○
国務大臣(
斎藤十朗君) ただいま議題となりました
精神衛生法等の一部を改正する
法律案について、その提案の理由及び
内容の概要を御
説明申し上げます。
近時の精神
医療、精神保健をめぐる
状況には種々の変化が見られるところであり、精神医学の進歩等に伴い入院
中心の治療
体制からできるだけ
地域中心の
体制を整備していくとともに、多様化し、複雑化する現代社会において、広く国民の精神保健の向上を図ることが重要な
課題となってきております。
こうした諸
状況の変化を踏まえ、国民の精神保健の向上を図るとともに、精神障害者の人権に配意しつつ適正な精神
医療を
確保し、かつ、その社会復帰の促進を図るため、今般、精神衛生法その他の関係
法律を見直すこととし、この
法律案を提出した次第であります。
以下、この
法律案の主な
内容につきまして御
説明申し上げます。
第一に、精神保健の向上に関する事項についてでありますが、精神衛生法の題名を精神保健法に改めるとともに、その目的や国及び地方公共団体並びに国民の義務として精神的健康の保持及び増進その他の精神保健の向上に関する事項を盛り込むこととしております。
第二は、精神障害者の人権の擁護並びにその適正な
医療及び保護の実施のための
措置に関する事項についてであります。
まず、精神保健
指定医についてであります。
従来の精神衛生鑑定医制度を見直して精神保健
指定医制度を導入することとし、精神
医療についての
一定の実務経験のほか厚生
大臣等が行う
研修の修了を新たにその
指定の要件として加えるとともに、五年ごとに
研修を受けることとする等の
措置を講ずることとしております。
次に、入院制度に関する事項についてであります。
本人の同意に基づく入院を推進する見地から、これを任意入院として新たに
法律上規定するとともに、保護義務者の同意によるいわゆる同意入院については
医療保護入院として位置づけ、入院に当たって精神保健
指定医の診察を要件とする等その適正な実施を
確保するための
措置を講ずることとしております。また、
措置入院の解除につき精神保健
指定医の診察を要件とする
措置を講ずることとしているほか、精神科救急に対応するため応急入院を新設する等入院制度に関して必要な整備を図ることとしております。
次に、
入院患者の処遇に関する事項についてであります。
入院の際には必要な事項を
患者本人に告知することとするとともに、都道府県に新たに精神
医療審査会を設け、
入院患者の病状に関する定期の報告等に基づきその入院の要否等に関する審査を行うこととしております。また、
入院患者に対する行動制限のうち特に人権上重要な
一定のものについてはこれを行うことができないこととするとともに、精神保健
指定医の認める場合でなければ
一定の著しい行動制限は行うことができないこととする等の
措置を講ずることとしております。
第三は、精神障害者の社会復帰の促進に関する事項についてであります。
法律の目的等において、精神障害者の社会復帰の促進に関する事項を盛り込むとともに、日常生活に適応するために必要な訓練及び指導を行う生活訓練
施設並びに自活のために必要な訓練と職業を与えるための授産
施設を精神障害者社会復帰
施設として
法律上規定し、都道府県、市町村、社会福祉法人その他の者がこれを設置することができることとしております。
また、その設置の促進を図るため、国及び都道府県は
施設の設置及び運営に要する費用を補助することができることとしております。あわせて、社会福祉法人、
医療法人等が精神障害者社会復帰
施設を設置することができるよう社会福祉事業法及び
医療法の改正も行うこととしております。
以上のほか、精神病者に係る公衆浴場の利用規制を見直すこととし、公衆浴場法の改正もあわせて行うこととしております。
なお、この
法律の施行期日は、公布の日から起算して一年を超えない範囲内において政令で定める日からとしておりますが、公衆衛生審議会への諮問に関する事項は公布の日からとしております。
以上がこの
法律案の提案理由及びその
内容の概要でありますが、この
法律案につきましては衆議院において、
指定病院の
指定の取り消しの手続、
医療保護入院の告知の時期、手続義務違反に対する過料の一部削除及びこの改正法案施行後五年を目途とする検討について修正が行われたところであります。
何とぞ、慎重に御審議の上、速やかに御可決あらんことをお願い申し上げます。