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1987-07-15 第109回国会 参議院 国民生活に関する調査会 第1号 公式Web版

  1. 会議録情報

    昭和六十二年七月十五日(水曜日)    午前十時二分開会     —————————————   委員氏名     会 長         長田 裕二君     理 事         坂野 重信君     理 事         水谷  力君     理 事         吉川  博君     理 事         山本 正和君     理 事         高木健太郎君     理 事         吉川 春子君     理 事         三治 重信君                 井上 吉夫君                 小野 清子君                 大島 友治君                 大塚清次郎君                 倉田 寛之君                 斎藤 文夫君                 添田増太郎君                 高橋 清孝君                 寺内 弘子君                 中曽根弘文君                 福田 宏一君                 向山 一人君                 吉川 芳男君                 糸久八重子君                 及川 一夫君                 千葉 景子君                 八百板 正君                 太田 淳夫君                 矢原 秀男君                 近藤 忠孝君                 抜山 映子君                 平野  清君     —————————————    委員異動  七月六日     辞任         補欠選任      及川 一夫君     一井 淳治君      八百板 正君     大森  昭君      太田 淳夫君     刈田 貞子君     —————————————   出席者は左のとおり。     会 長         長田 裕二君     理 事                 坂野 重信君                 水谷  力君                 吉川  博君                 山本 正和君                 高木健太郎君                 吉川 春子君                 三治 重信君     委 員                 井上 吉夫君                 小野 清子君                 大島 友治君                 大塚清次郎君                 倉田 寛之君                 斎藤 文夫君                 添田増太郎君                 高橋 清孝君                 寺内 弘子君                 福田 宏一君                 向山 一人君                 吉川 芳男君                 一井 淳治君                 糸久八重子君                 大森  昭君                 千葉 景子君                 矢原 秀男君                 近藤 忠孝君                 抜山 映子君                 平野  清君    事務局側        第二特別調査室        長        菊池  守君    参考人        日本長期信用銀        行常務取締役調        査部長      竹内  宏君        三井不動産株式        会社代表取締役        会長       坪井  東君        埼玉大学教育学        部教授      暉峻 淑子君        社団法人日本経        済研究センター        会長       金森 久雄君        総合研究開発機        構理事長     下河辺 淳君     —————————————   本日の会議に付した案件 ○参考人出席要求に関する件 ○国民生活に関する調査  (内需拡大に関する件)     —————————————
  2. 長田裕二

    会長長田裕二君) ただいまから国民生活に関する調査会を開会いたします。  まず、委員異動について御報告いたします。  去る六日、及川一夫君、八百板正看及び太田淳夫君が委員を辞任され、その補欠として一井淳治君、大森昭君及び刈田貞子君が選任されました。     —————————————
  3. 長田裕二

    会長長田裕二君) 次に、参考人出席要求に関する件についてお諮りいたします。  国民生活に関する調査のため、今期国会中、必要に応じ参考人出席を求め、その意見を聴取いたしたいと存じますが、御異議ございませんか。    〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
  4. 長田裕二

    会長長田裕二君) 御異議ないと認めます。  なお、その日時及び人選等につきましては、これを会長に御一任願いたいと存じますが、御異議ございませんか。    〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
  5. 長田裕二

    会長長田裕二君) 御異議ないと認め、さよう決定いたします。     —————————————
  6. 長田裕二

    会長長田裕二君) 国民生活に関する調査を議題とし、内需拡大について参考人から意見を聴取いたします。  本日は、お手元に配付の参考人名簿のとおり五名の方々に順次御出席をいただいております。  まず、日本長期信用銀行常務取締役調査部長竹内定君及び三井不動産株式会社代表取締役会長坪井東君から意見を聴取いたします。  この際、御両人に一言ごあいさつを申し上げます。  本日は、御多用中のところ、本調査会に御出席をいただきましてありがとうございました。  本日は、内需拡大について忌憚のない御意見を拝聴し、今後の調査参考にいたしたいと存じます。  議事の進め方といたしましては、まず最初にお一人三十分程度意見をお述べいただき、その後、委員の質疑に対しお答えいただく方法で進めてまいりたいと存じます。よろしくお願いいたします。  それでは、まず竹内参考人にお願いいたします。どうぞおかけになりましたままでお願いします。
  7. 竹内宏

    参考人竹内宏君) ただいま御紹介にあずかりました竹内でございます。お役に立つような御報告ができかねますのですけれども、一応御指名によりまして、現在、内需をどのようにこれから長期的に見て拡大する必要があって、それにはどんなことが必要かというようなことをかいつまんで御報告申し上げたいと思います。  甚だ書生っぽい議論で恐縮でございますけれども、現在の日本経済とか国際経済関係をちょっと貯蓄投資バランスでごく簡単に黒板を使って御報告させていただきたいと思います。  日本経済貯蓄投資バランスで見ますと、日本経済は約三百三十兆の経済でございます。それに対しまして、現在貯蓄額が約九十兆ございます。これは平たく申せば、私どもは毎年三百三十兆の物とサービスを生産し、そのうち二百四十兆をその年に消費して食べてしまい、九十兆のものを将来のために残しているというような経済でございます。ですから、これが例えば欧米でいきますと、貯蓄が四十とか五十兆に、日本と同じようなスケールでいきますと、その程度になるわけでございますから、私どもは営々と働いてつましく生活し、大量なものを将来に残しているというような意味では大変すばらしい経済でございます。  ところが、現在この貯蓄は、高度成長のときには残されたものが工場道路に変わり、見事な高度成長を達成したわけでございますけれども、昨今でございますと、この貯蓄額は使い切れない状態に変わった。御案内のとおりでございます。それは技術進歩が低迷しているせいだと思われます。  現在ハイテク産業の代表的なもの、例えば産業用ロボット生産額は千五百億ぐらいでございますけれども、アイスクリームの生産額は三千億でございますし、DCブランドといいますか、キャラクターですね、何かディオールとか森英恵さんとか、そういうようなものがついているキャラクターブランド生産額は一兆二千億に達するというようなことでございます。OA機器にいたしましても、約一兆円でございますから、現在私ども技術が大変進歩しているといいますか、ハイテク産業と申しましても、日本経済から見ますと大した大きさではない。経済を耕すぶるような力は毛頭ないというような状態でございます。その結果、現在大ざっぱにいきますと、七十五兆円が工場投資に使われ、十五兆円が余っている、このような経済でございます。正確に言いますと、余っているのは十四兆で、二兆円が財政赤字によって解決されておりますけれども、大ざっぱにいきますと十五兆円だと、こういうことになるわけであります。  アメリカとの関係を見てみますと、アメリカ経済は約六百兆の経済でございます。貯蓄が百十六兆、約百二十兆円ございます。これがほとんど民間の投資に使われております。その上に財政赤字がございます。財政赤字が二十四兆円あるわけでございます。これは御案内のレーガノミックスによりまして、財政を大いに拡大するといいますか、減税をやりまして、経済を刺激しながらアメリカ経済近代化といいますか、産業近代化を図ったわけでございますけれども、御案内のとおり、これがうまくいかなくて、二十四兆円のいわば過剰需要が発生している。このようなものがアメリカ経済でございます。  日米関係でいきますと、この余ったものがアメリガに流れでいっている。まあ、こういうようなことで、日米関係といいますか、これを平たく過去の例でいきますと、財政赤字が多くて需要が過剰になる、物価が上がる、そのためには金融引き締め的な政策をとらざるを得ない。あるいは大量な国債が発行されますから、金利が上がりがちである、日米金利差拡大する、日本から資本流出が起きる、円売り・ドル買いが発生してドル高・円安に過去においてなった。そうなりますと、経済余りものがスムーズに海外に流れていく。このようなことで解決されたわけでございますけれども、現在、御案内のとおり、日本経常収支黒字は一千億ドルに達したわけでございます。  これくらいの大きさになりますと——一千億ドルというのは、例えば霞が関ビル一つ建てましても、現在五百億以下でできるわけでございますから、毎年二十棟、あるいは瀬戸内大橋を毎年十五本ぐらいはかけられるだけのものが海外に出ていっているわけでございます。そうなりますと、海外に対する影響力は極めて大きいわけでございますから、日本が仮に覇権国家であったならば、どんどん無理やりに輸出していくことができるわけでございますけれども、現在、日本はそういう立場には毛頭ないわけでございますから、そういたしましても、海外とのバランスを考えますと、これを海外にもはや輸出することができなくなってしまったというような限界に達しているというような感じがいたすわけであります。  実際、アメリカ経済が立ち直るためには財政赤字を減らさなければならない。財政赤字を減らしますと経済が下降いたしますから、金利を引き下げて景気刺激をしなければならない。日米金利差は縮小いたしますから、日本からの資本流出が少なくなりまして、その結果、円高ドル安事態が発生する、このようなことだろうと思います。現在、アメリカの病が治っていきますと、どうしても円高になっていく、これはやむを得ないことでございます。円高になるということは、余っている過剰貯蓄輸出によってはけなくなってしまうというような事態になるんで、現在そのような状態になっているというような感じがいたします。  仮にアメリカ財政赤字をこのまま拡大して今までと変わりないことをやりますと、アメリカ経済は弱くなります。ドルが減価してまいります。日本からアメリカ投資してもドル資産が減価いたしますので、怖くて投資できない。昨年では、アメリカ新規国債発行額の七〇%を日本が買っているわけでございますから、そうなりますとアメリカ資金が流れなくなり、アメリカ金利が上がる。金利が上がれば財政から刺激せざるを得ないし、あるいは金融を緩めざるを得ない。そうなりますと、さらに期待インフレが増大いたしまして、アメリカにさらに資金が流れなくなっていくというようなことで、アメリカ経済がだめになってまいりほすと、保護貿易が一層強くなり、日本輸出できなくなる。  このような寸法で、いずれにいたしましても、日本輸出主導型の成長が全く困難になったということになるわけであります。そうなりますと、この十五兆円を何とか解決しなければならないというような事態に追い込まれたというような感じがするわけでございます。  過去のオイルショックの後も同じような事態がございましたけれども、このときには建設国債やさらに赤字国債まで発行いたしまして、この余りものを買っていただいた。それで道路やいろいろなものをつくっていただいたわけでございますけれども、現在は、その結果財政赤字といいますか、国家財政破産状態になっているというような中で、この十五兆円近いものについてこれから内需拡大していかなきゃならないというような羽目に陥っているわけであります。  具体的に考えますと、現在の経常収支黒字を一千億ドルからGNPの一%ぐらい、三百億ドルぐらいに減らしていけるのかな。五年ぐらいでこれぐらい、あるいは三、四年でそんな程度にすれば、国際的な批判を免れるといたしましても、約七百億ドル、金額にいたしまして一兆円の内需拡大していかなければ日本経済の長期的な成長はできない、このようなことになるのではなかろうかと思われるわけであります。  平たく申せば、アメリカ経済財政赤字を減らす。例えば増税によって減らす。そういうことをいたしますと、アメリカ需要が縮小する。つまりアメリカは、極端な言い方をいたしますと、国民生活を切り下げながら需要拡大需要超過状態を直しまして輸入を減らして輸出をふやす、このような努力が必要でございますし、日本は余っている海外に出していたもの、これを国内に投入していって生活水準を上げる。そういたしますと、日米間の経済バランスできるというようなことになるはずでございます。  現在でも一人当たり国民所得は、一万六千ドルに達して世界最高水準でございますけれども、この一万六千ドルを我々が持ってアメリカ生活いたしますと、世界最高生活が営めますけれども日本生活すれば——消費物価は極めて高いわけであります。食料費アメリカと比べますと約二倍でございますし、ウサギ小屋のような住宅に住みながら住宅価格は一・七倍ぐらいいたします。流通サービス業料金も一・七倍から八倍と言われております。ですから、もし一万六千ドルございましても、消費者物価水準が二倍近くでございますから、二で割ってやらなければいけない。我々は世界最高所得をもらいながら、生活水準はシンガポールより幾らかましかな、こんなような程度になっているわけであります。と申しますのは、一万六千ドルというような所得ドル建てで見ますと、工業が極めて強いので円レートが上昇し、一万六千ドルになったということでありますけれども工業以外の分野はまるっきり弱いわけであります。農業などは絶望的な弱さでございます。  そういうことで、実際の生活水準が上がらないということでありますから、この過剰分はもしそれらのものに投入されていったならば、我々の生活水準ははるかに上昇し、日米間のあるいは日本対外摩擦は解消すると、このようなことに相なるものと思われます。  でございますけれども、御案内のとおりこれが非常に困難でございます。例えば何かいたそうといたしましても、国民の七〇%が土地住宅を持っているわけでございます。そうなりますと、土地をお持ちの方にとっては、最大土地を持っている人々にしてみますと最大財産土地でございます。正確な計算はわかりませんけれども、大体我々の資産は三千五百万ぐらいでございます。世界最高資産を持っております。そのうち二千万ぐらいが土地でありまして、その上に九百万円のウサギ小屋を持って、六百万円の金融資産を持っている。これが我々の財産目録でございますので、この土地の周りに何か道路ができるとか、あるいは空港ができるということになりますと、当然強烈な反対が起きるわけでございますから、甚だ不遜な言い方になりますけれども国民生活を上げながら、これを使うために政府とか地方自治体がいろいろおやりになっておりますけれども、それはどうしても人がいないところにおやりにならざるを得ないだろうというような感じがいたします。  今回の五兆円の公共投資の追加につきましても、人がいるところにやりますと、どうしても土地買収に非常に金がかかりますし、それで地主さんの収入に入ってしまいますと、地主さんの貯蓄がふえるだけでございますから、貯蓄投資バランスはかえってインバランス拡大してしまう。ということになりますと、できるならば地価が安いところとか、反対が起きないところということになろうかと思います。  甚だ不遜な言い方になりますけれども瀬戸内大橋三本おかけになるとか、あるいは関西空港とか、昨今の東京湾架橋であるとか、いずれも人がいない海の上に大型プロジェクトをおやりになっているというふうなのは、ある意味でいきますと、大変悲しい出来事がなというような感じがいたすわけでございます。  こういうことで、この貯蓄を使い切れるような内需拡大する、つまり国民生活のレベルを非常に上げるために使っていくということになりますと、どうも現在の経済仕組みを変えなければならないのかなと、このような感じがいたすわけであります。  ちょうど昨今画期的な出来事が発生いたしまして、例えばNTTさんが民営化される、その結果、第二電電が三社もでき、第二種通信事業者が四百社も登場し、テレホンカードが大変売れている。八百億の売上高でございますから、産業用ロボットの二分の一ぐらいの売上高を獲得している。民営化することによって投資が起き、需要拡大しているというようなことであります。ですから、これから、既に国鉄が分割・民営化されておりまして、跡地を初めいろいろな問題がございますけれども、うまくやりますと投資拡大できる、インセンティブが持ち上がるのかなというような感じもいたすわけであります。  現在の状態からまいりますと、日本は言うまでもなく地価が大変高うございます。よく言われますように、日本を一国買うお金でアメリカが二個買えるわけでございます。それからエネルギーコストも、価格も、電力料金アメリカの二倍するわけであります。法人税は、地方税を加えますと、五二%ぐらいになりますから、アメリカの四〇%と比べると高い。その上、賃金がアメリカよりも高くなった。ということになりますと、どうしても日本設備海外に移動するわけであります。  現在、設備投資額の約八%ぐらいは海外投資されているというような状態でございますから、これもできるならば国内に引っ張ってきまして、貯蓄投資バランスをうまくしなければならないというようなことになりますと、当然のことながら総合的な改革といいますか、土地を含めまして、総合的に投資も起きて国民生活も同時に上昇していくような仕組みを考える必要が大いにあると、こういうような感じがいたすわけであります。  どうも税制の改正もそのような方向に進むのかなというような感じがいたしますし、農業につきましても、このままでいきますと、農業が多分崩壊していくことが確実ではなかろうかと思われます。  冗談じみた話でございましょうけれども、そろそろ山口県では、韓国ではお米はまだ国際水準より高いわけでございますけれども日本よりはるかに安いので、釜山で夜お握りをつくって、高速船で朝下関に持ってきて、そこで売れば相当安くなる。そういうふうに加工して入ってくるというようなものがどんどんふえていくというようなことだろう。そのような感じもするわけであります。  ですから、単純に考えますと、何といいますか、日本は雨も降りますし、夏は大変暑うございますし、それからさらに山には天然の雪がございますし、それから塩害がございませんし、工業水準が高こうございますから、肥料の質も大変よろしいわけですし、農業機械世界最高でございますし、それから農民の方々工業で働く人々と同じように勤勉でございます。ですから、世界最高農業ができないはずがないわけでございますけれども、現在は、仕組みのせいで世界で絶望的な価格の高い農業が形成されてしまっているというようなことではなかろうかと思われるわけであります。こんなものも仕組みを変えてやりますと効率的な農業ができると同時に、事によると、現在と同じような農業生産額を上げるために、もっと専業がふえまして大規模経営をやられますと、多分土地が現在の七〇%ぐらいで済むのかなというような感じがいたすわけであります。そうなりますと、これは地価に対しまして大変効果的に働いてくるわけだろうと思われます。  それからさらに、現在、国民生活を上げようとするような大型な計画は、えてして水利権とか、あるいは入会権とか、あるいは農地が転換できないとか、漁業権とか、そのような問題が障害になっているケースが大変多いわけでございますが、これも何かうまいぐあいに解決していけば、例えば東京ディズニーランドは年間一千万人の人が殺到するわけであります。長崎県にオランダ村というのができまして、百十億ぐらいの投資でございましたけれども、実に百六十万人の人がわざわざ出かけていっているというようなことであります。  これは考えてみますと、そんなにわざわざ行くほどの立派なものとは思われませんけれども、これは多分、いかに日本リゾート施設が貧弱であるか、ちょっとしたものができれば膨大な需要が殺到するわけでございますから、もし仮に今申し上げましたような権利の調整がうまくいったといたしますと、事によると、我々の生活水準が上がりながらそのような大投資が起き、それによって成長率を維持し、しかも国際的な関係バランスできる。ちょっと大げさでありますけれども、そんなようなものがたくさんできますと、そのようなうまい解決方法といいますか、いい方向に展開していくのかなと、こんなような感じがいたしてならないわけでございます。  それから、さらに長期的に見ますと、現在何といっても、日本で足りないのは道路とか空港網だろうと思われます。地方の都市にどれだけ空港ができましても、羽田が満杯でございますから余りうまく機能しないというようなことではなかろうかと思われるわけであります。東京は、現在、言うまでもなく、世界金融、情報の中心地になってまいったわけでございますから、どうしてもここに経済力が集中するわけでございます。その集中をうまく分散させてやるためには、無論、政府がどこかに行くとか一部移動するとか、いろんなことも必要でございますけれども、最も合理的なのは、周辺からのアクセスの時間を極めて短くしてやるということが必要だろうと思われます。  現在、日本の中で最も成長率が高い県は山梨県でございます。工業生産額はこの三年間で年率一六%というような驚くべき伸びをしておりますし、山梨県のGNPといいますか、それは過去五年間をとりますと年率一二%という驚くような成長をしております。その最も効果的に働いたのは、言うまでもなく中央高速のインターチェンジができた、このようなことであります。ですから、ある意味でいきますと、調布あたりに、あるハイテクの電子メーカー、電子計算機のメーカーが研究所を持っておりますが、そうなりますと、一時間で行けるようなところにはハイテク、かなり技術の高い研究所とか工場が移転していき、あるいは調布とか八王子に百五十万人以上の人が住んでおりますから、その方々の居住といいますか、セカンドハウスとかレジャーの地域が西に広がっていく。道路一本が大変な効果を持つわけであります。これは同時に地方東京周辺に経済力とかあるいは人々が住む地域が拡大していくというような効果を持つというような気がするわけでございます。  将来、ごく近いか長いがよく存じませんけれども、二二〇〇年ぐらいになりますと、御案内のとおり日本世界最高の高年齢国になるわけであります。しかも絶望的なことは、若年層が減っていきながら老人がふえていくわけでございますから、これは極めて苦しい時代が確実にやってくるわけでございます。そうなりますと、多分日本経済成長率は確実に鈍化していくというふうに思われます。ですから、その準備を今からしておかなければならないというような意味で、インフラ投資は時間との競争であるというような感じがいたすわけであります。  で、インフラ投資とか、いろんな鉄道網投資、あるいは空港とか、特に重要なのは道路だと思いますけれども道路投資される場合でも、計画は、できるならばやっとお立てになって、まあ三つぐらい腹案をお持ちになっていて、その中で最も安く買えた、あるいは反対が最もないというようなところを決める、つまり、こね得をなくすにはどうしたらいいかというようなことが非常に重要だろうと思われますし、インターチェンジとか駅の周辺につきましては、できれば、地方自治体とかあるいは道路建設者の方であるとか、そういうような方が大量に土地を取得されて、建設者が例えば三十年社債とか五十年社債を発行され、そして、そこを千ヘクタールぐらいお買いになったら、それを三十年先に売却してやれば、多分道路の建設費はかなり埋め合わせができるだろう。つまり、開発した利益を一部の地主さんがひとり占めしないような、建設者に還元できるようなシステムをつくり上げていくというようなことも極めて重要ではなかろうかというふうに思われるわけであります。  そんなようなシステムの大変化を伴いながら、一つのことをやるのにもたくさんのお役所に行かなきゃならないというようないろいろな問題もぜひ解決していただいて、機能的に動くようにし、それから地域によりましては、あるいは土地につきましても、リースとか信託であるとか事業委託であるとか、多様な方法があるわけでございますが、特に土地カンを持っている地域の人々がそのようなことを、買収であるとか、いろんな新しい方法が開発されているわけでありますから、これを広く日本全体がうまくできるようにいたしまして、どこでも活力を持った計画が実施できるというようなことが極めて必要ではなかろうかというふうに思われるわけであります。  しかも、これからいよいよ情報化時代になってまいります。情報化時代というのは人々の移動が大変激しくなるわけであります。つまり、リアルタイムで記号みたいな情報が来ますと、それを確かめるために人々が右往左往したときに活力ある社会がやってくるわけであります。平たく言えば、ちょうど現在、あのカウフマンが仮にニューヨークで円が上がるよというようなことを言ったら、すぐだれかが飛んでいって、カウフマンが本気で言ったかどうかとか、酔ったついでで言ったかどうかとか、周りの人が本気になっているかどうかとか、そのようなことで生きた情報をつかむ。これがどうも情報化社会でございますし、これも不遜な言い方になりますけれども、例えば将来ホームコンピューターみたいなものができてホームショッピングができるというような便利な時代が多分やってくるだろう。そのようなときになりましたら日本道路という道路は宅配便であふれると考えるのが普通でございます。ですから、老齢化とかあるいは情報化というようなことを考えますと、どういたしましても、早く交通網の体系を整えておくことが必要だろうと思われるわけであります。そういうことがとりもなおさず日本の長期的な生活水準を高める方向かなというようなことであります。  でございますから、現在の円高状態あるいは内需拡大しなければならないという状態は、考えてみますと甚だラッキーな状態でございます。私どもは一千億ドルの物と千五百億ドルの金があり余って国内で使い切れなくて、我々よりもはるかに生活水準の高いアメリカに主として持っていって使っていた、こういうことであります。これを国内に投入すればはるかに生活水準が上がるわけであります。現在の円高状態はそのような羽目に追い込まれたということでございますから、どういたしましても、そこから先は、我々がどうしてうまいそのような仕組みをつくり上げるか、既得権益をお持ちの方々といかにうまく対話されていくかというようなことではなかろうかと思われます。  最後に、口幅ったいようなことでございますけれども経済が長期的に低迷する場合は、経済の力ではない、政治の力であるかもしれないということであります。コンセンサスができにくくて、古い既得権者の人がそれぞれ強い力をお持ちになった国は大体衰退していくのかなというような感じでございます。現在のように物と金が使い切れなくて海外に投入されているということは、言ってみれば過去のイギリスと同じような状態であります。その輸出した国が衰退し、それを受けた国が成長する、このようなことであります。  最後に、冗談じみたことで恐縮でございますけれども、前にイギリス人にそんなことを申し上げまして、日本もいよいよイギリス病になった、こんなことを申し上げましたら、イギリスは、世界最高の地位を築き、七つの海を支配した後没落した、日本のように現在から没落するのは決してイギリス病ではなくて、これは日本病ではなかろうかというようなことをロンドンで批判されたことがございます。  どうも口幅ったいことを申し上げまして失礼いたしました。
  8. 長田裕二

    会長長田裕二君) まことに有意義なお話をありがとうございました。  次に、坪井参考人にお願いをいたします。  どうぞおかけになったまま、できましたら、委員全員が十分聞き取れるようにお願いいたします。
  9. 坪井東

    参考人坪井東君) 坪井でございます。  ただいま竹内先生から、日本の貿易黒字が巨大でアメリカが巨大な赤字になった、あるいは日本国民所得世界で最高の水準になった、それにもかかわらずいろんな面で日本の豊かさが感じられないというようなお話もございましたが、そういうような日本の豊かさをどういうふうに増すかというところに内需振興の問題が出てくるのでありまして、これは必ずしも貿易収支とは関係なく、内需拡大によって国民生活を豊かにすべきであるというのは、もう当然のことでありまして、そういうことができる状況であるのにもかかわらずなぜできないんだというところにむしろ問題があるのではないかという感じがいたします。  今、社会資本の整備のあり方というものは、御案内のとおり日本はかなり貧弱でありまして、下水道だとか水洗便所とか道路だとか、一人当たりの公園の量だとかいうものは欧米に比較してもう格段に悪いわけでございますし、また住宅にいたしましても、住宅資産国民所得で割りますと日本は欧米の約半分、いわゆるウサギ小屋と言われるような余り良質でない住宅に住まざるを得ない。これほど豊かな国民所得を持っている国の国民がなぜこういうような貧弱な状況の中に住まなきゃならないかということは、かつて恐らく、そういうような金が産業基盤のために使われて、社会資本とか国民生活基盤のために余り使われなかったというのかもしれません。しかし現在は、逆に言うと、そういう国民生活の基盤を充実させるべき余地がもうかなり大きいということで、適当な方法をとればこういうようなことが可能であるし、またしなきゃならない。  ただ、財政面でそれを補うということがなかなか困難であるということは、公共事業その他が大変限られておるということで、問題になると思いますが、逆に言いますと、最近民活というようなことで、民間の金ないし力、あるいはそういった企業力をそういう社会資本整備の分までどういうふうにして誘導できるかということが大変大きな問題になっておるわけでありまして、やり方をうまくすればそういったことが可能であると私どもは思っておるわけであります。  それで、二つ問題がございまして、一つは、御承知のとおり、最近の東京を中心とする地価の暴騰でございます。かつて住宅地が非常な勢いで上がりました。これは当然上がったわけでございます。と申しますのは、非常に大量に急速な人口集中が行われたわけでありまして、昭和四十年から五十年にかけましては、御承知のように毎年百万人の人間がふえ、十年間で一千万人の人間が三大都市圏に集中した。東京で言いましても、四十年から五十年の間に約六百万人の人間が東京圏に集中したということであります。こういうようなかつて世界的に経験したことのない急速にしてかつ大量な民族移動、人口集中が大都市に行われたということが地価住宅地の高騰を招いたわけであります。  問題は、確かに行政的に対応できない面があったと思いますけれども、どういうふうに行政が対応したかと申しますと、結局、その集中する人口をいかに抑制するかということに多大の努力が払われたということであります。当然人口が集中すべき経済情勢にあったにもかかわらず、過度に人口を集中すべきでない、むしろ地方に分散すべきだというような政策が行われたために、逆に供給力がかなり抑制されたという苦い経験が過去にあるわけであります。  例えば、住宅地にいたしましても、大変な価格で暴騰したわけですが、戦後、最初衣食の値段がどんどん上がりまして、住宅地がおくれて上がったわけですが、昭和三十年になりまして、戦前に比して約三百倍というところで衣食住の指数が大体一致したわけであります。それからはもう土地だけが独歩で高くなりまして、現在に至るまで大体賃金が約二十倍、物価が五倍、土地に至っては東京では百五十倍。これは六十年のデータでございますので、恐らく最近は大体三百倍ぐらいになっていると思います。要するに、賃金が二十倍になっているにもかかわらず土地が三百倍になっているというような大変なアンバランスになったわけでありますが、こういったようなことは、増大する需要に供給が追いつかなかったというようなことで、必然的に起こった現象であろうかと思うわけです。  例えば、一番私どもの印象に深いのは、私どもが宅造するような場合に、農地は宅造してはだめです、農地は宅地に転換してはだめですというのがかなり長くございまして、私どもは山林を宅造せざるを得なかった。山林を宅造すれば非常にコストがかかるし、それからいわゆる上下水道とか道路とか学校だとかいうものは、それ自体宅造の中で賄わなければならないということで、公共公益負担が非常にふえまして、コストが高くなり、それが地価をつり上げたということもあったと思うわけです。  しかも、農地は使えないのみならず、御承知のように都市計画法というものがございまして、都市計画区域が決定されたわけですが、全国で約五百万ヘクタールの中で住宅を建ててもよろしいという市街化区域というのが約百三十万ヘクタールですか、あとの残り三百七十万ヘクタールというのは調整区域で、ごらんのとおり住宅を建ててはいけませんというところなんです。さなきだに少ない宅地予定地がさらに限定されて百三十万ヘクタールに限定された。私どもの持っている土地のうちの相当部分が調整区域に編入されまして凍結されたということであります。こういうふうに供給の源泉も大分細ってまいったようなことであります。  それから先ほどの、農地は宅地化できなかったわけでありますが、現在に至ってもその農地が宅地化できないというのは今でも残っております。御承知のように東京圏の中に農地がたくさんございまして、当然これは宅地並み課税をすべきだということで一たん宅地並み課税が決定されましたが、御案内のとおりしり抜けになって、今、東京圏において農地が約二万八千ヘクタールぐらいありますが、そのうちの二万四千ヘクタールが農業用地として認定され、農地の宅地並み課税を逃れているような状況でございます。この数字というものはかなり大きな数字でありまして、私どもがざっと計算しましても、そこに大体百万戸ぐらいの住宅が建ち得る農地でございます。何もそれを宅地並み課税したからといって全部が全部住宅地になるとは限りませんけれども、しかし、かなり大きな土地が宅地並み課税を免れているために宅地化しないでいるという状況は厳然としてあるわけでございます。このように住宅地につきましてもかなり供給を絞っておるということが現況でありまして、これは当然需要がふえれば供給をふやすべきだということとは、全く逆の現象になっているのではないかと思うわけです。  それから最近の地価の暴騰というものは主として御承知のように東京都の問題でありますし、業務用地の問題でございまして、業務用地が五十七年ごろから大変暴騰いたしました。  私どもの感覚で、五十七年ころからなぜ業務用地が上がってきたかといいますと、このころから極端にオフィスのスペースが足りなくなってきた。それの直接の原因は、どうもオフィスオートメーションといいますか、情報機器が非常な勢いで採用されまして、そのためのスペースが非常に多くなった。いわゆる情報化といいますか、それがハードであれソフトであれ、いずれにしてもオフィススペースを非常に増加させたことは事実であります。  それから最近に至りましては、御承知のとおり金融の国際化と申しますか、あるいは日本経済が非常に大きくなりまして、そのエネルギーが東京に集中していることもあります。それから、そのエネルギーが国外に向けて開かれ、国外からまた入ってくるというような国際化を迎えまして、たくさんの外国の企業が東京に参入してまいりました。殊に金融機関につきましては非常な勢いで膨張しておるわけでありまして、御案内のとおり、この間できました森ビルさんのビルは大体六〇%が外国企業で占められておりますし、最近の都心地区の新築ビルの約四割は外国企業で占められておるような状況であります。  このようなことで、情報化とか国際化というものは現実にオフィススペースの需要を非常に増大させておるわけでありますが、それに対して供給が急にふえるかというと、決してそういうことになっていないわけであります。供給も確かにふえつつありますけれども、それは膨大なそういう需要に対してとても追いつかないし、その結果土地が暴騰してきた。もちろん、土地の暴騰のメカニックの中には単なる需要だけでなくて仮需要も含み、投機的な要素も含んでいると私は思いますけれども、いずれにしましても、直接の原因は需給のアンバランスだということは間違いないわけです。  住宅地につきましても、業務用地につきましても、増大する需要というものは防ぎ得ない要素を持っているわけであります。幾ら地方分散するという政策を立てましても、実際問題として、経済、人口というものは東京に集中しつつあるわけでございまして、これはもう否定できないわけです。これから二十一世紀にかけまして東京圏の人口はますますふえ続けまして、大体四百万人ぐらいふえるだろうというようなことが想定されておりますが、オフィスにつきましても、一千百ヘクタールぐらいのオフィススペースの需要が見込まれるというような数字が出ておるわけであります。  さらばといって、その増大する需要に対してどういうような供給があるかということは必ずしも明確になってないわけであります。むしろ、いかにしてそういうような増大する人口ないし需要を抑制するかということについてはかなりいろいろ研究されておるわけでありますし、殊に土地が高くなることは社会的な不安要素もかなり持っています。と申しますのは、御承知のように地価の高騰が業務用地にとどまらないわけでありまして、これは住宅用地にどんどん波及している状況でありますので、国民が必要とする住宅というものはどんどん上がっていく。ことしより来年、来年より再来年と毎年毎年上がっていかざるを得ないような状況になっておりますので、これはかなり大きな社会問題だと言わざるを得ないわけであります。  そこで、どういうような政策が今とられているかと申しますと、これもやはり抑制、規制ということが主眼であります。例えば私も、国土法を強化しまして土地の監視を強めるということも、これはやむを得ないことでありますし、それから短期の譲渡所得に対する超重課といいますか、大体九八%ぐらい売買差益を召し上げるというようなことも、これもやむを得ないことだと思うわけです。これらの政策はそれぞれやむを得ないことでございますけれども、それだけの政策だけで果たして問題が解決するかというと、そうではないことはもう御承知のとおりでありまして、そういうような規制と同時に、いかにしたら供給を増加させるかということも最大の問題であるわけであります。  それでは、例えば東京土地があるのかないのかということになると、私どもはあるというふうに申し上げるわけであります。と申しますのは、今住宅地に使えないでいる土地がかなりあるということは、今農地の問題でも申し上げたと同時に、調整区域の問題で申し上げましたが、要するに、当然住宅地として使うべき土地が使えないでいる、使われないでいるというような状況がかなりあるわけでございます。  それから業務用地にいたしましても、御承知のように東京の平均階高というのは二・五階でございます。二十三区の階高が二・五階だというのは、世界じゅうこういう大都会ではかなザ珍しいことでありまして、もしこれが一階プラスになれば四割ふえるというようなことでございますので、要するに東京都の土地の有効利用ができれば業務用地の供給はかなり可能だということが言えるわけであります。これにはいわゆる建築基準法、都市計画法、そういったものの抜本的な改正が必要でありますが、それと同時に、新しい供給、例えば今、東京の臨海部の開発が問題になっておりますが、この辺におきましてもかなり膨大な供給源があるわけです。  大体、東京の臨海部の湾央地区だけで見ましても、今インナーハーバーと申しますが、豊洲、有明、晴海ですか、あの付近だけを見ましても、大体一千ヘクタールぐらいの土地がさらに有効的に転換できる、土地の相当部分は業務用地になり、相当部分は住宅用地になるだろうということであります。一千ヘクタールと申しますと、半分有効にしましても五百ヘクタール、例えば五〇〇%としますと二千五百ヘクタールという膨大なスペースが出てくるわけでありまして、ただいま申し上げました東京の二十一世紀までのオフィスの需要、約千百ヘクタールぐらいですか、こういったものを十分カバーしてなお余りあるというようなスペースはあるわけであります。  東京の現存する土地あるいはこれから利用する土地も、十分に土地はあるわけでありまして、問題は、そういった土地をいかにして早く有効利用化するか、そのテンポの問題だと思うのです。今までの行政あるいはその法制の中でやりますとなかなか時間がかかる。例えば、東京住宅地ないし業務用地のボリュームをアップする、例えば斜線制限をもっと緩やかにするとか、容積を上げるとか、そういった問題がありますと、必ず東京都がより過密になり、そのためにインフラが間に合わないという意見が常に出てくるわけです。東京の臨海部におきましても、あれを開発するためには膨大なインフラが必要であります。そういったインフラを在来の形で整備しようとなると、これは何年かかってできるかわからないわけでありまして、そういうタイムラグというものは非常に問題なわけです。  ですから、タイムラグさえなくて、需要がコンスタントにあるわけですから、そのコンスタントな需要に応ずるような供給ができれば、インタイムに供給ができれば、需給のアンバランスというのは起こらないわけであります。そういうような可能性があるということだけでも、こういう考えられないような土地の非常な暴騰というものは防げるわけであります。つまりインタイムにできないというところに問題があると思うわけです。いろいろな規制緩和がなぜインタイムにできないか、あるいはインフラがなぜインタイムにできないかということになると、在来の行政並びに在来の財政のあり方ではなかなかできないということであります。  したがいまして、時間がございませんものですから、私は結論的なことを申し上げますが、地方に分散すべきだという議論も確かにあるわけであります。首都圏の機能を分散することは一つの方法ではありますが、これはまずその首都の分散といいますか、一種の極端に言いますと遷都ということに相なろうかと思います。これは欧米では御承知のようにもうしょっちゅうあることでありまして、アメリカではワシントンでありますし、カナダではオタワでありますし、豪州ではキャンベラでありますし、それからブラジルはブラジリアであります。そういうような首都と在来の巨大都市との機能分離というものは相当な国で行われておるわけであります。最近はアルゼンチンですら首都を分離しようという話があるそうでございますが、このように首都を分離するということは各国が行っているわけでありますので、日本もできないわけではありませんし、また分離するということは膨大な金を必要としますから、そういったものは内需振興にかなり役立つわけです。  その財源をどうするかということになれば、それは移転した後の土地を売れば大分賄えるんじゃないかという感じがするわけでありますし、また首都機能が移転しましても、東京経済的な役割というものはますます充実されこそすれ、減ることはないというふうに思うわけです。ニューヨークは首都でありませんけれども、ニューヨークの経済力というものはアメリカでは断然すぐれておりますし、そこにまた経済力が集中しつつあることも事実であります。例えば東京都が分都、遷都、展都、まあいろんな形式がありますけれども、どういうような方法をとっても、東京都の経済的機能あるいは国際的地位については余り大きな変化はないと思うわけです。しかし、そういう遷都とか言っても、これはなかなかできることではございませんので、まずできる方法を考える必要がある。それには手っ取り早い方法は、インフラの金を民間が負担するというシステムを導入する必要がある。これは我々も、民間側でもそれはもう世論化しておるわけです。当然にはそういう社会資本の整備というものは公共団体がすべきだというのが常識でありますけれども、そういうことをやったんでは間に合わない。これにはやっぱり民間側が積極的に参加し負担すべきだということであります。  それには一つ条件がありまして、民間に相当なインセンティブを与える。先ほど申し上げたようなことで、建築基準法あるいは容積率あるいは道路の制限とかいろんな制限がございまして、かなりボリュームが実際問題として制約されているわけですが、そういったとこみを、ある地区を規定する必要があるのかもしれませんが、その地区内では少なくとも相当なボリュームアップをしてやる、あるいは港湾用地を業務用地あるいは住宅用地に用途変更するとか、そういうようなことをすると同時に、それに対する一種の賦課金を取るわけです。こういう方法は外国ではしょっちゅうやっていることでありまして、用途変更をすれば、ただで用途変更できない。  私ども実はフランスで住宅を買いましてオフィスに変えましたところが、オフィスユースにすることは認めるけれどもその差額を市に納めろということでありました。そういうふうに用途変更とか容積変更というものはただではないはずであります。ただでやったんでは、それでは余りに一方的に地主を均てんさせるだけでありまして、そういうようなもろもろのインセンティブは当然負担が伴うべきであります。負担のルールができていないというところに問題があるわけですが、こういったものは臨海部と言わず内陸部と言わず、相当なインセンティブを与えた場合は、インセンティブに対応する賦課金を徴収するという方法を確立する必要があると思うんですね。そうしますと、かなりのインセンティブを与え、かなりのボリュームアップをしても、社会資本が同時に充実できるということに相なるわけであります。  要するに、こういうような再開発にしても、なかなか自治体が積極的になり得ないということは、そういうことを進めるに従って自治体の負担が重くなる、社会資本の整備を公共体がやらなきゃならないという仕組みそのものに問題があるわけでありまして、もしもっと優良な都市計画、もっとよりよい効率的な土地の利用というものを図るのであれば、そういうインセンティブを与えるかわりに当然な応益負担をさせるということはもう当然なことだと私ども思うわけであります。そうしますと、東京都の容積がさっき申し上げたように平均二・五階という非常に低い形になっておりますが、そういったものがちょっと高くなるということだけでも膨大なスペースが住宅地にしろ業務用地にしろできるわけでありますし、それから、そういうような容積アップできますと結局、需給のバランスができるわけですから、地価の鎮静化も行われる、また、それによって社会資本の整備、公共事業の整備も行えるというような仕組みですね、そういった仕組みができないといけないと思うわけです。  それからもう一つ、住宅についても一言触れたいと思うわけですが、住宅は最近御承知のように大変好調でございます。恐らくことしの住宅の着工は百五十万戸をかなり超えるんではないかと思います。去年が百三十九万戸、約百四十万戸でございましたので、十万戸から十五万戸ぐらい去年よりふえる。そうしますと、一兆五千億から波及効果を入れますと三兆ぐらいの経済効果があると思いますし、十万戸ふえますと税収が五千八百億ふえるという計算があるそうでございますが、いずれにしましても、かなりの内需拡大には役立っていくんではないかという感じがいたします。  そこで最後に、住宅が今御承知のようにかなり高くなりまして、なかなか国民の手に入らなくなりつつあるわけでありますので、この際せめて欧米並みの住宅に対する減税を考えていただきたいと、かように思うわけであります。  日本住宅政策というものはかなり福祉的な性格を持っておりまして、貧乏人が住宅を建てて借金すれば借金の利息を少し減免してやろう、あるいは住宅金融公庫に安い金利を賄ってやるということでありまして、かなり住宅政策としては社会福祉的な性格を持っているわけですが、御承知のように外国、殊にアメリカではこういったものは、あらゆる所得、あらゆる規模の住宅について全面的に借入金の利息を所得控除しているわけであります。日本は恐らく東京あたりで平均八十三平米ぐらいの住宅でありますし、アメリカは百三十五平米ぐらいの住宅でありますから、アメリカがはるかに豊かな住生活を送っているわけですが、それにもかかわらずアメリカ住宅に対する税制的なインセンティブというのは日本に比べるとはるかに大きいわけです。日本住宅減税額というものは歳出に比較して御承知のように〇・三%ということになっておりますが、アメリカは四・九%ということになっております。一九八六年におけるアメリカ住宅減税は三百七十億ドルということになりますから、恐らく五兆とか六兆とかいう数字になります。  日本は、いわゆる住宅促進減税というのは六百七十億ぐらいですか、けたが二つばかり違うわけでありますが、アメリカに比較することは困難にしましても、せめて英国の三・八%とか西独の三・一%とか、そういうようなヨーロッパ並みの住宅減税、これは歳出規模に対する減税の比率でありますけれども、それが日本は〇・三%だというのは余りに貧弱ではないかというような感じがするわけであります。確かに、一方、住宅金融公庫に対する補給金があるにしましても、それを全部足しましても、住宅対策費というものは減税以外にあるわけでありますけれども、そういったものを足しましても日本は一・六%であり、アメリカは五%であり、英国は五・七%であり、フランスですら五・八%である。日本のそういう住宅対策費というものは国際的にかなり貧弱なものと言わざるを得ないわけであります。今度こういう減税問題がかなり大きな国会の問題として出てくるわけでありますけれども、いまだかつて住宅減税に対して余り大きな声が聞かれないというのは甚だ私ども残念でありますが、この際諸先生方のお力を得まして、国民住宅に対して、何とかそれを獲得できるような力を与えていただくことに御協力をいただきたいと思うわけでございます。  時間になりましたので、これで終わらせていただきます。どうもありがとうございました。
  10. 長田裕二

    会長長田裕二君) まことに有意義な御意見をありがとうございました。  以上で両参考人からの意見聴取は終わりました。  これより両参考人に対する質疑を行います。  質疑のある方は会長の許可を得て順次御発言を願います。
  11. 一井淳治

    一井淳治君 まず、竹内宏参考人からお伺いをしたいと思います。  先ほどのお話にもありました、アメリカを中心とする好ましからざる経済状態と、それから日本の過剰な貿易をしている非常に好ましからざる経済状態ですが、これは鶏と卵という関係からいけばどういうことでしょうか、どちらが先でしょうか。
  12. 竹内宏

    参考人竹内宏君) 日本の立場からいいますと、アメリカが悪いというような言い分になります。アメリカ財政赤字が大きいので経常収支の赤字も大きい、だからアメリカはほとんどすべての国に対して経常収支が赤字である。日本アメリカに対して五百五十億ドル黒字でございます。韓国が七十億ドル黒字でございまして、韓国は日本の十五分の一の経済ですから、七を掛けてやりますと約一千億ドルだ、台湾は百五十億ドルでありますから、日本に比べると二十分の一の経済ですから三千億ドルだ、日本は決して悪くはないんだ、このようなのが日本の言い分であります。  今度は、アメリカとか他の国から見ますと、日本はほとんどすべての国に対して経常収支黒字であるということでありますから、その批判がございます。つまり、日本は供給力が余っていて需要が少ないんだ、言ってみれば、日本は飢餓輸出しているのじゃなかろうかというのが海外からの批判でございます。  私は、どうもアメリカの方の責任の方が何となくやや多いと思いますけれども、どっちかというのはよくわかりません。ただ、日本人でございますから、アメリカが悪いというようなことは海外では言っておりますけれども、必ずしも自信がございません。
  13. 一井淳治

    一井淳治君 お立場上どこの国がどうこうということは言えないということがあれば、専門外であるということで外していただいても結構なんですけれどもアメリカ財政赤字の原因といいますか、そのあたりについてはどのようなお考えをお持ちでございましょうか。
  14. 竹内宏

    参考人竹内宏君) 第一番目には、福祉が拡大し過ぎたということがございますし、短期的に見ますと、レーガノミックスが失敗したというふうに思われます。レーガン政権は、大幅な個人減税をやり需要拡大し、同時に設備投資減税をやって経済を強くしよう、設備投資減税をやると設備投資が起きる、それによって設備投資関連企業は成長し、雇用が拡大し、その一部が貯蓄に回るんだ、このような寸法で強いアメリカをつくろうと思いましたけれども、あのレーガンが考えるほどアメリカ経済は既に強くなかった。設備投資減税をいたしましても、企業は企業買収にばかり熱を上げてしまった、アメリカの労働者のモラルは予想以上に低下していたというようなことで供給不足が発生したと思われます。  それから、細かいといいますか、長期的に見ますと、民主主義のコストを支払ったというような感じがいたします。つまり、福祉とかそういういろんなものがカットできなかったということが第二だと思います。  第三番目に、どの国も同じでございますけれども、軍事負担に参ってきてしまったというようなことだと思います。
  15. 一井淳治

    一井淳治君 大統領がアメリカでは一番大きな権力を持っておると思いますけれども、例えば民主党の大統領が選出されるというふうな政権の交代があった場合、アメリカ経済はかなり変更してくる可能性があるでしょうか。
  16. 竹内宏

    参考人竹内宏君) さしあたって、大統領選挙の前まで非常にいい状態をつくっておかなきゃなりませんから、来年は多分、これからアメリカはやや甘い政策をとられる。大統領がかわった後その政策が持続できませんから、その意味アメリカ経済はややまずい状態になるのかな、これは常識的によく言われている状態だろうと思われます。  それから、あとはどちらがなろうとも、アメリカでも同じように民活を主張されているわけでございます。民主党の最近の報告でございましても、自立の精神といいますか、それをいかにうまく育てていくかというようなことが強く強調されているわけでございますから、さしあたってアメリカも現在のような病から回復していくには、民主党だろうが共和党だろうが、似たような政策をとらざるを得ないのかな、こんなような感じを持っております。
  17. 一井淳治

    一井淳治君 先ほどの御回答の第三番目に、アメリカの軍事支出の増大ということのお話がありましたけれどもアメリカの軍事産業、これとアメリカ内需とはどういう関係になっているんでしょうか。
  18. 竹内宏

    参考人竹内宏君) アメリカでは二つ問題がございます。  一つは、軍事関係の発注が非常に多うございますから、ハイテク産業が発達しやすいというような関係がございます。それに伴いまして設備投資も起き、雇用も拡大するというような効果がございます。一方、アメリカ経済が弱くなった最大の原因を軍事力だと言われる人もおります。と申しますのは、優秀な人材が軍需に行ってしまっている、あるいは重要な資金が軍需産業に過大に配分されてしまっておりますので、その結果、民需用の部門には余りいい人が集まらないというようなことが指摘されておるわけでございます。  そこへいきますと日本は極めて対照的でございまして、優秀な人材が民需といいますか一般的な消費財にうまく配分されていたというようなことで、その面ではアメリカの軍需はアメリカ経済成長の足を大変引っ張ったというようなことが言われております。
  19. 一井淳治

    一井淳治君 参考人の今のお話によると、アメリカでは政権交代が起こっても余り政策の変更はないんではないかというふうなお話でございましたけれども、そうなると、現在の非常に好ましからざる世界経済状態、私はこれは日本よりもアメリカの方に大きなウエートがあるというふうに思っておりますけれども、これから脱却することは非常に困難である、世界的な経済の苦しい状況は、非常ペシミスチックといいますか、将来明るい展望が持てないんじゃないかというふうな感じもいたしますけれども日本経済の立て直しのために世界経済の将来がどうなっていくのか、そういう中において日本経済を立て直すために世界経済に対してどういうふうに働きかけたらいいのかという辺についてもちょっと御説明願いたいと思います。
  20. 竹内宏

    参考人竹内宏君) 私は、御指摘のように、アメリカ経済の再建はなかなか難しいと思います。でございますけれども、昨今になりますと、財政赤字が二百億ドルぐらいずつ減り出したというようなことでございます。税制の改革がどの程度影響しているかわかりませんけれども、多分アメリカ財政赤字はこれ以上ふえないだろうと思われますし、あるいは百億ドルか二百億ドルずつ減っていくのではなかろうかというような感じがいたします。  さらに、ドル安円高の効果が働きまして、日本は、御承知のとおり、数量ベースで見ますと、輸出数量は四%ぐらい、輸入数量は十数%ふえているわけであります。アメリカドル安の結果、輸出数量がかなり急ピッチでふえ出した、十数%ふえているわけでございます。さらに、アメリカはこれから台湾とか韓国に対して通貨の切り上げを強く要求していくというようなことでございますから、ドル安の効果が働きながら、財政の赤字を逐次減らしていきながら、何となくよたよたしながらいい方向にたどっていくのかな。少なくとも現在は、昨年の後半からいい方向、非常にいい方向じゃありませんけれども、いいか悪いかといえば、いい方向に少しは歩み出したというような感じがいたします。  ただ問題は、アメリカには中南米諸国があります。アジア諸国でも累積債務はかなり持っているわけでございますけれども日本経済がうまくいき、アジア諸国の経済がうまくいくからお金が回っているわけでございます。アジアには累積債務がありましても、ただ累積債務があるということで、累積債務問題はない。しかしアメリカの場合、経済が弱り、アメリカの銀行の力が弱くなり、それが中南米に膨大な債務を持っておりますから、中南米では累積債務問題が深刻になっているというようなことで、これがもう一つ世界経済に非常な不安な要因をつくっているんじゃなかろうかと思われるわけでございます。  世界経済バランスしていくためには、何といっても日本経常収支黒字を減らさなければならない、これは至上命令だと思います。これぐらい経済大国になりますと、とても輸出主導型といいますか、もっと輸出拡大することはできませんので、やはり私ども生活水準を上げるということに最大の努力を払う、これが海外に対する寄与であり、経済大国としての役割が果たせるのじゃないか。生意気でございますけれども、このように考えております。
  21. 一井淳治

    一井淳治君 非常に端的な手段ですけれども、企業が自主的に例えば前年度の一律一割とかあるいは二割ぐらい輸出を減らしましょう、輸出自体を規制するというふうな方法は、これはできるかどうかは非常に疑問の点があるかもしれませんが、仮にそういうふうな経済政策をとった場合には日本経済はどうなるでしょうか。
  22. 竹内宏

    参考人竹内宏君) 私、現在、日本の企業はそうやっているんじゃなかろうかと思います。アメリカ保護貿易が強うございますから、ほとんどすべての商品は輸出の自主調整という形で輸出を制限していると思われます。それでも多いということで批判を受けているわけでございますけれども輸出産業を制限いたしますと多分雇用問題が確実に生じてくるだろうと思われます。ですから、輸出を制限したら、同時に輸入を拡大するような政策といいますか、内需をふやしていく政策をとりませんと、現在ですらこの円高で失業率が三・二%に達しているわけでございますから、そのような観点から申しますとなかなかできにくい。  それからもう一つ、あるいは事によりますと、輸出企業は、日本全体の輸出が制限されるということは喜ぶべき現象だと思う業界もあるかと思います。そうしますと、世界価格は上がりますから収益が上がってしまう。ですから、日本の現在の輸出の自主制限につきましてそれなりにおさまっておりますのは、それによって輸出価格が引き上げられて収益がかえって高くなるというような面もあります。
  23. 一井淳治

    一井淳治君 自主規制をもっと拡大していく、そうしますと日本国内の失業が起こるというお話でございますけれども、失業を起こさないで時間短縮に振り向けていく、そういうふうな考え方はどうでございましょうか。現実的でないでしょうか。
  24. 竹内宏

    参考人竹内宏君) それも一理あると思いますけれども、そうなりますと日本の生産性が落ちます。現在でも中進国からの競争に追い上げられておりまして、例えばタンカーにつきましても韓国よりも三〇%ぐらい高いわけであります。鉄鋼も二五%高い。中進国は日本の賃金の七分の一で土日働いている。これに追い上げられてくるわけでございますから、時間短縮と同時に、何といいますか、非常に生産を自動化していくような強力な投資が起きませんとね。時間短縮をやりますと日本経済の転換がうまくいかないのかな。円高が続きますと中進国の追い上げが激しいんじゃなかろうか。それによりまして、時間短縮を一斉にやりますと、低生産部門がやられてしまうというような危険性が非常にあろうかと思います。
  25. 一井淳治

    一井淳治君 ちょっと質問の趣旨を変えさせていただきますけれども、先ほど、膨大な債権を日本が国外に対して持っておる、そして日本の富が外国へ投資されているというお話がございましたけれども、その日本の富を国内投資へ振り向ける方策といいますか、そういうふうな誘導方法でございますね、そのあたりについて御説明いただけませんでしょうか。
  26. 竹内宏

    参考人竹内宏君) 私は、例えば現在、生活水準が圧倒的に低いのは東京の人だと思います。多分、東京のサラリーマンはソウルのサラリーマンより生活水準が低いと思います。  と申しますのは、向こうの方が日本より広い住宅に住んでおりますし、通勤時間はいずれも四十分だというようなことでございます。それから向こうではテニスコートもマンションのそばについております。つまり東京のこれだけの所得を持っている人々生活水準を高めたいというような膨大な要求があるということであります。その端的な証拠は、土日になりますと高速道路等超満員になるというのは、いかに需要が大きいかということであります。  でございますから、先ほど坪井会長が言われましたように、土地の問題を解決してやるというようなことが非常に必要だろうと思いますし、それがいろいろ、例えば御指摘のように、あの十二号埋立地とか農地の宅地並み課税であるとか、あるいは若干固定資産税を上げるとか、短期的に東京でねらっているのは重課税でございますけれども、長期的には譲渡税をただにしてやるとか、土地が非常にうまく流動化していくように、しかもあるいは容積率をインフラ投資と組み合わせながら拡大していくとか、空中権というような権利を使うとか、あるいは口幅ったいようでございますけれども土地を利用していない限り所有権が発生しないというような新しい西欧的な考え方を持ってくるとか、そんなようなことがまず必要かなというような感じがいたします。  それから、さらに民活を利用いたしましてうまい仕組みで交通網を拡大していくとか、そんなようなことをやりますと、膨大な投資が確実に発生するというような感じがいたします。
  27. 一井淳治

    一井淳治君 その膨大な投資が確実に発生するメカニズムをもう少し御説明願いたいと思います。
  28. 竹内宏

    参考人竹内宏君) 現在でございましても、例えば国有地が一斉に販売され、いつになったらどれぐらい販売される、十三号埋立地はいつごろになったらどのような計画を立てるというようなことさえ、そのようなことをはっきり公表していただければ、東京は間もなく事務所用の土地は過剰になるに違いないというような確信が出てまいりますと、地価の暴騰が防がれるのではなかろうかと思われます。  ですから、何としても地価が下がるとか、あるいは現在よりも低い水準になってくれれば一層よろしゅうございますけれども、そうなりますと、端的に言って、先ほど坪井会長が御指摘のように、東京の事務所は足りなくて困っているわけでございますから、これは自動的に需要が発生するはずでございますし、東京の中央部に通っている人々になりますと、ワンルームマンションでアリのような生活をしているわけでございますから、当然それらの住宅需要も発生する。  ですから、第一番目に地価だ。それから第二番目の問題につきましては、ある意味でいきますと、民間の大型プロジェクトにつきまして規制をかなり緩和していただくというようなことがございましょうし、さらに特別なものにつきましては、利子補給なりあるいは税制上の減税措置をしていただくというような税制を使いますと多分いいんではなかろうかというような感じがいたします。現在は資金もあり余っているわけでございますから、そのようなフィージビリティーさえでき上がれば、資金もうまくつきますし、建設者も登場するというような感じがしております。
  29. 一井淳治

    一井淳治君 同じ質問を重ねてして失礼なんですけれども日本国内産業の振興のために、東京を中心とする土地の問題の解決、交通整備ということはわかったんですが、ほかに日本には大都会以外に残された非常に広い範囲がございますけれども、そういう地方産業の振興ということも絡めながら、国外に出ておる投資日本に引っ張り戻すという観点から何かいい方策はないでしょうか。
  30. 竹内宏

    参考人竹内宏君) それは甚だ言いにくいことでございますけれども、現在のように地価が高くて税金が重くてエネルギーコストが高ければ企業は外に行ってしまう。企業は既に国境を越した活動をしておりますから、それにつきましては、長期的な土地対策であるとか、あるいは税制も法人税を軽減していくとか、そんなようなことが必要ではなかろうか。  ただ、日本は極めて勤勉な人が住んでおりますから、海外でも昨今になりますとハイテク産業日本投資し始めたというようなことで、海外ハイテク産業日本投資し、日本の中級以下の技術といいますか、そういうようなハイテク以外のものが海外に出ていくというようになりますと非常にうまい仕組みができ上がるのではなかろうかと思われるわけであります。  ただ、経済成長いたしますと当然過疎過密が発生する、これはやむを得ないことだろうと思います。考えますと、何にもない田舎にお住みになるよりも都会に住んだ方が多くの人は幸せだというような感じがいたします。ですから、東京に余りにも集中して問題でございますけれども経済成長しますと過疎過密が地方の中で発生していく。地方の中で百万ぐらいの都市ができ、その都市と東京の情報がうまくアクセスでき、その都市に国際空港ができて海外との連絡がうまくなっていくというようなことによりますと、地方成長していくのかなというような感じでございますけれども、現在のように東京へのアクセスに時間がかかり、国際空港がなかなかできないというようなことになりますと、東京との格差は拡大していく一方がな、このような感じがしてならないわけでございます。
  31. 一井淳治

    一井淳治君 さっき空の問題が出ましたけれども日本の航空料金は非常に高いと思うのですが、これは専門外でございましたら結構なんですけれども、その原因についてお知りでございましたらお答え願いたいと思います。
  32. 竹内宏

    参考人竹内宏君) なかなか私素人で存じませんけれども、競争が制限されていたというのが現状だろうと思います。現在でも同じところに二つの路線が走りますと割引が始まるというようなことでございます。御指摘のように日本の航空料金は割高でございますけれども、これが普通並みになってかなりリーズナブルに、アメリカ並みに下がってくれば、多分沖縄とか北海道なんというようなところはさらに成長するはずでございます。現在でも海外旅行の一番人口分の旅行者が少ないのは北海道でございます。東京まで来て飛んでいかなきゃなりませんので、二日余分に要るわけでございますから、もっともっと空港ができますと、多分新しい情報が入って非常に刺激が高くなって成長する一つの要因になる。一つの要因でございますけれども、そのような感じがしております。
  33. 一井淳治

    一井淳治君 あと一つ御質問さしてもらいたいんですが、地方の振興のためにリゾート開発ということが最近よく言われておりますけれども、その問題と、リゾートを開発する場合には、どうしても一般庶民がある程度長期間そこに滞在するということも必要だと思いますけれども、そういった観点から時間短縮も並行的に進めていかないとリゾートの開発は十分できないじゃないかというような感じがいたしますけれども、その辺について簡単な御説明をお願いしたいと思います。
  34. 竹内宏

    参考人竹内宏君) おっしゃるとおりでございます。ですけれども、現在の状態で時間短縮をやりますと、東京に住んでいる人は一リゾートが非常に大混雑し、道路が混雑していますからテレビてごろ寝というようなことになるんじゃなかろうかというような感じがいたします。ですから、リゾートを開発するには道路とかいろんなことが無論必要でございます。現在、大リゾート地というのは、北の方に向かって千ヘクタールとか二千ヘクタールの開発が行われております。と申しますのは、西日本全体とすれば地価が高過ぎるということがございますし、兼業農家の方が余りにも多いというようなことで西日本はなかなか難しいかなというような感じがいたします。  ただ、リゾートを開発いたしましても、それでは余り雇用効果はないわけであります。例えば安比とか占冠とか、世界水準を抜くような大開発が東北や北海道でございますけれども、そこで伺いましても、せいぜい二百人から三百人の雇用効果でございます。もちろん、そこの村にしてみますと、過疎地でございますから、それは大変ありがたいことでございますけれども、リゾート地が開発されてもその地域の経済が力を持ちませんと、東京から行く人は東京で着物を買い、東京で缶詰を買い、そして行ってしまいますから、あの地域、その現地には缶詰の空と、それから生活汚水だけ残って、トータルで見ますと必ずしも採算に乗らないというような気もいたします。ですから、それを地元に落とすような、そのような仕組みといいますか、その地元の方の努力がございませんと、トータルで見ますと必ずしもいい——もちろんいいには違いありませんけれども、そんな大きな効果は期待できないのかなというような感じはしております。
  35. 一井淳治

    一井淳治君 坪井参考人にお尋ねしたいと思いますが、東京土地問題について詳しい御説明をいただきましたけれども、私は地方に住んでおりまして地方のひがみかもしれませんけれども東京土地問題を解決すると、住宅とかあるいはいろんなビルが東京を中心にどんどん建築される。そうすると東京の景気がよくなって地方は、例えば地方の材木はどんどん東京の方へ送り出されまして、材木屋さんは、一部の材木屋さんは忙しくなりますけれども、材木の値段が上がる、それから不動産関係の業者も地方で仕事をするよりは東京で仕事をした方がいいというので東京に進出する。結局、地方の方はますます過疎が進行する。東京だけが肥大になっていく。東京が便利になりますとますますそこへ人口が集中してきて、またイタチごっこといいますか、もう一遍東京の再開発を考えなくちゃいけない。そういうことで東京にばかり集中して、地方は何といいますか、非常に見捨てられた状態になっていく。不均衡がますます拡大していくというふうな悲観的な考えを持っておるんですけれども、そういう観点からすると、かえって東京は住みにくくしておくに限るといった考えを持っておるんですけれども、全国的なバランスのとれた発展という観点から土地問題についてもちょっと御説明願いたいと思うんです、土地問題、交通問題につきまして。
  36. 坪井東

    参考人坪井東君) 道路をつくると自動車が多くなって渋滞するというような説があるわけですが、東京に人口とか経済が集中するのは、これはもう防げない問題なんですね。そのために全総計画では常に地方分散とか、地方定住とか、それから国土の均衡ある開発というものが国策の最大のテーマだったと思います。しかし現実的には逆に東京に集中している状況でありますが、地方でもそれぞれの地方自治体の活動あるいは地方の財界の活動、そういったものによって地方の振興をすることは可能だと私は思うんですが、しかし私ども中央の企業から見ますと、若干地方で閉鎖的な面もなきにしもあらず。もし地方の自治体あるいは地方の財界が相当な決意で、相当なプロジェクトを展開するんであれば我々も喜んで参加したいと思うわけでありますが、そういった意味地方と中央というものは相提携して地方を開発していくということになれば大変いいんじゃないかと思います。  それから、確かに自然的な趨勢としては政策のいかんにかかわらず集中化というものは、これは免れないわけですから、もし政策的に分散をするんであれば、先ほど私が申し上げたようなことで首都機能の分散を行政的あるいは政治的に断行する以外に方法ないわけです。  例えば国会が移転するということは国会の先生方が決議すればそれはできるわけでありますし、国会が移転すれば当然行政機関も移転するわけであります。一部の行政機関が移転しただけではとてもじゃないがこれは問題解決できないわけですから。遷都となればまず国会が移転するということが大前提になろうかと思うわけでありますが、そういうことは私どもとしては批判の限りではありませんが、もしそういう御決断をされても東京は依然として成長し続けるということに間違いありません。  ただ、このままで東京に何もかにも一点に集中を強めると、確かに大きな問題が起こったその現象的な問題が今の地価高でありますので、こういうような現象は必ずしも好ましいとは思っておりませんわけです。したがいまして、需要に合うような供給を図ると同時に、地方分散というものは行政、政治ともに強力に行う必要があろうかというふうに思っております。
  37. 井上吉夫

    井上吉夫君 まず竹内参考人にお伺いしたいんです。  今この何日間かの為替相場を見てみますと、大体百五十円の後半から百五十一円ぐらいというところで、まあまあうまいぐあいに動いているような感じがするんですが、これから先の予想といいますか、そういうことについてお伺いしたいと思います。
  38. 竹内宏

    参考人竹内宏君) なかなか難しい問題でございまして、アメリカで有名な研究がございますけれども、占い師とエコノミストとどちらが為替の相場が当たったかといいますと、同じ程度当たらなかったという結論でございます。  ただ私、考えますのは、現在の百五十円の相場からやや円安ぎみだというようなことの最大の原因は、一つは日本輸出が減って輸入がふえ出した、アメリカ輸出がふえて輸入が減り出した、つまり世界経済の不均衡が是正される方向に走り出したというようなことで、現在数量ベースで見ますと、日本輸出黒字は急速に減っておりますけれども、間もなくドルで見ましても減り出すというような見通しが立てられたというのが第一だと思います。  それから第二番目には、アメリカドル安を防ぐために非常な努力を払い始めた、そのような払う決意を内外に示したというようなことだろうと思われます。  それからさらに、サミットなどの影響もございますけれども日本も五兆円と一兆円のそれぞれ減税と公共事業の拡大を内外に公表した。  このようなところが為替相場を百五十円に押し上げて、しかも百五十円から若干上にいくのかなというような相場感ができたというような感じがいたしているわけでございます。このような百五十円前後の動きというのは多分これから一年ぐらいは続くのかなと思われるわけでございますけれども、先ほどの議論のように、アメリカの病は決して治っていないというように思われます。ですから、来年になりますとアメリカ経済の不安感が出てくる可能性があるというような感じがいたします。  ですから、現在のような安定相場といいますか、百五十円前後の相場というのは多分一年強続けば非常に幸せかなと、このような考え方をしております。そこから先になりますと、再び円高になる可能性があるというような気がしております。
  39. 井上吉夫

    井上吉夫君 これは坪井参考人にも共通してお伺いしたいことなのでありますが、何といいましても、今日本にとって一番大事な問題は土地問題である、特に坪井参考人のお話しの大部分は土地問題に集中したと思います。私どももそう思うんです。とりわけ、その中で東京土地問題というのが一番深刻である。ただ、この場合に一連のお話の中で、東京における土地の需給のアンバランスをどうやって埋めていくか、そういうことについてかなり細かく規制の問題であるとかいろんなことをおっしゃいました。  私は、さっきの同僚委員の質問にもありましたように、むしろ物事を考える場合に、ついつい絶えず最後は東京問題に集中してしまう。そのことよりも、もっともっと地方に活力を与える、地方を活性化するというそのことに政策のほとんど大部分を集中する。そのことによってだんだんと東京への一点集中というのがおさまっていって、そしてそこからこれ以上の需要の急激な増大というのはない、これだけの需要総体量に対する供給はこうやったら十分賄えていけるのではないか。むしろこういうぐあいに割り切って考えると、供給過剰すら考えられるということになると、自然そこから土地は、どちらかといえば、ぐっと値下がりということを招来するのではないか。だから、手法といいますか、やっていく順番というのを、どちらかといえば、地方対策に重点を移すということの方が効果があるのではないかなという、そんな感じがするわけでございます。  ただ、例えば東京遷都というような大変なトラスチックな決断をしたにしても、東京経済というものはそう大きく変わらぬだろうというお話等もございましたけれども、そうであればあるほど、なおさら地方に、経済の活性化というものについて、交通手段その他を含めて、重点を大きく志向するということが一番大事ではないか。そんな感じ土地問題という側面からもするわけですが、いかがでしょう。お二人からひとつお答えいただきたいと思います。
  40. 坪井東

    参考人坪井東君) 私からお答えいたしますが、最近の経済を見ますと産業構造が急速に変化しつつあるわけです。だめな産業はますますだめになってしまう。殊に重厚長大と申しますか、各地方でいわゆる企業城下町と言われるものがかなり大きな打撃をこうむっておるわけであります。そういうような地方産業を基盤とした地方経済というものは非常に大きな打撃を受け、そして反面、御承知のように、最近の情報化とか国際化とか、あるいは第三次産業化とかということになると、ますます東京に集中するような経済構造になってきておるわけです。ですから、おっしゃるように、私どもこういったことはあらゆるエネルギーが東京に集中してしまう結果になって東京がパンクしてしまうという現実を招来したわけでありますが、いかに地方が振興できるかということになりますと、これはなかなか私は難しいと思います。少なくとも公共事業の重点的配分というものは地方にさるべきであって、確かに東京でもインフラは非常に不足しておりますし、それが東京のいろんな混雑を増大しているわけでありますけれども、私さっき申し上げたような、東京のインフラは民間にそのインフラを負担させ、民間とともに東京は動いていくという体制をとれれば、あらゆる公共事業はむしろ地方に重点的に配分できるんではないか。  ところが、今は、むしろ必要なのは東京のインフラが必要であって、地方には必ずしもそういうニーズがないというようなことの方が現実であろうかと思いますけれども、政策的にはやはり公共事業は地方に重点的に配分さるべきである。東京の必要なインフラは、東京が民間とともに整備していくという方針を打ち立てるべきではないかというふうに考えております。
  41. 井上吉夫

    井上吉夫君 同じ問題を竹内さん。
  42. 竹内宏

    参考人竹内宏君) 私、地方の問題を考えますときに、どうも感じとして地方も一つ一つかなという感じがいたします。ちょうどインドネシアがなぜ成長しなくて、日本がなぜ成長したかといいますと、同じと思っている道徳の大きさは多分一緒だけども日本が持っている道徳の方がたまたま工業化に適したモラルを持っていたということにすぎないんじゃなかろうか。今極端な例でございますけれども何かそんなような感じがいたしてならないわけであります。  西日本全体の経済力が低下してまいりましたのは、昔から大変栄えたところでございますから、兼業農家の方が多いんで土地を手放されないものですから、四国なんか典型的でございますけども経済力に比べて地価が高くなり過ぎてしまっているというような感じもいたします。  それから地域ごとにモラルがございますので、非常に抽象的な話で恐縮でございますけども東京の歴史はたった四百年で、出稼ぎ者の集まりでございますから、そこに固有なモラルがないわけであります。風土的なモラルがないわけで、地域によりますと、つまらない話で恐縮ですけども、お嫁に行くときにトラックに何台も積んで行くとか、あるいは友引には葬式を出さないとか、あるいは仏滅には結婚式を挙げないとか、そのような因縁が重なっているというような感じがいたします。  ですから、大阪と東京を比べると、千五百年ぐらい関西は日本最高の地位にいて、ごく二、三十年前に東京に逆転されたわけでございますけども、その逆転の原因というのは、関西に行きますと中小企業が極めて数が多いわけでございますけれども、これがそれ以上成長できないというところにある。ちょうど比喩的に言えば、京都の小売屋さんはなかなか全国展開されるような気力はないわけで、入り口にちょっと高級な物を並べておかれて内の方で待っていられるわけでございますから、それ独特の風土があるんじゃなかろうかというような感じがしてならないわけでございます。  ですから、それがうまいぐあいで成長するようなコンセンサスができる。つまり、そこで地方自治体とか財界の方とか活躍されましてそんなようなうまいコンセンサスづくりができるのかなと、それが第一でございます。  それから第二番目に、残念ながら、製造業が発達していくためには、地場産業なんか典型的でございますけども、数百年の歴史が要るのかなという感じもいたします。  ちょうど九州でございましても、熊本に本田が展開しても部品工業が地場にはなかったというようなことでございますから、その展開した力が周りに伸びていかないというようなことでございます。ですから、そういう意味でいきますと、うまいぐあいに地域の情報をうまく育てていくというのが非常に重要であろうというような感じがいたします。  ちょうど井上先生の鹿児島でございますと、鹿児島は昔から一種の独立国みたいなところでございますから、鹿児島の企業が全国展開するというのはないんで、鹿児島の中だけでマーケットシェアを高めるというような戦略をとられているわけでございますから、そのような考え方を変えますには、どうしても東京との情報といいますか、世界との情報が拡大していかなきゃならないのかなというような感じがしてならないわけでございます。  ただ、それでも道路がつきますと、ちょうど鹿児島でございましても、ふるさとの関係がございましょうけども、京セラとソニーの最大工場が鹿児島に立地した。これは多分道路ができた結果ではなかろうかと思われるわけであります。あそこでできた製品は道路で神奈川県まで持ってくるわけでございますから、そういうようなことで、交通網の拡大こそ地域に経済力が分散し、同時に人々が刺激されていくというような感じがいたします。  なお、つまらないことで恐縮でございますけども東京の活力というのは何にあるかといいますと、歴史と伝統がないということのほかに、若年層の人口が圧倒的に多い、これが東京の活力でございます。地域がなぜ成長できないかというと、若年層が東京に取られているわけでございますから、この若年層が喜んで住むような環境づくりみたいなものが必要だ。それは案外原宿、六本木みたいなものが必要がな。国家の行政じゃなかなかできないわけでございますけども、何となくそのような文化的な雰囲気が極めて重要がなと、このような感じがしてならないわけでございます。  ですから、建前上は、自然が大変重要だとか言いまして、地方自治体で若者のために触れ合いの森をつくられても、だれも触れ合わないような森をつくられてしまうというようなことで、もうちょっと若者を引きつけるには別のものがあるんじゃなかろうかというような感じもしております。
  43. 井上吉夫

    井上吉夫君 湘南海岸あたりの海水浴は人が込み合うからますます人間が集まるんだ、人間の少ないところにはだれも若い者は特に行きたがらぬということに今の竹内参考人のお話はつながると思いますが、我が鹿児島も含めて、地方も必ずしも、何といいますか、新しい企業がこれから伸びていく要素が絶無というわけではないと私は思うんです。さっき言われた交通手段の問題もありましょうし、いろんなことを政策的に集中して、そして育てていけば、なるほど歴史も少ない、もともと大変閉鎖的な一面もある。いろんな諸要素があったと思いますけれども、どうも先ほども申し上げましたように、もっともっと地方にということを手法として考えていかないと、大都市問題というのは、日本が全体として余り広くないわけですから、東京東京ということだけで考えていってたのでは、どうもしょせん追いかけっこをずっとやっていることになってしまうのではないだろうか。  特に坪井参考人、お仕事柄のこともありますから、とりあえず目につくところは東京周辺の話、それをどう広げていくかということが経済の採算上の話としては対象になるでしょうけれども、もう一つ大きく踏み出して、新しい拠点をそれぞれ全国にうんとつくっていく。私は四全総に言う多極分散というのはそういうところだというぐあいに思うんです。だから、東京に本社のある企業というのは全国に網を張ることは決して難しいことではないと思いますし、有利性が認められる、手をつけたら伸ばせるということになったら、私はどんどん伸びていくのではないか。そういう対象地をどちらかといえば東京以外の地方に求めるというような、そういうとらえ方を特に経済界でお考えをいただきたい。もちろん政治の分野は、さっきお話がありましたように、とりあえず公共事業あたりを地方に傾斜配分して、そして企業が新しく立地する条件を整えるというところまでがいわば政治の分野の責任で、それをどんどん現実のものとして立地させていくという分野になりますと、企業がそういうとらえ方をしていただかないとなかなか効果が出ないのではないか、そんな感じがしてならないわけであります。  そういうとらえ方の中で、改めて東京というのはビジネスの中心あるいは情報、金融の中心、そういうものとしてやっていくために何と何がどうしても必要がな。そういう中にいろんな規制の問題等があり、あるいはそれぞれの問題点を解決するいろんな問題を一層浮き彫りにし、そしてそれが解決へ向かって伸びていくんではないか、そんな感じがしてならないわけです。  私の意見の方が中心になってしまいましたけれども、もう一つ竹内参考人のお書きになったのをちょっと見ながら、土地問題について、どっちかといえば固定資産税の方は高くして、そして土地譲渡所得等については安くしたらどうかという、そういうことをお書きになっておるようでございますが、少しこのくだりを解説をいただければと思います。
  44. 竹内宏

    参考人竹内宏君) 私、甚だ口幅ったい言い方でございますけれども東京経済集中はとまらないというような感じがしております。ちょうど昭和三十年代に重化学工業が太平洋ベルト地帯に展開して日本経済高度成長した。同じように現在のような金融とか情報とか、それらの機能が東京に集中することによって日本経済成長しているというようなことでございます。そうなりますと、東京というのは特別なところであって、日本ではないのかなというような感じがするわけでございます。そうなりますと、その東京の機能を経済的にうんと生かしてやるためには、都市計画とかいろんなことをやりましても、人知、人間の知恵は限りがあるわけでございますから、プライスメカニズムのままに動かしてやった方が非常に経済の効率がよくなるというような感じがいたします。そうなりますと、どういたしましても、東京の現在の地価の値上がりの最大の理由は、やっぱり東京に供給力がないということと金融緩和による、これが非常に大きかったと思いますけれども、ただ東京の中でも、何といいますか、土地を持っていることによるコスト負担をかけてやりませんと、土地の有効な利用がないというような感じがいたします。特に東京のような特別な地域は、できるだけ持っていることの負担を高くしてやるというようなことで、有効利用が図られて東京が非常に機能的な都市になっていくのかなというような感じがしております。  私、そういうことを書きまして、念頭に置いておりますのは東京でございまして、東京だけは何か日本ではないというような考え方をしておく必要があるのかな、これは特別なところだというようなことでそんな意見を申し上げたわけでございます。
  45. 井上吉夫

    井上吉夫君 遊ばしている土地等については、竹内参考人のお話、そういうとらえ方が当然あるのかなと思うんですが、現に住まいをしているところは、だんだん地価上昇に伴って改定期ごとに固定資産の評価額が上がってきています。だから、自分の持っている土地、自分の持ち家でありましても、生活の条件としてはちっとも変化がないのに税金だけはどんどん改定のたびごとに上がっていく。そういうことと同時に、また相続の時点などになるとどうにもならなくなって、手放さなければもう子供が引き継いでいけないという、そういう東京における生活上の大変な問題点というのは、今言われた東京日本と別だというぐあいに割り切ってしまえば答えになるのかもしれませんが、今のような点についてはどうでしょう。
  46. 竹内宏

    参考人竹内宏君) どうしても土地を有効利用するということになりますと、住んでいる方々にもその上の有効利用を図っていただかなければならないというようなことでございます。まさに御指摘のように、そこに永遠に住んでいる方は、この地価の値上がりは含み資産の増加ではなくて、むくみ資産の増加だと言われているのはそれだろうと思います。でございますけれども、例えば空中権みたいな物権を考えまして、空中権が売買できるというようなことになりますと、そこにお住みの方は空中権を売却することによって、その資金を他の資産運用しておけば固定資産税の負担にたえられるのかなというような感じがしているわけでございます。  そのような意味でいきますと、東京の中心部に昔からお住みになっている方には甚だ気の毒でございますけれども、その方々がその方々の仕事とかなんかにふさわしいところに移っていただくというようなことが、これが経済の変化であり、日本経済の進歩かなというようなことだろうと思われます。高度成長のときなぜ進歩したかといいますと、皆いや応なしに東京に来てしまった、あるいは大都市とか工場地帯に来てしまった、これが進歩でございます。ですから、そんなようなことになりますと、東京を進歩させるためにはそのようなことを考えて、非常に非人情的でございますけれども経済の進歩というのは元来非人情的なものかな。この非人情的なことをやめますと経済が低迷する。ですから、経済の低迷と人情とどちらをとるかというような、一種の選択といいますか、そういうような感じがしているわけでございます。
  47. 井上吉夫

    井上吉夫君 ありがとうございました。
  48. 矢原秀男

    矢原秀男君 時間が十五分でございますので一方的に質問申し上げますけれども、それについて御答弁をお願いしたいと思います。  まず、竹内先生と坪井先生御両名の方にお願いを申し上げたいんですが、今回の緊急経済対策の五兆円の問題につきましては、内需拡大、その中で国民生活の質を高めていくということも大きな課題になっております。で、数字的には、六十二年度事業費が、御案内のとおり、五兆円でございまして、国費が一兆七千五百五十億円、財投が八千億円、地方が二兆五百五十億円となっているわけでございます。これも、内需拡大の中で公共事業を中心とするこの仕事が国民生活の質を高めていく問題に顕著に出てくるのかどうかという一つの疑問を私は持っているわけでございますけれども、それぞれお答えをお願いしたいと思います。  それから、竹内先生にお願いしたいんですが、米の財政赤字の理由の四点の中で、一つは大幅個人減税、そして三番目に福祉の増大に対するカットができなかった、こういうお話を伺ったわけでございますが、この二点についてもう少し具体的に御見解を教えていただきたい。  それから坪井先生にお願いしたいわけでございますが、確かに地価の問題が大きな課題になっております。しかも、東京に一点集中をいたしております。この問題解決の方途は幾らも私はあると思いますし、坪井先生も五点にわたってお話をされております。  私はもっと臨海部を、これは坪井先生と同じ意見だと思うんですけれども、臨海部の開発を、例えば高層化、そうしてもっと民活を活用しながら早く政策をやっていかなければいけない、そういう問題が一つ。  そうしてもう一つは、神戸市のように環境問題をよくバランスをとりながら、思い切って人工埋め立てをふやしていく。しかもそこには外国で言えばフィンランドのように樹木の緑、そうして入り江、こういうふうな中で住宅用地というものを高層化の中でもっともっとやれば、まず一つはそれで解決できるんではないか。  そうして内陸にあっては、東京都のせめて二十三区では老朽の公共住宅を高層化する。高層化にして、十階建てぐらいにして、これは各県や市にも順次波及すると思いますけれども、エレベーターを思い切ってつける。そうして高齢の人は一階か二階に住んでいただく。そういうふうにして——今、私兵庫県でございますけれども、市営や県営住宅でも、五階、四階建て、そうしてふろもないところもある。エレベーターもない。お体の悪い方は上まで上がるのに大変である。思い切って十階建てぐらいにしていく。エレベーターにする。高齢の人は、今申し上げているように、下に住んでいただく。そういうふうになれば、公営住宅だけでも思い切った質の高まりができるのではないか、こういうことを思っているわけです。  まず東京都について、坪井先生、この住宅問題、今私が申し上げた質問に対して御答弁をお願いしたい、こう思います。それぞれお願いをいたします。
  49. 坪井東

    参考人坪井東君) それではお答えを申し上げますが、東京集中の問題は、先ほどから申し上げたようなことで、経済的現象としては、これはもうとめられない状況でございます。これをとめるには高度に政治的な判断が必要だというふうに考えます。したがいまして、これはむしろ我々経済人の問題よりも、先生方の御決意の問題ではないかという感じがしておりますが、東京にいろんな機能が集中しまして東京地価が暴騰したということは申し上げましたが、今先生のお話のありました臨海部の開発に限って申し上げますと、これは非常に前々から期待されていることでありますし、相当膨大な開発のポテンシャルを持っているわけであります。ただ、ポテンシャルがありながらなかなか実行できないというのは、行政体がかなり複雑でございまして、御承知のように、中央政府の各省並びに実施する東京都、これらの行政のコンセンサスを得ることがかなり時間がかかるということと、それから先ほども申し上げましたが、そういったことを開発するためのインフラストラクチャーをどういう手段で整備するかといったことが解決されませんと、非常に時間がかかって間に合わないということであります。  私はこの行政のあり方と、それからもう一つ、インフラに対して地権者がどういうふうに負担するかということになりますと、ある意味では私権といいますか、所有権に対するある程度の制約が必要になってまいると思いますが、こういった特殊な場所においては特殊な方法をとらなければ開発ができない、開発が非常におくれるということは当然でありますので、私は緊急避難的に緊急立法をもって、ある特定の地域については在来の行政的なしがらみだとか、そういうものを排除して、ある一つのマスタープランのもとに早急につくり上げていくというような超行政的な、あるいは超法制的な措置が行われないとなかなか簡単にできないんじゃないかと思うわけであります、  日本全国、もうかなりたくさんウオーターフロントを日本は持っているわけでありまして、地方都市におきましてもウオーターフロントが有効に使えれば、それぞれの都市の開発にかなり役立つと思うわけですが、日本の場合は公有水面をいじくるということがかなりやかましい問題でございまして、殊に地方都市につきましては、環境問題も含め、なかなかウオーターフロントの開発というものはそう簡単でないわけであります。こういったことは、それぞれの需要あるいは活性化のために必要なところは、在来の慣習あるいは法制にとらわれずに、積極的に新しい方法をもってやる必要があると思いますし、現にアメリカと言わずイギリスと言わず、今ウオーターフロントの開発が非常に活発に行われているのは御承知のとおりでありますが、そういった場合に、いろいろな複雑な行政機能を一つにまとめ実行できるような新しい行政体をつくりまして、それが担当するということであります。今みたいに、単体の行政体がやろうとすると、関連する行政体のコンセンサスを一々得ながらやらなければなりませんし、そういう財政的な措置もかなり在来のやり方にとらわれざるを得ないような状況でありますので、思い切った新しい手法を導入するのは、もうアメリカでも英国でもフランスでも同じように行っているのに、なぜ日本でできないのかという感じがするわけであります。
  50. 竹内宏

    参考人竹内宏君) 第一点につきまして、五兆円の問題でございますけれども、現在の国民生活を高めるための最も緊急なことは、三・二%の失業率をいかに下げるかというようなことが最大の問題ではなかろうかというふうに思われます。  ですから、この五兆円を現在非常に困ったところといいますか、ボトルネックになっているようなところに投資しますと、えてして土地代に大部分取られてしまいますので、波及効果を考えますと、多分すぐには役に立たなくて、長期的に役に立つというような面の投資が行われるに違いない。その面では直ちに国民生活の向上にはなりませんけれども、緊急な課題は三・二%の失業率を下げていって、円高のフリクションをうまくならしてやるというようなことではなかろうか。そんなようなことを考えますと、私もこの五兆円の内需拡大は大賛成であると、このような立場に立たしていただいているわけでございます。  それから、アメリカの個人減税とか福祉の問題を御指摘になりましたんですけれどもアメリカが悪くなりましたのは、減税いたしましても、減税するということは個人の需要が出てくるわけでございますし、設備投資減税をいたすということは、企業の設備に対する需要が出てくるわけでございますけれども、実際には、それだけの需要が出てきましても供給力が出てこなかった、ここに最大の問題があったと思われます。これはとりもなおさずアメリカ経済が弱くなったとも言えますし、人によりますとベトナム戦争の影響がまだ加わっていたんだと。昨今になりますと、そのベトナム戦争による精神的な荒廃がほとんどなくなったから健全になったんだなんて、このような説もございますけれども、そのようなことで個人減税をやって、経済バランスといいますか、の強さに比べますと減税の幅が大きかったのかなと、このような感じもいたしているわけでございます。  それから福祉の問題につきましては、どの国も同じでございますけれども、オーバーな話で先生方の前で恐縮でございますけれども財政赤字がとまらなかったということと人口が減り出した、この二つがあった場合には大体の国家は衰退していくわけでございます。そのような意味で、アメリカとか先進国いずれもそうでございますけれども、福祉が膨れ過ぎて赤字になっていくという状態が続きますと、どういたしましても、その国の経済力は長期的に衰退していって、民族といいますか、国民経済が成り立たなくなるというようなことかなと思われるわけであります。  ですから、昨今アメリカの民主党の研究なんかにもございますけれども、口幅ったいようなことで恐縮でございますが、例えばリハビリテーションをしている最中の人には手を差し出さない方がいいんだ、つまり自助努力をいかにできるような環境をつくるかということが最大の福祉政策ではなかろうかというような考えが持たれてきているわけでございます。  これも口幅ったいようでございますけれども、十八世紀の中ごろイギリスがなぜ成長したか。これは自助努力ということを最も強く主張したわけでございますし、日本もそれを導入した明治の福沢諭吉先生を初めとして皆自助努力を主張されたというふうなことでございますけれども、これがイギリスは、他助努力といいますか、他助の福祉が中心になってくるとともに国が衰退していったというようなことでございます。そんなような意味合いでアメリカでは現在福祉の議論がされているのかなと、このような感じがしているわけでございます。
  51. 近藤忠孝

    近藤忠孝君 竹内参考人に三問、それから坪井参考人に二問、まとめて申し上げますので端的にお答えいただきたいと思います。  まず竹内参考人ですが、この貿易収支一千億ドルを単純に見るのではなくて、日本からアメリカへの輸出、それから今度はアメリカにおける日本企業の生産量の総体、アメリカから日本への輸出、そして日本におけるアメリカ企業の生産、これで比較してみることも必要だと思うんです。そうしますと、量はほぼ同じ。人口一人当たりで見てみますと、日本人の方がアメリカ企業のものを二倍多く買っている、こういう点をどう見るのか、これが第一点です。  それから海外への生産拠点の進出の問題ですが、今先端産業でもどんどん海外へ出ている、こういう状況なんです。ところが、海外へ出れば今度輸入がふえて、そういう点では貿易摩擦解消につながっていくのでむしろ促進すべきだ、こういう考えがあるんですが、これは先ほどお話しのように、バランスよくいけばいいんですが、そういう保証はないわけで、産業の空洞化の促進になりはしないか、そのことは日本経済に否定的な影響を与えはしないかという点です。  それから第三点、貿易摩擦、黒字が、あるいは円高の問題がどうなるかですが、日本の場合の特徴は、上位三十社の企業で全体の輸出の六〇%弱を輸出している。これらの企業は円高問題を次々克服しています。百七十円をクリアし百五十円、将来百円もクリアしよう。この体質がある限り、やはり輸出は減らないのじゃないか、この面どうお考えか。  それから坪井参考人に二点ですが、土地高騰対策として規制緩和が言われておりますが、先ほど五階を六階にというのですが、私はそういうものではなくて、空間の利用ですから、もっと相当の高層建物の大量建設が目的だと思うんです。となりますと単位面積の利用価値が高まりますから、逆にこれは地価高騰につながるのじゃないか、単位面積でいきますと。その点がどうか。  それから、これは先ほど竹内参考人の御意見で、土地が高くなるとそこに住まないでほかへ行ったらいいじゃないか。確かにこの辺あるいは坪数千万もするところに住むというのはだんだん難しいと思うんですが、しかし中心部が上がればその周辺が上がり、周辺が上がりますと今度ある特定の地域、地方がやっぱり上がります。この間伊東へ行きましたら、別荘の購入が相当ふえて、あの辺に建築ブームが今起きている。となりますとその周辺にも住めなくなってくると思うんです。特に坪井参考人の場合には不動産を事業としておられますから、そういった方が、今までの人はほかへ行ってもいいということで事業に取り組まれると、これはちょっと大変なことになるのじゃないか。やっぱり既存住民が引き続いて東京に住んでいけるように、その辺をどうお考えか。  以上、端的にお答えいただきたいと思います。
  52. 竹内宏

    参考人竹内宏君) 第一点でございますけれども、御指摘のように日本に存在しているコカ・コーラであるとかあるいはIBMであるとか、いろいろなアメリカ企業が生産し、それを我々が消費しておりますから、御指摘のようにバランスを考えてみますと、日本系企業、アメリカ系企業ということになりますと、大分アメリカとの経常収支黒字といいますか、この問題がほとんどなくなると、御指摘のとおりでございます。あの幅は五百五十億ドルでございますからなくなるということであります。  ただ、この場合例えば日本アイ・ビー・エムを日本の企業と見るか、アメリカの企業と見るかというような問題だろうと思われます。つまり日本アイ・ビー・エムは日本の雇用を拡大しているわけでございますし、日本に対して税金を納めているという意味では日本の企業でございます。ただし、その指揮系統がアメリカに置かれているということでありますけれども、ただ、これが株式が上場されますと日本が買収可能であるというようなことでございます。  それは第二点と関係いたしますけれども、第二点も日本経済の空洞化が起きるというのは、まさに日本から進出した例えば現在間もなく二百二十万台アメリカで自動車が生産されますけれども、これらの企業を日本の企業と見るか、アメリカの企業と見るかというようなことだろうと思われます。日本の例えばアメリカトヨタをアメリカの企業と見ますと、日本にそれだけ投資すれば日本にもっと雇用が拡大いたしますけれども日本の雇用が拡大しないでアメリカの雇用が拡大するというような意味では、アメリカの企業かもしれないというような感じがしております。つまりアメリカの企業の方が日本よりも一段早く国際化していたというようなことだろうと思われます。  現在、日本の企業が国際化するということはアメリカと同じような轍を踏むんじゃなかろうか。日本の企業、日本経済が空洞化、つまり海外で活躍して海外で雇用が拡大し、日本の雇用が減少するというような意味で空洞化の現象が議論されるというようなことだろうと思います。ですから、先生がおっしゃいました第一、第二の関連はまさに御案内のとおり裏腹の関係になっているというように思われます。  ただ、日本といたしましては、空洞化が余り急ピッチで進みますと困難でございますけれども、できれば海外からハイテク産業とか海外から資本流入してくれて、日本で極めて高度な、日本アイ・ビー・エムとか、そのような企業が日本で活躍してくれれば空洞化が防げるのかなというような感じがしております。ただ、現在の空洞化のテンポはやや速過ぎるというような感じもいたすわけでありますけれども地価が高いとかいろいろな条件を考えますと、企業は国境を越しておりますので、この力をなかなか遮ることはできないのかなというような感じがしております。これを遮りますのは、日本の企業が日本投資のチャンスをふやすような、いろいろな内需拡大であるとか、そんなことが必要かなというような感じがいたします。  それから第三に、上位企業でございますけれども、ここにはむろん多数の部品産業が存在しているわけでございます。現在のところ既に日本輸出数量は減り出した、輸入数量は急ピッチにふえているということでございますから、円高の効果は必ず働くのかなというような感じがいたします。日本輸出企業が輸出を伸ばす場合には、韓国から例えば鉄鋼を輸入し、セメントを輸入して、それによって工場で組み立て海外に出していくというような国際的な分業が進みながら、つまり輸入もふえ輸出もふえるという形でバランスしていくんじゃなかろうかというような感じがいたします。その結果、韓国製品が輸入されますと、それによって鉄鋼メーカーとかセメントメーカーに新しい雇用問題が発生するというような感じがいたすわけであります。ただし、全体として見ますと、輸出に向けられる分を内需拡大してやれば解消するわけでございますから、そのような意味内需拡大が急がれるわけでございます。
  53. 坪井東

    参考人坪井東君) それでは私からお答え申し上げますが、規制緩和すると地価の高騰につながるんではないかという御質問でございますが、確かにただインセンティブを与えるだけでは地権者を有利にさせるということであることは間違いないことでございますので、インセンティブはただでは与えない、必ず応益負担を必要とするというルールがなければならないということを先ほども申し上げたわけですが、そういったルールが必ずしも今はっきりしておらないわけでありますので、逆に規制緩和しづらいということになっておるわけです。  例えば東京都の平均的な高さが二・五階と申し上げましたのは、いかに空間があいているかということなのでありますが、それじゃその空間を埋めるためのいろいろな規制緩和をボリュームアップすると地価高騰になるというわけですから、そういったことを相殺するために、あるいは社会資本を充実するためにも応益負担をする必要がある。応益負担というのはどういう形でやるか、賦課金でやるか、あるいは固定資産税の特別徴収をするか、いろんなやり方はあろうと思いますけれども、そういうことによって地価高騰につながらないような方法をとるべきではないかという感じがいたします。  それからもう一つ、住民との関係でございますけれども、確かに今都心三区におきましては、業務用ビルがたくさんできますたびに住民がどんどん追い出される結果になっておるわけでありまして、千代田、中央それぞれ人口がどんどん減っておるのが現状であります。  そこで、千代田、中央、港区におきましては、住宅の附置義務というものが最近開発の要件になってまいりまして、あるボリュームのビルを建てるのであれば、何月の住宅を一緒に建てなさい、こういうような附置義務があります。  ただ、そのためには、好ましいと思うのは、ボリュームアップするときに、その部分は住宅をつくりなさいというような規制がもしあれば、職住近接といいますか、住民が必ずしもそこから出ていかないで済むということもあり得ると思います。ですから、インセンティブの出し方によって住民が住みつき得るということが可能であります。  実際問題として、ロンドン、パリ、ああいう大都会の中央部におきましては、下が店舗で真ん中がオフィスで上が住宅というようなのが一般的な都会の住み方でありますけれども日本の場合は地価が非常に高いものでありますので、東京の真ん中になかなか住みつけない、殊に固定資産税なんかますます高くなりますと、住民がいや応なしに追い出されてしまうというような結果もあるわけでありますので、その点は、附置義務があって住民がそこに住んでいても固定資産税が払えないというような結果にならぬとも限りませんものですから、この辺の関係は大変難しいんではないかと思います。しかし、都心に全部住民がいなくなるということは行政体にとってもかなり大きな問題でありますので、その点については開発する方と行政との話し合いが今行われているわけであります。
  54. 抜山映子

    抜山映子君 竹内先生にお伺いいたしますけれども、今、国会の方では、内需拡大の刺激策として減税ということ、そしてその減税に対する恒久財源はどうするかということ、それにはマル優枠の廃止がいいんだと政府が今そういうように主張している。このような関連について先生の御見解をお伺いしたいと思います。
  55. 竹内宏

    参考人竹内宏君) 内需拡大の減税ということ、同時にこれは多分増税を伴うんじゃなかろうかと思いますけれども、現在の最大の問題は不公平税制であるというように思われるわけであります。そんなような観点からマル優の問題も議論されてしかるべきかなというような感じがいたすわけであります。できれば、経済の現在の情勢から考えますと、この際思い切った内需拡大をやりませんと、日本の国際的な立場が非常に苦しくなる、このような感じがしてならないわけでございます。
  56. 抜山映子

    抜山映子君 今、世界恐慌があるのではないかということがいろんな方によって云々されておりますけれども、これは国際協調の進んだ現代においてはあり得ないんだという説があり、一方においては、そうではない、アメリカ世界最大の債務国になっているから可能性があるんだという説、両方ございますけれども、先生のこの点についてのお考えをお聞かせください。
  57. 竹内宏

    参考人竹内宏君) 私は決してあり得ない問題ではないというふうに思うわけでございます。確率でいきますと多分一〇%ぐらいはそんなことを常に考えておかなければならないと思うわけであります。特に二、三カ月前まではそんなような危機的な状態が一度発生したような感じがいたします。  先ほどちょっと触れましたけれどもアメリカ金利が上がっていった。つまりドルの不安が起きますから、日米金利差拡大しても日本から資金が流れなくなってしまった。その結果アメリカ金融市場が逼迫し、アメリカ金利が上がってしまった。アメリカが不況の中で金利が上がってくれば、先ほど触れましたように金融緩和か財政刺激しかない。そうなりますと、アメリカはインフレがさらに加速されてアメリカ投資が失われていく。そうなりますとアメリカ金利が下がらないというようなことで、どんどん悪い状態になっていく。そうなりますとアメリカのとる手段は保護貿易しかない。現在でもやっておりますけれども、厳しい輸入制限をとるだろう。そうなりますと他の国も報復的にとってくるかもしれない。というようなことになりますと、これが一九二九年のイギリスがやった姿であったというように思われます。  一方、日本は現在、一九二九年のアメリカの立場にございます。つまりアメリカはかつてイギリスに輸出してそして内需拡大しなくて輸出し続けたというようなことでございます。その結果、保護貿易が強くなり、保護貿易競争になり、世界の貿易は一挙に縮小していったというようなことでございますけれども、昨今になりますと、アメリカ金利も下がり出し、日本財政拡大するという発言もございましたし、それからドル高によって不均衡が是正されてきた。明るい展望がやや持たれてきましたけれども、御指摘のように、一九二九年のような大恐慌が決してないという状態ではない。  一方では、ラテンアメリカには膨大な累積債務が残っているというような状態でございます。つまり累卵の危機にあることは同じような状態でございますけれども、現在それが話し合いが行われたりしておりまして、国際協調で多分うまくいくだろうと思いますけれども、そのような危険性は決してないことはない。それから現在の風潮といいますか、我々の趣味とか遊び方とか、そういうものが一九二〇年代に極めてよく似ているというような点からも二九年説が言われるわけでございますけれども、決してなくはないというような感じがいたします。
  58. 抜山映子

    抜山映子君 今、日本の会社が、会社に限らず個人も含めてでございますけれども、外国で不動産を購入する、特にニューヨークのメーンストリートに面した大きなビルが次々と日本企業によって買い占められていくということについて、非常に現地で反感を買っているというようなことを伺いますけれども、もしこれについて数字的なものを把握していらっしゃいましたら、その数字と、これについてどうあるべきか、竹内先生のお考えをお聞かせいただきたいと思います。
  59. 竹内宏

    参考人竹内宏君) 現在、不動産に限らず、製造業でも金融業でも海外に対してオーバープレゼンスである。つまり、海外にとって甚だ目ざわりになるぐらい日本企業が進出してきた。こんなようなことで非難されているといいますか、これは不動産だけには限らないというような感じがいたします。現在、不動産の中には、円高のときに買っておいてヘッジしておくというような状態もあろうかと思います。現在このような海外に不動産投資が出てくるということは、オーバープレゼンスというのはいけないことだろうと思いますけれども海外生活水準を高めるために寄与するわけでございますから、工場が進出するのと同じような効果はあるというような感じがいたします。  ただ、非常に残念なことは、日本ウサギ小屋で、海外で豪華な住宅地を開発している。しかも非常に極端な言い古いたしますと、成田までウサギ小屋を眺めながら、海外に行って、日本から輸入した機械を使い、日本から持ってきた資金を使い、日本の経営ノーハウを使って膨大な豪華な住宅を建てられている、これが不動産業界の状態じゃないか、これが日本経済の姿であろうというような感じがいたすわけであります。  ですから、国内でもっともっと投資しやすいような環境をつくってやるということになりますと、多分こういうような投資はなくなるはずでございます。それから日本経済、現在のように財政が欠陥でございますから、財政から刺激できない。景気政策は専ら金融に負担がかかっている。金融に負担がかかりますと、どういたしましても過剰流動性が発生する。膨大な経常収支黒字がございますから、ここらにも通貨増発要因がある。世の中には、いわば極端に言えば、金があり余っているということになりますと、いい収益源を求めて海外投資されるということはやむを得ないことかなと、こんなふうに考えております。
  60. 抜山映子

    抜山映子君 同じ質問を坪井先生にお願いいたします。
  61. 坪井東

    参考人坪井東君) お答えいたします。  アメリカの大都市に対する日本の不動産投資が大変目立つということは御指摘のとおりであります。去年はたまたまアメリカの税制が変わりまして、固定資産の超過償却がなくなったり、キャピタルゲイン課税がなくなるというような税制改革が去年中に行われましたものですから、相当なビルがマーケットに出てきたことも事実であります。したがいまして、日本のインベスターがかなりのビルを買ったこともまた事実であります。その数字は非常に把握しづらいのでありますけれども、一九八六年に大体六十億ドルぐらいのものではなかったかというふうに想像されます。その前の年が十二、三億ドルでありましたから、若干目立った投資ではなかったかと思いますが、これは大体英国あたりが投資しているのと似たり寄ったり、英国は四十億ドルぐらいだと思いますが、似たり寄ったりのことでありますから、そう日本だけが突出しているというわけでもありませんけれども、先ほどのお話しのように急にラッシュがありまして、若干のオーバープレゼンスがあったのかもしれません。  ただ、問題は、アメリカのビルというものは、日本と違いまして、全部これはマーケットに出てくる筋合いのものであります。普通日本ではビルを売ったり買ったりすることは余りやらないんですけれどもアメリカではたくさんのビルがマーケットに出てまいります。御承知のように、バンク・オブ・アメリカとかパンナムは自分の本社ビルも売っておるわけでありますし、今度私どもが買いましたエクソンビルもやっぱりそんなようなことです。そういう不動産の流通市場というものが非常に大きくて、しょっちゅう動いているというようなことでもありますし、それからもう一つ、日本側の事情から見ますと、日本の例えば東京土地が非常に高くなりましてビル事業が成り立たないということもありまして、アメリカに目が向いていることも事実であります。  ただ、そのためにアメリカに非常に不愉快な感じを与えているということは、私が知っている限りではないわけでありますが、たまたま去年、かなりの高値で取引した事例があったわけであります。高値が若干アメリカの市場をディスターフしたというような非難があったことは事実でありますが、非常に限られた事例でございまして、恐らく今後はそういう問題が出てこないのではないか。ちょっとなれない新しい参入がありましたものですからそういう事態が起こったことは事実でありますが、アメリカ全体の膨大なマーケットの中では、我々の進出というものはまだまだ微々たる段階でありまして、そう社会的に問題になっている問題とは私は思っておりません。
  62. 抜山映子

    抜山映子君 ありがとうございました。
  63. 平野清

    平野清君 坪井参考人に二点、竹内参考人に三点ほどお伺いしたいんです。  坪井参考人は先ほど、住宅減税を大いにやれというようなことを御主張になりました。私たちの党も早くから住宅減税を主張しておるわけですけれども、ある年収の限度額を決めて住宅ローンの金利ぐらいただにしてしまうぐらいの思い切った具体策を練れという主張をしているんですが、参考人の言われる住宅減税の具体策はどういうお考えかということ。  それからもう少し高層化したらどうだということを言われておりますけれども、私たちが街に出てみますと、マッチ箱を立てたようなビルがくっついておりまして、ビルとビルの間を人間が歩けないような五階建てのビルが建ち、そのかわり幅は極めて狭いというような高層化が目立つわけです。そういうときに、隣の地権者同士で、何らかの法制的優遇措置を加えればもうちょっと効率的なビルが建つんじゃないかというふうに考えますが、いかがでしょうかということです。  竹内参考人にお伺いしたいのは、先ほど同僚委員が先に御質問されましたのですが、一九二九年から三〇年にかけての日本の恐慌というものは例の金解禁だったと思うんですけれども、あれと同じような形の世界恐慌が一〇%ぐらい起こり得るとお考えになっているのか、全然違った形の世界恐慌があり得るとお考えになっていらっしゃるのか。  それから先ほど物価が非常に高いというお話がありました。物価が安ければ内需もそれだけ拡大するわけですし、国民も物を買うと思います。輸入をふやせと言われましたけれども、入ってくる輸入品が日本物価とすぐ並行してしまうわけですね。同じコカコーラ、東京なり日本でつくったものが市場に出るときにはやはり高いコカコーラになってしまう。こういう点の物価のおかしさというか、不思議さというものをどうやって解決したらいいかというような点。  それからもう一つは、地方分散のことがありましたけれども、私たち若いころ横浜とか神戸にみんな本社を持っていた貿易会社、商事会社がほとんど全部東京に本社を移しております。地方工場だけ残したので地方には固定資産税きり入らない。営業の法人税その他は全部東京が取ってしまう。そういう点、工場を持つ地方自治体と東京都との法人税、事業税の配分をもっと考えたら、地方に活力が幾らかでも起きるんではないかというふうに考えますが、いかがでしょうか。
  64. 坪井東

    参考人坪井東君) まず、住宅減税についての御質問でございますけれども日本で行われております住宅減税は規模が大変小さいということは先ほども申し上げました。今行われておりますのは、ローン減税、ローンの税額控除ということです。ローン利子の税額控除でありますが、普通の借金については一%、公的借入金については〇・五%を所得から税額減税するということでございます。アメリカではローンの利子そのものを全額所得から減税するということで、かなり大きな金額の減税が行われました。  それからもう一つ、日本の特色は、かなりいろんな制限がございまして、建物の規模とか収入とか限度ですね、年間幾らまでという非常に低い限度がありまして、限度制約がかなり厳しいものですから大型の減税になり得ない。どっちか言えば金持ちには減税はしない、自分で金を持って住宅を建てる者については減税措置をしないというようなことでありますが、アメリカでは、この住宅減税というのは投資減税みたいに考えておるわけでありまして、借金をする場合、ロックフェラーが借金をしても、それは引いてくれるというようなことであります。  それから外国にもかなり投資減税的な要素を持っているところがありますんですが、ローン減税にいたしましても、ローン減税の減税規模がかなり大きいんですね。日本のは、先ほど申し上げました普通が一%、それから住宅金融公庫のローンが〇・五%ですけれども、欧米では、殊にイギリスでありますか、イギリスは三〇%、フランスは二五%、これは五年間ですか、そういうふうにかなり大幅な税額減税をしておるわけであります。  いずれにしましても、減税の規模が日本では余りに少な過ぎるということが問題ではないかというふうに思います。それからローン減税よりもむしろ投資減税であってほしいというのが私どもの主張であります。  それからもう一つの答えは、高層化によって鉛筆ビルがたくさんできるじゃないかという御指摘ですが、確かにそのとおりでありまして、これは余り好ましいことではございません。最近はそういう鉛筆ビルに対するオフィス需要がかなり減ってまいりまして、ちゃんとしたビルでなきゃだめだというようなことになりまして、できるだけ小さなビルが合同しまして、ある程度の規模を持った形でやるということが好ましいということであります。したがいまして、合同してビルを建てた場合は適当なインセンティブを与える、余り鉛筆ビルばかりつくらないようにする行政が必要ではないかというふうに思っております。
  65. 竹内宏

    参考人竹内宏君) 第一点でございますけれども、多分一九二九年代と見ておりますのは世界経済インバランスでございますし、成長力格差でございます。今度多分仮に大混乱が起きたといたしますと、日本にとってみますと、アメリカへのとか、海外への輸出が一挙に減る、極めて急速に減るというような形ではなかろうかと思われます。金融とか外貨の管理とかいろいろな面につきましては、当時よりもはるかに知恵が進んでいるというようなことでございますけれども、ただ日本経済全体だけで防げる問題じゃございません。つまり、世界経済に、日本輸出の減退はかなりの打撃を与える可能性があるということであります。もっとも、その可能性があるといいましても、一〇%とか、そんな低い水準でございますけれども、そんなことをいつも頭に置いておいた方がいいんではなかろうかというような考え方をさしていただいております。  それから第二番目には、輸入品がなかなか下がらないということで、これは御指摘のとおりでございます。これは流通網とか、いろいろなところに適正な競争が行われていないというような感じがいたすわけであります。ここにも非常に細かい規制がございますので、なかなかうまいぐあいに物価が下がらない。つまり、ここには過剰の利益が蓄積されているというような感じがいたします。  ただ、それにしましても、つまらない話でございますけれども、だから現在三・二%の失業率が発生してもここに何となくおさまってしまうというような非効率なところがあって、超過利潤がありますと、言ってみれば失業のプールになっているというようなメリットもあるわけでございますけれども、そんなような要因が一つでございます。  それから第二番目にはやっぱり我々の買い方もいけないわけでございまして、ブランドは、かなり高いと好まれますし、余り安くなると買わないものです。特に贈答品なんというのは税制の関係でいろいろ活発でございますけれども、贈答品になりますと、どうしても値段が高くないと贈答品にならないというのは、我々の中にも責任があるんじゃなかろうかという感じがいたします。  第三点は、私考えたことがなかったものですからよく存じませんけれども、ただ工場地方に移転させたり地方分散させますにはやっぱり地方で何らかの減税措置がないとうまくいかないのかな、現在の経済力を総合的に見ますと、やはり何か地方独自の減税対策が必要がなと、こんなふうに存じているわけでございます。
  66. 長田裕二

    会長長田裕二君) 以上で両参考人に対する質疑は終わりました。  竹内参考人坪井参考人には、お忙しい中を御出席いただきましてまことにありがとうございました。非常に有意義なお話を承りました。ただいまお述べいただきました御意見等は今後の調査参考にさせていただきます。両参考人に対しまして調査会を代表して厚くお礼申し上げます。本当にありがとうございました。  午前の調査はこの程度にとどめ、午後一時三十分まで休憩いたします。    午後零時三十四分休憩      —————・—————    午後一時三十四分開会
  67. 長田裕二

    会長長田裕二君) ただいまから国民生活に関する調査会を再開いたします。  休憩前に引き続き、国民生活に関する調査を議題とし、内需拡大について参考人から意見を聴取いたします。  まず、埼玉大学教育学部教授暉峻淑子君、社団法人日本経済研究センター会長金森久雄君及び総合研究開発機構理事長下河辺淳君から意見を聴取いたします。  下河辺参考人は後ほど参る予定でございます。  この際、参考人方々に一言ごあいさつを申し上げます。  本日は、御多用中のところ、本調査会に御出席をいただきましてありがとうございました。本日は、内需拡大について忌憚のない御意見を拝聴し、今後の調査参考にいたしたいと存じます。議事の進め方といたしましては、まず最初にお一人三十分程度意見をお述べいただき、その後委員の質疑に対しお答えいただく方法で進めてまいりたいと存じます。よろしくお願いいたします。  それでは、暉峻参考人にお願いいたします。
  68. 暉峻淑子

    参考人暉峻淑子君) 御紹介いただきました暉峻でございます。  きょうはお招きいただきましてありがとうございました。ただ、お役に立てる話ができるかどうか、大変危ぶんでおります。と申しますのは、国民生活に関する調査会の議事録を全部読ませていただき、それから報告書、「国際化に伴う国民生活の対応」、これもあわせて読みましたけれども、メンバーの方、大変熱心に勉強していらっしゃって、問題点はおおよそ出尽くしているという感じがいたします。  ただ、読みました感想を率直に言わせていただきますと、指摘された問題点について、あるいは提言について、一体政府がそれをどれだけ本当にやるかという問題、どれだけこの調査会に実行させるパワーがあるかという、この点が大変心配でございます。  それからもう一つ、議事録の内容から感じたことを言いますと、恐らくこの会だけでなくて、多くの政治家の方の中には無意識的にそういう潜在意識がおありになると思うのですが、貿易収支のアンバランスをどういうふうに数字的に縮めたらいいか、あるいは国際的な非難をどうかわすかという、そういう内需拡大の視点にどうしても立ちがちであると。それは意図的にはそうしておられないと思うんですけれども、潜在的にそういう気分を大変強くお持ちだということを感じました。そのために、マクロ的な技術的な数字のつじつま合わせ、それから最も恐るべきなのは、何か即効性のあることをやろうという、何かせつな的な即効性を求めておられる点があるのではないか。大変恐縮な表現ですけれども、この際内需拡大のかけ声のどさくさ紛れに何か後世に悔いを残すようなことをやってでも数字のつじつまを合わせようと、そういうことがあるのではないかとちょっと危惧されます。  それから、後で述べますけれども、なぜそれを危惧するかといいますと、建設白書でも言っておりますように、例えば都市環境を現在のままにして、ただ建築規制だけを緩めるというようなことが行われますと、国民生活の質ということが大変国際的に言われているんですが、その生活の質から見れば、それは逆に低下することになるわけです。内需拡大されるかもしれないけれども国民生活の質は低下するという、そういうことがあることを恐れます。それから、例えば大型設備投資ということを非常にやりますと、これは、ある時間が過ぎれば再び輸出に拍車がかかって貿易収支は再び大きな黒字を生み出すという、そういうこともあるかもしれません。  ですから、私はここで申し上げたいのは、内需というのはあくまでも国民生活の質、言いかえれば生活水準を高めるという、そういうところについてのみ、それのみに内需拡大を図っていただきたいということです。当然のことですが、私は一般の主婦の方、その他学生とか大勢の方と話をする機会が大変多いのですけれども国民はその内需拡大の数字合わせのために生きているわけではないんですね。国民生活の基盤を整えたその結果として、初めて永続的、恒常的な内需拡大が可能になると思いますので、ここが本末転倒にならないようにということを大変心配しております。  私は、この調査会にまず望みたいのは、なぜ日本が先進国の中でとりわけ内需拡大に失敗した国になったのか、政府の政策のこれまでのどこに誤りがあったのか、そのことを党派を離れてまず真剣に議論していただければ、その議論の中からおのずから新しい方針というのが出てくるのではないかというふうに考えております。そのことはまた参議院のこういう調査会でなければできないことで、党派の利害関係が生のままぶつかるところでは多分できないことであろうと思います。  六月十一日の第二号会議録の中で長田会長さんが、内需喚起の問題は、日本輸出超過からスタートしたことは認めるけれども日本国民生活を変えていくという意味もあるので、新しい社会をつくっていくための発想を展開してほしいということを述べておられます。これは本当にそのとおりだと思って拝読しました。  そこで、私はマクロの立場からではなくて、毎日の生活を生きている国民生活の立場に立って、本当の意味内需、つまり国民生活の質を高める内需とは何かということについて二、三私見をきょう述べさせていただきたいと思います。  世界では一体どういうふうに今の日本状態を見ているかということなんですけれども、私はたまたま昨年三度目のドイツに行って、ほぼ一年いたんですが、ここにありますのはフランクフルター・ルンドシャウという、これはドイツの大学生や知識人が好んで読む新聞で、大学の前の売店には必ずある。この新聞が金持ち日本、貧乏日本という一ページ全体の特集を組んでいるわけですが、ヨーロッパのいろいろな国の新聞がこの記事を買いまして、スイスとかその他の国々で一斉に発売されました。  この中の見出しを見ますと、日本はその富を国民に分けていない、そのことが我々が日本がまだ近北国家ではないというふうに考える大きな理由である、そういう見出しが書いてあります。それから次の見出しには、ヨーロッパの人々は非常に福祉的に富んだ生活をしている、しかし経済から見れば余りぱっとしないように見えるかもしれない、日本反対だ、経済は華々しく繁栄しているけれども人間は貧乏であるとはっきり書いてあります。これは大変ヨーロッパの日本観を代表しているわけであります。  この中に書いてあることを本当に要点だけ読みますと、  日本は明治以来、大企業の所有する富と、国民生活との断絶が大きな国であり、それが数々の破綻を生み出してきたが、第二次世界大戦後も、企業活動と国民生活の質とは、並行せず、戦前にくらべてその両者はほんの僅かしか近づかなかった。高い地価住宅、教育費、不十分な社会保障と生活不安。そのために国民貯蓄や財テクに熱心にならなければならず、大都市は家族の住むところではなく、仲買人に追い立てられ、賃金の購買力は低く、日曜日以外の全労働の投入に対して、実際の口に入る所得は少ない。中小企業の労働者、パートの主婦、失業者、日本で生まれた韓国人、交通遺児達は、経済大国のイリュージョンとはかけ離れたくらしをしている。日本がその富を投資だけに使う限り、人間としての生活の満足感も安定も将来の繁栄もえられないだろう。それを日本シンドロームとよぶという言葉で終わっております。  同じようなことが、この五月のターゲス・ツァイトゥンクという、これは大変左寄りの新聞なんですけれども、これにも同じように出ていまして、日本が利子を非常に低くする、それから円高の問題、そういうもので挟み打ちになってしまって板挟みの苦悩に追い込まれているというふうに書いてあります。そしてその中に、これは日本が贖罪、罪滅ぼしをなすべく享受した結果であるということが書いてあるんですね。  そのほか、シュピーゲルなども繰り返して日本のこういう状態を、非難するとかやっかむということではないと思うんですね、ニュースのいろいろなものを聞いておりますと、むしろ日本はこれでいいのかと。どこの国でも、経済の繁栄だけを突っ走れば表向きはいいように思うんだけれども、それではだめだという歴史的な教訓の結果、福祉を大事にし、それから社会資本を十分に整えて、生活の基盤を整え、その結果緩やかだけれども恒常的でどん詰まりにいくことのない内需拡大をやっているのに、日本だけがそんなに即効的なうまい手があるわけではない。だから日本も正統的な方法で繁栄の道を歩くべきだ、そういう言い方をしているのは大変特赦的であると思います。  例えば、日本の商品は安くてすぐれていると言うけれども、商品のその背後にある日本人の長労働時間、ウサギ小屋、通勤の殺人的な満員電車、下請企業の非常に過酷な条件、低水準の福祉や社会保障、そういうものはすぐれたテレビや自動車の後ろに隠れてしまって、商品はそれを写し出していない。商品だけ見ていたのではそれがわからない。それはアフリカから輸出されるものがその背後に悲惨な人種差別があることを写し出さないのと同じだという、こういう論調がテレビなどでも言われておりました。  それで、日本のマスコミでは安保ただ乗り論とか、関税障壁を除く、そういうことだけが割合に出るようですけれども、これはアメリカでも良識的な、オピニオンリーダーと言われるような非常に良識を持って社会から信用されている人たちは、そういうことよりも日本の社会にあるアンバランス、今申し上げたようなことですが。これを大変心配して、そういうことで日本の繁栄が長続きするわけはない、そしてもし日本が福祉カット、いわゆるソシアルダンピングというもので競争をするとなると、その競争に打ちかっためにはほかの国も同じようにしなければならなくなるので、これは大変恐ろしいことだ、そういうふうに言っております。  例えば、日本の満員電車というのはそういう人たちには驚くべきことで、確かにあれだけぎゅうぎゅう詰めにして満員電車で通勤すれば、輸送機関の効率から言えば最高の効率を上げてGNPの数字は大きくなるでしょうと。だけれども乗っている乗客から見れば、これは一時間電車に乗っていることはその疲労エネルギーの代謝率からいうと一時間の肉体労働と同じであって、つまり労働者、サラリーマンが消耗するということとの引きかえにGNPが大きくなっていっているのではないか、そういうふうに言っております。  特に新宿駅なんかで、乗った乗客を扉が締まらないので無理やりにはぎ取って引きずりおろすというような状況を見た人たちは、経済繁栄の日本の中でどうしてこういう交通がいつまでも放置されているのかというふうに言っているわけでございます。  それから、日本住宅について、前の国際化に対応する云々というその中にも数字が挙がっておりましたけれども、あれはちょっと片手落ちの数字でありまして、総務庁の住宅統計などを見ますと、あれは新設の住宅についての面積が挙がっていたわけですが、例えば台所と便所を共同使用にしているアパート、この床面積は全国平均でほぼ十六・二平米しかありません。東京だと十三・四、大阪は十二・五平米でございます。  それから台所、便所つきのアパート、貸し部屋になりますと、これは大きくなりまして、全国で四十一・四、東京で三十一・一、大阪三十八・二ですけれども、一方では消防署から危険住宅というふうに指定をされていて人間は住んではいけないと言われている住宅がまだ百九十二万戸ありまして、その中にそのまま人間が住んでいるわけでございます。公営、公団の住宅になりますとほぼ四十四、五平米はあると思いますが、そこに入ることのできない人たちはまだそういう悲惨な状況にあるわけです。それから東京、大阪の住宅の二分の一は大体四十あるいは五十平米以下の床面積にあります。それから借家が大変条件が悪うございまして、借家の床面積の全国平均は二十四または二十五平米です。  敷地面積が百平米以下、三十坪以下の一戸建てハウスは東京では四四・七、大阪で四八・一という数字が出ております。それから、敷地面積五十平米以下というのも八%、ほぼ二百万戸ぐらいがあるわけです。  外国人が驚きますのは食寝不分離ですね、食事をする部屋と寝る部屋がいまだに同じで、そういう借家が全国にまだ三七%あるという、借家ですが、東京では五三%ぐらいあるということで、最低居住水準に満たない世帯ですね、四人家族で五十平米というのは最低居住水準なんですが、これがまだ一割ございます。これらのことは早急に解決していただきたいことだと思うんです。  これは私が特に好んでそういう数字を挙げているわけではありませんで、例えばコロラド大学のケネス・ボールディングは、一九八二年に来たときに、日本人は量的な豊かさの追求のかわりに生活の質の向上を目指すべきだということを日本経済新聞で述べております。マサチューセッツ工科大学のポール・サミュエルソンは、輸出主導型の成長路線はやめなさい、もっと日本国内の社会資本充実や住宅需要に目を向けなさい、とりわけ日本住宅はひど過ぎると、これも言っております。またシンガポールの首相のリー・クアンユーは、日本国民はその富と地位に値する生活水準と質を持つべきであると、これは八六年十月十六日に言っております。それから、ECレポートのウサギ小屋論は有名ですから省略しますが、ウサギ小屋論のその後にこういうことが書いてある。このような国との競争に立ち向かっていくことは容易ではないとちゃんと書いてあるんですね。  その他、六十五歳以上の老人の有病率が三八・三あるのに受療率の方はその半分しかない。他の年代ですと有病率に対して受療率が八、九割あるんですが、この点なども、せっかく働いてきて戦後の復興をなし遂げてきた人たちに対して大変気の毒だと思います。  それから、言われていることなので飛ばしますが、労働時間が非常に長い。一九六〇年から現在まで生産性は二倍に伸びているわけですが、労働時間は四十分ぐらいしか縮まっていないんですね。有給休暇も日本は百十一日、一年の中で、土、日入れてありますが、西ドイツなどは百四十五日ですね。労働時間もアメリカ、イギリスは日本よりも二百ないし二百五十時間短いですし、西ドイツは年間千五百時間で、短いわけです。  労働時間の問題、日本は有給休暇があってもとらないということが有名なわけですね。夏の年次休暇でもみんなが半分ぐらいしかとらない。それはとらないことをもってよしとする空気があって、いつまでも遅くまで残って残業していると上役によく思われるとか、有給休暇をとらない人が勤勉であると思われる、こういう風潮がいまだに非常に強いわけです。  それで、ドイツでは、もう日本の昭和三十年代の後半になったときに、なぜ労働時間を短くしなければいけないかという哲学が、これはミュンスター大学教授のヨゼフ・ピーパーという人の、「文化の基礎としての余暇」という非常にいい本があります。これはアメリカにも随分翻訳されて世界じゅうに読まれている本ですが、その中に書いてあることは、人間は労働をするということは権利でもあり義務でもある。自分の創造的な能力を外側に発揮して労働をしていく。これによって人間も成長する、社会にも役に立つ、そういう面もあると。それは人間の半分であって、あと半分は自分に立ち返って、専門的な労働のために、専門性はすぐれているかもしれないけれども人間全体としてはバランス上ゆがみが生じるという人間を、もっとバランスのとれた人間にするために、働く時間が一日の三分の一あれば残りの三分の二は自分の時間として持つべきである。その時間は長いほどよい。  それはなぜかというと、人間は自分が外側に向かって働きかけたことを、自分自身の自分のための時間を持つことによって、どのように一体人間は生きていくべきなのか、社会は一体どういうふうに行くのが最大多数の最大幸福になるのか、どうやって平和を守れるかという、人間にとってかけがえのない大事な問題を自分の時間を持つことによってじっくりと考えることができる。それはヒューマニズムの復活の時間だというふうに言っております。  あるいはそれは宗教家にとっては、神の前に立って自分と神と向かい合って人間の進むべき道というものをはっきり考えたり反省したりする時間である。そういう自分の時間なしに社会が間違いない方向に進んでいくということはあり得ないということをはっきり言っているわけです。ですから余暇という言葉は日本語の悪い言葉でして、ドイツでは自由時間あるいはフライハイトと言うんですね。自分の時間というふうに、人間としての時間というふうに言っております。  私は、日本の場合、労働時間の短縮ということは言われているけれども、なぜ短縮しなければいけないのかという根源的な哲学というものがなくて、それでただ外国に比べて長いからとか、そういうことを言われているのは、大変残念だと思うんですね。やっぱり人間は、人間として人々と国際的にも共存し、間違いのない道を歩いていくためには本当に余暇が必要だと思います。  で、例えば私と同じ商売でいいますと、大学の夏休みは三カ月ありますし、それから小学校から高校まで子供たちは午後一時で学校は終わります。それからその他いろいろ、四年を働けば一年は休暇がもらえるとか、それから小学校の先生も無給でよければ自分の在職中に十年まで休暇がとれて、その間南アメリカに行ったり、インドに行ったり一生懸命研究をしたりという体験を重ねて授業をしておりますので、私は授業をずっと幼稚園から高校まで暇があれば見学したわけなんですが、それはそれは実に豊富な体験に基づいたいい授業が行われていました。日本のように先生があんなふうに忙しくしていたのでは、しかもドイツの場合、小学校の学級は既に二十人学級になっていますから、多くても二十二人とまりですので、本当に個性を大事にしたいい教育が行われていると思いました。  実は、この間の日曜日でしたか、マダム・モレシャンが日本のことを、彼女は日本がとても好きなんですが、日本は考えさせる余裕を与えない社会であるというふうに朝日で書いています。   深みのあるテーマは、重い、暗い、ダサイと排除され、軽いテーマだけが情報社会の大半を占める。こうした文化の中で育った若者たちは、人間への尊敬などの気持ちを失ってしまう。  世界で最も「軽チャー」の国となりつつある日本は、情報社会の巨大化がもたらす弊害を最初に受けた国なのだろうか。やがて、世界に広がる伝染病ならば、これはエイズよりも恐ろしい。  人間としての尊厳を踏みにじるような社会は、まさに人間が人間を侮っているとしか言いようがない。というふうに書いています。これは本当に人間の生活、人間の時間をとても大事にした、人間の主体性のある国で暮らすと、本当にこのことはよくわかります。  それで、ではこういう今幾つか特徴を挙げたような事態にどうして日本がなったのかということになるんですけれども、私は内需を抑制する構造というのは今に始まったことではなくて、特に最近で言えば、これは私の立場から申し上げるわけですけれども、行政改革路線というのは非常に誤りであったと思うんですね。というのは、行革で一番割を食ったのは国民生活であり福祉でありまして、決して一様に何かきちんとした緊縮が行われて効果が上がったわけではない。そして国民生活基盤をそういうふうに社会保障などで侵していった、崩していったことで国民は国を信頼しなくなったと思うんですね。  例えば大変悪いですけれども、関東軍がそこにいる住民を真っ先に見捨てて逃げていったというように、日本の国というのは何かあれば国民生活が真っ先に割を食う、犠牲にされまして、政治家は最後まで国民生活を一番大事なこととして考えている国ではないのだと、そういうふうに思っているものですから、貯蓄でもどうしてもしなきゃならないということになるわけです。  その大きなものは例えば例を挙げると老人保健法、あれは大変老人に残虐な法律であったと思います。五十七年から六十二年までに、こういう数字はお気に召さないと思いますが、防衛費の伸び率は三六%であるのに、同時期、社会保障費の伸びは一一・一%、文教・科学費の伸びは八・五%ですね。中小企業対策費はマイナス二一%です。  それで、もう御承知のことと思いましたけれども、きょう配りました資料の一ページ目に五十五年からの、総務庁の家計調査を抜粋して、あと私が下の欄は指数を出しておきました。これを見ますと、世帯主収入は一〇〇から一二七・二に上がっているんですけれども、教育費は一五一・九、非消費支出は何と一六六・三。非消費支出というのは社会保障と税金です。それから土地家屋返済金一七〇・七。可処分所得はそういうわけで一二四・二にしかなっておりませんで、このa、実収入から非消費支出と土地家屋の返済金だけを引いてみますと、その実質指数は五十五年から六十一年までに一〇六・一という非常に低い伸びになっているのです。  この数字はマクロの数字から見ますと、GNP比で租税負担は一九七〇年代の終わりまでは二〇%をずっと維持していたわけです。ところが、一九八〇年から八六年の間に二二・二%から今や二五・一%まで上がっておりまして、これをもし二〇%で維持すれば、多分七兆円ぐらいの減税をしなければならないようになるのではないかと思います。今、ローンの返済世帯は、国の統計では返済している人もしていない人もの総平均が出ますので、ここでは二万円ほどになっていますが、ローン返済をしている家庭だけを平均しますと、一カ月六万五千三百四十六円という家計調査年報での平均になっていますから、相当これは苦しいわけですね。  時間が来ましたので、後の質問のときにまたいろいろ申し上げたいと思うんですけれども、家を持つために今最大の焦点となっているのは地価でありまして、地価がこんなになってしまったというところに私は日本経済政策の誤りの全部の凝縮した縮図があらわれていると思います。  これも三十年代、労働時間を短くするというときに、ドイツではグルンドゲセッツ・デス・シュテットバウエス、連邦建築法という法律を定めました。これなどをお読みくださると大変いい参考になるかと思いますが、この中では商品の需要供給の法則は土地には当てはまらないということが真っ先に述べてありまして、土地に租税を課すこと、課し方、それから開発利益を全部国が吸収するということですね。それから地価の刻々とした報告をすること。それからその中に「日光、空気及び緑は、今日との住宅にとっても必要不可欠であることは自明のことである。」という文章もうたわれ、不良住宅地域は国の責任できちんと建てかえなければならないということとか、それから公共の福祉のためには用途制限を強くする必要があるということが言われておりまして、私は規制緩和というのは逆に地価を上げることには力があると思いますが、下げることには力がないと思います。  それを書きましたのが三枚目の縦の半ぺらに、これは私がドイツのマーケットで買いました食品の価格がずっと挙げてあります。この食品の価格は、念のためにドイツの役所の物価統計とも照らし合わせてみて大体正確なんですが、これを見ると半分以下。それからベルリンの土地価格がずっと書いてありますが、市の中心商店街でも一平米大体二十万、最高住宅地で八万、それから地下鉄二十分で都心に行くところで四万三千円、都心まで三十分ぐらいで三万七千円という、ちょっとそれを後でごらんください。そういういい意味地価を維持し得ているわけです。  それからあと公的機関の先買い権を確立することとか、既にこれからそういう問題が出てくるぞというときにこういうことが行われていますので、私は日本の政治家がなぜ日本の場合そういういい手を打って内需拡大についてこんなに苦しまなくてもいいようにしていただけなかったのかと大変残念に思っております。  では、以上で私の話を終わります。
  69. 長田裕二

    会長長田裕二君) 有意義なお話をありがとうございました。  次に、金森参考人にお願いいたします。
  70. 金森久雄

    参考人(金森久雄君) 日本済研究センターの金森でございます。  きょうここで意見を述べる機会を与えていただきまして光栄であります。  私のお話ししようと思いますポイントはここに七点書いてございまして、あわせて表がついておりますが、時間かございませんので粗筋だけをテーマに従いまして申し上げます。  さきに六兆円の緊急経済対策ということが行われたわけでありますが、私はこれは非常に妥当な政策だったというように思います。これまで内需不足でいろいろな問題が発生したわけでありますけれども、この政策によりまして私は今後かなり順調に景気は回復をしていくのではないだろうかというように考えております。恐らく今年度の政府経済成長の目標三・五%というものは実現できるのではないかと思うんですね。しかし、そうなりましても、やはり黒字と失業というのは残ります。最近になりまして、ようやく円高の効果が出てまいりまして黒字は減ったと申しましても、依然として七十億ドルぐらいの黒字があるわけですね。ですから、年にいたしますと八百四十億ドル、膨大なやはり黒字が残るわけであります。  それから失業率は三%、これはどういうことかといいますと、これだけ成長しましても、なお日本では供給能力に比べまして相当需要が不足をしているということを意味しているわけでありまして、これは私は、ずっと長い間日本需要抑制政策を続けてきました結果として起きてきているのではないかと思うのですね。現在の日本GNPが三百三十兆ぐらいございますけれども、なお私は適正な水準から比べますと一〇%ないし二〇%レベルが低過ぎるのではないか、こういうように考えております。もう一〇%なり二〇%高まりますと失業も減ってまいりますし、黒字も妥当な線に下がってくるのではないかと思うわけであります。したがって、私はこの六兆円の経済対策というのは妥当とは思いますけれども、やはり緊急対策ではないと思うんです。やっぱり長期的な対策として需要拡大するという観点から物を考えていただきたいというように考えるわけであります。  第二番目に内需拡大政策の目標ということでありますけれども、これは通常、国内経済力を活用して国民生活を上げるという目標と、それから国際収支の黒字不均衡を解消するという二つの目標が挙げられておりますけれども、これは幸いに日本の場合には矛盾しないわけですわ。これは需要拡大することによりまして両方が同時に実現できるということでありまして、これは国によりましてはこうした目標が矛盾して動きがとれないということがあるわけでありますが、日本の場合には矛盾しないということであります。したがって大変恵まれているわけでありまして、これをどちらが目標であるかというようなことを余り議論するということはそれほど意味がないと思うわけでありまして、積極的な内需拡大政策によりましてこの両方が同時に達成できます。しかし現在の日本世界における地位ということを考えてまいりますと、やはり国際的な観点というものもかなり重視をすべきであるというように思うわけであります。  最近、私非常に心配しておりますのは、日本の国際収支不均衡問題というのは責任はアメリカにあるんだ、悪いのはアメリカ日本にはその責任はないという説がかなりあるわけでありますけれども、やはり決してそういうことではないというように思います。アメリカはこの需要を抑制すべきではありますが、日本需要拡大する。両面から協力して臨みませんと、世界経済全体に大きな問題を引き起こすのではないかと思うんですね。  それからいま一つは、内需拡大しても国際収支黒字は余り減らないよということから内需拡大反対する説もありますが、これも誤りであるというように思います。内需拡大すれば必ず輸入は増大をいたします。そして、現在のような為替レートの上昇ということがこれに加わっておりますから、輸入性向というのは非常に上がるわけですね。普通のこの議論というのは、輸入平均性向は変わらないということでもって考えておりますけれども、そうでなくて、現在のような場合には輸入性向が非常に上がっております。最近で見ましても消費財等は四〇%、五〇%、自動車などは八〇%ぐらい前年度よりもふえているわけですね。したがって、内需拡大によりましてかなりこの国際収支黒字不均衡ということも縮小するということであります。  ただ規模といたしましては、この消化能力とか財源とかいろいろな現実的な問題がございますから、まず私は六兆円ぐらいが妥当ではないか。私は経済成長率としましても五%ぐらいをその目標にすべきではないかと思います。現在政府のいろいろな考えでは大体四%ということになっておりますが、経済企画庁等で二十一世紀を考えまして四%成長ということを言いましたのは、現在の石油問題がこんなに緩和しない石油危機のさなかにおきましてそういう目標を立てていたわけであります。それからまた、技術革新も現在のように急激な技術革新が起きるということを予想しない段階におきましてそういう成長目標を立てていたわけでありまして、いま少し高い目標を描いて積極的な政策をいたしませんと、この失業問題も国際収支の黒字問題も私は解決をしないのではないだろうかというように思うわけであります。  そして、財政均衡主義の問題点ということが出ておりますけれども、これにおきまして従来、一般会計だけを目標にして財政の均衡ということを議論していたわけでありますけれども、これは余り意味のないことではないかと思うわけですね。国の全体の部門のバランスということを考えるべきではないかというように思うわけであります。  そうしますと、その場合に一番の問題は、民間が貯蓄超過のような経済では財政バランスさせるということと国際収支の黒字の不均衡を直すということは大体論理的に両立しないんですね。財政の方を圧縮すれば国際収支の黒字拡大をしてしまいます。事実、大平内閣以来この財政再建ということを中心にしましてずっとこれを実行してきたわけでありますが、それに伴いまして国際収支の黒字はどんどん拡大をしてきた。これは別に大蔵省が放漫な支出を認めたということでも何でもないわけでありまして、均衡財政の方は予想どおり、政策どおりに実行された。しかし、その反面として国際収支の黒字というものの拡大が出てきたわけでありまして、こういうような考え方を基本的に改めませんとこの問題は解決をしないのではないかというように思います。  御参考にお配りいたしました数字の方に制度部門別の貯蓄投資というのが出ておりまして、これは時間がありませんので説明は省略いたしますけれども日本では家計部門で非常に大きな貯蓄超過が出ているわけですね。そういうような貯蓄超過にもかかわらず、財政部門の方が赤字をずっと縮小をしております。したがって、その差額というものが海外部門、すなわち国際収支部門におきまして非常に大きな黒字が出てきているわけでありまして、現在の矛盾というのはそこのところについての基本的な考え方に私は誤りがあったのではないかというように思うわけであります。したがって、その国際収支のバランス黒字不均衡を是正する、あるいは財政バランスをとるということも従来の考え方を改めまして、やはり成長によりまして自然に民間の投資、消費を活発化をする、また自然増収がふえてくるというようなことで、成長を通じましてこの両目的を同時に達成するということが必要ではないだろうかというように考えるわけであります。  第四番目に、それじゃこの需要をつけるときに投資によるのか、公共投資をふやすのか減税かということでありますが、現在の緊急対策では一兆円の減税と五兆円の公共投資拡大ということが組み合わさっているようでありますけれども、私もこれは、投資と減税とはそれぞれその長短がございますので、やはり両方組み合わせるということが妥当ではないかというように思います。  一方で、もっと消費をふやすべきであるという意見もございますけれども、やはり日本におきまして非常に不足しておりますのは社会資本でありますから、この時点におきまして投資の方を拡大するということも妥当でありまして、どちらかということでなしに、この組み合わせということが望ましいように考えるわけであります。  それから、消費につきましては現在、全体の日本経済の発展に比べまして大変おくれておりますが、これは単に減税によりまして消費をふやすということでなしに、円高の利益を還元するということがどうしても必要ではないかというように思います。これは方々の方が言われておると思いますけれども日本の為替レートも、今の貿易財につきまして実際に決定しております為替レートは一ドルが百五十円でございますけれども、我々の生活に関連しては一ドルが二百四十円ぐらいの価値しかないというようなことが言われておりまして、両方が非常に乖離している。両方が非常に乖離しているというのは、一方で円高になりましても消費財の方は少しも下がってこないということであります。  それが下がらないということの理由に、やはり自由化が非常におくれているということがございますし、それから政府の関連している物価が下がってないですね。ですから、これは思い切ってそうした統制を外しまして物価を下げる、これによりまして消費がふえる。これは財政に負担をかけずに消費をふやすという非常に重要な道ではないかというように思うわけであります。  それから第五番目に、投資の内容ということでありますけれども、私は短期と長期の両面が必要ではないかというように思うわけでありまして、短期的には現在政府で計画しておりますたくさんの公共事業の五年計画、七年計画、十年計画というものがございますけれども、これがいずれも未達成に終わっているわけであります。こういうような計画は、やはり促進して実行するということが私は実際に早い効果を上げるというためには望ましいように思うわけであります。しかし、短期的には既存計画の繰り上げということが必要だとは思いますけれども、現在長期的に大きな経済の変化が出ているわけでありますので、そうした長期的な観点に立ちました大型なプロジェクト、地方公共投資住宅投資等を実現をするということが必要ではないかと思うわけですね。それから、やはり民間の設備投資をもっと活発にするということが重要であるというように思うわけでございます。  そういうような観点に立ちますと、やはりこれを実行するためには、確かにお金だけ出したのではだめだと、土地問題というところに必ずぶつかってくるわけでありまして、現在の国土をもっといかに利用するかということに力を入れなげればいけない。これは後で下河辺参考人のお話しになる内容のようでありますので私が特に申し上げることはないかもしれませんけれども、現在非常に日本経済は大きな変化に直面をしておりまして、その問題が解決しませんとなかなかお金を出しただけでうまく内需拡大するというわけにいかないと思うわけであります。  どういうところが変わるかといえば、第一番目には東京が国際都市、世界都市として非常に膨張しつつあるということであります。それから第二番目に情報とか通信とか交通の発達ということがございます。三番目に産業構造が変わっておりまして、農業とか石炭とか、いわゆる重厚長大産業が急激に縮小してくる、サービス業が発展してくる、こういうような変化があるわけでありますので、やはりこうした変化に適応したような需要拡大政策というものが長期的には必要であるというように思うわけでありまして、初めに申しましたように、現在日本は非常に大きな需給ギャップがありまして、供給力を拡大することができる非常に世界にもまれなチャンスでありますので、そうした長期的な観点に立ちましてぜひ日本の国力を活用していただきたいというように思うわけであります。  そのためには、一方では東京の発展を図るということと同時に、情報化というのは同時に分散化効果を私は持っていると思うんです。現在は情報化に伴いましてますます東京に集中という結果が出ておりますが、これは非常におかしいことでありまして、本来情報化は確かにそういう集中を促進いたしますけれども、分散効果を持っているわけでありますので、そうした情報化の分散効果を生かすということが大事ではないかと思うわけであります。  そのためには、やはり私はインフラストラクチャーをもっと強化をするということは重要であるというように考えております。ずっと公共投資を抑制してきたということが地方への産業の展開、地方需要拡大というものを妨げているというように思うわけであります。それから、そうした公共事業の経営の方法というものをもっと改善すべきではないかと思うわけであります。また通信とか交通とか流通とか、そういう規制緩和というものも必要であります。こういうようなことによりまして、かなり新しい需要が起きてくるのではないかと思うわけです。  そうして、こういうときに当然問題になりますのが土地問題でありますけれども土地は税制とか取引を監視するとかいろいろなことがございますが、私は基本的には供給をふやすということがなければ解決はしないのではないかというように思うわけでありまして、やはり東京土地の造成ということは大変重要な仕事ではないかというように思うわけでございます。それから東京がこれだけ地価が高いのに有効に利用されない、いわゆるドーナツ化現象というものが出ておりまして、夜はゴーストタウンのごとくになるところがたくさんあるわけでありまして、土地が非常にむだに利用されておるということがございます。  それから、都市の機能分散ということが大事ではないかと思うわけでありまして、戦後四十年、どうも都市の機能分散ということはごく表面的に言われますけれども、本気でまじめに考えたことはないように思うわけで、これは大変私は不思議なことだと思うわけでありまして、この問題を解決しませんと公共投資をふやしましても地価の上昇ということによりまして十分な需要喚起というものはできないのではないかというように思います。  それから最後に、財源でありますけれども、すぐやっぱり税金を取らなければいけないということが言われるわけで、支出をふやすためには税金をふやさなければいけないということが言われるわけでありますけれども、私はそうではなしに、まだむだな支出を省く余地というのは大変あると思います。私は行革というのは非常に高くその効果を評価しておりますけれども、事補助金に関しましてはほとんど減ってないということでありまして、いたずらに早く増税方策というのを講じますと、むだな支出を省くという努力の方は実行できなくなってしまうわけでありますので、私は増税というものはできるだけ先に延ばして、行革の精神を貫いて、むだな支出を除いて財源をつくるということを基本に考えていただきたいように思うわけであります。  それから国債でありますが、国債というのを非常に悪いものというように考える見方がございますけれども、私はこれは疑問であるというように思うわけであります。国債というのは、別に日本銀行がお札を印刷してこれを買っているわけではございません。日本貯蓄がありまして、この貯蓄国債は買われるわけであります。現在は日本貯蓄というものはアメリカ国債を買っている。日本国債は買わぬでアメリカ国債を買いまして、確かにアメリカ生活はそれでよくなっております。しかし、これを買っている間にドルが減価をしましてどんどん実質価値は下がる、これは私はやはりおかしいのではないか。  もっと日本貯蓄というのは日本国債でもって吸収をしまして、そして内需拡大、インフラストラクチャーの増加ということに活用するというのが妥当ではないかというように考えるわけであります。税金の方が国債、借金よりも健全だという考え方がございますけれども、やはり税金になりますとかえってむだ遣いということが起こります。国債は、これは必ず返済の圧力というものがかかりますから、おのずから合理的に使われるという力が働くわけでありまして、いたずらに国債を私は罪悪視するのは誤りではないかというように思うわけであります。  それから、幸い現在はNTTから出ました余裕の財源もございますし、それから民間資金を利用するという道もあるわけでありまして、積極的な内需拡大政策を実行するための財源というものは十分にあるというように考えております。しかし、初めに申しましたように、今の内需拡大政策というのは緊急対策と考えてはならない。やはり長期的に日本経済が持っております潜在能力を生かし、これを国民生活の向上に向ける、世界経済の発展のために向けるという考え方になりますから、財源の方もやはり恒久的なものを主とすべきであるというように考えるわけでありますが、そうした恒久的な財源というのはやはり成長の中から生まれてくると考えるべきではないかというように思うわけで、従来のように抑制型の経済政策というものは基本的に私は賛成しない。ようやくここのところで転換をしたわけでございますけれども、長期的な観点で実行していただきたいというように考えるわけでございます。  以上で意見を終わります。
  71. 長田裕二

    会長長田裕二君) まことに有意義なお話をありがとうございました。  この際、下河辺参考人に一言ごあいさつを申し上げます。  本日は、御多用のところ、本調査会に御出席をいただきましてありがとうございました。本日は、内需拡大について忌憚のない御意見を拝聴し、今後の調査参考にいたしたいと存じます。  議事の進め方といたしましては、まず最初に三十分程度意見をお述べいただき、その後、委員の質疑にお答えをいただきたいと存じます。  それでは、下河辺参考人、お願いいたします。
  72. 下河辺淳

    参考人(下河辺淳君) 御紹介いただきました下河辺でございますが、きょうは皆様方の調査会にお招きを受けて発言の機会を得ましたことを光栄に存じます。  ただ内需拡大については、調査会の皆様方の御発言の速記録も読ませていただきましたし、きょうは朝から四人の参考人意見も聴取されていらっしゃるようでありまして、問題はほとんど出尽くしているのではないかという気がいたしましたので、私としましては内需拡大に対する全体についてお話をもう一度するということを避けることにいたしまして、私が考えております幾つかの特殊な視点についてだけ発言させていただきたいと思います。  四つのことについてそれぞれ特異なポイントだけお話ししたいと思いますが、四つのポイントは社会資本、地域問題、産業構造問題、国土政策という四つの問題について、感じていることを申し上げたいと思います。  まず最初に社会資本でありますが、日本は国際的に比較して社会資本の整備がまだ未熟な段階にあるということはもうさんざん言われているところであります。しかし、一つ私たちが今大きな問題として思っておりますのは、戦後四十年間、ちょっと歴史的に見ても各国比較してもかなり大型の社会資本投資をしてまいりました。その結果、今私たちが非常に大きな問題にしておりますのは、戦後四十年に投資した数百兆円の社会資本の更新期が来るという問題でありまして、大型の社会資本がほとんど同時的に更新期を迎えるということに対応しなければならないということが一つ指摘されなければならないと思っております。  アメリカは、大型の社会資本を投資して更新期が来たときに、更新的な投資をちょっと手抜きをしたためにアメリカの社会資本というものは経済活動とのバランスとしてはかなり水準の低いものになっているということが大きな問題となってきています。日本の場合にはその更新というものをサボってはならないというのが一つの観点であります。  それからもう一つの観点は、どうも私たち社会資本に関係しておりました人間からいいますと、短期の目まぐるしく変わる経済政策に社会資本整備というものが協力することはやぶさかではありませんけれども、短期の朝令暮改と思われるような変動に社会資本整備が追いついていくことは容易ならざることでありまして、少し計画的、長期的に社会資本の整備をしたいという気持ちがいつでもあるということをぜひ申し上げておきたいというふうに思います。景気対策あるいは円高対策あるいは失業対策というふうに目まぐるしく注文をいただいて前倒し議論というのをいたしますが、実務としてはこれを消化するのは容易なことではありませんで、もう少し事前的に社会資本の安定した整備ができないかということを思っています。  それからさらには、明治以来官と民の役割が、官については社会資本、民については民間資本となっておりますが、このあたりで何が官で何が民であるかということは再調整の必要があるんじゃないかということを思っているということだけ申し上げたいと思います。  それからさらには、社会資本を大都市と地方とでどういう分配をするかということは必ずしもコンセンサスがありませんで、一般論としては地方優先ということを言われ、生活優先ということを言っているわけですけれども、果たして大都市と地方においてどういう選択があり得るかということも大きな課題であるというふうに思っておるわけでありまして、内需拡大としての社会資本論としてそのような視点があるということだけ申し上げたいと思います。  二番目は地域問題でありますが、この地域問題のところで私が申し上げたいのは、日本のすべての地域が活性化するということが内需拡大にとって最も基本的な問題であるというふうに思っております。これは東京もたくさんの地域で構成されておるわけで、全国大都市から地方都市、農村、漁村を通じて、過疎地域も通じてたくさんの地域がそれぞれに活性化するということを内需拡大として考えてみる必要があるというふうに思っています。  この地域の活性化というのは、場合によっては経済成長のことだけを意味していないというふうに思っています。やはりそこにいる住民が生き生きとしているということが基本的なテーマであるというふうに思っておりまして。人間が生き生きとするためには経済水準というものが保障されているということは基本的なテーマですけれども、それだけではない、何かもっと生きていくことに必要な充実した何物かを求めているわけでありまして、そういうことを含めた地域の活性化ということが重要である。そのために経済ということだけではなくて、文化とか歴史とか、自然とか伝統とか健康とかいうような面に、どれほど立ち入った活性化ができるかということが大きな仕事になると思っています。  ここでは、もちろん社会資本というものもお手伝いしなきゃなりませんが、最近よく行われております数々の催し物、イベントあるいは文化活動、スポーツの大会というようなものが、全部これらの一つの方法としてそれぞれの地域で選択が行われるということが重要であり、かつその地域の主体性というものが何らかの形で確立されて、その主体性がプログラムを組み、住民とともに実施していくというような構造が必要であります。今、日本の地域というものは、地域によって円高不況その他非常に難しい諸問題を抱えておりまして、ややもすると将来に対する絶望的な見通しから非常に住民が消極化していく傾向にあるわけでありまして、何とか将来に夢を持って住民全体が何か燃えることができるような何物かを必要としている。それを地域の活性化としてぜひ何かをすべきであるということを申し上げてみたいと思いました。  それから、産業構造の問題といたしまして一つ大きな問題は、今まで高度成長期に実は地域の所得格差が縮まってきておりました。この縮まってきていた内容を見ておりますと、経済活動、生産力ということを通じて地域の格差が縮まったという要素は、格差が縮まった要素の半分ぐらいの役割ではないかと思っています。計画によればもっと格差が縮小したはずなんですけれども、なかなか思うに任せないままに今日に至っていますが、生産力の拡大によって格差はわずか縮小したと言っていいと思います。  しかし、最も縮小に効果があったものは財政その他のトランスファーといいますか、所得移転でありまして、あるいは保障費というようなものでありまして、間接的なもので直接的な生産力の拡大によるものではないという状況であって、北海道や九州などは財政依存率が極めて高いという地域になったわけでありますけれども、しばらく財政の緊縮政策をとりました関係で格差が再び拡大するということにならざるを得ないという状況にあります。しかも、それらの地域の場合には石炭、造船、鉄、第一次産業というようなことで、将来に対してどうもはっきりした見通しを持ち得ないということが折り重なってきております。そこで観光ということになりましたけれども、これだけの円高になりますと、東京の若者は日本の遠いところの観光とハワイその他の観光とどちらがよいかということになれば、若干貯金を重ねて海外に出る方がいいという意見が圧倒的に増加しつつあるという現状であって、地域の経済が非常に困った状況にあるということは皆さん御承知のとおりであります、  そこで私が問題にしておりますのは、どうも産業構造というと重厚長大から軽薄短小へという文学的な発言が割にコンセンサスを得ている状況でありまして、それを超えてサービス、ソフト産業へ、知識的なものへということになりますが、果たして一億の国民がそういう産業構造のもとでどう対応できるのかということは、非常に労働力としては摩擦現象を起こす原因でもあるわけでありますし、かつ重厚長大というものが全くないという日本を考えているのかというと、そうでもない。  華やかに軽薄短小を言ったときは、よもや日本の重化学工業の大企業がそんなに弱い企業であったとはだれも思っていなかったという時代に、重厚長大よりも軽薄短小というようなことを言ったのではないかということで、今日のように重厚長大産業というものが全く混乱状態に陥っているときに軽薄短小だけで生きていけるというふうには思いづらいということを知り始めたと思いますが、重厚長大産業であるとか、あみいは第一次産業というものの将来への見通しというものを明確にすることが、実は地域の活性化なり、あるいは産業構造の調整にとって一番重要なことではないだろうかというふうに思っているわけでありまして、もし産業構造を根本的に変更して、そして国際分業ということへ進むとすれば、かなり明確な方向を持った上で、それの調整への投資というものは決して小さいものではないのではないかということを申し上げてみたいと思いました。  最後に、国土政策でありますが、これは私が長い間担当していたということもあって、少し話題をお話ししてみたいと思います。  国土政策で今新たに問題になってきているのは、やっぱり東京問題であるというふうに思っています。東京へ情報や金融というものが極度に集まり始まって、しかも首都として全国的な規模で集まってきたという時代を超えまして、世界金融や情報の機能が東京というものへ集中してきているという現実があります。どうも今まで私たちの地域開発の歴史から言いますと、この強大な市場原理に基づく巨大都市への集中というものに抵抗するということについては、少し我々は悲観的であります。かなりの行政的腕力を発揮したにしても、そう簡単にこの集中のバイタリティーを変更させるだけのことは、実は非常に難しいんではないかというふうに思っています。しかし、この集中というものがメリットとデメリットを持っていることは明らかでありまして、きょうはメリットの話はあえて申し上げないことにしようと思いますけれども、デメリットというものがかなり顕著に出てくることは問題にしておかなければなりません。  特に思いますことは、国際機能あるいは首都機能というものの極度の集中というものと、東京におきます社会資本との均衡が完全に崩れてくる、あるいはきているということだと思います。したがって、私たちの考え方としては、集中する機能は市場の合理性ということにだけ従うのではなくて、必要な社会資本というものを負担するということが当然ではないかという考え方が出てくるわけでありますが、この辺になりますと、賛否両論に分かれてなかなか安定した行政的結論を得ていないというのが現状ではなかろうかというふうに思っています。  その社会資本の中で、道路であるとか電気であるとか、あるいは下水道であるとか水道であるとかということがございますが、やはり一番大きく問題になっているのは住宅ではないだろうかというふうに思うわけでありまして、都心の機能の拡大というものが住宅供給とうまく結びついていないということは、都市の欠陥として大きな問題になるわけでありまして、いかにしてこれだけ集中する機能に対して住宅を供給できるかということが大きな問題であることは間違いがありません。しかし、そこはいろいろな方が御指摘になっているように、土地問題がありますから、そう明るい見通しを語ることはほとんど不可能に近いと思います。  きょう、もし大胆な意見を言わせていただけるとすれば、東京住宅問題を解決したい、あるいはしなければならないということには発言に人後に落ちるつもりはありませんけれども、実際にどうかということをもし聞かれたとすれば、そう簡単ではない、あるいはもっと言えば、少し不可能に近い課題であると言っていい状況になっていると思っています。  さらに、デメリットとして問題になっておりますのは大型地震でありまして、これだけの機能の集中が大型の地震の災害を受けたときにどういう機能の問題があるかということは、なかなか一つ大きな問題でありまして、今までどのくらいの方が亡くなり、どのくらいの方が傷害を受けるかということなんかについては、少し研究もしないではないんですけれども、しかし、機能が麻痺したときに世界経済にどういうデメリットがあるかというようなことになりますと、ほとんど五里霧中といいますか、明快な答えを得られないでいるというのが現状ではないかと思います。  私は、多少大げさに言うとすれば、今これだけ世界機能が東京に集まっていて、特に金融なんかが集まっていて、東京がかなりのダメージを受けたときには、かなり長期にわたって世界経済へもデメリットがあるんじゃないかというふうに思ったりしているわけであります。そういう状況でありますので、我々としては、東京問題に対してかなり思い切った対策を必要としているという認識に立って、遷都問題であるとか分都問題であるということにまで、ことしは、あるいはここ数年かけてかなり大型の研究をする必要があるのではないかというふうに思っています。  国会の皆さん方におかれても、国会というものが直下型地震で崩壊したときに、国会の機能をどうやって維持するかというようなことについては、ぜひお考えいただきたいところであります。大正十二年の大地震のときは、まだ国会機能よりも行政機能が専決的に強かった時代でありますので、地震がありましても、国会を開催しなければならない条件というのは、今日に比べるとずっと小さかったと思いますが、今日では、何せ重大なる意思決定を国会にゆだねておりますので、いかなる災害があろうとも、全国から代議士が集まって議会を開催しなければならないということになりますが、果たして地方から東京へ集まることさえできるかどうかというようなことを考えますと、その危機に対して国会機能をどうするかということも、行政の遷都、分都ということとあわせて極めて大きな問題であるというふうに思っておりまして、これは行政の方も国会の方も、あるいは民間企業の本社機能の方も、そういった災害に対するリダンダンシーについてかなり深い研究を必要としているということを申し上げたいと思います。  それから、これは少し違った話題とも受け取られるかもしれませんが、社会資本とのバランスの悪いことに伴う害に対しての対策ですが、土地代が高いというようなこともあって、この社会資本の不足を完全に回復することは驚異的な投資を必要とすることは御想像にかたくないと思うのです。  そのときに私たちは少し提案として休都というものを提案しています。これは休む都と書いて休都と言っておりますが、よく考えてみますと、東京の困った状態は夏にかなり集中しておりまして、自動車の交通上、光化学スモッグができるのも夏ですし、水がかれるのも夏ですし、電力のピークができるのも夏ですし、河川の汚濁がひどくなるのも夏ですし、夏型の公害といいますか、環境破壊が非常に集中しておりますので、私は、都民の皆さんに夏休みをぜひしてほしいということを言っておりまして、お盆のときだけ東京は実にきれいになることはもう経験済みでありまして、百万人から二百万人ぐらいが交代、交代に地方へ出てくださると、東京は余りお金もかけないで環境はそう悪くはならないというようなことがあって、労働休暇ということが、週二日制ということがありますが、私、自分のことを考えて、きちんきちんと毎週二日休むということよりも、夏一カ月休めたら快適であるという気持ちもしておりまして、休都論というのはお暇な折に一考していただくぐらいの意味はあるのじゃないかということも思っています。  そこで、次の問題は、東京問題がこういうことになってきておりますと、経済の原理といたしましては東京の周辺三百キロの範囲が著しく経済的立地条件の優位性を持ち始めています。しかも、新幹線、高速道路、通信ネットワークというようなものは東京を中心として三百キロ圏にわたって整備を優先いたしましたので、日本列島全体から言うと三百キロ圏内が大規模な社会資本の優位性を持っています。  したがって、ハイテク型の工場であったり、あるいは研究所であったり、大学であったり、いろいろなすぐれた機能が海外からさえも三百キロ圏内に集中してくるという傾向にありまして、この三百キロ圏というものをどうするかということが大きな話題になりつつあるというふうに思っています。ここでは、かなり民活型の仕事も多くなってくるのではないかというふうに思っておりますし、東京住宅問題考えました際に、東京での貧弱な住宅よりも、三百キロ圏内の自然地域の中での新しい雇用とのつながった居住地というものに住宅政策上の魅力があるということも感じているところであります。しかし、先ほど地域の経済で申しましたように、三百キロ圏外の地域というものがむしろ国土政策としては政策上一番優先すべき困難な課題を持っているということは当然申し上げなければならないというふうに思っているわけであります。  最後に、国土政策の中で重要な土地問題について、少し発言させていただきたいと思います。  日本という国は、土地の所有というものが私有財産制であるということはもう憲法に保障されたものであります。しかし、特色があるのは小規模地主の国であるということでありまして、ヨーロッパ、アメリカ等、土地関係法令の比較研究をするときに一番私たちの頭の悩ましいことは、所有規模が日本の場合に余りにも小さい。ヨーロッパであってさえも中世紀的な大規模地主というものがまだかなり多いわけでありまして、都市的な近代的な小規模宅地所有者という形のものはまだ少数であるということが言えると思いますが、日本は国全体が小規模地主化しておりまして、地主が何人いるかという統計はないためによくわかりませんが、固定資産の支払いということから少し整理してみますと、恐らく二千五百万人ぐらいが地主ではないかと思っておりますが、一億二千万人で二千五百万人の地主がいるというようなことは有史以来なかったことであって、非常に特殊な私有財産制のもとにあるということを言わなければならないかもしれません。  さらに、この土地とか住宅の所有という角度からそれぞれの性格を分類するときに、私は四つに分類して議論することにしています。  それは、一つのグループはもう既にある水準で、ある水準といっても国際的に比較すれば小さいんですけれども日本なりにそれなりの土地住宅を持っているという人たちがまず第一のグループでありまして、この人たちはほかのグループに比べるとかなり優雅な生活が可能であると私は思います。  それから、第二のグループは、土地と建物をそれなりに、といっても小さく持っているグループという点では同じですけれども、極めて大型の借金をしょって購入した人たちというグループがあります。同じ持っていても大型の借金をしないで手に入れた人とは違って、大型借金で子供の代まで借金を返さなくてはいけないというほどの借金で、日常生活をきりきりに切り詰めているという人たちが第二グループであります。  第三グループは、持っていない人たちというグループになるんですけれども、持っていない人たちが二つのグループに分かれてきている。その一つのグループは、現在持っていないけれども、やがて土地、建物を手に入れることが予約されているというグループでありまして、資産者が死ぬのを待っているというグループでありまして、この方々がかなり多いわけであります。したがって、公務員宿舎にいて、役所をやめたらというような感じになるという、相続との問題があります。  それから、第四のグループは、現在持っていないけれども、将来もだれもくれる人がいない。政府もとても自分たちのためにある水準の家を供給してくるれることはちょっと望み薄だというふうに考えているような第四のグループというのがいます。この第四のグループが非常に過激な意見になることは当たり前のことでありますが、残念ながら極めて少数派ではないかと私は思っております。  その四つに分類したときに、実は土地問題が本音のところでは極めて異質なものになっているということが重要でありまして、建前で話しますとこの四人がみんな同じ意見になって、たちどころにコンセンサスが得られるのですけれども、本質的にはその四グループによって問題が全然異質のものであるということも忘れることができないのではないかというふうに思っております。  ちょうど列島改造ブームで土地が騰貴しましたときに、自民党、社会党、公明党、民社党という四党で国土利用計画法というものを議員立法したときにお手伝いをしました経験から言いますと、あのときにもそういった議論が裏側にありまして、それはそれなりに相当思い切った案を議員立法としてつくっていただいたのですが、その法律を一〇〇%運用することさえできないような状況でありますのは、やはり本音の四グループの考え方のコンセンサスが得られないためだろうというふうに思っておりまして、計画上の法制がないからというふうには私は思っておりませんで、国土利用計画法を十分活用すれば大丈夫というふうにも思っております。  ただ、土地問題は著しく金融制度の問題であると思っておりますので、金融制度の方の協力なしては十分な効果が上がらないということは確かですけれども、国土政策とかあるいは土地利用政策上の制度というものは日本の場合、そう不備なものではないというふうに思っています、ちなみに、世界じゅうで土地の私有財産制をとっている国で国土利用計画法というような強い法律を持っている国はない。つまり、政府が私有財産の処分に対して価格にまで介入したということは、私有財産制を疑わしめるほどの大制度でおりまして、世界各国の法律学者たちからどうしてこういうことが成立したかと問われているぐらいであるということを申し上げてみたいと思います。  しかし、現実はばかばかしいほどの高値であり、それによる混乱というものは御承知のとおりでありますから、この土地についてはかなり思い切った措置を講ずる必要があるということは当然であると思います。  以上で発言を終わらしていただきます。
  73. 長田裕二

    会長長田裕二君) 有意義なお話をまことにありがとうございました。  以上で参考人からの意見聴取は終わりました。  これより参考人に対する質疑を行います。  質疑のある方は会長の許可を得て順次御発言を願います。
  74. 山本正和

    山本正和君 大変私どももこの問題に取り組んでまいりまして、いろんな方からお話を伺ったり、あるいは自分たちで勉強したりしておりますが、きょうの今の三人の先生方のお話、大変またいろんな意味で、何といいましょうか、私どもの考え方の中の違った部分を指摘していただいたような気がいたします。  そこで、お聞きしてみたいと思いますのは、内需拡大ということが国民生活の質を高めるということについて考えようと、これは本調査会の一致した意見でありますから、そういう立場に立っていろいろ議論しているわけでありますけれども、三人の先生方があるいはお触れになる時間がなかったのかとも思うんですけれども、税制の仕組みの問題が国民生活に深くかかわってまいります。ですから、内需拡大ということ宣言いましても、この税金の問題がいやでも応でもかかわってくる。最後にお話しいただきました国土利用計画法の問題にいたしましても、やっぱり税制の問題が絡んでまいりますし、また金森先生、経済学の見方というか、経済学の使い方というふうな形で日経新聞にもずっと講義を載せていただきましたけれども、それを拝見しておりましても、やっぱり税金の問題がどうしても経済にかかわってくる。  ですから、私どもがいろんな問題を勉強していくときに、日本の国の財政運営が経済学の立場とどういうふうに切り結んでいくかという大変難しい問題が出てくるわけでありますけれども、その中で特に、我が国の戦後四十年間の税制がいろんな意味で、いわゆる先進国の間で我が国の経済の運営そのものに大変大きな影響を与えているんじゃないかということを思うわけでございます。特に、最初の暉峻先生のお話にしてもそうでありますけれども国民生活の中に生活の質を高めなくしている作用を持っている税制があるんじゃないか、こういうことを感じたりもいたしまして、きょうのお話を聞いておりまして、その部分にお触れいただけないかということを思ったのでございます。そういう意味で、三人の先生がそれぞれ常日ごろお考えいただいている、例えば、こういう税制というものについてはこれはやっぱり問題じゃないか、こういうふうな点につきまして御指摘をいただけたら大変ありがたい、こう思うのでございます。
  75. 長田裕二

    会長長田裕二君) どなたから最初にお答えいただけますか。  それでは、今ちょっと質問の中にもお名前が出てまいりました金森参考人から始めていただきたいと思います。
  76. 金森久雄

    参考人(金森久雄君) 税制でありますけれども、私はまず、税はさしあたっては高めるべきではないという考えであります。それはまず、現在では財源として非常にむだ遣いが行われる。もし税金でもって簡単に財源が得られる、そんなようなことになりますとむだ遣いを減らすということはできなくなってしまうわけであります。ですから、現時点ではできるだけ増税ということは行わないで頑張るということが大事だと思うわけであります。  そういうふうなことが進んだ後におきましては、私は現在のやはり日本のこの所得税中心というものはいろいろな弊害を生んでいると思います。所得税というものは理論的には公平のようでありますが、やっぱり結果的にはいろいろな不公平を生んでいるということでもって、これは間接税に移行する、間接税を取り入れるということは妥当であるというように思うわけでありますけれども、その前に、もう少しこの今のむだをやめるということが前提になると思うわけですね。それから利子の優遇制度というものも、これも私はやはり今は不公平になっているのではないかというように思うわけでありまして、こういうものをやめていくということが望ましいのではないだろうかというように考えております。
  77. 暉峻淑子

    参考人暉峻淑子君) 私はやはり暮らしの側から意見を申し上げたいと思うんですけれども、税が高いか安いか、安いと感じるかというのは、今おっしゃいましたように、結局税の使われ方にかかっていると思うんですね。西ドイツは公的負担比はもう大体日本と同じになっていると思いますけれども、スウェーデンなどは大変高いわけです。そういうところに暮らしている住民たちと、税は高いか、あなたたちは大変高いと思うかというふうに市民同士で話し合いますと、結局使われ方にかかっているんですね。それが生活に還元されるような使われ方をしていれば、税がある程度高くても税痛を感じていないわけです。  西ドイツに来てお産をした日本の女の人などが、ここで本当にもう四十万ぐらいの経費がかかるのに外国人の私たちにでも、いきなり来ても六万円ぐらいで全部やってくれて、それから外国人の子供であっても児童手当をすぐに日本の円で言いますと五万から六万ぐらいのものをくれる。こういう使われ方を見ているとやっぱり税というのはありがたいものだという感じに逆になるというんですね。  特派員などに聞いてみますと、社会保障を受けたい人は税を払いなさい、この国で社会保障を受けたくなければ払わなくてもいいというような選択があると、家族で来ていればどうしても払う方を選ぶ、それくらい安心感があるということを言います。ですから私は、今までは税の使われ方が余りにも国民生活に還元されてこなかった、少しはされていますけれども十分には、先進国並みには還元されていないところに私たちが税を嫌だというふうに思う気持ちの大きな理由があるのではないか、主婦としてはそう感じるわけです。  それから、税の負担が一九八〇年代からだんだんGNP比にもふえてきたということはさっき言いましたけれども、それだけ負担がふえているのに暮らしの中ではその上にまた医療費にしても受益者負担、保育料にしても受益者負担と、受益者負担が大変ふえているわけですね。これは、例えば老人ホームの受益者負担は、出発当時は全国で七十億円ぐらいだったと思うんですが、今やそれは経過措置であったということで、もう四百億ぐらいにふえているわけです。だから、税は払ったのに、またこの上に受益者負担で何とかというふうに何度も取られるということが市民としては大変納得がいかないということがあります。  それから間接税については、理論的にはともかくも、きょう差し上げました資料の一番最後の棒グラフを見てください。これは私が家計簿の設計も全部しまして一万七千世帯の間接税調査をした結果でございます。もとのものはここにございますけれども、これを見ますと歴然としておりますように、月収六十万以上の人に比べると月収二十万以下の人の負担率は倍になっているわけですね。逆進税であるということはこれでもわかるわけで、直接税の場合はいろいろ抜け道はあるんですがともかくも累進課税になっている。特に年金生活者のようにもう収入が望めないという人にとって、この間接税が一体どういう困った税であるかということは、この家計簿に対して、この税金についてあなたはどう思うかという意見までこれは全部聞いたんですが、老人たちの非常な不安ですね。それから、現在も大体下から三分の一ぐらいの階層までは所得税と物品税はほぼ同じぐらいの家計支出になっています。これも全部実態調査をしてみた結果なんです。  それで、なぜ私たちが貯金をやるかということと税金とは大変関係があると思うんですけれども日本人の貯金好きというのは、今平均では一九八六年で七百三十三万円の貯金がありますけれども、モードの最も高いところは百九十三万円にすぎないわけですね。今マル優のことが大変言われていますけれども、一般の国民にとってはマル優の九百万という枠ですか、その枠の中にほとんどの人の貯金がおさまってしまうわけなので、不正を働いているというのは人数としては非常に少ないと私は思うんです。  ですから、マル優の制度をやめにするということの場合に、これをやめるとみんなが得をするというふうな中曽根首相の言葉のように解釈もできるのですけれども、私はそうではなくて、やっぱりグリーンカードが国会を通りながらやめになってしまったというようなことの方がおかしいわけで、マル優の中におさまる本当に零細な貯金しか持っていないという人たちは保護してほしい。不正を働く人がいれば、これはグリーンカードなり、あるカード制で、マル優の適用を望む人だけそのカードを持てばいいわけだから、一億背番号にもなるわけではないので、そういうふうにしたらよいと思います。  それから、税制のことで私たち主婦の集まりでよく問題になるのは、新聞にしばしば出る十大商社、世界の貿易額のほぼ一割を持っている十大商社が、何でただでいられたり、ごくわずかしか税金を納めないのか。こういうことはまことに市民のモラルから考えても理解できないことであると思います。朝日新聞に「租税避難地の子会社 五年で六四%増」という記事が出ていまして、パナマとかリベリアとかにどんどん税金を逃れるためにタックスヘーブンを利用した日本の企業の節税対策が盛んだという記事も出ていましたが、こういうことがあちこちに出てくるので、間接税とか何とかということを言う前に、市民のモラルとしてやっぱり担税能力のあるところからもっとちゃんと税を取るということを事前にしてもらわないと、国民の感覚としてはその上にまた重税になるということは、やっぱり納得ができないことではないかと私は思っているわけです。  今度の内需拡大は、今おっしゃいましたように、税金の使い方という意味では画期的な転換を行ってくださるものと期待しておりまして、私たちが将来にもし増税になってもこれでよいと。税金というのは共同消費に使われるわけで、共通社会資本といいますか、そういうものですから、そういうものに使われれば決して税金というものは高くはつかないものだと思うのですね。かえって利得が得られるものだと思います。さっき下河辺さんもるる言われましたけれども、喜んで我々が税金が納められるような税の使い方。  大変失礼室言葉を使うと、国会での税の使われ方を見ますと、私はこの間、大蔵委員会で小倉武一さんと意見を述べたのですが、何か国会議員の私物化しているという感じさえ受けることがあるのですね。税制のことを言われるならば、やっぱり税の使われ方という問題を、国民生活に還元し、しかも内需拡大ができるようなそういうものにぜひ改めてというか、近づけてほしいというふうに思います。  以上です。
  78. 長田裕二

    会長長田裕二君) 下河辺参考人、おっしゃっていただくことありますか。
  79. 下河辺淳

    参考人(下河辺淳君) 税制につきましては、余り時間もない中で詳しくお話しすることができないと思いますけれども、金森さんがおっしゃったように、税制と国債とのバランスをどうとるかというところは基本的な国会としての意思決定の課題であると私は思っています。つまり、いろんな形があり得ると思っていまして、どういうバランスを選択するかということはやはり国の意思として決められなきゃならないというふうに思っています。  これは、もう少し言えば直接税と間接税のバランスについても大きな意思決定が要ると思っています。さらには所得税と資産税といいますか、相続税も含めた資産税とのバランスについても、やはり大きな意思決定が要ると思います。ですから、極めて専門的な言い方をすれば、そのバランスはいろんなシナリオがあり得る。そのシナリオ次第でいかにも被害者と加害者が出たような論争になりがちであるというふうに思っておりますが、しかしそのバランスの決定というものはかなり重要な政治の意思によるというふうに思っております。やはり国家というものは徴税権を行使するということはギブアップすることのできない問題でありまして、一人の国民として言えば、早く決めてほしいという気持ちが率直なところです。
  80. 山本正和

    山本正和君 ちょっと私の質問の仕方が悪かったかと思うんですが、今の税制の仕組みのために国民が仮にもっと楽しい生活を暮らそうと思っても暮らしにくいというふうな制度が幾つか仕組みとしてありはしないかと。あるいは、今の例えば建設国債ならばまあいいけれども赤字国債はいけないというふうな発想が出たりいたしますですね。ところが実際問題としては、国民の中には国債を買ってもいいと。例えば国債を二%で無利子、無記名というならば幾らでもお金出しましょうという気持ちがないではないんですね、国民の中には。  ところが、そういうところにほとんど着目せずに、いわゆるシャウプ税制以来、日本国民貯蓄というものを銀行なりあるいは民間の金融機関、投資機関等にいろいろ預けてしまって、国が国民貯蓄というものを本当に有効に国のために使うということについての施策がされてこなかったんじゃないかとちょっと私思っておったものですから、特に後のお二人の先生から、もう少し税金については大胆な発想をお持ちじゃないかということを思ったものですからちょっと御質問したわけでございます。
  81. 暉峻淑子

    参考人暉峻淑子君) ちょっと済みません、一つ補足させていただきますと、私は、そのお答えに合うかどうかわかりませんが、サラリーマンの必要経費を控除方式でなく認めるということをもう踏み切っていただいていいのではないかと思うんです。  といいますのは、その控除、基礎控除でやりたい人は基礎控除を選ぶということで構わないと思うんですが、それ以上に、例えば基礎控除以上に職業上の、例えば私たちですと本を買ったりいろいろなことをいたしますけれども、そういうものが必要であるというときは、それを必要経費として控除してほしいと思うんですね。ドイツなんかではこの必要経費の控除枠は非常に大きくて、そのことをある財政学者に質問しましたら、勤労者の、あるいは普通の人にとってもですけれども、自営業にとってもですが、そういう必要経費を控除するということは内需拡大になると言っていました。それは、必要経費として控除されると思えば欲しい物を我慢しないで買う、それで控除してもらえるということになりますと。  それは三年ほど前にドイツの、日本でいうと住宅公団的なところの総裁の人が税金を一円も納めなかった。だけれども、その勘定書を見てみると、確かに使っていて、法的には全く合法である。しかし、モラルの上でどうであろうかというような文章が出ていましたけれども、それでもわかるように、例えば私たちにとっても研究上のいろいろな必要性があれば相当広いものを認めているわけですね。私は、内需拡大のために必要経費を認めるということを踏み切っても今やいいのではないかというふうに感じるんですけれども
  82. 山本正和

    山本正和君 それで、実は金森先生にお伺いしたいんですが、四月段階で日経にお書きになっておられる中で、経済成長についてお触れになっておりまして、きょうのお話の中でも大体今三・五%は実現できるんじゃないかと、こういうふうなお話がございまして、しかし、できたら五%を目標としてというふうなお話もございました。  今、内需拡大ということで政府は緊急対策を行う、あるいは今度の補正予算を出すというようなことをしているんですけれども、こういうことにつきまして先生の現在の予測といいましょうかお考えは、大体今の形で進行した場合に何%ぐらいは可能かというふうな見込みでございましょうか。
  83. 金森久雄

    参考人(金森久雄君) 私は現在、四・二%の成長ということをかねがね言っておりますけれども、やはり為替レートが安定をいたしまして、去年は非常に為替レートは成長にマイナスに働きましたけれども、これからは私は円高というのはプラスに出るというように思います。円が高くなったために、物価が下がっております。それから先ほどの六兆円の公共投資、減税というものが加わりますために、私は意外にこの成長率は高くなる可能性があるというように思っているわけですね。  ただ、現時点ではまだ民間の設備投資が動き出すというところまでいっておりませんし、ことしの六兆円も全部今年中に消化し切るというわけにいかなくて、来年に延びるわけでありますから、今年は四%台、しかし長期的な考え方からいきますと、やっぱり五%程度成長ということが望ましいのではないだろうかというように思うわけで、そのために私は建設国債を発行しても差し支えがないのではないか。建設国債国民貯蓄政府が利用する道でありまして、それは東電でもあるいは新日鉄でも全部社債を発行して借金をしているわけでありますから、国だけが借金をするのはいかぬということは私はないんじゃないかと思うわけです。
  84. 山本正和

    山本正和君 それから、これは流通問題についてちょっと触れていただいている部分もあったわけでありますが、西ドイツへこの前、私ども行ってまいりましたんですが、西ドイツの中で、いわゆるマルクが高くなったときにそのまますぐ反映してガソリンがうんと安くなった、五割も下がった。ところが日本の場合、ガソリンが全然円高になっても同様に下がらないわけですね。そういうふうな問題についてやっぱり国民の中にいろんな、どうしてなんだろうという声があるわけですけれども、そういう流通問題について両先生から、特にこの辺に一番問題がありはしないかというようなことがございましたも、ちょっと御教示いただきたいというふうに思うんです。
  85. 金森久雄

    参考人(金森久雄君) 私は、やはり自由化ということが一番大事ではないかと思います。日本では供給者の方を中心にしていろいろ輸入も制限をしている、国内の取引にも制限がある、これがなくなればすぐ価格というものが下がるというものがたくさんございます。それに伴いまして確かに供給側にはいろんな困難というものが発生すると思うわけでありますけれども、むしろ消費者のニーズに合わせて供給の体制の方を合理化していくという考え方が大事で、供給側の安定を図るために物価が下がらないようにしていくということは、やはり消費者無視の行政ではないかとかねがね考えております。
  86. 下河辺淳

    参考人(下河辺淳君) 日本の場合、特に国際比較して食べ物がとっても高いというお話がよくありますね。私たちは、東京の真ん中で千円のコーヒーを飲んだときに、千円のコストはどういうふうになっているかというのはかなり興味のある話になっておりまして、原価計算上百円でも大丈夫という数字もありますから九百円高いということがありまして、百円のコーヒーが円高になった関係で数円安くなったというのがありますが、千円で数円安くなっても、数円安くする気にはならないでいるというのが中小のコーヒー屋さんの考え方じゃないかと思うんです。  その千円というのは何かというと、土地代に取られている分とかサービスに取られている分であって、必ずしもコーヒー屋さんが全部ポケットに入れてもうけちゃっているわけではないというところが非常に問題ではないかと思っています。土地代については相当疑問があるんですけれども、しかし、これは一般の小売商でも位置の優先性というのは市場価格に影響するという原則のところは曲げられないのだろうと思うんですが、異常であるかどうかというのは問題だと思うんです。  しかし、私がちょっとおもしろいと思うのは、雇用に非常に影響しているということが大きいと思っていまして、安くしてサービス産業の雇用を減らすのとどちらを選ぶかというと、私なんかは少し迷うんですね。ですから、単に国際比較の価格だけで言えるほど単純ではないと思っていますけれども
  87. 小野清子

    小野清子君 嘩峻参考人にお伺いしたいと思います、時間がありませんのでお一人になってしまいますけれども。  生活水準を高めることに、あるいは生活基盤を整えるものにぜひ内需拡大をしてほしいという、そういう先ほどのお話でございまして、そういう観点から考えていきますと、先ほど西ドイツのお話がいろいろとされたわけですけれども日本の場合でも以前から比べますと自由時間が多くなりましたり、あるいは子供の数が少なくなったり、そしてまた核家族、それから二十四時間体制や国際化の中でというぐあいに、主婦の生活、私はプログラムと勝手に申しておるんですけれども、そういうものが大分違ってきたような気がするんです。    〔会長退席、理事坂野重信君着席〕 そんな意味で、物に対する考え方とか生活に対する考え方というのが私どもが育った子供時代と今の主婦層とは全く違いのある二十四時間体制の中というものがこのごろ出てきたわけで、ある意味では大変過渡期で、歴史的に大きな変革の時期に来ているかと思うんです。ですから、そんな意味では、内需拡大は別にいたしましても、どのように二十四時間を生きていくかということもまず一つ主婦にとっては大変なことではないか、そんなことも考えております。  そこで、きょうのテーマであります内需拡大ということですが、例えば家庭の主婦が考える立場において、私なども海外に行って帰ってきますと、家の中がくず箱のように感ずるわけですね、物が多くて。価値のある物はないわけですけれども。片や諸外国の御家庭なりそういうものをお邪魔してみると、物が少ないのに驚くわけなんですね。いわゆる豊富な充実した生活というものと物との関係、何に充実、満足感を得るかということは、これから生きていく上での非常に大きな指針になるのではないかと思いますし、内需拡大というのは何かを買うということにつながるわけでありますから、そういった意味でいわゆる豊かさというものをどういうふうにこれから考えていくのか、これは大変大きな問題だと思うんです。政府の方も改築とか内装をよくするとか、具体的には物といってもそういうお金のかけ方もあるわけですし、本当に家の中に、今例えばテレビは複数化される時代ですが、西ドイツへ行きますとテレビのない家庭が多かったりする。しかし、満足感はどちらが多いかというと、なかなかこれは答えの難しいところだと思うんです。  ですから、物に満足感を得るのか、時間に満足感を得るのか、これは先ほどの労働時間の問題とも絡むわけですけれども、非常に大きく生活の価値観というものが変化している中において、例えば内需拡大を主婦の立場において考えた場合には、具体的にどんなお考えを持っていらっしゃるかお伺いしたいと思います。
  88. 暉峻淑子

    参考人暉峻淑子君) 小野先生はいろんなところで実は私といろいろ、何というんですか、一緒の仕事を本当は陰ながらしていることが多いのではないかと思っているんですけれども、やっぱり一番私が感じますのは、金持ちというのは金を持つことですね。金持ちということと豊かということはやっぱり違うと思うんです。金は持っているけれども時間は持ってない、美しい環境は持っていないということが大いにあるわけで、日本のその豊かさというのは金持ちとか物持ちの方に、その物も本当の物は持っていなくて、ちゃこちゃしたぼろみたいな物をたくさん持っているという、それを豊かさであると考えているところがやはり一番問題であると思います。  そして、どうしてそういうふうな主体性のない考え方をするようになったかということは、堂々めぐりになるんですが、やっぱり日本人に時間がないということ。だからよく考えることができない、深く考えることができない。それから環境が貧しいので非常にせつな的な要求でそれを満たそうとする。アメリカの、これは誤解を受けないように申し上げたいんですけれども、ある研究者の、憲法学者の言われていることに、アメリカの貧しい黒人層の消費構造と日本人の消費構造が非常に似ていると言うんですね。例えば自動車を一台も二台も持って、それでオートバイをばあっとぶっ飛ばしてみたり、いろんな物をごちゃごちゃ買いたい。  それで、外国で私たちは笑ったんですけれども日本人は外国でいろいろなカルチャーショックを受けて落ち込むことがある。その回復に何をするかというと、日本人の生活行動はすぐ買い物に行ってそれを満たすというんですね。ドイツ人とかフランス人とか、ほかの外国人は、人と人でよく話し合ってみるとか、音楽会に行くとか美術を見に行くとか、山登りをするとかという行動なんだけれども日本人は落ち込み回復にすぐお財布持って物を買いに行く。あれ日本人はどういうんだと言われて、全く自分を振り返ってもそういうところあるなと思ったんですけれど、全く御指摘のとおりだと思います。  それから今、ごみ学というのがあるんですが、これはごみ箱やごみ捨てのところをずっと調査して何が捨てられているかということを研究する立派な学問なんですけれども、ごみ学の人たちのつい最近の調査報告によりますと、ごみの中の容積で言う六割は包装物なんですね。    〔理事坂野重信君退席、会長着席〕 それから、その全体の中の四割というのは食べかけの食べ物とかまだ着られる衣服とか、つまり使えるのに捨ててあるものが四割である。それから一割は、お菓子の箱もあけないで新しいまま捨ててあるというのが一割あるんですね。そんなに物を浪費しているくせに私たちの周りには公園も、東京は一人当たり二平米です。ワシントンが四十五だと思います。それからベルリンは二十八です。ロンドンは三十五ぐらいでしょうか。だから、いっぱいごみ学の人が言うほどに捨てているくせに、子供たちが伸び伸びと遊んだり、主婦がゆっくり散歩をしたり人々と話し合うという、そういう場所はない、本当にないと思います。  私はドイツにいて、日本人ですから日本が大変好きなわけなんですけれども、一つ、とても懐かしいと思うのは、あの環境の美しさですね。例えばスポーツ施設も、月三千円払うとどんなスポーツ施設でも市民が使えます。ですからスポーツしなくても、シャワーに毎日かかりに行くだけでも三千円で安いというのでそういうところへ行く人もいるし、本当にお年寄りたちもそうですね。それから、私たちが山登りするというと何か列車に乗ってどこか行かなくてはいけないんですが、西ドイツの場合ですと、森が生活圏内になければ意味がないという思想で、例えば交通の貨物の操車場があくとなると日本はわっとそれには何億円とお金がつくんですけれど、そういうところに木を植えるという声がやっぱり一番強くて、そうなるんですね。  それで大学の行き帰りにも私は森を通って行っていましたし、その森の中に運動場があって、それから小学生の子供たちも十人ぐらいを単位にその森の中をずっと駆け抜けていって、リスがぱっと飛んでいったり、野性のスズランがあったりね。どこの都市に行っても毎日の日常生活の範囲の中にそういう緑、それから運動もできる、スケッチもできるというようなところがふんだんにあるわけです。ドイツでは社会資本をつくった期間はもう既に終わっていて、財政がそれに束縛されないで社会保障とかいろんなところにお金が行っているわけですね。  私はここで決して自説を押しつけるわけではないんですけれども、政治家の議論の中に、今小野先生も言われたわけですが、人間の人格構造はどうやってできていくのかという議論が余りにもない。同じ人間のやっていることなのに、経済や何かの人間の活動のある一部については物すごく言われるけれども、人間が赤ちゃんから大人になっていくときに持っている感覚というものの大きな意味というものが本当に議論されることが少ないと思うんです。赤ちゃんというのは生まれたときには言葉もなければ、持っているのは感覚だけなんですけれども、そこに大人が言葉を投げかける。ああいい子だとか、気持ちがいいとか、美しいとか、だめだとか、それに合わせて自分の感覚を言葉の中に整理していくわけなんですけれど、それ以外に、言葉にならないものは音楽になり、踊りになり、スポーツになり、絵になりという形で、言語に表現されないけれども人間の人格を支えている非常に重大なものというのは、もうたくさん体の中にあるわけなんです。  それを健全に育て上げることなくしてどうして健全な人間ができるかというのは、私はもう子供を育てている過程の中で本当に強く感じたことです。そこに、今おっしゃるようにテレビとかパソコンゲームのピピッピッというのを与えたり、ウサギ小屋の中にわんさといて、勉強をする、あるいは静かに物を考える、あるいは一人でこつこつと工作をしたりなんかしているという空間がない。町へ出ればごみ箱ひっくり返したみたいな、そういう街路の中を通って学校に通うとかね。そういうことがどれだけ人間の真っ当な、正常な判断力を損ねているかということを本当に政治家はまともに考えてもらいたいと私は思います。  だから、私が豊かと言っているのはそういう社会資本、それから変に人の足を引っ張らないで、自分の個性に合わせてゆっくり自己の成長や開発を図っていけるような、そういう教育のシステムとか社会保障制度とか、そういうものをあわせて本当に豊かな国になってもらいたいということを、もう強く思っております。
  89. 斎藤文夫

    斎藤文夫君 それでは金森先生と下河辺先生両方に御質問させていただきます。  最初に金森参考人にお尋ねいたしますが、先ほどの御説明で、今回の緊急経済対策で景気は三・五%、GNP、実現できるだろう、したがって回復も見通しが明るいというような御説明をいただきましたが、その後やはり黒字と失業は残ると、こういう御説明がございました。たまたまこれだけ大きな公共投資を突っ込んでいくわけでありますが、例えばごく最近ですと一部建築資材、鉄筋などは相当高騰であるし資材不足、あるいはまた型枠工に至ってはもう一日三万円の日当と、業界でもちょっと悲鳴を上げつつある。こんな状況も聞いておるところでございますけれども、一部にそういうインフレ的な懸念というものが出てくるのではなかろうかと、こんなような心配をしておりますけれども、いかがなものでございましょうか。  それと同時に、黒字の問題でございますけれども、今日の産業構造の改革というものを考えていきますと並み大抵のことでないというのはもう十二分に承知をしております。しかし、今の政策と、あるいはそれを受けて民間の対応というようなものを総合的に判断して果たしてこれから、例えば一年六十億、七十億ドル黒字が減りますという説明はわかるんですけれども、五年、十年、いやもう少したったら一体このままの、日本はいつまで貿易黒字が続くんだろうかと、こんな見通しというのはどういうふうにお考えになっておられるんでしょうか。  それと、円が一時一瞬でしたが百三十八円台、きょうあたりは百五十一円、こういう感じですね。これだけ十三円から、そしてまたさらに、どうボックス相場になるかわかりませんけれども、先ほどの参考人の方の御意見を聞きましても、あるいは一年ぐらいこんな格好が続くかもしれない。これはあくまでも見通しですからわかりませんけれども円高、円安、その日本内需拡大にもたらす影響というものはどう考えたらいいんだろうか。この点をまず金森参考人にお聞きをいたします。  それから下河辺参考人に一つお尋ねしたいのは、いろいろきょうは示唆に富むお話をそれぞれの先生からいただきましたが、産業構造の改革の中で重厚長大から軽薄短小、口で皆さんだれしも、我々もそうだそうだと言っておるんですけれども、実は私も非常にこの言葉に危惧を抱いておる一人でございまして、それだけに本当に大企業がいろいろな形の、例えば第一次産業あるいはそれが第二次産業に移る、第三次産業に新しい分野を求めて開拓をしていくわけでありましょうが、ある意味においては大企業はそれを消化することができる。ところが、日本のいわゆる特異な体質であるところの中小企業というものは、資本力から見ても人材から見ても、技術力から見ても、あるいは機械設備その他から見ても、そう簡単に右左くるっと変わるわけにいかぬ。この辺のところの中小企業の産業構造改革に伴う荒波というものをどういうふうに受けとめて考えていったらいいのか、これが一点。  それからもう一つ、実はきのう夜テレビで、ごらんになった委員方々もおられるかもしれませんが、偶然見ておりましたら丸の内かいわいの状況のテレビ放映があったんです。これが非常にこれまたおもしろいんでございまして、日本の、いや世界の都市のど真ん中、日本経済、いや世界経済を支えている源である丸の内で外国企業がどんどん進出してくる。ある会社の社長のスポークンによれば、もうあらゆる中心だと。ここの丸の内かいわいはいわゆるウォールストリートである、あるいはザ・シティーだと、こういう感じの中だからこそ、こういうところへ無理しても集中をしてくるんだと、こう言っていらっしゃる。  ところが、現在丸の内のオフィスの要求量というのは一万一千ヘクタールあると、ある人がこう答弁していました。ところが住んでいる住民票はたったの十二人、それを一軒一軒アナウンサーが、レポーターが訪ねたわけですけれども、あの大きな、巨大な世界の中心たる丸の内一丁目から三丁目の中でたったお二人しか住んでない、おばあちゃんお二人。こんなような、きのうテレビでまことにドラマチックな印象を受けたわけでありますけれども、いわゆる生活上では全くの無人都市になっている。しかしながら、世界のいわゆるありとあらゆる機能が集約された先端都市の中心が丸の内であると考えましたときに、一体これで本当に都市なんだろうかと。まさに都市の姿が完全に喪失された何か別の世界を見せられたような気がしたわけであります。これについて御所見をお聞かせいただきたいと思います。
  90. 金森久雄

    参考人(金森久雄君) まず、最近急に公共事業を拡大いたしましたので、御指摘のように形鋼その他、資材の一部が不足をしている、あるいは公共事業の、建設業の工事能力が間に合わないということがあるのは御指摘のとおりであると思います。これは、しかし昭和五十四年以来日本の公共事業はずっと減っているんですね。純減であります。したがって、建設の労働者の数も減っている、十分な設備もしてこないというところでありますので、ここで供給が間に合わないということがございます。しかし日本の状況からすれば、鉄鋼その他あるいは雇用者に問題があるということはないと思うんですね。したがって、やはり当初は公共事業の地域的な配分とかその他に考慮することは必要でありますけれども、余りインフレを恐れて公共事業を抑制するということは私は望ましくない。とめておいて急に出すという結果がもたらしている一時的な現象ではないかというように思うわけであります。  私は、やはり国の経済政策で雇用問題を最重視すべきじゃないかと思うんですね。戦後はやはり完全雇用というのが国の大政策でありましたけれども、ずっと戦後幸いにして失業問題というのはなかったものでありますから、だんだん忘れられてきた。そして財政再建というのが重視されたわけで、もちろん財政再建大事でありますけれども、やっぱりその前に完全な雇用というものが、完全に働ける人に、働きたい意欲のある人に働かせるというのが国の重要な任務ではないかというように思うわけでありまして、ぜひ五%成長というのを目指して積極的な政策をやっていただきたいと思うわけであります。  貿易が現在、経常収支黒字でありますが、九百億ドルを超す黒字になっておるわけですね。これが果たしていつまで続くか。非常に今世界に例がないような大きな黒字でありますけれども、この円高が進んだ場合にはいつまで続くか、これは今の各予想機関の間でもいろいろな見方がございます。一九九〇年代になると赤字になってしまうというような見通しを東海銀行が発表しておられますし、それから経済企画庁で最近出しました見通しては二〇〇〇年になりましてもGNPの二%ぐらいの黒字が残るというような予測になっておりまして、いろんな見方があるわけでございますけれども、私は変動相場制度であれば、これは赤字になれば円がまた弱くなる、黒字が大きくなれば円が高くなるというような形で、やはり為替というのはある程度貿易収支のバランスを調整する役割があるのではないか。  ですから、為替レートが適当に動きまして、かつ経済成長率が適正であれば、貿易黒字の問題というのはある調整力が働くのではないだろうかというように考えております。これは突如として赤字になるわけのものでもございませんので、ずっと見ていてその状況がおかしくなればまた調整をするということではないかというように思うわけですね。  そして円高、円安でございますけれども、これが急激に円が強くなる場合には産業は調整が間に合わない。それに応じてコストを下げたり生産品目を転換するわけにいきませんから非常に混乱が起きまして経済は低下をいたします。これが一昨年の九月から昨年の八月までに起きた状況なんですね。このときには輸出産業では三〇%ぐらいの利益の減少が発生をいたしました。しかし、これがある段階になりまして円が安定してまいりますと、私は円高国民生活にプラスであるというように思うわけで、この点一般の見方はかなり私は誤っているのではないかというように思います。  最近、円がまた高くなったとか安くなったとかいろいろ言っておりますけれども、去年の八月に一ドル百五十二円になったわけですね。ですから、それと現在と比べてみますと円は完全に安定をしております。その中間に十円前後の揺れはございましたけれども、実は非常にこれは安定をしている。その結果としてどういうことが発生したかといいますと、日本は非常に安く輸入品が買えるということになりました。いわゆる交易条件が改善をするということでありまして、これは食料も自動車も鉄鋼も繊維も非常に安く買えるわけです。その結果として製品の輸入が非常にふえておるわけでありまして、それはやはり私は内需拡大に役立つのではないか。したがって、私は為替が急激に振れるのは困りますけれども、しかし円高というのはそう心配するということはないのではないか。  それからまた、今百五十円だから円が高過ぎて困る、百八十円ぐらいになってほしいという希望もございますけれども、それは私は希望的な単に願望にすぎないのではないか。現在、月にまだ七十億ドルも貿易の黒字があるわけでありますから、この圧力でやはり円というのはだんだんまだ強くなるような経済的な実態を持っていると思うわけであります。日本人は困ると言っておりますが、大体アメリカの学者でもアメリカの経営者でもみんな、またもっと円は強くなると考えているわけですね。ですから、やはりそうしたことを考えて円高を生かすような政策をとっていくということが必要だと思うわけです。過去のこれまでのように抑制政策をとっておりますと、せっかく円高で交易条件が改善して安い物が入ってまいりましても、需要がありませんから国民生活はよくならない。かえって黒字不均衡が拡大するという結果になってきたわけで、円高のメリットが生きていなかったのではないかと思うわけでございます。
  91. 下河辺淳

    参考人(下河辺淳君) 最初の方の、産業構造の調整の過程で中小企業がどうなるかということでありますが、当然常識的な一つの結論は中小企業が相当のダメージを受けざるを得ないというふうに思っています。しかし、一方で中小企業の方が大企業よりもこの激変に対する適応力が強い面があるというふうに思っておりますので、政策よろしきを得ればいいのだというのが私の考えでありまして、大企業の方がこの激変に対応することはそう簡単ではないという見方をしています。  それから二つ目の、丸の内の状況は御指摘のとおりで、今まで私たちは職場と住宅をいかに分離するか、その分離したことがいかにいいことかということばかりでやってきまして、結果としてはテレビの話のような丸の内ができ上がりましたが、これはいずれにしても時間をかけて少し修正を必要としているというふうに思っています。ただ、コンビナートとかあるいは倉庫地区とかとなりますと、同じような社会的問題というのがありまして、今までテレビというのは倉庫地区をねらって犯罪物を放送するのが得意でしたけれども、今度は人けのない丸の内で犯罪物をやるようになると一番困ったことだと思ったりしておりますけれども……。
  92. 斎藤文夫

    斎藤文夫君 ありがとうございました。
  93. 高木健太郎

    高木健太郎君 三人の方から大変示唆に富むお話を伺いまして感謝しておる次第でございます。  最初に、暉峻先生にお聞きしたいと思いますが、暉峻先生はドイツにおいでになったということでございますが、私もドイツにおりまして、仰せのようなことを感じまして大変同感のところがたくさんございました。特にドイツの新聞で、金持ち日本、貧乏日本とか、富を国民に分けていないとか、あるいは欧州では福祉に富んでいるけれども日本はその逆じゃないか。あるいはまた、これを日本シンドロームというんだとか、いろいろ厳しいお話がございましたし、また、こんなようなことをしていたのではこんなような日本と将来競争していくということは大変なことじゃないかという、そういう気持ちを多分ヨーロッパの人は持つのではないかというふうに考えたわけでございまして、大変同感でございます。  そこで、まず最初に暉峻先生にお聞き申し上げますが、私もドイツにおりまして、我々と同じようなドイツの教授でございましたけれども、その教授の生活はいかにも豊かでございまして、大きな丘の上に、ネッカーの丘の上に立派な邸宅を持っておりまして、書斎も立派であれば自動車もセカンドカーを持っておりました。これはもう一九五五年ぐらいのことでございますから、今ではもっとゆっくりした生活をしていると思いますし、医学の臨床の先生ではもっと立派な家に住んでいるということを聞いておりました。しかし、その月給はというと我々と余り変わったことはなかったわけでございますが、収入は我々と余り変わっていないのに、その生活であるとか住宅その他の面におきましては我々と格段の違いがあったということを感じたわけでございます。  まず、ドイツの方々は新しく家を建てるにつきましても余り土地のことを心配しているということは見当たりませんでした。立派な大きな土地を買いましたけれども、非常にそれが安くて、一九五五年のときでも、どうして日本はそんなに高いのだというようなことを言っておりましたが、このドイツのいわゆる生活費及び土地の値段が日本とこういうふうに違うということを何かお考えになりましたでしょうか。まず、それをお伺い申し上げます。
  94. 暉峻淑子

    参考人暉峻淑子君) ドイツ人の生活費が非常に安いというのは、そこに私が外食の費用を書いたように、私も大学におりましてメンザという学生食堂を大変利用したのですけれども、大体昼食が百五十円から百七十円ぐらいで済んでしまうんですね。これはちゃんとシチューみたいなのがついたりフライドポテトがついている。それからデパートに行っても、そこで食べられるのは二百三十五円ぐらいの昼の定食です。レストランですと六百三十円ぐらいから千円ぐらいまでありますけれども、本当に安いですね。私はやっぱりそれは社会資本の充実ということにあるのではないかと思います。個人の家計というのは、それを取り巻く周りの条件が家計を非常に助けていれば、余り大きな収入がなくても楽しく暮らせる。例えば交通費なんかでも、地下鉄もバスも市電も全部一枚の切符で乗り継げまして、百三十円ぐらいの一枚の切符で目的地までずっと行くことができるのです。  私が胸を打たれたのは、日本で言えば国鉄の駅に大きなポスター、きょう写真を持ってくればよかったのですが、張ってありまして、六十五歳以上の老人は半額パスがもらえるんです。そのポスターに、老人の半額パスは遠くにいる者を近づけるという、それは三十ぐらいの男の人とおばあさんとが駅でひしと抱き合っている写真なんですね。こういうことも、日本の国鉄分割民営とかいろいろなことで経済効率のことだけが議論されましたけれども、そういう人間が移動するということについて、低コストで移動で走るということがどんなに大きな生活上の平等というか、安定、便宜というものを保障しているのかというのは、そこで一年暮らして私はひしひしと感じたわけです。交通費というのは東京にいますと、千円札一枚持って出れば、行って帰ってくるときには交通費だけでなくなるわけですけれども、そういうこともあります。  もちろん図書館もあれば、それから老人の在宅看護ですけれども、これは私は在宅看護に一緒についてずっと歩いたんです。そうしたら、在宅看護は医者が証明を書けば、看護婦とヘルパーと、もう一人書類を代書したり相談に乗ってくれる三人の人がチームを組んでほとんど毎日行きます。それでホームヘルパーはお掃除をしたり、お皿を洗ったり、給食車が届けたものを温めて食べさせたり、洗濯をしたりするんですけれども、看護婦さんは血圧をはかったり、注射をしたり、時間ごとの薬を、その時間ごとに行って飲ませたり、それから散歩の手伝いをしたり、リハビリテーションを助けたりという、そういうことが十分に行われていて、それがまた、私は赤十字のゾチアルスタチオンを拠点にして、ずっとそれと一緒に歩いたんですけれども、彼らが言うには、在宅看護をちゃんとするには、住宅規模がある程度しっかりしてないとできないと言うんです。だから、日本のようにウサギ小屋にいたらそれは在宅看護はちょっと難しいですよと、やっぱり言うんです。  私は、在宅看護でも、例えば日本では考えられない、頭をただ看護婦さんがシャンプーをしてあげて、きれいにセットをしてあげるというようなのも在宅看護に入っているし、それからホームヘルパーの場合は、スーパーマーケットに一緒に行ってあげて、買い物をしてお勘定を済ませて、自分の家に送り届ける。途中でちょっと公園で一緒にぐるぐる歩いたりして、一休みして届けるという、そういう仕事も全部行われているから、生活費が安いのは当たり前だと思うんです。だから、税金を払っていても苦情が来ないというのは、本当にかゆいところに手が届くようになっているからだと思います。  それで、全く無利子で老人住宅の改造なんかも資金が貸し付けられていますし、低所得層には地方自治体が改造しているし、それからトイレのところには、日本ではコンピューターというと経済的なところとか、子供の遊びにばかり使われているわけですけれども、老人の家庭にはトイレの水洗のタンクにそれがつけてありまして、二十四時間水が流れないと、それは自動的に救急施設に通報が行って、いつも救急の人がすぐ駆けつけてくる。日本でもこのごろやるようになりましたけれども、ポケットに倒れたときの呼び出しのものを皆つけているとか、それから、電話も老人の家では受話器を取り上げて、ある期間何にもそこに応答がないとそれもホットラインで行くとか、そういうことにコンピューターの使われ方がとてもいい使われ方をしていまして、そういうことも非常に老人の生活を安定させている。  私は一体幾らあったら暮らせるかと随分聞いたんですけれども、本当に最低の暮らしをしようと思ったら、住宅の家賃がとても安い。例えば私は学生の下宿にもしばしば遊びに行ったんですけれども、大体百平米のところを八千円ぐらいで皆借りているんです。大体普通の家でも六、七万の家賃で三十坪ぐらいの家が借りられていますので、住宅費に食われなければ全く安い。それから教育費にまた食われないから、非常に安いんです。  これも実例ですけれども、私は小学校を見学したときに、ヨーロッパでは外国人の子供がたくさん小学校に来るんですが、ドイツ語ができない。そうすると、先生は一生懸命個別指導もして教えているんですけれども、というのは英語とか国語とか数学の時間は二十人学級に二人教師がつきますから、個別指導ができるんですが、それでも追いついていかないとなると、担任の先生が市役所に申請書を書きます。そうすると、市の費用で家庭教師がその子の家に派遣されまして、追いついていくようになるまで個人指導をする。その子の家が例えばジプシーの家であるとかトルコ人の労働者の家であったりして落ちついて勉強ができないとなると、図書館の学習室に連れていってやる、あるいは家庭教師が自分の家に連れていく。家庭教師はちゃんと小学校の先生の資格を持っている人で、何かの理由によって今家にいるという人がそういうふうにやっているわけです。もう至れり尽くせりですから、家計費が少ないのはこれは当たり前だと思います。  私は、生活の質を高めるということはやっぱりそういうことだと思うんですね。本当にうらやましいと思いました。
  95. 高木健太郎

    高木健太郎君 ありがとうございました。  時間がございませんので、下河辺先生にお尋ねしますが、貿易黒字が千百億ドルぐらいあるということですが、それが財政日本は赤字である、何かやろうと思ってもできないと。ところが、国民生活は一般的には非常に私は低いと思います。貯金が多いといっても、実際に物価とかそういうものを比べるとアメリカの半分ぐらいではないかなと思うわけです。こういう金がどこへ行っているんだろうかということをよく私たちは質問を受けるわけです。それが一つです。  それから、内需拡大をしましても貿易アンバランスに五十億ドルとか六十億ドルぐらいしか役立たぬだろう。それを将来も続けていかなければならぬ。ことしは六兆円ぐらいの金を出しましても、それを将来までも続けていけるかどうかというようなこと。それから住宅のことですけれども住宅はもっと高層化しろというようなお話もございますし、空間をもっと利用するというようなこともございますけれども、元来が非常に土地が狭い、そういうことから日本では非常に困難ではないかなということを思いますし、もう一つは、日本人の生まれつきといいますか、今までの歴史上から非常に閉鎖性が強い。だから共回生活というようなことがなかなかできにくい。そういうことも根本的にあるのではないか。これが第二番目でございます。  それから第三番目には、高齢化が進んでおりますが、これを今のうちにやっておかないと、二〇四〇年か四五年には恐らく二・七人に一人が老人を見ていかなければならない。そうすると、それだけの社会保障費が労働者から、いわゆる勤労者の方から出てくるかどうか。どうしたらこれはやっていけるのか。それについての先生のお考えを聞きたい。  それから社会資本を充実しなければいけないということでございますが、道路あるいは鉄道、あるいはいろいろの最近の超電導ですね、ああいういろんなものが入ってきまして、また再び重厚長大の工業が盛んになるかもしれません。そして、行き来も非常に盛んになるかもしれませんけれども、それに対するメンテナンスが今度かかってくる。先生も今更新の時期に来ているんじゃないかというお話がございました。それこれを考えまして、長期的に今後、内需拡大といっても何年間ぐらいこれは続けられるのか、どういうふうにすればいわゆるその場しのぎの政策ではなくて、安定した政策としてやっていけるかということについて、全体的に先生のお考えをお聞きしたいと思います。
  96. 下河辺淳

    参考人(下河辺淳君) 最初の生活の問題について私思いますことは、ドイツと日本と比較したりヨーロッパと比較したとき、いつも思うことは、ヨーロッパの人たちはストックということを非常に大切にすると思うんです。だけれども日本人というのは非常にフローといいますか、短期の消費ということに非常に興味があるという違いがあると思っています。  ヨーロッパを旅している日本人というのは世界で一番乱費型の人たちと言われていると思うんです。ストックというのに手が届かないということが大きな理由でしはうけれども、非常に消費型の消費者が多いという気がします。一軒の住宅を見ても、住宅というものにお金払うよりも、住宅の中に置く装備については世界的レベルだと私は思っております。これから一世帯に一台コンピューターが入るなんて話を聞くとますますそういう気がしています。それはどちらがどういいかという議論になると、私から結論を出すべき問題ではないかもしれないという気がいたします。  それから住宅を高層化して共回生活ということは、私は端的に言えば、やむを得ずしているというのが我々のジェネレーションだと思っていますけれども、今の若い方々がそれをどう考えられるかというところは、これから結論が出るところではないかと思っています。底つき一戸建て住宅ぐらい住みづらいものはないという考え方は若い人の方に少し出てきているように思っておりますが、余りはっきりしたお答えにはならないかもしれません。  それから高齢者につきまして私が思うことは、高齢者を保護することの政策の論争が非常に華やかでありまして、ますます必要だとは思いますけれども、本質的には世話されなくて生きられる老人をつくる方が先決問題だと思っていまして、国家のお世話にならない老人像というのを高齢化社会のビジョンにしたいと思っておりまして、それがだめなら、財政を準備するよりも平均寿命を下げる方がいいかもしれないという乱暴な意見さえ、やはり議論すべき問題ではないか。特に今私たちが問題にしているのは、明治の残った今現在の方々はかなり長寿的な高齢者になりそうな気がしているんですけれども、今の新人類が果たして平均寿命が伸びるかという点については、むしろ先生が御専門でしょうけれども、むしろ平均寿命は下がるんじゃないかということさえ環境の制約上言われるというようなこともあって、高齢化社会の議論の仕方は私は少し違っているかもしれません。  それから最後の内需拡大をいつまで続けるかということについては、最初に発言させていただきましたように、私は望ましい都市なり国土をいかにするかという観点から、内需拡大政策とは無関係に、あるきちんとしたビジョンを持つべきだと思っています。そして、私たちがこれから非常に楽な状態になるのは、人口増加がとまることです。西ドイツが日本に比べて非常に役人として見ていいと思うのは、西ドイツの役人も言っておりますけれども、人口が減ってきたことです。これは都市の人口さえ減ってきましたから、都市問題の我々の対応とは全く違います。  日本という国は、東京で言いますと、二百万人の江戸が三千万人の大東京に百年間で人口が十五倍になったわけです。こういう経験をした国はないわけです。こういう急速な人口増に居住環境を十分対応させる知恵というのは、なかなかそう容易なことではありません。しかし、二十一世紀は日本の人口の増加がとまり、東京の人口増加も三千二、三百万人ぐらいでとまると思っておりますので、これから少し本格的にできるというふうな見方をしています。
  97. 高木健太郎

    高木健太郎君 ありがとうございました。  金森先生にもお聞きしようと思いましたが、時間がございませんので、これで終わります。
  98. 吉川春子

    吉川春子君 三人の参考人の先生方には大変お忙しい中、貴重な御意見を伺わせていただきましてありがとうございました。  私の持ち時間は十分ということですので、こちらからまず最初に質問の項目を申し上げますので、それぞれお答えいただきたいと思います。  まず、金森参考人と下河辺参考人に共通の質問ですが、内需拡大の目的は何なのかということです。外圧に対してそれをかわすために行うのか、それとも国民生活の向上のために行うのかということですが、言うまでもなく日本経済力に比べて国民生活というのは非常に劣っていると。経企庁の「内需拡大と成果配分」という文書によっても、労働時間がドイツより五百時間、三カ月歩く、アメリカより二百四十時間多いとか、あるいは給料も欧米の六〇%程度であるとか、あるいは老後の暮らしに不安な国民はせっせと乏しい給料から貯金をするとか、あるいは子供の教育費の負担ということで、ある新聞の経済面を見ておりましたら、三重苦の業火に国民は責め立てられている、それが住宅と教育費と老後だということを指摘してありました。私は、国民の汗で今日のこの日本経済力というものほからとられたわけだから、その成果をもっと国民に分配すべきではないか、そのために内需拡大ということが行われるべきではないかと思うんですが、お二人の参考人の御意見を伺いたいと思います。  それから個別の質問ですが、下河辺参考人に伺いますが、根本的に内需拡大の流れが二つあって、その一つは国際比較上低レベルにあるものを整備しようという公平な全地域的な考え方と、それから大型プロジェクトを持つという考え方だというふうに述べておられますけれども、その中で、みなとみらい21とか幕張メッセ、あるいは東京の十三号埋立地など大型プロジェクトの推進ということを言っておられるわけです。今回の政府内需拡大策も東京湾横断道路とか鳴門大橋などを挙げておりますけれども、この大型プロジェクトによって経済の波及効果というものがどの程度あるんでしょうか。例えば地域の中小零細企業に仕事が回るのか、あるいは失業者が救済されるのか、それから国民の身近な生活の向上につがなるのか、そういう点をお伺いいたします。  それから金森参考人の個別の質問ですけれども、これは週刊東洋経済ですか、売上税を撤回しなさいというお考えを述べていらっしゃる同じところで、円高のメリットが浸透しているというふうにおっしゃっておられます。また、今もおっしゃいましたけれども、円が百五十円で高過ぎるレートとは思われないというふうにも述べております。二、三日前の新聞によりますと、東京商工リサーチの調査の結果が出ていました。円高倒産件数が千二十一件に達した、千件を超えたと。そしてそこに働いている従業員は二万五千六百人だということで、これからさらに、今は為替相場がやや安定してドル安円高で推移しているものの、秋口にかけてはさらに一段と厳しい影響があらわれるということを指摘しているわけです。  参考人円高のメリットが徐々に浸透しているというお考えですけれども、こういうような実際の数字と比べてどうなのかということと、それから百五十円のレートでも、私実は各地の円高不況で苦しむ業者の方たちを回って調査してきたんですけれども、百五十円高値安定、これでももう大変な事態に陥っているわけですけれども、そういう円高のもとで苦しんでいる企業やそこで働いている人たちに、じゃどういう救済の手を差し伸べるべきなのか、そのことをお伺いします。  それから暉峻参考人には二点伺いますが、まず内需拡大を進める上で重要な問題として、私は国民の購買力を高めるということがあると思うんです。国民が少ない収入の中から貯金するのも老後などに備えて行うのですけれども、福祉の充実ということをしっかり行うことが安心して国民の財布のひもを緩めさせる道でもあるというふうに思うわけです。先ほども老人問題、老人保健法の問題にもお触れになりましたけれども、今老後の不安がいっぱいで、しかも現在老齢化されている方々に対する施策は実に冷たいものがある。これは、老人というものは日本経済発展の中で役に立たないもの、そういう発想があるからだと思うんですけれども、老後の生活保障と経済効率の関係をどうお考えになるか、これが第一点です。  第二点は、西ドイツは日本と同じように資本主義国であり、ともに敗戦国である。それなのに、今お話を伺いますといろいろ日本と比べて天地の差があるわけですが、特に土地政策について西ドイツから学ぶべきものがあれば教えていただきたいと思います。  以上、よろしくお願いいたします。
  99. 金森久雄

    参考人(金森久雄君) 今の内需拡大の目的というのは、もちろん国民生活を高めることが中心だと思います。現在、内需が不足をしておりますために九百億ドルお金が余って、国際収支の黒字になっているわけですね。月に一兆円とか二兆円ずつお金が余っているわけでありまして、関西空港が一本か二本、毎月できるぐらいの余裕というものがあるわけで、これを全部アメリカとかほかに貸しているわけでありますから、しかもそれで感謝されないで黒字が大き過ぎると文句言われているわけでありますから非常に私はおかしい、やはりこれを国内生活を高めるために使う、これが目的だと思います。そして同時に、これが国際収支の黒字不均衡をなくしまして世界経済の安定にも役立つということになりますから、一石二鳥ではないかと思うんですね。  それから円高の問題でありますが、私は円高のメリットは徐々に浸透していると思います。消費者物価が完全に上がらなくなる、時によれば少し下がるということで、最近は消費もやや回復の色が見えております。それから国内サービス産業ですね、輸出に関連したサービス産業ではやっぱり利益が二〇%ぐらいふえているわけでありまして、これは円高で原料価格が安くなってきているということによるわけで、メリットは浸透していると思いますけれども、その浸透が非常に不十分なんですね。もっと当然食糧でも航空運賃でも下がってしかるべきものが下がっていないというところが結局問題でありますけれども、徐々に浸透していると思います。  それから、百五十円で私は高過ぎるとは思われないというのは、今百五十円という為替レートになっておりますけれども、やっぱり輸出したいという人の方が輸入したいという人よりもずっと多いわけです。それで毎月まだ七十億ドルも貿易で黒字が出ているということであります。毎月毎月七十億ドルずつ受取超過で外国からドルが入ってくるわけですね。そうすれば需要供給の法則でもってやはり私は円はもっと強くなるのではないか。今の百五十円ではやはり輸出の方がふえるような状況にあるわけでありますので、まだ円は私は今後は高くなると考えるべきではないかと思うんです。これを人為的に百八十円とか二百円に持っていくことは不可能であります。したがって、そういう形になる、そういう形にしてほしいということから甘い期待を抱くよりは、やはり百五十円あるいは百四十円で成り立つような方向に経営を転換していかなきゃいけない。確かに円高不況というので倒産がふえているという結果が出ておりまして、これは非常に困ることでありますけれども、やはりそれに応じていくというより私はしようがないんじゃないかというように思っております。
  100. 下河辺淳

    参考人(下河辺淳君) 内需拡大政策の目的ということですが、その内需拡大政策の問題に入る前に、日本はこれだけの貿易の黒字を長期に続けることは世界的に迷惑であるから、日本がみずから修正しなければいけないという政策課題があることは明らかではないかと思うんです。そして、しかも現実の問題として金余り現象で過剰流動性がかなり大きいので、この過剰流動性をどこかに吸収して健全な経済発展に結びつけなければならない。これが土地に入り込むということが社会的混乱のもとですから、その政策もしなきゃならないということがあります。  さらには、産業構造を根本的に調整する時期が来ているということも確かです。それから実際の円高不況のために出てきておりますこともあって、高齢者ということもあって雇用政策というものに新しい段階が来ていると私は思います。そういう諸政策がたくさんあるわけですね。そのときに、それらの諸政策に何らかちょっとずつ役に立つのが内需拡大政策だと思ってお話しになる方が多いと思うんです。そのために目的が非常に多目的と言ってしまえばそれきりですし、ほんのちょっとずつしか効果がないと言えば直接的にはそんなに効果がないというような性質を持っていると思います。そういう意味では金森さんおっしゃったように、基本は国民生活の向上にあるという前提が私はよいと思いますけれども、今申し上げたような諸課題にも影響を与えたいということについては、やはり積極的に取り組むべきであろうというふうに思っています。  で、外圧というお話がありましたが、外圧というのは日本にとっては、何といいますか、都合のいいこととして受け取っている場合が多いわけで、都合の悪い外圧はお断りすればいいんじゃないでしょうか。  それから二つ目の御質問は大規模プロジェクトの問題ですが、一つお話ししたいのは、今始まろうとする大規模プロジェクトはさしあたっての有効需要に結びつくほど熟してはいないと思います。みなとみらいとか、十三号地とか、幕張とかとおっしゃったんですけれども、あれが工事として最盛期になるのはまだ大分先だというふうに私は思っています。  それから、大規模プロジェクトの一般論としては波及効果のお話がありましたが、我々が波及効果と言うときには、有効需要効果がどうあるか、雇用効果がどうあるか、生産力効果がどうあるかという三つの観点から議論します。有効需要と雇用効果はそれなりに出てきます、工事をすれば。それで生産力効果がどうかということになるときに非常に難しい議論をすることになります。  それは、私たちの仕事は大規模な事業が調査されて、着工して完成して、それが効果を上げるのに二十年以上かかるというものが大部分です。そうしますと、その経済的波及効果を測定することが技術的に困難です。青函トンネルをつくったときでも、あれをつくるときに今日の高度成長を予想してその波及効果を論ずるというようなことは、空虚といいますか、架空な話で不可能なんですね。ですから、大規模開発事業の生産力効果というのはどうやって測定しようかということが専門的にちょっと困っている問題です。ですから、お答えにはならないのですけれども、大規模事業は波及効果との点でどうかという一般的な御質問に対しては、雇用効果と有効需要効果はそれなりにあるとお答えして、生産力効果の方は少し様子を見ていただきたいというのが本音です。歴史上、大規模プロジェクトの実施というのは、経済的な判断よりは政治的な判断で始まる方が古代ローマ以来常識になっているわけで、したがって、賛否いろいろ出てくるというのは常識だろうと私は思っておりますけれども
  101. 暉峻淑子

    参考人暉峻淑子君) 時間がないようですから簡単に。今の老人の問題ですけれども、私は内需という場合、本当に私たちの生活の質を高めて、人間性を傷つけないような、そういういい本当の内需ですね、生きることの中から出てくる内需、そういうもので言えば、老人の場合は非常に需要が満たされていないものがたくさんあると思います。それで、満たされていないものを民間の力及び国、公の力でその需要を満たしてほしいということ。  日本の政治家の例の、もうこれはヨーロッパにも有名なんですが、老人のためにお金を使うことは枯れ木に水をやるようなものだとか、雌牛も乳が出なくなれば屠殺場に送られる、人間も云々というような言葉は割合にさあっともうヨーロッパにも広がっているわけで、私は、人間というのはなぜ生まれてきたか、なぜ生きるのかという問いに対してだれも答え得る者はない。だけれども、生きている、与えられた生を大事にして終末まで生きようということはみんな思っていることだと思うんですね。老人問題にある制限を加えることは、やがて身障者にも加えることになる、精神病患者にもむごい扱いをすることになるということになるので、医学の発展というのは、そういう一万人に何人というような人をも助けようと努力する、そこから薬とか治療法とかというのが出てきて、それは健康な人間にもプラスを与える。  そういう回り回ってみんなに福祉が還元されていくというものであって、ある目的を定めて、これにはやるけれども、これにはやらないというようなことを人間に対してやると、それは全体のレベルを低めるというのか、しっぺ返しが必ず来ると私は思うんですね。その一番大きなのはナチスが精神病患者を殺してしまったというようなことで、そういう社会が繁栄したためしはないわけです。だから、情けは人のためならずで、やっぱり人間の生命や生活を本当の意味で大事にする。物づけとか、医学が営利企業になるとかという意味ではなくて、そういう社会はあらゆる意味で繁栄していく社会であると思います。  それから、なぜ貯金をするかということは、やっぱりそういう不安があるからですが、もう一つ紀元二〇〇〇年になると三人に一人はパートタイムあるいは派遣事業による労働者になるという報告がなされておりますけれども、そのことも大変国民の不安をかき立てていると思いますが、あと多国籍企業の問題ですね。一生懸命に今働いていても、いつ自分は失業するかわからないぞという、空洞化といいますか、そのことも若い人の貯金ということに大変拍車をかけていると思います。  それで、私は、多国籍企業の空洞化の問題、企業を移してしまって低賃金のところで物をつくらせるとか部品をそこにつくらせる。それは経済の原則としてはそうだろうと思いますけれども、その状態を野放しにしておくということを耳にしたり、実際それで苦しんでいる人を見ますと、本当に国破れて山河ありという言葉をよく思い出すんですね。一生懸命に働いて富をつくってきた人が経済の効率性とか利潤のために、あるとき、ぽっとほうり出されて、国内では失業を生んでいって、多国籍企業がそこにあると。しかも国内に残された人たちも、なお国際競争の中にあって労働時間は長いし、中小企業の賃金もよくないしというようなことになってくると、どこかでこの流れを人間尊重という流れに変えていかないと、日本の行く先ほどうなるのかなということでつくづく自分の子供の時代のことを考えると本当に心配になります。  それで土地政策は、さっきちょっとお話ししましたが、ドイツでは土地は、もちろん供給のことも十分考えていますけれども、一般の商品とは別扱いにするということがもう基本理念としてあって、ある意味では用途規制を非常にかける。この資料にもありますように、二階建てのところは土地が安いし、四階建てのところは地価が高くなっているというように、むしろ使用制限をかけることで地価を安定させているというところもあるわけです。それで、さっきのグルンドゲゼッツの中に「近代医学が外科医学なしには考えられないのと同じ」で、「健康を回復するために手術が行われるのと同様に、」私権の制限をするということは「所有権の否定にではなく、その維持と創設に役立つことは確かである。」ということがうたってあるんですね。  だから、やっぱり私権を野放しにしておくということが妥当でない分野というのはあるわけで、それで私はここで急に話を変えてこういうことを言うのは本当にいけないことだと思うんですけれども、やっぱり一般の人たちは土地政策の問題にしろ何にしろ、これが実効力を持たない、さっき下河辺先生がおっしゃった国土利用法ですか、そのことなんかでもそれはやっぱり政治献金のせいではないかということを言い出すんですね、一般の人は。それで政治家はやるべきことはわかっていても動きがとれないのではないか。やっぱりこういう政治不信を生むというのはよくないことであって、土地政策に本当に力を入れて、日本のこれまでの流れを徐々にでも健全な私たちの住む土地というものに返していかなければいけないと思っております。
  102. 吉川春子

    吉川春子君 ありがとうございました。
  103. 三治重信

    三治重信君 まず金森さんにお伺いいたしますが、今の日本経済からいくと一〇ないし二〇%の需要不足があると。これを満たせば成長率五%程度までいく。しかし、問題は一〇ないし二〇%の需要不足を有効需要にしていくこの財源をどういうふうに考えられているか。今度みたいに緊急経済対策として、中曽根さんが特別これをサミットで約束してきたからやるという、政治的なことから急に起きたことなんですけれども、これを納経済的に見ていった場合に、有効需要の不足に対して国民経済の運営上、どういう視点でそれをどういう財源を使って補充していけば正しいのか、こういう問題をひとつお伺いしたい思います。
  104. 金森久雄

    参考人(金森久雄君) かなり大きな需要不足でありますから、これを単一のものでやるということは私は難しいのではないかと思うわけで、これは公共事業とそれから民間の大型プロジェクト、それから消費の増大、民間の設備投資の増大、やっぱりすべてのものによってこれを実現をしていくということが必要ではないかと思うわけです。  確かに、今までずっと抑えておりましたのを急にここで百八十度転換でありますから、そこにいろんな矛盾が出てくるということで、これは私も非常によくなかった、残念だと思います。しかし、転換したこと自身は私は結構であるというように考えるわけで、公共事業などは、これは先ほど下河辺氏も言われましたけれども、やはりある程度長期的な計画を持ってずっとやるということが能率を高めるゆえんではないだろうかというように思うわけです。そしてぜひ私、公共事業でも北海道とか九州とかやっぱり発展のおくれたところにやっていただきたいというように思うわけであります。  最近のこの発展の過程でそういうところを抑えておりましたために、地域格差というものは拡大をしているということがあるわけですね。しかも土地は安いわけでありますから、同じお金をつぎ込みましても、先ほどのインフレというような問題はないし、非常に効率的に使われるわけであります。そして今、情報化というものが進んでおりますけれども、これがそういう地域が発展しないものでありますから、ますます東京に集中する。これが住宅問題、地価問題というのをつくり出しているわけであります。ですから、単に需要の増加ということだけでなしに、どういう地域にどういうものに投資をするかということをぜひ考えていただきたいというように思うわけでございます。
  105. 三治重信

    三治重信君 下河辺さんにお尋ねしますが、土地問題を随分言われて、その中で外国と比べて一番障害になっているのが土地の所有者が細分化されている、こういうことなんで、私もそのとおりだと思うんです。そうかといって土地の所有者をどうして減らすかということになってくると知恵が余りないわけなんで、私はそういうことからいって、土地政策というのは土地の所有者の所有を買収とか売れとか言ってそういうことをやるんじゃなくて、みんな借り地なり信託なり、その土地の所有者の所有は認めてやる、国債の所有と同じように。そして適正な地代を払っていけばいいんで、国が道路をやるから、学校をつくるからといってみんな土地を買い上げるというのをやめたらどうかと思う。  これはみんな借地でやって、その制度をつくった方が、やはり土地の非常に細分化された、殊に大都市の市街地再開発問題なんというやつは何かそういう所有と利用を分離して、所有者には適当な地代を得る元にして、その土地の管理を中間的な者が、地主が自分で直接管理せぬでも所得なりその土地の所有がずっと保障されるんだという、何というんですか、第三セクターなり何なりそういうものを国でもつくってやった方がうまくいくんじゃないかと思うんですが、そういうようなことに対する御意見はいかがですか。
  106. 下河辺淳

    参考人(下河辺淳君) 今の御意見に私は非常に賛成の立場でいます。それは日本の場合にはヨーロッパのように土地の所有と土地の利用権とを分離するという考え方が実は余りうまくいかないんじゃないかと思っています。したがって、所有と使用とをつなげた形で何か知恵を必要としておりますが、しかし、現実の所有は値段が高くなっている一方で相続に困っているということもありまして、所有権の不安定性というのは実は社会的には非常に増大しているわけです。そのために土地の所有に関して信頼のおける信託機関を必要としていると思っています。したがって、半ば公的で半ば私的な土地に対する信託制度を整備することが私は土地問題に対して非常にいい案ではないかと思っております。
  107. 三治重信

    三治重信君 暉峻さんにちょっと。
  108. 長田裕二

    会長長田裕二君) 簡潔にお願いいたします。
  109. 三治重信

    三治重信君 西ドイツの社会保障なり何なりが非常に整備されている、それは結構なんですが、実際はどうなんですか。日本で社会保障を行政改革である程度抑えたのは、毎年毎年七、八%もどんどん医療費がふえていく。そこに問題があってこういう結果になったんだろうと思うんですけれども、西ドイツなんかの医療費や社会保障費というのは、そんなに毎年一〇%も八%もふえても国が全部支給を増加するような体制になっているのかどうか。あるいはそれがふえないのであろうか、その点どうなのか。
  110. 暉峻淑子

    参考人暉峻淑子君) 日本ほどそれは急角度にふえていないと思います。一つ大事なことは、どうしてもふえるから切る、制限するというふうに日本はすぐいくわけですけれども、例の沢内村の話というのがよく出てくるんですが、あそこは十九年かけて保健活動を一生懸命やって、全国の市町村の中では医療費を逆に減らした自治体ですね。一世帯当たり一万幾らか国保の掛金まで下げることができたというので、やはり医療費というのはその前の環境の問題ですね。都市環境の問題とか、労働時間の問題とかという社会生活及び保健活動というようなものをしっかりしないと、結果だけの医療費のところで勝負をつけようとするとやっぱり犠牲者が出てくるということになると思います。  それはやっぱり即効性ではいかないので、日本は開業医制度の中でそういう保健活動とか環境を整えるということがおくれているので、私はそこをやっぱり一生懸命にやって、即効的ではないけれども医療費を減らしていくというふうにいくのが真っ当であろうと思います。  そこで一つ提案があるのですけれども内需拡大につながるかどうか、先進国の場合は、これは私が書いた本なんですが、大体国立の老化研究所というのがございますね。アメリカなんかでは国立老化研究所、NIAというのが研究者数四百三十名、予算二百三十五億円。それから老化動物モデルの開発に三億七千万円。それからもっといろいろなものを持っておりまして、全国に五カ所の老年痴呆研究センターがあって六千億円の経費を投入しております。ソ連も医学アカデミーがキエフに老年学研究所を持っていて、老化機構の解明、それから老年病の病理学的特性、いろんな診断、治療、予防の研究。それから老化現象や寿命に及ぼす社会的な要因の研究というのも一生懸命にやっていて、フランス、イギリス、西ドイツ、カナダ、オランダ、それぞれにもあります。  日本の場合そういうものがなくて、ただただ老人になってお金がかかるから切ろうという、そこが問題であるわけで、やっぱりそういうところもバランスをとってちゃんとしてほしいと私は思っているわけです。
  111. 平野清

    平野清君 平野清でございます。  長時間御苦労さまでございますが、最後ですのでもうちょっと御辛抱のほどをお願いいたします。  暉峻先生と下河辺さんにお伺いしたいんですが、まず暉峻先生が発言の最初に、サラリーマンの大変な四重苦、五重苦の話をされて、私たちサラリーマン新党としては本当に同感なんですが、いつか暉峻先生にぜひ聞きたいと思っていましたので、内需拡大とちょっと離れますけれども、それではなぜ日本のサラリーマンはそんなにおとなしいのか、私たち不思議でしょうがないんです。そういう意味でサラリーマンがもっと声を大にして怒るか、もう一つの方法は一票を投ずるときにその怒りを発表すればいいわけですが、そういう現象が長い間起きていないということをどうお考えになっていらっしゃるか。  それから一兆円減税その他が叫ばれていますけれども、今の条件をそのまま使えば、先生が教授として、また主婦としてこの間接税の表を見ましても、一たん所得減税があってもそこに間接税がプラス・マイナスされれば、私たちの計算でも確実に低所得層は増税になる。そうしたら、その一兆円はまた貯蓄に消えてしまうんじゃないかと私たちは不安を持っているわけです。そうしますと、中曽根さんの方のどうしても高齢化社会に備えて恒久的な財源が欲しいんだということとの矛盾が出てくるわけですが、先生のお考えの中で恒久的な財源というものは果たしてサラリーマン全体でしよえるものがあるのかどうかということ。  それから下河辺さんにお伺いしたいのは、僕の非常に乏しい歴史知識の中では、これは間違っているかもしれませんが、日本で検地が行われたのは秀吉以来ないと思うんです。一切検地が行われないで土地問題が発生してきている。それで、先ほど土地信託問題なんかが出ましたけれども、思い切ってマッカーサー元帥がやられた農地解放と同じような土地検地というものをこの際、国民の怒りを背景に一挙にやって、そこで信託制度その他を導入されたら大方の国民の拍手が得られるんじゃないかというふうに思うんですが、私だった五分きりございませんのでこれで質問は終わらせていただきますが、お答えいただければと思います。
  112. 暉峻淑子

    参考人暉峻淑子君) なぜ闘わないかということの一つの理由は、労働組合が企業別労働組合で長く来たということがあると思います。やっぱり自分の企業を生き残らせたい、あるいは企業の中で憎まれたくない、そういういろんなことがあると思います。労働組合の組織率というのは、日本と西ドイツは組織率そのものからいえばそんなに変わらないんですね。しかし産業別組合ですから、特に私はこれは日本と違うと思ったのは、中小企業にも同じ三十何%という組織率があるわけです。労働組合が企業別労働組合の中にいる限りは闘いにくい、サラリーマンといってもやっぱりどこかの会社に勤めているわけですので。だから、そこを企業から離れて闘い得るようなものが必要であろうと思います。  それから間接税は、これは政権構想何とか会という、比較的政府寄りではないかと思いますが、そういうところでさえも、それから大蔵省もどこかで、年収八百万または七百万ですか、それ以下の人は減税があっても間接税でかえってマイナスになるということは認めていることですので、もうそれは有名なことで、全くそのとおりです。  それからその財源の問題ですけれども、それを所与の今の支出構造を前提にして、じゃ、どこかに新たにというふうに言われても、私はやっぱり支出構造全体の枠の中でどれだけ社会保障費を考えていくかというふうにしなければいけないと思います。  大体、以上です。
  113. 下河辺淳

    参考人(下河辺淳君) 御指摘のように、秀吉以来検地をしたことがないということは事実ですけれども、国土調査法という法律がありまして、その中に地籍調査というのがあります。この地籍調査は単なる調査ではなくて、所有権に対しても発言権があり、登記簿を修正する権限も持ったきちんとした検地法です。  しかしこれは農地から始まったわけで、米の生産調整との関係で、面積が不確定は困るということから始まった法律ですが、しかしこれは全国土やるようになっておりますけれども、私たちは御指摘のように土地政策上、都市の土地の地籍調査を法制的にきちんと整えたいということは何回でも提案して、かなりの予算も持っておりますが、先生のお話と全く逆で都市はだれも喜びません。むしろ抵抗に遭います。そして抵抗に遭ってもかなりの地方都市で始めておりますけれども、全市終わりますと完全に固定資産税の税制その他根本的に変わってきますけれども、なかなかそれをよしとしていただけないで困っておりまして、きょう先生からお話いただいたので、国土庁の担当者に伝えておきますが、私は、本当に近代的な土地法というものは地籍が明確でないというような前提ではおよそできないと思っております。
  114. 暉峻淑子

    参考人暉峻淑子君) 済みませんちょっと一言つけ加えさせてください。  イタリアの憲法の三十六条というのは、法定休暇、これは国民は放棄してはいけないということを決めてあるんですね。ぜひこの調査会でそれを提言して、そうでないと、企業別組合みたいに会社の顔色をうかがっている労働者としては法定休暇もとりにくいということではないかと思います。
  115. 平野清

    平野清君 ありがとうございました。
  116. 長田裕二

    会長長田裕二君) 以上で参考人に対する質疑は終わりました。  参考人方々には、お忙しい中を御出席いただきましてまことにありがとうございました。非常に有意義なお話を承りました。ただいままでお述べいただきました御意見等は今後の調査の重要な参考にさせていただきます。参考人方々に対しまして調査会を代表して厚くお礼を申し上げます。どうもありがとうございました。  本日はこれにて散会いたします。    午後四時四十六分散会