○栗林卓司君 私は、いわゆるクロヨン問題についての大蔵当局の御見解を
お尋ねしたいと思います。
先ほど、正確なことはわからないんだという御
答弁がございました。それは大蔵当局の答えとすると、余りに無責任なのではあるまいかと思いますので、
理由を若干申し上げながら、再度お答えを求めたいと思います。
このクロヨン問題というのは、各種
所得間の把握率格差の問題でありますけれども、源泉徴収されている給与
所得は九割ぐらい
所得が把握をされる、
申告納税の
事業所得は六割ぐらい、農業
所得は四割ぐらい、これを並べて俗にクロヨンと言っているのでありますが、これを簡単に整理をしますと、源泉徴収されている
所得と
申告納税の
所得、この間に把握率格差があるのではないかということになろうかと思います。
今、
国民の方はどうかといいますと、日常の
生活実感からそれは
所得率格差が存在すると決めてしまっておりまして、世論調査を見ましても、例えばこれは
昭和六十一年二月の
政府世論調査結果でありますけれども、不公平があると思っている者は全体の八割でありまして、その
理由はといいますと、サラリーマンと商工業者、自営業者の間の納税方法に違いがあると答えた者が五二・四%で最も多いし、「最も不公平があると思う税金の種類では」という質問に対して、
所得税を挙げた者が五一・二%でありました。
国民の皮膚感覚とすると、この
所得率把握格差が厳然として存在するとみんな思っているのでありまして、ではそれが存在するかしないか、一体調べた資料があるのかどうかということになるわけでありますけれども、実は同じ種類の調査を一九七三年に
アメリカで膨大な調査をしたものがございました。その結果を見ると、源泉徴収されている給与
所得把握率は九三・九%、
利子所得は、これは支払い
所得でありますけれども、八六・三%、配当
所得、これは八三・七%、
事業所得、
申告納税制度でありまして、これが四五・三%、不動産
所得が三七・二%などなどとなっておりまして、源泉徴収と
申告納税でははっきりした差があるという答えがそこでは出ております。源泉徴収の場合には頭からつかまれてしまうのでありまして、
申告納税の場合にはある
程度の裁量が納税側に働く可能性は十二分にあるわけでありますから、したがって、源泉徴収の場合と
申告納税の場合では
所得の把握率に開きが出るであろうということは、そう困難な想像ではないと思います。
そこで、こういうデータが
アメリカからでも出ているということを踏まえながら、一体日本はどうかといいますと、実はそういう研究が二つばかり例がございました。御
承知のことと思いますけれども、石弘光さんが
国民所得統計から
所得を推定計算をしながら「
課税所得捕捉率の業種間格差」を調べた報告がございます。一方、同じように本間正明さんが調べた「
所得税負担の業種間格差の実態」というものがございまして、これを見ますと、例えば石さんの場合、いろいろ書いてございますけれども、結論はどうだったかといいますと、最後にはこう書いてあるんです。「その結果はわれわれの納税者の日常的感覚とおおむね一致している。推計作業にはまだまだ改良の余地はある。だが選択的なよりよいと思われる方法をとっても、ここで得た最終的な推計結果をおそらくくつがえすものとはならないだろう。」これが石さんの調査結果でありました。
一方、本間正明さんは、これは厚生省系の統計データを使いながら納めるべき
所得税の類と、それに対して現実に納めている
所得税の額の開きを計算されたんでありますが、それは業種間によって開きがあるということを言っております。
問題は、本間正明さんにしても、石弘光さんにしても、だれも知る税の専門家であります。この
委員会にも何遍となく
参考人においでいただきました。その方々がクロヨンは存在すると、こう言われました。しかも同種の
アメリカの内国歳入庁の調査結果から見ても、日本の
国民、納税者が感じているあのクロヨンという実態はあるんだなあ、確信を持って判断するようになりました。私は、これは放置していい問題ではないと思うんです。私もいろいろ拝見しまして、俗にクロヨンと言っておりますけれども、そうした
所得把握率格差はあるものと私も
考えて、以下
議論を進めざるを得ません。そうではなくて、そんなものはないんだというのであれば、その反証は徴税当局みずからがお出しになる以外にないのでありまして、したがって現状から見ると、客観的な状況証拠は、クロヨンは存在するということになるんでありまして、これに対して大蔵省として、いや正確なことはわからぬでは済まないではありませんか。
国民から公正に対する信頼を失ったら一体税制はどうなりますか。
国民からもし税が信頼を失ったら、その後には国家の財政基盤は崩壊をします。したがって、今大蔵省でまずしなければいけないことは、この俗に言われるクロヨンを、俗に言われるで済まさないで、実態がどうなのか、それを全
国民の分析にたえる堂々とした
内容に調べて公表をしていくのがまず第一の義務ではありませんか。そう私は思うんですが、いかがでありますか。