○橋本敦君 何のために即時その場で確認をすることが法益になるのか、ここが問題なんですね。つまり、
外国人に対していつどこであろうと四六時中常に国家としてはその
身分関係やあるいは住居関係その他を即座に把握できるように監視の目を張りめぐらしておる、そういう
管理体制、それがまさに
保護法益だということなんですよ。だから、これが一歩超えますと、本当にこの
規定は取り締まり
規定として人権侵害を含む大変なことに、なるんですよ。大体、
登録証明書を四六時中常時携帯しておきなさい、そのこと
自体が、言ってみれば人権を侵害しておるんですよ。その上に、今言ったようなそういう国家の
考え方でやるとすれば、実際の運用においてはよっぽど注意しないと、あなたたちがおっしゃるようなきれいごとの弾力的運用ということで済まされません。
その証拠に、法令研究会編の「
外国人登録法の違反
態様と捜査の要点」という本がある。この本は、警察官と実務関係者の指導書と言われている木です。この本がどういうようにつくられたかといいますと、この「はしがき」にも書いてありますが、この研究会に集まる「会員のすべては、それぞれの面で、直接実務に携っているその道のベテランを網羅している。」。そして「第一線の捜査に従事する捜査官の捜査技術に重点を置いて研究を進め、研究の成果については、まず会員の全体会議に附し、疑問の点はさらに深く掘りさげて
検討した上、その道の権威にも
意見を聴き、もって研究の万全を期しているのである。その第一回の成果がすなわち本書であり、」ということで出版されているんですね。
この本の中で、「
登録証明書の不携帯」ということで百七十四ページ以下に書いてあるんです。どう書いてあるかといいますと、不携帯は「不携帯の現行犯として逮捕し捜査することは少しも差支えないばかりか、被疑者の
登録証明書を確認するまでは釈放すべきでない。」。いいですか、不携帯は
原則として逮捕して、その
登録証明書を確認するまでは釈放するなど言うんです。
なぜ、そういうことまで厳しくやるかというと、こう書いてあるんです。「捜査の段階で不携帯を重視するのは、不携帯事犯で調べているうち
に、密入国、
登録不
申請、確認不
申請、再
交付不
申請、不
受領など」数々の「違反が発見できるからである。」、まさに別件逮捕のような扱いでやるんですよ。不携帯で、まず持っていない、それじゃ逮捕する、連行する、調べる。これをやった上で、そこから次から次へと犯罪容疑を探っていけばよろしい、こう書いているんですよ。
さらに、こうも書いていますよ。「
登録証明書の不携帯は、もちろん軽微な犯罪ではあるが、それは単純な不携帯だけで、これをきっかけとして大きく発展してゆく
可能性があり、事実そこからいろいろな犯罪が発覚している。」、そういうことで、これはもういろんなことを調べていくその端緒としてこれを使うんだ、こう言うんですよ。また、こうも言っていますね。「また緊急逮捕のできない
登録不
申請や、時効にかかっている密入国者などを逮捕する」、それは緊急逮捕できない、そのためにも、それを捕まえる「伝家の宝刀でもあるからである。」、こう言っているんです。
これは大変なことですよ。弾力的運用や、おふる屋やプールの場合は何とか考えますという程度の問題じゃない。第一線の捜査官は、こういうことでまさに
外国人を取り締まりと刑罰の対象とし、この常時不携帯をてことして、そこから他の犯罪を調べ上げるという
手段に、いわば別件逮捕のようなことにも使われておる。こういうことを研究会で堂々と書いてあるんです。こういうような
考え方を警察庁は今も支持しておるんですか。