罰の対象にされる、重罪に該当する罪だと私は思っておりますが、どうですか。
  232. 仁平圀雄

    説明員仁平圀雄君) 現在フランスの刑法につきまして検討しているところでございまして、フランス国民の国外犯の規定がどうなっているのか、まだ私自身は承知しておらないところでありますが、事務的には検討をいたしておるところでございます。
  233. 橋本敦

    ○橋本敦君 今国外犯の処罰というお話でございましたが、私もフランス刑法を調べてみますと、日本刑法では日本国民の国外犯で強盗などはもちろん処罰しますが、フランス刑法には、おっしゃるようになかなか難しくて、刑法そのものでは国外犯処罰というのはないんですね。それで私は、元岡山大学の教授で国際刑法学の権威であられる森下忠先生という方がいらっしゃいまして、ちょっと伺ってみますと、フランスの刑法では国外犯処罰は決めていないが、フランスの刑訴法に定めがあると、こういうふうにおっしゃっているんです。ですから、そういう意味では、これはフランスの刑訴法で三億円事件の犯人はフランスが処罰することも可能だという見解を述べておられるんです。これは今警察庁でもこういう問題を含めて研究中ですか。
  234. 仁平圀雄

    説明員仁平圀雄君) 今大変貴重な御意見といいますか、御教示をいただきました。引き続き、よく検討いたしたいと思います。
  235. 橋本敦

    ○橋本敦君 そこで、それはフランスの問題です  が、我が国としてはこの指名手配をした犯人の所在がわかれば、これはやはり引き渡しを受けて厳重に捜査をするというのが主権の行使であり、捜査権の行使として大事だと思うんですが、このフランス人がフランス本国に帰ってしまいますと、さて引き渡しがどうなるかという問題が出てくるわけですね。我が国の場合でも犯罪人引渡法がありまして、第二条で、政治犯及び逃亡犯罪人が日本国民であるときは、国民保護という立場で我が国でも引き渡しはしないと、こうなっております。フランス犯罪人引渡法を調べてみますと、同じように第五条で拒絶事由として、政治犯のほかに引き渡しの対象とされている者がフランス国民またはフランスの被保護民であるときと、こうありますから、直接的には双方とも、我が国もフランス犯罪人引き渡しは自国民についてはやらないという法制度をとっておりますから、要求してももらえないと、こうなるんです。一体こういう場合どうなるだろうかということで森下先生に意見を伺いますと、森下先生の意見は、法制的にはそうなっているけれども、国際的には相互主義という建前で、犯罪人引き渡しの条約がなくても犯人を要請国に引き渡すという事例がないわけではないと、そういうことで、引き渡しを受けることが理論的に不可能ではないという御意見をおっしゃっているんですが、警察庁の見解はどうでしょうか。
  236. 仁平圀雄

    説明員仁平圀雄君) この問題は大変難しい問題でございまして、目下検討しているわけでございますが、御指摘のようにフランスにおきましては法制上自国民につきましては逃亡犯罪人の引き渡しは行わないということになっておりますので、現行法制上は難しい、もっと言えば不可能であると思います。また、我が国の法制上も、我が国は逃亡犯罪人引渡法というのがございますが、条約上特別の定めがない限り自国民は引き渡さないということになっているわけでございます。そういうことでございますとここで相互主義が働くわけでございまして、相互主義の立場から、今回のような事件につきまして我が国はフランスに対して引き渡しの請求は差し控えなきゃならぬ、こういうことになろうかと思います。  それでは、一般的にどうかということになろうかと思いますが、これは厳密に言うといろいろ問題があろうかと思いますが、ごく概括的に申し上げますと、コモンローの国におきましては条約を締結した国との間においてのみ逃亡犯罪人の引き渡しが可能であるということになっておりまして、また大陸法系の国におきましては条約の締結がなくても相互主義の保証があれば身柄の引き渡しをするということになっております。しかし、この場合におきましても自国民は引き渡さないということになっているようでございます。  ですから、日本とフランスと法体系が異なりますので、なかなかこの辺は相互主義の保証があればいいというふうにはいかないのではないかというふうに現段階では考えておるところでございます。
  237. 橋本敦

    ○橋本敦君 大臣国家公安委員長という立場でお聞きいただきたいんです。私が法律家である関係もあって細かい議論をして申しわけないんですが、非常に国際捜査協力ということが近代的要求でありながらなかなか法制的には難しいということを、今議論を進めているわけです。  それで、日本とアメリカとの間には、御存じのように日米犯罪人引き渡し条約がうまく締結をされております。この第五条によりますと、「被請求国は、自国民を引き渡す義務を負わない。」、これを原則にしています。原則にしていますが、「ただし、被請求国は、その裁量により自国民を引き渡すことができる。」ということを日米双方が決めているんです。だから、そういう意味で日本とアメリカとの間では、それぞれの国の裁量によって、請求国に自国民であっても引き渡すということがあり得るということでこの条約ができている。こういう条約がある場合は、今局長がおっしゃったように、それに基づいて引き渡しを受けられる、こうなるんですね。  そこで、三億円事件を働いたフランスの犯人が今どこにいるかわかりませんが、フランス本国に帰ったとしましょう。それで、フランス本国に帰って、フランス本国のフランス法で重罪で処罰されれば、それはフランスの処罰権の行使ですが、そうされるかどうか、森下教授も、なかなか難しいだろうと、こうおっしゃっているんです。フランスでは重罪裁判所は賠審なので、賠審というのは大変費用その他もかかるし、なかなかやらぬという話もあるそうですから、やらないということがあり得るということです。処罰しないことがあり得る。  それでは、日本に引き渡しを求められるかというと、今言ったフランスの国内の引渡法、日本の引渡法でそれぞれ相互に自国民は渡さないと決めていますから、引き渡しを受けられない。こうなりますと、三億円を国際的ギャングとして取って、そしてしばらくした後にフランスへ帰っちゃったら、これはもう全然処罰もされない、こういうことになる。こういうことを計算した上で国際ギャング団が横行するとしますと、これは国際社会と国際秩序から見て、こういう巧妙な策動というのは、そこまで計算しているかどうかわかりませんが、やっているとすれば、これは許せないことになるわけですね。  したがって今後、こういった国際社会に踏み込んでいる今の日本がますますそうなるでしょうし、また経済大国日本を目がけてこういった犯罪もふえる可能性がありますので、将来はこういった犯罪人引き渡し条約についても、日本はアメリカだけではなくて、各国犯罪人引き渡し条約を締結するということの研究を、外務省や法務省とも一緒に国家公安委員長としてはひとつ開始してもらう必要があるのではないかというように感ぜざるを得ないんです。そうしませんと、今私が言ったように非常に不正義を残すことになる。せっかくの捜査努力で犯人を割り出して情報を得て、しかし一番肝心かなめのその引き渡しを受けられなかったら刑罰権の行使も日本はできない、こうなりますし、こういった国際社会に対応する新たな刑事政策の対応について、犯罪人引き渡し条約をどうするかということをぜひ検討してもらいたいと思うんです。  私が聞いたところでは、EC諸国は狭い大陸ですからもう隣の国へすぐ行けますから、EC諸国間ではこれはお互いの引き渡しができるような状況になっているというように私も聞いておるんですが、国家公安委員長としてこういった国際犯罪に対応する今後の一つ課題として、私が指摘した問題の研究を閣内で進めてほしいと思いますが、いかがですか。
  238. 梶山静六

    国務大臣梶山静六君) ただいま橋本委員刑事同長の専門的なやりとりを聞いておりまして、先日来ヒアリングをいたしておりますが、さらに大変問題の難しさと複雑さを感じた次第であります。やはり社会正義は追求されなければならないわけでございますから、この逃亡した外国被疑者身柄の引き渡しが迅速かつ円滑に行われるような方向で、法制度の問題を含め、関係省庁、特に外務省、法務省とこの問題の検討を深めて、でき得るならばこの問題についても可及的速やかに対応ができるような措置を検討してまいりたいと思います。
  239. 橋本敦

    ○橋本敦君 ぜひお願いします。  もう時間がなくなりまして、地上げ問題を御準備いただいたんですが、申しわけありませんが、警察庁にお伺いする時間がなくなりましたので、お許しいただきたいと思います。  最後に一点だけ、運転免許の更新について簡易迅速に、しかも郵送も含めて便宜な措置を前進させてほしいという国民の要望が大変強いように私聞いておりますので、この点についての対応と今後の国民サービスをどうやっていただけるか、この点一つお聞きして質問を終わります。
  240. 内田文夫

    説明員(内田文夫君) 現在の免許証の更新は各都道府県警察の運転免許試験場だとか警察署等で行っているわけでありますが、年々免許人口がふえまして、昨年あたり約千六百万人ぐらいの更新が参っているわけでございまして、そういった方々の負担をなるたけ軽減しなきゃいかぬということで、現在、例えば日曜日にも更新手続をやるとか、あるいはなるたけ試験場だとか警察署へ来たのが一回で済むように即日交付の問題だとか、あるいは郵送サービスをするというようなことで全国的に進めてきているところでございまして、ちなみに六十一年中に更新者の約三六%ぐらいですか、その方々が即日交付を受けて、約一四%の方が郵送サービスを受けているということになっておりますが、さらにそれを進めるように努力をしてまいりたいと、こう思っております。
  241. 抜山映子

    ○抜山映子君 本日は定数是正の問題に絞って質問したいと存じます。  御存じのように憲法の前文は、日本国民は正当に選挙された国会における代表者を通じて行動することをうたっております。すなわち、憲法下の国民が主権を行使する直接かつ具体的な機会のうち最も有用なものがこの一票を行使することであろうと思うわけでございます。  先ほど来大臣認識しておられますように、昭和六十一年五月の十六日には公職選挙法改正調査特別委員会の委員長が、昭和六十年国勢調査の確定人口の公表をまって、例外二人区、六人区の解消を図る、議員定数の見直し及び選挙区画の見直しも行うと、こういうように言っており、さらに衆議院議員の定数是正に関する決議案についても全く同じことを決議しておるわけです。昭和六十年国勢調査の確定人口の公表は六十一年十一月十日に行われました。もう既に一年経過しておるわけでございます。しかし、国会としては何の動きもございません。これは中曽根内閣の怠慢であったということが言えると思うんですが、大臣いかがでしょう。
  242. 梶山静六

    国務大臣梶山静六君) 再三御指摘をちょうだいいたしておりますが、議員定数の抜本的改正については、もう今さら私が議論をする必要もなく、最重要課題というふうに考えております。いずれにしても、三高裁の判決もあることでございますし、また我々には衆議院の本会議における決議、最高の決議があるわけでございますから、これの実現に向けて各党とも力を合わせ、それぞれの議院の良識において国民の信をつなぎ得るような早急な抜本的な改正がなされるように懸命な努力をしてまいりたいと思います。
  243. 抜山映子

    ○抜山映子君 では、中曽根内閣の怠慢であったことはお認めになるわけですね。
  244. 梶山静六

    国務大臣梶山静六君) 私が怠慢ということを認めるという発言はいたしておりませんけれども、なかなか中曽根内閣総理大臣個人ができる問題でもございませんし、各党お互いに議院の良識と責任において、各国会議員の共同責任においてこの問題は解決をされなければならないというふうに感じております。
  245. 抜山映子

    ○抜山映子君 前大臣の葉梨自治大臣、この方も、各与野党間の協議が先決である、これのみに終始されておるわけです。  ところで、先ほど大臣は同僚委員の質問に対しまして、前回、昭和六十一年の定数是正は緊急避難である、このように言われました。緊急避難ということについて大臣はどのように御理解していらっしゃいますか。
  246. 梶山静六

    国務大臣梶山静六君) 言葉の選択を誤ったかもしれませんが、いずれにしても抜本改正でおいという意味での緊急避難ということに御認識をいただければ幸いであります。
  247. 抜山映子

    ○抜山映子君 抜本改正でない。抜本改正でないから暫定的であるということですね。これに基づいてもう一回選挙を行うということは、これは暫定的でないということになりますが、この点いかがですか。
  248. 梶山静六

    国務大臣梶山静六君) 選挙を行うことが有効であるか無効であるかの判断は、それぞれ意見の分かれるところかもしれませんけれども、私どもはあとう限り選挙前にこの抜本改正を行うべきだという意思を結集して、そういうそしりを受けないような努力をしなければなりませんし、その結論が出ることを期待いたしておりますの
  249. 抜山映子

    ○抜山映子君 大臣である以上、期待だけに終わったのでは困ると思うんです。やはり自治大臣でいらっしゃる以上、ある程度イニシアチブをとっていただくこと、これが必要だと思います。  先ほど緊急避難、言葉の使い方を誤ったかもしれないというような言葉をおっしゃいました。しかし、緊急避難的に行ったものであるということは、新聞紙上の文字としても何度も出てきておるところでございます。緊急避難であるためには普通二つの要件がある。すなわち、現在一つの危難がある、すなわち憲法の十四条の法のもとの平等に反するという危難がある、そのためにもう一つの要件、やむを得ざることとしてやった、こういう二つの要件が緊急避難の要件として普通言われておるわけですね。ですから、このように一つの法益を守るためにもう一つの法益が害されておる、すなわち中選挙区制という我が国の公職選挙法の基本としている一つの法益がこの緊急避難によって害されておる。だから、一刻も早く抜本改正をしてもらわなくちゃいけないのだ、こういうことになると思うんですが、この点大臣、同意していただけますでしょうね。
  250. 梶山静六

    国務大臣梶山静六君) それは、六十一年五月二十一日の衆議院の本会議での決議でも二人区・六人区の解消、議員総定数の見直し、こういうものをうたっているわけでありますから、その意味においては委員指摘のとおりだと思います。
  251. 抜山映子

    ○抜山映子君 この数カ月、定数是正問題について高裁の判決が幾つか出ました。六十二年九月八日が仙台高裁の判決、これが一応今の定数が合憲ということ。六十二年十月十二日、大阪高裁が違憲状態である。六十二年十月二十二日の東京高裁が合憲ではあるけれども格差は違憲状態に極めて近い。こういうように判決が出ておるわけです。新聞の解説によりますと、大阪高裁と、仙台高裁と東京高裁の二つとは相矛盾するように解説している新聞もございますけれども、よく読むとそうではなくて、どの裁判も定数是正の抜本改正に免罪符を与えたものではない、抜本改正はしなくちゃいかぬのだという趣旨のものなんです。特に東京高裁の方は合憲だということの前提に当たって二つのことを言っている。一つは、昭和六十年国勢調査の速報値に基づいて一応定数是正の措置を講じている。もう一つが、衆議院の本会議において、その確定値の公表をまって議員総定数の見直しをし速やかに抜本改正する、こういう決議をしているから合憲なんだ、こういうように言っているわけです。ですから、そういう意味におきましても抜本改正を早くやらなくてはいけない、このように思いますが、再度大臣の御意見をお伺いします。
  252. 梶山静六

    国務大臣梶山静六君) 再度申し上げますけれども、前回も定数是正問題協議会、各党協議の場において八増七減の改正が行われたわけであります。こういうものを踏まえますと選挙制度審議会というものの活用ということも考えられますけれども、いずれにしても各党間のおおむねの合意が得られる基準ができませんと自治省としての作業には入りづらい、そういうこともこれあり、前回の経緯を踏まえまして各党間が大筋の合意を得るべく、これから最大限の努力をしてもらわなければなりませんし、これは前回の本会議の決議の問題でもございますので、ぜひそうありたいと思っております。
  253. 抜山映子

    ○抜山映子君 私どもの永末選挙制度調査特別委員長は、六十二年十月十二日の大阪高裁の判決が出た直後に、談話としまして、昭和六十一年改正公選法はあくまでも暫定的なものであり、急選抜本的改正が行われるべきであるにかかわらず、今日まで定数是正をなおざりにしてきたのは中曽根内閣の公約違反であると。もう一つは、我が党は議員定数の抜本的是正を実現し、国民の参政権の平等を回復するため、各党間の協議を早急に開始すべきだと考える、このように我が党はちゃんと言っているわけです。ですから、恐らくほかの党についても、今まで同僚委員が何回も発言しておりますから、この定数是正について自治大臣がイニシアチブをとられたら即応ずる姿勢があると思うんですよ。  そこで伺いますが、選挙制度審議会設置法というのがございますね。この第二条に、「審議会は、次の各号に掲げる事項に関し、内閣総理大臣の諮問に応じて調査審議する。」、その第一項の二号には「国会議員の選挙区及び各選挙区において選挙すべき議員の数を定める基準及び具体案の作成に関する事項」とはっきりとうたっておるんですよ。  そこで、なぜこの選挙制度審議会の委員が任命されておらないのですか、自治大臣、お答えください。
  254. 浅野大三郎

    説明員(浅野大三郎君) 選挙制度審議会は、ただいま先生がお示しの選挙制度審議会設置法によって設置されておるわけでございますが、実は、昭和三十六年以来七次にわたりまして選挙制度審議会は活動したわけでございますが、昭和四十七年、第七次の審議会の報告後は新たな委員の任命が行われず今日に至っているということでございます。  なぜそういう経過をたどったかということでございますが、一つには、この選挙制度審議会、七次にわたりましてやりまして、選挙制度その他検討すべきと考えられた事項についてはおおむね論議が尽くされたという判断があったようでございます。  それからもう一つは、特に選挙区制の問題等、基本的な問題になりますと、審議の過程において各委員の間において意見の対立等もあって審議の取りまとめがなかなか難しいということもあったわけでございます。現に、四十七年の第七次選挙制度審議会は答申に至らず報告という形で終わっておるわけでございます。そして選挙制度の基本にかかわる事項につきましては、事柄の性格上審議会の意見というものも最終的なものにはならないわけでございまして、結局、立法府における各党間の論議を尽くさなければその実現が困難だと、そういうようなことから今日まで委員の任命を行わないで来ておるわけでございます。
  255. 抜山映子

    ○抜山映子君 大臣、今と同じ御回答と理解してよろしいでしょうか。
  256. 梶山静六

    国務大臣梶山静六君) それに加えまするに、ただいま抜山委員から御指摘がありましたように、抜本改正をしなければいけない、公約違反である、よって民社党としては各党間の協議を早急に行うべきだという大変前進的な御意見を集約されておりますので、私も早速議運の場を通じてこの話し合いが行われますように申し入れを行いたいという気持ちがいたしております。
  257. 抜山映子

    ○抜山映子君 先ほど大臣の前に御回答いただいた分についてでございますが、一つの理由は、おおむね論議が尽くされたからだと。しかし、これはおかしいですね。今はもう最高裁の判決が出て、その後また高裁の判決が三つも出て、まだ係属中の事件もあって、そういう事態のときに、おおむね論議が尽くされたからもういいんだと。これは全く理屈に合わないんじゃありませんか。  それからもう一つ、各委員の対立があってなかなか結論が出ないから立法府に任すべきだとおっしゃるけれども、そもそも選挙制度審議会が設置されたその趣旨にかんがみれば、立法府では各議員の利害が錯綜してなかなかやりずらい。したがって、この選挙制度審議会を設置して、そしてこの委員は学識経験のある者の中から普通の委員を選び、特別委員の方は国会議員及び学識経験のある者の中から任命する、こうなっているわけでしょう。ですから、両方とも私は全く理屈が立たないと思うんですよ。この点いかがですか。
  258. 浅野大三郎

    説明員(浅野大三郎君) この点はよく御承知のとおりだと存じますが、選挙制度審議会は、先ほど御指摘いただきましたように定数問題も審議事項に入っておりますが、もっと広くいろいろな課題を審議してきたわけでございます。そういう選挙制度をめぐるいろいろな議論をし、大体それでもう一応尽くしたんじゃないかという意味で申し上げたわけでございます。  確かに、定数問題というのは、四十七年に選挙制度審議会の委員の任命が行われなくなってからも行われておるわけです。例えば昭和五十年にも定数是正が行われておるわけですが、このときも、選挙制度審議会に語るということではなく、国会の場で各党いろいろ御協議もありまして、そういうものを踏まえて定数是正を行ったというような経過があるわけでございます。
  259. 抜山映子

    ○抜山映子君 余り理由が立っておらないと思いますけれども、まあいいでしょう。  ところで大臣、この選挙制度審議会の委員の任命がされないでずっと来ている。これは内閣総理大臣が任命するわけですけれども、非常に側近でいらっしゃるらしいので、ひとつ内閣総理大臣委員を任命してはいかがかと進言なさるお気持ちはありませんか。
  260. 梶山静六

    国務大臣梶山静六君) 側近という言葉が適当であるか不適当であるかはわかりませんけれども、竹下総理大臣とは親密な間柄にあるということは私的には同意をいたします。ただ、国務大臣として内閣総理大臣を補佐しなければならないという職分においてこの問題の話し合いをしてみたいと思っております。
  261. 抜山映子

    ○抜山映子君 ぜひお願いしたいと思います。  それでは、多少技術的に細なくなってきますけれども、公職選挙法の前身である衆議院議員選挙法における昭和二十二年の議員定数の配分は、選挙区に直接配分しないで既存の行政区画である各都道府県に配分した後その都道府県内の各選挙区に配分する、こういうようになっておると存じますが、ちょっと御説明いただけますか。
  262. 浅野大三郎

    説明員(浅野大三郎君) 昭和二十二年の選挙法の改正のときにどういう方法で定数の配分をしたかということにつきましては、ただいま御指摘のように、まず人口によって各都道府県に議員の数を配分して、さらにそれを選挙区ごとに配分したというふうに承知いたしております。
  263. 抜山映子

    ○抜山映子君 この方式を最大剰余方式と呼んでおるそうですが、そのとおりですね。
  264. 浅野大三郎

    説明員(浅野大三郎君) 通常、私ども理解いたしておりますのは、最大剰余方式というのは、議員数等を比例配分します場合にどうしても端数が出ることになりますので、その端数の処理の一つの方式として最大剰余法というのがあるというふうに理解いたしております。
  265. 抜山映子

    ○抜山映子君 その最大剰余方式で議員の定数を決めた、こう理解してよろしいですね。
  266. 浅野大三郎

    説明員(浅野大三郎君) 私も、端数整理について具体的にこのときにどういう方法をとったかということはちょっと確認いたしておりませんが、要は、その最大剰余法かどうかということは、端数処理の問題でございますから、基本的に人口に比例して配分したということは間違いないだろうと思っております。
  267. 抜山映子

    ○抜山映子君 ところで、昭和六十一年の法改正前における都道府県の議員配分の状態で、いわゆる取り分制約を満たしていないものが四十七都道府県中にございますね。これは幾つの都道府県に上りますか。
  268. 浅野大三郎

    説明員(浅野大三郎君) 取り分制約ということにつきましては、私ちょっと不勉強で恐縮でございますが、もし、比例配分をしまして一応各県ごとに議員数というものが算定され、そういうもので算定された議員数と実際にその都道府県内の選挙区から選挙される議員さんの合計した数、それを比べて過不足があるかどうかというふうに理解してよろしければ、人口比例、その場合端数処理は最大剰余法という方法を使ってまず比例配分をしてみた一つの計算ができます。その計算と現実の各県に配分されておる議員数とを比べまして、実際に各県に配分されておる議員数の方が多いというものは三十、逆に、そういう比例配分で計算した数よりも現実に配分されている議員定数の方が少ないものは十一道府県だと、こういうことになろうかと思います。
  269. 抜山映子

    ○抜山映子君 配分不足の県が神奈川、大阪等にまじって兵庫も入っておりますね。
  270. 浅野大三郎

    説明員(浅野大三郎君) 兵庫県もその十一都道府県の中に入っております。
  271. 抜山映子

    ○抜山映子君 兵庫の配分不足は二不足になっておるわけですけれども、何とこの昭和六十一年の法改正にはかえって減員になっておりまして、本来増員されなければいけないのに減員されてしまっておるわけです。兵庫は本来二十二人県でなければいけないのに、二十人県が一議席減らされて十九人県になってしまっておる。このような大きな矛盾を冒しながら八増七減の暫定措置がとられた。だから、これはもうぜひ直していただかなければいけないと思うのですが、大臣いかがでしょう。
  272. 浅野大三郎

    説明員(浅野大三郎君) その前に、なぜ六十一年選挙法改正のときにそういう状態になったかということにつきまして事務的に申し上げますと、経緯を私ども受けとめておるところを申し上げますと、やはりあの際には、選挙区ごとにいわゆる格差、議員一人当たり人口の差というものを見まして、それで非常に格差の大きいものについてはそれを是正しようと、こういう考え方に立って定数是正をおやりになられたわけでございます。その結果として御指摘のような姿もそこで出たということではないかと受けとめております。
  273. 抜山映子

    ○抜山映子君 それはまさしくそのとおりだと思いますよ。だからこそ、本来抜本改正をして分区をして、フェアな選挙区を新たにつくっていかなくちゃいけないという、こういう課題が課せられておるわけだと思うんです。特に二人区になりますと、三人区制に比較しまして死に票というんですか、そういう増加を招く結果になるわけですから、何としてもこれは改正しなければならない。  ところで、五十年六月四日、衆議院の公職選挙法改正に関する調査特別委員会で、公職選挙法の一部を改正する法律修正案の趣旨説明に、小泉委員が選挙区の分割の原則を述べておりますが、どういう原則を述べておるか、ちょっとおっしゃってみていただけませんか。
  274. 浅野大三郎

    説明員(浅野大三郎君) 昭和五十年六月四日の衆議院公職選挙法改正に関する調査特別委員会において、公職選挙法の一部改正法案の修正案の提案者が、その趣旨の説明の中で、選挙区を分割するに当たりましては、一つには、「分割により設定される各選挙区の人口及び将来人口が配分定数との関係においてなるべく均衡のとれたものとなるようにすること、」。  二つ目には、「行政区域を尊重し、この区域を分割することとならないようにすること、」。  三つ目には、「分割後の選挙区の区域が、それぞれ地勢、交通、産業、行政的沿革等諸般の事情を考慮して合理的なものとなるよう定めること、」。  四つ目には、「分割後の選挙区の区域が、それぞれいわゆる拠点を中心として地域的なまとまりを示すこととなる等社会的、経済的観点からも地域的一体性を保持することとなるよう配慮すること、等の原則を基本とし、かつ、地域の特殊性を勘案して分割いたした」と述べられております。
  275. 抜山映子

    ○抜山映子君 この分割の基準は極めて穏当なもの、妥当なものであると私考えるんですが、自治省としてはいかがお考えですか。
  276. 浅野大三郎

    説明員(浅野大三郎君) やはり分区の基準をつくるという場合、それは技術的な側面ももちろんございますけれども、一方で、まさに選挙区をつくるということでありますから一つの基本にかかわる事項でもございます。そういう意味で、まさに私どもとしては、選挙制度の基本にかかわるようなことについては、まずどうあるべきかについてはよく各党で御論議いただきたいと申し上げておるわけでございまして、ただいまお示しの点も、これはまさに公職選挙法改正に関する調査特別委員会において、立法府における提案者がお述べになったものでございまして、なかなかこれについて私どもがいいとか悪いとか申し上げにくいわけでございますが、一つの重要な過去の事例であるのではないかというふうに思っております。
  277. 抜山映子

    ○抜山映子君 先般の昭和六十一年の改正、八増七減によって石川県が六人県から五人県になっている。その上方にある香川、和歌山、富山、この三県はその順に五人県にならなくちゃいけないのになっておらない。この結果逆転現象が増設された結果になっているわけですね。今逆転区は全選挙区のうち幾つありますか。
  278. 浅野大三郎

    説明員(浅野大三郎君) 逆転区というもののとらえ方でございますが、これは、人口は大きいんだけれどもそこに配分されておる議員定数は少ない、そういう関係にあるものを逆転と呼びますならば、そういうことで計算しましたいわゆる逆転選挙区は五十三でございます。
  279. 抜山映子

    ○抜山映子君 先ほど兵庫県の例を申し上げましたが、それだけにとどまらず逆転現象もふえるようなずさんな六十一年の改正であったわけです。そこで、どうしても抜本改正をやっていただかなくちゃいけないわけですけれども、先般の、十月何日でしたか、東京高裁の判決でございますが、定数是正を考えるに当たって、都道府県、市町村その他の行政区画、それから面積の大小、交通事情、それから人口の都市集中化、過疎化の現象等、今挙げたこれだけのそういうことを正当に考慮することのできる人口以外の政策的技術的考慮要因をもしんしゃくして選挙区画や議員定数の配分を考えるべきだ、このように東京高裁がいみじくも述べておるわけです。  そこで、私はたまたま参議院でございますから、兵庫に限って言いますと、一区から五区までの全兵庫県を選挙区としておるわけです。そこで私が非常に感じますことは、過疎ほど政治へのニーズが高いのではないか、こういう自分として印象を持ちました。  そこで、ちょっとお調べいただいたんですけれども昭和六十一年の衆議院総選挙におきまして、「有権者数、投票者数及び投票率等に関する調」、これをいただいたわけです。  兵庫県でいきますと、ぴったりに一区が投票率が六一・一一%、二区が、二区というのは阪神地域なんですけれども六五・六九%、三区、これは明石、加古川の方ですが七三・九九%、それから姫路の方が七七・五三%、いわゆる丹波、但馬の地域が八七・五九%と過疎にいくほど投票率が高いという事例になっておるわけです。また、これを全国的に見てみましても、投票率が非常に高いのは鳥取の八五・八八%、島根の八六・九三%、例は全部挙げませんけれども、秋田の八一・二五%、山形の八二・四九%と非常に投票率が高くなっておる。だから、そういうところでは政治のニーズが非常に強いということが言えると思うんです。この点はぜひ考慮をしなければいけない問題と思いますが、いかがでございましょうか。
  280. 浅野大三郎

    説明員(浅野大三郎君) 衆議院議員の選挙区別の定数配分の基礎をなすものは人口であると考えられますが、しかしそれは唯一、絶対の基準ではありませんで、例えば最高裁の判決におきましても、行政区画や地理的状況、人口の都市集中化の現象等社会情勢の変化など、さまざまな事情が考慮されてしかるべきであるというふうに言っておられます。これは最近のものでは、例えば昭和六十年七月十七日の判決でもそういうことを言っておられます。  そこで、実際に議員定数を配分するに当たりまして、お尋ねのような側面をどのように評価すべきなのかということはなかなか考え方の難しい問題ではありますが、ただ、定数の抜本改正の論議がこれから行われます際には、衆議院本会議の決議があるわけでございまして、そういうものを踏まえてやるということになりますと、その過程で過疎地域の実情に配慮をするというようなことも入っておるわけでございますから、そういうことが一つ考慮されるということは決議からも出てくるのじゃないかなというふうに見ております。
  281. 抜山映子

    ○抜山映子君 過疎に政治へのニーズがあるのみならず、いろいろ台風の被害とかそういうものなども過疎に一番集中しがちでございます。そういうときに交通事情が、兵庫の五区なんかの場合ですと、五軒の部落、川を渡って向こう方に十軒の部落ということで、それが直進的にいきませんで手袋のようになっておりまして、一つの部落から次の部落へ行くのに一たん下へおりてまた上へ上がっていくというような状況で、非常に選挙区としてはしんどい選挙区でございまして、地理的に広いこともあってとても二人では面倒を見切れない、見てもらえないということで、大変地元に不満が多うございます。  そこで私、一つお願いしたいんですけれども、私も法律家でございますが、実は選挙の体験をせずに、例えば最高裁の判事なり高裁の判事になった場合にはやはり机上の空論で、一票の重み、いや、これは三倍けしからぬとか、そういうふうに出てくるだろうと思うんですけれども、一たん選挙を体験しますと、確かに一票はできる限り公平、一票の重みは平等に近づけることがこれは憲法の要請ではあるけれども、そのほかにももろもろ考えなければいけない点が多々ある、一票の重みだけにとらわれて判決を出すのはいかがなものか、こういうような、全然考え方が選挙を体験したために違うわけですね。ですからひとつ、選挙制度審議会、いずれ委員も任命されることでしょうが、単なる統計で机上の空論を闘わすことなく、過疎なら過疎の選挙区を一遍回ってみていただく。それから都市部の選挙区も回っていただく。そして、身にしみていただいて、どういうようにするのが最も公平な国民の要求にこたえるものであるか、こういう検討をしていただきたい。これはもう切に切に要望したいと思うんですけれども、いかがでしょうか。
  282. 浅野大三郎

    説明員(浅野大三郎君) 御指摘の点に関連いたしまして、昨年の公職選挙法の改正に際しましては、これは衆議院の特別委員会の方でいろいろ御論議もされたわけですが、たしか特別委員会としても各地にお出向きになりましていろいろ実情をお聞きになったというようなこともおやりになったと承知しております。
  283. 抜山映子

    ○抜山映子君 ですから、審議会の委員の任命に当たって、統計だけを見て乱暴な議論をしていただかないように、やはり現地を見ていただく、典型的な過疎の地帯を見ていただくというような、現場検証と言っちゃオーバーですが、そういう視察の機会を与えていただくことが必要だと思いますが、それについてひとつ御意見を伺いたい、こういうように申し上げたんです。もう一度お願いいたします。
  284. 浅野大三郎

    説明員(浅野大三郎君) まさに御指摘のような点を含めまして、そもそも選挙区制あるいは選挙区画をどう考えるかという一つのやはり基本的な問題になるんではないかなという気がいたします。その辺はなかなかやはり、実際の体験をしない人が机の上で言うだけでいいかどうかという問題もあろうかと思います。その辺を、そうでありまするだけに、私どもとしては、まずやはり実際選挙をお戦いになっております各党の方々でそういう基本のところを十分御論議いただいて、こういう基本的な方向だというのをまずおつくりいただけると大変ありがたいんではないかなというふうに実は思っておるわけでございます。
  285. 抜山映子

    ○抜山映子君 ですから、各党で論議するのは、もちろん民社党としては喜んで受けて立ちたいということはもうとうに表明しておるわけでございまして、選挙制度審議会の方とそれから党の協議と両方並行して進んでも一向に差し支えないと思うんですよ。  そこで最後に、大臣、先ほどの選挙制度審議会の委員の方にはぜひ各選挙区の典型的なところを見ていただくというようにしたらいかがでしょうかと私申し上げておるんですが、ひとつ大臣としてどのように考えるか御所見を伺って、私の質問を終わります。
  286. 梶山静六

    国務大臣梶山静六君) 選挙制度審議会の委員の任命があるかないかは、私が任命権者ではございませんので申し上げることができませんが、今、抜山委員の血の通った御議論を拝聴いたしておりまして、大変感動をいたしております。と申しますのは、確かに選挙制度は人口を基準として考えるのは当然でありますけれども、現実に過疎地帯あるいは大変な災害常襲地帯、こういう方々の政治に対する依存度、これが極めて強いわけであります。しかも、議員というのはある意味で地域代表でもございますから、議員の数を減らされることに大変な抵抗をその選挙区の選挙民は感じていることは、選挙をやった者であれば皆身にしみて感じていることだと思います。  そう一つものと原則的なものをどうかみ合わせるかというのは、まさに私たち国権の最高機関にある議員が、みずから考え、みずから創造していかなければならない大切な問題であるというふうに考えておりますし、それが前回の衆議院の決議に見られたように、過密過疎の地域の実情に配慮する、こういう文言になったものだというふうに私は理解をいたしております。そういうものを胸に刻み込みながら、今後とも検討を続けて、早い機会にとにかく成案を得るように、各党間の努力をしてまいりたいと思います。
  287. 永野茂門

    ○永野茂門君 本日の最後を承りまして、テロ対策、それから薬物乱用防止対策、さらに大震災対策、この三つについて質問をいたしたいと思います。  最初に国際テロについてお伺いいたします。  日本の経済大国化とそれに伴う政治的な役割の増大というものは、国際テロのみずからの資金獲得のため、あるいは日本の国際政治行動の牽制でありますとか拘束でありますとかあるいは変更を強制するというような目的のために、あるいはさらに自由陣営のリーダーの一つの柱に対するアピールというような目的を持って、海外在住の日本人に対するテロ行為が行われ始めているように見受けられます。そしてまた、この傾向は、自由陣営内での日本の地位が高くなり日米の地位が近接してくるに従って、我が国に対するこの種攻撃が増加するものと見られます。そこで、我が国が国際テロの対象とされた具体的事例はどのようなものがあったか、あるいはあるかということについてまず承りたいと思います。
  288. 新田勇

    説明員(新田勇君) 最近五年間の国際テロの事件で日本の権益が標的にされたというものが十六件、それから日本人が巻き込まれたというものが九件というふうになっております。  昭和六十二年の事例で申しますと、三月二十三日、ペルーにあります東京銀行支店長が銃撃された、それから五月三十日、フィリピンにおきまして熊谷組の建設現場が襲われた、六月十日、イランにおける三井物産事務所攻撃されたというものでございまして、これが日本の権益が標的になったというものでございます。それから五月十九日、フィジーにおきましてニュージーランド航空機がハイジャックされましたが、この際、日本人四十七名が搭乗していたということで、これが日本人が巻き込まれたということになろうかと思います。  なお、大変レアなケースでございますが、しかも六十二年でございませんが、六十年の六月二十三日には、外国人テロリストによると思われるのでございますが、日本国内で事件発生したというのが一つございます。カナダ太平洋航空機に積載していた貨物が成田空港で爆発し、日本人二名が死亡し四名が負傷したという事件でございます。
  289. 永野茂門

    ○永野茂門君 我が国は社会的には極めて健全でありまして、犯罪発生率も非常に低いし、それからまたその検挙率も世界最高であると見られております。その限りにおいて、国内のテロの発生は低く抑えられるはずでありますし、また国際テログループが日本国内で行動するというようなこともかなり抑制されてくるはずであります。ところが、反面、日本の今の状態は、例えば超密集の状態であるし、あるいは超スピード化されておりますし、そしてまた超高度化、精密化されたというような社会のつくり方になっており、極めて脆弱性を持っております。その上に、在日外国人が増加してきておりますし、また高度のテロ用の資器材の製作技術が比較的普遍化されてきておる。こういうようなこと、あるいはまた世界的に国際テログループが連携を始めておる。これはいろいろな国の国家意思が作用しておるように見られるものもたくさんありますし、そうでないテログループ同士の単なる連携というものもありますけれども、いずれにしろこういうような国際テロが日本を目標とすることにおいて、それを容易ならしめるような要件も、日本の健全な社会と並立して考えなきゃいけない極めて重要な要件となってきておるわけでありますが、警察白書によりますと、「一部の国際テログループが我が国をテロの対象とするなどの動向がみられ」る、先ほど成田の爆破事件の話もありましたけれども、そういうことが述べられておりますけれども、さらに具体的にどのような動きが見られるのか、お聞かせをいただきたいと思います。
  290. 新田勇

    説明員(新田勇君) お答え申し上げます。  まず日本赤軍でございます。日本赤軍は、パレスチナゲリラなどと連携しながら、いわゆる反帝国主義闘争というのに取り組んでおるわけでございますが、ことしの五月三十日付の日本赤軍の編集したと言われている資料によりますと、「我々の主体的任務である日本革命も戦士的連帯を求め」ということで、日本の革命を日本赤軍は依然として目的としている。そして「「プロレタリア国際主義と組織された暴力」の旗を掲げ」るというようなことで、依然としてこの武装闘争路線を堅持しているということが言えようかと思うのでございます。  それから、昨年の五月に、インドネシアにございます日本大使館に対して砲撃事件というような事件発生いたしましたが、これに関連いたしまして反帝国主義国際旅団という名を名乗るグループから、これは東京サミットというものを非難する内容でございますので、こういうことの中に我が国も含まれておるかと思いますが、そういうことでの犯行声明が出されたということがございます。  それから、昭和六十年一月十五日、フランスのテログループでございます直接行動ADというのと西ドイツのテログループでございます西ドイツ赤軍RAFというものが、日本、アメリカ、西欧を打倒すべき帝国主義体制の経済的枢軸と位置づける共同声明を発表したことがございます。  こういったことが我が国をテロの対象としているということの例ではなかろうかと存じます。
  291. 永野茂門

    ○永野茂門君 我が国を対象とするテロの動きあるいは企図等に関する説明は大変に怖いものを感ずるわけでありますが、国際テロの封圧につきましては、御承知のようにさきに行われましたベネチア・サミットにおいても国際協力がうたわれ、そしてその前、またさらにその前と続いて数回にわたって国際テロを封圧するために諸国、特に先進諸国が協力しなければならないということの声明が出されております。  我が国に対する脅威を取り除くためにも、そしてまた国際的な協力を進めるためにも、我が国としては具体的に協力をしていかなければならないと考えられるわけでありますが、この国際テロ封圧のために警察としてはどのような国際協力を現在行っておりますか、あるいはさらにその活動を拡大しようと考えておりますか、伺います。
  292. 新田勇

    説明員(新田勇君) 国際テロの封圧は、何しろその規模が国際的でございますので、国際社会全体の問題であるということで取りかからねばならぬかと存じます。そういった観点から、我が国警祭といたしましても外交ルートあるいはインターポールのルートというものを積極的に活用いたしまして、情報交換やまた条件が整った場合には捜査協力ということを行うことといたしておるところでございます。  ことしの五月二十八日にパリにおきましてテロ対策担当閣僚会議というのが開かれたわけでございますが、我が国からも国家公安委員会委員長が参加いたしまして国際協力の重要性を確認してきたところでございます。  こういうことで、今後ともますます国際協力を軸にして国際テロの封圧に向かって活動を進めなければならない、かように考えておるところでございます。
  293. 永野茂門

    ○永野茂門君 着々と国際協力を進めておるようでありますが、さらにいろいろと積極的な具体策が必要なのかもしれないというふうに感ぜられます。  ところで、この現在行っておる国際協力は、我が国の脅威となるべきテロリスト等の水際での入国阻止、これが一番大事なことだと思いますけれども、テロの根源を覆滅するということはなかなか外国のことであって我々は手を出すことはできませんけれども、水際で入国を阻止するということが少なくとも我が国でできる防御手段として極めて大事なことであると思うわけでありますが、その水際での入国阻止に具体的にどのように役立っておるか、御説明を承りたいと思います。
  294. 新田勇

    説明員(新田勇君) 仰せのとおり、入国阻止というのがこの種事案の防止に極めて重要な役割を果たしていると私どもも考えているところでございます。そのために、ただいま申し上げましたように、外交ルートであるとかインターポールルートであるとかというものを活用いたしまして、情報交換なり捜査協力を行っているところでございますが、特にこの潜入防止のためには、こういった国際協力によって得られました情報を整理いたしまして、この入国の第一線に当たります入管当局に提供することといたしておりまして、事前の入国情報の把握及び入管におけるチェックに役立たせてもらっているところでございます。  具体的にそういう事案の適用があった例を申しますと、六十一年七月二日に、これはインターポールからの情報に基づくわけでございますが、ハイジャックの前歴のあるスウェーデン人の入国を事前に把握し、入管当局がその入国を拒否したという例がございます。
  295. 永野茂門

    ○永野茂門君 水際での阻止には今言いましたテロリストの入国阻止ということがありますが、テロリストとほとんど同等の任務あるいは同一の人間が別な任務で入ってくる、こういうようなことも考えられるわけでありまして、例えばスパイあるいはもっと積極的な工作員として入ってくる、こういうようなこともあるわけでありまして、特に北朝鮮のスパイ等の工作員はかつては何例も新聞に報道されておりましたように潜入をしてきたわけであります。  そこで、こういうようなものの入国を水際で防止するために、警察としてはどのような対策をとっておりますか、承りたい。
  296. 新田勇

    説明員(新田勇君) そのような不法入国者に対しましては、警察官自身によります情報収集及び警戒というのがあるわけでございますが、それに加えまして密航監視哨員あるいは地域の協力会の方々に警戒方をお願いしているというのもございます。また、海上保安庁あるいは入国管理局、税関といった関係機関とも情報交換を適宜行っておりまして、特に第一線のレベルでの協力関係維持に努めているところでございます。
  297. 永野茂門

    ○永野茂門君 スパイに触れたそのことに関連いたしまして、ここでテロの軍事的側面について防衛庁に伺いたいと思いますが、共産主義国の一部でありますとかあるいはイスラム教国の一部などでは、みずからの政治的あるいは外交的な優位を確立する目的あるいは都合の悪い相手政権を打倒しあるいは奪取するというようなためにみずからのテロを使用したり、あるいは国際テログループを支援しているということが言われております。そしてまたそれはさらに一歩進んで、戦争の重要な手段としてテロを使用し、あるいは利用するという傾向が進行してきておるように思われます。これは核抑止下で高いレベルの暴力は用いられない、あるいは兵器は用いられない、これは通常兵器についても同じでありまして、その惨禍の甚大さを考えますとどうしても低レベルの手段しか使えないというようなことからくるのではないかと思われるわけでありますけれども、この種の動きについては十分な注意と警戒が必要であると考えられます。防衛庁はこの種の動きについてどのように評価しておりますか。
  298. 伊藤康成

    説明員(伊藤康成君) 御説明申し上げます。  ただいま先生指摘のとおり、核時代におきまして核戦争あるいは通常戦争に至らない段階の手段といたしまして、低強度紛争と申しますか、そういうようなものがあるということは本年の八八年版の米国の国防報告等でも触れておるところでございます。特にアメリカは、八三年のレバノンでの海兵隊の襲撃事件とか、あるいは一九八六年の西ベルリンのディスコの爆弾事件とか、そういうものも踏まえまして、これらを低強度紛争というふうに呼びまして、いわば第三の戦争の手段というような認識で脅威が増大しているというふうな認識を持っておるというふうに承知しております。  なお、ヨーロッパ諸国におきましても、テロ対策ということは一種の軍の対応すべき任務の一部というような認識を持って対応している国もあるというふうに承知しておる次第でございます。
  299. 永野茂門

    ○永野茂門君 その具体的な例といたしまして、北朝鮮の特殊部隊でありますとか、あるいはソ連のスペツナズ、これも日本語に直せば特殊部隊ということになると思いますが、のようなものがあって、これらはそういう目的で訓練され、編成され、日常の活動を行っておる、こういうふうに言われておりますが、この点について極東にどういう兵力規模があり、そしてその訓練状況をどのように把握しておるか、極めて簡単で結構でございますから御説明をお願いします。
  300. 伊藤康成

    説明員(伊藤康成君) 北朝鮮につきましてもソ連につきましても特殊部隊ということでございまして、必ずしも詳細明らかでないわけでございますが、私ども承知しておる範囲で御説明申し上げたいと思います。  まず北朝鮮でございますが、特殊軍団というものがあると言われておりまして、かつての八三年のラングーン事件なんかもこの者たちが起こしたのではないかと言われておるわけでございますが、大体八万人ないし十万人程度の規模で持っているのではないかというふうに言われております。この人たちはどういう訓練を受けておりますかと申しますと、通常の軍事訓練はもちろんでございますが、非常に厳しい行軍、例えば一日数十キロというような厳しい行軍ですとか、偵察ですとか、あるいは襲撃訓練というようなこと、それから破壊というようなことで、特殊な訓練を受けているというふうに言われております。  次にソ連でございますが、スペツナズというふうに略称されておりますが、こちらの方はちょっと性格が違いまして、有事に敵地の後方深く入って、そこでいわば偵察任務と申しますか、重要な軍の施設がどこにあるというようなことを本来の部隊に知らせるというようなのが主任務というふうに言われておりますが、ソ連全体で二十個旅団プラス三個連隊というふうに言われております。ただ、これが極東地域にどの程度あるかということについては、ちょっと資料もなく明らかではないという実情でございます。このスペツナズの方の訓練状況でございますが、パラシュート降下などを中心とした侵入、それから爆発物等を使った各種破壊活動の訓練、そういったことをやっておるのではないかというふうに言われておる次第でございます。
  301. 永野茂門

    ○永野茂門君 ありがとうございました。  国際のテロ問題に関する会議等に出席いたしますと、これらの特殊部隊が現在においてもかなりの活動を行っておる、もちろんこれは確認情報はないわけでありますけれども、某国の転覆でありますとか、あるいは某国に対する兵器補給等をやっておるやに報告をされます。したがいまして、我が国に対してはそういうようおことは全く現在のところはないわけでありますけれども、そういうことについて十分な警戒を要しますし、そしてそういうようなことにつきましてはテロ対策の主管庁でありますところの警察庁との間に、十分な情報交換ないしはその活動の連携をやっていただきたいとお願いいたします。  次に、国内テロの問題に移りますが、国内テロは御承知のように、攻撃目標が多様化し、そして無差別化し、また社会的には極めて混乱を起こす影響の大きい通信の中枢でありますとか、信号ケーブル等の破壊等を行い、そしてまたその手段でありますとか凶器もますますエスカレートしてきております。  警察当局の不断の大変な努力によって全般的にはこれが抑止され、いわゆる平常時においては全く平静であるということについては、警察当局の御努力に敬意を表するところでありますけれども、しかしまだこれが根絶できてない。何かのイベントがありますと、これが出現してくるということでありまして、御承知のように火炎物の発射でありますとか、あるいは爆発物の発射でありますとか、重要通信施設の破壊等はまだ後を絶たないと見なければならないわけですが、その原因をどのように分析していらっしゃるのでしょうか。それが第一です。  それから、私はこれはやっぱり根源、つまりアジトを覆滅しなければだめなんじゃないかと、それほどそのアジトをたたくことが極めて重要である、非常に難しいのかもしれませんが、と思うわけでありますけれども、その状況あるいは困難な原因をどういうふうにお考えになっておるか、そしてその対策としてどういうことを今構想しておられるか。特に恐らくこれは人的な増強あるいは装備資機材等の増強を必要とするのじゃないか、こういうふうに想像されるわけですが、その付近について御答弁をお願いいたします。
  302. 新田勇

    説明員(新田勇君) 初めに、この種の事案がなかなか絶えないということについて御説明いたしたいと存じます。  確かにゲリラ事件と彼らが言っている事件が年々多く発生いたしまして、加えて最近は爆弾の爆発力がだんだん強力なものになってきている、それから発射弾の距離も伸びてきている、正確なねらいができるというようなものを使うようになってきたということがございます。また、個人の居宅へ放火をする、あるいは通信ケーブルといったようなものを破壊するということでの、対象の多様化ないし広がりというものが憂慮されているわけでございます。  これを企画といいますか、これを行います極左暴力集団はいわゆる日本革命なるものを目指しておるところでございます。一つの例で申せば、中核派と呼ばれるグループがございますが、正式には革命的共産主義者同盟全国委員会と言いますが、この規約によりますと、共産主義社会の実現こそ最後の到達点であり、この目的の実現のためプロレタリア世界革命を目指して闘うと言っておりますので、この種の破壊活動を引き続いて行っていく意欲といいましょうか、そういうことにあるというふうに考えるわけでございます。そして、現在とっております方法は、彼らにとりまして最も犠牲が少なくかつ効果があるという認識であろうかと思いますので、先ほど申し上げましたような方法を引き続いてとるだろうということでございます。  なお、彼らがこの種の手段をとる場合には、事前に警察側の動きを綿密に調査いたしまして、また時限装置を用いるというようなことから逃走が大変容易になっておるということで現場検挙が困難でございます。また、証拠物を自動発火装置で焼棄するということのため手がかりが失われ、事後の捜査にも困難を来すということでございます。こういったことがなかなかゲリラ事件を根絶できないところの理由であろうかと思います。  私どもといたしましては、情報の収集に努めまして防止を図る、あるいは彼らといえどもどこかにエラーと申しましょうか、何かすきがあるということで手がかりを、そこをつかんで捜査を伸ばす、あるいは暴力排除の気運を一層盛り上げて彼らが犯行を犯しにくくする環境をつくり、また御理解を賜っている方々からの御協力を得て犯人を検挙することで後を絶ちたいと考えているところでございます。  それからアジトの壊滅の点でございますが、確かに彼らは一つの専門グループをつくり、そのグループを非公然化し、さらに軍隊組織で動いておるということからこのアジトの壊滅が極めて重要な作戦になるわけでございます。昨年来、非公然アジトを十九カ所摘発し、非公然活動家三十一名を検挙したというのもこれへ向けての私ども努力一つの結果と存じます。しかしながら、これらの要員は、まず筋金入りの活動家である、あるいは組織を完全縦割り制にしておりまして、一人が捕まってもほかの組織のことを知らないということでの組織防衛が徹底している、あるいは普通の市民を装って社会に入っていて全く目立たない、あるいは尾行の点検が大変徹底しておりまして、そのために極めて多くのよく訓練された要員が必要であるというようなこととなっており、なかなかこのアジトの摘発も難しいということとなっておるところでございます。  このアジト摘発その他のためにいろいろなことを私どもも準備をいたさねばならぬわけでございますが、そのためには、一つにはすぐれた捜査員の養成ということが必要でございまして、そのために地方警察官、極左暴力集団行動確認要員ということで絞りまして千六百三十五人、あるいは車両、携帯用コンピューター、パトカー照会指令システム等、五十四億円に上る予算の要求を今考え、大蔵省といろいろ折衝をいたしておるというのが現状でございます。
  303. 永野茂門

    ○永野茂門君 大変に難しい仕事ではありますが、国内の安全、治安のためにもどうしても御努力をお願いしなければならないと思います。とにかく知恵を絞って御努力をお願いしたいと思いますし、私どもはそれを支援することにやぶさかではありません。  そこで、本テロ対策につきまして大臣国家公安委員長としての御決意をお伺いしたいと思います。
  304. 梶山静六

    国務大臣梶山静六君) 極左暴力集団によるテロ、ゲリラ事件は、国民の平穏な生活を根底から破壊しようとするものであり、民主主義に対する重大な挑戦であり、断じて許されるべきものではありません。警察としては、現在総力を挙げてテロ、ゲリラ根絶に向け極左対策に取り組んでいるところでありますが、さらに国民各位の御協力を得るとともに、関係省庁とも十分連携を保ち、市民社会の安全確保に万全の努力をいたす所存であります。  なお、特に御指摘のあった国際テロにつきましては、各国間における情報交換やICPOを通じた捜査協力等を効果的に行い、テロに対する決然とした粘り強い闘いを進めてまいる所存であります。
  305. 永野茂門

    ○永野茂門君 次は薬物事犯関係に移らせていただきます。  薬物事犯は、本人が殺人をしたり、あるいは放火をいたしましたり、その他の凶悪犯をやることに陥ることが多い、あるいは交通事故をしょっちゅう起こしますとか、あるいは資金欲しさに強盗をやりましたり、あるいは窃盗をやったりということであるだけでなく、先ほども問題になっておりました暴力団の資金源にもなっておるわけでありまして、この対策は極めて重要であり、銃砲の所持、使用とともに、社会の平穏を脅かす重大な要因であると考えられます。国際化の中で真剣な国内的、国際的対応が迫られておるように思われます。この現状をいかに把握し、そしてそれを評価しておられますか。特に御承知のように日本は先進国の中で薬物禍はない国としてかつては鼻高々で有名であったのでありますが、この十数年間は増加が継続しております。これの理由をどういうふうに分析しておられますか、承りたいと思います。
  306. 漆間英治

    説明員(漆間英治君) お答え申し上げます。戦後我が国は、昭和二十年代にヒロポン時代を経験いたしております。また三十年代にはヘロイン時代という二つの薬物乱用期を経験いたしましたが、いずれも法令の整備でありますとかあるいは取り締まり体制の強化、あるいは官民一体となりました取り組みによりまして、いずれも数年のうちに収束させることができました。しかし、昭和四十五年ころから再び覚せい剤を中心としました薬物乱用が増加をいたしまして、昭和五十六年以降は検挙人員が毎年二万人の高水準で推移をいたしております。押収量が昭和五十九年以降四年連続して史上最高を記録いたしております。十年間で約十倍に上るという状況でございます。特に本年は、現在までの覚せい剤の押収量が約六百キログラムを超えておりまして、史上最高でありました昨年一年間の押収量の約一・七倍、注射量にいたしますと約三千万回分にも上る量でございまして、これに加えまして、最近欧米で蔓延いたしておりますコカインの上陸の兆しも出ております。こういうことで薬物をめぐる情勢にはまことに厳しいものがあるというふうに私ども認識をいたしております。  警察といたしましては、これまでの乱用期と同様徹底した取り締まりを展開してまいったわけでございますが、この増加を十数年にわたって抑えることができていない理由といたしましては、何よりもこの乱用されている覚せい剤の供給源が国内から海外に移行したということがございます。これに伴いまして、国際交流の活発化の中で事犯が一層国際化、広域化をしまして、これに捜査体制が追いついていかないというのが現状でございます。
  307. 永野茂門

    ○永野茂門君 今の御答弁の中に供給源が海外に移行しておるというお話がございましたが、その様相はどういうことになっておりますか、伺います。  そして一番大事なのは、海外の供給源を壊滅させるということが重要であるということでありまして、現実に薬物乱用防止対策要綱の中にも供給源の壊滅が対策重点の第一項に取り上げられておるようでありますが、我が国は水際以遠、特に供給源に対してどのような具体的な役割を演じようとしておるのかあるいは演じつつあるのか、承りたいと思います。
  308. 漆間英治

    説明員(漆間英治君) 覚せい剤の供給源はすべて海外に移行いたしております。その供給源といたしましては当初は韓国が中心でございまして、日韓連絡会議を開催いたしましてお互いにこの問題に対する関心を強めようという話し合いをいたしました。その結果、韓国当局の取り締まり、関心が大変強まりまして、最近ではこれに伴いまして密造の拠点が台湾に移っております。さらに最近ではフィリピンあるいはタイにも広がっているやにうかがわれる様相も見られます。それから密輸組織の構成でありますとかあるいは活動拠点の面でも一層国際化、多様化の度を増しているというように感じております。したがいまして我が国といたしましては、関係国からの協力を確保することが不可欠となっているところでございます。  世界的に見ましても、現に薬物乱用問題で悩んでいる国はもとよりでございますけれども、薬物乱用のない国でありましても中継地としてねらわれておりますなど、薬物問題は各国共通の問題となっております。したがいまして、最近のボン・サミットでありますとか東京サミット、あるいはベネチア・サミットにおける議論、あるいは本年六月、世界の百三十八カ国の閣僚が参加をいたしまして史上初の国際麻薬会議が開催されましたが、この会議における政治宣言等の採択、さらには国際的な取り締まり強化のための新条約の審議など、近年世界が一体となりまして薬物問題に対する取り組みを強化してまいろうという動きが強まっております。  私どもはこのような世界の動向に呼応いたしまして、本年の六月、御質問にありましたような薬物乱用防止対策要綱を制定いたしまして、第一に国際化対策の強化を掲げました。全国警察が一体となって海空港における警戒態勢の強化等を図るとともに、特に供給源あるいは密輸組織の拠点のある関係諸国に対しまして薬物情報官を初めとした捜査官の派遣による情報交換、さらには国際情報収集網の整備でありますとか、関係諸国の捜査官を招いた国際捜査セミナーの開催等を積極的に実施いたしまして、国際捜査協力を一層推進いたしたいと考えております。  当面の具体的な国際活動の例といたしましては、このたび日本政府として初めて国連主催のアジア・太平洋地域麻薬取締機関長会議を日本で開催することといたしまして、今月三十日から始まる予定になっております。  以上でございます。
  309. 永野茂門

    ○永野茂門君 今の御答弁の中にも、水際検挙の問題でありますとか、あるいは密輸組織あるいは密売組織の壊滅等の話が出ましたが、こういうようなことをやり、あるいは末端乱用事犯を検挙するというようなためには適時適切な、これもまた非常に難しいことでありますけれども、現地現物に応ずる取り締まりの推進とそれに先立つ十分な内偵、情報収集等が必要であり、専門員あるいは協力者等が必要であると思いますが、これらは十分得られておるのでありましょうか。  そしてまた、今専門官についてちょっと触れられましたが、それに関連して、警察内においてこういう専門的な人員はどういうふうに今後考えておられるか、あるいは装備資機材等において特にこういうものが今言ったような目的を達するために重要であるというようなものがありましたらお伺いいたしたいと思います。
  310. 漆間英治

    説明員(漆間英治君) 御指摘ございましたように、覚せい剤の事犯と申しますのは外国からの物の供給に基づきまして密売組織とそのルートが形成をされます。非公然のマーケットを通じて国民の間に拡大していくという特徴を有しておりますので、これに対応する専門の内偵捜査が不可欠でございます。あわせまして、事犯の国際化あるいは広域化の中で、外国捜査機関との連絡調整でありますとか、全国警察の間の広域捜査共助等の迅速かつ的確な対応が求められるものでございます。また、関係各省庁との連絡調整等も極めて多うございます。  このような最近の情勢を踏まえまして、警察庁といたしましては、今後の総合的な薬物対策の推進を期するために、まず第一に警察庁に国際的な窓口かつ国内的な元締めとしての薬物対策課を新設すること、それから同時に関係捜査機関との情報交換に専従する情報担当官を増員することが必要であると考えております。それから地方警察官につきましても、ひそかに全国に流される膨大な量の薬物を専門的に追跡する内偵捜査要員を全国都道府県警察に配置をし、相手の勢力に呼応した専門的な捜査体制を整備したいと考えております。  また、海空港の警戒態勢を強化しまして、密輸事犯を防止するために最も重要なことは、正確な情報が迅速に中央に報告をされ、これに基づく手配が直ちに全国の関連捜査現場に伝達されるというシステムが必要でございますので、資機材の面におきましてコンピューター等を利用しました捜査支援システムを全国的に整備する必要があるというように考えております。
  311. 永野茂門

    ○永野茂門君 薬物乱用対策というのは、銃砲対策あるいは銃器対策とともに治安対策の中の二つの柱と言われておるところでありまして、極めて重要なものであり、そして最近の我が国の傾向が非常に心配される状況にある以上、こういう関係者の十分な御活躍をお願いしたいと思うわけでありまして、今言われたような人員あるいは機材等の取得につきましても私どもも御支援をしたいというふうに考えるところであります。  そこで、再び国家公安委員長たる大臣に、本対策についてどういうふうな御決意をお持ちであるか承りたいと思います。
  312. 梶山静六

    国務大臣梶山静六君) 永野委員指摘のとおり、覚せい剤、麻薬等の中毒性薬物の乱用は、銃器等の不法所持、使用と並んで治安の根幹にかかわる重大な問題であり、またボン、東京、ベネチアにおけるサミットあるいは国連における宣言等にも見られるとおり、今日世界各国の共通の重要な国際的問題となっているところであります。我が国は、国際社会における中心メンバーの一員として、覚せい剤等の薬物乱用の根絶に向けて国際協力の積極的な推進に努めるとともに、世界有数のすぐれた治安の伝統を持つ国家として、薬物乱用の根絶に全力を傾注してまいりたいと考えております。
  313. 永野茂門

    ○永野茂門君 次に、地震対策について承りたいと思います。時間がありませんので、なるべく効率的にやりたいと思います。  地震時には出火の防止でありますとか、あるいは初期消火でありますとか、あるいは延焼拡大防止と、こういうようないわゆる大震火災対策というものが極めて重要であると考えられます。  そこで、消防庁としては、こういうことについてどのような対策をとっていくのか、基本的な考え方を承りたいと思います。
  314. 矢野浩一郎

    説明員矢野浩一郎君) 大規模な地震が発生いたしました場合には、その被害は極めて広域に及ぶと同時に、また地震によるところの建造物の破壊あるいは火災の発生あるいは津波の発生等、いわゆる複合的な災害をもたらすものでございます。こういった性格にかんがみまして、もとより震災対策においては極めて総合的な対策を必要とすることは言うまでもないところでございます。  地震発生時におけるところの出動、対応のあり方、あるいは避難誘導の方法、あるいはより基本的に建物、公共施設等の震災に強い構造の建物の整備等、いろいろ必要でございますが、特に消防庁といたしまして消防の面から考えました場合には、やはり火災に特に重点を置かなければならないと考えております。  特に大規模震災の場合の火災の発生は、通常の火災が単発型の火災であるのに対して、関東大震災の例をもっても理解できますように、いわゆる同時多発型の火災と、こういうことになる公算が極めて大でございます。したがいまして、そういった面から、こういった火災の発生に備えまして、消防庁といたしましては特に耐震性の貯水槽の整備、これは六十トン型あるいは百トン型あるいは大規模なものでは千五百トン型、こういったようなものもございますが、比較的市街地にそういったものを整備をいたしまして、そういった場合に対応する。また、それらのものの中には、そういった災害発生時には飲料水の不足をも来す可能性が大でございますので、飲料水と兼用になるような貯水槽の整備、これには最も重点を置いておるところでございます。  なお、そのほか地震発生時には極めて交通の面で困難性を生ずる、こういう可能性もございます。そういう観点から、可搬式の小型動力ポンプ、この整備、これにも特に重点を置いておるわけでございますが、そのほか備蓄倉庫でありますとか、あるいは電源車であるとか、いろいろな地震発生に対応しての施設の整備を特に地方公共団体において重点的に進めていくように指導しておりますし、また同時に、これらの施設の整備につきましては、大変財政的に困難の中ではございますけれども、毎年度所要の補助金の予算額を確保いたしまして、地方団体における大震火災対策を支援してまいっておるところでございます。  今後とも、厳しい財政状況の中で必要な補助金等を確保いたしまして、大震火災対策を進めてまいりたいというのが基本的な考え方でございます。
  315. 永野茂門

    ○永野茂門君 大規模地震対策特別措置法では、地震の防災対策強化地域が指定されております。そして、これは言いかえると東海地震対策だと思いますけれども、それについては、五十五年度からその地震対策緊急整備事業が十カ年計画で進められておるようでありますが、その中で消防施設関係重点項目はどういうものであり、そしてその進捗状況はどうなっておるか、そしてまた今後の見通しはどういうことになっているか、御説明を伺いたいと思います。
  316. 矢野浩一郎

    説明員矢野浩一郎君) 大規模地震対策特別措置法に基づきまして地震防災対策強化地域に指定をされておりますところの地域におきましては、五十五年度から御指摘のように地震対策緊急整備事業が十カ年計画で進められておるところでございます。この緊急整備事業について消防庁におきまして特に重点を置いておりますのは、消防用施設といたしまして防火水槽、消防ポンプ自動車等を中心に考えて整備を進めてまいっておるところでございます。  現在の計画の進捗状況でございますが、現在の計画は昭和六十四年度末、すなわち昭和六十五年三月三十一日までのものでございますけれども、これは全体の事業費は消防以外のものを含めますと約五千六百億円でございますが、その中で消防用施設に係る計画額は約三百五十億円でございます。これに対しまして現在までの進捗見込みは事業費で約二百五十五億円でございまして、この進捗率は七三%でございます。  消防庁といたしましては、今後残された期間における緊急整備事業につきましても、東海地震対策の重要性にかんがみまして、できる限り消防用施設に係る補助金の確保に努めまして計画の達成を果たしてまいりたい、このような所存でございます。
  317. 永野茂門

    ○永野茂門君 進捗状況は大体計画どおりであると見ていいのかと思います。  そこで、東海地震対策についてはそういうことで結構なんですが、南関東地震、東京を初め千葉、埼玉等のいわゆる直下型地震に対する対策を必要とする地域については大体同様な対策が講ぜられておるのでありましょうか。法律的には特にないかと思いますが、この状況はどういうふうになっているのでございましょうか。
  318. 矢野浩一郎

    説明員矢野浩一郎君) 御指摘の南関東地域における地震対策でございますけれども、これは御質問の中で御指摘がございましたように、東海地域と違いましていわゆる強化地域の指定が行われておりません。これは、地震の予知そのものが内陸直下型の地震だということで非常に予知が困難だというようなことによるものでございますけれども、ただ、歴史的に見ましてこの地域は、過去に何回も地震を経験をしておるところでございますし、また我が国の社会経済の面から見て極めて重要な地域でございます。したがいまして、法律上整備計画をつくって整備をするということになっておりませんが、消防庁といたしましては、私どもの持っておりますところの消防の予算、これはもちろん一般地域に対する震災対策のものを含めて予算を持っておるわけでございますが、これをできる限り重点的に南関東地域にやはり投入をしていく、またこの地域の関係地方公共団体もそういった地震に対するやはり非常に関心が高こうございますので、みずからも整備をしていこうという姿勢が非常に強うございます。そういった姿勢に呼応いたしまして、東海地域と並んで私どもとしては重点の整備地域として施策を進めてまいっておりますし、また今後ともそのような考え方でまいりたい、このように思っております。
  319. 永野茂門

    ○永野茂門君 この首都地域は極めて重大な地域であり、そしてまた地震対策は非常に難しい。一たん起きた場合の災害をどういうふうに極小化するかということは非常に難しいことであると思いますので、いろいろと今後とも御努力をお願いしたいと思います。  最後に、地震災害、先ほど長官おっしゃいましたように、広域災害でありまして、道路等の被害を考察いたしますと、ヘリコプターの活用が極めて機動的で、そして効率的であると考えられます。情報の収集でありますとか伝達でありますとか、あるいは確認でありますとか、あるいは被害者の救出でありますとか、緊急な救援物資の投下、補給でありますとか、その他いろいろあると思いますが、この整備について消防庁はどのようなお考えを持って推進しておられますか、お伺いします。
  320. 矢野浩一郎

    説明員矢野浩一郎君) 地震災害のみならず、一般に大規模な災害の発生時におきましては、道路や橋梁、鉄道などが損壊をいたしまして、交通手段が寸断をされるという場合が多いわけでございます。  御指摘のように、そういう場合における広域的な活動体制の整備というのはまことに重要だと考えておるところでございます。その場合に、こういった広域体制に対応する最も有効な手段の一つがおっしゃられるとおりヘリコプターの整備だと思います。消防庁におきましては、市町村の消防機関、特に大都市が目下中心でございますが、市町村の消防機関あるいは所によりましては都道府県自身の防災機関が防災ヘリとして整備するものもございますけれども、そういった活動に使用するためのヘリコプターの整備については補助制度を設けておりまして、その整備促進に努めてまいりますとともに、こういった消防機関の保有するところのヘリコプターをできるだけ広域的に使っていくということから、法律に規定のございます消防庁長官の出動要請制度、他の地域に対して応援をしてほしいという出動要請制度、これを積極的にやっぱり活用いたしてまいりたいと考えております。  何分にもヘリコプターは大変高価なものでございますし、また維持管理費にもかなり経費がかかります。そういう意味では、現在、市町村の消防機関が保有しておりますところのヘリコプターは全国でまだ十八機でございます。そのほかに都道府県が、これは消防機関が直接持ってはおりませんけれども、防災ヘリとして二機持っております。しかし、この保有状況から見まして、全国をネットワーク、少なくともヘリが飛んでいける距離のネットワークで覆うためにはまだまだ不足でございまして、私どもとしてはそういった広域体制をとることによりまして、大規模な地震その他の災害に対応できる体制を一刻も早く進めることがこれからの消防行政の一つ重点的な目標である、このように考えております。
  321. 永野茂門

    ○永野茂門君 災害は発生してから騒いでもいたし方がありませんので、事前にいろいろな力を整備するように御努力を願いたいと思います。  以上をもって私の質問を終わらしていただきますけれども警察にいたしましても、消防にいたしましても、国民の安全を守るために極めて重要なお仕事を大変御苦労されながらやっていただいておるわけでありますけれども、ますます御努力をいただいて国民の負託にこたえていただくようにお願いをいたしますとともに、大臣のその面においても敏腕をお振るいになって御活躍になられることをお願いいたしまして、私の質問を終わらしていただきます。  どうもありがとうございました。
  322. 穐山篤

    委員長穐山篤君) 他に御発言もないようですので、自治省警察庁及び公営企業金融公庫決算についての審査はこの程度といたします。  次回の委員会は来る十二月八日午前十時に開会することとし、本日はこれにて散会いたします。    午後五時五分散会      —————・—————