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最高裁判所長官代理者(上谷清君)
法律相談ということになりますと、普通は、私の言い分が通るでしょうかとか、あるいは
裁判で勝てるだろうかとか、そういうふうなことを聞いてくるということを考えるわけでございまして、
裁判所の方で相手方の言い分を聞かずにあなたの言い分が正しいとか、あるいは勝てるでしょうというふうな相談に応ずることは、これはちょっと
裁判所の性質
上非常にできにくいわけでございます。そういうふうなことになりますと、例えば、
弁護士会で行っておられますような
法律相談とか、あるいは
市町村等が
弁護士をお願いしてやっております
法律相談というようなところへ行っていただくより仕方がないということでございます。
ただ、
裁判所の方もそういうふうな事柄の中身に立ち入ったことではなくて、こういう人に金を貸したんだけれ
ども返してくれなくて困っている、
裁判所にどのようにすれば手続をとってもらえるのかということでございますと、これはもちろん
裁判所の方でも相談に乗っておるわけでございます。これは大
都市の
裁判所でございますとどうしても非常に
事件が多うございますので、余り十分な御説明もできないということもございますけれ
ども、できるだけその辺のところは親切に説明するようにはいたしております。
例えば、
裁判所の窓口に、素人の方でも比較的利用しやすいような印刷した訴状のひな形でございますとか、一定の事項を書き込めばそのまま調停の申し立て書になるというふうな用紙、定型用紙と私
ども申しておりますが、そういうようなものを備えて、また、記載例等も置いておきまして、それをごらんいただければ一応の手続はできるというようなこともいたしておりますし、それもできないという方のためには
裁判所の職員が、これは
法律の定めがございますが、当事者の申し立てを聞いてそれを調書にとって、それで訴訟の訴え、訴状にかわるというようなものにする、あるいはまた調停の申し立て書にかわるというふうなものにするという制度がございます。
これは、
裁判を起こすということになりますと、実はそうは申しましても、実際に当事者が主張しなければならない事柄をいろいろと
整理して書かなければいけないという面がございまして、ある程度紛争の中身に立ち入ったことになりますので、実際問題としては
裁判所の職員がそれを
整理するというのは非常に難しい面がございます。ところが、調停でございますと、今までの紛争のいきさつをそのまま書いていただければいいわけですし、
裁判所の方も聞いたままを書けばそれで申し立て書ということになりますので、それはかなり多く利用していただいております。
具体的な例を申し上げますと、数年前からサラ金で高い利息を払わされて、どうしても支払いができなくなったという消費者の方から、債権者であるサラ金を相手に、むだな弁済をさせられないようにしてほしいとか、あるいは
法律の定めを越えるようなむちゃな制限利息を払わなくていいようにしてほしいという
趣旨の調停申し立てが非常にふえました。そういうふうな
事件に関しましては、
裁判所の方でかなり積極的にそういう債務者の申し立てを調書にとりますとか、あるいは定型的な用紙に書きやすいように説明をして差し上げるということをいたしまして、具体的に申しますとそういう
事件の二割ぐらいは
裁判所の職員の方で当事者の言い分を聞いて申し立て書をつくって差し上げております。それから、説明をして、置いてある用紙にそのまま書き込んでいただくというふうなものも六〇%ぐらいは利用していただいております。全体から言いますと七割から八割ぐらいはそういうふうな
裁判所の方の協力あるいは説明ということで、当事者に書面をつくっていただかなくても済むような手当てをいたしておりますので、できる限りそういうふうなことで努力はしておるわけでございます。
必ずしもこれで十分というわけにはまいらないところはあると思いますし、特に忙しい
裁判所等ではどうしても若干つつけんどんになるというふうなことも、おしかりを受けることもあるわけでございますけれ
ども、今回この
法律を成立させていただきますと、そういうふうな窓口の相談
事務についてもできるだけ充実していこうというふうな計画を持っているところでございます。