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国務大臣(
宮澤喜一君) まず、
キャピタルゲイン等の資産
所得課税についての問題でございますが、このたびの御
提案によりまして、
有価証券の
譲渡益については
課税ベースをかなり
拡大いたすことにいたしております。
また、
土地の
譲渡益につきましては、短期所有につきましてはこれを
重課するということ、それから
個人の事業用資産の買いかえの
特例のときにはこれを一部縮減するというようなことを
考えておりますし、また
登録免許税の引き上げも御
提案申し上げておるところでございます。
一般的に
資産所得に対する
課税が甘いではないかという御
指摘がございました。いろいろな事情で行政上の体制がなかなか公平な
課税まで整備できていないという問題もございます。そういうことも
考えながら、今後引き続き勉強してまいらなければならないと思っております。
次に、
マル優制度についてお尋ねがございまして、これはもう御承知のとおりでございますが、現在この
制度によって
課税を免れておる
利子がほぼ十六兆円あると
考えられます。
給与所得、
事業所得等に比べてこの
資産所得である
利子所得がなぜ
課税を免れているのかということは、我が国としては、長いこと富国強兵あるいは戦後の資本蓄積ということで怪しまずにやってまいりましたけれ
ども、ここまでまいりますと、
資産所得であるだけに、なぜ免税なのかということは、やはり一遍
考えるべき問題ではないかと思っておるところでございます。
それで、この
制度を改組することでだれが一番利益を得るかということにつきまして、現実の問題としては、
高額所得者の方が与えられた特典をフルに利用できるという意味では、つまり枠を残さずに使えるという意味では比較的には受益が大きいと
考えます。その点をわかるように
説明せよということの御
指摘がございましたけれ
ども、ちょっとくどくて申しわけございませんが、標準世帯でございますと四人でございますから、一人についての枠は九百万円でございます。したがって、三千六百万円の枠を標準世帯の
高額所得者はフルに利用できるということになります。三千六百万円の元本を仮に五分といたしますと、それは百八十万円でございますから、今後新たにそれに二〇%の税が課されることになると三十六万円でございますが、現在はそれが免税になっておる。枠をフルに利用できる人ほど受益が大きい。これは当然のことでございますけれ
ども、そういうことと
考えておるわけでございます。
それから、この一律
分離課税ということは一体どうなのかということでお尋ねがございました。
これは、おっしゃいますとおり、本来すべての
所得が総合されるというのが、そして累進
税率の
適用を受けるというのが、
所得税のあるべき最終的な姿だとは思っております。ただ、現実の問題として、先ほど
総理も言われましたが、
利子所得は非常に大量に発生する、それも多様でございます。いろいろな商品がございますし、また、その間であっちからこっちへ動くというようなことがございますから、これを的確に捕捉、管理するとなりますと、何か納税番号のような
制度が恐らく必要である。また、そのほかに
納税者であるとか、あるいは
金融機関、郵便局、国、地方の
税務当局等々、相当の費用
負担を強いることになります。今の税務執行体制からそれがすぐには現実的でないということを
考えております。
この点につきましては、しかし、
衆議院におきまして
議院修正がありまして、この「
利子所得に対する
所得税の
課税の在り方については、
総合課税への移行問題を含め、必要に応じ、」「五年を経過した場合において
見直しを行う」、こういう御
修正がございました。もしこのような御
修正が最終的に
国会の御意思となります場合には、もとよりその
趣旨に従いまして誠実に対処いたさなければならないと思っております。
それから、
昭和六十三
年度以降の、六十二
年度もそうでございますが、
減税財源はどうなるのかということでございます。
六十二
年度は
減税先行ということが一般に各党の御意見のように思われます。今
年度は幸いにして前
年度の歳入
剰余金がございますので、お許しを得まして、これの全部残りを使わせていただければ、まあ何とか処理ができるかと思っております。
六十三
年度につきましては、実はそういうような見通しははっきり立っておりません。
赤桐議員が言われましたように、
利子課税がフルに財源になりますためには数年を要すると思われますので、これが六十三
年度の
減税財源として十分働くとは想像ができません。恐らく二千億とか、そういう単位のものではないかと
考えられますので、今これを財源と
考えるわけにはまいりません。したがいまして、六十三
年度をどうするかということは、私としても、これから歳入歳出全体を通じて実はかなり悩んでおる問題でございます。このような大きな恒久的な
減税には恒久的な財源を必要とすると思っておりますが、この点につきましても、
衆議院におきましては、殊に
税制改革協議会というものが成立しておりまして、そこでもこれから御検討いただくことでありますので、しばらくその
推移を見守らしていただくべきかと思っております。
最後に、
欠陥予算についてお話がございました。
御
指摘の点は、前
国会において
売上税等々が全部
廃案になった、しかし、先般
補正予算を出しましたときに、そのことについて、歳入面においても歳出面においても何ら補正をしていないではないかということは、これは御
指摘のとおりでございます。
先般、補正のときに申し上げたかと存じますが、形式的に申しますと、
政府の
税制改革案が
廃案になりました結果、当初のいわば
現行の
税制に返るというのが、形式的にはどうしてもそうなるわけでございますが、ただ、
現行の
税制につきましては、
政府も
改革を
考えましたし、また、各党各会派において、例えば
所得税の
減税は少なくとも必要であるというような御意見はもうコンセンサスになっておりますから、
廃案になったからといって、もう一遍
現行の
税制で補正をということはいかにも、形は整いますが、現実的でないことは明瞭でございます。したがって、先般の補正におきましては、この
売上税等に関する
部分は、歳入面も、一部歳出面もございますので、全部これに変更を加えませんでそのままにいたしてございます。現在の姿は、したがいまして、
予算に整合性がないとおっしゃられれば、そのとおり今その姿になっております。
政府といたしましては、このたび
税制改正についての
国会の御意思が決まれば、
年度が終わりますまでにこの点をもう一度補正をいたしまして、歳入歳出間の整合性を
確保しなければならない、そういうふうに
考えておりますし、また現実には、それに至りますいわば中途の
段階に今あるということでございまして、御
指摘の点はそのとおりでございますから、
年度終了までにこれはきちんと整合性を整えなければならないと
考えております。(
拍手)
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