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1987-09-01 第109回国会 参議院 内閣委員会 第3号 公式Web版

  1. 会議録情報

    昭和六十二年九月一日(火曜日)    午前十時開会     ―――――――――――――   出席者は左のとおり。     委員長         名尾 良孝君     理 事                 板垣  正君                 岩本 政光君                 大城 眞順君                 久保田真苗君     委 員                 大島 友治君                 岡田  広君                 亀長 友義君                 小島 静馬君                 古賀雷四郎君                 永野 茂門君                 桧垣徳太郎君                 堀江 正夫君                 小野  明君                 野田  哲君                 飯田 忠雄君                 峯山 昭範君                 吉川 春子君                 柳澤 錬造君    国務大臣        外 務 大 臣  倉成  正君        国 務 大 臣        (防衛庁長官)  栗原 祐幸君    政府委員        内閣法制局第一        部長       関   守君        防衛庁参事官   瀬木 博基君        防衛庁参事官   古川 武温君        防衛庁参事官   児玉 良雄君        防衛庁参事官   筒井 良三君        防衛庁長官官房        長        依田 智治君        防衛庁防衛局長  西廣 整輝君        防衛庁教育訓練        局長       長谷川 宏君        防衛庁人事局長  松本 宗和君        防衛庁経理局長  日吉  章君        防衛庁装備局長  山本 雅司君        防衛施設庁長官  友藤 一隆君        防衛施設庁総務        部長       弘法堂 忠君        防衛施設庁施設        部長       鈴木  杲君        防衛施設庁建設        部長       田部井博文君        防衛施設庁労務        部長       山崎 博司君        外務大臣官房審        議官       渡辺  允君        外務大臣官房審        議官       川上 隆朗君        外務省北米局長  藤井 宏昭君        外務省条約局長  斉藤 邦彦君        外務省国際連合        局長       遠藤  實君    事務局側        常任委員会専門        員        原   度君    説明員        外務省北米局安        全保障課長    岡本 行夫君        大蔵省主計局主        計官       岡田 康彦君        通商産業省機械        情報産業局電気        機器課長     横江 信義君        労働省職業安定        局業務指導課長  小倉修一郎君     ―――――――――――――   本日の会議に付した案件 ○防衛庁設置法及び自衛隊法の一部を改正する法  律案(第百八回国会内閣提出、第百九回国会衆  議院送付) ○防衛庁職員給与法の一部を改正する法律案(第  百八回国会内閣提出、第百九回国会衆議院送付  )     ―――――――――――――
  2. 名尾良孝

    委員長名尾良孝君) ただいまから内閣委員会を開会いたします。  防衛庁設置法及び自衛隊法の一部を改正する法律案並び防衛庁職員給与法の一部を改正する法律案の両案を便宜一括して議題といたします。  政府から順次趣旨説明を聴取いたします。栗原防衛庁長官
  3. 栗原祐幸

    国務大臣栗原祐幸君) ただいま議題となりました防衛庁設置法及び自衛隊法の一部を改正する法律案及び防衛庁職員給与法の一部を改正する法律案につきまして、その提案理由及び内容概要を御説明申し上げます。  初めに、防衛庁設置法及び自衛隊法の一部を改正する法律案提案理由及び内容概要について御説明いたします。  まず、防衛庁設置法の一部改正について御説明いたします。  これは、自衛官の定数を、海上自衛隊二百三十九人、航空自衛隊二百六十七人、統合幕僚会議四人、計五百十人増加するものであります。これらの増員は、海上自衛隊については、艦艇、航空機就役等に伴うものであり、航空自衛隊については、航空機就役等に伴うものであります。また、統合幕僚会議については、日米防衛協力推進等のためのものであります。  次いで、自衛隊法の一部改正について御説明いたします。  これは、自衛隊予備勢力を確保するため、陸上自衛隊予備自衛官千人、海上自衛隊予備自衛官二百人、航空自衛隊予備自衛官三百人、計千五百人を増員するものであります。  次に、防衛庁職員給与法の一部を改正する法律案提案理由及び内容概要について御説明いたします。  この法律案は、予備自衛官手当について、その月額現行の三千円から四千円に改定するものであります。  現行月額は、昭和五十四年に定められたものでありますが、その後の経済情勢変化等にかんがみ、これを改定することとしたものであります。  なお、この法律案規定は、昭和六十二年四月一日から施行することとしておりましたが、衆議院において、公布の日から施行し、昭和六十二年四月一日から適用するよう修正されております。  以上が防衛庁設置法及び自衛隊法の一部を改正する法律案及び防衛庁職員給与法の一部を改正する法律案提案理由及び内容概要であります。  何とぞ、慎重御審議の上、速やかに御賛同賜らんことをお願いいたします。
  4. 名尾良孝

    委員長名尾良孝君) 以上で趣旨説明の聴取は終わりました。  それでは、これより質疑に入ります。  質疑のある方は順次御発言願います。
  5. 野田哲

    野田哲君 まず今後の防衛政策といいますか、全体について伺いたいと思います。そこで、日本防衛に非常に深くかかわっているアメリカ国防報告について伺って、アメリカが一体日本防衛に対して何を求めているのか、何を期待をしているのか、そしてそれに対して日本政府あるいは防衛庁としてどう対応しようとしているのか、こういう点からまず伺ってまいりたいと思います。  最初に、一九八七年度アメリカ国防報告、昨年春発表されているものでありますけれども、その中の日本関連部分についての見解を伺いたいと思います。昨年発表されている一九八七年度米国防報告日本関連部分の中で次のような記述があります。「日本は、その重要な位置、改善された対潜機雷戦能力、近代化された自衛隊及び新しい任務(例えば一、〇〇〇カイリの距離までの海上交通路防衛)を引き受けることにより、この地域における西側防衛強化のために重要な役割を果している。」、あるいはまた少し飛んで「日本は、自衛のための、そして米国の前方展開部隊に緊要なインフラストラクチャー支援のための能力を向上しつつある。」、こういうくだりがあるわけであります。これによりますと、日本自衛隊の一千海里のシーレーン防衛、これは西側防衛強化のための役割としてアメリカ国防報告では評価をされているわけであります。いつの間にか日本のやろうとする一千海里のシーレーン防衛西側防衛強化のための役割、こういう形にはまり込んでいるわけですが、そういうつもりで防衛庁はやっているわけですか。
  6. 瀬木博基

    政府委員瀬木博基君) 我が国自衛力の範囲におきまして我が国周辺の数百マイル、また航路帯を設ける場合には一千海里ということで防衛力整備を行っているということは、累次政府から申し述べているところでございます。ただいま先生がおっしゃられましたところの国防報告におきまして、恐らく先生が問題にされましたのは三つの点ではないかと思います。一つは、この国防報告によりますと、日本海上交通の安全について任務を引き受けたと、この引き受けたという点であろうかと思います。この引き受けたという言葉につきましては、これは日本語では引き受けたというふうに訳されておりまして、日本語というのはニュアンスのある言葉でございますから、引き受けたというと何となくだれかから譲られたと、権利なり義務なりを譲られたというようなニュアンスを思い浮かべるところでございますが、英語にいたしますと、これは言ってみれば引き受けたというよりは果たすとかこれを帯びるとかというような、正確に言えばそういう表現であると思います。したがいまして、こういう役割アメリカから日本が譲られて、そういうことを引き受けざるを得なくなったということではございません。  で、また新しいという表現がございますが、これはアメリカ当局がどういうつもりでこういう表現を使ったかということは明らかにいたしませんが、我が国が先ほど申し上げました海上交通の安全について防衛力整備するということは、この八七年の国防報告に出るような時点で決められたことでも何でもございません。特に我が国が新しい任務役割を持つようになったということではございません。また、インフラストラクチャーという言葉が出ておりますが、これは従来からやっておりますように、在日米軍我が国に駐留するに当たりましていろいろな形で施設、区域を提供するということを指しているのであろうかと思います。いずれにいたしましても、我が国防衛力整備ということは、これは当然のことでございますけれども、我が国憲法その他の法規また日本の国策に従いまして、自主的判断によって行っているというところでございます。
  7. 野田哲

    野田哲君 今ここで私の乏しい英語の知識であなたと英語論争をするつもりはありませんが、私がやはり疑問を呈したのは、私が取り上げた文書の引き受けたというのは、これは防衛庁が訳した文書で質問しているんですからね。あなた方の方で、新しい任務を引き受けた、こういうふうに訳している。訳しているということは、やはりそういう意識を持って訳しているんじゃないか、こういう疑問を持っているわけであります。  今のことに続いて、さらに私が疑念を持つのは、ことしの春発表されたアメリカ国防報告、その中の東アジアと太平洋地域という項目の日本関連部分の中に次のような記述があるわけであります。「防衛支出における持続的な実質増継続は、日本が、世界民主主義諸国社会一員としての責任」、そしてそこに説明があるわけです。「この責任中曽根総理大臣によって公式に引き受けられた義務――を認識していることを示す一連の歓迎すべき措置一つである。」、こうなっていますね。つまり、持続的な防衛費実質増継続は、日本民主主義諸国一員としての責任としてやっているんだ、そしてこの責任中曽根総理大臣によって公式に引き受けられた義務だ、これを認識していることを示す一連の歓迎すべき措置一つであると、「その他の積極的な措置としては、一、〇〇〇マイルまでのSLOC防衛受入れ(そのための防衛力は一九八六-一九九〇年度防衛力整備計画において明らかにされている。)や、民間のSDI研究計画参加を認める旨の最近の決定がある。」、こういうふうになっているわけです。  この中にある「この責任中曽根総理大臣によって公式に引き受けられた義務」とは、一体どういう義務中曽根総理大臣は引き受けてこられたのか。こういう義務、そして財政支出を伴う毎年毎年防衛費継続的に増大をしていく、そういう義務を公式に引き受けているのであれば、これは国際取り決めとして国会内容報告をして承認を求めなければならないはずなんですが、このアメリカ国防報告記述をされている「中曽根総理大臣によって公式に引き受けられた義務」というのは一体何であるのか、明らかにしていただきたい。
  8. 瀬木博基

    政府委員瀬木博基君) この点につきましては、予算委員会におきましても問題提起がございまして、中曽根総理からもお答えになったところでございます。一部の新聞に、我が国防衛費継続的な増大中曽根総理の引き受けた義務だというような報道がされたこともございますが、これは私から見ますと、誤訳に基づく誤解であると考えます。  この国防報告で書いてございますところは、中曽根総理が引き受けられた義務というのは、我が国民主主義国一員として果たしていくという役割、そういう一般的なものを我が国が引き受けた義務というふうに記述しておるわけでございまして、このつながりからいたしましても、中曽根総理継続的な防衛費増義務国際的約束として引き受けたというふうにはなっておりません。また、そういうようなことはあり得ないことであります。
  9. 野田哲

    野田哲君 これも私が勝手に訳した自分なりの文書で言っているんじゃないんですよ。防衛庁が訳して防衛庁が発表している文書に基づいて指摘をしているんですから、それをあなた方の方が誤訳だということであるならば、誤りを正す措置アメリカ国防省に対してやるべきじゃないですか。そして、ちゃんとした解釈を発表すべきじゃないですか。いかがでしょうか。
  10. 瀬木博基

    政府委員瀬木博基君) 野田委員がおっしゃられましたところの防衛庁の訳文というのはどこをとらえておられるのかはっきりいたしませんが、防衛庁でもって監修いたしておりますところの国防報告におきましては、ここに誤解がないようにいたしておりまして、「日本が、世界民主主義諸国社会一員としての責任」ということにして、括弧をいたしまして、「(この責任中曽根総理大臣によって公式に引き受けられた義務)」というふうに、責任民主主義社会一員としての責任であるということを明らかにするような文章で訳してございます。
  11. 野田哲

    野田哲君 文章解釈論争ではないのでありまして、私が根拠にしているのは、やはり防衛庁が発表している文書によって質問をしているのであります。やはり「責任」とか「公式に引き受けられた義務」、こういうふうにあなた方の方で訳しているんだから、この義務とは一体何を約束してきたんですか、こういうふうにあなた方の文書によって聞いているんです。中曽根総理が公式に引き受けた義務によって日本防衛費継続的な実質増が行われているんだとこうなっているから、日本防衛費継続的に増大をするためのどんな義務を公式的に引き受けているんですか。具体的でなければ何も義務ということじゃない。どうなんでしょうか。
  12. 瀬木博基

    政府委員瀬木博基君) ただいま申し上げましたことの繰り返しで恐縮でございますが、この国防報告で書いてございますのは、我が国が持続的に防衛費の実質的な増を図っているということは、我が国世界民主主義国社会一員としてそういう責任をみずから感じておるというところ、そういうところから出たところの自発的行為である、そういうふうに書いておると思います。したがいまして、中曽根総理として引き受けられておる責任といいますか、義務といいますか、それはまさに我が国民主主義国社会一員として果たしていかなければならない、そういう認識を指しておるところです。
  13. 野田哲

    野田哲君 栗原長官に伺いたいんですが、そういたしますと、日本防衛費の毎年毎年の増大というのは、これは西側諸国に対する義務としてこういう措置がとられている、こういうことなんですか。
  14. 栗原祐幸

    国務大臣栗原祐幸君) 私はアメリカへ行って話するときに、我が国防衛というのは憲法規定に従って必要最小限度防衛力整備をする、具体的に言うと、防衛計画大綱の水準を達成する、これが目標だと。そのために中期防衛力整備計画というのをつくっておる。これをやるためには継続的計画的にやっていかなきゃならない。これだけ言っておりまして、それ以上のことは言ってないんです。アメリカの方も、西側陣営一員として日本に対して防衛費の増強、そういうような言葉は、またそういうニュアンスは一切私には言っておりません。
  15. 野田哲

    野田哲君 国防報告では、今私が瀬木さんとやりとりしたようなことが書いてあるわけです。それで、私が、持続的な防衛費の増は中曽根総理大臣によって公式に引き受けられた義務だと、こうなっているから、どんな公式の義務を引き受けてきたんですかとこう聞いたところが、いや具体的に義務をということじゃなくて西側諸国一員としてやっている、こういうことなんだと言うから、それでは日本防衛費の毎年毎年の増加というのは西側諸国のためにやっていることなんですかと、こう聞いたわけなんですけれども、そうなんですか。アメリカではそう書いているんですよ。
  16. 栗原祐幸

    国務大臣栗原祐幸君) 西側諸国のためにやるというのじゃなくて、結果として日本がやるべきことをやっておるということが西側諸国の連帯に寄与する、そういうことだろうと思います。しかも、国防報告にいろいろ書いてありますけれども、これはもう今までも随分あったんですが、その言葉のやりとりというのはいろいろなことがありますから、私はそういうことは余り気にしないんです、これは。要するに、日本としてやるべきでないことはやらない、その程度でありまして、一つ一つこれをどうのこうのと言ってみても、結局は見解の相違ということになるのではないかと私は思います。
  17. 野田哲

    野田哲君 気にしないというわけにいかないんですよ、長官。これは防衛庁アメリカ国防報告を訳して、西側諸国のためにやっているんだと、これは公式に中曽根総理が引き受けているんだとこう言っているんですから、日本防衛費の毎年毎年の増大はそれじゃ西側のためにやっているんですかと、こう聞いているのであって、そんなこと余り気にするなど言われたって、国会審議をするのには気にしないわけにいかない。
  18. 栗原祐幸

    国務大臣栗原祐幸君) これは、ある意味において中曽根総理がどう言ったかということの問題だと思います。したがって、中曽根総理国会でどう答弁しているか、それを政府委員から答弁をしてもらいます。
  19. 西廣整輝

    政府委員西廣整輝君) 本問題につきましては、中曽根総理が既にお答えになっておるわけですが、この国防報告につきまして、日本防衛費を増額するという義務があるというようにとられては困ります、そういうことではなくて日本民主主義社会一員としての責任を果たしてきた、そういう民主主義社会一員としての義務を果たすという意味であって、日本防衛費の増額の義務ということはまた別問題でございますというようにお答えになっておるわけであります。その点御理解をいただきたいと思います。
  20. 野田哲

    野田哲君 総理のことの記述なんですから、改めてこれは総理と――もう機会ないかな、機会があればやりたいと思います。  さらに、私がもう一つ明確にしてもらいたいと思うことは、一昨年までの国防報告の中では、シーレーン防衛日本語に訳せば、こういうふうに表現をされていたわけですが、昨年以来の国防報告ではSLOC防衛という言葉に変わってきていますね、アメリカ国防報告が。  こういうふうになっていますね。「その他の積極的な措置としては、一、○○○マイルまでのSLOC防衛受入れ(そのための防衛力は一九八六-一九九〇年度防衛力整備計画に」云々と、こういうふうに変わってきているわけなんです。この今までのシーレーンという表現SLOC防衛の受け入れ、ディフェンス・オブ・シーライン・オブ・コミュニケーション、こうなってきています。これは軍事的にかなり意味が変わってきているんじゃないか、こういうふうに思うんです。SLOCといえば、これはいわゆるレーンでなくて海域の兵たん組織を引き受けたんだと、こういうふうに私なりに解釈をしているわけなんですが、どのような経緯でこのシーレーン防衛SLOC防衛の引き受けと、こういうふうに変わってきたのか、この点の説明をいた。だきたいと思います。
  21. 瀬木博基

    政府委員瀬木博基君) ただいま先生の御指摘になりましたことは、日本でも一部の新聞に出ておったところでございますが、シーレーン防衛というものがいわゆるSLOC防衛ということに変わったというのは、必ずしもアメリカの中でも適切ではないのではないかと思います。昨年の国防報告とことしの国防報告を見てみますと、昨年はシーレーンという言葉SLOCという言葉とが一つずつ出ておったわけでございます。ことしはそれがSLOC一つ出ておるだけでございまして、むしろ使い方が変わったというよりは、用法が二つ一つになったということでしかないのではないかと思います。ちなみに、アメリカ議会報告それから要人演説等を見てみますと、シーレーン防衛という表現は相変わらず使われておるということでございまして、また、私どもからアメリカ当局に聞いたところでも、アメリカ側としてもこの二つに特に差は設けておらないということでございました。  なお、この点はまだ先生が今お聞きになったことではございませんけれども、アメリカが考えておるところのSLOC防衛にしろシーレーン防衛にしろ、そういう概念日本シーレーン防衛というものとが違うのではないかというようなことが、かつて国会でも御質疑があったところでございますが、これはそれぞれの国が海上交通の安全を図るという場合に、それぞれの国がどういうものを最も主眼に置いて海上交通の安全を図っておるか、それぞれの国情によって異なるわけでございますので、アメリカが考えるところのSLOC防衛にしろシーレーン防衛にしろ、そういうものと日本が考えるものと、これはおのずから国柄が違うのでございますので、それはちょっと違うということではないかと思います。いずれにしろ、これはその言葉使い方によって違ってくる差ではないかと思っております。
  22. 野田哲

    野田哲君 私もあれこれひっくり返してみたんですが、一昨年までの日本関連部分記述ではこれはシーレーン、こうなっているわけですね。そうして、昨年からSLOCというところがあったりシーレーンというところがあったりするわけですが、ことしになって、一カ所というのはこれは日本関連部分のところでは明確に一カ所であったにしても、日本が引き受けたということでSLOCと、こういうふうになっているわけであります。同じような意味なんだというような説明もありましたが、これは言葉はちゃんと辞書があるわけですから、私も辞書で調べたわけです。これはそれぞれにやっぱり意味が違うわけです。軍事的にシーレーン防衛SLOC防衛について全く同じように解釈をされているわけですか。
  23. 瀬木博基

    政府委員瀬木博基君) ただいま申し上げたところでございますが、本年になりましてもSLOCまたシーレーン防衛ということは、アメリカの中でもいろいろな機会にそれぞれ使われているようでございます。例えば議会証言を見ましても、ワインバーガー長官アーミテージ国防次官補というアメリカ国防要人議会証言をいたしました際にはシーレーンという言葉を使っておりますし、また大統領が出しておりますところの国家安全保障戦略というもの、これは今年度初めて出たわけでございますが、その中で使われておる言葉シーレーンでございます。他方、もちろんSLOCという言葉も非常に確立した概念だろうと思います。いずれもアメリカの中でも使われておるということではないかと思います。
  24. 野田哲

    野田哲君 今お話があったように、シーレーンという言葉も使われているし、SLOCという言葉も使われているわけでありますから、そこで日本関連のところが今までシーレーンであったところが去年からSLOCになったから、これは軍事的にシーレーンSLOCというのは意味が違うんだから、どうして日本関連部分のところが、言葉シーレーンという言葉SLOCという言葉がそれぞれ使われているのに、日本関連部分のところはシーレーンからSLOCに変わったのか、これは軍事的に質が変わったんじゃないですかということを私は聞いているので、その点を明確にしてもらいたい、こういうことなんです。
  25. 西廣整輝

    政府委員西廣整輝君) 今、瀬木参事官からお答え申し上げたように、私は、シーレーン防衛といい、SLOC防衛といい、内容的にはやや似た言葉であるけれども、米海軍の軍事用語としては従来からも、随分前からSLOCという言葉の方がより使われていたと思います。一般的にシーレーン防衛といえば航路の防衛ということでございますから、より普通の言葉といいますか、語り言葉に近いものだと思っております。なお、SLOC防衛とそれじゃシーレーン防衛と違うかというと、私はそうではなくて、先ほど瀬木参事官がお答え申し上げたように、やはり国によって、同じSLOC防衛であろうがシーレーン防衛であろうが、その形態、重点の置き方が違うということではないかというふうに考えております。  例えばアメリカのように非常に海外依存度が少ない、そういう国でありかつ多くの部隊というものを前方展開させている一そういう国では、海上交通路の安全ということは大部分がそういう前方展開している車への補給路の確保、そういったものがアメリカにとっては非常に重点になるということであろうかと思います。一方、日本のように海外に車を出しているわけではない、国土防衛だけを考えている国では、そういう軍事的な海上補給路というものはほとんど必要がありません。必要なのは国民の生存を図るための各種の物資の輸入等を確保するための海上交通路の確保というものが非常に重要になる。ということになりますと、おのずから同じSLOC防衛あるいはシーレーン防衛といっても、内容的にその重点の置くところが非常に変わってくるというものでありまして、言葉によってその性格が変わるものではなくて、その国々の特性によって何に重点を置いているかということによって、シーレーン防衛なりSLOC防衛内容がおのずから定まってくるというように御理解いただいた方がいいと思います。
  26. 野田哲

    野田哲君 これは、西廣さんともあろう人が、ちょっとそこのところはあいまいなんじゃないんですか。シーレーン防衛といえばやはりいわゆる一つ航路帯、今説明されているのでは一千海里までの航路帯のいわゆるディフェンス、防衛でしょう。SLOCということになると、一定のエリアの兵たん組織、これを提供する、引き受ける、こういうふうにちょっと意味が変わってくるんじゃないんですか。どっちも同じなんだというようなことにはならぬのじゃないんですか、これは。
  27. 西廣整輝

    政府委員西廣整輝君) シーライン・オブ・コミュニケーションというのは決して面というような意味ではなくて、アメリカならアメリカの所要の海上輸送路、それについてのコミュニケーションというものを確保するということでありますから、一本の線ではないかもしれませんが、それぞれの所望の展開部隊等に対する海上交通路の確保ということだろうと思います。  一方、シーレーン防衛と申す場合も、航路帯というふうにシーレーンをお訳しいただくと若干誤解があると思います。シーレーンというのは航路そのものだろうと思いますが、私どもはシーレーン防衛というのは日本語で従来海上交通の安全確保というように申し上げております。したがって、これはオペレーションの対応としては面である場合、あるいは船団護衛のように点である場合、あるいは移動を航路そのものとして帯のような形で守ろうといういろんなオペレーションはあろうかと思いますが、それはシーレーン防衛であったり、あるいはそれをSLOC防衛と呼んだりということによってオペレーションの形態が変わってくるというものじゃなくて、それはやはりそのときどきの状況、何をどういう形で輸送するかという、時に応じてとられるオペレーションの形態はいろいろそれぞれについてあろうかと思いますけれども、SLOCシーレーンというものが全く違ったオペレーションがなされる、そういうような理解ではないというふうに私は考えております。
  28. 野田哲

    野田哲君 これは私にはどうしても了解できない。また機会があれば、これからもいろいろ議論を続けたいと思います。  防衛白書に記述されている事柄について、幾つか伺いたいと思うんです。  栗原長官ね、ことし発表された防衛白書を一読して、これは大変攻撃的というか、平易な言葉で言えばタカ派的な、随分さま変わりをした防衛白書だと、こういう印象を受けたわけであります。きのうの本会議で、いろいろ栗原長官質疑者とのやりとりを聞いている中で、私どもの同僚の中でささやきが起こっておりました。栗原祐幸さんというのは、これはハト派だと思っていたが随分タカ派になったんだな、こういうささやきが起こっておりました。そして、国際情勢のとらえ方にしても、これは余りにも硬直をしているのではないか。一言で言えばソ連は悪玉、アメリカは善玉、そしてソ連がやっていることは軍事力の拡大、影響力の拡大、アメリカのやっていることは抑止力の提供、こういう区分けをされているんです。そして、世界の国々をすべてソ連につく国かアメリカにつく国か、殊さらに区分けをされるような印象なんです。中国についてまでもどっちへつくかということで区分けをされるような印象なんです。今日の国際情勢にはこういう硬直した考え方では対応できないんじゃないか。INFの削減、ダブルゼロの話がことしの秋には決着をしようか、そしてニューヨークかワシントンで米ソ首脳会談が開かれようか、こういう状況であるし、NATOの諸国の中でも西ドイツなどもこういう動きに対応して軍備の削減を図っていく、こういう動きが出ているときに、依然として世界の国々をソ連側とアメリカ側に区分けをして、ソ連のやっていることは軍事力の拡張、アメリカのやっていることは抑止力の提供、こういう画一的な区分けをした中で物を見ていこうというのは、余りにも硬直をしているとらえ方じゃないか、こういうふうにまず私の印象を申し上げておきたいと思うんです。  そこで、まず最初に、ことしの白書の冒頭に「軍事力の意義」、こういう項目が出てきているわけです。平和と安全を保つためには、外交努力や経済の発展による内政の安定だけではだめだ、こういうふうに指摘をされているわけですね。そして、軍事力の意義を強調されている。世界の中には軍事力を持たないという国がある、こういうふうに触れているわけです。そして、それはもう経済的にもごく限られた、人口、面積、経済力、あるいは周辺の国際環境が我が国などとは異なっているんだ、こういうふうに軍事力を持たないとしている国を指摘をされているわけです。そして、この軍事力の役割ないし機能は、究極的には力によって相手に対する要求を充足させていく、こういうふうになっています。  この点について、きのうの本会議中曽根総理は、あのくだりは一般的なことを言っているんだ、こういうふうに言っていましたけれども、一般的じゃないんですよ、これは。「軍事力を持たないこととしている国もあることは事実であるが、これらの国は、いずれもその人口、面積、経済力などや周辺の国際環境がわが国などの場合と異なっている。」、こういうことで、二、三の国を念頭に置いておられるようですが、我が国とは違うんだと、我が国は軍事力を持つ、こういう国の中に置いている。こういう記述になっているわけです。こういう形で、軍事力を持たない国というのは人口の少ない国土の小さい経済力の弱い特定の国なんだ、我が国などとは事情が違うんだ、こういうふうにとらえて、そういう形で軍事力というものは究極的には力によって相手に対する要求を充足させていくんだ、こういうふうになってくると、このくだりというのは、これは憲法九条とはまるきり理念が一致しない、憲法九条を否定する考え方に立っているんじゃないか、こういうふうに思うんです。この点いかがでしょうか。
  29. 瀬木博基

    政府委員瀬木博基君) 白書についてのお尋ねでございますので、私の方からまずお答えさせていただきます。  ただいま先生、この白書の冒頭では善玉悪玉論というものが非常に流れているのではないかという御指摘でございましたが、これは私どもの考えと全く反するところでございます。国際情勢を分析するということに当たりましては、できるだけ客観的に事実に即して判断をするということがまず大切なことでありまして、こういう事実に即した客観的な分析というものを欠く場合には、おのずと分析そのものが誤るということであります。我々としてはできるだけそういう観点から、毎年もそうでございましたが、ことしについてもいろいろな局面にわたりましていろいろな角度から分析したつもりでございます。  世界の国が米ソ二つに属するのではないか、これこそまさに我々が今回の白書においてそういうことを避けようとしたところの非常に大きなところでございまして、世界の軍事情勢の中を流れる東西対立というものが基調をなすということを分析しながらも、他方、その外においていろいろな形で国際的な紛争というものが起こっているということで、特に地域紛争などに注目したというのがことしの一つの特色ではないかと思います。  他方、我々が書きましたのは防衛白書でございます。したがいまして、国際情勢の分析に当たりましても防衛面、軍事面というものを主体として記述する、また分析する、これが防衛白書の特色というか、そういうものでございます。世界的な国際情勢を分析するということであれば、もちろん軍事面に並んで政治、経済、文化、それぞれの局面ももちろん大切だと思いますが、これはあくまでも防衛白書というものの特色としてやはり一つの局面というものを取り出さざるを得ない、これは御理解いただけるところではないかと思います。  で、「軍事力の意義」というものをことし特に冒頭書いて、国民の皆様に世界政治を見る上で軍事力というものは一つの大きな要素であるということを御理解いただくために参考に資したわけでございますが、特に私どもが強調したかったところは、野田先生が今引用されましたところのむしろその下にございますところ、すなわち軍事力というものが決して戦争を行うというところにだけ意義があるのではない。そういう究極的な意味で戦争が行われるときにだけ軍事力が意味があるということになりますと、今日の国際社会の理解を誤る。むしろ、平和時において果たしておるところの軍事力の意味、すなわち政治的な影響力になる、また相手からの影響力を抑止するところにある、そういう意味における平和時における軍事力、国防力の意味というところを我々はむしろ強調したかったわけでございます。
  30. 野田哲

    野田哲君 これは政治論ですからね、私は長官に答えていただきたいと思うんです。  くどいようですが、私が言っているのは、今も瀬木参事官の方から後段のところをよく読んでくれと、こういうことで説明があったわけですが、つまり平和というものは国家間の力の均衡によって保たれているんだ、「世界の大多数の国は、そのために多くの人的、物的資源を投入して努力を重ねている。」、こういうところを読んでくれという意味だろうと思うんです。そしてその前段のところで、軍事力を持たないことにしている国もあることは事実であるが、そういう国々は我が国とは置かれている条件が違うんだと、こういうことですから、我が国は軍事力を持つという立場の方に立っているんだと、こういうふうになっているわけですね。  そうして、この「軍事力の役割ないし機能は、究極的には力によって相手に対する要求を充足させ、あるいは相手の軍事力の行使を直接阻止することにある。」と、こういうふうになっているわけです。だから、ここまで書くと、これは憲法九条の国際紛争を解決する手段としては永久に軍備を放棄する、そしてその「前項の目的を達するため、陸海空軍その他の戦力は、これを保持しない。」と、こういう憲法のくだりと真正面から衝突してくるんじゃないですかと、こういうふうに聞いているんです。そのことについての説明を願いたいと思うんです。
  31. 栗原祐幸

    国務大臣栗原祐幸君) 先ほどのお話の中で、栗原はハト派だと思ったがタカ派だと。これは言論の自由でございますから、これに対してどうこう申し上げません。しかし、私はタカ派とかハト派じゃなくてリベラリストで、おおむねここら辺が常識だろうなと、そういう点を述べているんです。そういう良識というか、常識と合わない人がこれをハトと言い、タカと言うのはこれは自由でございますが、気持ちといたしましては余り力まずに、これは常識じゃないか、そういうようなところでやっておりますことを一応御理解いただきたいと思います。  それから、ここの軍事力の記述でございますけれども、そういったいろいろ自分のそれぞれ持っている良識というものがありますから、自分の定点から見るとこれは行き過ぎじゃないか、あるいは一方から見ればそれは行き過ぎじゃない、しょせんはそういうことだろうというふうに思います。私どもは憲法を逸脱して軍事力を行使するという考え方は毛頭ない。防衛力というもの、必要最小限度、それはもうこの防衛白書全部に通じているところでございますから、そういう意味で御理解を賜りたいと思います。
  32. 野田哲

    野田哲君 だから、こういう軍事力のとらえ方というのは、日本の立場はあくまでも憲法が基本ですから、憲法九条の立場とはこういう軍事力の評価、考え方は両立しないじゃないですか。余りにもこれは走り過ぎているんじゃないか、憲法を無視しているんじゃないか、こういうふうに私は指摘しているんです。
  33. 西廣整輝

    政府委員西廣整輝君) 先生指摘のように、我が国には憲法があり、かつまた我が国自身の政策というものがいわゆるパワーポリティックスでないということは、先生のおっしゃるとおりであります。一方、世界の実情を見ますと、パワーポリティックスといいますか、軍事力というものの外交なり国際関係に占める位置づけというものも、まだ依然としてかなり高いものがあるということも実態だろうと思います。そこで、我々としては、日本としてそういうパワーポリティックスをとるということではなくて、日本のような相当な人口があり産業があり、かつまた地理的にも要衝を占めている国、そういう国が世界の現状を踏まえますと、それなりに日本自身が力の空白になるというようなことがないような、自衛のための最小限の措置というものは現状では必要であるという意味でこの白書の記述も書かれておると思いますので、その点御理解を賜りたいと思います。
  34. 野田哲

    野田哲君 だから、九条はもうあなた方の念頭にはない、こういうことなんですよ。日本のような置かれている地勢の立地条件の中で、経済力もあり人口も多い、そういうところは軍事力を持たなければいけない、軍事力によって究極的には相手に対する要求を充足させていく、そういう立場をとらざるを得ない、こういうふうにもう防衛白書の冒頭から書いてあるわけですから、つまりそれは今まで憲法の九条の枠内での憲法九条といえども防衛のための最小限度の自衛力は認めていたんだ、こういうのが今までの防衛白書の立場であり、そういう説明であったわけです。冒頭にこういうくだりが出てくると、もう防衛庁の皆さんには憲法九条は念頭にないのか、こういう疑問がまず起きてくる。こういうふうに指摘をせざるを得ないじゃないですか。これはもう水かけ論がいつまでも続くと思うのですが、何か御説明がありますか。
  35. 西廣整輝

    政府委員西廣整輝君) 繰り返しになると思いますが、我が国自身が軍事力というものあるいは抑止効果の高い軍事力を持ってみずからの外交政策といいますか、そういったものの遂行の後ろ盾にしようという考えはないということは先ほどお答え申し上げたとおりでありまして、我が国には憲法があり、非核三原則その他の政策があって、そのようないわゆる抑止効果の高いといいますか、相手方に自分の意思を押しつけるような軍事力は持たないという決心をしておるし、現にそういう防衛力整備しておるわけであります。しかしながら、世界の中にはまだそういう動きというものが残っておるという状況下で、日本としては自分自身がそういう積極的な軍事力を背景にした外交政策をとろうというわけじゃございませんが、その種の圧力があった場合に最小限の自衛措置がとれる程度のものは持っておる必要は依然として残っておるということを御理解いただきたいわけであります。
  36. 野田哲

    野田哲君 防衛局長説明はここに書いてあるような説明ではないので、今までのような説明なんだ。ここはあなたの今の説明のようなことにはなっていないんですよ、これは。軍事力を持たないという国々が幾つかあるけれども、それは日本のような条件のところじゃないんだと、こういうところから始まって、軍事力がなければ平和は保てないんだ、究極的には軍事力によって相手に対する要求を達成させていくんだ、こうなっているから、これはいかにも憲法を守ることを義務づけられている政府防衛庁の書くことではないじゃないか、こういう点を指摘をしているんです。繰り返しになりますからもうここでやめますが、これはしかし私はこのままでは済まされない問題だと思っています。  次に、大綱に対する考え方が、栗原長官、随分変わってきていますね。こういうふうになっていますね。「「大綱」の基本的考え方の見直しはもちろん、別表の修正も考えていない。」、こうまず初めに述べているわけです。これに対して、「将来これに有効に対処し得なくなるのではないかといった疑問も提起されている。」、こういうふうに述べているわけですね。「将来、科学技術等の進歩に伴い装備体系等が変わるようなことがあれば、別表に掲げた部隊や主要装備の数量が変動し得ることを考慮したものである。」、こういうくだりがあるわけです。そして、防衛力の効率化のための別表の修正もあり得るんだと。しかし、別表の修正を行う場合でもおのずから限度がある、そしてまた修正に際してはこういう手順を経るんだと、こういうふうに説明があるわけです。つまり、ここに述べている回りくどい記述があるわけですが、これは、今は大綱も別表も変更は考えていないが、しかし、有効に対処できないのではないかという疑問も提起されている。この点で、大綱は情勢が変われば変更する道もあるんですよと、変更をここで示唆されているわけでありまして、これはここでまず布石を打っておいて近い将来大綱の見直し、別表の修正を意図した、そういう意図が隠されているんじゃないんですか。いかがでしょうか。
  37. 西廣整輝

    政府委員西廣整輝君) 大綱につきましては、一昨年以来たびたび論じられておるところでございますが、御承知のように、一昨年五カ年計画ができました。この五カ年計画を実施する段階で、我々としては大綱については、大綱本文はもちろんのこと別表についても一切手を触れないでその整備が行われるという前提のもとに、五カ年計画がつくられておるというように考えております。  なお、大綱そのものについての性格といいますか、一般論としての論議も一昨年以来しばしば行われたわけでございますが、それについて言いますと、大綱の物の考え方あるいは大綱で期待している防衛能力というものについては、私は大綱の考え方そのものを変えない限りこれは不動なものであろうと考えております。なお、その考え方、能力を果たすための部隊のあり方ということについて言えば、これは工夫の仕方なりあるいは技術の進歩、そういったものによっていろいろな態勢というものはとり得るであろうと思います、その能力については。したがって、状況が変われば、同じ大綱で定めた能力を持つについても周辺の軍事的な状況というものが低下すれば、態勢そのものも縮小されてしかるべきものであるし、逆に周辺の状況がより厳しくなれば、そういったものに対応して同様の能力を持つために防衛力というものが一層強化されるということもあり得るだろうと思います。  なお、特に申し上げたいのは、大綱別表について言えば、そこの注に記述されておりますように、それは大綱がつくられた当時の装備体系あるいはそのときもう既に予定をしておる装備体系、そういったものでつくられておりますから、装備体系というのはやはり技術の進歩なり物の考え方が変わってまいりますと、時間がたてばたつほど変わる可能性というものはふえてまいると思っております。そういう意味で変わり得る余地が残されていることは事実でありますが、そういった大綱そのものの性格なり防衛力というものの性格的なものとして変わる余地というものはあるということは事実であるということも、また御理解を賜りたいところであります。例えば同じ力、同じものを持つのにいたしましても、ある部隊についてそれを陸上自衛隊が持つか、航空自衛隊が持つかというようなことで、合理性の面からあるものを横に移すということになりますと、防衛力としては全く変わらなくても、別表としてはそれぞれの自衛隊の態勢の中のどちらで持つかということで変更が行われる場合もあるというように御理解をいただきたいと思いますし、先ほど申したように、同じ小規模侵攻といいながら、周辺の諸国の軍備の動向からいって軍備がどんどん縮小されるというような段階になれば、小規模侵攻対処能力としてもより少なくて済むという状況も出てまいりましょうし、逆に周辺諸国の軍備というものが逐次逐年ふえ、かつ技術的にも高度なものになっていくことになりますと、同じ小規模侵攻対処能力であっても、そのときの相対的な防衛力という意味でより技術的、質的になりあるいは量的に強化しなくちゃならない場合も大綱の中であり得るということもあるということを御理解賜りたいと思います。
  38. 野田哲

    野田哲君 そうすると、もう端的に言えば、大綱の別表というものは周囲の情勢によってふやすこともある、減すこともある、変更はフリーハンドだと、こうおっしゃるんですか。
  39. 西廣整輝

    政府委員西廣整輝君) 御承知のように、大綱の別表も含めまして閣議決定で決められたものでありますので、我々としては常にその枠内でできる限り状況の変化に応じていくということに、その別表を動かさないでその枠内でできるだけ周辺の状況の変化に応じていくということに最大限の努力を重ね、工夫を重ねておるわけであります。しかし、それでは全く動かせないかという理論的な問題になれば、それは動かすことは可能でありますし、それなりの手続、御理解を得て、閣議なり安全保障会議で十分御審議の上、変え得ることもまた事実であろうと思っております。
  40. 野田哲

    野田哲君 そこのところが、ことしは白書に随分回りくどい表現防衛計画大綱に疑問も提起をされている。今は変えるつもりはない、しかし変える場合にはこういう手順を経るんですよと、こういうことでまさにことしのは変更いたしますよという布石と言わざるを得ないと思うし、今の西廣防衛局長の考え方も、言葉はかなり遠慮をされているが、やはり動かすことは可能なんですよとこういう説明なんですが、長官は今どう考えておられるんですか。
  41. 栗原祐幸

    国務大臣栗原祐幸君) 私は、今までも言ってきましたけれども、大綱と別表というのは一体であると。しかし、一体であるからといって別表がいささかでも動かせない、ちょっとでも動かしたらこれはけしからぬ、そういうものじゃないと。それは限定的かつ小規模の侵略に対処し得るという、そういう大綱の精神の範囲内に属するものならば変動はあり得ると、これは多少ふえることもあるだろうし減ることもある、そういう考え方できている。これは私の防衛庁長官になってからの一貫した考え方でございます。ですから、私は、一体であるが、だからといって絶対に別表はいじくっちゃいけない、そこまではなかなか言えないということで来ております。  したがって、今西廣局長からいろいろ言われましたけれども、問題はこういう記述をとらえてどう考えるかですよね。そこが分かれた目だと。例えばいわゆる大綱を見直すべきだという議論もあるがという、そこら辺に重点を置けば、これは大綱を変えるなどということはそう簡単に考えるべきことじゃございませんよと、大綱の中でできるだけのことをやるべきですよと、そういうふうに読めるわけですよ、これ。ですから、そこら辺になりますとまさに政治的判断の問題になる。私の基本的な考え方は、大綱の見直しはすべきでない、現時点においては。これが私の一貫した態度であります。
  42. 野田哲

    野田哲君 そうすると、長官は大綱の見直しはすべきでないと、別表とは一体だと、しかし別表は絶対変えちゃいかぬというものじゃないと、こういうことなんですか。これは一体じゃないじゃないですか。別表は変えてもいいんだということだったら、大綱と別表は一体じゃないじゃないですか。
  43. 栗原祐幸

    国務大臣栗原祐幸君) 一体不可分ではないです。一体である、だから、大綱があって別表があるんです。ただし、別表というものがきちっとしちゃってどうにもならぬというのは、これはおかしい。やっぱり限定的かつ小規模の侵略、そういうものに対処しなきゃならぬと。ですから、それは最後はどうするかというと、それぞれのシビリアンコントロールのルールで決めなきゃならぬということですよ。むやみやたらにやっちゃいかぬ、これはもう当然のことであります。
  44. 野田哲

    野田哲君 大綱の扱いについて、私はずっとここ数年来の防衛白書がどういうふうに大綱を扱っているか、こういうことでずっと五十七年以来振り返ってみたわけなんです。そういたしますと、非常にやっぱりこれはロングランの立場で巧妙に一つずつ布石を打ってきていることがうかがえるわけなんです。  例えば五十七年の防衛計画の大綱、このときは別表もきちっと本文の中へ、防衛計画の大綱という項の本文の中に別表も編集されていたんです。五十八年もそういうふうになっているんです。ところが、五十九年、中曽根内閣になっての二年目のところですね、五十九年のところで別表だけは外されているんですよ。別添えの資料のところへ別表だけが分離されているんです。そして、六十一年のときに、去年ですね、別表の変更も可能なんですよという表現が出てきたわ付なんです。そして、さらにことしはその点が露骨になってきている。  それからもう一つは、防衛費の取り扱いについても、これを越えるためにやはり二年、三年の非常に計画的なこれは知恵を絞った踏み越え方が防衛白書の中でもうかがえるわけなんです。六十年のときは、これはすき間がもうほとんどありませんよと、八十九億しかありません、しかし防衛力は水準に達していないんだ、早く達成することが急務なんですよと、こういうふうに書いてある。六十一年になると、今度はこれやはり一%とのすき間というのは非常に少ない、しかし、この水準の達成が急がれるんです、こうなっている。そして、六十一年の暮れから六十二年の初めにかけてついに一%を踏み越えたわけですね。そういう経過を見ると、やはり二年なり三年なりで段階的に手をつけているんですね。別表についても、そういう形で一つずつ布石を打ちながら変更への扉をずっと開いていった。一%の扱いについても、これはそういう形で二年、三年どこう積み上げてついに踏み越えている。こういうことで、私はこの防衛白書というものは、数年間をずっと見ていくと防衛の動きというものが、特に今まで踏み越えてはならないそこのところを踏み越えるための巧妙なやはりそこに表現記述というものがうかがえるわけなんです。  そこで、この問題で結局どうするんですか、大綱の別表は近い将来変えようという考え方があるんですか、どうなんですか。
  45. 西廣整輝

    政府委員西廣整輝君) 最後の御質問にお答えする前に、まず白書の性格について若干申し述べたいんですが、御存じのように、白書は各省でこの種のものを出しておりますけれども、いずれもこれはアニュアルレポートということで、その一年間にあったことについて整理し記述をするということで、将来への布石というような形で政策提言をするというようなことは慎むという、各省間でそういう申し合わせになっておりますし、各省合い議においてもそういう点は厳密にお互いに審査し合っているという状況であります。したがいまして、今回の大綱等の問題につきましても、この一年間にその種論議があって、その内容を整理したものということでございます。例えば、本日野田先生からいろいろ御質疑賜っているわけですが、その御質疑を通じて新たな問題等が出てまいりますと、それが次の来年の白書に出てくるということでありまして、決して我々が白書に将来を見越して意図的に何かを盛り込んでいくというものではありませんので、その点は御理解を賜りたいと思います。  なお、大綱改定については、我々、御承知のように、現在防衛力整備を進めておりますが、これは一昨年決定されました中期五カ年計画において決定された計画というもの、これを枠組みとし、経費的にも重要内容として枠組みとしておるわけであります。これは先ほどちょっと申し上げましたけれども、大綱の改定は全く意図していない、変えない、現在のままにやるということで、現在その種の大綱について手をつけるという考えは全くございませんので、その点申し上げておきます。
  46. 野田哲

    野田哲君 今の中期防衛力整備計画、五年計画、六十五年が来た段階ではこれは見直すということもあり得るわけですか。どうでしょうか。
  47. 西廣整輝

    政府委員西廣整輝君) 六十六年度以降の防衛力整備につきましてどういう形をとるかということは、この一月の閣議においてまだ決められておりません。したがって、我々としてもどういう形になるかまだわからないわけでありますが、我々としてはやはり六十六年以降の防衛力整備というものが単年度でそのときそのときで積み上げていくということでは、しっかりした計画性を持った防衛力整備というものはできませんので、でき得れば引き続き五カ年計画といったものがつくられた方が、合理的かつ計画的な防衛力整備ができるというふうに考えておりますけれども、これについては今後御審議を賜ることになると思います。  いずれにしても、我々としては六十五年ごろまでの間に、その時点における防衛力整備というものがどういう形であるべきかということについて我々自身としては勉強していきたい、そういったものを安全保障会議等で御披露をして、どういう形式によって防衛力整備を進めていくかということを改めて御審議いただき、御決定いただきたいというように考えております。
  48. 野田哲

    野田哲君 どうも守るという言葉が出てきませんね、これね。  栗原長官、これはやっぱりシビリアンコントロールなんですから、六十五年、西廣さんも今のポストにはいないと思うんです。しかし、栗原さんは長官を二回も務めて自由民主党の――私の方にまだ政権が来るとはちょっと見通しかありませんので、そうすると栗原さんは相当やはり防衛問題についても与党の中の枢要な地位についておられると思うんですが、今長官は六十五年以降について大綱の扱いをどう考えておられますか。
  49. 栗原祐幸

    国務大臣栗原祐幸君) これは総理大臣が、六十五年以降の防衛力整備については、そのときの責任ある政権がもろもろの条件を勘案して決めるべきものである、こう言われております。これは私は可能性の問題としてそれなりの見識だと思いますが、私自体からいうと、防衛大綱の水準を維持する、これはなかなか大変なことだと思います。というのは、いろいろと技術水準等どんどん変わりますからね。ですから私はそれを防衛計画の大綱水準の維持、そういう点に重点を置くべきではないか、こう考えております。ですから、そのときに国際情勢に大きな変化があれば別でございますが、そうでない限りは大綱水準の維持、そういうことでいくべきではないかというのが私の基本的な考え方であります。
  50. 野田哲

    野田哲君 別の問題で進めたいと思うんですが、今度の防衛白書のもう一つの特徴は、国民と防衛ということにかなりのウエートを置かれているように思うわけですが、その中で先進諸国の諸外国の予備役制度というものをいろいろな事例を挙げて、イギリスがどうでございますとか、フランスがどうでございますとか、ドイツがどうだとか、こういう形で予備役制度の事例を盛りだくさんに紹介をされているわけであります。今の法案とも直接かかわる問題でありますが、これはどういう意図で諸外国の例、予備役制度を盛りだくさんに紹介されているわけですか。
  51. 西廣整輝

    政府委員西廣整輝君) 予備自衛官と申しますか、予備役制度の問題につきましては、実は私ども現在防衛力整備を進めております。その段階において、本日もそのための定員増加の御審議をいただいておるわけでございますが、逐次どうしても艦艇、航空機等の就役に伴って人員をふやしていかなくちゃいけないということがあります。一方、できるだけそういった人員がふえないように合理化をしていきたいということを考えて、我々の部隊編成そのものについて申せば、御承知のように、日本はよその国と違いまして、国土防衛というものを中心に考えておりますから、もろもろの作戦支援機能については国内のそういった能力というものに期待をするということで、自衛隊自身が多くの支援機能というものを持たない編成にいたしております。しかし、なおかつ検討していけば、例えばもろもろの装備の修理であるとか整備であるとかそういったことについても、現在以上にあるいは民間等に委託できるのではないかといったような問題もいろいろ問題提起され、勉強いたしておるところであります。  しかしながら、そういった形で平時民間にいろいろな業務を委託していくということになりました際、有事それがどういうことになるのかということを考えておかなくちゃいけない。有事においてもその種機能が確保されなければいけないということになりますと、それではその方々に、やっていただく方々に予備自衛官になっていただき、有事になればそれが自衛官として同様の職務をやっていただけるようになるのかといったようなことを含めて、予備自衛官制度というものを十分活用することによって、できる限り平時の自衛隊の定員というものなどを合理的な持ち方にできるのではないかということで、今庁内で検討いたしておるわけでございます。それに関連して、白書においても各国の予備役制度等についても一応調べ、そういったことも参考にしながら、我が国の特性に合った予備自衛官制度というのはいかにあるべきかということについて、今勉強いたしておる最中でございます。
  52. 野田哲

    野田哲君 今お話がありました予備自衛官制度の活用、適用業務の拡大ということについて庁内で検討委員会があって、その検討の結果が出されているわけですが、その中の予備自衛官制度の活用ということで、「予備自衛官を充てるべき職務について」云々というのがあるわけですが、これはどういう意味ですか、意味は。
  53. 松本宗和

    政府委員(松本宗和君) 現在、検討を進めております予備自衛官をもって充てる職務でございますけれども、現在、現におります予備自衛官についての職務というものにつきましては、ただいまも防衛局長の方からも御説明がございましたし、主として有事における後方支援でありますとか、あるいは損耗補充と申しますか、そういう面で考えておるわけでございますが、今後もっと広い意味予備自衛官を有効に活用していくという道があるのではないか。例えば現在自衛官が実施しておる業務の一部を合理化という観点から民間の方に委託していく、そういうものにつきまして、有事における有効性を確保するという意味から、予備自衛官という制度を活用できないかというようなこと等も考えられるわけでございますが、いずれにいたしましても、そういうものにつきまして具体的にどういうことが考えられるかということについて、現在検討を進めておるというのが実情でございます。
  54. 野田哲

    野田哲君 こういうふうに書いてありますね。「予備自衛官を充てるべき職務については、その拡大を図るとともに(従来は、後方警備・第一線部隊の補充が主体)、諸外国において即応性等に差を設けていることを参考とし、即応度等に応じたカテゴリー化についても検討する」、こうなっているわけですね。諸外国における例を参考にして、即応度等に応じたカテゴリー化を検討するというのは、もっとわかりやすく言えばどういうことなんですか。
  55. 西廣整輝

    政府委員西廣整輝君) 私自身この研究に参画しておりませんので、あるいは違っている点があるかもしれませんが、御承知のように、例えば他国の陸軍部隊等について言えば、その配置の場所あるいはその部隊の性格等によってその即応度、充足度等段階を設けておるのは御承知のとおりであろうと思います。我が国についても、現在はおおむね一律の充足なり即応度を持たせておりますが、それでもなおかつ、例えば北部方面隊に配備されております部隊について言えば、他の地域に配備されておる部隊よりも充足率を高めてあるといったような若干の差異は設けております。そういったことについて、地域的にあるいは部隊の性格によってそれぞれの充足の度合い等を変えるといったようなこともあるいは可能ではないかということも、研究の対象になろうと思います。  また、そういった場合にどういう形でその未充足部分というものを有事埋める手だてをとるかということについても、あわせて考えなくちゃいけない。その際には、当然その重要なソースとしては予備自衛官というものが考えられるということであろうと思いますので、やはり部隊の配置、部隊の性格、そして今度はそれぞれの隊員の職域といいますか、それらによって充足をどう考えるか、かつ即応度をどう考えるか、またそれの裏づけとしての予備自衛官制度をどう考えるかということを、さらに詰めて研究してみたいということであろうと考えております。
  56. 野田哲

    野田哲君 民間委託における予備自衛官制度の活用の可否、こういう点が検討課題になっておりますが、これは具体的にはわかりやすく言えばどういうことなんですか。
  57. 松本宗和

    政府委員(松本宗和君) 民間委託におきます予備自衛官の活用の問題につきましても、現在まだそれほど具体的に御説明し得る段階までいっていないと思います。現在のところ、漠然としたところで大変申しわけないと思いますが、例えば自衛隊が現在実施しております後方関係の業務の一部でございますね、こういうようなものを平時において民間に委託するというようなことを実施したといたしました場合に、有事においてその辺の業務が非常にふえてくるであろうというようなことも考えられるわけでありまして、そういう際に、これの有効な対応といいますか即応といいますか、こういうものを確保するという観点から予備自衛官の制度を活用するわけにはいかないかというようなあたりも、検討の対象として考え得るのではないかということだというぐあいに思っております。
  58. 野田哲

    野田哲君 もう一つ自衛官の未経験者を予備自衛官として採用することが検討課題に入っているわけでありますけれども、こういう発想は一体どういう理由によるものなんですか。
  59. 松本宗和

    政府委員(松本宗和君) 自衛官の未経験者を予備自衛官に採用するという発想自体、ただいま話題になっております予備自衛官の適用業務の拡大、そういうものに伴います予備自衛官制度の拡充と関連のある問題として発想されてきたことでございます。現在、御案内のとおり、予備自衛官自衛官を経験した者の中から採用するということになっておりますけれども、予備自衛官の数が予備自衛官の適用業務の拡大によりまして相当数ふえてまいりますと、現在のソースでは募集し切れないのではないか。つまり、自衛官を経験した者の中からだけ採用しておったのでは予備自衛官を充足し得ないのではないか。そうなりますと、考えられる方法といたしまして、自衛官を経験していない一般の人の中から予備自衛官として採用させていただくという方法も考えられるのではないかということで、その点につきまして、いろんな制度面について検討しておるということでございます。
  60. 野田哲

    野田哲君 自衛官の未経験者までも予備自衛官として採用することを検討されているということについて、一体この予備自衛官というものはどのくらいのものが必要だというふうに考えておられるわけですか。
  61. 西廣整輝

    政府委員西廣整輝君) 予備自衛官については、大きく分けると二つに私は分けられると思っております。  一つは、有事特別に編成しなくちゃいけない部隊に充てる。例えばこれは現在の師団等の主動部隊が戦闘地域の方に移動をする、そういった後について警備責任を負う警備部隊等を新編をするというものがございます。さらに、先ほどちょっと触れましたけれども、現在の部隊編成というのは平時の態勢を中心に考えておりますので、有事の補給部隊であるとか、あるいは前線に出る野整備部隊、そういったものについては非常に手薄な形というか、欠編成にいたしております。そういったものについて、野戦でそういったことができるような部隊というものをつくらなくちゃいけないということがあります。そういったものに充てるべき人員ということが一つございます。  さらに申せば、現在、平時における部隊維持管理をできるだけ俗な言葉で言えば安上がりにするために、充足を計画的に抑えておるという面がございます。そういったものに対して、有事速やかにそれが補てんできるように補充して、全員がそろった形で戦闘行動ができるようにするためにどういう形でそれを維持するか。今は予備自衛官を充てると同時に、新規に募集をするといったようなことも含めて考えておるわけでございますが、そういったものについて予備自衛官で直ちに十分な補充ができる態勢をとるといったようなことも必要であろうと思います。  そういったもろもろの施策を行う際に、例えば平時の学校で勤務しておるとか、後方のもろもろの事務的な組織で勤務しておる者については、それらが多くは戦闘部隊へ配置がえになるということになると思います。そうしますと、そういった後方の整備、修理業務、補給業務等については多くを予備自衛官で充てる、あるいは引き続き民間に委託をするという格好になると思います。そういった場合に、その種いわゆる戦闘職種でないものについて言えば、平時からより民間に委託する分野があるのではないかという研究を今いたしておるわけですが、それが有事になると民間であるということでその業務が行われなくなってしまうということになると大変なことになりますので、その方たちに予備自衛官という資格といいますか身分を与えておいて、有事は自衛官に変更することによって引き続きその種後方業務に従事していただくといったような制度も必要なのではなかろうかというような、多面的ないろいろな面からの検討というものがなされておるわけでございます。
  62. 野田哲

    野田哲君 今の話を聞いておりますと、予備役の招集とか補充兵の招集とかいう四十何年前のイメージがよみがえってくるんですが、人員の構想は持っておられるんですか。どのぐらいのものを考えておられますか。
  63. 西廣整輝

    政府委員西廣整輝君) 現状におきましては、例えば陸上自衛隊でいけば十八万人の定員としての自衛官、それプラス予備自衛官として五万数千人、これは中期計画で予定をしております予備自衛官でございますが、それらを合わせたものが有事における――失礼しました。今の計画は陸海空合わせて五万数千人でございますが、陸自としては四万四千人、これらを含めたものが陸上自衛隊全体の規模というように考えておるわけでございます。  それにつきまして、現在の十八万人というもの、あるいは海空が現在まだ増員をお願いしておりますが、そういった増員が今後どんどん出てくるということでは、なかなかこれに対応していくことも困難になってくると思いますので、そういった増員をできるだけ最小限にとどめるためにも、予備自衛官というもので賄い得るものであればそれによって賄うことの方がより合理的であろうということで、今検討しておるわけでございます。
  64. 野田哲

    野田哲君 いや、私伺いたいのは、民間人までも予備自衛官として採用することを検討されているということなんですから、そこまで手を広げているということであれば、一体予備自衛官というものは人員としてはどのぐらいの人員を持つことが望ましいと考えておられるのか、それを伺っているんです。
  65. 西廣整輝

    政府委員西廣整輝君) 実は、今先生のお尋ねの点を研究課題にしておるわけでございますけれども、我々といいますか、部隊の当事者としてはすべてが予備自衛官ということじゃなくて、現役の自衛官によって充足されていることが望ましいということは間違いないと思うんですが、それではいかにも不経済な平時の持ち方であるということでありまして、これから職域、仕事の内容等十分精査をいたしまして、そういったものについては自衛官でなくてもいいではないか。そういった自衛官はできるだけ戦闘職種の方に回ってもらって、現在例えば補給処等で自衛官が勤務をしておる職域、そういったものについては、それを場合によってはシビリアンにかえる、そうでなければ民間に委託をする。民間に委託をするかわりに、その方たちに予備自衛官になっていただいて、有事においても引き続きその仕事ができるような態勢という裏づけをしておきたいというようなことが、現在研究している研究に際しての着意といいますか、そういった点が可能かどうかということをこれから勉強していきたいというものであります。
  66. 野田哲

    野田哲君 どうもかみ合わないんですが、この程度にとどめて、外務大臣にお見えいただいておりますので、ちょっとそちらの方に質問を移してまいりたいと思います。  この間からちょっと話題になって、きのうの本会議でも話題になっているんですが、アメリカの太平洋艦隊司令官の指示の文書、一九八四年五月八日付のS八一一〇四C、一九八二年七月三十日付S〇二七一〇、きのう本会議でも質問があったときに、倉成外務大臣ですか、総理ですか、文書を持ってないので正確なお答えができないというお話でしたけれども、もう大分前のことなんです。八月の初めごろに公表されたもので、これ本当に外務省としてはこれだけ大きな問題になっていても文書を取り寄せておられないわけですか。
  67. 倉成正

    国務大臣(倉成正君) 昨日、参議院の本会議で久保田委員から御質問がありました際にはまだ正式に入手しておりませんでしたが、昨日の夕刻入手いたしました。
  68. 野田哲

    野田哲君 この文書によりますと、私もかなり前から持っていたんですが、ニュークリア・ウエポン・アクシデント、核兵器の事故、重大事件の対処のための地域調整官というのを指定をしている。そして、その中で地域として日本を指定をして、その地域調整官として在日米軍司令官が指定をされている。こういう事実は文書によって間違いないと思うんですが、いかがでしょうか。
  69. 藤井宏昭

    政府委員(藤井宏昭君) お答え申し上げます。  昨日入手いたしました八四年五月八日付の文書内容の今の点に関連しまして、事実関係を御説明させていただきます。  この文書は、米太平洋軍司令部がただいまの日付、すなわち一九八四年五月八日付で作成いたしました表題はニュークリアセーフティー、核の安全という文書でございまして、太平洋地域における核事故の発生を未然に防止すると同時に、万一核事故が発生した場合、その影響を最小限にとどめるための諸措置に遺漏なきを期するということで、米太平洋軍の指揮下にあるすべての軍の組織が行うべき各種事項を規定したものでございます。これは米軍の内部文書ではございますけれども、作成の当初から秘密指定は行われておりません。秘密でない文書でございます。  この文書は、冒頭におきまして、核事故というものの重大性にかんがみて、米太平洋軍司令官屋下のあらゆる将兵が核事故に対しての意識と申しますか、そういうものをきちっと持つべきであるということを述べております。そこでさらに具体的に言っておりますことは、太平洋地域において核兵器事故が生じた場合には、その処理のための全体的な責任は米太平洋車司令官が有している。通常がかる責任は、適当な司令官を通じて遂行される。現場での管理を効果的なものにするために、次のようなことを適用するということで、米太平洋軍司令官指揮下の米統合司令官――これは二つございます。日本と韓国とございます。それから、米太平洋軍司令官代理、これは六つほど海外についてございますけれども、そのすべてを地域調整官として、それぞれの管轄する地域において生じるすべての核兵器事故の処理のための全体的責任を有する。なお、本件文書には、ただいま申し上げましたように、地域調整官のリストが別添されておりますけれども、これは太平洋地域にある海外における米統合軍司令官及び米太平洋軍司令官代理のすべてを列記しているものでございます。  それから、さらにこの文書は、基地における核兵器事故に際しては現場の司令官が第一義的な現場責任を有する。基地外における核兵器事故に関しては、当該事故に最も近い基地、軍事施設あるいは船舶の指揮官がまず責任をとるというようなことを書いてございます。さらに、米国領域外の地域において、地域調整官は、現地政府職員または任国の米国政府団の長との間で計画の立案、調整を確保するということを述べておるわけでございます。
  70. 野田哲

    野田哲君 今、いろいろ説明があったわけですが、要するに一九八四年五月八日付の合衆国太平洋司令官の指示で合衆国核兵器事故の地域調整官を指定をしている。その中に在韓米車司令官、在日米軍司令官あるいはグアム、フィリピン等々が何カ所か指定をされている。そして、五月八日付の文書では地域調整官の役割といいますか、やるべきこと、そしてさらに核兵器事故あるいは重大事件が発生した場合のとるべき措置、これが具体的に記述をされている。そして、このEODですか、要するに常設の核爆発物処理の分遣隊として、コロラドとかあるいはノースアイランドとかシールビーチとかずっと各市が指定をされている。そのEODの分遣隊の中に、横須賀と佐世保が地域のリストとして指定をされている、こういうふうになっていますね。これは事実でしょうか。
  71. 藤井宏昭

    政府委員(藤井宏昭君) まず事実関係を申し上げますと、ただいま御指摘になりましたEOD云々と申しますのは全く別個の文書で、これは一九八二年七月三十日のアメリカの太平洋艦隊司令官の――先ほどのは太平洋軍でございます。今度は太平洋艦隊司令官の指令の文書でございまして、先ほど申しました一九八四年五月八日付の文書と八二年七月三十日付の文書とは関連がございません。  で、ただいまの太平洋軍司令官の指令文書が言っておりますことは、この爆発物の処理についての一般的な情報、特にどのような手続で展発物の処理というサービスを受けることができるかということを周知徹底せしめるためのこれは指令であるということを冒頭に、その目的というところで述べております。その中で爆発物処理第一グループ云々ということを言っておりまして、その爆発物処理第一グループの分遣隊が日本の佐世保、横須賀にあるということもそのとおりでございますけれども、本文書で言っておりますことは、これは定義というところで言っておりますけれども、このEODすなわち爆発物処理というものの定義は一つは不発弾の処理であると、それからさらに損傷した爆弾等、これについての処理であるということを明確に述べておるわけでございます。  さらに、一部の報道では核兵器事故を含めるように指示されているということでございますが、そのような記述はこの中にございませんで、この中の一部の記述に爆発物処理第一グループ分遣隊が扱う事故の中には――失礼いたしました。EOD一般でございます。の中には核爆発事故も含まれるということは言っておりますけれども、これは理の当然でございまして、爆発物全般ということでございますので、理論的にそれは含まれるということを言っておるわけで、特に爆発物処理分遣隊の任務の中に核兵器事故を含めるというようなことをこの文書が書いておるわけでもございませんし、そのようにまた意図されておるものでもございません。
  72. 野田哲

    野田哲君 確かに、今北米局長言われたように、文書は常設の爆発物処理の分遣隊、EODのリストと、それから核兵器事故の地域調整官を指示した文書とは文書は別のものでありますけれども、一九八四年五月八日付の文書によって核兵器事故の処理のための地域調整官というものが在日米軍司令官、所在は日本、担当地域として日本を指定されているわけですよ。在日米軍司令官、地域日本。そうして、その中に別の文書で横須賀と佐世保に爆発物処理の分遣隊が配置をされている。こうなっていれば、特にこの核兵器事故の処理の調整官として地域日本と指定して在日米軍司令官が調整官として指定をされているということの事実、これはやはり日本にそのような該当事項があるということを示していることにほかならないんじゃないですか。この点をどういうふうに受けとめておられますか。
  73. 倉成正

    国務大臣(倉成正君) 爆発物処理、EODについては政府委員から御説明申し上げましたが、今先生お話しの文書について申し上げますと、核兵器事故を未然に防止するとともに、万一事故が生じた場合等の緊急事態において、米太平洋軍司令官の指揮下にあるすべての地域の米軍代表者あるいは現場の指揮官が、事故の処理あるいは事故による被害を最小限にとどめ、さらには後方対策をどのように処理するかといった手続をあらかじめ指定したものでございます。一般に軍隊が緊急事態に対処するための計画を有することは当然のことでございますし、無論核事故はあってはならないものでございますが、万一かかる事故が生じた場合には、その影響は国境を越えて及ぶ性質のものであり、特定地域における核兵器の存在の有無にかかわらず、米太平洋軍司令官が指揮下のすべての地域調整官に対し、米軍核兵器事故に際して後方対策を含めその処理の任務に当たっての指示をあらかじめ与えておくことは、核兵器保有国たる米国の責任として当然のことであると考える次第でございまして、各地域調整官があらゆる種類の核兵器事故に対してその処理の任務を与えられていることと、核兵器が現にそれらの地域に存在するということとは、全く別問題と考えておる次第でございます。
  74. 野田哲

    野田哲君 倉成外務大臣のそういう説明では、国民の持っている疑惑は、これは解消されませんよ。具体的に文書はこうなっているでしょう。合衆国核兵器事故、重大事件地域調整官。一、合衆国太平洋車総司令官のもとに統合された各司令官及び合衆国太平洋車総司令官の各代表は、核兵器事故、重大事件への対処を以下のように調整するものとする、こういうことで下級統合司令官、合衆国太平洋軍総司令官代表、地域、こういうことに整理されて、在韓米軍司令官、これは地域は韓国、在日米軍司令官、これは地域日本、それから、以下グアム、フィリピン、オーストラリア、タイ、インド洋、南西太平洋、それぞれに官職を指定しその担当地域を指定した、こういう指示文書になっているわけでありますから、政府や外務大臣が言うように、日本には核兵器は存在しない、非核三原則をアメリカは守っている、こういうことであれば、何もここに地域日本ということで指定して調整官を置く必要はないんですよ。どうですか、この点は。
  75. 倉成正

    国務大臣(倉成正君) 米太平洋軍司令官の組織に関する御指摘先生がお話しのとおりでございますけれども、この核兵器事故に関する文書、一九八四年五月八日付について申し上げますと、米太平洋軍司令官から指揮下にあるすべての軍組織に対して一律に与えられている指示であります。その実施の態様は、各軍の組織の置かれた状況によって異なるものと考えておる次第、でございます。現に核兵器の存在しない我が国において、同文書規定されている核兵器事故をコントロールするための計画に関する協議、調整は一切行われておりません。また、我が国との関係でいえば、理論的に考えて、万が一にでも太平洋その他の地域でかかる事故が生じた場合にも、その影響、後方対策を含む対応策が国境を越えて及ぶ性質のものであることから、在日米軍等がこの指示を受ける軍組織の一つとなっていることにそれなりの意味があると考えておる次第でございます。
  76. 野田哲

    野田哲君 大臣、アメリカの太平洋軍司令官が下級司令官あてに一般的に指示した文書じゃないんですよ。ちゃんと地域を指定しているんですよ。その地域を指定された中に韓国とか日本とかフィリピンとか、こうずっとあるわけです。在日米軍司令官は担当地域日本だと、こういうことで核兵器事故の担当地域を調整官として指定されているわけですから、アメリカを信じなさい信じなさいと言うたって、こんな文書があってどうして信じられるんですか。この問題が公表されてから、外務省はアメリカに対して何か説明を求めたんですか。
  77. 藤井宏昭

    政府委員(藤井宏昭君) ただいまの御指摘でございますが、先ほど申し上げましたように、この文書は太平洋軍司令官の隷下のすべての将兵が核事故の重大性にかんがみてその手続、いろいろ意識を高揚する等、それを周知徹底せしめるということが冒頭にある趣旨でございまして、具体的に今御指摘の点は、これはもう先生御存じのとおりでございますけれども、太平洋軍司令官の次にいる司令官というのは統合軍として日、韓、それからあと先ほど申しました代表ということで、グアム等に六人いるわけでございます。その次にいる司令官すべてに対して太平洋軍司令官が指示を与えているということでございます。そういうことでございますので、これは理の当然すべての隷下の指揮官に調整官としての任務を与えたということでございます。
  78. 野田哲

    野田哲君 これは、じゃなぜ地域として日本を指定をし、そして別の文書なんだとおっしゃるが、別の文書です確かに、その別の文書で爆発物の処理の分遣隊がなぜ佐世保と横須賀、そこに指定をされて置いてあるんですか。一般的な文書であり、一般的な爆発物の処理であれば、日本で横須賀、佐世保だけでなくて米軍の所在する爆発物のあるところは全部、横田とかあるいは岩国とか三沢とか、全部一般的な爆発物の処理であれば置いてなきゃいけないんですよ。横須賀と佐世保にだけ置いてあるところに、私どもは非常に問題を感じているわけであります。これは私は外務省ももっとアメリカに対して厳しく対処してもらいたい、こういうふうに考えるわけで、今のような説明だけでは私は国民は理解できないと思うんですが、いかがでしょうか。
  79. 藤井宏昭

    政府委員(藤井宏昭君) ただいまの前段の御質問でございますけれども、なぜ地域かと申しますと、まさにこの太平洋軍司令官の隷下の指揮官がおりますのがこの全部で八つのところでございまして、その担当の地域がそれぞれの地域でございますのでそれを書いてある。つまり、全指揮官に命じたということでございます。  それから第二の点でございますけれども、EODの方は、先ほど申しましたように、片方は太平洋軍司令官の文書、片方はちょっと文字は似ておりますけれども太平洋の海軍でございまして、艦隊でございまして、全く出どころが違う文書でございます。この二つ文書は直接の関係はございません。  ということでございまして、EODと申しますのは、先ほど申しましたように、その文書にも書いてありますように、不発弾の処理等をその主な任務とするものでございまして、およそ爆発物は全部入っておるわけでございますけれども、その不発弾の処理というような任務はすべての軍隊に必要でございます。したがいまして、これはEODの第一グループというのは海軍にございますけれども、EODそのものは海軍のみならず我が国におきましても横田でございますとかあるいは富士とか、ほかの場所にもあるわけでございます。
  80. 倉成正

    国務大臣(倉成正君) 今政府委員から御説明したとおりでございますけれども、いずれにしましても、政府としては核兵器の持ち込みについて事前協議が行われていない以上、米国による核持ち込みがないことについては何ら疑いを有していないことでございます。従来これは答弁したとおりでございますが、また事実の問題として、核兵器事故に関し本文書にあるような協議が行われたこともございません。そういうことも一つ申し添えておきたいと思います。
  81. 野田哲

    野田哲君 この問題はすれ違いですから、もう時間がございませんので、防衛庁、まだ洋上防空の問題とか予算の概算要求のことなどお聞きしたいこといっぱいあるんですが、もう私の本日の時間が来ましたので、栗原長官に一言だけ伺っておきます。  何か九月、国会が終わるとアメリカへ行かれるというようなことが報道されております。いろんな報道があるんですが、FSXについて栗原長官はどういう態度を持ってアメリカへ行こうとされているわけですか。この点だけ一言伺っておきたいと思います。
  82. 栗原祐幸

    国務大臣栗原祐幸君) まだアメリカへ行って何をするかということは決めておりませんけれども、もしアメリカへ行くようになれば、当然FSXの話が出てくると思います。これに関しましては、もうかねてから申し上げているとおり、これは客観的に軍事的、防衛的に見てすぐれたものでなけりゃならないと。それから、日米の安保体制というのがありますから、少なくともアメリカ国防総省の理解を得る必要があると。もう一つは、こういうことには航空機になりますと防衛産業といいますか、企業というのが非常にこれはかかわってくる。今までもそのために大変な不信を起こしたこともございますので、これは日米ともにそういう企業といいますか、防衛産業の影響を受けない、排除する、この三原則でいきたいと考えております。今いろいろと検討しておりますけれども、まだこれだといって結論が出ておりませんので、私が行く場合には、大体こちらの方でこういうことだなというのが固まらなければこれは行けないと思います。まだいつ行くと、こうなったということを言えない段階でございます。
  83. 名尾良孝

    委員長名尾良孝君) 午後一時に再開することとし、休憩いたします。    午後零時五分休憩      ―――――・―――――    午後一時三分開会
  84. 名尾良孝

    委員長名尾良孝君) ただいまから内閣委員会を再開いたします。  休憩前に引き続き、防衛庁設置法及び自衛隊法の一部を改正する法律案並び防衛庁職員給与法の一部を改正する法律案の両案を便宜一括して議題とし、質疑を行います。  質疑のある方は順次御発言願います。
  85. 大城眞順

    ○大城眞順君 まず、今回提案になっております防衛二法につきまして、簡単に触れてみたいと思います。  政府国会に法案を提出する場合、この国会でぜひ可決してくれという前提があるはずであります。しかしながら、防衛法案に関する限り、何かジンクスがあるようでございまして、必ず三国会にまたがるというような流れがあるようでございますけれども、これはちょっと普通でないんじゃないか、このように私は考えます。そういった観点から、今回の提案されております防衛庁設置法及び自衛隊法改正法案がそういった形の中に埋もれてもし可決されない場合、大変自衛隊の運営に支障を来すと思いますけれども、どういった支障があると予想されるのか。定員増の関係あるいはまた予備自衛官の問題も出ておりますけれども、そういったもろもろの問題について、もし可決されなかったらどうなるのか。この辺についてお伺いをいたしたいと思います。
  86. 西廣整輝

    政府委員西廣整輝君) 御承知のとおり、今回お願いしておりますのは海空及び統合幕僚会議自衛官の定数と予備自衛官の員数でございますけれども、この海空の自衛官定数と申しますのは、主に、既に数年前に予算として成立をいたしており契約しておる艦艇なり航空機が製造を終わってその年度に就役をしてまいります。そうしますと、当然のことながら乗組員なり整備員をつけませんと、そのできてきた艦艇なり航空機が運航できないということになります。しかも、御承知のように、自衛隊の場合は、定員を管理する上で実員につきましてはさらに充足率ということで予算措置としてそのうちの一部を放置されております。例えば陸上自衛隊は十八万人でございますけれども、三万人近い者については平時はできるだけそれを節約するということで、予算的な裏づけをつけておりません。海空につきましては九六%の充足率でございます。まあ人員の採用というのは大体新卒者を四月に採用しまして、それが逐次減っていく、途中採用はそれほどございませんので、そういったやめていく人も含めて平均充足率ということで、我々は九八%ぐらい欲しいと申し上げていますが、九六ということでぎりぎりのところで抑えられている。  ということになりますと、仮に艦艇が就役してくる、あるいは航空機が就役してきて現在お願いしているような定数の改正がないとしますと、当然のことながら人を採ることができませんので、既に配分されておる艦艇の人間を一部薄めてきて、それを新しく就役した艦艇に配属するという形をとるわけでございます。そうしますと、艦艇要員というのは普通三直で二十四時間を勤務して航海するわけですが、それが二直しかないというようなことになりますと、せっかく訓練がしたくて一週間なら一週間の航海をしたくても、二直ですとそう続きませんので二日ぐらいで帰ってくるとか、そういうことをせざるを得ない。あるいは一般の部隊等でも非常に超過勤務等が多くなって、自衛官は超過勤務手当というのはございませんけれども、実質的に勤務時間だけ長くなるということをして何とか賄わなくちゃいかぬということになって、非常に過重な労働を隊員に強いなくちゃいけないというようなことになるわけでございます。そういう点で、毎年毎年就役してくる航空機の必要数と、それから一方退役していくのもございます、それとの差し引きをお願いしておりますので、この増員についてはぜひともその予算が成立した年に早目にお認めいただく、法律の方も改正いただかないと大変苦しい状況になるというものであります。  一方、予備自衛官につきましては、午前中の審議でもお答え申し上げたように、これは有事におけるさまざまな役割を果たすために平時から確保しておくというものでございます。ですから、それじゃことしやらなくても来年まとめてやればいいじゃないかという御意見もたまに出るわけでございますけれども、この予備自衛官というのは現状では自衛官を退職した者の中から採ることになっております。したがって、ある年一遍にたくさんの予備自衛官を採用するということは不可能でございまして、毎年毎年やめていく中から選抜をして予備自衛官になっていただくということでありますので、そういう計画的に予備自衛官というものを確保していくためには、どうしても各年ある程度ずつふやしていただくということでないと、何年かに一遍採るといいましても退職者はそう多うございませんし、その中から所望の人員が確保できないということでありますので、毎年のことで大変恐縮でございますが、今回提出しております法案につきましてぜひともお認めいただきたいというように考えておるものであります。
  87. 大城眞順

    ○大城眞順君 ただいまの質問に関連いたしまして、昨年十二月に定員をふやしたばかりでございまして、またことしもふやしていくと。ある程度数年を見通して、そして基準なんかをつくってやる方法はないものですかね。同じ法案を毎年毎年同じように繰り返していくということは、法案の提出のあり方に私はちょっと疑問を立法の立場から持つわけですけれどもね、そんなことはできないんですか。簡単にお答え願います。
  88. 西廣整輝

    政府委員西廣整輝君) 確かに、一般公務員の場合総定員法というものがございまして、総定員の中でやりくりしていくという考え方もございます。また、自衛隊におきましても、陸上自衛隊について言えば十八万人という定員をまずいただいておりまして、その中で工夫を重ねていくということであります。それから、海空については、先ほど来申し上げているように、毎年毎年の積み上げで現在までお願いしておりましたが、それでは陸上自衛隊なりあるいは一般公務員のように一つの総定員としての枠組みを定めて、その中で予算によって、全部一遍に使ってしまうということではなくて、予算的な審議の中で逐次必要なものだけ増員していくという考え方はあろうと思いますが、それはそれなりに相当な根拠のある、例えば五カ年計画なら五カ年計画ができた初年度に、それに基づいて何人になるかということで五年分ぐらいを、ある程度確たる数字を積み上げてお願いをするということでありませんと、やみくもに何万人というわけにまいりませんので、その辺我々としてももう少し研究してみたいと思いますが、今の段階ではそれぞれ就役に合わせてやっているということでございますので、御理解を賜りたいと思います。
  89. 大城眞順

    ○大城眞順君 午前中に野田委員の方から、今回の防衛白書の問題について、攻撃型ではないのかあるいは憲法九条に対する真正面からの対決ではないのかという形で御質問があったわけでございますけれども、ずばり申し上げまして、今回の今日までと違った白書の特徴というものは何ですか。お答え願います。
  90. 依田智治

    政府委員(依田智治君) 御承知のように、五十一年に防衛計画大綱というのができまして、昨年の十月で十年になったということでございます。今回の白書におきましては、こういう防衛力整備に向けての日本の着実な努力というようなものを国民にわかりやすく説明するということで「「大綱」十年のあゆみ」とか、またこの一月に「今後の防衛力整備について」ということで、政府の方で発表しましたそういう方針を国民にわかりやすく説明したというのが大きな特徴ではないか。まあ情勢とかいろいろな面もこの一年間の変化等を重点に記述しておりますが、特にということになりますとそういう点じゃないかと思います。
  91. 大城眞順

    ○大城眞順君 これも午前中にファイター・サポート・エックスの問題について長官に御質問がありましたけれども、このFSX、二、三日うちにベースができそうだ、言葉をかえて言いますならば、何とか話し合いの基礎ができそうだというようなことを私承りましたけれども、最終的に決定するのはいつごろなのか。ことしじゅうにできるのか、できるとするならば今度の概算要求との関係はどうなるのか、十二月の本予算との関係はどうなるのか、その辺の関連性についてひとつお聞きしたいと思います。
  92. 西廣整輝

    政府委員西廣整輝君) FSXにつきましては、先生御案内のように、選択肢としては大きく分けますと三つございまして、一つは現に自衛隊が使っている航空機、これを転用していく、若干改造する場合も含めて転用していくという考え方がございます。もう一つは、アメリカを初め各国が既に持っているといいますか、使用されている航空機、そういったものを新たに外国から導入をしてくるという考え方がございます。最後に、開発をする、つまり新たに独自に開発する場合もございますし、アメリカ等にある航空機を改造、開発する場合もございますが、いずれにしても相当の手を加えて新しいものをつくるという考え方がございます。  この第三番目でございますと、どうしても開発の期間というものが五年なり六年かかりますので、それであればできるだけ早く着手をしなくちゃいけない。つまり、来年の予算にも組んでいただかないといけないということになります。仮に前者の転用なり導入ということになりますと、まだ急ぎませんので予算措置は要りませんが、我々が求めているものがどうしても新しい開発したものでないと得られないという検討の結果になりますと、もう既に余り早い時期でもない、来年でもかからなきゃいけないということですから、十月中にも決心をして、そして予算の追加要求をして来年度予算に組み込んでいただくという措置をしなくちゃいかぬのではないかと考えております。
  93. 大城眞順

    ○大城眞順君 次に、日米安全保障条約と日本における提供米軍基地施設との関連において、二、三御質問を申し上げたいと思います。  日米安全保障条約が今日まで果たしてきた役割というものは、我が日本の発展に大変な私は歴史的な貢献をしてきたものだと、このように確信を持っております。日本の平和そしてアジアの安全、平和のみならず、今日まで日本がここまで経済発展をし、世界のリーダー格の一人として発展してきた。まさにこれは安全保障条約のやはり大きな貢献があったからではないか、このように考えておりまして、私は大きく評価をいたすものでございますし、今後とも日米安全保障条約は堅持すべきであるという姿勢を持っております。  しかしながら、堅持する方法論について私はいささか意見がございまして、みんなで国を守ろう、みんなで国防のことを考えよう、せっかく自衛隊に対する認知も国民世論で八三%までいっているわけですから、ここらで喜びも苦しみもみんなでやっていこうという基本的な姿勢を持ってかからないと、この安全保障条約というものはいつまで続くのか。その辺で、私は将来の見通しについていろいろと物事を考えながらこれから御質問申し上げたいと思います。長官も毎度のこと、国民一人一人の協力を得て我が国をしっかり守っていくんだ、安全、平和を維持していくんだ、このように大変なすばらしい哲学を持っておられるわけでございますけれども、さて、日米安全保障条約の裏というべきか、側面を考えた場合に、今、沖縄の基地の密度というものが大変に濃い。在日米軍施設の七五%はあの小さい沖縄にひしめき合っている、一般常識としてだれでも沖縄は基地が多いなということはわかっておりますけれども、実態として一体どうなのかということをまずもって私は数字を挙げてから、質問に入りたいと思います。  沖縄県の面積というのはたったの二千二百五十一平方キロであります。こんなに小さい島に、四十七年五月十五日復帰当時、米軍八十七施設がありまして、二億八千六百六十万平米の基地がございました。それから満十五年、現在四十六施設に減っております。しかしながら、その面積はちっとも減っておりません。取るに足らないわずかだけしか減っておりません。二億五千三百五十一万平米、三千万平米ぐらいしか減ってないわけでございます。これは、先ほど申し上げましたように、全国の米軍専用施設の七五%を占めておりまして、県土の一一・三%であります。沖縄は、御案内のとおり、四十二の島々に人間がひしめき合って住んでおります。その四十二の島全部合わせて、あるいはほかの無人島も全部合わせて全土の一一・三%。本島だけを考えた場合に、本島の二〇%。地域的に考えますと、沖縄本島の中部地域は二七%も米軍施設なんです。これを市町村におろしてまいりますと、例えば嘉手納町の八五%は米軍基地であります。お隣りの北谷町が六〇%であります。キャンプ・ハンセンのある金武町が六〇%であります。  これを他県に比べてみましょう。一番多いと言われ係る二、三の県を申し上げます。静岡県でたったの一・二%であります。沖縄は一一・三%、全県で。山梨県で一・一%であります。あとはほとんど他県は○・以下であります、県土に占める米軍施設の割合というのが。そして、この施設は沖縄においては九八%が米軍専用であり、それが本土ではたったの一三%。あと八七%は自衛隊との共用に相なっておると思います。これだけ数字を申し上げれば、いかに沖縄に米軍基地が偏っているかということは、私はこれは冷厳なる否定のできない事実だと思います。これを正常なあり方と思っておられるのか。安全保障条約を堅持するという立場から、この実態をどう長官は受けとめておられるのか、長官のひとつ御姿勢をお聞かせ願いたいと思います。
  94. 栗原祐幸

    国務大臣栗原祐幸君) お話を承るたびごとに、大変沖縄の方々が苦労されておるということがよくわかります。安全保障条約の意義を十分に御理解いただいて御協力をいただいているわけでございますが、安全保障条約というのは日本側もこれを守っていかなきゃなりませんが、アメリカ側も安全保障条約の重要性をよくわきまえてそれなりの対応をしていただきたい、これが私の願いでございまして、いろいろの場面でそのことは強くアメリカ側にも申し上げたいと考えております。
  95. 大城眞順

    ○大城眞順君 大臣、私が申し上げたいことは、日米安全保障条約をこれからも堅持していこうという立場の中で、いつまでも沖縄に七五%の米軍基地を持っていいのかどうか。例えばなぜ本土にはほとんどいないというマリン隊が沖縄だけにひしめき合っておるのか。こういったものは沖縄にいなくちゃならないのか。東北ではいかぬのか、北陸ではいかぬのか、北海道にあっては悪いのか、その意味なんです。これ絶対動かしがたいものなのか。今度の質問の資料をいただこうとしたときに、私はこういったなにの資料はないかと、米軍専用の本土における施設の面積は幾らなのか、沖縄は幾らなのかと。これがなかなかおわかりにならぬようでございまして、それは結構ですけれども、中には必ずしも沖縄でなくてもいいという施設が僕はあると思う。そうであるならば、やはり自民党としても基地の整理縮小というものは政策でございますので、そういった見地からも今後は見直すべきだ。ただ必要がなくなったから返しましょうというだけでは、政策的な基地の整理縮小には私はならぬと思うんです。  そういったことを考えた場合に、先ほど申し上げましたように、みんなで国を守るためにみんなで苦しむところは苦しみ、汗を流すところは流してやろうじゃないか。沖縄だけが七五%いつまでも未来永劫に担ぐその義務があるのかなというように私は絶えず自分に反問しながら、基地の実態というものを見てまいりました。歴史の流れで沖縄で唯一の地上戦をやった結果、米軍が乗り込んで勝手ほうだいに土地を接収して、そうして二十七カ年の米施政権下の中においてどんどん勝手ほうだいに、自分の権利ですから、施政権を持っているわけですから、どんどん接収してきた形が沖縄なんです。したがって、とってしまったからもう放すまい、本土に持っていくとまた反対運動が起こるから、沖縄にそのままもう押しつけておいた方が日米安保条約を堅持する意味において有効適切な手段ではないかと、いささかでもそういった考えがあるとするならば、これは私は大変なことだと思うんです。その辺について私は実はお伺いしたかったんですけれども、これはもう未来永劫そうなのか。沖縄の歴史はめちゃくちゃになります、これ。みんなで苦しみましょうや。みんなで国を守りましょうや。分けてくださいよ、ほかにも。これについて長官もう一度。
  96. 栗原祐幸

    国務大臣栗原祐幸君) これは私逃げるわけじゃございませんけれども、現在に至っている今までの経緯がございまするし、この問題については防衛庁が有権的に意見を述べるところでないと思うので、これはどこになりますかね、外務省じゃないかな、今までの経過を有権的に述べられるところからお答えいただきたいと思います。
  97. 西廣整輝

    政府委員西廣整輝君) まず軍事的な観点から一般論を申し上げたいと思いますが、先生御承知のように、日米安保条約というのは、我が国は集団的自衛権を行使しないでアメリカ側日本有事の際には共同対処してもらうというかわりに、日本及び極東の安全のためにアメリカ側施設を提供しているわけでございますが、その際アメリカの前進配備の基地として沖縄というものが、例えばソ連等の戦術航空機の行動半径外にあるということで、地理的にアジアのかなめ石と言われるくらい非常に重要な地位にあるということは否めないと思います。そういうことで、本土が独立した後も沖縄については施政権がなかなか返還されなかったということも、沖縄のこの東アジアにおきます軍事的な地理的な条件として非常に重要な要件にあるということで、アメリカとしてもここにかなり大きな東アジアでは主力になるような部隊を置いているという軍事的な一般的な理由があるということは御理解いただきたいと思います。  もちろん、現在沖縄に所在いたします各種部隊の中で、果たしてそれらはどうしても沖縄になくちゃいけないのか、すべてがそうなのかということにつきましては、十分これからも検討されるべき問題であろうと思いますし、この点につきましては外務省等が中心になってこれからまた御検討になると思いますが、私どもは一般論としては今のような特徴があるということを申し上げたいと思います。
  98. 大城眞順

    ○大城眞順君 軍事的に戦略上沖縄のポジションというものが極東の平和の維持あるいはまた他の諸国との関連において重要な地位を占めておる、位置を占めておるということは私わかります。それにしても、これはいろいろと論議ができる問題だと思うのですけれども、時間がございませんので申し上げませんが、このように私が声を高くして申し上げますのも、私が沖縄の軍事基地の歴史を知っており、自分自体が、私ごとを申し上げて大変失礼だと思いますけれども、戦争で中学生として駆り出された健児の塔の生き残り組なんです。私が国会に出てきたのはただそれだけの理由なんです。亡くなった皆さんにかわって沖縄のためにやりますと言ってきた手前、こういった形で質問せざるを得ないということを御理解願いたいと思います。  先ほど来申し上げましたこの沖縄のひしめき合う基地の実態、安保の立場から外務省はどう考えておるか。
  99. 渡辺允

    政府委員(渡辺允君) お答え申し上げます。  まず日米安全保障条約、日米安全保障体制が日本それから極東の安全に寄与しておりますことにつきましては、先ほど先生指摘のとおりでございます。私どもいろいろな理由から沖縄県において先ほど先生指摘のような数字でお示しになったような米軍の施設、区域が非常に多く存在するということにつきましては、まず機会がございますたびに米国にもその旨をよく説明をし、理解を深めさせるような努力をいたしております。私の記憶に間違いございませんでしたら、外務大臣の米国における講演のような機会にも、具体的に数字を挙げてそのことを述べたことがございます。それからまた、私どもといたしましては、基地の整理縮小、できる限りの返還、それから存在いたします施設、区域、それから米軍の活動から住民の皆さんにお与えをしております影響をできるだけ小さくするということ等につきまして、日ごろできるだけの努力をしておるつもりでございますし、これからも、先生のお話も踏まえまして、できるだけの努力をしていきたいと思っております。
  100. 大城眞順

    ○大城眞順君 このように申し上げてきましたのも、今、沖縄の空、海、陸、安全なところはどこもないんですよ。最近の事故を振り返ってみるまでもなく、沖縄の空は米軍の演習区域の残されたちょっとしたわき道を日本航空や全日空が飛んでおる。海の方は海の方で片っ端から演習区域に入っておりまして、この前みたいに、例のサガ号事件あるいは第一一徳丸事件、米軍からはやられるし、まだ因果関係わかっておりませんけれども、当時の状況からして私は自衛隊と思っておりますけれども、その事故による漁船への爆発物の落下ですか、そういったことを考えた場合に、これいつ何ときどんな大事故が起こるのかなと、もうはらはらするわけです。今日まで毎月、事故、事件、起こらない日はないわけですね。そういったことからして、単に事故をなくすようにしましょうというだけではどうにもならぬ。必ず事故が起こるんです。このサガ号、第一一徳丸のその後のてんまつはどうなっておるのか、簡単にお答えを願います。
  101. 弘法堂忠

    政府委員弘法堂忠君) お答え申し上げます。  まず、防衛施設庁からサガ号の関連についてお答え申し上げます。  本件の事故の後、防衛施設庁から在日米軍司令部に対しまして、また現地の那覇防衛施設局長からは在沖縄の米海軍艦隊活動司令部に対しまして遺憾の意を表明いたしますと同時に、本件事故の原因の究明と再発防止策の確立を要求しております。また、米海軍としましては、とりあえず事故に関する詳細が判明するまで、嘉手納に滞在しておりましたFA18機の同地域いわゆる鳥島における夜間の武器訓練を中止いたしまして、事故調査委員会をつくりまして原因究明に当たっているところでございます。  なお、被害者に対しましては、私どもの方から既に被害の補償の制度等を御説明申し上げております。
  102. 大城眞順

    ○大城眞順君 今たった二つの事件、事故について触れましたけれども、今年に入ってからの主な事故を簡単に読み上げてみますと、キャンプ・ハンセンの実射訓練による砲弾が空中爆発をしまして、その破片が金武町の喜瀬武原という部落の畜舎のトタン屋根をぶち抜いたんですね。これが一月。二月、沖縄市において米兵が日本人女性を暴行した。これはもうしょっちゅうあることです。五月、金武町において酔っ払った米兵が民家に侵入をして器物を破損する。そのほかに、学校校舎まで酔っ払って米兵が入ってきて子供たちをけ散らした。六月、嘉手納飛行場で離陸中のRF4ファントム機から燃料タンクが落下する。六月、キャンプ・ハンセン及び伊江島飛行場で催涙ガスを使用している訓練中に付近にガスが流れでいっている。七月に今申し上げましたサガ号事件が起こった。そのほかに、四月に与那城村というところで児童公園にヘリコプターが不時着をする。同じく嘉手納基地内で先ほど申し上げましたような燃料タンクが落下して燃えている。  米軍人や軍属の検挙状況を沖縄県警の調査から見てみますと、四十七年から六十年まで、いわゆる復帰から六十年まで三千五百十件、凶悪犯、粗暴犯、窃盗犯、知能犯、こういった、まあ犯罪はみんな悪いんですけれども、悪質犯が三千六百六十名です。これが沖縄におる米軍人のぶざまな行動なんです。しかも、キャンプ・ハンセンには下士官を養成する学校があるにもかかわらず、こういったざまなんです。偏見がもしらぬけれども、我々の耳に入るのは、質のいい兵隊はヨーロッパに送って、質の悪いやつは日本に行かせているそうだと。本当ですか、外務省。質の悪いのは日本によこして、特に沖縄でしょうね、質のよいのはヨーロッパに行かせているという話も聞こえるけれども、そんなことありますか。
  103. 渡辺允

    政府委員(渡辺允君) 米軍側が米国それから世界各地に配置しております軍隊の中で、そのように質によって分けているというようなことはあり得ないことではないかと思います。
  104. 大城眞順

    ○大城眞順君 それでは、質問を変えます。  大変外務省や防衛施設庁そして労働省に御迷惑をおかけし、そして御苦労を願ってまいりまして大変感謝申し上げておるわけでございますけれども、例の基地従業員の大量解雇の問題、解決しましたね。長官、どうですか。解決しましたね、これ。
  105. 友藤一隆

    政府委員友藤一隆君) 現在まだ解決をいたしておりません。
  106. 大城眞順

    ○大城眞順君 昨日の夕刊、そしてけさの朝刊、沖縄の地方紙ですけれども、一面トップに一件落着の記事が載っておりますけれども、これはどういうことですか。
  107. 友藤一隆

    政府委員友藤一隆君) 私どもとしては、当該新聞記事で述べられている内容については全く承知をいたしておりません。
  108. 大城眞順

    ○大城眞順君 この新聞内容によりますと、めでたしめでたしの感がいたしますし、また先ほど申し上げました三省庁に対しまして感謝の気持ちが胸いっぱいであるべきだという今の心境ですけれども、どうも新聞記事の出所が、きのうから私も一生懸命走って捜しておりますけれども、県もわからない、防衛施設庁もわからない、外務省もわからない。内容は極めて詳細にわたっておりまして、予備費から二億一千万出しまして、そして例の日米間の特別協定で一億四千万ですから三億五千万調達できるわけでございまして、赤字の四億のうちあと五千方向こうが負担すればできるという解決の方法。そしてまた、週四十時間であったのを四時間短縮いたしまして、三十六時間にしてこれが決着がついた。そして、マネージャー十名以外は全部職場復帰という新聞報道ですけれども、このようになっていきますかな、いきませんかな。
  109. 友藤一隆

    政府委員友藤一隆君) 御案内のとおり、今回の人員整理を米側が通告してきました理由と申しますのは、沖縄の米海兵隊クラブの経営が独立採算性ということもございまして、特別協定というものもございましたが、非常に円高によりまして経営が悪化したというようなことで、通告をしてきたものでございます。したがいまして、私どもその経営の状況でございますとか人員整理を必要とする人数の詳細等について、現在まで種々詰めておる段階でございます。まだ具体的にその解決方法あるいは圧縮の人数等について米側から特段の通報を受けておりません。現在それについて折衝しておる最中でございます。
  110. 大城眞順

    ○大城眞順君 皆さんは撤回は求めなくて圧縮を求めておられるんですか。
  111. 友藤一隆

    政府委員友藤一隆君) 通告について再考をしていただきたいと、考え直していただきたいということは当初から申し上げておりますが、御案内のとおり、なかなか経営状況というものも厳しい状況でございますし、特にこの組織と申しますのが歳出外資金によります独立採算性と、こういうような制約がございまして、全面撤回ということにつきましては大変厳しい条件下にあろうと推察されるところでございます。私どもとしましては、でき得ればその整理が全面的になくなるということが望ましいことはもちろんでございますが、昨今の円高状況、あるいは今回私ども特別協定でもって措置していただきました特別の負担の状況等、これも全面的に米側の負担増をカバーしておるというものでございませんことから、なかなかそういう点については必ずしも楽観を許さないというような状況にあることを御理解賜りたいと思います。
  112. 大城眞順

    ○大城眞順君 おっしゃるとおりだろうと思いますけれども、私はこの二十カ所にわたるマリン隊のクラブの経営は極めてずさんであったのではないか、このように察しております、なぜかと申しますと、過般私は嘉手納基地の副司令官に会いまして、あなたたちのところにもこういった問題が波及してくるのか、あなたたちのクラブはどうなのかと聞いたところ、絶対ございませんと、御心配なくという返事をいただいたわけなんです。同じ歳出外資金でもって独立採算性をとっておるクラブが、マリンの方はだめになって三百三名、今は実質的には二百九十八名ですか、この首切りにつながった。陸と空は何でもないんです。そんなばかな話は私はないと思うんです。そういったことからしますと、私はいわゆる彼らが安上がりするために、一たん首を切って新しい人を初任給で安く持っていこうとするのか、あるいはHPTいわゆるパートタイムに持っていこうとするのか、はたまた業者に請け負わすのか、あるいはまた米軍人の妻や家族にパートとして働いてもらう、いろんなことを考えておると思うんですけれども、今後申し上げたようなことで空軍、特に沖縄空軍、陸軍もおりますけれども、他の軍に波及するおそれはないかどうか、その辺簡単に。
  113. 友藤一隆

    政府委員友藤一隆君) 先ほど御質問ございましたように、なぜ海兵隊のクラブだけがこういう状況になっておるのかということについて私どもも大変な疑念を持ちまして、そういう点からその状況等について詳しく米側にも問いただしておるところでございます。それぞれ組織の実情等も個別には相当違いますので、なかなか一概には申し上げられないということでございますが、特に海兵隊の場合は多くの施設に分散設置しているというような問題もおろうかと思いますし、従業員の年齢構成あるいは給与の構成等あるいは労務に依存する部分の大きさ、こういう点も相当大きく影響をしておるものと推察されるわけでございます。  それで、他のクラブはどうか、こういう点でございますが、現在のところこういった人員整理というような事態には至っていないというふうに見ております。
  114. 大城眞順

    ○大城眞順君 今度この問題の処理を誤りますと、私は大変なことになるんじゃないかと思うんです。全国で三千名もおるこのIHA、インディレクト・ハイヤー・アグリーメント、間接雇用、まあほかの言葉もありますけれども、そうやって間接的に雇用されておる皆さんが三千名、うち二千名が沖縄なんです。これが全部やられますと、平均年齢四十七、八歳になっていますから、もう。沖縄、家族、その構成の数多いんですね。五名平均いくと思うんですよ。千名が首を切られたら五千名の生活がめちゃくちゃにされていくということになりますので、これは極めてこの処理を誤らないように、どんなことがあってもひとつアメリカに食いついていただきたい。しかしながら、アメリカとしてはやっぱり円高ドル安が原因でここまで来ておるはずですから、日本側が手当てしてでもこれをやらぬと大変なことに僕はなるんじゃないか、このように考えますけれども、特別な手当ての方法をもしアメリカ側がどうにもならぬという場合に考えておられるのか。特別協定の中で例えば傾斜配分をするとか、さっき新聞報道の中身を申し上げましたけれども、あるいは予備費から持ってくるのか、あるいはまたこの方々をさっき申し上げました空とか陸の米軍の方に再雇用してもらうのか、その辺いろんなことが考えられますけれども、もし今月いっぱいにこれが十二分な形で解決されない場合には話し合いをもつと延長して解雇を延ばして、何とかどんなことがあってもこれは根気強くやってもらわぬといかぬのじゃないか、このように考えます。  そしてまた、例えば今の海兵隊のクラブの皆さん方に傾斜配分をしますと、じゃ陸軍にもやれ、じゃ空軍にもやれと、いろんな問題が出てくる。そういったものを総合的に考えて、この種の基地従業員に対して今後日本政府としてはどうするのかという一つの政策樹立をしない限り、この問題は大変なことになりますよ。その辺を含めまして、今後の解決方法、そしてまたきのう来いろいろ話がありましたけれども、二、三日うちにアメリカから返事が来るということですけれども、どんな返事が来そうなのか、あるいはまた今後どういった方向に展開していくのか、その辺の見通しをひとつお聞かせいただきたいと思います。
  115. 友藤一隆

    政府委員友藤一隆君) 今この交渉につきましては非常に厳しい状況であることは、先ほど御答弁申し上げましたとおりでございますが、沖縄の現在の雇用状況あるいは安定的な基地の運営維持の必要等、いろいろ日米安保体制の円滑な運用等も十分勘案して、この人員整理についてひとつ十分考えていただきたいということで、私どもあるいは外務省からも申し入れをしてございまして、そのベースに立ちまして現在日米双方で交渉を行っておるわけでございます。私どもとしては、もう本当に人員整理の影響を最小限とするように現在強く要請をしておるところでございまして、制度上許容されるいろんなやり方を工夫していただくようにお願いをしておるわけでございますが、米側もそれぞれの軍の事情もございまして、状況はなかなか予断を許さない厳しい状況であることは事実でございます。ただ、私どもとしましては、先ほど申し上げましたように、沖縄の状況あるいは日米安保の安定的維持の問題、こういったことを勘案しまして、ぎりぎりの期日まで最大限の努力をしてこの問題に対応してまいりたいというふうに考えております。
  116. 大城眞順

    ○大城眞順君 ぎりぎりの期日まで対応してまいりたいという真剣なお答えをいただいたわけですけれども、一歩踏み込んで予想をつけまして、ぎりぎりまでやってもできないようだったら、何とかもっと話し合おうということでその幅を持たせて、先ほど来何回もこの重要性を私は申し上げておりますので、当分の間何とか解雇を待ってもらって、何とかやって話し合いを続けていくという方法もひとつ考えていただかないと、安全保障条約との関連におきまして沖縄県民のいわゆる安保に対する信頼性を失わせないような立場からしても、これは私は大変な重要な問題だと思うんです。だから、私があえて先ほど冒頭に基本的に沖縄基地に対する苦言めいたことを申し上げたのはその辺に理由があるので、真剣にひとつ取り組んでいただきたいことをお願い申し上げます。  こういうふうに沖縄の基地の実態を並べ立ててまいりましたけれども、またまた変なやつが起こっているんですね。せっかく各省庁の御努力、開発庁を初め各省庁の御努力をいただきまして、先般五カ年の沖縄復帰特別措置を延長していただいた。三回目の延長をしていただいたところなんですよね。この復帰特別措置の中の一つ、これを米軍が押しつぶそう、吹っ飛ばそうとしておるんです。大変なことです。米軍がですよ、日本政府が沖縄にやっていただいた復帰特別措置をけ散らしておる。  それは何かと申しますと、復帰特別措置の中で沖縄では基地の町周辺に承認輸出物品販売場というものが置かれております。免税売店みたいなものです。そして、これは音響・映像機器とか、カメラ、時計、宝石等、米軍人、軍属、家族向けの商売をやっておるわけなんです。これは本土のオーディオメーカーあたりから入れて売っておるわけですけれども、アメリカの基地内にあるPXもこのメーカーから入れております。これを最近になって横田にあるPX本部、PFO、パシフィック・フィールド・オフィス、いわゆる契約事務所からメーカーに圧力をかけまして、沖縄のこの種業者に同様な品物は出しては困る、こう言って圧力をかけてきた。沖縄にそういったオーディオ関係の機器を出すならば我々はこれからあんたたちのものは買いません、仕入れません、このような圧力をかけてきた。沖縄でPXで売られるこの種の品物が約四十五億から五十億です。このさっき申し上げました商売、特免業者の売り上げはたったの十五億なんです。そうすると、メーカーとしては十五億の商売にかかわるよりは五十億の商売にかかわった方がいいわけですから、圧力に負けますよ。この米軍のPXというのは、先ほど来の問題とも関連してきますけれども、円高ドル安で恐らく大変な苦しい経営、あるいはまた放漫な経営を先ほどのマリンクラブみたいに私はやっていると思う。それで、そういったことをしてPXでもうけて、そして沖縄のこういった復帰特別措置の売店をつぶしていこう、こういった魂胆がありありと出てきておるわけです。この問題、御承知しておられますか、外務省。
  117. 渡辺允

    政府委員(渡辺允君) ただいま先生指摘の問題につきましては、沖縄現地での新聞報道もございましたし、また先生からも御指摘がございまして、私どもとしてはまず事実関係を確認するように、今調査をいたしております。まだ現在のところ事実関係を十分に把握しておりませんので、まずそれをやらせていただきたいと存じます。その上で、必要に応じまして私どもとしても措置をとることを考えたいと思います。
  118. 大城眞順

    ○大城眞順君 これは早目に対応していただきたい。私はすべての証拠物件を持っております。業者対横田基地の契約担当事務所との電話も全部テープにおさめてあります。はっきり言っている、圧力をかけた人そのものが。これは沖縄の復帰特別措置でできた店であるというのがわかっておりながら、そうやっておる。十月にはセーフ・ア・トーン――英語ですけれども、どういった意味か私もトーンという意味はよくわからぬけれども、セーフ・ア・トーン、いわゆるセールスフェアを毎年PXはやっているらしいんですね。ずっとオーディオ機器を並べましてやっている。それに間に合わせてこんな汚いことをやっているわけです。みんなつぶれちゃうですよ。あなたたちが高く売ればいいじゃないかと、これはPXの連中がこの業者に。商売は自由の原理がありますから、高く売ったらどうにもならぬ、商売は。同じようにこの業者の皆さんも売ってきたわけだ。幾らで売れと言う権利は何もないはずです。  私がここで申し上げたいことは、そういったところまで侵犯してきて――アメリカの軍内のPXだったらアメリカの品物を売ればいいんですよ、こういった貿易摩擦の問題もあるわけですから。日本の品物を買っておって、おまえたちは日本の品物を仕入れるな、我々が売るからおまえら売るなと、そんなことで日本の法律まで犯すような権限はアメリカに僕はないと思う。いかがですか、そんなことをやらせていいのか。事実だとするならば、そんなことがあっていいのかどうか。外務省、その辺お答え願いたいと思います。
  119. 渡辺允

    政府委員(渡辺允君) 先ほどもお答え申し上げましたように、私どもとしてはまず事実関係をぜひ確認させていただきたいと思います。問題があるようなことがございますれば、当然それに対応して措置をすることをいたしたいと思います。
  120. 大城眞順

    ○大城眞順君 私は事実だということで証拠を持っておりますけれども、皆さんはこれからお調べになる。少なくとも外務省は、先ほど来申し上げておる七五%の軍事基地を持って、基地にまつわる問題というのは毎日起こっておるんですよ。少なくとも沖縄をかわいがってもらわないと、安全保障条約は大変なことになりますよ。だから、沖縄に関する記事ぐらいはなにしてやって対応してもらわぬと。きのうだれもわからぬです、外務省は。新聞記事も見てない。僕に言われて初めてもらったんですから。これではもう大変ですよ。私の申し上げるのが事実だとするならば、そんなことがあっていいのか。日本の法律を犯してまでPXは商売する権利があるのかどうか、それを言っておるのであって、もう一回お答えを願いたいと思います。  それから通産省、これが事実だとするならば、メーカーに対してどういった行政指導をなされるかお答え願いたいし、もう時間ですので申しわけございませんけれども、そしてまた労働省まだいら申しゃいますか。――先ほどの例の首切りの問題について労働省としては、いわゆる本土三・二%の失業率の倍の六・四%の失業率を持っている沖縄の雇用安定の立場から、この問題をどう考えてどう対応しておるのか。この辺まとめて御返事をいただきまして、私の質問を終わりたいと思います。
  121. 渡辺允

    政府委員(渡辺允君) 私どもといたしましても、もちろん例えば日本の法令上問題があるようなことでございますれば、それに応じた措置をとるのは当然でございます。
  122. 横江信義

    説明員(横江信義君) 今先生のお話の中に三つの主体が出てまいります。PXそれから家電メーカーそれから周辺の免税店。このうち家電の販売をやっております免税店、あるいは家電製品をつくって卸しております家電メーカー、この辺は通産省の所管でございます。  きのういただいた資料、それから本日のお話で大体の構図がわかったと思いますので、実はけさから幾つか家電メーカーを呼んで事情を調査しておりますが、まずは事実関係をしっかりつかみまして、それから法律関係を詰めて、その後恐らく外務省さんと御相談をしながら、もし問題がありますればその解決に努めていくべきであろうと思っております。
  123. 小倉修一郎

    説明員小倉修一郎君) 沖縄の基地従業員の大量解雇問題につきましては、先生も御指摘のように、沖縄が非常に深刻な雇用失業情勢にあるということでございまして、私どもとしてもこの解雇問題は厳しく受けとめておりまして、防衛施設庁等とも緊密な連携をずっととってまいったところでございます。  この問題につきましては、これまでも関係者の間で協議がなされておりますし、また今後も努力が続けられるというふうに承知をしておりますが、労働省といたしましても、従業員の雇用の安定の確保が最大限図られることを期待いたしておるところでございます。
  124. 飯田忠雄

    ○飯田忠雄君 本日、審議をいたします防衛庁設置法及び自衛隊法の一部を改正する法律案につきまして、拝見をいたしますと人員の増だけでありまして、そのほか改正すべき点が多々あると思われますが、一つも触れられておりません。そこで、そうしたことを中心として、また現在自衛隊に課せられておるところのいろいろの仕事の問題点について質問をいたしたいと思います。  まず最初に、最近全会一致で成立いたしました国際緊急援助隊の派遣に関する法律というのがございます。この法律を見ますというと、その三条に「外務大臣は、被災国政府等より国際緊急援助隊の派遣の要請があった場合において、」「別表に掲げる行政機関の長及び国家公安委員会と協議を行う。」、こうございまして、別表を見ますというと防衛庁は入っておりません。  そこで、お尋ねをいたしますが、自衛隊法の八十二条に災害派遣の規定がございます。この規定を見ますと、自衛隊任務として「天災地変その他の災害に際して、人命又は財産の保護のため必要があると認める場合」、こういう場合には部隊の派遣を長官に申請をして、長官が派遣するということになっております。これは国内ではそうなっております。そして、こういうような規定は余り各官庁の関連の法令を見ましても数多くありません。災害派遣は、今のところ実際にこれを実行し得る力を持つ官庁は自衛隊だと言わざるを得ない現状であります。ほかの機関は、もちろん警察もあり海上保安庁も消防庁もありますが、こういうところは日常の業務に手いっぱいでありまして、とても災害派遣に出ていくだけの余裕はないと思われます。ところが、この国際緊急援助隊の派遣に関する法律というのは、出ていく力のない海上保安庁とか警察とか消防それから市町村、そういうものを使って行うというこれは法律になっております。これは大変ごまかしも甚だしいのではないかと思われるわけであります。そこで、こういうような処置に至りました理由、殊に防衛庁長官がこの法律に名を連ねることを拒否されたその理由その他の問題につきまして、政府のお考えをお尋ねいたします。
  125. 川上隆朗

    政府委員(川上隆朗君) お答え申し上げます。  ただいま御指摘のございました国際緊急援助隊の法律でございますが、従来の例を見ますと、緊急援助活動と申しますのは、主として救助チームそれから医療チーム及び防災、災害復旧のための専門家あるいは災害応急対策のための専門家の派遣、こういうようなもので構成しておるわけでございますが、ただいま先生より特に御指摘のありました救助チームにつきましては、今度の法律によりますれば、市町村の消防救助隊員、これは三十三市町村から約四百名を既に消防庁に登録しているわけでございますが、のほか都道府県警察の救助隊員等の御協力を得て、今後救助活動を進めていくという仕組みになっております。  最近起こりましたメキシコの大地震、コロンビアの火山噴火、エルサルバドルの地震等、幾つかの例がございますわけでございますが、これらの経験に照らして考えてみた場合に、我々といたしましては関係十六省庁、この法律の立て方が十六省庁の御協力を得るということになっておるわけでございますが、十六省庁及び都道府県警察、市町村消防等の御協力によって、機動的かつ効果的に事態に対処し得るというふうに判断した次第でございます。そこで、同法では自衛隊の参加を予定していないという仕組みになっているわけでございます。
  126. 飯田忠雄

    ○飯田忠雄君 今度の法律を見ますと、これは大規模な災害が外国に起こった場合、殊に開発途上国で起こった場合、こういうような場合に救済を出すんだ、そのためのもののように読めるんですが、この法律はね。そうしますと、そういうところへ派遣するところの部隊が、現在我が国の国内で使っておる消防隊とかあるいは都道府県の警察とか、そういうもので任にたえ得るか大変疑問です。災害といいましても、そういうところでは病気もはやるでしょうし、恐らく私は衛生隊が中心をなす、こう判断せざるを得ないわけですね。その衛生隊というものは、今日これを持っておるのは恐らく自衛隊ではないかと思われます。赤十字にいたしましても、赤十字も実は看護婦を持っておるわけじゃないわけです。そういうような点を考えますと、どうもこの法律をせっかくつくって、天下に我が国の国際愛を示しておるんですけれども、実体は何もないと言われても仕方がないもののように思いますが、こういうことについて防衛庁長官はどう考えておられるかという問題です。  自衛隊法の八十三条によりますと、政令で定める者は長官に災害派遣を要求できる、こうなっております。この災害派遣というのは、内地、外地を問わないんです。日本とは書いてないんです。そうなりますと、政令で外務大臣とこう書いたら、外務大臣が請求すれば防衛庁はお出しになるかどうかという問題です。緊急援助隊派遣に関する法律に書かないでこの八十三条でうまく処理する、こういうお考えであるのかどうか、そういう点どうでしょうか。
  127. 西廣整輝

    政府委員西廣整輝君) この国際緊急援助隊につきましては、これまで外務省を初めとする関係省庁で御検討になった結果、従来の経験からいくと自衛隊を含めなくても処理し得る、こういう御判断のもとに今回の法案ができたものと私どもは承知しております。したがって、防衛庁といたしましては、現段階でこの種事案に対して防衛庁としてこれに参加するということは全く考えておりません。
  128. 飯田忠雄

    ○飯田忠雄君 この法律をおつくりになった政府当局、国際緊急援助隊を派遣しなければならないような、そういう実態はどういうものかということを御研究になったんでしょうか。例えば、アフリカでナイル川がはんらんをして大変な洪水になった、疫病が発生した、飢餓者も出る、そういうのを救うんでしょう。そういう場合に日本の町の消防隊を動員して出して役に立つかという問題です。これは行ってみてもどうにもならぬ問題ではないでしょうか。私は、なぜ国内で災害派遣をなさる自衛隊を国外に派遣できないかという問題ですね。自衛隊が持っておる衛生隊、自衛隊が持っておる施設隊、こういうものを現地に派遣して洪水を防いだり病人を看護したり、または自衛隊にあるところの医療隊、これはもう相当の部隊があるはずですが、防衛庁防衛大学枝では医学に関する――防衛大学校ではないにしましても医学校がございますが、ここでは相当お医者さんも養成しておられる。大変な部隊を持っておられるにもかかわらず、なぜそういう国際緊急援助に使えないのかという問題ですが、防衛大臣どうお考えになりますか。
  129. 栗原祐幸

    国務大臣栗原祐幸君) 防衛大臣ではございませんけれども。  この問題は、防衛庁がそういう役割を担う実体的なものがないわけじゃないわけです、これは。しかも、武力を行使するというものではない限り、海外の方へ出るということは憲法上これは認められておる。しかし、いろいろの議論をやっておる中で、防衛庁に対する積極的にやれというのと、いや防衛庁はできるだけそういうものに関与すべきでない、そういう議論が渦巻いておるわけですね。そこら辺は政治的な判断になりますから、防衛庁としては、防衛庁に全体としてそういうことをやるべきであるというような議論が詰まっていったときには、それはそのときにいろいろ検討する、これが今の政治的な対応としては適当ではないか、こう考えております。
  130. 飯田忠雄

    ○飯田忠雄君 こういう災害派遣を防衛庁にやるなという考え方の基礎には、防衛庁というものはこれは憲法が禁止しておる陸海空軍だから、そんなものを使うととんでもないことになるという考え方が基礎にどうもあるように想像されるわけですね。私は防衛庁をそういうものとは考えていないのです。憲法どおりのものと考えているんです。憲法どおりのものと考えておりますから、いわゆる武力じゃない看護兵を送ったり施設隊を送ったりすることは戦争をやりに行くわけじゃないですよ。向こうの人を救済に行くわけですから、そういうことをやるのになぜ防衛庁を出してはいかぬ、自衛隊を出してはいけないんだとこだわるのか。そのこだわる人たちの、議論なさる方々の根底には、防衛庁というものはこれは戦争屋だからいかぬのだという観念がある。この戦争屋だからいかぬという観念を取り去らなければ、私は今後の自衛隊はあり得ない、こう思いますが、いかがですか。
  131. 栗原祐幸

    国務大臣栗原祐幸君) いろいろ意見がございますが、大変貴重な意見だと考えます。
  132. 飯田忠雄

    ○飯田忠雄君 そこで、この問題につきまして国際緊急援助隊というものの実効をあらしめるための法改正をお考えになるかどうか、お尋ねします。これは外務省ですか。
  133. 川上隆朗

    政府委員(川上隆朗君) 将来の問題として自衛隊の派遣、援助隊として海外に自衛隊を派遣する可能性があるのかという御質問だと理解をいたしますが、この問題につきましては、自衛隊の参加につきまして万一それが必要と判断されるようなことになれば、その時点で諸般の事情を十分慎重に考慮しながら検討されるべき問題であるというふうに認識しておりまして、その意味で我々としましては将来の検討課題というふうに考えておる次第でございます。  いずれにいたしましても、その場合でも自衛隊がこの緊急援助隊派遣法に基づきまして国際緊急援助活動を行うためには、法律の別表を国会審議を経て改正する必要があることは、言うまでもないことであるわけでございます。
  134. 飯田忠雄

    ○飯田忠雄君 自衛隊法解釈上、この自衛隊法に書いてあることはすべて国内のことだけであって国際的には関係がないという解釈を一貫してとる、そのために緊急援助隊派遣に関する法律を出したというのであれば、それも一つの立派な理論でございます。そのかわり、自衛隊法はあくまでもそういう態度で解釈されねばならぬことになってしまう。そうなった場合に大変都合が悪いのではないかと私は思いますがね。  そこで、八十三条の「都道府県知事その他政令で定める者は、」の政令ですね、この政令というものの内容はどういうものになっておりますか。
  135. 西廣整輝

    政府委員西廣整輝君) この災害派遣の要請権者としましては、都道府県知事のほか、海上保安庁長官、管区海上保安本部長あるいは空港事務所長、そういった方々、それから、そのほか自衛隊の派遣を防衛庁長官又はその指定する者」ということで、方面総監、師団長、駐屯地司令等に要請することができる云々と書いてありますが、ここに書いてありますのは、地方公共団体の長なりあるいは国民の安全を図っている海上保安庁なりそういった方々を前提としておりますので、海外における災害、そういったものは予定してない法文であろうというふうに私どもは考えております。
  136. 飯田忠雄

    ○飯田忠雄君 わかりました。  それでは、この際ここで自衛隊憲法九条との関係について少しく考え方をはっきりさせておきたいと思います。どうも観念が混乱をいたしますので。  まず、憲法の第九条が決めております戦争放棄、これは「国権の発動たる戦争」、こういうふうに書いてありますが、「国権の発動たる戦争」というのはどういう戦争だと政府ではお考えになりますか。
  137. 関守

    政府委員(関守君) この「国権の発動たる戦争」と申しますのは、それぞれ独立国には戦争する権利がある、交戦の権利があるということを前提として、極めて一般的な意味での国際法上戦争と認められるような戦争という趣旨であったかと思いますが、要するにそういう、今それが国連憲章ではどういうふうになっているかとか、いろいろな問題がございますけれども、国の主権の発動として行うというような戦争ということだと思います。
  138. 飯田忠雄

    ○飯田忠雄君 これは国が自国の国家権力を使って、そして政策として行う戦争であるわけですね。つまり、国家権力を発動して政策として行う戦争。だから、政策として行わない戦争は放棄していないということでしょう。例えば自衛権の名において戦うのはこれは政策としての戦争ですから、そういう戦争は放棄する。ただし、本当の意味自衛、つまり名目じゃなしに、外国から攻められていや応なしに立ち上がって反抗する、これは反抗権の行使ですよ、国際法上のね。そういう場合の戦う、これは戦争です。やっぱり戦うんだから戦争です。そういう戦争までは放棄してはいない。放棄するのは「国権の発動たる戦争」だと、こうはっきり憲法では書いておるんです。そういうことを明確に理解すれば、自衛隊がそういう戦争をやらないものとして確立されておるならば、ちっとも恥ずる必要はないと私は思います。  国家権力がある。つまり一国家権力というものは、これは国家を構成するための必要的条件です。国家権力のないようなものは社会ではあっても国家ではない。しからば、国家権力はこれを保障するものは何であるかといえば、武力です。すべての国家は武力を持つ、これが国家の本質的構造であるわけですね。ただ、その武力をどう使うかの問題は、これは政策の問題であり、法律の問題です。我が国憲法は第九条で国の本質として持つ武力に対して、これを使用していい場合、使用してはいけない場合、明確にしております。つまり、憲法九条というのは国の本質的に存在する武力の行使の規制条項であるわけです。根本的な規制条項ですね。ですから、憲法に反することは一切国としてはできない。そういうものでありますので、武力の中には国権の発動たる戦争に使わない武力、それから国権の発動たる戦争をやるための陸海空軍、そういうものでない武力、これは当然初めから国には備わってあるわけです。そういうものがないものは国家ではない。社会ではあっても、国家ではないのです。そういう意味で、今日まで警察の保有だとかいったようなものについてはどこにも憲法は書いていないわけですわ。いなくても当然警察力というものは国の武力として存在する。  それから、自衛隊というものもそういう意味で国権の発動たる戦争をしない武力、これを警察と名づけるか自衛隊と名づけるかは、それは名づける態度の、名前の問題です。そういう点は明確に私は政府は持っていただきたいと思う。そうでなければ、あいまいな形で自衛権の発動だからいいとか、そういうことは理由にならないんです。自衛権の発動と称しても国権の発動たる戦争ならだめです。  従来、満州事変だとか支那事変だとか、全部自衛権の発動でやりましたが、あれは政策として行った戦争ですから、外国を攻めてこれをとるという政策の戦争です。ですから、許されない。そういうものは放棄したんです。その辺のところを明確にしておいていただかないと、もう話にならぬと思いますね。せっかく国際緊急援助隊、この法律をつくっても、これに防衛庁が加わるのは憲法違反のような考え方を持ってくるのは、憲法の正確な理解がないからです。と私は思います。こういう点について、どうですかね。法制局おいでになるかね。私の見解が間違っておるならば間違っておるとおっしゃってください。
  139. 関守

    政府委員(関守君) 政府といたしましては、憲法第九条第一項は、国際紛争を解決するための手段としての戦争、武力による威嚇あるいは武力の行使というものを禁じておりますけれども、今先生のお話がございましたように、独立国家に固有の自衛権まで否定する趣旨のものではございません。そういうふうに考えられますので、自衛のために必要な最小限度の実力を行使することは憲法の禁止するところではないというふうに、一貫して従来から解釈してきておるところでございます。
  140. 飯田忠雄

    ○飯田忠雄君 今私の言ったことと余り違わないかもしれませんけれども、ちょっと表現の仕方で私は非常に気になるんです。自衛権の行使とか自衛権という問題は我が憲法の九条にはどこにも書いてありません。自衛権と憲法九条とは違うんです。別のものです、これはね。憲法には明らかに国権の発動たる戦争、しかも国際紛争解決のための武力の行使、こういうものは放棄するんだと書いてあります。だから、自衛権を認めたとか認めぬとかといったようなことはあの条文どこをひっくり返しても何も書いてないんですがね、その点はどうですか。
  141. 関守

    政府委員(関守君) 先ほど申し上げましたように、憲法第九条第一項には今御指摘のような規定があるわけでございますけれども、その規定は独立国家に固有の自衛権をも否定するものではないというふうに解せられますので、自衛のために必要最小限度の武力を行使することは憲法は禁止してはいないと、こういうふうに考えているわけでございます。
  142. 飯田忠雄

    ○飯田忠雄君 どうも私の質問が下手かもしれませんが。自衛権というもの、これは国際法の権利です。国際法上との国にも自衛権がある。しかし、自衛権があったって、武力がなかったら自衛権の行使はできないでしょう。そこを私は申し上げているんですよ。つまり、我が国が持っておる武力というものは、自衛権とかそういうものとは関係なしに、もともと日本国家ができたときに、国家をつくったときに国家の構造的本質として存在する国家権力である。国家権力というのは武力を背景にするものでしょう。警察力がなくて国家権力なんて成り立たない。泥棒をしたら、泥棒を捜す警察がいなかったら国家は成り立たない。どんな場合でも警察という武力がある。それからまた、それは名前を警察という名前にしてもいいが、同時に警察予備隊という名前でかつて呼んだことがある、自衛隊を。それを今自衛隊と呼んでおる。自衛隊というのはあくまでも文字どおり自衛の隊です。自衛の隊であって、いわゆる陸海空軍、つまり憲法をつくった当時に考えておったところの陸海空軍という概念に当てはまる、そういう部隊ではない。そういう部隊になることは認めないというわけですね。  もちろん、自衛の部隊というものは自衛できなきゃならぬのだから、当然自衛力というものはなければならぬわけでしょう。そういうものを私はいけないと言っているわけじゃないですよ。ただ、自衛権という国際法上の権利を持ち出して、そして自衛隊の合憲性を言うということはこれは筋が違う。自衛隊の合憲性はあくまでも国家の本質的構造として存在する武力だと。そして、憲法九条というものはその武力に対する規制です。その武力をこういうことに使ってはいけないよということを言っておるあれは条文なんです。国際紛争解決のための武力の威嚇、行使はこれはしない、そういう規定は武力の存在を前提とした規定です。武力を用いないというのは、武力があるからそれを前提とした規定なんだね。そういう点を私は明確にしておきませんと、許される範囲を超過することもわからなくなるし、どこまでが許されるのか、どこまでがやれるかということもわからなくなると私は思いますね。もちろん、そういう問題につきまして、自衛という問題と無関係だとは言いません。しかし、本来的な問題があるということを私は考えていただかなければ、自衛隊の合憲、違憲という問題は解決しないと思いますよ。そういう点についてどうですか。
  143. 関守

    政府委員(関守君) ちょっと御質問の趣旨をとらえかねているので、あるいは的外れのお答えになるかもしれませんけれども、私どもは、先ほど申しましたように、独立国家に固有の自衛権というものは九条の規定によっては否定はされていないというふうに考えておりますので、自衛のために必要最小限度の武力の行使をすることは憲法上許されている、許されないわけじゃないということ、禁止されていないということを申し上げておるわけでございます。
  144. 飯田忠雄

    ○飯田忠雄君 まあこれはやめておきましょうね。議論してもやっぱりすれ違いになるから、やっても無駄ですからやめておきますが、しかし、私の今言おうとしていることは、質問の内容はわかっていただけると思いますがね。わかりませんかな。  次にそれじゃいきますが、防衛という問題につきまして、結局防衛ということは相手があってからの問題ですから、自分だけで防衛なんてありません。相手が攻めてこなければ防衛はないんですからね。相手がなぜ攻めてくるか。相手がこちらを好ましくなく思うからでしょう。ですから、できるだけ外国に対してその感情を刺激するようなことをことさらやる必要はないと私は思うんですよ。  そこで、これは国際法に関係しますので、ちょっと御質問申し上げますが、具体的な事件について質問をするのじゃありません。光華寮問題というのが現在ございます。しかし、この光華寮の問題は、今裁判をやっておるあの光華寮のことは今私は問いません。まだ係属中ですからね。ただ、これを法律的に御質問申し上げたい、光華寮問題ね。  これは今まで新聞記事その他で見ますというと、三権分立の問題だからということで伝えられております。しかし、私は結論を申しますと、これは三権分立の問題じゃない、国家意思の統一の問題だと考えるわけです。御承知のように、日中平和友好条約が締結されます前に、共同声明というものがございました。その共同声明の中で、日本と中華人民共和国と意思が一定しましたのは、考え方が一定してなされたのは、中国というもの、これは中華人民共和国が唯一の政府である、中華人民共和国以外に中国はあり得ない、こういうふうに合意をいたしまして、それを天下に公表したわけですね。そうして、従来条約を結んで国交を持っておった中華民国というのを否定いたしまして、中華民国とは絶縁をして、あれはもうないものとする、こういうことになったわけですね。我が国内においては、中国と言えば中華人民共和国だけである、中華人民共和国以外のものは中国ではない、中国と言うた言葉の中は全部中華人民共和国だと、こういうことに日本国内ではなったわけです。  これはアメリカの場合と違います。アメリカでは、中華民国と中華人民共和国と両方認めています。ですから、日本の場合の問題処理でアメリカとか韓国の問題を持ってきて処理することは、誤りだということにならざるを得ないのです。現在、韓国は中華民国を認めておる、それからアメリカも認めておるということで、だから中華民国はあるとこういうことは、それは事実の問題であって法の問題ではないのです。我が国内においては、法律上は中国と言えば中華人民共和国だけです。そういうふうに我が国は国の意思を統一いたしまして、中国と条約を結んだのです。  こういうことを明確にしておきませんと、やはり相手国の感情を刺激して、日本はうそを言うとか、日本はだます、こういう非難を受けることに相なるわけです。ですから、この種の場合、外交当局はこの点を明確にされておることが必要だと思いますね。しかし、まあ私の見解と違う御見解をお持ちかもしれませんのでお尋ねをいたしますが、どういうふうに政府ではお考えでしょうか、お尋ねします。
  145. 斉藤邦彦

    政府委員(斉藤邦彦君) 我が国は日中共同声明におきまして、ただいま御質問の点に関連する事項につきましては、二つのことを定めております。  一つは、日本政府は中華人民共和国政府が中国の唯一の合法政府であることを承認する、これが第一点でございます。それから、もう一つは、中華人民共和国政府は台湾が中華人民共和国の領土の不可分の一部であることを重ねて表明する、日本政府はこの中華人民共和国政府の立場を十分理解し尊重する、この二点でございます。
  146. 飯田忠雄

    ○飯田忠雄君 国家財産の継承に関するウィーン条約というのを外務省は御存じだと思いますが、まだ我が国は加盟しておりませんがね、これの十五条はどういうふうに御理解をなさっておるでしょうか。
  147. 斉藤邦彦

    政府委員(斉藤邦彦君) ただいま御指摘の条約は数年前に作成されたわけでございますけれども、我が国はこの条約の採択に当たりまして、内容にいろいろ疑義がございましたために棄権をしております。で、いまだに我が国はこの条約の締約国になっていない次第でございます。  もしただいまお尋ねの十五条の内容ということであれば、条文をお読みすればよろしゅうございましょうか。
  148. 飯田忠雄

    ○飯田忠雄君 条文をできれば読んでください。もし今そこになけりゃいいですがね。
  149. 斉藤邦彦

    政府委員(斉藤邦彦君) 多少長くて恐縮でございますが、第十五条は新独立国について規定しております。 1 承継国が新独立国である場合、  (a) 先行国の所有する不動産であって、国家承継が関連する領域内に所在するものは、承継国に移転する。  (b) 国家承継が関連する領域に属していた不動産であって、従属していた期間中この領域の外に所在し、かつ、先行国の国家財産となっていたものは、承継国に移転する。  (c) 先行国の所有する不動産であって、(b)に掲げられたものに含まれず、国家承継が関連する領域の外に所在し、かつ、その創設 について従属地域が寄与したものは、その従属地域の寄与の程度に応じて、承継国に移転する。  (d) 先行国の所有する動産であって、国家承継が関連する領域についての先行国の活動に係るものは、承継国に移転する。  (e) 国家承継が関連する領域に属していた期間中先行国の国家財産となっていたものは、承継国に移転する。  (f) 先行国の所有する動産であって、(d)及び(e)に掲げられたものに含まれず、かつ、その創設について従属地域が寄与したものは、その従属地域の寄与の程度に応じて、承継国に移転する。 以下、二項、三項、四項とございますが、直接関係ないかと思いますので省略させていただきます。
  150. 飯田忠雄

    ○飯田忠雄君 今の条文だけでは、今度の中国の財産の処分の問題は解決は難しいかもしれませんがね。しかし、我が国の立場、我が国が宣明した国家意思は、先ほどおっしゃいました、台湾も含めて中国は一つであって、中華人民共和国だけが中国なんだと、こうおっしゃいましたね。  そこで、我が国の領域内にあるところの中国財産――中国の財産ですよ、これは動産、不動産を問わず中国の財産、中国という政府機関が持っておった財産、こういうものは承継するかどうか。つまり、従来中華民国が持っておったものですが、この中華民国は日本が国交を断絶して否定しました。否定して、あるのは中華人民共和国だけだとこうなった場合、日本国内にある中国財産は中華人民共和国に承継されるのではないか、受け継がれるのではないかというふうに思われるのですが、その点の御見解はどうでしょう。
  151. 斉藤邦彦

    政府委員(斉藤邦彦君) 国際法上の一般論としてお答えさせていただきますが、一国の政府の承認関係が移った場合の国有財産の取り扱いでございますけれども、国有財産のうちのいわゆる外交領事財産が新たに承認された政府に帰属するということにつきましては、国際法上異論のないところだと存じます。  他方、外交領事財産でない国有財産、これらにつきましては、国際法上必ずしも確立した原則というものが存在しておりません。したがいまして、これらの財産の取り扱いにつきましては、個々の具体的なケースに従いまして、それぞれの事情に着目して判断されるべきものと考えている次第でございます。
  152. 飯田忠雄

    ○飯田忠雄君 それでは、先ほど読んでいただきましたウィーン条約でいきますと、どうなるでしょうか。
  153. 斉藤邦彦

    政府委員(斉藤邦彦君) 申しわけございませんが、我が国はこの条約の内容につきましていろいろ疑義を有しておりまして、したがいまして採択会議でも棄権したところでございます。それから、この条約はいまだに発効しておりませんし、締約国はまだ一つもないような状況でございます。したがいまして、我が国が、我が国政府といたしましてこの条約につきまして有権的な解釈と申しますか、確立した考え方を持っているわけではございません。  ただ、私個人の理解しているところで差し支えないということであれば、この条約におきましては承継の際、国有財産を二つの種類に分けて考えるという考え方は必ずしもとっていないというふうに理解しております。
  154. 飯田忠雄

    ○飯田忠雄君 それでは、今の問題はこのぐらいにしておきまして、次に自衛隊法につきまして非常に疑問に思われる点が多々あるわけでございます。例えば、防衛出動の場合ははっきりとわかる言葉で書いてありますが、治安出動の場合の言葉がどうも明確でないわけです。治安出動の場合、命令による治安出動、これには「間接侵略その他の緊急事態に際して」とありますが、間接侵略その他の緊急事態というのはどういう場合であるのか、これが明確でありませんが、どのように理解しておられますか。
  155. 依田智治

    政府委員(依田智治君) この間接侵略というのは、外国の教唆または干渉による大規模な内乱及び騒擾というように解釈しておりまして、その他の緊急事態というのは結局今言ったようなものに準ずるようなもので、一般の警察力をもって治安を維持することができないようなもの、こういうように理解しております。
  156. 飯田忠雄

    ○飯田忠雄君 内乱が起こったといたしましょう。治安出動できますか。
  157. 依田智治

    政府委員(依田智治君) ちょっと質問の趣旨を……。
  158. 飯田忠雄

    ○飯田忠雄君 内乱が発生をいたしました。直ちに防衛庁長官は治安出動を命ずることができるかという問題ですが、内乱というのは先ほどのお話では間接侵略ということになりますね。間接侵略というものは、これは直接侵略じゃありませんので、間接的なものでしょう。外国から使嗾されて行うというんだけれども、そうなるとまず外国が使嗾したかどうかを調査しないとわかりませんね。内乱が起こっても、その内乱が間接侵略であるか間接侵略でない内乱が、これは判断するのに困るでしょう。そういう困って迷っているうちに大変なことになりますが、どうお考えになりますか。
  159. 依田智治

    政府委員(依田智治君) この点につきましては、今申し上げましたように、間接侵略というのが外国の教唆または干渉による大規模な内乱、騒擾と、その他のものというのはその他緊急事態ということで通常一般警察力等をもって対応するような、その中には内乱的なものもあるかもしれませんが、そういう一般警察力をもってしては対応できないというような場合に、この七十八条の規定によりまして内閣総理大臣によって防衛出動を命ぜられれば、自衛隊が治安出動できるというように解釈しておるわけでございます。
  160. 飯田忠雄

    ○飯田忠雄君 今おっしゃったことはわかったようでわからぬのですが、間接侵略というのは、これは率直に申しますと、昔からよく研究されてきた内容は、今最も妥当するのはスパイですね。謀略。謀略機関が日本の国内で謀略を行いまして、そうして騒動を起こさせる、その謀略行為が間接侵略と従来言われたのですね。それで、間接侵略の方法にはいろいろの方法がありますが、我が国がこの間接侵略に引っかかったのが、一つはゾルゲ事件です。ゾルゲという、これはもう初めから計画されて日本の国策を左右するために送り込まれた人が、当時の総理大臣をうまく丸め込んで南方政策、南方進攻政策をとらせた。そういうのが間接侵略なんです、本来はね。そういうようなことをやって日本の国内で内乱を起こさせたものを間接侵略だというふうに政府で定義づけてしまっておられるから、だから間接侵略の内容がわからなくなってしまうと思いますね。  それで、これは純粋の間接侵略の中で内乱というものを考えた場合、内乱という武力行動は刑法の問題です、これは。刑法の問題で、内乱罪の問題である。その内乱罪を日本人がこれを起こしておる、内乱罪をね。それを外国人がやれやれと言ってやらさせたということになると、外国人がやらさせたということだけをとりますと、それは武力じゃないんですよ。考え方、思想でありあるいは政策であり、そういうけしかける行動だというわけでしょう。そういうものに一体自衛隊という武力を使うのか、こういうことになるわけです。武力に対して使うならいいけれども、そういうものに武力を使うのはおかしいじゃないか、こうなりますので、どうですか。
  161. 西廣整輝

    政府委員西廣整輝君) 若干お答えが悪かったかもしれませんが、私ども考えておりますのは、治安出動の対象となるものは通常の警察力等をもっては対抗できないような大規模な内乱及び騒擾事態を考えておるわけでございます。その大規模な内乱及び騒擾事態について二つに分けておりまして、一つは外国の教唆扇動に基づくもの、それを間接侵略による大規模な内乱あるいは騒擾状態。もう一つは、外国の教唆扇動のない場合の大規模な内乱及び騒擾事態がありますが、これもやはり治安出動の対象になっておるということでございます。
  162. 飯田忠雄

    ○飯田忠雄君 私が実は申し上げたいのは、自衛隊法の七十八条はこのようなややこしい、書かぬでもいいことを文句を並べる必要はないではないかということなんですよ。初めの「間接侵略その他の緊急事態に際して、」なんて要らぬ文句ではないか。そのものずばり「一般の警察力をもっては、治安を維持することができないと認められる場合には、」で、それでいいではないか、こういうことを申しているんですよ。要らぬことをつけられるので防衛庁長官は治安出動ができなくなりますよと言っている。現行法のままだったら、内乱が起こった場合、治安出動ができませんわ。もしやって、裁判になったら負けます、裁判で。
  163. 西廣整輝

    政府委員西廣整輝君) そういうことではございませんで、先ほどから申し上げているように、間接侵略及びその他の緊急事態ということで、その他の緊急事態の方は、私どもはいわゆる外国の教唆及び干渉によって生じたものでない内乱及び騒擾事態を申し上げておるというように従来から申し上げております。決して外国の教唆扇動を伴わない大規模な内乱なり騒擾事態について治安出動できないということではございませんので、その点は御理解いただきたいと思います。
  164. 飯田忠雄

    ○飯田忠雄君 この問題はこのぐらいにしておきまして、次に、いわゆるシーレーンという言葉がございますね。シーレーンと洋上防空の問題ですが、私は実は大変無学なので、シーレーンという言葉が何語なのか、どういう内容を持つのかさっぱりわからなくて困っているんですが、これは何語であってどういう内容を持つ言葉でしょうか。
  165. 西廣整輝

    政府委員西廣整輝君) 私どもは、防衛力整備等を行う場合の防衛政策として、シーレーン防衛ということを一つ言葉として使っております。シーレーン防衛と申しますのは、我々としてはその目的は、国民の生存あるいは継戦能力の保持を図るための必要な物資等を海上輸送する、そういった海上交通の保護をすることそのものをシーレーン防衛と言っております。先生今御質問のシーレーンとは何かということになりますと、これはいろんな使い方があると思いますが、単なる翻訳ということになれば、航路というような意味になるのではないかというふうに私は思っております。
  166. 飯田忠雄

    ○飯田忠雄君 それで、その翻訳だけじゃなくてその意味する中身ですね、防衛庁で考えておられる中身は何かということなんです。
  167. 西廣整輝

    政府委員西廣整輝君) これは防衛庁と申しますか、政府として統一的に申し上げていることでございますが、定義として私はシーレーン防衛ということについては、政府としては、これは端的に言えば海上交通の安全を確保することというように考えております。そして、その目的は、先ほど申し上げたように、四方を海に囲まれており資源の大部分を海外に依存する我が国が、有事の際国民の生存を維持しあるいは継戦能力を保持するために海上交通の安全を確保する、そういう目的のために海上交通安全を確保することだというように従来から申し上げております。  なお、そういったシーレーン防衛を確保するための方法としましては、哨戒であるとかあるいは船団護衛であるとか、あるいは海峡なり港湾等の防備、そういった方法を通じまして、その事態に応じた各種の作戦の組み合わせによりまして、そういった各種作戦の累積効果で今申し上げたような目的を達成するということを含めて、私どもはシーレーン防衛というように申し上げております。
  168. 飯田忠雄

    ○飯田忠雄君 それでは、この自衛隊法の第八十二条を見ますと、これには「海上における警備行動」ということで規定がございます。「長官は、海上における人命若しくは財産の保護又は治安の維持のため特別の必要がある場合には、内閣総理大臣の承認を得て、自衛隊の部隊に海上において必要な行動をとることを命ずることができる。」、こういう条文がございますが、この条文との関係はどういうことになりますか。
  169. 西廣整輝

    政府委員西廣整輝君) この隊法八十二条の海警行動、海上における警備行動と申しますのは、海上における人命財産の保護、あるいは治安の維持といった警察権の範囲に入るものだと私どもは考えております。つまり、こういった行動は警察的活動に属するもので、外部からの武力攻撃といったような我が国防衛するための目的である防衛出動、そういったものとは別の種類に属するものであろうというように考えております。
  170. 飯田忠雄

    ○飯田忠雄君 それでは、シーレーン防衛というものは防衛出動だというふうにお考えになっているというふうに今承りましたが、防衛出動であるならば、外国からの武力攻撃あるいはそのおそれがあるということが明らかな場合でないとちょっと困りますね。そうなると、このシーレーン防衛というものを防衛出動の場合だというふうに規定してしまうことはどうでしょうかね。どのようにお考えになりますか。
  171. 西廣整輝

    政府委員西廣整輝君) 先ほどの政府見解で申し上げましたとおり、私どもがシーレーン防衛と申しておりますときは、有事の際つまり防衛出動下令下における、要するに我が国に対して不正な外国からの侵略が生起をしておる、そういう状況下において国民の生存を維持したり、あるいはそういう防衛活動を続けていくための海上輸送を確保するということであるというように定義をいたしております。
  172. 飯田忠雄

    ○飯田忠雄君 そうしますと、こういうことですか。平時においては自衛隊法八十二条でやるけれども、戦時になったらいわゆる防衛出動としての七十六条におけるシーレーン防衛だと、こういうお考えなんでしょうか。
  173. 西廣整輝

    政府委員西廣整輝君) 平時におきます警察活動につきましては、通常はこれは海上保安庁が御担当になっておるというように私どもは考えております。しかしながら、状況が非常に厳しくなりまして海上保安庁だけでは対処し切れないといったような事態、そういったときに海警行動というものが発動されるというように御理解いただきたいと思います。
  174. 飯田忠雄

    ○飯田忠雄君 八十二条の場合は平時の場合で、これは海上保安庁では手に負えぬ場合に海上自衛隊がやる場合だという御見解だというように承りましたが、それで、七十六条のシーレーン防衛というのは防衛出動の場合だと、こういうお話であったわけですね。ところが、防衛出動ということになりますと、外部からの武力攻撃があった場合に限られるわけでしょう。あるいは武力攻撃があるということがもう明らかな場合に限られるということになりますね。そうしますと、現在はそういう場合であるかどうかが問題なんですよ。そういう場合でないのにシーレーン防衛ということでいろいろ部隊活動をするということは、法律上大変困難になるんじゃないかと思いますが。  例えば、現在イランとイラクが戦争をしております。そこで石油を積んでくるタンカーを護衛するという場合、これは平時ですから当然これは海上保安庁及び海上自衛隊の仕事になるでしょうね。しかし、これは海上自衛隊だけじゃないんですよ。八十二条は、海上における警備行動というのは自衛隊の部隊に対して海上において必要な行動をとらせる。そうなると、これは海上自衛隊が行動をとるということじゃなくて、海上で行動するのは航空自衛隊だって海上で行動できるでしょう。航空自衛隊が海上で行動をしていろいろ海上自衛隊と共同作業で護衛するということも起こってきますね。それも八十二条でできることになるんじゃありませんか、法文上は。どうですか。
  175. 西廣整輝

    政府委員西廣整輝君) まずお断り申し上げますが、実は自衛隊というのは一つでございまして、法律上、陸上自衛隊海上自衛隊航空自衛隊という三つの自衛隊があるわけじゃございませんで、自衛隊というものは一体であるということに御理解いただきたいと思います。  なお、それでは海警行動の際に海上自衛隊以外のものが行動できないかということになれば、それは私はやり得るというように考えておりますが、実際問題としてこれは警察行動でありますので、例えば警察官職務執行法に基づいて行動するというようなことで、実際にそういう権限を与える場合には、海上自衛官のたしか三書以上だったと思いますが、そういった人間に海上保安官と同じような職務上の権限を与える。例えば船舶への立ち入りであるとか、質問であるとか、進行を停止させるとか、そういった権限を付与するというようになっておりますので、実態としては海上自衛隊の隊員以外にはそういう行為はなかなか行い得ないというように考えております。
  176. 飯田忠雄

    ○飯田忠雄君 平時の場合は要領のいい御返答いただきましたのでこれ以上論じませんが、七十六条の防衛出動の場合がシーレーン防衛だと、こういうことに先ほどお話がございましたが、そうなりますと、七十六条の場合は国会の承認を必要とすると、こうなっていますね。シーレーン防衛というのは国会の承認を一々とらなきゃならぬのですよ、緊急でない場合は。緊急の場合は、防衛行為をとっておいで後で国会の追認を得るということになりますけれども。そう書いてあるから、法律に。現在まだ実際に防衛出動をしなきゃならぬような外国からの武力攻撃があると思われぬようなときに、なぜシーレーン防衛ということが問題になるのか。その辺のところが理解できないのでお尋ねするわけですが、その点はどうお考えでしょうか。
  177. 西廣整輝

    政府委員西廣整輝君) これはシーレーン防衛そのものは海上自衛隊単独の任務ではございませんが、自衛隊任務そのものの大部分というものは有事、つまり防衛出動が下令された段階に何をするかということが本来の任務でございます。これは陸上自衛隊の国土防衛任務であれ、航空自衛隊が中心になっておる防空任務であれ、いずれもこれは防衛出動が下令された我が国に対して侵略が生起している段階、いわゆる有事における段階におけるものでありまして、決してシーレーン防衛だけがそういった有事のものを現在野にやっているということではございませんで、防衛力のほとんどすべてというものは有事に備えて、万々一そういう事態があった際にいかに我が国を守るかというためのものであることを御理解いただきたいと思います。
  178. 飯田忠雄

    ○飯田忠雄君 それでは、シーレーンというのはそういうようなものだと莫然と理解をいたしましたが、シーレーン防衛というものは現段階では実際には起こり得ないというふうに理解されることになりますね、御説明によれば。  そこで、洋上防空ということが言われますが、シーレーン関連して洋上防空ですね、洋上防空といいますのは、これは太平洋か何かというのは洋ですね、そういう洋の上で防空をすると、こういうふうに文字ではなるんですが、この実態はどういうことでしょうか。洋上防空というものの内容ですね。そして、この洋上防空というものを行う法的根拠としては、自衛隊法のどの権限に基づいて行うのかという問題です。八十二条なのか。私はどうも八十二条のような気がするんだけれども、八十二条でないとおっしゃれば、それじゃどこだ、こういうことになるわけですが、どうでしょうか。
  179. 西廣整輝

    政府委員西廣整輝君) 洋上防空と申しますのも、これは防空という機能の一環、一部であるというふうに御理解をいただきたいと思います。しこうして、我が国防衛というときに、我が国に対する侵害というのは主として海上から行われる侵害もありますし、空を経由して行われる侵攻もある。あるいは陸上戦闘、上陸なり着陸して相手が攻め込んでくるという場合もございます。その場合、主として空からの脅威に対抗するためにあるのが防空機能だというふうに御理解をいただきたいと思います。さらに、洋上防空ということになれば、この防空機能が発揮される場所が洋上においてであるということで、防空機能の一環だと申し上げておるわけであります。いずれにしましても、これらは有事、いわゆる防衛出動下令時、我が国に対する侵略があった際の、そのときの侵略の態様に応じて防空機能は発揮されるというふうに御理解をいただきたいと思います。
  180. 飯田忠雄

    ○飯田忠雄君 これは言葉の問題だと私は思いますが、法律上は「海上における警備行動」としておるのであって、海上と書いてあるんです。それをわざわざ洋上というふうに言葉を変えねばならぬ意味がどうも私にははっきりしませんが、太平洋であろうとあれは海上でしょう、海であるんだから。日本海も海上ですが、どうして海上という言葉でいけないのか、洋上と言わなきゃならぬのかということが一つ疑問点です。つまり、こういう言いかえをしなければぴったりこない内容ですね、内容がどうもわからぬわけです。こういう点について、御説明は難しいかもしれませんけれども、やはり自衛隊も国家機関である以上は法律に基づいて動いているんですから、法律の根拠ぐらい明確にしておいていただかぬと困るのではないか、こう思いますがね。  そこで、恐らく想像いたしまするに洋上防空というのは、今は非常に航空機の発達が激しいので、航空機でいつ攻められるかわからぬから、いつ攻められてもいいように攻めてくるものを何とかする処置を考えようという、そういうようなお考えがあって、海上における警備行動というとどうも船だけでやるように見えるので、飛行機でやるようなものをひとつこの際印象づけよう、こういうようなことでお始めになったのではないかと思われますが、しかし、法的根拠としては自衛隊の部隊は海上において行動できると書いていますから、これは海の上は空だって海上ですよ、あれは。水の上しゃなくたって海上でしょう。それだからいいように思うんですが、それじゃいかぬとおっしゃるので、それじゃどういうところに根拠を置くかということです。  もし、これではいけなくて、こういうことをどうしてもやらなきゃならぬということであれば、自衛隊法改正が必要です。自衛隊法をとこか改正されて、できるようにすべきではないか。今は法律の改正の話ですから、それでまだ自衛隊法改正するところがあるのではないか、こうお尋ねしているんですがね。それで、この八十二条で賄えるのかあるいは賄えないのか。賄えなければどうするんだ、こういう質問なんですよ。この点いかがですか。
  181. 西廣整輝

    政府委員西廣整輝君) どうも御質問を十分私理解しているかどうかわかりませんが、私先ほど来申し上げておるのは、シーレーン防衛と申しておるのは我が国有事の際の問題である。つまり、我が国に対して不正な侵略行為が行われておる、防衛出動が発動されておるという事態のことだと申し上げております。  一方、先ほど来お話の出ている海上における警備行動あるいは治安出動あるいは領空侵犯措置、そういったものにつきましては、平時における警察活動の一環である。したがって、例えば治安出動等の問題であれば、平時におきましてはこれを第一義的に担当しておるのは警察である。海上におけるその種治安について第一義的に担当しておるのは海上保安庁であるわけであります。したがって、そういったものについてそれらの警察なり海上保安庁がそれぞれ担当しておりますが、事態が大きくなって手に負えなくなってくる状況、そういったときに治安出動なりあるいは海上における警備行動が発動されるというもので、要するに平時においてそれぞれの省庁が担当されている分野というものを明確にしてそこは書かれておるわけであります。それに対して自衛隊がどうするということで書かれてあるわけでありまして、一方、有事いわゆる防衛出動時の事態につきましては、これは我が国防衛のために必要な範囲ということで、特に範域を書いておるわけでもございませんし、もともとこれは自衛隊そのものの主たる任務でございますので、第一義的にそういったものを担当しておるところはございませんから、それに合わせて地域なりそういったものが限定して書かれていないというように御理解いただいたらいいと思います。
  182. 飯田忠雄

    ○飯田忠雄君 防衛庁の御見解でそういうふうに理解をしなさいとおっしゃれば無理に理解をせぬでもありませんが、私はやっぱり法律屋だものですから法律的にきちっとしておらぬとどうも気になってしようがない。  それで、この自衛隊法あるいは防衛庁法のどこに根拠を置いての問題かということは非常に大事なので、もしこの自衛隊法に根拠がなくて行動されるということになると、これは法律違反であり憲法違反である。だから、そういうそしりを避けるためには、やはりこの法律の中のこの条文だと、根拠はこれだということをはっきり考えて正確に読んでいかれたらいいと思いますがね。八十二条は何も必ずしも平時だけとは限らぬのですよ。平時なら海上保安庁がやるんです。海上保安庁で手が負えなくなったというときは少し怪しくなったときの話でしょう、これ。その場合の海上の警備、つまり海上の治安維持。海上の治安維持ということは何だということは、海上は空も海上ですから、大体飛行機が飛ぶ範囲は皆海上です。だから、そういう点からもう少し御研究になる必要があるのではないか。その八十二条の範囲ではどうしてもだめだという、それ以上のことをやりたいということであれば、これはやはり自衛隊法改正してやれるような基礎を持ってやることが必要になってくるというふうに言われた場合に困りますね。そのことを実は考えてお尋ねをしておるわけであります。  これはどうもお話から想像しておりますと、いつ日本の国は洋上から攻撃を受けぬとも限らぬので、飛行機とかあるいは大陸間弾道弾でね、そういうものの攻撃を受けた場合に、今のうちに何とかそういうものを撃ち落とす方法を考えておこう、これは自衛隊法にあってもなくてもそんなことは構わぬので、とにかくやっておこう、こういうようなお考えのように見えるんですよ。ところが、それではやはり予算がつかぬし、これは困るわけだ、予算がつくようにしておいておやりにならぬとね。どうですか。もう少し明確にシーレーンとは何であるか、シーレーン防衛というものは明確に自衛隊法のどれを根拠に置いてやり得る問題であって、やらねばならぬのだというお考えですね、そういうものを明確にひとつしておいてくださいよ。
  183. 西廣整輝

    政府委員西廣整輝君) シーレーン防衛にしろ防空にしろ、あるいは陸上防衛もそうでございますが、これらは自衛隊法で申しますと第三条、「自衛隊任務」というのがございますが、そこの中に「自衛隊は、わが国の平和と独立を守り、国の安全を保つため、直接侵略及び間接侵略に対しわが国を防衛することを主たる任務とし、」云々と書いてございます。その直接侵略に対し我が国防衛することを主たる任務とするという、直接侵略そのものであるというように我々は理解しておるわけでございます。
  184. 飯田忠雄

    ○飯田忠雄君 ついでだから、これはもうやめようと思ったけれども少し申しますが、この第三条はこれは一般規定なんですよ。これに基づいて権限規定ができるわけですね。八十二条にしてもこの第三条を根拠にしてできた権限の規定でしょう。だから、シーレーン防衛というものをやろうとするのであるなら、おっしゃったこの第三条を根拠にして包括的には任務があるのだから自衛隊でやるのだということで規定をおつくりになることが必要ではないか、こういう質問なんですね。まあこれいいですわ。この辺にしておきましょう。  それから、次がこれに関係することですけれども、訓練空域の範囲の問題ですが、今日訓練空域をお決めになった法的根拠は安保条約の何かの法規に根拠があると思いますが、それはどこでしょうか。
  185. 渡辺允

    政府委員(渡辺允君) ただいま先生御質問の御趣旨は、米軍の訓練空域のことでございましょうか。そうでございますれば、米軍の訓練空域といたしまして現在日米合同委員会で協議をいたしました上で設定されました空域が、我が国領域の上空及びその周辺の上空二十三カ所ございます。
  186. 飯田忠雄

    ○飯田忠雄君 その訓練空域の内容というものは、国民の生命財産に関係があるような場合には公示されることになっておりますか。公示はされないんですか。
  187. 渡辺允

    政府委員(渡辺允君) この米軍の訓練空域と申しておりますのは、実は施設、区域として提供いたしております土地あるいは公有水面の上空でございまして、これがいわば事実上その施設、区域と一体として米軍の使用を認めているということでございますので、それにつきましてはこの施設、区域と同様に官報に告示しておるというふうに承知をいたしております。
  188. 飯田忠雄

    ○飯田忠雄君 先般も同僚議員が御質問になっておりましたが、米軍の超低空飛行が紀州の沖合いでやられておると、そして奈良県のワイヤをひっかけたかどうかということで新聞をにぎわしております。これはやっぱり訓練空域の問題だと思いますが、そういうところも訓練空域に含めて話し合いができておるのかどうか。また、もしそういうところは入ってないということであれば、それに対する処置の問題ですね、これはどうなるのかということがございますが、刑法の問題、民法の問題も生じてくる。もしこれが一兵隊の行為であって軍隊の行為でないということになってくれば民事、刑事の責任も生じてくる。もし部隊の行為だということになれば、部隊の義務違反の問題になる。その点はどうでございましょうか。
  189. 渡辺允

    政府委員(渡辺允君) ただいま先生指摘の問題は、まず第一に従来からも御答弁申し上げておりますとおり、在日米軍は安保条約第六条で日本に駐留を認められております目的のために、軍隊として必要な一定の行動をすることができるわけでございます。現在、先生指摘の飛行訓練あるいは飛行という観点からそれを申し上げますと、その飛行の具体的な場合の形態によりましてそればその施設、区域の上空でございますいわゆる訓練空域で行うべきものであり、またそう行われているもの、あるいは自衛隊の訓練空域を自衛隊と調整しながら利用してそこで行っているもの、あるいはそれ以外の空域で行っているもの、今回の奈良県の事故のような場合には、これは例えば射爆撃でありますとかそれから戦技の訓練というようなことを伴わない、いわゆる航法の訓練であるというふうに理解しておりますけれども、そのようなものにつきましては、必ずしもこの指定された空域以外で行うことができないということではないというのが私どもの解釈でございます。そういたしますと、その場合に適用されます法律関係につきましては、これは一般国際法それから地位協定等に基づきまして、米軍あるいは個人としての米軍にどういうものがどういうふうに適用されるかという、一つ一つの法令の問題になってくるかと思います。
  190. 飯田忠雄

    ○飯田忠雄君 このたびの事件につきまして、現実にはどういう処置がとられたのでしょうか。奈良県の超低空飛行で米軍の飛行機がワイヤを引っかけた事件でございますね、現実にはどのような処置がなされたんでしょうか。
  191. 渡辺允

    政府委員(渡辺允君) 今回の事故につきましては、現在のところ米軍としてまず事故調査委員会を設置して、原因等事実関係の究明に当たっておるところでございます。日本側も日本側としての調査をしておるわけでございます。したがいまして、これらの調査が終了いたしました段階で、そのときに判明いたしました事実関係に基づきまして、必要な措置がとられるということになるだろうかと思います。
  192. 飯田忠雄

    ○飯田忠雄君 それでは別の問題に入りますが、現在ペルシャ湾の紛争がございます。イランとイラクが戦争をしておりますね。これはイランとイラクは交戦国でしょうか。国際法上交戦国であるかどうか。もし交戦国でないなら、どういうわけで交戦国でないのか、その辺をお伺いいたします。
  193. 斉藤邦彦

    政府委員(斉藤邦彦君) 国際法の歴史的進展に即して申し上げますと、戦争というものは、いわゆる戦時国際法が全面的に適用される国家間の状態であるというふうに従来考えられていたわけでございます。しかしながら、今世紀に入りまして戦争違法化の動きが急速に進められまして、国連憲章のもとにおきまして武力行使が原則的に禁止されるに至ったわけでございます。このような体制のもとにおきましては、伝統的な意味での戦争というものは認められなくなっております。したがいまして、現在のイラン・イラク紛争もこのような国際法上の伝統的な意味では戦争に当たるとは言えないというふうに我々は考えている次第でございます。
  194. 飯田忠雄

    ○飯田忠雄君 そうしますと、大体これは過去における満州事変とか日支事変のようなものと考えられるわけでしょうかね。それとも、現在は本当は戦争だけれども国際連合の関係で戦争と認めないと、これその辺のところは御見解をお伺いをしたいんですが。そして、どちらにしても日本は中立国としての立場に立つのか、それともそうでないのか。昔の戦争法規でいきますと中立国の宣言をすることになるはずですが、今中立国宣言をしないのはなぜかという問題、その点はいかがでしょうか。
  195. 斉藤邦彦

    政府委員(斉藤邦彦君) 国際法上戦争が適法とされておりました時代には、交戦国でない国家、これは自動的に中立国という立場に立ちまして、一定の義務を負うことになっていたわけでございます。その際、中立宣言をするかしないか、これはその国の政策判断の問題でございまして、中立宣言をしなくても中立国としての立場に立つということになっていたわけでございます。しかしながら、国際法上の戦争が違法化されました現在、国連憲章のもとにおきましては、戦争自体が合法であることを前提とした伝統的な中立概念というものは、もうそのまま適用があるわけではないというふうに考えているわけでございまして、イラン・イラク紛争に関しまして我が国が中立国であるかどうかというような問題、これも従来の国際法上の考え方で律することはできない状況にあるというふうに考えております。
  196. 飯田忠雄

    ○飯田忠雄君 それでは、従来の戦争法規じゃもう役に立たぬということでありますと、実際に我が国のタンカーその他の船が被害を受けた場合に、それに対する損害賠償の請求はどういうふうにするかという問題、それから我が国は中立国としての義務を負わないということになるのかどうか、そういうような問題はどうでしょうか。
  197. 斉藤邦彦

    政府委員(斉藤邦彦君) 損害賠償請求の権利の問題は、中立義務があるかないかという点を離れまして、一般国際法上ある国家の不法行為によりまして他の国家が損害を受けましたときは、損害賠償請求その他の国家責任の解除ということを要求する権利がございます。したがいまして、御設問のような場合、我が国が何らかの形で権利の侵害を受けたといたしますと、我が国といたしましてはその侵害を行った国に対して損害賠償請求を含めまして、国際法上の責任を追及することができるということになるわけでございます。
  198. 飯田忠雄

    ○飯田忠雄君 時間が迫ってきましたのでこの問題はそれまでにしまして、せっかく大蔵省に来ていただいたのでひとつ大蔵省の方へお尋ねいたしますが、現在防衛費の問題で一%枠が撤廃されたと、こういうふうに新聞その他で書いてあります。こういうような状況下において、大蔵省で防衛費を査定なさる上において、従来は一%枠という枠があったので大変査定がしやすかったと思います。この枠がなくなりました段階においては査定が非常に難しいと思いますが、一%というものをやはり考えて査定されるのか、あるいはそういうものは考えないでどんどん幾らでも多く査定するということになるのか、そういう点は大蔵省ではどのようにお考えでしょうか。
  199. 岡田康彦

    説明員岡田康彦君) お答えします。  六十二年度の防衛関係費につきましては、厳しい財政事情のもとにありまして中期防衛力整備計画の着実な達成という点を一方で踏まえながら国の他の諸施策との調和を図り、極力圧縮に努めたところでございますが、名目GNP成長率との関係もございまして、GNP比が一%をやや上回ることに結果的になったわけでございます。来年度の防衛関係費につきましては、昨日要求書を受け取ったばかりでございまして、今後の予算編成過程において調整されていくことになりますが、いずれにしましても、本年一月二十四日の閣議決定におきましては、昭和五十一年十一月五日の閣議決定の精神を尊重し、節度のある防衛力整備を行っていくということが掲げられておりますので、私どもとしましては他の予算と同様、厳しく中身を一つ一つ見せていただいて、これからこの査定にタッチしていこうと思っております。
  200. 飯田忠雄

    ○飯田忠雄君 時間が参りましたので、御無礼します。私のために御出席願いまして質問ができなかった政府委員の方には、この際おわびをいたします。どうも済みません。
  201. 吉川春子

    ○吉川春子君 先般発表されましたことしの防衛白書についてお伺いいたします。  今年度の白書は昨年度と幾つか違った記述が見られるわけですけれども、「軍事力の意義」を冒頭に掲げております。この記述は大変問題があると思うんですけれども、なぜこの部分が置かれたのでしょうか。
  202. 瀬木博基

    政府委員瀬木博基君) 防衛白書は、御存じのように、毎年防衛庁として出しております報告書でございまして、何とか毎年多少とも特色を持ったものにしたいと心がけておりまして、毎年同じような編集ではおもしろくないということから、少しずつは変えるように努めている次第でございます。  ことしの版につきまして、世界の軍事情勢というところに、冒頭「軍事力の意義」ということを挙げさせていただいたわけでございますが、この我々の防衛白書というものは、その性格上、世界の国際情勢を見ますときに、やはり防衛上ないし軍事上という、そういう観点から国際情勢を分析するということにいたすわけでございます。その際、この軍事力というものが国際政治の中においてどういう意義を持っておるか。軍事力と申しますと、えてして武力の行使があって初めて意味があるというようなふうに誤解を受けるといけません。軍事力はもちろんそういう武力の行使ということにおいて意味がある一方、そういうことのない、有事でないときにおいてもそれなりの意味がある、そういうことを国民の皆さんにわかっていただきたい。そういうことから「軍事力の意義」というものを冒頭に記述したところでございます。
  203. 吉川春子

    ○吉川春子君 ここには、「外国からの侵略の可能性を否定できない以上、侵略を抑止して国の生存と独立及び平和と安全を維持するための手段としての軍事力を備えておくことも重要である。」と述べています。そして、「世界の中には、軍事力を持たないこととしている国もあることは事実であるが、これらの国は、いずれもその人口、面積、経済力などや周辺の国際環境がわが国などの場合と異なっている。」というふうにされているわけですが、この表現からいきますと、日本は軍事力を持たない国のグループには入らないわけですね。
  204. 瀬木博基

    政府委員瀬木博基君) 我が国憲法その他の法律また国策に従いまして防衛力整備しておる、この点につきましては何ら疑いを入れないところでございます。他方、世界の中にはいろいろな国がございます。また、その国がいろいろな環境の中にあると思います。そういう一部の国におきましては、全く自分の力で自衛力も持たないという国もあるわけでございます。そういう国も世界には一方にある。しかし、それらの国々と我が国などの環境、それは国際環境がやはり違っておるという、そういうことを書いた次第でございます。
  205. 吉川春子

    ○吉川春子君 端的にお答えいただきたいんですが、長官我が国は軍事力を持つ国なんでしょうか、持たない国なんでしょうか。
  206. 西廣整輝

    政府委員西廣整輝君) 御承知のとおり、我が国は、我が国固有の憲法というものがありますから、自衛力としての防衛力を持っております。この防衛力内容というものを諸国の軍事力と比べた場合に、いわゆる軍事力に当たるもの、軍事力とみなされるものも私はあるというふうに考えております。
  207. 吉川春子

    ○吉川春子君 ちょっと今聞き逃しましたが、防衛力の中には軍事力に当たる部分もあるとお答えになりましたか。
  208. 西廣整輝

    政府委員西廣整輝君) 諸国で軍事力と言っているものと同じものもあるというふうに申し上げました。
  209. 吉川春子

    ○吉川春子君 そうしますと、日本は軍事力を持たない国のグループではないわけですね。
  210. 西廣整輝

    政府委員西廣整輝君) 私は白書の編集を担当しておりませんから十分理解しておりませんが、この白書で書かれておるのは恐らく、軍事力を全く持たない幾つかの国があるというふうに私は理解しておりますので、そういう国のグループとは違うという考え方であろうと思います。
  211. 吉川春子

    ○吉川春子君 ちょっとそのお答えは大変な意味じゃないかと思うんですけれども、そうしますと、憲法九条が持ってはならないというふうに禁止している軍事力は日本は持っていないと、これは午前中からの論議ではっきりされたわけですけれども、今の防衛局長の答弁だと、軍事力のある部分は日本で持っていると、そういうものに当たる部分を持っているということですから、これはまさにここに書かれているとおりですね。日本は軍事力を持たないグループには入らないわけで、しかしそういうこと自体大変重大な問題だというふうに思うわけです。防衛庁長官、そういう同じような御意見でしょうか。
  212. 栗原祐幸

    国務大臣栗原祐幸君) 前から言っているように、日本防衛力を持っております。
  213. 吉川春子

    ○吉川春子君 重ねて伺いますが、その防衛力の中に軍事力に当たる部分も含まれているというふうに長官はお考えでしょうか。
  214. 栗原祐幸

    国務大臣栗原祐幸君) それは今防衛局長が言ったように、実力において相似たるものがある、そういうことでございます。
  215. 吉川春子

    ○吉川春子君 もう、ちょっとそういうのは許せないと思います。  それで、さらにこの記述の中でけしからぬのは、日本で軍事力を持つべきであるというようなことを書いた後、「軍事力の役割ないし機能は、究極的には力によって相手に対する要求を充足させることにあるなどと述べています。これは憲法前文の、いずれの国も自国のことのみに専念し他国を無視してはならないのであり、政治道徳の法則は普遍的なものであるとか、あるいは諸国民の協和による成果の確保とか、恒久の平和を念願し、平和を愛する諸国民の公正と信義に信頼して我らの安全と生存を保持しようと決意したと、こういう憲法の国際協調主義に真っ向から反するものであると思うんですけれども、この辺の御見解はいかがですか。
  216. 瀬木博基

    政府委員瀬木博基君) この点につきましても午前中御質疑がございましたが、日本政府憲法その他の法規のもとに行動する、また防衛白書を書くに当たってもそういう精神のもとに書かれている、これは当然のことでございます。私どもは、ここに書きましたのは、国際政治、現在の世界の情勢を見るに当たって、軍事面から分析してみるならばどういうことだろうかと、そういう一つの基準と申しますか、よすがと申しますか、そういうものを読者の皆様に提供したということでございます。したがいまして世界の現実においてはこれは究極の理想から見れば遺憾であると思いますが、力の均衡というものの中で動いているという、そういう現実の中で軍事力の意義というものは見失うべきでないというのが我々の考えでございます。
  217. 吉川春子

    ○吉川春子君 この点についてもう一つお伺いいたしますが、長官日本自衛力を持っていると、そしてその中には軍事力というふうに世界の中で呼べる力の部分も含まれるかもしれないということですが、そうしますと、防衛白書を読んだ私の印象ですけれども、車事力というものが世界の平和を守るんだというふうに書いてありますので、日本としても世界の平和を守るためにはいずれははっきりとした軍事力のようなものを持つべきである、そういうように防衛庁は考えていらっしゃるんじゃないかというふうに私はこの防衛白書を読みましたが、そういう解釈でよろしいんでしょうか。
  218. 西廣整輝

    政府委員西廣整輝君) 我が国防衛につきましては、これは再三申し上げているとおり、自衛の範囲の最小限のものを持つ、しかも我が国自身がその種最小限の防衛力を持つということは、この白書でも書かれておるような国際情勢下にあって、日本自身が力の空白ということにならないということがある意味では平和を維持するゆえんでもあるというように考えておりまして、この点については従来から一貫した考えであって、今回の白書で特に我が国防衛についての政策なりというものの考え方を変えだということは全くございません。
  219. 吉川春子

    ○吉川春子君 憲法には違反しない、従来の考えを変えたつもりでないとおっしゃりながら、この記述もそうですけれども、今の答弁を伺っても大変危険な方向に踏み出していると私は思います。こういうような、特に武力に対する、軍事力に対する定義などという、こういう憲法を踏みにじるだけではなくて本当に国際的にも脅威を与えるような記述については白書の中から削るべきだと、それぐらいこの記述というのはけしからぬものだということを私は指摘しておきます。  次の問題に移りたいと思いますが、いわゆる米海洋戦略についてお伺いいたします。  新聞の報道によりますと、海上自衛隊の幹部は六月二十四日から三日間、米海軍と共同で「日本防衛のための北西太平洋戦略」と題する本格的なウォーゲームをロードアイランド州ニューポートの海軍大学校で行ったということですけれども、これは事実でしょうか。
  220. 西廣整輝

    政府委員西廣整輝君) 今御質問の件がこの六月の中ごろですが、アメリカの海軍大学校、これは先生のおっしゃるとおりロードアイランド州のニューポートにありますが、そこに自衛隊の幹部数人が、十名ほどが派遣されて研修を行ったというものを指すのであれば、そのとおりであります。  この派遣研修は、我が国でいろいろ訓練等をやる際に、いわゆる図上演習というのをやります。要するに実際の艦艇、航空機等を動かさないでいろいろな演習をするわけですが、その際にアメリカでは既にコンピューター等を持ち込んでそういった状況が現実に現示をされ、しかもその指揮、活動をした状況、結果等が客観的あるいは定量的に分析、評価されるような手法が取り入れられているということでありますので、我々としても従来やっておる図上演習の精度というものをより高めるために、アメリカのやり方というものを研修させるために派遣をいたしました。
  221. 吉川春子

    ○吉川春子君 コンピューターを使ったこの種のシミュレーションというのは初めてなんですか。
  222. 西廣整輝

    政府委員西廣整輝君) いわゆるシミュレーションといいますか、一つのモデルを使っていろいろシミュレーションをするということはたびたび行われておりますけれども、いわゆる図上演習、実兵指揮といいますか実際の艦艇等を動かさないで指揮演習をやるわけですね、こういう部隊を動かすというような指揮演習をやるわけですが、それにコンピューターを組み込んだやり方というものは我が国では今までやったことがございません。
  223. 吉川春子

    ○吉川春子君 ちょっと教えていただきたいんですけれども、私はファミコンぐらいしか知らないんですけれども、アメリカの海軍大学校にあるというその大型コンピューターのディスプレーと呼ぶんでしょうか、画面は物すごく大きなものなんですか。どういうものなんですか。
  224. 西廣整輝

    政府委員西廣整輝君) 実は私も行ったことがありませんし、また日本自身にそういうものがないものですから詳しく申し上げられないわけですが、恐らく今我々が図上演習ということをやりますと、通常識味方に分かれて、それぞれが自分の与えられている部隊というものを動かしていくわけですけれども、従来の我々のやり方ですとそれを紙に書いてそして統裁部にそれを出すと、統裁部が図上でそれをこまを動かしていくというようなやり方をするわけです。恐らくそういった処理がすべてコンピューターにお互いに打ち込めば即座にいろいろ現示されていく。さらに現示されてそれがどういう結果になっていくかということもリアルタイムにわかっていくというような形で、コンピューターシステムというものを十二分に取り入れた方法であろうと思いますが、私も詳しいことはまだ知りません。
  225. 吉川春子

    ○吉川春子君 そうしますと、コンピューターのゲームがありますね、小さいのが。それでミサイルを撃つと相手の飛行機をやっつけるとか船が沈むとか人が死ぬとか、こういうゲームがありますわね、普通たくさんあちこちに。子供なんかもやって問題だと思うんです。そういうようなもので大きいもので、しかも弾薬の数とか飛行機の数とかみんな正確に現実にある航空機やら潜水艦やらいろんなものを全部使ってコンピューターに打ち込んでおいて、それを使ってこうやるということは、大型の要するにファミコンみたいなものですか。そういうふうに理解していいわけですか。
  226. 西廣整輝

    政府委員西廣整輝君) 具体的な結果を出すシミュレーションということになりますと、それぞれ使う兵器、例えばミサイルであるとか砲であるとか、それぞれの命中精度とかなんとかの精度、命中率等をコンピューターに打ち込んでおかなきゃいかぬわけですね。そして、何発撃ったから恐らく何発が命中したであろうというようなことで、結果がどのくらい成功したとかしないとかということになるわけですが、今の申し上げたいわゆる図上演習、指揮演習のためのコンピューターということになりますと、そういった実戦をするかわりのシミュレーションをやるというわけではございませんから、私はそこまで細かいことは打ち込まないのではないかというふうに思っております。
  227. 吉川春子

    ○吉川春子君 そうしますと、これに参加された方は、日米両方ともどういう方が参加されたんですか。
  228. 西廣整輝

    政府委員西廣整輝君) これは基本的には向こう側はその海軍大学校の先生方あるいはコンピューター等を扱っておる方であろうと思います。こちらから参加いたしましたのは、今言った指揮所演習の関係でございますから、私どもの運用幹部、オペレーションの方の幹部を出したということであります。
  229. 吉川春子

    ○吉川春子君 新聞の報道によりますと、スミス海軍少将も参加されたとなっていますが、この方はどちらの所属の方なんでしょうか。
  230. 西廣整輝

    政府委員西廣整輝君) ちょっと突然のお尋ねなんで、私もよく存じませんので調べて御連絡したいと思います。
  231. 吉川春子

    ○吉川春子君 それでは、調べてくださるということですので、そのときに参加されております第七艦隊、在日米海軍の方々の名前も後でお教えいただけますか。
  232. 西廣整輝

    政府委員西廣整輝君) 細部にどこまで申し上げられるかわかりませんが、責任者については申し上げられると思いますので、一応調べてみます。
  233. 吉川春子

    ○吉川春子君 それでは、このコンピューターゲームといいますか、シミュレーションはどういうシナリオでやられたんでしょうか。
  234. 西廣整輝

    政府委員西廣整輝君) 先ほど申し上げたように、コンピューターを取り入れた図上演習の勉強ということでありますから、極めて簡単なものであったようでありますけれども、我が国の海上防衛のティピカルな一つの形態のシナリオを打ち込んだということであります。
  235. 吉川春子

    ○吉川春子君 私が聞きました、新聞の報道ですけれども、シミュレーションは、欧州戦争が勃発した場合に、通常戦争の初期段階において北西太平洋方面でも対ソ戦線を開き、同時にソ連近海でミサイル原潜SSBNに先制攻撃をかけるという、アメリカ海洋戦略の一環として行われた、こういうことなんですか。
  236. 西廣整輝

    政府委員西廣整輝君) 先ほど来申し上げているように、私どもの図上演習、そういった訓練がより精緻に行われるためのシステムの勉強でありますから、アメリカの海洋戦略等とは余り関係ありません。私どもがやる通常の訓練にどう使えるかということを確かめに勉強に参ったわけでありますので、我々の通常の演習の比較的軽易なものを試してみたというように聞いております。
  237. 吉川春子

    ○吉川春子君 今私が申し上げましたようなことは、米海軍省スポークスマンが発表しておるんですけれども、そうしますと、この新聞記述は間違いなんですか。
  238. 西廣整輝

    政府委員西廣整輝君) 新聞、私は読んでおりませんけれども、もし今先生が言われたようなことであれば、私どもの聞いておることと違っております。
  239. 吉川春子

    ○吉川春子君 読んでいないというのは大変意外な御答弁ですね。  それで、ちょっとお教えいただきたいんですけれども、アメリカの海洋戦略というのはどういうものなんでしょうか。
  240. 瀬木博基

    政府委員瀬木博基君) 恐らく先生御質問の海洋戦略というのは、米国の前海軍作戦部長のワトキンス大将が論文に書きましたものをお指しになっているのではないかと思います。  米国の軍事戦略また戦術については、いろいろな著述がございます。その基本というものをなしておりますのは、米国の戦略というものは抑止であるということであります。ワトキンス大将が書いておりますのも、いろいろなことを書いておりますけれども、いろいろな事態、平時においてまた戦争が行われそうになっている事態その他のことを想定しながら、いかにして抑止を維持していくかということを記述しているものというふうに了解しております。  ちなみに、ワトキンス大将は引退されたわけでありますが、その後、トロスト海軍大将という方が現在は作戦部長をされておりますが、このトロスト大将が海洋戦略というものを改めて記述いたしておりますけれども、このトロスト大将によりますと、海洋戦略というものは一つのシナリオというようなものであるべきでない、また今までもそういうものであったことはないし、これからもそういうものではない、平時からバランスのとれた戦力を備える、これこそ海洋戦略であるということを書いております。
  241. 吉川春子

    ○吉川春子君 これはケリーという米海兵隊司令の書かれた海洋戦略のことなんですけれども、途中だけちょっと読んでみますと、「段階Ⅱ」として、「イニシアチブをつかめ」ソビエトが中部ヨーロッパへの全面的規模の侵略をはじめた場合、NATOの初期の戦略は、攻撃を撃退し、敵を消耗させ、イニシアチブをつかむことである。攻撃型潜水艦は、すばやく、ノルウェー海、バレンツ海、地中海、太平洋で、ソビエト海軍部隊と交戦する。空母戦闘群は、ソビエトの海上脅威、空からの脅威をなくし、あるいは中和させようとするし、一方同盟国軍の対潜戦部隊は、ソビエトの海底の部隊をさが  し出して、壊滅させる。こういうのも海洋戦略なんですよね、そうでしょう。
  242. 瀬木博基

    政府委員瀬木博基君) 私ども日本政府として米国政府の代弁をするということは到底できませんし、また、いわんや海兵隊について有権的にこれを代弁するということはとてもできませんし、またすべきでもないと思います。  ただいま申し上げましたように、米国の全体の戦略というものは、これは三軍ないし海兵隊を含めて抑止というところに基本があるんであろうと思います。ケリー大将がどういう意図に基づいてどういう論文を書かれたかということは、私どもは定かでございませんけれども、彼の論文の中においても、結論的にまた序文で書いてあると思いますが、抑止というものがいかにして守られるべきであるか、そういうために海兵隊としてもほかの三軍と協力して尽力するということを書いておったと思いますが、いろいろな具体的なシナリオというようなものも、そういう基本的な思想を支えているものではないかと私は推測いたしております。
  243. 吉川春子

    ○吉川春子君 その抑止という意味は、ソ連がもしアメリカかどこかの国に戦争をしかけてもそれは間尺に合わないんだと、もっと痛い目に遭うんだと、そういうことを思い知らせるために、日常的に軍備をどんどん拡大しておいてそれが抑止の力になるというものなんですけれども、そこは百歩譲って前提として、その抑止が崩れたときどうするんですか。抑止が崩れたときは、例えばヨーロッパでソ連が攻め込むというふうに言うわけでしょう、アメリカは。そのときに、抑止が崩れて攻め込んだときに、じゃ太平洋ではどうなるんですか。そのときは、やっぱり抑止だから実際にバランスが崩れたときはもう黙っているんですか、太平洋で。
  244. 瀬木博基

    政府委員瀬木博基君) これまた米国の戦略でございますので、日本政府が代弁するということではございませんけれども、米国の国防報告等において書かれておりますのは、米国の戦略は、まず抑止を維持することであるということを書く一方、仮に抑止が破れるというような有事の事態が発生する場合には、米国並びにその同盟国の利益を損なわないように、でき得る限り早期にこの事態の収拾を図る、そういうことを書いてございます。そういう意味において、有事になった際もできるだけその紛争が拡大しないように、そしてまたそういう態勢を整えていく、これこそが全体の抑止になるというのが考え方だろうと思います。
  245. 吉川春子

    ○吉川春子君 もし、ヨーロッパで有事になったときに、戦線を拡大しないために太平洋で事を起こしてソ連の力をそぐ、こういうのが海洋戦略だと思うんですが、これはとりあえずそういうことにしまして、局長にお伺いしますのは、さっきアメリカでシミュレーションをやったときに、日本のいろんなことに役立つような簡単なものだとおっしゃいました。日本のために役立つということは、日本防衛するためにという意味ですね。
  246. 西廣整輝

    政府委員西廣整輝君) おっしゃるとおりであります。
  247. 吉川春子

    ○吉川春子君 そうすると、日本防衛しなきゃならないときというのは相手国から侵略を受けたときだと思うんですけれども、どういうときに日本は侵略を受けるんでしょうか。
  248. 西廣整輝

    政府委員西廣整輝君) 日本が侵略される場合というのは、さまざまな考え方があろうと思いますので私は一概に言えないと思いますが、いずれにしましても我々の考えというのは、現在世界の各国の中で最も軍事的な能力がすぐれておるという国は米ソの二カ国だと思っております。そして、それら例えば一カ国の侵略意図に対して、他の国は一国ではとてもそれに対抗できないのではないかというように考えております。したがって、我々としては、同じような自由主義、民主主義を基調としているアメリカとの同盟関係を結ぶことによって、侵略を抑止するという考え方をとっておるわけであります。また、同時に、米ソ両国というのは、お互いの力というものを十分認識していると私は思いますから、少なくともお互いに一番戦いたくない相手はアメリカはソ連であり、ソ連はアメリカであるというように考えているのではないかと思います。そういう意味で、私どもはそういうお互いが戦いたくないと思っているぐらい非常に強力な国の一つと同盟関係、安全保障体制を結ぶことによって、日本への侵略というものを未然に防止をするという基本的な考え方に立っておるわけであります。  先ほど来アメリカの海洋戦略のお話が出ておりますけれども、我々としては、今申し上げたような考え方で、米ソが戦うというような事態はよくよくのことでないと起こり得ないという前提のもとに安全保障体制を組んでおるわけでありますが、一方アメリカにすれば、ソ連と実際に戦う場合にどうできるかということを考えておくのは、これまたアメリカにとっては当然なことであろうと思うわけです。その際に、生き延びることが可能であればすべての事態に対応できるとアメリカが考えておることもまた当然のことだろうと思いますが、我々はそういったような世界の終末に近いような状況下で何をするかということよりも、現実において日本が侵略されない、安全であるためにはどういう選択をとるべきかということで考えており、そのための防衛力整備をしているというように御理解いただきたいと思います。
  249. 吉川春子

    ○吉川春子君 防衛庁長官のお考えをお聞きしたいと思います。  日本がどこかの国から侵略される可能性があるんでしょうか。もし侵略されるとすれば、それはどこの国から侵略されるんでしょうか。
  250. 栗原祐幸

    国務大臣栗原祐幸君) 可能性というものはあると思いますよ。しかし、どこかということは、これはわからぬですよ。これは言えませんね。
  251. 吉川春子

    ○吉川春子君 侵略の可能性があるから防衛力を増強するというのだと思うんですけれども、そうしますと、どういう事態のときに日本が侵略を受けるか、こういうことはいろいろ研究なさらないと自衛隊役割は果たせませんわね。どういう事態になれば日本は侵略を受けるんですか。
  252. 西廣整輝

    政府委員西廣整輝君) 日本という国は、たびたびこれ申し上げていることですが、かなりの国力がある、高度の技術も持っている産業もある、そういったことでかなり魅力のある国であります。さらに言えば、軍事的に見てもその地理的条件からいって東アジアの外縁に位置しておりまして、海洋戦略上その他から考えても非常に枢要な軍事的な価値を有する地理的条件にあるわけです。そういう意味で、各国のそれぞれの戦略目標というか、国家戦略があろうかと思いますけれども、そういう意味合いから見ると、日本というものは決して魅力のない国ではない、それなりの非常に高い戦略的価値のある国だと私は理解をしております。したがって、日本が仮に全くの無防備でありかつ同盟国もなくてたやすく日本というものを自分の勢力圏下に入れられるという判断がされれば、その国はちゅうちょなくそういった行動をとる可能性は常に存在をしておるというふうに考えております。
  253. 吉川春子

    ○吉川春子君 魅力のある国に対しては侵略するということは、まさか防衛庁の考え方じゃないんでしょうね。そういう考えというのはすごく恐ろしいと思うんです。魅力のある国だとどうして侵略されるんでしょうか。むしろたくさんの国と仲よくしていけばいいのであってね、その理由はちょっと納得できません。
  254. 西廣整輝

    政府委員西廣整輝君) 魅力がある国でありかつそれなりの価値のある国に対して、その国が全く軍事的に無抵抗であるとしますれば、何も軍事力を使って侵略する必要はなくて、軍事力というものをバックに威嚇するだけでその国の意向に従わなくちゃいけないという状況になるということを申し上げておるわけであります。
  255. 吉川春子

    ○吉川春子君 これもアメリカの高官の言葉を引用したいと思いますが、ギン元在日米軍司令官の米議会での証言です。「日本だけが攻撃され、単独で応対しなくてはならないような事態はあり得ず、日本へのソ連の限定攻撃は、米ソの世界的対決の中だけであり得る」というふうに言っています。白書ではいろいろ否定しておりますけれども、日本が戦争に巻き込まれるとすればそれは米ソ戦争のときなんだと。この人だけではありませんが、あちこちでこういうアメリカの高官の発言もありますけれども、そういうお考えに対してはどう思われますか。
  256. 西廣整輝

    政府委員西廣整輝君) 私は今のような考え方に対しては非常に反対といいますか、賛成しがたいと思っております。  先ほど来申し上げたように、米ソの軍事力というものは世界の中でも隔絶したものがあって、恐らく私の見るところ、米ソが戦った場合にお互いに勝つことはできない。しかし、刺し違えることはできる能力を相互に持っているのではないかと思っております。したがって、米ソが相戦った場合には共倒れになる可能性が非常に強い。    〔委員長退席、理事岩本政光君着席〕 そういう意味で、米ソが戦うということは最も可能性が少ない戦争の一つだろうと思っております。  一方、米ソ間の相対的な力関係というものがある程度動いてきた場合に、それにしても私は今言ったような勝てないまでも負けない力というものはお互いに維持していくのではないかと思っております。ただ、その際にある程度相対的に力が下がった方がやり得ることといえば、同盟諸国に対するコミットメントをできるだけ縮小していくということだろうと思います。自分の十分な力がないのに火中のクリを拾うということはだんだん困難になってくると。そういう意味で、コミットメントというものを縮小せざるを得ない。最後は自分だけを守るということにアメリカとしてもならざるを得ない。アメリカ自身が自分を危うくしながら最後まで日本を助けるということは、相対的な力関係が動いてくればそれはだんだん変わってくると考えざるを得ないと思うわけです。したがって、私は同盟国の間に何か侵略が起きるとすれば、常に米ソが戦った場合だという考え方は間違っておるし、いまだかつてそういった例もなかったというふうに考えております。
  257. 吉川春子

    ○吉川春子君 アメリカも最後になれば日本を守ってくれないと、核の傘がさしかけられないと、そういうような御意見を最後にちょっとおしゃられましたけれども、私は、このアメリカの海軍の大学校でこういう大型コンピューターを使って研究をやる、そしてソ連の侵略を前提として海洋戦略に基づいたこういう訓練をやる、たとえ図上であっても、コンピューターの図面であっても、ディスプレーの画面であっても、そういうことはやっぱり非常にソ連に対しても挑発的なことだし、私はこういうことはやるべきでない、そのことを指摘して、時間の関係がありますので次の問題に移りたいと思います。    〔理事岩本政光君退席、委員長着席〕  さっき沖縄の話が出ましたけれども、私もこの夏沖縄に行ってきました。日本の米軍基地の七五%のある沖縄で、沖縄の県民がどんなにつらい大変な思いをしているかということを見てまいりまして、本当にこれは安保があるからではないかという認識を一層強めたわけですけれども、その全体的な問題については逐次御質問をさせていただきますが、アメリカの基地ではなくて日本の基地ですね、海洋観測所についてお伺いしたいと思います。  沖縄の勝連に海上自衛隊の海洋観測所がありますけれども、ここでは何をしているんでしょうか。私たちの質問に対して田中所長は、潜水艦の音も調べていると、音の伝わり方を研究しているんだというふうにおっしゃっておられますが、そういうことなんでしょうか。
  258. 西廣整輝

    政府委員西廣整輝君) 海洋観測所におきます任務というのは、我が国周辺の海域におきます海洋といいますか、海の変化なり状況というものを常時把握しておくということが最大の任務であります。したがって、あるところで音を出してそれがどういうふうに伝搬するか、そういったことも含めてさまざまな海洋環境についての調査をいたしております、
  259. 吉川春子

    ○吉川春子君 ここにはアメリカ人のエンジニアが派遣されてきておりまして、私たちの調査でも嘉手納基地とか普天間基地からの米軍人軍属のYナンバーの車が日常的に出入りしているということを確認しています。このアメリカのエンジニアの身分について、衆議院内閣委員会で海軍の軍属だというふうにお答えになっていらっしゃいますが、軍属という場合は、中身といいますか範囲といいますか、どういうものなんでしょうか。
  260. 岡本行夫

    説明員(岡本行夫君) 日本アメリカの間の地位協定第一条(b)号に軍属の定義がございまして、それによりますと、「「軍属」とは、合衆国の国籍を有する文民で日本国にある合衆国軍隊に雇用され、これに勤務し、又はこれに随伴するもの」でございます。
  261. 吉川春子

    ○吉川春子君 そうしますと、具体的に例えばアメリカ車の軍人の家族であるとか、あるいはいろいろな人がいると思うんですけれども、今の条文を具体的に言うとどういうことになりますか。
  262. 岡本行夫

    説明員(岡本行夫君) 地位協定の対象を受けます人たちは、大きく分けますと米国軍隊の構成員そして軍属――軍属は平たい言葉で言いますと文民であって、つまり制服の方ではない文民であって、米軍と主として雇用契約を結んでその仕事に従事している人たちでありまして、その方々、そして家族の方々という区分けになっております。合衆国軍隊の構成員とそれから軍属の間の地位協定上の取り扱いにつきましては、出入国等につきまして若干の取り扱いの差異がございますが、そのほかの規定につきましては、大体軍の構成員と軍属は同様に取り扱われている場合が多いと御承知おきいただきたいと思います。
  263. 吉川春子

    ○吉川春子君 そうしますと、沖縄の海洋観測所に出入りしておられる軍属というのはどういう方なんですか。今言った軍属の範囲の中で言うと、どこに当たるんですか。
  264. 西廣整輝

    政府委員西廣整輝君) 私どもの方、海洋観測所二カ所持っておりますが、そこで使っております器材の多くのものは、現在そういった海洋の観測に最高の技術を持っておりますアメリカの器材の供与を受けて行っております。したがいまして、このアメリカから購入した器材、これらの維持、整備あるいは調整といったようなこと、そういったことに携わるアメリカの民間技術者の技術援助を受けております。
  265. 吉川春子

    ○吉川春子君 そうしますと、民間の会社の社員という身分も一方では持っているということですか。
  266. 西廣整輝

    政府委員西廣整輝君) あるいは外務省の方からお答えすべきかと思いますが、恐らく民間の技術者をアメリカ軍として雇用をしているということではなかろうかと思っております。
  267. 吉川春子

    ○吉川春子君 アメリカの技師が観測所にどうして出入りしているのかという理由について田中所長は、FMSで購入した観測器材なので保守整備のために来るというふうにおっしゃっておられました。で、保守整備のためというのでありますと疑問が生ずるわけですけれども、毎日来ているんですよね。初期調整とか定期点検のためなら毎日必ず一定の時間に来る必要はないと思うんですけれども、ここではオペレーターの養成訓練か何か行っているんでしょうか。
  268. 西廣整輝

    政府委員西廣整輝君) 先ほど申したように、整備もありますし、器材の維持あるいは調整、そういったものも含めて彼らの技術をかりておるわけでございます。
  269. 吉川春子

    ○吉川春子君 そうすると、毎日二十四時間いなければならないような仕事があるんですね。
  270. 西廣整輝

    政府委員西廣整輝君) ちょっと一般論になって恐縮ですが、海洋というのは非常に一様なように見えますけれども、やはり四季あるいは昼夜によりまして海温等は非常に変わってくる。それによっていろんな層ができて音波の伝搬状況等が極端に変わってくるわけでありますが、そういった状況を通じていろいろな実験をして観測をするということになりますので、昼夜、夜いろいろ行うこともあろうかと思っております。
  271. 吉川春子

    ○吉川春子君 アメリカの軍属である技師が二十四時間いるということは、実際上米軍の指揮のもとにあるのではないかというような疑いも持ちますが、考え過ぎですか、これは。
  272. 西廣整輝

    政府委員西廣整輝君) 指揮という意味が十分理解できませんが、いずれにしましても、この観測所というのは部隊とかオペレーションやっておるわけじゃございませんで、海洋の観測に常時従事をしているということであります。したがって、業務そのものは観測所長の命によってみんなが働いておるということであり、かつ先ほど申したように個々の器材、アメリカから供与された器材の運用なりあるいは整備なりあるいは実験のやり方なりについて彼らの技術的な助言をかりておるということであります。
  273. 吉川春子

    ○吉川春子君 この海洋観測所はホワイト・ビーチの、つまり米軍基地の敷地の中にあるわけですね。で、外務省にお伺いいたしますけれども、地位協定の二4(a)に基づく施設となっているわけです、この海洋観測所が。この場合、米軍はその観測所の中に自由に立ち入りできるんですか。
  274. 岡本行夫

    説明員(岡本行夫君) 御指摘のとおり、この建物は地位協定第二条1の(a)に従って我が方の自衛隊が共同使用をしているものでございます。米軍がこれに自由に立ち入りできるかというお尋ねでございますが、第一に、この施設区域は二条1項(a)の提供ということからも明らかなように、米側の管理権は依然として潜在的に存在しているものでございます。それから、一般的に自衛隊施設に米軍人が立ち入ることがあるかとおっしゃるお尋ねであれば、これはもちろん個々具体的な事例に即していろいろお答えしなければならないと思いますが、安保条約のもとでのその効果的な運用と円滑な実施に資する限りはそれは私どもとしては当然のことと考えております。
  275. 吉川春子

    ○吉川春子君 もう一つ伺いたいんですけれども、その部分をアメリカから返還させて、そして自衛隊がその観測所をつくるというふうにはしなかったのはなぜですか。
  276. 岡本行夫

    説明員(岡本行夫君) いわゆる地位協定の二4(a)の提供と申しますのは、日本政府または日本の国民がその施設、区域の一部または全部を使用する必要がある場合であって、しかも他方米側としてはその施設、区域を全体として保持する必要があって、したがって部分的にせよこれを返還するというようなことは困難である、このような場合に使っている方法でございます。したがいまして、繰り返しになりますが、この施設については米側が全体としてそれを依然として保持する必要性があるということでございます。
  277. 吉川春子

    ○吉川春子君 じゃ、イエス、ノーだけでいいんですけれども、要するにその海洋観測所も含めて米軍は管理をしておく、管理というか米軍のものにしておく必要があると、その海洋観測所の敷地を含めてそういう必要があったからだということですね。もう簡単でいいです。
  278. 岡本行夫

    説明員(岡本行夫君) 敷地全体について米側が全体として保持する必要は依然としてあるということは、先ほどのお答えのとおりでございます。
  279. 吉川春子

    ○吉川春子君 そして、ここで自衛隊が集めましたさまざまな情報、シグナルというんですか、原潜のシグナルとか、もろもろさっき局長がおっしゃいましたような海洋の状態、そういうようなデータはアメリカ軍に提供されるんですか。
  280. 西廣整輝

    政府委員西廣整輝君) ここは潜水艦の音をとっているというわけじゃございませんで、音の伝搬状況等がどう変化をするだろうという海洋状況を調査しているものであります。御承知のように、海洋観測所というのは北では下北半島の下北にございます。これは自衛隊施設でございますけれども、いずれにしましても北と南に一カ所ずつあり、かつそういう海浜に面した基地というのはほかにございませんので、南の方ではホワイト・ビーチを使わせてもらっているということでありますが、これらの資料は一括して横須賀にあります資料隊の方に送られてくる、そこで処理をするあるいは蓄積をしておくというものであります。  なお、そこで集められたデータ等については、必要に応じては米側とデータ交換することも可能でございますが、これはやはり状況により、我々の必要性等を勘案しながらやっていくということになるわけです。
  281. 吉川春子

    ○吉川春子君 聞いていると潜水艦の音も入ってくるんでしょう。
  282. 西廣整輝

    政府委員西廣整輝君) あるいはこちらの測定器の近くに潜水艦が通れば、潜水艦と言わず漁船と言わず入ってくると思いますが、アトランダムに物が入ってきても、どういう状況に昔波が伝わるかわかりませんので、結局決められたところから発せられた音がどういう形で屈折するかとかどういう形で聞こえるかという、要するに海洋の方の変化、そういったものが重要なわけであります。
  283. 吉川春子

    ○吉川春子君 そうしますと、いろいろな海洋の状態とかノイズとか調べているけれども、本当に潜水艦の音がどうか確かめるほどの設備はここにはないんだ、こういうことですね。
  284. 西廣整輝

    政府委員西廣整輝君) ある船舶のノイズが仮に入ったとしましても、それが何の発した音であるかということを確認するためには、やはり船なり航空機なりが出動して確認しなければできないわけですが、そういった業務をやっておるわけではございません。
  285. 吉川春子

    ○吉川春子君 FMSで買ったものは何ですかと伺いましたら、温度、圧力、潮流をはかるセンサー、そして陸にデータを送信するケーブル、またデータの処理器であるというふうにお答えをいただきましたが、このとおりですか。
  286. 西廣整輝

    政府委員西廣整輝君) 私、個々の器材等についてはわかりませんが、基本的にはその種のものだというように考えております。
  287. 吉川春子

    ○吉川春子君 さっきの局長のお話ですと、海底のいろいろなノイズも聞こえてくるんだとおっしゃいましたけれども、そうしますと、聴音器のようなものもあるわけですね。
  288. 西廣整輝

    政府委員西廣整輝君) ノイズが聞こえてくると私は必ずしも申し上げたわけじゃありませんが、我々が必要としているのは、海洋の密度であるとか温度差がどうありどういう角度でそれらが形成されているかという状況をとらえる必要があるわけです。そのためには、音の曲がりぐあい等がどうなるかということを含めて確認するということになるということは事実であります。
  289. 吉川春子

    ○吉川春子君 ちょっと私は余りこれ専門じゃないので、詳しくお聞きしたいんですが、わからないんですが、要するに音を聞く器械を、そんなに性能がいいか悪いかは別として、ノイズをとる器機、聴音器はあるというふうに今おっしゃったんですか。
  290. 西廣整輝

    政府委員西廣整輝君) ここは音をとることが任務ではなくて、先ほどから何度も申し上げているように、海洋の環境状況を調べることが任務でございますから、そのために各種測定器なりがあるというようにお答え申し上げたいと思います。
  291. 吉川春子

    ○吉川春子君 FMSで買ったものの中にはそうすると聴音器は含まれていない、このように理解してよろしいですね。
  292. 西廣整輝

    政府委員西廣整輝君) 測定器の中に音の測定器ということもありますから、その測定という意味であるいは聴音という機能の一部が入っておると言えないこともないかもしれませんが、いずれにしましても聴音器ということではございません。
  293. 吉川春子

    ○吉川春子君 リピーターといいますか、中継器のようなものはやはりアメリカから買ってはいないんですか。
  294. 西廣整輝

    政府委員西廣整輝君) ちょっと細かいことで私もよくわかりませんが、要するにリピーターというのはかなり遠くにある、例えばケーブル等が長いものの場合、とったデータというものが減衰しないようにある時点で増幅してまた送るという代物だと思いますので、測定器をどこに置くかによって、場合によってはリピーターを使うこともあり得ると思います。
  295. 吉川春子

    ○吉川春子君 そうすると、リピーターがあればかなり遠くの音まで聞こえるということですか。
  296. 西廣整輝

    政府委員西廣整輝君) リピーターがあればというよりも、その測定器をどこに設置をするかということによろうかと思います。
  297. 吉川春子

    ○吉川春子君 私、間もなく時間が終わりまして、この質問は引き続き次の機会に譲りますが、この質問の最後に、防衛庁長官にお伺いしたいんです。  実は、私ども共産党の調査団がこの海洋観測所を見せていただきたいというふうにこの夏お願いしましたら、見事に断られました。その理由をお伺いしたいわけです。つまり、国会議員がそういう自衛隊の基地に入って重大な機密を見せよ、そういうことじゃないんです。その中に入って、どういうことをしているのかということを見たいというその要望を断られたということであれば、やはりシビリアンコントロールという立場からいっても好ましくないんじゃないかと私は思うんですけれども、その点について長官はどのようにお考えでしょうか。
  298. 依田智治

    政府委員(依田智治君) 先生今お尋ねの点は、七月十六日に瀬長議員等が見学したいということで、八月三日に見学したいという申し入れがあった件ではないかと思います。  一般の問題としまして、国会議員の先生方が部隊の視察をなさるという場合には、国政調査権に基づくものであろうとその他のものでありましても、私どもとしてはできる限り協力するという基本姿勢であります。ただ、この沖縄の海洋観測所の場合には、先ほど来防衛局長等からお話がありましたように、高度の機密に属しておる、機密保全上協力できない面がございますので、御遠慮いただいた。一般的な数字を申し上げますと、例えば昭和五十九年でございますと、四十九件の申し入れがありましたのに対しまして、公務の都合等でお断りしたのが六件、最近の数字ですと、六十一年は五十件の申し込みに対しまして二件、本年は十九件に対して現在三件というようなことでございます。  一般原則としましては、これはもともと三木総理時代に国政調査権と守秘義務というようなことでお答えしておるわけでございますが、結局守るべき秘密とそれから国政調査、その両方の公益というか、個々の事案を比較考量して、それにおいて判断するということですが、私どもとしましては、できるだけやはり基本姿勢としましては、国政調査、議員の先生方の視察に協力するという姿勢であるわけでございますが、そのあたりの点は、ひとつどうしても公務上または秘密保全上お断りしなければならない場合もあるという点をひとつ御了解いただきたいと思うわけでございます。
  299. 栗原祐幸

    国務大臣栗原祐幸君) そういうことでございますので、あしからず。
  300. 吉川春子

    ○吉川春子君 では、次回に続けます。
  301. 柳澤錬造

    ○柳澤錬造君 私は、最初にお聞きをしていきたいことは、きのうの本会議でもって中曽根総理が、日本には仮想敵国はないという答弁をなさっておったんです。これは総理が御答弁なさったんですから総理に聞かなきゃいけないんですけれども、防衛庁としてその点はどういうお考えをお持ちなのか。私の判断から言わせていただくならば、仮想敵国がなくてどうして国の防衛というものについての戦略戦術が立てられるか。何らかのものを考えてそこに防衛の戦略、戦術を立てるわけですから、そういう点に立って防衛庁としての御見解をお聞きしたいんです。
  302. 西廣整輝

    政府委員西廣整輝君) 我が国はかねがね仮想敵国がない、逆に言えば敵性を持つ国をできるだけなくすという姿勢であることは、御理解いただけると思います。  一方、防衛力整備あるいはその運用に関連して我々としてもいろいろ研究をしたり勉強をしたりするわけでございますが、その際、当然のことながら、我が国周辺にあります諸国の軍備の動向なりあるいは軍事技術の状況といったものには非常に強い関心を持っておりますし、それらのものが能力として我が国に対して何をなし得るかということについては常々研究を怠らないところでありまして、そういったことから我々としても十分な防衛の戦略といいますか、防衛の作戦等についての研究は可能であるというふうに考えております。
  303. 柳澤錬造

    ○柳澤錬造君 そうすると、防衛庁は仮想敵国はあるという判断を持っているというふうに理解していいわけだね、今の局長の答弁からいくと。
  304. 西廣整輝

    政府委員西廣整輝君) 繰り返しますが、仮想敵国はないというふうに御理解いただきたいと思います。  ただ、たびたび申し上げておりますように、軍事力といいますか、脅威というのは、そのある特定の国が持っておる能力、軍事力そのものとその国が我が国に対して抱くであろう意図、そういったものが結びついて初めて脅威として顕在化するものだと考えております。一方、意図というものが比較的変わりやすいということに対して、能力というものはそれを築き上げるには相当な時間がかかるということでありますから、我々は変わりやすい意図というものに着目するのではなくて、能力というものに常に十分な観察を行って、もし相手の意図が急変したような場合にも国の安全というものが全うできるようにということでかねがね注意は怠らないし、それなりの勉強はしておるということがありますが、それは必ずしも相手を仮想敵国視しているということとは別のものであるというふうに御理解いただきたいと思います。
  305. 柳澤錬造

    ○柳澤錬造君 今の防衛局長のような、これは学校の先生が教壇の上でしゃべっているのならそれでも済むわけです。それで、長官、考えていただかなきゃならぬのは、第一次世界大戦のときは日本はドイツと戦ったわけでしょう。それで、第二次世界大戦のときには今度は日本はドイツと同盟国の関係になった。それで、またアメリカとの関係にしてもそうだけれども、この間の世界大戦のときにはもう真っ向からアメリカと戦争したわけだ。そのアメリカとは十年後には、先ほどからお話が出ているように、日米安保条約まで結んでいわゆる同盟国の関係になって今こう来ているわけだ。だから、私から言わせてもらえば、日本以外はすべて仮想敵国でしょうと。どこの国とどういう関係になるかなんということは、そんなことはわかりはしないことだ。ただ、敵国との関係のそういう状態というものは九〇%から濃度が高いか、あるいは一%しかない低さか、その違いは私はあると思うんです。何も仮想敵国と言ったからってその国と戦争するわけじゃないんです。そうでなけりゃ皆さん方が日本の国の防衛態勢をどういう状態でもって配備をしてやるかというときに、戦略、戦術が成り立つはずがないんだから。  歴史的に見ても、それこそ昭和十六年の一月と七月というわずか半年の差でもって日本防衛態勢というのは百八十度転換したわけだ、あのときはね。ですから、その辺の点で今までの防衛局長のような答弁では納得もしないし、それから、私が言っているのも、何も仮想敵国があったからといってそこと戦争になるだろうなんて言っているんじゃないんです。戦争にならぬように努力をして、これはいろいろ外交の手段もあるし、あらゆることをやらにゃいかぬ。しかし、先ほども長官言われたとおり、これだけの経済力を持ち工業力を持った国家なんですから、それはいろいろなところからねらわれる。そのねらわれるのを防がなきゃならぬ。ですから、その辺の点について、別に揚げ足を取るわけじゃないですけれども、あるいは言葉のあやになるかもわからぬけれども、仮想敵国はないというふうなそういう表現じゃなくて、すべてが仮想敵国の対象ですと、そういう中でもって、極端な言い方をすれば、大部分はそういう仮想敵国の要素はほんの一%か五%しかないでしょうと、それもゼロにするような努力はいたしますということの表現はあってもいいと思うんです。ないという言い方だけであったならば、それではどうやって防衛庁防衛の戦略、戦術を立てるんですかということになるんですから、長官からその辺お答えいただきたい。
  306. 栗原祐幸

    国務大臣栗原祐幸君) お話の何を言わんかということはよく私にも理解できるつもりでございます。ただ、仮想敵国と言いますと、いかにも敵がい心に燃えるような雰囲気になるといいますか、そういうムードを持つ人もいるんじゃないでしょうか。仮想敵国というようなことはやはり政治的に非常に刺激をすると思いますね。ですから、やはり今まで言っているとおり、そういう国は日本にはないと、仮想敵国は。ただし、現実に日本として注意をしなければならない周辺の軍事情勢、そういったものについては十分に配慮して、おさおさ怠りのないように努めておりますということで言った方がかえっていいんじゃないでしょうか。これはもうお気持ちはよくわかりますが、私はその方が現在の政治的な判断としてはいいように考えます。
  307. 柳澤錬造

    ○柳澤錬造君 だから、日本防衛庁というのは何を考えておるかわからなくなっちゃう。日米安保条約だって、それはこういう場でなにしちゃいかぬけれども、日本が侵略されたときに出かけていって助けてあげようというのが表向きのあれにはなっていることは事実。しかし、アメリカとするならば、言うならば日本が余り軍事力を持って強くなってもらっちゃ困るというふうなものもあって、あの日米安保条約を結んだ。そういう逆な作用、ある限界でもって日本の軍事力を抑え込んでおこうというものもあって、あの日米安保条約が結ばれたわけでしょう。それは長官たち御存じないわけないんだから。だから、その辺はどういう表現を使ったらいいかわからぬけれども、仮想敵国はないんだというふうなそういう言い方は、もうちょっと適切な言葉を考えて使いなさいよ、本当にもう。誤解を、逆な意味誤解を生むことになりますよ。  それで、次に私申し上げたい点は、この中にいっぱいこれずっとなにしてあるけれども、いわゆるシビリアンコントロール、これはもういつも言われていること。このシビリアンコントロールということについて防衛庁としての認識というものを私お聞きをしたいんです。厳格なシビリアンコントロールを文民統制で云々とこう書いてあるわけだ。だから、総理も文民でなきゃならないし、これは憲法上からもそのとおりです。それで、最高の指揮監督権を持つわけでしょう。とするならば、少なくとも内閣総理大臣が文民であるだけに、言うならば統幕議長だとか各幕僚長だとかそういう人たちと月に何回ぐらい会って、それでいろいろとそういうふうな軍事情勢について話を聞いて、絶えず総理の頭の中にはそういう情勢について物事を判断できる材料を持たせるようなことをしておるのか。その辺についてどうなんですか。統幕議長や各幕僚長なんかは総理と月何回ぐらいお会いしているんですか。
  308. 依田智治

    政府委員(依田智治君) シビリアンコントロールの点につきましては、この白書でも防衛の基本的な問題といたしまして八十五ページ以下に基本原則の一つとしてうたっておるわけでございます。今日の我々としましては戦前の反省に立って、政治の軍に対する優先ということで十分機能しておるというように確信しておるわけでございます。  今お尋ねの統幕議長等とどのくらい会っているかという問題でございます。中曽根総理が間もなく五年になるわけでございますが、中曽根総理の代にちょっと数字をあれしてみますと、国防会議とか安全保障会議、同議院懇、こういうので統幕議長が出席して国際情勢等を説明したりというのがこれまで二十回行われております。あと夕食懇談という形で一回やっただけで、実は鈴木総理の場合三回くらいやっておりましたが、このところ途絶えておる状況でございます。観閲式とか自衛隊高級幹部会同、それから防大卒業式等には必ず出席して訓辞をいただくというような形で直接考えを自衛官にお示しいただく、このほかに必ず自衛隊の一線幹部、これは新退任のあいさつのときには必ず官邸に総理にごあいさつに行って、その際時間の許す限り懇談し、当面のあいさつだけでなくて意見を聞くというような形、これが二十三回行われた。こんなような状況でございます。
  309. 柳澤錬造

    ○柳澤錬造君 国防会議だとかなんとかそんなものは、私が聞いている数の中に入れたって意味はなさぬわけだ。それから、鈴木総理のときは三回だって。私が鈴木総理予算委員会で、あなた総理になって何回統幕議長と会いましたかと言ったら、総理になって七カ月でたしか七回だっておれに言ったんだよ。そうしたら後ろの方でもって、いや柳澤さんよ、それは飯食っているのも一緒に入れて言っているんだよと言っていたくらいだけれども、それはそれでいいわ。  それで、そういうふうな形式的な答弁をおれは聞いているんじゃないんだから。現実に日本の現職の内閣総理大臣がドイツの総理大臣からサミットで、いよいよソ連がSS20をアジアへ配備しましたよと言われて、SS20って何だか知らなかったというんだ。そういうことじゃ困るわけなんだよ。ほかのことならば、それは総理大臣はいろいろ税金がどうだとかこうだとか頭に入っている。しかし、やっぱり軍事情勢の問題なんというのはそれは専門家じゃないんだから、いろいろそういうことについていつもやっぱり頭に入れておいて、そして判断ができるような、そういう材料を提供しておいてやらないと。だから、その辺がシビリアンコントロールということについて、今ここでこれ以上私議論せぬけれども、若干皆さん方の認識というものが正確ではないです。もう少し文民優先、政治優先ということはどういうことを指すんだという、その辺をやっぱり防衛庁の幹部の皆さん方理解しておいていただきたい。  だから、総理が最高指揮権を持っておって、今までどれだけやられたかわからぬけれども、領空侵犯、領海侵犯、言うならば日本の国の主権を侵された、それについて内閣総理大臣が、これは中曽根総理に限らぬでいいですから、最高指揮官として指揮権を発動して命令下した総理がおられるんですか、どうなんですか。
  310. 西廣整輝

    政府委員西廣整輝君) 今おっしゃられた指揮権という意味はいろいろあろうかと思いますが、いわゆる法に定めた内閣総理大臣がやらなくちゃいけないこと、例えば治安出動であるとか、その種の指揮というのは今まで発動されたことはございませんが、個別の事項で実際問題としては、個々の行政の問題であれ、今おっしゃられた例えば領侵があったとかいろいろな情勢の変化に応じた対応策であれ、その都度重要なものについては総理にも御報告し、状況によっては総理から指示なりが与えられるという状況でございまして、回数というものは何回というふうに覚えていられないぐらい何度も総理のところにはお伺いするという状況であります。
  311. 栗原祐幸

    国務大臣栗原祐幸君) 私も防衛庁長官これで二回目でして、シビリアンコントロールということについては全責任を負っているつもりです。私は週に一回は統幕議長、三幕長、これは国会なんかあれば別ですよ、を呼びまして、それに次官、官房長交えていろいろと懇談をする、いろいろ聞く、注意をする、そういうことをやっております。それで、必要な場合はこういうことをしたと私が総理大臣に伝える。必要とあればあなたから下命をしなさいと。また防衛局長その他を随時総理大臣のところへやるということですから、まあいろいろあるでしょう。私大変生意気なようですけれども、割合にシビリアンコントロールはしっかりやっているつもりでございます。ただ、足らぬところもあるでしょうから、今後とも御鞭撻を賜りたいと思います。
  312. 柳澤錬造

    ○柳澤錬造君 わかりました。今度一回ここへ統幕議長、各幕僚長を呼んで我々にも直接やっぱり自衛隊の実態について聞かしてくださいよ。そういう機会を持ってください。  それから、次は防衛計画の大綱、これもこの中からなんですけれども、言うならば、この白書の中で大綱の考え方は、限定的かつ小規模な侵略に原則として独力で対処し得る防衛力整備することにより云々と言って、これも至るところに出てくる文句なんです。それで私がわからないのは、防衛計画の大綱のような中で、限定的かつ小規模な侵略に原則として独力で対処し得る防衛力ってどういうことなんですか。これはまあ戦争は避けなくちゃいかぬからね、戦争にならぬようにすることはもちろんのことだけれども、もしも攻め込まれるというときに小規模でもって小ちんまりと来てくれよとこっちから言って、ああそうか、じゃ一個小隊ぐらいでもって行くかなんて、そんなことになるわけないわけでしょう。小規模で来るのか大規模で来るのかわからぬわけよ、これは相手のあることで。そうすると、どういう形で来てもそれに対応するだけのものはきちんとしておかなくちゃいけないことであって、それが防衛計画の大綱というような中で今のような表現を使って、そして日本防衛力はと、こういうような言い方をしているところが私には理解ができないことなんで、この辺も御答弁がいただければあれだし、もしなんならば無理に申しません。ただ、さっきのなにと同じで、やっぱりもうちょっと、誤解を与えてはいけないけれども、正確に皆さん方に理解ができるような、そういう表現を考えないと私は間違いを犯すと思うんで、その点はどうなんですか。
  313. 西廣整輝

    政府委員西廣整輝君) 防衛計画の大綱というのは、御承知のように、防衛力整備の大綱でありまして、現在の国際情勢その他から見て直ちに日本に対して軍事力を用いて現状変更をしかけてくるような国はないといいますか、そういうことは非常に強く抑止されている国際情勢下にあるという前提における、平時から持つべき防衛力の水準というものを明示してあるわけであります。したがって、それは日本が日米安保というものがあるにしろ、そういったものが有効に機能をしないような状況、非常に短時間の間に既成事実ができてしまうような状況であっては、日本に対して侵略する気持ちを持ちかねないということも含めて考えて、小規模限定的な事態に独力で対応できるだけの防衛力を少なくとも平時から持っておるべきであるという考え方でありまして、日本に対する侵攻が仮に本当に行われるという事態を考えますと、相手がよほど頭が悪くない限りは、日本に勝てるだけの兵力をつぎ込んでくるということは疑いのない事実だと思うんです、そういう状況になれば。勝つか負けるかわからない兵力を持ち込んでくるということは余り考えられない。勝てるだろうと思うから来るわけでありますから、相当な軍事力を投入してくるということは疑いないことでありますが、現在直ちにそういう状況ではないし、そういう状況に変わるためには、やはり今のそれぞれの各国間、各地域における均衡状態というものが破れてくる、あるいは損なわれてくる状況にならないと、そういう大規模な軍事力というものを動員する事態にはならないであろうということで、現在の防衛計画というものが定められておるように理解をいたしております。  したがいまして、防衛計画大綱に言っておる限定的小規模侵略というものは、何度も申し上げるようですが、防衛力整備の基本的な考え方として、まずそれを水準として考えておるということであって、運用の大綱ではないということは御理解いただきたいと思います。
  314. 柳澤錬造

    ○柳澤錬造君 防衛局長ね、そういう答弁を聞いているともうあと質問するの嫌になるんだ。それは文部省がどこかの何とか局長が今のようなことを聞かれて言っているのならばそれで済むけれども、防衛庁防衛局長の地位にある西廣さんが今のようなことを言うからさ。私は戦争を何もやる用意しろと言っているんじゃないんです。戦争は起こさないようにしなくちゃならぬ。そのためのいかにして抑止力を持ってやらなければいかぬかということを考えればこそ言うことであって、そういうふうな今の局長の答弁のようなこと、後でもってよくお考えください。全く私から言わせれば逆立ちの論理でもって、ですからそれ以上その点はもう触れません。  リムパックのことももうこれやめまして、大城先生からもちょっとあったFSX、次期の支援戦闘機について、大城先生の質問のときの防衛局長の御答弁聞いていて、私から言わせればこれも逆立ちの答弁。これは兵器でしょう、戦闘機だから。兵器であるならば極力自前で、国産で持たなければ。国産という言い方はあれだけれども、持つべきものなんだ。そうでなければ、外国から物を買ってくれば即これみんなわかっちゃうわけだから。だから、第一にはやはり国内で開発をして自前で持つ。ところが、どんなにそう思ったって日本にそれだけの力がなければ、今で言えばアメリカと協力をして共同開発をするか、それもだめならば、しようがないから外国で開発した飛行機を買ってくるかということになるわけです。そういう点に立つならば、第一に考えなくちゃいかぬことは、もうこれ三年ぐらい前からこの問題はやっていて議論しているわけですよね。今の日本航空機産業のあれからいけば、私そのくらいの技術はもう持っていると思うんです。だって、YS11が戦後最初に開発した旅客機、今はもうなにしたけれども、割合に小型だけれども評判がよかった。その次には今度はC1でしょう、あれは輸送機だけれども。それで、その後はPS1の飛行艇をつくって、さらに発展していって今度はF1で、これは戦闘機。今の自衛隊の中にもF1、これは恐らくかなりたくさんあると思うんですよ、百機近くは。そうしてくるならば、その次のこのFSXについてもひとつ自前でもって開発をするかといってお考えになるのが最優先。  ところが、先ほどの大城先生の答弁のときに、局長のあれを私黙ってここで聞いていたときに言われた点は、何か時間がないんだとかなんとかかんとかというようなことを言われた、昭和二十九年に自衛隊法をつくって、三十二、三年か三十四、五年ごろならば、いろいろの点について準備が間に合わない、時間がないということは、そういう言葉を使うこともあり得るかわからぬけれども、今は昭和六十二年ですからね。それで、もうずっと今までもだんだん二次防、三次防、四次防とやってきているんだから、そうすると今度、この次の段階はどういうことをやらなければいかぬかなんということは、もうはるか前に、現実にFSXにしたって私の記憶だけでももう三年ぐらい前から議論しているわけだ。だから、そういう点に立つならば、もう一回お聞きをするんだけれども、やはり国内で開発をするということを最優先して考えていくべきだと思うんだけれども、その点についてのお考えいかがですか。
  315. 西廣整輝

    政府委員西廣整輝君) 先ほど大城先生お答えしたのは、FSX選定時期はいつごろでしょうかという御質問でございましたので、それぞれの選択肢によって違うし、開発する場合にはできるだけ早く決定した方がいいと思いますということを申し上げたわけであります。  なお、今の御質問ですが、私どもは防衛のための装備というものは国産で基本的にあるべきであるという考え方は必ずしもとっておりません。先ほど先生、全方位で全部仮想敵国というお話もありましたけれども、私どもの防衛政策というのはやはり日米安保というものを基軸にして考えております。しかも、我が方の有事というのは常に国土戦であるということを考えますと、日本自身が持っておる武器の生産能力というものが、有事においても十分有効に働くとは必ずしも思えないわけであります。そういうことを考えますと、損耗の非常に激しいもの、例えば航空機等について言えば、やはりできるだけ米側と同じような機種、パイロットが直ちに使いこなせる機種であるということも、非常にまた重要なことだろうというふうに私どもは考えております。大綱にもありますように、状況の変化に応じてエクスパンドできるというようなことも含めて考えますと、パイロットさえ健在ならば航空機を持ってくればある程度の柔軟性のある対応ができるということもまた非常に重要なことだと考えております。ただ、こういった防衛装備につきましては、やはり自分自身がある程度の技術力なり生産能力というものを持っておりませんと、しかるべき装備というものが公正な値段で手に入るということもまた難しい点があります。そういった点でバーゲニングパワーというのは必ずしも私は好きではございませんけれども、そういった意味日本自身が相当な能力を持っているということもまた重要だと考えておるわけです。  さらに申し上げれば、現在の日米関係で見ますと、アメリカから供与されている、アメリカに頼っている部分というのがいかにも多いわけであります。一方、アメリカ日本に頼っているといいますか、そういった部分はほとんどない状況でありまして、技術の問題につきましても装備の問題につきましても、日米間にはたくさんの糸がつながっておりますけれども、糸が切れて血が出るのはいつも日本側であるという状況は必ずしも適切ではない。やはり一部のものであっても日本のすぐれた技術というものがアメリカの装備の中に取り入れられるという状況は、日米安保の効果的な運用なり安定のために私は非常に重要なことだというふうに考えております。
  316. 柳澤錬造

    ○柳澤錬造君 長官は賛成なの。
  317. 栗原祐幸

    国務大臣栗原祐幸君) 今日本が、共同開発、それから現有機の転用ですね、外国機の導入、この三つで、俗に言う三原則でいろいろやっているわけですね。  この間ワインバーガーさんが来ましたときに、ワインバーガーさんの方から、アメリカ航空機をひとつ主体として、日本の技術を入れていろいろ検討してみてくれないかというお話がありましたよ。それについては、それ検討しましょうと私は言ったんです。ただ、同時に私が言ったことは、私の関心はアメリカ航空機を買うということに関心があるんじゃないんだと。しかし、どうしても日本でつくらなきゃ承知ならぬと、そういうところにも関心があるんじゃないんだと。日本の技術とアメリカの技術をどうアジャストするか、そして両国のために最もいいものをつくるか。これはただ単にFSXだけじゃない、これかものハイテク時代に向かってアメリカの技術と日本の技術をどうアジャストするか、そういうところに私は関心があるんですと、これは一般論として申し上げますということを言ったんです。それに対しましてはワインバーガーもうなずいておりました。
  318. 柳澤錬造

    ○柳澤錬造君 何でも日本でつくれなんて私言ってるんじゃないのであって、それはイタリアの兵器も日本の護衛艦には積んでいるんですから、だからそういう点に立って性能のいい兵器はそれは買ってもいいと思う。しかし、日米安保なるがゆえにといってそういうことばかり。やっておったら、結局日本自衛隊はわかりやすく言えばアメリカに支配されたようなことになってしまうんだから、極力やっぱり自主独立してきちんと存在する状態であって、それであってこそ防衛庁長官アメリカへ行って今度はなにしたって対等で物を言えるわけなんですから。そういう点に立って、これだけの工業力を持って、それで技術開発も、私なんか心配するのは、ある程度そういう技術の開発のことを次々とやらせていかなければ技術者がいなくなっちゃうんです。いなくなってから今度は物を開発しようとしたってこれは間に合わないのであって、ですからそういう点に立って、一つのことを開発するのでも大変なお金がかかってあれだけれども、そういう言うならば自前で開発をするということを基本に置いて、といってもとてもじゃないけれども今それは無理だ、じゃこれはアメリカと協力してというふうな、そういうふうな考え方をとっていただきたいということを特にお願いをしておきます。  それから次にペルシャ湾情勢で、この間もちょっとお聞きをしたんですけれども、これも本来なら総理に聞かなきゃいかぬことだけれども、私もきのう本会議を聞いておって、総理の答弁でまことに不可解な答弁をなさったわけです。それはペルシャ湾では日本は最大の受益国だと。それは確かに私はそうだと思うんです。五五%あそこから油を運んでいるんです。日本は最大の受益国であって、非軍事的な役割で貢献していくと。これは総理に聞かなきゃわからなければまた総理が来たときにするんだけれども一防衛庁の方でもってこの点について御答弁ができるならばお聞かせをいただきたいと思うんです。
  319. 瀬木博基

    政府委員瀬木博基君) この点はもう既に委員も御承知だと思いますが、従来から政府が申しております非軍事的な役割というのは、外交的な役割であると思います。やはりこのペルシャ湾の危険な状態というのは、基本的にはイランとイラクとの間の紛争状態にあるわけでございます。これを何とかして早期に解決するという、これがやはり一番の基本であろうと思います。この点について、日本政府としてもちろんイラン、イラクそれぞれに働きかける。また国連を通じて働きかける。たまたま国連の安保理で決議をつくりましたときも、我が国は非常任理事国の立場にございますので、その立場に立って国連からの働きかけをしておる。現在もそれを続けておると防衛庁としても承知いたしております。
  320. 柳澤錬造

    ○柳澤錬造君 その国連に、これは外務省に聞かなきゃいかぬのだけれども、だれが行ったの。恐らく日本からは次官クラスかだれかだ、ほかの国と違って。それから、この間外務大臣みずからがイランにも行っておるわけでしょう。それで少しは鎮静化したかといったら、ますます激化して、今もう毎日のようにあのとおり行われて、それで今日本のタンカー、だから平常時の半分以下なんです、入っているのは、もう危なくてしようがないから。だから、その辺の点が、イランとイラクの戦争をと言って、これは言葉では簡単だけれども、もう五年、六年でしょう。それで依然としてあのとおりやっているわけなんで、だから、何か日本がいい知恵あって、それでイランにもイラクにも納得させておさめるような方法があればいいことだけれども、その辺の点が何もなしに、日本は最大の受益国であるのだから非軍事的な役割でもって貢献をしていくんだなんてことを一国の総理が本会議で答弁されているというのは困ってしまう。この辺は防衛庁にということを言っても無理だけれども、ただこのことだけは長官よく覚えておいてください、きょうは御返事はいいけれども。この前に私が聞いたときに、防衛庁の答弁は、ペルシャ湾のこの問題について、防衛庁は関係ありませんと言った。そういうことの答弁をしておっていいのかどうなのか。少なくとも主権が侵害されているにもかかわらず、その国の、日本で言えば自衛隊なり、外国で言うならば国防軍なりが、それは我関せずで、関知することではありませんなんてことを言っている国が、少なくとも世界の主要な国家の中で日本以外にあるかといったら、私はないと思う。だから、そういうことを安直に言ってもらっては困るんですということだけ申し上げておきたいと思うんです。  それで、これは私いいことで何ですけれども、今度のこの防衛白書、一番後ろにアンケートがついているんですが、今までこんなことしたことないので、なかなかいいことをなさったなと思うから、それでせっかくの機会で、そういう意味では官房長でもいいんだけれども、この白書の発行部数がどのくらいで、それで我々のところなんか決まり切って来るんだけれども、一般の国民が買うなり何なりして読んでもらえる部数というのはどのくらいあるのか。それで、今度はアンケート初めてのことですから、これ集計されたら何らかの機会に私どもにもそれを教えていただきたい。これは大変いいごとをされたから、その点は評価をして、白書の中身じゃなくてアンケートつけたことはよかった。  それから、ペルシャ湾のことについてはあえて答弁求めませんけれども、これは次の機会にでも私また時間かけてやりたいと思いますので、外務省にも出てもらって、それでよくお考えだけしておっていただきたいと思います。
  321. 依田智治

    政府委員(依田智治君) 白書の点についてお尋ねですのでお答えいたします。  発行部数大体三万部を予定しております。大蔵省の印刷局で印刷いたしまして、それで政府刊行物サービスセンター等でそのうち二万部を販売するということでやっております。大体これまでの売れ行きですと、経済白書、中小企業白書に次いで警察白書と防衛白書が大体三位を争っているという状態でございまして、昨年度の実績が一万五千部程度というように聞いております。なお、残り一万部につきましては、全国にある図書館とかそういうところを中心に、また先生方やマスコミ関係者その他有識者等に有効に活用していただくように配付しているという状況でございます。  あとアンケートにつきましては、ちょっとこの白書につきましては非常にどちらかというと難しい、じっくり読んでもらえば相当中身はいいことを書いてあるつもりでございますが、ただ一般的に中学、高校生くらいが説もうとすれば、ちょっと難しい面もあるかなと。しかし、まとまって書くとどうしてもこのくらいな形になっちゃうわけですので、一回ごとし初めての試みですが、先生の今おっしゃるこのアンケートで、どういう点に関心があるか、本当に難しいのだろうかというような点をちょっと一般に買った人に――どのくらい返事があるか。多数の返事を期待しておるわけでございますが、これをもとに私どもとしては来年の白書作成の際にはその意見を有効に生かしたいというように考えているわけでございます。  なお、先生指摘のように、この数字等がまとまりましたら、また先生にももし機会があればお知らせしたいと思っております。
  322. 柳澤錬造

    ○柳澤錬造君 終わります。ペルシャ湾は次回に。
  323. 西廣整輝

    政府委員西廣整輝君) 先ほど吉川委員の御質問の際に御答弁を保留させていただきました点について、補足してお答え申し上げます。  まず第一点は、スミス少将という方についてお話がありました。この研修に際しまして日米の図演の実験に際して見学者の中にL・W・スミス少将という方が入っております。この方はアメリカの海軍省の海軍作戦本部の即応態勢課の部員であるということであります。  それから、なおアメリカ側責任者はコッシー少将、在日米海軍司令官であります。  以上です。
  324. 名尾良孝

    委員長名尾良孝君) 本案に対する本日の質疑はこの程度とし、これにて散会いたします。    午後五時二分散会      ―――――・―――――