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稲村稔夫君
法律の条文に細かくいろいろなことを規定をしろと私も申しません。しかし、この
グリコ・
森永事件の体験というのは労働者というか従業者にいろいろな形でしわ寄せが来るということ、これはもう事実として我々は体験をさせられたということになるわけでありまして、この種の
事件の発生と同時にいろいろな
雇用関係の問題というのが派生をしてくるのはこれは当然のことなんであります。
私はさらに申し上げれば、例えばこれから発生するなどということがあってはならないけれ
ども、例えば通報の義務一つにいたしましても、今これが知れるとちょっとぐあいが悪いと
経営者が判断したときに、知った労働者に対しては、おまえしばらく黙っていてくれよというようなことだって起こらないとは限りません。言ってみれば不当労働行為にまで当たるようなものもいろいろな形で、おまえ、このことを例えばこういう
協力をしてくれなかったら
雇用についてだってということをにおわさないとも限りません。いろいろこういうことを契機にして不当労働行為が行われたって困ります。そういうことで、私は
企業の
経営の安定、安心ができるということと同時に、やはりその際に従業者にいろいろな形で不利益がそれを口実にしてもたらされてはならない。それに対す
る歯どめというものはやはりきちっとしておかなければならない問題ではないか、こんなふうに考えております。
時間の
関係もありますので、私は意見を
中心にきょうは申し上げるような格好になります。そして、さらに刑罰と
関連をした問題で申し上げてまいりますと、特に
毒物の
混入について知ったときに対する通報義務についての刑罰については私はいささか問題があるのではないかというふうに思っております。これは例えば
抑止効果ということで考えるならば、前科になるという、言ってみればそのことが
抑止効果としては非常に大きいかもしれません。しかし二十万円だったら知らせなきゃならない、それよりも安かったら知らせないとか、そういうたぐいのものではないだろうというふうに思っておりますので、そうすると、私はこの二十万円という基準についてもいささか疑問がございます。例えば原子炉等規制法には二十万円というのがありますけれ
ども、これとは性格が全く違うと思います。というのは、原子炉等規制法については、これはその
企業者の側に大方の責任があるそういう事故についての通報義務であります。しかし、これは言ってみれば
企業の方も被害者なんでありますから、そういう被害者についてこういった罰則を付するということはいかがなものだろうかということは、やはり私はやはり疑問として残らざるを得ません。
それからもう一点の、例えば先ほど申し上げましたように、「知ったとき」というけれ
ども、これは今度は
企業、
製造業者等とそこで働く従業者も含まれる。そうすると、例えば不当労働行為みたいな形で、従業者から押さえられた、極端に言えば黙っていないと首になるといったときに、この法文もそのままでいけば、その従業者も通報の義務違反ということになったんでは、これは非常に困るのではないだろうか、こんなことも考えたりいたしますし、またさらに、きのうもいろいろ出ておりましたけれ
ども、「必要な
協力」、「必要があると認めるときは、」、いろいろなことが書かれていますけれ
ども、特にこの場合に、現場の警察官や海上保安官の判断に任される
部分というのに、いろいろとそのときの判断ということには場合によっては人権侵害になることだって発生する可能性というものを持たないわけじゃありません。この辺の運用についてはやはりかなり厳密にしていかなければならない問題ではないだろうか、こんなふうにも思うわけでありまして、その辺のところも今後の本
法律案の運用については十分に考えていただかなきゃならない、そういう問題ではないだろうか、こんなふうに思っております。
さらにもう一点申し上げますと、消費者の被害者に対する救済
措置というものがもちろんこれにはなくて、きのうもいろいろと出ておりました、何でしたか、犯罪被害者の救済支給金ですね。そういうことに頼っておられるわけでありますけれ
ども、それだけでは極めて不十分なのではないだろうか。例えば
企業等も含めて、
企業等を結集して保険
制度を考えるなり、あるいは共済
制度を考えるなりというような形で、このようなことが起こっても
企業の方はそうした賠償の義務ということの中では軽減をされるという体制も新しい
施策としては必要なんではないだろうか。こんなことをもろもろと考えて私は今の問題を提起するわけでありますので、それぞれ
提案者とそれから
主務省庁から簡単にお答えをいただければ大変ありがたいと思います。