○
野田哲君 これは私にはどうしても了解できない。また
機会があれば、これからもいろいろ議論を続けたいと思います。
防衛白書に
記述されている事柄について、幾つか伺いたいと思うんです。
栗原長官ね、ことし発表された
防衛白書を一読して、これは大変攻撃的というか、平易な
言葉で言えばタカ派的な、随分さま変わりをした
防衛白書だと、こういう印象を受けたわけであります。きのうの本
会議で、いろいろ
栗原長官と
質疑者とのやりとりを聞いている中で、私どもの同僚の中でささやきが起こっておりました。
栗原祐幸さんというのは、これはハト派だと思っていたが随分タカ派になったんだな、こういうささやきが起こっておりました。そして、国際情勢のとらえ方にしても、これは余りにも硬直をしているのではないか。一言で言えばソ連は悪玉、
アメリカは善玉、そしてソ連がやっていることは軍事力の拡大、影響力の拡大、
アメリカのやっていることは抑止力の提供、こういう区分けをされているんです。そして、
世界の国々をすべてソ連につく国か
アメリカにつく国か、殊さらに区分けをされるような印象なんです。中国についてまでもどっちへつくかということで区分けをされるような印象なんです。今日の国際情勢にはこういう硬直した考え方では対応できないんじゃないか。INFの削減、ダブルゼロの話がことしの秋には決着をしようか、そしてニューヨークかワシントンで米ソ首脳会談が開かれようか、こういう状況であるし、NATOの諸国の中でも西ドイツなどもこういう動きに対応して軍備の削減を図っていく、こういう動きが出ているときに、依然として
世界の国々をソ連側と
アメリカ側に区分けをして、ソ連のやっていることは軍事力の拡張、
アメリカのやっていることは抑止力の提供、こういう画一的な区分けをした中で物を見ていこうというのは、余りにも硬直をしているとらえ方じゃないか、こういうふうにまず私の印象を申し上げておきたいと思うんです。
そこで、まず最初に、ことしの白書の冒頭に「軍事力の意義」、こういう項目が出てきているわけです。平和と安全を保つためには、外交努力や経済の発展による内政の安定だけではだめだ、こういうふうに
指摘をされているわけですね。そして、軍事力の意義を強調されている。
世界の中には軍事力を持たないという国がある、こういうふうに触れているわけです。そして、それはもう経済的にもごく限られた、人口、面積、経済力、あるいは周辺の国際環境が
我が国などとは異なっているんだ、こういうふうに軍事力を持たないとしている国を
指摘をされているわけです。そして、この軍事力の
役割ないし機能は、究極的には力によって相手に対する要求を充足させていく、こういうふうになっています。
この点について、きのうの本
会議で
中曽根総理は、あのくだりは一般的なことを言っているんだ、こういうふうに言っていましたけれども、一般的じゃないんですよ、これは。「軍事力を持たないこととしている国もあることは事実であるが、これらの国は、いずれもその人口、面積、経済力などや周辺の国際環境がわが国などの場合と異なっている。」、こういうことで、二、三の国を念頭に置いておられるようですが、
我が国とは違うんだと、
我が国は軍事力を持つ、こういう国の中に置いている。こういう
記述になっているわけです。こういう形で、軍事力を持たない国というのは人口の少ない国土の小さい経済力の弱い特定の国なんだ、
我が国などとは事情が違うんだ、こういうふうにとらえて、そういう形で軍事力というものは究極的には力によって相手に対する要求を充足させていくんだ、こういうふうになってくると、このくだりというのは、これは
憲法九条とはまるきり理念が一致しない、
憲法九条を否定する考え方に立っているんじゃないか、こういうふうに思うんです。この点いかがでしょうか。