○梶原敬義君 私は、
日本社会党・
護憲共同を代表して、ただいま
議題となりました
日本航空株式会社法を廃止する等の
法律案につきまして
質問をいたします。
二年前の八月十二日は、日航一二三便が群馬県上野村山中に墜落、大破炎上し、乗員乗客五百二十名の死亡事故を起こした、忌まわしい、忘れてはならない日であります。
先般、航空事故調査委員会の最終報告書が提出され、事故の再発防止のための勧告が示され、また、事故の刑事責任を追及している群馬県警によって
日本航空の立入捜査が進められているところであります。我々は、こうした事故がなぜ発生したのか、隔壁修理ミスがなぜ発生したのか、五百二十名のとうとい生命の生死を分けた原因が何であるのか、徹底究明して再発防止に努めることが、不慮の死を遂げられた方々や遺族の皆様への責任であると
考えるものであります。
その後、国内においては重大な民間航空機事故は発生していないものの、今月八月十一日、高知沖上空で百ないし二百メートル、十九日には千歳上空で五百メートルという至近距離での全日空機と自衛隊機とのニアミス事件が発生したと伝えられております。十六年前に百六十二名の犠牲者を出した雫石事故を思い起こすまでもなく、余りにも重大な事件であり、空の安全についての教訓はどうなっているのか、私は
言葉に尽くせない怒りを覚えるものであります。
昨日の夕刊によると、千歳上空のニアミスについては、航空管制に当たっていた自衛隊側の千歳進入管制所が、三機編隊で飛行していた自衛隊側の情報を全日空側に伝えていなかった公算が大きいと報じられているが、防衛庁長官、事実はどうなのか、
お尋ねいたします。
運輸省、防衛庁はニアミスについての食い違いがあるようでありますが、実際はどうであったのか、
国民が納得できるような説明を両
大臣に
お尋ねをいたします。あわせて、事実
関係の究明と責任の所在を明らかにしていただきたいのであります。
また、米国では、去る十七日に百五十余名の死者を出す墜落事故を起こしたばかりであります。
本論に返りますが、
政府は本
法律案により、半官半民の経営体制で
運営してきた
日本航空を完全
民営化させ、同時に、
日本航空を国際線と国内幹線に限定した航空憲法四五、四七体制を打破し、航空
企業間の
競争を
促進させようとしているのであります。しかしながら、こうした完全
民営化と
競争激化が経営を採算性と
合理化、
効率化一辺倒にさせ、その結果として安全性の確保がないがしろにされる危険性が増大しないか大きな疑問があるところであります。
自由
競争に任せている米国では、今回の大事故を初め、事故に至らないニアミスや
サービスの劣悪化、切符のダブリ販売など、
競争の余り逆に
利用者にとって危険な、看過できない問題が頻発してきており、米国議会ではデレギュレーションの見直しの動きすら出ていることは、その証左と言わねばなりません。
中曽根総理は、単に行財政
改革の一環としてこの
日本航空の完全
民営化をしゃにむに進めようとしていますが、航空事業の最も大切な安全性の確保をどのように
考えておられるのですか。
日本航空完全
民営化の基本姿勢並びに安全性の確保につき所見を最初に求めておきたいのであります。
さて、本
法律案の内容について具体酌に
質問をいたします。
質問の第一は、
日本航空を完全
民営化する意義についてであります。
日本航空の収支は、五十七
年度以降では、五十九
年度を除きいずれの
年度も赤字を発生させ、無配に陥っています。また、旅客輸送量も日航機墜落事故の後遺症が遠のいたとはいえ、十分な回復を示すまでに至っておらず、このようなときになぜ完全
民営化を急ぐのか全く
理解できません。航空憲法と言われた四五、四七体制が抜本的に改められ、国内線のダブル化、トリプル化等の
競争促進や国際線の複数社制、また外国の巨大航空
企業との
競争も一層激化する中で、
日本航空が完全
民営化してやっていける見通しがあるのか、今なぜ現行経営体制のもとでの
改革でやれないのか、その
理由について運輸
大臣から
国民にわかりやすく説明を求めたいのであります。
質問の第二は、
日本航空の完全
民営化を前提とした六十二
年度から六十五
年度までの中期計画と乗員問題についてであります。
中期計画では、経営強化施策により、計画最終
年度に三百八十億円の経常収益を上げ得ることを見込んでおりますが、同時に、収益については目標を大きく下回ることが懸念され、この達成には容易ならざるものがあると特記されており、極めて不透明かつあいまいな計画となっているのであります。果たしてその実現性はあるのか、運輸
大臣にお伺いします。
加えて、安全性と密接に関連するボーイング747−400型機の二人乗務の是非について
検討していた乗員編成
会議の答申は、両論併記で
結論が出なかったとされております。中期計画は二人乗務を前提に計画されているようですが、安全性を重視するなら当然三人乗務体制での計画に改め、本院の
審議に対応した計画を再提出すべきと
考えるものでありますが、あわせて御答弁をお願いいたします。
質問の第三は、航空労働者に対する異常な労務政策並びに
合理化政策についてであります。
一つの
企業に六つもの労働組合が存在し、法に定められた安全委員会や衛生委員会が事実上機能してない異常な
状況が続いており、
政府の指導責任を免れることはできません。運輸
大臣の御答弁をお願いいたします。
ききにも
指摘しましたとおり、ボーイング747−400型機の二人乗りについては、
日本航空は秋には役員会で見切り発車を
決定するとの報道もされており、我が党としては看過できません。運輸
大臣、
日本航空に対し、安全のための十分な人員を配置した経営姿勢を貫くよう指導すべきではないですか、御答弁をお願いいたします。
また、完全
民営化で
日本航空の
資金調達が
政府保証債で行えなくなり、やがて利払い費の
負担が急増し、この面から
日本航空の財務を今以上に圧迫することは避けられないと
考えられます。そして、その引きかえに人員の
合理化や修理費等の
経費の節減に重心がかかり、安全と
国民への
サービスが損なわれるのであります。
日本航空を今日のむちゃくちゃな
状況に陥らせたのは日航の経営者と
政府の介在であり、その責任を放置し、
国民と労働者側に責任を押しつけることは許せません。
そこでお伺いしますが、今後完全
民営化に向けて現在混乱しておる社内の体制を一体化するためにどのように
努力するつもりですか。また、労務政策の公平化、
労使関係の正常化をどう指導していくつもりか明らかに願いたいと存じますが、運輸
大臣にお伺いします。
質問の第四は、航空運賃政策についてであります。
国際線については、円高に伴って生じている方向別格差の是正や円高差益の還元等、
利用者の不満が増大しております。国際線で
日本発運賃に対し、米国発運賃が半額以下という状態は、何らかの是正なくして
国民の納得を得ることは困難と言わねばなりません。
政府は、IATA等国際協議の場でこれの是正に向けての
努力が必要ですが、運輸
大臣にはどのように対処するつもりですか。
また、国内航空運賃についても格差の
指摘があります。
政府はどのように対処しようとしているのか、いつ
結論が出るのかお伺いをします。
質問の第五は、さきにも
指摘した航空の安全対策についてであります。
日航機墜落事故の事故調査委員会の勧告に対し、運輸省は修理ミス防止策として、製造工場外での大規模修理では必ずメーカーの技術支援を得る、修理を下請に出しても発注側が重要検査工程や最終工程に立ち会うなどの回答をしております。当然このことは修理検査体制の
改革、人員補強が必要となってくるはずであります。しかるに、
日本航空は完全
民営化に当たり、六十五
年度までの間に地上職員九百人を削減すると既に発表しており、航空機の修理検査体制の強化に逆行するような動きを示しております。
安全の確保は、実際にこれを行う人間が十分対応できなくては効果はないのであります。さきの日航機墜落事故も修理検査体制に十分の人手と時間が注がれておれば未然に防止することができたのではないでしょうか。
政府は
衆議院の答弁で、検査は航空法にのっとり適正に行われていたとしていますが、完全
民営化に当たり、今後修理検査体制の強化を運輸
大臣は具体的にどう図っていく所存か、お伺いをいたします。
質問の第六は、日航の
株式売却方法並びにその
売却益の
使途についてであります。
国の持ち株四千八百万株をいつ、どのように処分しようとするのか、そしてまた、
売却益をどのように使おうとしているのか、
大蔵大臣並びに運輸
大臣にお伺いをいたします。
最後に、私は、
日本航空の完全
民営化については、今日段階でさまざまな問題があることを
指摘せざるを得ないと
考えますが、いずれにしても、完全
民営化が円滑に行われるためには、
競争できる経営基盤や
国民が安心して乗れる安全対策等の条件が前もって確保されていなければならないことは言うまでもありません。
法律を改正すれば安全の問題や経営環境はひとりでによくなるものでは決してありません。言うなら、
日本航空の完全
民営化を急ぐ現在の
政府の
理由は、
株式を
売却して国の
財源難を穴埋めすることの意義しかないのではないかと思われてなりません。
中曽根総理、あなたは、行財政
改革に名をかりて
国民の
財産を処分するいわゆる物売り
総理としての名は後世に残すでしょう。しかし、
日本航空の完全
民営化は時期尚早であり、
政府はこれを思いとどまるべきであると
考えるのでありますが、
総理大臣、いかがですか。
私は、以上をもって
質問を終わりますが、
政府の明確な答弁を期待いたします。(
拍手)
〔
国務大臣中曽根康弘君
登壇、
拍手〕