○
国務大臣(
中曽根康弘君)
和田議員にお答えをいたします。
広範な御
質問をいただきましたので要点を申し上げて、
あとは
関係大臣にお願いをいたします。
まず、
任期あと四カ月であるので謙虚に
国民に語りかけよという御
主張でございますが、全く同感でございます。
国民の皆さんのお声によく耳を傾けまして、また、我々の
考えているところをよく御理解いただくようにお訴え申し上げまして、対話をこの
国会等を通じて
強化してまいりたいと思っております。
政治には小休止はない、そう
考えております。
次に、
世界経済に対する認識でございますが、私は一九二九年のような
世界恐慌が起こる
可能性はないと確信しております。と申しますのは、あのときと今日とでは条件がまるっきり違っている。一番大きな条件の相違というものは、
一つは、あのころはブロック
経済の網が
世界じゅうに張りめぐらされまして、英連邦のオタワ
会議とかそのほかの大きな障害が生まれてきておった。あるいは
政治的条件といたしましても、ザールの占領の問題、それからいわゆるドイツに対する賠償金請求、そういうようないろいろな問題がありまして、ドイツから相当な資本逃避が一挙に行われておった。そういう
政治的不安定な情勢も背景にあったと思います。
しかし、今日におきましては、国際間の
経済協調が非常に進んでおりまして、
保護主義あるいはブロック化の
傾向に対しては断固反対する、そういう
サミットにおきましても何回もやっておりますように首脳間の明確な意思表示が行われている。そして、相互政策協調、それから構造改革というものがうたわれ、実践されつつあります。そして、金融のいろいろな事態に対しましては、相次いでG7のような
大蔵大臣、中央銀行総裁の
会議が持たれまして、
発展途上国や累積債務問題も含めて、それらが救済について協調
協議を実行しておるという状態です。そのほか、情報が非常に普遍的に通達されるようになってまいりまして、要らざる不安感が起こるという余地は前よりは非常に少なくなってきております。そのようないろんな情勢と
アメリカ経済が持っておる潜在的な強さというもの等を
考えてみますと、一九二九年のような
世界恐慌が起こる条件はない、そう
考えております。
詳細は専門家でいらっしゃいます
大蔵大臣からお聞き願いたいと思います。
次に、
日本の
企業の行動の問題でありますが、節度のある
企業行動をとっていただいて、
世界経済との調和をあくまで守っていただくということが大事であります。自由
貿易を推進するという必要は、
日本にとっては最も大きな条件でございます。そういう
意味におきまして、我々は今まで累次にわたる努力をしてきたわけでございますが、
企業側がこれに相応する節度ある態度をとってもらいませんと、自由
貿易自体に影響を及ぼしてくるわけでございます。
そういう点
考えてみますと、
企業の
対外行動、それと同時に国内的な影響等も
考えて、下請代金の問題であるとか、
関連中小
企業に対する対応であるとか、あるいは金融に対する関係、先ほども御指摘がありましたようないわゆる
マネーゲームというものに対する自粛、いろいろな問題につきましても、こういう微妙な重大な時期においては、
企業も相応の社会的責任、
世界的責任を持っておるのでございまして、そういう面において新しい
企業観あるいは
経済道徳観というものが生まれなければならないのであります。東芝事件の
世界的反響を見ましても、我々はそれを痛感する次第でございまして、そういう点については
企業側の研さんと自粛を求めたいと
考えておる次第であります。
通産大臣を
アメリカに派遣するという問題につきましては、現在、
米国におきましては、巨額の
貿易赤字を背景に
保護主義的条項を含む
包括貿易法案が審議されていて、そして最近の東芝事件等を背景に、この
保護主義に対する
国会の空気というものは非常に強まってきております。また、一方におきまして、東芝機械の対ソ不正輸出に端を発しました
日本の輸出管理体制に対する非難も高まってきております。そういういろんな点を
考えてみまして、これに対して的確に対応する必要がございます。
したがって、
国会の御了承が得られるならば、速やかに通産大臣を
米国に派遣して、
米国の
国会あるいは
政府の要人に対しまして、あるいはジャーナリズムに対しまして、我が
政府の講じている
措置あるいは再発防止策等について説明し、あわせて
保護主義法案に対する我々の
考え方というものを明確に示しまして、
日米経済関係全般にわたる率直な意見交換を行い、いろいろな問題に対する対応を行っていただきたい。御苦労ではございますけれども、
国会の御了承をいただきましたら速やかにに行ってきてもらいたい、そう
考えておる次第であります。
緊急経済対策の
経済的
効果につきましては、今回の
内需拡大策は
我が国GNPの一・八%に相当する大
規模なものでありまして、今後一年間で
我が国の
GNPを二%
程度押し上げる。そういう計算からいたしまして、実質三・五%成長は十分可能であると
考えております。
また、
内需拡大、
政府調達等によります輸入の
増大等も、経常収支
黒字をおおむね五十億
ドルから六十億
ドルぐらい追加的に
削減する
効果があると
考えております。さらに、主要
企業におきまして、通産省から輸入
拡大努力を
要請しまして、おおむね六十二億
ドル程度の追加輸入を約束していただいておるわけでございますが、これらにつきましても的確に行われるように我々は努力してまいるつもりでおります。
次に、
積極財政と六十二
年度予算の問題でございますが、私は、行政改革の理念あるいはその手法というものは、やはり継続して努力して追求しなければならぬと思っております。百五十二兆を超えるような大きな国債を来
年度以降に
日本は持つことになります。これだけ膨大な国債を持っているということは、ちょっと手を緩め安心するというと、それがインフレにつながる危険性なきにしもあらずであります。
そういうようなことを
考えますと、何としても物価の安定を持続するということが、
国民生活の基盤の
最大、重大な保障であると
考えておるのです。
政府は、いろいろ御議論いただきましたが、
円高基調のもとに物価の超安定的な
措置を今までも講じてきまして、このように長い期間にわたって物価がこれだけ安定したことはないと思うのであります。それは、
政府が物価安定を
最大の重大案件と
考えて処置してきたからでありまして、今後、いかなる
政府が出てきましても、物価安定という問題は至上命題であり、追求されなければならぬと思うのであります。
そういうような面から、これを持続的にやっていくというためには、やはり行政改革によりましてむだな経費を
削減して、小さな
政府でむだをなくしていく、そういうような努力は引き続いて行われなければなりませんし、しかしまた一面において、雇用や景気に対する配慮から
臨時、緊急の
措置も認められておりますから、そういう
臨時、緊急の
措置は機に応じて断行するという、いわゆる二刀流と私は申しておりますが、
基本はやはり行政改革、臨調精神を
基本にする、
あとは応用問題である、そう
考えている。応用問題も一回限りというような
程度のものではない。御指摘のように、必要が持続しているときはその必要に応ずる態度をとることもまた必要である、こう
考えております。
私は、六十三
年度予算の概算要求の編成に当たりましては、やはり
基本的にはこの行政改革を貫きまして、経常経費は昨年同様に厳しい査定、
削減を行う。しかし、投資的経費や
公共事業費等につきましては、これを例外とする。しかし、
目標はあくまで赤字公債を減らしていくということと、
予算における国債依存率というものをできたら二〇%以下に引き下げる。我々の
予算におきましては、今まで一九・四%まで引き下げましたが、今回の
補正予算等によりまして二一%をまた超えました。しかし、
経済規模は
拡大しつつありますから、そういう
意味におきましては、現在の電電株とかあるいは税の増収とか、いろいろなものと組み合わせてやれば二〇%台に引き下げることも、これはやり方によってはできるのではないかと思うのであります。
それと同様に、また六十五
年度赤字公債依存
体質脱却、これも同じように税収の動向、あるいは
NTT株の
状況、あるいは
自然増収、そういういろいろな情勢を勘案してやれば、努力によっては望みなきにあらずで、その
目標に近づくことは可能であると
考えておるのです。そういう
意味におきまして、
政府としては、あくまでむだをなくし、増税を防ぎ、そして
国民に快適な生活を保障するという
意味におきましても、行政改革の精神、これは堅持すべきである。そういう
意味におきまして、六十五
年度赤字公債依存
体質脱却という旗はおろさない、こう
考えておるのであります。
次に、減税の問題でございますが、これは前から申し上げておりますように、現在、
税制改革協議会におきましていろいろ御
論議願っておりますので、その結果を我々は見守りたいと思う次第でございます。
ただし、施政方針
演説で申し上げましたように、
所得税減税の先行実施はぜひ実現したい、そういうふうに
考えておりまして、これが財源
措置等も含めまして、この
税制改革協議会の推移を見守っておるところでございます。
御指摘の
雇用対策は、現下の最重要
課題の
一つでございます。業種、地域の雇用動向を的確に把握して、そうして現在の
経済政策と結びつけまして、いわゆる三十万人雇用開発プログラムあるいは地域雇用開発等々を結びつけまして
雇用対策に万全を期してまいりたい。
なお、いわゆるミスマッチと言われる摩擦的な失業というものに対しましては、この雇用開発計画にもございますけれども、訓練であるとかあるいは紹介であるとか、そういうマッチのチャンスをさらにふやすように地域的な問題も含めて努力してまいりたいと
考えておる次第でございます。
中国に対する外交
基本姿勢は、一貫して現在も変わっておりません。それは日中友好平和条約、あるいは共同宣言、あるいは四
原則、これを厳守して、そうして相互信頼関係に立脚して、不断の対話を通じて友好協力を深めていくということでございます。
最近の幾つかの問題はございましたけれども、日中間の交流というものは次第に
増大しており、
経済関係におきましても、
貿易は
拡大均衡の方向に進みつつあります。
日本のいわゆる
黒字の過大という問題がございましたが、本
年度におきましては非常に大きく
是正されました。今後とも対話を深めまして、
中国の近代化に対する我が方の協力、民間資本の
中国に対する協力、こういうような問題につきましても積極的に努力してまいりたいと思います。
貿易を見てみますと、八六年におきましては、総額で百五十五億
ドルでございまして、これもふえつつあります。インバランスの関係は、八五年が六十億
ドルでありましたが、八六年は四十二億
ドルに減り、八七年の五月までは五億
ドル程度に激減しております。投資は、八五年が約一億
ドルぐらいでございましたが、八六年は二・二六億
ドルで、これは倍増しております。そのほか、
経済協力あるいは人的交流等も非常に最近は進んできております。
最近の
日本人の訪中者数を見ましても、七二年におきましては八千人であったのが、八六年には三十三万四千人に上がってきております。また、
中国人の訪日を見ましても、七二年には九百九十人であったのが、八六年には七万五千二百八十人と、こういうふうになっております。また、留学生につきましてもふえてきております。あるいは研修員につきましても同様でございます。
このように両国の関係、公約あるいは私的な関係を通じて交流を
増大してまいりたいと思っております。
INFの
アラスカ配備問題は、私がここで累次申し上げるように、我々の
目標は、
世界から
核兵器を追放することで、ゼロにすることである。それと同時に、ヨーロッパと
アジアを平等な扱いにして、
アジアの犠牲においてヨーロッパをゼロにするということは認めない、あくまで平等にゼロでなければならない、それを実現しようということなのでありまして、しかし、軍備管理交渉におきましては、現実は
米ソ間におきましても各カテゴリー間における
削減で行われておるわけです。つまり、SS20についてはパーシングⅡであるとかクルージングミサイルであるとか、戦車に対しては戦車であるとか、その同じカテゴリー間で行われている。
そういう点
考えてみますと、
ソ連がどうしても
アジアに百置くという場合に、それをなくさせるためには
アメリカもじゃ百置くぞと、そういうような権利を留保して、それを両方ゼロにしようという相殺する材料が要る、これは交渉のテクニックの問題でございます。そういうような
意味におきましても、ゼロを実現するための交渉の
一つの
過程における材料としてそういうことも容認する、そういう
意味のことを申し上げておるのです。
今までの軍縮を見ますと、
米ソともに
均衡による抑止という理論に立っております。
ソ連も同じであります。そういう
意味におきまして
均衡という面を
考えると、これは対抗条件を持たなければ
均衡はできないし、ゼロにはできない。これが冷厳なる軍縮の実態なのでありまして、そういう現実性に立った
考えで行わなければゼロはできないと、そう私は
考えておるのであります。
SDIの問題でございますが、この取り決めにつきましては今、
協議中であり、具体的
内容について申し上げることは差し控えたいと思いますが、合意
内容につきましては公表し得るものは公表する、
我が国のSDI
研究参加については現行の国内法及び
日米間の取り決めの枠組みの中で処理する、研究
成果の利用の問題も含め、
日米双方にとり満足のいく結果が得られるよう努力する、こういう
立場で今最終調整を行っております。
我が国企業が
参加を希望する場合には、この
参加を円滑ならしめるための取り決めを行おうとしておるので、研究
成果の利用問題を含め、
日米双方にとり満足のいく結果が得られるよう今努力しておるところでございます。
もとより、民間がSDI研究に
参加するかしないかということは、民間
企業の自主的判断で決めることでございます。したがって、SDIの交渉を撤回する、
我が国の方針を撤回する、そういうことはございません。
防衛費の問題でございますが、平和憲法のもと
専守防衛に徹して、他国に脅威を与えるような軍事大国とならない、節度ある防衛力を
整備する、これは前から申し上げているとおりであります。
我々が現在追求しているのは、三木
内閣がたしか
昭和五十一年につくりました
防衛計画大綱水準、それに近づく、達成するということなので、十年以上も前につくった三木
内閣のその水準にまだ達していない。三木
内閣があれをつくったときには数年で達成できると見通してやったことです。しかし、それがまた十年たっても達成できない。そういう
意味でこれが達成のために五カ年計画もつくりまして今努力している
過程なのでございます。そういう継続的な努力の
過程としてこれはぜひごらんいただきたい。あくまでも三木
内閣の一%に関する閣議決定の精神を尊重しつつ、それを実行しているという態度なのでございます。
洋上防空の問題やあるいはそのほかの
技術的な問題等につきましては、栗原君から御
答弁があると思います。
土地問題につきましては、
さきの
通常国会に御提案申し上げた所有期間二年以下の超短期所有
土地に対する重課
制度の創設を含む
土地税制の
見直しは、
税制全般にわたる
抜本的見直しを行うという今般の
税制改革の一環をなすものでありまして、
政府としては、この部分のみを
切り離して実施するということは適当ではない、
税制改革協議会において今包括的に検討が進められておりますので、この推移を見たいと思うわけであります。
固定資産税の
軽減措置につきましては、
昭和六十三
年度の
固定資産税に係る
土地の
評価がえについては、目下自治省において全国的な観点から
評価の基準となる地点について適正な
評価が行われるよう調整を行っております。異常な
地価騰貴の
状況にも十分配慮しながら
課税団体との調整を行っており、既に
住宅用地については
課税標準額を二分の一、さらに
一定規模以下の小
規模住宅用地については四分の一とする
軽減措置等を講じてきておるところでありまして、居住用資産に対しては、これ以上の特例
措置を講ずることは、市町村の財源に与える影響もありまして問題でございます。
固定資産税の負担については、昨年の十月の税制調査会の答申において、多くの納税者に対し毎年
課税されるという
固定資産税の性格を踏まえて、負担の急増を緩和するためなだらかな増加となるよう配慮が必要であるとされておりまして、この趣旨を踏まえて対処する所存でございます。
再
評価税の御提案がございましたが、大
法人の
土地等に対する再
評価税については、所得
課税として
考えてみますと、まだ実現しないキャピタルゲインに対する
課税となっておりまして、これは適当ではない。なぜ大
法人だけを相手にするのかという問題もあります。さらに、
企業のこのような
土地への
課税は、
不況にあえぐ例えば鉄鋼であるとか造船であるとかという装置
産業等に極めて重大な影響を与えるという問題もあるのであります。
地価の
高騰対策につきましては、
地価対策関係閣僚
会議において、
土地取引規制の
強化、国等が
土地売買等の契約を締結しようとする場合の配慮、
土地税制の
見直し等を
内容とする
対策を了承いたしまして推進しているところでございます。
前
国会で、国土利用計画法の一部改正
法案が成立いたしましたので、監視区域
制度を積極的に活用するよう地方
公共団体を指導してまいる所存でございます。なお、税制につきましては、
税制改革協議会において
協議しておりますので、この
状況を注視いたしております。
先日、新行革審に対しまして
地価等
土地対策に関する
基本的かつ総合的な改革方策について提言願いたいと
要請したところでございます。
今後ともこの関係閣僚
会議を機動的に運用いたしまして、
政府・与党あるいは関係業界一体となりまして、
効果的な
地価対策を強力に推進いたしたいと思っております。
残余の
答弁は関係各大臣がいたします。(
拍手)
〔
国務大臣宮澤喜一君
登壇、
拍手〕