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内藤功君 私は、七月三十日に社労委で、石川島播磨重工業など造船、鉄鋼などの大企業が、そこで働く労働者の人格の尊厳を傷つけるような
方法で大量の
退職を強要した人権侵害問題が起きているということを具体的事例を挙げて
質疑を行いました。そのとき労働省当局は、「実際にそういうことが行われたとするならばかなり強硬な
退職勧奨だと思います。」、また
大臣は、「企業に行き過ぎの点がございましたら、これは都道府県等を通じてさらに指導してまいりたい」と、こういう
答弁になっておるわけであります。
ところが、その後も石川島播磨重工では、特に組合の活動家である労働者に対して人権侵害が相次いております。
たくさんありますが、一、二の例を挙げますと、
一つは勤続二十七年の方です。この人は茨城県の阿見町に居住していて、八年前に奥さんを亡くして三人の娘さんがいる。特に二番目の娘さんは特殊学級に所属をしている。精神薄弱児という認定を受けておるんですね。そして、この人は毎朝五時四十分ごろ家を出て、早くても帰宅は七時三十五分ごろ。出張というようなことは絶対にこの三人の子供さんを抱えた家庭でできない。こういう家庭
事情を十二分に承知の上で、別会社の石川島輸送機株式会社というところの改修技術部へ出向を通告されたんですね。
この出向先は、石川島播磨でつくったクレーンの納入先を巡回して点検、修理するという出張が日常的な業務である、長期の出張もあり得ると、こういうことでありました。西は静岡から関東一円、東北、北海道にまでエリアは及ぶということで、月のうち半分くらいは出張もあり得ると、こういう職場に出向を命ぜられたわけです。そこで、これでは直接の家庭崩壊にやはりつながる、深刻な事態を招くことは必至である、必定であると、特に次女の学級担任教員や町の民生
委員からも嘆願書が出されている
状況なんですが、なおこの出向を断念していない。東京都内のしかるべき職場にという懇願にもかかわらずこの出向を断念していないという問題が、私は
一つの人道上の問題だろう、労働法以前のやはり問題としてあるというふうに私は思わざるを得ないんですね。
もう
一つだけ例を挙げておくと、このもう一人の方は仮にBさんといたします。さっきの方をAさんとします。このBさんは五十六歳で、やはり二十七年間勤務をした。特に昨年十二月まで十六年間は一貫してクレーン運転工ですね、クレーンの運転手をしておられた。この人を別会社の、これは石川島鉄工建設という会社の橋梁部、橋をつくる橋梁部所属の現場作業員として出向を命令してきたんですね。これはなぜ問題かというと、出向先の業務は橋梁の架設工事であります。このBさんに、橋梁架設工事の現場作業をやれというわけです。橋梁は必然的に高いところの高所作業であります。山合いや谷合いの場合は大体地上二十ないし三十メートルでしょう。市街地でも五メートルから十メートルになりますね。こういうところで足場の組み立てからボルトの締めつけ、ジャッキ操作、測量、塗装その他等々の現場作業をするわけです。これまでこの人は工場内でのクレーン運転工、それからその前は機械工、溶接工であった。高所作業は経験がない。それから五十六歳のいわゆる法律上の中高年齢者に当たり、高血圧症ですね。これは私も血圧のあれを見ましたが、非常に高いです。
労働安全衛生法の六十二条には「事業者は、中高年齢者」「については、これらの者の心身の条件に応じて適正な配置を行うように努めなければならない。」というのが改正でつけ加わっております。そこで、安全に自信がないと申し出たんですが、企業側は、そのうちなれる、低いところから次第に高いところに移ってくる、命綱や足場もあるというような
答弁にしかすぎないんですね。大変無責任なことであります。我々が調べた労働災害の事故では、なれるまでの間に転落するというのが非常に多いですね。これが非常に多い。これが問題です。ところが、そのうちなれるというふうな
答弁しかしないんですね。あくまでこれは人間の今、体に危害のあるところに追いやるわけですから、私はこれ以上の人権侵害というものはないと思うんですね。労働法どうのこうのという以前の問題であります。
この出向先会社の発行した安全手帳を見ますと、墜落のおそれのある高所作業には中高年齢者並びに高血圧症、低血圧症、心臓疾患等を持った人を配置しないと書いてあるんですから、これはもう明白に安全規程自体にも違反しておる。本人からは
文書、口頭で何度かこのようなところの高所作業をやめさせてもらいたい、ほかの高所でないところで働かせてもらいたいという要求を出しておるわけであります。これは結局昨年十一月から十二月に行われた緊急対策で七千人の
退職者が出たんですね、そのときに
退職を断った、この断った者への高齢者いじめと考えざるを得ませんというのが御本人の
判断であります。私はあってはならぬことだと思うんですね。生命身体の危険の大きいところに高齢者を送り込む、非常に冷酷な、人道に反することだと思います。
私は、こうした事案について
法務省としても人権擁護という
立場から、これはまた労働省などと違った
立場から、巨大企業であるがゆえに許されていいか、
調査等是正勧告を
局長にお願いしたいと思いますので、これについての御
答弁を伺いた
時間の
関係があるので関連をして、これはもう一、二の例にすぎないんですね。
大臣にこれは伺うことだと思いますが、これらの巨大企業は国からいろいろな契約の発注を受けています、優先的に受けていると思いますね。それからいろいろな補助金を受けていますよ。それからいろいろな特典もあると思いますよ。そういうものを国から受けていて
仕事をしている。もちろん私は、石川島播磨という世界に冠たる企業の技術、働いている人の優秀さ、そういったものを少しも疑いません。そういうことを否定するのじゃないんです。そういうところであるがゆえに、やはり率先して憲法、人道というものを守って、そして他の企業の模範となるべきであるにかかわらず、こういう人権侵害、さっき
お話しの大企業内のいじめですよ、こういうことがあることは断じて許せないと思うんです。その点についての
大臣の人権擁護の基本姿勢というものをお伺いをしたいと思うんです。